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#不動産コンサルティング試験間近
ari0921 · 1 year
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和五年(2023)4月15日(土曜日)
    通巻第7708号 
 チャットGTPなど生成AIが16兆円の新ビジネスに化けるのか
  「知ったかぶり屋」や「論文盗用」が増えて社会を壊す懼れはないのか?
************************
 指示に従ってたちどころに文章を作成し、画像や動画を自動生成する革命的な武器。生成人工知能(AI)の登場は産業地図を塗り替えるだろうか。
現在、生成AIの先陣を切ったのは米社「オープンAI」である。同社の「チャットGTP」はパターン化された行政書類の作成など朝飯前、公務員の仕事を代替する近未来はすぐそこにある。
大量の失業が起こる。しかし同時に大量の雇用が発生する? 
モラルの問題が未解決なうえ、「人間が技術文明を制御できなくなる」という旧型の議論も蒸し返されている。バイデン大統領は「関連企業は製品の安全を確かめてから一般公開する責任がある」と4月4日のホワイトハウスの会議で発言した。
チャットGPTは高度な対話能力があり、すでに49%株主のマイクロソフトが検索サービスを開始した。グ-グルは自社開発の対話AI「バード」を開発、メタ(旧フェイスブック)は「メーク・ア・ビデオ」で動画生成AI、大規模言語モデルなどを開発し、2023年中に商用化するとした。とくにメタはSNSのフェイスブック、インスタグラム、メタバースにも活用する方針だ。
 ゴールドマンサックスは近未来に3億人のユーザーが見込まれ、GDPを7%押し上げるとし、ボストン・コンサルティングは2027年の生成AI市場が16兆円に膨らむと予測している。
 中国はまっさきにチャットGTPを禁止した。イタリアが続き、ドイツ、フランス、アイルランドも禁止を検討しているとの報道が続いた。
ところがチャットGTPの主力「オープンAI」CEOのアルトマンが来日すると、岸田首相が面談に応じた。なにかちぐはぐな日本政府の対応ぶりである。
 オープンAI社はシリコンバレーにある。失業者が溢れ、商業ビルは30%が空室。この街で例外的に活気に満ちている。というのも、この会社は2015年に設立され、創業期にはテスラのイーロン・マスクも株主だった。そのマスクがFOXテレビで「AIは文明を破壊するかも知れない」と発言している。
▲厳しい規制が必要とする意見がメディアやアカデミズムに拡がる
CEOのサミュエル・アルアトマンはまだ37歳と若く、しかも風来坊のような風体、本人はゲイだと告白している。
アルトマンはスタンフォード大学を中退し、起業家をめざした。これまでにも1000社に投資しており、どちらかといえば発明家ではなく投資家である。この点で企業買収を繰り返してEVとスペースXであてたイーロン・マスクのビジネススタイルと似ている。アルトマンは、その上、民主党支持者であり、バイデン選対のPACに25万ドルを寄付している。
 このことを嫌ってのことか、どうかは不明だがイーロン・マスクは2018年に「オープンAI社」から引き上げ、替わって2019年にはマイクロソフトが10億ドルを出資した。 
マイクロソフトは、2023年に出資額を100億ドルに増やした。これで勢いがついた。現在の利用者はかるく1億人を超えた。
 
 厳しい規制が必要とする意見がメディアやアカデミズムに拡がり、要するに学問の探究や真理の発見、科学のコペルニクス的な発展に寄与する可能性より「知ったかぶり」の偽知識人の卵や論文の盗作が横行するのではないか、という懸念が世界的に拡がった。
 なにしろ学生の論文を読むとウィキペデアのコピペが圧倒的だと嘆く大學教授たちの声が聞かれる。東大の或る教授は「知ったかぶりを増やすだけだ」と断言しているほどである。しかもウィキペデアの中味には左翼偏向が顕著だ。
 アルトマンと会見後、岸田首相はリスクの存在をつたえたとし、松野官房長官は「公務員の仕事の軽減に役立つかどうか、検討課題だ」とした。
 反対の狼煙を上げたのはNY市教育局で「安易な使われ方が予測される」として禁止した。ハーバード大學のチームは実際に相当数の試験問題を入力して、生成AIでテストしたところ、60%が合格点となり、プラス・マイナスの両面があるとした。
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takahashicleaning · 5 months
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TEDにて
エリザベス・ホワイト:パーソナル・ファイナンス危機に対する率直な洞察
(詳しくご覧になりたい場合は上記リンクからどうぞ)
現在進行中の「移民による移民のための社会実験国家」がアメリカです。
現在進行中の「移民による移民のための社会実験国家」がアメリカです。
現在進行中の「移民による移民のための社会実験国家」がアメリカです。
秘密を教えます。ベビーブーム世代の多くが厳しい家計状況で老年に突入しています(日本では、バブル崩壊後の就職氷河期世代)
そして、その背後には、同じ問題を抱えた若い世代も控えています。
作家のエリザベス・ホワイトは、非常に私的な切り口を交えたこのトークによって、金銭問題に関する率直な対話の口火を切り、限られた収入の中で豊かで味のある人生を送る上での実践的なアドバイスを提供します。
あなたは私を知っている。私はあなたの友人の輪の中に隠れている。私の服装はいまだに非の打ち所がないお金を稼いでいた良き時代に購入したものだから。
私を見ても実は先週、不払いのため電気が止められ生活保護の有資格者であるとは、あなたは気づかないだろう。
でもよく見ると私の瞳の中の悲しみ自信に満ちた声に隠された恐怖に気づくだろう。
最近私は1.99ドルのお試し用サイズの洗剤を買って生計を維持している。このサイズの洗剤があるなんてあなたは知らないだろう。
2人でいつも楽しんだ高級レストランにあなたは私を誘う。でも今回、私の注文は12ドルのシャルドネのグラスではなくレモンをひと絞りした水だ。
メニュー選びは節約を念頭に1セント単位で細かく頭の中で計算する。私は、デザートも洒落たコーヒーもワインのお替わりも頼んでないので割り勘は勘弁してもらう。
体裁を繕うのは、うんざりだ。私は貧しいのではなくお金がない、そこには差があると友人に言われたケーブルテレビもジムも解約し、ネイルサロンにも通わない。
髪の手入れも自分でできると分かった。退職金積立もなければ、貯金だってない。だいぶ前に使い切ったのだ。資産となる高級マンションも支えてくれる夫もいない。
遅延と不払いを何カ月も重ね。私の信用スコアはボロボロになった。督促の電話がいつもかかってきて、まずお定まりの文言を読み上げそれから初めて私の苦境に対して礼儀正しく同情を示し、そして完全に履行不可能な支払スケジュールを要求する。
私の友人は心の中で、なぜ私ほどの教育を受けた人が経済的に急転落したのかといぶかしがっている。
私は変わらず能力があり頭がキレるが、仕事は切れ切れであり単発のコンサルティング案件が、あったりなかったりだ。
55歳にして私は、明るさを装うことを学んだ。しかし、もう仕事の機会は多くない。いつ減ったのかはっきりとは覚えていない。だが「かつての」「昔は」のたよりない世界に入り込んでしまっていることを否定しようもない。
自分がどこに所属しているのかも、もうはっきりしない。はっきりしているのは、何十件ものオンライン求人への応募は、全部ブラックホールに吸い込まれてしまったらしいということ。
自分がどうなるのか分からない。まだ健康を維持しているが、身体が痛む。それとも痛むのは心なのかホームレスの女性はかつて私にとって透明人間だった。
しかし、今や、彼女たちを鑑定しようと目が引き付けられる。彼女たちの物語の始まりは、私と似ていたのだろうか。
この作品は、1年前に���いたものです。私と知り合いの女性たちの事情を組み合わせて作った物語です。なぜ書いたかというと平気じゃないのに平気なふりをすることにうんざりしたからです。
普通であるふりをするのにうんざりしたのです。マスコミの報道の中に自分の姿は見つけられませんでした。世界を旅する人やコスタリカのマンションを買った知人などいません。
ごく少数の友人だけが、15~20%の貯蓄をしています。専門家が、退職後に生活水準を維持するために必要だとしているレベルの貯蓄です。
私の友人の多くは50~60代ですが、彼らが直面している現実は、所得水準が下落し、一生働き続けざるをえず、失業、病気、離婚のいずれかで破産に至るというものです。
まだどん底に落ちてはいないかもしれませんが、多くの人が、一連の出来事によってどん底に至りかねない状況に初めて直面しています。
そして実際、どん底に沈むのはそんなに難しくないのです。米国の所得中央値の世帯では、1か月分の収入に見合うだけの貯蓄しかありません。
47%の世帯は、緊急時に400ドルを捻出できません。国の約半分の世帯がです。車の大きな修理だけで絶望の淵に沈みます。身の周りを見ただけでは気づかないでしょう。
このような状況にあるのは、私だけではないことにこの会場の中にも同じような苦境にいる人がいます。あなたがそうでなくてもご両親や姉妹、あるいは親友がそうかもしれません。
私たちは、普通を装うことがうまくなります。恥じらいが私たちを黙らせ閉じこもらせます。初めて窮状を訴えようと決めた時、私はウェブサイトを作りましたが、友人は私の写真がないことに気づきました。
このようなイラストばかりでした。公表する際でさえ私は隠れていたのです。
私たちは成功が収入によって定義される世界に生きています。お金の問題に直面していると口にすることは自分が負け犬であると宣言するのとほぼ同じです。
ハーバードビジネススクールを卒業した私のような人間だと二重の敗北ということになります。
私たちベビーブーム世代は、退職の備えが足りないのは、すべて自己責任だと言われます。なんだってわざわざ退職年金を引き出して義母の老人ホーム費用の不足分や子供の学費やただ生きていくことに充ててしまうのかと。
私たちは無計画だ。怠け者だと追及されます。ラテやミネラルウォーターにいくら費やしたのかと辱めて責めることは、とても楽しげな誘惑であり、私たちの多くは他人に非難されるのさえ待たず自責の念に駆られています。
いや、自己責任は引き受けます。私たちは皆、もっと貯められたでしょう。私は自分がもっと貯められたと知っています。そしてあなたがもし私の過去30年の人生をくまなく調べれば、金銭的に愚かな行動を1つとは言わず、見つけられるでしょう。
それはもう変えられません。あなただって同じです。でも、個々人の独立した行動を制度的な要因と混同しないでください。退職者の生活費に7.7兆ドルの不足をもたらした制度的な要因です。
ベビーブーム世代の多くのアメリカ人が、こうなったのはスタバに行き過ぎたせいではありません。
過去30年間、こんな問題を相手にしてきました向上せずに下落する賃金。消えていく年金。天井しらずの住居費や医療費や教育費。
アメリカは昔、こうではありませんでした。
退職者の収入は安定した3本脚のスツールのようでした。貯蓄と年金。そして社会保障の3本脚です。しかし、スツールは不安定になってしまいました。
まず貯蓄。何を貯めるというのか。多くの家庭にとって請求書の支払いを済ませたら貯金する残りはありません。
年金という脚もぐらついてます。多くの人が年金を受給できた時代を私たちは覚えています。現在、年金を支給する企業で働いているのは、アメリカの労働人口の13%だけです。
年金の代わりは何でしょう。確定拠出型の積立が導入され、突然、退職後の計画の責任は雇用主から私たちに移されたのです。
権限を委ねられただけでなくリスクも負いました。そして、40年間も自主的に投資し続けるのはそんなに得意ではない人が、大勢いるということがはっきりしました。
多くの人は市場リスクを管理することに長けていません。数字が語っています。米国の世帯の半数では、退職に向けた蓄えが全くありません。
ゼロです。どの退職金口座にも10セントすらありません。55~64歳の退職年金口座にある金額の中央値は10万4千ドルです。
10万4千ドルはゼロよりましに聞こえますが、年利で生じるのは300ドルほどです。これでは生きていけないのは言わずもがなです。
貯蓄が減り、年金が過去の遺物となり確定拠出年金が多くのアメリカ人の期待を裏切る中で退職間近の多くの人が退職金積立の代わりに社会保障をあてにしています。
でもそうはいきません。本来、社会保障とちゃんとした退職金積立は、まったく別の物です。まったく不十分です。良くても退職前の収入の約4割を補うにすぎません。
社会保障が始まった1935年から多くのことが変わりました。当時、21歳の男性が、65歳まで生きる確率は5割でした。
つまり、彼は60歳で引退し、少し釣りをして孫にキスをして金時計をもらい退職後の給付を受け始めてから5年以内に亡くなりました。
昨今はそうではありません。50代後半で健康な場合、あと20年や25年生きるのは容易です。それは生計を維持するには、あまりに長い期間です。特に、お金がない場合。
では、この状況に至ってしまった50歳、55歳、60歳の人は何ができるのでしょうか。この状況を避けたいと考える22歳や32歳の人は、何ができるのでしょうか。
私自身の経験から以下のことを学びました。騎兵隊は来ません。大規模な救助隊も白馬の王子様もおらず、大規模な救済策も計画されません。
アメリカで貧しい年寄りにならないようにチャンスを掴もうとするなら自分自身を。そして、お互いを助ける必要があります。私は影から歩み出てここにオープンに立っています。
皆さんにも同じようにして頂きたいのです。簡単なことではないなんて言いません。でも自分の物語を話す決意をしたのは、少しは皆が自分の話をしやすくなるかなと思ったからです。
人数が多いということを武器にする他に退職後の危機に関して交わされているこの国の現実離れした会話に変化を起こす手段はありません。
私たちの多くが自分たちに起きたことに対し、大きなショックを受けさまよう中で私たちは草の根から立ち上がり、回復のためのサークルを作る必要があります。
これは小さなグループで集まって何が自分たちに起きたのか話し、資源と情報を共有し、前進する道を考え始める活動です。これを足掛かりに自分たちの声を再発見し、警鐘を鳴らせると私は信じています。
政府機関や政治家に圧力をかけこの危機に相応の緊急性を持って全力で取り組んでもらいましょう。
その間。「その間」があるわけですが、私たちは地を這って生きる考え方を身に着け出費を大きく節減する必要があります。収入に合わせて生きるという意味だけではありません。
多くの人はすでにそうしています。私たちに今求められるのは、もっと深い意味でモノに定義されない人生を送ることの本当の意味を自ら問うことです。
これを「大事なことに絞る」と呼びます。「大事なことに絞る」とは、満たされ地に足がつくと感じるために本当に自分に必要なことを把握することです。
私のある友人は本当にオンボロの車に乗っていますが、彼はこつこつと節約してとうとう1万5千ドルを貯めてフルートを買いました。彼にとっては、音楽が本当に大切なものだからです。大事なことに絞ったのです。
私はまた魔法を求める思考を手放しました。我慢すれば、耐乏生活を送れば普通に戻れるとの考えを手放したんです。履歴書をもう1通送れば。インターネットでもう1つ仕事に応募すれば。交流会にもう1つ参加すれば。
確実に私が慣れ親しんだ種類の仕事に就ける。そして、確実に物事は普通に戻るという考えです。しかし、私もあなたも戻れないというのが、実状なのです。私たちが知っていた普通は終わりました。
私たちが今いるこの新しい場所では、したくないことをすることを求められます。私たちは、自分の立ち位置や才能や技能に見合わない仕事をすることを求められます。私は自分の王座から降りる必要がありました。
去年、親しい友人からオーガナイズする(まとめる)仕事を手伝ってほしいと頼まれました。私はコミュニティを組織化する仕事。オバマ大統領がシカゴでやったようなタイプの仕事だろうと思いました。
誰かのクローゼットを整理する仕事でした「それはやらない」と答えると「王座から降りなさい。お金に色はないでしょ」と言われました。
先進的なチームの一員としてワークライフの新時代を呼び込むのは、容易ではありません。最初が一番難しいのです。最初の時には、ネットワークや道筋やロールモデルがなくて政策も私たちの進むべき道しるべもできていません。
私たちは地殻変動の中にあり、抜け出すためには「つなぎ」の仕事を見つける必要があります。当面行うべきことは「つなぎ」の仕事です。「つなぎ」の仕事とは、次にどうするのかを考えている間に取り組む仕事のことです。
「つなぎ」の仕事は、こんな認識を手放させてもくれます、私たちの価値は収入や役職や仕事に依るという考えを手放させてくれるのです。
「つなぎ」の仕事は、金銭的苦境に陥った時の個人の状況によって奇妙に見えたり、流行の仕事のようにも見えます。私の友人は、博士号を持っていてもホームセンターで働いたりしています。
また、他のベビーブーム世代の人と組んでベンチャーを始めた友人もいます。「つなぎ」の仕事をしていても過去のキャリアに基づく仕事を望まないという意味ではありません。
有意義な仕事を望まないというわけではありません。そうせざるをえないのです。「つなぎ」の仕事は、次の仕事を見つけるまでの間にすることです。
また、失敗ではなく戦略を考えることを私は学びもしました。やりたくない多くのことを処理する中でです。皆さんもこんなアプローチを考えてみてはいかがでしょうか。
もし生計を維持するために兄弟と同居する必要があるのであれば、電話しましょう。住宅ローンの返済や家賃の支払いのために同居人が必要なら実行しましょう。生活保護が必要ならつべこべ言わず取りに行きなさい。
AARPによると実際に利用しているのは、対象となる高齢者のたった3分の1だそうです。次のラウンドに行くために必要なことをしましょう。同じ境遇の人は何百万人もいます。影から歩み出ましょう。
節約して大事なことに絞り、失敗ではなく戦略を考え自らの王座を降り厳しい時を乗り越える「つなぎ」の仕事を見つけましょう。
国としては、私たちは長寿となり数十億ドルを診断や治療や疾病管理に投資してきました。長く生きるだけでは十分ではありません。私たちは良い人生を送りたいのです。
私たちはそれを確実にする物理的なインフラへの投資をそれほどしていません。今、アメリカで年をとるという意味に関して私たちは新たな考え方を必要としています。
そして生き方に関する導きとアイデアを必要としています。どうしたら豊かで味わいのある人生を控え目な収入で送っていけるのか。
私は、変化の担い手や社会起業家、アーティスト、お年寄り、社会貢献投資家に呼びかけています。現状を生み出した人たちにもそれを打破する人たちにもです。皆さんの力が必要です。
どのようなサービス、製品、インフラに投資すれば、私たちの尊厳や自立や幸せが今後生きていく数十年にわたって支えられるのか想像してください。
私の旅は恐れと恥から謙虚さと理解へと至るものでした。私は皆さんと盾を並べてこの戦いを戦う準備ができています。私と一緒に戦ってください。
ありがとうございました。
それから・・・
マーガレット・サッチャーはこう言いました・・・
「社会などというものは存在しない」存在するのは社会ではなく個人とその家族だけなのです。
この誤解されたイデオロギーは、いまだに非常によく機能しており貧乏人が自らの貧困を恥じる理由となっています。
さらに、トニー・ブレア政権で、サッチャー政権の負の遺産を修正し、地方公共団体や公企業が復活、民営化によるサービス低下への対策が行われ
医療予算は大幅に増額させ、国民健康保険も立て直し、教育政策においても負の遺産であるサッチャー政権が導入した競争型の中等学校が事実上廃止!?公立学校の地位向上がなされ元に戻りました。
有名なサッチャリズムと呼ばれている政策は、ケインズの双璧をなすミルトン・フリードマンやフリードリヒ・ハイエクの経済学に対する思想が、のちの新自由主義的な経済改革の源です。
主に、小さな政府や政府の市場への介入を抑制する政策、国有企業の民営化や規制緩和、金融システム改革(金融ビックバン)など。
さらに、改革の障害になっていた労働組合の影響力を削ぎ、所得税、法人税、の大幅な税率の引き下げを実施。しかし、医療制度を機能不全に陥らせたり、金持ち優遇政策を採った副作用が起き始めます。
一方、付加価値税(消費税)は1979年に従来の8%から15%に引き上げられた。その後、小さな政府の柱の一つであった完全なマネタリズムを放棄し、リフレーション政策に転じていきます。
サッチャリズムと同時期に、アメリカでは、レーガノミクスが起きています。後に、「双子の赤字」と呼ばれる負の遺産を残します。その後、2008年の金融危機でレーガノミクスを改善したような対策。
2006年から2014年にかけて就任したFRBバーナンキ議長の経済対策のようなプロセスに到達しています。双子の赤字以上にアメリカの法人資産は金融工学を駆使しているし、黒字を維持し続けているので、膨大な金融政策でも成長しています。
2012年からの日本の経済政策も似ていますが、賃金だけが上がっていません。
最後に、マクロ経済学の大目標には、「長期的に生活水準を高め、今日のこども達がおじいさん達よりも良い暮らしを送れるようにする!!」という目標があります。
経済成長を「パーセント」という指数関数的な指標で数値化します。経験則的に毎年、経済成長2%くらいで巡航速度にて上昇すれば良いことがわかっています。
たった、経済成長2%のように見えますが、毎年、積み重ねるとムーアの法則みたいに膨大な量になって行きます。
また、経済学は、大前提としてある個人、法人モデルを扱う。それは、身勝手で自己中心的な欲望を満たしていく人間の部類としては最低クズというハードルの高い個人、法人。
たとえば、生産性、利益という欲だけを追求する人間。地球を救うという欲だけを追求する人間。利益と真逆なぐうたらしたい時間を最大化したいという欲を追求する人間。などの最低生活を保護、向上しつつお金の循環を通じて個人同士の相互作用も考えていく(また、憎しみの連鎖も解消する)
多様性はあるが、欲という側面では皆平等。つまり、利益以外からも解決策を見出しお金儲けだけの話だけではないのが経済学(カントの「永遠平和のために」思想も含めて国家や権力者は透明性を究極にして個人のプライバシーも考慮)
(合成の誤謬について)
合成の誤謬とは、ミクロの視点では正しいことでも、それが、合成されたマクロ(集計量)の世界では、必ずしも意図しない結果が生じること。物理学では、相転移みたいな現象です。性質が変わってしまうということ。
ミクロのメカニズムが個人同士の経済における仕組みであるのに対して、マクロのメカニズムは、国家間や経済全体の循環における仕組みだからである。
例えば、家計の貯蓄などがよく登場するが悪い例えです。前提条件が、所得が一定の場合!!所得が一定じゃない増加する場合は?これは、論じていませんので参考になりません!!(法人が提供する製品やサービスの価格も一定の場合も前提条件です)
1930年代のアメリカ経済が金融危機2008と似たような状態に陥った時、ケインズは、「倹約のパラドックス」というケインズ経済学の法則を発見しています。
それは、ポール・A・サミュエルソン(1915-2009)が、近代経済学の教科書「経済学」の冒頭で「個人を富裕にする貯金は、経済全体を貧困にする!(所得が一定の場合)」というわかりやすい言葉で表現しました。しかし、庶民の所得が増加し、貯蓄が投資、消費に回る場合には、「倹約のパラドックス」は生じません。
その後、この「倹約のパラドックス」は、アメリカの経済学者・ケネス・J・アロー(1921- )が「合成の誤謬」を数学的論理に基づいて「個人個人がそれぞれ合理的選択をしても、社会システム全体は合理的選択をするとは限らない」を検証してみせた。 要するに、部分最適ではなく、全体最適させていくということ。
つまり、新産業でイノベーションが起きるとゲーム理論でいうところのプラスサムになるから既存の産業との 戦争に発展しないため共存関係を構築できるメリットがあります。デフレスパイラルも予防できる?人間の限界を超えてることが前提だけど
しかし、独占禁止法を軽視してるわけではありませんので、既存産業の戦争を避けるため新産業だけの限定で限界を超えてください!ということに集約していきます。
なお、金融危機2008では、マイケル・メトカルフェも言うように、「特別資金引出権(SDR)」は、2008年に行われた���急対策で、一国だけで行われたのではなく、驚くほど足並みの揃った協調の下に国際通貨基金(IMF)を構成する188ヶ国が各国通貨で総額2500億ドル相当を「特別資金引出権(SDR)」を用いて世界中の準備通貨を潤沢にする目的で増刷してます。
このアイデアの根本は、元FRB議長であったベンバーナンキの書籍「大恐慌論」です。この研究がなければ、誰一人として、変動相場制での当時の状況を改善し解決できなかったと言われています。
それ以前では、固定相場制でのマーシャルプランが有名です。
続いて、トリクルダウンと新自由主義
インターネットの情報爆発により隠れていた価値観も言葉となり爆発していくことになった。
しかし、法定通貨の方が、その価値、概念に対する通貨量拡大として価格で応じることができず、圧倒的に通貨量が足りない状況が生まれていたのが、2010年代の問題点のひとつでした。
リーマンショックの後に、新自由主義が誤りであることが、ピケティやサンデルによって指摘され、当時のFRBバーナンキ議長が、通貨供給量を大幅に増やした対策により、ベースマネーの金融、銀行間の相互不信を解消して収束した。
それでも、まだ足りないが、適正水準に収まったことで、さらに価値も増幅され、マネーストックの財政政策から再分配、事前分配を大規模に行い、さらなる通貨供給量が重要となっている現在の日本国内。
例えば
Googleがしようとしてた事は、まだ新産業として、基礎研究から発展できない機械学習の先端の成果をすべて持ち込んだ社会実験に近いこと。
シュンペーターの創造的破壊は、一定数の創造の基礎を蓄積後に、未来を高密度なアイデアで練り上げてから破壊をするのが本質です。
こうして、憎しみの連鎖や混乱を最小限にする。
アルビン・トフラーの言うように、法人と行政府とのスピードの違いが縮まらないのは、構造上の違いであって、それを補うためにプラスサムな連携するということが、必要になってくることを説いています。
三権分立が、規制のないGAFAMを非政府部門としてMMT(現代貨幣理論)からプラスサムに連携したらどこで均衡するのか?という社会実験も兼ねています。
このような前提で、あらゆるインターネット企業が、創業時、貢献するためコンセプトの中心であったものが、今では、悪性に変質して違う目的に成り下がっています。
再分配、事前分配の強化がスッポリ抜けてる欠点があり、ここに明かしたくないイノベーションの余地があります!!
