Tumgik
#霊性開花クラス
kozuemori · 23 days
Text
Tumblr media
私の最近の日課は、早朝のバラを楽しむことです。フルーツ、紅茶、ミルラに似たいい香りを胸いっぱいに吸い込みながら、その美しい姿から元気をもらっています。無農薬で育てているので、虫たちが葉っぱを美味しそうに食べる様子もまた、可愛いです。穴だらけの葉もご愛嬌。例年通り、春の最初の花は色も鮮やかで形も大きく、花びらの数も多くて強い芳香がします。去年一度も花をつけなかった白いツルばらも、今年はたくさん咲きそうです。(写真は我が家のバラたち)
植物を育てていると霊性開花の過程を思わせることが多く、たくさんのヒントが隠されているように感じます。蕾もつけず、葉も落ち、枝も細くなり、すっかり元気がなくなったこの白いツルばらを少々持て余し気味だったのですが、去年の秋に思い切った剪定をし、肥料も十分に与え、より太陽の光が当たる場所に移動してみたところ、今年の春先からぐんぐん成長し始めたのです。新しいシュートを伸ばし、若草色の柔らかな葉をたくさんつけ始め、小さな蕾が現れ始めた時の感激といったら…。人もまた、時に実力を十分に発揮できなかったり、落ち込んだり、運に見放されたと感じたり、二度とチャンスは現れないと思い込んだりしますが、バラたちの成長を見ていると実にマイペースでおおらかです。今年がダメなら来年があるさ、とでも言いたげな様子で、ゆったりと呑気に風に吹かれています。
そんなバラたちに振りまわされ、一喜一憂し、あれこれと気を揉んでいるエゴだらけの私。必要な手入れをしながら努力を惜しまず、希望を捨てず、成長を信頼して委ねることの大切さを、バラを育てながら学んでいます。また、バラのおおらかさと慎ましさ、マイペースさ、そして変化を恐れない姿をこれからも見習っていきたいです。
今週見かけた、スピリチュアル関係のニュースをご紹介します。まずは、こちら。
俳優という職業は、自分以外のキャラクターを自分という媒体を使って演じる一種のミディアムなのでしょう。スピリチュアリズムを最初に紹介した俳優は、シャーリー・マクレーンかもしれません。彼女の著作『アウト・オン・ア・リム』は、私が20歳頃に読んだ最初の”スピリチュアル”本です。そこからこの本の訳者であった山川ご夫妻が手がけた本を片っ端から読み漁り、亜希子さんのお話会に参加したり(会場が当時の家から歩いて1分のところでした)と、スポンジのように私がずっと知りたかったことはこれだ!とばかりに吸収していました。当時、シャーリー・マクレーンほどの有名人が自らの神秘体験を語ることは、そのキャリアが危ぶまれるほどリスキーだったと思います。『アウト・オン・ア・リム』から40年、これからさらに有名人を含むたくさんの人がスピリチュアルな体験談をカジュアルに話し、霊感があることが当たり前になったら、スピリチュアリズムへの偏見や誤解も少なくなってゆくでしょう。
偏見といえば、こちらのニュースもありました。
この番組を見ていないので想像でしかないのですが、一般的に心霊番組では霊の存在を必要以上にセンセーショナルに描写したり、災いをもたらすもの、恐ろしいものとして扱い、視聴者もそれを期待することが多いようです。また、特定の霊を呼んで交信する場面も多く見うけられます。
私は霊を怖いと思ったことは今まで一度もありませんし、ミディアムシップの中で恐ろしい姿の霊が現れたこともありません。ミディアムを続けていられるのも、霊が愛と癒しに溢れる存在だと知っているからですし、霊界が私を道具として引き続き使ってくださっているからです。全ては霊界の采配によってミディアムシップは行われます。ですから、こちらが特定した霊と交信する事もできないとされています。生きている人間と同じように、霊もプライバシーと尊厳を持っています。そして、生きている人間以上に霊はエゴのない無条件の愛を持ち、見えないものの大切さに気付かせてくれるのです。
今週からZoomクラスが始まりました!今学期もまたクラスにたくさんの光を持ち寄ってくださる皆さまと、夏の日差しに負けないくらいの明るい光を浴びながら共に霊性開花を学びたいと思います。まだお申込みいただけるクラスもあります。ご参加をお待ちしています!
Tumblr media
夏学期クラスはサイトとショップからお申し込みいただけます。(アイイスのサイトでも告知されています)
春学期に蒔いた霊性開花という名の種を、眩しい太陽と清らかな水、豊かな土壌、そして爽やかな夏の風のエネルギーを享受しながら、共に大切に育んでゆきませんか?皆さまのご参加をお待ちしています!
アウェアネス・ベーシック前期 Zoomクラス 
月曜日:10:00~12:00 開催中止 日程:5/13、5/27、6/10、6/24、7/8
火曜日:10:00~12:00  日程:5/7、5/21、6/4、6/18、7/2
・・・・・
アウェアネス・ベーシック後期 Zoomクラス   
土曜日:19:00~21:00  日程:5/11、5/25、6/8、6/22、7/6
・・・・・
アウェアネス・ベーシック通信クラス
開催日程:全6回 お申し込み締め切り:5/15
・・・・・
アウェアネス・オールレベルZoomクラス
火曜日:19:00~21:00  日程:5/14、5/28、6/11、6/25、7/9
木曜日:10:00〜12:00 日程:5/9、5/23、6/6、6/20、7/4
・・・・・
アウェアネス・マスターZoom クラス
火曜日:19:00〜21:00 日程:5/7、5/21、6/4、6/18、7/2
金曜日:19:00〜21:00 日程:5/17、5/31、6/14、6/28、7/12
・・・・・
サイキックアートZoomクラス
日曜日:17:00~19:00  日程:5/12、5/26、6/9、6/23、7/7 水曜日:16:00~18:00  日程:5/15、5/29、6/12、6/26、7/10
・・・・・
インナージャーニー 〜瞑想と内観〜 Zoomクラス  
月曜日:16:00~17:00   日程:5/20、6/3、6/17、7/1、7/15
土曜日:10:00~11:00 日程:5/11、5/25、6/8、6/22、7/6
・・・・・
マントラ入門 Zoomクラス  
土曜日:13:00~15:00 日程:5/18、6/1、6/15、6/29、7/13
・・・・・
トランスZoomクラス
土曜日:19:00~21:00  日程:5/18、6/1、6/15、6/29、7/13
・・・・・
サンスクリット・般若心経 Zoomクラス 
月曜日:13:00~15:00   日程:5/20、6/3、6/17、7/1、7/15
水曜日:19:00~21:00   NEW! 日程:5/15、5/29、6/12、6/26、7/10
サイトのクラス紹介ページはこちらです。
継続受講の方は直接ショップからお申し込みください。
・・・・・
サンデー・サービス(日曜 12:30〜14:00)詳細はこちらから。
5月19日   担当ミディアム:澤輪・森
6月30日  担当ミディアム:ゲスト・森
ご参加は無料ですが、一口500円からの寄付金をお願いしています。
当日は以下のリンクよりご参加ください。
・・・・・
ドロップイン・ナイト 木曜日 19:00〜20:00
5月23日(木)指導霊(スピリット・ガイド)のサイキックアート
詳細とお申し込みはこちらからどうぞ。
過去の開催の様子はこちらからご覧ください。
0 notes
deisticpaper · 1 year
Text
蜃気楼の境界 編(一二三四)
Tumblr media
「渦とチェリー新聞」寄稿小説
連載中のシリーズ、第一話からの公開、第七話まで。第八話以降、朗読版に繋がり、最新話に辿り着けます。
Tumblr media
蜃気楼の境界 編(一)
序件
 赤に黄を混ぜると橙になるとか、分子だとか原子だとか、決まりごとで世界を理解した気になれるとしている人達の視た光景が世界の基準になっていることがそもそも気に食わないと、二〇一六年春、高校一年生になったばかりの渡邉咲は思っている。彼女はやがてクラスに、背が高く視力の悪い市川忍という一見平凡な男子生徒がいることに気づくだろう。麗らかな新大久保、韓国料理店をはじめとした多国籍渦巻く通り、彼女よりも背の高い通行人達の隙間を縫いながら気分よく和楽器専門店へ向かう道すがら、迷いのない機敏さですれ違った、いつだったか見たような気のする少女に勘が働き、あとを追うと、二人の男が対立していたのだ。さっぱりとした面立ちの男が軽やかに束感ショートの若い警部補に、これは高橋さんお久しぶりです、と話しかけるが、その警部補は、探偵に用はないよ、と軽くあしらう。少女は、この探偵と警部補の間を通り過ぎ、可憐に立ち止まり、一、三、三十、千五百と口にしたのだ。新規上場企業連続殺人事件の際はな仲本慧きみのお世話になったが、警部補がいう、本当に高くついたよ闇のポケットマネーだった、今回の捜査はもう済んでいる高知県岡内村の淵に発見された男の水死体はここのホステスとの恋の縺れで半グレが実行したと調べがついている。ところが、探偵仲本慧は、隠れて話を聞いていた渡邉咲が耳を疑うようなことを坦々と喋りだしたのだ。少女崔凪が口にした数から推理するに、彼女の身長百五十センチが百五十万μm(マイクロメートル)だね、目視可能な基準五十μmより小さい花粉が三十μmで飛沫や通常マスクの捕獲サイズが三μmで細菌は一μm、零点三μmはN95マスク捕集サイズ、零点一μmはインフルエンザやコロナのウイルスサイズつまり著名なウイルスは人間の千五百万分の一の小ささでその一回り大きい細菌が百五十万倍の少女を視れば頭は火星にあり地球からの距離十三光分だね月までなら一点三光分、符号、十三、仲本慧が楕円を描くようにぐるぐる歩く、火星は周期七百八十日で地球に近づき月との接近を天上で愉しめるわけだが今年はそれに当たる、七百八十と十三に関係する郵便番号が高知市青柳町で、そこに住む犯人は七百八十日周期で男を殺しに東京を訪れる。
 雑居ビルの階段下で警部補は少女崔凪を見、腰を低くし、初めまして警部補の高橋定蔵だ、二年前はお世話になったがきみは知ってるのかな、という。崔凪は強い瞳のまま無言。警部補は探偵に、依頼はしてないから助言と受け取るがどうして事件を追ってる。陰で話を聞きながら、渡邉咲は胸を熱くしている。着信音がする。それを無視した仲本慧、曰く、単なる不倫調査で慧探偵事務所の探偵チームはターゲットの男がある女とホテルへ入るところを写真に収めたが依頼の追加でその女のプロファイルを求められたという。追加依頼を探偵チームに投げようとしたとき事務所に遊びにきた崔凪が、一、三、三十、千五百と自ら口にしたのだ。推理から、と仲本慧はいう、写真に収めた女は、蜃気楼だと気づいた、真の不倫相手の女、つまり犯人が、虚の像を追わせたのさ、ここのホステスは事件の蜃気楼、無関係だね。渡邉咲は、どういうこと、と驚くが、何度か鳴っていた事務所からの着信を仲本慧が受けて、崔凪に、さぁ行こう、と告げ、去り際、ふと足元を見、ツバキの花は境界に咲くというが、現世と魔界の境界にも咲くんだね、と笑みを浮かべる。警部補は二人を追わず高知警察署へ連絡しているらしい。数日後、高知の青柳町に住む女、宮地散花が連続殺人容疑で逮捕されたことを渡邉咲はニュースで知り、午前の授業中はずっと雑居ビルの階段下でのやりとりの記憶に捕らわれ、探偵仲本慧の絡んだ事件の真相って境界の狭間に咲く花のよう、と夢見心地になるが、少女崔凪による真相は、甲乙ムの三文字の一体である鬼を抱く宮地散花が千五百年つまり明応九年に践祚した後柏原天皇の詠んだ歌、心だに西に向はば身の罪を写すかがみはさもあらばあれ、に心打たれるも意味を取り違え、三十人の男の供養を願ったことに始まる。その鬼の念、情景を歪ます程に強く、探偵や警察を巻き込み、一高校生渡邉咲さえ巻き込んだが、彼女は探偵仲本慧による更なる次元さえ加わった渦の中でときめいている。その様は、クラスメイトの市川忍の何かを揺るがしたのだ。窓の下、体育館でのバスケの授業をずっと眺めていた市川忍は、突然渡邉咲の存在に気づき、それは彼のもう一つの人格、仟燕色馨の方が先だったかもしれない。胸騒ぎだ。
蜃気楼の境界 編(二)
書乱
 春の夕、上海汽車メーカーの黒い車が高田馬場駅は西、高校の校門を通過し、停車する。奇妙な車がよぎった、脳裏より声。授業も聞かず窓の下、体育館でのバスケの授業をぼんやりと眺めていたが、脳裏に響く声に高校一年生の市川忍、カジョウシキカ唐突に何だよ、と聞く。一昨年にきみを冗談交じりに犯人と疑ってみせた探偵がいたのを覚えてないか。そう問われたものの市川忍は思いだせず、それがどうかしたのと内側へ声を。すると、微かなタイヤの摩擦音と停車音の比較から目的地はすぐ側の一軒家だろうちらと見えた、運転手がその探偵だ、という。この七年前は二〇〇九年五月、関西の高校生から広く流行した新型インフルエンザ以降雨の日以外つねに窓が少し開けられている。空気は生ぬるい。チョークの音。市川忍、幾つか机の離れた席に座る渡邉咲に視線を送る。チャイムの音が鳴り、放課後、別のクラスの生徒、石川原郎がやってきて無造作に横の机に座り、市川おまえ高校はバスケ部入らないの。まあね。受け応えしながら机の中の教科書類を鞄にしまっていく。渡邉咲立ち上がり、教室の外へ。一書に曰く(あるふみにいわく)と仟燕色馨の声が響く、混沌のなか天が生まれ地が固まり神世七代最初の神、国常立尊が生まれたが日本書紀に現れない五柱の別天津神がそれより前にいて独神として身を隠したというのが古事記の始まりということは教科書にも書かれていたが先程の古文の教師はイザナギとイザナミの二神から説明した、これもまた一書に曰く、数多の異神生まれし中世ではアマテラスは男神ですらあり中世日本とは鎌倉時代からつまり末法の世まさに混乱した世の後で超自然思想は流行り無限の一書織り成す神話に鎮座し人々は何を視ているのか、きみが気にしている渡邉咲、退屈そうに探偵読本を机の中に置いていった、大方、探偵に夢を見、探偵業に失望したのだろう、数分の場所に探偵がいる。市川忍は脳裏に響くその声をきっかけにし会話一つ交わしたことがない渡邉咲のあとを必死で追う。走りながら、どう呼びかけるのかさえ決めていない。仟燕色馨のいう一軒家は平成に建てられた軽量鉄骨造で、渡邉咲が通り過ぎた頃合いで咄嗟にスマホを耳に当て、探偵が入っていった、と強く言う。驚き、振り返る渡邉咲。
 目黒にて桜まじ、遊歩す影二つ。吹く風に逸れ、冷たし。怪異から死者が幾人、立入禁止とされた日本家屋をちら見し、一つの影、あァお兄様さらなる怪奇物件作りどういたしましょうと口元を手で隠し囁く明智珠子に兄、佐野豊房が陽炎のごとき声で私達はね共同幻想の虚空を幽霊のように漂っているんです、井戸の中で蛙は鬼神となりたむろする魍魎密集す地獄絵図の如き三千大千の井戸が各々の有限世界を四象限マトリクス等で語る似非仏陀の掌の架空認識から垂れ下がる糸に飛びつき課金ならぬ課魂する者達が世を牛耳りリードする妄想基盤の上で生活せざるを得ないならば、宇宙に地球あり水と大地と振動する生命しかない他のことは全て虚仮であるにもかかわらず。明智珠子がその美貌にして鼻息荒く、あの探偵とだけは決着を付けなければいけませんわ、家鳴の狂った解釈で恐怖させる等では物足りません残酷な形で五臓六腑ぶちまけさせなければ気が済みません。佐野豊房は、だがただ凍風を浴びるがままである。翌週は春暑し、件の探偵仲本慧はそれでも長袖で、奇妙な失踪調査依頼で外出している。我が探偵チームが二日で炙りだしたターゲットの潜伏ポイントは男人結界つまり男子禁制の聖域だからねと探偵事務所二番窓口女性職員橋本冷夏にいう、琉球神道ルーツの新興宗教だそうだ。いつも思うんですが年中長袖で暑くないんですか。東京中華街構想があった年と探偵仲本慧プロファイルを口にする、同士と約束したんだねハッタリ理由に青龍を肌に翔ばす気がなかったから年中長袖を着る決着にしたわけだ。えっ、一体何が。その会話を引き裂かんとついてきていた少女崔凪、突飛な言葉を口にする、卑弥呼は、自由じゃない。ハッとし振り返った仲本慧問いかける、今回の件、どう思う。崔凪、気分良さげにいう、男子禁制だから教えられない。生暖かい風が東京湾から。晴海アイランドトリトンスクエアをぐるっと回ってみたわけだが、と元の駐車場に踏み入った仲本慧、あれはかつて晴海団地があった土地だね、我が探偵チームが弾き出した潜入ポイントにも寄った方がいいかもしれないね。そうして訪ねた一軒家の門の外、仟燕色馨を秘める二重人格者は市川忍と、探偵仲本慧を気にする渡邉咲、二人の高校生が現れたのだ。
蜃気楼の境界 編(三)
朔密
 白雨あったか地が陽を返す。探偵との声に驚き振り返る渡邉咲の前に市川忍。彼をクラスメイトと理解する迄に数秒。バスケ部上がりの忍は別世界の男子生徒に見えたし圧も弱く視野外にあったのだ。水溜りを踏んで市川忍は彼のもう一つの人格仟燕色馨と心の内側で会話をしている。探偵が入っていったとスマホを片手に口にしたが通話はしていない。咲に向け、ここで事件が起こっているから静かに、俺には知り合いに探偵カジョウシキカがいて今彼と話していると囁くように言い、表札にある「朔密教」と火と雫の紋章、白い香炉を模った像をちらと見、呼び鈴を鳴らす。片や探偵仲本慧はその軽量鉄骨造の一軒家の門の斜め向かい、車中にいる。突然現れた高校生の男女がターゲットの家の呼び鈴を鳴らしたことで注目する。ガチャと鳴り玄関から高齢の女、倉町桃江が姿を見せ咲を見ると、何か用ですか、と聞く。戸惑う咲の前に出、忍、朔密教の見学に来たのですが、というと、男子禁制ですから、そちらのお嬢さんだけでしたら。運転席の仲本慧とともに慧探偵事務所窓口職員橋本冷夏が後部座席から降りるが助手席に座る少女崔凪は出てこない。通り雨は天気予報になかったねと口にしながら歩み寄る仲本慧を間近に見た咲が紅潮する。仲本慧が高校生二人を一瞥し、倉町桃江をじっと見つめ、貴女がここの教主ですか、こちらの橋本冷夏が見学に来たのですが。ぬるい風に織り混ざる卦体。そうですか。倉町桃江は表情一つ変えず、弥古様はおられませんが、さ、どうぞ、屋内へ���える。門前に探偵と忍と咲が残る。脳裏の声に促されて忍、何か事件でもあったんですか、と慧に。素性を見抜かれた質問を受けた慧はほんの僅か忍を見、ああきみは以前事件のときに少し話かけた学生だね、とにっこり笑いながら名刺を差し出し、慧探偵事務所の仲本慧だ、困ったことがあればいつでも訪ねてくるといい金額は安くはないけどね、そう話を逸らす。スマホを耳にあてた忍は仲本慧の目をじっと見て、知り合いの探偵と連絡を取りあってるところでもしかしたら同じ事件を追ってるのかも、弥古様を、と挑発する。ここに、咲の目前で、二人の探偵の戦いの火蓋が切られたのだ。咲の気をひく為に市川忍によって仟燕色馨が探偵とされた顛末である。
 門と玄関の境界の片隅、雨露に濡れるツバキの花に気づくのは、仲本慧のスマートフォンに朔密教内部に潜入した橋本冷夏から失踪調査対象は石文弥古の姿見当たらずとのメッセージが届き、車内の崔凪に視線を送った直後、片や、市川忍の視界には、はらはら雪が舞い、脳裏に津軽三味線の旋律流れ、声響く、曰く、表札に火と雫の紋章があったがイザナミが命を落とすきっかけ火の神カグツチを当てれば雫はその死悲しむイザナギの涙から生まれしナキサワメであり白と香炉を模った像から琉球の民族信仰にある火の神ヒヌカンを合わせれば朔密教の朔は月齢のゼロを意味し死と生と二極の火の神を炙り出せるだろう男子禁制からヒヌカンによる竈でのゼロの月の交信を弥古様は隠れて行い目的はイザナミの復活か、次元異なる宗教織り成す辺りの新宗教らしさから朔密の密を埋没神と見るなら竈は台所更には死した大いなる食物の神オホゲツヒメの復活とも関連し故に弥古様は台所を秘めたる住処、家としている。この象徴的絵解きのごとき推理の意味が市川忍は何も分からなかったが解が台所であることのみ理解しスマホへ向け成程仟燕色馨、君の言う通りだ敢行するしかないねと言い渡邉咲を見、ねぇ仟燕色馨から君にお願いがある、この中は男子禁制、だから、と耳元に。咲はこのとき、心を奪われたのだ、市川忍ではなく、仟燕色馨の方に。現場が男子禁制ゆえに崔凪の手助けが得られず動揺して仲本慧は自力で推理する。ここへ来る前に出向いたかつての晴海団地はダイニングキッチンが初導入されそれを一般家庭に普及させた歴史的土地で朔密教が琉球神道ルーツの新興宗教であることは調査班の報告で分かっているから潜入した橋本冷夏は台所へ案内されている筈、儀式は日々そこで行われるが石文弥古の姿はないという、ならどこに。その事務的に戸惑った様子が渡邉咲には探偵読本にもあった只の組織である商売人の探偵にしか見えなかったのだ。咲は仲本慧を背にして走り、玄関をくぐり、朔密教内部に潜入する。だが、濡れた車、助手席から出てきた少女崔凪が数字の羅列を呟き、仲本慧は、そうか分かったぞ、と声をあげて橋本冷夏に通話する。崔凪が、涼しい顔でのびのびと呟く、負けるくらいなら今だけ男子禁制じゃなくてもいいかな。
Tumblr media
蜃気楼の境界 編(四)
你蜃
 燻銀の月が空に二人の高校生公園で座る。笙の天音が鳴り、お母さんだ、とラインの返信をしながら渡邉咲、探偵カジョウシキカは推理で勝っていた、と市川忍を見、探偵仲本慧に出会ったきっかけはそもそもあの少女崔凪だったと思いだす。一昨年にこの公園で鼻歌交じりハーブの栽培をしてた子だ、だから見覚えがあったんだ、と。軽量鉄骨造一軒家、朔密教本部から出てきた探偵職員橋本冷夏に、今宵は重慶三巴湯と青島ビールで宴会だね、と上海汽車メーカーの黒い車へ去る仲本慧の側にいた少女崔凪が高校生の二人をちらと見ふっと笑う。市川忍は悔しがるだけで、だがその内側に潜むもう一つの人格仟燕色馨は市川忍の瞳を通し崔凪をじっと見つめる、夜の公園で仟燕色馨、只の勝負なら勝敗などは所詮遊戯それに君も渡邉咲と親しくなり目的は果たしているだろうしかし慧探偵事務所は現世と魔界裏返りし境界ありこれは魔族の矜持に触れるゆえ既に仕掛けをしている君も再戦を覚悟してほしい、と。その脳裏からの声の本意を掴めない市川忍に、咲、貴方のお知り合いの探偵さんはどう言ってるの。その輝く瞳妖しく、市川忍はときめく反面恐怖を覚え、無意識にポケットから作業用の黒ゴム手袋をとりだす。刹那、何故か海峡で波を荒らげる雪景色に鳴り響く津軽三味線の調べが聞こえ、再戦を望んでると伝えると、只ならぬ興奮を見せて咲は喜ぶのだ。先刻、朔密教内部へ駆けていった咲は、仟燕色馨の伝言、台所の真下に女の住居有り、を忍から受け儀式行われし白い炊事場を目指したとき、倉町桃江の脇で動揺する橋本冷夏の姿を見たが、その元に着信が入り中国語で会話を始め、瞳に青龍の華が光れば、香炉、水、塩、生花を払い除け床下収納庫の先に階段を見つけると、独房のような地下室で失踪調査対象である石文弥古を発見、最早咲は事の成り行きを見届けるのみ、異変の只中で、少女崔凪の存在が頭によぎったのだ、確かに探偵仲本慧は推理が届かず動揺していた、何か得体の知れない事が起きたのだ。それにしても、咲は思う、探偵仟燕色馨どのような人なのかな、市川忍という同級生がどうして魅力的な探偵さんとお知り合いなの、ふふ、取りだしたその黒ゴム手袋は何、月がきれい、まるで、私の住む世界のよう。
 朔密教、明治に明日香良安が琉球神道系から分離し設立した新宗教である。分離したわけはスサノオに斬り殺されたとされるオホゲツヒメの復活を教義の核に据えた故で、同時期に大本で聖師とされる出口王仁三郎が日本書紀のみ一書から一度だけ名が述べられるイヅノメ神の復活を、同様に一書から一度だけ名が述べられるククリヒメの復活を八十八次元の塾から平成に得た明正昭平という内科医が朔密教に持ち込み妻の倉町桃江を二代教主に推薦し本部への男子禁制を導入、女埋没神の全復活によりイザナミ復活へ至る妻のお導きを深核とし今の形となる。女埋没神はイヅノメ神、オホゲツヒメ、ククリヒメの他に助かったクシナダヒメを除くヤマタノオロチの生贄とされた八稚女らがあり、更には、皆既日食により魔力が衰え殺されたとされる卑弥呼を天照大神と見定めての復活とも融合している。それらを依頼主に説明しながら仲本慧は殺風景な部屋で分厚い捜査費用を懐に入れ、他の探偵にも依頼してないかな、と冷えた目を向ける。依頼主である小さな芸プロのマネージャーは、業界に知られたくない件だから貴方を紹介して貰ったんだ、深入りはしない彼女どういう様子でしたと聞く。調査ではと仲本慧、社会にある数多の既存の道筋を歩めないという認識から石文弥古は芸能に道がないか訪ね、今は朔密教を訪ねているのだろうね、弟以外の人の来訪を絶ち鬼道を続けたとされる卑弥呼の形式で、倉町桃江の最低限の関わり以外を完全に断って地下で儀式を八十八日間続ける任務を受け入れた石文弥古は、我が優秀な女子社員いわく、自らの意志とのことだ。屋外へ出、仲本慧、通話し、高校生市川忍を調査して、という。崔凪の口にした数は、四四八、二四七、一三七。仲本慧はタワマン供給実績数を推理し晴海団地へ出向いたわけだがその推測は二〇二一年の上位三都府県に予知のごとく一致し、崔凪はのちに数列に隠していた八十八を付け足し、慧の推理は台所の地下へと変化したが、二四七が卑弥呼の日食の年を指すように、海とされるワタツミ三神がたとえ人智の蜃気楼であってもなくても推理と崔凪の真意とが違っても。仲本慧は思う、人々は、この街は大地は、紀元前、胡蝶の夢は一介の虚無主義ではない知が、華が、騒いでいる。
by _underline
蜃気楼の境界 編(五六七)へ
0 notes
myonbl · 4 years
Text
2020年9月7日(月)
Tumblr media
私の職場(私立女子大学)では、コロナ渦のもと「三密対策の徹底」をうたって学年暦(スケジュール)を通常通りこなしてきた。後期授業の開始が予定通りの9/21(月)、ただし「遠隔授業」の可能性もあるので全科目で Google Classroom を導入することになり、準備が完了したとの連絡が届いた。まだ2週間、もう2週間・・・。
Tumblr media
リゾット+ヨーグルト+豆乳。
三男は休み、他は出勤。
洗濯1回。
朝一番で、昨日用意しておいた「ETCマイレージ」の ID 再発行申請書を投函する。
チャイムが鳴って出てみると交通安全協会の職員、車庫証明の確認作業である。
教学センターからメール、後期科目の Google Classroom の準備が出来たとのこと。私は前期の「現代社会論」で利用しようとしたが、受講生の中にログイン出来ないものがいた。学生の通信環境は、大丈夫だろうか。
後期は6科目8クラスの担当、とは言え、「インターンシップ」はすでに中止が決定しているし、「人権論」は受講生��少ないので「不開講」となるはず。それでも、第8週までは週4日出勤する必要がある。
西大路花屋町・セブンイレブンで金をおろし、セントラルスクエアで買い物用プリペイドカードにチャージ。鶏モモ肉、レタス、セロリ、トマトを購入。
このところ、毎日ストウブで「無水ミネストローネ」を作っている。夜はスープとして、朝はリゾット、昼はご飯か麺と一緒の野菜タップリ生活である。
Tumblr media
ランチ、息子には素麺、私はスパゲッティにミネストローネ。
Tumblr media
明日は IM嬢と「出来る女プロジェクト(番外編)」のために京都駅で待ち合わせ、macOS の「プレビュー」で画像編集した地図を送る。
Tumblr media
録画番組視聴。
中島みゆき名曲集~豪華トリビュートライブ&貴重映像~
15年11月に行われた「中島みゆきRESPECT LIVE 歌縁」。大竹しのぶさんから満島ひかりさんまで幅広い世代の豪華アーティストがステージで披露した名曲の数々。さらに中島みゆきさん本人のライブや「夜会」の映像もたっぷりとお届けします。演奏曲:「糸」「命の別名」「空と君のあいだに」「わかれうた」「化粧」「あばよ」「黄砂に吹かれて」「怜子」「ファイト!」「地上の星」「世情」「麦の唄」「時代」ほか。
4年前の放送だが、その時も見ていた。ライブを収録したCD、今となっては YouTube にアップされているので買わない、買わない。
腹筋30回。
夕飯用に、シシトウの甘辛煮・ナスのごまナムルを作る。
Tumblr media
今夜のメインは「豚とレタスのうまみ蒸し」、ミネストローネを先にいただくと、全体の摂取量が減って食べ過ぎ防止効果がある。もちろん、「平日休肝日プロジェクト」は継続中である。
Tumblr media
落語視聴、今夜は<古今亭菊之丞『大山詣り』【9月5日プレミア公開アーカイブ】>、夏の定番、安定の上手���。
Facebook から「不正アクセス」の通知、パスワードを変更する。
Tumblr media
amazonの誘惑に負けて、kindle で「あだち充・Q&A(全6巻)」購入。
あだち充が「タッチ」以来久々に描く兄弟の絆!!
6年ぶりに生まれ故郷に帰ってきた庵堂厚。 その街は、6年前にたった一人の兄を事故で失った街。そして気になる幼なじみの女の子、前沢遊歩の暮らす街でもあった。 そんな厚の前に現れたのは、死んだはずの兄・庵堂久の幽霊!!? とんでもない再会を果たした庵堂兄弟の運命は…!?
