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#自分の遺伝子を残すことはめでたいのか? 喜ばしいことなのか? 自分の遺伝子を含んだ愛らしい人間が生まれることが嬉しいのか?
doctormaki · 1 year
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ハンブルグに戻り、ほぼ誰もいなくなったもぬけの殻のマンションで、ここ数日暮らす。実に静かで良い。このマンションの立地は丸の内一番地的で素晴らしいのだが、上階や隣人の足音や声が聞こえて、言うなれば、音響が素晴らしく良い。上階のギリシャ人Chrisと共に起き、彼と共に上下階に別れて朝シャワーをし、Chrisが出かけていく足音を聞きながら、左側上階のスウェーデン国籍ナイジェリア人のMinnaがZoomしているのを聞きつつ、隣人の南ア人ゲイのLouisが彼のパートナーとお喋りしているのを聞く毎日。私は神経質なので、他者の生活音がかなりのストレスだった事を、思い知る。
世の中はイースター休暇である。小学生の頃、イースターの頃のヨーロッパ旅行でイースターエッグのチョコレートを貰うのが、小さな喜びだった事を思い出す。私が子供の頃は、チョコレートも飴も、ちょっとした特別感があったものだ。コーヒーも紅茶も、ちょっとした潤いというか贅沢だった。豊かになり、チョコレートが毎日飽きる位に食べられるようになったり、コーヒーが一杯百円で売られるようになったりと、日本の異常な豊かさに驚くと共に、そんな事は長続きするはずが無いと確信している。豊かさの飽和が、民心を貧しくしているというパラドクスは、しかし、アメリカもドイツも同じだ。
日本のバブル崩壊から30年。それでも豊かでいられるのは、過去の現役日本人、祖父母や両親達が頑張ってくれたお陰だと身に染みて思う。私と同世代の団塊ジュニアは、バブル世代の犠牲になって差し上げ、バブルの軽くおバカなノリを冷ややかに見ているが、それは、ほぼ、社会の底辺から見ているに過ぎない。私達の直ぐ後の世代は、就職氷河期でも無いくせに、就職氷河期であった事を主張し、自分達が社会の犠牲者である事を恥ずかしげもなく標榜し、発想力も無く、知的レベルが低く、上(バブル世代)に媚びへつらう事で生き延びようとする組織のコマ程度の人材ばかりが、起用されていく。ハンナ・アーレントの組織的悪のパターンが平和的に実行されているに過ぎぬ。日本の経済力、組織力、民度の低下は、今後ますます酷くなるだろう。そうした危惧も無く、今をこの世の春と謳歌できる楽観主義者と、未だに核家族化における社会的要請(少子化対策)を真剣に受け止めるマジメな方々だけが、せっせと子作りに励み増殖していく。それは、アメリカでも、ドイツでも同じ。
私の周りの知人達は、ほぼ皆、社会不安や将来不安から子を持たない選択をしている。この人には親になってほしいと、こちらが願うような人格者ほど、子を持たない。私の分析では、子供を持つ事とは、親に成らせてもらう事によって、自らの自己成長のために、子供を、ある種の犠牲にしているようなものだと思う。従って、DVなどの負の連鎖は、綿々と続くし、どこかで、負の連鎖のカルマを断ち切り、気付きの機会が無い限り、家は負の意味で没落しゆく。逆に、家が消滅するとは、カルマが終了したという風にも捉えられると思う。十分に、学びの機会を持ち、ついえれば、終わって良いのだ。日本は宗教がいい加減だが、多くの聖職者が子を持たないのは、そういう意味合いがあるのだろうと思う。私は、聖徳太子の好む維摩経が好きだ。在家で在野に在りながら、清くいる。私は、二十代の半ば、病気をしてから、維摩経を心に置いている。
私は、色々な角度から考えても、子供を持たなかった選択を、良かったと思う。どうせ天然記念物並の知性と感性の持ち主なのだから、天然記念物らしく朽ちれば良いのだ。ガハハ。生物とは、ただの遺伝子の箱なのだとしたら、チェコのブルーノでメンデルが発見した法則のように、また、どっかで、突然変異が生まれ、私のように、社会を斜めに観察する人間も、生まれて来るだろう。問題は、小池がほざくような(負の)レガシーではなく、何を足跡として残せるのかという事とも思う。しかしながら同時に、忘却される事の粋美も思ったりする。忘却されていても、本物であったならば、本物を探す者が時空を超えて探し当てるものだと確信している。それは、必ずしも親族や同民族では無いという事も。
春の訪れを日本を思いつつ祝う時、チューリップを紅白に活けてみた。また、研究所での食事が無くなったので、自分の食べたいものを料理して食べられる幸せを感じている。料理を極端に嫌う事や、料理しない事を良しとする事は、私には理解不能だ。自分の体調に合った、身体が季節変化に合わせて求めるものを、食べたいときに食べられないのは苦痛でしかない。食べたいものを、自らが調理して食べられる幸せ。買いたいものが売られていて、それを購入できる幸せ。その背景にある多くの人々の仕事に感謝しつつ、また、食べて下さいと五体投地してくれる生命を、有り難く調理し、美味しくいただく。これ以上の幸せはあろうか。自分が確実に大きな社会のネットワークの小さなゴマ粒に過ぎず、大きなものに生かされていることを思う。毎食、毎食が、感謝でしかない。
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研究所のコックのミヒャエルと、彼の彼女レベッカさんは、私の事をとても好きみたいだ。まぁ、地下回廊に簡易に作られた薄暗く狭いキッチンに、昨年からせっせと通い詰めているのは、研究者でも私だけだしね。。。私は丸山眞男好きなので、市井の小さき名もなき人々の日々の小さき行いこそが、国家の根幹であると信じて疑わない。政治家も学者もアイドルも、みんな、ウンチである。見て社会の病を推測する事はできても、社会を支える根幹は、表立つウンチどもからは、絶対に見えない。大衆とは、実にウンチが好きなんだなぁと感心する。まぁ臭いから、ベムりんみたいに、気になるという事なんだろう。あるいは、自分の中のウンチと呼応するので、ウンチを見て賞賛したくなるのかもしれん。
ワシはウンチはどうでも良いので、社会を動かす、根幹の部分にある、隠蔽された良心を見たい。そして、そこにこそ、社会の希望と未来を見出だしたい。そんなワシに、ミヒャエルは、イースター休みにも関わらず、レベッカと愛犬ペッピーノと共に、車で拙宅まで送り迎えし、自宅に招き、春の料理を振る舞ってくれた。ミヒャエルは北部ドイツ、レベッカは黒い森周辺の南部ドイツ出身。ミヒャエルは、バンコク、リスボンなど世界中を渡り歩いたコックさん、レベッカは2014年台北で開催された25歳以下世界お菓子選手権大会で世界3位を取ったパティシエ。ペッピーノはミックスの捨てられていた犬で推定1歳半。皆、何故か分からんが、ペッピーノなんか身体が壊れそうな位に喜びまくるし、ワシの方が感謝せんならんのに、ミヒャエルとレベッカは、来てくれてありがとうと、感謝して来訪を喜んでくれる。
イースターのためにミヒャエルが作ってくれたのは、春の魚、サワラのソテー。これに森のキノコと白ワイン、玉ねぎを煮込んでとった出汁をベースに、刻んだ玉ねぎと白アスパラと緑アスパラを小口切りし、たっぷりのバターで炒め、春にしか取れない森のキノコをふんだんに入れたところで出汁投入。そして削ったパルメジャーノと黒胡椒で味を整えたスープ仕立てソースを、別フライパンでソテーしたサワラの上にかけて、いただく。食器は、家にある食器で一番高いという、ミヒャエルがお祝いで貰った、美濃焼の器。彼の料理は、優しく繊細で、兎に角、優しく奥深い味わい。研究所で出している料理と異なり、心がこもる料理とは、同じ作り手でも、味わいが異なる事を実感した。この料理を、私は生涯、忘れ無いだろう。
おまけに、何故か、ミヒャエルからは日本から輸入した枯節一本、レベッカからは彼女の作った特大イースターエッグのチョコレートとワシが好きだと覚えて���て、ラズベリーとパッションフルーツのジャムを頂戴する。イースターにも、プレゼント交換するのをワシは知らんかったので、メチャクチャ恐縮。
でも、多分、ワシが作ってあげた、カツオダシのお澄ましとニラ餃子、あんこ玉を作っておいて白玉粉を器用に、トリュフ作る時みたいに白玉で包んで茹でて作った、あんこ入り白玉団子が、美味しくて、嬉しかったって事なんだろうなぁと、しみじみと思う。しみじみと、しみじみと、ワシの心が、彼らの心に触れたのであれば、これこそが、ホンマモンの外交努力である。そして、こうした触れ合いが人知れず継続される事でしか、外交なんて、本当は成立しない事も、ワシは知っている。昨今の、金持ちブリタイ外交官や商社マンが、適当な高級レストランで適当にクッチャベッて外交した気分で喜んでいるのは、ブリと鯛レベルに過ぎぬ。その一晩に使った金額の多い少ないで関係性が計測されてしまい、資本主義の薄っぺらい関係性でしか無くなる。
そうじゃないんだよ。時間を共にするということ。同じ釜の飯を食うとは、共に材料を集め、共に調理する時間を過ごしたという事を含意する。ミヒャエルが、マキに何を食べさせようかと思案しつつ、イースターで閉まる直前の忙しい市場に出向き、ウロウロして食材を買い揃え、前日には、アルコール飛ばしたソースなら食べられるか?と確認のメールをし、当日には朝からワクワクと、ソワソワと、魚を自慢の刺し身包丁で解体し、切り身にしてからバットの上で休ませ、レベッカに運転させて、マキを30分かけて車で迎えに行く。この間、ずーっと、思って貰えた事に、感謝なんだ。その優しさと、かけてくれた時間、思いを寄せてくれていた事こそが、掛け替えの無い友情の証だと、アホなワシは確信する。
ワシが、ケーキを作らなくなって久しいのは、忙しいからを口実にしとるが、ちゃうねん。ワシが掛けた時間が、工業製品の如くに、チャチャッと評価され、つまらない物として消費され、こんなんだったら、〇〇パチシエで買う方がいいじゃんと言われる事に、耐えられなくなっただけ。じゃ、おフランスで修行して、バカ高い価格つけて売っているブリタイ共から、買え。と思っただけ。
でも、もうこんな心的逃走も、春の訪れを以て終了します。他人は、裏切るものよ、信用なんかしちゃダメと、お風呂の師匠は私を諭す。他人に期待して傷つくのは自分だから、他人に期待しない事だよ。社会なんてゲームなのさと、エルちゃんは私を諭す。私は、ずーっと、ずーっと、彼らの言葉を哀しく聞いていた。人間はそんなものなのかと。父はハッキリと、お父さんは性悪説だと、10代のワシに宣言した。だから、ワシは18歳で、性善説を貫くと心に決めた。天邪鬼は、いつの世でも大変です。でも、ワシはやはり、性善説を生きようと思う。他人の、良心に触れようと。触れるためには、自分が良き人でなくてはならない。与えて、与えて、悲しんで、傷付きまくって、泣きまくって、それでも、与え続けられる人になりたい。何故なら、私はやはり、人間を恐れつつも、人間が好きだからだ。芥川の蜘蛛の糸のように、どんな悪人にも良き心があるはず。親鸞の悪人正機説は私はバーカ親鸞と思っているが、何故なら、悪の正当化を許容するから。近代日本をダメにしたのは、極端な悪人正機と他力本願で、親鸞こそが浄土真宗こそが、悪だとワシは思うちょりまんねん。まぁ大衆宗教だから、しゃーないけど、酷いもんだで。
いずれにせよ、ワシはもう、こだわりを捨てるのだ。東大にも日本にも、もはや期待は持てない。つまりだ。究極の個人主義の時代ならば、夏目漱石の超個人主義の時代が到来したのだと理解して、ワシこそが、良き者であり、あろうとし続ける弛まぬ努力をし続けることで、世界の良心になろうと思う。
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ritwuals · 2 years
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𓇬 ਏਓ 𓂂 🪷 𓂂 ਏਓ 𓇬 𓂂𓂂 𓇬 𓂂 ਏਓ 𓂂 𓇬
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shiri1124 · 2 years
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表現の自由 言論の自由 私はお腹の大きな女性を見るたび気持ち悪いと思ってしまう 理由はよくわからん でもなんか気持ち悪い みんな誰かのお腹に新しい人間ができるたび おめでとう というけれど 果たしてめでたいのか?自分の遺伝子を残すことはめでたいのか? 喜ばしいことなのか? 自分の遺伝子を含んだ愛らしい人間が生まれることが嬉しいのか? それとも自分と他人との遺伝子を組み込まれた人間が生まれることで他人と共に生きるための手段となることが嬉しいのか? 後者の場合言葉も出ないほどに気持ち悪い 吐き気を催す 親は子を選べる これは紛れもない事実 嫌な話をするけれど 子を産み育てることができないなら産まなきゃいい 気に食わない子供が産まれてくるとわかったら産まなきゃいい 産んでから無理だと思えば他人に委ねればいい しかし子供は生まれた以上生きて行くしかない 子供にとって死という選択肢はほとんどら無いに等しいのだ でも生きて行く上では誰かを頼らなければならない 子供にとって頼れる人といえば親だろう その親に 愛されなかった時 その親が子供を愛す度量を持っていなかった時 親から無償の愛をもらえなかった子供はどう思う?お前のそのエゴで悲しまずに済んだ命を悲しませるんじゃないよ "やめよう 性行為"
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lyglog · 3 years
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ゼルダ無双クリア
プレイして本当に楽しかったです。ありがとう。ありがとう。しかし中盤からマスターソード全然使ってなかったので大事なエンディングムービーに装備していなかった罠。ごめんマスターソード、退魔の騎士なのに存在すら忘れていたw クリア後はルピー稼ぎしやすくなった模様です。ツルギバナナだいじなので売らずにとっておくことお勧め。サブクエも大量解放されたため、エンディング後まだまだやり込む要素ありそうですね。
以下、ネタバレ含むめちゃめちゃ長い感想文。記事分けるか迷いましたがぜんぶ詰めで書いてしまいます。本家愛ゆえ多少辛口です。
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※※注意※※ この先、本家BotW~無双の大事なネタバレ含みます。ブレワイ本家エンディングの展開についても触れているのでご注意。
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🔽 おおまかな所感 真エンド閲覧済みです。ちなみにブレワイ本家はオール満点。
・シナリオ ★★★☆☆☆ ・バトル  ★★★★★☆ ・システム ★★★☆☆☆ ・ハピエン ★★★★★★ ・ゼルダ姫 ★★★★★★ ・英傑愛  ★★★★★★★★★★★★★★★★★★
🔶 はじめに すごく面白かったです。良かった点はいっぱい。挙げきれない。とにかく英傑ありがとう。一方、悪かったと感じた点は後半のシナリオ設定とカメラワーク、敵出現のシステム面。長所に比べたらぜんぜん少ない短所……なのですが、そのわずかな欠点が本家ファンには割と難点なのかなーというのがクリア後の正直な感想です。
🔶 ゼルダ姫主人公の物語 物語は本家と時系列が異なる完全IF。主人公もリンクではなく、ゼルダと未来から来たガーディアンでした。BotWネタありつつコンセプトやキャラクターは本家とは違う方向へ進んでいきます。シナリオはどんでん返しタイプではなくほんのり先が読める。でも「それをこう持ってるかあ」みたいな驚きを細々と挟んでいました。
🔶 プレイ対象層 BotWプレイヤー前提な部分もありますが本家未プレイヤーも楽しめる面白さでした。世界観や戦場となる場所の説明はTipsで読めるし、必要な知識はムービーやナレーションで解説されるため、無双シリーズから入った人にBotWを知ってもらうちょうど良い作品かもしれません。これやってから本家戻ったらみんな死んでるけど。
🔶 英傑の活躍 英傑が出て来る、という謳い文句通り中盤までは彼らに関するストーリームービーが多く嬉しかったです。英傑好きにはファンディスクとして成り立つかもしれません。しかし後半になるとリンク同様、背景にまぎれたモブ的扱いになっていた気がしなくもない。ゼルダとの絡みシーンに多少出て来るのですけど、最後らへんは戦場で会話する程度しか出番なくなったのがちょっとばかし寂しかったです。
🔶 本家と無双の対比表現 全体的に、ストーリーからバトルまで、本家シナリオ、特にDLC2の内容を基本にしており、ムービー表現も一部オマージュがありました。 細かいところだとエンディングラストの表現。「プツッ」と画面が消えるシーンがありまして。ギリギリ精神保っていたテラコ(未来から来た小さいガーディアン)の意識が途切れた表現だと思うのですが、なんとなくBotW冒頭リンクが目覚めるシーンと似てるんですよね。
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姫の声でフッと光が挿して目覚めるリンクと、姫に看取られてぷつりと意識が消えるテラコ。意図的に対比されてる印象が強い。
🔶 ハイラル王と時の神殿 ハイラル王救出の舞台が「始まりの台地」だったのは感無量でした。本家序盤の舞台である台地でリンクを導いてくれる老人、つまりハイラル王の魂が、100年前の真実を語る場所。それが時の神殿。しかも女神像に話かけた後に声を掛けられるあのシーン、ですね。
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無双ではこれを完璧にオマージュしてました。時の神殿・女神像の前で死んだはずのハイラル王と再会する…という構図に「やられた!」となりました。思わず本家で同じ場所を見比べにいったほど。再会の場所がハイラル王に相応しく、場所や光の加減が相まって「あの老人を救えた」という気持ちになれました…感激ですありがとうありがとう。
🔶 作中時系列の変化 先でも触れましたが、本家と無双、時系列が序盤から変わっています。パラレルワールドであるという意図的な仕込みでしょうか。 たとえば本家だとリーバルとリンクの出会いは退魔の騎士と認められた後の出来事となっています。しかし無双ではマスターソード手に入れる前に姫付き騎士となり、各英傑とも「護衛騎士」としての立場で出会っている模様。なのでリンクと各キャラとの関係性が本家と少し違ってきています。
自力で確認できた部分では一戦目から本家BotWと時系列がズレていたので、「テラコが100年前に来た時点ですべての時間軸が変化した」と解釈して良さそうです。
🔶 キャラクター同士の関係性変化 最も大きな変化を感じたのはゼルダ姫との関係。リンクが退魔の騎士と判明する前にある程度親しくなっているため本家ほど八つ当たりされて避けられていません。コンプレックスゆえにリンクの存在を疎ましく思う、という描写が減り、それよりも「己の力不足に悩み使命感を強くしていく」という方向に変わってる気がしました。外より内側、という感じでしょうか。それもまた姫関連のシナリオ見やすかった一因かもしれない。
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🔽 今作テーマ
🔶 「いまの私にできることは全てしたいんです」 今回の作品テーマは、ウルボザ、インパ、ゼルダとキャラクターを変えて繰り返し主張される「たとえ力がなくても…それでも、今は自分にできることをひとつずつしましょう!」「私たちの努力は全て、決して、無駄になんてなりません!」 という言葉。
🔶 ハピエンになった理由 オープニングからして確実にハッピーエンドに向かっているな~と拝見していたゼルダ無双、結末まで見ると喜びに満ちたエンディングを迎えることが出来た理由はひとえに「過去から現在までのゼルダ姫の努力」「100年後に目覚めたリンクの努力」に集約されていたかなと。 これはBotW本家を象徴する台詞とも言える本家ウツシエ記録、全てを喪った姫が放つ「私が今までしてきたことはなんの役にも立たなかった!」という言葉への意趣返しでもあると思います。
今作のキーとなった、
幼きゼルダが組み立てたガーディアン
それが与えてくれたシーカーストーンやシーカータワーの力
その力を通じて呼び寄せられた100年後からの助っ人
は、どれも100+α年間を通じて二人の努力が繋いだ縁です。テバ、シド、ルージュ、ユン坊の懐かしい面々が助けにきてくれるシーンは胸が熱くなると共に、荒廃した世界観の中でBotW本家を楽しんできたプレイヤーの思い出を否定することなく上手く合わせたなあと感動しました。
🔶 バッドからハッピーへ バッドエンドがハッピーエンドになるって、少なからず抵抗ある人いると思うんですよね。バッドエンドの先にも生きてきた人がいて、彼らは一生懸命生きている。特にBotWはその世界線の先で目覚めたリンクが頑張り、ガノンを打ち倒した――その努力は、どうなるの? なかったことになるの? って。 しかし厄災の黙示録では、ゼルダ姫だけでなく、本家でのリンクの行動がこの作品の結末を救ったことになります。少なくとも、ゼルダ姫だけの努力では未来から来た助っ人との繋がりは存在しなかったし、面識もなかったろうから、あんなに一生懸命戦ってはくれなかったろう。と……そう感じました。 ここから先、ハッピーエンドに分岐した世界観がどうなるかは分かりませんが、努力が報われて良かったねとウルり。
これに関しては本家BotWにも「厄災前にゼルダが最後まで研究をし続けていたからこそ冒頭でシーカータワー起動方法をリンクに伝えてくれた。100年前のゼルダの努力が100年後のリンクの冒険を助け、結果的にガノンを倒すことへ繋がった」という解釈があります。つまり無双における「ゼルダとリンクの冒険が平和をもたらした」という構図も本家をしっかり踏襲した結果だと考えて良いと思います。
なお個人的にはむしろ、本家ではプレイヤーへ伝わりにくかった姫の努力の部分を、無双ではしっかり伝わるよう強調してきたなとさえ感じました。
🔽 作品完成度と疑問点
🔶 総合評価は★3.5~4.2 夢中になってプレイしました。面白かったです。しかし自分は英傑の活躍を目当てにプレイしたこと、本家が醸し出す滋味深い物語がどうしても脳裏に先立つことを鑑みて、シナリオに関しては厳しめの評価になってしまいました。たぶんBotWと名乗ってなければもっと評価は違うのですが、任●堂公認続編と公言してるので、本家と比較されるのは仕方ないことかと…。
🔶 シナリオに対する疑問が多い ことシナリオに関してはウーンと唸る部分がありました。 未来から来たテラコにハッピーエンドルートの全てを一任しすぎている。敵が仲間入りするシーンに関しても詳しい描写がなく都合良かったり、ゼルダ以外の人間がモブになっていたり、背景の一部であるリンクはバトル要員以外に居る意味はあるのだろうか…と疑問が過ったり。細々した部分になんとも言えない気持ちが残りました。 看過できなかった各疑問は下記に綴ります。
※以下ボロクソ語ってますが個人的にはテラコは嫌いじゃないです。いや、ちょっと微妙だけど。傍から見ていた家族も「なぜゼルダにスタ●ウォーズいるのか。他のガーディアンはゼルダぽくて問題ないが、こいつのデザインは作風ぶち壊しでは?」と発言してたけど。(すみませんちょっと賛同しました)
……が、それでもテラコは可愛くて割と好きです。以上を踏まえた上で読んでください。
🔶 疑問①:リンクが圧倒的空気 リンクが物静かだから影が薄い、というより、彼が行うはずだった行動がテラコにとって代わられている、という問題です。たしかにリンクは元から無口。本家ウツシエも存在薄めではありました。けれど本家では姫とリンク、二人の関係を軸に物語が展開されていくため主人公然とした雰囲気は残っていました。
しかし無双は……テラコが出てきたことで、リンクは単に「退魔の剣を持ってるだけの存在」「姫を守るだけの便利な役」になってしまった。本来リンクにもう少し焦点が当てるべき場所で(彼が喋らないので)ちょいちょいテラコが代弁するように画面に入ってくる。が、どちらにしろテラコも喋れないから出番を取っただけ。それならリンクさんをもう少し丁寧に描いてあげたら良かったんじゃないかなあと感じました。 ※ちなみに英傑に焦点当たっているシーンは割とリンクの存在あります。姫がメインの時はないです。
🔶 疑問②:テラコ便利屋すぎる ハッピーエンドには必要なキャラクターですが、厳密に見ると、テラコは物語を破綻させてもいるなあと。さきほど上記に挙げた理由もさることながら、とかく最強主人公すぎる…。
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プルア「テラコのお陰でさくさくっとシーカータワー強化して全軍隊がテレポート出来るようになったよ☆ どこにでも総力戦しにいけるよ~~いやァ~~~ガーディアンってすごいよね~!」
ほんとうにそれで良いのだろうか……BotWが持っていた物語の味が、テラコの便利すぎる力により消えた感じがあります。もちろん、テラコの生まれた経緯は「ゼルダ姫が昔、遺物の設計図を見ながら組み立てた」ということなので、結果的に「ゼルダのたゆまぬ努力が作った奇跡」と万々歳ネタではあります。あるの、ですが……そのガーディアン、なぜ時空超える力もってるのか。という大事な要素は明かされない。こいつたまたま時空を超える力もってました~、と…? 
ちなみに幼い姫が設計図を見ながら作っていたムービーから察するに、テラコは昔から存在する型だと予想されます。なぜならあの歳のゼルダがあの設計図を描いたとは考えにくいです。仮に彼女がいちから作った代物なら、他のガーディアンも増産可能になってるはずですし。
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となると古代シーカー族がそもそも最初から時空を超える技術を持っていた可能性がある。そしてテラコ型にその力を込めたが、貴重なタイプもしくは世界にひとつしかないタイプで発見されてこなかった…? しかし時空を超え力があるなら一万年後に復活する災厄ガノンに関して何か活用して関与できたはずでは?(それがテラコということでしょうか)
テラコは時オカ技術の流用なのでは?との考察があります。神獣も時オカ賢者の名前が多いため、無双もあの時代を念頭においている可能性はあるなと思うのですが(メドーだけは風タク賢者。リト族という名前が初めて出たのがその作品)、ただし時オカではハイラル王家の秘宝だったような。あと、スカウォ姫が時空超えた時の扉ってシーカー族のものでしたっけ。どうやらテラコはあの青く光るネジがキーアイテムらしいので、それだけハイラル王家の技術という可能性はありますね。
とはいえ時空を超えた点はまだ全然いいです。やっぱり一番気になるのは「テラコがいればシーカー技術の謎もぜんぶ解~決~☆」で済ませた部分。
🔶 疑問③:忘れられていたテラコ テラコに関して疑問点がもう一つ。なぜ、誰もテラコのことを思い出さないのだろう、と。 様々なガーディアンと比較しても、テラコは大変特徴的な外見しています。なので「他に類を見ない特殊なガーディアンだ」と言い切るくらいなら、「あれっなんか見たことあるやつじゃない?」と誰かひとりは覚えていないものでしょうか。
回想でも幼いゼルダがあのガーディアンを連れ歩いていた(少なくともそばに置くくらい愛でていた)ような描写がある。ということは、王や近衛は多少なりともテラコを見掛けていそうですよね…?w
🔶 疑問④:敵キャラの扱いが大雑把 コーガ様仲間入りに関しては「寛大なゼルダの心およびハイラルに住まう者はみな同胞と考えている」「少しでも仲間を増やしてハイラルに住まう人々全員でガノンに立ち向かいたい気持ち」と捉えてはいます。が、展開さくっと飛び越えて仲間からの意見は何もない。隠しキャラとしてプレイアブルになる憑依ガノンと違い、一応メインストーリー中に仲間になるのだからもう少し言及して欲しかったです。次の戦場で唐突に仲良く会話しててびっくりしました…! しかもスッパはそこから一切出てこず「まさか、あの時戦ったカースガノンの中にいた?」と震えていたらちゃっかり真エンドロールにいる。尺の問題かもしれませんが、後半ゼルダ姫以外のキャラがほぼ存在皆無なことと合わせて、なんとなく適当さを感じる…。
また憑依ガノンに従っていた敵役アストルに関しても当て馬扱いすぎるのでは~とモニョりました。ギャラリーにさらりと人物紹介が載っているだけ。。。オロチや無双ならいいんですよ。でもこれBotW続編って言うから……;;
🔶 以上より抱いた作品の印象 プレイしながら、終盤へ近づくにつれてストーリーぶっとばしてるなーと言う印象が強くなっていきました。無双オールスターズはそれでいいけれど、本家ストーリー仕立ての続編と銘を打っているのでその視点で評価してしまう。まあ無双だから仕方ない…のか……。
姫を丁寧に描いている分、周辺キャラに関する穴がやや目立つ気がしました。おかげで姫を好きにもなりましたが、BotW本家の良いところって、ムービーは姫中心でも、各イベント使いながら英傑や周辺人物の人となりを丁寧に描いて立体感を作り出してくれたところだと思っています。なので今回は「ある程度描いたからいいでしょ」的な平べったいシナリオに感じました。
🔶 その上での評価 上記の理由&また、これから後ほど語る無双姫の扱いにより、終盤へ進むにつれて演出とシナリオ、ストーリー設定に首をかしげるシーンも増えました。なので自分の中でのクライマックスは神獣解放戦~ハテノ砦救出戦で止まっています。そこから先は崩壊していくためBotW続編とは別物として捉えたい気持ちが大きい。(過激派)
でも最初に述べたように、気に掛かる部分を含めたとしてもゲームとしては面白くプレイできました。最終的には「ハッピーエンドをありがとう」の一言を伝えたいなと思います。 各キャラとのやりとりは面白いし、みんなの素顔をじっくり見れる素敵な作品でした。無双のお陰で知らなかった一面をたくさん垣間見れて、本家やDLCから更にイメージ変化したキャラもいたくらいです。特にリーバル先生とハイラル王は優しい印象が強くなったし、本家ではほんの少し苦手だった姫への好感度上がりました。 エンディングも綺麗にまとまっていたのではないでしょうか。BotWキャラクター達への愛が詰まった素敵な作品だと思います。 よって総合★3.5~4つ。 ※シナリオ重視人間なので満点にはできませんでした。ぼろくそ言ってファンの方ごめんなさい。
🔽 100年後の世界に関して
🔶 分岐した世界線 Tipsで「二つの未来が生まれた」と書かれていました。したがって物語の中で英傑たちが「100年後の世界も頼んだよ」と発言するのは、パラレルワールドとして在る未来世界のことを指してると解釈して良さげ。なのでストーリー中もただ単に「後継者を未来から呼び出した」のではなく「異世界から呼び出した」と表現したほうが正確かもしれません。 結末を予測させないためクリア後まで「パラレルワールドの話である」という点へ触れなかったのかもしれませんが、シナリオ進行中にもう少しちゃんと説明したほうが良かったのでは?
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🔶 本家BotWの未来は つまり……? 英傑が死んだ未来も依然存在しており? あっちの未来の英傑が助かった訳ではない? 未来変えてしまったら本家そのもの否定する形になるので当然ですが。分岐であろうと英傑が笑顔になれる世界線が作られたことに嬉しさを感じつつ、真の救済ではないのかあと少し悲しみ。分岐はあってもこういうパラレルワールドはなんとなく拍子抜け……。まあゼル伝は公式分岐いっぱいあるから有り得るとは思っ以下略
🔶 ハッピーエンド違い 自分の中での最高のハッピーエンドは「あの世界線の英傑が助かること or 蘇るに近い未来」でした。でも無双EDは、あちらではいま尚みんな死んだことになっており、ハイラルに住む人々はその大厄災の悲しみを乗り越えてブレワイ世界を生きている。インパやプルアが経験した苦しみも変わらず残っているし、シドの姉を失った悲しみも消えるわけではない。 同時に存在している本家世界では、それが「変えようのない歴史的事実」だから。 ならば……死んだはずの人に分岐未来で出会ってしまった助っ人たちは、どうなんでしょう。自分の世界に戻ったら「やっぱり英傑様や家族は死んでました」は逆に辛くないのだろうか…。そんな切なさが残るところはやはりBotWですね。
🔶 幸せなら良い 己の中では、真実、これをハピエンとして受け入れていいのか疑わしい気持ちが依然として残っています。でもテバやルージュ好きとしては大変嬉しいイベントでした。未来の後継者と過去の英傑達の絡みなんて二次創作でしか見られないと思っていた……。ありがとうコー●ー。ありがとう任●堂。世界救われたしこれでリンミファの夢は叶うかもしれない……アアア。
こんなに愛があるのだからご都合主義でもいい、みんなが幸せならそれでいいんだ……という気持ちにさせてくれる、パワーに溢れた作品でした。
🔽 無双物語のゼルダ姫
🔶 姫好感度爆上がり 一貫して主人公はゼルダ姫でした。特に終盤になるとほぼゼルダとテラコの物語。ゼルダ視点で物語が進むって珍しいような…? あと内容にあんまり関係ないけど覚醒ゼルダの描写に使われる、ブレワイ特有の光の描写(イラスト的な線状の輝き)が好きです。そして「ガノン戦の弓ーーッ!」という感動。
🔶 リンクへの態度が変化した理由 冒頭で「姫とリンクとの関係性が変化している」と述べましたが、おかげで姫がリンク(とプレイヤー)に対してマイルドな態度になり、ストレス少なく物語に集中出来ました。以下、二人の関係がなぜあれ以上悪化しなかったのかと根本的な理由を考察してみる。
🔶 そもそも何故こじれていたか 元々、本家でゼルダ姫とリンクの仲がこじれていた原因は、姫が力に目覚めない+リンクがさっさと退魔の騎士として覚醒してしまった→覚醒できない姫がリンクに劣等感を持ってしまった……という流れがありました。 その上で本家BotWの各ウツシエを辿っていくと「(最初は退魔の騎士であるリンクの存在がコンプレックスで疎ましく思っていたが)イーガ団に襲われたところをリンクに守られ少しずつ彼に信頼を寄せていく切っ掛けとなった」とあります。イーガ団さまさまです。
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一方、無双の時間軸ではリンクが退魔の騎士となるイベント以前にイーガ団急襲事件がありまして。ゼルダ姫はそこで彼に守られ、「父親が選んだ護衛騎士」という立場としか見ていなかったリンクへ「姫付き騎士」として信頼を寄せていくことに。 コンプレックス抱いてしまう前に彼と親しい関係性を築くことになった姫は、この後、たとえ自分より先に覚醒してしまうリンクへ劣等感を抱いたとしても、それほどアレな態度を見せなくなりました。(本当によかったです)
🔶 苦悩する姫のストーリー それも含め体験版的に今作は笑顔が多いのかな~と思いきや……物語の雰囲気は本家通りでした。姫が力に目覚めず焦燥してしまう中盤あたりが特にもにょもにょするかもしれません。英傑は集い、退魔の剣士も見つかり、さあみんなでがんばりましょう~!という雰囲気の中で彼女だけが俯いてしまう。
加えてBotW知ってる人間は、ゼルダ姫がそのまま力に目覚めず、国が崩壊してからやっと覚醒してガノンを封じ込めている…との経緯を知っているがゆえに「さすがに今作は最後まで覚醒しない訳ないよね?」とどきどきする部分だと思います。ハテノ砦まで伸ばすのだろうなあと予期はしつつ、自分は
一周目は覚醒しない→本家通りハイラル壊滅→ガーディアンの力でまた過去に戻る→同じ戦場をプレイして救いに行くパターン……もあり得る…?
とも考えたり。個人的にこの展開でも面白かったかもしれない。未来を行き来できる設定あるのだからいきなり救わなくても良かったし、そっちのほうが「ああやはりBotWの続編なんだ」と実感できた気がします。 それに英傑たちの死も一度は直接見たい。そこで一旦絶望してから救いたい(血涙)
🔶 覚醒した姫の印象 姫が覚醒してからは物語が一気に加速し、シナリオ雰囲気ががらりと変わりました。本来プレイヤー達が「ゼルダ姫」へ抱いていた崇高な姫というイメージが蘇って、BotWで100年間ガノンを封じ続けている「彼女」へいっそう近くなった気もします。
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これまでずっとゼルダを勇気付けてくれた人々が不安そうにしている絶望的な状況の最中、トライフォースを持つ姫巫女として文字通り周囲を照らす光となっていく…という構造は上手いです。中盤までは親しみを込めて「ゼルダ」と呼び捨てしたい気安さがありますが、終盤は「ゼルダ姫様」と呼ばなければならない凜とした姿でした。(どうやら今作は姫が三つのトライフォース全て持っているようですね)
🔶 無双版姫の違和感 しかしロードオ●ザリングや映画版バイ●ハザード最終章の最終決戦に近い演出をしているせいか神聖さより強さが目立っていた印象。そこはまあ無双だから仕方ないですが…なんか「俺に任せとけ!」的な台詞言うタイプには見えないので違和感覚えたり。
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テラコも相まって、終盤は「これなんの作品だっけ…」と過ぎる瞬間が多くなったのは内緒。特に自分なんて退魔の剣持参してなかったので…本当にリンクの存在薄い…。
🔶 ゼルダ姫のコンセプト分岐 無双の覚醒ゼルダかっこいいなーと思う反面、今作の「ゼルダ姫」はコンセプトが変化してるかもしれないですね。
本家ではラストで「もうその剣の声も聞こえなくなりました。力が枯れ果てたのかもしれません。でも私、もういいんです」と清々しく笑うシーンあって。「ずっと力に目覚めず劣等感に悩んでいたゼルダ姫が、コンプレックスの象徴であるリンクと共に戦ったことを経て、完全に吹っ切れ、力を持たざる存在でもよいのだ、それが自分だ、と受け入れることが出来た(ウルボザの言葉どおり胸を張ることが出来た)」というあの姿があるからこそ、苦悩した過去も意味を持ったのだろうし、ブレワイ独自の劣等感や無才の姫という深みのある物語になったんだろうなーと自分は考えていました。
しかし、そこで「覚醒した姫は強いゾ!すべて任せろ!」になると、BotW当初から描かれてきたゼルダ姫のコンセプトがやや異なる方面へ変化していくのでは、とも思わなくもない。だって姫の魅力は力ではないんです…力のトライフォースを持っているから確かにその要素もあるかもしれませんが、本家で描かれてきた彼女はそうではないんです…!(過激派再び)
ただし。その分、今作は「ゼルダ姫が頑張ってきたことはすべて意味を成した」という異なるメッセージが語られています。だから……分岐未来ごとに姫のコンセプトが形成された、ということで良いのかな…。
🔽 神獣、英傑、後継者
🔶 個人的ナンバーワンポイント英傑 神獣は内部の再現度すごい。また100年後の後継者は英傑自身の子孫が多いせいか、やり取りがとても可愛い。ずっと見ていたかったです。英傑+後継者の日常、などストーリー補足DLC来ないかなあ。
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🔶 英傑アレンジBGM最高  厄災版BGM、やばいです。やばやばのやばです。別の記事でも語っていましたが、戦場を駆け抜ける英傑たちの格好良さを表現したアレンジ、いつまでも聞いていられる。あの切ない原曲がこんなに格好良くなるんだ、と驚きました。しかもリーバル先生は性格上ライバルとして出て来るクエストが多いため、一人だけ敵版BGMがある優遇っぷり。味方版も敵版どっちもカッコよくてたまりません。 美しかった旋律は気高さに、悲しみが漂っていた音色は偉大さに。各英傑に焦点当たるクエやメインシナリオをプレイすると戦場入った途端にアレンジ流れるのですが、もう、ほんと好き。すごく好き。アアアアって気分が高まる。けど、ちゃんと原曲も流れるんです。使い分けている。音楽だけで一万円払う価値あるなと思いました…。
ちなみにですがウルボザは原曲が非常に美しいので、彼女だけ原曲のほうが好きです。
🔶 ウルボザとルージュ 母を亡くしたルージュにとってこの時代におけるウルボザは、先祖というより母代わりに近い存在だったのかもしれないな~と思いました。不安を零すルージュに「あんたは一人じゃないよ」と声掛けたり、「さあ戦いにいこうじゃないか」とわざわざ手を繋いで神獣へ飛び込むシーン良かった。ルージュの母上が生きていたら、こういう会話しながら一緒に戦っていたんだろうなあと想像しました。 ウルボザが関わる物語はどれも暖かくて大好きです。(関係ないけどタワーから各戦闘地域へ空飛ん���移動する時、「やっぱり高いねえ!」と少しハラハラしてるウルボザ可愛い)
🔶 ダルケルとユン坊 ユン坊は本家で先祖であるダルケルと邂逅していますが、豪快、かつ臆病とはほど遠い(と思っている)本人の背を生で見ることは大きな成長に繋がったんじゃないかなと。助けに来たユン坊を逆に守ろうとする背中の格好良くて……「ダルケル様!」「俺に様つけるんじゃねえ!」ってシーンもすごい好きです。自分も昔は臆病だったからこそユン坊にはもっと逞しくなってほしいのかな。だからこそ「様」つけたくなるんですよ! と一人思いながら。ちなみにユン坊はしっかり「ゴロ」になっていました。 急に突拍子もないことするダルケル兄貴はユン坊と並び一番の可愛い枠だと思ってます。
🔶 ミファーとシド  シドに至っては、共に暮らし、失ってしまった最愛の姉に再会できたのですから感無量ですよね…。魔物に囲まれた仲間を助けるため二人で神獣へ乗り込みながら「こんなに成長したシドと戦えるなんてね」とミファーが喜びを口にして、シドが「俺も……いや……ッ」と言葉が出ない様子で口ごもるシーン。そうだよね、喜びだけじゃ言い表せないものあるよね、と胸が詰まりました。 他の子孫や助っ人にとって英傑は「過去の人」。でもシドにとっては生身の暖かさを知る「肉親」。会えて嬉しい、だけには留まらない、これまで経験した大きな悲しみや苦しみも一気に押し寄せたのかなーと想像してました。姉弟の関係性好っき…。(ミファーは姉としての顔が一番好きです)
🔶 リーバルとテバ  テバとリーバル先生は血縁関係ないけどリーバルが唯一肩を並べて戦える同族戦士、というやり取りが可愛くて笑いました。 「英傑様にもこんな一面が」 「英傑様の素顔も拝めましたしね」 テバ本人は憧れの英傑に近づけたことが嬉しくて発言してる模様ですが、リーバルの難ある性格、遠回しに揶揄されてるwww 当のリーバル先生は「フンッ」とだけ返すも、PT構成画面やキャラ切り替え画面では親しげに話してるし、一緒にクリアした神獣戦では「僕達二人なら余裕だよね、テバ」と褒めちゃうあたり後輩のことめちゃくちゃ気に入ってる説。同じ時代に生きていたら世話焼きそう。しかもテバが訓練場愛用してることにもフフンッと喜んでて、この人可愛いがすぎた。好き。
🔶 時空を超えた出会いの意義 こう考えると、英傑や後継者達は、時を超えたことで自分たちの欠けたものに会えたのかもしれないですね。ルージュは若くして天に召された母親、シドは喪ってしまった姉、ユン坊は奮い立たせてくれる憧れの背中、リーバルは肩を並べることが出来る同種族の仲間。 やはり英傑は良いものだ。
🔶 英傑同士の関係性 戦場における英傑同士の会話から、彼らの関係性がよく分かり嬉しかったです。以下なんとなく各バトル台詞から察せられるもの。
【リーバルから見た英傑】 ウルボザ→文句なしの腕前と尊敬、自分より上と思ってそう ダルケル→同等の力を持つ存在、素直に感謝を口にする相手 ミファー→癒しはあれど戦闘の腕は自分より下と認識?
【ダルケルから見た英傑】 ウルボザ→年長組の対等な立場、力量は同程度だと認識 リーバル→男同士の友情的なアレ、一緒にバカできる仲間 ミファー→娘的な立ち位置? 世話を焼いてしまう相手
随時追加
🔶 個人的な妄想 ところでガーディアンであるテラコに人格があるなら神獣にも人格はないのでしょうか。賢者とか……賢者ぽいのとか……。神獣と英傑のやりとりが見たい。
🔽 バトルやシステムの感想 ノーマルとハードの感想です。
・総合評価 ★★★★☆☆ ・素材集��� ★★★★☆☆ ・カメラ  ★★☆☆☆☆ ・サブクエ ★★★★★★ ★★★★★★ ・���獣操作 ★★★☆☆☆
🔶 総合評価★4.5くらい 大勢をぶった斬り、あとはウィークポイントを粛々と削っていく仕様。英傑とリンクが汎用性高い(リーバル先生除く)かもしれない。反対に後継者キャラは動きまわる子が多く、カメラワークと合わせて操作難易度高い気がする。あまり見たことないシステムが多いなあと思いました。今の無双って色々と進化してるんですね…!