2021年には、新自由主義のような弱肉強食では自然とトリクルダウンは生じないことは明らかになる。
確かに、トリクルダウンは発生しないが、法律で人工的に同じ効果は、貨幣の再分配、事前分配という形にできる可能性は高い。
再分配や事前分配をケムにまく「金持ちを貧乏にしても、貧乏人は金持ちにならない」「価値を生み出している人を罰するつもりがないのであれば税に差をつけないほうがいい」(サッチャー)
とあるが、新自由主義は誤りで、ピケティやサンデルによると違うみたいだ。
<おすすめサイト>
ニコラ・スタージョン:行政府が低収入者へのウェルビーイング(幸福度)を最優先するべき理由
デアンドレア・サルバドール: 低所得世帯の光熱費負担を低減するために
この世のシステム一覧イメージ図2012
イギリス保守党。党首デービッド・キャメロン: 政府の新時代
ルトハー・ブレフマン:貧困は「人格の欠如」ではなく「金銭の欠乏」である!
個人賃金→年収保障、ベーシックインカムは、労働市場に対する破壊的イノベーションということ?2022(人間の限界を遥かに超えることが前提条件)
世界の通貨供給量は、幸福の最低ライン人間ひとりで年収6万ドルに到達しているのか?2017
<提供>
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ohba-artlife · 1 year
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chatGPT 最近よく話すことのまとめ
今現在のスピード感だと、正直2週間も経つと浦島太郎状態になるchatGPTのまとめに、どれだけ意味があるのか?と思うようになってきた。が!!自分のために簡単に書いておくことは重要だと思って書いてみる。
早速、今日もこんな記事である。
次の順番で、大場自身のリマインドとして記載しておく。
※ 不明な点はご容赦下さい。自分への説明ですので…。
◆(0)人類への影響 ◆(1)原理原則のtranceformer ◆(2)chatGPTへのうまい指示の出し方@プロンプト ◆(3)プロンプトの自動化システムと大規模データへの対応 ◆(4)ベクトルデータベースの基礎 ◆(5)過去のブログ記事
◆(0)人類への影響 ここは、大場の放言だと思って下さい。(読み飛ばしてもらってもOK)
 人類に必要な観点は3つに絞られる(そんなに遠くない将来か?)
◇人間自体 →ライフサイエンス、医療、食、生活環境等、人間を生かすための環境も含めたすべて
◇人間関係 →人間同士、SNS、人間へコンタクトするスマホ等の機器、エッセンシャルワーカー、人間同士をつなぐものすべて (将来は、嫌な人とコンタクトを取らずにAIが仲介してくれることを思うと、この問題は減っていくのかもしれない。)
◇やり取りの価値を測るもの →当面は金融、お金、仮想通貨、であるが、将来はお裾分けへの気持ち、となるのかもしれない。
 そして人類が行うことは、
◇電子化されていないデータの電子化を行うこと ◇自分しか持ってない電子データを創る事こそが差別化の要因
となるのではないか。
 今までの産業革命とは本質的に異なる時代である。産業革命は、体の一部(早く運ぶ、たくさん運ぶなど)を改善したのに比べ、人類の生物的な最大かつ唯一の特徴としての ・脳「世代間をまたいだ知識の共有」自体を置き換えるイノベーション だと思っている。
 人類の歴史で、最後かつ最大のイノベーションなのだと思っている。(極論、人類はもう要らないのかもしれない。)
◇ 来年シンギュラリティとか言っているのはこちら
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◆(1)原理原則のtranceformer
正直、簡単でも良いのでここの概念をわからないと、その後の話は、本質的に意味が不明だと思っています。
◇ 簡単なまとめ
・全てのステップでの情報を同一次元にし、計算量を減らす
 Googleの初期の論文「Attention Is All You Need」では、512次元(=2の9乗)になっている。全ての情報が同一次元であるので、ベクトル計算が行える。
・再帰的な仕組みを排除し、勾配消失問題を起こさせない
 再帰的ではないので計算の終わりが見えている。つまり札束とデータ量で、大手企業が鈍器で殴る感じで、勝負ができる。  →100億円もあれば学習させることが出来る。この事が進化を早めたと思っている。
・アテンションという仕組みを用意する
 人類の脳と脳のコミュニケーションとしての「言語」の仕組みをうまくとらえたアーキテクトがアテンションだと思ってもらえば良い。これが秀逸だったので、計算量が格段に減った。
・検索に使うだけではなく、言葉のやり取りに活用
 Googleの検索エンジンで、2語以上のキーワードでの検索の際、順番を入れ替えると結果が変わるのに気付いた方はいるのではないか?それが極論、トランスフォーマーだと思ってもらってもよい。
 OpenAI社の秀逸だったのは、検索ではなく、人のコミュニケーションに使ったところだと思っている。
◇これ簡単に読みました
Tumblr media
◇もうちょっと進んだらこれでしょうか?
◆(2)chatGPTへのうまい指示の出し方@プロンプト
 優秀な弁護士を思い浮かべて欲しい。天才弁護士も実際の契約書の内容は教えてもらわないと知らない。つまり、優秀な人間と同じで、chatGPTにもきちんと指示を出さないとうまいこと回答が戻ってこない。少なくとも現在はそうなっており、そのためにプロンプトエンジニアという職が発生している。
 簡単に言えば、次の通りである。
「 インストラクション(質問・指示) ・絶対にやって欲しいことを簡潔・明瞭に記載する。 ・絶対に最初に書く。 インプット(入力) ・インストラクションで処理してもらいたいテキスト・コードなどを貼り付ける。 コンテクスト(予備知識) ・やって欲しいことをこなす際に、絶対に必要になる知識や文脈。 アウトプット(出力) ・どういう形式で回答して欲しいかを定める。 」
◆(3)プロンプトの自動化システムと大規模データへの対応
 うまい指示を、更なる前提条件となるデータを与えて行うとなれば、計算量を考えてもベクトルデータベース(次項目参照)を利用するしかない。我々のチームでは、「具体的に動かすためのシステムが作れそうなこと」「作るにあたってのプロンプトに投げかける文言のノウハウが溜まってきており」、完全自動化への道筋が見えてきた。
 そのシステムの例が次の画像である。そして、行うべきことは次である。
・電子化されていないデータの電子化 ・自活用したい形でデータをベクトルデータベースに格納 ・欲しい結果を出すための検索キーワードのコンサルティング ・継続的に利用できるようする機能を備えたプラットフォームの提供
初めの1つは既存ビジネスであるが、この4つの提供が出来そうである。
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◆(4)ベクトルデータベースの基礎
 いくつもベクトルデータベース提供会社があるのだが、以下に例を出す。(pineconeは100億円集めたから安心して下さい、とメール来ていました。)
 計算スピードを上げるためにも、データはchatGPTと同一次元でデータを保持しておく必要がある。
◆(5)過去のブログ記事
画像生成AIに関しても調べてみた
chatGPTに関するシンギュラリティ動画 by 落合陽一
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alues3117 · 3 years
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最近 不動産関連オススメ10選‼️#もうすぐ宅建試験#貸金取扱主任者を取ろう#競売不動産取扱主任者 試験間近#賃貸不動産経営管理士 試験間近#不動産コンサルティング試験間近#住宅ローンアドバイザー試験間近#行政書士試験間近#無人島売買#山を買う#アフターコロナの不動産新常識#不動産は出口が肝心#タワマンの法則#ニュータウンはオールドタウンへ#これからは快適に住む #無形価値を楽しむ時代#住宅市場活発化#牧野知弘#家を選ぶ前に街を選ぼう https://www.instagram.com/p/CUy_nlBLW1V/?utm_medium=tumblr
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shunsukessk · 4 years
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あるいは永遠の未来都市(東雲キャナルコートCODAN生活記)
 都市について語るのは難しい。同様に、自宅や仕事場について語るのも難しい。それを語ることができるのは、おそらく、その中にいながら常にはじき出されている人間か、実際にそこから出てしまった人間だけだろう。わたしにはできるだろうか?  まず、自宅から徒歩三秒のアトリエに移動しよう。北側のカーテンを開けて、掃き出し窓と鉄格子の向こうに団地とタワーマンション、彼方の青空に聳える東京スカイツリーの姿を認める。次に東側の白い引き戸を一枚、二枚とスライドしていき、団地とタワーマンションの窓が反射した陽光がテラスとアトリエを優しく温めるのをじっくりと待つ。その間、テラスに置かれた黒竹がかすかに揺れているのを眺める。外から共用廊下に向かって、つまり左から右へさらさらと葉が靡く。一枚の枯れた葉が宙に舞う。お前、とわたしは念じる。お前、お隣さんには行くんじゃないぞ。このテラスは、腰よりも低いフェンスによってお隣さんのテラスと接しているのだ。それだけでなく、共用廊下とも接している。エレベーターへと急ぐ人の背中が見える。枯れ葉はテラスと共用廊下との境目に設置されたベンチの上に落ちた。わたしは今日の風の強さを知る。アトリエはまだ温まらない。  徒歩三秒の自宅に戻ろう。リビング・ダイニングのカーテンを開けると、北に向いた壁の一面に「田」の形をしたアルミ製のフレームが現れる。窓はわたしの背より高く、広げた両手より大きかった。真下にはウッドデッキを設えた人工地盤の中庭があって、それを取り囲むように高層の住棟が建ち並び、さらにその外周にタワーマンションが林立している。視界の半分は集合住宅で、残りの半分は青空だった。そのちょうど境目に、まるで空に落書きをしようとする鉛筆のように東京スカイツリーが伸びている。  ここから望む風景の中にわたしは何かしらを発見する。たとえば、斜め向かいの部屋の窓に無数の小さな写真が踊っている。その下の鉄格子つきのベランダに男が出てきて、パジャマ姿のままたばこを吸い始める。最上階の渡り廊下では若い男が三脚を据えて西側の風景を撮影している。今日は富士山とレインボーブリッジが綺麗に見えるに違いない。その二つ下の渡り廊下を右から左に、つまり一二号棟から一一号棟に向かって黒いコートの男が横切り、さらに一つ下の渡り廊下を、今度は左から右に向かって若い母親と黄色い帽子の息子が横切っていく。タワーマンションの間を抜けてきた陽光が数百の窓に当たって輝く。たばこを吸っていた男がいつの間にか部屋に戻ってワイシャツにネクタイ姿になっている。六階部分にある共用のテラスでは赤いダウンジャケットの男が外を眺めながら電話をかけている。地上ではフォーマルな洋服に身を包んだ人々が左から右に向かって流れていて、ウッドデッキの上では老婦が杖をついて……いくらでも観察と発見は可能だ。けれども、それを書き留めることはしない。ただ新しい出来事が無数に生成していることを確認するだけだ。世界は死んでいないし、今日の都市は昨日の都市とは異なる何ものかに変化しつつあると認識する。こうして仕事をする準備が整う。
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 東雲キャナルコートCODAN一一号棟に越してきたのは今から四年前だった。内陸部より体感温度が二度ほど低いな、というのが東雲に来て初めに思ったことだ。この土地は海と運河と高速道路に囲まれていて、物流倉庫とバスの車庫とオートバックスがひしめく都市のバックヤードだった。東雲キャナルコートと呼ばれるエリアはその名のとおり運河沿いにある。ただし、東雲運河に沿っているのではなく、辰巳運河に沿っているのだった。かつては三菱製鋼の工場だったと聞いたが、今ではその名残はない。東雲キャナルコートが擁するのは、三千戸の賃貸住宅と三千戸の分譲住宅、大型のイオン、児童・高齢者施設、警察庁などが入る合同庁舎、辰巳運河沿いの区立公園で、エリアの中央部分に都市基盤整備公団(現・都市再生機構/UR)が計画した高層板状の集合住宅群が並ぶ。中央部分は六街区に分けられ、それぞれ著名な建築家が設計者として割り当てられた。そのうち、もっとも南側に位置する一街区は山本理顕による設計で、L字型に連なる一一号棟と一二号棟が中庭を囲むようにして建ち、やや小ぶりの一三号棟が島のように浮かんでいる。この一街区は二〇〇三年七月に竣工した。それから一三年後の二〇一六年五月一四日、わたしと妻は二人で一一号棟の一三階に越してきた。四年の歳月が流れてその部屋を出ることになったとき、わたしはあの限りない循環について思い出していた。
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 アトリエに戻るとそこは既に温まっている。さあ、仕事を始めよう。ものを書くのがわたしの仕事だった。だからまずMacを立ち上げ、テキストエディタかワードを開く。さっきリビング・ダイニングで行った準備運動によって既に意識は覚醒している。ただし、その日の頭とからだのコンディションによってはすぐに書き始められないこともある。そういった場合はアトリエの東側に面したテラスに一時的に避難してもよい。  掃き出し窓を開けてサンダルを履く。黒竹の鉢に水を入れてやる。近くの部屋の原状回復工事に来たと思しき作業服姿の男がこんちは、と挨拶をしてくる。挨拶を返す。お隣さんのテラスにはベビーカーとキックボード、それに傘が四本置かれている。テラスに面した三枚の引き戸はぴったりと閉められている。緑色のボーダー柄があしらわれた、目隠しと防犯を兼ねた白い戸。この戸が開かれることはほとんどなかった。わたしのアトリエや共用廊下から部屋の中が丸見えになってしまうからだ。こちらも条件は同じだが、わたしはアトリエとして使っているので開けているわけだ。とはいえ、お隣さんが戸を開けたときにあまり中を見てしまうと気まずいので、二年前に豊洲のホームセンターで見つけた黒竹を置いた。共用廊下から外側に向かって風が吹いていて、葉が光を食らうように靡いている。この住棟にはところどころに大穴が空いているのでこういうことが起きる。つまり、風向きが反転するのだった。  通風と採光のために設けられた空洞、それがこのテラスだった。ここから東雲キャナルコートCODANのほぼ全体が見渡せる。だが、もう特に集中して観察したりしない。隈研吾が設計した三街区の住棟に陽光が当たっていて、ベランダで父子が日光浴をしていようが、島のような一三号棟の屋上に設置されたソーラーパネルが紺碧に輝いていて、その傍の芝生に二羽の鳩が舞い降りてこようが、伊東豊雄が設計した二街区の住棟で影がゆらめいて、テラスに出てきた老爺が異様にうまいフラフープを披露しようが、気に留めない。アトリエに戻ってどういうふうに書くか、それだけを考える。だから、目の前のすべてはバックグラウンド・スケープと化す。ただし、ここに広がるのは上質なそれだった。たとえば、ここにはさまざまな匂いが漂ってきた。雨が降った次の日には海の匂いがした。東京湾の匂いだが、それはいつも微妙に違っていた。同じ匂いはない。生成される現実に呼応して新しい文字の組み合わせが発生する。アトリエに戻ろう。
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 わたしはここで、広島の中心部に建つ巨大な公営住宅、横川という街に形成された魅力的な高架下商店街、シンガポールのベイサイドに屹立するリトル・タイランド、ソウルの中心部を一キロメートルにわたって貫く線状の建築物などについて書いてきた。既に世に出たものもあるし、今から出るものもあるし、たぶん永遠にMacの中に封じ込められると思われるものもある。いずれにせよ、考えてきたことのコアはひとつで、なぜ人は集まって生きるのか、ということだった。  人間の高密度な集合体、つまり都市は、なぜ人類にとって必要なのか?  そしてこの先、都市と人類はいかなる進化を遂げるのか?  あるいは都市は既に死んだ?  人類はかつて都市だった廃墟の上をさまよい続ける?  このアトリエはそういうことを考えるのに最適だった。この一街区そのものが新しい都市をつくるように設計されていたからだ。  実際、ここに来てから、思考のプロセスが根本的に変わった。ここに来るまでの朝の日課といえば、とにかく怒りの炎を燃やすことだった。閉じられた小さなワンルームの中で、自分が外側から遮断され、都市の中にいるにもかかわらず隔離状態にあることに怒り、その怒りを炎上させることで思考を開いた。穴蔵から出ようともがくように。息苦しくて、ひとりで部屋の中で暴れたし、壁や床に穴を開けようと試みることもあった。客観的に見るとかなりやばい奴だったに違いない。けれども、こうした循環は一生続くのだと、当時のわたしは信じて疑わなかった。都市はそもそも息苦しい場所なのだと、そう信じていたのだ。だが、ここに来てからは息苦しさを感じることはなくなった。怒りの炎を燃やす朝の日課は、カーテンを開け、その向こうを観察するあの循環へと置き換えられた。では、怒りは消滅したのか?
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 白く光沢のあるアトリエの床タイルに青空が輝いている。ここにはこの街の上半分がリアルタイムで描き出される。床の隅にはプロジェクトごとに振り分けられた資料の箱が積まれていて、剥き出しの灰色の柱に沿って山積みの本と額に入ったいくつかの写真や絵が並んでいる。デスクは東向きの掃き出し窓の傍に置かれていて、ここからテラスの半分と共用廊下、それに斜向かいの部屋の玄関が見える。このアトリエは空中につくられた庭と道に面しているのだった。斜向かいの玄関ドアには透明のガラスが使用されていて、中の様子が透けて見える。靴を履く住人の姿がガラス越しに浮かんでいる。視線をアトリエ内に戻そう。このアトリエは専用の玄関を有していた。玄関ドアは斜向かいの部屋のそれと異なり、全面が白く塗装された鉄扉だった。玄関の脇にある木製のドアを開けると、そこは既に徒歩三秒の自宅だ。まずキッチンがあって、奥にリビング・ダイニングがあり、その先に自宅用の玄関ドアがあった。だから、このアトリエは自宅と繋がってもいるが、独立してもいた。  午後になると仕事仲間や友人がこのアトリエを訪ねてくることがある。アトリエの玄関から入ってもらってもいいし、共用廊下からテラス経由でアトリエに招き入れてもよい。いずれにせよ、共用廊下からすぐに仕事場に入ることができるので効率的だ。打ち合わせをする場合にはテーブルと椅子をセッティングする。ここでの打ち合わせはいつも妙に捗った。自宅と都市の両方に隣接し、同時に独立してもいるこのアトリエの雰囲気は、最小のものと最大のものとを同時に掴み取るための刺激に満ちている。いくつかの重要なアイデアがここで産み落とされた。議論が白熱し、日が暮れると、徒歩三秒の自宅で妻が用意してくれた料理を囲んだり、東雲の鉄鋼団地に出かけて闇の中にぼうっと浮かぶ屋台で打ち上げを敢行したりした。  こうしてあの循環は完成したかに見えた。わたしはこうして都市への怒りを反転させ都市とともに歩み始めた、と結論づけられそうだった。お前はついに穴蔵から出たのだ、と。本当にそうだろうか?  都市の穴蔵とはそんなに浅いものだったのか?
