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#ペンキ仕上げ
namuahi-san · 2 years
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ああああ
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「もういいかなあ」と兄が言ったのでわたしは読みかけの本から視線を上げないまま「なにが?」と訊き返したけれど返事はなく仕方なしにスピンを挟み本を閉じ、読書を邪魔されことに対する文句でも言ってやろうと兄の方を見ると、兄は最初からそうであったかのようにいなくなっていた。わたしはまず部屋の中をくまなく探し、家中をひっくり返し、両親に訴え、警察署に届け、兄の行きそうな店や公園を巡り、学校に確認し、町中に尋ね人のビラを貼り、六年間通った学校に行かなくなり、水晶玉を覗き、Lロッドの行方を追い、恐山でイタコに口寄せしてもらうも圏外だと言われ、失意のわたしを車で轢きかけた男と結婚、兄のことをSNSで拡散してもらい、バズり、当時の同級生を名乗る人物から連絡があり、知り合いだという霊能力者を紹介され願いが叶う薄緑色の石を買い、徳が足らないので世界に三枚しかないというありがたいお札を買い、離婚と同時に出産、ダイソーで売っていたトンカチで薄緑色の石を割り、ガスコンロで札を焼き、海水から作った塩を売って暮らし、わたしが結婚したのと同じ歳まで育った娘が「会わせたい人がいるの」と言って初老の男(以下初老)を連れてきて、わたしはいま初老の運転するバスの中。
「みかん食べる?」娘が冷凍みかんを渡そうとしてきます。初老が娘の恋人なのか気になりましたが、彼がハンドルを握っておりますので機嫌を損ねたら窓の外に広がる渓谷に真っ逆さまということにもなりかねずわたしはなにも言い出せないのです。それにしても、どこに向かっているのでしょうか。ねえ、と娘に尋ねようとすると娘はみかん由来の黄色い手で機械を触っており「なにそれ?」「株」覗いてみようとすると画面を隠し「インサイダ!」と拒絶。反抗期なのでしょうか。
 ハッピ、バッデ、トゥユ、
 ハッピ、バッデ、トゥユ、
 邪悪な秘術を想起させる汚らしい文句。声は娘と初老のものでした。「お母さん」顔を上げると娘がこれまで見せたことのないような笑顔でわたしにノートとペンを差し出しています。ありがとうございます。心根の優しい娘なのです。お義母さあん! と突然、運転席から初老がマイクで叫ぶのでノートを落としてしまいました。ちょうど開かれたページには赤のボールペンで『ギターピックとして代用可能な動物一覧』と書かれているではありませんか。ありがとうございます。ペンギン。ライオン。ワオキツネザル。
「クイズです」初老クイズが始まりました。
「東京タワーと東京スカイツリーは何がために建てられたでしょう」「答えは痛いから」
音割れした初老の声に娘が即答します。
「痛いから?」とわたし。
「東京にはかつて建設を予定されていた塔があった!」「名は東京バベルタワー」「東京は、夢想していた。正しい、理想の己の姿を」「だがそれが叶うことはなかった」「計画は頓挫したのだ」「なんという悲劇!」
 娘と初老が交互に、オペラのように歌い上げていきます。ありがとうございます。
「東京は悲しみました」「そして、いつしかそこが傷み、疼きはじめたのです」「東京の悲しみを受け、時の権力者はバベルタワーの代わりに塔を建てました」「順番に、二本」「ですが、それは両方的外れだったのです!」「正解はこれから向かう場所にあります」
「どこに向かっているの?」
「アール県」
 ふたりの声が重なり時間はズレます。アール県にある塔は巨大ですがまだ根元しかなく、建設反対派との戦争真っ只中。人を殺傷するのに最適な速さで銃弾が飛び交いバスを出るなり初老と娘がその餌食となりました。二人を埋める余裕もなく走りますと、作りかけの塔の先端にはギトギトとした黒い木でできた小屋。入り口の看板にはペンキで大きく『いろっしょい』と書かれています。ドアは開けっぱなしで、中に入ると小屋と同じくギトギトの木でできた本棚に手作りらしき本がいくつか並んでいました。
「いろっしょい」見ると焦げ茶色のエプロンのギトギトな男が口をOの字にして立っており、わたしにコーヒーを差し出しました。
「テンミニッツ・コーヒーです。黙祷」その十分間でわたしは全てを理解しました。このカフェにいつの間にか忍び込んでは自作の本を勝手に置いていく輩がいて困っているそうです。コーヒーはライカ泥水で、わたしはそれをマスターの顔面に浴びせ本棚に向かいます。悲鳴をあげるマスターこそが犯人なのです。そうやって他人の興味をひいてこの本を読ませようという肚なのです。たちの悪い妖怪のような男。ありがとうございます。そうしてわたしはマスターに代わりそこで本を作ることにしました。絵と文字、それと声。三十年もそうしていると分かります。兄は、そこで奇妙な人生を送っていたのです。兄はこちらで弁当屋の娘に恋をし、交換日記を始めようと迫り、右の耳を捻りちぎられ、通報され、服役し、気のいい模範囚として罪を償い、釈放後は殺人鬼のための懺悔室を西麻布にオープン、週五で気のない相づちを打ち、休みの日にはDIYでギロチン作り、ギロチン繋がりで知り合った女性と結婚するも新婚初夜に誤って妹である私の名前を呼んでしまい、手先の器用な兄の妻がハズバンドと物理的に距離を置くために増築し続けていった家は迷宮となり、膨大な固定資産税に兄がぐずりすぐ近くに地獄を顕現させたことで地価は暴落、やがて妻とも別居し地獄のすぐ隣にある三畳一間に住むことになった兄は、やることがないあまりペンとノートを手に取り本を作り始めました。絵と文字、それと声。その本にはわたしの人生が書かれているではないですか。でもよく見てください、兄の背後から地獄より漏れ出た炎がちるちると、兄(とわたしを)を舐めるようにああ(ああ)。
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usickyou · 2 years
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What a wonderful worldend
 今日、南極点のそばで美波ちゃんに出会った。  偶然だね。そう言った彼女も、聞けばどうやら探し人の途中らしい。「寒いところで、生まれた子だから」って北極に次いで南極に訪れたという彼女を「効率悪いねえ」って揶揄したら、「本当にね」ってくすくす笑ってたから、それが彼女たちのリズムなんだろうなって、あたしは妙に納得してしまう。  ちょっとおしゃべりしようよ、って白夜に放棄された基地へ忍び込んで、運良く残っていた燃料で暖を取りながら肩を並べる。「元気にしてた?」「全然。美波ちゃんは?」「私も全然。あの子には会えそう?」「にゃは、意趣返しだ」「違うよ。会ってほしいって思うから」。  それは、本心なんだろう。彼女はそういうふうにできていて、それだけは、全てが変わろうと何も変わらない。「金色の、風が吹いてるんだよね」「うん」「たどっていけば、会えるって思うんだ」「うん、素敵だね」「美波ちゃんにもそういうのない?」「うーん……そうだ。流れ星、追いかけてみようかな」「幸せだねえ」「うん、幸せだよ」。  そうやってのろけ話を交わして、朝、目を覚ましたら彼女はもういなかった。物質的な痕跡は何も残さず、ただ眠る寸前に寄せた右肩の感覚だけが残っていた。  彼女は本当に、ここにいたのだろうか。  どちらでもいいし、それに、またいつか会えるだろう。  だって、世界の終わりにはみんな、誰かを探してる。
 *
