反スパイ法のない日本、外事警察の苦闘
櫻井よしこ
わが国は、四桁に迫る数の自国民を北朝鮮という国家権力によって拉致されたまま、約半世紀、取り戻せないでいる。
13歳で拉致された横田めぐみさんは59歳になった。母上の早紀江さんは、日本はなぜ、国民を取り戻せないのかと問い続け、新しく拉致担当大臣が就任する度に「真剣に取り組んでほしい」と要望する。歴代内閣は拉致解決を政権の最優先課題と位置づけるが、吉報は未だ訪れない。
第二次安倍政権の7年8か月間、安倍晋三総理を支えて国家安全保障局長等を務めた北村滋氏は、近著『外事警察秘録』(文藝春秋)の冒頭で当時の拉致問題への取り組みを記した。めぐみさんのものとされる遺骨が螺鈿(らでん)装飾の漆器調の器におさめられて日本側に手渡された時、その遺骨は警視庁鑑識課で横田御夫妻に示された。目に涙を浮かべた父上の横田滋さんが無言で坐る傍ら、早紀江さんが沈黙を破った。
「めぐみは生きていますから。これは警察の方でしっかりと調べて下さい」
早紀江さんは毅然と言い、「遺骨」を証拠として鑑定処分に付することを承諾して下さった。「それは娘の生存に対する確固たる信念の発露」だったと、北村氏は書いた。
周知のように、遺骨はめぐみさんとは無関係だと判明し、日本国内の怒りは頂点に達した。だが、振りかえってみれば拉致は金正日総書記が2002年に認めるまで日本での関心事にならなかった。遡って1988年3月、梶山静六国家公安委員長及び警察庁の城内康光警備局長が、「一連のアベック失踪事件は北朝鮮による拉致の疑いが十分濃厚」と答弁した。
北村氏の指摘だ。
「拉致事件について国会で閣僚と警察の責任者が断言し、それ��前後して日本人が拉致されたことを示す具体的な情報が複数取りざたされていたが、それでも捜査に追い風は吹かなかった。北朝鮮の国家犯罪の追及は当時、日本政界を支配していたムードに逆行するものだったのだろう」
事実、89年7月には土井たか子、菅直人の両衆院議員らが北朝鮮の工作員・辛光洙の釈放を求める要望書を韓国に送り、90年9月には自民、社民両党が「金丸訪朝団」を結成して訪朝した。当時は日朝友好親善の機運が高まっていたのだ。
世界一、与し易い国
警察が拉致を防げなかったこと、捜査が進捗しないことについての批判は依然として強い。北村氏は言い訳するつもりはないとしたうえで、日本国の体制に注視する必要性を指摘する。まず第一に、スパイをはじめわが国の国益を深刻に侵害する犯罪を直接、適切な量刑で処罰する法律がないことだ。米国では死刑、終身刑、数十年の懲役刑となるような犯罪が、わが国では北朝鮮のスパイ事件に見られるようにほぼ全員、軽微な刑罰にとどまると北村氏は指摘する。
警察庁が認定してきた1950年から81年までの北朝鮮スパイ事件42件に限れば適用された罪名は「出入国管理令違反」等の微罪にすぎず、執行猶予が付くケースが多いという。
第二次安倍政権が「特定秘密の保護に関する法律」(特定秘密保護法)を難産の上成立させたとはいえ、今もまだ拉致問題に典型的に見られる対日有害活動を直接処罰する法律は制定の動きすらない。安全保障に疎いわが国の、これが現実である。
『外事警察秘録』の頁をめくる度に、日本の安全保障体制が法的にも国民の意識という点においても如何に貧弱かを思い知らされる。北村氏が41年間のキャリアを振りかえって取り上げた事件は拉致問題、重信房子の日本赤軍、麻原彰晃のオウム真理教、暗躍する中国スパイなど、実に幅広い。一連の事例から浮かび上がるわが国の姿は、悪意を持った犯罪者にとって恐らく、世界一、与し易い国のそれではないだろうか。
日本と日本国民を守る手段(法整備)に事欠く中で、北村氏らは国内世論の無理解、日本政府内に蔓延する気概の喪失とも戦わなければならなかった。たとえばオウム真理教事件で、早急に打つべき手のひとつが麻原彰晃ら最高幹部の国外逃亡阻止だった。
彼らは当時頻繁にロシアに渡り、レーザー兵器、ウラン、軍事用ヘリコプター、毒ガス用の検知器、自動小銃などを入手した可能性があった。そこで北村氏ら外事警察は「旅券法に基づいて、麻原に旅券返納命令を出してほしい」と外務省に要請。95年3月30日、警察庁長官の国松孝次氏が狙撃された当日のことだ。外務省担当者はこう返答したという。
「返納命令を発出してもし報復テロの対象として我々が狙われたらどうなりますか。警察庁長官ですら銃撃から守れなかった日本警察に部外者の我々を守り切れるのですか」
テロリストの思う壺
最終的に旅券返納命令は発出されたが、恐怖心を煽って政治的目的を果たそうとするテロリストの思う壺にはまっている日本の姿がそこにあった。氏はまた警察庁外事情報部長だったとき、スパイ事件に関する日米の分析検討会議に出席した。日本の摘発事例を説明した際、米側の出席者がたまりかねた様子で尋ねた。
「日本警察が摘発した事件では、そもそも公訴の提起がなされなかったり、スパイ協力者に対する求刑が懲役一年から二年程度だったりすることが多い。判決では執行猶予が付され、釈放されるケースばかりだ。なぜなのか」
日米同盟という関係の中で、日本から情報が漏れれば米国も一蓮托生だ。米国側が懸念するのは十分に理由のあることなのだ。
北村氏は、日本の刑事法にはスパイ行為を直接罰する罪が存在しないこと、したがって捜査機関は、スパイがその情報を入手するためのプロセスを徹底的に精査し、あらゆる法令を駆使して罪に問える罰条を探し、スパイ協力者はその共犯として立件すると説明したが、到底、理解してもらえなかったという。
「米国では、情報を漏らした者はもとより、情報を探知し、盗み出した者を、より重罪とする。量刑は最高で死刑だ。(中略)終身刑や被告の寿命を遥かに上回る数十年の拘禁刑という事例も散見された」
北村氏はこう書いたが、これは中国、ロシアを含めておよそ世界の国々の常識であろう。
インテリジェンスの専門家が振りかえる安倍政権、7年8か月の軌跡は、案件のひとつひとつが生々しい記憶をよび起こす。独立国としての日本の再起に文字どおり命をかけた安倍晋三総理。第二次政権発足の翌日、内閣情報官としての第一回総理ブリーフィング(報告)を終えて退出する北村氏に安倍総理が声をかけた。
「これからも時々、報告に来てください」
週一回だった定例報告はそれ以来、週二回となった。安倍総理はインテリジェンス報告に多くの時間を割いた。情報こそが国の命運を決することを正しく理解していた宰相なき後、わが国の前途は多難である。
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Famitsu 916 Persona 3 part pictures and transcription.
期待の新作特搜隊
期待の新作TOP30にランクインしたソフトの最新情報を特捜隊が徹底調查!
2006年も半分を過ぎようとしている今日このごろ。我らが特捜隊は、今週も読者が期待を寄せるビッグタイトルを総力取材!厳選された新作情報を見逃したら、話題に乗り遅れちゃうぞ!!
今週のラインアップ 期待の新作TOP30は44ページ
ペルソナ3 254ページ
うたわれるもの 散りゆく者への子守唄 258ページ
メタルギア ソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット 260ページ
ファイナルファンタジーⅢ 262ページ
その他の期待作 266ページ
本作の概要はここでCHECK!
人気RPG、『ペルソナ』シリーズの最新作。これまでのシリーズとは異なる世界設定、異なる登場人物による、新たな物語が描かれるのだ。主人公を始めとした"ペルソナ"を召喚する能力を持つ仲間たちが、人間の精神を喰らう"シャドウ"と戦うことになるぞ。こうしたシャドウとの戦いは、午前0時になると訪れる"影時間"に行われる。一般の人間には、その存在を認識することすらできない闇の時間が、人類の存亡を懸けた戦いの舞台となる!!
主人公
私立月光館学園に転入してきた17歳の少年。学園寮への入寮当日にシャドウ襲撃事件に巻き込まれ、その際にペルソナ召喚能力を覚醒。シャドウ討伐部隊、"特別課外活動部"のリーダーとなる。メンバーの中で唯一、複数のぺルソナを自由につけ替える力を持っている。
初期ペルソナ
オルフェウス
P3
Persona3
ペルソナ3
またもや新たな登場人物が判明!でも、なんか怪しい感じ⋯⋯?
ケータイで購入
プレイステーション2
PS2
DVD-ROM
アトラス 7月13日発売予定 7140円[税込]
ドラマ RPG 要67キロバイト
ディレクター:橋野桂、キャラクターデザイン&アートディレクション:副島成記
期待の新作TOP30 ランキングデータ
今週の順位
3位
初登場4月7日号
15位
最高順位6月30日増刊号
1位
"影時間"に行動する者が⋯⋯!?
主人公ら、ペルソナ召喚能力を持つ者たちは、影時間に自由に行動することができる。それ以外の人間は、影時間に迷い込むとシャドウに精神を喰われてしまうのだ。しかし、そんな影時間に行動する、主人公たち以外の人間がいることが判明したぞ!彼らは3人組。いったい何者なのだろうか⋯⋯!?
↑影時間に入り込んでも精神を喰われないのは、主人公たちだけではなかった。彼らはシャドウに襲われないのだろうか⋯⋯?
仲間になることが判明しているペルソナ使い
たけ ば
岳羽ゆかり
��:豊口めぐみ
主人公のクラスメイトで、同じ寮に住んでいる女の子。性格は勝ち気で、明るく前向き。ぺルソナ召喚能力には覚醒したばかりだ。月光館学園に入学したのは、ある事情によるらしいが?
初期ペルソナ イオ
い おり じゅん ぺい
伊織順北
声:鳥海浩輔
主人公のクラスメイト。転校生である主人公にまっさきに話しかけてきた、明るくお調子者の少年だ。主人公の転校直後に影時間への適性=ペルソナ召喚能力を見出され、仲間に加わる。
初期ペルソナ ヘルメス
はみだし情報
シリーズのクロスレビューは何点?
PS 女神岡聞録 ペルソナ
9887
謎の3人組⋯⋯彼らの目的とは!?
ネットで話題になっている、復讐代行サイト。そこに依頼を書き込むと、復讐がなされるという噂が流れている。この復讐代行屋の正体は、シャドウに精神を喰われることもなく平然と影時間を闊歩する3人組だった。どうやら、影時間に復讐を行っているらしい。彼らがこんなことをしているのは、なぜなのだろうか?
不気味な気配⋯⋯
タカヤ
声:神奈延年
グループのリーダーらしき男。この界隈では有名な、"不気味"で、"イッている"集団をまとめている。ほかのふたりと比べて、不気味さは際立っている。その言動から、何か狂信的な思想を持っているようにも感じられるが、詳細は不明だ。
←↑荒垣と話す3人組。特別課外活動部のことを気にしているようだ。荒垣と彼らの関係性が気になるが、詳細はいまのところ不明。
荒垣と知り合い?
←復讐の代行屋⋯⋯。いかにも危なそうなヤツらだ。
ジン
声:小野坂昌也
タカヤのそばに、いつもつき添っている関西弁の男。情報収集や分析を行う、リーダーのサポート役的な立場らしい。その手に持っているのは手榴弾なのだろうか⋯⋯?何にしろ、危ない人物であることは確か。
チドリ
声:沢城みゆき
タカヤが率いる集団に、つねについて歩いている女の子。不気味な集団の中で、どのような役割を果たしているのかは不明。また、なぜ集団に身を置くのかも謎に包まれている。ゴスロリテイストの服装に、行動とのギャップを感じる。
主人公にとって彼らは敵か味方か⋯⋯?
きり じょう み つる
桐条美鶴
声:田中理恵
月光館学園の経営母体でもある大企業、桐条グループの令嬢で、局等部の生徒会長。幼少時のある事故を契機に、ペルソナ召喚能力に目覚めた。主人公を特別課外活動部に勧誘した張本人。
初期ペルソナ
ペンテシレア
さな だ あき ひこ
真田明彦
声:緑川 光
月光館学園高等部3年生で、ボクシング部主将。ストイックな性格で、シャドウとの戦いも強くなるためのトレーニング的な感覚で行っている。明彦が力を求めるようになった理由とは?
初期ペルソナ
ポリデュークス
さまざまなシステムが一挙に判明!!
ダンジョン探索や戦闘に関するシステムについて、これまで明らかにされていなかった部分が一挙に判明!さっそく、これの要素について紹介していこう。どうやら探索、戦闘の両面で計画性を持った行動が求められるようだ。事前に戦略をしっかり立てよう!
パーティーを編成して突入!
ダンジョン"タルタロス"の探索に入るまえに、パーティーメンバーを編成する。探索に挑めるのは、主人公を含め最大4人。出現する敵の属性や、仲間が持っているスキルなどをよく考えて編成しよう。
会話して
編成に加えるかを選択
誰を連れて行く?
←攻撃、回復という区別だけではなく、所持ペルソナの属性も考慮したパーティー編成を心がけよう。
ダンジョンを手分けして探索
ダンジョン内で"散開"コマンドを選択すると���パーティーが個別行動に移る。主人公以外の仲間は、自動で探索を行ってくれるぞ。ダンジョンの全体像を把握したり、宝箱を捜す際に便利なコマンドだ。
ダンジョン内部を各自単独で探索!
"散開"を指示
宝箱も見つけてくれる
←宝箱を発見したら、各自回収してくれるぞ。散開をうまく使えば探索が楽に!
散開中でも戦闘はアリ!
↑→散開中の戦闘は、それぞれ単独で戦うことになるぞ。強敵に注意すること!
探索を終えたら"集合"!
←↑"集合"を指示すれば、散開中の仲間が主人公のもとに戻ってくる。
やま ぎし ふう か
山岸風花
声:能登麻美子
引っ込み思案で、自分を卑下してしまう傾向がある女の子。戦いには参加せず、情報支援に特化した立場で特別課外活動部に参加する。機械いじりが得意だが、料理にも興味があるようだ。
初期ペルソナ
ルキア
あま だ けん
天田 乾
声:緒方恵美
月光館学園初等科所属。2年まえに事故で母親を失い、親戚からの学費援助のみで寮住まいをしている。初等科5年生という若さながらペルソナ召喚能力を持ち、特別課外活動部に加わる。
初期ペルソナ ネメシス
ピンチのときは"救護要請"
破間中に戦闘になることもある。この場合、当然ながら主人公はひとりで敵と戦うことになるわけだ。もし苦戦を強いられそうなら、迷わず"救援要請"を指示しよう。歌会していた仲間が、続々と駆けつけてくれるぞ。ひとりで無理せず、緊急時には仲間の助けを求めるのも勇気だ。
→危ないと思ったら、迷わず放後要請を出すべき。あとは仲間がやってくるまで、なんとか持ちこたえろ!
仲間が続々と集まってくる
↑←頼れる仲間が集結したら、いざ反撃。目にモノ見せてくれる!
パーティーが全員集合!!
ペルソナが成長していく!
主人公たちだけではなく、ベルソナも敵との戦いで経験値を積み、レベルアップしていく。レベルが上がるとパラメーターが上昇するほか、新たなスキルも覚えるのだ。覚えるスキルの上限まで育てるのもあり。ぺルソナ合体・育成ともに自由度高し!!
これが合図
→こうして地道にペルソナを強化していけば、ペルソナ合体の際に、より強力なぺルソナが生み出せるぞ。
ペルソナのレベルアップ!!
新たなスキルを覚えることも!
←↑新しいスキルを修得!さっそく戦闘で使い、効果のほどを確認してみよう。
所持ペルソナの組み合わせによって発動する"ミックスレイド"
主人公は、複数のペルソナを所持できる。このとき、特定の組み合わせのペルソナがいれば"ミックスレイド"が発動。強力な魔法で戦況を有利にしてくれるのだ!
ミックスレイド発動!
↑ジャックフロストとジャックランタンで発動。ほかにはどんな組み合わせが?
なんだかスゴそう!
→一転して迫力溢れる演出に!ジャックブラザーズが本気になった!?
組み合わせごとに異なる演出が入る
←"ジャックブラザーズ"という組み合わせらしい。漫才コンビのような演出で心も癒される。
そして主人公がスキルをくり出す!その威力は⋯⋯!?
コロマル
声: ? ? ?