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 いやぁ、  未来都市ですね、
 ある編集者がこのアトリエでそう言ったことを思い出す。それは決して消えない残響のようにアトリエの中にこだまする。ある濃密な打ち合わせが一段落したあと、おそらくはほとんど無意識に発された言葉だった。  未来都市?  だってこんなの、見たことないですよ。  ああ、そうかもね、とわたしが返して、その会話は流れた。だが、わたしはどこか引っかかっていた。若く鋭い編集者が発した言葉だったから、余計に。未来都市?  ここは現在なのに?  ちょうどそのころ、続けて示唆的な出来事があった。地上に降り、一三号棟の脇の通路を歩いていたときのことだ。団地内の案内図を兼ねたスツールの上に、ピーテル・ブリューゲルの画集が広げられていたのだった。なぜブリューゲルとわかったかといえば、開かれていたページが「バベルの塔」だったからだ。ウィーンの美術史美術館所蔵のものではなく、ロッテルダムのボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館所蔵の作品で、天に昇る茶褐色の塔がアクリル製のスツールの上で異様なオーラを放っていた。その画集はしばらくそこにあって、ある日ふいになくなったかと思うと、数日後にまた同じように置かれていた。まるで「もっとよく見ろ」と言わんばかりに。
 おい、お前。このあいだは軽くスルーしただろう。もっとよく見ろ。
 わたしは近寄ってその絵を見た。新しい地面を積み重ねるようにして伸びていく塔。その上には無数の人々の蠢きがあった。塔の建設に従事する労働者たちだった。既に雲の高さに届いた塔はさらに先へと工事が進んでいて、先端部分は焼きたての新しい煉瓦で真っ赤に染まっている。未来都市だな、これは、と思う。それは天地が創造され、原初の人類が文明を築きつつある時代のことだった。その地では人々はひとつの民で、同じ言葉を話していた。だが、人々が天に届くほどの塔をつくろうとしていたそのとき、神は全地の言葉を乱し、人を全地に散らされたのだった。ただし、塔は破壊されたわけではなかった。少なくとも『創世記』にはそのような記述はない。だから、バベルの塔は今なお未来都市であり続けている。決して完成することがないから未来都市なのだ。世界は変わったが、バベルは永遠の未来都市として存在し続ける。
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 ようやく気づいたか。  ああ。  それで?  おれは永遠の未来都市をさまよう亡霊だと?  どうかな、  本当は都市なんか存在しないのか?  どうかな、  すべては幻想だった?  そうだな、  どっちなんだ。  まあ結論を急ぐなよ。  おれはさっさと結論を出して原稿を書かなきゃならないんだよ。  知ってる、だから急ぐなと言ったんだ。  あんたは誰なんだ。  まあ息抜きに歩いてこいよ。  息抜き?  いつもやっているだろう。あの循環だよ。  ああ、わかった……。いや、ちょっと待ってくれ。先に腹ごしらえだ。
 もう昼を過ぎて久しいんだな、と鉄格子越しの風景を一瞥して気づく。陽光は人工地盤上の芝生と一本木を通過して一三号棟の廊下を照らし始めていた。タワーマンションをかすめて赤色のヘリコプターが東へと飛んでいき、青空に白線を引きながら飛行機が西へと進む。もちろん、時間を忘れて書くのは悪いことではない。だが、無理をしすぎるとあとになって深刻な不調に見舞われることになる。だから徒歩三秒の自宅に移動しよう。  キッチンの明かりをつける。ここには陽光が入ってこない。窓側に風呂場とトイレがあるからだ。キッチンの背後に洗面所へと続くドアがある。それを開けると陽光が降り注ぐ。風呂場に入った光が透明なドアを通過して洗面所へと至るのだった。洗面台で手を洗い、鏡に目を向けると、風呂場と窓のサッシと鉄格子と団地とスカイツリーが万華鏡のように複雑な模様を見せる。手を拭いたら、キッチンに戻って冷蔵庫を開け、中を眺める。食材は豊富だった。そのうちの九五パーセントはここから徒歩五分のイオンで仕入れた。で、遅めの昼食はどうする?  豚バラとキャベツで回鍋肉にしてもいいが、飯を炊くのに時間がかかる。そうだな……、カルボナーラでいこう。鍋に湯を沸かして塩を入れ、パスタを茹でる。ベーコンと玉葱、にんにくを刻んでオリーブオイルで炒める。それをボウルに入れ、パルメザンチーズと生卵も加え、茹で上がったパスタを投入する。オリーブオイルとたっぷりの黒胡椒とともにすべてを混ぜ合わせれば、カルボナーラは完成する。もっとも手順の少ない料理のひとつだった。文字の世界に没頭しているときは簡単な料理のほうがいい。逆に、どうにも集中できない日は、複雑な料理に取り組んで思考回路を開くとよい。まあ、何をやっても駄目な日もあるのだが。  リビング・ダイニングの窓際に置かれたテーブルでカルボナーラを食べながら、散歩の計画を練る。籠もって原稿を書く日はできるだけ歩く時間を取るようにしていた。あまり動かないと頭も指先も鈍るからだ。走ってもいいのだが、そこそこ気合いを入れなければならないし、何よりも風景がよく見えない。だから、平均して一時間、長いときで二時間程度の散歩をするのが午後の日課になっていた。たとえば、辰巳運河沿いを南下しながら首都高の高架と森と物流倉庫群を眺めてもいいし、辰巳運河を越えて辰巳団地の中を通り、辰巳の森海浜公園まで行ってもよい。あるいは有明から東雲運河を越えて豊洲市場あたりに出てもいいし、そこからさらに晴海運河を越えて晴海第一公園まで足を伸ばし、日本住宅公団が手がけた最初の高層アパートの跡地に巡礼する手もある。だが、わたしにとってもっとも重要なのは、この東雲キャナルコートCODAN一街区をめぐるルートだった。つまり、空中に張りめぐらされた道を歩いて、東京湾岸のタブラ・ラサに立ち上がった新都市を内側から体感するのだ。  と、このように書くと、何か劇的な旅が想像されるかもしれない。アトリエや事務所、さらにはギャラリーのようなものが住棟内に点在していて、まさに都市を立体化したような人々の躍動が見られると思うかもしれない。生活と仕事が混在した活動が積み重なり、文化と言えるようなものすら発生しつつあるかもしれないと、期待を抱くかもしれない。少なくともわたしはそうだった。実際にここに来るまでは。さて、靴を履いてアトリエの玄関ドアを開けよう。
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 それは二つの世界をめぐる旅だ。一方にここに埋め込まれたはずの思想があり、他方には生成する現実があった。二つの世界は常に並行して存在する。だが、実際に見えているのは現実のほうだけだし、歴史は二つの世界の存在を許さない。とはいえ、わたしが最初に遭遇したのは見えない世界のほうだった。その世界では、実際に都市がひとつの建築として立ち上がっていた。ただ家が集積されただけでなく、その中に住みながら働いたり、ショールームやギャラリーを開設したりすることができて、さまざまな形で人と人とが接続されていた。全体の半数近くを占める透明な玄関ドアの向こうに談笑する人の姿が見え、共用廊下に向かって開かれたテラスで人々は語り合っていた。テラスに向かって設けられた大きな掃き出し窓には、子どもたちが遊ぶ姿や、趣味のコレクション、打ち合わせをする人と人、アトリエと作品群などが浮かんでいた。それはもはや集合住宅ではなかった。都市で発生する多様で複雑な活動をそのまま受け入れる文化保全地区だった。ゾーニングによって分断された都市の攪拌装置であり、過剰な接続の果てに衰退期を迎えた人類の新・進化論でもあった。  なあ、そうだろう?  応答はない。静かな空中の散歩道だけがある。わたしのアトリエに隣接するテラスとお隣さんのテラスを通り過ぎると、やや薄暗い内廊下のゾーンに入る。日が暮れるまでは照明が半分しか点灯しないので光がいくらか不足するのだった。透明な玄関ドアがあり、その傍の壁に廣村正彰によってデザインされたボーダー柄と部屋番号の表示がある。ボーダー柄は階ごとに色が異なっていて、この一三階は緑だった。少し歩くと右側にエレベーターホールが現れる。外との境界線上にはめ込まれたパンチングメタルから風が吹き込んできて、ぴゅうぴゅうと騒ぐ。普段はここでエレベーターに乗り込むのだが、今日は通り過ぎよう。廊下の両側に玄関と緑色のボーダー柄が点々と続いている。左右に四つの透明な玄関ドアが連なったあと、二つの白く塗装された鉄扉がある。透明な玄関ドアの向こうは見えない。カーテンやブラインドや黒いフィルムによって塞がれているからだ。でも陰鬱な気分になる必要はない。間もなく左右に光が満ちてくる。  コモンテラスと名づけられた空洞のひとつに出た。二階分の大穴が南側と北側に空いていて、共用廊下とテラスとを仕切るフェンスはなく、住民に開放されていた。コモンテラスは住棟内にいくつか存在するが、ここはその中でも最大だ。一四階の高さが通常の一・五倍ほどあるので、一三階と合わせて計二・五階分の空洞になっているのだ。それはさながら、天空の劇場だった。南側には巨大な長方形によって縁取られた東京湾の風景がある。左右と真ん中に計三棟のタワーマンションが陣取り、そのあいだで辰巳運河の水が東京湾に注ぎ、東京ゲートブリッジの橋脚と出会って、「海の森」と名づけられた人工島の縁でしぶきを上げる様が見える。天気のいい日には対岸に広がる千葉の工業地帯とその先の山々まで望むことができた。海から来た風がこのコモンテラスを通過し、東京の内側へと抜けていく。北側にその風景が広がる。視界の半分は集合住宅で、残りの半分は青空だった。タワーマンションの陰に隠れて東京スカイツリーは確認できないが、豊洲のビル群が団地の上から頭を覗かせている。眼下にはこの団地を南北に貫くS字アベニューが伸び、一街区と二街区の人工地盤を繋ぐブリッジが横切っていて、長谷川浩己率いるオンサイト計画設計事務所によるランドスケープ・デザインの骨格が見て取れる。  さあ、公演が始まる。コモンテラスの中心に灰色の巨大な柱が伸びている。一三階の共用廊下の上に一四階の共用廊下が浮かんでいる。ガラス製のパネルには「CODAN  Shinonome」の文字が刻まれている。この空間の両側に、六つの部屋が立体的に配置されている。半分は一三階に属し、残りの半分は一四階に属しているのだった。したがって、壁にあしらわれたボーダー柄は緑から青へと遷移する。その色は、掃き出し窓の向こうに設えられた目隠しと防犯を兼ねた引き戸にも連続している。そう、六つの部屋はこのコモンテラスに向かって大きく開くことができた。少なくとも設計上は。引き戸を全開にすれば、六つの部屋の中身がすべて露わになる。それらの部屋の住人たちは観客なのではない。この劇場で物語を紡ぎ出す主役たちなのだった。両サイドに見える美しい風景もここではただの背景にすぎない。近田玲子によって計画された照明がこの空間そのものを照らすように上向きに取り付けられている。ただし、今はまだ点灯していない。わたしはたったひとりで幕が上がるのを待っている。だが、動きはない。戸は厳重に閉じられるか、採光のために数センチだけ開いているかだ。ひとつだけ開かれている戸があるが、レースカーテンで視界が完全に遮られ、窓際にはいくつかの段ボールと紙袋が無造作に積まれていた。風がこのコモンテラスを素通りしていく。
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 ほら、  幕は上がらないだろう、  お前はわかっていたはずだ、ここでは人と出会うことがないと。横浜のことを思い出してみろ。お前はかつて横浜の湾岸に住んでいた。住宅と事務所と店舗が街の中に混在し、近所の雑居ビルやカフェスペースで毎日のように文化的なイベントが催されていて、お前はよくそういうところにふらっと行っていた。で、いくつかの重要な出会いを経験した。つけ加えるなら、そのあたりは山本理顕設計工場の所在地でもあった。だから、東雲に移るとき、お前はそういうものが垂直に立ち上がる様を思い描いていただろう。だが、どうだ?  あのアトリエと自宅は東京の空中にぽつんと浮かんでいるのではないか?  それも悪くない、とお前は言うかもしれない。物書きには都市の孤独な拠点が必要だったのだ、と。多くの人に会って濃密な取材をこなしたあと、ふと自分自身に戻ることができるアトリエを欲していたのだ、と。所詮自分は穴蔵の住人だし、たまに訪ねてくる仕事仲間や友人もいなくはない、と。実際、お前はここではマイノリティだった。ここの住民の大半は幼い子どもを連れた核家族だったし、大人たちのほとんどはこの住棟の外に職場があった。もちろん、二階のウッドデッキ沿いを中心にいくつかの仕事場は存在した。不動産屋、建築家や写真家のアトリエ、ネットショップのオフィス、アメリカのコンサルティング会社の連絡事務所、いくつかの謎の会社、秘かに行われている英会話教室や料理教室、かつては違法民泊らしきものもあった。だが、それもかすかな蠢きにすぎなかった。ほとんどの住民の仕事はどこか別の場所で行われていて、この一街区には活動が積み重ねられず、したがって文化は育たなかったのだ。周囲の住人は頻繁に入れ替わって、コミュニケーションも生まれなかった。お前のアトリエと自宅のまわりにある五軒のうち四軒の住人が、この四年間で入れ替わったのだった。隣人が去ったことにしばらく気づかないことすらあった。何週間か経って新しい住人が入り、透明な玄関ドアが黒い布で塞がれ、テラスに向いた戸が閉じられていくのを、お前は満足して見ていたか?  胸を抉られるような気持ちだったはずだ。  そうした状況にもかかわらず、お前はこの一街区を愛した。家というものにこれほどの帰属意識を持ったことはこれまでになかったはずだ。遠くの街から戻り、暗闇に浮かぶ格子状の光を見たとき、心底ほっとしたし、帰ってきたんだな、と感じただろう。なぜお前はこの一街区を愛したのか?  もちろん、第一には妻との生活が充実したものだったことが挙げられる。そもそも、ここに住むことを提案したのは妻のほうだった。四年前の春だ。「家で仕事をするんだったらここがいいんじゃない?」とお前の妻はあの奇妙な間取りが載った図面を示した。だから、お前が恵まれた環���にいたことは指摘されなければならない。だが、第二に挙げるべきはお前の本性だ。つまり、お前は現実のみに生きているのではない。お前の頭の中には常に想像の世界がある。そのレイヤーを現実に重ねることでようやく生きている。だから、お前はあのアトリエから見える現実に落胆しながら、この都市のような構造体の可能性を想像し続けた。簡単に言えば、この一街区はお前の想像力を搔き立てたのだ。  では、お前は想像の世界に満足したか?  そうではなかった。想像すればするほどに現実との溝は大きく深くなっていった。しばらく想像の世界にいたお前は、どこまでが現実だったのか見失いつつあるだろう。それはとても危険なことだ。だから確認しよう。お前が住む東雲キャナルコートCODAN一街区には四二〇戸の住宅があるが、それはかつて日本住宅公団であり、住宅・都市整備公団であり、都市基盤整備公団であって、今の独立行政法人都市再生機構、つまりURが供給してきた一五〇万戸以上の住宅の中でも特異なものだった。お前が言うようにそれは都市を構築することが目指された。ところが、そこには公団の亡霊としか言い表しようのない矛盾が内包されていた。たとえば、当時の都市基盤整備公団は四二〇戸のうちの三七八戸を一般の住宅にしようとした。だが、設計者の山本理顕は表面上はそれに応じながら、実際には大半の住戸にアトリエや事務所やギャラリーを実装できる仕掛けを忍ばせたのだ。玄関や壁は透明で、仕事場にできる開放的なスペースが用意された。間取りはありとあらゆる活動を受け入れるべく多種多様で、メゾネットやアネックスつきの部屋も存在した。で、実際にそれは東雲の地に建った。それは現実のものとなったのだった。だが、実はここで世界が分岐した。公団およびのちのURは、例の三七八戸を結局、一般の住宅として貸し出した。したがって大半の住戸では、アトリエはまだしも、事務所やギャラリーは現実的に不可だった。ほかに「在宅ワーク型住宅」と呼ばれる部屋が三二戸あるが、不特定多数が出入りしたり、従業員を雇って行ったりする業務は不可とされたし、そもそも、家で仕事をしない人が普通に借りることもできた。残るは「SOHO住宅」だ。これは確かに事務所やギャラリーとして使うことができる部屋だが、ウッドデッキ沿いの一〇戸にすぎなかった。  結果、この一街区は集合住宅へと回帰した。これがお前の立っている現実だ。都市として運営されていないのだから、都市にならないのは当然の帰結だ。もちろん、ゲリラ的に別の使い方をすることは可能だろう。ここにはそういう人間たちも確かにいる。お前も含めて。だが、お前はもうすぐここから去るのだろう?  こうしてまたひとり、都市を望む者が消えていく。二つの世界はさらに乖離する。まあ、ここではよくあることだ。ブリューゲルの「バベルの塔」、あの絵の中にお前の姿を認めることはできなくなる。  とはいえ、心配は無用だ。誰もそのことに気づかないから。おれだけがそれを知っている。おれは別の場所からそれを見ている。ここでは、永遠の未来都市は循環を脱して都市へと移行した。いずれにせよ、お前が立つ現実とは別世界の話だがな。
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 実際、人には出会わなかった。一四階から二階へ、階段を使ってすべてのフロアを歩いたが、誰とも顔を合わせることはなかった。その間、ずっとあの声が頭の中に響いていた。うるさいな、せっかくひとりで静かに散歩しているのに、と文句を言おうかとも考えたが、やめた。あの声の正体はわからない。どのようにして聞こえているのかもはっきりしない。ただ、ふと何かを諦めようとしたとき、周波数が突然合うような感じで、周囲の雑音が消え、かわりにあの声が聞こえてくる。こちらが応答すれば会話ができるが、黙っていると勝手に喋って、勝手に切り上げてしまう。あまり考えたくなかったことを矢継ぎ早に投げかけてくるので、面倒なときもあるが、重要なヒントをくれもするのだ。  あの声が聞こえていることを除くと、いつもの散歩道だった。まず一三階のコモンテラスの脇にある階段で一四階に上り、一一号棟の共用廊下を東から西へ一直線に歩き、右折して一〇メートルほどの渡り廊下を辿り、一二号棟に到達する。南から北へ一二号棟を踏破すると、エレベーターホールの脇にある階段で一三階に下り、あらためて一三階の共用廊下を歩く。以下同様に、二階まで辿っていく。その間、各階の壁にあしらわれたボーダー柄は青、緑、黄緑、黄、橙、赤、紫、青、緑、黄緑、黄、橙、赤と遷移する。二階に到達したら、人工地盤上のウッドデッキをめぐりながら島のように浮かぶ一三号棟へと移動する。その際、人工地盤に空いた長方形の穴から、地上レベルの駐車場や学童クラブ、子ども写真館の様子が目に入る。一三号棟は一〇階建てで共用廊下も短いので踏破するのにそれほど時間はかからない。二階には集会所があり、住宅は三階から始まる。橙、黄、黄緑、緑、青、紫、赤、橙。  この旅では風景がさまざまに変化する。フロアごとにあしらわれた色については既に述べた。ほかにも、二〇〇もの透明な玄関ドアが住人の個性を露わにする。たとえば、入ってすぐのところに大きなテーブルが置かれた部屋。子どもがつくったと思しき切り絵と人気ユーチューバーのステッカーが浮かぶ部屋。玄関に置かれた飾り棚に仏像や陶器が並べられた部屋。家の一部が透けて見える。とはいえ、透明な玄関ドアの四割近くは完全に閉じられている。ただし、そのやり方にも個性は現れる。たとえば、白い紙で雑に塞がれた玄関ドア。一面が英字新聞で覆われた玄関ドア。鏡面シートが一分の隙もなく貼りつけられた玄関ドア。そうした玄関ドアが共用廊下の両側に現れては消えていく。ときどき、外に向かって開かれた空洞に出会う。この一街区には東西南北に合わせて三六の空洞がある。そのうち、隣接する住戸が占有する空洞はプライベートテラスと呼ばれる。わたしのアトリエに面したテラスがそれだ。部屋からテラスに向かって戸を開くことができるが、ほとんどの戸は閉じられたうえ、テラスは物置になっている。たとえば、山のような箱。不要になった椅子やテーブル。何かを覆う青いビニールシート。その先に広がるこの団地の風景はどこか殺伐としている。一方、共用廊下の両側に広がる空洞、つまりコモンテラスには物が置かれることはないが、テラスに面したほとんどの戸はやはり、閉じられている。ただし、閉じられたボーダー柄の戸とガラスとの間に、その部屋の個性を示すものが置かれることがある。たとえば、黄緑色のボーダー柄を背景としたいくつかの油絵。黄色のボーダー柄の海を漂う古代の船の模型。橙色のボーダー柄と調和する黄色いサーフボードと高波を警告する看板のレプリカ。何かが始まりそうな予感はある。今にも幕が上がりそうな。だが、コモンテラスはいつも無言だった。ある柱の側面にこう書かれている。「コモンテラスで騒ぐこと禁止」と。なるほど、無言でいなければならないわけか。都市として運営されていない、とあの声は言った。  長いあいだ、わたしはこの一街区をさまよっていた。街区の外には出なかった。そろそろアトリエに戻らないとな、と思いながら歩き続けた。その距離と時間は日課の域をとうに超えていて、あの循環を逸脱しつつあった。アトリエに戻ったら、わたしはこのことについて書くだろう。今や、すべての風景は書き留められる。見過ごされてきたものの言語化が行われる。そうしたものが、気の遠くなるほど長いあいだ、連綿と積み重ねられなければ、文化は発生しない。ほら、見えるだろう?  一一号棟と一二号棟とを繋ぐ渡り廊下の上から、東京都心の風景が確認できる。東雲運河の向こうに豊洲市場とレインボーブリッジがあり、遥か遠くに真っ赤に染まった富士山があって、そのあいだの土地に超高層ビルがびっしりと生えている。都市は、瀕死だった。炎は上がっていないが、息も絶え絶えだった。密集すればするほど人々は分断されるのだ。
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 まあいい。そろそろ帰ろう。陽光は地平線の彼方へと姿を消し、かわりに闇が、濃紺から黒へと変化を遂げながらこの街に降りた。もうじき妻が都心の職場から戻るだろう。今日は有楽町のもつ鍋屋で持ち帰りのセットを買ってきてくれるはずだ。有楽町線の有楽町駅から辰巳駅まで地下鉄で移動し、辰巳桜橋を渡ってここまでたどり着く。それまでに締めに投入する飯を炊いておきたい。  わたしは一二号棟一二階のコモンテラスにいる。ここから右斜め先に一一号棟の北側の面が見える。コンクリートで縁取られた四角形が規則正しく並び、ところどころに色とりどりの空洞が光を放っている。緑と青に光る空洞がわたしのアトリエの左隣にあり、黄と黄緑に光る空洞がわたしの自宅のリビング・ダイニングおよびベッドルームの真下にある。家々の窓がひとつ、ひとつと、琥珀色に輝き始めた。そのときだ。わたしのアトリエの明かりが点灯した。妻ではなかった。まだ妻が戻る時間ではないし、そもそも妻は自宅用の玄関ドアから戻る。闇の中に、机とそこに座る人の姿が浮かんでいる。鉄格子とガラス越しだからはっきりしないが、たぶん……男だ。男は机に向かって何かを書いているらしい。テラスから身を乗り出してそれを見る。それは、わたしだった。いつものアトリエで文章を書くわたしだ。だが、何かが違っている。男の手元にはMacがなかった。机の上にあるのは原稿用紙だった。男はそこに万年筆で文字を書き入れ、原稿の束が次々と積み上げられていく。それでわたしは悟った。
