Tumgik
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みんなバーに帰る(パトリック・デウィット/東京創元社)
献本でいただいた1冊となります。 いわゆる“泥酔文学”に分類されるとか。
“泥酔”というフレーズが示すとおり、 ひたすらに“ダメ人間”の集い、といった風です。
といっても、教訓臭いわけでもなく、 ある意味突き放した視点で描かれているのかな、と。
主人公はとあるバーのバーテンダー。
彼自身がイロイロとダメめ要素を持ってはいるのですが、 物語の冒頭はあくまで“観察者”としての立ち位置です。
彼の働くバーに来る客たちの“ダメ”ぷりといったら、、 微笑ましくもあり、あきれ果てるのもあり、様々です。
日々、困らせるようなことばかりですが、 どこか憎めない客ばかり、だからこそ“帰る”のでしょうか。
中盤以降、主人公のバーテンダーもまた、 “呑みこまれて”いってしまうのですが、、うーん。
端から見ると転落していくのでしょうが、 本人にとってはどうなのでしょう、、これもまた一つの形、なのかも。
なんて愚にもつかない事を考えながら、つらつらと。
素面で読むよりは、バーボン片手に酩酊しながら、、 アテの一つとして楽しむ、それもまた“アリ”かもしれません。
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堕ちたる者の書(タニス・リー/創元推理文庫)
献本でいただいた1冊、久々のタニス・リーさんです。 時代は中世ヨーロッパ、舞台は架空の都“パラディス”。
分類はファンタジーとなるのでしょうか、、 中編が3つ、薄墨に隠されたような物語たち、です。
1つは男女の性が混雑としたままに、背徳とそして、 生と死の境目を行ったり来たりする「紅に染められ」。
1つは昼と夜で2つの貌のみならず、 2つの性別をも使い分ける「黄の殺意」。
1つは性差をも超える美貌を持つ役者が魅入られた、 この世ならぬ存在を描いた「青の帝国」
共通しているのはいずれも、、
“耽美”と“倒錯”、“退廃”と“背徳”、 そんなフレーズに彩られた物語であること。
読んでいるとどこか、薄闇の中を分け入っていくような、 そんな夢うつつにくるまれていくような感じになります。
読み手は正直選ぶかな、と。
決して現実ではありえない物語、、 でも心奥ではもしかして求めている、のかもしれない物語。
それは性と生、そして死との狭間が曖昧で、 時として行きつ戻りつするからかも、知れません。
この世ではないどこか、その世界に耽溺したくなる、そんな1冊。
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国境のインテリジェンス(佐藤優/徳間文庫カレッジ)
元は2年前の本となります。
主な題材は2011年から2013年ころの、政局や国際情勢、 国内的には民主党崩壊と第2次安倍政権の始まり辺りまで。
インテリジェンス、対ロシア関係、沖縄問題、特亜関連、、 軸となる視座は他の著書とも相違なく。
知の巨人とも言われる事が増えてきた佐藤優さん、 この方の“考え”を俯瞰するのにちょうどいいかな、と思います。
興味深いのは、心情的に、現在よりも若干“安倍さんより”との点、 これは“時の政権”には常に批判的でいるという感じでしょうか。
それでいて、認めるところは認める、 知識人として、至極真っ当なスタンスかと。
批判的な意見がないとの状況、それは危険と思いますから。
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日常を袋詰めにして、海に捨てた罪(間武/コシーナ文庫)
これは“詩”、なのでしょうか。 表紙も題名も、耽美系な感じです。
一篇が三行、ただひたすらにそれが続きます。
どこかに置き忘れた“記憶”、 それを掘り起こしてもくれそうな、なんて。
なんとなくルバイヤートを思い出しますが、、
つらつらと、グラス片手に眺めていく、 そんな風に堪能してみたいかな、とも。
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あなたに褒められたくて(高倉健/集英社文庫)
高倉健さんの、エッセイ集。
読書会で紹介していただいて、 その後、とある本屋の平積みでフラッと。
