Tumgik
#今週の注目銘柄
nyc200922 · 7 months
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今週の注目株
私は全世界株のインデックス投資と日本株の高配当株投資を行っています。 そこで、私が注目する今週の銘柄をピックアップしたいと思います。 1. 5192 三つ星ベルト まず、三つ星ベルト(株式コード:5192)についてご紹介します。 三つ星ベルトは、ベルトや建設資材の製造と販売を主要な事業として展開しています。 この企業は、製造業の中でも信頼性が高く、自動車産業向けに高品質なベルト製品を供給しています。 自動車業界は常に成長し、三つ星ベルトはその一翼を担っています。 また、環境への配慮も高く、持続可能なビジネスモデルを追求している点も魅力です。 2. 6073…
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kennak · 6 months
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「氏名」NGリストでNHKの誤報だと主張してた人たち。会見の運営会社が認めたことで完全に解釈の余地はなくなったので、ちゃんと謝罪や撤回をしたのだろうかと気になってそのうち1人のジャニオタのTLを見に行ったらリポスト内容が凄まじかった。以下はその一部。ジャニーズ事件のスポンサーは「底辺中高年男性」「売名弁護士」「左翼ジャーナリスト」「左翼活動家女性」の提供でお送りします。・ジャニーズ事務所が行動した事第三者委員会社名変更社長交代被害者窓口設置記者会見法を超えての補償ジャニーズ事務所廃業エージェント会社設立・マスメディアがした事揚げ足取り底辺中高年男性はどこから出てきたのだろうか…Twitterではまだ盛り上がってるけど、週刊誌の編集が、もうジャニーズ叩きの記事を載せても反応が悪いし、売り上げも伸びないと言ってた。まだ載せる媒体は、自己を総括、またはアリバイ作りのためにやっているんだろうと。そうかもな。こういう「中の人」系も多い。紅白の司会が発表になったのにジャニショの方がトレンドを席巻してるのNHKは前途多難だねw今年の出場が危ぶまれた当初から「カウコン(ジャニーズのカウントダウンライブ)の方が大事だから紅白なんてどうでもいい」言説が主流。去年まで紅白出場で一喜一憂していたのに…ジャニーズ問題、韓国同業に追い風 5銘柄に市場が関心会員制だったから要約すると…ジャニーズが弱っているこの隙に、韓国芸能事務所数社が、日本人を所属させ、音楽、ドラマ、CM、映画事業などの拡大を狙っているそうです。要は、韓国版ジャニーズ事務所を日本に作りたいそうです。ジャニオタの皆さま、拡散希望します。日経記事を元に「この隙に」「狙っている」と陰謀論の芽が生まれている。そうですね、恐ろしくて誰も依頼できないですよね。むしろFTI社は自社の名誉のためにこのリークが社内の者なのか調べ上げた方が良いと思います。NGリストの作成自体はよくあることらしいので、信頼回復の余地はあるかもしれません「NGリストは一般的」にすがる投稿は多い。それとリークした裏切り者探し。そういえば…サントリーの新浪さんのパワハラの件を取り上げた局はありましたか?情報番組が好きそうなネタなのに取り上げないのってそれこそスポンサー忖度じゃないの?あっちはどうなんだ論。テレビに出てる弁護士が、今のところ一人も、司法に訴え出ろと言わないのが不気味ですよね、ほんと。そして推定無罪の原則がどっか行っちゃって、ジャニーズを潰すことが最善という結論で一致してる。野村修也先生みたいに、拡大解釈まで容認して。法治国家を壊そうとしてるんでしょうね。「推定無罪」は頻出するワード。事務所が認めたことはどう考えているのだろう。ジャニーズの名前を残すな!と事務所に迫りながら、いつまでも番組の見出しに「ジャニーズ」と付けて視聴率稼ごうとするWS 事務所の方針は発表されたのに、まだ「ジャニーズ」をネタに尺を稼ぎたいらしい それなら誰がNGリストを流したのか、飯島、滝沢の責任は?等もっと取材して新事実教えてよこちらも裏切り者探し。テレビ局の"ジャニーズ叩き"ちょっとしつこくないか?見てて気分悪くなるコンサル(外資毛PR会社)側が全面的に非を認めてるのだからもう決着してるだろ。これ以上はまるで集団イジメだ🇰🇷(芸能プロ)からジャニーズの現役タレントと育成組織を徹底的に潰すように指示されてるのかも?と勘ぐってしまうよ「韓国KPOP界による攻撃」論。あんまり言いたかないけど、ワイドショーのスポンサーやってる企業にも問題あると思う。あんな異常な番組に出資してるんだもの。既にジャニオタじゃなくても体調崩す人が出て来てる。TV番組を見て健康被害出るのはポケモン以来じゃないかな?健康被害が出ているらしい。立場ってあるやん。謝る立場って弱いやん。下げてる頭を上から踏みつけるようは真似は品がない。ジャニーズのやることなすこと叩きまくってる昨今の風潮がなんかおかしい気がしてきた。品格…今ジャニーズやファンを叩いてご満悦のおぢ達って危機感がなさ過ぎでしょ。これがまかり通ったら、今後は見知ってるというだけで、証拠が一切なくてもあなたから性被害を受けたと申し出られたら問答無用で資産を差し出して補償するってことですよ。もちろん家族も知らなかったはずはないので同罪です。また「おじさんが叩いてる」 論。統計を学んでるんですが、最近暇なものでジャニーズの偏向報道において、ジャニーズを一方的に、絶対悪でコメントしてる人たち(調査数2069人)のうち過去ツイートやプロフィールから40歳以上であろう人達が1641人それ以下と断定できる人が307人年齢が特定できない人達が121人年齢層特定にあたって過去のツイートを見ていると、若い人たちは様々なルートで情報を見て、自分で正しい報道を見極めている傾向が高かったが、40以上の方は、引用ツイートに週刊記事が多かったり、特定のジャーナリストの記事ばかりリツイートしていた。つまり年齢が上がる程、情報に偏りがあった統計を学んでいるらしい。ここでも「叩いてるのは中高年」論が。ジャニーズ、東山紀之さん、井ノ原快彦さん、俳優のキャリアを潰して責任背負うのに、なぜ叩くのか。しかも悪いことは関係ない。気の毒すぎます。新しいことを応援しないで、くだらないこと喚き可能性を潰してきたのが日本の「失われた30年」。水に落ちた犬を叩くのではなく救うのが日本。部外者感想くだらないことって…ジャニーズ問題での会見について「国民の知る権利が」とか言ってるけどよくわからん。ジャニーズ事務所は公でも官でもない私企業にすぎないし、ジャニーズと全く縁のない生活をしている人など山ほどいる。被害者が居るのであれば適切に対処されれば良いねえとは思うけどそれ以上でも以下でもない。みなさんには関係ないでしょ論。ミヤネ屋やめざましTVなどテレビ局に関係なく同じ制作会社が請負いで番組を制作してるそりゃ横並びになるよね#偏向報道PROGRAM GUIDE | 株式会社メディア・バスターズZIP/めざましテレビ/グッドモーニング/ノンストップ/ミヤネ屋/サンデーモーニング/イット/α/ANNNEWS/スーパーJチャンネル/サタデーステーション/サンデーステーション/おはよう朝日です/SPARK/めざまし8これ全部同じ制作会社で局に常駐して番組制作してるのかーへーそりゃ全局同じ報道になるよねー「偏向報道」の原因は制作会社だとする説。私は細かく尾形と望月のYouTubeチャンネルに行って、再生せずに報告してますよ。まずは奴らの資金源をきっちり断たなければなりません。動画を見なくても報告はできます。小さなことからコツコツと。ちなみに、尾形と望月のYouTubeチャンネルを報告するときには「スパム」もしくは「差別的・攻撃的内容」を選択するようにしています。繰り返しますよ。大切なのは、活動家の資金源を断つことです。特に尾形と望月の主たる資金源はYouTube以外見当たりません。ここに集中しましょう。そのほかマスコミの資金源を断つのも同様で、雑誌買わない、新聞買わない、URL踏まない、サブスク登録しない。小さなことからコツコツと。あともうひとつ大切なことを。対象に電凸、メール凸などは絶対に禁止です。それはこれまでの極端な圧力団体と同じことになります。また大学などに電話かけたり実際に行くのもNGです。どうやったら資金源を断てるのか、できる生活の中でできる範囲で地味に目立たずコツコツと。むしろ今後は、「ジャニーズファンは電凸なんかしないから、それをやってるのはあちらの勢力」って言えるくらいの状況に持っていきたいですよね…正当な理由のない通報は業務妨害な気がするけど…ほんっと、ファンでも何でもない俺がテレビでジャニーズ関連のニュースのコメンテーター(特に休憩室のミヤネ屋がひどい)見る度に吐き気がするほどアホらしい茶番だと感じるから、ファン���人々はもっとしんどい気持ちなんだろうし、タレント自身は心を病んでもおかしくないレベル。マジでやりすぎ「ファンでない人もこう思ってる」系。ええええ叔父の責任を姪が取れと散々責めてるのだから、その理論からすると実弟の責任を姉が被るのは当然では??叔父より近い血縁でしょうに望月記者の弟がやっている会員制サロンの問題についての投稿。違和感があれば報道していきたい、とか我々の姿勢も問題があった、とかなんか色々報道陣の人たち言ってるけど、当事者の会の齟齬・矛盾や、無罪推定の原則が守らてていないこと、被害者の可能性もあるタレントに対しての異常な排斥に対する違和感はないのかしら?結局なんも変わってへんやん。頻出ワード「矛盾」「推定無罪」わざと虚偽のニュースを流して、それを訂正されたのも隠しておきながら、翌日のニュース内でちゃんと訂正しなかったというのは、風説の流布の犯罪にあたると思いますが?普段からそういう事が横行してるから、コンプライアンス意識が甘いのでしょうか?NHK批判。NHKさんツッコミまくられてますね。w報道する前にNHKでコンサル会社に確認取材しましたか?NHKは震災などの緊急時の情報を頼りにしている人達も多くいる。その情報の正確さへの疑念が生まれるような事を平時に行っていてよいのですか?総務省の調査が必要では?上に同じ。偏向報道が異常すぎる。警察が動くか、または全テレビ局に責任を取らせて解体させ電波オークションをしない限り、人権侵害が続くのかもしれない。頻出ワード「人権侵害」メディアによるジャニーズ叩きがあまりにも異常なのでTVのニュースや情報番組は見なくなった。法を超えた補償をする、社名変え廃業も決めた、新会社設立し組織改革する。で指摘することなくなったら些細な言葉尻の揚げ足とり大騒ぎ。狂気ですね。ニュースキャスター、MCたちにも拒否反応です。「ジャニーズ叩きは異常」論。ジャニーズ事務所はコンサル会社の情報漏洩のせいで多大なる損害が出てるからコンサル会社に訴訟起こすべきだし名誉毀損ものの記事を書く週刊誌にも対応すべき。「ジャニーズは被害者」論。このメールが本当にFTIコンサルからのものならこの会社に危機対応を任せようと思う会社は今後現れないだろう。クライアントの意に反してNGリストを作成・持ち込んだだけでなく、それをクライアントのせいにするようなリークの仕方をするのだからもう二度と信頼は回復しないのでは?上に同じ。謝るどころかHPの文言の違いについて事務所に質問したが回答は無いと、あくまでも悪いのは事務所と思われる様な言い方。コンサル会社の謝罪は切り取った1部だけ表示。偏向報道にも程がある。ファンの必死な訂正やお願いや批判のリプは全く届いてないんだね。どうしてこんなに頑ななの?#NHKニュース7NHK批判。もっかい言うけど、8月に国連から注意されたのはジャニーズだけじゃなくて「もみ消しに加担した」メディアもだからね国連への最終報告は来年の6月ジャニーズは改善したよメディアはどうする?「ジャニーズは改善した」…テレビ局、自暴自棄になってないか?常軌を逸した偏向報道、ヘイトスピーチまがいの罵詈雑言のオンパレード。ジャニーズファン以外でも、ごく普通の人なら、ゲンナリしてるし、なんなら吐き気もしてる。今後もう、まともな人はますます見なくなっていくぞ。#ゴゴスマ#ミヤネ屋「もう普通の人は見てないから」論。ビジネスと人権の観点から今後問われなければならないのは、今まで見て見ぬふりをしてきたとされるメディア、芸能界とスポンサー企業の責任です。手の平を返したようにジャニーズ事務所を責めるのは誠に無責任。自覚を持って今後行動して頂きたいものです。世間、あんなに国連が〜!って言ってたのにこっちのポストは全然拡散されないの、まじでジャニーズ叩ければ人権なんてどうでもいいんだろうな笑「ビジネスと人権〜」の引用は国連特別報告者(現代的形態の奴隷制担当)の小保方智也氏による投稿。なお氏は直前にジャニーズ事務所の2回目の会見、最後の記者が言われた事は的確だと思います。支配力が非常に強く、従うしか無いと被害者が感じた場合、単に性加害では無く国際人権法上最も重大な「奴隷」に当てはまる可能性が高くなります。これを踏まえて個人個人に適切な補償が施される事を期待します。という投稿をしてこちらはジャニオタに反発されているのだが…コピペしている最中も怒涛の勢いでリポストが増えていく。このうち少なくとも1〜2割はジャニオタによる投稿ではない。(NHKの誤報と主張した一番いいねが多かった投稿も非ジャニオタによるものだった)XにはNHK嫌い、マスコミ嫌い、嫌韓、陰謀論者なども多いのでそれらの投稿を味方に一層ジャニオタのエコーチェンバーが強化されてしまっている様子がわかる。一体どうすればこの状況を止められるのだろうか…追記これ本当に探し集めたわけじゃなくTLに延々と並んでてどれも数百数千いいねやリポストされてる。こういう世界で生きてるのかと戦慄した。
「NHKの誤報」と主張したジャニオタのエコーチェンバーを覗き見てみる
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kurihara-yumeko · 27 days
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【小説】コーヒーとふたり (上)
 休日に喫茶店へ行くことは、加治木零果にとって唯一、趣味と呼べる行動である。
 喫茶店へ行き、コーヒーを飲む。時刻はだいたい午後二時から三時。誰かと連れ立って行くことはない。常にひとりだ。行き先も、決まった店という訳ではない。その時の気分、もしくはその日の予定によって変える。
 頼むのは、コーヒーを一杯。豆の銘柄やどのブレンドにするかは店によってだが、基本的にブラック。砂糖もミルクも好まない。軽食やスイーツを注文するということも滅多にない。ただ一杯のコーヒーを飲む、それだけ。
