Tumgik
#vituuri
suka51 · 2 months
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2024
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marcarella-pizza · 4 years
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Awkward dates anyone?
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sorairono-neko · 4 years
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愛するひとが寝かせてくれない
 目ざめた勇利は、しばらくぼんやりとしていた。すぐ前にヴィクトルがいた。しかし、それについて驚くことも慌てることもできないほどにぼうっとしていた。ヴィクトルはまぶたを閉じて深く眠っており、勇利はゆっくりと瞬いた。ヴィクトルだ、と思った。一緒に寝たのか。部屋には入らないでと言っているのに。そう考えたところで、勇利は、ここは「気軽に入っちゃだめ」と厳しく注意した長谷津の自室ではなく、ひとりで住み暮らすサンクトペテルブルクのアパートの一室なのだと気がついた。すると、ヴィクトルがいる理由がわからなくなった。彼は泊まっていったらしい。ゆうべはどうしたのだったか……。  そこで、勇利はようやく正気に返り、はっとなった。彼は飛び起きると掛布をつかみ、勢いよくそれをはぐって自分の身体を見た。いつもベッドの上に脱ぎっぱなしにしている寝巻用のスウェットを着ており、おかしなところは何ひとつなかった。 「…………」  勇利は、かすかに息をついた。何もされてない……。  だが、すぐに彼は赤面した。何もされてないってなんだ。何をされてると思ったんだ。いま、ぼくは何を想像した?  勇利は頬に手を当てた。認めるのも気恥ずかしいけれど、彼は、いま、自分が裸ではないかと疑ったのだ。そして──ヴィクトルに、口に出すのも恥ずかしいようなことをされた痕跡を肌に見出すのではないかと、反射的に考えたのである。  ヴィクトルにあまりに失礼じゃないか……?  勇利はちいさくうめいた。あらゆる意味で失礼だ。ヴィクトルに申し訳なかった。そもそも、勇利はヴィクトルとそういう仲ではない。親密ではあるけれど、世間でいうコーチと生徒で、それ以上のことはないのだ。なのに一緒に寝ていただけで妙な心配をしてしまった。最低だ。  いや、嫌だからそういう不安を持ったわけじゃなくて。ただ、何かあったんじゃないかって──そんなこと考えるのがどうかしてるんだけど──でも──でも──。  勇利は眠っているヴィクトルのほうへちらと視線をやった。静かな寝息が聞こえる。そっか、と思った。ヴィクトル、ぼくにはそういうことしないんだ。そっか……。  勇利はかすかに息をついた。いや、当たり前なんだけど。そういう対象として見られてるわけないんだけどね。ぼくだって見てないし。ヴィクトルに何かされたいなんて、そんなこと、考えたこともない。ただ……ただ……、あ、しないんだ、って、簡単な感想……。 「あ、頭いた……」  勇利は頭痛がすることに気がついた。なんだなんだと首をかしげた。どうしてこんなに頭が痛いのだ。そういえば、息もなんとなくいつもとちがうように思う。酒臭さが混じっているというか──。  そのとき、ヴィクトルがゆっくりと瞬き、まぶしそうに勇利を見た。勇利は慌ててヴィクトルのほうへ身体を向け、膝から下を外へ折り曲げるようにして座り、ぺこんとつむりを下げた。 「お、おはようございます……」 「……おはよう」  ヴィクトルが起き上がって挨拶した。