選詩集『poetryactivist』
選詩集『poetryactivist』目次
1.「青春プリズム(詩集『十代プリズム』より)」
2.「強がり(詩集『真夏の誘惑』より)」
3.「#シュウカツ(詩集『もしも、昨日の僕をぶん殴れるなら』より)」
4.「波巣(詩集『現代神話』より)」
5.「BUZZのキューピッド(詩集『Black Star』より)」
6.「ぼくはラジカル・ティーンエイジャーに憧れていた(詩集『蜂蜜』より)」
7.「異銀河旅団の帰還(詩集『異銀河旅行』より)」
8.「DEMAGOG RHAPSODY(詩集『ACID WAVE』より)」
9.「ゆびきり抱擁シンドローム(詩集『今日からはじまる永遠の青春』より)」
10.「いらない!(詩集『Aries 〜 白緋』より)」
11.「哀愁ぴえん(詩集『蒼糸楽団トーラス』より)」
12.「愛のバラッド(詩集『Gemini -Evergreen Story-』より)」
13.「No.4(詩集『Cancer -アダジュニティ-』より)」
14.「おにぎり、あなたは何が好き?(詩集『獅子の食卓』より)」
15.「SINCE 2022(詩集『いつかの君に逢いにゆく』より)」
16.「ヒプノシス叙事詩(詩集『CANVAS -時喰う人たち-』より)」
17.「革命の世代(詩集『夜明け前』より)」
18.「ことば叙事詩(詩集『言語天体 -The Kotobatic Love Orchestration-』より)」
19.「みかんのうた(詩集『グロリアス・モーニング』より)」
20.「21世紀生まれの僕らに(詩集『青春群像 -Youthful Crowd-』より)」
21.「愛してるよ(詩集『私たちの青春』より)」
22.「サヨナラは言わない(詩集『消費期限』より)」
23.「恋愛ポートフォリオ(詩集『Poetry Showcase 03:恩師へ / 大人になるってなんだろう?/ 私の十代』Bonusより)」
24.「電脳都市(詩集『Poetry Showcase 04:アジアの旅人』より)」
25.「じゃあね(詩集『人類再考』より)」
26.「ブルー・エデュケーション・ラヴァーズ(詩集『青春謳歌』より)」
27.「孤独な海(作品集『GIFT2020』より)」
1.「青春プリズム」
屈折する、
感情も、行動も、何もかも。
挫折する、
夢も、目標も、何もかも。
愛なき時代とは言わないけれど、
今の時代に希望なんてない。
何もせず、
何かを始めようとするわけでもない、
そんな奴に希望なんて叫んでほしくない。
僕らに芽生えた反抗心は、
ひとつの青春プリズムを産み落とすこととなった。
かつて、大人にその力で反抗しようとした学生たちのように。
表面的には沈静化したつもりでも、
学生たちにはずーっと芽生え続けている。
大人にもなれず、子供にもなれない。
ジレンマが僕たちを大人にする。
2.「強がり」
【1】
旅行鞄に
夢を詰め込み
独り旅に出たあの日
手を振る君が
贈ってくれた
赤いミサンガを見つめてみる
トンネルを抜ければ
広がる摩天楼
これから始まる物語(ストーリー)
想い浮かべて
胸を膨らませた
都会の新たな暮らし
生きるために何が要るのだろう
悲しみか?
それとも歓び?
涙の果てに何が見えるかなんて
誰もわかりはしない
碧い海に
強がりな僕
孤独を抱きしめて
君に逢える
その日信じて
憂いを越えてゆく
【2】
君のため息
淡いベッドシーン
大人への階段
登るための旅
エンディングはない
君と共に行こう
約束を交わした
放課後の教室
独り涙堪えても
流れる涙
君の笑顔が
黒板に映し出されて
忘れかけていた
君との思い出
生き生きと蘇る
悲しみを乗り越えるために
僕は何をすればいいんだろう?
諦めか?
目を逸らすのか?
きっと答えはひとつじゃない
淡い河に
強がりな僕
弱さを抱きしめて
君に逢える
未来を信じて
自分を越えてゆく
【3】
決して忘れることはできないだろう
君と過ごした青春の頃の思い出
僕はここで夢追っている
現実と真実の闘争
淡い目論見 脆い約束
今僕は何処にいるのだろう
水たまりに
強がりな僕
青春プリズムよ
君に逢える
希望を信じて
夢を叶えてみせるから
碧い海に
強がりな僕
哀しみ抱きしめて
君に逢える
流星を信じて
涙を越えてゆこう
もう強がったりしないから……
3.「#シュウカツ」
埃だらけのアルバム
捲ってみれば
あなたと過ごした日々
眩しく光る
純情な日々
みなぎる若さは
今の僕らに
無縁だけど……
何度も喧嘩して
何度も微笑んだ日々
青春の終わりが見えてくると
当たり前が輝きだした
別れの日に
涙は要らない
笑顔で送り出してくれ
いつまでも泣いてちゃ
君らしくない
いつかまた逢えるから
いとしさ せつなさ
ぜんぶ閉じ込め
君に最後の愛を
ここに贈ろう
青春のときめき
思い出してみれば
あなたと暮らした日々
まるで走馬灯
若さに溺れ
何も言い出せず
堂々巡り続けた日々
それも蒼さか?
別れの日に
涙は要らない
笑顔で送り出してくれ
クヨクヨすんなよ
君らしくない
必ずまた逢えるから
希望 絶望
ぜんぶ閉じ込め
君に最後の愛を
ここに贈ろう
埃を被った小説の
栞はあの日のまま
さらば思い出よ
愛しき日々よ
さよなら
君と暮らしたこの家
出逢った日に
もう一度戻れたとしても
やり直したいとは思わない
君が好きだよ
この胸に飛び込め
必ず幸せにするから!
別れの日に
涙は要らない
笑顔で送り出してくれ
人生の終わりに
涙は要らない
笑顔で送り出してくれ
いとしさ せつなさ
ぜんぶ閉じ込め
君に最後の愛を
ここに贈ろう
一緒にいてくれて
本当にありがとう
4.「波巣(なす)」
通知音
通知オン - 通知オフ
通知待ち
フォロワー数
フォロー - リムーブ
フォロバは精神安定剤(medicine)
僕らはこの波で
波に乗れずに
溺れそうな身体を
無理に支えて
僕らはこの波を
希望と信じて
今日を生きている
フォロワーの数がなんだ
フォロバされないからってどうなの
所詮 形のない関係なのに
接続する 現実生活(real life)
減速する 心(Heart)
使い捨て 素材(contents)
サイバーパンクを誰もが夢見ている
いい気になってんじゃねえと
お前に叫びたい
遥か後ろにいると思い込んでいる
僕は僕じゃないさ
この波に真実(ほんとう)を求めてはいけない
虚無と虚像に騙されてるだけさ
僕は僕じゃない
君も君じゃない
少女のように見える人も
実はおじさんなのかもしれない
加工アプリ 音程調節
声も 映像も 姿も
自由自在 魔法逃避
そこにいるはずの人が
ヴァーチャルに消えてく
絶望しても 誰も知らんぷり
誰かを傷つけるために
誰かをダシにしてさ
右だとか 左だとか
あいつが気に食わねえとか
単なる思い込みが
社会現象になる
あの有名人(スーパースター)を
この声で苦しめよう
波は人を変えてしまう
依存は人を殺してしまう
ヒットは崩壊する
消滅した世論
ニュースや新聞がどんなに叫んでも
時代は変わらない
季節は過ぎてく
生き残るためには
受け入れる勇気も必要だ
目の前にある
吐息を感じて
すぐ傍にいる
あなたを愛して
確かめよう
わたしの波を
5.「BUZZのキューピッド」
寝ぐせをつけて
シワだらけの服で
ここに現れた
そんな彼が私のdarling
抜けてるとこばかりで
とても頼りなくて
時々ムカつくけど
そんな彼が私のhero
髪型を変えたら褒めてくれるし
メイクしたら「かわいい」って言ってくれるし
まるでスターになった気分ね
そんな彼が私のprince
今夜もカシスオレンジで
恋のBPM(鼓動)
フジヤマ越えて昇天しそうだ
明日もカシスオレンジで
赤く染まった顔が見たいの
寝惚け眼で
ドアを開けてみれば
恋のシャッター
こんな恋が世間にバレた
通知 つぶやき 無限大
慌てふためく彼が
ちょっと哀れに見えた
こんな恋に……
気分はdrama queen
倍々ゲームでフォロワーは増えてく
通知が止まらず慌てる
まるでスターになった気分ね
そんな彼に大好きのキス
今夜も夢のコスチュームで
キミのBPM(鼓動)
フジヤマ越えて
悩ましく身体重ねる
明日も夢のコスチュームで
赤く染まった顔が見たいの
私はBUZZのキューピッド
私がいなくなっても
私のこと 忘れないよね?
忘れたら 今度は取り憑くぞ☆
今夜のうちに荷物纏めて
次の彼の下へ……
今夜もgeekを惑わせて
愛のBPM(鼓動)
高鳴る彼を
艶やかに嘲笑う
明日もgeekを惑わせて
赤く染まった顔が見たいの
私はBUZZのキューピッド
明日はあなたのキューピッド
世界は私で回ってる
6.「ぼくはラジカル・ティーンエイジャーに憧れていた」
君に逢ったのはいつだろう。
過ぎ去りし日々、あなたに贈る愛の歌。
そして、とびきりのラブレター。
この素晴らしき愛のために、今日も歌い続けている。
ぼくらは貴方たちと共に、終わらない夢を追いかけている。
ぼくらは貴方たちと一緒に、永遠の愛の歌をここで歌い続けている。
ひとつ、告白しよう。
ぼくはラジカル・ティーンエイジャーに憧れていた。
貴方のようになりたかった。
貴方みたく素敵な歌を作りたかった。
でも、今のぼくはダメだ。
どこにでもいるような、普通に満足したままの猿だ。
だからこそ、貴方たちの背中を追いかけたい。
届かないかもしれないけれど、適わないかもしれないけれど、せめて……
同じ時代を生きる歓びを噛み締めたい。
「諦めない夢は終わらない」
確かに、貴方はこう言った。
ぼくもこの言葉を信じている。
どんなに不器用でも、諦めなければ、頑張り続ければ、きっと夢は叶う。
——創作者になりたい!