 彼女は喫茶店では本を読まないし、パソコンも開かない。スマートフォンにさえ触れないこともある。コーヒーを飲み終えたら、すぐに店を出て行く。たとえその一杯がどんなに美味でも、二杯目を頼むことはない。時間にすればほんの数十分間。一時間もいない。それでも彼女は休日になると、喫茶店へ行き、コーヒーを飲む。
 零果がその店を訪れたのは二回目だった。最初に訪れたのは、かれこれ半年近く前のことだ。
 たまたま通りかかった時にその店を見つけた。「こんなところに喫茶店があったのか」と思った。喫茶店があるのは二階で、一階は不動産屋。賃貸マンションの間取り図がびっしりと貼り付けられているガラス窓の隣に、申し訳なさ程度に喫茶店の看板が出ていた。
 細く狭い階段を上った先にその店はあり、店内は狭いながらも落ち着きのある雰囲気だった。歴史のある店なのか、年老いたマスター同様に古びた趣があるのが気に入った。コーヒーも決して不味くはなかった。出されたカップもアンティーク調で素敵だと思った。
 しかしその後、零果の喫茶店リストの中で、その店はなかなか選ばれなかった。その店の立地が、彼女のアパートの最寄り駅から微妙に離れた駅の近くだったからだ。「わざわざあの駅で降りるのはちょっとな……」と思っていた。けれど、最近同じ店に行ってばかりだ。今週末は、普段あまり行かない店に行こう。それでその日、その店を選んだ。
 けれど、その選択は失敗だった。
「あれ? 加治木さん?」
 そう声をかけられた時、零果は運ばれて来たばかりのコーヒーをひと口飲もうとしているところだった。カップの縁に唇を付けたまま、彼女はそちらへと目を向ける。
 その人物はちょうど、この店に入って来たところだった。そして偶然にも、零果は店の入り口に最も近い席に案内されていた。入店して真っ先に目につく席に知人が座っているのだから、彼が声をかけてきたのは当然と言えば当然だった。しかし、零果は彼――営業部二課の戸瀬健吾に声をかけられたことが衝撃だった。
「こんなところで会うなんて、奇遇だね」
 戸瀬はいつもの人当たりの良い笑みを浮かべてそう言ったが、零果は反応できなかった。驚きのあまり、何も言葉が出て来ない。しかし彼女の無言に気を悪くした様子はなかった。
「俺はよくこの店にコーヒーを飲みに来るんだけど、加治木さんもよく来るの?」
 笑顔で尋ねてくる戸瀬に、零果はカップを口元から離してソーサーの上へと戻しながら、「いえ、その……たまに……」と、かろうじて答える。この店に来たのは二度目だったが、そう答えるのはなんとなく抵抗があった。あまり自分のことを他人に明かしたくない、という彼女の無意識が、曖昧な表現を選んでいた。
「そうなんだ。ここのコーヒー、美味いよね。あ、じゃあ、また」
 やっと店の奥から店員が現れ、戸瀬は空いている席へと案内されて行った。幸いなことに、彼の席は零果から離れているようだ。大きな古めかしい本棚の向こう側である。
 戸瀬の姿が見えなくなってから、零果はほっと息をついた。休日に同僚と顔を合わせることになるとは、なんて不運なのだろう。その上、場所が喫茶店だというところがツイていない。
 改めてコーヒーを口元へ運んだが、未だ動揺が収まらない。半年前に来店した時は悪くなかったはずのブルーマウンテンブレンドだが、戸瀬の顔を見た後の今となっては、味の良し悪しなどわからなかった。香りも風味も台無しだ。コーヒーカップのブルーストライプ柄でさえ、「さっき彼が似たような柄のシャツを着ていなかったか?」と思うと途端にダサく思えてくる。
 それに加えて、戸瀬は先程、こう言った、「俺はよくこの店にコーヒーを飲みに来るんだけど、加治木さんもよく来るの?」。
 その言葉で、彼女の喫茶店リストから、この店が二重線を引かれ消されていく。
 同僚が常連客となっている喫茶店に足を運ぶなんて御免だ。二度目の来店でその事実を確認できたことは、不幸中の幸いだったと思うしかない。数回通い、この店で嗜むコーヒーの魅力に気付いてしまってからでは、店をリストから削除することが心苦しかったはずだ。ある意味、今日は幸運だった。この店は最初からハズレだったのだ。
 零果は自分にそう言い聞かせながらコーヒーを飲む。味わうのではなく、ただ飲む。液体を口に含み、喉奥へと流す。せっかく、いい店を見つけたと思ったのに。うちの最寄りから、五駅離れているのに。飲み込んだ端から、落胆とも悔しさとも区別できない感情がふつふつと沸き上がってくる。その感情ごと、コーヒーを流し込む。
 早くこの店を出よう。零果は、一刻も早くコーヒーを飲み干してこの店を出ること、そのことに意識を集中させていた。
 コーヒーを残して店を出ればいいのだが、出され��コーヒーを残すという選択肢はなかった。彼女は今まで、たとえどんなに不味い店に当たってしまっても、必ずコーヒーを飲み干してきた。零果にとってそれはルールであり、そのルールを順守しようとするのが彼女の性格の表れだった。
 先程入店したばかりの客が熱々のコーヒーを急いで飲み干してカウンターの前に現れても、店の主人は特に驚いた様子を見せなかった。慣れた手つきで零果にお釣りを渡す。
「ごちそうさまでした」
 財布をショルダーバッグに仕舞いながら、零果は店を出て行く。「またのお越しを」という声を背中で受け止め、もう二度とこの店に足を運ぶことはないだろうな、と思い、そのことを残念に思った。深い溜め息をついて階段を降り、駅までの道を歩き出す。
 店の雰囲気は悪くなかった。コーヒーだって悪くない。ただ、戸瀬の行きつけの店だった。
 否、それは戸瀬個人に問題があるという意味ではない。彼の物腰柔らかで人当たりの良い態度や、その温厚な性格は職場内でも定評があるし、営業職としての優秀さについても、零果はよくわかっている。
 そうではなく、零果はただ、同僚に会いたくないだけなのだ。休日に喫茶店でコーヒーを飲んでいる時だけは。唯一、彼女にとって趣味と呼べるであろう、その時間だけは。知り合いには誰とも会うことなく、ひとりでいたい。平日の書類とメールの山に抹殺されそうな多忙さを忘れ、心も身体も落ち着かせたい。そのためには極力、同僚の顔は見ないで過ごしたい。
 駅に着くと、ちょうど零果のアパートの最寄り駅方面へ向かう電車が、ホームに入って来たところだった。このまま家に帰るだけというのも味気ない、と思いかけていた零果であったが、目の前に停車した電車を目にし、「これはもう、家に帰れということかもしれない」と思い直した。もうこの後は、家で大人しく過ごすとしよう。
 そう思って、電車に乗り込む。車両の中にはすでに数人の乗客が座っており、発車までの数分を待っている様子であった。零果は空いていた座席に腰を降ろそうとし、そこで、自分の腰の辺りで振動を感じた。バッグに入れてあるスマートフォンだ、と気付いた。その一瞬、彼女はスマホを手に取ることを躊躇った。
 バイブレーションの長さから、それがメールやアプリの通知ではなく着信を知らせるものだということはわかっていた。休日の零果に電話をかけてくる相手というのは限られている。候補になりそうな数人の顔を思い浮かべてみたが、誰からの着信であっても嬉しいニュースであるとは思えない。
 座席に腰を降ろし、スマートフォンを取り出す。そこで、バイブレーションは止まった。零果が呼び出しに応じなかったので、相手が電話を切ったのだ。不在着信を示すアイコンをタップすると、発信者の名前が表示された。
 有武朋洋という、その名前を見た途端、めまいを覚えた。ちょうど、午後四時になろうとしているところだった。判断に迷う時間帯ではあったが、この電話は恐らく、今夜食事に誘おうとしている内容ではないだろうと、零果は確信していた。
 膝の上でショルダーバッグを抱き締めたまま、メッセージアプリを開き、有武に「すみません、今、電車なんです」とだけ入力して恐る恐る送信する。瞬時に、零果が見ている目の前で、画面に「既読」の文字が現れた。恐らくは今、彼もどこかでこのアプリを開いて同じ文面を見つめているに違いなかった。案の定、間髪入れずに返信が表示される。
「突然悪いんだけどさ、ちょっと会社来れる?」
 零果が思った通りだった。有武の、「悪いんだけどさ」と言いながら、ちっとも悪びれている様子がない、いつものあの口調を思い出す。
「今からですか?」
 今からなんだろうな、と思いながら、零果はそう返信する。
「そう、今から」
「今日って休日ですよね?」
 休日でも構わず職場に来いってことなんだろうな、と思いながら、それでもそう返信をせずにはいられない。
「そう、休日」
 何を当たり前のこと言ってんだよ、って顔してるんだろうな、有武さん。少しの間も空けることなく送られて来る返信を見ながら、零果は休日の人気がないオフィスでひとり舌打ちをしている彼の様子を思い浮かべる。
「それって、私が行かないと駄目ですか?」
 駄目なんだろうな、と思いながらそう返信して、座席から立ち上がる。
 駅のホームには発車のベルが鳴り響いている。零果が車両からホームに戻ったのは、ドアが閉まりますご注意下さい、というアナウンスが流れ始めた時だった。背後で車両のドアが閉まり、彼女を乗せなかった電車は走り出していく。
 家に帰るつもりだったのにな。零果は諦めと絶望が入り混じった瞳でその電車を見送った。握ったままのスマートフォンの画面には、「加治木さんじゃなきゃ駄目だから言ってるんでしょーよ」という、有武からの返信が表示されている。
「…………ですよね」
 思わずひとり言が漏れた。ホームの階段を上りながら、「今から向かいます」と入力し、文末にドクロマークの絵文字を付けて送信してみたものの、有武からは「了解」という簡素な返信が来ただけだ。あの男には絵文字に込められた零果の感情なんて届くはずもない。
 再び溜め息を盛大についてから、重くなった足取りで反対側のホームに向かう。なんて言うか、今日は最大級にツイてない。休日に、一度ではなく二度までも、同僚と顔を合わせることになるとは。しかも突然の呼び出しの上、休日出勤。
 ただひとりで、好きなコーヒーを飲んで時間を過ごしたいだけなのに。たったそれだけのことなのに。
 心穏やかな休日には程遠い現状に、零果はただ、肩を落とした。
「加治木さん、お疲れ様」
 そう声をかけられた時、思わず椅子から飛び上がりそうになった。咄嗟にデスクに置いてあるデジタル時計を見る。金曜日、午前十一時十五分。まだ約束した時間まで四十五分あるぞ、と思いながら零果は自分のデスクの横に立つ「彼」を見上げ、そこでようやく、声をかけてきたのが「彼」ではなく、営業部の戸瀬だったと気が付いた。
「あ……お疲れ様です」
 作成中の資料のことで頭がいっぱいで、零果は戸瀬に穏やかな笑顔を見つめられても、上手い言葉が出て来ない。五四二六三、五万四千二百六十三、と、零果の頭の中は次に入力するはずだった数値がぐるぐると回転している。キーボードに置かれたままになっている右手の人差し指が、五のキーの辺りを右往左往する。
 当然、戸瀬には彼女の脳内など見える訳もなく、いつもの優しげな口調で話しかけてきた。
「この間の土曜日は、びっくりしたね。まさかあんなところで加治木さんに会うなんて」
 土曜日、と言われても、零果はなんのことか一瞬わからなかった。それから、「ああ、そう言えば、喫茶店で戸瀬さんに会ったんだった」と思い出す。
「でも、聞いたよ。あの後、有武さんに呼び出されて休日出勤になっちゃったんだって? 加治木さん、いつの間にかお店から消えてるから、おかしいなって思ってたんだけど、呼び出されて急いで出てったんでしょ?」
 零果は思わず、返事に困った。急いで店を出たのは戸瀬に会って気まずかったからだが、まさか目の前にいる本人にそう伝える訳にもいかない。有武の呼び出しのせいにするというのも、なんだか違うような気もするが、しかし、戸瀬がそう思い込んでいるのだから、そういうことにしておいた方が得策かもしれない。
「えっと、まぁ、あの、そうですね」などと、よくわからない返事をしながら、零果の右手は五のキーをそっと押した。正直、今は戸瀬と会話している場合ではない。
「有武さんもひどいよね、休日に会社に呼び出すなんて。そもそも、加治木さんは有武さんのアシスタントじゃないんだから、仕事を手伝う必要なんてないんだよ?」
 戸瀬の表情が珍しく曇った。いつも穏やかな彼の眉間に、小さく皺が寄っている。本気で心配している、というのが伝わる表情だった。けれど今の零果は、「はぁ、まぁ、そうですよね」と曖昧に頷くことしかできない。四のキーを指先で押しつつ、彼女の視線は戸瀬とパソコンの画面との間を行ったり来たりしている。休日出勤させられたことを心配してくれるのはありがたいが、正午までにこの資料を完成させなければいけない現状を憂いてほしい。零果にはもう猶予がない。
「なんかごめんね、加治木さん、忙しいタイミングだったみたいだね」
 戸瀬は彼女の切羽詰まった様子に勘付いたようだ。
 こつん、と小さな音を立てて、机に何かが置かれた。それはカフェラテの缶だった。見覚えのあるパッケージから、社内の自動販売機に並んでいる缶飲料だとわかる。零果が見やると、彼は同じカフェラテをもうひとつ、右手に握っていた。
「仕事がひと段落したら、それ飲んで休憩して。俺、このカフェラテが好きなんだ」
 そう言って微笑む戸瀬の、口元から覗く歯の白さがまぶしい。「あ、あの、ありがとうございます」と零果は慌ててお礼を言ったが、彼は「全然いいよー」とはにかむように左手を振って、「それじゃ、また」と離れて行った。
 気を遣われてしまった。なんだか申し訳ない気持ちになる。恐らく戸瀬は、休日に呼び出され仕事に駆り出された零果のことを心から労わってくれているに違いなかった。そんな彼に対して、自身の態度は不適切ではなかったか。いくら切羽詰まっているとはいえ、もう少し仕事の手を止めて向き合うべきだったのではないか。
 そこで零果は、周りの女子社員たちの妙に冷たい目線に気が付いた。「営業部の戸瀬さんが心配して話しかけてくれているのに、その態度はなんなのよ」という、彼女たちの心の声が聞こえてきそうなその目に、身がすくむような気持ちになる。
 しょうがないではないか。自分は今、それどころではないのだから……。
 パソコンに向き直る。目の前の画面の数字に意識を集中する。しかし、視界の隅に見える、カフェラテの缶。それがどこか、零果の心にちくちくと、後悔の棘を刺してくる。あとで、戸瀬にはお詫びをしよう。零果はカフェラテを見つめながら、心に黄色い付箋を貼り付ける。それにしても、カフェラテというのが、また……。
「資料できたー?」
