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#頬杖ついて
michikotani · 2 years
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ずっと気になっていたお店。 職場の近くにあるのも知ってたけど、行く機会がなかった… でも、やっと行けた お昼から贅沢過ぎた…🥺 古民家を改装した造りで、 店内は古き良き昭和のかおりが漂って、ノスタルジックな気分になれた #決算後の #頑張ったね💮 #ご褒美ランチ #そう思うことにします #のすたるじっく #頬杖ついて #ぼーっとしたい (at Kufuku± 暮富食) https://www.instagram.com/p/Cfab7AzPnkIEfYB37yftlq3gbqNq6IyXiKdKT40/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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rosysnow · 16 days
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かたむいていく
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 意識がくらくらする炎天下、いつもの喫茶店にたどりついた私は、からんころんと響いたドアベルをくぐった。
 ほてった頭や汗ばんだ肌を、クーラーが優しくなだめる。「いらっしゃいませ」と近づいてきたウェイトレスに、「待ち合わせなので、テーブルで」といつも通り答えると、「こちらにどうぞ」とうやうやしく窓際の席に案内される。
「アイスレモンティーお願いします」
「かしこまりました」
 彼女はにっこりして注文を書きつけると、一礼してカウンター内のマスターに注文を伝えにいく。
 窓の向こうを見た。気がふれそうな猛暑が続いている。熱中症警報の中、出かけていく私を家族は心配しているけど、今日もやっぱり来てしまう。
 時刻は十四時を少し過ぎていた。レースカーテン越しに、窓からの日射しは明るい。何度も入口の扉に目をやりながら、彼を待つ。
 この春、私は大学生になった。この機にひとり暮らしを始める友達も多かったけど、私は実家から通っている。時間はかかるものの、乗り換えなしの一本で大学最寄り駅まで行けるのだ。もちろん、大学付近でのひとり暮らしにも少し憧れたけれど、今は勉強に必死で、自活する余裕はなかったと思う。
 ゴールデンウイークが過ぎて、いよいよ授業は本格的になった。その頃から、帰る前に大学のそばのドラッグストアで、ひとつお菓子を買うのが私の秘かな楽しみになった。ドリンクはいつも、紙パックのレモンティー。コンビニで買ったら高いもんね、とレジに向かうと、今日もあのスタッフさんに当たった。
 無愛想ではないけれど、何というか、無気力そうな男の人だ。まだ三十歳にはなっていないと思う。かったるそうな手つきでバーコードを読み取り、お会計を読み上げる声も低い。何も見ていないような目が印象的だ。
 よく雇ってもらえてるなあ、と感じながら、私はお金をはらって、商品の入ったエコバックを肩にかける。「ありがとうございましたー」とやはりやる気のなさそうな声に送り出され、あの人のレジにはあんまり当たりたくないのにと思った。
 今年は、すでに初夏から猛暑日があった。梅雨に入っても、ほとんど雨が降らない。かと思ったら、七月の頭に数日激しい雨が続いて、それが明けると煮えるような真夏が始まった。
 前期の試験が終わった日、結果次第ではすぐに夏休みだなあと私はちょっと浮かれていた。暑さは絡みついてくるけれど、足取りは軽めに、今日は多めにお菓子を買っちゃおうとドラッグストアに立ち寄る。
 狂ったように、蝉の声が空をかきむしっている。焦げつく太陽の下を歩くと、日焼け止めもあえなく、皮膚がひりひり痛くなってくる。お手入れするものも買ったほうがいいかもしれない、と思っていると、ドラッグストアの入口付近にある自販機の隣で、誰かベンチに座っていることに気づいた。
 何も見ていないような目で、視線を放り投げている男の人。
 ……あの人、だよね? ここのレジの人。サボってるのかな。それとも休憩?
 何となく立ち止まって、怪訝を浮かべる私に、彼も気がついた。そして、「あー……どうも」といきなり話しかけてきたので、私は動揺してしまう。
「えっ……と、あ、どうも」
 一応そう答えたものの、それ以上、会話は続かない。彼はまたベンチにもたれて、空中を見上げた。そんなとこ暑いでしょ、と私は首をかしげつつ、気まずいのもあってさっさとドラッグストア店内に踏みこんだ。
 節電で照明暗めの店内から、クーラーがさあっと軆を包みこむ。涼しい、と救われたため息をついて、���っそくお菓子コーナーに行こうとしたときだ。
「え、こんなのあった?」
「使っていいのかな」
 そんな女の子たちの話し声が聞こえて、つられるようにそちらを見た。レジがあったそこには、スーパーでも見かける機械が登場していた。セルフレジだ。
 私は少し考えたあと、お店を出て、男の人のところに引き返した。彼は変わらずそこにいて、ぼんやりしている。私に気づくと、「何も買わないの?」と訊いてくる。私はゆっくり彼に歩み寄ると、その隣に腰をおろした。
「セルフレジに、なってましたね」
「ああ、期待の新星だよ」
「……有人レジは」
「残ってるよ。君、セルフレジ苦手?」
「そういうわけでは」
「じゃ、俺よりいいでしょ」
 私は彼のほうに首を捻じった。
「人員削減で、俺、真っ先にクビ」
「……そうですか」
「今まで、シフトいつでも入れるから、かろうじてつながってたけど。機械が来たら、シフトいつでも入れますとか何でもないよなあ」
 あんまり焦っている様子はない彼を見つめていると、「暑っついなあ……喉渇いた」と彼はあくびまでもらす。
「そこに自販機ありますけど」
「自分をクビにした店の利益にはなりたくない」
「じゃあ、涼しいところ行くとか」
「そうだなあ。君は? このあと予定とか」
「ヒマ……ですけど」
「じゃあ、紅茶がおいしい茶店知ってるから、行こうか」
「えっ」
「若い女の子とお茶してなぐさめられたい」
「………、喫茶店って、近いんですか?」
「駅までの道だよ」
「じゃあ、少しだけ」
「うん」
 彼は伸びをしてから、ベンチを立ち上がった。私も続いて歩き出すと、彼は自然と私の手を取る。伝わった指先の熱に、どきんと心臓が揺らめく。
 彼の背中を見上げた。南中の日射しに、短い黒髪の毛先が透けている。歩幅は広いけど、歩調はゆっくりだ。振り向いて笑みを見せたりはしないけど、私を引っ張るみたいに自分の速さで歩いたりしない。実は気遣える人なのかもしれない。
 ぬるい風が抜けても、軆はすぐに汗ばんでくる。会話がないから、どぎまぎと視線が泳ぐ。つながった手から、細胞が緩くしびれる感じがして、鼓動がざわついて落ち着かない。
 彼が私を連れていったのは、駅まで近道だけど人通りが少なく、私は普段使わない小道にある喫茶店だった。チョコレート色の扉を押し開くと、からんころんとドアベルが響く。