あの日、ぼくは夕陽に向かってこう叫んだ。
今のぼくは何処にいるのだろう。
どの道を進んでいるのだろう。
先の見えない時代で、ほんとは怖いんだ。
世界をどんなに変えたくても、自由に動いてはくれない。
思い通りにならない、上手く進めない。
だから、ぼくはラジカル・ティーンエイジャーに憧れていた。
ただ、あの時代の熱に、憧れていたんだ。
7.「異銀河旅団の帰還」
ひかりが現れ
すべてを飲み込んでいく
僕らの翼は
宇宙に消えていく
終わりが来たのさ
還る日が来たのさ
僕らは役目を終え 宇宙に還るとき
ブラックホールに吸い込まれる仲間へ
静かな歌声 天使の微笑み
目の前に広がる
ひかりがささやかな贈り物になる
希望を持って帰ろうか
自由になって帰ろうか
語らうのは……
幸せと僕らが犯した罪
微睡むのは……
愛しさと僕らが犯した罪
舟は語るよ
ひかりは語るよ
異銀河旅行を僕らに贈ってくれたのは
明日への希望と
その先にある���期待”を
抱きしめるためなのだろう
やさしさの祝福
ぬくもりのファンファーレ
僕らが旅に出てから
母なる星が選んだ道は
何も知らない僕らの舟を
抱きしめることだった
絶望した神々は再生を選んだ
見たこともない渦に
僕らは吸い込まれていく
何千兆のひかりは
僕らに語らずに
人がすべてを悟ったとき
息の根をとめるだろう
地球は碧く
美しく輝く……
地球は碧く
美しく輝く……
喜びも 怒りも 哀しみも 楽しさも
誰かのタクトに導かれて
結末へ向かうだろう
もう誰にも
止められはしない
手遅れになったとき
やっと人は気づくだろう
仲間たちの涙が
真実を示すだろう
地球は碧く
美しく輝く……
地球は碧く
美しく輝く……
これが涙か
地球の涙なのか
嗚呼……
嗚呼……
嗚呼……
8.「DEMAGOG RHAPSODY」
幸せになりたくない人なんていない
優しくなりたくない人などいない
淋しいのがいいって人はいない
怒られるのが好きな人もいない
ああ 愚民たちよ なぜ君たちはそんなに愚かなのか?
ああ 愚民たちよ どうして君たちはそんなに馬鹿なのか??
悲しいほど静かな街の中で
ただ大好きなものを投げ捨て
俺はここまで歩いてきた
素直に夢を追いかけてきた
ラララ ラララララ
ラララ ラララララ
文句を言う前に
君のやるべきことをやれよ
誰かをアジる前に
君のやるべきことをやれよ
言いたいことを言えば
風の噂で火は巻き上がり
還ってきた時には姿を爆弾に変え
俺の前で導火線が切れる
あきらめろ もう遅いぜ
あきらめろ もう遅いぜ
声を挙げるのが遅すぎたのさ
もう止まりはしないのさ
暴走電車にようこそ
華やかな宴にようこそ
怒れ 怒れ 怒れ 怒れ 怒れ
笑え 笑え 笑え 笑え 笑え
ぴえん ぴえん ぴえん ぴえん ぴえん
しくしく しくしく しくしく しくしく しくしく
自分がヒーロー気取りで
正しさの意味さえ知らずに
君は正しさを語るつもりなのか
それならケチャップを丸呑みしてまで
苦労の道を歩むことはないだろう?
おかしいことはおかしいと言うのだ
違うものは違うと言うのだ
寂しいときは寂しいと言うのだ
せつないときにはせつないと言うのだ
神がこの星を創り
俺たちがここに産み落とされた
宇宙の法則の中
流星群に乗り 飛びたて
夜が嵐に包まれて かつてない狂騒
明日は闇に覆われて かつてない競争
着せ替え人形のように
お前も変わり身が得意だな!
壊してばかりじゃ何も始まらない
叩いてばかりじゃ何も産まれない
涙ばかりじゃ何処も渡れない
争いばかりじゃ夢も翔ばない
華やかな週末に 綺麗なドレスで着飾って
鏡の間 集結する若人よ
ひどく暑い夏に あの橋を駆け抜けてゆく
髪を束ねた 少女ランナー
黒雲に青空は見え
彼方には遥かなる山
その滾るような美しさ
忘れかけてたもの
子供たちのあどけない微笑み
淋しかったから 声をかけてみよう
ロックは死んだ ロックは死んだ ロックは死んだ
サイレントマジョリティー
広場に人は集まり
まだ終わってないと声を挙げる
意味がないと知っていても
変わる可能性がある限り
闘い続ける 走り続ける それが人の慣性
ダイスを振れば
転がる石のように
気まぐれに時代は変わる
誰かの声に揺られて
転がる石のように
気まぐれに世間は変わる
最高の詩があれば
世界も変わるはずさ
もう一度 信じてみたい
もう一度 愛してみたい
愛する勇気をみんなで持てば
きっと世界は良くなる
パンドラの函を開く前のように
カオスのない世界
まだ物語は始まりすらしない
人間なんだもの
毎日 君も生まれ変われる
世界はもっと良くなる
9.「ゆびきり抱擁シンドローム」
あなたは頑張っているよね
頑張れないこともあるよね
もう頑張らなくていいよ
頑張れなくてもいいよ
その一言がどんなに心を軽くしたか
あなた次第でわたしは空を飛べたのに
精一杯生きてる
あなたは頑張りすぎてる
今日くらいは深呼吸してさ
好きなように生きてみようよ
いつか頑張り方がわからずとも
ちゃんと生きていけるようにって
ここで指切りしよう
あなたに言われたこと
今も覚えているよ
もう頑張らなくていいよ
わたしが見てたから
その一言がわたしをどれだけ救ったか
言葉次第でわたしは散ってたかもしれない
性懲りも無く生きてる
あなたは頑張りすぎてる
今夜くらいは深呼吸してさ
好きなように生きてみようよ
いつか生き方がわからずとも
ちゃんと生きていけるようにって
ここで握手しよう
あなたが人生にサヨナラを告げる日まで
どんなに幸せでも憂鬱でも
生きていかなきゃいけないのだから
わたしが出来ることはなんでもするよ
この一言があなたを傷つけたことに気付いたのは
あなたが死んでからだった
精一杯生きてる
あなたは頑張りすぎてる
今日くらいは深呼吸してさ
好きなように生きてみようよ
いつか頑張り方がわからずとも
ちゃんと生きていけるようにって
ここで指切りしよう
ここで生きたあなたは
ほんとに頑張りすぎてた
今日くらいは泣いてもいいよね
好きなように泣かせてよ
精一杯生きてる
あなたに気付けなかった
今日くらいは叫ばせてよ
ごめんね……
救いたかった……
独りよがりの言葉
馴れ合いの世界
好奇心で集う若者
薄汚れた社会
性懲りも無く生きてる
あなたは頑張りすぎてる
今夜くらいは深呼吸してさ
好きなように生きてみようよ
いつか生き方がわからずとも
ちゃんと生きていけるようにって
ここで握手しよう
いつか頑張り方がわからずとも
ちゃんと生きていけるようにって
ここで指切りしよう
いいや……
なんでもないよ
10.「いらない!」
あれもこれもいらない!
無駄だからいらない!
使わなさそうだからいらない!
気に入らないからいらない!
こんな世界で夢追いかけても
何も変わらないとわかっているから
夢なんていらない
愛なんていらない
いっそ全部捨ててしまおう
君もあなたもいらない!
この街にいらない!
社会にいらない!
間違えてるからいらない!
一生子供のままでいい
世界に大人なんて一人もいない
光なんていらない
影なんていらない
いっそ全部捨ててしまおう
人はいらない!
生き物もいらない!
地球もいらない!
太陽系もいらない!
星なんていらない
宙なんていらない
いっそ全部捨ててしまおう
時間はいらない!
過去も未来もいらない!
無も有もいらない!
ありとあらゆる偶然も必然もいらない!
いらない!
いらない!
いらない!
11.「哀愁ぴえん」
寝ぼけ眼に
目覚ましパニック
DOKIDOKI☆FORTUNE
調子はどうだい?
苦し紛れの
とびきりスマイル
遅刻ごめんね
その場凌ぎ
“夜空を繋ぐふたりの愛は
渚に揺れる波のよう”
やけに文学的なキミの言葉
恋の終わりは突然やってくる
そんな時はぴえん
どんな時もぴえん
魔法の言葉で時代変えよう
やっと会えたぴえん
話聞いてよぴえん
ポンポンポーンで青春天国
いつでもどこでもぴえん日和
Love Love Love 哀愁ぴえん!
カルシウム足りない
愛も足りない
TARINAI♡DUKUSHINO
切ない友情
“あなたはいつもウワベだけだね”
別れ際のキミの言葉
一生許さない
そんな時はぴえん
どんな時もぴえん
キュンキュンバンバン あの歌みたく
忘れたくてぴえん
泣きたいよぴえん
キラキラ輝く青春天国
いつでもどこでもぴえん日和
Love Love Love 哀愁ぴえん!