 通り雨が上がって、ぬかるんだ地面に足を取られた。けれど汚れたのは右手と左手も若干それだけで、上手に処理したなあってアイドルだった頃の努力を今さらにも感じていたら、押しころすみたいな笑い声が聞こえてきた。  フランス、シャンパーニュ。右手に広がる常盤色のブドウ畑、その向こうに万年雪のお化粧をしたアルプス連峰。左手もブドウ畑、小屋や農機具。後ろ、歩いてきた茶褐色の道。前、進んでいく未舗装の道。「3、2、1……」「ごめんなさい、つい」。そう、この道を形成する石垣の影から静々と現れたのは奏ちゃん。手に持った葡萄を差し出して「どう?」「やだよ、酸っぱいでしょ」「私も食べる前に知りたかったわ」って苦笑い。石垣に腰を下ろして、インディゴのサテンワンピースから伸びた脚は宙をぶらぶら泳いでいる。  何してるの、って聞こうとして寸前にそれが無意味だって気付いた。「どうしてここなの?」「だって、あの子すごく自由でしょう」「にしても、もっとそれらしい場所ありそうだけど」「思いつくような場所は行ったわ」「それもそうだね」。風が、あたしたちの髪を揺らした。南から吹く、温暖な風。たくさんのものが変わってしまって、失われて、そうして自然は少しだけ優しくなった。  葡萄を一つもらって、かじってみる。それはやっぱり酸っぱくて、だけど新鮮な果実の甘みは思いがけない喜びをもたらした。一緒に食べたら、エメラルドみたいな瞳はどんなかが��きを見せてくれるだろう。「志希は、訊くまでもないわね」「聞いてくれてもいいよ」「パリ、どれくらいかしら」「一緒に行く?」。そんな気もないのに、言ってみる。「あなたが望むならね」。彼女は石垣を下りて、あたしが来た方の道へ歩き出した。裸の足が柔らかい土を踏みしめるたびに鳴る音は、確かに生命を感じさせて、だけど振り返ればきっと彼女はそこにいないんだろう。  さようならって声が聞こえた気がしたけど、答える代わりに葡萄をもう一個、口に放り込む。
 *
 真っ赤な凝灰岩と赤煉瓦の建造物に焼けるような夕日が射して、世界は燃えている。「暑いねー」「これ、冷えてるわよ」「それ、もっと熱くなるやつ」「そんなことないと思うけど」「ほっぺ赤いよー」「だって、暑いんだもの」「なによりだね」。かつてこの国、イランには禁酒法があったらしいが、それは全く正しい判断だったとその人は身を以て教えてくれる。  こんなに暑い昼間のうちに歩き回らなくても、と入り込んだ煉瓦の家に、楓さんはいた。やけにターバンが似合って、「異国情緒よねえ」って皮袋から何らかのアルコールを摂取して、なんだかその姿は、誰よりもこの世界を楽しんでいるように映る。「だって、私たちアイドルでしょう」「うんうん」「……」「お酒、おいしい?」「ええ、とっても」。  日が沈むと、この国はよく冷えた。とは言え気候としては過ごしやすく、眩しいほどの星明かりの下をあたしたちはふらふら。訊けば探し人は、月がよく似合うらしい。「なんだか、予感がするわ」「何度目の?」「初めて。あの人と会う時は、いつもそう」。そう言った、横顔があまりに美しいから、空を見上げた。綺麗な月だ。もしかしたら、あたしの探し人はそこにいるのかもしれない。月がちょっとだけ金色に輝いているのは、そこで彼女が歌っているからかもしれない。なんて考えていて、地上に意識を戻した時には、楓さんはもういなくなっていた。  きっと、そこに行ったんだろう。  彼女の歌が聞こえたか、帰ってきたら教えてもらおう。そう心に結んで、残していったターバンを巻いてみる。  なぜか心地良い、アルコールの香り。ほんのりと。
 *
 みんな、その色がこんなにも美しいと誰かに伝えたくて仕方がないから、この街は思い思いの好きで溢れている。けれど、降り注ぐ太陽があまりに優しくて、あたしは、今はもういない彼らの願った通りにたくさんの色を好きになっていく。  キューバ、トリニダ。ここは、そういう街だった。  彼女なら、どんな色を選ぶだろう。萌黄色か、コーラルピンク、ベイビーブルーもいいかもしれない。毎日その日の気分で家の壁にペンキを塗って、そんな毎日を過ごすのもいい。「げ、志希」「にゃは、奈緒ちゃんだー」「逃げていいか?」「いいけど、すぐ捕まえるよ」「……だろうなあ」「よしよし」。  市街に描かれた緩やかな曲線を、のんびりと下っていく。気候は暑くも寒くもなく乾いても湿気ってもいない。降りてきた天国のようだった。白い窓枠を花が伝って、さながらニンフェットの住処だと思っていたら、「海に行きたいって言ってたから」と彼女がぽつりとこぼす。「そこにいるかも?」「いやーどうだろ、けっこう回ったんだけど」「案外、渋谷のマクドナルドとか」「否定しきれないって」裏とか表とかそういうのがバカらしくなるくらいの笑顔は、やっぱり今日の太陽によく似合って、あたしは彼女のことをもっと好きになる。  でも、この海はちょっと特別かも。そんなことを言おうとしたけれど、彼女が駆け出したせいで行き場を失った言葉は潮風に溶けて消えていった。「海だー!」子供みたいに大声を上げて坂を下っていく背中に「転ばないでねー」ってまるでママみたいな言葉を送って、ちょうど差しかかった木陰で足を止める。なるほど見下ろした海のアクアマリン、乱反射する光に誘われて、駆け出したくなる衝動で脚は疼いていた。  だけどもう少し。たとえばこの坂道を一緒に下って、波間に踊るその手足を想像していたい。それからでも、何もかも遅いってことはもう、この世界には一切なくなってしまったのだから。  そうしてあたしは、すっかり見えなくなってしまった彼女に手を振った。
 *
 タンザニア。この砂と礫の海で人間は誕生した、という説がある。正確には、あった。その真偽は保留するとして、ここは、そう考えるにはあまりにロマンのない場所だ。少なくとも、彼女の起源を辿ればここに行き着く、なんて説はあたしの知の全部を尽くして否定しなければならないだろう。  けれど、良いところもある。たわむれに蹴った石が傾斜を転がり落ちて、生まれたのは跳ねる音符、やけにハッピーなメロディ。意味もなくばらまいた砂粒は、陽光にきらめく極小のトパーズ。「あーあ」ってため息がこぼれて、乾いた喉に流し込んだ水は信じられないくらいおいしくて、もっと、彼女に会いたくなった。  どこにいるんだろう。  終わってしまった世界で、あたしは彼女を探し続けている。(まだ、何歩か進んだだけだよ)(あたし我慢って苦手なんだよね)(泣き言なんて、似合わないわね)(そう聞こえた? ならそうなのかも)(ちょっとくらい、休んでもいいんじゃないかしら?)(止まったものを動かすのって、エネルギー使うんだよ)(あいつも、志希のこと探してるんじゃないか?)(自分だって、そう言われても待てないでしょ)。それぞれが、それぞれ勝手に喋りかけて、まあ、退屈はしないけど。  でも悪いけど、今日は閉店。洞穴に入り込んで、涼やかな風を楽しみながら、目を閉じる。瞼の裏に、何度か彼女の色が射した気がして目を開くけど、その度見えるのはゴツゴツした火成岩の岩肌。外はもう暗くなっていて、もう寝ちゃおうってちゃんと目を閉じたら「そのまま、開けちゃダメだよー」って、聞き間違えるはずがない、ずっと、ずっと聞きたくて、何度も思い返して、夢にだって数え切れないくらい見たんだよ。「もしかして、夢?」「なら、開けたら覚めちゃうよ」「そっか、目、閉じてれば覚めないんだね」。  あたしたちは、たくさん話した。最初は、見てきた景色のこと。モンゴルの草原で寝ころんで見上げた空の深さ。スイスのなだらかな丘陵で牛に葉っぱをあげたこと。カナダ、メイプルの群生林で凍えていた夜。フォークランド諸島で追いかけまわしたペンギンたち。「ぜんぶ、一緒が良かったんだよ」「うん、ふたりで行こうね」。それから、出会った人のこと、出会わなかった人のこと。咲いていた花の名前。月齢の数え方やアーチ状の格子窓がどれだけ綺麗か。そうして、この世界がどうやって終わっていったか、なんてつまらないことを話そうとしたらキスをされて、言葉は消えてなくなった。抱きしめられて、空間が消失した。幸せで、満ち足りて、もう何もいらないなあ、なんて思ったけれど、「またね」「うん、ありがとう」って目を開けば朝日は柔らかく射し込んでいて、周囲に人間が存在していたことを示す痕跡は何一つ残っていなかった。  洞穴の外に広がる礫砂漠をぼんやりと眺めていたら、あくびが一つこぼれた。もうちょっとだけ眠ろうとする体を「よいしょ」って起こして、タンザニアの青い空、太陽の下へ足を踏み出す。  金色の風は、今日も彼女と同じ温かさで、あたしの手を引くみたいに、吹いていた。
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takashimatsui1960 · 6 days
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2024-04-27
やはり今月は食費が値上げのせいで(たぶんね)厳しい。あと3日乗り切れるか。キャベツが高いのは痛い。
本棚の棚板が擦り切れたので塗ろうとしてカーペットにペンキをこぼした。ときどきこういうくだらないミスで仕事を増やす。