 店内は白が基調で明るかった。壁や天井だけでなく、少ないテーブル席も白い。窓にかかるレースカーテンも白く透け、光が満ちていた。カウンターと床だけ、木製のチョコレート色が出ている。
「いらっしゃいませ」
 ウェイトレスの女の子が歩み寄ってきて、「おふたり様ですか?」と穏やかに微笑む。「うん」と彼が答えると、「こちらにどうぞ」と彼女は窓際の席に案内してくれた。
「君はレモンティーだよね」
 席に着くと、メニューは開かずに、彼はそう問うてきた。認識されてたのか、と何だか恥ずかしくなりながらも、こくりとする。
「俺はクリームソーダ」
 それを聞いて、私はつい小さく噴き出してしまった。「え、何?」ときょとんとした彼に、「何か、かわいいなと思って」と私は正直に答える。「えー……」と彼はメニューに手を伸ばしかけたけど、「やっぱ、クリームソーダ」とウェイトレスに伝える。彼女もちょっとくすりとしつつ、「以上でよろしいですか?」と確認を取ってくれる。
「何か食べる? おごるよ」
「いえ、レモンティーだけで」
「そう。じゃあ、そのふたつで」
「かしこまりました」とウェイトレスはたおやかに微笑み、注文を受けつけて去っていった。それを見送っていると、彼は頬杖をついてつぶやく。
「アイスと炭酸、夏には最高だと思わない?」
「分かるんですけど」
「子供っぽい?」
「そうは言ってないですよ」
「男に『かわいい』って言うのは、そういう意味だよ」
「……そうなんですかね」
「ま、どこで注文しても、確かに言われるんだけどね」
 私は彼の顔を見て、誰に、と訊きかけた。訊かなくても、相手は分かった。頬杖で、彼の左薬指に銀色の光があることに気づいたから。
 彼女、いるんだ。いや、もしかして奥さんかも。
 じゃあ、このお茶にも深い意味はないのか。そう思うと、なぜかしゅんとしぼむような気持ちになる。すると、「どうした?」と彼が顔を覗きこんできた。その顔の近さに肩を揺らしていると、「大丈夫?」と彼は相変わらず表情はあまりないけど、首をかたむける。
「暑い?」
「……暑いですね」
「すぐ注文しちゃったから、お冷や忘れられてるかも。もらってくるよ」
 そう言った彼は立ち上がり、カウンター内のマスターに声をかけた。それを見守って、やっぱり気遣いがある、と思った。高校時代に少しつきあった彼氏なんて、ファミレスでは私にドリンクバーのお水を持ってこさせたっけ。
「はい、これ飲んで」
 彼が持ってきたお冷やを受け取ると、私はひと口飲んだ。ただの水だけど、ひんやりおいしい。「ここは氷がいいから、水でもおいしいでしょ」と席に着いた彼に、思わずうなずいてしまう。
「ここ、よく来るんですか?」
「うん。君と同じかな」
「同じ」
「仕事帰りの癒やし」
「……私、そんな嬉しそうにお菓子買ってましたか」
「そうだね。で、俺がレジだと一瞬眉間に皺寄せるの」
「えっ。そ、そんなことは」
「いいよ、たいていの常連さんがそうだったから」
「………、感じ悪いわけではなかったですよ」
「そう?」
「ただ、やる気なさそうだなあって」
「やる気はなかった」
「顔に出しちゃダメですよ」
「はは。やる気出せって言われるよりいいな」
 初めて咲った彼に、私はまた、胸がざわざわと甘く騒ぐのを感じる。
 それから、レモンティーとクリームソーダをさっきのウェイトレスが運んでくる。お冷やのことを謝られて、私は慌てて首を横に振った。彼の前に置かれたクリームソーダは、よく見かけるメロンでなくオレンジだ。
「オレンジソーダなんですね」
「そうなんだよね。これがまたうまいわけですよ」
 彼はまず濃厚そうなバニラアイスをすくって、口にふくむ。食べるときは、表情があるらしい。すごくおいしそうに食べている。
 私もきらきら鮮やかなレモンティーに、ストローをさして飲んでみた。搾ったばかりらしいレモンが瑞々しい。それに淹れたての紅茶と、蜂蜜が絡みあって、甘酸っぱい味がした。
 一時間ぐらい、ゆっくり涼んで過ごした。ほかのお客さんも、わりあいのんびり過ごしている。
 おごるよ、とは言われたけど、本当に甘えていいのかな。でも、メニューを見ていないから、値段が分からない。これで足りるかなという金額として、私は千円を席を立つ前に出してみた。
 彼はまばたきをしたのち、「名前も知らない男に、お金出しちゃダメだよ」と苦笑した。「じゃあ、お名前教えてください」と私が言うと、「ほんとに気にしないで」と彼はレジに向かってしまう。私は仕方なく千円札を財布にしまって、彼と喫茶店をあとにした。
「ちなみに、蒼一ね」
「えっ」
「俺の名前」
「………、あっ、お金──」
「そういう意味じゃなくて、君の名前は?」
 外の熱気に早くも軆が汗ばむ中、私は彼を見上げて、「清那です、けど」とぎこちなく答える。「清那ちゃんか」と繰り返した彼は、「いつも店でありがとね」と言って、駅とは逆方向に歩き出した。
 送ってくれないのは、そういう意味。
 分かったのに──分かったから、私はその背中に「蒼一さんっ」と声をかけていた。蝉の声の中に反響した私の声に、遠ざかりかけた影法師が止まる。それから、彼はこちらを振り返った。
 いつも、何も見ていないような目をしているくせに。今は、私をくっきり映して、捕らえてくる。
 そのあと、試験には合格して、大学はすぐ夏休みになった。なのに、私は毎日その街におもむいた。蒼一さんに会うためだった。いつも、あの喫茶店でお茶をするだけ。それでもよかった。
 過ごすのは、お昼を食べたあとぐらいの十四時くらいから、日がかたむいてくる十七時まで。真っ白の喫茶店の中では、射してくるオレンジが透けて、夕暮れが始まったのがすぐ分かる。それがお別れの合図だった。
「彼氏はいいの?」なんて蒼一さんは訊かない。私が正直に、「いないよ」と答えるのが分かっているのだろう。彼氏のいない私の責任は、取れないのだ。それ以上に、「彼女はいいの?」と私が問う機会を摘み取っている。
 蒼一さんのシルバーリングに、私が知らないふりをしていること。それに蒼一さんが気づいていないわけがない。
 夕暮れ、懐かしいような色合いのオレンジが、睫毛越しに揺れる。蒼一さんは私を駅には送ることなく、誰かのところに帰っていく。風に混じった夏の香りが頬を撫でた。蝉の声がゆがむように残響している。心で甘く熟していく想いに、私の呼吸はじんわり痛む。
 あっという間に、八月に入った。その日も喫茶店に向かうと、なぜか蒼一さんは、チョコレート色の扉の前にいた。いつもは、先に来たほうは喫茶店の中で待っているのに。少し息を切らし、汗もだいぶ流しているから、私は急いで駆け寄って「暑いよ、入ろう」と声をかけた。
 蒼一さんが私を見る。どきっとする。この人が私を「見る」のは、初めて彼の名前を呼んだあのときだけだったから。
「……何で」
「えっ」
「何で、そんな──」
 私は首をかたむけて、「どうしたの?」と蒼一さんを覗きこんだ。すると、露骨に顔を背けられて、私は少し傷ついてしまう。うつむいて、塗るようになった淡いマニキュアの指先を握りしめる。
 なぜかは分からないけど、蒼一さんがいらいらしているのは伝わってきた。もしかして、今日は早く来て、すごく待っていたのだろうか。でも、連絡先は交換していないから、私に知る術はなかったし──
