ほうじ茶ミルクのかき氷がツボ❣️ #かき氷 #ほうじ茶ミルクかき氷 #ほうじ茶ミルク #大久保麻衣 #aiokubo #ふわふわかき氷 #ふわふわ #甘いものは別腹 #甘いもの大好き #下北沢グルメ #下北沢 #下北沢カフェ #tokyogurumet #織部 #japantrip #おりべ #shimokitazawa #下北 (織部下北沢店) https://www.instagram.com/p/Ch4z39QpgPy/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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【すき家】330円のレベルじゃない。新登場のかき氷、これは要チェックでしょ - Peachy - ライブドアニュース
以下引用
牛丼チェーン店「すき家」で、2023年6月20日9時から新商品「かき氷」が販売されます。
ず~っと濃厚!追いシロップ付き
牛丼チェーン店「すき家」から、夏にピッタリな「かき氷」が登場。フレーバーは、ほんのりと甘いミルクシロップをかけた、ソーダ・抹茶・イチゴの3種類。別添えで追いシロップが付いているので、最後まで濃厚さを楽しめます。
トッピングのアイスホイップクリームは、ふんわりとろける食感です。「かき氷」のシャリシャリ感と、アイスホイップクリームの優しい口あたりがベストマッチ。食後のデザートにはもちろん、単品・テイクアウトでも購入できます。価格は各330円(税込)とお手頃な点も魅力です。
彩り豊かな3種の「かき氷」ラインナップ
「かき氷 パチパチクリームソーダ ソーダシロップ付き」は、りんごとライムの果汁で、さっぱり爽やかなソーダシロップが特徴です。トッピングには、口の中でパチパチ弾けるキャンディと、カラフルなラムネたち。鮮やかで見た目も可愛い一品です。
「かき氷 宇治金時ミルク 宇治抹茶シロップ付き」は、風味豊かな宇治抹茶シロップを使用。芳醇な抹茶と粒あん、ホイップクリームの相性は抜群です。
「かき氷 いちごミルク いちごシロップ付き」は、少し酸味のあるいちごフローズンがアクセントに。食感も楽しめて、甘いシロップとホイップクリームのバランスが絶妙です。
持ち帰りにも対応。これからの時期に、すき家の「かき氷」でひんやり涼んでみてはいかがでしょうか。
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大阪
いつのまに瞼を擦ったのだろう。手のひらでアイシャドウが煌めいている。飛行機から降りた途端、エスカレーターの立ち位置が札幌と逆になっていて一瞬戸惑う。仕事が終わってすぐに地下鉄と電車を乗り継いで飛行機に乗ったから、大阪に着いた頃には22時を過ぎていた。乗り間違えたら朝まで新世界で呑む羽目にな���けど、まあそれも面白いかもと、緩やかなプレッシャーを携えて終電でホテルへ行く。街灯に照される見覚えのある風景、だけどそれは初めて見る風景だ。あ、ここ。と何度も錯覚する。チェックインした頃には0時半を回っていて、近くのコンビニで買った缶チューハイで乾杯。2泊3日ではあるけれど、大阪1日目は1時間半で終わって、「いや〜1日目楽しかったねえ」とかふざけて早々に眠る。
ガイドブックに載っていない良店が知りたくて、ここで呟いたらお2人から返信がきた。ユニバの招待チケットを譲ってもらったから大阪に来たのだけれど、わたしは高校の修学旅行でディズニーもユニバも行かずに、食べ歩きと伏見稲荷を選んだ人生だ。せっかくだから旅行の合間でどこで呑んでどこでお茶しようかと企んでいた。
怒涛の終電チェックイン翌日に行くユニバはそれなりに楽しかった。ジオラマを眺めるかのような面白さがある。一応、ジェラシックパークの恐竜カチューシャを着けて回った。こういうのは振り切ったもん勝ちだからと思ってはしゃいでみた。でも、その日の午前に行った海遊館のジンベイザメも楽しかった。映画を予習してたらもっとユニバを楽しめたのかもしれないけれど、巨体をゆらゆらと翻して回遊するジンベイザメを一日中見ていたかった。小さな小さなセーラ服に体育帽子を被った幼稚園児の団体と一緒になって魚を見て回る。遠足だろうか。子ども特有のふにゃふにゃした声色で、かわいいかわいいと連呼している。“わ”の部分にイントネーションが付いていて、こんな小さな頃から大阪人なのかと当たり前のことを思う。
夜は、教えてもらった“十忠八九”という海鮮居酒屋に行く。名物だと言う生サーモンレアフライもどれも美味しかった。店員がみんな仲良さそうで良かった。かと言って雑然とした接客じゃない。傘がないと言ったら、帰り際に大きなビニール傘をくれた。いつかの客の忘れ物らしく、どうせ取りに来ないんで要らなくなったらどっかほおってくださいと言う。訛りのある敬語に甘えて、傘を差して帰る。旅先の雨だと言うのに気分が良い。「なまら美味しかったです!」と教えてくださった方にメッセージを送る。
次の日は大阪城へ。3年ほど前に弟と大阪に来た時はかなりゆっくりできたから、新世界と通天閣、道頓堀、太陽の塔までみれたから大阪の観光で行ったことないのはあと大阪城ぐらいだった。日本史を履修していないし、戦国時代はよくわからない。天守閣まで登って、ぐるりと回って大阪の街並みを見る。展示は、兜や屏風など目に留まるものだけ解説と合わせて見て足早に城をでる。わたしの目当ては大阪城ではなく、その横で静坐している珈琲屋だ。これもまた教えてもらった“ばん珈琲”という店だった。この方は質問箱に匿名で教えてくれたのだけれど、文章でなんとなく誰だかわかった。大阪ってたこ焼きとか虎柄とかあめちゃんとかのイメージが強かったけれど、失礼ながらこういう生活を営む大阪人もいるんだなと素直に思った。静かだけれど、強要されるような圧力はなく、ただただ上質な珈琲をしっとりと飲める店だった。少しだけアイスコーヒーを残して、ミルクとガムシロを加える。小さな氷がジャラジャラとぶつかり合う音が、店の隅まで聞こえてしまいそうだった。他にもお店を教えてもらってたけれど、時間が合わなくて行けなかったから次来た時に行く。麒麟堂ってところにも行きたかった。忘れないよう位置情報をブックマークしておく。
空港まで帰る電車で通天閣を横切る。鉄道はずっと街の上を走っている。街並みが圧縮されているなと思う。同じ車両に乗っているはずなのに路線の名前が変わるのに少し焦る。たまに道外に出てしまうと人間として根詰まりしちゃってないかな、いろんな場所を旅行して心底惚れた街に住むのもいいよなと思う。ともかく観光チックになりすぎない観光っていうのが性に合ってて良かった。死ぬまでにまたこの場所にくるのだろうかと思いながらその場所を歩きたい。知らない地の誰かの生活に倣って過ごすことで、こんな人生も良いよなと想像してみる。
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9/27(火) かき氷営業🍧13:00-完売まで(最長22:00)本日栗40食強🌰です。 ・ ・ ・ ——————————- 【本日のメニュー】 1. れもな娘(檸檬と梨と杏仁) 檸檬ソース×梨ソース×パインソース ×マンゴーソース×梨 ×シャインマスカット×檸檬ピール ×杏仁ミルク×杏仁ジェラート ×ホワイトチョコクリーム 他 ※本日途中よりクリームチーズジェラートに切り替わる可能性があります。 2.和栗日和🌰(40食強) 和栗ソース×ほぐし和栗×店主の渋皮煮 ×ほうじ茶ジェラート×餡クリーム ×黒豆煮×芋どろりん×きなこ 他 3. お芋黒胡麻バナナ(季節氷) お芋ソース×芋チップ×くろみつ ×黒胡麻バナナジェラート×芋どろりん ×南瓜チーズクリーム×バナナ ×黒胡麻きなこ 他 1//2000yen 2//2200yen 3//1800yen ※複数杯ご注文のお客様は、 数の小さいものから順にお作りさせて頂きます。 ——————————————- 今日は和栗日和🌰は出し切り。 40〜50食位です。 そして季節氷のお芋があります。 今日と、来週もう1日だけの限定です。 私がまかないで食べたいパーツを 詰めました🍠✨^^ 作ってもらった黒胡麻バナナジェラートが 凄く私の好みだったので 共感くださる方がいてくれされば 嬉しいです。 昨日はれもな娘🍋のフィーバーでした。 かわいいビジュアル、 写真をinstagramで紹介したいのに 私はまだ撮影できていません>< 和梨のソース始め、 スッキリした秋のフルーツ達が勢揃いの れもな。 このシリーズは どれも256nicomらしいですね^^ お時間合う方、 よければmauveにいらしてください🍧 ・ ・ ・ ・ ・ 現行のかき氷営業と 来月からのcurry&parfaitの再開、 1年怠ったレシートの山の処理 (これが難関だけど、 完全なる自業自得、、( ๐_๐)) 新店舗に伴う、 千葉からの移転の件もあるので 私がめいっぱいになってしまっていて、 昨日も、れもながももな表記となってしまいご迷惑をおかけしてしまい 申し訳ありませんでした。 10月の予定のお問合せも 頂いているので、 朝書いて、 まだ修正テープだらけの下書きですが←汗 最後にスケジュールも入れました。 こちらは 明日以降、ちゃんとしたものを投稿します。 ・ ・ ・ 来週からは柿がメニューに入ります!! ラムレーズンの氷も組み込まないとです。 今日が終わると、 残すかき氷営業はあと10日!! 出し切ります。 来週もよろしくお願い致します。 いつもありがとうございます。 256nicom eri #256nicommauve https://www.instagram.com/p/Ci_oiTyvVX1/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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おはようございます! MOCMO sandwiches & Craft beerです☁️🥪🍺 9月もまだまだ暑いですねーーー!三鷹はまだまだセミが鳴いています🌳 この夏好評でした【台湾風ミルクかき氷】は続投販売中です🍧 フレーバーは全3種!写真はほうじ茶金時🍵 一日数量限定ですのでご希望の方はお早めにご来店下さい🏃♂️💨 本日も皆様のご来店心よりお待ちしております🙌 #mocmosandwiches #モクモサンドイッチーズ #萌断 #吉祥寺 #吉祥寺カフェ #吉祥寺ランチ #kichijoji #三鷹 #三鷹カフェ #三鷹ランチ #mitaka #グルテンフリー #glutenfree #クラウドブレッド #cloudbread #craftbeer #craftbeerlife #nicebeer #クラフトビール備忘録 #クラフトビールライフ #beergeek #craftbeergeek #craftbeerreview #ビール #ビアスタグラム #ビール好き #クラフトビール #クラフトビール好きと繋がりたい #かき氷 #台湾かき氷 https://www.instagram.com/p/CieHCfHvUO_/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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佐久市岩村田にあるかき氷と甘味の「雪あそび」です。本日カミさんと揃って病院に行き、ランチした後寄りました。
ここは日光市今市の松月氷室の天然氷を使用しています。だからフワッとして、サクサクじゃなくてサワッとした雪のような食感になるのだそうです。店内も落ち着いた雰囲気。
真夏では無いので一人で一個は無理だろうということで協議の結果、「大人女子の抹茶ミルク(税込1,000円)」になりました。静岡産抹茶とオリジナル練乳、ホイップクリームを使用しています。私、女子ではありませんが、一応大人です。そしてチューブ入りの練乳をチュルチュル吸うほど練乳が大好きなんです。とにかく上から下までしっかり抹茶、練乳が入っていて大満足。お店のHPの写真より私の撮ったこの写真の方がボリュームがあり、実際に近いと思います。フワフワなので時間を置くとすぐに溶けてしまいますしね。
そしてもう一個は「わらび餅(税込500円)」。毎日こねてこねて作っているそうです。もちもちでトロ〜ッと伸びます。かき氷の口直しにもピッタリでした。二人で両方に急かされるように手を出し、あっという間に食べ切りました。(2023/9/30)
お店のURLは
https://r.goope.jp/yukiasobi2022/