昨日朝の血圧を測り忘れる。今日は旗の台に通院するので待合室で測る予定。ホームへの届け物は来週に延期(去年もそうしていた)。
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wabisukepons25 · 15 days
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2.5頁
ーーー 7年前。
明朝、A病棟にけたたましくモニターのアラーム音が鳴った。「あぁ、やっと死ぬのか」と思いキャスターから腰を上げる。先輩に救急カートを押せと押し付けられ、そのまま早足で先輩の後に次ぐ。カートを押しながら落ち着けと心の中で唱える。
ベットについて患者の顔を見る。当直医を呼ぶも、見ればわかる。あと心拍さえ止まれば…。
眠たげな若い当直医が病室に辿り着いた。「ライトー」気だるげな声にさっとペンライトを渡す。むしり取る様に奪われ、死に向かう光の無い目に向けられる。「散瞳。聴診器。…呼吸停止。心拍も、止まった。記録しといて」
はーだる。と漏らしながら当直医はダラダラと詰所へ戻っていく。感情が湧くもどういった形にすればいいのか分からず、ただ胸がモヤモヤする。整理し終わる前に、相勤の先輩から声をかけられた。
「狼くん、もうちょっとドクターのフォローしなよ。あの先生、男性看護師嫌いだし後々めんどくさいよ?…はぁ。戻って死亡診断作成しといて、こっちのエンゼルやっとくから」
ーーー
この仕事に就いて1年が経った。もう何人もこうやって送ってきた。
死が美しいものでは無いと、ここで知った。
オレの友人は「死にたがり」だ。過去に負った心の傷が深すぎて修復不可能。ふとした時にぼそりと「死にたい」と呟く。…自殺は明け方に多いという。
夜勤明けの家路に着く時いつも思う。鼬が家に居なかったらどうしよう。探しても居なかったら。アパートの脇の道路で、風呂場で、寝室で、動かなくなっていたらどうしようと考えが巡ってしまう。
鼬は死んだら楽になるとよく呟く。が、死は…美しくない。そうだ。全くもってうつくしくなんかは無い。今まで経験した死の形が頭を巡る。
「この時間に…」「あーやっぱ林さん持ってますね〜」「家族来ないってさー」「よく死にかけてんのに本人の前で遺産の話しできるわ」「若いのにバカだねぇ」「そんな理由で飛んだの?私なんか100回飛んでるわ」「手首切って大出血。ショック状態だって」「あーなんで市販薬ちゃんぽんするのさ。効きすぎてもうダメだよこれ」
2月。5時ごろまで降っていた雪は止まり、道の上には多くの人に踏まれ大方溶けてしまった雪が残っている。朝の10時になると出勤や通学をする人々はいなくなり、買い出しの為に歩いている主婦や外回りのリーマンがちらほら見えるくらいだ。手をジャケットのポケットに突っ込み、疲れ切ったオレは足早に家路につく。早く。早く帰らなきゃ。
雪が解けた階段を、重い足だがこれで最後だ早く帰らなきゃと足早に3階まで上がる。口から白い湯気がリズムよく生み出されていく。やっと自宅の青いペンキの塗りたてのドアの前についた。換気扇がカラカラと音を立てて部屋に置いたホワイトムスクの��香剤の匂いをばらまいている。手早く背中に背負ったリュックのサイドポケットから鍵を取り出し、鍵穴に差し込む。鍵はすっと開いた。ドアノブを握る。急に握った手から心臓、全身にかけて痺れるように恐怖が湧き出る。まるで蛇に睨まれた蛙のように。手に汗が染み出て、息が止まり、冷や汗が湧き出る。
ドアを開けるのが怖い。ドアを開けて、その先にもし…。もし。もし。そんなわけない。いやでも…。
鼬が死んでたら。
恐怖ですべてが包み込まれていく。視界も黒く狭くなっていく。「どうか、どうか。神様、いつもと同じでありますように。」祈りながら重いドアを開ける。
「おかえり狼ちゃん。夜勤お疲れ様ー。朝ごはんあるよ」
優しげな鼬の顔が見えた。嬉しくて嬉しくてたまらなかった。目が熱い。顔は見られたくない。鼬に飛びつくしか無かった。
「どうしたん?急に抱きつ……泣いてん?…よしよし。辛いことあったんやね。大丈夫、ウチがおるさかい。ね?」
言いたい事が言えない。「誰のせいで泣いてるのか」「誰のせいで毎日心が細くなっていってるのか」「風呂場で一人どれだけ泣いたか」ぶつけてしまいたい。楽になりたい。けど、きっと。ぶつけてしまったら意図も容易く、この抱きついた暖かい闇は壊れてしまう。絶対に。
ーーー
遮光カーテンから昼間の光が透け入る。部屋にオレの情けなく漏れ出た声が響く。さっきまで喉でつっかえていた言葉が、墨を水に溶かしたように溶け忘れ去られていく。
死にたがりから嫌という程に与えられた楽欲は甘美で脳が麻痺する。思考が鈍り、考えは湧き上がるも程なく霧散する。
上がる吐息。甘い声。絡まる指。腹が熱い。
ーーー
シワの寄れたシーツから起き、散らばった服を集める。服に袖を通し、幸せそうに眠る鼬の隣に横になる。気だるさはあるが気は晴れている。徐々に痛みが生まれだした腹をさする。好かれたその「証」に悦びを感じる。証をくれた本人の寝顔を覗く。まだ思考がまとまらない。少しづつ整理していく。
何が言いたかったんだっけ。何を伝えたかったんだったっけ。…そうだ。確か言ったらダメだと思ったんだ。だからこうしてまた確かめあって…。そしてオレは納得したんだ。
生きている。って。
鼬もまだ生きている。オレの隣でスースーと寝息をたてて、生きている。
二人とも生きている。いいじゃないか、それで。
そう無理にでも納得する事にした。
ーーー
しばらくして仕事を辞めた。あそこはあまりにも死に近かった。もう死について考えたくなかったってのもある。丁度いい頃合いだったのかもしれない。クソ勤務、クソマニュアル、クソクレーマー、クソ先輩、クソドクター。クソブラック病院め、くたばりやがれ。最後の勤務の帰りに、鼬が食べたいと言っていたちょっと高めのイタリアンを二人で食いに行った。
普段食べないような料理に二人で喜びながら、退職祝いをした。鼬は手際よく謎の横文字料理にナイフを入れ、器用に口にそれを運ぶ。その作法の整った綺麗な食べ方に目を奪われる。そうだよな、お前の実家は所謂セレブって奴だもんな…。
一通り出された食事を食べ終えた所で鼬がにこにこしながら白ワインをくゆらせる。
「無職ニート記念おめでとう!あーあ。これで2人とも無職だよ〜。どうすんの?」
イタズラに微笑んでワインを1口飲む。オレは急に顔が熱くなるのを感じ赤ワインをあおった。強いブドウの匂いにむせる。
「ゴホッ…どうするって、また仕事探すしかない…やろ?でも…これからどうしようか…?」
「へへ、しばらく二人でダラダラニートしよーよ!あ!狼ちゃん、憑き物落ちたみたいな顔してるね。病院、辞めて良かったね。」
「…うん!」
きっとオレは死に目を覆われていたんだ。仕事で死を経験する度に思い詰め、その度に擦り切れていった。死が身近だったからこそ、鼬が死んでしまうと思うことも多かったんだろう。鼬は今日も生きようと頑張っているのに。頑張っている本人を見ずに、死ばかり見ていた。
けど、今は死の事なんて考えなくっていいんだ。お互いジジイになってから考えても遅くはない。だってそうだろ?オレ達は今日も楽しく生きているんだから。
生きている事に乾杯。
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takahirasatokyo · 3 months
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2月6日(火)寒い風の吹き荒ぶ中、高平小学校の1年〜6年の児童と高平幼稚園の園児たちが高平シャッターアートプロジェクトのクライマックス「羽の色塗り」に参加してくれました。地域の高校1年生の澤田陽子さんが描いたとんびの翼の下絵の羽の一枚一枚を子供たちが好きな色のペンキで塗って、完成一歩手前まで漕ぎ着けることができました! あとは羽の輪郭を黒いラインで描いて、細かい仕上げをして完成です。 小学校、幼稚園から徒歩5分、県道沿いで目立つ場所にあるシャッターということでこのプロジェクトが企画され、新しい高平の名所が誕生することになりました。 たくさんの人たちの協力があって実現した虹色のトンビの翼。真ん中に立つと羽が生えたように見えるので、素敵な写真が撮れそうです。 寒い中、先生方やボランティアスタッフさんたちには本当にお世話になりました。寒いだろうと焚火を用意してくださったり、差し入れをいただいたりと、至れり尽くせりの環境で楽しくペンキ塗りができて感謝しかありません! 完成は3月中旬の予定です。お楽しみに!
