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#冷えで古傷が痛む
okumaseitai · 1 year
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・ 左肩が亜脱臼したように ガリガリ音がなります。 後頭部の神経痛、冷えでお悩みの方です。 最近 かなり冷えなどで 頭痛の方も多いです。 寒くなると 筋肉がいつもより緊張して 頭痛や古傷 肩の痛みなどがでて うずくことがあり 眠れなくなったりしてしまいます。 カイロや蒸しタオルなどで 温めていただくと ラクになることが多いです。 良かったらお試しください。 #冷え #神経痛がうずく #後頭部の痛み #肩の痛み #神経痛と冷え #冷え対策 #冷えで古傷が痛む #左肩の痛み #肩の亜脱臼 #後頭部痛 https://www.instagram.com/p/CmduDWUuki9/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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kennak · 9 months
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今日、出勤したものの、上司と2人でラーメン屋に行く約束が嫌すぎて、冷や汗が止まらず気分が悪くなり即退勤した。人数が少ない部署なので、同僚の人には悪いと思ったけど、あまりにも嫌すぎて、自分がこんなに嫌だと思ってることに驚きつつも休んでしまった。明日はちゃんと行こうと思っている、し、もしも明日ラーメン食べに行こうってなっても行けると思う。今日たまたま体調とかメンタルの調子が良くなかったんだ。 上司は55〜59歳で、自分の部署の一番上の人。5人しかいない部署で、狭い部屋で一緒に仕事をしている。上司と自分は4月に同時に異動してきた。仕事上、頼りになる人だし、自分も特に仕事面で心配なことはない。残業も少なくて、先輩も聞けば教えてくれる理想的な環境。 上司は職場でパワハラセクハラで有名だ。前の部署では2人ほど長期の休みに追い込んで、1人辞めさせている。それでも上司が干されないのは、仕事をこなせるからということと、休む側にも問題があるということからだと思う。まあ、休む側の問題というのも無いとは言えないなって、当時人事担当だった自分は思っていたわけよ。 でも一緒に仕事して3ヶ月で、だいぶしんどさがわかってきた。この人と1年仕事してキッパリ退職した女性の先輩がいるけど、すごい我慢したんだろうなってあらためて思った。 とりあえず、4月から自分ががその都度記録して、記録するたび読み返して憎しみを燃やしたメモを見てくれるかな。 ちなみに自分は25〜30歳の女だ。上司には自分と同い年の息子もいる。この情報も踏まえて読んでくれると、よりキモさをわかってもらえると思う。【4月上旬】・「俺は昔から不良だった」「覚せい剤を手に持ったこともある」「本物のヤクザと知り合いだ」 上記のような内容で自分を強く見せようとしている?事実だとしても別に尊敬できる内容ではない。・一人では飲食店に入れないから一緒に行ってくれと何かにつけて言われる。【4月中旬~5月下旬】・かなりしつこく一緒に自転車に乗ろうと誘ってくる。 体力がないので、日焼けしたくないので、暑い時期はちょっと、と言って断り続けるが、「諦めろ」「腹をくくれ」など。職場の上司と出かけるなんて、よっぽど仲がいいかせめて同性でしょ。・「体力的に難しくて漕げなくなったら背中を押して並走してあげる」触んなクソボケ。・「Aさん(女)もBさん(女)もCさん(女)も俺と出かけた」←めちゃくちゃしつこいから。・「退職したら養ってくれ」キモすぎる。・おいしいラーメン屋や飲食店があるという話があると「今度一緒に行くか」嫌すぎる。【6月後半】・出張に行けないかわりに上司と自分で、昼食を食べに行こうという話になった。断り切れず寿司をおごってもらった。味がしなくて残してしまった。・学校の教師は敵だから、俺たちよりも下だと思ってる、と繰り返し言う。過去に教師に「腐ったミカン」だと言われたらしい。周りの人間をダメにする人間のことを、言い得て妙だと思った。・前の部署時の話になると怒りだしてしまう。病気みたい。人事(自分の古巣だ)はあの時人をくれなかった。予算つけなかった。と責めてくる。(自分が原因で療養している人が複数いることは棚上げなのだろうか?)・前部署の部下Sさん(若手・男性)のことは、折を見て悪く言う。これは上司のお気に入りだったYさん(若手・女性)に対してSさんが言った「心の扉を開けたい」「妻に残業してこいと言われている」などの発言を根に持っているみたい。どう聞いても、Sさんの人柄を鑑みても、冗談で言っているとしか思えない内容だが、こういう隙のある発言をすると、上司は同じ群に自分のメスを誑かそうとするオスがいる!と思って、Sさんを攻撃して、結果Sさんは長期のお休みに入ってしまった。・Aさん(前部署の部下で、上司に詰められてやっぱり休んじゃった・中堅・男性)、Sさんについては100%相手が悪いと思っている。・一方でYさん(上司のオキニ女性)に対しては、良い仕事を回して大変なところだけ他の部員にやらせておいて、美味しいところを手柄にしてあげるというエコ贔屓具合。「Yさんはオレが守ってあげる」と言ったらしい。このYさんはどういう気持ちかわからないけど、上司のことをキモがらない稀有な人材なので、上司の運命の人になってあげてほしいと常々思っている。・上司「前部署時代から朝早く出勤している。俺が雑用をしていると、後から来た下の人が『自分がやります』と言う。自分がやると言うくらいなら俺にやらせないようにしろ。俺より先に気づけ。」←自分本位すぎる。世界が自分中心に回っているのか??頭北極か???マジでいるところにはいるんですこういう人が。・どれだけ自分が仕事をして、どれだけ大変だったか、どれだけ残業したかを繰り返し話す。部分的に、確かに大変だったろうと共感するところもあるが、自分の言動が仕事量を増やしていることに無自覚だったり棚に上げたりするのがはっきりわかるので不快。・健康診断の結果が悪いと、すぐに「俺死ぬから、あとよろしくな」「俺がいなくなってよかっ��な」と言う。今時「そんなこと言わないでよ~そんなことないよ~」待ちなのか?女子中学生みたいだ。・病院の検査で尿道にカメラを入れられた話してくる。別に聞いてない。話の流れで「偶々~~」といったら「金玉の話してんのかと思った」と言われた。頭金玉か?全身海綿体か??・もうとにかく自分と自転車で一緒に出掛けたいらしい。寿命が短いから生殖本能が活発になってるのかもしれないと思う。【7月】・近所のラーメンに一緒に行こうと誘ってくる。他の部員の人は誘われていない。行きたくない。・飲み会は絶対に飲めと言われる。上司が飲めなくて車を運転するので、飲まない理由が無いだろうという論調。飲み会後の車の中で一番最後に私を残す。位置的な問題もあるだろうけど、個人的にこれがかなり怖い。・「のどが痛い。一回1錠の薬をめんどくさいから2錠飲んでやった」とイキっていた。自傷自慢がとにかくすごい。これ、後から思い返すと、自分が風邪っぽかった飲み会の直後に言い始めたんだ。つまり上司が言いたいのは「風強ぽい部下のコと、飲み会後イイ感じにやることやっちゃって風邪が移っちゃった★」ってことなんじゃないか!?と勘繰ってからマジでキモくてしょうがない。・おしゃべり相手がいないのをあわれに思い、アレクサの購入を促した。・何かと質問に答えると「そういうところ素敵だと思う」と言う。言われても嬉しくない。純粋に気持ち悪いなと思う。口説き文句じゃなくて普通の誉め言葉はないのか?・自分が入院して離婚した時の話で、今後は●さん(自分)に退院するときの荷物取りに来てもらうからな!と言われた。嫌だ…。私はお前の何なんだよ。・元奥さんとの離婚の経緯や自分の恋愛観について二人きりの時にずっと話している。●さんの恋愛観って何?と聞かれる。脳内ピンク色すぎる。どうやったらそんなに恋愛のことを考えていられるのかわからない。再婚するなら俺のありのままを受け入れてくれる人がいいな!とか言っている。やたら再婚の話を振ってくるのでリアクションに困る。・元奥さんと結婚しようと思ったきっかけ��、初デートの初ディズニーで駐車場が混んでいて、イライラして「帰ろう」と言った時、元奥さんが「いいよ」と笑って言ってくれたことらしい。そんな人、今後二度と現れない。・部屋に上司と二人になると話しかけられてしまい、仕事が手につかない。・ラーメンを二人で食べに行く約束をさせられた。当日涙が出るほど嫌だった。生理的に嫌すぎる。今ココ。以上です。 ねえ、皆さん。このくらいの人、世の中にはいっぱいいるんでしょうね。 そして勘のいい人は読んでて大体わかったと思うけど、この上司は妻と離婚して一人暮らしのおじさんなんだ。もうとにかく毎日寂しくてしょうがないの。でもね、職場の自分の息子と同い年の女性をその捌け口にするのはやめてくれと。勘弁してくれと。お前なんかと食うラーメンはゴメンだよどんなに美味しくても。寿司すら味しなかったんだから。 そしていろんな誘いをハッキリ断れない自分も、きっと批難されるべきなんでしょう。「ラーメン?2人じゃなくて3人なら行きますよ」 これさえ言えればいいので。でもねえ、色々考えるわけよ。例えば自分がそっけない態度をとったとして、きっと上司はしつこく色んなこと聞いてくるし、5人しかいない部署で同僚に気を使わせてしまうのも悪いと思うし。上司には逃げ道もある。「俺はそんなつもりなかったけど、●さんがそう感じたなら悪かったね」。これだけでいいからね。 あ〜ほんと、明日はちゃんと出勤する。同僚に謝って、仕事して、必要とあらば上司とお昼一緒に食べる。味がしなくてもね。そうやってやり過ごせばいつか終わるんだ。 読んでくれてありがとうございます。
上司とラーメンに行きたくなさすぎる。
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niyuuhdf · 25 days
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行屋虚彦 プロフィール
行屋虚彦 キャラ設定メモ
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画家。 中学にはほとんど通わず、師である山雪のアトリエでいつも油絵を描いている。(油に限らずなんでも描く。カガリのドローイングの真似をしたりも) すでに画家として売れており、軌道に乗りつつある。 直人を超える早筆で多作。 自身の色覚障害を忌々しく思っており、それを才能だとは認めない。 母似の近寄りがたい面立ちをしているが、中身は普通の多感な15歳。
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作者から割り振った疾患・病名:感覚過敏、軽度の識字障害(他にも発達障害傾向がちらほら)、視覚認知に拠りすぎた脳、市販薬依存症(幼少期から偏頭痛の鎮痛剤を濫用・多量摂取していた)、900℃(アイロンの熱は200℃までらしいが)の火で焦がされた激痛を痛みのマックスと捉えている、オトガイ未発達、体質全般(行屋家の遺伝的要素でもある)。
本名:行屋虚彦(Ikiya Utsuhiko) PN:hollow あだ名:イキヤ
?小学校→?中学校→? 高校中退、もしくは高校進学せず中卒、絵の仕事で稼いで生きてる
手記本公式年齢:13,14,15歳 直人パート手記本登場時で15歳 ?年(平成?年)11月22日生まれ 蠍座 身長164〜168㎝ 体重49kg B型
家族構成: 実父:行屋疾彦 実母:耀屋七 (実娘:行屋瞳)
人間関係: 師:山雪穣、名廊直人 画家仲間:カガリ、ユーコ、花 アトリエ仲間:景一、ユーコ、繭、花 主治医:近所のにーちゃん:新屋敷佐
髪の色:黒 目の色:黒(虹彩の模様:?) 趣味:? イメージ:? モチーフ:シーラカンス、カラス、死神、妖精に拐われた人間の子(チェンジリング)、オオミズアオ、背骨・脊髄(ムカデ?)、行灯(幽霊の出ずるところ)(アンドンクラゲ→海の中で遭遇したときの死の予兆)、 誰にも傷つけられないから孤独な心
体質: ・常に過緊張・過覚醒状態。 ・弛緩できない。(薬で弛緩する) ・薄く細いが筋肉が尋常でなく強く怪力。 ・いつでもごく自然に「火事場の馬鹿力」を発揮する死の淵に立つ精神状態。怪力。 ・非常に痩せやすい。が、痩せ衰えて骨のようになっても「火事場の馬鹿力」に足る筋肉は落ちない。 ・体幹・腹筋が鋼鉄のように強い。 ・皮膚は柔らかくかつしなやか。健康状態にもよるが基本的には強い。状態がよければトキさんと同じくらいの強さになる。 ・日焼けでサンバーンを起こし、火脹れまみれになりやすい。が、放置しても火脹れを無理やり潰しても痛むだけですぐに皮が剥けて回復する。細菌感染などを起こさない。強い。 ・喉が弱く、退化している。 ・全感覚過敏。極寒でごまかしている。 ・肌を虫が這う感覚。蟻走感、コークバク、あるいはシャンビリ。 ・腑を他人からくすぐられて弄ばれ刺激される幻触覚の病。
外見: ・洗濯されすぎて色褪せた、古着の黒い細身のパーカーをよく着ている。(フードの膨らみの部分で猫背隠し&視覚が苦しいときに気休めにフードを深く被って視界を真っ暗にするため) ・両耳に黒曜石(天然ガラス)のピアス。(小学校低学年のとき、冷泉さんがくれた。「二度と他人に同じ真似を強いることのないように 情動に飲まれそうになったらこのピアスに触れて思い出せ」) ・右胸から肩にかけてアイロンでひどく焦がされた火傷の痕がくっきりとある。(本人は、人体の上にあまりにも無機質なアイロンの型取りがあるさまを、他者から見ると不気味で気持ち悪いだろうと冷静に思っており、迂闊に見せない) ・目の下にはいつもクマがある。(母親をずっと緊張して気にかけて生活していて、不眠症。) (ベッドでしっかり横になって寝るのが苦手で、よく床に座って壁に背をつけた姿勢で少しだけ仮眠をとれている) (身体から力を抜いてリラックスしたりくつろいだり弛緩することを恐れている) ・独特の上斜視のような三白眼の目つきは、生来は母親と同じ大きく見開かれた四白眼。幼少期の顔立ちは四白眼である。幼い頃からの、面前DVや頭痛や市販薬の乱用やトラウマやPTSDなど複合的な身体的・精神的ダメージによって眼瞼下垂が進んだ姿。加齢とともにさらに瞼を持ち上げていられなくなっていき、常に眩しそうな・苦痛に耐えるような・疲れ果てたような、かなりの伏目の目つきになっていく。 (イキヤ(とトキさんも)の目元の表情、「満ち足りることを知らない常に餓えきった」ようなものを宿してる 初期コンセプト) ・病的に痩せきった骨と筋の目立つ薄い身体。体幹は強い。 ・肌は蒼白い。 ・顎が小さく細く弱い。口が開きやすくて、喉が乾燥したり炎症したりしやすい ・が、常に緊張状態で口を開けるのを恐れてもおり、口の中の肉をいつも噛んでしっかり閉じている。 ・喉がとても弱い。使えば痛み、熱く熱をもつ。少し話し込んだだけで声が掠れて裏返りだす。あまりにも他人との会話や発声を必要としなかった+話して言葉にすると自分の視覚がバレるため黙っていたため、喉が退化した。 ・人目のある場所では全身に緊張が駆け巡っていておそろしく姿勢がいい。一人きりの時間だけ、身体の苦しみを庇うように自然と猫背になりがち。 ・腹筋(体幹)がとにかく強い。腹とか腰とか薄くて細いけど、げっそり肋から下が削れて抉れてたりはしなくて、木刀で横薙ぎに腹にフルスイングして打ち込んでもびくともしないみたいな。 ・手は引っ掻いて怪我しないように深爪ぎみに爪を切る。痩せきった老人かあるいは生命力みなぎる飢えて痩せきった猛獣のよう。指がまっすぐでなく歪んでいるのは筆を持ったりして酷使しすぎたせい。痩せかたと筋や骨や血管は幼い頃からどこか老人のような手をしている。 ・感覚過敏。極寒でごまかしている。 ・肌を虫が這う感覚。コークバク、あるいはシャンビリ。 ・思春期を過ぎてイライラが落ち着いてからは、感覚過敏について開き直り受容し、感触フェチになる。不必要なものでも感触が好きなものは買う。布ものや紙などなんでも。 ・酒を飲めない? 幼い頃に大人から飲まされた酒で急性アルコール中毒で倒れて死にかけて以来、酒を飲んだことがない。
内面:?
