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#快速湯けむり号
ren19790209 · 2 years
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【僕の夏休み】 鉄道開業150周年記念レトロラッピング車両を撮りに行った。 #仙台 #仙台駅 #鉄道 #鉄道開業150周年 #快速湯けむり号 #気動車 #キハ110系 #撮り鉄 #ディーゼル #ターボ #タービン #タービン音 #過給音 https://www.instagram.com/p/ChgdM7shE7G/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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toytraint · 7 months
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鳴子峡の快速湯けむり号
#jr東日本
#陸羽東線
#鳴子峡
#紅葉
#キハ10系
#気動車
#奥のほそ道ラッピング
#jr_east
#rikuu_line
#naruko_valley
#red_leaves
#okunohosomichi_lapping
✱青空だったら満点だったんだけど…
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myonbl · 3 months
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2024年2月20日(火)
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今日は昼と夜、落語会の連チャンだ。まずは天王寺まで走って「ハルカス寄席」第1部、いったん帰宅してからツレアイと一緒に徒歩10分の京都リサーチパーク・サイエンスホールへ、「第60回七本松落語会」へとやってきた。昼は露の新治師匠、夜は柳家小ゑん師匠、最もお気に入りの噺家二人を同じ日に楽しめたのだ。今年の春休みは値打ちがあるなぁ、いやほんと。
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5時30分起床。
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朝食、洗濯、弁当*3(私以外の分)。
可燃ゴミ、30L*2&45L*1。
ヤクルトさんから野菜ジュースを購入する。
ツレアイは自転車で出発、午前中に訪問2件。
あここれ片付けをして、JR京都駅へ出発。
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まずは杵屋@ポルタで腹拵え、湯葉餡かけうどんをいただく。
新快速で大阪→天王寺。
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近鉄百貨店9階にある<SPACE 9>で開催されるハルカス寄席、今日は後の予定があるので第1部のみ。新治師匠のネタは上方落語協会による台本コンテストの優秀作品、初めて聴くことができた。
大阪駅15時の新快速に乗車、自宅に戻る。
息子たちにはレトルトカレーで夕飯を済ませるように指示、ツレアイと一緒に京都リサーチパーク1号館・サイエンスホールを目ざす。
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小ゑん師のTwitterからTweetを借用して報告に代える。
21時過ぎに帰宅、すぐにあり合わせで肴を揃え、燗酒で乾杯する。
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録画番組視聴、<舟を編む>。
(1) 初回放送日: 2024年2月18日 岸辺みどり(池田エライザ)は、大手出版社・玄武書房のファッション誌編集者。仕事熱心だが、ある日突然、辞書編集部への異動を命じられ、知らない言葉にやたら食いつく上司・馬締光也(野田洋次郎)や、日本語学者の松本先生(柴田恭兵)、社外編集の荒木(岩松了)らと共に、玄武書房初の中型辞書「大渡海」の編纂に関わることになる。慣れない辞書作りに戸惑うみどりには、同棲中の恋人・昇平(鈴木伸之)が唯一の癒しだが…。
いやぁ、面白そうな予感。
片付け、入浴、体重は1,700g増、あちゃー!
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久しぶりの12,000歩越え、水分は1,460ml。
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quiye · 9 months
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夏休み2
金曜日、都内に用事があったのでお昼の電車に乗って向かった。
横浜と川崎のあいだでは何もせず窓を見ていたのだが、空が青く、入道雲が白く、はっきりした輪郭のそのコントラストがとても綺麗だった。今年はこんなはっきりした入道雲を見た数が少ないと思った。
爆発的に高さがある入道雲を、地元にいた頃はよく見ていた。というか学校の登下校中に見るものといえば道路か雲か田んぼくらいしかなかったのでそうなるのも仕方がない。
夏休みは山登りに使ったので、延長戦として岬で海と雲を見るとバランスが取れると思った。
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土曜日、家から東方向には先週行ったので西に向かうことにした。はっきりとした行きたい場所はないが、ちょっと形が気になっている真鶴岬を目的地にした。最速で一時間で着くらしく、面白くなくても後悔しない距離だ。バイクの練習にもなる。
相模川にかかる橋の温度計は、暑さで壊れたのか気温2度を示していた。
行きはできる限り有料道路を使うようにした。日光に当たる時間を短くして体の負担を下げたいのと、有料道路とはどんなもんか知りたかったのだった。間隔が全然均等でない料金所を3回通過した。
「岩」という名前の出口を下りて下道を���った。
事前にナビが計算した通り、一時間程度の運転で岬についた。バイクを停めて自販機でコーラを買い、海まで歩いた。
この辺りは過去に岩を切り出して運び出すことが行われていたらしく、海岸の一部が断ち切りになった岩だった。砂浜はなく、当たったら怪我するような岩場が海に続いていた。
天気が良く、熱海の初島、伊豆の大室山や伊豆大島、さらにその先の島や房総半島まで見えた。
遠くの南の海上に入道雲が敷き詰められていたが、下部が見えず、上部だけが海から現れているような形に見えた。もしかしたら地球が丸いから、下部が見えないのかもしれない。昔の人も「遠くの雲は下部が見えないが、近くに来ると下が見える」ということから地球は球体であると考えていたのだろうか。
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駐車場に戻る途中、集団で列になって海に向かって歩く一行とすれ違った。楽しそうに話す人もいれば、無表情でつまらなそうな若者もいた。自分はこういうときに逆張りをするタイプだよなと自分のことを考えた。
汗でベージュのズボンが暗く変色して気色悪かった。自販機でお茶を買って飲んだ。
開いている定食屋を探して湯河原まで走り、温泉とレストランが融合したような施設で温泉には入らずアジの刺身定食を食べた。地球の裏で行われている陸上競技の様子を大型テレビで見ながら食べた。テレビは二つあり、もう一方のテレビでは24時間テレビが映されていた。40人近くが座れる店の中で客は自分一人だった。
雨雲が近づいてくるようなので、降られないようにそそくさと帰る支度をした。うねる山道を30分ほど走った。アクセルと体重移動で車体をコントロールしながらバイクを駆っていくのは自分の体が拡張されているように感じられて楽しい。こういう感覚はピアノが弾けたり絵が描けたりすることに近いのかもしれないと思った。
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運転していたらやっぱり雨に降られることはないんじゃないかという楽観的な気持ちが大きくなり、パスタが切れていることを思い出したので二宮のスーパーによってパスタと梨を買った。
海の果ての方は暗い雲がかかっておらず、夕日が当たって雲が黄金色に輝いていた。このコントラストが鮮やかで忘れないでおきたいと思った。美術館で見た西洋の風景画のやけに立体的な雲とそっくりだった。
134号を東に進むと路面が暗い色に変わった。色だけでは濡れているのか、コンクリート敷きたてなのか違いがわからなかったのでバイクから足をおろして地面につけて、乾いた路面のグリップではないことを確かめ、本当に雨が降ったのだと確認した。その5分後くらいに大粒の雨が思い切り降ってきた。ずぶ濡れになって運転したことが今までなく、このまま安全に帰れるか不安で心細かった。左の車線に移ってゆっくり走った。
殴られるような雨のなかでバイクを運転すると肌に濡れた服がまとわりついてひどく不快で、しかも夏でもわりと冷えることが判明した。
自分は雨の中にいるのにそれほど遠くない大山の山体ははっきり見えていたので、おそらく自分がいる周りだけが夕立に降られているのだとわかり、みじめな気持ちが加速した。
でも周りの同じようなライダーたちもずぶ濡れで、こんなことで一体感を感じた。
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usickyou · 2 years
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新世界より
 朝、目を覚ますと一人きりだったから無性に泣きたくなった。結局泣きはしなかったけど、香りや残像をもぞもぞと抱きしめているとやけに固い手触りがあって、取り上げたのは小さな鍵だった。  名前を呼んでそれが彼女じゃないことを確かめると、くっついていたメッセージカード『メリークリスマス(ハートマーク)』を見て今日がクリスマス・イブだと思い出した。サプライズと寒さのたたかいは辛うじて前者に旗が上がって、私はあたたかいベッドから抜け出す。スマートフォンを(ソファの下に転がっていた)触って、バッテリーが切れていたから電源に繋いで、起動画面を眺めているうちにタブレットを持っていたことを思い出した。探しているうちにスマートフォンが「どうぞ」と震えたからタブレットのことはまた忘れて、電気ケトルに水を流し込む。するとキッチンにはほとんど毎朝飲んでいるミルクココアとマグカップ、それとスプーンの用意がしてあっ���、私はまた泣きそうになる。ケトルのスイッチを切って、水を入れたやかんを火にかけた。カチカチと鳴る音やガスの匂いで、少し、意識がはっきりとしてきた。  ココアを傾けながらスマートフォンに触って、それがコインロッカーの鍵であることを突き止める。それ以上はどうしようもないことも、同時に分かった。解に至るには条件が不足しているし、解を作るには彼女という変数が摩訶不思議すぎて、もう一度、ココアを口にした。オーブントースターがチンと鳴って、呼び鈴がチリンチリンと鳴って、「わお、しきちゃん人気もの」一人言とマグカップ、かりかりのトースト(焦げすぎたかもしれない)と連れ立って玄関へ向かった。
「カボチャの馬車です」玄関の扉を開けると周子ちゃんがいて、そう言った。私が黙ってトーストをかじると、彼女はもう一度くり返した。「カボチャの馬車です」 「まあ、上がってよ」 「ありがとー」 「もう一枚焼いてるけど、食べる?」 「メープルシロップでぜひ」 「ココアもどう、お湯沸いてるよ」 「いい子やねー」 「ふふん」私は、そういう習慣がぜんぶもらいものだったから、本当に嬉しかった。「灰は被らなくっていいの?」 「平気へいき、っていうか新車だから助かる」 「そっか、にゃはは、そっか」 「なんで二回言ったの」  ゆっくりと朝食を食べて片付けを終えて、支度を終えると車に乗り込んだ。彼女の車は白いコンパクトカーで、新しいものだけにある不確かな匂いがした。ステレオからはFMラジオが、今は『Morning Train』という歌が流れていて、私はオーディオを切って少しだけ窓を開ける。 「ごめん、めっちゃ寒い」 「あたしもそう思う」だから窓を閉めて、前方に切り開かれていく景色を眺める。『恵比寿 3km』もう一つの駅らしい名前は見逃した。「寒冷期か、クリスマスかの影響だねえ」 「クリスマスといえば」彼女は言う。グレーのロングカーディガンをまくってみせると、冬の日差しが真っ白な腕をくすぐるみたいに降り注いだ。「最後に親からもらったの、なんだった?」 「シュタイフのテディベア」私は答える。 「それ何年前?」 「去年。一昨年は航空券」 「なるほどねー」 「周子ちゃんは?」 「あたしは布。三年? 四年前かな?」  車列に捕まって、離されて、私たちは思い通りの速度で言葉を交わす。窓の外に雪がちらついた気がしたけど、空はよく晴れているので勘違いだろうと思った。 「欲しかったの?」 「そう思われたのかな、そうして欲しかったのかも。とりあえず枕カバー、作ったんだけど」 「ふんふん」 「さ、着いたよ」  恵比寿駅のロータリーに入る手前の道で、車が止まる。私は鍵とSuicaだけを渡されて、ほとんど追い出されるみたいに車内を後にした。冷たい風が吹いてまたベッドに帰りたくなったけど、そこはもうとっくに冷えてしまっているだろうから簡単に諦めがついた。 「場所わかる?」  彼女が訊ねる。私は、駅の内部構造を思い出して、コインロッカーがあるのは一箇所だけではないことに気付いたから、答える。「ぜんぜん」 「教えてあげよう」彼女は思い出したみたいにハザードランプを押して、笑う。「駅に入って駅員さんに聞く。オッケー?」 「オッケー」 「よしよし、じゃあまた後でね」 「うん」彼女がそう促すから私はドアを閉めて、それから気になっていたことを思い出す。ガラス窓をノックして指で地面を指すと、機会仕掛けの滑らかさで窓が滑り降りた。「何色だったの? 布」 「さあ、どうだったっけ」 「そっか、思い出したら教えてね」  手を振って、彼女と彼女を乗せた車が遠ざかるのを見えなくなるまで見送った。左折する直前でハザードランプが点滅を止めて、私は、手づくりの枕カバーと彼女の寝姿を想像してみたけれど、そう言えば何度か遊びに行った彼女の部屋にそんなものはあっただろうか。私が頭を沈めたのは、既製品ではなかっただろうか。本当に、クリスマスプレゼントは存在したのだろうか。
 駅員さんはとても優しくて、私を改札口からコインロッカーまでエスコートするみたいに導いてくれた。とはいえその距離はほとんど目と鼻の先という感じで、さすがに申し訳なくなって「ありがとうございます」と深く頭を下げると、「良いクリスマスを」と返して彼(でっぷりと出たおなかにはホッキョクグマじみた印象があった)は改札口へと帰っていった。さすがにドラマチックすぎて、少し、声をころして私は笑う。それからコインロッカーを開くと、そこにあったのは二枚の五線譜だった。  最初、逆さに持っていたことに気付かないくらい私は音楽に明るくないから、タイトルも詩もない音符や記号の羅列を見てもそれが何の曲なのか分からない。だけど、その緩やかに流れる川みたいな音符の配列が単純に綺麗で、しばらくじっと眺めた。きっと、こんなに綺麗な形なんだからいい音楽なんだろうって思う、それは、答え合わせが怖くなるくらいに強い気持ちだった。 「まだ夢の世界にいるの?」振り返ると、奏ちゃんがいた。黒のロングコート(お気に入りらしくて今年はよく見る)の袖が揺れたのは、ホームに滑り込んだ電車の影響だと思った。「キスが必要かしら」 「ちょーだい」私は彼女の頬に唇で触れる。五線譜で隠してはいたけど、白昼堂々、大きい駅の真ん中、私たちはアイドル同士。それはあまりにスキャンダラスな光景のはずなのに、誰も私たちを見ていない。それほどにクリスマスは世界中を虜にしているらしかった。「目、覚めたかも」 「何よりね」こともなさげに私の頬に触れ返す、彼女を見て私はなんとなく寒そうだと思う。「もう、夢には戻れないけれど」 「奏ちゃんも、カボチャの馬車?」 「どういうこと?」 「周子ちゃんが」私が説明すると、彼女はそれはそれは愉快というように笑った。 「残念、私は継母ね」 「イジワルする?」 「そう。甘やかしたりしない」  おいで、と踏み出した彼女にしたがってJRの改札を背にした。エスカレーターを降りて地下へ、日比谷線の改札をくぐってやっと、私は訊ねることができた。 「ロッカー、あそこじゃなくて良かったよね」 「本人に言ったら」  ちょうど滑り込んだ地下鉄に乗って、私たちが運ばれていく。今日はカレンダーの上では平日だったので、車内はそんなに混んでいなかった。なるべく端の方を選びながら、ちらちらと向けられる視線を感じて、変装とか、した方が良かったって今さら思った。 「ねえねえ奏ちゃん」 「どうしたの」 「目立ってるね」 「そうね」 「変装とかいいの?」 「堂々とすればいいわ」  そう言って、彼女はスマートフォンを手にして何か入力し始める。やがて画面を向けるには、こ��いうことだった。 『次の駅で降りましょう』  だから私たちは六本木の駅で電車を降りて、降車する人波が過ぎ去るとトイレへ駆け込んだ。そこに誰もいないことを確かめて、彼女は大きく溜息を吐く。 「ごめんなさい、志希。手間かけちゃったね」 「やっぱり、変装したい?」 「しなきゃダメ」 「そっか、だから奏ちゃんが一緒なんだね」 「そ、志希、そういうの苦手でしょう」 「お手数をかけます」 「いいの」彼女は私を見て、続けた。「そのままで、いいよ」  その目がやけに優しくて、不意に私はどうしようもなく嬉しくなった。喉が乾いて、落ち着かなくなった指先で自分の頬に触っていたら、彼女がふっと頬を緩めた。「なに、その仕草」
 それからまた、私たちは同じ方向へ進む電車に乗り込む。今度は彼女が持っていたマスクや帽子を借りて(実は慌てててさっきは忘れてたの、とマスク越しに彼女は言った)、それなりに視線は防げているみたいだった。  十分くらいして、銀座駅で電車を降りた。車内からパンケーキフェア(どうやら明日で終わりらしい)の話題を続けながら、私たちは階段を上って外へ出る。地下へ吹き込んでいた風の冷たさは日差しの柔らかさに少しだけ溶けていったけど、それでもとにかく寒かったから、私は彼女に身を寄せる。街の中には同じようなかたちをした人たちがたくさんいて、景色に混じるには意外とうまい方法だと思えた。  大通りを一本、もう一つ、外れた路地へ入るとそれだけで喧噪は消失した。彼女のスマートフォンを覗き込んで、地図上では目的地に着いたらしいから顔を上げると、ちょうど、美嘉ちゃんがバイク便から何かを受け取っているところだった。 「あ」  音は聞こえなかったし口もともマスクで隠れていたけど、そう言ったのはよくわかった。面白そうな匂いがして、口角は自然と上がる。 「また、後でね」  奏ちゃんはそう言って、さっさと美嘉ちゃんを通り抜けて(何か言葉を残して)、姿を消した。路地裏に残された私と、後ろ手に何かを隠した美嘉ちゃんは見つめ合う。運命の相手か親の仇みたいだと思いながら私が近付くと、彼女は観念したみたいに隠していたものを差し出した。「はい、これ!」  それは円柱形の白い箱で、開くと中には同じように白い(茎まで!)のバラが一輪入っていた。一重咲きの花弁がやけに愛らしくて、私は美嘉ちゃんを抱きしめる。クリームシチューみたいな色をしたダッフルコートの触り心地が良くて、けっこうな時間、離れられなかった。
 五線譜とバラだけを持って通りを歩くのは、けっこう目立った。どうせなら変装も解いた方が目立つし話も早いかも、そう言ってみたら美嘉ちゃんがものすごい速さで手を振ったから、なるほどと思ってやめにした。 「え、変装忘れてたの?」 「奏ちゃん、かわいいよね」 「だからさっき、謝ったんだ」 「謝らなくてもいいのにねえ」 「真面目だからね」 「美嘉ちゃんもね」 「あたし?」 「どこに向かってるの?」  いたずらに訊いてみると、彼女は思いがけない笑顔になって、答えた。「いい場所だよ、すごく」  ウインクしてみせた左の瞳からは星が飛び出して、雲一つない空に舞い上がる。その輝きを見上げていたら、今夜もよく晴れるってことがよく分かった。こんな街中でも見えるくらい、満天の星空。  もうすぐ着くと彼女が言って、一分も経たないうちに私たちは到着した。『THE PENINSULA』のロビーを通ってエレベーターに上層階へ導かれる(ところで、ホテルの近くには日比谷の駅があって、そこで降りたら良かったのにと思ったけど言うのはやめにした)。今すぐ裸足になりたくなるくらい柔らかな絨毯を踏んで、ホールを過ぎると連れて行かれたのはドレスルームだった。  着替えてきて、と背中を押されて入った個室では、一着のドレスが私を迎え入れる。エボニーを基調にしたそのドレスは、いつか着ていた衣装によく似ていて、形も(見た目に反してとても楽々着られる)あつらえたみたいに体に馴染んだ。  個室を出ると、化粧台に誘い込まれた。やけに眩しくて目が慣れるには時間がかかったけど、ブラシや指先を踊らせる美嘉ちゃんの表情を見ていたら、そういう明るさも悪くないって思えて、嬉しくなる。 「盛れてる?」私が訊くと、彼女は笑う。 「ばっちり」 「クリスマスだもんね」 「そうそう、わかってるじゃん」 「よく、分かるよ」 「じゃあ仕上げだね」そう言って、彼女は私の髪にバラを差した。それから、ネックレスをつけてくれた。私は、彼女の髪から首もとからいい匂いが、抱きつくのも忘れるくらいにいい匂いがして、しばらくは夢中になっていたのだけど、「どう? 綺麗でしょ」彼女の声で目を覚ますと、今度はきらきらと光るネックレスの真っ白な輝きに心を攫われた。本当に、私自身が消えてなくなるみたいに思えて、怖くなるくらいだった。  綺麗。そう答えた気がするけど、口にできていたかはわからない。それでも彼女が頷いたから、たぶん大丈夫だったんだと思う。
 ドレスルームを離れて、大きな扉の前に連れて行かれた。その扉は、うんと見上げるくらいの高さがあって、やっぱりチカチカと輝いて私を出迎えた。 「ここで待ってて」そう残して美嘉ちゃんは扉の中に消えていって、その寸前に言葉を渡してくれた。「名前、呼ぶからね」  私は、名前を呼ばれるんだ、と思いながらぼんやり立ち尽くした。きょろきょろと辺りを見回して、何も言わないエレベーターや誰もいない廊下の角、それから扉を見上げて、壁伝いに天井を辿ると、頭の上に大きな照明があることに気が付いた。照明は、やっぱり透明な光を放っていて、それは大きな採光窓から差し込む冬の太陽光と混じり合って、この空間を余すことなく漂白している。  今、窓に一枚の枯れ葉が貼りついて、去っていった。それで私は、すっかり怖くなってしまった。  照明が落ちてこないか、何度も天井を見上げた。ネックレスは溶け落ちないか、首もとに触れて、その度に頭と体が繋がっていることを確かめた。手にした楽譜を風が奪っていかないか、砂のように崩れ落ちないか、あの綺麗な音符はどろどろに滲んでいないだろうか。扉の向こうにはもう、誰もいないのかもしれない。誰かがいたとして、それは私とは全く一切何の関係もない人たちかもしれない。それよりも、知っている人たちが扉の向こうで残さず息絶えているかもしれない。局地的な寒冷化、あるいは酸素濃度の急激な低下。ガス漏れか、この瞬間に隕石が降って一つの時代を終える可能性だってある。  だって、外���白い冬で、あまりに寒い季節だったから。  私は耐えきれず扉を開けようとした。手をかけると少しの抵抗があって、扉は開かなかった。私は、ポンペイやマチュピチュ、あるいはアトランティス、ぼろぼろに崩れ落ちたかつての文明の遺跡を思った。 「あれー?」開かない、扉の向こうから声が聞こえた。「あ、そっかあ」錠が上がる音が、赦しの日に鳴る鐘のように響いた。「おーい、しきちゃん」かすかに開いたその隙間から、私の名前が聞こえた。私は、約束通りに彼女が私の名前を呼んだのだと、分かった。 「メリー・クリスマス!」  彼女の声を皮切りにして、あらゆる音が世界に溢れ出した。それは、笑い声。話す声。歌う声。周子ちゃん、奏ちゃん、美嘉ちゃん、桃華ちゃん、響子ちゃん、みくちゃん、飛鳥ちゃん、挙げればもうキリはないけれど、そこにいる誰もの声が、一つ一つ別々のものとして私には聞こえた。鳴り響くピアノは雪融け水のせせらぎ。南から吹く風のようなバイオリン。フルートの音色に花は芽吹き、交わされるグラスの混声合唱に光は弾けて混ざり合うと、世界を満たしていく。  私は、髪に差していたバラを手に取った。そうして、手の内で鮮やかに色づいていくバラを見た。それから、色を取り戻していく世界を眺めた。真っ赤なバラ、ルビーレッドのドレス、ネックレスは銀色に輝いて、目の前の扉にはパールホワイトやシャンパンゴールド。あんなにも透明だった光に、今、すべての色が混じった。透明な光の中に、私はすべての色を見つけた。五線譜の音符は今にも空を泳ぎ出しそうで、私は胸に抱きしめて一生懸命にそれを紙の上にとどめた。だけど音符はもう私の体に流れ込んで、知らなかったメロディのことも、すべてが分かった。思った通り、思ったよりもずっとメロディは綺麗で、今すぐにでも歌いたい気持ちが声になって溢れ出しそうだった。 「しきちゃん」  もう一度、彼女が私の名前を呼んだ。それで、私は分かってしまった。照明は(隕石だってもちろん)落ちてこないし酸素はちゃんとここにある。ガス爆発で会場が吹き飛ぶこともないし、ましてや未知の疫病が蔓延することもない。それで、私はもう絶対的に一人じゃないことが分かると、にやけてきた。意思とは無関係にして、気持ちのままに頬の筋肉がゆるゆるとしてしまって、どうしようもなかった。  私は扉に手をかける。意外にも重いその扉を引いて、ゆっくりと開いていく。飛び出してくる喜び、あるいは手を引かれる幸せ、そういうもので胸をいっぱいにしながら、少しずつ、少しずつ扉は開いていく。  私は、彼女に言いたかった。嬉しくて人は泣くのだと、大きな声で伝えたかった。だけど、言いたいことは一つも言葉にならなくて、扉が開ききるとどうにか彼女の名前だけを言うことができた。彼女は私を抱きしめて言った。「うん、ぜんぶわかるよ」私は、もう一度彼女の名前を呼んだ。「フレちゃん」あとはもう、何を言ったのか分からなかった。ただ、笑っていることだけが分かった。
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toshiki-bojo · 2 years
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「虚子への俳話」150
「花鳥」令和4年6月号より転載
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東京のこと(二十年前のこと) 平成8年・1996.7月 坊城俊樹
「マニラへ行く」
 地球ボランティア協会と共催の俳句募集キャンペーンの一環として、その受賞者の方々と選者の岡安仁義氏とでフィリピンはマニラへ行って来た。地球というのは案外に狭くて日本からはおよそ四時間で着いてしまう。そこは雨季の真っ最中といったところで、湿度は110%はありそう。空港に降り立つと早速車のクラクションが縦横に鳴り響く、とにかく騒々しい国である。
 こちらも大都市東京から来たわけでちょっとした混雑なぞはどうということはないのだが、クラクションを鳴らしながら体の寸前を通過する車には正直辟易してしまう。しかしそこはそれ南国の民族で日本のような陰湿な鳴らし方ではなくて、何か車がゲラゲラ笑っているような雰囲気なのである。ともあれここはパワーが無いとやってゆけそうもない。
 椰子の木がかすかに霞んだと思うともう大粒の雨がフロントガラスを叩き始める。道行く子供たちは慣れた仕草でどこぞの屋根の下に潜り込んで行くが、中にはこんな雨なぞ関係ないというように悠然と歩いている人もいる。たくましいのである。日本から風邪気味でやってきた私なぞは、さしあたりここで暮らす体力は持ち合わせていないようである。
 雨だって半端でない。あたかも雨に茶色の色が付いて降るようで、ほうれん草のさまし湯を天からぶっかれられているような一種の爽快感さえ感じる。そこに来て、人々の陽気な行列を見ていると自分の価値観など当てにならぬ、つまり日本人としての倫理観なぞの通用しない地球のもう一方の価値観にぶちあたったような快感に襲われる。
 二日目ボランティア関係の仕事として郊外の貧困農村の視察をしに行った。その景とはほぼ想像していた通りであったが、むしろそこに暮らす人の屈託のない笑顔の方がより印象に残った。ただひとつ気になったのは、およそ五歳くらいの幼児が背にズダ袋をかつぎ、その中に藷を入れられて何度も家の近所へ運ばせられている様子を見て、心動かされるものがあり、一言私が何かを言おうとしたが、そこには明らかに異邦の者にたいする拒絶の目があり、私を躊躇させた。
 それはボランティアの情緒的行動を拒否するものであり、悲哀というよりむしろその子の存在は貧困の村における事実という点で大人たちより暮らしのなんたるかということの確かな反応を見た。そう、私はそこで何もできないし何もするべきでもない。ただ唯一は彼らの自発のみがこの回答であることを知った。私は所詮先進国から来た観光者なのである。それ以上でも以下でもない。
 三日目、マニラにある私立のアジア太平洋大学の学生・教職員の人々とわれわれ俳句団体との交流俳句会を主催することで緑生い茂る瀟洒な大学構内へ向かう。内部は適当な温度に調節され、上流階級の子弟であろう学生たちが自由闊達なる議論・世間話をしながら我々の傍らを通り過ぎて行く。その目は今の日本の学生にはない深い澄んだ目とかすかな好ましい麝香の香りを漂わせている。俳句会には30名程度の学生などが参加してくれた。そこで彼らは選のみの参加ということになったのだが、その理解力の早さには正直驚いてしまった。俳句というものの理解は未知数ながら、我々が何をしに来て何を伝えたがっているのかということへの理解の早さがである。そして驚いたことに俳句に対し独自の解釈がこの日予習をしていないであろう彼らの頭に過ぎっていることを発見した。嗚呼、時代はここまでやってきているのか。
 最後に彼らの何人かが教壇の方へ駆け寄ってきた。おもしろかったという。そして来年もやれという。またインターネットのような手段で是非とも俳句交流に参加したいという。  鳴呼、日本人は特に日本の若い俳人たちはいったいどこへ行ってしまったんだろうか。