 あんたは、もうひとつの世界にいるんだな。  どうかな、  で、さまざまに見逃されてきたものを書き連ねてきたんだろう?  そうだな。
 もうひとりのわたしは立ち上がって、掃き出し窓の近くに寄り、コモンテラスの縁にいるこのわたしに向かって右手を振ってみせた。こっちへ来いよ、と言っているのか、もう行けよ、と言っているのか、どちらとも取れるような、妙に間の抜けた仕草で。
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xf-2 · 5 years
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第198回国会に当たり、所信を申し述べます。今回が私の二度目の外交演説となりますが、昨年の外交演説の中で申し上げた六本の柱を引き続き、外交政策の中心に据えてまいります。 
第一に、日本の平和と安全を確保していく上で、日米関係を一層強化し、日米同盟の抑止力と対処力を一層向上させます。同時に、普天間飛行場の一日も早い辺野古移設を含め、地元の負担軽減に全力で取り組むとともに、沖縄の一層の成長につながる国際化支援を進めます。さらに、米国の協力を得て英語教育を推進します。 加えて、自由、民主主義、基本的人権、法の支配、国際法の尊重など共通の価値観を持つ国々との連携を強めていきます。インド、豪州、EUや欧州主要国等の戦略的利益を共有する各国との枠組みや、ASEANを含めたアジア太平洋の地域協力等、同盟国・友好国のネットワーク化を推進します。
 第二に、我が国周辺の安全保障環境を踏まえつつ、近隣諸国等との関係の強化を進めます。ロシアとは、「1956年共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させる」との首脳間の合意を踏まえ、領土問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針の下、交渉責任者として粘り強く交渉に取り組みます。 大局的観点からの中国との安定的な関係構築は極めて重要です。首脳間を含めたハイレベルの往来を通じ、経済関係のみならず、国民レベルの交流を深め、信頼関係の強化を図ります。他方、東シナ海における一方的な現状変更の試みは、断じて認められません。引き続き、冷静に、かつ、毅然と対応してまいります。 国際社会は核武装した北朝鮮を決して受け入れません。核・ミサイル問題を解決し、正しい道を歩めば明るい未来を描くことができるということを、北朝鮮の現体制に示し、北朝鮮による全ての大量破壊兵器及び弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な廃棄まで国際社会の団結を維持するとともに、拉致問題の早期解決に向けた努力を続けます。 韓国に対しては、日韓請求権・経済協力協定、慰安婦問題に関する日韓合意など、国際的な約束事をしっかりと守ることを強く求めていきます。また、日本固有の領土である竹島については、日本の主張をしっかりと伝え、粘り強く対応します。 
第三に、WTOを中心とする、ルールに基づく多角的貿易体制をしっかりと守り、改革する努力の旗振り役を務めます。また、官民連携の推進による日本企業の海外展開支援、再生可能エネルギーの利活用を含めた資源外交、インバウンド観光の促進、日本産商品への風評被害対策、海外で日本企業が直面する知的財産侵害対策、鯨類を含む生物資源の持続可能な利活用等の取組等、積極的な経済外交を進めていきます。本年、日本で開催されるG20の議長国として、世界経済の成長を牽引するためにリーダーシップを発揮していきます。
 第四に、地球規模課題の解決への一層積極的な貢献をしていきます。 国連の安保理は、もはや21世紀の現実を反映していません。安保理を改革していくことは日本だけでなく、国際社会の喫緊の課題です。まず、改革のための正式な交渉を始めることを目標にします。 唯一の戦争被爆国である日本にとって、核軍縮・不拡散は重要な問題です。核兵器のない世界の実現に向け、核兵器不拡散条約の維持・強化や「核軍縮の実質的な進展のための賢人会議」の開催等を通じ、核兵器国と非核兵器国といった立場の異なる国々の橋渡しに努め、核軍縮・不拡散の現実的かつ実践的な取組を主導します。 地球規模課題への対応が急務となる中、SDGsの達成に向けて、日本が主導してきた「人間の安全保障」の考え方に基づき、「誰一人取り残さない」社会を実現するための取組を進めていきます。 気候変動問題は最も重要な課題の一つです。気候変動は、北極にまで影響を及ぼしており、環境変化のメカニズムの解明、その影響を理解することが重要です。また、我が国の知見や技術を活かし、パリ協定の着実な実施を始め、気候変動の影響にしっかり立ち向かいます。 このほか、海洋プラスチックごみ対策やユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進にも取り組みます。G20大阪サミットを見据え、これら諸課題に対しリーダーシップを発揮します。 イラク、シリアにおけるイスラム国の支配地域が大幅に縮小したものの、外国人テロ戦闘員が出身国や第三国へ帰還・移転したことにより、テロ及び暴力的過激主義の脅威もアジアも含めて世界中に拡散しています。関係各国とテロ対策に関する協力を強化し、穏健化の促進等に取り組みます。また、在外邦人の安全確保に万全を期してまいります。
  第五に、引き続き対中東政策を強化していきます。中東の平和と安定は、日本を含む世界の平和や経済の繁栄に直接関わってきます。それゆえに、中東地域における政治的な関与の強化が必要です。日本は、宗教・宗派や民族的な観点から中立であり、中東地域になんら負の歴史的足跡を残したことはありません。また、中東に影響力のある米国と強固な同盟関係にあります。このような強みを持つ日本だからこそ果たせる役割があります。ようやく日本も中東におけるプレイヤーの一つと認識されるようになりました。引き続き、日本の中東への関わり方を示す「河野四箇条」、すなわち、「知的・人的貢献」、「人への投資」、「息の長い取組」、「政治的取組の強化」の「四箇条」の下、中東の平和と安定に向け一層の役割を果たしていきます。
 第六に、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、努力を続けます。法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序とシーレーンの安全は、国際社会の安定と繁栄の礎です。そのために、航行の自由や法の支配の普及・定着、国際スタンダードにのっとった質の高いインフラ整備による連結性の向上、海洋安全保障分野の能力構築支援の三つをASEAN諸国、米国、豪州、インド、NZ等の関係国と緊密に連携しながら、具体的に進めます。 
今回は、これらに加えて、いくつかのことを申し上げたいと思います。 
日本は、軍事力を背景とした外交を行うことはありません。一方、我が国外交の大きな柱であるODAはピークからほぼ半減しています。知恵と工夫による我が国の「裸の外交力」が試される時代になりました。裸の外交力を高めるためにも、外交活動を支える足腰を強固にする必要があります。そのためには、外務省に良い人材を集め、更にその人材に磨きをかけなければなりません。外務省では、全職員の約3割、来年度入省する職員の約半数が女性であります。また、全職員の約6割、約3,500名が在外公館で勤務しています。共働きの職員、介護を抱える職員など様々な事情を抱える職員がそれぞれの持ち場で活躍しています。しかしながら、現在、外務省の業務は飛躍的に増大しているため、一部の外務省職員の残業時間は、これまで累次の機会に述べているとおり大変深刻な状況にあります。このような状況が続けば、外務省に優秀な人材が集められないという状況にも陥ります。それぞれの職員が、普通に家族と時間を過ごし、育児休業などの休業や休暇制度を活用し、子育てや介護など家庭と仕事を持続的に両立できる体制の整備により一層取り組む必要があります。立法府にも是非、このような状況を御理解いただきたいと思います。さらに、多様な人材が活躍できる組織とする上で、障害者の雇用にも全力で取り組み、障害者が活躍できる環境を整えていく所存です。
 もちろん外交の責任者としての外務大臣の責任も重大です。国連安保理の非常任理事国選挙を始め、国際司法裁判所の裁判官の選挙、北朝鮮に関する安保理決議の完全履行、あるいは国連改革など、国際場裏で日本への支持を獲得するためにはトップセールスが欠かせません。また、多くの国際会議は益々各国の利害が激しくぶつかり合う場になっており、日本の立場を反映させるためには、事前の連携、事後の調整が欠かせません。外務大臣就任以来、日本の外務大臣として初となる国々9か国を含め63の国と地域、のべにして94の国・地域を訪問しましたが、No country shall be left behind、「どの国も取り残さない」という精神で身を粉にして職務に努めてまいります。そのためには外務大臣の海外出張を効率化すると同時にロジを簡素化する必要があります。
 今、日本外交の大きな武器になりつつあるのが、2013年にユネスコでも無形文化遺産に登録された和食です。現実に、多くの国で、大統領や首相が、積極的に大使公邸に足を運んでくださっています。そのためには腕の良い公邸料理人を確保し続けることが大切です。 日本外交の最大の課題は、自由、民主主義、基本的人権、法の支配、国際法の尊重といった基本的価値に基づいた国際秩序を様々な方面からの挑戦から守り続けることにあります。 ある国で経済が発展すれば、その国民は次に民主主義を求めるようになると私は信じています。しかし、最近の国際的な経済の発展に比べ、民主化の遅れが見受けられます。基本的価値に基づく国際秩序に対抗する秩序を創り上げようとする動きとは断固、戦わなくてはなりません。 
他方、民主化を目指すならば、その道筋は一つではありません。その国なりの民主化の道筋、速度があるはずです。押し付けではなく、その国に寄り添った民主化支援を目指します。G7などの場で、基本的価値に基づいた国際秩序の中でそれぞれの速度で民主化を目指すアジアの声をしっかりと代弁していきます。 サイバー空間においても、近年、一部の国が管理・統制する潮流が出てきています。過度な管理・統制に対し、我が国は民間や学術界、市民社会から幅広い参加を促す国際的なマルチステークホルダーの取組に基づき、「自由、公正かつ安全なサイバー空間」を堅持していきます。
また、人工知能、IoT、第五世代移動通信システム等の技術の発展は新しいサービスを生み出し、社会的価値を創出する一方、サイバー攻撃に対する社会の脆弱性を増しています。こうした脅威に一国のみで対応することは容易ではなく、国際社会全体との連携が不可欠です。こうした認識の下、日本は「法の支配の推進」、「信頼醸成措置の推進」、「能力構築支援」を三本柱としてサイバー外交を推し進め、「自由、公正かつ安全なサイバー空間」を実現していきます。 自律型致死兵器システム、LAWSと呼ばれる、人工知能を搭載し、人間の関与なしに人を殺傷する兵器に関しても、国際的な議論が始まっています。かつて火薬や核兵器が戦争の在り方を変えたように、人工知能も戦争の在り方を根本から変える可能性があります。映画「ターミネーター」のように人工知能が人間の関与なしに自ら判断し人間を殺りくするリスクもあれば、人工知能の活用により低コストで兵隊を置き換えられる可能性もあります。すでに多くの国では開発競争が始まっており、我が国は有意な人間の関与が必須であるとの立場から、日本の安全保障の観点も考慮しつつ、国際的なルール作りに積極的に関わっていきます。
 ODAに関しては、背伸びをせず、身の丈にあった、人間の安全保障を中心とする日本らしいODAを目指します。 ODAに対する理解を国民の間で深めていくためにも、ODAの効果を明確に示していく必要があります。保健や教育、女性または農業などの支援に関しては、国際的にも効果を数字で示せるようになりつつあります。税金を使う以上、ODAも結果にコミットすることが必要です。
 今年は、横浜で第7回アフリカ開発会議(TICAD7)が開催されます。アフリカでは、選挙、議会、法律、司法、治安、徴税、入国管理など国家の制度に対する国民の信頼が低く、国家の公式な統治機構よりも民族や文化や宗教的な結びつきが重視されてしまう国がまだあります。それが温床となって、内戦や宗教的対立、テロが頻発し、開発が遅れます。アフリカにおける平和構築、特に国家の制度構築の取組に対し、積極的に手を差し伸べていきます。その一方、成長著しいアフリカは21世紀最後のフロンティアとも言われ、大きな潜在力を持っています。TICAD7へ向けて、官民の連携を通じた日・アフリカ間の貿易投資、アフリカの経済成長のための人材育成、質の高いインフラ整備の一層の促進を図る考えです。 今や世界的に難民、避難民の数は約7,000万人に達し、第2次世界大戦後最多となっています。気候変動の影響で台風や集中豪雨などの自然災害は激甚化することが予想されています。2030年までにSDGsを達成するためには、毎年2兆5000億ドルの資金ギャップを克服しなければならないと言われていますが、我が国を始め、先進国の多くは厳しい財政制約に直面しています。そのため、革新的な資金調達メカニズムが必要です。グローバリゼーションから利益を得た者が、その利益の一部を人道支援のために国際���関に提供することが求められます。国際的な取組みの進展状況等を踏まえつつ、グローバリゼーションがもたらす利益の一部を活用し、それを地球規模課題の対策に充てる国際的な資金調達の方法は議論を深める価値のある一つのアイデアです。日本は、こうした議論の先頭に立ってまいります。 
OECDのDACルールの下では、一人当たりGNIが一定水準を超えた国はODAカウントの対象から外れます。しかし、気候変動の中、島嶼国のように災害のリスクが高まっていく国もある中で、柔軟な対応が求められています。ODAにカウントされるか否かにかかわらず、支援を必要としている人をしっかり支援してまいります。 発展途上国の経済の多くは、ODAだけでなく、日本からの投資を求めています。ODA予算が限られている中で、民間の投資を動員することも今後の日本外交にとって大変重要です。大企業だけでなく中小企業も積極的に海外に出て行けるように、情報提供やODAを活用した海外展開支援をしっかりと行っていきます。 
また、昨年末に発効したTPP11の拡大や発効が確定した日EU・EPA、さらにはRCEP交渉の早期妥結のように大規模な自由貿易の取組を進めるだけでなく、経済規模が小さな国・地域とのFTAや投資協定も戦略的に進めていきます。北京やソウルと比べると、東京から直行便が飛んでいる国、都市の数は限られています。民間活力を外交に生かすためにも、国交省と連携し、直行便を増やし、投資や観光の交流を増やしていく必要があります。
 いまやマンガやアニメを入り口として日本語や日本の文化にも興味を持つ若者が世界中に増えています。ドラえもん、ハローキティやピカチュウは今や国際的キャラクターですし、寿司やラーメンのレストランは世界中で見ることができます。マンガやアニメだけでなく、日本のテレビ番組や映画、音楽、和食や飲み物、ゲームなどさまざまな形で日本の文化を世界に向けて発信し続けていく必要があります。残念ながら文化予算は、フランスはもとより韓国と比較しても少ないのが現状であり、日本も一層力を入れる必要があります。一方、国の予算だけでは限界があります。官民協力に取り組みつつ、文化で稼げるようにすることも大切です。
 日本の自然・文化は多くの外国人観光客を魅きつけています。2019年ラグビー・ワールドカップ、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会、更に2025年の大阪・関西万博に向け、被災地の復興ぶりも積極的に国際社会に発信し、インバウンド観光促進にも貢献していきます。 
日本が様々な外交政策を推進し、基本的価値に基づく国際秩序を実現していくためにも、日本の政策・取組の戦略的な対外発信により努めます。特に、歴史認識や領土保全における日本の立場を発信していくことは、極めて重要です。 日本を理解し、支持・応援してくれる親日派・知日派を発掘し、育てていくことも極めて重要です。また、日本語教育は、外国人材の円滑な受け入れや、外国人と日本人の共生社会の実現のためにも重要であり、その観点からも海外における日本語教育に取り組んでいきます。しかし、残念ながら英語はもとより、フランス語、スペイン語、中国語等にも学習者数において大きく後れを取っています。地道な取組が必要です。日系社会との連携も重要です。日系社会との絆を一層深められるような取組を一層強化していく必要があります。
 外交は、外務省だけ、政府だけで行うものではありません。日本全体の力を使った外交が必要です。無償資金協力や技術協力にもっとNGOの力を活用しなければなりません。いや、活用できるNGOを育てていかなければなりません。そのために、ODAに関する有識者懇談会から提出された提言も踏まえて、日本NGO関連予算をまずは、3割程度積み増し、実施状況を見つつ、段階的に引き上げてまいります。その中で、NGOの一般管理費の引き上げについては、最大15%を見据えて検討していきます。
 JICAのガバナンスを確立すると同時に、ODAの実施に関してもJICAと競争できる実施主体を養成していきます。健全な競争関係を確保しつつ、ODAの全体像の中でNGOや開発コンサルティング等の実施主体の特性を踏まえ、日本全体としての「顔の見える」ODAを実施してまいります。コンサルティングの分野も抜本的に改革し、国際的な競争力を強化していきます。
 国連を始めとする国際機関で活躍する日本人を増やすことも急務です。国際機関に対して、日本人の職員、幹部の数の増加を日本の拠出金とリンクさせることを明言していますが、そもそも応募者の絶対数が足りません。若手でも英語力などの問題で国連の採用試験に受かる者がほとんどおらず、JPOからの採用しかほぼ道がないため、国連機関に採用される若手の人数はJPO予算に制約されます。短期的な対策として、海外に留学している日本人学生に対して国際機関に関するガイダンスを強化していきます。国家公務員をJPOとして国際機関に派遣することを復活させます。 
また、国際機関の職員の幹部登用を後押しするため、上を狙う国際機関の日本人のために外務省のポストを活用していきます。 日本で高等教育を受けても英語ができるようにならないことが、国際機関だけでなく、日本人が様々な場面で活躍する際の障壁となっています。美しい日本語か英語かの選択ではありません。どちらも必要です。英語教育の抜本的な改革は急務です。文科省と連携していきます。
 国際機関の中でも重要な組織のトップを取るために、各国は、首相や閣僚経験者を始め、政治家の候補者を擁立してきています。これに対抗し、国際機関のトップを取るためには、日本も政治家を候補者として擁立していく必要があります。そのためにも与野党の枠を超え、適材を適所に擁立することが必要です。我こそはと思う方は是非名乗りを上げていただきたいと思います。外務省は全力で御支援申し上げます。 私は、これからも日本の国益や平和をしっかり守りながら、世界の平和と安定に貢献していく考えです。 議員各位そして国民の皆様の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。
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mluwt2020 · 3 years
