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東京五輪から2年 湾岸はいま
悪夢のようなTOKYO2020大会から2年が経った。
五輪のために姿を変えられたあの場所は、巨額の資金を費やして建てられた会場は、白いフェンスに閉ざされていた公園は、いま一体どうなっているのか。
湾岸エリアを中心に、フィールドワークを行った。
①築地市場
築地本願寺から場外市場に向かう。日曜日。外国人観光客、親子連れ、カップル。賑わいは築地市場があった頃と変わらないように見えた。どの店にも、昼食を目当てに沢山の人が並んでいる。
立体駐車場の最上階から市場のあった方を見下ろす。縦横に走るターレ、魚の並ぶケース、積み上げられたトロ箱、林立する仲卸の看板――それらが全て消え去り、でこぼこの、剥き出しのコンクリートだけが灼熱の太陽に焼かれていた。その一部は駐車スペースに。数台の自家用車。物悲しくなるぐらいしょぼい。
駐車場のわきに、築地市場の仲卸とおぼしき店名のプレートを付けたターレが放置されていた。よく見ると、ナンバープレートを外した痕がくっきりと残っている。
石原元都知事が主導した2016年五輪招致当時、築地市場を潰してメディアセンターを作るという話が出ていた。2020東京大会ではそれが「駐車場」にかわり、市場は2018年10月に東京都によって閉鎖された。選手村から競技場への輸送のために新たに作られた環状2号の全面開通は、五輪閉幕から1年以上も過ぎた2022年12月。五輪招致が、都民の台所を打ち出の小づちのように利権を生み出す空虚な「一等地」に変えてしまった。
築地を舞台にしたある連載漫画の中で、目利き一筋の主人公は何故か移転に何の葛藤もないまま「豊洲で頑張っていこう」と仲間に呼びかけていた。築地市場83年の歴史は、急速に「なかったもの」にされようとしている。
②月島
東京では五輪の前から、競技会場と直接関係のない場所でも各地で再開発が起こっていた。晴海にも程近い、湾岸エリアに位置する月島もまたその1つ。もんじゃストリートで有名なこの町は、一本裏道に入ると古い木造家屋が軒を連ねる下町らしさが残っている。私たちが2017年に訪問した際は、月島1丁目西仲通り地区再開発計画のためにもんじゃストリートの店舗が軒並み閉店していた。
そして今回訪ねてみると、MID TOWER GRANDなる地上32階、高さ121mの超高層マンションが建ち(2020年10月竣工)、その1階にもんじゃ屋などの店舗が入っていた。
月島ではさらに地上48階、高さ178.00mのタワマンを建てる月島三丁目南地区第一種市街地再開発事業、地上58階、高さ199mのタワマンを建てる月島三丁目北地区第一種市街地再開発事業が控えている。フィールドワークの後で知ったこ��だが、この月島三丁目再開発計画には反対運動や行政訴訟も起こっているとのこと。長年暮らしてきた人々の息吹が聞こえるような町並みが、大手開発業者によって姿を変えられようとしていることには胸が痛む。
③晴海選手村
カンカン照りの選手村跡地。ここはHARUMI FLAGなる高層マンション群として開発され、完成すれば5,632戸12,000人が暮らす街になるという。未だ工事中で通行できるのはメインストリートの車道のみ。焼けつくような暑さの中、誰もいないコンクリートだらけの空間は殺伐とした雰囲気が漂っていた。
選手村をめぐっては、東京都が適正価格の10分の1という不当な安さで都有地を三井不動産ら11社のデベロッパーに売却したとして住民訴訟が起きている。五輪という祝賀的なイベントが作り出す例外状態によって、公共財産が民間資本に吸い上げられた象徴的な場所だ。
街の中心に近づくと、左手には、大会中、大量の食材廃棄が問題となった食堂の跡地が、中央区立の小中学校(2024年度開校予定)として整備されていた。
右手には三井不動産の商業施設「ららテラス」。その1階には「東京五輪を振り返りスポーツの力を発信する施設」として「TEAM JAPAN 2020 VILLAGE」が設置されるらしい。五輪と三井不動産のどこまでも続く蜜月がうかがえる。
その先では道路を挟んで左右両方の街区で50階建ての2棟の超高層タワーマンションが目下建設中だった。
選手村を訪れるとき、2018年、建設工事中に2人の労働者が亡くなったことを思わずにはいられない。その街区は、労働者の死という痛ましい現実を塗り固めるようにSUN VILLAGE(太陽の村)という輝かしい名前で分譲されている。
この街区だけではない。この街全体が、五輪によって引き起こされた問題などまるで何もなかったかのように成り立っている。この街ではとても生きていけない、生きた心地がしない。生気を抜かれたようにその場を後にした。
④潮風公園、お台場海浜公園
ビーチバレーボールの会場設営のため何年もフェンス封鎖されていた潮風公園。わたしたちは初めて公園内に入った。こんなに広かったのか!無観客のくせに、この公園全体を占拠していたなんて��ほんとうに厚かましい。
東京湾の対岸の埠頭にはコンテナが並んでいる。海をみてみると、うっ!海水は泥沼のような色。しかし、なぜか匂いはせず、潮の匂いさえもしない。ファブリーズでもしているのか?
わたしたちは、野宿の人たちが寝ていた場所を探して公園内を歩いた(東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織員会による追い出し→https://x.gd/ZJP4d)。木がたくさんあってなかなか住み心地よさそうだと思っていたら、屋根のある排除ベンチにたどり着いた。なんて醜いデザインなのだろう。
次に「トイレのようなニオイ」と話題になったお台場海浜公園のビーチへ、匂いを確認しに行った。「遊泳禁止」の看板があり、スクリーニングのためと記してあったが、やはり汚染が懸念されているのだろろう。このビーチの海水も濁っていて、潮の匂いさえもしない。怪しい水質だ。
しかし、暑すぎる。灼熱の日差しの下で、ビーチバレーボールや、トライアスロンをやって、汚い海に飛び込んでいたのか。
知れば知るほど、オリンピック・パラリンピックは地獄だ。
⑤有明
有明の旧会場エリアへ。グーグルマップで見ると、どうやらこの一帯は「有明オリンピック・パラリンピックパーク」と名付けられたらしい。いまや地に落ちた電通がオリンピックでちゃっかりゲットした、唯一黒字と言われる有明アリーナへ。SNSではステージが見えない席があ��と不評を買っていたが、「ディズニーオンアイス」をやってるらしく、猛暑の折、駅から会場まで大勢の人だかり。
有明体操競技場はこの5月に「有明ジメックス」と名を変え、株式会社東京ビックサイトが運営する展示場としてオープンしたらしい。第一印象は「・・・神社?」世界的ウッドショックの最中に木材を山のように使って、10年程度で取り壊される予定とのこと。こんなに立派にする必要あったのか?
そこからゆりかもめの駅を越えると、フェンスで囲われた草ぼうぼうのワイルドな一角が。有明BMX会場跡地だ。グーグルマップには「有明アーバンスポーツパーク(2024年4月開業)」とあるが、いまのところ影も形もない。スポーツ施設より原っぱ公園の方が需要あるのでは?
有明テニスの森公園は工事パネルが外されて、開放感に溢れていた。こんな素敵な場所を何年もオリンピックのために囲って、市民を排除してきたかと思うとあらためて腹が立つ。
真夏の炎天下に火を燃やし続けた聖火台があった夢の大橋にも立ち寄った。観覧車が無くなっていた。東京都はこの夢の大橋を含むシンボルプロムナード公園の一角に、新たに聖火台置き場をつくって飾っている。東京都はいつまでオリパラの亡霊にすがる気か。。
⑥辰巳・東京アクアティクスセンター
アクアティクスセンター
「威圧」を形にしたような巨大建造物。
建物の周りには木陰がなく、取ってつけたような弱々しい植栽が施されている。
正面外の、広すぎる階段は、車いす利用者でなくても、大げさすぎてびっくりする。コンクリートが日射で熱い。ゴミ一つ落ちていないのは、人が寄り付かないからだろう。
その下にたたずんで私は、ピラミッド建設のために労働を強いられている人のような気持ちがした。
ここは、公園の一部であった。近くに団地もある。誰でも入って、海からの風を感じながらくつろぎ、出会う場所だったはずだ。
5年前に訪れた時は、工事中で巨大な支柱がそびえたっていた。三内丸山遺跡にインスパイアされたのかと思ったが、出来上がったのは帝国主義の終点のようなしろものだった。
「お前たちが来るところではない。」という声がどこからか聴こえる気がした。
知ってる。だから入ってみた。静かだ。人っ子一人いない、空調が効いて冷え切っている。だだっ広いロビーの小さな一角に、TOKYO2020オリパラのポスターたちがいまだに展示されていた。
競争をあおり、序列化し、勝者に過剰な価値を与え、「感動」を動員するスペクタクルがここで続けられるのだ。
生きていくのに必要な潤いをもたらす公園に、このような醜悪なものが君臨しているのを私は許せない。
炎天下の湾岸エリアを丸1日かけて回った。TOKYO2020跡地は、廃墟になっていると思いきや、むしろ多くの場所でまだまだ開発が続いていた。開発への飽くなき欲望と「レガシー」への執着、五輪災害は閉幕後も延々と残り続けている。
この日撮影した映像を使って「オリンピックって何?東京からパリ五輪1年前によせて」という動画を作成し、1年後に五輪開幕が迫るパリでの反五輪の闘いに連帯を示すメッセージとした。
From Tokyo To PARIS, NOlympicsAnywhere
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日記 / 5.7 / 写真を再び
どうもここ数ヶ月、写真が撮れなかった。半年前から撮っている写真のシリーズについてのことだ。製本ワークショップに参加して製本してみて、一度立ち止まって俯瞰的に見てみようと試みたが、これがまさかの急ブレーキとなってしまった。本の形になった高揚感に浸りつつ、「足りない」こと探し、粗探しを繰り返した結果、撮影を始めたときに抱いていた前のめりな感覚を忘れてしまっていたように感じていた。
京都国際写真祭でそれに拍車がかかった。凄みのある作品を三日三晩浴び続けることで、着眼点や撮影の技量、熱量、我が事とする力強さ、数え切れないポイントと比較ばかりして苦しくなってしまっていた。正直、息ができていない状態に陥っていた。1年前は「制作」をしていなかったから、どの作品も憧れのような対象だった。尊敬する写真家の自宅に訪ねて相談させてもらったり、他の写真家の方には、勤務中に彼の働く会社まで足を運んで助言を請うたりした。ようやく、自分なりの視点を持って撮影してこれたのではと、思った今年のはず…と思っていたのだが、違った。「作品をつくるようになった若い人」(と言われるようになった)は、先人たちから厳しいレビューを受け、落ち込んでしまったのだ。この落ち込みを誰かに解消してもらうことなんてできないし、親しい友人に話しても、結局情けをかけてもらいたいという気持ちから始まってしまうわけで、健全ではなかった。
先週には、撮影をお願いしていた方と長い時間お茶をして撮影に望んだが、正直に伝えた。「今は撮れるような状況ではない」と。相手からも、見透かされたような気がして、ブローニーフィルム一本を撮り切ることだけにしか集中できなかった。つまり被写体との対話ができていたとは言い難い。きょう、現像から上がってきた写真たちは、それなりに撮れているのだが、撮ったときの感情をまだ記憶しているので素直に見ることができないことで思い知らされた。現像があがるまでの高揚感、ポジティブな気持ちを抱いていなかったことに気づいた。
ここまでネガティブなことばかり書き連ねているのだが、ようやくトンネルを抜け出せそうな感覚をきょうは覚えた。一日を振り返りながら、いろいろ考えてみようと思ったからきょうは書こうと思う。
まずは、久々に早朝に起床できたことに始まる。朝マックに足を運び、エッグソーセージマフィンのセットを食し、スイッチを入れる。朝ごはんを食べると血糖値が高まり、血の巡りを感じる。ファストフードとはいえ、気持ちが前向きになったようだった。その勢いで、都内の展示へ。本当は丸木美術館に行きたかったが、せっかく晴れている日、2時間も電車に乗るのがもったいないと思い、終了日前日なのに諦めた。
昨日、WHOがコロナ緊急事態宣言の終了を発表。週明けにはコロナが第5類に移行する。パンデミック下に置かれていた日常は、ようやく活気づいてきたことを武蔵小杉から乗り換えた行楽日の総武線快速で感じた。先月行った京都も、外国人観光客が戻ってきて、マスクをしている人がほとんどみなかったので、不思議ではないのだが、東京にもコロナ前の日常が戻りつつあった。そんなことを思いながら、上野に着くとすごい人だった。動物園に並ぶ人々の姿も見えた。美術館前で記念撮影をする人。にぎやかな声が聞こえてくるから、自然と触発される。
向かったのは東京芸術大学陳列館。「解/拆邊界 亞際木刻版畫實踐」(脱境界:インターアジアの木版画実践)(※)を見るためだった。初夏の日差しに浴びる青々とした葉をつけた木々が陰をつくる上野公園がこんなに気持ち良いとは思わなかった。陳列館の2階は、天窓から優しい日光が注ぎ込み、版画がすられたキャンバスや布がゆらゆらとしていた。版画は力強かった。日本、韓国、中国、香港、台湾、フィリピン、インドネシアのアーティストの作品をゆっくり何周もしながらみる。印象的だったのは、タイトルの通り、ボーダーを越えていくことの希望だ。
點印社(香港)の「私たちは輪になって食べる、刷る」は横長の大きな版画。テーブルでご飯を食べる様子を描いているのだが、そこに描かれているのは、人間だけでなく、シャチや、犬など動物もいる。コロナ禍によって幾多の国境が閉ざされた世界で、異なる国籍や民族やルーツ、バックグラウンドを持つ人々の間に境界線が引かれるようになったことを忘れてはいけない。そんな時代だからこそ、他者との時間を共有することを肯定し続ける力強さを感じた。登場する人々や、動物の表情は笑顔で豊かで、美しかった。決して丁寧に、きれいにつくられたわけではないけれど、その雑然さを版画で刻む描くことの尊さを感じた。
韓国のキム・オクさんが制作した7枚の版画からは、いつか未来で消える朝鮮半島の南北の境界線を想像させた。30年以上に渡り、朝鮮半島南部をくまなく歩き、フィールドワークしてきたというキムさん。農村地帯など韓国の原風景が描かれた7枚は、南北統一という先に続きがうまれるはずだという期待を抱かせ、そしていまだ解決しない南北問題について、極東の島国にいる自分をハッとさせた。