彼はちゃんと衣服を着ていた。あ、いつもみたいに裸じゃない、と勇利は瞬いた。 「服着てるんだね」 「…………」  ヴィ���トルは黙っていた。勇利は、起き抜けに変なこと言っちゃった、と反省した。 「えーっと……」  勇利は混乱しながらおずおずと上目遣いでヴィクトルを見た。 「……ヴィクトルはどうしてここにいるの?」 「おぼえてない?」  ヴィクトルは物穏やかに言った。な、なんか怒ってるのかな……。勇利は緊張した。この感じだと、ぼくはお酒を飲んで酔っぱらったのかな? でも、ヴィクトルだっていつも飲め飲めって言ってくるし、たぶんゆうべもそうだっただろうし、ぼくひとりが悪いわけじゃないと思うんだけど……いや、めんどうをかけたんだろうから、言い訳する気はないけど……。 「送ってくれたんだよね?」  勇利は記憶の糸をたぐりながらおそるおそる尋ねた。ゆうべは、確か……ヴィクトルがお酒を飲みに連れていってくれて……そこで……。 「ぼく、飲み過ぎた?」 「まあね」  ヴィクトルがかるくうなずいた。勇利は丁寧に謝った。 「ごめんなさい」 「…………」 「ご迷惑おかけしたようで……」 「…………」 「これからは気をつけますので……ゆるしてください……」  ヴィクトルは何も言わない。かなり怒らせてしまったのだろうか。勇利は不安になった。 「俺がなぜここにいるかは、本当にわからない?」 「えっと……」  勇利は頬に手を当てて考えこんだ。確かにたくさん飲んだ。飲んだけれど、まったくおぼえていないわけではない。ヴィクトルと歩いて帰ってきて……それで……。 「勇利、鍵を出して」  ヴィクトルは勇利の部屋の扉の前で言った。勇利は彼にもたれかかり、「うーん」と間の抜けた声を上げた。 「鍵だよ。わかるかい?」 「かぎぃ……?」 「そうだ。勇利の部屋の鍵だ。出して」 「なに? ヴィクトル、ぼくの部屋の鍵、欲しいの……?」 「…………」 「えっとねえ……」  勇利はバックパックを下ろしてもぞもぞと探り、中からタオルや着替えを取り出した。 「うーん……」 「勇利、本当にそんなところに入ってるのか?」 「えー……?」 「こっちじゃないのか」  ヴィクトルが勇利の上着のポケットを探った。勇利は笑い声を上げ、「ヴィクトルのえっち!」とはしゃいだ。 「人聞きの悪い……、ほら、これだろう」 「うーん、それだぁ……。ヴィクトル、正解!」 「ほら、しっかり立って……」  勇利はヴィクトルに寄りかかりながら中へ入った。ヴィクトルはあかりをともし、勇利を台所へ連れていって、グラスに水をそそいだ。 「勇利、さあ、飲んで」 「なんですかぁ?」 「水だよ」 「水か……のむ」  勇利は両手でグラスを持ち、喉を鳴らして一気に水を飲み干した。 「こぼれてるよ」 「うんー」  ヴィクトルがタオルで口元をぬぐってくれた。彼は勇利をベッドまで案内し、「さあ、もう寝て」と勧めた。 「寝るの?」 「そうだ。水の瓶、ここへ置いておくから。喉が渇いたら飲むんだよ」 「はーい」 「いい返事だね。いい子だ」  ヴィクトルがくすっと笑った。勇利はとろんとした目つきで彼を見上げた。 「じゃあ俺は帰るから」 「はーい」 「おやすみ」 「おやすみなさーい」  去っていこうとするヴィクトルに、勇利は勢いよく抱きついた。ヴィクトルが「おっと……」とよろけながら勇利を受け止めた。 「勇利……」 「ヴィクトルも、一緒に寝よぉー」 「きみね……」 「一緒に寝よう。一緒に寝ようよぉー」  勇利はヴィクトルの袖をぎゅっと握りしめ、甘えるように彼をみつめて言いつのった。 「ひとり、さびしい」 「…………」 「一緒に寝て」 「……いや」 「長谷津では、ヴィクトルのほうが一緒に寝ようとか言ってきたじゃんー」  勇利は責めるようにヴィクトルをにらみつけ、さらに抱きついて腕に力をこめた。 