エピソード:オオミズアオ標本、オオミズアオ もう死ぬ、って時に殺して標本にした
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osyamojihan · 1 month
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4月10日 近況報告🙋‍♀️
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いつもは最後に表紙を描くのですが今回は先に仕上げてみました✨といいつつちまちま加筆しています。おしゃもじです😌
ブラッドさんのお顔一生上手く描けない!!😂
今朝同人イベントに出る夢を見たのをきっかけにそろそろタンブラーにご報告いかねばと思いまして。なんとか生きております👍️
夢の同人イベントは個人主催のアットホームなもので私は新刊コピー本を2冊持ち込むんですが1冊も出なくて(古傷が痛む!笑)でもとっても楽しかった😊✨✨ 目が覚めてからもリアルでもイベント出たいなー!って思いました。
年度末&始で進捗ゆっくりですが着実に進んでいます😊 5月中には入稿できるかな?というかんじ。いつも以上に自由にわがままに私の好きな両想いキスブラスケベを描けていて楽しいです✨✨(そりゃそうだ)
ここまで見てくださった方どうもありがとうございました😌 春とはいえ花冷えの日もありますので、体調崩しませんよう御身おいといくださいませ😊
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genhone8 · 3 months
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これは愚痴
~【昨今のAI画像生成問題が悩ましい】【2月入ってから仕事しんどい】【1月のセッションに破壊された情緒はほぼ平常に戻りつつ】の三本立て~
 ・悩ましい。なんだっけ動画も作れるようになったじゃん。その以前は海外セレブのディープフェイクじゃん。絵なら「手描きじゃないAI生成かよがっかりだな」でまだ済むけど、動画はさあ~~~。嘘を嘘と見抜けない人にネットは難しいという古来の言葉あるけど難しくなりすぎだろ。どう見抜くんだよ。心眼持っててもきついぞ今後  ・ちゃんとミッドジャーニーをさ……創作の補助として使っている人たちをみてきたからさ…一概に悪とは言い切れないんだよなあ。肩身狭かろうて。俺はそれ否定できねえよ正しく扱ってると俺は思うもの。と、意見探してたらしっくりくるのがあって、『AI生成には「プロンプト生成」と「食わせて生成(image to image)」があるんだよ~~』というのをみて、あ~~~と納得、ひとまずは納得している。そう、俺はこの後者が嫌いなのだ。イヤなのだ  ・俺は絵を描くスキルを持った者なので、絵描きほどバカでかい被害はないんだよね。でも危機感は持ってるからよ……
 ・��あ最近やたらと気が沈むのは上記の三本立てですというかほぼAI学習による頭の頭痛が痛いぐええです。ボスラッシュよ
 ・くっかいはね~~、いいシナリオだったねえ。でも俺のヒビキくんというか私が作る陰鬱な文章って私の精神を破壊する力を十分に持っているので自傷行為しながら書いてるのよねSSを。私はなんだろうな、自分や自キャラの苦楽を包み隠さずにそのままどうにか創作にして気持ちを昇華/消化するんだ  ・汚い例えをすると排便です。快便のときはすっきり!するけどそうじゃない時は苦しむ  ・だから鍵垢くんは便所なんだよな。閑話休題  ・花冷えのSSも並行して書いてるんだけど、勢いで書かない場合の文字って難しいと思う。会話文が多く続くと不安になる。途中で表情の変化とか入れるべきか?と悩む。でも変わんねえから続行しちゃうし、セリフという言葉の濁流をするの好きなんだよなあ…あ~~ん書きあがらないわからない  ・ふせもつくりたい。前編後編で区切ればいいのにねえ…    ・仕事しんどいはまあ。私は仕事が本当に大嫌いなので仕事の話題はマジで口にしたくない目にしたくない耳にしたくない唾棄放棄廃棄すべきコンテンツ、なんすけども。おかげで胃痛というか最近食欲も低下してて「あ~~~~~~~んボスラッシュで胃が縮小してる~~~~!!」と嘆きます。健康から遠ざかってる~~!!がんばってご飯食べてるけどむしろ今までが飯めっちゃ食ってたのか?!いやいっぱい食べることはいいことだと思ってるから今までの方がよかったと思うんだけどどう!?!!単なる加齢!?!!?どうなん!??!?と、なる~~~!!!!  ・通勤時間の話しただけでゲボりかけるけどリアル友人と仕事の愚痴言いあうときは平気というかダメだわこの文章見るだけでダメになってきた。あ~~~ん嫌いどすwork  ・いうて自分から口にしたくないだけで聞く見る話す全部余裕でできるんすよね  ・そう考えるとおれのしんどいってそこまでしんどいもんじゃないわな  ・おわり
 ・三連休ちゃんと飯食え
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manganjiiji · 5 months
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ペンを取れれば勝ちまくり
10時半に寝て、2時に起きてしまった。目が痛い(画面を見ているため)。『ルポ 消えた子どもたち』(NHKスペシャル取材班)の一章を読む。児童虐待の「その後」を明らかにするにあたって、出版されている一般書籍を目につく範囲で購入した。Amazonで(物流が悲鳴をあげているらしいと聞くので申し訳ないと思いながら)注文し、夜届いた。他に『誰もボクを見ていない』『わたし、虐待サバイバー』が届き、『ルポ 虐待サバイバー』が明日届く予定である。今のところ、聞き取り取材、ルポライター、自伝が中心で、学術的な書籍はまだ調べていない。というか、『ACEサバイバー』『子どもの脳を傷つける親たち』以外に見つけられていない(この2冊は購入済で、どちらも2/3程読んだところ)。あとは研究論文(心理学のものが多い気がする)の注釈から専門書を調べて、取り寄せたいと思っている。ざっと見た感じでは、書籍よりも論文からの引用が多く、書籍にまとまった学術書はまだ少ないと思われる。とくに、社会学者がこの問題を取り上げているケースは、少ない。でもなんか私は社会学の方向からこの問題を提起していくべきだと思う。心理学や精神科医の論文は治療のため、ケアのためのものであって、社会問題として世間に訴える役割ではないと思えるから。福祉社会学における先行研究が今ひとつ目に入ってこない。探し方が悪いのだと思う。PCとプリンタ(明日届く)を繋いだら本格的に探して印刷しておきたい。とにかく記憶力が悪いので、何事も紙にしてラインを引いて自分の手でまとめ直さないと頭に入らない。それをしてさえなかなか覚えていられないのだが、とにかく紙に印字された情報を手元に置いておけるのはかなりの安心感がある。電子だとどこにどの情報があるのか、それらをまとめるツールを使わなければならないのだが、そういうのがかなり面倒くさく感じる。これはPCを使っていないからだと思う。PCの起動が基本的に重く、動作も早くないので、せっかちな私はかなりPCとの相性が悪い。軽量化して起動もできるだけ短縮しているはずだし、データも全てUSBメモリに移しており、そんなに本体にデータもないはずなのに、iCloudのような何ものかが無駄に写真を保管していたりして、しかしもはや消し方がわからない。iCloud自体をアンインストールすればいいのか。あとはiTunesに入っている楽曲が重いのではないかと思っている。しかしiTunesは消すわけにはいかない。iTunes内のデータはCドライブにいるような気がするのだが、これは他のドライブに移せるのだろうか。明日調べてみようと思う(毎回調べては挫折している気がする)。
プリンタとPC机(簡易)が届くのを前にして、やっと客用布団をクローゼットにしまうことができた。部屋の半分くらいしかつかっていないので(居室は6畳のはずだがそれより広いと思う)、かなりすっきりというか、がらんとして、寒々しい。机が届いたらまた雰囲気も変わるだろうし、ものが増えて散らかっていくんだろうなあと思う。客用に毛布(として使っているふわふわの敷きパッド)を1枚布団に挟みっぱなしにしていたのを、改めて自分のベッドに移動させたらめちゃくちゃ暖かくて、これなら寝てる間に暖房がいらないなと思う。布団だと暑すぎるので、毛布2枚と敷きパッドで調節している。とにかくふわふわの中に挟まれて寝るのが好きなので、敷きパッドあるいはシーツの代わりに無印良品の毛布を敷き、ニトリのNウォームの毛布をかけ、その上から古くて重い(母からもらった昔の)毛布やふわふわの敷きパッドを乗せ、ベッドを密封している。かなり自分の巣という感じがしていい。寝具を好みに整えることは、安心して暮らせることの第一条件だと思う。実家での私の睡眠環境は最悪だったが、そのことは家を出るまで気づかなかった。折りたたみのパイプベッドに薄い布団を敷いて寝ていたので、どう考えても体が痛かったと思う。そのことを踏まえて、実家に戻った時に(成人してかなり経ってから)パイプベッドの上にマットレスを敷き、それでようやく人間が寝るベッドらしくなった。なぜ私だけ簡易的なパイプベッドを使わされ続け、ベッドを買ってもらえなかったのかはわからない。私が19歳まであの硬いベッドで寝ながら苦しんでいるあいだ、父母兄はマットレスのしっかりした、でかくて高いベッドで寝ていたのだ。糞が。まあベッドが与えられて布団や毛布があり、横になって眠れるだけでかなり恵まれていると今はわかっているので、あまりこういうことを言ってはいけない。親がすること/しないことに関して、特に深い意味はない。大人として、子供の養育に興味がないのだから、子供のベッドを買うということを思いつかなくても全く不思議はない。パイプベッドの硬い骨組みの上で、私が肩こりと頭痛と不眠に苦しんでいても、親には関係のない出来事だった。今はそんなことは遠い記憶なので本当によかったと思う。
日記を書いていたら本格的にお腹がすいてきてしまった。今日は人生2度目の水炊きだった。今日も美味しかった。今から冷凍ご飯に卵をかけて食べればいい気がする。
今日の日記としては、まだやや体が重かったが、風呂に入らずドライシャンプーだけして、Seriaとタリーズに行った。Seriaでまた無駄にあんスタのメタリックカードとクリアカードを買ってしまう。ガチャやブラインドは射幸心を煽り無駄に金を使わせる悪しき風習だ。こんな悪魔みたいな商法を考えついたのは一体誰なんだ。ギャンブルじゃねーか。タリーズではとち狂って苺のミルフィーユロイヤルミルクティーなる激甘かつクリームのせのせのものを注文してしまった。『資本主義の〈その先〉へ』を2ヶ月ぶりに開いた。自分で資本主義とは何で、問題点はどこで、今後社会はどう展望されるのか、説明できるようになるまで、資本主義の勉強は頑張ろうと思う。とにかく「説明できる」というのが大切だ。それはつまり記憶��ているということだ。英検用の教材も一応持っていったが、今日は結局勉強しなかった。勉強再開1日目としては、これくらいの出来なさでもまあ仕方がないかと思えた。帰路、とにかく体が重かった。郵便局とスーパーに寄ることができた。また太ったのだろうなと思う。なんだか疲れは取れないがとりあえず動いていたという1日だった。風呂に入るべきだと思う。
2023.12.14
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shukiiflog · 7 months
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ある画家の手記if.122  行屋虚彦視点 告白
最近は部屋でカガリの真似事しながら過ごしてる。あいつの方法論は真似したくねーから見た目だけ。この部屋で油描くのは難しそうだから。 細かいドローイングとかも嫌いなわけじゃない。こういう綺麗に使わないといけない部屋でおとなしく描くのにはうってつけだし。描くのが嫌いなものを見つけるほうが昔から難しい。
インターホンが鳴ったから出てみる。つってもここに訪ねて来る人は今んとこ香澄さん一人だけど。 とか思って油断しきってモニター見た途端、目に針かなんか山ほど突き立てられて思わず一歩後ろによろけて後退した、…いや、針じゃねえよ…でも目を焼く異物の痛みは片目潰したときに体感したけど相変わらずあれとよく似てんな… 目を細めてモニターに映る二人をじっと見る。香澄さんが「今日もお肉のおみやげあるよ」って言う。 …? 本人見ないことにはよくわかんねーな。鍵を開けて上がってもらう。 長い紫色のため息が自分の口から出た。その場で一度ガクッと脱力して足を折って屈み込む。香澄さんの横の針山もここに来るんだろ…  そんで肉の奪い合いになんだろ…  何でここに来るんだよ…
部屋にきた香澄さんはやっぱちょっと見慣れない色混じりになってた。 まあそういうことのほうが多いし普通ではあるけど…なんか嫌なかんじがすんな… 「……」 いらっしゃいとかも言えなくて何なのかわかんなくて玄関先で香澄さんをじっと見てたら横の見ないようにしてたやつが一声発した。 「ネッチューショーだろ」それだ。 「それ。香澄さんはあんま動かないで布団に寝ててください。体の熱がたぶんやばいことになってます」 香澄さんの手から荷物をとりあげて布団まで誘導しながらあいつもごくごく稀に役に立つこと言うなとか思う。 つーか気づいてんならこんなとこまで来させてねーで病院連れてくなり家に送り返すなりしろよ。預かった荷物を後ろをついてくるそいつに投げて渡す。 「冷凍庫あるから肉守れ」 「はいよ」 俺は香澄さんの対処に回るからな…まあ香澄さんや人間はともかく肉ならこいつもちゃんとした扱いするだろ。現に鼻歌まじりにもう冷凍庫開けてるし。 俺に若干背中押されるくらいの勢いに負けたのかおとなしく布団の上に座った香澄さんに経口補水液を渡す。飲んだのを確認してから横になってもらう。 横になった香澄さんの体に保冷剤を当てに持ってくる。足りなさそうだったから冷蔵庫の中の冷えたペットボトルも代用品にいくつか持ってきた。 「ちょっとすみません、少し触ります」 一言断るのと同時に香澄さんの着てる薄手のシャツのボタンを全部外して前を開けて、腰のベルトを外して緩めた。デニムか、できれば脱いでもらいたいけど今日はあいつも同じ部屋に居るし俺の前でもそんな格好になるのは抵抗あるかもな… いや、でもこの部屋ももともと少し寒すぎるから服は着てたほうがいいか…? 「体冷やしたいんで嫌じゃなければ服は脱いでください、上下どっちかでもいいです。俺やあいつはなんも気にしなくていいんで。」てだけ言っとく。 で、冷やす場所…  体内で体の表面に近い場所を静脈が流れる箇所…だろ…   たまにそういうのだけ見えたりもすんだけど…ググったほうが早いし確実なのか…「ここ、前頸部の両脇」横からメラメラ燃えてるみたいな色と一緒に細い腕が伸びてきてその箇所を指差した。 「…確かだろうな」こんなことでつまんねー嘘つかねえのは知ってるけど疑いの目を向けて毒づきながら言われたとおりにする。「狙える静脈探してんだろ?つぎ、腋の下。その次、足の付け根の前面」 指差されるままにそこに保冷剤当てて冷えたペットボトルを挟む。取れないようにタオルで固定した。 水分補給と体温下げて血流よくして、室内はもともと極寒だし、…やっぱ極寒とか極端なのもまずいかな今は。リモコンで空調をいじって適温まで上げる。あとは… 香澄さんの横に膝をついて考えてる俺の横からビシャッと香澄さんの体に濡れたタオルがかけられた。なんでだか香澄さんは突然の暴挙にもう慣れたみたいな顔してる。 香澄さんが持ってた濡れた服…ここにくる途中か?こいつの仕業か。 「やり方が雑すぎんだろてめえ」 「人体は理屈じゃねえ。身をもってわかってんだろ」 にまっと機嫌よさそうに笑われる。俺は眉間にこれでもかってほどしわが寄ってる、たぶん。 俺の感情と表情筋は母さんの胎内にいるときに今生の別れを告げたっぽいんだけど、なぜだかこいつの前ではそんな別離はなかったみたいに結構なんかしらの表情が自然にできたりする。だいたいこういうしかめっ面みたいのだから俺の好感度が上がる効果はない。 香澄さんが寝てる布団の横の床に深淵をひっぱってきて座る。 最近ポストに入ってた祭りの宣伝みたいな柄の入った団扇で香澄さんの首あたりに向けて扇ぎながら、香澄さんの体から上る色が目に入る。 病気で仕方なく脱いでんのにじろじろ見るのもなぁと思うんだけど、なんつーか…キリストみたいだな…キリストよく知らねーけど。香澄さんの傷跡、しっかり見えてないけどどれももう古い、生傷はない。長く拷問部屋で拷問され続けてある日突然解放された人間みたいだ。 扇いでたら香澄さんが俺のほうを目線だけで見上げてきた。普段より目が開いてないな。 「一度眠ってください。時間が遅くなりだしたら俺が直人さんに電話入れときます」 額に手をあててみる。こういう熱って額で測っていいのか知らねえけど、まだ少し熱い。 香澄さんが戸惑ってるような顔してる気がしたから立ち上がって、この部屋のアリ地獄のまわりにいつもいるウミウシを連れてくる。俺が作ったぬいぐるみ。 ウミウシを香澄さんの枕元に置いて、そのまままた座り込んで扇いでたら香澄さんは眠った。
「おいなんでそれ食ったんだよ俺が丁寧に焼いてただろ」 「このラインからこっちはぜんぶ俺のって決めたろうがよ」 「決めてねーよてめーがそういう血迷ったひとりごと言ってるのは聞いてた」 「焼き加減なんぞにこだわって肉が無事に口に入ると思ってんのかめでてーやつ」 「紛争国や僻地ばっか転々とすっからこう殺伐とした大人ができあがるんだろうな生憎ここは日本なんで」 「この国は大した文明国じゃねえよ守るべき法があるとすりゃ年功序列だ箸どけろ」 「誰がどけるかこれは俺が守りきって立派に焼く なんでそうどんどん食うんだよ生焼けのも 速度的に俺が完全に不利だろ」 「不利ってなんだよてめえが好きこのんでじっくり焼いてんだろうに どうぞいくらでも時間かけてのらくら焼けよ」 「鉄板の上にあるものぜんぶとりあえず食うとか人間として最低レベルの蛮行だからな つか自分で引いたラインすら守ってねえし」 「蛮行で上等 焼肉は戦争だろ」 「もともと俺に食わすために買ってもらえた肉だってことを思い出せよ」 「目の前にある肉を逃したことがねえ俺もついでに思い出しな」 「あの…焼くのは俺が…「「それはダメだ」」 向かいの浮浪者とちょうどハモったから交代で続ける。 「香澄さん、肉をめぐる争いってのは本人同士で殴り合わないと誰も納得しないですよ」 「そういうこった。やっぱ数でおされてるほうの人間の言葉の説得力は一味違うな」 「…」 顔だけ香澄さんのほうを向いてるまま横目でジロッと睨む。 普段は無神経な直球の暴言とかばっか爆弾みたいに投下してくだけで言語にほとんど脳内使ってねーくせに肉が絡むと少し饒舌になりやがる。 香澄さんはさっきから食べないで自分の肉を皿に確保してってる。宝の貯蔵…そういう戦争の仕方もありだな。 と思ったら香澄さんの皿に箸を伸ばして浮浪者が平気な顔してそこから肉を食べた。領土侵略だ。香澄さんは唖然としてる。 「うつひこくんに取っといたぶん…」 無意識みたいに口から出た言葉に向かいの浮浪者が床に両手をついて首を仰け反らせて笑う。 「誰の手にある皿かなんて気にするかよ」 「いや気にしろよ」 宝は俺のだったのか…。