なんとも人となりが偲ばれる内容で、 何事にも真摯だったのだなぁと、あらためて。
個人的には「鉄道員」や「南極物語」、 「ブラックレイン」が、印象に残っています。
久々に何か借りてこようかな、なんて。
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ヒゲのウヰスキー誕生す(川俣一英/新潮文庫)
朝ドラ「マッサン」のモデルともなった、 竹鶴夫妻の生涯を追いかけたノンフィクション。
“日本で本物のウイスキーを造る”、 その想いだけでスコットランドに渡った、竹鶴氏。
時代は大正、慣れない異国の地で、試行錯誤を重ねつつ、 一つ一つ、ウイスキーの真髄を紐といていきます。
帰国してからも、決して順風満帆なわけではなく、 周囲の無理解や資金繰り、立地など、様々な困難にぶつかります。
 “一人前のウイスキー原酒に成長するまで、   辛抱強くいとおしんでやること。”
それでも決してあきらめることなく、プリンシプルも見失わずに、 その夢は寿屋(現・サントリー)と、ニッカにて結実します。
“酒”とはこんなにも慈しんで造るものなのか、 なんて、『風のマジム』ともシンクロしながら、、
あっという間に読んでしまいました、面白かったです。
ウイスキー、ここ最近ご無沙汰でしたが、 何かしら試してみようと、そんな風に感じた一冊です。
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入社1年目で頭角を現す人、沈む人(山口伸一/ぱる出版)
久々の献本でいただいた一冊。 題名の示すとおりに、“新社会人”向けな内容。
著者の山口さんは、セミナー運営がメインなのでしょうか、 全部で55編、その経験からくる“エッセンス”がてんこ盛りです。
一つ一つ、さらっと読める分量ですが、 社会人として、ごくごく基本的な内容がまとめられています。
 ・「ありがとう」という言葉が大事なコト  ・お客様から給料を貰っているコト  ・コンプライアンスというコト  ・「苦手な人」と仕事で付き合うというコト  ・仕事を選り好みしないというコト  ・身だしなみを整えるコト  ・否定する言葉を用いないとのコト  ・「5S」「PDCA(I)」を意識するコト
などなど、ちょっと懐かしいような、、 そして、いつの間にか忘れていたようなコトが、たくさん。
私自身、昨年5月に転職してそろそろ1年目の終わりも見えてきました。 いろいろと思うところもあり、考えることもありますが、、
基本に立ち返って見つめ直しておきたいと思います。 まずは“顧客目線”、なんてことを思い出した一冊です。
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イスラーム国の衝撃(池内恵/文春新書)
著者の池内さんは、長年、中東地域の政治や、 イスラームの政治思想を研究をされていて、、
なんて風に書くと、一見とっつきにくい感じですが、 非常にわかりやすく、丁寧にまとめられています。
当初、池袋のジュンク堂で探していたのですが、 新書にしては珍しく売り切れていて、地元で発見しました。
そういった意味では、ちょうど時節に合致しているのかなと。
その内容は、第1次大戦後の秩序形成からイラン革命、 湾岸戦争、9.11テロ、そして「アラブの春」。
この辺りをざっと俯瞰しながら、 イスラーム社会の質の変容をまとめられています。
キーワードは“グローバル・ジハード”、 明確な指導者を持たない拡がり、とはなるほどと。
興味深かったのは、こちらと前後して読んでいた、 『新・戦争論』や『賢者の戦略』とシンクロしている点。
アンダーソンの言う“遠隔地ナショナリズム”とも関連する、 “新しい国家”のカタチなのか、どうか。
ん、個人的には“イスラーム法学”が、 次のキーワードとして、気になっています。
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ドリームダスト・モンスターズ(櫛木理宇/幻冬舎文庫)
『ホーンテッド・キャンパス』の櫛木さんによる、 “悪夢”を題材とした、連作短編な物語。
主人公は、夢に潜る能力を持つ壱と、 その壱に助けられることになる、晶水。
2人とも高校生ですが、カップル未満な感じで、 なんとも初々しい感じなのは、ホーンテッドと同じですかね。