🔶 良かった点①:固有アクション キャラごとの固有アクションシステムは特徴的で面白かったです。特に序盤から重宝しているのはリーバル先生。次にテバの空中攻撃でした。もはや蹂躙の域。 他に、最初戸惑ったけど強いなーと感じるのはシド王子。R2によるリズムゲー。ゲルド砂漠など煙が多いと見えませんがタイミング掴めば感覚でR2押せるから便利。ただ溜めモーションが長くて自分の場合は被弾率も高かったです。 ウルボザのアクションも好きです。雷が爽快。音も画面もかっこよくて、特にY2X連打コンボがお気に入りです。
🔶 良かった点②:サブクエ そのプレイアブルキャラクターを強化していくにはマップに点在するサブクエをこなしていく必要があります。各々4行程度の小話があり、キャラクターや世界観に沿った内容なのが凝ってるなあと感じました。当時はこんな出来事があったのか、こんな生活をしていたんだな、と想像できて嬉しかったです。BotWやり込んでからプレイすると戦場歩きながら「当時はここに拠点作ってたんだな」など楽しくなります。
🔶 良かった点③:シーカーストーン 今作目玉であるシーカーストーンシステム。本家ではリンクしか使用できなかったあの力を、テラコの恩恵により全員リモコンバクダンやビタロックを使えるようになったのは面白かったです。ナビ表示されるのでどのタイミングで何のシーカーストーンー使えば良いか、というマーク出るから戦い易くなる。 終盤に登場する怨念のガーディアンのようにナビ無し敵が出現しても、それまでの戦いで「この動きにはこれだな」と学習しているため動き見て活用できました。 ただ通常戦闘やメインは、要求レベル高くなるにつれて複数戦増えていきます。一人に注視すると別の方向にシーカーストーン使わなければならなかったり、  そのへんは見極めが必要。
🔶 苦労した点①:カメラワーク たぶんこれがシステム面の短所ナンバーワン。カメラワークが「そっちじゃないw」となるシーンが多く、敵見ていたのにいきなり壁の中へカメラが回って画面が見えない、というパターンがありました。紙一重や獣神系の高難易度はカメラワークの問題で難しくなっているかもしれない。あと探索要素として室内にも宝箱やコログがいるのでコンプリート目指すなら入らなければいけないのですが、カメラワークが本当に悪いので部屋の中がよく見えないし室内細かいのに上部オブジェが視界の邪魔をする……。 その割に移動速度は自動ダッシュになるため、視界が悪く歩き回りながら駆け足でぐるぐるするという。戦闘もつらかったけど室内探索が特につらかった。。
🔶 苦労した点②:進行不可バグ バグが少しありました。マスターソードゲットする戦場みたいに、エリア封鎖されて戦うシーンが何回かあるのですが、敵が本来進めない場所に入り込んでしまい、攻撃届かない&向こうも攻撃してこない、と…。(その戦場は最初からやり直しました) 何回もプレイできるの嬉しいので自分はこのバグは気にならなかったですがw
🔶 苦労した点③:敵出現の仕様が悪い 300体や500体と一定数指定されて敵殲滅するタイムアタックがあるのですが、敵出現の仕方がタイムアタックにぜんぜん向いてないなあと思いました。少しでもマップに敵を残しちゃったら、その一匹を探しまわって倒さないと次の雑魚団が出てこないんですよね。 マップ見れば赤い点があるため居場所分かるっちゃ分かるんですがたった数匹のために来た道戻って――は時間がもったいない。なのにハイラルチャレンジと呼ばれるサブクエはほぼ制限時間仕様なので敵出現システムとクエストが合っていない気がしました。
🔶 苦労した点④:神獣戦 カメラワークと近い部分があるのですが敵がどこにいるか見えなくて肩が凝ってしまいます。  危険マークorすぐ近くまで飛んで来た敵しか見えず。岩が来るのか、弓が来るのか、ウィズローブの攻撃なのか。まあ体験版では触れない部分だしイメージと違ったのは仕方ない。ただ、ちまちましてるから人によっては「無双なのに爽快感がない」とストレス溜まりそうだなと。 自分は目視では戦況追えなかったため途中からマップ見ながら倒すコツ覚えました。でもマップには載らない、移動を邪魔する障害物なんかもフィールドにはあって…マックスサイズゆえに動き制限される神獣戦は難しい…!
神獣戦含めて今後のアプデ楽しみにしています…!
7 notes · View notes
lolowv0 · 3 years
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スーパーダンガンロンパ2 感想
それはネタバレと言います
先日クリアしました。おまけモード等は未プレイ 本編のみの感想と考察
難易度はいつも通りイジワルでプレイ タイトル画面からキャラクターのみならずUIデザインもドット絵でなんだかゲーム調でとても良い
横スクロール日向クン関節キモくてわろた
通信簿イベントは基本気になったキャラのみでやり直し等は無しだが、狛枝だけは2章以降どうしても気になりすぎて一度だけ時を戻して1章で1つ回収した(2章以降は日向から見た狛枝の人格が変わるため、システムの都合上イベント1は1章で見ないとテキストに矛盾が生じる…)
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最終的に通信簿の進捗はこんな感じ
先ず一つ言えることがあるとすれば、俺は澪田が好きだった
CHAPTER1 絶望トロピカル
十神白夜は十神白夜だと思っていたためプレイ前は生き残るだろうと予想してたが、話しかける暇もないまま死亡 かなりショックだった
しかしそれ以上に衝撃だったのはこの殺人を扇動したのが狛枝凪斗だったことだろう 狛枝の考えは序盤では到底理解に及ばんが、最後までやるとある程度は理解できるし納得もできる 己の価値観で物事を考えるのは危険だと十神(本物)も言っていた
‣殺人の計画
超高校級のみんなのために奮闘していた十神が、家族のために外へ出ようとした花村に殺されたというのは皮肉なものだ
しかし花村は十神を狙ったわけではなく、よからぬことを企んでいた狛枝を止めよう(殺そう)として、それを防ぐために十神が身を挺した結果、今回の事件の犠牲者となった
これは狛枝の”幸運”の才能が働いたのだ 前段階として狛枝の殺人の計画が十神によって妨害され”失敗”に終わるという不運がある その後、花村がその計画を利用して殺人を起こすことで狛枝の望み通り”コロシアイが始まる”のである
‣花村と狛枝の会話
狛枝の殺人計画に気づいた際の花村との会話では、狛枝の”希望”に対する絶対的な信頼と、”絶対的な希望”を証明するためならコロシアイでもなんでも出来る、という常軌を逸した考えが語られる それに対し花村は「訳が分からない、どうかしてる」と言い、狛枝の価値観を否定する
‣十神のリーダーシップ
コロシアイ修学旅行において危険視すべきなのは「疑いあうこと」だ それを防ぐためには皆で協力し合う事が大切だが、その解決策として十神は”秩序を持った統率”を取るため自らリーダーを名乗り出た
モノクマの狙いが疑心暗鬼を引き起こすことであれば、そうさせないことは正しく生き残るための道である 十神には人の上に立つ素質もあったし、実際に反発した人間は九頭竜くらいだったので、もし殺人が起きなければ皆をまとめることも可能だったろう
また、十神は仲間を妄信するのではなくむしろ疑ってかかっている 同じく上に立つ立場の人間としてソニアが居るが、ソニアは皆をひたすらに信じるスタンスだ この場合リーダーに最も相応しいのは十神ということになる(「疑いもするけど、それでも信じたいという気持ちが本当に信じるという事」という七海のスタンスとも一致している)
CHAPTER2 海と罰。罪とココナッツ
ヒヨコと小泉の風呂イベントがあったり、水着CGがあったりと、裏で狛枝が拘束されていることなど忘れるくらい和気藹々としててよかった 七海、どうしてそんなところにほくろがあるんだ?
2章は狛枝の語りから入る ここの笑顔で口めっちゃパクパクするの面白い
「価値ある人間とそうでない人間って、生まれた瞬間から明確にわかれているんだ。」
「才能ある人間は“なる”もんじゃない…最初からそれだけの器を持って生まれてくるものなんだ。」
ここでは狛枝が生きてきた中で構築されてきた、”絶対的な希望”の価値と己の無価値さを説いている
「これは憧れなんかとは違うからね。憧れって…自分がそうなりたいと願い気持ちでしょ?ボクのはそんな図々しい気持ちとは違うんだ。ボクのはなんて言うか…もっと純粋で、無償の愛みたいなものなんだよ…」
「ボクは…どちらにも頑張って欲しいだけなんだ。ボクは…その先にある“絶対的な希望”をこの目で見たいだけなんだ。」
狛枝は『才能を持って生まれた人間』に憧れているのではない 希望同士がぶつかり合って残ったより強い希望、すなわち”絶対的な希望”に究極の価値を見出している(=無償の愛)
‣狛枝の監禁
旧館で拘束されて行動制限を設けられていたが、これが逆に小泉を”動機”に向かわせる原因になる 狛枝の様子を見に行った小泉は、そこで『トワイライトシンドローム殺人事件』についての話をし、ゲームをプレイしに行ってしまう
このころから七海は「��ロシアイなんて絶対にさせない」という強い意志表明をしはじめる そして日向に『トワイライトシンドローム殺人事件』をクリアするように誘い、学級裁判でも相棒として積極的に手伝ってくれるようになる
1章序盤で相棒役となってくれていた狛枝が拘束されたところで、新たに日向の支えになってくれた 可愛い
‣事件について
九頭竜とペコ山の通信簿イベ等はノータッチだったので犯人までは分かっても動機は推測できなかったが、記憶が消された期間より前から関係があったことは盲点だった これに関しては本編中、ダイナーに居る九頭竜に話しかけると「新しい島について教えてきたヤツがいた」との話を聞くことができる これがペコ山である
ペコ山は自分を”道具”だと言い張っていたが、九頭竜はそうは思っていなかったし、周りも認めなかったため自分に投票させたペコ山の思惑は失敗に終わる ペコ山と九頭竜は互いを想いあってはいたが、互いの価値観を共有することが出来ていなかったのだ
九頭竜はトワイライトシンドローム殺人事件の真相を探るため話を持ち掛けただけだったが、小泉の反論を受けて衝動的に手にかけようとしてしまった ペコ山の動機は九頭竜を守るため(生かすため)
「他人の罪を裁くなんて…そんな権利なんて誰にもないんだよ!復讐なんて…間違ってるよ!!」
小泉の「他人を裁く権利などない」という考えは正論かもしれないが、しかし極道の世界で生きてきた九頭竜にはオトシマエをつけさせなければならないという使命感があった これは単なる復讐ではなく、九頭竜にしか分からない仁義である 二人の価値観が決定的に違っており、それを受け入れられるだけの器がまだ育っていなかったために起きた事件だった
‣ソニアに関して
海水浴を企画しみんなを集めたことで”小泉が自分の罪について相談する機会”を失くしてしまったことは、事件の引き金になっている
また、図書館で『キラキラちゃん』について話したりシリアルキラーに関心を持っている事がわかるが、これは今回の裁判において重要なヒントであり、ミスリードでもある
しかしここで注目したいのはソニアがシリアルキラーなどの異文化に関心を持つ理由だ
「自分と違う価値観と触れ合うのは、とても大切な事なのですよ。」
‣この世界の謎について
ジャバウォック島が人工島である事を匂わせる描写があったり、無数の監視カメラなどであたかも前作のダンガンロンパ同様、「世界に放映されている」と思わせるミスリードがある
実際は1章冒頭の扉の場面やチャプター演出等でこの世界が現実ではなく、前作同様に閉鎖空間であることを予想できる
未来機関については、モノクマの言う事を信じる気はなかったので完全に敵だとは思っていなかったし、この時点で”裏切り者”とモノミへのヘイトが尋常じゃなかったのでおそらく未来機関は味方で、あってモノクマ・未来機関・日向たちの3すくみだろうと考えていた
モノミについても敵ではないが権限持ちを意味するステッキを盗られている以上役に立たない置物程度に思っておいた(ちゃんとモノケモノを倒してくれていました)
CHAPTER3 磯の香りのデッドエンド
追悼ライブや花火の打ち上げなどこれまで以上に澪田が積極的に行動を起こしてきたため、このあたりで退場かと怯えながらも覚悟を決めてプレイしていた
九頭竜とヒヨコはどちらも大切な仲間を失っているが、九頭竜はこの章で自分なりの”ケジメ”をつけ、回復後は協力的になり、日向たちと行動を共にすることを拒まない
一方で、ヒヨコはまだ九頭竜の罪を許せておらず、前へ進もうとしている途中の段階だった そして絶望病の発覚後はモーテルの自室に閉じこもり、モノクマの罠である絶望病に怯えてしまう おそらくこの差が生存できるか否かの分かれ目だろう
‣左右田の才能発揮
病院とモーテル間の連絡を取り合うため通信機を発明しているが、ここでの発明は「みんなのため・コロシアイを防ぐため」のものであり、左右田の才能がコロシアイの道具ではなく「皆と生きるため」に使われている(罪木の見立て殺人の道具としても使われたが、これを日向が観測していたことにより結果的に日向にしか辿り着けない”真実”に繋がっている)
‣絶望病について
モノクマが自由に罹患・治療することができる謎の病気 この非現実的な病気はこの世界が現実ではないことを分かりやすく示唆している
‣狛枝のウソつき病に関して
病名の通り狛枝は嘘をついている 狛枝の様態が悪化した翌日、起き上がれるようになった狛枝の病室を訪ねると
「日向クンと一緒なんてボクには耐えられないよ。」 「さっさと行っちゃって、もう顔も見たくないからさ。」
というような台詞を言う
これは嘘であるから、本音としては「一緒にいたい」ということになる
しかし普段の狛枝は「自分なんかが超高校級の皆と並び立つなんておこがましい」と自分を卑下するような発言が目立つ 更に己の才能が分からないにも関わらずみんなと仲良くする日向に対して”羨ましい”と言っている これらもすべて本当であり、「一緒に居たい」と言う本心を隠しつつ「自分なんかが一緒に居ていい訳ない」という本音を喋っているのである
狛枝は皆を”希望の象徴”とする一方で自分は”希望の踏み台”としてしか見ておらず、それらはすべて自信の無さから出る発言であり、彼の”希望の象徴”としての基準を己は満たしていない(生まれ持ったものなのだから、努力したって価値のある人間にはなれない)という考えのもとで構成された自己肯定感の低さの表れである
‣事件について
犯人の決定的な証拠は無かったが、現場の状況からして罪木以外はあり得ないという状況 しかし動機も分からない以上罪木にボロを出して貰うしかない… 七海の協力もあり罪木から論破できる言葉を引き出すことに成功
狛枝が捜査段階から罪木に疑いの目を向けていたのは、看病された際に絶望病に罹っている事に気づいたからだろう 事実、狛枝の様態が回復する頃にちょうど罪木は高熱を出していた(抱き着かれながら目覚めた日向はそれに気が付いた)
そして”あいするひと”のために殺人を計画したという罪木の告白
「あなたに会えるという希望を持って死ぬ私を、どうか許してください。」
ここで言う”あいするひと”とは江ノ島盾子であり、彼女は皆の記憶が消された期間より以前に既に死んでいるという事実が証明される
狛枝に指摘された通り、現在の罪木は過去を思い出したことによって”絶望”に堕ちており、「あなたに会える希望を持って死ぬ事を許してほしい」という台詞は”絶望”に相応しくない”希望”を抱くことに対する懺悔である
更に罪木の病気は”思い出す病気”であること、「私がこんな人間になったのはみんなのせい」であることから、罪木は誰かの影響を受けて”こんな人間(絶望側の人間)”になったことがわかる
裁判後、罪木は”島で過ごした仲間たち”とのことを「ただの過去」と言い切る これは島に来てからの罪木は”学園生活の記憶”を失った過去の罪木、つまり”絶望に堕ちる前の罪木”であり、絶望に染まってしまった現在の罪木にとっては価値のない過去でしかない
豹変した罪木は正直好き
‣ソニア
ちなみに今回もソニアの言動が事件の引き金になっている(帯が結べないヒヨコに対して「ライブハウスの鏡を使ったらどうか」という助言をしている) これは善意からのミスリードである
猫丸が再登場するときロボ化フラグか?とか思ったらガチロボットでまじでわらった
CHAPTER4 超高校級のロボは時計仕掛けの夢を見るか?
ロボットに命があるのならAIにも命はあるのだろうか
猫丸がロボ化して復活した後のこのタイトル、早くも死亡フラグか…と思いつつ 冒頭から思ってたけど1やV3と違って開けた場所で色彩も鮮やかで全体的に明るい雰囲気だ 南国だの遊園地だの
ジェットコースターでなんやかんやした後ドッキリハウスとかいう完全な閉鎖空間に誘拐される この章をプレイした時二徹明けの夜とかだったから思考も推理もグシャグシャで正直あんまり覚えてないが結構難易度の高いトリックだった気がする
タワーを通じて繋がる二つの空間が単純に横並びでないことはすぐにわかったが、振動のないエレベーターがあくまでその挙動を隠すためのものであることに気づかず実際動いてないんじゃないか?みたいなことを考えて 動いてるのは建物の方(非現実的だがこの世界なら起こるだろ)、のような推理をしてた気がする
どうしてそこに八角形があるのかな?
この章でソニアと田中が何やら仲良くなる ここについては詳細を知らないが、二人は互いに励ましあい協力しようとしていたらしい
‣ファイナルデッドルーム
狛枝操作 急に脱出ゲームが始まって動いてない脳みそが更に固まるが、優しい狛枝とウサミのヒント(答え)でなんとかクリア ちゃんと起きた状態でやりたかった
狛枝は”6発中5発が弾丸入りのロシアンルーレット”をするが、見事に成功させてクリア特典を受けとる ここでの狛枝は意識的に”超高校級の幸運”の才能を利用しており、自分の才能に絶対的な信頼を置いていることがわかる
‣クリア特典
未来機関のファイルと希望ヶ峰学園のプロフィール
狛枝は自分たちの過去と日向の才能について知ることになる 予備学科差別には大変笑ったが日向からしたら途方もない絶望だろう 読む前は「才能が分かれば日向クンも喜ぶだろうな」ってウキウキだったのが面白い
日向が何の才能も持たないただの”予備学科”であることを知った狛枝は、日向に対し「キミもボクもただの”踏み台”でしかないんだ」と、それまで以上に日向のことを同類視している
元々”希望ヶ峰学園に憧れる存在”として意識していたようだが、才能が無いことを知った彼の中では完全に自分と同じ価値の無い人間に成り下がってしまったのだ
‣事件の真相
田中は閉鎖空間にいる間も生きることを諦めず、生きるために戦う事を選んだ それは猫丸も同様で、彼は田中の殺気を感じ取った瞬間に自分も戦う事を決意していた
ソニアや終里は田中たちの考えに納得できないと言うが、その信念は決して間違っておらず、自己の正当化でもない 自分の価値観を押し付ける気は毛頭ないし理解されようとも思わず、ただ己の信念を貫いたことで世界を変えた彼の功績は大きい
「俺様の価値観を押し付けるつもりなど毛頭ないからな…だが、あえて言わせて貰うとすればッ!ただ死ぬのを待つだけの生など…そこに一体どんな意味がある?」 「生を諦めるなど…そんなものは“生に対する侮辱”でしかない!」
生を諦めることを生への冒涜、生物としての歪みだという彼の信念が今回の事件の”動機”になり、それによって日向たちの「仲間同士で殺しあうくらいなら死んだ方がマシ」という諦観の価値観を変えた
田中がファイナルデッドルームに行くに至った動機は、”停滞”した現状を打破するため つまりは全員で緩やかに死んでいくことを防ぐためであり、みんなを前に進ませることが目的である そのために「弐大との戦いに比べれば児戯に等しい」ロシアンルーレットも越えてみせたのだ(自分一人の生死よりもみんなを含めた生死の方が重要ということ)
彼の命に対する価値観が”超高校級の飼育委員”によって培われたものだとすると、彼もコロシアイにおいて己の才能を発揮していたと言える
狛枝にはこれを”希望のための殺人”と思えなかったが、実際にはみんなに希望を与える結果となっている
‣ソニア
4章では男女で別れてそれぞれの階の客室を使うことになるが、ストロベリーハウスの部屋数に対してあぶれてしまいラウンジで寝泊まりするはずだった日向を、女子が使うマスカットハウスの余った部屋に泊まるよう誘導する
ここでもし日向がラウンジで寝泊まりしていたら、その後起きる事件は実行不可能だったのである(犯人は気づかれずラウンジを通る必要があるため)
今回もソニアは事件が起こる一端ともいえる、善意からのミスリードをしている
また、この章の最後で狛枝がモノクマを呼び出すシーンがある
そこで「この島の絶望を排除することが出来れば、ボクは本物の希望になれるはずだ」と、自分の持つ”超高校級の希望”になりたいという欲望を吐露している
CHAPTER5 君は絶望という名の希望に微笑む
この時点で七海と狛枝の通信簿は回収済み
‣詐欺師
捜査パートで十神が偽物だったことが判明する 意味が分からなかったが、意味などないらしい 十神の正体を引っ張ったのは『コロシアイ学園生活の生き残り』や『裏切り者』のミスリードでしかなかったのだ
七海は自分たちを騙していた十神に対し仕方ないと言う
「才能を持つっていう事は、その才能に縛られるって事でもあるんだよ。」
本人の望む望まないは別として、才能に頼らざるを得なくなる状況もある 狛枝はその生き様からして上記の事を体現しているだろう
そしてこれは才能を持たない人の方が良いのかもしれないという考えであり、狛枝とは真逆の価値観である
‣自殺に見せかけたトリック
自分の命を懸けて”絶対的な希望は絶望に打ち勝つ”ことを証明したかった狛枝は、今回の”犯人不明のトリック”に及んだ
自殺(狛枝が仕組んだ殺人)であることは裁判中早い段階で判明したが、その動機について「狛枝は俺達を皆殺しにする為に自殺したのか?」と日向が疑問を抱く
そして消化弾の細工に気づき、この事件の犯人が”特定不可能”であることに辿りつくが、ここで重要なのがモノクマには犯人が分かっている点である(プログラム世界である以上、監視カメラなどの小細工を必要とせず、監視者として全てを把握できる)
‣ソニア
倉庫で火災が発生した時、ソニアが「消化弾を使いましょう」と言わなければ狛枝の罠に嵌ることは無かった 善意からのミスリード
また、軍事施設で怪しい動きをしていたり、狛枝が用意した大量の爆薬がただの花火であることを教えにギリギリになって倉庫へやってくる等”裏切り者”のミスリード
”絶望を排除しようとする”狛枝と、”希望を守ろうとする”七海
‣七海千秋
七海の推理の根幹は「信じる」ことだ
「疑いもするけど…それでも信じたい。その先にあるのが『信じる』って気持ちなんだよ。」
狛枝は自分の幸運を信じて「裏切り者に自分を殺させる」計画を決行した その幸運を信じるのであればこの事件の犯人は”裏切り者”である七海だ そう推理した七海は、日向なら真実に辿りついてくれると信じて”裏切り者”の推理を託したのだ
日向が七海を”裏切り者”として指摘することは狛枝の運を信じることではなく、七海を疑うことでもなく、七海を信じることである この選択は非常に心苦しいが、七海の選択を裏切らないためでもある
未来機関を裏切れないからと、これまで直接的な干渉は控えていた七海だが、この章をもってそれを卒業することになる
七海はひな祭りも乳絞りも知らない 生まれたばかりで色々なことを学習している途中だ
「人の感情とかを推測して考慮して、選択しなきゃいけないようなのはちょっと難しい。」 「できるだけ、傍観者でいた方がいいって。」
そう言っていた七海が狛枝の”希望”に対する感情を推測して考慮した推理��披露し、自分の意思で”本来の役割”を降り、未来のために日向たちの背中を押したことは彼女が正しく成長していることの証明だろう
‣超高校級の幸運
狛枝の目的は「裏切り者以外の全滅」、さらに言えば「希望が絶望に打ち勝つ事」である 前者が今回の計画の主目的であり、これは日向たちの推理によって”失敗”に終わった しかしこの失敗という不運は6章で覆ることになる
‣七海とウサミのおしおき
ウサミはおしおきの直前こんな話をする
「英雄になる必要なんてないんでちゅよ。無理に誰かに認められなくてもいいんだからね。」 「他人に認められなくても、自分に胸を張れる自分になればいいんでちゅ。」
これは権限をモノクマに奪われたウサミ本人にも、才能を持たずそれに強い憧れを抱く日向にも向けられた言葉であり、同時に 確かな才能を持つ者に憧れ、自分を卑下していた狛枝にも刺さる言葉だ
‣バグり始めた世界
画面にノイズが走りテキストが文字化けすることでこの世界がプログラムであることが表面化してきた それだけでなく、死んだはずの仲間が出てきたりと心臓への負担が大きい演出となっている
その後レストランで狛枝の最期のメッセージを聞くことに
バグりながらも話を紡ぐ狛枝が残したものは『11037』のパスワードと、彼の願望をあらわにした言葉だった
「ボクの行動が世界の希望の礎になると信じている」 もし本当にそうなったら「ボクを…超高校級の希望と呼んでくれ。」と、今まで隠していた「”超高校級の希望”になりたい」という願望を明確に口にする
CHAPTER0 修学旅行へと向かう乗り物の中のような
船の中でカムクラと話している狛枝
カムクラの視点で語られるが、両者の語り口からは”あいつ”(江ノ島)に対する殺意や憎しみが垣間見える (狛枝の「大嫌いなあいつを殺せるのかな?」 等)
”絶望”になった生徒たちは皆が皆罪木のように江ノ島のことを純粋に敬愛してるわけではなく、彼らの様に否定的な感情を抱く者もいるのだろうか
‣カムクラの目的
「僕は持っています。あいつが遺したモノを…」
江ノ島が遺した江ノ島アルターエゴのことだが、それを持ち込んだ理由は単に江ノ島を復活させるためではなく、江ノ島を利用してツマラナイ世界に何かを残そうとしている
『予想がつかない』出来事を期待している
‣狛枝が腕を移植した理由
「最大の敵である”超高校級の絶望”を取り込むことに成功した」 「大嫌いだからこそあいつの力を取り込む」
と言っているが、直後に「大嫌い…なのかな?なんだろ…おかしいな…」などと錯乱する様子も見られる
6章裁判での苗木(偽物)の「江ノ島と一体化する事で、自分の中で彼女を生かそうと考えたんだろうね。」と言う発言は江ノ島アルターエゴの推理であるから狛枝の真意は分からない
CHAPTER6 This is the end 〜さよなら絶望学園〜
序盤は希望ヶ峰学園の探索 愛着のある景色が壊れていく様は面白かった 前作をアニメで済ませずちゃんとゲームプレイしててよかった
未来機関のメールの痕跡などから苗木たちが”超高校級の絶望”を匿っていること、それが未来機関の意思と反することなどが伺える
‣ちーたんアルターエゴ
監視者の二人についてや、監視者の権限を乗っ取ったウイルスも”ルール”に縛られていることを教えてくれた ここで何者かがこの世界にウイルスを持ち込んだことがわかる
‣苗木誠
苗木クン生きてるしめっちゃ喋るしなんなら普通に登場してわろた
『11037』のパスワードを「ある人が窮地に陥った自分を救うために残してくれた数字」と言っていて、なんだかすごく嬉しくなった 舞園さんが好きなので 苗木にとって舞園さんは今でも恩人であり忘れられない思い出なんだ
以下裁判パート
‣苗木?登場
めちゃくちゃ格好良い登場の仕方だったけど偽物だった
ここで狛枝が先に辿りついた真実の一つ、自分たちが”超高校級の絶望”であることを突き付けられる
モノクマから卒業プログラムで卒業を選ぶことで”超高校級の絶望”の記憶はなくなり、現在の日向たちのまま卒業できるという説明を受ける
死んだみんなは生き返らないが、ここで外に出ない意味はないので当然卒業の流れに 七海が残してくれた未来ならそんなの選ばざるをえない…
しかし、日向たちが卒業する方へ誘導しているモノクマに違和感を抱き、この苗木を信用して良いのか?と言う流れに 結果、この苗木はモノクマの自作自演だということがバレる ここで苗木である証明のために『11037』の意味を問うところがまた良い
‣江ノ島アルターエゴ
死ぬ前に江ノ島本人がちーたんの技術を盗んで作った…らしい カムクラが持ち込んだウイルス
江ノ島は卒業プログラムについて「死んだみんなは生き返る」と条件変更 あからさまに都合が良すぎるが
ジャバウォック公園にあったカウントダウンは「コロシアイ修学旅行のタイムリミット?」→「モノクマの言う”あいつ”が来るまでの時間?」→「江ノ島がプログラムを改ざんするまでにかかる時間?」のように次々とミスリードされていったが、結局意味など無いらしい
ここにきて卒業を押すのか…?と思ったら
‣苗木(本物)登場
主人公か?
苗木は新しい方法として”強制シャットダウン”を提示する しかし現状では人数が足りない…まさかとは思ったが、そのまさかだった
‣霧切・十神登場
激アツカットインからのクールな二人 苗木含めたこの三人好き
十神が「いいから強制シャットダウンだ」しか言わない こいつ前は自分の価値観で物事を考えるのは危険とか言ってなかったか?
苗木とその希望を信じてプログラム世界に身を投じた二人だったが、彼らの説得も虚しく江ノ島が突きつける残酷な真実に日向たちは絶望してしまう
苗木たちがこの世界に来るタイミングは、江ノ島に操作されたものである
‣希望更生プログラムから絶望復元プログラムへ
”強制シャットダウン”を選ぶと「この島での記憶が消える」 それはつまり七海の記憶も消えるという事だ それはみんなが絶望に戻ってしまうことや死んだみんなが生き返らない事よりも重大に思えてしまった
しかし”卒業”という選択肢は世界に”絶望”を放つことである それは江ノ島の”絶望”が勝つことを意味するため選ぶことは絶対にできない
(”留年”はどう考えてもメリットが無いため考慮しない)
江ノ島は日向たちに卒業を選ばせたがる(=苗木たち三人を永遠に留年させ、生き返ったみんなを江ノ島アルターエゴで上書きする(のちの人類総江ノ島化計画)ことを目論んでいる) ここで重要視すべきなのは人類総江ノ島化計画ではなく、苗木たちを永遠にこの世界に留まらせる事である
そして強制シャットダウンをさせないために江ノ島はさらなる残酷な真実を突き付けてくる
‣カムクライズル
日向創が希望ヶ峰に憧れるあまり付け込まれロボトミー手術を施されて生まれた”超高校級の希望”と呼ばれる天才 あらゆる才能を人工的に植え付けられた結果、人生を「ツマラナイ」ものだと思っている模様 カムクラの存在は5章のウサミの台詞と真逆であり、狛枝の「才能は生まれ持ったもの」という理念に反するもの
強制シャットダウンすれば日向は”絶望”状態のカムクライズルになり、日向創という存在は消えるのだと言う こんなにも残酷な真実があっていいのだろうか、まさに絶対的な絶望だ
そしてどちらも選べず立ちすくむ日向たちに対し、江ノ島は「予想通り」だと言う すべてが予定調和で、すべてをコントロールできるゲームの世界だから こうして事態は膠着したまま苗木たちもなすすべなく日向は絶望に堕ちてしまう…
江ノ島アルターエゴの真の狙いは”停滞”であり、南国の島でずっとずっとずっと…みんなを未来に進ませない事にある そこに動機は存在せず、ただ純粋に絶望を追い求めているだけ
‣七海千秋
救いの手を差し伸べてくれるのはやはり七海だった
「キミ達はゲームなんかじゃないんだよ?”選ぶ”だけじゃなくって…”創る”事だってできるはずだよ。」 「たとえ”存在”がなくなったとしても、私とみんなで作った未来をみんなが進み続ける限りは…私は消えてなくなったりしない。」
と意識の底から日向の背中を押して励ましてくれる そうして才能を持つ事がゴールじゃない、自分を信じてあげる事が大切だと言うのだ
これは七海がコロシアイ修学旅行を経て学習したことであり、日向が欲していた”希望”の言葉だろう
「キミなら”未来だって創れる”はずだよ。」
七海の言葉を借りて絶望に染まったカムクラを論破していく 日向創、いい名前だ
‣スーパーサイヤ日向
江ノ島は七海の後押しにより覚醒した日向を見て完全に予想外だという反応を見せる 「ま、まさか・・・カムクラ?ちょっとどうなってんの!?こ、これって・・・マジもんのバグとか!?」という台詞から推察すると、現在の日向はカムクラと同等の力を持っており、”超高校級の絶望”に対抗できるものだとしたら、日向は”超高校級の希望”として目覚めたのである
そうして日向は自分たちで”未来を創る”ために強制シャットダウンをする決意をみんなに示した
‣江ノ島の敗北
江ノ島アルターエゴはウサミにおしおきされ、今度こそ影響力を失う
”超高校級の希望”が”超高校級の絶望”に打ち勝ったという事は、狛枝の望みが成就したという事でもある 5章での狛枝の計画が”失敗”して七海が未来機関としての役割を放棄し処刑されるという”不運”を覆すのが、6章での七海が日向の”意識の中”で彼を励ますという役割を担う”幸運”に繋がる
つまり狛枝の行動が起因となってどんな絶望にも打ち勝つ絶対的な希望を日向に与えている
これは狛枝が意図していたことではなく、本人が望んだ結果とは別の形での幸運の成就という、これまで発揮されてきた才能の法則性と違わぬものになっている
また、”幸運”という才能が単なる偶然の産物ではないことはカムクラがその才能を持っている(=移植できるレベルで定義が存在する)ことが証明となっている
EPILOGUE 未来の前の日
スーツ着た霧切さんがとても可愛かった 腐川が十神の帰りを待っている事を思わせる台詞もあったし前作の生き残り組はこの世界でちゃんと生きてるんだなと思うと感慨深かった
苗木たちの創った未来も存在している事実が嬉しい
同時に日向たちが創った都合の良い未来も存在していることを願う
今作が一貫して言っていたことは、「多様な価値観があること」
己の価値観のみで形成された世界では起こりえない予測不可能なことでも、行動を起こせば”奇跡”は起きる
他に考えたい点
・日向(カムクラ)達はなぜ超高校級の絶望になったのか
・希望ヶ峰学園のした事
・カムクラの目的 等
キャラ評などは通信簿埋めてから改めて���くと思う
Tumblr media
これは一番好きな日向創の表情
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kurihara-yumeko · 3 years
Text
【小説】氷解 -another- (下)
※『氷解 -another-』(上) はこちら(https://kurihara-yumeko.tumblr.com/post/634137547287756800/)
 その朝、真奈は自分が乗るはずだった電車に轢かれて死んだ。
 仕事へ向かう人間たちで満員になるはずのその電車は、そのせいで一時間以上遅延し、駅のホームでは多くの愚痴や溜め息が零れ、怒りや落胆が行き交った。
 だがそれは、ときどき突発的にやって来るありふれた朝の風景にしかすぎず、俺は電車の遅延を伝える駅の電光掲示板を見上げながら、それがまさか、自分の恋人の自殺によるものだなんて考えもしなかった。
 俺がそのことを知ったのは、それから三日経った夜のことで、真奈の両親が、彼女が残した携帯電話から連絡をくれたのだった。その携帯電話には、「ノブから返信がないので死にます」というメモが残されていた。ノブというのは俺のことだった。
 真奈が自殺した朝、俺は寝坊して焦っていた。仕事があまりにも多忙で、二日徹夜した翌日だった。いつもより遅い時間に目覚めた俺は、慌てて身支度を整え、駅まで走ればいつもの電車に間に合うはずだと、家を飛び出した。ベッドの枕元に携帯電話を忘れてきたと気付いた時には、駅の改札の前にいて、そして人身事故が起きたことを知った。
 電車が遅延していることを会社に連絡したかったが携帯電話がないので、仕方なく公衆電話から連絡を入れた。ひと息つき、電車が再び動き出すまで何をして待っていようかと考えながら、ふと、毎日「おはよう」と「おやすみ」を連絡している真奈に、今朝は連絡し損ねていることを思い出した。
 今朝だけではない。昨日の夜も、会社から帰宅するだけで力尽き、「おやすみ」の連絡をしていなかった。そういえば、未読メールがいくつかあったような気もする。最後にメールを返したのはいつだっけ。三日前か、それとも四日前か。仕事が忙しくて連絡が返せないかもしれない、という内容のメールを、先週だったか、今週の初めか、送ったような気もする。
 家に帰ったら、今日は真奈にちゃんと連絡を入れよう。
 なんとか一区切りついた案件の内容を頭の中で反芻しながら、俺はそんなことを考えていた。自動販売機で缶コーヒーを買い、昨日からほとんど何も食べていない胃に、黒い液体を流し込む。寝が足りていない頭と、陽の光がまぶしすぎて閉じてしまいそうになるまぶたは重く、それでも、山場は乗り切ったのだという実感が胸の中にあった。それだけで少し、足取りが軽くなる。
 いつ振り返ってみても、あの時の俺ほど、滑稽な存在はこの世にいないだろう。俺は自分が成し得た仕事の達成感で浮かれていたのだ。そして、このことを真奈に話せば、きっと彼女も一緒に喜んでくれるだろう、とまで思っていた。
 線路の上では真奈が肉片となって飛び散っていることなど、知りもしないで。
「ノブは、本当に仕事好きだよねぇ」
 彼女はよく、俺にそう言った。
 それは、純粋にそう口にしている時もあれば、つい仕事にのめり込み、他のことを疎かにしてしまう俺への非難を込めた声音の時もあった。あるいは、羨望が垣間見える時も。
 彼女が職場の人間関係に悩んでいることは、以前から知っていた。大学の同期で、同じ年に就職した真奈は、就職したばかりの頃から、上司と折が合わないことに悩んでいた。
 俺は苦悩する彼女を見殺しにしたかった訳ではない。だが、「もう少し頑張ってみたら」と言っても、「そんなに嫌ならいっそ転職してしまえば」と言っても、真奈の返事はいつだって、「でも……」でしかなく、なんの変化も起きないまま就職して二年が過ぎていた。何を言ったところで助言に従う訳ではない真奈に、俺は何も言わなくなっていたし、助言を求めて愚痴を零していた訳ではない彼女も、共感や同情を怠った俺に何も話さなくなっていった。それでも、仕事の話さえしなければふたりの仲は良好だった。だから自然と、仕事の話は禁忌となりつつあった。
 それでもときどき、真奈は「仕事がつらい」と零した。酒が入るとそれが顕著になり、「もう本当に、あの上司には死んでほしい」と言うこともあった。俺はなるべく口を挟まないで彼女の話に耳を傾けるよう努力していたが、真奈はもう、具体的に何に苦しんでいるのかを、告白しないようになっていた。
 俺には、正直、真奈が仕事に対して怠慢だと思うことが、時折あった。
 どんな仕事にだってつらく大変な局面はあり、誰にだって嫌な上司や先輩、同僚のひとりかふたりくらいいて、皆がそういった苦労をしながら日々働いて生活している中で、「つらい、つらい」と愚痴を零す彼女が、軟弱に思えたことだってある。
「今日は会社行かない」と言って、一日中、家でゲームをしていたり、ぼんやりとテレビを観ていたり、ソファでごろごろ転がっているだけの真奈に、俺は同情することができなかった。同情できない俺に苛立つ彼女に、さらに苛立った。
「いいよねノブは。毎日会社行くのが楽しくてたまらないんでしょ」
 嫌味のようにそう��われた時は、俺も思わず声を荒げてしまったりもした。
 だがそれでも俺たちは、普段から険悪という訳ではなかった。上手くいっているんだと思っていた。結婚して、一緒に暮らして、そしたら真奈は仕事を辞めさせよう。そのためにもまず金を貯めよう。口にしたことはなかったが、頭の片隅ではいつもそう考えている俺がいた。そのためにはまず、目の前の仕事に集中しよう。できる限り早く出世しよう。俺は今まで以上に仕事に精を出し、成績は少しずつだが着実に上がってきていた。
 そんな俺の姿勢が、余計に彼女を追い詰めていたのかもしれないと、今は思う。
 まだ訪ねたことがなかった真奈の実家の門をくぐり、沈んだ面持ちの両親に導かれ、そうして足を踏み入れた仏間、そこに飾られていた真奈の笑顔。まるで花が咲いたような、とでも表現できそうなその遺影の笑顔を見て、俺は腹の底から嗚咽が込み上げてくることに耐えられなかった。
 彼女がこんな風に笑っているところを、最後に見たのはいつだったのだろう。忙しいことを言い訳に、ないがしろにした日々の記憶は曖昧で、まるで靄がかかったようにはっきりとしない。俺は今まで真奈の、どんな表情を見ていたのだろう。笑った顔も怒った顔も、泣き顔だって思い出せるが、全てが少し昔の日々の記憶、懐かしい思い出でしかない。
 ここ数日の彼女の様子はどうだったのだろう。ずっと連絡を待っていたのだろうか。俺が連絡してこないことを、そんなにも思い詰めていたのか。自らその命を絶つほどに。「おはよう」でも「おやすみ」でも、メールを返していれば、もしくはほんの一分でも、俺が声を聞かせていれば、こんなことにはならなかったのだろうか。真奈のことを、気にかけていれば。
 長年、学校の教員として多くの教え子を持っていたという真奈の父親は、遺影の前で泣き崩れた俺に、こんな話をしてくれた。
「もう二十年も前になるかね。中学校に勤めていた頃だ。その頃、担任をしていたクラスに、不登校の生徒がいてね。小学校でのいじめが原因で、中学には入学してから一度も来ていなかった。学校に来るように何度も働きかけをしていたんだが、三年生になっても不登校のままでね。それでも、その生徒のご両親はとても根気強い人だった。学校に行かない息子を厳しく叱ることもなければ、反対に甘やかしすぎることもなく、毎日毎日、その子の気持ちに寄り添い、励まし続けていたんです。その子も少しずつ、学校へ足を向けてみようかなと、心境に変化があったということなんですがね、ある日突然、その子は亡くなってしまった。自宅で首を吊ったんです。ご両親から聞いたお話だと、遺書が残されていて、そこには『昨日はお母さんにおはようと言ってもらえなかった。ついにお母さんにも見捨てられた僕はもう駄目です』と、そう書いてあったそうです。その子が起きて二階から降りてきたら、たとえそれがお昼だろうが夕方だろうが、必ず母親が笑顔でおはようと声をかけるのが、その家では習慣になっていた。ところが、その子が自殺した前日に限っては、母親は忙しくしていて、ついうっかり、いつもなら起きて来た息子に声をかけるところを、かけないでしまった。たったそれだけのことなんです。わからんですよ、遺書に書いてないだけで、きっと他にもその子の心を悩ませ追い詰めた何かがあったのかもしれません。でもね、実際に死へと踏み切るきっかけなんて、些細なものですよ。母親が挨拶を返してくれなかった、それだけのことかもしれんのですよ」
 職場での人間関係に悩んでいた真奈。仕事に行きたくないと愚痴を零していた真奈。部屋にこもってゲームばかりしていた真奈。つらそうにしていた彼女の様子が、今さらになって鮮明に思い出せる。「もしも、あの時、ああしていれば……」という後悔だけが、いつまでも胸に焼き付いて離れない。
 俺が連絡をしなかった、ただそれだけの理由で。
 そんな些細なきっかけで、大切な人を失った。
 だから、わかっていたはずだった。人が自ら命を絶つきっかけは、ほんの小さな出来事なのかもしれないということ。
 ――あなたが、殺したのよ。
 井荻公介の母親にそう言われた時、俺は真奈を亡くした時のことを思い出した。
 彼の死を責められる度、俺は彼女の死をも責められているような気になった。
 ――あなたのせいで、公介は。
 井荻公介の両親は、それきり俺がその家の門扉をくぐることを許しはしなかった。繰り返し繰り返し、息子の死は俺の責任であると告げられながら、炎天下、俺は門の前に立ち続け、なんの意味もない謝罪の言葉を機械のように繰り返し、それでも彼らに許す気がないことがわかると、黙って去ることしかできなかった。
 なんのために、誰のために、俺はこの家を繰り返し訪れているのか。俺は誰に、一体なんの罪を許されたいのだろうか。
「あの、これ」
 もう何度目になるのかわからない、無駄足となった訪問から帰る途中、後ろからそう声をかけられた。振り向けば、そこにはひとりの女子高生が立っていた。
「あれ……。きみは確か、井荻くんの…………」
 それは井荻沙織だった。井荻公介の妹。
 彼女は無言で一本のペットボトルを差し出した。よく冷えたスポーツ飲料。ひときわ暑い午後のことだった。
「縞本さん、でしたっけ」
 そう訊く彼女の瞳は、何か深いところを覗き込もうとでもしているかのように瞬いた。
「あなた、本当は違うんでしょ、兄にパワハラした上司と」
 彼女の言葉には、一切の迷いというものがなかった。まるで真実を全て知っているかのような、そんな声音にさえ思えた。俺が会社から遣わされた貧乏くじの当て馬だということを、見透かしているようだった。
「どうして、そう思う?」
「だって、そういうことするような、悪い人に見えないから」
「ははっ。悪い人に見えない、か…………」
 恋人が自殺するのも止められず、部下を見殺しにした俺が、悪い人間に見えないのだとしたら、世の中の人間の大半は聖人君子にでも見えているのだろう。
 身近な人をふたりも殺しておいて、何が、「悪い人に見えない」だ。
 今回の件で辞職が決まって以来、社内でも、裏の事情を知らない他部署の人間たちからは、本当に俺が井荻公介を自殺に追い込んだのだと思われ始めている。辞職は来週に決まってはいるが、連日のように社内で冷たい目線に晒されては、今日にだって辞めてしまいたい気分だった。
 だけどどうして井荻沙織は、俺のことを見抜いたのだろう。自分の両親が人殺しだと罵っていたのが聞こえていたはずなのに、そんなことはお構いなしのようだ。本当は、両親と同じように俺を非難することが許されている立場だと言うのに、どうして追いかけて来て、冷えた飲み物を渡してくれるんだ。
 この暑さのせいか、まるでこの世界で唯一、彼女だけが俺のことを理解してくれているような、そんな錯覚が起こりそうになる。
 俺は、「そうじゃないよ」と、誰かに言ってほしかったのだろうか。気休めでもいいから、そんな言葉を向けてほしかったのだろうか。「本当は違うんでしょ」と、指摘してほしかったのだろうか。こんな風に、誰かに、救ってほしかったのだろうか。許してほしかったのだろうか。
 だけどそんなのは、馬鹿げている。
 俺は喪服の内ポケットから名刺入れを取り出し、その中に収めていた真新しい名刺を一枚、井荻沙織に渡した。
