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#麦の穂青し
nostalblue · 8 months
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えんばく(その1)
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植物には動物の名を冠するものが多い。イネ科植物も例外ではなく犬麦(イヌムギ)、鼠麦(ネズミムギ)、鳩麦(ハトムギ)、烏麦(カラスムギ)などがあるが、今回から何編かに分けて挙げていくのは燕麦(エンバク)についての話である。ちなみに名前の由来は、熟して二股に開いた小穂の形がツバメの尾に似ているからで、燕尾服と名付けられた衣装と同じ理由。
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エンバクは全世界で毎年2500万トンも生産される穀物で、人間の食料や家畜の飼料として利用されている。オートミールはこのエンバクが原料だ。ただ米作中心の日本では、緑肥や草マルチ資材、あるいは線虫忌避などの目的で栽培されることが多いようで、種子もそういった用途向けに販売されている。入手は比較的容易で値段も高くはないが、100均やペットショップで売られている「猫草の種」も歴としたエンバクなので、こだわり無ければこれを使うと家庭菜園には程良い量でコストパフォーマンスも良い。むしろ無消毒種子であることを歓迎し敢えて後者を選んで使う人もいるようだ。
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エンバクの播種は真夏と厳冬期以外は可能なので気軽に利用し易い。他の野菜の播種や定植に忙しくなる時期からちょっとずらして作業できるからね。三角ホーなどで軽く溝を掘り、パラパラとスジ播き、覆土鎮圧して散水しておけば1週間程で発芽する。
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季節によって多少異なるが、成長速度はとても早い。畝肩に播いて、ある程度丈が伸びたら青刈りして畝に被せ草マルチにするのが私の使い方の定番だが、ざっくり刈り込んでもしばらくするとすぐ元どおりの高さまで成長するので、だいたい1箇所で3回以上は刈れるね。根が割としっかり張るから畝土の流出防止にも貢献する。大規模農園だと機械を使って刈り込み、緑肥として土中に鋤込むのが定番らしいけど、人力でやると大労力掛かるし、充分分解するまでその場所使えなくなっちゃうから私はやっていない。
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エンバクをバリケードにして、その内側で風や害虫にやられやすい野菜を育てるって使い方もできる。完全防御は期待できないが、人工資材を使わないで済むメリットがある。事が済んだら草マルチとして流用出来るし、最終的には生物分解で堆肥化してゴミも出ないからね。
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種子を収穫しようとする場合は地域によって適した播種時季がある。当地においては秋に播いて冬を越させ、翌年の6月に穂がクリーム色になったところで収穫する。大麦やライ麦同様、梅雨時の収穫になるので晴天時を見計らってやらなければいけないのが気を揉むところ。とりあえず棹ごと刈り取って収穫し、天日下で良く乾かしてから保管する。出来るだけ湿気を除去してカビさせないことが重要だ。それさえ気をつければ、細かい分離作業は梅雨明け後にゆっくりやればいい。
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最悪棹ごと埋めても発芽するだろうけど、小穂レベルまで分離しておけばスジ播きしやすい。自家採取して循環栽培するのは多少の手間が掛かるが、数年繰り返して要領を得た現在では簡単なルーチンワークでしかない。種を購入する費用が不要となり、気軽に様々な利用をするのに充分な量の種子を自前で確保できるのは喜ばしいことであり、自給自足生活の観点からも理に適っている。そうなるとさらなる活用法についても探求してみようということになり、必然的にある野心が生まれるのであった。
(その2に続く)
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myonbl · 2 years
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2022年8月23日(火)
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SOU・SOUから月に1回、<伊勢木綿手ぬぐい+足袋下2枚>のセットが届く頒布会、<長月号>が届いた。今月のテーマは、<禾乃登(こくものすなわちみのる)=いよいよ稲が実り、穂を垂らす頃。「禾」は稲穂が実ったところを表した象形文字>とのことだ。前回までは足袋下が<踝丈>であったものが<普通丈>になっていることからも季節の変化を感じる。<食欲の秋>とならぬよう、引き続き減量路線は維持するのだ。
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3時起床。
日誌書く。
2度寝して、5時30分起床。
今日は長男の誕生日、お祝いメッセージを送る。
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そばの解凍を忘れたので、久しぶりにパンを頂く。
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ツレアイの弁当と珈琲を用意し、職場まで送る。
<市民しんぶん(9月1日号)>を組内に配付する。
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フレスコ七条店で買い物、ツレアイから指示のあったアルトバイエルンを無事ゲット。
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次は千本丸太町の<やまや>へ向かったが、車のキーの反応が悪い。なるほど、購入してもうすぐ丸2年、バッテリーの劣化だろう。途中のセブンイレブンでボタン電池を購入、帰宅してから入替作業、久しぶりのことだったのでやり方を忘れていた。
糠床メンテナンス、ナスを漬ける。
キュウリのしょうゆ漬けを仕込む。
半熟酢卵仕込む。
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ランチ、息子たちは出石蕎麦、私はレトルトカレーで残りご飯を片付ける。キュウリを試食、サッパリとして美味しい。
軽く午睡。
資料整理。
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安倍国葬の中止を求めるキャンペーンに賛同、カンパ3000円送る。
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ライフ西七条店で買い物、このナスは夕飯用。
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夕飯は、茄子と豚バラ肉の甘辛炒め/浜峰のウルメ丸干し/いかの西京漬け/半熟酢卵/キュウリのしょうゆ漬け/トマト。
ツレアイは今日も激務、平日だが少し日本酒を冷やし、今日仕入れた南アのワインで慰労する。
あれこれ喋りながら、iPhoneで小沢昭一@末廣亭を流す。
朝が早かったので、早々にダウンしてしまう。
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WaterMinderのアイコンを紹介、水分を摂取すると、身体にそれだけ水が溜まり、目標達成すると全身真っ青になるのだ。
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practiceposts2 · 4 days
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今日、小麦畑のただなかの道を自動車で走っていたら、折からの夕陽で四月の小麦のまだ青い穂が一斉に黄金いろにきらめいて、透明な光の氾濫の中の、その「存在の祭り」(宮沢賢治)がまるで永遠のようにきれいでした。
暑かった長い一日の終わりにとっておきの曲をどうぞ。カール・リヒター『マタイ受難曲』(1958)。
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kachoushi · 3 months
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各地句会報
花鳥誌 令和6年2月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和5年11月1日 立待花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
星の出るいつも見る山鳥渡る 世詩明 人の世や女に生まれて木の葉髪 同 九頭竜の風のひらめき秋桜 ただし 太陽をのせて冬木の眠りけり 同 生死また十一月の風の音 同 朝湯して菊の香に上ぐ正信偈 清女 懸崖の赤き菊花の流れ落つ 誠
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月2日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
秋空の深き水色限りなし 喜代子 故里は豊作とやら草紅葉 由季子 菊花展我等夫婦は無口なり 同 しぐれ来る老舗ののれん擦り切れて 都 狛犬の阿吽語らず冬に入る 同 謎々のすつきり解けた小春の日 同 杣山の織火となりぬ紅葉山 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月4日 零の会 坊城俊樹選 特選句