 唐突にそう声をかけられ、彼女は今度こそ椅子から飛び上がった。気付けば、側には「彼」が――日焼けした浅黒い肌。伸びすぎて後ろで結わえられている髪は艶もなくパサついていて、社内でも不評な無精髭は今日も整えられている様子がない。スーツを着用する営業職の中では珍しく、背広でもジャケットでもなく、作業服をワイシャツの上に羽織っているが、その上着がいつ見ても薄汚れているのがまた、彼が不潔だと言われる理由である。ただ、零果がいつも思うのは、彼は瞳が異様に澄んでいて、まるで少年のようであり、それでいて目線は鋭く、獲物を探す猛禽類のようでもある、ということだ――、有武朋洋が立っていて、零果の肩越しにパソコンのディスプレイを覗き込んでいた。
「あれ? 何、まだ出来てないの?」
 咄嗟に時刻を確認する。戸瀬に声をかけられてから、もう十分近くも経過している。なんてことだ。しかし、約束の時間まではあと三十五分残されている。今の時点で資料が完成していないことを責められる理由はない。それでも零果が「すみません」と口にした途端、有武は「あー、いいよいいよ」と片手を横に振った。
「謝らなくていいよ。謝ったところで、仕事が早く進む訳じゃないから」
 斬って捨てるような口調であったが、これが彼の平常だ。嫌味のように聞こえる言葉も、彼にとっては気遣って口にしたに過ぎない。
「時間には間に合いそう?」
「それは、必ず」
「そう、必ずね」
 零果は画面に向き直り、資料作りを再開する。ふと、煙草の臭いがした。有武はヘビースモーカーだ。羽織っている作業着の胸ポケットには、必ず煙草とライターが入っている。煙草臭いのも、社内外問わず不評だ。しかし有武本人は、それを変える気はないようである。
「うん……大丈夫そうだ。本当に、正午までには出来上がりそうだね。さすがだなぁ��加治木さんは」
 零果が返事もせずにキーボードを叩いていると、彼の右手が横からすっと伸びてきて、机の上のカフェラテの缶を取った。零果が「あ、それは……」と言った時、缶のプルタブが開けられた音が響く。
「これ、飲んでもいい?」
「…………はぁ」
 どうして、缶を開けてから訊くのか。順序がおかしいとは思わないのだろうか。
「飲んでいいの?」
「……どうぞ」
「ありがと」
 有武は遠慮する様子をまったく見せず、戸瀬が置いて行ったカフェラテをごくごくと飲んだ。本当に、喉がごくごくと鳴っていた。それから、「うわ、何これ、ゲロ甘い」と文句を言い、缶に記載されている原材料名をしげしげと眺めている。人がもらった飲み物を勝手に飲んで文句を言うな。零果はそう思いながらも、目の前の資料作成に集中しようとする。どうしてこんな人のために、せっせと資料を作らねばならないのだろうか。
「じゃ、加治木さん。それ出来たらメールで送って。よろしくね」
 そう言い残し、カフェラテの缶を片手に有武は去って行く。鼻歌でも歌い出しそうなほど軽い彼の足取りに、思わず怒りが込み上げる。階段で足を踏み外してしまえばいい。呪詛の言葉を心の中で吐いておく。
 有武がいなくなったのを見計らったように、後輩の岡本沙希が気まずそうに無言のまま、書類の束を抱えて近付いて来た。零果がチェックしなければならない書類だ。
「ごめんね、後でよく見るから、とりあえずそこに置いてもらえるかな」
 後輩の顔を見上げ、微笑んでみたつもりではあったが、上手く笑顔が作れたかどうかは疑問だった。岡本は何か悪いことをした訳でもないだろうに、「すみません、すみません」と書類を置いて逃げるように立ち去る。そんなに怖い顔をしているのだろうか。零果は右のこめかみ辺りを親指で揉む。忙しくなると必ず痛み出すのだ。
 時計を見つめる。約束の時間まで、あと三十分。どうやら、ここが今日の正念場のようだ。
「メールを送信しました」という表示が出た時、時計は確かに、午前十一時五十九分だった。受信する側は何時何分にメールが届いたことになるのだろう、という考えが一瞬過ぎったが、そんなことを考えてももう手遅れである。
 なんとか終わった。間に合った。厳密には一分くらい超過していたかもしれないが、有武がそこまで時刻に厳密な人間ではないことも、この資料の完成が一分遅れたところで、今日の午後三時から始まる会議になんの影響もないこともわかっていた。
 零果はパソコンの前、椅子に腰かけたまま、天を仰いでいた。彼女が所属する事務部は五階建ての社屋の二階にあるため、見上げたところで青空が見える訳はない。ただ天井を見上げる形になるだけだ。
 正午を告げるチャイムが館内放送で流れていた。周りの女子社員たちがそれを合図にぞろぞろと席を立って行く。呆然と天井を見つめるだけの零果を、彼女たちが気に留める様子はない。それはある意味、日常茶飯事の、毎日のように見る光景だからである。魂が抜けたように動かないでいた零果であったが、パソコンからメールの着信を知らせる電子音が鳴り、目線を画面へと戻した。
 メールの送信者は有武だった。本文には、零果の苦労を労う言葉も感謝の言葉もなく、ただ、「確認オッケー。午後二時半までに五十部印刷しておいて」とだけ書かれていた。やっぱりなぁ。そうくると思ったんだよなぁ。当たらないでほしい予想というのは、なぜかつくづく当たるものだ。嫌な予感だけは的中する。
 十四時半までには、まだ時間がある。とりあえず今は、休憩に入ろう。
 零果は立ち上がり、同じフロア内にある女子トイレへと向かった。四つ並んだうちの一番奥の個室に入る。用を足していると、扉が閉まっていたはずの手前の個室から人が出て行く気配がした。その後すぐ、水を流す音と、扉がもうひとつ開かれた音が続く。
「ねぇ、さっきのあれさぁ……」
「あー、さっきの、加治木さんでしょ?」
 手洗い場の前から会話が聞こえてくる。
 零果は思わず動きを止めた。声のする方へと目線を向ける。扉の向こうが透視できる訳ではないが、声から人物を特定することはできる。ふたりとも、同じフロアに席を置いている事務員だ。正直、零果と親しい間柄ではない。
「戸瀬さんがせっかく話しかけてくれてるのに、あの態度はないよね」
「そう、なんなの、あの態度。見てて腹立っちゃったよ」
 蛇口が捻られ、手を洗う音。零果は音を立てずにじっとしていた。戸瀬ファンクラブ所属のふたりか。恐らく、ここに零果本人がいるということを、ふたりは知らないに違いない。
「戸瀬さんもさ、なんで加治木さんなんか気にかけるんだろうね?」
「仕事が大変そうな女子社員を放っておけないんじゃない? 戸瀬さんって、誰にでも優しいから」
「加治木さんが大変な目に遭ってるのは、有武のせいでしょ?」
 きゅっ、と蛇口が閉められた音が、妙に大きく響いた。その時、零果は自分の胸元も締め付けられたような気がした。
「そうそう、有武が仕事を頼むから」
「加治木さんも断ればいいのにね。なんで受けちゃうんだろう。もう有武のアシスタントじゃないのにさ」
「さぁ……。営業アシスタントだった過去にプライドでもあるんじゃない?」
 ふたりのうちのどちらかが、笑ったのが聞こえた。
「うつ病になってアシスタント辞めたくせに、事務員になってもプライド高いとか、ちょっとねぇ……。自分で仕事引き受けて、それで忙しくって大変なんですって顔で働かれてもさぁ……」
 足音と共に、ふたりの会話も遠ざかっていく。どうやら、女子トイレから出て行ったようだ。
 ふたりの声が完全に聞こえなくなるのを待ってから、零果は大きく息を吐いた。「……有武さんのことだけは、呼び捨てなんだ」と、思わずひとり言が漏れた。そんなことはどうでもいい。どうでもいいけれど、言葉にできる感想はそれくらいしか思い付かなかった。
 他の事務員から陰で言われているであろうことは、薄々わかってはいた。同じ内容を、言葉を選んで、もっともらしい言い方で、面と向かって言う上司もいる。同僚たちに特別好かれているとは思っていなかった。しかし、本人には届かないだろうと思って発せられる言葉というのは、こんなものなのか。
 水を流し、個室から出た。鏡に映る自分の顔の疲弊具合に気分はますます陰鬱になる。腹の底まで冷え切っているように感じる。
 同じ階にある休憩室へ向かおうと思っていたが、先程のふたりもそこにいるのだろうと思うと、足を向ける気にはならなかった。さっきの会話の続きを、今もしているかもしれない。
 自分の席に戻って仕事を再開するというのも考えたが、こんな疲れた顔で休憩も取らず仕事をしているところを、誰かに見られるのも嫌だった。
 結局、零果は四階に向かうことにした。階段で四階まで上ると、営業部が机を並べているフロアと、会議室が両側に並ぶ廊下を足早に通り過ぎる。外出していることが多い営業部だが、昼の休憩時間に突入しているこの時間は、いつにも増して人の姿がない。零果は何も躊躇することなく、通路の突き当り、外階段へと続く重い鉄の扉を開けた。
 非常時の利用を目的に作られた外階段を、普段利用する社員はほぼいない。喫煙室以外の場所で煙草を吸おうとする不届き者ぐらいだ。外階段だけあって、雨風が吹き荒れ、もしくは日射しが照り付け、夏は暑く冬は寒いその場所に、わざわざ足を運ぶ理由。それは「彼」に会いたいからだ。
「おー、お疲れ」
 鉄製の手すりにもたれるようにして、「彼」――有武朋洋がそこにいた。いつも通り、その右手には煙草がある。有武は、この外階段でよく煙草を吸っている。社内に喫煙室が設けられてはいるが、外がよほどの嵐でない限り、彼はここで煙草をふかしている。
「……お疲れ様です」
 挨拶を返しながら、鉄の扉を閉め、有武の吐く煙を避けるため風上に移動する。向かい合うように立ちながらも、零果の目線は決して彼の顔を見ようとはしない。それもいつものことだ。有武も、そのこと自体を問うことはしない。ましてや、喫煙者でもない彼女が何をしにここまで来たのかなんて、尋ねたりもしない。
「何、どうしたの。元気ないじゃん。なんか嫌なことでもあった?」
 口から大量の煙を吐きながら、有武はそう尋ねた。零果は「まぁ……」と言葉を濁しただけだったが、彼は妙に納得したような顔で頷く。
「まー、嫌なこともあるよな」
「……そうです、嫌なこともあります」
「だよな」
「せっかくの休日に呼び出されて仕事させられたり」
「…………」
「今日だって、あと二時間で会議の資料を作ってくれって言われたり」
「…………」
「その資料がやっとできたと思ったら、それを五十部印刷しろって言われたり」
「何、こないだの土曜日のこと、まだ怒ってんの?」
 有武が小さく鼻で笑った。これは、この男の癖だ。この男は、上司でも取引先でも、誰の前でも平気で鼻で笑うのだ。
「土曜日は呼び出して悪かったって。でもあの時にテンプレート作って用意しておいたから、今日の資料作りがたった二時間でできたってことだろ?」
「……なんとかギリギリ、二時間でできたんです」
「でも、ちゃんと時間までに完成しただろ」
 有武は、今度は鼻だけでなく、声に出して笑った。
「加治木さんはできるんだよ。俺は、できると思ったことしか頼まない。で、本当にちゃんとできるんだ、俺が見込んだ通りに」
「…………」
 零果は下を向いたままだ。そんな彼女を見つめる有武の瞳は、からかうように笑っている。
「別に気にすることないだろ。周りからなんて言われたのかは知らないが、加治木さんは他の人ではできないことを――」
「私はもう、あなたの営業アシスタントじゃありません」
 遮るように言った彼女の言葉に、有武が吐く煙の流れも一度途切れた。
「もう、私に……」
 仕事を頼まないでください。そう言えばいい。零果が苦労ばかりしているのは、この男の仕事を引き受けるからだ。それを断ってしまえばいい。幸いなことに今の彼女は、それを咎められることのない職に就いている。もうアシスタントではない。ただの事務員だ。同僚たちが言う通りだ。
 わかっている。頭ではわかっているのに、零果はどうしても、その続きを口にすることができない。うつむいたまま、口をつぐむ。
 ふたりの間には沈黙が流れる。有武は煙草を咥えたまま、零果が言葉を発するのを待っているようだった。しかし、いつまでも話そうとしない彼女を見かねてか、短くなった煙草を携帯灰皿へと捨ててから、一歩、歩み寄って来た。
「加治木さんは、俺のアシスタントだよ。今も昔も、ずっと」
 彼の身体に染み付いた煙草の臭いが、零果の鼻にまで届く。もう何年になるのだろう、この臭いをずっと、側で嗅いできた。いくつもの案件を、汗だくになったり、走り回ったりしながらこなしてきた。無理難題ばかりに直面し、関係部署に頭を下げ、時には上司に激昂され、取引先に土下座までして、それでも零果は、この男と仕事をしてきた。いくつもの記憶が一瞬で脳裏によみがえる。
「仕事を頼まないでください」なんて、言えるはずがなかった。どうして彼が自分に仕事を���頼するのか、本当は誰よりもわかっていた。
 大きく息を吐く。肩に入っていた力を抜いた。
「有武さん」
「何」
「……コーヒー、奢ってください」
「は?」
「それで許してあげます」
 零果の言葉に、ぷっ、と彼は吹き出した。
「コーヒーでいいの? どうせなら、焼き肉とか寿司とか言いなって」
 まぁ言われたところで奢らないけどね。そう言いながら、有武はげらげらと笑う。零果は下を向いたまま、むっとした顔をしていたが、内心、少しほっとしていた。零果が多少、感情的な言い方をしてもこの男は動じないのだ。
「あ、ちょっと待ってて」
 有武は唐突にそう言うと、外階段から廊下へと繋がる扉を開け、四階のフロアへと戻って行った。ひとり残された零果が呆然としていると、有武はあっという間に戻って来た。
「ほい、これ」
 差し出されたその手には、缶コーヒーが握られている。社内の自動販売機に並んでいるものだ。どうやら、有武はこれを買いに行っていたらしい。零果は受け取ってから、その黒一色のパッケージの缶が、好きな無糖のブラックコーヒーだと気が付いた。
「それはコーヒーを奢ったって訳じゃないよ。さっき、デスクにあったカフェオレもらったから、そのお礼ね」
「もらったって言うか、有武さんが勝手に飲んだんじゃないですか……。あと、カフェオレではなく、カフェラテです」
「オレでもラテでも、どっちでもいいよ。飲んでやったんだろー。加治木さんがコーヒーはブラックの無糖しか飲まないの、知ってるんだから」
 その言葉に、ずっと下を向いたままだった零果が一瞬、顔を上げて有武を見た。戸瀬から缶飲料をもらった時、「よりにもよってカフェラテか……」と思ったことが、バレているのではないかとさえ思う。そのくらい、目が合った途端、得意げに笑う有武の顔。憎たらしいことこの上ない。零果はすぐに目を逸らした。
「……やっぱ、許さないかも」
「は?」
「なんでもないです」
 有武は肩をすくめた。作業服の胸ポケットから煙草の箱を取り出し、一本咥えて火を点ける。吐き出された煙は吹く風に流され、あっと言う間に目では追えなくなった。
 いただきます、と小さく声に出してから、零果は缶コーヒーのプルタブを開けた。冷たいコーヒーをひと口流し込んでから、喉が渇いていたことに気が付いた。
 疲れたな。改めてそう思う。百円で買える缶コーヒーの味わいにさえ、癒されていくように感じる。