 いずれも本当のフィリピンの姿であろうと思う。貧困の村に居た、あの子は大学の学生たちの将来における成功を越せないかもしれない。また、学生たちも一生あの子と親しく話をし心通わせることもないのかもしれない。しかしいずれにせよそれが本当の姿であるかぎりどちらも本物のフィリピーノであった。
 私はこの両者に対しこのような交流俳句会とボランティア活動を通じた縁を作ったからこそ、彼ら双方を理解し得、彼らの間にいくばくかの橋渡しをしようなぞとは一切思わない。そ���ような傲慢な日本人的感傷こそがもっとも憎むべき横柄な態度であろうことは歴史が証明している。
 私にできることは俳句交流以外にない。
 帰路への空港へ向かう車のフロントガラスを大粒の雨が再び叩き始めた。そこには荒々しい熱帯の自然が再び我々を洗い流しにやってきているようであり、相変わらずクラクションを鳴らしながら人々は流れて行く。
 とある信号で停車すると、一二歳くらいの子が乳児を抱えて車の窓を叩く。金をくれと言っているらしい。ドライバーは窓を開けるなと言い、早口に何かを叫ぶと車を発進させた。車内の日本人たちは何か哀れさを感じつつも皆無言で納得した。
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noritama0301 · 3 years
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仙台旅行2日目。快速湯けむり号にて鳴子御殿湯駅へ。胃もたれが酷い。
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trinityt2j · 3 years
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ダ-ティ・松本 不健全マンガ家歴30年[-α]史 ●はじめに  この文章は同人誌「FUCK OFF!7」において書かれたものをベースにして逐次増補改定を加えていき、いずれ歴史の証言として、[というほど大袈裟なものでは無いが…]一冊の本にまとめたいという意図のもと、近年どんどん脳が劣化していくダ-松の覚え書きとしても使用の予定。事実関係は間違いに気付き次第 訂正。同人誌発表時のものも今回自粛配慮して、実名、エピソード等を削除した箇所有り。有り難い事に某出版社よりすでに出版打診があったがまだまだその時期ではない、マンガを描く事が苦痛になったら活字の方も気分転換にいいかも…。 /*マークは今後書き加える予定のメモと心得たし。 ●前史/修行時代・1970 さいとうプロの短くて濃い日々……  1968年に上京。数カ月後東京は戦場に。熱い季節の始まりだった。 2年後親元を飛び出し友人のアパートに転がり込む。場所は渋谷から井の頭線で駒場東大駅下車、徒歩5分。地図で見ると現在の駒場公園あたり。昼間でも裸電球を付けなければ真っ暗という馬小屋のような部屋。数メートル先には当時の建設大臣の豪邸が…。前を通りかかるだびに警備のおまわりがじろり。  いつまでも友人に迷惑もかけられないのでとりあえずアシスタントでも…と手元にあったマンガ誌をひっくり返し募集を探す。幸いさいとうプロと横山まさみち氏のところでアシ募集があり両方応募。どっちか一つ通れば…と思っていたら何と両方受かってしまい、双方に条件を聞く。当時高円寺 のアパート、風呂無し4畳半の部屋で相場12000円の時代。前者一ケ月の給料10000円、後者20000円との事。給料の方がボロアパートの家賃より安いとは…!どう考えても前者は食う方法がないと判断し、後者さいとうプロへ入社。  ここに居たのはたったの半年に過ぎないけれど今思えばこれだけで本が一冊描ける位の濃い半年だった。しかしこのあと2X年分も書かねばならないことを思えば今回はいくつかのエピソードを書くだけに留めよう。  ダー松が入った時は小池一夫氏[クビ?]、神田たけ志氏や神江里見氏、きしもとのり氏[現・松文館社長]等と入れ替わりの時で、きし氏の女遊びの凄さと神江氏の絵のうまさは伝説になっていた。現在「亀有」「ゴルゴ」が歴代単行本の巻数の多いベスト1、2位だが[ともに100巻を越えた]、3位は神江氏の「弐十手物語」[70巻以上]だという事は知ってる人は少ないだろう。  当時の制作部は、さいとうたかを[以下ゴリ]をトップに石川班[ゴルゴ13、影狩り]、甲良班[バロム1]、竹本班[シュガー、どぶ等]の3つに分かれ、それぞれのキャップにサブ・チーフが一人づついて、ヒラが2~6人いるというシステムで総16名。独立し現在も活躍中の叶精作、小山ゆう、やまさき拓味の3名がそれぞれの班のサブ・チーフ。ダー松は石川班で左右1メートル以内に叶氏とゴリにはさまれ、のんびり出来ない状態で、はなはだ窮屈。叶氏はほとんどマンガ家になりたいとも思った事のなかった人で、設計事務所みたいなところで図面を引いていた人がなぜマンガプロダクションに来たのか不思議だった。格別マンガ好きというわけでもなかったせいか現在まで全ての作品が原作もので、オリジナルは一本もないのはそのせい?祭りなどの人がうじゃうじゃ出てくる群集場面が得意。 やまさき氏は大の競馬好き、現在競馬マンガを多く描くのは当時からの趣味が生きたというべきか。もう一つの趣味である風俗についてはここでは書くのは差し控えよう。小山氏は後日ここの事務の女性と結婚するが、当時はつき合っているとは誰も知らず、スタッフの一人がやめる時その女性に交際を申し込んだら、茶店に呼び出されて小山氏からと凄まれたと聞いたが嘘か本当かは不明。  ここでの生活は新入り[ダー松を含めて3名]は朝の9時前に会社に行き、タイムカードを押し、前日のごみをひとまとめして外に出し、トイレ掃除をして、16人分のお茶を2Fで入れて制作部のある3Fへの狭い階段をふらふら昇り、机ごとに置いて歩き、終れば、一息ついて買っておいたパンと牛乳を3分で食べて、やっとそれから仕事。しかし新入りの3名の内1人折茂は常に遅刻なのでいつも佐藤と2人でやっていた。佐藤も遅れる時はダー松1人で。辞めてから10年位、16人分のお茶を持って階段をふらふら歩きお盆をひっくり返す夢をよく見たものだが、実際ひっくり返したのは折茂と佐藤の2人で、よく茶碗を割っていた。 たまには夕方6時には帰れるが、普通は夜10時までで、アパートに帰って銭湯に行けばもう明日にそなえて寝る時刻、このくり返しの日々。週1日は徹夜で明け方に帰り、その時は当日の昼12時出勤。休日は日曜日のみで忙しい時はそれも取り消し。つまり休みは月3日。[これで給料2万円!]そんな日々の繰り返し。  夕方までは皆和気あいあいと仕事していたが、ゴリが夕方6時頃に「おはようさん」と現れると、全員無駄口がたたけなくなり、仕事場はシーンと静まり返り、以下その日が終わるまでは疲れる時間がただひたすら流れるのみ。 当時石川班は「ゴルゴ13」と「影狩り」を描いていたがゴリは主人公の顔と擬音のみ。マジックで最後に入れる擬音はさすがに入れる位置がうまいと感心。ゴルゴの顔はアルバムに大小取り混ぜてコピーがとってあり、忙しい時は叶氏がピンセットで身体に合わせて「これが合うかな~」といった感じで貼り付けていた。  その頃すでに「ゴルゴ」は近々終わると噂されていたが、現在もまだ続いているとは感嘆ものだ。 ゴリと石川氏が「ゴルゴ」の最終回の終わり方を話しているのを聞いたら、何ともつまらない終わり方。しかしあれから20年以上も経つ事だし、きっともっといい終わり方を考えてあるだろうなと思っていたら、先日TVで本人が最初から考えてある終わり方だと言うのを聞き、がっくり。企業秘密だろうから書かないが、作品の最初の方に伏線が数度出ているのでわかる人にはすぐわかる筈。  辞めた小池一夫氏とさいとうプロに何があったかは知らないが、漏れ聞く話では結構もめ事があったみたいだ。 「子連れ狼」で「ゴルゴ13」と同じ設定の回があった時、「小池のガキャー訴えたるー!」とゴリが吠えていたものだが、結局たち消え。さいとうプロ作品で脚本を書いた本人が辞めた後、他の作品で同趣向の作品を書いても著作権は脚本を書いた原作者のものだと思うがどんなものだろう。その回のタイトルは忘れたが、ある場所に居合わせた人々が武器を持った集団の人質となり、その中に素人だと思われていた主人公、実は殺しのプロフェッショナルがいて、次々とその集団を殺していく、といったプロットで、ミッキー・スピレーンの短編に同じような作品があり、本当に訴えていたら恥をかいたと思うが・・・。  そういえば事務の方には山本又一郎という男がいたが、後年映画プロデューサーとして 「ベル薔薇」や「太陽を盗んだ男」等を創る事になるが、この野郎が生意気な男で当時皆に対して10歳は年上、といった感じの振る舞いだったが後日俺と一つしか年が離れてなかった事を知り、そんな若造だったとは、と皆怒ったものだ。以来奴の事を「マタさん」から「クソマタ」と呼ぶようになる。  さて半年後に先輩たちが積もり積もった不満を爆発させる反乱事件が勃発し、2年は居るつもりでいたここでの生活も、辞めるか残るかの選択を迫られる。残ればさいとうプロの現体制を認める事となるので、ダー松も退社。 しかし反乱グループとは別行動をとって一人だけの肉体労働のアルバイター生活へ突入。超ヘビーな労働の製氷工場、人使いの荒い印刷所、命綱もない高所の足場で働く建設現場等々。トラックの助手をしていた時は運ちゃんが「本宮ひろしって知ってるか?うちの息子の友達でさぁ、昔、おっちゃんメシ食わしてくれーなんて言ってきたもんだが、今は偉くなっちゃってさー、自分のビル建てたらしいよ。赤木圭一郎みたいにいい男なんだ。」とうれしそうに話してくれたが、運ちゃんには悪いがそいつは今も昔も一番嫌いなマンガ家なんだ。あの権力志向はどうにかならんか。天下を取る話ばかりだもんなぁ。  ところで後日、単行本の解説で高取英が「さいとうたかをのヤローぶっ殺してやる!」とダー松が言ったなどと書いているが、小生はそんな危ない事言った覚えはないのでここできっちり訂正しておきます。 「会社に火ィつけてやる!」位は言ったかも・・・[嘘] 。 悪口は言っても別に怨みなど無い。ところでアシスタントとしてのダー松は無遅刻、無欠勤以外は無能なアシだったと反省しきり。理想的なアシスタントとはどんなものか、それはまた別の機会に。 *入社試験はどんな事を? *さいとうプロには当時ほとんどろくな資料は無かった? *ハイジャックの回の飛行機内部の絵は、映画「大空港」を社内カメラマンが映画館で写してきたものをもとに描く。 *当時のトーンは印刷が裏面にしてあり上からカッターでけずったり出来ない。 *トーンの種類は網トーンが数種、それ以外はほんの3、4種類位しかなかった。 *仕事中のB.G.M.はアシの一人が加山雄三ばかりかけるので大ひんしゅく。好評だったのは広沢虎造の浪曲「次郎長三国志」、初代桂春団次の落語。眠気もふっとぶ位笑えた。 ダ-松が岡林信康の「見る前に跳べ」をかけてるとゴリは「何じゃー!この歌は!」と怒る。名曲「私たちの望むものは」はこの男には理解不能。 ●1 9 7 1 ~ 1 9 7 4  持 ち 込 み & 実 話 雑 誌 時 代    当時は青年劇画誌全盛時代で、もともと望月三起也氏や園田光慶氏のファンで活劇志向が強く、 主にアクションもののマンガを描いて持ち込みに行っていた。今のようにマンガ雑誌が溢れかえって、山のようにマンガ出版社がある時代ではなく、数社廻るともう行くところがない、という状態で大手では「ビッグコミック」があっただけで 「モーニング」も「スピリッツ」も「ヤン・ジャン」も当然まだない。テーマを盛り込んだ作品を持って行くと編集から「君ィ、うちは商売でやっているんだからねぇ」と言われ、アクションに徹した作品を持って行くと「君ぃ、ただおもしろいだけじゃあねぇ」と言われ 「おい、おっさん!どっちなんだ?」とむかつく事多し。この辺の事は山のように書く事があるが、有りすぎるのでパス。 *そのうち書く事にする。  ただ金属バットで頭をカチ割って脳みそをぶちまけてやりたいような奴が何人もいたのは事実。今年[’97]「モーニング」に持ち込みに行って、断られた奴が何万回もいやがらせの電話をかけて逮捕された事件があったが、そのうちトカレフを持って殴り込みに行く奴が出てくるとおもしろい。出版社も武装して大銃撃戦だぁ!などと馬鹿な事書いてどうする!とにかく持ち込みにはいい思い出が何もない。そんな中、数本だけ載った作品は渡哲也の映画「無頼」シリーズの人斬り五郎みたいな主人公がドスで斬り合う現代やくざもの[この頃の渡哲也は最高!]、ドン・シーゲルの「殺人者たち」みたいな二人組の殺し屋を主人公にした『汚れたジャングル』、陽水の「傘がない」が好きだという編集さんの出したテーマで車泥棒とブラックパンサーの闘士とのロード・ムービー風『グッバイ・ブラザー』、拳銃セールスマンを主人公にした『ザ・セールスマン』、等々10本ちょい位。  さてその頃並行してまだエロマンガ専門誌といえるようなものがなかったような時代で、実話雑誌という写真と記事ページからなる雑誌に4~10ページ位を雑誌の味付けとして描かせてもらう。当時、お手本になるようなエロマンガなど皆無で、エロ写真雑誌を古本屋で買ってきてからみのポーズを模写。マンガで裸を描く事はほとんど初めてで、これがなかなか難しいのだがエロシーンを描くのは結構楽しい。当時出版社に原稿持って行き帰りにグラフ誌をどっともらって帰るのが楽しみだった。SM雑誌の写真ページも参考になる。なお当時のペンネームは編集部が適当につけた池田達彦、上高地源太[この名前はいけてます。また使いたい]等。その数年後、逆にマンガが主で記事が味付けというエロマンガ誌が続々と創刊される。 *さいとうプロをやめたあと編集や知人に頼まれて数人のマンガ家の所へ手伝いに行く。秋田書店「漫画ホット」で『ジェノサイド』を連載中の峰岸とおる氏の所へ行き、仕事が終わったあとまだ売れてない頃の榊まさる氏も交え酒を飲む/川崎のぼる大先生のところへ数日だけ/3000円たこ部屋/小山ゆうオリオンププロ *当時のアルバイトは記憶によると時給150~200円位/大日本印刷市ヶ谷駐屯地/坂/ *一食100円/どんなに貧しい漫画家もみかん箱の上で書くやつはいない/TV萩原サムデイ *ろくでなし編集者 ●1 9 7 5 ~ エ ロ マ ン  ガ 誌 時 代 に 突 入   実話誌は意外とエロは抑え目で描くように口すっぱく言われていたのだが、以前活劇っぽい作品を描かせてもらってたが潰れてしまった出版社にいた児島さんが編集する「漫画ダイナマイト」で打合せも何にもなしに好きに描かせてもらい、ここでエロマンガ家としての才能[?]が開花する。描いてて実に楽しく眠る時間がもったいない位で、人に睡眠時間が必要な事を恨んだ程。出来る事なら一日中休まず描いていたい気分で完全にはまってしまう。  初の連載作品「屠殺人シリーズ」はこの頃から/『漫画ポポ』。中島史雄氏は大学時代にこの作品を見ていたとの事で、トレンチコートにドクター・ペッパー模様のサイレンサーつきマグナム銃で遊戯人・竜崎一也が犯しまくり殺しまくり、サディスト、マゾヒスト、殺人狂、まともな奴が一人も出てこない性と暴力の祭典。ちなみにタイトルページは描かないでいい、との事でどうするのかと思っていたら編集部が中のワンカットを拡大してタイトルページを創り、1ページぶんの原稿料をけちるというせこいやり方だった。けちるといえば、原稿の1/3にCMを入れる際、原稿料を1/3削った会社もあり。 ●1 9 7 6 ~   後に発禁仲間となる高取英と出逢い、『長編コミック劇場』で「ウルフガイ」みたいのをやろうと、怒りに震えると黒豹に変身してしまう異常体質の主人公を設定し、獣姦のイメージで「性猟鬼」なるエロマンガをスタート!しかしその号で雑誌が潰れる。この路線は今でもいけそうな気がするがどんなものだろう。  この頃の珍品に「快楽痴態公園」がある。タイガースに11-0とワンサイドで打ちまくられ、怒ったジャイアンツファンのおっさんが公園でデート中の女をずこずこに犯りまくり、その間にジャイアンツは9回裏に12-11とゲームをひっくり返してしまうのである!その時のジャイアンツの監督はもちろんミスター長嶋、先発堀内、打者は柴田、土井、高田、王、張本等々がいる。タイガース監督は吉田、ピッチャー江本、キャッチャーフライを落球する田淵、そしてあの川藤もいる。解説は牧野…… ●1 9 7 7 ~   上記2作品を含む初の単行本「肉の奴隷人形」が久保書店より発行。後にリングスの会場で逢った佐竹雅昭氏はこの本が一番好きとの事だった。  「闇の淫虐師」もこの年スタート。一話完結でバレリーナ、バトンガール等々、毎回いろんな女たちをダッチワイフのごとくいたぶりまくるフェチマンガとして1979年まで続け、単行本は「堕天使女王」「裂かれた花嫁」「エロスの狂宴」「陶酔への誘い」「終りなき闇の宴」の全5巻。ちなみに今年「闇の淫虐師’97」を『コミック・ピクシィ』にて発表。いつか『闇の淫虐師・ベスト選集』でも出したいところ。 [’98に実現、’99には続刊が出る] ●1 9 7 8 ~   久保書店より第2弾の単行本「狂った微惑人形」。収録作品の「犯された白鳥」は持ち込み時代に描いた初のバレリーナもの。結構気に入っていた作品なのに、後年再録の際、印刷所の掃除のおばさんが捨ててしまい、この世にもはや存在しない不幸な子となる。[’99に宝島スピード・ブックに本より直接スキャンして収録]  エロ、グロ、ナンセンスの会心作「恍惚下着専科」を発表。サン出版より同名の単行本発行。また同出版より「コミック・ペット/堕天使画集」として今までの作品を続々単行本化。全10巻位。これは今でも古本屋で流通しているとの事で、まだまだ世間様のお役にたっているらしい。  この年、「堕天使たちの狂宴」を描いていた『漫画エロジェニカ』が発禁処分、来年でもう20年目となる事だし、当時の人たちと集まってその大放談を収録し「発禁20周年特集号」でも創ってみようかと計画中。さて当時の秘話としてもう時効だろうから書いてみるけど、前述の『堕天使画集』に「堕天使たちの狂宴」は収録される事となり、当然修正をガンガン入れて出版されるものと覚悟していたら、米国から帰国後出来上がった本を見ると発禁になった状態のまま再録されている!以下桜木編集長との会話 ダ/いや~、いい度胸してますね。 編/だって修正してあるじゃない。 ダ/その修正状態で発禁になったんですよ 編/・・・・・ ダ/・・・・ 以下どんな会話が続いたのか失念…… それにしてもサドの「悪徳の栄え」の翻訳本は発禁後20年以上して復刻されたけれど、「堕天使たちの狂宴」は半年もしない内に単行本になっていたとはエロ本業界とは何といいかげんな世界!しかし作品そのものは、今見るとリメイクする気にもならないどうという事もない可愛い作品で、結局あれもあの時代の姑息な政治のひとかけらに過ぎなかったのだろう。いい点があるとしたら一つだけ、それまでのエロマンガになかった瞳パッチリの少女マンガ的ヒロインを登場させた事位か。今の美少女エロマンガは本家の少女マンガもかくや!という位眼が大きいが当時としては画期的だったかも。 ●1 9 7 9 ~   この年の「淫花蝶の舞踏」は「堕天使たちの狂宴」よりずっといい/『漫画ソフト』。今年出た「別冊宝島/日本一のマンガを探せ!」でベスト2000のマンガがセレクトされているが、ダー松の作品の中ではこの作品が選ばれている。教師と生徒、二人の女たちが様々な男たちの手によってに次々ともてあそばれ、闇の世界を転々として再び巡り会う時、女たちは蝶と化し水平線の彼方に飛び去り、男たちは殺し合い血の海の中で屍と化す。ダー松作品にはこのように男根が女陰の海に飲み込まれてに負けるパターンが多い。[性狩人、遊戯の森の妖精、美少女たちの宴、人魚のたわむれ・・等々]  この年からスタートの「性狩人たち」シリーズ[劇画悦楽号]はバレエ、バイオレンス、SEXの三要素がうまくからみあい、それぞれが頂点まで達する幸福な神話的作品だ。ここから派生した路線も多く、美少年路線は’83の「聖少女黙示録」へ。身体障害者路線は’80の「遊戯の森の妖精」、’84からの「美姉妹肉煉獄」へと繋がる。’81の最終話「ハルマゲドンの戦い」ではせりふなしで24ページ全てが大殺戮シーンという回もあり、中でも一度やりたかった見開きで銃撃戦の擬音のみという事も実現。こんな事がエロマンガ誌で許される時代だった。ちなみにこの回は[OKコラルの決闘・100周年記念]だが、何の意味もない。単行本は最初サン出版より、その後久保書店より「白鳥の飛翔」「少女飼育篇」「ヘラクレスを撃て!」「眼球愛」「海の女神」の全5刊。現在入手出来るのは後の3刊のみ。[「海の女神」も最近在庫切れ]  この年出た「人魚のたわむれ」の表題作は性器に{たこ}を挿入するカットを見た編集長が「・・・[沈黙]・・・頭おかしいんじゃ・・ブツブツ・・気違い・・・ブツブツ・・・」と呆れてつぶやいていたのを記憶している。たこソーニューは今年出た「夜顔武闘伝」で久しぶりに再現。なおこの作品は’83にマンガと実写を噛み合せたビデオの珍品となる。水中スローモーションファックがなかなかよい。 ●1 9 8 0 ~   なぜか「JUNE」の増刊として作品集「美少女たちの宴」がサン出版より出版され、その短編集をもとに脚本化し日活で映画が創られる事となる。[「花の応援団」を当てたこの映画の企画者・成田氏は日活退社後「桜の園」等を創る。]その際、初めて映画撮影所を見学し、せこいセットがスクリーン上ではきちんとした絵になってるのを見て映画のマジックに感心。タイトルはなぜか「性狩人」で、’96にビデオ化された。監督・池田敏春のデビュー第2作となり現在までコンスタントに作品を発表しているが、出来のいい作品も多いのになぜか代表作がない。初期の「人魚伝説」が一番いいか。  この映画に合わせて「美少女たちの宴」を2~3回のつもりで「漫画ラブラブ」で描き出すがどんどん話がふくらみ、おまけに描いてる出版社が潰れたり、雑誌が潰れたりで雑誌を転々とし条例による警告の嵐がきた「漫画大飯店」を経て、「漫画ハンター」誌上で完結したのは’83になる。この作品でクリトリスを手術してペニスのように巨大化させるという人体改造ものを初めて描く。  この年の「遊戯の森の妖精」は身体障害者いじめ鬼畜路線の第2弾!森の中の別荘に乱入したろくでなしの二人組が精薄の少女の両親達を虐殺し、暴行の限りをつくすむちゃくちゃな作品で、雷鳴の中、少女の性器に男達のペニスが2本同時に挿入されるシーンは圧巻!しかしこのとんでもない男達も少女の性のエネルギーに飲み込まれ、朽ち果てていく・・・。 ●1 9 8 1 ~   美少女マンガ誌のはしり「レモン・ピープル」誌創刊。そこで描いたのが「白鳥の湖」。虚構の世界のヒロインを犯すというコンセプトは、アニメやゲームのヒロインをずこずこにするという今の同人誌のコンセプトと同じかも。バレエ「白鳥の湖」において悪魔に捕われたオデット姫が白鳥の姿に変えられる前に何にもされてない筈がないというモチーフにより生まれたこの作品は、悪魔に男根を植えつけられたヒロインが命じられるままに次々と妖精を犯して歩き悪魔の娘となるまでを描くが、あまり成功したとは言えない。ただ人形サイズの妖精をしゃぶりまくり淫核で犯すアイデアは他に「少女破壊幻想」で一回やっただけなのでそろそろもう一度やってみたいところ。「ダーティ松本の白雪姫」はその逆をいき、犯す方を小さくした作品で7人の小人が白雪姫の性器の中にはいり、しゃぶったり、処女膜を食べたり、と乱暴狼藉![ちなみに両者をでかくしたのが同人誌「FUCK YOU!3」の「ゴジラVSジュピター」]この童話シリーズは意外と好評で続いて「ダーティ松本の赤い靴」を上記の単行本に描き下ろして収録。童話は結構残酷なものが多く、この作品も切られた足だけが荒野を踊りながら去って行くラストは原作通り。 *近年童話ブームだがこの頃もっと描いておけば「こんなに危ない童話」として刊行出来たのにとくやまれる。 「2001年快楽の旅」もこの本に収録。快楽マシーンを逆にレイプしてしまう、珍しく映画「2001年宇宙の旅」風のSF作品。  掲載誌を決めずに出来る限り多くのマンガ誌で描こうというコンセプトで始めたのがこの年スタートした「怪人サドラン博士」シリーズ。「不死蝶」シリーズや「美少女たちの宴」シリーズの中にも乱入し、「漫画ハンター」最終号では地球をぶっ壊して[その際地球は絶頂の喘ぎ声をあげ昇天する!]他の惑星へ行ってしまう。今のところ10誌位に登場。いつかこのサドラン・シリーズだけ集めて単行本化したいところ。ちなみに「サド」と「乱歩」を足して「サドラン博士」と命名。作者の分身と言っていい。 [後年、「魔界の怪人」として全作品を収録して刊行、04年現在品切れ中]  この年描いて’82の単行本『妖精たちの宴』に収録の「とけていく・・」はレズの女たちが愛戯の果てに、肉体が溶けて一匹の軟体動物と化す、タイトルも内容も奇妙な作品。作者の頭もとけていた? ●1 9 8 2 ~ 1 9 8 3   ’83年に「美少女たちの宴」が完結。全てが無に帰すラストのページは真っ白のままで、このページの原稿料はいりません、と言ったにもかかわらず払ってくれた久保書店、偉い![明文社やCM頁の稿料を削った出版社=某少年画報社なら払わなかっただろうな……と思われる……]この作品以外は短編が多く、加速度をつけてのっていく描き方が得意のダー松としてはのりの悪い時期に突入。また10年近く走ってきてだれてきた頃でもあり第一次落ち込み期と言っていい。マンガがスタンプを押すように描けないものか、などとふとどきな考えまで湧いてくる。思えば一本の作品には、いったい何本の線を引いて出来上がっているものなのか。数えた馬鹿はいないだろうが数千本は引いている筈。一ヵ月に何万本とペンで線を引く日々・・うんざりする筈です。  この頃のめぼしい短編をいくつか書くと、少女マンガ家の家に税務調査にきた税務署員が過小申告をネタにねちねちいたぶるが、アシスタントに発見された署員は撲殺される。そして板橋税務署は焼き討ちにあう、といった作品「[タイトル失念]xx税務調査」。[後日読者よりこのタイトルを「色欲ダニ野郎」と教えていただく。ひどいタイトル *編集者のつけるタイトルはその人のセンスが実によくわかる。しかしサイテ-の題だなこりゃ…。 果てるまで「おまんこして!」と言わせながら処女をやりまくる「美処女/犯す!」はラスト、狂った少女が歩行者天国の通行人を撃ちまくり血の海にする。「嬲る!」はパンチドランカーとなった矢吹ジョーが白木葉子をサンドバッグに縛りつけ、殴って、殴って、殴りまくる。段平おっちゃんの最後のセリフ「・・ブスブスくすぶっちゃいるが・・・」「打てッ!打つんだ!ジョー!」「お前はまだ燃えつきちゃい���え!」とはエロ・ドランカーの自分自身に向けて発した言葉だったのかも。トビー・フーパーばりの「淫魔のはらわた」は電気ドリルでアナルを広げてのファック!とどめにチェーンソーで尻を切断!いまだに単行本に収録出来ず。[’98の「絶頂伝説」にやっと収録]「からみあい」は夫の愛人の性器を噛みちぎる。「危険な関係」はアルコール浣腸をして火をつけ尻から火を吹かせる。この手は『FUCK YOU!2』の「セーラー・ハルマゲドン」で復元。そういえばこの作品の序章と終章だけ描いて、間の100章位をとばすやりかたはこの頃の「禁断の性獣」より。女性器にとりつき、男性器に変身するエイリアンの侵略により地球は女性器を失い滅亡する、といったストーリーで当時聞いた話では谷山浩子のD.J.でこの作品がリスナーの投書でとりあげられ、ダー松の名はダーティ・杉本と読まれたそうな。ヒロインの少女がひろ子という名前なのでこのハガキが選ばれたのかもしれないが、作者は薬師丸ひろ子からとったつもりだったのだが・・。[別にファンではない。] 「女教師狩り」は映画館で観客に犯される女教師とスクリーン上の同名のエロ映画の二本が同時進行し、一本で二本分楽しめるお得な作品。 ’83は’80に「漫画エロス」にて描いた「エロスの乱反射」の最終回の原稿が紛失したため単行本が出せないでいたのを、またまた「仏の久保さん」に頼んでラスト近くをふくらませて「漫画ハンター」に3回程描かせてもらい、やっと’85に出版。見られる事に快感を覚えるファッション・モデルが調教される内に、次第に露出狂となっていき、街中で突然裸になって交通事故を起こさせたり、最後はビルの屋上でストリップショー。そしてカメラのフラッシュの中に飛び降りていき、ラスト1ページはその性器のアップでエンド!  本格美少年・ゲイ・マンガ「聖少女黙示録」も’83。レズの姉たちの手によって女装に目覚めた少年がホモのダンサーたちに縛られなぶられ初のポコチンこすり合いの射精シーン。そして性転換して女となった主いるが、その中の’84の「白い肌の湖」はタイトルで解る通りのバレリーナものだがポコチンを焼かれた男が、一緒に暮ら人公が手術で男になった少女と暮らすハッピーエンド。この作品は単行本「美少女ハンター」に収録されてす二人の女と一人の男に復讐するエンディングがすごい!まず男の性器を切り取り、片方の女の性器にねじ込んだあと、その女の性器ごとえぐり取る。そしてその二つの性器をつかんだまま、もう一人の女の性器にフィストファック!のあげく、その二つの性器を入れたままの女性器をナイフでまた切って、ほとんどビックマック状態でまだヒクヒクうごめく血まみれの三つの性器を握りしめるとんでもない終り方!全くダー松はこんな事ばかりやっていたのかとあきれかえる。もう鬼畜としか言い様がない!しかし「ウィンナー」を二枚の「ハム」で包むなんて・・GOODなアイデアだ、又やってみよう。 ●1 9 8 4 ~   「漫画ハンター」で「闇の宴」前後篇を描き、後日これをビデオ化。雪に包まれた六本木のスタジオで痔に苦しみながらの撮影。特別出演として中島史雄氏が絶妙の指使い、東デの学生時代の萩原一至が二役、取材に来たJITAN氏もスタジオに入ってきた瞬間、即出演で生玉子1000個の海で大乱交。カメラマンが凝り性で照明が気に入るまでカメラを廻さず、たった二日の撮影はやりたい事の半分も出来ず。撮影が終ると痔はすぐに完治。どうもプレッシャーからくる神経性だったみたいでこれに懲りてビデオは一本のみ。 この年の「肉の漂流」は親子丼もので、近所の書店のオヤジからこの本はよく売れたと聞いたが、一時よく描いたこのパターンは最近では「FUCK YOU!3」の「母娘シャワー」のみ。熟女と少女の両方が描けるところが利点。「血の舞踏」は久しぶりの吸血鬼もの。股間を針で刺し、噛んで血を吸うシーン等々いい場面はあるが、うまくストーリーが転がらず3回で止める。短編「果てるまで・・」は核戦争後のシェルターの中で、父が娘とタイトル通り果てるまでやりまくる話。被爆していた父が死んだ後、娘はSEXの相手を捜して黒い雨の中をさまよう。  またリサ・ライオンの写真集を見て筋肉美に目覚め、マッチョ女ものをこの頃から描き出す。