「だから一緒に寝るの!」 「勇利、俺はね……」  ヴィクトルがなおも何か言おうとした。勇利はぼんやりした口ぶりでささやいた。 「一緒がいい」 「…………」 「行かないで……」 「…………」 「ヴィクトル……」  勇利は目を閉じた。そして……。 「……あー」  思い出した、と思いながら勇利はひきつった笑みを浮かべた。そうだった。ぼくが帰らないでって言ったんだ……。 「えー……あの……」  ヴィクトルは静かに勇利を見ている。振り払って帰ることもできただろうに、勇利がかわいそうで、彼はそうしなかったのだろう。申し訳ないことをした。 「……すみませんでした」  勇利はぺこりと頭を下げた。 「酔ってて……」 「…………」 「……って、言い訳にならないけど……」  甘えてしまった。べつに普段からひとりがさびしいと思っているわけではないのだけれど、ヴィクトルといる時間が楽しくて、彼と離れることがせつなくなってしまったのだ。��っぱらい特有の感情の高ぶりである。 「……怒ってる?」  勇利はためらいがちに尋ねた。ヴィクトルは溜息をつき、「怒ってないよ」とかぶりを振った。 「ほんとに?」 「本当だ」 「引き止めちゃって……」 「そうだね」 「ベッドも狭かっただろうし……」 「それはいいけど」 「寝言、うるさかった?」 「さあ。俺も寝てたからね」 「いびきはかかないと思う……」 「ああ」 「寝相は……わからないけど……」  ヴィクトルがもう一度溜息をついた。勇利はどきっとした。 「あの、ごめんなさい……」 「…………」 「……本当に」 「もういいよ」  ヴィクトルは苦笑を浮かべて勇利を見た。勇利はぱちりと瞬いた。 「とりあえず俺は帰るから」 「え、あ」  ごはん食べていって……と言おうとして、勇利は人に出せるような食事がないことを思い出した。 「勇利は今日一日ゆっくりやすむこと」 「……はい」 「頭は痛くない?」 「痛かったけどどっか行った」 「そうか」  ヴィクトルはくすっと笑い、ベッドから下りると上着に腕を通して身支度を整えた。 「じゃあね」 「はい、あの……」 「送らなくていいよ。またリンクで」 「は、はい……」  ヴィクトルはほほえんで部屋を出ていった。勇利は窓辺に寄り、彼が帰っていくところを熱心に眺めた。ずいぶんと迷惑をかけてしまった。世話もさせただろうし、一緒に寝てと頼んだりして。なのに……。  ぼくは、ヴィクトルに何かされたかも、なんて思ってしまった……。  勇利はひどく反省した。  クラブからの帰り、ふたりで歩いているとき、ヴィクトルが言い出した。 「明日は休みだね。いまから俺の家に来ないか」 「え?」 「一緒に夕食を食べよう」 「いいの?」 「ああ。何か買って帰ろう。次の角で曲がろうか。店に寄ろうよ」 「うん」  勇利はほほえんでうなずいた。ヴィクトルも微笑し、ふたりは仲よく買い物をしてヴィクトルの家に帰った。買いこんできたものを並べ、いろいろなことを語りあいながら食事をするのは楽しかった。勇利は愉快な気分で過ごし、ヴィクトルも陽気に笑っていた。食事が終わり、さて帰ろうかなと思ったところで、ヴィクトルが「何か飲もうか」と言い出した。 「あ、紅茶淹れる?」 「そうじゃなくて」  ヴィクトルが酒瓶を取り上げて笑ったので、勇利は警戒した顔つきになった。 「いやだ」 「そう言わずに」 「酔っぱらって変なことになるし」 「大丈夫だよ」 「踊り出さない自信がないし」 「構わないじゃないか」 「ぐでんぐでんになるし」 「ちょっとだけ」 「そう言われて本当にちょっとで済んだことがない」 「俺が見ててあげるから」 「そう言われて本当に見ててくれたことがない」 「見てることは見てるよ。止めないだけで」 「ヴィクトル」 「まあまあ」  ヴィクトルは勇利の身構えた様子にくすくす笑った。 「今夜はちゃんと止めてあげるから。