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#唯一無二の墨絵師
shu-sumie · 1 year
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✨現在ギャラリー結様は常設展示作品されているSHU墨絵作品を紹介✨ ( @gallery.yui.tochigi ) 個展『零之楼〜ゼロのやぐら〜』で大好評につき、少しでもSHU墨絵を身近に感じて頂きたい想いから、常設展示作品を増設しました✨ 【ページ1】 富嶽三十六景 現代墨絵版 【ページ2】 龍光 老舗人形店 人形のわたや×墨絵師荒川颼コラボ提灯 【ページ3】 A knight's tale 【ページ4】 来る4/28(金)国指定重要文化財 大阪市中央公会堂にて クラシック音楽×墨絵のコラボコンサート 『冥加』を開催‼️ 音楽・墨絵史上としても初 アートは一つに楽しんだっていい 見て、聞いて、感じる (*)席に限りがございますので、 お早めにご予約下さい🙇‍♂️ DMにてご予約受付致します✨ 最高の思い出をこのイベントにて❗️ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 💫筆を使わない墨絵アーティスト💫 荒川颼 / SHU Arakawa 【颼墨絵作品 常設展示場所】 栃木県栃木市河合町4-16 tel: 050-5359-7563 Eat Me Sandwich 2F ギャラリー結 ✨✨✨✨✨✨✨✨ 筆を使わない墨絵アーティスト 荒川颼/SHU Arakawa www.shusumie.com Googleで『墨絵』または『ハンド墨絵』でトップ表示 #津波墨絵 #葛飾北斎 #富嶽三十六景 #大阪市中央公会堂 #音楽墨絵コラボライブ #筆を使わない墨絵師 #墨絵師 #墨絵 #sumie #ハンドドローイング #handdrawing #日本を代表する墨絵師 #墨絵アーティスト #書道好きな人と繋がりたい #画家さんと繋がりたい #飛墨 #hisumi #唯一無二の墨絵師 #唯一無二の墨絵アーティスト #しゅう墨絵 #shusumie #生きる墨絵 #UNESCO #世界遺産 #ライブパフォーマンス #墨ノ祭 #ギャラリー結 #栃木 #tochigi (大阪中央公会堂) https://www.instagram.com/p/CnSp3scygqw/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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2ttf · 12 years
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kachoushi · 4 years
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雑 詠
花鳥誌 令和2年4月号
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雑詠巻頭句
坊城俊樹主宰選 評釈
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墨染が漆黒となる寒の雨 小川 笙力
 法衣の気高さと、その修行の厳しさを思う。この漆黒はその尊厳をあらわすと同時に雨に打たれ、濡れそぼった色の寒さをあらわしている。寒中の修行であろう。漆黒は常人が想像できないような深く寒い修行の色の暗示なのである。
鐘冴ゆる堂の静寂を揺らすかに 小川 笙力
 鐘がしんしんと響き渡る大きな法堂や仏塔。僧侶たちのその祈りを包む鐘の音は金剛界の鋼のような音を響かす。この静寂を破る音こそが、仏教の修練と仏の尊厳をあらわす音色なのだろう。
神将の怒り浮き出す寒灯下 小川 笙力
 十二神将という像がある。四方八方を守護する武装した神たちのこと。薬師如来の眷属であると言われる。その怒りの表情は凄まじい。血管を浮かせて怒る神々たちは、われら衆生の者を寒灯の下で叱咤する。荘厳で厳格な世界。
お地蔵になるための石凍てにけり 栗原 和子
 そこいらに放置されている石。ことに地蔵になるためなら仏閣の近辺の参道や敷地にある石たちなのだろう。それは寒さに凍えている自然石なのだが、やがて地蔵になるのだ。風雨に晒されている石もまた修行の身なのだと。
残る葉に触れて落葉にしてしまふ 栗原 和子
 この句の形式に新鮮味を感じる。ここに主たるものは人か葉か。風や人が触れて、���っていた葉を落葉にしてしまうのか、別の葉が降ってきて、その葉に触れて落葉にしてしまうのか。それは神の仕業。どのみち、葉というものの運命を感じる。
この径もいつかは曲がる枯葉踏めよ 栗原 和子
 「踏めよ」という命令形のおもしろさ。口語体による破調の神秘性。この細く長くつづく径もいずれは曲がる。冬という季節のうつろいも。ならば兎も角この枯葉を踏みて行きたまえ。と言うのは、作者の言葉を借りた四季を司る自然神の言葉なのである。
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たつぷりと束ね真冬の茅の輪かな 加納 佑天
 真冬の茅の輪というものを季題としての題材として見たことがない。茅の輪を潜るのは、夏期の夏越しの神事のころ。神社によっては冬にも潜るのだろう。その茅の束の太さは、豊穣の収穫の後の真冬のころにふさわしい。
荒川線ごろごろ春は遠からじ 加納 佑天
 「ごろごろ」というオノマトペが適切である。都電の荒川線は東京都の北部を走る、ほぼ唯一の都電。そのスピードは「ごろごろ」という措辞でわかる。春めいてくるころの、のんびりとした風景は東京の異空間。その長閑さ愉快さ。
霜晴の乾き尖らす鳶の笛 荒木 絹江
 鳶の笛の降る天空の風景。その叫びは乾ききった天空を切り裂き尖らす。雪晴れの晴天ならばこそ。尖るのは季節の神慮によるものだが、同時にその鳶の野性もまた表現されているところに壮大さを感じる。
大地抱く白の虚構や霜柱 荒木 絹江
 「白の虚構」とはなんぞや。霜柱という虚構のような造形物のことであろう。しかし、それに取り囲まれている、大地もまたそれに併せて虚構のような風景となっている。幾何学的な無機質なる造形美。
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冬ざれしやや湾曲の草田男碑 岩佐 季凜
 草田男の生涯と虚子との複雑なかかわり。その俳句の意味付けと、湾曲という形象の意味付けとの響き合い。それらがすべて冬ざれているという、この作者の感覚に敬意を表する。
火鉢置く細き通路の絵本売 岩佐 季凜
 細き通路なのだと露天市かなにかか。さむい朝はそこに火鉢をおいて客を待つ。だからこそ、売られている絵本に滋味が加わる。その絵本の世界にあるものが見えてくる。
日本一古き駄菓子を売る綿子 須川 久
 日本一ふるい駄菓子屋は東京の鬼子母神の境内にある。それは三百年ちかい時間があるという。本当かは知らぬが、そこで菓子を売る人を「綿子」と表現したことに滋味が。綿子は綿入れの着物のこと。チャンチャンコより分厚く古いイメージ。
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祈り怠ればただちにかまいたち 辻 梓渕
 かつて幾度か「鎌鼬」にであったことがある。幼少の頃、ふと気づくと膝小僧がすっぱり切れている。ガキ大将たちはみなそうだった。敬虔な祈りも糞もない少年たちを叱る神。
寒鯉になりゆく詩仙堂に棲み 馬場 省吾
 詩仙堂という、江戸期の文人、石川丈山の旧居。画や書、詩歌の文献などもあり、この寒鯉はなかなかにインテリで思慮深いのであろう。髭なども生やして。
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衛士に子のあれば帰らむクリスマス 岡田 順子
 衛士とは神社や宮殿を警護する警護員。それは厳格であって、私語すらゆるされない。その彼もまた家に帰れば、そしてそこに彼の子があればクリスマスソングが待っている。
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kimatayasunori · 5 years
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有無相生ず 個展在廊即興描画作品 【鍾馗図】色紙 3,000円 #nowonsale 虎渓山徳林院にて即興で生まれた唯一無二の一点もの作品です。額に入れて飾ってはいかがでしょう。郵送可。 暁斎や国芳、北斎など沢山の日本の絵師も描いている中国の魔除け道教神の鍾馗。いつか描こうと思っていましたが、有無相生ずにて即興描画にて誕生。今後等身大サイズの大きな鍾馗図を描こうと思います。邪気を祓う、学業成就などとても縁起の良いモチーフです。 今日を含めあと二日。最終日の土曜日来てください。 #japaneseink #縁起物 #鍾馗 #中国 #端午の節句 #魔除け #墨絵 #学業成就#monochromeart #tattoo #artlife #traditionalart #japaneseart #japanesepainting #contemporaryart #tattooart #sumie #tajimi #多治見 #徳林院 #永保寺 #虎渓山 #kimatayasunori #木全靖陛 #日本芸術 #blackpainting #exhibition #saleart #artexhibition ✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎ 今年で6回目となる画家 木全靖陛による徳林院での作品展。 今回は「有無相生ず」。この世は陰陽、常に表裏一体に共存してます。その陰陽の世界を墨画に置き換え、自分なりの世界を表現しています。新たに描き下ろした新作から代表作まで、墨画を中心に作品を揃えてみました。お気に入りの作品を見つけていただきたいと思います。寺院という荘厳な空間で、古来あるオリエンタルなモチーフを独自の描画技法で表現した作品群をゆっくりとご堪能ください。※展示作品は購入可能になっております。 ■木全靖陛 墨画展「有無相生ず〜うむあいしょうず〜」 <開催期間> 2019年 9月21日(土)〜10月5日(土) <開催時間>10:00~17:00予定 <会場> 虎渓山徳林院 (慈雲峰徳林院) 岐阜県多治見市虎渓山町1-40 電話:0572-22-1542 https://goo.gl/maps/9yuovPjkVWAmcHJN6 <駐車場>永保寺駐車場をご利用下さい <作家在廊日> 9/21(土)10:00~17:00 9/22(日)13:00~17:00 9/23(月)13:00~17:00 9/28(土)10:00~17:00 9/29(日)10:00~14:00 10/5(土)10:00~17:00 その他平日可能な時間(ご来展の際ご連絡いただければなるべく在廊します) @ 徳林院 (徳林院) https://www.instagram.com/p/B3Lk-NqDmx-/?igshid=cenfte6m73j4
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chiecello · 5 years
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10月〜Live Schedule
成田千絵HP http://chiecello.com
10/1(火)
Jasmin cafe ニューオープン
お祝いのliveは19時から
ジャスミンカフェ Jasmin Cafe 国分寺市高木町1-5-34 JR国立駅北口から「けやき台団地」行きバス 三つ目の停留所「国分寺第三中学校入口」下車 バプテスト教会の路地右折つきあたり。
10/4(金)
The organic & Hemp Style Cafe & Bar 麻心
出演   HIRO CALIENTE  (アフロ&カリビアン&エスニックパーカッョン&歌&トレスギター)   +CANA(ゲスト、コーラス)
 たまゆらの音 (弾き語りデュオ~オリジナルやレゲエ、ハワイアンチャント、民謡etc)  +CHIE(ゲスト、チェロ)
 Open18:30~ 各45分2ステージ有り   1st,Start19:00~  2st, 20:30~
投げ銭です
10/7(月)
室礼と舞 ~重陽の節供~
旧暦九月九日は重陽の節供 天の数ともいわれる九の重なる大切な日 菊の節供でもあります 仙境に咲く菊の露を飲んで 八百歳生きた美しい菊慈童 菊を愛で、菊酒を飲み 菊の露を含ませた綿で顔をぬぐい 長寿と美しさを願います 菊花で菊玉飾りを作り三方に供え 舞と音楽と菊のお料理でお祝い致しましょう 講師・実習とお話 : 高橋久子 音魂演奏:奈良裕之 cello : 成田千絵 舞踊:苳 英里香 舞 : 關口奈美・中野妙香 食 :いしだひさや 日時:10月7日(月)11時〜14時頃 参加費 :¥8,800〈材料費・直会(お食事)込み〉 人数 :10名程 実習:菊玉作りと節供の室礼 持参:三方(小・15㎝内外)・花ばさみ(無い方はお貸しいたします) *三方をお持ちの方はご持参ください。 お持ちでない方はご用意させていただきますので、お申込み時にその旨お知らせください。(3日前までの受付とさせていただきます。別途実費1000円前後) 三方は今後の室礼でも使う予定です。 会場・ご予約 agréable*musée アグレアブル・ミュゼ 国分寺市光町1-42-8(国立駅北口徒歩4分) Email: [email protected] TEL: 042-577-7353
10/12 (土) 19:00~ 10/13 (日) 13:00~/17:30~
彩の国さいたま芸術劇場 Saitama Arts Theater 15年前に舞踊家Chie Noriedaが立ち上げたバリアージ。 バリ舞踊、モダンバレエ、ジャズなどの舞踊や能楽をベースにした唯一無二のスタイルで、観る人の感性を拓く異空間を、国内外様々な場所で創り出してきました。 それはもはやダンスというジャンルを超えたアート。そして文化を超えて人を本質のところでつなぐ力を放っています。 2019年10月にバリアージ創設15周年を記念した公演「道」を開催します。 この宇宙の、この世界の、そして人生の「道」。 道教では、道とは宇宙と人生を創る理だとされ、日本では華道・茶道・武道などに代表されるように、心技体を整えながらあることに向き合い続けるという意味でよく使われます。バリで歩いた祈りの「道」から始まり、宇宙の道、世界の道、人生の道、奉納舞を捧げた熊野古道...あらゆる道を表現し、体感してもらう…それがバリアージ15周年記念公演「道」です。 https://motion-gallery.net/projects/baliasi_tao
イベントページはこちらです。
https://www.facebook.com/events/661615241005207/
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10/ 27 (日) 1日だけのリトリート&マーケット ○玉結び○ 会場/ 暮布土屋通り 住所/ 愛知県常滑市栄町3-89 時間/ 10:30-17:00頃 ◉ 入場無料 🍁常滑の焼きもの散歩道へとつながる『暮布土屋通り』 その昔、土管を焼いていた大きなレンガの窯がランドマークとなる、 風情溢れる通りや建物が、『玉結び』会場となります。 * 針と糸と���をつなぎ、結ぶ、 初めの儀式のような玉結び。 カラダや五感を通して繋がるいろいろ、 ジャンルを超えて、国を超えて、 訪れる方々も、チクチクつながる輪の中に。 見て、聴いて、触れて、話して、食して、体感して、 空間の趣きも味わいながら。。 秋の気配がそこかしこに香り立つ時季 ぜひ散策も兼ねて遊びにいらしてください♪🎃 * ♪ライブ♪ 今年は二本立て!! ⚫︎10:30〜 オープニングライブ      ダンス/ 野口 暁 www.akinoguchi.com ⚫︎16:00〜 クロージングライブ      チェロ、うた/ 成田千絵  www.chiecello.com                            香/Chieko Park 【出店者】 ◉モノ、アート ◎吉川千香子      焼きもの、オブジェ ◎leaf mold       布仕事(洋服、エプロン他)*WS/可愛いふんどしパンツ作り ◎Niira&Livy      ボタニカルリース、アロマワックス、スワッグ   *WS/スワッグ、ガーランド作り ◎GrowSlow      手積みハーブの芳香蒸留水 ◎Asuka mio      木の器、イラスト ◎空飛ぶ羊   モンゴルのフェルト・羊毛製品など ◎Esperanca*    ミニポーチ、アクセサリー ◉フード、ドリンク ◎風と土   焼き芋(有機栽培)、芋のおやつ ◎かみばん      石窯焼き天然酵母パン ◎KAGOYA COFFEE     ボリビア・有機コーヒー、各種ドリンク ◎mariam・kitchen      マコモダケのリゾット ー敷地内店舗ー ◎侘助  うどんと甘味/スペシャル『玉結び弁当』 ◎パン工房 風舎    常滑の人気パン/ スペシャル『玉結びパン』  ◎カフェ風  パスタ、創作料理/スペシャル『白いカレー』 ◉リトリート、セラピー ◎Kazumi Bluelotus     北スコットランドの意識のワーク/トランスフォーメーションゲーム ◎Crystal Beauty       天然石クリスタル『いしあしび』 ◎TaoTao/ Chieko     『見る香り』パフォーマンス ♦︎各出展者、WSの詳細は ↓↓↓ 玉結びHP https://tama-musubi.wixsite.com/knot 
11/9(土)Jurate Narmontaiteの作品展
リトアニア出身の版画家・Jurate Narmontaite 卵の創世神話カレワラにインスパイアされた メゾチント版画の連作を中心に展示します。
ギャラリーオープン 9日/12時~17時 10~12日/11時~19時
https://www.facebook.com/events/536133753790516/?active_tab=about
Opening パフォーマンス 「神話のカケラ」 17時~ 3,000円+drink order (限定25名様) Erica Fuki(舞踊) Chie Narita(チェロ・歌) Taeka Nakano(舞)
会場・ご予約 agréable*musée アグレアブル・ミュゼ 国分寺市光町1-42-8 Email: [email protected] TEL:   042-577-7353 https://www.agreable1993.com
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11/16(土)
「白き音の葉」
渡会光晴(ピアノ)
成田千絵(チェロ・歌)
初霜を溶かしてゆく ぬくもりのチェロ
冷たい空気  渡りゆく 透明なピアノ
森は静か
事の葉  音の葉
白く 白く
開場13時半 開演14時
前売り2000円 当日2500円
ワンドリンクオーダー
(オーガニックのお酒やドリンク)
会場 飛鳥ピアノサロン
奈良県高市郡明日香村島庄47
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飛鳥ピアノサロン
TEL0744-54-3485/090-9812-3248
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11/17(日)
コトスミワタル
成田千絵(チェロ、歌)
Steve Eto (打楽器)
桃蹊(墨あそびひと)
15時半開場 16時開演
3,000円
旅館松前 奈良県奈良市東寺林町28−1
http://www.matsumae.co.jp/
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0742-22-3686(旅館松前)
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a62 · 5 years
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第五講|ヨーロッパと日本をつなげる
日本文化の禅から世阿弥の時期、ヨーロッパはまさにルネサンスを迎えていました。ルネサンス時代についてはよく「人間復興」とか「人間再生の時代」とかと書いてあります。それまで続いていた暗黒の中世からやっとトンネルを抜けて開花した明るい時代だとか、いよいよヨーロッパが人間性を取り戻した輝かしい時代、としてとらえられている人も多いでしょう。でもそんな単純なことではないんです。そこには「神の知」と「人間の知」をめぐる、情報編集的な葛藤が色々と複雑におこっていた。
ヨーロッパでも日本でも、人間文化のいちばん奥には、古代神話の世界があったわけです。これをまとめて「ミュトス」といいます。神話世界、筋書きという意味です。アリストテレスが早くに指摘した上で、人間文化はこの筋書きに絡んで進んでいるという。わたしたちは自分たちの民族の記憶を、長らく神々の神話に託して継承してきました。それがやがて制度化され組織化され、宗教として体裁が整ってくると、神はバーチャルではあるけれど、全知全能の存在になって、現実社会のセンターとしてそこかしこに君臨していぎます。
それを最も推し進めたのが、ヨーロッパにおいてはユダヤ教とキリスト教です。ユダヤ=キリスト教では「知」というものは全知全能の神から流出してくるものだと考えたんです。そしてそれを人間社会が受け継いでいく。そのレセプションのために、「神学」のような体裁が生まれ、また神の知の管理センターとしての教会や修道院が発達していったわけです。そしてそこに「神父」という人たちが登場しました。教会や修道院はまさに「神の知」を形としてあらわすようにつくられました。
社会や文化には「同」を求める流れがある一方で、必ず「異」となる流れがあるわけで、ヨーロッパではその「異」が中世で目立ってくるんです。
12〜13世紀ごろの教会の建築様式のことを「ゴシック」という言い方をします。パリのサン・ドニ教会とかノートルダム寺院とかケルン大聖堂とかが有名です。いずれも尖頭アーチが天空に伸び上がった、巨大で壮麗なカテドラルです。巨大な一冊の聖書を建築によって体現したような空間。
ゴシックという言葉は、ゴートっぽいという意味で使われた言葉で、野蛮な異教徒たちの様式、という意味あいをもっていました。純正統派的なキリスト教の様式とは違った、異教徒の匂いをぷんぷん放っていたというわけです。意外です。