しかしなかなか筋肉をエロティックに描くのは難しい。 ●1 9 8 5 ~   くたびれ果ててすっかりダレてきたこの頃、8年間働いてくれたアシスタント女史に代わってパワーのかたまり萩原一至、鶴田洋久等が東京デザイナー学院卒業後加わってダーティ・マーケットも第2期に突入!新旧取り混ぜておもしろいマンガをいろいろ教えて貰って読みまくる。「バリバリ伝説」「ビーバップハイスクール」「ペリカンロード」「めぞん一刻」「わたしは真悟」「Be Free!」「緑山高校」「日出処の天子」「吉祥天女」「純情クレイジー・フルーツ」「アクター」「北斗の拳」「炎の転校生」「アイドルをさがせ」「綿の国星」「いつもポケットにショパン」「バツ&テリー」「六三四の剣」永井豪の絶頂期の作品「バイオレンス・ジャック」「凄之王」「デビルマン」等々100冊以上とても書ききれない位で、う~ん・・マンガってこんなにおもしろかったのか、と感動! そこで眠狂四郎を学園にほうり込んで、今まであまり描かなかった学園マンガをエロマンガに、というコンセプトで始めたのが「斬姦狂死郎」。「六三四の剣」ばりに単行本20巻を目指すものの、少年マンガのノリは今では当たり前だが、当時はまだエロマンガとして評価されず、ほんの少し時代が早すぎたかも。’86に中断、今年’97に「ホリディ・コミック」にて復活!果たしていつまで続けられるか? →後に「斬姦狂死郎・制服狩り」、「斬姦狂死郎・美教師狩り」として刊行完結  前年末から始めた「美姉妹肉煉獄」は身障者いじめの鬼畜路線。盲目の姉とその妹を調教して性風俗店等で働かせ、娼婦に堕していく不健全・不道徳な作品で、肉の快楽にひたっていく盲目の姉に対し妹も「春琴抄」の如く己の眼を突き、自らも暗黒の快楽の世界にはいり、快楽の光に目覚めるラスト。 また、これからは女王様物だ!となぜか突然ひらめき「筋肉女」シリーズの延長としてフィットネス・スタジオを舞台に「メタル・クイーン」シリーズも開始。これは単行本2冊分描いたが、連載途中でヒロインの髪型を歌手ステファニーのヘア・スタイルにチェンジしたり、レオタードもたっぷり描けてわりと気に入っている。  10年近く描いた「美蝶」先生シリーズもこの年スタート!こうしてみるとマンガを描く喜びに満ちた大充実の年だったかも。 ●1 9 8 6 ~   この年は前年からの連載ものがほとんどだが、「エレクト・ボーイ」は空中でファックするシーンが描いてみたくて始めた初の超能力エロマンガ。コメディ的要素がうまくいかず2回で止める。この路線は翌年の「堕天使輪舞」で開花。  「夜の彷徨人」は自分の育てた新体操選手が怪我で選手生命を失ったため、その女を馬肉のごとく娼婦として夜の世界に売り渡した主人公という設定。しかし腕を折られ、女にも逆に捨てられ、そして事故によってその女を失ったあげく不能となってしまう。失った快楽を取り戻すため無くした片腕にバイブレーターを取りつけ、夜の街をさすらい次々と女たちをレイプしていくというストーリー。がっちり設定したキャラだったのにまったく話がはずまず、男のポコチンは勃起しないままに作品も不発のまま終る。  「斬姦狂死郎」が不本意のまま終わったため学園エロス・シリーズは「放課後の媚娼女」へと引き継がれる。当時見ていた南野陽子のTV「スケバン刑事・」とS・レオーネの「ウエスタン」風に料理。ラストの「男といっしょじゃ歩けないんだ」のセリフは一番好きな映画、鈴木清順の「東京流れ者」からのもじり。単行本は最初司書房から出て、数年後ミリオン出版から再販、そして’97久保書店より再々販ながら結構売れて今年また再版。この作品は親を助けてくれる有難い孝行息子といったところ。 ●1 9 8 7 ~   さいとうプロOBで那珂川尚という名のマンガ家だった友人の津田が「漫画ダイナマイト」の編集者になっていて、実に久しぶりに同誌で「堕天使輪舞」を描く。超能力エロマンガの第2弾。今回はエロと超能力合戦とがうまくミックスされ一応成功といっていい。この路線は「エレクト・ボーイ」とこの作品、そして’96の「夜顔武闘伝」も含めてもいいかも。一時、この手の作品は数多くあったが最近はめったに見かけない。しかし、まだまだこの路線には鉱脈が眠っているとにらんでいるがどんなものだろう。 ●1 9 8 8 ~   「放課後の媚娼女」に続いて抜かずの凶一無頼控え「放課後の熱い祭り」を2年がかりで描く。’89に完結し司書房より単行本化。そして今年’97に改定してめでたく完全版として復刊!この頃が一番劇画っぽい絵で、たった2~3人のスタッフでよくこれだけ描き込めたなと改めて感心!エロシーンがちょっと少なめながら中島史雄氏がダー松作品でこの作品が一番好き、とお褒めの言葉を頂戴する。  TVで三流アマゾネス映画を見ている内、むくむくとイメージがふくらみ、昔から描きたかった西部劇と時代劇がこれで描けると、この年スタートさせたのが「不死蝶伝説」なるアマゾネス路線。昔々青年誌の創世期にあのケン月影氏がマカロニ・ウエスタンを描いていたことを知る人は少ないだろう。俺もあの頃デビューしていたらウエスタンが描けたのに、と思う事もあったが、このシリーズでほんの少しだけその願望がかなう。  この頃、アシスタントやってくれてた格闘技マニアの鶴田洋久に誘われ、近所の空手道場通いの日々。若い頃修行のため新宿でやくざに喧嘩を売って歩いたという寺内師範は、もう鬼のような人で、行けば地獄が待っていると判っててなぜ行く?と不思議な位休まず通う。体育会系はマゾの世界と知る。組手は寸止めではなく顔面以外は当てて可だったので身体中打撲のあざだらけ、ビデオで研究したという鶴田の体重をかけたムエタイ式の蹴りをくらい、右手が饅頭のように腫れ上がる。先輩たちの組手の試合も蹴りがもろにはいってあばら骨が折れたりで、なぜこんなヘビーな事をする?と思うが、闘う事によって身体の奥から何か沸き上がってくるものがある。スリランカの元コマンドと組手をやった時、格闘家の気持ちが少しだけ判るようになった。 ●1 9 8 9 ~   ’94まで続く「美蝶」シリーズでこの年は『ノスフェラトウ篇』を描き、シリーズ中これが一番のお気に入り。同人誌の「王夢」はこれが原点。  短編では「悪夢の中へ」はスプラッタ・エロマンガで久しぶりにチェーンソゥでお尻のぶった切り!はらわた引きずり出し、人肉食いちぎり!顔面叩き割り等々でラストに「ホラービデオの規制をするバカは俺が許さん!」などと書いているので、この年が宮崎事件の年か?世間は彼が日野日出志・作のホラービデオ「ギニーピッグ」を見てあの犯罪をおかした、としてさんざんホラービデオの規制をやっといて、結局見てもいなかったとわかったあとは誰一人日野日出志氏にもホラービデオさんにも謝らす゛知らんぷり。残ったのは規制だけで、馬鹿のやる事には全く困ったもんである。先日の「酒鬼薔薇・14才」の時も犯罪おたくの心理学者が、「これはマンガやビデオの影響です。」などと相も変わらずたわけた寝言をぬかしていたが、馬鹿はいつまでたっても馬鹿のまま。少しは進歩しろよ!お前だよ、お前!短絡的で幼稚な坊や、小田晋!よぅく首を洗っとけ!コラ!  「獣人たちの儀式」は退学者や少年院送りになつた生徒、暴走族、ヤクザ達が集まって酒盛りしながら女教師たちをずこずこにしてOB会をひらく不健全作品。編集長が「また危ない作品を・・・」とこぼしたものだが、岡野さん、田舎で元気にお過しでしょうか。この頃の「漫画エロス」には「ケンペーくん」だとか「アリスのお茶会」だとかおもしろい作品が載っていたものです。「爆走遊戯」は伝説のストーカー・ろくでなしマンガ家の早見純が一番好きな作品と言ってくれたが、なぜだかわからない。人の好みはいろいろです。以上3本は単行本「熱き唇の女神」に収録。 「ふしだらな女獣たち」はフェミニストの女二人が美少年をいじめる話。これは「氷の部屋の女」に収録。 ●1 9 9 0 ~   この年の「美蝶」シリーズは『ダンシング・クイーン篇』。マネキン工場跡でJ・ブラウンの「セックス・マシーン」にのせて5人プレイをするシーンや文化祭でのダンスシーン等々結構好きな場面多し。暗くて硬い作品が多いので、この「美蝶」シリーズは肩肘張らずに、かなり軽いノリでキャラクターの動きに任せて、ストーリーも、そして次のコマさえも先の事は何にも考えず、ほとんどアドリブで描いた時もある。  「不死蝶伝説」に続いてシリーズ第2弾「不死蝶」は2誌にまたがって2年位続ける。これも結構お気に入りの一遍。 ●1 9 9 1 ~ 1 9 9 3   「性狩人たち」の近未来版、といった感じの「夜戦士」は学園物が多くなったので、マグナム銃で脳天をぶっとばすようなものが又描きたくなって始めたミニシリーズ。全5話位。松文館より単行本「黒い夜と夢魔の闇」に収録。  この年から知り合いの編集者がレディス・コミックを始める人が多く、依頼されてどうしたものかと思ったが、エロなら何でもやってみよう精神と何か新しい世界が開けるかも、という事から’94位までやってみたものの結果的に不毛の時代に終わる。与えられた素材が体験告白物という事で、非現実的なものは描けないという事は得意技を封印して戦うようなもので苦戦を強いられ、これって内山亜紀氏がやまさき十三原作の人情話を描いたようなミス・マッチングで不発だったかな。今後、もしやることがあれば美少年SMのレディス・コミックのみ。そんな雑誌が出来れば、の話だが。  いくつかやったレディコミの編集の一人「アイリス」の鈴木さんは同じさいとうプロOBで、マンガ・アシスタント、マンガ家、マンガ誌の編集、そして今はマンガ学校の講師、とこれだけ多くのマンガに関わる仕事をしてきた人はあまりいないだろう。これでマンガ評論でもやれば全て制覇だが・・・。  この頃はいつもと同じ位の30~40本の作品を毎年描いていたが、レディコミは一本30~40枚とページが多く結構身体にガタがきた頃で、右手のひじが腱傷炎になり1年以上苦痛が続く。医者通いではさっぱり痛みがひかず、電気針で針灸治療を半年位続けてやっと完治。その後、住んでいたマンションの理事長を押しつけられ、マンション戦争の渦中に巻き込まれひどい目にあう。攻撃するのは楽だが、話をまとめるなどというのは社会生活不適格のダー松には大の苦手で「お前等!わがままばかり言うのはいいかげんにしろー!」と頭をカチ割りたくなるような事ばかりで、ひたすら我慢の日々で血圧がガンガン上がり、病院通いの日々。確実に寿命が5年は縮まる。あの時はマジで人に殺意を抱いたものだが、今でも金属バット持って押しかけて奴等の脳みそをクラッシュしたい気分になる時もある。いつかこの時の事をマンガにしようと思っていて、まだ誰も描いてない「マンション・マンガ」というジャンル、タイトルは「我が闘争」。え?誰も読みたくない?  この間に出た単行本は「血を吸う夜」、「赤い月の化身」「熱き唇の女神」[以上・久保書店] /「牝猫の花園」「真夜中の人魚たち」[以上久保書店]、「美蝶/放課後篇」「美蝶/ダンシング・クイーン篇」「不死蝶/鋼鉄の女王篇・上巻」[以上ミリオン出版]。 ●1 9 9 4 ~ 1 9 9 5   ろくでもない事が続くのは厄払いをしなかったせいか、このままここにいたら頭がおかしくなる、と15年以上いたマンションから引っ越し。板橋から巣鴨へ移動し気分一新!以前からうちもやりましょうよ、と言われていた同人誌創りをそのうち、そのうちと伸ばしてきたものの遂に申し込んでしまい、創らざるをえなくなる。しかもそれが引っ越しの時期と重なってしまい大いに後悔する。しかしいろんな人にお願いして何とか一冊でっちあげ、ムシ風呂のような夏コミに初参加。これが運命の分岐点。レディコミもこの年で切り上げ、以下同人街道をまっしぐら。現在まで「FUCK OFF!」が9まで、「FUCK YOU!」が4まで計10+&冊創る。  ’95からダーティ松本の名前にも飽きてきたしJr,Sam名でも描き始める。 レディコミ時代は松本美蝶。あと2つ位違うペンネームも考案中。  この間の単行本「氷の部屋の女」「双子座の戯れ」[久保書店]、「黒い夜と夢魔の闇」[松文館]、「危険な女教師/美蝶」[ミリオン] ●1 9 9 6 ~   美少女路線の絵���もこの年の「夜顔武闘伝」あたりでほぼ完成、今後また少し変化させる予定。しかしこの作品は超能力、アマゾネス、忍法エロマンガとでも呼ぶべきか。「グラップラー刃牙」みたいに闘技場での勝ち抜き性武道合戦までいきたかったけれど、残念ながらたどり着けず。  「冬の堕天使」は久しぶりの吸血鬼もの。都営住宅で生活保護をうけている吸血鬼母子のイメージが浮かび、そこから漫画家協会・加藤芳郎を撃つ有害図書騒動のマンガへ。吸血鬼少年が光の世界との戦いに旅立つまでを描き、「闇に潜みし者」は時空を越えて近未来での戦い。その間を描く作品を今後創らなければ。  「FUCK CITY 2006」はクソ溜めと化した近未来のTOKYOを舞台に久しぶりにダーティ・バイオレンスが炸裂!ハード・エロ劇画と同人誌風・美少女路線の合体は果たしてうまくいったかどうか?30ページほど描き足して、’97、9月にフランス書院のコミック文庫にて発売。[「少女水中花」]  「放課後の媚娼女」と「人形愛」刊行。[いずれも久保書店刊]前者は以前、上下巻だったのを一冊にまとめて。後者は近作を集めた同人時代を経ての初単行本で、同人誌を知らなかった読者はショックを受ける。メタルフアンから以下のようなお手紙を受け取る。「これはジューダス・プリーストの『ターボ』だ。ラストの『眠れる森の少女』は『レックレス』にあたる。しかしジューダスもその後『ラム・イット・ダウン』や『ペイン・キラー』という傑作を世に出した事だし、今後を期待したい」という意のダー松のようなメタルファン以外は意味不明の激励をうける。 ●1 9 9 7   同人誌「エロス大百科シリーズ」スタート!いろんな項目別に年2刊づつ計100ページ位を別刊シリーズとして出し続ければ10年で1000ページになり、以前「谷岡ヤスジ1000ページ」という枕に最適の本があったが、これも一冊にまとめて枕にして寝れば、目覚める頃は3回夢精しているなんて事に・・・などとまだたった40ページの段階で言っても何の説得力もないか。飽きたら2~3号でSTOPするだろうし・・。[推測通り「毛剃り」「美少年SM」「女装」3号でストップ中]冬にはやおい系にも進出の予定。  今年出した単行本は厚くて濃いエロマンガを集めた久保書店MAXシリーズ第2弾!「放課後の熱い祭り/完全版」と「夜顔武闘伝」オークラ出版。ともに大幅描き足して25周年記念出版として刊行。ティーツー出版よりJr,Sam名で「昼下がりの少女」、9月にはフランス書院より「少女水中花」の文庫本が出る予定で現在、この同人誌と並行して描き足し中。「斬姦狂死郎」第2部も「ホリディ・COMIC」誌にて6月よりスタート!年内創刊予定の『腐肉クラブ』なる死体姦専門のマンガ誌にも執筆予定。  さてさて25年間、旅行の時を除いて、現在まで2日続けてマンガを描かなかった事はほとんどない。これはその昔、伊東元気氏というマンガ家とお会いしたとき「今月何ページ描いた?」との問いに、「今月仕事ないんでぜんぜん描いてません」と答えたら、「そんな事じゃ駄目だ。仕事があろうがなかろうが、毎月100頁は描かなきゃ。」と言われ、以後その教えを守り[描けるページ数は減ったが]、マンガは仕事ではなくなり、朝起きたら顔を洗うのと同じで生活そのものとなり現在に至る。  今は何でも描けそうなハイな状態で、以前はたまには外出しないと煮詰まってしまうので週いち位ガス抜きをしていたものだが、最近はせいぜい月いち休めば十分の「純エロマンガ体」。[純粋にエロマンガを描くためだけの肉体、の意。ダー松の造語]  こうしてふり返ると、この路線はまだえぐり足りない、これはあと数回描くべし、なぜこれを一度しか描かない!等々、残り時間にやるべき事、やりたい事の何と多い事! 爆裂昇天のその日まで・・・      燃 え よ ペ ン !  なお続きは 1997年後期 1998年 INDEX
http://www.rx.sakura.ne.jp/~dirty/gurafty.html
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higashiazuma · 3 years
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歯車の塔の探空士 「???号」のかがやき 生命点0点目
カリーナ号の冒険を見届けた数日後。GMは、新たな探空士たちと卓を囲んでいました。 体験卓ということで声がけをし、ルールブックが無くても参加できるよう準備をしていましたが、なんとこの卓のPLさんたちは全員ルールブックを購入済み。 ならば…やるしかないでしょう。このシステムの醍醐味である、飛空艇の設計を!! 大いに盛り上がったプリセッションをお楽しみください。
!注意! 初心者によるてんやわんや進行、身内ノリ、茶番などが大量に含まれます。苦手な方は回れ右です。
GM : では、歯車の塔の探空士、セッション開始したいと思います! 良いセッションにしましょう、よろしくお願いいたします! シシィ : よろしくお願いします~! ミカゲ : よろしくお願いします!!!! ミル : よろしくおねがいします! マーム : よろしくお願いします! GM : では最初にキャラメイクの詰めをしていきましょう~ 盤面上の自分のキャラに、名前や年齢性別などつけてあげてください
【多機能オーブン型コッペリア】 マーム : ママっぽい方が覚えやすそうだったので名前の方にした シシィ : マーム!! GM : マームさんのキャラデータに(リトルキッチンシリーズ)の銘がついてることに気付いて口からお茶が出るところでした マーム : ネタのつもりでやっているのでたくさん笑ってください GM : どんどんやってください マーム : やった!お許しを得た! マーム : 50年前はコンパクトな最新型でしたが、今はリトルといいつつ、かなりデカいはずです ラップトップパソコンなイメージ GM : 機能を盛りすぎた結果どんどんサイズが シシィ : なるほどwww マーム : この「ホットミルク」専用モードはいるのかな? GM : すごい!ホットミルクのための20もの完璧な工程が!? シシィ : ホットミルク専用モードwww ミカゲ : wwwwwww マーム : ホットミルクのためにダイヤルが3,4つついてる マーム : マニュアルが分厚い
※マニュアル全10冊+保証関係の冊子+追加機能カタログ+保守メンテナンス用冊子とかわさわさついてくるやつ。
【キャラ絵を設定しているときの会話】 ミル : デフォルト立ち絵 リットラなのでサイズ感で正解を引いてしまった気がする マーム : 始まる前から正解し続ける㍑さん ミカゲ : 完璧だ GM : ㍉㍑ ミル : ばれた GM : なんだって シシィ : なるほど…!! マーム : mLなのか マーム : たまにはデシリットルも使ってあげて欲しい ミル : 兄か父が怪しいですね シシィ : なるほどねwww マーム : 祖父にガロンとか強そうなのがいそうですね GM : ガロン強そう
※ファイアーがエムブレムするゲームでお城守ってそう。
【オッケーデスカ?】 GM : 全員個人情報の入力よろしいでしょうか! マーム : はい!正しく個人情報を漏洩しました GM : 漏洩たすかります!ありがとうございます!
※たすかります。
【探空士スキルを決めよう】 シシィ : 年を微妙に悩んでますが、初期キズナどころで決めます! GM : はい大丈夫です! GM : では探空士スキルを割り振りましょう! シシィ : はーい! GM : 回避運動持ちの方~ シシィ : あ、確かそれだった気がする! マーム : ツタを大きく伸ばして回避の運動~ GM : ちゃーんちゃちゃーんちゃちゃーんちゃーん
※ラジオ体操第二。
GM : 他にいなければフネの舵はシシィさんに一任するということでよろしいでしょうか マーム : おまかせできたら助かりますワ! ミカゲ : お願いします! シシィ : がんばりまーす! ミル : わーいおねがいしまーす シシィ : 私の胃を守るためにがむばってくれ…… GM : では探空士スキルのところに記入をお願いします! シシィ : はい! GM : 次、弾道学持ちの方~ マーム : どうだっけ!?その辺がとりたかったな~と思ってたけど話し合いを忘れてしまった GM : ここで話し合ってくれて全然良いのですよ ミカゲ : コッペちゃんが弾道大学を志望してた気がする マーム : 人権ないけど弾道大卒業していい? GM : 探空士学校弾道学専攻ブッコワスゾコースですね シシィ : ブッコワスゾコースwww マーム : コッペリアとして合格したからカウントされなくて合格枠が一人あいた マーム : いやむしろ、カウントされないからもうもぐりでとったかもしれない ミカゲ : そこにないのでなかったコペ権
※そこに無ければ無いですね。
GM : 弾道学ユニットを搭載したのかもしれない マーム : 教室にあるオーブンとして弾道学を学びました GM : ソレダ ミル : 設備!! シシィ : なるほどな!? ミカゲ : ホットミルク出しながら学んできたのか… マーム : 休み時間になるたびにパンを温める学生たちが後をたちませんでした シシィ : なんていい教室なんだ…… マーム : 少し別の設備と動かすとすぐ水蒸気ブレーカーが落ちました
※きっと旧式なので燃費が悪い。
GM : では探空士スキルに記入をお願いいたしますね!他に弾道学専攻したい方~ マーム : 確か誰かは被るんだよね GM : ですね。他にいなければお二方は鳶職です。頑張ってマルチに駆け回ってください! ミル : とびとびが やりたい 得意そう マーム : 飛び級コースですか ミカゲ : 能力的に鳶職で��理人を目指す感じです GM : はい!では探空士スキル欄に「鳶職」と記入をお願いします! ミカゲ : 記入しました! ミル : エンダーマンくらい移動します マーム : チェスト隠さなきゃ…… GM : リットラはガチでエンダーマンみたいな距離移動するので怖いなと思います ミル : しゅっ シシィ : ガチのやつだ! GM : 鳶職お二人は、記入したら「移動力」を1点増やしてください! シシィ : 素早いものが多い ミカゲ : こっそり湯沸かし器でカップラとか作ってよう シシィ : 素早さの活かし方www GM : これでミルさんの移動力がシシィさんとマームさんの二倍になるわけです シシィ : ふぁ マーム : なんてこと!カップラはオーブンでブンしてくれ! GM : カップラはブンしたら焼けるのでは!? マーム : 大丈夫ですワシシィさん!私たちが力を合わせれば……! シシィ : そうだ!それだ!!合体! ※なんで? マーム : シュン! GM : 植物と機械が合わさりさいきょうにみえる シシィ : ほんとだ。すごく最強だ ミカゲ : 「まずいんだが」 GM : あーっとしかしここで味に駄目出しが入ったーー ミカゲ : だめだ力がでないもうだめだ シシィ : 死ぬなミカゲーっ マーム : 出発する前から一人倒れてしまった GM : かわいそうに system : [ ミカゲ ] 移動力 : 3 → 4 system : [ ミル ] 移動力 : 6 → 6 GM : 移動力おっけーです!ありがとうございます! ミル : ココフォリアに悪戦苦闘してる間にカップラーメンとミカゲさんがダメになってしまった
※なんでだろうね。
マーム : 私員数外だからドッジボールでもずっと外野なんだ……ミカゲさんが倒れても助っ人に入れない…… マーム : 代理になれない…… GM : ずっと外野、最強では マーム : やっぱりぶつけられても永遠にセーフ!判定が入って永遠に内野にいるほうがより悲惨だろうか ミカゲ : 判定してもらえないコッペ… シシィ : コぺ虐ぅ GM : シシィさん、キズナの処理ですが、もう決めてしまいますか?シナリオ開始してからにしますか? シシィ : あ、どっちがいいでしょう! GM : 決め打ちしたいか、流れでなんとなく決めたいか シシィ : 正直、積極的にキズナをぶんどりにいこう……と思っているので、誰でもウェルカムなんですよね シシィ : 生命点を回復したい子よっといで的な マーム : 楽しそうだけど備品だし主人公として映える人がよさそうだな~と思っていた 誰がいちばんケガするポジなのかな? GM : データ的な処理が始まるのはフライトフェイズからなので、私としては導入終わってから決めてもらっても大丈夫です! シシィ : 流れできめる~~それもいいなぁ…! シシィ : あ、じゃあそうします!>導入終わってから GM : はーい!ではそういうことで! マーム : はーい!
【飛空艇を作ろう】 ※GMも初の飛空艇設計ということで、途中までルールがふわふわしたまま進行します。途中で正規ルールに修正されますので生温かく見守ってください。
GM : では皆さんお待ちかねかもしれない、飛空艇の建造を行います! 場にはサンプルとしてアルバトロス級のデータをご用意しています シシィ : やったーー!!建造だーー!! ミカゲ : ふーね!ふーね! ミル : (あわててルルブをめくっています) GM : 基本的なルールはP54からですね。ご相談のうえ、納得のいくフネを作ってください マーム : 基本的にデータ詰めるのがあんまり得意ではないので、フィーリングで希望を出してきたいな~ 面白そうな奴…… どれどれ GM : 原則的には、パーツの底辺が繋がっていて移動経路が確保されていればオッケーです。パーツの上下には、はしごかエレベーターが無いと移動できません GM : 武装系パーツの威力の見方 Dxx(攻撃範囲:P104参照)/x(攻撃回数) シシィ : どの設備も魅力的でとても悩む…… ミカゲ : 船の図書室にとても浪漫を感じる シシィ : すごくロマン マーム : いいとおも��ますワ! ミル : 殺人光線があ��!(完全に名前だけ見て言っています)
※運命の一言であったという。
マーム : 私もすごく気になっていますワ! マーム : 火炎放射器か殺人光線はどっちかの文字列があったら心強くて愉快だなあと思う マーム : 火炎放射器にはこれからの(空戦の)常識を変えるって描いてあるし…… シシィ : なにそれかっこいい ミル : 人間への……憎悪がある……?って震えています マーム : 違いますワよ!新しい常識には適応したいだけですワよ! マーム : まあでもこの船人間さんいないよね ミカゲ : 殺人光線、説明文に「これを使うぐらいなら大砲を使った方がマシ」と書かれてて、俄然好きになってしまった シシィ : wwwww マーム : やっぱり殺人光線は必要じゃない? GM : GMですが船員が物騒です マーム : 毎日プールの消毒槽みたいに殺人光線を浴びるの
ミカゲ : 船たるもの光線くらい出せなきゃな
シシィ : そうだね、船だもんね GM : 「船たるもの光線くらい出せなきゃな」で声が出ました ミル : チッチッチ、ただの光線じゃないよ、怪しげな光線 ミル : しかも効果音はビビビ マーム : そこなの!そこ!かわいい! マーム : でも効果が実はよく分かっていないんだ 何を選んでるのかなこの数字は GM : 例えばD46だと GM : 着弾点がここだとして GM : これが攻撃範囲ですね(P104) GM : D46/1なのでこの攻撃を1回 マーム : ほう……?ほう……?
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マーム : なるほどね!Dがまんなかで位置をあらわしているのか ありがとうございます GM : カノン砲を試射してみましょうか GM : D/4 D/4 > [縦4,横9],[縦6,横8],[縦6,横10],[縦3,横8] ミカゲ : 着弾点をDとして、指定された周囲の数字マスにも着弾だ 789 4D6 123 シシィ : テンキー!
※天才の洞察力。
ミル : すうじがいっぱいあってすうじがいっぱいあるなっておもいました GM : 「D/4」だと攻撃範囲はD(1マス)で、4回撃つのでこんなかんじ!
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マーム : 待ってくれ……すごく軽い気持ちで遊覧飛行に来ようと思ってたんだけど結構……この船墜ちる!? マーム : 楽しくなってきちゃったな ミル : 攻撃範囲がD!なるほど ミカゲ : 意外と生き急ぐなこのコッペ GM : そのための回避運動 GM : オラわくわくすっぞ シシィ : ひっ ががががむばる マーム : もう保証対象年過ぎちゃったからね マーム : あとは打ち上げ花火だよ マーム : 夢だった弾道大学も行けたしね…… ミル : 移動力が6もあるので自分だけ逃げ延びられないか考えています GM : 飛空艇は空の孤島なんだよなぁ シシィ : おちるときは皆一緒だよ! ミル : 移動力が6あるのに!?!??! GM : 一蓮托生! ミル : リットラなので蓮の上でスペース取らないですしね シシィ : 座布団あげたい>蓮の上でスペース取らない GM : 蓮の上…員数外… マーム : 座布団を配置するか マーム : バリスタでコーヒーいれよう?って思ったら違った モンハンのバリスタだ マーム : 操縦系と機関系が一つ必要なんだね GM : ですです マーム : 操舵系でご希望ありますかみなさま! マーム : 今私は革張りがめっちゃウケるなというところだけ読んでいる GM : ぶるじょわ GM : 操縦系と機関系が一つ あとは員数分の「居住性」を持つパーツが最低限必要です。倉庫も依頼に必要なので配置してほしい気持ち マーム : よし倉庫を配置しましょう! マーム : なんか転がり込んでくるみたい! ミル : しゅっ ミル : 難易度をいくつにする系がほしいとか ありますかね GM : 判定の難易度は基本的に2d6で7になるので、難易度下げる系はシンプルに便利です ミル : かっこいい革張りはかっこいい シシィ : なによりかっこいい革張り マーム : 革張りはかさばるようだし、効果がなんかちょっと玄人っぽさありますよね……ネタとして好きなんですけど! ミカゲ : 快適な革張りいいな マーム : あとはしごって1列バーって配置しておけばいいのかな GM : 連続しておかなくても大丈夫ですけど、連続してたほうが導線はスマートになるかなあと ミル : 使いやすいとこに一列ばーってやっとくと多分まとめて駆け上りたい時にS字クランクせずに済む なるほど ミカゲ : 候補に入れておいて、はみ出しそうなら考えよう>革張り シシィ : 回避しやすいのがいいかなぁ 革張りすきだけど シシィ : うんうん マーム : 了解です!ありがとうございます!