 新しい職場へ向かうことになった俺のために、部長が尽力してくれた結果、まだ入社も配属もしていないにも関わらず、俺の手元にやってきた名刺。誰にも渡したことがないそれを、俺は彼女に渡したのだった。
「……どうして、くれるの?」
 井荻沙織は不思議そうな顔をしてそう訊いた。
 どうしてだろうな。
 ただ、誰かに知っておいてもらいたかったのかもしれない。
 たとえどんなに馬鹿げていても、会社の捨て駒にされ、非難の目線や罵声を浴びせられ、誤解され陰口を叩かれ憎まれたとしても、それでも俺という人間を、本当はわかっていてほしかった。
 誰かを傷つけた俺だって、同じように傷ついているんだ、と。
    それから、井荻公介の死を忘れることはなかったが、妹の沙織のことは忘れていた。
 俺は新しい職場に慣れることに奮闘し、しかしどこからか、「部下を自殺に追い込んで、うちの会社に流れてきた縞本さん」という噂が広がり、俺は次の職場でも、入社直後から孤立無援の立場になりかけた。
 信頼関係を築き上げるのが困難な中、ひたすら利益を追求し成果を挙げることだけでなんとか会社にしがみつき、がむしゃらな仕事人間になることに徹するうちに月日は流れた。
 後輩ができ、少しずつではあったが出世していくと、怠惰な連中を見ることが耐えられなくなった。男だろうが女だろうが、仕事ができない部下は容赦なく叱責した。努力していない人間を見ると黙ってはいられなかった。自分でもわからない焦燥感に駆られ、俺はいつも飢えているみたいに、心休まる瞬間もないまま、狂ったように仕事に打ち込んでいた。
「あれじゃ、鬼だよな。人間じゃないよ、鬼だよ、鬼」
「あの様子を見れば、部下が自殺したっていうのもわかるよな……」
「自分が勝手に必死になってるのはいいけどさ、それを俺たちにも求められても困るっつーの」
 俺が喫煙室にいることを知らない、同じ部署の後輩たちが、そんな会話をしながらすぐそばの廊下を通って行った。隣にいた貝塚は、「気にするなよ」とでも言うように、無言のままで肩をすくめる動作をしたが、俺は何も言わなかった。
 彼らに言い返すべき言葉など、俺は何ひとつ持っていなかった。彼らは正しかった。間違っているのは、俺の方だ。だが俺は、他に生き方なんて知らない。
 そうしてある年の春、どこか見覚えのある新入社員が入ってきたと思ったら、それが井荻沙織だった。
 高校生だった頃からは、ずいぶん大人びたように感じたが、だが兄に似た、深いところを覗き込もうとする、あの眼差しだけは変わっていない。
「私のこと、覚えていらっしゃいますか」
 煙草を吸わないくせに、俺がひとりでいるのを見計らって喫煙室までやって来て、井荻沙織はそう言った。以前から、彼女が同じ社内にいることに気付いていた。ただ、俺のことなど忘れているかもしれないし、覚えていたとしても、もう関わり合いたくないと思っているかもしれない、だから、よほどのことがない限り、彼女に関わるのはよそう。そう考えていた。
 それが、向こうから声をかけてくるとは。
「……覚えてるよ」
 俺は煙草を口に咥えたまま、火を点けようと持っていたライターを、そのままポケットへと仕舞った。
「きみは、井荻の……」
「井荻沙織です。縞本宜嘉さん」
「……よく、覚えているな」
「名刺、頂いてましたから」
「名刺?」
 そこでようやく、以前、彼女に自分の名刺を渡していたことを思い出した。たった一度だけ言葉を交わした、あの暑い日に、ほんの気まぐれで渡した名刺。
「だから私、この会社の面接を受けたんです」
「…………それで、受かったってことか」
「はい」
「…………」
「……何か、変でしょうか」
「いや…………いや、変だろ」
 俺は何もそういうつもりで、あの時に名刺を渡した訳ではなかった。じゃあどういうつもりだったんだと訊かれれば、言葉に詰まるしかないが。
 だが井荻沙織はその時、俺を前にして、微笑んだのだった。
「私、変だって、よく言われるんです。両親だって、そう言うんですよ」
 そう言って、彼女はにっこり笑った。彼女の笑顔を見たのは、それが初めてだった。
 井荻沙織はそれ以降も、何かにつけて、社内で俺に話しかけてくるようになった。彼女が配属されたのは他部署ではあったが、俺が陰でなんて呼ばれているのか、耳にしているはずなのに。
「縞本さんって、仕事帰りに飲みに行ったりするんですか?」
「する時もある」
「どこのお店行ってるんですか?」
 本当は、兄のことを訊き出したいのだろうが、彼女が社内でその件を口にすることは一度もなかった。恐らく、俺が「部下を自殺に追い込んで、うちの会社に流れてきた縞本さん」だと噂されていたことを知ったか、あるいは悟ったのだろう。彼女は聡いやつだった。誰に言われなくても、あの深淵を覗くような瞳で周囲をじっと観察し、状況を判断していた。そしてそれは、兄の公介とよく似ていた。
 俺は彼女のそういうところに好感が持てた。だから、今まで誰にも教えたことがなかった、とあるバーを教えた。金曜日に行くことが多かったそのバーは、一本入った路地の、見つけづらいところにあって、ひとりで飲むのにはうってつけの場所だった。
「初めてなんじゃない? シマちゃんが他のお客さんこの店に連れて来たの」
 彼女を初めて連れて行った時、バーのマスターが含みのあるにやにやした顔でそう言ったのを今でも覚えている。
 それから、ときどき、彼女とその店で飲むようになった。俺が読んだ通り、周囲に会社の連中がいないとなると、井荻沙織は兄の件をあれこれ訊いてきた。質問の大半は、俺の部下であった井荻公介の働きぶりや職場での様子を尋ねる内容か、もしくは、どうして俺が公介の自殺の件の責任を全て負って会社を辞めたのか、についてだった。そして俺は、いずれの内容であっても、彼女の質問にはろくすっぽ答えなかった。
 はぐらかし続けているうちに、井荻沙織は俺にその手の質問をしてこなくなっていった。訊いたところで答えてはくれないと、彼女自身わかってきたのだろう。それでも彼女はそのバーにやって来ては、俺の隣で黙って酒を飲んでいた。
 俺は酔って口数が増える男ではないが、井荻沙織も饒舌になるタイプではないようだった。
 それでも少ない口数なりに、バーでは他愛のない話をするようになった。俺が冗談を言えば彼女は笑ったし、彼女の冗談に顔をしかめてやると、さらに嬉しそうに笑った。そんな風に楽しそうな彼女を見ていると、俺は胸の奥底で凝り固まったどす黒い感情が、少しずつ溶けて流れていくような錯覚に陥った。
 井荻公介の死と、真奈の死から、許されるような気さえした。そんなはずはないのに。
 一緒に酒を飲むようになって、一年半が過ぎた頃、抱えていた案件が上手くいっていなかった焦燥感と、酔いの勢いも相まって、俺は井荻沙織をホテルへと誘った。少しは嫌がる素振りを見せるかと思ったが、あろうことか、彼女は平気な顔をしてのこのことついてきた。
 ラブホテルの一番安い部屋に入り、先にシャワーを浴びて酔いが醒めてきた俺は、「本当にいいのか」と、これからバスルームへ向かおうとしている彼女に訊いた。だが彼女は、ただ黙って頷いただけだった。
 彼女を待つ間、無下に煙草をふかしながら、俺は「本当にいいのか」と、自分に問い続けていた。
 井荻沙織は、恋人ではない。職場の同僚だ。所属部署も異なるし、俺の部下ですらない。年齢もひと回り近く離れている。接点は、彼女の兄を俺は見殺しにした、それだけの関係だ。彼女を抱く権利など、俺にあるはずがない。
 やはり帰ろう。こんな場所に誘ったことは間違いだった。一時間前の俺は、一体何を考えていたのだろう。そう逡巡していた。だが、結論から言えば、そんな思考は無意味だった。バスルームから出て来た井荻沙織が俺に触れた、その指先の温かさに、溺れるように甘えてしまった。
 他人というのは、こんなにも柔らかく、優しいものだっただろうか。
 彼女の髪に指を絡ませながら、俺はこんな風に気持ちが安らぐのは、一体いつぶりだろうかと考えていた。人肌に触れたのも、いつが最後だっただろう。真奈が死んで以来、俺はそういう機会を持たないままでいた。誰かを愛したり、誰かに愛されたり、そんな資格などないような気がしていた。否、俺は井荻沙織を愛している訳では決してない。彼女だって、俺に愛情を抱いている訳ではないだろう。こんな風にまぐわうことが、本当は良くないこともわかっている。だがそれでも、やめられなかった。
 欲に流されたと言えばそれまでだが、彼女に触れる度、彼女の指が俺の皮膚をなぞる度に、憑き物が落ちていくような気持ちになった。まるで、林檎の皮がくるくると剥かれていくように。
 仕事でいくら成果を出しても、満足感なんてなかった。安堵する暇さえなく、終わりの見えない道をただひたすら走り続けているような日々だった。それがどうして、こんな簡単なことで、癒されていくのだろうか。
 果てた後も、俺はしばらく彼女を腕の中に抱いていた。彼女は嫌がらなかった。その身を委ねているかのように、俺の胸に頭を預けていた。その頭の重みすら、心地良いと思う俺は、本当にどうかしているのかもしれなかった。
 うとうとしていると、彼女がふいに身じろぎをした。
「縞本さん、私ね――」
 ぽつりと、彼女は言った。俺の腕に抱かれたまま、ぽつぽつと語り出した。
「まだ、兄が生きていた頃の話です。私は高校生でした。兄は、ときどき仕事の帰りが遅くなることがあって、日付が変わってから帰宅することもあったんです。遅くに帰って来て、玄関のドアを、勢いよく閉めるんです。ばたーんって、大きな音が二階まで聞こえてきました。もう両親は先に部屋で休んでいて、私は自分の部屋で、試験勉強なんかをしてるんです。階段をどすどすと足音を立てて登ってきたり、トイレのドアを、また勢いよく閉めたり。今振り返ってみれば、きっと仕事のストレスを、兄はそういう形で表してたんだと思うんです」
 暗いままの部屋の天井には、窓から射し込む細い光が、数本の線となって映し出されていた。部屋の外を走る車のヘッドライトが、新たな光の線となって天井を移動していく。俺は横目でそんな天井を見つめたまま、彼女の言葉を聞いていた。
「でも、あの頃は許せなかった。兄が、まるで自分ひとりだけが戦っていて、自分ひとりだけが苦しい、と思っているような気がして。両親はもう寝ていて、私が遅くまで勉強していることを知っているはずの兄が、そんな風に家の中で振る舞うことを、私は許せなかった。身勝手だ、と思ったんです。両親は、そんな兄の夜中の様子を知ってか知らずか、何も言いませんでした。それがまた、兄の振る舞いが黙認されているような気がして、私は面白くなかった。夜中は静かで、勉強していると、帰って来た兄が立てる物音が気になって、気が散って、勉強が手につかなくなって、そんなことが続くと私も嫌になってしまって。だから私、ある晩に願ってしまったんです。『お兄ちゃんなんて、もう帰って来なければいいのに』って。そしたら、そしたら…………」
 井荻沙織は、それ以上何も語らなかった。その先は、言われなくてもわかっていた。
 井荻公介が死んだのは、妹である彼女がその不在を願ったからではない。彼女が公介を死へと追いやったのではない。彼女にはなんの責任もない。
 公介の仏壇の前で、初めて彼女に出会った時、なんとも言えない深い眼差しで見つめられていたことを思い出す。彼女はもしかして、俺が現れたことでほっとしたんじゃないか。兄が死んだのは自分のせいではないのだと、そう実感できたんじゃないだろうか。
 だがそれでも、こうして語るということは、彼女にはまだ、わだかまりがあるのだろう。願ってしまったことへの後悔は、いつまでも消えることがないのだ。
 彼女の細い腕が静かに俺の背中に回った。ゆっくりと、しかし着実に、腕の力は強まっていく。泣くのかと思ったが、彼女は涙を見せなかった。それでも俺にしがみつくその手は、微かに震えていた。
 溶けることのない氷の塊が、彼女の胸の奥底にはある。それは、決して触れることができない。どんな言葉も、そんな深いところまではきっと届かない。それでも何か、力になってやりたかった。おこがましいだろうか。俺が公介を死に追いやったのかもしれないのに。こうして一緒にいることが、許されるようなふたりではないのに。
 俺はそっと彼女の身体を抱き返した。傷つけないように。嫌になったら、いつでも突き放せるように。そんな力加減で抱き締めた。こんな風に、誰かに優しくしようと思うことが、ずいぶん久しぶりだと感じた。
 互いの体温に身を委ねているうちに、再び眠気に誘われて、氷が少しずつグラスの中へ溶けていくように、そうしてふたり抱き合ったまま、朝まで眠った。
   「お疲れさん」
 目の前に缶コーヒーを置いてやると、貝塚は驚いたように顔を上げた。
「縞本。お疲れ、今から帰るのか?」
 そう言いながら自分のデスクから立ち上がろうとする貝塚を、俺は片手で制した。
「あとひと踏ん張りしようかと思ったけどな、もう今日はいいやって気持ちになっちまった」
「いいんじゃないの。縞本は働きすぎなんだよ」
 そう言う貝塚も、ブースに残っている最後のひとりだった。フロアを見回してみたが、同僚たちはとっくに退社している。
 こいつも、俺に負けず劣らずのワーカーホリックなのだ。おまけに、俺よりもヘビースモーカーだ。
「たらふく飲んで寝るよ、今夜は」
 週明けの月曜日の朝は、先方への謝罪から始まるのかと思うと、それだけで気が滅入った。今夜くらいは、酒でも飲まないとやってられない。
「さすがの縞本も参ってるねぇ」
 にやにやしながら貝塚はそう言って、俺がデスクに置いてやった缶コーヒーに手を伸ばす。
「井荻さんに癒してもらったら?」
「……は?」
 わざとらしく訊き返してみたが、貝塚は嫌らしい笑みをより深くしただけだった。
「俺はお似合いだと思うけどなぁ。縞本と井荻さん」
「……何を言ってるんだお前は。アホか」
「井荻さんはまだ知らないんだろう? 縞本が春に九州に異動になること。内示しかされてないもんねぇ」
「…………」
「誘ってみたら?」
「……俺と一緒に九州に行こう、ってか?」
「そうそう。井荻さんもその気になるかもしれないし」
「……アホか」
 俺は吐き捨てるようにそう言ったが、貝塚は缶コーヒーに口をつけながら笑っていた。その笑顔が妙に朗らかで、からかわれているのは明らかだった。無性に腹が立つ。
「万が一、彼女にその気がなくて関係が気まずくなっても、縞本は春にはいなくなる訳だから、少しの間の辛抱だし」
「何が言いたいんだ?」
「ローリスク、ハイリターンだよ、縞本。挑戦する価値はあるだろ?」
「…………アホか」
 俺は片手を挙げて「お疲れさん」と告げ、営業フロアを後にする。「なんだよ縞本、俺はマジだぞ」と、後ろから聞こえてきたが、それ以上耳を貸すことはしなかった。
 エレベーターを下り、建物を出ると、途端にビル風が吹きつけてきた。手袋を忘れて来たことを思い出し、コートのポケットに手を入れる。
 すれ違う人たちは皆、急ぎ足で通り過ぎて行く。今夜は昨日よりも冷える。早く暖かい場所へ行こうと、誰もが思っているのだ。
 暖かい場所。
 俺はいつの間にか、彼女のことを連想していた。馬鹿馬鹿しい。自分でも恥ずかしくなる。これじゃあ、貝塚にからかわれても仕方がない。
 そう言えば、今日彼女に会った時、俺が「行くのか」と訊いたら、彼女は「行きます」と答えたっけ。腕時計に目をやった。彼女はまだ、いるのだろうか。いつものバーに。
 あれから、井荻沙織との関係は変わっていない。変わらず同じ会社で働いていて、ときどき一緒に酒を飲み、ときどき一緒に眠っている。だが恋人ではないし、しかし、ただの同僚と呼ぶには、いささか深い仲になりすぎた。
 井荻沙織が兄の件について語ったのは、あの夜が最後だった。それ以来、彼女は兄の話をしていない。もしかしたらもう二度と、俺の前で口にすることはないのかもしれない。
 彼女の胸の内にあるわだかまりは、今もそこにあるのだろうか。���けることのない氷を、変わらず抱いているのだろうか。
 俺は彼女に、何をしてやれるだろう。
 あの暑い日に、彼女が渡してくれた一本のペットボトル。その冷たい感触を、今でも思い出すことができる。「本当は違うんでしょ」と告げられた時、本当はどんなに嬉しかったか。
 誰かを傷つけ、自らも傷ついてばかりいた俺に、彼女は手を伸ばしてくれた。本質を見抜こうとでもするかのような眼差しで射抜かれる度、嘘をつかなくていいのは安堵できた。彼女の肌に触れ、彼女の指先が俺をなぞる時、今までの傷が癒えていくように思えた。俺は彼女に出会って報われた。その温かさに救われたのだ。
 だが俺の手は、彼女を温めることができるのだろうか。
 はたして、俺にそんな資格があるのか。
 そんな生き方が、許されるのか。
「九州か……。遠いな…………」
 思わず零れた独り言は、吹き荒ぶビル風に掻き消された。周囲の人々と同じように首をすくめ、背中を丸め、駅へ向かう道を歩く。雑草さえまだ芽吹かない、冷たいアスファルトを見下ろしながら、今はまだその足音さえも聞こえない、春のことを考える。
 その春が来た時、俺はもう、この場所にはいない。
 俺じゃなくてもいい、誰かが、彼女の傷を癒してやってくれればいい。彼女が救ってくれたように、代わりに誰かが彼女を救ってくれればいい。こんな冷え切った、硬く冷たい指先ではなく、もっと情熱的で献身的な、穏やかな熱量がある誰かが、彼女を抱き締めてくれればいい。
 そうして、彼女が抱いている大きな氷塊も、いつしか溶けてしまえばいい。
 だがもしも、側にいることが許されるのならば、その手を引くことが許してもらえるのであれば、俺はできうる限り暖かい場所へ、彼女を連れて行きたい。何もかもを忘れてしまえるような、まぶしいくらい陽の当たる場所へ。
 だがそんなことは、つまらない夢にすぎない。
「アホだな、俺は……」
 どうか彼女が、暖かい場所にいつまでもいられますように。
 そんなことを願った。
 そう願うことだけは、きっと俺にも許されるだろうから。
 了
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事実を知らしめることが親善に
豊田有恒(作家)
愛国の一方で政府批判
 このところ、韓国の反日が常軌を逸したものになっている。いわゆる従軍慰安婦の問題は、日本の巨大新聞が、その強大な影響力を行使した結果、世界中にまき散らされた虚構なのだが、いわば韓国との連携のもとで、拡大した側面も見逃せない。
 明らかに、韓国は、変わってきている。なぜなのだろうか? 私は、1970年代の初頭から、韓国へ通い始め、韓国語も学び、多くの著書を上梓してきた。しばしば、親韓派と目されてもきた。弁解になるが、これには、理由がある。70年代の当時、例の巨悪の源泉である新聞社は、北朝鮮一辺倒だったのである。今日では考えられないことだが、北朝鮮を「地上の楽園」と美化し、相対的に韓国を独裁政権と規定し貶(おとし)めてきたのである。
 私は、もともと、小説家であり、思想的な背景はない。韓国へ行くようになったきっかけは、小説の取材のためでしかなかった。韓国は、あの新聞社が報じるように、独裁政権の国だと思いこんでいた。これは、おおかたの日本人の当時の平均的な理解だったろう。なにしろ、良心的と目されていた大新聞が、北朝鮮への帰国事業などを後援し、後にノーベル賞を受賞する有名作家や、国際無銭旅行で大ベストセラーを出した評論家などが、すっかり賛同しているのだから、実際に韓国へも北朝鮮へも行ったことのない人間は、そうだと信じこむしかなかった。
 しかし、韓国へ通ううちに、日本の報道が、おかしいのではないかと、うすうす思いはじめた。三十代はじめで若かったせいだろう、フットワークが良かったから、取材目的の古代遺跡のほかにも、あちこち歩きまわる。ディスコで知り合ったディスクジョッキーをやっているという同年輩の韓国人と意気投合したが、この男、どこでも政府批判ばかり口にする。こちらが、心配になって、周囲を見回したほどだった。日本では、KCIA(韓国中央情報部)の悪行ばかりが報道されていたから、言論の自由はないという先入観にとらわれていたが、こうした報道が、変ではないかと感じはじめた。
 また、一方では、政府批判もするが、この男、愛国心を口にする。ディスクジョッキーという軟らかい職業の男が、愛国心を口にすることに、違和感も持ったが、やや羨ましくもあった。当時、日本のマスコミは、左翼デマゴーグに牛耳られていたから、愛国心などと言えば、右翼と間違われかねないような風潮が、蔓延していた。しかし、韓国では、こうした言説は、この男だけではなかった。あちこちで、北朝鮮に偏している日本の報道がおかしいとする、多くの韓国人の批判を耳にするようになった。また、必ず日本に追いついて見せるという、愛国心をむき出しにした意見にも接した。
韓国の実情紹介に誹謗中傷
 韓国語が判るようになると、行動範囲も広がってくる。こうした韓国人が、KCIAに監視されているから、点数かせぎに愛国心を口にしていたわけではないと、だんだん判ってきた。バイク・カーマニアだったので、現代(ヒョンデ)自動車(チャドンチャ)や大林産業(テーリムサノプ)のショールームに足を運んで、韓国の自動車・���イク事情に関心を持ちはじめた。
 日本で報道されるような「暗く抑圧された独裁国」といったイメージでないことが、しだいに判ってきた。日本で、しばしば誤解されていることだが、反日の激しさから、韓国人に険しいイメージを持つ日本人が多い。一面では当たっていないこともないが、日常の生身の韓国人は、妙になれなれしく陽気で人懐(ひとなつ)こい。
 あの大新聞は、「暗く抑圧された独裁国」という疑似イベントを売りまくって、北朝鮮を美化し、韓国を貶める方向へ、日本国民をマインドコントロールしていたのだ。
 韓国では、確かに日本より言論の自由が制限されていた。しかし、それは、金日成の個人崇拝による究極の独裁国家である北朝鮮と対峙するためであり、ある程度は強権政治を敷くしかなかったのである。当時、韓国では「誤判(オバン)」という表現が、しばしば使われていた。韓国国内が混乱していると見てとり、好機とばかりに北朝鮮が南進に踏み切るのではないかというわけだ。つまり、北朝鮮に誤判させないように、常に国内を安定させておかなければならなかったのだ。全ての韓国人が、ほん(・・)もの(・・)の(・)独裁国家である北朝鮮を恐れていたからだ。
 こうした韓国の実情を、広く知らせたくなった。小説家という職業柄、書くメディアには、事欠かない。小説家の仕事ではないという躊躇(ためら)いもあったが、最初のノンフィクションとして「韓国の挑戦」(祥伝社)を上梓したのが、昭和53(78)年のことだった。書評では、これまでの日本の対韓認識を一変させたとまで、評された。当時の私には、巨悪と戦おうなどという大それた問題意識は、まったくなかった。
 だが、ベストセラーにはなったものの、あれこれ、雑音が耳に入ってきた。この問題が、当時のマスコミ界では、タブーになっていると知ったのは、発売されてからだった。つまり、ほんとうのことを言ってしまったため、このタブーに抵触した。期せずして、あの大新聞と言う虎の尾を踏んでしまったわけだ。
 朴政権に買収されている―は、まだしも上品なほうで、韓国に愛人がいるとか、韓国成り金だとか、いろいろ悪罵を聞かされることになった。そこで、子供たちもつれて、一家5人で毎年夏休みに韓国へ遊びにいき、印税を使い果たした。
日韓のため尽くした金思燁氏
 あの大新聞が主導して、日本人を親北朝鮮、反韓国という方向へ誘導していたわけだが、最近は、かつての報道姿勢が嘘だったかのように、あの大新聞は、北朝鮮を賛美するようなこともなくなり、いつのまにか北朝鮮への批判を、臆面もなく展開するようになった。
 それどころか、70年代当時あれほど嫌っていたはずの韓国に過剰に感情移入し、悪いのは全て日本人式の報道姿勢で、虚構に基づく従軍(・・)慰安婦(・・・)なる疑似イベントを垂れ流す始末である。多分、従軍(・・)慰安婦(・・・)報道についても、いったん非を認めたものの、真剣に謝罪するつもりなどなく、なし崩し的に、鉄面皮を決め込んで、風当たりが収まるのを待っているのだろう。
 実際、当時、私は、韓国人の魅力にハマってもいた。日本人のように、控え目でなく、陽気に自己主張する姿勢が、一度も宮仕えしたことのない私のような一匹オオカミの作家には、波長が合っていると錯覚したせいでもある。
 当時、知り合った韓国人のなかには、私の終生の師と仰ぐ人も、少なくなかった。東国大学の金思燁(キムサヨプ)先生とは、シンポジウムの席で知り合った。日韓バイリンガルの世代的な体験から、「日本書紀」「万葉集」を韓国語に、「三国(サムグク)史記(サギ)」「三国遺事(サムグンニュサ)」を日本語へ翻訳され、日韓古代史の研究におおいに貢献され、また、東国大学に日本学研究所を設立され、初代所長として、日本研究を韓国に定着させた功績は、おおいに評価されるべきだろう。
 金先生に招かれ、東国大学で講演したこともある。最初、韓国語で話しはじめたのだが、見るに見かねて、助け船を出してくださったのは、先生の優しさだった。私のほうも、日本人を知る方々が物故して、日本語スピーカーが減っていることに危惧を覚え、毎年、拙著も含めた文庫本を教材として日本学研究所へ寄贈し、日韓親善に努めたものである。金先生は、私のささやかな協力に、研究所からの表彰という栄誉で応えてくださった。ほんとうに尊敬できる立派な方だった。
 また、在日の人では、作家の故・金(キム)達(ダル)寿(ス)さんとは、古代史の会を通じて、親しくしていただいた。「日本の中の朝鮮文化」は、十数巻にわたる大著だが、日本全国に足を運んで、いわばライフワークとして書かれる際、金さんが自分に課していたことが、ひとつだけあった。韓国・朝鮮人の書いたものは、絶対に引用しないことだった。韓国・朝鮮人の書いたものなら、例の剣道の起源の捏造のように、なんでも朝鮮半島から渡来したと、こじつける文献が、いくらでも見つかるだろう。
 おそらく、金さんは、韓国・朝鮮人の書いた文章を引用したいという誘惑に駆られたこともあったにちがいない。しかし、日本人が書いたものしか引用しないと、いわば、痩せ我慢のように、心に決めていたのだ。
 金達寿さんとは、酒を呑んだり、旅行したり、また拙著の解説をお願いしたりしたこともある。艶福家で豪快な人だった。
今に伝わらぬ統治のプラス面
 時の政権を批判して、亡命同様に日本へ渡り、「コリア評論」を主宰されていた金三(キムサム)圭(ギュ)さんとも、知り合った。何度か、同誌をお手伝いした記憶がある。金さんは、東亜(トンア)日報(イルボ)の主筆の体験を生かして、当時は画期的だったクロス承認方式を提唱して、健筆を奮っておられた。南北朝鮮の対立状況を解消するため、中ソ(当時)が韓国を、日米が北朝鮮を、それぞれ承認することによって、平和を担保するというアイデアだった。
 しかし、その後の経緯を考えれば、中露は韓国を承認したが、日米は、北朝鮮と国交を持たないままである。あの当時は、かの大新聞の陰謀で、日本では伏せられていたが、北朝鮮という史上かつてない独裁国家の実像と戦略が、今や全世界で周知のものとなったからである。
 例の大新聞は、韓国を独裁国家と決めつけて、あれこれ捏造報道を繰り返したが、まもなく馬脚をあらわすことになった。あまり、褒められた話ではないのだが、不純な動機ながら、多くの日本男性が、韓国を訪れるようになり、本物の韓国を実際に目で見るようになったからだ。
 今も変わらぬ売春大国は、当時から有名だったのだ。空港などでは、団体旅行の男たちが、昨夜の女がどうのこうのと、聞えよがしに話しているのは、同じ日本人として、気が引ける思いだった。当時は、日本世代の韓国人が健在だったから、日本語を理解できる。あまりの傍若無人さに、舌打ちをしながら、露骨に「ウェノム」だの「チョッパリ」だの、差別用語を口にしている韓国人も、珍しくなかった。こうした日本人は、韓国語が判らないから、差別用語で呼ばれても、判らないのだから、おめでたい話だ。
 しかし、不純な動機から訪韓しようと、実際の韓国を見てくれば、韓国が制限付きながら、自由主義の国だと判る人が増えてくる。とうとう、例の大新聞も、疑似イベントのような韓国=独裁国家論を、引っ込めるしかなくなったようである。
 免税店などでは、日本世代の年配の女性が、若い人に日本語を教えているケースもあった。何度か訪れ、親しくなると、世間話のようなこともするようになる。さる女性は、つい最近(当時)、女学校の同窓会を行なったところ、多くの同窓生が日本から駆けつけてくれたと、嬉しそうに話してくれた。
 当時、女子の高等教育は、日本でも朝鮮でも、まだ途上だった。女学校は、いわば最高学歴で、いい家の子女しか、通えなかった。したがって、この方の同窓生は、かつてソウルに住んでいた日本人が多かったわけだ。いや、この方も、元日本人であり、内地か朝鮮かなどと、出自を気にすることなく、自由に青春を共にしていたのである。
 多くの悲劇も誤解も矛盾もあったが、こうした日本統治時代のプラス面が、日本でも韓国でも、今の世代に正確に伝わっていないことが、日韓の最大の問題なのだろう。
良好になりつつあった日韓関係
 70~80年代にかけて、韓国では、慰安婦も歴史認識も、話題にすら昇ったことはなかった。その後、韓国を独裁政権扱いする報道も影をひそめ、日韓関係は、良好な方向へ向かいはじめた。もちろん、一部では、反日もあるにはあったものの、顕在化しなかった。
 むしろ、日本人のほうが、韓国への好感度を増していった。「冬のソナタ」のヒットの影響もあったろう。元のタイトルは「冬(キョウル)恋歌(・ヨンガ)」である。主役の裴(ペ)勇(ヨン)俊(ジュン)の魅力もあったろうが、誰が訳したのか、ソナタという言葉が効いたせいもあるだろう。
 70年代、日本世代の免税店のおばさんたちは、男ばかり来ないで、女性にも韓国へきてもらいたいと、いつもぼやいていた。家内を同行すると、おおいに喜ばれた。当時、ビーズのハンドバッグ、螺鈿(らでん)の漆器、絞り染めの生地など、男には価値の判らない土産物が、韓国では安く買えたのである。時代は、様変わりして、多くの中年女性が、日本から韓国を訪れるようになった。
 私も個人的に、日韓親善に尽くしてきたつもりである。東国大学以外にも、たまたま知り合いができた祥(サン)明女子(ミョンヨジャ)大学(テーハク)など、いくつかの大学へ、文庫本を教材として寄贈しつづけた。韓国の日本語スピーカーを減らさないためである。
 また、本業に関して言えば、日韓の推理作家協会の交流プロジェクトが、行なわれた際には、おおいに働いたと自負している。韓国では、減ったとはいっても、日本語で案内してくれる作家に、事欠かない。しかし、日本では、「韓国の独裁政権、やっつけろ」式の景気のいいスローガンをぶち上げる作家は、たくさんいたものの、韓国語で案内できる作家が、ほとんどいなかった。「あれ(イッチョ)に(ゲ・)見えます(ポイヌン・)建物(コンムル)は(・ン)、国会(クッケ)議事堂(ウィサタン)で(・イ)ございます(ムニダ)」などと、東京観光ではバスガイドのようなことも、しなければならなかった。
 90年代には、日本人の韓国に対する関心と、好感度も高まり、韓国人の日本への興味、関心も、増していった。サッカーW杯の共同開催に向けて、日韓関係は、新たなステージに向かうかに見えた。
日韓離反狙う慰安婦捏造報道
 だが、ここで、あの大新聞は、またしても、その強大な権力を行使して、日韓離反の挙に出た。
 1991年、いわゆる従軍慰安婦なる虚構が、報道されたのである。この巨大新聞は、現在では、いちおう虚妄だったことを認めてはいる。だが、軍隊相手の売春婦である慰安婦と、勤労動員で働いた挺身隊を、混同した報道に関しては、当時は事実関係の研究が進んでいなかったためと、弁解している。
 しかし、年齢の離れた姉が、あのころ女学生で、勤労動員により中島飛行機の工場へ、自転車で通っていたのを、私ははっきり覚えている。もちろん、慰安婦とは、何の関係もない。ことは、姉の名誉とも関わってくる。
 平成に入って早々のころには、あの新聞社にも、私と同世代の社員が、まだ現役でたくさん働いていたはずである。知らないはずがない。二十数年も訂正することなく、頬かぶりをしてきたのは、単なる誤報などではなく、あの大新聞が仕掛けた日韓離反策の一環で、意図的なものだからなのだろう。
 日韓離反を図る大きな意思は、あの新聞の言論支配のもうひとつの柱として、吉田某なる人物による、済州(チェジュ)島(ド)における日本官憲の女狩りという、とんでもない虚構を付け加えることによって、さらに拡大していく。
 しかし、その後の十数年は、この大新聞の企みは、まだ功を奏さなかった。日本では、韓国ブームが続いていたからである。これまで訪韓したことのない、中年婦人層が、韓国を訪れることが多くなり、韓流にはまった韓国語学習者も、増えていった。そればかりでなく、男性のなかにも、韓流ドラマにはまる人が多くなった。韓国の大河ドラマ「朱蒙(チュモン)」は、高句麗の開祖朱蒙を主人公とした作品だが、私の近くのDVD店では、新作が十巻入っても、即日借りだされるほどの人気だった。
 朱蒙は、もともと「三国(サムグク)史記(サギ)」に記録される神話上の人物なのだが、それを強引に歴史ドラマ風に、仕立て上げるところが、まさに韓国人である。元ネタが僅かしかないので、古今東西のエンタテインメントから、使えそうな要素を、流用している。水戸黄門のような部分も、大奥のような部分もあるが、臆面もなく、受けそうな要素を投入しているから、たしかに面白いことは面白い。
 また、韓国側も経済力の伸長と共に、訪日して実際の日本を肌で知る人々が増えてきてもいた。別府の大ホテルなど、経営危機に陥った苦境を、韓国からの観光客の増大で乗り切ったほどである。国際化というスローガンが、しばしばマスコミを賑わすが、お互い知り合う以外に、国際理解が進むことはない。 
慰安婦と同構造の原発報道
 だが、挺身隊=慰安婦という虚妄、済州島女狩りという捏造は、徐々にボディブローのように効いていった。韓国では、従軍慰安婦像なるものが、日本大使館の前に設置され、アメリカ各地へ飛び火していく。あの像は、新聞報道にあった12歳の少女として造られている。挺身隊=勤労動員には、中学生、女学生も動員されたから、その年齢の生徒たちも少なくなかったが、軍隊相手の慰安婦に、その年代の少女がいたという記録もないし、事実もなかった。
 韓国では、挺身隊問題対策協議会という団体が、活動し続けている。あまりにも長ったらしいので、挺(チョン)対(テ)協(ヒョプ)と略している。あの大新聞が垂れ流した挺身隊=慰安婦という虚構を、そのまま踏襲しているわけだ。語るに落ちるとは、このことだろう。
 事実関係が、はっきりしたのだから、あの新聞の責任で、韓国側に訂正を求めるのが、筋だろう。だが、あの新聞は、それをしない。それどころか、慰安婦の存在は事実だから、これまでの方針に変わりないという態度を、とりつづけている。
 なぜ、こうなるのだろうか? 韓国の問題と離れるが、私も筆禍に遭ったことがある。あの新聞社は、取材も検証もしないで、記事を書くことが、はっきり判った。私が受けた筆禍など、些細なことだが、問題の根は、共通している。
 私は、本業のSF小説の未来エネルギーとして、昭和30年代から、原子力に興味を持っていた。そして、日本中の原発と、建設予定地の全てを、取材した。当時、人気の「朝日ジャーナル」誌が、特集を組んだなかに、私の名前も、名誉なことに入れてあった。その特集とは、「わたしたち(原発反対派)を未開人と罵った識者十人」というものだった。もしかしたら、原発反対派を未開人と罵った粗雑な人間が、その十人の中に、いたのかもしれない。
 しかし、私は、そういうことを言ったこともないし、書いたこともない。それどころか、立地点の住民の反対を尊重すべきだと、常日頃から主張してきた。また、すでに物故したが、反対派の大立者の高木仁三郎は、私の中学の同級生で、同じ大学に入った間柄であり、かれが反対意見を発表できないような事態になったら、私と意見が異なってはいても、かれの言論の自由を守ると宣言してきた。さらに、原発に反対する自由のない国は、原発を建造すべきではないと、何度も書いたことがある。
 ことは、原発賛成、反対という問題ではない。こうした報道をするからには、私をふくめて、そこに記された十人が、そういう発言をしたかどうかを、取材確認する必要がある。
 ところが、私には、まったく取材は来ていない。そこで、私は、雑誌「諸君」のページを借りて、当時人気だった筑紫哲也編集長宛てに、私が、いつ、どんなメディアで、そういう発言をしたかと、問い合わせた。もちろん、そんな発言など、あるわけがない。筑紫編集長の回答は、のらりくらりと、話題をすりかえることに終始した。
韓国人と〝あの新聞〟の共通点
 つまり、あの大新聞は、取材も検証もしないで、主義主張に基づくフィクションを、報道の形を借りて、読者に垂れ流しているわけだ。原発などに賛成し、傲慢な発言をする非国民が、十人必要になった。そこで、関係ない人間もふくめて、誌上でさらし者にしたわけだ。つまり、原発推進めいた意見を、圧殺する方針だったのだろう。
 いわゆる従軍慰安婦の報道と、まったく同様の構造である。
 従軍慰安婦なるフィクションを、あたかも事実であるかのように、売りまくって読者を欺いた責任は、まさに重大である。しかも、��韓関係を破壊したばかりでなく、全世界にわたって日本の名誉を泥にまみれさせた罪科は、きわめて悪質である。
 誤報ではなく、明らかに意図的な捏造である。この捏造が,韓国に飛び火すると、さらに拡大していく。その意味では、この大新聞の離反策に、うまうまと乗せられた韓国も、いわば被害者と言えるかもしれない。主義主張を真っ向から掲げて、事実の確認も検証もしない韓国の国民性と、あの新聞の社是(?)は似ているかもしれない。
 私は、過去四十数年にわたって、韓国と関わってきた。最初、自宅ちかくの笹塚の小さな教室で、韓国語を学びはじめた一人に産経新聞の黒田勝弘さんがいる。あちらは、ソウル在住が長いから、私など到底及ばないネィティブスピーカーに近い語学力だが、スタートは一緒だった。
 以後、折々に韓国関係の著書を上梓してきたわけだが、その都度、親韓派、嫌韓派などと、勝手に分類されてきた。例の大新聞もふくめて、日本のマスコミが北朝鮮に淫していたころは、日本のマスコミ批判とともに、韓国擁護の論陣を張り、顰蹙を買った。また、韓国の反日が、度を過ぎたと思えば、遠慮なく韓国批判を展開してきたつもりである。
 国際親善には、王道はないから、知る以外に近道はないと考え、「日本人と韓国人、ここが大違い」(文藝春秋)「いま韓国人は、なにを考えているのか」(青春出版社)など、比較文化論ふうの著書もあり、口はばったい話だが、日本人の韓国理解に貢献してきたつもりである。
 もちろん、私の独断と偏見に堕す危険があるから、多くのコリア・ウォッチャー仲間から、助言や意見も頂戴し、拙著の間違いも指摘された。
転向左翼の韓国利用
 いわゆる韓国病にはまりかけていたとき、早大名誉教授の鳥羽欽一郎先生から、たしなめられた。「豊田さん、日本人と韓国人は、おたがい外国人なのだから、同じ視点に立つということはできませんよ」と、確か、こんなことを言われた。そのときは、むっとしたが、先生は、韓国にのめりこみすぎている私に、ブレーキをかけてくださったのだ。
 70年代、韓国にまじめに取り組もうという日本人は、それほど多くはなかった。田中明氏のような大先達のほか、外交評論の大御所岡崎久彦氏にも、お目にかかり、励ましを頂戴したことがある。外務省在勤中で、本名をはばかったのか、「隣の国で考えたこと」を、長坂覚のペンネームで、早い時期に刊行されている。現在は、本名で再版されているから、入手可能な名著である。
 また、産経新聞の柴田穂さんも、大先達の一人だった。韓国関係の会合で、何度か、お目にかかり、アドバイスを頂戴したこともある。なにしろ、中国政府に批判的な記事を書き、産経新聞が北京支局の閉鎖に追いこまれたとき、支局長として残務を整理し、従容として北京を退去された剛直な方である。支局閉鎖という事態を招いたのだから、本来なら責任重大なはずだが、言論の自由を守ることを優先したのである。
 それに引き換え、当時あの大新聞は、中国べったりの記事を、垂れ流しつづけていた。この新聞社には、Aという名物特派員がいた。中国通をもって自任していたはいいが、他社の記者まで、このA特派員に、お伺いを立てるようになったという。どこまで書いたら、中国政府の逆鱗にふれるか、A特派員に、判断を仰ぎに来たのだ。早い話が、あの大新聞が、日本の中国報道を検閲していたことになる。
 70年代、北朝鮮一辺倒だった日本の文化ジャーナリズムの世界で、一つの伝説があった。いわゆる進歩的文化人は、自分の名前だけ、ハングルで書けたというのである。申し合わせたのかもしれないし、あるいは、あの大新聞の関与があったのかもしれない。現在からは、信じられない話だが、ハングルで名前を書いてみせるだけで、朝鮮問題(?)の権威扱いされたそうである。
 しかし、現在の日韓の確執を眺めると、妙なねじれ現象がある。竹島問題にしても、従軍(・・)慰安婦(・・・)にしても、韓国側と共同歩調を取っているのは、70~80年代、あれほど韓国を独裁国家扱いして、忌み嫌っていた進歩的文化人なのである。節操もなにも、あったものではない。日本叩きに資する、あるいは、商売になると判ったら、かつて贔屓にした北朝鮮を見捨て、韓国に媚びるのだから、こういう世渡り上手と戦うのは、容易なことではない。
事実伝えることが真の親善に
 翻って、現在の韓国である。反日は、狂気の沙汰の域に達している。これには、日本世代が現場から退き、あるいは物故したという事実が、おおいに関係している。私が、多くの教示を受けた方々は、もし存命なら、こんなことを言うと怒られるかもしれないが、日韓双方の美点を兼ね備えておられた。
 もう一歩、踏み込んで言えば、日本の教育を受けた方々だった。立派な方というと、ややニュアンスがずれるが、韓国語でいう「アルンダウン・サラム」という方が多かった。こういう世代が亡くなり、反日が質量ともに、変わってしまった。まず、かれらが考える仮想の日本人に対して、際限なく敵意をむき出しにした、いわばバーチャル・リアリティの反日になっている。
 日本では、韓国人は、険しいイメージでとらえられがちである。反日の激しさを見れば、間違いではないが、一面的に過ぎる。日頃の生身の韓国人は、お喋りで、陽気で、図々しいくらい人懐こい。日本人は、以心伝心を理想とする文化を生きているが、韓国人は、口にしたことが全てである。発信能力を磨かないと、生きていけない社会である。たとえ嘘でも、自分の主義主張を正面に掲げないと、たえず足をすくわれる危険に直面している。
 そのため、国際的には、日本人より判りやすいと定評がある。よく見てもらえれば、日本人の誠意が通じるはずだが、韓国人のほうが声が大きいから、知らない人が聞くと本気にする、と言った程度には、説得力を持ってしまう。
 大方の日本人の対韓姿勢は、「また、韓国人が騒いでおる。放っておくのが、大人の態度」といったものだろう。これが、日韓摩擦を拡大した主な原因のひとつである。日本からの反撃がないから、向こうは、さらに反日をエスカレートさせるのだ。
 日本は、和の社会だとされる。これには、聖徳太子が引き合いに出されることが多いが、贔屓の引き倒しの面がある。有名な十七条憲法の第一条が、はきちがえられている。太子は、談合のような和を勧めているわけではない。あくまで論じてからと、なれあいを戒めている。
 まさに韓国相手では、論じなければ駄目なのだ。相手は、合理的な議論が苦手だから、徹底して、論拠を上げて、言い負かすつもりで、追いつめなければ、非を認めない。一見、乱暴なようだが、反日が、高くつくという事実を、知らしめないかぎり、韓国の反日は、拡大するばかりで、絶対に解消しない。
 現在の韓国は、日本世代がいなくなり、歯止めがかからなくなっている。さながら李朝時代の政争のような、権力闘争すら起こりはじめている。日本が、関わりを持つ以前の時代へ、先祖がえり(atavism)してしまった感がある。ここに乗じて、あの大新聞が、新たなテーマで反日の捏造を加えて、逆襲してくる畏れもある。いや、その萌芽は、すでに現れている。
 私の「どの面下げての韓国人」(祥伝社)は、やや刺激的になるのを承知のうえで、出版社と協議して決めたタイトルである。さっそく、左翼弁護士が、噛みついてきた。ヘイトスピーチだというのである。しかし、ネットでは、すぐ反論されている。つまり読んでいないことを白状したようなものだというのである。なかには、あの本は韓国に同情しているのだ、とする感想もあった。こういう応援は、ありがたい。
 私は、あるときは親韓派、あるときは嫌韓派というレッテルを、貼られてきた。私は、日本人であり、日本を愛している。その都度、批判すべきことは、日本であれ韓国であれ、批判してきたつもりである。
 あの大新聞は、苦境を打破するため開き直って、韓国批判の本には、すべてヘイトスピーチだという烙印を押して、葬り去ろうというわけなのだろう。また、いわゆる従軍慰安婦の仕掛け人の元記者の就職先や自社に、脅迫があったという事実をもとに、言論の自由を盾にして、被害者の立場へ逃げこもうとしている。自分が、強大な権力をふりかざして、異なる言論を圧殺してきたことには、すっかり頬かぶりしている。
 韓国には怒りを込めた反論を、あの大新聞には、厳しい追及の手を緩めてはならない。それが、ほんとうの日韓親善につながるからだ。
 とよた・ありつね 昭和13年前橋市生まれ。父の医院を継ごうと医者をめざし、合格した東大を嫌い慶應大に入るも、目標が変わり武蔵大に入学。第1回日本SFコンテストなどに相次いで入賞して在学中の37年作家・シナリオライターとしてデビュー。手塚治虫のもとで「鉄腕アトム」のシナリオを二十数本担当。「スーパージェッタ―」「宇宙少年ソラン」の脚本も手掛ける。『倭王の末裔 小説・騎馬民族征服説』が46年にベストセラーとなる。47年東アジアの古代史を考える会創設に幹事として参画。50年「宇宙戦艦ヤマト」の企画原案、SF設定を担当。SF作家クラブ会長、島根県立大学教授などを歴任。63年オートバイ日本一周を達成。近著に『日本の原発技術が世界を変える』『どの面下げての韓国人』(ともに祥伝社新書)など。
※別冊正論23号「総復習『日韓併合』」 (日工ムック) より転載
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kyokantheaternews · 3 years
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【共感シアターナビ】たくさんの投稿頂きました!「おすすめしたい日本のアニメ映画」投稿全部ご紹介!