ゴート人というのは、4世紀から5世紀にかけてゲルマン人の大移動にともなって北方からやってきて、ついにイタリアに入って東ゴート王国をつくった民族です。
キリスト教は「異」なる外部者たちによってもたらされた異教徒な文化やシステムを、「同」の中に取り込みながら、だんだん論理やデザインや情報戦略を強化していくという歴史がずっと続いていく。ごくごく縮めていえば、ルネサンスというのは、この異教趣味にかなり傾いたところから出てきた文化様式。「異」は「異」として認めようじゃないか。
もともと中世のキリスト教は、人間が人間のことや自然について探求したり思索したりふるような「知」を禁じていた。アダムとイブがエデンの園から追放されたのは、禁断のリンゴを食べたからですが、あれは人間が知らなくていいことを知りたがった、という意味です。
ダヴィンチは、人間解剖図も書けば水流の観察もすれば、ヘリコプターや飛行機の設計もする。芸術から科学まであらゆることに手を出していた。キリスト教的にいえば、このような好奇心というか知の探求精神そのものがたいへんに異教徒だったわけです。キリスト教が封印してしまった「人間らしい知」というものがヨーロッパの古代の地層のなかに眠っていた。それが古代ギリシア・ローマの「知」です。なかでもプラトンの哲学やアリストテレスの論理学や自然学です。しかし、これらもきちんと保存し継承してきたのはヨーロッパ人でなくてイスラム文化圏の人々。多くがイスラムの「知恵の館」に収集され、アラビア語に翻訳されていた。
で、12世紀〜13世紀にかけてキリスト教的な信仰とギリシア・ローマ的な哲学や理性をなんとか調和させるためにラテン語という特殊な言葉を用いて独自の学問体系をつくろうとします。一言でいえば、どうやってキリスト教とアリストテレス体系を両立させるか、融和させるかということに挑んだ特別の学問。ラテン語はそういうために作られた体系言語。
13世紀半ばくらいになると、かなりの点でうまく融合できるようになっていきます。このスコラ哲学(ムダな論議をたくさんしてきた)の頂点の時期がちょうど建築様式としての「ゴシック」に対応している。
ゴシック建築もスコラ哲学も、キリスト教の教義、すなわち神の知を、いかにして現実世界に置き換えていくかというところから生まれたというふうに見るといいでしょう。そのために「神の知」をいったん部分部分に分けて、それぞれについて合理的で現実的な解釈を加えておいた上でそれを再統合していくという方法をとっていったわけです。
こうしていったん再統合されると、そこからさらに次の新しい方法が生まれていきます。建築様式でいえば、ゴシックからグレコ・ローマン様式、すなわちギリシア・ローマ様式。東ゴート王国の地層の下に眠っていたギリシア・ローマ文化が前面に出てきた。ここからルネサンス様式というものが芽生えていく。
ルネサンスといえば、だいたいイタリアにおこった文芸やアートの動向のことを指すことが多いのですが、同じころにヨーロッパ各地、ドイツでもフランスでもイギリスでもスペインでも、それぞれの国においてルネサンス的な文化の盛り上がりがありました。
ヨーロッパ中世の夜明け。
出来事①
キリスト教権力の弱体化
十字軍遠征そのものは結果的に失敗。ローマ教皇庁の権力が後退。
出来事②
教皇権にかわって各国の国王の力が増大
とくにフランスとイギリスが大きく台頭。14世紀には領土問題や王位継承をめぐって100年にわたる英仏戦争がおこります。このときイギリスに圧されていたフランスを救うために立ち上がった一人の女性。ジャンヌダルク。13歳の少女が神のお告げによって立ち上がりフランス郡を勝利に導いた。
出来事③
イタリア商人の近代化
十字軍をきっかけにイタリアの港湾都市を拠点とする地中海交易が活発になり、たとえばベニス、ジェノバ、フィレンツェ、ミラノといった都市が大きな経済力をもっていた。とくにシェイクスピアの戯曲で有名な「ヴェニスの商人」たちは、東方からもたらされる香辛料や絹などをヨーロッパ諸国に売りさばいて儲けまくった。
イタリアの商業都市でルネサンスが開花した背景。
こういう変化のなかで、キリスト教自体も大きく変わっていく。1450年にグーテンベルクが活版印刷を発明。最初に印刷されたのが聖書。人々が聖書を身近に手に取ることができるようになると、これまでのローマ教会の在り方に疑問をもつ人々があらわれてきます。ドイツの修道僧マルティンルターがでてきて「95か条の問題提起」をしたことがきっかけで宗教改革につながる。
このときに聖書の教えに戻ろうというスローガンを掲げて登場したのが、プロテスタント派。日本の大学でいうと、青山学院、明治学院、関西学院など。
さらにフランスのカルバンが厳格な聖書主義を説いて宗教改革を強力に推し進めた。このような動きに対して守旧派のカトリックも「イエズス会」が組織される。イエズス会は教皇の絶対権力を守りプロテスタントと徹底的に対抗し、未知の国々に出かけては熱心に布教していく。日本にキリスト教をもたらしたフランシスコザビエルは、このイエズス会の宣教師。上智大学、聖心女子大、清泉女子大、白百合、南山大学、ノートルダム、平安女学院。
人間の歴史は古代このかた長いあいだ、本を読むときは声を出していた。本は音読しかできなかった。それがグーテンベルクの活版印刷以降、黙読がはじまり、声の文化が薄れていった。
印刷革命と宗教革命の引金を引いたルネサンス時代の次が(途中マニエリスムをはさみ)バロック。バッハ、ヘンデル、モンテベルディの時代。バロックというのは「ゆがんだ真珠」という意味。代表的なのがベルニーニの彫刻。1620年ごろにサン・ピエトロ大聖堂の装飾彫刻をすべて請け負う。「物語性の強調」とても演劇的でドラマチック。そして2つ以上の焦点があり、その2つの焦点が互いに動きあって独特の��じり感覚、ドラマ性を生み出している。バッハの「フーガ」は2つのモチーフが互いに追いかけけっこする様式。追想曲。ルネサンスでは焦点はつねに一つだった。
ルネサンスの世界観では宇宙はたった一つので、神秘主義の影響もあってマクロコスモスとミクロコスモスは神を中心にして完全に調和ひているもの、秩序をもったものと考えられていた。
バロックでは、唯一型の宇宙観が崩れはじめマクロコスモスとミクロコスモスとが二つながら対比してくる。かつ、二つの世界はかならずしも完全に対照しあっていない。それぞれが動的でそれぞれが焦点をもちはじめる。
ルネサンスでは正円の世界、バロックでは楕円。
バロック時代は科学革命がおこっていた時代。極大のマクロコスモスと極小のミクロコスモスのそれぞれについて科学によって明らかにされていった。16世紀半ばにコペルニクスが地動説を発表。(その前はプレイマイオスの天動説)イギリスでは1600年にウィリアムギルバードが「地球磁石論」著作、イタリアのガリレオガリレイは天体望遠鏡をつくる。ドイツでは、ケプラーが宇宙モデルを構想して惑星が楕円軌道を描いている「ケプラーの法則」を発表。17世紀後半になると、ニュートン「万有引力」
シェイクスピアこそ、バロック的な光と影の、神と人間の、生と死の葛藤を物語にした作家。ハムレットの悩みこそ「生きるか死ぬか」まさに二焦点的、バロック的。
編集とは。
そのままではいっしょにしにくいものや、それまで誰も関係があるとは思っていなかった現象や情報に、新しい関係性を発見したり、もう一つ特別な情報を加えることによって関係線を結んでいく。新たな対角線や折れ線を見つけていく「方法の自由」、「関係の発見」
人間は、マクロとミクロを考える葦
デカルトの(我思う、ゆえに我あり」は人間の存在を世界の存在とともに数学のように証明したかった。そのデカルトが自分よりも30歳も年下なのにどうしても会いたくて会いにいったのがプレースパスカル。「パスカルの定理」「人間は考える葦である」「人間は、自然のうちでもっとも弱い一本の葦にすぎない。しかしそれは考える葦である」
人間は折れやすく壊れやすいからこそ考えるのだ。人間の小さなことがらに対する敏感さと、大きなことがらに対する無感覚は、奇妙な入れ替わりを示している。
同時期日本では、分割しない見方がさまざまな日本文化を生んでいく。座の文化、一座建立。いろいろな人々が集まって一座を設けて、そこに何かを見立てていく。そこには出会いがある。一期一会、分割しない文化。
東山文化(銀閣)では、和風と漢風の融合がおこる。如拙や周文といった人たちがあらわれて、和風の水墨画が生まれ、ついち狩野派が大和絵の方法を加えた日本的な水墨画の一派をおこします。そしてこれを、雪舟が完成させた。
一休さん(一休宗純)を慕って茶人の村田珠光(そのあと珠光の好みを継承した武野紹鷗、完成させた利休がでてくる)や能の金春禅竹、連歌師の飯尾宗祇が大徳寺に集まっていた。
利休の茶の湯を「侘び茶」、本当は立派な唐物を揃えてもてなしをしたいのだけれど、とりあえず今はこんな粗末な道具しかない、あなたに申し訳ない、といった詫びる心をあらわす。
つながりの文化。人と人のつながりだけでなく、茶碗や花や庭や言葉や書がそれぞれつながっていった。
千利休。一本の竹を選び出す眼、竹を一辺両断にする決断力。
利休の茶の湯精神を継承したのが、古田織部。織部は武家の出身でお父さんが信長に従って情報戦略を担当していた人。ただ、織部は利休の精神を誰よりも理解しながら、茶の湯をもう一度、開放する。茶室を広くし、窓も八つ開けた明るい空間「八窓庵」に。自由奔放にゆがみ茶碗を好んだ。織部焼は美濃や瀬戸でたくさん作られている。
ルネサンスの利休、バロックの織部。
利休の茶(長次郎の茶碗)は正円の世界。茶の湯という一つの焦点だけを極めていった。織部のほうは、ゆがみやひずみをもった楕円の世界。まさにバロック。
日本文化はいつも対称的。
「弥生型、縄文型」「公家型、武家型」「都会型のみやび、田園型のひなび」
「漢」と「和」の両立、「和」のアマテラスと「荒」のスサノオに象徴されるような二つの軸で動いてきた。
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nanaintheblue · 7 years
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残月
 今日で、ここ来るのやめます。  左手で私の手をもてあそびながら、佐藤君は言った。うまく反応を声にできないまま、私は言葉を慎重に選ぶ。 「……彼女できたの?」  こういう場面においての第一声として、正しいのかよくわからない。ただ、いま一瞬感じた驚きや怒り、悲しみを冷静なままの佐藤君にさらすのは少し悔しかった。あくまで落ち着いているふうでいようと思った。こちらは大人なのだから。 「違います」 ふっと吐かれた佐藤君の息が首すじにうっすら届く。つづく言葉を聞こうと耳をすましていたけれど、何も言わなかった。指の動きは止まないままなので、私は手をつないだまま、離せずにいる。 暖房のごうごうという音だけが準備室の中で冴える。結露して曇った窓ガラスに、夜露が墨のようににじんでいた。
受験生としての自覚なのかもしれない、というのが、私なりの解釈だった。高校三年、十一月。時期としては遅すぎるけれど、それが妥当だと思う。私に飽きたか、他に好きな女の子ができたのか。いずれにしろ、佐藤君は理由を教えてはくれないだろう。 佐藤君の進路は、よく知らない。なんどか訊いたが、返事はたいてい、要領を得ないものだった。美術部員でもないので、それとなく担任に聞くわけにもいかず、何と無く、大学には行かないのかもしれない、と思っていた。父親が三歳の時からおらず、母子家庭だと言っていたから。 成績は、よくも悪くもないようだ。試験期間も時々準備室を訪れ、私に触れるわけでも話をするわけでもなく、課題を広げることがなんどかあった。 関係を持ってから、ほとんど間をあけることなく、週に一回か二回ふらっと来ていた。二年になれば、三年になれば、さすがにそうもいかなくなるだろう、ぱたりと途絶えるだろう、と思っていたのに、いつまでたっても頻度は変わらなかった。模試のあとに来ることも、たびたびだった。私は叱らなかった。受験生としての自覚はないの? と問い詰めたくなることもあったが、生徒と不埒なことを及んでいる私にそんなことを言う資格などない。 あのあと、佐藤君はひとしきり私の手をもてあそんでぼんやりしていたが、電車の時刻に合わせて帰っていった。なにか、最後に一言言うかと思ったけれど、とくになにもなかった。私も、こういうときなにか声をかけるべきなのかどうか考えながらも、黙って見送った。 いずれ、こういう日が来るのだろうなとは思っていた。戒めのためにも、関係を持った日のうちから、そのことを考えていた。 三十一歳。大人ぶるつもりは毛頭ないけれど、夢を見るほどには若くない。この歳になってどうしてこんな不毛なことをしているのだろう、と私のセーターをたくし上げる佐藤君のつむじをぼんやり見下ろすこともあった。三十路にはいっても関係がつづいたとき、こちらから振り切ることもちらと考えなかったわけではない。それでもきっぱり関係を切る気にならなかったのは、佐藤君との関係があるにしろないにしろ、自分が他の男性とどうこう、ということにはならないだろうとわかっていたからだ。あってもなくても変わらないのであれば、わざわざ切る必要もないだろう、というせせこましい考えだった。 さっきまで触られていたてのひらになまめかしく動いていた指の感触がよみがえり、身体の芯が灯されたようにじんと熱を持ち始めた。 相手はもういなくなったのに、誰のための発情だろう、とむなしくなった。
佐藤君はとても大人しい生徒だった。とても、女教師に手を出してくるようなタイプには思えなかった。 人前ではそう振舞っている、というわけではなく、素で寡黙だ。おなじ大人しそうな男子生徒二、三人とつるみ、地味に黙々と生きている、という感じがした。若者らしいエネルギーや欲望が一切感じられず、所作が老人じみているようなところがあった。 唯一の接点だった、一年の時の芸術の選択授業でも、目立たない生徒の一人でしかなかった。油絵を日本画の手法で模写する、というコンセプトの授業で、彼はゴッホのひまわりを選び、丁寧に下絵を描き、人よりいくらか遅れて色塗りに入った。 「すごくよく描けてる。経験者?」 巡回で佐藤君の絵が目に留まり、思わず声をかけた。佐藤君は突然私に話しかけられ、一瞬戸惑いを見せ、ありがとうございます、と私に聞こえる最低限のボリュームに絞った低くかすれた声で言った。少しでも教室で目立ちたくない、自分の存在を誇示したくない、という意思を感じた。 「美術部だった? 中学。それとも習いごと?」机の上の消しゴムのカスの量はちょっと笑ってしまうほど多い。几帳面に隅に小山をなしている。 「いえ……あの、特には」 無愛想ではないけれど、あまり話したそうに見えない。話しかけられるのは迷惑なのか、と思わず身を引き、他の生徒の方へ身体の向きをかえ、ふと気づき、ぎょっとした。 彼の膝の上に載せられた握りこぶしが、汗でぐっしょりと濡れ、ズボンを濡らして黒を濃くしていた。 顔は平静なのに、その動揺の現れのギャップがなんだか生々しく、思わず目をそらした。見てはいけないものだったかもしれない、と少し申し訳なく思った。同時に確信していた。この子は教師と話すことにすら緊張し、怯えてすらいる。 湧いてきたのは、庇護欲ではなかった。嗜虐心、だったかもしれない。腹の奥底でわずかにひくついたなにかに気づかないふりをして、それ以降話しかけることはしなかった。もちろん、巡回で助言をすることはあったが、個人的なことで声をかけるのはやめておこうと思った。佐藤君は、淡々と私の言うことに頷き、その通りに鉛筆や筆を動かした。真面目に制作に取りかかる佐藤君よりも、すぐに怠けたが る他の男子生徒に発破をかけて促したり、せんせー彼氏いるの? 結婚しないの? などと友達のような口をきく生意気な女子生徒をあしらうことに忙しく、私は佐藤君のことなどほとんど意識の外にあった。 作品提出の最終日、間に合わなかった生徒を放課後美術室に呼び出し、来週まで、完成するまで毎日居残りなさいと言い渡した。怠けていた生徒のグループから離れたところに、佐藤君がぽつりと座っていた。 だりー、めんどくせえ、などと文句を垂れ流す生徒をなだめすかしたり叱り飛ばしたりしているうちに、一人、二人と終わらせていく。サボるような生徒に限って、元々の要領はよかったりする。 結局、締め切り日まで居残ったのは佐藤君だけだった。その日は美術部員が制作をしに何人も美術室に来たので、生徒は佐藤君一人ということもあり準備室でやらせることにした。隣の机で他の生徒の作品に成績をつけながら、完成を待つ。暖房から発せられる熱に乗って、版画のインクの匂いと埃が鼻をむずむずさせた。ストッキングの下で肌が汗ばんだ。 職人のように何色もの顔彩を使い分け、一番細い彩管で色を塗り重ねている。恐ろしいほどの集中力で、ホームルームが終わるなりやってきて黙々と準備を始めていた。あと小一時間で終わるだろう。 「先生」 声に顔を上げると、佐藤君と目が合い、目顔で呼ばれた。完成したのかと思い、立ち上がり上から覗き込む。 「ここの、凸凹に色が載らなくて」 見ると下塗りの部分が砂粒でも入り込んだようにぼこんと不恰好に盛り上がっていた。指で触っても、取れそうにない。 「削った方がいいですかね」 佐藤君が爪を立てようとしたので、私は慌ててその手を掴みとめた。勢いのまま、背中から抱きつくような格好になる。意図せず胸の重みをそのまま彼の身体に押しつけることになった。あ、と佐藤君が呻き声に近い声を上げる。つられて顔に熱が回った。それをごまかそうと、早口に威丈高な口調でさとす。 「だめ。そんなことしたら、そこだけ色が染み込んでむらになる」 手を離す。身体を起こすと、佐藤君の耳たぶの裏側は直視するのが躊躇われるほど真っ赤になっていた。寒さのせいではない。この部屋は十分、暖かい。 触りたい、と思ったときにはもう指が耳朶に触れていた。気づけば佐藤君の握るものは絵筆ではなく、私の左手に変わっていた。さっきまで佐藤君のつむじを見下ろしていたはずなのに、いつの間にか佐藤君が私の肩を机の上に押さえつけていた。 未成年に手を出せば淫行、罪に問われるのは自分。そんな意識が頭のすみにあった。けれど、止まらなかった。止まってくれなかった。止まる気はーーなかった、かもしれない。今思えば。 うわごとのように先生、と呼びつづける佐藤君の掠れ声にだけ耳を傾けていた。美術室と準備室を隔てるドアは分厚いので声が漏れることはないだろう、ということを計算するくらいには、私は冷静だった。 佐藤君の絵は、机の上で未完のまま乾いていた。
夢だったのかもしれない、と美術室の戸締りをしながら思った。その方がお互いにとっていいだろう、と思った。 佐藤君は身体こそ震えていたが、表情は落ち着いていた。淡々と着衣を直す私に、佐藤君はなにも言わなかった。正直安堵した。 言い訳を並べてごまかされたり、丁重に謝られたりしたら、ひどく傷ついただろうから。 四年ぶりだった。ふと気づき、その頃佐藤君は小学生だったのかと思い、自分を嗤った。 異性と交際したことは二度だけだ。大学生の時と、同僚からの紹介。どちらもさしてつづかなかった。自分は異性への愛も愛されることにも執着はないのだな、と二度目に別れた時に思った。寂しい生き方になるだろうと予感したし、実際、それ以降淡々と過ごしていた。 ふと人肌恋しい瞬間や、誰かの腕にすがりたいと思う時もないわけではなかったけれど、大抵、眠ったりごはんを食べればなんとなくうやむやになった。一時の満たされない淋しさを埋めるために誰かと付き合うということが、億劫でしかなかった。 同年代の女が、恋に泣き、笑い、はしゃいでいる間、私はずっと一人だった。友達もいたし、実家もそう遠くない。まわりを羨むこともあまりなかった。 一生、誰にも執着せずにひっそりと過ごしていくのだと思っていたし、それで納得していたはずなのに。
幸い芸術の授業はそれ以降なかったので、佐藤君と顔を合わせずに済んだ。どんな顔をすればいいかわからなかったし、どういう対応をしても、お互い傷つくだろうと思った。いや、私の方は別にいいのだ。この歳にもなれば、忘れて記憶を封じ、なかったことにすることも容易い。ただ、まだ幼いほど若い佐藤君に、ほんのいちどの過ちで、これからによくない影響が出ないことを祈った。教師としてというより、大人として申し訳ないことをしてしまった、と済まなく思った。 暖房がききすぎる職員室があまり得意ではないのと、美術部にすぐに顔を出せるのとで、私は普段美術準備室で仕事をしていた。翌日も準備室で作業していると、そっと戸が開いた。 予感はあったけれど、いざ顔を合わせると、驚きと戸惑いを隠せなかった。まさか、という困惑と、やっぱり、という確信ーーもっと正直に言えば、安堵や嬉しさも、まったくなかったとは言えない。浮き立つ気持ちが一瞬とはいえ湧き上がったのを、私は気づかないではいられなかった。 「完成、したんで」 佐藤君は作品を私に差し出した。作品を持って帰ったことを知らなかったので、予想外な用事に面食らう。私情で来たのだと勝手な、かつ自意識過剰な勘違いをした自分に羞恥を感じ、くだらなく思った。 「……締め切り、過ぎたから駄目ですか」 なにも言葉を発さない私に、不安そうな声で言う。いいの、点はつけるから、と笑い返し、受け取った。とても完成度が高く、まじまじと見入ってしまった。恐らく、美術部に所属する生徒と同格、もしかするとそれ以上に優れているかもしれない。 「いい作品ね」 凹凸がそのまま残っていた。私がそれに目をとめたことに佐藤君は気づいていることを意識して、わざと爪で軽く引っ掻いた。佐藤くんが音を立てずに唾を飲み下したのが喉仏の動きでわかった。 「無理に取らなくてよかった」 微笑みかける。余裕ぶってはいたけれど、内心、挑発している自分にはらはらしていた。佐藤君は無言のまま私を見下ろした。冷酷なほど無表情だった。 うろたえればいいのに。みっともなく顔を赤らめて、嫌悪や困惑を露わにすればいいのに。子供のくせに、どうしてこの子はこんなに落ち着き払っているんだろう。 先生、 にゅっと琥珀色の武骨な指が伸びてきて、反射的に肩を跳ねさせてしまう。右頬をさっと撫でられた。それだけで、ざっと肌が粟立つ。その気配を読み違えたのか、佐藤君まで見るからにうろたえ、ばつの悪そうな顔をした。 「……インク、ついてたから」 嘘だ、と思ったけれど、佐藤君の指には確かにインクがついていた。 「ありがとう。……もう、帰んなさい」 椅子を回転させ、顔を背ける。頬を触られただけで朱に染まった今の顔を見せられない。 ごめんなさい。 佐藤君が部屋を出る時、戸を締める音に紛れて謝られた気がした。羞恥でさっと全身の血が逆流するような感覚に、くちびるを強く 噛みしめる。あんな青臭い子供にどうして謝られなければならない。立場は本来逆のはずだ。私はそんな惨めな女ではない。 勢いよく部屋を出た。佐藤君は十メートルほど先で、肩を跳ねさせ振り向いた。 「佐藤君」 「……はい」 おずおずとこちらに戻ってきた佐藤君の手を掴み、部屋に連れ込んだ。鍵を後ろ手で締めると、彼はほっとしたようにわたしの腰を強く抱きよせた。むっとするような強いインクの匂いの中、私は自分の肩に置かれた佐藤君の手をじっと見つめていた。武骨に盛り上がったそれを、飽きることなく、ずっと。 共犯者だと思った。同じ秘密を共有することでお互いを牽制し、だからこそふたりを強く結びつけた。佐藤君の、夏の草いきれのようなとめどない量のエネルギーが一心に私へ向けられ、底のない壺になったような���持ちでそれらを受け入れた。圧倒されていた。欲望の強さは、彼の生きている強さそのものだった。佐藤君自身、それを持て余してどう扱えばいいかわからずにただやみくもに私にぶつけてきた。 先生、 掠れた呻き声で名を呼ばれるたび、からだからかくんと力が抜け、血が強く満ち引きした。生きていることを強烈に実感した。 そんなあやうい関係など、最初から壊れることを前提につくったことくらい、わかっていたはずだ。いつだってはらはらしていた。いい大人である自分から終わらせなければならないと自覚していた。 いつかは、いつかは、と、先延ばしにしては佐藤君と肌を合わせ、抱き合った。すればするだけ離れられなくなることをわかっていながら、見えない振りをした。大人として、教師として、女として、最低だった。それでも、ひとたび後ろ暗い欲望に引き摺り込まれれば抗う気などほとんど湧いてこなかった。 くだらない見栄とプライドのために、いちどであればごまかしがきいた過失を退路を切って自ら念を押した。なかったことにする選択肢もあったのに、佐藤君がわたしより先にしましょそれを選ぼうとしているのを感じた瞬間、屈辱を覚えてしまった。そんなくだらないもののために、生徒を道連れにしたも同然だった。共犯、などではない。佐藤君は被害者ですらある。 だめな大人でごめんね、と謝ることすら許されていないような気がした。佐藤君の躯から発せられる熱で、すべてをうやむやにしてしまいたかった。 いつか手酷いしっぺ返しを食らうことも、ちゃんとわかっていた。わかっていたのだ。