いかんいかん、一気に読んでしまった。
入浴。
足踏み30回。
Tumblr media
作業に夢中で、2度目の買物をサボってしまった。
4 notes · View notes
xf-2 · 5 years
Link
最初の特攻を命じたことによって、「特攻の産み親」と呼ばれることになった大西瀧治郎中将は、天皇が玉音放送を通じて国民に戦争終結を告げたのを見届けて、翌16日未明、渋谷南平台の官舎で割腹して果てた。
特攻作戦を採用した責任者といえる将官たち、前線で「おまえたちだけを死なせはしない」と言いながら特攻を命じた指揮官たちの中で、このような責任のとり方をした者は他に一人もいない。
そして、ひとり残された妻・淑恵さんも、戦後、病を得て息を引き取るまで33年間、清廉かつ壮絶な後半生を送っていた。
最初の慰霊法要に駆け込み、土下座した貴婦人
終戦の翌年、昭和21(1946)年3月のある日、全国の有力新聞に、
〈十三期飛行専修予備学生出身者は連絡されたし。連絡先東京都世田谷区・大山日出男〉 との広告が掲載された。
空襲で、東京、大阪、名古屋はもちろん、全国の主要都市は灰燼に帰し、見わたす限りの廃墟が広がっている。
連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)は昭和21年1月、「公職追放令」を出し、旧陸海軍の正規将校がいっさいの公職に就くことを禁止した。日本の元軍人が集会を開くことさえ禁じられ、戦犯の詮議も続いている。広告を見て、「戦犯さがし」かと疑う者も少なからずいたが、呼びかけ人の大山のもとへは全国から続々と連絡が寄せられた。
戦争が終わってこの方、掌を返したような世の中の変化で、生き残った航空隊員には「特攻くずれ」などという侮蔑��な言葉が投げかけられ、戦没者を犬死に呼ばわりする風潮さえもはびこっている。そんななか、大勢の戦友を亡くして生き残った者たちは、戦没者に対し、
「生き残ってすまない」
という贖罪の気持ちをみんなが抱いている。それは、はじめから陸海軍を志した、いわばプロの軍人も、戦争後期に学窓から身を投じた予備士官も、なんら変わるところがない率直な感情だった。
「十三期飛行専修予備学生」は、大学、高等学校高等科、専門学校(旧制)を卒業、または卒業見込の者のうち、10万名を超える志願者のなかから選抜された5199名が、昭和18(1943)年10月、土浦、三重の両海軍航空隊に分かれて入隊、特攻戦死者448名をふくむ1616名が戦没している。呼びかけに応じて集まった予備学生十三期出身者たちの意思は、
「多くの戦没者同期生の慰霊こそ、生き残った者の務めである」
ということで一致した。そして、同期生たちが奔走し、GHQ、警察、復員局の了承をとりつけて、ふたたび10月30日の新聞に、
〈十一月九日、第十三期飛行専修予備学生戦没者慰霊法要を東京築地本願寺にて行ふ〉
と広告を出し、さらにNHKに勤務していた同期生の計らいで、ラジオでも案内放送が流れた。
昭和21年11月9日、国電(現JR)有楽町駅から築地まで、焼跡の晴海通りを、くたびれた将校マントや飛行靴姿の青年たち、粗末ななりに身をやつした遺族たちが三々五々、集まってきた。築地本願寺の周囲も焼け野原で、モダンな廟堂の壁も焦げている。寺の周囲には、機関銃を構えたMPを乗せたジープが停まって、監視の目を光らせている。焼跡のなかでその一角だけが、ものものしい雰囲気に包まれていた。
広い本堂は、遺族、同期生で埋め尽くされた。悲しみに打ち沈む遺族の姿に、同期生たちの「申し訳ない」思いがさらにつのる。読経が終わると、一同、溢れる涙にむせびながら、腹の底から絞り出すように声を張り上げ、「同期の桜」を歌った。
歌が終わる頃、一人の小柄な婦人が本堂に駆け込んできた。「特攻の父」とも称される大西瀧治郎中将の妻・淑惠である。
大西中将は昭和19(1944)年10月、第一航空艦隊司令長官として着任したフィリピンで最初の特攻出撃を命じ、昭和20(1945)年5月、軍令部次長に転じたのちは最後まで徹底抗戦を呼号、戦争終結を告げる天皇の玉音放送が流れた翌8月16日未明、渋谷南平台の官舎で割腹して果てた。特攻で死なせた部下たちのことを思い、なるべく長く苦しんで死ぬようにと介錯を断っての最期だった。遺書には、特攻隊を指揮し、戦争継続を主張していた人物とは思えない冷静な筆致で、軽挙を戒め、若い世代に後事を託し、世界平和を願う言葉が書か���ていた。
昭和19年10月20日、特攻隊編成の日。マバラカット基地のそば、バンバン川の河原にて、敷島隊、大和隊の別杯。手前の後ろ姿が大西中将。向かって左から、門司副官、二〇一空副長・玉井中佐(いずれも後ろ姿)、関大尉、中野一飛曹、山下一飛曹、谷一飛曹、塩田一飛曹
昭和19年10月25日、マバラカット東飛行場で、敷島隊の最後の発進
淑惠は、司会者に、少し時間をいただきたいと断って、参列者の前に進み出ると、
「主人がご遺族のご子息ならびに皆さんを戦争に導いたのであります。お詫びの言葉もございません。誠に申し訳ありません」
土下座して謝罪した。淑惠の目には涙が溢れ、それが頬をつたってしたたり落ちていた。
突然のことに、一瞬、誰も声を発する者はいなかった。
われに返った十三期生の誰かが、
「大西中将個人の責任ではありません。国を救わんがための特攻隊であったと存じます」
と声を上げた。
「そうだそうだ!」
同調する声があちこちに上がった。十三期生に体を支えられ、淑惠はようやく立ち上がると、ふかぶかと一礼して、本堂をあとにした。これが、大西淑惠の、生涯にわたる慰霊行脚の第一歩だった。
生活のために行商を。路上で行き倒れたことも
同じ年の10月25日。港区芝公園内の安蓮社という寺には、かつて第一航空艦隊(一航艦)、第二航空艦隊(二航艦)司令部に勤務していた者たち10数名が、GHQの目をぬすんでひっそりと集まっていた。
関行男大尉を指揮官とする敷島隊をはじめとする特攻隊が、レイテ沖の敵艦船への突入に最初に成功したのが、2年前の昭和19年10月25日。三回忌のこの日に合わせて、一航艦、二航艦、合計2525名の戦没特攻隊員たちの慰霊法要をやろうと言い出したのは、元一航艦先任参謀・猪口力平大佐だった。安蓮社は、増上寺の歴代大僧正の墓を守る浄土宗の由緒ある寺で、住職が猪口と旧知の間柄であったという。
神風特攻隊敷島隊指揮官・関行男大尉。昭和19年10月25日、突入、戦死。最初に編成された特攻隊4隊(敷島隊、大和隊、朝日隊、山桜隊)全体の指揮官でもあった。当時23歳
昭和19年10月25日、特攻機が命中し、爆炎を上げる米護衛空母「セント・ロー」
寺は空襲で焼け、バラックの一般家屋のような仮本堂であったが、住職は猪口の頼みに快く応じ、特攻隊戦没者の供養を末永く続けることを約束した。この慰霊法要は「神風忌」と名づけられ、以後、毎年この日に営まれることになる。
遺された「神風忌参会者名簿」(全六冊)を見ると、大西淑惠はもとより、及川古志郎大将、戸塚道太郎中将、福留繁中将、寺岡謹平中将、山本栄大佐、猪口力平大佐、中島正中佐……といった、特攻を「命じた側」の主要人物の名前が、それぞれの寿命が尽きる直前まで並んでいる。
生き残った者たちの多くは、それぞれに戦没者への心の負い目を感じつつ、慰霊の気持ちを忘れないことが自分たちの責務であると思い、体力や生命の続く限り、こういった集いに参加し続けたのだ(ただし、軍令部で特攻作戦を裁可した事実上の責任者である中澤佑中将、黒島亀人少将は、一度も列席の形跡がない)。
東京・芝の寺で戦後60年間、営まれた、特攻戦没者を供養する「神風忌」慰霊法要の参会者名簿。当時の将官、参謀クラスの関係者が名を連ねるなか、淑惠は、亡くなる前年の昭和51年まで欠かさず列席していた
十三期予備学生の戦没者慰霊法要で土下座をした大西淑惠は、その後も慰霊の旅を続けた。特攻隊員への贖罪に、夫の後を追い、一度は短刀で胸を突いて死のうとしたが、死ねなかった。ずっとのち、淑惠は、かつて特攻作戦渦中の第一航空艦隊で大西中将の副官を勤めた門司親徳(主計少佐。戦後、丸三証券社長)に、
「死ぬのが怖いんじゃないのよ。それなのに腕がふにゃふにゃになっちゃうの。それで、やっぱり死んじゃいけないってことかと思って、死ぬのをやめたの」
と語っている。
大西瀧治郎中将(右)と、副官・門司親徳主計大尉(当時)。昭和20年5月13日、大西の軍令部次長への転出を控えて撮影された1枚
暮らしは楽ではない。夫・大西瀧治郎はおよそ金銭に執着しない人で、入るにしたがって散じた。門司は、フィリピン、台湾での副官時代、大西の預金通帳を預かり、俸給を管理していたから、大西が金に無頓着なのはよく知っている。淑惠もまた、金銭には無頓着なほうで、もとより蓄えなどない。
家も家財も空襲で焼失し、GHQの命令で軍人恩給は停止され、遺族に与えられる扶助料も打ち切られた。
昭和3年2月、華燭の典を挙げた大西瀧治郎(当時少佐)と淑惠夫人
自宅でくつろぐ大西瀧治郎、淑惠夫妻。大西が中将に進級後の昭和18年5月以降の撮影と思われる
焼け残った千葉県市川の実家に戻って、淑惠は生きるために商売を始めた。最初に手がけたのは薬瓶の販売である。伝手を求めて会社を訪ね、それを問屋につなぐ。次に、飴の行商。元海軍中将夫人としては、全く慣れない別世界の生活だった。
昭和22(1947)年8月上旬のある日、薬瓶問屋を訪ねる途中、国電日暮里駅東口前の路上で行き倒れたこともある。このとき、たまたま日暮里駅前派出所で立ち番をしていた荒川警察署の日下部淳巡査は、知らせを受けてただちに淑惠を派出所内に運び、近くの深井戸の冷水で応急手当をした。
「質素な身なりだったが、その態度から、終戦まで相当な身分の人と思った」
と、日下部巡査はのちに語っている。柔道六段の偉丈夫だった日下部は、元海軍整備兵曹で、小笠原諸島にあった父島海軍航空隊から復員してきた。後日、淑惠が署長宛に出した礼状がもとで、日下部は警視総監から表彰を受けた。だが、その婦人が誰であるか知らないまま8年が過ぎた。
昭和30(1955)年、日下部は、元零戦搭乗員・坂井三郎が著した『坂井三郎空戦記録』(日本出版協同)を読んで坂井の勤務先を知り、両国駅前の株式会社香文社という謄写版印刷の会社を訪ねた。日下部は、昭和19(1944)年6月、敵機動部隊が硫黄島に来襲したとき、父島から硫黄島に派遣され、そこで横須賀海軍航空隊の一員として戦っていた坂井と知り合ったのだ。
香文社を訪ねた日下部は、そこに、あの行き倒れの婦人がいるのに驚いた。そして、この婦人が、大西中将夫人であることをはじめて知った。日下部は淑惠に心服し、こののちずっと、淑惠が生涯を閉じるまで、その身辺に気を配ることになる。
淑惠が、坂井三郎の会社にいたのにはわけがある。
淑惠の姉・松見久栄は、海軍の造船大佐・笹井賢二に嫁ぎ、女子2人、男子1人の子をもうけた。その男の子、つまり大西夫妻の甥にあたる笹井醇一が、海軍兵学校に六十七期生として入校し、のちに戦闘機搭乗員となった。
笹井醇一中尉は昭和17(1942)年8月26日、ガダルカナル島上空の空戦で戦死するが、戦死するまでの数ヵ月の活躍にはめざましいものがあった。ラバウルにいたことのある海軍士官で、笹井中尉の名を知らぬ者はまずいない。
その笹井中尉が分隊長を務めた台南海軍航空隊の、下士官兵搭乗員の総元締である先任搭乗員が坂井三郎だった。笹井の部下だった搭乗員はそのほとんどが戦死し、笹井の活躍については、坂井がいわば唯一の語り部となっている。
坂井は、海軍航空の草分けで、育ての親ともいえる大西瀧治郎を信奉していたし、
「敬愛する笹井中尉の叔母ということもあり、淑惠さんを支援することは自分の義務だと思った」
と、筆者に語っている。
坂井は淑惠に、両国で戦後間もなく始めた謄写版印刷店の経営に参加してくれるよう頼み、淑惠は、実家の了解を得て、夫の位牌を持ち、坂井の印刷店のバラックの片隅にある三畳の部屋に移った。日暮里で行き倒れた数年後のことである。
だが、坂井には、別の思惑もある。淑惠が経営に関わることで、有力な支援者を得ることができると考えたのだ。坂井の謄写版印刷の店は、福留繁、寺岡謹平という、大西中将の2人の同期生(ともに海軍中将)ほかが発起人となり、笹川良一(元衆議院議員、国粋大衆党総裁。A級戦犯容疑で収監されたが不起訴。のち日本船舶振興会会長)が発起人代表となって株式会社に発展した。
出資金は全額、坂井が出し、名目上の代表取締役社長を淑惠が務めることになった。会社が軌道に乗るまでは、笹川良一や大西に縁のある旧海軍軍人たちが、積極的に注文を出してくれた。淑惠は、香文社の格好の広告塔になったと言ってよい。
「裏社会のフィクサー」の大西に対する敬意
淑惠には、ささやかな願いがあった。大西の墓を東京近郊に建て、その墓と並べて、特攻隊戦没者を供養する観音像を建立するというものである。
苦しい生活のなかから細々と貯金し、昭和26(1951)年の七回忌に間に合わせようとしたが、それは到底叶わぬことだった。だが、この頃から慰霊祭に集う人たちの間で、淑惠の願いに協力を申し出る者が現れるようになった。
大西中将は、まぎれもなく特攻を命じた指揮官だが、不思議なほど命じられた部下から恨みを買っていない。フィリピンで、大西中将の一航艦に続いて、福留繁中将率いる二航艦からも特攻を出すことになり、大西、福留両中将が一緒に特攻隊員を見送ったことがあった。このときの特攻隊の一員で生還した角田和男(当時少尉)は、
「大西中将と福留中将では、握手のときの手の握り方が全然違った。大西中将はじっと目を見て、頼んだぞ、と。福留中将は、握手しても隊員と目も合わさないんですから」
と述懐する。大西は、自身も死ぬ気で命じていることが部下に伝わってきたし、終戦時、特攻隊員の後を追って自刃したことで、単なる命令者ではなく、ともに死ぬことを決意した戦友、いわば「特攻戦死者代表」のような立場になっている。淑惠についても、かつての特攻隊員たちは、「特攻隊の遺族代表」として遇した。
「大西長官は特攻隊員の一人であり、奥さんは特攻隊員の遺族の一人ですよ」
というのが、彼らの多くに共通した認識だった。
そんな旧部下たちからの協力も得て、昭和27(1952)年9月の彼岸、横浜市鶴見区の曹洞宗大本山總持寺に、小さいながらも大西の墓と「海鷲観音」と名づけられた観音像が完成し、法要と開眼供養が営まれた。
昭和27年9月、鶴見の總持寺に、最初に淑惠が建てた大西瀧治郎の墓。左は特攻戦没者を供養する「海鷲観音」
その後、昭和38(1963)年には寺岡謹平中将の筆になる「大西瀧治郎君の碑」が墓の左側に親友一同の名で建てられ、これを機に墓石を一回り大きく再建、観音像の台座を高いものにつくり直した。
墓石の正面には、〈従三位勲二等功三級 海軍中将大西瀧治郎之墓〉と刻まれ、側面に小さな字で、〈宏徳院殿信鑑義徹大居士〉と、戒名が彫ってある。再建を機に、その隣に、〈淑徳院殿信鑑妙徹大姉〉と、淑惠の戒名も朱字で入れられた。
この再建にあたって、資金を援助したのが、戦時中、海軍嘱託として中国・上海を拠点に、航空機に必要な物資を調達する「児玉機関」を率いた児玉誉士夫である。児玉は、海軍航空本部総務部長、軍需省航空兵器総局総務局長を歴任した大西と親交が深く、私欲を微塵も感じさせない大西の人柄に心服していた。大西が割腹したとき、最初に官舎に駆けつけたのが児玉である。
昭和20年2月、台湾・台南神社で。左から門司副官、児玉誉士夫、大西中将
児玉は、昭和20(1945)年12月、A級戦犯容疑で巣鴨プリズンに拘置され、「児玉機関」の上海での行状を3年間にわたり詮議されたが、無罪の判定を受けて昭和23(1948)年末、出所していた。
巣鴨を出所したのちも、淑惠に対し必要以上の支援はせず、一歩下がって見守る立場をとっていた。「自分の手で夫の墓を建てる」という、淑惠の願いを尊重したのだ。だから最初に墓を建てたときは、協力者の一人にすぎない立場をとった。
だが、再建の墓は、大西の墓であると同時に淑惠の墓でもある。児玉は、大西夫妻の墓は自分の手で建てたいと、かねがね思っていた。ここで初めて、児玉は表に出て、淑惠に、大西の墓を夫婦の墓として建て直したいが、自分に任せてくれないかと申し出た。
「児玉さんの、大西中将に対する敬意と追慕の念は本物で、見返りを何も求めない、心からの援助でした。これは、『裏社会のフィクサー』と囁��れたり、のちにロッキード事件で政財界を揺るがせた動きとは無縁のものだったと思っています」
と、門司親徳は言う。
鶴見の總持寺、大西瀧治郎墓所の現在。墓石に向かって左側に海鷲観音と墓誌、右側には遺書の碑が建っている
大西瀧治郎の墓石右横に建てられた遺書の碑
墓が再建されて法要が営まれたとき、淑惠が参会者に述べた挨拶を、日下部巡査が録音している。淑惠は謙虚に礼を述べたのち、
「特攻隊のご遺族の気持ちを察し、自分はどう生きるべきかと心を砕いてまいりましたが、結局、散っていった方々の御魂のご冥福を陰ながら祈り続けることしかできませんでした」
と、涙ながらに話した。
「わたし、とくしちゃった」
淑惠は、昭和30年代半ば頃、香文社の経営から身を引き、抽選で当った東中野の公団アパートに住むようになった。3階建ての3階、六畳と四畳半の部屋で、家賃は毎月8000円。当時の淑惠にとっては大きな出費となるので、児玉誉士夫と坂井三郎が共同で部屋を買い取った。ここには長男・多田圭太中尉を特攻隊で失った大西の親友・多田武雄中将夫人のよし子や、ミッドウェー海戦で戦死した山口多聞少将(戦死後中将)夫人のたかなど、海軍兵学校のクラスメートの夫人たちがおしゃべりによく集まった。門司親徳や日下部淳、それに角田和男ら元特攻隊員の誰彼も身の周りの世話によく訪ねてきて、狭いながらも海軍の気軽な社交場の趣があった。
「特攻隊員の遺族の一人」である淑惠には、多くの戦友会や慰霊祭の案内が届く。淑惠は、それらにも体調が許す限り参加し続けた。どれほど心を込めて慰霊し、供養しても、戦没者が還ることはなく、遺族にとって大切な人の命は取り返しがつかない。この一点だけは忘れてはいけない、というのが、淑惠の思いだった。
大西中将は生前、勲二等に叙せられていたが、昭和49(1974)年になって、政府から勲一等旭日大綬章を追叙された。この勲章を受けたとき、淑惠は、
「この勲章は、大西の功績ではなく、大空に散った英霊たちの功績です」
と言い、それを予科練出身者で組織する財団法人「海原会」に寄贈した。大西の勲一等の勲章は、茨城県阿見町の陸上自衛隊武器学校(旧土浦海軍航空隊跡地)内にある「雄翔館」(予科練記念館)におさめられている。
昭和49年、大西瀧治郎を主人公にした映画「あゝ決戦航空隊」が東映で映画化され、淑惠は京都の撮影所に招かれた。大西中将役の鶴田浩二、淑惠役の中村珠緒とともに撮られた1枚
淑惠は、毎年、この地で開催されている予科練戦没者慰霊祭にも、欠かさず参列した。
「こういう会合の席でも、奥さんはいつも自然体で、ことさら変わったことを言うわけではない。しかし短い挨拶には真情がこもっていて、その飾らない人柄が参会者に好感をもたれました。大西中将は『特攻の父』と言われますが、奥さんはいつしか慰霊祭に欠かせない『特攻の母』のようになっていました」
と、門司親徳は振り返る。
昭和50(1975)年8月、淑惠は最初に特攻隊を出した第二〇一海軍航空隊の慰霊の旅に同行し、はじめてフィリピンへ渡った。
小学生が手製の日の丸の小旗を振り、出迎えの地元女性たちが慰霊団一人一人の首にフィリピンの国花・サンパギータ(ジャスミンの一種)の花輪をかける。特攻基地のあったマバラカットの大学に設けられた歓迎会場では、学長自らが指揮をとり、女子学生が歌と踊りを披露する。警察署長が、慰霊団の世話を焼く。
予想以上に手厚いもてなしに一行が戸惑っていたとき、突然、淑惠が壇上に上った。
「マバラカットの皆さま、戦争中はたいへんご迷惑をおかけしました。日本人の一人として、心からお詫びします。――それなのに、今日は、こんなに温かいもてなしを受けて……」
涙ぐみ、途切れながら謝辞を述べると、会場に大きな拍手が起こった。
淑惠は、翌昭和51(1976)年にも慰霊団に加わったが、昭和52(1977)年6月、肝硬変をわずらって九段坂病院に入院した。この年の4月、二〇一空の元特攻隊員たちが靖国神社の夜桜見物に淑惠を誘い、砂利敷きの地面にござを敷いて夜遅くまで痛飲している。
「こんなお花見、生まれて初めて……」
77歳の淑惠は、花冷えのなかで嬉しそうに目を細め、しみじみつぶやいた。
九段坂病院5階の奥にある淑惠の病室には、門司親徳や、かつての特攻隊員たちも見舞いに駆けつけ、人の絶えることがなかった。児玉誉士夫は、自身も病身のため、息子の博隆夫妻に見舞いに行かせた。香文社時代の同僚、遠縁の娘など身近な人たちが、献身的に淑惠の世話をした。日下部淳は、警察の仕事が非番の日には必ず病院を訪れ、ロビーの長椅子に姿勢よく座って、何か起きたらすぐにでも役に立とうという構えだった。
昭和53(1978)年2月6日、門司親徳が午前中、病室に顔を出すと、淑惠は目をつぶって寝ていた。淑惠が目を開けたとき、門司が、
「苦しくないですか?」
とたずねると、小さく首をふった。そして、しばらくたって、淑惠は上を向いたまま、
「わたし、とくしちゃった……」
と、小さくつぶやいた。子供のようなこの一言が、淑惠の最期の言葉となった。淑惠が息を引き取ったのは、門司が仕事のために病室を辞去して数時間後、午後2時24分のことであった。
「『とくしちゃった』という言葉は、夫があらゆる責任をとって自決した、そのため、自分はみんなから赦され、かえって大事にされた。そして何より、生き残りの隊員たちに母親のようになつかれた。子宝に恵まれなかった奥さんにとって、これは何より嬉しかったんじゃないか。これらすべての人に『ありがとう』という代わりに、神田っ子の奥さんらしい言葉で、『とくしちゃった』と言ったに違いないと思います」
――門司の回想である。
淑惠の葬儀は、2月18日、總持寺で執り行われた。先任参謀だった詫間(猪口)力平が、葬儀委員長を務め、数十名の海軍関係者が集まった。納骨のとき、ボロボロと大粒の涙を流すかつての特攻隊員が何人もいたことが、門司の心に焼きついた。
こうして、大西淑惠は生涯を閉じ、その慰霊行脚も終わった。残された旧部下や特攻隊員たちは、淑惠の遺志を継いで、それぞれの寿命が尽きるまで、特攻戦没者の慰霊を続けた。戦後すぐ、芝の寺で一航艦、二航艦の司令部職員を中心に始まった10月25日の「神風忌」の慰霊法要は、元特攻隊員にまで参会者を広げ、平成17(2005)年まで、60年にわたって続けられた。60回で終わったのは、代のかわった寺の住職が、先代の約束を反故にして、永代供養に難色を示したからである。
大西中将の元副官・門司親徳は、「神風忌」の最後を見届け、自身が携わった戦友会の始末をつけて、平成20(2008)年8月16日、老衰のため90歳で亡くなった。昭和と平成、元号は違えど、大西瀧治郎と同じ「20年8月16日」に息を引き取ったのは、情念が寿命をコントロールしたかのような、不思議な符合だった。
大西夫妻の人物像について、門司は生前、次のように述べている。
「大西中将は、血も涙もある、きわめてふつうの人だったと思う。ふつうの人間として、身を震わせながら部下に特攻を命じ、部下に『死』を命じた司令長官として当り前の責任のとり方をした。ずばぬけた勇将だったとも、神様みたいに偉い人だったとも、私は思わない。だけど、ほかの長官と比べるとちょっと違う。人間、そのちょっとのところがなかなか真似できないんですね。ふつうのことを、当り前にできる人というのは案外少ないと思うんです。軍人として長官として、当り前のことが、戦後、生き残ったほかの長官たちにはできなかったんじゃないでしょうか
奥さんの淑惠さんも、無邪気な少女がそのまま大人になったような率直な人柄で、けっして威厳のあるしっかり者といった感じではなかった。でも、人懐っこく庶民的で、人の心をやわらかく掴む、誠実な女性でした。長官は、そんな淑惠さんを信じて後事を託し、淑惠さんは、つましい生活を送りながら、夫の部下たちやご遺族に寄り添って天寿を全うした。
正反対のタイプでしたが、理想的な夫婦だったんじゃないでしょうか。いまの価値観で見ればどう受け止められるかわかりませんが……」
そう、現代の価値観では計り知れないことであろう。責任ある一人の指揮官と、身を捨てて飛び立った若者たち。そして、自決した夫の遺志に殉ずるかのように、最期まで慰霊に尽くし続けた妻――。
「戦争」や「特攻」を現代の目で否定するのは簡単だ。二度と繰り返してはならないことも自明である。しかし、人は自分が生まれる時や場所を選べない。自らの生きた時代を懸命に生きた人たちがいた、ということは、事実として記憶にとどめておきたい。
旧軍人や遺族の多くが世を去り、生存隊員の全員が90歳を超えたいまもなお、全国で慰霊の集いが持たれ、忘れ得ぬ戦友や家族の面影を胸に、命がけで参列する当事者も少なくない。彼らの思いを封じることは誰にもできないはずだから。
10 notes · View notes
laplanoel-tos · 5 years
Text
Re: チームレベル0から始める啓示者生活[Arts対応]
Tumblr media
[新規・復帰者向け]
Re:Buildで様変わりした育成環境を確かめるべく、新キャラを作ってきたよレポ。
Ep11・レベルキャップ解放に対応して追記・更新。(2019/9/19)
Arts大型アップデートに対応してさらに追記。(2020/1/10)
(復帰者向け)劇的ビフォーアフター
Tumblr media
Re:Buildを経て環境は文字通り激変。ランクシステムが以前とは全く別物に改変された。10のクラスを縦に積み上げていくビルドシステムから、好きな3職を自由に選択するシステムに。
経験値テーブルは変わっていないので、転職はそれぞれ以前のR2/5/8のタイミングになる。
また、転職ポイントシステムが実装され、以前よりは気軽に職変更(いわゆるビルリセ)も可能となった。日々の活動でポイントがもらえる他、新規・復帰者はログインボーナスで職変更1枠分のポイントが支給される。
クエスト報酬の改変もあり、経験値カードとは別にクエスト完了時に直接経験値がもらえるようになった。
初心者向け育成ルートのポイント
ソロ〜ペアでベースLv420まで無理なく辿り着きたい初心者さん向けのポイント。
クエストをしよう
久々の復帰な啓示者くんちゃんはピンとこないかもしれないが、今はクエスト報酬が本当にうまい。ものすごくうまい。どのくらいうまいかというとほぼメインクエストと330IDだけでLv410くらいになる。
マップレベル-30からクエストが発生するようになったので、その時点で出ている最新のメインクエストをこなしていくのが一番楽で速い。
ケドラ装備について
育成中のつなぎ装備はケドラ装備がおすすめ。
Artsアップデートによりケドラ装備はクエ報酬ではなくなり、一定レベルに達するとバイボラの翼から支給されるようになった(キャラ毎)。
40, 75, 120, 170, 220, 315, 350装備があり、ヴェルニアップやエメンガードシールドなどかなり使えるアイテムも入っている。ついでにキャラ帰属の特性ポイントが貰えるので、必須特性の足しとして。
ベースLv360になったら、フェディミアンにいるNPC「パヤウタ」から黄旗クエが受けられる。これを最後までクリアすることで強化済み380武器・防具が手に入る。
育成とは関係ないけどケドラ商団について気になった人は、ゲナル平原〜マナハースのクエスト及び書籍「バロコンシと黄金鉱脈の鬼」(タニエル一世の記念区クエスト報酬)あたりをチェック!
イベントマシニオスについて
新規・復帰アカウントの場合、ログインボーナスで「マシニオス」シリーズ武器がもらえる。これは+11強化・5超越済の状態になっており、パヤウタからもらえる380ケドラ武器より少し強い。確実にゲットしておこう。
経験値カードについて
クエストでもらえる経験値カードは、もらったそばからどんどん使っていって問題ない。特別こだわりがなければ各マップのクエストが終わったところで使うのがいいと思う。
また、マップ探索率を100%にすることでもカードがもらえるので、レベル12経験値カードがもらえるコノット森(Lv278)以降はマップ埋めもしっかりやっていくと早い。一度マップを埋めれば同チームの2キャラ目以降でも経験値カードがもらえ、サブの育成も楽になる。
IDについて
現状270以下の低レベル帯IDは非常にマッチングしにくくなっている。正直IDに行くより適正のメインクエストをやった方が早くレベルが上がるが、どうしても行きたい場合はシャウトで仲間を集めたりベテラン啓示者に護衛をお願いしたりしよう。
330IDに入れるようになったら、自動マッチを利用して毎日行くべし。経験値もシルバーもおいしい。
チャレンジモードについて
100レベル以上のマップで狩りをしていると、紫色に光るmobがわくことがある。これを倒すとチャレンジモードポータルが開き、マップレベル-30〜+80レベルのキャラならチャレンジモードに入ることが出来る。
チャレンジモード内ではmobが高速で定点湧きする。一定数を狩ることでボスが出現し、倒すと次の段階に進める。段階ごとに湧くmobが固くなっていき、最大で7段階まで挑戦することができる。
レベリングがしやすくなったこともあり、レベル上げ目的の低レベルチャレンジ募集はほとんどなくなった。一方、定点で大量の敵を倒せることから高レベル製造武器の素材がドロップするマップでは割と募集がある。経験値もおいしいので、ある程度装備がそろってきたら星の塔以降のチャレンジに参加してみるのもおすすめ。
転職の順番について
Re:Build以降、転職のランク制限がなくなり自由な順番でクラスを選択できるようになった。原理的には選びたいクラス3つを決めたらどの順番で取ってもいいのだが、三次転職で選択するクラスのクラスレベルが45になるのはベースレベル410〜くらいになることに注意。
一次転職は攻撃スキルが豊富なクラスを選び、その後はスキルシミュなどで実際にポイントを振ってみて、一番ポイントに余裕があるクラスを最後にまわすのがいい。
また、一部のクラスのスキル特性にはベースレベルが一定以上にならないと取得できないものもあり、その有無でスキルの使用感が180度変わることがある。まわりのベテラン啓示者さんに聞いてみたり、ToS Wikiも最近は更新が早めなのでチェックしてみよう。このブログにも今後色々書くかもしれない。
実際に育成してみた
啓示者育成計画イベでもらった枠を使って新うぅ〜いちゃんを作成。今まで槍キャラがいなかったので、ドラグーンをめざすことにした。
Lv1〜100
クエスト 開始マップ 最小受注レベル 騎士ティタスのもとへ シャウレイ西の森 1 司教が見た女神の夢 クラペダ 2 正体不明の石板 クラペダ (水晶鉱山からの連続クエ) 隠された聖地の啓示 ネフリタスの崖 (水晶鉱山からの連続クエ) 正気を失った記録官 大王の関門 30 史学者レキシファーの研究 ルカス高原 43
チュートリアル〜クラペダワープ作成
シャウレイ西の森からスタート。チュートリアルに従ってクラペダに向かう。
クラペダについたら、クラペダ帰還用クエストワープを作ろう。
チュートリアルで見たようにToSのクエストの一部は完了時に受注NPCまでワープできるものがある。これを利用して、クラペダに完了NPCがいるクエストを完了させずに残しておくことでいつでもクラペダに戻れるようになる。とても便利なので、早期に作っておこう。
おすすめのクエストはレンジャーマスターから受注できる「裏切り者の毒」。低レベルで受注できる上、これから進めていく水晶鉱山のメインクエストの道中でついでに終わらせることができる。今はとりあえず受注だけしておこう。
水晶鉱山〜ターネット聖堂
メインクエスト(黄色の旗)に沿って進めていくと、シャウレイ東の森の途中辺りで一度目の転職を迎える。このキャラはとりあえずドラグーンを選択。
シャウレイ鉱山の村でクラペダワープクエを完了しておく。ターネット聖堂の啓示まで終えるとLv50程度になる。ケドラ装備をもらってつけるのを忘れずに。
ぶきや ぼうぐは そうびしないと いみがないぞ!▼
ベヤ谷〜クバイラスの森
Tumblr media
ベヤ谷はネフリタスの崖から行ける。女神像は花園のが近い。ここからセプティニーの谷までの一連のクエストは後のメインクエの前提になっているので必ずクリアしよう。
関門路は棘の関門で塞がれているが、クエストをクリアせずとも微量のDoTを受けるだけで普通に通れるのでサブクエが面倒なら強行突破してしまっても問題ない。
サフィエネックレス
ここで手に入る「サフィエネックレス」が序盤優秀なアクセなので、他のアクセを持っていなければ制作しておくといいかも。
製造書
関門路:信徒ノユースから受注できるサブクエスト「注視者の最後の警告」クリア報酬
素材
関門路: 信徒アデレから受注できるサブクエスト「私の指輪!」クリア報酬でサフィエストーン
クバイラスの森: メインクエストの途中にあるサブクエ「スビエサ丘陵地の根」クリア報酬でサフィエチェーン
クバイラスの森: メインクエスト「ブランブル攻略(3)」クリア報酬でブランブルの角
大王の関門〜ティルタス峡谷〜王陵
Tumblr media
Lv75を超え次第、ケドラ装備を回収しておく。もしレベルが足りているなら大王〜ティルタスのクエは飛ばしてしまって構わない。
王陵のメインクエストをクリアする辺りでLv100を越えると思う。
クラペダに戻った時にでもIDなどのチュートリアルクエスト(黄色の旗)をやっておくとカードがもらえたりする。
ジャカリエルバングル
王陵のサブクエをクリアするともらえる「ジャカリエルバングル」は後々まで使える優秀な装備なので制作しておくことをおすすめする。
製造書
Tumblr media
王陵1階:サブクエスト「リサイクル(1)」→「(2)」クリア報酬
素材
Tumblr media
王陵2階:サブクエスト「隠された場所(1)」→「(2)」クリアでトゥームロードチェーン
Tumblr media
王陵4階:サブクエスト「最後の守護者」クリアでベアカリスの破片
ヴィカラスのコアはヴィカラスorヴィカラスメイジからドロップする。王陵2階にもいるが、セイルの森(フェディミアン隣のマップ)に行った方が湧き数も多く狭い範囲にまとまっているので狩りやすくオススメ。
Lv100〜220
クエスト 開始マップ 最小受注レベル 現地調達(1) 碑石路 66 *遺跡の保護(1) 碑石路 66 星の痕跡(1) いにしえの女神の庭 69 フラリーの碑文(1) エサンチウ村 73 *最後の命令(1) エサンチウ村 73 昔話(1) フェディミアン外郭 77 女神ガビヤ(1) フェディミアン 83 霊魂を入れる器(1) [大聖堂]本堂 107 届かない場所(1) 水路橋地域 121 蜜のせい(1) ダイナ養蜂地 130 秘密の取引(1) 城郭内地区 170
碑石路〜フェディミアン外郭
メインクエストの他に、サブクエスト「遺跡の保護」もステータスポイントがもらえる。フェディミアン外郭のメインクエが終わったところでケドラ装備が更新できる。
エサンチウ村のサブクエスト「最後の命令」は、ラストの「最後の命令(4)」がフェディミアン行きのクエワープとして使えるので残しておくといい。
魔術師の塔〜大地の要塞
Tumblr media
フェディミアンで受けられる「女神ガビヤ(1)」から魔術師の塔のメインクエストが始まる。途中で2回目の転職ができるはず。このキャラはホプライトを選択した。
この辺りでポーションが必要になってくると思うので、マーケットでアルケミスト製のものを買おう。「濃縮〜ポーションLv15」というのを買えばよい。
あとは大聖堂→魔族収監所→ダイナ養蜂地→大地の要塞と順にメインクエストを進めていく。
Tumblr media
Lv200解禁のスキル特性が振れるようになっているので、取得を忘れずに。
Lv220〜300
クエスト 開始マップ 最小受注レベル アレメテの森の研究 アレメテの森 190 無気力な難民たち クラント沿岸 202 女神ユラテの伝承者 イギティ沿岸 205 啓示の守護者ジャナス [カレイマス]接見所 229 危機のクポル(1) コノット森 257 森の中に潜んでいる危険(1) パマル森 280
アレメテの森〜イギティ沿岸
Tumblr media
大地の要塞クリア直後だとカレイマスのレベルに少し足りないので、この辺りのメインクエをして上げていく。イギティ沿岸はゼテオの岸のクエストの前提になっているのでやっておいた方がいい。
カレイマス
ここから、多少敵の攻撃が痛くなってくる。PTを組むか、ソロならポーションなど充分に準備してから進もう。
改変でフィールドボスはいなくなった。ちょっとさみしい。
テブリン鍾乳洞〜パマル森
カレイマスに続きテブリンもかなりの長編連続クエストなうえ、ヴァカリネ女神像が1階と5階のみなので多少きついマップ。途中で3回目の転職レベルに届くと思う。このキャラはランサーを選択した。この辺りからマップ埋めも始めるといいかもしれない。
Lv300〜330
クエスト 開始マップ 最小受注レベル 消えた子供 ミシュエカンの森 297 初めてのお客さんの役割(1) ノブリアの森 308
ミシュエカンの森
ミシュエカンでは全クエストクリア後に発生する隠しクエでプラクトニウムを手に入れられる。貴重な素材なので必ず回収しよう。
詳しくはこちらを。
サウシス9館
Tumblr media
例によって5マップからなる深いダンジョン。途中のクエ完了のワープが使えるタイミングで補給を挟みながら進むと楽。クエワープを残したければサウシス9館のサブクエを残せる。
なお、「初めてのお客さんの役割」そのものはLv305で発生するが、一連のクエのうちサウシス10館のクエスト「影の下に(7)」に何故か最小Lv308の制限がかかっており、もしLv308以下だと途中で詰むのでちょっとだけ注意。
Lv330〜380
Tumblr media
330IDに入れるようになったところでID周回を開始する。経験の書、倍数トークン、ID回数リセット券等があればここで全て投下する。
倍数トークンとは、IDに1回行っただけで複数回行ったことにしてくれるアイテム。2個使うことで1日の参加上限である3回分の周回を1回に濃縮してくれる。使い方は上の画像のインスタンスダンジョンUIの右側「倍数モード適用数」を2にし、倍数モード発動を押してから自動マッチングを押す。なお、バイボラの翼に話しかけて「これまでの出来事を話す」を選択するとメインクエスト追加報酬がもらえるが、「隠された聖地の啓示」「転移の隙間」「カレイマスの啓示」がID倍数トークンになっている。
ゴールデンタイムなら自動マッチが成立すると思うが、もし人がいなければシャウトで募集してみるのも手。あまり難しく考えず、みんなの後をついて敵を倒していけばいい。
360IDが未実装である現状、楽にカンストを目指すならLv400〜420をクエストで上げるのが望ましい。そのためには330IDで最大限経験値を稼いでおく必要がある。経験値減衰が激しくなるLv380手前まではIDで上げておきたい。
装備はケドラ315で問題ない。余裕があれば+6に強化するとよいかも。イベントマシニオスがあればベター。Lv350解禁の特性もあるので確認をわすれずに。
Lv380〜400
クエスト 開始マップ 最小受注レベル *時を遡って...(1) ジーマ・スコット 278 *女��ユラテに仕える者たち(1) ゼテオの岸 297 *テケル避難地を徘徊する犬 テケル避難地 318 準備段階(1) バリンウェル85水域 332 *弱々しい逃亡者(1) ヴァルティネ記念区 341 *怪しい造形物(1) スタリータウン 351 パヤウタ フェディミアン 360 ドラゴンボルタ ベダ高原 360
370台後半にもなると、330IDの経験値・シルバーの減衰が厳しくなってくる。経験の書が切れたらクエストにもどろう。Lv391でテーブルリセットが掛かり、またレベルが上がりやすくなる。
ヴァルティネ記念区
プラクトニウムが2つもらえるサブクエ。先にやって回収しておくとよい。
ぜテオの岸・テケル避難地
ステータスポイントがもらえるクエのため、優先度高め。
星の塔
Tumblr media
バリンウェル85水域から星の塔21階まで、じつに8マップに渡る大長編メインクエ。その分経験値もうまく一気に390近くまでいくはず。クエスト改変で少しこなしやすくなった。
途中でもらえるネックレス・ブレスレットも優秀なので、いいものが手に入るまでの繋ぎとしてオススメ。
ジーマ・スコット、スタリータウン
ユニークレイドの参加前提になるクエのため、経験値稼ぎのついでにこなしておくとあとで役にたつかもしれない。
パヤウタ
Lv390〜マップの導入になるクエ。380装備と特性ポイント、それに各種ステータスを増やせるパヤウタカードがもらえる。なおここで手に入るケドラ380ユニーク武器は+11、3超越済みであるためかなり使える。具体的にはイベントマシニオス武器よりちょっと弱いくらい。Artsアップデートでのスキル火力上昇もあって、チャレに強いビルドならEp11マップ(水域水域、ファリアス森、城壁方面)のソロチャレ5段階程度はこなせる。
他の黄旗クエスト
レベルが足りなかったらLv300〜370の黄旗クエストを片っ端から進めていくといいと思う。
イレディアンの避難所
390レベル侵食ダンジョン。ここの経験値はかなりおいしく、安定して狩れるようならば籠ってレベリングするのもよい。落ちる鉱石類をマケ売りしたり、装備を鑑定・分解すれば金策にもなる。
チャレンジモード
適正レベルのチャレンジに参加するのもオススメ。マップレベル-30から入場できる。ソロするもよし、皆で高段階を目指すもよし。
ドラゴンボルタ(クエスト)
レベル上げとは関係ないが、装備品「エンブレム」に関するチュートリアルになっている。そこそこ使えるエンブレムがもらえるので、気が付いた時にやっておくとよい。内容はボルタの顔を見て戻ってくるだけ。
Lv400〜Lv420
クエスト 開始マップ 最小受注レベル 危機の奪還隊 バリンウェル27水域 358 水域を守る者 メイバーン31水域 361 少年に助けを(1) メイバーン32水域 365 また始まる襲撃 外城壁・第11区域 361 苦しむ呪いの地 内城壁・第10区域 365 抵抗軍の別働隊 外城壁・第13区域 367 それぞれの事情(1) 外城壁・第14区域 371 閉ざされた時代 外城壁・第15区域 374 花と蝶(1) 北部ファリアス森 378
いよいよEpisode11追加マップのクエストに手をつけていく。
Ep11マップのクエストについて
Tumblr media
全てメインクエストになっており、経験値がとても美味しい。400を超えてから手をつければだいたいLv415程度になると思う。
開始マップはバリンウェル〜メイバーン水域エリア・外城壁エリア・ファリアス森エリアに分かれているため、エリアごとにまとめてクリアしていくと効率がよい。Lv360メインクエスト「パヤウタ」をクリアしていると、フェディミアンのNPCパヤウタが合計5回までそれぞれのエリア(バリンウェル27水域/外城壁・第11区域/北部ファリアス森)に転送してくれるので活用しよう。
チャレンジモード
カンストまでは引き続き適正レベルマップでのチャレンジがおすすめ。バリンウェル27水域以外のEp11マップでは400ユニーク装備素材、プレニウム、覚醒研磨剤が狙える。
外城壁の地下水路(400FD)
とりあえず380ケドラ装備だとものすごく固い&痛いので装備が揃ってからがいいと思う。
カンストしたら
まだまだやることいっぱいあるよ!!