 今日は良い天気だ。この外階段に吹く風も、日射しも心地良い。ここから見下ろせる、なんてことのない街並みも。この男との何気ない会話も。ここにあるものすべてが、冷え切っていた零果の心を解きほぐしていくような気がする。
「加治木さん、昼飯はもう食ったの?」
 煙を吐きながら、有武がそう訊いた。
「いえ……」
「何、また食ってないの? ちゃんと食わないと、身体に良くないよ」
「……有武さんは?」
「俺は今日、三時から会議で、終わったらその後に会食だから。昼飯は食わなくてもいいかなーって」
「会食までに、お腹空いちゃうんじゃないですか?」
「何か軽くは食べるけどね。会議中に腹が鳴っても締まらないし。ただ、四十歳過ぎるとね、やっぱ食った分は太るんだわ」
 そう言う有武は、今年で四十一歳のはずだが、まったく太っていない。零果は七年前から彼を知っているが、出会った頃から体型が変化したとは思えない。ただ、それは本人が体型を維持する努力をしているからだろう。
 そして、そういう努力ができるのであれば、もう少しこまめに髪を切ったり髭を整えたりしてもいいのではないか、とも思う。特に最近の有武は、髪にも髭にも白髪が混じるようになった。もう少し身なりを整えれば、印象もまた変わると思うのだが。
「あ、そういえば、もらったアンパンがあるんだった。アンパン、半分食う?」
「いえ……あの、今本当に、食欲がなくて……」
 零果はそう言いながら、無意識のうちにみぞおちの辺りをさすっていた。トイレで聞いてしまった、同僚たちの会話。無遠慮に吐き出された彼女たちの言葉、その声音の棘が、零果の胃の辺りに突き刺さっている。とてもじゃないが今は、何か固形物を口にしようという気にはならなかった。
「ふうん、あ、そう」
 と、有武は煙草をふかしながら返事をした。零果の様子を特に気に留めている様子も、提案を断られて落ち込むような様子もない。そうやって、無関心を装う節がこの男にはある。
「じゃ、今度は喫茶店にでも行こうか」
 有武が煙草を吸い終わった頃、零果も缶コーヒーを飲み終えたところだった。
「コーヒー奢るよ。どこか行きたい店ある? 俺の好きな店でもいい?」
「どこでもいいですよ」
「了解。また連絡するわ」
 有武が外階段とフロアを繋ぐ、重たい扉を開ける。開けたまま待ってくれている彼に、小さく会釈をしながら零果が先に通る。触れそうなほどすぐ近くに寄ると、煙草の臭いをはっきりと感じる。今は吸った直後なので、臭いはなおさら強烈だ。
「くっさ……」
「あ?」
 零果の口から思わず零れた言葉に、彼は即座に睨んでくる。
「すみません、つい、本音が……」
「悪かったな、煙草臭くて」
 有武は舌打ちをしながら零果に続いてフロアへ戻り、外階段への扉を閉めた。
「有武さんは禁煙しようとは思わないですか?」
「思わないねー。だから俺が臭いのはこれからも我慢してねー」
「…………」
 臭いと口走ってしまったことを根に持っているのか、有武は不機嫌そうな顔だ。
「あ、有武くん!」
 並んで廊下を歩いていると、突然、背後から声をかけられた。振り向くと、通り過ぎた会議室から、ひとりの女性が廊下へ顔を覗かせている。
 肩につかない長さで切り揃えられた黒髪。前髪がセンターで分けられているので、その丸さがはっきりとわかる額。染みも皺もない白い肌には弾力がある。彼女が今年で四十歳になるのだと聞いても、信じる人はまずいないだろう。零果より頭ひとつ分、小柄なことも相まって、彼女――桃山美澄は、二十代に間違えられることも少なくない。
 実年齢よりも若く見られる桃山は、実際は経験豊富な中堅社員である。そして何より、ずば抜けて優秀な社員として、社内外で有名だ。営業アシスタントとして三人の営業マンの補佐についているが、「桃山本人が営業職になったら、売上額が過去最高になるのではないか」という憶測は、かれこれ十五年前から上層部で囁かれている、らしい。有武の営業アシスタントを務めているのも彼女である。零果は仕事を手伝わされているに過ぎず、本業は事務職であり、有武の本来のアシスタントは桃山なのだ。
 桃山の顔を一目見るなり、有武は露骨に嫌そうな顔をした。しかし、それを気にする様子もなく、彼女は近付いて来る。
「有武くん、探したんだよ。午後の会議の資料の進捗はどう? 間に合いそう?」
「あー、それなら大丈夫。加治木さんに頼んでるから」
 桃山は有武の隣に並ぶ零果を見やり、申し訳なさそうに眉尻を下げた。
「ごめんね加治木さん、また面倒な仕事、有武くんに頼まれちゃったね」
「いえ、あの、大丈夫です」
 零果はいつも、桃山を前にすると困惑してしまう。謝る彼女に対して、なんて言葉を返せばいいのか、わからない。
「資料は? どのくらい出来てるの? 続きは私が代わろうか」
「あの、もう、完成はしていて、あとは印刷するだけなんですが……」
「本当に? もう出来てるの? すごいね加治木さん、やっぱり優秀だね」
「いえ、そんなことは……」
 桃山はにこにこと、朗らかな笑顔だ。嫌味なところは感じさせない。実際、嫌味など微塵も込めていないということは、零果もわかっている。返す言葉に悩んでしまうのは、そうやって本心から褒めてくれる存在がそれだけ稀少だからだ。
「じゃあ、資料の印刷はこっちでやるよ。月末も近いし、加治木さん、自分の仕事も忙しいでしょう?」
「そんなことは……」
 そんなことはありません、と言おうとして、後輩の女子社員から書類の束を受け取っていたことを思い出す。そうだ、あの書類をチェックしなくてはいけないのだ。思わず言葉に詰まってしまう。桃山はそれを見逃さなかった。
「うん、資料の印刷は私がするね。もう有武くんにメールで送ってくれてるんだよね? 有武くん、私のアドレスに転送してもらっていいかな?」
「はいはい、わかりましたよ」
 有武は窓の外に目線を向けたまま、そう返事をした。彼のそんな態度にも、桃山は顔色ひとつ変えることはない。柔和な笑みのまま、零果に向き直った。
「加治木さん、忙しいのにいつもありがとうね。本当は私がやらなくちゃいけないことだから、こんな風に言うのはおかしいんだけど、有武くんは加治木さんと仕事をするのが本当に楽しいみたいで」
「い、いえ、あの……」
 桃山は続けて言う。
「でも、加治木さんには事務職としての仕事もあるんだから、しんどかったり、難しかったりする時は、いつでも私に言ってね。有武くんだって、それで加治木さんのことを悪く思ったりはしないからね。私も、有武くんも、いつだって加治木さんの味方だから。無理はしないでね」
 その言葉に、零果は頷くことしかできない。気を抜くと、泣いてしまうかもしれない、とさえ思った。桃山が自分の上司だったら良かったのに。零果は今の上司である、事務長の顔を思い出しながらそんなことを思う。桃山が上司だったら、毎日、もっと楽しく働けるかもしれないのに。
 けれど、と思い直す。
 桃山はかつて、零果の先輩だった。同じ営業アシスタントだった。三年前までそうだった。零果は彼女の下に就き、多くのことを学んだ。彼女の元から離れたのは、自分なのだ。そのことを、零果は今も悔やんでいる。
「それとね、」
 桃山は一歩、零果に近付くと、声を潜めて言った。
「加治木さんが有武くんから直接仕事を任されていることは、事務長も、営業アシスタント長も、営業部長も合意している事柄だよ。それなのに、加治木さんのことを悪く言う人が事務員の中にいるみたいだね?」
 脳裏を過ぎったのは、女子トイレで聞いた会話の内容だった。同僚の言葉が、耳元でよみがえる。
 零果は思わず、桃山の顔を見た。先程まで朗らかに笑っていたはずの彼女は、もう笑ってはいない。口元は笑みを浮かべたままだったが、その瞳には鋭い光があった。それはぞっとするほど、冷たい目だった。
「うちの営業アシスタント長は、そっちの事務長と仲が良いからね。私が事務長に言っておいてあげようか? 『部下をよく指導しておいてもらえませんか』って。加治木さんは有武くんの仕事をサポートしてくれているのに、それを邪魔されたら困っちゃうんだよ」
 桃山には、こういうところがある。普段は温厚なのに、時折、何かの弾みでとてつもなく冷酷な表情を見せる。
 零果は慌てて、首を横に振った。
「そんな、大丈夫です」
「そうかな? 私はそうは思わないけどな。加治木さんのことを悪く言う社員が同じ事務の中にいるなんて、とてもじゃないけど――」
「桃山、もういいって」
 ずっと上の空でいるように見えた有武が、突然、会話に割って入った。
「加治木さんが大丈夫って言ってるんだから、とりあえずは大丈夫なんだろ。もし何かあったら、桃山に相談するよ」
「…………」
 桃山はしばらく無言で有武を見上げていたが、やがて再びにっこりと笑った。それから、零果へと向き直る。
「うん、加治木さん、何かあったら遠慮なく相談してね。いつでも聞くからね」
「いえ、あの、お気遣い、ありがとうございます」
 何度も頭を下げる零果に、桃山はにこにこと微笑む。
「ううん。逆に、気を悪くしていたらごめんね」
「いいえ、気を悪くするなんて、そんな……」
「私はこれでも、営業アシスタントだから。有武くんが気持ち良く仕事���するために、私にできることは全部したいんだ」
 そう、桃山の目的は、あくまでも「それ」だ。営業アシスタントとしての職務を全うしたいだけなのだ。零果のことを気遣っているかのように聞こえる言葉も、すべては有武の仕事を円滑に進ませるため。反対に、彼の仕事ぶりを邪魔するものを、すべて排除したいだけ。
 有武から仕事を頼まれた零果がその意欲を削がれることがないように、彼女のことを悪く言う同僚を排除しようと考えているのだ。その点、桃山は零果のことを「有武の仕事にとって有益にはたらくもの」と認識しているようだ。そうでなければ、零果に仕事を依頼していることを許したりはしないだろう。
「何かあったら言ってね」と言い、「それじゃあ」と手を振って、桃山は営業部のフロアへと向かって行った。
 桃山の姿が見えなくなると、その途端、有武は大きく息を吐く。
「はーあ、おっかない女……」
「桃山さんのことを、そんな風に言わなくても……」
 普段は飄々としている有武も、桃山を前にするとどこか緊張しているように見えるから不思議だ。そう思いながら、零果は有武の顔を見上げ、
「あ……」
「あ?」
「いえ、なんでもありません……」
 反射的に目を逸らした零果を、彼が気にする様子はなかった。ただ、「加治木さん、俺の正式な営業アシスタントに早く戻ってくれよ」と、どこか冗談めかした口調で言った。
 その言葉に、零果は何も答えなかった。うつむいたままの彼女の左肩をぽんぽんと、軽く二回叩いて、「じゃ、また」と、有武も営業フロアへと消えて行った。
「…………無理ですよ」
 有武の背中も見えなくなってから、ひとり残された零果はそうつぶやく。
 事務部に異動して二年。今となっては、営業アシスタントとして働いていた過去が、すべて夢だったのではないかとすら思える。あの頃は、毎日必死だった。ただがむしゃらに仕事をこなしていた。どうしてあんなに夢中だったのだろう。零果はもう、当時の感情を思い出すことができない。 二階の事務部フロアに向かって歩き出す。所属も業務内容も変わったが、今も零果には戦場が与えられている。運動不足解消のためにエレベーターを使うのではなく階段を降りながら、頭の中では午後の仕事について、すでに思考が回り始めていた。今の自分には、やるべき業務がたくさんある。戦うべき雑務がある。そのことが、何よりも救いだった。
 ※『コーヒーとふたり』(下) (https://kurihara-yumeko.tumblr.com/post/746474804830519296/)へと続く
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tumnikkeimatome · 1 month
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金融政策次第で波乱が予想される株式相場:市場全体の動きに影響を受けない好業績の小型株3銘柄に注目
はじめに 2024年3月14日の米国株市場でダウ平均株価は前日比137ドル安と4日ぶりに反落しました。 これを受けて、翌15日の東京株式市場は半導体関連株などを中心に売り優勢となりました。 来週(18~22日)は、日米の金融政策決定会合の開催に関心が集まり、その内容をめぐって神経質な展開となりそうです。 こうした地合いの中、市場全体の動きに影響を受けない独自性のある好業績の小型3銘柄に注目が集まっています。 仮設鋼材リース最大手のジェコス(9991) 1銘柄目は、JFEホールディングス系の仮設鋼材リース最大手であるジェコス(9991)です。 同社は3月13日、今2024年3月期業績予想の修正を発表しました。 売上高は従来予想の1300億円から1280億円(前期比6.2%増)へ減額した一方、営業利益は53億円から63億円(同39.9%増)に上方修正しました。 重仮設事業の中で商社的な役割を…
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lienguistics · 6 months
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裏表
2023.09.30
章1
撮らせてもらった僅かな彼の写真の中には、一緒に過ごせた日々が色褪せないまま残っていた。特に懐かしく思いを馳せさせるのが、信号待ちをしていたときだった。目が合ったとき、噛み殺そうとしたのにクスッと笑わずにはいられなかった私に「何だ?」と彼は眉をつり上げながら聞いた。
「別に何でもないよ」とあどけなく言い返したが、納得させることができなかったのは目つきで察した。 「 俺の影で涼しむために寄ってきたんだろ?」 「まあ、確かにそんなメリットもあるけど、なんでそう思うの?」 「お前の顔にできた影が不自然だったから」
ふふっと笑い返しながら携帯を取り出して構えたら、写真を撮れないように彼に手でカメラを塞がれた。
「なんでぇ〜」と口を尖らせる私に彼は「汗かいてるし、疲れた顔してるし」とぼやいて拒んだ。 「それでも、私にとってはどうしたって可愛いと思うのよ」と私はそっと呟いたら、彼が徐々に気を許してくるのに気づいた。
照れ笑いと優しい眼差しでこちらを眺めてくる。 夕方の日差しに包まれる輪郭が柔らかく輝いている。 茶色くふわふわの巻き毛がボサボサになってしまい、日光で背後から照らされ、薄茶色やきつね色に毛先を彩り、ポカポカと暖かい焚き火のイメージが蘇る。
通りを横断しながら、私は一瞬肩越しに振り返って彼の表情をまた一目見ようとして「楽しんでるの?」と聞いてみた。
「君のそばにいるだけで幸せだよ」
如何にも素敵な写真なんだ。
. . .