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今回やってきたのは、乃木坂駅から徒歩5分の「The INNOCENT CARVERY」さん。 お店のスタイリッシュさ、特注のセラーの中のお肉たちには目を奪われます。 公式💁♀️ @innocent_nishiazabu この日の予約は「シェフズテーブル」(27500円)というプレミアムなコース!! シェフは明石さんという方で、説明が実に丁寧で分かりやすく、しかも終始ニコニコ。 「シェフズテーブルの明石前」とは、この明石さんが目の前で食材や調理法の説明をしてくださりながら、フルオープンキッチンのカウンターでお料理を楽しめるというプレミアムなコース。 ▼自家製熟成生ハム 旬のフルーツとマスカルポーネチーズ 栃木県の「とちあいか」と、2ヶ月のあいだ塩漬けし、熟成させた山形牛のモモ肉。 ほんのり燻製の香りが香ばしく、チーズも蜂蜜も、実に後味がまろやか!! ▼和牛と北海道産雲丹のお刺身 雲丹の食感に合わせ、噛んでいく咀嚼の回数を合わせながらお肉を切るんだそうです。 お肉やわらか!! コクのある醤油がよく、雲丹さんとすごく合うんです。 ▼和牛ヒレカツ 揚げたてのヒレカツをザクザクっと切って、パルミジャーノ・レッジャーノを豪快に!! 赤身の旨味をしっかりと感じ、脂の加減がしつこくない。チーズとの相性も最強。 ▼和牛タン元のお刺身 フランス産トリュフ添え おっきな牛タンと、黒トリュフ。まさに森の黒ダイヤです。 タン元とタン中の食べ比べとは!!黒トリュフは綺麗にスライスされ実にフレッシュです。 ▼ユッケちゃんご飯〜キャビア添え ラトビア?キャビア、磨宝卵(まほうらん)の黄身。松坂牛の内もも。 キャビアを1瓶ぜんぶ どーーーーん!! さすが、超豪華ユッケ丼。このご飯もまた美味しいので、まさに無敵な美味しさ。 ▼焼肉 ●厚切りタン元 綺麗でキメ細かいサシはトロジュワリととろけ、食感はシャックシャク。 ●太田牛のハラミ 下味はついているので、1つは何もつけずに。1つは大根おろしと味噌で。 サッパリした大根と、ガツンと味が来る味噌との相性は、��さに ネ申 !! ●シャトーブリアン さすがはお肉の皇帝、繊細で芸術的な味わいです。 シャトーブリアンなのに、脂が重くなくサッパリしているのが本当にすごい! ▼和牛霜降りと旬のお野菜のすき焼き 季節の土鍋ご飯 コンガリと焦げ目をつける程度にネギを焼き、お肉と割下を投入。 立ち上がる香りと、ジュワァァァという音がエンタメ性高いです!! お肉はお口の中でとろける!! 割下のシャキッとした味付け、お肉の野生的な甘さ、ネギの優しげな甘さ。 百合根のごはんは1.6合だったかな。ものすごい量があります。ついついおかわりっ!! 余ったご飯はお持ち帰りさせて頂いて翌日美味しく頂きました(ノ∀`) ▼旬のフルーツ フルーツ、たっぷり!! 「お好きなものをお選びください。もちろん全種類でも」との事で、欲張っちゃって全種類です。思い切り堪能しました(ノ∀`) ▼コーヒー又は紅茶 自分はコーヒーにしましたが、妻ちゃんはフシギな青いウーロン茶。ベリーの香りがするんだとか? ▼かき氷 まさかのダブルデザートです(ノ∀`)かき氷は2種類を1つずつ頂きました。 ●ほうじ茶ミルク ほうじ茶の香ばしさがすごい。しっかり濃くて美味しいですし、かき氷にほうじ茶は意外な組み合わせでした。 ●バルサミコ苺 苺の濃厚な味をバルサミコが引き立てていて、ふわふわの氷に相性が良くてとても美味しい!! ◆◇◆後記◆◇◆ 今回は本当に素晴らしいお食事となりました。 お口の中では、お口に入れた瞬間、じっくりと咀嚼する時の無言になってしまう味わい、飲み込んだ後の充実感、それぞれの楽しみがありました。 このお店は、今までに行ったどのお店よりも強く推薦できます。 ぜひとも「明石前」でお早めにご予約を!! 公式💁♀️ @innocent_nishiazabu ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼ The INNOCENT CARVERY 050-5594-2688 東京都港区西麻布1-4-28 カルハ西麻布 101 https://tabelog.com/tokyo/A1307/A130701/13189539/ ▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲ #TheINNOCENTCARVERY #ジイノセントカーベリー #明石前 #明石シェフ #シェフズテーブル #乃木坂 #乃木坂グルメ #東ぐる #Yahoo地域クリエイター #乃木坂デート #乃木坂焼肉 #乃木坂和牛 #食べログ人気店 #食べスタ #食べロガー #食べロガーみうけん #食べログ #みうけん @gourmet_kanagawa_ (The INNOCENT CARVERY) https://www.instagram.com/p/CoeVX70SvVA/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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鮫麗 (サメウララ)
栗ほうじ茶ミルク
西区に移転されてから初めてお邪魔してきました【鮫麗】さんにお邪魔してきました。この日はちょっとどんよりしたお天気で翌日にワニワニクリスマス会を控えた日でした。こちらのかき氷はブラッドオレンジ・パッションフルーツ・マンゴーなどの南国な果物をメインとしたお店なので私には敷居が高い(酸っぱいのが苦手で)のでお店の選択としては案外ランクは下の方なんですが実は食べたいかき氷があったので行ってみました。ですがそちらのメニューはありませんでしたwwwお話を伺ったところそのメニューは他の店さんとのコラボメニューだったのです。残念です。ですが一度だけ食べた感想は私の中では絶大なもので♡いつか食べられたらいいなっ♡
#かき氷は趣味です
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鈴蘭の花言葉を知ってるか
学生時代に付き合っていて卒業と同時に別れたふたりが、プロヒーローになってから復縁する話。
これ(https://kyo-sakisaka.tumblr.com/post/685577858426486784/%E5%A4%8F%E3%81%8C%E6%9D%A5%E3%81%9F%E3%81%AD%E8%BD%9F%E3%81%8F%E3%82%93)の続きのつもりで書いていますが多分単体でも読める。
***
目が覚めたら、手を伸ばしていた。
ぴぴぴ、という音に意識が浮上する。軽い電子音は、瞬く間に狭い部屋に吸い込まれた。ベッドの横にある窓。揺れるカーテン。白くぼやけた朝日。いつも通りの、朝。
「あ……」
まるで時が止まったかのように、静止して動くことのない部屋の中。その中で天井へと伸ばしていた自分の手だけが、ただ異質だった。鳴り止まないスマホのアラームと、朝を告げる鳥の声が混ざりあって溶けていく。力を抜けば、重力に従ってぱたりとベッドの上に崩れ落ちる手。七年前の傷痕は残ったままだった。
起きあがると、ふるりと背筋が震える。寂しいような、それでいてどこか温かいような胸騒ぎが肌を満たしていた。じわじわと浸食していく微かなざわめきと、花びらを噛んだあとのような苦み。
一度大きく深呼吸をして、傷だらけの右手を見つめる。目蓋の裏側に鮮明なまでに描かれた、燃え盛る炎の色。強い意志を秘めた色違いの瞳。手のひらから生み出されるその熱量。
「……………」
夢の内容など、覚えていない。
というよりは夢を見ていたことさえ記憶にない。それでも自分が夢を見ていて、そしてそれがどんな夢かなんてことはなんとなく想像が付いた。
いつもよりほんのり温かく感じられる右手。
確かめるかのように一度握って開けば、勘違いの温度が指の隙間からこぼれていった。ぬるい体温の残るシーツを抜け出して、フローリングに足をつける。ひたり、と朝の冷たさが裸足に刺さった。
透ける光を求めるように、隙間から柔らかな朝日を届ける窓の方へと向かう足。その薄い足の裏の皮膚を刺す、氷のような冷たさ。それを気にしないようにして緑色のカーテンを横に引いた。ひとしきり眩しさを瞳の奥に焼き付けて、祈るように目を伏せる。
――右手に刻み込まれた傷跡は、僕の人生のなかでただ一人を彷彿とさせる。
窓枠にそっと手を掛けてぐっと押し引く。からからという乾いた音を立てたと同時に、どこかしらから漂う花の香りが鼻腔を擽った。
「……轟くん」
思い出の中で優しかったはずのその香りは、きっと一生ぶんの恋煩いの味だったんだと思う。苦みさえ知らない頃の、風が吹いてしまえば消えてしまいそうな。しゃぼん玉のような恋煩い。
――みどりや。
耳の奥に残る甘い低音。僕を包み込んでいた優しい影。風に流れる白と紅。癖のないさらさらの髪の毛。澄んだ青空のような轟くんの匂い。繋いだ手のひらの熱。爪を立てた夜の鼓動。最後に見た、泣きそうな顔。
ぴぴぴ、と辛抱強く鳴り続けるスマホのアラーム。それをタップして解除すれば、でかでかと書かれた今日の日付が飛び込んでくる。リスト上に並べられるはずの通知は何も届いていない。特別な予定があるわけではないのだけれども、その日付は僕にとって見覚えがありすぎた。
轟くんの隣で見た世界の色を、君の隣で見た奇跡を。僕はずっと覚えている。
いや、違う。忘れられないままでいるんだ。君を。
「………そっか、もうそんな経つんだ」
緑谷出久。独身、二十三歳。職業、プロヒーロー。ヒーロー育成機関の最高峰、雄英高校ヒーロー科を卒業して五年が経つ。
――つまるところ、轟くんと別れてから五回目の春が巡ることになる。
***
雄英高校に在学していたときと比べればめっきりと減ったが、それでもヴィランや小悪党は未だ多く水面下で蠢いていた。僕がヒーローとして活躍する頃には、ひょっとしたらもうヒーローなんてどこも雇ってくれないかもしれない、だなんて考えていたあの頃が懐かしい。僕らヒーローの仕事がないのが一番ではあるのだけれども。どうやらこの個性社会ではそうもいかないようだった。
出社時刻よりすこし早めに家を出て、通勤がてらパトロールをする。それがプロヒーローとして事務所を立ち上げてからの僕の日課になっていた。そうして事務所へと出社すれば、ここ数年で随分と見慣れた顔のサイドキックの視線が僕を捉える。大量の書類が挟まったバインダーを片手に持ちながら、顔を綻ばせた。
「おはようございます、デク」
「おはよう」
雄英高校ヒーロー科。ことヒーローの育成機関としては最高峰だと謳われるその高校。そんな高校を卒業して五年も経てば、あのころ有精卵と呼ばれていた仲間も軒並みプロヒーローとなっていた。これは社会に出てから痛感したけれども、雄英のカリキュラムはかなり実践的なものだ。今までの現場において、何度あの頃の雄英の教育に感謝したことだろうか。
出世したなぁ。
そんなことを思いながら事務所のロッカーにどさりと荷物を置いた。プロヒーローになってまだ日は浅い。それでもこうして信頼を寄せて支えてくれるサイドキックがいる。ありがたいことだった。けれどそれは同時に、あの頃にはなかった責任という言葉がついて回ることになる。彼らは僕を信じてサポートをしてくれるのだから、僕はその期待に応えなければならない。当たり前だけれども、プロヒーローという職業は、想像以上に大変なものだった。肉体的にも、精神的にも。
「デク、眠れましたか?」
「え?」
「少し顔色が悪いように思います」
ばたん、とロッカーの扉を閉めて自分のデスクへと赴けば、いつの間にか珈琲の香りが漂っている。手に持っているトレーを見る限り、どうやら傍らに立っているサイドキックが淹れてくれたようだった。
本当に有能なサイドキックには頭が下がる思いだ。なにより、気遣いが素晴らしい。僕にはもったいなさすぎるな、なんて思いながら椅子に腰を下ろす。体に馴染んだそれはいとも簡単に僕を支えてみせた。
「大丈夫、仕事に支障はないよ」
「でも………」
「心配性だね?僕は平気だから、ありがとう」
その優しさにふわりと僕の頬の筋肉が緩んでいくのがわかった。ほんとうに心根が優しい。そして考えが顔に出るタイプだ。心配そうに瞳を揺らすサイドキックに有無を言わさぬよう言えば、まだ何か言い足りなさそうな唇が引き結ばれた。
明らかに今朝の夢のせいだとは思うけれど、夢見がなんだろうがプロには関係ない。必要であれば命を懸ける。そういう世界に生きているのだから、甘えなど許されなかった。勿論、それを選んだのは僕だ。
「今日は午後三時から会議ですので、それまでに事務所のことは終わらせておいたほうが良いかと」
「そうだね。そうする」
温かい珈琲に口を付けながらぼんやりと考える。最近活動が目立ってきている犯罪組織。その取り締まりを一斉に行おうという話はプロヒーローの間で前々から出ていた。所謂、チームアップだ。
――懐かしいな。
チームアップにはじめて参加した、あのエリちゃんの事件を頭の中で思い出していた。あのときは、周りをプロヒーローとビッグ3に囲まれて萎縮することしかできなかったような気がする。今やそれが日常茶飯事なのだから、ほんとうに時の流れというものは早い。五年なんて、すぐだった。