以前は神社の神主に飼われていたが、主人を事故で失って以来野良犬として暮らしていた。ペルソナ召喚能力を覚醒させてからは、特別課外活動部の一員としてともに戦うことになる。
初期ペルソナ
ケルベロス
アイギス
声:坂本真綾
シャドウ制圧用として開発された兵器。ペルソナ召喚能力を実装するため、"自我”を与えられている。従順実直で、命令には忠実に従う。戦術面以外の知識は、あまり持ち合わせていない。
初期
ペルソナ
パラディオン
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幻想の銀河を握りしめる
ぼんやりとしているうちに、八月が終わってしまいそうだ。
今年は、ツバメのねぐら入りを見に平城京へ行くタイミングがなかったし、大台ヶ原も二回しかいけなかった。コマドリの写真はもちろん撮れていない。わたしは結構大台ヶ原の運はよくて、行けばコマドリを見ること��できていたのだけれど……鳥というのは、なかなかむずかしい。
代わりに先週、十津川村の「玉置神社」というところに行った。
「呼ばれなければ行けない神社」と言われている。奈良県十津川村は、吉野郡に属するのに三重県からだと、和歌山を回った方がはやくつく。
三時半に家を出て、八時半くらいについたかな……。
山に登るタイプの家族と一緒に行ったので、まずは玉置山にのぼった。のぼりはじめてすぐ、カケスが目の前に飛び出してきた。望遠を引いても見切れるくらいの間近でしばらくたたずんでいて、うごけないままシャッターを切った。びっくりした。
こんな幸運があると、(まずこの神社にたどり着けたことが幸運で、「呼ばれていない」ときはカーナビが壊れたり車が壊れたりするらしいが)この土地の神々は、わたしを受け入れてくれたんだ、と思う。
山頂へ行き、下っているあいだに、鳥はあまりいなかったが、見たことのない花をたくさん見た。ホトトギス、という種類の花らしい。
リスがしきりに鳴いていた。
お参りを済ませてから御朱印をもらい、紙製のお守りと陀羅尼助を買った。お守りは最初はスマホケースに入れていたのだが、トイレとかにも持ち歩くことを考えたら、なんだか神様に狼藉を働いているような気がして、財布に入れ替えた。
お参りを終えたのがお昼まえで、そのまま熊野本宮大社へ行った。八咫烏のグッズや置物がたくさんあった。八咫ポストというのがあったので、いずれわたしを澁澤の伯母様と呼ぶ予定のおちいさいひとにはがきを送った。自分には、八咫烏のピンバッヂを買った。木曽駒ヶ岳で帽子をなくしてしまい、お気に入りのライチョウとルリビタキのピンバッヂも一緒になくなってしまったので、新しい帽子に付けた。かわいい。
それはそうと、いま田中芳樹の『銀河英雄伝説』を読みかえしている。先々週の台風で仕事を休んだ日に、急に読み返したくなって読み始めた。いまは6巻。ヤンイレギュラーズが結成されたあたり。
社会情勢が日々悪くなってゆき、暗澹とした未来しか見えない。そんな状況でこの物語を読むと、ラインハルト・フォン・ローエングラムの存在を切望し、いないことに落胆する自分がいてぞっとする。
物語に指摘されずともいまの日本の状況には、成人して参政権のあるわたしにも責任がある。それなのに、絶対的な善性を持った、カリスマ性のある誰かに、この状況を打破してもらおうと期待している。そしてそんな人が現れないことに、毎朝、(通勤の電車で読んでいるので)やるせなさを感じてしまう。
社会のかわらなさ、どうにもならなさ、悪化に歯止めのかからなさ、それらに追い詰められている。
わたしにできるのは自分の善性を信じ、また疑いながら、日々を過ごしてゆくことと、それを他者に働きかけること。それはわたしの現在をいますぐ変えてくれることはないかもしれないが、わたしを澁澤の伯母様と呼ぶ予定のおちいさい人が、人生選択をするころには、作用していてくれればいいと思う。
わたしは生きることをつづけて行けるだけの幸運さがあり、まだ生きるという抵抗をやめずにすんでいる。
そんなことを思いながら、今日は伊良子へ渡った。伊良子清白という詩人は、自分が伊良子という姓だから伊良湖岬のことをあえて「伊良子」と書いたらしい。わたしもそれに倣っている。
行きのフェリーで、シェアオフィスの一階のちゃんぽん屋さん夫妻にである。今日から夏休みでお出かけのようだった。少し話をして、わたしは鳥を鳥にサイドデッキヘ。
鳥羽ー伊良子航路は、神島ー伊良子間にオオミズナギドリが多く飛ぶ。水面すれすれを飛び、ときに水面に片翼の切っ先をすべらせて澪を引くその姿のうつくしいこと。
風を得て、羽ばたかずにただ身を風に乗せている、その動きの簡潔さと効率に感動する。いまは「アホウドリ」と呼ばれているオキノタユウをこの航路で見ることはできず、オオミズナギドリの飛翔を見て想像するしかないが、かれらは荒天のほうが生き生きと飛ぶらしい。眠りながらでも飛び続けられるというから驚きで、その姿をこの目で見たいと切望している。
恋路ヶ浜で去年ノビタキを見たので探そうと思っていたが、暑すぎて無理だった。「日本で二番目においしいかき氷」のお店でかき氷を食べた。このお店はシロップが自家製で、田原の特産物を使っている。わたしはいま銀英伝を読んでいるので、ヤンのことを思いながら紅茶シロップにした。
それにしても、暑かった。水温が上昇しすぎた海には魚が減ったと漁師たちが嘆く。渡り鳥の種類も減ったり変わったり(渡りのルートや時期も変わってしまっているらしい)していると、何十年もバードウォッチングをつづけているひとたちは言う。
人間が滅びてしまっても、鳥や魚たちはやはり各々の営みをつづけるのだろうが、それでも、人間による傷跡のことを考える。遠い昔からわたしたち人間という種族が滅ぼしつづけてきた生物、そしていまだ滅ぼすことをやめない生物たちに対して負っている責任のことを。
帰り際、遊歩道でくちばしにルアーが引っかかっているアオサギをみる。このアオサギも、人間によって迷惑を被っている鳥なのだ。そしてその個体を直接的に救うすべを、わたしは持っていない。
復路にもミズナギドリは飛んでいた。フェリーに併走するように飛ぶ鳥は、とてもうつくしかった。
神島を過ぎ、鳥の姿も見えなくなって、SNSの友人たちに旅の報告をしていたら、TLに自分の本の写真が流れてきた。
千葉の書店「本屋lighthouse」さんが、『ゆけ、この広い広い大通りを』を取り扱ってくれることになった。セーファースペースの取組みをしている書店さんで、この本を並べてもらえることは、ほんとうにうれしい。安心してお買い物できると思うので、本をお求めの方は是非本屋lighthouseさんのショップから買ってください。
日々、いろんなことを考えている。
考えるだけでは、まえに進まないこともたくさんある。それでも、とりあえず考えなければならなくて、考えの果てに、すこしはよい未来がありますようにと思っている。
文フリ大阪が間近だ。
ヨモツヘグイニナからは再録短編集の新刊はあるけれど、どうか日々詩編集室から出る『ゆけ、この広い広い大通りを』をよろしくおねがいします。
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『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』考察 ※ネタバレあり
端的に申しまして、よく出来た映画でした!
ピーチ姫が、守られ助けてもらうだけのか弱いお姫様ではなく、自ら勇ましく戦うカッコイイ女性像に描かれていたり。
息つく暇もなくめまぐるしい、クライマックスの連続といった演出も、今風を意識して作られていると感じました。
昨今流行りのなろう小説では、装飾的な文章や描写などは極力カットされ、要点だけで話を繋げる書き方がウケているようですし、それに近いなと。
衰えたBBAの動体視力では、ちょっと疲れてしまったので、小休止シーンも欲しい所ですけどねw
私、この映画を観た後に何ともダークな気分になり、そういうことだったの……? と考え込んでたんです。
それで気になってネットでの評判や感想をググってみた所、誰も私のようには受け取っていない!?とショックを受けました😱
ならばここに、1人のひねくれ者(?)の解釈を残しておきたいと思い、今この文章を書いています。
約90分の鑑賞中、そこかしこでモヤモヤしていましたが、決定的だったのはラストシーンでした。
ブルックリンの街を守り抜いたマリオたちは、救世主として持てはやされ、大団円EDを迎えます。
が、その直後。
なぜか暗転し、真っ黒に染まる画面。
ポツンと現れたチコが、意味深なメッセージをつぶやきます。
「これでおしまいだなんて、出来すぎたお話だよね」
「後に残るのは闇だけ。せめてこのサックスを聴いて」
しばし独奏を経て、画面には再びマリオとルイージの、その後と思われし姿が映ります。
寝起きの二人は、ただ眠いだけなのか、他にも理由があるのか……? どこかくたびれた、疲労の残る表情でカフェを飲み干します。
それから互いの顔を見合わせ、気合を入れ直して、思い切ったように部屋を飛び出して行く。
飛び出した先に広がる世界は、一面のマリオワールド。
おなじみの障害物やブロック類が浮かんでいます。
あれ?
救ったはずのブルックリンの街は?
たくさん居た街の人たちは?
大団円のラストシーンのはずなのに、一緒に戦ったピーチ姫や仲間たちの姿も見えません。
朗らかな雰囲気が漂っているのに、どことなく寂しい絵面のまま終わります。
この付近で、私が感じていたモヤモヤは自分勝手な確信へと変わっていったのでした。
ブルックリンの街は、とっくに滅んでしまったのかもしれない、と。
街の人たちも、そしてマリオとルイージも。
思い返してみれば、ピーチ姫が出自を語るシーンでは
「赤ん坊の時からキノコ王国に居た」
「過去の記憶はないし、自分が何者なのかもわからない」
と話していました。
その内容から察するに、ピーチ姫の正体というのは、産まれてすぐ亡くなった可哀想な子供なのではないでしょうか。
純粋で汚れがない赤子の魂であったがゆえに、キノコ族に守られ天国の城で暮らしていた。
マリオを見た時、「あなた人間なの!?」と、とても驚いた様子でもありました。
多くの人間は罪深く、彼女が住む天国にはほとんど辿り着けないのかもしれません。
ピーチ姫は浅慮で、マリオを城(天国)へ受け入れてしまいます。
だけど、ダークランド(地獄)へ落とされてしまったルイージを諦めきれないマリオは、地獄まで追いかけて行くと決意する。
意気投合した愚かな人間二人は、ダークランドのクッパと対峙しようとしますが、ピーチを大切に育んできたはずのキノコ族は、何ともすげない態度で拒否します。
キノコ族は天国の守人だから、世の理を理解しており、決して逆らおうとはしない。
そしてダークランド、すなわち地獄を牛耳るクッパという存在が、閻魔大王の象徴です。
結論としまして。
『スーパーマリオ』という作品は、仏教の死生観を表現しているのだと思います。
ゲームで夢中になって攻略していた、あの一面一面は “地獄” を指している。
思えば『スーパーマリオブラザーズ』 は、全8面構成です。
そして仏教でいう所の地獄は、八大(八熱)地獄と説かれています。
もっと言うなら、ルイージが捕らわれていたクッパ城の牢部屋���どは、まさにわかりやすい焦熱地獄でした。
チコは劇中を通し、何かと意味ありげな台詞を吐く謎の存在でしたが
「唯一の希望、それは死による解放」
なんてことをズバリ言い放っておりました。
このキャラは隠された裏設定をチラ見させるため、視聴者にヒントを与えていたのでしょう。
マリオとルイージは、無間地獄を彷徨う罪人だった。
映画を観終わった私なりの解釈を、ここにひっそりと記しておきます。
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「何もないところ」
2年前に首都圏からここに引っ越してきたときに、あるお店の人が私に言った。「よくこんな何もないところまで来ましたねえ」。それは、「ようこそ、何もないところですが」といった歓迎の気持ちを込めた言葉だったと思うが、こんな風に言われてしまう「何もないところ」ってかわいそうだな、とちょっと思った。
確かに、「〇〇市」と言えば、「ああ、あの観光名所で有名ですよね」と言われるようなところは数多くある。しかしよく考えてみれば、それよりもはるかに多くの市町村などが、「それ、どのあたりですか?」と言��れるような、聞いたこともないような名前の場所だろう。読み方がわからないものもあれば、自分が住んでいる県の町でも場所があまりよくわからない、何があるのかわからない、という場合もある。
そんな「何もないところ」の一つに引っ越してきた私の新たな趣味がウォーキングだ。「何もない」ということは、都会にはない視界が開けた風景がすぐ近くにあるということ。それで、歩くのが楽しくなったのだ。そして、遠くを見ることが多くなったから、視力もよくなった。そんな場所を歩いていると、いろいろな発見がある。同じ道を歩いていても、時間帯や季節によって、「何もないところ」は異なる表情を見せる。それらを写真に残してみると、あることに気づく。あれ、これが「何もない」場所なんだろうか、いろいろあるじゃないか、と。
「何もなく」ても、そこで生活し、学校で勉強し、あるいは仕事をしている人がいる。毎日、夕暮れ時には家々に灯りがともり、海岸沿いにある工場の煙突からは絶えず白煙が出ている。洋上風力発電のための風車も回っている。都心に行った帰り道、高速道路を走る車からこれらが見えると、ああ、家に帰ってきたな、と思う。私にとって一番好きな場所は、今、住んでいるところなのだ。そういった「何もない」ところでも、人々の日々の営みがあることを愛おしく思う。
どんな場所にも、その場所なりに美しい風景がきっとあるだろう。多くの「何もない」と思われている場所にも、必ず何かあるはず。もしあなたが今、住んでいる場所をあまり気に入っていなかったとしたら、今日、少しだけ歩いてみて、見つけてみませんか。
神栖(かみす)市(茨城県)
市役所裏の緑地公園。1周4.4キロの池があり、10種類以上の野鳥が見られる
ウィンド・パワーかみす第1洋上風力発電所。神栖市は、日本初の本格的な洋上風力発電所が誕生した場所。誰もいない海岸で景色を満喫できる
息栖(いきす)神社。鹿島神宮(茨城県鹿嶋市)と香取神宮(千葉県香取市)とあわせて東国三社とされる。鹿島神宮、香取神宮までは、それぞれ車で20分ほど。東国三社に共通のお守りがあり、本体となる木のお守りをどこか1社で買い、残り二社で、色の異なるシールを購入して本体に貼れば完成(最初の1社のシールはすでに貼られてある)。
季節によって、この景色は変わる。冬は緑がなく、一面、荒涼とした砂漠のよう
地元の人ですらほとんど行かない夕日スポット、なさか夕日の郷公園
イギリスで出会った景色と一瞬、似て見えた(?)風景
*ここまで読んで、神栖市に関心を持ってくれた方へ。神栖市がどこにあるかは、市のキャラクター、カミスココくんが、ものすごくわかりやすく示してくれています(頭は茨城県の形。神栖市はココよ、と教えてくれています)。ちなみに、好物はナタデココみたいです。
カミスココくんプロフィール / 茨城県神栖市 (city.kamisu.ibaraki.jp)
*ほとんど誰からも注目されない場所が、日の光を浴びてきらきら輝いている。そんなところを歩くときに気分を一層盛り上げてくれるのが、この音楽。
(278) "Say So" - Doja Cat - Cover (Violin) - YouTube
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『 リボルバー・リリー 』
皆さん こんにちは。
近くの結婚相談所 ハッピータイム群馬桐生相生
婚活アドバイザーの金子です。
女優の綾瀬はるかさんが、華麗なガンアクションを繰り広げる
ダークヒロインを演じるという話題の映画「リボルバー・リリー」
特殊戦闘能力を持つスパイを養成する組織「幣原機関」の最高傑作
と呼ばれた「リボルバー・リリー」こと小曽根百合(綾瀬はるか
さん)は、東アジアを中心に50人以上もの要人を暗殺し、
各国大使館から「最も排除すべき日本人」と言われた伝説の
凄腕諜報員。
関東大震災の翌年である1924年の大正時代末期。
すでに組織から引退し、帝都 東京でカフェを営む小曽根百合は、
陸軍の消えた闇資金の情報を持つ少年を保護したことに端を発して
陸軍の精鋭部隊から追われる身になってしまいます。
「戦いでは何も守れない」という事を悟って諜報員から引退した
はずの小曽根百合でしたが、少年を守るために国家の陰謀と���う
決断をするのです。
小曽根百合をサポートし共に戦うのは、元海軍の弁護士 岩見良明(長谷川博己さん)、カフェ店員の奈加(シシド・カフカさん)
と琴子(古川琴音さん)。
そして、豊川悦司さん、石橋蓮司さん、橋爪功さん、野村萬斎さん
らベテラン俳優が渋い演技を披露し、陸軍幹部役でジェシーさん、
板尾創路さんなどが迫真の演技で悪役を演じていました。
更に、過去の数々の映画で様々な俳優が演じてきたある歴史上の
有名な人物を、それまで演じてきた俳優とは異なるタイプの
阿部サダヲさんが演じていたのが意外でした。
監督は「世界の中心で愛を叫ぶ」の行定勲さん。
綾瀬はるかさんが「ニキータ」や「アトミック・ブロンド」の
ようなガンアクションシーンを見事にこなしていたものの、
ハリウッド映画の「ジョン・ウィック」などを手掛けてきた
アクションデザインチーム「87イレブン」によるアクションシーン
などと比較してしまうと若干スピーディーさに欠けるのは否めま
せんでした。
しかし、間があることがかえって日本映画らしい情緒のような
雰囲気をもたらしているように感じ、特に後半での敵の姿が
見えない濃霧の中での銃撃戦は、むやみに銃を撃ったりはせずに
相手の気配を感じ取って戦うという静の要素を取り入れての
アクションで、とても良かったです。
原作は読んでいませんが、長浦京さんという作家による
「第19回大藪春彦賞」を受賞した同名小説とのことで、
それにふさわしいハードボイルドタッチのシリアスなトーンの
映画ですが、反戦をテーマにしているストーリーでもありました。
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近くの結婚相談所 ハッピータイム桐生相生
婚活アドバイザー 金子 薫
群馬県桐生市相生町5-536-1 ネプチューン2-A
電 話:0277-32-5314
連絡時間:午前10時から午後9時
定休日:年中無休
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梢ちゃん、初めてのイリュージョン
1.
大阪から東京へ引っ越して、あっという間に1学期が過ぎた。
新しい学校で仲良しの友達もできたし、まあどんな環境にもすぐに適応するのがウチの強みやな。
弟の湊(みなと)は転校先の小学校に慣れなくてちょっと苦労している感じ。
それで母ちゃんが新聞の折り込みチラシで見つけた小学生向けの造形美術教室へ行ってみたらどうか、と提案してきた。
湊はウチと違(ちご)て繊細やもんね。
ゾーケイとかビジュツとか、そういうんは向いてると思う。
母ちゃんは教室へ電話を掛けて見学の予約をした。
土曜日午後のクラス。
「梢(こずえ)も一緒に来て」
「えぇー、ウチも?」
「湊は小2やし一人で行かされへんでしょ? いつもママが付き添えるとは限らへんし、そのときはあんたが連れてくの」
「あーん、貴重な週末やのに。母ちゃんのいけずー」
「そろそろ『お母さん』かせめて『ママ』って呼んでくれへん? いつも成○石井で母ちゃんって大声で叫ばれるの恥ずかしいんやけど」
「『おかん』って言われるよりええやろ? それに高級スーパーやゆうて恥ずかしがるんは田舎モンやで。だいたい成○石井くらいアベノ橋にもあったやんか」
「あ、そうか」
「分かったらよろしい、母ちゃん」
「そうやって親を煙に巻くの止めなさい」
2.
そんな訳で3人で見学に来た造形美術教室。
三田さんというおばちゃんの先生が教えていた。
生徒は10人ほどで、それに保護者のパパとママが何人か来ている。
この日はカラーキャンドルを作っていた。
使い古しのろうそくとクレヨンを削って湯せんにかける。
何色か溶かして好きな順番で型に流し込めばカラフルなキャンドルが出来上がる。
「桧垣湊くんね? よかったら一緒に作らない?」
先生に誘われて湊は頷いた。
「あのっ、ウチもやらせてもらっていいですか!」
「こら梢!」
母ちゃんが止めようとしたけど、先生は笑って許してくれた。
「湊くんのお姉さんね? もちろんどうぞ」
「桧垣梢ですっ。中学2年です! ヨロシクお願いします!!」
だってキャンドル作り、すごい面白そうなんやもん。
「うわぁー、綺麗やん!」
どや、この色のチョイスはなかなかのもんやろ?
「水色を入れたいの? ええで、お姉ちゃんが一緒に削ったげる」
クレヨンを削るのを手伝ってあげた。この教室、こんな小っちゃい子にもナイフ使わせるんか。
「ボク! そこ指入れたらあかんっ。熱いでぇ~!」
湯せんの中に指を入れかけた男の子を止めた。ホットプレートの扱いも注意させんとあかんなぁ。
気が付けばウチは子供たちの輪の中にいてあれやこれや世話をしていた。
先生は後ろに立って笑っていた。
3.