その一方で、変わらずに人の悪意の描きように、ゾッと来ます。 そのギャップが、個人的には非常に好みです。
元ネタ的には「サイコダイバー」になるのでしょうが、 サラッと楽しく読めました、続きも楽しみですね~
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賢者の戦略(手嶋龍一&佐藤優/新潮新書)
佐藤優さんと手嶋龍一さんの“世界を読み解く対談集”、第3弾。 相変わらずに2匹の獣がじゃれ合うかのような面白さです。
題材は、ウクライナ、イスラム国、東アジア、集団的自衛権、 そしてまっとうな意味での“愛国心”、な感じで。
興味深かったのは、いわゆる“公開情報”を分析するだけで、 国家が生き抜くための“インテリジェンス”を抽出できるとの点。
そして、右派にも左派にもそれぞれに批判を加えながら、 見失ってはいけないのは愛国心であろうとは、なるほどと。
いずれにせよ、ブレない“軸”を作っていかないとなぁ、と。
ん、「イスラム国」の傍若無人さから始まった今年、 この1年を生き抜くためのヒントがちりばめられているのかな、なんて。
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バンクーバー朝日(テッド・Y・フルモト/文芸社文庫)
100年前にカナダに存在した日系人野球チーム、 伝説として語り継がれてきたその存在は、2002年に甦りました。
伝説の始まりは1907年、日系人排斥の暴動から、 その後、1914年にチームが立ち上がり、、
1926年には、カナダ・リーグで優勝するまでになります。
あくまでフェアプレーを突き通すチームカラーは、 日系人のみならず、白人社会にも影響を与えながら。
著者はテッド・Y・フルモトさん、 チーム初期を牽引したテディ古本さんの息子さん(日本在住)。
文章は粗削りながら、非常に読み応えがあり、 息をのむようなプレーの描写は、グッと迫ってきました。
そんなチームも、先の大戦の影響でばらばらとなります、 カナダ政府による、日系人の強制収容所送りによって。
この行為に対し、カナダ政府が正式に謝罪したのは、1988年、 そして、カナダ野球界で「バンクーバー朝日」が殿堂入りしたのが、2002年。
寡聞にして、知りませんでした、、1988年も、2002年の出来事も。 まだまだ知られざる物語はあるのだなと、あらためて。
そうそう、『KANO』は台湾における差別の超克でした、 時期的には被っており、先の大戦が影を落としたのも同じ。
どちらも映画にもなっているようで、 機会があれば是非、見比べてみたいところです。
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食卓の情景(池波正太郎/新潮文庫)
ブクブク交換でいただいた1冊。 池波さんの“食”へのこだわりがつまっています。 もうただひたすらに、美味しそうです。 津々浦々の食べ物と、それにまつわるエピソード。 結構“やんちゃ”してたのだなぁ、なんて風にも。 池波さんの著作群からわきたつ“食の匂い”、 それは実体験から来ているのだなぁ、とも。 昭和の香りを色濃く感じる、そんな1冊です。
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官僚の責任(古賀茂明/PHP新書)
311の後、2011年7月に出された1冊。 元経産省のキャリア官僚としての視点から、 日本官僚システムの“病巣”について、言及されています。 といっても、小難しい感じではなく、 わかりやすくまとまっていて、興味深く読めました。 海堂尊さんの『無頼派宣言。』ともリンクし、 官僚の不作為による、闇の部分がつらつらと。 もちろん、メリットについてもまとめられていて、 ただ感情的に叩いている、というわけでもありません。  “「国のこと���最優先に考える」ように、   若いうちから教育できるシステムをつくる” 官僚は基礎能力も高く、当初は志高い人が多い、 そんな方々が入省後にはじき出されていくのが問題、とも。 農協や日教組に代表される様々な既得権益者への言及、 この辺り、佐藤優さんによる外務省批判とも通じています。 ん、“霞が関は人材の墓場”とは、よくいったものだなぁ、と。