三人で同じようなやりとりを繰り返しながら肉を焼いてたらあっという間に肉はなくなった。 ガスコンロの片付けをする前に三人で焦土と化した戦場跡に寝転がる。何日かぶりにめっちゃ食った。うちは母さんも含めて肉族だったから実家には焼肉用の庭と炭火焼ができる用意が常にある。 香澄さんは一度眠って起きたらとりあえず体は楽になったみたいだった。起きるまでの間に時間みて保冷剤を交換したりタオルを変えたりした。 「うつひこくん、さっき俺が起きるまで扇いでくれてたの疲れてない?」 今は香澄さんは布団じゃなくてアリ地獄に沈みこんでる。 「俺も深淵に座ってたから寝てたようなもんですよ」 「深淵。」 復唱されてそういえば名前はまだ誰にも何も言ってなかったのを思い出す。 「人をダメにするソファの、香澄さんが今埋まってるオフホワイトのやつがアリ地獄で、俺が今座ってる濃紺のやつが深淵、て名前です」 「なまえ…うつひこくんがソファに付けたの?」 「そうすね」 物に名前つけるの好きなーお前、とか言ってるやつを脚を伸ばして蹴る。余計なこと口走るなよ…てか覚えてたのか、いや適当言っただけか。 「あ、俺うつひこくんのお父さんに渡すものがあって…」 香澄さんが唐突に紙袋の中から絨毯みたいな綺麗に折りたたまれた布を取り出した。…あいつがいつも着てるやつ。だから今日着てねえのか。 「なんで香澄さんがそれ持ってんですか?」 「なんでお前がそれもってんだ」 同時に発した俺とあいつの声が重なって、空間に文字浮かべてみたら言ってることも内容ほぼ一緒で苦い顔になる。 「お祭りで俺が池に落っこちたとこを助けてもらって、そのとき貸してもらってたんだよ」 香澄さんは俺に説明してくれる体で話す。俺より貸した張本人のほうがなるほどみたいな顔してっけどなんでてめーは忘れてんだ。 「クリーニングに出してたからちょっと返すの遅くなったけど、あのときはありがとうございました」 香澄さんがお礼と一緒に両手で分厚い布を差し出すのをそいつは受けとると、すっと立ち上がって布の襟首部分だけ掴んでその場でバサッと広げて袖は通さずに羽織るみたいに肩に掛けた。…こいつ自身の色が一番やべーけどその絨毯の色もかなりキツイからさっさと出てってくんねーかな、座っただけで床に裾が大きく広がってやたら面積とるし。 そろそろ飲み物とか欲しくなってきたからキッチンのコーヒーメーカーでコーヒーを淹れにいく。 「香澄さんはそん時こいつと知り合ったってことですか」 豆をセットしながらリビングに向かって訊く。 「うーん…それより前にも会ってるんだけど…知り合ったってわけじゃない…のかな」 そいつとちゃんと知り合うのってなかなか難関らしいからな…。色々すっ飛ばすし、母さんと結婚するときも突然結婚したらしいし。 話題に上がってる張本人は俺が作ったウミウシとかムニムニする丸いボールとか直人さんちにたくさんいた怪獣を俺が真似て作ったやつをひとつひとつ両手で持ってはじっと見つめあってる。 香澄さんと俺のぶんのコーヒーを持ってって香澄さんに渡す。俺もコーヒー飲みながら深淵の上に腰かけ直したら、怪獣を持ってたそいつが突然部屋の中からハサミとか簡易の裁縫道具とかを探り当ててついでに俺の服もひっぱりだして容赦なくハサミを入れだした。 「オイ狂人!俺の服だぞそれ!」 よくわからない異国の言葉みたいなので歌いながらハサミが迷いのないラインで布を裂く、リズミカルにどんどん服が切り抜かれてそれを針と糸で怪獣に縫い付けながら、 唐突にそいつが首のけぞらせて笑いながら目を閉じて 空気中に高い声を発した 「ーーーー………」 尋常じゃない悪寒 聴いてはいけないもの 暗い孤独の淵からの 受け取り手のない交信を求める声 部屋の中を巨大な 部屋におさまりきれないくらいの 強い風なんて吹いてないのにまるでさざ波みたいな風が 色を連れてざあっと通りすぎていく クジラの声、だ。海中の。こいつが機嫌がいいときに出す声。というか音というか。 …俺はこいつの出すこれだけは、昔から嫌いじゃなかったりする。綺麗だ。 「…」 とか思ってるうちにハッと気づいたら目の前に変わり果てた姿の怪獣ができあがってた。声に気をとられた。 「なんでこういうことすんだよ…」 げんなりしながら見せられた怪獣を手にとる。 なんか背中の棘が増量してるし顔も微妙に凶悪になってるし指先とかあちこち全身に俺の���(黒い)がトゲトゲひらひらくっついて全体の質量が倍くらいになってっし…完全に原型留めてねえ… 「暗黒面に落ちてる…。ダース・ベイダーかよ…」 「俺記念に写メ撮っとこ」 俺の隣で意外にも抵抗感なく楽しそうに香澄さんは暗黒面に落ちた怪獣の写真撮ってる。 「あの…迷惑じゃなければこれ香澄さんがもらってください」 「でもうつひこくんが自分用に作ってたんじゃないの…?」 「いや、直人さんちにこいつがたくさん居たんで、こいつが居ると香澄さんが落ち着くのかと」 なんか俺いま押し付けがましいこと言ったな…と思って言った直後に後悔する。表情筋と感情のWi-fiが切れてるとこういうときは助かる。香澄さんは俺の言葉にむしろにこにこしてた。 香澄さんが持ってきた空になったバッグの中に暗黒面に落ちた怪獣がおさまった。 諦めて深淵の上に倒れこんでコーヒーを飲む。 …直人さんの家、香澄さんが落ち着く…か…。 「そういえば香澄さんは直人さんの運転での送り迎えとかじゃなくて今日徒歩なんすよね。この時期かなりリスキーな気がしますけど…」 熱中症なりかけてたしな。もしも重体だったら今こんなことしてられないけど、色は落ち着いてきてるし嫌な感じも鎮まってる。 今の直人さんが香澄さんを送り迎えしないでほっといたのがちょっと意外な気がしたけど…これってなんか無礼な詮索が過ぎてんのかもしれないしな… 「直人は仕事で忙しそうだから」 香澄さんがぽつりと落とした言葉が床にベシャッと広がる。…いや、それは違うんじゃ… 「…香澄さんがガンガン用事とか頼みごと言いつけないとあの人際限なく描きますよ」 あそこに引っ越してきたのがまだ最近のことだろ、であのアトリエにはあれだけ山積みになった作品やら紙面やらあってアトリエ以外の部屋にも山積みになってたけど直人さんが画家に戻ったのも多分引っ越しと同時期くらいだろ、あの人は習作をいつまでもとっとかないし、あのペースは一番むちゃくちゃに量描いてた頃の俺と同じくらいだ 俺よりあの人のほうが体力あるし、前より体鍛えられてたし、全然考えなしでああしてるんでもないんだろうけど 「俺はあの人もっと早くに死ぬと思ってましたよ。自殺未遂とかやらかすからじゃなくて、死ぬまで描くのをやめないから。…そういう風にしか描けない人間を、俺とかこいつとか画家連中は特にどうもしないけど、香澄さんは違った、ってことだったんじゃないんですか」 くたばってた深淵の上から起き上がって香澄さんのほうを見る。 「え…どういうこと…?不眠不休でずっと描き続けてたとか…?」 「………。」 これは…俺が言っていいことじゃない、のか、それとも直人さんがああだから俺以外に言える人間がもしかしていなかったりするのか…。 直人さんが今も死なずに画家として生きてるのは香澄さんの存在が大きいはずだ、それは香澄さんが画家じゃなかったからで、…だから画家のあれこれなんてものと香澄さんが無縁な存在でいることが重要なのかもしれなくて、…でも香澄さんが家族として直人さんを遠慮なくこき使うくらいがちょうどいいのもあるとは思う …全部ただの俺の勝手な想像だし、ここまで踏み込む権利もない、か 一歩間違えれば全部瓦解するような繊細な事情を孕んでんのかもしれねーし わかんねえけど… 「…や、よその家庭に出すぎたこと言いました。忘れてください」 つくづく考えたり人の事情を察したりってことに向いてねえな俺…。
その時、久しぶりに感じる気配がして、俺が深淵から飛び起きるのと同時にあいつも目つきを少し細めて変えた。気づいたらしい。 …まだマンションの外なのか位置情報が正確に出ねーけど、ここにさらにあの人も加わったら流石に俺の対応が捌けなくてそれぞれ雑になりそうだしと思って、香澄さんとそいつをとりあえずエントランスまで押してってタクシーに乗せる。 タクシー券があったから使って、香澄さんには経口補水液のペットボトルを渡した。うっかりコーヒーとか出して完全にミスった、脱水を促すからNGだろ…。 行き先は香澄さんが帰れるように直人さんちにしたけど、こいつはまあ好きなとこで停めて勝手に降りてどっかいくだろ 「ウツ。なんかあったら呼べ」 タクシーに一緒に乗せたあいつが珍しいこと言うから咄嗟に言葉が出てこなかった。 呼べったって、ケータイも持ってねえやつをどう呼ぶんだよ…それに何かってなんだ。
そのままタクシーを見送ってから、今度約束してた金魚もらいに行かねえとな、とか思う。
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nemumizawa · 9 months
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コンビニ
思い立って握りしめたのは781円。深夜のコンビニには相応しい額だと思った。短パンには取れないシミの付いた安っぽいTシャツ。無造作に投げられたスリッパを履けば心が僅かに踊った。夏の夜は嫌いじゃない。無論冬の夜の方が好きではあった。唯一夏を肯定するとすれば深夜のコンビニだと思う。静まり返った夜道は耳を澄ませたくなる。砂利を踏む足音と、握りしめた小銭が擦れ合う音。深呼吸してもむせ返るような冬の夜風は入ってこなかった。大きく息を吐く。昼間よりは幾分下がったその熱は未だ生温く漂う。特に当てもなく入ったコンビニはやはり眩しすぎて眩暈がした。ふしだらな格好が世に晒されているかのように感じて体がほてる。気だるそうに商品を陳列している店員と僕だけのために照らされた明かりだ。そういえばゴミ袋がなくなりそうだったから、コンビニへこの時間に来なければいけなかった理由を後付けした。オプションで買ったアイス。ゴミ袋に包んだアイスに背徳を覚えてはまた熱気に包まれる。夏の夜は嫌いじゃない。きっとこれからも。耳を塞ぎたくなるような静けさも、生温い風も、時折触れる夜風も。ああ、このままここに居たいや。なんて思ってしまった。
微熱
思い返せば全部僕からだった。君は自分から好きになったんだと最後まで言い張ったが、その気持ちを伝えたのも、それを終わらせたのも、全部僕だった。君の無邪気さと子供っぽさのせいで騙されていたけれど、いつも選択を迫られてたのは僕で、選ばせてあげてたつもりが選んでいたんだと悟った。いつだって君は僕のあとをついてくるかのように、子供が母親の真似事をするかのように。好きだよ、と伝えればそれ以上の愛をくれたから見過ごしてたけど、君が僕を他の誰かに自慢したことはなかった。君が抑えきれず僕への気持ちを綴った文字はなかった。いつも君が僕よりも大きな愛で包んでくれていると思っていたから、気づかなかった。僕が好きだと言えばそれ以上の好きをくれた。僕が君を思って書いた日記を見て君も綴った。僕が君を思って。君は僕を思って何をしたんだろう。もう好きじゃないんだ、と告げた僕を見て、本当に悲しそうに俯いた。けれど次の呼吸ではすでにそれを飲み込んだ表情が見えた。「ほんとにこれでいいの?」と君は僕に問いかけた。うん、としか言えなかった。「あのとき、君はどうしたかったの?」なんて口にすればあまりにも子供で、ずっと下がらない微熱のようにうなされて。
1K
理想がある。限られた必要最低限の広さで、自分だけの居場所を作る、もっぱら最近のブームはこれだった。と言うのも、夏の暑さにうんざりして、模様替えをすれば心なしが涼しくなるような気がしていたためだった。考えることは楽しい。没頭できることがあるのは幸福だと感じる性分だ。古いメジャーを引っ張り出して、縦と横のセンチの世界にのめり込む。どんどんと頭の中ではイメージが浮かんではひとりわくわくする。数センチの誤差を気に揉んで一旦冷静になる。おかげでスマホの検索欄は家具ばかりになっていた。好きなものだけを詰め込みたかった。例えば本が好きだ。本に囲まれて過ごす朝も昼下がりも深夜も、それは心踊る空間になるだろう。自分で撮った写真なんかも飾ったりして。そうするとカメラを持ち歩いて外に出るのももっと楽しくなるんじゃないだろうか。深夜の眠れない夜に1人、映画を鑑賞してそれっぽい雰囲気に飲まれることもしてみたい。理想はなくなることを知らない。きっと全てが叶ったとき、僕は部屋から出られなくなるだろう。だからきっと、理想や願望叶わないくらいがよくて、1Kくらいの限りある空間がちょうどいいのだと。
擦り傷
冒頭で出てきたアイスを食べることにした。少しカップが柔らかくなっていて、夏を感じさせる。小さい頃の贅沢は、バニラアイスにカラフルスプレーをたくさんかけて食べることだった。ある日家族といったホテルのバイキングで、カラフルスプレーがたんまりと置かれていた。その色鮮やかなものは特別な時だけ出てくるもので、日常的に食べられる板チョコのような存在とは程遠かった。幼い僕は目をキラキラさせてゆっくりとアイスにそれをまぶした。どれだけかけていいかわからず、周りを見ながら1度、2度、3度と。「それ、アイスよりかけてる方が多いんちゃう」と母に言われ、口篭ったのも懐かしい。あれからその至福はそこでしか味わえないと思い、そこへ行こうとねだった時もあった。いつしか成長し、訪れたときにはその宝石のようだったカラフルスプレーはなくなっていた。あれから僕は大人になって、小さい頃の夢をご褒美として時折叶えている。コンビニのバニラアイスにスーパーで買ったカラフルスプレーを思う存分かける。子供の頃はどれだけ食べたくても許されなかったそれが、今ではこんな簡単に手に入ってしまう。少し寂しかった。あの頃よりも幸せの味はしなかった。大人になると、幸せを感じる頻度も量も少なくなってしまう。それが幸せだったのだと気づいてしまったとき、そしてその幸せを今の自分はもう感じられないんだと知ってしまったとき、身に覚えのない擦り��を見つけた時に似た痛みを感じた。
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各界著名人から衝撃&絶賛の声続出
第27回釜山国際映画祭で「『パラサイト 半地下の家族』に次ぐ大傑作」「ユーモア、サスペンス、アクション…映画のすべてが詰まった衝撃作」と称され、本国の公開でも、観客・批評家の熱狂を呼び、スマッシュヒットを記録した本作。このほど、日本のあらゆるジャンルの各界著名人からも絶賛コメントが到着しました!
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相沢梨紗(でんぱ組.inc)
心のブラックホールを埋め合うように引き寄せ合う人々。
家、家族、愛、お金…。
求めれば苦しく、諦めれば虚しいのか。
人が幸せに生きる為に、幾つの要素が不可欠なのか…
いつか、その答えは見つかるのか?と考え込んでいます。
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あんこ(映画超好き芸人)
2つの訳あり家族が出会い起きてしまった化学反応は、予想外のラストを生み出しちゃった!!
この映画ハッピーエンドだったのかアンハッピーエンドだったのか…しばらく考え込んで座席から立てなかったよ!
人や社会の温もりと冷たさが交差する、飴と鞭の物語。
心かき乱してくる傑作!!
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ISO(ライター)
通過地点であるはずのサービスエリアから抜け出せない家族に、
"モノを生まれ変わらせる”リサイクル家具屋の店主が手を差し伸べる。
人が人を助けるのは素晴らしいこと。だが本来貧困から人を救うのは人情ではなく福祉のはず。
この格差社会を描く寓話の顛末を、どうしても他人事だとは思えない。
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一宮彩夏(Jams Collection)
高速道路のSAで暮らす家族にまず衝撃を受けましたが、お金によって少しずつ豹変していく父、子供たちを守ろうとする母、まさかの衝撃の展開に最後まで目を離せません!!
私たちが今、普通に生きてる世界が当たり前じゃない、
人と人との繋がりで変わっていく環境や感情を是非見て欲しいです!
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桂まり(ライター)
チョン・イルは、優しくかつ頼れる役が多く、紳士でファッショニスタとしてつとに知られる。
そんな彼が驚きを隠せない新境地で魅了。
さらにどの作品でも心を掴んで離さないラ・ミラン。
チャーミングなキム・スルギ。
そして子役の存在感も尋常じゃない。
傷ついた心とどう向き合う��、深く考えさせられ余韻が残る。
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加藤るみ(タレント・映画コメンテーター)
世の中はそんなに甘くない。
負の連鎖は続いていくが、断ち切る力が必要だということ。
父親にやるせない想いを抱きながらも、断ち切れない愛の意味をずっと考えていた。
怒涛の展開に瞬きする余裕はない。
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K(シンガーソングライター)
主人公たちがそれぞれ深い傷を抱えながら生きている姿に小さい光のような希望を感じました。
きっと僕らも気づいてないだけで、もうすでにその幸せを手にしているかもしれない。
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佐々木俊尚(作家・ジャーナリスト)
投資詐欺に巻き込まれてダメになっていった夫の人生、それにけなげに付き合いながらも、この生活からどうしても脱したいと願う妻。
このふたりの思いが交錯し、そこに彼らを支えようとする家具店主が寄り添っていく。
物語も脚本も演技も素晴らしく、たしかに『パラサイト』以来の傑作と言わざるをえない。オススメ。
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SHIHO(モデル)
運命とはなんだろう。
人として、親として、この世を生きていく上で、大切なことは一体何なのか。
全ては自分が創りだすものだからこそ、それについて考えさせられる映画だった。
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清水あいり(タレント)
"子は親を選べない"
そして、どれだけ苦しい環境に置かれても
心が離れる事はない、離れられない、血の繋がったたった一人の親だから。
だけどウニは"この親を選んで"生まれてきたのかもしれない…
この子にとっての家族とは?幸せとは?
すごく考えさせられ、胸が締め付けられる作品でした。
ウニの優しくて力強い目の演技に感情揺さぶられました。
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ジャガモンド斉藤(映画紹介人・芸人)
過ちを犯して社会から爪弾きにされたとしても、”家族”だけは帰れる場所だと信じたい…!
しかし、家族は個人と個人の集合体で、
誰かを守るために何かを犠牲にするある種の社会なのかもしれない。
この映画、静かで残酷だ。
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SYO(物書き)
孤独を打ち消す安息の場所か、個の意志を縛りつける鎖なのか。
貧乏は普通か?一緒にいることが本当に正解か?幸せとは?
気持ち一つで変動する「家族」の価値を、リアルタイムに活写。
自身と断絶したエンタメだと傍観していたら、その影は足元に。
かれらを蝕む貧富の延長に我々はいる。
確信的にこわい映画だ。
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末廣末蔵(ジャンル映画大好きツイッタラー)
高速道路で生活する家族、どん底ながらも、家族の絆と他人への親切心に溢れる韓国社会では不思議な多幸感さえ感じさせる日々。
しかし破滅的な暮らしは徐々に心身を蝕み、辿り着いた安らぎの地ではこれ迄のツケが一気に回って来る悪夢の展開に…
彼らの幸せを心底願わずにはいられないラスト、あなたにはどう映っただろうか?
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高橋愛(俳優・モデル)
人間とは こんなにも儚く美しい生き物なのだな、と感じました。
一生懸命生きる家族がどんどん形を変えていって
でも、そこには必ず愛がある。
こんなにもみんなが愛に溢れているのに、どうしてこんなにすれ違ってしまうんだろう。
子供達の「お父さんも一緒に暮らしちゃダメなの?」と言う
真っ直ぐなセリフが心に刺さりました。      
俳優さんの演技がとにかく素晴らしく、子供達の演技にも心打たれました!