何よりエンパワーメントされた。この展示の作家の多くが社会運動に参画し、運動を活性化させたり、アジテーションを強化するという目的を持ったりしながら制作しているということを掲示されているテキストで知る。政治的抑圧に抵抗する。それは大きな主語を語りがちのように感じられるが、版画を刷るということによって我が事として捉える身体性が一層増していくように感じた。何より、作家自ら社会に対して、異議申し立てをするまでのプロセスを、自らの生活実践の場において果たそうとする姿勢が感じられた。だからこそ、「私たちは輪になって食べる、刷る」のカラフルな描き方に心が揺さぶられたのだろう。
何より、描いて、版を作り、刷るという繰り返しを諦めない。その先に、社会的に生じている苦しさから解放されるように思えた。新聞記者として多くの時間を、社会的課題について考えようとしながら、当事者性があるかどうかなど悩み、写真撮影においても強度があるかないかなど気にしていた自分にとって、今までの悩みがちっぽけに思えたし、何よりそうだ、自分が言いたいことを言えばいいんだと思えた展示だった。
彫り続ける作家たちの姿勢に刺激をもらい、浅草に移動してから入ったタリーズで本を開いた。坂口恭平の「継続するコツ」だ。数ヶ月前に綴方で購入したまま開いていなかったが、効果てきめんだった。「才能という言葉」の呪いにかけられたように、他者の作品を羨望の眼差しで見ていた。そして、撮影ができない状態に陥っていたけれど、それは「比較が始まり、否定が始まり、手が止まる」という項で正体が書かれていた。ある程度、自分がやりたいことを続けていくと「慣れ」が生じるというのだ。「慣れ」。なるほど。確かに、慣れてきた。こうして撮っていけばいいのだ。こう進めていけばいいのだという実感は、いつしか、「見る人に伝えるには○○が足りない」と完成度ばかり気にすることに変わっていたからだ。
製本して、足りないことが見えて、評価を受ける作家のアーティストブックやダミーブックに圧倒され、到底その領域に達していないのにと自分を卑下して、比較をし続けていたなと気付かされた。なんか自分が馬鹿らしくなった。撮っていく。それだけでまずは十分じゃないか。当初抱いていた撮りたい写真への気持ちは、いろんな人の助言や苦言や励ましで少しずつ変容したりしているけど、自分の撮りたいという気持ちに正直になれるのは自分しかいないわけなんだから。
そうだ。去年の7月、アレック・ソスに「SLEEPING BY MISSISSIPPI」にサインを入れてもらったとき、メッセージをお願いして書いてもらった言葉を思い出した。「Don't ever forget the feeling when you first piched up a camera」。そうだよね。初心忘れずって言うよね。いま撮っているカメラは別に「First」じゃないけれど、このカメラで撮っていくぞって嬉々としていたときのことを思い出した。小さな1Kで、千尋からも「買ってよかったね」なんて言われて、ファインダーを覗いて初めて装填したネガフィルムに彼女を焼き付けたんだっけ。うまく扱えず、フォーカスと露出を決めるのに時間がかかって切ったシャッターによって写し取られた千尋のふと力の抜けた表情が自分は好きだったんだなと。あの感覚があったから、静かに被写体となる他者に正対する感覚を今でも大事にしているのかもしれない。
そんなことを思いながら、ベトナムの写真作家たちのダミーブック展をあとにしたあと、ブローニーを装填した。ゴールデンタイムの日差しが当たる街にカメラを向けてシャッターを数枚着る。隅田川に沿って歩いていくと、ふと人を撮りたいなという気持ちが湧いた。
ふと、目が止まった。若い男女が微動だにせず、静かに抱き合っている姿に見とれてしまった。高校生か、大学生かな、と思い、声をかけさせてもらった。こうやって街にいる人に声をかけて撮りたいって伝えるの久々だな。心のなかで自分に語りかけていた。それに、やっぱり最初は緊張する。「ティックトックですか?」と聞かれたけど、「いえ違いますよ」という。最近��インスタやYou Tubeのショート動画で確かに「ストリートスナップ撮っているんですけど」という動画が流れてくるなと思い出した。それのおかげなのかな。恥ずかしがっていた彼らは、少し悩むそぶりを見せてくれたけれど快諾してくれた。撮らせてもらえる。高揚感が全身に走った。
マキナで露出を決め、フォーカスを固める。透明の四角いファインダーの向こうで、静かに佇む二人に引き込まれる。女性は恥ずかしいからマスクをしたままだったけれど、風になびく黒髪の隙間から見える青いカラーコンタクトをつけた瞳から向けられる視線が、まっすぐ力強く凛としていた。男性の方も、無表情ながら芯の強さを感じさせていた。
撮影後に聞くと、二人は15歳の高校1年生。男性はぼくの父とおなじ江戸川区で生まれ育ったという。在日朝鮮人の母を持ち、インスタグラムには日本と韓国の国旗アイコンを掲げる。聞きづらかったけれど在日コリアンかどうかを聞いてしまったが、「そうですよ」とさらりと答える。僕がこれまで川崎で取材をしてきたことなども伝えると、親しげな感じを見せてくれた。そして、なにより自分のルーツに誇りを持っているようだった。スケートボードが好きで、スケートボードが「バ先」だといって、店長のインスタグラムアカウントを見せてくれた。女の子はシャイだ。ファインダーの奥に見たあの視線の強さとは相反するのか、不思議だった。
街で声をかけ写真を撮る。撮影時間を入れても、賞味10分ほどしかなかったかもしれない。写真はSHOOTだ。池澤夏樹によると、「Shoot」は銃撃か撮影でしか使わない。だから、若い彼らをカメラの前に立たせる行為というのは、主従関係が生じ、抑圧・被抑圧の関係性が生まれることにほかならない。それでも、撮影を許容してもらうために、僕は彼らに誠意を伝えようとする。そして彼らも受け入れるために覚悟をする(覚悟を強いている可能性も忘れてはいけない)。そのわずかな時間でも、僕と彼ら彼女の間に一定の緊張感が生まれ、正対することによって他者を信じ切るしかないのだ。嘘偽りがないとは言い切れない。それでも、1/500秒という膨大な時間軸における一瞬、フィルムに焼き付ける行為そのものが、僕がこの社会に接点を築いていくことに必要なプロセスなのだと言い聞かせるには十分なんだ。そのことを、二人との出会いによって改めて認識させられた。
これが、明るい兆しだ。写真を諦めなくてよかったと思えた撮影だった。写真を撮ることでしか、僕は社会を知るすべがないことも知っている。それが、なにか明確なメッセージや、スローガンがなくても、そこに写し込まれた人々の姿によって、この社会の輪郭が際立ち、描かれていくことを信じたいから撮っている。僕にとって人を撮ること、正対してポートレートを撮ることとは、その決意表明みたいなものなのだ。沈みかけていた気持ちが、ようやく前を向き始めた。
※参考)近年、アジア各地で木版画による芸術・文化実践が再び注目を集めています。20世紀初頭の中国で魯迅によって始まった近代木版画運動は、民衆自身が社会や現実を表現する運動/方法としてアジア各地に伝播しましたが、20世紀後半になると社会構造やメディア環境の変化により下火となっていきました。しかし、2000年代から2010年代にかけてアジアの芸術家や社会活動家たちの一部は木版画を通じて社会や政治の問題を表現し、文化的直接行動や集団的創造の実験、さらには国境を越えた交流・ネットワークを生み出してきました。
本展は《「解/拆邊界 亞際木刻版畫實踐」(脱境界:インターアジアの木版画実践)》と題し、アジア各地から12の作家・活動団体による木版画を紹介します。とりわけ2020年に始まったパンデミックでは、人やモノの移動を一元的に管理する国境の問題や、差別や排外主義などの社会的、心理的な排除や断絶の問題を現前化させました。本展はわたしたちの生きる世界や社会に張り巡らされた「境界」を改めて主題化し、これらの境界からの離脱・解体を志向するトランスナショナルなアジアの木版画実践とそのネットワークについて紹介します。同時に、コロナ期に各地で制作された木版画を比較することで「アジア」という地理的/政治的概念への批判的認識と、さらなる理解・議論の可能性を開くことを目指しています。
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2024/3/26 7:59:46現在のニュース
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2024年3月24日
アストラム延伸部分 全区間のイメージ動画を地元住民に公開 己斐地区には新しい道路も 広島市(RCCニュース 3月25日)2024年3月24日に追記
広島市を走るアストラムラインの延伸計画について、地元で住民説明会がはじまり、詳しい予定ルートなどが初めて示されました。
アストラムラインは、広島市安佐南区の広域公園前駅から、西広島駅まで延伸する計画です。計画ルートの住民に向けた説明会は、きのうから始まりました。説明会では、新たに設置される6つの駅の詳しい位置や構造が初めて明らかにされたほか、延伸区間のイメージ映像が公開されました。
延伸ルートは、現在の広域公園前駅から高架や地上を走って佐伯区の五月が丘団地に入ります。そして、”ジ・アウトレット広島”がある石内東地区へ向かい、そこからはトンネルになります。
己斐峠の地下を通って己斐上に出ると、再び高架を走って西広島駅へと向かいます。西広島駅では、南側広場の上にアストラムラインの駅ができる予定です。
また、歩道がなかったり道幅が狭かったりする場所の多い己斐地区では、新たに片側1車線の車道と、幅が4メートルの歩道を設置する新しい市道”己斐中央線”を整備し、その上をアストラムラインが走る計画です。
松井一実市長(2015年)「広域公園前駅からJR西広島駅までの延伸を、事業化することといたしました」
延伸計画は、2030年前後の開業を目標にしていましたが、コロナ禍の影響もあって需要予測が遅れ、先月、広島市は2036年ごろの全線開業を目指すめざす方針を固めました。総額760億円の巨大事業。今の街並みが大きく変わる可能性があります。
五月が丘団地の住民 「便利になるかなーと、でも12年後なんですよね? なんかかなり先だなーというのが」
「立ち退きになるかならないのかっていうのが早く知りたい。もしなったときに、引っ越すんなら早めに引っ越したいとかありますし」
石内東の住民 「トンネルの部分の説明がきょうすごく聞きたくて、振動とか騒音とかが心配なんで、何m下とか、どのぐらいのところに通すかとかが知りたかったんですけど」
◆スタジオ解説
改めてルートを見ておきます。現在の発着駅である広域公園前駅から、西広島駅までおよそ7キロを延伸するという計画です。計画ルートの周辺には、己斐や五月が丘という大きな住宅地もありますし、広域公園前駅周辺には大学もあります。周辺へのアクセス向上などが整備を進める理由となっています。また、現在はマイカーやバスが主なアクセスとなっている”ジ・アウトレット広島”の敷地の北東に仮の名前ですが”石内東駅”ができる予定です。
大きく変わりそうなのが、ジ・アウトレット広島からトンネルを抜けた先にある己斐地区です。
学生時代を己斐地区で過ごした田村友里アナウンサー 「己斐エリアは、住宅が多くて道幅が狭かったです。主な移動手段はバスで、結構道が混んだりもしていたので、アストラムラインができると便利になるのかなと思います」
己斐地区は、現在のバス通りとは違うルートに、広い新しい道路”己斐中央線”をつくって、その上を高架でアストラムラインを走らせようという計画です。”己斐上駅”と”己斐中駅”という2つの駅をつくる予定です。
開業も2030年前後だったのが2036年に遅れたり、いろいろ心配されている市民も多いのですが、広島市は「丁寧に説明して、理解をいただけるよう努めていきたい」としています。
アストラムライン延伸計画で住民説明会はじまる 広島市 開業は2036年度ごろの見込み(広島テレビ)2024年3月24日
広島市はアストラムラインの延伸計画を巡り、24日から地元住民への説明会を始めました。
延伸区間の、広島市佐伯区で開かれた説明会にはおよそ320人が参加しました。
アストラムラインは、「広域公園前」駅から「JR西広島」駅までを延伸する計画です。開業は、新型コロナの影響などで当初より遅れ、2036年度ごろの見込みです。広島市は、再開発が進む西広島駅へアクセスしやすくなることなどを説明しました。
住民 「アストラムラインが延伸することを前提に家を購入したので、できてもらわないと困る。」
広島市は、沿線の3つの会場で来月にかけて24日を含め5回、説明会を開く予定です。
尊富士が110年ぶり新入幕Vの快挙!右足負傷を乗り越え歴史的賜杯、所要10場所の“史上最速V”で三賞も総なめ(TBS NEWS DIG)
尊富士 強行出場で110年ぶり新入幕V!記録ずくめの初賜杯、所要10場所は史上最速 やったぞ!大拍手(スポニチアネックス)
尊富士の母は感涙 優勝の瞬間は「会場の近くでスマホで」「震え止まらず」心配で急遽大阪入りも館内入れず(スポニチアネックス)
大相撲春場所千秋楽の取組が24日、エディオンアリーナ大阪で行われ、東前頭17枚目の尊富士(24=伊勢ケ浜部屋)が西前頭6枚目の豪ノ山(25=武隈部屋)を押し倒しで破り13勝2敗で初優勝を決めた。前日の朝乃山戦で右足首を負傷し、出場も危ぶまれた中での強行出場で気迫の一番を見せた。新入幕優勝は1914年(大正3年)夏場所の両国以来110年ぶりの快挙。初土俵から所要10場所目での優勝は両国の11場所目を抜く史上最速となった。
取組後は土俵上で少し表情を崩し万感の表情。場内から「凄いぞ~!」「良くやった!」「尊富士!」「バンザ~イ!」の大歓声と、割れんばかりの大拍手を浴びながら花道を引き揚げた。花道では関係者が涙する中、笑顔で握手や熱い抱擁を交わしていた。
館内に歓声がこだました。勝てば歴史的初賜杯となる豪ノ山との大一番。右足首の負傷を感じさせない五分の立ち合い。そこから豪ノ山の圧力に屈することなく前へ出続けた尊富士は、徐々にペースを握り、最後はこん身の押し倒しで110年ぶりの快挙を手繰り寄せた。
強行出場する息子を心配し、いてもたってもいられなかった。尊富士の母・石岡桃子さん(47)は「心配で急遽来ました。勝ってほしいのと、足が心配なのと…複雑でした。大丈夫かな?という気持ちで見てました。急遽でチケットが取れなかったので、会場の近くにはいたけど、スマホで見てました」とドタバタだった千秋楽の大阪入りを明かした。「今朝9時の飛行機で来ました。顔を見て安心したかったので。(学生時代)毎回いいところまでいった時にケガしてきてたので、それがちょっとよみがえってしまって…。初めての日本一がこの形でって震えが止まらなかった」。これまでを思い返し、言葉を絞り出すと感極まり涙がこぼれ落ちた。