ドラマのような恋愛がしたい
雑誌のような顔になりたい
これが魔法の言葉
ぴえん ぴえん ぴえん
そんな時はぴえん
どんな時もぴえん
夕陽に向かって愛を叫ぼう
恥ずかしくてもいい
上手く言えなくていい
私らしくいたい
青春は終わらない
やっとわかったぴえん
大好きだぴえん
キラキラ輝く青春天国
いつでもどこでもぴえん日和
あなたがくれた 群青ぴえん
Love Love Love 哀愁ぴえん
12.「愛のバラッド」
悲しみの夜が
今日もやって来た
君との時間だけは
終わらないと信じてた
あの頃の俺達は
ずっと若かったね
君が傍にいる
意味もわからなかった
夕陽に照らされて
自転車を押して帰った日
アヤメの花を握ってさ
約束したこと
今も覚えてるよ
忘れたフリをしたけど
些細なすれ違いが
いつしか大きな傷になった
今だから言える
後悔してると
別れてもいいと言って
ごめんね
安らぎの夜が
今宵も明けてゆく
君と共に過ごした日々が
無性に恋しくなる
思い出話に
浸りたくはないが
夜が深くなる程に
後悔が止まらないよ
泣き明かした夜は
ずっと電話したよね
アヤメの花は枯れたまま
月の光を浴びて
今も覚えてるよ
無かったことにしたけど
些細な嘘が
心のかさぶたを開く
今だから言える
あの言葉の意味を
別れてもいいと言って
ごめんね
君のことだから
新たな恋を育むだろう
俺なんかよりずっと立派な恋人
でも忘れられない
忘れてはいけないんだ
忘れてはいけない気がする
過去に縋るなんて
こんなの俺じゃないけど
自尊心……
今も覚えてるよ
忘れたフリをしたけど
些細なすれ違いが
いつしか大きな傷になった
今だから言える
後悔してると
別れてもいいと言って
ごめんね
今だから言える
あの言葉の意味を
別れてもいいと言って
ごめんね
愛のバラッド
13.「No.4」
サヨナラを言う前に、
ちゃんと話したかったよ。
ごめんね、
ありがとう、
そして、
サヨナラ。
もっと話したかった、
あなたを知りたかった、
私を知ってほしかった、
人と分かり合いたかった。
僕らにはお互いに、
余裕などなくて、
ふとした言葉が君を、
傷つけていたんだ、
正直に言うと、
私もあなたの振る舞いに、
ちょっとムカついてたし。
だから、
たくさんの言葉に、
もう何も返さないまま、
無かったことにしてしまおうと、
削除キーを押したよ。
しかし、
時が経つほど、
言葉が重荷になって、
忘れられない過去に代わり、
傷口を開いてく。
二度と話すことなど出来ないが、
最後に一言だけ言ってやりたかった。
「君もさほど変わらないでしょ」
14.「おにぎり、あなたは何が好き?」
恋人とのランチタイム
互いにおにぎりを作ってくることにした
綺麗な三角は作れなかったけど
僕なりに頑張ってみた
中庭でランチボックスを広げると
恋人は僕のおにぎりに驚いた
高菜と昆布を入れたのだが
その組み合わせが不思議だったらしい
コンビニのおにぎりなら
梅とツナマヨがいい
でも折角自分で作るのなら
いつもと違うものを作ってみたかった
そんな話をすると
恋人はおひさまのように微笑んだ
この笑顔が好きだ
君を好きになった理由を思い出した
恋人がつくったおにぎりは
やさしい味がした
恋人も同じように思うのだろうか
表情と仕草が気になった
青空に雲がぷかぷかと浮かんでいるように
穏やかな時は流れていく
いつか別れが来るかもしれないが
今はこれでいい
恋人と過ごす
この瞬間が好きなのだ
だからこれでいい
ずっとこのままがいい
15.「SINCE 2022」
ひとつ上の先輩に憧れて
私もピアノを始めたよ
最初はこんなステージに立てるなんて
想像もしてなかったけど
今はあなたがいるから
どんな歌も声も力になる
大切な人や愛を守るために
今日もここで音楽を奏でるわ
三国ヶ丘のステージで
恋の歌を歌っていた頃
聞いてくれたのはふたりでも
心は胸いっぱいのぬくもりに満たされてた
今こそあの頃に感謝を
あなたと青春を謳おう
明日に向かって
一歩目を踏み出す
勇気があれば それでいいよ
夕陽が沈む寸前の公園で
あなたとよくセッションをしたよね
庄内の街で愛を叫んでいた頃は
まだ大人になりきっていなかった
いつか友と夢を語り合った日は
どんな歌も届く気がした
遠い国で音を見つめるあなたに
この声は届いているかな?
心斎橋のステージで
無邪気に歌っていた日は
どんなに叫ぼうとも明日は見えずに
帰りの電車で愚痴をこぼしてばかりだった
今こそあの頃に感謝を
あなたと青春を謳おう
夢があるなら
私と一緒に
勇気があれば それでいいよ
もう愛の歌を唄いたくはないと
恋人とぶつかった日もある
大恋愛が終わった夜
かつての友に久々に電話をした
嫌いになりかけていた音楽が
友と歌うだけでまた好きになった
私はやっぱり音楽しかないの
愛すべきものがわかった気がした
三国ヶ丘のステージで
恋の歌を歌っていた頃
聞いてくれたのはふたりでも
心は胸いっぱいのぬくもりに満たされてた
今こそあの頃に感謝を
あなたと青春を謳おう
明日に向かって
一歩目を踏み出す
勇気があれば それでいいよ
あなたと私のこのステージは
すべての物語の始まり
かつて私が音楽を始めた頃
無邪気に夢見てた場所
夢は叶えるためにあるもの
一緒に手を取り合って
私はそれが偶然音楽だっただけ
あなたとまだ見ぬ夢を叶えよう
今こそあの頃に感謝を
これからもあなたと……
青春を謳ってゆこう
16.「ヒプノシス叙事詩」
【A】
神秘の港で
新世代のブルースを奏でる少女
想像は現実を越え
さらなる超絶技巧を求める
走るウマグマ
心臓をすげ替えた男
虹色の牛が街をたむろし
不気味に帽子が笑う
その名は誰も知らず
その顔も知らず
いくつもの噂の果てに
虚構の素顔が生み出される
打ち棄てられたエシクス
解れたままのイデア
【B】
電気の武者が
やさしく老人の世話をする
おせっかいなほど丁寧に
不似合いな言葉を並べる
電子・光・管弦楽団
聖地巡礼
土曜・早朝・写真
百眼の巨人アーガス
この世のすべてを飲み込む
未だ序章 トリロジー
自動車の群れ
ハイウェイは狂騒に包まれる
突然雲の影
Crying Laughing Loving Lying
ロマニーの愛
オリビアの嫉妬
狂気が誘う
殺戮のハイタッチ
Pair! Pair! Pair!
第三世界の曙に
さらなる深みへ……
【C】
聖なる館
灰は燃ゆる
四枚目のウィッシュボーン
バンドよ駆け抜けろ
ブロードウェイ 眩惑される
競獅子 不安は募る
悪に染まる会社 運命のカード
見つからない……エルドラド
精神の波……いつかのトイレ
あなたがここにいてほしい
アラビアンナイト
火星の女神
荒廃した街角で
アメリカを越えてゆけ
己に酔いしれてもいい
悪戯電話プレゼンス
愛ゆえに泣き叫んだ後の
突然やって来た静寂よ
空が燃えている
生き物たちは笑ってる
【D】
究極 顔を合わさなくとも
大都会の孤独 乗り越えられる
スリリントンはロンドンで唄う
デイヴ・ギルモアのギターが唸る傍で
薄濡れの夢
トマトを食べろ
そして残ったのは三人の勇者
Never Say Die……
神に誓おう
宇宙を取り戻すまで
終わらない Resistance!!
血塗れの旅人
滅亡したインカ帝国
銀河のヒッチハイカー
ようこそ愛のドライブへ
【E】
やけに乾いた愛 - Yes, Sir!!
やけに吼える狼 - Yes, Sir!!
昨日逢えませんか?
夕闇をひとり
彷徨う少女
共同戦線
闇からの一撃!
【F】
銀河船VOYAGER
ダイヤモンドは粗く深く
君を見つめるだろう
恋の炎のままに
銀河船VOYAGER
ダイヤモンドは粗く深く
君を見つめるだろう
恋の炎のままに
銀河船VOYAGER
原子力で駆動する棲家
銀河船VOYAGER
狂気の先へ行こう
ヒプノシス 永遠に
17.「革命の世代」
【A:革命の果て】
闘いの果てに
平穏は戻った
普通の暮らしは
今や過去のもの
街は静けさの中
リュートの音が響き
誰かの涙を語る
世界は変わった
【B:名誉の唄】
民衆の選んだ者が
独裁者に変貌する
誰も気付かぬまま
国は染め上げられていく
気づいた時には
もう手遅れだった
罪なき者が武器を取り
侵略者の恥も何処へやら
正義を信じてここまで来た
ある日突然現実に気付いたのさ
心に襲いかかる嵐の影
立ち上がらなければと決意した
いつか歴史は語る
物事の正当性
勝者を見つめて
敗者は怨念を秘めた
あの頃の僕らに想像もできない
現実は空想を凌駕するもの
自分自身の正義を信じて
かつての王朝を倒すと決めた
身の危険は厭わず
時代を変えるために
君よこの手を取り
明日を掴み取れ
【C:我に勝利を】
陰謀の果てに
街に民衆は集う
未来を見つめ
誓いあった者達
慌てふためく
独裁者の姿
宮殿に人々は集い
正義が勝利した
センセーショナルに
報道は伝える
不変の壁や体制が変わる
民衆は時代を破った
【D:英雄よ理想郷を築け】
英雄が舵を取る
新しい時代の到来
人々は祝福し
未来を思い描く
まだ見ぬ青春
素晴らしき人生
ロックスターは夢を語り
俳優は銀幕で躍る
理想郷の幕開け
【E:歴史は繰り返す】
降り止まぬ雨が本質を語る
笑顔の裏に果てなき欲望
力は人を変えてしまったのか
群衆は再び涙を流す
【F:革命よ再び】
S通信の一報が
センセーショナルに
世界を駆け巡る
見えない壁に
囲まれた国にも
言葉は透過する
涙が怒りに
怒りは力に
もう一度自由のために!