舌先に絡まるほろ苦さが、ミルクのまろやかさに優しく溶ける。香りの良い豆の匂いが、少しだけ尾を引いていた眠気を霧のように消していった。僕がひとつ温かな息を吐き出して、凝り固まりがちな首をぐるりと一回転させれば、事務所のテーブルの片隅にあるそれが目に付く。
「これ、どうしたの?」
「ああ、春ですから」
良いかと思って。
そう笑うサイドキックの横に飾られた、透明なガラス瓶とそこに生けられた花。透き通るようなガラスは光に当たると、うっすらと青の色を纏う。ぽつん、とそこにある青色が少しだけ胸の奥をざわつかせたのはきっと、目の前で笑うサイドキックには気付かれていないだろう。
生けられていたのは、少しでも力を入れれば折れてしまいそうな細い枝と、その先に咲く白い小さな花。絨毯のように野原に咲いているその花を見たことがある。群生するその花は、その花の色と小さく丸い形から綿毛のようにも見えた。
なんて名前の花だろうか。知識があれば粋な返しもできたのかもしれないけれど、生憎と僕は花にあまり詳しくない。知ってるのは1つくらいだった。花の名前だとか、花言葉だとか。そういったものをもっとちゃんと勉強しておけばよかったかな、なんて密かに思う。
「お嫌でした?」
「まさか。ありがとう」
着慣れた緑のヒーロースーツ。傍らで笑うサイドキック。朝の澄んだ空気に、一日の歯車が回り出す。
これが、プロヒーローになってからの僕の日常だった。
***
プロヒーロー、ショート。その圧倒的なルックスと、氷と炎というふたつの力を併せ持つ、強力な個性。そんな轟くんの涼しげな瞳が、世の女性を虜にしないはずがなくて。轟くんがヒーローとして活躍するようになってからというものの、その人気はとどまるところを知らなかった。サイドキック時代から「抱かれたいヒーローランキング」だなんていかにもなランキングで堂々の一位を獲得し、今現在に至るまでその一位の座を譲ったことがない。そんな轟くんが報道陣の目に止まらないはずなどなく。事あるごとに週刊誌に熱愛報道をすっぱ抜かれているのだった。轟くんは全部、否定しているようだけれども。
淡雪のような恋を抱いたその相手のことを、気にならないといえば嘘になる。だからと言って、何かをするというわけではない。要は、外野から偉そうに「ふーん、そうなんだ」と見るだけ見ているような、そんな感じだ。だってもう、他人だろう。轟くんと僕なんて。
仕事終わり。すっかり日が落ちて、真夜中にさしかかろうとする時間帯。ヒーロースーツから私服に着替え、マスクと帽子だなんてなけなしの変装で顔を隠した僕は、帰路についていた。
高校時代からの日課である、ヒーローニュースのチェック。人気がない、街灯だけが照らす道を歩きながらそれを確認すれば、見慣れた「プロヒーローショート」の文字が並んでいた。
――ほら、また派手な噂だ。
プロヒーロー、ショート。彼が記事になる場合だと、ヒーローとしての活躍ぶりを書かれるか、熱愛報道が出されるかのどっちかだ。ほかのヒーローだったらこうはいかない。そもそもこんなに熱愛報道が出ること自体すごいのだ。大方、そのルックスだからだろうけれど、
(今度はどこぞの女優とだろう)
見出しの「ショート、熱愛発覚!?」の文字列を、到底タップする気にはなれない。相手の女優の顔なんて見れば苦しくてたまらなくなることくらい、わかっていたから。隣に並んでいるだけで、心臓が張り裂けそうに痛むのがわかっていたから。ずっと隣で見ていた、あの柔らかな笑顔を。甘く溶ける色違いの瞳を。
「………情けない」
考えれば考えるほど馬鹿な話だった。今更何を言っているんだろう。捨てたのは僕だというのに。
水太りのようにぶくぶくと膨れていくこれは。これはきっと恋なんて綺麗なものじゃない。独占欲に汚れていったのは、いつからだっただろうか。
気が付けばヒーロー事務所があった通りは小さくなっていて、自宅近くの閑静な住宅街にまで着いていたようだった。瓶いっぱいの藍をぶちまけたような夜の隅に、ひたひたという足音が響く。暖かい季節になったとはいえ、夜は昼間と比べぐっと気温が下がる。ずれ落ちそうになったマスクを引っ張り上げて、十字路に差し掛かるあたりで視線を持ち上げれば、欲しがりすぎた恋の結末がそこにあった。
(あ、――――)
帽子の隙間からはみ出た、紅と白の色。その特徴的な左目の火傷の痕。甘い残像と、あの日の面影。最後に見たときよりもぐっと男らしくなった轟くんは、雑誌のなかやテレビで見るだけではわからない、くらくらすほどの色気を纏っていた。両手にいっぱいの荷物を抱えて、その瞳がまっすぐに僕を射抜く。記憶の中の僕と君が笑った気がした。
「轟、くん」
「…緑谷」
「はは…久しぶりだね…元気にしてた?」
「ああ」
続かない会話と、落ちた沈黙。僕は自分のスニーカーの爪先をじっと見つめていた。僕はいま、うまく笑えているのだろうか。
どうしてこんな日に限って君と会うのかな、轟くん。
おそらく、今日が人生で一番ついていない日だ。そんな事を頭の片隅で思いながら、途切れた会話の話題を探すように視線をうろつかせる。すぐにその手元に抱えられている大きな荷物に目がいった。
「どうしたの、その大荷物」
「……ちょっと、逃げてきた」
「へ?」
「報道陣。またデマで騒いでやがるから」
「ああ、あれ…」
さっきまでネットニュースにあがっていた熱愛報道を思い出す。どうやらそれでマスコミに追いかけられているようで、「家まで押し掛けて来る」なんてため息を吐きながら轟くんは言った。僕と違って、世騒がせな色���は大変なようだ。
「デマ、だったんだ」
「……そりゃそうだ」
「…へぇ。そう、なんだ」
轟くんはよくマスコミにすっぱ抜かれる。ただその割には毎回違う相手だし、ヒーローショートの熱愛報道なんて誰も本気にしていない。そんなこと世間もわかりきっているだろうに。
――あんなに派手に噂されているのに。彼女つくらないの、轟くん。
喉元までこみ上げて唇から溢れそうになった、毒のような言葉を飲み干す。びりびりと喉が焼け付いたように痛んだ気がした。この毒が君を殺しかねないだなんて思うのは、烏滸がましいだろうか。笑って言えば、轟くんは苦しむだろうか。
会いたくなかったんだ。会ってしまえば、こうなることくらいわかっていたから。求めすぎて過ちを繰り返すことくらい、わかっていたから。僕はあの頃と、何も変わっていやしない。
夢に見るくらい。手を伸ばすくらい欲しがっても。それでも僕は、轟くんと離れる決意をしたのだった。したはずだった。
「…じゃあ、気をつけてね、僕はこれで――」
「緑谷」
喚き出す胸の奥を押し殺して去ろうとした、僕の手首を掴んだのは轟くんで。手首にかかる指の感触が。その温度が。懐かしくて愛おしくてたまらなくて、目の奥が熱くなっていくのがわかる。それでも僕は涙をこぼすことはなかった。だってもうあのころとは違う。
君も僕も。大人になったんだよ、轟くん。
「………どうしたの、轟くん」
ぶちまけた藍色の中、かすかに煌めきが宿る。僕の鼓膜を、すう、だなんて酸素を取り入れる音が揺らした。心臓をナイフで貫かれたようだ。傷口から漏れ出すこれは、いつの間にか変色している。もう、愛だなんて呼べやしない。
今更何を躊躇っているんだい、君は。
あのとき、「わかった」と。「ありがとう」と言ったのは、轟くんだったはずなのに。降り積もった五年分の歳月は元に戻らない。いつの間にか僕と轟くんの間にできた溝を、繋ぐかのようなその手。僕の腕を掴んだ轟くんは緑谷、とつぶやいた。
「お願いだ、五日間だけ泊めてくれねえか」
「え?」
「この通りだ、頼む」
そう言って僕に頭を下げる轟くん。重力に従ってさらりと流れるその髪の毛が、普段は隠れているかたちの良い耳を露わにしていた。
***
たぶん、断るべきだったんだろう。それでも断れなかったのは、惚れた弱みというやつなのだろうと思う。
連絡先は知っていた。高校時代にやりとりをしていた、メッセージアプリの友達欄。そこにまだ轟くんはいる。トークルームを開けば五年前の懐かしい日付と、柔らかな口調のメッセージが残っていた。
連絡を取ろうと思えば、取れた。それをしなかったのは、結局のところ弱さで。まだ好きだから、連絡が取れなかった。あのころの恋人としての轟くんのことを忘れられていたら。そうしたら、「ひさしぶり!轟くんは元気?」だなんて、軽々しく連絡が取れたのだろうか。
プロヒーローとしてお互い忙しい身であるし、五日感も一緒にいることを考えたら合鍵を轟くんに渡すのは自然なことで。五年ぶりに動いたそのトークルームの履歴は、轟くんが先に僕の家に戻っていることを告げていた。「飯まだだろうから、作っとく」だなんてことも。
なんでこんなことになったんだろう。
こんな近い距離で、轟くんと五日間も過ごすことになるなんて。その距離はどうしたって高校時代を彷彿とさせるのだから、今から気が重くて仕方ない。悶々としながら今日も仕事を終えて帰宅すれば、扉を開けたその先で出迎える姿があった。
「おかえり、緑谷」
その声に、その微笑みに、どくんと心臓が跳ねる。
(君との、――)
君との未来は、こんな感じだったのかな。もし君と。未来を描けたのなら。無意識のうちに手のひらに爪を立てていた。柔らかい肉の中を堅い爪が沈んでいく感触と、鈍い痛み。
痛い。ああ、痛い。頭の片隅で思う。胸の奥が、とんでもなく痛い。
「――――っ」
「…緑谷?」
「なんでもない、なんでもないよ轟くん」
はっとしたようにドアノブから手を離せば、ばたん、と扉が締まる。それと同時にかさりという音が鼓膜を震わせて、靴を脱ごうとした僕の動きを止めた。
「…え?」
それは、花だった。
一番に飛び込んでくるのはその鮮やかな色。黄色、紫、白といった色とりどりの色が花びらを染め上げていた。茎のところ白色のリボンで結ばれて、ぎゅっと一つに束ねられている。
まるで死体のようだった。
あくまで小ぶりなかたちの花弁は、慎ましやかに玄関の下に落ちていた。視線を上げれば、ドアの内側に取り付けられた、郵便受け。ドアを閉めた際にそこから落ちたのだろう。恐る恐るのぞき込めば、そこには名刺サイズのカードが隙間に挟まっていた。
『もの想い パンジー』
「?…なにこれ」
手書きで書かれたような文字は、どこか暖かみがあって。懐かしいような、切ないような、不思議な気分になる。右手で花をそっと拾い上げれば、蕩けるような花の香りが鼻腔を刺した。カードを裏返してみても、そこには何も書かれていない。
「…花か?」
「うん、なんだろう、僕になのかな?」
「お前の家なんだからそうだろ、きっと」
差出人不明の花。匿名で贈られた花。ありとあらゆる生命活動をやめた、死体のような花。
どうしても、恐ろしいものだとは思えなかった。たぶん、思うべきだった。萎れずに、まだ瑞々しいままの花びらを見つめる。郵便受けに入れられたのは、きっと数時間前のことなんだろう。
「この、『もの思い』ってなんだろう」
「……花言葉か?」
「え?」
「たぶん、パンジーはもの思いだった気がする」
スウェット姿の轟くんが、花を見つめてそんなことを言う。その花を見つめる轟くんの視線はどこか優しくて。
(――――、)
まるで、高校時代に戻ったようだった。
目尻を下げて、頬を緩めて、瞳の奥を甘く蕩かせていた、あの頃の轟くんを思い出す。目に焼き付けた筈の残像が、また熱を持って甘く疼きだす。近いようで遠くて、たまらなかった。
なんなんだろうな。なんでこんなことになっているんだろう。
消え失せて、と心の中で願えども消えないから、瞳を伏せる。――もの思い。ふつうは考えないことまであれこれ考えること。
「詳しいんだね」
「まあな」
それきり、その話はしなかった。靴を脱いで、肩から鞄を下ろす。キッチンからは良い匂いが漂っていた。轟くん料理できるんだなぁとか考えて、また嫌になる。そんな僕を見た轟くんははっとしたように、顔を上げた。
「ごめん、今から温める」
「いいよいいよ、それくらい自分でやるから。だから轟くんは寛いでて」
ばたばたと着替えながら、轟くんの視線から逃れるようにキッチンの方へ向かう。自分の家の中に轟くんがいるということが。轟くんを見るということが、痛いくらい苦しいのに、ばかみたいなほど嬉しくて、触れたくて、愛おしくて。自分から捨てたくせに、気を抜けば縋りついてしまいそうだったから。
「あ、お風呂もう入った?僕ご飯食べてるから、もしまだだったら先入ってて良いよ」
「……まだ、俺も食べてない」
「え、」
ほら、僕はこんなにも弱い。轟くんを極力見ないようにと決意した矢先にこれだ。ぴたりと足が止まって後ろを振り向く。伏し目がちに呟く轟くんの、少しばかり恥じらうような声。
「一緒に食べたかったから」
「……………、」
その言葉に、なんて返せばいい?なんて返すのが正解なんだ?「嬉しい」?「先に食べててよかったのに」?学生時代に何気なく返していたはずの言葉。それさえ思い浮かばなくなってしまった。轟くんを振った僕が言える言葉は、何だ?