その後、支度部屋で無事対面。偉業を成し遂げた息子と抱擁を交わし再び涙した。
優勝力士インタビューでは24歳の孝行息子が「おかげさんで、僕もそんなに体は大きくないですけど、こうやってしっかり幕内の土俵で勝てるように育ててくれて、感謝しても感謝しきれないです」と母への感謝の思いを照れ笑いを浮かべながら口にした。
年6場所制となった1958年以降、幕下付け出しも含めた初優勝の最速記録は1972年夏場所に初土俵から15場所目で賜杯を手にした輪島だった。尊富士は日大の大先輩でもある偉大な横綱の記録も塗り替えた。
最速新入幕を果たした尊富士は今場所、初日から11連勝。9日目には三役初挑戦で小結・阿炎を下すと、10日目には大の里との新鋭対決を押し出しで制した。11日目には大関・琴ノ若を寄り切りで破り、1960年初場所の大鵬に並ぶ歴代1位タイとなる新入幕初日からの11連勝を達成。出世が早過ぎて大銀杏の結えないちょんまげの24歳があの大横綱がつくった記録に並んだ。
12日目には99年度生まれの同学年の大関・豊昇龍に土俵下まで投げ飛ばされて初黒星を喫したが、「何も考えずに自分を信じてやるしかない」と切り替え。13日目は関脇・若元春を圧倒し、歴史的な新入幕優勝に王手を懸けた。しかし、14日目の朝乃山戦で右足首を負傷。花道を自力で歩けず車椅子で医務室に直行し、ギプスで固定した状態で救急搬送されていた。
尊富士はこの日、午後2時17分、エディオンアリーナ大阪に到着した。14日目の朝乃山戦で右足首を負傷。この日はゆっくりとした足どりで、右足を少し引きずっているようにも見えた。1差で追う大の里(24=二所ノ関部屋)は午後1時25分に会場入りしており、尊富士は通常よりかなり遅めの到着だった。そして、負傷した右足首にサポーターを装着も、しっかりとした足取りで土俵入り。大歓声にも表情を崩さず、鋭い眼光で前を見据えていた。
青森県五所川原市出身で鳥取城北高、日大と強豪校を歩んだ。22年秋場所で初土俵を踏むと序ノ口、序二段、三段目は1場所で通過。今年初場所に新十両に昇進すると13勝を挙げて新十両優勝を果たし、部屋の横綱・照ノ富士とアベック優勝でパレードでは旗手を務めた。
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建築探訪 宝塚神戸編
あっというまに3月も半ばをすぎ、2週間前のことになりますが、兵庫を巡ってきました。明石の友に会いに行くの��絡めた兵庫建築探訪。
2020年1月に企画していたのが、コロナで見送りはや3年。その時の予定表を引っ張り出して再企画。20代の若かりし頃、芦屋の旧山邑家住宅を訪れるも、阪神淡路大震災からの復旧工事中で閉館中だった現在のヨドコウ迎賓館、まずはここに行きたかった。念のため数日前に電話してみたら「予約制で、たぶんもういっぱいかと、、』予約サイトを見たら満員御礼。う。しかし落ち込んでいる暇もなく前日に予定を組み替え、のぞみに乗り込みました。
まずは宝塚へ向かうため新大阪下車。が、しかし、尼崎駅の車両故障で電車がとまり、人々が大移動している。未知の地での振替輸送はお手上げ状態となるも、運転手さんの導きで、次の大阪で梅田に移動して、初めての阪急電車。
西宮北口でのりかえ宝塚南口下車。線路沿いをしばらく歩くと見えた。
住宅地の中にそびえる塔。
村野藤吾設計のカトリック宝塚教会。1965年竣工。
思ったよりも大きい。
マンタのような屋根。
村野藤吾は大きな鯨に見立てていたそう。当時の手記では、“大洋を漂いつづけていた白鯨がようやく安住の地をみつけ岸辺に打ち寄せられたとでも申しましょうか”とのこと。
曲線の大きな屋根の水をうける排水塔はオブジェのよう。
中に入ってみると、木板貼りの流線型の天井に包み込まれているような空間。祭壇を挟んで左右の壁の作り方が違い、光の入り方がちがうのも印象的。
そびえ立っていた塔の下に祭壇。上に吸い込まれて行くような天井。
振り返ると、2階部分が翼を広げたように見えました。
事前にお電話していたので、上にも上がらせてもらえました。
雁行する壁の隙間から差し込む光がきれい。
反対側はハイサイドライトが続く、左右非対称。
外に出てぐるり一周。納まり切らない。
今にも動き出しそうな屋根のライン。
一度外に出たら『あなた、見学の電話くれた方でしょ』と中から出てきた婦人が『どこからきたか知らんけど、もっとゆっくり見ていきなさい、電気もつけておくから』と言ってくれたので、再び中に入ったりしながら、すみずみまでゆっくり見学。
しょっぱなから圧倒される旅の始まり。
電車に乗る前に、宝塚大劇場と音楽学校を拝む。
阪急電車に乗り、御影下車。坂の斜度がすごい。振り返ったら海が見えた。しかし目的地にたどりつかず坂をおりる。
敷地の反対側へまわったら、、ありました。豊雲記念館。建築家 清家清設計の1970年の建物。
華道小原流三世家元の小原豊雲の顕彰を目的として小原流芸術参考館として建てられ、改装を経て美術館となっていたが、2010年に閉館し、中は見られません。
うねる屋根と多孔ブロックの外壁。中から見てみたかった。
再び阪急線にのり、王子公園にて下車。
パンダがいるなら寄ればよかった、と帰ってきてから思う、王子動物公園を通りこし、
兵庫県立美術館王子分館 原田の森ギャラリー。旧兵庫県立美術館、村野藤吾の設計、こちらも1970年の建物。
日本で最初の近代美術館は神奈川県立近代美術館で、次いで二番目がこの兵庫県立近代美術館だそうです。
ゆるやかにスロープをあがっていく。
絶妙に折れ曲がる壁と、照明のデザインと開口が美しい。
圧巻のスロープ。
トップライトとダウンライト、星がちりばめられたようなダウンライトが美しい。
当時のままという階段の手すりのディテールもすごい。
近接したお隣の建物は、横尾忠則現代美術館、こちらもみごたえありました。
村野藤吾建築に満たされたあとは、バスにのって布引で下車し、竹中大工道具館へ。道具がどう作られるか、というところまでわかる。
そしてここからふたたびバスに乗り南京町へ。びっくりすごい人。
前日に友に教えてもらった豚饅頭、普段行列には並ばない私も、長蛇の列に並びまして、
美味しかった!
ここから次の目的地まで、しばし居留地を歩く。『近代化産業遺産』のプレートがかかる建物を見ながら。通りの最後に見たこの建物がかっこよかった。
そして、本日最後のたてもの探訪、こども本の森神戸。
建築家 安藤忠雄の設計で昨年オープン。安藤忠雄自らが神戸市に寄付した図書館、ということを帰ってきてから知りました。
天井までの高い本棚がまさに本の森。
上の本は、下で手にとれるようになっています。
大きな階段とブリッジ。
平日の夕方、小さな子供達がきていました。
ダイナミックな吹抜け空間と、階段下の空間と、それぞれに居心地が良い。
閉館の時間まで、ここで、震災復興の絵本を読みました。
このあと元町に戻り、友の教えで観音屋のチーズケーキを買い、ぶらぶらしながら三宮へ。
震災の数年後に来て以来の神戸、たぶんはじめての三宮。阪急デパートの下に阪神電車の駅がある不思議。
こうして1日の予定を終え、JRに乗って垂水へ、無事に友と合流。なんと、大阪からドラゴンボート仲間がきてくれて、久々の再会で楽しい夜でした。
けんちく探訪は、翌日、淡路島に続きます。
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2020年
私の人生は"不要不急"で成り立っていた
1月
去年の年越しはバイト終わりのメンバーと。葛西臨海公園、成田山、九十九里浜に行ったけな。成田山に向かう車内で年を越して、パーキングで会った初めましての人と乾杯した。成人式迎えたのも今年か!久々に会う地元の友達は新鮮で、でも懐かしくて、心地良い。定期的に会えてる子は数人しかいないけどこれからも大切で特別。楽しかった!待ちに待った2020、オリンピックあるしなんか良い年になる気がした。
2月
1回別れた彼氏との1年記念日。北海道の函館へ2人で。函館はすごく楽しかった。初めての国内飛行機、美味しい海鮮、ジンギスカン、地ビール。でも貴方は楽しそうじゃなかったね。そんな貴方と今年2回も別れてそれでもやり直すことになるとは。
3月
小学生ぶりに歯医者にいったら5本も虫歯があるって言われた。7回の歯医者通い。面倒くさかったけど途中から慣れてきちゃった。
4月
大学3年生は学校の周りのランチ巡りをしようとしたのにコロナでオンライン授業。家に居る時間が極端に増えたから料理をしたり、服の毛玉を取ったり、diy、ウォーキングとか丁寧な暮らしをしようとしたよ。でももう途中で飽きちゃった。やっぱ私って継続苦手。
5月
マイナビとリクナビ2022が登録出来るようになって就活本格的にスタートしよって思った。でもやってみたいことないし、自分の事全然分かってないなってちょい病みした。5月だからって言い訳して、しょうがないかって思って生活してた。彼氏とは初めてお弁当作りあいっこして、これから一生お弁当作りたくないなって思った。毎日作ってるお母様凄すぎる!
6月
熱海にいったよ。moa美術館目当てで行ったけど行く道中の海沿いの道、街並みが探検してる感じした。坂多いけど住んでる人は住みにくくないのかな。
7月
右目の下が謎のバイ菌のせいで腫れて、初めての点滴。早く治したくて何回もいったらニキビのスタンプカードくれた。絶対にニキビじゃなかったからそのカード貰ってからいくのやめた。すぐ治った。
8月
ドライブで千葉の棚田、なんか有名な橋、横浜、あと新宿パルコポケモン展、上野ゴッホ展、香川豊島美術館に行った。いってみたい欲が満たされまくった8月。特に豊島美術館が最高によかった。生き心地がやばい。次訪れる時は死にたいと思ったとき。
9月
学校の単位の為に行った5日間のインターンシップで2日間遅刻しました。朝起きれないの一生の悩み。あと、ずっとやりたかったお台場でBBQ。バイト先の人が叶えてくれた!
10月
北千住に1000ベロ目当てで行ったのに3時間で1人1万円使った。まあそんな日もあるよね。?
11月
私の21歳の誕生日。ずっと行きたかった金沢に連れて行ってもらった。金沢やりすぎ、観光の為に作りました感が否めなかった。あと、初めて1人旅で広島に。初めての1人新幹線、ホテル。みんなと一緒だと頼っちゃうから自立の為に行ったけど行きたいとこ全部行って楽しかった。1人でも楽しめちゃう新しい自分の一面みーつけた。まだまだ自分の知らないこといっぱい。
12月
軽井沢のイルミネーション、クリスマス前に六本木でお泊まり、年末には年内に会いたかった子に沢山会えた!
月々に分けて書いたけどこの他にも一人暮らしを辞めた、ガールズバーで働いた、高校の親友と絶縁間近の喧嘩、弟の童貞卒業、ライバーデビュー色々ありました。
まとめ
今年はコロナで色々規制された年だったけど、そのお陰で気付けたことが沢山。今までは趣味もなく、やりたいこと、やってみたいことがあってもタイミングが合わず出来なかったり、後回しにしちゃったりしてたけど今年は例年以上に濃く、行動した1年に出来ました。色々手付け過ぎちゃって7割型中途半端になっちゃったり、まだまだビビりで心配性だからチャレンジ出来ないことも多かったけどやらないって勿体無いよね!死んだらもう出来ないし!チャンスを逃さないように2021は飛び込もう!あとポジティブなのも大事だけど1番は自分に素直にね!いつも私と関わってくれている人達に感謝の気持ちを忘れず、最後の学生生活やりきってね私!!
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少し怪しい祭り【亥】 【NEWS‼】リピーター割引と 4日&6日コーヒー販売 実施!
みなさんこんにちは。少し怪しい祭り【亥】関連企画、
9/7(土)少し怪しい祭りワークショップ、好評のうちに終了しました!盛りだくさんの3コマにお付き合いいただいた参加者の皆さんありがとうございました。
大いに刺激をうけて、翌9/8(日)は演劇よいとな、人形劇JIJO 、マイム尾上一樹3チーム揃っての合同稽古がありました。
各チーム、例年とちがったこころみに挑戦していますよ☆
そして今回、昼と夜で別プログラムの尾上一樹作品は、ことなる趣きの作品!
両方みていただきたい!ということで、リピーター割引を実施します!
また、初日・千秋楽にD.D.コーヒーのドリップコーヒー販売があります!
コーヒーとともにしばし作品の余韻を味わっていただければ幸いです!
*尚、D.D.コーヒーの前座パフォーマンス(オープニング・アクト)は、6日各回の開演前ですので、お時間のある方はぜひお早めにお越しください!!
詳細は
↓
◇◇◇◆◆◆◇◇◇◆◆◆◇◇◇◆◆◆
KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2019 フリンジ「オープンエントリー作品」
少し怪しい祭り【亥】
a little bit strange festival
◆演劇よいとな×人形劇JIJO ×マイム尾上一樹◆
~異なる表現形式による3つの少し怪しい小品たち~
毎年好評を博して、ついに3年め! 少し怪しいジョイント企画。独自の活動を繰り広げる3組の新作を、一挙上演!
■出演
人形劇 JIJO
演 劇 殿井歩
申芳夫
たなべやすのぶ
久貝亜美
マイム *昼の部のみ出演*黒木夏海(maz)・豊島勇士(maz)
*夜の部のみ出演*尾上一樹・籔本浩一郎(音楽:アコーディオン)
*6日オープニング・アクト*
ゲスト D.D.コーヒー
■スタッフ 照明:木内ひとみ 協力:菅原義輝
■公演日時【全5ステージ】
2019年10月
4日(金)19:00◎
5日(土)14:00●/19:00◎
★6日(日)11:00●/15:00●◆
※受付開始・開場は各回ともに開演の30分前。
★=最終日のみ開演前D.D.コーヒーによるオープニング・アクト(前座)が あります。
◆=終演後、トークがあります。
……【尾上作品のみ、昼と夜で演目・出演者がかわります!】……
●昼の部=出演:豊島勇士&黒木夏海
振付・構成:尾上一樹
◎夜の部=振付・構成・出演:尾上一樹&籔本浩一郎
…………………………………………………………………………………………
☆初日&最終日限定! コーヒー販売実施!
4日&6日の各回、終演後にD.D.コーヒーさんによるドリップコーヒーの販売がございます。各回限定10杯!
■料金〔前売り・当日とも〕
一般 2,300円/高校生以下 1,000円
リピーター割引(2回目の観劇)一般 1,500円
※未就学児膝上観劇無料ですが、「子ども向け・親子向け」の作品ではありません。
※本公演には大なり小なり怪しさが含まれます。また、内容に一部実験的な試みを含みます。気になる方は事前にお問い合わせください。
☆リピーター割引あり!