それに、外じゃないんだからいいだろう? 飲もう飲もう!」 「もー……また迷惑かけられても知らないよ」  勇利はしぶしぶ了承したが、飲むこと自体は嫌いではないし、ヴィクトルとまだ一緒にいられると思うとうれしかった。今日はめんどうななりゆきにはしないぞと飲みながら自分でも量を気をつけ、約束通り、ヴィクトルもよく見ていてくれた。勇利は気持ちが明るくなっていつもよりはしゃぐ程度で、正気を失うようなことはなく、今夜のふたりの会合は平和にのうち終了した。 「ね? 大丈夫だっただろ?」 「うん!」  勇利は酒瓶を抱きしめて頬を寄せたままへらっと笑い、こっくりうなずいた。ヴィクトルは勇利の反対の頬をつつき、「いつまで酒におぼれてるんだい」とからかった。 「かわいいけどね」 「ぼくがかわいいなんて、ヴィクトル酔ってる」 「いつもかわいいと思ってるぞ!」 「じゃあ年じゅう酔ってるんだ」  勇利はふふっと笑った。 「勇利、泊まっていくかい? もう遅いし」  ヴィクトルが提案した。 「うーん」 「帰るなら送っていくけど……」  それは申し訳ない。だったら泊まるほうがまだよいのではないだろうか。勇利も、いまから自分のアパートまで歩くのは億劫だった。 「泊まる」 「本当かい? じゃあ、これ、勇利の着替え」  ヴィクトルが下着やスウェットをひとそろい持ってきたので勇利は笑った。 「ヴィクトルの?」 「いや、勇利の」 「え? ぼく用? なんであるの?」 「こんなこともあろうかと思って。あとは歯ブラシと……」  なんだそれ。勇利は可笑しくてくすくす笑いながら浴室を借りた。ヴィクトルの家に来たことは何度かあるけれど、泊まるのは初めてだ。勇利は酔っぱらいの前向きさ、陽気さでわくわくしていた。ヴィクトルが入浴しているあいだ、居間のテレビを見てマッカチンと過ごし、そのあと、ふたりで寝室へ入った。 「勇利……、寝る場所なんだけど……俺の……」  勇利はそこではっと気がついた。そういえば、前にヴィクトルが泊まったとき、勇利は「何かされたのではないか」と勝手に勘違いをして焦ってしまったのだ。あれは本当に申し訳なかった。ヴィクトルがそんなことをするわけがないのに。そのことが彼に伝わっているはずはないけれど、勇利としては、「変なことは考えていない」「貴方のことは信用してる」ということを伝えたかった。 「お邪魔します!」  それで勇利は、いそいそとベッドに上がり、ヴィクトルを笑顔で振り返った。 「ぼくここで一緒に寝ていいんだよね? ヴィクトルと寝ていいんだよね」 「え? あ、ああ……」  ヴィクトルがびっくりした顔つきで勇利を見た。勇利は不審をおぼえた。この反応はなんだろう。まるで、勇利がそう言い出すなんて予想もしていなかった、というような……。 「──あ!」 「えっ?」 「もしかして、ヴィクトル、そういうつもりじゃなかった?」 「な、何がだい?」 「ぼくと一緒に寝るつもりなんてなかった?」  人のベッドにずかずかと上がりこむずうずうしいやつになってしまったのかもしれない。勇利はうろたえた。「ヴィクトルを信じてる」「貴方と一緒に寝るのはぜんぜん平気」と主張したいあまり、ヴィクトルの事情というものをまったく考えていなかった。 「ご、ごめん!」  勇利は急いでベッドから降りた。 「厚かましく、こんな……」 「あ、いや」  ヴィクトルが慌てたようにかぶりを振った。 「いいんだ。そう提案しようと思っていた」 「でも……」 「本当だ」  ヴィクトルが勇利の手を握り、真剣に言った。 「そうじゃなければ、寝室へ連れてきたりするわけがないだろう?」 「それはそうだけど……」  では、さっきの驚いた態度はなんだったのだろう。勇利がじっとヴィクトルをみつめると、彼は勇利の言いたいことに気がついたのか、ほほえんで説明した。 「いや、勇利が一緒に寝るのを歓迎するとは思わなくて。