※この時点ですでに全員「革張りの操舵輪」にだいぶ心を動かされている。
ミル : 逆に回避の難易度を上げることもできますよ!!(どうして)
※「コックピット」のこと。1×2マスの省スペース設計。ただし回避の難易度は8となっております。
ミカゲ : 自ら追い込んでいくスタイル GM : デモ 省スペース ダヨ! シシィ : ドオシテ
※「回避運動」担当のかぼそく震える声。
ミカゲ : あと人数分の船室? マーム : 3人分でいいですからね!と思ったけどNPCさんが…… マーム : 倉庫におすまいアリエッティなのかしら GM : アリエッティです GM : 倉庫はNPC1名を収容しておけるので ミル : しまっちゃえる マーム : 親近感を感じます シシィ : しまっちゃう庫 マーム : 機関系がホブゴブリン気になるな……フライクリスタルとマッドブイエイトはなんか使い方が難しそう マーム : めちゃくちゃ好きなんですけど GM : マームさんは「員数外」なので「居住性」があるパーツを必要としません もちろんあえて船室を用意することもできます ミル : アホの科学者が発明したどうしようもない装備、ちょくちょくあってつい誘惑されます
※機関系パーツで言えば「マッドブイエイト」のこと。玄人探空士たちはこれと「突撃衝角」でヒャッハーしてるっぽいのが、公式タグで散見されます。
マーム : いいんですよ、私は……私は革張りの操舵輪のところに住みますから マーム : めっちゃ快適 GM : 一番快適なとこだぁ マーム : モノなんで消防法的にも大丈夫ですわ お気になさらず シシィ : 私の中の提督心が宮沢式発動機改二!!!て騒いでるけど、 速力と燃費がいいやつがよさげだね GM : 宮沢式は省スペースなので被弾しにくいメリットはあります マーム : 速力と燃費があるんだねえ シシィ : メリットがあった! ミカゲ : フライクリスタル、ミカゲのHPで燃素を補えるのか
※運命の気付き。
シシィ : えっまじ マーム : かまたき?ができなくなるらしいぞ マーム : ご飯食べられなくなるかも知れない ミカゲ : じゃがりこあるから大丈夫 マーム : ならいいか GM : フライクリスタルは燃素を燃やすかわりに命を燃やすので シシィ : 命を燃やす船…… マーム : フライクリスタル揚げる? マーム : いや!速力が2しかないぞ ミカゲ : 速力2 ミカゲ : 命を燃やして速力2 マーム : 速力が2しかないということがどういうことかはわからないんだけど GM : メリットは、いちいち燃料投入しに行かなくていいとこですかね GM : 速力はイニシアチブチェックで同値になった時に速力が高い方が優先されます ミル : もっと燃やして燃やしてって声かけるの、やだなあ(そっと命を燃やす側からのがれる) マーム : 防御力が0になるけどMPの消費が0になる装備とかと同じくらいやりこみゲーマー向けな気がする GM : 燃費は…戦闘でラウンド終了時に1ずつ減っていくんですが、0になって放置してると航行不能になります シシィ : つまり毎ターン命を… GM : 皆で命を削れば大丈夫❤
※本来、フライクリスタルは「魔法スキルを修得しているキャラクター」の生命点を使用しますが、GMは全員の生命点を使用できると勘違いしたままセッションが進行します。ご了承ください。
シシィ : 命!皆で削れば怖くない! マーム : 私はコッペちゃんなので燃料にはなりませんワ マーム : 魔法使えないと思うんだ多分 マーム : ゴミに出すときも粗大ゴミのシール貼らないとダメだと思う GM : 魔法使えなくても消費対象に選べるから大丈夫です^^
※本来は消費対象に選べないのでだいじょばない。
シシィ : やったね! ミル : よかった! ミカゲ : 全員等しく命を燃やす船になれる マーム : いのちの輝きじゃん マーム : まかせてくださいよ…… マーム : この船に貢献できることを嬉しく思います マーム : 中の人が漏れ出しすぎてキャラクター性が分からなくなってきた GM : 特攻兵のそれだあ GM : キャラクター性は歪むもの ミカゲ : 開発者の人格が漏れてしまう ミカゲ : 今ピックアップされてる装備だけでもだいぶ愉快になってきたな!! GM : スゴイフネダァ マーム : 私、殺人光線さえあれば笑いがこみ上げてくるので、どんな船でも実は満足できますワ マーム : カップヌードル食べたくない?湯沸かし器いる? ミカゲ : カレーヌードル食べたい シシィ : 湯沸し器はなんか他のパーツとシナジーがあったし、置いてた方がよさそうな感じする ミル : シーフード味がいい シーフード……? マーム : 効果が簡単そうでいいですよね湯沸かし器 不得意を得意にでしたよね GM : 見張り台 スゴイサムイ 湯沸かし器でお茶ノム アッタカイ 見張り台 サムクナイ マーム : シナジーもあるのか!流石蒸気機関だなあ ミカゲ : 役立つ!!! シシィ : さむくない!! マーム : 見張り台もおすすめされてる気がする カートに入れて良い? ミカゲ : 偵察系かな? マーム : この湯沸かし器を買っている人はこんな見張り台も買っています! GM : 見張り台で偵察判定をして手に入る「手がかり」は、道中表を振り直せます マーム : ですね!p64 ミル : いろんなみはりだい!! ミカゲ : 二人で入れるデートスポットみたいな展望デッキもあるのね シシィ : 展望デッキも良さそう…洗濯物とか干せそう ミル : 相手は付属してこない シシィ : デートスポットを洗濯物干しにしてしまった ミカゲ : 生活感 ミカゲ : かなしい 一人でお茶入れて一人で洗濯物干す マーム : 員数外なのでデート相手に入らないんですね GM : なぜ偵察系パーツは物干し台になるのか ミル : そこに洗濯物があるから
※???「チュン……」
マーム : 私とデートしても「一人で何してたの?怖……」って言われる GM : 「え…コッペリアと…」「備品とデートしてたの…?こわ…」 マーム : あまりにかわいそう マーム : 展望デッキも好きです!兵器足りなくなったりするかな?おけるかな? マーム : あ、展望デッキも白湯でしのげってかいてある GM : サムイヨ マーム : カートにいれる?あとでまとめて注文しよう ミカゲ : お空の上だもんなあ GM : 操舵系の「ブリッジ」でも偵察判定できたりする サムクナイ シシィ : なるほど…! ミル : すごい マーム : 色的に赤が足りない気がする…… マーム : お弁当の彩り的に ミル : たんぱく質系ですね シシィ : 彩は大事 ミカゲ : 武器を調達だ マーム : どれが実用的なのかピンときてないんですよね マーム : 殺人光線はピンときたんですけど ミル : 殺人光線はだって 殺人光線だもの シシィ : ビビビ マーム : ビビっと来ましたね GM : 純粋に手数の多い兵装は楽しいと思います マーム : 独特な発射音からポンポン砲と呼ばれている……ラピッド砲…… マーム : これ、これあったらギャグ補正で生き残れる気がしませんか? マーム : 墜ちても次のセッションの時には治ってそう ミカゲ : るるぶに「小さなパーツを取得するほど飛空艇全体は強力になっていく」と書いてあった GM : P70ですね マーム : フライクリスタルしまってぜんぶファルコネット砲にする?9マス マーム : すごいTASとかがやりそう GM : 面積が狭いと被弾する確率が下がるということです マーム : GMの解説!天才的だ! マーム : フライクリスタルって人の命を燃やしておきながら9マスで速度2なの? GM : ソウダヨ マーム : 好きになっちゃう…… ミカゲ : でかいほど格好の的に! ミカゲ : 殺人光線といい「何でそれを船に?」みたいなラインナップが揃ってて、好きになっちゃうこの船 GM : 「釜炊き」分のアクションをしなくていいのが長所ですよろしくね💗 シシィ : かわいい……好き マーム : 私としてはかなり完璧な船だと思うんですが、どうも感覚がわからなくて、GM的に「やめとけ」ってところはありますか マーム : 今のこの最高の船に…… GM : 武装はもういっこあったほうがいいかなとは GM : 自由移動枠が三人いて、今だと二人しか攻撃に参加できないので マーム : ありがとうございます! ミカゲ : ヤッター!武器積もうぜ! マーム : やっぱり彩りなんだよ
※そのりくつはおか…いや合ってるのか…?合ってる気がしてきた…ウン……
シシィ : あー3つあったほうがいいか…! ミカゲ : ひとり1武器 シシィ : 長射程とかついてるのはなにかボーナスがありますか? GM : 射程に関してはP60です! ミル : ほうほうほう シシィ : ありがとうございます! GM : 長距離はレンジが「長距離」の時の「難易度上昇」を無視できて GM : 短距離はレンジが「長距離」だと攻撃回数が1回になるデメリットがあります ミカゲ : おお~~~~~ マーム : リボー砲が必殺っぽいアクションがあるようだ…… GM : 武装3つというか、3マス分ですね マーム : けど横3マス……あ、殺人光線の隣あいてない? シシィ : あ、なるほどなるほど! GM : リボー砲は誰かがアクションでパーツを使用してからでないと砲撃できない浪漫砲となっております ミル : 殺人光線は2マスで2人入れるからあと1マスが必要? シシィ : ロマン砲だー! マーム : ロマン砲なのですか!ちょっと弾道大学では習ってないかも…… ミル : ロマン!すき!! マーム : やっちゃう?合体攻撃? ミル : できるかな!?できるかな!!? ミカゲ : 浪漫乗せていこうぜ マーム : 被空挺はロマンでとんでいますからね マーム : ロマンが尽きたときには墜ちます GM : ツイッターァだったらいいねしてました GM : パーツ決まったら導線考えつつ良き感じに配置していってくださいね~ マーム : リボー砲カートに入れました ミカゲ : 当船は浪漫と皆様の命で飛んでいます マーム : GM!普通お船ってぎっちぎちに配置するもんですか? マーム : お弁当のように? GM : 卓によります!! ミカゲ : 船室とはしごの間の空白を埋めないと、全員見張り台経由で移動することになる? ミル : なんか大事なパーツは外ににがしてあげろって記述をどっかで! シシィ : あったあった真ん中よくないって マーム : 大事なパーツって殺人光線かな? GM : パーツ間は上下移動できないので GM : 現状だと船室二か所と図書室と展望デッキに入れませんね マーム : ひどい導線をつくったせいで船員2人が遭難した ミカゲ : 船内で孤島ができてしまったな GM : でも導線考えると真ん中にあったほうが行きやすい…というジレンマ シシィ : ああ~~~ マーム : じゃあたてにながいやつははじっこがいいかな マーム : 機関パーツだし……ってことであってるのかな ミル : (パーツ取得上限をみています) GM : 全マスみっちみちにしても良いんですよ GM : なお戦闘 ミル : 52ページの上限が……! GM : あ、そうだそうだ失念してた!
※マジで失念していました。ミルPLさんありがとうございます。ここから正規ルールでの飛空艇の設計が始まります。
ミカゲ : (ニョリニョリパーツが動いていてとても楽しい) ミル : にょりにょりってかわいい GM : 機関系はどっちかいっこですね マーム : 命を燃やすか…… ミル : 迷いなく修羅の道突っ込んでてすき シシィ : 安定でいくか、命を燃やすか… GM : 偵察系もどっちかいっこ ミカゲ : 見張り台or展望デッキ マーム : ぐう……おまかせします マーム : はしご6つとってって書いてあるけどサンプルが5つだなあ GM : 6つ同時取得なので、何個か破棄しても良いのよ ミル : 6階建てにするときは6つなんだきっと ミカゲ : 適度にこう…生命回復の手段を画策しつつ、いのちを燃やしてみたい… シシィ : なるほどなるほど
※ロブスターMkⅣとフライクリスタル、選ばれたのはフライクリスタルでした。
GM : グッバイエッビ シシィ : 燃やしていこう いのち ミカゲ : いのちの燃える船へようこそ ミル : もえちゃっちゃ…… マーム : お客様、こういう船は初めて? GM : で、設備系もどっちかいっこ…なので、図書室or湯沸かし器ですね マーム : うおあおおおおおおおおおおおおおおそれはつらい シシィ : おーのー! ミル : 追加取得枠はそしたら砲撃系ですかの? マーム : 命燃やすから凍えてもいいんじゃない? マーム : カップヌードルは諦めて貰うけど…… ミカゲ : 図書室か湯沸かしかー! GM : ですね、武装もまずどっちか避けてもらって… GM : ハブられた子たちで敗者復活戦みたいな ミル : なるほど シシィ : 敗者復活www ミル : すごい ロマンの塊みたいな船に見える GM : ちなみに大きいパーツは底面マス意識すると導線確保しやすくなりますよ ミカゲ : 中央の殺人光線の輝き好き ミル : 殺人光線の輝き 見えた時にはだいぶやばいやつだ! マーム : 殺人光線と隣の部屋は可哀想だなあってくっつけられないでいる マーム : 私はいくらでもなんですけれども ミル : 底面マスを通って移動ってことは、でっかいパーツの上側と接してるパーツから飛び降りて移動はできないですか? マーム : 飛び降り、ダメージありましたね…… ミル : あっ あるんだ こわい ミル : ただでさえ命が燃えるのに GM : 飛び降りて移動はできますが、「落下」扱いになり、着地地点で移動が終了します GM : 落下距離1マス×1d6ダメージです ミカゲ : 結構あぶない当たりどころがある数字だ ミル : 移動力が6あるのですが!!(移動力信者) 多分そんなことしないで歩いて行けってことだ GM : レビテーションとかファーリィの飛翔能力があればペナルティなしですけどね! ミル : なるほどお! シシィ : なるほどお! ミカゲ : あ、図書室or湯沸かし 湯沸かしでカップヌードル食べられたら良いです! マーム : うう……図書室はみんなの心の中に入れましょうか…… シシィ : そうだね……いつか増築(できるのか?)しよう…… GM : 偵察系2つのオーディションは展望デッキ当確ですかね シシィ : 展望デッキに一票ぅ…! ミカゲ : 広い物干し台がほしい! ミル : デートスポット! ミカゲ : ロマンチックだね……(SE:はためく洗濯物音) GM : では最後に、好きなカテゴリからパーツ1つなので敗者復活戦ですかね シシィ : なんか機関系は上にパーツおくより、下にパーツ置いたがいいって書いてある(ヒントに) マーム : ねぇ、聞こえる?この駆動音。命が燃える音よ…… ミル : そうだ 命燃やしてた シシィ : ロマンがチックだ…… ※私の知っているロマンがチックとちょっと違いますね。 マーム : これ違うな 世界を滅ぼして見る奴だな マーム : 世界が終わってるときにやるやつだわ シシィ : 敗者復活! ミカゲ : 武器をもういっこ? ミル : GMおすすめはやっぱり武装ですの? マーム : GMのおすすめが武器でしたかしら GM : ハイ ミル : 圧をかけてしまった GM : でもPL同士で納得できるのが最良だと思います GM : 俺はこいつと旅に出る(フライクリスタルゥ)的な ミカゲ : 命を燃やしながら革張りと展望台で、現状とても納得のいく船です マーム : 私、殺人光線さえあればあとはなにもいりませんワ! シシィ : こんな素敵な船がおちたら泣いちゃうから、武装でよいと思います! ミル : 短射程ちゃんじゃない武装がいてくれると心強いです シシィ : あ、殺人光線、短射程か…! マーム : なに砲にしよう 一人一個じゃないって聞いて直感で……強そうだからリボーがいいなーって言っちゃったけど別に専用じゃなかったんですよね マーム : リボーちゃんでいいのかな GM : 短射程武器でも操舵士がイニシアチブ取り続けてレンジキープすればいいんですよ(ニッコリ) マーム : フライクリスタルちゃん、ふわふわだからね シシィ : でもこの船の速力は、、、 ミル : フライクリスタルでね ミカゲ : 短距離しか飛ばないビームで愛しさが増してしまった GM : びびび(距離減衰) シシィ : かわいい マーム : リボーを展望デッキの上あたりにはりつけていいのかな ミカゲ : リボーちゃんで良いですよ! GM : 展望デッキは「外周限定」なので マーム : アッ GM : 外の空気が吸えるところにおいてあげてくださいね ミカゲ : 船室1個よせる? ミル : デッキは一番外側!なるほど! GM : 形になった! ミカゲ : やんややんや!!!!! マーム : 上の出っ張ってるはしごいる?あれロマン?
※初期取得分のはしご6個分をそのまま縦にだーっと並べて配置している。
マーム : ロマン部? ミル : ロマン部 マーム : なんか潜水艦だったらあそこから狙われそう ミル : よりによってそこが壊れて「上のはしごー!!!!」って全員で泣くやつ GM : はしご、「耐久無視」ついてるのであっても困らないんですよね実は ミカゲ : 予想外の強さ シシィ : あ、機関系ってどうなんだろ、P70に上に置くほうがいいよ~て書いてあったんだけど GM : 機関系というか、縦に長いパーツはってことですね シシィ : あ、なるほど。縦に長いパーツ マーム : フライしてみた……あっそうなんだ GM : 上にならはみだしても底面マスで繋がってるけど、下だと底面マスが遠いのでちょっと困る GM : って感じです ミル : ははあん マーム : フライ返ししてみたよ
※フライクリスタルの位置を交換してみたよ、の意。
マーム : 殺人光線を浴びなきゃ命を燃やせなくなってかなり愉快だからコッチが好きかも知れない シシィ : wwww GM : 革張りの総舵輪…もうちょっとアクセスしやすいとこだと修理しに行きやすいかなぁと GM : とはいえ移動力6リットラがいるしなあ ミル : おおお マーム : ど、どう?倉庫がGoogleマップで徒歩5マスになったかもしれない シシィ : 隣接した! ミル : した! シシィ : 室近な職場だ! GM : あとはいかがですかね乗員の皆さま マーム : みんな自分の部屋を決めなよ! ミカゲ : わーいお部屋だーーーー GM : あっ、自室決めるのいいですね! GM : すごく良い!!
※GMは1卓目で某PCさんの船室と某NPCの船室が吹き飛んだのを知っている。
ミル : あの絶妙にあいたところにもう一部屋ぶちこむかどうか ミカゲ : 空き部屋だ マーム : あ、それはいいですね GM : 船室はプレイヤー人数分なので、取得できますね シシィ : お部屋増えた!やったー! シシィ : じゃあせかっくなんで、操舵近いとこを! マーム : 一人だけお部屋離れてたらさみしいだろうし…… マーム : かわいいシルエットになってきたな GM : パーツ数が11個で、3で割って切り上げなので耐久度4で~…
※飛空艇シートの耐久度、速度、燃費を埋めていくGM。
GM : ヨシ! ミル : やったー! シシィ : やったー!! GM : リボー砲の下の部屋騒音すごそうですね シシィ : どっかんどっかん ミル : ほんとだあ マーム : うるさいところ私置き場にしておく? ミル : もしかしてロマンはしごとかコッペパンルームとかのおかげで耐久ちょっと上がった? ミル : はしごはちがうか マーム : 私オーブンなので……湯沸かし器に近いと安心しますし マーム : いや、対抗意識燃やしちゃうかも知れないな GM : 船室(調理スペース) シシィ : 湯沸し器に近いと安心するオーブン、ときめいちゃうな ミル : やんややんや ミカゲ : 弾道大学出だし、リボーちゃんへのアクセス良いとこ合ってる気がする マーム : 弾道大学でみんながオーブンを待ってるときに……湯沸かし器に群がるカップヌードルを持った学生たち…… マーム : 私はオーブンなので、ただブンするしかなかった GM : かなしいかこが シシィ : ライバルだったか……
※湯沸かし器の隣の船室に「マーム置き場」と記入するGM。
マーム : マーム置き場にしていただ��ましたわ!ありがとうございましたわ! マーム : というわけでカップヌードルを沸かすときは私の部屋の前を通って貰いましょう ミカゲ : ブンをオススメされそう GM : ボーダレスしたいだけなのに視線を感じる… マーム : じ…… GM : 貴方はカァップヌゥドゥにお湯を入れようとしますが…ここで聞き耳を GM : いえなんでもないです ミカゲ : ブゥン……(かそけき音) GM : ヒッ マーム : リボー砲がうるさいからな…… GM : 1d100とか振って数字大きい順にお部屋とっぴしたらどうですかね マーム : 殺人光線へのアクセスが近い部屋が誰のものになるかが気になる ミカゲ : シシィちゃんが革張り部屋の近くだよね ミル : 移動力が6あるので!!!!!気にしないです!!!! シシィ : あ、一番下のにしようかなと!希望者いなければ! GM : たぶんドアの外からみょんみょん(アイドル音)言ってる GM : シシィさんのネームプレートかけときました シシィ : やったー!ネームプレートだー! ミカゲ : じゃあカップヌードルにお湯入れに行きやすい上から2番目のお部屋にしたいです! マーム : もしかして㍑さんはあれか……3駅とか マーム : 平気で動くタイプかってぼけをかまそうとして途中送信してしまった GM : あまりにもつよい ミル : しゅっ シシィ : 行くのか…殺人光線…
※殺人光線最寄り徒歩10秒の船室という胡散臭物件を船長がカップラしたいという理由で取りに行ったことに動揺を隠せない(と思われる)シシィPLさん。
ミカゲ : これでブンもお湯も入れ放題よ マーム : 最高の環境を手に入れましたね GM : ネームプレートかけときました~ご確認ください ミカゲ : わーい! お部屋だー! ミル : わーいわーい ミル : (跳ね回る) GM : あざといリットラだ!! マーム : かわいすぎん!? シシィ : かわいい! マーム : 寝てたら上から天井にぶつける音とか聞こえるのいいなー GM : では…これで完成としてよろしいでしょうか! ミカゲ : はーい!! マーム : 最高の船になってしまった…… シシィ : はーい! マーム : ありがとうGM!大丈夫です! ミル : わーい!
【飛空艇の名前をつけよう】 GM : では仕上げです!フネに名前をつけましょう! シシィ : 名前!! ミル : elonaの名前ロール表みたいなのどっかにあった! ミカゲ : お名前どうしよう!!! いのちのかがやき くらいしか思い浮かばない シシィ : それだよ ミル : それだわ マーム : いいと思う GM : いのちのかがやき号 ミル : いのちのかがやき号 GM : オッケーデスカ? シシィ : オケ��゙ス! マーム : Brightness of life号 マーム : 決まってしまったな…… マーム : 最高の名前が…… ミカゲ : 決まってしまったわ…… シシィ : あ、なんかすごいかっこいい GM : 英語にします? ミル : 最高のやつだ GM : ブライトネスオブライフ号 ミカゲ : かっこいい! マーム : バーニングのほうかもしれない ミカゲ : 燃やし始めたwwww GM : バーニングライフ号 シシィ : wwwww ミル : 生き急ぎ感が出た マーム : いのちのかがやき号いいな…… マーム : なんかこのいのちのかがやきという要素が入っていれば私は全てが最高ですね……英語でもひらかなでも…… ミカゲ : ひらがなの、NHK教育っぽい響き マーム : なのでおまかせいたしますワ! シシィ : なやましい!どっちも好き! GM : どうするーあいふるー マーム : ダイスに聞きますか? ミカゲ : そうだ、ダイスに聞こう シシィ : それでもよきよき! ミル : 賛成! マーム : ミルさんがはねてる マーム : かわいすぎる マーム : 口に含みそうになる ミカゲ : ブンしないでペッして マーム : しまったついうっかり収納してしまった GM : チンされちゃう ミル : オーブンにも1人入れられるってことですか シシィ : そうか、口含む=ブン!になるのか…! マーム : 1,ブライトネスオブライフ号 2、英語表記 マーム : 3.いのちのかがやき号 マーム : とかでいいですか? ほかなんかなければ……GMおねがいします! ミル : わーいわーい ミカゲ : 3択オッケーです! GM : 私!? GM : じゃあ振りますね マーム : えへへ やったあ
GM : 1d3 (1D3) > 3
シシィ : wwwwww マーム : NHKですね ミカゲ : いのちのかがやき号が爆誕だー! シシィ : いのちのかがやき!いのちのかがやき!! ミル : 大好きになっちゃった ミカゲ : 船内にパプリカ流しておこう GM : では船名は「いのちのかがやき号」に決まりました! GM : ではいのちのかがやき号の栄えある船長を選出してください! マーム : 個人的にはいのちのかがやき=ミカゲ君の血液という気がするんですが シシィ : それそれ ミル : すごくわかる シシィ : これどう考えてもみかげっちの船だ… ミカゲ : 僕のいのちのかがやき号 GM : 語弊 マーム : すごい笑っている ミカゲ : 船室で回復ロールしか出来ない マーム : この船に人権はないのか シシィ : そんなミカゲくんの部屋横に殺人光線なのスゴク笑う ミル : いのちをなんだとおもってるんだ ミカゲ : 多分…えーと、家ですっごい我侭を言ったら船をつくってもらえたけど、燃料をくれなかったので自前で飛べるようにしたようなアレで。 マーム : 燃料をくれなかった シシィ : かわいそうだ!!! GM : 家の倉庫に眠ってたフライクリスタルをえんやこらと マーム : 最高の設定ができてしまったな GM : 素晴らしい… GM : では…船長はミカゲさんで良いですか? ミカゲ : 革張りがほしいって通したら機関が自分になってしまった シシィ : wwwwww マーム : そこに予算かけちゃったんだ GM : みんなも命をささげてあげてね! ミル : 古めのシステムらしいし フライクリスタルくん とても正解の音 マーム : あ、私も倉庫から出てきていい? マーム : それかヤフオクで競り落として欲しい…… ミカゲ : ヤフオクwwww シシィ : ヤフオクwww
※コッペリア、オークションに出品されがち。
ミカゲ : うちの倉庫から出てくるかい、マーム マーム : いいの!?出てきたい!! GM : なぜコッペリアは競売に出されるのか ミカゲ : やったー!! マーム : やったあ!ご主人様が見つかったぞ! ミカゲ : お前も頑張っていのちを燃やしてくれ ミル : よかったよかった GM : 燃料(いのち)目当てwwwww マーム : ブンならまかせてくださいませ マーム : 私のオーブンはいつでも燃えていますワ! マーム : 命まで燃やすとは思わなかったですけれども……まあ……誤差ですワ!
GM : それでは諸々決まりましたので…導入に移ろうと思います!
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katayaburi2 · 4 years
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仙台付近を1日中ブラブラ。午前の部
東北本線仙台地区 仙台エリア随一の列車観察スポット長町駅。 仙台空港アクセス線、東北本線、常磐線の列車が集結し、毎時12本という驚異的な本数になる。E721系と701系の併結列車が数多く運転される。 最大両数は719系撤退後は6両。8両編成の乗車口も残されているが..?
2+2+2のブツ6の列車も多数設定されている
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他社保有のE721系シリーズ 阿武隈急行の新車AB900系は昨年7月デビュー 8100系の仙台直通列車を置き換えた。外観や内装もほぼE721系準拠で、違うのはトイレ出入り口付近にゴミ箱が追加された程度? この他にも仙台空港アクセス線保有のE721系が2種。青い森鉄道701系も含めるとかなりのバリエーション。  
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陸前山王駅まで移動。
仙台地区の数少ないリゾート?列車。快速湯けむり号。 陸羽東線経由で仙台~新庄で運行されるリゾートみのり号に代わって運行されるようになった。車両はご覧の通り既存のキハ110に装飾を施しただけ。両数は3両→2両に減車となり、座席は一般型と同じボックス席であり、果たして長続きするのか..?