2回目以降の観劇時、一般2,300円のところが1,500円に! 複数回ご予約の方は、ご予約の時点で自動的に適用いたします。
2回目以降の観劇が「当日券(予約なし)」の場合もリピーター割引対象。
★小さな会場ですので、なるべく事前予約にご協力くださいませ。
▼予約方法
上記メールアドレス宛に件名を「チケット予約」とし、
①お名前 ②希望日時 ③人数(高校生以下の方はその旨も)を明記のうえ、送信してください。
こちらからの返信をもちまして、ご予約完了といたします。(ご返信に少々日数・時間がかかることがあります。)
※お手数ですが、gmailアドレスからのメールを受信できるよう設定をお願いします。
■会場【京都】人形劇の小さなアトリエ あとりえミノムシ
〒602-0807 京都市上京区寺町通り今出川上ル6丁目不動前町1-2
[mail]
[email protected]
[Tel&Fax] 075-200-8261 [Web] http://at.mino3064.com
■アクセス
・京都市営地下鉄烏丸線 「鞍馬口」駅下車、1番出口より徒歩10分。
・京阪本線「出町柳」駅下車、7番出口より北西へ徒歩約15分。
*駐車場はございません。自転車・バイクは停められます。
■参加団体プロフィール
尾上一樹 Kazuki Onoue
1987年生まれ。京都造形芸術大学映像・舞台芸術学科6期卒業。
在学中は主に山田せつ子氏に師事。 いいむろなおき氏主催「マイムラボ・セカンド」1期生。
2015年渡米。Steven Wasson、Corine Soumの両氏にCorporeal Mime を学ぶ。
現在は大阪の福祉施設に勤める一方、表現活動を続けている。
例年1月には池田市立五月山児童文化センター(大阪)で30分間の親子向けマイム公演を、10月には演劇・人形劇・マイムによるジョイント公演「少し怪しい祭り」を実施している。届け、 ニッチな層へ。
JIJO じーじょ
北海道のオホーツク海に面した町に生まれ育つ。ある日札幌で観た「糸あやつり人形劇団みのむし」の人形劇に衝撃を受け、人形劇の道に進む。
「JIJO」という名で一人劇団を立ち上げ、人形劇やカブリモノのパフォーマンスなどをしている。保育園や児童館、人形劇フェスティバルなどで上演。
JIJOの活動の他、他劇団作品への出演、昨年は名古屋の劇団作品の人形製作も手掛ける。関西の糸操り人形集団「ITOプロジェクト」でも活動中。消しゴムハンコを作ったり、エッセイを書いたりするのが趣味。
http://ayajijo.com
よいとな Yoitona
映画『ハッピーアワー』(317分/監督:濱口竜介)での共演を機に意気投合した殿井歩と申芳夫が2015年に結成した演劇のユニット。
殿井が作と演出、申が出演とプロデュースを担当。他ジャンルのアーティストとも交流しながら関西を拠点に活動。近年は外部への脚本提供や出張出演&演出も。
■公演情報
https://kyoto-ex.jp/2019/fringe_open-entry/a-little-bit-strange-festival/
https://yoitona.tumblr.com
Twitter@sukoaya
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出演情報
くがいつぐみが京都にて、10月4日(金)~6日(日)に舞台に出演します。昼・夜公演とございますので、秋の散策とともに少しの怪しさを感じてみるのはいかがでしょうか。
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少し怪しい祭り【亥】公演詳細
a little bit strange festivalKYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2019 フリンジ「オープンエントリー作品」少し怪しい祭り【亥】 10月4日(金)~6日(日)
◆演劇よいとな×人形劇JIJO×マイム尾上一樹◆
~異なる表現形式による3つの少し怪しい小品たち~毎年好評を博して、
ついに3年め!
少し怪しいジョイント企画。
独自の活動を繰り広げる3組の
新作を、一挙上演!■出演
人形劇 JIJO演 劇 殿井歩
申芳夫
田辺泰信
久貝亜美 昼の部のみ出演
マイム 黒木夏海(maz)
豊島勇士(maz)
夜の部のみ出演
尾上一樹
籔本浩一郎(音楽:アコーディオン) 6日オープニング・アクト
ゲスト D.D.コーヒー■スタッフ 照明:木内ひとみ 協力:菅原義輝■公演日時
2019年
10月 4日(金)19:00◎
5日(土)14:00● /19:00◎
【全5ステージ】 6日(日)11:00●★/15:00●★◆
※受付開始・開場は各回ともに開演の30分前。
★=開演前D.D.コーヒーによるオープニング・アクト(前座)が あります。
◆=終演後、トークがあります。
……【尾上作品は昼と夜で演目・出演者がかわります!】……
●昼の部=出演:豊島勇士&黒木夏海
振付・構成:尾上一樹
◎夜の���=振付・構成・出演:尾上一樹&籔本浩一郎
…………………………………………………………………………………………
■料金〔前売り・当日とも〕
一般 2,300円/高校生以下 1,000円
※未就学児膝上観劇無料ですが、「子ども向け・親子向け」の作品ではありません。
※本公演には大なり小なり怪しさが含まれます。また、内容に一部実験的な試みを含みます。気になる方は事前にお問い合わせください。
▼予約方法
上記メールアドレス宛に件名を「チケット予約」とし、
①お名前 ②希望日時 ③人数(高校生以下の方はその旨も)を明記のうえ、送信してください。
こちらからの返信をもちまして、ご予約完了といたします。
(ご返信に少々日数・時間がかかることがあります。)
※お手数ですが、gmailアドレスからのメールを受信できるよう設定をお願いします。
早期予約特典 9月7日(土)までにご予約いただいた方に、 少し怪しい粗品をプレゼント!
■会場【京都】人形劇の小さなアトリエ あとりえミノムシ
〒602-0807 京都市上京区寺町通り今出川上ル6丁目不動前町1-2
■アクセス
・京都市営地下鉄烏丸線 「鞍馬口」駅下車、1番出口より徒歩10分。
・京阪本線「出町柳」駅下車、7番出口より北西へ徒歩約15分。
*駐車場はございません。自転車・バイクは停められます。
■参加団体プロフィール
尾上一樹 Kazuki Onoue
1987年生まれ。京都造形芸術大学映像・舞台芸術学科6期卒業。在学中は主に山田せつ子氏に師事。 いいむろなおき氏主催「マイムラボ・セカンド」1期生。 2015年渡米。Steven Wasson、Corine Soumの両氏にCorporeal Mime を学ぶ。現在は大阪の福祉施設に勤める一方、表現活動を続けている。例年1月には池田市立五月山児童文化センター(大阪)で30分間の親子向けマイム公演を、10月には演劇・人形劇・マイムによるジョイント公演「少し怪しい祭り」を実施している。届け、 ニッチな層へ。
JIJO じーじょ
北海道のオホーツク海に面した町に生まれ育つ。ある日札幌で観た「糸あやつり人形劇団みのむし」の人形劇に衝撃を受け、人形劇の道に進む。
「JIJO」という名で一人劇団を立ち上げ、人形劇やカブリモノのパフォーマンスなどをしている。保育園や児童館、人形劇フェスティバルなどで上演。
JIJOの活動の他、他劇団作品への出演、昨年は名古屋の劇団作品の人形製作も手掛ける。関西の糸操り人形集団「ITOプロジェクト」でも活動中。消しゴムハンコを作ったり、エッセイを書いたりするのが趣味。http://ayajijo.com
よいとな Yoitona
映画『ハッピーアワー』(317分/監督:濱口竜介)での共演を機に意気投合した殿井歩と申芳夫が2015年に結成した演劇のユニット。殿井が作と演出、申が出演とプロデュースを担当。他ジャンルのアーティストとも交流しながら関西を拠点に活動。近年は外部への脚本提供や出張出演&演出も。
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一 はじめに
平成最後の施政方針演説を、ここに申し述べます。
本年四月三十日、天皇陛下が御退位され、皇太子殿下が翌五月一日に御即位されます。国民こぞって寿(ことほ)ぐことができるよう、万全の準備を進めてまいります。
「内平らかに外成る、地平らかに天成る」
大きな自然災害が相次いだ平成の時代。被災地の現場には必ず、天皇、皇后両陛下のお姿がありました。
阪神・淡路大震災で全焼した神戸市長田の商店街では、皇后陛下が焼け跡に献花された水仙が、復興のシンボルとして、今なお、地域の人々の記憶に刻まれています。
商店街の皆さんは、復興への強い決意と共に、震災後すぐに仮設店舗で営業を再開。全国から集まった延べ二百万人を超えるボランティアも復興の大きな力となりました。かつて水仙が置かれた場所は今、公園に生まれ変わり、子どもたちの笑顔であふれています。
東日本大震災の直後、仙台市の避難所を訪れた皇后陛下に、一人の女性が花束を手渡しました。津波によって大きな被害を受けた自宅の庭で、たくましく咲いていた水仙を手に、その女性はこう語ったそうです。
「この水仙のように、私たちも頑張ります。」
東北の被災地でも、地元の皆さんの情熱によって、復興は一歩一歩着実に進んでいます。平成は、日本人の底力と、人々の絆(きずな)がどれほどまでにパワーを持つか、そのことを示した時代でもありました。
「しきしまの 大和心のをゝしさは ことある時ぞ あらはれにける」
明治、大正、昭和、平成。日本人は幾度となく大きな困難に直面した。しかし、そのたびに、大きな底力を発揮し、人々が助け合い、力を合わせることで乗り越えてきました。
急速に進む少子高齢化、激動する国際情勢。今を生きる私たちもまた、立ち向かわなければならない。私たちの子や孫の世代に、輝かしい日本を引き渡すため、共に力を合わせなければなりません。
平成の、その先の時代に向かって、日本の明日を、皆さん、共に、切り拓いていこうではありませんか。
二 全世代型社会保障への転換
(成長と分配の好循環)
この六年間、三本の矢を放ち、経済は十%以上成長しました。国・地方合わせた税収は二十八兆円増加し、来年度予算における国の税収は過去最高、六十二兆円を超えています。
そして、この成長の果実を、新三本の矢によって、子育て支援をはじめ現役世代へと大胆に振り向けてきました。
児童扶養手当の増額、給付型奨学金の創設を進める中で、ひとり親家庭の大学進学率は二十四%から四十二%に上昇し、悪化を続けてきた子どもの相対的貧困率も、初めて減少に転じ、大幅に改善しました。平成五年以来、一貫して増加していた現役世代の生活保護世帯も、政権交代後、八万世帯、減少いたしました。
五年間で五十三万人分の保育の受け皿を整備した結果、昨年、待機児童は六千人減少し、十年ぶりに二万人を下回りました。子育て世代の女性就業率は七ポイント上昇し、新たに二百万人の女性が就業しました。
成長の果実をしっかりと分配に回すことで、次なる成長につながっていく。「成長と分配の好循環」によって、アベノミクスは今なお、進化を続けています。
(教育無償化)
我が国の持続的な成長にとって最大の課題は、少子高齢化です。平成の三十年間で、出生率は一・五七から一・二六まで落ち込み、逆に、高齢化率は十%から三十%へと上昇しました。
世界で最も速いスピードで少子高齢化が進む我が国にあって、もはや、これまでの政策の延長線上では対応できない。次元の異なる政策が必要です。
子どもを産みたい、育てたい。そう願う皆さんの希望を叶(かな)えることができれば、出生率は一・八まで押し上がります。しかし、子どもたちの教育にかかる負担が、その大きな制約となってきました。
これを社会全体で分かち合うことで、子どもたちを産み、育てやすい日本へと、大きく転換していく。そのことによって、「希望出生率一・八」の実現を目指します。
十月から三歳から五歳まで全ての子どもたちの幼児教育を無償化いたします。小学校・中学校九年間の普通教育無償化以来、実に七十年ぶりの大改革であります。
待機児童ゼロの目標は、必ず実現いたします。今年度も十七万人分の保育の受け皿を整備します。保育士の皆さんの更なる処遇改善を行います。自治体の裁量を拡大するなどにより、学童保育の充実を進めます。
来年四月から、公立高校だけでなく、私立高校も実質無償化を実現します。真に必要な子どもたちの高等教育も無償化し、生活費をカバーするために十分な給付型奨学金を支給します。
家庭の経済事情にかかわらず、子どもたちの誰もが、自らの意欲と努力によって明るい未来をつかみ取ることができる。そうした社会を創り上げてこそ、アベノミクスは完成いたします。
子どもたちこそ、この国の未来そのものであります。
多くの幼い命が、今も、虐待によって奪われている現実があります。僅か五歳の女の子が、死の間際に綴(つづ)ったノートには、日本全体が大きなショックを受けました。
子どもたちの命を守るのは、私たち大人全員の責任です。
あのような悲劇を二度と繰り返してはなりません。何よりも子どもたちの命を守ることを最優先に、児童相談所の体制を抜本的に拡充し、自治体の取組を警察が全面的にバックアップすることで、児童虐待の根絶に向けて総力を挙げてまいります。
(一億総活躍)
女性比率僅か三%の建設業界に、女性たちと共に飛び込んだ中小企業があります。時短勤務の導入、託児所の設置などに積極的に取り組み、職人の三割は女性です。
彼女たちが企画した健康に優しい塗料は、家庭用の人気商品となりました。女性でも使いやすい軽量の工具は、高齢の職人たちにも好んで使われるようになりました。この企業の売上げは、三年で二倍、急成長を遂げています。
女性の視点が加わることにより、女性たちが活躍することにより、日本の景色は一変する。人口が減少する日本にあって、次なる成長の大きなエンジンです。
女性活躍推進法を改正し、このうねりを全国津々浦々の中小企業にも広げます。十分な準備期間を設け、経営者の皆さんの負担の軽減を図りながら、女性の���きやすい環境づくりに取り組む中小企業を支援してまいります。
パワハラ、セクハラの根絶に向け、社会が一丸となって取り組んでいかなければなりません。全ての事業者にパワハラ防止を義務付けます。セクハラの相談を理由とした不利益取扱いを禁止するほか、公益通報者保護に向けた取組を強化し、誰もが働きやすい職場づくりを進めてまいります。
働き方改革。いよいよ待ったなしであります。
この四月から、大企業では、三六協定でも超えてはならない、罰則付きの時間外労働規制が施行となります。企業経営者の皆さん。改革の時は来ました。準備はよろしいでしょうか。
長年続いてきた長時間労働の慣行を断ち切ることで、育児や介護など様々な事情を抱える皆さんが、その事情に応じて働くことができる。誰もがその能力を思う存分発揮できる社会に向かって、これからも、働き方改革を全力で推し進めてまいります。
障害者の皆さんにも、やりがいを感じながら、社会でその能力を発揮していただきたい。障害者雇用促進法を改正し、就労の拡大を更に進めます。
人生百年時代の到来は、大きなチャンスです。
元気で意欲ある高齢者の方々に、その経験や知恵を社会で発揮していただくことができれば、日本はまだまだ成長できる。生涯現役の社会に向かって、六十五歳まで継続雇用することとしている現行制度を見直し、七十歳まで就労機会を確保できるよう、この夏までに計画を策定し、実行に移します。
この五年間、生産年齢人口が四百五十万人減少する中にあっても、多くの女性や高齢者の皆さんが活躍することで、就業者は、逆に二百五十万人増加いたしました。女性も男性も、お年寄りも若者も、障害や難病のある方も、全ての人に活躍の機会を作ることができれば、少子高齢化も必ずや克服できる。