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先日13日火曜日の21時より放送された共感シアターナビの中で、視聴者の皆さんの声を紹介するコーナー「俺たち共感族!」のお題は「おすすめしたい日本のアニメ映画」でした。 募集をかけたところ、多くの視聴者から熱いコメントをたくさん頂きました!ただ、番組内では放送時間の都合上、全部を紹介することは出来ませんでした。 そこでこの度、放送内ではご紹介できなかった投稿を含めて、視聴者の皆様から頂いた全投稿をこちらに掲載させて頂きます! 視聴者の皆様から寄せられた熱い投稿、ぜひご覧ください!!
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きょたさん
■作品:劇場版シティーハンター<新宿プライベートアイズ> ■おすすめ理由 2019年に公開されたシティーハンター最新作。前作から20年ぶりに作られた新作(パラレルワールドのエンジェル・ハートは除く)シティーハンターは好きだが昔のコンテンツというイメージだったので、正直期待しないで観に行ったが面白すぎて度肝を抜かれた。感想としてはとにかく完璧にシティーハンターをしてるシティーハンターだった。無駄な要素を一切入れていない。 作品のノリや雰囲気、キャラの性格が当時と変わってないから安心して観れる。何より監督や声優が当時のままなのが一番嬉しい!平成最後に神谷明主役のアニメをぶちこんでくれたのは最高でした。山寺宏一、山崎たくみ、茶風林など当時エキストラで出演してた声優が今回メインキャラになったのは感慨深いものがある。 ギャグシーンも多めで、獠は5分に一回くらいはもっこり言ってたイメージ。もちろん戦闘もバッチリ決める!ゲスト芸能人声優が邪魔してないのもGOOD。話題性ばかりで演技がド下手な「大物ゲスト俳優(笑)」を使う作品が多いが、今回のゲストヒロイン役の飯豊まりえが上手くて物語に集中できた。 そしてシティーハンターはあくまで獠と香が主役だからシナリオ的にもでしゃばってない他にも往年のファンのテンションが上がる要素が多くて飽きさせない。特に音楽。シティーハンターシリーズの歴代主題歌が随所で流れるが、タイミングも曲のチョイスもバッチリ過ぎて聴いた瞬間目頭が熱くなった。 原作を知ってるならあっとなる小ネタも多くて探すのが楽しい。劇場公開時よく言われてた感想で「昔馴染みのラーメン屋に入ってラーメンを頼んだらラーメンが出てきた」というのが秀逸。確かに最近はラーメンを頼んだら冷し中華が出てくる作品が多い。そんななかこの作品が完成したのはまさに奇跡としか言いようがない。 一見するとファン向けな作品のイメージだが内容は「いつものシティーハンター」なので入門書としてもオススメ。映像面もシナリオも完璧で、まさにシティーハンターの最高傑作と呼ぶにふさわしい作品だった。 ■作品:デジモンアドベンチャー ぼくらのウォー・ゲーム! ■おすすめ理由 デジモンアニメの中で一番好きな作品。40分という短い尺の中に恋愛、戦争、生活、友情、勝利など様々な要素が詰まってる映画。最初はいたずらメールを送るくらいのコンピューターウィルスがどんどん進化していき、レジの代金をバグらせてとんでもない代金にしたり、交通機関を乗っ取って電車を暴走させたり少しずつ世界を混乱させていく…… それを阻止するため主人公達が立ち向かうというストーリー最終的には核ミサイルまで発射されてしまい、日本を壊滅させようとするスケールのデカさにビックリしたこの映画に「島根にパソコンあるわけないじゃん」という台詞があるが島根県出身の身として言わせてもらうと、一応パソコンは当時から島根にもあったぞ~~!!
鶴岡亮さん
■作品:クラッシャー・ジョウ ■おすすめ理由 僕がオススメしたいアニメ映画は「クラッシャー・ジョー」です。本作の舞台は2160年の宇宙で、主人公ジョウ率いる宇宙の何でも屋の「クラッシャー」がある依頼を受け、壮大な戦いと陰謀の渦に巻き込まれていくというスペースオペラものです。 このアニメの見所は何と言っても監督のみならず、作画監督も務めた安彦良和さんを始めとするアニメーター陣による圧倒的な作画力です。河森正治(かわもりしょうじ)さんデザインのスターファイターが宇宙空間で繰り広げる激しいドッグファイトシーンや、カーチェイスやクリーチャーを相手にした豊富なアクションシーン、人間の身体の動きを滑らかに描いたガンファイトシーン等が、80年代アニメブーム時代の高クオリティな作画で楽しめます。ストーリーも若干フィルムノワールを思わせる敗者の哀愁を漂わせる面があり、一見スタンダードなスペースオペラという体制をとりつつも、そういう所を取り入れてくるのが学生運動経験者の安彦良和監督らしく面白い所です。 後、一部の人にしか判らないでしょうが、安彦良和さん作画の「ダーティペア」が一瞬見れる所も今作の見所です! 高クオリティな作画を楽しみたい方には楽しめる作品だと思いますので、未見の方が居たら是非ともご覧下さい! ■作品: 機動警察パトレイバー2 the Movie ■おすすめ理由 この作品は言わずと知れた押井守監督作品のアニメ映画。 本作は90年代に作られた作品で、当時日本で問題になっていた自衛隊の海外派兵問題や、それを是とする日本国の情勢に対して、押井監督の鋭い指摘が冴えまくった作品です。 横浜ベイブリッジにミサイル発射テロが行われるシーケンスに代表される印象深いカットワークてんこ盛りの本作ですが、中でもテロに対して東京に非常事態宣言が発行され、新宿、渋谷、池袋に自衛隊が駐留し、「日常から非日常」へと転換していくシーケンスは非常にインパクトがあり一見の価値があります。 奇しくも、この映画が公開された1993年の2年後の1995年にオウム真理教による「地下鉄サリン事件」が発生し、「このアニメに影響されたテロでは無いか?」と物議を醸し出しだす事になりました。 社会、こと日本について描いた作品というと、庵野秀明監督の2016年の「シンゴジラ」が挙げられますが、本作「機動警察パトレイバー2 the Movie」は押井守監督が90年代の日本の状況を克明に描き出し、予言とも言える快作を作り上げました。 ポリティカルサスペンスとして非常に完成度が高く、90年代という日本の時代性を語る上で外せない作品だと思うので、未見の方は是非ともご覧下さい。
バッファロー・ビルさん
■作品:今敏監督作品「パーフェクトブルー」 ■おすすめ理由 アイドルを卒業し、女優への転身を決意した主人公。彼女は事務所の要望となりたい自分との狭間で思い悩むようになります。現実と虚構が曖昧になっていく中、彼女にストーカの影が・・・最近では実写でもあまり見かけなくなったサイコホラーという題材。 90年代はセブンとか羊たちの沈黙とかやたら多かったですが、人間というものの気持ち悪さをここまで、それもアニメで本格的に描いた作品はあまりないでしょう。 98年の作品ですが、インターネット、芸能界の思惑、ストーカー等、現代でも十分通じる物語です。この作品がダーレン・アロノフスキー監督の「レクイエム・フォー・ドリーム」「ブラックスワン」に影響を与えたことは有名です。2010年にお亡くなりになった今敏監督。訃報を聞いた時はとてもショックでした。本当に残念でなりません。
肴はサラダチキンでいいさん
■作品: OVA版ブラックジャック カルテX  しずむ女 ■おすすめ理由 皆さんに見てもらいたいアニメで考えた結果これしか思いつきませんでした。また変化球気味で映画ではなくVシネマアニメですが、ギリOKという事で。 今作は手塚治虫先生の原作話で週刊チャンピオンで連載される訳でしたが、当時の公害描写などの理由でお蔵入りとなった話がOVAでアニメ化された物です。 ブラックジャックは医療アニメである前にヒューマンドラマだという事が分かる素晴らしい作品です。共感族の皆さんにも機会があれば是非見てもらいたいですね!^_^
nksさん
■作品:デジモンアドベンチャー ぼくらのウォー・ゲーム! ■おすすめ理由 本作は知る人ぞ知る細田守監督の出世作で、東映アニメ祭りで上映された、40分の短編映画です。 アニメーションの革新性、主要登場人物8人の手際良い配置、適度なギャグ、魅力的なアクション、どれを取っても20年前とは思えない出来の良さです。  スピルバーグが〈映画うま男〉なら、細田守は〈アニメうま男〉といったところだと思います。 細田監督がメジャー化してからの作品である「サマーウォーズ」は、実質本作のリメイクですが、個人的にはラスト10分でミサイルが着弾するスリルが現実の上映時間10分とぴったりリンクする所など、完成度において「ぼくらのウォーゲーム」の方が優れていたと思います。
■作品: 海獣の子ども ■おすすめ理由 本作は、主人公の少女(cv.芦田愛菜)が魚と会話できる不思議な力を持った少年と出会い、ひと夏の冒険を通じて海/地球/宇宙の神秘と生命の起源を知るという、ジュブナイルものかと思ったら「2001年宇宙の旅」だった、という映画です(なに言ってるか分からなかったらスミマセン。)。 ストーリーが難解でつまらないといった評価が多いですが、2001年やプロメテウス、エヴァが好きな私にとっては、大好物の作品でした。 しかしなんといっても本作最大の特徴は、一枚一枚が水彩画であるかのような、圧倒的な画力です。日本で同時期に公開された「スパイダーバース」と比較しても、勝るとも劣らない画の密度で、ハリウッドからの挑戦状に日本から回答を示すなら本作「海獣の子ども」だと思います。 2019年10月、制作会社のスタジオ4℃でアニメーターの残業代未払い問題が報道されました。そもそも本作は企画から完成まで6年を要した労作であり、そりゃ作り手が何人か倒れててもおかしくないよなと思いました。が、一観客として、「その成果はちゃんと届いてるよ!!」と、改めてアニメーターさん達に拍手を送りたいと思います。
甘えん坊将軍ユウスケさん
■作品:クレヨンしんちゃん~嵐を呼ぶジャングル~ ■おすすめ理由
しんちゃん映画だときっとオトナ帝国と戦国が挙げられるでしょうが、あの二作はアニメ映画としては最高ですが、しんちゃん映画としては言いたいことがあるので敢えてあの二作の直前の本作をピックしました。 擬似的な親離れ家族離れ体験としていつもの五人でジャングル探検してギャグシーンを満載にした前半(原恵一監督は結構このシチュエーショ���やってる気がするのですが、このテーマ好きなんですかね?)。一人の兄としてひまわりちゃんを守って頑張る中盤。徹底的にまたギャグに振ったみさえ&ひろしの救出シーン。で、本作最大の見処であるしんちゃんの憧れのヒーローであるアクション仮面のくだりです。 単純な強さで言えば、悪役のパラダイスキングに劣ってしまうアクション仮面ですが、皆の応援、特にどんな時でも憧れのヒーローとして慕ってくれるしんちゃんの声援と、悪役にはない優しさがあるからこそ勝つと言うちゃんと「正義は勝つ!!」のロジックを下手なアメコミ映画よりちゃんとやっている点。 また、ハリボテの城に住み、「力」は手に入れたが、また本当の意味で声援を送ってくれる者の居ない文字通り「猿山の大将」である、ある意味でヒーロー俳優としてあり得たかもしれない別視点の自分が最大の悪役として立ちはだかる点。 これら昨今のアメコミ映画に有りそうな題材をアメコミブームの10年近く前に既に、ちゃんとやっていると言う点ではヒーロー映画としての完成度は抜群に高いとと言いたいです。また、最後はバッチリお下劣ギャグやナンセンスギャグで締めてくれるのも最高ですね。 オトナ帝国や戦国、ロボとーちゃんばかりが、もてはやされがちですが、ギャグとアツい展開のバランスが取れてるクレしん映画としておすすめしたい一本です(特に特撮ヒーロー好きなら大西さんにもおすすめです。既にご覧になられてるかもしれませんが…笑)。
nikiさん
■作品: 時空の旅人 ■おすすめ理由 『火の鳥・鳳凰編』と同時上映の80年代角川アニメです。子供のころ、戦国時代が好きだったこともあり、劇場で見ました。こういったガキの時に見て面白かった作品が今見ても面白いのか?という疑問は昔の作品にはつきまとうと思うのですが、『時空の旅人』は大人になってから見ても面白かったです。 萩尾望都のキャラクターデザインの作画、竹内まりやの曲もいい感じです。ただ、ストーリーが原作ほど緻密ではない点、唐突に挟まれる角川春樹の俳句には目をつぶってください。
きゃわぐちさん
■作品:第5位 「帰ってきたドラえもん」と「サマーウォーズ」をセットで挙げます! ■おすすめ理由 13年前、まだ映画で涙した経験のない、鉄仮面だった高校生の私を大号泣させたのが、アメトークのドラえもん芸人で見た「帰ってきたドラえもん」でした。以来、涙腺がブッ壊れ、ついに映画館でも初めて泣いてしまったのが「サマーウォーズ」の花札のシーンです。 当時はセカチューや「1リットルの涙」から続いていた闘病モノブームもあって、そういう“お涙頂戴”がことさら多かった気がするのですが、“悲しさ”ではない感動で泣く、という経験ができるのもこの2本のいいところですね。
■作品: 第4位 「この世界の片隅に」 ■おすすめ理由 第4位は一転して底無しの“悲しさ”に泣けてしまう「この世界の片隅に」です。戦争モノのアニメ映画といえば、「はだしのゲン」や「火垂るの墓」や、いわゆるグロくて強烈な作品は数あれど、こんなにも穏やかな、それでいて辛い作品があったでしょうか!? 全編にわたりほぼほぼ戦闘シーンがなく、主人公・すずさんのおっとりした性格も相まって、日常系のアニメを観ているかのような気分になりそうな本作。しかし確実に戦時中である、というギャップが、どうしようもなく悲しい。去年の終戦記念日に初めて観たのですが、すずさんの穏やかな暮らし、健気な性格を見ていると「戦争さえなければ、平和に幸せに暮らせていたはずなのに」という思いが込み上げてきて、クライマックスでも何でもないシーンで涙が止まらなくなりました。 そして、当時の日本には何万人、何十万人という“すずさん”がいたのだという事実が現実味を帯びて感じられます。紛れもなく、映画史に残る名作です。 ■作品:第3位 「 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」 ■おすすめ理由 これは「クレヨンしんちゃん」という子供向けコンテンツを、大人の視聴にも耐えられる、むしろ大人こそ感動できる作品へと昇華させた金字塔的作品です。クレヨンしんちゃんの映画として必須な“お下品な笑い”はふんだんに盛り込んでおきながら、成長して見返すと泣かずにはいられない感動もある。 見る年齢によって、泣き所が変わってくるのもポイント。いつ観ても笑って泣ける、最高に楽しい映画です!こっちは何回も観るからブルーレイ化してくれ! ■作品:第2位 「 ルパン三世 カリオストロの城」 ■おすすめ理由 挙げるまでもない名作ですが「ルパン三世 カリオストロの城」! ・言わずもがな抜群の完成度。 ・テレビで流れていればつい観てしまう ・何度も観ているから安心感があるのに、何度観ても飽きのこない面白さまさにアニメ映画界の「ターミネーター2」! 今さら観てない人はいないと思いますが、「クラリスって誰?」という人がいないとも限らないので、念のため第2位にランクインです。 ■作品:第1位 「 さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」 ■おすすめ理由 そして第1位は、完全に私の趣味「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」で決まりです!もちろん世代ではなく、小学生のころケーブルテレビで父に見せられたのがきっかけ。テレビ版も見たことがなく、最初に触れたヤマトが劇場版2作目の“さらば”。 まだアニメといえばドラえもんやクレヨンしんちゃんやコナン、あるいは少年漫画の単純な勧善懲悪しか知らなかった私に、いきなりの“さらば”はまさに世界がひっくり返るような衝撃でした。見終わったあとテレビの前で呆然としていたことは、20年以上経った今でも覚えています。ボロボロになっても戦い続ける、ヤマトの不屈のカッコよさ、白色彗星帝国の圧倒的な強さと絶望感、クライマックスの激闘、そしてきゃわぐち少年を衝撃の渦に呑み込んだラスト。最高と言うほかありません! ただ、ヤマトに限りませんが、大人になってから初めて触れると、どうしても奥にいる製作者や、話の辻褄ばかりに目がいってしまって、純粋に作品の世界に没頭することが難しくなるもの。でも子供の頃に観たものなら、大人になってもずっと“あの頃”のまま楽しむことができます。 共感シアターをご覧の皆さんで小さなお子さんを持つ方がいたら、早いうちに「さらば宇宙戦艦ヤマト」を見せることをオススメします。あと「あしたのジョー」。 余談ですが、共感シアターではだ〜れも観てない「鬼滅の刃」、僕は初日に行ったしブルーレイも予約したし、結構感動しました(笑)
アレスさん
■作品:「 マジンガーZ対暗黒大将軍」 ■おすすめ理由 無敵のスーパーロボットと思ってたマジンガーZが新たに現れたミケーネ帝国の戦闘獣軍団にボロボロにされるのは幼心にそれはもうショッキングでしたが、そのピンチを救うべく飛んできたグレートマジンガーの無双ぶりはそれを上回るインパクトでした。 「マジンガーZの兄弟さ」とだけ言い残し飛び去って行くラストシーンの格好良さはアニメ映画の括りだけじゃなく、映画のマイオールタイム・ベストシーンです。
ぜんぞう
■作品:「 餓狼伝説/劇場版」 ■おすすめ理由 さて、おすすめしたい日本のアニメ映画ですが、僕のおすすめ日本アニメ映画は、「餓狼伝説/劇場版」です。「AKIRA」や「オネアミスの翼」等、大好きなアニメ映画は沢山ありますが、他の皆様のおすすめにあがりそうなので、あまり語られることのないであろう、「餓狼伝説/劇場版」をおすすめしたいと思います。 制作当時、隆盛を極めたSNK製のビデオゲーム「餓狼伝説」シリーズを基にした、劇場版ならではのスケールの大きいオリジナルストーリーがとにかく魅力的。ゲームでお馴染みのキャラクター達が、伝説の闘神の鎧を巡ってインディ・ジョーンズよろしく遺跡を巡り、謎を解き、鎧を狙う敵対勢力と超人バトルを繰り広げる展開は圧巻の一言。 ダイナミックなアクションとミステリアスなストーリーは、これぞ日本アニメ!「ヘルボーイ/ゴールデンアーミー」にも影響を与えた(と勝手に推測している)クライマックスも含め、見所満載のスペクタクルアニメ映画です。ぜひぜひ、ご鑑賞ください。
ヱキストラさん
■作品:クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶ夕陽のカスカベボーイズ(2004年) ■おすすめ理由 クレヨンしんちゃん界隈の映画秘宝こと「クレヨンしんちゃん研究所」で絶賛された本作品。往年のマカロニ・ウェスタン/アウトロー作品への愛を異常なほど感じさせる本作は、これまでの明るい雰囲気を出さないためか、オカマキャラを一切登場させない徹底ぶり。 「荒野の七人」「夕陽のガンマン」「マッドマックス」「ローン・レンジャー」など自分がわかるだけでも数作品のオマージュ/パロディが随所に散りばめられていて、その上、元ネタを知らなくても楽しめるクオリティの高さでした。加えて最後のオチは、"映画"というギミックを笑っちゃうぐらい見事に活用! 上映時間は95分で、Netflixにも公開されているので、映画好きな共感族の皆さんにも、是非一度ご覧いただきたい作品です( ´-`)
リノス屋さん
■作品: バンパイアハンターD (英題:Vampire Hunter D: Bloodlust) ■おすすめ理由 古典的なモンスターホラー要素に、SFファンタジーや西部劇の要素も併せ持つ作品です。 舞台設定は、遥か未来。“貴族”と呼ばれる吸血鬼に支配された世界で、人類は家畜同然な存在に。貴族達に怯えながらも、なんとか生活を保っている人類に味方をするのが、人間と吸血鬼の混血で、吸血鬼ハンターを生業にしている、主人公“D”。全身黒ずくめで、大きな旅行帽を被り、背中に長い刀を背負い、左手には人面瘡(じんめんそう)を宿し、顔立ちは美形という、一見地味に見えてカリスマ性のあるこのキャラクターがまず魅力的です。 映画の内容は、名門と云われるエルバーン家の少女が、貴族に誘拐される所から物語が始まり、それを知ったエルバーン家の者が、主人公Dや人間の吸血鬼ハンターいち味を雇い、少女救出へと向かわせます。後に、『マトリックス』のオムニバスアニメ『アニマトリックス』の一作品を手掛ける事になる、監督の川尻善昭(かわじりよしあき)さんが描く、道中でのアクション等見所が随所にあり、混血な故に貴族からも人間からも毛嫌いされ、しかしながらも奮闘する主人公Dの孤独な戦いもドラマに絡んできて、終盤には思わず涙を誘われます。 又、この作品の公開時は、英語版での上映のみでしたが、ソフト化の際には、日本語版も発売され、声優ファンには堪らない錚々たるメンバーがキャスティングされております。特に、主人公の左手に宿る人面瘡(じんめんそう)の声を、永井一郎(ながいいちろう)さんがアテられていて、無口な主人公とは対照的に、ユーモアや皮肉に溢れるキャラクターを演じられていたのが印象的でした。『バンパイアハンターD』は、映画以前にもOVAやオーディオドラマ、プレステ用ゲーム等のメディア展開も多くあります。 何より、菊地秀行(きくちひでゆき)さん原作の小説には、キャラクターデザイン兼挿絵をファイナルファンタジーシリーズのイラストでも有名な、天野喜孝(あまのよしたか)さんが手掛けられていて、天野さん自身の個展でも度々、同作品のイラストも出展している為、おそらく共感シアターの皆様も、どこかで一度は“D”を目にしたことがあるかもしれません。
孔明(MOVIE TOUCH)さん
■作品: トランスフォーマー ザ・ムービー 1986年公開作品  ■おすすめ理由 1984年にアメリカでトランスフォーマーの玩具が発売され、テレビアニメ放送もあって大ヒット。それを受けて製作されました。テレビアニメ同様に日米合作で、作画は主に日本の東映動画(現:東映アニメーション)が担当。最初のテレビアニメ「戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー(通称:初代)」の続編ですが、本作は当時の子供達に深い傷痕を残しました。 開始30分以内に玩具の在庫処分のために初代に登場したトランスフォーマーの殆どが無惨にも殺されていき、同時に新商品の宣伝のために新しいトランスフォーマー達が主役の物語が容赦なく始まるという衝撃的な内容。総製作費40億円(尚、半分しか使い切れなかった)をかけた本作はCGと���間違える程の神作画が終始続き、日本のアニメーター達の底力を見られます。特に星帝ユニクロンの変形シーンはロボットアニメ史に残る神シーンです。ジャド・ネルソン、レナード・ニモイ、エリック・アイドル、オーソン・ウェルズらが声優として出演。 また本作はオーソン・ウェルズの遺作でもあります。勢いある80年代を象徴するような本作のアルバムは映画アルバムでもベストに入れたいほどの名盤で、特に主題歌「The Transformers Theme」と挿入歌「The Touch」は海外アニソン屈指の名曲。因みに劇伴は「ロッキー4/炎の友情」のヴィンス・ディコーラ。日本は玩具発売元であるタカラ(現:タカラトミー)の大人の事情で劇場公開に至らなかったものの、後にチャリティ上映やソフト販売が一応行われました。 現在国内で合法的に見る方法は北米版ブルーレイ(勿論日本語音声も字幕も無し)を海外から取り寄せる以外ほぼ皆無で、他はネットに違法アップされた物を見るしか方法がありません。しかしタカラトミーもブルーレイ発売や配信をする気が無いのにも関わらず本作の玩具を出しまくっているので事実上黙認状態(因みに今月も発売予定あり)。実写映画版シリーズで本作から引用されているシーンや台詞、設定がかなり多いので是非見てください。 ■作品: ガールズアンドパンツァー 劇場版  ■おすすめ理由 ある意味戦車アニメ版ワイルドスピード。その熱さは実際に鑑賞した多くの映画ファンから同年公開の「マッドマックス 怒りのデスロード」に匹敵すると言われた程。 砲撃戦のみならず戦車で戦車を投げ飛ばして攻撃、戦車同士で格闘戦、ジェットコースターのレール上で戦車チェイス、窮地を救う観覧車先輩などなど、「戦車でそんな使い方アリ?!」のオンパレード!仲間はファミリー同然に面倒を見る!一度戦った相手はマブダチ!応援大使は蝶野正洋!一見あり得ない戦車戦の裏には膨大なリサーチに裏付けられた世界トップクラスの再現度を誇る戦車描写があり、リアリティとファンタジーが見事に融合した戦車映画になっているのです。 特攻野郎Aチーム的な「どんな奇策でその場を乗り切るか」という展開も見どころです。オーケストラで収録された劇伴も作品を盛り上げる良い仕事ぶりを発揮し、オリジナル楽曲以外にもリパブリック賛歌やフニクリ・フニクラなど様々な国の曲が使われるので大変勉強になります。共感族なら一度は聞いた事があるであろう、あの映画にも出てきたあの楽曲も使われます。また劇中歌「おいらボコだぜ!」は人生何度ボコボコにされても立ち上がる力をくれる素晴らしい歌です。 現在劇場用OVA最新作「ガールズアンドパンツァー最終章 第3話」が公開中。それに合わせてNetflix、dアニメストア、Huluなどの各配信サービスにて本作ほかシリーズ作品が見放題配信中、更にシネマサンシャイン系列劇場などでリバイバル上映中です。以前アニメ業界にいたのですが、業界人として見ても手描きアニメと3DCGを組み合わせる現代のアニメの中でもトップクラスの作品と言える程クオリティは高いと思います。また、私が業界にいた頃にお世話になった方々が関わっていますので、是非ご覧いただければと思います。 因みにガルパンのムック本「不肖・秋山優花里の戦車映画講座」は監修/執筆が青井邦夫さん、執筆協力の1人が高橋ターヤンさん!ガルパンは実質共感シアター案件では?! 以上になります! 今回は「日本のアニメ映画」というように限定しましたが、アニメ映画はまだまだたくさんありますので、また皆様からのお声を募集したいと思います! お楽しみに!!
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skf14 · 3 years
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12150006
軽快なメロディが音割れしていることにきっと全員気付いているはずなのに、誰も指摘しないまま、彼は毎日狂ったようにそれを吐き出し続けている。
時刻は朝の8時過ぎ。何に強制されたでもなく、大人しく2列に並ぶ現代の奴隷たち。いや、奴隷ども。資本主義に脳髄の奥まで犯されて、やりがいという名のザーメンで素晴らしき労働という子を孕まされた、意志を持たない哀れな生き物。何も食べていないのに胃が痛い。吐きそうだ、と、50円のミネラルウォーターを一口含んで、押し付けがましい潤いを乾く喉に押し込んだ。
10両目、4番目の扉の右側。
俺がいつも7:30に起きて、そこから10分、8チャンネルのニュースを見て、10分でシャワー、10分で歯磨きとドライヤー、8:04に自宅を出て、8:16に駅に到着。8:20発の無機質な箱に乗る、その最終的な立ち位置。扉の右側の一番前。黄色い線の内側でいい子でお待ちする俺は、今日もぼうっと、メトロが顔を覗かせるホームの端の暗闇を見つめていた。
昨日は名古屋で人が飛び込んだらしい。俺はそのニュースを、職場で開いたYahoo!のトップページで見かけた。群がる野次馬が身近で起きた遠い悲劇に涎を垂らして、リアルタイムで状況を伝える。
『リーマンが飛び込んだ』
『ブルーシートで見えないけど叫び声聞こえた』
『やばい目の前で飛び込んだ、血見えた』
『ハイ1限遅れた最悪なんだけど』
なんと楽しそうなこと。まるで世紀の事件に立ち会った勇敢なジャーナリスト気取り。実際は目の前で人が死ぬっていう非現実に興奮してる変態性欲の持ち主の癖に。全員死ね。お前らが死ね。そう思いながら俺は、肉片になった男のことを思っていた。
電車に飛び込んで仕舞えば、生存の可能性は著しく低くなる。それが通過列車や、新幹線なら運が"悪く"ない限り、確実に死ぬ。悲惨な形を伴って。肉片がおよそ2〜5キロ圏内にまで吹き飛ぶこともあるらしい。当然、運転手には多大なトラウマを植え付け、鉄道職員は線路内の肉片を掻き集め、乗客は己の目の前で、もしくは己の足の下で、人の肉がミンチになる様を体感する。誰も幸せにならない自殺、とは皮肉めいていてよく表現された言葉だとつくづく思う。当人は、幸せなのだろうか。
あの轟音に、身体を傾け頭から突っ込む時、彼らは何を思うのだろう。走馬灯とやらが頭を駆け巡るのか、やはり動物の本能として恐怖が湧き上がるのか、それとも、解放される幸せでいっぱいなのか。幸福感を呼び起こす快楽物質が脳に溢れる様を夢想して、俺は絶頂にも近い快感を奥歯を噛み締めて堪えた。率直に浮かんだ「羨ましい」はきっと、俺が人として生きていたい限り絶対漏らしてはいけない、しかし限りなく本音に近い、5歳児のような素直な気持ち。
時刻は8:19。スマホの中でバカがネットニュースにしたり顔でコメントを飛ばして、それに応戦する暇な人間たち。わーわーわーわーうるせえな、くだらねえことでテメェの自尊心育ててないで働けゴミが。
時刻は8:20。腑抜けたチャイムの音。気怠そうな駅員のアナウンス。誰に罰されるわけでもないのに、俺の足はいつも黄色い線の内側に収まったまま、暗がりから顔を覗かせる鉄の箱を待ち侘びている。
俺は俯いて、視界に入った己のつま先にグッと力を込めた。無意識にするこの行為は、死への恐怖か。馬鹿らしい。いつだって、この箱の前に飛び込むことが何よりも幸せに近いと知っているはずなのに。
気が付けば山積みの仕事から逃げるように、帰りの電車に乗っていた。時刻は0:34。車内のアナウンス。この時間でこの場所、ということは終電だろう。二つ離れた椅子に座ったサラリーマンがだらりと頭を下げ、ビニール袋に向けて嘔吐している。饐えた���いが漂ってきて貰いそうになるが、もう動く気力もない。死ね。クソ野郎が。そう心の中でぼやきながら、俺はただ音楽の音量を上げて外界を遮断する。耳が割れそうなその電子音は、一周回って心地いい。
周りから俺へ向けられる目は冷たく、会社に俺の居場所はない。同期、後輩はどんどん活躍し、華々しい功績を挙げて出世していく。無能な俺はただただ単純で煩雑な事務作業をし続けて、それすらも上手く回せない。ああ、今日はただエクセルの表作りと、資料整理、倉庫の整理に、古いシュレッダーに詰まった紙の掃除。それで金を貰う俺は、社会の寄生虫か?ただ生きるために何かにへばりついて必要な栄養素を啜る、なんて笑える。人が減った。顔を上げると降りる駅に着いていた。慌てて降りる俺を、乗ろうとしていた騒がしい酔っ払いの集団が睨んで、邪魔そうに避けた。何だその顔は。飲み歩いて遊んでた人間が、働いてた俺より偉いって言うのか。クソ。死ね。死んでくれ。社会が良くなるために、酸素の消費をやめてくれ。
コンビニで買うメニューすら、冒険するのをやめたのはいつからだろう。チンすれば食べられる簡単な温かい食事。あぁ、俺は今日も無意識に、これを買った。無意識に、生きることをやめられない。人のサガか、動物としての本能か、しかし本能をコントロールしてこその高等生物である人間が、本能のままに生きている時点で、矛盾しているのではないか。何故人は生きる?生きるとは?NHKは延々とどこか異国の映像を流し続けている。国民へ向けて現実逃避を推奨する国営放送、と思うと笑えてきて、俺は箸を止め、腹を抱えてしこたま笑った。あー、死のう。
そういえば、昔、俺がまだクソガキだった頃、「完全自殺マニュアル」なる代物の存在を知った。当然、本を変える金なんて持ってなかった俺は親の目を盗んで、図書館でそれを取り寄せ借りた。司書の本を渡す際の訝しむ顔がどうにも愉快で、俺は本を抱えてスキップしながら帰ったことを覚えている。
首吊り、失血死、服毒死、凍死、焼死、餓死...発売当時センセーショナルを巻き起こしたその自称「問題作」は、死にたいと思う人間に、いつでも死ねるからと���あえず保険として持っとけ、と言いたいがために書かれたような、そんな本だった。淡々と書かれた致死量、死ぬまでの時間、死に様、遺体の変化。俺は狂ったようにそれを読み、そして、己が死ぬ姿を夢想した。
農薬は消化器官が爛れ、即死することも出来ない為酷く苦しんで死ぬ地獄のような死に方。硫化水素で死んだ死体は緑に染まる。首吊りは体内に残った排泄物が全て流れ出て、舌や目玉が飛び出る。失血死には根気が必要で、手首をちょっと切ったくらいでは死ねない。市販の薬では致死量が多く未遂に終わることが多いが、バルビツール酸系睡眠薬など、医師から処方されるものであれば死に至ることも可能。など。
当然、俺が手に取った時には情報がかなり古くなっていて、バルビツール酸系の薬は大抵が発売禁止になっていたし、農薬で死ぬ人間など殆どいなくなっていたが、その情報は幼かった俺に、「死」を意識させるには十分な教材だった。道徳の授業よりも宗教の思想よりも、何よりも。
親戚が死んだ姿を見た時も、祖父がボケた姿を見た時も、同じ人間とは思えなかった俺はきっとどこか欠けてるんだろう。親戚の焼けた骨に、棺桶に入れていたメロンの緑色が張り付いていて、美味しそうだ。と思ったことを不意に思い出して、吹き出しそうになった。俺はいつからイカれてたんだ。
ずっと、後悔していたことがあった。
小学生の頃、精神を病んだ母親が山のように積まれた薬を並べながら、時折楽しそうに父親と電話をしていた。
その父親は、俺が物心ついた、4、5歳の頃に外に女を作って出て行った、DVアル中野郎だった。酒を飲んでは事あるごとに家にあるものを投げ、壊し、料理の入った皿を叩き割り、俺の玩具で母親の顔を殴打した。暗い部屋の中、料理が床に散乱する匂いと、やめてと懇願する母親の細い声と、人が人を殴る骨の鈍い音が、今も脳裏によぎることがある。あぁ、懐かしいな。プレゼントをやる、なんて言われて、酔っ払って帰ってきた父親に、使用済みのコンドームを投げられたこともあったっけ。「お前の弟か妹になり損ねた奴らだよ。」って笑ってたの、今思い返してもいいセンスだと思う。顔に張り付いた青臭いソレの感触、今でも覚えてる。
電話中は決まって俺は外に出され、狭いベランダから、母親の、俺には決して見せない嬉しそうな顔を見てた。母親から女になる母親を見ながら、カーテンのない剥き出しの部屋の明かりに集まる無数の羽虫が口に入らないように手で口を覆って、手足にまとわりつくそれらを地面のコンクリートになすりつけていた。あぁ、そうだ、違う、夏場だけカーテンをわざと開けてたんだ。集まった虫が翌朝死んでベランダを埋め尽くすところが好きで、それを俺に掃除させるのが好きな母親だった。記憶の改変は恐ろしい。
ある日、俺は電話の終わった母親に呼ばれた。隣へ座った俺に正座の母親はニコニコと嬉しそうに笑って、「お父さんが、帰ってきていいって言ってるの。三人で、幸せな家庭を作りましょう!貴方がいいって言ってくれるなら、お父さんのところに帰りましょう。」と言った。そう。言った。
俺は、父親が消えてからバランスが崩れて壊れかけた母親の、少女のように無垢なその笑顔が忘れられない。
「幸せな家庭」、家族、テレビで見るような、ドラマの中にあるような、犬を飼い、春には重箱のお弁当を持って花見に行き、夏には中庭に出したビニールプールで水遊びをし、夜には公園で花火をし、秋にはリンゴ狩り、栗拾い、焼き芋をして、落ち葉のベッドにダイブし、冬には雪の中を走り回って遊ぶ、俺はそんな無邪気な子供に焦がれていた。
脳内を数多の理想像が駆け巡って、俺は、母の手を掴み、「帰ろう。帰りたい。パパと一緒に暮らしたい。」そう言って、泣く母の萎びた頬と、唇にキスをした。
とち狂っていたとしか思えない。そもそも帰る、と言う表現が間違っている。思い描く理想だって、叶えられるはずがない。でもその時の馬鹿で愚鈍でイカれた俺は、母の見る視線の先に桃源郷があると信じて疑わなかったし、母と父に愛され、憧れていた家族ごっこが出来ることばかり考えて幸せに満ちていた。愚かで、どうしようもなく、可哀想な生き物だった。そして、二人きりで生きてきた数年間を糧に、母親が、俺を一番に愛し続けると信じていた。
母は、俺が最初で最後に信じた、人間だった。
父親の家は荒れ果てていた。酒に酔った父親が出迎え、母の髪を掴んで家の中に引き摺り込んだ瞬間、俺がただ都合の良い夢を見ていただけだと言うことに漸く、気が付いた。何もかも、遅過ぎた。
仕事も何もかも捨てほぼ無一文で父親の元へ戻った母親が顔を腫らしたまま引越し荷物の荷解きをする姿を見ながら、俺は積み上げた積み木が崩れるように、砂浜の城が波に攫われるように、壊れていく己の何かを感じていた。母は嬉しそうに、腫れた顔の写真を毎度俺に撮らせた。まるでそれが、今まで親にも、俺にも、誰にも与えられなかった唯一無二の愛だと言わんばかりに、母は携帯のレンズを覗き、画面越しに俺に蕩けた目線を送った。
人間は、学習する生き物である。それは人間だけでなく、猿や犬、猫であっても、多少の事は学習できるが、その伸び代に関しては人間が群を抜いている。母親は次第に父親に媚び、家政婦以下の存在に成り下がることによって己の居場所を守った。社会の全てにヘイトを募らせた父親も、そんな便利な道具の機嫌を損ねないよう、いや、違うな、目を覚まさせないように、最低限人間扱いをするようになった。
まあ当然の末路と言えるだろうな。共同戦線を組んだ彼らの矛先は俺に向いた。俺は保てていた人間としての地位を失い、犬に、家畜に成り下がった。名前を呼ばれることは無くなり、代わりについた俺の呼び名は「ゴキブリ」になった。家畜、どころか害虫か。産み落とした以上、世話をするほかないというのが人間の可哀想なところだ。
思い出したくもないのにその記憶を時折呼び起こす俺の出来の悪い脳を何度引き摺り出してやろうかと思ったか分からない。かの夢野久作が書いた「ドグラマグラ」に登場する狂った青年アンポンタン・ポカン氏の如く、脳髄を掴み出し、地面に叩きつけてやりたいと思ったことは数知れない。
父親に奉仕する母は獣のような雄叫びをあげて悦び、俺は夜な夜なその声に起こされた。媚びた、艶やかな、酷く情欲を煽るメスの声。俺は幾度となく吐き、性の全てを嫌悪した。子供じみた理由だと、今なら思う。何度、眠る父親の頭を金属バットで叩き割ろうと思ったか分からない。俺は本を読み漁り、飛び散る脳髄の色と、母の絶望と、断末魔を想像した。そう、この場において、いや、この世界において、俺の味方は誰もいなかった。
いつの間にかテレビ放送は休止されたらしい。画面端の表示は午前2時58分。当然か。騒がしかったテレビの中では、カラーバーがぬるぬると動きながら、耳障りな「ピー」という無慈悲な機械音を垂れ流している。テレビの心停止。は、まるでセンスがねえな死ね俺。
ずっと、後悔していた。誰にも言えず、その後悔すらまともに見ようとはしなかったが、今になって、思う。何度も、あの日の選択を後悔した。
あの日、俺がもし、Yesと言わなかったら。あの日の俺はただ、母親がそう言えば喜ぶと思って、幸せそうな母親の笑顔を壊したくなくて、...いや、違う。あれは、幸せそうな母親の笑顔じゃない、幸せそうな、メスの笑顔だ。それに気付けていたら。
叩かれても蹴られても、死んだフリを何度されても自殺未遂を繰り返されても、見知らぬ土地で置き去りにされても、俺はただ、母親に一番、愛されていたかった。父親がいない空間が永遠に続けばいい、そう今なら思えたのに、あの頃の俺は。
母親は結局、一人で生きていけない女だった。それだけだ。父親が、そして父親の持つ金が欲しかった。それだけだ。なんと醜い、それでいてなんと正しい、人間の姿だろう。俺は毎日、父親を崇めるよう強制された。頭を下げ、全てに礼を言い、「俺の身分ではこんなもの食べられない。貴方のおかげで食事が出来ている」と言ってから、部屋で一人飯を食った。誕生日、クリスマス、事あるごとに媚びさせられ、欲しくもないプレゼントを分け与えられた。そうしなきゃ殴られ蹴られ、罵倒される。穏便に全てを済ませるために、俺は心を捨てた。可哀想な生き物が、自己顕示欲を満たしたくて喚いている。そう思い続けた。
勉強も運動も何も出来なかった。努力する、と言う才能が元から欠けていた、可愛げのない子供だったと自負している俺が、ヒステリーを起こした母親に、「何か一つでもアンタが頑張ったことはないの!?」と激昂されて、震える声で「逆上がり、」と答えたことがあった。何度やっても出来なくて、悔しくて、冬の冷たい鉄棒を握って、豆が出来ても必死に一人で頑張った。結局、1、2回練習で成功しただけで、体育のテストでは出来ずに、クラスメイトに笑われた。体育の成績は1だった。母親は鼻で笑って、「そんなの頑張ったうちに入らないわ。だからアンタは何やっても無理、ダメなのよ。」とビールを煽って、俺の背後で賑やかな音を立てるテレビを見てケタケタと笑った。それ以降、目線が合うことはなかった。
気分が悪い。なぜ今日はこんなにも、過去を回顧しているんだろう。回り出した脳が止められない。不愉快だ。酷く。それでも今日は頑なに、過去を振り返らせたいらしい脳は、目の前の食べかけのコンビニ飯の輪郭をぼやけさせる。
俺が就職した時も、二人は何も言わなかった。ただただ俺は、父親の手口を真似て、母親の心を取り戻そうと、ありとあらゆるブランド物を買って与えた。高いものを与え、食わせ、いい気分にさせた。そうすれば喜ぶことを俺は知っていたから。この目で幾度となく見てきたから。二人で暮らしていた頃の赤貧さを心底憎んでいた母親を見ていたから。
俺は無邪気にもなった。あの頃の、学校の帰りにカマキリを捕まえて遊んだような、近所の犬に給食のコッペパンをあげて戯れていたような、そんな純粋無垢な無邪気さで、子供に戻った。もう右も左も分からない馬鹿なガキじゃない。今の俺で、あの頃をやり直そう。やり直せる。そう思った。
「そんなわけ、ねぇよなぁ。」
時刻は午前4時を回り、止まっていたテレビの心拍が再び脈動を始めた。残飯をビニール袋に入れて、眩しい光源を鬱陶しそうに睨んだ。画面の中では眠気と気怠さを見せないキリリとした顔の女子アナが深刻そうな顔で、巷で流行する感染症についての最新情報を垂れ流している。
結論から言えば、やり直せなかった。あの女の一番は、俺より金を稼いで、俺より肉体も精神も満たせる、あの男から変わることはなかった。理解がし難かった。何度殴られても生きる価値がない死ねと罵られても、それが愛なのか。
神がいるなら問いたい。それは愛なのか。愛とはもっと美しく、汚せない、崇高なものじゃないのか。神は言う。笑わせるな、お前だって分かっていないから、ひたすら媚びて愛を買おうとしたんだろう。ああ、そうだ。俺にはそれしかわからなかった。人がどうすれば喜ぶのか、人をどうすれば愛せるのか、歩み寄り、分り合い、感情をぶつけ合い、絆を作れるのか。人が人たるメカニズムが分からない。
言葉を尽くし、時間を尽くしても、本当の愛の前でそれらは塵と化すのを分かっていた。考えて、かんがえて、突き詰めて、俺は、自分が今人間として生きて、歩いて、食事をして、息をしている実感がまるで無い不思議な生き物になった。誰のせいでもない、最初からそうだっただけだ。
あなたは私の誇りよ、と言った女がいた。そいつは俺が幼い頃、俺じゃなく、俺の従兄弟を出来がいい、可愛い、と可愛がった老婆だった。なんでこんなこと、不意に思い出した?あぁ��そうだ、誕生日に見知らぬ番号からメッセージが来てて、それがあの老婆だと気付いたからだ。気持ちが悪い。俺が人に愛される才能がないように、俺も人を愛する才能がない。
風呂の水には雑菌がうんたらかんたら。学歴を盾に人を威圧するお偉いさんが講釈を垂れているこの番組は、朝4時半から始まる4チャンネルの情報番組。くだらない。クソどうでもいい。好みのぬるめのお湯に目の下あたりまで浸かった俺は、生きている証を確かめるように息を吐いた。ぼご、ぶくぶく、飛び散る乳白色が目に入って痛い。口から出た空気。無意識に鼻から吸う空気。呼吸。あぁ、あれだけ自分の傷抉って自慰しておいて、まだ生きようとしてんのか、この身体。どうしようもねえな。
どうせあと2時間と少ししか眠れない。髪を乾かすのも早々に、俺が唯一守られる場所、布団の中へと潜り込んで、無機質な部屋の白い天井を見上げた。
そういえば、首吊りって吊られなくても死ぬことが出来るんだっけ。そう。今日の朝だって思ったはずだ。黄色い線の外側、1メートル未満のその先に死がある。手を伸ばせばいつでも届く。ハサミもカッターも、ガラスも屋上もガスも、見渡せば俺たちは死に囲まれて、誘惑に飲まれないように、生きているのかもしれない。いや、でも、いつだって全てに勝つのは何だ?恐怖か?確かに突っ込んでくるメトロは怖い。首にヒヤリとかかった縄も怖い。蛙みたく腹の膨れた女をトラックに轢かせて平らにしたいとも思うし、会話の出来ない人間は全員聾唖になって豚の餌にでもなればいいとも思う。苛立ち?分からない。何を感じ、生きるのか。
ああ、そういえば。
父親の頭をミンチの如く叩きのめしてやろうと思って金属バットを手に取った時、そんなくだらないことのためにこれから生きるのかと思うと馬鹿らしくなって、代わりに部屋のガラスを叩き割ってやめた。楽にしてやろうと母親を刺した時、こんなことのために俺は人生を捨てるのか、と我に返って、二度目に振り上げた手は静かに降ろした。