綿虫と彼女が指せばそれらしく 瑠璃 梵鐘のはらわたに闇暮の秋 緋路 逝く秋をくづれゝば積み古書店主 順子 綿虫や浄土の風が抜けるとき はるか 太き棘許してをりぬ秋薔薇 和子 弥陀仏の慈顔半眼草の花 昌文 綿虫のうすむらさきや九品仏 小鳥 参道で拾ふ木の実を投げ捨てる 久 綿虫は仏の日溜りにいつも 順子 香煙はとほく菩提樹の実は土に 小鳥
岡田順子選 特選句
腰かける丸太と秋を惜しみけり 光子 九品の印契結ぶや冬近し 眞理子 古に大根洗ひし九品仏 風頭 綿虫や浄土の風が抜けるとき はるか 奪衣婆の知る猿酒の在り処 光子 神無月ならば阿弥陀も金ぴかに 俊樹 蚤の市に売る秋風と鳥籠と 和子 下品仏とて金秋の色溢れ 俊樹 綿虫と彼女が指せばそれらしく 瑠璃 梵鐘のはらわたに闇暮の秋 緋路
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月4日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
ありきたりの秋思の襞を畳みをり かおり 秋日入む落剝しるき四郎像 たかし 返り花ままよと棄つる文の束 美穂 凩や客のまばらな湖西線 久美子 凩のやうな漢とすれ違ふ 睦子 小鳥来る小さなことには目をつむり 光子 流れ星キトラの星は朽ちてゆき 修二 凩に雲や斜めにほどかれて かおり 人肌を知らぬ男のぬくめ酒 たかし 老人が老人負うて秋の暮 朝子 冬の日や吾が影長く汝に触れて 同 身に入むや妣の財布の一セント 久美子
(順不同��選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月10日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
秋思消ゆ「亀山蠟燭」点せば 悦子 この町へ一途に滾り冬夕焼 都 新蕎麦を打つ店主にも代替はり 佐代子 添ふ風に方位はあらず狂ひ花 悦子 HCU記号音満つ夜の長し 宇太郎
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月11日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
トランペット響く多摩川冬に入る 美枝子 竹林の風音乾き神の留守 秋尚 公園の隣りに棲みて落葉掃く 亜栄子 句碑の辺の風弄ぶ式部の実 同 新のりの茶漬に香る酒の締め 同 歩を伸ばす小春日和や夫の癒え 百合子 朔風や見下ろす街の鈍色に 秋尚 ぽつぽつと咲き茶の花の垣低き 同 リハビリの靴新調し落葉ふむ 多美女 濡れそぼつ桜落葉の華やぎぬ 文英 露凝りて句碑に雫の朝かな 幸風 大寺の庭きりもなや木の葉散る 美枝子 山寺の風の落葉を坐して聞き 三無
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月13日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
風除の日だまりちよっと立ち話 和魚 風除の分厚き樹林影高き 秋尚 揚げと煮し切り干やさし里の味 あき子 薄日さす暗闇坂に帰り花 史空 渦状の切干甘き桜島 貴薫 切干や日の甘さ溜め縮みたる 三無 風除けをせねばと今日も一日過ぎ 怜 切干や少し甘めに味継がれ 秋尚
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月13日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
確かむる一点一画秋灯下 昭子 幽玄な美女の小面紅葉映ゆ 時江 釣り糸の浮きは沈みし日向ぼこ 三四郎 六地蔵一体づつにある秋思 英美子 赤い靴なかに団栗二つ三つ 三四郎 着飾りて姉妹三人千歳飴 ただし 正装で背中に眠る七五三 みす枝 雪吊の神の恐れぬ高さまで 世詩明 七五三五人姉妹の薄化粧 ただし トランペット音を休めば息白し 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月14日 萩花鳥会
夜鴨鳴く門川住居六十年 祐子 捨てられて案山子初めて天を知る 健雄 ゴルフ玉直ぐも曲るも秋日向 俊文 山茶花や現役もまた楽しかり ゆかり 舟一艘ただぼんやりと霧の中 恒雄 献茶式津和野城下や朝時雨 美惠子
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令和5年11月14日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
秋の暮百均で買ふ髪飾 令子 虫食ひの跡そのままに紅葉かな 紀子 背の丸き鏡の我やうそ寒し 同 小春日や杖つく母を見んとする 令子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月15日 福井花鳥会 坊城俊樹選 特選句
小春日や日々好日と思ひたり 世詩明 禅林を通り来る風秋深し 啓子 何事も無き一日や神の旅 同 炉開きの一花一輪定位置に 泰俊 一本の池に煌めく櫨紅葉 同 三猿を掲ぐ日光冬日濃し 同 立冬こそ自己を晒せと橋の上 数幸 小六月笏谷石は饒舌に 同 如何にせん蟷螂は枯れ僧恙 雪 猫じやらしもて驚かしてみたき人 同 一匹の枯蟷螂に法の庭 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月17日 鯖江花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
小鳥来る赤き実に又白き実に 雪 幽霊の出るトンネルを抜け花野 同 おばあちやん子で育ちしと生身魂 同 見に入みぬ八卦見くれし一瞥に やす香 時雨るるやのつぺらぼうの石仏 同 近松忌逝きし句友の幾人ぞ 同 季は移り美しき言葉白秋忌 一涓 菅公の一首の如く山紅葉 同 落葉踏み歩幅小さくなる二人 同 冬ざれや真紅の句帳持ちて立つ 昭子 今日の朝寒む寒む小僧来たりけり やすえ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月17日 さきたま花鳥句会
からつぽの空に熟柿は朱を灯し 月惑 白壁の色変へてゆく初時雨 八草 六切の白菜余すひとり鍋 裕章 一切の雲を掃き出し冬立ちぬ 紀花 小春日や草履寄せある躙口 孝江 柿を剥く母似の叔母のうしろ影 ふゆ子 いわし雲よせ来る波の鹿島灘 ふじ穂 鵙たける庵に細き煙たつ 康子 雲切れて稜線きりり冬日和 恵美子 水鳥の羽音に湖の明けにけり 良江
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令和5年11月18日 伊藤柏翠記念館句会 坊城俊樹選 特選句
紫のさしも衰へ実紫 雪 蟷螂の静かに枯るる法の庭 同 二人居て又一人言時雨の夜 清女 母と子の唄の聞こゆる柚子湯かな みす枝 還りゆく地をねんごろに冬耕す 真栄 帰省子を見送る兄は窓叩く 世詩明 人に無く芒にありし帰り花 同 香水の口よりとどめさす言葉 かづを 時雨をり故山の景を暗めつつ 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月19日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
浮寝鳥日陰に夢の深からむ 久子 呪術にも使へさうなる冬木かな 久 無敵なる尻振り進む鴨の陣 軽象 冬日和弥生も今も児ら走る 同 冬蝶の古代植物へと消えぬ 慶月 谿の日を薄く集める花八手 斉 冬天へ白樫動かざる晴れ間 慶月 青空へ枝先細き大枯木 秋尚 旋回す鳶の瞳に冬の海 久 冬の蜂おのが影這ふばかりなり 千種 水かげろうふ木陰に遊ぶ小春かな 斉
栗林圭魚選 特選句
竹藪の一画伐られ烏瓜 千種 遠富士をくっきり嵌めて冬の晴 秋尚 白樫の落葉急かせる風のこゑ 幸風 切り株に鋸の香遺る冬日和 久子 四阿にそそぐ光りや枯れ芙蓉 幸風 白樫の木洩れ日吸ひて石蕗咲けり 三無 小春の日熊鈴つけしリュック負ひ 同 青空へ枝先細き大枯木 秋尚 寒禽の忙しく鳴ける雑木林 貴薫 草の葉を休み休みの冬の蝶 秋尚 逞しく子等のサッカー石蕗咲けり 亜栄子 甘やかな香放ち桂紅葉散る 貴薫 あづまやの天井揺らぐ池の秋 れい
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月26日 月例会 坊城俊樹選 特選句
薄き日を余さず纏ふ花八手 昌文 耳たぶに冬の真珠のあたたかく 和子 黒松の肌の亀甲冬ざるる 要 雪吊をおくるみとして老松は 緋路 冬空を縫ふジェットコースターの弧 月惑 ペチカ燃ゆフランス人形ほほそめる て津子 上手に嘘つかれてしまふ裘 政江 嘘つつむやうに小さく手に咳を 和子 手袋に言葉のかたち作りけり 順子
岡田順子選 特選句
池一枚裁ち切つてゆく鴨の水尾 緋路 黒松の肌の亀甲冬ざるる 要 自惚の冬の紅葉は水境へ 光子 玄冬の塒を巻きぬジェットコースター 同 光圀の松は過保護に菰巻きぬ 同 ペチカ燃ゆフランス人形ほほそめる て津子 雪吊を一の松より仕上げをり 佑天 不老水涸れをり茶屋に売る団子 要 遊園地もの食ふ匂ひある時雨 俊樹
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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4komasusume · 1 year
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草花食べれば恋萌ゆる――佐倉色『おだまき君の道草ごはん』
 桜が散り草木の新緑が目に入る季節になりました。草木と十把一絡げに言いましたが、実際はそれぞれ名前がついています。その中には食用になる植物もあります。食用に適する植物を総じて山菜といいます。山に自生するものだけでなく、里山や海岸、水辺などに自生するものも山菜といいます。今回取り上げる作品はこの山菜をテーマにした作品です。