「何か、怒ってるの?」
「………」
「……熱中症になるよ。とりあえず、冷たいもの飲んで──」
「本気で、そんなこと思ってるの?」
「えっ」
「俺はさ、そんなに純粋じゃないんだよ」
 顔を背けるまま言った、蒼一さんを見上げる。拍子、ぐいっと手をつかまれた。「わっ」と声が出たけど、蒼一さんは構わず私を引っ張っていく。私は慌てて速足になり、それについていく。
 何でだろう。ぜんぜん優しくないのに。不安を感じるより、どきどきしている。
 駅に向かうと、夏休みで混雑する構内を抜けて、裏通りに出た。狭い飲み屋街があって、車道沿いに出る。そこに並んでいるのは、センスがよく分からない変な名前のラブホテルだった。
 その中のひとつに、蒼一さんは躊躇うことなく私を連れこんだ。エレベーターの中で、蒼一さんの顔を盗み見ると、苦しそうにしている。その表情が、不思議と愛しい。私は自然と背伸びをして、蒼一さんの口元にキスをすると、「大丈夫」とささやいた。蒼一さんが何か言いかけたとき、エレベーターが到着する。
 部屋に入ると、蒼一さんは私をベッドに押し倒した。きしんだ音に蒼一さんがかぶさってきて、ついで、息継ぎもないような深いキス。唾液が絡まる音は、蜜が蕩けているみたいだった。胸をまさぐられながら、吐���も素肌もどんどん敏感になる。
 クーラーもつけなくて、室内には熱がこもって空気が湿っていった。ふたりとも汗でどろどろだったけど、構わずにお互い服を脱がしあう。蒼一さんの指が私の脚のあいだに触れた。ただでさえ蒸れていたそこは、下着越しの刺激でも切なく響く。
「……すげー濡れてるね」
 そう言った蒼一さんには、食べているときと同じように表情があった。私の下着を剥ぎ取って、膝をつかんで脚を開いて、愛おしそうに舌ですくってくる。私は思わず声をもらして、すると、蒼一さんはもっと丁寧に私を食べた。
 快感のままに水音がはじける。私の壊れそうな喘ぎが空を彷徨う。蒼一さんはもどかしそうに自分の下着も脱いで、本能のまま張りつめたものをあらわにした。私は焦点の合っていない目でそれを見て、自然と手を伸ばす。
 あったかい。硬い。脈が手のひらに伝わる。
 私は身を起こすと、それにキスを繰り返してから、そっと頬張った。蒼一さんが私の髪をつかみかけ、やめて、梳くように撫でてくれる。しょっぱい、生ものの味がする。舌先で脈をたどると、それはますます太くなって、私は夢中で蒼一さんをむさぼる。
「清那ちゃん」
 名前を呼ばれて、私は蒼一さんに上目遣いで見た。瞳が溶け合って、何も言われていないのに私はうなずく。
 ああ、もうどうだっていいや。
 全部捨てちゃっていい。
 ルールも、理性も、薬指の銀色の光も──
 蒼一さんの軆が軆に重なり、同時に分け入ってくる。奥までつらぬかれて、私は息を震わせて蒼一さんの首にしがみついた。蒼一さんも私の腰を抱いて、ゆっくり引いたもので、ぐっと深く突いてくる。じんじんする核まで響いた刺激に、腰が跳ねて、喘ぎ声が泣きそうになる。
 少しずつ腰遣いが早くなり、私の中で白波が紡がれていく。耳たぶから指先、爪先まで、全身が浮かされたようにほてっている。もう声は節度なく乱れていて、私からも腰をすりつけるように動かす。そして、不意に充血が満ち足りて、オレンジ色みたいなサイダーがはじけた。
 ──それ以来、私と蒼一さんは何度も軆を重ねた。ただの生き物になって、狂おしく求め合った。
 シルバーリングには、いつまでも知らないふりをしていた。だって、こんなの火遊びなんでしょう? 期待したって、私の「恋心」を知ったら、あなたは白けて逃げていく。
 かたむいていく。心が。日射しが。安定が。どんどん、かたむいていく。
 行かないで。もう少しだけ。手をつないでいて。ほどけたりしないで。どうか、このまま……
 しかし、どんなに愛し合うような時間を共にしても、蒼一さんは夕暮れになれば帰っていく。
 ──そう、昨日の別れ際、蒼一さんの様子がどこか違ったわけじゃない。でも、こんな日が来ることは最初から分かっていた。
 喫茶店の中は薄暗くなっていた。時刻を確かめると、十八時だ。ついに今日、蒼一さんは来なかった。そもそも約束なんてしていない。けれど、私のことはこんなふうに簡単に投げ出すんだなと思った。夕刻には、必ず帰っていくくせに。
 ああ、何か嫌だな。こういうの、ダメだな。
 注文したけど、飲まなかったレモンティーのグラスをつかむ。直接、口をつけた。ぬるくてまずかった。
 ……ああ、もう疲れた。
 ぽきんとそう思って、私は唇を噛んだ。いきなりこみあげた涙をこらえる。あの人にかたむいていた心が、あまりにもたやすくもろく、折れる感覚が軆の中に落ちていく。
 レモンティーのグラスから手を引く。日射しもすっかりかたむき、オレンジ色はとっくに色あせて陰っている。私の心も、ゆっくり沈んでいく。
 あんなにまばゆかったのに、暮れてしまった淡くて短い恋に、私は小さなため息をひとつこぼした。
 FIN
【SPECIAL THANKS】 レモンティーとオレンヂソーダ/杉野淳子 『SERIES SINGLE 3/4』収録
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museology-h · 4 months
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2023 趣味記録編
※展覧会はあまりにも偏りがあるので割愛
🎵bonobos / LAST LIVE bonobos.jp
解散ライブなのに、それを感じさせないくらいいつも通りのライブだった。懐かしい曲をやるわけでもなく、今のbonobosを淡々と…。未だに解散が信じられないくらい。ラストのあなたは太陽は名演でした。
🎵BUMP OF CHICKEN / be there
結局2か所3公演しか行けなかったものの、席に恵まれて悔いなし…。会場では会社の友やお久しぶりの方々に会えて嬉しかった。1番初めに作ったアカウントのFFとBFLY以来に会い「生きてた…!」と言われた。4/2のHAPPYは忘れたくない。
🎵Yogee New Waves / AYA Tour 2023
最初で最後の中野サンプラザ。コロナ禍以降ライブに行けず、やっとの思いで参加。終始ヨギーの音がすることや、ここにいる人はみんなヨギーのことが好きなんだ…という当たり前のことがとても懐かしく嬉しかった。好きなバンドって本当に儚い。
🎵Bialystocks / Bialystocks 2nd Tour 2023
先輩の結婚式から直行。上機嫌。振り返ると短期間でライブ何回も行けてラッキーだった💫頬杖1番いいところで笑ってたのがハイライト。
💚EXO / EXO CHANNEL “THE BEST”
人生初ペンミ。未知の世界。ベルーナドームはあまりいい評判が見られず悪い想像しかしていなかったけれど、意外とアクセスも環境も良かった。今後はペンミ的なものよりはステージ重視で…なんて思ったけれど、これが最後の完全体になるとは夢にも思わなかった。今後完全体で日本に来てくれることはあるのか…?そしていつ私はTempoをフルで見られるのか…?