サブキャラ育成
補助キャラ、ヒーラー等育てにくいキャラに挑戦してみるもよし、違う系列に手を出してみるもよし。サルラス修道女院ミッションの報酬やユニークレイドの入場アイテム(同一キャラで何度も回ろうとすると必要個数が増える)の関係で3キャラくらいはいるとやりやすい。
330ID周回で停滞したところでサブキャラを始めるとちょうどいい気がする。
金策
侵食ダンジョンでのファーミング、サルラス周回、高レベルマップでのソロチャレンジモード辺りがポピュラー。
特にLv390以上のマップでのチャレンジは稀にプレニウム(レジェンド装備素材)が拾え、マケ売りすれば結構な金額になる。
自信があればイレディアンの避難所のボスに挑戦するのもあり。チャンネル毎に合計1,000体のモンスターが狩られると30分間だけポータルが開く。ソロのみ入場でき、中のボスを倒すと報酬としてイレディアンキューブがもらえる。毎週5回までクリア可、キューブの中身は祝福の欠片やイレディアンエンブレム、魔精石。2種類いるが、回数制限は共有で報酬の内容は同じ。アミスドッグの方が柔らかいので行く人が多い。
400FD「外城壁の地下水路」には新ボスマーズルースがいるが、結構な高難易度(らしい。書いてる人はまだ行ってないです)。
ユニークレイド、レジェンドレイドに挑戦
ギルド等に入るなりして仲間を見つけたら、ユニーク装備のレシピが手に入るユニークレイド、レジェンド等級アイテムが制作できるレジェンドレイドに挑戦してみよう。
おすすめはベルカッパーの巣に通ってのベルカッパー装備作成を目指すこと。1世代前のレジェンド装備になるが、まだまだ一線級で活躍できる上にLv360からつけられるのも魅力的。イベントマシニオスくらいの装備を持参すれば十分PTに参加できると思うので、PTを探して入ってみたり、ベテラン啓示者さんに連れて行ってもらうといいと思う。
クエスト沼にはまる
飛ばしてきた低レベル帯のサブクエストの中にはメインクエの伏線や補足になっているものがあったり、サイドストーリーがあったりする。いろんなマップを巡って旅して、あわよくば沼ってほしい。
ビューティーショップに吸い込まれる
あれはブラックホールだ。気をつけろ。
釣り、ギミック、コレクションなど
クラペダやコバルトの森では餌と釣り竿を買うと釣りができる。珍しいアイテムが釣れたりもするので放置時にするとお得。タコで釣りをするとレアなコレクションアイテムが釣れるので、収集の一助に。
各地に散らばるギミックやフェディミアンのアナスタシアさんのクイズに挑戦したり、コレクション集めをするのもたのしいぞ!魔法少女しよう!
何が言いたいかというと、とすちゃんめっちゃたのしいよ!!!
3 notes · View notes
tukumoteiog · 6 years
Text
プレーンシフト:ドミナリア ラノワールのエルフたち
 D&D第5版でマジック・ザ・ギャザリングの世界観を冒険できる公式サプリメント『Plane Shift』のドミナリア、ラノワールのエルフの章を翻訳した。これで「プレーンシフト:ドミナリア」が一通り翻訳できた。序文の翻訳および一部校閲後にまとめたものを配布予定だ。
 ひとまず、MtGでも屈指の知名度を誇るラノワールでの冒険を楽しんでほしい。
Tumblr media
ラノワールのエルフたち
 塔のごとき巨大な古木が地上1000フィートの高さまで成長する、広大にして古きラノワールの森へと危険を冒して踏み込む者は、ほとんどいない。それらの木々の間には、凶暴で排他的と噂され、他種族を森林の影にすら寄せ付けない、苛烈なラノワールのエルフが暮らしている。実際にはしかし、ラノワールの人々は孤立しており、慎重な旅人であれば彼らの領域に入り、その住民を目撃することなくそこを出ることができるだろう。ラノワールのエルフたちを目撃するとき、それは彼らが意図して姿を現したときであり、ときに侵入者に害をなすときである。
ラノワールの英雄
 ラノワールのエルフたちは排他的であるとされ、侵入者へは微かな疑惑から速やかな死に到るまでの歓迎を施す。エルフの一部には自己保身を優先にする者もいれば、家族、村、エルフェイム(訳注:エルフの自治区)の安全を考える者もいる。だが、より巨大な危険に目を向ける者もいる。これらのエルフは鉄葉教団に加わり、森林の境界線を監視し、ときに脅威に対処するために国境を越えて冒険する。その他の者たちは、ラノワールだけでないより多くの者を脅かす敵を追い、あるいは単に冒険を求めて、より広い世界へと踏み出していく。
属性:普通は中立となる。
種族:エルフ(ウッド・エルフ)、ハーフ・エルフ(特にルアダッハ(Ruadach、訳注:人間の町との境界に近いエルフェイム)において多くみられる)
推奨される背景:隠者、民衆英雄、辺境育ち、賢者、兵士
推奨されるクラス
 ラノワールのエルフのキャラクターを作成する際には、下記について考慮すること。
 バードやドルイド:エルフのプレインズウォーカーであるフレイアリースが死去して以来、ラノワールのエルフは生命と自然の女神であるガイア信仰へと改宗した。その多くはフレイアリースこそがガイアの顕現やその一側面であると信じており、彼女が死してなおその役割を果たし続けていると信じてフレイアリースへの祈りを捧げ続けている。だが、昨今においてはフレイアリースへの信心篤い者であっても、ガイアへ直接祈る者が増えてきている。それはつまり、ラノワールのドルイドたちは単一の宗教組織ではないということである。彼らは職業的な哲学者階級であり、異なる教団がエルフたちの中で異なる社会的、宗教的役割を果たしている。いくつかの教団は将来の世代のためにラノワールの人々や伝承を集め伝える詩人、吟遊詩人、および歴史家によって構成されている。その他は天文学者、数学者、航海士で構成され、天文学的知識を使って天候や天文学的事象を予測する。最も重要なドルイドたちの役割は司法機関として機能することであり、不満の訴えを調査し、被告人を裁くことにある。
 ファイターやレンジャー:カヴーに騎乗する騎兵から枝を渡る射手に到るまで、ラノワールのエルフたちはこれらのクラスの双方に適した熟達の戦士である。
推奨される尊ぶもの
d8/尊ぶもの(訳注:カタカナの地名はラノワールのエルフェイムを指す。ジュビラー(Jubilar)のみ、ファイレクシアの侵攻によって破壊され、生き残った者はケルファイ(Kekfae)に移住した)
1:リアシル(Riashil)の平和性 自然とともに平和に暮らすため、まずは他者と共に平和に暮らすことを学ばなければならない。
2:ステイプリオン(Staprion)の反抗心 境界線を越えた者は、元の場所へと戻らなければならない。
3:ロリダルー(Loridalh)の共存 自分のことは自分で決める。だが、すべての生命の網の一部として働くとき、私は最も力を発揮する。
4:ケルファイの柔軟性 揺れ動く樹木であろうと人生の混乱であろうと、安定を求めるのは無駄というものだ。
5:ジュビラーの記憶 ファイレクシアの侵攻によって犠牲となった人々のことは忘れてはならず、私たちが語り継いでいかねばならない。
6:バシフェーム(Bashiphem)の誇り 私たちは強いため、森の他の地域をできるだけ援助する責任がある。
7:ヘドレッセル(Hedressel)の聖性 私たちは木々との繋がりを維持するため、文化的、肉体的な他者との距離感を維持しなければならない。
8:ルアダッハ(Ruadach)の開放性 私たちは新しい文化、新しい人々、そして新しい発想へ自らを開いていかねばならない。そうしなければ、倒木のように腐ってしまうだろう。 
推奨される関わり深いもの
d8/関わり深いもの
1:私が愚かなことをしたならば、いつも母が私の頭をひっぱたいてくれると思っていた。(リアシル)
2:私の同族に危害を加えた陰謀団に復讐をしたい(ステイプリオン)
3:ラノワールでも最も高い12の超高木は、私にとって世界中で最も大切な場所である。(ロリダルー)
4:私は生まれたときからあるカヴーと絆を結んでいた。(ケルファイ)
5:私は300年以上前のファイレクシアの侵攻から生き延びた。亡くなった人々の顔は決して忘れることはない。(ジュビラー)
6:私の家系はファイレクシアの侵攻からラノワールを守ることに失敗した汚名を背負っており、恥辱を濯ぐために何もしないでいることはもうやめようと考えている。(バシフェーム)
7:私はヘドレッセルで一年を過ごし、今後の人生もその聖地を守るために費やすことを決めた。(ヘドレッセル)
8:私は家族との別れの悲しみよりも、それに耐えて家族の元を去ることを選んだ。(ルダッハ)
Tumblr media
ラノワールでの冒険
 ラノワールのエルフの最も知られた文化的な特徴は、異種族への嫌悪に関連した孤立主義である。この他者への不信は歴史の中でその度合いや苛烈さが変化してきた。そして、それはラノワールの様々な社会の中で広がっていった。あるエルフたちは入念に警備された国境地帯で用心深く取引を行い、他のエルフは不文律を破った者を厳しく罰する。
ラノワールの探索
 ラノワールのエルフの多くは森林という傘の下から出ることを嫌う。そのため危険なことが森の境界の外で起こったならば、エルフェイムの指導者たちは血気盛んな若いエルフたちをそこへ送り出すかもしれないし、外の冒険者に助力を求める(もしくは冒険者を呼ぶ)かもしれない。
ラノワールの探索
d6/クエスト
1:鉄冠山脈でオークの略奪者の根城を探せ。
2:巨大クモの巣に巻き込まれたものを回収せよ。
3:ベナリアの街へ、外交、貿易、恋文などの書信を届けよ。
4:森林に対する犯罪の処罰からの脱走者を捕らえよ(おそらくヘドレッセルに侵入することもあるだろう)。
5:新たに発見されたファイレクシアの瓦礫を処分せよ。
6:ささやきの森や他の離れた森でラノワールの植物の種を植えよ。
Tumblr media
ラノワールの遺跡
ラノワールの森は生命と魔法で溢れている。森林内には特別な場所が多く存在し、様々な冒険の可能性を与えてくれる。
ラノワールの遺跡
d10/冒険の遺跡
1:奇妙にも内部から腐敗を始めた巨木の中。
2:超高木の頂上にある、魔法の花が育つ場所。
3:森の中で最古にして最大の樹木の根のあいだ。
4:まだ生きている巨木の枝に建てられた神殿。
5:静かな森の開拓地に建てられた、エルフの英雄エラダムリーの像。
6:梢の木々を繋ぐ縄橋の移動網。
7:死んだ木によって建てられた邪悪な外観の塔。
8:毎日成長し続ける巨大なキノコ畑。
9:草に覆われたファイレクシアの戦争機械
10:巨大な神殿よりもさらに大きな蟻塚、白蟻の巣、スズメバチの巣。
ラノワールの悪役
 排他的なラノワールのエルフたちの怒りと暴力性は普通、ラノワールの森に侵入した者たちに向けられる。しかし、対処的に行われる怒りや暴力が自発的に行われようになるのは小さなきっかけで事足りる。
ラノワールの悪役
d8/悪役
1:ある盲信的なドルイドは人間とハーフ・エルフをルダッハから追い出したい。
2:ある実用主義者は古いドルイドの伝統がエルフを偉大な行いから遠ざけているとして、ヘドレッセルかモリモ(もしくはその両方)を破壊しようとする。
3:ある鉄葉の騎士は、ヒューマンたちを殺害する理由づけとして、ベナリアと戦争を起こそうとする。
4:あるドルイドが古代の死霊術を使い、ベナリアの街の水源である川に毒を流し込む。
5:あるスタプリオンの戦士は平和主義のリアシルがエルフの裏切り者であるとし、彼らを戦いに追い立てようとする。
6:あるエルフは木々をなぎ倒しエルフェイムを破壊するために巨大なカヴーを育成した。
7:ある死霊術師は、ヘドレッセルを守護するため、エルフを滅ぼすと言われるエルフの死霊の魂を我が物にせんとしている。
8:ある鉄葉教団の長は陰謀団の一員であり、その命令によってスタプリオンの戦闘力を弱体化させようとしている。
Tumblr media
カヴー
 カヴーは超古代もしくは比較的最近になってドミナリアで生まれた爬虫類生物である。数千年に及ぶ長い冬眠から目覚めたか、最初から成体として生み出されたか、いずれにせよファイレクシアの侵略を妨害するために大地より現れた。
 ラノワールのエルフは現在、様々な役割を果たすためにカヴーを繁殖させている。このクリーチャーはドミナリア防衛のために女神ガイアの意志によって生み出されたと信じられている。エルフとカヴーの密接な関係性は、ガイアの恵みをいつでも想起させる。
 すべてのケルファイの民は樹上生活のカヴーと相棒の絆を結び、いくつかのケルファイとバシフェームの戦士たちはカヴーに騎乗して戦闘に望む。
樹上生活の脅威
 ケルファイの民によって飼育された樹上生活のカヴーは、どんな角度の場所を登攀できるとともに、地表においても恐るべき速度で突撃を繰り出すことができる。ケルファイの戦士たちが巨大に成長したカヴーの捕食者に騎乗するときには、そのクリーチャーの背中に座るかぶら下がる命綱として、人繋ぎの布紐を使用する。俊敏で身軽なケルファイ・カヴー乗りは、樹上主義者と呼ばれている。
命取りの突撃者
 バシフェームの民は森林の最上層に暮らしている一方で、森林の敷地で地上生活のカヴーを飼育、訓練するための広大な厩舎を運営している。鉄葉教団の構成員は、しばしばこれらのクリーチャーに乗って戦闘へ赴く。カヴーは最大で象のような大きさに達することもある。
Tumblr media
カヴーの捕食者
大型・野獣 無属性
アーマー・クラス:15(外皮)
hp:75(10d10+20)
移動速度:30フィート、登攀30フィート
【筋】18(+4)【敏】12(+1)【耐】15(+2)【知】6(-2)【判】14(+2)【魅】8(-1)
技能:〈知覚〉+4、〈隠密〉+5
感覚:暗視60フィート、受動〈知覚〉14
言語:エルフ語を理解できる。
脅威度:2(450XP)
飛びかかり:このカヴーがあるクリーチャーに向かって真っすぐに20フィート以上移動し、かつ移動したのと同じターン中にそのクリーチャーに“爪”攻撃をヒットさせたなら、そのクリーチャーは難易度14の【筋力】セーヴを行わねばならず、失敗すると伏せ状態になる。(訳注:もともと伏せ状態であった場合にも、この攻撃によって伏せ状態になった場合も)、このカヴーはボーナス・アクションとしてそのクリーチャーに1回の噛みつき攻撃を行なえる。
アクション
複数回攻撃:カヴーは2回の“爪”攻撃を行う。
噛みつき:近接武器攻撃:攻撃+6、間合い5フィート、目標1つ。ヒット9(1d10+4)[刺突]ダメージ。
爪:近接武器攻撃:攻撃+6、間合い5フィート、目標1つ。ヒット7(1d6+4)[斬撃]ダメージ。
Tumblr media
鉄葉のカヴー
大型・野獣 無属性
アーマー・クラス:16(外皮)
hp:142(15d10+60)
移動速度:40フィート
【筋】20(+5)【敏】12(+1)【耐】18(+4)【知】6(-2)【判】14(+2)【魅】8(-1)
技能:〈知覚〉+4
感覚:暗視60フィート、受動〈知覚〉14
言語:エルフ語を理解できる。
脅威度:4(1,100XP)
怒り狂う突撃:このカヴーがあるクリーチャーに向かって真っすぐに20フィート以上移動し、かつ移動したのと同じターン中にそのクリーチャーに“噛みつき”攻撃をヒットさせたなら、そのクリーチャーは難易度15の【筋力】セーヴを行わねばならず、失敗すると伏せ状態になる。(訳注:もともと伏せ状態であった場合にも、この攻撃によって伏せ状態になった場合も)、このカヴーはボーナス・アクションとしてそのクリーチャーに1回の“切り裂き”攻撃を行なえる。
アクション
噛みつき:近接武器攻撃:攻撃+7、間合い5フィート、目標1つ。ヒット14(2d8+5)[刺突]ダメージ。
切り裂き:近接武器攻撃:攻撃+7、間合い5フィート、目標:伏せ状態のクリーチャー1つ。ヒット23(4d8+5)[斬撃]ダメージ。
Tumblr media
2 notes · View notes
lucewizard27 · 6 years
Text
Scrap Days
 古い紙特有の匂いがする。埃っぽいなと呟いて、ここに居るぞと主張する。ばさばさと音を立てて落ちて来る紙の資料の向こう側で、「あいよ」と聞き慣れた声がした。資料探しを手伝いに行ったまま戻らぬ相棒を捜して踏み入れた芸術家どもの魔の巣窟は、徹夜続きのアルコールの匂いと僅かに珈琲の匂いと交じって煙草の煙と、妙に甘い匂いがした。声、らしきものは先程返事をしたもののみで、後は唸り声ばかりが響いている。踏み入れてはならない場所に来てしまったような気がしても、何時だって後の祭りだった。そも���も、ここカルデアでは珍しくもない光景でもある。ぱっと思いつくだけでも、数多の国から色んな時代の者達が集まっているのだ。文化のサラダボウルだと言うと、エジソン辺りが合衆国の建国について一言申して来そうな気もするが、安心して欲しい。発電マニアどもはエレナ女史の付き添いで『ちょっと』遠出している。何事もマハトマのお導き、大丈夫だ問題ない。 「友よ、」と声が聞こえた。意味のある音だ。視線を向ければ、平常からしてすでに色の白い名探偵中の名探偵が、迷探偵面をして視線を空に彷徨わせていた。考えるまでもなく、何処かに中身が旅立っているようだと頷く。探偵が座るこの部屋で一番高そうな革張りの赤いソファは、何をひっくり返したものやら濡れたような染みの痕がある。すぐ横の丸い猫脚のテーブルの上には、「 absinthe 」とラベルの張られた謎の瓶が幾つも空になって転がっていて、猫脚ににゃあとも鳴かない童話作家が頭を預けて低い声で唸っている。寝心地が悪いのだろう。そう言えば静かだなと辺りを見回せば、劇作家は据わった目つきで種火はもう食べさせないで欲しいとぶつぶつと呟いており、心持ち腹が膨れているような気もした。いつものメンバーだなと安堵したところで、ここでは見慣れぬ音楽家の二人が無言でダイスを転がしてカードを出しあっており、やれ「産地チェック」だとか小さい声で呟いている。唯一正気らしい復讐者、いいや、影のどうしようもない相棒はこてりと首を傾げていつの間にか目の前に立っており、「どうかしたのか共犯者よ」とそう言いながら卒倒した。末期だ、とてつもなく世紀末だ。なんぞかの合同の死がどうとか食堂でこのメンバーが会合をしていたのは知っていたが、謀反でも起こすつもりか。いやいや、と首を横に振る。そこでもう一つ。 「ロビン!」  素直に名前を呼んで助けてくれと主張を最大限にする。早く連れ去って欲しかった。だってここは、とっても教育に悪い現場だ。 「いや、まあ、なんです?締め切り前だから助けて欲しい、時給が出るってんでして。このご時世何かと入用でしょ、お互い。いざって時の貯蓄みたいなもんですよ。」  彼の言い分はこうである。別に悪くないし、仲間との交流を深めるのは今までの彼を思えばいいことだろうと頷いた。ロビンはそんな、……カルデアのマスターを前にして、盛大にため息をつきたいのを堪えた。朴念仁とは言うまい。気の使い方は人それぞれだ。好意に鈍感でなければ、発狂しかねない程パーソナルスペースを侵されているのにこの子供は指摘しない。できようもないのであろうが。今だって、個室に二人きりという環境がどうのとマスターである子供を思って、「保護者」と主張する何名かに視線をすれ違いざまに向けられた。マスターの部屋に誰かがスタンバイしているのはいつものことだ、と誰もが理解している筈だと言うのに。そもそも、保護者と主張している何名かというか正直なところ、ロビンにとって源の大将は頭の痛い種の一つではあった。アジア人の見た目が幼いということを抜きにしても、マスターである子供は生前のロビンよりは明らかに年下だった。懐かれるのは気分は悪くなかったし、距離を縮めれば時々甘えるような言動をするのが良かった。そういう趣味を持ち合わせているわけではないのだと言い切れるが、初めてありがとうとはにかんでくれた時は一瞬息を飲んだものだ。だって、ちっとも、この子供は心から笑うということをしなかったから。  以来、ロビンは保護者ではないが傍に居る。駄目そうだなと判断すれば手を伸ばすし、まだ頑張れそうだと思えばただただ見守っている。騎士中の騎士である円卓の面々に、「忠義あふれる行いだ」などと評された時は本気で喧嘩になりかけたが、特にマスターに報告はしてはいない。だって、ロビンは騎士にはなれない。柄でもないというのもあったが、主義に合わないのだ。何処にでも居て、ただ学校に通い、どうということもなく過ごせる筈だった子供。だから誰かが守らなくては、勿論、別にロビンは自分がそうでなければいけないとは思っていない。顔を隠して、影のように付き従う復讐者のような相棒にもなれない。何もかもが中途半端な立場で、でもそれでも英霊だから。幸いただの人間に負けるようなことは在り得ない。いつかいつもの日常が戻る時、その日に備えておくのだ。抜け駆けだとは誰にも言わせるつもりはない。これは正当な報酬なのだから。 「時間延長料金は貰うつもりですけどね。」  きょとりと瞬いた子供にロビンは笑いかけて、アンタにとっても悪い話じゃないぜと囁いたのだ。  ごう、と風が吹く。白い大地に雪が降り注ぎ、果ては見えない。今どこに居るのかと問おうとして、口を閉ざした。思考が明瞭になる。懐かしい瞬間は程遠い。次の氷雪の大地へと向かう筈だった一行が、不意に妙な隙間に迷い込んでから数日。時間経過はまったくない謎の領域で、本来であれば夏だった筈の日々を過ごしている。――ルルハワってなんだっけ、妙なワードが過ったが忘れた。忘れることにした。あまつ、NYに行きたいかあと声が聞こえた気もしたが、全くの幻聴であろう。 「先輩、良いお知らせと悪いお知らせがあります。どちらからお聞きになりたいですか。」  洋画でよくある台詞って、使ってみたいけど現実に使おうと思うと使えるタイミング全くないよね、なんて会話をしたのが五分前だった。頷いていた探偵に、思わず二度見をしたがこれも気のせいだろう。だと言うのに、愛すべき後輩は天然を惜しみなく発揮させ、結果的に場の空気を和ませることに成功していた。これを奇蹟と言わずして何と言おうか、そんなムニエルの叫び声も気のせいだろう。なんだっけ、これ、いつかの惨状に似ているなと立夏は思ったがなかったことにした。シリアスな状況が続かないのは仕方のないことで、空腹すら存在しないこのただ白い景色が続く退屈な時間は、精神的にひたすら摩耗するからなのだった。何の肉を使ったか当てよう、所長のお手製料理コンテストはすでに行った。マシュのましゅましゅコントは可愛かった。ダヴィンチちゃんのうんちくトークはもうマニアックなのでやめて欲しい。様々な要求があったが、ムニエル氏のお悩み相談コーナーは異常に盛り上がった。スタッフの探偵と接する時の会話のテンポが難しい、年頃であるマシュと立夏の情操教育上に正しい行動とはだの、割と平和じゃないかなと立夏が遠い目をしたくらいには時間が経過している、筈である。曖昧な時間が、焦燥感へと変わる。その瞬間はすぐそこだとわかっているのに、何も出来ずにいた。 「……良いお知らせは、特異点を発見したことです。悪いお知らせも特異点を発見したことです。」  つまりどういうことだってばよ、と立夏は瞬いた。うっかり忍者のような物言いをしたなと思ったものの、誰も同じ国の出身者がいなかった為にそのネタは通じなかった。唯一、ムニエル氏だけが口元をにまにまとさせていた。 「つまりだね、立夏くん。特異点が見つかったんだ。この何もない筈の氷雪の大地の上に、突如として現れたんだよ。」  ドクターみたいな物言いをしたダヴィンチが、咳払いをした。意識をしたのかもしれない。立夏は小さくはにかんで、こくりと頷いた。後にすることはわかっている。特異点があるならば調査をする必要があった。何か不測の事態が発生していることは確かだったから。  そうして氷雪の大地に踏み入れた途端、立夏の足は緑に覆われた大地に辿り着いたのだ。あっという間だった。まるで目隠しをされていたかのように、そこに在った。ぶあ、と生々しい生き物の気配が襲い掛かる。情報量は急に多くなり、立夏は一瞬眩暈を覚える。でも、懐かしいと感じた。何故だろうと首を傾げた横に、ダヴィンチが降り立つ。上を見上げ青い空を、周りを見回し木々の木漏れ日を、耳を澄ませて鳥のさえずりを。「なんて、うつくしい」と幼い声でダヴィンチが言った。立夏は頷き、思い切り息を吐き出して、続けて胸いっぱいに吸い込んだ。冷たくない、温かな空気だ。マシュが恐る恐る降り立ち、探偵ことホームズは眩しそうに目を細めた。探索はいつも通り、二人で。何かあるかわからないと言う割に、ダヴィンチは危険性は低いと思うよと確信をもった様子で言い切る。ホームズは「成程、」と妙に嬉しそうに笑うのだ。 「常々、思っていたのだがね。会いたい、と言葉にしない理由を。成程、確かに願うまでもなかったわけだ。」  きょとりとする立夏に、ホームズは「さあ、行ってくるといい。懐かしい旧友に会えるだろう」と満面の笑みで言う。立夏は逆に警戒心を高めてしまいながら、マシュの手を強く握った。おや、と眉を跳ねあげたホームズは、今の言葉の何処に警戒心を高める理由があったのかということについて、すぐにダヴィンチに視線で訴えた。ところが全く伝わらず、ダヴィンチはお土産を楽しみにしていると手を大きく振ったのだった。  歩いて、歩く。踏みしめる大地の上に足跡が残る。雪に埋もれてすぐには消えない。振り返れば帰る場所へと通じる道筋はすぐにわかった。迷いそうでいて、迷わない程度にわかりやすく誰かが踏みしめたような小道があって。恐らくこの森の何処かに森の主が居るのだろうと容易に察せられた。特異点と言うからには敵も居るだろうと思ったのに、二人の行く手には何も遮るものがない。あるのはただ木々と、諸動物の気配と。人里を離れて、迷い込んだ森。そんな気分にさせられながら、立夏は歩みを進める。こんな風な場所を皆と歩いたなと思いながら、懐かしむ余裕すらでてきた。野営をすることはないだろうが、あまり遠くへは行かない様にしようかと手を繋いだマシュを振り返る。 「先輩、パンでもちぎって歩けばよかったですね。」  誰かに捨てられたわけでもないのにマシュがそう言って、立夏は食べる方が建設的じゃないかなと肩を竦めた。色気より食い気だからと言い訳をしてみて、マシュをちらりと見て。マシュはそれでも先輩と一緒なら、と笑うのだった。森の木々は時折かさりと音を立て、二人はその度に足を止めた。でも、その度に正体までは掴めずに、必死に気配だけを辿った。まるでわざと残されているような痕跡、歩いていた足が途中から走り出して、無我夢中に。アプリコット色の髪が揺れたのが見えたら、もう駄目だった。  白衣が、翻って。困ったように笑って。樹皮に縦に割れ目の走る、赤い小さな果実を無数につけた一際背の高い木の下で。その人は申し訳なさそうに、そこに居るのだ。 「「ドクター!」」  声が揃った。繋いでいた手もそのままに走って、押し倒さんばかりでしがみつく。誰なのかも、本人なのかもわからないまま、感じ慣れた気配ただそれだけに縋りつく。涙腺が緩んだ。頬を勝手に伝うものは止められずに、恋しくて寂しくて、手を伸ばしても届かなかったその人の名前を呼ぶ。ロマニ、ロマン、永遠に消えてしまった人。助けられなかった二人。後悔はいつだって尽きない。その中でも前所長とドクターだけは、二人に焼き付いているのだ。半ば呪いのように。 「……申し訳ないけど、先に言っておくよ。ボクはロマンその人ではないんだ。生前、ダヴィンチちゃんからのお願いで、ボクはボクのAIを造っていてね。だからこれは、ボクの代替品と言うか……データの集合体でしかない。この体は確かに人間によく似たものだけれど、年を取ることはない。あ、でもボク達が旅をした日々のこと、これまで二人がここに至るまでのこと。全部把握はしているよ。何せ、これはボクの我儘でもあるんだ。形がどうであれ、ボクは君達のつくる未来が見たかった。」  両腕は二人の背に回り、疑似的な回路で体温が点った手の平が二人の背を撫でる。撫でて、それだけでは足りなくて。頭やら頬を撫でて、触感を確かめるように。「柔らかいな、女の子だもんね」と言えば、マシュに無言で睨まれたりもして。 「オリジナルのボクは、立夏くんとマシュのことをとても愛していた。データの集合体であるボクにあるこの感情を本当だと信じてくれるなら、ボクだって二人のことが大好きだ。……そういうわけで、」  少しだけ間をおいてロマニは言うのだ。 「戦闘に役立てるかと言うと全くなんだけれどね。ああ、本来のボクよりはその辺はマシになってるけれど。……―――なにより、おかえりって言えるんだ。また、キミ達に。」  また零れて来る涙を拭って、マシュが縋り付く勢いでしがみつく。何処へも行かないでもう二度と、なんて言葉を言わなくてもきっと伝わっている。偽物かかどうかなんて判断するまでもなかった。二人にはわかっていたから。  帰り道すがらにロマニを挟んで手を繋いで歩く。両手に花だと立夏が言うと、「確かに若い子を連れて歩くのは、気分はいいな。」などと神妙な態度でロマニは頷く。積もる話もあったが、いつものようなやり取りが何よりも。立夏が楽しそうに話して、マシュがロマニにほんの少し甘えた素振りをして、ロマニが困ったように笑って。何時だって、ここにダヴィンチが居て、メンバーは入れ替わっていったりもした。でも、ロマニが居なければやっぱり駄目なのだ。おかえりの声がないと言うだけで、踏みしめる足は心細くなる。もう大丈夫歩いて行けると思っていたのに、こんな風にされてはもう駄目なのだ。優しさに飢えていたわけではない。新所長や、スタッフ、ホームズもダヴィンチだって。こんな状況であっても、尽きぬものだ。人の優しさ、温かさ。触れ合って、例え壊してしまう世界の向こう側であっても。もしかしたら狡いのかもしれないと立夏が言うと、マシュが不安そうにロマニを見上げた。ロマニはやっぱり困ってしまったように笑って、 「というか、ボクそのものはボーナス支給みたいなものなんだ。そもそもの発端は君達もよく知る彼のお願いからで、ダヴィンチちゃんとボクは相応の対価と引き換えに実現したに過ぎない。それでも有り余る資源はこうして今目の前にあるわけなんだけど、……よく考えてごらん。森、目隠し���そして、――イチイの木。」  今の今まで歩いて来た方向を振り返り、ロマニは嬉しそうに口にする。 「サーヴァントには好かれていないってデータがあったけれど、記録を読む限りではそうではないと思うんだ。少なくとも、『認められていた』ってね。何よりボクはあの彼にそう願われたことが、何よりも嬉しい。」  好かれているとは思わなかったのだと語る口調は楽しそうでもあって、訝し気に見上げるマシュの手を揺らして、ロマニはまあまあ、と宥める。歩いて、歩いて、その内に森の終わりが見えてきて。またふわり、と幻影のように森が消えそうになったところで、ロマニが二人の手をやんわり解いて振り返り叫んだ。  「ロビンくーーーーーーーーーーーーーん!やっぱり二人に黙って置くのはかなり無理があると思うんだ!大体使い切れないリソースを廃棄するのはもったいない。限りある資源こそ有効に使うべきだ。肉体のあるロビンくんなら、戦力としても護衛役として十分な筈だろう?!」  ぶっと噴き出したのは立夏で、マシュはぱちぱちとしきりに瞬いている。一方、叫び声の木霊する森はゆるゆると消えて行き。やがてぽつんと緑色のマントを纏う人影へと姿を変えた。あの森そのものが彼の宝具だったとは、まさか思いもよるまい。立夏は何か逸話に大幅な変更でもあったのかと首をひねるが、勢いよくフードをとったロビンは舌打ち交じりに言い放つ。 「仕様変更でも何でもねえっての。こちとら、持ってるところからせっせとバイトをして隙間産業しながら溜め込んだんだ。聖杯?上限迎えてるってのに、人に捻じ込んで来たのは何処の何方でしたでしょーか。」  じと、と見つめる視線に立夏は何と無く気恥ずかしくなり、ロマニの後ろの隠れた。何だかビミョーなお年頃のような反応をされ、ロビンは閉口する。今それか、今になってそれかと内心で突っ込みつつ、ロビンにしては積極的に歩み寄って襟首をつかんで引きずり出せば、合わせる顔がないと来たものだ。ぼそぼそと語る言葉を繋ぎ合わせれば、もう会えないと思っていたから、だの、いつかまた会えたらいいとは思っていた、だのと。 「立夏くん、そこは素直に会いたかったでいいと思うんだ。データから見ても、こういうのはリリカルな展開を経てメイ・キングなだけにメイキングラブになると思うんだ。」  ロビンがついロマニの肩を軽く小突いた。流石に今のはなかったな、とお互いに視線を交わしたところで、マシュが咳払いをし、 「つまり……、どういうことなんでしょうか。ロビンさんは、あのカルデアに居たロビンさんなんですか?」 「まあ、なんです。宝石剣をちょいとレンタルしましてね。出所については聞かないでくださいよ。面白くもない苦労話が付録につくだけだ。――あー、そもそもあの宝石剣ってのは平行世界の」 「ロビン、もっとわかりやすく。」  立夏がかみ砕いてくれと言うと、そうでしたね、とロビンは立夏の頭を撫でる。こういう時、孔明大先生が居たらなとロビンは思うのだが、居ないものは仕方あるまい。 「宝石剣で平行世界からマジックパワーを集めたよってところですかね……」 「雑だね。ロビンくん。」  ロマニに雑などと言われると、ロビンも思うところはある。思うところはあるが、突っ込みを返したところで泥沼になるのが目に見えていた。まじっくぱわあ、とぼやいた立夏はじーとロビンを見上げている。 「そんなに熱心に見つめたところで、ハンサム顔があるだけですよ。」 「クラスがキャスターになったってこと?」 「違うな???」 「でもドルイドの関係なら、キャスターわんちゃん。」 「どこぞの御子様でもあるまいに、木を燃やすなんて真似しませんよ。一面焼け野原にでもなっちまったら、隠れる場所なくなるでしょうが。」 「あー、成程。そういう流れでなしなんだ。」 「いやまあ、どっかの誰かが新たな逸話でも発見したなら在り得ない、とは言い切れないけどな。…………、この話今必要だったか?」 「あんまり。」 「ですよね。」  成程と頷いている立夏の調子が相変わらずマイペースだなと思いながら、ロビンはふっと視線を逸らす。すると目に入ったのがにやにやしているロマニと、したり顔のマシュなのだから手におえない。まだそう言うんじゃないと主張したところで、もう手遅れだろう。ダヴィンチが顔を覗かせているのが遠くに見えるし、ここから待ち受ける盛大な言い訳と、新所長への御目通りと。これからのことを思えば、決して容易い日々ではあるまい。でも、立夏はそこに居て、守りたい者とその日々は此処にあるから。