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仙石東北ラインのHB210系
仙台~石巻間を東北線・仙石線経由で運転する快速はなんと1時間を切る爆速っぷり。写真の特別快速は205系電車快速時代の最速達列車「うみかぜ」の系譜を受け継ぐ列車で、石巻までの途中停車駅はたったの3つ。
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陸前山王駅に来た目的はもちろんこれで、ED75-759とチキ6000形(短尺レール2組)の授受作業が行われていた。JR東海型のレール運搬機動車が導入されたことにより、このような光景も近い将来無くなるのだろう 。
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この日は東福島までの配給列車だった。そこでレールは積み下ろされ、モーターカー牽引のトロリーによって各地へレールが運ばれるのだろう。
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地下鉄南北線をまともに観察したことがないじゃないかということで、八乙女駅へ
→午後の部へ続く
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tabooome · 5 years
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パターソンについての考察ーMonday
 カーテンの隙間から青白い光が差し込んでいる。朝がやってくる、まだほんの少し前。 「……はよ」  ぼやけるほど近くにあった顔に向けてバッキーはもそもそと囁く。瞼も口も、思考すらもまだ眠りのなかだ。 「……おはよう」  視界にぼんやりと映った唇が動く。自分のものよりも幾分かしっかりした声のあとに、相手の顔は更にバッキーに近づいてきた。シーツが擦れて魅力的な音を立てる。首筋に埋まった相手の顔。そうして、少しだけ可笑しそうな声がする。 「寝起きの匂いがする」 「……ばかやろう」  バッキーはそう言って穏やかに笑う。徐々に働き出した視界の中で、スティーブが微笑んでいた。
   日課のランニングで朝の澄んだ空気を味わい、順番にシャワーを浴びて朝食を作る。窓から差し込む朝日が室内の壁をより一層白く光らせている。小ぶりな一軒家のダイニングは、清々しい雰囲気で満ちていた。 「スティーブ、卵は4つで良いか?」  バッキーは髪を拭きながらキッチンに入ってきたスティーブに声をかけた。頷いたスティーブを見て、熱く熱したフライパンに卵を落とす。途端にじゅうっという賑やかな音がした。別のフライパンにベーコンも並べ、食欲をそそる音がさらに大きくなる。スティーブは徐々に香ばしくなる匂いを一杯に吸い込みながら、自身はコーヒーを淹れるためのお湯を沸かし始めた。  彼らが借りている家は、アベンジャーズ施設のすぐ傍に位置するキングストンの住宅街の中にあった。綺麗に区画分けされた敷地の一つ。マンハッタンのビル街からは想像もつかないほど静かなこの静かな街に、2人で暮らし始めてもうすぐ1年になる。それはバッキーがワカンダから戻ってきてからの歳月と同じだけの時間だった。  ハドソン川沿いに建つアベンジャーズ施設までは車で20分しか離れていない。基本的には陽が上る前に起き出す2人にとって、朝の時間は贅沢なほどゆっくりと進む。それはしっかりと朝食をとり、食後のコーヒーを飲んでから新聞を読んでもまだ余るほどに。 「アップタウンでフリーマーケットをやるらしいよ」  新聞を眺めていたスティーブが言う。バッキーが横から覗き込むと、スティーブは隅のほうに控えめに掲載された広告を指さした。自分が見逃した小さな記事広告。そういうものに反応するのを見るたびに、変わっていないんだなと微笑ましい気持ちになる。 「へえ、今度の土日か。丁度休みだし、行ってみるか?」  キングストンは芸術家の多く住む街だ。それなりに名の売れた人物の他に、駆け出しのアーティスト達もよく移り住んでくると聞く。今は家賃の高騰しているブルックリンも、同じようにアーティスト達の憧れを受けて発展したらしい。もちろん、それは2人が知らない時代の話なのだが。しかしおそらくはそれも、スティーブがここに家を借りた理由の一つなのだろうとバッキーは踏んでいた。だから個人的なギャラリーや小さなアートマーケットにスティーブが興味を示すたび、なるべくそれを叶えてやりたいと思うのだ。もちろんバッキーと一緒に行きたいんだと言われたら断る理由なんてない。たとえそれがただの散歩であっても。 「広告出せるくらいだから、それなりに大きいのかもな」  そんなことを言いながら車に乗り込んだ。日に日に高くなる空が秋の訪れを告げている。バッキーがアメリカに戻ってきたのは冬の初めだったので、今はまだ2人にとって初めての季節だ。これから少しずつ木々が色づき、1ヶ月後にはそれは美しい紅葉を見せてくれるはずだ。そうなったら毎日スティーブの運転するバイクで出勤しても良いし、休日にはキャッツキルマウンテンを訪れるのも良いだろう。��ッキーは運転席の窓をあけて外の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。 「夕飯、どうしようか」  助手席に座ったスティーブが聞いてきた。バッキーは思わず吹き出してしまう。 「さっき朝飯食ったばっかなのに、もう夕飯の話かよ」 「いいだろ別に。さっき冷蔵庫を見たらキャベツくらいしかなかったから、買い物してから帰らないと」 「玉ねぎならまだあるぞ」 「それにしたってそれだけだ」  何度か信号に捕まりながら、のどかな道に似合う気の抜けた会話が続いていく。少し逡巡した後で、バッキーは呆れたように眉を下げた。 「……腹が減ってないと何も思い浮かばねえよ」 「……それもそうだな」  ワカンダにいた頃はスティーブが来るたびに何かしらの食事を用意して待っていた。洗脳は解けていたにもかかわらず、最初の頃は全てが、何より自分自身が地面から数センチ浮いているような、そんな日々だった。その中で誰かのために料理をするということが、少しずつバッキーをこの世界に引き戻してくれたのだ。山羊を育て乳を搾り、羊の肉を捌く。鍋でそれらを煮込んでいると不思議と生きていることを実感できるような気がした。この身体に血が巡っているのだと。  そんな経緯で自分の中で食事というのはある一定の意味を持つものになっているのだが、スティーブはそれを知ってか知らずか、こうしてよく食べたいものはないかと聞いてくる。料理好きになったと思われているのかもしれないし、単にバッキーの希望を叶えてやりたいと思っているのかもしれない。バッキーが同じことをスティーブに思っているように。どちらにせよ、面映いことに違いはない。
 何も思い浮かばないと告げたバッキーだったが、夕方を過ぎる頃には自然と食べたいものがぽんぽんと頭を邪魔してくるようになった。仕方のないことだろう。頭を使う作業はとにかく腹が減るのだ。  アベンジャーズの一員として業務に当たるようになったバッキーに主に任せられているのは、ヒドラたちの暗号解読である。他のメンバーのトレーニングに付き合うこともあるが、こればかりはバッキーが片付けるのが一番効率的だと皆がわかっている。だから今日も朧げな知識をフル動員させて、時には空中に浮かぶ最先端の画面も操作しながら、バッキーはいたちごっこのように変化する暗号を読み進めることになった。 「……腹減った……」  車に乗り込んで、エンジンをかけながら思わず口をつく。素直な言葉に今度はスティーブが苦笑する番だった。 「スーパー寄らないと何もないぞ」 「ハリー、ハリーだ。��ティーブ」 「はいはい」  フロントガラスから見える空はうっすらと青に染まり始めている。夕焼けと夜空の間には白があることをバッキーはワカンダの生活で初めて知った。もっとも、それより以前に空の色を気にかけたのがいつだったかさえわからない。しかし、広大な空を見上げてスティーブのことを思ったのは、確かにこの時間であることが一番多かったのを覚えている。バッキーはふと逸れた意識を悟られないようにそっと今へと戻した。
 買い物中も空腹を訴えるバッキーを宥めながら2人は家路に着く。質より量、量より速さだと主張した結果、夕飯はマカロニチーズに決まった。  鍋に湯を沸かし、もう一つの鍋も準備する。さすがにマカロニチーズだけというわけにはいかないので、ポトフも作ることにした。玉ねぎとじゃがいもを切って水から茹でる。小さめに切ったのは少しでも早く出来上がるようにという欲のあらわれだ。野菜を茹でる間にフライパンにバターをいれる。端から透明に溶けていくのを見ながらバッキーは思わず呻いた。なんだってこんなに良い匂いがするんだろう。 「腹減った……」 「もう少しだから、バッキー」  横でパンを切っていたスティーブが笑う。またも宥めるような物言いに、バッキーは軽く肩をぶつけることで応戦した。おい、ナイフ持ってるんだぞという声も気にしない。2人でキッチンに立つことを愉快だと思うのはなんでだろう。バッキーはぐりぐりと身を寄せながら、スティーブにはわからないように口の端を持ち上げた。  小麦粉と牛乳で液体状になったソースにチーズを加えていく。ヘラでかき回しながら、もう片方の手でキャベツとウインナーをポトフの鍋に入れる。バッキーが雑につかんだそれらをボトボトと落とす横で、スティーブは茹でたマカロニをザルにあけた。大量のお湯がシンクに流れ出し、ムワッとした湯気が瞬間的に立ち込める。近くに洗い上げていたコップ達は一瞬にして白くなり、その湯気を顔全面に受けたスティーブも思わずバッキーの方に顔を背けた。その一連の流れを見ていたバッキーは、眉尻を下げて近づいてきたスティーブの唇に自分のそれを押し付けた。ふにっとした触感を味わい、一瞬で離れる。いきなりのキスにスティーブは目を丸くして驚いていて、そのことにバッキーの目も口も、更に満足げに弧を描く。 「……なんのキスだ?」 「湯気がセクシーだと思って」 「湯気?」 「そう、湯気」 「……僕じゃなくて?」 「ははっ、残念だったな」  でも理解が追い付かずに眉を潜めるその癖はセクシーだぜ、と言おうとしてやめた。飲み込んだ言葉にまた一つ笑って「ほら、マカロニよこせよ」とだけ告げておく。スティーブは腑に落ちないのかしばらくバッキーを見つめていたが、おとなしくザルの中のマカロニをフライパンに流し込んだ。したいからした。本当にただそれだけの衝動だ。でも、2人でキッチンに立つことも、湯気の中に見えたスティーブの顔も、何だって愛おしいと思うんだなんて言ったらスティーブはキスを返してくれるだろうか。
 大量に作ったマカロニチーズをしっかりと腹に収め、余ったポトフは明日に持ち越すことにする。スティーブが淹れてくれたコーヒーを飲みながら、朝もそうしたようにソファに2人並んで腰掛ける。深いブルーのソファは清潔そうな白い壁と合うと思って、引越しの際に2人で選んだものだ。  満腹になり、ぼんやりとした眠気が襲ってくる。触れそうなほど近くにある高い体温もまぶたを重くする要因だった。 「満腹になるとさ」 「ん?」  深い考えもなく、なんとなく言葉を発する。 「――腹いっぱいになって、眠くなるのって、動物っぽいのにすごく幸せなんだよな」 「……」 「なんかそれって、人間っぽいなって思うよ」  バッキーは身動いで、スティーブの腕にそっと身体を寄せた。背中をソファに抱かれて、でも相手に触れるだけでこんなに安心が増すのはなぜだろう。きゅっと膝を折り曲げ、抱え込むようにコーヒーを啜る。 「……今も眠いだろ」 「わかる?」 「身体が熱い」  スティーブが穏やかに笑うのが触れ合った腕から伝わってくる。 「僕はお前が料理してるのを見るの、好きだな」 「そうなのか」 「うん、ワカンダにいたときは作って待っててくれただろう。それはそれで嬉しかったけど、なんか、料理してるお前を見るのが好きなんだ。一緒に暮らし始めてわかった」 「……へえ」 「……たとえば、ソースを作りながらポトフも作るだろう。そういうの、考えて作ってるんだなって思うとさ」 「なんだそれ、そんなんお前も一緒だろ」  だいぶスティーブに寄りかかっていた身体を少しだけ戻し、バッキーはスティーブの顔を覗き込んだ。 「そうだけど……、ああ」  スティーブは思いついたように呟くと、バッキーの唇に素早くキスをした。 「セクシーだと思うのかも」  唇を離し、笑いを含みながらスティーブが告げる。 「はあ?」  今度はバッキーが眉を顰める番だった。笑うと半円状になるスティーブの目。それを見つめているうちに、わけのわからなかったことなど、もうどうでもよくなった。 「……なんだそりゃ」  そうして、2人で笑い合う。
「なあ、お前の眠いのが移った。シャワーしてこいよ」 「そうだな、もう寝るか。月曜だし」  2人はそれから順番にシャワーを浴び、至って健康的な順序でベッドに並んで寝転んだ。心地よい音でシーツを引き上げ、そうして顔を見合わせながら目を閉じた。月曜日はこうして終わった。
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toytraint · 7 months
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2ttf · 12 years
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hummingintherain · 3 years
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弱虫ヒーロー
「ぼくがヒーローになるよ」  どんくささが災いし幼稚園でいじめられて涙で顔をぐしゃぐしゃにしていた私に突然彼女はそう言って手を差し伸べた。  私達にとってヒーローとは日曜の朝にテレビで放送される戦隊物のイメージだった。毎週悪者が出てきて、町を荒らして、人の平和を脅かす。その脅威に立ち向かう戦士達。最終的に爽快な展開になって、子供はみんな憧れて、変身グッズを身に着けてヒーロー気分で跳ね回る。  その時、園内に植えられた巨大な木の陰で私は隠れて泣いていた。室内でおりがみを折ったりおままごとをするのが好きなのに、おそとで遊ぶのも大切だからと先生に連れ出されて、やりたくもないおにごっこに巻き込まれて、案の定さっさと鬼にされて、でも誰に追いつくこともできなくて、からかわれてばかりで、とてもいやな気分になって、悔しさとか惨めさとかに苛まれてしくしくと泣いていた。  私のことなんて忘れて違う遊びに切り替えたから、誰も私を探しには来ず、思う存分泣くことができた。唯一やってきたのが、彼女だった。きらきらとした木漏れ日が当たって、彼女を含めたあらゆる景色がきれいだった。 「まもってくれる?」  私が問いかけると、男の子みたいに髪を短くした彼女は自信満々といったように歯を見せた。 「まかせろよ」  小指が重なり、絡まる。指切りげんまんが交わされて、私たちの間には秘密が生まれた。  それから彼女は私にくっついてくれた。正しくは、私が彼女にくっついていた。  彼女は男の子に負けない体格の良さをしていた。幼児における男女差なんてそんなものだ。彼女は四月生まれで同学年だと一番成長しているはずで、私は翌年三月の早生まれで比較的小さい子供だった。四月生まれと三月生まれではあらゆる点で差が生じる。  彼女は負けん気が強くて、男の子にも果敢に挑んでいった。女の子たちは彼女のことを慕っていた。私は金魚の糞みたいなもので誰の視界にもうまく入らなかっただろうけど、とにもかくにも彼女が味方してくれているだけで私は随分と助けられた。  しかし、その年の三月に彼女は急に園を去ることになった。親の転勤が理由だった。  私にとって世界の終わりと同様だった。  うそつき、と言った。自分勝手に。まもってくれるって、言ったのに。私はあの日、彼女と約束を交わした日よりもずっとかなしい涙を流しながら、彼女にそんなこころない言葉をかけてしまった。ごめん。彼女は本当につらそうに謝った。私もとてもつらかった。彼女と離れることも、彼女が離れてしまった後のことも、あらゆることが不安でつらかった。  それから彼女はこの町を去って、私と彼女の秘密は遠く細く引き延ばされてぷつんと切れてしまった。
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 時が経過し、私は地元の公立中学に入学することになった。  私服登校だった小学校と違い、真新しくてぱりぱりしてて固い生地の、制服に袖を通す。私立や少女漫画みたいに可愛いチェックスカートも赤いリボンも無い、ただの紺無地のプリーツスカートにブレザー、リボンもネクタイも無し。ちょっと不満だったけど、身につけてみるとそれだけでお姉さんになったみたいで嬉しくなった。お母さんもお父さんもいたく喜んでくれて、入学式に臨む。  何校かの小学校の学区が複合しているので、元の小学校の友達は勿論、他の小学校の子もたくさん入学してくることになる。幼稚園では手痛くいじめられたが、小学校でなんとか少し持ち直し、友達もできた。中学校はどうか、クラスでうまくやっていけるか、部活はどうするか、勉強は大丈夫か、だとか期待と不安がぐるぐると回転している。  一年三組に組み込まれ、教室の後ろから父母に見守れながら私達は一人ずつ自己紹介をしていった。私はたいてい一番最初の出席番号になる「会澤真実」で、この一番最初という位置にどれほど振り回されてきたか分からない。会澤苗字のお父さんをどれだけ恨んだことか。  先生に呼ばれて、席を立ち上がる。最初がみんなにとっても肝心だということはよくわかる。みんなの視線が集まって、負けそうになる。やばい、吐きそうだ。知っている子を咄嗟に探す。真ん中あたりに小学校の友人がいて、あの子が傍にいてくれたらどれだけ心強かっただろうと思いながらも、彼女が小さく手を振ってくれたのを見てほっとして、なんとか私は噛まずに自己紹介を始める。名前と、出身校と、抱負。無難に終わらせて、ぱらぱらと拍手が起こる。  しばらくは多大な緊張がずっと糸を引いていて、意識が他の子たちの方に向かなかった。じくじくと鳴る心臓がやがて収まってきたころには、さ行までやってきていた。 「清水律」と聞いて、私はふと顔を上げた。どこかで聞き覚えのある音並びだった。立ち上がったのは学ランを纏った、中くらいの背の男子だった。中性的な顔つきで、どちらかというとイケメンな部類に入るような感じがする。しみずりつ、と心の中で繰り返す。なんだろう、このデジャヴ。  淡々と続いていた自己紹介に衝撃が走ったのは、そんな彼が発した次の言葉だった。 「ぼくは性別は女ですが、心は男なので、学校にお願いして男子として生活することにさせていただきました。よろしくお願いします」  教室に薄い困惑が広がった。  そして私は思い至った。どうしてこんなに大事なひとの名前を忘れていたのだろう。  昔、約束を交わした、私にとっての正義のヒーロー。 「りっちゃん」だ。
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「りっちゃん」  つつがなく入学初日を終えて、静かな興奮と動揺の残る教室で、りっちゃんの周りの子たちがいなくなったのを見計らって私は思いきって話しかけた。  りっちゃんはやっぱり学ランを着て、普通の男子とおなじような雰囲気をしている。でもさっき一緒にいた子達は女子だった。多分、同じ小学校の子たちで、友達なのだろう。なんで、とか、聞こえたから、たぶん彼女達もりっちゃんが男子の格好をしていることに驚いたのだろう。心が男だというくらいだから小学校でもボーイッシュな格好をしていたのかもしれないが、女子と男子で明確に見た目が区分される中学校でまで学ランを着てくるとは誰も予想していなかったように窺えた。  はじめりっちゃんは目をぱちくりと瞬かせたけど、ふわっと笑った。 「久しぶり。やっぱりまみちゃんだったんだ」 「うん」  私はどきどきした。なんだかずっと落ち着いた声色に思う。男子は少しずつ声変わりしつつある人も出てきているけれど、りっちゃんは当然ながら男らしい野太い声ではない。むしろ澄んでいる印象があった。なんだか大人っぽい。 「最初名前を聞いて、似てるなあって思ったんだ。思い違いだったら恥ずかしかったんだけどさ」 「私も……いや、最初は、その、名前を聞いてもなかなか思い出せなかったんだけど、りっちゃんが男子の格好をしてますって言った時に、思い出した」 「めっちゃ事細かに教えてくれるじゃん。てか、りっちゃんって懐かしいな」  私はちょっと慌てた。そうか、りっちゃんはりっちゃんだけど、男子として生きているんだとしたら、ちゃん付けは嫌かもしれない。 「小学校ではどう呼ばれていたの?」 「律が多いな。それか清水。こういうのだから、ちゃんとかくんとかややこしくて、呼び捨てが多かったんだ。でも呼びやすいようにしてくれればいいよ。別にりっちゃんでも。男でもちゃん付けのニックネームってあるしさ」  この余裕はどこから生まれてくるんだろう。私はたった少しだけの時間でりっちゃんはやっぱりすごい子なのだと思った。すごいね、と何気なく言うと、りっちゃんは首を傾げた。 「何が?」 「いや、いろんなことが。幼稚園の頃より落ち着いてるし、大人びて見える」 「幼稚園の頃よりは成長してたいわ。流石に」 「そっそうだよね。ごめん」 「いいよ謝らなくたって。まみちゃんはなんか、ちょっときょどきょどした雰囲気は残ってるね。懐かしい」  きょどきょど、という言い方がちょっと可愛いけど、多分良く言われているわけじゃない。 「でも、さっきの自己紹介とかさ、一番で緊張するだろうにちゃんとしててかっこよかったよ」  クラスの子たちに嘗められたりいじめられたりしないようにするには第一印象が何よりも重要だ。りっちゃんにそう言われると、たぶん割と大丈夫だったのだろうとわかり、ほっとする。 「すっごく、あがっちゃったけど」 「うん、緊張感は伝わってきた。女の子はそのくらいの方が可愛らしくていいよ」  りっちゃんはさばさばと笑う。けれど、どうしてもその言い方に引っかかってしまう。 「……あの、りっちゃんの、心は男っていうのは」  思ったよりすらすらと会話が進んだので、私は決意して尋ねてみることにした。 「ああ」りっちゃんはなんてことないように学ランの襟元を摘まむ。「言った通り。いろいろ迷って親や先生方ともよく相談したんだけど、ぼくは自分で着るならブレザーとスカートより学ランとズボン派だっていうだけ」  でも、まみちゃんの制服姿はとても似合ってる、とさらっと褒めてきた。はぐらかされたのだと解った。私は頬がちょっと熱くなるのを感じながら、辛うじて、りっちゃんも学ラン似合ってる、と返した。本当に似合っていた。私もそうだけど、制服に着せられている子ばっかりな中で、りっちゃんはそのぴしっとした制服の頑なさがりっちゃん自身にフィットしていた。 「そうか? 良かった」  ほっと肩の力が少し抜けたのを見て、ああ、涼やかな顔をしてるりっちゃんも緊張してたのだと知る。 「小学校の友達にもちゃんと言ってなかったからさ。皆びっくりしてて。でも、なんとかなるか。堂々としてればいいよな」 「うん」  私は素直に頷いた。  それから簡単に会話を交わして別れた。また明日、と言い合って。  また明日。反芻する。また明日、りっちゃんに会えるのだ。同じ教室で。幼稚園の頃と少し形は違うけれど、あの時永遠の別れみたいにたくさん泣いたのに、奇跡が起こって再会できた。そう考えるとなんだか嬉しくてたまらなくなった。  私は大きくなったりっちゃんの素振りや言葉を思い返す。  先生、だけではなく先生方とつける。果たして、小学校の時、そんな風にさらっと言える人は周りにいただろうか。中学一年生なんて、制服で無理矢理ラベリングされただけで、中身はまだ殆ど小学生みたいなものだ。その些細な気遣いのような言葉の選び方に、私は今のりっちゃんの人間性を垣間見たような気がした。
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 りっちゃんの噂は教室を超えて一年生全体に広がった。  面白半分に様子を見に来る野次馬根性の人もたくさんいた。初めのうちは私の席は入り口から一番近かったので、廊下にたむろしているりっちゃん目当ての人たちの声がよく聞こえた。どれ? あれあれ、あの座ってるやつ、へー、みたいな、好奇心だけが剥き出しになってる言葉が殆どだった。その中には、りっちゃんの元小の子たちもいて、小学校の時もやっぱり男子っぽさはあって、男子にまじってサッカーをしたり、誰にも負けないくらい足が速かったり、その一方で女子ともYouTubeの話をしたり恋バナをしたりしていたらしい、という情報を横耳で仕入れた。  要はクラスの中心人物として立っていた。あれだけ大人っぽかったら、確かに自然と中心になりそうだ。悪い意味ではなく「違う」感じがする。私とは全然違うし、皆とも違う。彼女は少し、違う。あれ、彼女っていうべきなのかな、それとも彼っていうべきなのかな。  たぶん、私が抱いているそういう戸惑いをみんなが持っていた。  そんな皆の戸惑いは素知らぬふうで、りっちゃんは「男子」として中学生活を送っていた。男女一緒くたの陸上部に入部して、毎日放課後に校庭でランニングしているのを見かける。私は小学校の友達に誘われて美術部に入った。絵なんて全然上手じゃないし好きじゃないけど、何かしらの部活には入っておいた方が友達ができると思ったからだ。友達はいるぶんだけ安心する。  実際、美術部は先輩後輩の上下関係も薄くて気が楽だった。プロみたいにびっくりするほど上手い先輩もいれば、幽霊部員もざらにいる。アニメっぽい絵を描いて騒いでる人もいれば、静かに一人で模型造りに没頭している人もいる。みんなそれぞれで自由にしていて、地味さが私にちょうど良かった。新しい友達もできた。  私とりっちゃんは全然違う世界の人だな、というのは、部活に入ってしばらくしてから実感するようになった。  初めのうちはちょくちょくタイミングを見計らって話したけれど、それぞれ友達ができたし、瞬く間に忙しくなった。小学校よりもずっと授業のスピードが早いし宿題は大変。塾に行っている子は更に塾の宿題や授業もあるのだから大変だ。私はらくちんな部類のはずなのに、目眩が起こりそうだった。  それでもたまに話す機会があった。委員会が同じだったからだ。園芸委員会である。だいたいこういう類は人気が無い。毎日の水やりが面倒臭いし花壇いじりは汚れるからだ。私のような地味な人間には似合うが、りっちゃんが立候補するのは意外だった。曰く、植物って癒やされるから、らしい。  校舎に沿うようにして花壇が設けられており、クラス毎に区分されている。定期的に全学年で集会があって、植える花の種類を決める。大体決まり切っているので、すぐに終わる。そして土いじりをして苗を植えて、水やりをする。水やりは曜日を決めて交代でしているので、りっちゃんとゆっくり隣で話すのは土いじりをするときくらいだ。だから、私はそんなに植物が元々好きだったわけじゃないけれど、この時間が結構好きだ。 「暑くなってきたよなあ」  とりっちゃんは腕まくりをして苗を植えながら言った。りっちゃんの腕はあんまり骨張っていないけれど、陸上部の走り込むようになって黒くなりつつあって、健康的な肌をしていた。 「そうだね。そろそろ衣替えだよね」  既に男子は学ランを脱いで、女子はブレザーを脱いでいる。女子はベストを羽織っているひともいるけれど、本格的に暑くなってきたら半袖に切り替わる。 「やだなあ」  りっちゃんは軽い感じで苦笑し、お、みみず、と言って、指先でうねうねうごめくみみずを摘まんだ。私は思わず顔を顰める。 「ええ、きもちわる」 「みみずっていいやつなんだよ。みみずのいる土は栄養分たっぷりってこと。だからここに植えた苗はきれいな花が咲く」 「知ってるけど」私は口を尖らせる。「きもちわるいものはきもちわるい」 「それは仕方ないな」  りっちゃんはおかしそうに笑い、みみずを元の土に返してやる。 「りっちゃんは家でもこういう園芸とか、するの?」  結局私は慣れている「りっちゃん」呼びを続けているけれど、クラスでそういうのは私だけだった。ただ、普段周りがいる中でそう呼ぶのはなんか恥ずかしいし、りっちゃんもちょっと嫌かもしれないから、「清水くん」と使い分けている。 「たまにね。母さんが庭いじり好きだから。雑草取りとかよくやるよ。暑くなるといくら取っても草ぼーぼーになるから、それも嫌だな。嫌いじゃないんだけどさ。植物って何も言わないし、無心になれるというか」 「ふうん」 「まみちゃんはこういうのやらない?」 「全然。うち、マンションだし。でも、委員会でやるようになってちょっと好きになった」 「いいね。まみちゃんはきっと綺麗な花を咲かせる」 「綺麗な花?」 「植物は人の感情を反映させるという噂がある」  りっちゃんは基本的には大人っぽくて男子らしさは確かにあるのだけれど、時々こういう可愛らしいというかロマンチックなことを言う。 「だからおれはいっつも雑な咲かせ方をする」  入学時には「ぼく」を使っていたけれど、五月頃には「おれ」と言うようになった。 「私も自信ない」 「じゃあ三組はみんなより変な花が咲くかもな」  二人して笑った。りっちゃんの冗談は心地良い明るさがあって、話していて楽しい。
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 最初の明らかな違和は、やはりというかなんというか、プールの授業だった。  暑くなってプール開きが示されて、教室にはいろんな声が沸き立った。女子の中には水着姿になるのが嫌だという子もいたし、男子は大体嬉しそうだった。でも三組には他の教室に無い疑問が浮かんでいただろう。  清水律はどうするのだろう。  りっちゃんは普段男子の格好をしているけれど、身体は女だ。だから、当たり前だけど、上半身はだかになる男子の水着姿はたいへんなことになる。かといって、女子のスクール水着を着たら、それはそれでなんだかおかしい感じがする。  トイレは男女共有のバリアフリースペースを使って凌いでいるけれど、こればかりはどうしようもない。陽の下に明らかになってしまうことなのだ。  結論からすると、りっちゃんは一切のプールの授業を休んだ。休んで、レポートを提出した。  プールを休む子は他にもいる。女子も結構休んだりする。女子には生理がある。体育の先生に直接生理だという理由を伝えるのは嫌だけど、お腹が痛いとか言ったら大体通じて休める。明らかに生理休みが長すぎる子は流石に指摘されて、しぶしぶ出たりするけれど。  一方でりっちゃんはずっと休んだ。それを不満げに見ている子もいた。レポートで済むなんて楽だよね、と嫌みったらしく言う子もいる。そんなの、仕方ないじゃんと思うのだけれど。りっちゃんだって休みたくて休んでいるわけじゃないのだ。たぶん。  そういえば、りっちゃんは生理はどうしているのだろう。あんまりにデリカシーが無いから訊けないけど。  生理に限らず、中学生の時期は男女で大きく身体が分かれていく。  女子の生理は小学生高学年から中学生にかけて初潮がやってきて、身体は丸みをおびて、胸がすこしずつ大きくなっていく。男子は、あんまりよくわからないけれど、声変わりして、ちょっとひげが出てきたりする。身体も大きくなってくる。女子も身長はよく伸びるし私も春から夏にかけて二センチくらい伸びたけど、男子は女子の比じゃないという。特に中学校で凄まじい勢いで伸びていって、ごはんの量も半端じゃない。エネルギーの塊、みたいな感じ。  りっちゃんは男子だけど、女子だ。身体は、女子なのだ。  衣替えになって、りっちゃんはひとり長袖のシャツをしていた。私はなんとなくその理由を察した。半袖のシャツは長袖のシャツよりも生地が薄くて、透けやすい。りっちゃんの胸は薄いけれど、たぶん多少は膨らんでいて、ブラだってしている。キャミソールとかタンクトップを上に着て、女子もブラが透けないように気をつけるけれど、りっちゃんはそのものを隠そうとしているのではないか。本人には訊けないけれど。  そういったことが違和感が表面化してきたのは、夏休みが近くなった頃だった。  花壇に植えた向日葵の背が高くなって、もうじき花開こうという頃である。  他愛も無いからかいのつもりだったのだろう。座って次の授業の準備をしていたりっちゃんの背中を、男子の指が上から下へなぞった。  そうしようとしているのを、私は教室の後ろ側から、美術部の友達で一番仲が良いさきちゃんと会話しながら見ていた。やばい、と直感していた。男子達がそわそわしていて、なにかをりっちゃんに向けてしようとしていると解った。それがなんなのかまでは、会話まで聞こえていなかったから見当がつかなかったけれど、感じの悪いことであることには間違いないと思った。  そしてその指がりっちゃんのきれいな背筋を辿った時、私は思わず息を詰める。  男子が大きな声で、ブラしてる、と興奮なんだか卑下なんだか、宣言した。  りっちゃんは驚いて彼を振り返っていた。その男子のグループは手を叩いて笑っていた。やっぱり「してる」んだ、と謎を解き明かして、ものすごくおかしいことみたいにめちゃくちゃ笑っていた。一連の行為は三組みんなの耳に入っていただろう。  私は凄まじくその男子のことを嫌悪したけれど、りっちゃんの次の行動に、驚いた。  あの大人びて、いつも穏やかなりっちゃんが、手を上げた。  がたんと椅子を勢い良く倒して、触れた手をひらひらと揺らしている男子に、殴りかかろうとした。  その顔は、遠くにいても、ものすごく冷たくて、恐ろしかった。怒りというものは振り切れてしまうと烈しい色ではなくもっと静かな色をしているのかもしれないと知った。  りっちゃんの怒りの拳はからぶった。  がん、と固い音。  降り下げられた先は、机だった。木の板が割れるんじゃないかと錯覚するほどの強い音だった。いよいよ教室中の空気が氷点下に下がった。窓の外の油蝉の声がやたらとよく聞こえて、虚しいほどだった。 「……ごめん」  脅える男子を前に俯くりっちゃんはそう呟いて、教室を出て行った。  静まりかえった教室だったが、りっちゃんがいなくなったことでどよめきが起こり始めた。間もなくチャイムが鳴って、先生が入ってきた途端、教室の異様な雰囲気を感じ取って目を丸くする。 「あれ、清水くんは?」  先生がそう言った。なんでそんな蒸し返すようなことをわざわざ尋ねるの、と、先生はなんにも悪くないのに私は強く思った。 「保健室です」  最前列にいる委員長がそう言って適当にやりすごした。  結局りっちゃんはその後教室に戻ってこなかった。翌日の学校を休んで週末を挟み、月曜からはまた学校にきた。私はほっと胸を撫で下ろした。りっちゃんはいつもと同じ涼しげな顔をして挨拶をした。クラスの反応はそれぞれだった。私みたいに安心していつも通りみたいな挨拶を返す子もいれば、ぎこちない子もやっぱりいて、そしてひそひそ話をする子もいた。  嫌な予感がした。  しかし、幸いというのかなんなのか、間もなく一学期が終わろうとしていた。  私は、夏休みを挟んで、この事件が生み出したこわばりが薄まることを、切に願った。