章2
立ち去ってからもう2週間以上経ったのに、彼の名残りがまだ私のアパートに撒き散らされている。自分の所持品に限ってはいつも通りに整えているが、彼との過ごした日々によって増えたものは、どこに収めたらいいのか考えて決める気になれなく、そのまま残る。時間が経つにつれて、自分の常識や判断力も変わってきたことを悟った。
スキンケア用品のサンプルセットは、すでに様々な言語の著書をいっぱい抱えている本棚の端に乗せられるのがおかしいどころか、あっさりと拾い上げられるので便利のよくて相応しいじゃない。
ある美容化粧品店の表札を見かけた瞬間に、私は「あっ」としか発せず出し抜けにその店に向けて雑踏の潮をすり抜け出した。
「おススメしてもらった銘柄だから実際にどんな魅力があるのか気になったんだ」と説明しても、彼は別にこんなところに興味がないと推定してしまい、とりあえず好奇心を満足させるためにさっさと見回してすぐ出ようと自分に言い聞かせた。
だが、知らないうちに彼はビアードオイルやクリームを手にして「いい匂いするし、肌触りも気に入ったし、後で買おうかな」とぶつぶつ独り言したのが聞こえた。
彼から少し離れて、エッセンスやセラムの棚に近づいて、諸々な商品にゆるりと目を通して、シャンプーやコンディショナーまで視線を向けたとき、店員さんに「よかったら、サンプルを差し上げましょうか」と提供された。
「あっ、ほ、本当いいんですか」とどもったが、店員さんが頷いてから、「じゃあ、お願いします」と私は返して、受け入れるしかなかった。
えっ?当時の彼にすぐ一つ渡すのを忘れてしまったからといって、この二つを果てしなく保たなければならないわけではない上に、同居人の一人と一緒に暮らしているので、せめて一つをあげてもいいって?なんて非常識な提案。
ガラステーブルの片端を飾っているのが花輪のレイ。天命ゆえに冬を春に向き合わせたと言わんばかりに、ピンクと水色が僅かに交流する花壇は殺風景な凍った湖の縁に降臨して根付き出した。当該の性格が絡み合っていると仄めかすように。
ダウンタウンでぶらぶらしていたとき、ハワイをテーマにした居酒屋に行こうと気まぐれに決断をして、入店する前に歓迎の一環としてスタッフにレイをかけてもらった。
献立を見据えながら、「何を注文するの?」と彼に聞かれたら「うーん、パイナップルのスムージーとかなんとか…かな。そっちは?」と答えた。 「マイタイ飲んでみようと思うけど…とにかく、空席を見つけてくれない?」 「おおっ、いいよ」
一回りしてから「そこのテーブルで大丈夫だと思うよ」と提案するために合流したとき、私がお酒に弱いと知っている彼はさっき言った通りの飲み物をすでに手にしていて、テーブルまで案内してもらうのを待っていたようだ。
「えっ?!いいの??」と慌てて聞いたが、「普通はかわりばんこに払うんだろうし」という正論で立ち止まって屈した。 「とりあえず、飲んでみない?酒の味が思ったより弱いから君も耐えられるかも」と彼は言いながらガラスを渡してくれたが、私が一口飲んでみたなり、「弱いどころか…結構味わえるじゃん!」という愚痴を溢して舌をすばやく出した。 「あ、そう?」 「ほら、私のを飲んでみぃ〜」 「俺のよりもうまいね」 「飲み干すな!」
レイをかけるとかゆいし、どこかに置いて自分にかけない方がいいんじゃない。それに萎まない花束と見做すのが妥当なの。
食卓の上で同居人の植物に付き合っているのがペロペロキャンディの一本。元々は二本だったが、好奇心と口寂しさに負けてしまったんだ。こんなお菓子をどこの店でも買えるのは一目瞭然だが、不憫な褒美として、ゲームセンターで楽しく過ごせた時間の象徴で、ダンスダンスレボリューションで心ゆくまで精一杯勢いよく踊った証明だった。
歌の知識で私の方が有利だったはずなのに、動きがぎこちないせいで何回も彼に負けた。むしろ、まるでそもそも負けなかったかように感じるほどゲームにすっかりと夢中になってしまったのは、さも10年以上ぶりに遊ぶのがさすがだね。
ロリポップはどうだったって?まあ、案の定、結構平凡で、食べたことを微塵も後悔していないよ。ちょっとでも片付けたと見做させられるかな。
こちらを未練がましいと決めつけるとしたら、どうせなら両成敗ということにしようか。
. . .
章3
積み重ねたレシートをより分けたら、まるで束の間だけでも過去に遡ることができるかような感じがして、懐かしい雰囲気がひとしきり漂ってきて、余韻に浸れずにはいられない。
と、君へのメッセージをうっかりと送ってしまった。そんな恥ずかしいことを自分の胸にしまっておいたらよかったかな。
ちなみに、今回の方が俺たちに関心を向けてる人って多かったんだね?君は本当に何も気づかなかったって?
だってさ、あるときなんか、商店街で見て回りながら、店員さんに「何かお探しですか?」と質問されて、俺は「丈91センチのズボンが店内にありますか?ウェブサイトで見かけたんですが、自分で履いてみたかったので…」と説明したのに、戻ってきた店員さんが「誠に申し訳ございませんが、そのサイズが店内にございません。ひょっとしたら、オンライン限りに在庫があるかも知れませんが」と君に正面切って相談したんだ。俺より頭一つ以上背が低い君の方がさすがにそんな長さに合ってると言わんばかりに。
笑いながら、次の店に俺の袖を掴んで引きずって行った。ハワイ風の服ばかりに囲まれて、漆黒でガバガバなパーカーや濃紺のコンバーススニーカーちをからだじゅう身につけた君とため色のシャーツをしわくちゃなジーンズと合わせた俺は、一目瞭然でわかる場違いな雰囲気を受け入れきれないうちに、君があれよあれよという間に近付いてきた店員さんと喋り始めた。
えっ?俺たちはオアフ島に行く予定があるって?確かに夜のイベントとかなんとか行ったら、こんなふうに厚手の生地の方がいいし、お洒落な色も選んだなぁ… あっ、おい!調子乗りすぎじゃない?カクテルのガラスの模様も?何、その生意気な目つき…
旅行が数日だけと言ってしまった君は、「もったいないわ〜」と疑問を抱く店員さんに直面したらどうする?
少しでも休みを取らせてもらうように許可を得る過程が大変だっただけではなく、二人とも働いていて一緒に同時に休めるため、両方のスケジュールを調整することに取り組んだが、結局なんとかできたと真剣に言い逃れるお前、えらいじゃないか!
すでにアロハシャツを4枚持っている俺を試着室まで店員さんは案内してくれたが、君が辿るのを躊躇ったのに気づいたので、「廊下の突き当たりが二人で入ることができるほど広いですよ」と声かけた。君は俺に面食らった眼差しでちらっと見たが、やっと向かってきた。背後にドアを閉めた後に「お前、本当に信じられない」と俺が苦笑いして、自分でまったく抜き出さなかったシャツを羽織ってみた。
この経験でどんなスタイルや模様や色と似合うのかてっきりとわかってきたに違いない。
「晩ご飯は何を作ろうか」と悩んでいた君に「パスタだったらどう?」と提案したら、咄嗟に「じゃあ、頼むよ!うわぁ〜、料理してくれる人がいるのって最高!めっちゃラッキーだわ」と大はしゃぎで歓声を上げられて「えっ、ちょっと!料理してあげるって言ったわけではないよ」と拒むに拒めなかった。 おせっかい焼きの君がニンニクと野菜を切るのを許したが、食後に皿洗いにも手をつける前に俺はすぐ自分で洗い始めたのに、食卓を雑巾で拭く姿が横目で見えたきっかけで「疲れた?」と声かけた。 君は首を横に振った。「ううん、別に」 「そう?」 「晩ご飯の献立を考えて決めた上に、準備とか料理をきちんと果たしたのはあんただから、私の方が本当に楽なの」 一瞬の間を置いてから「いつかこんな風に一緒に暮したらどうだろう」と思いつきをぽつんと漏らした。 「本当に一緒に暮らすことを検討してる?」 「君ならいけると思うけど」 「お前は野菜が嫌いだから、八百屋に行ったらどうする?別々に買ったり払ったりするの?だって、私はね、野菜をそんなにあっさりと手放さないよ」 「食べれる野菜もあるけど!理想的には二人でお金を少しずつ出し合って、欲しいものを揃えて買おうと思ってたんだ」と言ったら、納得させることができた。「まあ、確かに、そんなことは恋人とか家族との生活みたいだけど、お前なら…」 「もうずーっと付き合ってる感じじゃない?私たちってさ、幼馴染から恋人に実際になれたら、都合のよくない?」とそっと笑った。 「30歳になっても未だ独身だったら、とにかく結婚しよう…とかなんとか?」 「おおっ、ロマンティックじゃん〜 じゃあ、あと6年だね」 「5年じゃない?6年間待つしかなかったらしょうがないけどぉ」 「 私は29歳に、お前は31歳になる年に決めるとしても、条件が特に一つあって、即ち、夫婦別姓にしたいって。私は博士を取得できたら、お前が博士で私は単純にお前と結婚してるという誤解のないようにね」 「いいよ。ハイフンが付いた名字もいけるかな?」 「んー、それはもうちょっと考えないと〜」 「まあ、5年間あって余裕だね」
最後の夜に「死んで永遠に会えなくなるわけではないから、泣く理由なんて何もないよ」と慰めようとしたのに、君の目に涙が湧き溢れていたのを見てから、涙を親指でスイスイと拭って、頰をひとしきりそっと撫でていた。
「遠く離れた場所に引っ越しても、お願いだから訪問してくれると約束してね。必ず空港に迎えに行くよ」
本当に、一ヶ月間も滞在しても、構うどころか、嬉しい。 君がすすり泣きながら体を震わせるのを鎮めるためにぎゅっと抱き締めようとしたが、俺もべそかいてきたんだ。
「泣くなって言ってたんだろう、アホ」とぶつぶつ言いながら、自分の頰からも涙をぬぐった。
. . .
章4
オフィスに迎えに来てもらってアパートに帰ってからすぐにお互いに抱きしめ合おうとした。最初は両腕を彼の��に巻きつけると、自分の顔が直接に胸に埋まったので、代わりに肩越しに回すためにつま先で立とうとしたが、私は長い時間そのままバランスを保つことができなかった。彼もずっと身を屈めるのは無理だったので、結局腰に私の脚を巻きつけて、私を一気に優しく持ち上げた。
「よっしょ!これでいいかな?」と彼はそっと笑った。 「重くない?」と私は眉を顰めながら聞いた。 「かなり軽いよ」 「ふーん」と勘繰るような表現で口を尖らせた。
目を逸らさず、鼻先をくっつけて、すりすりしてきた。
「ここまで来てくれて本当に嬉しいの」と私は囁いた。 「めっちゃ会いたかったよ」
「君に最も幸せになって欲しいし、いつも応援してるけど、そんなに幸せにしてあげることができる人って俺じゃない」と彼に言われたときに最初は面食らったが、一瞬の間を置いて我に返ってから「うん、自分自身の気持ちを抑え込むよりちゃんと伝えたり、相手の感情もよく理解したり、相当に対応したり、またはせめて誤解があったら前向きに積極的に話し合ったりすることができる人の方と気が合うよね」と頷いた。「だって、ここ一ヶ月間お前に言うに言えなかったことあるの。会話が静まった咄嗟に、お前は他の他愛のないことで気が紛れるから、こっちはゆっくりと切り出せる余裕がなかったし」 「ん?」 「ね、お前にいきなり電話した夜、覚えてる?結構遅かったから、そろそろ寝ないと、ってお前に言われたもん」 「ああ、覚えてるよ。めっちゃ眠かったんだ」と彼はそっと笑った。 「当時は、まあ、今でも、すごく言いづらくて喋り方が毎回ぎこちなくなってしまうけど、なんだろう、お前に電話かける数時間前に父にも電話してひとしきり最近の出来事についてやり取りして、母が父と絶交したのは二ヶ月前だと初めて聞いた。原因は散々愚かだったが、…母は私が大学院の代わりに就職活動に目を向けると聞いたとき、ひどく落胆してきて、私にまた大学院に申し込むように言い聞かせてくれとすぐに父に訴えようとしたが、『うちの娘にもうそんなことを言い付けられない 』と父に反対された。再話でこの部分でおそらく父に庇ってもらえていいねって思ってるんだろう?当時の私もそう思ったが、父はその舌の根も乾かないうちに、ろくでもないと見做す生物学の学士号で私が就職活できないと最初に諭そうとしたのに、結局父の主観を理解できるようになるまで何目の面接にも落ち続ける私を傍観するしかないとも吐き捨てた。その警告に従わなかったゆえの自業自得だと言わんばかりに。両親の落胆に圧倒されたから、気が紛れるために、お前に話してみようと思ってたのに…その瞬間にどれほど死にたかったのか口にすることができなかった」 「君がそんな気持ちを抱いてたって言ったらよかったのに。俺はたまに上手く慰めることが���きないのが他のことに気を取られているからだけど」 「大抵自分自身で処理した方がマシだというタイプにしては、さすがだよ」
困るときに友達に相談する私と、縁のない人からの視点や意見は無益だと思っている彼が、ずっとこのままにしては言った通りに幸せにしてくれない。一人は過酷に厳しい監視で絶え間なく見据えてくれる両親、もう一人はよそよそしい断続的に不在の両親から産まれ育たれたのが、あがり症のかまってちゃんと孤高の気取り屋の二人となってきた。
いきなりに「天然ボケ」と言い放たれた瞬間に、「で?」と私が言い返すところだったが、彼は私の首に顔を埋め込んできて「で、可憐」ともごもご打ち明けた。
「俺のタイプは… クール系女子かな?」と言われたとき、ああ、確かにその「クール系」というのは「可愛いだけ」の私に当てはまらないのが、なぜそもそも腑に落ちなかったんだろう?両方のアピールができると私は自慢に思ってしまったから。
幼い頃から完璧ではないと愛に値しないと教え込まれた私は、サイコホラーの深刻で不気味な執筆で自殺などの話題を読むことにより、自分の自殺念慮を理解してもらえて安堵感を感じさせる。仕事で手術を焦点にするのは、頭が良くないとしても、せめて手際よくなるまで練習できると自分に思い込んでいる。即ち、自尊心を誰でも否めないほどまで徐々につけるということ。
その一方、なぜ彼がラブコメやテイラー・スイフトにすごく目がないのか決して理解できない。首を傾げて「魅力ってどこだったっけ?」と素直に聞くと「素敵なところはどこでもあるから、美術を見る目がなくてもったいない」と窘められてしまう。少なくとも「救い難いロマンチスト」と彼が自称することによりの自覚で少し許せる。
彼は若いときから自立しなければならなかったのが、自分だけではなく妹たちのお世話する責任も負うようにさせられ、自分のことを考える余裕がなかった。交際ではやっと気を許して自分らしくしてくるたびに、すぐにガラッと当時の恋人に振られたのは追い討ちをかけるじゃないか。 両方とも無条件に愛されたいという皮肉なんて。
背後から急にぎゅっとされたとき、私は肩越しに「ん?」と振り返った。 「今まで本当にありがとう」 「なぁに〜、その真剣な口調?」 「いつもお世話になりました」 「おお、丁寧語を使ってまでか」 「本気で言ってるよ!俺のために君がする些細なこと、俺が毛布を充分に持つかどうか見定めるために角からこっそりと覗いたり、外食に行くときに紹介してくれた食事がほとんど俺の口に合ったりするって、全部認めてるよ」 「友達だから当然でしょ」とにっこりと笑いかけた。 「それもあるけど、お前が特に優しくて俺にとって本当に大切なんだ」
彼に抱いてもらったままに「正直にいうと、ここ一年間半ぐらい私たちは少しずつ絶交してくる感じがするの。私をだしにしてお前はひっきりなしに容赦なく冗談を作って大笑いしてるから、まるで時間が経つにつれて私のことがどんどん嫌いになっていくのかように、本当に訪れてきてくれたくなかったではないかと勘ぐらずにはいられなかった」と私はおどおどと打ち明けた。 「俺はただ普通の友達に会うためにも、自分の心地良い家を出るわけではないよ、ましてや六時間運転することなんて。現在にお前と一緒にいるのは、心底から会いたかったんだ」 「と私に言い聞かせようとしてるけど、理解と納得できないのは私を酷く馬鹿にする所謂冗談を連発するところなの!」 「打ち解ければ打ち解けるほど本音を自由に引き出して冗談がますます激しくなってくるけど、俺が言ってた間抜けな事を、お前は真面目に受け取ると思わなかった」
というわけで、建前はほとんど無関心だと見做すほど内向的で冷静沈着だが、本音はふざけてばかりいるというのは、両方とも主観を露にしないじゃない。
「何回も同じいわゆる冗談を繰り返したら、本気で言ってると考えてくるのは不合理ではないの」 「じゃあ、これから君と話したら、そんな冗談はちょっとでも控えるように心がかけていけるけど、本当の自分はいつもふざけたりからかったりしがちだし、誰のためにも自分を変えないよ」 「では、心ゆくまでたっぷりとふざけることができないと、完膚なきまで自分らしく生きることもできないのは、厳密にいうと、お互いに相性が合わないじゃない」 「そうとも言えるけど…議論すると、相互理解まで徹底的に話し合ったら大丈夫なはずだと思うよ」