 かくて、愛と希望の日々はまだ続き、旅はまだまだ終わりそうにもない。ロビンは冷たい曇り空を見上げ、肩を竦めて。仕方なさそうな素振りで笑って返して、いつもと変わらない素振りでそこに居るのだ。
1 note · View note
hummingintherain · 3 years
Text
弱虫ヒーロー
「ぼくがヒーローになるよ」  どんくささが災いし幼稚園でいじめられて涙で顔をぐしゃぐしゃにしていた私に突然彼女はそう言って手を差し伸べた。  私達にとってヒーローとは日曜の朝にテレビで放送される戦隊物のイメージだった。毎週悪者が出てきて、町を荒らして、人の平和を脅かす。その脅威に立ち向かう戦士達。最終的に爽快な展開になって、子供はみんな憧れて、変身グッズを身に着けてヒーロー気分で跳ね回る。  その時、園内に植えられた巨大な木の陰で私は隠れて泣いていた。室内でおりがみを折ったりおままごとをするのが好きなのに、おそとで遊ぶのも大切だからと先生に連れ出されて、やりたくもないおにごっこに巻き込まれて、案の定さっさと鬼にされて、でも誰に追いつくこともできなくて、からかわれてばかりで、とてもいやな気分になって、悔しさとか惨めさとかに苛まれてしくしくと泣いていた。  私のことなんて忘れて違う遊びに切り替えたから、誰も私を探しには来ず、思う存分泣くことができた。唯一やってきたのが、彼女だった。きらきらとした木漏れ日が当たって、彼女を含めたあらゆる景色がきれいだった。 「まもってくれる?」  私が問いかけると、男の子みたいに髪を短くした彼女は自信満々といったように歯を見せた。 「まかせろよ」  小指が重なり、絡まる。指切りげんまんが交わされて、私たちの間には秘密が生まれた。  それから彼女は私にくっついてくれた。正しくは、私が彼女にくっついていた。  彼女は男の子に負けない体格の良さをしていた。幼児における男女差なんてそんなものだ。彼女は四月生まれで同学年だと一番成長しているはずで、私は翌年三月の早生まれで比較的小さい子供だった。四月生まれと三月生まれではあらゆる点で差が生じる。  彼女は負けん気が強くて、男の子にも果敢に挑んでいった。女の子たちは彼女のことを慕っていた。私は金魚の糞みたいなもので誰の視界にもうまく入らなかっただろうけど、とにもかくにも彼女が味方してくれているだけで私は随分と助けられた。  しかし、その年の三月に彼女は急に園を去ることになった。親の転勤が理由だった。  私にとって世界の終わりと同様だった。  うそつき、と言った。自分勝手に。まもってくれるって、言ったのに。私はあの日、彼女と約束を交わした日よりもずっとかなしい涙を流しながら、彼女にそんなこころない言葉をかけてしまった。ごめん。彼女は本当につらそうに謝った。私もとてもつらかった。彼女と離れることも、彼女が離れてしまった後のことも、あらゆることが不安でつらかった。  それから彼女はこの町を去って、私と彼女の秘密は遠く細く引き延ばされてぷつんと切れてしまった。
 *
 時が経過し、私は地元の公立中学に入学することになった。  私服登校だった小学校と違い、真新しくてぱりぱりしてて固い生地の、制服に袖を通す。私立や少女漫画みたいに可愛いチェックスカートも赤いリボンも無い、ただの紺無地のプリーツスカートにブレザー、リボンもネクタイも無し。ちょっと不満だったけど、身につけてみるとそれだけでお姉さんになったみたいで嬉しくなった。お母さんもお父さんもいたく喜んでくれて、入学式に臨む。  何校かの小学校の学区が複合しているので、元の小学校の友達は勿論、他の小学校の子もたくさん入学してくることになる。幼稚園では手痛くいじめられたが、小学校でなんとか少し持ち直し、友達もできた。中学校はどうか、クラスでうまくやっていけるか、部活はどうするか、勉強は大丈夫か、だとか期待と不安がぐるぐると回転している。  一年三組に組み込まれ、教室の後ろから父母に見守れながら私達は一人ずつ自己紹介をしていった。私はたいてい一番最初の出席番号になる「会澤真実」で、この一番最初という位置にどれほど振り回されてきたか分からない。会澤苗字のお父さんをどれだけ恨んだことか。  先生に呼ばれて、席を立ち上がる。最初がみんなにとっても肝心だということはよくわかる。みんなの視線が集まって、負けそうになる。やばい、吐きそうだ。知っている子を咄嗟に探す。真ん中あたりに小学校の友人がいて、あの子が傍にいてくれたらどれだけ心強かっただろうと思いながらも、彼女が小さく手を振ってくれたのを見てほっとして、なんとか私は噛まずに自己紹介を始める。名前と、出身校と、抱負。無難に終わらせて、ぱらぱらと拍手が起こる。  しばらくは多大な緊張がずっと糸を引いていて、意識が他の子たちの方に向かなかった。じくじくと鳴る心臓がやがて収まってきたころには、さ行までやってきていた。 「清水律」と聞いて、私はふと顔を上げた。どこかで聞き覚えのある音並びだった。立ち上がったのは学ランを纏った、中くらいの背の男子だった。中性的な顔つきで、どちらかというとイケメンな部類に入るような感じがする。しみずりつ、と心の中で繰り返す。なんだろう、このデジャヴ。  淡々と続いていた自己紹介に衝撃が走ったのは、そんな彼が発した次の言葉だった。 「ぼくは性別は女ですが、心は男なので、学校にお願いして男子として生活することにさせていただきました。よろしくお願いします」  教室に薄い困惑が広がった。  そして私は思い至った。どうしてこんなに大事なひとの名前を忘れていたのだろう。  昔、約束を交わした、私にとっての正義のヒーロー。 「りっちゃん」だ。
 *
「りっちゃん」  つつがなく入学初日を終えて、静かな興奮と動揺の残る教室で、りっちゃんの周りの子たちがいなくなったのを見計らって私は思いきって話しかけた。  りっちゃんはやっぱり学ランを着て、普通の男子と��なじような雰囲気をしている。でもさっき一緒にいた子達は女子だった。多分、同じ小学校の子���ちで、友達なのだろう。なんで、とか、聞こえたから、たぶん彼女達もりっちゃんが男子の格好をしていることに驚いたのだろう。心が男だというくらいだから小学校でもボーイッシュな格好をしていたのかもしれないが、女子と男子で明確に見た目が区分される中学校でまで学ランを着てくるとは誰も予想していなかったように窺えた。  はじめりっちゃんは目をぱちくりと瞬かせたけど、ふわっと笑った。 「久しぶり。やっぱりまみちゃんだったんだ」 「うん」  私はどきどきした。なんだかずっと落ち着いた声色に思う。男子は少しずつ声変わりしつつある人も出てきているけれど、りっちゃんは当然ながら男らしい野太い声ではない。むしろ澄んでいる印象があった。なんだか大人っぽい。 「最初名前を聞いて、似てるなあって思ったんだ。思い違いだったら恥ずかしかったんだけどさ」 「私も……いや、最初は、その、名前を聞いてもなかなか思い出せなかったんだけど、りっちゃんが男子の格好をしてますって言った時に、思い出した」 「めっちゃ事細かに教えてくれるじゃん。てか、りっちゃんって懐かしいな」  私はちょっと慌てた。そうか、りっちゃんはりっちゃんだけど、男子として生きているんだとしたら、ちゃん付けは嫌かもしれない。 「小学校ではどう呼ばれていたの?」 「律が多いな。それか清水。こういうのだから、ちゃんとかくんとかややこしくて、呼び捨てが多かったんだ。でも呼びやすいようにしてくれればいいよ。別にりっちゃんでも。男でもちゃん付けのニックネームってあるしさ」  この余裕はどこから生まれてくるんだろう。私はたった少しだけの時間でりっちゃんはやっぱりすごい子なのだと思った。すごいね、と何気なく言うと、りっちゃんは首を傾げた。 「何が?」 「いや、いろんなことが。幼稚園の頃より落ち着いてるし、大人びて見える」 「幼稚園の頃よりは成長してたいわ。流石に」 「そっそうだよね。ごめん」 「いいよ謝らなくたって。まみちゃんはなんか、ちょっときょどきょどした雰囲気は残ってるね。懐かしい」  きょどきょど、という言い方がちょっと可愛いけど、多分良く言われているわけじゃない。 「でも、さっきの自己紹介とかさ、一番で緊張するだろうにちゃんとしててかっこよかったよ」  クラスの子たちに嘗められたりいじめられたりしないようにするには第一印象が何よりも重要だ。りっちゃんにそう言われると、たぶん割と大丈夫だったのだろうとわかり、ほっとする。 「すっごく、あがっちゃったけど」 「うん、緊張感は伝わってきた。女の子はそのくらいの方が可愛らしくていいよ」  りっちゃんはさばさばと笑う。けれど、どうしてもその言い方に引っかかってしまう。 「……あの、りっちゃんの、心は男っていうのは」  思ったよりすらすらと会話が進んだので、私は決意して尋ねてみることにした。 「ああ」りっちゃんはなんてことないように学ランの襟元を摘まむ。「言った通り。いろいろ迷って親や先生方ともよく相談したんだけど、ぼくは自分で着るならブレザーとスカートより学ランとズボン派だっていうだけ」  でも、まみちゃんの制服姿はとても似合ってる、とさらっと褒めてきた。はぐらかされたのだと解った。私は頬がちょっと熱くなるのを感じながら、辛うじて、りっちゃんも学ラン似合ってる、と返した。本当に似合っていた。私もそうだけど、制服に着せられている子ばっかりな中で、りっちゃんはそのぴしっとした制服の頑なさがりっちゃん自身にフィットしていた。 「そうか? 良かった」  ほっと肩の力が少し抜けたのを見て、ああ、涼やかな顔をしてるりっちゃんも緊張してたのだと知る。 「小学校の友達にもちゃんと言ってなかったからさ。皆びっくりしてて。でも、なんとかなるか。堂々としてればいいよな」 「うん」  私は素直に頷いた。  それから簡単に会話を交わして別れた。また明日、と言い合って。  また明日。反芻する。また明日、りっちゃんに会えるのだ。同じ教室で。幼稚園の頃と少し形は違うけれど、あの時永遠の別れみたいにたくさん泣いたのに、奇跡が起こって再会できた。そう考えるとなんだか嬉しくてたまらなくなった。  私は大きくなったりっちゃんの素振りや言葉を思い返す。  先生、だけではなく先生方とつける。果たして、小学校の時、そんな風にさらっと言える人は周りにいただろうか。中学一年生なんて、制服で無理矢理ラベリングされただけで、中身はまだ殆ど小学生みたいなものだ。その些細な気遣いのような言葉の選び方に、私は今のりっちゃんの人間性を垣間見たような気がした。
 *
 りっちゃんの噂は教室を超えて一年生全体に広がった。  面白半分に様子を見に来る野次馬根性の人もたくさんいた。初めのうちは私の席は入り口から一番近かったので、廊下にたむろしているりっちゃん目当ての人たちの声がよく聞こえた。どれ? あれあれ、あの座ってるやつ、へー、みたいな、好奇心だけが剥き出しになってる言葉が殆どだった。その中には、りっちゃんの元小の子たちもいて、小学校の時もやっぱり男子っぽさはあって、男子にまじってサッカーをしたり、誰にも負けないくらい足が速かったり、その一方で女子ともYouTubeの話をしたり恋バナをしたりしていたらしい、という情報を横耳で仕入れた。  要はクラスの中心人物として立っていた。あれだけ大人っぽかったら、確かに自然と中心になりそうだ。悪い意味ではなく「違う」感じがする。私とは全然違うし、皆とも違う。彼女は少し、違う。あれ、彼女っていうべきなのかな、それとも彼っていうべきなのかな。  たぶん、私が抱いているそういう戸惑いをみんなが持っていた。  そんな皆の戸惑いは素知らぬふうで、りっちゃんは「男子」として中学生活を送っていた。男女一緒くたの陸上部に入部して、毎日放課後に校庭でランニングしているのを見かける。私は小学校の友達に誘われて美術部に入った。絵なんて全然上手じゃないし好きじゃないけど、何かしらの部活には入っておいた方が友達ができると思ったからだ。友達はいるぶんだけ安心する。  実際、美術部は先輩後輩の上下関係も薄くて気が楽だった。プロみたいにびっくりするほど上手い先輩もいれば、幽霊部員もざらにいる。アニメっぽい絵を描いて騒いでる人もいれば、静かに一人で模型造りに没頭している人もいる。みんなそれぞれで自由にしていて、地味さが私にちょうど良かった。新しい友達もできた。  私とりっちゃんは全然違う世界の人だな、というのは、部活に入ってしばらくしてから実感するようになった。  初めのうちはちょくちょくタイミングを見計らって話したけれど、それぞれ友達ができたし、瞬く間に忙しくなった。小学校よりもずっと授業のスピードが早いし宿題は大変。塾に行っている子は更に塾の宿題や授業もあるのだから大変だ。私はらくちんな部類のはずなのに、目眩が起こりそうだった。  それでもたまに話す機会があった。委員会が同じだったからだ。園芸委員会である。だいたいこういう類は人気が無い。毎日の水やりが面倒臭いし花壇いじりは汚れるからだ。私のような地味な人間には似合うが、りっちゃんが立候補するのは意外だった。曰く、植物って癒やされるから、らしい。  校舎に沿うようにして花壇が設けられており、クラス毎に区分されている。定期的に全学年で集会があって、植える花の種類を決める。大体決まり切っているので、すぐに終わる。そして土いじりをして苗を植えて、水やりをする。水やりは曜日を決めて交代でしているので、りっちゃんとゆっくり隣で話すのは土いじりをするときくらいだ。だから、私はそんなに植物が元々好きだったわけじゃないけれど、この時間が結構好きだ。 「暑くなってきたよなあ」  とりっちゃんは腕まくりをして苗を植えながら言った。りっちゃんの腕はあんまり骨張っていないけれど、陸上部の走り込むようになって黒くなりつつあって、健康的な肌をしていた。 「そうだね。そろそろ衣替えだよね」  既に男子は学ランを脱いで、女子はブレザーを脱いでいる。女子はベストを羽織っているひともいるけれど、本格的に暑くなってきたら半袖に切り替わる。 「やだなあ」  りっちゃんは軽い感じで苦笑し、お、みみず、と言って、指先でうねうねうごめくみみずを摘まんだ。私は思わず顔を顰める。 「ええ、きもちわる」 「みみずっていいやつなんだよ。みみずのいる土は栄養分たっぷりってこと。だからここに植えた苗はきれいな花が咲く」 「知ってるけど」私は口を尖らせる。「きもちわるいものはきもちわるい」 「それは仕方ないな」  りっちゃんはおかしそうに笑い、みみずを元の土に返してやる。 「りっちゃんは家でもこういう園芸とか、するの?」  結局私は慣れている「りっちゃん」呼びを続けているけれど、クラスでそういうのは私だけだった。ただ、普段周りがいる中でそう呼ぶのはなんか恥ずかしいし、りっちゃんもちょっと嫌かもしれないから、「清水くん」と使い分けている。 「たまにね。母さんが庭いじり好きだから。雑草取りとかよくやるよ。暑くなるといくら取っても草ぼーぼーになるから、それも嫌だな。嫌いじゃないんだけどさ。植物って何も言わないし、無心になれるというか」 「ふうん」 「まみちゃんはこういうのやらない?」 「全然。うち、マンションだし。でも、委員会でやるようになってちょっと好きになった」 「いいね。まみちゃんはきっと綺麗な花を咲かせる」 「綺麗な花?」 「植物は人の感情を反映させるという噂がある」  りっちゃんは基本的には大人っぽくて男子らしさは確かにあるのだけれど、時々こういう可愛らしいというかロマンチックなことを言う。 「だからおれはいっつも雑な咲かせ方をする」  入学時には「ぼく」を使っていたけれど、五月頃には「おれ」と言うようになった。 「私も自信ない」 「じゃあ三組はみんなより変な花が咲くかもな」  二人して笑った。りっちゃんの冗談は心地良い明るさがあって、話していて楽しい。
 *
 最初の明らかな違和は、やはりというかなんというか、プールの授業だった。  暑くなってプール開きが示されて、教室にはいろんな声が沸き立った。女子の中には水着姿になるのが嫌だという子もいたし、男子は大体嬉しそうだった。でも三組には他の教室に無い疑問が浮かんでいただろう。  清水律はどうするのだろう。  りっちゃんは普段男子の格好をしているけれど、身体は女だ。だから、当たり前だけど、上半身はだかになる男子の水着姿はたいへんなことになる。かといって、女子のスクール水着を着たら、それはそれでなんだかおかしい感じがする。  トイレは男女共有のバリアフリースペースを使って凌いでいるけれど、こればかりはどうしようもない。陽の下に明らかになってしまうことなのだ。  結論からすると、りっちゃんは一切のプールの授業を休んだ。休んで、レポートを提出した。  プールを休む子は他にもいる。女子も結構休んだりする。女子には生理がある。体育の先生に直接生理だという理由を伝えるのは嫌だけど、お腹が痛いとか言ったら大体通じて休める。明らかに生理休みが長すぎる子は流石に指摘されて、しぶしぶ出たりするけれど。  一方でりっちゃんはずっと休んだ。それを不満げに見ている子もいた。レポートで済むなんて楽だよね、と嫌みったらしく言う子もいる。そんなの、仕方ないじゃんと思うのだけれど。りっちゃんだって休みたくて休んでいるわけじゃないのだ。たぶん。  そういえば、りっちゃんは生理はどうしているのだろう。あんまりにデリカシーが無いから訊けないけど。  生理に限らず、中学生の時期は男女で大きく身体が分かれていく。  女子の生理は小学生高学年から中学生にかけて初潮がやってきて、身体は丸みをおびて、胸がすこしずつ大きくなっていく。男子は、あんまりよくわからないけれど、声変わりして、ちょっとひげが出てきたりする。身体も大きくなってくる。女子も身長はよく伸びるし私も春から夏にかけて二センチくらい伸びたけど、男子は女子の比じゃないという。特に中学校で凄まじい勢いで伸びていって、ごはんの量も半端じゃない。エネルギーの塊、みたいな感じ。  りっちゃんは男子だけど、女子だ。身体は、女子なのだ。  衣替えになって、りっちゃんはひとり長袖のシャツをしていた。私はなんとなくその理由を察した。半袖のシャツは長袖のシャツよりも生地が薄くて、透けやすい。りっちゃんの胸は薄いけれど、たぶん多少は膨らんでいて、ブラだってしている。キャミソールとかタンクトップを上に着て、女子もブラが透けないように気をつけるけれど、りっちゃんはそのものを隠そうとしているのではないか。本人には訊けないけれど。  そういったことが違和感が表面化してきたのは、夏休みが近くなった頃だった。  花壇に植えた向日葵の背が高くなって、もうじき花開こうという頃である。  他愛も無いからかいのつもりだったのだろう。座って次の授業の準備をしていたりっちゃんの背中を、男子の指が上から下へなぞった。  そう��ようとしているのを、私は教室の後ろ側から、美術部の友達で一番仲が良いさきちゃんと会話しながら見ていた。やばい、と直感していた。男子達がそわそわしていて、なにかをりっちゃんに向けてしようとしていると解った。それがなんなのかまでは、会話まで聞こえていなかったから見当がつかなかったけれど、感じの悪いことであることには間違いないと思った。  そしてその指がりっちゃんのきれいな背筋を辿った時、私は思わず息を詰める。  男子が大きな声で、ブラしてる、と興奮なんだか卑下なんだか、宣言した。  りっちゃんは驚いて彼を振り返っていた。その男子のグループは手を叩いて笑っていた。やっぱり「してる」んだ、と謎を解き明かして、ものすごくおかしいことみたいにめちゃくちゃ笑っていた。一連の行為は三組みんなの耳に入っていただろう。  私は凄まじくその男子のことを嫌悪したけれど、りっちゃんの次の行動に、驚いた。  あの大人びて、いつも穏やかなりっちゃんが、手を上げた。  がたんと椅子を勢い良く倒して、触れた手をひらひらと揺らしている男子に、殴りかかろうとした。  その顔は、遠くにいても、ものすごく冷たくて、恐ろしかった。怒りというものは振り切れてしまうと烈しい色ではなくもっと静かな色をしているのかもしれないと知った。  りっちゃんの怒りの拳はからぶった。  がん、と固い音。  降り下げられた先は、机だった。木の板が割れるんじゃないかと錯覚するほどの強い音だった。いよいよ教室中の空気が氷点下に下がった。窓の外の油蝉の声がやたらとよく聞こえて、虚しいほどだった。 「……ごめん」  脅える男子を前に俯くりっちゃんはそう呟いて、教室を出て行った。  静まりかえった教室だったが、りっちゃんがいなくなったことでどよめきが起こり始めた。間もなくチャイムが鳴って、先生が入ってきた途端、教室の異様な雰囲気を感じ取って目を丸くする。 「あれ、清水くんは?」  先生がそう言った。なんでそんな蒸し返すようなことをわざわざ尋ねるの、と、先生はなんにも悪くないのに私は強く思った。 「保健室です」  最前列にいる委員長がそう言って適当にやりすごした。  結局りっちゃんはその後教室に戻ってこなかった。翌日の学校を休んで週末を挟み、月曜からはまた学校にきた。私はほっと胸を撫で下ろした。りっちゃんはいつもと同じ涼しげな顔をして挨拶をした。クラスの反応はそれぞれだった。私みたいに安心していつも通りみたいな挨拶を返す子もいれば、ぎこちない子もやっぱりいて、そしてひそひそ話をする子もいた。  嫌な予感がした。  しかし、幸いというのかなんなのか、間もなく一学期が終わろうとしていた。  私は、夏休みを挟んで、この事件が生み出したこわばりが薄まることを、切に願った。
 *
 夏休み。  美術部は自由登校だ。一応コンクールはあるけれど、締め切りにさえ間に合えばあとはどうだっていい。  私はそれでも学校に来ていた。絵はそんなに好きじゃなかったけど、塾も無いし、やることがあんまりなかったから、なんとなく向日葵に水やりをしにきた。ひんやりとクーラーがよく利いた美術室で一休みしている間に、静まりかえった校舎にブラスバンドの練習している音が響く。同じ学校なのに、普段のせわしなさが無くて異世界みたいだった。こののんびりとした静けさは、いいな、と思う。ずっとこのくらい優しい時間が流れていればいい。  私はスケッチブックを脇に、ペンケースを片手に、花壇の方へ向かった。途中で青のじょうろを手に取り、水を入れる。日光に当てられているせいか最初は熱湯が出てきて驚いた。こんなに熱くては向日葵の根に悪そうで、充分冷たくなってからたっぷりと補給する。  たぷんたぷんと重たく跳ねる水。ときどきはみ出して、乾いた校庭にしみをつくる。  花壇側は影がほとんど無かったが、花壇の後ろの数段の階段部分、つまり一階の教室に直接通じる部分はぎりぎり黒い影になっていた。花壇から校庭側に目を向ければ入道雲が光り輝く夏の青空が広がり、とんでもない直射日光の下で運動部が練習している。サッカー部と、それに陸上部もいる。思わずりっちゃんを探したけれど、見当たらなくてちょっと残念だった。りっちゃんは高跳びをやるようになっていていた。助走をつけた直後の一瞬の筋肉の収縮と跳ね返り、そして跳んだ瞬間の弛緩した雰囲気、全身をバネにしてポールを越える刹那に懸ける感じが、きれいで、りっちゃんにぴったりだった。私はこっそり練習を遠目に見かけてスケッチブックに描いてみたけれど、あまりに下手すぎてお蔵入りだ。人体は難しい。  そうしてぽんやりと歩いて行くと、三組の花壇の前には思わぬ先客がいた。 「りっちゃん?」  声をあげると、りっちゃんが顔をあげた。その手には緑のじょうろを携えていた。 「あ、おはよう」  あまりに普通に挨拶された。慌てて挨拶を返す。 「すごい。夏休みなのに水やりしにきたのか。あ、部活か。美術部って夏休みもあるんだな」  りっちゃんはスケッチブックに視線を遣った。その中にはりっちゃんの跳ぶ瞬間を描いた下手くそな絵もあるので、慌てて後ろ手に隠した。 「りっちゃんこそ。というか、りっちゃんの方こそ部活は?」  まさに、陸上部がすぐそこで練習に励んでいる。えいえい、おー、だとか、かけ声を出しながら、走り込みをしている。  真夏のまばゆい陽に照らされて、りっちゃんは少しさみしげに笑った。りっちゃんに特有の大人っぽさに切なさが加わって、私はたったそれだけで胸が摑まれた。 「辞めたんだ」  咄嗟に、耳を疑った。  蝉の声がじんと大きくなる。 「辞めた?」 「ああ」 「陸上部を?」 「ああ」  私は信じられなくて、一瞬目の前がくらっとした。  真面目に頑張っていて、りっちゃんは楽しそうだった。身体を動かすのが好きで、小学校でだってスポーツが得意で男子にも負けなかったくらいだったという。足だって速かったという。実際、りっちゃんの足は速い。体育で私はそれをまざまざと見て、本当に、本当の男子にも負けていなくて、びっくりしたし、かっこよかった。 「なんで?」  蝉が近くでうるさく鳴いて、風を掻き回している。 「言わなきゃ駄目?」  りっちゃんは薄く笑った。なんでもあけっぴろげにしてくれるりっちゃんが見せた小さな拒絶だった。ショックを受けていると、りっちゃんは嘘だよ、と撤回した。 「陸上って、まあ、スポーツって全般的にそうだけど、男女で種目が分かれてるだろ」 「……うん」  どんくさいくせに、私はもうなんだか道筋が見えて、理由を訊いた自分がいかに無知で馬鹿か自覚することになった。 「どっちがいいのか、結構揉めてさ。そりゃ、身体は女子だから、身体を考えると女子になる。でもおれは男子でいたいから、男子で出場したいんだけど、なかなかそうはいかないんだとさ。ほら、戸籍とか学校の登録では女だから。おれ、格好が男なだけなんだよな。それに、やっぱり先輩とか見てるとそのうち絶対本物の男子とは差が出てくるんだよな。それってどうしようもないことだしさ。今はおれの方が成績良くても、そのうちあいつらは軽々と俺ができないバーを越えていくようになる。てか、今、おれが高く跳べるとか、速く走れるっていうのも、どうもあんまり良くないみたいでさ。実力主義って言って割り切れたらいいんだけど、どうもそういうわけにはいかないらしい。運動部って上下関係厳しいしさ。腫れ物扱いっていうかさ。なんかあらゆることが面倒臭くなって、そもそもおれの存在自体が面倒臭いんだって気付いて、辞めちゃった」  一気に言い切って、あはは、とりっちゃんは空虚に笑い飛ばした。あまりに中身が無い笑い方だった。  私は自分が立っている地面の堅さを意識しなければ、自分が立っているかどうかの認識すら危うかった。 「おれも美術部に入ろうかなあ」  などと、絶対に本心からではないことを言った。 「絵が下手でもやれる?」  りっちゃんの顔がにじむ。 「壊滅的に下手だから、美術部は流石に無理か」  また、からからと笑った。あはは、からから、表面だけの心にもない笑い方。 「……まみちゃん」  りっちゃんが驚いた顔をして、近付いてくる。 「なんで泣いてるんだ?」  私はまたたいた。いっぱいになった瞳から、堪えきれず涙が溢れて頬を伝った。 「ええ、どうした。なんかおれまずいこと言った?」  慌てて引き笑いをするりっちゃんの顔をしっかりと見ることができない。私は咄嗟に首を横に振り、嗚咽した。ほんとに、なんで泣いてるんだろ。私がどうして泣いているのだろう。  水の入ったじょうろが指から滑り落ちた。水が派手に跳ねて、じょうろは横倒れになって、乾いた地面に水溜まりが広がっていく。  空いた手で私は涙を拭く。肌で拭ったところで全然止まらなくて、スカートのポケットを探る。そうして今日に限ってハンカチを忘れたことに気が付いた。美術室に戻れば鞄の中にタオルがあるけれど、戻る余裕が無かった。私はじっと静かに泣いた。  やがて、りっちゃんから、黙って、青いハンカチが差し出された。  綺麗な無地のハンカチ。私は最初断ろうとしたけど、りっちゃんは自然なそぶりでそのハンカチで私の頬を拭った。このさりげなく出来てしまうりっちゃんの大人びた優しさが、いいところだ。やわらかな綿の生地が触れて、群青のしみが広がっていく。私は諦めて受け取り、自分で目頭に当てた。ついでに鼻水まで出てきて、ハンカチは申し訳ないくらい私の涙と鼻水をたっぷり吸い込んでしまった。りっちゃんは何も言わなかった。静かに待ってくれた。私は、頭が真っ白になりながら、頭のどこかで、この二人向かい合っている状況が誰の目にも入らなければいいと思った。りっちゃんも、私も、ややこしいなにかに巻き込まれないように。でも、隣のグラウンドではたくさんの生徒がいる。校舎内ではブラスバンド部が練習している。こんなところ、誰の目にも触れない方が無理だ。こんな時までそんなことを考える私は、最低だ。 「思い過ごしかもしれないけど」  私の嗚咽がピークを迎えてやや落ち着いてきた頃、りっちゃんは静かに滑り込むように呟く。 「まみちゃんが考えているよりおれは平気だから、大丈夫だよ」  嘘だ。  私は充血した目をハンカチから覗かせて、りっちゃんの顔を見上げた。女性的でも男性的でもある、きれいなりっちゃんの顔。りっちゃんは笑っていた。愛想笑いだった。  ほら、やっぱり嘘だよ。 「りっちゃんらしくないよ」  私はどう言ったらいいのか解らなくて、ようやく絞り出したのは、その言葉だった。  りっちゃんの顔が冷める。 「おれらしいって、なに?」  思わず息を止める。私はりっちゃんの冷たい双眸を凝視した。笑った仮面を剥がした、静かで、恐い、りっちゃんの表情。冷たい怒りを拳というかたちに変換して振り上げた、あの教室での鮮烈な映像が過った。  ぬるい風が強く吹いて、軽くなったじょうろがかたんと音を立てる。  りっちゃんは我に返ったように表情を変えた。ありありと後悔が浮かんでいる。 「ごめん」  そう口早に謝って、りっちゃんは俯いた。 「ヒーロー失格だな」  りっちゃんは呟いて、その場を去った。私の後ろの方へ足音が遠ざかっていって、やがて消えた。  蝉の声と、ブラスバンドの音と、運動部のかけ声、それにあまりにも重たい沈黙だけが残った。  なんてことを言ってしまったのだろうと、烈しい後悔に襲われてももう遅い。りっちゃんのハンカチで顔を覆ってうじうじと座り込んだ。私、小さい頃と何も変わっていない。うそつき、と心ないことを言ってりっちゃんを困らせたあの頃と、なんにも変わっていない。  他のクラスより堂々と高々と咲き誇った向日葵がふらふらと揺れていた。高い分、風によく煽られてしまうのだった。  それから私は何度か向日葵に水やりをしに来たけれど、りっちゃんと会うことはなかった。向日葵はだんだんとくたびれて、重たい頭でっかちな花の部分をもたげて、急速に枯れていった。
 *
 二学期がやってきた。  りっちゃんは一人でいることが多くなっていた。  腫れ物、とまでは言わないにしても、なんとなくクラスのみんながりっちゃんに対してよそよそしくなっていた。夏休みを跨いでも、りっちゃんのちょっとした特異性の受け入れ方を迷っていた。勿論、普通に話しかける子もいる。私も、すれちがった時に挨拶はするし、園芸委員会で一緒になると普通に喋る。りっちゃんは夏休みの出来事が無かったことみたいに、自然に喋ってくれた。私にはうまく出来ない芸当だ。でも、私はそのりっちゃんの優しさに甘えて、何も言わずに安堵して会話した。  私はりっちゃんにずっと甘えている。幼稚園の頃からずっと。  苦しんでいるりっちゃんを前にしても、それでも透明人間みたいに、クラスのはじっこの方で、りっちゃんの背中を見ている。そして秘密の会議みたいな園芸委員会の時間だけ喋って特別感に浸ってる。りっちゃんのことを分かっているような気で、でも分かっていない。  残暑が厳しい中、次なる行事である運動会に向けて学校は動き出していた。  運動会は、学年種目、すなわち学年毎のクラス対抗の種目と、個人種目、すなわちクラス毎で定められた枠の人数で個人が立候補して争う種目と、二種類ある。そして応援合戦があって、これは三年生が主体となってダンスをする。  りっちゃんは基本的に男子なので、種目も男子の枠で出場するし、応援合戦でも男子として出る。  りっちゃんの噂は高学年にも伝わっているらしく、合同練習をするようになって、少し奇異な視線が向けられる。先輩たちも最初は迷ったようだが、男子の列にりっちゃんは加わった。りっちゃんはなんでもないように振る舞っている。  私は身体を動かすのがとにかく苦手なので、運動会なんて休みたいくらいだった。でも普段からそうして休むわけにはいかないので参加する。横一列になってみんなでよーいどん、なのでそこから置いていかれてはみ出さないようにすることで精一杯だった。  あと運動会まで一週間、というところで、園芸委員会では向日葵を根こそぎ捨てて、パンジーやビオラを植えた。ベタだけれど、寒い冬でも花を咲かせるという力強い品種らしい。それぞれのクラスに割り当てられた花の色はカラフルだった。とはいえまだどれも蕾なので、実際に咲いたらどうなるのか考えるとわくわくした。  スコップを土に突き立て、掘り起こす。りっちゃんと話し合いながら、三列になるように均等な間をつくり苗を植え替えていく。 「でも、冬になる頃にはもう園芸委員も終わってるな」  りっちゃんの言葉で気付いた。委員会は上期と下期で分かれるので、りっちゃんとのこうした共同作業ができる時間はもうすぐ終わるのだ。上期で委員会をした人は、下期では役職無しになる。そうしたら、私はほとんどりっちゃんと話せなくなるかもしれない。それは、寂しい。  私は、ふと、りっちゃんのことを好きなのだろうか、と考えた。  あまり深く考えたことが無かった。りっちゃんのことは好きだ。確かに好きだけれど、恋愛的な好きなのだろうか。尊敬してるし、かっこいいとも思う。顔だって素敵だ。特にやわらかく笑んだ顔を見ると心があたたかくなる。  クラスには、付き合ってるとか、そういう噂話も回ってくる。私は、りっちゃんと付き合いたいだろうか。付き合ったら、園芸委員という理由なんて無しにりっちゃんと一緒にいたとしても、なにもおかしなことはないだろうか。  でも、付き合うということは、りっちゃんは彼氏になるのだろうか。それとも、彼女? 私は女だから、彼女というのもなんだかおかしい気もする。女の子同士で付き合うこともあるというのは漫画で知っているけれど、実際自分にあててみると、どうなのだろう。男子に興味が無いわけではないのだけれど、男子といるよりも、りっちゃんといる方が楽しいし落ち着くし、心地が良い。というか、りっちゃんは、男子だし、でも、女子だし。  ううん。  考えるほどに分からなくなってしまう。  それに、りっちゃんと付き合うということは、りっちゃんも私を好きだということとイコールになる。  りっちゃんが私を好きかと言うと、それは自信が無い。私がりっちゃんを好きになる可能性はあっても、りっちゃんが私を好きになる可能性は、限りなく低い。どんくさいし、泣き虫だし、クラスの中で釘が飛び出ないように透明であろうとして、みんなのなかにいることに必死で、りっちゃんみたいにちょっと変わった部分を堂々としていられるような勇気も自信も無い。つまり、りっちゃんが私を好きになることは、無い。  そう至って、浮かんだ桃色の案が破裂した。  うん、無いな。  私はりっちゃんのファンみたいなものなのだ。推しなのだ。だから、りっちゃんの幸せを願っているし、りっちゃんが苦しんでいると途轍もなく悲しくなる。りっちゃんが優しく接してくれることに甘えているけれど、それ以上を求めるのは烏滸がましい。だから、園芸委員を期に離れてようやく普通になるんだ。きっと。 「何を頷いてるんだ?」 「ひょおおええ」  手を止めて自分の思考に没頭していた私に、りっちゃんが恐る恐る話しかけてきて、思わず奇声をあげた。りっちゃんはぶふっと笑った。しかも止まらなくて、ずっと笑い続けて、涙まで出して、お腹を抱えている。 「そこまで笑わなくてもいいじゃん!」 「だって、なに? ひょおおええって」  あっはははは。私は耳まで熱くなっていたけれど、一方で、りっちゃんがこうして思いっきり笑っている姿を見たのは随分と久しぶりだったから、胸がぽかぽかと温かくなった。恥ずかしいけど、まあいいや。私もつられて笑った。三組の花壇で二人して、げらげらと笑っていた。  翌日の朝。  私は水やりをしに少し早起きして登校した。  じょうろに水をためる。朝の暑さは真夏になると収まりつつあって、蛇口から出る水もすぐに冷たいものになった。たぷんたぷん、揺れる水の重みを片手に感じながら、私は花壇に向かった。  そこで、昏い現実を目の当たりにすることになる。  三組の花壇だけ、無残に掘り起こされていた。りっちゃんと一緒に丹念に植えたパンジーもビオラもぼろぼろに引きちぎられて、ぐちゃぐちゃに踏み荒らされて、原型を留めていなかった。  私はしばらく目の前の現実を受け入れられなくて、呆然と立ち尽くした。  なんだろう、これは。  誰かによる、暴力的な、意図的な、明確な悪意であることは確かだ。  蕾だけが投げ出されて、散らばっている。  葉も根もばらばらだ。  土はおかしなでこぼこができていて、靴の跡も窺える。  なんだろう、これは。  なんでだろう、これは。  りっちゃんと笑った、昨日の光景が浮かんだ。手を土で汚して、話し合って、ひとつひとつ苗を植えていった大切な時間や記憶が、汚い靴で踏み抜かれていく。  足が浮かんでるみたいだ。  なんで。  あまりに悲しくて言葉が出なかった。  りっちゃんにこの花壇を見てほしくなかったけれど、私の力ではどうにもできなかった。