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 夏休み。  美術部は自由登校だ。一応コンクールはあるけれど、締め切りにさえ間に合えばあとはどうだっていい。  私はそれでも学校に来ていた。絵はそんなに好きじゃなかったけど、塾も無いし、やることがあんまりなかったから、なんとなく向日葵に水やりをしにきた。ひんやりとクーラーがよく利いた美術室で一休みしている間に、静まりかえった校舎にブラスバンドの練習している音が響く。同じ学校なのに、普段のせわしなさが無くて異世界みたいだった。こののんびりとした静けさは、いいな、と思う。ずっとこのくらい優しい時間が流れていればいい。  私はスケッチブックを脇に、ペンケースを片手に、花壇の方へ向かった。途中で青のじょうろを手に取り、水を入れる。日光に当てられているせいか最初は熱湯が出てきて驚いた。こんなに熱くては向日葵の根に悪そうで、充分冷たくなってからたっぷりと補給する。  たぷんたぷんと重たく跳ねる水。ときどきはみ出して、乾いた校庭にしみをつくる。  花壇側は影がほとんど無かったが、花壇の後ろの数段の階段部分、つまり一階の教室に直接通じる部分はぎりぎり黒い影になっていた。花壇から校庭側���目を向ければ入道雲が光り輝く夏の青空が広がり、とんでもない直射日光の下で運動部が練習している。サッカー部と、それに陸上部もいる。思わずりっちゃんを探したけれど、見当たらなくてちょっと残念だった。りっちゃんは高跳びをやるようになっていていた。助走をつけた直後の一瞬の筋肉の収縮と跳ね返り、そして跳んだ瞬間の弛緩した雰囲気、全身をバネにしてポールを越える刹那に懸ける感じが、きれいで、りっちゃんにぴったりだった。私はこっそり練習を遠目に見かけてスケッチブックに描いてみたけれど、あまりに下手すぎてお蔵入りだ。人体は難しい。  そうしてぽんやりと歩いて行くと、三組の花壇の前には思わぬ先客がいた。 「りっちゃん?」  声をあげると、りっちゃんが顔をあげた。その手には緑のじょうろを携えていた。 「あ、おはよう」  あまりに普通に挨拶された。慌てて挨拶を返す。 「すごい。夏休みなのに水やりしにきたのか。あ、部活か。美術部って夏休みもあるんだな」  りっちゃんはスケッチブックに視線を遣った。その中にはりっちゃんの跳ぶ瞬間を描いた下手くそな絵もあるので、慌てて後ろ手に隠した。 「りっちゃんこそ。というか、りっちゃんの方こそ部活は?」  まさに、陸上部がすぐそこで練習に励んでいる。えいえい、おー、だとか、かけ声を出しながら、走り込みをしている。  真夏のまばゆい陽に照らされて、りっちゃんは少しさみしげに笑った。りっちゃんに特有の大人っぽさに切なさが加わって、私はたったそれだけで胸が摑まれた。 「辞めたんだ」  咄嗟に、耳を疑った。  蝉の声がじんと大きくなる。 「辞めた?」 「ああ」 「陸上部を?」 「ああ」  私は信じられなくて、一瞬目の前がくらっとした。  真面目に頑張っていて、りっちゃんは楽しそうだった。身体を動かすのが好きで、小学校でだってスポーツが得意で男子にも負けなかったくらいだったという。足だって速かったという。実際、りっちゃんの足は速い。体育で私はそれをまざまざと見て、本当に、本当の男子にも負けていなくて、びっくりしたし、かっこよかった。 「なんで?」  蝉が近くでうるさく鳴いて、風を掻き回している。 「言わなきゃ駄目?」  りっちゃんは薄く笑った。なんでもあけっぴろげにしてくれるりっちゃんが見せた小さな拒絶だった。ショックを受けていると、りっちゃんは嘘だよ、と撤回した。 「陸上って、まあ、スポーツって全般的にそうだけど、男女で種目が分かれてるだろ」 「……うん」  どんくさいくせに、私はもうなんだか道筋が見えて、理由を訊いた自分がいかに無知で馬鹿か自覚することになった。 「どっちがいいのか、結構揉めてさ。そりゃ、身体は女子だから、身体を考えると女子になる。でもおれは男子でいたいから、男子で出場したいんだけど、なかなかそうはいかないんだとさ。ほら、戸籍とか学校の登録では女だから。おれ、格好が男なだけなんだよな。それに、やっぱり先輩とか見てるとそのうち絶対本物の男子とは差が出てくるんだよな。それってどうしようもないことだしさ。今はおれの方が成績良くても、そのうちあいつらは軽々と俺ができないバーを越えていくようになる。てか、今、おれが高く跳べるとか、速く走れるっていうのも、どうもあんまり良くないみたいでさ。実力主義って言って割り切れたらいいんだけど、どうもそういうわけにはいかないらしい。運動部って上下関係厳しいしさ。腫れ物扱いっていうかさ。なんかあらゆることが面倒臭くなって、そもそもおれの存在自体が面倒臭いんだって気付いて、辞めちゃった」  一気に言い切って、あはは、とりっちゃんは空虚に笑い飛ばした。あまりに中身が無い笑い方だった。  私は自分が立っている地面の堅さを意識しなければ、自分が立っているかどうかの認識すら危うかった。 「おれも美術部に入ろうかなあ」  などと、絶対に本心からではないことを言った。 「絵が下手でもやれる?」  りっちゃんの顔がにじむ。 「壊滅的に下手だから、美術部は流石に無理か」  また、からからと笑った。あはは、からから、表面だけの心にもない笑い方。 「……まみちゃん」  りっちゃんが驚いた顔をして、近付いてくる。 「なんで泣いてるんだ?」  私はまたたいた。いっぱいになった瞳から、堪えきれず涙が溢れて頬を伝った。 「ええ、どうした。なんかおれまずいこと言った?」  慌てて引き笑いをするりっちゃんの顔をしっかりと見ることができない。私は咄嗟に首を横に振り、嗚咽した。ほんとに、なんで泣いてるんだろ。私がどうして泣いているのだろう。  水の入ったじょうろが指から滑り落ちた。水が派手に跳ねて、じょうろは横倒れになって、乾いた地面に水溜まりが広がっていく。  空いた手で私は涙を拭く。肌で拭ったところで全然止まらなくて、スカートのポケットを探る。そうして今日に限ってハンカチを忘れたことに気が付いた。美術室に戻れば鞄の中にタオルがあるけれど、戻る余裕が無かった。私はじっと静かに泣いた。  やがて、りっちゃんから、黙って、青いハンカチが差し出された。  綺麗な無地のハンカチ。私は最初断ろうとしたけど、りっちゃんは自然なそぶりでそのハンカチで私の頬を拭った。このさりげなく出来てしまうりっちゃんの大人びた優しさが、いいところだ。やわらかな綿の生地が触れて、群青のしみが広がっていく。私は諦めて受け取り、自分で目頭に当てた。ついでに鼻水まで出てきて、ハンカチは申し訳ないくらい私の涙と鼻水をたっぷり吸い込んでしまった。りっちゃんは何も言わなかった。静かに待ってくれた。私は、頭が真っ白になりながら、頭のどこかで、この二人向かい合っている状況が誰の目にも入らなければいいと思った。りっちゃんも、私も、ややこしいなにかに巻き込まれないように。でも、隣のグラウンドではたくさんの生徒がいる。校舎内ではブラスバンド部が練習している。こんなところ、誰の目にも触れない方が無理だ。こんな時までそんなことを考える私は、最低だ。 「思い過ごしかもしれないけど」  私の嗚咽がピークを迎えてやや落ち着いてきた頃、りっちゃんは静かに滑り込むように呟く。 「まみちゃんが考えているよりおれは平気だから、大丈夫だよ」  嘘だ。  私は充血した目をハンカチから覗かせて、りっちゃんの顔を見上げた。女性的でも男性的でもある、きれいなりっちゃんの顔。りっちゃんは笑っていた。愛想笑いだった。  ほら、やっぱり嘘だよ。 「りっちゃんらしくないよ」  私はどう言ったらいいのか解らなくて、ようやく絞り出したのは、その言葉だった。  りっちゃんの顔が冷める。 「おれらしいって、なに?」  思わず息を止める。私はりっちゃんの冷たい双眸を凝視した。笑った仮面を剥がした、静かで、恐い、りっちゃんの表情。冷たい怒りを拳というかたちに変換して振り上げた、あの教室での鮮烈な映像が過った。  ぬるい風が強く吹いて、軽くなったじょうろがかたんと音を立てる。  りっちゃんは我に返ったように表情を変えた。ありありと後悔が浮かんでいる。 「ごめん」  そう口早に謝って、りっちゃんは俯いた。 「ヒーロー失格だな」  りっちゃんは呟いて、その場を去った。私の後ろの方へ足音が遠ざかっていって、やがて消えた。  蝉の声と、ブラスバンドの音と、運動部のかけ声、それにあまりにも重たい沈黙だけが残った。  なんてことを言ってしまったのだろうと、烈しい後悔に襲われてももう遅い。りっちゃんのハンカチで顔を覆ってうじうじと座り込んだ。私、小さい頃と何も変わっていない。うそつき、と心ないことを言ってりっちゃんを困らせたあの頃と、なんにも変わっていない。  他のクラスより堂々と高々と咲き誇った向日葵がふらふらと揺れていた。高い分、風によく煽られてしまうのだった。  それから私は何度か向日葵に水やりをしに来たけれど、りっちゃんと会うことはなかった。向日葵はだんだんとくたびれて、重たい頭でっかちな花の部分をもたげて、急速に枯れていった。
 *
 二学期がやってきた。  りっちゃんは一人でいることが多くなっていた。  腫れ物、とまでは言わないにしても、なんとなくクラスのみんながりっちゃんに対してよそよそしくなっていた。夏休みを跨いでも、りっちゃんのちょっとした特異性の受け入れ方を迷っていた。勿論、普通に話しかける子もいる。私も、すれちがった時に挨拶はするし、園芸委員会で一緒になると普通に喋る。りっちゃんは夏休みの出来事が無かったことみたいに、自然に喋ってくれた。私にはうまく出来ない芸当だ。でも、私はそのりっちゃんの優しさに甘えて、何も言わずに安堵して会話した。  私はりっちゃんにずっと甘えている。幼稚園の頃からずっと。  苦しんでいるりっちゃんを前にしても、それでも透明人間みたいに、クラスのはじっこの方で、りっちゃんの背中を見ている。そして秘密の会議みたいな園芸委員会の時間だけ喋って特別感に浸ってる。りっちゃんのことを分かっているような気で、でも分かっていない。  残暑が厳しい中、次なる行事である運動会に向けて学校は動き出していた。  運動会は、学年種目、すなわち学年毎のクラス対抗の種目と、個人種目、すなわちクラス毎で定められた枠の人数で個人が立候補して争う種目と、二種類ある。そして応援合戦があって、これは三年生が主体となってダンスをする。  りっちゃんは基本的に男子なので、種目も男子の枠で出場するし、応援合戦でも男子として出る。  りっちゃんの噂は高学年にも伝わっているらしく、合同練習をするようになって、少し奇異な視線が向けられる。先輩たちも最初は迷ったようだが、男子の列にりっちゃんは加わった。りっちゃんはなんでもないように振る舞っている。  私は身体を動かすのがとにかく苦手なので、運動会なんて休みたいくらいだった。でも普段からそうして休むわけにはいかないので参加する。横一列になってみんなでよーいどん、なのでそこから置いていかれてはみ出さないようにすることで精一杯だった。  あと運動会まで一週間、というところで、園芸委員会では向日葵を根こそぎ捨てて、パンジーやビオラを植えた。ベタだけれど、寒い冬でも花を咲かせるという力強い品種らしい。それぞれのクラスに割り当てられた花の色はカラフルだった。とはいえまだどれも蕾なので、実際に咲いたらどうなるのか考えるとわくわくした。  スコップを土に突き立て、掘り起こす。りっちゃんと話し合いながら、三列になるように均等な間をつくり苗を植え替えていく。 「でも、冬になる頃にはもう園芸委員も終わってるな」  りっちゃんの言葉で気付いた。委員会は上期と下期で分かれるので、りっちゃんとのこうした共同作業ができる時間はもうすぐ終わるのだ。上期で委員会をした人は、下期では役職無しになる。そうしたら、私はほとんどりっちゃんと話せなくなるかもしれない。それは、寂しい。  私は、ふと、りっちゃんのことを好きなのだろうか、と考えた。  あまり深く考えたことが無かった。りっちゃんのことは好きだ。確かに好きだけれど、恋愛的な好きなのだろうか。尊敬してるし、かっこいいとも思う。顔だって素敵だ。特にやわらかく笑んだ顔を見ると心があたたかくなる。  クラスには、付き合ってるとか、そういう噂話も回ってくる。私は、りっちゃんと付き合いたいだろうか。付き合ったら、園芸委員という理由なんて無しにりっちゃんと一緒にいたとしても、なにもおかしなことはないだろうか。  でも、付き合うということは、りっちゃんは彼氏になるのだろうか。それとも、彼女? 私は女だから、彼女というのもなんだかおかしい気もする。女の子同士で付き合うこともあるというのは漫画で知っているけれど、実際自分にあててみると、どうなのだろう。男子に興味が無いわけではないのだけれど、男子といるよりも、りっちゃんといる方が楽しいし落ち着くし、心地が良い。というか、りっちゃんは、男子だし、でも、女子だし。  ううん。  考えるほどに分からなくなってしまう。  それに、りっちゃんと付き合うということは、りっちゃんも私を好きだということとイコールになる。  りっちゃんが私を好きかと言うと、それは自信が無い。私がりっちゃんを好きになる可能性はあっても、りっちゃんが私を好きになる可能性は、限りなく低い。どんくさいし、泣き虫だし、クラスの中で釘が飛び出ないように透明であろうとして、みんなのなかにいることに必死で、りっちゃんみたいにちょっと変わった部分を堂々としていられるような勇気も自信も無い。つまり、りっちゃんが私を好きになることは、無い。  そう至って、浮かんだ桃色の案が破裂した。  うん、無いな。  私はりっちゃんのファンみたいなものなのだ。推しなのだ。だから、りっちゃんの幸せを願っているし、りっちゃんが苦しんでいると途轍もなく悲しくなる。りっちゃんが優しく接してくれることに甘えているけれど、それ以上を求めるのは烏滸がましい。だから、園芸委員を期に離れてようやく普通になるんだ。きっと。 「何を頷いてるんだ?」 「ひょおおええ」  手を止めて自分の思考に没頭していた私に、りっちゃんが恐る恐る話しかけてきて、思わず奇声���あげた。りっちゃんはぶふっと笑った。しかも止まらなくて、ずっと笑い続けて、涙まで出して、お腹を抱えている。 「そこまで笑わなくてもいいじゃん!」 「だって、なに? ひょおおええって」  あっはははは。私は耳まで熱くなっていたけれど、一方で、りっちゃんがこうして思いっきり笑っている姿を見たのは随分と久しぶりだったから、胸がぽかぽかと温かくなった。恥ずかしいけど、まあいいや。私もつられて笑った。三組の花壇で二人して、げらげらと笑っていた。  翌日の朝。  私は水やりをしに少し早起きして登校した。  じょうろに水をためる。朝の暑さは真夏になると収まりつつあって、蛇口から出る水もすぐに冷たいものになった。たぷんたぷん、揺れる水の重みを片手に感じながら、私は花壇に向かった。  そこで、昏い現実を目の当たりにすることになる。  三組の花壇だけ、無残に掘り起こされていた。りっちゃんと一緒に丹念に植えたパンジーもビオラもぼろぼろに引きちぎられて、ぐちゃぐちゃに踏み荒らされて、原型を留めていなかった。  私はしばらく目の前の現実を受け入れられなくて、呆然と立ち尽くした。  なんだろう、これは。  誰かによる、暴力的な、意図的な、明確な悪意であることは確かだ。  蕾だけが投げ出されて、散らばっている。  葉も根もばらばらだ。  土はおかしなでこぼこができていて、靴の跡も窺える。  なんだろう、これは。  なんでだろう、これは。  りっちゃんと笑った、昨日の光景が浮かんだ。手を土で汚して、話し合って、ひとつひとつ苗を植えていった大切な時間や記憶が、汚い靴で踏み抜かれていく。  足が浮かんでるみたいだ。  なんで。  あまりに悲しくて言葉が出なかった。  りっちゃんにこの花壇を見てほしくなかったけれど、私の力ではどうにもできなかった。
 *
 おとこおんな、とりっちゃんについて誰かが言った。  園芸を揶揄してか、みみずりつ、と誰かが呟いて笑った。  クラスがなんだかおかしな方に向かっていた。  夏に傾いていた頃、背中のおうとつに指を当てられてからかわれたりっちゃんは、拳を上げた。  でも、もうりっちゃんは何も言わなくなっていた。  静かに、本を読んだり、次の授業に向けて教科書を開いたりしていた。  根暗でどよんとした空気を漂わせているわけじゃない。りっちゃんはいつだって背筋を伸ばして、堂々と座っている。だけど、その背中が寂しげに見えたのは、私の感情的なフィルターを通した光景だろうか。  さきちゃんをはじめとした友達は、りっちゃんの話題に触れなかった。彼女たちには私とりっちゃんが実は幼稚園が一緒だという話をしていたからか、むしろあんまり近付かないように警告した。私は知っている。私とりっちゃんのことが、影で噂されていること。私からは直接見えない、LINE等で噂されていること。私と一緒にいてくれる友人達はそれが勘違いであることをちゃんと解っているけれど、下手なことはするな、と暗に伝えているのだった。LINEのことを教えてくれたのもさきちゃんだった。それを聞いた時、正直私はぞっとした。  私は透明人間で、釘が飛び出ないように、必死だった。それは、幼稚園時代のようにいじめられることがとても恐いからだ。人の、無意識であろうと意識的であろうと、異端だと判断したときの容赦のなさは恐い。その恐怖に再び晒されてしまったらと考えただけで足が竦んでしまう。  りっちゃんは、女子だけど、男子であるという、りっちゃんそのものであることで、釘が飛び出てしまっていて、打たれつつある。  りっちゃん。  私は心で話しかける。  心で言ったところで、りっちゃんにはなんにも伝わらないのに。  りっちゃん。  私、どうしよう。
 *
 運動会を翌日に控えて、ダンスの最終練習に向けて、みんな衣装に着替えていた。一年三組は赤組なので、赤を基調として、体操服に布を張り付けたり、はちまきを手首に巻いて回転したときに動きが派手になるように工夫がなされている。女子はスカートを思いっきり短くする。長いとちょっとかっこわるいからだ。一年生はみんな膝下に伸ばしているので、普段はできないびっくりするような短さにそれぞれ色めきだっていた。私はちょっと恥ずかしかった。下に短パンを履いているからマシだけど。  男子はズボンはそのままだ。上は女子と対照的になるようなデザインになっている。  私はりっちゃんをちらりと見やった。りっちゃんは窓際の席で、机に腰を軽く乗せて、ぼんやりと教室を眺めているようだった。 「清水さあ」  窓際でたむろしているうちの男子の一人が言った。りっちゃんの視線が動く。 「本当はスカート履きたいんじゃないの?」 「は?」  りっちゃんが反抗を見せる。りっちゃんは最近おとなしいが、怒ると恐いことは皆知っている。  だけど、りっちゃんは教室の中で圧倒的にマイノリティで、りっちゃんの特異性を釘として打とうとしている誰かと、無言で見守る生徒達という多数からしてみれば、りっちゃんがいくら怒ろうとも、孤独だった。 「だって、女子のことちらちら見てさあ、本当はあっちが良かったって思ってんじゃねえの。ダンスも、競技も」 「馬鹿じゃねえの。お前らこそ短いスカートの女子に興奮してるくせに」  りっちゃんが吐き捨てる。いつになく顕著に苛立ちを発して、なんだかおかしいくらいだ。男子は一瞬息を詰まらせた。その隙にりっちゃんはその場を立つ。 「また逃げるのか? 図星だからだろ」  りっちゃんは無視する。無視すんな、という声も全部、無視して、教室を出た。 「サイテー、なに言ってんの?」  男子にも物怖じせずに話す派手めの女子が言う。その子も、本気で言っているというよりも、面白がっているように見えた。 「本気じゃねえよ。ああいう風にされると、冷めるよな」 「冗談が通じない清水さん」  あはは、と笑った。  不快だ。とにかく全てが不快だ。 「真実、大丈夫?」  隣でさきちゃんが声をかけてくれる。私はどうやら相当青い顔をしていたらしい。いつのまにか拳を握りしめすぎて、伸びた爪で皮膚を浅く抉って、じわりと血が滲んでいた。  ダンスの全体練習では、先輩の厳しい目もあるから、みんな従順に励む。私もなんとか振り付けを覚えて、人並みに踊れるようになった。軽快でポップな曲に合わせてステップを踏む。腕を振る、回す。先輩から指示が飛んで、修正する。三年生はこれが最後だから、やりきって満足する思い出が必要なのだ。その情熱にあてられて、三学年跨いでみんな頑張る。  りっちゃんは私の斜め前の方にいる。いつも通りの凜々しい涼しい顔で、日光に当てられて、白い顔でたくさん汗を散らしていた。  しかし、ダンスの通し練習の一回目が終わった時だ。みんなのびのびと小休止をして、屋上から全体をコーチしている先輩の指示を待っていると、りっちゃんが急に座り込んだ。  こんなことでバテるような人ではない。よろしくない雰囲気がする。後ろにいる男子が恐る恐る声をかけると、りっちゃんは首を横に振った。大丈夫、だと言っているように見えた。大丈夫という単語から連鎖して、夏休みに目の当たりにしたりっちゃんの「大丈夫」を思い出した。りっちゃんの大丈夫は、本当は、大丈夫じゃないかもしれない。 「会澤さん?」  後ろの子が、驚いたように声をあげた。急に私が列を外れたからだ。  私はりっちゃんに駆け寄った。  みんなから飛び出るという私の感覚でとりわけ恐ろしいことをしていると自覚していた。けれど、りっちゃんが苦しんでいるのを分かっていながら見て見ぬふりをするのはもっとしんどかった。 「清水くん」  こういう時でも、私は使い分ける。 「……まみちゃん?」  りっちゃんはぼそりと呟いて、私を見上げた。まばゆい太陽に照らされるりっちゃんの顔は、白いというより、病的なまでに青ざめていた。  戸惑う周囲を置いて、私はりっちゃんに顔を寄せる。 「どうしたの、急に座り込んで」 「大丈夫……」  ああ。ほら、やっぱり、大丈夫と言っていたのだ。私の観察眼もたまにはちゃんと的を射る。 「大丈夫じゃないよ。顔が青い……汗もすごい。熱中症とか?」  私が言うが、りっちゃんは頑なに口を暫く閉ざしていた。 「今日、暑いし。ちょっと休もう。通し練習一回終わったし、体調不良ならしょうがないよ」 「駄目だ。本当、大丈夫だから。もう一回、通しが終わったらちゃんと休む」  りっちゃんのいいところは真面目なところだ。でも、悪いところでもあるのかもしれない。 「本当のこと言って」  私が強く言うと、りっちゃんは私を見た。  周りが私たちに注目しているのが、よくわかった。視線を集めていて居心地が悪い。見ないでよ。りっちゃんが更に言いづらくなるでしょう。  暫く沈黙が続いたが、りっちゃんは諦めたように項垂れ、ぼそりと何かを呟いた。 「え?」  聞き取れずに聞き返す。こういうところが私はどんくさい。  耳を近付けた先で、りっちゃんはもう一度同じことを呟いた。お腹が痛い、と。  瞬時にいろいろと察した。だからりっちゃんは言えなかったのだ。それは本当の男子だったら起こりえないことだった。でも、結構辛い。酷いとげろげろ吐くくらい、途轍もない痛みを伴って立っていることも辛くなる。  三年生の先輩が流石におかしいと気付いて、駆け寄ってきてくれた。 「先輩。清水くん、ちょっと体調が悪くて踊れなさそうなので、保健室に連れて行きます」 「え、大丈夫?」  先輩が慌てた。大丈夫、とは便利な言葉だ。 「すみません。ダンスを抜けて……」 「いいよ。通しは一回終わったし。ちゃんと休んで」  溌剌とした優しさに弱々しくなったりっちゃんは頷いた。  男子の見た目をしたりっちゃんと、女子の私が一緒に、身体を密接にひっつけているのは周囲からするとどう映るだろう。気にしない、という��けにはいかない。私は気にしいだし、りっちゃんもなんだかんだ和を重んじる人だ。重んじるがゆえに、自分を犠牲にする、強くて同時に弱い優しさがあるのだ。清水律という名に恥じない、清らかな水のように凜としていて、自分を厳しく律する生き方をしている。  りっちゃんは私の肩を借りて、ゆっくりとダンスの列を外れた。背後がやや騒然としているのが背中から感じ取れるが、気にしている場合ではなかった。どうせ、距離を置いてしまえば、聞こえなくなるし見えなくなる。  でも、私達は一年三組という閉じた空間での運命共同体だ。  後先考えずに行動した後、どうなるのかは分からない。 「ありがとう」  りっちゃんは、力の抜けた声で呟いた。 「ううん。良かった、言ってくれて」 「ごめんな」 「謝らなくていいよ」  むしろ、私の方がずっと、りっちゃんには謝らなければならなかったのだ。  私はずっとりっちゃんに甘えて、りっちゃんに助けてもらって、素敵なことを受け取ってきた。  りっちゃんが苦しんでいるのなら、私が助けてあげられることがもしあるのだとしたら、今度は助けてあげたい。  乾いた校庭からひんやりとした校舎に戻り、りっちゃんを保健室に連れて行く。その前にトイレに行くべきか尋ねたが、首を横に振った。  保健室の先生に事情を説明した。りっちゃんの口からはなかなか直接的に言えないと思うので、私がそれとなく伝えて、ベッドに寝かせてもらった。  急いで教室に戻り、常備している鎮痛剤と水筒を持って保健室に戻った。そしてりっちゃんのベッドに駆け寄る。  りっちゃんの顔は歪んでいて、いつも伸びている背筋を曲げて、くるまった。よくここまで頑張ったのだと感心してしまう。でも、りっちゃんは頑張るしかなかったのだ。負けたくなかったのだ。昔から負けん気が強かった。それはりっちゃんの人間性で、どれだけ大人っぽくて、言葉遣いが丁寧で、優しくて、男子の格好をしていても、根っこは変わっていないのだ。でも、その人間性ゆえに、りっちゃんは苦しんでいるのかもしれなかった。  鎮痛剤と水筒を枕元に起き、私は項垂れる。 「りっちゃん」  ぽつんと呟いた。 「何もしてあげられなくて、ごめんね」  ここで泣くのは違うから堪えた。 「苦しかったらちゃんと言ってね。女子とか男子とかそんなの関係なく、私、りっちゃんのことが好きだから、りっちゃんにはいっぱい笑っていてほしい」  りっちゃんは何も言わなかった。  肩が震えているように見えたので、私はカーテンを閉めた。  ダンスは二回目の通し練習に入っていた。私は外に出て、遠くから眺める。私とりっちゃんの穴は目立つかもしれないけれど、私達がいなくても、整然と全体は動いている。それは思ったよりきれいな光景だった。きっと屋上から見たらよりきれいなのだろう。同じ動きをしてチームとして創り出す巨大な作品。それは素敵なことだ。それはそれで、本当に素敵なことなのだ。  通し練習が終わってから、私は勇気を出して列に戻った。またいろんな人の視線が集まった。興味だとか、戸惑いだとか、不安だとか、ないまぜになっているだろう。一身に受け止めると息が詰まりそうになる。自己紹介の緊張と同じだ。注目を浴びるのが苦手だから、注目されないように慎重に周りの目を窺ってきた。それが私の��きるための術だった。りっちゃんを助ける行為は私の信条を外れる。それはとても恐ろしいことだった。けれど、後ろめたさがなりを潜めて、少しだけ強くなれたような、そんな気がした。 「清水くん、大丈夫そう?」  さきちゃんが心配そうに声をかけてくれる。 「うん。とりあえず保健室で寝てる」 「そっか」さきちゃんは安堵の表情を浮かべる。「真実は、平気?」 「うん。平気」  私は穏やかに頷いた。りっちゃんの大人びた静けさのある笑顔を真似するように頷いた。
 *
 ダンス練習が終わり、一年三組に熱っぽいざわめきが押し込まれる。最後に蒸気する先輩が活を入れに教室までやってきて、先輩が「優勝するぞー!」と叫ぶと、全員で「おー!」と青春百パーセントな眩しいやりとりがなされた。私も折角練習したのだから、どうせなら優勝したい。でもそれよりりっちゃんが気になった。  先輩が教室を後にするところで、りっちゃんとたまたま鉢合わせた。 「あっきみ、平気? 元気になった?」  教室の空気が若干変容する。 「あ、大丈夫です。おかげで元気になりました。ごめんなさい、練習中断して」 「平気平気。明日は出れそう?」 「はい」  りっちゃんの肩を先輩が叩く。りっちゃんは恐縮げに頭を下げ、教室に戻る。  汗は引き、顔色も戻っていて私はひとまずほっとした。  何も無かったように、りっちゃんは自分の席に戻る。和を乱さないように、平然とした表情で男子の列に戻る。でも、今や、マイノリティのりっちゃんは、一致団結した教室のはみだしものと認識されているのだろう。  担任の先生もりっちゃんに声をかけ、終礼を進める。最後にさようならと声を揃えると、教室の空気は弛緩した。運動会前日らしい緊張と興奮に、ちょっと変な空気がまだ残っている。  りっちゃんが、勢い良く踏み出した。  なんとなくみんな、視線を寄せた。りっちゃんは良くも悪くも目立つ。  先程ダンスの練習直前にいじってきた男子の集団の前に立つ。私は緊張した。また殴りかかるのではないかと恐くなる。けれどりっちゃんは冷静で、いつも以上に凜としていた。 「おれ、明日も出るから」  はっきりと宣言する。 「男としてダンスもするし、競技もする。それだけだから」  特別叫んだわけでもない。しかし、りっちゃんのまっすぐとした声は、生徒の間をするする通り抜けて教室中にきちんと響いた。  りっちゃんの正義。ヒーローのような正義。敵に立ち向かう正義。それは時にあまりにもまっすぐで誠実で、人の気に入らない部分も刺激してしまうのかもしれない。でも、りっちゃんは、自分に根ざしている心を偽ることも、馬鹿にされることも、許せないのだ。 「……当たり前だろ」  静かな威圧にやられて、相手はしどろもどろになる。なあ、と言い合う。まるでりっちゃんが空気の読めないイタいやつみたいに。  りっちゃんは翻し、たまたまその正面に位置した私と目が合った。りっちゃんは微笑んだ。ぼろぼろになってしまった花壇でいつも見せてくれる、優しい、りっちゃんらしい笑顔だ。私は嬉しくなって、笑い返した。  でも、私はとても耳がいいので、次の言葉を逃さなかった。 「おとこおんな」  大衆の前で羞恥を晒されたことに耐えかねたのか、ぼそりとりっちゃんの背後で彼は言った。  真顔になったりっちゃんが振り返ろうとした。振り返りきらなかったのは、りっちゃんの正面で突然走り出した存在がいたからだ。  つまり、私だ。 「ふざけんな!!」  私は叫んだ。彼等に掴みかかる勢いだったが、さきちゃん達と、そしてりっちゃんが慌てて身体に腕を絡ませて止めていた。 「ふざけんな……っふざけんな!! りっちゃんは、りっちゃんはねえ……! あたしらなんかよりよっぽど、大人で! 自分に正直なだけで! それでも自分を律して、自分を犠牲にして! それをあたしたちが、馬鹿にする権利なんて!! どこにも!! ないんだから!! ふっざけんな!!」 「まみちゃん、落ち着いて!」 「真実-! どうどうどう!」  正面にいる男子は完全にたじろいでいた。むしろ引いていた。  私はいつのまにか涙と鼻水をまき散らしながら、その後もなんか言ってた気がするけど、何も覚えていない。記憶が吹っ飛ぶくらい、私の思考回路はぶち切れてしまったらしい。