やがて冬が来る。準備室を訪れる生徒は誰もいない。 三年生と階が違うので、佐藤君を校内で見かけることもほとんどない。それでも、ふと廊下を歩いている時に痩せた背の高い男子生徒を見かけると目で追ってしまい、決まり悪く思った。未練がましいにもほどがある。 日常に戻った。それだけだ。なにも失っていない。私にできるのは、卒業するまでに、佐藤君がわたしとの過失を自分の中で清算するなり昇華するなりして進路に向き合ってくれることを祈るだけことだった。 傲慢だろうか。端から佐藤君は、私個人など見ていなかったのかもしれない。若い男の子なら、よくあることだ。その方が後腐れがなくてよほどいいとすら思った。私はどこまでも身勝手だった。 帰り際、ふと窓ガラスに映った自分の顔にまったく生気がないことに気づき、薄くわらった。 捨てられて当然だ、そんな女。
計ったようなタイミングで母から見合いの話が来た。年に何度か話を切り出される度、仕事を理由に断っていたが、もう潮時かもしれない、と思い休日を利用して実家に帰った。相手は隣町の不動産の跡取りだった。条件も申し分ない。三十一という自分の年齢をかえりみても、もうこれ以上の案件は無いだろうと思い、向こうが用意した料亭で食事を取ることにした。 歳は私より五つ上で、若白髪が混じっていたが優しそうな人だった。お互いに口下手で会話が弾んだとはお世辞にも言えなかったが、こういう人と結婚すれば一生大事にしてもらえるのだろう、と薄ぼんやりと思った。 とりあえずは付き合ってみませんか。もちろん、結婚を前提に。 帰り際、拙い口調で言われ、断る理由も無いままに頷いた。相手に好意がない以上は承諾しなかった二十代の頃とは訳が違う。もう、市場から降ろされようとしている。むしろ喜んで交際を受け入れる立場にいるのだった。 両親に交際することを伝え、そのまま自宅に戻った。大したことはしていないのに、ひどく身体が重かった。 最後にされたくちづけは、こちらが戸惑うほど不器用だった。蝶が止まったような弱い弱い重ね方は、交際への躊躇をそのまま如実に表しているような気がした。ああ、この人は別に私とこういうことがしたかったわけではなくて、私への気遣いであり儀礼的な挨拶なんだろうな、とそこまで透けて見えてしまった。いい意味でも悪い意味でも、正直な人なのだろう。 別に、傷つかない。いまさら、そんなことでは。
家族以外の人と年を越したのは初めてだった。自宅に呼び、蕎麦を食べ、テレビを観て、穏やかに過ごした。彼がわたしに好意や愛情を持っているのかどうなのか時間が経ってもよくわからなかったが、おずおずと求められれば黙って差し出した。淋しいのはお互い様だ。二人でいるというよりも、ひとりぼっちが二人いるような気がした。 このまま私はこの人と結婚するのだろう。それとなくだが、古風な価値観を持つ彼が家に入ることを望んでいることもわかっていた。それなりに苦労して手に入れた教師という職に未練や愛着がないわけではないけれど、それはそれでよかった。もう、準備室にいたくなかった。廊下を歩いてくる足音がないか、耳を済ませるくせが抜けず、かと言っていまさら職員室で作業をするのにも慣れず、どうやり過ごしていればいいかわからなかった。見かけた時は、見つけられる前に踵を返すことも二度ほどあった。 年明けの学校は大学受験のために絞り切った空気が漂って張り詰めていた。三が日が明けたばかりなのに、三年生の生徒は黙々と学習室や教室に篭っている。佐藤君はどうしているのか。センター試験は、受けるのだろうか。進学率は高い高校だが、皆が皆進学するわけでもない。秋頃から職員室で面接練習をする生徒も何人かいた。 不意にすれ違ったのはセンター試験を一週間切った週末のことだった。本当に不意打ちだったから、誰なのかよく考えもせずに前を歩いてきた生徒の顔を凝視してしまった。佐藤君は困惑したように何度か瞬きした。すれ違いざまになにか声をかけるべきなのか、その前に目をそらすべきなのか、何もわからない。 かすかに唇が開かれた気がした。気のせいかもしれない。佐藤君は結局何も言葉を発さなかった。そのまま履き替え口に吸いこまれていく。 今度もこちらが捨てられたと思った。捨てられたと感じることすら私には許されていないのに、屈辱と情けなさで簡単に泣きそうになった。 なぜ、この子はこんなにも平気そうなのか。皮膚ごと引き剥がされるような痛みに苛まれているのは、私だけなのか。佐藤君を思いだすだけで、見かけるだけで、血を煮るような地獄を味わっているのは、私一人なのか。そうなのか。 わーん、と子供のように声を上げて泣こうにも、涙を流す気力すらない。背中にとりすがろうにも、振り払われる痛みを思えば腕を伸ばすこともままならない。元からそんな権利はないのだ。執着も依存も、してはならない。ましてや佐藤君はまだほんの高校生で、進路を前にした岐路に立っている。こちらから手離してあげなければならなかったのに、結局佐藤君にさせてしまった。 佐藤君は私がまだ見ていることに気づかないまま、スニーカーに履き替え、ドアを押して出ていった。その姿は闇の中で溶け込み、一瞬で見失う。 動く体力もなく、ぼうと立ちすくんでいると、先生どうしたんですか?と女子生徒に怪訝そうに声をかけられ、愛想笑いで取り繕い、その場を立ち去る。すがりつくべき相手は別にいるではないか。その温もりは確かに私に向けられたもので、私が望んでいい熱だ。 でも私が焦がれているものはそんな生温いものではない。 恋に恋する十代の少女のようにみっともなく感傷に浸りつかる自分をどこかで冷酷に見つめながらも、反芻をやめられない。どうしてこんなに執着が消えないのだろう。熱の中に取り込まれて気を遣ってまぎらわそうにも、私が見ているのは別の男だ。手を絡めただけでぐっし ょりと汗で濡らした手のひらだけを、繰り返し繰り返し思いだしている。
  季節は簡単に過ぎていく。春の萌しとまではいえないけれど、晴れた日は土の匂いがふと風に運ばれ鼻をかすめる。   センター試験が終わり、国公立の前期試験が終わり、ふれれば頬を切りそうなほど尖りきった空気は和らいで、校内は卒業の雰囲気に包まれていた。   期末試験が終わる頃、私は正式に婚約を申し込まれた。交際期間はそう長くはなかったが、異存はなかった。激情はなくとも、穏やかに暮らしていけるだろう、そう思った。   そして、三月いっぱいで教員を辞めることにした。離婚でもしない限り、私が教壇に上がることはもう二度とない。   職員室で祝福を受け、どこから漏れたのか通りざまに見知らぬ生徒から結婚のことをからかわれたり祝われたりすることもあった。こそばゆくはあったけれど、プロポーズを受けた時よりもこうして他者から祝福を受けて初めて、素直に幸福を感じた。 あれ以来佐藤君とは会っていない。三年生は、後期試験がある生徒以外はほとんど登校していないから、当然といえば当然だった。   私のことなど忘れていて欲しい、どうか自分の進路にだけ向き合っていて欲しい。本音なのか建前なのかなどどうでもいい、私にはそう祈ることしか許されていない。その祈り自体に、滝のような身勝手と傲慢が幾重にも重なって組み込まれていることも重々承知している。   けれど、どれほど考えても、あのとき他にどんな選択肢があったのか、私にはわからないのだ。
  卒業式が終わり、授業もないのにほとんどの生徒は帰らずに下級生も上級生も廊下で輪をつくっていた。こういうときに、なんとなく一人では帰りたくないという気持ちもわからないではない。芸術の授業を取っていた生徒が数人、アルバムを持ってコメントを書いてくださいと美術準備室までわざわざ足を運んできた。結婚が決まったせいか、とりわけ女生徒には懐かれて、幸せわけてくださいと真剣な声で握手を頼んでくる子もいた。 これから部活ごとに送別会がある。佐藤君は部活に属していない。友達もそう多い方ではないように見えたし、もうとっくに帰っているのだろうか。   美術部員には、先生も送別会に参加してくださいと声をかけられていたが、あまり顔を出す気はなかった。おそらく結婚の祝いも兼ねているのだろうとは想像がつくが、主役はあくまで卒業生であるべきだ。祝福なら浴びるほど受けている。 準備室にいると生徒に引っ張り出されかねない。職員室に行こうと戸締まりをしていると、ふと手元がうっすらと翳った。振り向こうとしたのを押し止めるように声がした。 「先生」 耳に届いた途端、背骨から尾?骨にかけてぐにゃりと溶けて、その場に崩れ折れそうなった。のろのろと振り向く。逆光ではあったけれど、かちりと目が合った。 「……結婚、」聞きたくない、と咄嗟に思った。「するんですね」 賑やかしい喧騒が遠い。力無い微笑みを浮かべ、佐藤君が右手と左手を後ろ手で組んだ。 「……あなたは」訊く権利など微塵もないことを知りながらも訊かずにいられなかった。「ここを、離れるの?」 佐藤君は遠い北の地方の大学名を口にした。「恐らくはそこです」淡々とした口調からは、薄い微笑み以外、何の感情も読み取れない。 もう会うこともないでしょうね。 げんきでね。 どうか忘れてしまって。 なにも掛ける言葉を持たない。目を見ることもできず、視線が下を向く。土埃で薄汚れた上履きは、わずかにふるえていた。 「すきでした」 爪先が向こうを向く。そのまま、音も立てず階段を降りてゆく。 リノリウムの廊下がふわっと揺らぐ。 はっと前を向いた時には、すでに佐藤君は踊り場を曲がって降りて行くところだった。 そうか、 そんな簡単なこと、 唇が勝手に歪み、わらってしまった。ひびわれた笑い声が喉をこじあけ、漏れ出す。 来月には、式を挙げる。先生と呼ばれることはもう二度とない。 もう、佐藤君以外の誰にも「先生」と呼ばれたくなかった。あの切実な、喉仏からぐんと押し出したような低い声を、最後にしたかった。無意味だとわかっていても、耳をふさいだ。せめて、今日だけは、佐藤君の声で締めくくりたかった。くだらない感傷でも、浸かっていたかった。 そうか、恋か。この、胃の底から躯が灼けつくような痛みは、そのせいだったのか。わからなかった。知らなかった。三十一にもなって、まったく気づかなかった。 卒業、おめでとう。 それすら言うことを忘れていた。 お互いに祝福を口にしなかったのは本心ではないからだと思うのは、あまりに驕っているだろうか 。少なくとも、私は佐藤君がこの町を出ていくことをおめでとうなんて思っていない。だから私は教師を辞めるのだ。この学校にいる意味を、失ってしまったのだから。 空に目をやれば昼の月がぽかりと浮かんでいる。その生白い三日月を横顔になぞらえてしまわないうちに、歩きだす。
2016.1 R-18女による女のための文学賞二次落ち。これにて平成28年度のワナビー生活は終わり。わたしは色気のある異性を一種類しか書けないからいつまでたっても処女みたいな文学少女のままだ。
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zeaccainf0 · 4 years
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サニーサマーレイン
☂8月23日
「ゲームセット!ウォンバイ青春学園、越前リョーマ」  歓声が、遠い残響のように聞こえた。  真っ二つに割れたボールが足元でひっくり返っている。それを茫然と眺めているうち、勝つことしか考えられず熱を持っていた頭が、少しずつ冷えていった。全身から力が抜けて、その場に立ち尽くす。はー、と勝手に息が洩れた。 「ねえ」  対岸から呼ばれる。越前くんが手を差し伸べていた。  重い足を動かして、ネット際に歩み���った。  こうして対戦相手とまともに握手ができるのはいつぶりだろう。五感を失い這いつくばった姿を見下ろすのがお決まりだった。今までのろくに顔も覚えていない選手たちを思い出しながら、手を伸ばす。  手のひらを強く握られ、俺も同じぐらいの力で返した。越前くんは目の縁を尖らせる。試合は終わっても、瞳の中には火が点っていた。ぎらぎらした目で俺を見据えて、それから、笑顔を弾けさせた。  俺より少し小さなボウヤの手は、俺と同じぐらい節くれだっていた。それだけ多く、ラケットを振って、ボールを打ったということだ。血が噴き出しそうなほどの努力を、まだ成長途上の体で重ねてきた。そういうことだ。  今さらながら、とんだ化け物を相手にしていたことに気がつく。もっとも、試合中の彼は化け物というより、天使とか神様の申し子とか形容した方がしっくりくるのだけれど。今だって、俺に向ける笑顔はひたすらに温かくて、やさしい。  握っていた手を離した。彼いわく「楽しいところ」へ俺をいざなおうとする手を、今はまだ取ることができない。  越前くんは、しょうがないな、という顔で俺を見て、仲間のもとへ駆けて行った。待ってる。そう、その背中に言われているような気がした。  立海のベンチへ戻ると、対岸のお祭り騒ぎとは打って変わって、ひどく沈んでいた。みんな俯いて、悲痛な面持ちをたたえている。嗚咽を隠しもせずに泣いている部員もいた。  誰も俺を見ようとはしなかった。ただひとり、真田を除いて。その真田も、瞳がゆらゆらと揺れている。  しばらくして、迷子のような足取りで真田は俺に近づいてきた。おずおずと差し出された手に、ラケットを託す。 「準優勝だ、幸村」  真田がそう言って俺を見つめた。 「……負けたんだね」  頭では分かっている筈なのに、負けた、という言葉がただの音としか捉えられなかった。三文字は俺の心の中をうわすべりして、霧散した。  代わりに、真田の眉間に深い皺が寄る。負けという言葉を使わなかったのは、真田なりの気遣いだったんだと気づいた。もしかしたら、真田自身だって聞きたくなかったのかもしれない。  それでも、真田は深く頷いた。  わあ、といっそう大きく青学が湧く。越前くんが胴上げされていた。青空めがけて、高く、たかく。  あれは、去年までの俺たちの姿だ。優勝だ、と真田が俺に告げる姿が頭をよぎる。普段の落ち着いた様子からは想像できないほど浮かれた真田の声。そして、俺も。頬が熱くなるのを感じながら、笑顔で待つ仲間に飛びつくのだった。  これ以上、何を言ってどうしたらいいのか、分からなくなった。 「両校、整列してください」  審判の号令で、動けなくなっていた体を半ば無理やりに動かすことができた。相手に情けない顔を見せてたまるものかと、負けず嫌いの部員たちは唇を引き結び、厳しい顔をした。  青学と礼をし合って、それから、ふと客席を見る。父さん、母さん、お祖母ちゃん、妹。やはり、悲しそうな顔をさせてしまった。  感傷にひたる間もなく、すぐに表彰式が始まる。  式の間、テニスコートはおごそかに静まりかえる。聞こえるのは、選手を称える拍手ばかり。割れるようなそれに包まれながら、誰もがひと夏の軌跡を振り返り、噛み締める。 「準優勝、立海大附属」  前へ出ようとすると、背後から遮られた。 「俺が行く。いいな」  問いかけではなくて、決まったことを確認する口調だった。俺が答えもしないうちに、真田は壇上へと歩み出す。  その眼前に、盾が差し出される。にぶい銀色をした盾が。真田にとっては、突きつけられた、と言ってもいいぐらいかもしれない。  しかし真田は表情ひとつ変えず、それを受け取った。両手に抱えて、いつも以上に背中を真っすぐに伸ばして、頭を垂れた。 「優勝、青春学園」  続いて、手塚と大石が壇上に上がる。まだ高い太陽に照らされて、手塚の持つトロフィーも、大石が掲げる優勝旗も、さんさんと輝く。  俺の手の中は空っぽだった。真田は、盾をじっと見ていた。振り返ると、赤也が、泣きそうになりながら表彰台を見上げていた。  赤也をはじめ、レギュラーとして戦うのは初めての部員も多かった。初めての夏を、胸を張って終わることは叶わなかった。  ぜんぶ、俺のせいだ。 「真田、やってくれ」  だから、ミーティングを始める前に、そう告げた。  周りにいた部員たちが、血相を変える。でも、真田はもともとそのつもりだったのだろう。ためらいも滲ませず、こくりと頷いた。 「遠慮はせんぞ」 「掟に遠慮も何もあるものか」  打ちやすいように、真田の正面に立った。真田は手首を握り、調子と覚悟とを整える。  俺と真田に気づく部員が増えるにつれて、ざわめきも大きくなった。 「静かにせんか!」  真田の一喝で、ほぼ全員が俺たちに視線を注いだ。却ってよかったと思う。証人が多い方が、けじめをつけるにはふさわしい。 「歯を食いしばれ」  真田が手のひらを振りかぶる。焼きつけておくために瞼を見開いた。  病室で俺を打った姿が重な���。絶望の淵から俺をすくい上げた、その手、その熱さ。  今さらになって、走馬灯みたいに記憶がよみがえってくる。本当はおそろしくて仕方がなかった手術。俺がいれば、と悔やんだ関東大会の敗北。死に物狂いでリハビリをして、やっと踏みしめた緑の芝生。  長い、本当に長い夏だ。  打たれる瞬間、どうしても反射で目を閉じてしまう。 頬に触れたのは、熱い風だった。たったそれだけ、だった。  目を開ければ、あともう少しで俺に届きそうだった真田の手が、ぱたりと落ちる。 「……できん」 「……どうして」 「理由がない」  聞いたことがないぐらい、声が震えていた。黙って、続きを促す。 「お前は負けた。だがお前の戦いに、驕りも油断も、微塵も感じられなかった」  真田の呼吸が徐々に乱れていく。 「むしろ……っ」  とうとう、言葉はただの吐息に変わった。真田はそれでもどうにか言葉を継ごうとして、面持ちをぐしゃりと歪ませた。涙がひとつ零れる。 「……っ、すまないっ」  真田は片手で瞼を覆って、俯いた。それでも抑えきれない涙が、頬にいくつもの線を描いていく。  ふくぶちょう、と赤也がつぶやく。真田よりもっと大粒の涙が、そのまなじりからぼろぼろと落ちる。咄嗟に赤也をかたわらで支えたブン太も、ともすれば一緒に崩れてしまいそうだった。  水面に石が投げられたみたいに、波は広がった。気がつけば、仁王までもが、目の端を赤くし鼻をすすっている。  俺の敗北がどれだけ大きいものだったか、ようやく実感した。真田に打たれて終わりにしようとした、自分の浅はかさも。 「すまなかった」  自然と深く腰が折れる。  やめてください、そんなことしなくていい、と何人かが叫んだけれど、しばらく頭が上げられなかった。  部員たちの嗚咽が、もの悲しく降ってくる。こんなにも苦い思いを味わわせてしまったことに、ただただ詫びることしかできない。 「幸村、もういい」  真田に体ごと引き上げられて、抱き締められた。痛みを感じるほど、きつく。  体を震わせて咽喉を引き攣らせて、真田は泣く。覆うものが何もなくなったせいで、たちまちにジャージの肩が濡れた。幼い頃ですら、ここまで泣く真田を見たことがない。  俺は、泣けなかった。  ああ、と思わず嘆息した。いたたまれない。  俺の中で何かが欠けている。申し訳ない、それしかなかった。こうして目の前で真田が、みんなが、俺のために泣いてくれてもなお、一緒に泣くことができない。他人事みたいに茫然としている。  取り巻く空気が湿度を増す中で、目が乾く、とすら思った。
☂8月24日