平成の、その先の時代に向かって、「一億総活躍社会」を、皆さん、共に、創り上げていこうではありませんか。
(全世代型社会保障)
少子高齢化、そして人生百年の時代にあって、我が国が誇る社会保障の在り方もまた大きく変わらなければならない。お年寄りだけではなく、子どもたち、子育て世代、更には、現役世代まで、広く安心を支えていく。全世代型社会保障への転換を成し遂げなければなりません。
高齢化が急速に進む中で、家族の介護に、現役世代は大きな不安を抱いています。介護のために仕事を辞めなければならない、やりがいを諦めなければならないような社会はあってはなりません。
現役世代の安心を確保するため、「介護離職ゼロ」を目指し、引き続き全力を尽くします。
二〇二〇年代初頭までに五十万人分の介護の受け皿を整備します。ロボットを活用するなど現場の負担軽減を進めるとともに、十月からリーダー級職員の方々に月額最大八万円の処遇改善を行います。
認知症対策の強化に向けて、夏までに新オレンジプランを改定します。認知症カフェを全市町村で展開するなど、認知症の御家族を持つ皆さんを、地域ぐるみで支え、その負担を軽減します。
勤労統計について、長年にわたり、不適切な調査が行われてきたことは、セーフティネットへの信頼を損なうものであり、国民の皆様にお詫び申し上げます。雇用保険、労災保険などの過少給付について、できる限り速やかに、簡便な手続で、不足分をお支払いいたします。基幹統計について緊急に点検を行いましたが、引き続き、再発防止に全力を尽くすとともに、統計の信頼回復に向け、徹底した検証を行ってまいります。
全世代型社会保障への転換とは、高齢者の皆さんへの福祉サービスを削減する、との意味では、全くありません。むしろ、高齢者の皆さんに引き続き安心してもらえることが大前提であります。
六十五歳以上の皆さんにも御負担いただいている介護保険料について、年金収入が少ない方々を対象に、十月から負担額を三分の二に軽減します。年金生活者の方々に、新たに福祉給付金を年間最大六万円支給し、所得をしっかりと確保してまいります。
こうした社会保障改革と同時に、その負担を次の世代へと先送りすることのないよう、二〇二五年度のプライマリーバランス黒字化目標の実現に向け、財政健全化を進めます。
少子高齢化を克服し、全世代型社会保障制度を築き上げるために、消費税率の引上げによる安定的な財源がどうしても必要です。十月からの十%への引上げについて、国民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。
八%への引上げ時の反省の上に、経済運営に万全を期してまいります。
増税分の五分の四を借金返しに充てていた、消費税の使い道を見直し、二兆円規模を教育無償化などに振り向け、子育て世代に還元いたします。軽減税率を導入するほか、プレミアム商品券の発行を通じて、所得の低い皆さんなどの負担を軽減します。
同時に、来たるべき外国人観光客四千万人時代を見据え、全国各地の中小・小規模事業者の皆さんにキャッシュレス決済を普及させるため、思い切ったポイント還元を実施します。自動車や住宅への大幅減税を行い、しっかりと消費を下支えします。
来年度予算では、頂いた消費税を全て還元する規模の十二分な対策を講じ、景気の回復軌道を確かなものとすることで、「戦後最大のGDP六百兆円」に向けて着実に歩みを進めてまいります。
三 成長戦略
(デフレマインドの払拭)
平成の日本経済はバブル崩壊から始まりました。
出口の見えないデフレに苦しむ中で、企業は人材への投資に消極的になり、若者の就職難が社会問題となりました。設備投資もピーク時から三割落ち込み、未来に向けた投資は先細っていきました。
失われた二十年。その最大の敵は、日本中に蔓延したデフレマインドでありました。
この状況に、私たちは三本の矢で立ち向かいました。
早期にデフレではないという状況を作り、企業の設備投資は十四兆円増加しました。二十年間で最高となっています。人手不足が深刻となって、人材への投資も息を吹き返し、五年連続で今世紀最高水準の賃上げが行われました。経団連の調査では、この冬のボーナスは過去最高です。
日本企業に、再び、未来へ投資する機運が生まれてきた。デフレマインドが払拭されようとしている今、未来へのイノベーションを、大胆に後押ししていきます。
(第四次産業革命)
世界は、今、第四次産業革命の真っただ中にあります。人工知能、ビッグデータ、IoT、ロボットといったイノベーションが、経済社会の有り様を一変させようとしています。
自動運転は、高齢者の皆さんに安全・安心な移動手段をもたらします。体温や血圧といった日々の情報を医療ビッグデータで分析すれば、病気の早期発見も可能となります。
新しいイノベーションは、様々な社会課題を解決し、私たちの暮らしを、より安心で、より豊かなものとする、大きな可能性に満ちている。こうしたSociety 5.0を、世界に先駆けて実現することこそ、我が国の未来を拓く成長戦略であります。
時代遅れの規制や制度を大胆に改革いたします。
交通に関わる規制を全面的に見直し、安全性の向上に応じ、段階的に自動運転を解禁します。寝たきりの高齢者などが、自宅にいながら、オンラインで診療から服薬指導まで一貫して受けられるよう、関係制度を見直します。外国語やプログラミングの専門家による遠隔教育を、五年以内に全ての小中学校で受けられるようにします。
電波は国民共有の財産です。経済的価値を踏まえた割当制度への移行、周波数返上の仕組みの導入など、有効活用に向けた改革を行います。携帯電話の料金引下げに向け、公正な競争環境を整えます。
電子申請の際の紙の添付書類を全廃します。行政手続の縦割りを打破し、ワンストップ化を行うことで、引っ越しなどの際に同じ書類の提出を何度も求められる現状を改革します。
急速な技術進歩により、経済社会が加速度的に変化する時代にあって最も重要な政府の役割は、人々が信頼し、全員が安心して新しいシステムに移行できる環境を整えることだと考えます。
膨大な個人データが世界を駆け巡る中では、プライバシーやセキュリティを保護するため、透明性が高く、公正かつ互恵的なルールが必要です。その上で、国境を越えたデータの自由な流通を確保する。米国、欧州と連携しながら、信頼される、自由で開かれた国際データ流通網を構築してまいります。
人工知能も、あくまで人間のために利用され、その結果には人間が責任を負わなければならない。我が国がリードして、人間中心のAI倫理原則を打ち立ててまいります。
イノベーションがもたらす社会の変化から、誰一人取り残されてはならない。この夏策定するAI戦略の柱は、教育システムの改革です。
来年から全ての小学校でプログラミングを必修とします。中学校、高校でも、順次、情報処理の授業を充実し、必修化することで、子どもたちの誰もが、人工知能などのイノベーションを使いこなすリテラシーを身に付けられるようにします。
我が国から、新たなイノベーションを次々と生み出すためには、知の拠点である大学の力が必要です。若手研究者に大いに活躍の場を与え、民間企業との連携に積極的な大学を後押しするため、運営費交付金の在り方を大きく改革してまいります。
経済活動の国境がなくなる中、日本企業の競争力、信頼性を一層グレードアップさせるために、企業ガバナンスの更なる強化が求められています。社外取締役の選任、役員報酬の開示など、グローバルスタンダードに沿って、これからもコーポレートガバナンス改革を進めてまいります。
(中小・小規模事業者)
中小・小規模事業者の海外輸出は、バブル崩壊後、二倍に拡大しました。
下請から脱し、自ら販路を開拓する。オンリーワンのワザを磨く。全国三百六十万者の中小・小規模事業者の皆さんは、様々な困難にあっても、歯を食いしばって頑張ってきました。バブル崩壊後の日本経済を支え、我が国の雇用の七割を守ってきたのは、こうした中小・小規模事業者の皆さんです。
新しいチャレンジをものづくり補助金で応援します。全国的に人手不足が深刻となる中で、IT補助金、持続化補助金により、生産性向上への取組も後押しします。
四月から、即戦力となる外国人材を受け入れます。多くの優秀な方々に日本に来ていただき、経済を担う一員となっていただくことで、新たな成長につなげます。働き方改革のスタートを見据え、納期負担のしわ寄せを禁止するなど、取引慣行の更なる改善を進めます。
後継者の確保も大きな課題です。四十七都道府県の事業引継ぎ支援センターでマッチングを行うとともに、相続税を全額猶予する事業承継税制を個人事業主に拡大します。
TPPやEUとの経済連携協定は、高い技術力を持つ中小・小規模事業者の皆さんにとって、海外展開の大きなチャンスです。「総合的なTPP等関連政策大綱」に基づき、海外でのマーケティング、販路開拓を支援してまいります。
四 地方創生
(農林水産新時代)
安全でおいしい日本の農産物にも、海外展開の大きなチャンスが広がります。農林水産品の輸出目標一兆円も、もう手の届くところまで来ました。
同時に、農家の皆さんの不安にもしっかり向き合います。二次補正予算も活用し、体質改善、経営安定化に万全を尽くします。
素晴らしい田園風景、緑あふれる山並み、豊かな海、伝統ある故郷(ふるさと)。我が国の国柄を守ってきたのは、全国各地の農林水産業です。美しい棚田を次の世代に引き渡していくため、中山間地域への直接支払などを活用し、更に、総合的な支援策を講じます。
農こそ、国の基です。
守るためにこそ、新たな挑戦を進めなければならない。若者が夢や希望を持って飛び込んでいける「強い農業」を創ります。この六年間、新しい農林水産業を切り拓くために充実させてきた政策を更に力強く展開してまいります。
農地バンクの手続を簡素化します。政権交代前の三倍、六千億円を上回る土地改良予算で、意欲と能力ある担い手への農地集積を加速し、生産性を高めます。
国有林野法を改正します。長期間、担い手に国有林の伐採・植林を委ねることで、安定した事業を可能とします。美しい森を守るため、水源の涵養、災害防止を目的とした森林環境税を創設します。
水産業の収益性をしっかりと向上させながら、資源の持続的な利用を確保する。三千億円を超える予算で、新しい漁船や漁具の導入など、浜の皆さんの生産性向上への取組を力強く支援します。
平成の、その先の時代に向かって、若者が自らの未来を託すことができる「農林水産新時代」を、皆さん、共に、築いていこうではありませんか。
(観光立国)
田植え、稲刈り。石川県能登町にある五十軒ほどの農家民宿には、直近で一万三千人を超える観光客が訪れました。アジアの国々に加え、米国、フランス、イタリア、イスラエルなど、二十か国以上から外国人観光客も集まります。
昨年、日本を訪れる外国人観光客は、六年連続で過去最高を更新し、三千万人の大台に乗りました。北海道、東北、北陸、九州で三倍以上、四国で四倍以上、沖縄では五倍以上に増えています。消費額にして、四兆五千億円の巨大市場。
観光立国によって、全国津々浦々、地方創生の核となる、たくましい一大産業が生まれました。
来年の四千万人目標に向かって、海外と地方をつなぐ空の玄関口、羽田、成田空港の発着枠を八万回増やします。世界一安全・安心な国を実現するため、テロ対策などの一層の強化に取り組みます。国際観光旅客税を活用し、主要な鉄道や観光地で表示の多言語化を一気に加速します。
来年三月の供用開始に向け、那覇空港第二滑走路の建設を進めます。発着枠を大幅に拡大することで、アジアと日本とをつなぐハブ機能を強化してまいります。
北海道では、昨年、フィリピンからの新たな直行便など、新千歳空港の国際線が二十五便増加しました。雄大な自然を活かした体験型ツーリズムの拡大を後押しします。広くアイヌ文化を発信する拠点を白老町に整備し、アイヌの皆さんが先住民族として誇りを持って生活できるよう取り組みます。
(地方創生)
観光資源などそれぞれの特色を活かし、地方が、自らのアイデアで、自らの未来を切り拓く。これが安倍内閣の地方創生です。
地方の皆さんの熱意を、引き続き一千億円の地方創生交付金で支援します。地方の財政力を強化し、税源の偏在を是正するため、特別法人事業税を創設します。
十年前、東京から地方への移住相談は、その半分近くが六十歳代以上でした。しかし、足元では、相談自体十倍以上に増加するとともに、その九割が五十歳代以下の現役世代で占められています。特に、三十歳未満の若者の相談件数は、五十倍以上になりました。
若者たちの意識が変わってきた今こそ、大きなチャンスです。地方に魅力を感じ、地方に飛び込む若者たちの背中を力強く後押ししてまいります。
地域おこし協力隊を、順次八千人規模へと拡大します。東京から地方へ移住し、起業・就職する際には、最大三百万円を支給し、地方への人の流れを加速します。
若者たちの力で、地方の輝ける未来を切り拓いてまいります。
(国土強靱(じん)化)
集中豪雨、地震、激しい暴風、異常な猛暑。昨年、異次元の災害が相次ぎました。もはや、これまでの経験や備えだけでは通用しない。命に関わる事態を「想定外」と片付けるわけにはいきません。
七兆円を投じ、異次元の対策を講じます。
全国で二千を超える河川、一千か所のため池の改修、整備、一千キロメートルに及ぶブロック塀の安全対策を行い、命を守る防災・減災に取り組みます。
四千キロメートルを超える水道管の耐震化、八千か所のガソリンスタンドへの自家発電の設置を進め、災害時にも維持できる、強靱(じん)なライフラインを整備します。
風水害専門の広域応援部隊を全ての都道府県に立ち上げ、人命救助体制を強化します。
ハードからソフトまであらゆる手を尽くし、三年間集中で、災害に強い国創り、国土強靱(じん)化を進めてまいります。
(東日本大震災からの復興)
九月二十日からいよいよラグビーワールドカップが始まります。五日後には、強豪フィジーが岩手県釜石のスタジアムに登場します。
津波で大きな被害を受けた場所に、地元の皆さんの復興への熱意と共に建設されました。世界の一流プレーヤーたちの熱戦に目を輝かせる子どもたちは、必ずや、次の時代の東北を担う大きな力となるに違いありません。
東北の被災地では、この春までに、四万七千戸を超える住まいの復興が概ね完了し、津波で浸水した農地の九割以上が復旧する見込みです。
原発事故で大きな被害を受けた大熊町では、この春、町役場が八年ぶりに、町に戻ります。
家々の見回り、草刈り、ため池の管理。将来の避難指示解除を願う地元の皆さんの地道な活動が実を結びました。政府も、インフラ整備など住民の皆さんの帰還に向けた環境づくりを進めます。
福島の復興なくして東北の復興なし。東北の復興なくして日本の再生なし。復興が成し遂げられるその日まで、国が前面に立って、全力を尽くして取り組んでまいります。
来年、日本にやってくる復興五輪。その聖火リレーは福島からスタートします。最初の競技も福島で行われます。東日本大震災から見事に復興した東北の姿を、皆さん、共に、世界に発信しようではありませんか。
五 戦後日本外交の総決算
(公正な経済ルールづくり)
昨年末、TPPが発効しました。来月には、欧州との経済連携協定も発効します。
いずれも単に関税の引下げにとどまらない。知的財産、国有企業など幅広い分野で、透明性の高い、公正なルールを整備しています。次なる時代の、自由で、公正な経済圏のモデルです。
自由貿易が、今、大きな岐路に立っています。
WTOが誕生して四半世紀、世界経済は、ますます国境がなくなり、相互依存を高めています。新興国は目覚ましい経済発展を遂げ、経済のデジタル化が一気に進展しました。
そして、こうした急速な変化に対する不安や不満が、時に保護主義への誘惑を生み出し、国と国の間に鋭い対立をも生み出しています。
今こそ、私たちは、自由貿易の旗を高く掲げなければならない。こうした時代だからこそ、自由で、公正な経済圏を世界へと広げていくことが、我が国の使命であります。