「そっか」
手を伸ばせば届く距離。まだ好きなんだと、もう一度やり直したいと、言える距離。それでも僕のくちびるからこぼれたのは、その一言だけだった。
***
お互い好き合っていて、気持ちが離れたわけではない。
そう言えば、十人中十人が「どうして別れたんだ」なんて疑問に思うだろう。実際、轟くんと別れたことをクラスメイトに話せば、予想通りの反応が返ってきた。
好きなら良いじゃないかと、誰かに言われた気がする。おぼろげな記憶の中で、僕はその言葉になんと返したんだっけか。五年も前のことだ。もう覚えていない。
――好きだから、だめなんだよ。
好きだから、だめなんだ。恋愛感情だけじゃなくて、轟焦凍という人間が好きだから。だから、離れなければならないんだ。
『別れよう、轟くん��
目を伏せれば鮮やかに映る、最後の日の記憶。君と近づいた夏、君と離れた春。さざ波の音と、昇りはじめた太陽。地平線の向こうを眺めながら、これで最後だと、頬に触れた轟くんの手のひらをそっと離した、あの日。
僕の中で大きく育ちすぎた想いが、ヒーローとしての君を殺していくんだ。そばにいられたらそれでよかったはずなのに。いつの間にか我が儘で欲しがりになってしまった僕は、やがて君の全てを欲しがった。馬鹿だろう。ヒーローになりたがっていた君が好きだったはずなのに。
もう、僕はわからなくなってしまっているんだよ、轟くん。
『………わかった』
ありがとう、とこぼれる言葉。波の音と、朝焼け。瞳の奥に焼き付けた、最後の顔。泣きそうな、轟くんの顔。
安堵していたはずなのに。すれ違いの温度がやけに目の奥に沁みた。
君が、好きだから。僕を好きでいてくれる君が、好きだから。
だから、君が好きな僕のままで、終わらせてほしい。
「――――デク、」
「え?」
「何回も呼びましたよ、大丈夫ですか」
思考を打ち砕く声に、手にしていた書類がばさりと落ちる。書類の白から開けた視界の向こう側から、心配そうにこちらを見つめるサイドキックの顔が視界に飛び込んできた。
「はは…ごめん」
轟くんがうちに泊まりに来てから、今日で四日が経つ。一日目に贈られた花は、それ以来毎日ポストの中に投函されるようになった。最初は、『もの想い パンジー』。次の日は、『うれしい知らせ ハナショウブ』。またその次の日は、『いたわり ポピー』。こんな連日花を贈られれば、大方今日も何かしら贈られているのだろうと思う。
それは決まって夜だった。朝、出勤前に郵便受けを覗いても、そこに花の影はない。よくわからない業者からのダイレクトメールか、チラシかくらいだ。瑞々しい花びらを見れば、投函されてからそう時間が経ってないことくらいすぐにわかる。
夜の藍色に隠すように、そっと贈られる花。ご丁寧に花言葉までしっかり書かれたそのメッセージカード。こんなことを言えば気持ち悪がられるのはわかっていたけれども、僕には何故かそれを捨てる気にはなれなかった。手書きで綴られた文字の羅列は、今もデスクの引き出しの中で眠っている。
――頃合いかな。
少しばかり水気を帯びた、春の色。窓の外に浮かぶ厚い雲。散ってしまった桜の花びら。窓ガラスの向こう側で大きくなる涙の粒は、光を反射して青にも赤にも装ってみせた。雨だ。静かに降る、春の雨。
隠し事は得意だった。それはもう、学生の頃から。オールマイトから受け継いだこの力のことは、墓場まで持って行くと決めていた。僕は、無個性のデク。ただの、木偶の坊。君と一緒に、未来を描きたいだなんて。そんなのは傲慢だ。
意を決してじっとその瞳を見つめる。真面目で優秀な僕のサイドキックは、僕のただならぬ雰囲気を感じ取ったようで。一度きょとんしたのち、一拍おいてその瞳を負けないほど強いものにしてきた。
「ほしいもの、ある?」
「え?」
「欲しいもの。手に入らないもの。ある?」
びっくりしたように丸められる瞳が、ゆっくりと細められる。睫毛が震えて、終わりを告げるかのように目蓋が落ちた。うすく開かれた唇と、吸い込まれた鋭利なまでの酸素。
「――ありますよ」
まるで、針の山を飲み込んだかのように笑う。いや、違う。笑ってるんじゃない。泣いてるんだ。目尻を下げながら、口角を持ち上げて。泣いてるんだ。心臓に突き刺して、そうして漏れ出たのはきっと。きっと愛だ。
苦しかった。ぱらぱらと降る雨の音が、ひどく静かな部屋に木霊する。鼻腔を擽る珈琲の香りすら、煩わしかった。それでも、と続ける彼女の声。
「デク。あなたは、違うでしょう?」
「――――、」
「わかります。一緒だから」
私もあなたと一緒だったから。
そんな話、聞いたことなかった。ここにない、どこか遠くを見つめる彼女の瞳が。切ないような、懐かしむような、そんな色をするから。でも、デク。そう言葉を続けられるまで僕は、息が出来なかった。
「あなたはまだ、伝えられるでしょう?」
――伝えるとしたら。きっと、今なんだと思う。
奇跡のような偶然。悪戯のような巡り合わせ。この機会を逃したら、金輪際、轟くんに近づけやしないのだろう。
「…そうだね」
目を伏せれば、愛された記憶が蘇る。この思い出だけを抱いて。繰り返し映し出される記憶の中で。僕は、何年でも生きようと思っていた。
メディアに取り上げられるたび。その顔を、名前をみるたび。胸の中で渦巻いていた感情の名前を。それを、僕はもう一度恋と呼んでいいのかな。
しとしとと降り続ける春の雨は、答えをくれない。
『ちいさな幸せ スミレ』
その日郵便受けに届けられていたのは。紫色の花だった。幸せを告げる、花だった。
***
その日は、朝から忙しい一日で。プロヒーローたちと幾度もの会議を経たのち、���動が目立ってきている犯罪組織の取り締まりを明日に控えていた。当然、僕の事務所の面々も緊張した面もちで。
――正直、その忙しさに助けられていた。
「……………はぁ」
忙しくしていれば、轟くんのことを忘れられた。今日が五日目の夜だということを。今夜、夜を越えたのなら。轟くんが僕の前からいなくなることを。通い慣れた道ですら、さよならのカウントダウンをされているように思えてならない。
「…おかえり」
「ただいま」
ドアを開ければ、白と紅の髪の毛が揺れていた。見上げたところにある色違いの瞳は、いつもよりほんの少しだけ痛そうに見えた気がして。
この会話にも、温度にも、慣れ始めている僕を、僕はどうするべきなんだろう?
轟くんは、あくまで紳士的だった。元恋人という間柄にあるとはいえ、この五日間、轟くんは僕に迫るようなことはなかった。一度たりとも。
そんな轟くんだから、なんとなく。なんとなくわかってしまう。
あの頃轟くんを振ったのは僕で。そして恐らく、今度は轟くんが僕を振るのだ。思い描いた未来は白紙のままで、もう一度は聞き届けられない。僕が想っていることを轟くんも想っているだなんてばかばかしい。自惚れにもほどがある。
轟くん。料理、上手なんだね。初めて知ったよ。
あの頃気づけなかったことが。知らなかったことが。今更になって溢れてくる。一緒に食事を摂る間だとか、流しっぱなしのテレビがCMを挟む間だとか。気まぐれに落ちる沈黙を、僕はとりとめのない言葉で会話を繋ごうとした。いつもより、途切れがちな会話を。かすかな糸が切れてしまわぬように。
『どこか遠くへ ハマユウ』
郵便受けには、白い花があった。百合にも似た、その花。繊細な曲線を宿した、白い花。差出人の名前のない、メッセージカードに書かれた「どこか遠くへ」の文字。
もしも。もしもどこか遠くへいけるのなら。ヒーローも、ヴィランも、個性ですらない世界へいけるのなら。そうしたら僕は君と一緒にいられたのだろうか。
願ってはいけない恋だった。シャワーヘッドから土砂降りのように落ちていく水の温度はいつもよりぬるくて。春の雨に打たれて、緑は栄えるのだろうな、なんてことを思う。窓ガラスの向こうに見えた、踏まれ泥にまみれた茶色の桜の花びらも。きっといつか無駄じゃないと思えるのなら。
「轟くん。電気、暗くしていい?」
「おう」
お風呂からあがれば、ソファに肘を突く轟くんの姿があった。グレーのスウェットがよく似合っている彼は、僕がそう声をかけると流しっぱなしのテレビをぷつりと切る。
途端に、静けさが部屋を埋めてだめだった。肌を侵す緊張を悟られないよう、寝支度を整える。僕が部屋の電気を小さなものにすれば、轟くんも貸していた布団を整え始めた。
「消すね」
「ん」
おやすみ、と小さく震わせれば、おやすみと返ってくる声。ゆっくりと目を伏せた、その先に見える青。
――眠って、朝が来たら。もうそのときには、轟くんはいない。
『あなたはまだ、伝えられるでしょう?』
「緑谷」
「…なあに」
眠れないのは轟くんも同じだったみたいで。暗闇に慣れた目には月明かりが眩しく映る。ひどく、優しい声だった。だから僕も、ひどく、優しい声で返した。
視界の端で、轟くんが動く気配があった。それを捉えてそちらを向けば、暗がりでも美しく映る瞳に射抜かれる。
「――――、」
何も、言わなかった。
何も、言えなかった。
好きだと、言うべきだった。別れようだなんて、言うべきじゃなかった。忘れられると思っていた。それなのに、五年経っても、心の穴は空いたままで。
どこもかしこも痛くてたまらない。今でも轟くんが好きだよと、伝えなければならないのに。声が出ない。どうしてこんなにうまくいかないんだろう。君を忘れるために、強くなるために別れたはずなのに、それどころか臆病になっていたようだ。
ゆっくりと伸ばされた轟くんの手が、ベッドと布団の間の空間を繋ぐ。その熱い手のひらが、祈るように、僕の右手に触れた。
轟くんと、僕の間で掛け渡されたのは、なんだったのだろう。
「これで、最後にする」
「…………とどろきくん」
「もし、お前が――」
月が綺麗な夜だった。もしも叶うのなら。あの白い花のように、どこか遠くへいきたい。この夜を溶かして、瓶に詰めて。そうしてそれだけを抱えて、どこか遠くへ。
ぎゅ、と痛みを耐えるように寄せられる眉根。その癖は変わらないね。別れを告げた日も、君は同じ顔をしていた。
言葉に詰まった轟くんの瞳が、深海のように揺らめく。海底で光を受けてきらめくような瞳。その中に溶ける緑色に僕は泣きそうになった。
「いや、なんでもない」
触れた指先はひび割れていて。あかぎれの出来たその指先に、ゆるく絡め取られる。ぎゅ、と僕の指の一本一本の隙間に轟くんの指先が絡んで、苦しいくらいに優しい力で指先を抱き締められた。
手首にそっと落とされるくちびると、なみなみと心に注がれるなにか。ベッドと布団の間を繋ぐその腕はゆっくりと離れていって。そうして小さくおやすみ、という声が夜の淵から聞こえた。
――花はもう、届かないような気がした。
***
目が覚めたら、手を伸ばしていた。
「………………」
一体いつ、轟くんがこの部屋を去っていったのかを僕は知らない。昨日まであった轟くんの荷物も、確かに触れたはずの温度も。僕が朝起きたときには、もうそこにはなかった。ただ、轟くんの匂いだけが、いたずらに残っていた。
代わりとばかりに、テーブルの上に控えめに置かれていたのは鍵だった。泊めてくれと言われ五日前に渡した、この部屋の合鍵。その横を見ても、書き置きの一つすら見当たらない。まったく。嫌になるくらい、轟くんは最後まできっちりしている。
――それはまだ、鮮やかだった。確かに息をしていた。
静止して動かないどころか、縋りつきたくなるくらいに優しかったのだ。僕の指先に触れた熱が。狂おしいと、暴れのたうち回る胸の奥が。一瞬でも僕と轟くんを繋いだ、昨日の夜が。
『いや、なんでもない』
一瞬だけ揺れて、伏せられた瞳。手向けられたのは、餞別のつもりだったのだろうか。僕にはわからない。轟くんのことが、わからない。
言えなかった言葉たちが目の奥から溢れていく。すきだよ。轟くん。僕はまだ、君のことが好きなんだ。馬鹿みたいな話なんだ。それでももう、その言葉すらきっと受け取ってもらえないんだろう?