英雄は悪魔になった!
【G:止まらないカオス】
なぜ人は過ちを犯すのか
痛みを厭わないのか
怒りは届かぬまま
今日も晴れ渡る
この空も皮肉屋になったのか
【H:運命の唄】
家の中に国境が敷かれ
離れ離れになった恋人たち
好きになった時は同胞だった
結ばれた時も想いあっていた
新たな生命が生まれた瞬間
あの革命が起こり
家族は引き離された
Breaking News!!
Shall We Dance!?
踊らされる人
Breaking News!!
Shall We Dance!?
罪なき人
終わらない
怒りの果てに
【I:時は語る】
数十年の時が僕らに流れた
子どもの顔も思い出せぬようになった
いつか見た夢の痕は
無邪気な幼虫の踊り場
【J:自然摂理】
すべては自然に還る
安らぎと不変の時
風は憂いを吹き払い
光は生命を育む
時代は天の思うがまま
【K:革命の果てに僕らは……】
闘いの果てに
平穏は戻った
普通の暮らしは
今や過去のもの
街は静けさの中
リュートの音が響き
誰かの涙を語る
世界は変わった
嗚呼 僕らは何のために
立ち上がったのだろう
歴史は僕らを慰めない
現実が今を語る
革命の果てに僕らは大人になった
18.「ことば叙事詩」
(地球誕生)戦禍の中に
言葉はいらない
理想を掲げ
使命を果たせばいい
悪魔の声が
この胸に轟く
理想の先に
何を攫めるというのか
過ちの果てに
掴み取った未来を
壊す奴を許すな
悪魔に悪魔が笑う
単語(恋)
文節(してる)
文章(恋してる)
恋してるの訳し方を
76億の民は知らない
I Love Youじゃ訳せない
言葉の隙間にある真意よ
曖昧さを愛するがゆえに
一元的な正義に恐怖する
そのくせ一つになると
揺るぎない連帯
流されることに気づかぬフリして
考えるのを諦めた
君の声に怯えて
僕らは顔を覆ったまま
やりたいことをやるために
悪事に手を染める
君と目を合わせず
僕らは安らぎを探して
やりたいことをやるために
自分を妥協する
僕らはいつ歌うことを覚えたんだろう?
僕らはいつ踊ることを覚えたんだろう?
忘れはしないよ
君がそこにいたこと
青春と後悔の果て
涙は止まらない
全部捨てちまえ!
言葉も愛も捨てちまえ!
炎で燃やしてしまえ!
日常を投げつけてしまえ!
激情のままに踊ろう
退屈な言語天体で
踊り明か��ことしかできない
自分の無力さを嘆く
あいうえお かきくけこ さしすせそ
たちつてと なにぬねの はひふへほ
まみむめも やゆよ らりるれろ わをん
憎み合うために 生まれてきたわけじゃない
恨み合うために 生きてきたわけじゃない
未だ終わらぬ戦争よ
人を嘲笑う差別や格差よ
最後に誰が笑うのか
言葉は生まれ
もうすぐ死んでゆく
協調という名の欺瞞が見えた
それでも生きてゆく
強く分かちあう
言葉にまだ出来ることはあるさ
まだ死ぬ時は先さ
サイバー空間の中で
僕らが生きる意味を探そう
言葉の価値を決めるのは
他でもない君自身さ
今生きている君こそ
ことば叙事詩の主人公
19.「みかんのうた」
みかん みかん 僕のみかん
みかん みかん 君のみかん
みかん みかん 一粒つぶ
みかん みかん 一口でも
酸っぱくて顔を顰めるキミも
甘くてサムズアップするキミも
まるで恋愛のようなその味に
ずっと一目惚れしたままなんです
僕らはきっとみかんが好き
あなたもきっとみかんが好き
和歌山 愛媛 静岡 熊本
みかんと一緒に大きくなる
20.「21世紀生まれの僕らに」
【1 - 子どもたちの詠唱(アリア)】
20世紀終わりの狂騒を
僕らは何も知らない
21世紀始まりの歓喜を
僕らは何も知らない
安らかに生まれ
健やかに生きる
希望に満ちた未来へ向かう
子どもたちの声が聞こえるか
【2 - 夜明けの戦争狂交響曲(シンフォニー)】
平和へ向かっていたはずの
人々たちの群れに
Shocking!!
崩れ堕ちた平穏に
慌てふためく為政者たち
群衆は熱に浮かされたように
戦争へと足を進める
時は満ち
風は起こり
安らかな日々を求める
群衆は熱に浮かされたように
戦争へと足を進める
独裁者のせいでも
民主主義のせいでも
メディアのせいでもない
すべては群衆が求めたこと
あまりに無責任だ
他意も悪意も鋭意もなく
無邪気に……
世界は塗り替えられていく
【3 - 精神科医の輪舞曲(ロンド)】
ニュースは女と子どもに寄り添う
群衆は報道に涙する
本当に目を向けることまで
感傷的な声に惑わされ
大切なことが見えなくなる
性別と年齢の調和が
彼らに武器を持たせた
近隣に住む友人は
国境線の向こうにいる
ふと地面を見ると
転がる死体の群れ
傷ついた首に光るネックレスが
友の面影を語る
もう武器は持てぬ
人は殺せぬ
愛と正義のために
精神科医は夜明けまで
休みなしに働く
この戦争はもう
永久(とわ)に終わらないのか
誰のための戦争か
戦争は何を生むのか
現状打破への焦りが
人類最後の叡智を
隣人へ遣わす!
踊る精神科医
笑う精神科医
嘆く精神科医
【4 - 電子幻想曲(エレクトリック・ファンタジア)】
世界を揺るがす
銀色の箱に
新世界への扉が
開こうとしている
音楽を1$で買えるようにして
インターネットの民主化を目論む
その先に何があるのか
誰も知らない
だけど……
禁断の果実は
すでに齧られてしまった
もう止まらぬ
止められぬ
シリコンバレー発の革命
世界を揺るがす
銀色の箱に
新世界への扉が
開こうとしている
【5 - スマートフォンの哀歌(エレジー)】
見渡せば
スマートフォン
見つめる人の群れ
聞こえない
スマートフォン
見つめる人の本音
感じない
スマートフォン
見つめる人たちには
味のない
スマートフォン
見つめる人が見ているもの
【6 - 正義の小歌劇(オペレッタ)】
独裁者が倒された
正義は勝った
歓喜に沸く群衆に
指導者は主張する
愛する人が傷ついて
目の前に現れる
そんな現実の中で
なぜ群衆は喜ぶのか
私にはわからない(何故!)
私にはわからない(今!)
私にはわからない(さあ!)
私にはわからない(変えよう!)
戦争は人を豊かにはしない
戦争は偽物の富を国家にもたらす
だから止められない
他人を唆して
都合のいい嘘で塗り固め
愛と平和の名の下に
無名戦士たちを戦場へ送る
私にはわからない(何故!)
私にはわからない(今!)
私にはわからない(さあ!)
私にはわからない(変えよう!)
ここからが本当の
戦いだ
【7 - アラブ奇想曲(カプリッチオ)】
銀色の箱が
塗り替えた世界は
指導者たちの横暴を
決して許さない
片手で収まる
銀色の箱は
写真も撮れるし
声も録れる
ひとりひとりが
かつてのマスメディア
ひとりひとつの
メディアを運営する
あなたの一声が
世界を変えられる
隣の国が出来るんだ
私たちにだって出来るさ
希望を見つけた
群衆は止まらない
影響を持つ人を
誰もが夢見る時代
SNSの海で巻き起こった嵐は
目に見えないままに
この国のアンシャン・レジームも
打ち破る!
気概を持て!
勇気を持て!
明日をこの手で創り出せ!
【8 - 群衆の舟歌(バルカローラ)】
安らかな眠りにつく
子どもたちに
平和の意味を尋ねられた時
君はどのように
言葉を紡いでみせるのか
希望に塗り固められた
虚構を伝えるか
それとも現実を素直に
言葉にしたためるか
何れにせよ
大人たちの態度が問われる
安らかな眠りにつけない
子どもたちに
生きる意味を尋ねられた時
君は如何にして
愛情を伝えられるのか
誇張に塗り固められた
誇張を伝えるか
それとも静かなる愛を素直に
言葉にしたためるか
何れにせよ
子どもたちはいつも見ている
【9 - 社会の小即興曲(インベンション)】
未曾有の危機に
うねりが生まれて
若者たちは
隙間を見つける
小さな成功が
大きな夢へと導く
大人になって忘れていた
目の前の物事へ
夢中になること
蹂躙されてきた
人々が声を上げる
その背中を見て
群衆が時代に乗る
明日なき暴走が
希望の未来を創る
目の前の物事を
ひとつずつ変えていく
でも置き去りにされたままの
大人や老人はどうなる?