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おだまき君の道草ごはん 1巻 (まんがタイムコミックス)
posted with AmaQuick at 2023.04.25
佐倉色(著) 芳文社 (2023-04-06)
Amazon.co.jpで詳細を見る
 佐倉色さんは『シロクマはシェーカーを振れません』から5年ぶりのコミックとなります。
 道草を食う。今でも使われる慣用句ですね。それを実際にしている人を見たらどう反応しますか?こんな顔になります。
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 草をもしゃもしゃ食べているのが苧環有利(オダマキユウリ)で、無の境地に達している女子が穂高小麦(ホダカコムギ)です。草を食べながらラブコメしたり友情を語ったりする作品です。ちょっと雑でしたね。雑草なんて草はないという警句もあるので、詳しく掘り下げてみます。
 まずは穂高さん。彼女はプライドが高く上昇志向も強い性格です。弱みを握って勉強法を聞き出そうとする性格の悪さがありますが、正面切って問いただすことができないチキンな性格の裏返しです。欲望、特に食欲に弱く食べ物につられてしまうこともしばしばあります。小麦という名前も食欲と関連付けられていますね。褒められるとすぐに態度を軟化する性格で俗に言うちょろインでさらに素直になれないツンデレ属性も持ち合わせています。 なかなかの情報量です。ともするとキャラクターのブレになりそうな多数の属性は、苧環くんと親しい関係が作られる過程で統合されていき、食欲に弱いツンデレ気味ちょろインという性格がメインになります。ちょっとネガティブっぽい感じがしますが、この状態になった穂高さんはかなりの可愛さを醸し出しだしているのです。
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  こちらは1話で弱みを握ってテストの必勝法を聞き出そうと息巻いていたのに食欲に流れた時の表情です。まさにちょろいの一言。
  もう一人の主人公の 苧環くんは天然系天才児です。 見目麗しく女子からの人気も高いです。かといって男子からは嫉妬を向けられるかというとそうでもなく、捨て猫がいれば誰に頼まれた訳でもないのに里親を見つける、といったところが好青年と評価される完璧超人です。趣味と実益を兼ねて山菜の調理を日々行っており、「道草を食う」のもその一環。苧環というのはキンポウゲ科の花の名前です。
 苧環くんは天然という性格がクローズアップされていきます。初回から穂高さんに敵意を向けられながら、二心なく「仲良くなれて嬉しいな!」と言える人格者。暖簾に腕押し、糠に釘。悪意を悪意として捉えない性格は同時に人の話を聞かないマイペースさも感じさせます。センスも独特で穂高さんの機嫌を損ねた際に、一発ギャグで笑いを取れとアドバイスを受けて穂高さんに言ったギャグが「オオイヌノフグリ」金●ネタです。
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 女子と仲直りするときにそれを言うか?というセンス。ちなみにオオイヌノフグリは犬の睾丸という意味です(四季の山野草・オオイヌノフグリ)。当然穂高さんは呆れ顔になりますが、内心ではその天然センスも込みでちょっとうけていました。作中で苧環くんの友人が完璧超人と評していますが、この天然が完璧に欠けてる部分を作っています。そして欠けてるからこそ苧環くんは魅力的なキャラクターになっているのです。
 
 この二人を結びつけたのが食べられる草花。作中で取り上げられているのはセリ、よもぎ、ノビルなど知名度の高いものから、シロツメ草、ホトケノザ、ノカンゾウなど、食用としてはマイナーな草花など多岐にわたります。この草花を材料にしてする料理の数々は食欲だけでなく知的好奇心も刺激します。
 例えばあまり馴染みのないノカンゾウは別名、成長具合での食感、調理の仕方、由来、万葉集で取り上げられていることなどかなり詳しい情報を提示しています。よもぎやミツバだと料理ネタ一本でも膨らますことができますが、ノカンゾウは食べる以前に知識がない読者が多いと思われるので、情報を提示しながらうまくストーリーと絡めているのです(四季の山野草・ノカンゾウ)。
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 また料理がメインでないエピソードもあります。シロツメ草は四つ葉の���ローバーと花冠でストーリーを組み立てています。苧環くんの天然タラシと穂高さんのちょろインな可愛さが光るエピソードに出来上がっているのです。シロツメ草の料理に関しては1コマお吸い物にしようと思っていると描かれているだけです。シロツメ草をお吸い物にするという情報は意外性があるのですが、多くの読者が作ったり見たことがあるシロツメ草の花冠で描かれるエピソードの方がインパクトを与えています(四季の山野草・シロツメグサ)。
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 苧環くんがシロツメ草の花冠を乗せる4コマですが穂高さんの感情の変化がたまらなく素晴らしいです。同時に穂高さんをこの表情にしてしまう苧環くんの良い男っぷりがわかります。作中屈指の名シーンです。
 野草を美味しく食べるエピソードで構成のなかでシロツメ草のようなエピソードを入れてくるのが上手いです。知的好奇心をくすぐりながら、食欲を刺激する演出の妙が楽しめます。
 野草を食べることと苧環くんと穂高さんの関係の変化の組み合わせ方が非常に巧いです。野草の食べ方に注目するのも良し、苧環くんと穂高さんの恋愛関係に注目するのも良し、もちろんマルっとまとめて楽しむのも良しです。作品を読んだ後には雑草という概念はなくなるかもしれません。
(量産型砂ネズミ)
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画像出典 芳文社 『おだまき君の道草ごはん』1巻 P5,P7,P95,P40,P42,P19 掲載順
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igcloset · 1 year
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隔週で💐フラントリーブから届くお花💕 今回、届いたのはぁ〜 #アネモネ #チューリップ #レースフラワー #キンセンカ #麦 💚青々とした麦の穂や、 色鮮やかなアネモネとチューリップ🌷が春から初夏まで思わせる様な… ☀️明るく元気なイメージで♪ 左右上下に動きを持たせて挿しましたぁ〜🤗 数日経って📆チューリップの茎が🌷立って⤴️アネモネの花びらが開きましたぁ〜🥰 ・ ・ ・ #季節の花 #お花の宅配 #フラントリーブ #花のある暮らし https://www.instagram.com/p/CoyUNIcBhYJ/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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last-mission · 2 years
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立夏(りっか)− 二十四節気
 立夏(りっか)− 二十四節気 立夏(りっか)− 二十四節気 5月6日頃(2022年は5月5日)〜小満(5月21日)まで 「立夏(りっか)」は暦の上での夏の始まり。この日から「立秋」の前日までが夏季になります。 九州では麦が穂を出し、北海道では馬鈴薯や豆の種まきが始まる新緑の季節でもあります。 夏といっても、本格的な夏はまだまだ先。日差しが強くなり気温が高くなる日もありますが、紫外線の量も6月より緩やかで、さわやかな青空に、乾いた風にも包まれ、一年のうちで、もっとも過ごしやすい季節です。
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palomino8th · 2 years
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(ウクライナの昔話 訳:山室静)
やさしい子供たち
 神様が人間に対してお怒りになったため、三年のあいだ世界が大飢饉になりました。 世界のどこでも一粒も穀物ができず、せっかく蒔いた種も日でりのために芽を出しません。 三年間というもの、ひと粒の雨も降らず、露もおかなかったからです。  一年は、古い麦をこなして、どうにか食いつなぎました。 穀物の値段がひどくあがったため、金持はお金をもうけました。 秋になると、種をまだ持っているか、買うことができた者は、それを蒔いて、熱心に神様に祈りました—— どうぞ私たちの罪を許して、豊作をお恵み下さいと。 しかし、無駄でした。 神様の慈悲はえられなかったのです。 彼らの持っていた最後の種を蒔いたのに、多少は芽を出したのがあっても、そのまま枯れてしまいました。 まあ、なんという悲しみでしたろう! 人々は泣いて悲しみましたが、飢死の時が日に日に近づいてくるだけでした。  その冬は、それでもどうやら過しました。 春になると、まだ種を持っていた者は、それを蒔きました。 しかし、やはり祝福はえられなかったのです。 冬に雪が少なかったため、どこもかしこも乾ききってしまい、草一本生えません。 世界じゅうが死の姿になり、人々も家畜も、次々と死んでいきました。  ちょうどその頃、ある国に強大な若い皇帝がいましたが、若者が若者を愛するように、この皇帝もただ若い者だけを愛して、内閣にも役所にも軍隊にも、ただ若者だけを用いて、老人は一人も用いなかったのです。  とこ��が、若者の知識は未熟ですから、この国では大臣も未熟で、その意見も未熟でした。 さて、一年がすぎ、二年がすぎ、三年目になって世界がいまにも死に絶えそうになると、若い皇帝は若い大臣たちを集めて会議を開きました。 