 *
 おとこおんな、とりっちゃんについて誰かが言った。  園芸を揶揄してか、みみずりつ、と誰かが呟いて笑った。  クラスがなんだかおかしな方に向かっていた。  夏に傾いていた頃、背中のおうとつに指を当てられてからかわれたりっちゃんは、拳を上げた。  でも、もうりっちゃんは何も言わなくなっていた。  静かに、本を読んだり、次の授業に向けて教科書を開いたりしていた。  根暗でどよんとした空気を漂わせているわけじゃない。りっちゃんはいつだって背筋を伸ばして、堂々と座っている。だけど、その背中が寂しげに見えたのは、私の感情的なフィルターを通した光景だろうか。  さきちゃんをはじめとした友達は、りっちゃんの話題に触れなかった。彼女たちには私とりっちゃんが実は幼稚園が一緒だという話をしていたからか、むしろあんまり近付かないように警告した。私は知っている。私とりっちゃんのことが、影で噂されていること。私からは直接見えない、LINE等で噂されていること。私と一緒にいてくれる友人達はそれが勘違いであることをちゃんと解っているけれど、下手なことはするな、と暗に伝えているのだった。LINEのことを教えてくれたのもさきちゃんだった。それを聞いた時、正直私はぞっとした。  私は透明人間で、釘が飛び出ないように、必死だった。それは、幼稚園時代のようにいじめられることがとても恐いからだ。人の、無意識であろうと意識的であろうと、異端だと判断したときの容赦のなさは恐い。その恐怖に再び晒されてしまったらと考えただけで足が竦んでしまう。  りっちゃんは、女子だけど、男子であるという、りっちゃんそのものであることで、釘が飛び出てしまっていて、打たれつつある。  りっちゃん。  私は心で話しかける。  心で言ったところで、りっちゃんにはなんにも伝わらないのに。  りっちゃん。  私、どうしよう。
 *
 運動会を翌日に控えて、ダンスの最終練習に向けて、みんな衣装に着替えていた。一年三組は赤組なので、赤を基調として、体操服に布を張り付けたり、はちまきを手首に巻いて回転したときに動きが派手になるように工夫がなされている。女子はスカートを思いっきり短くする。長いとちょっとかっこわるいからだ。一年生はみんな膝下に伸ばしているので、普段はできないびっくりするような短さにそれぞれ色めきだっていた。私はちょっと恥ずかしかった。下に短パンを履いているからマシだけど。  男子はズボンはそのままだ。上は女子と対照的になるようなデザインになっている。  私はりっちゃんをちらりと見やった。りっちゃんは窓際の席で、机に腰を軽く乗せて、ぼんやりと教室を眺めているようだった。 「清水さあ」  窓際でたむろしているうちの男子の一人が言った。りっちゃんの視線が動く。 「本当はスカート履きたいんじゃないの?」 「は?」  りっちゃんが反抗を見せる。りっちゃんは最近おとなしいが、怒ると恐いことは皆知っている。  だけど、りっちゃんは教室の中で圧倒的にマイノリティで、りっちゃんの特異性を釘として打とうとしている誰かと、無言で見守る生徒達という多数からしてみれば、りっちゃんがいくら怒ろうとも、孤独だった。 「だって、女子のことちらちら見てさあ、本当はあっちが良かったって思ってんじゃねえの。ダンスも、競技も」 「馬鹿じゃねえの。お前らこそ短いスカートの女子に興奮してるくせに」  りっちゃんが吐き捨てる。いつになく顕著に苛立ちを発して、なんだかおかしいくらいだ。男子は一瞬息を詰まらせた。その隙にりっちゃんはその場を立つ。 「また逃げるのか? 図星だからだろ」  りっちゃんは無視する。無視すんな、という声も全部、無視して、教室を出た。 「サイテー、なに言ってんの?」  男子にも物怖じせずに話す派手めの女子が言う。その子も、本気で言っているというよりも、面白がっているように見えた。 「本気じゃねえよ。ああいう風にされると、冷めるよな」 「冗談が通じない清水さん」  あはは、と笑った。  不快だ。とにかく全てが不快だ。 「真実、大丈夫?」  隣でさきちゃんが声をかけてくれる。私はどうやら相当青い顔をしていたらしい。いつのまにか拳を握りしめすぎて、伸びた爪で皮膚を浅く抉って、じわりと血が滲んでいた。  ダンスの全体練習では、先輩の厳しい目もあるから、みんな従順に励む。私もなんとか振り付けを覚えて、人並みに踊れるようになった。軽快でポップな曲に合わせてステップを踏む。腕を振る、回す。先輩から指示が飛んで、修正する。三年生はこれが最後だから、やりきって満足する思い出が必要なのだ。その情熱にあてられて、三学年跨いでみんな頑張る。  りっちゃんは私の斜め前の方にいる。いつも通りの凜々しい涼しい顔で、日光に当てられて、白い顔でたくさん汗を散らしていた。  しかし、ダンスの通し練習の一回目が終わった時だ。みんなのびのびと小休止をして、屋上から全体をコーチしている先輩の指示を待っていると、りっちゃんが急に座り込んだ。  こんなことでバテるような人ではない。よろしくない雰囲気がする。後ろにいる男子が恐る恐る声をかけると、りっちゃんは首を横に振った。大丈夫、だと言っているように見えた。大丈夫という単語から連鎖して、夏休みに目の当たりにしたりっちゃんの「大丈夫」を思い出した。りっちゃんの大丈夫は、本当は、大丈夫じゃないかもしれない。 「会澤さん?」  後ろの子が、驚いたように声をあげた。急に私が列を外れたからだ。  私はりっちゃんに駆け寄った。  みんなから飛び出るという私の感覚でとりわけ恐ろしいことをしていると自覚していた。けれど、りっちゃんが苦しんでいるのを分かっていながら見て見ぬふりをするのはもっとしんどかった。 「清水くん」  こういう時でも、私は使い分ける。 「……まみちゃん?」  りっちゃんはぼそりと呟いて、私を見上げた。まばゆい太陽に照らされるりっちゃんの顔は、白いというより、病的なまでに青ざめていた。  戸惑う周囲を置いて、私はりっちゃんに顔を寄せる。 「どうしたの、急に座り込んで」 「大丈夫……」  ああ。ほら、やっぱり、大丈夫と言っていたのだ。私の観察眼もたまにはちゃんと的を射る。 「大丈夫じゃないよ。顔が青い……汗もすごい。熱中症とか?」  私が言うが、りっちゃんは頑なに口を暫く閉ざしていた。 「今日、暑いし。ちょっと休もう。通し練習一回終わったし、体調不良ならしょうがないよ」 「駄目だ。本当、大丈夫だから。もう一回、通しが終わったらちゃんと休む」  りっちゃんのいいところは真面目なところだ。でも、悪いところでもあるのかもしれない。 「本当のこと言って」  私が強く言うと、りっちゃんは私を見た。  周りが私たちに注目しているのが、よくわかった。視線を集めていて居心地が悪い。見ないでよ。りっちゃんが更に言いづらくなるでしょう。  暫く沈黙が続いたが、りっちゃんは諦めたように項垂れ、ぼそりと何かを呟いた。 「え?」  聞き取れずに聞き返す。こういうところが私はどんくさい。  耳を近付けた先で、りっちゃんはもう一度同じことを呟いた。お腹が痛い、と。  瞬時にいろいろと察した。だからりっちゃんは言えなかったのだ。それは本当の男子だったら起こ���えないことだった。でも、結構辛い。酷いとげろげろ吐くくらい、途轍もない痛みを伴って立っていることも辛くなる。  三年生の先輩が流石におかしいと気付いて、駆け寄ってきてくれた。 「先輩。清水くん、ちょっと体調が悪くて踊れなさそうなので、保健室に連れて行きます」 「え、大丈夫?」  先輩が慌てた。大丈夫、とは便利な言葉だ。 「すみません。ダンスを抜けて……」 「いいよ。通しは一回終わったし。ちゃんと休んで」  溌剌とした優しさに弱々しくなったりっちゃんは頷いた。  男子の見た目をしたりっちゃんと、女子の私が一緒に、身体を密接にひっつけているのは周囲からするとどう映るだろう。気にしない、というわけにはいかない。私は気にしいだし、りっちゃんもなんだかんだ和を重んじる人だ。重んじるがゆえに、自分を犠牲にする、強くて同時に弱い優しさがあるのだ。清水律という名に恥じない、清らかな水のように凜としていて、自分を厳しく律する生き方をしている。  りっちゃんは私の肩を借りて、ゆっくりとダンスの列を外れた。背後がやや騒然としているのが背中から感じ取れるが、気にしている場合ではなかった。どうせ、距離を置いてしまえば、聞こえなくなるし見えなくなる。  でも、私達は一年三組という閉じた空間での運命共同体だ。  後先考えずに行動した後、どうなるのかは分からない。 「ありがとう」  りっちゃんは、力の抜けた声で呟いた。 「ううん。良かった、言ってくれて」 「ごめんな」 「謝らなくていいよ」  むしろ、私の方がずっと、りっちゃんには謝らなければならなかったのだ。  私はずっとりっちゃんに甘えて、りっちゃんに助けてもらって、素敵なことを受け取ってきた。  りっちゃんが苦しんでいるのなら、私が助けてあげられることがもしあるのだとしたら、今度は助けてあげたい。  乾いた校庭からひんやりとした校舎に戻り、りっちゃんを保健室に連れて行く。その前にトイレに行くべきか尋ねたが、首を横に振った。  保健室の先生に事情を説明した。りっちゃんの口からはなかなか直接的に言えないと思うので、私がそれとなく伝えて、ベッドに寝かせてもらった。  急いで教室に戻り、常備している鎮痛剤と水筒を持って保健室に戻った。そしてりっちゃんのベッドに駆け寄る。  りっちゃんの顔は歪んでいて、いつも伸びている背筋を曲げて、くるまった。よくここまで頑張ったのだと感心してしまう。でも、りっちゃんは頑張るしかなかったのだ。負けたくなかったのだ。昔から負けん気が強かった。それはりっちゃんの人間性で、どれだけ大人っぽくて、言葉遣いが丁寧で、優しくて、男子の格好をしていても、根っこは変わっていないのだ。でも、その人間性ゆえに、りっちゃんは苦しんでいるのかもしれなかった。  鎮痛剤と水筒を枕元に起き、私は項垂れる。 「りっちゃん」  ぽつんと呟いた。 「何もしてあげられなくて、ごめんね」  ここで泣くのは違うから堪えた。 「苦しかったらちゃんと言ってね。女子とか男子とかそんなの関係なく、私、りっちゃんのことが好きだから、りっちゃんにはいっぱい笑っていてほしい」  りっちゃんは何も言わなかった。  肩が震えているように見えたので、私はカーテンを閉めた。  ダンスは二回目の通し練習に入っていた。私は外に出て、遠くから眺める。私とりっちゃんの穴は目立つかもしれないけれど、私達がいなくても、整然と全体は動いている。それは思ったよりきれいな光景だった。きっと屋上から見たらよりきれいなのだろう。同じ動きをしてチームとして創り出す巨大な作品。それは素敵なことだ。それはそれで、本当に素敵なことなのだ。  通し練習が終わってから、私は勇気を出して列に戻った。またいろんな人の視線が集まった。興味だとか、戸惑いだとか、不安だとか、ないまぜになっているだろう。一身に受け止めると息が詰まりそうになる。自己紹介の緊張と同じだ。注目を浴びるのが苦手だから、注目されないように慎重に周りの目を窺ってきた。それが私の生きるための術だった。りっちゃんを助ける行為は私の信条を外れる。それはとても恐ろしいことだった。けれど、後ろめたさがなりを潜めて、少しだけ強くなれたような、そんな気がした。 「清水くん、大丈夫そう?」  さきちゃんが心配そうに声をかけてくれる。 「うん。とりあえず保健室で寝てる」 「そっか」さきちゃんは安堵の表情を浮かべる。「真実は、平気?」 「うん。平気」  私は穏やかに頷いた。りっちゃんの大人びた静けさのある笑顔を真似するように頷いた。
 *
 ダンス練習が終わり、一年三組に熱っぽいざわめきが押し込まれる。最後に蒸気する先輩が活を入れに教室までやってきて、先輩が「優勝するぞー!」と叫ぶと、全員で「おー!」と青春百パーセントな眩しいやりとりがなされた。私も折角練習したのだから、どうせなら優勝したい。でもそれよりりっちゃんが気になった。  先輩が教室を後にするところで、りっちゃんとたまたま鉢合わせた。 「あっきみ、平気? 元気になった?」  教室の空気が若干変容する。 「あ、大丈夫です。おかげで元気になりました。ごめんなさい、練習中断して」 「平気平気。明日は出れそう?」 「はい」  りっちゃんの肩を先輩が叩く。りっちゃんは恐縮げに頭を下げ、教室に戻る。  汗は引き、顔色も戻っていて私はひとまずほっとした。  何も無かったように、りっちゃんは自分の席に戻る。和を乱さないように、平然とした表情で男子の列に戻る。でも、今や、マイノリティのりっちゃんは、一致団結した教室のはみだしものと認識されているのだろう。  担任の先生もりっちゃんに声をかけ、終礼を進める。最後にさようならと声を揃えると、教室の空気は弛緩した。運動会前日らしい緊張と興奮に、ちょっと変な空気がまだ残っている。  りっちゃんが、勢い良く踏み出した。  なんとなくみんな、視線を寄せた。りっちゃんは良くも悪くも目立つ。  先程ダンスの練習直前にいじってきた男子の集団の前に立つ。私は緊張した。また殴りかかるのではないかと恐くなる。けれどりっちゃんは冷静で、いつも以上に凜としていた。 「おれ、明日も出るから」  はっきりと宣言する。 「男としてダンスもするし、競技もする。それだけだから」  特別叫んだわけでもない。しかし、りっちゃんのまっすぐとした声は、生徒の間をするする通り抜けて教室中にきちんと響いた。  りっちゃんの正義。ヒーローのような正義。敵に立ち向かう正義。それは時にあまりにもまっすぐで誠実で、人の気に入らない部分も刺激してしまうのかもしれない。でも、りっちゃんは、自分に根ざしている心を偽ることも、馬鹿にされることも、許せないのだ。 「……当たり前だろ」  静かな威圧にやられて、相手はしどろもどろになる。なあ、と言い合う。まるでりっちゃんが空気の読めないイタいやつみたいに。  りっちゃんは翻し、たまたまその正面に位置した私と目が合った。りっちゃんは微笑んだ。ぼろぼろになってしまった花壇でいつも見せてくれる、優しい、りっちゃんらしい笑顔だ。私は嬉しくなって、笑い返した。  でも、私はとても耳がいいので、次の言葉を逃さなかった。 「おとこおんな」  大衆の前で羞恥を晒されたことに耐えかねたのか、ぼそりとりっちゃんの背後で彼は言った。  真顔になったりっちゃんが振り返ろうとした。振り返りきらなかったのは、りっちゃんの正面で突然走り出した存在がいたからだ。  つまり、私だ。 「ふざけんな!!」  私は叫んだ。彼等に掴みかかる勢いだったが、さきちゃん達と、そしてりっちゃんが慌てて身体に腕を絡ませて止めていた。 「ふざけんな……っふざけんな!! りっちゃんは、りっちゃんはねえ……! あたしらなんかよりよっぽど、大人で! 自分に正直なだけで! それでも自分を律して、自分を犠牲にして! それをあたしたちが、馬鹿にする権利なんて!! どこにも!! ないんだから!! ふっざけんな!!」 「まみちゃん、落ち着いて!」 「真実-! どうどうどう!」  正面にいる男子は完全にたじろいでいた。むしろ引いていた。  私はいつのまにか涙と鼻水をまき散らしながら、その後もなんか言ってた気がするけど、何も覚えていない。記憶が吹っ飛ぶくらい、私の思考回路はぶち切れてしまったらしい。
 *
 運動会は、優勝しなかった。ダンスも優勝しなかった。  先輩達は号泣し「うちらは赤組が一番だと思ってるから! 赤組最高!」とやはり青春まっしぐらの文句を高らかに言い放ち、拍手喝采が湧き上がり、不思議な感動のうちに幕を閉じた。  声援で盛り上がったグラウンドは、しんと静まりかえって、夕陽色が全面に広がっている。  今日は部活も全部休みだ。それぞれのクラスで打ち上げが予定されている。私もりっちゃんも出る予定だったけど、こっそり抜けた。ああいった事件の直後なので流石に無理と判断した。不器用な私たちよりずっと器用なさきちゃん達が計らってくれた。  運動会の最中はスポーツが創り出す団結感によって、りっちゃんを馬鹿にした男子も、派手な女子グループも、たくさんの傍観組も、私の大切な友人も、りっちゃんも、私も、頑張った。全体として赤組は優勝しなかったが、一年三組は学年競技で一位になった。男女問わず、みんな手を叩いて喜んだ。  私は身体を動かすことは苦手だけれど、こういうのもたまにはいいかもしれない。細かい価値観の違いだとか、性別だとか、性格だとか、身体の特徴やかたちだとかそういった、それぞれで生じる違いや個性を超えて、一つの目標めがけて力を合わせることは。  りっちゃんは個人でも活躍した。決まっていたことではあるが、クラスで一番足が速いので、メドレーリレーに出場し、二位でバトンを受け取った後、辞めてしまった陸上部の仲間だった黄組の男子生徒に迫り、デッドヒートを繰り広げ、ぎりぎりで追い抜いた。その瞬間の盛り上がりようといったら、りっちゃんの纏っていた仄暗さを吹き飛ばすものだった。みんな調子がいいんだ。それはそうとして、りっちゃんはかっこいい。やはり、りっちゃんは自分を消すように着席しているよりも、太陽の下で輝いているヒーローみたいな立ち位置がよく似合う。  だけど、明日からの日常はどうなるかわからない。  今日と明日は違う。  でも私達はたぶんそんなに暗い顔をしていない。  きれいに整えた花壇の前で、手を叩く。 「いつかやりたいと思ってたけど、ようやくできたなあ」  りっちゃんは満足げに笑った。花壇を踏み潰された事件は実に陰湿でショッキングだったし、結局誰の仕業かは判明していない。あのパンジーやビオラは戻ってこないけど、一応、元通りだ。 「運動会の後に花壇をきれいにしたいなんて、りっちゃんもよくやるよね」 「ずっと心残りだったんだ。でもそれどころじゃなかったから」 「そうだね」  あらゆることがとりあえず一つの区切りを迎えたのだと思う。りっちゃんは気持ちの良い表情をしていた。 「またパンジーとビオラの苗、頼んで用意してもらうか」 「せっかくだから、違うのでもいいかも」 「なんかあるかな。調べてみるか。でも、三組だけ違うのもなんか変じゃない? こういうのは統一感があってもいいと思うんだよな」 「たまにはいいよ」  一年のくせに生意気だと言われるかもしれない。でも本当に通るかどうかなんて分からないんだから、言うだけ言ってみるのも手だろう。 「でも、園芸委員、もうちょっとしたら終わっちゃうんだよね」 「継続で立候補したらいいんじゃない? やりたいって言ったら別に誰も止めないだろ。他の子で園芸委員やりたいって奴がいたら別だけど、いないだろうし」 「いないだろうねえ」  私は土まみれになった手を見やる。汚いけれど、健康的な手だ。 「おれもその方がちょうどいいな。まみちゃんと一緒だし」 「えっ」私は大きな声をあげる。「また私と一緒でいいの?」 「え? うん」りっちゃんは目を瞬かせる。「え?」  なんだか変な沈黙が訪れる。  りっちゃんは怪訝な表情を浮かべているが、何か変なことを言っただろうか。  でも、一緒がいいと言ってくれるのは素直に嬉しいので、私は何も考えずにぽわんと笑みを零した。 「そっかあ。りっちゃんと後期も委員会一緒なら、楽しいね」 「……うん。そうだな」  りっちゃんは相変わらずちょっと挙動不審だけれど、まあいいか、とやがて大きな息を吐いた。  遠くでかすれ声のようなひぐらしが鳴っている。向日葵は枯れて、とうに夏は過ぎたと思っていたのに、まだ蝉は鳴いているのだと驚く。だけどじきにこの声も聞こえなくなるだろう。 「まみちゃん、垢抜けたというか」私を見ながら、しみじみとりっちゃんは言う。「さっぱりしたな」 「誰かさんの影響かな」 「誰だろうなあ」 「誰だろうねえ」  ふふ、と笑い合った。なんだか幸せである。 「でも、殴るのはやめた方がいいな。ああいうのは、どんだけ相手がくだらない挑発をしていたとしても、先に手出した方が悪者になるんだ。それに殴った方は結構痛い」 「りっちゃん、痛そうだったもんね」  夏休み前の、りっちゃん暴力未遂事件である。 「あれはまじ��やばいぐらい痛かった。今までで断トツ。おれがあの時逃げたのは、痛すぎて、そして恥ずかしすぎたからだから。廊下に出てから、ちょっと泣いた」 「うそー」 「ほんと。まみちゃんも一回机殴ってみたら? まじで痛いから」 「やだよ」  しかし、振り返ってみるとなんと暴力的な園芸委員だろうか。実際、とんでもないおまけが付いてきた。  おとなしいやつほど怒らせると恐い。私とりっちゃんが一年三組に植え付けた強迫観念の一つである。園芸委員の二人は、そのおっとりとした穏やかな響きの肩書きとは裏腹に、暴力的なレッテルが追加されることになった。自分達の正義というか本能というか、挑発に乗った愚かさというか、そういったものが生んだので、名誉といったらいいのか不名誉といったらいいのか微妙なところである。先生も親も驚いた。多分、運動会が過ぎて、明日以降のどこかで話があるだろう。  これで、三組に渦巻く嫌な空気が吹き飛べばいいのだけれど。  少なくとも、直接的な影響がでなければまずはそれでいい。裏で何を言われてようと、遠く離れていれば気にするほどのことではない。 「さて、これからどうする?」 「うーん」  なんとなくこの大切な時間が終わってしまうのが寂しくてごまかす。  私は、一つ提案した。りっちゃんは嫌そうな顔をしたが、受け入れてくれた。 「なんかポーズをした方がいいのか?」 「いらないいらない」  私はおかしくて笑い、スケッチブックを捲り、鉛筆を立てる。  真剣な目つきで、ただ、花壇裏の階段に座るりっちゃんの横からの姿を写生した。  無自覚のうちに自分を律するりっちゃんは、リラックスした空気であっても肩の力が抜けていても背筋がきれいだ。ちょうどいい鼻の高さ、中性的な顔つき、長い白シャツとズボンの下が女性的でも、りっちゃんを形作る雰囲気は男性的で、どちらも兼ね備えるりっちゃんは普通と少し違って、素敵だ。でもきっと、みんなそれぞれ少しずつ違う。たまたまりっちゃんが目に見えやすいだけで。  強い夕陽に照らされて儚げな横顔。暗くなって見えなくなる前に、私は真剣に紙に写し取る。この瞬間を完全に切り取ることはできなくても、この瞬間を、私の目が捉えるこの瞬間を、できるだけ忠実に切り取りたい。  拙くても、私は一生懸命鉛筆を走らせる。 「ちょっと喋っていい?」 「うん。でも動かないで」 「厳しい」  りっちゃんは笑う。ぎこちなかった真顔よりこっちの方がいいな。私は消しゴムで口許を修正し、微笑みを与える。うん、りっちゃんらしい。 「おれ、幼稚園の頃、いじめられて泣いているまみちゃんを見て、守らなきゃって思って、ヒーローになるって言ったの。覚えてる?」 「もちろん」  明るい記憶ではなく、むしろ掘り起こされたくない部分でもあるが、りっちゃんに助けてもらったことは何にも代え難い私の希望だった。指切りまでして、約束を交わしたことを、よく覚えている。 「りっちゃんは、私のヒーローだった」 「うん。そうなりたいと思っていた。でも、実はまみちゃんもヒーローだったんだな」 「私が?」  咄嗟に素っ頓狂な声をあげて、手を止めそうになるが耐える。しかし、ふらふらと明らかに動揺した線になってしまう。 「おれ、結構きつかったんだわ。いろんなこと。男子として生きてみようと思ったのはいいけど、親がまず困る。親はきっと、おれのブレザーとスカートの晴れ姿を見たかったんだ。前例が無いせいで先生方も困惑してるし、みんながどう受け止めるべきか困っているのも解ったし。気持ち悪いものが気持ち悪いのは、しょうがないじゃん。単純なことかと思ってたら、おれだけの問題じゃないんだなってよく解って、でも、おれはおれであることからは逃れられないから、そことのギャップも、地味ないたずらも、苦しかったんだ」 「うん」 「昨日、ダンス練習して、一日目だったからやばいかもなーとは考えていたんだ。でも、もうこれ自体もさ、おれがどうあがいても女子っていう証拠で、覆せなくて、それがむかつくやら苛立つやら悔しいやら、でもどうしようもないから隠すしかない。でも、あの時は耐えられなかったな。最近あんまり寝れてなかったし」 「……そっか」  大人びたりっちゃんを創る、本当のりっちゃんが話しているのだ。私は余計な邪魔をせず、相槌に専念しつつ、絵を完成へ近付ける。 「身体の変化にはあらがえないと実感したけど、まみちゃんが助けてくれて、本当に助かったんだ。それに、その後まみちゃんが取り乱したのも、びっくりしたけど、この子は味方でいてくれるんだって」  りっちゃんが振り返る。私は、動かないで、と言わなかった。 「ありがとう」  夕陽を逆光にして、りっちゃんはきれいに笑った。本当に嬉しそうに笑った。  私は鉛筆を止めて、呆然とした。そしてまた号泣していた。 「いやいやいや、だからなんで泣くんだよ」 「わかんない」  りっちゃんは戸惑いというよりもおかしく笑った。私は鞄からタオルを取りだそうとして、青いハンカチが目に入った。あれから良い機会が全然無くて、返せずにずっと鞄に入れっぱなしにしていたのだ。私は泣きながらとりあえず返そうとする。 「いや、それで拭きなよ」冷静なりっちゃんは呆れる。「そのうち返してくれればいいし」  運動会の汗をたっぷり吸い込んだタオルよりもずっと清潔なハンカチに、また沁みができた。申し訳なさやらなんやらが積み込まれた、重たいハンカチになっていく。 「泣き虫だなあ」  りっちゃんは苦笑する。 「泣き虫だし、いつまでも、りっちゃんに甘えてばっかりで、弱虫で……だからずっとりっちゃんが苦しんでるの知ってたのに、見て見ぬふりして……全然、私、ヒーローなんかじゃない」  私はぽつんぽつんと涙ぐみながら言う。りっちゃんは首を横に振った。 「そんなことない。みんな弱虫だ。おれもそう」 「りっちゃんは、すごいから、私なんかと全然違って」 「すごくない。おれはまみちゃんの方がよっぽどすごいと思う。嘘をつく方がよっぽど楽なことだってあるじゃん。ちょっとはみだすことって、本当に大変で、勇気がいることだから。その一歩が一番大変だ。だから、真実ちゃんはすごいし、おれのヒーローだよ」 「うええ……」  身に余る言葉ばかりたくさん浴びて、私は写生どころではなくなってしまった。微笑むりっちゃんを写した拙い絵に、涙が一粒落ちる。 「うわっすげえ。この短時間で? めっちゃ上手いな。ちょっと気にしすぎなくらい人のこと見てるもんな。絵の才能あるんじゃないか?」  りっちゃんはスケッチブックを私の膝上からあっさり引き抜いた。 「他のも見せてよ」  了承を得る前に、まったく悪気が無い手さばきでりっちゃんは過去のページを捲る。  涙が瞬時に止まった。真顔になり、さっと血の気が引く。  その中には、こっそり、隠し撮りならぬ隠し描きした、りっちゃんの高跳びをする瞬間の写生画が入っているのだ。 「や、やめてーーーーー!!」
 透明人間だった私に、輪郭が描かれ、あざやかな色が塗られていく。
 了
「弱虫ヒーロー」 三題噺お題:世界の終わり、嘘をつく、指切りげんまん
0 notes
shintani · 4 years
Text
2020年8月23日
【公式】ハイライト:横浜F・マリノス 3 - 1 サンフレッチェ広島 明治安田生命J1リーグ 第12節 2020/8/23
Fマリノスのトップチームスタッフに新型コロナの陽性反応が出たが、監督、コーチ、選手、スタッフの計68人のPCR検査の結果、67人が陰性。1人が判定不能。クラブ内、試合開催に関わる関係者に濃厚接触者なしの判断で開催が決定(22日21時発表)
8月23日「処暑」暦の上では暑さが和らぐ頃
8月も終わりに近づき、23日は二十四節気のひとつ「処暑(しょしょ)」です。暦の上ではだんだんと暑さが和らぐ時期とされています。みなさんはもう秋の気配を感じましたか?
23日の広島は33.5度。8月15日以来続いていた猛暑日がストップ。
京都サンガF.C.ゴールパフォーマンス 京都五山送り火・大文字(森脇良太 選手)
J2第14節 京都サンガF.C. 2-2 松本山雅FC@サンガスタジアム by KYOCERA 45+3分ピーターウタカ選手の先制ゴール直後にベンチから飛び出した森脇良太 選手がパフォーマンスの指示。
お盆に迎えた先祖の霊を送る伝統行事「京都五山送り火」。16日夜、京都市街を囲む山々であった。2020年は新型コロナウイルスの感染予防策で、規模を大幅に縮小。
送り火は太平洋戦争で1943~45年に中止されたが、縮小しての開催は初めて。2019年は約2万8000人(京都府警発表)の人出があったが、20年は観光客の密集を避けるため���京都五山送り火連合会が「見学に出かけず、自宅で静かに過ごしてほしい」と呼び掛けていた。
感染防止など課題山積 東京パラリンピック、あと1年(時事ドットコム)
感染防止策
暑さ対策
国際大会が相次いで中止になった影響で、東京パラ出場に必要なクラス分けの認定機会が十分に設けられていない
スポンサー離れ
娘の自由工作は3Dプリンターで作った猫ちゃん。YoutubeでZbrushの使い方を見てあとは自分で勝手に。凄い時代や…(ナムチャン)
NHK 総合 08/23 06:10 目撃!にっぽん「コロナと新宿ゴールデン街」
“密”が魅力だった夜の街、新宿ゴールデン街。新型コロナが猛威をふるう中、個性豊かな店主たちは、心を寄せ合い、この難局に立ち向かう。飲み屋街、5か月間の記録。
午前9時〜「カラフルファミリー」(NHK総合)を見た。Pinterestにピンして投稿を試みたがエラー。アルゴリズムの問題?
\#ありがとうフジロック2020/ 3 日間に渡り、世界中を音楽で満たした #フジロック 多くの音楽ファンを笑顔にしてくれて、ありがとうございました そして盛り上げてくれたフジロッカーの皆へ、感謝の気持ちを込めてYouTube から花束を(YouTube Japan)
FRF’20 LIVE ON #YouTube は、スーパーチャット機能(投げ銭)を使った寄付を募った。(寄付金は一部手数料を引いた全額を「Music Cross Aid」及び「国境なき医師団」へ寄付)
oasis の時間は「 #仲直り代 」ハッシュタグ付の投げ銭が続々と。井上陽水 「 #傘代 」、Cocco 「 #靴代 」、広末涼子 「 #キャンドル代 」などなど大喜利に。
安倍首相の連続在任が最長に 佐藤栄作氏に並ぶ2798日
安倍晋三首相の連続在任日数が23日で2798日となり、佐藤栄作元首相の最長記録に並びました。24日に記録を更新して単独1位になります。
2012年末に発足した第2次安倍政権は、金融緩和と財政出動、成長戦略の「3本の矢」による経済政策「アベノミクス」を推進してきました。円安による企業業績改善や株高といった成果を挙げましたが、公約に掲げたデフレ脱却はいまだ実現できていません。(水泡に帰すアベノミクス コロナ禍打撃、経済縮小―再生へ構造改革急務 時事ドットコム)
0 notes
kozuemori · 2 days
Text
Tumblr media Tumblr media Tumblr media Tumblr media
6月に入り、予報ではしばらく過ごしやすい気温になるようです。我が家のバラも2番花、3番花が咲き始めました。繰り返し楽しませてくれますが、少しずつ色や形が控えめになってゆきます。今日は先ほどマントラ入門クラスが終わり、勉強熱心な方々と一緒に聖音の響きを楽しみました。7時からはトランスクラスがあります。こちらも熱心な参加者の方々と、変性意識の中の光を体験したいと思います。
秋学期クラスとワークショップのお知らせは、来週のブログで告知する予定です。今しばらくお待ちいただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
・・・・・・・・・・
5月23日に開催したドロップイン・ナイトの様子をダイジェストでお知らせいたします。読みやすいように編集しています。
森:インドの女性の指導霊がいらっしゃっていて、額にビンディという赤いお印がついていますけど…ちょっと厳しそうなお顔をされている、老婦人みたいな素敵な方ですよ。ちなみにご自身はインドに行ったことはあります?