「この娘が一番楽しんだようで申し訳ありません」
他の生徒さんたちが帰った後、母ちゃんが謝った。
ま、ウチを連れてきたらこうなるのを予想せんかった母ちゃんのミスやな。
「いいんですよ。よかったらこれからも毎週来てくれたら助かるな、梢ちゃん」
「ええんですか?」
「子供、好きでしょ?」
「ハイッ、好きです! ・・母ちゃん、ウチの分の月謝もお願い」
「あのねぇ」
「月謝なんて要らないわ。むしろお給料払わないといけないくらいよ」
「えぇ! お給料もらえるんですか!」
「な訳ないやろ」
母ちゃんがウチの頭を小突いた。
「ところで、」
母ちゃんは先生に向かって聞いた。
「三田、静子先生ですよね?」
「はい」
「覚えてませんか? 30年以上前ですけど京都の中学校で」
「京都? 確かに昔、京都で教師をしていましたが」
「私、美術部でお世話になった鈴木です」
鈴木っちゅうんは母ちゃんの旧姓やな。
「・・鈴木純生(すみお)さん? あの、捻挫して松葉杖の」
「はい!」
「きゃあ~っ」「きゃあ~っ」
母ちゃんと三田先生は両手を握り合った。
それからハグして、その場で跳ねながら一回転する。よお息が合うもんやと感心した。
「チラシでお名前見て、もしかしたら思ってたんです」
「懐かしいわ!」
「よかったら、あらためて昔のお話させてください」
「そうね、そうしましょう!」
・・後ろのドアが開く気配がした。
「先生、これも倉庫に置かせてもらっていいですか」
振り返ると背の高いお兄さんが立っていた。
その後ろには可愛いお姉さんもいる。
お兄さんは大きな丸いモンを抱えていた。
イケてない兄ちゃんやな。この、もさぁっとした感じ。
ウチの見立てやと30は超えとるな。もちろん彼女いない歴イコール年齢や。
それと比べてお姉さんはずっと若くてキュート。きっとピチピチの女子高生。
「ああ、まだ生徒さんがいましたね。出直します」
「いいのよ。もう済んでるから。・・それで何を置きたいの?」
「このボールです」お姉さんが答えた。
「くす玉なんだって」
「正確には人間くす玉です」
人間くす玉って、いきなり謎のワード。
「くす玉っ!?」
素っ頓狂な声を上げたのは母ちゃんだった。
「まさかそれ、S型の人間くす玉・・」
「よく分かりますね」
お兄さんが言った。
「あなた何者ですか?」
母ちゃんは両手で胸を押さえて深呼吸して、それから一人で叫んだ。
「きゃあああ~!!」
さっき三田先生とシンクロして叫んだときよりずっと大きな声だった。
皆が驚いて見守る中、母ちゃんだけが絶叫しながらぴょんぴょん飛び跳ねていた。
46歳の母ちゃんが急に若返ってハタチになったみたいに見えた。
4.
次の土曜日の教室。
ウチは一人で湊を連れて来た。
母ちゃんは前の晩からどこかへ出かけ、朝になって上機嫌で帰って来てグーグー寝ている。
ええ歳の主婦がそないな夜遊びしてええんか?
父ちゃんは笑ってたから許してるんやろうけど。
今日の造形美術教室の題材は千切り絵だった。
いろいろな色の和紙をハサミを使わずに裂き、糊で貼って綺麗な絵にする。
子供たちは一生懸命。ウチも一緒に絵を作る。
やっぱり楽しい。
ウチには造形美術の才能があるんやないか。
「みんなーっ、クッキーだよ! あたしの手作り!!」
れいらさんがお菓子を持ってきてくれた。
玻名城(はなしろ)れいらさんは先週出会ったあの高校生だった。
造形美術教室の卒業生で、ときどき子供たちに差し入れしてくれる優しいお姉さん。
「イッくんは二日酔いらしいです」
「男のくせに駄目ねぇ」
れいらさんが報告して三田先生が笑った。
イッくんとはあのお兄さんのことで、本名はえーっと、酒井功(さかいいさお)さんやったな。
れいらさんと同じく造形美術教室のOBで今もいろいろお手伝いしてくれているらしい。
「いったい何人で飲んだんですか? 先生」
「5人ね。イッくんと桧垣純生さんと私。それに桧垣さんの知り合いっていうモデル事務所の社長さんと、京都から来たイベント会社の社長さん。イッくん以外は全員女性よ」
「えっ、ウチの母ちゃんも一緒やったんですか?」
「そうよ。昔のお話が沢山できて楽しかったわ」
「社長するような人と母ちゃんが知り合いとか、知らなかったです」
「面白い人たちだったわ。皆さんお酒もぐいぐい飲むし、盛り上がっちゃった」
「先生もぐいぐい飲んだんでしょ?」
「おほほほ」
「イッくん可哀想。おばさんたちに飲まされて」
「んま、れいらちゃんったら失礼なこと言うわねー」
「ウチにも分かります。30過ぎのおじさんでも、おばちゃんたちから見たら若い男の子ですもんね。そら可愛がられますわ」
「梢ちゃんまだ中学生でしょ? 何でそんなことが分かるの?」
「えへへ、そうゆうんは得意なんです」
「でも30は可哀想よ。彼25歳だもの」
「うわぁ、ホンマですか~! ウチが言うたってチクらんといてくださいっ」
「あはは」「きゃはは」
5.
家に帰って、ウチは母ちゃんから若い頃の話を聞いた。
母ちゃんは京都の会社でイベントの司会やイリュージョンのアシスタントをしていた。
イリュージョンって、あのマジックのイリュージョンなのか。
二十歳のときの写真と言って見せてくれたのは、チャイナ服の母ちゃんが透明な箱の中に出現したところだった。
腰まで割れたスリットから生足出して、きらきら輝く笑顔で手を振っている母ちゃん。
今の母ちゃんと同じ人とは信じられないくらいに綺麗だった。
謎の『人間くす玉』についても教えてもらった。
���間くす玉は同じ会社のアトラクションで、中から���の子が飛び出すくす玉なんだって。
先週イッくんが抱えていたのは一番小さなサイズのくす玉。
「彼がクレクレしたから無料であげたって社長が言ってたわ。意味分からへんよね」
ウチにも意味が分かりません。
夜、れいらさんから LIME のメッセージが届いた。
『明日イッくん家に行くの。梢ちゃんも一緒にどう?』
『行きます!』
『イリュージョンを見せてくれるんだって』
またイリュージョン!?
後にして思えば、それはウチが新しい世界に足を踏み入れるお誘いだった。
6.
イッくんのマンション。
「いらっしゃいませ!」
ドアを開けて迎えてくれたのは綺麗な女の人だった。
「あなたが梢ちゃん? 酒井多華乃(たかの)です。よろしくね」
「多華乃さんはイッくんの奥さんだよ。先月結婚したばかり!」
ほぇ~。ばりばりの新婚さんやないですか。
多華乃さんは七分丈スパッツの上にニットのサマーセーターを着ていた。セーターの襟ぐりが大きくて谷間がちらちら。
こんなセクシーな奥様がいるやなんて、この間は「彼女いない歴イコール年齢」とか思てゴメンナサイ!
リビングに案内してもらうとイッくんが待っていた。
ちゃんとお話しするのはこれが初めてだった。
「お招きありがとうごさいます! ・・あの、ウチも『イッくん』って呼ばせてもらってええですか?」
「いいけど?」
「実はどう呼ぶか寝ないで考えました。『イッくん』はちょっとナレナレしい、『イサオさん』はヨソヨソしい、そやかゆうて『イッさん』やと大阪のおっちゃんみたいで」
多華乃さんがぷっと笑う。
「なんでやっぱり、れいらさんと同じ『イッくん』で行かせてください!」
「梢ちゃんって面白いね」
よっしゃ、ウケてくれた!
ウチは心の中でガッツポーズをする。
「イッくん、二日酔いは治った?」
れいらさんに聞かれてイッくんは頭をかいた。
「ああ、酷い目にあったけど、タカノがいてくれたから・・」
「熱いねーっ」
大喜びで冷やかすれいらさん。
いつものウチなら一緒に囃し立てるとこやけど、さすがに初対面で遠慮したのは我ながらエライと思う。
「・・んじゃ、さっそくやろうか」
「イリュージョン!?」
「うん、新作だよ。この場所に招かれたゲストだけが見れる限定イリュージョン。そして記念すべき最初のゲストが君たちだよ」
ぱちぱちぱち。れいらさんが拍手した。
今度はウチも一緒に思いきり手を叩いた。
7.
小さなテーブルを挟んで4人がソファに座った。
手前のソファにウチとれいらさん。
向かい側にイッくんと多華乃さん。
こちらから見て向かって左にイッくん、右に多華乃さんが座っている。
イッくんは多華乃さんの腰に左手を回すと、ぐいっと引き寄せた。
多華乃さんがイッくんに密着する。
ニットの襟がでろんと伸びて白い肩が出た。その肩にブラ紐はなかった。
あの、それはお客さんが男性のときに目を惑わすための演出ですか。
女でもドキっとするんですけど。
「これはサテンの袋。長さ2メートルあるのでうちの妻が全部入ります」
イッく���は多華乃さんを左手で抱いたまま、床の袋を右手で拾い上げた。
紫色でつるつるした光沢のある袋だった。
それを多華乃さんの頭から被せる。もぞもぞと右手だけで身体全体を覆ってゆく。
・・そやから、わざわざ密着してそういう作業をするのは何でですか。
すごくエッチに見えるやないですか。
足先まで袋を被せた。
「足あげて」
多華乃さんの膝がぴょんと伸びて、目の前に袋の先が突き出された。
「れいらちゃん、袋の口をくくってくれる」
「これでいい?」
れいらさんはサテン袋の口を絞って結んだ。
「ありがとう」
相変わらずイッくんは袋に入った多華乃さんを左手で抱いたままだった。
つるつるしたサテンの袋を右手で撫でる。
多華乃さんのボディラインがはっきり分かった。
膝、腰、頭。
うわ、そこは多華乃さんの胸。
いくら奥さんやからゆうて、人前でそないに揉みしだいたらアカンでしょ。
「次はこのシュラフ(寝袋)。梢ちゃん、シュラフって知ってる?」
「ええっとキャンプとかで使うモンですよね」
「そう、携帯用の寝具だね。綿が入ってて暖かいんだ。・・これを被せるから手伝ってくれるかい?」
イッくんに指示されてシュラフを今度は多華乃さんの足の方から被せた。
腰の下を通すとき、イッくんは左手に抱いた多華乃さんを持ち上げて通し易くしてくれた。
頭まで被せ終えると、脇のファスナーを上まで閉めた。
「こっちは縄で縛るよ。・・ん? どこかな」
右手で足元をまさぐった。
「れいらちゃん、そっちに紙袋が置いてない?」
「ええっと・・、あった!」
ウチとれいらさんが座るソファの後ろに紙袋があった。
「そこに縄が入ってるから、それでここを縛って。できるだけきつく」
れいらさんはイッくんのソファの後ろに回り、言われた通りにシュラフの口に縄を巻いて縛った。
「二人ともご苦労様でした。後は座って見てね」
ソファに座ったイッくん。
ウチとれいらさんはその反対側に座っている。
イッくんの左手はシュラフ(の中の多華乃さんの腰)を抱いたまま。
「いま、タカノは二重の袋の中。暖かい、というより暑いだろうね。呼吸するのも辛いかもしれない」
右手でシュラフを押さえた。多華乃さんのちょうど顔にあたる部分。
「この中で美女が苦しい思いをしていると考えたら、・・ちょっと興奮するよね」
「イッくん! そういうフェチな妄想してる場合じゃないでしょ! 梢ちゃんも見てるのに」
「え、ウチ? 何のことですか?」
分からないふりをしたけど、二人の会話は何となく理解できた。
じっと我慢してる多華乃さん。たぶん本当に苦しい。
そんな多華乃さんを抱きながら「興奮する」と言ったイッくん。ドSやんか。
「ごめんごめん。イリュージョンに戻ろう」
イッくんは右手でシュラフの口を縛る縄を掴んだ。
「いくよ。・・それ!!」
手前に引いた。
シュラフは腰の位置で二つに折れ曲がった。
「もう一回!」
すぐにシュラフの足先を掴んで持ち上げた。
二つ折りのシュラフが四つ折りになった。
「え」「え」
ウチとれいらさんは揃って声を上げた。
「二人で上から押さえてくれるかい」
言われた通りシュラフを押さえると、空気がしゅうっと抜ける音がした。
シュラフは四つ折りのまま潰れて平らになってしまった。
「えーっ、どうして!?」
「多華乃さんは!?」
二人で騒いでいると多華乃さんの声がした。
「お疲れ様、お茶にしましょ♥」
リビングに隣り合ったキッチンに多華乃さんがいた。
紅茶とケーキを乗せたトレイを持って笑っている。
少しだけ乱れた髪。少しだけ紅潮した頬。
とても色っぽかった。
8.
「いったいどうなってるの!?」
「それは内緒。今のところお客さんが来た時に見せられるのはこのイリュージョンだけだからね」
イッくんはタネを教えてくれなかった。
「あんなにたくさんあったイリュージョンの機材はどうしたの?」
「ほとんど人にあげるか倉庫に入れちゃったんだ。これからまた新しいのを作るよ」
「新居に汚いものを置くなって、三田先生に言われたみたい。私は気にしないんだけどね」
多華乃さんが補足してくれた。
「まあ彼のアパートにいろいろ怪しいモノがあったのは確かね」
「怪しいモノはないだろ、タカノ」「うふふ」
「イッくんはね、何でも自分で作っちゃうんだよ。イリュージョンの道具から吊り床まで」
「スゴイですね! 吊り床って何ですか?」
「あ、ゴホンごほんっ」「・・ちょっと早いかな? 梢ちゃんには」
「???」
いろいろ話をしてイッくんと多華乃さんのことを教えてもらった。
二人は同じ大学で知り合って、一緒にイリュージョン同好会を設立した。勤めるようになってからも仲間と活動を続けている。
マジックの競技会にオリジナルのイリュージョンを出して賞を獲ったこともある。
たまに造形美術教室の子供たちにもイリュージョンを見せてくれているんだって。
「最近はれいらちゃんも参加してくれてるんだ。梢ちゃんはイリュージョンをしてみたいって思わない?」
「やりたいです。ウチもあんなすごいイリュージョンができるようになりますか?」
「できるわよ。私も最初は何も知らなくて始めたんだもの」
「ならウチの親が許してくれたら。あ、日曜日しかダメですけど、いいですか?」
「ぜんぜん大丈夫」
「梢ちゃんを誘おうと思ったのは訳があるの」
れいらさんが説明してくれた。
「三田先生、10月に還暦を迎えるのよ」
「カンレキって?」
「60歳のことだよ」
「先生そんなお歳やったんですか」
「だからお誕生会を企画してるの。そこでイリュージョンも見せようって」
「ははぁ」
「いつもだったらイッくんが多華乃さんとやるんだけど、たまにはサプライズもいいでしょ?」
イッくんと多華乃さん、れいらさん。3人がウチを見て笑っている。
まさか。
「れいらちゃんがものすごく推すんだ。新しく来た梢ちゃんっていう中学生がとてもいい子だって」
「あのウチそんないい子では」
「僕も梢ちゃんと会って思ったよ。是非、誕生会のイリュージョンをやって欲しい。・・タカノはどう?」
「大賛成よ。私も梢ちゃんのことが大好きになっちゃった」
「決まりね。マジシャンはあたし、アシスタントは梢ちゃんだよ!」
れいらさんが宣言した。
どうやらウチはいつの間にかイリュージョンに出ることが決まっていたらしい。
母ちゃん、ウチ、母ちゃんと同じイリュージョンのアシスタントするんやで。怒らんといてな。
「実はこんなのを設計しているんだ」
イッくんはノートに描いた図面を見せてくれた。
スーツケース?の中に膝を曲げて入った女の人のシルエットが描かれていた。
「タカノ用に描いたんだけど、梢ちゃんなら問題ないはずだよ」
「もしかしてウチがこれに入るんですか?」
「そうだよ。それで外から剣を刺すんだ」
「えええ~っ!!」
9.
還暦祝いなんて勘弁してちょうだい。
はじめのうち三田先生はお誕生会を嫌がった。
それでも造形美術教室の卒業生がたくさん来る、保護者の皆さんもお金を出し合って準備してくれると聞いて抵抗を断念した。
「ありがとう! ・・でも赤いちゃんちゃんこなんて着せようとしたら、その場で逃亡するわよ」
母ちゃんはウチがイリュージョンするのを嫌がるどころか大喜びしてくれた。
「三田先生のお誕生日にイリュージョン? 素敵やないの!! それであんた衣装はどうするの?」
「んー、まだ何も決まってへん、と思う」
「マジシャン役はあの高校生の女の子ね? よーし、母ちゃんがまとめて面倒みたげる!!」
母ちゃんはイッくんの携帯の連絡先を聞いていたらしい。
勝手に電話して衣装製作の了解を取り、るんるん楽しそうに準備を始めたのだった。
10.
「スーツケースが手に入ったんだ。サイズをチェックしたいから来てくれる」
次の週、連絡があってウチは一人でマンションへ来た。
イッくんと多華乃さんが迎えてくれた。
さっそくスーツケースを見せてもらう。
「メ○カリで買った中古品なんだ。これをイリュージョンに使う予定」
それは思ったより小さかった。
立てて置いたら腰くらいの高さしかない。
「入ってくれるかい。梢ちゃん」
「あ、はい」
いきなりですか。
ええですよ。そのつもりでスカートやのうてショートパンツ穿いてきましたし。
イッくんが広げたトランクの中にお尻をついた。
「両手は後ろに回してくれるかい」
「後ろですか?」
「そう。手錠掛けるつもりだから」
「てじょう?」
「うん、後ろ手錠。動けないように」
!!
「イサオ! イリュージョン初体験の女の子にそんなストレートな言い方はダメっ」
多華乃さんが叱ってくれた。
「梢ちゃんフリーズしてるじゃない。・・心配しないで、梢ちゃん。マジック用の手錠だから自分で外せるわ」
「身の危険を感じました。ウチは生還できるんでしょうか?」
「んー、大丈夫だと思うよ。しらんけど」
イッくんがのんびり答えた。
ウチの関西人アンテナが反応する。
「あ、今『しらんけど』言いました? ウチも使うチャンス伺ってたんですけど」
「一度言ってみたかったんだよ『しらんけど』。今の使い方でいい?」
「グッドです。イッくん大阪でやっていけますよ」
「ナニアホナコトイッテンネン」
今度は多華乃さんが言った。
「多華乃さん、それは東京のヒトがやると割とスベるんで止めた方がええです。あとイッテンネンやのうてユーテンネンです」
「難しいのねぇ」「ドンマイです」
「ねえ、そろそろ続きをやらない?」
「イッくん人のギャグには冷淡ですねー」
「うふふ。冷たいのも彼の魅力よ」
はいはい、ごちそう様です。
トランクの中で横になった。
身体を丸くして両手を後ろに回す。
「もっと顎を引いて頭を下げてくれる」
「はい」
「あぐらを組む感じで。もうちょっとお尻下げて。・・OK、そのポジションをよく覚えておいてね」
「了解っす」
外にはみ出した髪を多華乃さんが直してくれた。
「大丈夫だね。では蓋するよ」
カチャ。
トランクの蓋が閉じて真っ暗になった。
頭の後ろが押し付けられて痛かった。
ぎゅっと折りたたんだ膝と脛、足の甲も前に当たってキツイ。
狭いやん!