 全国大会の翌日は焼肉屋で打ち上げ、というのが立海のはるか昔から続く伝統だ。  レギュラーたちは、ものすごい勢いで肉に食らいつく。瞼さえ腫れていなければ、昨日あんなに泣いていたのが嘘みたいだった。  ウーロン茶とジュースで乾杯をして、誰もが雰囲気に酔っていた。負けたのに、などと野暮なことは言わない。  目の前では、ちょうどブン太と赤也のカルビ争奪戦に終止符が打たれたところだった。赤也は、覚えとけよ、と空の取り皿を抱えて涙目で言い残し、蓮二に席替えをお願いしに行った。  俺はといえば、ジャッカルばかりが焼かされているのがかわいそうで、それを手伝っていた。 「幸村くんさあ、なんで真田と仲いいの」  真田が別のテーブルにいるのをいいことに、ブン太がなかなかに突っ込んだ質問をしてきた。 「あ、別に変な意味じゃなくて。言っとくけど俺あいつのこと嫌いじゃねーよ。苦手だけど」 「おい」  あまりにもブン太が正直なのを、ジャッカルが咎める。俺は、あけすけだけどわりと愛のこもった言い方だと受け取った。 「幸村くんと真田、好きなもんとか何ひとつ被ってなさそうじゃん」 「実際、被ってないね。一緒に遊ぶと時々困る」  印象派の美術展に行ったとき、終始真田は首を傾げていた。反対に、骨董の壺だらけのお店に連れて行かれたときは、俺の目にはどれも同じに映って、盛り上がる店主と真田の横であくびを噛み殺していた。 「好きなものがはっきりしない頃からの幼馴染だから……かな」 「だったら趣味は似るような気もするけどな」 「俺とジャッカルもやってたゲームとか同じだぜい」  たしかに、目の前のダブルス以上に俺と真田の付き合いは長い。ただ不思議と、俺のガーデニングも真田の剣道も、一緒にやろうと誘い合ったことはなかった。  俺と真田が一緒にすることって、と思い浮かべてみたら、答えはあっという間に出た。 「テニスはふたりとも好きだと思う」  遊んだ日の締めくくりには、お互いの退屈を晴らすため、テニスコートへ赴くことも多い。  そう言うと、何故かきょとんとした顔をされた。 「……好きなんだ」 「好きじゃなかったら部長なんかやらないだろ。もともと俺は部長向きのたちじゃないよ」  全体を俯瞰して見ることはできても、最後には自分が興味のあるところばかりに目が行ってしまうし、集中したい。もっとひどい話をすると、入院というブランクはあれど、未だに全部員の名前を覚えていない。覚える必要がないとも思っている。  大好きなテニスで三連覇をすることしか考えていないような人間が、部長に選ばれた。理由はいたって単純だ。実力主義のこの学校で、いちばん強いのが俺だったというだけ。  部長になってからは、ひたすら好き勝手にやらせてもらった。実力で周りを黙らせてきたけれど、さすがに運動部らしいしがらみを無視する訳にもいかなかったそれ以前とは違って。  誰に対しても分け隔てなく厳しくできる真田や優しくできる蓮二が隣にいなかったら、この部はどうなっていただろう、ということをよく考える。 「真田の方が部長に向いてると思う」  ジャッカルもブン太も勢いよく首を横に振った。まあ、短気ですぐに手が出るところは玉に瑕だろうか。 「なんで真田じゃだめなんだい」 「怖い」  ジャッカルのシンプルな即答に、思わず笑った。 「ブン太は?」  ううん、とブン太は唸る。 「……ひとりでなんでもしようとするから」  急に声音が真剣になった。ああ、とジャッカルもいささか引き締まった顔をして、頷く。 「時々一緒のチームでいる意味が分かんなくなるんだよ。勝ちたいって気持ちとかは一緒だと思うんだけど、もうちょっと、こう……」 「頼ってほしいよな」 「それ!」  ジャッカルがしみじみと言うのを聞いて、昨日、真田の試合が終わった後、断られてもアイシングを持って追いかけていった姿を思い出した。 「手塚に勝った後、あいつひとりで泣いてた」 「へえ、そうだったのか」  次の試合が始まるのも見届けずにどこかへ行ってしまったのに、そんな訳があったとは。手塚は、真田にとって俺の次に倒すべき相手だった。長年の雪辱が晴れて、感極まったのも無理はない。 「嬉しいのは俺たちも同じだし、一緒に喜びたかったよな」 「そうだね」  相槌を打った途端、ブン太が俺を見て目を三角にする。少したじろいだ。 「なに」 「幸村くんもそういうとこ、あるぜ。俺基本的にお前のこと好きだから、もっと頼ってくれたらもっと好きになるかも」  冗談めかしてウィンクされる。 「あ、もう焼けてる」  すぐに興味を移したブン太は、ロースを俺の小皿に放った。すっかり食べ物のことを忘れていた。 「まあ、明日からすぐに俺たちにも任せろとまでは言わないけどさ。せめて真田とぐらい分け合ってみたら」 「……うん」  やけに暗い声が出た。 「わり、なんか説教っぽい。引退だし許して」  それにすぐ気づいたブン太は、もう一度ウィンクして、ぺろりと舌を出す。  入院中、誰よりもみっともない姿を真田には見せた。時には縋ったこともある。いや、縋ってしまった。そう思っているあたり、ジャッカルとブン太に言われたことは的を射ている。俺も真田も、本当の弱みは誰にも見せたくないんだ。 「んだよジャッカル、にやにやして」  ブン太の声で、引き戻される。 「好きなものは被ってなくても、似てるんだな。幸村と真田」 「……俺がどうかしたのか」 「げ」  いつの間にか、真田がブン太とジャッカルの間、赤也が座っていたところに立っていた。  向こうのテーブルを見ると、蓮二がひらひらと手を振る。その隣、安息の地で、赤也がブン太に取られた分を取り返そうと、がつがつと肉と米をかき込んでいた。たぶん、さっきまで真田が座っていた席だ。甘やかされてるなあ、赤也。  むっとした顔の真田に、とりあえず座るよう促す。 「俺も真田もテニスが好きだよねって話をしてた」  助かった、という視線が目の前のダブルスから寄越された。別に悪口を話していた訳でもないし、堂々としていればいいのに。 「うむ」  真田が肯定したのかただ単に相槌を打ったのか、よく分からなかった。少なくとも、機嫌が直ったから、悪い気はしなかったはずだ。
☂8月25日
 家族に手間も心配もかけたくなくて、ひとりで行ける、と言ったものの、案の定入口で足が竦む。病院独特の消毒の匂いとけぶった白色。かつてここに閉じ込められていた記憶を無理やりに引きずり出されて、苛まれる。  主治医からは、絶対に今日来てくださいね、と念を押されていた。二学期から大手を振って学校に通うためには、今日中に検査を受けなければならないらしい。  通院を減らして全国大会に集中したい、というのは本音でしかなかったけれど、検査から目を背けるための口実でもあった。  これは、健康というお墨付きをもらうためだけのものだ。一昨日まであんなに激しいスポーツをしていたくせに、何を怖がることがあるんだ。自分に言い聞かせても、怖いものは怖いのだった。  どうにか一歩踏み出そうとしたそのとき、狙ったかのようなタイミングで電話が鳴った。ディスプレイには真田の名前。  長くかかる用件のような気がしたものの、つい通話ボタンを押す。真田の声を聞けば、きっと少しは楽になれる。逃げ場にしようとしていることは悟られないようにしなければならないけれど。 「部の引き継ぎの件で相談があるのだが」  やっぱり、長めの用件だった。真田が何もなくて連絡を寄越すことはほとんどない。 「ごめん、これから検査なんだ。今、病院に着いたところ」 「む、すまん。あとでかけ直す」  もう切るのか。少しがっかりしたことは、おくびにも出さない。 「夕方には終わるから、俺からかけるよ」  じゃあね、と言うと、真田が言葉を継ごうとする気配がした。 「ご家族はそこにいらっしゃるのか?」 「ううん、用事があるみたいだったから付き添いは断った」 「ではお前ひとりか」 「そう」  ごそごそと何かをしている音が続いた。 「すぐに向かう」  びっくりして、すぐに返事ができなかった。  病院に足を踏み入れる憂鬱も、検査を受けることをどうしようもなく恐れているのも、きっと真田には見透かされている。普段はにぶいくせに、どうして分かってしまうんだろう。 「……予約の時間に間に合わなくなるよ」  側にいて、不安をやわらげてほしい。わがままが口から零れそうになるのを抑えて、言った。  せめて真田とぐらい分け合ってみたら。昨日のブン太の台詞が頭をよぎった。やっぱり、すぐには無理だ。どうもこの幼馴染の前では、負けず嫌いの俺が色濃く出てしま���。  電話の向こうで小さく唸る声がする。しばらく、真田は考えているようだった。 「大丈夫だから」  真田だけに言うつもりが、俺自身にも言い聞かせている。 「……待っている」  やけにやさしい声。 「ありがとう」  今度はなんのためらいもなく、言葉が口から零れた。 「は、早く部のことを話し合わなければならんからな」  照れたのか、取ってつけたことを返してくる。下手くそだなあ。  あらためて真っ白な建物と対峙する。俺を暗い気分にさせるだけだった白に、ほのかな明かりが差して見えた。消毒くささも、さっきよりずいぶんとましなような気がした。 「もう、大丈夫」  電話を切って、つぶやく。  ほんの少し軽くなった足取りで、病院の自動ドアをくぐった。
 部屋を次から次へと移動して、腕や足を動かしたりよく分からない機械で何かを計測されたりしているうちに、検査はすべて済んだ。意外と早かった、と体感として思う。入院中にも何度か受けたものばかりで、説明されなくてもするべきことが分かるぐらいには慣れていたのが大きいかもしれない。  残るは、主治医の問診だった。これですべてが決まる。気が尖っていくのをなだめながら、先生の向かいの丸椅子に腰かけた。 「これから普通に学校に通っていいですよ」 「部活……テニスをしても?」 「それはもうしちゃっただろう」  カルテから顔を上げて、先生は困ったように笑った。君の回復力には本当に驚かされる、と付け加えて。 「全国大会、どうだった?」 「準優勝です」 「ええ!すごいね。おめでとう」  驚いてくれたので、俺も愛想笑いを返した。俺たちにとって優勝が当たり前だったことを知らない人にとっては、こんなものなんだ。 「きちんと結果が出るのは、五日後。異常がなければ電話でいいかな」 「はい、お願いします」  ほら、何も怖がることなんてなかった。胸を撫で下ろし、そっと息を吐く。
 病院の最寄駅で両親に結果を知らせたあと、真田にも電話をした。 「待たせたね」 「いや」  一拍置いて、どうだった、と訊かれる。 「ちゃんとした結果はまだだけど、普通に学校に行って生活していいって」 「そうか。では、テニスもできるのか」  さっきの俺と同じ質問がすぐに投げられる。真田も怖いのか、語尾がわずかに震えていた。 「テニスも問題ないみたいだ。試合にももう出ちゃっただろって先生にはちょっと呆れられたよ」 「そうか」  さっきと同じ相槌でも、声が違っていた。安堵したのが明らかだった。 「心配させてすまないね」 「気にするな」  さて、と言って、また声音が変わる。今度は副部長の声。 「蓮二に聞いたのだが、次の代は仕事の割り振りを見直したいそうだ」 「了解。蓮二のことだから、もうプランまでできてるんだろ」  俺も部長らしく返してみる。 「ああ、お前が検査を受けている間にその確認を取っていた。今よりずっと効率的にできると言っていたぞ」 「三人で会って話そうか。俺はいつでもいいから」 「俺も午後なら構わん。蓮二の予定次第で調整しよう」  それから一言ふた言を交わして、電話を切った。  部長の仕事、入院でほとんどできなかったけど、まとめておかなきゃな。あれこれと思考しているうちに、電車がホームに入ってくる。  乗車して初めて、ずいぶん長い間ホームに立っていたことに気づく。つい最近まで駅ですら怖いと思っていたのに。  こうやって、ひとつひとつ、平気になっていく。
☂8月28日
 宿題と部の仕事の合間に、庭をいじったり絵を描いたりクラシックを聴いたり詩集を読みふけったりと好きなものにまみれていたら、あっという間に二日間が過ぎた。いくら好きといっても延々と続けていられるものでもなくて、最後の方はブラームスさえも俺の退屈を満たしてはくれなかった。  ただ、テニスだけはしなかった。決勝の日からずっと、ラケットもボールもバッグの中で眠っている。  少しの空き時間があればテニスをしていた俺にとっては有り得ないことで、家族も、口には出さずとも不思議そうな顔をしていた。 そういえば、テニスをしないとなると全然真田に会わない。三日空くというのも有り得ないことだ。  久しぶり。目の前の真田に、頭の中で言ってみた。  真田は眉間に皺を寄せて、蓮二が作ってきた資料とにらめっこをしている。超優秀な参謀の立てたプランに欠点なんてないに決まっているのに、ばか真面目にひとつずつ検分しないと気が済まないんだ。ちなみに俺は十分以上前に読み終えた。 「精市、何か飲むか」 「じゃあ、アイスティー。ありがとう」  蓮二は俺の分のコップも持って、ドリンクバーへと向かった。 「そのプラン、もっと改善した方がいいところとかあった?」  進捗確認も兼ねて、真田に話しかけた。 「今のところないな。さすが蓮二だ」 「そう。……真田、最近どうしてる」 「もっぱら道場にいる」  顔を上げないまま、真田が答える。 「飽きない?」 「……お祖父様には絶対に言えんが、さすがに飽きてきたな」  真田にとっては後ろめたいことなんだろう。誰に聞かれる心配もないのに声を潜めるのがおかしかった。 「だよね。いきなり夏休みって言われても何したらいいか分からないよな」  テーブルに残った水滴を指先ですくって、アコーディオンみたいに縮まったストローの包み紙に垂らす。包み紙はゆっくりと間抜けに伸びていった。こんな風に緩慢に、俺の夏休みは終わっていくのだろうか。  いつの間にか俺の手なぐさみを見ていた真田に、行儀が悪い、とたしなめられた。 「いっそ旅行にでも行くか」  真田が資料を置いて、切り出す。唐突すぎて、言われたことを理解するのに少し時間がかかった。 「いつ」 「明日から二泊三日でどうだ。母の田舎にあてがある。旅行といっても何もないから、観光はできんが」 「また急だな」  と言っても、特に予定がある訳でもない。宿題もあと数ページ。今日中に終わらせられる。 「でも、行けるな」 「何の話だ?」  ちょうどいいところに戻ってきた蓮二を誘ってみるも、すぐに首を横に振られてしまった。 「せっかくだが、家庭教師をしなければならない」 「なに、赤也かっ」  真田が吼えそうになったので、どうどうとなだめた。唯一の二年生として俺たちについてきてくれた赤也は、特に宿題どころじゃなかっただろう。間違っても勉強の得意な子ではないけれど、多少目を瞑ってあげなければ。  それに、旅行をするにあたって、もっと大変なことがある。 「俺と真田のふたり?」 「ああ」 「ふたりきり?」 「それがどうかしたのか」  何を今さら、という態度を真田は崩さない。がっかりした。こう、照れたりとかなんかあるだろう。 「恋人ができたらそんな態度じゃだめだよ」 「たわけたことを」  ふん、と真田が鼻を鳴らす。だからそうじゃなくて。 「おい、いつまで俺はお前たちのやり取りを聞いていればいいんだ?胸やけがしてきたぞ」  甘いな、と冷ややかに言う蓮二の声で我に返った。一体真田に何を期待してるんだ、俺は。  蓮二が持ってきてくれた紅茶を口にして、頭を冷やした。 「それで、来るのか来ないのか」 「たぶん行けるよ」  真田が資料に没頭している間に、家族の了解を取りつけるべく、メールを打った。数分後、あっさりと明日からの真田との旅行が決まった。
☂8月29日
 電車を乗り継いで四時間と少しで、その町に着いた。車だと早いのだが、とさすがの真田も疲れた顔で言い訳をした。  俺たちの宿は、ときょろきょろしている間に、真田はどんどん前へ進んでいった。慌ててその隣に並んでついていく。  住宅街を抜けて、さらに奥へ。駅に降りたときから田畑が多く見られるのどかな場所だったのが、もっと緑が豊かになってきた。  ようやく、真田は立ち止まった。 「……これ登るんだよな」 「一時間ほどの辛抱だ。徒歩ならこちらが近道だぞ」  荷物は軽めに、と言われた理由が一瞬で分かった。うっそうと茂る木々の間に、とてもよく言えばハイキングコース、見たままで言えばけもの道が、山奥へと続いている。  旅行というかもはや合宿だ。今年は参加できなかったから、ちょうどいいかもしれないということにしておこう。  そんなことをのんきに考えられていたのは初めだけで、しばらくすると家を出るときにもらったお小遣いに頼りたくなった。山の中で暑さはやわらいでいるといえど暑いものは暑いし、しかもこの悪路。検索してみようと携帯電話を見て、仰天した。まさか、今どき電波が通じなかった。もともと必要なとき以外は使わないから、構わない。けれど。 「本当にふたりきりじゃないか」  思わずつぶやく。 「何か言ったか」 「なかなかすごいところに来たなって、それだけ」 「あまりに田舎で驚いたか」  からからと真田は笑う。そうじゃないけど、まあいいや。なんて、やっぱり俺は何を思ってるんだろう。  喋る余裕もなくもくもくと歩いているうち、整備された大きな道に合流した。あと十五分だ、と真田。  道中、二泊分の物資を調達するために、個人の商店に立ち寄った。色あせた看板と外壁。店内の電気が点いていなかったら、見落としてしまいそうだった。  おそるおそる入店すると、失礼ながらお店の見た目に反して、商品はきれいに並べられ、埃のひとつも落ちていなかった。 「すみません」  真田が声をかけると、しばらくして、奥からお婆さんが出てきた。歳はうちの祖母と同じぐらいだろうか。化粧っけがなくて人がよさそうで、いかにも田舎のお婆さん、という見た目だった。  お婆さんはレジ越しに真田を見て、ぱちぱちとまばたきをする。 「あなた、真田さんのところの。大きくなって」 「お久しぶりです」  今度は俺を見る。 「あなたはお友達?」 「はい、幸村と言います」 「……真田と幸村」  含み笑いをされた。 「げんちゃんから何回か聞いたことがある。テニススクールのお友達でしょう」 「今は同じ部活ですよ」  げんちゃん、と呼ばれた真田は、俺に聞かれたのが嫌だったのか、少しぶっきらぼうな口調になった。  お婆さんは、自分たちで食事を作るならあれがいいとか今の季節はこれが美味しいとか、一緒に店内を回って教えてくれた。さらに親切に、真田にお菓子を握らせたり、お友達にも、と言って俺にもくれたり。  籠の中が充実してきたので、買い忘れはないだろうか、ともう一度売り場を見回す。あるものに気づいた。 「これやろうよ」  花火を手にして、真田の前に持っていく。 「ふたりだけでするのか?」 「まだ今年はやってないんだ」 「ご近所の迷惑にならないだろうか」  眉間に皺を寄せて、真田は渋る素振りを見せた。 「いいだろ、げんちゃん」  不意打ちだったらしく、言葉に詰まる。作戦成功だ。 「幸村、後で話がある」 「もう季節も終わりだから安くするよ、げんちゃん」  お婆さんに勢いを削がれたらしい真田は、こくりと頷く。つい笑ってしまうと、俺と違って狙った訳ではないお婆さんは、不思議そうな顔をした。  会計を済ませると、お婆さんはお店の外まで出て見送ってくれた。 「げんちゃん」  ぽつりと言ってみただけで、真田がすごい勢いで振り返る。 「間違っても学校で言うなよ」 「いいじゃないか、かわいくて」  目の端が吊り上がってきたので、からかうのはそのぐらいにしておいた。
 真田のお母さんのお祖父さんとお祖母さん、つまり曾祖父母が住んでいたというその家は、今では別荘のように使われているらしい。  床に荷物を置く前に、手で埃を払う。 「さすがに二年来ないと、埃は積もるな」 「掃除すればいいよ……あ、これ」 立ち上がろうと顔を上げると、本棚にずらりと並んだ小説や図鑑が目に入った。 「整理をしなければならないとは話しているがな」  真田の言う通り、別荘と言うわりには家の端々に生活の匂いが残っている。 「俺はこういう方が好みだけど」  一冊を手に取って、ぱらぱらと捲る。日焼けした歴史書。真田の歴史好きはもう片方のお祖父さん譲りだと思っていたけれど、実はここにルーツがあるのかもしれない。紙の上に、達筆な文字が書きつけられていた。誰のものかは分からないけれど、これも、さすが真田と血がつながっているだけあって、字がどことなく似ている。 「おい、始めるぞ」  俺が本を眺めているうちに、真田は掃除機を持ってきていた。 「えー、ちょっと休憩」 「駄目だ」  休むにしてもこう汚くては、と背中を叩かれた。仕方なく重い腰を上げる。  掃除機をかけて水拭きをすると、なかなかに良い時間になった。学校の当番や母さんの手伝いをすることはあっても、普段からこんなに大規模にしている訳ではないから、やけに時間がかかった。  ぴかぴかになった床に座って、足を投げ出す。もうどれぐらい動き続けているだろう。やっぱり、休んでおけばよかった。 「お腹すいたな。なんか作る?」 「ああ」  真田の頬にも空腹だと書いてある。ただし頷きはするものの、乗り気ではなさそうだ。 「真田って料理できた?」 「少しだけ」  俺も、たまにお弁当の具の一部を作るくらいだ。掃除の二の舞になる予感がした。  商店で買った野菜や調味料をかき分けて、奥にしまっておいたカップ麺を取り出す。 「我ながら名案だと思うけど、どうかな?」  ポットにはもうお湯が沸いている。そう付け加えると、真田はさっきよりも深く頷いた。  カップにお湯を注ぐ俺の一挙一動を逃すまいとでもいうかのような視線。そのままでは味気ないので卵を割り入れると、おお、と感嘆された。たったこれだけで。今日は自炊をやめて正解だった。 「食べたことなかった?」 「うむ」  真田は、いかにも見よう見まねという素振りでお湯を注いでみせた。嫌な予感が深まる。結局、卵は俺が割った。  真田はじっと時計の秒針を見つめていた。適当でいいよ、と教えたのだけれど。  蓋を剥がす。湯気と一緒に、鶏と醤油の匂いが立ちのぼってくる。割り箸を折るより先に、耐えかねた腹の虫が、大きい音で鳴いた。真田が俺を横目で見て、ふっと笑う。はずかしい。 「いただきます」  三分きっかりを測り終えた真田は、俺に倣って蓋を剥がした。おそるおそる箸先をスープにつけて、麺を一本引き出す。 「毒見じゃないんだから、普通に食べたら。ジャッカルのお父さんのラーメンほど美味しくはないけどね」 「うむ」  今度はきちんと束で取って、口へ運ぶ。眉尻がぴくりと動いた。 「これは意外と」  言い終わる前に、言葉は麺をすする音に変わった。真田も俺に負けず劣らず空腹だったんだろう、はふ、とスープの熱さを冷ましつつかき込んでいく。 「真田とふたりだけで食事なんていつぶりだろう」 「思い出せん」  ジャンクフードを一緒につつくことに至っては、初めてだ。お堅い真田は、部活の後の買い食いすら良しとしない。 「たまにこういうジャンクなものが食べたくなるよね……って分からないか」 「うむ。そもそも縁がない」  そう考えると、俺と真田はあんまり中学生らしい付き合いをしていないのかもしれない。 「テニスばかりしているからな」  真田は言ってから、しまった、という顔をした。別にかまわないのに。  真田のばつの悪さを蹴り飛ばしてやるつもりで、言った。 「じゃあ明日から一緒にしようよ、テニス以外のこと」
☂8月30日
 隣でごそごそと動く音がして、目が覚めた。薄っすら瞼を開けると、カーテンの隙間からやわらかい陽の光が差し込んでいた。 運動部の体力をもってしても昨日は疲れたらしく、布団に入ってすぐに眠って、それきり目が覚めることはなかった。 「起こしたか」  真田の声がした方に視線を移せば、すでにトレーニングウェアに着替えていた。ベッドサイドの時計は八時。どのみち起きなければいけない時間だ。首を横に振る。 「走ってきたのか」 「ああ」  上体を起こして伸びをする。朝は決して得意ではないけれど、今朝はしゃっきりと目覚めることができた。 「俺も走ろうかな」 「付き合おう。道も分からんだろう」 「うそ、ダラダラしたいよ」  わざと、もう一度シーツにくるまった。 「たっ……」  たるんどる、と言いかけてやめる。下手くそめ。 「嘘だよ、ダラダラはしない。朝ごはん食べたらさ、散歩がしたいな」