するとみんなは若者らしい意見を出して、王様にすすめました。 やれやれ、彼らが決定したことは、それをロにするだけでも罪になりそうな決定でしたっけ。  そうです、皇帝は彼らのすすめに従って、こんなお触れを出したのでした。—— 「若者にはパンを与える必要があるが、老人にパンをやるのは無駄である。だから老人はみな水に溺らしてしまえ。老人を隠して養う者は死刑に処す」と。 そして皇帝は全国に使いを出して、この命令を伝えさせたのです。 そこで悪党どもは、片っぱしから老人をつかまえて、情け容赦もなく水になげこんだのです。   さてその頃、ある村に年とった父親をもつ三人兄弟がいました。 兄弟がこのお触れをきいて父親に話すと、父は言いました。 「息子たちよ、それが神様の思召しで、皇帝のお心なら、さっそくわしを死なして、お前たちが生きのびるがよい。わしはもう墓の中に片足をつっこんでいる身の上だからな。」  しかし、心のやさしい兄弟は、 「いいえ、お父さん、わたしたちが死ぬようなことになろうと、決してあなたを見捨てるようなことはしません。わたしたちの食べる分を減らしてでも、きっとあなたを養いますよ。」  と口々に言って父親を抱きしめたのでした。  それから兄弟は、年とった父親を小屋へつれて行くと、床の下を掘って寝部屋をつくりました。 藁が少なかったので、毛皮を敷いて老人をそこに寝かせ、土のように黒い一塊のパンを傍らにおいてから、また床板をはったのです。 老人はそこで二、三ヵ月くらしました。 その間に息子たちは、時々こっそりと、どうにかして手に入れた食料を運んでやりました。  その夏もすぎましたが、収穫はぜんぜんありません。 秋も悲嘆の中にすぎ、冬も同じことでした。 ようやく春が来て、あたたかい日が照りはじめました。 種を蒔く時です。 しかし、蒔く種がありません。 世界は広いけれど、どこにも穀物の種は一粒もなかったのです。 いよいよ世界の終りがきたかと思われました。  そのとき三人の息子は、父親のところへ行ってたずねました。 「お父さん、種を蒔く時が来て、今年は神様の恵みで雨も降り、地もあたたまっているのに、ひと粒も麦がありません。どうしたものでしょうか?」 「息子たちよ、そんなら古い藁屋根をひっぱいで、その麦藁の束をからさおで打って、その屑を蒔いてごらん。」  息子たちは主屋と納屋の屋根をはぐと、麦藁の束が粉々になるまで、汗みどろになって打ちました。 それからその屑を蒔くと、神様の祝福があって、一週間で畑は青々として来ました。 ひと月たち、ふた月すると、ふさふさと穂が出て、しかもそこにはあらゆる種類の穀物がはえたのです—— ライ麦も、小麦も、大麦も、そう、ソバやアワまで一、二本はまじっていましたっけ。  世界のどこを見ても穀物一本見られず、どこもかしこも雑草やアザミでおおわれていたのに、兄弟の畑だけは穀物が波うっていたのです。  人々はどんなにおどろいたことか! 噂は世間に広がって、とうとう皇帝の耳までとどきました。 皇帝は三人の兄弟に出頭を命じました。  兄弟は通知をうけると、頭をたたいて叫びました。 「これでおれたちもおしまいだ!」と。  兄弟は、また父のところへ行って、言いました。 「お父さん、皇帝がぼくたちに出頭せよというのです。どうしたらいいか、教えて下さい。」 「息子たちよ、行ってありのまま皇帝に申し上げるのだ。あとは、なるようにならせるばかりだよ。」  兄弟が旅立って、皇帝の許へ来ると、皇帝はきびしい声でいいました。 「悪党ども、きさまたちは、飢饉で多勢の人間が餓死している時に、穀物を隠していたのだな。真実を申せ。申さぬと拷問にかけて、死ぬまで苦しめてやるぞ。」  兄弟は始めから終りまでありのままに申し上げて、最後に言いました。 「さて、いま申し上げた通りですから、拷間にかけるなり、御慈悲をたれるなり、好きになさって下さいまし。」  急に皇帝の顔はなごみ、眼は澄んできました。 それから皇帝は、兄弟の年老いた父親をすぐさまお呼びになって、自分の玉座の隣りに坐らせ、老人が死ぬまで、その意見をきかれたのでした。 息子たちにはまた、ゆたかな贈物をなさいました。  それから皇帝は布告されました—— 兄弟の畑の穀物を、一穂ももれなくつんで、人間の手で丁寧にもみほぐし、すべての国に送るようにと。 そしてこの種から全世界のいまの尊い穀物は、すべて生じたのだといいます。
山室静「花と虫と昔話と — 七月の日記から —」
八坂書房 山室静 著『植物的生活から』(昭和48年10月31日刊)
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gumix777 · 2 years
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2017/11/25 Character Sonic Syndrome vol.8@月あかり夢てらす
イベント詳細:https://twipla.jp/events/281855
[曲名] - [アーティスト] / [タイアップ]
01. sotto voce - 桂ヒナギク (伊藤静) / TVA「ハヤテのごとく!」CS
02. 恍惚パラダイム - 柊鈴菜 (伊藤静) / TVA「犬とハサミは使いよう」CS
03. わんわんディスコフィーバー - 森島はるか (伊藤静) / TVA「アマガミSS」CS
04. なchuラル - 椎名ましろ (茅野愛衣) / TVA「さくら荘のペットな彼女」CS
05. 断絶3 - 百合城銀子 (荒川美穂), 百合ヶ咲るる (生田善子), 椿輝紅羽 (山根希美) / TVA「ユリ熊嵐」IM
06. Your First Star - 姫柊雪菜 (種田梨沙) / OVA「ストライク・ザ・ブラッド II」CS
07. baby now - アスモデウス (たかはし智秋) / TVA「sin 七つの大罪」3話IN
08. Fly by my side - 三鷹愛 (伊藤静) / TVA「ナースウィッチ小麦ちゃんR」5話IN
09. セキララ・ララバイ - 江藤不二子 (伊藤静) / TVA「いちばんうしろの大魔王」CS
10. ICE DOLL - ブルーローズ (寿美菜子) / TVA「TIGER&BUNNY」CS
11. 闇のBaroque -バロック- - シェシェ (土屋実紀), ミミ (下屋則子) / TVA「マーメイドメロディーぴちぴちピッチ ピュア」IN
12. HOLY SWORD~勇気はキズナ~ - キュアソード (宮本佳那子) / TVA「ドキドキ!プリキュア」CS
13. GAL -Get All Lucky!- - ギャル子(和氣あず未) / TVA「おしえて!ギャル子ちゃん」CS
14. Gimme a fork × ・・・やめた。 - 後ろから這いより隊M (喜多村英梨) / TVA「這いよれ!ニャル子さんW」CS
15. ラスト・ダンス - 青山美生 starring 悠木碧 / TVA「神のみぞ知るセカイ」CS
16. Eternal Spice - MADOKA (阿澄佳奈) / TVA「犬とハサミは使いよう」CS
17. ワビサビ乙女 - 星伽白雪 (高橋美佳子) / パチスロ「CR緋弾のアリア」IN
18. 叭喇撃突ケ響 - 西絹代 (瀬戸麻沙美) / TVA「ガールズ&パンツァー」CS
19. 秋雨純情歌 - 徒然なる操り霧幻庵 / GM「SHOW BY ROCK!!」IN
20. Dirty Heroes - アレッシオ・ユリアーノ (成田剣) / TVA「うえきの法則」CS
21. RUMBLE BALL ~チョッパー七段変形~ - トニートニー・チョッパー (大谷育江) / TVA「ONE PIECE」CS
22. Perfect Pride - セシリア・オルコット (ゆかな) / TVA「IS<インフィニット・ストラトス>」CS
23. スナオ・プリンセス - 近衛素奈緒 (水樹奈々) / TVA「つよきす Cool×Sweet」IN
24. 永遠語り~El Ragna~ - アンジュ (水樹奈々), サラ (堀江由衣) / TVA「クロスアンジュ 天使と竜の輪舞」11,最終話IN
25. キラメク誓い - キュアミラクル (高橋李依), キュアマジカル (堀江由衣), キュアフェリーチェ (早見沙織), キュアモフルン (齋藤彩夏) / 劇場版「魔法つかいプリキュア! 奇跡の変身!キュアモフルン!」IN
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jpf-sydney · 2 years
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Besuto essei. 2021
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Shelf: 914.68 BES 2021 Besuto essei. 2021 = The best essay. edited by Nihon Bungeika Kyōkai. Tōkyō : Mitsumura Tosho Shuppan, 2021. ISBN: 9784813803706
353 pages ; 20cm.
Editorial board members: Kakuta Mitsuyo, Hayashi Mariko, Fujisawa Shū, Horie Toshiyuki, Machida Kō, Miura Shion. Text in Japanese.
Table of contents:
よねー予想 / 北大路公子.
小説を書いてみては / 星野智幸.
オンライン授業事始め / 伊藤比呂美.
栞と山椒魚 / 佐藤雅彦.
ことばの来し方 / 青木奈緒.
うたびとの業 / 小佐野彈.
代本板とZoom / 永田紅.
スロー・リーディング / 旦敬介.
金一封 / 彬子女王.
真っ白な大きな紙 / 吉田篤弘.
海を隔てバズった母 / 岸田奈美.
演じる笑いにこだわり / 西条昇.
美しく逢うこと / 堀江敏幸.