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立石晴香(女優)
近年、身近に感じる格差や物理的に恵まれていても心が満たされない人もいる混沌とする世の中。
それぞれのキャラクターの抱える背景を渾身のお芝居で表現していて、「幸せ」とはなんだろう、と呼びかけられる。
胸が痛くなるような熱くなるような心に刺さる一作でした。
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ビニールタッキー(映画宣伝ウォッチャー)
これは衝撃…。
困っている人にそっと手を差し伸べる優しい物語が心を温かく包み込み、同時に心を引き裂く。
傷付いた者同士の絆が愛を生み、時に愛を遠ざける。
本当の人間ドラマとはこんな風に喜劇と悲劇が深く混ざり合ったものなのかもしれない。
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古家正亨(ラジオDJ・MC)
真の豊かさとはなにか。
それは富める者だけが持てるものなのか。
それとも貧しくとも「幸せだ」と感じる者が持てるものなのか。
この映画のエンディングは、その「解」を観客に委ねるのだ。
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まつきりな(タレント)
タイトルとビジュアルから目を引く作品ですが、終わった後、家族について考えさせられました。
どんな形であれ家族。家族という呪いのようなもの。
自分がどういう環境で育ったか。そういったところでも、作品の見方や捉え方が人それぞれ違うと思います。
後半になるに連れ引き込まれていく展開と演技力がすごく素敵でした。
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峰島こまき(ナナランド)
家族のあるべき形、親になるという責任がこうやって現実になるんだなとすごく思いましたし、「母」という存在が子供のためにと覚悟を決める強い2人にすごく心を打たれました。
幸せとは何なのか、家族と過ごせる事が幸せなのかすごく考えさせられる映画でした。
私は親に会いたくなりました。
そして最後の驚きの展開に注目です。
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ミヤザキタケル(映画アドバイザー)
何故そんな生活を選ばなければならなかったのか。
断片的に語られるものの明示はされず、彼ら家族に寄り添うのは難しい。
そういった描き方をマイナスにも感じるが、その寄り添えなさには一考の余地がある。
見知らぬ他人の心の内は覗けない。手を差し伸べるには理由がいる。
映画的というよりも現実的な人の描き方が、
無関心・不寛容なこの社会で他者を思い遣れることの意義を問う。
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みんしる(韓流イベントMC)
高速道路のサービスエリアにテントを張り生活をするホームレス親子。
家族さえいれば幸せだったはずの生活は、ある「善意」をきっかけに形を変えていく。
父親を演じたチョン・イルの熱演が凄まじく、思いもよらない結末に苦しくなった。
この家族の「幸せ」はどんな形だったら良かったのだろう。
見終わった後も余韻が残る。
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山崎敦子(フリーライター)
多くを語らずして深い悲しみをにじませるラ・ミランの繊細かつハートフルな演技。
これでもかというくらい汚れ役に徹したチョン・イルの圧巻。
貧しさとは?家族とは?幸せとは?
シンプルだけど奥深い普遍のテーマが心に迫り、観終わった後もなお胸を締め付ける。
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雪見みと(女優)
家族の絆だけでは説明できない、慈悲とか恩愛とか、曖昧な情について考えさせられる作品でした。
衝撃の結末に私は「よかった」と思ってしまったけど、賛否両論が生まれるな~これは!
今すぐ誰かと語りたい!
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Yumi(フリーアナウンサー)
社会の深刻な裏側をリアルに描いていて胸が締め付けられたが、子供達の純粋さと賢さに一筋の希望の光を見た。
チョン・イルさんの鬼気迫る演技は、もはや“時代劇プリンス”のイメージを見事に払拭している。
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韓国ドラマ好きのだらだら子(韓国作品ライター)
観る前と後で、今まで見ていた世界が違って見えてくる。
もし自分ならどうする......?と正解のない問いを投げかけてくるようで、
明日からどう生きるかを考えずにはいられなくなる。
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金承福(韓国語専門の本屋チェッコリの店主)
愛と情の違いが分る映画でした。
家族が一心で人の情けを乞うシーンと
子どもが段々恥を知っていくシーンは本当に見事でした。
80年代スーパーアイドルだったイ・サンウンの歌が流れていてびっくり。
軽やかなリズムと中性的なボイスで、中盤から20代になって映画を見ました。
音楽の力って時空を自由にしてしまうんですね。
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KEI(韓国系インフルエンサー)
「2万ウォンだけ貸してください」日本円にするとたった2,000円程度。
そんな一言がきっかけで〝人生〟が狂うなんて誰が想像できただろうか……。
あっという間の128分。とんでもない結末が待っているこの映画、シェアせずにはいられない。
見終えた後に〝本当の幸せとは何か〟思わず誰かと語り合いたくなる作品。
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にこ(韓ドラライター)
サービスエリアを転々とするホームレス家族と、裕福な訳あり社長夫婦が出会ったことから想像を超えた衝撃の結末に。
コメディタッチの冒頭の楽しさからは思いもよらない展開へと進むストーリーで、言葉にできない感情で胸がいっぱいに。
「2万ウォンだけ貸してくれませんか?」チョン・イルの壮絶圧巻の体当たり演技が見事。
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韓流エンタメ情報局・ゆうやん(韓国ドラマ系YouTuber)
社会から疎外された家族をまるで独立映画のような生々しさで描き出す。
その独特な世界観が私たちを惹きつけるわ。
泥臭さ満点な父を演じたチョン・イルの名演を初め、助演から子役まで韓国俳優の演技力が一際光る。
家族とは?幸せとは?その意味を考えさせられる強烈なメッセージと衝撃のラストに注目!
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MIU(韓国系インフルエンサー)
詐欺は決して良い事ではないけれど、冷たい現実の中にある人々の温かい一言は、誰かを救うかもしれない。
社会も守ってくれなかった家族に手を差し伸べる1人の女性を通して、人と人との絆や信頼、家族の大切さを感じる事ができる作品。
出演陣の演技に圧倒され、またサービスエリアを転々とする家族の視界に温かい自然が広がるなど、美しい演出にも楽しめました。
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k1kawa · 1 year
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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ考察④ キャラクター別考察その1 ヌードルスについて❶
 ここからキャラ別に色々考えていきます。初めは主人公ヌードルスから。
ご注意!
女性へのレイプといった暴力行為を話題に出しています
キャラクターをけちょんけちょんにしています
殺人に対する行動の早さを褒めてたり、主人公以前に筆者の倫理観もずれています
 ヌードルス、本名デイビッド・アーロンソンというキャラクターは私にとってかなり不思議に映ります。暴力的だし人を殺すし女性をレイプするし、最終的には密告によって意図ではないとはいえ友人たちを死に至らしめる……あれ、クズだな? でも嫌いに���れないどころか実際に交流したら気に入ってしまうんだろうなぁと何となく思います。個人的にね。なのでその点を掘り下げていくのが議題その1 ということで。
・映画本編から推測するヌードルスのいいところ
 本編の初めの方で、阿片窟から中国系の店員に逃がされるシーンがあります。私は初見のとき「え、逃がしてくれるんだ?!」と思ったのを覚えています。だってはっきり言って、中国系の彼らにヌードルスを庇うメリットはありません。葬儀屋が彼を除いて全滅したのは新聞でニューヨーク中に広まったでしょうし、追われていることからヌードルスはもうニューヨークを出なければいけない。端的に述べてヌードルスはもう落ち目です。むしろ差し出して恩を売った方がいいです。私ならそうします(生き意地汚いので)。じゃあ助ける理由とは? これはもう中国系の彼らにとってヌードルスには何らかの恩があった、という背景があったと考えていいでしょう。アメリカにおいて中国系はマイノリティで迫害に晒されていたのは言うまでもなく、さらに中国には恩を返すことこそ至上、という文化があります。そう考えると中国系店員たちの行動は何ら不自然ではないのです。
→ ヌードルスは人種で(少なくとも中国系は)人を虐げない
 次にモー。彼はヌードルスの居場所を吐いた張本人ですが、よく考えてください。吐く前にもうすでに痛々しいくらいボコボコにされています。音声解説でも「この映画で一番痛いシーン」と言っていましたね。モーが吐いたのはイヴが殺されたのを知り銃口を口に突きつけられたとき。つまり強く命の危険を感じたからです。拷問に耐えかねたのではなく、死にたくないので吐かざるを得なかったのです。私なら銃を突きつけられる前にゲロります(痛いの嫌なので)。ここでモーから、たとえ半殺しにされても仲間(ヌードルス)は売らないという熱い心が読み取れますね。
 そしてヌードルスがやってきます。たぶんさらば禁酒法パーティ以来の再会。すなわち他の仲間がヌードルスの密告のせいで死んだあと。ですがモーに彼を責める様子はありません(モーの立場と性格もあるのでしょうが)。たとえ向こうが「じゃあ俺共同基金もらって逃げるから」宣言してもです。モーはわかっているのです。ヌードルスが決して私利私欲のために仲間を売ったわけではないのだと。もちろんそう思わせる背景にはマックスが計画していた連邦準備銀行襲撃があったのでしょう。
→ 仲間から厚い信頼がある
 まだ青年期です。宣言通りヌードルスは共同基金をロッカーから頂戴しようとします。でも中身は古新聞。個人的な話ですが、初見のときこのシーンが何なのかまるでわからなかったのですよね。二周目で理解しました。だってヌードルスがあまりにも冷静なんですもん。100万ドルはあったはずの中身が古新聞にすり替わってる、わけがわからなすぎてもうちょっとわかりやすいくらい動揺してくれてもいいんじゃないか、と私は思いますがヌードルスはそんなの時間の無駄で、今は逃げなければ危ういと理解しているので冷静にニューヨークを発つのです。
 遡りますが、逃亡中モーの店に行ったヌードルスは、入った時点で追手がいるであろうと考え、確認もしていない敵を罠にはめて殺害。持ち前の機転と冷静さがもたらした結果です。
→ 冷静さを失わない
 35年ぶりの友人に随分厚かましいな、と思わせる老年期はとばして少年期に入ります。人の店でトイレタイム邪魔するわ料理はひっくり返させるわ傍若無人の少年ヌードルスくん。……老年期と合わせて考えると結構厚かましいなこの人。でも許してしまう魅力というか、茶目っ気があったんでしょうね。閑話休題。ここで登場する少年時代の仲間、パッツィーとコックアイ、そしてドミニク。前の二人の生年を鑑みて同年代と思われますが、どう見てもリーダーとして扱われているのはヌードルス。バグジーからの報酬で一ドルかカツアゲかを選ぶのも彼なのですよね。
 話を進めてアパートのシーン。「親父は祈るだけ。お袋は泣き通し。電気も止められた。家に帰る理由なんてない」という台詞があります。この発言からヌードルスの家族、アーロンソン家はかなり困窮している、ということがわかります。彼の言う両親の様子を鑑みるに、下手したらアーロンソン家の一番の稼ぎ頭は子どもであるはずのヌードルスだったという可能性も浮上します。13〜15才と推測できる子どもが家族を養うだけの稼ぎを得るには、それこそ非合法な仕事に手を出さざるを得ません。まあ割には楽しそうなので性には合っていたのでしょう。以上を踏まえてグループのリーダーを務め、おそらく家族を養っていた背景が垣間見られます。
→ 責任感があり、引っ張る力がある
 少しとんで、バグジーの支配に見切りをつけ新しい商売相手を探して営業中のヌードルスとマックスたち。彼らの売り込みポイントは、海に捨てた酒の回収方法。あらかじめ酒の入った箱にウキと塩をつけるというもの。マックスの発言からして発案したのはヌードルス。そもそもヌードルスというちょっと変わったあだ名には脳みそいっぱい詰まったやつ、つまり切れ者の意が込められています。原作の『The Hoods』のヌードルスも、進学しないのを校長に惜しまれるほど成績が優秀だったと描写されています。このあだ名が変わっていないのはそういうことなのでしょう。読書家の一面も見せていますしね。
→ あだ名になるほど頭がいい
 一端の稼ぎを得たヌードルスたち。我がもの顔で街を闊歩します。しかしそれも束の間、彼らはバグジーの強襲を受けました。その凶弾で犠牲になった一番の年少だったドミニク。傷ついた彼を、危険を顧みず陰に引っ張ったのはヌードルスでした(一番近かったのはあるでしょうが)。ドミニクはヌードルスの腕の中息を引き取ります。それでもなお少年たちの命を狙うバグジー。ここ、初見だと激情に駆られたヌードルスが怒りのままバグジーを刺した、という見方にどうしてもなりがちかと思われます。しかしこのシーンを一個のカットも見逃さず見ると、そうではないとわかります。バグジーがゆっくり歩き、それを注視するパッツィー。ですがバグジーは数歩戻り、不気味な笑みを見せます。それを見て逃げ出すパッツィー。この通り、ドミニクの次に小さいパッツィーをロックオンしたバグジー、という描写なのです。実際それに気づいたマックスが動き出しています。けれども一歩早く動き、パッツィーの危機を救ったのはヌードルスだったのです。といってもぶすぶす刺してる間に冷静さを失い、何も悪くない警官まで刺してしまいますが……。
→ いざという時は誰かのために動ける
 懲役12年を過ぎて青年期です! ここら辺は前のシーンで示されたヌードルスのいいとこの復習みたいなものなので読み飛ばしても無問題です。まず12年ぶりに顔を合わせたのにマックスだと一目でわかったこと。パッツィー、コックアイはマックスの一言が寄せられていましたが、ヌードルスの様子を見るに一目でわかったのでしょう。実際髪の色や体格がだいぶ変わったペギーのこともわかりました。もはやこれは記憶力はもちろん頭の回転が早いと言えますね。ヌードルスのあだ名は伊達じゃない。
 次にジョー始末のシーン。超個人的ですがここのヌードルスが私は一番好きです。あとの場面でわかりますが、ジョーが撃たれた時点でヌードルスは作戦の概要を知らないのです。戸惑った表情こそ見せましたが、一人逃げたとわかると彼は何も言わず銃を持って飛び出し、始末しました。聞かされていないのにこの機転の良さは素直に憧れます。その後のマックスへの説得も、シンプルながらも仲間を思う強さも伺わせます。
とりあえずここら辺でまとめますと、
・ヌードルスは人種で(少なくとも中国系は)人を虐げない
・仲間から厚い信頼がある
・冷静さを失わない
・責任感があり、引っ張る力がある
・あだ名になるほど頭がいい
・いざという時は誰かのために動ける
・機転が良い
・仲間思い
 といった感じです。いいやつに見えてきたな……? そんなことはないのでこれより「ここを直せヌードルス」の項目に移ろうと考えていましたが予想以上に長くなってしまいました。別に私ヌードルスくんのポジティブキャンペーンしようと思ってこの記事書き始めたわけじゃないのに……というわけで❷に続きます。
 
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ezoelino2 · 1 year
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迷子ノ廻 仮
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遭遇
『早く帰りたい…寝たい…』
スマホの時刻盤は午前一時を当に過ぎていた。
その日、いつも使っていた道は下水道工事で通行止めの規制がされていた。
迂回路はあるにはあるのだが、正直あまり通りたくない。
何故なら
あの通りには曰く付きの神社があるからだ。
あの神社には
『深夜に現れる狐のお面をした化け物に遭遇すると神隠しに遭う』という言い伝えが存在する。
俺はこの手の話がどうにも苦手だ。
しかし理由はそれだけじゃない。
今年の4月に来たばかりだが、昔からこの町の神社付近で行方不明事件のニュースが後を絶たなかった。
皆、あの神社に一度参拝した後に消えているという。
しかもここ最近、印刷したばかりの捜索願いの張り紙が日に日に増えてきている。
霊にしろ愉快犯にしろ、あの道だけはなるべく通りたくなかった。
こんな夜更けなんかには特に。
しかし、他に通り道がない。
ネットカフェのある隣町までは歩いて20分かかる。
残業明けの鉛のような身体でそこまで歩き続ける余力など、これっぽっちも残っていなかった。
重だるい脚を無理やりに動かし、仕方なく雨に濡れる神社の通りを進む。
すり足気味の足音と冷たい雨音だけが耳に響く。
言い伝えもあってか、この時間の神社通りには人どころか車の気配すら無い。
家の灯りもほとんど消えて、オンボロな街灯だけが、雨粒に揺れる夜道を照らし続ける。
少し頭を上げれば、モンタージュのような建物越しに、顔を覗かせる赤黒い雲が不気味に漂っていた。
不気味な世界に酷く嫌気がさして視線を逸らした途端、暖かみのない、ひどく冷え切った暗闇が視界を覆い尽くした。
終電帰りも慣れてきたはずなのに
この通りは何かが違った。
まるで自分一人が異質な静寂に閉じ込められている、そんな錯覚を嫌でも覚えてしまう。
ふと煌々と照らす光に、ぼやけた視線を凝らすと、駐車場の看板が辺りを照らしていた。
その看板の下の自販機の前で、見慣れない雰囲気の人影が佇んでいた。
(え…誰かいる………、なんでこんな時間にこの通りに居るんだ…?……。)
更に視線を凝らしながら前進すると、お面を被った浴衣のような姿の白髪の女性だと気づく。
ハエのような虫が飛んでいるように見えた。
(何か飛んでる…ハエ…?…影も…動いてるような………)
…丁度自販機前まで近寄った。
精巧に作られたお面と、それにそぐわないボロボロの容姿をした、老婆のような、若者のような、奇妙な姿のそれはじっとこちらをみていた。
威圧感で足が動かしにくい感じがした。
雨粒に濡れたお面がずり落ちた直後、九尾の尾のようなモヤが背後から出てくる。
その表情は何処かで見たことのあるような雰囲気を醸し出していた。
次の瞬間、顔の辺りにおぞましいそれが浮かび上がる。
「…!、!?ひ、…ぃあ……あ…!?!?」
(…!?…ぁあ、狐、、、??ぇ、、逃げ、にげない、と、…、)
干からびて腐りかけたような顔面に無数の瞼がメリメリと浮かび上がる。
グトリと瞼を開くとぎょろぎょろと辺りを見回し、俺の姿を見るや否やその目は、狙いを定めたかのように見開いて血走った。
心臓の裏から襲い来る酷く煮詰まった憎悪に急かされるように、すぐさま逃げ道を探す。
(他に迂回路は?こいつを撒くには?家の向こうには何かあった?全然わかんねえクソッ!!動け動け動け動け動け動け動け動け!!!)
連日の残業と寝不足で止まった頭を無理やり働かせる。
しかし、どうやっても家に逃げ帰る以外の策が思いつかない。
(クッソ!!!全然思いつかねえ…!!!)