 朝ごはん食べたらさ、と簡単に言ってのけたものの、まずこれが大変だった。トーストと目玉焼きとサラダというシンプルな献立に、俺も真田もやたら苦戦して、包丁の特訓をしよう、と誓い合った。片付けも、言わずもがな。  昼食は、とあまり考えたくなくなっていたことを相談したら、どうやら外にうってつけの場所があるらしい。朝食で残った食材でサンドイッチを作ったり、その他もろもろの出発の準備をして、と忙しくしていたら、目的地に着いたときには十一時を回っていた。  八月も終わりになると、空気は熱くても、川の水温は十分に冷たい。  真田は持って来た胡瓜とトマトをざるに入れて、川の水に浸した。その絵だけで、いかにも夏休みといった風情だった。さっきまでの慌ただしさが、嘘みたいに流れていく。  滑るなよ、と子どもみたいな注意を受けながら、飛び石の上に立つ。落ちていた木の棒を片手に持っていたせいで少しふらついて、岸にいた真田がすぐ隣の飛び石までやって来た。 「あのボウヤ」 「誰だ」 「越前リョーマ」  その名前を出しただけで、空気が変わる。真田はなんでもない風を装って、相槌を打った。 「軽井沢で修業してて記憶喪失になったんだって?こういうところだったのかな」  しゃがみ込んで、水の中から小石を拾いあげる。 「修行って何してたんだろうね」  テニスの要領で、木の棒を振って小石を打った。小石は二十メートルぐらい真っすぐに飛んで落ちて、勢いよく水を跳ねあげた。試合だったらサービスエースを獲れていただろう。 「ラケットを持ってきてもよかったな」  木の棒で素振りをする。ラケットよりずっと軽くて、手からすり抜けていきそうだ。 「テニスではないことをするのではなかったのか」 「そうでした」  どうしてもすぐにテニスへと道が逸れてしまう。いや、もしかしたらテニスこそが俺たちの正しい道で、それ以外のことをしようとする今が脱線しているのかもしれない。  これ以上真田を困らせるのもかわいそうな気がした。棒を水の中に放ると、真田の面持ちに安堵が滲む。 「気遣ってるだろ。俺からテニスの話を遠ざけようとか、のんびりさせてあげようとか」  首を横に振ろうとするのを、遮った。 「いいよ、もう分かってる」 「お前には敵わん」  真田は苦々しげにつぶやいて、あっさり白旗をあげた。気を遣うのも隠し事をするのも、真田は大の苦手だ。とっくに限界だったんだろう。  俺にしてみれば、俺がほぼ無意識にテニスを避けていることを敏感に感じ取った真田にこそ「敵わん」のだけれど。  今度は俺が素直になる番だ。そう思った。 「実はね、まだ負けたっていう実感がないんだ」  真田は黙って、続きを促した。 「いや、実感はあるのかな。君たちに申し訳ないって気持ちは今だってずっとあるよ。でも、何もかも腑に落ちた訳じゃない」  うろうろと言葉がさまよう。ずっと抱えていた気持ちを吐き出すうちに、心細さばかりが嵩を増していく。  みんなと一緒に泣きたかった。泣けなかった。何がみんなに、真田に、涙を流させているのか分からなかった。  だから、あの日以来テニスには触っていない。逃げているだけだと、自分でも痛いほどに分かっている。ずっとこのままではいられないことも。  どうしたらいい、と真田に縋りたいとすら思った。なけなしの自尊心が、それを咽喉で押しとどめた。  俺がすべてを吐き出し終えるまでずっと、真田は俺を見つめていた。 「冷たく聞こえたら悪いのだが」 前置きをして、咳払いをひとつ。 「俺の知ったことではない。答えを俺に求められても、それはお前が導くものだ、幸村」  視線以上に言葉は真っすぐで正しくて、鋭利だった。伸ばしかけた手を払いのけられる。俺はたったひとり、谷底へと突き落とされたにも等しかった。 「そのとおりだね」  俯いて足元を見て、そう頷くのがやっとだった。飛び石の岩肌とその間を流れるせせらぎとが見えることに、ほんの少しだけ安心する。 「いつか答えが出たら、そのときは一緒に抱えてやる。それぐらいはできるぞ」  はじかれたように顔を上げる。真田と目が合う。目線はほとんど同じ高さなのに、はるか上を見上げる心地だった。  突き落とされても、這いあがれるのなら。そう言って、そう信じて、真田は俺に手を差し出す。  青学のボウヤ、立海の仲間、真田。ほんの少しあたりを見回すだけで、こんなにもたくさんの人が、俺ならできる筈だと、盲目的と思えるほどに信じてくれている。過度な期待だと言い換えてもよかった。彼らもそれをよく分かっていて、尚言うのだった。  まったく、ひと月前まで体を動かすこともままならなかった人間に、なんて無茶をさせるんだ。――絶対に答えを出してみせる。 はは、と勝手に笑みが零れた。それは武者震いにも似ていた。 「……そういえば」 「どうした」 「ん、いや、もう冷えたかな、野菜」 「お前は……」  呆れて絶句されてしまった。だって、これ以上何も言う必要はないだろう。  もう少しだけ、上で待っててよ。真田の立つ飛び石に乗って、その肩を軽く叩いた。伝わったのやらそうでないのやら。岸へ引き返す俺に、真田は黙ってついて来た。  引き揚げた胡瓜を齧ると、まだ生ぬるかった。体感ではひどく時間が経った気がするのに、現実にはせいぜい十分ほどの出来事でしかなかったらしい。 「どれ」  真田は俺の手首を握って、ずいと顔を近づけてきた。後ずさる間もなく、胡瓜の天辺はその口の中へ。 「もうしばらく待たねばならんな」 「真田、きみ」  俺が食べた後から、そんな風にためらいもなく。と言いかけたけれど、お互い幼馴染相手にはよくやることだった。たとえばスポーツドリンクの回し飲みなんて、もう何百回もしている。 「わ、悪かった」  ところが、さっきまで平然とした顔をしていた真田までもが、急に赤面して謝ってきた。 「いや、いいけど!いきなりだから、ちょっとびっくりした……」  そう、たぶん、いつもとは違うシチュエーションに驚いてしまっただけだ。急にどきどきし始めた心臓に、真田の赤い顔に、無理やり理由をつける。  一度齧ったものを戻すのもな、とぬるい胡瓜を手に持ったまま、形のいい真田の歯形を見つめていた。
「夏休みが終わるよ」  西の空ではたった今、夕焼けの最後のひとかけらが夜に呑まれたばかり。  真田と妙にぎくしゃくしてしまった昼間の出来事を振り払うのに、半日を要した。ずいぶん時間がかかったものだ。 「まだ一日と少し残っているだろう」  バケツを床に置くと、ぱしゃんと水が撥ねた。 「そういう気分ってこと」  花火というものは、どうしたって感傷を呼ぶ。  お婆さんのお店で買った、打ち上げ花火が五つ。ふたりしかいないのにあまり多くても、とこの数になった。夏休みのフィナーレを飾るべく、それらを点々と並べていく。  俺の背後でマッチを手にした真田が、ぽつりとつぶやいた。 「どうやって点火するのだ」  すごい勢いで振り返ってしまった。これはもしや、カップ麺に引き続き。 「やったことない?」 「……その通りだ」  家族とやるときは男手として駆り出されるものだろう、と思ったけれど、そういえば真田は次男、しかもお兄さんとは歳が離れている。 「この線に火を点ければいいんだな」 「いいよ、俺がやるよ。あっちで見てて」  ここで怪我をされてはたまったものじゃない。うう、と不服そうに唸りはしても、真田は素直に従った。急に真田が弟のように思えてきた。  まずはひとつ。火を点けて、真田のいるところまで走った。ひゅう、という音で空気を裂いて光の玉が宙へ飛んで行った。 「きれいだね」  そう言って隣を見ると、なぜだか浮かない顔。 「俺もやる」  腕を組んで唇をへの字に曲げて、こうなったらもう真田は譲らないだろう。次の花火は駄々っ子につきっきりで点火を見守った。 「なんだ、簡単ではないか」  たくさんの光が空を彩っては、消える。真田が次から次へと火を点けるので、たった五つの花火はすぐにあとひとつになってしまった。  花火より、得意げな真田の横顔を見ている時間の方が長かったかもしれない。もう少し多く買えばよかった。そうすれば、かわいい真田をもっと見ていられたのに。――一体誰がかわいいって? 「……なんだかもう、決定的だ」 「幸村、最後だぞ」  ああうん、と心ここにあらずな返事をしてしまった。真田は気にすることなく、マッチを擦る。最後なだけに、あからさまに張り切っているのがかわいい。  空でうつくしく舞う光たちがついに目に入らなくなり、申し訳ない気分だった。
 布団に入ってしばらくして、なあ、と真田が声をかけてきた。いつもは直滑降で眠りに落ちるのに、どうやら寝つけないらしい。しかも、珍しく弱気な声音だった。 「退屈しなかったか」 「なんのこと」  真田の言っている意味が分からなかった。 「旅行と言って連れ出したのに、何もないところで驚いただろう」  最初にそう言っていたじゃないか。ますます分からない。首を傾げてしまった。 「それに、俺はお前に頼ってばかりで……のわっ」  真田のすぐ横に転がって、うつぶせに倒れた。そのまま布団の端を持ち上げて、侵入する。 「おい、入ってくるんじゃない!」 「昔はよくこうやって寝てたじゃないか」 「何年前の話をしているんだ」  しばらく真田と攻防を続け、最後には無理やりに体すべてを布団の中におさめる。こういうときに真田が俺に勝てないのは分かっていた。本人が気づいているのかは知らないけれど、そういうルールと言ってもいい。真田は俺に甘い。  案の定、はああ、と長いため息をついて、諦めたようだった。 「楽しい」  退屈だなんて、とんでもない。そんなつまらない心配を口にするな。 「次に同じこと言ったら、怒るよ」  まったくの本心だった。  真田のため息が、安堵から来るものに変わる。 「真田のこと、ずいぶんたくさん分かったし。十年も一緒にいて、今さらだけど」  たとえば、ほら、こういうこととか。  真田の髪に指をくぐらせた。触れた瞬間だけ真田は体を強ばらせたけれど、嫌がられはしなかった。  見た目どお��硬い感触だった。針金みたいで、少しちくちくとする。真田らしいな、と思って、口元がゆるんだ。  つい五秒前には知らなかったこと。記憶がひとつ、積み上げられていく。 「俺も、ほとんどお前を知らなかったのだな」  真田の指先が俺の髪に触れる。まさかやり返されるとは予想していなくて、今度は俺が緊張する番だった。できるだけ悟られないように、体の力を抜く。  ごつごつと硬い手のひらもぎこちないやり方も、決して心地いいものではないのに、まったく嫌だと思わなかった。  どちらかといえば、商店で適当に買ったシャンプーを使っているせいで、髪の毛がごわごわしているのが気になる。女の子じゃあるまいし、と思うけれど、触れられるのは初めてだから。真田の中に、俺の髪がこういうものなんだという印象がついてしまったら、なんだか嫌だ。  昼間にどきどきしたみたいに、段々と鼓動が速くなる。決定的だ、とふたたび胸中でつぶやいた。昼のあれは決して驚いた訳じゃないことに、もうとっくに気づいている。  いつからだったのかな。ここへ来たときには確かにもう、心の中にあった。決勝の直後に抱き締めてくれたとき、病室に足しげく通って不器用に励ましてくれたとき、同じ学校へ行こうと誓い合ったとき。同じ布団で眠るのが当たり前だった頃から、もしかしたら、ずっと。  真田の中にもそれはあるだろうか。俺はうぬぼれてもいいのだろうか。教えてほしい。 「もっと知りたいよ、真田のこと」  ひとつひとつ、丁寧に知りたい。  瞼を閉じて、そっとつぶやいた。  真田が聞いていたのか、それとももう眠ってしまったのかは、分からない。いつの間にか、髪を撫でる手は動きを止めている。さっきまでより温かくなった体温に、ただ安らいだ。 「俺もだ」  まどろみの中で、ひどくやさしい真田の声を聞いた気がした。
☂8月31日
 翌朝も、真田は俺より先に起きていた。 「起こしたか」  首を横に振って、既視感のあるやり取りをした。真田の様子はまるで昨日と変わらなくて、夜の出来事が夢だったように思える。 「もう帰る日か、早いね」  寝ているベッドが初日とは違うものだということが、かろうじて証拠になるだろうか。ぼんやりしたまま掛布団の端をめくると、ふわりと真田の匂いがした。ひと息に記憶がよみがえり、襲ってくる。振り払おうとして、布団をすべて跳ねのけた。 「そのことだが」  真田は俺の挙動不審を気にしなかった。命拾いした。 「帰りにひとつだけ寄りたいところがある」 「いいよ。どこ?」 「挨拶をしておきたい人がいてな」
 荷物をまとめておいたお陰で、出発にそう時間はかからなかった。けもの道を、来たときとは違うルートで下って行く。着いたのは墓地だった。  かつてあの家に住んでいた人たち、真田の曾お祖父さんや曾お祖母さん、もっと昔のご先祖様たちが眠っているらしい。 「なるほど、挨拶をしておきたい人ね」 「すまん、俺のわがままに付き合わせて」  お墓はきれいに手入れされていて、ほとんど掃除は必要なく、花立ての中身を新しい花と水に取り替えるだけでよかった 「曾お祖父さんたちに会ったことはある?」 「生まれたばかりの頃にな。だから、あまり記憶はないのだが」。  真田は線香の火を手であおいで消し、皿の上に寝かせた。 「今日は幸村を連れてきました」  言いながら墓石に水をかけて、その前にしゃがんだ。 「俺の……親友の」  親友、という言葉を使うのに、どこかためらいがあった。真田は、変わりつつある俺との関係をうまく言い表せないみたいだった。 「真田くんにはいつもお世話になってます」  俺も一緒で、あいまいに誤魔化した。 真田は手を合わせて、目を伏せた。俺もその横にしゃがんで、真田に倣った。 ちらりと横目で窺うと、真田は難しい顔をしていた。ご先祖様にたくさん報告したいことがあるみたいだった。  俺は何をどう言えばいいんだろう。弦一郎くんと俺の行く末を、どうか温かく見守ってくだされば嬉しいです?大事な子孫はお前にやれん、って祟られたらどうしよう。いや祟るなんて、ご先祖様に失礼だな。  悩んでいるうちに突然、携帯電話が鳴った。母さんからの着信だった。知らない間に電波が復活していたようだ。  真田が片目だけ開けて、俺を見る。 「……ごめん、こんなところで」 「いいから、出ろ」  促されて、通話ボタンを押す。ハイのハの字も言わないうちに、精市あなたどこにいるのいつ帰るの真田くんは一緒なの、と矢継ぎ早に質問をぶつけられた。  母さんはおかんむりだった。連絡がつかなくなったことというより、そのせいで検査の結果を伝えられなかったことに。そういえば、異常がなければ電話で、と先生と話した覚えがある。  珍しく音量が大きくなった母さんの声は外に洩れまくっているらしく、知らないうちにご先祖様への話を終えていた真田に苦笑いされる。  どうにか母さんをなだめて、電話を切った。 「解決したのか」 「うん、帰ったらあらためて雷が落ちるだろうね」 「ならば、早く帰らんとな」 「……帰りたくない」  また来ます、と律儀に挨拶をして、真田は桶と柄杓を手に立ち上がった。俺がわざとのろのろしているうちに、踵を返して行ってしまう。強引だ。 「この前の検査、ちゃんと結果が出たそうだよ」  真田が借りたものを元の場所に戻すのを待って、言った。歩みを進めながら。 「どうだった」 「寛解って言うんだって」  字面がうまく浮かばなかったのか、カンカイ、とおうむ返しされる。 「ほとんど完全に治ったっていう意味」  真田は吐息を零した。すぐに言葉が浮かばないようで、咽喉を詰まらせる。結果は分かりきっていたけれど、やはり心配させていたようだ。 「……よかったな」 「うん、よかったよ」  でも。  真田に比べると俺の声は冷ややかで、自分でも驚いた。安堵はあっても、いざ結果が出ると手ばなしでは喜べなかった。  検査の数値は、決勝戦から二日後の俺の体を表している。たった二日間であの病気がどうにかなるとは思えない。  つまり、決勝戦のあの日、俺は病に倒れる前と同じコンディションで、テニスコートに立った。 「いつもどおりに戦って、俺は負けたんだね」  真田の瞳が揺れる。痛みに耐えるように、切れ長の目が鋭くなって、眉間には皺が寄った。 「そうだ」  それでも、真田は確かな声で肯定した。  決勝の日の情景が、鮮烈に蘇った。誰も俺を見ようとはしない中、真っ先に俺を見つめ頷いた真田と、今目の前にいる真田とが、重なる。 ――負けた。その三文字が、急に胸の中いっぱいに広がった。  その場に縛りつけられたかのように足が動かなくなる。追いかけなければ、と思うのに、俺と真田の歩幅は開いていく。 「……幸村?」  怪訝そうに、真田が振り向いた。 「ごめん、なんか、いきなり」  奥歯がかちりと鳴る。震えだす肩を、自分で抱いた。  いつか答えが出たら、そのときは一緒に抱えてやる。昨日真田が言った「そのとき」は想像していたよりずっと早く訪れて、答えはいたって単純だった。 「……悔しいなあ」  悔しい。ただそれだけ。  言葉にした瞬間、こめかみがぎゅっと熱く、痛くなる。  勝ちたかった。欲しかった、みんなに、真田にあげたかった。誰もが俺たちの勝利を祝福する拍手喝采。トロフィーの金色の美しさ。風を受けて翻る優勝旗の重み。そこに刻まれた「優勝」のふた文字が、どんなに誇らしいか。  すでに知っているからこそ、それらすべてを俺の手で葬ってしまったことが、悔しくて仕方がない。そのためだけに生きて、テニスをしてきたと言っても過言ではなかった。いっそ死んでしまいたいぐらいだ。  は、と息が洩れたのが引き金だった。まなじりを涙が伝う。それが地面に落ちるより先に、新しい滴が流れる。すぐに頬も顎もしとどに濡れた。  とうとう歯の根が合わなくなった。浅い呼吸が勝手に繰り返されて、息の仕方が分からなくなる。苦しくて唇を結ぶこともできなくて、嗚咽が勝手に溢れ出す。こんな子どもみたいな泣き声が到底自分のものだと思えなくて、驚いた。子どもの頃だってこんな風に泣いたことはなかったかもしれない。  真田どころか誰の目にふれるか分からない場所で醜態を晒す恥ずかしさで、頬が灼けた。それでも、悔しさの方がずっと大きくて、抑えきれなかった。 「幸村」  真田はほんの少し猫背になって、俺の両肩を手のひらで包んだ。指が筋肉に食い込んで、少しだけ痛い。  ぼやけた視界の中で、真田の真っ黒な瞳だけがはっきりと映った。ふたつの黒は俺をとらえて離さない。あまり泣き顔を見せたくないのに。  両手で顔を隠そうとしたとき、真田の顔が近づいてくるのが分かった。 「なっ、なに……」  近すぎる、と思ったときにはもう、距離はゼロになっていた。震えてろくに言葉も作れない俺の唇に、真田の唇が被さる。  涙が、もしかしたら鼻水まで口に入ってしまうかもしれないだとか、真田の唇も俺と同じくらい震えていて、とてつもなく緊張しているんだな、とか。とりとめもないことが次々に頭をよぎっては消える。  生まれて初めてのキスを奪われたのに、怒りも嫌悪もそこにはなかった。  ひたすらに、安堵していた。 俺はずっとひとりで戦っていたんじゃない。みんなが言葉で態度で示してくれていたことが、今やっと腑に落ちる。  ふっと息を逃がして、真田は退いた。唇が重なっていた時間は、きっと三秒にも満たなかった。 「すまん、こうしたら治まるかと思った」  言い訳ではなくて、本気でそう思っただろうことが伝わってくる声音だった。真田は時々とんでもないことをする。  しかも治まるどころか、逆効果だ。悔しさに安心が加わったせいで、体中の水分が出てしまうんじゃないかと心配になるぐらい、涙の量が増えた。 「……さなだあ」  真田、さなだ、とばかみたいに名前を呼んだ。真田は、ああ、とそのひとつひとつに律儀に応えてくれた。俺が一緒にいる。そう言外に含ませて。  しかしそれだけではどうにも心細くて、今度は俺から顔を近づけた。真田の唇を啄む。うまくいかない俺の呼吸が正しい真田のそれに同期されるぐらい、深く。  肩にあった真田の手が、遠慮がちに背中に回る。俺も腕を伸ばすと、抱き締められた。 乾いてささくれた唇が、その奥の正反対にやわらかい粘膜が、俺よりも高い体温が、背中に食い込む腕の力が、真田が俺の側にいて、俺を決してひとりにしないことを教えてくれる。  耳鳴りの向こう側で、蝉の鳴き声が聞こえた。もうすぐやって来る命が燃え尽きる瞬間に憔悴したかのように、けたたましく鳴き続ける。 「……っ、は」  お互いに息継ぎの仕方を知らないせいで、そう長い間唇を塞いではいられなかった。離れがたい、とためらいながら、距離を置く。  口づけの間も流れ続けた俺の涙は、真田の頬までも濡らしていた。点々と残る滴が、まるで俺と一緒に泣いたみたいだった。  真田は俺のよるべだ。今までも、これからも。  思わず、真田に触れる指をぎゅっと丸める。確かな感触と温度がそこにある。 「痛いぞ、幸村」  真田がほほ笑むのが分かった。仕返しのつもりなのか、さっきよりも強い力で抱かれた。  どちらからともなくまた唇を合わせると、一瞬だけ蝉の声が止んだ。 夏が終わる。長い、本当に長い夏、だった。
☀9月1日
「どうしたんスか」  ステージの下にやって来た幸村部長を見て、訊かずにはいられなかった。  瞼をぱんぱんに腫らし、女子たちが騒ぐ整った顔立ちも形無しだった。マジひっでえ顔。  たぶん、昨日泣いたんだというのは察しがつく。俺もつい一週間ぐらい前の決勝の次の日、同じような顔になったから。 「やっぱり分かるかい?」 「分かりすぎてやばいっスけど……どうしたんスか」  分かっていながらも、衝撃的すぎて二回も同じことを訊いてしまった。そもそもどんな理由でこんなになるまで泣いたのかっていう好奇心もあって。 「……秘密」  ふふ、と笑う部長。いつもみたいに様にならないと思ったら、照れているみたいで、頬がほのかに赤くなっている。あ、悪い理由じゃないんだ。少し安心した。 「大会終わってから、なんかしました?」 「すごい田舎に行って、夏休みらしく過ごしたよ」 「へえ、いいっスね。俺宿題やばくて休みどころじゃなかったっス」 「それは終わったのだろうな」  いきなり真田副部長が割って入ってきて、びくっとしてしまった。 「蓮二に相当頼ったと聞いたが」 「あー、そりゃもうお陰様で!すげえ助かりました……へへ……」  ぎろりと睨みつけられるのを、笑って受け流した。頼りはしたけど答えは絶対に教えてもらえなくて、泣きながら、これはたとえじゃなくて五回ぐらいマジ泣きしたけど、まあそんなかんじでどうにか片付けた。  というエピソードを話してもよかったけどやぶへびになりそうで、会話を打ち切る。表彰、とっとと呼ばれねーかな。  文武両道を良しとする学校なだけあって、夏休み明けは表彰の数がとんでもないことになる。女テニが賞状渡されてるから、次ぐらいだろうか。  女テニの成績は、全国には進出したものの、決して華々しくはなかった。それでもレギュラーの面々は目に涙を浮かべ���いた。嬉しいのか悔しいのか、たぶん両方だ。  俺はどういう顔をしてあそこに立てばいいんだろう。 「男子硬式テニス部」  答えを出す暇もなく呼ばれた。部長を先頭にしてシングルス組、その後ダブルス組、という隊列で壇上に進んだ。 「団体戦、準優勝」  そう告げられるなり、空気が急にざわめき立つ。優勝できなかったことを今知った奴らだ。それどころか、結果をとうに知っていた校長も、俺たちに残念そうな顔を向けてきやがった。どいつもこいつもうるせえんだよ。なんにも分かんねえくせに。 「言わせておけばいい」  俺がイラついてるのをいち早く察しただろう柳先輩に、小声で諭された。 「……あざっす」  先輩の言うとおり、誰がなんと言おうと、俺たちが精一杯やった結果には変わりなかった。誇らしい結果。せめて、と思って、胸を張ろうとして、失敗した。  幸村部長が、ひとりいちばん前へと躍り出たからだ。迷いのない足取りだった。  かたわらの真田副部長は、微動だにしなかった。てっきり今回も副部長が受け取るものだと思っていたから、マジでびびった。誰も口にしなかったけれど、俺たちの間には、優勝旗以外は部長に触らせたくないという気持ちが確かにあった。 「準優勝、おめでとう」  二本の腕をぴんと伸ばして、幸村部長は校長から盾を受け取った。盾に大きく書かれた準優勝の文字をじっと見て、それから、この世界でいちばん大切なものみたいに、銀色の盾を抱えた。  部長はゆっくりと振り返る。壇上から、真っすぐに全校生徒を見据えた。 「ありがとうございました」  校庭中に響く声だった。ひどく震えた声、だった。  瞳に張った涙の膜を揺らして、唇をぎゅっと引き結んで、緊張した肩を震わせて。こんなに悔しそうな幸村部長を、俺は見たことがなかった。涙を零さないのは、きっと部のトップとしての最後の意地だった。  真田副部長は眩しそうに目を眇め、部長を見つめていた。見守っていた。  たちまちに目の奥が熱くなる。  みんなが見てる中で泣きたくなかったのに、結局俺は、柳先輩にあやすみたいに背中をさすられるぐらいぼろぼろになった。勘弁してくれ、クラスの奴らになんて言われるか、ああクソ治まる訳がねえよ、だって、幸村部長が俺たちと一緒に泣けてよかった。 もうどこにも、幸村部長がひとりで戦う必要なんてなくて、よかった。