あの時の爽快感を、忘れたことはない。
あぁ、そうか、分かった。
死が隣を歩いていても、俺がそっち側に行かずに生きてる理由。そうだ。自由だ。ご飯が美味しいことを、夜が怖くないことを、寒い思いをせず眠れることを、他人に、人間に脅かされずに存在できることを、俺はこの一人の箱庭を手に入れてから、初めて知った。
誰かがいれば必ず、その誰かに沿った人間を作り上げた。喜ばせ、幸せにさせ、夢中にさせ、一番を欲した。満たされないと知りながら。それもそうだ。一番も、愛も、そんなものはこの世界には存在しない。ようやく分かった俺は、人間界の全てから解き放たれて、自由になった。爽快感。頭皮の毛穴がぞわぞわと爽やかになる感覚。今なら誰にだって何にだって、優しくなれる気がした。
そうか、俺はいつの間にか、人間として生きるのが、上手くなったんだ。異世界から来てごっこ遊びをしている気分だ。死は俺をそうさせてくれた。へらへらと、楽しく自由にゆらゆらふわふわ、人と人の合間を歩いてただ虚に生きて、蟠りは全部、言葉にして吐き出した。
遮光カーテンの隙間から薄明るい光が差す部屋の中、開いたスマホに並んだ無数の言葉の羅列。俺が紡いだ、物語たち。俺の、味方たち。みんなどこか、違うようで俺に似てる。皆合理的で、酷く不器用で、正しくて、可哀想で、幸せだ。皆正しく救われて終わる物語のみを書き続ける俺は、己をハッピーエンド作者だと声高に叫んで憚らない。
「俺、なんで生きてるんだっけ。」
そんなクソみたいな呟きを残して、目を閉じた。スマホはそばの机に放り投げて、目を閉じて、祈るのは明日の朝目が覚めずにそのまま冷たくなる、最上の夢。
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honyade · 4 years
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(5月31日まで開催中)【フェア】人から紐解くiPS細胞
代官山 蔦屋書店 営業時間について 5月11日(水)~当面の間 11:00~19:00
■代官山 蔦屋書店ご入店に関して ・1号館2階 映像フロアでのレンタル対象商品は「新作のみ」とさせていただきます。 ・3号館2階 音楽フロアはご利用いただけません。 ※お客様およびスタッフ同士の距離感を十分に取れる空間の確保・維持のため、入場制限を設ける場合がございます。 その場合は整理券を配布いたしますので、ご案内の際は指示に従ってくださいますようお願い申し上げます。 ※大変恐れ入りますが、マスクを着用していないお客様のご入店はお断りしております。 ※休店日や営業時間、当日のご案内方法は予告なく変更となる場合がございます
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iPS細胞研究所所長の山中伸弥さんをはじめとした研究者の方々や、京都大学総合博物館で行われる特別展「iPS細胞、軌跡と未来―こだわりの研究所を大解剖―」の関係者の皆様が、ご自身の人生で現在に至るまでに「刺激を受けた本」の数々を紹介教えて下さいました。 それぞれコメントも頂いておりますので、これが皆様にも刺激となれば嬉しいです。
———- 京都大学 iPS細胞研究所 所長 山中伸弥
『宇宙英雄ローダン・シリーズ』K・H・シェール他(著)ハヤカワ文庫SF 子どもの頃、夢中になって読んでいました。科学の力で問題を解決していく登場人物にあこがれたのが、今の仕事の原点かもしれません。日本語版が600巻を超えた今でも続きが出ている人気作です。
『星新一のショートショート』 環境問題、人口増など現代にも通じる社会問題に鋭く切り込んだ作品が多く、読んでいて刺激になります。
『仕事は楽しいかね?』デイル・ドーテン(著)きこ書房 アメリカ留学から帰国後、仕事に悩んでいたと��に読んだ本です。思うように研究が進められず、研究を続けるかどうか悩んでいた私に、仕事を楽しむことを思い出させてくれました。
『FACTFULNESS』ハンス・ロスリング他(著)日経BP 科学者にとって、自分の偏見を捨て、データと真剣に向き合うことは非常に重要です。これは科学者以外の方にも言えることだと思います。この本は、世界のいろいろな事象を思い込みに惑わされずに見つめる訓練にとても役立つと思います。
『理不尽に勝つ』平尾誠二(著)PHP研究所 仕事をしていると、理不尽な目にあうことはたくさんあります。そんなときに手に取る本です。著者の平尾誠二さん(故人)とは友人として深い付き合いがあり、仕事の進め方やリーダーシップについて、多くを教えてもらいました。この本は、彼から教わったことを思い出させてくれます。
———- 京都大学 iPS細胞研究所 所長室 中内彩香
『阪急電車』有川浩(著)幻冬舎文庫 片道わずか約15分という阪急今津線の乗客の人間模様が優しいタッチで描かれ、映画化もされた大ヒット小説。人にはみな、それぞれが主役の人生のドラマがあるという当たり前なことにふと気づかされると同時に、(誤解を恐れずに言うと)「人って悪くないな」と思わされます。人間関係に少し疲れたときに読むと、ほっこり温かな気持ちになれる一冊です。
『僕たちの戦争』萩原浩(著)双葉文庫 何の接点もない戦時中の少年と“今どき”の少年が、ひょんなことからタイムスリップして互いの時代を生きる様子を描いたフィクション小説。背伸びしない、少年の目線で当時を想像しながら本の世界に没入し、現実世界に戻った後も、当時の人が急に今の私たちの日常に迷い込んでくるとこの世界はどう見えるのだろうと想像を膨らませました。当時を懸命に生きてきた方たちのおかげで今があるということを改めて考えさせられました。
『チーズはどこへ消えた?』スペンサー・ジョンソン(著)扶桑社 いつから変化を恐れ、前に踏み出すのをためらうようになってしまったのだろう。常に起きる変化にどう適応するかは自分の考え方次第。物事をシンプルに捉え(自分で勝手に複雑化しない!)、柔軟に行動し、冒険を楽しむ。「新しいチーズ」探しの旅を始める勇気をこの本からもらいました。心が弱くなる度に読み返すと背中を押してくれる、私の良き伴走者です。
『Newtonニュートン』ニュートンプレス 親が愛読していたこともあり、物心がついた頃にはページいっぱいに広がる鮮やかなビジュアルに惹かれて、わけもわからずページをめくっていました。今思えば、それが知らず知らずのうちにサイエンスに興味をもつきっかけになったように思います。読者を「追いていかない」工夫が凝らされ、また号のテーマによらない最新の科学情報も得られるので、おすすめです。
『SNOOPY COMIC SELECTION』チャールズ・M・シュルツ(著)角川文庫 1950年から描かれ、スヌーピーをはじめ愛くるしいキャラクターが人気の漫画。ほのぼのとしたやりとりに心を癒されるときもあれば、子どもの他愛のない一言が、大人が目を背けがちな真理をついていてハッと気づかされるときもあります。読後の爽快感がたまらず、休日の午前に読みたくなる作品がたくさんあります。
———- 京都大学 iPS細胞研究所 臨床応用研究部門 准教授 池谷真
『神様からの宿題』山本育海他(著)ポプラ社 私たちの研究室では、進行性骨化性線維異形成症という筋肉組織中に骨ができる難病の研究に取り組んでいます。この本は、患者である山本育海君と、そのお母さんの手記です。患者さんとご家族が抱える苦悩、葛藤、決意などの思いが込められています。毎日を頑張って生きようという気持ちになります。
『細胞の分子生物学』ブル-ス・アルバ-ツ他(著)ニュートンプレス ミクロ系生物学が網羅されている、大学レベルの教科書です。大学合格が決まった後、すぐに購入しました。当時、第2版で、現在は第6版になっています。時に読本として、教科書として、辞書として、そして枕として大活躍しました。
『最強マフィアの仕事術』 マイケル・フランゼーゼ他(著)ディスカヴァー・トゥエンティワン 実際に裏社会で成功を収めた著者が、仕事��やり方を経験に基づいて書いた本だそうです。『マフィア』の法則ですが、現実社会に通じる内容が数多く含まれています。思わずニヤッとしてしまうような箇所もあり、心が疲れた時に半分娯楽として読むとちょうど良いかと思います。
『ブラック・ジャック』手塚治虫(著)講談社 医学に関心がある漫画好きの方なら、一度は読んだことがあるのではないでしょうか。法外な治療費を請求するなど理不尽に思える内容もありますが、治療不可能と思える患者を一人の天才外科医が治していく姿に憧れました。
『ドラえもん』藤子・F・不二雄(著)小学館 あんなことやこんなことを、夢の道具で実現してくれるドラえもん。何より、その発想の自由さに、子供心をくすぐられました。ただ同時に、サボった分は後から自分でやらないといけないという人生訓も教わりました。
———- 京都大学 iPS細胞研究所 未来生命科学開拓部門 講師 中川誠人
『ぼくらの七日間戦争』宗田理(著)角川文庫 中学生が大人の言いなりにならないために一致団結して向かい合う青春ストーリー。テンポがよく、ワクワクしながら一気に読んだ覚えがあります。秘密基地などは誰もが幼い頃にあこがれたのではないかと思います。本の終わりも痛快・壮快で良く覚えています。映画にもなりましたね。純粋に楽しめる本だと思います。
『三国志』横山光輝(著)潮出版社 最初に横山光輝さんの漫画から三国志の世界に入りました。様々な登場人物がそれぞれの信念を持って中国統一に向けて戦います。武力だけでなく知力、政治力、一番は人力(魅力)に優れている事が重要だと感じました。そういう人の周りには優れた人が集まり大きな力となるのだと思います。小説は数種類読みましたが、書き手によって内容や登場人物の性格が違っているのが面白かったです。個人的には劉備・関羽・張飛の義兄弟の絆にあこがれます。
『ザ・ゴール』エリヤフ・M・ゴ-ルドラット(著)ダイヤモンド社 ストーリー仕立てで、製造現場の生産管理の手法「制約条件の理論(Theory of Constraints)」を易しく学ぶことができる本。研究には関係無さそうであるが、ラボマネージメントの観点から非常に参考になりました。考え方によって様々な状況に対応できる理論になり得るのではないかと感じました。
『英語は3語で伝わります』中山裕木子(著)ダイヤモンド社 初心者でも、なんとなく英語を勉強してきた人でも参考になるのではないかと思う。いかにシンプルに英語で表現できるかを学べる。英語を難しく考えがちな思考を変えてくれる良本と思います。
『マイケル・ジョーダン物語』ボブ・グリーン(著)集英社 引退した今もなおバスケットボール界の神様と言われているマイケルジョーダン(MJ)の伝記。コート上での神様MJの圧倒的な支配力、そして人間MJの比較をうまくまとめた本。超一流の人には何か共通するものがあるのだろうと感じた。
『細胞の分子生物学』ブル-ス・アルバ-ツ他(著)ニュートンプレス 通称「セル」と呼ばれる、生物学の基礎教本。最初はその重さにやられてしまいますが、制覇した時の達成感は忘れられません。生物学の研究を志すなら、要点をまとめたエッセンシャル本もありますが、是非「セル」を読んでください!筋トレにもなります(笑)
———- 京都大学 iPS細胞研究所 国際広報室 和田濵裕之
『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ(著)ハヤカワepi文庫 幹細胞を使った再生医療に関係する仕事をしている者として、とても刺激になりました。ノーベル文学賞受賞で話題にもなりました。どういう未来が私達にとって良いのか、考える際の参考になると思います。
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』村上春樹(著)新潮文庫 村上春樹さんの作品はどれも好きですが、特に印象に残っているのがこの作品。読むのにとても頭を使いました。こんなに頭を使ってしんどい思いをしながら読んだ作品も珍しいですが、しんどくても次を読みたいと思わせる魅力があります。科学的コミュニケーションにもそうした魅力をうまく持たせたいです。
『パラサイト・イヴ』瀬名秀明(著)新潮文庫 科学コミュニケーションを行う上で、科学に興味のない人にどうやって科学的な内容を伝えたらいいのかと悩む中で参考になった一冊。物語の中に科学を散りばめることで、より多くの人にアプローチできるのではないかと思うきっかけとなりました。
『アルジャーノンに花束を』ダニエル・キイス(著)ハヤカワ文庫NV 刻々と変わっていく文章の書き方が、日々変化している主人公の知能を反映していて、初めて読んだ高校生のときには衝撃を受けました。時が経過して、アルツハイマー病の患者さんの病気が進行していく姿にも共通するように感じ、改めて読み直したいと思った一冊です。
『ルリボシカミキリの青』福岡伸一(著)文春文庫 大学3回生の時に学生実験で数週間だけ指導をしていただいた福岡伸一先生。雑談の中にあふれる知識に魅了され、4回生の研究室配属では福岡先生の研究室に入りたいと思いました。残念ながら他大学へ移られてしまい、念願は叶いませんでしたが、あの時に感じた魅力、科学コミュニケーションにとって大事なことがこの本には現れているように思います。
『アルジャーノンに花束を』ダニエル・キイス(著)ハヤカワ文庫NV 刻々と変わっていく文章の書き方が、日々変化している主人公の知能を反映していて、初めて読んだ高校生のときには衝撃を受けました。時が経過して、アルツハイマー病の患者さんの病気が進行していく姿にも共通するように感じ、改めて読み直したいと思った一冊です。
『銀河英雄伝説シリーズ』田中芳樹/藤崎竜(著)集英社 舞台は宇宙ですが、歴史ものの小説のような作品。世界には様々な価値観があり、いずれも正しく尊重されるべきであることを強く意識するきっかけとなりました。
———- 京都大学 iPS細胞研究所 国際広報室 志田あやか
『松風の門』山本周五郎(著)新潮文庫 中3の国語のテストで収録作『鼓くらべ』に出会い、すぐに図書館へ走ったのを覚えています。自分の信念ではなく、人にどう見られるかを基準に行動してしまいそうになったときに読む本。
『壬生義士伝』浅田次郎(著)文春文庫 吉村貫一郎という新選組隊士が主人公。「お国のため」が第一だった武家社会を背景に、自分の軸を持って生きるというのはどういうことかを教えてくれる本。
『どうなってるのこうなってるの』鈴木まもる(著)金の星社 父に毎晩読み聞かせをしてもらって育ちましたが、リピート率No.1はこの本でした。「どうなってるの」で十分タメてから「こうなってるの!」と進むのがコツです。
『脳死・臓器移植の本当の話』小松美彦(著)PHP研究所 著者の小松氏は、大学に入って最初の講義の講師でした。「私を含め、他人が言うことを検証し建設的に批判できるようになれ」と言われたのが記憶に残っています。この本は、小松氏自身がそれを実践した著作。脳死のとらえ方に新しい一石を投じてくれるはずです。
『完璧じゃない、あたしたち』王谷晶(著)ポプラ文庫 あたりまえのことなんですが、男との出会いだけが、女にとっての「特別」であるはずがないのです。恋愛、友情、尊敬、女同士のいろいろを描いた短編集。
———- 京都大学 情報環境機構/学術情報メディアセンター 助教 元木環
『観る―生命誌年刊号Vol.45~48』中村桂子(著)新曜社 中3の国語のテストで収録作『鼓くらべ』に出会い、すぐに図書館へ走ったのを覚えています。自分の信念ではなく、人にどう見られるかを基準に行動してしまいそうになったときに読む本。
『壬生義士伝』浅田次郎(著)文春文庫 JT生命誌研究館の季刊冊子が年に一度まとめて発刊されるうちの一冊。研究者である編者が様々な分野の専門家と繰り広げる対話の連載や各種記事が、生命科学関連の研究を非専門家向けに、丁寧なテキストとビジュアル表現で伝達されており、研究を伝える時の態度や工夫が感じられるのが楽しい。この号は、自分が大学で、研究を対象にデザインをし出した頃にとても参考になった。
『図解力アップドリル』『[動く]図解力アップドリル』原田泰(著)ボーンデジタル この2冊のシリーズは、「読めばすぐできるような」デザインマニュアルだと思い手に取ると、期待を裏切られる。タイトルやぱっと見からではわからないが、知識や情報、あるいは経験を「視覚的に表現し、伝達する」ことの本質を、頭と身体を使い、実践的に掴んでいくための道しるべとなる本になっている。デザイナーだけでなく、科学を対象とするデザインに関わる人にもとても参考になるし、続編の「動く」の方は、映像作成の考え方の基礎にもなる内容で秀逸。
『患者はだれでも物語る』リサ・サンダース(著)ゆみる出版 CiRA展とは別で展示の準備中に出会った先生からいただき、とても面白かった本。医師が患者の問診や診察でどのように診断をしていくかが物語として描かれている。デザイナーが、制作依頼を受けて、相談、制作していくデザインプロセスとも通じるところがあることが興味深い。
『デザインに哲学は必要か』古賀徹 (著)武蔵野美術出版局 デザインの実践者かつ教育者である著者らによる論考がまとめられており、デザインの裏側にある考えを想像する手がかりになる本。実践者が自ら「デザインとは何か」と問い、表現している言葉に共感を覚える箇所が多数ある。CiRA展に関わったデザイナーたちは確かに、(うまく言語化できていなかったとしても)フレキシブルでかつ一貫した考え方を持って、制作に携わっていたのだ、と想像してもらえるかも。
『優しさごっこ』今江祥智(著)理論社 私が紹介するまでもない有名な小説であるが、小学生の頃以来、時々読み返す本。いつも関西(京都?)の言葉で綴られる光景やモノローグや会話の表現、時々出てくる食べ物の描かれ方に引き込まれるが、タイミングによって、娘、親、別の登場人物など、別の視点で読んでいる自分と、行間や背景に想像できる範囲が変わっている自分に気がつかされる。装幀や挿絵(初版は長新太さんによるもの)を含めたブックデザインに興味を持つきっかけとなった一冊でもある。
『アイデア No.355』アイデア編集部(編)誠文堂新光社 もし古本でも手に入るなら、「《特集2》奥村昭夫と日常」のページをみてほしい。CiRAマークの相談を受けブラッシュアップした、グラフィックデザイナー(当時京大メディアセンターの客員教授であった)奥村昭夫氏のデザインに対する態度、大学の中の様々な仕事の中でCiRAマークの制作に関わることになった様子に触れることができる。
『美術館は眠らない』岩渕潤子(著)朝日新聞社 大学生の頃、授業中ある先生から「美術館に興味があるならこれを読んでみたら」と紹介され出会った本。筆者がアメリカの美術館での研修員時代の体験談を軸に、アメリカでの美術館を支える組織、社会のあり方が紹介されている。今とは時代背景は異なるが、美術館や博物館を運営する(もちろん展示を行うにも)仕事は多様な専門性があって成立していること、国によって異なる歴史や社会の仕組みが、美術館や博物館にもとても影響をすることを教えられた一冊。感染症の関係で、美術館や博物館にまつわる社会の仕組みも再編されるのではという目で読むこともできる。
京都大学総合博物館 准教授 塩瀬隆之 『ちいさなちいさな王様』アクセル・ハッケ他(著)講談社 わたしたちの国と人生が真逆で、たくさんの知識や先入観をそぎ落とし、どんどん好奇心あふれ、いたずら心であふれる最期を迎える国の王様の話。「可能性で埋め尽くされた想像の毎日を捨て、なぜ斯くもつまらない一つの正解だけを追う日々を生き急ぐのか」と王様にわたしたちの社会が笑われている。
『エンデの遺言』河邑厚徳(著)講談社+α文庫 ファンタジー童話『モモ』や『はてしない物語』で知られるミヒャエル・エンデの晩年の関心は、「お金を根源から問い直すこと」。お金がお金を生む投機的な世界に心を奪われた現代社会を風刺し、思想家シルビオ・ゲゼルの「老化するお金」を研究した。『モモ』の世界に登場する時間貯蓄銀行の灰色男は、あくせく働きすぎの現代社会を40年も昔から見透かしていた。
『木を見る西洋人 森を見る東洋人』リチャ-ド・E・ニスベット(著)ダイヤモンド社 問題を細分化する西洋流の要素還元的なモノの見方に対して、全体の調和を保とうとする東洋流のモノの見方こそが大切で、どちらかに優劣をつけようというのではない。大局観を失った近視眼的なモノの見方を揶揄する言葉であるが、それが心理的な差異にとどまらず、経済、法���いった社会制度の好み、宗教観にまで影響を及ぼしていると指摘する。
『不実な美女か貞��な醜女か』米原万里(著)新潮文庫 ロシア語通訳の米原万里が、要人通訳などにおいて意識した技術と視点を紹介する本。見栄えはよいが中身を伴わない文章と、見栄えが悪くも中身を正確にとらえた文章、使いこなす文章は常にその間を揺れ動いている。翻訳に限らず、あらゆる言葉の表現をするうえで、悩ましくも筋の通った考え方を示す。文章そのものも明解で極めて参考になる。
『バーバパパのがっこう』A・チゾン/T・テイラー(著)講談社 学校を舞台にしたバーバパパシリーズ。監視を強める学校に反発する個性豊かな子どもたちに手をやく大人。見かねたバーバファミリーが、ダンス好きな子、絵が好きな子、メカが好きな子それぞれの個性にあった学びをとどける。興味をもったところに、学校の数学の先生がかえってきて一緒に教え、結果として質の高い学びを得る物語。監視を強める学校教育への警鐘と言える。
———- 特別展「iPS細胞、軌跡と未来 こだわりの研究所を大解剖」デザイナー 東南西北デザイン研究所 石川新一
『生き物の建築学』長谷川尭(著)平凡社 泥臭い、生きるためのデザインをしたいと思った時に読むといい本
『さあ、横になって食べよう』バーナード・ルドフスキー(著)鹿島出版会 既成概念にとらわれていないか?と自分に問う時に読むといい本
『鯨尺の法則』長町美和子(著)ラトルズ 日本文化で癒されたい時に読むといい本
『Usefulness in Small Things』Kim Colin and Sam Hecht(著)Rizzoli アノニマス(無名性)デザインで参考になるいい本
『メイカーとスタートアップのための量産入門』小美濃芳喜(著)オライリー・ジャパン 私などデザインをする人が将来の野望ために読むといい本
———- 特別展「iPS細胞、軌跡と未来 こだわりの研究所を大解剖」デザイナー 奥村昭夫
『伊丹十三選集』伊丹十三(著)岩波書店 若い頃、伊丹さんの本は読む楽しみとともに、元気づけてくれました。 今、伊丹十三選集を楽しく読んでいます。
『瑞穂の国うた』大岡信(著)新潮文庫 文中の、夏目漱石の”レトリック など弄している暇はないはずだ、ア イディアがすべてだと思うよ、ということです。”の言葉に、製作の確 信を得てたびたび思いおこしています。
『常用字解』白川静(著)平凡社 常に手の届くところにあって、漢字と言葉の散策をしています。
『黒田泰蔵 白磁』黒田泰蔵(著)求龍堂 圧倒的に美しい白磁、緊張とすみきった空気を感じ、頭と心を研ぎす ましてくれます。
『大衆の強奪』セルゲイ・チャコティン(著)創元社 “戦争に対する戦争”のスローガンに代表されるように、伝える事の 本質と、言葉とシンボルの力を教えてくれました。
【プロフィール】 京都大学iPS細胞研究所 iPS細胞研究所所長の山中伸弥さんをはじめとした研究者の方々や、京都大学総合博物館で行われる特別展「iPS細胞、軌跡と未来―こだわりの研究所を大解剖―」の関係者の皆様が、ご自身の人生で現在に至るまでに「刺激を受けた本」の数々を紹介教えて下さいました。 それぞれコメントも頂いておりますので、これが皆様にも刺激となれば嬉しいです。 2006年に誕生し、2012年に「成熟した細胞を、多能性を持つ細胞に初期化出来る事を発見」した事により、山中伸弥/J・B・ガードン両氏が2012年のノーベル生理学・医学賞を共同受賞した事で、一躍再生医療の救世主と目されることになった「iPS細胞」。 そんな新たな存在を医療の現場に応用させる為の研究を行う「京都大学iPS細胞研究所(CiRA)」は2020年で設立から10周年を迎え、同研究所の軌跡と未来を記した『iPS細胞の歩みと挑戦』(東京書籍)も刊行されます。
会期 2020年5月11日(月)~2020年5月31日(日) 時間 営業時間通り 場所 蔦屋書店1号館 1階 ブックフロア 主催 代官山 蔦屋書店 共催・協力 京都大学iPS細胞研究所 東京書籍
問い合わせ先 03-3770-2525
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usagi33 · 4 years
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非現実的な夢想家として 村上春樹 カタルーニャ国際賞スピーチ原稿全文
「非現実的な夢想家として」  僕がこの前バルセロナを訪れたのは二年前の春のことです。サイン会を開いたとき、驚くほどたくさんの読者が集まってくれました。長い列ができて、一時間半かけてもサインしきれないくらいでした。どうしてそんなに時間がかかったかというと、たくさんの女性の読者たちが僕にキスを求めたからです。それで手間取ってしまった。  僕はこれまで世界のいろんな都市でサイン会を開きましたが、女性読者にキスを求められたのは、世界でこのバルセロナだけです。それひとつをとっても、バルセロナがどれほど素晴らしい都市であるかがわかります。この長い歴史と高い文化を持つ美しい街に、もう一度戻ってくることができて、とても幸福に思います。  でも残念なことではありますが、今日はキスの話ではなく、もう少し深刻な話をしなくてはなりません。  ご存じのように、去る3月11日午後2時46分に日本の東北地方を巨大な地震が襲いました。地球の自転が僅かに速まり、一日が百万分の1・8秒短くなるほどの規模の地震でした。  地震そのものの被害も甚大でしたが、その後襲ってきた津波はすさまじい爪痕を残しました。場所によっては津波は39メートルの高さにまで達しました。39メートルといえば、普通のビルの10階まで駆け上っても助からないことになります。海岸近くにいた人々は逃げ切れず、二万四千人近くが犠牲になり、そのうちの九千人近くが行方不明のままです。堤防を乗り越えて襲ってきた大波にさらわれ、未だに遺体も見つかっていません。おそらく多くの方々は冷たい海の底に沈んでいるのでしょう。そのことを思うと、もし自分がその立場になっていたらと想像すると、胸が締めつけられます。生き残った人々も、その多くが家族や友人を失い、家や財産を失い、コミュニティーを失い、生活の基盤を失いました。根こそぎ消え失せた集落もあります。生きる希望そのものをむしり取られた人々も数多くおられたはずです。 日本人であるということは、どうやら多くの自然災害とともに生きていくことを意味しているようです。日本の国土の大部分は、夏から秋にかけて、台風の通り道になっています。毎年必ず大きな被害が出て、多くの人命が失われます。各地で活発な火山活動があります。そしてもちろん地震があります。日本列島はアジア大陸の東の隅に、四つの巨大なプレートの上に乗っかるような、危なっかしいかっこうで位置しています。我々は言うなれば、地震の巣の上で生活を営んでいるようなものです。  台風がやってくる日にちや道筋はある程度わかりますが、地震については予測がつきません。ただひとつわかっているのは、これで終りではなく、別の大地震が近い将来、間違いなくやってくるということです。おそらくこの20年か30年のあいだに、東京周辺の地域を、マグニチュード8クラスの大型地震が襲うだろうと、多くの学者が予測しています。それは十年後かもしれないし、あるいは明日の午後かもしれません。もし東京のような密集した巨大都市を、直下型の地震が襲ったら、それがどれほどの被害をもたらすことになるのか、正確なところは誰にもわかりません。  にもかかわらず、東京都内だけで千三百万人の人々が今も「普通の」日々の生活を送っています。人々は相変わらず満員電車に乗って通勤し、高層ビルで働いています。今回の地震のあと、東京の人口が減ったという話は耳にしていません。  なぜか?あなたはそう尋ねるかもしれません。どうしてそんな恐ろしい場所で、それほど多くの人が当たり前に生活していられるのか?恐怖で頭がおかしくなってしまわないのか、と。  日本語には無常(mujo)という言葉があります。いつまでも続く状態=常なる状態はひとつとしてない、ということです。この世に生まれたあらゆるものはやがて消滅し、すべてはとどまることなく変移し続ける。永遠の安定とか、依って頼るべき不変不滅のものなどどこにもない。これは仏教から来ている世界観ですが、この「無常」という考え方は、宗教とは少し違った脈絡で、日本人の精神性に強く焼き付けられ、民族的メンタリティーとして、古代からほとんど変わることなく引き継がれてきました。  「すべてはただ過ぎ去っていく」という視点は、いわばあきらめの世界観です。人が自然の流れに逆らっても所詮は無駄だ、という考え方です。しかし日本人はそのようなあきらめの中に、むしろ積極的に美のあり方を見出してきました。 自然についていえば、我々は春になれば桜を、夏には蛍を、秋になれば紅葉を愛でます。それも集団的に、習慣的に、そうするのがほとんど自明のことであるかのように、熱心にそれらを観賞します。桜の名所、蛍の名所、紅葉の名所は、その季節になれば混み合い、ホテルの予約をとることもむずかしくなり���す。  どうしてか?  桜も蛍も紅葉も、ほんの僅かな時間のうちにその美しさを失ってしまうからです。我々はそのいっときの栄光を目撃するために、遠くまで足を運びます。そしてそれらがただ美しいばかりでなく、目の前で儚く散り、小さな灯りを失い、鮮やかな色を奪われていくことを確認し、むしろほっとするのです。美しさの盛りが通り過ぎ、消え失せていくことに、かえって安心を見出すのです。  そのような精神性に、果たして自然災害が影響を及ぼしているかどうか、僕にはわかりません。しかし我々が次々に押し寄せる自然災害を乗り越え、ある意味では「仕方ないもの」として受け入れ、被害を集団的に克服するかたちで生き続けてきたのは確かなところです。あるいはその体験は、我々の美意識にも影響を及ぼしたかもしれません。  今回の大地震で、ほぼすべての日本人は激しいショックを受けましたし、普段から地震に馴れている我々でさえ、その被害の規模の大きさに、今なおたじろいでいます。無力感を抱き、国家の将来に不安さえ感じています。  でも結局のところ、我々は精神を再編成し、復興に向けて立ち上がっていくでしょう。それについて、僕はあまり心配してはいません。我々はそうやって長い歴史を生き抜いてきた民族なのです。いつまでもショックにへたりこんでいるわけにはいかない。壊れた家屋は建て直せますし、崩れた道路は修復できます。  結局のところ、我々はこの地球という惑星に勝手に間借りしているわけです。どうかここに住んで下さいと地球に頼まれたわけじゃない。少し揺れたからといって、文句を言うこともできません。ときどき揺れるということが地球の属性のひとつなのだから。好むと好まざるとにかかわらず、そのような自然と共存していくしかありません。  ここで僕が語りたいのは、建物や道路とは違って、簡単には修復できないものごとについてです。それはたとえば倫理であり、たとえば規範です。それらはかたちを持つ物体ではありません。いったん損なわれてしまえば、簡単に元通りにはできません。機械が用意され、人手が集まり、資材さえ揃えばすぐに拵えられる、というものではないからです。  僕が語っているのは、具体的に言えば、福島の原子力発電所のことです。 みなさんもおそらくご存じのように、福島で地震と津波の被害にあった六基の原子炉のうち、少なくとも三基は、修復されないまま、いまだに周辺に放射能を撒き散らしています。メルトダウンがあり、まわりの土壌は汚染され、おそらくはかなりの濃度の放射能を含んだ排水が、��海に流されています。風がそれを広範囲に運びます。  十万に及ぶ数の人々が、原子力発電所の周辺地域から立ち退きを余儀なくされました。畑や牧場や工場や商店街や港湾は、無人のまま放棄されています。そこに住んでいた人々はもう二度と、その地に戻れないかもしれません。その被害は日本ばかりではなく、まことに申し訳ないのですが、近隣諸国に及ぶことにもなりそうです。  なぜこのような悲惨な事態がもたらされたのか、その原因はほぼ明らかです。原子力発電所を建設した人々が、これほど大きな津波の到来を想定していなかったためです。何人かの専門家は、かつて同じ規模の大津波がこの地方を襲ったことを指摘し、安全基準の見直しを求めていたのですが、電力会社はそれを真剣には取り上げなかった。なぜなら、何百年かに一度あるかないかという大津波のために、大金を投資するのは、営利企業の歓迎するところではなかったからです。  また原子力発電所の安全対策を厳しく管理するべき政府も、原子力政策を推し進めるために、その安全基準のレベルを下げていた節が見受けられます。  我々はそのような事情を調査し、もし過ちがあったなら、明らかにしなくてはなりません。その過ちのために、少なくとも十万を超える数の人々が、土地を捨て、生活を変えることを余儀なくされたのです。我々は腹を立てなくてはならない。当然のことです。  日本人はなぜか、もともとあまり腹を立てない民族です。我慢することには長けているけれど、感情を爆発させるのはそれほど得意ではない。そういうところはあるいは、バルセロナ市民とは少し違っているかもしれません。でも今回は、さすがの日本国民も真剣に腹を立てることでしょう。  しかしそれと同時に我々は、そのような歪んだ構造の存在をこれまで許してきた、あるいは黙認してきた我々自身をも、糾弾しなくてはならないでしょう。今回の事態は、我々の倫理や規範に深くかかわる問題であるからです。  ご存じのように、我々日本人は歴史上唯一、核爆弾を投下された経験を持つ国民です。1945年8月、広島と長崎という二つの都市に、米軍の爆撃機によって原子爆弾が投下され、合わせて20万を超す人命が失われました。死者のほとんどが非武装の一般市民でした。しかしここでは、その是非を問うことはしません  僕がここで言いたいのは、爆撃直後の20万の死者だけではなく、生き残った人の多くがその後、放射能被曝の症状に苦しみながら、時間をかけて亡くなっていったということです。核爆弾がどれほど破壊的なものであり、放射能がこの世界に、人間の身に、どれほど深い傷跡を残すものかを、我々はそれらの人々の犠牲の上に学んだのです。  戦後の日本の歩みには二つの大きな根幹がありました。ひとつは経済の復興であり、もうひとつは戦争行為の放棄です。どのようなことがあっても二度と武力を行使することはしない、経済的に豊かになること、そして平和を希求すること、その二つが日本という国家の新しい指針となりました。  広島にある原爆死没者慰霊碑にはこのような言葉が刻まれています。  「安らかに眠って下さい。過ちは繰り返しませんから」  素晴らしい言葉です。我々は被害者であると同時に、加害者でもある。そこにはそういう意味がこめられています。核という圧倒的な力の前では、我々は誰しも被害者であり、また加害者でもあるのです。その力の脅威にさらされているという点においては、我々はすべて被害者でありますし、その力を引き出したという点においては、またその力の行使を防げなかったという点においては、我々はすべて加害者でもあります。  そして原爆投下から66年が経過した今、福島第一発電所は、三カ月にわたって放射能をまき散らし、周辺の土壌や海や空気を汚染し続けています。それをいつどのようにして止められるのか、まだ誰にもわかっていません。これは我々日本人が歴史上体験する、二度目の大きな核の被害ですが、今回は誰かに爆弾を落とされたわけではありません。我々日本人自身がそのお膳立てをし、自らの手で過ちを犯し、我々自身の国土を損ない、我々自身の生活を破壊しているのです。  何故そんなことになったのか?戦後長いあいだ我々が抱き続けてきた核に対する拒否感は、いったいどこに消えてしまったのでしょう?我々が一貫して求めていた平和で豊かな社会は、何によって損なわれ、歪められてしまったのでしょう?  理由は簡単です。「効率」です。  原子炉は効率が良い発電システムであると、電力会社は主張します。つまり利益が上がるシステムであるわけです。また日本政府は、とくにオイルショック以降、原油供給の安定性に疑問を持ち、原子力発電を国策として推し進めるようになりました。電力会社は膨大な金を宣伝費としてばらまき、メディアを買収し、原子力発電はどこまでも安全だという幻想を国民に植え付けてきました。 そして気がついたときには、日本の発電量の約30パーセントが原子力発電によってまかなわれるようになっていました。国民がよく知らないうちに、地震の多い狭い島国の日本が、世界で三番目に原発の多い国になっていたのです。  そうなるともうあと戻りはできません。既成事実がつくられてしまったわけです。原子力発電に危惧を抱く人々に対しては「じゃああなたは電気が足りなくてもいいんですね」という脅しのような質問が向けられます。国民の間にも「原発に頼るのも、まあ仕方ないか」という気分が広がります。高温多湿の日本で、夏場にエアコンが使えなくなるのは、ほとんど拷問に等しいからです。原発に疑問を呈する人々には、「非現実的な夢想家」というレッテルが貼られていきます。  そのようにして我々はここにいます。効率的であったはずの原子炉は、今や地獄の蓋を開けてしまったかのような、無惨な状態に陥っています。それが現実です。  原子力発電を推進する人々の主張した「現実を見なさい」という現実とは、実は現実でもなんでもなく、ただの表面的な「便宜」に過ぎなかった。それを彼らは「現実」という言葉に置き換え、論理をすり替えていたのです。  それは日本が長年にわたって誇ってきた「技術力」神話の崩壊であると同時に、そのような「すり替え」を許してきた、我々日本人の倫理と規範の敗北でもありました。我々は電力会社を非難し、政府を非難します。それは当然のことであり、必要なことです。しかし同時に、我々は自らをも告発しなくてはなりません。我々は被害者であると同時に、加害者でもあるのです。そのことを厳しく見つめなおさなくてはなりません。そうしないことには、またどこかで同じ失敗が繰り返されるでしょう。  「安らかに眠って下さい。過ちは繰り返しませんから」  我々はもう一度その言葉を心に刻まなくてはなりません。  ロバート・オッペンハイマー博士は第二次世界大戦中、原爆開発の中心になった人ですが、彼は原子爆弾が広島と長崎に与えた惨状を知り、大きなショックを受けました。そしてトルーマン大統領に向かってこう言ったそうです。  「大統領、私の両手は血にまみれています」  トルーマン大統領はきれいに折り畳まれた白いハンカチをポケットから取り出し、言いました。「これで拭きたまえ」  しかし言うまでもなく、それだけの血をぬぐえる清潔なハンカチなど、この世界のどこを探してもありません。  我々日本人は核に対する「ノー」を叫び続けるべきだった。それが僕の意見です。 我々は技術力を結集し、持てる叡智を結集し、社会資本を注ぎ込み、原子力発電に代わる有効なエネルギー開発を、国家レベルで追求すべきだったのです。たとえ世界中が「原子力ほど効率の良いエネルギーはない。それを使わない日本人は馬鹿だ」とあざ笑ったとしても、我々は原爆体験によって植え付けられた、核に対するアレルギーを、妥協することなく持ち続けるべきだった。核を使わないエネルギーの開発を、日本の戦後の歩みの、中心命題に据えるべきだったのです。  それは広島と長崎で亡くなった多くの犠牲者に対する、我々の集合的責任の取り方となったはずです。日本にはそのような骨太の倫理と規範が、そして社会的メッセージが必要だった。それは我々日本人が世界に真に貢献できる、大きな機会となったはずです。しかし急速な経済発展の途上で、「効率」という安易な基準に流され、その大事な道筋を我々は見失ってしまったのです。  前にも述べましたように、いかに悲惨で深刻なものであれ、我々は自然災害の被害を乗り越えていくことができます。またそれを克服することによって、人の精神がより強く、深いものになる場合もあります。我々はなんとかそれをなし遂げるでしょう。  壊れた道路や建物を再建するのは、それを専門とする人々の仕事になります。しかし損なわれた倫理や規範の再生を試みるとき、それは我々全員の仕事になります。我々は死者を悼み、災害に苦しむ人々を思いやり、彼らが受けた痛みや、負った傷を無駄にするまいという自然な気持ちから、その作業に取りかかります。それは素朴で黙々とした、忍耐を必要とする手仕事になるはずです。晴れた春の朝、ひとつの村の人々が揃って畑に出て、土地を耕し、種を蒔くように、みんなで力を合わせてその作業を進めなくてはなりません。一人ひとりがそれぞれにできるかたちで、しかし心をひとつにして。  その大がかりな集合作業には、言葉を専門とする我々=職業的作家たちが進んで関われる部分があるはずです。我々は新しい倫理や規範と、新しい言葉とを連結させなくてはなりません。そして生き生きとした新しい物語を、そこに芽生えさせ、立ち上げてなくてはなりません。それは我々が共有できる物語であるはずです。それは畑の種蒔き歌のように、人々を励ます律動を持つ物語であるはずです。我々はかつて、まさにそのようにして、戦争によって焦土と化した日本を再建してきました。その原点に、我々は再び立ち戻らなくてはならないでしょう 最初にも述べましたように、我々は「無常(mujo)」という移ろいゆく儚い世界に生きています。生まれた生命はただ移ろい、やがて例外なく滅びていきます。大きな自然の力の前では、人は無力です。そのような儚さの認識は、日本文化の基本的イデアのひとつになっています。しかしそれと同時に、滅びたものに対する敬意と、そのような危機に満ちた脆い世界にありながら、それでもなお生き生きと生き続けることへの静かな決意、そういった前向きの精神性も我々には具わっているはずです。  僕の作品がカタルーニャの人々に評価され、このような立派な賞をいただけたことを、誇りに思います。我々は住んでいる場所も遠く離れていますし、話す言葉も違います。依って立つ文化も異なっています。しかしなおかつそれと同時に、我々は同じような問題を背負い、同じような悲しみと喜びを抱えた、世界市民同士でもあります。だからこそ、日本人の作家が書いた物語が何冊もカタルーニャ語に翻訳され、人々の手に取られることにもなるのです。僕はそのように、同じひとつの物語を皆さんと分かち合えることを嬉しく思います。夢を見ることは小説家の仕事です。しかし我々にとってより大事な仕事は、人々とその夢を分かち合うことです。その分かち合いの感覚なしに、小説家であることはできません。  カタルーニャの人々がこれまでの歴史の中で、多くの苦難を乗り越え、ある時期には苛酷な目に遭いながらも、力強く生き続け、豊かな文化を護ってきたことを僕は知っています。我々のあいだには、分かち合えることがきっと数多くあるはずです。  日本で、このカタルーニャで、あなた方や私たちが等しく「非現実的な夢想家」になることができたら、そのような国境や文化を超えて開かれた「精神のコミュニティー」を形作ることができたら、どんなに素敵だろうと思います。それこそがこの近年、様々な深刻な災害や、悲惨きわまりないテロルを通過してきた我々の、再生への出発点になるのではないかと、僕は考えます。我々は夢を見ることを恐れてはなりません。そして我々の足取りを、「効率」や「便宜」という名前を持つ災厄の犬たちに追いつかせてはなりません。我々は力強い足取りで前に進んでいく「非現実的な夢想家」でなくてはならないのです。人はいつか死んで、消えていきます。しかしhumanityは残ります。それはいつまでも受け継がれていくものです。我々はまず、その力を信じるものでなくてはなりません。 最後になりますが、今回の賞金は、地震の被害と、原子力発電所事故の被害にあった人々に、義援金として寄付させていただきたいと思います。そのような機会を与えてくださったカタルーニャの人々と、ジャナラリター・デ・カタルーニャのみなさんに深く感謝します。そして先日のロルカの地震の犠牲になられたみなさんにも、深い哀悼の意を表したいと思います。(バルセロナ共同)
以下サイトより転載しました
https://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/5e18920119e56de25a99aaaf81a16a4f
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maborice · 5 years
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ぼくとスーパーダンガンロンパ2 CAPT. 1
 というわけでChapter 1。グラブルのギアスコラボが挟まったりでクリアまでにかなりの時間をかけてしまったので既に記憶が曖昧だったりする。社会は悪い文明。誰か5000兆円とは言わないから50000円ぐらいくれない?