もうすぐアパートに着く。
ここで通り過ぎたら絶対戻って来れない。
もう体力が残っていない。
半ばヤケで直帰した。
脚が重い。それでも走らなければ、あれに襲われる。そんな予感だけを頼りにひたすらに走る。
アパートの階段を1段飛ばしで駆け上がる。
足が異常に重い。
ここで速度を緩めたらあいつに追いつかれる。のに。
思うように足が上がらない。
ようやく扉の前まで着くと、震える手で鍵を探した。
(はやく、逃げなきゃ、塩、しお撒かなきゃ、)
早くしないとあいつに追いつかれる。
恐怖と焦りでなかなか見つからない。
(ぁ、あった、あった、鍵、…ックッソこういう時に限ってッ…開けよッ…!!)
ようやく探し当てて震える手で鍵を回そうとした。しかし鍵穴が古くて上手く回らない。
背後からはまだあれの気配を色濃く感じる。
殺される。早く開けないと。
ますます手は震え鍵穴に鍵が入りにくくなる。
(ッ……!開いた、)
もう片方の手で震えを強引に押さえつけ、なんとか鍵を開けることに成功する。
無理やりに引き抜くとすぐさま少し開いたドアの隙間から身を捩りすぐさま戸を閉める。
(あいつが入ってくる、見られる、閉めないと、あと、あと、)
他の窓も全て施錠を確認し、遮光カーテンをしてお清めの塩を自分と辺りに撒く。
「ッッっハァ!!ハァ!、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ…けほ、けほ、は、は……は〜〜…けほっ…ケホ、……ハァ……スゥ〜〜…………。」
玄関先で崩れ落ちると、思い出したように叔父からもらった数珠とお札を手にして、昔教えてもらった念仏を早口で唱える。
『不安になったとき、これを手に持ってお祓いの念仏を唱えて、深呼吸しなさい』と、母が倒れた年に叔父から教えてもらったお祓いの行法。
もう念仏まで丸暗記していたから、早口で唱えるなんて造作もなかった。
「祓い給い清め給え神(かむ)ながら守り給い幸(さきわ)え給え、祓い給い清め給え神ながら守り給い幸え給え、祓い給い清め給え神ながら守り給い幸え給えッッ」
「はぁ〜ぁハハ…は……ぁ〜〜ー…。」
一通りの儀式を終え、髪をかきあげるように顔を覆うと、途端襲いくる疲労に崩れ落ち、そのまま膝を抱え視界を遮断した。
(あれは、なんだった、?、目、お面、しっぽ、なにあれ、まるで、あの…言い伝えの…。…なんで…、藤田さんみたいな…顔…、…して…。)
(いや……見間違えた…だけだよな…都市伝説なんか…あり得ない…。)
(でも…もし……。…あぁだめだ、また不安になってきてる…。)
(ちゃんと教わった通り塩撒いたんだ、あれに遭うことなんかない。)
そう言い聞かせて、重だるい体を引きずり、流しで手を洗う。
穢れを落とすように、入念に洗う。
今日できたばかりの指先のささくれに石鹸が染みてシクシクと痛んだ。
いつものくせで実家から持ってきた使い古しのやかんに水道水を注ぐ。
水の溜まっていく音が思考を揺する。
(あれ…やっぱり…藤田さんに似てる…なんで…?そういえば子どもいたっけ…あの子も見かけなくなったような…最後に会ったのっていつだろう…よくスーツの人が家の前にいたような……あれって…)
やかんの取っ手がいつもより重いと気付いてすぐさま思考が止まる。水を入れ過ぎた。
余分な水を捨て、やかんに火をかける。
「カチャンチチチチチチボッチチチチカチャ」
テーブルの近くで腰を下ろし、スマホに充電プラグを刺すと先程の続きを考え始める。
(…そういえば子どものはしゃぐ物音すごかったな…母さんも昔俺の暴れ方凄くて周りから虐待なんじゃないかって疑われてたとか…言ってたよな…。大変だったろうな藤田さん…。)
隣人の部屋からは昼夜問わず子供のはしゃぐ音が聞こえてくるのがいつもの日常だった。
しかしいつからかその音もなくなり、誰かの泣き声とヒステリックな声がたまに聞こえる程度になっていたのだ。
いつもならこんなこと覚えているはずがないのだが、処方された薬が合わないのか効きすぎているのか、芋蔓式に思い出してくる。
ーーー
「やめてください、うちは関係ありません!」
『近隣住民からこのような申し出がありましたので、お子さんだけでも見せていただけませんか?』
「隼人は今祖母の家に預けているって言ってるでしょう!?もう帰ってください…!」
その日から、隣人の玄関口にはスーツの人間が顔を覗かせるようになった。その度隣からはヒステリーを起こした声が夜な夜な聞こえてきた。
それからしばらくして子どもの姿は見なくなり、大家さんの催促が定期的に来るようになっていた。
あのスーツの人は児童相談所の人なのだろうか。…そういえばいつからか隣人だけが出入りしていた。
その頃から隣人は次第に雰囲気が変わっていった。チラリと見えた部屋の中は、玄関口からでもわかるくらいゴミが溢れていてハエが舞っていた。
おそらくだが、心労が祟ってまともな生活が送れなくなっていたのだろう。俺の実家もまさしく似たような時期を経ていたので、その辺りの事情は手に取るようにわかってしまう。
最後に隣人を見かけた時は、あれで良く生きていられると思うほどひどくやつれ細った身体になっていた。
(でも……どうして…あれが藤田さんと似た姿をしてたんだ…?)
頭が焼き切れそうなのに頭が勝手に回転する…空回りが続いて煮詰まった直後。
『ヒュリュゥゥヒュウゥウヒュルルルルゥウピィィィィィイイイイイイイイ』
やかんの甲高い音が鼓膜をつんざき、急に現実に戻る。
考えすぎたせいか、頭が締め付けられるように痛くなってくる。
たまらず重い身体を動かして火を止める。
麦茶のパックを菜箸でくるくると回すと、コンロ横に置いたコップに出来上がった麦茶を注ぐ。
「…ンツッ…!」
氷を入れ損ね舌を火傷した。
舌先と下唇がジンジンと痛む。
先程考え過ぎたせいか、うまく頭が働かない。
冷蔵庫の製氷室をのぞくが氷は無かった。
熱い麦茶が入ったコップをベッド近くのテーブルに置く。
ここに来て風呂に入り忘れたことに気づき、忘れていた倦怠感が一気に戻ってきた。
動けない…。鉛が全身に詰まったみたいだ…。
たまらずベッドに横になった。
(……昔婆ちゃんに教わった通り、…やったんだから、…絶対、大丈夫…。大丈夫…。)
麦茶が冷める頃には、目と鼻の先のコップを取ることも出来ないほどの倦怠感と眠気がのしかかっていた。
(……ぁ〜……さっさと寝よ。忘れよ。だいじょぶ…何も起きない…。ぁ…薬…。)
ここにきて薬も飲み忘れていたと気づく。
急いで起きてカプセル錠を口に放り込みお湯で押し流す。
(…疲れた……。)
そうして重たい瞼を無理やりに閉じる。
薬のせいだろうか。それともあの悪夢のような出来事のせいだろうか。
鼓動が早まり、瞼の裏でまた思考が暴走を始めたのは、その直後だった。
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iconomiccc · 1 year
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2022年はどんな年でしたか?
私にとっては生まれ変わりの年でした。 発病して9年、自分的にうつ病とはうまく付き合えてる、離脱症状も乗り越えて薬も辞められた上で(障害者枠でだけど)働けてるし、主治医やカウンセラーや周りの支援者の力を借りて障害受容も着実にできている、と思っていたのに、やっぱり私はずいぶん無理して、頑張っていたのでしょうね。全然気づかなかった。 精神的・肉体的な辛さがピークに達し、今夏に精神病棟に入院したことで、すごく辛かったけれど、色々な出会いと経験を通して新しい考え方を身につけることができて、本当に、今の私は入院前の私と別の人みたいなのです。 薬の効果もあるのだけど、気持ちが落ち着いていて、毎日何もなくても楽しいし、無意識に自分を責めていた時間をまるまる、好きなことや興味のあること、楽しいことをする時間にできる。 本当に、うつ病になった脳みそというものは、セロトニンを脳内で受容体に受け渡すことができなくなっているので「楽しい」「嬉しい」「なんとかなる、大丈夫」とか、「できなくてもいい、やってみよう」とかいうポジティブな気持ちは感じられないのです。全く。感じたくても。 抗うつ剤ってすごいわ。こんないいものなら全人類飲んだ方がいい、とまで思います。(副作用もあるけど、それを差し引いてもお釣りがくる)そしてうつ病の脳を持つ人たちがどんなに苦しい気持ちで真っ暗で永遠に砂を噛むような人生を歩んでいるのかも改めて、よく、わかりました。 今の私は何も持ち物が増えてなくても嬉しくて、何もなくても楽しい。 ただ生きてるだけで幸せだなあと思えるし、ウキウキすることもできる。本当に幸せ。 仕事納めの日に部署のリーダーとこの夏の休職・入院を経て得た私の変化や、これからどう働いていきたいかについて話していて、私と同じ病を抱えながら管理職をしている彼は、時々涙ぐみながら静かに共感しつつ話を聞いてくれました。 気に入らないこともあるけれど、こんな話ができる会社で働けて、私は幸せ者だなあ、と温かい気持ちで仕事納めして帰宅して、夜、家事をしながらふっと久しぶりに、なんとなく、ジョンヒョンのソロの歌を聴きました。 2017年の寒くて暗い12月、一人で自ら命を絶ってこの世から消えてしまった彼の美しすぎるネックレスのような歌を聴きながら、なぜだかたまらない気持ちになって少し涙を流しました。彼もまたうつ病でした。苦しみに耐えられなくなった果ての自殺でした。 私は芸能人についてとんでもなく汚い世界で物凄く綺麗なものを商品として売り出さなければいけない人たちだと捉えていて、彼のように自殺する人の方が共感できる、まだまともだと思える、でも悲しい、と思っています。訃報以降年末が来るたびに胸が痛んでいたのですが、今年、私が流した涙は今までとは違う種類の涙だったと思います。 私には好きなアーティストがたくさんいますが、彼らは紀元前の古代中国の詩人から現代のk-popアイドル、20世紀アメリカの写真家、中性ヨーロッパの画家、日本の近現代作家までさまざまで、国も時代も言葉も生きた時代も文化も全く違う人たちです。 私が彼らの生き様や作品に対して強くシンパシーを感じる共通点は、「この世の醜さや生きていくことの辛さに耐えられず、居場所を求め苦しみ、世を恨み、皮肉を吐き、自らの純粋さに傷つき絶望しながらも、そんな自分を冷めた目で見ている」そんななんとも言えない苦しみを作品に表している、という点でした。 言葉を使えない乳幼児の頃から、世界(母)に拒否されたと感じて生きていた私は、自分は愛されて育った裕福で幸せな子供だと思い(込み)ながら、本当はずっと感じていた傷心や怒りや苦しさや悲しみを心の奥底に埋ずめ込み、「存在しないもの」として生きてきたのです。だから、うつ病になったのです。(「自分を無視して生きていると、必ず心身に病として現れる)。 だから、そのような、「自分の中に実は存在していたもの」を、作品���通して見せてくれる芸術家たちに出会うと、言葉や文化が違っても驚きの涙を流し、まるで昔からの旧友に再会した人のように、あるいは生き別れた主人を見つけた犬のように、思わず駆け寄って寄り添い、「いつもの安心」という名の苦しみに抱きついて嬉しげに瞳を閉じ涙を流す。そんな愛着を感じていたのです。 ジョンヒョンが死んだ時、「ああまた私と同じような花が一輪、枝を離れて川に落ち、流れて逝ってしまった」と絶望の涙を流しました。彼の最期に自分の影を見るような心地の涙と諦観でした。が、それは自分が彼と同じ暗闇の世界に生きていたから。今年流した私の涙は、今までのものとは違う種類のように感じます。 人は必ず死にます。 有機物なので。 生と死は同じものです。けれど、彼は生きることに希望を失い、自らの手でこの世界を去ってしまった。 今の私は闇を通しても自分の生に光を見ることができています。だからこそ余計に悲しく、この世の無数の命が愛おしく、またやりきれない、複雑な味の涙だったと思われます。
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mio3740 · 1 year
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もちろんネズミとしては、これらすべてを歯牙にもかけぬといったふうに、小さな手でひと払いして、我ながら疑わしい見せかけの軽蔑の笑みをにやりと浮かべるなり、自分の穴にすごすごと潜りこむしかない。この嫌になるほど悪臭ふんぷんたる自分の地下室で、侮辱を受けて笑い物にされ傷ついた我らがネズミは、たちまち冷ややかな毒気に満ちた、しかもいつ果てるとも知れぬ悪意に身を浸すのだ。四十年立て続けに、自分の受けた屈辱をその最も些細な恥ずべき細部に至るまで一つ一つ思い出しては、しかもそのたびに、自分でわざわざいっそう恥ずかしいディテールを付け加え、自分で作り上げたその虚構で、意地悪く己をからかい苛立たせるというわけだ。さすがに自分でも、でっち上げた虚構を恥じることになるのだが、それでもすべてを次から次へと思い出しては、ありそうもないデタラメを、そんなことだって我が身に起きたかもしれないじゃないかと考え出し、そうした屈辱をどれ一つとして赦そうとはしない。それでいて、おそらく復讐を始めるにしても、それはなんとなく中途半端に途切れがちの、みみっちいものであり、しかも自分はぬくぬくとした場所に隠れたまま、匿名でこそこそやるに違いない。自分に復讐の権利があることも、復讐が成功することも信じずに、むしろ復讐の試みゆえに自身が相手の百倍も苦しむことになり、しかも相手はたぶん、痛くも痒くもないに決まっていることもあらかじめ知っているのだ。臨終の床でも、またもや積もり積もった利子ともども、すべてを思い出し、そして……。
ドストエフスキー『地下室の手記』安岡治子訳(2007 光文社古典新訳文庫 19-20頁
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lyrics365 · 2 years
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傷を隠して
空っぽの笑顔で受け流す あなたを見かけた 瞳は揺れていて 古傷が疼いた 上っ面の愛嬌に弾む声 あなたを知るほど 似ていると思った 何かが引き合った 夜の毛布に2人くるまって 傷を隠して 生きてきたって 分かるよだって 同じだった 怯えるような 顔で笑った 痛いのなんのなんてだって 手に取るように それが解った 寄り添える、そんな気がした 古傷が騒いだ 過去は意味を持った 錆び付いた心臓が軋む音 ギブスで固めて 期待しないように 心触れぬように 誰かの感傷も流れ込む ご機嫌はいかが? 記憶が蘇る 悪夢でまた萎える 冷えた足先そっと触れ合った 傷を抱えた 目だとわかった だって自分と 同じだった 臆病そうな 色をしていた 痛いのなんのなんてだって 溶け合うように 一つになった 生まれた意味までも悟った 傷跡をなぞった 答えなら解った 傷を隠して 生きてきたって 分かるよだって 同じだった 怯…
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oharash · 2 years
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ないりの波際
ないり は 泥梨 で地獄のことです。
本文は杉元視点、エピローグは白石視点です。
 俺はあいつのことをほとんど知らない。  それはあの時だけじゃなく今もって何ひとつつまびらかには知らない。いろいろあって一緒に凍死しかけたり金をせびられたり、酒を飲んだり同じ釜の飯を食ったり殴ったり殴られたりしたが、あいつの目が何に焦点を当ててあの旅の間に何を胸に抱えたのか、そんなことは一切知らない。  聞こうと思ったこともなかったし、近くにいて自然に知ることが出来ることだけを知っている――それだけでいいと思っていた。  俺は白石がいればそれでよかった。
   海と山しかないようなその郷で、アシリパさんのコタンの裏山には炭焼きの窯と窯を見るための小屋が一棟あった。その小屋はもともとは山の作業小屋と休憩所を兼ねていたものを頑丈に作り替えただそのまま今に至るまでなんとなく修繕し続けていたというもので、自然からも人からも中途半端に見捨てられた佇まいを俺はそれなりに愛していた。ここでの俺の棲家だ。アシリパさんの叔父の嫁さんの妹の旦那の爺さんの…詳しいことは忘れたが、とにかくどこかの誰かが持て余していたものを俺が借り受けている。人が住んでいた方が傷まない、できたら家族の分だけは炭を焼いて欲しい。そんな理由で。  今年は北海道でも盛夏から雨が多く襦袢が湿って背中に張り付くし朝顔は結局蕾をつけなかった。けれどくさくさした日も朝霧の匂いは甘かったし川の水は冷たくて、俺は少しぼんやりとしながら日々を過ごしていた。  だから、太い道から小屋に続くだらだら坂の中腹に俺以外の足跡を見た時は背骨に太い芯でも入れられた気分だった。足が意思より早く坂を蹴り立て付けの悪い引き戸を力任せに開ける頃にはもう我慢ができなかったのだ。 「テメエっ連絡もよこさねえでどこほっつき歩いてやがった‼︎」  平手で思いっきり、側頭部を、叩いた。拳だったらたぶん殺していた。  そいつは濁った悲鳴をあげて床に転がってやっぱり「クーーーーーン」と鳴いた。 「いだいいいいい…。だからモテねえのよお前」 「うるせえ受け身取ってんじゃねえっ」 「だっていくら平手だってお前に思いっきり叩かれたら死んじゃうでしょお⁉︎」  口調と裏腹に楽しそうに口角を上げる白石を見たら馬鹿馬鹿しくなって、でもまだ腹の虫は治らなかったのでもう一発平手に力を込める。  靴脱ぎには古くさい草履が脱ぎ捨てられていた。