(2014/11/30)
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shibaracu · 4 years
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●国宝探訪
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●国宝探訪 ●国宝『平治物語絵詞』の探訪とデジタル復元 https://youtu.be/ymTKg46bkaQ 2018/10/01 まだハイビジョンが普及する前の番組だったので、ぜひ再放送や再編集して放送してもらいたい素晴らしい一作です。 0:29:50 より始まる番組は、今では当たり前になったデジタル技術の凄さが当時の私にも大変衝撃をもって教えられました。 ※番組中「絵巻」と紹介されてますが、『絵詞』と思われます。ややこしいですが「平治物語絵巻」は『絵詞』より大分のちの時代に絵柄も異なる作品として残ってますので。些細ですが。 貴重な文化遺産を個人で独り占めするのはけしからんと長年思ってましたが、それによって日本美術史に残る傑作も生まれる事もあると、最近になって教えられました。 https://ja.wikipedia.org/wiki/平治物語絵詞   ●地獄草子  荒俣宏 水木しげる   https://youtu.be/grCZGncnYAc 2019/01/07 2000年 地獄草紙(じごくぞうし)は、 地獄を描いた12世紀の絵巻物。 地獄草紙と呼ばれる絵巻物は、 東京国立博物館本(国宝)、 奈良国立博物館本(国宝)、 旧益田家本甲巻、 旧益田家本乙巻 の4巻があった。 このうち旧益田家本乙巻は、現在では、地獄を描いたものではないとされ、「辟邪絵」(へきじゃえ)と呼ばれるようになっている。 東博本は、髪火流地獄、火末虫地獄、雲火霧地獄、雨炎火石地獄の4図がある。 奈良博本は、屎糞所、函量所、鉄磑所、鶏地獄、黒雲沙、膿血所、狐狼地獄の7図がある。 旧益田家本甲巻は、火象地獄、咩声地獄、飛火地獄、剥肉地獄、沸屎地獄、解身地獄、鉄山地獄の7図がある。 奈良国立博物館本、東京国立博物館本は、『餓鬼草紙』、『病草紙』、『辟邪絵』(いずれも国宝)などとともに、後白河法皇が制作させ、蓮華王院の宝蔵に納められていたことが記録されている「六道絵」の一部であったとする説がある。 これらが蓮華王院の宝蔵にあったものだと断定はできないが、時代的には後白河の時代、すなわち12世紀頃の制作と考えられている。 https://ja.wikipedia.org/wiki/地獄草紙 再生リスト「寺社など」→ https://www.youtube.com/playlist?list=PLCeMQT6UgwOedXhIyvTHsSSicrEf89gsv
◆法隆寺の国宝(後編)  https://youtu.be/8zAMb35Yr9s   2016/10/22 法隆寺の歴史と国宝紹介    ◆国宝 - Wikipedia   https://ja.wikipedia.org/wiki/国宝 国宝(こくほう)とは、日本の文化財保護法によって国が指定した有形文化財(重要文化財)のうち、世界文化の見地から価値の高いものでたぐいない国民の宝たるものであるとして国(文部科学大臣)が指定したものである(文化財保護法第27条第2項)。建造物、絵画、彫刻、工芸品、書跡・典籍、古文書、考古資料および歴史資料が指定されている。 法的には、国宝は重要文化財の一種である。国宝・重要文化財の指定手続、指定制度の沿革などについては、重要文化財の項を参照。 なお、いわゆる「人間国宝」とは重要無形文化財に指定された芸能、工芸技術などの保持者として各個認定された者の通称であり、本項で解説する国宝とは異なる   ◆日本の国宝一覧(にほんのこくほういちらん) 建造物の部    https://ja.wikipedia.org/wiki/日本の国宝一覧 近世以前 (以下の「神社」「寺院」は、文化庁による分類である。寺院所有の物件で様式上「神社」に分類されているもの、神社所有の物件で「寺院」に分類されているものがある。)   ◆国宝の種類02-絵画(仏画、絵巻物、水墨画など) http://kokuho-japan.alexis.jp/kokuho02_kaiga.html 国宝のうち、建造物に分類されるのは、 仏画、絵巻物、肖像画、水墨画、障壁画など8世紀の奈良時代から19世紀の江戸時代までの作品。 国指定文化財等データベース(文化庁ウェブサイトへ)では、「国宝・絵画」は156件。   ◆【情報】 今年は「四大絵巻」<源氏物語絵巻・信貴山縁起絵巻・伴大納言絵巻・鳥獣人物戯画>が公開!2016年04月01日 https://blog.goo.ne.jp/kakitutei/e/97a9c134eccf694d06137648ee146f63  絵巻に関する情報です。 国宝に指定されている 『源氏物語絵巻』『信貴山縁起絵巻』『伴大納言絵巻』『鳥獣人物戯画』 の4つは「四大絵巻」と呼ばれています。   ◆鳥獣人物戯画   http://www.japanmatrix.com/gooshop/sup_giga/sup_giga1.html 兎や蛙だけではありません。猿や狐のほか鹿、猪、猫や鼠も登場。 甲巻は大きく分けて5つの場面 国宝「鳥獣人物戯画」は甲・乙・丙・丁の4巻からなる絵巻物ですが、我々が親しむ図柄、特に鳥獣戯画グッズに出てくるデザインのもとはほとんどが甲巻の兎や蛙、猿などの絵柄です。 長い歴史の間に、場面の入れ替わりなど継ぎはぎ部分もあるようで、なぜここにこの場面?というところも中にはありますが、大きくは5つの場面に分かれているようです。   ◆日本四大絵巻 - 鳥獣戯画グッズ 豆知識(2) - JapanMatrix http://www.japanmatrix.com/gooshop/sup_giga/sup_giga2.html 「鳥獣人物戯画」とともに日本四大絵巻と呼ばれる絵巻物について紹介しています。すべて国宝で制作された時代も平安末期のものです。 すべて平安時代末期の作、すべて国宝 この国には「日本四大絵巻」と言われる絵巻物が存在します。 「鳥獣人物戯画」「源氏物語絵巻」「信貴山縁起」「伴大納言絵詞」がそれですが、ここでは鳥獣人物戯画以外について、その概略と絵の一部分をご紹介します。   ◆鳥獣戯画グッズで日本のデザインをもっと楽しもう! http://www.japanmatrix.com/gooshop/giga.html 雄叫びをあげる蛙、と投げ飛ばされる兎が人気 日本最古の漫画といわれる鳥獣戯画をデザインしたグッズがひそかな人気です。兎や蛙、猿、鼠…etc、日本中世に描かれた楽しい動物たちを身近に置いて生活を優雅に楽しみましょう。 鳥獣戯画グッズの中で圧倒的に多い図柄は、(左)相撲で勝って雄叫びをあげる蛙と投げ飛ばされる兎で、次に、(中)逃げる猿とそれを追いかける蛙と兎、(右)酒壺をかつぐ蛙と兎などです。   ◆鳥獣戯画に並ぶ漫画のルーツ!国宝 四大絵巻のひとつ「信貴山縁起絵巻」が公開 アート / 日本画・浮世絵  増田 吉孝  2016/04/18 https://mag.japaaan.com/archives/38145 日本の国宝には四大絵巻物と称される絵巻物があります。源氏物語を題材にした「源氏物語絵巻」、ウサギやカエルがユーモアたっぷりに描かれた「鳥獣人物戯画」、応天門の変を題材にした「伴大納言絵詞」。 そして現在公開されているのが「信貴山縁起絵巻(しぎさんえんぎえまき)」という、平安時代末期に製作されたとみられている三巻からなる絵巻物です。絵巻物に描かれている内容は、信貴山を再興した修行僧 命蓮 (みょうれん) に関するお話。 信貴山縁起絵巻はその作風から、鳥獣人物戯画とともに漫画のルーツとも言われている絵巻。とにかく鳥獣人物戯画と同様に描かれている人物(鳥獣戯画は動物)が、とても躍動感に溢れているんです。   ◆国宝・重要文化財(美術工芸品)等に 係る保存・活用に関する取組 file:///C:/Users/asahi/AppData/Local/Temp/r1399254_03.pdf   ◆口コミで選んだ、国宝が見られる人気スポットランキング Top30 | https://tg.tripadvisor.jp/news/ranking/kokuho-30/ 2018/02/28 「国宝」とは「世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるもの」(文化財保護法)として国が指定したもの。2018年1月現在、1100件を超える建造物や美術工芸品が国宝に指定されており、近年は旅のテーマとして「国宝」を巡る旅も静かな盛り上がりを見せています。 ここでは、トリップアドバイザーの口コミをもとに、「国宝」が見られるスポットをランキング。日本の悠遠な歴史の中で創造され、文化と共に守られてきた「国宝」巡り、まずはこれらのスポットから始めてみてはいかがでしょう? 東寺(京都府京都市) さらに、見逃せない国宝が五重塔。高さ約55mと木造建築物として日本最高を誇り、空海が唐より持ち帰った仏舎利が収められていると伝わります。現在のものは1644年に再建された五代目で、初層では心柱を大日如来に見立て、4尊の如来と8尊の菩薩が囲んでいます。これらをあわせ、同寺は25件の国宝を有しています。   ◆日本の国宝|城・刀剣・仏像・茶器など http://kokuho-japan.alexis.jp/ ・「日本の国宝」について About Japan National Treasures 当サイト「日本の国宝」は、日本の国宝についての情報サイトです。 国宝とは何か、国宝の分類やその代表例などとともに、特に有名なものなどを紹介しています。 日本の重要な文化財のうち「国宝」として指定されるものがどういうものなのかを知ることで、古来から我が国において美しいとされてきたものや素晴らしいとされてきたもの、その文化的背景や歴史的��景を知ることに繋がり、日本が大切にしてきた文化、伝統を知る一助となることができたら、と思います。 ・国宝とは What's national treasures? 国宝と重要文化財の違いは何でしょうか? 文部科学大臣が有形文化財のうち重要なものとして指定する「重要文化財」のなかで、「世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるものであるものを国宝として指定」したもの(文化財保護法第27条)。 建造物、絵画、彫刻、工芸品、書跡・典籍、古文書、考古資料、歴史資料が指定されています。 1950年の文化財保護法施行前は「国宝」と「重要文化財」の区別はなく、国指定の有形文化財(美術工芸品、建造物)はすべて「国宝」と称されていました。 ・国宝の種類 Classification of 'KOKUHO' ●日本の国宝1:建造物 神社、寺院、城郭他 ●日本の国宝2:絵画 仏画、水墨画、壁画他 ●日本の国宝3:工芸品 刀剣、甲冑、茶器他 ●日本の国宝4:彫刻 仏像・神像他 ●日本の国宝5: 書跡・典籍、古文書 ●日本の国宝6: 考古資料、歴史資料   ◆国宝って何?日本人なら知っておきたい「国宝の雑学」をクイズで解説 https://intojapanwaraku.com/jpart/10007/ 2019/08/24 寺社仏閣や美術館などへ行くと見かける「国宝」という言葉。でも、その実態ってあまり知らないもの。 そこで、地域や時代、ジャンルなどを手がかりに国宝を読み解く3分で終わるクイズを作成しました。 国宝の知識が一気に身につく! 目次    国宝の知識が一気に身につく! 雑学クイズ10問        Q1:現在指定されている国宝の総数は?        Q2:次のうち、国宝を一番多く所蔵している寺院は?        Q3:名僧のうち、その書が国宝になっていないのは誰?        Q4:国宝指定を受けた建造物があるのはどの神社?        Q5:国宝の五重塔をもっていないのはどれ?        Q6:国宝の茶室でないのはどれ?        Q7:日本の名城の中で、国宝の天守があるのはどこ?        Q8:以下の国宝の中で、最も古い時代に生み出されたものはどれ?        Q9:国宝に登録されている絵が一番多い絵師は誰?        Q10:国宝の約1割を占めるジャンルは何?   ◆鳥獣戯画とは?作者は誰?ミステリアスな国宝を徹底解説ッ! 2018年11月06日  和樂編集部 https://intojapanwaraku.com/jpart/2230/   ◆へぇ〜鳥居の形にも種類があるんだ。読んでから行くともっとおもしろくなる神社の豆知識  2019年08月26日  和樂編集部 https://intojapanwaraku.com/culture/7261/ 目次    神社にまつわる素朴な疑問14        1 「八百万の神」といいますが、神様は本当はどのくらいいらっしゃるのでしょうか?        2 鳥居はなんのためにあるのですか?        3 境内はどこを歩いてもいいのでしょうか?        4 日本で最も古い神社は?        5 狛犬はなぜ対で置かれているのですか?        6 拝殿と本殿の違いはなんでしょうか?        7 注連縄を張る意味を教えてください        8 ご神木のほかにも大きな木がたくさんあるのはなぜですか?        9 社殿の上に載っている木にはどんな意味があるのでしょうか?        10 拝殿に鈴が付けられているのはなぜですか?        11 ご神体とはどんなものなのでしょう?        12 どうして境内にいくつも小さな社があるのですか?        13 同じご祭神があちこちの神社に祀られているのはなぜですか?        14 「○○神宮」と「○○大社」、どこが違うのですか?            参拝にまつわる素朴な疑問10はこちら!   ◆日本の狛犬(こまいぬ)=エンキとエンリル説by Hiroshi Hayashi 2019/10/27 https://youtu.be/-GPH0kBxZ0o ブッダの守護神・仁王(金剛力士)の謎 仁王・エンリル・エンキ説byはやし浩司 シュメールにいた、日本の狛犬 狛犬(こまいぬ)は犬ではない。狛犬は、神の中の神、エンリルだった。 【狛犬・エンキ・エンリル論byはやし浩司】original 狛犬(こまいぬ)は犬ではない。 番犬でもない。 狛犬は、神の中の神、エンリルだった。   ◆日本の鳥居=トリリス(3石柱)説byはやし浩司  2017/09/25 https://youtu.be/ATlANN2YQ3M   ◆鳥居の謎 byはやし浩司    2015/08/21 https://www.youtube.com/watch?v=9B_ZwZhwAI0 (鳥居の謎) マルタの地下都市の壁画vs唐草模様 生命の樹の謎 日本の「生命の樹」 五重塔の相輪は、生命の樹だった! 生命の樹(せいめいのき、英語:Tree of Life)は、旧約聖書の創世記(2章9節以降)にエデンの園の中央に植えられた木。命の木とも訳される。生命の樹の実を食べると、神に等しき永遠の命を得るとされる。 カバラ(ユダヤ教神秘主義)ではセフィロトの木(英語: Sephirothic tree)という。 ヤハウェ・エロヒムが、アダムとエヴァをエデンの園から追放した理由は、知恵の樹の実を食べた人間が、生命の樹の実までも食べて永遠の生命を得、唯一絶対の神である自身の地位が脅かされることを恐れたためである。(ウィキペディア百科事典)   ◆天橋立・籠神宮の謎(神々の参道・神々の住む国)  2013/12/05 https://youtu.be/JHxmjyTZsXw 天橋立という、日本の不思議な橋 K. Miyaさん、情報ありがとうございました。が、それ以上に驚いたのは、丹後半島が、まさに遺跡の宝庫だったことを知ったことです。天橋立の謎は、そのほんの一部にしかすぎません。ここでは、ハンカ湖、アダムズ・ブリッジ、バーミヤンのダムと対比して謎解きに挑戦してみました。 籠宮(このみや)の謎 この情報は、K.Miyaさんという方からいただきました。このビデオは、その報告です。 【籠(この)神社】(別名:元伊勢) (籠神社HPより) その後、天照大神は十一代垂仁天皇の御代に、又豊受大神は二十一代雄略天皇の御代にそれぞれ、伊勢におうつりになりました。それに依って當社は元伊勢と云われております。 両大神が伊勢にお遷りの後、天孫彦火明命を主祭神とし、社名を籠宮(このみや)と改め、元伊勢の社として、又丹後国の一之宮として朝野の祟敬を集めて来ました。 Hiroshi Hayashi++++++++++++はやし浩司 K Miyaさん、情報ありがとうございました。天橋立が、人工的に作られたと聞いても、私は驚きません。まさにそういう橋ですね。これからも傍証を集めていきます。
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morningsnow · 5 years
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蝶々書生
先生が花街の売れっ伎に送る恋文を代筆するのが、僕に与えられた唯一の仕事だ。
書生の分際、庭の紅葉をほうきで掃いたりお茶をいれたりするのは当然のこと。“お手伝い”で銭は貰えない。
いたるところで恨みを買いっぱなしの放蕩者な先生は、高い金で女の裸の絵ばかりを売り飛ばすインチキ絵師だ。土気色の顔も陰気な目付きも、いかにも如何わしい芸術家風情で胡散臭い。
先生は絵が上手ですよ、とある日褒めたらポカンと殴られた。港で先生を越える絵師はいないのだ。
「さて先生、今日はどんなお手紙を書きますか?」
絢爛な蒔絵の入った漆塗りの化粧箱を脇息代わりにしながら、僕は尋ねる。高価な代物だから最初はひどく叱られた。だけどもはや先生は、僕のこの悪癖をすっかりと諦めてしまったようで。だいたい、化粧箱を使う人物なんて家にいないのだからいいじゃないか。
先生は機嫌悪そうに煙草をふかし続ける。煙で書斎が真っ白だ。
「あれだ。えーと・・・俺のことは構わず良い人としあわせになってください、って頼む。とびきり男前に書いてくれや」
「あらまぁ」
文のお相手はうりざね顔の年増の芸者さんだ。お座敷に連れていってもらった時に顔を見ている。芸達者でおっかない美人だった。
先生はあのお姐さんの前でだけ、柄にもなくへたな冗談を言ったりお酒を飲み過ぎたりと、つくづく挙動不審なのだ。
なーるほど先生、こいつァ惚れっちまいましたね。連れていってもらった帰り道でからかったら、またポカンと殴られた。こっくりと白いお月さまは円満、顔では怒っているくせに先生の下駄の音は浮かれていた。僕の舌打ちはキリギリスの声にまぎれてしまう。
「あの別嬪さん、お嫁に行っちゃうんですか?」
訊けば、近々彼女は金持ちの若旦那に身請けされるのだとか。
化粧が上手だけど、姐さんはそんなに若くない。旬の過ぎたお花なのに買い手がついたのだ。きっと良い女なのだろう。そして先生は、失恋して拗ねているのだろう。
「簡単なことですよ、先生。若旦那をぶちのめして姐さんを盗っちゃいましょう」
「言うほど簡単だったら苦労しねえよ馬鹿野郎ォ」
「意地張ってたらだめですよ」
先生は胡散臭いけどお金持ちだし、浮気者だけどちょっと男前だ。インチキ絵師と百戦錬磨の売れっ伎で、毒気も充分釣り合っている。
なおかつ、僕は姐さんからのお返事の手紙も読んでいるのだからわかる。ふたりは両思いなのだ。その癖なかなかくっつかない。あらもしかして本気の恋ははじめてですか、おふたりさん。なにを純情ぶっているのだか。悔しいやらもどかしいやら、傍で見ていて穏やかじゃない。
しつこく言い募る僕に、先生は煙たそうに眉をしかめる。苛立ったときの表情が綺麗なのは得なことだ。
「お前さんにゃわからねえよ。恋したこともないくせに」
まったく馬鹿な音も男である。
「なんだよ先生の意気地無し、だめ人間、早漏!」
「馬鹿野郎ォ。早さじゃねぇよ、まごころだよ」
「言ってて恥ずかしくないんですか? 先生」
切り子細工の灰皿が、僕のこめかみから一寸ばかりのとこをかすめ、勢いよく飛んでいく。頭のすぐ後ろでガシャンと派手に割れる音がした。
人は誰しも、触れられたら正体をなくすほどに腹が立つ事情を持っているのだ。先���のそのへんのつぼを、僕はしかと心得ている。
しかしなんというか、剣呑に対峙するふたりの居場所はいつも、鈍器のようなもので溢れているらしい。できすぎた偶然を装って衝動を肯定するのは誰の仕業か。即席の殺意は翡翠色の破片に化ける。
頭に血がのぼった先生は、どうやら貧血を起こしたらしい。ふらふらと砂壁に手をついて寄りかかった。ザラリとしたその感触を思う。苦々しい。
そして、灰皿わ投げつけられてびっくりして声も出せない演技も、そろそろ潮時かもしれない。相変わらず取り澄ましている僕に、先生は喘ぎ喘ぎで怒鳴り散らす。
「あ、甘やかせばつけあがりやがって、香港に売り飛ばしちまうぞ!」
「僕のこと可愛くてしょうがないくせに、なにをおっしゃいますか」
「まずテメェわ僕って言うのをやめやがれ。若い娘が、胸糞悪い」
「先生が所帯を持ってくれたら、僕も安心して女の子がやれるのに」
そうしたら、買ってくれた金蒔絵の化粧箱だって使ってやる。お洒落して蝶々みたいに華やかでお淑やかなお嬢さんになってやる。お茶にお花に、昔大嫌いだったお琴だって習ってやる。それとも舶来のとびきり高いピアノってやつを買ってくれるかしら。まぁ少なくともかんざしと振袖は堅いな、と僕は胸の内で先生の懐事情を推し量る。
僕にどうにか娘らしい装いを、と。なかばご機嫌取りのように先生が買ってきた口紅や手鏡を、僕はいっさい受け取らなかった。選ぶのは地味な色の小袖に袴姿。先生とたまに来る飯炊きのおばさん以外の人々は、僕を小さな男の子だと思っている。この悪い癖がなおったら、きっともうこんな暮らしはおしまいだ。
ふたりの間でなかば禁句になった、いわば僕の奥の手のような話題である。ちょっとした口喧嘩で負けそうになっても絶対に持ち出さなかったそれ。堂々と突きつけられて、先生は色を失う。
「私だって、いつまでもこんなことが続けられるとは思っておりませんよ」
昔習った通りの言葉遣いで、盛大に微笑んでみせる。紅もさしていない唇だ。ちっとも艶やかじゃないのが悔しい。