男性:はい、随分昔ですけど。マザーテレサが生きていた頃、あそこの…。
森:カルカッタ?
男性:ボランティアに行きました。
森:カルカッタですよね、確か。
男性:はい。
森:じゃあ、やっと(この指導霊が)出てきたか、って感じですか?(注:何度か参加されている方なので)
男性:(笑)
森:厳密に言えば、マザーテレサはキリスト教系の方ですけどね…あの方も何かお導きがあってインドに…他には(インド国内)のヒンドゥー教寺院とかに足を運んだりされました?
男性:ちょこっと足を伸ばした程度で、あんまり詳しくは行かなかったですね。
森:じゃあその頃���、あまりヒンドゥー教の文化にはご興味がなかったんですね。
男性:そうですね、サラリーマンをやっていたのを辞めて、もっと広く世界を知ろうと思って…そっちの動機の方が強かったですね。
森:なるほどね…じゃあ、そう決めて最初に訪れたのがそこ(カルカッタ)ですか?
男性:そうですね。
森:なるほど。その時に気づかなくても後から「あ〜、あの時の出会いがそうだったんだな」とか、一見その、無駄足というか、回り道というか、無関係に見えることが後からになって振り返ってみると全部繋がったりとかして、全てが無駄じゃないんだって気づいたりするんですよね。気づく時と振り返る時と、脇目も振らず邁進して今やるべきことをやっている時というのが、まぁ、交互に訪れたりとかするんでしょうけどね。この指導霊とは、もしかしたらその頃からご縁があるのかもしれないですね。(指導霊が)おっしゃっているのは、浄化についてなんですよね。浄化、気を整えるとかそういう事です。ヒーリングとか、興味あります?
男性:はい、興味はありますけれども。
森:あります?コースは取っていらっしゃらない?
男性:ヒーリングコースを今、やっているところです。
森:じゃあ、そのことを(指導霊が)おっしゃっているんだと思います!それを手伝ってくださるんだと思いますよ。気を整えることをおっしゃっていますね…この方が見せてくださっているのは…パンチャカルマって聞いたことあります?一気にパ〜ンと整えるというよりは、少しずつ部分的に段階を経て、その人に一番適したメニューを作りながらオーダーメイドで浄化することをおっしゃっています。スピリチュアルヒーリングもそうだと思うんですね、オーラとかチャクラとかも関係してきますから…体の隅々までが関わってくるので、一律にマニュアル通りに流れに沿ってやるのではなくて、体つきも性格も違う、その人の状態に合わせてオーダメイドの浄化についておっしゃっています。技術的なテクニックも大事だけれども、元になる考え方というか、ヒーリングの理論体系をこの方が支えている感じがします。厳しい顔の大先生、って感じではあるんですけど、とは言っても「ユーモアも大事よ」ともおっしゃっています。ユーモアもひとつのヒーリングだと言っています。全て笑いに転換するような心の余裕っているのかな、あと、笑いにはセンスが必要ですよね、(指導霊は)ご自身にユーモアのセンスがある、とおっしゃっていますよ。
男性:最近ちょっと仕事にも余裕が出てきたので、少しそうやって、ユーモアを持たせることも始まったかな、と思っています。
森:そうなんですね、そうやって自分も癒すんですって。まずご自身が癒やされていないと人を癒すことができないですよね、基本的に。笑うこともひとつの浄化って言っています。誰もが思わず微笑んでしまうような、温かみのある浄化を広げてください、と厳しい顔でおっしゃっていますね。(笑)技術的なテクニックも大事ですけど、繰り返し聖典的な…アイイスのヒーリングのテキストってありますよね、それを繰り返し読むといいんですって。そうすると最初は見えてこなかったものが見えてくる、もっと腑に落ちて、更なる技術へと繋がっていく、とおっしゃっています。(1枚目の絵を見せる)ぜひ、頑張ってくださいね。
男性:ありがとうございます。
森:それでは次の方ですね。顔の輪郭から描いていきたいと思います…女性がいらっしゃっていて…日本人だと思います。着物を着ているんですよね。若い感じに見えますね。着物を着ているんだけど、普通の着物じゃないですね…巫女さんです。鈴を持っていらっしゃるのでね、ああいうシャンシャン、って鳴る。巫女さんなので、あれですよ、シャーマン的な感じ。神託を降ろしたりとかね、そういう役割をする方ですね。その辺とか、何か興味があったりします?
女性:巫女さんってことは神社ですよね?
森:はい、そうですね。
女性:巫女のアルバイトはしたことあります。(笑)
森:(笑)それって、すごくあることじゃないですよね?
女性:コネがないとできないので。
森:ですよね〜。多分、指導霊がその頃から導いているんじゃないですかね。神社とのコネがあったんですか?
女性:神社の神主さんが、父の同級生で。
森:お父さまがそういうご縁を運んできたんですね。
女性:それ以外は、あまり(巫女や神社に関して)思い当たらないです。
森:それ、結構大きいと思いますよ。(笑)巫女さんが(指導霊に)ついていて、巫女の格好をしたことがあるんですよね、それはなかなかないですよ〜私の知る限り。(笑)どうです?割とその頃から…早いうちから精神世界とか、目に見えないものにご興味がありました?
女性:割と小さい頃にあったんだけど、それを…忘れようとしていた。普通に暮らそうと。で、母が若くして亡くなったんですけど、その時にまた見えない世界にグ〜ッて呼ばれて。それから自己流ですけど、色々勉強したり本を読んだり。
森:すごく近い大事な方が霊界に行かれるっていうことは、それはつまり、こういったスピリチュアリズムというか、霊性開花への招待���なんですよ。すごく大事な絆っていうのかな、それを失って初めてね、一つのドアが閉まったかもしれないけれど、また新しいドアがそれで開くんです。お母さまがその道を示してくださったんだと思います。ご自身はご性質として敏感なところがあると思います。
女性:はい。
森:ですから、それを活かしましょう、とこの方(指導霊)がおっしゃっています。あとね、この方がシャンシャンシャンって…上手く描けないけど(笑)、鈴を持ったりとかしたことはないです?
女性:(笑)ないです。
森:鈴を持っているんですけど、楽器とかは演奏されます?
女性:はい、楽器の演奏は好きです。小さい頃からオルガンを習って、中学はブラスバンドに入ってて、
森:それは鍵盤楽器ですか?なんか、シャンシャンって…金管楽器というか、鈴の音なんで…他には?
女性:クラリネットは長かったです。で、8年前からチェロも習い出しました。
森:すごいですね!でもシャンシャン、じゃないですね〜。(笑)なんだろう…でも、とにかくリズムをとっている感じで、音楽的な、音的なことをおっしゃっているんじゃないかと思うんですね。音と繋がると、もっとインスピレーションが湧くっていうかね、直感と繋がるようなこと…そんなことだと思うんですね、すごく集中するから。楽器演奏ってすごく集中しますよね、音と一体となるから。ですから、アウェアネスの成長を…今、クラスが始まったばかりなのかしら?
女性:はい。
森:それを応援していますよ、(指導霊が)舞いながら。ということで頑張ってください。頑張ってくださいってメッセージ、ちょっとアレなんですけど(笑)要するに指導霊って光なんですね、実際にこういう人物としてここに立っているわけじゃなくて、自分が納得するような親和性のある姿で見せてくれることによって、より身近な存在、興味の範囲で現れる。だったらちょっと頑張ってみようかな、そういうきっかけを作ってくださる、モチベーションになるようなお姿やイメージで見せてくださるんです。先ほど巫女さんのアルバイトをされていたっておっしゃったじゃないですか、それを思い出したら、ちょっと「あっ!」て思いますよね、そういうことをやってくださる、ユーモアのセンスのある方(指導霊)です。こういう感じの方です。(3枚目の絵を見せる)
女性:ほぉ〜。
森:素敵な音色を鳴らしてください!
女性:ありがとうございました。
・・・・・・・・・・
サンデー・サービス(日曜 12:30〜14:00)詳細はこちらから。
6月30日  担当ミディアム:本村・森
ご参加は無料ですが、一口500円からの寄付金をお願いしています。
当日は以下のリンクよりご参加ください。
0 notes
pinoconoco · 7 years
Text
teardrop
4.きらきら光る恋をした
とても小柄な彼女がふわりと笑うのがとても好きだった。 彼女は花に例えるならバラやガーベラのような美しさや可愛さをこれでもかと主張してくるようなものとは違い、静かに庭に咲いて心を和ますすずらんのような存在だった。 そんな淡い恋心を気付くより先に 彼女には幼い頃から揺るがない関係の相手がいることを知ったからか 僕の初恋も失恋も、胸を焦がすとか何もやる気をなくすというようなドラマチックなものではなかった。 というよりは 小説に出てくるような激しくも切ない恋愛なんて 自分には出来るともしたいとも思わなかった。気持ちを奪うとか奪われるなんて恋愛よりも、相手といることが何より幸せで、相手にも同じように思ってもらえるような そんな陽だまりみたいな関係を築けたら そんな相手が現れたらいいなと思っていた。 痛みはもちろんあるだろうが、朽木さんが言葉を発することもできずに嗚咽を漏らし、泣き続ける姿に僕の胸も締め付けられるように痛くなった。 ほんの数十分前まで笑ってたのだ 走る楽しみを覚えて その成果をだしたくて 「去年まで、いや数ヶ月前までだって、マラソン大会なんていやなだけだったのだ。 それが今は明日が待ち遠しくてドキドキしているんだ。こんな気持ちになれるなんて思わなかったぞ」 子供のように目をきらきらとさせる朽木さんは、あんまりにも可愛くて ずっとみつめていたいのに、目を反らして笑って誤魔化すしかできない。 可愛い、と言いたくなってしまうから。 「吉良君のおかげだな!」 「たいしたこと、教えてないよ」 「でも一緒に走ってくれた。それに毎日な、この走る時間が1番楽しいんだ。楽しく走って、早く走れるようになるなんてすごいことではないか」 「毎日の積み重ねって大事だからね。それが楽しかったんならよかったよ」 「うむ!あ、でも吉良君は私にあわせてくれてたから……自主トレの意味がなかったか?」 「そんなことないよ。それに僕も楽しんでるし」 ニコッと笑う顔は無意識に気を使うときのものだと思った。
きっと、僕が朽木さんに気を使って楽しいなんて言ってくれたとでも思ったのだろう。 そんなことまで、最近はわかるようになっていた。 朽木さんと毎日走るようになって 同じクラスなこともあり、教室でも前より話すようになっていた。前よりなんてもんじゃない、最近は休み時間になれば朽木さんはトコトコと僕の席に遊びに来た。もちろん、以前と同じように、ちょこちょこ雛森さんが遊びに来たりもするし、他の女子達と話していることもあるけれど 僕が本を読んでいようと仮眠をしようとしてても、朽木さんは必ず僕の傍にやってくる。 依存性なのかな ふとそう思ってしまった。 一学期までは違ったのだ。 あの頃は、かなり離れたクラスの男が毎日朽木さんの傍にいた。 クラス替えしたばかりの頃だったし、誰もが朽木さんの彼氏だと思っていた。僕もだった。 「くーろさきくーん!戻るよー」
僕のところに遊びに来ていた雛森さんが、朽木さんと楽しそうに喋っている男を呼んだことで、男の名前が黒崎というのを知った。
「あの彼、雛森さんと同じクラス?」 「うん、部活も一緒だよ?ルキアもね。あたしが吉良君と仲良しなの知ってるから、6組行こうぜってすぐ誘ってくるの。自分がルキアと遊びたいもんだから」 「ふぅん。朽木さんの彼氏なの?」 「違うって二人とも言うけど。あんな仲良くちゃじゃあ何なの?って思うよねー」 へぇ、と答えながら、でもそれよりも 雛森さんに仲良しと言われれば、それでも嬉しいような寂しいような気持ちになってしまう自分は、まだ雛森さんの事を好きなのかもしれなかった。 かといってその気持ちをどうこうさせたいというのもなく、憧れに近いのかもしれないなんて思った。 雛森さんは、僕の先輩の彼女だった。 彼氏の日番谷先輩は真面目で厳しい人だけど、それでも皆から「苦手」でなく「憧れられる」のはそれは陸上部で足が速いというだけでなく、かっこいいからだ。 言葉は多くなく、つきあいがよくなくても優しいからだ。 現に人見知りの僕に声をかけてくれて 部活の皆の中に溶け込ませてくれたのも先輩だった。 「雛森が、おまえは真面目で面白いって」 だから仲良くしてあげてね?メンタル弱いとこあるからいじわるしちゃダメだよ? って言ってたぞ、と日番谷先輩に言われたときは恥ずかしかった。日番谷先輩はそんな僕を見て楽しそうに笑っていた。 雛森さんにはそんな風に思われているのかと思うと嬉しくて情けなくて。 僕だって一応男なのに、全然心配する素振りもなく本当に声をかけて話してくれる日番谷先輩はかっこよくて。 演劇部が遅い日は、日番谷先輩は雛森さんを待ってるし 陸上部が遅いときは雛森さんがいつでも日番谷先輩を待っていた。 二人はいつでも二人とも 「ウチも今終わったんだ」 と言う。 長い付き合いでもお互いに気を使っている。悪い意味なんかじゃなくて、お互い思いやりに溢れている二人の感じが好きだった。 いつかこんな風な関係の相手が欲しいなと思った。初恋はそのまま僕の憧れや理想になっていた。 付き合っていないという朽木さんと黒崎は確かに仲が良いと思っていた。 というか付き合ってないけれどお互い好きなんだろうと思っていた。 誰かが紛れれば一緒になって話すけれど、基本的にはお互いが相手がいればそれでいいというか、二人で楽しんでいるように思えたから。朽木さんは友達がいないわけでも、クラスの男子にモテないわけでもなく 声をかけられればどこにでも入っていけるのに 黒崎がいれば黒崎の傍にいる。 なんとなく嬉しそうというか おい、とかよう、とか黒崎が教室に入ってくれば耳と尻尾をピョンと立てる犬みたいに見えた。飼い主と遊ぶのを楽しむ犬みたいな そんな風に見えなくもなかった。 だから
ある日突然、教室で黒崎と険悪な雰囲気になってそれから黒崎が来なくなって 黒崎には彼女が出来たと雛森さんから聞いた時 誰かに声をかけられても 1人ぼんやりする朽木さんは 飼い主に捨てられた犬みたいだと思った。 本当は器用な女の子じゃないのかもしれない 誰にでも心を開いて仲良くなるタイプじゃないのかもしれない あの時川原でたまたま喋って何となく一緒に走るようになって 僕には少しだけ心を許したのかもしれない でももしかしたら もしかしたらなんて考えてはその考えを頭から追い出す。 違う、彼女は飼い主を失った寂しい捨て犬で たまたま頭を撫でた僕に 危険人物じゃないと近寄ってくるようになったそれだけだ ただ、少し可愛い犬だそれだけなんだ そう思うようにしなければ 絶対自分は後に傷つくことになる だって彼女は 飼い主のことを好きなんだ 黒崎を好きなんだ 普通に考えてそうだと思う。 黒崎も朽木さんを好きだと思っていたけど 彼女を作るならそうじゃなかったのか。 だとしたら どうしてあんなに朽木さんの傍にいたんだろうと不思議に思う。 思うけれど、恋愛偏差値の低い自分には 見るからにモテそうな黒崎の思考なんてわかるはずがないのだ。 雛森さんに教えてもらった黒崎の彼女は確かにとても可愛らしい女の子だった。 甘い匂いがしそうな女の子だけれど 僕は
石鹸の香りをさせる宝石のような瞳の朽木さんのほうが好きだと思って そう思ってしまえば悲しくなった。 何となく一緒に走るようになったなんて嘘だから あの日眼鏡を落とした朽木さんが 僕の顔を認識しようと両手��僕の顔を掴��で引き寄せた時 まるでキスでもするみたいに自然に顔を寄せた朽木さんの小さな顔なのに大きな瞳と赤い唇が忘れられないでいる。 黒崎と彼女が自転車で通りすぎていくのを眺めていた朽木さんの寂しげな顔に 何とかしてあげたくなって いやそんな優しい気持ちよりも 自分が傍にいたくなったのだ。 だから無理矢理、一緒に走ろうなんてワケのわからない事を口走ってしまった。 でも朽木さんは本当に僕と走るようになって 教室でも僕の傍に来るようになって 僕の勧めだけじゃないかもしれないけれど 本当に眼鏡もとってコンタクトに変えて 僕が、黒崎の変わりになんてなれるだろうか 朽木さんの隣に並べる男になれるだろうか もしも一位になれたなら 僕とつきあって欲しいと それでもやっぱり言えなかった。 言えなかったけれど 泣く朽木さんは確かにあの時 隣にいる黒崎じゃなくて僕を見ていた。 あまりに悲しそうに泣く朽木さんを抱き締めたくて伸ばした手を 朽木さんも伸ばそうとしてくれたと思ったのは目の錯覚かもしれない どっちにしても 僕の手は 朽木さんには届かなかったのだから 僕から奪うように 誰にも渡さないと 身体全体でオーラを出しながら朽木さんを抱えて体育館を出ていく黒崎の後ろ姿を 僕は見ていることしかできなかった それでもあの目があった時の顔を思い出せば胸が熱くなって苦しくなった。 あの時は黒崎でなく確かに僕を見てくれていた。
それは あのなかで彼女の涙の意味を理解していたのが僕だけだからかもしれないけれど。 どっちにしても 彼女に何も言わなくてよかったのかもしれない。一位をとれたらつきあって欲しいなんて言えなくて言わなくてよかった。 でも言ってみたかった気もした。 だいたい長距離には日番谷先輩がいるのだから一位になんてなれるわけなかった。 それでもあの時 僕のものになって、と朽木さんに言えてたら もしもいいよなんて笑ってくれてたら 僕は日番谷先輩に勝てる気がしたんだ おい、と呼ばれて振り向けば黒崎が自転車に股がったまま横に並んだ。 ウサギのキーホルダーが揺れた鞄は朽木さんのものだとすぐにわかった。 面倒見てくれてありがとう でもこれからはもういい 眉間に皺を寄せてそう言ってきた黒崎に 巧く言い返す言葉がみつからなかった。 言いたい事を言って自転車を走らせた黒崎を しばらくぼうっと眺めていた。 くやしかった 憎たらしいと思った 朽木さんを独占しておいて 捨てたくせに 朽木さんの理解者な僕に焼きもちやいて 挙げ句の果てには近寄るななんて 拳を握りしめた 明日は絶対一位を獲ると自分に誓った 黒崎なんかに朽木さんを渡さないと 固く自分に誓った ◾ ◾ ◾ 「吉良君!」 朽木さんの声に驚いて振り返れば、松葉杖を
ついた朽木さんがよろめきながら手を振っていて、黒崎が慌てて支えるという、嬉しくて忌々しい光景が目に飛び込んできた。 ヒョコヒョコと器用に片足で僕の方に来ようとするから、慌てて僕から彼女の元に駆けつけた。 「朽木さん!今日来たの?休むとばかり思ってたよ」 「だって、休んだりしたらマラソン大会サボったと思われるだろ?それに吉良君応援したかったしまだ聞いてないからな」 「え……」 それで、来たの? 昨日散々泣いたからか、朽木さんの目元は腫れている。僕の応援をしたかったなんて言われれば胸が熱くなる苦しくなる。 「……ルキア、俺ちょっとクラスの方に行くから」 一瞬忘れかけていた存在の黒崎の声に、顔を向ければ違和感を感じた。 昨日のあの強気な黒崎は幻のように いつもの、俺は人気者ですと言わんばかりのオーラもなく 何より昨日みせた僕を見下すような視線でなく まるで僕を憎むような挑むような視線を寄越している。 「それで、一位獲れたら、どうして欲しいか決めたか?」 思わず黒崎に気をとられてしまい、朽木さんにそう聞かれた時は「あ、 えっと」とどもってしまった。 「…………本気で、死ぬ気で一位狙うから…」 「うむ!」 「応援、してね」 そう言うとそんなの当たり前ではないか!だから何が欲しいのだ!と朽木さんは笑った。 「でも朽木さんが走れなくなったのに、僕だけだとずるいでしょ」 「私が走れぬのは自業自得だ。それに一緒に走ってきたんだ、私も吉良君が一位になるのをみたいんだ」 「……でも……」 「ほら、言え!私のことは気にするな、だいたい一護まで便乗してきてるんだぞ?」 「一護……って、黒崎…君?」 「そうなのだ。今日休めとうるさくてな。吉良君の応援に行くと、一位になったらの賭けの答えもまだ聞いてないと言ったらじゃあ俺も、と」 「……黒崎君はなんて?」 「10位に入れたら、絶対にひとつ願い事を聞けと。まぁ無理だろうから絶対の願い事を聞いてやることにしたよ。一護は確かに運動神経もいいし足も速いが、運動部を差し置いて10位なんて無理に決まってるではないか」 ふふん、と憎たらしい顔で鼻を鳴らす朽木さんはわかってない。 黒崎の本気が朽木さんの話だけで僕には伝わってきた。 その願い事が何かも、容易にわかる気がした。 演劇部の黒崎が10位なんて無理だ。 普通に考えて無理だと思う。陸上部の人数が少なくても、他の運動部で足の速い人だっているし、日々の運動量は演劇部とは格段の差がある。10キロ走る体力の配分を黒崎は知らないだろう。 それでも、恐いと思った 黒崎なら、そんなこと無理だと思いながらも 10位に食い込んでくるのではと 背中や腕が冷たくなる感じがした。
「朽木さん」 「何だ?言う気になったか?」 「……うん、あのね、もしも一位になれたら」 「うむ!」 「僕が、言うことに、必ず答えてね」 「……ん?なんだそれは」 「約束だよ!」 遠くから、黒崎が僕と朽木さんを見ているのがわかってしまう。 そんなに気になるのかと思うと思わず小さく笑ってしまった 僕も男なんだよ、と 目の前の朽木さんと 遠くからでも睨み付けてくる黒崎の二人に わからせるように 朽木さんの頬を両手で撫でた 初めて女の子の頬を撫でた 長距離は心理戦だ コツやら基礎もあるが 最終的には心理戦なのだ 足腰は当然鍛えられている。それは自分も そして最大のライバルの日番谷先輩も同じことだ。 日番谷先輩のぴたりと後ろについて走り続けたのは彼を追い詰めるためだ。
追われる側は強靭な精神を長い距離を走る間保ってなければいけない。 追う方より追われる方が辛いのだ。 走りながら 朽木さんにはこんなことは教えなかったな とふと思った。 彼女と走るのは楽しかった 走ることが楽しかっただけじゃない この一月は毎日が楽しかった 雛森さんに対しての淡い恋心とは全然違ってたなぁと思う。 何もないのだから 今回だって淡い恋心に違いないのに 少しだけ欲を持ってしまった いや、まだ持っている そのくせ怯えている 傷つきたくないのに 僕は傷つくのをわかっていながらも この大会で一位をとらないわけにはいかなかった 折り返し地点でまさかの黒崎を見た。 校内のマラソン大会なんて、ほんの数名だけが何十分という差をつけてゴールするが、ほとんどの人は固まりとなってかなり後からゴールをする。 でも、今確かに黒崎がいた。 いや、この時点で10位には届いていないと思う。思うけれどー 彼は本気なのか 奇跡を起こすのか 僕が目の前の日番谷先輩を抜かすよりも 黒崎の方が奇跡に近い 奇跡なんていくつもいらない 負けたくない
誰にも 日番谷先輩にも黒崎にも 負けたくない、その思いから 僕は本当に 初めて白いテープを自分が切った ゴール前には朽木さんと雛森さんの二人がいて、二人とも顔を真っ赤にして泣きそうになりながら僕を迎えてくれた。雛森さんはもちろん、僕より少しだけ遅れてゴールした日番谷先輩の方にすぐ駆け寄って行ったが、陸上部の先生や朽木さんはまさかの僕の一位に興奮状態だった。 「すごい、すごいぞ!吉良君!私まで嬉しくて泣きそうだ、頑張ったな!おめでとう!」 「あり、がとぅ、」 さすがにうまく喋れない。 気持ちだけでゴールしたようなもので、足も手も震えている。何より興奮していて今更ながら自分がここまでこれるなんて思ってなかったことに感動していた。 「吉良、負けたよおまえすげーよ」 「吉良君、おめでとう!シロちゃん応援してたのにね、吉良君が見えてきたとき二人ともがんばれ!って、負けないでって思っちゃったよ、すごいよすごいよ吉良君」 涙ぐむ雛森さんと笑顔の日番谷先輩にもそんな風に言ってもらえて自分も泣きそうになる。
負けたくない、なんて こんな気持ちになることが自分の中にあることに興奮もしていた。 その時「10位!」という声が聞こえて はっと周りを見れば 黒崎はいなかった。 その瞬間本当に力が抜けた。 まるで自分は黒崎の亡霊にとり憑かれているようだと思ってから朽木さんを見れば 朽木さんはまっすぐ遠くをみていた まだ遠くを走ってくる中に オレンジが僕の目にも見えた時 朽木さんの大きな瞳の端に、きらきらと光るものを見た。 地べたに座って動けないまま そのきらきらと光るものを美しいなと素直に感じた。 「呼んであげなきゃ」 「……え?」 「黒崎を、呼んであげるんだ。僕なら最後まできっと頑張れるよ」 「そうだな……」 そう言うと朽木さんは、一護!がんばれ!と大きな声を出した。きらきら光るそれは さっき僕が触れた柔らかい頬をゆっくりと伝った。 黒崎は14位だった。 本人は悔しいのと身体の疲れから、両手両膝を地面について顔をあげないで肩を揺らしていた。それでも運動部でもない黒崎が全校で14位なんて凄いことなのだ。 女子がキャアキャア騒ぐのも無理はない。
「黒崎先輩!感動しちゃって、あたし涙が止まらない……!」 と人目も憚らず抱きついたのは、黒崎の彼女だろう。傍にいた朽木さんがヒョコヒョコとその場を離れた。 黒崎はまだ喋れないのか喋りたくないのか 疲れて動けないのか同じ姿勢のままだった。 「吉良君、」 ぼんやりその光景を眺めていると、いつの間にか朽木さんが隣に来ていた。 「さぁ、一位の報酬を言ってくれ!」 きらきら光っていたものはもう目元からも頬からも消えているけれど ニコニコ笑いかけてくる朽木さんは やっぱりとても可愛い、と、少しの間彼女の顔を眺めた。 「黒崎君、残念だったね」 「……10位なんて馬鹿みたいな目標たてるからだ」 「それだけ、彼は本気だってことだよ」 「吉良君の一位より全然無理だと思ってたがな」 「そうかな、僕は、僕は黒崎君の10位発言で1位がとれたんだと思うよ」 「はぁ?そんなバカな。吉良君のは実力だよ」 呆れたように笑う朽木さんは何もわからない。 でもそれでいいんだ、 もう、いいんだ 何より僕が亡霊に脅えたくない きれいな涙の意味も僕は知らない振りなんてしたくない 「じゃあ、一位ななったから、言うね」 「お、言う気になったな!」 「今から言うことに、うん、か、いいえのどちらかで答えてね」 「うむ、なんだ?」 「朽木さんの好きな男は黒崎一護です」 朽木さんは眉間に皺を寄せて僕を見つめた。どうしてそんなことを聞くのだと言わんばかりの顔をされたら、僕が傷つくのはわからないようだった。 わからないならそれでいい でも、僕に未練を残させないで欲しいんだ これは僕の我儘だけれど 朽木さんは僕から目を反らさないで
ゆっくりと頷いた 「きっと拗ねてると思うけど、14位なんて普通入れないんだから。おまけして聞いてあげなよ」 そう言うと、吉良君は優しいんだなぁと 朽木さんはおかしそうに笑った。
4 notes · View notes
n0-l · 5 years
Text
2019.07.09
7月6日、幸せな気分になってそのあとなにかできるんじゃないかって思ったから! でもしにたいなと歩きながらスマホにメモした。 17時、海賊酒場バッカニア、コロナビールの瓶のネック部分を4本の指で持ちながら、飲んだ。 その前、池袋マルイに行った。おそらく7Fまである、上から下って行った。薬局に入った。地元の友達五人と飲みに行こうということになっていた。 どんな効用があるのかわからない試供品であるフェイスクリームを一人の友達が僕の手の甲に塗った。薄緑色の液体が過剰に飛び出て、両手の甲で合わせこすったらペンキで塗ったようになった。それを顔に塗ると泥パックみたいになった。白塗りの歌舞伎役者かよと思った。みんな笑っていた。愉快であった。そんな風にして薬局を練り歩いていると、一閃、やはり商品が欲望を持っているのだ、ある薬品、友達はロキソニンを探していた。ある薬品が頭の中を通り過ぎた。その薬局にいなかったら思いもつかなかったことだ。だが買わずにみなと下に降りて行った。友達もロキソニンを見つけることはできなかったのかそこでは買わなかった。 予約していた17時が近くなったのでバッカニアに向かった。そこで小さい薬局を通り過ぎた。まだ17時になっていなかったため、店のビルの前で逡巡していたから、友達に「ここならロキソニンあるんじゃない?」と言って、その薬局に入ることになった。僕は先に見たマルイの薬品と頭の中で随伴した状態であった、だが買わなかった、しかし、友達が出ていくと、急いで一人で引き返し、どうせ場所はわかっているのだから、僕はレジの後ろに並んでいた薬品を買うことにした。水も。そして店員に肝臓に効く薬を聞き、肝臓水解物とサイコエキスが入った薬品も買った。友達から「〇〇バッカニアきて」というラインが来ていた。僕はこれから酒を飲むから、その肝臓に効くサプリをだけを買って来たという風にその薬品を友達に見せながら店に繋がる地下の階段を降りて行った。そして僕は席に着くと、すぐさまトイレに行き、買った水とそのコデインの含まれている薬品を貪るように一気に飲んだ。その薬品の瓶と酒を一緒に写真で撮りたかったため、少しだけ残しておいた。席に座り、酒を頼み、酒がくると、そそくさと友達にバレないようにその酒の瓶と薬品を一緒に写真で撮った。それから84錠の薬品は空になった。瓶をすぐさまカバンに入れた。 コンセプトに合ったクラシカルなデザインをした女性店員にオススメの酒を聞いた。友達が「ここはラム酒じゃない?」と言うから、「ラム酒だったら、甘いのとか飲めます?」と言うから、「飲めます」って言ったら、「マイヤーズダークラムが好きなのでそれでいいですか?」と言うからそれにした。腹のなかには薬品が入っているし、ガバガバ飲むということはしなかった。その店の予約していた時間は19時までだった。薬による著しい気分の変調というものは見られなかった。店を出て、夜の池袋を徘徊した。二軒目に行こうという話だったが、土曜日ということもあって店がいっぱいだったため、とりあえず地元に帰ることにした。歩いている時、ゆれるの0.03が頭の中で流れていた。
1943 ただ一人きりだ。ただ一人! 効いてない!駅のホームで友達にお腹を突っつかれて太ってるじゃんと言われても気にならない。なぜなら一人きりなのだから 嬉しいね、集団の中にいながら、一人きりだ
2048 電車の中で僕はカナル型のイヤホンを耳にいれ、ゆれるの0.03を聴いたが、何か違った。言葉は原理的に空虚な音で、その機能的ではないシニフィアン(音の連なり)の連鎖によって意味が形成される、超自我によって規定されている言葉だが、薬と酒の作用にて、超自我を修正する作用が働いていたような気がする、その中で、僕は符合するとにかく意味を持たないような音楽ジャンルであるアンビエントを聴いて目を瞑ることにした。少し気持ち悪さを覚え、それは吐くまでに至らない微小の吐き気なのだが、僕は座席に座っている男にこの気持ちが伝わってくれ、とにかくその座席に僕を座らせて欲しいと思った。そこで大宮でその男が降りたので僕は座席に座り、寄りかかり、目をつぶり、空虚な聴覚風景に身を委ねていた。
ひょっとしたら楽しい瞬間はここかもしれぬ 失いたくない みんないっしょ 喋らない 楽しい 全てが 溶解するこの空間に 返事も返さない返さなくていい この瞬間において自由だ! バシンスキありがとう もうつくのか また池袋からスタート��もいい 何回も シニフィアン状態だ 中央自由道路にて つなぎとめて死ぬものよ わりと不幸な
2128 地元に着くと、声がかすれていて、友達が「寝起きで声ガラガラじゃん」と言って来たが、それは明らかに薬によるものだった。パブか、相席屋にでも入ろうということになったが、パブは満席で30分ほど待つとのことだった。相席屋ならいいや、と一人の友達が言ったので帰るか、ということになったが、一品300円の居酒屋に行くかということになり歩いていたら、キャッチに捕まった。そこで話をしていると、友達が居酒屋の店の前にいる、同級生の女性と話をしていた。その女性は二人組で、一人の女性は学校が一緒で知っていたが、もう一人の女性は知らなかった。その学校が一緒の女性の友達の知り合いということで友達になったらしかった。話し込んでいると、その二人組も僕らが一緒に行く店が目的らしかったが、その店はいっぱいだよと伝えて来た。彼女らは天の川を見ることが目的らしかった。そこで、僕らは急調子であるかのようにその女性二人組と共に前の店に入ることになった。
ここで僕は狂うよに、自分の思いついた言葉、なんの関連性もない想起の断片をただただスマホのメモ帳にメモしていった。 あらゆる存在は関係存在だという。「並存としての他在と継起としての他在とがある。 意識は少なくとも、主体と客体と並存、つまり空間次元における他在を前提としている」と、ヘーゲル関連の本に書かれていたように思う。 「他のものであることの意味にも用いられているが、 とくに、或るものがその本来の姿でない形で存在していること」=疎外 「疎外感とは自己自身の志向性や行為が疎外されている過程に自己が囚われている時の感覚(反精神医学 クーパー)」 物理的な公共空間でみんな楽しく喋っている中で僕は押し黙っている。楽しく喋る、それは瞬間的なものだ、僕はスマホの中のメモというテクノロジーという持続性の中にいる、テクノロジーは持続性を実現させるように設計されているらしく、それは異なる種類のインタラクションを可能にするらしい。他在=自分ではない自分、のもとで自分自身のもとにいることこそ生きる目標というが、或るものがその本来の姿でない形で存在していること、僕のここでの本来の姿とは84錠の空き瓶だった。84錠の空き瓶から出た尊詠、書くこと、それが自分自身を見失わないこと、今、書くこと、様々な線分の交錯の中で書くこと、とにかくスマホにメモを打ち込むこと、空っぽな瓶から出た空っぽな言葉を書くこと、それによって保たれる平衡状態、見つかってはならない、書くこと。書いた言葉を載せるが本当に意味がわからない。僕は一つの断片を書き終えると、すぐにスマホを置き、また数秒も経たないうちにスマホを取り戻し、打ち込むという行為を何十回も行った。僕は相変わらず酒を飲んでいるが、量の少ないワインを飲み、酩酊発作など起こるはずもなく、ただただ理性的だった。友達たちとは、午前3時くらいに解散した。
錯綜する読んだ日よ 自分がわからなくなることがない 菊を売る 得る 帰るかという声 忘れようと思う 欲望はただ一人になりたいということ ただ自殺の日は欲望 レベル2の要素 そうかいのきおく 欲のレベルの記憶 記事書きは異邦人 夜の歯 たしかに青はなく 自分の容姿などまったく気にならない 石剣 これは、これが後悔する日はくるだろうか セルガン工房 ドミートリー ただ言葉だけがあり、そこに意味はない あ、空虚だ! 僕はこの場において眠っている タバコの煙を肺に入れてないことがわかった
2230
この時間が永遠に続けばいいのに インスタの話 僕はここにいない アーカイブとしての自己 私であるとはどういうことか xxをやることにより重なる 自分が自分に ラブラブラブ 腹が動いてないタバコを吸うとき もう二度とこんな体験はしたくないが 今がいまだ 連合解体 なにもかも思い出せる 月並みすぎる会話 見せて あぶなスマホがとられたのかと思った 死にたいことが起きるようだ ただ文脈だけがあり、意味がない レベルの中になにもないことに 明け方サイファ なんでこんなにみんな喋れるのだ? 喋ってなにが楽しいというのだ? ぬいぐるみを買い、飾るのが楽しみな友達よ タバコももう吸いたくない 懐古 ハイタッチをするおまえらよ レベルに酔うアヤワスカよ もはやここに価値なし 冷凍放送 アルトーの層 かいげきしんこう 憎きメルベー コートラせんじゅうし エンジェほしか なんでこんなに意味のない言葉を記録しなければならないのだろう? なんでそれでいいのだろうか? 日常が吹き飛ばされた 既存の生活がいまない まるで虫 僕は気持ちが悪い 誰からも相手にされないされない 黙ってたほうがさわやか ろっけんのほうそう 人との会話において、ヨーゼフKしか言いたくない らきこ ニコ先 なんで価値がないことに必死に!? 手が震えいるが全く気にならない 自意識がない 「なんのために」 すごい!全部この問題だ。 おれは解釈されズタズタに解体 それでしかない レクス2の8 もう2時間半!? ソレルスの数、読みたい ジズー六個 もうすぐ意味を付与強烈な付与が来る 実存はいい しかし、ほんとに一人になったとき 10匹のクマ せくろく 情報は虚しい 強迫意味付与社会 りくろくのガーナカルチャー なぜ酒を飲まない?馬鹿か? すごく楽しそうにいられる能力? これは消えるのに?いま消えているのにか? 金森まりあ 見ちゃった。 もう会わなくなる人よ? 海ぶどうのしょっぱさをワインで消す 馴染みの味 あ、これは意味のない言葉だ すごい疎外 あいくおおがえし 私はでぶ ギンズバーグアレント アルギスの戯れ 天井を見て煙を見ることで自分を客観視できた 女の子というくくり レクスは死に、僕もしぬ 全ては客観的なもの 裁きを 眠りよ 自己嫌悪の涙よ トロント 頭の中に何回も出てくるからメモするしかない 本質は変わらない 会話において出てくる言葉、それが印象づける、それが空間になき主観を発生させ、発見する雪のように降り、領土を作り、増やし、溶け、落ち、死ぬ レベルにおける感興の踊りよ 落ち、町田に記憶を変える レクスも出てくる 全ては耳打ちのそばに レベルにおけるかんそうの怒りよ ただただ酔っ払いを、放っておく テキーラを乾杯して飲みほすもの 私を見て私を無視する友達よ 私はただただ酒だ マイスリーと酒 私の友はこれ 幻覚者 僕はただものではない 怒りはただメジコン以外odしない メジコンが最強 レベルにおける三角よ お、パーカー レクガン 二面のこうかく けびれば 寝たら怒る6人が 外在化された魂と自己疎外の問題! うおあ!うおあ!うおあ! やったぞ! レベルにおけるさんた目録 地面タクス 紅茶の香りか 軽いガラス キューバリブレ挟まないと飲めないから ああなるほどねと一度きりの女 まるで人生よ 発汗する幸せよ かぎりなきれんごうこうきゅう 哲学塾における投げ出された顔 アルバス600 やたら数字が出てくる 永遠に終わることがないが早く終わってほしい ホワイティレインボー プリチャンをユリカと見ていたときよりまともで硬直だ ガラム、舌の刺激 素晴らしいガラムよ 限りないるはん れんじょうさくげきよ 言葉の強度の平坦化よ たらい回し編 レベルにおける カンサーよ にげんむげきよ さよならよ 記憶よ ピースフル6よ 中しぃからの連絡よ オルデレス 会話に意味がないから会話しない 沈黙ではない沈黙よ 夢を食う歯ぎしりよ 夢に来る。あ!全てが無理になりそう ふときた レベル9 ただならぬスマホの箱 蜃気楼 俺を疎外するな!享楽社会論よ! マイスリーは全てを癒す 素晴らしいなにもない無言な私よ レベルの二撃よ 指を動かするはんの光よまさにレベルよ かいそうの喜劇よ フリ倒される私よ 地面に落ちてしまう! コカレロを飲み干しガラムを吸う 私よ レベルのなくよんさよ 激しく慰め私の返しよ りくげきの賛歌よ レベルなきためしがき 和らいだ歯 死ぬ妄想 どれだけなにを飲んでも酔うことはない そしてわたしはここに 出る?悲しい言葉 xxを買ってよかった タバコを吸うたびまぶたが落ちる落ちそうになる機先を制するわかるか?僕は��りたくないから帰らないのだ一人で このbgm充電器、その言葉を聞いて安心した 長崎のよ ツイッターみたくない 既存の生活だからさ なにも伝わらないから自分だけに伝えさせるのだ レベルのユーカリよ きみのなかにある全てが価値 レベルのよくげきよ 反撃の無プールサイド トラップカード発動笑った
独軍 毒蜘蛛タランテラ きみのなかに徘徊する勇気の言葉よ 神楽坂駅 なやめ 記憶がねえや くっさ レベルの道よ街よ! ふわふわしてたら僕はいまここにいるのか?と思えてきた レベル2の蜂 ツイッターは開かないよ!理由は詳しく説明できないけど レッドゴー 眠らないようにスマホを取り上げる エフェドリンが効いてるのだろうなあ
0129
これは違う 前の時間だ なにも辛いことなんてない バシンスキが一番いいよ ダルトー もう4時間!? 吸うと火花が見える 私はいえにかえり、やっと目を閉じる それが至福の時間だ 目をつぶらないという役割を付与されているやったあ役割だ 青柳の春よ レベルxの胸像 自殺ちょーしたい 究極系の自己疎外だね どこで働いてるの? 文章に価値をつけるため、聞いた 僕にはないから ツイッターに呟いた瞬間全てが嘘になってしまう 年少解雇がよく笑うよく笑う 赤いキティできるだけ情報を xxの瓶を転がした 僕は何回ガラムを吸うんだろう 家に帰ってチェの一本を吸うとき… 219に解放 歩きの会話の脳内の音楽でかきけすが どっちみちバシンスキ エスカレーターの下 幸せは消えていく また意味を喋らなくてはならない 風呂には絶対に入らないバシンスキを聴いて目を瞑るやっと目が瞑れる はやくトイレ終われ 僕は暗闇に
0316
これ、これが最高なのよ フルニトラゼパムを飲んで後は寝るだけ 他の奴らは横浜だろうがはははは 声が鳴り止まない
0444 ねれない。俺に全てを任せてくれ 俺以外全員一端の人間なんだが 涼しい風よ吹く かゆい^_^ 雪よ てすかよ 長い狂いよ やっぱりバシンスキを吸おう ジオラマ模型もある 考えなかった 根幹がいない
0521
孤独だ 解釈かれ解体された残りカス 俺はこれからどう生きていけばいいの おまえはワンタン俺は適当に、
0530
猫の鳴き声 バシンスキも消した。僕は僕と一人きり わけのわからないものを作り、外在化させたい きょじんたちぜろ はるき?エレベーターで? 白い空 思考が再生これを切るためにはそれを書くことだ いつぶりだろう?この格好 昨日のこと思い出す ただいまおかえりなどと言ってもここは居酒屋ではないし返事もない 笑い声やりたきゃやってんだよなと 蛇だ蛇がいる 用意できましたらくらんボタンはは
0600
細切れに意識落ちる、だがねれない 自分の身体やたらと触る 後悔しかない。また通常意識に戻りました 既存の生活それがなにより耐えられない うるせーと猫にあたる父忘れてた幻聴か なにものみくいしたくない はははプリパラの地下見るよ 蜘蛛がいる バーモルサ
0631
加速か沈黙か 自分は醜い、がゆえの寵愛 カーテンがゴミ箱のビニールに触れる音 僕は醜い 別にネットにあげるわけではないのだから
0647
行ってらっしゃい
おはよう
遅かったね
楽しかった?