目の前の物事を
ひとつずつ変えていく
時代遅れと糾弾され
存在理由すら若者は否定する
踏み台にされたままの生き物たち
彼らの断末魔が聞こえた
過去と未来を繋ぐ
果てしなき分断の影
そこにあるのは
潜在的現実
何者でもない人に
名前が生まれて
かつてない時代の波に
誰もが流されたまま
Fire! Fire! Fire! Fire! Fire!
Equally! Equally! Equally! Equally! Equally!
【10 - 21世紀夜明詩(オーバード)】
今こそ!
地球に
目を向けよう
今こそ!
君だけを
愛してみよう
世界を変えるには
目の前の私から
この星を守りたいなら
目の前のあなたから
21世紀の始まりに
生まれた僕らの物語は
もう一度ここから
愛と希望を胸に旅立つ
世界では
この瞬間も
誰かが生まれる
世界では
この瞬間も
誰かが死んでいく
戦争を知らない子どもがいるなら
戦争しか知らない子どももいるだろう
空腹を知らない子どもがいるなら
空腹しか知らない子どももいるだろう
今こそ!
できることを
私の力で
今こそ!
できることを
あなたの思うがままに
21世紀生まれを誇りあるものとして
未来の子どもたちに語り継げるように
今何が出来るのか考えてみよう
そこから新たな未来が生まれるさ
夜明けはきっと
すぐそこに
21.「愛してるよ」
愛してるよ
本当だよ
嘘じゃないよ
信じてよ
そりゃ束縛もしたけど
誰よりも好きだから
前より増えた煙草の本数
ちょっとした変化に気付けない私
本音を気軽に言えない彼は
合鍵を置いて家(ウチ)を出た
そりゃ束縛もしたけど
誰よりも好きだから
愛してるの
気付いてよ
抱きしめてよ
逃げないでよ
そりゃ束縛もしたけど
誰よりも好きだから
人懐っこい笑顔の裏側
なんで言ってくれなかったの?
ウチら恋人同士じゃんか
私に何か不満があったの?
そりゃ束縛もしたけど
誰よりも好きだから
愛してたよ
わかってよ
嘘つかないよ
目ェ合わせてよ
そりゃ束縛もしたけど
誰よりも好きだった
ゴミ箱にはありったけの写真
想い出を捨ててしまうよう
そこにもうあなたはいなくて
独りになったことを自覚する
そりゃ束縛もしたけど
誰よりも好きだった
愛してる
愛してたんだよ
あなたのこと
心から愛してた
22.「サヨナラは言わない」
時の魔法は
川の流れに似て
君が呼吸するうちに
少女を大人に変えてゆく
手を伸ばせば
太陽に手が届きそう
何度も折れた翼を縫い合わせるうちに
君は空を飛べる鳥になった
裸足で駆け抜けた
海岸線に行く度
あどけない微笑みが美しすぎて
涙が止まらなくなる
今際の別れではなくとも
君と別れるのがつらいよ
サヨナラは言わない
また逢おうと伝えたい
僕は君を愛していたから
初めて逢った日は忘れられない
今日もこの先もずっと
君がここにいたこと
僕は永遠に語り継ぐから
何度も涙した Graduation
春は待たない Destination
心がつらくなる Sensation
君の時代 My Generation
愛する意味さえわからず
涙色の雨に溺れて
絶望に打ちひしがれた日々よ
そんな時も君がいたから
僕は強くなれたんだ
あの舞台で歌う君に
青春を重ねた
風に吹かれて
揺れるカーテン
春の夜明け前は静寂の中
ここから君は夜明けを待ち
大いなる翼を広げて旅立つ
涙も憂いもすべて置いてゆけ
どんな嵐も糧になるさ
初めて逢った日は忘れない
今日もこの先もずっと
君がここにいたこと
僕たちは永遠に忘れない
梅の花が咲く
美しい満月の夜
桜はその時を待ちながら
別れを見送る
君はもう飛べる鳥だ
この坂道から……
23.「恋愛ポートフォリオ」
最初に告白した彼は
クラスの人気者でした
スポーツも出来て頭も良く
誰もが羨む存在
でも賢いがゆえに影もある
彼には二人目の恋人がいました
二番目に付き合った彼は
図書室が好きでした
静かに見えて冗談がわかる
付き合うほど好きが増していく
四季を重ねたって
少しも飽きずに
いつまでも傍にいたいなんて
公園で言葉を交わしたこともある
でも転校してしまった
小学五年の秋
木枯らしが切なすぎて
もう恋なんてこりごりだと
闇雲にスポーツに打ち込んで
気付けば中学に進学し
髪をばっさりと切った夏
同じ部活の先輩に思わず恋をした
あっという間に距離は縮まって
ふたりは友達以上になり
三番目の恋をした
あなたは私を好きだと言うけど
実は他の女の子が好きだった
気づいてたのです
机の中のプレゼントに
ただ、やりたいことをやればいい!
ただ、やるべきことをやればいい!
ただ、やれないことをやればいい!
先輩方の背中を追い
ここまでやって来たんだ
最後にスリーポイントを決めたら
全国大会への切符を掴む
私たちは跳べると信じていたのに
私のせいで跳べなかった
そんな時に慰めてくれたあなたが
四番目の恋人になる
あれほど優しかった人が
付き合った途端に豹変する
言葉も交わしてくれなくなり
身体にアザは増えていく
そんな時に救ってくれたのは
幼馴染でした
男の子は信用ならないと
この時心から思ったのです
一本のビデオが運命を変えてしまった
私のこ���を誰も知らない街へ向かう
その音声は偽物であなたの陰謀が蠢く
それでも人は人気者のあなたを信じるだろう
桜の咲く季節にひとりでクラスに佇んでた
私に気付いた少年とふと目と目が合う
もう恋愛なんて二度としないと決めてたのに
あなただけは信用できると恋に堕ちたんだ
最初のキスはあなたから
ある放課後のこと
胸がこんなに熱いのは
初夏の陽射しのせいじゃない
あなただけは信用できると思っていたのに
また裏切られたのは
SNSの通知に気付いてしまったから
リコメンドは人の首を絞めることもある
あなたの温もりはすべて嘘でした
六番目の恋は自然発生的なもの
塾で隣の席に座ることが多かった彼と
いつの間にか付き合ってた
大した仲じゃなかったけれど
一緒にいて心地よかった
でも何かが物足りなくて
大学進学と共に別れた
Evergreen……
すべてが真っ白な季節
同じ学部のあなたに恋に落ちたのは
アイビー・ファッションが似合う
シティボーイなアイツよ
颯爽と現れる仕草と同じように
光の速さで浮気された
最初は気づかぬフリしたけど
そのままじゃいられない
誤魔化し合うだけの関係は
すぐに破綻していった
最後のキスは夏祭りで
私から切り出した
七番目の恋はこれでおしまいと
もう開き直っていました
誰もいない街
ヒステリックなニュース
何もすることがなくなった私は
マッチングアプリを始めた
最初に出逢った彼とは音信不通になり
次の彼は口を開けば
ケ・セラ・セラ
でも八番目の彼は他の彼とは違った
カメラが好きなあなたに思わず恋をした
だけど良い恋人に限って目の前から消えてく
さよならも言えないまま
この世界から去っていった
私に一言くらい言ってくれてもいいじゃんか
ひとりで死ぬなんて狡すぎるよ
九番目の彼は狡猾だった
元カレの死に落ち込んだ私を
まるで飲み込むように恋に堕としたの
そんな関係は長続きしない
安らぎも温もりもなく
私たちはどこへも向かえなくなっていた
あなたと出逢うまでは
恋なんか信じられなくて
いつかは裏切られると
心に過っていた
何度恋に期待しただろう
そして何度裏切られただろう
ある時は浮気され
ある時は無関心だった
さよならを告げるまでは
恋は終わらないけど
自然に終わった恋を見るたび
胸が痛くなる
それでも誰かを好きになることを
あきらめたくはない
誰かを愛していくことを
あきらめたくはない
星空にあなたと誓う
幸せな未来を信じて
たしかな明日を信じて……
十番目の恋人よ
あなただけは信じてもいいですか?
私愛してもいいですか?
24.「電脳都市」
九段下の駅から
遥か彼方を見つめる
少年たちのその眼に
希望はあるのか
安らぎなどない世界
明日など見えない世界
強さも正しさも
正解にはならない
さすらうのは風だけでなく
人も同じだから
時代の波に押し流されて
居場所を見失う
山積みになったままの社会問題たちよ
政治家は居眠りしながら
子羊たちの収穫を待つ
シティポップに浮かれて
クールジャパンに惑わされ
輝ける日々に憧れた者が
描いた五輪の夢
あきらめにも近い
若者たちの視線に
大人は気付かぬまま
カオスへ突き進む
魑魅魍魎たちが闘う
電脳都市TOKYO
「淋しい」なんか見向きもされず
ビル群に舞うだろう
もう泣かないと決めた日をもう一度思い出せ
君は君の責任で生きるしかない
大人が選んだ道なのさ
青春と現実の光と影の狭間
少年少女たちは苦悩し
いつしか夢を失くしたまま
子供を卒業する
真っ黒なスーツと
後ろに束ねた髪
パンプスは血だらけで
まるで本音のよう
ソーシャルメディアで誰もが繋がれる時代に
見たいものも見たくないものも
すべてが無編集のまま
拡散される
資本主義が紡いだ世界に疑問を抱いた人
そしてこの世界を諦めかけた人
さらに夢だけを見つめる人
魑魅魍魎たちが蠢く
電脳都市TOKYO
新しい夜明けへのCollaboration
怒りと痛みのこれから始まる
Harmagedōnはどこへ向かうのか?