「……ふ、ぅ、っ……とどろき、くん…っ」
窓の外から差し込む、眩しいほどの光。その眩しさに目をくらませて窓枠に手をかければ、すぐに風が吹いてくる。夏の前の、少しだけ青々しい匂いを纏った風が。
――春が終わったね、轟くん。
きみと近づいた夏の日。アイスを分け合った帰り道。額に乗せられた、ひんやりとした君の手のひら。氷が溶ける音と、一瞬だけ触れたくちびるの感触。爆ぜる炎の揺らめき。夏が終わる、水の冷たさ。
君の、体温。
僕らはもう。どうしようもないくらい大人になったんだね、轟くん。初恋は叶わないなんて言葉、知ってたらもっと楽になれていたのかな。君に恋することなんて、なかったのかな。僕たち、友達のままのほうがよかったのかな。
戻ってきた。僕の日常が、戻ってきた。卒業してからの五年間。轟くんのいない、僕の日常が。そうだろう?
「……ぅ、っく……とどろき、くん…、っ…しょうと、…くん、っ……」
ほら、どうだ。笑ってみろよ。これが僕が望んだ、僕と君の結末だ。笑えよ。幸せな記憶に手を伸ばして、その指の隙間から取りこぼした想いの欠片がこれだ。君がもう一度願ってくれるならと甘えて、君の優しさにあぐらをかいて。置き手紙ひとつない、無機質な銀色だけが答えじゃないか。笑えよ。笑ってくれよ。こんな僕を。
風に靡いて揺れるカーテンの裾。その揺らめきの向こう側から差し込む光。なにも答えてくれない風と、嫌になるくらい気持ちの良い朝。
それらすべてを目に焼き付けて、そっと光の中で手を繋いだ。慣れたはずのひとりの朝と。ここにはいない、誰かを想って。
――3、2、1、
ゼロ。その合図と同時に、派手な土煙が昇る。空を白く染め上げたそれは、瞬く間に硝煙の匂いを撒き散らした。耳の奥で轟々と鳴る音はまだ止まない。視界を煙に奪われながらも、僕らは足を踏み出した。
「――デク、これは」
「…いないね」
やがて土煙が収まって視界が開ければ、そこはもぬけの殻だった。巷で勢い付いている犯罪組織。その組織の幹部やら下っ端やらがいると思われていたアジトには、人間の形が一つとして見あたらない。おかしいな、と訝しがりながら僕はぐるりと部屋を見渡した。今までの情報に狂いがないことくらいわかっている。確かにここは追っていた犯罪組織のアジトだったはずだ。
そっと壁に手を付けば、ばらばらと崩れていく瓦礫。部屋の中央に置かれた、年季の入った赤いソファ。テーブルの中央に置かれた灰皿の上の煙草。
近づいてよく見ればそれは変色していた。灰皿のなかで無数に蠢くそれをひとつつまみ上げる。冷たい。僕たちが来ることに気が付いて急いで逃げたようには到底思えなかった。
「僕たち、嵌められたみたいだ」
「…まずいですね」
「うん」
穏やかじゃないね。
僕のその言葉は、廃墟めいた瓦礫のへと吸い込まれる。不気味なほどしんとした静けさと、硝煙の匂い。ぴりぴりとした緊張が肌を焦がしていた。傍らに控えている、いつもは温厚なサイドキックですらその顔は強ばっている。頭の中で広がり続ける嫌な予感に、僕は考えを巡らせた。
――もしここに僕たちを誘導したのなら。その目的はなんだ?
考えろ。考えるんだ。そうでなければきっと、取り返しの付かないことになる。僕のせいで、誰かが傷つくことになる。恐らくヴィランは、僕たちを邪魔だと思ったんだ。だからこうしてここに誘導した。ということは――
八ッとする。考えたくない考えが、頭に浮かぶ。だって、こんなの、
「――時間稼ぎ?」
ジジッと耳に付けていたイヤホンモニターから、ノイズ音が走る。焦ったようなヒーローの声を耳にしたとき、遠くで爆発音が響いた。
***
嫌われてると思ってたんだ。生まれたときから。そんな僕は、嫌ってたんだ。こんな僕を。
無線越しの焦ったような声。耳が拾った、ショートという音。爆発音と灰色の煙。
ねえ神様。もしもあなたがいるなら教えて欲しいんだ。これはもうなんと呼んだらいいんですか。相手のためを思って。そうして離れたのは僕のエゴですか。もうしそうなら、こうやっていま息を切らせている僕を、僕を逸らせる想いすらエゴになりますか。
愛だとか恋だとかもう、もうわかんないんだよ。もうほんと、どうしてくれんだよ。
「――、っ轟くんっ、」
がらりと引き戸を開ければ、いつか見た姿がそこにあった。消毒液の匂いと、嫌になるくらい白い部屋。その中で一際鮮やかに滲む、赤。
昨日の夜ぶりに見た、白と紅の髪の毛。色違いの瞳。
それを目にした途端、膝が震えて。目の奥が熱くて。喉が引き攣るように痛んで。そうして上下する胸を整えて、僕は轟くん、と切り出す。
「君だろ、これ」
「…みどりや」
すべてはもう遅かった。轟くんが怪我をして、病院に搬送されたと聞いて。急いで事務所に戻って、引き出しを開けた。差出人不明のメッセージ。贈られた花と、花言葉。きみが五日間といった意味を。
『もの想い パンジー』
『うれしい知らせ ハナショウブ』
『いたわり ポピー』
『ちいさな幸せ スミレ』
『どこか遠くへ ハマユウ』
――その五枚のカードが意味することを。
「らしくないよ、轟くん」
「………」
「こんなの、君らしくない」
「………みどりや」
「こんなの、…ッ口で!伝えてくれなきゃわからない!」
「もういい」
気が付いたら、轟くんの腕の中にいた。もうどうして、僕はこんなんなんだ。怒鳴って、けが人に抱き締めてもらっているだなんて。
「もうわかんないんだよ!どうして今更になってなんて思う!どうしてこんなわかりにくいやり方でなんて思う!でも、っ」
溢れていく涙が止まらない。ああ、ほんとうに嫌になる。轟くんからの想いを断ち切ったくせして、もう一度欲しいと強請るなんて。
痛い。痛くてたまらない。それなのに、それ以上に好きで。そばにいたくて。会いたくて。触れて欲しくて。
「でも、一番わからなくて嫌なのはこの僕だ!君を振ったくせに五年も好きで好きでたまらなくて、今だって君のことが大好きな…っ」
そうしてこうやって、どうしようもなくなって。病室にまで駆け出してしまうような。
「僕、なんだよ…」
顔もあげられなくなった僕の頭を、そっと撫でる指先があった。炎と氷を生み出す指先。思えば、はじまりは轟くんに触れられたことだった。僕の右手を、愛おしそうに触れられたことだった。
「もういいんだ、緑谷」
それが聞けただけで、俺はもういいんだ。
傷だらけになりながら、轟くんはそんな事を言う。五年なんて時間、もうどうでもいいんだ。お前の傍にいられるならなんて。そんなことを。
――優しい人。一途な人。愛おしい人。
みどりや、と名前を呼ばれる。轟くん、僕はね。君に名前を呼ばれるのがいちばん好きなんだ。ずっとずっと前から。
「俺と、やり直してくれますか」
「………っ、……」
震える手で、花を差し出される。その��には、見覚えがあった。轟くんも、怖かったんだね。お互い好き合ってるのに、離れるなんて。ほんとうに僕らは臆病だった。
病室のベッドの枕の下から顔を出したのは、鈴蘭の花だった。メッセージカードはなかった。差出人なら知っている。花言葉でさえ、覚えている。だってその花を贈ったのは僕だ。
涙に濡れて、しっとりとした感触がくちびるから伝わる。少し塩辛いそれに、轟くんはゆっくりと微笑んだ。僕からキスしたのは、はじめてだったかもしれない。肯定代わりのそれを、鈴蘭の花だけが見ていた。
―――――………………
『なに見てんだ?』
『轟くん』
『…花か?』
『うん、鈴蘭っていうらしいよ』
『へぇ』
『…はい。これは君にあげる』
『…いいのか?緑谷が見つけたんもんだろ?』
『うん!だって――』
――鈴蘭の花言葉はね、「再び幸せが訪れる」なんだから。
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河越ほうじ茶
ストロベリーパンナ🍧
.
閉店してしまったカフェ アンティのかき氷
去年 食べに行った時のもの
お友達とシェアして食べました♩*。
パンナって生クリームって意味なんですね
ショートケーキみたいで可愛い🍓
どちらも甘すぎなくて美味しかった ❤︎*。
.
.
カフェ アンティ / 川越
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73. 10段アイスクリーム
(英題)Decuple-Scoop Cone
2021/07/26
作曲: thus(2021)
編曲: thus(2021)
歌詞: thus(2018-2021)
絵: thus(2021)
動画: thus(2021)
(フォント: ふい字P, トガリテ Heavy, トガリテ Black)
(集中線: つくP(2013))
© 2021 thus. Composed by thus
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https://nico.ms/sm39646222
YouTube
https://youtu.be/NUD_2v7DVCk
哔哩哔哩
https://www.bilibili.com/video/BV16Q4y1U7Dm/
---
(氷菓子(アイスクリーム)食(た)べたい 10段(だん)乗(の)ったやつ)
(氷菓子(アイスクリーム) 食べたい 10段(だん)乗(の)ったやつ)
氷菓子(アイスクリーム)食(た)べたい 10段(だん)乗(の)ったやつ
世(よ)の期謀(きぼう)を 金(きん)差(さ)し悲願(ひがん)で嵩(かさ)練(ね)り亢(たか)く
第一段目(だいいちだんめ)最初(さいしょ)は宇治(うじ)抹茶(まっちゃ)
慎重(しんちょう)に慎重(しんちょう)に 次(つぎ)を積(つ)み上(あ)げる
第二段目(だいにだんめ)宇治(うじ)抹茶(まっちゃ)ミルク
慎重(しんちょう)に慎重(しんちょう)に 全乗(ぜんの)せ目指(めざ)し行(ゆ)く
第三段目(だいさんだんめ)季節(きせつ)限定(げんてい)宇治(うじ)抹茶(まっちゃ)
第四段目(だいよんだんめ)超高級(ちょうこうきゅう)の宇治(うじ)抹茶(まっちゃ)
第五段目(だいごだんめ) デリシャス宇治(うじ)抹茶(まっちゃ)
第六段目(だいろくだんめ) プレミアムな宇治(うじ)抹茶(まっちゃ)
第七段目(だいななだんめ)透明色(とうめいしょく)宇治(うじ)抹茶(まっちゃ)
第八段目(だいはちだんめ)宇治(うじ)☆SUPER☆濃厚(のうこう)抹茶(まっちゃ)
第九段目(だいきゅうだんめ)宇治(うじ)マッチョ・プロテイン味(あじ)
第十段目(だいじゅうだんめ) シン・宇治(うじ)抹茶(まっちゃ)
ぐらついた
全部(ぜんぶ)落(お)っことした ドロドロ融(と)けていく
全部(ぜんぶ)落(お)っことした 蒸発(はつ)香(かお)り良(よ)く
全部(ぜんぶ)落(お)っことした 昇華(しょうか)し消(き)えていく
予報(よほう)通(どお)りに暑(あつ)さがかんかん照(て)り焼(や)く糖分(とうぶん)を
嗚呼(ああ)
サヨナラ氷菓子(アイスクリーム)勝手(かって)に融(と)けてけ
サヨナラ氷菓子(アイスクリーム)持(も)ち手(て)に落(お)ちてけれ
サヨナラ氷菓子(アイスクリーム) もういっそ焼(や)き殺(ころ)してくれ(?)