旅の病 / 宇佐見りん.
七輪大会 / 出久根達郎.
抱擁 / 小池昌代.
雨雨雨雨雨雨 / 村田喜代子.
坪内祐三さんを悼む / 重松清.
空腹感も分からない / 朝倉かすみ.
手 / 遠野遥.
名実況の効果 / 宮田珠己.
葡萄の葉からもれる日 / 岩阪恵子.
ごちそうさま / 浅田次郎.
心は自由 / ふくだももこ.
「第九」再び抱き合えるか / 岡田暁生.
姉妹からの教訓 / 林真理子.
街に人が集まる理由 / 荒俣宏.
ひとりぼっちにさせへん / 佐伯啓思.
人間を「機械」にする罠 / 伊藤���紗.
逆説で語り続けた〈自由〉 / 鷲田清一.
物語爆弾のしわざ / 井上荒野.
社長ですか? / 長嶋有.
探検のできない夏 / 岡村隆.
長靴と青春の旅立ち / 小暮夕紀子.
意外なチェックポイント / 穂村弘.
哀しい自慢とアルファロメオ / 宮沢章夫.
おまじないスカート / おーなり由子.
感じて動く読書法 / 広瀬浩二郎.
正しいけど全部間違ってる / 町田康.
ジョーこそが文学心撃ち抜かれた / 矢作俊彦.
キノコのスープ / 岸本佐知子.
最後まで「前衛」の歌人 / 伊藤一彦.
老衰の朝な朝な / 瀬戸内寂聴.
旅の道連れに幸あれ / 岩松了.
天井から / 大森静佳.
最期まで語り続けた彼 / 小池真理子.
戦争のために生まれた世代 / 保阪正康.
マイカー三昧 / 平岩弓枝.
ラーメンよりキビヤが食いたい / 角幡唯介.
むき出し嫌い / 酒井順子.
生産性のない読書 / 柏木博.
和牛への道 / 三浦しをん.
長寿梨 / 山﨑修平.
呪いの小石 / 小山田浩子.
男の死 / 横尾忠則.
さすらいのママから谷根千BARへ / 森まゆみ.
砂の城と子どもの心 / 佐々木閑.
「映画の父」の温かさ / 中江有里.
台湾の思い出 / 宮内勝典.
くくられる「夜の街」抜け落ちる何か / 俵万智.
さつき 時間の名前 / 金田一秀穂.
生死不明 / 島田雅彦.
新品か中古品か / ヤマザキマリ.
歳月に与えられたもの / 黒井千次.
真心、なるもの / 藤沢周.
書棚に関する回想から / 月村了衛.
犬と散歩をした話 / 高瀬隼子.
一杯一杯 / 藤原正彦.
山椒魚は悲しんだ / 堀川惠子.
時計草に思う / 佐伯一麦.
「愛は無償」と値切るな / ブレイディみかこ.
踏破されぬ「巨大な山脈」 / 丸尾聡.
人生最後のステージに立って / 久田恵.
リモートで、さようなら / 最相葉月.
南の島のよくウナギ釣る旧石器人 / 藤田祐樹.
一休和尚の教え / 秋山仁.
自分なり / 角田光代.
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jitterbugs-prma · 2 years
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赤い靴でわたし生きたわ cheek to cheek.
 
 
 革命、改革、上も下もなく概念のすべてをひっくり返してあまりある力があるとするなら、彼をおいてほかにはなかった。少なくともクレイ・フォーサイトには、為政者として、また、有識者の傲慢さをもって、意図的に他人を評価して選抜すら躊躇わない覚悟があった。もとより感じ入りやすく、よく言えば素直、悪し様に罵る口の言うことには愚かなきらいのあるガロ・ティモスが、実際のところでは言葉ほどクレイ・フォーサイトに心酔しきっていたのではないことを、はじめに見抜いたのはエリス・アルデビッドの聰明な眸で、あった、よく似た姿の妹の快活さや、くるくると万華鏡のように移り変わる表情のゆたかさ、一見して少女らしく、また、どこか愛玩動物のさまを思わせる愛嬌を、エリスもまた持ち合わせていてしかるべきであったが、彼女は概して、それらを積極的に遠ざけた。少女らしくふるまうべき時代は、とうに、エリスから過ぎ去って久しい。なにも年齢が、彼女に、少女らしさをゆるさない要素のすべてではなかった。言うなれば、契機をうしなっただけで、行き場なく滞り霞んでいる、燦々と、あるいは煌々と、かがやくものがすべてではないように。
 夜明けの凌雲をまだらに染めたやわらかい鴇色が妹、アイナ・アルデビッドのものであるなら、エリスにゆるされたのは、そのわずかにまえの時間、ほどけきらない夜のとばりの、群青の気配をのこした薄紫である。ただでさえつぶらの眸をさらにまあるくおおきくし、身振り手振りをまじえて全身で同僚の安否を気遣い、めったにしない姉への懇願さえも口にするアイナに何もかもを打ち明けてしまいたい、と思わないでもなかったけれども、しかしエリス・アルデビッドには、箝口令や、守秘義務のなかったとても、クレイ・フォーサイトと、このプロメポリスで秘密裏に進行している箱舟計画について語る言葉がなかった。クレイの定めた、生き残り、新天地においてあらたなる文明の礎を築いて担う人間の数はわずかに一万を数えるばかりである。突然変異種バーニッシュによる全世界に突発的にもたらされた未曾有の大災害で、人類はすでに半分を失い、多くの都市と、得難い知識と、頭脳たちが、焔になめられて灰燼と帰してきた。エリスは、実際に災害を生き延びた世代ではなく、紛争と呼べるほど組織だってもいなければ、レジスタンスのような、理性と冷静さを欠くことなしに活動する人びとも、物心がつくころにはすっかり淘汰されたあとであった。残されたのはわずかながらもけしてささやかとは言えない脅威、そのくせ、どこか他人事のように、丁重に、丁寧に、マスキングされている。すくなくともエリスにとっては外側の世界のことである。はじめに彼女のなかにねむる叡智の光を見出し、神童と持て囃したのは誰だっただろう、両親だっただろうか? それとも。彼女は気づけば机に向かって、おり、走らせるペンすらもどかしく、ありとあらゆる思考と、嗜好、それから繰り返される試行のすべて、エリス・アルデビッドは極度に完成していた。自転していた。なによりも、重力場をのがれて遠心力にゆがんでゆくものごとを、憎しみにも似た感情で俯瞰していた。彼女は気づくと孤独のさなかにあった。学術の徒として、おなじく研究に没頭する同僚たちには、いくらか年齢の近い者もあったけれども、しかし彼らはけして、友人ではあり得ない。互いに切磋琢磨し、檄を飛ばし、励ましあうような慕わしさを、彼らに感じたことはない。心が凍っている? そんなまさか。エリス・アルデビッドにも感情はある、執心があり、俗物的で、肉慾に類する愛さえ。しかしそれらに耽溺し、たんなるひとりの女であること、孤独にむせび、愛に飢えて喉を枯らすような生きかたに、つよい忌避感をおぼえたのもまた事実なのだった。
 はじめのころは、姉の仕事、研究、この小さな、エリス・アルデビッドという女の全体積の二割にも満たない頭脳がしきりに行なっている微細電流のやりとりについて、妹もたずねてきた。お姉ちゃん、次は何を作るの? よく飛ぶ紙飛行機、割れにくいシャボン玉、無意識のうちにはたらきかける、耳ではきかれないくじらの歌、そういったささいなものから、徐々にエリスが乖離してゆくにしたがって、アイナもあまりたずねなくなっていった。会話がへるにつけて、けして妹に無関心ではないのに、彼女のことを知らなくなってゆく。知的好奇心と、倒錯にちかしい妹へのくるおしい愛情とのあいだにエリスは揺れ、結局、未知なるものへとみずからを投げ出していくことになる。それでも、忙しい合間を縫ってアイナの顔をみれば安堵に胸をなでおろすことができたし、めずらしく非番にあっても、同僚のガロ・ティモスがどうの、ルチア・フェックスがどうのと、たのしそうに話す妹をすきで、あった。
 対バーニッシュ研究分野において革命的で、飛躍的な数々の発明を生み出し、こののちは文字通り人類の存続にかけた暗躍を試みているクレイ・フォーサイトは、いまや象徴的な存在となり、彼のもたらした天才的な閃きを、実際に実用化にむけて試行するのは、エリスたち研究員たちに託された。彼は研究者である以上に、いまでは為政者なのであり、思うように研究にだけ没頭するわけにもいかないのだ、ということが、いよいよエリスにも分かっていた。もっと言うのであれば、こうしてクレイ・フォーサイトが生きながらにして磔になり、石を投げられる銅像の役割を演じてくれなければ、われわれ心無い(と思われている)研究者たちが、人道に悖り、倫理に叛逆して、何食わぬ顔でのうのうと生きていることさえままならないので、あろう、知性はときおり、あたたかな営みを置き去りに、した、無味乾燥した、温度のない、縦軸のめもりが規則的に伸び縮みする対数グラフの無感動だけを共として彼らは彷徨し放蕩する、もっとも生産的で、もっとも非生産的な暮らしのなかにある。一面にひろがる金色の海で重たく垂れた小麦の穂や、水耕栽培の田園風景に隊列をなしていた鴨の親子や、なんの変哲も無い、と、思われてきた光景はもう失われ記録映像のなかにしか残らない。あらかじめ失われたものに思い馳せても仕様がない、夏の日は灰になった、ひとの営みと、都市と、文明の半分が焼き尽くされたときに。眠れない夜にみた、人間をタンパク源として再利用し人々の食糧を確保する映画を思い出していた。食物連鎖を考えれば、弱いものが捕食されていくのはごく自然な、ことだ、しかし、タンパクの変性による疾病が存在するのもまた確かなことなので、生理的嫌悪によって鳴らされる警鐘にも一理はある。たいていの物事の可否、あるいは正誤を判別するときに、指標として持ち合わせる分銅の手数の少なさよ、嘆きはするけれども、そも、天秤にかけるほかに、手段がないのも問題であろう。常に選択と聖別を迫られて、聖者でもなければ、使徒でもない、神などもうない世界をわたし生きたわ、うつくしくはなくとも、いつかは斬り落とされるだけの赤い靴とタランテラを、わたし生きたわ。あなたに頬を寄せて……、妹のめったにない望みと、姉への頼みを微笑みで棄却して、エリス・アルデビッドは、もう、世界の葬列にならぶことさえゆるされない。