魑魅魍魎たちが棲む
ここは電脳都市TOKYO
25.「じゃあね」
その日は雨だった
玄関にはハイヒール
胸騒ぎがしてドアを開けると
ふたりは抱き合ってた
何も言う気にならず
涙を流しても
あなたは腰を揺らすばかり
こちらに気付きもしなかった
星空を見上げて
愛を誓い合った
あの日のやさしさは何処へ
なぜ貴方は貴方を殺してしまったの?
話をしようよ
腹を割ってさ
最後くらいは
本音で言ってよ
浮気しても止めないけれど
せめて家には入れないで
私を殺すつもりなのか
それでも答えは返らない
ある日荷物が消えた
貴方はここからランナウェイ
そしてコロナが始まり
新たな恋を探す
遥かなる愛を求め
恋の歴史は深くなる
それでも愛には出逢えず
貴方を夢に見る
模造真珠の指環
いつかの贈り物
青春色の記憶は癒えず
今も貴方の面影がコンパス
貴方にサヨナラ
突きつけられるなら
胸に残らない
水に流せるかも
大好きだった狂おしい時間
心から愛してた
胸騒ぎがした日から私は
変わってしまった
あんなに優しい人が
女で変わっていく
私にさえ向き合えないのに
誰と向き合うの?
シャネルのドレスを着た彼女と
ヴィスポークのスーツを着た女が
有楽町マリオンの表で
メルツェデスに乗り込む
それでもなお
貴方と話したい
別れ話でいい
サヨナラが言いたい
貴方にサヨナラ
突きつけられるなら
胸に残らない
水に流せるかも
狂おしいほど貴方を
心から愛していた
愛おしいほど暮らしを
守ろうとしていた
26.「ブルー・エデュケーション・ラヴァーズ」
ついに言えなかったよ
あなたのことが好きだと
もう良いんだ
僕も君が好きじゃない
負け惜しみのようだが
言い訳させてくれ
アオハルの気まぐれという
風に吹かれていただけ
遥か夕陽が沈む春の日に
ふたり電車に揺られて話した
その言葉は今でも忘れられないけど
君のことは明日で忘れるよ
バレンタインも貰ったし
誕生日のお祝いもあった
でも僕は鈍感で
何も言えなかったんだ
君は僕を好いていたはずなのに
何故だか素直になれない
五月の道に咲くジギタリスを見つめ
花言葉に想いを馳せる
遥か朝陽が昇る夏の日に
ふたり朝まで語り明かした
その言葉は今でも忘れられないけど
君のことは明日で忘れるよ
思い出を宝石に閉じ込められたら
ずっと美しいままでいられたのに
お互いを知りすぎてしまった関係は
秋の静けさに溶けていく
恋する気持ちは嘘じゃない
でも僕の気持ちは嘘ばかり
遥か月が見えない冬の日に
ひとり布団に包まり涙した
君ほど好きになれた人はいないのに
最後まで伝えられないまま
卒業式の朝は憂鬱で
打ち上げにも行かないと決めた
僕の心はまだコバルトブルー
桜は春を待っているというのに
君との日々はずっと忘れられないだろう
でも君のことは今日で忘れるよ
27.「孤独の海」
水滴がぽつりと零れる
雨音はぽろりと溢れる
夜の静寂(しじま)に怯え
沈黙した子供みたく
安らぎを求めて
誰もが暗闇に背を向ける
遥か彼方に未来があるなら
なぜ僕らはまだ答え���知らない?
理想 現実 幻想 失望
ロゴスの源流
華やかに艶やかに
厳かにしなやかに
細胞に刻まれた
愛の痕は何処へ?
未知なる海へ舟を漕ぐんだ
僕らは孤独な旅人
波の滴は満ちて
月が踊り出す
君はペシミスト(星はペシミスト)
誰もが絶望するその時
自由な夜の夢よ 僕らを抱きしめろ
希望の鐘が鳴ろうとも 二度と目覚めはしない
夢想 瞑想 妄想 失想
ロゴスの誘惑
密やかに心地良く
穏やかに優しく
遺伝子に囁いた
時の印は何処?
宿命と闘い
明日を掴み取れ
未知なる海へ船を漕ぐんだ
僕らは孤独な旅人
詩集『poetryactivist』制作クレジット
Produced / All words written by Yuu Sakaoka
Designed by Minoru Ichijo(G.Slope & Hill's Planet)
Co-Written by Sakura Ogawa(No.23)
Drafted by TORIMOMO(No.25) / Sakura Ogawa(No.23,24, 26)
Dedicated to My Best Friends
Management by G.Slope & Hill's Planet
Very very very thanks to my friend, my familly, and all my fan!!
2024.3.31
坂岡 優
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ソテツ⑱
「いや、1人で帰れる」
「...でも結構ふらついて見えますけど」
「こんなの大した事じゃねぇよ。お前もさっさと帰って寝ろ。俺についてくんなよ」
今出たばかりの居酒屋の軒先でそんなやり取りをするソテツと自分。
たまたま入った居酒屋が重なって相席、次の日は休みということで酒を煽りながらダラダラととりとめのない話をしていたら23時を回った頃だ。
自分を律儀に駅まで送ると背中越しに片手を上げてヒラリと手を振るソテツは、やはり少しだけ身体が揺れていた。
どうにも気になってしまいパタパタと駆けつけると腕を引いた。
「やっぱりダメです」
「...は?」
「気になるので私の家に来てください。明日はお休みなんですよね?」
ソテツさんの家にはついて行きませんので、私の家についてきてください。
そう言うと少し強引に重たい彼の腕を引きながら改札を抜けた。
「おいおい、誘ってんのか」
「?何がです?酔ってるのに気づいてないソテツさんが心配なんですよ」
(...あー、これマジのやつだ)
その真面目な返答にちょっと面倒くさそうに腕を組むと、立ったまま電車の窓に身体をもたれた。
「お前、絶対崩さねぇよな」
「...さっきから何言ってるか分からないんですけど...やっぱり酔ってます?」
少し押してみると照れて隠れそうになる癖に、大胆に誘うとポカンとされる。そのうまい具合が未だにわからない。
別にそこまで思い入れしてる訳じゃないが。
「...惜しいな」
ぽつりと呟く台詞を彼女は聞いておらず、次ですよと催促するとまた腕を引きながら(本人は至って真面目に支えている)着々と帰路へとついていた。
「ソテツさんには狭いかもしれませんけど、一日だけ許してくださいね」
「...おー」
玄関に棒立ちになって部屋に入ろうとしない彼に、再び首を傾げる。
「どうし...あっ、変な匂いしますか?」
周りを嗅いで見せ、唸る彼女に鼻で笑う。
「ホントに入って良いのかよ」
「え、良いですけど...彼女さんがいらっしゃる場合はやっぱりやめた方が良いですか?」
「は?彼女?」
「え?居ないんですか?」
「なんで居る前提なんだよ。居ねぇよ面倒くせぇだろそういうの」
呆れて言いながら少し身を屈めて玄関に入ってきた。
サッと靴を脱ぐと同時に上着も脱ぐ。
ソテツのその姿に少しだけドキリとした。
それに気づいた彼がこちらを見る。
「なんだよ。」
なんてことない仕草だったのだが、そういう訳ではなく、単純に自分の家で自分より体格の大きな異性が、これから部屋に邪魔するぞと"上着を脱ぐ"行動にドキリとしたのだ。
今まで生きてきて男性を部屋に招いたことなどなかったのだ。
安直に考えていたのかと少しだけ身が強ばる。
「あ...、いえ!お水出しますので、待っててください。」
そうリビングに通した。
一人暮らしの1LDKは廊下もさほどなく、1部屋も普通の大きさだ。
女性から見たら。
そこに男性が1人入るだけで随分と雰囲気が変わる。
その事実にドキドキしながらコップに水を汲むとソファに腰掛けるソテツに差し出した。
「どうも」
「...えっと、さすがにソテツさんの着れる服が無いので24時間営業の所に行ってきますけど、それまで何か不都合あったら連絡してください。」
あとトイレはココでお風呂はこっちで、あっバスタオルはここに。ペラペラと説明して上着を脱ぐことも無く再び玄関へ向かおうとする彼女を引き止める。
「寝る時服着てねぇからわざわざ買うことねぇよ」
「え、寒くないですか」
「いや別に」
うーんと唸る彼女を無視してソテツは立ち上がった。
無様ながらに少しだけ足がもつれるのを彼女がとっさに手を(というか身体を)差し出して支えようと試みる。もちろん支えるなんて物は言いような、むしろソテツが支えているような状況に少しだけ笑ってしまった。
「はは、悪...」
その時だった。
謝ろうとした時、ソテツの視界に変わった道具が目に入る。棒状の、自分の指くらいの太さだろうか。何が入っているかわからない無印無装飾な箱の中からひょっこり顔を見せるソレが単純に好奇心を煽る。
「なぁ、アレなんだ?」
顎で指したその先に視線をやる彼女が、きょろりと見渡し、ソレに気がつくとまるできゅうりに驚くネコのように身体が跳ね上がった。
「あっっ、なんでもないです!」
ははぁ。ソテツの悪い癖がじわじわと湧き上がる。
なんでもないと言う割には中々の驚きようではなかろうか。
ニヤリと笑う彼の声を聞いたかのようにゆっくり見上げると、案の定悪どい笑みを浮かべて一歩こちらへ踏み込んだ。
「何。見せろよ」
必死に隠そうとするソレに手を伸ばす事など簡単で、離すまいとする彼女の手から奪い取るのもまあ容易い。
「あっ」
ソテツにより宙高く掲げられ箱ごと奪われた彼女は、手の届かなくなったソレに目を伏せた。
「どれどれ」
箱の中からソレを取り出し、まじまじ見るソテツは片方の眉先を上げて首を傾げる。
「なんだこれ...」
触ってもよくわからない。持って見りゃそこそこ細い。なんなら料理器具の一種のような...。そう考えている矢先、スイッチらしきものを見つけた。
そこでハッとする。
「...あぁ?へぇ。」
「...、」
何も言わない彼女と、そんな彼女を見下ろして笑ってみせるソテツ。
箱を投げるようにソファへ置くと、自分も再びドカリと腰掛ける。
「お前、こういうの買うんだな」
かぁっと顔が熱くなる。彼女は答えず、ソテツに背を向けた。
「お、お風呂に行ってくるのでソテツさんは休んでてくださいね」
明らかな挙動不審に、ソテツの嗜虐心を煽るには十分だった。
待て待てと腕を引けば、彼女の抵抗は無に等しく、直ぐソテツの脚の間に引き込まれた。
「俺こういうの使ったことねぇんだけど、どうなんだ。そんなイイか?」