彼は正面切って認めないが、ごく稀に気が緩むと、心の裏を見透かせるようにその少ない規範に基づくことができる。真夜中に空気が澄んできたときに、カップが半分しか入ってなくなって、私たちを囲まった虚空を懺悔室にした。 「怖いよ、付き合う相手を選び間違うのって」 「… 誰かを愛したことあるの?」 「ある」と彼は頷いて「永遠に一緒に暮らすのを仮にも考えてきたほど恋してた」ともぽつんと呟いた。 「何が起こったの?」 「手遅れになるまで心を開かなくて話さなかったのはすごく後悔しているんだ」 …が、矛盾的には心を開くと、自分自身を完膚なきまで拒否される機会も与えるので、そもそも自分のことを表さない方がいい、と暗黙的にわかってきた。 「だから、今度こそ、疑問を微塵も抱きたくない」 「そんなに紛れもなく納得させるまでかなり時間かかりそうじゃない?」 「また間違えたくない、むしろ、また間違えるわけにはいかない」
なのに「ね、一緒に暮らしたら、ウサギを飼える?子供の頃から俺はずーっとウサギが欲しかったよ!」と彼は軽々に提案したときもあった。 「私はジャンガリアンハムスターが欲しいの」 「うわっ、それもなんて可愛い!」 「だろー!」 「じゃあ、二匹とも飼おう!」 「オッケ〜、猫も二匹しよう。一匹だけだったら寂しいから」 「まったく同感」 「じゃあ、アパートを借りたら部屋はいくつ?」 「1部屋でいいかな」 「ほほう、やんわりと断りたいと思います。お前は他の友達とビデオゲームをすると、夜遅いだけではなく、みんなめっちゃくちゃうるせぇ!私が大切な睡眠を妨げられるなんてまっぴらだよ」ときっぱりと拒否した。 「おおっ、確かに…ちなみに、お前の台所の現状はダメだよ」 「何だって!」 「鉄製フライパンはおろか果物ナイフ以外は持ってない!」 「三徳包丁を一本持ってるし、今までずっとなんとかできたし、それ以外には必要ではないという証明になるじゃないか。それより、逆にお前は超便利な泡立て器とかゴムベラも持ってるわけではないし」と私は生意気にあかんべをした。 「そう。だからお前は俺の厨房に入ったらまったく場違いな気がするけど、俺たちの別々の調理道具を一つの台所で組み合わせたら、徹底的に完璧な台所になるよ」 「もう高齢の夫婦のように間抜けなことについて口論してるなんて」と私はため息して首を左右に振りながら、彼は肩をすくめてニコニコした。
「で、私のこと本当にどう思ってるの?」私はひたすら問いかけてみたとき、彼の唇から流した答えを頑張って把握しようとしたのに、まるで私の体が透明なのかようにすんなりと通り抜け、何も聞き取れなくて済んだ。
. . .
二人とも未練がましいというのは間違いないんだが、相互的だというわけではないね。
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nekomamablog · 10 months
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FOMC議事録や雇用統計で金融政策の行方を探る!半導体関連株や銀行株、ワクチン株に注目!
はじめに 今回は、7月上旬の米国株式市場で注目すべきイベントや銘柄についてお伝えします。来週の米国株式市場は、下半期、新四半期入りで新たな資金が流入することや、金融セクターの株主還元策が相場を支えることが期待されています。しかし、規制強化や追加利上げの可能性は相場の上値を抑える要因となりそうです。 FOMC議事録や雇用統計などの重要な経済指標も発表されます。これらの指標は、金融政策や景気回復の見通しに影響を与える可能性があります。また、半導体関連株や銀行株、ワクチン株などの注目セクターの決算発表もあります。これらの決算は、業績や需給状況、株主還元策などに関する情報を提供します。 7月も忙しそう~それでは始めましょう! FOMC議事録で金融政策の見通しをチェック 2023年6月は13日~14日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されました。…
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usamierina · 1 year
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Mikosushi: High-quality but casual sushi bar in Shimbashi
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Last week was my birthday. I didn't do anything special to celebrate, but that's because I had a reservation for sushi this Friday. I took a dashing afternoon off and went to Miko Sushi. Miko-zushi is a sushi restaurant with an undisclosed address that opened last year but quickly became popular, it is popular for its cosy and delicious food.
先週はわたくしお誕生日でして。特にお祝いっぽいことはしなかったのですが、それはこの金曜日にお寿司の予約を入れていたからなのです。颯爽と午後休をいただいて、みこ寿司へ。 みこ寿司さんは、昨年オープンして瞬く間に人気になった住所非公開のお寿司屋さん。コスパよく美味しいものが楽しめるということで人気。気になっていたので行ってみました!
おやすみなので、お昼からお酒飲んじゃうよ! ということでおビールからスタートです。生ビールじゃなくて瓶ビールのお店。すーぱーどぅぅぅるぁぁぁぁい!
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まずは九州のそでいかからスタート。
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きっとこのそでいかの白は、世の中にあるという200色の白の中のひとつでしょうね。 すこしだけピンクがかった白にわさびのグリーンが透けて美しい。 そしてもちろん美味しい。ふんわりねっとりのところに、お塩と柑橘果汁の酸味でさっぱり。
お次は真鯛。この日は愛媛のだったかな。
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皮目を軽く炙って、香ばしさがあって美味しい。
お次はカンパチ。こちらも愛媛のだったかな。
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カットが綺麗。カットに軽く染み込んだお醤油がよい。
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赤身と〜
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中トロ。
赤身はねっとり、中トロはバランスのよい脂ののり。 大将が「はい、○○」とネタ名を言って出してくれるのを「〇〇〜」と反唱してから食べてしまう癖のある私。別にいいと思ってる!笑
ここでおビール無くなったので、日本酒へ切り替えます。
お店には、常設の2種と、都度入れ替えの限定が5種類くらいかな?置いてあるみたいで、その中からお隣のお兄さんが飲まれていて気になったこいつをチョイス。
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飛騨(!!)の「蓬莱」の「初汲み 純米吟醸 生貯蔵」。
なにやらめちゃめちゃ気合いが入った紙巻きのパッケージ。
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「新・生ける伝説 北場広治スペシャル」の斜めのシールと、「酒造り一筋三十五年の漢 北場広治スペシャル」の金色のシールに気合いが入っている(笑)日本酒。
フルーティーな香りと、ややしっかりめな味わいで「日本酒〜」って感じでした。笑
さて、お寿司に戻ります。お次は鯵。
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例のごとく「背の青い魚好き」な私。やっぱり鯵は美味しい〜 上に乗ってる紫蘇の爽やかさがやっぱり合う。ウマウマデス
お次はシメサバ。
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シメサバってたまにパッサパサになってるやつあるけど(大きいお店のは結構多い)、こちらはしっかりしっとり。そこまでお酢がきつくない締め方で、おいしかった〜
鳥貝。
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コリコリな中にも貝の磯の旨味。
ホタテは軽く炙ったものを手巻きで。
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美味しい〜 けど、海苔がちょっと大きいから、ホタテの味わいよりも海苔の香りが強く出ちゃっててちょっと勿体無かったかも。美味しかったけど!結局ホタテは美味しいけど!!!
甘エビ。
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美味し。やっぱり甘エビすき。とろんとろん甘々。
とっても背筋がピンとした車海老。
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ブリッとした歯応えが車海老らしさよね。美味し。
いくらの軍艦。
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上にぱらっと振られたゆずの香りがよい。でも、そこまでしっかりしたいくら粒じゃなかったから、印象は薄めだなあ。
ここで2杯目の日本酒へ。福井の「白龍」の限定「純米吟醸 DRAGON WATER SILKY」をいただきます。
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さっきの「蓬莱」よりも香りは軽めで、エステルっぽいブドウ方向の香りがしてより飲みやすい感じ。 福井といえば「黒龍」で(もちろんそっちは飲んだことある)、「白龍」があるのも知ってたけど、飲むのは初めてだったかな。美味しいです。
さてさて、ちょこちょこ別のお客様のために登場していたのが、こちらのお店のスペシャリテであるウニ。
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/ダダーン\
本日は7種類の箱雲丹が入っております。
社長さんが無類の「ウニ好き」ということで、初セリの一番いいウニもこちらのお店に入れたとのこと。(今年の初セリのウニは30万円超だったそう。さすが御祝儀価格...!)
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お店では、「雲丹パラダイス」ということで、当日仕入れられている何種類ものウニの中から、好きな銘柄を1つ選ぶことが可能。もちろん、追加で何種類も選んで食べ比べをすることも可能。880円/1貫です。
本日の7種類から、悩みに悩んで3種類を注文!
\\ ダダーン //
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左から、 ・北海道根室マルコ水産 ・THE TAKAHASHI 高橋 無添加 ・はだて生うに
色も違えば味わいも違う、1箱でもオスかメスか(卵巣か精巣か)によって色が違って味わいも違うとのこと。みんなちがってみんないい、の精神。
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大将は「はだて生うに(一番右)は圧倒的にウニ界のルイヴィトン」とお話しされていたけど、甘味と磯臭さのなさのバランスで言うと、私は一番左のマルコ水産さんのが一番好みだったかな!
(お隣の方が追加追加で8貫くらい頼まれていたのが、羨ましかった)
そろそろ最後の方に。穴子です。
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炙り穴子最高。
手巻きのトロタク。
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ここで、さらにお好みでということで、ちょっとだけ追加。
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そでいかさんと、
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鯵と、
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なんだかんだ手巻きのホタテ。
最後に
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大粒の納豆の海苔納豆巻きと
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しじみのすまし汁で締め。ご馳走様でした。
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(おみせのおねえさんの賄いで作っていた、ほとんど魚の中巻きもちょっとつまませていただきましたw)
この日のお会計は11800円也。
とってもコスパがよいお店、と聞いていて、確かにその通り。 うーんでも、ネタはとってもいいんだけど、ちょっとシャリが微妙だったきがするな...やや柔らかくて、割れ米が多くてねっちょりしてた気がするなあ。もうすこし粒立ってる方が、わたしは好きかも。(あくまでも”私”は、ね) シャリのバランスって難しいね。
手巻き系は海苔が大きいので、せっかくのネタの良さが海苔でバランス崩れているのも勿体無いかも。特にホタテとウニ。せっかくのウニは軍艦じゃない方がいいんじゃないかな...??今度行く時は海苔なしで相談してみようかな。
まだまだ気になるお店は多いので、引き続きいろんなところに行ってみようと思います。
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nihonsyuya · 1 year
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【11月16日wed SHAKE!】 年の瀬間近の11月16日水曜,週のど真ん中,新丸ビル7Fニューみるくでパーティーを!会場名にかけて,日本酒はにごり酒を用意します。 クラフトサケ,どぶろくに注目が集まる今,僕らはにごり酒の汎用性を知り尽くしたか?ソーダで割っても,ビールで割っても,温めても旨い。そんな軽くて飲みやすいにごり酒を用意します! 銘柄はOMK的にも大注目な出雲から,出雲大社の御神酒も醸す旭日酒造。 十旭日を数種類用意します! DJには夏に台湾潜入も終えたばかりのYOUNG-G,MMM from stillichimiya,モーラムからサイヨーへ気持ち良い音を探し続ける探求者Soi48,日本の民謡を独自の思考回路でアウトプットする俚謡山脈からムード山。OMK新聞を発行した彼らの今気になる音楽を体感。しかも東京のへそ,丸の内で夜景も観れるって最高じゃないですか? そして吉祥寺からは円盤目玉焼きDJ ADULT,茨城の取手のローカルファーマーbonno108が参加! 料理はタイ料理家でもあり,今夏「エスニック料理。屋台飯もスパイスカレーも。」を発売したばかり,東中野で予約制プライベートダイニングをされているアベクミコさん。 笹塚でカフェatelier Perchを経営し,ケータリングチームも主宰するまきあやこ。タイ料理,和食,ひっくるめたアジア料理を! 会場のニューみるくは店内の他,夜景が気持ち良いテラスもあるので,踊った後は涼みながら酒を飲んだり食事を楽しんだりできます。仕事終わりでも満足してもらえるよう色んな料理を用意してます。そしてニューみるくのお酒も飲んでいただけるので,ビールやみるくを使ったカクテルも! 少し早めの忘年会的大集合。かるく一杯でも,ゆっくり音を楽しんでも。日本の鉄の血液の源流,東京駅前の新丸ビル,ニューみるくで会いましょう! OMKについてや,料理酒の詳細はまた来週に〜。 (新丸ビル) https://www.instagram.com/p/CkZuetvvpVC/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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nyc200922 · 6 months
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今週の注目株!