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ソイレント・グリーン
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highlandfeet · 2 years
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爽やかな空が広がる梅雨入り前(2022.5.23~29)
例年より涼しい日が続く5月の後半。足早に移り変わる天候、雨が上がると山里は爽やかな初夏の彩に包まれます。 雨上がりの涼しい朝。雪渓が薄くなる南アルプスの山々。 八ヶ岳から吹き降ろす涼しい北風が、圃場を埋める青々とした麦の穂を揺らしていきます。 夜明けが早くなり、朝の気温も随分と高くなりましたが、八ヶ岳からの涼しい風が吹くと空はクリアー。もう5月も末ですが、遙か遠くに富士山を望む事が出来ました。 終日、涼しい風が吹き続け、雲が広がり始めた夕暮れ。田植えを終えた圃場の水面に眩しい夕日が照らし出されます。 日没を過ぎて琥珀色に染まる西の空。夕凪を迎えて、残照に照らされる雲が圃場の水面へと映し込まれていきます(2022.5.23) お天気が良い状態が続く週の前半。稜線を越えていく雲が薄紅色に染まる南西の空。 遅くなってきた夕暮��。風が涼しくなる午後7時前、西の稜線に広がる雲の狭間に…
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ari0921 · 5 years
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「麦の穂青し」③終
 知覧特攻基地と言えば、「富屋食堂」を営み、多くの特攻隊員の面倒を見て、“特攻の母”と呼ばれた鳥濱トメさんが有名ですが、地元の知覧高等女学校の生徒たちが特攻隊員を献身的にお世話したことも記憶に留めておく必要があります。
 本書には、知覧高女なでしこ会が刊行した『群青 知覧特攻基地より』の「まえがき」が引用されています。
 本書の第二部「征く人、送る人」の第二章「さらば、祖国よ」から、「知覧の少女たちが見た別れ」の箇所を、少々長くなりますが引用いたします。なお、文中に出てくる『空から轟沈』の唄はご存じない方が多いと思いますので、Youtubeから貼り付けました。
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 知覧基地に関しては、地元の知覧高等女学校の生徒たちによる特攻隊員に対する献身的なもてなしが、多くの特攻隊員につかの間の安らぎを与えたことはよく知られています。
 知覧高等女学校の生徒たちがなぜこのようなもてなしをするようになったかのいきさつは、「知覧高女なでしこ会」が昭和51年に刊行した『群青 知覧特攻基地より』の「まえがき」に、永崎(旧姓前田)笙子が次のように記しています。
 「昭和20年3月27日、知覧高等女学校の三年生進級を前にして、突然、私たちは勤労動員学生として、各地から知覧基地へ集結された特攻隊員の身の回りのお世話をすることになりました。敗色濃い戦局だったために、軍だけでは隊員たちを受け入れるゆとりもなく、その態勢も整っていなかったのでしょうか。激しい空襲のさなかを自宅から基地まで、遠い人は二時間もかかって通い、三角兵舎の掃除、食事の用意、洗濯、そしてつくろいものなどの雑用係として、14、15歳の少女だった私たちがあたることになったのです。最初18名だった女学生も、手が足りなくなって次第に増員されるようになりました」
 戦争末期のこの時期、日本軍には余力というものが全くなくなり、青壮年は根こそぎ軍隊にとられ、本来なら下級兵士や軍属がすべき雑用を、知覧基地では14、15歳の少女に任せるはかなかったのです。その期間は昭和20年3月下旬から6月下旬までの3ヶ月足らずですが、この聞に昼間出撃した特攻隊員を飛行場で直接見送るという稀有の体験を少女たちは重ねることになったのです。その点を永崎は次のように記しています。
 「多くの隊員は到着して4、5日間を基地の三角兵舎ですごして出撃されましたが、なかには、たった一夜だけの滞在で慌ただしく出撃された方もいらっしゃいました。それは、つかのまの出会いではありましたが、長い歳月を経た今でも、心の奥底に多くの隊員たちの思い出が生き続けているのは、平和な時代には想像もできないような異常な戦争体験だったからでしょうか。泣きながら桜の小枝をうち振って出撃を見送ったときの光景など、折にふれ鮮烈な思い出としてよみかえってまいりました」
 彼女たちは今で言えば中学二、三年生の純情で清潔で多感な少女でした。その少女たちが、「生き神様」と呼ばれ、明日には特攻散華するかも知れぬ、一死殉国の若者たちの身の回りの世話をし、共に語り、共に笑い、共に心を通わせたのですから、その印象は生涯消すに消されぬほど鮮烈なものであったに違いありません。
 特攻隊員でもっとも若い者は16、17歳であり、少女たちより二、三歳上に過ぎないのです。そうした若者たちが日本を救うために明日にはその身を敵艦上に爆裂させるかもしれないという切迫した状況が、少女たちを深く感銘させ、その感銘がまた少女たちの献身を引き起こしたのです。いわば特攻隊員の自己犠牲の崇高な精神が彼女たちに無償の奉仕という対価を求めぬ純粋な献身行動を呼び起こしたとも云えるのです。
 そして永崎はさらにこう続けます。
 「皆様の遺書や書簡を読ませていただき、あらためて現実の出来事のように、ありし日のあの方、この方をしのび、多くの若者を失ったあの戦争とはいったい何だったのだろうかと、新たな感慨に胸が締め付けられる思いでございます。生と死の狭間のなかで苦悩しながら、永遠の平和を願い、国の護りに殉じていった若い人々のために心から涙を流した愛惜の日々は、私たちの頭から生涯消え去ることはないでしょう」
 大東亜戦争は日本史上最悪の出来事でした。死者の総数は310万人を超え、日数でならすと一日に約2,300人の死者が出た計算になります。これほどの大悲劇はありません。ただその大悲劇の中で、唯一清冽な想い出を歴史に刻んでくれたのが特攻隊の若者たちの愛と勇気に満ちた身の処し方であり、このことは日本史がつづく限り、民族の誇りとして語り継がれてゆくに違いありません。
 戦争を経験せずに真の平和はあり得ないとされています。まだ逆に平和を獲得するのが戦争だという考えもあります。しかし戦争と平和の問題は個々に独立した概念として把握されるべきではなく、常に歴史の連続性の中で確認されねばならぬ最重要な国家的課題であり、永崎もその点を次のように説いています。
 「いま私たちが手にしている平和が、数多くの人生とかけがえのない青春の上に築かれていることを忘れ、自分の利害だけで、権利ばかりを主張して責任を果さない風潮が一般的になったと、よく人々から聞かされるようになりました。こんなとき、平和を願い、すべての私情を断ちきって短い人生を終えていった特攻隊員を、その出撃直前まで目のあたりにしてきた人々の中から、『歴史の証言として何かを残すべきではないか』という声がもちあがりました。それもある思想的な立場からの作為のもとに粉飾されたり、無意識のうちに変ってしまったものではなく、その時、その状況の中で真剣に綴られた生のままを残したほうがよいのではないかということでした」
 この群青というタイトルには、特攻隊員が出撃して征った沖縄の青い海や空がイメージされていることば確かですが、それよりも平和な時代の限りなく優しい海や空の青を思い描き、祖国防衛戦争にその尊い命を捧げた特攻隊の若者たちの自己犠牲の崇高な精神を、日本民族がつづく限り、永遠平和のために未来永劫語り継いでゆこうという強い意志がこめられているに違いありません。それゆえ永崎は次のように記してこの「まえがき」を閉じています。