※これを機におみくじ代わりにトレカを引き始める
💚WayV / WayV JAPAN EVENT 2023 ‘The First Vision’
2日目しかチケット取れなかった。そして本命はいつも何も覚えてない。WTMPを口ずさんでみんなで踊ってたの忘れないよ〜恋ダンスも…。
💚Billlie / Japan Debut Showcase “what is your B?”
迷いに迷ったけど、次いつ見られるか分からなかったから行った。本当にみんな可愛かった😭2023年の春を彩ってくれたEUNOIA🦉古谷さんの流れるようなMCがすごかった。メンバー1人1人に全部感想あるけど長くなりそうなので割愛。つきちゃんの手があんなにぶるぶる震えていてびっくりした。お見送り、そして剥がしという未知の文化…。
※写真撮影OKタイムあってたくさん撮ったのにデータは全部消えた
💚NCT / MCT NATION
酷暑!演者もお客さんもみんな大変な暑さの中、約4時間の公演。この2日でしっかり日焼けした。BDSに7感にtake off😭カメラワークもとても良かった。例の如く記憶は全然ないけども楽しかった〜。
🎵浦上想起・バンド・ソサエティ/United by Purpose
ソサエ!1月のライブからさらに進化していた!カバータイムで心理の森やったこととか、舞台の上でやったこととか、たまらない時間だった〜。おもちゃ箱からおもちゃが次々と飛び出してくるよう。
🎵OGRE YOU ASSHOLE / LIVE 2023 TOKYO
2022のときより全体的に輪郭が分かったような…?年末にリキッドルームで見えないルールを聴くために1年頑張っている。来年の原村ライブ行きたいがどうしても行けないので涙😢
🎵松木美定 / アルバムリスニング会
なんとかチケットを手に入れて参加!ご本人の軽快なトークとともに良い音響で収録を聴くという贅沢なひととき。このアルバムの曲どれもとても好きだけれど、さらに愛着がわいた。またこういう機会があれば参加したい!!
💚VANNER / VVS adventure
友達に誘われて参加。直前までメンバーの名前もグループ名の読み方もよく分からなくて不安だったけど、楽しかった!これもファンミ的な感じだったのかな?ステージ、トーク半々くらい。今まで参加してきたコンサート、ファンミは無機質通訳さんだったけど今回は感情込めるタイプだったので慣れず最後まで???となっていた。
💚Neighbors Con / WayV,BOYNEXTDOOR,NiziU
例の事件があってすぐのKアリーナ。警備厳重。入退場も恐れていた���りもスムーズだった。WayV今年はたくさん日本に来てくれてありがとう😭ボイネクは曲が好み(zicoプロデュースしてるし)で気をつけないとはまってしまいそう。NiziU可愛かった😭HEARTRIS❣️途中から音響が気になって集中できず残念だった。
💚XG / ‘NEW DNA’ showcase
私の人生に彗星のごとく現れたXG😭オープニングのJURINのビジュアルがあまりにも破壊的でどうにかなりそうでした。大好きなLEFT RIGHTしっかり見ることができて悔いなし。全編撮影OK。メンバーへのサプライズ的なことも初めてやって楽しかった。
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gu4 · 2 months
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どんな文脈だったか、ドイツ語の授業中に教授が「君たちは今でこそずいぶん尖ったことを言うけど、就職して結婚したりすると驚くほど保守的になるから信用ならない」と言ったのは今でも覚えている。教壇に頬杖ついてうっすらと笑みを浮かべていた表情も。
予備校の頃にいつも淡々と講義をしていた古文の講師が唐突に”生きるとはどういうことか”を語り、また淡々と授業に戻った「あの数分は教育だった」 - Togetter
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ignitiongallery · 7 months
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エッセーの音がきこえる『これが生活なのかしらん』刊行記念朗読会
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小原晩さんのエッセー集『これが生活なのかしらん』(大和書房)の刊行記念朗読会を、10月28日(土)にtwililightで開催します。
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小原さんの音楽家の友人である、みらんさんと寺田燿児さんをお招きし、『これが生活なのかしらん』から気に入ったものを朗読していただきます。
小原さんのエッセーには明るい諦めのようなムードが漂っていて、ムードという目に見えないものを表現するのは、言葉より音楽が得意とするものだと思います。
それを小原さんが言葉にできるのは、もしかしたら小原さんが歌を詠む人だからかもしれません。
ページをめくり、小原さんのムードに浸っていくと、いつか死ぬことや、人と人とは分かり合えないことを、胸の中に受け入れて、生きていこうと思える。どこからか音がきこえてきて、それは自分の鼓動だと気づく。
エッセーの音がきこえる夜に、ぜひいらしてください。
また、小原晩さんによる選書フェア『これまでに影響を受けた12冊』も10月5日から開催します。ぜひ足をお運びください。
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日時:2023年10月28日(土) 開場:19時 開演:19時30分 会場:twililight(東京都世田谷区太子堂4-28- 10 鈴木ビル3F/三軒茶屋駅徒歩5分
出演:小原晩 / みらん / 寺田燿児
料金:2,500円+ 1drink
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件名を「エッセーの音がきこえる『これが生活なのかしらん』刊行記念朗読会」
として、お名前(ふりがな)・お電話番号・ご予約人数を明記の上、メールをお送りください。
*このメールアドレスが受信できるよう、受信設定のご確認をお願い致します。2日経っても返信がこない場合は、迷惑フォルダなどに入っている可能性がありますので、ご確認ください。
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《選書フェア》 期間:2023年10月5日(木)〜10月30日(月) 会場:twililight(東京都世田谷区太子堂4-28- 10鈴木ビル3F&屋上/三軒茶屋駅徒歩5分)
小原晩さんが「これまでに影響を受けた12冊」を選び、 それぞれにコメントを寄せています。
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小原晩(おばら・ばん)