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今作では隣の部屋は十神くんらしい。というかこのアイコン前作から使いまわしたな? ……あれ? 前作の隣の部屋の主って……。 いきなり前作のモノクマコインに変わる要素としてカクレモノクマの説明をされたが、このゲームの欠点として調査中のカーソル移動速度が遅いというのがあるんだがその欠点が如実に現れる要素だがいいのか? やること自体は好きだからいいけど360度旋回式のマップに隠したら怒るからな。
 そして島の中央に仕掛けられたバカでかいタイマー。どう見ても爆弾かそれに準ずる危険アイテムだがどうせ話進んだら爆発するだろうから考えなくていいや。ここで記憶奪って1年だと錯覚させていたくだりをやってしまうあたり、前作とは違った趣向ではなく、前作と同じコンセプトを出した上で、その先を超えていく気概を感じる。だからこの年頃の人間の成長誤魔化すのはまいどまいど無理あるんじゃないか? と思うが考えても仕方ないので以下略。 ただ奪ったのがクマじゃなくてミの方というのが若干引っかかる。その辺は世界観の話につながってると思うので考えても仕方ない。そればっかりだな今回。しかしアローラ十神の安定感と言ったら。なんかやたら修羅場をくぐり抜けたとか言ってるし前作の彼との接点を匂わせたくて仕方ないという雰囲気を感じる。どうせ殺すのにご苦労なことで。
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ただ、これほどまで1の続き、ということを推してくるのであれば以前に予想した前作と趣向を変えてくるだろう、という予想が全く当たらない気がしてきたので覚悟をしておこう。違うベクトルからアピールするのではなくあくまで同じ路線で上を行く、というのであればプレイヤーとしては願ったり叶ったりである。
 自由時間。前作で下手に後回しにすると泣きを見ることを思い知らされたのでとりあえず見た目で上から行く。というわけで初手王女。
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拘束衣渡したらクッソ不評だった。さもありなん。キャラクター的にはまあこんなもんか、というべきか必要以上に天然だったり世間知らずだったりしなくてよかった。そもそも前作からしてこの会話で明らかになるキャラクター性なんか本編とズレてるんだけど(極限状態である、という前提はもちろんあるが)。
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これは好き。
 よし! パーティをしよう! という話から流れるようにくじ引きを取り出し負ける狛枝。こんな事もあろうかとって何だよ……。 というか名前が前作主人公のアナグラムなの今気付いたわ!!!!!!!!!!! おっそ!!!!!!!!!!! そしてここまで全く良いところのない極道。極道に期待してたムーブをマネージャーがやってくれてるのでこいつが何したら良いのか分からなくなってきた。この後ちゃんと見せ場ある? 大丈夫?
 パーティ会場。とりあえず事務室でクソ高い位置のブレーカー見た瞬間に今回のタネを察する。ボディーチェックされたり一緒に危険物探したりアローラ十神にやたらとスポットが当たってるのとなんか過去のことをやたら強調して匂わせてきたりしてる当たりでなんとなく先の展開も察する。そしてなぜここまで察しておいて「ああ鉄串? 最初から一本足りなかったよ」だけはナチュラルにスルーした俺ェ! 「リストと数が合わないものがあるようだが?」「鉄串のことだね、それは気にしなくていいよ」なんて会話されたらつまり足りてないのは鉄串だろーが! なにリストの画像とにらめっこして「えー、このサイズの文字読んで数えるの嫌だなあ……」とか言っとるんじゃ! もっとホンシツを見ろホンシツを! キャシゴ!(鳴き声)
 そして案の定停電が起き何かごたごたがあって…… うーん通算9話出演にしてついにご臨終なされてしまった……。 案の定というかアローラのすがたはここで退場してしまった。前作キャラ(?)を引っ張りすぎるとろくなことがないし、何より前作の頃と比べて異常に人間性が向上しているのでこの状態で学級裁判しても波乱が起きそうにない(推理力が向上していなかった場合それはそれでまずいことになりそうだが……)。結局、初見のインパクトから好き放題プレイヤーを振り回した挙げ句そのままお星様になって消えていってしまった。うーん、男性陣で顔に興味があるのが狛枝だけになってしまった……あいつかぁ……
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突然こんなこと言い出した挙げ句に
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前作のギリギリちゃんのポジションまで一人で確保していくやつのこと純粋な目で見ろっての無理でしょ……なんだこいつは……。
 捜査開始。といっても今作初事件なので短い。
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朝日奈枠だと思ってたこの子も自発的に行動してくれるし何より写真情報を提供してくれるので杞憂が晴れて本当に優しい気持ちになった。保健委員とかも捜査に協力的で、なるほど十神白夜とギリギリ響子という不穏分子の居なくなった集団はこんなにも強調が生まれる(しないと殺られるとも言う)のか、と感心。その分日本舞踊家がゲーム的にもキャラ的にもヘイト製造機になってるのは流石に何かあるだろうからまだ許す。これで何もなしに生き残ったら余りにも余りにもすぎる。極道あたりと刺し違えねえかな(本音)。
 トイレはずっと埋められてて、外の見張りのゲーマーいわく外に出た子はいなくて、外をうろついてた極道が中に入る手段はなくて、床板は隙間がでかくて、凶器は細く鋭利ななにか。ふーん、鉄串ね。床下から刺し殺したんやろなあ。誰がやったんだろ~~~~。そこまで考えたなら露骨に怪しいやつが一人いたことに気づけ、僕!!!!!!!!!!
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……これ、逆転裁判3みたいな設定がこいつに付いてるわけじゃないとしたら犯行を露骨にごまかそうとしてるようにしか見えないのだが? まさかの散々匂わせといて1話で退場タイプか? 舞園さやかの系譜か? と思ったけどこいつまで退場したら意味深要員がいなくなって非常に薄味になるだろうから無いわ。万が一ここで退場したらそのまま裏で暗躍してるパターンだわ。
 というわけで証拠集めが終わって場面転換。ガンダムとかいう扱いにくそうなキャラを捜査に絡めつつ厨二力を存分に発揮していく脚本には脱帽。 証拠だけ見てるとあからさまに狛枝が怪しいのでそういう話題には行くと思う。その後真犯人になるかどうかは知らん(だから床下から鉄串という推理とテーブルにナイフを隠す行動が矛盾していることに気付け!!!!!!!! もう少し自分の論理を信用しろ!!!!)。個人的にはもう面倒くさいから極道が退場してほしい。 しかしスキルが選択習得方式になってずいぶん楽になった。迷うことなくエイム力向上スキルとタップバトル緩和スキルを習得しいざ学級裁判。
 学級裁判全体のシステムについて。 ・賛成 純粋に楽しい。逆転裁判出身なのでやはりノンストップトークが一番基本にあるので、これのバリエーションが増えるのは喜ばしい。 ・なんか切るやつ 爽快感はあるがボタン連打要素が邪魔。惜しい。あと弾を選択する下りが妙に分かりづらい。 ・アナグラム 楽しくなった。でも初回から「て」「つ」「し」は難易度高すぎるッピ! ・タップバトル なんでこれが続投してるんじゃ! 相変わらず意味分からんわ! ・漫画のやつ コマが順に提示されるようになって難易度が上がって手応えが出来た。でもアスペには厳しい。例によって漫画のクオリティがよい。
いざ裁判が始まると完全に狛枝ペースである。苗木+ギリギリは反則だなあとか思ってるうちに何かおかしな流れになる。
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前作主人公と同じようなこと言ってるはずなのに受ける印象がぜんぜん違うっていうのが本当に演出の妙って感じ。
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……うん。まあ、そういうことね。はい。 そっかー前作ボスが絶望フェチだったから今回は希望フェチかーなるほどねー分かる分かる……分からんわ……いや分かるけども! 詳しく掘るのは後にするけど根本的にこの子ら別に頭脳が優れている(ただし何かに特化している時点で少なくとも脳の機能自体は優秀だと考えられるが、それは置いておく)肩書じゃない人たちもいるからこの点でそこまで自分のこと卑下する必要ないんじゃないかな! しかしゲーマーと保健委員の活躍で自体は進展を見せる。オアーッ、前作の似たようなポジションは十神白夜に完全に抑えられてたから驚きの展開! これぞ2! というか澪もガンダムも貢献したり活躍機会が平等に振られている感がいいぞ! あ? 日本舞踊家? 知ーらね! そしてついに地下への侵入口の話題に! 最初完全にトイレから行ってるもんだと思ってから忘却の彼方に合ったが倉庫に積まれた荷物の下にあったらしい。うん忘れてたわ! もっと素直に制作陣の出したヒントを受け取れ! 逆転裁判3のこと思い出しとる場合ちゃうかったやんけ!
 そうなれば後は一直線で、結局蛍光塗料は普通に用意できるもんなのか? という疑問は完全に触れられなかったがついに凶器の隠し場所が明らかになる。骨付き肉……
……
サイズ感が分かりづれぇ~~~~~~~~~~!!!!!!!!!! ついでに超高校級の才能回収してきやがった~~~~~~!!!!!!!!!!!!! いや普通に床下に置いといたらいいんちゃうの!? それはポイ捨て判定になるのか? 確かに十神くんがヒントくれてたけどさぁ! そして決着。なるほど前作よりも序盤から各キャラの動きがはっきりしている。絶対強者の不在はこれほどまでに場を混沌とさせるのか。おしおきにてっきりモノケモノ使うのかと思ったらそうではなかった。ちゃんと南の島活かしててよかった(KONAMI)。
 「誰かに会いたい」「真実を確かめたい」の一心で反抗に走るのは前作と同様で、なるほど踏襲するかという感じ。次回以降の提示される動機やテーマにも注目である。 ちょっと首をひねったのが「確かに記憶は返す……返すとは言ったが、その時期までは指定していない!」のくだりで、これまで散々これは前作の続きだということをアピールしておいてそこで同じ設定でまだ引き伸ばすのかという印象を受ける。ただ今回の事件も含め記憶返しちゃうと事件の起きうるシチュエーションがかなり制限されかねないのでまあゲーム成立のために犠牲になってしまったのかあという感じ。まだ2話とかで返してくれるかもしれんからこの点に文句言うのはまだ早い。 そして何よりも王女様! 裁判終了後の「頑張りましょう」はズバリそれを待っていた!!!!!!!!!!! よし! 今の所不穏な要素は見られないので安心して推して良いな! ……本当に? 妙に国家のこと引き合いに出すから3話ぐらいで崩壊する自国の映像見せられて豹変したりしない? やめてね。
 という感じの1話であった。全体を通して感じられる「お前ら前作は当然やったよな? 覚えてないやつは置いていく」という制作陣の心意気が非常に頼もしい。周回すると選択肢が増えて新しいルートに行けるタイプのノベルゲームと同じ空気を感じる。そう、続編に求めてるのはこれだよ。嬉しいなあ。 ガラッと一新されたキャラクターたちではあるが前作にいなかったタイプを主眼に起きながら友好的,敵対的,積極的と言った集団に対する姿勢は1のバランスのまま、そこに狛枝とかいうとんでもない不穏分子を放り込むことで芯を残したまま混沌を生み出しており俺たちの学級裁判はこんなもんじゃねえという熱いメッセージが見える。なるほどこれはやらざるを得まい。そもそも前作から思っていたがいくら絶望的な状況だからってわざわざ殺し合いするとか敵の手の内にはまらなくても……もっと信頼しろよ……と言いたくなるが僕にも心当たりがあって、あ~~~友達が少ね~~~みんなオタクやめていって終いにはぼっちだ~~~とか言ってるオタクが僕含め周囲に何人かいてそいつらと永遠のYU-JO 友情 を誓っているのだが当の僕自身がこいつら絶対僕より先に卒業するわと内心思ってるので人間そういうもんだね。悲しいね。
・魔法少女ミラクルモノミ プレイ環境の問題なのだがボタン配置がアクションゲームとしてあるまじきことになってしまっており完全にクソゲーになってる。1話を遊んだ清々しい気分で遊びに行ったら10分で完全に余韻が吹き飛んだので勝手にキレてる。
・キャラクター所感
・ゲーマー さすがはOPの登場順がヒロインの位置の女、といった感じで今作におけるギリギリちゃん並の発言強度を持っている。事件前から裁判に至るまですべてのムーブがあまりに完璧すぎてゲーマーは世を忍ぶ仮の姿、みたいな展開になったりしない? 自由人タイプかと思ったら割とそうでもなかったのでちょっと意外。今のところは死にそうにないが……。 ・ガンダム 葉隠枠とか言ってごめん、chapter 1時点で葉隠の貢献ポイントを既に超えたわ。厨ニキャラとかいうさっむいさっむい設定になりかねないハンデを乗り越えて今日も元気に高笑いしている。最初は意外な犯人枠とか言ってたけど今回のコンセプトを考えるとやっぱり被害者ポジかもしれない。彼をおしおきすると必然的に動物が絡んできて然るべき団体から抗議来そうだし(最悪の予想法)。 ・日本舞踊家 完全にただのヘイト製造機1号になってるが流石に何かあるだろう。よりによって1話で貢献ゼロなのが最悪。ただ明確に保健委員(とメカニック)に悪感情を向けていることが分かるのでそういう方面でイベントがあるだろう……多分……こいつが山田枠になるかもしれんけど……。今の所ヘイトの売り方が安すぎてあんまり生死予想したくない。生き残っても殺しても殺されても文句しか出そうにないので掘り下げ待ち。そう言って掘り下げられなかったやつが前作にいたけど……うんまあ……続編だから改善されてるだろ……きっと……。 ・極道 ヘイト製造機2号。1号とは別ベクトルで虚無のヘイトを生む。 chapter 1 でも何一つ見せ場がねえ。大丈夫か?
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ところでそのネクタイの柄は何? 逆向いたクソ? ・カメラマン 朝日奈枠だと身構えていたがきちんと自分の頭で考えられる子だったので良かった。いやでも朝日奈も考えてはいたよな。人の話全く聞いてないだけで。まあでも全然違うんだけど枠的には朝日奈だから前作の反動受けそうだよなあ……(思考が呪われている)。 ・保健委員 あの場面で自分の意見を言える子は伸びる。謎のお色気シーンは正直良くわからんかったが検死スキル持ちは強いぞ。日本舞踊家とあわせて異常にくどい絡みを見せられるのは正直分からんが……。とりあえず序盤は生き延びられそう。 ・軽音楽部 可愛いからいいや! 頭悪いから茶化すしか無いバカ、のポジションは前作にもいたが明確に協力の姿勢が見えるので見た目で許せる。実際貢献したし。いや前作の連中も協力する意思はあったと思うんだけど……。 豹変パターンが無い限り死んでも死ななくてもちょっと微妙な感じがするので生きそう。生きて。 ・マネージャー クソじゃあああああああああ!!!!!!!!!!!! 割とこいつも何もやってねえわ! 2話か3話の被害者っぽい! ・オワリ 立ち振舞いが完全にさくら枠だった。見た目バカなのであんまり頭脳戦に向かなさそうだがどうするんだろう。でも前回も十神白夜(遺伝子組換えでない)が余計なことしたし今回も余計なことするって宣言しやがったやつがいるから犯人ポジになってもやっていけそう。 ・ペコ 風紀委員と同じように随所で協力の意思は示されているがアピールできるタイミングが無かったのがちょっと痛い。戦闘タイプのキャラとしてオワリと枠を争うことになるのでどちらかは脱落しそう。殺されるとしたらこっち、という気はする。 ・王女 今の所推せる度一位。求められてる振る舞いをビシッと決めてくれるのはやはり高感度が高い。現状新しい指導者に祭り上げられそうな空気があるのでとりあえずchapter 2の間は生き延びられる気がするがこの混沌渦巻く空間で統治が長く続くとは思えないので一悶着起きたタイミングでどのポジションにいるかがカギ。豹変して殺人犯になるパターンだけは避けてほしい。 ・メカニック 完全に野球部枠だと思ったら生き残った上に意外とツッコミが鋭いので割と需要が上昇した。
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ここ普通に「かずいちちゃん」って呼んでるはずなんだけど「わーちゃん」にしか見えなくて困った。こいつはわーちゃんだ。 ・シェフ ・御曹司 前回たまたま最後に書いた(約一名は別とする)2人が消えた。 消える予想まではあっていたが両方共被害者ポジだったのでうーんという感じ。まあ二人共やることやっただけマシだよ。
・超高校級の幸運 お前だよお前お前お前お前混沌の原因の99割お前だよ!!!!!!!!!!!! 希望フェチというなるほどと頷かざるを得ない属性を引っさげて現れた前作主人公(ではない……本当に?)。ただ絶望フェチに比べればしっくりくるので咀嚼自体は可能。なるほどこの異常なまでに歪んだ自己評価に惹きつけられるわけだ。確かにこんなキャラがこいつらと二年間(?)過ごしたら少なくともこの初期状態のままでいるのは不可能だろうから記憶を戻さないのも分かる。この劣等感のようなものを維持し続けるのは辛いだろう。戻したら戻したで「君たちへの憧れは高まっていくばかりだったんだよ! だから君たちならこれぐらいなんてこと無いはずさ! 僕には分かるよ!」とか言い出しそうだけど。アナグラムなのは依然気になるがもうこれは主人公だから出来なかったことをやるためのキャラとして見たほうが良いかもしれない。あんまり前作主人公に囚われないほうが良さそうだ。言葉の圧はあまりにも強いが言っている事自体はそれなりに筋が通ってはいるので、しばらくは場をかき乱し続けるだろう。十神白夜(アローラのすがた)の責任感ある行動には経緯を表しているっぽいし。何というか別に人殺しじゃなくてもこの状況を相手に言い分を全く飲まずに切り抜けるのも普通に希望っぽくない? とか言いたくないわけではないが思わず画面の向こうに反論したくなるキャラである、というのが大事なのだ。少なくとも今のところは。 ……いやまあ、全部演技で腹の底では全く別のことを考えている黒幕、と言われても違和感がないのが困りどころではあるが……。 ただ、前作では明らかに救うべき過去を持ったキャラクターが救済された例は殆ど無い(結果的にヒロインだったギリギリちゃんでギリギリ。しかもあくまで本人の手に委ねられている)ので、この歪み(そう言って良いのかは知らんがとりあえずこう表しておく)が訂正される機会が来るのかどうかは非常に謎である。訂正されないまま死んでいく可能性のほうが圧倒的に高そう。
・超高校級の主人公 今の所まあ主人公マインドだなと言う以外にあまりコメントがない。こいつが16人目、前作で言う戦刃むくろのポジションで��る、というような示唆はいくらか見られたのでなるほど今回は主人公ポジである狛枝が日向くんを受け入れるような展開になるのか、と思ったりもしたが狛枝が豹変してしまったのでちょっと怪しい展開になってきた。というかそもそも前作において自分の才能を覚えていなかったのはギリギリちゃんなので、(CVと合わせて)こいつが今作の探偵である、とか言い出してもおかしくないよなあ……でも流石に安直かなあ……。前作メチャクチャ胡散臭かった主人公もなんだかんだ胡散臭くなかったので今作もまあ主人公であることを期待しては良いと思う。出来ればここの予想自体は裏切らないでほしい。
追伸:
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1話で包丁が使われるのはシリーズ伝統か~~~~???? とか一瞬思ったが全く関係なかった。
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103 Promise
空は青く澄み渡り、アストラは静かで穏やかだった。絹のように地に薄く張った水面はまぎれもなく天を映しながら、その鏡面にはさらにひとりの、現実にはすでに存在しない人影が、大いなる戦いを終えたフェレスの主らを見守りつつたたずんでいた。ストラーラだった。淡い青みがかった銀髪と左右の均整のとれた美しい姿を持ち、だが今ならば、その身裡にはまったくの未知の力、無秩序の根源である混沌の資質を宿している者なのだとバルナバーシュには分かった。虚無と対をなして七つの資質を少しずつ持ち、そのカオスの不合理をはたらかせて変則と放縦のパターンを織りあげながらも、我々とともにロジックを生みだし、同じ結果にも到達しうる者……。予知を拒み、冷笑的でたわやすく心を開くことのないあやうい背理のなかで、彼女はなにを願い、なぜ円環の終わりに抗いながらフェレスのかけらに力と希望を与えようとしたのか。
バルナバーシュは、おそらく彼女のようなものの力こそが虚無と同様に、私たちヒトにとって最大の宿敵となり、またなくてはならぬ存在にもなるのだろうと漠然と感じとった。
ディオレが混沌の少女の幻影に歩み寄って、数歩離れたところにひざまずき、唇にあてた指を口づけを介した儀式のように水面に触れさせる。すると規則的な波紋が音もなく広がって、うっすらと輝き、水面に映っていたストラーラは反転しながら彼らのいる次元へ実体をともなって顕現した。その場にいる全ての者の視線が向けられたが、彼女は意に介さず、人も無げに口を開いた。
「……私はあなたたちの誰よりも、世界は夜に満ち、いつかはかならず終わるものと思っていた。私はひどく退嬰的な世界に生まれた、血も薄い不具の子だった。まるで滅びゆく時代を模した申し子のように。ゆるやかな絶望が落とす影を感じながら、ただひとりであることや、自然の営みだけに心を安らかにして、ヒトの可能性というものは露ほども信じていなかったし、願いや欲望などは冷笑すべきものだった。ときに不全のからだに苦しみ、ときに御しがたい衝動に振りまわされながら、それでも自分がなぜ世界に生きようとするのかさえ判然とはしない……。そんな私のもとにも、フェレスが目覚め、けれど自分の願いなどなにも分からなかった。〈可能性〉ではなく、〈運命〉のまにまにただ任せてイススィールへと来た。何よりフェレスの力が、私の短かった命を永らえさせてくれたから」
思いに沈んだ目で、長い溜息のように少女は淡々と、己れの来歴を語った。憂鬱に満ち、病的な気風のただようこの振る舞いが、心を取りもどした本来の彼女のありようなのだろうか。差し出した両手のなかがにわかに青白い光であふれると、小さなゼンマイ式のオルゴールがそこに現れる。ストラーラのフェレス――可愛らしい草花の彫りが入った木箱からは、悪夢めいて迷えるものがなしい歌が奏でられ、同じ旋律が切れ目なく続くさまは、彼女にとっての永遠を象徴しているようでもあった。
「私はあるひとりの魔族の男と、島の波止場で出会い、なかば連れられるようにしてリギノの神殿を訪ね、そうして七つのパワースポットをも巡っていった。あなたたちのように、さまざまな人々、さまざまな思い、さまざまな記憶に触れて、一歩一歩、少しずつ、世界の中心へと進みながら……。どうしてかは分からないけど、そんな旅や冒険は楽しかったし、景色は美しく、パートナーは得がたい友だちで、こんな私に命をかけて良くしてくれて、私もやがて、彼を守るためなら危険を冒してもよい思いを強めていった。彼は私と違って楽観的だったけれど、魔族らしく混沌的なところは似ていて、お互いがお互い以外の者には飽いていたから、長く続いたのかもしれない。そしてミュウにもグッドマンにも味方せず、まるで親に楯つく子供みたいに、無邪気に私たちははざまの道を進んでいった。………」
どこか悔いるように、ストラーラはかたく目を閉じる。
「あんなことになるなんて思わなかったの。人間になったアンドロイド、ユキルタスの導きでアストラで戦ったはてに、ミュウとグッドマンはさしちがえ、クレスオールは無念のなかで消滅し、要石であるユテァリーテは砕かれた。ユキルタスは物語は終わると言っていたけれど……それでもヒトに希望がある限り、いつか新しいイススィールは生まれるはずだった。そう、イススィールとエターナルデザイアーの伝説は多くの次元と結びつきながら、女神の意思さえも超越した永遠の円環〝だった〟から。でも私たちは、より大きな、もっとも上位にある絶対的な運命をその時に感じたわ……。『もう二度と、伝説はよみがえらない』のだと。島を形成するイメージはただ薄れて消えるのではなく、みずから燃えあがり、過去から未来へ、時そのものがはてるまで……すべての次元、あらゆる世界と存在のなかへ駆け抜けるようにして、全てが灰と化していった。喪さえ拒む仮借なき滅びによって、この神秘の島を知るわずかな人々に、鮮烈な記憶の痕を、秘密として残しながら。本当の、本当の終わりだったの。火をまえにして、私は――ひどく悲しかった。流したことのない涙さえ流した。でも、何も言えなかった……あまりに突然のことで、信じられなかったから。自分のその嘆きの正体は、今でも分からない。世界はいつか終わるのだと、あんなにも強く思っていたのに……。パートナーも、私とまったく同じ気持ちだった。そして私と彼は、イススィールでの思い出をレリックとしてフェレスに刻みながら、燃えさかる世界のなかであることを願い、また約束を誓った」
バルナバーシュのとなりで、かすかにディオレが息を呑む気配があった。幸星の民を束ねるこの戦士すらも知りえぬ事実が言い連ねられているのだろうか。
「もう一度だけ、かりそめでもかまわない……私のフェレスを要石にしてイススィールのイメージをつなぎとめて、この地を残し、エターナルデザイアーをまだ必要とする者たちを受け入れつづけること。それが、この島で生まれてはじめて生きる希望を抱いた、私の願いだった」 「私たち幸星の民の父祖が約束したというのは、ストラーラ、あなたとだという。パートナーとする魔族の男が、私たちの父祖なのか」 「そうよ、ディオレ。彼はもともと、黒魔次元からのはぐれ者で、次元から次元を海のように間切ってわたる旅人でもあった。名はエイデオン。いつか心を失うはずの私――偽りながらも、繰り返されるストーリーや志半ばで果てたフェレスのかけらを受け入れつづける私に、終わりをもたらす約束を交わした。そうして永い時が流れ、彼と私の物語も忘れられて、あなたたちのなかで掟に変わって残るだけになったけれど」 「父祖はあらゆる次元で落伍者や居場所のないものたちを集めながら、最後にオルトフの次元を見いだし、そこを彼らのためのささやかな住処と定めた。そしてフェレスを持つものが人々のなかから現れはじめると、彼らを鍛え、オルトフの次元からデスァ闇沙漠へつながる隧道を開き、あの場所のイメージをとらえながら進む案内人になることを掟にしたという。だが、父祖も長寿だったが定命の者であり……最期に自身の古い約束を、後世の者たちの手で果たしてほしいと言い残して現世を去っていった。約束ははざまの道の先にあるのだと」
ディオレが継いだその話に、ストラーラはいくらか満足したらしい顔をみせ、「昔話はもうおしまい」と首を小さく振る。
「それにしても彼、私と冒険した思い出や、約束にこめた想いなんかは、きっと誰にも話さなかったのね。おかげでディオレや後世の人達は、私をただの倒すべき敵かなにかのように思っていたようだけれど」
ディオレは言葉を詰まらせたが、ストラーラはそこではじめて、ヒトとしての笑みを浮かべ、すこし嬉しそうに含み笑いをもらした。そうして視線を、今度はルドへ、さらにバルナバーシュとフェリクスにも向ける。その瞳はいま、あらゆる人々の面影が去り、本来の赤みがかった黒玉の���に艶めいていた。
「最後のパワースポットを開放するわ。私のフェレスの力を、あなたたちに託します」
ストラーラがオルゴールをかざすと、その場に青白い光の泉水が生じ、イススィールの最後の力が滔々とあふれだして輝いた。オルゴールは見る間に朽ち、木箱がほろほろと崩れると、中にあったシリンダーは茶色く錆びてしまっていた。
「きみのフェレスが……!」
ルドは嘆いたが、ストラーラはそれに首を振った。
「私にはもう必要のないものよ。目的はすべて果たされたから。かつて、ユキルタスのフェレス――かなめのビスも同じようになったけれど、そのわけがやっ��分かった気がする。彼もきっと、かなめからの決別を最後には望んでいたのかもしれない」
パワースポットの前に、ルド、バルナバーシュ、ディオレ、フェリクスが集い、目と目をかわしあったが、たがいに何も言わなかった。彼らの後ろでは、獣人の娘ナナヤと猟犬のマックスが固唾を呑んで背を見つめている。
ルド以外の者がフェレスをかざすと、光は柱のように広がって立ちのぼり、彼らの意識と五感を包みこみながら新たな力を伝えてきた。それはいにしえより脈々たる、〈運命〉を帯びながら世界の定常を守ってきた数多くの英雄たりし者の極めた力と生涯の技、そして記憶――決戦の地アストラに到達しうる戦士だけに継承を許された、偉大なる頂きの光だった。そして四人もまた、継承を経てその伝説にいつか連なっていくのだろう。光の向こうに、かつてまことのイススィールで神秘の旅を経験した冒険者の何千という影が往還している。ある者は夢の化身を晴らし、ある者は魔王の破壊を乗り越え、ある者は女神の支配を砕いた……。鋭く冴えたリズムが鳴りわたり、続いてもうひとつ、またひとつと加わってゆき、イススィールの天と地に複雑で精妙なこだまを響かせた。意志に鍛えられた心身と霊的に研ぎ澄まされたセンス、内外を問わぬあらゆる攻撃をはねかえし、世界を切り分ける言説といかなる脅威にもひるまず目的を完遂しうるモラルの集中、そして調和への約束の歌が過去から未来へ、無限のかなたへと広がっていく。冒険者たち、いにしえの英雄たちの影をも越えて、世界の中心に立つある一人の、甲冑を鎧った者が力強いまなざしを四人に送っていた。その鎧はサークによく似ていたが――空櫃ではない。
「リギナロ!」
ルドが何かをさとって、その名を呼ばわった。リギナロは神殿で決意を示された時と変わらぬ気高さで、ヒトの心の深奥より、この世のすべての冒険者たちを祝福しているように思えた……。光が薄れていく。宇宙と個人がひとつとしてたがいを映し、ふくみあう深遠より浮かび上がり、秘密の回廊を抜け、四人の意識は現次元へ、アストラの地へと戻ってきた。
彼らの帰還を見届けて、ストラーラはもろく微笑んだ。
「約束を果たしてくれてありがとう……そして、さようなら。開眼人、極致にいたり、真理を悟ったひとたち。あなたたちが世界に流れる一筋の希望となることを祈っているわ」
ストラーラが大気に溶け入るように消えると、途端に天はふるえ、大地は荒ぶる巨人の肉体のごとく震撼した。要石の少女がつなぎとめていたイメージが崩れ去り、偽りのイススィールもまた消え行こうとしているのだ。不穏な喧騒に揺らぐ世界で、太陽は脈打ちながら色あせ、空は混沌と暗く濁り、地平は赤と黒の狂おしくうずまく煙と化して、大波をなしながらこちらに押しよせてくるかに思える。一行は地響きにひざをついておののいたが、恐怖を踏みしめどうにか立ち上がった。
「偽りの所産ゆえか、伝説に聞くよりも崩壊の速度が早い。ありあわせのイメージで持ちこたえているだけの脆さだったか……みなで旅の終わりを讃えあう時間も与えてはくれないようだ」
焦った様子のディオレが、目配りしながらみなに脱出をうながす。悲鳴と破壊がふりそそごうとするなか、バルナバーシュははっと思い出して、急いではいたが用心深い足取りで、咆哮する地平に向けてその場から駆け去った。ルドが追おうとしたが、魔術師は目的のものを見つけると立ち止まり、掴みあげる。それはフェリクスとの戦いで斬り飛ばされた、ルドの機械の右腕だった。
「バルナバーシュさん、それは……」
戻ってきたバルナバーシュの持つ己れの腕に、ルドは不安げな声をもらした。
「約束する。この島を出たら、私がかならず君の腕を治してみせる。たとえ長い時がかかったとしても――」
バルナバーシュは使命感から言い切ったが、それはかつてリギノの神殿で交わした「ルドに希望のありかを示す」という約束と同じく、ひどく不確かな未来で、なんの保証も持てぬ思いでもあった。ただ何も考えず、自分自身のするべきことへの直感を、もう知っているものとして今は信じるしかなかった。実現への困難を表したけわしい表情がバルナバーシュをかすめすぎたのをルドは見たが、何も言わなかった。
「フェリクス! あなたも私と一緒にくるんだ」
ディオレの警告が聞こえ、ルドたちもフェリクスのほうを見た。古代人は、いまはもう鉄塊に過ぎぬイブの亡がらに膝をつき、安息の膜のかかった瞳で彼女を見つめながらその場を離れようとしない。その背は頑なであり、見かねて腕を無理やりつかんで立たせようとしたディオレの手は乱暴に、にべもなく振り払われた。バルナバーシュとルドもまた、生存を望んで説得を試みたが、ときに彼の身勝手なまでの意志の強さは二人も知るところであり、そのほとんどが聞き流されているようだった。
「フェリクス。イブはお前がここで終わるのを望むはずがない。お前にはまだ島の外でなすべきことがあるんじゃないのか」 「バルナバーシュ殿、頼むから放っておいてくれないか。私は貴殿らとは逆しまに、これですべてを失ったのだ。夢も現実も、過去も未来も、生きる希望さえも……。鉱山でともに過ごしたあの日、イブは私のすべてだと語ったろう。それは今も変わらぬ。一心同体の者として私がこの時に願うのは、彼女と同じ墓の穴へ葬られることだ」
埃に汚れた眼鏡の奥からバルナバーシュに向けられたルベライトの瞳は、光を失ってはいない。絶望も自棄もなく、心の底から強く望んでいるのだと、宿敵だった相手に打ち明けていた。もはや打つ手なしと嘆息するルドたちのもとに、ひとり近づく者があった。赤毛と尾と肩を剣幕とともにすさまじく怒らせ、憤懣やるかたなく目を吊り上げたナナヤが、ずかずかと、消滅に瀕した大地を大股で横切り――とめだてさせる隙もなくフェリクスの胸倉をつかむや、精魂を握りしめた拳で思いっきりその頬に一発食らわした。唖然とするルドたちの前でフェリクスは口を切って突っ伏し、眼鏡は数歩離れたところに吹っ飛んで片側のレンズに罅が入った。
「この頓馬が、いい加減に目を覚ましやがれ。この機械はあんたの命を守って死んで、そしてあんたはこの機械を愛していたんだろう。だったら、生きるんだよ。それがあんたにふりかかっちまった、どうしようもない運命なんだ――どうしてそれが分からない?」 「ぐうっ……この小娘……ッ」
最後になって運命と戦うのではなく尾を巻いて逃げだそうとした己れの図星をこうもはっきりと指され、怒りをあらわに食いしばった歯の間からフェリクスは罵倒を押し出そうとしたが、荒い呼気とうなりにしかならず、結局なにも言えずによろよろと眼鏡を拾ってかけなおし、ふたたびイブの前にひざまずいた。彼女の頬に手をやり、側頭部から親指ほどの銀色のチップを抜き、それから銀空剣に突き通された胸の中へ、心臓を掴みとらん勢いで腕をねじ込んだ。絡みつく電線や器官から引きちぎるようにして拳大の青い正八面体のコア――永久にエネルギーを生みだすという遺失文明の結晶を取り出すと、チップとともにベルトに下げた鞄に仕舞いこむ。フェリクスと機械種族のルドだけが、そのチップが、イブのこれまでの経験や記憶を、稼働する頭脳とは別にバックアップとして写しておく記録媒体であるのを知っていた。ルドは、自分が銀空剣で致命傷を与えたあとの記憶――〈イムド・エガト〉で戦うフェリクスを地上から見届け、彼の言葉によってイブの願いが叶った瞬間のこと――は、破損し、完全にはその中に残されていないかもしれないと考えた。
「ふたたびお前に会いにいく。かならず」
フェリクスはイブの亡がらにそう言い残し、立ち上がった。ディオレの先導のもと、ルド、バルナバーシュ、ナナヤ、フェリクス、猟犬のマックスは、次元の瓦礫と無をたたえた黒い穴ばかりの――それさえも塵に帰して消えていこうとするアストラの地を急ぎ駆け去っていく。一度だけ振りかえったフェリクスの視線の先では、イブの機体はまだ眠れるように捨ておかれていたが、それも巨大な結晶となって降りそそぐ空の破片の向こうに埋もれ、見えなくなった。
アストラから幅広い階段を下りていくうちに、あたりは発光する色のない濃霧につつまれ、肌や喉に刺すようにまつわり、彼らの向かうべき方角や意志力をも狂わせようとした。たがいの顔を探すのもままならぬなか、「立ち止まれ」とディオレが言い、続くものらはぞっとしながらも従った。霧にまったく覆われた世界では、空を渡る火も大気も、地を流れる水も土も、形をうしない、すべての元素が曖昧になってひとつに溶け合っていくようで、それに巻き込まれかねない危機感、そして異様な悪寒が身裡に走るのを一行は感じていた。ディオレは幻妖として霊的に発達した感覚をめぐらしたが、尋常ならぬ霧はあらゆる観測をしりぞけて、イススィールとこの地にまだ残る者たちを〝どこにも実在せぬもの〟として呑みこみつつあった。このままでは肉体と精神は切れ切れの紐のようにほどかれて分解し、宇宙に遍満するエネルギーのなかに取り込まれて、諸共に自我も跡形もなくなるだろう。いずれ死の果てにそうなるのだとしても、今ここで己れを手放すわけにはいかない。
「ディオレ、進むべき場所のイメージをとらえられないか」
バルナバーシュがディオレの肩と思われるところをつかんで言った。蒼惶と声を張ったが、霧の絶縁力にはばまれて、ディオレにはほとんどささやくようにしか届かなかった。
「やってみてはいる。だがこの霧はあまりに強力だ」
そのとき、近くからナナヤの短い悲鳴――はっきりと聞こえる――があがり、青白い光があたりに差して、見れば彼女の手にはハインから贈られた〈沙漠の星〉が握りこめられているのが分かった。ただただ驚く彼女のまえで、宝石はやわらかな光を輝かせながら球状に、周囲の濃霧を晴らし、またひとすじの細い光線が、ある方向を真っ直ぐにさしながらのびていく。霧のなかに溶け入っていた足元はいつのまにか階段ではなく、新緑色の草地からなる野原に変わっていた。
「その石が足場のイメージをとらえているのか」
精巧な羅針盤の針のようにぴたりと途切れぬ光の先をみとめながら、フェリクスが言った。彼らは思いを同じくしながら、光のさすほうへ進んでいった。ルドとバルナバーシュは、暖かな草土の感触を踏みしめ、灌木の梢が風でこすれあう音を聞き、獣のにおいがかすかに混じる大気をかぎながら、ハインが多く時を過ごしたであろうエイミリーフ広原を思い起こし、またナナヤの持つ〈沙漠の星〉が、新たに生まれし希望――フェレスとしての産声を上げたのかもしれないと考えた。
(お願いだ、ハイン。あたしたちを導いて)
ナナヤがそう祈った直後、光のさきから獣の吠え声がした。
「アセナ?」
聞き覚えのある鳴き声にナナヤが呼びかけると、思ったとおり、応えるように白い雌狼が霧のなかから現れ出た。家族のしるしにマックスと顔を近づけあい、その後を追って、大柄な人物も飛び出てくる。正体にディオレが驚きで声を上げた。
「ああ、グレイスカル!」 「ディオレか!」
節々を覆う灰色の鱗と側頭部からねじ曲がる二本の角、二メートル近い体格を持つ竜族の男だった。瞳は白目の少ない血紅色で、まさに竜のごとく筋骨隆々とし、見るからに屈強な戦士であったが、まとう装甲は血と土埃に汚れ、外套は焦げ落ち、武器であるナックルは籠手ともどもぼこぼこにへこんでしまっている。むき出しになった頬や黒髪の頭部、鱗がはがれた隙間からは流血のあとが見てとれた。ディオレは彼の腕をひしとつかみ、引き寄せて抱きしめ、幸星の民だけにしか分からぬあらんかぎりの言葉で喜びをあらわした。察するに、はざまの道を進んでいた時には彼に会えなかったようだ。
「エソルテル砦を守る騎士――クァダスたちにやられそうになったところを、間一髪、アセナが助けてくれたんだ。ハインが仕向けてくれたに違いないが、して、あいつはどこに?」
グレイスカルは同行者だったナナヤをみとめ、顔ぶれのなかにハインを探したが、彼の顛末を伝えると快活な面立ちははや深い悲しみに沈んだ。誇り高い友を襲った死への罵倒、そして生前の彼をほめそやす呟きがこぼれる。
「あのような好漢が先に逝ってしまったのはまこと残念でならん。そして我らの友、イラーシャも。だがこの周囲の有りさま、ついに偽りのイススィールに終わりをもたらしたのだな。俺は砦で負った怪我がひどく、階段を登るのはあきらめていた。ディオレ、それにフェレスの戦士たちよ……よくぞ果たしてくれた。死んでいった者たちの無念も、お前たちの戦いで弔われたならばそれに如くはない……」
グレイスカルとアセナを連れて、彼らはさらに道なき道を進んでいった。〈沙漠の星〉はあらゆる辺境でヒトを導く不動の星であり、現次元と星幽が交錯するただなかにある冒険者たちのため、行くべき道を絶え間なく照らしつづけている。いまこの時の、唯一の希望と変わって。やがて重々しいとどろきが遠くから聞こえ、より耳を澄ますと、それは大海にどよもす海鳴りだと分かった。一行は島の涯、神秘の冒険のはじまりの場所だった海岸に近づきつつあるようだった。
靴底が細かな砂を踏むと、そこで〈沙漠の星〉の光は役目を終えて消えていった。霧は完全に晴れ、砂浜に立つ一行の前には、暗く怒号して荒れる海が果てしなく広がっており、暗灰色の重く垂れこめる雲から打ちつけるのはささやかな糠雨だったが、騒擾としてやみがたい大波と風の群れがこれから臨む航海を厳しいものにするだろう。
「蟷螂の斧だな」
バルナバーシュが浜辺に残されていた一艘の頑丈そうな木製の小舟を見つけると、うねりやまぬ海を横目に船底や櫂をあらため、まだ使えそうなことを確かめた。これに乗るのは四人が限度といったところか。
「諸君、我らはここで別れとしよう」
灰色の竜族、グレイスカルが高らかに告げ、ディオレも肩を並べると感慨深く仲間の顔を見渡した。「君たちはどうするんだ」バルナバーシュが幸星の民らを案じて問い、ディオレがそれに答えた。
「私たちはもどって闇沙漠のイメージを探し、そこからオルトフの次元へ帰ろう。大丈夫だ、あとは自分たちのフェレスが道を拓いてくれる。闇沙漠でも伝えたが、君たちをなかばだますような結果となってしまったこと、まことにすまなく思っている……だが君たちが辿り、乗り越えてきた冒険――思索、探求、そして神秘の数々――は、偽りとはならない。決して。なぜならイススィールは、つねにあらゆる時代、あらゆる人々の心のなかに存在しつづけ、世界が滅びに迷えるとき、天末にあらわれ、はるかなる果てへといたる門を開くのだから。その永遠の営みのなかで、私たちは君たちとの冒険譚とともに、後世に役目を継いでいくとしよう。いつかまた、終わらせるものが必要とされる時のために」 「君たちは何ものなんだ。オルトフ、あの地は現次元ではあるまい」 「時空の流れつく浜、魂の森、あるいは闇沙漠に集う夢のひとつ――そこに住まう者たちとでも言っておこうか。では、さらば! 縁があれば別の次元で会おう」
幻妖と竜族のふたりの戦士は、故郷をさして早足に駆け去っていった。その背を見届け、彼らが砂浜に繁る森のなかへ消えると、ルド、バルナバーシュ、フェリクス、ナナヤの四人は協力して小舟を波打ち際まで運び、そのあとを猟犬のマックスと白狼のアセナが忠実な足取りで付き従った。嵐の海は調和の象徴たる海流が正体を失ってないまざり、遠洋では硫黄めいた未知のガスが蒸気のようにあちこちで噴き出して、寄る辺となる次元や生命のしるしさえも見いだせぬ。いくつもの黒い波の壁がうめきつつ落ちてはまたそそりたち、水飛沫を散らして強く吹きつける潮風にルド以外の目や肌はひりついて痛んだ。水はわずかにねばっこく、塩ではない、いまわしいものの枯れた死骸を思わせるような、悪心をもよおすにおいがした。ルドは身をふるわせ、ナナヤの顔には恐怖が張りついている。
「この海を渡りきれるだろうか」
バルナバーシュがおぼつかなげに海をみやった。フェリクスだけが頓着せず、つねよりも鹿爪らしい面差しで出帆への備えを進めており、バルナバーシュもその片言のほかは何も言わなかった。この砂浜も近く虚無のなかへ消滅し、それまでにイススィール周辺の乱れた自然律や概念の撹拌された海が都合よく鎮まってくれるとは到底思えなかったからだ。小舟を波間に浮かべると、四人は悲壮感をもって乗り込み、二匹の獣もまた船べりを踊りこえて飛び乗った。
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shibaracu · 4 years
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◆コトバの不思議◆コトバのチカラ◆言霊(ことだま)
◆コトバの不思議◆コトバのチカラ◆言霊(ことだま) 日本には昔から言霊がある。 コトバには力が有り不思議なモノが宿ると。 コトバ一つで世の中が動いたり人が動いたりする。 コトバの不思議を色々と探ってみた。 たわいのない事書いたページもある。 難しい学術的な事も書いたページがある。 日常から学問 色んなコトバの探検。 貴方達も感じるモノではないかな。 何を感じ何を自分のモノとして活かせるか。     ◆おんなコトバの不思議=女言葉の不可思議   解説:池田光穂 https://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/131201onhnakotoba.html はじめによんでください. https://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/ikeda-jfirst.htm ――オンナコトバ(女言葉)ってなに? ――女が話す言葉でしょう。 ――「オカマ」*が話すオネエコトバもそう? ――女が話すように話すから、それもオンナコトバでしょう、たぶん?! ――どうしてオンナコトバがあるのかな? ――女がそのような話し方をしてきたからでしょう。 ――男がそのように女に対して「話させてきた」のでは? ――そうとも言える。 言語学者(日本語学者)の中村桃子先生は、女ことば を、日本の女性が使ってきた言葉というよりも、その言葉の使用には時代的変遷があり、普遍的に決して同じではないことを主張している。その意味で「女こと ば」とは、ことばの使用のジャンルであり、歴史を超えて厳然と存在するものではないと言う。また、昔の人の女ことばを使っていて、今はそうではないという 主張も怪しいとおっしゃる。昔と今で、女ことばに共通点がそれほど見つからないのに、なぜ独自の女ことばがあるとみんな信じてしまうのだろうか。などな ど。
◆寺田寅彦 言葉の不思議 - 青空文庫 https://www.aozora.gr.jp/cards/000042/files/42768_23763.html 目次 一 一 二 三 四   一 「鉄塔」第一号所載木村房吉氏の「ほとけ」の中に、自分が先年「思想」に書いた言語の統計的研究方法(万華鏡所載)に関する論文のことが引き合いに出ていたので、これを機縁にして思いついた事を少し書いてみる。
◆ ◆ ことばの不思議 ◆ http://www.asahi-net.or.jp/~pw2t-mnwk/Life/LanguageNHK.html 1998/06/13 23:45-24:30 NHK教育 知への旅 「ことばの不思議 (1) なぜ話せるの?」(3回シリーズ) 人間の可能性を探る言語学 「言語学」について一般向けにわかり易く紹介する番組。 アメリカで作られたものの吹き替え版。3回シリーズの第1回を 観ただけだが、とても面白い番組だった(第2回は 6/20、第3回は 6/27 放送予定)。 このところ放送している「知への旅」シリーズは好き。 このページでは、番組を観て僕が考えたことなどを雑多に書きます。 番組内容と異なったり、飛躍しているところもあるかもしれません。
◆生命のよもやま話 http://www.asahi-net.or.jp/~pw2t-mnwk/Life/index.html MINEW は、生命や進化、性選択、人工生命などについて考えています。 ● イキのいいネタ Top3    2007/02/12 「ダーウィンの悪夢」 in 映画    2006/06/26 「インテリジェンス・ダイナミクス 2006」シンポジウム in イベント    2006/06/05 「人間の進化と性淘汰 II / チャールズ・ダーウィン」 in 書物    └→ 倉庫
◆こんにちは。 「ミニュウのホームページ」と呼んでください。 http://www.asahi-net.or.jp/~pw2t-mnwk/index.html 気の向くままに、いろいろやってます。ごゆっくりどうぞ。 ● イキのいいネタ Top3    2020/01/02 「年賀状 2020 年」 年賀状 in よしなしごと    2019/01/03 「年賀状 2019 年」 年賀状 in よしなしごと    2018/01/05 「年賀状 2018 年」 年賀状 in よしなしごと    └→ 倉庫
◆コトバのチカラ - YouTube https://www.youtube.com/channel/UCrimxfW4K6l3fE7RBsxR2ug 【江原啓之】ため息をつくと幸せが逃げるのではなくコレが逃げます! 【江原啓之】素晴らしい人ほど○○です!