長谷津では断られたし……」 「ああ、なんだ……」 「酔ってるせいかな? ずいぶん親密にしてくれるんだね。うれしいよ」 「親密っていうか、だってこの前、ぼく、ヴィクトルに何かされたのかと思っ……」 「え?」 「あっ、いえいえいえいえ! なんでもありません!」  余計なことを言うところだった。勇利はにこにこしながらかぶりを振った。 「寝よう!」 「あ、ああ……」 「おやすみー!」  やはり酔っているのだろう。勇利は普段にはない明るさで挨拶し、一緒にベッドに入ると、ヴィクトルにぎゅっと抱きついた。 「えっ、勇利……」  ヴィクトルが緊張したそぶりを見せた。勇利はきょとんとして瞬いた。 「ん? あ、これだめ?」 「いや、だめじゃないんだが……」 「じゃあいい?」 「いいけど、まさかここまでされるとは……」 「そう?」  勇利は上機嫌で目を閉じた。ヴィクトルにくっついて眠るのは最高だった。ヴィクトルはぼくに何もしない。ぼくはヴィクトルを警戒したりしない。だって、ヴィクトルがぼくに変なことなんてするわけないからね! ぼくなんてそういう対象じゃないんだ。だからこうして抱きつくのだって当たり前。ヴィクトル、ぼくの信頼をわかってくれるかな?  それからは、勇利はたびたびヴィクトルの家を訪れ、夜は泊まった。酔っていなくても、泊まっていくといいとヴィクトルが言ってくれたし、また、勇利もそれがうれしかった。たまに、あんまりべったりでいるのもと思い、今日は帰ると言って早々に帰宅するのだが、すると勇利はさびしく感じ、泊まってくればよかった、と思うのだった。  勇利は、ヴィクトルのところへ泊まるときは、いつも彼のベッドで一緒だった。そして、毎回、��ィクトルにぴったりとくっついて眠った。酔いがまわっていないときは、これはどうかと思う、とためらうのだけれど、でも急にやめるのも変だしな、という気がし、何よりも、ヴィクトルに対して失礼なことを考えてしまったあのときの自分にあきれてしまい、彼にこころからの信頼を示したくなるのだった。  ヴィクトルはぼくのことをそんなふうに思っていない。反射的にあんなふうに考える自意識過剰を打ち消さなければ。そんな気持ちだった。ヴィクトルは勇利に興味なんてないのだ。きっと、勇利と裸で寝たって指一本ふれないだろう。彼は、勇利が泊まるときは、きちんと寝巻を着ているけれど。 「裸で寝ないんだね」  勇利はからかった。 「裸がいい?」  ヴィクトルはなぜか真剣に尋ねた。 「いいわけないじゃん」  そんなことをされたら落ち着かない。もちろん、警戒しているからではない。誰だって裸の人と一緒に寝るのは困るだろう。 「勇利、裸がいやなんだったら、あまり俺にくっつかないでくれるとありがたいんだが」  そんなふうに言われて勇利はきょとんとした。 「なんで?」 「なんでって……」 「嫌なの?」 「いや……、そういうわけじゃない。うれしいんだが、でも、勇利は俺が脱ぐと困るんだよね?」 「くっつくのと脱ぐの、何か関係あるの?」  ヴィクトルは相変わらずおかしなことを言う。勇利は笑ってしまった。 「やめて欲しいなら嫌って言ってよ。だったらやめるよ」 「いや……そういうわけじゃ……」 「じゃあいいじゃん」 「…………」  ヴィクトルはまったく変なのだった。  しかし、勇利はといえば、完全に満足していた。ヴィクトルと一緒に寝るのには慣れたし、朝起きて彼が隣にいても、「何かあったんじゃ」とうろたえることはもうないし、ヴィクトルのことをこころから信頼している。あのときはどうしてあんなふうに考えてしまったのだろう? 勝生勇利にも困ったものだ。 「お母さんがいろんなものを送ってくれたんだ」  ある日の帰り道、勇利は母から届いた荷物について話した。 「ヴィクトル宛てのもたくさんあるよ」 「ワオ、本当?」 