「あのときは吉原が俺を呼んでたわけよ」 「うるせえちんぽ腐り落ちてしまえ」 「ひどぉい」  どこまで行ってきたのか知らないが、白石の荷物は小ぶりなずた袋ひとつで財布には相変わらずろくな額の金も入っていなかった。金がなくなったから帰ってきたのか、それともここに帰るまで路銀が持てばいいと思ったのか。どうせまたどこかから逃げてきたのだ、草履は盗品だと俺は決めつけた。 「アシリパちゃんのとこ行ったら、お前がここにいるって教えてくれたからさあ」 「会ったのか」 「うん。背伸びててちょっと感動したわ。とりあえず飲もうぜぇ」 「せっかくだからアシリパさんとこ行って飲もうぜ? まだそんな遅くねえし」 「俺もう歩き疲れたのよ。明日行くからさあ」  白石が体を起こしてちゃぶ台に寄りかかる。なんとなく妙な気配がした。嫌とは違った胸騒ぎに似た違和感。いつもと違う感じ。あるいはいつもと同じで、ほんの少しブレる――共振を起こした時計の針が振り切れるような、そんな程度の。  けれど目の前の男そのものは何も変わらない俺の、たぶん仲間、だったので俺は自然に奴の��かいに腰を下ろしていた。
「こっちに来る途中流しの菓子職人と行きあってさ、ちょいと一緒にいたわけ。みちのくから北海道まで行くってんで、その辺の菓子って言われてみれば形が似てんだよね。杉元の地元のかりんとうってどんな形してる? 犬のウンコっぽい形じゃない? それがさあ、南部の北あたりから葉っぱみたいな形になんの。それが津軽海峡を超えて北海道きても同じでさあ。まあその菓子職人に最後は警吏に売られたけどね、おかげで靴なくした。あ、そういえばお前が言ってた帝国ホテルのエビフライも食ったぜ」 「は? 強盗にでも入ったの?」 「違いますう。不忍の競馬場で会ったオッサンが金持ちでさあ、仲良くなって連れてってもらったの。いやーありゃ美味いねお前が言うだけある。ふうわりして甘くて…」 「わかる…ふうわりしてる…」 「だよなあ。油で揚げるって聞いたからあとで灯火油でやったらボヤ起こしかけた」 「そこはせめて菜種油だろ」  東京で行方をくらましたあと白石は日本中をぶらついていたようで、旅の話をとりとめもなく教えてくれた。軽薄な調子とか、ゆっくりとした声の拍子がとても自然で嬉しい。 「俺がいなくて寂しかった? いだい痛いいたいっ‼︎ 」  腕ひしぎ十字固めをかけると白石はゴザをばたばたと蹴り上げた。悲鳴はすぐに笑い声に変わって、俺もなんだか笑ってしまう。もう会えないだろうとそのうちひょっこりやってくるだろう、の間を揺れ動いていた心が溶け出していく。  気持ちよく酔っ払って床に寝転がる。頭を傾けると、白石も同じ姿勢で俺を見ていた。 「…なんだよ」 「俺は寂しかったよ。お前らがいなくてさあ」 「お前が勝手にいなくなったんだろ」 「それはなんていうか、そんなもんよ。お前は? まあ元気そうだけど」 「あー…」誰に言うつもりもなかったが、こいつにならいいかなあ、と酒と再会が俺をゆるめた。 「右手、が」 「みぎて?」 「ときどき痺れる。なんていうか、力の入れ方はわかるから動くんだけど、感覚が薄くなる。後天的に耳が聞こえなくなった人って、聞こえなくても喋れるじゃん。多分ああいう感じ」 「あらま。不便ないの」 「特にない。アシリパさんには言うなよ」 「言わないけどさあ…脳みそ欠けてるから痺れるのかな? 大事にしなさいよ。せっかく目も爪も指も手足も全部揃って生き残ったんだから」  白石が手を伸ばして俺の手のひらを取った。按摩をするように揉みながらため息をつく。その嘆息ともいえる雰囲気が珍しかったので 「気持ち悪い」と言ってしまった。「ひどぉい」とこだまのような声が帰ってきた。  手をとられたまま、にじりにじりと距離を詰めて空いている左手でその頬をつねりあげる。こいつの頬はよく伸びるのだ。白い歯がのぞいた。 「いひゃい」 「お前、アシリパさんと何かあったの?」 「ええ、なんでわかるの? アシリパちゃんのことだから? お前も十分気持ち悪いよ⁉︎」 「うるせえ顔面ちぎり取られなくなかったら喋れ」 「脅迫しないでくれる?」  俺の手を揉むのはやめず、歯切れ悪く話し出す。 「アシリパちゃん普通だったよ。お前みたいにどこ行ってたんだって怒ってくれて、おやつ食べさせてくれてさあ。ヒグマの胆嚢が高く売れた話とか、ウサギのウンコの話とかしたよ。でも何かよそよそしくてね? なんか、ああやっちまったな、って思ったの。心当たりあるのよ、あのよそよそしい感じ。  お前に話したかわかんないけど、俺赤ん坊の頃寺に捨てられてて家族いねえのよ。その寺も逃げ出したし。クソガキだったけど、仕事とか駄賃くれたり飯食わしてくれたり、クソガキにも何かと世話焼いてくれる優しい人ってのが世の中にはいるわけ。ただその人たちにも事情があるからずっとは続かなかったり突然会えなくなったりすんの。でもガキだからさ、そうなるとすっげえの。すっげえ落ち込むの。やっぱり大人なんてそんなもん、自分の都合で行動するだけで、俺のことなんか考えていない。期待したり信用したりしちゃダメだって思うようになるんだわ。もう傷つきたくないからさ。そうするとまた会えてもよそよそしくしちゃうんだよね。  アシリパちゃん見てそんなこと思い出したのよ、お前、俺の勘違いだと思う?」 「わかんねえけど、東京でいなくなった時、どうせすぐ帰ってくるだろと思ったら全然そんな気配がなくて、こっちに戻ってしばらくはアシリパさんちょっと元気なかったぜ」 「あの子も両親いないもんね。俺ってアシリパちゃんにそこそこ好かれてたのねえ…ただ嫌われた方が楽だったなあ」  静寂が床に落ちる。ひとりでいる時は気にも留めないのに、ふたりでいるときのそれには何かしらの色がついていて居心地が悪い。 「お前、次いなくなる時は言ってからにしろよ」 「湿っぽいサヨナラ嫌いなのよ…」 「タコ。さっさと出てけ」  残すは体ひとつ分の距離にいた白石に身を寄せて、覆いかぶさるように抱きしめる。酒の匂いと汗くささと懐かしい甘い香りがした。 「言ってることとやってることが逆だよ、杉元」 「うるせえ」 「お前も俺のこと好きだよねえ。ばかだよなあ」  たくさん人間を殺したので骨や神経や内臓や血は地獄ほど見た。けれど一度も心というものはまろび出てこなかった。だから俺は心のありかを今になって知る。今このとき痛んでいる場所だ。 「でも俺もお前のこと好き。ちょう好き。一生好きだわ」  白石が俺の背に手を回して子どもをあやすように撫でるものだから一層この男が憎くなる。体の奥の奥の奥でいくつもの夜と意思が帰結する音がした。  俺たちはその晩抱き合って眠った。
 翌日、俺が山仕事から帰って間も無くアシリパさんが訪ねてきた。山菜と獣肉を持ってきてくれたようで、いつものように手際よく鍋を作ってくれた。 3人で食べる夕餉はあまりにも久しぶりでどこか現実感がない。昨夜白石が言う通り、アシリパさんは少しかたい顔で俺にばかり話しかけた。あるいは俺を介して白石と話していた。 「今年の冬はマタカリプに三度も会った、そうだよな杉元」とアシリパさんが言えば、俺が「お前がいたら何度頭噛まれたかなって話してたんだよ」と白石に水を向ける、という風に。  白石は少し苦笑していたけれど、アシリパさんの目を見て彼女に話しかけるのだけはやめなかった。  翌日は俺たちがアシリパさんのチセを訪ねた。その次はアシリパさんがまた来て…と晩夏は進み、だらだら坂のナツズイセンが葉を落とす頃にはアシリパさんと白石の会話に俺はほとんど必要なくなった。  ある薄曇りの日なんて俺が帰ると白石がアシリパさんの髪を結っていてのけぞった。 「え〜カワイイ…白石、お前そんな特技あったの?」 「見よう見まねだけど。似合うでしょ、町娘風」  マタンプシはそのままに束髪(三つ編みというらしい)をつくり、どこから摘んできたのか桔梗を編み込んでいる。艶やかな髪によく似合っていた。白石がアシリパさんへの土産に持ってきた手鏡はなぜか俺の住まいに置かれていて、ふたりは額を合わせて鏡を覗き込んでいた。何も坊主のオッサンまで映す必要はないと思うが。  囲炉裏の上では鍋がくつくつと煮立ち芳しい香りで住まいを満たしている。「何の鍋?」と聞くと白石とアシリパさんはお互いに目配せをして、何も答えずにふたりで笑った。 「え〜何ぃ〜? 俺には秘密なわけ〜?」 「食べればわかる」  アシリパさんが歯を見せて笑い、鍋を椀によそってくれる。 「はち、は…って…これ桜鍋じゃん〜」  ずっと前に小樽の山で3人で食べた味噌の入った桜鍋。味噌を敬遠していてアシリパさんが初めて食べたあの鍋だ。 「白石が悪事を働いて手に入れたんだ」 「悪いことしてないよぉ⁉︎ 町で鹿肉と取っ替えたのよ」 「明らかに量が見合ってなかっただろう」 「いいじゃなーい。あのおばちゃんお金持ってそうだったし、エゾシカ珍しがってたでしょ」  泡が弾けるような調子でふたりは笑っていて、わだかまりが解けたのかな、と思った。家族でも親戚でもないふたりがこうしていると縁というものの妙を感じる。  アシリパさんは髪を褒めると耳を赤くして黙り込み、俺の口に飯を突っ込んできた。照れちゃって〜とあまりにからかうものだから、白石はちょっと嫌われていた。
  「押してダメならもっと押せ、ってねえ〜」  白石はその晩、常になく酔っ払って絡んできた。聞けばこいつは俺が山に行っている間に足繁くアシリパさんのコタンに通い、アシリパさんの狩りや女衆の仕事を手伝っていたそうだ。 「狩りは相変わらず役に立たねえんだけど、それなら外堀埋めてこって思って。縫い物とか細かい作業ならちょっとはできんのよ」 「白石が働くなんてやめろよ、火山とか噴火したらどうすんだよ」 「ちょっとは見直してよぉ。人生で一番女の子に尽くしてる最中なんだぜ。まあ今日はよかったわ。3人で桜鍋食べれたし、あとはアシリパちゃんの悩みごとがちょっと前に進むといいんだけどなー」 「悩みごとって? お前のことじゃなくて?」 「んん、ほら、子どもって子どもなりに色々あるじゃない。アシリパちゃんは賢いし胆力あるし綺麗な子だけど、子どもの世界ってあの子たちだけの法律があるでしょ。倫理とか道徳に沿って行動するより、友達のメンツを守ることの方が大事だったり、そういうの。そういうところでお友達とちょっとうまくいかなくなっちゃったみたいよ」  白石の話はこうだった。コタンに暮らすアシリパさんと、彼女と歳の近い女の子がひとり、ここのところ上手くいってないらしい。表立って喧嘩をするとかそういったことはないけれど、少し前までは自然に集まって遊んでいたのがぱったり見られなくなった。どうやらその女の子がアシリパさんを避けているらしく、その子と他の子たちが遊んでいる時にアシリパさんが来れば集団は散開するしその逆もあり、子どもたちの間にはなんとなくぎくしゃくした空気が流れているんだそうだ。 「…お前なんでそんなこと知ってんの。俺全然気づかなかった」  なんならちょっと悲しく情けなくすらあった。俺だってアシリパさんのコタンには足繁く通っているのに。その女の子のこともよく知っている。負けん気が強いが小さな子どもたちには優しくアシリパさんともよく遊んでいる子で、裁縫が苦手なアシリパさんの衣類のほつれを見つけては繕ってあげているのもよく見ていたというのに。 「俺が気付いたのだってたまたまよ。お前とかばあちゃんには言いたくないのよ。好きな人にカッコ悪いとこ見せたくないじゃない。別に俺だって、話の中で出てきたのをさりげなーーーーく広げてってたまたま気づいただけ。彼女たちどっちが悪いわけでもないみたいよ。  結った髪もさあ、本当はフチに見せてあげたいらしいの。でもこのままコタンに帰って、そのお友達に見られるのが嫌みたい」  自分に置き換えても記憶は全く役に立たない。俺が彼女くらいの歳の頃ほとんどのいさかいは殴り合いでうやむやになっていたしそもそも原因も具体的に思い出せない。俺が悪かったこともあれば相手も悪かったこともあるだろうし、どちらも悪くないこともあったような気がする。思い出せないということはつまりどれも大した理由はなかったのだ。 「あのアシリパちゃんでも同年代の子を相手にするとまた違うんだなって。本人には言わないけど、年相応のそういう悩みがあってよかったなあって思ったよ俺。これであの子がお前に駄々こねられるようになったら、もう完璧」 「話が飛躍してねえか?」 「酔っ払いだから〜。子どもの時に駄々こねておかないと、欲しいものを欲しいって言えない大人になっちゃうんですう〜これは監獄で一緒だった医者の受け売りねえ〜」  気づけば徳利の酒をほとんど飲み干して白石は気持ちよさそうにちゃぶ台に突っ伏した。そのままいびきをかき始めたので床に倒して布団をかけてやり…たかったが、俺もだいぶ気持ちよくなっていたのでそのままふたりして床で寝てしまった。夜中に隙間風で目が覚めると白石を抱き込んでいるせいかさほど寒くはなくて、山鳩の声を聞きながら俺は再びまどろみに落ちる。  白石は俺の気づかないことによく気づくし俺の知らないアシリパさんを知っている。俺とはものごとを捉えるものさしがまったく違って優しいくせに薄情だし金に汚いしほぼ全てにおいてだらしないし、危険なことは嫌いで逃げることばかり得意なくせに俺を命懸けで助けにきたりして、理解できないし分かり合えもしない。   だから、白石にとってあのとき黄金がどんな意味を持っていたのか、あるいは持つのか。そんなことは本当の意味では俺にはわからなかったのだと思う。  聞いてしまえば俺にとっては他愛もない夢としか捉えられなかったかもしれない。それが嫌で、俺はそこにだけは踏み込まなかったのかもしれない。  そんな風に遠くへゆく気持ちと、目の前の男を独占したい気持ちが矛盾しながら混ざり合う。白石はもう俺を必要とすることはないのだろうか。そんなことを考えると途方もないほど悲しくなって、夜の底が急激に冷えていくのを感じた。
 泥酔で寝落ちしない夜はずっと抱き合っていた。  唇が欲しくて首を引き寄せて、飴を舐めるみたいに舌を吸う。白石のシャツに掠れて胸の先端がじんわり痺れた。白石は体勢を変えない。この程���のかすかな刺激がかえって欲を誘うことを知っててやってるんだろう。白石が俺の額のへこんだ部分や顔面の引きつれや抉れた傷跡を優しく撫でるものだから、自分の体がいいものになった錯覚さえ起こしてしまう。  小屋は虫や梟の声、葉ずれや風の音に包まれている。少しも静かでなくむしろ騒々しい夜の山で俺たちはふたりきり誰にも知られずそんなことばかりしていた。  股間に唾液を垂らされ、全体をゆるく撫で上げられる。もどかしくて身を捻るとかすかに笑われた。こういう時の白石はとても静かで、その分皮膚の感覚が際立ってしまう。口に含まれると指より滑らかで温い粘膜を感じる。白石の舌は自律した生き物のように器用に動いて、陰嚢の下の何もない部分からちんぽの先端までつるつると舐め上げる。我慢できず鼻にかかった声を漏らすと、あやすように腰をさすられた。  上半身を起こして白石の額に指を添えるとひと時目が合い、奴はまた視線を落とした。魚油ランプの明かりに目の縁が赤く浮かんでいて、こいつでも粘膜は繊細な色をしているのだなと思う。「俺、もう無理」「無理でいいじゃん」ちんぽくわえながら喋らないでほしい、言ったのは俺だけど。ひときわ強く擦られてあっけなく射精した。「最短記録じゃない?」「うるせえ」  ひとつも力の入らない四肢を投げ出して、目をひらけば刺青の皮膚がそこにある。この体をよく知っている。釧路で北見で網走で豊原で何度も抱き合った。記憶のふくらみが脳を灼いていく。  尻にいちぶのりを塗り広げて、白石の指がゆっくりと俺の中に沈む。体の内側で異物が動くたびに心が熱を帯び、潰れそうなほど瞼を閉じると痙攣が何度も起きてつま先が反り返った。何本入れられているかなんてもうわからない。締め付けるたびに体内の指を感じてしまい、体を他人に明け渡す甘やかさに背筋がおののく。 「白石、あれしよ。一昨日したやつ。ケツ上げて…」 「んん。いーよ。気持ちよかった?」  俺の腰の下に座布団を突っ込んで、白石がゆっくりと押し入ってくる。重たい快感が腹の奥まで突き上がり胸を強く擦られて叫んだ。角度が変われば当たる場所も全然違って揺らされるたびに無様な声と涙が落ちる。  体が熱くなる一方で心には恐ろしさばかり湧き上がり、せめてここに留まれるようにと白石の指を探り、握った。空いている手で何度も顔を撫でられる。子どもの頃に父が肩を抱いてくれたのを思い出す。そんないつくしみだった。