「起こすよ」
ぐらり。
お尻に体重が乗った。
すっと身体が沈んで後頭部に余裕ができた。
足は全然動かせないけれど、少しだけほっとした。
「肩を捩じって、片手ずつ前に出してみて」
ごそごそ。
あ、出せた。
「右手で左の壁、左手で右の壁。触れるでしょ?」
はい、触れます。
「あとはまた両手を背中に戻す」
ごそごそ。
戻せました!
「ここまでできたら問題ないよ。ちゃんと生還できるから安心して」
はい!
「何度も練習して慣れてね。出してって言ってくれたらすぐに開けるから」
分かりました!
11.
「・・梢ちゃーん、大丈夫?」
声が聞こえた。
この声は、れいらさん!?
「はーい、大丈夫ですぅ。れいらさんですかぁ?」
「そうだよー。もう15分くらい経ったっていうから開けるよー」
え? 15分も?
ぐらり。
ウチを閉じ込めていた空間が横向きになった。
カチャカチャ音がして蓋が開く。
イッくんと多華乃さん、それにれいらさんがウチを見下ろしていた。
あ、えーっと。
「じゃーんっ、たった今、囚われの美少女が救出されました!」
あかん、誰も笑てくれへん。
仕方ないので、自分で「えへへ」とごまかして起き上がった。
「大丈夫みたいだね。静かなままだから、ちょっと心配になって」
イッくんが言った。
「ぜんぜん大丈夫です。・・何か馴染んでしもて、ぼおっとしてただけです」
多華乃さんとれいらさんが安心したように微笑んだ。
本当は、女の子を閉じ込めるってこういうことなんかと考えてた。
ちょっとえっちな妄想もしてドキドキした。
でんもそんなん恥ずかしくて言われへんやんか。ウチ純真な中学生やのに。
「そういえばれいらさん、いつの間に来てたんですか?」
「遅れてごめんね。梢ちゃんのお母さんに衣装の採寸してもらってたんだ」
「れいらさんちに行ってたんですか、ウチの母ちゃん」
それで朝からウキウキ出かけて行ったのか。
「面白いお母さんねぇ。あの人から梢ちゃんが生まれたのなら納得だわ」
「変な納得のしかた、せんといてください」
「そうだ梢ちゃんのお母さん、イリュージョンやってたって教えてくれたよ」
「え、そうなの!?」
多華乃さんが驚いた。
「らしいです。ウチも詳しくは知らんのですけど」
「むかし京都にいた頃、かなり本格的なイリュージョンをやってたらしいよ」
「なんでイサオが知ってるのよ」
「前に飲まされたときに聞いたんだ。・・あ、別にわざと教えなかったんじゃなくて、僕は余計なことは喋らないだけだよ」
「む」
多華乃さんはイッくんの首を肘で絞めて押さえ込むと、その耳の後ろをゲンコツでぐりぐりした。
「あれはスリーパーホールド。多華乃さんの得意技だよ」
れいらさん��教えてくれた。
その後イッくんがスーツケースイリュージョンの仕掛けを説明して、皆で進め方を相談した。
途中でれいらさんが「あたしもスーツケースに入りたい」と言い出して入ることになった。
「何時間でも閉じ込めていいよ」なんて言うもんやから「なら駅のコインロッカーにでも預けましょか」って返したら「うわーいっ!」と喜ばれてしまった。
多華乃さんまで「あらそれ素敵」なんて言う始末。
「手錠は?」「いいですねー」
「DID♥」「ですっ!」
もうやっとれんわ。
でも、これだけあけすけに話せるんは羨ましいな。
ウチもさっきスーツケースの中で興奮しましたって素直に告白したらよかったかな。
12.
お誕生会前日の造形美術教室。
子供たちがみんなで飾り付けをしていた。
ウチは湊と一緒にケーキを作っている。
ケーキと言っても食べられない飾りのケーキだった。
ダンボールの大きな筒に模造紙を貼って、その上から色紙で作ったクリームやフルーツをつける。
「姉ちゃんっ。そこはローソクやんか」
「あ、ゴメン」
「ここのチョコプレートはボクがやる」
「ならまかせるで」
「うん」
造形美術教室に来るようになって湊はずいぶん積極的になったと思う。
立ち上がって周囲を見渡す。
手伝って欲しそうな子は・・おらへんな。
それなら部屋の隅に座り込んでちょっとひと息。
明日はいよいよイリュージョンの本番か。
昨夜見た夢を思い出した。
スーツケースに入っている夢だった。
何故か学校の制服を着ていて、後ろ手に手錠を掛けられていた。
この頃、何度も同じような夢を見る。
ウチはいつもスーツケースに閉じ込められていた。
・・またか。
夢の中で考える。
・・それやったら、楽しまな損。
イリュージョンと言われてスーツケースに入ったウチ。
そのままどこかへ運ばれる。
街の雑踏が聞こえる中をごろごろ転がって、静かな場所に置かれた。
コインロッカー!?
スーツケースごと、コインロッカーに収納されたんか。
あの、このスーツケース、女の子が入ってるんですけど。
囚われのヒロイン。DID。
ずっと前からDIDの意味は知っていた。ウチはおませな少女なんや。
おませなウチは絶対絶命のピンチにも憧れる。
もう逃げられへん。どこかに売られてしまう。
そうや、可愛い女の子は拉致られて売られる運命にある。
諦めるってキモチ、ちょっとええと思う。
小さく折り畳んだ身体が動かせない。
もどかしい。もどかしくてウズウズする。
そやけど、このもどかしさに耐えるのが乙女の務めや。
身体じゅうが熱くなる。
「・・梢ちゃん!」
誰かに呼ばれて我に返った。
ウチの顔を覗き込んでいるのは、れいらさんだった。
「梢ちゃんがヒマそうにしてるのは珍しいね」
「ちょっと休憩中です。れいらさんはどうしはったんですか?」
「さっきね、衣装を試着してきたの」
「お~っ、どんなでしたか」
「セクシー! 自分でもびっくりしちゃった」
「母ちゃん、ウチの衣装よりもヤル気出してましたもん」
「恥ずかしいけど、あんな恰好めったにできないから頑張って着るよ。梢ちゃんの衣装は?」
「それは明日のお楽しみです。・・ええっと、あの、つかぬ事を伺いますが」
「はい?」
思い切って聞くことにした。
「れいらさん、こないだスーツケースに入ったでしょ? イッくんのところで」
「入ったねー」
「失礼なこと聞くって怒らんといてくださいね」
「うん、怒らない」
「れいらさんと多華乃さん、やっぱりマゾの人ですか?」
「へ!?」
「あのときのお二人、ドMトークで盛り上がってたやないですか。コインロッカーに預けてほしいとか手錠掛けられたいとか」
「そ、そんなこと口ばしったっけ」
れいらさんが顔を赤らめるのを見たのは初めてやないかな。
「『ICレコーダー梢ちゃん』の異名を持つウチですから間違いありません。あのトーク、なんぼかはノリで言わはった思うんですけど、羨ましかったです。あんな風に性癖を発散する女の人を見たのは初めてでしたから」
「中2のくせに性癖なんて言葉使うのね」
「ウチはおませな少女なんです」
「あははは」
豪快に笑われた。
「いいよ、教えてあげる。マジレスすると多華乃さんはドMだよ。自分でも公言してるわ。旦那様のイッくんはS」
「分かります分かります」
「あたしはMとS両方あるな。お相手によってどちらでも。・・あ、お相手って男性に限らないからね」
れいらさんはそう言ってウインクした。
「梢ちゃんはMだよね」
「あ、ウチはまだ・・」
「スーツケースに詰められて感じてるじゃない。もうみんな気付いてるわよ」
ぶわ。
冗談やなしに顔に火が点いた。
しばらくけらけら笑ってから、れいらさんは言った。
「それでいいんだよ! SとかMとか恥ずかしいことじゃないんだし」
「それやったらお願いがあるんですけど」
「何だって聞いたげるよ」
「これからはウチも多華乃さんとれいらさんのドMトークに参加していいですか? ウチもエロいこと言いたいです」
「そんなこと!? あはは、大歓迎!!」
「ありがとうございます。何かすっきりしました~」
「梢ちゃんて本当に面白くっていい子ねぇ。ますます好きになっちゃった。あたしが三田先生なら絶対にぶちゅ~ってしてるところね」
「ぶちゅう~!?」
13.
三田先生のお誕生会が始まった。
造形美術教室の生徒さん、保護者のパパとママたち、卒業生が何十人も集まっている。
イッくんと多華乃さん、それにウチの母ちゃんもちゃんと揃っていた。
司会のれいらさんが開会を宣言した。
続いてイッくんが卒業生代表として挨拶。・・その直後。
ぱーん!
正面にあったケーキからクラッカーが弾けて紙吹雪が舞った。
「三田先生っ。はっぴぃばーすでーぃ!!」
ケーキが上下に割れて、中から立ち上がったのはウチやった。
母ちゃんの作ってくれた白い衣装を着ていて、手には花束。
ケーキから出て花束を三田先生に渡した。、
子供たちは大喜び。他の人たちからも大きな拍手。
ウチが飛び出したのはケーキの形をしたびっくり箱。
その正体は前日に湊が作ったダンボール製のケーキだった。
これをイッくんがたった一晩で改造してくれた。
クラッカーを取り付けて紙吹雪が飛ぶようにした。
上下に分離できるようにして内部を補強し、小柄な女の子なら収まる空間を用意してくれた。
ホンマ、イッくんって何でもできるスーパーマン。
「ご苦労様!」
花束を渡して戻って来たウチをれいらさんが労ってくれた。
「ケーキの中でドキドキした?」
「はいっ。次にパーティするときは一緒にびっくり箱しましょ!」
「いいわね!」
ウチは皆が集まる前からケーキの中にずっと隠れていたのだった。
お誕生会はそれから子供たちが歌ったり踊ったり、造形美術教室の昔のビデオを上映したりして進行した。
そしてメインイベント。ウチとれいらさんのイリュージョンの時間になった。
14.
れいらさんが衣装を着替えて出てきた。
「うわあ」「れいらちゃーん!!」
「すごーい!」「キレイ!!」
大人も子供もみんなびっくりしてるなぁ。
「みんなー! お姉ちゃんこれから頑張ってマジックするよー。立ち上がったりしないで見てねー」
「はーい!!」
れいらさんは真っ赤なボディスーツとその上に短い黒ジャケットを着ていた。
ボディスーツはハイレグで胸のカットも深い。
バニーガールみたいにも見えるし、白いブーツを履いているからレースクイーンのようにも見える。
エロくて恰好いい。
母ちゃんが「萌える~!!」と雄叫びを上げながら作ったコスチュームだけのことはある。執念がこもってるわ。
何人かのパパが見とれてしまってママから叱られているのもお約束。
さすがにこれを女子高生に着せて小学生の前に立たせるんはええのかと心配やけど、三田先生が手を叩いて喜んでるから構へんのやろうね。
れいらさんが手招きした。さあ出番や。
「マジックをお手伝いしてくれる梢お姉さんです!」
「よろしくーっ」
ウチはスーツケースを引いて出て行く。
あの中古のスーツケースはイッくんが改造して外観が変わっていた。
正面と裏側に細長い穴が6つ。
これはサーベル(剣)を刺すための穴。
ギミックの都合でキャリーハンドルは上げたまま固定。
ウチはお客さんの方に背中を向けると両手を後ろで組んだ。
その手首にれいらさんが手錠を掛けた。
左右に引っ張って手錠が外れないことを示す。
それが済むと、れいらさんはスーツケースを倒して蓋を開いた。
スーツケースの中は仕切り類が全部外されていた。
代わりに蓋の裏に剣刺しのギミックがついて、少しだけ狭くなったけどウチが入るのには問題ない。
うちは靴を脱がせてもらって裸足になり、スーツケースの中に横になった。
膝を引き寄せて身体を丸くする。
簡単な所作やけど、一発で決まるように何回も練習したんやで。
れいらさんはスーツケースの蓋を閉じようとする。と、中身が大きすぎるのかなかなか閉まらない。
蓋にお尻を乗せて座って閉めた。パチンとロックを掛ける。
キャリーハンドルを両手で握り、重そうにスーツケースを立てた。
れいらさんが次に手に取ったのはサーベルだった。
これもイッくんの手作りで、長さ1メートルほど。
銀色のブレード(刃)と手元が束(つか)になっている。
れいらさんはブレードを指で撫でて痛そうな顔をした。
「怖い人は目をつぶってねー」
スーツケースの後ろに立ち、一番上の穴にサーベルの先端をあてがった。
何人かの子供が自分の手を目の前にかざした。
15.
カチャリと音がしてスーツケースが閉ざされた。
ウチはもう外へ出られない。
ぐらり。
スーツケースが立てられて世界が90度回転した。
いよいよここから本番。
ウチはスーツケースの中で深呼吸する。
こんな姿勢やから本当の深呼吸は無理やけど、大切なんは気持ちやからね。
スーツケースの中で身体を捩じった。
背中で手錠を掛けられていた両手を前に回した。
そんなことができるのは、左右の手錠が分離できるからだった。
手錠の鎖は紐で繋がっているだけで、その紐はリールで伸びるようになっている。
前に出した右手で左の壁をまさぐり、そこに6個並ぶレバーを探し当てた。
蓋の裏にはサーベルの一部、ブレードの先端だけが隠されている。
レバーを動かすとスーツケースの蓋の穴からその先端が突き出る仕組みになっている。
一方、れいらさんが持つサーベルは、スーツケースの穴に押し込むとブレードが縮んで束の中に収まる仕掛けになっているのだった。
「・・スチール製のメジャーがあるだろう? あれと同じ構造だよ。ブレードは硬いように見えて実は巻き取られてるんだ」
「?」「?」「?」
ウチもれいらさんも、一緒に聞いていた多華乃さんも、イッくんの説明はさっぱり理解できなかったと思う。
理屈は分からんでも、効果は分かった。
後ろからサーベルを押し込むのに合わせてレバーを操作したら、お客さんにはサーベルがスーツケースを貫通したように見える。
大切なのは二つ。
二人のタイミングを合わせること、それから6個ある穴の順序を間違わんようにすること。
それさえ守ればバッチリのはずや。
れいらさんが最初の穴に1本目のサーベルを押し当てた。
コツン。
スーツケースの中に音が響く。
ウチは1秒待ってレバーを下げた。
これでサーベルの先端がにょっきり顔を出したはず。
2本目、3本目。
ウチは順番にレバーを操作した。
後で聞いたら子供たちとパパママたちはビックリしていたらしい。
ウチが本当に刺されたって思った子が多かったんやて!
うわぁっ嬉しいぃ、って叫んでしもたよ。
4本目、5本目、6本目。
全部のサーベルがスーツケースを突き通った。
れいらさんはそのスーツケースをくるりと回してお客さんに全体を見せた。
今度は後半。サーベルを抜く演技になる。
レバーを逆の向きに動かせばブレードの先端が引っ込み、同時にれいらさんがサーベルを引き抜いたらええんやけど、実はこれはけっこう、ちゅうか、かなり難しい。
前半でサーベルを刺すときは、れいらさんがサーベルを押し当てる音を合図に、少し遅れてレバーを動かせばよかった。
「・・でも、抜くときに少し遅れるのは困るんだ。ちょっと考えたら判ると思うけど」
「?」「?」「?」
またしても女性3人はイッくんの説明を理解できなかった。
「後ろで引き抜いてるのに、前に出ている先端がそのまま残っているのは不自然だよ。あれ?って思われてしまう」
「そうか」
れいらさんが気付いた。
「前も後ろも同時じゃないといけないんですね」
イッくん細かい。でもその通りやな。
ウチとれいらさん、スーツケースの中と外でタイミングを完全に合わせないといけない。
何か合図が要る。でもどうやって?
イッくんのアイデアは単純やった。
「それならお客さんに合図してもらおう 」
16.
子供たちに向かってれいらさんが呼びかけた。
「みんなー、梢お姉さんが穴だらけになっちゃいました! 助けてあげたいですか?」
「助けてあげたーい!」
「じゃあ、この剣を抜きまーす! 何本抜かなきゃいけないかしら?」
「ろっぽん!!」
「1本ずつ抜くから一緒に数えてくれるー?」
「はーいっ」「数えるー!」
「数え間違ったり、声が揃っていなかったりしたら、梢お姉さんは死んじゃうかもしれないよ?」
「だめー!」「やだあっ!!」
「じゃあ練習しよう! いい? せーのっ、いーち、にぃーい・・。ああぁっ、ダメダメ揃ってないっ。もう一回!」
全員が揃って1から6まで数えられるまで練習させた。
「いくよ? せーの!」
「いーっち!」
れいらさんがサーベルを引き抜くと同時にブレードの先端が引っ込んだ。
「にぃーい!」
子供たちの声が響く。リズムもペースも綺麗に揃っていた。
「さーん!」
どんどんサーベルが抜けて行く。
「しいー!」
あと2本!
「ごぉー!」
これで最後!!
「ろぉーっく!!」
「はーい! 全部抜けたねー! 梢お姉さんは無事かなー?」
スーツケースを横に倒して、ロックを解いた。
カチャリ。
横になっていたウチが身を起こした。
「うわー!!」「あれー!?」
白い衣装がピンクに変わっていた。
立ち上がって一回転して見せた。
どうかな? 母ちゃんの作ってくれた早変わり衣装。
可愛いでしょ?
れいらさんに手錠を外してもらう。
小声で言われた。
「知らなかったよ。びっくり!」
「えへへ。黙っててスミマセン」
二人並んでお辞儀をした。
三田先生が駆け寄って来た。
「すごいすごいすごい!! どきどきしちゃった! ありがとう!!」
イッくんも来て握手してくれた。
「やられたよ。衣装チェンジとはね」
もう一度拍手を浴びながら皆でお辞儀した。
お客さんの中に母ちゃんと湊が座っているのが見えた。
湊は黙ってサムズアップしてくれた。
あんた、どこでそんなゼスチャー覚えたの。格好ええやんか。
ウチも笑って親指を立てて返す。
すると母ちゃんまで指を立ててウインクした。
母ちゃんっ、指が違う.