「受け取りがてら、ぼくんちに来てくれる?」 「いいとも! じゃあ勇利の部屋でごはんにしよう」  楽しい夜だった。ヴィクトルは手土産だと言って持ってきた酒を開け、勇利もすこし飲んだ。ふたりは長谷津の思い出について語らい、ヴィクトルはそこで初めて会ったときの勇利の様子をからかった。 「バンケットではあんなに親しくしたのに、長谷津では……」 「だからバンケットのことはおぼえてないって言ってるじゃん」 「それが薄情だと言うんだ。そうやってすぐ記憶をなくす」 「すぐじゃないよ。最近はおぼえてるだろ。今夜だって……」  勇利は言いながら、大きなあくびをした。酒はそんなに飲んでいないけれど、昨日いささか夜更かしをしたのだ。 「眠いの?」 「すこしだけ。ゆうべちょっと……」 「ゆうべちょっと、なんだい?」 「うん……」  勇利はもう一度あくびをし、くすっと笑った。 「愛するひとが、ぼくを離してくれなくて……、寝かせてくれなくて」  ヴィクトルがぎょっとしたように勇利を見た。勇利は、「あ、もうないね」とヴィクトルのグラスに酒をそそぎ足そうとした。その手をヴィクトルがつかんだ。 「え、なに?」 「勇利……」  ヴィクトルはこわいくらい真剣な目をしていた。勇利は驚いてぱちぱちと瞬いた。 「なんでそんな顔してるの?」 「いまのはどういう意味だ?」 「え?」 「ゆうべ……」  ヴィクトルの声はかすれていた。 「寝かせてもらってないって……」 「ああ、うん」  勇利は笑い出した。 「何かしたのか?」 「何かっていうか」 「いったい何を……」  ヴィクトルは勇利を問い詰めた。 「誰としたんだ」  勇利は愉快な気持ちで白状した。 「ヴィクトルだよ」 「……え?」  ヴィクトルが瞬いた。 「昨日、ヴィクトルの演技の動画見てて」  勇利はくすくす笑った。 「もうやめよう、これでやめよう、ってきめるんだけど、ヴィクトルはその決心を突き崩してくるんだよ。次も見たいって思っちゃって。ぼくをぜんぜん離してくれないし、寝かせてくれないんだ」 「…………」 「それで」  勇利は口元を押さえてヴィクトルを見た。 「そういうこと」 「…………」 「わかりましたか?」  ヴィクトルは放心したような顔つきで勇利をみつめていた。勇利は時計へ目をやった。 「あ、もう遅いね。ヴィクトル、泊まっていく? いつも泊めてもらってるし。ぼくの家じゃベッドが狭いけど、それは我慢してもらって」  勇利は立ち上がり、いそいそと歯ブラシと着替えを出した。 「ぼくもヴィクトルの真似して、いろいろ支度してみたんだ。こういうの楽しいね。お風呂あっちだよ。入ってきたら?」 「…………」  ヴィクトルは相変わらず放心したまま浴室へ行った。変なヴィクトル、と勇利は思った。何を気にしているのだろう?  テーブルの上を片づけて食器を洗っているとヴィクトルが上がってき、勇利は入れちがいで入浴した。寝るというときになってもまだヴィクトルはぼんやりしており、ベッドに浅く腰掛けていた。 「ヴィクトル、ぼーっとしてるけど大丈夫? 酔った? ヴィクトルらしくないね」 「ああ……」 「はい、寄って寄って」  勇利はヴィクトルをベッドのすみのほうへ追いやった。意地悪ではなく、そうしなければふたり入れないのだ。勇利は笑いながらヴィクトルに抱きつき、頬をすり寄せた。 「ゆ、勇利……」 「なに?」 「それは……ちょっと」 「それってどれ? くっつくの?」 「ああ……」 「でもいつもそうしてるじゃん」  毎回しているのに今夜はだめだと言われても、勇利は承服できかねた。勇利にとって、ヴィクトルと寝るおりにこんなふうにふるまうのは、もう当たり前のことなのだ。ヴィクトルを信頼しておこなっていることに文句をつけられたくはない。 「しかし……」 「いいから寝ようよ。あ、狭すぎて気になる? ヴィクトルのベッド大きいもんね。