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作家、歌人。2022年初のエッセイ集となる『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』を自費出版。2023年「小説すばる」に読切小説「発光しましょう」を発表し、話題になる。 9月に初の商業出版作品として『これが生活なのかしらん』を大和書房から刊行。
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みらん
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1999年生まれのシンガーソングライター。 包容力のある歌声と可憐さと鋭さが共存したソングライティングが魅力。
2020年に宅録で制作した1stアルバム『帆風』のリリース、その後多数作品をリリースする中、2022年に、曽我部恵一プロデュースのもと 監督:城定秀夫×脚本:今泉力哉、映画『愛なのに』の主題歌を制作し、2ndアルバム『Ducky』をリリース。
その後、久米雄介(Special Favorite Music)をプロデューサーに迎え入れ「夏の僕にも」「レモンの木」「好きなように」を配信リリース、フジテレビ「Love music」でも取り上げられ、カルチャーメディアNiEWにて作家・小原晩と交換日記「窓辺に頬杖つきながら」を連載するなど更なる注目を集める中、新曲「天使のキス」を配信/7inchにてリリースした。
Twitter:https://twitter.com/m11ram_5Instagram:https://www.instagram.com/mirams11
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寺田燿児(てらだ・ようじ)
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広島生まれ。yoji&his ghost bandの名でCD『My Labyrinth』(’14)『ANGRY KID 2116』(’16) を発表。角銅真実のサポートの他、折坂悠太(合奏)メンバーとしてFUJIROCK FES’18などに出演。 ’22 ニ作目となる漫画『TORA TORA TORA TORA』を東南西北kikenよりリリース。MIDORI.so NAKAMEGUROから衛星(台北)に至る6都市で漫画展をツアーした。「中華満腹見聞録」と題して街の中華を巡ったりもしている。 X:@YOJIandGHOST IG:@ysfor_men
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ichinichi-okure · 11 months
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2023.6.5mon_tokyo
夢を見た。この部屋にいる人物だれもが制服を着てい���ので中学か高校のクラスだと思った。好きな人が右隣の席に座っていて、他のクラスメイトの男の子と楽しそうに話してるのを見た自分は、もういいよって突き放したような気持ちになった。先週祖父が亡くなって帰省したとき、運転席にいる父親が「〇〇くんはライバルだったからねー」と言っていた。その人は母親によく話しかけていたらしかった。それ以上はなんとなく聞かなかった。
寝不足の状態でベッドに入ると夢をよく見る気がする。夢の中では大抵現実(夢を現実でないと言うのもおかしい気がするけれど)の自分とは離れた感情を抱いていることが多いなと思う。全く違う感情というよりかは、元々ある感情をより醜くした?ものを抱いている。それで目を覚ましたあと少し自分のことが嫌になる。意地の悪いラブソングの歌詞みたいな気持ちの動きだと思った。戸川京子の「結婚のすべて」を聴いていたからかもしれない。
干したばかりの洗濯物が風で揺れる様子。ピエールブーレーズのピアノソナタと星型に反射しているステンレス製の物干しが重なって美しく見える。ロマンチックと冷静さと狂気が一緒くたになってるような状態が好きだと思う。ぼやけた視界で枕元に置いてあったスマホの画面で時間を確認する。カーテン越しに窓の外から聞こえてくる音がだんだん遠ざかっていく。意識を失うまでのひととき。
昨日、職場から歩いて帰る坂道の駐車場に「よろしかったらどうぞ」と細いボールペン字で書かれたチラシの裏紙と、紫蘇の苗が置いてあった。その光景を見て10歩くらい通り過ぎたところで引き返したのだった。ベランダに置いたまま放置していたプランターの土を手で掘り起こして植え替える。
お店番のときに着るために自分で作ったPerspectiveの歌詞Tシャツ。昨日スタッフのNさんが「学生のとき机に鉛筆でこの曲の歌詞を写経してたんですよ」と言っていて嬉しくなった。自分はずっと日記の曲だと思っている。坂本龍一は別れの曲と言っていた。
玄関でなにを履こうかほとんど迷わずサンダルを選ぶ。中古でかなり安く購入したJIL SANDERのサンダルは底のゴムソールが取れていて、道路標識のペンキ上を歩くだけで滑って転びそうになる。今すれ違った帽子を被った人の頬が赤らんでいた。
今週末からお店でやる展示の準備をする。ギリギリで入稿して告知をする。赤いヘルプマークを付けて杖をついたおじさん。店内の日記本を長い時間、とても嬉しそうに見てくれていた。
スタッフのAさんと緑道が交差する道で別れて、業務スーパーに向かう。毎日同じ道で帰るのが好きだと思う。ここの工事は進んだとか、壁の落書きが増えてるとか、あの人前にもすれ違った!とか思ったり思い出したりする。
ローソンの自動ドアから出てきたギャルの二人が「うまっ」って嬉しそうに言いながら何かを頬張って向こう側に歩いていく後ろ姿。キャベツや鶏肉で重くなったビニール袋をぶら下げて、飲み屋街を通り抜ける。月曜日にしてはいつもより人がいる。前を歩くチェックのシャツを着た青年。背中越しにコーン付きのアイスクリームを持つ手が見える。白色に見えるのでバニラ味だろうかと想像する。自分はコンビニでお菓子やアイスを滅多に買わないので、それが何の商品なのかわからない。
船の公園(勝手にそう呼んでいる)はどの時間帯もタクシー運転手たちの休憩場所になっていて、タバコの煙が上がっていく様子を横目に工事中の大きな壁に面した道をいつも曲がる。
-プロフィール- 栗本凌太郎 26歳 東京 日記屋月日 店長 / 新しい部屋 @kuritaro___ / room-n.space
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littlesallywalker · 11 months
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日記
わたしたちから。
バスで頬杖をついている間に社会がはだけた恥部を除いて厚着した。
右薬指にした陶の指輪のその金の縁に雨をとじこめたまま、
停まってしばらくして火を吹いて横やりに倒れこんだ。
今日は買い出しはせず家にあるものを食べる日。