狡いと思う。たまに女みたいに振る舞えば、そうやって寂しそうな顔をするくせに。
「・・・絵なんてぜんぜん教えてくれなかったじゃないですか」
なにも僕は恋文の代筆屋さんではない。
こんな胡散臭い男のもとで書生をやって粘ってきたのには、それ相応の夢があったからだ。目の前の絵師は弟子を取らないことで有名である。
先生は壁に背中を預けて静かに息を整えた。あきれたその瞳すら真剣なので、本当にもうおしまいなのだと悟る。
「だったら、今から絵の話でもするかい?」
ずいぶん長いこと答えを先伸ばしにしていた。筆を持たされたと思えば恋文ばかり書かされる。本当は答えなんてわかっていた。
「悪いことは言わないから、嫁に行きなさい。で、見合いの席で特技は絵ですとでも答えな。お前さんはその程度さ」
でも、と先生はしかめっ面のまま続ける。ああ、またこの人は、柄にもないことを言おうと必死だ。
「通りでお前さんの絵が売ってたら、俺ァ買うよ」
「黙れ早漏野郎が」
青い顔がまた赤くなった。まるで七味唐辛子みたい。どやされると思いきや、先生はばたりと畳に引っくり返った。激昂して倒れるなんて、平安時代のお姫さまじゃあるまいし。
本当に好きだったのに、ただ喉が痛いだけで涙すら出ない。ふぅ、と僕は長く細く、肩が震えるほど大きくため息をついた。こんな喋り方もこれで最後だと思いながら、おもいきり声を張り上げる。
「おいインチキ絵描き、こんな時分に寝てる場合じゃねえだろうが馬鹿野郎ォ。さっさと芸者に土下座して求婚してきやがれ!」
チンタラしてると売れちまうぞ、と、市場の魚を競り落とすような気迫で追い立てる。怯えるその襟首をひっつかんでちぎっては投げて門の外に放り出した。でかけるときにいつもかぶる山高帽子も、忘れずに投げ渡す。
先生を蹴り飛ばした自らのの日に焼けた脛を見て思う。女に戻るのは骨が折れることだろう。ほとんど逃げるように下駄をつっかけて走る先生の背中に呟いた。
「僕だって恋くらいしましたよ」
そのまま僕は風呂敷を抱えて、先生のところから出ていった。親戚の家まで汽車に乗って、その晩のうちにツテを借りて奉公先を決めてしまった。
ただ、出て行く前に先生の書斎を片付けてやった。代筆じゃない自分の恋文を一度も書いてないことに気づく。どれいっちょ書いてやるか、と、ひとりきりでにんまりした。たっぷり墨を含ませた絵筆で高価なふすまに“汽車代頂戴しました”と達者な字で書き残す。
放蕩絵師が横恋慕の末に芸者を妻取った報せをきいたのは、それからすぐのことだった。
へたな手紙でもよこされたら腹が立つので、新しい奉公先は教えてやらない。いっちょまえのお嬢さんのように化粧をして髪を結った僕とすれ違っても、きっと先生は気がつかないだろう。
数ヶ月後、先生はめずらしく女の裸以外の絵を評価された。豪華絢爛な蝶々の絵だ。ずいぶんと大事そうに描かれた蝶々。軽やかに飛び立ったその下に、ぐちゃぐちゃに脱ぎ捨てられた脱け殻があった。
この脱け殻の絵は蛇足だと言う批評家もいるけど、僕はそれこそ愛すべきものだと思う。先生だって、なにもそんなにひどい描きかたをしなくてもいいじゃないか。僕らはそれなりに楽しくやっていたのだから。
その絵が大きな賞を取ったことを新聞で見た。インテリな美術雑誌の取材を受けて、先生はたったひとこと。“ふすま弁償しやがれ馬鹿野郎”だそうだ。
さておき、買ってもらった金蒔絵の化粧箱を置いてきたのは失敗だった。ひとことも言わなかったけど、実はあれを気に入っていたのだ。
かんざしと振り袖は堅いと思っていたのに、結局、もらえたのは蝶々の羽二枚だけだ。割に合わない書生時代だったわ、と、笑う唇に今は紅をひいて。
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shu-sumie · 1 year
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‼️‼️もうすぐ‼️‼️ 来る3月に紀伊國屋全店に SHU墨絵作品『朱雀乱舞』と『桃源の馬』を 載せた書籍『Q Art Catalog』が発売‼️ 全国です✨ ⭐️A4版オールカラー⭐️ そして、5月にはオンライン上でも購入が可能になります✨ オンライン上は幅広い展開で、日本だけでなく 海外へも配信✨こちらは全世界 アマゾン、d���ーケット、U next、楽天、 セブンネットショッピング、ひかりテレビbook、 e book、COCORO book と かなり広範囲に渡って配信されます⭐️ (*)📘イギリスの国際日本文化研究 教授タイモンスクリーチ様がSHU Arakawaの作品を評論 「全体に広がる力強い墨の飛沫によって、壮大な鳥が描かれている。羽と火の輪が紙の上を反時計回りにダイナミックに回転する。鳥の羽は右上に上がり、開いた嘴は左下に向かって鳴き声を上げる。これは南を守る見事な朱雀である。その輝かしさが墨の黒色から伝わってくる。」 (タイモン スクリーチ評論) In a vast and power splash of ink creaters a magnificient bird. A circle of feathers and fire turns dynamicaliy in an anti-clockwise movement across the paper. The bird's wings rise to the top right, while its open beak cries downwards to the bottom left. This is the great Scarlet Bird that guards the south. Its brightness is transmitted in the black of ink. ( by Timon Screech) ご存知のように、作品『朱雀乱舞』は 高評価かつ有名な作品で、スペイン世界遺産常設、国連ユネスコ展示、日光東照宮展示、 他受賞多数の作品 作品価値も上がっているとても重要な作品です✨その作品が書籍として入手可能になります✨ 書籍もオンラインも両方から、SHU墨絵作品が 見れるようになりますので、 是非皆さまご高覧ください🙇‍♂️ 今後もSHU墨絵アートを宜しくお願いします #墨絵 #墨絵師 #墨絵アーティスト #墨アート #書籍全国展開 #Qアートカタログ #紀伊國屋書店へ書籍展開 #日本代表の墨絵アーティスト 💫筆を使わない墨絵アーティスト💫 荒川颼 / SHU Arakawa 【颼墨絵作品 常設展示場所】 ✨常設作品を増設‼️‼️✨ 栃木県栃木市河合町4-16 tel: 050-5359-7563 Eat Me Sandwich 2F ギャラリー結 (*)是非ご来場ください 【ギャラリー営業日/営業時間】 水、木、金 11:00am〜16:00pm 日 11:00am〜13:30pm 定休日 月、火、土 (*)但し、営業日・定休日は都合により変わります ✨✨✨✨✨✨✨✨ 筆を使わない墨絵アーティスト 荒川颼/SHU Arakawa www.shusumie.com Googleで『墨絵』または『ハンド墨絵』でトップ表示 #筆を使わない墨絵師 #墨絵師 #墨絵 #sumie #ハンドドローイング #handdrawing #日本を代表する墨絵師 #墨絵アーティスト #書道好きな人と繋がりたい #画家さんと繋がりたい #飛墨 #hisumi #唯一無二の墨絵師 #唯一無二の墨絵アーティスト #しゅう墨絵 #shusumie #生きる墨絵 #UNESCO #世界遺産 #ライブパフォーマンス #墨ノ祭 #ギャラリー結 #栃木 #tochigi (eat me sandwich) https://www.instagram.com/p/CoDsikhyhoe/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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pinkblazenut-blog · 7 years
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うちの子雑記帳(随時更新)
※超絶ネタバレ注意です!
                     ……大丈夫ですか? ではどうぞ!
【花鶏匡俊】
  家族構成
  祖父 花鶏博美(あとりひろみ)  98
父  花鶏正親(あとりまさちか) 68
母  花鶏展絵(あとりのぶえ)  65
兄  花鶏聖児(あとりせいじ)  39 ※享年12
  慶應義塾大学
  現在両親とは絶縁中。就職する際に大喧嘩してそのまま。
ただ、高齢の祖父のことは少々気にしている。
生まれてこのかたTVゲーム&携帯ゲームをやったことがない。
バレンタイン生まれなので当日はチョコと誕生日プレゼントで大変なことになる。
慶応には幼稚舎から通っている。生粋の慶応っ子。
小学受験には失敗した兄の教訓を生かし(?)物心ついた頃からスパルタ式で鍛えられた。
ちなみに兄が受かっていたのは灘中。公立小学校からだからかなりすごい。
酔うとキス魔になる。だから人前ではあまり飲まない。
  【有栖川飛鷹】
  家族構成
  父 有栖川敦司(ありすがわあつし) 50
母 有栖川夕子(ありすがわゆうこ) 54
弟 有栖川隼飛(ありすがわはやと) 20
妹 有栖川飛鳥(ありすがわあすか) 20
    実家は東京都墨田区。こう見えて下町っ子。
今まで旅行で行ったことのある国はインド、エジプト、オーストラリア、カナダ、グリーンランド(デンマーク領)、シンガポール、台湾、タンザニア、ペルー。
ヨーロッパは仕事で行くから旅行先からは除外。
小学生時代にカリオ○トロの城を見て握りこぶしから万国旗を出す手品をめっちゃ練習した。
あの顔で両親は「親父」「お袋」呼び。父親とは常に喧嘩腰だけど仲は悪くない。
納豆が大嫌い。あの臭いがダメ。食べる人の気が知れない。
他にはチーズも臭いがきついやつはちょっと苦手。
      【桜葉丈偉】
  家族構成
祖父 桜葉丈治(さくらばたけはる) 92 ※婿養子
祖母 桜葉久里子(さくらばくりこ) 85
父  桜葉景嗣(さくらばかげつぐ) 62
母  桜葉安子(さくらばやすこ)  57
兄  桜葉隆久(さくらばたかひさ) 32
義姉 桜葉舞子(さくらばまいこ)  30
甥  桜葉有嘉(さくらばありよし)  0
姪  桜葉真綾(さくらばまあや)  -3
甥  桜葉明生(さくらばあきお) -7
妹  桜葉麗(さくらばうらら)   27
      実は片頭痛持ち。スーツの裏ポケットにはいざというときのロキソニンと下痢止めが常に入ってる。
おとめ座なことをちょっとだけ気にしている。
剣道は現在四段。そろそろ五段の試験を受けたいと思っている。
得意料理はサバの味噌煮。きちんと真サバで作るし針生姜もつけるよ!
運転免許は持ってるけど滅多なことでは運転しない。運転中は眉間の皺が二割増し。
焼肉で一番好きな肉の部位はハラミ。こんなところでも庶民的。
実は蜂が大の苦手。小さい頃外で遊んでいて刺されてバンバンに腫れて以来、あの羽音からしてもう無理。「あの時の丈偉は一晩中泣いて大変だった」by隆久
今度エイサとちょっと遠い温泉に行きたい。有馬とか下呂とか。
          桜葉家には本家に子供が生まれるたびに桜の苗木を植える風習があって、それで家の周り一帯が桜の群生地になっていて、春には薄紅色の霞に包まれる日本家屋、みたいな幻想的な光景が広がっていると良いよね、という妄想。もちろん丈偉の桜もあるよ!※1
        【直見英佐】
  家族構成
  祖父 直見英幸(なおみひでゆき)81
祖母 直見佐保子(なおみさほこ)75
母  直見絵梨(なおみえり)  55 実はおみむーと同じ職場(違う部署の管理職)
叔父 直見橘平(なおみきっぺい)37
    エイサの名前は祖父と祖母の名前の頭文字をとっている。
のと、『英』には「光り輝く花」という意味があって、絵梨さんが「光り輝く花のように魅力ある人になるように、それでいて他人の補佐もできるような、思いやりにあふれた人になるように」という願いを込めて付けた名前だったりする。
おばあちゃんには「英ちゃん」と呼ばれている。
高所恐怖症。小さい頃遊園地で乗っていた観覧車が最上部で停止して閉じ込められた経験がある。
ちなみにその時は橘平おじさんと一緒に乗ってたけど、我慢できずに漏らしたのを処理してもらってたりする。おじさんには今でもからかいのネタにされる。
イメージ画像を見る限り彼は地毛がちょっと癖毛なのかもしれない。それをストパーで真っ直ぐにしてる感じ。
焼肉で一番好きな肉の部位はタン。
今度ジョーイと島に行きたい。淡路島とか沖縄とか。
      【麻績村朔人】
  家族構成
  父 麻績村静雄(おみむらしずお) 57 高校の国語科教師
母 麻績村淑乃(おみむらよしの) 54
弟 麻績村日向(おみむらひゅうが)29 精神科医
  カントリーマアムが大好き。
お酒の辛い味か嫌い。カシスオレンジとか甘い系しか飲めない。
体が固い。前屈がまるで出来ない。
面白がったみなちに後ろから押されて「痛い痛い痛い」ってやってる。
三年前、血統書つきだが生まれつき片目が見えないため買い手がついていなかったジョセフに店先で出会い、その場で購入を決意した。
手がごつごつとしていて色っぽい。
私服もかっちり目。パーカーとか着たことない。ノーネクタイでもジャケットは羽織る。最大限ラフな格好でロングカーディガン&シャツ&ジーンズ。
ブラックミント系のガムを噛むと必ずくしゃみが出る。鼻の粘膜が弱い。風邪は必ず鼻風邪。
        【薬袋千秋】
  家族構成
  父 薬袋慎一(みないしんいち)53
母 薬袋知世(みないともよ) 55
妹 薬袋小春(みないこはる) 15
  リラックマが大好き。
スプラッタもホラーも虫も平気。強心臓の持ち主。
G退治ならまかせて!(丸めた新聞紙を装備しながら)
妹ちゃんとは仲がいい。一緒に買いものとか普通に行く。渋谷とか原宿とか。
「ちぃくんはアイス食べ歩きたいだけでしょ?」by小春
妹が高校生になったら変な男に引っかからないか心配。
笑いのツボがおかしい。そしてずっと笑ってる。
めっちゃお酒強い。水のようにウォッカを飲む。
ベッドは人を駄目にするソファ。リラックマぬいぐるみに囲まれて、タオルケットにくるまって寝る。まるで何かの生き物の巣。よくジョセフと一緒に寝てる。最近はおみむーにもらった抱き枕を常用している。
名前の由来は、二度の流産を経てようやく授かった、一日千秋の思いで待ちわびた我が子だから。別に秋生まれだからとかじゃない。
          【麻績村日向】
  家族構成
  父 麻績村静雄(おみむらしずお) 57 高校の国語科教師
母 麻績村淑乃(おみむらよしの) 54
弟 麻績村朔人(おみむらさくひと)29 百貨店のバイヤー
  野菜の好き嫌いが激しい(ピーマン、トマト、椎茸、なすび……etc.)
白衣のポケットには必ず飴玉が数個入っている。よく夜勤の看護師さんに配ってる。
カナヅチ。どうしてか本人は覚えてない。実は5才くらいの時に海で溺れかけて大嫌いな兄に助けられたことを含めて、溺れかけたショックで全て吹っ飛んでる。ただ深層意識に水への恐怖だけが刻み込まれて、それでカナヅチになった。
料理は下手。ダークマター製造機。
カフェイン中毒。水の代わりにコーヒー飲んでる。
          【森井戸侑】
  家族構成
  父 森井戸文穂(もりいどふみお) 60
母 森井戸愛子(もりいどあいこ) 53
  毎日その日の分の食材しか買わない。なので冷蔵庫には瓶の炭酸水と調味料しか入っていない。
低血圧。寝起きはものすごく機嫌が悪い。
イライラすると爪を噛む癖がある。
絶対音感の持ち主。だから音程のあっていない歌とか聞かされると頭が痛い。なのでカラオケが大嫌い。誘われても絶対行かない。
こう見えて職場の人との仲は悪くない。職場での愛称は「ミステリアスプリンス」。
蜘蛛が大の苦手。視界に入ってきたら飛び退く。「ひゅ、日向さん、くも、蜘蛛が」「はいはい、分かったからしがみつくのはやめてね。捕まえられないから」みたいな。タランチュラとか見たら(たとえ写真でも)卒倒する。
ハリーポッターのDVDを日向と一緒に観た時にはアラゴグで絶叫した。
「侑くんのあんな声初めて聞いた」by日向
滅多に笑わないけど笑った顔はものすごく可愛い。
先日定年退職を迎えた父親と、父親を支えてきた母親をねぎらうために海外旅行をプレゼントした。基本的には良い子。
        【有栖川隼飛】
  家族構成
  父 有栖川敦司(ありすがわあつし) 50
母 有栖川夕子(ありすがわゆうこ) 54
兄 有栖川飛鷹(ありすがわひだか) 26
妹 有栖川飛鳥(ありすがわあすか) 20
  中学高校とサッカー部に所属していた。大学ではフットサルサークルと軽音サークルに所属している。担当はドラム。
大量ガス体質なのでサツマイモは食べない。食べたら翌日に腹が張ってガスが止まらなくなる。
お化けが大嫌い。でも妹が大好きだから夏場の心霊番組視聴は無理矢理同席させられる。
「だからやだって言ってるだろ飛鳥!」「そうやって嫌がる隼飛がいけないんだよ、もっといじめたくなるから」「ドSか!!!」とかやってる。勝てない。
就職してからも実家住み。あと一、二年してお金が貯まったら同棲を切りだそうと考えている。それまでは節約&我慢。
寝相が悪い。ベッドの上で寝ていたはずなのに二回に一回は目覚めると床に落ちてる。
        【舞鶴永】
  家族構成
  父  舞鶴光矢(まいづるみつや)60
母  舞鶴敬子(まいづるけいこ)56
長兄 舞鶴明(まいづるあける) 32
次兄 舞鶴拓(まいづるひらく) 30
三兄 舞鶴聖(まいづるきよい) 29
長弟 舞鶴巧(まいづるたくみ) 25
次弟 舞鶴希(まいづるのぞむ) 23
妹  舞鶴香(まいづるかおり) 18
  家族構成を見てもらえばわかる通り六男一女の七人兄弟。大家族。
なのでおっとりしているように見えてわりと押しは強い。じゃないとやっていけないので。
大家族ゆえあまりお菓子だとかを食べられずに育ってきたため、ケーキとかチョコレートとかを貰うとすごく喜ぶ。可愛い。
歯医者さんが大嫌い。あの音とか特徴的な臭いとか全部だめ。親知らずを抜きに行ったときには本気で泣いた。
侑とは従兄弟同士。(母親が姉妹)
秋田出身。油断すると相槌が「んだ」になる。色白な秋田美人。でも出すモノは立派()
乗り物酔いが激しい。バス、船、飛行機。全部だめ。酔い止め飲んでも途中で吐く。車での長距離移動も好きじゃない。
なので就職して上京してくるときは新幹線の中で吐いて大変だったし、修学旅行は憂鬱の塊だった。
それでも海外への出張命令が出たら行く。真面目。
      【胡桃沢恵眞】
  家族構成
  実父 胡桃沢岳(くるみさわがく)    70
実母 胡桃沢百恵(くるみさわももえ)  66
姉  胡桃沢めぐ実(くるみさわめぐみ) 46 享年35
養父 戸枝作之助(とえださくのすけ)  71
養母 戸枝絹代(とえだきぬよ)     69
義兄 戸枝怜文(とえだあきふみ)    38
甥  伊武和希(いぶかずき)      18
  家族構成から察せられるように生い立ちがものすごく複雑。
不仲な両親のもとに生まれ、年の離れた姉に守られながら育つ。
しかしそんな姉も6歳の時に失踪し、以後は怒号が絶えない家庭環境で息を殺すように生き延び、10歳の時に母親を刺し殺そうとした父親を止めようとして背中を切り裂かれる。
その後病院に搬送され一命は取り留めたが、背中には今も大きな傷跡が残っている。
事件をきっかけに両親は離婚。父親は刑務所に行き、母親の行方は知れない。
児童養護施設に引き取られた後、12歳の時に戸枝家の里子になる。
戸枝家が恵眞を里子にしたのは一人息子の怜文が「弟が欲しい」と言い出したから。
義兄とはつかず離れずの関係。考え方が根本的に合わない。エマが唯一といっていいくらい珍しく苦手に思っている人物。
就職してすぐに姉が亡くなったことと、彼女がシングルマザーで息子を遺して逝ったことを知り、甥を引き取る決意をする。以来11年間、甥っ子を男手ひとつで育ててきた。
甥っ子には「俺も今年で高校卒業して一人暮らしするし、大学には奨学金で行くから、恵眞さんはそろそろ自分が幸せになったほうが良いですよ」と言われている。でも本人は人並みに幸せになるつもりがない。
つたないなりに自分を守ろうとしてくれていた姉のことを尊敬し、敬愛している。だからこそ彼女の訃報を知った際、彼女が実父に性的虐待を受けていたこと、その果てに妊娠・中絶したこと、そのために自分の前からいなくなったことを知り、実父に言いようのない殺意を覚えた。※2
と同時に、そんな男の血が流れている自分は誰かと幸せになってはいけない人種だろうと思い、それからは誰とも付き合わず、行きずりの相手とのセックスしかしていない。
「いつか姉さんを見つけて恩返しをしよう」という向上心で生きてきたし、和希を引き取ってからは「この子を立派に育てよう」という責任感で生きてきた。どちらにせよ自分に厳しい生き方。
自分にも冷酷な部分があることを自覚している。
      ※1 桜の話
直桜が結婚して数年経った後、麗ちゃんが里帰り出産することになって(結婚は直桜の一年前くらいにしてた)ジョーイに電話がかかってきて「丈兄ちゃん、たまには帰ってきたら?」「いや、だって……」「お父さんがぎっくり腰やっちゃってね。舞子さんのところにも三人目が生まれるでしょ?隆兄ちゃんは有嘉(ありよし)くんと真綾(まあや)ちゃんの相手で忙しいし、人手が足りなくってお母さんがてんてこ舞いなの。だから帰って来てよ。二人分の人手、あてにしてるからさ」※有嘉くんと真綾ちゃん…隆久の長男長女。つまりジョーイの甥っ子姪っ子。「二人分?」「え、丈兄ちゃん一人で帰ってくるつもり?」「いや……いいのかなって」※ジョーイは結婚してから一度も実家に帰っていません。「何言ってるの? お母さんが言ってたんだよ。丈偉に英佐さんと帰ってきて模様替え手伝いなさいって言いなさいって」コロコロと電話口で笑う妹に、肩の力が抜けるジョーイ。「……そっか。帰って来なさいって、母さんが言ってたのか」「うん。……だから帰ってきて。みんな待ってるよ」「ああ、分かった」
  そんなこんなで帰ることになって、どうにかこうにか都合をつけて土日含めて三連休くらいもらって、直見の運転で茨城まで行くんだけど、緊張しまくった直見は道を間違えるし田んぼに落ちそうになるし散々。「どうした、お前」「いや、緊張して」「らしくないな。昨日はあんなに堂々とプレゼンしてたくせに」「親御さんに会うんですよ? プレゼンより断然こっちのほうが緊張しますって!」「そんなもんかね」「丈偉さんは緊張しないでしょうよ、うちの絵梨さんはあんなだから」「あんな、ってお前な」※絵梨さん…直見のお母さん。