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 本文ではコンサルティング産業の発展とその役割や仕事内容を魅力と欠点を通して理解を深めるのが目的である。初めてコンサルティングについて学んだのが英語と社会2の授業で、フォースバレー・コンシェルジュ株式会社代表取締役の柴崎さんが話していたときだ。総合的に多種多様な業種の中から、印象に残っているのが柴崎さんの人材コンサルティングプロジェクトと日本の現状についての関係性であり、とても興味深かった。日本の現状、特に悪化する少子高齢化、を分析した上でそれに必要な海外からの人材確保の説明を聞いていた誰もが納得が出来るように理論的に仕立てて発表していたのは今でも忘れられません。現実を見せられつつも、それを打破するような試行錯誤を新しいプロジェクトという形にする労力は計り知れないが、その成果が社会的に貢献出来ると思わされる程感銘を受けた。こういった知識を駆使して状況を改善しようとする仕事は理想的と言って良い程である。利益のために働くのみならず相手のニーズに答えることは現代のビジネスでは大切な概念である。結果的にコンサルティングは、客観的に物事を見て相手のニーズに合わせて答えを出すことだったが、他の業種とは異なる印象を持った。よって、聴講した内容に影響を受けてコンサルタントをより詳しく知りたいと思ってテーマに選んだ。  そもそもコンサルタントといえば、一般的に経営コンサルティングが連想されるが、その起源はいつか、そして何かをこれから説明する。西井(2013)曰く、今までの経営コンサルティング産業の発展を3世代に区分することが出来る。その起源は、1880年代後半以降の「科学的管理法」の発展・普及と深い関係である。また、第1世代は、工場現場における作業能率、生産能率などの効率性の向上の取り組み、コンサルティング・サービスが「業」として確立と普及し、産業の基盤が構築された世代である。次に、第2世代ではトップマネジメントに対する組織・戦略に関するコンサルティングを提供し始める。また、経営コンサルティング・サービスが一般的に利用されるようになり、それに合わせたニーズにプロフェッショナル・サービスとして注目が集まるようになった。当時に経営コンサルタントが提供されていたサービスは幅広く、財務や会計から派生した分野も担当するようになった。ICTが発展してきた第3世代では情報・通信分野に関するコンサルティングを提供するコンサルティング・ファームが台頭してきたのだ。この1世紀で工場現場の能率を上げる仕事から様々なサービスを取り扱うように変貌を遂げたコンサルティング産業はまだこれからも発展していく。時間を経て、より幅広い知識でより多くのクライアントを満足させることが出来たコンサルティング産業はまた新たに変化をしようとしていることを西井(2013)は、第4世代と呼んでいる。  第4世代の説明に入る前に、根本的なコンサルタントの仕事と役割とは一体どのようなのだろうか。第3世代から徐々に情報は流布し始め、各情報を掴むにも一筋縄では済まされない上、クライアントも様々な情報を要求してくる。コンサルティング産業は、徐々にだが、知識産業を代表する産業として社会で認知されつつもあり、コンサルタントは先端をいく職業とも言われている(鴨志田, 2003)。鴨志田(2003)曰く、先端をいく職業には二つの役割が果たしている。  第一に、それは、幅広くかつ奥深い知識と知恵を使って、必要な知的付加価値を生み出している。例えば、それぞれのクライアントに適切な対応を出来るようなコンサルティング・サービスやプロフェッショナル・サービスのことである。第二に、コンサルティングは変革の時代にこそ力を発揮しなければならないのである。すなわち、経営コンサルティングは時代に沿った経営をするクライアントのために変革する援助の手を差し伸べることが重要である。これらから、経営コンサルティングの仕事は二つの要素から成立していると言える。一つ目は、独立した問題解決の専門家が行うこと。二つ目は、クライアントに対する助言サービスを行うこと。また、二つ目の役割の仕事内容はどのコンサルティングでも通用する基本的な要素を二つに分解出来る。時代の変化と共に、経営方法の照準が合わないまま繰り返し同じ行動をとってそのまま悪化が進むケースは少なくはない。その渦からなかなか抜け出せないままでいることを「有害な種類の周期反復の活動」とロバード=R・ブレークとジェーン=S・ムートン(1978)は呼んでいる。要するに、コンサルティングとはその不順から脱却出来るように手を貸すことである。  そのためにも、現状を冷静に分析と調査し、原因を明らかにし、クライアントには「悪い」ことは「悪い」と言えなければならない。そうでなければ、クライアントの企業で改変と思っていることが全く意味がなかったり、エゴとなっていたりしている場合は再び悪いサイクルが陥ってしまう。しかし、コンサルティングはあくまで手を差し伸べるだけで、クライアントとは一緒には変革を起こせない。だから、林(1990)は、経営コンサルタントの立場を「変革の媒体」と一言で表している。また、ワインバーグ(1990)はコンサルティングとは「人々に、彼らの要請に基づいて影響を及ぼす術」と述べておりこれ以上に当てはまる言葉はないだろう。しかし、時代の変化し、コン��ルティング産業の仕事内容が変わりつつもある。  コンサルティングの仕事を変革させるような風潮とは何だろうか。これが以前に言っていた第4世代のことだ。西井(2013)によると、第4世代は従来のプロフェッショナル・サービスとしての経営コンサルティング・サービスの枠を超えた授業を展開し、ビジネスモデルを建築している経営コンサルティング・ファームが台頭してきたのである。つまり、従来の経営コンサルティングの概念が大きく変容している。本来は、独立性を保つことが最重要であったが、最近ではクライアントがコンサルタントからの提案を実行する期間中もコンサルタントを活用する傾向が強まっており、助言サービスから支援サービスになりつつある。また、経営コンサルティングには新しく「ビジネス・コンサルティング」という概念も用いられるようになってきた。更に、プロフェッショナル・サービスのコモディティ化が進み、クライアント用にカスタマイズされたサービスを提供するのではなく、既製品に相当するサービスを提供するのである。また、アウトソーシング・サービスの発展もあげられており、これまでクライアントが自社の組織内で業務を処理してきたのを外部のコンサルタントやサービス受託者に委託することが増えた。これによって、コンサルティングの領域が拡張されコンサルティング・ビジネスの形態が大きく変化してきている。  西井(2013)が第4世代と呼んでいる時代はまさに知識が基盤となったビジネスが展開されつつ、私達がいる今こそ知識が重宝されるのではないだろうか。幅広い知識でクライアントをあらゆる方法で手助けすることで互いに成功する可能性を上げる手法は、コンサルティング産業で進歩していると言える。従って、現代に近づくにつれ、知識の重要さが徐々に目立つようになる。鴨志田(2003)曰く、「そこまで情報があふれてしまうと、単なる情報ではなく、本当の意味での知識や知恵を有する企業や人や意味を持つ社会になるのは必然であり、そういう社会が知識社会と呼ばれるわけだ。」  多量の情報が常時、飛び交う状態は確かに知識社会なのだろう。今まで、労働とは、体力を消耗させることで成り立つ肉体労働者が多かったが、情報通信の発達が進んでそれまで以上の情報が放出された。様々な情報を手に入れられるのが可能になったが、その中から大量の情報に触れられると同時に情報の渦中に信頼出来る情報を探し出す知恵が必要だ。こういった意味では、知識社会で働く知識労働者は情報を選別してピックアップする能力を持った人材は必要不可欠である。なお、その中から活躍出来る五つの人材のキーワードを鴨志田(2003)は「リーダー」、「プロデューサー」、「アントレプレナー」、「インキュベータ」、「クリエーター」と挙げている。こういった人材像を思い浮かべるような言葉を並べたが、鴨志田(2003)はコンサルティングで更に具体的な資質を指摘している。それらは、経営的センス、グローバル経験、起業家精神、顧客志向、対人コミュニケーション能力、精神的・肉体的タフネス、の六つである。全てを満たすことは困難だが、一つでも多く条件に当てはまることでコンサルタントになる一歩近づくことが出来るだろう。  これまで一般的にも具体的にもコンサルティングについて説明してきたが、これからは全てを考慮してコンサルティングの魅力と欠点と述べたいと思う。コンサルティング産業の魅力のひとつとしては、多種多様の企業と触れ合える機会が設けられる、ビジネスを新たな切り口で見られることではないだろうか。実際に経験はしたことはないが、参考文献を読むとコンサルティングで幅広い業種を間近で経験することが多いようだ。また、ビジネスで一番必要なことは知識とそれを活かした戦略が大事になってくるので、コンサルティング産業はその先端で働くことが出来るメリットもある。  反対にコンサルティングの欠点は、情報収集が何よりも大切で一つでも欠いていてもビジネスに失敗する可能性があるのでリスキーな面もある。また、最大のデメリットと言えば、コンサルティング産業は基本的に手助けをメインにしていることで直接的にクライアントと共に成功へ導きは出来ないのだ。最良の手助けをした後に、実際クライアントも成功するも失敗するも何年も後にわかることでありいまいち結果が不透明である。それによって、コンサルティングの風評もかなり影響されるのだ。  コンサルティング産業の多種多様な面を見てきたが、コンサルタントになるには厳しい修行を詰んで、様々な経験を経て一人前になることはとても大変だという印象を受けました。しかし、追究心を諦めずに地道に研究を重ねて誰かの助けになるのは苦労の中に一つの幸いと思うとやりがいはあるとも思った。これはコンサルティング産業のみならず、他の業種にも通用することでもあるし、何にも向き合ってこれからも進歩出来るよう努力したいと改めて考えさせられた業種だった。
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log2 · 5 years
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Arch-LOGのベンチマーキングを各社共同で行いました。
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株式会社ログログ(本社:東京都港区) と 丸紅株式会社(本社:東京都中央区)は、共同でログログが提供するBIMオブジェクト総合検索プラットフォーム「Arch-LOG」の運営に関する事業化を目指し、株式会社日建設計(以下、「日建設計」)、鹿島建設株式会社(以下、「鹿島建設」)及び株式会社ローランド・ベルガー (*1) (以下、「ローランド・ベルガー  」)と実証実験を行いました。
Arch-LOGプラットフォームは、クラウド上でのレンダリング(可視化)機能を業界で唯一提供しています(ローランド・ベルガーとの共同実施プロジェクト結果より)。単なる設計図からフォトリアルな質感を持つ画像にリアルタイムに変換し、施工前に完成予想(デジタルモックアップ)を確認できます。また、規格を統一した建材のBIMオブジェクトを制作し提供する事により、ユーザーに対し高いクオリティを実現しています。これにより、施主と設計業者・建設業者間のコミュニケーションが円滑になり、設計・施工業務の煩雑化や設計の不具合による手戻り等の課題解決が期待できます。
ログログと丸紅は、実証実験の結果、日建設計とは同社内システムに連携した管理機能の開発およびAI導入によるレンダリング(可視化)機能の高速化を実現し、鹿島建設とはArch-LOGプラットフォームを利用することで、ホテルやオフィス複合プロジェクトの設計提案などの業務における大幅な効率化を確認しました。
また、ローランド・ベルガーとの共同実施プロジェクト結果より、BIM関連技術は今後の建設業界にもっとも大きなインパクトを与える技術であり、その中でもArch-LOGプラットフォームは、そのユーザーが拡大することにより、建設業界全体の効率化と品質向上に大きく寄与し、施主、建材メーカー、設計業者、建設業者、ファシリテイマネジメント業者、などすべての関係者へ新たな付加価値を提供し得ることが確認されました。今後、Arch-LOGプラットフォームを利用することで、BIM運用の合理化・効率を運用の合理化・効率化が図れ、本実証実験によるベンチマークで、Arch-LOGプラットフォームの普及が促進され、更なる設計作業の生産性とクオリティが向上し、働き方改革の一助となることを目指します。
*1)ドイツ・ミュンヘンを本拠とする、ヨーロッパで最大の経営戦略コンサルティング会社。
【実証実験を行ったArch-LOGの各機能】
1、建材メーカーのBIMオブジェクト検索
Arch-LOGではフリーワードやカテゴリー等、高度な検索絞り込み機能が実装されており、登録メーカーが増える事で幅広く利用できることを確認しました。
2、プロジェクト登録・管理機能
Arch-LOGでは複数のプロジェクトが登録・管理できる事で、社外の協力業者・担当者間で管理運営が可能となり、建材メーカーの商品別採用履歴の可視化も実現できる事で業務効率化の可能性を確認しました。
3、Arch-LOGに登録されている建材のサンプル自動請求機能
Arch-LOGでは複数の登録メーカーのサンプル請求を一括で行う事が出来、履歴管理などの多機能サービス利用による業務効率化の可能性を確認しました。
4、マテリアルボード制作機能
Arch-LOGでは簡単な操作でデジタルマテリアルボードの制作が可能となり、ステークホルダー間でのスマートな提案、運用による業務効率化の可能性を確認しました。
5、各BIMソフトウェアに対する建材オブジェクトのダウンロード機能
Arch-LOGではArchiCAD, Revit, SketchUPに対する最適化されたBIMオブジェクトの提供により、BIM統合設計での容易な運用が可能となり業務効率化の可能性を確認しました。
6、Arch-LOG導入に伴う社内管理システム機能の開発導入
Arch-LOGでは汎用クラウドサービスとして対企業向け機能を実装させたことにより、日建設計として導入がより可能となる事を確認しました。
7、レンダリング機能の高速化の為、AIを導入
Arch-LOGではAIを導入する事により従来提供していたレンダリング速度に対し数十倍の高速化に成功した。これを基に用途別レンダリング設定の定量化に向けたベンチマークを実施しました。この結果ユーザビリティの圧倒的な向上を確認しました。
【ベンチマーク方法の詳細】
ベンチマークの詳細としては、Arch-LOGを利用する際に特定のシーンに於いて完成したCG画像を取得できる時間の目安とする為、日建設計本社のBIMモデルを、Arch-LOG Cloud Rendering を使用してレンダリングすることによって行われました。
どの程度の収束率と時間ならば利用可能なシーンとして運用できるかについて、まず、日建設計本社ビルのBIMモデルの中で公共性が高い場所を選択し、CGでレンダリング時間の差が現れるであろうパターンとして以下のそれぞれの条件を設定しました。
外観
エントランス昼景(外光が入るインテリアシーン)
エントランス夜景(ほぼ外光がないインテリアシーン)
2Fロビー(ほぼ外光が直接はいらないインテリアシーン)
また、レンダリング時間は解像度に比例して長くなる為、解像度のパターンは、以下の通り設定しました。
大(3840×2160ピクセル: 4K)
中(1920×1080ピクセル: Full HD)
小(960×540:Arch-LOG Cloud Renderingで無料レンダリング可能な最大解像度)
この度の取り組みでArch-LOGでは最新技術であるAI denoiserを実装しており、これがレンダリング時間の高速化に重大な影響を与えると予想されることからAI denoiserが有効の時と無効の時についても比較検証する事としました。
Arch-LOGに於けるレンダリングサービスでは、無料でレンダリング可能な最大解像度(960×540)の場合と占有予約システムを利用する場合があり、各サービスに於いてレンダリングに使われるGPUリソースの数も異なるので、無料でレンダリング可能な最大解像度(960×540)の時のみ、無料版と、占有予約システム利用時のレンダリング時間比較も検証することとしました。
Arch-LOG Cloud Rendering は徐々に精細に見えるようになるレンダリングシステム(プログレッシブ・レンダリング)であり、一定の時間ごとにレンダリング画像を取得し、その収束度を合わせて見ることにより目安となる収束率と、時間を得ようと試みました。 以上の条件、方針をもって設定した40パターンのレンダリングを行うことにより合計6万枚以上の画像を取得し、検証した結果、80%の収束率で目視、印刷においても十分と思われるクオリティに達することが確認できた為、80%に達する時点をレンダリング時間の基準として設定しました。
以下が結果となります。
【Arch-LOG Cloud RenderingによるAI Denoiser ON/OFF時間比較表】
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【Arch-LOG Cloud RenderingによるAI Denoiser ON/OFF時間倍率比較表】
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【Arch-LOG Cloud RenderingによるAI Denoiser ON/OFFベンチマーク結果】
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【ベンチマーク結果とその考察】
解像度が960×540で比較した場合、フリーと占有予約システムでは占有予約システムがフリーに比べて、2.5倍~16倍レンダリング速度が早くなっている。
従来のレンダリング手法(レイトレーシング:光線追跡法)では解像度が3840×2160(4K)の場合、数時間以上かかるが、Arch-LOG Cloud     RenderingにてAI Denoiser が有効の場合は外観のシーンでは3分以内で終わっている。
エントランス(昼景)で解像度が3840×2160(4K)の場合、外構の樹木のポリゴン数が多いために突出して時間がかかっているが、AI     Denoiserが有効に機能したため47分で終わっている。
インテリアシーンは一般的にはCGレンダリング時間が膨大にかかるが、解像度が3840×2160(4K)の場合、AI Denoiser が有効に機能したため22分程度で終わっている。
AI Denoiserが無効の場合と有効の場合を比べると、AIが有効の場合のレンダリング時間は最大35倍程も早くなるということがわかった。
一般的なCGにおいて今回設定した解像度で考えると、大は小の16倍、中は小の4倍の時間がかかると考えられた。AIが無効の場合はほぼ予想に近い実測値が得られたのに対して、AI Denoiser が有効の場合、総じて解像度を大きくした場合の、解像度から予想したレンダリング時間よりも実際のレンダリング時間が短くなることが確認できた。  
【ベンチマークに利用した各種CG画像(一部)】
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【他、レンダリング画像】
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maruwwa2018 · 5 years
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フリーランスの地域おこし協力隊を大募集!? 市の職員として雇用するのではなく→ということは市役所内に勤務するのではなく、なんと活動場所は今年8月にオープンしたわっぱビルヂング2FのMARUWWA(マルーワ)!! フリーランス(個人事業主)との委託業務契約とすることでより自由な活動 →これは副業OK そして、実は現居住地が東京など大都市圏だけでなく秋田市や盛岡市や弘前市でもOK!!(※一部条件あり 合併前の旧市内であればOK) Repost @ishi_seven with @get_repost ・・・ 新年早々ですが、里帰りで実家に戻って来ている方や、故郷に帰らずお正月を迎えている方。 そろそろ都会の生活にも限界を感じたり、地方で地域課題を解決し起業してみようとお考えの方へ! 今までにない条件の地域おこし協力隊の募集があります。 他の地域ではあったかもしれませんが大館市では初ですかね!? ※写真はMARUWWAの様子です。直接記事には関係ありませんが雰囲気だけでも。 https://maruwwa.com/ フリーランスの地域おこし協力隊を大募集!? 市の職員として雇用するのではなく→ということは市役所内に勤務するのではなく、なんと活動場所は昨年8月にオープンしたわっぱビルヂング2FのMARUWWA(マルーワ)!! フリーランス(個人事業主)との委託業務契約とすることでより自由な活動 →これは副業OKということ!個人事業者として既に業をなしている方、業としたい方(ライティング、デザイン、写真・動画撮影、コンサルティングなど)。それ以外でもやる気があれば大丈夫!! そして、実は現居住地が東京など大都市圏だけでなく秋田市や盛岡市や弘前市でもOK!!(※一部条件あり 合併前の旧市内であればOK) 詳しくはこちらの記事もご覧ください。 ◆前編:移住者たちが大活躍。秋田県大館市は若者たちによって変わっていく https://cocolococo.jp/26169 ◆後編(募集要項):クリエイティブな仕事で大館市の魅力を発信! フリーランスの地域おこし協力隊を大募集 https://cocolococo.jp/works_recruit/26181 活動内容にある「サテライトオフィス企業を呼び込むための活動」は今まで私のお手伝いして来たので分かるのですが、いろんな企業やフリーランスの方をサテライト企業として誘致・コーディネートするお仕事。ここでもいろんな出会いがあって今のMARUWWAにつながっています。 「星と緑と温泉の360°パノラマ」サテライトオフィス体験事業 http://so-odate.online/ こちらもまだまだ募集中!(現地までの旅費・移動費・オフィス費・滞在費の半額補助!) 提案事業活動の「空き家の利活用、イベント、ビジネスシステム構築、まちづくり活動などその他定住に向けた活動」 →かなり幅広いですが、地域課題を解決しビジネスに結びつける。 大館でやってみたいビジネス構想がある方 活動期間満了後、大館市において起業・就業して定住する意欲のある方 →3年間もチャレンジできて、3年後にできれば起業!! 例えば... 自分たちが大館に住む家を空き家の調査からはじめ、お試しシェアハウスとして運営してみる。その後はゲストハウスとして一般宿泊も可能にして収益を出していく! この場合シェアハウスとして使えそうな物件を探すため空き家のリサーチを本気でやる。不動産屋さんや行政が管理する空き家情報よりもきめ細かな情報を収集する。どんな人が住んでいて、こんな人なら応援したいとか。 そのきめ細かい空き家情報は今後起業したい人や、リノベーションして住んでみたい人のためのになる。 この時重要なのは街の人や近所の人との人間関係と信頼を築くこと。 不動産屋さんや行政では得られないような空き家の情報が集められたら、それはすごい価値があるし、可能性が広がる。 そして必要なら宅建の資格や旅館業の営業許可も3年あったら取れそうですよね! 活動場所のMARUWWAはオープンして4ヶ月。MARUWWAの料金は一般(シルバー)の月会員でも5,000円。コワーキングスペースの利用料金としては格安なのです。光熱費やフリードリンクもあるので自宅にネットを契約するより安い。 あとは...近くに1週間~1ヶ月滞在できるシェアハウスがあればいつでも来る!または長期間滞在したいという声は多いのです。 大館にはビジネスホテルは多いのですが、安くても4,000円前後。1週間~1ヶ月滞在となると厳しいのです。 MARUWWAを業務拠点とするので、日々いろんな相談や、お話が舞い込んできます。一緒にできることや、副業も色々あります!すでに手が足りないくらい。 もう一つ可能性を感じるのは 取材をしてライティングできるて、編集もできるのであれば、その人材は大館で不足しています。というかその概念も少ないくらい。なのでそちらの業務での収入も見込めれば、お試しシェアハウスそしてゲストハウス一本でや (Maruwwa) https://www.instagram.com/p/BsI2Gb7lNqE/?utm_source=ig_tumblr_share&igshid=24k09u181yoa
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masaa-ma · 7 years
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サンフランシスコ最大の「ディープラーニングサミット」現場レポート by Serend
from http://techwave.jp/archives/deep-learning-summit-2017feb-sanfran.html
アメリカ・ベイエリアからSerend.Inc 大木さん登場です
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 今までTechWaveで記事を書いてもらってないのが不思議なくらいではあるのですが、アメリカ・カリフォルニア州サニベール(シリコンバレー地域の南の方)を拠点に、Tech企業に対する多様な支援活動を展開しているSerend.Incの大木美代子さんに寄稿して頂きました。彼女はベイエリア(シリコンバレーからサンフランシスコ)の大企業からスタートアップ支援まで多様な経験があり、日米横断プロジェクトやアジア進出支援などを展開しています。現地コミュニティに入り込んでいる数少ない日本人といえるでしょう。
「Deep Learning Summit」 @ San Francisco by Serend