今週も私が考える高配当株投資における注目銘柄をご紹介します。 今週注目しているのは、ツガミ株式会社(6101)、ダイヘン株式会社(6622)、VTホールディングス株式会社(7593)の3つの企業です。 それぞれの事業内容と高配当株としての魅力について詳しく探っていきましょう。 1. ツガミ株式会社(6101) ツガミ株式会社は機械産業におけるリーディングカンパニーです。 彼らは自動旋盤、研削盤、マシニングセンタ、転造盤などの工作機械を製造・販売し、日本と中国を中心に事業を展開しています。 ツガミは高精度な工作機械を提供し、自動車、航空宇宙、医療機器など多くの産業に貢献しています。 2.…
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kennak · 8 months
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kiku-chanです。https://twitter.com/kikukikuchan/status/1683075167482941440タイトルの通りです。妻が巨額の詐欺被害にあいました。引っかかってしまうと、素人は詐欺師のペースに乗せられてしまいます。常識的な判断力を巧妙に奪ってくるのです。このような手口があるということを多くの人に知っていただきたいです。【Fultonに入金されている方へ】これはFultonの競合他社による妨害の為の捏造記事ではありません。目を覚まして!------先週の段階で警察には被害相談をしており、振込先の銀行についても、振り込め詐欺救済法の窓口にすべて通報しています。既にいくつかの口座は凍結されていました。弁護士については検索で上位にヒットする弁護士事務所については、高額な着手金に見合う効果が得られるのか疑問で、依頼するか悩んでいます。ある意味弁護士も怪しい(着手金200万と言われたり、口コミを探すと評判が極端に悪い、国際ロマンス詐欺では弁護士の二次被害にあった人もいる。ファーマ、横山などは要注意)※弁護士会の相談センター経由で探すことになりました。情報ありがとうございます。着手金200万円は特別高額では無いとのことです。初期対応は↓こちらにまとめています。anond:20230725105032------騙されたのはFulton FXという海外の金融機関のFX部門を装った詐欺サービスhttps://megalodon.jp/2023-0715-1659-24/https://www.fultonfx.com:443/jp/上記サイトを見た後に以下のリンク先を見ると共通点が複数見られると思います。https://sites.google.com/view/fxkarakuchi/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/index/page37?fbclid=IwAR3K03N-RSZaFOaOa9YKjpya8uHzS5Aa0oCZGIWI1obdpsHgT1UXYkmnNa0手口としてはFacebookの投資系広告からLINEグループに勧誘され、そこで投資指南を受けて実在する投資サービスで取引すると利益が出る。安心させた上で、架空のFXプラットフォームに誘導し多額の入金をさせるというもの。WebアプリだけでなくスマホのアプリでもiPhone用とAndroid用がそれぞれ用意されていて手が込んでいます。経緯を妻視点でまとめると以下の通り、話がとっちらかって読みにくくて申し訳ありません。【2023年6月中旬】Facebook広告にやたら投資案件が出るようになった。親から引き継いだそれなりの現金をどうするか考えていたこと、夫の体調が悪いのと、私は母の介護と子供達の不登校でフルタイムで働くのが難しいことから、これらの現金を元手に生活を楽にする方法を考えなけば、と思っていたからかもしれない。その中の広告から、何気なくLINE友達追加した人物より「株式投資会です-Y350」というLINEオプチャに参加するよう促された。最初は私も怪しんで適当な返事しかしていなかったが、しつこくやってくるメッセージに何故か根負けしてしまい、「無料なら参加します」と返事をしてしまった。そのグループでは「先生」「投資アドバイザー」なる人物がいて、日々の経済状況やローソク足の読み方、オススメ銘柄等が投稿されていた。それなりにまともに見える内容で、段々私のガードは下がっていった。始めのうちは「先生」のアドバイスに従い、自分の元々使っていた証券会社やFX会社で取引を行っていた。昔私がFXで損した分を取り返す位のプラスが出た。追記:先生やアドバイザーは関根・橋口・新田シニアアナリスト・関根進についてのプレスリリースhttps://note.com/1news/n/n5c85cff25875これですっかり先方を信用してしまった私。今度は「機関投資家が撤退する日本の株式市場より今はFXが儲かる」という話の流れに乗って、先方の提供するプラットフォームで取引を始めてしまった。日本に進出して間もないので、シェアを大きくするため実績を上げたいとのことだった。また初回2万円以上入金すれば3万円のボーナスがもらえるというニンジンがぶら下げられた事と、先生の指示に従って「買い」「売り」を行うと見事にプラスが出るという成功体験で、完全に心酔してしまったのだった。元本を大きくし、取引をする際は少額の証拠金に大きなレバレッジをかければ、取引に負けてもロスカットにより損を最小限にできるとの先方の言葉に乗って、次々と手持ちの現金を入金してしまった。ここで考えるべきだったのは、相手の日本語がたまにおかしい事(機械翻訳のような日本語)、入金する時の宛先が何故か日本の中小企業の口座だった事。一瞬「これ本当に戻って来るの?」という事が頭をかすめたものの、タイミングよく相手が「安心して下さい」とメッセージを送って来たり、グループ内にいるサクラと思われる人物が「利益を引きだして楽しくやってます!」等と投稿していて、体よく不安を解消させられてしまった。振込先が中小企業なのは、入金額をドルに両替するために複数の業者の協力を得ているとのことだった。取引を続けるうち、口座上では数千万円の利益が出ているように見えていた。そのうち原油の現物取引に参加を促された。契約も何もなく、適当なパンフレットを見せられ、口頭で購入数を伝えると先方が「銀行に予約を入れる」というシステム。10日程度保持すると予約金額の2倍以上の利益が得られる。この時点で私には専属のサクラが付いており「私はこんなに沢山予約しました!」とか「保険を解約して全資産を投入しています!」等と常にメッセージが来ていて、私は完全に相手のペースにはまり、大量の原油を予約してしまっていた。このサクラ、大阪にいるシングルマザーのおばちゃんという設定。最初は警戒していたのに心を許してしまったのだった。この原油取引も最初は少ないロットで成功体験を得られた。次はかなりの取引額を勧めてくる。しかもこれまでの為替取引と同じように、証拠金があれば良いのかと誤認させられたが、決済時に全額分が取引口座に入っていないと違約金30%を払わなければならないとのことだった。この時点で7月5日、原油の決済日は7月13日。違約金を払うと、これまで取引で得た利益を失うだけでなく投入資金に対して1千万を失ってしまう。私は判断力を完全に失ってしまった。親から引き継いだ不動産会社(清算待ちの状態)の口座から数千万引き出し、夫の貯蓄や子供たちの口座にあるお金もほとんど投入してしまった。夫も、不安にも思いつつ夫婦の関係を優先してお金を出してくれたのだった。夫からも「本当に大丈夫なの?」と何度も聞かれたが、洗脳され信頼しきっていた私は「絶対に大丈夫!」と答えていた。それでも原油の決済額には足りないのだが、そこは普段の取引で元手を増やせば良いとアドバイスされていた。しかし、そこから思うように取引で資産が増えなくなった。時には一度に8百万の損が出る。そうしているとアドバイザーが助けてくれる。アドバイザーの指示するタイミングで売り買いをすると取引に勝つことができるのだった。しかし原油の決済日数日前になっても決済金額に1千万以上届かない。するとローンの借入を勧められた。このあたりで夫が、TwitterやGoogleで検索すると詐欺を指摘する情報がヒット(この数日前から詐欺を疑う情報が増えて来ていた様子)。夫が仕事の昼休みに公開されているオフィスの住所である、マインズタワー33階に行ってみるとそこにはFulton Financialのオフィスは無くトレンドマイクロのオフィスがあり、詐欺と確信したのでした。。https://www.trendmicro.com/ja_jp/about/announce/announces-20230718-01.html※住所が騙りだとバレたら移転話が出てきています。夫はもしものことを考えて年収分のお金は死守しており、当面の生活は何とかなりそうです。【追記】弁護士の件ですが、以下のリンク先の記事では、国際ロマンス詐欺の被害者が弁護士による二次被害にあっていますが、その弁護士というのが我々が最初に電話したところだったりします。こわいhttps://www.bengo4.com/c_1009/n_15592/【検索用 フルトン 口コミ 評判 関根 橋口 新田】
【拡散希望】妻がFX投資詐欺で数千万詐取されたよ【Fulton FX】
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本日は2種類の日本酒をご紹介! 石川県・吉田酒造 吉田蔵U/山廃純米 石川門-百万石乃白の二種類 人気銘柄"手取川"を醸す、吉田酒造店。 定番酒として人気の高かった「吉田蔵」ブランドが、装い新たに 現代の空気感を纏った新たなるシリーズ"u" -"u"とは、「優しい」の優。そしてあなたの you - 今回のシリーズのコンセプトは、 『食・人・自然に寄り添う ナチュラルで優しいお酒』 地酒本来の姿を未来に繋ぐ、 地元の米・水・酵母で醸した「モダン山廃」のナチュラルなお酒です。 「石川門」 特有の甘みと爽やかな酸味のあるお酒。 フレッシュ感を追求した瓶詰め方法でかすかな発泡を感じます。 キラキラして瑞々しい果実のような味わい。 『百万石乃白』 2020年にデビューした石川県の酒米です。その透明感とクリアな味わいに、多くの日本酒ファンが今注目している新たなる酒米です。  特有のミネラル感と透明感のある味わいで 同じく『石川門』と同じ造りでありながらも酒米の特長を上手く引き出した一本になっています。 2種共に、アルコール度数は13度。 爽やかな酸味、程良い旨味が絶妙なバランスで整えられ、和食のみならず様々の料理に寄り添います。 是非よく冷やしてお召し上がりください。 1.8L 税込¥3520 720ml税込¥1760 2種の1.8L、720mlの計4種ございます 隠れた美酒・銘酒を求めて・・・  一味違った豊富な品揃え!! 朝日屋酒店 東京都世田谷区赤堤1-14-13 Tel:03-3324-1155 営業時間 10-19:30(19:00時で留守番電話に切り替わります) 定休日:毎週水曜日 【通販】 オフィシャルサイト http://www.asahiyasaketen.com/item.html Yahooショッピング https://store.shopping.yahoo.co.jp/asahiyasaketen/ #日本酒 #石川県吉田酒造 #朝日屋酒店 #純米 #石川門 #百万石乃白 #吉田蔵 (at 朝日屋酒店) https://www.instagram.com/p/CfnKFTHlCPL/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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yokoham · 2 months
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雑記20240306
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俺たちのAMD、一部メディア(僕も見たけど確かロイター)が中国への輸出規制を米連邦政府に掛けられるだか掛けられないだか、報道がありました。やばい! 死んでしまう! と思ったけど、全然平気でした。っていうかいつの間にか200ドル超えてた。いくらで買ったんだっけか。
ほんと中国には振り回されっぱなし。みんなでしあわせになろうよ。
今日は日経平均も大きく下げるかもしれませんね。しばらくは調整かも。
と思って昼休み、いやこれ上昇途中ですね。今週はメジャーSQなので難しいかもしれませんが、案外あっさり41000まで行くのかも。強すぎる。40300円を超えたら早いだろうね。どうなってんのこれ。
出遅れ株を買う最後のチャンスなのか? 今の流行りは半導体からAIに移行しつつあるけど、正直AI関連って玉石混交というか、うさんくさいのも多いから難しいよね。あんまり手を出そうって気が起きない。
おじさんは割安な内需銘柄を揃えておくよ。
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僕がいつも買ってる目薬。やっぱ疲れが取れるのはこれなんよ。ただビタミンB12の色素で赤い液体なので、白いTシャツとかに落ちると色が付くから注意だぜ。洗えば落ちるけどね。
定価が結構高いのに、なぜかAmazonのコハクドラッグさんはいつも半額くらいなのでほぼ100%コハクドラッグさんで買ってる。
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7回買ってました。案外少なかった。ていうか過去1か月で6000個以上買われてるってやば。人気あるんだなぁ。
サンテメディカル12(Amazon)
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ecoamerica · 23 days
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Watch the American Climate Leadership Awards 2024 now: https://youtu.be/bWiW4Rp8vF0?feature=shared
The American Climate Leadership Awards 2024 broadcast recording is now available on ecoAmerica's YouTube channel for viewers to be inspired by active climate leaders. Watch to find out which finalist received the $50,000 grand prize! Hosted by Vanessa Hauc and featuring Bill McKibben and Katharine Hayhoe!