なら良かった
慟哭の地獄よ
0717
悪意はない 全くない
0732
もう言葉もでなくなりましたか
1001
博物誌とはなんだったんだ、ソネーズ レベル9のなくしんさよ
1153
動けない。動けないのが心地いい。半睡状態
1228
幸せだ、なにもしなくていいんだもん 幸せだ、適度に眠い
2100
ずっと寝ていた 爆竹の音、内臓に響く クズの本懐で二人が分かれた意味 疲れてんだよ、実際のところ また飲もうってよ 俺はいまただ眠いよ
「いつ俺の存在に気づくのか」
人生に倦み疲れたものが集まる場所…
そこでは膏薬が…
存在を発見されなかったもの…
頭が壊れちまいそうだよ! 俺はただ強迫を感じたくないだけ そういうところ嫌なんだよねと言われるやつ
0015
しまわれてるその舌で目を舐められ、すぐに洗った
0059
大変なんだなって無意識に口に出した
0332
まさか一日中倒れてるとはな 自分の身体にある小さい小さい部屋に入って出られない感じ マイスリーも飲まないすぐ寝るだろうし なにも行動ができない 肝臓を疑うつらい外部が辛い脅威だから 異にする辛い 腹が鳴る一日中なにも食べてないからな今日も食べないだろうなにかを口にすることが罪責を促す 疲れてんだよ人生にほんとに疲れた 求めてるのは変性だけ 髪が長いし清潔感ないデブ なにも載せるな混乱の銃器よ 正常な細胞が脂肪に置き換わる つらい、寒いな 他作品を見てたら気持ち悪くなってきた 雰囲気を作れ雰囲気を もっと光を少なくしたい
加工せよ軍隊よ
ズボボボボという音楽なんだっけ ケッテルみたいな人が出してた気がするけど なにもすることない ただただ外界が怖いよ外界に自分がいることを意識するのも怖いよ酒が飲めないよ畜生変性は?変性は?変性は?変性は? メジコンodとは違った良き倦怠感だが それはもうしにたいよ 一番意味のない行為 でも割れてるじゃん わかった!
0543
かゆいから掻いている副作用だ 猫が前に来たので抱きしめた 思い浮かべてた映像がきえた
0636
猫の声でかき消された 猫を見るとほかのものも生きてるんだろうなあと感じる
0738
きらきら いい笑顔でした さよなら アニメイトの話?ローソンあるよって言われている誰に? さくやさんのあれを捨てたのは確かに悪い 作業している犯罪者 夢のxxは俺を拒んでくる 一緒のクラスなのに あまり美人とは言えない顔 教室に友達がいないが、〇〇ってよくない?と同調したりしている 俺が話しかけると俺が俺だとわかるみたい 四人の女の子から本気で無理と思われている 施設制度分析 涅槃よ え?って思う もう学校も終わるから学校にきてみたが 君は人のこと差異化の手段としか思ってないのか
1016
強迫に見つかった
1028
深刻な鬱だ… 外界がつらいんだ 精神はまだ安定しているかもしれないが、 外界に触れるのが嫌になってきた… あああの穴の空いた石壁!あのときはもう二度と来ない!そしてなんて気持ち悪いんだろう! グループラインのトークを見返してる… 病ませてはくれない… 存在→空の薬品の瓶 みんな仕事か笑うわ なにかが終わりました 薬を飲むことくらいしかやることがないです 本を読むかなんだか泣きそうな気分になってきたな 全人間に否定されている 無だ…こわ… どこでも自分自身となれない。だから作品を書くことだ 今となってはなにもつまらない 酔っ払ってるxx、君みたいな人がいい
1130
だめだ、動くと四肢がはちきれそうだ ツイッターに埋め込まれている画像を見ることとそうでないこと 内面化された規律が厳しすぎたxxちゃん メードザン 放射させること、できませんでした ゆれる0.03を聞いてるとき 自分のツイッター見てたけど寝てるなこいつ、抑うつだよ
1141
苦しくなってきた つらい 気力がない なんか食べて気分変えるか なにかすがるものあるか人物? 感情が消えた ゆでたまごとジャガイモとわかめとたまねぎの味噌汁を飲んだ氷はうまい 穏やかだ穏やかすぎるほど穏やかだ しにたいしにたい
はやく!はやく家から出ないかなあ 一人になりたい
1245
また目を瞑る、これしかできないつらい
1532
情報 インプットとアウトプットしかない
1825
夢の中にまた魚。助けを求めるかのように叫んでた、多分現実でも。魚がいておぞましい感触がある。安定剤服用。直近の夢の内容を思い出せず。 生贄。システムへの懐疑。まだ解釈され解体されている、自分の作品を持たない限りはずっとこれだ。早く治療しないと。また寝る。精神を保てない。 多層。xx、四階のマンション。 xxにプレゼント送ったことあったよなとまどろみの中で。しかしそれはxxがどういう反応をするか、想像することでそれはないとわかる。声によって 言葉に触れるのも嫌で、 まじで疲れた pupgやった、やられるタイミングの美学 俺はなにをしているんだ とにかく疲れた 酒を持ってきたが飲む気にならない
0220
pubgまち、天海春香しね 三階のブランコでずっと とにかく外部に居座る 外部に居座る 三階の霊的なもの たがわから連絡きてたがいくらなんでもおそすぎだろ 寝てることにしよう 頭蓋を差し出そう しろいもの とっちゃいなよ くろいもの、つけじるにつけて ピンクのもの れいします いつまでも絡んでくるアメリカ なにするの? 修行を 集団に修行なんてないんだ、思いよそのげんきょうよ
0449
なんでこんなに寝ちまう 風呂も入る予定だったのに もうどうでもいいや全ては虹色へ 頭の中がいきなり切れて誰かに対して申し訳なくなる
0602
私も傘が吹き飛ぶほど喜んでしまった メキシコのサイトを見ていたら私は私であることが困難で、今までの私が否定されてくる この上なく精神不安定なので安定剤を飲んだ 僕は今日これからなにをすればいいですか コデインビール228 住み込みで働くところから物語は始まる? 薬物で幽体離脱するスレとメキシコ旅行のサイトを同時に見たらつらい しにたいしにたいつらい。つらいくるしい お願いだから助けてほしい オペラ?コンサート?美術館?まるで興味ないしにたい モンテベルデ雲林保護区 息ができない。白ワインを持ってきた 全ては想像のために想像が全てを作る 些末なことで思い悩む人生やめたいがそこに文学があるのだ 銃使うか、どうするか あー俺はどうすればいいのだろう 今日はなにもしなくていいか まあ思想として扱うのはガタリやラッツァラート、ビフォなんだけど 人々に睨まれている 想像に対しては意欲的にならないとだめだ 俺はなにもかも自分でやってきた、それだけは誇れる、失敗はしたが… サンホセ・デ・パシフィコ メキシコに行っても物語が書けなかったら意味がない。本当にそれは意味がないから 山間の小さな集落を舞台にしよう! 反動。結婚式の反動。なにが楽しいのだ 強迫、他者、それが喜びなのだが、苦しみのが大きい。 政令によって僕はメキシコに行くことができる 僕を自分が不幸であることを見せ付けなければ、それが僕なのです。作品を。プリチャンを。 ツイッターでの自己発信、脳髄をツイッターの形式に入れ込むということ 中枢神経系だけよ 既存意識にいることが多すぎて超意識は排除される
0 notes
nfhnchn · 6 years
Text
去るために
Tumblr media
他のパーティの後、私は長い時間がない、このような理不尽な叫び、そしてこの夜、さらに強力叫んだ、私は自分自身を非表示にする必要はありません、私は大ブランドコピー代引き声で泣いて、部屋の中央を不法占拠。ブランドコピー服次の日、私は2つのクルミのような目を身に着けていた、と親はどのようなバグを知らない場合、彼らは何が起こったかについて非常に心配羅が柔らかい私に尋ねた、私は、夜に、落ち込ん式は言っ見てふり1ビット、結果は、母親にも知られていませんでした。私は笑って聞いて、ロス・ソフィーはさておき、まだいくつかの感情、林そはつはのをそれらを保証したと私は賑やかな蚊を聞いたとき、不思議夜、いくつかの昆虫シロップを購入、または他に実行するために、最近思わないと述べましたこのような病的なバグで、私の顔は終わったと推定されます!ときに電車の中、林そはつはのは私にダウン彼の顔オフサングラスを過ぎて見ることができないので、私は上に置く、すぐに、それ以外の人は、私たちの3人は、あなたはあまりにもいじめと思います!私は微笑んで、サングラスを取った、車に乗り込んだ、私は突然、韓非李の後ろに座って見て、今日の彼は閉じている。この時点でヘッドフォンを身に着けている帽子を身に着けているカジュアル、頭を、身に着けていました偽の目。私は彼に潜ブランド激安市場入し、すぐに座る場所を見つけた。私はもともと、フィージーはこの1週間のツアーツアーを軽視しないと考えましたが、クレジットがありますが、それはフィジーの目のものではありません。車の起動、車の騒々しい学生、この旅行で誰も先週はとても興奮していた、トランペットの教師を保持するだけで、いくつかのセキュリティ問題の物語、次回は車はすべての私たちです。始めに、あなたに何が起こったのですか?私は戻ってきました、みはめはこふのせさこ。私は少し奇妙です、智めはこふのせさこは私から3つのポジションではあブランドコピーりません、どのように私の後ろに表示されますか?私はみはめはこふのせさこの元の位置を見て、一目でそれを見ました。みはめはこふのせさこが他の人と位置を変えたことが判明しました。私は彼が、お尋ねし続け、答えなかったそれは不快で、話すことがどのようにではないか?あなたの病気ちょうど、体がいくつかのためにも過言ではない、私はクラスを探す必要がありますか?を参照してください。私は微笑んで急いで相手を引っ張った。ただ、行ったことはない疑い陵玄シーズンを起こさないようにするために、私は私がなって、紀霊玄の後ろに見えたが、周辺視野が密かフィジー李風邪を目指しているいた時に、みんなの話題に統合してみてください。しかし、他の当事者がバスに乗った後、彼は目を閉じたままにして、彼は私を気にしなかった。あなたが以前にそれを変更すると、フィジーは間違いなく口を少し持ち上げて、笑顔の笑顔で私を見ていますが、今では彼は沈黙を選んでいます。私は自ロレックスコピー分の口を頷き、自分を慰める。問題じゃない、気にしない第71章黒い猫の道ブランドコピー代引きジャンヌ劉と林そはつはの彼らはオフにした後、激しい議論中であるので、文字で何かを買いに行く必要がある、と紀霊玄も男子生徒の背後にある最後の夜のバスケットボールのスコアを議論引っ張られ、私は少し窓に対して、見て窓の外に、ぞっとする。高速車の後、道は徐々に国の車線になって、私は、周りを見回した古いコテージある家と家、村は、私が粉々に、距離キャノーラの花オープンフィールドで見ましたゴールデンイエロー。ないシートベルトが彼の体に縛り付けている場合、慣性のため、過去に持っているので、突然、ドライバのブレーキが突然、誰も前方に愛到し、我々はすべての放物線運動を開始しているブランドコビー激安と推定しています。ええ、どうして猫ができますか?運転手は呪われて車を運転し続けた。逆に恐怖のため、学生は興奮の痕跡と心の腕があるという理由だけでしかし、我々は、一見叫んだ信用宇多田光集結されており、何のブ韓国 ブランドコピーレーキを持っていないあまりにも刺激的でなく、ジェットコースターよりも楽しいです。私は本当ロレックスコピーに、現時点で自分の感情を理解することはできません突然、私は黒の数字が目に登場しました、景色を見て窓ガラスに対して頭を継続します。私はそれを見て、道路の隣に座っている黒い猫を見た。彼は静かに座っていたが、彼の目は私を見ていた!
0 notes
ukigawachihiro · 7 years
Text
『灼熱』
 空を見上げた時に見える半透明の筋。揺らめいて見える大気は、実は目の中に浮いているごみが映っているのだと聞いた。剥がれ落ちた網膜。自分の細胞の成れの果て。私は、小さい頃からずっと、目の血管が見えているのだと思っていた。  西武線の黄色い電車を降りる。家まで徒歩十分。遊歩道の両脇に並ぶ街路樹はすっかり葉を落とし、住宅街はすっかり濃茶色の冬景色となっていた。この辺りは都会より季節の変化が分かり易いけれど、雪国に生まれた私にとって、冬の持つイメージが茶色になったのは、就職で東京に来てからだった。冬は白く、厳しく、凍てつく。どんな冬も同じだと思っていた。  蛍光灯を点けると、物が少ない部屋がより寂しく見える。  テーブルの上、生成りの手紙。下手な字が延々と書き付けられている。書いたことすら忘れてしまっていた手紙が突然私宛に届けられた。久々に会った旧友とタイムカプセルを開けたあの夕暮れが、白かった手紙に染みついていた。冬は寒いけれど、家にこもる分、昔のことを思い出すのには良い季節だ。十年越しのラブレターは結局届かなかったけれど、場は盛り上がったので、まぁ、良しとしよう。そう思わなければ、この手紙をかいた中学生の私が痛々し過ぎて、向き合うことさえできなかった。 『深と冷え込んでいた空が少しずつ青く、暖かくなり、はち切れんばかりの桜の蕾をあちらこちらで見かけるようになりました。中学三年生の俺から、きっと大人に、もっときれいになった君に、このはち切れそうな桃色の気持ち、その蕾を送ります。と、言っても、せっかちな俺のことだから、もうその頃には、この蕾は開いて、赤い赤い綺麗な花が咲いているかもしれないけど。もしそうなら、中学三年生の俺を、二人並んで、声を揃えて、『変なの』って笑ってやってください。  君は今日も絵を描いていたね。いつも虚空を見つめながら、どんな絵を描いているのかは、俺はまだ知らないけれど、俺のことを描いてくれてたらいいな、ってちょっとだけ思う。「何、描いてんの」って聞いても、「言っても、きっと分かんないよ」といって、君は微笑むだけ。その悪戯な笑顔に、俺はつい心にもないことを口走る。「俺のこと、描くんじゃねぇよ」って、ね。そして、君はまた微笑むんだ。「描いてないよ」って。あぁ! バカだなって思うけど、でも、仕方がないじゃないか! それが俺で、それが君なんだから。そんな、ウソつかなくたって良いのに、お互いに本音(きもち)をひた隠して、上っ面(てれかくし)だけで微笑む繊細な君に、俺は心の中でだけ触れることができる。俺は君の桜のような儚さに憧れて、君は、きっと、俺のどこか深いところにある暖かい場所に惹かれているんだと思う。君は、他の皆と違って、俺の表面を見ないから、もっと深い、奥の方に気付いてくれた。だから、俺は君の視線から、その瞳の奥、とても暗い、海底の砂に隠れている魚のような、強い意志が見えちゃったんだ。俺たちは深い所できっと繋がっている。だからもう、その重力から俺は逃れられないし、きっと、君も同じなんだと思う。それについては、本当にごめん。ごめんね。でも、ありがとう。ありがと。』    耐えられない。読むことに堪えられない。読まれることを自ら拒んでくるような手紙だった。しかも長い。とてつもなく長い。これが便箋の一枚目であり、まるで悪魔との契約書のようなそれはあと五枚残されていた。剣道漬けと勉強漬けの過酷な日々を過ごした中学時代。文武両道の学級委員。抑圧された欲望の反動は、タイムカプセルに押し込まれ、十年後に爆発した。当時の狙い通り、このラブレターは「君」の目の前で公開されることになった。 『きっかけはそう『林間学校』だったんだ。三年生になって同じクラスになった俺たちの最初のイベント。ハイキングというか登山というかキャンプというか、まさしく『林間学校』って感じだったね。周りは恐怖の樹海だ、幽霊が集まるだなんて変な噂も流れていたけど、そんな子供じみた噂よりも、その時の君のジャージ姿、その姿に俺はもうどうしようもなく釘づけだった。今思えば、吊り橋効果って奴なのかな。確かに俺は、どこか浮世離れした、木漏れ日の中の君にドキドキしていた。感受性の強い君は、きっと、もっとドキドキしてたんじゃないかい? この俺に。え? なんで、そんなみっともないジャージ姿に、って? なんでもっと、オシャレしてる時に見てくれないの、って? でも、仕方がないじゃないか。君はジャージを着ていた。ジャージには青や赤や黄色の絵具がついていて、そんなこと気にも留めず、君は、ただ一心に、絵を描いていた。そう、俺を見ながらね。君は「あなたの後ろの花を描いているの」なんて言っていたけれど、そんな上っ面(てれかくし)の言葉は俺には通じない。「だから、ちょっとどいて」なんて言われて、俺はわざわざその花を摘んで、「俺の背景にするよりも、君の笑顔に似合ってるよ」って髪飾りにしてあげるなんて格好良いことしようとしたけど、しようとしちゃったけれど、やっぱり何もせずどいちゃった俺を見て、君はやっぱり怒ったようなふりをして「変な人」って微笑んだね。あれは「まったくもう、この朴念仁!」っていう気持ちの裏返し、照れ隠しだったんだよ���?』  この辺りで私は死にたくなる。もしボタンひとつで簡単に死ねるのならば、私は確実に死を選ぶだろう。それでも、生きようとする自分がいることに、人間のしぶとさを感じる。一体どれほどの事態になれば、私は死ぬのだろう。仕事の悩みなんて、今、目の前にある手紙の暴力性に比べたらどうでもいいことのように思えてきた。私の人生における最大の敵は、文武両道で学級委員だった自分自身の嘘偽りのない気持ちだったのだ。十年前の彼は、時を超え、今を生きる私を本気で殺そうとしてきている。   『そういえば、あの林間学校で、作ってくれた、いや、班の皆で一緒に作った、いや、君は絵に夢中だったから、君以外で、いや、君に食べてもらおうと張り切りすぎて作業量的にはほとんど俺が作った、いや結局、そのやる気を皆に利用されて全部俺が作ったんだけど、あのカレー、覚えてる? 俺がナンまで焼きだしたら、先生まで唖然としてたよね。あれが、あのカレーが初めての共同作業ってことになるんだと、俺は意識してた。しちゃってた。』  ここで私は、この手紙を読み返すことに飽きてきた。飽きてきちゃってた。もう何回も読破しようと試みているのだが、いつもこの辺りで心を折られてしまうのだ。それほどに中学生の頃の私は純粋な気持ち悪さで今の私を殴りつけてくるのだ。  少しでいいから言い訳を聞いてほしい。昔は何でも上手くできたんだ。毎日血反吐吐くまで練習した剣道は学校で一番強くなった。連日徹夜で勉強したテストはクラスで一番だった。マラソン大会があるからって、誰にも見つからないように、夜中、独りで何キロもランニングをした。バカみたいに目が悪いのに格好悪いから眼鏡は掛けなかった。おかげで黒板の字なんて一つも見えなかったけど、その分を取り返そうと、家で必死に勉強した。そして、地元で一番の高校に入学した。でも、全部意味がなかった。高校には私より頭の良いやつが掃いて捨てるほどいたし、剣道部には俺より強いやつしかいなかった。鶏口となるも牛尾だった。いや、たぶん鶏口ですらなかった。月でもないし、夜空を見上げるすっぽんにすらなれなかった。兎でもないし、亀でもない。天狗だ。他人の森に逃げるように東京に出てきた哀れな天狗。 みんなで集まってタイムカプセルを開けたあの日、久々に訪れた札幌の秋はよく冷えていて、気持ちが良かった。友人たちは変わらず、自分も中学生の時と変わらない、馬鹿な笑い方をしていることに気付かされた。「君」は相変わらず可愛くかった。友人たちはこの痛いラブレターを回し読みして馬鹿にしながらニヤニヤするばかりだった。すっかり大人になった友人たちが『お前らしい』と言ってフォローしてくれたことが、一層私を落ち込ませた。どうせなら、相変わらず良い格好をしようとする私に『大人になれよ!』と説教でもして欲しかった。私は、東京に住めば、勝手に一流の人間になれるとでも思っていたのかもしれない。東京は人が多すぎて、いつも誰かに見張られているような気がする。私を見下す冷徹な目線がいつも背中に突き刺さっていた。 最後にこの手紙を読み切った「君」は私に『変なの』と言って、野花のように小さく微笑んだ。そのやわらかな優しさも相変わらずだった。見栄や自己顕示欲に塗れて、どうしようにも身動きが取れなくなった私を、いつもそうやって少し楽にしてくれた。 読もう。自分自身の気持ちを思い出すために。私が伝えたかった嘘偽りのない気持ちを。「君」の笑顔を思い出すと、不思議と勇気が湧いてくる。昔からそうだった。剣道も勉強もランニングも眼鏡を掛けないのも辛いことばかりだったが、その笑顔一つで全て吹き飛んだ。今もそれは変わらず、きっと私は今も彼女が好きなんだ。あの頃と同じ、ここは他に誰もいない独りきりの部屋で、見栄を張る理由も格好つける相手もいない。眼鏡を掛け、死ぬ気で勉強していたあの部屋と何も変わらない。そんなことにようやく気が付いた。 私は突然やってくる暴力的な言葉にやられないよう、心の中で剣道の上段の構えをし、気持ちを集中させた。受験勉強で磨き上げた速読術を使って、心を痛める隙を与えなかった。五枚目の便箋を捲ることには身体も心も疲弊していたが、マラソンで鍛えた根性が私を突き動かした。 最後の一枚。妄想の物語はこう綴じられていた。 『なにより伝えたいのは、『ありがとう』。林間学校で、バカな俺に「変なの」って言ってくれた君に。あれ以来、君と接する内に出てきた空回りばっかりの俺を、散々馬鹿にして、利用して、受け入れてくれたこのメンバーに、とても感謝しています。本当にありがとう。皆好きだけど、特に君が大好きでした。 未来の俺と君へ』 意外だった。すっかり忘れてしまっていた。けれど、確かに私らしかった。中学校を卒業する時の嘘偽りのない私。格好つけて伝えられなかった本当の気持ちだった。 携帯電話を取り出して、十年ぶりに手紙を送る。 『今でも好きです』 数分して返事が来る。 『ごめん。彼氏いるんだ。』 数十秒してもう一通届く。 『あれ? こないだ会った時、みんなに言わなかったっけ?』 『知ってた』 『だよね?』 『それでも、伝えておきたくて』 恋とか愛とか友情とかそういうものだけじゃなく。付き合ったとか振られたとかじゃなく。東京とか北海道とかじゃなく。 『中学の時の自分には負けたくなかったんだ』 『変なの』 それは彼女の口癖だった。そう言っていつも、野花のように微笑んだ。     (『灼熱』 おわり)
6 notes · View notes
ronpe0524 · 4 years
Text
梅雨があけない7月(2020年7月の日記)
■2020/7/1 2020年下半期の初日となる水曜日。詳細は書けないが今日も大変な1日となってしまった。Netflix『スノーピアサー』S1E6を見る。ウーディネ・ファーイースト映画祭『喜劇 愛妻物語』を見る。病院で購入した「開口器」というものを使って口を少しでも大きく開けられるようになる練習をはじめた。夜、ドラマなどを見てるときにやるのだけどちょっとした拷問である。
■2020/7/2  木曜日。夜、20時半から20分間だけ横田基地の花火。独立記念日の花火だが、いろいろ調整があって今夜になったのだろう。マンションの外に出るとよく見える。寝る準備をすませた娘と二人で見る。今年は昭和記念公園の花火も中止だし、短い時間でも見ることができて嬉しい。何より終わってすぐ帰れるのが最高。Netflix『スノーピアサー』S1E7を見る。ウーディネ・ファーイースト映画祭『叫び声』を見る。去年のTIFF以来の再見。
■2020/7/3 完全に寝坊した金曜日。いろいろ裏技を使いつつ娘に朝食を食べさせたり英会話をやらせたり着替えをさせたり日焼け止めぬったり学校の準備をさせたりしてギリギリで間に合う。今まで一番やばかった。がしかし、娘がアライナー(歯の矯正器具)をつけたまま登校してしまったことに後から気づく。食事のときに外して、食後に歯磨きをして付け直す必要があるのだけど、学校給食時はムリなので普段は学校には付けていっていないのだ。外したときに入れておくケースも持参していない。しょうがないので学校に電話、給食前のタイミングで僕が学校まで行ってアライナーを回収することに。こういうときに学校が近いと便利である。学校行事以外で小学校に行くことはほとんどないのでやや緊張してしまったが、副校長先生と担任の先生が快く対応してくれた。娘はクラスでは人気者なのだろうか?やたらいろんな子に話しかけられた。まぁクラスの子の親がイレギュラに学校に来たらあんなものなのだろう。何より父親が学校に来たことに対して、娘がイヤな感情を抱いてないようでとても安心した。オンライン試写で『 ぶあいそうな手紙』を見る。BS録画『名探偵ポワロ』E13を見る。
■2020/7/4 土曜日。朝から娘の歯医者へ。定期健診とクリーニングである。よく磨けていると褒められて嬉しい(僕が毎日夜に仕上げ磨きをしている)。国立へ。娘を習い事に送り、「ひもかわ桐生 国立」という新しいうどん屋さんでひもかわうどんを食べる。いいね、ひもかわうどん。立川へ。シネマツーで『イップ・マン 完結』鑑賞、極上音響上映で。上映後、同回を観ていたさっちゃんさんとちょっと話す。もうリアルで友人と会ったなんていつ以来だろう?3月のMCTT以来?ディスタンスを取りつつとても嬉しかった。娘を迎えに行って帰宅。夜は入江監督のトークイベントの配信と、再開のJリーグ 柏×FC東京戦を同時に見る。大変。しかしどちらも面白かった。Netflix『ダーク』S1E1を見る。これ吹替ないのかー。
■2020/7/5 日曜日。今日は娘と実家に遊びに行こうと思っていたが、娘がせきをしてるし鼻水出てる。もー。日曜なので病院は行けず。とりあえず実家に行くのはやめて、家でおとなしくさせておくことにする。もう説得するのが大変である。動画をいつもの倍見ていい、ボードゲームをいつもの倍やってあげる、工作の続きをやろうか、とか部屋で遊べる楽しいことをこれでもかと提案する。まぁ発熱はなく食欲もあってとても元気。娘が動画見てる間とかは僕ものんびりできた。明日は小児科だなぁ。WOWOWオンデマンド『悪魔は見ていた』を見る。U-NEXT『ソニはご機嫌ななめ』を見る。
■2020/7/6 娘の連絡帳に欠席の旨を書いて学校へ。担任の先生にご挨拶。午前中はミーティング(もちろんリモートです)が入っていたので抜けられず。夕方に小児科へ。溶連菌というやつの検査をやって、溶連菌じゃないことを確認。たぶん風邪でしょう、てことで薬を出してもらう。もう1日様子を見て発熱しなければ学校行って良いとのこと。ふー。Netflix『ダーク』S1E2を見る。Amazon Prime『エクソシスト2』を見る。追悼エンリオ・モリコーネ。
■2020/7/7 今日も娘の連絡帳を持って学校へ。今日は副校長先生にご挨拶。まぁ娘は鼻水とせきが出てるだけでとても元気。おばあちゃん(奥さんのお母さん)が来てくれてとても嬉しそう。僕はミーティング(もちろんリモート)に出ながら娘に宿題をやらせたり。でもおばあちゃんがご飯作ったり、娘とお風呂に入ってくれて大変助かります。Netflix『スノー・ピアサー』S1E8を見る。U-NEXT『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』を見る。
■2020/7/8 水曜日。今日から娘が学校に復帰。まだ鼻水出てるけど発熱しなくて良かった。僕は休暇を取る。娘が出かけてから渋谷へ。渋谷なんていつ以来だろうか。おそらく3月にイメフォで『コロンバス』を観たとき以来だ。松屋で早めのランチを食べてからユーロスペースで『はちどり』鑑賞。もう休暇を使わないとこういう映画を観れない。しかも休暇を使ったからといって何本も映画が観れるわけではなく、この1本を観てすぐに帰宅しなくてはならない。なかなかきびしい状況だ。でも『はちどり』にはその価値があったと思う。次にいつ行けるかわからないけどユーロスペースの会員証も更新。映画を観てすぐに帰ったので娘の下校前には自宅に戻れた。学校も問題なかった��たいでホッとする。夜はDAZNでFC東京×川崎戦を見る。ホーム開幕戦なのに0-4。多摩川クラシコはたまにボコボコにされるよな。 Netflix『ダーク』S1E3を見る。 PFF・オンライン映画祭「“ひと”が映画をつくる」@ PIA LIVE STREAM」『縄文にハマる人々』試聴。片桐仁の縄文トークも楽しかった。しかしとにかく眠い。24時ぐらいにはもう眠さの限界だ。
■2020/7/9 木曜日。まだまだ雨だ。肉が食べたくなったのでお昼はすた丼まで行ってテイクアウト。北海道すた丼。午後、娘が学校から帰ってきてからおやつを食べさせ英会話に送り出すのだがちょっと忘れ物をしてしまった。仕事しながらだと忙しくてまぁまぁ限界がある。Netflix『日本沈没2020』E1とE2を見る。辛い話だ。そうだよな、日本が沈没する話だもんな。PFF・オンライン映画祭「“ひと”が映画をつくる」@ PIA LIVE STREAM」『あみこ』『魚座どうし』試聴。2作とも再見だけど貴重な機会なので。山中瑶子と池松壮亮のトークはかなり雰囲気で話していて何も残らない感じ。どうして山中瑶子があんな面白い映画が撮れるのか不思議でしょうがない。Netflix『日本沈没2020』E1とE2を見る。辛い話だ。
■2020/7/10 金曜、まだまだ雨である。午後、上司とミーティング(もちろんリモートの)があり、それがちょうど娘が下校するタイミングであり、おやつをあげるタイミングであり、英会話に送り出すタイミングだった。大変。PFF・オンライン映画祭「“ひと”が映画をつくる」@ PIA LIVE STREAM」『セノーテ』視聴。これは劇場で体感するやつだなぁと思いつつも見れて良かった。Netflix『クラウディア・キシ倶楽部』を見る。Netflix『日本沈没2020』E3とE4を見る。
■2020/7/11 土曜日。朝から娘の眼科へ。視力、まずまず。娘を習い事に送ったあと、シネマシティへ。シネマツーで『透明人間』鑑賞。もう7月に入ってから面白い映画しか観ていない。こんなことでいいのだろうか。娘と合流して実家へ。本日はお泊りである。もうすぐ娘の誕生日なので、おじいちゃんおばあちゃん(僕の両親)から誕生日プレゼントをもらう。弟からもプレゼントがあった。さっそく遊ぶ。夜ごはんのあとかき氷を食べ、庭で手持ち花火をやる。いろいろやったので寝るのが遅くなってしまった。22時過ぎからオンラインで開催されていて僕モテ読者関西サミットに参加。ふだんは参加できない集まりであるが、声をかけたら参加させてもらえてありがたい限り。僕が参加してからだけで3時間以上やっていて、僕の上半期ベスト10発表がラスト。眠い人もいたと思いますが最後まで聞いていただき感謝。しかしみなさんよく映画を観ている。それ以上にみんなよくTVを、とくにバラエティを見ているなぁという印象がある。僕もTVは見ている(録画ですが)んですけど、バラエティはほぼ見ていないかもしれない。そこに使う時間がないわけだけど、世代的な差もあるんだろうか。なかなか面白い。実家宿泊のタイミングだと、いろいろ自由にできるのでまたチャンスがあれば参加したい(隣で娘が寝ているわけですけど)
■2020/7/12 昨夜は26時ごろまで起きていたのに、もう娘が5時前から起きておもちゃで遊んでいる。たのむから5時まで寝よう、と説得。6時ぐらいか英会話をやらせたり。7時ごろからきっちりした和食の朝ごはんをご馳走になりおなかいっぱい。お昼は近所のモールへアイスケーキを買いに。誕生日ケーキである。娘ももうすぐ8歳です。昨夜発表したベスト10をTumblrにupしたり、実家でのんびり過ごす。しかしスマホの調子(主にバッテリー)がいよいよ良くなくて、これは買い替えかもしれない。うーむ。夕飯まで実家でご馳走になってから帰宅。夜は娘を寝かしつけならがDAZNでマリノス×FC東京戦を見る。「負けた試合の後の試合が大事だ」って森重が云ってましたが、よくぞ逆転して買ったと思います。調子がよくなくても点が取れるのが今年のFC東京な気がする。YouTubeで『リコーダーのテスト』を見る。Netflix『日本沈没2020』E5とE6を見る。CUBE produce PRE AFTER CORONA SHOW presents リーディングアクト『プラン変更 ~名探偵アラータ探偵、最後から7、8番目の冒険~』をアーカイブで見たがウトウトしてしまった。また後日見よう。
■2020/7/13 月曜日。もう梅雨終わってほしい。夜、娘がピアノを真面目にやらなくて、さすがに叱ったら泣いてた。辛い。お父さんも叱りたくないんですよ。Netflix『日本沈没2020』E7とE8を見る。ううぅ。体調が悪いのか、睡眠不足なのか、風呂のあとベッドに横になりながら『プラン変更~』を見直していたらそのまま寝てしまった。夜中に何度か目が覚めた気がするけどぜんぜん起きられず。