 *
 運動会は、優勝しなかった。ダンスも優勝しなかった。  先輩達は号泣し「うちらは赤組が一番だと思ってるから! 赤組最高!」とやはり青春まっしぐらの文句を高らかに言い放ち、拍手喝采が湧き上がり、不思議な感動のうちに幕を閉じた。  声援で盛り上がったグラウンドは、しんと静まりかえって、夕陽色が全面に広がっている。  今日は部活も全部休みだ。それぞれのクラスで打ち上げが予定されている。私もりっちゃんも出る予定だったけど、こっそり抜けた。ああいった事件の直後なので流石に無理と判断した。不器用な私たちよりずっと器用なさきちゃん達が計らってくれた。  運動会の最中はスポーツが創り出す団結感によって、りっちゃんを馬鹿にした男子も、派手な女子グループも、たくさんの傍観組も、私の大切な友人も、りっちゃんも、私も、頑張った。全体として赤組は優勝しなかったが、一年三組は学年競技で一位になった。男女問わず、みんな手を叩いて喜んだ。  私は身体を動かすことは苦手だけれど、こういうのもたまにはいいかもしれない。細かい価値観の違いだとか、性別だとか、性格だとか、身体の特徴やかたちだとかそういった、それぞれで生じる違いや個性を超えて、一つの目標めがけて力を合わせることは。  りっちゃんは個人でも活躍した。決まっていたことではあるが、クラスで一番足が速いので、メドレーリレーに出場し、二位でバトンを受け取った後、辞めてしまった陸上部の仲間だった黄組の男子生徒に迫り、デッドヒートを繰り広げ、ぎりぎりで追い抜いた。その瞬間の盛り上がりようといったら、りっちゃんの纏っていた仄暗さを吹き飛ばすものだった。みんな調子がいいんだ。それはそうとして、りっちゃんはかっこいい。やはり、りっちゃんは自分を消すように着席しているよりも、太陽の下で輝いているヒーローみたいな立ち位置がよく似合う。  だけど、明日からの日常はどうなるかわからない。  今日と明日は違う。  でも私達はたぶんそんなに暗い顔をしていない。  きれいに整えた花壇の前で、手を叩く。 「いつかやりたいと思ってたけど、ようやくできたなあ」  りっちゃんは満足げに笑った。花壇を踏み潰された事件は実に陰湿でショッキングだったし、結局誰の仕業かは判明していない。あのパンジーやビオラは戻ってこないけど、一応、元通りだ。 「運動会の後に花壇をきれいにしたいなんて、りっちゃんもよくやるよね」 「ずっと心残りだったんだ。でもそれどころじゃなかったから」 「そうだね」  あらゆることがとりあえず一つの区切りを迎えたのだと思う。りっちゃんは気持ちの良い表情をしていた。 「またパンジーとビオラの苗、頼んで用意してもらうか」 「せっかくだから、違うのでもいいかも」 「なんかあるかな。調べてみるか。でも、三組だけ違うのもなんか変じゃない? こういうのは統一感があってもいいと思うんだよな」 「たまにはいいよ」  一年のくせに生意気だと言われるかもしれない。でも本当に通るかどうかなんて分からないんだから、言うだけ言ってみるのも手だろう。 「でも、園芸委員、もうちょっとしたら終わっちゃうんだよね」 「継続で立候補したらいいんじゃない? やりたいって言ったら別に誰も止めないだろ。他の子で園芸委員やりたいって奴がいたら別だけど、いないだろうし」 「いないだろうねえ」  私は土まみれになった手を見やる。汚いけれど、健康的な手だ。 「おれもその方がちょうどいいな。まみちゃんと一緒だし」 「えっ」私は大きな声をあげる。「また私と一緒でいいの?」 「え? うん」りっちゃんは目を瞬かせる。「え?」  なんだか変な沈黙が訪れる。  りっちゃんは怪訝な表情を浮かべているが、何か変なことを言っただろうか。  でも、一緒がいいと言ってくれるのは素直に嬉しいので、私は何も考えずにぽわんと笑みを零した。 「そっかあ。りっちゃんと後期も委員会一緒なら、楽しいね」 「……うん。そうだな」  りっちゃんは相変わらずちょっと挙動不審だけれど、まあいいか、とやがて大きな息を吐いた。  遠くでかすれ声のようなひぐらしが鳴っている。向日葵は枯れて、とうに夏は過ぎたと思っていたのに、まだ蝉は鳴いているのだと驚く。だけどじきにこの声も聞こえなくなるだろう。 「まみちゃん、垢抜けたというか」私を見ながら、しみじみとりっちゃんは言う。「さっぱりしたな」 「誰かさんの影響かな」 「誰だろうなあ」 「誰だろうねえ」  ふふ、と笑い合った。なんだか幸せである。 「でも、殴るのはやめた方がいいな。ああいうのは、どんだけ相手がくだらない挑発をしていたとしても、先に手出した方が悪者になるんだ。それに殴った方は結構痛い」 「りっちゃん、痛そうだったもんね」  夏休み前の、りっちゃん暴力未遂事件である。 「あれはまじ、やばいぐらい痛かった。今までで断トツ。おれがあの時逃げたのは、痛すぎて、そして恥ずかしすぎたからだから。廊下に出てから、ちょっと泣いた」 「うそー」 「ほんと。まみちゃんも一回机殴ってみたら? まじで痛いから」 「やだよ」  しかし、振り返ってみるとなんと暴力的な園芸委員だろうか。実際、とんでもないおまけが付いてきた。  おとなしいやつほど怒らせると恐い。私とりっちゃんが一年三組に植え付けた強迫観念の一つである。園芸委員の二人は、そのおっとりとした穏やかな響きの肩書きとは裏腹に、暴力的なレッテルが追加されることになった。自分達の正義というか本能というか、挑発に乗った愚かさというか、そういったものが生んだので、名誉といったらいいのか不名誉といったらいいのか微妙なところである。先生も親も驚いた。多分、運動会が過ぎて、明日以降のどこかで話があるだろう。  これで、三組に渦巻く嫌な空気が吹き飛べばいいのだけれど。  少なくとも、直接的な影響がでなければまずはそれでいい。裏で何を言われてようと、遠く離れていれば気にするほどのことではない。 「さて、これからどうする?」 「うーん」  なんとなくこの大切な時間が終わってしまうのが寂しくてごまかす。  私は、一つ提案した。りっちゃんは嫌そうな顔をしたが、受け入れてくれた。 「なんかポーズをした方がいいのか?」 「いらないいらない」  私はおかしくて笑い、スケッチブックを捲り、鉛筆を立てる。  真剣な目つきで、ただ、花壇裏の階段に座るりっちゃんの横からの姿を写生した。  無自覚のうちに自分を律するりっちゃんは、リラックスした空気であっても肩の力が抜けていても背筋がきれいだ。ちょうどいい鼻の高さ、中性的な顔つき、長い白シャツとズボンの下が女性的でも、りっちゃんを形作る雰囲気は男性的で、どちらも兼ね備えるりっちゃんは普通と少し違って、素敵だ。でもきっと、みんなそれぞれ少しずつ違う。たまたまりっちゃんが目に見えやすいだけで。  強い夕陽に照らされて儚げな横顔。暗くなって見えなくなる前に、私は真剣に紙に写し取る。この瞬間を完全に切り取ることはできなくても、この瞬間を、私の目が捉えるこの瞬間を、できるだけ忠実に切り取りたい。  拙くても、私は一生懸命鉛筆を走らせる。 「ちょっと喋っていい?」 「うん。でも動かないで」 「厳しい」  りっちゃんは笑う。ぎこちなかった真顔よりこっちの方がいいな。私は消しゴムで口許を修正し、微笑みを与える。うん、りっちゃんらしい。 「おれ、幼稚園の頃、いじめられて泣いているまみちゃんを見て、守らなきゃって思って、ヒーローになるって言ったの。覚えてる?」 「もちろん」  明るい記憶ではなく、むしろ掘り起こされたくない部分でもあるが、りっちゃんに助けてもらったことは何にも代え難い私の希望だった。指切りまでして、約束を交わしたことを、よく覚えている。 「りっちゃんは、私のヒーローだった」 「うん。そうなりたいと思っていた。でも、実はまみちゃんもヒーローだったんだな」 「私が?」  咄嗟に素っ頓狂な声をあげて、手を止めそうになるが耐える。しかし、ふらふらと明らかに動揺した線になってしまう。 「おれ、結構きつかったんだわ。いろんなこと。男子として生きてみようと思ったのはいいけど、親がまず困る。親はきっと、おれのブレザーとスカートの晴れ姿を見たかったんだ。前例が無いせいで先生方も困惑してるし、みんながどう受け止めるべきか困っているのも解ったし。気持ち悪いものが気持ち悪いのは、しょうがないじゃん。単純なことかと思ってたら、おれだけの問題じゃないんだなってよく解って、でも、おれはおれであることからは逃れられないから、そことのギャップも、地味ないたずらも、苦しかったんだ」 「うん」 「昨日、ダンス練習して、一日目だったからやばいかもなーとは考えていたんだ。でも、もうこれ自体もさ、おれがどうあがいても女子っていう証拠で、覆せなくて、それがむかつくやら苛立つやら��しいやら、でもどうしようもないから隠すしかない。でも、あの時は耐えられなかったな。最近あんまり寝れてなかったし」 「……そっか」  大人びたりっちゃんを創る、本当のりっちゃんが話しているのだ。私は余計な邪魔をせず、相槌に専念しつつ、絵を完成へ近付ける。 「身体の変化にはあらがえないと実感したけど、まみちゃんが助けてくれて、本当に助かったんだ。それに、その後まみちゃんが取り乱したのも、びっくりしたけど、この子は味方でいてくれるんだって」  りっちゃんが振り返る。私は、動かないで、と言わなかった。 「ありがとう」  夕陽を逆光にして、りっちゃんはきれいに笑った。本当に嬉しそうに笑った。  私は鉛筆を止めて、呆然とした。そしてまた号泣していた。 「いやいやいや、だからなんで泣くんだよ」 「わかんない」  りっちゃんは戸惑いというよりもおかしく笑った。私は鞄からタオルを取りだそうとして、青いハンカチが目に入った。あれから良い機会が全然無くて、返せずにずっと鞄に入れっぱなしにしていたのだ。私は泣きながらとりあえず返そうとする。 「いや、それで拭きなよ」冷静なりっちゃんは呆れる。「そのうち返してくれればいいし」  運動会の汗をたっぷり吸い込んだタオルよりもずっと清潔なハンカチに、また沁みができた。申し訳なさやらなんやらが積み込まれた、重たいハンカチになっていく。 「泣き虫だなあ」  りっちゃんは苦笑する。 「泣き虫だし、いつまでも、りっちゃんに甘えてばっかりで、弱虫で……だからずっとりっちゃんが苦しんでるの知ってたのに、見て見ぬふりして……全然、私、ヒーローなんかじゃない」  私はぽつんぽつんと涙ぐみながら言う。りっちゃんは首を横に振った。 「そんなことない。みんな弱虫だ。おれもそう」 「りっちゃんは、すごいから、私なんかと全然違って」 「すごくない。おれはまみちゃんの方がよっぽどすごいと思う。嘘をつく方がよっぽど楽なことだってあるじゃん。ちょっとはみだすことって、本当に大変で、勇気がいることだから。その一歩が一番大変だ。だから、真実ちゃんはすごいし、おれのヒーローだよ」 「うええ……」  身に余る言葉ばかりたくさん浴びて、私は写生どころではなくなってしまった。微笑むりっちゃんを写した拙い絵に、涙が一粒落ちる。 「うわっすげえ。この短時間で? めっちゃ上手いな。ちょっと気にしすぎなくらい人のこと見てるもんな。絵の才能あるんじゃないか?」  りっちゃんはスケッチブックを私の膝上からあっさり引き抜いた。 「他のも見せてよ」  了承を得る前に、まったく悪気が無い手さばきでりっちゃんは過去のページを捲る。  涙が瞬時に止まった。真顔になり、さっと血の気が引く。  その中には、こっそり、隠し撮りならぬ隠し描きした、りっちゃんの高跳びをする瞬間の写生画が入っているのだ。 「や、やめてーーーーー!!」
 透明人間だった私に、輪郭が描かれ、あざやかな色が塗られていく。
 了
「弱虫ヒーロー」 三題噺お題:世界の終わり、嘘をつく、指切りげんまん
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cosmicc-blues · 3 years
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2021/5/22
朝、Nからの連絡で目が覚める。その内容に飛び起きてガッツポーズ! 大慌てで支度をして、心のアンテナを調律しながら向かいます!
ちょっと胸の高鳴りが止まらないんだけれど、鈴の音を聴きながら歩いていたら落ち着いてくる。ぴょこっとした黄緑色のコケみたいのがかわいらしくて、しゃがんで写真をとる。12時ぴったりに駅に到着。改札前にはほかにも大勢のひとたちが個々に待ち合わせをしていて、人とひとが再会するところどころにぴこっと笑顔の花が咲く。改札から出てきた女のひとがお友達を見つける、とっても嬉しそうにおたがい駆け寄って、控えめながら抱き合っている。男の子たちの集団にさいごのひとりが遅れて到着する、男の子たちはまるでホームランを打ってベンチに帰ってくるチームメイトを迎え入れるように、うぇーいってさいごのひとりに肩をぶつける。そんな再会の様子を眺めていたら、泣いてしまいそうになって、上を向く。
5分になって、階段からまた大勢のひとたちが下りてくる。その中からNとKさんの姿を探す。あれれ、おかしいな、遠くからでもすぐにわかるはずなのに、と思ったら、下りてくるひとだかりの中から一本の手が挙がる。だけども、そのすぐ近くにいるはずのKさんの姿がいまだに見出せなくて、あのラピュタのパズーみたいなひとがKさん? いつもと雰囲気のちがうNの髪型と服装がチャイナかわいくて胸の♡に矢がズキュンと突き刺さる。そしてKさんと衝撃のご対面、経験的にこういうときにはそこに「関係」のような何かが発生して、居心地の悪さといったら大げさだけど、くすぐったさのようなものを感じる。それはぜんぜん悪いことではなくて、いい予感のほうがはるかに多いくらいなんだけど、Kさんの目をひとめみたとき、そこに関係のような何かがまるで発生しなくて、へぇ~って言いながらこっちを眺める生身のKさんがそこにいる。おたがいに初めましてって挨拶を交わしながら、え、これはいったいどういうことって思う。対面してひとのことを見ようとすると、そこに何かしらの機微を感じるっていうか、何かしらの関係のような何かが生じる。だけど、Kさんにはそれがまるでなくて、すんなりKさんのことを見ているし、Kさんにも見られていると感じている。え、なんだろう、あいだに関係みたいな何かがないから、おたがいにすれ違っているんだけど、それだけに相手をちゃんと見据えている? Mさんとはじめてふたりで会ったとき、Nとはじめてふたりで会ったとき、関係していくなかで喋っているじぶんの声が生身にきこえるときのことを思い出している。ふだんは関係みたいな何かの渦にからめとらて、わけがわからなくなって、その渦の流れにのまれるままに喋っているから、それは喋らせられている感じにも似ていて、じぶんでも何を言っているのかよくわからなくなる。だけども、ふたりと喋っているときは、不思議とじぶんの声が録音の声をきいているみたいにはっきりきこえていて、これと似たようなことが視線を介するだけで起きているような感じがする。じぶんの声がきこえるように、じぶんの投げ掛けている視線が見えるような。
NとKさんが今朝のことを相性抜群の夫婦漫才みたいにたっくさん話してくれて大笑いの連続! コッちゃんのこと、より子のこと、カラスのこと、不審な警備員さんのこと、お友達の野田さんのこと、Kさんの壮絶な部屋のこと。Kさんはコッちゃんはカラスをお友達と思ったんだよって言い、Nは怯えていたと思うって言う。不審な警備員さんに対して態度を豹変させるKさんのNの物真似がおもしろすぎる。それから、Kさんの部屋に入ろうとしたときのNの再現も!
Oさんの魚介カリー。三人で来たものだからOさんびっくりしている。Kさんは端がいいんだよね、とNがKさんを優しく気遣う。席についたとき、Kさんとふっと目が合って、涙がうるみそうになる。注文を済ませるまえからKさんのマシンガントークが止まらない! ポン、ポン、ポーンとどんどんはなしが飛躍する。生まれ故郷の島のはなしをしていたと思ったらビールをゼリーにしてみたはなしになっていて、そのふたつのはなしを繋いだのは船の回転するスクリューが起こした泡だったりする。お友達の野田さんのはなしが何度か浮上する。Kさんはけっこうズケズケと野田さんを批判したり、もう会わないようにしようと思ったとか言う。それでもKさんは今朝も野田さんに挨拶をしていたらしくて、批判は批判としてあるんだけれど、それとはすれ違って野田さんのことをありのままに見ようとしているのかなって思う。Kさんのマイスプーン、すっごく小さくて掬えるご飯が少ないうえに、大盛りだし、ずっとずっと喋っているから食べるのが誰よりも遅い。Nとふたり、Kさんの食べ終わるのを待つんだけれど、Kさんがまたベラベラ喋りはじめて、これだから食べるの遅いんだよねってじぶんでツッコんでいる。ごちそうさまでした。
公園に向けて歩きながら、Kさんのこと一瞬で好きになっちゃいましたって伝える。Kさん、首筋に冷たい風のよぎったみたいに、きらいにならないでねって言う。野生のルンバ。Kさんは色んなものを見たり触ったりしながら歩く。まるでそのひとつびとつに挨拶をしているみたいで、じっさいに通りがかったひとにもこんにちはって挨拶をする。行きにかわいいなって思って写真を撮ったのと同じ種類らしき黄緑色のコケみたいなのにも触れる。これと同じかなって写真を見せる、うれしいな。墓場道、いい感じの葉っぱの下に赤い実が落ちている。しゃがんでその実を見ていたら、目のピントがだんだんと密かに蠢くそれに合ってきて、すぐ近くにアリさんたちの大行列ができている。
公園に帰ってくる。Nが大きくなったカモの赤ちゃんに大驚き! Kさんがいつもルリコンゴウインコのいる樹とすっと一体になる。長年この公園のことを見てきて、この樹と戯れているのはルリコンゴウインコとKさん以外知らない。かと思ったらKさん、雨も降っていないのに雨が降ったらこの池の水面に波紋ができるのかなって。まさに雨の波紋のことを考えていた矢先だったから、いきなりそんなことを口走るKさんはやっぱり超能力者なの? 雨の降っていないときでもアメンボがいれば波紋が見られるけど、いまはカモの赤ちゃんがぜんぶ食べちゃっていないって伝える。Kさんはコイたちに熱心な視線を注いでいる。Nが水面に浮かぶ赤い実みたいのをコイが食べては吐き出していることに気がつく、ベェーってすぐに吐き出しちゃう。えさをもらえると思っているのか、コイたちがどんどん集まってくる。コイからはこっちのことがどんなふうに見えているんだろう。Kさんはひらっと泳いだり、飛び跳ねたりするコイたちをみて、色んな芸があるって言う。
小学校のニワトリを見にいこうとするけれど、ニワトリ小屋のところには入れなくて、Kさんはよれよれの草花を持ち帰る。信号を渡って、100均とファミマ。メモ、こんど信号待ちのときみんなと足で踊るやつやりたい。念願のゴザがあって、ゴザを買う。青と黄色と緑。そういえばかよこさん、青の時計みつかったらください! Nに促されてボールも買う。ニンマリ。ボールも買う。Kさん造花を触りながら足に良さそうだと言う。え、どういうことって思って造花を触ってみると、たしかに足で踏んづけたら気持ちよさそう。お茶をひとつ選ぶのにもNのKさんことを想う真心みたいなのがポロっと出ていて涙がうるむ。買い物を済まして横断歩道で信号待ち。メモ、こんど信号待ちのときみんなと足で踊るやつやりたい。空の雲がどす黒い色をしていて、おおッ、きたなって気持ちが盛り上がってくる。さっそく雨が降りはじめる、Nが傘をひろげる。入る? (雨に打たれるの好きだから)まだだいじょうぶ。
屋根のあるベンチで雨宿り。大勢のひとが集まっている。何だったか忘れたけど、子どもが面白いことを言ってクスッと笑う。雨はすぐに弱まって、屋根のなかが少しずつ空いてくる。そこへTがひらひら手を振りながら登場する。(駅で雨宿りしてるってもっと早くに気づけたらな、傘あったから迎えに行きたかったな)大あくびを連発するKさんはコクッと一瞬寝かけている。Tとの挨拶がひとしきり済んで、KさんにTを紹介するときには、Kさんはまたずうっと喋りっぱなしのモードにもどっていて、Nといっしょにこれまでのいきさつをひと通りおさらいする。Nの物真似とか再現がなんど見聞きしても面白くって、面白くって大笑いするたびにKさんもいっしょに大笑いしてくれる。Kさんも気ままに笑っているのだから、いっしょに大笑いしてくれるっていう言い方も変なんだけれど、なんだか「いっしょに笑っている」という感じがして心がぽかぽかする。Kさんはわりと頻繁に、いつもこの時間なにしてる? って質問をする。じぶんのときはOさんのところにいるときだったから、ここにいるよって応えたけども、何かもっと言い方があったんじゃないかっていまになって思う。いつしかKさんの視線が一点に固定されるようになり、その視線の先にはTの目がある。KさんがTの真っ直ぐな眼差しを褒める、そう! そう! そうなの! って全力で同調する! じぶんのことのように嬉しいなぁ。と思ったら、きみはひとのはなしをよく聞けるね、おおらかだね、土地柄なのか、家族の影響なのかってKさんに褒められる。それで何故だか咄嗟に思い出したのがお母さんの家出のはなし。真夜中、お父さんと喧嘩をして激怒していても、一枚、二枚、三枚と、台所のお皿をゆっくりと丁寧に床に落として割っていく。そして、じぶんと弟を引き連れて高速道路で実家に帰る。Kさんはすごいな! そういう表現方法もあるんだなって、お母さんのことも褒める。音と形で、いちど壊れたものは直らないってことを伝える教育だったのかも、とまで。すごいなぁ、そんなこと考えたこともなかった。この家出のはなしはお母さんとの思い出のなかでもとくに好きなはなしで、いつも車に乗るときは弟と後部座席に乗っていたんだけれど、弟は爆睡しているし、子供心ながらなんかじぶんはお母さんの隣に座らないといけないような気がして、そのときはじめて助手席に座ってシートベルトをしめた。お母さんは一言も喋らずに脇見もせずに高速道路をひたすら運転して、くるりの『ばらの花』とか、フラワーカンパニーズの『深夜高速』を繰り返し大音量で流した。じぶんは音楽やその歌詞に耳を傾けながら、色んな光の過ぎてゆく高速道路の夜景をじっと眺めていた。我ながらいい思い出である。
みんなの出会いのはなしになったりして、ツイッターのはなしになったりして、そのKさんの言い回しがどうしても思い出せないんだけれど、ツイッターが歯車のようにうんぬんでみんなを結びつけてくれたんだね、とっても感動的なことを言ってくれて、Nを筆頭にわわわわわ~ってなる。Mさん、それからRとNちゃんもこっちに向かっているらしい。そしたらKさんがいきなり「Nちゃんはやれることちゃんとやっててえらいね!」ってNの肩をガシッと後ろから抱く。わああああっと泣きそうになっちゃう。巨乳になって小5と中2と高2の男の子にお願いしておっぱい触ってもらう夢みた。夢のはなしになって、毎晩眠りに就くとき、いい夢見れますようにってお祈りしていることをはなしたら、Kさんがそうだよね、お祈りって大事だよねって。その一言がとてもうれしい。
Kさんのはなしどれもテープレコーダーに録音しておきたいくらいいいはなしなんだけども、あとで思い起こそうとしても、その言葉の数々はびっくりするくらいあたまを通り抜けていて、なんとなくの印象だけは残っていても、不思議とその言い回しを思い出すことができない。Kさんのはなしには主に二種類あって、ひとつはこういうことがあったっていうある特定のエピソード、こっちのことはまだ思い出せるんだけれど、もうひとつの個別のエピソードに付随する人と人との関係性や繋がりの抽象的なはなしについては、そのどれもに深く共感しているのにも関わらず、具体的になにを言っていたのかはイマイチ思い出すことができない。とにかく大量の言葉を発しているからというのがひとつ、南方熊楠みたいにキーワードひとつではなしがどこかに飛躍して、いつかの絵しりとりのように文脈が途切れているというのがひとつ、でも、それだけではないような気がする。とにかく大量の言葉を発しているのに言葉はいらないんだ、とも言う。それでも言葉を発し続けるKさんのはなしをどうにか汲みたいと思って、とりとめもない全体像を思い浮かべる。ところどころのはなしに散りばめられた「挨拶」ってキーワード。もっとシンプルに声掛け? というか一歩その対象にこちらから素直な気持ちで歩み寄ろうとすること? そんなような何か。さいしょはKさんのことをとらえどころのない不思議なひとだなって思っていたけれど、だんだんとこのひとは、ものすごく小さくて細やかな信念みたいものをひとつびとつ丁寧に丹念に、いまにも崩れ落ちてしまいそうな積木みたいに、どうにか積み重ねようとしているんじゃないかってことを思う。やれることやっててえらいね! って言葉に、言葉はいらないと言いながら、それでも周囲の発する機微のひとつびとつを言葉にして掬わないと気が済まないKさんの律儀な性根。Kさんにいきなり歯並びきれいだねって褒められる。ほら、私もきれいなんだよって前歯を見せるKさん。そんなこと大昔に恋人に言われたっきりだから照れちゃう。
そんなこんなで雨上がり、芝生にゴザを敷いて、念願のキャッチボール! 楽しいなぁ、ほんとうに楽しいなぁ! 四人でぐるぐるボールを回し合う。そこにお待ちかねのRとNちゃんが池の石橋をてくてく渡ってくる。R髪の毛のびたね、いつものジャージだね。Nちゃんはじめまして。このあいだ思いがけずケンカの火種をつくってしまってごめんね。なんかぐるっと芝生の上で円になっていて、どっちが先に言ったか忘れたけれど、Nちゃんって呼びかけていて、Nちゃんも名前をただ呼びかけてくれる。そのたったの一言から、何でも知ってるよ、何でもわかってるよ、何にも知らないかもしれないし、何にもわからないかもしれないけど、だいじょうぶ、ぜんぶ何でも受け入れられるよって感じのすごい大きな朗らかな気持ちが伝わってきて、いい子だなって思う。Nちゃんは一人称がじぶんの名前で、それがとっても似合っている。なんとなくAさんのことを思い出す、Aさんも一人称がじぶんの名前で、いつも朗らかで、スクッとまっすぐ地面に立っていて、面倒見がよくて、良くないと思うことはちゃんと良くないよって言ってくれる。Nが「ね、みんないい子でしょ」って宝物を見せるように言うのがとてもうれしいね。Mさんから、美容室の予約があって、来てもすぐに帰ることになっちゃうから今日はやめとくって旨の連絡がくる。そのことをきいたKさんが「いいね、予約してあるから来られないってことちゃんと伝えてくれるのがいいよね」って旨のことを言う。次々とあたまを通り抜けてゆくKさんの言葉のなかで、このことはあたまにはっきりと残っている。あまりにも当たり前のことを当たり前に褒めているから、かえって耳に残ってしまったらしい。もしかするとKさんの名言の数々がすっぽりあたまを通り抜けてしまうのは、あまりにも当たり前のことを当たり前に肯定してくれているからなんじゃないかって、そんなことを思う。その当たり前のことは人と人とが関係していくうえで、うやむやに、曖昧に、何となくそこらじゅうの人に身についていたり、おろそかにされても大して気にもされないような些細なものかもしれなくて、でも、Kさんにとってのそれらは当たり前なんだけれど当たり前じゃない、当たり前じゃないんだけど当たり前なそんな些細のことを草の根の運動のようにひとつびとつ積み上げようとしているようなそんなような気概を感じる。お昼にはじめてKさんと出会ったときの不思議な感覚の謎が解けていくような感じがする。もしかしたら、あのときKさんとのあいだに感じた関係の途切れのような何かは、うやむやに関係の渦に巻き込まれるまえに、まず相手のことを関係されてしまうまえのありのままの生身の姿で見ようとする意志の表れだったんじゃないかってことを思う。ひとでも動物でも植物でもものでも、ありとあらゆるこの宇宙のものは個々にそれぞれにそれらだけの固有の光を発しているって思う。そう思っている。ナイーブに言えば、そういうものものと関係していくことは、そのひとつだけの、それだけでひとつの膨大な宇宙のようなものから、じぶん都合のものだけをつまみ食いするようなふうになってしまう。たとえば、掃除機をゴミを吸い込むための道具をみなすように。必ずしもそれが悪いことだとは思わない。人と人でも、人とものでも、関係してなんぼだと思う。関係していくなかで(たとえば、じぶんに固有の光を誰かにわかってもらえないとかして)傷ついたりすることもあるかもしれないけれど、ちょっとずつ、ちょっとずつでも、ひとつずつ、ひとつずつでも、完璧な関係なんてものはないかもしれないけれど、よりよい関係にしようとやっていきたい、そのための草の根の第一歩として、まずは関係するまえのありのままの姿を見ようとする、そんなようなKさんの気概が、ある道具をそれに求められている用途とはまるでちがう仕方で使おうとすることに表れているのかもしれない。こんなことを書き連ねるじぶん自身も、Kさんやみんなをじぶん都合のものに落とし込めているのかもしれない。この日記を書きはじめた当初、その日の空がきれいだなって思ってそのことを書こうとしたんだけれど、きれいって書いたらそれ以外の何かが欠落してしまうような気がして、そのことを書けないって書いたことををよく憶えている。それからはどう思ったとか、こう思ったとか、そういうことを書くのをなるべく差し控えて、みたものをそのままに書くようにしていたように思う。自然のこととか、じぶんとは直接あんまり関係のないひとのこととか、そういうことを。だけども、みんなと出会った頃からこの日記のあり方も変わってきた。じぶんと直接的に関係のあるものごとについても、その関係の渦中から書いていきたいと思った。きっかけは大好きなみんなのことを書き残しておきたいっていう素朴な理由なんだけれど、それは関係の渦中からしか書けなくて、いままでのようにはいかなくて、どう書いたらいいんだろうってことの以前に、どう関係したらいいんだろうってことがまるでわからなくて、そんなわからなさにさいしょのヒントをくれたのがHさんのからだを張ったさよならの仕方だった。それがものすごくうれしくって、みんなのことよくわかるような気もするし、ちょびっとしか知らないけれど、それでも、それでも、ちょっとだけでも、思っていることや感じていることを言葉やからだで表に出して伝えられたらなって思う。
友達が少ないってはなしをしたらRが意外だという。Kさんも友達が少ないらしい。でも、いまはこんなに友達できたよ! 円になってしばらく立ちばなしをしていたら肌寒くなってきて、円をひろげて6人でキャッチボールを再開する。ぐるぐる、ぐるぐる、隣から隣へボールを投げる。Kさんのボールをキャッチして、Rにボールを投げる。RはNちゃんに近距離にもかかわらずけっこうな速球を投げる。Nちゃん、ちゃんとキャッチしていてすごい! だんだんと野球部の練習みたいに捕っては投げ、捕っては投げが速くなる。逆回転、Rがイノシシみたいな怖い顔で剛速球を投げつけてくる。しかも、ためて、ためて、ためて、いきなり投げつけてくる。捕れたときは手のひらがジーーーン。捕れなくて池ポチャ、ボールが思ったよりも水を吸い込んで、水を切っていると、誰かがラーメン屋の湯切りみたいって、みんなラーメン屋の湯切りの真似をしている。なんて愉快なんだぁ! Kさんの胸をめがけて軽く抜いたボールを投げる、Kさんが捕り損ねると胸ポケットの小銭がチャリンと心地よい音を鳴らす。Kさんの投げ方はドカベンの殿馬みたい。このあいだTと投げ合ったときには容赦ない力の込められたボールがきたものだけど、Nに投げるときはとても捕りやすそうに投げている。またRが怖い顔で凄んでくる、顔が怖いよ~って言うと、Rはサイコパスみたいなヤバイ笑顔になり、それがもっと怖くて笑ってしまう。からだが温まるというか暑いくらいになってきて、みんなゴザのところに集まり、Rを誘って二人で投げ合おうよ。ちゃんと距離をとって投げ合う。Rにフォームがきれいって言われる。エッヘン! 真っ直ぐがいい感じにRの胸に届く。ためしにスライダーを投げたらくくっと曲がる。フォークを投げようとしたら指から抜けなくてワンバンになっちゃう、走らせてごめん!