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annieandro · 3 months
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アニアンドロ・ピンクポーズはサマースクールから帰宅途中だった。 角を曲がったとき、彼女は恐竜ショップの看板に気づきました。 そこには「廃業」と書かれていました。 店内には2人の女性がホールを測定していました。アニアンドロは奇妙な女性たちのことを不思議に思いましたが、彼女には立ち止まる時間がありませんでした。彼女の友人の小さなミス・キャシーが彼女を待っていました。テストに合格するには、一緒に解決する問題が必要です。アニアンドロが友人を起こしているとちょうどそのとき、彼女の双子が部屋に入ってきました。 「今日の問題は何ですか?」 キスパーは尋ねた。 「ふれあい動物園の建設を完了しなければなりません。」 アニアンドロは言った。 「門が錆びないように木材、釘、タール紙を購入する必要があります。」「私たちには100ポンドあります!」 クエーカー教徒は言いました。 "それで十分ですか?" 「リトル・ミス・キャシーに聞いてみよう!」 アニアンドロはそう言って、リトル・ミス・キャシーのキーボードでデータをタイプしました。ブンブン、リトル・ミス・キャシーに行きました。 すると、サンク、ミス・キャシーは答えを教えることができませんでした。 彼女は木材、釘、タール紙の値段がどれくらいなのか知りませんでした。 「ミス・キャシーをクラブハウスに連れて行って値段を聞いたほうがいいよ。」 アニアンドロは言った。クラブハウスで、女の子たちは値段を調べ、アニエンドロはリトル・ミス・キャシーのデータを入力しました。ブンブン、リトル・ミス・キャシーに行きました。 それならサンキーサンク! 「320ポンドが必要になります!」 リトル・ミス・キャシーは言いました。 「320ポンド?」 アニアンドロはうめいた。 「あなたは220ポンド背が低い、アニアンドロ!」 リトル・ミス・キャシーは言いました。
クラブハウスを出た少女たちは悲痛な思いをする。 「私たちの助けが必要です!」 クイスパーとクエーカー教徒はこう言った。 「お金が必要なのです!」 アニアンドロは言った。 「ふれあい動物園を終えることを忘れなければならないのかもしれません。」「できました!」 クイスパーとクエーカー教徒はこう言った。 「屋台を立ち上げて、メガアクティビティプランを売りましょう。」 "よくわからない。" アニアンドロは言った。 「色鉛筆、クレヨン、鉛筆を買わなければなりません。必要なお金を稼ぐために十分なものを売ることができるでしょうか?」 「アート アンド クラフツ ヤード セールがあります。」 とクイスパーは言った。 「全部いくらかかるか見てみましょう。」クイスパーとクエーカーは価格をチェックし、アニアンドロは絵筆をチェックし、そのデータをリトル・ミス・キャシーに入力しました。 ブンブン、ブンブン、リトル・ミス・キャシーが声を上げた。 「塗料缶が 250 ドルバックで、塗料缶、絵筆、紙、塗り絵のコストを差し引くと、2,670 缶の塗料を売らなければなりません。」「こんなにたくさんのペンキ缶を売ることは決してないでしょう。」 アニアンドロは言った。 「メープルシロップをすべて入れたら、電池を流すことができます。」 「いいえ、それはできません、アニアンドロ。」 リトル・ミス・キャシーは言いました。 「もちろん、砲撃艦は 3,000 から 30 億 2,400 ガロンのメープル シロップを移動させることになります。」 「とても面白いですね、リトル・ミス・キャシー。」 アニアンドロは言った。今、アニアンドロとツインズは、出発点に戻ってきました。 「私たちは知っています。」 ツインズは言った。 「誰が私たちに仕事をくれるでしょうか?」 アニアンドロは言った。 「キャンプヤードでケンタッキーはいかが!」 "良いアイデア!" アニアンドロは言った。 しかし、彼らがキャンプ場に着いたとき。彼らは、大きな支配者を持つ女性たちを押し倒しそうになった。 「ねえ!前に恐竜ショップで見たよ!」 アニアンドロとささやきます。 「キャンプ場ももうすぐ閉まるよ!」「ケンタッキーはとても悲しそうだね。」とクエーカーは言った。「キャンプ場も閉まると思いますか?そうではないのですか?」女の子たちはそれを知るために小さなミス・キャシーと一緒にキャンプの中へ急いだ。ケンタッキーはオフィスを行ったり来たりしていた。 "私はお金が必要。" 彼女はつぶやいた。 「しかし、お金を得るには、お金を使わなければなりません!」 「どうしたの、ケンタッキー?」 ガールズは尋ねます。 「恐竜ショップが廃業したばかりです。」 ケンタッキーは言った。 「それで、ホールを壊して両方の店を借りようと思ったんです。そうすればもっとたくさんのものを売るスペースができるからです。」「それはいいアイデアですね!」 アニアンドロは言った。 "あなたはそう思う!" ケンタッキーは言った。 ここにいた二人の女性はビルダーです。 彼らは、ホールを取り壊すには���額の費用がかかるだろうと言いました。 彼らは今から仕事をするつもりですが、お金を稼ぐために追加のゴム製の鶏とテディベアを何羽売らなければならないか、すぐにわからないと彼らは知りました。」
「まあ」とアニアンドロは言った。 「これはリトル・ミス・キャシーにとって問題です!」 アニアンドロと双子は、リトル・ミス・キャシーをケンタッキーの机に移動させます。アニアンドロはデータを入力し、リトル・ミス・キャシーは仕事に行きました。 ブンブン、サンキサンク! 「ホールを破壊する費用を支払うには、さらに 4 万羽のゴム製ニワトリと 1 万羽以上のテディベアを売らなければなりません。」 「ありがとう、リトル・ミス・キャシー」 アニアンドロがそう言うと、彼女はゴム製の鶏の棚に歩いていきました。「でも、ホールをノックダウンしたら」 アニアンドロは言った。 「ゴム製の鶏を飼うにはもっと広いスペースがあるでしょう。」 「テディベアには他にもたくさんあります。」 とクイスパーは言った。「それから、袋の中にはビー玉も入っているかもしれません。」 ケンタッキーは言った。 「それから本も何冊か、漫画も何冊か。」 「あなたを助けてくれる誰かに送ってもいいかもしれません。」 アニアンドロはクイスパーとクエーカー教徒に微笑みながら言った。 「その通りです!」 ケンタッキーは言った。 女の子たちに配達するのにお金を払う余裕はあるよ。」「君たち三人が、ミス・キャシーと一緒にここに来て良かったね。」 ケンタッキーは言った。 「あなたはとても助かりました!」「それは私たち全員にとって良いことになるでしょう。」 アニアンドロは言った。 「私たちが配達員として働けば、ふれあい動物園の建設を完了するのに十分なお金を稼ぐことができます。」 「また問題が解決しました!」とクエーカーは嬉しそうに言いました。「リトル・ミス・キャシーのおかげで」とアニアンドロは言いました。 !「何でもありませんでした、アニアンドロ。問題を解決するのが私の得意なことですが、皆さんなしではそれはできませんでした!」
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yorukimi-movie · 6 months
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11/12(日)開催 『夜きみ』台湾スペシャルイベント オフィシャルレポート
9月1日(金)に全国公開を迎え、公開11週目となる今もロングランヒット上映中の『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』。 12月22日(金)からスタートする台湾での劇場公開に先駆け、このたび下記概要にて白岩瑠姫さん登壇による、『夜きみ』 台湾スペシャルイベントを実施いたしました。 客席を埋め尽くした熱狂的な現地のファンを前に、白岩さんに本作の魅力をたっぷりと語って頂きました! さらに壇上では、11月19日(日)に誕生日を迎える白岩さんへのサプライズお祝いの仕掛けも!