■2020/7/14 火曜日。朝から娘がテキパキと英会話やったりご飯を食べたり。昨夜叱ったからやる気を出して学校行く前にピアノをやるのかと思ったら動画(YouTube)を見たいからとのこと。なんなんだ。お昼ごろ近所の図書館で娘の本をいろいろ借りる。お昼ご飯はどうしても餃子が食べたかったので冷凍餃子12個をひとりで食べる。満足。Netflix『日本沈没2020』E9とE10を見る。これで完走。変な部分はありつつもそんな悪い作品じゃないですけどね。Netflix『オールド・ガード』を見る。BS録画『キューブリックが語るキューブリック』を見る。
■2020/7/15 水曜日。お昼ごろドコモショップより電話あり。翌日に機種変のための来店予約をしていたのでその確認。いきなり「ご希望の機種と容量はありますか?」と聞かれたので「SE(第二世代)256」ととっさに回答してしまったが普通に高いよな。でも容量でいろいろ考えるのがイヤなので今回はこれでいこうかな。さて、本日配信された僕モテメルマガより、以前はふじっこさんが担当していた「情報コーナー」を引き継ぐことになりました。なるべくふじっこさんが書いていたときの雰囲気のまま書いていきたいと思います。いま過去のメルマガを読み直して研究中です。Netflix『スノー・ピアサー』S1E9を見る。WOWOW『轢き逃げ 最高の最悪な日』を見る。Amazon Prime『アップグレード』を見る。
■2020/7/16 木曜日。昼ごろ、仕事を抜け出しドコモショップへ。ついにiPhoneの機種変です。IPhone SEからiPhone SE(第2世代)となりました。もう大きくなっちゃったし、イヤホンジャックないし。個人的にはマイナス要素ばかりなのですがバッテリーがもうダメだったのでしかたないです。あとAmazon Primeとディズニー+とApple tvが1年間無料になったぞ。これだけでトータルけっこうな金額なんですけどね。Amazon Prime『ザ・キッチン』を見る。Netflix『スノー・ピアサー』S1E10を見る。これで完走。終盤、とくにE9は盛り上がったなぁ。日付変更と同時に配信されたAmazon Prime『劇場』も見る。
■2020/7/17 あまり書けないんですけど今日も大変な1日でした。オンライン試写で『誰がハマーショルドを殺したか』を見る。
■2020/7/18 娘の誕生日。レゴマリオを買ってあげる。早朝から遊ぶ。実は家庭内の問題について、昨夜ひとつ前進したかなぁと思ったことがあったのですが、朝のある出来事で元に戻ってしまう。これはなかなかきつい。娘を習い事に送ってからキノシネマ立川で『ナイフ・プラス・ハート』鑑賞。ちょっと映画には集中できなかったかもしれない。娘を迎えに行ってから、まぁいろいろありまして、最低限の解決までいく。僕がいろいろ足りないんでしょうけど、家族を持つということは大変ですね。明日は早朝から家族と出かけるため、娘が寝てから実家に車を借りに行く。BS録画『名探偵ポワロ』E14を見る。ヘイスティングズがインドの詩人タゴールについて言及していて、お、となる。
■2020/7/19 何か云われるとイヤなのでTwtterなどには一切書きませんでしたが、浦安の方にある某施設に家族で行ってきました。奥さんの努力によりチケットが取れたのです。本当に素晴らしい対応で、こんな状況でも楽しむことができました。娘も楽しそうで嬉しかった。夜には車を返しに実家へ。YouTubeで映画『美味しんぼ』を見る。森崎東監督作。
■2020/7/20 月曜日。今日も在宅勤務なわけですが、またも家でいろいろあり。さすがに心が折れそうになりますが努力するしかないですね。Netflix『性の劇薬』を見る。Netflix『ダーク』S1E4を見る。
■2020/7/21 火曜日。昼ごろ仕事の抜け映画秘宝を買いに行ったりスーパーで買い物したり。在宅勤務はこういうのがまぁまぁ自由にできるのが良い。と思っていたら夕方ごろ急ぎの仕事がきて焦る。娘を寝かしつけながら2時間ほど寝てしまった。風呂に入ってからWOWOWオンデマンド『アド・アストラ』を見る。
■2020/7/22 水曜日。娘が早起きしていて、テキパキ英会話をやったり、朝ごはんを食べたり、着替えたり。何があったのかわからないがいつもこのぐらい早くやってくれるといいのに。夜はオンライン試写で 『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』視聴。
■2020/7/23 木曜日であり、本日から4連休。お義母さんが来てくれているので娘を見てもらい午前中だけ出かけさせていただく。大変ありがたい。シネマシティで『悪人伝』鑑賞。4連休で観れる映画はこの1本の予定。でも1本だけ観れただけでも嬉しい。AFURIでラーメン食べてから帰宅。夜はAmazon Prime(レンタル)で『ストゥーバー』を見る。BS録画『名探偵ポワロ』E15を見る。
■2020/7/24 実家で車を借りてから家族3人で出かける。まぁ本来であれば外出自粛、なんでしょうけどグランピングというおしゃれなコテージとかテントとかに泊まれて、料理はホテルの人が作ってくれるという、最近流行っているやつに行きました。他のお客さんとはがっつりディスタンスがあるし、街に買い物とかに行くよりよっぽど安全。でもこれも何云われるかわからないのでSNSなどにはPOSTせず。めんどくさいですね。娘が楽しそうにしてたので何より。
■2020/7/25 某所のグランピングで一泊してから帰宅。途中、雨が凄かったです。夜はU-NEXTで『無言歌』を見る。そうです、『死霊魂』に向けての準備がはじまっています。そうそう、ゆうろうさんやチートイツさんが僕モテメルマガの情報コーナーを見て映画を観に行ってくれたことをツイートしてくれてて、こういうのは本当に嬉しいものですね。
■2020/7/26 実家の車を借りたままであったので、車で娘と昭島の図書館へ。昭島の図書館は新しく建て替えられたばかりで超綺麗。普段は予約した本を僕が借りてくるだけなので娘ははじめて行く。長時間は滞在できないので、館内で本読まずに借りるのすぐ決めてね、と云ってもなかなか決まらず。しかも巨大迷路みたいな本ばかり借りやがって。自転車で返しに行くのは僕なんですけどね。借りてた車にガソリンを入れてから実家へ。お昼をご馳走になり、午後はMCTGM『透明人間』に参加。意外にも微妙な感想の人が多かったので、絶賛モードの僕がマイノリティであった。これはこれで楽しい。人と会えなくなり、個人的にはあまり映画も観に行けない状況なので、こういう場は本当にありがたいです。夕飯までご馳走になってから帰宅。実家にも本当に助けられております。夜はDAZNでサッカー見たり。YouTube『街の灯』を見る。Apple TV+『グレイハウンド』を見る。サンクスシアター『ひかりの歌』を見る。
■2020/7/27 4連休明けの月曜日。娘はまだ学校があるし、僕ももちろん仕事。在宅だけど。海外は別に4連休じゃなかったわけでメールがたくさんきていてしんどい。ミーティングも3つもあるじゃないか。深田監督が『本気のしるし』公開館変更についてのnoteを書いていて読む。何度も思っているけど、ここまで自分の考えを、丁寧に、難しい言葉を使わずに説明できるのはすごいと思います。同じようなことを考えたり行動したりしてる人はいるのかもしれないけど、言葉の使い方が強すぎたりたり感情的になってしまっている人が多い中、しっかりこのスピードで表明できているのは素晴らしいと思います。Netflix『ワンダーウォール 劇場版』を見る。Netflix『男はつらいよ 寅次郎子守唄』を見る。 
■2020/7/28 休暇をもらい定期通院。検査はとくに問題なし。だけど待ち時間が長かったなぁ。腹ペコで牛丼をテイクアウトして帰宅。遅めのランチを食べ、子供を英会話に送り出し、ちょっと仕事する。在宅勤務はここらへんがけっこうゆるくできるので効率的。BS録画『名探偵ポワロ』E16を見る。WOWOWオンデマンドで『無双の鉄拳』を20分ほど見て一時停止したら、なぜか続きが再生できなくなってしまい、しょうがないので同じくWOWOWオンデマンドで『守護教師』を見る。問題なかった。Netflix『男はつらいよ 寅次郎相合い傘』を見る。あの「メロン騒動」の場面がついにやってきた。爆笑。
■2020/7/29 水曜日。もう雨はいいんじゃないでしょうか。期待していた『ハニーボーイ』のオンライン試写は外れたなぁ。代わりにAmazon Prime『サラブレッド』を見る。
■2020/7/30 木曜日。家で仕事してても、映画など見てても、基本的にとても眠い。どこかでしっかり寝ないといけないかもしれない。Amazon Prime(レンタル)『素顔の私を見つめて』を見る。U-NEXT『ホームアローン』も見る。
■2020/7/31 金曜日。変則的であるが今日で小学校の1学期がおしまい。つまり娘は明日から夏休み。つまり家にいる時間が増える。つまり仕事するのがまた大変になりますな。U-NEXT『三姉妹~雲南の子』を見る。そんなこんなでいろいろ大変だった7月もおわり。正直しんどいです。
0 notes
find-u-ku323 · 4 years
Text
『部分的にそう』
 あなたのことは前からそんなに好きじゃなかったし、と、呆気ないほど素っ気なく恋の幕は閉じられた。情けない姿を晒すまいと閉じ込めていた気持ちはいつのまにか溢れだしていて、ただ黙って、告白の舞台として僕が指定した中庭をとぼとぼと歩いて帰るしかなかった自分が、本当は一番情けなかった。  忘れなければいけないのだろう。本当は、忘れなければ大変なことになると、自分でもそう分かっているはずなのに、高嶺の花相手に挑んだ無謀な恋愛の後遺症は、僕が思ったよりも強く深く抉れた傷を僕に与えてきた。まるで誰も足を踏み入れることができない山岳地帯に咲いている白いサザンカを自らのものにするために、命懸けでそこに分け入っていったら、何か逆らえない神の逆鱗に触れたような重力で全身を強打したみたいな、そんな痛々しい気分だった。  じゃあ、なんであんなに気のあるフリをしたんだよ! ああいうことをするから、僕みたいに勘違いして傷つく奴が出るんだろ、って。そうは思わないかい、──。  僕は路傍にあった石ころ、その全てを転がして、晴れない気持ちを全てそこに籠めるかのように、制服が汚れるかもしれないという懸念も頭に浮かぶことなく水溜りの方へシュートしてみせた。瞬間、汚い水しぶきが上がるのを見たが、もちろんそんなものでは何の気休めにもなりやしなかった。  家に帰って来てから、晩御飯を食べる気力もなかった。休んだ部活の��級生から来たメッセ��ジを横目で消していくだけで、なんとなく精一杯だったから。きょうのことがなかったことに出来たなら、ちょっとは楽なのにな。告白した相手に僕の感情が漏れていたなら、正直、女々しいんじゃないの? って言われてしまいそうだった。  晩夏の夕空にかかった飛行機雲を見ながら、明日は雨なら学校に行かない、と憂鬱な気持ちを飛ばしていった。コップに注いだ強めの炭酸水の泡が抜けていく音が、魂の抜けていくような気持ちと重なって哀しい。名前のない感情が、声のない声に漏れ出ている。  力の抜けた片手で、さっき落としたスマホを拾い上げる。相変わらずメッセージを読む気力はない。  しかし、メッセージアプリの上のほうにいつも表示されている広告に、今日はなぜか目がいった。その広告は、どこか気味が悪くて自分の知らない異国の言葉で飾り立てられていたけれど、イメージを示す絵だけで、すぐにそれが意味するところが分かってしまった。  そのバナーを押したときに、自分は何をしているんだ、と内なる理性が僕を押しとどめようとした。なんの未練もないはずなのに、そんなに不確実なことをしてまで知りたいなんて、どうかしている、と。  内なる衝動もそれに答える。別に、自分にはどうでもいいことに成り果てたが、恋もつい先ほどまで生きていたんだから、供養をしてあげなければいけない。それに少し時間を割くことまで否定されるのは、なんとも耐え難い、と。  自分の中で延々とループし続ける善悪の秩序に、流れる無音の精神は鎮まらないままに、耳にはサイトから流れるエキゾチックな音楽、もう発狂しそうだった。情報が整理できない。こんなところで情報を受け取ってしまったら、もう二度と自分の消し去りたい過去から逃れることが出来ないんじゃないか、と散々悩んだ挙句、結局、そのサイトに描かれている珍妙で勝ち誇ったような顔をしたランプの魔神の導きに僕は従っていった。  サイトにある「人やキャラクターを思い浮かべて」というメッセージに従って、まさにきょう振られたばかりの女子を思い浮かべる。なんて甘えた妄想をしてしまうのだろう、と少し頭を振る。そして「スタート」の文字をタップすると、その魔神が、誰にでも簡単に答えられるような質問をしてくる。僕はそれに答えていれば、それでいいようだった。 『男性ですか?』  いいえ。 『30代ですか?』  いいえ。 『名前に漢字が入っている?』  はい。 『眼鏡をかけていますか?』  うーん、たぶん、いや絶対かけていたはず。 『セクシーなビデオに出たことがある?』  そんなの、いいえ、に決まってる。 『その人は個人的にあなたを知っている?』  これはどうだろう。僕は間違いなくあの子のことを知っていたけど、彼女が僕のことを知っていたかどうかは全く分からない。 『学生ですか?』  はい、間違いなく。 『その人は人気者ですか?』  ……たぶんそう、部分的にそう。 『その人の部活動は、体育会系?』  残念、ガチガチに文化系なんだよね。 『背は高いですか?』  はい。身長の低い僕がコンプレックスを抱くくらいには。 『さっぱりした性格?』  これも間違いなくそう。表向きに振る舞う顔は明るく利発そうな優等生だし、僕の告白を断った時だって、まるで僕の気持ちを慮ったからねと言いたげに、さらりと流れるように済ませたけれど、きっとひとりでいるときの彼女はもっとずっと暗くて深い。僕がそうなんだから、彼女もきっとそうなんだ。 『その子は、白いシュシュをしている?』  即座に自分の指は「はい」を押していた。核心をついた問いを突然ぶつけられて、処理能力を越えてしまったのだ。どぎまぎするのは、なんでこんな個人的なことを知っているんだろう、という疑念。狂気。僅かな恐怖。  誰も目にかけないほど小さなシュシュのことを思い浮かべるのは、彼女に執着しているから、どれほど細かなことでも見えてしまうくらいに見つめていたってこと。そんなことを、なんで初対面のはずの魔神が? 僕はスマホに映っている魔神の目を見ている間、ずっと密かに困惑した。だけど、偶然に当たってしまっただけのことかもしれない、と思いたい気持ちもどこか端々にはあったのも事実だった。  生唾を飲み込んだ。少し手汗をかいていた。緊張が顔以外の場所に出るのは、自覚している限りでは初めての経験だった。 『その子は、──ですか?』  やはり、か。僕は自分がしたことの重大さと軽率さに呆れかえるほど悲しんだ。しかし、同時に奇妙な達成感も味わってしまった。見つけてしまったと思うことで、失恋相手をコンピューターに学習させ、これからの彼女の人生をほんの少し変化させるくらいの、いや、バタフライエフェクトを起こすくらいのことが起こるのではないかという期待すら感じた。  だが、それだけなら僕は自己満足の自慰行為に勤しんだ虚しさで寝転んでしまってもおかしくなかったはずなのだ。無為なことだと斬り捨ててしまえば、それまでだったんだから。  僕がそれでもスマホの画面から目を離すことが出来なかったのは、彼女の顔写真を誤操作でタップしたときに表示された、彼女を象る個人情報の暴走のせいだった。  そこに出ていたデータは、名前や生年月日から、住所や電話番号、家族構成、自室の写真まで、有象無象森羅万象が全て記載されていた。  僕は、最初、それを全く信じなかった。名前や誕生日だったらまだ知れないこともないけれど、どう見ても本人しか知り得ない質問にも回答されてしまっている以上、こいつは嘘デタラメを書き記しているんじゃないかと思ったのだ。それでも何度か見返すうちに、その記述内容がどんどん彼女の本来持っている気性である根暗な性格にぴったりと当てはまるようにして見えてきてしまった。  ベンチウォーマーだった自分のことなんか見ているはずもないのに、彼女は彼女なりに「誰にでも分け隔てなく笑いかける華凛な少女」を演じようとしていたのだろう。しかし、運の悪いことに、それが僕を不機嫌にさせてしまったのだから、仕方ない。  窓の外は、スマホにくぎ付けになっている間にもう闇の中へと溶けていた。全てを凍り付かせる月の光は、ぴきり、ぴきりと心の壁まで冷気で覆う。もう、目の前のサイトがいかにして個人情報を手に入れているとか、人智を越えたものに対する畏怖とか、そういうものをすっとばして心は既に歪なほうへとねじれていた。
 人を騙すつもりはない純粋な少女の姿を目で追ってしまう、そんな歪んだ独占欲のせいで、あのサイトを使った次の日から、僕は世間一般でいうところのストーカーになってしまった。そうでもしなければ、一人で満足に承認欲求も満たせやしないのだ。  いつかの歌に『怖がらないでね、好きなだけ。近づきたいだけ、気づいて』なんて歌詞があって、初めて聴いたときはまったく共感できなかったけど、今なら分かる。全て知ってしまった今だからこそ、僕には彼女にいまさら何度もアタックする勇気も根気もない代わりに、彼女のことをずっと見ていたいという気持ちだけがふつふつと湧き上がっていた。怖いくらいに、そんなことがとても純粋だと自分の中で思いあがっていたのだ。  現実にリンクしない世界の話じゃないのに、ゲームを操作している感覚を持って浮遊している。いま、自分はあの魔神が操作するアバターで、彼女は間違いなく最終ターゲットのヒロインに違いなかった。そう、視野狭窄だから、この眼にはボクとキミの二つしか映っていないのだ。  角を曲がって商店街の花屋が見えるあたりに、彼女が足繁く通う古めかしい喫茶店が見える。きっと、午後五時きっかりに彼女はこの店を出て、家に帰っていくのだ、とあのサイトに書いてあった。であれば、いつものようにここからつけていけば、彼女の一人きりの姿を独占できるに違いない、今日だってそう思っていたのだ。  そう「思っていた」と過去形になったのは、彼女が店を出たときに感じたただひとつの違和感によってだった。彼女はいつもジャムトーストとミルクティーのセットを頼んでいると書いてあったが、今日はいつもと違って口の端にストロベリージャムをつけたまま、どこか落ち着かないような気持ちでもって辺りをきょろきょろと見渡す(そのしぐさは相変わらず可愛かった)。しかしその後に、思いもかけないような光景を目にしてしまって、僕は思わず眩暈を感じた。くらくらしたのだ。  彼女は、店の中の方へ誰かを手招きしたと思ったら、財布を鞄の中に仕舞いながらドアを開けた男の手を握った。とてもその姿が仄かに輝いていて、僕は暗闇の中の宝石を見つけた気分だった。しかし、その輝きも、横にいるよく知りもしないような男のせいで一気にくすんでしまう。こ、こ、こいつは誰だ。一体、誰なんだ。俺の知らない人間を招き入れるのだけでも何か純粋なものを汚された気分になるのに、そんなに近しい距離で彼女と男が歩いているということで、もう、世の中に不条理しか感じなくなる一歩手前まで自分の心が乱されてしまう。  彼女たちに与えられた風はそのまま僕の方まで平等に吹き抜けた。そのおかげか、雨の匂いを敏感な感覚器官で感じ取るが、生憎、僕には傘がない。知り得た情報だけでは何にもならないように、いまここで降りそうな雨を防ぐには鞄を屋根代わりにしただけじゃ不十分に違いないのだった。 「僕の知らないところで……何で告白を……受けたんだ……」  僕の私怨を飲み込むほど彼女も子���じゃないことは分かっていた、つまり僕の方があまりに幼い精神のもとで行動していたことは相手にもバレているんじゃないか、と恐れながら生きていた。しかし、ここまで来てしまった今、もう止まることはできない。  僕はすぐさまスマートフォンのシャッター音が鳴らない改造カメラアプリを起動し、彼女と一緒に歩いている男の写真を撮った。もちろん、名前も、素性も、いやもしかすると僕と同じ高校であるという確証すらないのかもしれない。それでももしかしたら、彼女を『解体』したときと同じように、名前すら分からなくとも何者かが分かるはずだ、と僕は察知したのだ──本当にできるかどうかはともかく。  興奮のあまり、通信料を気にしてしまうなんてこともなく、その場で例のサイトにアクセスした。僕は、そこで先に撮ったイメージを想起し、彼女を思い浮かべたときと同じような要領で、魔神が出してくる質問にただただ淡々と答えていった。 『男性ですか?』  はい。 『背は高いですか?』  はい。 『その人は百八〇センチ以上ありましたか?』  こればかりは、平均より背が低い僕がいくら相対的にといえども評価することはできないだろう。だから、分からないとだけ言っておいた。 『人気者ですか?』  これも全く分からない。この男のことを一度も見たこともないから、判断しようがないのだ。 『眼鏡をかけていますか?』  魔神は眼鏡フェチなんだろうか? (問いに対して、)いいえ。 『あなたの近くに住んでいる人ですか?』  正直、『近く』という言葉の定義次第だろうとは思うが、まあ、あの喫茶店から出て来たのだから、近所に住んでいるという解釈でだいたい間違いはないだろう。 『その人は目つきが悪いですか?』  その質問を見たとき、少し思い当たる節があって、さっき撮った写真を拡大してみた。男の目のあたりを比べてみると、たしかに鋭くて吊り上がった狐目が特徴的だった。 『どちらかというと暗い雰囲気ですか?』  彼女といたときの彼からは、──無表情気味ではあったけれど──どこか人格に欠損のあるような後ろ暗さを持っている感じはなかった。そして彼女もそんな奴を選ぶほど落ちぶれてはいないはずなんだろうって、そう信じたいだけだった。 『その人は、あなたの大切な人の横にいますか?』  魔神はなぜこんなにも意地悪で、絶望を促すようなことで僕を揺さぶるのだろう。好きになったのに、好きになれなかったという屈辱的な現実に死にたくなるけれど、しかしそれは厳然たる事実を示しているに過ぎなかった。彼女は好きになりたかった大切な人で、その傍にあの憎き男がいたのだ。それは僕の目が捉えた紛れもない、正しいことなんだと、再び絶望の淵に突き落とされた気分だった。  そして、それが最後の質問だったようだ。僕は、魔神の考える姿を見て、この魔神は電子空間上の存在だから感情の正負もないし誰かの悪意も感じないはずなのにどうしてこんなに「悪意」の姿が見え隠れするのだろう、と訝しんだ。  数分の後、やはり僕の知らない男の名が画面に表示される。彼女と同じように顔の画像はタップすることが可能となっていて、やはりこれも彼の個人情報を確認することが出来る。  男の名を知り、その住所や電話番号、学年やクラス(僕が知らないだけで、彼は同じ高校の同級生だった)、好きなものや嫌いなもの、所属する部活動、家族構成、果てには性的嗜好やバイタルデータ、その全てを知った時に覚える慄然とした気持ちを、僕は否定しようとした。  ──イマ、ボクハナニヲシヨウトシテル?  否定しようとした気持ちは間違いなく理性だった。しかし衝動はもはやあのサイトに出て来た魔神のコントロール下にあって、彼を罰せよ、彼を憎めよ、と原始的な生存本能でもって敵対する雄を蹴散らそうとする。なぜ魔神の制御を受けていると言えるのかというと、もはや今この場所に立っている自分は、あのサイトを見て行動を起こす前の失恋したときの自分とは、まるきり行動規範が違うからだ。いくら誰を否定しようとも、それを傷つけることを選ばなかった自分が、「復讐」の二文字さえ頭によぎるくらい、それくらい海より深く山より高い嫉妬に狂わされていた。  ──オイ、オマエノテキッテノハ、アイツラダロ?  内なる声のナビゲーションは、僕を路地裏への暗がりへと誘って、そのまま潜む。  ぐらぐらと実存が脅かされる音がする。魔神が把握していた位置情報によれば、彼女と男は、喫茶店から商店街を突き抜けるかと思いきや、そこから脇道に外れて、地元でも有名な治安の悪い通りへと進んでいった。  通りの悪評は、ネットで調べなくたって、この町では暗黙のうちに知れ渡っているところだ。路には吐き捨てられたガムと鳥の糞が交互に撒き散らされていて、使い捨てられたコンドームの箱であるとか、あるいは良く知らない外国産の薬のゴミ、タバコの吸い殻、そういったものがあちらこちらにあった。何度綺麗にしたってそうなるのだから、周囲の人々もほとんど諦めているに違いない、と僕は思っている。  ──大丈夫だ、僕にやましいことなど何一つない。  そんなステートメントとは裏腹に、やましいことだらけの僕が足を進めた。  辺りは灯も少なくて、闇の青さがすぅっと浮かび上がっているのだ。その青さが、心霊現象すら思わせるくらい非人間的な冷たさを含んでいて、僕はまだ秋にもなっていないのになぜか背筋が凍るように寒かった。  慎重に、痰とかガムとか糞を踏まないように気を付けながら、彼女らの後ろをつける。もはや気づかれることが怖い、なんて地平はいつのまにか超えていた。もう、死ねない僕は幽霊になって足跡を残さずにどこにでも付いていければいいんじゃないかって、そのくらいのことはずっと考えていたのだから。  暗い路地の隙間から、一軒、また一軒と光が漏れ出しているのを僕は見た。藍色の中から浮かび上がるそれを神々しいと表現するのは、とても浅はかなことだ。なぜなら、その光は林立するラブホテルからラブホテルへとつながっていたのだから。  光を追えば、必ず彼女たちへと繋がった。それは、到底避けられないような類の天災に似ていた。月並みな表現だが、雷が落ちたときって、こんなにビリビリするものなのか、と雲一つない空に思うのだった。  そして、こんなときに限って、あの告白を断られたときに言われた台詞が思い浮かぶのだ。 「──……君って、なんで私のことが好きなの? だって、私は……君のこと、まったく知らないし、興味もないのに」  知らないわけないだろう、と思っていた。彼女のことなら何でも知っていると勘違いして告白して、そして彼女のことを全て知ることが出来たと錯覚した今もまだ、勘違いしている。きっと僕がストーカーだと彼女が知ったなら、それはそれで彼女はゾッとするだろうが、何よりそのときに僕に向けられるであろう視線で僕は瞬間冷凍されるだろうと思った。一方通行の愛でもない、まがいものを見るような顔をするだろう……、ふたりとも。  しかし、歩き出した足は止まろうともしなかった。もう、これは魔神のせいなんかではない。自らの本能が、それでも自らの愛を受け入れなかった彼女らに罰を与えんとしているのだ。  汚れっちまった悲しみに、なすところもなく日は暮れるのだ。何も生まないことは知っている。  彼の背中を目がけて、一気に距離を詰め、家から持ち出した果物ナイフを何度も突き刺す、何度も突き刺すのだ。一度じゃ、人は死なないから、念入りに、何度も刺すのを忘れずに。ついでに、目撃者となる彼女にも、そうした鋭い苦痛を分け与えてやる。誰かに返り血でバレたって構わないのだ。もはや復讐は目的であって手段でもあった。 『あなたが復讐したい相手はいますか?』  魔神に問いかけられる声がして、ふとナイフを取り出す手が止まる。……そりゃあ、もちろん、殺してやりたいほどなんだ。それをなんだ、今更どうしたんだ、と僕は少し愚痴るような表情で心の中のランプに問いかけた。 『あなたは、相手があなたのことを知っていると思いますか?』  どうだろう。彼女が僕のことを知らないはずはない──覚えていないかもしれないが──、だから彼女から男へと「こんな情けない男がいたんだよ」くらいのことは伝わっているのかもしれない。答えは『部分的にそう』ってところだろうか。 『あなたは、相手があなたのしようとしていることを知っていると思いますか?』  そんなことはない! 僕は叫びたくなるのを抑えた。  死にたくなるほど惨めで飢えた獣が何をしたって構わないと思われているのかもしれないが、相手は僕のことを「覚えていない」とか言った奴なんだから、知らないに決まってるだろうよ! 『あなたは、相手のやろうとしていることを知っていますか?』  全く、ひとつとして知らない。それが答えで、特にそれ以上のこともない。大体、相手は間抜けにも復讐されて殺される側なんだから、これ以上彼女のことを考えるのは時間の無駄だ。  もう、さっさとめった刺しにしてやりたい。だが、魔神の声は質問が終わるまで僕を離してはくれないのだ。  魔神は、突然すっとぼけたような声でこんなことを問うた。 『あなたは、いま、幸せですか?』  幸せの定義にもよるだろうな、と僕は思っ��。そもそも、僕の周りにある大体のことは僕が不幸になるように出来ている。それを前提にして彼女や傍にいるクソ男を恨むという今の状況は、一面的に見れば幸せとは程遠い。しかし、反対から見てみれば、彼ら彼女らさえ消してしまったなら、恨まざるを得ない対象から解放されるのだから、それを幸福と呼ぶことだって僕は厭わない。  僕はそんなことでもって、結局『部分的にそう』としか答えられないのだった。  そして、それきり魔神の声は聞こえなくなった。  僕は、魔神が何をしたかったのかさっぱり分からなかったが、それを聞いたことによって、復讐をすることの意義であるとか正統な理由を獲得することに成功したのは確かだった。  まるで霧に包まれたかのように謎深き彼女のことも、あるいは隣で見せつけるように笑って彼女の手を繋いでいる男のことも、今では僕のスマホの中にある情報によって、地獄まで追いかけてやることすら可能だって、いったい誰が想像したんだろうね?  僕は人の悪い笑みを浮かべて、鞄から想像通りに果物ナイフを取り出す。そこから何十歩か歩めば、彼の背中に、満願叶って二度と消えない傷を刻めるのだ。その瞬間に僕はこの世で受けて来た耐え難い苦悩から逃れることができるし、くだらない集団から一抜けすることもできる。ああ、ようやくこの時が来たのだ! 晴れがましい気持ちで、すっかり夜になったこの町の空気を、一度だけ大きく肺に取り入れる。……少しだけ、煙草臭かった。  恐ろしい計画は、血飛沫で清々しく終わりたかった。だから、勢いをつけて、彼の背中へと突進する構えでもって飛び込んでいった。  ぐさり。  その擬音が生じたのは、彼の背中ではなく僕のお腹であった。瞬間、内臓の中を抉られるような深く鋭い痛みと、今にも沸騰しそうな血の熱さが僕の中を駆け巡る。  イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ──イタイ──イタイ…… 「お前がやろうとしてたことなんか、全部バレてんだよ。  知ってるだろ、このアプリ?」  男は、息絶えかけている僕にとても不快な微笑みを向け、スマホの画面を見せた。朦朧とする意識と、刺された衝撃でかけていたメガネが吹っ飛んだせいで弱まった視力でも、それは確かに分かった。『部分的にそう』なんて玉虫色の回答をするつもりもない。 「ああ、知っているよ」  魔神の顔は、俺を嗤うように口角が吊り上がっていた。思い返してみれば、さっきの声は警告だったのか? ……なんにせよ、全ては、あの魔神の掌の上で出来上がっていたことであって、きっと世界のシステムの中に仕組まれていたことだったのだ。  イタイイタイイタイ……イタイイタイ……タスケテ……イタイイタイイタイイタイイタイイタイ!  きっとこんな腐った路地じゃ、助けを呼んでも誰も来ない。おまけに僕は果物ナイフを持っていたから、仮に彼が罪に問われるとしても正当防衛として弁護されてしまうのだろう。  僕は意識を手放す前に、僕の中に現れた魔神に問いかけた。 『これは、僕が死ぬために仕組まれたことだったのか?』  答えは、なかった。答えるはずもなかった。これは憶測でしかないが、僕の中に魔神はいなかったのだ。あくまで、純粋な狂気が詰め合わされただけの自分を、あのサイトが後押ししただけだったのだ。  ああ、ああ、思考する能力がだんだんと弱まっていく……。  とある恋を葬るための赤い噴水が、僕の身体から吹きあがるときに──、白いサザンカが彼岸に揺れているのを見た。  その花言葉は、『あなたは私の愛を退ける』。
1 note · View note