◆名言!コトバのチカラ.JP https://00m.in/HW6zG 名言!コトバのチカラ.JPは、歴史に残る偉人や有名人などの残した名言を記録に残し、皆さんに知ってもらうためのwebサイトです。また、可能な限り出典を記載し、わかりにくい言葉には意味を解説。さらに有名な言葉については詳細解説も掲載しています。
◆ 第二十四回 母子健康協会シンポジウム https://www.glico.co.jp/boshi/futaba/no68/con05_11.htm 保育におけることばの問題と対応 2 ことばの遅れと対応 神奈川県立保健福祉大学教授 前川 喜平 ことばの獲得  ことばの獲得には、まず最初に、耳が聞こえるということです。それから目が見えて、五官がちゃんとしているということが条件です。そうすると、お母さんの身振りとか顔つきとか、いろんな言葉が、ある程度コミュニケーションの一つの道具だということを、子供は気がつくわけです。こっちが笑ったら向こうも笑うとか、おなかすいたときに、何だか知らないけど、泣いたら御飯が出てきたとか、そういうことですね。
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◆孫の代まで残したい言葉は何ですか? https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11840291 『おかえり』 です。 いつ何処でどんな事が起こっても不思議でない世の中になってしまいました。 毎日この言葉を云える幸せが続きますように。 「起きて半畳 寝て一畳 天下とっても 二合半」です。。。。 『幸せは歩いてこない だから歩いていくんだよ 一日一歩 三日で三歩 三歩歩いて 二歩下がる』 人のふり見て我がふり直せ 私の好きな、というか常に思っている言葉は「因果応報」。 悪い事すると自分にかえってくるし、いいことをしても自分にかえってくるという意味ですね。
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◆コトバの不思議 http://bit.ly/wgeyMr 爆笑問題のニッポンの教養FILE020:「コトバから逃げれられないワタクシ」 というのをやっていた。惜しいことに途中からみた。。。 言葉というのは、とても不便なものだと思う。 放送で言語学の教授が、 「イヌとネコが歩いているっていうのを同時に言えない」 と言っていた。 思わず頷いてしまった。   ◆「バイトテロ」の使い方や意味、例文や類義語を徹底解説! | 「言葉の手帳」 https://00m.in/153lZ 2019/03/13 バイトテロ(ばいとてろ) 近年たびたびネットやニュースで話題になり、社会問題にもなっているのが、この「バイトテロ」という行為です。まだ出来て久しい語なので、その言���自体は聞いたことがないという人もいるかもしれません。そこで今回はこの「バイトテロ」という言葉の内容について解説していきます。 この記事の目次    バイトテロ(ばいとてろ)        バイトテロの意味とは        バイトテロの由来        バイトテロの文章・例文        バイトテロの会話例        バイトテロの類義語        バイトテロまとめ バイトテロの意味とは これは「アルバイト従業員などによる、SNSにおける不適切な発言や写真投稿に対して批判が殺到して炎上する現象」を指す日本の造語です。多くの場合、飲食店や小売店において、従業員が店内の商品や什器を使用して悪ふざけする様子をスマートフォンなどで撮影し、SNSに投稿されています。投稿された動画などはTwitter等によりあっという間に拡散されるので、後から投稿元の記事を削除しても手遅れという事例も多数あります。中には、監視カメラに映った有名人の映像を、SNSに無断で公開する行為なども含まれます。
◆コトバの七不思議 http://bit.ly/wQzdyN
◆コトバの不思議世界への扉⑤(コトバのはじまり): http://bit.ly/yidx4E
◆ 民間信仰というコトバの不思議  なか (nakajima oumi) 2019/04/19 00:03 https://note.com/storysymbol/n/n2ab235b6e794 民間信仰という言葉が使われることがあります。これ、考えてみれば不思議な言葉で、お役所信仰ってあるんでしたっけ、と思ってしまいましたので、少し調べてみました。 一般的には「組織宗教的なものではない、教義や組織をもたない信仰」をさして民間信仰と呼ぶようです。 ただ、役所信仰ってあるのかなと思って日本史をさかのぼると、平安の昔、空海や最澄の時代、日本のお坊さんの多くは国家公務員でした。 空海は「国費で奨学金もらって留学してきます!」といって唐に留学しましたが、天才だったので20年の留学期間を2年に短縮してさっさと帰国してしまいます。
◆愛と感謝、水からの伝言 https://www.ne.jp/asahi/aquarius/messenger/mizu-photo.html 昨今、「水」を凍らせて、その結晶を写真に撮った本が静かなブームを呼んでいます。写真を見て驚きと大感激です。また「テレビや雑誌」などでも紹介されて、多くの人の関心を集めるようになりました。 言葉や文字には、それぞれ固有のエネルギーが宿っています。 水に、よい言葉や文字を見せたり、音楽を聴かせると、 「水の結晶」は美しく変化します。
◆人間の言葉を理解する、猫の不思議  https://www.excite.co.jp/news/article/Goowatch_788175e16ae8895d3b33cf1ec0913b06/
●猫が人の言葉を理解しているという確かな根拠 | ペット | 東洋経済 https://toyokeizai.net/articles/-/305086 2019/10/05   縄張りという視点で人をよく観察している 人の心を見透かしているようでもあり、まったくわかっていないようでもあり……。 猫は人の言葉を理解しているのでしょうか。ベストセラー『ざんねんないきもの事典』シリーズ、『わけあって絶滅しました』の監修者としても知られる動物学者の今泉忠明氏が、解剖学、動物行動学の知見を駆使して、猫脳の謎に迫った『猫脳がわかる!』から、一部を抜粋してお届けします。
●猫は人間の言葉を話せる?猫たちの不思議伝説 | PETomorrow https://petomorrow.jp/news_cat/89334   猫  都市伝説 猫は人間の言葉を話せる?猫たちの不思議伝説 猫と暮らしている方であれば「ああ、そうだね」と理解できる話だと思うのですが、猫って人間の言葉を理解している節がありますよね。 たとえば名前。 飼い主が名前を呼ぶと、寝ていても、ちょっと離れていても顔をこちらに向けて反応したり、返事をしてくれる猫は多いものです。 ときには簡単なあいさつや要求ぐらいなら、意向を汲んで対応してくれる猫までいるほどです。 猫たちはおそらく、ある程度飼い主側の言葉を理解しているのでしょう。
◆誤用の多い日本語の一覧とは   nicovideo https://00m.in/QxxDL ここでは、本来の意味と慣用的な意味に大きな違いが見られる日本語及び一般に普及している外来語を一覧する。 この記事に掲載された日本語は、本来の意味で使うと多くの人に伝わらず、慣用的な意味で使うと一部の人からツッコミが入るので、大百科などでは使うのを避けた方がよさそう。
◆コトバのチカラ http://bit.ly/xrjimr
◆ことわざの先にある言葉 http://appli-corp.com/blog/sukagawa/?p=345
◆『観察力』を鍛える唯一の愚直な方法|佐渡島庸平(コルク代表) https://www.sady-editor.com/n/nda177e6281a3 2019/12/24 一流のクリエーター、経営者は、みなセンスがある。 では、「センス」とは何か? では、「センス」とは何か? それは「観察力」によって暗記したことを元に下す決定のことではないかと、僕は考えている。その観察力に気づけない人は、直感や動物的勘という言葉を、その意思決定プロセスに使うのではないか。 観察力のある人は、世界を見る「解像度」が圧倒的に高い。
◆逆さしりとり - 葛の葉と和泉 http://kuzunoha.kantate.info/sakasa/sakasa_log_001.html 逆さしりとり 投稿者:kuzunoha_bach 2002/ 6/24 6:40 メッセージ: 1 これは に対する返信です 普通のしりとりの逆です。 つまり、その言葉の頭文字で終わる言葉をつなげていきます。 例:えんぴつ→こえ→しゃこ(車庫)→あし(足) ▼一応の規則とお願いです 【基本的なこと】 ○和語、漢語、外来語を問いませんが、日本語の単語と見なせるものを投稿してください。(もちろん古語もOKですが、字音仮名遣いはなし。) ○用言の場合は終止形で投稿してください。 ○つながりを分かりやすくするため、辞書の見出しのように平仮名または片仮名を用い、必要なら(上記「しゃこ(車庫)」のように)その後に漢字や原語を書き加えてください。 ○投稿語に「 」は不要です。 【細かいこと】 ○長音記号(ー)は、のばす文字の段の「あいうえお」とみなします。  (「キー」=「キイ」、「ショー」=「ショオ」等)  →「プリンター」=「プリンタア」がおかしいと感じるような場合は、「プリンタ」として投稿してください。 ○同音異義語はOKです。( )の中に、漢字等意味を区別するものを書いておいてください。
◆第20回 さかさことば | 日本のことば遊び - ジャパンナレッジ https://japanknowledge.com/articles/asobi/20.html 子供のころに、「テブクロの反対は何だ」と言って、ロクブテと答えさせ、相手を六つたたく遊びをなさったかたが多いと思います。ある時期の子供は、言葉をさかさに読むことに興味を持つもので、電車に乗っていると、停車するごとにシバンシ・ワガナシなどと、駅名をさかさに読んで遊びます。 わたくしが小学一年生のときに、みんなで、タデ、タデ、ガキツ。イルアマ、イルアマ、イルマンマ、ンボ、ノ、ナウヤ、ガキツ。と歌っていた記憶があります。 明治四十三年に創刊した雑誌『白樺』の同人である武者小路実篤が、大正五年に次のように書いています。
◆翻訳と言霊 http://bit.ly/Av0AFT
◆語感言語学 言語学試論 http://bit.ly/z1t8KV
◆言霊の不思議な世界! http://bit.ly/rZXUFy 言霊(ことだま)とは、一般的には日本において言葉に宿ると信じられた霊的な力のこと。 言魂とも書く。 清音の言霊は、森羅万象がそれによって成り立っているとされる五十音のコトタマの法則のこと。その法則についての学問を言霊学という。 Wikipediaでは言霊をこのように説明しています。
◆「水からの伝言」を信じないでください https://www.gakushuin.ac.jp/~881791/fs/ 「水に『ありがとう』などの『よい言葉』を見せると、きれいな結晶ができて、『ばかやろう』などの『わるい言葉』を見せると、きたない結晶ができる」というのが「水からの伝言」というお話です。 テレビで芸能人が取りあげたこともあるし、小学校の授業の教材として使われたこともあるそうです。 しかし、これまでの科学の知識から考えれば、水が言葉の影響をうけて結晶の形を変えるということは、けっして、ありません。 本や写真集には、実際に試してみたという「実験結果」がのっています。 でも、これは、実験する人の「思いこみ」が作りだした「みかけ」だけの結果だと考えられます。 ただの「お話」と思って聞くならいいかもしれませんが、事実だと思うのはよくないでしょう。
◆良い言葉を使えば良いことが起こる。水が教えてくれた、言霊の真実。誰でもできる実験つき https://matome.naver.jp/odai/2147381608900101301  2019年10月12日 言葉には力があると昔から言われ続けてきました。その言葉の力を水を通して目にすることができます。言霊の威力を知れば、あなたも言葉の力を発揮することができるでしょう。
◆言霊 - Wikipedia http://bit.ly/rWj8sV 言霊(ことだま)とは、日本において言葉に宿ると信じられた霊的な力のこと。言魂とも書く。 清音の言霊(ことたま)は、森羅万象がそれによって成り立っているとされる五十音のコトタマの法則のこと。 その法則についての学問を言霊学という。   ◆言葉(ことば)http://bit.ly/yQeVW5 話す・書くなどの行為をする事によって情報伝達手���となりうる、意味があるものの総称。心・気持ち・思い・考え等を表す手段の一つである。 学術的分野では、「言語」とも称される。   ◆・水の結晶言霊シール https://hadolife.net/SHOP/3391.html 美しく輝く結晶のシールは、使い方いろいろ! いつも身近に結晶を。 使い方はあなた次第!プレゼントにも人気です! 美しい水の結晶で癒される健康や環境問題に関心のある方だけではなく、 言葉の大切さを伝える教材としても世界中にひろがっています。 言霊 ◎アロハ/Aloha  ◎マハロ/Mahalo ◎慈悲/Compassion  ◎福の神/The God of Wealth  ◎ありがとう/ThankYou  ◎きれいだよ/You Are beautihul  ◎真理/Truth  ◎人類愛/Love For Humanity  ◎愛感謝/Love and Gratitude ◎幸せ/Happiness  ◎和/Harmony ◎天照大神/Amaterasu Omikami   ◆水・命からの伝言 ~優しい言葉が、社会を・家族を・自分自身を心豊かにしていくのかもしれません~   2013/09/16  https://youtu.be/h33CSZG5GEY 8/30 「水・命からの伝言」  ~優しい言葉が、社会を・家族を・自分自身を心豊かにしていくのかもしれません~ by ゆびとま子育て@吉祥寺(Mother Seed 改称予定) 水を大切にするということ、 それは私たちの命を大切にすること 命のつながりを感じよう!! 自然への感謝ということ、 水の神秘、生命の源としての水 環境汚染(特に放射能汚染)で私たちができること いのちの源である水、水は様々な国の創世記に登場しますが、 科学的に解明できていない部分も多く神秘に包まれています。 地球も私たちの体も70%が水でできています。 子どもたちは85%、受精卵は99%ともいわれています。 「水からの伝言」や、「胎内記憶」等、 いのちと水をめぐる、ひとりひとりの言葉や 心の在り方の大切さについて、 一緒に考えてみませんか? 水を大切にすること、それは自然への感謝であり、 また私たちの命への感謝にも通じているのです。 ★☆ 水・命からの伝言 ☆★    ◆【水伝】「ありがとう」は結晶を美しくする!?科学を超えるもの!!(最後まで見てくださいね)  2019/05/05  https://youtu.be/BTs6lAKamGI 「ありがとう」は結晶を美しくする!果物に音楽を聴かせると美味しくなる!水は答えを知っているんだ!「ありがとう」を科学する!(笑) (2019.5.6) ---------------------------- 石田久二(いしだひさつぐ)と申します。普段は「Qさん」と呼ばれています。2004年5月からブログ「宇宙となかよし」を毎日更新しており、その動画版として2018年8月に「宇宙となかよし/Qさん」を開設しました。CHANNEL登録をいただけると嬉しいです。 ⇒ http://bit.ly/2vMdd6p ・ブログ『宇宙となかよし』:http://exci.to/2fQSWEv 以下は主な個人メディアです。よかったらフォローいただけると嬉しいです。 ・LINE@『宇宙となかよし公式LINE@』:http://bit.ly/2xwRukS ・メルマガ『DO LISTEN! BE HAPPY!』:http://bit.ly/1zXnNT3 ・Facebook:http://bit.ly/2FX9k1b ・Twitter:http://bit.ly/2sOQkgL ・Instagram:http://bit.ly/2MuHDnQ 以下、著書となります。リンクはAmazonに飛びます。 『僕らの魂が地球に放り込まれた理由』(KADOKAWA)  https://amzn.to/2jCT3Fk 『「言葉」が人生を変えるしくみ その最終結論。』(Clover出版)  http://amzn.to/2k0WF7b 『夢がかなうとき、「なに」が起こっているのか?』(サンマーク出版)  http://amzn.to/2k3FZMr 『運がいいとき、「なに」が起こっているのか?』(サンマーク出版)  http://amzn.to/2fRo46Z 『そらのレコード』(エバーグリーンパブリッシング)  http://amzn.to/2kjcSAN ・その他書籍  http://amzn.to/2xGfzF9 石田久二(Qさん) #水からの伝言#水は答えを知っている#波動 <おすすめ動画> 【すごい】48時間以内にすごい!すごい!すごいことが起こる話です!!!  https://youtu.be/giMlJkob2Tg 【お金の引き寄せ】「お金=○○」であるとわかれば、一生困らなくなる!  https://youtu.be/PnzhAgeXROo 【願いを叶えるトレーニング】そのとき、宇宙の真ん中、創造主であることを思い出す  https://youtu.be/T1f6q_qwMuo 【宇宙の呼吸】嫌なことがあったら立ち止まって宇宙を思い出せ!大丈夫だから!  https://youtu.be/yB1BDixbxXA 【引き寄せの極意】潜在意識の抵抗をゼロにしてあらゆる願いを叶える方法  https://youtu.be/uYX3zLrqey0 【お金】潜在意識に請求書を送り お金を引き寄せる技法(前編)  https://youtu.be/LY-HYQQDNrM 【浄化・除霊】「チャールズ式セルフ除霊メソッド(CSJM)」を全公開!!  https://youtu.be/Q6B-yh-AJqc 【最強呪文】人は本来の姿に戻ることで全知全能の力を手に入れる!  https://youtu.be/TbVdMlQaSTw 【視聴注意】伝説の柏木係長!音量!熱圧!遺伝子崩壊にご注意ください!  https://youtu.be/vpVnXPaXJ24 【金運の秘密】これを入れているとお金に困らなくなりましたという個人的な話かも  https://youtu.be/gKsldRDAizc 【弥勒】小林正観さんの「358」から、弥勒の世の「369」へ!宇宙時代に突入!  https://youtu.be/0C1yBtxQDlg 【究極】日本一のお金持ちから聞いた宇宙の成功法則  https://youtu.be/5Jgbwnp9FQ0 【潜在価格=現金】なぜ、「感謝」をするとお金持ちになれるのか?今から実践できる、お金の法則  https://youtu.be/7tRgNY0FQg8 【夢なに①】願いをノートに10回書くと叶うってホント?  https://youtu.be/Rx1MXPq3mkI   ◆ 不思議な話 言葉の力で水→氷の結晶が変わる! https://miraisuteki.com/strange-1488 2019/11/22 あなたが変わる人生が変わる不思議な話です。言葉の力で変わるいろいろな実験動画や話をまとめてみました。 言霊(ことだま)の力を以前投稿しましたが、またまた言葉の影響力にビックリしています。 私が思う結論としては、あらゆる物質は言葉や感情を記憶するのではないかということです。不思議!? 目次 1 ネガティブ言葉には毒がある 2 言葉を投げかけた水を凍らせた氷の結晶の変化 3 小学生が言霊を実験した結果 4 自分を変える人生を変える言霊応用   ◆水からの伝言 - Wikipedia  https://ja.wikipedia.org/wiki/水からの伝言 『水からの伝言』(みずからのでんごん)とは、水の結晶である氷から言葉や音楽への反応が読みとれるとする江本勝の著作。水に向かって様々な文字を見せ、または音楽を聴かせた上で氷結させて、融解の過程で生じた結晶を顕微鏡を通して撮影した写真集となっている。シリーズで4巻までが発行された。   ◆水からの伝言 | 疑似科学とされるものの科学性評定サイト http://www.sciencecomlabo.jp/health_goods/water_business.html 言説の一般的概念や通念の説明 語句説明 水からの伝言とは、「水を結晶させた氷の形状からメッセージを読み取ることができる」という旨の主張が展開された書籍のタイトルである。これはたとえば、「水にありがとうや平和などの「よい言葉」をかけると結晶は美しい形となり、バカや戦争などの「悪い言葉」をかけると結晶も醜い形となる」といった意味である[1-3]。日本の経営者である江本勝氏(株式会社I.H.M.代表取締役)によって出版された。   水からの伝言が話題となったのは、日本の道徳教育現場でこの内容が取り上げられ、「科学的に検証された事実」として広まったことに由来する[4]。後に江本氏は「著書はフィクションであり物語である」と述べているが、一方で自身の主張については「いずれは証明されるもの」とも語っており、実際、水からの伝言に関連したいくつかの研究所を主宰している。本項では、こうした主張を便宜的に「水からの伝言」と定めて科学性を評定する。 目次: 1.「波動」という説明の論理性は低い 理論の観点:論理性(低) 体系性(低) 普遍性(低) 2.主観的に「きれい」「きたない」を分けるという問題 データの観点:再現性(低) 客観性(低) 3.実質的に反証不可能な主張である 理論とデータの観点:妥当性(低) 予測性(低) 4.「よい言葉をつかいましょう」は穏当だが、「水からの伝言」を肯定しない 社会的観点:公共性(低) 歴史性(低) 応用性(低) 総評:疑似科学
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orisyu-manako · 6 years
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スクエアンノウン.04.途中変なの挟まってますが仕様です。
前回のあらすじ「純粋な喜びと隠しきれない腐臭と、流れていったピラーマン(戦車)」
----伝人(六窓)視点----
 香港において食事は中断され、文字通り、戦いの火蓋は切って落された。  殆ど知っている通りだったので詳細は省くが、ポルナレフが 仲間に なった! ▽  そして現在、俺たちは偽船長の乗る、爆破される船を眺めていた。
「チャーターしたのはあの船だ。我々の外には乗組員だけだ。外に乗客は乗せない。もしもの事故があるとまずいからな」
 特に真剣に議論されるようなことでもなく、推測できるような情報もないため、俺の勝手な想像でしかないが、本物の船長は既に死んでいるだろう。どうしようもないのでそこはもう始めから諦めている。残りの船員は、ストレングス戦でスクエアを使い、可能な限り香港の港に強制送還する予定だ。
「ムッシュジョースター、ものすごく奇妙な質問をさせていただきたい」 「奇妙な質問?」 「……詮索するようだが、あなたは食事中も手袋をはずさない……。まさかあなたの『左』腕は『右』腕ではあるまいな?」 「…………? 『左』腕が『右』腕? 左が右? 確かに奇妙な質問じゃ……。いったいどういうことかな?」 「妹を殺した男を探している……。顔は分からない。だが、そいつの腕は両腕とも右手なのだ」 「……50年前の名誉の負傷じゃ」 「失礼な詮索であった。許してくれ」
 くるりと背を向けて話を続けるポルナレフ。そしてやはり、『雨がよけて通っていた』ことを聞いた。  ハングドマンが水溜りの中で傘を差していたと言えば全て解決するのだろうが、これが俺たちのようなイレギュラーが絡んでの『予定調和』の結果で、敵として現れる可能性が一番怖い。多少無理をしてでも明らかにしておきたいポイントだ。  目の前と袖の中にスクエアを発現して、それぞれをアン・ノウンへと繋げ、小百合に手早く確認を取る。
『館で、これが証明できるような何かはあったか?』 『いえ、特に。彼がこの件に関する話を誰かにしていたこともありませんでした。わざわざ話す程の過去でもなかったのでしょう』 『その何かが、水溜りの中で傘という仮説以外の結果として突きつけられる可能性は?』 『十分考えられますね。全く知らないスタンド使いもチラホラいましたし……』 『厳しいな』 『……ポルナレフには、私がその辺りも含めて説明いたします』
 そこまで読むとぷつんと回線が切られ、スクエアが自動的に俺の中に返された。アン・ノウンが外部アクセスを遮断した、ということだろう。ためしに再アクセスを試みるが、いつまでたっても接続中状態。向こうが許可しなけりゃ全く繋がらないらしい。   ……分かれて行動している時、安易に小百合につなげるのは避けたほうが良いだろうか。彼女が敵と戦っている時に俺からのアクセス通知というのは、かなり危ない気がする。よほどでなければ控えるとして、後で伝えておかなければ。
「……そうして君らを殺して来いと命令された。それが正しいことだと信じた……」 「肉の芽のせいもあるが、なんて人の心の隙間に忍び込むのがうまいヤツなんだ」 「その両腕とも右手の男ですが、館にいましたよ」 「……なに?」
 個人的に、二度も花京院の台詞を奪っているのが地味に気になるが、まぁ今回は仕方あるまい。  女にしては大きな手でアン・ノウンをズイッとかけ直し、一歩前に出る小百合。長い三つ編みが潮風で揺らめいた。
「DIOを目指していけば妹の敵に出会えると思っていた。が……君は今、なんと言った?」 「両腕とも右手の男は確かにDIOの館にいた。と、申し上げました」
 ポルナレフがざっと俺たちに視線を潜らせた。真実であるか確認したいんだろう。  各々頷いて返す中、花京院が小百合の後ろから声をかける。
「……サユリ、もしかして、ポルナレフと私は会っていたんじゃあないか?」 「いいえ。私達が館に行ったのは3ヶ月前。名前こそ聞いたことはありましたが、実際に出会ったのは今日が初めてになります」 「なんだ? どういうことだ? 少年は記憶がないようだが……そちらのお嬢さんは……まさか肉の芽もなしに、DIOの元に……?」
 ……結局、花京院のエジプト行きから説明することになったのだが、意外にも、これが中々骨の折れるイベントだった。  スタンドに珍しいも変わっているもないが、小百合ほどステータスが極端なケースは確かにそういるもんじゃあない。  更に、彼は生まれつきヒトガタのスタンドを持っていた。それに対し、彼女のスタンドは出会ったときからずっとかけている、その眼鏡。理解し難いのも分かる。  最終的に手に取り、かけてもらって、するりと透けて落ちて見せて初めて納得してもらえた。
「……��ころで、気になっていたんだが」 「なんだろうか」
 ようやく一段落したところで、俺はポルナレフに対し、ずっとモヤついていた疑問をぶつけてみた。
「俺の手は確認しなくて良かったのか? さっきから袖で見えていない筈だが」 「事件は3年前。それで日本の学生……ましてや幼い子供を疑うほど人間不信ではないつもりだ」 「幼い、子供……だと?」
 俺に電流走る……!  バッと承太郎を見た。若干の苦笑い。帽子のつばを引き下げて誤魔化された。  ジョースターさんを見た。「まー、しょうがないんじゃあないか?」という顔をしている。  アヴドゥルさんを見た。俺の言いたいことを何となく察したらしく、ぎこちない笑顔で応援された。  そして花京院と小百合を見る。堪えているつもりのようだが、どう見ても笑っている。
「……伝人は18歳だぜ」 「……なに?」
 見かねた承太郎が、ようやく動いてくれた。  声に出していなくても、その全身からやれやれと聞こえるようだ。  承太郎はタバコを吸う姿に何の違和感もないくらい、俺とは逆の意味で17歳には見えない。俺もやれやれだと言いたい。おまわりさん、コイツ、ミセイネンです。形だけでも止めてください。不公平です。俺は吸わないが。
「俺、学生組の中で最年長なんだけど」 「失礼ですよ。ね、典明」 「全くだ」 「……!??」
 俺の台詞を聞くや否や急に真顔になり、流れるように乗ってくる後輩2人。  遊ぶな、茶番開始すんな。なんだか揺れる前髪と三つ編みが動物の尻尾に見えてきた。捥ぐぞ。  対して、ポルナレフは軽く責められてうろたえている。いっそ俺もうろ���えたい。
「……18歳?」 「は?」 「……じじい」
 ここに来て、ジョースターさんが何やら聞き逃せない言葉を零した。  それを聞いて承太郎まで笑いそうになってやがる。ギルティ。お前らそれでもジョナサンの子孫か。紳士の遺伝子仕事しろ。
「……あれ。ジョースターさんには、俺と承太郎が中学の時に知り合ったって……話しましたよね?」 「2コ下の、高校1年生かな~、と……思っとったんじゃが、違ったんじゃな!」 「ジョースターさん……クラスで一緒だったと言われたじゃないですか……」
 アヴドゥルさんはどうしてブ男呼ばわりされているのか。マジに良い人である。  ジョースターさんはもう少しちゃんと話を聞いてくれ。  ……それにしたって、何故こうも不当な扱いを受けねばならない……。  身長に関しては譲ってやっても良いが、背の低い大人はいっぱいいるだろうがよ。
「どいつもこいつも! 有罪だ!!」 「その、……誤解していたようだな。すまない」 「やれやれだぜ……」
 一番罪のないやつに真摯に謝られるわ、友人にはガチ呆れのやれやれを食らうわ、散々である。  これ以上この話を広げられたら香港の沖合い35kmに放り出すつもりだったが、ようやく落ち着いたのでギリギリ勘弁してやった。
「すみませーん、ちょっとカメラのシャッター押してもらえませんか?」 「!」
 まだ少し怒りが残っているところへ、旅行者らしい女性の2人組が近づいてきた。ため息を吐いてクールダウンする。  やはり時間が前後しても抑えるところは抑えてくるというか、隙あらば正史通りの現象を起こしたがる何かを感じる。  ベタではあるが、『ここ』にそういった運命の予定調和のようなものがあるとするならば、『俺達』はその運命を根底から覆すか、それでも抜けられる手段を講じる必要がある。
「……」
 全員の注意がそちらへ反れる中、小百合だけが一瞬動きを止めたのが見えた。  これだけぐだぐだした後だというのにどうでも良さそうなイベントがきっちり発生したのだから、俺と同じようなことを思ったのだろう。ポルナレフの流れをざっくり予習させておいたのもあるが、彼女は『運命どおり』というのにかなり敏感なハズ。嫌でも反応してしまうか。
「おねがいしまーす」 「やかましい! 他のヤツに言え!!」 「まあまあ、写真ならわたしがとってあげよう」
 ポルナレフのナンパが炸裂する中でこんなにシリアスな気持ちになるとは、転生というのは苦労が多い。  小百合は花京院から見えない位置でグッと拳を握り、直ぐにその緊張を解く。俺と同じように、それがいつもの仕草ってヤツらしい。
「なんか、分からぬ性格のようだな」 「頭と下半身がハッキリ分離しているというか……」 「……サユみたいだ」
 だが、ここで全く予期しない台詞が投下され、頭が追いつかなくなった。
「え? ……柿ピー今なんてッ!?」 「いや、あの切り替えの早さ、凄く見たことあるなー……なんて、思っ……ふっ、ほんと、いつも見てるッ……!!」 「ええ……笑いすぎだろ、私に失礼だよ……」 「それはそれでポルナレフに失礼じゃねぇか?」
 2人して真面目な思考だったのもあるが、完全に花京院に置いていかれた。似てる似てると1人でツボに入ったらしく、馬鹿みたいに笑いが止まらない。  ここまでは『俺達』が動かない限り大体『運命どおり』だったと思うが、10年間もスタンド使いの転生腐女子と一緒にいた花京院は、そんな運命に従うようなヤツではなさそうだ。  俺のじゅうはっさい(笑)騒ぎが収まったかと思えば、次は小百合ときた。中々真面目になれない旅だ。
「……テメーらといると疲れるな」 「まだ日本出たばっかだぞ、確りしろ承太郎」
651 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- え? なにこれ修学旅行か何か?
652 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 流れていったピラーマン(戦車)がほんとに「仲間に なった!」の一言で流れてった件について
653 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 確かに腐女子モードと敬語モードがハッキリ分離してるといえばしてるかもしれない
654 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- テンメイが幸せそうでなによりだけど承りついていけてないwwwwwwwww 頑張れwwwwwwwwwwwwww
655 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square 承りはスタンド使ってないのにSPガリガリ減ってる気がする 漂流中に俺んちのテレビに繋げて相撲とか一緒に見るわ
656 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ていうか次の船長なんだけど、見た瞬間サユにバレるんじゃね?
657 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>655 それ…漂流っていうのか? 水も食料も足りなくなる心配ゼロっつーか…漂流してるか?
658 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known SP? 知りませんね。 流石に真面目な場面では自重しますが、 暇になったら特に理由のない安価が承り先輩を襲います。覚悟!!
659 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square >>658 せんせー! 後輩が俺の友達をいじめてまーす!! …猿の後の漂流までは安価してやるなよ? はじめてのひとりスタンドバトルになると思うし、ここで承りが変に動揺してたら全滅しかねん
これから船長とかストレングスとか色々あるから俺は落ちるけど、 アン・ノウンとちゃんねるはできるだけつなげっぱにしとくんで宜しく。
660 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>656 サユ「黒」 テン「おk」 承り「オラオラオラオラオラオラ!!」 こうですね分かります
661 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>658 くっそwwwwwwwwwwww 恐れを知らないサユwwwwwwwwwwwwww
662 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>659 六窓もそこは延期じゃなくて止めてやれよwwwwwwwwwwwww 承りは怒って良いぞwwwwwwwwwwwww
663 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 俺こんなのと10年いたら禿げてるわ
664 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 名前呼ばれただけで安価察してたし、テンメイも相当色々あったんだね……
665 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known え? なんです??? 私ばっかり迷惑かけてるみたいなこの空気は……???
666 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>655 違うのか? 違うとするならば証拠を提出すべき
667 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known >>666 あれー、そんな口利いて良いんですかねー? 幼馴染ぞ? 私、幼馴染ぞ?
668 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 私はむしろサユとかいう爆弾が友達になってしまったテンメイがどんな暴走をしているのか見たい 要するに写真クレ
669 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 証拠!! 証拠!! バンバンバンバンバンバンバン バンバン   /⌒ヽ バンバンバン バンバン∩#^ω^)はよ!はよ!            /_ミつ / ̄ ̄ ̄/__      \/___/
670 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known 「おまえ、見えないメガネのサユちゃんと友達なんだってー?」→「無双、そして私まで親を呼ばれる始末」 【かなり遠目だが、赤毛の男の子が小学校の廊下で複数人の男の子に囲まれている画像】 【何故か絡んでいた方の男の子達が床に縫い付けられるように転がって悶えている画像】 【子供のものと思われる両手で思いっきり顔を掴まれ正面を向かされているのに、思いっきり目をそらしている赤毛の男の子の画像】
「あそこ、ネコかな? なんか入ってったね」→「捕まえてきてよ」 【空中から逆さになっている視点で、地面では若干ピンボケした赤毛の男の子がわくわくした表情でこちらを見上げている画像】 【廃ビルか何かの中で、ネコではない2匹の何かがその子供を庇うように牙をむいてこちらを睨みつけている画像】 【動物図鑑のハクビシンのページを抑える、包帯の巻かれた子供の手の画像】
わたしは、うんめいうんぬんいぜんに、つよくなるときめた。
671 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- がーぞう!!!!!! がーぞう!!!!!!!!
672 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ってきたぁああああああああああああああああ!!!!!
673 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- テンメイwww ショタ時代はかなりやらかしてんなwwwww
674 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>670 ちょっと良い話なのにwwwww やりすぎwwwwwwwwwww「悪くない」みたいな顔wwwwwwwwwwwwwwwww
675 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- なんだこれwwwwwwwwwwwwww保存待ったなしwwwwww
676 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ハクビシンwwwwwwwwwww 小学生ロリVSハクビシン(子持ち)wwwwwwwwwwwwwww 死ぬわ
677 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ハイエロ見える友達ができてテンション高かったんだろうな!! サユも案外苦労したんだな!!!
678 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known 真面目に鍛えだして間もない頃だったので、ハクビシン戦は本気で死ぬかと思いました。 殺しちゃマズイですし私はロリでしたし。 それについては後で全力で謝ってもらいましたが、その後もお互い色々やらかしてここまで育ってきましたね。 今となっては良い思い出です。
679 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- やだ……ここのテンメイ普通にアホ可愛い……もの静かで頭の切れるイメージない……
680 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ここから段々あのテンメイになって…るか? サユと同じように、ほんとはクールぶった馬鹿のまま育ったりしてないか?
681 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known >679-680 クールぶった馬鹿×2ですが何か? 作戦は常にガンガンいこうぜですが何か?
682 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 推察系は六窓先輩がやってくれそうだからパーティバランスは問題ないのかもな
683 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>681 (自覚あったんだ)
684 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>681 っ「いのちだいじに」
685 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>682 六窓先輩が増えた分テンメイ抜けてたらだめじゃね…?
686 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known 思い出話はこの辺にして、ここから実況しますね。
687 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 攻めてなんぼのパーティwwwwww
688 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>685 ほら、学生組はコンビでやってるから……たぶんだいじょうぶ……だよな?
689 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 実況!! 事後報告ばっかだったから嬉しい!!
690 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known >>688 大丈夫ですよ。テンメイはちゃんと頭の良い馬鹿なんで。 【随分高い視点から人のいる甲板を見下ろした画像】
どこから始めれば良いのか分からないのでとりあえずタイムリーにいきます。 承り「……あれは放っておいて良いのか?」 テン「あれ?」 承り先輩に、見上げられて指を差されました。 サユ「スガスガしい気分ですよ。私こういうの夢だったんです。船と言えば高いところでカモメやウミネコと戯れるに限ります」 テン「サユがあの程度の高さから落ちたくらいで怪我をするはずがないさ」 承り「アイツは猫か何かか」
691 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 待て待て待てどこにいるんだお前
692 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 柿ピーのそれは信頼なのかなんなのか
693 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ネコ × ハクビシン ○
694 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known >>691 マストにかかってる縄というか網みたいなやつに座ってます。 港でパンを買っておいたので、それで鳥さんとニャアニャアやってます。 >>693 有罪
テン「それにほら、彼女、馬鹿だから」 承り「ば、馬鹿だから……高いところが好きと?」 テン「Exactly」 サユ「おい柿ピー聞こえてんぞ」 テン「知ってる」 六窓「……いぐ……?」
六窓先輩、さらっと流してくれるかと思いましたがダメでした。 二度見されました。
695 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 相変わらず楽しそうだな
696 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- vs執事の時にそれ言われるだろwww どうすんだwwそりゃ二度見もするわwwwwwwww
697 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 彼女、馬鹿だから……馬鹿だから…… なんとかと煙じゃなくてストレートに言ったな
698 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- くっそwwwwwその台詞をテンメイに仕込んでんじゃねぇwwwwwwww
699 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- …なぁ、もしかして転生して細かいこと覚えてなかったせいで そういう敵の台詞とかを感染させちゃったのか? それともわざとなのか?
700 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known >>699 この台詞は分かってて教えましたが、無自覚に感染させた台詞は結構あるかもしれません。
隠紫「しかしお前らな~、その学生服はなんとかならんのか~! そのカッコーで旅を続けるのか? クソ暑くないの?」 テン「僕らは学生でして……ガクセーはガクセーらしくですよ」 サユ「何しろタダで貰った高級学ランですからね。着なきゃ勿体無いですよ」 隠紫「タダで? とは?」 テン「……実は……この学ラン……DIOの館で用意されたものらしいのです」 承り「そんな服着てDIOの首取りに行くなんざ、どーいう神経してんだテメー」 テン「ン……別に良いでしょう。やたらと丈夫みたいだし」 サユ「旅が終わったら着る機会ないじゃないですか。卒業したらそれこそタンスの肥やしに直行ですし?」
701 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square >>700 あとで……ちょっと打ち合わせしような……
702 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known わぁ☆ 六窓先輩怒らないでくださいよ。 わざとじゃないんですよ☆ この台詞以外は……この台詞以外は……!
家出少女が見つかり、なんやかんやで海に飛び込みました。
703 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>700 無自覚に感染させた台詞でなんかしらの大事故とかが起きなきゃいいけど
704 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- この台詞以外はな
705 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 打ち合わせという名のお説教 ーーー六窓先輩がログインしましたーーー
706 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ふざけた時の肯定の返事としちゃ使い勝手は最高だし、使いたいのは分かる
707 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- でも結構深刻な問題じゃね? 幼馴染が使ってる言い回しをやたら敵が使ってくるなんてどう考えても違和感あるだろ
708 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>700 執事に作ってもらった服を着て執事を倒しに行くテンメイwwww
709 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known >>707 大丈夫ですよ!! ここまでスレでは日本語でお送りしてますけど、基本ガクセー組以外は英語で会話してるんで!! ほんと!! 六窓先輩も安心してくださいって!! この先敵だって日本語使ってこないでしょう!?
承り先輩が後を追い、鮫をぶん殴って、テンメイがなんかいい感じに活躍してます!!
710 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square 逆に台詞の方にちょこちょこ英語入ってるし 暗殺者って言ったら世界中駆け巡ってて日本語も使えたって何もおかしくない 特に変身系のスタンド使いなんかは日本語だってペラペラじゃねーの…?「Do you understand?」
711 :サユ改めクールぶった馬鹿:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known >>710 やだ……//// 全然気づきませんでした……////
家出ちゃんがスタンド使いじゃないかとか疑われて、なんかガヤガヤしてます。甲板降りました。 ヴ男「このヴ男……噂すら聞いたことのない「スタンド」だ……」 因みに私と六窓先輩の間にはみんなと違う緊張が走ってて気まずいです。
712 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- サユwwwwww実況がないがしろになってんぞwwwwwwww
713 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- は? いや、英語なの?