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月夜の島渡り(恒川光太郎/角川ホラー文庫)
沖縄を舞台にしたホラー、になるのでしょうか。 全部で7編の独立した短編集となっています。 共通しているのは“異世界”、そして“死の匂い”、 中でも印象的であったのは“フーイー”の物語。 転生を繰り返しながら“琉球”を俯瞰する一人の女、 歴史に翻弄されているとも見ると、なかなかに興味深く。 なにはともあれ、沖縄に行きたく、なりました。
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ビブリア古書堂の事件手帖6(三上延/メディアワークス文庫)
シリーズ第6弾、今回も長編な感じで。 最初の事件と同じく、太宰を題材としていますが、 そこからの、主人公2人の成長も読み取れるような。 一葉の写真が語り始める物語と、込められた想い、 そして2人を取り巻く点と点のつながりが密度を増していきます。 これもまた“運命”と言ってしまえるのかどうか、 小説ならではの物語の在り様かな、とも。 残り1巻か2巻とのことで、いよいよクライマックス、 甘酸っぱい要素も若干増えてたりもします。 太宰治に夏目漱石、掘り返してみようかなぁ、なんて。
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愛国論(田原総一郎&百田尚樹/KKベストセラーズ)
田原総一郎さんと百田尚樹さんの対談集、 題名の示すとおりに、題材は何ともストレート。  ・大東亜戦争について  ・自虐史観について  ・中韓との距離感について  ・朝日新聞について  ・国を愛するということについて 田原さんは「左翼」、百田さんは「右翼」と、 一般的にはそういった認識かと思います。 異なる視座を並べると、こうも興味深くなるのかと、 多様な価値観に触れることは大事だなぁ、と感じます。 もちろん、自分の軸がしっかりないと、 あっちこっちにふらついて終わってしまいますけども。 そんな中、あらためて感じたことは、日本での、 いわゆる「左翼(リベラル)」は“いびつ”だということ。 国際標準でみると、右翼も左翼もどの国にも存在するが、 どちらも、「国を愛する」という基本精神は共有しています。 その上で、手段の違いとなるのが、一般的です。 ところが、日本の「左翼」は著しくズレています。 ん、朝日新聞の在りようが典型的ですが、 “日本が嫌い”というところを起点にしています。 そういった意味では何とも異質な存在です。 そして、田原さんはそういったのとは、 一線を画する方だなというのもなんとなく。 これは、佐藤優さんとの対談なんかからも、です。 これまでは余り著作に触れてませんでしたが、 機会を見つけて手に取ってみようと、考えています。
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KANO(魏徳聖&陳嘉蔚/翔泳社)
台湾で大ヒットした映画のコミカライズ。 舞台は戦前、題材は甲子園、主人公は台湾代表。 弱小と蔑まれていた台湾のとある学校が、 一人のコーチをきっかけに台湾の代表となり、甲子園に出場するまで。 史実をベースとして、八田與一さんも織り込みながら、 台湾に“野球”という文化が定着するきっかけとしても。 なお、軸となる学校“嘉農(嘉義農林学校)”は、 漢人(台湾人)、蕃人(高砂族)、日本人(内地人)という、 3つの民族が混在していたとの点が、興味深く。 そして、その中で日本人による差別の風景も描かれています。 ですが、そんな風潮に乗ることなく、ただ、その能力と、 強い想いだけでチームを組み立てたのもまた、日本人でした。  “球(たま)は霊(たま)なり” 決して“あきらめない”、その気持ちを叩き込んだのは、 近藤兵太郎という、一人の日本人。 1920年に、世界で初めて人種差別撤廃を訴えたのは日本ですが、 それが決してあまねくオーサライズされていたわけではないと。 同時期にカナダで差別を受けていた日本人の野球チーム、 それを題材にした『バンクーバ朝日』と併せるのも面白く。 ちなみにこちらの映画も日本で公開されるようで、 永瀬さんや坂井さんが出演されているようです。
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