青天(せいてん)が殴(なぐ)る熱光浴(ねっこうよく)膝(ひざ)から崩(くず)れ落(お)ちて
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. . 塩ミルクあずき 食べてきました! 中まで餡子が入ってて嬉しいっ 明日は何を食べようか… . . . #Repost @_tsumiishi_ with @make_repost ・・・ こんにちは! 本日8/6(金)も喫茶ケルンオープンしています! 11:00-16:00です! 暑すぎる日にオススメしたい梅氷。 クエン酸で疲労回復!暑さを乗りきりましょう🍧 かき氷、ドリンク全てテイクアウト容器でご提供させていただいております! 店内ばっちり換気しておりますが暑すぎず、良い加減になっております🙆 お楽しみWOOLYさんのワークショップは明日ですー! 今週のかき氷 🍧 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ ○北本産完熟梅 650円 北本産の青梅とてんさい糖で作ったシロップに、完熟梅ジャムをかけました。甘酸っぱさがくせになるかき氷です。 ○北本産ルバーブ&プラム 650円 北本産のルバーブと北本産のプラム「太陽」という品種の2種類のソースと自家製豆乳ミルクを使ったかき氷です。ジューシーな甘さと酸味が美味しい! ○塩ミルクあずき 650円 十勝産の小豆と奄美の素焚糖で、一日かけてじっくり炊いた粒あんに、自家製の豆乳塩ミルクと豆練乳をかけた甘しょっぱいかき氷です。 (ブルーベリーは控え選手です🏃🍇 試作中のお米のお菓子に使うかもしれない!) ドリンク🥛 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐���‐‐‐‐ ○有機ほうじ茶(hot) 450円 ○アイスコーヒー(ノンカフェ) 450円 ◎アイスソイラテ(オーツミルク+50円) 500円 ○自家製梅ジュース(ソーダ/水割り) 500円 ○GOHAN-MAYUのあらごし新生姜エール 500円 ○こども国産100%ジュース(りんご/みかん) 250円 【 ◎‥ 豆乳またはオーツミルク 】 豆乳 : 大豆由来のミルク。グルテンフリー対応。 オーツミルク :オーツ麦由来の植物性ミルク。ほんのり甘く、さっぱりとした口当たり。食物繊維が豊富で、環境への負担が少ないミルクです。 ‐‐ 全てテイクアウト容器でのご提供となります。 ひとり営業の為、混雑時にはお待たせしてしまう事があります。ご了承頂けると幸いです🙇 駐車場は、店舗前2台となっております、よろしくお願いします。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ #ケルン #北本ケルン #北本 #シェアキッチン #喫茶ケルン #かき氷 #塩ミルク #小豆 #プラム #太陽 #ルバーブ #梅 #完熟梅 #青梅 #豆乳 #ソイミルク #オーツミルク #ジンジャーエール #ノンカフェイン #グルテンフリー #ヴィーガン #自家製 #白砂糖不使用 #乳製品不使用 #プラスチックフリー #オーガニック #有機 #地球に優しい暮らし #何かやってみたい人 https://www.instagram.com/p/CSN6kSTqgHU/?utm_medium=tumblr
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朝霧と
梅の花が咲くころ、海から近いこの町では少し先も見えないほどの朝霧がかかる。
何年も前のそのような日にシズカという少女が行方不明になった。まだ14になったばかりの少女で、素行に悪いところのない真面目な少女だった。シズカの失踪は町を動揺させた。犯罪者が町に入りこんでシズカをさらったのではないか、と憶測が飛び交った。犯人探しにしばらく町中の人間が躍起になったけれども、日が差して散る霧のように痕跡を見つからなかった。
今日は霧が出ていた。珍しくはないが、ここまで濃い霧は初めてだ。足元さえ白く霞んで、街路灯の��がまるで湯船にミルクを零したかのように空気を白くぼやけさせている。通いなれた道でも合っているのか不安になるほど、いつもと道の雰囲気が違った。まるで昔話の主人公のように別の世界に迷いこんでしまったかのようで、でも道の形や目を凝らして見える道沿いの家の形は見慣れたもので、ちゃんと現実で、町の中にいるという実感が持てた。
そんなことを考えていると、道の向こうに人影が現れた。輪郭しか分からない。小柄で、華奢に見えた。まっすぐ進むとぶつかりそうで、横にずれる。すれ違うまでの距離に近づくと、顔が見えてくる。うっすらと浮かびあがるのは血の気のない女の顔。黒い髪が朝霧のせいか頬に貼りついている。磯の臭いがした。着ている服は中学校のセーラー服で、それがびっしょりと濡れていた。夜遊びの代償だろうか。そんなことを思いながらずぶ濡れの少女とすれ違った。
三月も半ば、学生はそろそろ春休みだろう。卒業式も近い。どこか落ちつかない時期だったような気がした。最後に、という言葉でいろいろと無茶をしたのも今日のような日だった。あの日も何もかもを白く曖昧にする朝霧が出ていた。その朝霧のなかを誰にも見つからないようにこっそりと家に帰った記憶がある。はじめて体験した夜の朝で、体中に一つ年上の彼女の感触が残っていた。それが歩きながらも発作のように自分をたまらない気持ちにさせたのをしっかりと覚えている。
事務所の形が見えてきた。
一つ足を進めるほどに霧が晴れて、事務所の扉が見えたころには霧は嘘のように消えた。扉を開け、中に入るとすでに社長がいて、今日の工事の書類を眺めていた。おはようございます、と声をかける。
「酷い霧でしたけれど、運転は大丈夫でした?」
「霧?」
「ちょっと先も見えないぐらいでしたよ。もしかして、泊まりですか?」
「違うが、霧なんて今日は出てなかったが」
「え?」
社長がいぶかしそうに私の顔を見つめる。釣られるように自分の頬を撫で、それから髪に触れた。あれだけ濃い霧の中を歩けば、毛先が湿るものだけれど、指先に伝わったのは乾いた髪の感触だった。霧のなかですれ違った少女の姿が急に思い出され、氷を飲みこんだように芯が冷えた。
「大丈夫か?」
「体は元気ですよ」
「そうか」
社長はそう言って立ちあがると、給湯室に消えた。少ししてマグカップに黒い液体を――コーヒーを入れて戻ってきた。とりあえず飲んで落ちつけ、と言われる。社長からマグカップを受け取り、それを一口飲む。インスタントコーヒーの香り、苦味と強い酸味。ただ熱さだけが喉をすぎ、体の形をなぞるように落ちていく。
「霧の中で、」
社長は首を横にふって、私が話しだそうとするのを遮った。
「何も言うな」
「……どうして?」
「聞きたくない」
社長は嫌そうな顔をしていた。もしかしたら怖い話が苦手なのかもしれない。もう一度、霧のなかであったことを切り出そうとすると言葉よりも先に社長の手が私の口をふさいだ。
「そんなにホラーが苦手ですか」
「得意なやつは同じ人間とは思えないな」
社長は、それよりも、と話題を変える。今日の工事だが、と実務的な話を始められると、自分の頭も仕事に切り替わって、朝霧のこともその中ですれ違った少女のことも頭の片隅に追いやられた。
前も後ろも分からないぐらいの朝霧に遭遇したのは、これまでにその日のことが最初で、二回目はいまだにない。
飲み会や友人にそのことを聞いても同じような経験は誰からも聞けなかった。何だったのかは分からないままだ。
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🎉新商品情報🎉 明日8/1〜気温が下がるまで(笑) MOCMO特製台湾風ミルクかき氷を販売致します🇹🇼🥛🍧 選べるテイスト3種類! ・ミックスベリー(写真) ・キウイ ・ほうじ茶金時 甘く味付けした牛乳を凍らせて使用しているので、氷が溶け始めてもミルキーで濃厚な味わいが楽しめます👍 ぜひご賞味下さい😋 #mocmosandwiches #モクモサンドイッチーズ #三鷹 #三鷹市 #mitaka #三鷹カフェ #三鷹ランチ #吉祥寺 #吉祥寺カフェ #吉祥寺ランチ #kichijoji #craftbeer #craftbeerlover #craftbeershop #クラフトビール #クラフトビール専門店 #クラフトビール好きと繋がりたい #かき氷 #かき氷部 #かき氷好きな人と繋がりたい #かき氷研究所 #かき氷大好き #かき氷マニア #かき氷食べたい #大盛り #いちご味 #キウイ #ほうじ茶スイーツ #ほうじ茶 #台湾かき氷 https://www.instagram.com/p/CgqU-5UvlXs/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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一夜では終わらない
氷の上にいるヴィクトルを見て、勇利は感激し、ものが言えなかった。彼はただ両手で口元を覆い、黒い目をうるっとうるませた。
「なんだい?」
ヴィクトルは可笑しそうに笑った。
「どうしてそんな、ヴィクトル・ニキフォロフを見る勝生勇利みたいな顔してる?」
「勝生勇利がヴィクトル・ニキフォロフを見てるからだよ」
ふたりの会話を聞いて、そばでクリストフが「なにこれ?」と言ったけれど、勇利の耳には入らなかった。ヴィクトルだ。ヴィクトルがいる。ヴィクトルが氷の上に立っている。氷上の皇帝が。
もちろん、ロシア選手権やヨーロッパ選手権に出場していたことは知っていた。映像も見たし、金メダルを獲ったことも心得ていた。そのときは最高にうれしかった。しかし、こうして彼を実際目の前にすると、ヴィクトルは本当に復帰したのだ、同じ氷の上に立てるのだという喜びが押し寄せて、勇利はどうしようもなくなるのだった。
「さあ、そんなうっとりした目で見てないで、きみもおいで。練習しなくちゃ。勇利は俺に勝たなくちゃいけないんだよ」
「わかってます」
この世界選手権でヴィクトルに勝てたら最高だし、勇利はそういう心意気だった。ヴィクトルに勝つ、勝ちたい、とずっと思っていて、その気持ちはいまがいちばん強かった。だから公式練習の時間はめいっぱい使ったし、気力もじゅうぶんだった。練習しながらヴィクトルの動きを真剣に観察すると、この選手にはとても敵わないのではないかという気がしたけれど、そんなことない、ぼくにはヴィクトルコーチがついてるんだ、と自分を奮い立たせた。
「勇利のまなざしがあまりに熱烈だから、練習のときから全力でやってしまって困る」
その夜ヴィクトルは、ふたりの部屋で愉快そうに勇利に話した。
「そんなにうっとりしてた?」
「それはそうなんだが、あこがれだけじゃなく、絶対超えてやるという意気込みを感じる。恋い焦がれてでもいるかのようだ」
「ぼく、ヴィクトルに勝ちたいんだ」
勇利はこぶしを握って、子どものようにきっぱり言った。ヴィクトルは楽しそうにうなずいた。
「ヴィクトルに勝って、それで……」
「それで?」
「それで……」
それで、なんだろう? 勇利は言葉が続かなかった。ただ勝ちたい。ヴィクトルと競える選手なのだということを証明したい。そうすれば、ヴィクトルもすこしは勇利のスケートを認めてくれるかもしれない。
「俺に勝って、結婚する?」
「え?」
「金メダルを獲ったら」
ヴィクトルが口の端を上げて得意そうにした。勇利は赤くなって怒った。
「そういうことじゃないだろ!」
確かに、金メダルで結婚とかなんとか言っていたけれど、そういう話ではない。ヴィクトルは何を言っているのだ。
「ぼくはただ──ヴィクトルに認めて欲しくて──それに、ヴィクトルがコーチとしてすばらしいことを証明したくて──」
「わかったよ。そう一生懸命否定しなくてもいい。そんなに俺と結婚したいのかって期待する」
「だからなんでそういう話になるの!?」
ヴィクトルは声を上げて笑った。本当にどうしようもないひとだ。こんなことばかり言って勇利をからかっているのだ。まったく……。でも好き、と勇利は思った。
「言っておくけどね、そうやって余裕ぶっていられるのもいまのうちだからね」
勇利は胸をそらし、ヴィクトルの前を行ったり来たりしながら、学校の先生のように指を振った。ベッドにゆったりと腰掛けたヴィクトルは、おもしろそうに勇利を眺めて「へえ」と答えた。
「そうなのかい?」
「そうだよ! ぼくはもうすごいんだから」
「なるほど」
「ぼくのプログラムは、コーチがぼくのことを考えてつくってくれたやつなんだからね。ショートだって、ぼくには似合わないんじゃないかって思ったけど、勇利はセクシーだよって言ってくれたんだから」