昨年九月の共同声明に則って、米国との交渉を進めます。広大な経済圏を生み出すRCEPが、野心的な協定となるよう、大詰めの交渉をリードしてまいります。
国際貿易システムの信頼を取り戻すためには、WTOの改革も必要です。米国や欧州と共に、補助金やデータ流通、電子商取引といった分野で、新しい時代の公正なルールづくりを我が国がリードする。その決意であります。
(安全保障政策の再構築)
平成の、その先の時代に向かって、日本外交の新たな地平を切り拓く。今こそ、戦後日本外交の総決算を行ってまいります。
我が国の外交・安全保障の基軸は、日米同盟です。
平和安全法制の成立によって、互いに助け合える同盟は、その絆(きずな)を強くした。日米同盟は今、かつてなく強固なものとなっています。
そうした深い信頼関係の下に、抑止力を維持しながら、沖縄の基地負担の軽減に取り組んでまいります。これまでの二十年以上に及ぶ沖縄県や市町村との対話の積み重ねの上に、辺野古移設を進め、世界で最も危険と言われる普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現してまいります。
自らの手で自らを守る気概なき国を、誰も守ってくれるはずがない。安全保障政策の根幹は、我が国自身の努力に他なりません。
冷戦の終結と共に始まった平成の三十年間で、我が国を取り巻く安全保障環境は激変しました。そして今、この瞬間も、これまでとは桁違いのスピードで、厳しさと不確実性を増している現実があります。
テクノロジーの進化は、安全保障の在り方を根本的に変えようとしています。サイバー空間、宇宙空間における活動に、各国がしのぎを削る時代となりました。
もはや、これまでの延長線上の安全保障政策では対応できない。陸、海、空といった従来の枠組みだけでは、新たな脅威に立ち向かうことは不可能であります。
国民の命と平和な暮らしを、我が国自身の主体的・自主的な努力によって、守り抜いていく。新しい防衛大綱の下、そのための体制を抜本的に強化し、自らが果たし得る役割を拡大します。サイバーや宇宙といった領域で我が国が優位性を保つことができるよう、新たな防衛力の構築に向け、従来とは抜本的に異なる速度で変革を推し進めてまいります。
(地球儀俯瞰(ふかん)外交の総仕上げ)
我が国の平和と繁栄を確固たるものとしていく。そのためには、安全保障の基盤を強化すると同時に、平和外交を一層力強く展開することが必要です。
この六年間、積極的平和主義の旗の下、国際社会と手を携えて、世界の平和と繁栄にこれまで以上の貢献を行ってきた。地球儀を俯瞰(ふかん)する視点で、積極的な外交を展開してまいりました。
平成の、その先の時代に向かって、いよいよ総仕上げの時です。
昨年秋の訪中によって、日中関係は完全に正常な軌道へと戻りました。「国際スタンダードの下で競争から協調へ」、「互いに脅威とはならない」、そして「自由で公正な貿易体制を共に発展させていく」。習近平主席と確認した、今後の両国の道しるべとなる三つの原則の上に、首脳間の往来を重ね、政治、経済、文化、スポーツ、青少年交流をはじめ、あらゆる分野、国民レベルでの交流を深めながら、日中関係を新たな段階へと押し上げてまいります。
ロシアとは、国民同士、互いの信頼と友情を深め、領土問題を解決して、平和条約を締結する。戦後七十年以上残されてきた、この課題について、次の世代に先送りすることなく、必ずや終止符を打つ、との強い意志を、プーチン大統領と共有しました。首脳間の深い信頼関係の上に、一九五六年宣言を基礎として、交渉を加速してまいります。
北朝鮮の核、ミサイル、そして最も重要な拉致問題の解決に向けて、相互不信の殻を破り、次は私自身が金正恩委員長と直接向き合い、あらゆるチャンスを逃すことなく、果断に行動いたします。北朝鮮との不幸な過去を清算し、国交正常化を目指します。そのために、米国や韓国をはじめ国際社会と緊密に連携してまいります。
北東アジアを真に安定した平和と繁栄の地にするため、これまでの発想にとらわれない、新しい時代の近隣外交を力強く展開いたします。
そして、インド洋から太平洋へと至る広大な海と空を、これからも、国の大小にかかわらず、全ての国に恩恵をもたらす平和と繁栄の基盤とする。このビジョンを共有する全ての国々と力を合わせ、日本は、「自由で開かれたインド太平洋」を築き上げてまいります。
(世界の中の日本外交)
中東地域の国々とは、長年、良好な関係を築いてきました。その歴史の上に、中東の平和と安定のため、日本独自の視点で積極的な外交を展開してまいります。
TICADがスタートして三十年近くが経ち、躍動するアフリカはもはや援助の対象ではありません。共に成長するパートナーです。八月にTICADを開催し、アフリカが描く夢を力強く支援していきます。
世界の平和と繁栄のために、日本外交が果たすべき役割は大きなものがある。地球規模課題の解決についても、日本のリーダーシップに強い期待が寄せられています。
我が国は四年連続で温室効果ガスの排出量を削減しました。他方で、長期目標である二〇五〇年八十%削減のためには非連続的な大幅削減が必要です。環境投資に積極的な企業の情報開示を進め、更なる民間投資を呼び込むという、環境と成長の好循環を回すことで、水素社会の実現など革新的なイノベーションを、我が国がリードしてまいります。
プラスチックによる海洋汚染が、生態系への大きな脅威となっています。美しい海を次の世代に引き渡していくため、新たな汚染を生み出さない世界の実現を目指し、ごみの適切な回収・処分、海で分解される新素材の開発など、世界の国々と共に、海洋プラスチックごみ対策に取り組んでまいります。
本年六月、主要国のリーダーたちが一堂に会するG20サミットを、我が国が議長国となり、大阪で開催します。
世界経済の持続的成長、自由で公正な貿易システムの発展、持続可能な開発目標、地球規模課題への新たな挑戦など、世界が直面する様々な課題について、率直な議論を行い、これから世界が向かうべき未来像をしっかりと見定めていく。そうしたサミットにしたいと考えています。
これまでの地球儀俯瞰(ふかん)外交の積み重ねの上に、各国首脳と築き上げた信頼関係の下、世界の中で日本が果たすべき責任を、しっかりと果たしていく決意です。
平成の、その先の時代に向かって、新しい日本外交の地平を拓き、世界から信頼される日本を、皆さん、勇気と誇りを持って、共に、創り上げていこうではありませんか。
六 おわりに
二〇二五年、日本で国際博覧会が開催されます。
一九七〇年の大阪万博。リニアモーターカー、電気自動車、携帯電話。夢のような未来社会に、子どもたちは胸を躍らせました。
「驚異の世界への扉を、いつか開いてくれる鍵。それは、科学に違いない。」
会場で心震わせた八歳の少年は、その後、科学の道に進み、努力を重ね、世界で初めてiPS細胞の作製に成功しました。ノーベル生理学・医学賞を受賞し、今、難病で苦しむ世界の人々に希望の光をもたらしています。
二〇二〇年、二〇二五年を大きなきっかけとしながら、次の世代の子どもたちが輝かしい未来に向かって大きな「力」を感じることができる、躍動感あふれる時代を、皆さん、共に、切り拓いていこうではありませんか。
憲法は、国の理想を語るもの、次の時代への道しるべであります。私たちの子や孫の世代のために、日本をどのような国にしていくのか。大きな歴史の転換点にあって、この国の未来をしっかりと示していく。国会の憲法審査会の場において、各党の議論が深められることを期待いたします。
平成の、その先の時代に向かって、日本の明日を切り拓く。皆さん、共に、その責任を果たしていこうではありませんか。
御清聴ありがとうございました。
第百九十八回国会における安倍内閣総理大臣施政方針演説
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一 はじめに
平成最後の施政方針演説を、ここに申し述べます。
本年四月三十日、天皇陛下が御退位され、皇太子殿下が翌五月一日に御即位されます。国民こぞって寿(ことほ)ぐことができるよう、万全の準備を進めてまいります。
「内平らかに外成る、地平らかに天成る」
大きな自然災害が相次いだ平成の時代。被災地の現場には必ず、天皇、皇后両陛下のお姿がありました。
阪神・淡路大震災で全焼した神戸市長田の商店街では、皇后陛下が焼け跡に献花された水仙が、復興のシンボルとして、今なお、地域の人々の記憶に刻まれています。
商店街の皆さんは、復興への強い決意と共に、震災後すぐに仮設店舗で営業を再開。全国から集まった延べ二百万人を超えるボランティアも復興の大きな力となりました。かつて水仙が置かれた場所は今、公園に生まれ変わり、子どもたちの笑顔であふれています。
東日本大震災の直後、仙台市の避難所を訪れた皇后陛下に、一人の女性が花束を手渡しました。津波によって大きな被害を受けた自宅の庭で、たくましく咲いていた水仙を手に、その女性はこう語ったそうです。
「この水仙のように、私たちも頑張ります。」
東北の被災地でも、地元の皆さんの情熱によって、復興は一歩一歩着実に進んでいます。平成は、日本人の底力と、人々の絆(きずな)がどれほどまでにパワーを持つか、そのことを示した時代でもありました。
「しきしまの 大和心のをゝしさは ことある時ぞ あらはれにける」
明治、大正、昭和、平成。日本人は幾度となく大きな困難に直面した。しかし、そのたびに、大きな底力を発揮し、人々が助け合い、力を合わせることで乗り越えてきました。
急速に進む少子高齢化、激動する国際情勢。今を生きる私たちもまた、立ち向かわなければならない。私たちの子や孫の世代に、輝かしい日本を引き渡すため、共に力を合わせなければなりません。
平成の、その先の時代に向かって、日本の明日を、皆さん、共に、切り拓いていこうではありませんか。
二 全世代型社会保障への転換
(成長と分配の好循環)
この六年間、三本の矢を放ち、経済は十%以上成長しました。国・地方合わせた税収は二十八兆円増加し、来年度予算における国の税収は過去最高、六十二兆円を超えています。
そして、この成長の果実を、新三本の矢によって、子育て支援をはじめ現役世代へと大胆に振り向けてきました。
児童扶養手当の増額、給付型奨学金の創設を進める中で、ひとり親家庭の大学進学率は二十四%から四十二%に上昇し、悪化を続けてきた子どもの相対的貧困率も、初めて減少に転じ、大幅に改善しました。平成五年以来、一貫して増加していた現役世代の生活保護世帯も、政権交代後、八万世帯、減少いたしました。
五年間で五十三万人分の保育の受け皿を整備した結果、昨年、待機児童は六千人減少し、十年ぶりに二万人を下回りました。子育て世代の女性就業率は七ポイント上昇し、新たに二百万人の女性が就業しました。
成長の果実をしっかりと分配に回すことで、次なる成長につながっていく。「成長と分配の好循環」によって、アベノミクスは今なお、進化を続けています。
(教育無償化)
我が国の持続的な成長にとって最大の課題は、少子高齢化です。平成の三十年間で、出生率は一・五七から一・二六まで落ち込み、逆に、高齢化率は十%から三十%へと上昇しました。
世界で最も速いスピードで少子高齢化が進む我が国にあって、もはや、これまでの政策の延長線上では対応できない。次元の異なる政策が必要です。
子どもを産みたい、育てたい。そう願う皆さんの希望を叶(かな)えることができれば、出生率は一・八まで押し上がります。しかし、子どもたちの教育にかかる負担が、その大きな制約となってきました。
これを社会全体で分かち合うことで、子どもたちを産み、育てやすい日本へと、大きく転換していく。そのことによって、「希望出生率一・八」の実現を目指します。
十月から三歳から五歳まで全ての子どもたちの幼児教育を無償化いたします。小学校・中学校九年間の普通教育無償化以来、実に七十年ぶりの大改革であります。
待機児童ゼロの目標は、必ず実現いたします。今年度も十七万人分の保育の受け皿を整備します。保育士の皆さんの更なる処遇改善を行います。自治体の裁量を拡大するなどにより、学童保育の充実を進めます。
来年四月から、公立高校だけでなく、私立高校も実質無償化を実現します。真に必要な子どもたちの高等教育も無償化し、生活費をカバーするために十分な給付型奨学金を支給します。
家庭の経済事情にかかわらず、子どもたちの誰もが、自らの意欲と努力によって明るい未来をつかみ取ることができる。そうした社会を創り上げてこそ、アベノミクスは完成いたします。
子どもたちこそ、この国の未来そのものであります。
多くの幼い命が、今も、虐待によって奪われている現実があります。僅か五歳の女の子が、死の間際に綴(つづ)ったノートには、日本全体が大きなショックを受けました。
子どもたちの命を守るのは、私たち大人全員の責任です。
あのような悲劇を二度と繰り返してはなりません。何よりも子どもたちの命を守ることを最優先に、児童相談所の体制を抜本的に拡充し、自治体の取組を警察が全面的にバックアップすることで、児童虐待の根絶に向けて総力を挙げてまいります。
(一億総活躍)
女性比率僅か三%の建設業界に、女性たちと共に飛び込んだ中小企業があります。時短勤務の導入、託児所の設置などに積極的に取り組み、職人の三割は女性です。
彼女たちが企画した健康に優しい塗料は、家庭用の人気商品となりました。女性でも使いやすい軽量の工具は、高齢の職人たちにも好んで使われるようになりました。この企業の売上げは、三年で二倍、急成長を遂げています。
女性の視点が加わることにより、女性たちが活躍することにより、日本の景色は一変する。人口が減少する日本にあって、次なる成長の大きなエンジンです。
女性活躍推進法を改正し、このうねりを全国津々浦々の中小企業にも広げます。十分な準備期間を設け、経営者の皆さんの負担の軽減を図りながら、女性の働きやすい環境づくりに取り組む中小企業を支援してまいります。
パワハラ、セクハラの根絶に向け、社会が一丸となって取り組んでいかなければなりません。全ての事業者にパワハラ防止を義務付けます。セクハラの相談を理由とした不利益取扱いを禁止するほか、公益通報者保護に向けた取組を強化し、誰もが働きやすい職場づくりを進めてまいります。
働き方改革。いよいよ待ったなしであります。
この四月から、大企業では、三六協定でも超えてはならない、罰則付きの時間外労働規制が施行となります。企業経営者の皆さん。改革の時は来ました。準備はよろしいでしょうか。
長年続いてきた長時間労働の慣行を断ち切ることで、育児や介護など様々な事情を抱える皆さんが、その事情に応じて働くことができる。誰もがその能力を思う存分発揮できる社会に向かって、これからも、働き方改革を全力で推し進めてまいります。
障害者の皆さんにも、やりがいを感じながら、社会でその能力を発揮していただきたい。障害者雇用促進法を改正し、就労の拡大を更に進めます。
人生百年時代の到来は、大きなチャンスです。
元気で意欲ある高齢者の方々に、その経験や知恵を社会で発揮していただくことができれば、日本はまだまだ成長できる。生涯現役の社会に向かって、六十五歳まで継続雇用することとしている現行制度を見直し、七十歳まで就労機会を確保できるよう、この夏までに計画を策定し、実行に移します。
この五年間、生産年齢人口が四百五十万人減少する中にあっても、多くの女性や高齢者の皆さんが活躍することで、就業者は、逆に二百五十万人増加いたしました。女性も男性も、お年寄りも若者も、障害や難病のある方も、全ての人に活躍の機会を作ることができれば、少子高齢化も必ずや克服できる。
平成の、その先の時代に向かって、「一億総活躍社会」を、皆さん、共に、創り上げていこうではありませんか。
(全世代型社会保障)
少子高齢化、そして人生百年の時代にあって、我が国が誇る社会保障の在り方もまた大きく変わらなければならない。お年寄りだけではなく、子どもたち、子育て世代、更には、現役世代まで、広く安心を支えていく。全世代型社会保障への転換を成し遂げなければなりません。