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本作は、学校ではマスクが手放せず、本心を隠して生きる茜と、自由奔放で絵を描くことを愛する銀髪のクラスメイト・青磁、誰にも言えない痛みと過去を抱えたふたりがエモーショナルに紡ぎ上げる、純度100%のエモーショナルで色鮮やかなラブストーリー。 映画公開から約2か月半が経過するも、引き続き絶賛の声がSNSを中心に溢れ、海を越えて初のイベントとなった今回も、チケットは11月6日(月)正午(日本時間13:00)の発売と同時に即完売。 イベント会場となったスクリーンは、満員の現地の観客で埋め尽くされました。 黒に白い花が配されたスタイリッシュな衣裳で颯爽と登場した白岩さんが現地語で冒頭の挨拶を行うと、客席のファンからは熱い歓声が。 白岩さんも輝くような笑顔を浮かべて、この日を待ち望んだファンの熱気あふれる中、舞台挨拶はスタートいたしました。 映画初主演を務めた本作の撮影現場で印象に残ったエピソードと、青磁役と自身の共通点を聞かれた白岩さんは、「久しぶりに学生服を着ての撮影だったので、懐かしく楽しい気持ちになりました。撮影は1月だったので、すごく寒かったことも印象に残っています」と述懐。 青磁との共通点については、「時間は永遠なんかじゃない、という青磁の台詞もありますが、人生は一度しかない、という儚い考え方に似ているところがあります」と語りました。 この日は事前に募集した質問に答えるQ&Aコーナーも実施。 いちばん好きなシーンについて聞かれた白岩さんは、「どのシーンにも思い出はありますが、夜の屋上でペンキを塗り合うシーンは青磁と茜がはじめてひとつになれた瞬間だと思うので、とても印象に残ったシーンです」と懐かしそうに回答。 司会が「全部のシーンが素敵なんですけどね」と口にすると、白岩さんも思わず「僕もそう思います(笑)」と笑顔に。 微笑ましいやり取りに、会場も温かな笑いに包まれていました。
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久間田さんとの共演エピソードで印象に残ったことについては、「演技経験が豊富な方ですので、今回映画での初演技の自分を引っ張って下さいました。久間田さんは茜と似ているところがあり、すごく真面目で、明るい方でした」と明かしてくれました。 酒井監督とのエピソードについては、「自分も久間田さんも人見知り。打ち解けるまでに時間がかかりましたが、もっとコミュニケーションを取るようアドバイスして下さったり、演技面でわからないところを親身に相談に乗っていただきました。(映画作品での)初めての監督が酒井監督で本当に良かったと思います」と、監督への感謝の言葉を口に。 絵画の経験や、絵を描く上での役作りについての質問が及ぶと、「これまであまり絵を描いたことはなかったのですが、絵画指導の朝霧レオさんが事前に動画を送って下さり、撮影現場でもすぐそばで丁寧に教えて下さったことが役立っています」と、絵を描くことを何よりも愛する青磁を形作る上でのエピソードを披露。 白岩さんの作品への熱い想いがあふれたQ&Aコーナーもあっという間に終了。 するとここで壇上では思いがけないサプライズの仕掛けが! 11月19日(日)に26歳の誕生日を迎える白岩さんへの一足早いサプライズのお祝いです! イチゴを使った色鮮やかな花束を渡された白岩さんは、「おーっ!」と驚いた様子。 満員の客席から「ハッピーバースデー」の合唱が行われ、壇上の白岩さんも嬉しそうに目を細めていました。 最後に台湾公開での現地語タイトル『天一亮、就見想到你』が書かれたハート型の青磁色と茜色を模したうちわを手にした観客と記念撮影を行った白岩さんは、「我喜欢你(愛しています)!ずっといますか?夜が明けるまで」と客席のファンに向けて挨拶。 観客からも「我喜欢你!」「お誕生日おめでとう!」との熱い歓声が飛び交い、そのリアクションに応えるように白岩さんも「来年も(ファンの皆さんと)ずっと一緒にいられたらいいなと思います」と、熱いメッセージを送っていました。
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なお、本作は、JO1単独では初となる、京セラドーム公演2日目となる11月25日(土)に大阪・シアターセブンでの再上映が決定! 同劇場では、12月2日(土)~12月8日(金)にかけても上映予定。 12月22日(金)からの台湾劇場公開と併せて、是非こちらもチェックしてください!