この感覚、最初の夜以来……」  勇利のところ以外で、ヴィクトルがこんな狭いベッドで眠ったことはないだろうと思うと、勇利は愉快な気持ちになった。 「おやすみ」  挨拶して目を閉じた。ヴィクトルは何も言わなかった。もう寝たのかな、ヴィクトルはおやすみ三秒だから、と思っているうちに、勇利のほうもすぐにうとうとした。しかし──。  ふいにベッドがきしみ、ふとんがひっぱられて、勇利はびっくりした。何が起こったのかわからなかった。気がつくと身体が重く、ヴィクトルがのしかかってきており、勇利はぱちりと瞬いた。 「ヴィクトル……どうしたの?」 「無理だ」  ヴィクトルが差し迫った声でつぶやいた。 「何が?」 「無理なんだ……」 「え、そんなに狭い?」  勇利は慌てた。 「困ったなあ。眠れないほど? えっと、じゃあ……」 「勇利」  ヴィクトルが真剣に言った。聞いたこともないような声つきに勇利は戸惑い、どぎまぎした。 「は、はい……」  ついかしこまって答えると、ヴィクトルが端的に訊いた。 「いい?」 「え?」 「俺も今夜おまえを離したくない。寝かせないよ」 「俺もって、それはヴィクトルのことだし」 「勇利をそうしたいのはスケーターの俺だけじゃないということだ」 「え、なになに?」  それ以上はしゃべらせてもらえなかった。勇利はキスでくちびるをふさがれ、身体にふれられた。  確かに、離してもらえなかったし、寝かせてもらえなかった。  目がさめるとヴィクトルがいて、勇利は彼の寝顔をぼんやりとみつめた。そうか、ヴィクトル、ゆうべは泊まったんだな、とすぐに思い当たった。長谷津から荷物が届いて……ヴィクトルを呼んで……ヴィクトルが持ってきたお酒を飲んで……それで……それで……。  勇利ははっとして目をみひらいた。飛び起きると、ものすごい勢いでふとんをはぐり、自分の身体を確かめてみた。 「…………」  衣服を一枚も纏っていなかったし、白い素肌のいたるところに赤い痕跡が残っていたし、見た感じもいままでとは何かがちがって、情熱を知って変化したような──愛されることを体験した大人っぽさを帯びていた。  勇利は両手でおもてを覆った。  ……ヴィクトルに、あきらかに何かされてる……。  勇利の脳裏に、ゆうべのさまざまなことが思い浮かんだ。ヴィクトルの熱狂的なまなざし、熱い吐息、聞いたこともないような声、甘い言葉、男っぽいそぶり、せっぱつまった表情、そして、彼とひとつになった瞬間の──。 「あー……」  勇利は顔から手を離した。気持ちよさそうに眠っているヴィクトルを見下ろし、口をとがらせる。 「もー……」  勇利はヴィクトルのつむじにひとさし指を当て、ちょんと押した。 「信頼してたんだよ、ぼくは……」  ヴィクトルは何もしないんだって。だってずっとそうだったじゃない。なのに……。  勇利のくちびるが自然とほころんだ。楽しい気分だった。何もされないと信じて何かされたというのに、裏切られたという思いはまったく起こらなかった。それどころか、胸の奥があたたかく、どうしても笑ってしまうのだった。  ヴィクトルって……かっこよくて威厳があって品格が備わっていて紳士的で優しくて、陽気で愛嬌があってよく笑うすてきなひとだと思ってたけど……、それだけじゃなくて……。  ヴィクトルがうっすらとまぶたをひらいた。彼は青い目に勇利を映すと、たまらなくしあわせだというように微笑して手を伸ばした。ヴィクトルは、いつもふたりで眠るときとはちがって、何も着ていなかった。 「もうすこし寝よう……」  勇利はたちまち、みちたりていた精神がさらにときめいて、完全に幸福になるのを感じた。 「うん」  ヴィクトルに抱き寄せられるまま横になり、勇利は彼にくっついてまぶたを閉じた。もう一度寝て、目ざめたとき、ヴィクトルに訊いてみよう。  ──どうして最初の夜、ぼくを抱かなかったの?