立てるのは中指やのうて親指やちゅうねん。
17.
それから二週間経った夜。
ウチと母ちゃん、れいらさん、イッくんと多華乃さん夫妻、そして三田先生がレストランの個室にいた。
三田先生がお誕生会のお礼にと招待してくれたのだった。
「ウチ、フレンチなんて初めて」「あたしもです!」
「お箸で食べるフレンチ、いいですねー」
「友人のお店なの。形式張らずに楽しんでちょうだい」
ワインとノンアルコールのスパークリングで乾杯。
「あら、あなたたちもノンアル?」
先生がイッくんと多華乃さんに聞いた。
「僕らは後でいただきます。今は、ちょっと」
「彼、リベンジする気なんです」
多華乃さんが言った。
「タカノ、いきなり言う?」
「いいじゃない。頑張るのは私だよ?」
「あ、ぴぴっと来たっ。イリュージョンするんでしょ!」
れいらさんが言った。
イリュージョン!?
「この人、梢ちゃんの衣装チェンジに全部持ってかれたこと未だに根に持ってのよ。子供みたいでしょ? うふふ」
「そんなことはないよ。僕は」
「うん、イッくんってそうだよね」「分かるわ」「イッくん、ホンマですか?」
「ぼ、僕は・・」
「あまりイサオを苛めないであげて。その分、私が彼に苛められるんだから♥」
謎めいた微笑の多華乃さん。
他のみんなは笑っている。母ちゃんまでウンウンって頷いて。
まさかこの二人、ムチとローソクでSMプレイしてたりする?
18.
「ええっと、やろうか」「はい!」
イッくんと多華乃さんは席から立ちあがった。
一度出て行って戻って来た。
持ってきたのはあのスーツケースと紙袋。それからサーベル、ではなくて金属の細い棒。
「先日とは趣向を変えたスーツケースイリュージョンをやります。・・これは」
イッくんはそう言って金属棒を持って水平に構えた
「ステンレスの丸棒です。直径5ミリ、スーツケースの穴をぎりぎり通る太さです。先端を円錐形に削り出しました」
イッくんはスーツケースを床に倒して蓋を開いた。
れいらさんが黙ってウチの肩を叩いた。それから開いた蓋の裏を指差す。
!!
あの剣刺しのギミックがない。
蓋の裏に張り付けられていた黒いパネルのような仕掛けがなくなっていた。
6個の穴がはっきり見えた。
多華乃さんがさっとシャツを脱いだ。
ブルーのスパッツ。その上は黒いブラだけ。格好いい!!
スーツケースの中に入って膝をついた。
そのまま身体を逆海老に反らしてスーツケースに収まる。むちゃくちゃ柔らかいやないですか。
イッくんが多華乃さんの肌を撫でる。ああ、また。
「あら♥」「まぁ♥」
嬉しそうな声を上げたのはウチでもれいらさんでもなく、三田先生と母ちゃんだった。
イッくんはにやりと笑うと蓋をぱたんと閉じた。
すかさずスーツケースを立てて起こす。
紙袋から縄束を出してスーツケースに巻きつけ、荷物みたいにきりきり縛った。
れいらさんがウチの耳元でささやいた。
「多華乃さん、頭下向き」
ホンマや!
あのポーズで逆立ち?
イッくんはスーツケースの後ろでステンレス棒を水平に構えた。
「前後の穴を一発で通すのが難しいんだ。・・練習の成果をご覧あれ」
息を整える。
いきなり穴に突き刺した。合図も何もしなかった。
反対側の穴から棒の先端が飛び出す。
すぐに引き抜き、別の穴に突き刺した。
抜いては刺してを何度も繰り返した。
むちゃくちゃ速かった。
今度はステンレス棒を6本、スーツケースの横に並べた。
まず1本を突き刺した。
すぐに次の1本を持って突き刺した。
立て続けに全部の棒を刺してしまった。
「・・おっと失礼」
テーブルにあった紙ナプキンで、一番下の棒の先端を拭いた。
ナプキンが血に染まったみたいに赤くなった。
ひょえー。
ウチらのイリュージョンより迫力ありまくり!
多華乃さんがどうなっているのか想像できなかった。
ぎちぎちに縄で縛ったスーツケースの中で、無理なポーズで逆立ちで。
「では助けてあげましょう。彼女が無事でいるかどうか心配です」
ステンレス棒を全部引き抜き、スーツケースの縄を解いた。
床に寝かせて蓋を開ける。
入ったときと同じポーズの多華乃さんが現れた。
ぐったりしているみたいやった。
イッくんが多華乃さんの背中に手を当てて起こした。
血!!
多華乃さんの胸と脇腹から真っ赤な血が流れていた。
ええ!!
まさか、大怪我!?
れいらさんも驚いて固まっている。
「・・ええっと、残念ながらイリュージョンは失敗したようです。妻は天国へ旅立ちました」
ガタ!
立ち上がったのは母ちゃんやった。
自分のナプキンを掴むと、二人に近づいて多華乃さんのお腹をごしごし擦った。
「ひ、・・きゃはははっ」
多華乃さんが身を捩って笑いだした。
「あーん、ごめんなさい!!」
「あんたら、やりすぎ! これ、ケチャップでしょ?」
母ちゃんが言う。母ちゃんの目も笑っていた。
「恐れ入りました」
イッくんが謝った。
「最後まで騙せると思ってたんですけど、さすがですね」
「昔よく使ったわ。匂いで分かるからお客さんと近いときは注意が必要なの」
「勉強になります」
19.
食事が済んで、三田先生がイッくんに聞いた。
「さっき、もし桧垣さんに見抜かれなかったらどうするつもりだったの?」
「そのときは蘇生措置をして生き返らせる予定でした」
「ウソ。スーツケースに入れて持って帰るって言ってたじゃない、イサオ」
「そっちの方がよかったかな?」
「そうね。私はまる1日詰められてもイサオのためなら耐えるわよ♥」
「多華乃ちゃん」「はい?」
三田先生がいきなり多華乃さんの頬を両手で挟んでディープキスをした。
「ん! んんん~っ!!」
「素敵よ、その心がけ。でも新婚だからってサービスしすぎると、彼、図に乗るわよ」
「はぁ、はぁ、・・はい」
「次は、」
三田先生が顔を向けたのは・・、ウチやった!
「一番頑張ってくれた梢ちゃん♥」
「は、はい」
ウチは顔を近づけてくる先生から逃げられなかった。
「本当に、一番お礼を言いたかったのはあなたなの」
「うわ♥」れいらさんの歓声が聞こえた。
「これからも、お願いね」
ちゅう。
マウスツーマウスでキスをされた。
女の人相手で快感やったというと変態みたいやけど、本当に気持ちよくてうっとりしてしまった。
ウチは皆が見ている前で60歳のおばちゃんにファーストキスを奪われたのだった。
・・それからウチは長いことイリュージョンの活動をすることになった。
イッくん夫妻とれいらさんにはまだ秘密があったけど、それを知るのはずっと先のことだった。
────────────────────
~登場人物紹介~
桧垣梢(こずえ):14歳、中学2年生。一人称は『ウチ』。
桧垣湊(みなと):8歳、小学2年生。梢の弟。造形美術教室の生徒になる。
桧垣純生(すみお):46歳。梢と湊の母ちゃん。旧姓鈴木。
三田静子:60歳。小学生向け造形美術教室の指導者。嬉しいと誰が相手でもキスする癖がある。
玻名城(はなしろ)れいら:17歳、高校2年生。造形美術教室の卒業生で教室を手伝っている。
酒井功:25歳。造形美術教室の卒業生。趣味でイリュージョンをやっている。通称イッくん。
酒井多華乃(たかの):25歳。功の新妻。身体が柔らかい。
4年前に書いた 多華乃の彼氏 と 多華乃の彼氏2 での仕込みをようやく回収しました。
仕込みとは、造形美術教室の先生の名前を三田静子にしたこと、そしてイッくんが京都に行って人間くす玉をクレクレしたことです。
大抵の場合、回収方法はまったく考えずに執筆時のノリだけで仕込むので、そのまま放置で終わることも多いです。
今回はAIで作成したイリュージョン絵(=スーツケースに女の子が入って笑っている絵)が中学生のように見えたことから、この女の子を純生さんの娘にして仕込みを回収することにしました。
純生さんと三田先生のエピソード(純生さん中学3年生のとき)は『三田静子』をサイト検索すれば出てくるはずなので興味のある方はお読みになってください。
今回のイリュージョンは3つ。
イッくんのマンションでやった袋詰めからの脱出は、現実に演じることが可能と想定しています。
ただし、あの部屋(正確にはソファと隣接してキッチンがある)かつ観客が少人数でないとできないので、舞台で演じるには向きません。
袋の上から多華乃さんのボディを撫でまわすのは夫婦のイリュージョンだからできることですね。
梢ちゃんのスーツケースイリュージョンは、前記の通りスーツケースに入った女の子をAIに描かせたので、それなら剣を刺してしまえと考えたものです。
ダンボールの剣刺しはよく見かけるイリュージョンですが、スーツケースは珍しいかもしれません。
サーベル回避のギミックは、これならできそう?というものをイッくんに考えてもらいました。
刺すときと抜くときのタイミングの相違は作者のこだわりです。お読みの皆さまには面倒くさかったら申し訳ありません。
梢ちゃんのスーツケースで仕掛けを凝ったので、多華乃さんのスーツケースは一切ギミックなしの命がけです(笑)。
ダンボールよりはるかに狭いスーツケースの中、軟体ポーズでその上逆立ち。いったいどうやって6本のステンレス棒をすり抜けたのでしょうか?
最後に母ちゃんが止めたのは本当はルール違反です。
元プロだから分かっているはずですが、レストランで血まみれは悪乗りが過ぎましたね。
本話の最後で梢ちゃんの今後を示唆しました。
イッくん夫妻とれいらちゃんの秘密とは、もちろん 前話 で描いたあの趣味です。
梢ちゃんがどんなM少女に育って行くのか作者の私も楽しみです。
挿絵は今回もすべてAIで生成して一部手修正を施したものです。
一番うまくできたのはれいらちゃんのマジシャン姿。やはりAIは単純な立ちポーズなら簡単です。
ここのところAIに描かせた絵にストーリーをつける小説が続きましたが、次回以降はストーリーを先に考えて挿絵をつける従来の手順で進めたいと思います。
しばらく時間が開くと思いますが気長にお待ちください。
最後に小説ページの体裁について。
tumblr の入力エディタが更新され、従来の入力方法(HTML入力)が使いモノにならなくなりました。
大きな変化がないように努めていますが、一部違和感があるのはお許し下さい。
(例えば、後書き前の区切り線が引けない~泣)
それではまた。
ありがとうございました。
[Pixiv ページご案内]
こちら(Pixiv の小説ページ)に本話の掲載案内を載せました。
Twitter 以外にここからもコメント入力できますのでご利用ください。(ただしR18閲覧可能な Pixiv アカウント必要)
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むかしむかし、あるところに情報商材売りの男性がいました。「副業で月収100万円を稼ぐ有料noteはいりませんか?あなたもFIREしたくないですか?」男性はTwitterで声を枯らし、インスタで拾ったホテルや高級腕時計の写真を貼り付けた投稿を繰り返します。でも、4950円の有料noteはちっとも売れません。
男性が悲しそうにスマホをポケットにしまった、その時です。ベントレーが突っ込んできました。「ああっ!」男性は転びました。「馬鹿野郎、ひかれたいのか!」運転席から黒光りした男が怒鳴ります。金銭的な成功こそが人の価値だと信じて疑わぬ人間だけが出せる、己の非を認めぬ傲慢な声。資本の暴力。
資本主義の極北、東京砂漠。定職もなくアフィリエイトで日銭を稼ぎながら情報商材が売れることを夢見ている38才の男性を、道交法は守ってくれません。クラクションを鳴らし去っていくベントレーを、男性は冷たい道路に座って呆然と眺めていました。トボトボと町屋駅徒歩9分の築古アパートに帰ります。
「ただいま」。家に着きましたが、そこに人の気配はありません。家族も、恋人も、家で男性の帰りを待ってくれる人間は誰もいません。虚しくなった男性は、スマホでYouTubeのヒカルの動画を観ながら、業務スーパーで買った298円のチキン南蛮弁当をモソモソと食べます。ご飯が少し固くなっていました。
電気代も灯油も高いので、暖房器具は使えません。ストロングゼロを飲んで毛布に包まりますが、築古アパートのアルミサッシから冷たい風が入り込みます。あまりの寒さでこごえてしまった男性は、売り物の有料noteをそっと開きます。「シュッ」という音と共に、温もりに満ちた光景が目の前に広がります。
そこは渋谷ストリームのオフィスでした。24階の社員食堂で、美味しい料理に舌鼓を打ちながら外国人の同僚と雑談する男。高校の同級生の鈴木君です。一浪して東京理科大に進学し、修士号取得後にNTTに就職した鈴木君。現役で早稲田の社学に進んだ男性は「コスパ悪すぎw」と鈴木君を見下していました。
しかし鈴木君は頑張りました。NTTの研究所で働きながら、社会人大学院で博士号を取得。見事Googleへの転職を決めたのです。高2で数学を捨てて私立文系に逃げ、努力から逃げ、似顔絵アイコンで自称GAFA社員として中身のない情報商材を売る男性。一体、どこで二人の道は別れてしまったというのでしょう。
気がつくと、また寒々しい部屋です。静寂の中、隣の部屋からは何かを叩く音と女の人の泣き声が聞こえます。男性は慌てて次の有料noteを開きました。目の前に現れたのはタイムズスクエア。雑踏の中、スタバのコーヒーカップを片手にスーツの男が颯爽と歩いています。みずほ銀行で同期だった田中君です。
大学時代に遊び呆けていた男性でしたが、当時は運良く就活売り手市場。大量採用しているメガバンに潜り込めました。しかし、待っていたのはノルマとパワハラ、資格試験。FP2級に落ちて支店長に詰められた男性は「今どきJTCとかオワコンww」と言って、すぐにプルデンシャルに転職してしまいました。
同期が次々と脱落していく中、田中君は逃げませんでした。リーマンショックで資金繰りに苦しむ融資先を回り支援計画を練り、震災でATMが止まれば店頭で罵声を浴びながら頭を下げました。カラオケでは率先してマラカスを振り、支店のゴルフコンペは皆勤賞。帰宅後のTOEICの勉強も欠かしませんでした。
上司達は、そんな田中君を可愛がりました。地方支店から本社の法人営業、海外営業と順調にステップアップして、ついにNY駐在を勝ち取ったのです。プルに転職したものの鳴かず飛ばずで、強引な営業で友人からも避けらるようになり、逃げるように転職を繰り返し転落していく男性との差は広がるばかり。
男性が手を伸ばした瞬間、マンハッタン高層ビルの風景はフッと消えてしまいました。もしかしたら、自分が掴めていたかもしれない未来。暗くて寒くて乾いた部屋で一人、全身の震えが止まりません。男性はすがるように、次の有料noteを開きました。すると、今度はエプロン姿の女性が料理をしています。
後ろ髪を束ねた女性のお腹は膨らんでいます。「あ、蹴った」とお腹をさする優しい表情。「理恵!」男性は思わず叫びました。忘れましません、大学時代の元カノ、大妻女子大の理恵です。2男の頃、インカレテニサーに入ってきたばかりの右も左も分からぬ1女の理恵を口説いて付き合った記憶が蘇ります。
人生初の彼女に浮かれていた男性でしたが、釣った魚に餌を与えないどころか雑に扱うという、童貞を捨てたばかりの非モテにありがちなミスを犯します。アフター5でディズニーに行く約束をしてたのに、パチスロ北斗の拳で設定6を引いたからとドタキャンした過去。クリスマスのディナーはサイゼリヤ。
結局、理恵とは一年も持たず破局してしまいました。「別に女なんていくらでもいるし」と強がっていた男性でしたが、その後、ちゃんとした関係を結ぶ女性を見つけることはできませんでした。目の前の相手を尊重することで信頼を積み重ねるという、人として最低限のことすらできない人間の、惨めな結末。
一方、理恵はその後保育士となり、千葉大教育学部卒の中学教師と結婚します。お腹の子供は3人目。流山おおたかの森駅徒歩7分3LDKのマンションは少し手狭なので、戸建への引っ越しを考えています。タワマンもSAPIXも無縁ですが、だからこそ、日々の営みの何気ない幸せを噛みしめながら暮らしています。
暖かさと優しさで満ちた光景が消えると、また孤独が押し寄せてきます。男性は声を上げて泣き始めると、隣の部屋から「うるせーよ!」と壁ドンされました。慌てて次の有料noteを開こうとしましたが、もう、Vプリカの残高がなくて買えません。暗闇の中、スマホの画面だけがぼうっと青白く光っています。
自分の能力を過信し、努力を嫌い、下積みを蔑み、真摯なコミュニケーションを避けてきた人生。38年間を無為に過ごして、一体何が残ったというのでしょうか。京成線の電車がガタガタ部屋を揺らす中、ストゼロのアルコールが全身に回ってきました。男性はもう、全てがどうでも良くなってしまいました。
一年後。男性の姿は茨城にありました。この残酷な世界から逃げるべく死を選んだ男性でしたが、命を絶つという覚悟もなく、結局、財布に残っていた最後の5000円を使ってスーパーひたち号に乗って実家に逃げ帰ったのです。リタイヤ済みの故郷の両親は呆れつつも、それでも暖かく迎え入れてくれました。
男性の顔は日焼けし、頭には白い手拭いが巻き付けられています。親戚の叔父さんの紹介で、地場の建設会社に雇ってもらったのです。ベトナム人技能実習生に混じって太陽の下で身体を動かすことで、汗とともに自分の中にこびりついた澱のようなものが静かに、でも着実に流れ出ていくのを感じます。
東京での20年間は何だったんでしょう。人ではなく画面とばかり向き合い、その向こう側の人たちと優劣を競い、何を得たというのでしょうか。昼休憩が終わって作業に戻ろうとすると、スマホが震えました。「○○さんがあなたの有料noteを購入しました!」男性は苦笑いしながら、アプリを削除しました(完
窓際三等兵@息が詰まるようなこの場所でさんはTwitterを使っています
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旧東隊の小説(二次創作)
ホッケえいひれ揚げ出し豆腐
一月か二月の頃だった。
トリオン測定ですごい数値を叩き出した新人が二人も入るそうだというのが、その夜の話題だった。出水公平と天羽月彦のことだ。
新生ボーダーが動き出して一年半になる。『旧』ボーダーという言葉が定着するほどに、時は勢いを増して流れていく。その間に、一番仕事をしたのは開発室室長の鬼怒田本吉だった。