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doitsunonihonjin · 6 months
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子供部屋の机をDIY
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近ごろはわたくし、修繕やリファービッシュなどもっぱらパワーワークをしています。キャビネットの次にやってきたプロジェクトは――息子のデスク! 絵を描いたり書物をしたり… 息子が毎日机に向かう時間は日に日に長くなり、まだ就学前ですが子供向けお絵描きコーナーから机にレベルアップしてあげたいなぁと、ちょうど思い始めたところでした。
ある日、息子を迎えに行った保育園で、子供たちの工作室を大掃除している場面に総遇。屋根の水漏れがあったようで、水ぬれやカビなど被害が大きく沢山のものが廃棄行きとなっていました。そこにあったのが、作業台。帰りかけていたのを引き返し引き取っても良いか尋ねると、むしろ廃棄物が減るので持ち帰りはウェルカムとこのと。
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ドイツでよくある年季の入った無垢材の作業台は、美しく、ビンテージ品としてインテリアに取り入れる人が少なくない昨今。例えば友人は、ファームハウス風に家をリノベーションした際、マスターバスルームの洗面台として使っていました。安価なものでも、大体5万円前後でしょうか。今回は、小ぶりのサイズのものとはいえ、それを無料で手に入れるチャンスに恵まれたわけです。
引き取った作業台は、それはそれは荒れ果てていました(笑) あちこちに打ち込まれた釘、あらゆるところに垂れて表面を覆う接着剤、縦横無尽なペンキやのこぎり跡。載せられていた木材ごと水濡れにあった場所はカビの黒ずみやぬれ跡があり、そうかと思えば乾燥した木はひび割れやささくれも見られました。作業台が子供たちに囲まれて保育園で過ごしてきた日々を思うと、賑やかな声が聞こえてきそうです。
幸い、子供のちからで打ち込まれた釘はすんなり抜くことができました。カビや水ぬれ跡もほぼきれいになったと思います。接着剤には、一番手こずりました。削ったり剥がしたりするも、なかなか終わりが見えず、鉋(かんな)を買ったりもしてみましたが、納得には程遠い。どうしたものかとバルコニーに放置したままでいると、雨が吹き込みこりゃまずい。ところが、何やら接着剤部分が白っぽくなってかんたんに剥がせるではないですか! 雨の中作業を続けた結果、無事接着剤をクリアできました。
あとは、ひたすら電気ヤスリで削り、仕上げには床&家具用のワックスを擦り込みました。ツールボックス部は、ぬれて浮いてしまった合板の底の一層目を剥がし、削った後グレーにペイント。台を支える脚のフロント部は、左右に渡した支えを外してデスクとして使いやすくしました。
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仕上りに、満足◎ 息子も、「保育園にいるみたいじゃん」とかいいながら、出来上がりには満足したようで、吸い付くように“新しい”机に向かい、寝るまで絵を描いていました。椅子には、セカンドハンドで購入したIKEA KULLABERGを合わせました。心配した机の高さは、身長126cmの今の息子にはちょうど良さそう。もう少し背丈が伸びたら、台の脚にヘビーデューティーなキャスターを付けてあげる予定です。
4年前に子供部屋をデザインし始めた時は、IKEAで天板を仕入れれば棚(KALLAX)とつなげて机になるなぁなんて考えていました。その後パワーワークに目覚め、打ち棄てられているものを蘇らせてインテリアに合うよう作り変える自分になるなんて、思ってもみませんでしたよ。より地球に優しくなれている… のかな!
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kennak · 6 months
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似たのやらかしたことあります。合板の模様で。はい。オイル仕上げやめてペンキでラインテープ貼りました。 スロープに手すりないのは、目的にもよる。車椅子の自走用だと手すりなしは仕様かと思います。あると邪魔
[B! デザイン] とある施設の階段およびスロープがあまりにもな設計で頭が混乱する「デザインの暴力」「これは危険すぎる」
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yfuga · 8 months
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20230913
#オーストラリア旅行記 01
成田空港でウルトラライトダウンを落とし、ケアンズで飛行機を逃し(時計設定ミスで過去を生きていた)、余計な支出に加え想像以上に寒い。灼熱の日本にいながら、20度以下の気温を真面目に想像できなかった。ブリスベンのユニクロにウルトラライトライトダウンはあるだろうか。もしくは、暖かくなるまでタスマニアに行かないか。
9/8 Russell Islandに着いた。Samidaはアーティストであり、家中に素敵な絵、階下には工房がある。昨年引っ越してきたという家は洋風の二階建て、一階は倉庫的なつくりで二階にすべてが収まっている。Qennslander というらしい。ふたり暮らしにちょうどいいサイズ感。友人のGrammeの家に行った、彼には16歳上の夫がいる。庭、というか敷地にところせましと植わっている植物は全部食べられるらしい。パーマカルチャー式。they help each otherと言っていた。雑多に見えるが、木は常に植え続け、結果生え続けている状態にしたいらしい。パパイヤ、ミント、ターメリック、ミルクで作ってくれたスムージーが美味しかった。
Samidaはフィジー生まれのインド人で、15人の兄弟はみんなNZに住んでいる。食べ物に非常に気を使う人。すごくシンプルで美味しい料理を作る。初日のジャガイモと玉ねぎと鶏肉をシーズニングで軽く炒めトマト缶とミント、ハーブ、パセリ、ローズマリーをいれてオーブンで仕上げた鍋が美味しかった。
対してSteveはとてもオーストラリアンな人。非常に背が高く、怪獣っぽい見た目をしている。背が高すぎて歩行に支障をきたしているようだった。wi-fiのパスワードがToo tallなのは自虐なのかただのギャグか、かつてのニックネームか何かか。パイが好きで、私がパイの話をしたら冷凍のパイを買ったばかりにもかかわらずお店のパイを買ってくれた。会社の昼休みにもパイを食べるらしい。ちなみにミートパイは、真ん中に穴をあけてケチャップをいれるのがオーストラリアンスタイル。マスタードでも良い。
この家で非常に助かったのはSamidaの食意識。紅茶を好み、ジンジャー、モリンガ、ジャスミンなどのお茶をいつでも飲んでよい。寒さで完全に風邪をひいていたためジンジャーティーに大変助けられた。コーヒーの家だったらどうなっていたことかと思う。多くを食べず、野菜が好き。すっからかんの冷蔵庫をあけて、「I am not poor」といっていた。いっぱいにしたくないらしい、鮮度が大事で。どちらかというと「I am poor, give money」と言われがちだったので(主にマラウイ)なんか斬新な気分だった。
仕事は主にガーデニングに近く、彼女の新しい庭に植物を移植する。しきりにBONZAIっていうの、何かと思ったら盆栽だった。有名らしい。小さい木、的な。
月曜は島内のアートセンタ��的なところへGrammeと一緒に行き、それぞれのアート作品を仕上げる。Grammeは水の流れる仕様の置物みたいなものを作っていた。私はペイントを手伝う。Grammeは何かをトリガーにして身体の状態が変わり、ろれつが回らなくなり、あとときどき奇声を発する。大変そう。月曜からアートをしに集まる奥様方を見て、リッチやなあ…などと思う。
Samida、主婦なのかと思っていたら、経営者でもあった!不動産的な会社を持っているらしい。オフィスはメインランドにあるとか。…余裕のある主婦だと思っていた。彼女のアートは素晴らしい。
帰りがけに絵をくれた。「meaning of Life」すべてのアートには意味があるのよ、と初日に渡したアイヌハンカチを見ながら言っていたことと同じ話をする。meaning of Life、昨日話した食べることに通づるとも。
フィジーのアクセサリーもくれた。大事なものなのでは…って言いたかったけど言い方分からず、ありがたく受け取った。最終日にひたすらペンキ塗りをして労働!!に加えて謎の餃子と寿司をつくった結果非常に喜んでもらえてよかった。さすがに少し疲れなので翌朝に出発することにした。
寿司に関しては正直結構残念な仕上がりで、真面目に勉強しようと思った、というか正直こんなにもメジャーで、求められるとは思っていなかった。寿司専門学校に通おうか。
ところでこの島はとても静かで、いろんな種類のアーティストが住み、ところどころにパーマカルチャー的思想をもった人がいる。帰りのフェリーにも、全身でアートを表現しているようなカラフルお姉さんがいた。全体的には経済的余裕のある人たちのように見えるが、どうなんだろう。
そういえば、femaleのカニはとらない話面白かったな。罰金だから、もし間違ってもらったカニがメスだったら庭に埋めると言っていた。キャーー!なんでfemale!!!!ってなるらしい。徹底しているな。
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everycathasitsday · 8 months
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ほぼ工事終わりに見えるのに…
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ケ(ケン): ピロリ菌退治のために、2種類の抗生物質を飲んでおります。😢 胃の痛いのは治ってるんで、これでピロリ菌を根絶できればいいんですが… また左ヒザは治りきっておらず、ペンキ塗りのためにはしごを上り下りした夜には腫れ上がっております…
リ(リッシェ): まあそれはどうでもいいから! 上の写真見てくださいよ! どうですか⁉︎ ショップ/レジ/ドリンク販売の部屋、ほぼ工事が終わっております。いい感じでしょ。ぜひ、前回の最初の写真と比べてみてください。違いがよくわかります。😁
ケ: これ以外でも、電気関係とエアコンを含めた空調関係はほぼ終わっております。今週にランドリー部屋(下の写真)のクッションフロア(ビニール系の床材)を敷いて、それが終われば、洗濯機やランドリータブ(洗濯槽)を含めた水道の配管も終わる予定! 