  ようやくたどりついた立派な日本家屋は、ちょうど桜の時期でもあり、辺り一面に植えられた桜の木で覆われていて、まるで薄紅の霞に浮んでいるよう。思わず見惚れる直見を微笑ましげにジョーイが見守っていると、玄関が慌ただしく開く。「ああ、車の音がしたからもしかしてと思ったらやっぱり!」出てきたのは割烹着を着た初老の女性。母さん、と呼ぶジョーイ。固まる直見。ジョーイに呼ばれた母さんこと安子(やすこ)さんは二人を見るなり「丈偉、あなた手先が器用だったわよね?じゃあ後でベビーベッドを組み立てるのを手伝ってちょうだい。最近老眼がひどくって小さいネジとかがよく見えなくって困るわ。英佐くんは……そうね、背が高いみたいだからお台所の整理を手伝ってもらおうかしら。景嗣(かげつぐ)さんったら一番上の棚に重いものをしまうんだもの。あれじゃあぎっくり腰になるわよね」と矢継ぎ早に話す。上品な見た目の御婦人のマシンガントークに圧倒される直見、ああ懐かしいなぁこの感じ、と思うジョーイ。その場から動かない二人に安子さんは付け加える。「あら、ごめんなさい。言い忘れてたわね、お帰りなさい」にこっと笑う安子さんに、二人は顔を見合わせた後、揃って言う。「「ただいま帰りました」」と。※作者はここまで考えて既に泣いてた。
  その後は言われたとおりに台所の鍋を整理したり年代物のベビーベッドを組み立てたりしてお昼になり、居間に全員集合。隆久さんや舞子さん、麗ちゃんに「どうも」と改めて挨拶する直見。※舞子さん…隆久さんの奥さん。現在三人目妊娠中。と、そこへぎっくり腰で寝込んでいたお父さんこと景嗣さんもやってくる。今日一緊張する直見。「お、お邪魔しています、桜葉さん」「あら、ここにいる人は全員桜葉さんよ」くすくすと笑う安子さん。そうだな、と同意する景嗣さん。やらかしたー!と内心滝汗な直見に景嗣さんは言う。「桜葉景嗣だ。呼ぶときは名前でいい。私も君を名前で呼ぼう。英佐くん、だったか。良い名前だな」一拍置いて、意味を理解して「あ、ありがとうございます、景嗣さん!」と頭を下げた直見、勢いが良すぎて座卓に頭突きしてひとしきり皆に笑われる。
  お昼ごはんが終わった後、甥っ子姪っ子と遊んでいる(というより遊ばれている?)ジョーイを遠巻きに微笑んで見守っていた直見に、麗ちゃんが声をかける。「英佐さん、もしよければちょっと外を歩きませんか?」断る理由はないので承諾して外に出る。一面の桜。「すごいですね、この桜」「でしょう? これは桜葉家の本家に子供が生まれるたびに植えられる桜なんです。丈にいちゃんの木もありますよ」ほらあれです、と麗ちゃんが指差したのはカーネーションにも似たの濃い紅色の花が重そうに枝を枝垂れさせている木。「福禄寿、って品種なんです。おじいちゃんが選んで植えたんですよ。丈偉桜(じょういざくら)です」「丈偉桜?」「ええ、ここの木は誕生を祝って植えられた木だから、その子の名前をとって呼ぶんです。隆にいちゃんなら隆久桜(りゅうきゅうざくら)、お父さんなら景嗣桜(けいしざくら)。女性の場合は桜を『おう』と読むので、私の木は麗桜(れいおう)、真綾ちゃんの木は真綾桜(しんりょうおう)です」「へぇ、なんというか、雅ですね」「桜葉家の名前の由来ですから。江戸時代から続くしきたりです」呼吸をするように出てきた『江戸時代から』の言葉の重みを噛み締めて黙る直見。そのまましばらく無言で桜の海を眺める。「自分と結婚しなかったら丈偉さんも父親にな���てたのかな、とか考えてます?」「えっ」「ふふ、その反応は図星ですね」「……どうして分かったんですか?」「この世の終わりみたいな顔で桜を見てましたから。さっき丈にいちゃんを見てた時の顔とは大違い。そんな顔をする理由なんて、あんまりないでしょう? あとは想像です」「……まぁ、考えないわけにはいきませんよ。どう頑張っても俺が丈偉さんに残してあげられないものの一つはそれだから」「丈にいちゃんも同じこと言ってましたよ。店で迷子を見つけた時、手を繋いで親を一緒に探してあげている直見を見ると心臓が痛くなるって。自分の我儘に付き合わせて申し訳ないって」「そんなこと!」「ない、って思います? だったら丈にいちゃんも一緒です。英佐さんがさっきみたいなこと丈にいちゃんに言ったら平手で打たれますよ」「……それは勘弁してほしいな……」「だったら言っちゃだめですよ。大丈夫、あの人は英佐さんが思っているよりずっと強い覚悟であなたを愛するって決めてますから」ふふ、と笑う麗ちゃんの顔にジョーイの面影を見つけて、兄妹だなぁって思う直見。
  一方その頃の居間。「ねぇ丈偉くん、ひとつお願いがあるんだけど」「はい、なんでしょうか舞子さん」「この子の名前ね、丈偉君につけてもらおうと思って」「え?」「有嘉はお義父さんがつけたでしょ? で、真綾は隆久さんがつけて。桜葉本家の子は同じ本家の男性に名づけてもらうのがしきたりだから、次は丈偉君だねって隆久さんと話してたの」ちなみに男の子だよ、とニコニコ笑う舞子に戸惑いを隠しきれない丈偉。「なんなら英佐君と二人で考えてくれ。名付け親が二人なんて贅沢じゃないか」横から飛んできた隆久の言葉に込み上げてくるものがあって俯く。「丈おじさん、泣いてるの?」有嘉に首を傾げられる。「英佐さんと結婚してから泣き虫になったな、丈偉は」隆久の言葉に一同笑う。ジョーイも涙を拭いながら泣き笑い。
  そうこうしているうちに三日があっという間に過ぎて、帰る時間になる。帰り際、舞子さんを呼ぶジョーイ。「どうしたの?」「名前のことです」「ああ! 良い案、浮かんだ?」「良い案かは分かりませんが、考えはまとまりました。字は『明るく生きる』で、読みは『あきお』。明るい、という字には『明るく照らす』『夜明け』『光』という意味があるそうです。だから、他人を明るく照らせるように、一日の始まりである夜明けのように可能性に満ちているように、光に満ち、光を満たす人生を歩めるように。そんな願いをこめて、二人で考えました」「そう、二人で、ね。素敵な名前。良かったね、明生」お腹に語りかける舞子さん。「あ、蹴った! 明生もそうだねって言ってるみたい」「なら良かった」笑って、車に乗り込むジョーイ。一礼して続こうとする直見を呼び止める安子さん。「英佐さん」「はい?」振り向く直見。神妙な面持ちの安子さん。「また、帰って来てちょうだいね。待っているから」安子さんの隣で力強く頷く景嗣さん。目を見開いて、それから顔一杯に笑う直見。「はい!」皆に見送られて車を出してからしばらく経って、こそっと話しかけるジョーイ。「……運転代わるか?」「なんでですか」「前、見えないだろ。泣いてたら」「丈偉さん何年ペーパードライバーだと思ってるんですか……あー駄目だ、ティッシュ取ってください」「はいはい」そんな直桜、愛おしい。
      ※2 キラキラ
初めて見る世界はキラキラに満ち溢れていた。
顔が移るくらいピカピカに磨かれた石の廊下、広い空間。並べられている見たこともないほど綺麗な靴、触り心地のよさそうな服、眩しいくらいの輝きを放つ宝石。行き交う人々も上品で見惚れた。きらびやかな世界に圧倒された。
綺麗だった。だからこそ気圧された。
怯えて、縋るように握った手に力を込めると、優しい声が頭上から降ってきた。
「恵くんは百貨店にくるのは始めてだよね」
「うん。きらきらしてて、すごく綺麗」
お姉ちゃんは来たことあるの? と右斜め上を見上げると、優しいモカブラウンの瞳と目が合う。
「うん。小さい頃に一回だけ。お父さんたちとね」
「お父さんたちと?」
驚いて聞き返す。そんなの想像できなかった。お酒に酔っていつも怒っているお父さんと、甲高い声でわめいて泣いているお母さん。それが僕の知る二人だ。どう考えたってこんなに綺麗なところに���れてきてそうにはない。
「昔はね、あんなに仲が悪くなかったんだよ。ちょうど恵くんが生まれた頃くらいからかな、仲が悪くなったの」
「どうして?」
無邪気な疑問を重ねると、姉は曖昧に笑って答えてはくれなかった。答えられなかったのだろうと今なら思う。妻が妊娠している間、夫は中学一年生の娘を手籠めにしていて、出産後にそのことがばれて夫婦仲が破綻したのだなどと五歳児に言えるはずがない。自分のせいで家族が壊れたのだ、などと。
答えない姉に首をひねって、でも当時の自分はそれ以上問いを重ねなかった。それよりも目の前の魅力あふれる世界に意識が向いていた。
休日昼間の百貨店で、セーラー服姿の少女と古ぼけたセーター姿の幼児は浮いていただろう。しかも保護者らしき大人の姿は見当たらないのだ。ちらちらとこちらに向けられる視線が怖くなり、幼い自分は姉の背後に半ば隠れるように館内を巡った。
姉はその間、ずっと手を握り続けてくれていた。
今となっては顔すらもおぼろげだ。生き別れたのが六歳の頃で、結局その後一度も巡り会えずに遠く離れてしまったのだから、当然と言えば当然である。
だた、あの優しい手のぬくもりと、キラキラした世界のことだけは強烈に記憶に刻みこまれていた。
幼い自分は無知だった。
姉があの頃もまだ父親に辱められていたことも、その腹の中に命を宿していたことも、出奔を決意していたことも、何一つ知らなかった。ただ、家の中に吹き荒れる嵐から弟を守るために、いつものように遠出をしたのだとしか思っていなかった。
知らなかった。あらゆることを。
成長し、それらの醜い真実を知って、絶望した。
この体に、あの男と同じ血が流れているのだと知り、戦慄した。
そして人並みの幸せを諦めることに決めた。
恋だとか、愛だとか、そういったものを全て。
ただ一つだけ、あの人が遺したものだけは慈しむことにした。
幼かった自分たちのように悪意に潰されないよう、不必要な痛みに晒されないよう、出来うる限り守り、育ててきた。
そのおかげか、元来の性質か、彼は素直で実直な、健やかな少年に成長した。
あなたは幸せになるべきだ、と彼は言う。
今までずっと誰かのために生きてきたのだから、今度はあなたが幸せになる番だと。
善良な勧めを、けれど私は心の中で冷笑する。
こんな人間が、悪魔の子が、幸せになれるはずがないだろう。
そんなことは言えないから、言葉の代わりに、私は微笑む。
あの男に瓜二つの顔を歪めるように、笑う。
「気にするな、和希。今でも私は充分だ」
これ以上を望むなんて野暮は、しないさ。
      うちの子テーマソング
  アリあと
Wings of Words CHEMISTRY
ドライアイス ハルカトミユキ
直桜
シャングリラ チャットモンチー
麻薬(薬麻)
らへん 近藤晃央
おみもり
FINAL DISTANCE 宇多田ヒカル
不時着 椿屋四重奏
ギプス 椎名林檎
はやはる
正夢 スピッツ
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shu-sumie · 1 year
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『循心』 art work size: 297mm×420mm (掛け軸表装含まず) ¥******* 前回の龍作品『Grand Dragon』がsold outとなってしまい 今更返せとは言えず、 寂しさのあまりもう1つ前回の龍イメージで掛け軸の龍作品を... 『循心』という言葉は無いが、 『心が巡る』という意味を込め 龍を右回りだか左回りだから分からないように描く 良きも悪きも世の中必ず人の心とは巡り巡ってくる 良いことは右回り、悪いことは左回りといったところだろうか... この作品はある新天地へと展示 来年は辰年なので、SHU墨絵の年になりそう♪♪😊 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 【颼墨絵作品 常設展示場所】 ✨常設作品を増設‼️‼️✨ 栃木県栃木市河合町4-16 tel: 050-5359-7563 Eat Me Sandwich 2F ギャラリー結 (*)是非ご来場ください 【ギャラリー営業日/営業時間】 水、木、金 11:00am〜16:00pm 日 11:00am〜13:30pm 定休日 月、火、土 (*)但し、営業日・定休日は都合により変わります ✨✨✨✨✨✨✨✨ 筆を使わない墨絵アーティスト 荒川颼/SHU Arakawa www.shusumie.com Googleで『墨絵』または『ハンド墨絵』でトップ表示 #筆を使わない墨絵師 #墨絵師 #鳳凰墨絵 #白銀の鳥 #鳳凰于飛 #鳳凰 #不死鳥 #phoenix #墨絵 #sumie #ハンドドローイング #handdrawing #日本を代表する墨絵師 #墨絵アーティスト #書道好きな人と繋がりたい #画家さんと繋がりたい #飛墨 #hisumi #唯一無二の墨絵師 #唯一無二の墨絵アーティスト #しゅう墨絵 #shusumie #生きる墨絵 #墨ノ祭 #ギャラリー結 #栃木 #tochigi (eat me sandwich) https://www.instagram.com/p/Cp82L0XPm5K/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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shu-sumie · 1 year
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鳳凰于飛(ほうおううひ) 色紙サイズ新作の最高作の一つ ⭐️公式サイトへ正式に登録⭐️ ①おおとりの雌雄のように、夫婦が仲むつまじいこと。②鳳凰が飛ぶと他の鳥も従って飛ぶ意から、聡明な天子のもとに、賢者が多く集まることのたとえ。 一見... 1羽の鳥に見えるが、 左右の羽に2羽の鳳凰を描き、 雄雌の仲睦まじき様子を描いた作品 仲良くしなければならないのは、 家族、友人、知人だけではない、 国と国、民族、宗教、全てに於いて、つまらない争いは避けねばならない。 領土争いであれ、民族・宗教の争いが戦争に発展するのも、 単純な話『認め合う心』が欠けるからだ。 SHU墨絵作品はバリアフリーの概念を込めた作品が殆どだが、 世の中戦争が無いなら、 こんな作品描く必要はない... 故に、私が描くのをやめるときは、世の中から戦争がなくなった時だ その時に初めて、SHU墨絵作品の鳳凰は羽を休めることができる それまでは、空を舞っていることだろう... ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ イベント情報 4/28(金) 大阪市中央公会堂にて 音楽・墨絵史上初のイベント ミニオケ×墨絵コンサートパフォーマンス開催‼️ 音楽もアートも両方一度に楽しめる二度と無い最高のイベントです‼️ この機会逃すともう見れません 【場所】大阪市中央公会堂 国指定重要文化財施設 〒530-0005 大阪市北区中之島1-1-27 なにわ橋駅、または淀屋橋駅 【開催日】2022/4/28(金) 【開場】14:00pm 【開演】14:30pm 【会費】6500 【会場】小集会室 (注)ご予約はDMにて受付してます。お席限りあります☆ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 【颼墨絵作品 常設展示場所】 ✨常設作品を増設‼️‼️✨ 栃木県栃木市河合町4-16 tel: 050-5359-7563 Eat Me Sandwich 2F ギャラリー結 (*)是非ご来場ください 【ギャラリー営業日/営業時間】 水、木、金 11:00am〜16:00pm 日 11:00am〜13:30pm 定休日 月、火、土 (*)但し、営業日・定休日は都合により変わります ✨✨✨✨✨✨✨✨ 筆を使わない墨絵アーティスト 荒川颼/SHU Arakawa www.shusumie.com Googleで『墨絵』または『ハンド墨絵』でトップ表示 #筆を使わない墨絵師 #墨絵師 #鳳凰墨絵 #白銀の鳥 #鳳凰于飛 #鳳凰 #不死鳥 #phoenix #墨絵 #sumie #ハンドドローイング #handdrawing #日本を代表する墨絵師 #墨絵アーティスト #書道好きな人と繋がりたい #画家さんと繋がりたい #飛墨 #hisumi #唯一無二の墨絵師 #唯一無二の墨絵アーティスト #しゅう墨絵 #shusumie #生きる墨絵 #墨ノ祭 #ギャラリー結 #栃木 #tochigi #大阪市中央公会堂 #冥加 #音楽墨絵コラボ (eat me sandwich) https://www.instagram.com/p/CpgO0Z8yFmH/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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shu-sumie · 1 year
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🎍新年明けましておめでとう御座います🎍🌅🎍 ✨Happy New Year‼️✨ 昨年度は皆様からの沢山お世話になりました。本年もどうぞ宜しくお願いします🤲本年のご多幸を心からお祈り申し上げます。 書/calligraphy by @tayutan950 墨絵/sumi-e by SHU Arakawa 2023年卯年がスタートしました うさぎ墨絵にたゆたん書の年賀状 昨年は、原画ラストコラボを飾らせて頂きました✨新年は、 元気よく跳ねるウサギ墨絵でスタートを切れました‼️ これまでの墨絵にない躍動感溢れる生きるウサギ墨絵で、 皆様の発展を祈念しております🙇‍♂️ たゆたん書が、見事に相性よく 墨絵とマッチしてます✨ 今回はこのデザインの年賀状を 関係各位、企業様へと送付しております。 昨年は、言葉に表せないくらいの感動と変化があり、 大きく飛躍もあり、 皆様の応援に助けれた年でした。 心から感謝申し上げます🙇‍♂️ 本年も大きな動きがあり、 皆様方にとっても、繁栄と多幸ある年になることを心からお祈りしております。 ご迷惑をお掛けするかもしれませんが、皆様方へは沢山の感謝でもって返させて頂きます。 どうぞ本年もSHU Arakawa ハンドドローイング墨絵を宜しくお願い申し上げます🙇‍♂️ 💫筆を使わない墨絵アーティスト💫 荒川颼 / SHU Arakawa 【颼墨絵作品 常設展示場所】 ✨常設作品を増設‼️‼️✨ 栃木県栃木市河合町4-16 tel: 050-5359-7563 Eat Me Sandwich 2F ギャラリー結 ✨✨✨✨✨✨✨✨ 筆を使わない墨絵アーティスト 荒川颼/SHU Arakawa www.shusumie.com Googleで『墨絵』または『ハンド墨絵』でトップ表示 #新年の挨拶 #卯年墨絵 #2023年卯年 #筆を使わない墨絵師 #墨絵師 #墨絵 #sumie #ハンドドローイング #handdrawing #日本を代表する墨絵師 #墨絵アーティスト #書道好きな人と繋がりたい #画家さんと繋がりたい #飛墨 #hisumi #唯一無二の墨絵師 #唯一無二の墨絵アーティスト #しゅう墨絵 #shusumie #生きる墨絵 #UNESCO #世界遺産 #ライブパフォーマンス #墨ノ祭 #ギャラリー結 #栃木 #tochigi (eat me sandwich) https://www.instagram.com/p/Cm1io7BPFoh/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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shu-sumie · 1 year
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『梅吹雪』♪試し遊び描き♪ ページ1: ストローク有(濃淡無し) ページ2: 原画(仮名書濃淡有り) 仮名書 竹内一 @hajime.takeuchi0409 墨絵 荒川颼 和の花をモチーフとした作品を試し描きでトライアルとして 合わせた作品 作品背景と和歌が心地よく合っていて、竹内さんの仮名書が気品よく優雅に舞っているかのよう... 古今和歌集  作者:よみ人しらず 『心ざしふかくそめてし 折り(居り)��れば 消えあえぬ雪の花とみゆらむ』 (現代語訳) 深く心を込めて枝を取ったので 消えきれない雪が残って花に見えるのだろう』 古今和歌集には、よみ人知らずの作品が多く存在する 1100種の和歌がテーマ毎に収められており、読み人知らずとは 言わば『匿名』 作者不詳なのか、身分により名前が出せないのか、天皇・上皇自身の為名前が出せなのか... その理由は分からない...が、読み人知らずの作品でも、心を打つ素晴らしい作品が多く存在する その中の一つの和歌に、雪に対する想いを反映した歌が今回の作品 今回の墨絵は今までのSHU墨絵の中でも、珍しい作品 今回は原画へ書を乗せるのではなく、竹内さんの仮名書をデジタル的に乗せた作品 春の梅の花が咲くものの、まだ雪が散らつき、雪と共に花が空に舞う... まるで雪が花のように見えるというのを短歌に合わせた作品 雪はいずれ溶けてしまい 何も残らなくなる... 切なさ、儚さを感じる 日本人とは昔から短くも命あるものに儚い感情と、侘び寂びの想いを込めて伝統を築いてきた その伝統を大切にしつつ、 日本伝統文化を今の形、今のスタイルで想い伝えていこうと思う 竹内さんの仮名書にも、時と感情があり、作品と合わせる時は それ自体を目立たさせず、全体の雰囲気を壊さず、日本的な侘び寂びを感じさせる... この度は遊び心で作った作品とはいえ、こうして合わせることができたことを心から感謝申し上げます🙇‍♂️ 💫筆を使わない墨絵アーティスト💫 荒川颼 / SHU Arakawa 【颼墨絵作品 常設展示場所】 ✨常設作品を増設‼️‼️✨ 栃木県栃木市河合町4-16 tel: 050-5359-7563 Eat Me Sandwich 2F ギャラリー結 (*)是非ご来場ください 【ギャラリー営業日/営業時間】 水、木、金 11:00am〜16:00pm 日 11:00am〜13:30pm 定休日 月、火、土 (*)但し、営業日・定休日は都合により変わります ✨✨✨✨✨✨✨✨ 筆を使わない墨絵アーティスト 荒川颼/SHU Arakawa www.shusumie.com Googleで『墨絵』または『ハンド墨絵』でトップ表示 #新年の挨拶 #卯年墨絵 #2023年卯年 #筆を使わない墨絵師 #墨絵師 #墨絵 #sumie #ハンドドローイング #handdrawing #日本を代表する墨絵師 #墨絵アーティスト #書道好きな人と繋がりたい #画家さんと繋がりたい #飛墨 #hisumi #唯一無二の墨絵師 #唯一無二の墨絵アーティスト #しゅう墨絵 #shusumie #生きる墨絵 #UNESCO #世界遺産 #ライブパフォーマンス #墨ノ祭 #ギャラリー結 #栃木 #tochigi (eat me sandwich) https://www.instagram.com/p/CnvKRc9yvAm/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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