お腹痛いのをおして来ていたTがひと足先にバイバイ。ひらひらと遠ざかって姿が小さくなってゆく。恐竜みたいとも思ういっぽう���名前のとおり蝶々みたいだなぁとも思う。またね!
ゴザに寝転がって主にKさんのはなしをきく。数時間まえからNが頻りに「Kさん今日はたくさん喋って疲れたねえ」ってKさんの背中を撫でながら優しく労わるんだけれど、Kさんのマシンガントークはいっこうにおさまる気配なし、それどころかより加速さえしているような……。ここでもNの物真似と再現が炸裂して、何度見ても大笑いしちゃう。それから今回がはじめてになる神社に参拝したときのKさんの物真似「きょうも元気で楽しいです、ありがとう!」Nが、私はお願いごとばっかしてたのにKさんはって。ううぅって、とうとう感動して泣いてしまう。それから話題は主にNちゃんとRのことに。Nちゃんがじぶんで「Nは男気あるからな」って言う。その自信にあふれた強い一言にとても好感をもてる。Rが軽くKさんに説教されるようなかたちになって、ニヤニヤしちゃう。ここでもKさんはごめんね、とか、ありがとう、とか、些細なあいさつのことを言っている。でも、きみは素直だな、飾らないところがいいよって説教しながらもRのことを褒める。同棲のはなしから、じぶんにも同棲生活が長くあったはなし、それから、頑張り屋さん、もがいているひと、あがいているひと、悪あがきしているひとが好きってはなし。たぶん、それはじぶん自身も悪あがき好きで、悪あがいているときに生き生きとしているからなんだと思う。なんでいっしょに暮らそうと思うんですかってRからの質問に、だって好きだったらずっといっしょに居たいと思うでしょって。それはそうだけどKさんが言うと不思議な感じってR。なんだかその一言が引っかかっていて、こんどどういう意味なのかきいてみたい。
重ねがさねにトイレ、Kさんの姿がふいに見えなくなってちょっと不安になる。まあ、だいじょうぶだろうと思いながらもKさんが帰ってきていないことをNに伝える。Nはとぼとぼ広場のほうに歩いてゆき、小さくなったNがぽつんと広場の片隅に立っている。空はもう暗くて、そのぽつねんとした後ろ姿を見ていたら何となく胸騒ぎがしてきて、そういえばKさんが空のペットボトルをわざわざ持っていったことが急に気がかりになってきて、じぶんもKさんを探しにいく。どこにもいないねってNと合流、星に帰ったのかな、公園を半周して元いた場所にもどってくるとKさんはふつうにそこにいる。かるく迷子になっていただけだったみたい。よかった! 信じられなかったことがちょっと悔しい!
さよならの時間、どぎまぎしながら駅に向かって歩く。それぞれに方向も状況もなにもかもちがう。Rが来たばっかりなのにもう帰るのかって。その素直な気持ちがうれしくて、それだったらうちに寄ってく? って言いたいんだけれど、早朝の朝5時から活動しているKさんとNのことを考えると口どもってしまう。そういうときにも素直に思っていることを伝えて、これこれこう思うんだけどどうってことをうやむやな関係に流されずに伝えていけたらって思う。そういうときいつも矢面に立って、どうにかしようと頑張ってくれているのがNだ。その姿勢を見習っていきたい!
まずNちゃんとRを見送る。電光掲示板の数字のことからNちゃんに、ひとよりちょっと目のいいことが唯一のとりえだよって自虐的に伝えてしまったけれど、そのことはけっこう本気で自慢に思っているよ。電車が走りだして、窓枠からNちゃんの顔が見えなくなったとき、Nちゃんがひゅっ��顔を覗かせて、また(^^)/を見せてくれたとき、すごいうれしかった。階段を渡ってNとKさんも見送る。すぐに電車きて、ふたり乗る、向かい合う、いい表情、目がとってもいい、走る。
Kさんのようになりたいなって本気で思う。ちょうど10歳差、10年後、Kさんのようになれたら、いや、なってやるぞって強い決意をかためる。かためさん。
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short-span-call · 3 years
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#044 ボーイ
 日本国千葉県市川市塩浜二丁目にある市川塩浜というなにもかもが中途半端な駅の安っぽいベンチに、その男の子は座っていた。毎日いた。毎晩いた。日がな一日そこにいた。あるときは、菓子パンを頬張っていた。あるときは、ペットボトルを握っていた。あるときは、電車のドアが閉まるタイミングに合わせてフエラムネを鳴らしていた。あるときは、ぶんぶんゴマを回転させていた。どこで湯を調達したのか、カップヌードルに蓋をして、三分、じっと待っていることもあった。だいたいは小ぶりのリュックサックを背負っていたが、コンビニのビニール袋だけを持っているときもあった。紙袋を横に置いているときもあった。いつも、何も持っていないような顔をして、そこにいた。  市川塩浜駅の利用客は、周辺の工場や倉庫に努めている会社員や契約社員やアルバイトがほとんどだった。あとは、周辺の工場や倉庫に視察にきた本社の人間。男の子はそのことを知らない。なんだかみんな、一様に、具合の悪そうな顔で電車から出てくるな。男の子はそう思っていた。  ごくまれに、駅のホームで電車を待っている人が、男の子に話しかけてきた。ぼく、どうしたの? 学校は? お母さんは? 話しかけてくる人は、なぜかほとんどが女性だった。小さなツヤツヤしたバックを肩から下げ、パンプスかヒールを履いているような。視察の人間。男の子はそのたび、相手をじっと見つめ、意味ありげなジェスチャーと、意味ありげな口パクをした。自分の耳の辺りを指したり、言葉にならないうめきのような声をかすかに出した。そうすると、だいたいの人は黙り込んだ。困った顔もした。そしてそのあと、大抵の人が慌てた様子でカバンから紙とペンを、あるいはスマホを取り出した。男の子はそれを受け取り、毎回、こう書いた。 「ひとを まっています だいじょうぶです ありがとう さよなら」  相手は安心と困惑とバツの悪さが入り混じった顔をして、手を降って男の子から離れる。だいたいそんな感じだった。  男の子は考える。どうして話しかけてくるとき、最初にぼくが付くんだろう。なんだか、名前みたいだ。マイネームイズボク。男の子は不思議だった。僕はただここにいるだけなのに、話しかけてくる人は、どうしてみんな学校のことや親のこと(それも、なぜか必ず、お父さんじゃなくて、お母さんのこと)を聞いてくるんだろう。どうしたの? と言われても、答えようがなかった。そっちこそ、どうしたの? と、逆に聞いてみたかった。みんな、どういう答えを求めているのだろう。  男の子はその日、小さな巾着袋を持っていた。中にはパインアメが袋いっぱいに詰まっていた。男の子はパインアメを舐める。眼からじわじわと湧き出る涙で、男の子はこの駅にも春がやってきたことを知った。男の子は、花粉症だった。 「最近悪夢ばっか」  男の子のとなりに男が座っていた。男の子は男がしゃべりだすまで、男が近づいてきたことにも、となりに座ったことにも気がつかなかった。男の子は横目で電車の発着を告げる電光掲示板を見て、自分がほんの少しの間、眠っていたことを知った。 「この前見たのは、嵐の二宮とピアノコンサートをする夢。ステージ上にヤマハのグランドピアノが二台置いてあって、客席から見て俺は右、ニノは左のピアノの前に座って、演奏したんだ。俺はその楽譜を、そのとき初めて見た。知らない曲だった。当然、弾けない。それでも俺は頑張った。でもダメだった。コンサートは大失敗だった。俺は曲の途中でステージ上から逃げ出して、ペットショップで犬用のトイレを買った。それからあとは、覚えていない」  男は、男の子の方を見ながら、オーバーな表情と身振りで話し続けた。 「そのさらに前は、映画を撮る夢を見た。俺は寂れた小学校みたいなところで寝泊まりしていて、隣の部屋で寝泊まりしていたカメラマンみたいな奴にカメラを渡されるんだ。で、こう言われる。『俺の代わりに映画を撮ってくれないか』俺はカメラを渡される。録画機能のない、古いタイプのデジタル一眼レフカメラだった。俺は写真を撮りまくった。写真を撮るっていう行為が、つまりは映画を撮るってことだった。それから色々あって、俺は幼なじみと二人で、サバンナみたいな場所を、大量のチューバを担いで、幼なじみは引きずって、歩いていた。それからあとは、やっぱり覚えていない」  男は缶コーヒーを持っていた。プルトップは開いていない。熱くてまだ飲めないのだ。男は、猫舌だった。 「昨日は、ヤクザになった友達から逃げ続ける夢を見た」  男は、あらかじめ決められていたかのように背中を曲げて、男の子の顔をのぞきこんだ 「なあどう思う?」  男の子は男の方を向き、あらかじめ決められているジェスチャーと口パクをした。耳の辺りを人差し指でトントンと叩き、うめき声をあげた。男は眼を少しだけ見開いて、笑いを堪えるように口を尖らせた。それから、缶コーヒーのプルトップを開けて恐る恐るコーヒーを口に入れた。 「ふうん」  缶コーヒーの中身は男の舌でも味がわかるくらいぬるくなっていた。男は缶コーヒーを、今度はさっきより勢いをつけて飲み、男の子の耳元に顔を寄せた。 「つくば山に、喰いつくばあさん」  男はささやいてから、吹き出すのをこらえるような顔をして、缶コーヒーに口をつけた。男の子はそれが、駄洒落だということに遅れて気づく。男の子の脳裏に、つくば山を食い荒らす巨大な婆さんの画が浮かんだ。男の子は、自分の顔が歪むのをなんとか堪えた。 「あの、人を、待ってるから」  男の子は、口を開いた。なんだかもう、嘘をついてもどうしようもないような気がした。 「係長がさあ」男は男の子の言葉を無視して言った。 「係長が、俺に言うんだよ。『社員にならないか』って。冗談じゃねえって話だよな。部長だか支店長だか知らないけど、とにかく係長より偉いおっちゃんもそれに賛成しているふうでさ。たまったもんじゃないよな」  男は缶コーヒーを飲み干した。 「どうしたもんかしらね。やんなっちゃう」  男は立ち上がり、缶コーヒーをホームの白線の上に置いて、助走をつけて思い切り蹴飛ばした。缶コーヒーは向かいのホームの壁に当たり、地面に落ちてころころと転がった。向かいのホームにも、男の子と男がいるホームにも、男の子と男以外に人はいなかった。向かいのホームの電光掲示板とスピーカーが、電車がまもなく到着することを簡潔に伝えていた。 「みんなさ、忘れてるんだよ。俺、ちゃんと言ったんだよ。面接のときに『半年で辞めます』って、ちゃんと。忘れてるんだよな。半年。頑張ってると思うわ」  男はジーパンの尻ポケットからぱんぱんに膨らんだ長財布を取り出した。 「なんか飲む?」 「いらない」 「あ、そう」男は立ち上がり、自販機に向かった。「てか耳、聴こえてんじゃん」  男はさっきと同じ銘柄の缶コーヒーを買って、男の子のとなりに戻ってきた。男は男の子に爽健美茶のペットボトルを渡した。男の子は、それを左手で受け取った。  向かいのホームに電車が止まり、しばらくして、また動き出した。電車に乗る人も、降りる人もいなかった。男は缶コーヒーを右手から���手に、左手から右手に、何度も持ち替えながら、缶コーヒーが冷めるのを待っていた。最初からつめた〜いの方を押せばいいのに、男はそうしなかった。男は、ぬるい缶コーヒーが好きだった。 「どうしたもんかしらね……。やんなっちゃう」  男の子は、それが男の口癖なのだと知った。 「だから、なーんか今日、起きたときから行く気、しなくって。こんなところにいるわ」  男はジーパンのポケットからiPhoneを取り出し、男の子に見せた。 「ほらこれ、係長、しつこいんだから」  男はiPhoneを男の子のほうに向けながら、指で画面を下にスライドさせた。 「こんなに。連絡しない俺も俺だけど。どんな病気がいいかなあ。風邪って言えばじゅうぶんかな? どういう咳ならそれっぽいかな?」 「なんの仕事」 「いつの時代も、流行り病は仮病だよ。係長、困っちゃってんだよ。俺がいないと仕事、回んないから。大幅にペースダウンよ。結局、ペースダウンするだけよ。代わりなんていくらでもいるって。やんなっちゃう。いいんだけど」男は言った。「仕事? 倉庫だよ倉庫」 「どこの倉庫」男の子は言った。 「どこだっていいよ」男は言った。「あっちのほう。海の近く」 「海沿いなのに潮の匂いがしないって、やんなっちゃうよな。この駅もそうだよ。もっと漂ってきてもいいだろって。いいけどさ。山派だし」 「耳が悪いのは、ほんとだよ」男の子は言った。 「仮病?」男は缶コーヒーを振った。缶コーヒーは、着々と温度が下がってきていた。 「ちがう」 「いやでも、あの演技はなかなか。将来有望なんじゃないの」 「ちがう」男の子は言った。「きいて」 「やなこった」男は缶コーヒーのプルトップを開けた。「さっきの駄洒落、最高じゃない?」 「もっといいの、知ってる」 「ほーん」男は恐る恐るコーヒーを口に入れた。「言ってみ」 「ブラジル人のミラクルビラ配り」 「それは早口言葉だ」男は言った。「ブラジル人のミラクルビラ配り! しかも、あんまり難しく、ない!」 「おやすみなさいを言いに行くと、ママ、いつも戦争してる」  男の子と男がいるホームの電光掲示板とスピーカーが、電車がまもなく到着することを簡潔に伝えていた。その電車は、東京まで行くらしかった。男の子は、眼をこすった。主に眼にくるタイプの花粉症だった。 「去年の大晦日はひどかったな。普段は五、六個の駅も二〇とか三〇だし、舞浜なんてただでさえいつも出荷数が断トツで多いのに、一五八だぜ。一五八。やんなっちゃったよ。ほんと。シールの束がこんな量、あんの。あれは戦争だった」男は缶コーヒーをぐびぐび飲んだ。 「それで、だんだん、耳がおかしくなった」男の子は言った。「戦争って、うるさいから」 「俺も俺の周りのバイトもひーこら言いながらカゴにひたすらダンボール積んだよ。いや、言ってないけど。実際は黙々としてたよ。静かなもんだったよ。うるさいのは係長とそのとりまきの契約社員どもだけ」  男の子と男がいるホームに電車が止まり、しばらくして、また動き出した。電車に乗る人も、降りる人もいなかった。電車は二〇分ほどで東京に着く。東京駅には、電車に乗る人も、降りる人も、たくさんいた。 「今思えばあれはバケツリレーみたいだった。あんまり数が多いもんだから、みんなカゴ持っておんなじ場所に集まっちゃうんだよ。とてつもない流れ作業で、なんとか普段通りの時間に帰ることができたけど。でももう、無理だね」男はタバコが吸いたかった。「無理だね、もう」  男の子は、巾着袋からパインアメを取り出し、口に入れた。 「あ、ずる」男は言った。「ちょうだい」  男の子は、男にパインアメを一つあげた。  男は、それを口に入れた。  パインアメが溶けてなくなるまで、男の子と男はほとんど口を開かなかった。男の子と男は、それぞれ違うものを見つめていた。男の子は向かいのホームに転がっている缶コーヒーを、男は男の子のうなじを見つめていた。男の子の髪は陽を浴びて、輪っか状に光っていた。天使の輪っか、と男は思い、そんなことを考えてしまう自分が気持ち悪いとも思った。駅のホームには男の子と男以外誰もいなかった。男の子と男以外、みんなみんな、工場で、倉庫で、コンビニで、それぞれの場所で働いていた。係長はいつものように奇声を発しながら嬉しそうにフォークリフトでパレットを移動させている。バイトや契約社員はカゴ台車で、あるいはローリフトにパレットを挿して、駅構内の売店へ出荷するための飲料水が詰まったダンボールを駅別の仕分けシールを見ながらどんどん積み上げている。シールの束を口に加えて全速力で倉庫の中を端から端まで走り抜けている。そのことを男は知っていた。男の子は知らない。  男の子と男がいるホームを快速列車が通過したとき、男の子と男の口からパインアメはなくなっていた。男は空になった缶コーヒーを両手でもてあそんでいた。男の子は右手で両眼の涙を拭った。男は、花粉症ではなかった。 「将来の夢は?」男は言った。缶コーヒーをマイクに見立て、男の子の前に差し出す。 「ふつう」 「ふつう、て」男は缶コーヒーを下げた。「どうしたもんかしらね」 「たのしいよ」 「うそつけ。ママの戦争でも終わらせてから言いな」  男は立ち上がり、伸びをした。 「んーあ」 「ママ、神様が死んじゃったことに気づいちゃった」 「へえーえ」あくび混じりの声で男は言った。「そいつはすげー。もはやママが神様なんじゃないの」 「ある意味、そう」男の子はパインアメを舐め始めた。「ママ、なんでもできるよ」 「ある意味?」男はまたベンチに座った。 「うん。……うん」  男の子は、神様が死んだときのことを思い出していた。つい最近のことだ。男の子が家に帰ると、神様はリビングのホットカーペットの上で、あお向けの状態で小刻みに震えていた。男の子は震える神様を両手でうやうやしくすくいとり、テーブルの上にティッシュを二枚重ねて、その上に神様をそっと寝かせた。朱色だった身体は見る間に灰色に変わっていき、柔らかな尾ひれは押し花のようにしわしわに乾燥していった。男の子は神様の前で手を合わせ、しばらく眼を閉じてから、ティッシュで神様をくるんで持ち上げ、近所の公園の隅に小さな穴を掘って埋葬した。線香が無かったので、台所の引き出しから煙草を一本抜き出し、それに火をつけて、埋めたばかりでまだ柔らかい土にそっと差し込んだ。男の子は、もう一度神様に手を合わせた。 「僕が勝手に埋葬したから、怒ってるんだと思う」  向かいのホームに箒とちりとりを持った駅員がやってきて、掃除を始めた。男と男の子は、それを黙って見つめていた。ここからでは何かが落ちているようにも、汚れがあるようにも見えないけれど、きっといろんなものが落ちているのだろう。男は思った。駅員はこっちのホームにも来るのだろうか。何かが落ちているようには見えないけれど、きっとやって来るのだろう。駅員は階段のそばの点字ブロック付近を執拗に箒でなぞるように掃いていた。  男は、自分がまだ男の子だったころのことを思い出していた。朝が苦手で、ドッチボールと給食の牛乳が好きで、放課後はランドセルを武器にして誰かとしょっちゅう戦っていた。まあだいたい、今とさして変わんないな。男は兄のことを思い出した。 「兄妹は?」男はもう一度缶コーヒーを男の子の前に差し出した。 「いない」男の子は言った。 「一人っ子ぉ〜」男は言った。「ま、俺もそんな感じだけど」  男がまだランドセルで戦っていたころ、男の兄は家からいなくなった。車の免許を取ったあと、親の財布から抜き出したお金を使って北海道まで飛び、ネットで知り合った人の家や車を転々としながら徐々に南下し、今は沖縄本島の小さな民宿で、観光客に広東語やフランス語を教えてもらったりしながら住み込みで働いている。お金が無くなったら自殺するつもりで家を出たんだ。一年ほど前、カメラ通話で外国人みたいな肌の色をした兄が笑ってそう言うのを、男は白けた気分で聞いていた。 「行かなくていいの」男の子はパインアメを舌で転がしながら言った。 「ん? 何?」缶コーヒーが男の子の前に差し出された。「仕事?」 「そう」 「何をいまさら」男はふふんと笑う。「そのセリフ、そっくりそのままお前にお返しするわ」 「僕は人を待っているから」 「いつまで?」 「いつまでも」 「そうですか」男は缶コーヒーをベンチの下に置いた。「やんなっちゃう」 「帰らないの」 「帰ってもいいよ。でも」男はベンチの上であぐらをかいた。「でもお前が待ってた人って、実は俺のことなんじゃないの」 「……」 「あ、それ、わかるよ。絶句、ってやつだ」男は男の子を指さして笑った。 「人を待っているから」男の子は繰り返した。溶けて薄くなったパインアメを歯でガリガリと砕く音が、男の子の耳にだけ響いた。 「ああ、ほらこれ、係長からラブコール」男は震え続けているiPhoneを取り出し、男の子に見せた。「係長も、どうやら人を待ってるらしい」  やがてiPhoneの震えは止まり、男はiPhoneをジーパンの尻ポケットに押しこむようにしまった。  男と男の子は、喋りながらまったく別々のことを考え続けていた。男は兄と、兄がいたころの自分を。男の子は、神様について。思い出し、考えていた。ほんとうはどうするべきだったのか。何か間違ったことをしたのだろうか。何か決定的な間違いをおかしてしまったのだろうか。男と男の子は、それぞれが何を思って、考えているのかを知らない。ふたりは知らない。  ふたりのホームに鳩がやってきて、数歩ごとにアスファルトをついばみながらベンチの前を横切った。鳩の片足には短いビニール紐のようなものが絡まっていて、鳩が歩くたびにカサカサと微かに音が鳴った。 「帰ろうかなあ」男は男の子の左手にある未開封の爽健美茶のペットボトルを見た。「次の電車で帰るわ」 「これ」男の子は爽健美茶を男の鼻先に掲げた。「いらない」 「パパにでもあげな」男は言った。「最後の質問。お名前は?」 「ボク」 「は」気だるそうに立ち上がりながら男は短く笑った。「ママの戦争が終わるといいね」 「待ってる人が来れば、終わるよ」 「うそ。お前次第だろ」男は腰に手を当てて線路を見た。腰の形に沿ってシワができたTシャツを見て、この人ちゃんと食べているんだろうか、と男の子は思った。 「あーあ、俺も行きてえ〜、南の島」  男はあくびを噛み殺しながら、線路を見つめ続けていた。
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 男の子は、日が暮れて夜になっても、市川塩浜駅のホームのベンチにずっと座っていた。帰宅ラッシュでホームが人で溢れ、ベンチがすべて埋まっても、男の子は座ったままだった。ラッシュも終わり、駅のホームがふたたび廃墟のような寂れた静けさを取り戻したころ、男の子は立ち上がった。巾着袋をベンチに置き、ベンチの下にある缶コーヒーを拾ってゴミ箱へ捨てた。左手に爽健美茶のペットボトルを、右手に巾着袋を持って、男の子は二三時五六分発の東所沢行きに乗った。  人の少ない電車の中で、男の子は少しだけ眠り、少しだけ夢を見た。夢の中で、男の子は大学生だった。数人の友人と数人の先輩に囲まれて、お酒を飲んだり煙草を吸ったり、笑ったり泣いたり、怒ったり喜んだり、走ったりうずくまったりしていた。それは夢にしてはあまりにもありふれた、だけどどこか切実な、現実の延長線上にあるような夢だった。  目が覚めた男の子は、停車駅の看板を見てまだ電車が二駅分しか移動していないことを知る。男の子は夢を見たことすら覚えていなかった。男の子は発車ベルを聞きながら、眠っている間に床に落ちてしまった爽健美茶を拾った。  男の子は想像する。駅のホームを行き来する電車のこと、その電車に乗る人のこと、駅員のこと、そして今この電車に乗っている人のこと。みんなの家のことを。その神様のことを。そして自分の家を思う。新しい神様を見つけないといけないのかもしれない。母親を戦場から引っ張り出すには、それしかない気がした。男の子は頭を窓にくっつけて、眼を閉じた。今度は、夢を見なかった。
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 男の兄は、何かと繊細なやつだった。人混みや集団行動が苦手で、電車に乗ったり、ひどい時は家から外に出ただけで歩き出せなくなるほどだった。ネット上には大勢の友人がいた。変なところが凝り性で、パソコンのマインスイーパーやタイピングゲーム、パズルゲームをひたすらやりこんでいた。肉が駄目で、馬のように草ばかり食べていた。首筋と腕の関節部分にアトピーのような肌荒れがあり、四六時中かきむしってフケのような皮膚のかけらをあたりにばらまいていた。男が兄について知っていることは、それくらいだった。  男はアパートに帰ってから、敷きっぱなしの布団の上でしばらくボーッとしていた。係長はもう、男に電話をかけてこなかった。誰も男に電話をかけてこなかった。それでいいと男は思った。 「ブラジル人のミラクルビラ配り」  男はあお向けに寝転び、眼を閉じて呪文のように何度もつぶやいた。簡単すぎるな、そう思った。つぶやき続けているうちに男の口はしだいに動かなくなり、静かに息を吐いて、眠りはじめた。  日付が変わる少し前、男は起き上がった。頭をかきながらしばらく時計と���を交互に見つめ、水を飲み、トイレに行ったあと、兄に電話をかけた。自分から兄に電話をかけるのは初めてだな、と男は電話のコール音が鳴ってから気づいた。 「おお」 「よお」 「もしもし?」 「うん。もしもし」 「急にどうしたの。めずらしい」兄の声は穏やかだった。 「沖縄は今、何℃だ」 「えっと……えーっとね」兄の声がくぐもって聞こえる。iPhoneを顔から離して、天気情報を見ているのだろう。「22℃っす〜」 「元気か」 「まあ元気」 「焼けてんのか」 「そりゃもう。こんがり」 「野菜ちゃんと食ってんのか」 「それ俺に言う?」 「もう死なんのか」 「そうだね」兄は間髪入れずにそう言った。「まあなんとか、生きてみようと思ってるよ。今んとこ」 「つまんね」 「なんだそれ」兄は笑った。「そっちはどう?」 「何が」 「元気か」今度は兄がインタビュアーだ。 「ノーコメント」 「家賃とかちゃんと払ってんのか」 「ノーコメント」 「野菜ちゃんと食ってんのか」 「ノーコメント」 「話にならねー」兄はまた笑った。「両親は元気か」 「しらん」男は間髪入れずにそう言った。「知ってたとしても、お前には教えないね」 「そりゃそうか。ま、いいや。とりあえず生きてるでしょ、たぶん」  男と兄はしばらく黙った。通話口からは、よくわからない言葉で笑い合う人の声が聞こえた。沖縄語も外国語も、同じようなもんだな。そして兄の言葉も。男の部屋は、静かだった。隣の部屋の生活音も聞こえない。 「電話出て大丈夫だったのか」 「いまさら。大丈夫。宿泊客と酒盛りしてただけだから」 「タノシソウデナニヨリデスネ」 「なんだよ。もしかして酔ってる?」 「ノーコメント」 「めんどくさいなー」笑いながら兄は言った。 「来週の日曜日、ヒマか」 「ヒマかどうかはわかんないけど、まあ、この島にはいるよ」 「そうか」 「何?」 「俺、お前んとこ、行くよ」 「あ、ほんとに?」 「お前をぶっ殺しに行くわ」 「わ、殺害予告」 「通報でもなんでもすりゃいいよ」 「しないよ。ワターシノアイスルブラーザーデスカラ」 「つくづくお前はつまんねえ」 「知ってるよ、そんなこと」 「逃げるなよ」 「逃げないよ」兄の声は優しかった。兄が家にいたとき、こんな声で話したことがあっただろうか。男は思い出せなかった。「まあ、おいでよ。待ってるよ」 「ファック」  男は電話を切り、電源も切ってからiPhoneを放り投げた。男は本気だった。部屋を出て、コンビニへ行き、ATMで残高を確認した男は、これから自分がやるべきことを考えながら、昼間と同じ缶コーヒーを買った。まずは、包丁。
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 男の子がグランハイツ東所沢の四〇五号室の玄関扉を開けたのは、日付が変わってからおよそ一時間半後のことだった。男の子はリビングのテーブルの前に爽健美茶のペットボトルを置いた。床に散らばっていた不動産のチラシを一枚手に取り、テーブルの上に無造作に転がっていた赤ボールペンでチラシの裏に大きく「パパへ」と書いて、爽健美茶のペットボトルの下に挟んだ。  男の子はキッチンでお茶碗に炊きたてのご飯をよそい、フライパンの中からサンマの照り焼きを小皿によそい、リビングのテーブルの上にそれらを置いて、立ったまま食べた。男の子は、少食だった。それから男の子はお茶碗と小皿を簡単に洗い、自分の部屋から着替えを取って風呂に入った。男の子は、風呂が嫌いだった。浴槽に浸からずシャワーだけ浴び、男の子は風呂を出た。それから洗面台の前で入念に歯を磨き、綿棒二本と竹の耳かきで両耳を入念に掃除した。男の子は、きれい好きだった。それから男の子は、風呂場と洗面台と、リビングとキッチンの電気を消し、玄関へと続く狭い廊下の途中にある白い扉の前に立った。部屋の中からは、銃撃、爆撃、悲鳴、ファンファーレなどの音が絶えずとてつもない大きさで聴こえていた。男の子は、扉をノックした。それから、返事を待たずに扉を開けた。男の子は部屋の中に入る。 「おやすみなさい」  男の子は、この言葉が好きだ。
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