ちょっとだけオムライスの気分だったけど、
寒いので肉すいのようなものをとおもう。
そうするとチャーハンもいいなっていうところです。
バスは北東の町へ行く予定だった、身体を興して空へ戻った。
しばらく交わしていない言葉は裏返���、愛を読めずに強引に眠る。
ぼくとぼくたちの町には今日ひっきりなしの淡い雨だった。
皮肉にもアイスコーヒーをあたため、禁煙パイポで夜をうたった。
ネットが昨日からとぎれとぎれで「負の産物」と揶揄される、
何万色にもなる輪で耳鳴りを塞いだ。もう雨の音はしない。
「雨の動物園」が好きだった。舟崎克彦の。私の博物誌シリーズ。
リュックにね、レインカバーがついているんです。
底をあけるとロンズデールのロゴがすこしおおげさだけど、
灰色のビニールがくるり翻って荷物をまもってくれる仕組み。
何年も何年も使っているけど全体の黒がなぜか褪せずに丈夫だし、
ちょっとした時のレコード運びも大丈夫。
ぼくにはちょっとした時LPが入るサイズが必要だった。
今はあんまり迂闊にいると持ち崩すから注意を脳に促して。
”ちょっとした時”じゃあないんだよってね。
何かったらしになっちまったむかしの友よ。
たばこはとてもいいものです。
あの人は髪の毛をくしゃくしゃっとさせてつつじを摘み、
それを口にしたり吐いたりしながら君のまねと言った。
いいな、とおもってぼくもつつじをたばこにして吸って話した。
君とはじめて話した日は杉に雷がおちてバスが止まった。
20円と黒のシュシュがロビーに落ちていて、
エレベーターの脇に封切りの映画のような、
すこし太陽の匂いのするシャツと同じ鮮烈さを添えた。
靴は乾かなかった、明日もサンダルだろうか。
飛び立ったバスの網に文庫本をわざと忘れた。
友だちに気づいてほしくて押し花をのこした。
雨の市役所動物園はとても臭くていつも可笑しい。
閃いた好きなもの作る今夜は内緒のそれ食べる。
改心してところてんを買った。同情はできない。
透明な友へ。
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tanakadntt · 1 year
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三輪隊の小説(二次創作)
三輪隊の四畳半
「広いな」
広くはない。
︎ しかし、三輪秀次の独り言に奈良坂透は同意した。
「確かに広い」
「ま、広いな」
︎ 米屋陽介も同意する。
「いつもが狭いのよ」
︎ 控えめに月見蓮もうなずく。
︎ 全員意見は一致しているが、本来ならば広くはない。
︎ 三輪隊作戦室の奥まった場所にひっそりと存在する四畳半の部屋だ。
︎ この作戦室に入室して最初に目に入るオフィス然とした大部屋と対照的に、奥にある四畳半の小部屋はのんびりとした空間だ。畳の間に座卓を置いている。
︎ なぜそうなったかは、三輪隊以外の者は誰も知らない。壁際には渋い色の階段タンスが配置され、︎日本画の色紙も額縁に入って飾られ、その風景はノスタルジーさえ感じさせる。
「サザエさんかよ」
とは、A級太刀川隊隊員である出水公平のツッコミだった。
しかし、磯野家の居間も八畳である。カツオとワカメの子ども部屋だって六畳もある。
︎ 狭い四畳半が広く感じられるのは、三輪隊狙撃手である古寺章平の昨日からの不在によるものだった。
︎ 兄さんたちは寂しいのだ。
︎ 当の古寺は本日は遠征選抜試験初日で、寂しさなど感じている暇は微塵もないだろう。昨日は隊長面接のために休みをとっていた。
︎ 古寺は試験のために編成された臨時部隊の隊長を務める。それが意味する未来を考えると三輪は寂しい。
︎ 遠征よりもっと先の未来の話だ。上層部が最終的にどのような決定を下すかは分からないが、四人がバラバラで活動することになっても、遠征が終わればチームに戻る。
︎ しかし、古寺が本当に隊長になる未来は思っていたよりもきっと早く来るのだろう。
︎ とうとう、ちゃぶ台に頬っぺたを載せて、突っ伏してしまった奈良坂を眺めた。こたえている。日浦も行ってしまったあとだしな。米屋はニヤニヤと笑って頬杖をついた。
「動画残しとく?」 ︎
︎「やめてやれ」
「章平、喜ぶんじゃねえ」
「喜ばないだろう」
「章平のことわかってねえなあ。秀次じゃねえんだから」
それはその通りで、三輪なら困惑するだろう。
「話を混ぜっかえすな」
「米屋、りょーかい」
︎ 米屋は最後のバームクーヘンの切れ端を口に放り込んで、ちゃんと残してあった緑茶の冷めたのをごくごくと飲み干してご馳走様と言った。︎
「んじゃ、ま、個人戦行ってくるわ」
「遅番だからあまり時間がないぞ」
「ブースに行っても審査と試験で誰もいない」
︎ 三輪と奈良坂に同時に言われても、わかってるってと立ち上がる。
「太刀川さんは、いるっしょ」
「太刀川隊は早番だから、任務中よ」
︎ タブレットを見ながら、月見も声をかける。
「はーい」
︎ それでも、出かけようとする米屋に三輪はついに名前を呼んだ。
「陽介」
︎ その声の調子を汲んで、
「りょーかい」
︎ 米屋はストンと腰を下ろした。そのまま、三輪を見る。表情は読めない。これは文句を言いたいのだろうと三輪は見当をつけた。
︎ 米屋は未来を憂えて寂しがるなんてことに価値を見出さない。今、古寺がいなくて寂しいのは共有できても、それ以上の共有はお断りなのだ。
︎ しかし、米屋はそうでもこちらにも都合がある。だから、三輪は米屋を引き止めた。
「お前までいなくなったら寂しいだろう」
「なんだよ、そりゃ」
「そのままだ。部屋が広くなって、寂しいという意味だ」
︎ 米屋はそれ以上は突っ込まなかった。
︎ 奈良坂が不機嫌そうに顔をあげる。
「別に俺は寂しくない」
「奈良坂だって引き止めていただろう」
「忠告だ」
「はいはい、りょーかい、りょーかい」
︎ 米屋はもう一回立ち上がると、すぐ脇の冷蔵庫から紙パックの緑茶を取り出してきた。
「狭い部屋が好きだねえ」
狭い部屋だ。
︎ 四畳半の畳部屋ができたのには理由という程のものはない。
︎ A級にあがった時は皆とにかくテンションが高かった。
︎ 憧れの部隊章、トリガー改造、作戦室も引越しになる。
︎ 部隊章のデザインについては大いに盛り上がり、めちゃめちゃかっこいいのが出来たと全員自負している。
︎ トリガー改造は米屋が張り切った。前々から考えていた槍型のトリガーを実装して、学業そっちのけで訓練室にこもってしまうほどだった。これは三輪にとっても待望の実装だったので、相当付き合った。
︎ 一方で、さほど、盛り上がらなかったのは部屋のインテリアである。そこは高校生男子のチームだ。
︎ 大部屋もオペレーター室も広くなり、小さいながらもキッチンもついた。そして、その横に申し訳程度の小さな部屋がひとつ増えることとなった。
︎ B級時代、作戦室でも︎受験勉強が出来るようにと購入した古寺の机はそのまま大部屋に置くこととして、増えた一部屋を何に使おう。
︎ まず、面々は月見に相談した。三輪隊がB級ランク戦を勝ち抜き、晴れてA級部隊になったことについて、月見が最大の功労者であることは戦闘員全員の意見が一致していた。
「月見さんが好きに使えばいい」