「し、知りません...」
ソテツの目の前で身体を強ばらせ、視線を合わせないようにする彼女。
「使ったから開いてんだろ」
「、」
「...で?」
プツ、と電源を入れると微かにバイブ音がソテツの手から聞こえてくる。
「コレどうやって使うもんなんだ?」
いつの間にか腰に手を回され、腹部の布を捲られていた。
そっとバイブの触れる擽ったい感触に手のひらでソレを押し退ける。
「や、めて...下さい」
むぅ、と僅かに口を窄める彼が再びピンと何かを思いつく。
「あーなるほど。コッチか」
彼女の太ももを沿うように細いバイブが恥部へと上ってくる。
流石の彼女も反応を隠せず、肩が首へ誘われるようピクリと跳ねた。
「...お前も興味あるんだな。意外。何も知りませんて顔して男の事家に上げるくせに」
「え...と。その、コレは...」
「そういう奴程エロかったりするんだろうな」
僅かに見せる舌端が唇から覗くと同時に、彼の据わった瞳と目が合ってしまう。ドッ、と大きな振動が自分の身体から伝わり、動けなくなった。
その隙を逃さないソテツが、彼女の腰を更に引き寄せ、自分の膝の上へ誘い座らせた。拙いその動きにくつくつ笑うが、彼女の首筋に手を伸ばし顔を近付けると、キュッと目と唇を縛る姿に一瞬戸惑った。
彼女が少し震えているのが辛うじて分かる。
「...」
一度手を離した。
「コレ使ってしたことあるなら抱かれた経験か、抱かれてみたい願望みたいなのはあるんじゃねぇの?」
「...へ」
「身体こわばりすぎだろ。もっとリラックスしろよ」
「り、リラックス...、出来るものなんですか...?」
「処女みてぇなこと言うなお前。いや、見た目そんな気もするしな...」
さて、どうするか。抱けない気がしてくると中々手を出すのも面倒くさくなる。処女なんて以ての外だ。
「お前も気持ちいいことなら好きなんだと思ったけど違ったか」
両の手を頭の後ろに回すとぐっとソファにもたれ掛かり、彼女には触れないようにするソテツ。
タバコを探して上着のポケットを���り出す。その手を彼女が上から触れた。
「気持ちいい...こと、してくれるんですか?」
はた、と面を食らう彼が直ぐニヤリと笑う。
「それはお前次第だな」
「...ッ」
タバコを探していた手を止めて、真っ赤になって顔を隠したがる彼女の顔を覗く。
「コレ使って気持ちよくなってるところ俺に見せたら考えてやる」
「えっ」
「その気にさせたら、死ぬほど気持ちよくしてやるよ」
ぐっ、と息を飲み込む彼女は迷い俯きながらも、そっとバイブをソテツの手から受け取った。
「...あ、の...。お風呂には」
「要らねぇよ。さっさと脱いで始めな」
先程とは打って変わった、人形でも見るかのような表情を向けられる。
しかし、彼女にとって表情がどうかというのは、今は大して重要ではなかった。人に見られているというこの状態だけが羞恥心を飛び越えて恐怖すら感じるのだ。
そっと下を脱ぐと、トップスが少しだけ長い。
いい感じに下着を隠すその様に、ソテツは人差し指で唇に触れながらじっと見つめた。
するりと下着を下ろすと、衣擦れの音を僅かにこぼし床に落ちる。
そのまま左手で自身の秘部を辿り、そっと膣口へ指を一本押し当てた。
「...」
息を小さく吐くだけの彼女にほんの少し眉間にシワを作る。
「おい。見えねぇからテーブルの上座れ」
「え...っ」
「それか上の服も脱げ」
「あ、わ...わかりました」
どくどくと耳の奥で脈が打つような自我の働かない感覚に汚染されながら、上を脱ごうと服の端を掴む。
しかし、どうにも身体が強ばったまま動けず、震える手で力なく拳を作ると顔を隠して言った。
「...ご、ごめんなさい...。やっぱり、で、できな...」
恥ずかしさと何とも言えない恐怖に瞳に涙がたまる。
それに気づいてぎょっとするソテツ。
泣くとは思わなかった。
「いや...」
処女ってこういう所が面倒臭いんだよな、と思ったのがホントのところだ。しがし、彼女はそのままソテツの前に座り込んだ。
「なんだ?」
「...、その、ソテツさんをその気にさせられたら...良いんですよね」
「...は?」
ソテツのベルトに手をかけて下着の上から陰部に触れる。
「おい」
「私、自分の身体は分からないけど...こっちは上手いって言われたことあるので...コレで気持ちよくできたら、私の事も気持ちよくしてくれますか...?」
何を言っているのかよく分からないまま、彼女はソテツの下着の中から陰茎を出すと、躊躇なく唾液をソレに垂らした。
その姿を見下ろして息を吸い込んだソテツは言葉を失っていた。
亀頭を舌端で撫でると形を見せていく陰部を感じ、口の中をきゅうきゅうに狭くしながらゆっくりとソレを呑み込んでいく。
「ッ、」
(おいおい...)
徐々に大きくなるソテツの陰部に、濁音をこぼし唾液を零しながら何度も出し入れしていると、小さく痙攣しながらどろりとした液体が口の中に広がった。
口に貯めきれない量に、咄嗟に飲み込むと、その火照った顔のままソテツを見上げた。
「...ど、う...ですか」
ずるりと彼女の小さな口から零れる陰茎が、まだ僅かに透明な糸を引き、先の事実をさめざめ思い浮かばせる。
「きもちよかったですか...?」
どこか不安そうに見せるその表情に、ほんのわずか、欲情したのかもしれない。ソテツは一筋、汗を伝わせると再びあの不敵な笑みを浮かべた。
「...これで処女かよ」
いや、処女ではない...のか?
先程の彼女のセリフを思い出しながら考えようと藻掻くも塵と消える。
いつになく面倒くさい奴引っ掛けてしまったと後悔を半ばに、好奇心も隠せず彼女の腕を服ごと強引に引っ張って顔を近づけた。
「いいぜ。特別料金だ」
そう言って彼女の唇を容易に塞いだ。
声も出せずに口を塞がれた彼女が、抵抗のつもりか、ソテツの腕をぎゅっと握る。本人はそんなもの気にも留めず彼女の背中に手を回すと、慣れた手つきでホックを外した。
「...っ」
次々起こる性急なこの前戯とも言えぬ荒っぽいソテツの所作に、目を閉じるのも開けるのも恐ろしく、ただ身体を震わせている彼女。
そのうちに彼の舌が口内へ入り込み、唾液を絡め取ろうとする。
「...、あぅ」
吐息を混ぜながら、少し唇を離したソテツが囁いた。
「鼻で息吸えよ」
「あ、は...はぃ」
彼女を抱えて服の裾を咥えさせると、乳房に舌を伸ばした。
「っあ、」
快感と言うよりは驚きと羞恥心で声が出た。
男の人が自分の胸を蹂躙している、その姿に眉を下げ唇を噛むことしか出来ない。
それに気づいたソテツも、彼女の腰へ回した手を後ろからそっと恥部へと伸ばす。あまり濡れていない。
言わずとも頭を悩ましながら、彼女の腹部へ触れてみたり、唇はもちろん、胸や鎖骨など触れていく。
「お前、どこがイイんだよ」
「...え」
「1人でしてたんだろコレ使って」
発端のバイブを顔の面前に差し出しながらそう言い切るソテツに、目をそらす。
「...き、気持ちよく無かったから...1回しか使ってないです」
「は?そういうもんなのか?」
「自分の指入れるのは怖いし、男の人のも...その、あんまり...。だから買ってみたけど良さがわからなかったので使ってないです...」
「でもお前気持ちよくしてくれって...」
「だ、ダメですか...」
これでもかと言うほど真っ赤になって顔を手で隠す。
「...私だって、一度くらい気持ちいいセックスしてみたいんだもん」
震えながら、濡れていない下半身を隠すように脚を閉じて呟いた。
恥ずかしさで涙が浮かんでくる。
跨っていたソテツの脚から降りると距離を取った。
「ごめんなさい...。やっぱり、面倒くさいですよね。そ、ソテツさん色んな人と寝てるって噂で聞いたから...私でもって思ったんですけど...失礼でしたね。」
力なく笑ってこちらを見ない彼女が、踵を返して脱いだ下着やスカート類を拾う。その時、無意識に露わになる恥部がこの瞬間初めて色っぽく感じたなんて言ったら何てバカなんだと笑われそうだ。
「...いいぜ。抱いてやる」
「...、」
「ただし、ベッドでだ」
覚悟を決めた。
普段処女(仮)なんて抱かない。処女のような、自分で快感を拾えない女は抱かない。面倒くさいからな。
けどこいつはまぁ一応客だし、そこそこ面白いし。
ヤって見なきゃ分かんねぇかもな。
「触られて感覚過敏になる場所ってどこだ」
「?」
ベッドに腰を下ろす彼女を見下ろしながら服を脱いだ。
「びっくりするっつーか、変な声出るとか」
「...あ、耳とか首を触られるのは苦手で...ひゃっ」
「お。ホントだな」
「ち、ちょっとソテツさん」
「そういう場所はキモチイイ所なんだとよ」
ちなみに俺のは秘密。
そう言って耳に触れながら唇にキスをする。
「っふ、ぅん」
「舌もっと搦めてこい」
「...ぁ、はぃ...」
するすると慣れた手つきのまま耳から首へ無骨な指先が下っていく。そのまま乳房に手をかけ、唇を離すと、首筋へキスをする。
「ッ、あ」
「ん。気持ちいいだろ」
「えっ、あ...っや...」
キスを落とす度、舌を這わせる度に首を竦めて拒む身体とは裏腹に、いつもとは違う甘い声が出る。
それを抑えようと口を塞ぐも、ソテツはそれを許さない。
「声は出した方が気持ちいいぜ」
「で、も...恥ずかしい、です...」
「俺は結構心地いいけどな」
音を鳴らして身体に、首に胸元にキスをするソテツの指が恥部へ触れる。
ピクリと反応する脚が無意識に侵入を拒むよう、閉じた。
「脚開け。触れねぇだろ」
「あ...、」
恐る恐る開くも、カタカタ震える手膝が無様で恥ずかしい。
ソテツの指先が割れ目を撫でながら入口を探すと、ゆっくり押し込まれる。
「ッ、」
「...ま、キツいか」
仕方ねぇなと恥部上にある突起を探して刺激すると、彼女の上擦った声が盛大に漏れた。
「!ッあ、ご、ごめんなさ」
「そういや女はこっちのが気持ちいいって言うんだっけか」
くりくりと指で突起をいじりながら顔を近づけると舌を伸ばした。
ちゅう、と少しだけ音を鳴らして吸い付いたかと思うと舌を使い更に刺激する。
「や、ッ...き、汚ぃ」
「お前も俺の咥えたろが」
「で、でも...!」
カクカクと腰が勝手に引ける。
言葉にならない声が零れてもソテツの手や舌は動きを止めない。
次第に恥部は愛液が溢れ出す。
(...濡れてきたな。これなら...)