2017年1月26-27日の2日間、サンフランシスコにて第3回「Deep Learning Summit」が開催された。民間企業主催による当題材のコンファレンスとしては、今のところこれが一番包括的で規模も大きいものと言える。ディープラーニングのどの分野が注目されているか、技術の進捗状況、どの地域・大学・企業がAI研究で勢いがあるか、などが2日間のトークセッション群を通じて俯瞰できるようになっている。筆者は初年度から参加、今年のコンファレンスの模様をお伝えする。
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コンファレンス会場の様子
コンファレンス概要: 毎回30名程度のスピーカーが2日間に渡り入れ替わりにセッションを行うシンプルな仕立て。参加者同士が交流しやすいよう、コンファレンス会場では円卓ごとに5~6名ずつ自由に座り、一日数回のブレークタイム、ランチタイムもディスカッションに十分な時間が設けられている。実際にこのコンファレンスでは、参加者同士の会話がとても活発なのが特徴的だ。
スピーカー:28名  アカデミア、大手IT企業(Facebook, Googleなど)、AIスタートアップで各ほぼ3等分されている。アメリカ(東海岸・西海岸)、UK(ロンドン)、フランス(パリ)、カナダ(トロント)からのスピーカーが目立つ。
参加者: リサーチャー(大学、シンクタンク)、大手IT企業技術者、AIスタートアップ、ジャーナリスト
トピック: 自然言語処理、 強化学習、エンタープライズ向けディープラーニング、コンピュータ・ビジョン、画像精製技術(DCGAN) など
興味深かったセッションのサマリー
Facebook Facebookでは、現在モバイルのマシーンラーニングに注力しているという。それは現在10億人がモバイルのみでFacebookを使っているという現状から。  Facebookのディープラーニングの適応分野は以下の通り。
・ イベント予想:Facebookにアップされたイメージ/ビデオのセグメンテーション → それを見た人の属性データなどを加味し、その人の志向を判別する。 ・ 機械翻訳:Facebookで最近力を入れている機能である自動翻訳は現在100言語以上に対応。ニューラルネットワーク/自然言語処理(NLP)活用 ・ コンピュータ・ヴィジョン:畳み込みニューラルネットワーク(CNN)がFacebook, Instagram上の大量の写真で稼働
Deep Genomics トロント大学のFrey教授によって2014年に設立されたDeep Genomicsは、遺伝子型と表現型のギャップを埋めることを目的としたスタートアップ。
・ 脊髄性筋萎縮症の原因解明にAI / MLを活用しゲノム解析。 ・ 大量のデータセットを使う (73 Trillion データポイント、 9,661 データセット)
Preferred Networks 今年このコンファレンスのプレミアスポンサーとなった日本のPreferred Networks 西川氏のキーノートでは、FANUCと世界初の商業IoTプラットフォームが発表された。他にも製造業向けEdge Heavy Computingや、乳がんの検知度を飛躍的に高めるソリューションなどにも言及。
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キーノートセッション中のPreferred Networks CEO 西川氏
Intel 現状ではAIハードウェア・プラットフォームの分野でNVIDIAに大きく水をあけられている感のあるIntelのセッション。そのIntelは “Intel Nirvana”というディープラーニングのプラットフォーム(neonディープラーニング・フレームワーク + nirvanaハードウェア)を発表。AI開発のトレーニング、AIビジネスのコンサルティングを含め、包括的なサービスを提供するとしている。今後どの程度巻き返しが図れるかに注目したい。
Stanford University 個人的に非常に興味深かったのが、このStanford大学Ermon教授のセッション。 サステナビリティに関連する社会問題(貧困、食糧難を含む)を解決するには、複雑な要因を考慮した意思決定プロセス(Decision Management)が必要であり、AIを用いることでより正確で安価、スケーラブルな意思決定モデルが可能になるとしている。
NVIDIA 今AIといえばこの企業抜きには語れないNVIDIA. AI事業がどんどん加速するに従って、扱うデータの量も増加している。また、ニューラルネットワークもスケーラブルなシステム、パワフルなGPU, 新しいアイディアをすぐにプログラムして試すことができるツール (プログラマブル)、最適化されたライブラリが必須、という出だしからの、自社のプラットフォームの紹介。先駆者の余裕が感じられるプレゼンだった。
Netflix 以下の分野でディープラーニングを活用。 
⁃ ユーザーが、観た映画をどう評価するかをこれまでの利用履歴やプロフィールなどから推察する ⁃ ユーザー毎に映画タイトルをランキングし、レコメンドするコンテンツ(映画タイトルのサムネイル)のパーソナラゼーションを行う。トップにランクされた映画のイメージを選び出し、最適な形で表示する。
Preferred Networksワークショップ 2日目の午後、Preferred Networksから、ワークショップが行われた。同社のディープラーニング・フレームワークであるChainerを、製造業の導入事例を数件交えて紹介。シリコンバレーオフィスのChief Research Officer 比戸氏によると、CNNを導入すればすぐに製造業の課題が解決するわけではなく、アルゴリズムの改良を根気強く続けていくことが重要という。また、今後はディープラーニングの機能が製造業界の様々なプロダクトやサービスに組み込まれていき、AI企業がそのドライバー役を担うであろうとも言及。 
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まとめ
今回ディープラーニングの導入事例を発表した企業は、中堅どころのIT企業(スタートアップ)がほとんど (Netflix, Stich Fixなど)だったが、大手企業の事例が次々に出てくるのも時間の問題だろう。
Google, Facebook, Baiduあたりの、AI・ディープラーニングへのリソースのつぎ込み方・コミットメントが半端ないというのが各社のプレゼンからも感じられた。これにAmazonが加わって、現行のAI関連 先行グループといったところ。
AIの研究はやはりトロント(ウォータールー)が強い。ここはAI以外も良質なスタートアップを量産し続けており注目のエリア。一方、ヨーロッパでは、今回ロンドン、パリあたりのスピーカーが目立っていた。
【関連URL】 ・re-work Deep Learning Summit @ San Francisco 2017 https://re-work.co/events/deep-learning-summit-san-francisco-2017
蛇足: シリコンバレーの真ん中で
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 こういう新しい分野の技術のコンファレンス毎年定点観測的に参加すると、黎明期のモヤモヤしたフェーズから業界が次第に形成され、先行プレーヤーから事例が次々に生まれていく過程をリアルタイムで見ることができる。 人手がかかるラベリングの部分をどうするかなど、ディープラーニングはまだまだ課題も多いが、同時にハードウェアを含めてそれを支える技術は加速度的に進化している。それに従って、あと数年すればディープラーニングの適用事例も飛躍的に増えているだろう。今まさにディープラーニングは大きくブレークしようとしているのを実感した今年のコンファレンスだが、今回はPreferred Networkがスポンサーとしても協賛、存在感を示していた。同社を含めて、更に多くの日本のスタートアップ・企業がこの分野で活躍することを期待したい。
https://i2.wp.com/techwave.jp/images_inbox/2016/07/maskin-bit-2016-140x140.fw_.png
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ari0921 · 1 year
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和五年(2023)4月15日(土曜日)
    通巻第7708号 
 チャットGTPなど生成AIが16兆円の新ビジネスに化けるのか
  「知ったかぶり屋」や「論文盗用」が増えて社会を壊す懼れはないのか?
************************
 指示に従ってたちどころに文章を作成し、画像や動画を自動生成する革命的な武器。生成人工知能(AI)の登場は産業地図を塗り替えるだろうか。
現在、生成AIの先陣を切ったのは米社「オープンAI」である。同社の「チャットGTP」はパターン化された行政書類の作成など朝飯前、公務員の仕事を代替する近未来はすぐそこにある。
大量の失業が起こる。しかし同時に大量の雇用が発生する? 
モラルの問題が未解決なうえ、「人間が技術文明を制御できなくなる」という旧型の議論も蒸し返されている。バイデン大統領は「関連企業は製品の安全を確かめてから一般公開する責任がある」と4月4日のホワイトハウスの会議で発言した。
チャットGPTは高度な対話能力があり、すでに49%株主のマイクロソフトが検索サービスを開始した。グ-グルは自社開発の対話AI「バード」を開発、メタ(旧フェイスブック)は「メーク・ア・ビデオ」で動画生成AI、大規模言語モデルなどを開発し、2023年中に商用化するとした。とくにメタはSNSのフェイスブック、インスタグラム、メタバースにも活用する方針だ。
 ゴールドマンサックスは近未来に3億人のユーザーが見込まれ、GDPを7%押し上げるとし、ボストン・コンサルティングは2027年の生成AI市場が16兆円に膨らむと予測している。
 中国はまっさきにチャットGTPを禁止した。イタリアが続き、ドイツ、フランス、アイルランドも禁止を検討しているとの報道が続いた。
ところがチャットGTPの主力「オープンAI」CEOのアルトマンが来日すると、岸田首相が面談に応じた。なにかちぐはぐな日本政府の対応ぶりである。
 オープンAI社はシリコンバレーにある。失業者が溢れ、商業ビルは30%が空室。この街で例外的に活気に満ちている。というのも、この会社は2015年に設立され、創業期にはテスラのイーロン・マスクも株主だった。そのマスクがFOXテレビで「AIは文明を破壊するかも知れない」と発言している。
▲厳しい規制が必要とする意見がメディアやアカデミズムに拡がる
CEOのサミュエル・アルアトマンはまだ37歳と若く、しかも風来坊のような風体、本人はゲイだと告白している。
アルトマンはスタンフォード大学を中退し、起業家をめざした。これまでにも1000社に投資しており、どちらかといえば発明家ではなく投資家である。この点で企業買収を繰り返してEVとスペースXであてたイーロン・マスクのビジネススタイルと似ている。アルトマンは、その上、民主党支持者であり、バイデン選対のPACに25万ドルを寄付している。
 このことを嫌ってのことか、どうかは不明だがイーロン・マスクは2018年に「オープンAI社」から引き上げ、替わって2019年にはマイクロソフトが10億ドルを出資した。 
マイクロソフトは、2023年に出資額を100億ドルに増やした。これで勢いがついた。現在の利用者はかるく1億人を超えた。
 
 厳しい規制が必要とする意見がメディアやアカデミズムに拡がり、要するに学問の探究や真理の発見、科学のコペルニクス的な発展に寄与する可能性より「知ったかぶり」の偽知識人の卵や論文の盗作が横行するのではないか、という懸念が世界的に拡がった。
 なにしろ学生の論文を読むとウィキペデアのコピペが圧倒的だと嘆く大學教授たちの声が聞かれる。東大の或る教授は「知ったかぶりを増やすだけだ」と断言しているほどである。しかもウィキペデアの中味には左翼偏向が顕著だ。
 アルトマンと会見後、岸田首相はリスクの存在をつたえたとし、松野官房長官は「公務員の仕事の軽減に役立つかどうか、検討課題だ」とした。
 反対の狼煙を上げたのはNY市教育局で「安易な使われ方が予測される」として禁止した。ハーバード大學のチームは実際に相当数の試験問題を入力して、生成AIでテストしたところ、60%が合格点となり、プラス・マイナスの両面があるとした。
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jijinetasite-blog · 5 years
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北朝鮮と「コモンズ」共有経済: 新種国家の為の白紙状態なのか? 新たに浮上する北朝鮮は、持続可能かつ協力的な経済及び社会発展の新たな基準を国際社会に提供することができるだろうか? 地政学的変化と新しい技術のお陰で、共有経済「コモンズ」の考え方は益々実現可能なものに見える。南北の関係が急速度に変わりつつあるため、緊急な問題はもはや次の段階の和解プロセスのにあるのではなく、政治的、経済的及び文化的認識に向かっている。 新しい概念と技術で「隠遁の王国」の制度変容のドアが開きつつある。政府に対する新しいアプローチと新しいインフラ構築は、他の諸国が北朝鮮をモデルとすることができる刺激的な実験になるであろう。 朝鮮半島は未来が期待される発展の中にあるが、メディアの報道によると、多国籍の諸企業が北朝鮮の豊富な鉱物資源の開発と廉価な労働力を搾取し、迅速な富を創出する抽出的経済を計画しているという。 この利益は、貧困な北朝鮮の住民たちに入る訳ではなく、国際的投資家たちに利益をもたらすであろう。 これは戦後のイラクが見せた青写真と同じように、ウォールストリートやそれと類似した日本や中国の投資家たちが北朝鮮経済開発に関与することを示唆している。 しかし、北朝鮮は停滞と貧困をもたらした北朝鮮労働党の後進的な経済政策に従う必要もなく、グローバル投資銀行と彼らがファンディングしたコンサルティング会社によって運営される消費主義的な新自由主義的「開発」 政策を受け容れる必要もない。 ここに代案が存在する。北朝鮮が現状の腐敗政治経済も、国際投資銀行が夢で見ている汚くて搾取的な「成長」も、拒否しながらも依然として持続可能な経済的、政治的成功を達成する第三の道がある。 21 世紀のコモンズを受容 北朝鮮の為の「第三の道」とは即ち協力的な経済と社会である。これは、P2P(ピアツーピア)システムとコモンズ基盤の生産物 (例えばLinuxやWikipedia)によって可能になる教育、政治、製造、経済における新しいグローバルコモンズを受け容れることを意味する。本質的に北朝鮮はゼロから始めるため、他の所で行われたよりももっと包括的な方式でブロックチェーン(block-chain)やホログラフィック・インといった「検証インターネット」を採用することができる。 社会主義経済が存在するという前提下では、このような経済革新が共有され試されるだろうし、意思決定プロセスは社会全体に分散されて権威主義政治を避けることが出来るであろうし、コミュニティが優先順位を設定できるように権限を付与されるであろう。 このようなアプローチは北朝鮮が国際金融の指示に従わなくとも国際化から利益を得ることができるようにしてくれるであろう。アムステルダムの P2P財団とソウルのコモンズ財団(Commons Foundation)は搾取的かつ抽出的市場経済に対する実行可能な代案である共有経済の為の具体的な提案を提示した。 韓国を始め世界の仲間たちと連結させるグローバルP2P 経済に北朝鮮の住民たちを包含させることによって、北朝鮮は自らの住民に力を与えることができる。そうして国家やウォールストリートの統制を受けずして、コモンズ基盤のマイクロ生産を通して彼らは潜在力を実現することができる。北朝鮮は廉価な労働力や廉価な鉱物資源で搾取される代わりに、資本ではなく人々によって支えられている肯定的なグローバリゼーションモデルを開発することができる。 要求される根本的な概念転換の例示を近代の韓国において見つけることができる。1910-45年の日帝植民地戦略はかつて韓国の村落で栄えていた相互支援コミュニティを破壊した。大部分の韓国人たちにとって彼らの土地と伝統的な生産手段を奪った日本の「エンクロージャー」行為と言える。 コモンズ財団創立者のチェ・ヨングァンは、コモンズが韓国において新しいアイデアではないとして、「郷村規約(郷約)は地域社会における役割を規定したが、絶対的な所有権を付与しませんでした。郷村規約は日本植民地時代に破壊されました。非人間的な競争から始まった不平等の深刻化とそれによる富の集中が始りました」と説明している。 コモンズは市民たちに焦点を合わせた共有経済を創出することによって、裕福な国々が建設的で非搾取的な方法によって開発途上国と協力することができるのかというテーマに対するモデルを提供することができる。さらにコモンズ経済は外国人投資や労働搾取に関するものではないため、国連の対北制裁に明示された経済的相互作用の標準モデルに該当しない。それゆえ現実的な希望の門戸を示してくれる。 西側のメディアは北朝鮮を奇怪で孤立した神秘な国として描いているが、最近の韓国との交渉は他の開発途上諸国と同じく、金融機関が支配する無慈悲な世界化秩序の中で自分の居場所を探し出す為に北朝鮮が孤軍奮闘していることを見せてくれた。筆者の提案する革新は特定の技術から構成されるのではなく、開放型プラットホームとして、北朝鮮が全世界の知識や技術、専門知識、金融資源にアプローチすることを可能にさせ、寡頭政治に陥ることなく経済的転換を成し遂げることを可能にする。 コモンズ 101:何をするのか 北朝鮮は現代技術がほとんどない一方で、他の諸国の文化を破壊した商業主義や消費主義もほとんどない。したがって、北朝鮮の出発点がゼロであるので、他の国では不可能な制度革新の為の前例の無い機会が存在する。 北朝鮮は全ての建物で太陽エネルギー発電の使用を義務化することができる。この製造は地域単位でのオープンソース革新を可能にする。そのサービスは仲介人なしに家庭間で共有される。また、地方自治体が他国の他の地方自治体と教育及び社会的交流の為の関係を結ぶことができるように許容しなければならない。 北朝鮮は地域経済自治を構築する手段として暗号通貨やクラウドファンディングを使用する地域協同組合を育成する革新的な金融システムを構築できるのみならず、クラウドファンディングの形式で外国人投資を許容したり全世界の支持者たちの少額投資を受け入れることができる。 北朝鮮は清掃機やノコギリから洗濯機や太陽光発電機に至るまで、全てのものをコミュニティに任せる共有経済に含ませることができる。全ての市民の貢献を認めるサービス交換(掃除や料理から児童と老人をケアする労働まで)プログラムを計画することができる。老人たちを若者達と、農民たちを都市住民たちと連結し、新しい文化的、経済的シナジーを創出することもできる。 地域農業とマイクロ製造業に根ざした共有経済のコモンズを導入することは、浪費と経済的格差を促進するのみならず、軍事的軋轢の主要要因でもあった、今日の東アジアの頭痛の種である持続不可能な過剰生産を減らすことにおいて必須である。 北朝鮮は良質の高速道路と自動車に対する依存性が少ない。したがって、輸送手段が全て電気で作動する交通手段が共有される都市、自動車に対する必要性を減らす都市を計画することが可能である。 北朝鮮の開放は健全なP2P 国際化モデルを構築できる貴重な機会となり得る。 コモンズ 101: どのようにするのか 韓国は同じ言語を共有しているだけでなく、P2P経済の強力な前例を確立しているため、重要な役割を果たすべきである。 韓国人は参加型政治に対する物凄い熱意を示してきており、その頂点と言うことができる2016 年の「ロウソク革命」では、数百万の市民たちが共に出て腐敗した政治の終焉を要求した。 ソウル市は4年前に市全域で共有経済の強力なプラットフォームを提供する地方の村を作るプログラムを始めた。また、この都市は最近、ソウル全域にブロックチェーンシステムを構築し、効果的に使用できる新しい世代の専門家を養成する為に 6千億円の予算を投入した。 北朝鮮は短期利益ではなく経済的・技術的変化の倫理的意味に焦点を置いたP2P 諮問委員会が必要である。韓国もこの役割をすることはできるが、新興経済が陥りかねない落とし穴を避ける方法について全世界から助言を求めることもまた重要である。 韓国鉱物資源公社によると、北朝鮮に6兆ドル規模の石炭やウラン、鉄、金、亜鉛及び稀土類鉱物(レアメタル)が大規模に埋蔵されていると言う。P2P諮問委員会の最初の勧告事項中の一つは、北朝鮮が開発の長期的な環境影響を評価できる充分な専門知識を保有するまで地下資源開発を凍結することになるかも知れない。 資源開発、交通インフラ構築、P2P 専門家ネットワークによる都市空間開発に関する全ての提案を検討することは重要な最初の歩みとなり得る。 北朝鮮は開放の初めの段階において過度の負債が生ずることを避けなければならない。投資家の短期収益を保障することを計画の要素としない政策を樹立するように委員会は助けることができ、資本逃避の危険がないように明確化することができる。ソ連崩壊の後に寡頭政治が浮上したのと北朝鮮の状況が類似していくのを防ぐ為に、人々はコミュニティ銀行を作って参加型資金調逹メカニズムを構築しなければならない。 北朝鮮が「先進国」産業化された世界に「追いつく」べき神秘的で閉鎖的で不可逆的な冷戦時代の残在である必要はない。むしろ北朝鮮はブロックチェーン技術、マイクロ製造業、持続可能なエネルギーインフラ及び国際化に対するP2P方式のような新しい時代、東北アジア及び世界を先導する刺激的な実験になり得る。 この記事はLayne Hartsellと共同執筆しました。彼はP2P 財団の構成員として倫理及び技術哲学に焦点を合わせています。また彼は Asia Instituteの技術コンバージェンス及び 3E(エネルギー、環境及び経済)プログラムの理事でもあります。 Source: ハフィントンポスト
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honyade · 6 years
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近藤清人 ×井上克昭 × 安木淳一郎 × 桂武弘トークイベント「ローカル企業の事業承継術」 『強い地元企業をつくる』(学芸出版社)刊行記念
地域活性は、まず地元企業から。 地域資源を生かし、引き継ぐべき事業を自らの事業として「承継起業」した地元企業が自社の売り上げを上げながら、町も良くしていく。
ローカルデザイン、事業承継、地域活性化に関心のある方、必聴!