高齢化が急速に進む中で、家族の介護に、現役世代は大きな不安を抱いています。介護のために仕事を辞めなければならない、やりがいを諦めなければならないような社会はあってはなりません。
現役世代の安心を確保するため、「介護離職ゼロ」を目指し、引き続き全力を尽くします。
二〇二〇年代初頭までに五十万人分の介護の受け皿を整備します。ロボットを活用するなど現場の負担軽減を進めるとともに、十月からリーダー級職員の方々に月額最大八万円の処遇改善を行います。
認知症対策の強化に向けて、夏までに新オレンジプランを改定します。認知症カフェを全市町村で展開するなど、認知症の御家族を持つ皆さんを、地域ぐるみで支え、その負担を軽減します。
勤労統計について、長年にわたり、不適切な調査が行われてきたことは、セーフティネットへの信頼を損なうものであり、国民の皆様にお詫び申し上げます。雇用保険、労災保険などの過少給付について、できる限り速やかに、簡便な手続で、不足分をお支払いいたします。基幹統計について緊急に点検を行いましたが、引き続き、再発防止に全力を尽くすとともに、統計の信頼回復に向け、徹底した検証を行ってまいります。
全世代型社会保障への転換とは、高齢者の皆さんへの福祉サービスを削減する、との意味では、全くありません。むしろ、高齢者の皆さんに引き続き安心してもらえることが大前提であります。
六十五歳以上の皆さんにも��負担いただいている介護保険料について、年金収入が少ない方々を対象に、十月から負担額を三分の二に軽減します。年金生活者の方々に、新たに福祉給付金を年間最大六万円支給し、所得をしっかりと確保してまいります。
こうした社会保障改革と同時に、その負担を次の世代へと先送りすることのないよう、二〇二五年度のプライマリーバランス黒字化目標の実現に向け、財政健全化を進めます。
少子高齢化を克服し、全世代型社会保障制度を築き上げるために、消費税率の引上げによる安定的な財源がどうしても必要です。十月からの十%への引上げについて、国民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。
八%への引上げ時の反省の上に、経済運営に万全を期してまいります。
増税分の五分の四を借金返しに充てていた、消費税の使い道を見直し、二兆円規模を教育無償化などに振り向け、子育て世代に還元いたします。軽減税率を導入するほか、プレミアム商品券の発行を通じて、所得の低い皆さんなどの負担を軽減します。
同時に、来たるべき外国人観光客四千万人時代を見据え、全国各地の中小・小規模事業者の皆さんにキャッシュレス決済を普及させるため、思い切ったポイント還元を実施します。自動車や住宅への大幅減税を行い、しっかりと消費を下支えします。
来年度予算では、頂いた消費税を全て還元する規模の十二分な対策を講じ、景気の回復軌道を確かなものと��ることで、「戦後最大のGDP六百兆円」に向けて着実に歩みを進めてまいります。
三 成長戦略
(デフレマインドの払拭)
平成の日本経済はバブル崩壊から始まりました。
出口の見えないデフレに苦しむ中で、企業は人材への投資に消極的になり、若者の就職難が社会問題となりました。設備投資もピーク時から三割落ち込み、未来に向けた投資は先細っていきました。
失われた二十年。その最大の敵は、日本中に蔓延したデフレマインドでありました。
この状況に、私たちは三本の矢で立ち向かいました。
早期にデフレではないという状況を作り、企業の設備投資は十四兆円増加しました。二十年間で最高となっています。人手不足が深刻となって、人材への投資も息を吹き返し、五年連続で今世紀最高水準の賃上げが行われました。経団連の調査では、この冬のボーナスは過去最高です。
日本企業に、再び、未来へ投資する機運が生まれてきた。デフレマインドが払拭されようとしている今、未来へのイノベーションを、大胆に後押ししていきます。
(第四次産業革命)
世界は、今、第四次産業革命の真っただ中にあります。人工知能、ビッグデータ、IoT、ロボットといったイノベーションが、経済社会の有り様を一変させようとしています。
自動運転は、高齢者の皆さんに安全・安心な移動手段をもたらします。体温や血圧といった日々の情報を医療ビッグデータで分析すれば、病気の早期発見も可能となります。
新しいイノベーションは、様々な社会課題を解決し、私たちの暮らしを、より安心で、より豊かなものとする、大きな可能性に満ちている。こうしたSociety 5.0を、世界に先駆けて実現することこそ、我が国の未来を拓く成長戦略であります。
時代遅れの規制や制度を大胆に改革いたします。
交通に関わる規制を全面的に見直し、安全性の向上に応じ、段階的に自動運転を解禁します。寝たきりの高齢者などが、自宅にいながら、オンラインで診療から服薬指導まで一貫して受けられるよう、関係制度を見直します。外国語やプログラミングの専門家による遠隔教育を、五年以内に全ての小中学校で受けられるようにします。
電波は国民共有の財産です。経済的価値を踏まえた割当制度への移行、周波数返上の仕組みの導入など、有効活用に向けた改革を行います。携帯電話の料金引下げに向け、公正な競争環境を整えます。
電子申請の際の紙の添付書類を全廃します。行政手続の縦割りを打破し、ワンストップ化を行うことで、引っ越しなどの際に同じ書類の提出を何度も求められる現状を改革します。
急速な技術進歩により、経済社会が加速度的に変化する時代にあって最も重要な政府の役割は、人々が信頼し、全員が安心して新しいシステムに移行できる環境を整えることだと考えます。
膨大な個人データが世界を駆け巡る中では、プライバシーやセキュリティを保護するため、透明性が高く、公正かつ互恵的なルールが必要です。その上で、国境を越えたデータの自由な流通を確保する。米国、欧州と連携しながら、信頼される、自由で開かれた国際データ流通網を構築してまいります。
人工知能も、あくまで人間のために利用され、その結果には人間が責任を負わなければならない。我が国がリードして、人間中心のAI倫理原則を打ち立ててまいります。
イノベーションがもたらす社会の変化から、誰一人取り残されてはならない。この夏策定するAI戦略の柱は、教育システムの改革です。
来年から全ての小学校でプログラミングを必修とします。中学校、高校でも、順次、情報処理の授業を充実し、必修化することで、子どもたちの誰もが、人工知能などのイノベーションを使いこなすリテラシーを身に付けられるようにします。
我が国から、新たなイノベーションを次々と生み出すためには、知の拠点である大学の力が必要です。若手研究者に大いに活躍の場を与え、民間企業との連携に積極的な大学を後押しするため、運営費交付金の在り方を大きく改革してまいります。
経済活動の国境がなくなる中、日本企業の競争力、信頼性を一層グレードアップさせるために、企業ガバナンスの更なる強化が求められています。社外取締役の選任、役員報酬の開示など、グローバルスタンダードに沿って、これからもコーポレートガバナンス改革を進めてまいります。
(中小・小規模事業者)
中小・小規模事業者の海外輸出は、バブル崩壊後、二倍に拡大しました。
下請から脱し、自ら販路を開拓する。オンリーワンのワザを磨く。全国三百六十万者の中小・小規模事業者の皆さんは、様々な困難にあっても、歯を食いしばって頑張ってきました。バブル崩壊後の日本経済を支え、我が国の雇用の七割を守ってきたのは、こうした中小・小規模事業者の皆さんです。
新しいチャレンジをものづくり補助金で応援します。全国的に人手不足が深刻となる中で、IT補助金、持続化補助金により、生産性向上への取組も後押しします。
四月から、即戦力となる外国人材を受け入れます。多くの優秀な方々に日本に来ていただき、経済を担う一員となっていただくことで、新たな成長につなげます。働き方改革のスタートを見据え、納期負担のしわ寄せを禁止するなど、取引慣行の更なる改善を進めます。
後継者の確保も大きな課題です。四十七都道府県の事業引継ぎ支援センターでマッチングを行うとともに、相続税を全額猶予する事業承継税制を個人事業主に拡大します。
TPPやEUとの経済連携協定は、高い技術力を持つ中小・小規模事業者の皆さんにとって、海外展開の大きなチャンスです。「総合的なTPP等関連政策大綱」に基づき、海外でのマーケティング、販路開拓を支援してまいります。
四 地方創生
(農林水産新時代)
安全でおいしい日本の農産物にも、海外展開の大きなチャンスが広がります。農林水産品の輸出目標一兆円も、もう手の届くところまで来ました。
同時に、農家の皆さんの不安にもしっかり向き合います。二次補正予算も活用し、体質改善、経営安定化に万全を尽くします。
素晴らしい田園風景、緑あふれる山並み、豊かな海、伝統ある故郷(ふるさと)。我が国の国柄を守ってきたのは、全国各地の農林水産業です。美しい棚田を次の世代に引き渡していくため、中山間地域への直接支払などを活用し、更に、総合的な支援策を講じます。
農こそ、国の基です。
守るためにこそ、新たな挑戦を進めなければならない。若者が夢や希望を持って飛び込んでいける「強い農業」を創ります。この六年間、新しい農林水産業を切り拓くために充実させてきた政策を更に力強く展開してまいります。
農地バンクの手続を簡素化します。政権交代前の三倍、六千億円を上回る土地改良予算で、意欲と能力ある担い手への農地集積を加速し、生産性を高めます。
国有林野法を改正します。長期間、担い手に国有林の伐採・植林を委ねることで、安定した事業を可能とします。美しい森を守るため、水源の涵養、災害防止を目的とした森林環境税を創設します。
水産業の収益性をしっかりと向上させながら、資源の持続的な利用を確保する。三千億円を超える予算で、新しい漁船や漁具の導入など、浜の皆さんの生産性向上への取組を力強く支援します。
平成の、その先の時代に向かって、若者が自らの未来を託すことができる「農林水産新時代」を、皆さん、共に、築いていこうではありませんか。
(観光立国)
田植え、稲刈り。石川県能登町にある五十軒ほどの農家民宿には、直近で一万三千人を超える観光客が訪れました。アジアの国々に加え、米国、フランス、イタリア、イスラエルなど、二十か国以上から外国人観光客も集まります。
昨年、日本を訪れる外国人観光客は、六年連続で過去最高を更新し、三千万人の大台に乗りました。北海道、東北、北陸、九州で三倍以上、四国で四倍以上、沖縄では五倍以上に増えています。消費額にして、四兆五千億円の巨大市場。
観光立国によって、全国津々浦々、地方創生の核となる、たくましい一大産業が生まれました。
来年の四千万人目標に向かって、海外と地方をつなぐ空の玄関口、羽田、成田空港の発着枠を八万回増やします。世界一安全・安心な国を実現するため、テロ対策などの一層の強化に取り組みます。国際観光旅客税を活用し、主要な鉄道や観光地で表示の多言語化を一気に加速します。
来年三月の供用開始に向け、那覇空港第二滑走路の建設を進めます。発着枠を大幅に拡大することで、アジアと日本とをつなぐハブ機能を強化してまいります。
北海道では、昨年、フィリピンからの新たな直行便など、新千歳空港の国際線が二十五便増加しました。雄大な自然を活かした体験型ツーリズムの拡大を後押しします。広くアイヌ文化を発信する拠点を白老町に整備し、アイヌの皆さんが先住民族として誇りを持って生活できるよう取り組みます。
(地方創生)
観光資源などそれぞれの特色を活かし、地方が、自らのアイデアで、自らの未来を切り拓く。これが安倍内閣の地方創生です。
地方の皆さんの熱意を、引き続き一千億円の地方創生交付金で支援します。地方の財政力を強化し、税源の偏在を是正するため、特別法人事業税を創設します。
十年前、東京から地方への移住相談は、その半分近くが六十歳代以上でした。しかし、足元では、相談自体十倍以上に増加するとともに、その九割が五十歳代以下の現役世代で占められています。特に、三十歳未満の若者の相談件数は、五十倍以上になりました。
若者たちの意識が変わってきた今こそ、大きなチャンスです。地方に魅力を感じ、地方に飛び込む若者たちの背中を力強く後押ししてまいります。
地域おこし協力隊を、順次八千人規模へと拡大します。東京から地方へ移住し、起業・就職する際には、最大三百万円を支給し、地方への人の流れを加速します。
若者たちの力で、地方の輝ける未来を切り拓いてまいります。
(国土強靱(じん)化)
集中豪雨、地震、激しい暴風、異常な猛暑。昨年、異次元の災害が相次ぎました。もはや、これまでの経験や備えだけでは通用しない。命に関わる事態を「想定外」と片付けるわけにはいきません。
七兆円を投じ、異次元の対策を講じます。
全国で二千を超える河川、一千か所のため池の改修、整備、一千キロメートルに及ぶブロック塀の安全対策を行い、命を守る防災・減災に取り組みます。
四千キロメートルを超える水道管の耐震化、八千か所のガソリンスタンドへの自家発電の設置を進め、災害時にも維持できる、強靱(じん)なライフラインを整備します。
風水害専門の広域応援部隊を全ての都道府県に立ち上げ、人命救助体制を強化します。
ハードからソフトまであらゆる手を尽くし、三年間集中で、災害に強い国創り、国土強靱(じん)化を進めてまいります。
(東日本大震災からの復興)
九月二十日からいよいよラグビーワールドカップが始まります。五日後には、強豪フィジーが岩手県釜石のスタジアムに登場します。
津波で大きな被害を受けた場所に、地元の皆さんの復興への熱意と共に建設されました。世界の一流プレーヤーたちの熱戦に目を輝かせる子どもたちは、必ずや、次��時代の東北を担う大きな力となるに違いありません。
東北の被災地では、この春までに、四万七千戸を超える住まいの復興が概ね完了し、津波で浸水した農地の九割以上が復旧する見込みです。
原発事故で大きな被害を受けた大熊町では、この春、町役場が八年ぶりに、町に戻ります。
家々の見回り、草刈り、ため池の管理。将来の避難指示解除を願う地元の皆さんの地道な活動が実を結びました。政府も、インフラ整備など住民の皆さんの帰還に向けた環境づくりを進めます。
福島の復興なくして東北の復興なし。東北の復興なくして日本の再生なし。復興が成し遂げられるその日まで、国が前面に立って、全力を尽くして取り組んでまいります。
来年、日本にやってくる復興五輪。その聖火リレーは福島からスタートします。最初の競技も福島で行われます。東日本大震災から見事に復興した東北の姿を、皆さん、共に、世界に発信しようではありませんか。
五 戦後日本外交の総決算
(公正な経済ルールづくり)
昨年末、TPPが発効しました。来月には、欧州との経済連携協定も発効します。
いずれも単に関税の引下げにとどまらない。知的財産、国有企業など幅広い分野で、透明性の高い、公正なルールを整備しています。次なる時代の、自由で、公正な経済圏のモデルです。
自由貿易が、今、大きな岐路に立っています。
WTOが誕生して四半世紀、世界経済は、ますます国境がなくなり、相互依存を高めています。新興国は目覚ましい経済発展を遂げ、経済のデジタル化が一気に進展しました。
そして、こうした急速な変化に対する不安や不満が、時に保護主義への誘惑を生み出し、国と国の間に鋭い対立をも生み出しています。
今こそ、私たちは、自由貿易の旗を高く掲げなければならない。こうした時代だからこそ、自由で、公正な経済圏を世界へと広げていくことが、我が国の使命であります。
昨年九月の共同声明に則って、米国との交渉を進めます。広大な経済圏を生み出すRCEPが、野心的な協定となるよう、大詰めの交渉をリードしてまいります。
国際貿易システムの信頼を取り戻すためには、WTOの改革も必要です。米国や欧州と共に、補助金やデータ流通、電子商取引といった分野で、新しい時代の公正なルールづくりを我が国がリードする。その決意であります。