まず、彼は異世界に通じる門の発生ポイントを特定できるようにした。次に門の発生を抑えるトリオン障壁を一時的ではあるが生成に成功、最後に門発生ポイントを誘導する装置が開発され、三門市の安心を約束する三点セットがわずか一年で出来上がる。元々の研究分野の応用とはいえ驚嘆に値する開発速度だった。
こうして、急務だった門発生のコントロールに成功した後は研究途中で放置されていた擬似トリオン訓練室の完成、隊員増加を見越してランク戦で使う対戦ブースと八面六臂の活躍である。
短期間でこれだけのことをやってのけた彼及び彼のチームは、城戸政宗司令がどこからか連れてきた逸材だった。三門市にやってきた時には一緒だった家族とは離婚している。仕事に打ち込みすぎたせいだと専らの噂だった。
開発室以外も働いた。門がコントロールできるまではいつどこで出現するかわからない。国の機関に代わって街を守るボーダー隊員たちは昼夜を問わずパトロールを行い、近界民と戦った。
三門市民は最初、胡乱な目で彼らを見ていたが、公的機関と連携した規律ある行動に徐々にボーダーの存在は受け入れられていく。根付メディア対策室室長による世論操作も功を奏していた。
出ていく人間は出ていき、かわりに大量の物資と人材が流れ込んでくる。
ボーダーにもまた人材が集まった。
まず、市民志願者第一号として柿崎国治と嵐山准が入隊する。華々しい記者会見の後、志願者はぐっと増えた。
東春秋が部隊を結成したのもその頃だ。
この時期の部隊は自由結成と言うよりは忍田や根付の意向が強く反映していた。東隊も忍田の指示によるものだった。
忍田自身も部隊を持っていたが、本部で戦闘員を統括する役職につくために解散することが決まっている。
ガラリと引き戸をあけて顔を出したのは東春秋だった。いらっしゃいませと店員が声をかけると案内はいらないと手を振って、店内を見渡す。じきに見知った顔の並ぶテーブルを見つけて近づいた。
二十二歳だと言うが、ずっと老けて見える。外見だけではない。彼に接する人間はつい彼が二十代前半の若造だということを忘れてしまう。
後ろには背が高い男女二人がやは���背の高い東を挟んで並び立つようにいた。どちらも目を引く美男美女だ。彼らは近隣の六穎館高等学校の制服を身につけていた。
さらに後ろに中学校の制服を着た少年がひっそりと控えている。前のふたりと違って背は低い。寒いのか、マフラーをぐるぐると首に巻いていた。
三人は物珍しげに店内を見回している。
「なんだ、三人とも居酒屋は初めてか」
テーブルにいた眼鏡の男が声をかけた。既に頬は赤い。手には盃を持っている。日本酒派だ。林藤匠という。ボーダーでは古参の一人だ。歳は三十一になる。そろそろ現役を引退したいとボヤいているが、いかんせん昨今の人手不足だ。
ボーダー本部建物ができたにも関わらず、旧本部ビルから動こうとしない、なかなかの頑固者だった。
「学生ですから」
と、生意気そうに答えるのは、背の高いほうの一人である二宮匡貴だった。
「あれ、根付さんから聞いてないか? ボーダーマークの貼ってある店はボーダーなら学生でも入れるようになったんだぜ」
トリオン器官の性質上、十代の隊員は増えていく。本部でも食堂は設置しているが、彼らは三門市の飲食店にも協力を求めていた。パスポート制で十代への酒類の提供はないなどの配慮がされている。
「知ってますが…」
さらになにか言おうとする二宮を東は遮った。
「今夜は明日の確認だけしに来たんです。本部で聞いたら、ここにいるっていうから」
「明日? ああ、国の視察ね。用事は、唐沢さん?」
「俺?」
テーブルの奥から唐沢克己外務営業部長が顔を出す。彼はビール派だ。既にジョッキをほとんど空けている。まだ三十そこそこだが、やり手の男だ。鬼怒田同様、城戸司令がスカウトしてきた。元ラガーマンだという以外素性を明かさない男だったが、人当たりがよい。
今夜の飲みメンバーは林藤、唐沢に加え、エンジニア冬島慎次、戦闘員の風間蒼也、木崎レイジの三人だった。風間と木崎は二十歳前なので、烏龍茶が並んでいる。
「まあ、たってないでこっちに座れよ、東くん」
「あー、ウチはウチでご飯を食べる予定なんです」
東はお供のように控える背後の三人を見やった。東隊のメンバーだ。
「ここで食べていけばいいよ」
「はあ」
少しだけ、東の心が揺れた。老成しているとはいえ二十二の青年だ。気楽な酒の席は魅力的だ。
「大丈夫です。俺たちは帰ります」
東の心を見透かしたように、二宮が後ろの中学生の背を押して店の入口に向かおうとする。
「東」
林藤は声をかけた。
「みんなで食べてけよ。唐沢さんの奢りだ」
「あなたじゃなくて、俺ですか?」
急に振られた唐沢が満更でもなさそうに笑った。確かにこの男前は今日の面子の中で一番地位が高く、懐も暖かい。
「あら、素敵。せっかくだから、ご馳走にならない? 二宮くん」
そこで初めて、女学生が口を開いた。こちらも生意気な口調だが、軽やかでトゲトゲしいものを感じさせない。
「加古」
「ねえ、三輪くん?」
「……」
急に話を振られた中学生は無表情のまま首を傾けた。
「わかりません」
「東さんがここでお酒を飲んでるとこを見てみたくない? 面白そう」
三輪は悩みながらうなずいた。
「ほら、三輪くんもそう言ってるし」
「言ってないだろう」
「言ってないです」
「わかった、わかった」
いつもの掛け合いが始まりそうになって、東は決断する。一応、上役たちの前だ。
「ごちそうになろう。唐沢さん、ありがとうございます」
東が頭を下げると、揉めていた三人がピタッと止まって、同時に頭を下げた。よく訓練されている。東を猟師になぞらえて獰猛な猟犬を三匹飼っていると言っていたのは誰だったか。
「遠慮せずたくさん食べなよ」
唐沢はいつもの人当たりのよい笑みを浮かべた。
「追い出された」
案内されると同時に、風間と木崎が東隊の猟犬三匹のテーブルにやってきた。テーブルが窮屈になったらしい。
今夜はボーダー戦闘員と唐沢の交流会であるらしかった。
風間の兄は林藤の弟子だった男だ。故人である。木崎は東から狙撃手としてのスキルを学んでいるので、東隊の面々とは面識がある。今は林藤に従い旧本部ビルに寝泊まりしている。狙撃以外の分野では林藤に師事していた。
一方は小柄で華奢、もう一方は筋肉隆々の巨漢だ。正反対の見かけだが、どちらも恐ろしく強かった。さらに木崎はトリオン量は二宮と同程度を持っていて近界のトリガーを使いこなす。
加古の隣に木崎が座り、二宮と三輪の隣に風間が座った。スペースの有効活用の結果である。三輪は隣が風間なので緊張する。風間蒼也は様々な思惑の絡む本部で誰からも重用され、確実に任務をこなすエリートだった。
「もう、頼んだか」
「まだです」
彼らはまだ食べるつもりらしい。
「居酒屋は初めてか」
木崎が気を使って、品書きをテーブルの真ん中におく。
店員がまとめて置いていった突き出し(お通し)を配る。
「飲み物から決めよう」
と、店員を呼んでさっさと飲み物を決めてしまう。さくさくと仕切る姿が頼もしい。三人はジュースにしたが、風間と木崎はまた烏龍茶だった。
「おすすめは、揚げ出し豆腐だな。家で作るの面倒だし」
「そういう基準か」
「寺島たちに頼まれて作ったが、たくさん食べるものじゃないし、持て余した」
寺島たちと寺島雷蔵と諏訪洸太郎のことだろう。四人は同い年で気が合うようだった。諏訪は二宮と加古の同期でもある。
「おごりなら諏訪と雷蔵でも呼ぶか」
「来ないだろ」
確かにもう遅い。
「今日の当番は?」
お酒をあおる大人席では、林藤が煙草の煙を吐き出しながら聞いた。
「忍田さんとこと迅です」
迅悠一は木崎隊であったが、先日、晴れて『風刃』所持者となり、隊を離れS級隊員となっている。
「あとは嵐山隊ですね」
なんとなく大人たちは子どもたちのいるテーブルに視線を向けた。三輪がジュースを飲んでいる。迅、太刀川、嵐山と三輪の苦手な三人だ。
「明日は俺らの勤務か」
正直、オーバーワークだ。ここにいるメンバーは皆、ワーカホリック気味ではあるが、大規模侵攻からずっと働き続けている。
「入隊志願者が増えてますからもうちょっと頑張ってもらって…。部隊が増えてくれば、部隊の輪番制に移行するって城戸さんが言ってます」
「もうすぐですよ」
冬島がエイヒレに手を伸ばしながら言う。
「そう願いたい」
品書きと書かれたメニューには写真がない。並ぶ単語は知らないものが多い。
三輪が大人たちのテーブルをチラリと見れば東は刺身の盛られた皿をビール片手につついていた。嬉しそうだ。確かに、隊長ではない東は不思議な感じがした。
「秀次は刺身か」
二宮がつらつらと品書きを見ながら勧める。二宮も初めてだからよくわかっていない。
「盛り合わせがあるぞ」
「ちょっとずつ色んなのが食べたいわ」
加古がウキウキしている。
「レイジさんおすすめの揚げ出し豆腐は頼むでしょ。風間さんのおすすめは?」
「コロッケと卵焼きだな」
間髪入れずに答える。迷いがない。
「じゃあ、それー」
「また家で作れるようなものを…」
木崎がぶつくさ言うが、三輪は蕎麦を茹でるくらいしかできない。
「二宮は?」
風間が水を向けるが、彼は熟考に入っている。
「先に頼んじゃいましょ。店員さぁん」
「加古、お前なあ」
「大丈夫だ、二宮。何度でも頼めるから」
「風間さんがそう言うなら」
注文を手早く木崎がまとめる。
「三輪は決めたのか」
「じゃあ、刺身盛り合わせ(小)で」
「あと、ホッケ」
「加古、語感で決めただろう」
「干物だな。北の魚だ」
明日、視察団が来るというのに、大人組はまだまだ飲んでいる。タバコの匂いがする。
焼肉屋ともファミリーレストランともバーガー屋とも違う雰囲気にふわふわする。
「秀次」
三輪は、二宮に揺り起こされた。ひと通り食べたあと、いつの間にか眠っていたらしい。
「中学生には遅い時間だな」
木崎が気の毒そうに言う。
「大丈夫です。すみません」
彼らも高校生なのだ。
「ほら」
おにぎりが渡された。大きい。海苔がパリッとしている。
「結局、二宮くんが選んだのがこれよ」
おにぎりを優雅に食べるという器用なことをしながら、加古が教えてくれる。
「悪いか」
「いい選択よ」
「うまいな」
風間はまだ食べている。木崎はカチャカチャと皿を重ねて、テーブルを綺麗にしている。 三輪は散々食べたあとだが、おにぎりを持って、「いただきます」と言った。おにぎりは何も入っていなくて塩がきいている。
「おいしいです」
「そうか」
「東さん、あれ酔っ払ってるわ」
三人が揃って東のほうを向くと、その様子がおかしかったのか、木崎と風間が笑った。
「明日はお前らが頑張れ」
その日はみんなボーダー本部に泊まった。
終わり
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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和六年(2024)4月19日(金曜日)
通巻第8221号
後継皇室問題で自民党が有識者会議の二案を『妥当』
やはり自民党に「現代の新井白石」はいなかった
*************************
皇統後継問題の皇室典範改正をめぐって有識者会議が開かれ、これを踏まえて岸田首相は令和六年(二〇二四年)一月三十日の所信表明演説後の質門に答え、かく述べている。
「有識者会議において悠仁親王殿下までの皇位継承の流れをゆるがせにしてはならないとの結論に至った」。
つまり「女系天皇論」という俗論をたしなめたのだ。だがメディアは意図的に、この一歩踏み込んだ発言を殆ど伝えなかった。岸田首相は「悠仁親王殿下までの皇位継承の流れをゆるがせにしてはならない」と明言しているのである。
皇統は神武以来の万世一系で男子が継承し、跡継ぎが幼少などの場合、未亡人皇后か独身の内親王が天皇代理として「称制」と務めた。この歴史の特質が意図的に議論されず学校でも教えない。
だから軽佻浮薄にも「愛子天皇待望論」が出てくる。女性天皇と女系天皇の区別も曖昧とされたままである。
小泉政権のおり皇室典範改正をめぐって有識者会議が開催された。明治二二年(一八八九年)制定された典範により、男系長子が皇位を継承するという神武天皇以来の万世一系の伝統が守られてきた。状況が変化し、皇統が絶えかねないという危機を認識し、急遽、有識者会議が招集された。
だが、座長はロボット工学専門の学者で歴史には無知だった。秋篠宮に悠仁親)王がお生まれになって、皇統問題は棚上げとなった。
もしこの流れを変えるとなると歴史を否定する革命である。フランクフルト学派が狙うのは二段階革命による国家破壊であり、グローバリズムが国境をなくせと唱えている国家否定の隠れた目標に通底する。
4月15日、自民党は皇位継承の安定のための皇族数確保に関する有識者会議の二案を『妥当』とする立場を示し、「安定的な皇位継承の確保に関する懇親会(麻生副総裁が会長)で党見解のとりまとめを急ぐとした。
「二案」とは(1)皇族女子の結婚後の皇族身分保持。(2)養子縁組に拠る旧皇族団系男子の皇籍復帰、である。
自民党はいずれも妥当としたわけだが、いささか勉強不足だろう。やはり与党に現代版の新井白石はいなかったのだ。
各党の意見のなかで、唯一まともなのが「維新の会」である。すなわち(1)に対して、現実的ではあるが「女系への皇位継承資格拡大につながる懸念がある」としている。
(2)に関しては『歴史と現実を踏まえれば、高く評価できる』とした。
そもそも皇室典範の改正云々を内閣ごときがおこなうべきではない。立太子と親王殿下がおられるのに、なぜこんな議論をするのか、裏に何か別の動機が潜んでいるのか。
(参考文献 宮崎正弘『二度天皇になった女性 ─孝謙・称徳女帝の光と影』(ワック)
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(再録)「新井白石 皇統断絶の危機を予知」
皇統が断絶の危機に瀕したことは神武天皇の御代から幾度かある。また後継皇位を争った政争、謀���も何回かあった。
���代史最大の謎は応神天皇と継体天皇の正当性である。ほかにも雄略天皇が謀殺したイチノヘオシハ(履中天皇の皇子、雄略天皇の叔父)の遺児が播磨と吉備の境に二十年隠れ住んでいて、雄略の皇子・清寧天皇が亡くなると名乗り出た。この間、イチノヘオシハの妹の称制だった。
新井白石は自伝ともとれる『折たく柴の記』のなかで、皇室の後継が不在となる危機の到来を認識し、東山天皇の祖孫をして閑院宮家を立てられるよう将軍に建言した。その皇統を維持させた経緯を次のように回想した。
「議し申すべき一事の候は天亨・建武の間、皇統すでに南北にわかれ、南朝はいくほどなくて絶させ給ひぬ。北朝はもとこれ武家のためにたてられ給ひぬれば、武家の代の栄えも衰えをも、ともにせさせ給ふべき御事なるに、応仁の後、世の乱れ打ち続て、武家すでに衰給ひにし上は、朝家のことは申すに及ばず当家(徳川)神祖天下の事をしろしめされしに及びてこそ、朝家(皇室)にも絶たるをも?ぎ、廃れしをも興させ給ふ御事共はあるなれ。しかはあれど儲君(皇太子)の外は、皇子、皇女皆々御出家の事においては、いまもなほおとろへし代のさまに、かは
り給はず。凡そ匹夫匹婦の賤しさも子を産みては其室家あらむ事を思ふ。これ天下古今の情也。(中略)これより後、代々の皇子、皇女、其数多くおはしまさむに至りては天下の富も、つがせ給はぬ所ありぬべしなど申す事も候はんか。古より皇子、皇女、数十人おはしませし代々もすくなかれねど、それらの御後、今に至り給ふは、いくばくもおはしまさず。『天地の間には大算数といふもののある也』と古人は申したりき。これらの事は人の智力の推し測るべき所にあらず。ただ理の当否をこそ論じもうすべけれ」(松村明校注、岩波文庫。138~140p)
新井白石は後継皇統の候補者がたくさんおられた時代ではなく、いずれ後継候補が不在となる危機にそなえ、別に宮家を建てて費用をまかなうべきと建言したのだ。
将軍家宣は白石の建言を受けいれ直仁親王を閑院宮と称し、禄千石を進上した。はたして白石が危惧した通り第113代東山天皇の系統は第118代後桃園天皇で絶えた。
そこで東山の皇子、直人親王の孫にあたる光格天皇が第119代天皇として即位された。光格天皇は閑院宮典仁親王の第六王子。誕生の翌年に聖護院に入寺し将来は出家して聖護院門跡を継ぐ予定だった。
ところが後桃園天皇が崩御し、直系は内親王だけだったため、安永八年(1789)十一月二十五日、践祚された。今上陛下はこの光格天皇の系統である。
ゆえに令和の時代の皇室論議に臣籍降下された旧宮家の復活が急がれる所以である。
白石が冒頭にのべた「建武の間、皇統すでに南北にわかれ、南朝はいくほどなくて絶させ給ひぬ。北朝はもとこれ武家のためにたてられ給ひぬれば」という意味は、建武の中興の後醍醐天皇の南朝が99代の後亀山天皇で世継ぎなく北朝五代の後円融天皇の皇子が、第百代の後小松天皇、101代称光天皇のあと、五代遡って北朝一代の光嚴天皇の祖々孫にあたる後花園天皇となられたことを指している。
皇位が空位となったケースは幾つかあるが、未亡人か独身の内親王が称制(臨時天皇)として正式な後継皇子が成人するのを待った。たとえば持統天皇、皇極・齊明、元正、元明がそうだ。孝謙・称徳天皇の場合は後継淳仁天皇を廃帝とし、次の光仁天皇を指名したとする遺書は藤原百川がでっち上げた。
第二十一代雄略天皇の子、清寧には皇子がおらず三代遡って履中天皇の皇子イチノヘオシハの遺児(顕宗、仁賢)が継いだことはみたが、その間の飯豊天皇は明治三年に皇統譜から削除された。ところが葛城の麓へいくと宮内庁管轄の飯豊天皇陵がある。
その後、第二十五代武烈天皇にも後継皇子は不在で、こんどは五代遡り、応神天皇の五代孫と言われた継体天皇が践祚された。継体天皇は越前からやってきたが二十年間も奈良へ入らず、この謎は解明されていない。
(『月刊日本』から再録です)
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tagged by @katebvsh to list seven of my favorite films.I would like to thank my friends who always take an interest in me and care about me. I would be happy if it was an opportunity to meet good works.