梅田 蔦屋書店では、これまで西日本を中心に80社を超える中小企業のブランド戦略に携わってきた株式会社SASI DESIGN代表でデザイナー・コンサルタントの近藤清人さんによる書籍『強い地元企業をつくる 事業承継で生まれ変わった10の実践』(学芸出版社)の刊行記念イベントを開催いたします。
事業の先細りや、次世代を担う人材の不在に苦しむ地方の中小企業が多いなか、ソーシャルマインドを持った若い後継者にバトンが渡ることで、地域資源を活かした家業の生まれ変わりに成功し、さらには地元経済やコミュニティの活性化にも貢献している企業も少なくありません。
こうしたいわば「承継起業」の在り方について、実際のクライアントによる好例を豊富に取り上げつつ紹介したのが書籍『強い地元企業をつくる 事業承継で生まれ変わった10の実践』です。このなかでは、不動産業、建設業、酒造業、食品業、アパレル業などから、承継起業により変革を遂げた10社の現場をたどりつつ、事業のコンサルティングやプロダクトのデザイン検討のプロセスから、地域の支援機関や金融機関との連携のかたちまで、わかりやすく紹介されています。
トークイベントでは、近藤さんから本書のダイジェストトークを行っていただくほか、承継起業を果たしたクライアントである昌和莫大小株式会社(奈良県広陵町)の井上克昭さん、銀海酒造有限会社(兵庫県養父市)の安木淳一郎さん、そして本書に観光の視点から寄稿された株式会社日本旅行の桂武弘さんにもご登壇いただき、それぞれの立場からゲストトーク・クロストークいただきます。
地方のものづくりにおけるデザインの役割について考えたい方、地域に根付く企業の事業再生や世代交代にお悩みの方はもちろん、ひろく地方創生や地域活性化にご関心のお持ちの方は、ぜひご参加ください。
参加者全員に、但馬 銀海酒造「稜線」1ドリンク、もしくは丹波篠山 栗山米穀「黒豆しぼり」1袋をプレゼント。
【プロフィール】 近藤 清人(こんどう きよと) 株式会社 SASI DESIGN代表。1979年兵庫県丹波市生まれ。 中小企業庁や兵庫県、京都府、奈良県商工会連合会など派遣専門家として、西日本を中心に80社を超える中小企業のブランド戦略に携わる。アイデンティティデザインという独自手法で、デザインだけでなく、経営戦略としての「しくみ」を提供し中小企業の価値を引き出す。クライアント商品のメニュー開発や異業種交流を行えるcafe DOORを経営。起業や承継起業を総合的にサポートするコワーキングスペースDOORを運営。
井上 克昭(いのうえ かつあき) 昌和莫大小株式会社 代表取締役。 1964年奈良県広陵町出身。奈良県は靴下生産日本一の県である。 家業である靴下・タイツの製造販売会社に入社。OEM・ODM生産で各アパレルのブランド商品の生産を主軸として経営をおこない、新たに自社開発商品での自社ブランド展開の構築に向け、始動している。現在までに培った製造技術やノウハウを、靴下・タイツなどのレッグニット以外の商品開発についても積極的に取り組んでいる。 奈良県靴下工業協同組合副理事長 奈良ブランド「ThePair」委員会委員長
安木 淳一郎(やすき じゅんいちろう) 銀海酒造有限会社 専務取締役。 1897年創業。機械化をほぼ行わず、昔ながらの道具を使用し、12月から2月までの寒造りを行う。自ら酒を製造し、約15年の杜氏の経験から「醗酵を充分させる」酒作りを行う。麹の発酵の際にも、麹部屋の温度調整ではなく、麹の発酵熱で温度上昇を計ることで、強い麹を作成し、「強い酒、へたりにくい酒」を実現。醪期間においても、過度な冷却は行わず、ストレスのない発酵をイメージし、お燗した際に「味が広がるようなお酒」を醸す。
桂 武弘(かつら たけひろ) 株式会社日本旅行 日本旅行総研 西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)入社。 旅行業部門に従事。日本旅行へ転籍後は、国内旅行商品(赤い風船)のプロモーション・JR西日本ジパング倶楽部向け商品企画を経て、本社経営管理部にて事業計画作成・実績管理を担当。新規事業室内の地域活性化をミッションとする日本旅行総研にて全国各地で観光による地域活性化を担当~現在に至る。
【関連イベント】 「銀海酒造「katsura」試飲&販売会」 日時:2018年7月28日(土)7月29日(日)各日12:00-20:00 会場:梅田 蔦屋書店 コンシェルジュカウンター 参加費:試飲は無料です。ご参加は20歳以上のお客様に限ります。 URL:現在準備中です。 内容:但馬 銀海酒造の新酒katsura。 麹部屋の温度調整ではなく、麹の発酵熱で温度上昇を計ることで強い麹を作成し、「強い酒、へたりにくい酒」を実現し、「最高の食中酒」を目指す。氷ノ山を望む棚田に佇む大桂の樹を思わす、繊細ながらも図太い酒は、和洋問わず様々な食卓を彩る。日本酒とは思えないパッケージと手作りの酒でライフスタイルを提案する。
【同時開催フェア】 フェア「地元企業のローカルデザイン」 日時:2018年7月26日(木)~2018年8月8日(水) 会場:梅田 蔦屋書店 ワークスタイルフロア URL:現在準備中です。 内容:『強い地元企業をつくる』で紹介された企業によるプロダクトをご紹介します。 地元の自然や作物、蓄積された技術などを生かし、「今」欲しいさまざまなプロダクトにデザインされた商品を集めました。
【書籍ご購入はこちら】 強い地元企業をつくる 事業承継で生まれ変わった10の実践 著:近藤清人(学芸出版社) ご購入はこちら
【注意事項】 ・トークは、書籍『強い地元企業をつくる 事業承継で生まれ変わった10の実践』(学芸出版社/2018年4月刊行)を元に進めます。書籍の有無は、参加条件ではございませんが、ご持参いただくことをおすすめします。『強い地元企業をつくる』は会場でも販売いたしします。 ・お座席は自由席です。会場にお越しの順にご入場いただきます。 ・会場でのご飲食は9Fでお買上げの商品のみとさせていただいております。 ・録音・録画はご遠慮いただいております。 ・お客様ご都合によるキャンセルは承っておりません。予めご了承ください。 ・本イベントはEC、店頭でのご購入の両方でTポイント対象となりますが、ルクアポイントは店頭ご購入の場合のみ対象となります。
※※※オンラインショッピングでのご購入前に必ず下記をご確認ください※※※
1. お支払い方法はクレジットカード決済のみとさせていただきます。 2. お申し込み完了後、梅田 蔦屋書店よりご案内のメールをお送りいたします。 ≪≪メールは即時ではなく、確認にお時間を頂いております。≫≫ そのメールをイベント当日に会場(梅田 蔦屋書店 4thラウンジ)までプリントアウトしてご持参いただくか、携帯電話等でメール受信画面をご提示ください。 ※メールがエラーで戻ってきてしまう方がいらっしゃいます。ご登録のアドレスを今一度ご確認頂き、ご購入くださいませ。 3. 定員に達し次第、受付を終了させていただきます。 4. お客様都合によるキャンセルは承っておりません。あらかじめご了承ください。 5. オンラインストアでの受付は 2018年8月1日(水)まで。
【イベントのお申し込み】 以下のどちらかをお申し込みください。
参加者全員に、但馬 銀海酒造「稜線」1ドリンク、もしくは丹波篠山 栗山米穀「黒豆しぼり」1袋をプレゼント。
(A)チケットのみ:1,620円(税込) ご購入はこちら (B)書籍付きチケット:3,456円(税込み)[書籍2,376円+チケット1,080円] ご購入はこちら
会期 / 2018年08月02日(木) 定員 / 80名 時間 / 19:00~21:00(開場18:30) 講師/ゲスト 近藤清人 (株)SASI DESIGN・井上克昭 昌和莫大小(株)・安木淳一郎 銀海酒造(有)・桂武弘 (株)日本旅行 日本旅行総研 場所 / 梅田 蔦屋書店 4thラウンジ 主催 / 梅田 蔦屋書店 参加費 / (A)(B)いずれかをご選択ください。お土産付き。 (A)チケットのみ 税込1,620円 (B)書籍付きチケット 税込3,456円(書籍2,376円+チケット1,080円) 共催・協力 / SASI DESIGN、学芸出版社 申し込み方法 / 梅田 蔦屋書店オンラインショッピングまたは店頭にてお申し込みください。 ※オンラインショッピングでは決済のみとなり、チケットと書籍の発送はございません。 イベント当日にお渡しします。 問い合わせ先 / [email protected]
イベント情報の詳細はこちら
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thetaizuru · 7 years
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二人の空の男について。
 アメリカのチャールズ オーガスタス リンドバーグ(1902-1974)は25歳のとき、「スピリット オブ セントルイス」と名付けた単葉単発単座のプロペラ機で、ニューヨーク-パリ間、33時間半の空の旅をひとり、何度も睡魔に襲われながらも成し遂げる。大西洋単独無着陸飛行に初めて成功した「空の英雄」として世界的な名声を得る。  第二次世界大戦前夜、リンドバーグは、米軍の要請でドイツに何度か旅行し、ドイツ空軍についての報告を行う。1938年、ドイツのヘルマン ゲーリング(軍人、政治家、ナチス、ヒトラーの後継ともいわれた)から勲章を授与されたが、この授与は、ユダヤ人差別政策や強行的な対外政策を進めるナチス党政権と「親密になりすぎている」と米国内で批判を受ける。この批判に対しリンドバーグは「ドイツに対する過剰な非難だ」と反論する。  ヨーロッパで第二次世界大戦が勃発した後、共和党員であったリンドバーグは、アメリカのアイソレーショニズム(孤立主義)とドイツの政策の支持者として各地で講演する。リンドバーグはアイソレーショニストの団体「アメリカ ファースト コミッティ(米国優先委員会)」の主要なスポークスマンであり、ドイツとの中立条約を結ぶべきと主張。アメリカが海外の戦争に参加するべきではないと言い続けた。1941年9月11日アイオワ州での演説で「イギリス人とユダヤ人がアメリカに連合国側での参戦を働きかけている」と述べた。この「戦争を煽るのは誰か」演説に、ユダヤ系アメリカ人などが反発。ルーズヴェルト大統領はリンドバーグの米陸軍航空隊での委任を解除した。  1941年12月7日、日本との戦争が開始。リンドバーグは陸軍航空隊への復帰を試みたが、上記のいきさつによりルーズヴェルトらに拒否された。そのため、政府と航空会社(トランスワールド航空)に対する民間コンサルティング会社を通じて「米政府の戦争努力を援助する」という形で、1944年までに「民間人」として太平洋で50回の実働任務をこなし、日本軍機とも何度か交戦。少なくとも九九式襲撃機1機を撃墜している。
 リビア砂漠での墜落、遭難体験を元に、後に『星の王子さま』を書いたフランスのアントワーヌ マリー ジャン=バティスト ロジェ ド サン=テグジュペリ(1900-1944)は、兵役に志願し軍用機操縦士となり退役後、いくつかの職を経て民間航空界に入り、26歳で作家デビュー。飛行士としての体験を書き続け、1931年『夜間飛行』などがヒット、有名「パイロット作家」となる。  1939年9月、第二次世界大戦で招集される。所属した偵察隊(Ⅱ/33部隊)が多大な損害を受けアルジェリアへ後退していた頃、フランス ヴィシー政権(フィリップ ペタン首相、首都をフランス中部ヴィシーに置いた)はドイツと講和。サン=テグジュペリは動員解除されフランス本土に戻った後、アメリカへ亡命。1940年12月31日ニューヨークへ到着する。  このとき、ナチス ドイツによる占領下、国家存亡の危機の状態において、フランス人たちは大きな不安を抱え、意見の対立も激しくなる。おおまかに、亡命先ロンドンで「自由フランス」を結党し、戦闘継続を呼びかけたド ゴールによる派閥、「国民作家委員会」(モーリアック、エリュアール、サルトル、カミュらも参加)を抱え、左右の大同団結を訴えた「解放独立国民戦線」(本質的には共産党の提唱、主導だった)、そして対独協力(コラボラシオン)の「ヴィシー政権」などに分かれ、激しい論戦が行われた。  党派を嫌い、どの派閥とも連帯しなかったサン=テグジュペリは孤立。亡命した「有名作家」への誹謗中傷、悪い噂に傷つきながらも、アドルフ ヒトラー『我が闘争』への民主主義からのアンサーとして、『戦う操縦士』(Pilote de Guerre 従軍パイロット、英語版はFlight to Arras アラスへの飛行)を発表(1942年2月)。占領下フランスでは「ヒトラーはバカだ」の一文を検閲、削除のうえ制限付き少数部発刊、すぐ発禁になるも、地下出版物として読まれた。  1943年6月、亡命先ニューヨークから志願して北アフリカ戦線の元いた部隊に戻ったサン=テグジュペリは、その後1944年7月末、コルシカ島ボルゴ飛行場から単機出撃後、地中海上空で行方不明となる。
 第二次世界大戦終戦後、「芸術の都」はパリからニューヨーク(MoMA ニューヨーク近代美術館)へと移った。「空の英雄」と呼ばれたリンドバーグは、しかし、「堕ちた偶像」と言われるようになる。マスコミを避けるようにハワイに移り、生涯を終えた。親ナチス、反ユダヤのレッテルを貼られたことが、その理由の一つだった。  同じくアイソレーショニスト「アメリカ ファースト コミッティ」の一員だったヘンリー フォードと、アウシュビッツ強制収容所などで使用された殺人ガス(チクロンB)を製造していた企業の系列会社IGファルベン(ドイツの重化学企業)との関係も囁かれ、アイソレーショニストは不介入主義(平和主義)の美名のもと、ユダヤ人を見殺しにし、利益を得ていたとバッシングされた。
 自身も部隊の敗北を経験し、国を失う不安、党派対立、中傷合戦、様々なプロパガンダ、偽情報や誤解のなかに置かれたサン=テグジュペリは、「目に見えない大切なもの」と、再生の契機を探した。  亡命先ニューヨークで書かれ1944年12月に出版された『ある人質への手紙』にはこうある。「ぼくも自分が選んだ道のために、他人の選んだ道と争うかもしれない。他人の理性の歩みを批判するかもしれない。理性の歩みは不確かなものだ。しかしその人が同じ星をめざして苦労しているなら、ぼくは精神の面において彼を尊重する義務がある」「論戦や排他主義、ファナチズム(反対意見への極端な不寛容)にはもううんざりしている!」「きみのそばでなら身のあかしをたてる必要なんかない。弁解する必要も、証明する必要もない」「あるがままのぼくを受け入れてくれてありがとう」
 2017年4月24日、フランス大統領選決選投票に進むことになった「国民戦線 FN」マリーヌ ルペン党首は、「フランス2」のテレビインタビューで、党首の座を退くと表明。自分の党だけでなく、国民全体の大統領になるためだという。  大勢はマクロン(グローバリスト、金融系)支持。  米トランプ大統領は個人的にはルペン支持を表明しているが、トランプ政権発足から100日でトランプ自身よりも娘夫婦(グローバリスト、金融系)が存在感を増した。
 どっちがどうだからどうこうなることよりも大切な見えないものがあるはずだ。ぼくたち人間は肥育される家畜でも、差別的ツイートを培養するシャーレでもない。ネット上のほぼ全てが監視下にある世の中で、目的もなくこんな長文をタイプする。雲居の雁とともに飛ぶ。毎日10分以上ぼけーっとしている。とげがあろうがバラはきれいだ。
 もう五月朔日。見えないだろうけど、ほほえみを添えて。
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ari0921 · 1 year
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我が国の未来を見通す(65)
『強靭な国家』を造る(2)
「少子高齢化問題」の先に待っているもの
宗像久男(元陸将)
───────────────────────
□はじめに
 宮古島近海のヘリコプターの事故については、悲
しいことに、現時点においても、関係者全員をご家
族の元にお帰りいただくことが叶いそうにないよう
な状態のようです。今後も行方不明者の捜索が続き、
機体も引き上げられた後に本格的な事故原因の究明
が行なわれるものと考えます。
個人的な経験で恐縮ですが、陸上幕僚副長であった
時、緊急患者輸送任務を遂行中のヘリコプターが徳
之島の山頂付近に墜落するという事故が発生し、自
衛官4名の尊い命が奪われました。陸幕内に事故調
査委員会を立ち上げ、私は調査委員長として事故原
因の究明と再発防止の諸対策を検討し、徹底させた
経験があります。事故現場にも足を運びましたが、
墜落現場の悲惨さをこの目でみて、この種事故のす
さまじさに言葉を失いました。
その時の事故は、山頂付近の斜面にヘリコプターが
激突するという事故でしたので、海面に激突したと
思われる今回の事故とは違いますが、激突の角度に
よっては海面も地表面と同じような“固さ”があり
ますので、その瞬間はすさまじいものだったと想像
しています。
この事故については、もう少し具体的なことが判明
してから振り返りたいと思いますが、��故やその後
の捜索活動が連日、報道されることによって、宮古
島を含む南西諸島において、それこそ命を懸けて、
国防の任務を全うするために多くの自衛官たちが日
々活動しているという事実は、国内外に広く知らし
めることになったことは間違いないと考えます。
これまで判明している犠牲者を含む10名の隊員は、
「たとえ命を犠牲にしても、島を、そして国土を守
り抜くぞ」という強い意思を表明し、身をもって我
が国の「抑止力」の向上に貢献したのです。彼らの
行動と犠牲はけっして無駄にはなっていません。こ
の事実については、多くの国民の皆様にご理解頂き
たいと心より願っております。
▼我が国の「経済成長」の行方
 
さて前回、紹介しましたように、一橋大学名誉教授
の野口悠紀雄氏は今年1月、『2040年の日本』
という書籍を上梓し、我が国の近未来について、様
々な角度からまとめておられます。その中で、本メ
ルマガではこれまで触れて来なかった我が国の「経
済成長」の行方についてその骨子を紹介しつつ、
「少子高齢化問題」と「経済成長」の関係を可能な
限り“見える化”して、そこから浮かび上がる問題
について読者の皆様と一緒に考えてみたいと思いま
す。
「失われた30年」と揶揄される、最近の我が国の
経済的低迷の要因のひとつに「人口減」があること
は間違いなく、今後も「少子高齢化」が進む我が国
の近未来の中で、「経済成長はどうなるか」につい
てはだれしも関心があることと考えます。のちほど
具体的に触れますが、「経済成長」は、「超高齢化
社会において高齢者を支えることができるか否か」
という差し迫った問題と密接に関係するのです。
野口教授もまったく同じ観点で我が国の経済成長率
を分析しています。例えば、経済成長率が1%にな
るか、0.5%になるかによって高齢者が受けるサ
ービスは20年後、40年後では大きな差が生じる
ことを懸念します。つまり、1%成長を前提に収支
計画を立て、実際に0.5%しか成長しないと、一
人当たりの負担は2割増増える、あるいは一人当た
りの給付を2割減にしなかればならなくなると指摘
します。つまり、「分配なくして成長なし」ではな
く、「成長なくして分配なし」になると主張してい
るのです。
一般に、「実質的経済成長率」=「労働の成長率」+
「資本ストック成長率」+「技術進捗率」、の基
本式で表示されますが、「労働の成長率」について
は、今後の日本は生産年齢人口の減少から年齢別の
労働力率が現状と変わらないとすれば大きく減少す
るでしょう。
「資本ストック」についても、現時点の設備投資が
ほぼ減価償却に見合ったものからほぼ増えない状況
にあります。また、「技術進捗率」は、労働と資本
だけでは説明できない成長要因といわれますが、例
えば、「デジタル化」とか「データ経済への移行」
などへの対応によっては高い成長率が期待できると
されています。
さて、少子化の真っただ中にある日本は、1%の経
済成長を実現できるのでしょうか。様々な機関が経
済成長を予測していますが、最も詳細なデータを公
表しているのは、OECDの予測です。それによる
と、日本の「実質GDP」の成長率は、2020年
から2030年までの期間は0.987%と過去の
実績に比してかなり高くなっていますが、その後の
成長率は低下し、約0.5%を下まわるようになる
と予測しています。
ちなみに、ここでいう「実質GDP」とは物価変動
分を調整して算出しているもので、物価変動分を考
慮に入れて算出している「名目GDP」と違いうこ
とを補足しておきましょう。
OECDは、その根拠として「1人当たりの潜在G
DP」の成長について定量的な予測を行なっている
といわれます。細部は省略しますが、一例を挙げれ
ば「労働効率のトレンド」で、「それまで2人でや
っていた仕事を1人で出来るようになる」というよ
うなことを指しています。そのためには、デジタル
人材の育成や業務のデジタル化によって技術進捗を
実現することが必要になってきます。OECDは、
我が国の労働効率の伸びを、2018~30年まで
は年率1.1%、2030~60年までは1.4%
と推定していますが、2030年までを比較すると、
中国は2.7%、韓国は1.3%と推定しています
のでそれほど高いわけではありません。
我が国の過去の実質成長率は、2000年から20
21年までの平均は、0.65%、もっとスパンの
短い、2015年から2021年までは0.24%
に留まっています。最近は特にコロナ禍の影響があ
ったとはいえ、これらの成長率と比較をして、「日
本は、今後、過去に比べて高成長を実現する」とし
て日本の潜在能力を評価しているOECDの見積も
りが本当に実現できるかどうかは現時点では不明と
いわざるを得ないでしょう。
国内においては、将来の財政収支予測を目的とする
内閣府の「���政収支試算」では、高めの成長率を見
込む「成長実現ケース」と低めの成長率を見込む
「ベースラインケース」の2つのケースに分けてい
ますが、「成長実現ケース」では、2026年度頃
までは2%を超える成長率、その後も2%に近い成
長率を想定しています。「ベースラインケース」で
は2026年度までは1%を超える率、その後は1
%程度の成長率を想定していますので、かなり高め
と言えるでしょう。
また、厚生労働省による年金財源の収支計算の前提
とする「公的年金の財政検証」は、日本経済の長期
見通しについて、上記「成長実現ケース」を前提に
した3通り、「ベースラインケース」を前提にした
3通りの計6通りのケースを想定しています。
「成長実現ケース」では、2022年以降20~3
0年の実施成長率は、0.4%から0.9%として、
最も高い場合でも、「財政収支試算」の値より1%
ほど低下すると予測し、「ベースラインケース」で
は、同じ期間マイナス0.5%から0.2%として、
成長率がマイナスになることもあり得ると予測して
います。
さらに、民間研究機関の実質GDP成長率予測をみ
てみますと、三菱UFJサーチ&コンサルティング
は、2023年度~25年度までは0.5%、20
26年度~30年度は0.7%と予測し、みずほ総
合研究所は、2025年度~28年度は0.9%と
予測しています。つまり、民間の予測の方が政府の
見通しより成長率は低めに評価しています。
1%成長と2%成長では、10年後のGDPは約1
割以上、40年後では5割程度も違ってくるといわ
れますが、どちらが現実的なシナリオなのでしょう
か。「明らかに低成長シナリオである(それすら実
現できない可能性がある)」と野口教授は指摘しま
す。
その理由として、これまでの予測シナリオがみごと
に外れたことを例示しています。つまり、「201
0年の財政収支試算」では、「慎重シナリオ」と
「成長戦略シナリオ」の2つのシナリオを掲げまし
たが、実際には「慎重シナリオ」で予測した値にも
到達できなかったのでした。その結果、財政収支は、
2020年度の基礎的財政収支は48.8兆円の赤
字で、対名目GDPのマイナス9.1%となってい
ます。
「財政収支試算」は、現在、ほどんと注目を集めて
いません。それは、「プライマリーバランス」が改
善しているからではなく、長期金利が著しく低い水
準に抑えられているため、国債費の負担が著しく軽
減されているからです。しかし、実質2%程度の成
長を実現するためには、いつまでもこうした状況を
続けることはあり得ず、いずれ長期金利を上昇せざ
るを得ないと考えられます。
こうなれば、国債費も増加せざるを得なくなるのは
明白です。しかし、新規発行で既存の国債費を補填
する現在のシステムは、借り換えに伴って残った残
高の国債の新金利分が増加するだけであり、長期国
債の場合は、国債費が増加する期間が対象外になっ
ておれば、実質的な問題は先送りされ、問題の本質
が見えなくなっているとの一面もあります。野口教
授は、「財政の将来を考える場合に極めて深刻な問
題」と指摘し、日本の政策体系全体が2%実質成長
という“虚構”の上に立っているとして、「『高成
長』前提は、未来に対する責任放棄」と厳しく批判
しています。
我が国経済の将来予測の最後に、「1人当たりGD
P」についても触れておきましょう。国際通貨基金
(IMF)などによると、我が国の「1人あたり名目
GDP」は、2020年時点で3万9890ドル
(約452万円)であり、韓国(3万1954ドル)
や台湾(2万8054ドル)をそれぞれ上回ってい
ました。
日経センターの予測は、労働生産性、平均労働時間、
就業率などからはじき出した試算として、「一人当
たり名目GDP」は2035年頃まで年2.0%の
伸びになると予測しています。この間、韓国は年6.