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rhapeseuhans · 6 years
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The white dragon [+4 art by me!]
Chapters: 21/21 (complete)
Summary: During his pilgrimage to another town, Yuuri Katsuki discovered a huge white dragon wounded in the woods. Despite the fear, he decided that the right thing to do is help him, not knowing that they will form a strong human-dragon bond between them. Tags: 
Medieval AU. AKA Dragon!Viktor is very in love with his human.
Spanish version Russian version [ficbook] by vikadz
Chapter 19: The blue dragon (1/2) Chapter 20: The blue dragon (2/2) Chapter 21: Two adorable humans
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derbesteseemann · 5 years
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fem!vituuri
ты такая ну вовсе из неба и вряд ли бы кто-нибудь где-нибудь смог разыскать на морях и на суше прекрасней тебя ветерок
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ichiiichka · 6 years
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YOI Omegaverse Week
Day #2: Mating Run/Hunting | Scent/Marking
Nothing is as relaxing as cuddling and scenting (colouring?) each other after a long day.
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kare-valgon · 6 years
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I'm not feeling very well so to help encourage myself I decided to post the final panel of my latest nsfw mini comic.
In which Yuri gets carried away and bites somewhere he's not supposed to *wink*
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grigsby · 6 years
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IF THERE IS A BABY MACCACHIN IN THE ICE ADOLESCENCE THEN WHATS THE POINT
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suka51 · 2 years
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Night💤
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zukifettel · 7 years
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Ilustración del penúltimo capítulo de #Practicante Muchas gracias Aru-chan por todo tu arte. ¿Te gusto su trabajo? Visitala en: https://m.facebook.com/Aru-chan-301161953389723/" Penúltimo cap: http://my.w.tt/UiNb/9Z0JdV09pG
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randomsplashes · 7 years
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Yeah, you know how Viktor hates Yuuri's baby blue tie? What if Yuuri starts to wear the tie everyday that makes Viktor annoyed, only to find out that Yuuri has a collection of it then suddenly, "NOOOOO!!!!" he screamed dramatically that even rivaled Georgi and then Yuuri stirred up awake and ask, "What;s wrong?" and Viktor was panting heavily and even sweating and everything was just a dream... oh but the evil tie (in Viktor's POV) is just hiding in the deepest part of Yuuri's closet.
yuuri’s tie, probably:
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“The Incredible Flying Pork Cutlet Bowl”
Victor upping the antics with a chauffeur’s hat. ;) Positively fluffy <3
Inspired by LittleLostStar’s ( @iwritevictuuri ) “It’s a Sign”
Check out her work here!
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midnightmooncatcher · 7 years
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VICTUURI SPIDEY AU!!!!!
okay why haven’t i seen this yet??? was talking to @kais-jinora
first, yuuri as spiderman!!!!!- awk shy genius kid, doesn’t think a lot of himself and doesn’t have a ton of confidence
mary jane victor!!!!- like how perf with waiting on him and watching from the shadows and like knowing and gaaaaaah
And then the confidence increase with spidey powers and like constantly having to hide things and being flustered and like UPSIDEDOWN SPIDEY KISS!!!!!
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thedurins · 7 years
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0nate6 · 7 years
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Cute husbands and the fairy godmother of Russia & his boyfriend 🙏🏻
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