くいくい指を中に進めながら、外の突起を攻め続ける彼は、そう言えばとあのバイブを手にした。
ちょうど自分の指と同じくらいの太さなら役に立ちそうだと思いながら指と差し替え、バイブを彼女の膣口へと押し当てた。ゆっくりと呑み込んでいくソレが、少しだけ大きい頭の部分を呑み込んだ辺りで侵入を止める。
「...気持ちいいか?」
「へ...ぁ、は...はい...」
「じゃあこれも気持ちいいと思うぜ」
「...へ?」
途端、鈍い振動があらぬ所から全身に伝わった。
「っあ!?」
「お前が持ってたバイブだ。以前こうやって使ってたんだろ?」
「ひ...、ゃっな...と、とめ...」
「気持ちよくねぇか」
グリッ、角度を変えて押し上げると身体がわかりやすく跳ねた。
「ッ、き、きもち...気持ちいいから...やぁ...ッあっ」
いつになく蕩けた表情の彼女にソテツは身体が引き寄せられる。
彼女が無意識にベッドへ擦り付ける様にバイブの柄を動かしている姿に、生唾を飲んだ。先程出したばかりの陰茎が再び膨れる感覚に、下着をずらす。
ビクビク身体を震わせて、あれほど恥ずかしがって閉じていた脚を広げ快感を拾う彼女を見下ろした。
振動を止めるより先にバイブの柄を持ち引き抜くと、自身の陰部を彼女の秘部へ擦り付ける。
バイブを抜かれた違和感に目をゆっくり開く彼女が、眉を八の字に下げたままソテツを見上げた。
「...いれてください」
ソテツが聞くより先にソレに手を伸ばし自分で自分の秘部へ押し当てる。
「、おい...」
「は、はやく...」
物欲しそうに蕩けた顔を更に濃くし、伝う汗も唾液も気にせず腰を揺らして挿れようとする彼女に、ソテツは細く息を吐いた。
「...痛ぇからな」
「ん、ッ」
ぐっとゆっくり中へ進む陰茎が内蔵を圧迫する。
亀頭が引っかかると鈍い痛みが恥部を突いたが、すぐ楽になる。
息を吐きながら何とか半分ほど入れたところで身を起こすソテツは、いつになく汗をかいている自分に内心嗤った。
「おい、平気か」
「...は...はい」
「...できるだけゆ��くり動くから」
そっと恥部上部の突起に指を押し当てると、彼女の声が上擦った。
「お前はココに集中しとけ」
母音を零しながら啼く彼女を真下に、空いた手で顎をとるとキスをした。
ピッタリとはくっつくことの出来ないふたりの身体の隙間を煩わしく思いながら、ソテツはゆっくりと腰を打つ。
時々脚を震わせて快感を得る彼女を確認しながら首筋に、耳にキスをする。普段抱く女にこんなことをした試しはない。
しかし、彼女に関しては不思議と面倒だとは思わなかった。
ふと、彼女がソテツの首へ手を伸ばす。
「...ん?」
「ぎゅって...して...もっ、と、くっつきたい...」
「...、」
少しだけソテツの身体が強ばる。
彼女の手を振りほどくことはせず、しかし自分から抱きしめるのも躊躇し、ベッドを縫い付けるようにしながら彼女の体温を感じた。
初めて果てた彼女はまどろみの中、何とか恥部から溢れる体液を自分で拭き取ると、沈み込むように眠った。
ソテツはベッドを使えと言われたが一度風呂に入るからと抜けるとソファへ戻った。
彼女の寝息を確認してからベランダに出ると、タバコに火をつける。
(...女抱いてスッキリしねぇの初めてだな)
そもそもあれはほぼ処女みたいなもんだし仕方ねぇかな...。
長く細い息を吐き煙を漂わせると、スマホを取りだした。
「...これから相手させる女探すか」
その数分後、ソテツは彼女の家の鍵を掛けポストに入れると颯爽と他の女の家へ向かった。
その次の日。
目が覚めるとソテツは居ない。
スターレスに行ってももちろん居ない。シフトが休みだと言っていたのだから当然なのだが。連絡先は一方的に教えたが、登録してくれているともかぎらないしこちらは知らない。
ソテツがシフト含め顔を出したのはあの夜の3日後だった。
「ソテツさん」
「あ?...あー、お前」
良くもまぁ、普通に。そう思ったことは隠しておこう。
���つもと変わらない顔で声をかけてきた彼女を見下ろした。
「先日は無理なお願い聞いてくれてありがとうございました」
「...は?」
「え?」
「...いや、そうきたか」
「?」
もしまた次も...と言われると中々断りにくい立場だ。だが面倒くさい事はしたくない。どう答えたものかと考えていた所、この顔だ。
「もう大丈夫なので...」
「アレでいいのかよ。まともに抱いた気しねぇけどな」
少し意地悪そうに笑って答えると、彼女は慌ててソテツの口を隠す。
「だっ、大丈夫です...!」
赤くなる彼女を相変わらずニヤニヤと見下ろすソテツ。
するとそこに他のキャストが湧いてきた。
「おっこんな所でなーにしてんの!」
「晶さん。お疲れ様です」
「ねぇ、今日この後飲みに行こうよ〜2人きりで」
「えぇ...?今公演期間じゃ...」
「今日で千秋楽」
「あ、そうでした!良いですよ」
おいおい、良いのかよ。また俺の時みたいになるんじゃねぇか?
「でも他の人誘わなくて良いんですか?せっかくの千秋楽なのに」
「いーのいーの。むさ苦しいアラサー集めても楽しくないでしょ。そんなことより俺は君と2人で雰囲気のいい落ち着いたBARとかでしっぽりお話したいわけですよ」
「そ、そうですか。嬉しいです」
「キミが嬉しいなら俺も嬉しいな〜!」
んじゃまた帰りに。
そう言って嵐のように立ち去る晶の背中を見送ると、ソテツがぽつりと声をかけてきた。
「お前...こないだの今日で大丈夫か」
「え?何がですか?」
「またエロいこと頼むんじゃねぇよな」
「なっ...!ち、違いますよ!アレはたまたま出しっぱなしにしちゃってて...ソテツさんが潰れなければ」
「俺は別に潰れてねぇし」
少しだけむっとしながらソテツを見る。
「...でも、ありがとうございます。心配して下さって」
「え」
「次の日居なくなっちゃってたので私も少し心配したんですが、今日会えてよかったです。何も無くてよかった」
(良い子もここまで来るとすごいな)
あの後直ぐ他の女とヤリにホテル行ってたって知ったら。このお嬢ちゃんはどんな反応するのかね。
「...ま、気をつけな」
一度そういう雰囲気になった女は基本的に二度は抱かない。
俺はそこまで一途に女を想う筋合いはない。
ちょっと齧って良ければって感じだったが...まぁ、それは後の祭りか。
ソテツはタバコを手に非常階段へと向かった。
「変な男引っ掛けんなよ」
ひらりといつもの調子で片手を上げると、振り返ることなく裏口のドアノブに手をかけた。
おわり
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