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manganjiiji · 3 years
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ようそろ。フィガファウアドベントカレンダー、7thがやっと投稿できました。うん?この世はいま16日ではないですか?なんだかまたひとつのはなしを考えているだけで、たくさんの時間が過ぎてしまったもよう。なんでやねん。社会生活、たいへんな停滞。この7日間ほど、おりにふれて地獄の苦しみでした。いや、そんな、そんなことを言ったらつねにそうではないのか?という感じだが、とくにこの一週間、うまくいかなかった、ような…。現実世界に反して、私の頭の中のフィガファウ世界は楽しく過ぎていました。こんな風に日記をつけていると、一体どの日に何を書いて、どの日に何があって書けなかったのか、よくわかっていいですね。
おそらく注意書きがあと2つ3つは必要そうな、しかし言ったらおもしろくなくなるので言わなかった、という「配慮不足」のキャプションをつけてpixivに投げてしまった。どん。毎日書き足していたらなんだか字数が多くなっていて吃驚。こんな正体不明の、読みづらいにも程がある、先の長い話を誰が読むの?と思ったけれど、女史、「日本語が読めるなら読んだ方がいい」と豪語。戦く。ありがたく受け止める。今回、pixiv用ではなくて、気ままに1日1話感覚のTwitter用短編として書いていたので、初っ端から遺言を「ゆいごん」としたり、なぜ?というひらがなの開きが多い。なぜ?と私も思う。でも誰も答えてくれない。なぜ?と思いながら、私がそこはひらがなにしろと命令してくるので私は素直に従っている。またこんなに平仮名にして…ちょっと気持ち悪いわね…と思うものの、まあ素直に従ったの私だしな…と責任を引き受けるなどしている。
今日は副業の同僚と喋る会(どうやら、時節柄忘年会のような?集まり?)の開催であり、勤務後そのまま寝ないで都心にとどまっている。集合時間までの時間を利用して、つまりさっきまで、明後日で別れることになる同僚たち(の一部)に手紙を書いていた。一人便箋一枚分。あなたがどのような人で、私はあなたにどのように感銘を受け、また好ましく思っており、これからもよろしくしたいか、ということ。文章にしてみて、改めてスターメンバーしかいないな、と、こんな人達に囲まれることは後にも先にもないのでは、と時間の過ぎ去った貴重さに気づく思い。スターメンバーはあと2人いたが、彼女らは先に出立している。最後に私のお師さまだが、彼女へはまだプレゼントも選んでいないので手紙もまだ書かない。彼女には一体どんな文章を綴ればよいのか、見当もつかない。何を書いても意味がなさそう。毎瞬、その人はあんまりに眩しくて。そのひかりを私が紙にかきつけて伝えたところで、彼女に得るところは特にない。好意は十分に伝わっているだろうし。でも何も文章にしないのも寂しいから、文通の誘いでもかけようかな。でも、師匠、手紙書くのなんて苦手そう。とくに私宛にとは。
副業、残り勤務一回、明後日。すっかり忘れていたが、上長にも手紙を書こうか、と今思いついた。全員に差し入れるお菓子も買わなくては。ええっ、時間が足りないな。今日はどんなお喋りの会になるのだろうか。昨日までとても楽しみだったけれど、きちんと、いつもよりもっと深い「ないしょ話の会」にできるかどうか、すこし不安になってきた。みんな「話したいこと」をはち切れんばかりに持ち寄ってくれるかしらん。ちなみに私は、持ち寄りたい話を作ることに見事失敗しましたし、その話の展望も暗いので、何も話さないようにしようかな、と思い始めています。人頼み。
ヤマシタトモコの『違国日記』、今更に読み進め、5巻の途中までで力尽きている。うーん、好きだ。ヤマシタトモコとは男の趣味が合わない(BLの受け攻めがいつも逆の意)が、女の趣味がこの上なく合うので、この漫画は楽しい。女王も子犬も、いかにも私が好きそうな人種。女王の彼氏もよい。ヤマシタトモコの、男単体なら趣味が合うことがわかった。そもそも絵が好き。ありがとう、たくさん描いてくださって。今までの作品では『HER』『ひばりの朝』が好きです。BLでは「スピカ」という短編だけ好きだった。
枕元に積まれている東京卍リベンジャーズ、友から送られた箱のまま眠る遊戯王、このあたり、引越しまでに読み終わりたかった。もう無理。わかります、これらを読むことは無理です。時間と体力が足りない。たくさん買ってしまったフィガファウの同人誌、これらも読めていないものが多い。私は創作物を取り込むのに気合いを必要としすぎるきらいがあるが、体力がない時に物語を取り込むと、その後たいへんな目に(体調的に)遭うので、これからも物語については少食だし偏食だし時間がかかるのだろうなと思う。
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774 · 4 years
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米大手証券のモルガン・スタンレーは、日本企業にとりわけ期待を寄せてきた会社だ。12年暮れからの「アベノミクス相場」の熱狂も薄れた18年9月、「日本の変貌、出遅れから先行へ」と題する約180ページのリポートを20人がかりで作成。世界中の投資家に「まだ買える」と日本株を売り込んだ。 今のところ、もくろみは空振りだ。日経平均は当時と同じ水準にとどまる。リポートでは注目すべき21銘柄を紹介したが、公表直前から先週末までの株価の上昇率が日経平均を上回ったのは、HOYAなど7銘柄にすぎなかった。 誤算は自己資本利益率(ROE)に違いない。モルガン・スタンレーは日本企業のROEが改善し、25年には世界に追いつく見通しを「日本買い」の根拠としていた。現実には18年の9%から昨年は8%に低下したもようだ。中国景気の低迷に伴う業績の悪化が原因で、20年は米欧アジアに再び差をつけられると市場は予想する。 「モルガン21銘柄」にも株価とROEの相関が見て取れる。値動きが日経平均に勝った7銘柄のROEが平均14.6%だったのに対し、負けた14銘柄は11%。このうち59%と突出して高かったZOZOを除けば7.3%に沈む。モルガンの「打率」が振るわなかったのは、ROEが低い銘柄をマネーが避けた結果だ。
日本株に迫る「屈辱の日」 夢なき市場に未来なし  :日本経済新聞
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annamanoxxx1 · 4 years
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月兎 01
 雨の中華街は、まるで小さな映画館で観る古いキネマのようだ。燻んだ灰に烟る極彩色。濡れた地面に反���する赤、黄、青。中華角灯の連なる汚れた路地裏。公園の東屋。媽祖廟に関帝廟。映画のセットに一人取り残されたような気持ちで左馬刻は夜道を歩いていた。傘はない。霧雨は、肩にかけたスカジャンの下までは染み込んではこない。こんな日は人も静かだ。観光客の少ない街は必然、客引きの声が消える。商売をしても仕方がないと皆知っているから。脇に下げたホルスターの拳銃が、重い。自然丸くなる背をポケットに突っ込んだ手で支える。息をすることすら怠い。
 沈んだ景色の中、不意に頭上に明かりを感じた。まるで、雲の隙間から気まぐれに顔を出す日の光のような。顔を上げると、眼鏡の男が居た。正確には、陳列窓の中に。男は、うたた寝をしているように見えた。アンティークのソファにゆったりと体を預けている。優美な曲線を描くマホガニーの肘置きに柔らかく添う指先。鈍い光沢のジャガード生地で作られたロングのチャイナ服。細い体。柔らかな質感の濃茶の髪。完璧な形をした耳には、赤い房飾り。シノワズリ趣味。それは男の装いだけではない。透かし彫の衝立も、天井から下がる黒の角灯とクリスタルのシャンデリアも、大胆なピオニー柄の淡碧の壁紙も。現代日本とは思えぬ、杳々とした空間。その中で眠る男に興味が湧いた。硝子に顔を近づける。繊細な装飾が施された眼鏡の、黒のフレームの奥。レンズ越しの瞼をまじまじと見つめる。放射状に広がる長い睫毛。丸みを帯びたまぶた。瞳の色は何色だろうか。白い頬に落ちる影。
「なぁ、目、開けろよ」
 聞こえるはずはない。だが、話しかけずにいられない。明かりの消された店で、唯一明るい陳列窓の中で、眠る男が生身のはずはないのに。それでも、あまりに男が生々しくて。
「なぁ、なぁ」
 気狂いのようにぽつ、ぽつと何度も語りかける。
 どれ位の時間、そこに居ただろうか。縋るように硝子に手を突いて。ようやく諦めて、立ち去ろうとした。その時に。ふぅ、と男のまつ毛が持ち上がった。最初に見えたのは、明るい緑。晴れた夏の木漏れ日のような。それに見とれていると、ゆっくりとマゼンタが現れる。不思議な瞳の色だった。
「きれぇだな、お前の目」
 こちらを見ない男に、話しかける。
「あっ?おい!」
 男は無反応のまま、スゥと瞼を下ろした。何事もなかったように、上下のまつ毛が重なる。
「………くそ」
 悪態をついた瞬間、店内がパッと明るくなった。
「何か、用か」
 デカイ男が、にゅっと建物の脇から顔を出す。どうやら店の人間のようだ。裏口から回ってきたのだろう。
「あ、いや、こいつ」
 左馬刻が、陳列窓の中の男を指差す。
「ああ……今店を開けよう。待っていてくれ」
 そう言って、大柄の男が戻っていく。日の光を集めたような明るいオレンジ色の髪、晴れた海面のような明るい青の目。白色人種の特徴を持つ、彫りの深い顔立ちに、飾り窓の男と同じようなロングのチャイナ服。シノワズリを体現したかのような男と、店の佇まいが重なった。すぐに透かし彫の施された硝子扉が内側に開く。
「どうぞ」
 背の高い男に招かれて、左馬刻は店内に足を踏み入れた。エキゾチックな花の香り。外からは見えなかった場所には、壺や茶器、置物などが並んでいる。
「茶を淹れよう。座っていてくれ」
縁にカーヴィングの施された、エボニーのティーテーブル。揃いの獣脚のアームチェアにドカリと座り、左馬刻は陳列窓の男の茶色い後ろ頭を、ぼんやりと見つめた。
「気になるか?」
 オレンジの髪の男が、茶盤に並んだ茶器に湯を注ぐ。流れるような手つきで茶葉を洗い、再度鉄瓶から湯を注ぎ、蓋を閉めた小ぶりな急須に上からも湯をかける。コトリ、と目の前に置かれた透かし模様の白い湯のみに浮かぶ、黄金の輪。ず、と一口すすると、茉莉花の香りが広がった。
「銃兎も連れてこよう。起きるかどうかはわからないが」
 そう言って、オレンジの髪の男が陳列窓に近づく。あの男は『銃兎』と言うのか、と左馬刻は思った。オレンジの髪の男に抱き上げられた銃兎が、左馬刻の向かいのアームチェアにゆっくりと降ろされた。
「銃兎、茶はどうだ?貴殿の好きな碧潭飄雪(スノージャスミン)を淹れたのだが」
スゥと、銃兎の瞳が開く。けれどまたすぐに閉じてしまって、オレンジの髪の男が苦笑した。
「どうやら、今日は気が乗らないようだ。部屋に戻せと言っている。すまないが、待っていてくれ」
 そう言って、オレンジの髪の男は銃兎を抱き、カーテンに覆われた店の奥へと消えていく。それを、なぜだかひどく腹立たしい気持ちで左馬刻は見つめていた。いや、腹立たしいというのは少し違う。左馬刻は、羨ましかったのだ。オレンジの髪の男が。
「さて、待たせたな。小官は理鶯という。元軍人だ。船に乗るのが好きで、各国で買い付けをしては、こうして商いをしている。貴殿の名は?」
「左馬刻」
左馬刻は簡潔に答えた。
「銃兎、は一体なんだ?人間か?」
左馬刻の率直な問いに、理鶯が微笑む。
「あれは観用少年(プランツドール)だ」
「は?プランツ?嘘だろ?」
 『プランツドール(観用少年・観用少女)』とは、その名の通り、観用の少年・少女だ。人工の。左馬刻の属する火貂組の組長・火貂退紅も一体、少女型を所持している。左馬刻は職業柄、派手な集まりに参加することが多いが、今まで目にした観用少女たちはみな、成人男性の胸元にも満たない姿だった。何年、何十年物でも。手入れを怠らなければ、同じ姿のまま二百年の時を越える個体もいると聞いている。
「稀に、育ってしまう物もいる。稀に、だが」
 そう言って、理鶯は茉莉花茶に口をつけた。
「左馬刻、銃兎は名人の手による傑作だった。銘は『月兎(げっと)』」
 銘がつくほどの観用少年の価値を、左馬刻は知っている。退紅のオヤジのプランツも、銘を持つ逸品だった。その値段は、億を超える。しかし、理鶯は『傑作だった』と過去形を使った。
「育ってしまったプランツの価値は、ほぼ無い。それでも、銘を持つプランツなら、ワンルームマンションを買えるくらいの価値を持つ」
 語りながら、理鶯が茶を左馬刻の湯のみに注ぐ。一煎目より柔らかく重い香りが立ち上った。
「へぇ」
 左馬刻が相槌を打つ。つまりあのウサギちゃんは、高級品っていうわけだ。
「一千万でどうだ?」
理鶯の言葉に、左馬刻が顔を上げる。
「は?」
訝しげな左馬刻に、理鶯が微笑みかけた。
「銃兎は、左馬刻を気に入ったようだ。興味がなければ、一瞬でも、瞳を開いたりはしない」
「アイツ、動けんの?」
 ずっと、寝っぱなしなのかと勝手に思い込んでいたが、そういえば今まで見てきた観用少年・少女たちはみな、歩き、笑い、主人と何か会話をしていた。
「食べもんも食えんのか?」
 理鶯が茶を勧めていた事も思い出した。
「ああ、風呂もトイレも、一人でこなせる。食事は日に3度、人肌に温めたミルク。週に一度金平糖を与えると肌ツヤが良くなるぞ。全体的に疲れが見えてきたら専用の栄養剤もある。銃兎は育っているから、人間と同じ食事も摂れるが、嗜好品だ。ミルクさえ与えていれば、ことは足りる」
 左馬刻は頭を抱える。自分の家に銃兎がいる事を想像して、胸がぎゅっと熱くなった。コンクリ打ちっ放しの無機質な部屋だ。家具も最低限しかない。そんな空間に、あの、美しいものが存在する。それはなんと魅力的なことか。
「そいやさ、銃兎って名前は誰がつけたんだよ」
 銃なんて物騒な名前が付いている。けれどその名は、あのお綺麗な顔に不思議と良く似合っていた。
「前の主人が、な」
 含むように呟いた理鶯は、それきり理由を語ろうとはしなかった。
「返事は直ぐでなくていい。銃兎は気難しい。迷ったら顔を見に来るといい。眠っていても、銃兎は気づく」
 流石に、高級車が買える値段を即決することはできなかった。
「馳走になった」そう言い残して、左馬刻は店を出た。
*
「いいのか銃兎?左馬刻は帰ってしまった」     天蓋付きの中華風の寝台の上、銃兎は絹のシーツに包まって眠っていた。理鶯の言葉に、パチリと緑の瞳が開く。理鶯が差し伸べた手をとって、銃兎はゆっくりと起き上がった。
「理鶯、余計な事はしないで頂けます?」
手厳しい一言に、理鶯が苦笑する。
「大体、一千万だなんて、安すぎます。私を何だと思っているんです」
ぷぅと頬を膨らませて、銃兎が涙を滲ませる。元は、数億で取引されていた個体だ。自尊心が大いに傷つけられたのだろう。
「だが、銃兎。貴殿の日々のミルク代や服、装飾品など、一体いくらの持ち出しになっていると思う?」
 優しい声で理鶯が問う。責めているのではないことは、銃兎にはちゃんと伝わっている。けれど。
「……だから、嫌ですけど、ものすごく嫌ですけど、硝子窓で客引きしているじゃないですか」
「うん、それはとても助かっている」
 言いながら、理鶯は銃兎の頭を柔らかく撫でた。現実、銃兎を目当てに店に飛び込んで来る客は多い。しかし、銃兎はそんな客たちには決して目を開かなかった。銃兎を目当てに入って来た客の中には、店の常連になる者も多い。もともと銃兎を欲しがる客というのは、美術品の好事家が多いのだ。
「だが、銃兎、小官は貴殿をこのようなところで飼い殺しにしたくない」
 理鶯の言葉に、銃兎が泣きそうな���をした。
「わたしは、ここに居たいんです。ずっとここに。ねえ、駄目ですか?お願い、理鶯」
理鶯の幅の広いチャイナ服の袖を掴んで、銃兎が懇願する。理鶯は銃兎を大切に扱っているが、それはあくまで商品としてだ。出来る事なら、商品としてではなく、銃兎を愛してくれる人間に届けたかった。
「もう、人間を愛するのは嫌なんです。もう、あんな思い、二度としたくない」
 理鶯にすがり付く銃兎の背を撫でて、理鶯は物思いに耽る。通常、観用少年というのは、愛に絶望すると枯れるものだ。しかし、銃兎は、一度枯れかけはしたが、こうして未だ美しく咲いている。それは、銃兎も気が付かない心の奥底で、人の愛を望んでいるからではないのか。
「左馬刻は、きっとまた来る。ゆっくり考えたらいい」
 そう言って、理鶯は銃兎を寝台に横たえた。椅子の背に脱ぎ捨てられたチャイナ服を、ハンガーにかける。
「おやすみ、銃兎。また明日」
 暗闇の部屋から、明るい四角に足を踏み出す理鶯を、銃兎は寝台の上から静かに見送った。
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