「そういえばお前、歯に仕込み入れるのやめたの?」  白石の体はどこもかしこもよく伸びる。唇と頬を引っ張って遊ぶのが俺は好きだった。 「いてーわ。ここにいる時はいいかなあって。お前もいるし」  どうにも信頼されているように感じて、俺は嬉しくなって白石の眉を引っ張った。毛が抜けた。   抱き合っているときと眠っているとき以外はずっと話をしていた。空白の時間を埋めるように、あるいは沈黙が堆積しないように。とりとめのない話もあれば初めて人に話すこともあったし、返事を求めない冗談も交わした。 「俺は阿片も酒もやらないで、はっきりとした意識で人を殺してきたよ。それこそ地獄に落ちるだろ」  あの頃の夢は今も見る。親友が死に周りは血の海で俺は殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して血が吹き出す寸前の真っ赤な肉の切れ目、人間が粉砕される音、どこかから飛んできた口に入った生ぬるいとろみは誰かの脳みそ、殺して殺して殺して殺して殺し続ける。記憶も悪夢も何も消えはしない。体はこんなに頑健なのに心はそれなりの強度しかないのだなと最近はそんなことも思う。一方で、もう自分を厭わしいとは感じなくなった。 「そうかなあ? じゃあ今からでも神様か仏様か信じてみるってのは? ぜってーならねえと思うけどさ、お前って坊主に向いてるよ。どんな悪人もお前を見たら思うよ、どんな人間でも変わることができるって。あるいは仏様とか神様とかは――お前の場合はアシリパちゃんだけど――どんな人間も救うことができるって、わかるよ。  えげつないヤクザものほど信仰の道に入る奴は見逃すんだぜ。みんなどこかで怖さや後ろめたさを信じていて、助かる方法が欲しいんだろ」  白石は賭け事を好むのに、一方で期待というものを何ひとつ持っていないように見える。最初からきれいさっぱり。普段はだらしなく侮られる言動ばかりしているくせにそんなところは乾いていて、それを見ると俺の心は少しざわつく。羨ましいような同じところまで落ちてきてほしいような独りよがりな気持ちだ。 「杉元は他人も自分も信じてないように見えるのに地獄だけは信じてるんだよなあ。そういうところ俺は好きだけどね。そんなもんがあったらそこでまた会えるな俺たち」 「白石も地獄にくんの?」 「そりゃ俺だって悪党ですからあ。お前みたいなのは地獄行きだぞってガキの頃さんざん坊主に脅されたわ。  でもあれよ、地獄って決められた辛苦が終わったら輪廻転生に投げ込まれて次の世に生まれ変わるんだって。そんなのほとんど監獄じゃんね。俺とか絶対逃げ出すしお前は鬼ぶん殴って追い出されるでしょーよ。伴天連でも悪人は死んだら地獄行きらしいけど、地獄にいったくらいじゃ何も変わらないと思わない?  そういえば地獄って日本に仏教がきてから広まった概念らしいよ。その前は死者は黄泉の国にいくってされてたんだって。あれよ、よもつへぐいって知ってるだろ、あの世のメシを食うと現世に戻れなくなるってやつ。あの黄泉平坂の先にある黄泉の国。イザナミイザナギのイザナミがいる方。地の底だか海の彼方にあるらしいよ」 「なんだっけ、イザナギが死んじゃったイザナミを連れ戻しにいく話?」 「それそれ。イザナミは黄泉の国のメシ食っちゃったからもうこの世に帰れない。不思議なもんで希臘の国にも似た話があるんだって。世界中どこも考えることは一緒なのかね?  俺らの行き先が地獄なら地獄の窯で鍋やろうぜ。黄泉の国なら黄泉平坂で待ち合わせな」  ときどき博識なところがある白石の、けれど決して尊敬を請わないさま。あまりに軽薄で突拍子がなくあっけらかんとしていて、どうせ俺もお前も明日には忘れている、と言わんばかりの話し方が俺は好きだった。 「あの世でもお前とつるむのかよ」 「へへー。死生観を聞くと相手のことが知れてちょっと面白いよね。  そういえばお前、アシリパちゃんと一緒になんないの?」  両肩に岩が乗ったみたいに体が重くなった。やっぱりか、という気持ちと、お前からは聞きたくなかった、という気持ちで天秤が釣り合う。 「お前までそんなこと言うのかよお」  どうして白石もアシリパさんのコタンの人も、俺とアシリパさんをくっつけようとするんだろう。夫にならなくては俺はアシリパさんと共にいることを認められないのだろうか。  確かに俺には個性がなくて、帰還兵というには時間が過ぎているしこの土地の人間でもない。かといって浮浪者でもなくもちろん誰かの夫でもなければ父でもない。そういえば子どもの頃は大人になったら誰もが家庭をつくって子どもを育てられるのだと思っていた。けれど今、俺は個性がなくても生きているし働けば食べられるし人を大切にすることもできる。どうしてふたり組になることに義務を感じる必要があるというのだろう。その後に何を目指すわけでもないというのに。  そんなことを白石に話す。 「それから俺とアシリパさんの思い出とか関係をそういうものにされるのが、なんか嫌」 「どういうことよ」 「なんか、不潔っていうか…」  白石はひととき口を開けて俺を指差し、その後真っ赤になって笑い出した。 「おまえっ、おまえっ、俺にちんぽしゃぶらせといて不潔はねえだろおおおっ乙女か! 無理むり腹が痛え死ぬっ」  涙を流して笑う男を土間から蹴り出して笹の茂みの中に放り込んだ。この季節の笹の葉は硬くて顔面から突っ込むとそれなりに辛い思いをする。俺の純情を笑うんじゃねえ。 「いってえええええ、ごめんって、許してえ。まさかそうくるとは思ってなくてさあふひっ」 「ああ白石はヒグマの餌になりたいんだったな」 「違う違う、ごめんごめんってええええ」  その辺に潜んでいたらしいイタチに頭を噛まれていたので仕方なく助けてやる。息を整えて涙を拭い、白石は俺の手を掴んで立ち上がった。 「人間も動物だから食べて繁殖するのがよしと思うようにできてるし、歳を取ればなおさら自分のきた道が最良だって思いたいのよお。俺は家族も子どももいないけど、アシリパちゃんのフチとかコタンの人はそうなんだと思うよ。  お前の気持ちはわかったけど、アシリパちゃんの気持ちがお前に向くことがあったらちゃんと考えてやんなさいよ」 「うるせえ歳上ぶるんじゃねえ」 「歳上だよ一応!?」  自分を必要としてくれる場所で自分の力を使うのは当たり前だ。そう言うと白石はすっぱり笹で切れた頬を上げてまた笑う。何だかずっと、このしかたのない笑顔に守られていた気がした。
   毎朝「行ってらっしゃあい」と見送られるとヒモを飼っているような気分になる。この頃になると白石は気ままに動き回るようになり、昼間はアシリパさんのコタンに行くかと思えば俺の住まいで昼寝をしていたりどこかへ出かけて夜にひょっこりと帰ってくる日もあった。いつかの旅路を彷彿とさせる気やすさで、まるでずっとここにいたように錯覚しかける。  その日はどうにも寒々しく、手元が狂って獲物を仕留めるのにずいぶん返り血を浴びてしまった。運びやすいように解体していると肘まで赤黒く染まり、手の甲で顔を拭うと甘さとしょっぱさを感じる。慣れた味が今日も俺を生かす。アシリパさんのコタンに行く前に川に寄らなくてはならない。  俺の体は実によく働く。力は強く頑丈で大きなケガもすぐ治り、意思より先に動いてここまで俺を生かしてきた。川べりのトウシンソウの茂みに着物を脱いで放り、冷たい水で腕と顔を洗うと生き返る心地がする。小さなミソサザイが一羽、降下して何かを捕らえ損ね水面をかすめて舞い上がり、体に似合わない大きな鳴き声をあげて飛び去っていった。  木々の影は昨日より薄く、風は昨日より乾いている。俺の新しい故郷に秋がくる。  明日こそは聞こうと思う。お前はいつここから出ていくんだ?
 アシリパさんのチセに顔を出すと女の子ばかりが集まっていた。奥で手仕事をしてるフチに目礼したはいいが、もともとそれほど広さもないので入るのを躊躇ってしまう。そしてここにはなぜか坊主のオッサンがいて女の子の髪を結っている。アシリパさんはいつものようにマタンプシを巻いただけの姿だけど、隣のチセの女の子は町娘風に髪を結い上げているしオソマも短い髪に紐を編み込んでいた。手鏡をみんなで覗き込んでお互いを指さして恥ずかしそうに笑っている。今白石が髪を梳いているのは件のアシリパさんと複雑な関係にある女の子だ。  スギモトー、とアシリパさんが手を上げた。 「シライシが上手なんだ」 「自分は坊主なのにぃ?」 「ちょっと聞こえてるわよ杉子ぉ」 「誰が杉子だ」 「杉元もやってもらえ」 「アシリパちゃん、杉子の髪は短すぎてさすがに無理よ」  アシリパさんと白石に髪を梳かれている女の子が顔を見合わせてケラケラ笑った。働き者でいつも元気な彼女たちのそんな姿が愛しく思えて、父親とはこういう気分なんだろうかと突拍子もないことを思う。チセは土と子どもの匂いで満ちていた。喜びのようなものが自分でも驚くほどに湧き上がって、どんな顔をすればいいかわからず軍帽の鍔を下げる。       「…すげえや白石、脱帽だ」  半歩先を歩く白石がピュウ、と軽薄な口笛を吹く。  腹が温かく満ちている。あのあと女の子ふたりがアシリパさんのチセに残り、みんなで夕餉をご馳走になった。アシリパさんは彼女たちに対して俺や白石にするよりずっと優しくて(なんなら時に遠慮がちですらあった)そんな姿は旅の間全く見たことがなかったからときめいてしまった。 「アイヌの女の人って髪結ったりしないみたいだし、どうかなって思ったんだけど。あの子らに水を向けたらやってみたいって言うからさあ。そしたら他の子も集まってきてあんな感じ。  まあわかんないけどね、今日は仲良くなってたけど、明日になったら元通りかも知れないし。女心は複雑よぉ」  まぜっかえす割には俺以上に上機嫌で、ちょっかいをかけたくなってしまい後ろから抱きついてぐいぐいともたれてやった。 「重い重い! そんで力が強い! 自力で歩け不死身の杉元っ」  引きずるようにもたもたと歩きながら白石が俺の顔を覗き込むので、もみあげが頬に擦れてくすぐったくて声を上げた。痛みは警告を示すものだろうけどくすぐったさは何を示すんだろう。俺の体はよく動くが、俺の脳は体の発信を完璧には理解できない。 「…たのし」  自由落下の速度で俺の本音は土��落っこちて、機嫌よく跳ねて森の奥に消えてった。 「へへ、お前の男はいい男だろお」 「白石が俺の男? 逆じゃなくて?」 「そ。俺がお前の男。一生ね」  白石の微笑には本当に愛しまれているのだと思わせるような優しさとあくまで奴の中の問題にとどまる諦めみたいな雰囲気がうっすら混じりあっていて、俺は何もかもが甲斐のないことを知る。だからって俺の気持ちが減るわ��もない。  何につまづいたのか白石の体が傾ぎ、酔っ払いふたりでもつれあいながら草の上に転がった。 「いってぇ〜」 「お前俺ひとりくらい背負えよなあ。な、アオカンしよ」 「…唐突すぎない⁉︎」 「だって今やりてえ」  性欲を否定する人間を俺はあまり信じない。食欲と睡眠欲には振り回されるくせに性欲だけは飼い慣らせると思うのはおのれの身体を甘く見過ぎだと思う。できるのは空腹と寝不足と同じように不機嫌になって耐えることくらいだ。この晴れやかな夜に我慢はしたくなかった。 「いいけど…外ですんの久しぶりじゃない?」 「そーかも。へばんなよ」  シャツの中に手を差し込みながら、空気が濃度を増していくのを感じた。白石の背中とか腹は意外なほどつるりとしていて、胸をはだけさせると夜の森に白い肌がぼんやり浮かび上がる。この皮膚と刺青の明暗が好きだ、この男には欲望を隠さなくていい。  抑制ができないまま首筋を食むと「痛えよ」と笑われ顎を掴まれる。軽く触れただけの唇の隙間から舌が入ってきて口の中でもつれ、引き寄せようとする手前で深く重なってはまた引いていく。こいつは俺の癖をよく知っている。からかわれてるようでムキになってぐいと腰を引き寄せた。唾液が甘い。  夜の闇が急速におりてあたりを翳らせていき、誘われるように霧がでて刻々と濃くなった。霧の匂いと草いきれの中で知った皮膚に溺れていく。  白石を木にもたれさせてちんぽを舐め上げてやると水分を吸ったように膨らんだ。こいつとするまで自分の上顎が性感帯だなんて知らなかった。そんなことばかり教えられた。どこをどんな風に触ればいいか考えるとき、俺は俺の経験を思い出さなければならずその度に白石の伏せた視線が蘇る。こうやって人目を盗んだいくつもの夜が呼び起こされて体じゅうがざわめいた。  抱えるように引き寄せられて後頭部を押さえ込まれると喉の奥に生あたたかいものが広がって充足感で満たされる。見上げると白石はきつく目を閉じていて、俺の何かひとつくらいこいつの中に残ればいいのにな、と思った。  毎日こんなことばかりしているからか俺の尻は少しの準備ですんなり異物を受け入れる。下腹部に力を込めて強く伸縮させると白石が唾を飲む気配があった。揺さぶられるたびに自分が流れ出すようでもう何にも抗えない。俺が出してしばらくして白石が射精した。そのまましばらく重なりあっていた。重い、と言うと白石は人慣れした犬のように首筋に頬を擦り付け寄せてくる。こういう仕草が似合う男だった。
 重い体を引きずって住まいに戻り、何もかもが面倒だったので衣服を解いて適当に転がった。「さみいだろ」と白石に毛布をかけてやると「やさしい」と笑われた。「アオカンの弱点はすけべしてその場合で寝られないことだな」「わかるう…」「でもなんか抗えない魅力があると思わねえ?」「俺らの先祖もやってだろうから、もう本能なのかもよ」  食欲と性欲と睡眠欲と、それから何ともいい表せないもので満たされていて、あの夜俺はほんとうにしあわせ、だったのだと思う。過剰が空白を満たすと思いもよらぬことがもたらされるもので、だからなんか感極まって 「俺がお前にしてやれること、なんかない?」  そんなことを言ってしまった。 「そんなこと考える必要ねえよ、もう十分もらったからな」  白石の言葉は梁のあたりまでゆっくり浮かび上がってあっけなく霧散した。ぽろりと涙が出るだとか隕石が落っこちてきてふたりとも死ぬだとか俺が白石を殺すだとかどちらかが不治の病に冒されるだとかそういう劇的で奇跡じみたことは何も起こらなかった。でもその分だけ、味気ない現実を知ってるからこそせめて心だけでも伝えたくて、固い体を抱き寄せてうなじに顔を突っ込み腕に力を込めた。痛えよ、とまた笑われた。         「行ってらっしゃあい」  翌朝、出かける俺に白石は床の中から手を振った。  眠っている間に雨が降ったようで山の中はいつもより静かで、夜に冷やされた土が乾く香りがして清涼さだけがあり、イタドリの葉に残った朝露ひとつひとつが鋭く尖っていたのを覚えている。俺はいつもそんなことばかり覚えている。  昼過ぎに寄ったアシリパさんのコタンに白石はおらず、俺がそのまま帰宅すると住まいはがらんどうだった。ちゃぶ台には白石が飲み干したのか底の方に少しだけ澱が溜まった湯呑みがあり、かたわらには懐紙にのった飴が残されている。  ちゃぶ台の足元にはあいつがいつも身につけていたボロい半纏が畳まれていて、見えもしない意志のようなものを感じた。不安はなかった。いつかこうなることはわかっていたから。  今頃になって鼻の奥が熱くなりぼろりと涙が落下した。泣けるものだなと遠く感じて、こうやって俺は俺の悲しみと折り合いをつけていくのだとひとり知る。  子どもの頃に駄々をこねておかないと、ほしいものを欲しいと言えない大人になる。あいつの言葉を思い出す。俺はどんな子どもだったか。欲しいものは腕っぷしで手に入れていた。愛されていた。けれど本当に欲しいものは炎と土埃と血だまりの中に甲斐なく消えていった。あの時も今もこころを言葉にする術を知らなくて、いとしいものの気配だけが遠ざかる。でも今は、今だけはこれでいいのだ、と思う。白石が知られたくなくてしたことだから。  外からは虫の声や鳥の羽ばたきが降り注ぎ午後の光がゴザにやわらかく差し込んでいた。秋のとば口の山は賑やかで明るく、祭を控えたような興奮が満ちている。それでも俺はこのときどうしてか冬を思い出していた。この山は雪が降ると夜でも光るのだ、黄金よりまばゆく。
「役立たずは行ってしまったのか?」 「そうみたい。アシリパさんは寂しい?」 「寂しいけどそれでいい。あいつが私たちに会いたいと思うならいつでも会える」 「その前に俺たちの誰かが死んじゃったら?」 「私たちの信仰では死後の世界で会える」  アシリパさんは淡々と言い、櫛と手鏡をさらりと撫でた。 「杉元、フチからニリンソウを頼まれた。一緒に行ってくれるか」  言うより早くアシリパさんはチセを出ていく。草を踏む軽やかな音が俺の心をやさしく揺らす。外で誰かが声を上げて笑っている。 「アシリパさん、待って」 「杉元、来い来い、早く!」  俺はあいつのことをほとんど知らない。知っているのは、あいつの靴下が本当にくさいこと。二の腕の内側に三つ連なるほくろがあること。鹿肉より兎肉の方が好きなこと。体は右足から洗うこと。右の後頭部の方が左の後頭部より平らなこと。あの変な髭はほんとうにかっこいいと思ってやっていること。横向きに寝るクセがあること。賭け事とあだっぽい女性が好きなこと。ほんとうにそんなことばかりだ。  脳裏をかすめる、軽薄でだらしなく柔らかな男の面影。この野放図きわまりない空の下で煙のように消えていったあいつは、これからどこでどんな生き物になるのだろう。  俺は銃剣を持って立ち上がった。 「行くから待ってえ」 「秋の風だ、早く」