0%、台湾は年8.4%増えると予測していますの
で、近い将来、総額で韓国や台湾に追い抜かれる可
能性があるのです。
この伸びはまた、物価変動分を考慮した数値ですの
で、2%程度では物価変動分に飲み込まれ、実質的
な所得(賃金)はほとんど変わらない可能性もあり
ます。
▼「少子高齢化」の進展
第1編で紹介しましたが、最近のデータで修正しつ
つ、我が国の「少子高齢化」の現実を再確認してお
きましょう。
まず、我が国の人口は2008年をピークに減少し
続け、このままいくと2050年までに1億人を切
ると推計されています。折しも4月26日、厚生労
働省の人口問題研究所が「人口は2070年に87
00万人になる」と公表してニュースになりました。
また昨年の出生者は79万9728人で、はじめて
80万人を切ったことも話題になりましたが、子供
の数は41年連続で減少し続け、昨年は過去最少の
1465万人になりました。それは生産年齢人口
(15歳~64歳)の人口減が続いていることを意
味し、全人口に占める割合が現在の約60%が約5
0%になると推計されています。
毎年、「敬老の日」の前後に、厚生労働省は高齢者
の“現状”を公表します。昨年9月18日の公表に
よれば、65歳以上の高齢者は3627万人、前年
比で6万人の増加、総人口の29.1%を占めてい
ます。この比率は「過去最高」ですが、平均寿命が
延びることに伴い、2040年頃まで高齢者は微増
します。65歳以下の人口が減り、高齢者が微増す
るのですから、しばらくの間、「高齢者の割合は過
去最高」がニュースになることでしょう。実際に、
人口問題研究所は、2070年には38.7%にな
ると推計しています。
高齢就業者は909万人、前年比で3万人の増加、
全就業者の13.5%でこれも「過去最高」になっ
ています。高齢者の就業率は25.1%、つまり4
人に1人が働いていることになります。これを65
~69歳までに限定すると、はじめて50%を超え
たこと、つまり2人に1人は働いていることもニュ
ースになりました。「働き方改革」の推進や「高年
齢者雇用安定法」の改正により昨年4月より継続雇
用年齢が70歳まで引き上げられた効果などによっ
て、高齢者が働き続けていることは“光明”と言え
るでしょう(とはいえ、65歳以上の4人のうちの
3人は働いていません)。
世界の最先端を走る我が国の「少子高齢化」はすで
にその“真っただ中”にあり、今後、ますます進展
していく「現実」を強く認識する必要があるのです。
▼「社会保障費」の動向
 
問題は、「経済成長」が「少子高齢化」(あるいは
「超高齢化社会」)の我が国の近未来にいかなる影
響を及ぼすか、にあると考えます。
それらをチェックするために、「社会保障費」の
「給付」と「負担」の両面から現状と将来の推計を
みてみましょう。まず「給付」ですが、「令和2年
度も過去最高を更新」と話題になったように、総額
は132兆2211億年、前年比+8兆2967億
円(6.7%)でした。一人当たりの給付費は10
4万8200円となり、その内訳は、年金が約5割、
医療が約3割、福祉その他が約2割となっています。
当然ながら、平均寿命が延び、(働かない)高齢者
が増えるに従い、年金受給対象者は増え、医療費も、
そして前回取り上げました介護費も今後かなり増え
ることは明白です。
一方、「社会保障費」の「負担」の内訳は、保険料
が約6割、国や地方自治体の税が約4割となってい
ます。そのどちらも(減少しつつある)生産年齢層
が主な負担者になっています。
2018年、政府(厚生労働省や財務省など関係省
庁が作成)は「2040年を見据えた社会保障の将
来見通し」を発表しました。
それによると、「現在の給付水準を維持し、必要な
分だけ国民の負担を引き上げる」(「負担調整型」)
場合、65歳以上の高齢者人口の増加から全体の負
担は低くても1.130倍になると推計される一方、
生産年齢人口の減少から負担者数は0.795倍に
なると推計されることから、1人当たりの負担は1.
130÷0.795=1.42、つまり現在の42%
ほどの増加になります。
一方、政府の見積もりとは別に、「負担を現状程度
にして給付を削減する」(「給付調整型」)を推計
しますと、まず65歳以上の人口が2018年の3
561万人から2040年に3921万人になるこ
とから1.101倍になります。よって、一人当た
り受給額は、生産年齢人口の削減分0.795÷1.
101=0.722になり、社会保障制度による給
付やサービスが約4分の1カットされることになり
ます。
この際の1人当たりの負担は、1.101÷0.79
5=1、38倍となります。この場合にあっても、
現在の38%増の負担になります。つまり、いずれ
の場合においても、2040年頃には、現在の約4
割程度の負担増は避けられないと考える必要がある
のです。
この4割増の負担は、平均的なサラリーマン世帯の
所得に占める社会保険料や公費負担が現在の約5分
の1から3分の1近くに増加する額に相当し、かな
り大きな負担増になることがわかります。
一方、「経済成長」は、必ず所得(賃金)に跳ね返
ってきますので、経済成長率が0.5%程度なのか
1%程度になるかによって、実質的な負担の面から、
“数十年後の世界がまるで違ってくる”ことがわか
ります。少なくとも負担者数の減少分ぐらいは「1
人当たりGDP」が成長することを祈るばかりです。
将来、国民の所得(賃金)が上がらない中で政府が
社会保障費の負担率引き上げを言い出せば、“政権
が吹っ飛ぶ”と言っても過言でなく、現時点で明ら
かにできないとの判断もあるのでしょうが、実際に
は、近い将来、所得(賃金)が上がらず負担が増え
る公算は大なので、国民の生活水準は低下する可能
性もあるでしょう。
当然ながら、保険医療費の自己負担率の引き上げ、
そして年金支給開始年齢の引き上げ及び給付額の減
額なども必須でしょうし、そうなると、生活保護受
給者が激増することも予想されます。このように考
えると、野口氏が指摘する「『高成長』前提は、未
来に対する責任放棄」はますます現実味を増してく
るのです。
 
最後に、(少し気休めになるかも知れませんので)
社会保障費の国際比較をみてみましょう。我が国の
社会保障給付費の対GDP比は、2018年で21.
5%、2040年頃には23.8%から24.0%
になると増加すると推計されています。しかし、O
ECD34カ国内の比較では、現時点では我が国は
20位前後にランクされます。フランスの対GNP
比の約32%を筆頭に、デンマーク、フィンランド、
イタリア、ベルギーと続き、いずれも30%前後を
占めています。ちなみに、アメリカの対GHP比は
約25%、イギリスは約22%で日本と同等の比率、
韓国は約11%の33位にランクされています。
社会保障費の国民の負担率では、OECD内のラン
クはもっと低く、約42%の27位です。ここでい
う負担率とは、所得に対する税負担と社会保障負担
を合わせた公的負担の比率を指します。第1位はル
クセンブルクで、負担率は約88%、以下、フラン
ス、デンマーク、ベルギー、フィンランドなどはい
ずれも60%を超えた負担率となっています。
この国際比較だけを参照すれば、我が国は「低負担・
中福祉国家」とも言えるでしょう。我が国の「社
会保障」は戦後まもなくスタートして、社会保障給
付費は50年余りの間に約100倍に成長しました。
そして、高齢化が進んで対GDP比でみればようや
くOECD各国と同レベルになったとの見方も出来
ます。
総じて言えば、少子高齢化に伴い、我が国は「社会
の支え合い構造」が大きく変化しつつあることは間
違いなく、「経済成長」が現状程度に留まる場合、
私たちの子孫の時代は、「年金」とか世界に誇る
「国民皆保険制度」の存続さえ危ぶまれる時代が来
ないとは限らないのです。
長くなりました。「少子高齢化問題」の補足はこの
ぐらいにして、次回以降、「農業・食料問題」に絡
む我が国の“厳しい将来”について考えてみましょ
う。
(つづく)
(むなかた・ひさお)
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ari0921 · 3 years
Text
起業家に牙をむく中国政府
アント上場延期はほんの序章、民間企業が新たな障害に直面
2020.11.18(水)
The Economist
中国の民間企業の行く手に、恐ろしいほどの障害が立ちはだかっている。
 2018年の後半に開かれた中国で最も裕福な起業家たちとの会合で、習近平国家主席は、国家が自国の民間セクターに宣戦布告したのではないかとの懸念を和らげようとした。
 それまでの1年間に、北京の官僚たちが扱いにくい企業経営者を次々に屈服させていたにもかかわらず、国家主席は、民間セクターで党の影響力を無理やり拡大しているとの噂は間違いだと断言。
「定心丸を飲みなさい(安心しなさいの意)」と熱心に説いた。
 この薬をそのまま飲み込むのは難しい。この会合以降、中国共産党は企業の人材採用や経営判断に、より積極的に関与しようとしている。
 そして国家は、事業を拡張しすぎた金融コングロマリット(複合企業)の強情な経営者たちを制圧した後、その矛先を国内のハイテク企業の億万長者たちに向け、あからさまに党を批判するなら容赦しないという姿勢を明確にしている。
 習氏はかねて、中国の社会・金融の安定を維持することを最大の関心事としている。
 大企業にタガをはめておくこともその計画の一環だ。国が今、急拡大を成し遂げるハイテク企業に全神経を集中しているとしても、特段不思議なことではない(右図参照)。
 中国の市場時価総額上位20社のうちハイテク企業は6社を占めているうえ、そのサービスの利用者は数十億人に達しており、ほとんどの市民の生活と財布に関係しているからだ。
土壇場で延期された大型IPO
 そうしたハイテク業界の報いは、中国最大のフィンテック事業グループへの警告のようなものから始まった。
 11月5日に予定されていた370億ドル規模のアント・フィナンシャルのIPO(新規株式公開)が、実行まであと48時間足らずというタイミングで規制当局により延期されたのだ。
 当初は、中国の国有銀行を以前批判した創業者の馬雲(ジャック・マー)氏への警告だとしか解釈されなかった。
 ところが11月10日、ハイテク企業を対象とする大部の新ルールの草案が発表され、中国政府がアントだけでなく中国のハイテク業界を丸ごと屈服させようと企んでいることが明らかになった。
習氏と国内の大物経営者との関係は、ずっと前から荒れ模様だった。
 習氏が2013年に国家主席に就任した時、引き継いだ企業システムはつぎはぎだらけの規制や積み上がる一方の債務、そして不正行為にまみれていた。
 習氏はもっぱら政府幹部を標的にした反汚職キャンペーンに成功すると、外国での高リスクな投資案件に巨額の資金を投じていたビジネスマンのグループに矛先を向けた。
 そうした投資には、米国のアミューズメント・パーク運営会社シーワールドや、ニューヨークの高級ホテル「ウォルドーフ・アストリア」が含まれていた。
 政府当局者らは、こうした事業買収の多くは資金を中国国外に持ち出す手段である、魂胆が見え見えだ、と述べていた。
憂き目に遭う実業家
 我こそは中国のウォーレン・バフェットなりとうぬぼれていたビジネスマンたちのなかには、刑務所に送られたり、もっとひどい目に遭ったりした人が大勢いる。
 ウォルドーフ・アストリアをはじめ、様々な資産を購入した安邦保険集団の呉小暉会長は2018年、金融犯罪に手を染めたとして18年間の懲役刑を言い渡された。
 ロシアの石油会社ロスネフチの株式を90億ドル相当分購入しようと試みた葉簡明氏は、2018年の前半に身柄を拘束された。消息はいまだに不明だ。
 かつて包商銀行を支配し、中国の政治エリートを相手に証券業を営んでいた肖建華氏は2017年、香港のフォー・シーズンズ・ホテルにある住まいで中国公安当局に拉致された。
 現在は、自分が築いた金融コングロマリットの解体作業で当局に協力していると考えられている。
 中国企業によるグローバル投資ブームは、当局の取り締まりによって突然打ち切られた。
 2016年には外国でのM&A(企業の合併・買収)が2000億ドルも行われていたが、2019年の実績はこの5分の1にも満たなかった。
また、民間企業は政府の圧力の下、これまでに何百億ドルもの資産を手放してきた。
 かつてドイツ銀行やホテル大手ヒルトン・ワールドワイドの株式を大量取得した航空運送会社の海航集団(HNAグループ)は、ここ数年間で200億ドル超の資産を売却している。
 安邦保険集団は国有化され、ウォルドーフ・アストリアは中国財務省の所有物になった。包商銀行は国に接収され、今年8月に破産申請を許可された。中国の企業グループによる欧州サッカーのクラブチームの買収もほぼ途絶えている。
 アナリストらは、安邦保険やHNAグループのような企業によるシステミック・リスクが習近平氏の監督下で引き下げられたように見えることを称賛している。
 中国国内には、習氏の失敗を敢然と批判する人はほとんどいない。
 批判した人々は厳しい仕打ちを受けている。中国共産党の古参党員で、国有不動産会社の経営者だったこともある任志強氏は今年の初め、複数の友人に送った書簡のなかで習近平氏を「裸の道化師」と呼んだ。
 すると今年9月、汚職と横領を働いたとして懲役18年の判決を言い渡された。
 中国共産党は民間企業への影響力を高めるために、もっと手の込んだやり方も駆使している。
「党建工作」と呼ばれる戦略の下、企業の経営判断が政府の方針に沿っているか否かについて意見できる党委員会を社内に設置するよう求めているのだ。
 民間が支配している上場企業では、この党委員会の設置数はまだ少ない。
 コンサルティング会社プレナムが中国の上場企業1378社を対象に実施した調査によれば、このうちの61%が民間支配の企業で、定款に党建工作の条項がある企業はその11.5%に過ぎない。
 これに対し、国有企業の間では同条項が90%の企業にあるという。
「パーティー」への誘い
 しかし、このような委員会はこれから増えていくように見える。
 習氏は9月、民間セクターに「党の周りで団結」するよう求めた。その翌日には、共産党に支配されている強力な組織、中華全国工商業連合会の葉青副主席がより詳細な要求のリストを提示した。
 このなかで葉氏は民間企業グループに対し、党主導の人事部門と、管理職の聴取を党に認める監視部門を設置することを求めている。
 すべての企業がこの影響を等しく受けるわけではないかもしれない。
「大企業の場合は、話し合いも何もない。党から持ちかけられたら、ハイとうなずくだけだ」。中国の民間企業と国営企業の両方で取締役を務めた経験を持つ経営コンサルタント、ジョー・チャン氏はこう語る。
 ただ、大企業ほど目立たず経済的にも重要でないほとんどの中小企業では、意思決定に対する国家の影響力よりも利益の方が重要になることから、党の支部はほとんど機械的に承認する組織になるだけだと同氏は話している。
 また、党の影響力は必ずしも歓迎されないわけでもない。
 党委員会を設置しているある企業の幹部は、党指導部の思考に近づいていくことで、「それに従った企業経営が可能になる」と述べている。
 国家と衝突する可能性を排除できるのだ。
 シンクタンクのピーターソン国際経済研究所(PIIE)のホアン・ティアンリー氏は、今のところ、党委員会が企業の利益を損なっていると示唆する証拠はほとんどないと指摘する。
 しかし、党の影響力が強まれば、それによって妨げられる企業活動が出てくる恐れもある。
「イノベーションが抑制されるかもしれない。官僚的形式主義がさらに顕在化することもありうる。利益志向の企業が目標達成志向になり、利益を犠牲にすることもありうるだろう」(ホアン氏)。
大量の新規制がもたらす脅威
 党委員会が近く、ハイテク企業において、これまでよりも大きな役割を果たすようになる可能性はある。大量の新規制はそれ以上に直接的な脅威をもたらす。
 アントは決済・貸付プラットフォームを介して何億もの人々とつながっている。何千億ドルもの資金が貸し付けられたり使われたりするパイプラインをコントロールしているうえに、中国のほかの巨大ハイテク企業と同様に、顧客についての貴重なデータを保有している。
 そのような力が民間の手中にあることが、中国共産党と起業家たちとの間に緊張関係をもたらしている。
「これらの資源は厳しく管理しなければならないし、現在の体制のみならず政治指導者個人に対する企業・起業家の政治的忠誠心もしっかり維持する必要がある」
 キングス・カレッジ・ロンドンで教壇に立つスン・シン氏はこう指摘する。「アントの一件は、この暗黙のロジックが表に出ただけだ」。
 アントのIPO延期の引き金になったのは、少額のオンライン貸付を対象とする新規制の草案だった。
 アントにとっては、最大の収入源となっている同社の貸付プラットフォームを狙ったとしか解釈できない内容だ。
 馬氏は、10月に行ったスピーチで中国の銀行を「質屋」にたとえたことを後悔するかもしれない。この発言は上級幹部らを激怒させ、アントのIPOの唐突な延期にも寄与したからだ。
 しかし、政府が11月10日に独占禁止ルールの強化案を公表したことは馬氏のせいではない。もっとも、馬氏のおかげで公表時期が繰り上がった可能性はある。
影響力を求めて
 新しいルールはこれからしばらく検討されるが、導入されればインターネット企業や電子商取引企業に、明示的な独占禁止規定が初めて適用されることになるだろう。
 これらの企業群は、中国の独占禁止法の適用を長年免除されているわけではないが、同法によって訴えられたこともない。少数の企業がデジタル経済の大部分を支配できているのはそのためだ。
 また今回の新しいルールは、中国のハイテク企業による外国での資本調達を可能にしてきた構造にも狙いを定めている。
 外国人投資家から直接出資を受けることが禁じられていたため、資金に飢えたハイテク企業はほぼすべて、外国の資金と中国市場をつなげる変動持分事業体(VIE)という手法を用いてこの規制を20年も前から回避してきた。
 具体的には、まず外国人投資家がオフショアで持株会社を設立し、そこに資金を投じる。そしてその持株会社が中国国内の企業と契約を結び、原資産から生じる経済的利益を受け取るようにする仕組みだ。
 中国当局はこのVIEの仕組みを長い間黙認してきたが、法的に完全に認めているわけでもない。
 そのため外国人投資家は、自分が投資した資産への請求権を中国で主張することが事実上できない。
 外国のファンドはこの枠組みに以前から慎重な見方をしてきたが、中国のハイテク企業の大半はいまだに、外国での株式上場に際してこの仕組みを利用している。
 新しい独占禁止法が導入されれば、ハイテク企業はVIEの利用に際して認可申請を行うよう求められるかもしれない。
 そうなれば、VIEは今後も承認されるのか、外国資本を中国のハイテク企業が受け取ること自体認められるのか、という疑問も浮上する。
 国家がVIEに対する暗黙の承認の撤回をちらつかせて企業やその株主を脅すこともあるだろう。
 歯に衣着せぬ物言いをする馬氏も、新しいルールが導入されたらおとなしくなるかもしれない。馬氏はこの問題について公の場では何も語っていないが、アントは低姿勢になり、新しい規制を受け入れることに同意している。
 習氏は今回、どんなに大きな企業であっても、どんなに大規模なIPOであっても、国家に盾突くことは許されないということを明確にした。
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