︎ しかし、月見は辞退した。本部にあるオペレーターのスペースで身支度するから、自分用はいらないと言う。彼女の幼馴染である太刀川慶曰く『結構、すごいとこのお嬢様』だ。作戦室で身支度したり休憩するのはかえって落ち着かないものかもしれない。
︎ そこで、︎応接室にしたらどうですかと言ったのは古寺だ。
こみ入った話をする面談室のイメージだ。しかし、却下された。
「客こねーだろ」
「俺たちに客? ないな?」
「ラウンジで済む話しかないだろう」
︎ 米屋、三輪、奈良坂に順に言われて、古寺は先輩たち、自己評価低くないですか?と思ったが、実際、用事があってもA級新参部隊はこちらから出向くことが多いし、相談事も滅多になかった。あってもラウンジで済むことばかりだ。
︎ 次に、奈良坂がテスト前に作戦室で勉強したいと言い出した。古寺の受験勉強が捗ったのを見ていたからだ。しかし、目の前でダラダラされると集中できないからあのスペースを勉強部屋にしたらどうかという高校生らしい提案だ。それを聞いて、勉強のほうが大事だ、古寺の机も大部屋にある事だし、ダラダラするほうが狭い部屋でいいと三輪が言い切り、ダラダラするんだったら靴を脱ぎたいと米屋が希望し、そしたらフローリングか畳ですねと古寺が提案し、畳のほうが省スペースよと月見がまとめて、トントン拍子に狭い部屋の処遇は決まった。
︎ そこまで、決めてしまうと、みんなもう什器備品のことなどどうでも良くなって、
「今まで通り、タブレットあるし、モニターはまあ、なくてもいいな」
「タブレットの方が使いやすかったりしますしね」
「章平のパソコンもあるしな」
「必要になったら買えばいいんじゃね? 」
大部屋は作戦机、ロッカーからソファまでB級時代の作戦室から持ってきたものそのままざっくりと配置し、今に至る。モニターは未だに購入に至っていない。タブレットを持ち寄り、額を集めて相談する。
︎ 雑に決まった割には、四畳半はうまく機能し、それぞれダラダラもするし、全員でお茶もする。
長期遠征選抜試験が終わったら、まずはここで座卓を囲むことだろう。
終わり
︎ ︎ ︎ ︎ ︎
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mlyzvt-no2157 · 1 year
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草原で頬杖をつきながら、ゆるりと座るミロ🦂視線の先には氷河がいるんだろうなってmy設定しています🥰💕
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utazisai · 2 years
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2022/08/18
忘れたくないことばかり、いつも失くしてしまう。くしゃみを一つ、頬杖をつきながら、懐かしい音楽を聴いている。顔も、声も、記憶も曖昧で、ただ眩しさだけが残った頭の中、名前はただの文字でしかない。幼い恋は春に咲いては散る。僕はそれを見送るだけ。形を無くした君の影はひらり、花弁になった。
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409conflict · 1 year
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毎日、驚くほど足早に時が流れて行く。必死にもつれる足で走って、何度も転んで、どうにか笑っているうちに夜が更けて行く。気が付けば寝具に横たわっていて、いつの間にか朝の空気に満たされていて。そうしているうちに、何かを楽しもうとする気持ちが薄れて行った。時間が出来れば作業を詰め込み、それが終われば慌ただしく家事を済ませて、大して内容も入らない映像を流しては、気絶するように眠っている。そんな疲弊した身体に、不意に子供達の笑い声が届いた。閉め切った窓の外を思わず覗けば、はらはらと雪が舞っている。えらくはしゃいでは駆け回り、空を見上げるその様子に何故か鼻の奥がツンとした。外の空気が、吸いたい。確かに毎日触れているし、決して取り込んでいない訳ではなかった。けれど、意識して外気に心を馳せるのは、酷く懐かしい心地で。部屋着の上から適当に上着を羽織って、マフラーを巻いて外へ出た。外は先程よりも大粒の雪が降っていて、その量も頻度も存在感も、グッと増しているように思う。時折俺を責めるように強く煽る風が凍てつくほど冷たくて、溜め息を溢せば当たり前のように白く形づいた。自分が立っているその場を避けるように、地面に落ちて消えて行く。暗い色の上着には白い雪が残り、俺自身の存在を顕著に示してくれているようだった。肺の奥まで染み込んで、体温を奪って行く冬の香り。空を見上げれば一面が薄い灰色で覆われていて、まるで雪を凝縮して染め上げたようだった。忘れていた、深呼吸。歩みが早まる毎に浅くなって、心が歪む感覚にすら気付けずにいた。精一杯。必死。頑張る。努める。こんな時にいつも感じる、止まると走り出せなくなるような焦燥感。駆られる前に気付いて、立ち止まるべきだったのに。思えばもうずっと、耳の奥が籠ったままだった。悴んで動きづらくなり始めた指先を摩って、小さな段差に腰掛ける。この冷たさが心地良い間は、ここに居よう。現実に戻るのは、もう少し後でいい。響き渡る愛おしい騒がしさに心を傾けながら、ゆっくりと頬杖をついた。明日には跡形も残らないんだろうな。もっと図々しくていいのにさ。
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another-dolls · 8 days
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my strange addiction:
それでもあなたに選ばれている自分に呆れてる。「女だから」「顔がそれとなく整っているから」「清潔だから」その毒が体内でいつまでも泳いでいて、ぬるい死にたさを持て余して、爪を噛む子供みたいな気持ちで頬杖をついて明日なのか昨日なのかわからない輪郭を見つめてる。二人で本物を明かしあったあの夜、あの堤防。街の光を浴びた橋とその影。今でも、どこを歩いてもあの場所がこ���から西にあるのか東にあるのかわかる。「なんかさ、なんでわざわざその人を連れてるのかよくわかんない。似合わないよ」 だとしても私に相応しい幸福なんてないから私は、隣にいて死にたくなるような人間を選ぶ。希望はそこらじゅうに散らばっていることはわかっていても希望なんて感じてはいけないような気がしてならない。張りぼてで、いとも簡単に代替えの効く私を選び続けるあなたを見下していたいの。そのジョーマローンで思い出すのは肌に文字を刻むときの細くて尖った痛み、臓器の中で見えない血がだらだらと血が滴り続ける。死にかけの私を選択し続けて。ずっとそのまま、浅はかでいて。
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wasurerunikkii · 10 days
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2024.4.19 fri.