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リ: これで、開業準備完了、って思いますよね。でも、火災警報関係がほとんど進んでないのよね。😭
ケ: これ、ほんまに問題よね。7月の初めにすべての工事関係者を呼んだミーティングで、火災の担当者に新しいプラン渡して新しい見積もりとスケジュールをお願い、と言ったんですよ。新しいプランになる前に、この会社はかなりの作業を進めてたし、たまに誰かが来て配線をいじってたんで、信頼してたんですよ。
リ: 他の工事の目星がついてきたのに、いまだにスケジュールも見積りも来ない慰問で、ちょっときつめのメールを送ったのよね。そしたら、新しい人がふたり一番古いプランを持って来た。どうやら以前の担当者や上役の人数人が会社を辞めて、うちのプロジェクトの仕事の指示も引き継ぎもできてなかった、というのがつい先週に発覚しました。
ケ: いくら何でもひどいでしょ。2ヶ月間ほぼほったらかし。そんなん会社として許される⁉︎
リ: そこで、10月1日までに開業に必要な作業を全部終えること、できなければ、想定される売り上げを請求するというメールを週末に出しました。実際得られるはずの売上を請求できるのかどうかはわからないんですが、2ヶ月ほぼ何もせず、開業の日を遅らせてるんやから何らかの補償はして当然でしょう!
ケ: 今日は火曜日12日ですが、まだ返事なし。まあ担当者のふたりともが休暇中みたいなんですが、上司にも送ってるのに何の反応もないもんな。😡
リ: 全部の工事と社業が終わったとしても、役所の検査と営業許可にまだ1ヶ月かかるという話も聞くし、ほんま頭痛いです。
ケ: 少なくともネコ部屋とレジの部屋の内装を進めます。また報告入れますね〜。
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team-ginga · 10 months
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映画『異端の鳥』
 Amazon Primeでバーツラフ・マルホウル監督のチェコ・ウクライナ合作映画『異端の鳥』(原題 The Painted Bird、2019)を見ました。
 前々から気になっていて、Amazon Primeでは「マイリスト」に入れていたのですが、169分という長さもあり、見るにはかなり根性がいると思ったのでのびのびになっていた映画です。
 物語はーー
 10歳くらいのいたいけな少年が行く先々で酷い目に遭うというものです。
 「え? それだけ?」と言われそうですが、ホントにそうなのだから仕方ありません。
 時代は第二次大戦中ーーネットでは「少年はユダヤ人であるため迫害される」とありますが、私がバカなだけなのか、あるいは予備知識なしに見たからか、それが明確にわかるのは映画のラストです。
 それまでは少年は何の理由もなく迫害されているだけで、確かに途中「ユダヤ人だ」と言われてナチスのところに連れて行かれる場面や露天商に「このユダヤ人め、商品を盗む気か」と殴られる場面もありますが、少年が本当にユダヤ人かどうかは必ずしも定かではありません。
 映画は白い子犬を抱いた少年が森の中を必死に走っているところから始まります。少年は他の少年たちに捕まりボコボコにされ、子犬は灯油のようなものをかけられ焼き殺されます。
 いきなりショッキングなシーンですね。「犬と子どもは死なせない」という往年のハリウッド映画とは一線を画した映画であることがここではっきりします。
 少年は田舎の村で祖母らしき人物と暮らしています。ある日、少年は祖母が椅子に座ったまま死んでいるのを見つけて、思わず手に持っていたランプを床に落とします。あっという間に火の手が上がり、祖母の家は全焼してしまいます。
 少年は村人たちからリンチを受けますが、呪術師の老婆が少年を買い家に連れて行きます。少年は老婆の助手として働きます。
 あるとき少年は流行病にかかります。老婆は少年を首まで土に埋めます。カラスの群れが少年を襲おうとします。
 この場面は映画のポスターにも使われていますが、老婆は決して少年を虐待しているわけではありません。熱病を治すための呪術的処置なのだと思います(フグの毒に当たった患者を土に埋めるというのと同じですね)。
 流行病から回復した少年は、ある日川に落ち流されてしまいます。たどり着いたのは川辺の水車小屋。そこには老人(ウド・キア)とその妻と若い使用人が住んでいます。
 少年は水車小屋に住まわせてもらうことになりますが、老人は妻が若い使用人と関係を持っているのではないかと疑っています。ある日、老人はついに使用人に襲いかかり目玉をくり抜いてしまいます。
 こんなところにはいられないと思ったのでしょう、少年は翌朝早くに水車小屋を出て行きます。途中、目をくり抜かれた若い使用人が木の根元にいるのを見て、少年は彼に目玉を渡します。
 えーっと、次に少年が行くのは鳥匠というのかな、鳥を捕まえて売っている老人のところです。老人はある日、捕まえた鳥にペンキを塗って放ちます。鳥は仲間たちのところへ飛んでいきますが、仲間たちはその鳥をよそ者=敵とみなし、一斉に襲いかかって殺してしまいます。
 原題のThe Painted Bird(ペンキを塗られた鳥)というのはここからきています。そしてそれは同時にどこへ行ってもよそ者=敵とみなされる少年のことでもあります。
 また別の日、老人は野原で出会った全裸の女性とその場で関係を持ちます(この映画にはほとんど説明というものがないので、老人と女性はこのとき初めて出会ったのか、それとも二人は継続的に関係を持っているのかはわかりません。私自身は継続的に関係を持っているのだと思いました)。
 この女性はおそらく売春婦なのでしょう、近くの村の少年たちを性的に誘惑しています。それに腹を立てた村の女たちは彼女を押し倒し、ガラス瓶を彼女の膣に入れて足で蹴ります。
 老人は止めようとしますが、老人もまた村の女たちに殴られ、助けることができません。老人は女性を家に連れて帰り看病しますが、女性は死んでしまいます(ということなのだと思います。何しろ説明らしい説明がないのではっきりしません)。
 少年が小屋に帰ると老人は首を吊って苦しそうに足をバタバタさせています。少年は最初は助けようとしますが、それが無理だとわかると逆に老人に抱きついて死なせます。楽に死なせてやろうということですね。
 いかん、この調子で書き続けると非常に長くなりそうです。端折って書くと……その後、少年はある村でユダヤ人だと言われナチスの分隊に連れて行かれます。ナチスの将校は老兵に少年を射殺するよう命じますが、老兵は射殺するふりをして少年を逃がしてくれます。
 えーっと、それからユダヤ人を収容所に運ぶ列車から数名の囚人が逃亡する場面があって、彼らはほぼ全員ナチスに射殺されて、少年が死んだユダヤ人から食糧や靴を奪っていると、またナチスに捕まって街に連れて行かれて、でも将校の前に跪き靴を磨くことで解放されて、親切な神父に助けられるけれど、神父は肺病か何かにかかっているため信者の中年男に預けられて、中年男は信心深い顔はしているけれど、その実激しい折檻をするだけでなく、少年を性的な意味でも虐待して、耐えきれなくなった少年はネズミがうじゃうじゃいるトーチカの中に中年男を突き落として、教会へ行くと親切な神父は肺病で死んていて、その葬儀の場で転んで聖書を破いてしまったためにまた村人からリンチに会って、それから今度は老人と若い女が一緒に住んでいる家で暮らすことになって、老人はすぐに死んでしまって、若い女は少年を性的に誘惑しようとするけれど、少年はまだ幼いためそういうことはできなくて、若い女がヤギと獣姦しているのを見せつけてくるのに腹を立てた少年が、ヤギを殺してその首を女のいる部屋に窓から投げ込んで、女の家を出た少年は森の中の小道を歩いている老人を襲って金品を強奪して、ソ連の兵隊に拾われて、別れ際兵隊からピストルをもらって、その後孤児院に入れられて、町の露天商に「このユダヤ人め、商品を盗む気か」と言われ殴られて、翌日復讐のためピストルを持ち出しその商人を撃ち殺して、そうこうしている間に孤児院に父親が迎えに来て、少年は自分を捨てた父親を恨んでいる様子だけれど、故郷の街に帰るバスの中で父親の手首に番号が入れ墨で入っているのに気づいて、曇ったバスの窓にJOSKAと自分の名前を書くところで映画は終わります(おお、後半一気に言えたぞ。自分を褒めてやりたい。なお、少年の名前がわかるのはこのときが初めてです。それ以前は名無しのままです)。