それぞれのタイトル下に解説文をつけました。ネタバレしているので嫌な方は読まないでください。I've added a commentary below each title. Please do not read if you do not want to spoil the content of the story.
カラスの飼育~Cría Cuervos~ (1976)
高校生の頃にカヒミ(kahimi karie)のアルバムでカバーされていた「Porque te vas」という曲で知って見た映画。カヒミさんは主役のアナ・トレントが自分の幼少期のようでシンパシーを感じると言っていました。私も同じように感じたのかは初見時はよくわからなかったけど、とにかく湿度の高すぎる古めかしい屋敷の中の空気のように重く苦しいストーリーなのに、24時間ずーっと流していても気分が良い不思議な映画だと感じました。やはり自分の感性に似たものを感じて懐かしかったんでしょうね。
汚いことがたくさんある大人の世界に対する子供の鋭い視線、汚い世界で生きていて死んでしまった大好きな母親に対する愛、でも大きくなれば自分もその汚い世界に入っていくのだ、望む望まずに関わらず。それに対するどこまでもピュアな嫌悪感・拒否感が彼女を殺人に駆り立てたのではないだろうかと思っています。
アナの子供特有のスラリとしたお人形のようなスタイル、髪型、顔立ち、衣装、とても愛らしくて全て���璧。スペインの田舎の草原はどこまでも終わりがなく続いているようで、物語と同じく、救いなく連綿と続いていく人生のような寂しい風景だと感じました。
夢 (1990)
黒澤明とスティーブン・スピルバーグの合作。
高校時代の同級生に親が映画マニアで家に死ぬほどテープやDVDがある女の子がいて。その子と私がたまたま天気雨(狐の嫁入り)という気象現象に遭遇した時、私が「天気雨大好き!!」と言うと、「黒澤明の夢って見たことある?狐の嫁入り行列の映像があるんだけど、霧深い杉林の中で子供時代の黒澤明が狐に見つからないように隠れて嫁入り行列を見るの。その時の狐たちがリズムに乗って歩いていて、三歩に一度突然ぐわっと後ろを振り向くのが怖くてねー」って。
それがずっと記憶に残っていて、見てみたら最高でした。まさに私が思い描く通りの狐の嫁入り行列の映像化。見つかったら殺される、と言う緊迫感を忘れさせるほど幻想的なシーンで、何回も繰り返しみてしまう。
同時収録されているお雛さま人形たちが段々畑で実際の人間の大きさになって花吹雪の中舞い踊る話も大好き。黒澤監督が幼い頃にみた夢の映像化作品なので、ストーリーにあまり意味はないけれど、とにかく映像が美しいです。
The Addams Family (1991)
24時間ずーっと流してても苦にならない不思議な映画二作目。これもカヒミさん繋がりで知り好きになったもの。
中学、高校時代の私はカヒミカリィという人の感受性に痺れるようなシンパシーを感じていて、彼女が理想の姿でもあったけれど同時に全く自分と同じ悲しみを含んだ魂の形をしているなとひしひしと感じていました。懐かしい、いつも私が感じているもの、好きな感じ、落ち着く感じ。
カヒミさんはアダムスファミリーのようなお城で暮らしたい、世間と常識が真逆であっても家族の中では愛や信頼が成り立ち、幸せに暮らしていると言う姿が理想的とおっしゃっていました。アルバム「クロコダイルの涙」収録の「superfreak」はまさにその世界を彷彿とさせます。
私も赤い絨毯に蜘蛛の巣のはった不気味な古城に暮らしていた前世があると思う。世の人の不気味に思うものが私の美を感じるもの。
お気に入りキャラはイケてるいとこのモップさんとペットの賢いハンドくんです。可愛すぎ。
Nell(1994)
ジョディ・フォスター主演。ノースカロライナ州の深い山奥、美しい、湖のほとりにある木でできた家。そこに住む言葉が不自由な現代版狼少女のネルと医師のジェリー、心理学者ポーラ三人の心の交流・家族愛が不器用に育つ過程を描いた物語。体は大人だけど心は幼児でもない、小さな子猫でもない、不思議な存在であるネルと関わることで、常識の中で生きてきた普通の大人の男女二人が、一人の生き物としてそれぞれネルを守ろうと変わり始める姿に胸を打たれる。
私はなぜか小さい時から泉や水辺で水浴するという行為やシーンがとても好きなのですが、ネルが夏の夕方、森の中の湖で泳ぐシーンがすごく好きです。なんだろう、体が溶けて揺れて大気と水と一体になるような陶酔感。
真っ当に育った人間ではない存在であるネルが社会に復帰するために街に出るシーンは人々の好奇な目線やからかいに胸が苦しくなるのだけど、それをも乗り越えて人生は変化をし続けながら続いていく。目と心を世俗の汚れから洗ってくれるような作品。
Digging to China (1998)
実家にいた時衛星放送で偶然録画してすごく気に入った作品。まず登場人物全員の衣装やメイクや背景が半端なく可愛くて感心する。(一番の推しは主人公のお姉さんが妹捜索時に着ていた透明に白のドットの雨ガッパ)
思春期前の少女と知的障害ゆえに少年のような心を持った大人の男性の不思議な友情を描いた素敵な作品。
リボンのついたキャンディーのように可愛くて、でも油断してたら包み紙で手を切ってしまって血が滲むような、なんとも言えない純粋さと可愛らしさが混ざった妙味ある童話みたいな映画。大好き。
かぐや姫の物語 (2013)
あまりにも打ちのめされるので気軽に繰り返し見たいという作品ではないけれど、強大な力を持っているので選ばざるを得ない。
鬱病から社会復帰するときにリワーク施設に通っていて、そこでのプログラムで映画鑑賞というものがあり、月に二、三回スタッフさんの持ってきたDVDを見ていて出会いました。 もう、上映後は泣きに泣いて震えて頭が働かないくらい衝撃的でした。
このDVDを持ってきた支援員さんに、私が泣きながら「○○さん、これ。私、わかった」というと、彼女も目を潤ませながら笑顔でうなづいてくれたことを覚えてる。
これは竹取物語という昔話の単なるリバイバルではなく、「この地球で生きるとはどういうことなのか」「人間は死んだらどうなるのか」を描いた物凄く重い作品です。
これは、「この世に生まれてきて、自分を愛してくれた両親が望む娘の幸せと自らが望む幸せが合致せず、親のためにとひたすら自分を殺し続けた結果、苦しさに耐えきれなくなり自殺に至る娘の生涯」を描いた作品なのです。
姫が帝に抱きしめられて瞬間移動ができているのは、もう半分死の世界に行っているからです。生身の人間にあんなことはできません。最後に月の使者が迎えに来るのは文字通り死の世界からのお迎えです。兵士たちの放つ矢は全て花になってしまう。死の前にはどんな権力も力も通用しません。
羽衣を着てしまえば地球でのこと(生きていた時のこと)を全て忘れる、躊躇した姫に親の愛で動けるようになったおじいさんとおばあさんが駆け寄ったとき、「ととさま、かかさま!!」と泣きながら振り返り、二人に抱きつきながら「離れたくない!!」と叫ぶ姫のセリフは、「死にたくない!!」という生への執着、生への恋慕の叫びなのです。
死んだら無の世界に行きます。生きていた頃の記憶は全て忘れて、喜びも痛みも悲しみも何もない光に満ちた世界に行くのです。
姫が地球を飛び立ち、宇宙を月に向かって進んでいるとき、ふっ、と振り返って青い地球をかえり見たとき。一粒涙を流したのは、喜びも悲しみも苦しみも全てが咲いては枯れ、沸き起こり、繰り返されている、生の世界の営みを愛おしく思う心の表れでしょう。
今生きていることが途方もなく尊いことだってことは普段、忘れてしまいがちなのですが、見た後にそれを思い出して自分を抱きしめたくなるような凄い映画です。
中国の植物学者の娘たち(2006)
フランスとカナダ合作映画。監督は中国の方ですが同性愛を描いた作品のため中国では撮影許可が降りず、ベトナムで撮影されたもの。
映像も俳優さんたちも風景も全てが物凄く美しいけれど、物凄く悲しいストーリー。二人の愛が本物であったが故に、その愛の花が咲く大地が中国であったというだけで最後、二人は死刑にされてしまいます。
私は植物が好きなので画面に溢れんばかりに写り続ける緑と水と土の香りにとても癒されます。二人が出会い、互いに恋心を抱くようになり、少女のような淡い確かめ合いの時期を経てむせかえるような花と緑の中で激しく結ばれる。しかしその愛はこの人生では許されないものだった。関係が露見した二人は不幸になり、周囲から孤立し、ラストは死に別れるというとても辛い結末。
人間の幸福とは、国家とはなんなんだろうか?考えざるを得ません。
私は異性愛者ですが、幼い頃から同性愛者の人たちに不思議なシンパシーを感じていました。なんなら、そこらじゅうに在る異性愛よりも日の目を見ない同性愛の方が純粋であるとも思っていた。
どうして、同じ性別の人を愛しただけで罰せられなければいけないのか理解不能でした。愛の感情は人間に等しく与えられているものなのに。
見た後悲しくて胸が潰れそうになるので、これも気軽に何度も見ようとは思えないけれど、しかし心に残る作品です。
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この記事は、Ingress & Wayfarer Advent Calendar2022(その1)1日目の記事です。
はじめに
普段ブログ等の媒体を行使していないため、昔極たまに記録してたtumblrをこの為に掘り起こしてみました。Ingress ENL AGのRasmil7(a.k.a 楽さん)と申します。
2022年、今年もあっという間でした。
皆様今年はどのように過ごされましたか?
私が住んでいる沖縄県では、やはり人の動きが激しい&狭い県の為かコロナウイルスの流行に敏感になる日々を昨年同様に送ってた様に感じます。とは言え、ずっとコロナ禍とも言ってられない昨今。Ingress界隈では久々のリアルイベントが徐々に再開されてきましたね。直近の横浜アノマリーに思いを馳せる方々も多いのでは無いでしょうか。
そんな年の瀬に、12月3日 FS@Home in 沖縄 の開催を決定。今後の開催がされないかもしれないバーチャルイベントの方です。せっかくの残り僅かとなるであろうバーチャルFS開催の記念に、沖縄のIngress事情を踏まえたミッションを作成してみました。
本記事ではミッションの解説等を出来ればと思っております。普段文章もそんなに書くことが無いため、拙い部分があるかと思いますが、少しの間お付き合いくださいませ。
設問&ルートは当FSのRES FL sakinoriyaが担当しています。彼なりのユーモア溢れる説明文や設問も要チェックです♪
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■1-6 おばけチキン
おばけ、と聞いてピンと来られた方はいらっしゃるでしょうか?
12月にFSをやろうと決心した際、「どうせなら何か企画をひとつ作りたい!」と思い、以前リアルイベントのFS(FS那覇 :2019.2月開催)でやられてたようなミッションを作成したいと考えました。
普段仲良くさせていただいており、ミッションメダル作成にも定評がある、RES AG:sasakenさんにお声かけし、メダルイラストを提供して頂きました。
■Question
台湾は電箱と呼ばれたポータルが非常に多くて迷いますが、本土から来たAgentが困った沖縄で多いポータル名とは? ※カタカナ4文字、ヒントはさっき回ったポータルです!
台湾の「電箱」私自身なんの事かさっぱり分からず調べたのですが、日本にもある電圧機等が入っているプラスチック製の屋外箱、これを「電箱」と呼んでるんですね!
どうやら台湾にはこの電箱がポータルになってる箇所が多い様です。地域ならではの不思議。
そこで我らが沖縄県ですが、沖縄の道中至る所に居ます。守護神「○ー○ー」が!
Ingress初期頃は母音を増やしたり、ローマ字書きにしたりと……色々と工夫してポータル申請を行ってたと良く聞きました(笑)
■2-6 おばけ靴下
■Question
このミッションのアイコンのおばけですが、このポータルの旧崇元寺は沖縄戦の激しい戦火で建物は喪失していますが、敷地に入ると“幸せを呼ぶ精霊”とも“いたずら好きの妖怪”の気配がします。その精霊もしくは妖怪の名前は? ※カタカナ5文字で!
おばけイラストにマジムン話の設問を掛け合わせてくるセンスに脱帽!(沖縄では、おばけや妖怪は、方言でマジムンと呼ばれてます)
そんなマジムンの中でも1番有名なのが、「キジムナー」ではないでしょうか。子供みたいにイタズラ好きで、幸せを呼ぶとも言われています!本土で言う「座敷わらし」と似たような感じですね。
■3-6 おきなわ
■Question
沖縄は海に囲まれていて、沖縄本島を囲むBAFをしやすいですが、それを一人でやっちゃおうと初めに思って実行して成功させた陣営はどっち?
RESまたは、ENLで回答してください。
「オキナワ」という文字メダルにちなんだ設問。こちらの作戦は「Op.ひとりでできるもん」という作戦名でした。本当に1人で海を渡りやってのけてしまったので、当時は「女帝」と呼ばれ当然話題になりました(笑)今でも現役バリバリの素敵なAGさんです。
■4-6 エフエス
■Question
FSといえば、クロスミション!首里城復興を願って、青と緑で首里城アートを作成しましたね。そんな首里城の木曳式も終わり、復元工事がスタートしましたが、首里城正殿の復元予定は西暦何年?※数字4文字で!
「エフエス」という文字メダルにちなんだ設問。2019年10月末日に火災で消失してしまった首里城の復興を祈願して、その年の12月にXFでフィールドアートを行ったというものです。私は当時仕事で不参加だったのですが、沖縄AGの軌跡がフィールドに表現され、その後の打ち上げでお話を沢山聞いて胸が熱くなりました。参加したかった!
実はこちらも首里からスタートするフィールドアートの記念ミッションがライブしております。
首里城正殿の復興は2026年予定。何度も燃えて復興する首里城ですが、次はどのような形で蘇るか楽しみですね!
■5-6 てぃだプレゼント
おばけ、文字、につづき、沖縄のレッサーパンダ、てぃだくんの登場です。サンタ帽がとってもお似合いですね。てぃだくんは過去にFS那覇に参加してたりしました。皆さんの手元にもBiocardがあるかもしれませんね?
■Question
沖縄でもノヴァが流行りましたね!青チームは、2021年 「Op.ハッピーターン」があり、緑チームは、2022年 「Ops.神輿は軽いほうがいい」がありました。では、この二つのノヴァ本数を合計すると何本?a,b,cのいずれかで答えてください。
a.2281本 b.4430本 c.6711本
しかし二つ足しても日本記録の 2020/10/17 逗子(神奈川) ENL 7,913 超えないんだね~。
IngressのAGさん方のオペレーション名のセンスは一体どこから湧いてくるのでしょう。
「Op.ハッピーターン」好物のハッピーターンから来ているようです(笑)
翌年に「Op.神輿は軽い方がいい」が実行。(実はこの「神輿」という字が読めずに、しん?こう?とずっと読んでおりました、恥)
RESの本数越えを目指して、ENLも大奮闘!
と、この2つの作戦を合わせても本土の本数には及ばないようです。皆さん、次の作戦は8000本超えを目指しますか?(笑)
■6-6 てぃだサンタ
■説明文
ハイサイ!Agent の皆さん!! 青と緑が切磋琢磨するって素晴らしいね! お互いがあるから相手を超えようと頑張るよね!! さぁ最後のミッションです! ジン~ジン~ジングルベル~、ジンがネ~ラン~♪ サンタさんからのプレゼントを期待して、最後のひと踏ん張り! 美栄橋郵便局がゴールです!
ジングルベルからのジンガネーラン♪
解説させていただくと、「きいやま商店」という沖縄の大人気ロックンロールバンドの楽曲のひとつになります。
気分をあげて華やかなイルミネーションが素敵な久茂地にラストスパートかけていきましょう!
■Question
サンタさんからのFSミッションは楽しんでいただけましたか?最後にこのミッションのルートは、沖縄県民大好きフードをイメージして作っています!ほら皆さんの近くにもきっとあるはずです!いまだってすぐそばに! または手に持ってるかも(笑) 沖縄県民大好きフードはなんでしょう?※カタカナで答えてね!
ラストのポータル、美栄橋郵便局はデパート パレットくもじの1階にあります。おや、その隣にはかの有名な、カーネルなサンダースな方が。あの、おばけが持っていたものと同じ物が食べれそうですね!🤤🍗
クリスマス問わず、沖縄県民はお祝い事には、こぞってこちらのフードをバケツ買いをする風習がありますよ!
終わった頃には、シーサー像の上に乗って、チキンをほうばるキジムナーの姿が見れるかもしれませんね?
--------------------
最後に
Ingress10周年という記念イヤーに何か出来ないかと考えた結果、前年度の経験もあるFS@Homeぐらいであれば、私自身も出来るのでは!と思い立ち、今回、主催の手綱を握らさせて頂きました。恐らく私のAG人生で一番最初に交流させて頂いたイベントがFS組踊(2016年11月)であり、その際に沖縄AGの交流の深さを知りとても感動したので、私自身にとってはFSというイベントに対してとても思い入れがあります。私事ですが、今年2月のクレーゼエフェクトアノマリー当日に出産を迎え、育児に忙しい日々を送っております。育児片手間で大変微力な事は重々承知ですが、私が沖縄で経験したFSで体験して楽しかった事を、新人のAGは勿論、@Homeの特性を活かして、県外のAGの皆様にもお伝え出来ればなと思っております。
きたる!12月3日 13時より YoutubeLiveにて、
沖縄のAG2人(AgentOlympiad2018出場者)がメインMCとなり、楽しくIngressのアレコレを「ゆんたく」します!
ゲストにはファミ通Appのライター深津庵さんをお招きしました。
子供のお世話片手に、リチャージ片手に、これまたオリオンビール(昼飲み?)片手もよし!
皆々様、この放送で再びIngressへの気持ちを盛り上げて、その熱量を横浜アノマリーEpiphanyDawnにぶつけませんか?
皆様のご参加、心よりお待ちしております。
Ingress FS@Home in 沖縄 への参加はこちら
P.S.