いいのさんが布団を出てからまたすこし眠っていて、目をひらくともう家にはいなくてすこし心細くて、でもきっと眠っているわたしを見てから家を出たのを想像し、布団のにおいをかいで安心する。めぐらされた遮光カーテンでいつもうす暗い部屋に、キッチンの窓から光がさしているのをきれいだとおもいながら用意して、鍵を閉めて家を出た。このあんしんが今度はどうかなくならないでほしいと祈ることしかできない。こわくて仕方ない。
ぼんやりを引きずったまま仕事をすまして、帰りたくないな、と頬杖をついていたら、いいのさんが妙な顔して店に来てくれた。仕事終わりに来るのはめずらしいので、どうしたの、と聞くと、うん、眠れたんかなとおもって、と言って、二言三言話して、じゃあ、ゆっくり休んで、ごめんね、と帰って行った。やさしいひとだなーとおもう。謝ることはないよ、とおもったけど、なんだか頭がぼやぼやしていて上手く言えなかった。眠れなかったけど、あなたがとなりでよく眠っていてすこしさびしくてそして安心したし、寝ているあなたは動物のようでかわいかったよ。こんど会ったら言おう。今日はもらった佃煮食べてひとりではやく寝よう。
帰りの電車でとなりに座ったおじさんがひとりでなにか話していてやはりどうしてもこわかった
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nxloaea · 12 days
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四月 。ボクには何て事の無い季節で 、でも世間は何かに追われてて 、楽しそうで 、嬉しそうで 、悲しそうで 、大変そう?これは舐めとるか 。そんなのを横目に 、頬杖ついて欠伸して居たい 。みんなが集まる前から書いとけばよかったなぁ 、なんて急に思い立ったから書きました 。おもろい事があった時 、ボクの気分が乗った時 。書いて行こうと思います 。
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nui-and-me · 1 month
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240316 パパの応援
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手前で頬杖ついて?監督のようなスタイルでパパの演奏を見守ってるのがつむぐです。笑
引き継ぎでメンタルがしんどい。
辞めるって大変だなあ・・・(遠い目)
このまま3月いっぱい働いて、4月から次の職に就く。有休消化とか夢のまた夢。いやもういいんです、有給なんてくれてやる!とにかくこのつらい3月がはやく終われ!早く終われ!!!苦笑
そんな中つむぐが熱を出し、検査の結果インフルエンザ。今回は熱性けいれんまで起こしてしまい、親子共々ますますしんどい3月
重なる時は重なるけれど、きっとここから良いことばかりでしょう!と言い聞かせている。
そんな週を終え、つむぐも元気になり、週末はパパのライブ応援に行った。久しく楽器を演奏する場がなかったので、本当に久々のライブ。(本人も息子たちが小さいから、とお休みしてたし、そうこうしている間にコロナがやってきてバンド活動も軒並み自粛という時期が続いた)
ぬいは小さい頃にパパが演奏しているのを見ている筈なんだけど全然記憶にないそうな。そりゃそうか0歳?とかだもんなあ。
見てんのか見てないのかわかんないような応援っぷりだったけど、自分の父は趣味でティンバレスという珍しい楽器を叩いている、ということはわかったかと思う。笑
仕事ではないものに大人が一生懸命になっている姿を見せられてよかったと思う。それに久々に演奏しているところを見たけれど、やっぱりラテンビッグバンドはとてもハッピーで、パパは演奏している時が一番輝いている(ような気がする。笑)
息子達を連れて、また応援に行こう。次はたしか5月かな?
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niwanihaniwachickens · 2 months
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二人舞台不在
放課後の教室。
教育機関によって定められた時間割を終え学生も先生も居なくなり夕陽が差し込む、この教室で雑談をする為に俺、セツナとエリンは2人居残りをしていた。
「ねえ。そういえば結局、前言ってたあの子とのデートどうなったの?」
窓際のカーテンが吹き込む風でフワッと舞い上がる。
傾げた首と教室をたなびく、そよ風によってエリンのロングヘアーが揺れた。
「後日談が無いって事を察するのは出来ないもんか?」
「だって、意図的に隠そうとするものなんかと思ったんだもん。」
ぷく顔をしていても顔が良いので見ていれられる。
「各誌毎に隠し事を書く仕事をしている訳でも無いんだからさあ、そんなジャーナリズム見せつけられてもだな。」
「先に恋人が出来てこの関係性が希薄になってしまうのであれば、あたしは何処までも詮索しちゃうけど?」
「エリンがワンピースの海軍なら徹底的な正義を掲げているだろうな。」
「少年誌の漫画なんてわかんない。漫画だなんて前時代的なエンタメは今時、誰も見てなんかいないわ。」
「”赤犬“によって脳が焼き尽くされてしまったのだな。葬式やる時は呼んでくれよ。喪主を担ってやる。」
「他人の趣味を悪く言わないでよ。それと、あたしの両親はまだ健在なんだけど?とんだ無礼ね。」
「そんな両親との関係値をゆうに超える関係値であるというお洒落なジョークなんだけど。」
「あら、全てを説明させてしまっちゃうなんて随分と無粋な事をさせちゃたね。失敬、失敬。」
エリンは両手を顔の前で合掌してヘラヘラしながら詫びた。
「謝る気が無いだろうそれ。」
「悪いと思っていない時はパフォーマンスでも良いから謝っとけばいいの。」
「本人の前でよくもまあそんなベラベラと悪びれもなくそんな事言えたもんだよな。まあ、そこがエリンの好きな所でもあるんだけど。」
「なあに?愛の言葉でも囁いて、あたしの気を引こうとしているの?」
満更でもなさそうにニヤリと口角を上げながら言った。
「何も交渉する気は無いのはこの校章に誓うよ。」
「そんな気易く艶めかしい話をしないで欲しいわ。もしかして安売りされた愛の言葉を欲している女だって見積もられている?」
「感情がジェットコースターかよ。エリンへの解像度が低い事が露呈してしまった事は素直に謝るよ。失敬、失敬。」
さっきのエリンの物真似をしながら謝った。
「あーそうやって直ぐに、あたしの事を弄るのかー。もう知らないもんね。こんな可憐な美少女を怒らせるなんて罰当たりな男よ。」
椅子を引き徐に立ち上がり鞄に手を伸ばした。
「おいおい、鞄を持って帰ろうとするんじゃないよ。帰った所で特にやる事も無くどうせ暇だろ?」
またいつもの帰るフリをして俺の気を引こうとしているのが見え見えだったので右手で頬杖を着きながら言った。
「残念。皆目、見当違いだったね。手にした鞄はこうやって使うんだよ。」
そう言い放ち教科書や筆箱等が沢山入った鞄を勢いをつけて俺の左頬を目掛けて大きく振りかぶった。
「痛ってえな。学校指定品で武装するんじゃないよ。」
「残念ね。華奢な女子に武装させてしまったセツナが悪いのよ。ここまで言われないと分からないの?」
「なんだ?応戦してやろうか?エリンがその気ならこっちだってやってやんよ。」
「ふーん。やれるもんならやってみたら?誰に手を出すか分かった上での発言って事で間違いは無いよね?」
エリンは負けじと売り言葉に買い言葉で応戦した。
俺がエリンの制服に掴み掛ろうとしたが距離を詰める前に鞄を大きく振り回し始めた。
「おい危ないだろ。」
「セツナだってその気でしょう?止めれるものなら止めてみたら?」
さっと鞄を躱し懐に入り込み縦横無尽に暴れる鞄を制止する。
漸く攻撃が止んだと安堵したその刹那、教室前方のドアがガラガラと開いた。
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