 「本書は、還らざる方々の魂の証と、ささやかながら私たちの心の軌跡をまとめたものです。特攻隊に関する本は少なからず出版されていますが、数ある太平洋戦争史の大河の流れの一しずくとして、心ある方がもし拾いあげてくがさるならば、これにこした喜びはありません」
 本書が他の特攻関連の本と一線を画するのは、陸軍特別攻撃隊の若者たちと知覧高女の乙女たちの清楚で涼やかな心の交流が全編の至るところににじみ出ていることにあり、本書を心読すれば、当時の青春はこれほどまでに純粋で美しかったのかと強い感動に襲われるに違いありません。本書は特攻隊員の壮烈な遺書・遺稿を掲載しながら、それが壮烈であればあるほど、知覧高女の乙女たちの精神のたたずまいの美しさが際立ち、巧まずして平和の尊さを読む者の心に深く静かに訴えかける、稀有の鎮魂の書となっているのです。
 本書には、知覧高女の乙女たちの見た特攻出撃の光景が哀切に描かれています。たとえば永崎笙子は満開の桜の中を出撃して征く特攻隊の哀しいまでに美しい光景を次のように記しています。
 「ある日、私たちは当番兵から、徳之島前進の特攻機におにぎりを二個ずつ積むように言われました。徳之島前進というのは、航続距離の短い特攻機のために、徳之島を中継基地として出撃するため、知覧基地を飛び立って徳之島へ集結することを意味します。
 ただ、おにぎりを配るだけでは、どうしても私たちの気持ちをあらわすことができないような気がして、機中の隊員の方に桜の小枝を差し上げましたところ、隊員の方にたいへん喜ばれ、『ありがとう、ありがとう』と何度もくりかえしいわれました。その様子から、『時がくれば何の未練もなく散っていく桜のように、武士のいさぎよさを見た』と言った人もいました。それ以来、私たちは出撃す��特攻機の操縦席を、桜の花で飾るようになりました。当時、知覧は桜の花盛りでした」
 俗謡に「富士と桜の日本によくぞ男と生まれける」とありますが、日本男子にとって桜ほどふさわしい花はありません。『仮名手本忠臣蔵』に「花は桜木、人は武士」とありますが、特攻隊の若者たちも自分は現代の武士であると堅く信じていましたから、この言葉には大いに魅かれましたが、これ以上に特攻隊員が共感したのは「花は散り際、武士は死に際」という言葉でした。ひとたび出撃した特攻隊員に残されたことは存分に戦って潔く死ぬことだけであり、それゆえ死に際の見事さを彼らは切に願ったのです。
 また彼らは出撃前の壮行会では必ず「同期の桜」を歌いました。「咲いた花なら散るのは覚悟、見事散りましょ、国のため」という文句ほど、彼らの特攻魂をたぎらせ、かつまた彼らに清冽な詩情を与える文句はありませんでした。そして彼らは「散るのは覚悟」と歌いきることによって、特攻死というものが決して恐怖であるばかりでなく、華と散ること、即ち散華の美学と直結することを理屈としてではなく、感覚として理解できたのです。
 さらに桜についていうなら、彼らが好んだ句は「散る桜、残る桜も散る桜」であり、「風吹かば、かねて覚悟の桜かな」でした。桜の花が真に美しいのは満開の時よりも花吹雪となって散り急ぐ時であり、宗宮亮平(陸軍特別攻撃隊飛行第六十六戦隊、昭和20年6月6日、出撃戦死、少年飛行兵、岐阜県、20歳)という若者は、日記の最後に、
 「身を清廉潔白に保ち、若桜の一陣の春風に散るが如き最期を遂げたきものなり」
と記して出撃して征きました。特攻隊の若者たちがいかに潔い死を望んでいたか、この清冽な一文を読めば誰でも納得がゆくでしよう。知覧高女の乙女たちが贈った一枝の桜ほど若い特攻隊員たちを元気づけたものはなく、特攻機の操縦席に桜を持ち込んだ彼らは、桜と共に散華できることを無上の喜びとし、日本武士の誇りを胸に敵艦めがけて突入して征つたに違いないのです。
 そして永崎は眼前に見た特攻出撃の光景を次のように記しました。
 「4月12日
  今日は晴れの出撃、征きて再び帰らぬ神鷲と私達をのせた自動車は誘導路を一目散に走り飛行機の待避させてあるところまで行く。途中『空から轟沈』の唄の絶え間はない。先生方と隊長機の擬装をとってあげる。腹に爆弾をかかへた隊長機のプロペラの回転はよかった。本島さんの飛行機もブンブンうなりをたててゐる。どこまで優しい隊長さんでせう。始動車(当時の飛行機は発進のときプロペラの回転が自動でできず、始動車によって始動した機が多かった)にのせて戦闘指揮所まで送られる。うしろを振り返れば可憐なレンゲの首飾りをした隊長さん、本島さん、飛行機にのって振り向いていらっしやる。桜花に埋まった飛行機が通りすぎる。私達も差上げなくてはと思って兵舎に走る。途中、自転車に乗った河崎さんと会ふ。
 桜花をしっかり握り一生懸命駆けつけた時は出発線に行ってしまひ、すでに滑走しやうとしてゐる所だ。遠いため走って行けぬのが残念だった。本島機が遅れて目の前を出発線へと行く。と隊長機が飛び立つ。つづいて岡安、柳生、持木機、九七戦は翼を左右に振りながら、どの機もどの機もにっこり笑った操縦者がちらっと見える。二十振武隊の穴沢機が目の前を行き過ぎる。一生懸命お別れのさくら花を振ると、にっこり笑った穴沢さんが何回と敬礼なさる。パチリ……後を振り向くと映画の小父さんが私たちをうつしてゐる。特攻機が全部出て行ってしまふとぼんやりたたずみ、南の空を何時までも見てゐる自分だった。何時か目には涙が溢れ出てゐた」
 知覧高女の生徒たちは、こうした別れを毎日のように体験したのです。彼女たちにとって特攻出撃は勇壮なものであると同時に、お世話した若者たちとは二度と会えぬことが定められた惜別の哀しみに満ち満ちたものでもあったのです。
 さらに永崎は出撃にまつわる次のよう��親子の哀切な別れも記しています。
 「ある日のこと、搭乗したばかりの特攻隊員のところへ息せききって走りよる初老の男の方がいらっしゃいました。ふたことみこと言葉を交してから着ていた羽織の紐をもぎとると、それを隊員に差し出し去した。二人は手を固くにぎりしめたまま、身じろぎもしないで思いをこめた眼差しを交していました。その様子から、その男の方が隊員のお父様であることがわかり、胸があつくなりました。
 やがて羽織の紐を乗せて特攻機は飛び立ちましたが、機影が開聞岳の向うへ消えたあとも、乱れた羽織姿のままで南の空をいつまでも見つめながら、悄然と立ちつくしておられました。親子のきずなを羽織の紐に託して永遠の別れを告げられたその情景に、私たちは思わずもらい泣きをしてしまいました」
 特攻は見方を変えれば、すべて哀切な別れのドラマといえます。両親との別れ、兄弟姉妹との別れ、妻子との別れ、恋人との別れ、あるいは戦友や朋友との別れといったように、徹頭徹尾、特攻は愛と別れのドラマといえるのです。そしてさらに永崎はこの日の出撃光景を続けます。
 「離陸した特攻機は、飛行場の上空を旋回しながら隊別に三機編隊を組み、編隊を組みおえると機首を戦闘指揮所へ向けて急降下をしました。そして、みんな一様に三回、翼を左右にふりながら最後の別れを告げると、急上昇して開聞岳の彼方へ消えていきました。
 基地に残った隊員や整備兵たちは、いっせいに帽子を振り、私たちも桜の枝やハンカチを振って見送りました。機影が見えなくなってからも、私たちはしばらく呆然と立ちつくし、そのあとで急に襲ってくるはげしい悲しみに堰を切ったように泣きだしました。
 でも私たちは涙のかわかないうちに、まだ次に到着される特攻隊の方々をお世話しなければなりませんでした。そんな悲しみに堪えながら三角兵舎へ戻ることがたびたびでした。寒々と静まり返った兵舎内に足をふみ入れますと新たな思いにかられて、とめどもなく涙が頬を流れ落ちました」
 このように優しい乙女たちに見送られたことは、特攻隊の若者たちにとっても何物にも代えがたい喜びであったことでしょう。彼らにとっては、この別れが生きる喜びを感じた人生最後の体験となったのです。そしてこの離陸から長くとも二時間か三時間で彼らの人生は終わりを告げることになるのです。しかも彼らは心身ともに健康で、本来なら夢と希望に満ち溢れた二十歳前後の青年なのです。この一事を捉えても、特攻隊を美化したり、戦争を肯定したりすることが、人間性の尊厳を否定する不遜な考えであることが自ずと明らかになるのです。
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kachoushi · 5 months
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星辰選集
花鳥誌 令和5年12月号
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令和5年9月号の掲載句より再選
坊城俊樹選
この星辰選集は、私が各月の掲載句の中で、雑詠選・撰集選・さいかち集の成績などに関係なく、改めて俳句としての価値が優れていると判断したものを再度選句したものです。 言わば、その号における珠玉の俳句ということになります。