メダルイラストを提供頂いたsasakenさん、並びにミッションを作成して頂いたsakinoriyaさん、ありがとうございました!この場を借りて御礼申し上げます。
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玉城デニー知事の度重なる選挙違反も職務不正も報道されない沖縄県メディアの実態
1、選挙違反の証拠としてYouTubeやニコニコ動画でUP
ニコニコ動画 https://www.nicovideo.jp/watch/sm22715457
この動画では、2014年1月18日16時15分頃に撮影したと紹介されています。
その内容は、名護市の選挙期間中に〝生活の党〟の街宣車に市長選に立候補している「稲嶺進」のポスターを掲示し応援演説まで行っていたところを取材したものです。
動画の中で「街頭宣伝車標旗」の携帯を運転手に確認すると持っていない解答。
公道の歩道に街宣車を止めて投票を呼びかける演説をする違法な街宣活動を自ら行い、さらには公職人は撮影を断ることはできないことを知らない玉城デニー知事は「取らないで」と顔を隠し、慌てて逃げ出しています。
国会議員は、選挙期間中に地方公共団体所有の土地で候補者の氏名を印刷した文書図画(選挙ポスター)を掲示することは許されていません。
このことで、玉城デニー知事は下記の違反を犯したことになります。
①候補者のポスターを街宣車に貼る「公選法違反」
②街頭宣伝車標旗を得ないまま選挙活動「公選法違反」
当時の玉城デニー議員は、無知だったのかもしれませんが、現職の国会議員であるため公選法を知らなかったでは許されません。
ニコニコ動画 https://www.nicovideo.jp/watch/sm22726980
撮影者のコメントによると、カメラを向けると顔を隠し慌てて逃げたと書いています。
違反行為を知っていたすれば悪質極まりないといえます。
こんな人物が沖縄県の知事では沖縄県民の未来はどうなるのでしょう。
https://www.youtube.com/watch?v=TC-XmX9jCyw
更に玉城デニー議員は沖縄県の知事になると堂々と知事の権限で不正を次々と行なっています。
沖縄事務所の徳森りま所長と山形県の社団法人子供被害者支援基金の鈴木理恵代表理事と談合して玉城デニー知事による2500万円の公金を不正に流出したことが明らかに!
文化観光スポーツ部(沖縄県)新垣健一部長が淡々と言い訳する議会の動画がYouTubeにありました。
https://www.youtube.com/watch?v=7S9oc1pH_ms
契約前に業者との会食が発覚!
令和2年9月28日(月)第6回沖縄県議会
https://www.youtube.com/watch?v=s5OJETp4iI8
知事不在の知事室で弁当食べながら世間話しをしただけで何も知らない、聞いていないという。
玉城デニー知事が同席していたことは明らにもかかわらず、呆れた答弁が続きます。
「オール沖縄」は、日本の被害者だから暴力も許されるといった活動が加熱している沖縄県。
私利私欲の塊で問題が発覚すると全て職員に���任を取らせるよう事前に圧力をかける玉城デニー知事。
玉城デニー議員は、県知事選挙のテレビ演説で以下のように語りました。
「ミサイルが飛んでくると、我が国の上空に飛んでくるということを迎え撃つと。その、、、戦争の有事の前提を作っているわけですね。有事の前提を作ればなんでもできちゃうんですよ。だから、どんどん安保法制とか特定秘密保護法とか色々なものを、まるで戦時に備えてそうゆうことを整備していくんだというやり方は、およそ日本の国家が今まで取ってきた国の成り立ちや形とどんどんどんどん変えてきているんですね。だから僕は有事の前提に置かずに、平時における外交というものが一番大事で、相互関係で成り立っているのに基地を置くということは、ある種の裏切り行為と捉えられてもおかしくない。そうすると、こっちの国の人も「日本がこうするんだから、僕らもこうするよ」「いやいや、我々はあんた達がこうしているから、ここに基地を作っている」中々それが気がつかない。いつまでも疑心暗鬼が続いているわけですよ。専守防衛でいられる日本の利点は、平時における平和外交。なるべく基地は置かない方が良いという前提で、基地を置かない更なる前提は平和外交を前提とした諸外国、近隣諸国との良好な関係を継続して作っていくと。基地を作ってしまったら、平和になるなんて絶対にありませんから」
コメントを書き起こしながら笑ってしまいました。
「どんどんどんどん」とか「〇〇前提」が何度も繰り返されて、何を云いたいのか何を語っているのかわからなくなります。
要約すると、自民党は戦争を開始する前提で沖縄に基地を置いているから沖縄県民に対する裏切り行為だ!平和外交を前提に基地を全て無くすべきだ!
と主張しているんですね。
近隣諸国の中国も韓国も日本の領土を侵略している現実と北朝鮮は毎年未ミサイルを撃ち、今年は連日日本に向けて撃ってきている事実。
平和外交を続けてきた日本の末路とも言えるのではないでしょうか?
こんな訳の分からない主張と私利私欲の政治活動で隠蔽に翻弄しながらも知事に当選してしまう。
〝玉城デニー〟に投票する沖縄県民はどこに向かおうとしているのか?
本当に不思議な県民だ・・・
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伊藤英明、中谷美紀、宮沢氷魚、市川染五郎、北大路欣也 出演情報解禁!豪華俳優陣が覚悟の集結!!
伊藤英明、中谷美紀、宮沢氷魚、市川染五郎、北大路欣也という豪華俳優陣の出演が解禁になりました!
濃姫(綾瀬)の侍従・福富平太郎貞家(ふくずみへいたろうさだいえ)には伊藤英明、濃姫の筆頭侍女・各務野(かがみの)を中谷美紀、美濃の戦国大名で濃姫の父親・斎藤道三には北大路欣也がそれぞれ扮し、主演級の豪華俳優陣が綾瀬濃姫の脇を固めます!
織田家の家臣でありながら本能寺で謀反を起こした明智光秀には宮沢氷魚、そして織田家家臣・森可成の息子で信長の側近中の側近・森蘭丸には時代劇映画初出演となる市川染五郎が扮し、フレッシュなキャストが木���信長を支える形に。戦国時代を駆け抜けた人物たちが大友組の現場でどのような彩りを放つのか、新たなレジェンドの誕生にご期待ください!
【キャスト役所&コメント】
伊藤英明/福富平太郎貞家(ふくずみへいたろうさだいえ)役
濃姫の侍従。斎藤道三に仕え、その娘の濃が織田信長に嫁いだ際、共に織田家へと入った。
<COMMENT>
東映70周年記念作品であり、主演の信長役が木村拓哉さん、さらに大友監督が信長の生きた時代を撮るということで、台本以上のものが必ず出来上がるだろうと楽しみでした。内容としては信長と濃姫夫婦の純愛ストーリーですが、いち歴史ファン、信長ファンとしては、どういう解釈で一つの作品になっていくのか、その過程を見たくて出番がない日でも現場に顔を出していました。
私が演じた貞家は、濃姫の目付け役、お守役という役どころです。自分の中で役の中に通る筋のようなものを見つけて、演じるというよりは、現場で貞家が「生きている」という感覚を持ち楽しみながら参加させていただきました。完成した映像を観るのが待ち遠しいです。
中谷美紀/各務野(かがみの)役
濃姫の筆頭侍女。濃が幼い頃より姫を見守り支えてきた。
<COMMENT>
各務野は綾瀬さん演じる濃姫にお仕えする立場なので、濃姫への愛情を胸に秘めていて、彼女が可愛くて仕方がない、言うことを聞かないお転婆ぶりまでもが愛おしいという気持ちで演じていました。また、以前ご一緒させていただいたこともある大友監督から、ある種、濃姫が憧れるような存在であってほしいとのご要望がありました。信長の正室の濃姫は、その立場のためささやかな日常を楽しむゆとり、普通の幸せを感じることが許されていない。各務野と濃姫、2人が得られる幸せの違いを際立たせてほしいというご依頼で、その点も大事に演じています。壮大なスケールの作品で、この中に存在させていただいただけで本当に贅沢なことだなと思い、幸せでした。
宮沢氷魚/明智光秀(あけちみつひで)役
織田家の家臣で織田五大将の一人。信長より信頼され、低い身分から一国一城の主に出世したと言われる。史実では本能寺で謀反を起こし、わずか10日余りの天下を取ったとされる人物。
<COMMENT>
オファーをいただいたときは大変嬉しかったですが、すぐ「本当に頑張らなければ」というプレッシャーが一気に襲ってきたのを覚えています。自分がクォーターで、髪や目の色が茶色だったり、身長が184cmあったりもするので、そもそも時代劇に出られると思っていなかったので、脚本を読み込み、過去の映像作品を観て、自分なりに明智光秀についてリサーチや勉強をしました。そしてあえて自分にしか出せない明智を演じてみようという思いに至りました。ただ立っているだけなのに、何を考えているのだろうと感じるような不思議な雰囲気をまとっている、自分自身とシンクロした、自分にしかできないミステリアスな明智を作り上げてきたつもりです。
市川染五郎/森蘭丸(もりらんまる)役
織田家家臣、森可成の息子で織田信長の側近中の側近。13歳の頃より信長の小姓として仕え始め、その上品で堂々としたふるまいは、織田信長の近習として、織田家の家臣団や敵にも認められていった。
<COMMENT>
台本を読み、殿のため忠義を尽くして生き抜いた蘭丸の姿を純粋にかっこいいと思い、自分で演じてみたいと、お話を受けさせていただきました。木村さんとの共演シーンが多く、クランクインした日から信長の、後ろに炎が燃え盛るような気迫に圧倒されましたが、木村さんは殺陣の稽古を見てくださり、刀の持ち方のアドバイスもしていただいて勉強になりました。所作が歌舞伎と違う部分も多く難しいこともありましたが、殺陣では今回ちゃんと刀を合わせることができて、歌舞伎とはまた違った実戦感が楽しかったです。殿のために生きている蘭丸なので、殿が命令する前にすでに対応しているような頭の回転の早さが見えればいいなと思い意識して演じました。
北大路欣也/斎藤道三(さいとうどうさん)役
美濃の戦国大名で濃姫の父親。典型的な下克上の体現者とされ、美濃のマムシという渾名でも知られている。
<COMMENT>
戦国という滾る時代の中で、激しく美しく熱く燃える男と女の紡ぎ合い、ハラハラドキドキ興奮と感動の内に脚本を読み切りました。斎藤道三と織田信長、その運命の出逢いから道三の中で奮い立つ夢と希望、そしてその願いを濃姫に託したいという想い。そういった想いを意識してこの役を演じ、まさに男が男に惚れた、道三の一面を表現しました。自然体で受け止めて下さった、スタッフの皆様に感謝しています。
1956年(昭和31年) 映画「父子鷹」でデビューさせて戴いて以来66年、先人の方々が築き上げてこられた大きな山を、今も登り続けています。「東映70周年記念」と冠がついたこの作品に出演出来た事の喜びを嚙み締めております。
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📮ポストマン3年目の手紙の感想。
泣ける。考えちゃう。
【目次】
読む前
読んだ
感想
イソップとビクター
実装時UR - 抱擁と本編の関係
ちょっと腐った目
安全間の欠如について
【読む前】
早く手紙読みたい。妄想がどれだけ間違ってるのか知りたい。楽しみだけども唯一怖いのはキャラの解釈が根本的に変わること……。
読む前の今の認識を書いとくと、ビクターは
信頼されるなら何でもすると決めていたが、死にたくはないから信念は揺らぐ
大事にしてくれる人がいるのに気づかない
自分が欲してるような手紙は貰えない。
優しいけど自分第一
不可抗力以外に悪いことした?
さあこれからどれだけかわるのか。……寒いな、手がかじかんでうまく文字打てないよ。
【読んだ】
翻訳終わったっぽいので読んだ(日付明けて見ても中国語から翻訳されていなかった)。
さっきの箇条書きを検証すると、
信頼されるなら何でもする
→秘密を手元に留めるために何でもする。信念は守り抜いた。
大事にしてくれる人いるのに気づかない
→不明
自分が欲してるような手紙は貰えない
→貰えて楽しんでた。完璧に願望どおりかは不明
優しいけど自分第一
→その通り
不可抗力以外に悪いことした?
→不明
【感想】
やっぱりね
ビクターの捻くれた性格。最後まで心は開かなかった。親に捨てられて(意訳)約束を破られ続けてたら、そりゃ人間不信になっても不思議じゃない。友人がいないと嘆くぐらい友人という信頼関係への微かな憧れがずっと消えなかったのに、人間不信が強すぎるから自分が相手を信頼できなくて結局最後まで心は開けないまま。
……でも、逆にどうしたらビクターの友人になれる?人間不信の不安を払拭できるほど安心を与えられる存在?いないなぁ……。
エッそっち?いやまあでも言われてみればたしかにそうか
二次創作でよく見かける「ビクターを狙うイソップ VS それを不審がる他3人」ではなく、「同情で繋がったイソップ&ビクター VS 暴れるガンジ VS 周り怖すぎて逃げ隠れするしかない少女」でもなく、「フィーバーガンジ VS 適度な距離感で繋がってる他3人」だったのか。意外だ。
でも納棺師2年目の手紙の「ガンジ以外は自分から問題を起こさない」って文を読み返すと腑に落ちた。
初志貫徹ビクター
「鍵盤」の説明文の読み替えで「荘園主の言葉に惹かれて荘園に行たら、まさか自分の信念を賭けることになるとは!」ってあったから、「どんな危険な目に遭うとしても手紙を届ける」って1年目手紙の決意も貫けなかったんだろうと思ってた。でも信念貫いたね。すごいや……。
あれ?シラフだよねビクター?
薬物投与されてないはずなのにものすごく非常識的な行動を取ったビクター。薬のせいでハイになったガンジが暴れまくったならまだ理解できたけど…素で狂気的な行動を取るとは…ビクター、君ってやつはホントすごいよ。それもやはり手紙に対する貪欲な姿勢によるものか
やはりガンジが放火したのだろうか。
ガンジの背景推理終わってないのでなんとも言えないけど、確か荘園に来る前も放火したんだっけ。納棺師3年目に「イソップの計画を台無しにしたガンジ」ってあったから、今回放火したのもガンジじゃなかろうかと思うけど……。てっきりバット振り回して暴れたのかと思いきや、まさかの炎。荘園焼けてない?大丈夫?
……などなど思ったわけです(長い)。
手���優先したかぁ楽しんでたかぁビクター。そして火へ……。感慨深い。本当にエモいよ。
裏切られ続けた人生の中で、荘園にいる時だけは渇望した手紙も貰えて友人関係の体験もできて、大層嬉しかったんだろうな。
墓まで持って行きたいものも何も持たなかったビクターに、初めて誰かが「ビクター」自身に物を贈ったんだよ。言葉だけじゃなく行動とともに。死が迫っても手放したくないぐらい大事なものができたんだ。 他のメンバーから貰った手紙やメモが、ビクターにとってどれだけ大事だったか。それを思うと炎の中に身を投げた思考回路を共感はできずとも納得はできる。
一見頭のネジの外れた社交恐怖配達員だけど、彼の人生を見つめてきた身からすると最後の彼の行動はとんでもなくえもーしょなるなもので……うわぁ
でもずっと彼の人生とともにい続けたものはいない。ウィックでさえもビクターの人生を詳しく知らない。誰もビクターの行動の理由を理解できない。ある意味ビクター彼自身も秘密そのものだったのだ…… など思ってもう滾っております。
😭😭😭😭😭
【イソップとビクター】
これまで
ビクター:人は怖いけど表情が変わるのは見てておもしろい。直接は怖いけどコミュニケーションできたら嬉しいな。
イソップ:苦しいなら死ねば楽になれる。苦しんでる人は助けてあげたい。
手紙読んだ後
ビクター:信じたいけど無理だよ。人はどうしようもない。
イソップ:(変化なし)
どっちも優しいけれど、イソップの方が他者に対して根本から優しさがあるのが面白いなと思う。ビクターの方は見かけ上は優しいけど根幹にあるのが己の欲求のためのものなんだろうな(例:手紙を届ける→秘密を自分が決めた手順で操りたい、火事での救援活動→他者から信頼を得るため)。
【最終的な解釈】
失望の人生の中で見つけた、短くも幸せな日々。初めて持った自分のもの。大事な大事な贈り物。どうせいつ死んでもおかしくない身なんだ、手放すものか、死んでも墓まで持っていく。誰にも理解してもらえなくていい。これは僕のものだ。
【実装時UR衣装 - 抱擁との関連】
抱擁の説明文を見て「うわあぁ3年目ここにいたのかァ」とじわじわアハ体験を感じている。血族シリーズのストーリーほぼ把握してないんだけど、魔典って抱擁が人々の運命を書いたいわば秘密の書物(ってことでいいのか……?)。この認識で読み換えをすると、
「古城宴会後、血族の盟約は魔典の平衡が崩れたことにより崩壊した」→ゲームの参加者が集まった後、参加者の絶妙な関係性は手紙に書かれた密告によってその平衡が崩れ、人間関係は崩壊した
互いに踏み込まないという暗黙の了解=盟約→そのもとで形成された人間関係
魔典→秘密・手紙
元の主が姿を見せれば、運命を綴る資格はもはや誰の手にも渡れまい。→ビクターが手紙の在りかを知れば、手紙はもはや誰の手にも渡らない
元の主=抱擁→ビクター
運命を綴る資格→秘密を操る資格=配達者・守護者・所有者(クリスマスイベント引用)→手紙は誰にも渡さない執着
抱擁の説明文で唯一分かっていたことが告知文の「託された手紙を必ず届ける。たとえその配達先が、地獄でも。」が「たとえ命が危ぶまれても、僕は手紙を届ける」と読み換えができること以外は何もわからなかったから放置してたけど、ちゃんと読み込めば3年目の手紙の予想もできたのかも。とてもいい伏線だ……。
【ちょっと腐った視点で見る】
(他の方の考察を読んで書いた)ビクター目線でばっか考えてたけどイソップ目線の考察もいいな。 火が放たれた時、二人が同じ場にいるならイソップはいくら生者が嫌いだとしても納棺対象保護のために手を伸ばそうとするかも。イソップとビクターの組合せが好き故に雑念が入ってるの自覚した上で書くけど、もしかりに伸ばした手が振り払われたとしたらそれはこんな意味になるのかも↓
手を伸ばす=ビクターに対するイソップの感情を本人に伝えた
振り払われる=ビクターはイソップの気持ちを受け取らなかった
つまり表面上繋がってた幸せの終わりでもあって……儚い。
【安全間の欠如について】
聞きかじったぐらいの知識しかないけど、人格形成時に親や周りの人間から安心感を与えられていないと成長してもしこりを持ったままの大人になるとか。
ビクターの「安全感の欠如」って、「おやじ」存在も監視の目もそうだけど、幼少期に親も叔父さんにも見放されて「大丈夫だよ、ちゃんと見守ってるよ」って言ってくれる大人がいなかったからいつまでも安心感が育まれなかったってことも含まれてそう。
あと、マズローの欲求段階(だったかな?)安心感が満たされないと高次の欲求(人間関係とか自己実現とか)は現れないとか。
安心感がない・安全欲求が満たされないから、次の「人と繋がりたい」って欲求が生まれない。だからビクターは人間や交流に興味がないんだろうなぁと(でも、大人がちゃんと見てるかどうかの感覚は承認欲求と安全欲求どっちにはいるんだろうか)。
「過去の経歴のせいで捻くれた性格に」「イソップ以外は過去の経験が感性に影響を与えた」ってあるし、ビクター本人に要因が全くないとは言わないけど人格形成期の安心感の欠如がビクターの性格を捻じれさせた一番の原因のように思える。
安心させたい。誰か安心させてあげてくれ……
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