(安全保障政策の再構築)
平成の、その先の時代に向かって、日本外交の新たな地平を切り拓く。今こそ、戦後日本外交の総決算を行ってまいります。
我が国の外交・安全保障の基軸は、日米同盟です。
平和安全法制の成立によって、互いに助け合える同盟は、その絆(きずな)を強くした。日米同盟は今、かつてなく強固なものとなっています。
そうした深い信頼関係の下に、抑止力を維持しながら、沖縄の基地負担の軽減に取り組んでまいります。これまでの二十年以上に及ぶ沖縄県や市町村との対話の積み重ねの上に、辺野古移設を進め、世界で最も危険と言われる普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現してまいります。
自らの手で自らを守る気概なき国を、誰も守ってくれるはずがない。安全保障政策の根幹は、我が国自身の努力に他なりません。
冷戦の終結と共に始まった平成の三十年間で、我が国を取り巻く安全保障環境は激変しました。そして今、この瞬間も、これまでとは桁違いのスピードで、厳しさと不確実性を増している現実があります。
テクノロジーの進化は、安全保障の在り方を根本的に変えようとしています。サイバー空間、宇宙空間における活動に、各国がしのぎを削る時代となりました。
もはや、これまでの延長線上の安全保障政策では対応できない。陸、海、空といった従来の枠組みだけでは、新たな脅威に立ち向かうことは不可能であります。
国民の命と平和な暮らしを、我が国自身の主体的・自主的な努力によって、守り抜いていく。新しい防衛大綱の下、そのための体制を抜本的に強化し、自らが果たし得る役割を拡大します。サイバーや宇宙といった領域で我が国が優位性を保つことができるよう、新たな防衛力の構築に向け、従来とは抜本的に異なる速度で変革を推し進めてまいります。
(地球儀俯瞰(ふかん)外交の総仕上げ)
我が国の平和と繁栄を確固たるものとしていく。そのためには、安全保障の基盤を強化すると同時に、平和外交を一層力強く展開することが必要です。
この六年間、積極的平和主義の旗の下、国際社会と手を携えて、世界の平和と繁栄にこれまで以上の貢献を行ってきた。地球儀を俯瞰(ふかん)する視点で、積極的な外交を展開してまいりました。
平成の、その先の時代に向かって、いよいよ総仕上げの時です。
昨年秋の訪中によって、日中関係は完全に正常な軌道へと戻りました。「国際スタンダードの下で競争から協調へ」、「互いに脅威とはならない」、そして「自由で公正な貿易体制を共に発展させていく」。習近平主席と確認した、今後の両国の道しるべとなる三つの原則の上に、首脳間の往来を重ね、政治、経済、文化、スポーツ、青少年交流をはじめ、あらゆる分野、国民レベルでの交流を深めながら、日中関係を新たな段階へと押し上げてまいります。
ロシアとは、国民同士、互いの信頼と友情を深め、領土問題を解決して、平和条約を締結する。戦後七十年以上残されてきた、この課題について、次の世代に先送りすることなく、必ずや終止符を打つ、との強い意志を、プーチン大統領と共有しました。首脳間の深い信頼関係の上に、一九五六年宣言を基礎として、交渉を加速してまいります。
北朝鮮の核、ミサイル、そして最も重要な拉致問題の解決に向けて、相互不信の殻を破り、次は私自身が金正恩委員長と直接向き合い、あらゆるチャンスを逃すことなく、果断に行動いたします。北朝鮮との不幸な過去を清算し、国交正常化を目指します。そのために、米国や韓国をはじめ国際社会と緊密に連携してまいります。
北東アジアを真に安定した平和と繁栄の地にするため、これまでの発想にとらわれない、新しい時代の近隣外交を力強く展開いたします。
そして、インド洋から太平洋へと至る広大な海と空を、これからも、国の大小にかかわらず、全ての国に恩恵をもたらす平和と繁栄の基盤とする。このビジョンを共有する全ての国々と力を合わせ、日本は、「自由で開かれたインド太平洋」を築き上げてまいります。
(世界の中の日本外交)
中東地域の国々とは、長年、良好な関係を築いてきました。その歴史の上に、中東の平和と安定のため、日本独自の視点で積極的な外交を展開してまいります。
TICADがスタートして三十年近くが経ち、躍動するアフリカはもはや援助の対象ではありません。共に成長するパートナーです。八月にTICAD���開催し、アフリカが描く夢を力強く支援していきます。
世界の平和と繁栄のために、日本外交が果たすべき役割は大きなものがある。地球規模課題の解決についても、日本のリーダーシップに強い期待が寄せられています。
我が国は四年連続で温室効果ガスの排出量を削減しました。他方で、長期目標である二〇五〇年八十%削減のためには非連続的な大幅削減が必要です。環境投資に積極的な企業の情報開示を進め、更なる民間投資を呼び込むという、環境と成長の好循環を回すことで、水素社会の実現など革新的なイノベーションを、我が国がリードしてまいります。
プラスチックによる海洋汚染が、生態系への大きな脅威となっています。美しい海を次の世代に引き渡していくため、新たな汚染を生み出さない世界の実現を目指し、ごみの適切な回収・処分、海で分解される新素材の開発など、世界の国々と共に、海洋プラスチックごみ対策に取り組んでまいります。
本年六月、主要国のリーダーたちが一堂に会するG20サミットを、我が国が議長国となり、大阪で開催します。
世界経済の持続的成長、自由で公正な貿易システムの発展、持続可能な開発目標、地球規模課題への新たな挑戦など、世界が直面する様々な課題について、率直な議論を行い、これから世界が向かうべき未来像をしっかりと見定めていく。そうしたサミットにしたいと考えています。
これまでの地球儀俯瞰(ふかん)外交の積み重ねの上に、各国首脳と築き上げた信頼関係の下、世界の中で日本が果たすべき責任を、しっかりと果たしていく決意です。
平成の、その先の時代に向かって、新しい日本外交の地平を拓き、世界から信頼される日本を、皆さん、勇気と誇りを持って、共に、創り上げていこうではありませんか。
六 おわりに
二〇二五年、日本で国際博覧会が開催されます。
一九七〇年の大阪万博。リニアモーターカー、電気自動車、携帯電話。夢のような未来社会に、子どもたちは胸を躍らせました。
「驚異の世界への扉を、いつか開いてくれる鍵。それは、科学に違いない。」
会場で心震わせた八歳の少年は、その後、科学の道に進み、努力を重ね、世界で初めてiPS細胞の作製に成功しました。ノーベル生理学・医学賞を受賞し、今、難病で苦しむ世界の人々に希望の光をもたらしています。
二〇二〇年、二〇二五年を大きなきっかけとしながら、次の世代の子どもたちが輝かしい未来に向かって大きな「力」を感じることができる、躍動感あふれる時代を、皆さん、共に、切り拓いていこうではありませんか。
憲法は、国の理想を語るもの、次の時代への道しるべであります。私たちの子や孫の世代のために、日本をどのような国にしていくのか。大きな歴史の転換点にあって、この国の未来をしっかりと示していく。国会の憲法審査会の場において、各党の議論が深められることを期待いたします。
平成の、その先の時代に向かって、日本の明日を切り拓く。皆さん、共に、その責任を果たしていこうではありませんか。
御清聴ありがとうございました。
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HISオンライン体験「「近くて遠い国」をめぐり考える、朝鮮 ピーススタディツアー」
2021年7/10。参加人数は40名ほど。
■北朝鮮の概要
北朝鮮という名称は現地ではNG(「朝鮮」と呼べばOK)。日本は朝鮮半島にある国家は韓国のみとして国家承認していないが、意外にも164ヶ国が国家承認している。ヨーロッパでも承認していないのはフランスくらい。人口は日本の半分が韓国、韓国の半分が北朝鮮。
小学校の廊下の壁に過去の日本軍の残酷な行いの絵が描かれているなど、反日教育を徹底している。
基本的に、一般市民はネットを使えない。政府高官など使える人にしても、使用金額がとても高い。メールやアプリゲームはできるが、インターネットは使えない。
コロナの状況はというと、ガイドさん曰く「報道されている通り感染者0人なのかは不明だが、防疫は本当に厳しいのだと思う。独裁政権はこういうときのトップダウンが素早く働く」
■観光
北朝鮮に、行こうと思えば行ける。国家承認していない日本では大使館もないのでビザが下りないが、北朝鮮と国交のある国に行ってビザを発行してもらえば行ける。成田→中国・北京→平壌ルートが主。他ルートはウラジオストク経由など。かつては日本でも、新潟から船が出ていたが、現在は経済制裁で止まっている。受け入れ先が必要になるので個人旅行は×、団体ツアーのみ。
行こうと思えば行けると言っても、日本では渡航自粛要請が出ている。ガイドさん(日本国際ボランティアセンター=JVC所属)が初めて北朝鮮へ行くことになったとき、渡航前に外務省から警告の電話がかかり、渡航後に外務省に呼び出されて苦言と共に北朝鮮の様子を訊かれたという。ガイドさん「外務省の人が「わけのわからない国」と言っていたことが悲しかった」人道支援目的でも北朝鮮に持ち込める金銭は10万円まで。外務省に相談して許可を得られれば金額を上げられることも。
高麗航空の飛行機内で飲めるジュースは水で薄めてある感じ。CAの制服がミニ丈ノースリーブ。
海外から北朝鮮に観光目的で訪れる人は意外といる。一番多いのは中国人、ドイツなどヨーロッパからや、エジプトのYouTuberなど。
□主な名所・観光地
ガイドさんが実際に2017年に現地に行った際の、平壌の風景や様子がわかる写真・動画を見せてもらった。
「万寿台」…歴代総書記の像が立ち、試験の合格祈願や嬉しいことがあったとき訪れる神社のような場所と化している。夜は像がライトアップされて、ちょっと怖い。
「金日成(キムイルソン)広場」…広場でする遊びはバドミントン、バレーボールが人気。
「ユギョン(柳京)ホテル」…ガラス張りの三角形の塔のような外観。プロジェクションマッピングも行われる。
釣り堀やローラースケート場もあり、レジャーとして人気。
「平壌動物園」…トラの口から入る大きな動物園。マルチーズなどの「犬」もいるのが面白い。
北朝鮮でも、若者は普通にデートしてキャッキャ言っている。遊園地にオフ日の軍人の一団が遊びに来る。
「開城(ケソン)」…高麗時代の首都。現在は観光地、京都っぽい所。高麗博物館があり、時代物韓ドラの世界。宮廷料理も食べられる。ガイドさん曰く、建築の色使いなどが琉球文化と似ている?
「板門店(バンムンディ)」…有名な南北軍事境界線。観光用ツアーバスがあるが、徒歩で行くのはNG。人気観光地。記念撮影スポットもあり、案内係の兵士は気さく(「休戦協定」なので、アメリカが「勝っていないのは負けたと同じ」と旗を残していった、という伝説を熱く話してくれるが…)。
□交通
最近では電動自転車が出て来た(といってもバイクに近いもの)。
車は、タクシーなどを見ると中国車に近い型。
信号がない場所に交通整理の人が立っているのは平壌名物。日本でも昔見かけた光景。
平壌の地下鉄は、日本の大江戸線より深く長い。なぜかというと、対ソ連のシェルターとしての役割もあったため。ガイドさんが初めて渡航した2014年には安定していたようだが、それ以前には平壌も電力不足で停電が多く、地下鉄も真っ暗に… 現在では静かな日本の地下鉄と比べ、なんだかなつかしい音がうるさい地下鉄。
□食べ物
韓国料理より辛くない。サムゲタンなども、韓国とちょっと違う味。
平壌冷麺のレストラン「玉流館」は大人気。ガイドさんはここで平壌大学の日本語学部の学生たちと交流した。
■北朝鮮の人々
歌を歌う子や、真顔でキレのあるダンスを披露する子など、かわいらしくも芸達者な子どもたちの動画を見せてもらう。
人々は歌と踊りが大好き(世界共通)。道ばたで大音量で音楽を流してダンスしている人もよく見られる。おばさんがおしゃべり好きなのも世界共通。有名な「マスゲーム」のため、ダンス(舞踊)は学校で習うので、みんな踊れる。
カラオケが好きな昭和のサラリーマンのようなおじさんは、テドンガンのほとりにいた奥さんをナンパして結婚したという。「綺麗な人には声を掛けなきゃ失礼」という、イタリア人のようなラテン気質。北朝鮮の人々の意外な一面。
同性間の距離が近いのは民族性か? 韓国人より北朝鮮人の方が距離が近め。
□平壌外国語大学の日本語学部の学生たち
生徒たちは日本の大学生と何も変わらない普通の若者たち。
日本語を勉強するのを選んだ理由は、「日本語が朝鮮語と似てるから簡単だと思った」という声が多い。しかし国交もないため、勉強しても生かせる職業はない。日本語の勉強を続けるか悩む学生も多い。
日朝国交正常化を目指す女子学生は、日本に親しみを覚えながらも、「過去の清算はさせたい」という。
日本語学科には、日本人の先生はいない。基本的に日本で勉強した翻訳が専門の現地の人が先生なので、発音には弱い。在日コリアンの人がひとりいるくらい。
日本で言う東大にあたる金日成(キムイルソン)大学にも日本語学科がある。
トラさんやコナンなど、日本のドラマやアニメも教材になる。
よく言われるのが「日本政府は嫌いだけど日本の人々は好き」。特に交流した生徒たちは「日本は友達がいる国になりました」とも言ってくれる。一方、対アメリカのときは「アメリカ人とは絶対に仲良くなれない」と若者でも激しく言う。今の若者にとっては、南北分断のきっかけの憎い国はアメリカなのか。世代によって価値観・認識が違うのはどの国も同じ。
■平壌(ピョンヤン)
首都・平壌は特別に豊かで発展しているが、地方に住む人々は平壌に入ることもなかなかできないという。しかしナンパエピソードのおじさんは地方出身、よほどデキる人なのだろうと思われる。平壌とそれ以外の都市の格差は大きい。
現在の平壌空港は近代化し、床もピカピカ。道路が広くなったのもつい最近のこと。
■日朝交流
北朝鮮への人道支援活動は、日本では理解が得られないのが現状だが、1996年から静かに続けられていた。
相互理解が大切、互いを知るための行事が必要だと、絵を交換したり…(絵画交換の始まりは1999年から。のちに「南北コリアと日本のともだち展」という絵画展が2001年スタート)。
2012年から日朝大学生交流が始まった。当初は大反対もあったが、2019年には平壌大学の学生から「どういう世界がいい?」という議題で、「ビザを手に入れアジアの国々を訪ねたい」という、これまでなかった前向きな意見が出るなど、大きな変化があった。「平和が一番」だと、若者の意識は近付いているのかも。「話し合う意味があるのか」と大反対していた人物(大学教授)は、2019年、「意味があった」「大きな成果になる」と認めた。
平壌大学の学生はどうせエリートなんだろう?と言われるが、それは確かにそう、しかし最近北朝鮮の外務省に一人、日本交流の経験者が引き抜かれた。これは日朝国交正常化のための大きな一歩では?髪の毛一本ほどの希望だが…
■ガイドさんのエピソード
北朝鮮で手に入れたビールの蓋で何か作れないか、とたくさん日本に持ち帰ろうとしたら空港で金属チェックに引っかかった。変な目で見られたが許された。
ツアー時間内で答えきれなかった質問を、後日答えてくれたメールの文中で印象的だったガイドさんの言葉「北朝鮮にも普通に毎日を過ごしている人々がいるはずなのに、日本にいるとその人たちの顔が想像できない、のっぺらぼうのように顔が見えない、それが問題だと思っています。戦争を望む人なんていないはずなのに。2015年に38度線で南北が緊張状態になり、「準戦時体制」となったとき、平壌大学の学生は「いざというときは国を守る」と言っていたものの、最後は正直に「怖い」と言っていました」
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