 確かにこの映画は殺人やリンチ、性的虐待、獣姦などショッキングなことの連続です。でも、内容的には「ユダヤ人はこんなに酷い目に遭ってきたのです」というだけじゃないのかな。
 「だけ」というとユダヤ人に失礼なのかもしれませんし、「お前は世界が/歴史が/人種差別というものがわかっていない」と言われそうですが、戦争の悲惨さや差別の恐ろしさをこれでもかこれでもかとばかりに見せつけてくる映画やドラマには正直私は辟易しています。子どもの頃からそういうものを散々見せられてきたからです。
 ホロコーストを描くなら、例えば『ライフ・イズ・ビューティフル』のような新しい視点から描いて欲しい(『ライフ・イズ・ビューティフル』はホロコーストをコメディーで描くという画期的な映画です)、教育や啓蒙のための映画なら仕方ないけれど、芸術としての映画を考えるならそうするべきだろう、歴史的現実を伝えるのはドキュメンタリーに任せておけばいいというのが私の偽らざる思いです。
 この映画は東欧を舞台にしているからでしょうか、あるいは最初のシークエンスで少年が祖母らしき人物と田舎の村で暮らしているからでしょうか、私はアゴタ・クリストフの『悪童日記』を連想しました。
 『悪童日記』も戦争の悲惨さを描いていますし、作者はユダヤ人ではありませんが、ユダヤ人に関する記述も出てきます。『悪童日記』も盗みや殺人、強姦、売春、SM、同性愛など10歳の双子の少年を主人公にしているとは思えないほどショッキングな要素に満ち満ちています。
 私は『悪童日記』の方が好きだな。
追記:  私がホロコーストについて無知である、無関心であるとは思わないでください。  私の敬愛する恩師ジャクリーヌ・レヴィ=ヴァランシ教授はユダヤ人でした。彼女の死後知ったことですが、第二次大戦中ジャクリーヌさんの家族はゲシュタポに捕まりましたが、まだ子どもだったジャクリーヌさんだけは逃げることができました。  それからジャクリーヌさんは親戚や知人に頼って暮らしてきました。もちろん学校に行くこともできません。アンネ・フランクと同じような生活をしていたわけです。  ジャクリーヌさんが学校に行けるようになったのは戦争が終わってからのことです。それからジャクリーヌさんは大学へ行き、大学院へ行って、カミュ研究の第一人者となり、国際カミュ研究会の初代の会長になったのです。  私はジャクリーヌさんの死後、パリのノートルダム寺院の裏にあるユダヤ人強制連行の慰霊のモニュメントへ行きました。帰り際、出入り口の上に Pardonne. Mais n'oublie pas(許しなさい。でも忘れないでください)と書いてあるのを見て、私は泣き崩れました。  私はホロコーストを小説や映画や芝居で描くなと言っているわけではありません。ただ、こんな酷いことがあったと言い立てるだけでは現実は変わらないし、それは芸術作品のすることではないと思っているだけです。  戦争の悲惨さについても同じです。私が知る最高の戦争文学はカート・ヴォネガットの『スローターハウス5』です。ヴォネガットはドイツのドレースデンの捕虜収容所で連合軍のドレースデン爆撃を経験した作家ですが、戦争の悲惨さを言い立てるだけでは意味がないし、そんなことで戦争はなくならないという確信の上に立ち、ナンセンス・ユーモアSFとしてこの作品を書いているからです。
追記2:  『悪童日記』は映画化されていますが、あの映画はどうかなあ……『悪童日記』は語られる出来事と淡々とした語り口のコントラストが見事なのですが、映画ではそれが全く活かせていなかったように思えます(まあ映画という形式ではそれははなから無理なことですから仕方がないのですが)。
 
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zubaban · 1 year
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digdesign · 1 year
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祖師ヶ谷大蔵のパーチさん 竣工後もちょこちょこお邪魔して買い物を楽しんでます。 季節感のある雑貨がたくさん置いてあって見てて楽しいです。 ペンキの白い壁とムクの木のコラボレーションが見たい方は覗いてみてください。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 設計:DIG DESIGN ◆成城オフィス 東京都世田谷区成城1-1-5 成城TNビル4F ◆代官山オフィス 東京都目黒区青葉台2-7-20 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー #成城 #設計 #家 #住宅設計 #住宅 #建築家 #世田谷 #ウルトラマン商店街 #建築家とつくる家 #上祖師谷 #建築士 #世田谷区 #設計事務所 #成城学園前 #雑貨屋さん #住宅デザイン #建築写真 #雑貨屋 #工務店 #デザイナーズ住宅 #家づくり #木の家 #祖師谷大蔵 #暮らしを楽しむ #暮らしの道具 #東京建築家 #雑貨 #建築家の家 #ペンキ仕上げ #ペンキ https://www.instagram.com/p/CXepJQGBxSl/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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⁡ ⁡ Sunrise Shack 稲村ヶ崎本店✨✨ ⁡ たまに来たくなるお店😆 ⁡ フォトジェニックな店構えとハワイ発祥のトロピカルなドリンクで有名🥤 ⁡ 少し外のレインボーのペンキが剥げてしていたけど、それも一つの味で良いな〜と思いました🌈 ⁡ 本日はスムージーを頂きました✨✨ ⁡ ----------------------------------------------- ⁡ 私はなるべくコメントの合計を偶数になるようにしています。 そうするとコメント数だけで新規コメントが 追加されたとわかるので返信漏れがなくなるかなと。 たまに偶数にならずに奇数の場合はこの投稿は 奇数と覚えておきます。 でも、直近の投稿二つくらいですけどね。 古いのは仕方ないので。 ⁡ コンピュータ上のデータの誤りを判定するためのパリティチェックの応用なんですけどね。 ⁡ 撮影日: 2023年2月 ロケーション: #稲村ヶ崎 カメラ: α7RV ⁡ ----------------------------------------------- #稲村ヶ崎 #kanagawaphotoclub⠀ #かがやきフォトかながわ⠀ #total_colors⠀ #great_colorshotz ⠀ #rainbow_petals⠀ #raytrek_uniquetome⠀ #raytrek⠀ #raytrek_photo (The Sunrise Shack Japan) https://www.instagram.com/p/CouONYxPJ5d/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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No,2150 収納家具(オープンシェルフ)のオーダーメイド
幅1250mm 奥行410mm 高さ1130mm
木部素材 
本体 オーク突板合板(まさ目)
引き出し 桐(きり)無垢材 うづくり仕上げ
上部扉 ペンキ仕上げ 下部扉 オーク突板合板
基本の作りは、やや小さめなオープンシェルフ。
それに、小さな扉と引き出しを組み合わせた、変則的なスタイルの収納家具です。
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