「うんうん」
「ぼくはね、フリーの最後にクワドフリップを跳ぶんだよ! すごいだろ。GOE+3つくやつだよ。ヴィクトルも、勇利のそのジャンプが見たいって言ってくれたんだ!」
「ああ、それは高得点になるだろうね」
ヴィクトルは請け合うというようにうなずいた。
「……成功すればね」
「…………」
そのとおりだ。成功すれば──よいジャンプが跳べれば高得点を得られるだろう。しかし失敗すれば、いやな印象を与えたまま演技が終わる。最後のジャンプひとつがすべての得点に影響するわけではないけれど、勇利の精神にとってもよくないことになりそうだ。
勇利の瞳がうるっとうるんだ。
「なんでいまそういうこと言うの……」
ヴィクトルが目をまるくした。
「練習でも成功率低いし、本番になるとさらに下がるだろうし、ぼく不安なのに……」
「ああ、わかったよ、勇利。ごめんごめん」
ヴィクトルは笑い出し、勇利を引き寄せて自分の膝に座らせた。
「大丈夫。勇利ならできるよ」
彼は優しい声で言って、勇利の髪を撫で、こめかみのあたりにくちびるを押し当てた。
「できないわけないじゃないか。俺の勇利だ。俺が教えたんだ」
「……本当?」
勇利はくすんと鼻を鳴らしてヴィクトルを見た。
「本当だ」
ヴィクトルは真摯にささやき、ちいさくうなずいた。
「こんなにかわいい俺の生徒が、失敗するわけがない。勇利の演技は完璧だよ」
「かわいいは関係ないと思うけど……」
「関係あるよ。大ありだ」
「ない」
勇利が断言すると、ヴィクトルは笑いをこらえるような顔をし、「そうかな?」と不賛成の意を示した。勇利は、演技にかわいいかかわいくないかなんて関係あるわけないだろ、と思った。
「まあいいよ。勇利の意見だね。とにかく俺の勇利は完全な演技をするから」
「そう?」
「そうとも」
「絶対?」
「絶対だ」
「……うん」
勇利はうなずき、目をきらきらと輝かせてヴィクトルに顔を寄せた。
「ぼく、ヴィクトルに勝つからね!」
「そうかい?」
「そうだよ! 勝つんだ! 勝って……」
ヴィクトルのすばらしさを証明する、と宣言しようとしたら、ヴィクトルがおどけて言った。
「勝って俺と結婚するんだね」
「だからなんでそういうこと言うの!?」
ヴィクトルは八ヶ月も休養していたのだから不利だとか、さすがにリビングレジェンドでも今回の金メダルは難しいだろうとか、そんなうわさが飛び交っていた。ロシア選手権もヨーロッパ選手権も、ヴィクトルは優勝したけれど、自分の調子を確かめているような、試合をしながら調整しているようなところがあった。それがファンや解説者たちを不安にさせたのかもしれない。
だが、勇利は信じていた。絶対にヴィクトルは完璧に仕上げてくる。グランプリファイナルのフリースケーティングのようなすべりをしても、自分はまだ勝てない。彼より高い位置へ行くためには、あれ以上のものを見せなければ、という強い決意があった。
そして同じくらい、新しいヴィクトルを見たいと思っていた。親しくなる前も、彼と試合で会うことはあったけれど、いまは、そのときとはどこか──何かがちがう気がしていた。説明はできない。ヴィクトルはいつもどおり陽気だったし、とくに気負っている様子も緊張しているところもなく、ごく自然に練習に参加し、選手たちと言葉を交わしていた。勇利に対しても笑顔ばかりだった。これまでと異なるのは、ヴィクトルが選手であるだけでなく、勇利にはコーチとしてふるまうところだけれど、勇利が「ちがう」と感じるのは、そういう点ではなかった。もっと目に見えない──とらえがたい何かだ。
なんだろう、と思った。勇利にはわからなかった。だが、うれしい感じはした。そう、ヴィクトルを見ているとうれしくなる。胸がどきどきし、わくわくし、ときめいて、たまらなくなる。前からそうだったけれど、もっとはしゃぎたくなる。ヴィクトルに抱きついて、一緒にスケートして、とねだりたくなるような感覚だ。そうしたら、ヴィクトルが笑顔で勇利を抱きしめ、いいよ! と答えてくれるような──。
勇利はヴィクトルの演技をリンクサイドで見た。彼は、これまでのどんなヴィクトルともちがっていた。もともとかっこうよく、威厳があり、優雅でうつくしく、絶対的なスケートをすべるひとだったけれど──それを超えた何かがいまのヴィクトルにはあった。ただ人々を見蕩れさせるだけではなく、耐えがたいほどの激情と喜びで包みこんでしまい、完全に魅了し尽くすような──彼のスケートを知ったら戻れなくなるような、そんな何かだった。
勇利は瞬きもせずヴィクトルを見ていた。いつの間にか、彼の両目から涙があふれ、頬に流れ落ちていた。ヴィクトルが挨拶をしても、リンクサイドに戻ってきても、勇利は同じ姿勢のままじっとしていた。涙は止まらなかった。
「勇利」
ヴィクトルが息をはずませながらほほえんだ。勇利は何か言うべきだった。感じたことを。思ったことを。しかし言葉にならなかった。言葉にできるような演技ではなかった。
涙に濡れた目を上げた勇利をヴィク��ルはみつめ、長い指でまなじりをぬぐった。親愛の抱擁もできず、勇利は瞳をみひらいたままヴィクトルを見ていた。ヴィクトルはキスアンドクライへ勇利を連れていこうとしたけれど、勇利は動けなかった。
ヴィクトルの得点が出たとき、勇利は両手でおもてを覆い、しゃくり上げて泣き出した。
勇利は表彰式のときも、記者会見のときも、ずっとヴィクトルのそばにいたけれど、どこか近寄りがたい──話しかけづらいものを感じていた。ヴィクトルがそっけないわけではない。彼はいつもどおりほほえんでいるし、勇利のこともちゃんと見てくれる。しかし、勇利はためらいをおぼえた。ヴィクトルからぴりぴりしたものを感じる。いや──すこしちがうかもしれない。だが、まるで試合前のような緊張は常に伝わってきた。これから氷に立つのだというふうな、差し迫った雰囲気である。ヴィクトルは会見でもごく普通に受け答えをしたし、選手や観客にも笑顔で応えていたので、思いちがいかもしれないが、しかし勇利は、確かにヴィクトルからそういう熱気を感じた。ほほえみかけられ、微笑を返すけれど、勇利のほうも緊張していた。その感覚は部屋へ帰っても続いた。
「長い一日だったね」
ヴィクトルが言った。勇利はうなずき、ヴィクトルをじっとみつめた。
「なんだい?」
「……ううん」
「勇利、なんだか変だね」
ヴィクトルは笑った。
「……ヴィクトルに、金メダルにキスさせてあげられなかった」
「そうだね。残念だ」
ヴィクトルは優しい目をし、自分の金メダルを勇利に差し出した。
「さあ、キスしてくれ」
「もうしたよ。表彰台で」
「もう一度。何度でもして欲しい」
ヴィクトルは優勝したのだ。八ヶ月休養し、三ヶ月練習し、それで金メダルを獲った。新しいヴィクトルを見て、勇利はずっとどきどきしていた。負けてものすごく悔しいのに、同じくらい誇らしく、うれしかった。ヴィクトルはやっぱりヴィクトルだった。彼は氷を支配する。勇利は興奮しきっていた。ヴィクトルもそうなのだろう。だから雰囲気がちがうのだ。昂ぶっている。
「金メダル、うれしい?」
勇利はそっと尋ねた。
「うれしいよ」
ヴィクトルはにっこりした。
「前よりずっとうれしい」
「そうなんだ」
「勇利は?」
「すごく悔しいけど、すごくうれしいよ」
ヴィクトルは笑ってうなずいた。それ以上、お互い、何も言わなかった。言わなくても伝わった。しかし、伝わらないこともある。この言葉にしがたい、とどめがたいほどの強い感情……。勇利は口が利けなかった。ヴィクトルからもそういう気持ちを感じた。彼も黙っていた。お互い、言葉にしようという発想すらないのかもしれない。どうすればよいのだろう。
勇利は、ヴィクトルの演技を思い出した。氷の上にいる彼について考えると、自然と涙がこぼれそうになってしまう。困ったことだ。ヴィクトルはどうしてあんなことができるの? なぜ? ぼくの神様。でも、神様っていうだけじゃない……。
気がつくと、ヴィクトルがまっすぐに勇利を見ていた。勇利は彼と並んでベッドに座っていた。なんとなく気恥ずかしくなって、両脚をそろえてみた。まだヴィクトルの視線はそれない。
ヴィクトルの目つきに熱烈なものをおぼえた。勇利はさっきより胸がどきどきした。どうしてこんなに見るのだろう? 疲れたからシャワーを浴びてもう眠ろう。そう言えばこの時間は終わるのだろうか。勇利は、ヴィクトルの視線から逃れたいけれど、ずっとこの目でみつめられていたいような気がした。ヴィクトルの、言葉ではあらわせない情熱。普段には感じない緊張。近寄りがたいけれどそばにいたいこの感覚……。
ヴィクトルといると矛盾ばかりだ。一緒にいたいのに隣にいるとせつなくて、たくさん考えることがあるのに安らいで、甘い気分なのに胸が痛くて、うれしいのに苦しくて、涙が出そうで……。ヴィクトルはふしぎなひとだ。
勇利は思いきってヴィクトルをみつめた。ヴィクトルはずっと勇利を見ていた。彼の熱狂的な、こわいほどのまなざしがそこにあった。青い瞳はひんやりとしているはずなのに、ひどい熱さを感じるほどの熱意だった。勇利は──。
勇利は、ヴィクトルに求められている気がした。
気のせいだろうか? いや、ちがう。思いちがいにはできないほどその熱は強い。ヴィクトルは勇利を欲している。確かに。
勇利は彼に応えたかった。ヴィクトルの望むようにしたかった。しかし、どうすればよいのか、それがわからなかった。彼のねがいは何だろう。勇利のほほえみが必要なのか。勇利と語りあいたいのか。勇利と踊りたいのか。勇利のスケートが見たいのか。勇利とキスがしたいのか──。
どうすればいい。どうすれば。ヴィクトルのまなざしは圧倒されるほどの威力を持っている。勇利は混乱した。ヴィクトルからの興奮が伝わるだけでおかしくなりそうなのに、こんな目で見続けられたら本当にどうにかなってしまう。言ってくれればいいのに。こうしてくれと。勇利とこんなことがしたいと。言ってくれさえすれば、勇利はどんなことだって──。
勇利はすっと立ち上がった。彼は眼鏡を外し、そばの棚に置くと、すこしうつむいてゆっくりとナショナルジャージのファスナーを下ろした。そしてそれを脱いで椅子にかけ、下に着ていたシャツも脱いだ。ジャージパンツを取り、下着姿になって、胸にそっと手を当てた。ややうつむきがちでちいさく呼吸する。頬がほてっている。頭が痛いくらい熱かった。勇利は思いきって下着に手をかけた。それはすとんと足首まで落ちて、勇利の裸身があらわになった。
「ヴィクトル……」
勇利は目を伏せ、かぼそい声でささやいた。
「抱いてください……」
「…………」
「抱いて欲しいです……」
何をしているのだ、とんでもない、という気持ちはまるで起こらなかった。ありのままの、ごく自然な、当たり前のいとなみをするのだという気がした。ヴィクトルがあきれたらどうしようとか、彼の望みはこれではないかもしれないとか、そんなことも思い浮かばなかった。快楽が欲しいのではなく、ただ、ヴィクトルを深く感じたかった。ヴィクトルも感じたがっている。彼は求めている。勇利の何かを。このぴりぴりするような緊張の中──。
ヴィクトルが立ち上がった。彼は勇利を引き寄せ、額にくちびるを押し当てた。勇利はヴィクトルの胸に寄り添った。鼓動の速さはいままででいちばんではないかというほどだ。
勇利はヴィクトルの瞳を見た。ヴィクトルもじっとみつめ返した。彼は笑わなかったけれど、こわくはなかった。なんて情熱的なまなざしなのだろう……。
「おまえが欲しい」
ヴィクトルがささやいた。
「うん」
勇利はちいさくうなずいた。
「勇利の、何もかもがだよ」
「うん」
勇利はヴィクトルにすり寄り、まぶたを閉ざした。
「ヴィクトルのことしか、考えられないよ……」
くちびるが重なった。すこし荒っぽいしぐさでヴィクトルはそうした。勇利は喉をのけぞらせるようにして彼を見上げ、子どもみたいにすがった。閉じた目元から、真珠のような涙があふれた。
「どうして泣いてる?」
「ヴィクトルのスケートを思い出すと、涙が出るんだ」
ヴィクトルはもう一度くちづけした。奪うようなやり方で、抱きしめる手つきは熱狂的だった。おまえが欲しい、という言葉を肌で感じた。勇利は、ヴィクトルにすべてを捧げたかった。
ふたりでベッドに倒れこみ、夢中で抱きあった。勇利はヴィクトルの首筋に腕を投げかけ、指先で彼の髪を梳いた。熱い、と思った。熱い……。
くちびるを離し、ヴィクトルが勇利を見下ろした。緊張と熱意をたたえた瞳に勇利はぞくぞくした。全部あげる、と思った。ぜんぶ、ぜんぶ……。
何もかも。
目ざめるとすぐそこにヴィクトルの寝顔があった。勇利はしばらく黙って彼の顔を観察し、それからちいさく笑った。