エピローグ  ちんぽが痛い。やりすぎで。  失敗かそうでないかと言ったら完全に失敗だった。分かりきっていたがもう自信喪失するくらいに失敗だった。一日二日で帰る予定が居心地が良過ぎてだらだらしてしまい杉元にはただ期待だけ持たせたしアシリパちゃんには信頼する人間がまた消える失望だけ残した。俺はただ杉元への未練が膨らんだだけだしなんかもう不毛とはこのことだろう。  あのまま東京できれいさっぱり別れた方がよかったのは火を見るより明らかだったけれど、今の俺は五稜郭に用があり、函館に来るのに小樽に来ない、という選択肢はなかったのだ。  杉元は乙女なところがあるからせめて「起きたら白石がいねえ俺は夢をみてたんだろうか…」てな具合に夜中に抜け出せればよかったが、あいつが毎晩俺をがっちり抱え込んで眠るものだからそれすらできなかった。何をしても抜け出せない、あれは固技だった。それにしても半纏を置いてくるのは感傷的にすぎただろうか。  それでもアシリパちゃんと遊んで山のものを食べて杉元と朝な夕なやりまくって喋りまくって、ずっとふたりといられたこの日々は俺に極楽だった。この俺がずっとここにいたいと思うくらいには、ほんとうに。  だらだら坂が滲みはじめて目元を拭う。   久々に会う杉元は荒んだ雰囲気がかなり削げ落ちていてそれなりにここの生活に溶け込んでいた。まだ平穏に慣れきってはいないし乱暴なところはあるけど根は良性の人間だから、波があったとしてもうまくやっていけるだろう。誰にでも人に言いたくないことのひとつやふたつあるのだから大袈裟な心配はいらない。いつかの冬にこの山で出会った男はもういないのだなと思うと喜ばしい一方でほんの少し寂寞があった。誰もが不変ではいられない。俺だってあの旅の中で変わってしまった。  今日はどういうわけか昼下がりからずっと日差しが強く、昨日より気温がだいぶ上昇していた。一種の雰囲気を感じてふりあおぐと、立ち枯れた木のいただきにうずくまる猛禽の視線とかち合った。この森ともお別れだと思うとこんな瞬間にも感傷が滲む。  ふと獄中で出会った誰かの言葉を思い出す。人を大勢殺すとおかしくなる、避ける方法はひとつで犠牲者の血を飲むこと。どんな味かと尋ねたら、そいつは甘くてしょっぱい人間の味だと真剣な顔で言っていた。杉元は血を飲んだだろうか? 「動くな」  左後方、やや距離のあるところから鋭い声が突き刺さった。  そうきたかあ、と思っている間に猛禽が飛びすさっていく。矢を引き絞ったまま藪の中から姿を現したアシリパちゃんに、俺は両手を上げて降参の意思を示した。 「この毒矢はヒグマなら10歩だがお前なら一歩も歩けずに死ぬ」 「いつかも聞いたよそれ〜。怖いからおろしてえ?」 「出ていくのか」 「うーん、そうですね、ハイ」  矢が矢筒に収まり、とりあえず誤射による死は免れた。 「どうして何も言わずに出ていくんだ? 残されるものの気持ちを考えたことはないのか? サヨナラがあれば、それをよすがに生きていくことができるだろう」  目の前まで来て真っ直ぐ見上げられた。光を放つ無敵のひとみ。杉元を導く灯台はいつからか俺の道標にもなっていたように思う。  でも、もう道が別れる。 「ごめんね、こういう風にしかできないのよ。だってちょっとでも行かないで〜なんて言われたら俺ずっとここにいちゃうもん」 「そんなことは言わない」 「少しは考えてくれない!?」 「群れを離れて独立するんだろう。巣立ちは誇らしいことだ。立派になれ」  もしかして大人として信頼されていたというのは俺の勘違いで、彼女が俺によそよそしかったのは独立したと思った子狼がひょっこり帰ってきて落胆したということなんだろうか。そうすると俺は杉元に恥ずかしい思い違いを話したことになる。あいつ忘れてくれないかな。  珍しくアシリパちゃんが言い淀んだ。空白が混ざり合うみたいにお互いの考えが交わる感触がある。 「杉元を連れて行かないのか、って聞きたいんでしょ、俺に」  目に潰れそうなほど力を込めて、彼女は唇を引き結んだ。羨ましいなあと思う。女の子には敵わない。背がもう少し伸びて頬の丸みが消え、この目が憂いとともに伏せられる日が来れば杉元なんてあっさり絡めとられてしまうだろう。 「ないない。誘ったところで着いてこないって。俺が考えてること話したら、もしかしたらあいつのお節介心が動くかも知れないけど…いや動かないかなあ…。俺はひとりで行くよ」  それでもあいつは人の気持ちに鈍いところがあるから、ぽっと出の女性と突然恋に落ちて家庭を持つなんてことがありえないとは言い切れない。その女性が何事かに困っていたりしたらなおさらだ。アシリパちゃんがその気ならその辺は考えておいた方がいい…なんて言ったら矢で直接刺されかねないので黙っておく。  恋とか愛とか、俺にとっては借り物の言葉でどうにも座りが悪い。そんな言葉で杉元のことを言いたくなかった。ここから先はひとりだが俺と杉元は繋がっている。死んだら死後の世界で会う。地獄でも黄泉の国でもニライカナイでも、どこででも探し出す。だから古い靴下だけは捨てられなかったのだ。  彼女の小さな頭に手のひらを当てた。 「俺ねえ、やりたいことができたの。お姉ちゃんと遊ぶでも博打がしたいでもないよ? うまくやれたら手紙を書くから、これで杉元と会いに来て」  懐から包みを取り出して彼女に握らせる。彼女は包みを開けるとぽかんと口を開けた。片手に持った弓が所在なさげに揺れていてる。 「シライシお前、まさか」 「違うってえ〜それは井戸に落ちた時に半纏に入っちゃったの〜。杉元もポケットにしまってたでしょ? 俺はほら、これをもらったからね」  彼女の手には黄金の粒、俺の手にはカサカサのはんぺん。 「私にこれは」 「必要ないとか言わないでよ。俺から便りがなくてもさ、アシリパちゃんの大事な誰かを医者にみせる時なんかに使ってよ」  沈黙が訪れる。森が彼女を守るように鳴った。自然でも文明でも人間でもなんでもいいから、彼女をこの先ずっと守ってほしい。彼女の道行が実り豊かなものであるように。杉元が誰かと気持ちを分け合えるように。杉元が言うようにふたり組で��いつか瓦解するかも知れない。ふたりにはゆるやかに、多くのものとつながっていて欲しい。 「最後にアシリパちゃんに会えてよかった」  珍しく彼女は困った顔していた。適切な言葉を見つけることができないらしい。 「…お前がいなくなったら杉元が寂しがる」 「逆だよ、俺が寂しくなんの。俺は一生あいつの男だからね。杉元がアシリパちゃんの男だとしたら俺は杉元の男なわけよ。世界はふたり組でできてるわけじゃないからね」 「屁理屈をこねるんじゃない。ほんとうは私だって寂しい」  鼻を鳴らしてそれから少し悲しそうに顔を歪めた彼女を、俺は今までで一番近くに感じた。 「出世するんだぞ白石」  びゅうと風が吹き彼女の唇に髪が張り付いたので、俺はそれを払って小さな体を抱きしめた。背に回された手が思いのほか力強くてまた泣けた。くさいとは言われなかった。
 いつものように人の使う道を逸れて歩く。目的地がわかっていればどこを歩いても同じだ、ひとりならなおさら。街へ降りるのに使っていた獣道だが、前方右に前回通った時はなかった盛り土があった。薮を被せて隠されてはいるがここ数日の間に掘り起こされたらしく土は黒々としている。予感なのか記憶なのか、とにかく慣れ親しんだ虚しさを感じて足が止まった。長いこと北海道の山歩きはしてきたが獣はこんな形の穴は掘らないし土も盛らない。巣というより塚だ、と耳の奥で警鐘が鳴った。恐れとほんの少しの期待を込めて土塊に枝を突っ込むと予想通りの感触がしたのでそのまま土に穴を開けた。覗き込めばやはり土と血で黒く染まった衣が見える。  ここを通る人間はほとんどいない。つまり杉元か俺かってことで、そういうことだ。土塊の中身は密猟者か山賊だろうか。  杉元はあんなに変わったようでいてまだ人を殺せるのだなあ。やさしい目眩を覚えて俺の悪性が哄笑をあげる。  ふたり地獄で出会うよすがをひとつ胸にしまい込む。俺は歩き出した。
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shukiiflog · 7 months
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ある画家の手記if.68 名廊絢人視点 告白
俺の言葉は 届いてる?
香澄の手を引いてとりあえず落ち着ける場所に向かう。 途中の道で薬局に寄って包帯とかガーゼとか色々手当てに要りそうなものをざっと買っていった。ついでにペットボトルの水とちょっとしたパンとか食料も。ああいう場所はそういうちょっと入り用なもので小金稼いでるからどれも普通に買うよりめちゃ高いし。 そのまま迷わず駅近の若者向けのきれいなラブホテルに入る。まだ手を引かれながら歩く香澄はラブホを見てへんな顔してた。 「香澄はこういうとこあんま来ないの?」 「…初めてきた…」 「ベッドもソファもあってゆっくり休めるし泊まんなきゃ安いよ。バスルームとか冷蔵庫とかもあるからまずここで怪我の手当てしよ」 ほとんど有無を言わさず連れこんで、なるべく普通のビジネスホテルっぽい落ち着いた内装の部屋を選んで、鍵をとってエレベーターに乗った。急上昇に少し頭痛がする。 部屋についたら鍵を回して香澄を連れて入る。 香澄は部屋をおそるおそる見渡してた。 「名前のわりに案外フツーでしょ。最近はラブホで女子会とかする人もいるから、単にいかがわしい作りの部屋ばっかりじゃなくて色々使い勝手いいんだ」 話しながらコートを脱いでハンガーにかけてシワを伸ばす。鞄をおろして、ついでに香澄の肩からも香澄の鞄をとりあげて、一緒に壁のフックにかけた。 ペットボトルの水をあけて一度煽ると、俺は香澄の正面に立って香澄の服を脱がし始める。 「ぇ、絢人く…、…え?」 香澄がおろおろし出したから何でもない顔で言ってのける。「風呂入んないと手当てできないでしょ?俺も一緒に入るよ」 香澄はボタンを外されたシャツの前を片手で引き寄せながら一歩退いた。「いいよ、汚いし、自分で洗えるから…!」下がられたから香澄の腕を掴んで一歩踏み込んだ。 「体見せろっつってんの、ほかに怪我あっても自分じゃ気づけてないかもしんないだろ」腕を掴んだとき香澄の表情に少しの変化があった。腕にもあるのか。気づかないふりしてすぐに手を離すと、自分から服をさっさと脱いだ。香澄は根負けしたみたいにせめて服は自分で脱ぐと言って服を脱いで、ソファに畳んで置いた。 俺のほうを見た香澄が一瞬表情を強張らせた。…仕方ないよな。「病気とか、うつったりするようなのじゃないから。キモかったらあんま俺のほう見ないどいてよ」眉を下げて笑ってそう言って少し重くなった空気を流した。 香澄の手を引いてバスルームに入る。お湯をバスタブにはりながら、バスタブの淵に腰かけさせて、体を見る。一目見て分かるのは首筋から胸元の、この前まことくんとこに泊まったときもあった爪痕があった上から重ねられた傷、足首の肉が縦長に削がれて出血してる、腕にも長い似たような傷がある。 「ーーーー……」 そっと香澄の頭に手をあてると、長めの髪の毛を流れと逆方向に指で梳いてあちこちの方向によけて地肌を入念に見ていく。頭には何もない。生え際から後ろに顔の毛をどかして、顔を至近距離で見つめる。きれいに揃った長い睫毛。瞳をよく覗き込んで、目の近くに手を当てて指先で少し瞼や目の下の皮膚をひっぱって眼球や皮膚の内側を見る。何もなし。「嫌だったら言って。すぐやめる」言い忘れてたことを今更言い添えて続ける。唇に手をあてると口を開けさせて、舌に怪我がないか、口の中に噛んだあとがないか、欠けた歯がないか、覗き込んで見ていく。一本ずつ歯にそっと触れて前後にずらして出血しだしたり抜けそうな歯がないか確認する。大丈夫そうだ。 口から手を離して、輪郭を覆うように触れる。顎が外れたり陥没した部分もない、むしろ左右対称に整っててきれいだ。髪をあげて耳の中と裏側も見る。異常なし。 ーーーそうやって全身を確認した。香澄は相変わらず少しぼんやりしてたけど、隅々まで見られすぎてたまに恥ずかしそうなような妙な顔つきをしてた。 「ーーー香澄、終わったよ。目に見えるとこ以外は大丈夫だった。勝手に触ってごめんね」 「う…うん」 シャワーの水を弱く出して、香澄の爪先にかける。「温度大丈夫?」「うん」 タオルで足首を包んで落ちてきた水が沁みないように守ると、まずは首から胸の怪我を洗っていく。血は固まってたけどたんに放置されただけみたいだったから、上からあったかく湿らせたタオルを当てて、こびりついた血の塊が柔らかくなって剥がれやすくなるのを待つ。「いいでしょ。タオルとかたくさんあって使い放題だし、汚しても文句言われないし、そのまま置いて帰っちゃっていいしね」なんて言いながら何度もタオルを当てなおしてぬるいお湯でふやけてきた怪我を確認する。怪我にはりついた不清潔な血を指先で傷に触れないように慎重に洗い落としていく。「沁みてない?」「…うん、平気…」 香澄の足元に跪いて足も、腕も、同じようにきれいに流して血の塊を洗い落とした。傷口が見えやすくなって治療しやすくなった。 この傷でお湯に浸かると痛む。さっきからタオルを湿すのに使ってただけだし、お湯ははったけど湯船に浸からせなくてもいいか。今からそういうことやるわけでもあるまいし。 買ってきた治療道具を使って手当てしていきながら、さっき道で聞いたことをもう一度聞く。 「……何があったの」 「何…って…………」 あー。Dammit。香澄にとってこの怪我は何かあったうちにカウントされないわけ。上等じゃん。別角度からいこ。「直にぃは、今どこでどうしてる?」 聞いた途端に香澄が少し眉を下げて泣きそうなような顔をした。泣いてはないけど。「直にぃと何があったの?」 香澄はしばらく黙ってたけど、待ってたら話し出した。 「絢人くんが教えてくれたこと、…直人も俺に話してくれた。約束してたんだ、日にちも決めて…  直人は話したいって、俺に知っててほしいって言ってくれた、絢人くんが言ったみたいに。…なのに、ちゃんと落ち着いて直人の話ならなんでも受け止めて聞くつもりで、いたはずなのに、…俺は直人の気持ち、ちゃんと受け止めきれなかった」 「…………」 「直人のこと、傷つけた。余計なこと言って、直人のこと動揺させて、…直人は過呼吸起こして、意識なくして、そのまま一晩たっても目を覚まさなくて、…今朝病院につれていったけど病院から連絡ないから、まだ意識は戻ってないんだと思う……」 話す声も呼吸も落ち着いてるけど、…放心してるのに近いのかな。香澄がそこまで話して黙ったから、香澄の体をバスタオルで包んでベッドのほうにまた手を引いて連れていく。 俺が服ぜんぶ脱ぐ必要はなかったんだけど、こんな密室に二人だけだし、俺も全裸になって完全に武装解除したほうが香澄が怖がらないかと思ってそうしたけど、どうだろ、相手によっては逆効果の場合もあるし。なんとも言えないな。とりあえずバスルームから出たら俺は下だけ履いた。 ベッドに香澄を座らせて、服を着せ直しながらゆっくり、微笑んで言い聞かせるように話す。 「話せば香澄に傷つけられることを直にぃは知ってたはずだよ。お互いに無傷で済む話じゃないから。話したってことは最初から傷つけられることなんて直にぃは許してるんだ、香澄には。だからそのことで香澄がそんな顔しなくていいんだよ」 「…ちゃんと受け止めたかったのに…」 相変わらず香澄は少し放心ぎみで、俺の言ってることが届いてるか分からない。虚空に呟かれたみたいな言葉に、しっかり返事を返す。 「ちゃんと受け止めたから、香澄はこんなに傷ついてるんだ。傷つくのは相手のことを想ってるから。香澄も直にぃも、自分を責めたらだめなんだ、本当に愛してるなら、自分のことも愛していかなきゃいけない。一人では難しいけど、二人でこれからも丁寧に愛し合って過ごせば、いつかそうなるよ」 「……うん…」 香澄は少し目線を下に下げた。香澄の目を覗き込む。…俺の言葉は届いてる? 俺は今度こそ、間違えずに伝えた��ことを言えてるかな。相手を追い詰めたりしないで。俺の言葉だって、わかって聞いてもらえてるかな 「………」 「…直人が許したって、俺が許せないよ…」 香澄の口から言葉がベッドの上に溢れるみたいに落ちていく。 「…ちゃんと受け止められたなんて、…思えない…。直人のそばにいるのが、自分でいいと…思えない」 ……相当思いつめちゃってるな。 ちゃんと服を着せ終えてから、香澄の両肩に手を置いて、そっとベッドの上に体を寝かせた。 「香澄、少し眠ってごらん。ちゃんと眠ってたとしてもその間の自傷で体は疲れてるよ。今なら俺が何も起きないように見てて押さえてられる。眠って。ちゃんと直にぃの面会時間が終わるより前に起こすから」 そう言って俺は自分もちゃんと服を着ると、枕をクッションにして壁側に背をつけて座った。
「……絢人くん」 「…ん…?なに?」 香澄は目を閉じると天井を仰いだまま呟いた。 「その、……脚…」 ああ。忘れてた。正直頭の怪我のほうがバレそうでそっちに気がいってた。これはまだうつらないってことくらいしか言ってなかった。 「皮膚病みたいでキモいよね。俺も自分で見てたまに若干鳥肌たつ。だからセックスの時とか、彼女のことビビらせないように布団かぶったりね」朗らかに笑って大したことじゃないのを示す。 「ーーー火傷の跡だ」 「………そうだよ。…香澄の体にもたくさん傷跡あった。もうどれも古い傷跡なのかもしれないけど、中には火傷っぽく見えるやつもあったね。料理しててミスったとか?」そんなわけないだろバーカ。って心の中で自分つっこみ。 あれがぜんぶ自傷のあとってことはどう考えてもない。自分じゃ手の届かないところや見えないところにもたくさんあった。傷痕の形状や大きさもまるでバラバラ。自傷ってのは意識的にしても無意識的にしても同じやり方や傷つけ方の繰り返しになることが多い。 …不特定多数の他人の存在がある。それが、例えば一度きりの瀕死に陥るような過激なリンチや暴力でできたものなのか、長年ずっと誰かからの暴力を受けてたのか、判別が難しいくらいに重なってたくさんあったけど、たぶん後者だ。どれもほとんど古傷っぽいけど傷の薄まり具合に少しずつの差があった。 そのことについて訊いてみるか考えてたら香澄が話を俺のほうに戻してきた。 「…絢人くんは、料理してて、そうなったの」 「ーーー違うよ。」 香澄に訊くのはまた日を改めてがいい。今日は休ませないと。せっかく小芝居うって仕事早上がりさせたんだし。 …でも、人に聞く前に自分のこと話すべきだな。不快じゃない程度に。 「脚にガソリン撒かれて火をつけられた。火を消されたのがわりと早かったから、この程度で済んでる。おかげで見た目に比べてそんなにひどい後遺症はないよ。歩けるし。走るのはちょっと苦手だけど、まあそれは心臓に負担かかるから避けてるのもあるしね」 香澄はじっとして話を聞いてた。俺はここまでしか話さなかった。鞄から持ち歩いてる本をとってくる。ベッドの上で本を開いて、あとは黙って香澄が眠るのを横で待ってた。
10分もしないうちに香澄はじっとしてられなくなったのか、体を起こしてベッドから降りようとした。「香澄、」 急いで怪我をしてない両肩を掴んで、なんとかもう一度ベッドに押さえつけて寝せる。体格的に香澄に本気で動かれたら俺は押さえつけとくことはできない。香澄は俺の意思を尊重したのか、俺のことを跳ね飛ばしてまで動く気はないみたいだったけど、上に乗っかって押さえてくる俺の顔を哀しげな目で見てきた。 ーーー直にぃに会いたい? こんなとこで庇われながら一人で寝てるわけにはいかない? 直にぃに会いに行っていいか迷ってる? 直にぃのいない家に一人で帰るのが怖い? 俺にできることなんてたかが知れてるんだよ、直にぃにも、香澄にも。思い上がるなーーー父親殺し。 いくつもの言葉が同時に頭を巡って、疲れたようにゆっくり目を閉じると上から香澄を押さえたまま、聞こえないくらい小さな声で言った。 「俺もここにいるから。…お願いだから、俺と居て…」 少し気を抜いた瞬間、まるで涙が伝うような一筋の感触が目の横を通りすぎて、鼻筋から一滴の血が香澄の頬に、落ちた。
続き
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