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左手に聖書持ちかへ虹を待つ 天野 かおり ざわざわと黴雨の来たる人との間 伊藤 ひとみ 夏蝶のたはむれ城主墓に罅 四宮 慶月 水音は水を濁さず蜻蛉生る 田丸 千種 親指がほどの哀愁袋角 取尾田 美智子 もろもろの鳥遊ばせて樟茂る 松本 洋子 自転車にボード括りて夏に入る 海老澤 由希子 一族の潰えし郷の緑雨かな 渡辺 美穂 蟻の道辿ればやがて蟻の村 赤川 誓城
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梅雨出水過ぎて正気を歩きけり 斉藤 いづみ 罠であり結界であり蜘蛛の糸 渡辺 光子 二度廻る梓渕さんかも黒揚羽 松井 秋尚 咲き倦みて落つ事忘れゐる椿 村上 雪 単衣着て空念仏に去る漢 棈松 政江 水面裂くオール八本五月晴 崎島 六甲 済度する菩薩の眸子著莪点る 田中 惠介 風薫る旧びし墓碑の梵字にも 佐藤 ゆう子
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短夜の最後の看取り息浅し 岩原 磁利 炎天の瓦礫留めてゐる時間 岩佐 季凜 賽の目はぞろ目や夜の青嵐 冨永 桂 ソーダ水ぬるく漁港の日曜日 緒方 愛 生き死にを語る吐息の暑さかな 宮城 踏青 今年竹ただ青春の大空へ 続木 一雄 ハングルの難破漁船や夏の潮 鈴木 経彦 豆飯の湯気の中から母のこゑ 伊藤 ていこ
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花菖蒲八咫鴉てふ濃紫 奥 清女 坂の上の雲の館や若葉風 渡部 一馬 袋ごと枇杷をもげよと檀太郎 古賀 睦子 代掻くや越の富士山崩しつつ 多田 みす枝 五月闇こより捲かれし狛の脚 比嘉 幸子 ぐんぐんと入道雲へホームラン 田上 喜和 懐を深く神在す大夏木 伊木田 マリ 麦秋や昭和の映画語らうぞ 坂井 令子
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tomitorimasaaki · 3 years
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これまでアジア各地で開催してきた『女優顔』ですが、おかげさまでやっとやっと日本でお披露目できることになりました。
生まれた町東京で、約束の地スパイラルで、
富取正明写真展『女優顔』を開催します。
人との距離が遠くなるばかりのこの時代に、撮影者と被写体が同じ空間を共有し、会話を重ね、想いをぶつけ合うことで完成する一枚の写真。この6年間、Personal work として情熱を注ぎ撮影してきた渾身のポートレート展です。
一人でも多くの方々に観ていただきたいと思っています。
応援していただけたら嬉しいです。
世の中大変な時期ですが、ご無沙汰している方も、初めましての方も、皆様とお会いできることを楽しみにしています。
Photo exhibition 『女優顔』
富取正明写真展
会場: スパイラル 東京都港区南青山5-6-23
日程: 5月26日〜6月6日(11時〜20時)
入場無料
https://www.joyugao.com
公式Instagram joyugao
葵わかな/秋山ゆずき/有村架純/池田エライザ/石川恋/臼田あさ美/大島優子/門脇麦/夏帆/香里奈/川口春奈/岸井ゆきの/北乃きい/国仲涼子/倉科カナ/剛力彩芽/坂井真紀/坂本祐祈/桜井日奈子/桜井ユキ/佐々木希/趣里/白石聖/鈴木杏/清野菜名/田鍋梨々花/田畑智子/土屋太鳳/常盤貴子/戸田恵梨香/中条あやみ/中村アン/菜々緒/二階堂ふみ/浜辺美波/広瀬アリス/広瀬すず/深川麻衣/福原遥/前田敦子/松本穂香/観月ありさ/森川葵/山口紗弥加/山田真歩/山本舞香/山本美月/吉岡里帆/吉川愛/芳根京子
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backlaw · 3 years
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大麦栽培と大麦とえんどう豆のパン
ライ麦とオーツ麦の栽培ができたので、2019年に大麦の栽培に挑戦しました。
大麦もヴァイキング時代の主要な穀物で、粥やパンにしたり麦芽にしてビールの原料になったりと多くの用途があります。
大麦はおおまかに二条大麦と六条大麦の二種に分かれており、今回は二条大麦を育てました。
(後からヴァイキング時代は六条大麦が主流だと知ったときは衝撃でした。)
こちらでは2019年10月20日から2020年6月10日までの大麦栽培の様子を振り返ります。
前回の教訓から種まきの時期を変えました。
春に種を播くと登熟期に梅雨が被ってカビが生えたりするので秋播きに変更し、またバーク堆肥と苦土石灰を土に混ぜて土壌改良を試みています。
その結果土壌酸度が4.5から5.5程度になり、大麦の適正土壌酸度の7よりもだいぶ酸性よりですが、すこしはマシになったかと思います。バーク堆肥は混ぜる事により土が固まるのを防ぎ、通気性と排水性を高め根が伸びるのを助けます。
9月末ごろに苦土石灰を混ぜ、10月20日に三列に分けて大麦を播種しました。
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10/26 発芽。その後育って写真は11/21のもの。
この時期になると気温が低いので成長がスロー。何度か麦踏みもしている。
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冬を越して2020/4/27。雪の下で耐え縮こまっていた葉も4月に入って暖かくなると成長が再開する。
左側で咲いているのはホソバタイセイの花。
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5/2 穂が顔を出す。草丈があまり伸びず心配していたのですこし安心。
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5月上旬に花が咲き、写真は5/22 穂が膨らんできた。
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6/8 穂が黄金色に。収穫ももうそろそろ。梅雨に入るギリギリまで待とう。
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6/10 梅雨が近づいていたので急いで収穫。まだ青い穂もあったが全て収穫し、その後穂を切り取って乾燥させた。
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6/20 ハサミでちまちま芒を切り取り、家庭用精米機で脱穀する。
この大麦は皮麦と呼ばれる種子に皮がつく品種なので、できるだけ皮も取れるように長めに精米機にかけ精麦した。
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脱穀と精麦が完了し、計量。370gなら少ないもののいろいろ使えるかな。
ちなみに皮はしつこくへばりついてなかなか剥がれなかった。
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8/2 大麦とえんどう豆の平焼きパンをつくるためコーヒーミルを使い製粉する。この製粉のやり方はやはりだいぶ無理があり、とても疲れた。
赤えんどう豆もゆでて潰したりと力作業が多かった。
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パン作り。今回は出土品を参考に考古学の観点からヴァイキング時代の料理を再現したレシピブック「An Early Meal」から、ビルカ出土の大麦とえんどう豆の平焼きパンを作ってみます。
https://www.medieval.eu/viking-bread-and-food/
このレシピでは乾燥えんどう豆を使うのですが、ふさわしいものが身近になかったので赤えんどう豆で代用しています。
大麦粉と茹でて潰した赤えんどう豆を混ぜて生地にし、めん棒で薄く円状に成形したものを今回はスキレットで焼いてみました。
大麦はやはり小麦に比べて大味に感じましたが、えんどう豆の風味と香ばしさも相まって美味しかったです。
これ以外にも粥にしてみたりと大麦料理に挑戦してみましたがこのパンが一番美味しかったと思います。
今回の大麦栽培は試行したことと結果にわりと手応えがあり、収量も前回よりも増えたので調子に乗ってまた品を変え麦栽培を続けています。
2021年10月10日
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