ヴィクトルの顔つきは穏やかそのもので、安心しきっており、やすらかだった。昨日感じた緊張や昂ぶり、ぴりぴりしたものはかけらもない。ゆうべ抱きしめられている最中もそれはずっと続いており、勇利はその情熱が苦しいほどだったのだけれど、いまは落ち着いていた。あの熱された時間も、この物静かな瞬間も、どちらもたまらなく幸福だった。
「ふふっ」
勇利はもう一度笑い、ヴィクトルの髪にふれてから起き上がった。いささか身体がけだるいのは、試合に全力で取り組んだからだろうか。それともヴィクトルと抱きあったためか。しかしそれは快いけだるさだった。
勇利はかるくシャワーを浴び、簡単な衣服を身に着けて、お茶を飲みに行こうか迷った。時刻は十時を過ぎている。空腹感があった。携帯電話を確認してみたところ、二時間前にピチットから「ごはん食べない?」という誘いがあった。
『ヴィクトルと食べるのかな? そうだろうね。わかってて誘ったんだよ』
勇利はくすくす笑いながら、いま起きたということをピチットに知らせた。するとすぐに返事があり、それはこんな内容だった。
『えっちしてたんだ! 勇利、大人になったんだ!』
勇利はまた笑い、冷静な意見を返した。
『ピチットくんの考えてるようなことじゃないから』
彼の言うとおりなのだけれど、彼の思う「えっち」とはちがうものなのだ。そういうことではない。とてもしあわせで、情熱的で、すてきだったけれど……。
勇利はみちたりていた。ヴィクトルに自分のすべてを捧げることができてうれしい。それだけで世界が輝くようだ。
勇利はまだ寝息をたてているヴィクトルを見ながら、窓辺の椅子に座った。いつ起きるのかなあ、と首をかしげる。起きたらどんな話をしよう。べつに恥ずかしくないけど、恥ずかしいな……。あ、また矛盾だ。
勇利はすこし考え、ルームサービスを頼むことにした。トーストとミルクとスープ、卵料理という簡単なものだった。ヴィクトルに日が当たらないようにわずかばかりカーテンを開け、トーストをかじっているとき、ヴィクトルが目をさました。
「おはよう」
「勇利……なに食べてる……?」
「トーストです」
勇利はもぐもぐと咀嚼した。何度も何度も噛んでいると、ベッドに身体を起こしたヴィクトルがじっと視線をそそいだ。
「なに?」
「いや……かわいい食べ方をするなと思ってね」
「かわいい食べ方ってどんなの?」
恥ずかしくないけれど恥ずかしい。しかし、ごく普通に話せている。勇利はほほえんだ。
「ヴィクトルのぶんはないよ。どうする?」
「なんでそういうことする?」
「いや、食べるかわからなかったから……」
「勇利はひどい」
「うそだよ。びっくりした? ほんとはふたりぶん頼んだ」
「かわいい」
ヴィクトルはシャワーを浴びてくると言って立ち上がった。勇利は目をそらして抗議した。
「素っ裸でうろうろしないでよ」
「素っ裸で抱きあった仲じゃないか」
「そういうこと言わないで」
ヴィクトルは笑いながら浴室に消えた。彼が戻ってきたとき、勇利は両手でグラスを持ち、ミルクを飲んでいた。ヴィクトルは向かいに座ってまっすぐに勇利を見た。
「なに?」
「いや。見ていたいだけだ」
「変なの」
食事をするヴィクトルはごく普通の様子で、やはり、昨日の興奮はもうないようだった。勇利は微笑した。すてきな夜を経てこんなふうになめらかになれたのなら、お互いこれほどうれしいことはない。ゆうべの情熱は最高に甘美だったけれど、それが続くのは大変なことだ。次にあんなふうになるのはいつのことだろう? 試合があればああなるというものではないということくらい、勇利にもわかる。だからこそ貴重なのだ。またあんな体験をしたいものだ。
勇利はグラスを置き、カーテンをすべてひらいた。陽光がさっとさして、まくらべの棚に置いてあった金メダルがきらりとひかった。勇利は目元を手で隠した。
「メダル、しまって」
「なぜ?」
「思い出して悔しくなるから」
「喜んでくれたじゃないか」
「だめだめ。もう……」
ヴィクトルはくすくす笑った。
「そんなに俺と結婚したかった?」
「そういうことじゃないんだよ。いつまでその話してるの」
「俺はしたかったよ」
「はいはい」
ヴィクトルはしばらく黙ってスープを飲んでいた。勇利はぼんやりと座り、今日の予定は、とおおまかなところを思い出そうとしていた。
「勇利」
「ん?」
「ゆうべ、どうだった?」
勇利は瞬いた。変なことを訊かないで欲しい。
「貴方がご存じのとおりです」
「よくわからないな。夢中だったから……」
「ぼくも夢中だったからよくわからない」
「おぼえてないの?」
「ヴィクトル、おぼえてないの?」
ヴィクトルはおおげさに溜息をついた。勇利は笑いだした。
「すてきだったね」
短いひとことだったけれど、その言葉には勇利の気持ちがいっぱいに詰まっていた。
「最高だった」
勇利は残りのミルクを飲んで、しあわせそうにしていた。ヴィクトルは彼の言うとおりだと思った。確かにゆうべは幸福だった。最高の夜だった。ただ試合に勝ったからということだけではなく、ゆうべの熱気には、さまざまな意味がこもっていた。勇利と出会って変わったヴィクトルのスケート──勇利がそばにいること──彼と同じ氷の上に立てたこと──勇利のすばらしい演技──唯一無二のスケートをすべったときのヴィクトルに向けられた彼のまなざし──感じた愛──どうしようもなく湧き上がる感情に、それをのせたヴィクトルのプログラム──。ほかにもたくさんのことが重なって、自分でも制御できない感情だった。あの興奮は、一生に何度かしか経験できないたぐいのものだ。それを勇利と共有し、彼と夜を過ごした。ヴィクトルは勇利を求め、勇利はそれに応えた。ただの献身的な気持ちではなく、勇利の愛を感じた。貴重で得がたい、どうしようもなく幸福な──そんな夜だった。
いまはそれも落ち着き、ふたりの中に愛情は静かに流れている。前夜の経験を経て、また新しいお互いを知った。しかし──。
勇利はすっかりみちたりて、物穏やかな気持ちになっているようだ。ヴィクトルもそれは同じだけれど、満足しきっているとは、彼は言えなかった。もっと勇利が欲しい。もっと、もっと。昨日とはまたちがう情熱で、勇利のことを欲している。彼にはそれがわからないのだろうか?
「いい天気だねー」
勇利はのんきな様子で窓から外を眺めている。かわいい微笑が口元に浮かんでいた。ミルクを飲む姿が愛らしくて仕方ない。
「ヴィクトルのエキシビション、楽しみだな」
彼はわくわくしたようにつぶやいた。ヴィクトルもわくわくしていた。これからの勇利との関係に。
「また勇利のエキシビションに飛び入り参加しようかな」
「本当に?」
勇利ははしゃいだように笑ってヴィクトルを見た。
「ぼくはうれしいけど、スケ連に怒られるんじゃない?」
「構わないさ。慣れてる」
「そういうのに慣れるのもどうかと思うけど……」
「まわりを気にしてたら何もできないよ」
「ヴィクトルの理論だね……」
「勇利のほうが俺よりずっと傍若無人だ」
「どこが?」
聞き捨てならないというように勇利が口をとがらせた。そうやって、何もかも終わった顔で、みちたりて、一夜限りの情熱だと思いこんでるところがだよ。
「俺はあれだけで終わるつもりなんてないからね」
ヴィクトルはきっぱりと言った。
「そう……、グランプリファイナルのエキシビションは評判よかったから、お客さんは喜ぶだろうし、ぼくもそうだけど」
「そういう話じゃない」
「何が?」
勇利は無邪気にヴィクトルをみつめた。ヴィクトルは、ゆうべ腕の中で熱っぽくとろけ、いちずにふるえた彼を思い出しながらみつめ返した。
「俺たちの甘い関係」
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今回やってきたのは、乃木坂駅から徒歩5分の「The INNOCENT CARVERY」さん。 お店のスタイリッシュさ、特注のセラーの中のお肉たちには目を奪われます。 公式💁♀️ @innocent_nishiazabu この日の予約は「シェフズテーブル」(27500円)というプレミアムなコース!! シェフは明石さんという方で、説明が実に丁寧で分かりやすく、しかも終始ニコニコ。 「シェフズテーブルの明石前」とは、この明石さんが目の前で食材や調理法の説明をしてくださりながら、フルオープンキッチンのカウンターでお料理を楽しめるというプレミアムなコース。 ▼自家製熟成生ハム 旬のフルーツとマスカルポーネチーズ 栃木県の「とちあいか」と、2ヶ月のあいだ塩漬けし、熟成させた山形牛のモモ肉。 ほんのり燻製の香りが香ばしく、チーズも蜂蜜も、実に後味がまろやか!! ▼和牛と北海道産雲丹のお刺身 雲丹の食感に合わせ、噛んでいく咀嚼の回数を合わせながらお肉を切るんだそうです。 お肉やわらか!! コクのある醤油がよく、雲丹さんとすごく合うんです。 ▼和牛ヒレカツ 揚げたてのヒレカツをザクザクっと切って、パルミジャーノ・レッジャーノを豪快に!! 赤身の旨味をしっかりと感じ、脂の加減がしつこくない。チーズとの相性も最強。 ▼和牛タン元のお刺身 フランス産トリュフ添え おっきな牛タンと、黒トリュフ。まさに森の黒ダイヤです。 タン元とタン中の食べ比べとは!!黒トリュフは綺麗にスライスされ実にフレッシュです。 ▼ユッケちゃんご飯〜キャビア添え ラトビア?キャビア、磨宝卵(まほうらん)の黄身。松坂牛の内もも。 キャビアを1瓶ぜんぶ どーーーーん!! さすが、超豪華ユッケ丼。このご飯もまた美味しいので、まさに無敵な美味しさ。 ▼焼肉 ●厚切りタン元 綺麗でキメ細かいサシはトロジュワリととろけ、食感はシャックシャク。 ●太田牛のハラミ 下味はついているので、1つは何もつけずに。1つは大根おろしと味噌で。 サッパリした大根と、ガツンと味が来る味噌との相性は、まさに ネ申 !! ●シャトーブリアン さすがはお肉の皇帝、繊細で芸術的な味わいです。 シャトーブリアンなのに、脂が重くなくサッパリしているのが本当にすごい! ▼和牛霜降りと旬のお野菜のすき焼き 季節の土鍋ご飯 コンガリと焦げ目をつける程度にネギを焼き、お肉と割下を投入。 立ち上がる香りと、ジュワァァァという音がエンタメ性高いです!! お肉はお口の中でとろける!! 割下のシャキッとした味付け、お肉の野生的な甘さ、ネギの優しげな甘さ。 百合根のごはんは1.6合だったかな。ものすごい量があります。ついついおかわりっ!! 余ったご飯はお持ち帰りさせて頂いて翌日美味しく頂きました(ノ∀`) ▼旬のフルーツ フルーツ、たっぷり!! 「お好きなものをお選びください。もちろん全種類でも」との事で、欲張っちゃって全種類です。思い切り堪能しました(ノ∀`) ▼コーヒー又は紅茶 自分はコーヒーにしましたが、妻ちゃんはフシギな青いウーロン茶。ベリーの香りがするんだとか? ▼かき氷 まさかのダブルデザートです(ノ∀`)かき氷は2種類を1つずつ頂きました。 ●ほうじ茶ミルク ほうじ茶の香ばしさがすごい。しっかり濃くて美味しいですし、かき氷にほうじ茶は意外な組み合わせでした。 ●バルサミコ苺 苺の濃厚な味をバルサミコが引き立てていて、ふわふわの氷に相性が良くてとても美味しい!! ◆◇◆後記◆◇◆ 今回は本当に素晴らしいお食事となりました。 お口の中では、お口に入れた瞬間、じっくりと咀嚼する時の無言になってしまう味わい、飲み込んだ後の充実感、それぞれの楽しみがありました。 このお店は、今までに行ったどのお店よりも強く推薦できます。 ぜひとも「明石前」でお早めにご予約を!! 公式💁♀️ @innocent_nishiazabu ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼ The INNOCENT CARVERY 050-5594-2688 東京都港区西麻布1-4-28 カルハ西麻布 101 https://tabelog.com/tokyo/A1307/A130701/13189539/ ▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲ #TheINNOCENTCARVERY #ジイノセントカーベリー #明石前 #明石シェフ #シェフズテーブル #乃木坂 #乃木坂グルメ #東ぐる #Yahoo地域クリエイター #乃木坂デート #乃木坂焼肉 #乃木坂和牛 #食べログ人気店 #食べスタ #食べロガー #食べロガーみうけん #食べログ #みうけん @gourmet_kanagawa_ (The INNOCENT CARVERY) https://www.instagram.com/p/CoeVGrTyU32/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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