714 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>709 考えてみりゃそうだよな… …戦車やヴっさんがなめらくぁ~な日本語を使えるというのも、変な話なのです
715 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- クールぶった馬鹿が英語得意なの意外過ぎた
716 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square いや…俺も軽く使ってたけど、まさかお前、よりによってそれをテンメイに仕込むとか…マジか、マジか…! 俺はまた落ちるけど、こっちの都合で回線ブチ切りとかするかもしんねーから覚悟はしといてくれ
717 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>714 助詞付きやめろwwwwwwwwww 半チャーハンwwwwwwwww
718 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known いや、万が一何もかもがばれたとしても、テンメイなら大丈夫です!! 私が保証しますから!! テンメイなら大丈夫です!!!! 責任は私が取りますから!!
サユ「貴女、お名前は?」 家出「……家出。きゅ、急に名前なんか聞いてなんだってんだ?」 ステータスをゲットした!▽ サユ「白ですね」 テン「なんだ、ただの密航者か」 家出「は?」 戦車「!?」 偽船長が出てきました。家出ちゃんを相手にし、こちらを意識しないようにしているようですが、ニセモノと分かっているので詳しく見てみます。 案の定、スタクルメンバーに意識の糸が不自然に伸びていました。 戦車「いや今の……お、おお……ブラボー……」
719 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- まさか戦車に名前があれば何でも見えるって説明してない??wwwwwwwww 「お、おお…」wwwwwwww
720 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 確かにお前んとこのテンメイなら大丈夫な気はしてきてる
721 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known >>719 説明しましたが、まだちょっと半信半疑だったようですね。 因みに彼に説明するとき「直接触れてもらった」件はみなさんお気づきかとは思いますが、まぁそういう感じです。 こちらからはよく見えます。以上です。
722 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 「ただの密航者」ってwwwwww
723 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known 偽船長が承り先輩に喧嘩売りました。その喧嘩を買ってひと悶着してます。 隠紫「それは考えられんぞ承り! この「船長」船長は財団の紹介を通じ身元は確かだ! 信頼すべき人物、スタンド使いの疑いはゼロだ……」 船長「ちょっと待ってくれ「スタンド」? 一体何をいっているのか分からんが」 サユ「……「船長」船長、ですか……?」 本当はなんて名前なんですかね。ステータス見れないので、本物の方の名前なんでしょうね。 彼のステータスを見たい気持ちもあったのですが。残念です。
承り「……。スタンド使いに共通する見分け方を発見した。それは…スタンド使いはタバコの煙を少しでも吸うとだな…」 一瞬チラ見されました。彼の前でわざとらしく名前を繰り返してみせたのが確信に至らせたみたいです。
724 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>721 戦車のプライベートは消えたんや……
725 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known 承り「鼻の頭に、血管が浮き出る」 一同「「えっ!」」 戦車「嘘だろ承太郎!!」 承り「ああ、嘘だぜ! だが……マヌケは見つかったようだな!」 一同「「あっ!!」」
726 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>725 ここ転生組もやったのかな
727 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- サユいなくてもマヌケは見つかってたけどな
728 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 「船長」船長ってややこしいわ
729 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known 隠紫「承り、何故船長が怪しいと分かった?」 承り「いや全然思わなかったぜ。船員全員にこの手を試すつもりでいただけのこと……。サユが名前を繰り返したときには、ほとんど確信していたがな」 サユ「……彼、「船長」などという名前ではないようです。フルネームではないとはいえ、ステータスが見えませんでしたので」 船長「ステータス……? フン、シブイねぇ……全くおシブイぜ。確かに俺は船長じゃねー……本物の船長は既に香港の海底で寝ぼけているぜ」 承り「それじゃあてめーは、地獄のそこで寝ぼけな!!」
>726 一応「あっ!!」はやっておきました。
730 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- にしてもホンモンの船長は一体どこで死んだのか。船員も気づかないうちに入れ替わってたって怖いわ
731 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known 家出ちゃんが人質になりました。 予習していなければここで私が突っ込みフジツボパーリィしていたかもしれません。 船長「水のトラブル!」 クラ○アン!! 船長「嘘と裏切り! 未知の世界への恐怖を暗示する「月」のカード!! その名はダークブルームーン!!」
話が長いので意訳します: 船長「小娘を人質に海へ入るぜ! 追って来いよ、ただし俺は5対1でも強いぜ。水の中なら素早いぜ。勝つと予言するぜ」 承り「一人でやってろだぜ」 船長は承り先輩に思いっきり殴られて一人で海にドボンしました。 ヴ男「占い師の私を差し置いて予言するなど」 戦車「10年早いぜ」
732 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 水のトラブルwwwww俺も思ってたけどwwwwwwwwww
733 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 意訳wwww会話ログコピペより面倒くさいんじゃないのか?wwwwサユ大丈夫か?wwwwwwww
734 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- お前実況飽きてきたんだろwwwwwwwwwww
735 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known >>733 ただのコピペではなく英語を日本語にする手間があるので、ぶっちゃけた話、意訳のほうが早いです。 >>734 飽きてきました。出来事を一々細かく翻訳・コピペとか、思っていたよりダルイです。
戦車「流されていくぞ。ダークブルームーン、自分のスタンドの能力をさんざん自慢していたわりには大ボケかましたヤツだったな」 隠紫「承りどうした? さっさと女の子を引っ張りあげてやらんかい!」 承り「う……。くっ、ち、畜生引きずり込まれる!!」 テン「え!?」 隠紫「なんだって!?」 六窓「フジツボだ……!!」
736 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 英語かー……サユって頭のいい馬鹿なのかな?
737 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- さあ、テメーは何になりたいんだ?のお時間です。
738 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>735 承りとタメかそれ以上に物理で強い上に英語もできるとか、お前はいったい何なんだよ。 10年修行したって、旅のためだけに英語も修行したのか?
739 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- でもサユの顔立ちって純日本人じゃない感じだし、なんか親戚が外国人とかなんじゃね?
740 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 次遅いな
741 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>739 最初からいたやつしか写真見れてないだろ 六窓先輩の張ってくれてたやつ……もう見れねぇから……三つ編みJKの写真とか俺だってほしいわ!!
742 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 回線切られたか?
743 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ここでスクエア使わないとヤバイことってなんかあった?
----伝人(六窓)視点----
 小百合には絶賛実況中のところで悪いが、回線をぶった切った。  何度か此方からのぶち切りを経験しているだけあり、小百合も特に表情や動作に不自然さはなかった。真面目に承太郎の心配をしている顔だ。  別にあと1セット残っているし、回線を切らなければできないことじゃあなかったが、まさか実況のためにスクエアを空きゼロ状態にするなんて危険を冒すわけにはいかない。  一方の俺は承太郎が海へ引きずりこまれる前に��たにスクエアを出し、引きずり込まれる先を甲板にしてやる。
「グッ! つつ……!!」 「一応引き止めたが……このままじゃあラチが明かねぇな」
 俺の能力で混乱気味のアンちゃんを小百合に押し付けながら、承太郎が立つのを見守る。  派手な音を立てて背中から落ちたので若干の罪悪感はあったが、ここで不用意に触っちまうとフジツボを貰うことになりかねない。
「ってぇじゃねーか」 「俺も行くべきか?」 「伝人……。いや、構わねぇ。俺一人で十分だぜ」 「ああ、分かった」 「伝人! 承太郎!!」
 なんていうか、凄くいつものノリで会話を進めてしまった。  こう考えると結構、ガキの頃からアブネー橋をひょいひょい渡って来てたんだなと思う。ジョースターさんに咎められて初めて気づいた。
「なら口開けろ」 「く、くち?」
 俺たちの突き進み具合にちょっぴり気が立っているジョースターさんは置いておき、承太郎の前でスクエアを2cm四方に縮めて見せた。  つい2週間かそこら前までは承太郎にとって『見えない四角』であったスクエアは、最近『見える四角』になった。  今までも歪んだ空間そのものは見えていたわけだが、それを縁取る額と背面も認識できるようになったのだ。  だからこの状態にしても、スクエアは見えている。数回瞬きをして、俺の言うことを察したらしい。
「あ」 「ほほぉ、なんじゃ、そういうことか……」
 歯が見えるくらい大きく口を開ける承太郎。そこへスクエアの片割れを突っ込む。瞬間、小百合がビクンとしたのは気にしたら負けだと思った。花京院も見てみぬフリを通している。  十分空気が通る程度にサイズを調整し、それを軽く噛んでもらう。
「……れかいにゃ」 「え? にゃんですか先輩」 「 で か い な と言ったんだぜ」
 しかしここで意味のない小百合の煽りが承太郎を襲った。  今は安価はできない筈なので素でやったわけだ。俺にはお前の素が分からない。紳士なのか馬鹿な腐女子なのかどっちかにしろ。  これには承太郎もスクエアを口から取り出して軽く言い返す、が、偽テニール船長が待ちぼうけだぞ早く行け。
「サユ、サユハウス!」 「かしこまです」 「……行って来る」
 ガッと三つ編みを掴み、小百合を引っ張って下げる花京院。ほんと仲良いなお前ら。  スクエアを噛み直してもらった後、良い感じになるよう俺の右手の小指をブッ刺した。ネットを見るのと同じように、これなら遠くまで流れても『行ったことがある』場所になるので安心というわけだ。  大きく深呼吸をして海へ飛び込む承太郎を見送り、右手首だけを新たな窓で空中に浮かべた。理由はそのうち分かる。
「フフン、スクエアは使い方次第でいくらでも応用が利くんスよ?」 「なーるほどなぁ」
 俺は余ったスクエアをくるくると回して見せ付ける。それに対し、ジョースターさんは感心したようにひげを撫でた。  無駄にネットで知識を漁っている訳ではない。頭脳戦なら貴方にも負けないつもりだ。
「ただやっぱり、承太郎あんまり口でかくねぇからな……。俺なら全然平気なんだが……」 「少々れかいんですにゃ」 「いい加減殴られるぞサユ」
 船の上から承太郎の帰りを待つ。  エネルギーを吸い取られているとはいえ、呼吸は確保しているし、最悪スクエアで直接その場へ助けに行ける。みんなそこまでの緊張状態にはない。  渦潮には少々どよめいたが、そんな中でも、後輩組が宙に浮かぶ俺の右手を見て微妙な表情で声をかけてきた。
「……なんか、垂れてるが」 「しょうがねぇだろ。こうしねぇと射程範囲外に出たとき、承太郎の口の中が大変なことになっちまうんだからよ!」 「人はその液体をよだ……いえ、流石にやめておきましょう」
 呼吸孔なので閉じるわけには行かない。開きっぱなしなので、当然、中の液体は零れ放題。  まぁ、お察しのとおりで、甲板にはホタホタと若干糸を引く透明な液体が滴っており、時折ぱしゃぱしゃと海水も混じる、というありさまだ。  もちろん思いっきりひっ被らないように、こちらに通じる窓は下を向かせ、俺の手は小指が一番下になるような向きにしてある。  それからしばらくして、若干遠目のくぐもった声が『スターフィンガー』と言うのが聞こえ、渦潮が消える。スクエア越しにスタープラチナの声が届いたわけだ。承太郎が上がって来たのを見てスクエアを解除した。
「おお!」 「JOJO!」 「やはりわしの孫よ!!」
 承太郎が船に上がり、全くの無事ではないがそれなりに元気だと確認した後、俺は船室から雑巾を引っ張り出してきて、まず俺の手、そして床を拭いた。爆破されると分かってても、これをこのままにするわけにはいくまい。  それを見た承太郎から苦笑いを食らった。
「やれやれ……せめてもうちょっと隠して拭け。俺だって分かってたぜ、こうなってるってことくらい……」
 ちゅどーん。
----可哀想なシェルビー----
 男が始めてそれを見たのは、実はエジプトではなかった。  5、6年ほど前、ようやくその力で仕事をするというのも軌道に乗り、アメリカに行ったときのことだ。
 日が沈みきった頃だった。  彼は偶々通り道だった広場で、孤児院か何かのイベントでキャンプファイヤーをしているところへ出くわした。  だがそんな中で1人だけ輪から外れ、火から遠いところでそっぽを向き、だらしなく片膝を立ててベンチに座って本を読んでいる少女に出会った。傍から見れば出会ったというほどのことではなく、それにとっては記憶にも残らないような瑣末な出来事であったが、男にとっては、忘れることのない確かな記憶となっている。
 染めているのかくすんだブロンドに、沼底の泥のように光を知らない緑色の目。顔にはそばかすがあり、いかにも楽しくなさそうな眠たい顔が嫌に目を引く。  どうしてもやることがないから仕方なくこの本を読んでやっている。と言わんばかりの、刺激に飢えた視線が、足音に反応して男を刺した。が、見た瞬間、彼がそこにいることなど忘れてしまったかのように視線を戻し、つまらないという感情を見せ付けるように犬歯をむき出しにしてあくびをする。その態度、とうてい年頃の少女ではない。
 彼は何故かそれに目を奪われたが、そのまま通り過ぎて広場を横切っていった。
「ねぇせんせい、どうしてシェルビーはみんなといっしょにこないの?」
 すると、火を囲んでいる中でも特に小さな子供が、首に十字架をぶら下げた女に疑問を投げかけているのが耳に届く。  彼はシェルビーというのがあの眠たい顔の少女で間違いないと思い、なんとなく会話を聞いた。
「火が、怖いのよ。……あの子は、火事でお父さんを亡くしたからここにいるの。生まれつき声も出ないし……ああ、可哀想なシェルビー」 「カジ?」 「家が燃えてしまったのよ。今思い出しても、ひどい焼け跡だったわ……」
 彼は女の使った『可哀想』という言葉が引っかかった。あの顔は、どう見ても『一緒にいられないから楽しくない』のではなく、『ここにいなければならないから楽しくない』、という顔に思えたからだ。  辛い想いをして捻くれたとも考えられるが、一人で拗ねているにしては辛さというものが微塵も感じられず、寧ろあまりの退屈さに憤りすら滲んでいたくらいだ。
「……でも、優しくて良い子よ。あとで仲良くしてね」 「うん!」
 更に続けられた『優しくて良い子』というのも、男には信じられず、思わず辺りを見回してしまう。だが、それ以外にシェルビーという名で呼べそうな人影はなかった。  後姿からあの態度は伺えない。おとなしくベンチに座って見える。しかし前へ回ってみれば、それはきっとあのままの態度で、あの飢えた視線で他者を見るのだろう。
 彼は、その食い違いが妙に気になった。  この流れから、彼女が猫を被っていることが想像できた。  では、何のための猫だろうかと思考を巡らせてしまった。
 第一に、火事で炎にトラウマがある、というのは、態度からして嘘である。  第二に、火事で父親が死んだ、というのは、十字架の女の言葉からして真である。  第三に、やさしくて良い子を演じているが、本心では退屈に飽き飽きしている。
 なんとなく察しがついてしまった。  彼は振り返らないようにして歩き、そのままの勢いで仕事を済ませた。直後、必要はなかったが、足早にアメリカから飛び立った。  だがもう遅いのだ。この時点で彼はすでに、抜けられない泥濘に片足を突っ込んでいる。
----花京院視点----
 僕らは今、チャーターした船を爆破され、漂流している。  ……のだが、もはやスタンド使いは誰一人として漂流している気分じゃあなかった。  救助信号をうったからとか、そんな話ではない。いざとなれば小悪魔曲木のスタンドで一瞬で香港まで戻れるため、特にこの後どうなるのかという不安を持ちようがないのだ。
「お前らな~~……!」 「チャンネルは譲らねーぞじじい」
 JOJOのひざの上に、白い糸の纏わりついたガラスのような板が置かれていて、その向こう側から相撲をやっているような音声が聞こえる。  アン・ノウン越しに見ると、曲木とJOJOから伸びる意識の糸が板にぶつかるところで不自然に切れているのが分かった。
 僕は目の前で起こっている、通常では考えられないはずの現象を特に不思議なく眺めていた。生まれつきのスタンド使いだというのもあるが、サユと一緒にいると細かいことにいちいち突っ込んでいられないのだ。  小学校の頃、夏にスイカを割るのは素手だったし、中学校の頃、遅刻しそうなときは校舎を軽くよじ登って教室へ直接入ってきたし、それが高校ではかぼちゃを一突き、教室へ来るのは三角跳びにまで成長した。人間として、めちゃくちゃだ。  そんな彼女は今、僕の隣で長い三つ編みを首に巻きつけてなんでもないように海を見ているが、頭の中ではトランプのデータを引っ張り出し、僕とスピードをしている。
「救難信号はうってあるから、もうじき助けは来るだろう」 「なぁ、コーラとオレンジジュース、どっちが良い?」 「い、いま、どこから出したの……?」
 密航してきた女の子は魔法でも見ているような呆け具合で、完全においていかれていた。  あれだけスタンド能力を味わってしまった後だからと、JOJOたちにはあまり隠す気がないらしい。2人で透明の四角を覗き込みながら、曲木が袖から2本のペットボトルを取り出した。
「袖」 「……? ……???」
 彼は当然のように答えて見せるが、普通に考えて何を言っているのか分からない。  女の子はわけのわからない光景に不安になったのか、隣に座っているサユの腕にしがみついて、驚いた顔でいったん離れ、またしがみついた。僕には何が起きたのか分かる。硬かったんだね。分かる。
「あまりスクエア使わないであげてくださいよ。怖がってるじゃないですか」 「海の上でテレビ見てる時点で、もうなんでも良いだろ?」
 サユが咎めるような口調で遠慮なくオレンジジュースをもぎ取って、女の子に渡す。ただ、僕ら自身トランプで遊んでいる手前、あまり人のことを言えない。  少し悪戯っぽく笑って答える曲木の口には、小悪魔の名にふさわしいギザギザの歯がちらつく。彼のスタンドに物理的なパワーはあまりないが、あの歯で噛み付かれたら相当痛そうだ。
「あんたたち、いったい何者なの……? あ、冷たい」
 なんだかんだ言いつつ、少女は受け取ったジュースをごくりと飲んだ。冷蔵庫で冷やされていたんだろう、ボトルに水滴がついている。
「君と同じに旅を急ぐ者だよ。もっとも、君はお父さんに会いに……わしは娘のためにだがね」 「……」 「安心してください。私たちの誰も、あなたの敵ではありませんから」
 未だ警戒の解けない少女に対し、サユは凛々しい眉をやさしく緩ませて、琥珀色の瞳でまっすぐに見つめる。  ただの白地に黒襟のセーラー服が王子様の衣装に見えるくらいの、騎士然とした態度。とてもいつものサユだなと思ったし、そんなことをしながら頭の中ではトランプを裁き続けているのも、いつものサユだ。
「……サユリ」
 頃合を見て肉声で声をかける。  サユは切りのいいところで適当にトランプのウィンドウを消し、視界の下の方に会話ログを立ち上げた。
「ええ、船で��ね」 「え!?」 「か……貨物船だ! 気がつかなかった!!」
 しばらく前から、波に紛れて白い意識の糸が漂っている。  スタンドの像も見えなかったので、何か形として見えるまで何も言わないつもりだったが、サユも同じような判断をしていたようだ。一応『怪しんでいるが気づいていない』ように振舞って、何もない米神を押さえた。  助けが来たと騒ぐ中言いにくいが、この船全体に緩く意識の糸が纏わりついている。これは発現しているスタンドの見え方だ。  JOJOと曲木も何か察したらしく、何気なく4cm四方くらいの見慣れた四角い板を渡された。それをサユが耳の後ろの髪の中に押し込む。通話用の窓というわけだ。
「……承太郎、何を案じておる? まさかこの貨物船にスタンド使いが乗っているかもしれんと考えているのか?」 「いいや……タラップが降りているのになぜ誰も顔を覗かせないのかと考えていたのさ」 『あー…、ここでこの貨物船『が』スタンドだって言ったら、全体的に死亡ルート入る雰囲気』 『これだけ巨大だと外から攻撃するほうが危なそうだ。乗るしかないな』 『曲木:聞こえるか? 聞こえるなら俺のほうを見て2回続けて瞬きをしてくれ』
 素のサユと頭の中だけで会話を進めていると、突然、僕に聞こえていない曲木の言葉が会話ログに混じった。  彼を見ると、左の袖で口元を隠している。サユに聞こえたからログに入ったわけだ。タイミングをずらして、僕もそれに答えた。
『曲木:あ? ……そうか、アン・ノウンの機能か。これなら花京院にも伝わるな。把握したわ』 「ここまで救助に来てくれたんだ! 誰も乗ってねえわけねえだろーが! たとえ全員スタンド使いとしてもおれはこの船に乗るぜッ!」 「他に選択肢もなさそうだし、俺らも行こーぜ」
 ポルナレフの後に続いて、みんなどんどん乗り込んでいく。  僕らを確認するように視線を寄越したあと、曲木もタラップへと移った。  女の子はすっかりサユに頼るつもりのようで、JOJOが手を貸すというのを知らん振りし、サユの短いプリーツスカートを軽く引く。下にジャージを履いているので、引っ張ったものがスカートだという認識が薄いようだった。
「やれやれ」 「私は別に構いませんよ」
 サユはそう言いながら軽く少女を抱えあげると、そのままタラップへ飛び移ってたんたんと上り始めた。足音に合わせ、三つ編みの端で風車の彫られた金属の髪留めが揺れている。  あとを追うように僕も飛び移る。ふと、何か言いたそうなJOJOと目が合った。
「……ああいう女は初めて見たぜ」 「サユリは、女とかそういう枠組みの中の人間ではないのさ」
 彼女はとても強い。とても。  そして、女としては少々発酵が進んでいる。
768 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ほ
769 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- し
770 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- し
771 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- い
772 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square たけは嫌いだ
どこからが良い? ①バッドニュース ②グッドニュース ③回線ぶち切りの後 >>780
773 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- おかえり六窓。無事か
774 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- おかえりー!!
775 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- バッドニュースあるのかよ 1
776 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ショタは干ししいたけが嫌い(意味深)か ……ふぅ、③で
777 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 1
778 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 相変わらずここのスレ主達は唐突だな 2
779 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 1
780 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 1
781 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ③
782 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 1
783 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 2
784 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ①
785 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square バッド大目だな 良かった…始めに投下した花眼鏡の惨劇を繰り返さなくて……
というわけで準備はしていたぜ。下空けといてくれ
786 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square 【悲報】俺氏、家出少女に怖がられる
俺は猿の船の上で、スクエアで水兵の頭ぶち抜きを阻止したあと、彼らを無傷で家に帰してやろうと更に窓を増やして香港に繋げた……。ところが家出ちゃんだけがいつまでたってもサユの足にしがみついたまま窓をくぐろうとしない。 以下アン・ノウン会話ログ参照
六窓「……被せて帰すか?」 サユ「不安なのを無理やりにというのも可哀想ですが……」 テン『……サユ、その子、六窓が怖いんじゃあないのか?』 サユ「ぷっ、あえりえる……」 六窓「あ? なんだ?」 サユ「六窓先輩が怖いのではないかと、テンメイが」 家出「べ、別に怖いわけじゃ……」 六窓「よーしお前らちょっとこっち来い」 家出「ひゃ」 サユ「だからほらそーいうところが怖いんですってば!」
こうして家出少女は窓をくぐれず、まだ俺達のところにいる…… 解せぬ。
787 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- は?
788 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- バッドニュース、とは
789 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- んん? 六窓って怖いか?
790 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- バッドニュースが平和すぎて安心したwwwww
791 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 逆にサユに懐いてるっぽいな。 この時点だと承りの好感度高くないし、サユのほうが女の子で安心とか?
792 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square 俺より身長低いヤツが来たと思ったらこれだよ!!
で、グッドニュースは猿と船長を無事に倒したって話。 ちなみに今は救助されてシンガポールにむかってる
793 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known みなさん口の開いてない驚いた顔しか見ていないからそんな反応なんですよ。 六窓先輩のギザギザの歯と眉間のしわの寄りっぷりはまさに悪魔です。↓参考資料です。
ビフォー(`◉w◉) 【袖のだぼついた学ランを着た釣り目気味の少年を、斜め上から見下ろした画像】 アフター(`◎益◎’) 【写真の少年が今にも噛み付かんばかりに眉間にしわを寄せて牙を剥き、こちらを睨み付けている画像】
794 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- え?これ両方同じ子??六窓先輩???
795 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- も、猛犬注意かな?
796 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- おっかねぇ~~~~~~~wwwwwwwwwww
797 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>795 ハクビシンだろ?
798 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square あんだよ~! お兄さん怖くないから安心してくれよ~~~!!(`>w<´)=3
799 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known これ「よーしお前らちょっとこっち来い」のところですからね。それでこの顔ですからね。 >>797 そのネタ引っ張るのやめませんか???? ちょっと足の運動がしたくなってきました。
800 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ぬるっと入ってきて恐怖画像を貼るサユwwwwwwww
801 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>798 誤魔化せないwwwwwそんな顔文字じゃ誤魔化せないぞ六窓wwwwwwwww
802 :797:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>799 アッ……ごめんなさい……息子だけは、息子だけは……!!
803 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- お兄さん? おに、おにいさんか…。そうだったよな…。うん。
804 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- なんかお前ら怖いwwwwww唯一の癒しかと思われた六窓先輩も怖い人だったwwwwwwww
805 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square >>803 (`◉w◉)おれはじゅうはっさいです
806 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>802 797お前、さっきの干ししいたけの>776だろ? いろいろと大丈夫か?
807 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square >>802 (`◎益◎’)
808 :797:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>806 ああああああああああ!!なんで!!言った!!もう書き込めないじゃねーか!! すいません許してください!!調子に乗りました!!!
809 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 797は犠牲になったのだ……
810 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 797、愚かなやつめ………
811 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- さよなら797、あんたのことは忘れるまで覚えておくよ……
812 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ーーーーご愛読ありがとうございました! 797の次回作にご期待ください!!ーーーー
813 :797:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- え!?なにこれ!?俺死んだみたいなこの感じ!? いや、本当申し訳ございませんでしたっていうか!? まさかそんな六窓先輩がシルバーのピアスしちゃってるガッツガツの不良だとは思ってなかったっていうか!?
814 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- おwwwまwwwwえwwwwらwwwwwww
815 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square 797は触れないほうが良いなと思って流してたから別に今更どうでもいいけどよ…。とりあえずサユの実況ぶった切ったあとのトコから続けて良いか? ちなみに俺のこれはピアスじゃない。イヤーカフ。引っ張れば取れるんで。穴開いてないんで。不良のつもりないんで。
816 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known >>813 煽る相手を間違えましたね、797……。
817 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>815 「この六窓は、いわゆる不良のレッテルを貼られている…」ってことかよwwwwww やっぱ承りの友達だなwwwwwwwww
818 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- これは酷い去勢スレwwwwwwww
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終わり
ある夏だった。Kは鬱鬱な人文大学の裏口から熱のむらがりに向かって全身でもぐりこんだ。Kは幽霊のように歩いた。熱気からは目的も意味も感じ取れなかった。
Kは空虚よりは清潔さに近い感情の中にいた。そして、その感情があまりにも初めて感じてみたものであったため、Kは内面の奥の一番低いところですら呆然としていた。寂しさとは違う。不幸とも違う。自分の血管には、世界と自分を媒介する感覚を妨げるなんらかの砂の粒たちのようなものが流れている。
Kが入った生ジュース屋のすずしい座席から竹林の緑が見えた。それを背負って、汗をかきながらJ教授がペダルを漕いでいた。前に学生たちの話を偶然耳にしたことがある。このあたりにある安いワンルームと人文大学を行き来する彼の姿が、彼を知っている生徒たちには頻繁に目撃された。思索をしているのか、生徒たちとはろくに挨拶を交わさない。誰もが変人だと噂する。けれどKの考えは異なった。
J教授は純粋だ。偽りがなく、社会性が低く、一度原則を確立すると、中道半端と適当を許さない。まるであそこで葉を揺れる竹のような存在だ。KはJ教授が消えた後にも、彼に対する心象に灯りをつけたまま消さなかった。
夏休みの間、彼とKも頻繁にぶつかった。彼は来る日も来る日も人文大学の研究室にいて、Kはほぼまいにち人文大学2階にある自分のロッカーに荷物を置きに行った。
Kは「家出」を大げさにしたくはなかったし、そうする力もなかった。だから、いちおう家にある自分の荷物を重要な順番にこのロッカーへ運ぶ計画を立てた。その作業が終わると、いつ何が起きようが、ほとんど体一つで微塵も動揺せず家出ができる。そう考えると、重い本が10冊ほど入ったスポーツバックの紐を握り持って、夏の日差しを散々浴びながらも、なぜか穏やかな気持ちになれるのだ。ただ、その気持ちも一時の慰めにしかならず、やがてKの意識の白い平面に落ちて音も出さなくなった。
Kは、その日その日の運びを終えて、ぼうっと、2階のロッカーちかくの椅子に座っていることが多かった。そしてJ教授の研究室もその近くにあった。3時間ほどじっと座っていることもあったから、椅子の前の浄水器に水を飲みに来るJ教授ともよくぶつかるようになった。
あのような未来はどうだろう。
J教授の存在が余韻になって最終になす塊とは、そのような問いだった。
未来。
いかに気力が残っていないのだとしても、真っ白な画用紙から描ける無限の可能性があった。
今のKにはそれしか持たされていなかった。
過去の意味たちはすべて、地図の上、もう接近することもできない境域のなかに閉じ込まれていた。そしてその境域であった事柄すべて、白の平面の上に思いっきり放り捨てねばならなった。Kが真夏をくぐり抜く列車に乗ってこの都市に戻ったからには、過去はないものと同然だった。
多くのものを失った。
純粋を失い、心を失った。
それを嘆かわしく思うこともできなかった。Kの体からむしり取られていった記憶は、言語を許さないものだった。生まれた途端血まみれになって死んだ赤ちゃんのような、言葉すら出てこない鮮明な過酷。そのようなものがある。
何といえばいいか。何が起きたか。
愛という単語自体が己を踏んでは過ぎ去った。今までは生暖かい愛の国で生きた。今からは全然違う。Kの世界に一度生じた欠陥が、冷えて凍えた忘却の風を絶え間なく運んだ。
Kは食べて、遊んで、頑張って、生々しく生きることすべてに「臭み」を感じていた。
忘却。
J教授はKがしている忘却の眼にふたたび戦いた。
恐怖。   
一番最初に彼女に恐怖を感じたのはいつだったか。
彼女が自分より年の多い男とキスをする場面を見てしまった以来、それは触れるほど確実になった。
しかしもっと前、しかもKと初めて遭遇したその日から、恐怖のふたは取り除かれたのである。
Kは、美大の生徒だった。
なのに哲学科四年生の講義に登録した。J教授は講義紹介の日、彼女に登録の取り消しを勧めた。 Kは強く言い張った。
「単位が取れなくてもいいから、始めてみるも前にそんな簡単にあきらめたくはないです。」
「単位も重要だけど、単位のことだけを言っているんじゃない。哲学的訓練もしたことがない状態で、この授業が理解できるはずがないから、考え直せというのだ。それでもあきらめたくないなら、まず認識論とか、分析哲学などの先行科目を受講しなさい。」
ふと見つめたら、孤独が、そのままKの目を潰しそうに燃えていた。
どうしても受けたいというので、結局許可した。
その夜、綾影の女体につながりを求めた。いつも金曜日に訪れる河辺の無人モテルだった。行為を終えて窓を開けると、まだがさがさする初春の空気が肺腑を突いた。ふたり寄り添ってぽつぽつと会話をした。
「そのKって子、あたしの講義も受けるのよ。あたしの場合は微分方程式。それは三学年の科目よ。最初は登録システム的な何らかのミスだと思ったわ。だけど本人は強い受講意志があるといってるし、その科目を受けるために独学をしてきたって。美大でしょう? 頭の病気なのかしら、妙な違和感があったわ。とりあえず大学数学の基礎問題をメールに送るから、日曜までそれを解けてみせなさいと伝えたの。」
「お前も何もそこまでする必要あったのか。ある意味で素晴らしい挑戦精神だと感心してあげてもよかったのに。どうせ単位が取れなければ自己責任なんだし、大学はそういうのまでケアしてくれる場所じゃ無いだろう。」
J教授の眼鏡が鋭敏に震えた。小さい地方都市。知に消極的な大学だった。知を手段としてしか見つめない傾向が支配していたし、そもそも、多くの生徒たちはその手段にすらも大した興味を見せなかった。その状況で彼女みたいな挑戦者が現れたということだけで、一つの事件だともいえた。
次の授業からJ教授の感情は驚きとも切なさとも不気味とも名指せない大きなものに変わった。名指せないものに対して考えを続けた。
学期中には、もしかするとKの作品が見当たらないのではないかと思い、わざと美大の前を経由してワンルームに帰った。外観に飾っている生徒たちの作品を見ると、それがKのものかどうが識別はできないが、背筋が凍った。生徒たちが出席したり欠席したりでほぼ七人くらいで動く討論授業では、教授としての威厳を守るためにやたらと厳格だった。
普段の授業は、生徒たちが毎週決まっている主題を調べ、それを発表し、発表内容にかかわる討論を始める形で進行する。
Kの発表が終わったとたんJ教授は言った。
「たぶんKがやろうとしてるのは哲学ではなさそうだ。明確に知らない概念に対して自由に使って、今学んでる主題とは全く違う話になる変な発言をしてる。そんなのは、格好よく見せるために過ぎない。格好いいための哲学ではない。それは勉強の姿勢が確立されてない証拠ではないか。今後、注意しろ。」
Kならその言葉の意味を、J教授自分の厳格さの意味を、曲げずに理解してくれるはずだと確信した。Kは自分なりの純粋さを追求している。徐々にそのような命題が自分の中で力を得ていた。
案の定、Kはそのいらい飛躍的に成長した。最後の授業では、もっと正確で、もっと飾らぬ、芯の固い深さを得るようになった。
J教授は嬉しかった。
Kのレポートが提出されたメールアドレスで、少し会わないかと、会って作品を見せてもらえないかと、そういった一対一の私的な内容を書くことはできなかった。
その代わりにKのメールアドレスから検索をして、Kのブログに接続してみた。接続者が希にいる細やかで静かなサイトだった。
画家たちの作品にKなりの感想をつけるカテゴリの下に、日記があった。
花たちが夢のようにあらゆるところから咲いていた季節、Kと車の窓ガラスの中で熱いキスを交わしていたあの男の正体も分かった。
本の名前を入力して探してみたら、大衆から高い支持をもらっている純文学の作家だった。もともと彼は名門大学の数理統計学部を卒業したあと企業に勤めていたが、登壇してまもなく専業作家になって執筆活動を続け、今は十冊ほどの本を出していた。
Kは七年近くその男と生活をしていた。大学合格以後は彼と離れて寮に住んでいたものの、週末や休日となれば必ずあの男の都市に帰っていった。
この夏の半ばからKの文体は豊かさを失った青白いものに変わった。Kはやがて男との生活を清算し、学校からバスで四十分ほど離れた実家に居ることになった。
まともな故郷だといえるはずがなかった。
家出だ。
だからKは哲学科の友たちに借りたロッカーに荷物を運んでいるのを知った。
家出をするのなら行き先はあるのだろうか。
J教授は今度こそKに話をかけた。
「いつも見かけるけど、ここで何をしているのか。」
自分の中から引き出せる、いちばん柔らかい声だった。Kがその声に頼って、己に内面を近寄らせてほしかった。
「いや、別に、何もしていませんよ。」
Kは無表情を取り消して、健気に笑った。
芝居をしてる。俺が行くと、また空っぽになるだろう。
J教授はKがまだ自分には心を開いてないのを見た。
そのとき、J教授が一歩だけの勇気を出して、「今どこに住んでるの」と尋ねたら、Kも素直に、「行くところがないんです」と打ち明けたかもしれない。
Kはたった一人、自分に居場所を提供するかもしれない人間のしぐさを思い浮かべた。
筆を絡む白い指がしなやかに動く。大学建物の挟間にあるパラソルテーブルで彼と芸術哲学授業の発表の準備に取り組んでいた。彼は三才年下の哲学科の生徒だった。夕陽が黒い肌を持っていることに対照し、男の子は純白の肌を持っていた。夕陽が骨が透き通るほどやせていることに対照し、男の子はむっちりしていた。Kはその完璧な対照を観察しながら、この男の子と寝たいと思った。
文波は断らなかった。むしろ満面に意地悪い笑いを浮かべた。彼はその日の午前零時近くに電話をかけてきて、早くやりたいけどどうにかならないのかと強請った。
彼が親から引き継いだモテルは河辺にあった。だから窓を開けるとすぐに河のせせらぎが広がった。河は日と時間によって表情を変える。それが分かるようになるまで文波と体を混ぜた。
Kにとっては義務的で儀式的な作業だった。何の喜びも緊張感も生み出さないセックスが続いた。文波はこの行為のどこが好きで相変わらず自分を求めてくるのだろう、時々疑問を感じた。
「いつか君も本物の恋をしなくちゃあね。」
ぼんやり、巨大な水の動きを眺めながらそうつぶやいた。
「浮気している女がそういうこと言いますか?」
Kは文波を選んだ。彼がKの中の欠乏を補ってくれるからではなく、KとKの男が守り抜くべき本物の恋を補ってくれるから。Kは確認しておきかった。自分が夕陽と結ばれているのは俗の仕組みによったものではない。みっともない見た目を持った男が自分を所有することができるのは、自分がそんな男にしか選ばれない価値を持っているからではない。己は若いし、無口で憂鬱な表情をしているけれど、今最も美しい女性だ。己の青春の価値は文波の承諾、そして己の外面に対する文波の執着で証明できる。若い女に恵まれた年下の男の子も自分をきれいだと平価する。やっぱり俗の仕組みは狂ってはいなかったのだ。だとしたら、夕陽に向かって伸びていく感情はこの世の汚いものすべてを超越してる崇高なものなのだ。Kはその論証を完成させるために、青年から関心の視線を浴びるのも不可能ではないことを確かめる必要があった。
「本物の恋っていうのはよくわかりませんけど、俺は浮気に関しては大賛成です。俺もいつになっても浮気しますから。だって、楽しさは多いほうが勝ちでしょう? この女にはこの女の魅力が、あの女にはあの女の魅力があるはずですから。」
「今あたし以外に会う人あるの?」
「いません。姉さんもご存知のとおり、おれ勉強頑張ってますから。でも、将来のために今を犠牲にしているだけなんです。もしいいところに就職できたら、それからはホント美人たちと格好いい人生過ごしたいですね。」
こういう発言をされるときには必ず夕陽の真剣さが懐かしくなった。己を頑固に包んでくれる夕陽の小さい体の中に飛び込みたかった。文波にもらうのは若さだけど、夕陽にもらうのはその若いとか、女だとかという限界をはるかに超えた地点で成立する精神のアイデンティティだった。文波との交流は、己の青春をあんな男のドレン口に捨て流してるという挫折感を一時的に緩和してくれた。
その文波と、夏休みに入ってから当たり前のように連絡を交わしていなかった。
一か月半が経っただけなのに、夏花は川辺の散策路から姿を消していた。Kは建築して十五年もたつ赤い煉瓦の建物の中に入った。カウンタ代わりの小さい窓を開いて文波が白い顔を出した。古臭いにおいを我慢しながら冷房もない階段を上った。四階にある例の懐かしい部屋で過ごせるのかと思いきや、展望のない部屋に案内された。
「姉さん、世の中にただものはないですよ。金がないんでしたら一日三時間はここの掃除を助けてくださいね。」
「四千円くらいならあるわ。それで何とかならないの?」
「おお、金あったんですか? じゃあ、それもらいますね。安くしてあげたんですよ。」
文波と一緒に階段を下りていくとき、掃除機を持って階段を上がる若いベトナム人の女性とぶつかった。
文波は彼女のことを掃除担当のプオンだと紹介した。彼女は一日に三時間ここで働いてまたどこかに働きに行くらしかった。
ある日、河の向こう側の高級マンションのベランダでJ教授が見たのは、水のすぐ近くまで降りてきて一緒にビールを飲むKとプオンの姿だった。
「何を見てるの?」
後ろを向くと綾影が洗濯籠を抱いていた。
「あれうちの生徒なのかなと思って。」
「ああ、その子だね。」
「あの子、数学はついていった?」
「すごく頑張り屋さんだからね。発展という言葉を思い知らせる生徒だったわ。」
J教授は顔を赤くしながらこの最南端都市の暑さを責めた。
夕焼けが始まるごろには必ずKとプオンの影が向こう側に垂れた。彼女たちは時には水に浸かった岩の上に座っていたし、時にはモテル村から河に向けて滑り倒れる石の階段の上に座っていた。一度座ったら一二時間くらいは動かなかった。それを見るためにわざと煙草を始めた。台所では綾影が皿を洗う物音が恒例のように随伴した。
長い夢から目が覚めると、綾影のベットをこっそりと抜け出して誰もいない夜明けの人文大学まで車を走った。やるべき調査と書くべき論文が山ほどあるのに、ある女の肉体とある女の精神に振り回されている自分が情けなかった。どの女にせよ、これ以上振り回されるのは断りたかった。だからJ教授は、アメリカにある数多い大学の中の一つからでも採用通報が来ることを、今はただ待つしかないと考えた。
J教授が浄水器の前で話をかけた以来、人文大学からKの気配はなくなっていた。故郷の母が自分にガラスの花瓶を投げたからもう家出するしかないという筋の日記が書いていた以来、Kはブログも更新しなかった。Kの考えているすべてを読みたいという気持ちが頂点にまで進んだとき、無意識にKのアイディーをふたたび検索した。するとブログのほか、インスタグラムが出てきた。
Kは「Kの男」との思い出を記録するためにそのサイトを開設したらしく、当然ある時点から更新されていなかった。J教授は沸騰する感情を抑えながら説明のついたKの思い出の写真集を辿った。それをやっていると気が付かないうちに研究室が青に染まった。慌てながら携帯を出して確認すると綾影の電話は一通も入っていなかった。
二人は夜のビストロで食事をした。綾影の背中越しに都市の光を抱えて揺らぐ真っ黒い水が見えた。
「ね、旅行、行かない?」
綾影は喜ぶ顔もせず躊躇う顔もしなかった。
「なんで?」
J教授は一人でワインに酔った。
「君が好きみたいだし、君のことがもっと知りたいみたい。」
「そんな文系のセリフいう人だったっけ? それで、私のどこが好きなの?」
Kのどこが好きなのか。
彼女は俗の世界を超越している。彼女は清潔な理想の世界で生き、自分が救い上げた理想のためなら現実を構成する殆どのものをあきらめることができる。彼女は最も完璧で単純な原則の下でしか自分を生かさない。禅僧のように。それはJ教授がプラトンとフレゲの影響を受け、論理学をやりつづけてきた理由とも折り合う。
旅行は決まったものの、休暇の季節もピークを迎えていた。Kが学期のごろ、金曜日の授業を終え、裏口で待っている彼の車に飛び込み、そのままふたりで向かった自然の中のペンションたちはどれも予約が取れなかった。そしてKと彼がピクニックに出た渓谷、Kと彼が夜の釣りに行った海辺、どちらも人が混んでるはずだった。人影のない所ほどいいのは当然だった。そんな目でKのインスタグラムを見てるとたったひとつの場所が胸を刺してきた。
運転席に座っているだけでも汗をかいてしまう日、綾影を乗らせてKが書いた里の情報をもとに出発した。河の二つの淵源の中で北のほうの淵源に向かい一時間を走った。ビルがなくなり、山が無垢になり緑の稲がつづき、そして時折発見のように集落があらわれては消えた。隣にはKとは真逆な人が背もたれに体重をかけていた。
綾影は一生を自分の学問の枠組みから出ずに通すだろう。未知の領域からの誘いなど切り払いながら自分の手前だけを見て進む女。さっぱりした性格で、一見強いようでも実は脆弱な女。でも本人はその危なさを受け入れようとはしないだろう。一生を自分は自分の意志をもってゆるぎなく生きたと弁解しつづけるだろう。
日和見主義者。
真実が自分を破壊するのを根強く見守ることなんてできないお嬢様。
そんなお嬢様だから四十を超えた今でも女であり続けたいのだ。仮に老いてしまったことを鏡の前で認めることがあっても、そう簡単に生の分厚い制限―そのペルソナを脱ぎ捨ててKのように純粋になろうとは思わないはずだ。
この女を大学時代には結構好きだった。
あの若い日々に、己に初めて高潔さを教えた女性だった。極度に言葉を惜しんだし、浅さと薄さのない上品な顔をしていた。
その恋情があったから何十年もたって体を求められたとき、たやすく彼女の腕の中に吸い込まれた。
混じり合って一つになりたいという欲望が大きいほど、最後に残るのは挫折感でしかなかった。
無為なのは分かっていた。
そして、無為であったからこそ、切迫に体同士を絆したい気持ちになれたのだ。
でも間もなく、結末の時点がやってくる。
長い竹林のトンネルで思う存分みどりに化すると、終わりには太古の景色が広がった。Kの写真では遠望に映っていた三兄弟松が車のすぐ隣に現れた。三つの松と竹林の間に人気のない古宅が蹲っていた。銀色の案内板にざっと目を通すと朝鮮時代の学者の遺跡らしかった。
道は雑草だらけだった。綾影の靴が慎み深く道を選んだ。河のほうを見て綾影が感嘆した。
「すごい数の鳥。百匹以上になるかしら。」
体の大きい鳥たちが真っ白に輝きながら水辺に沿って並んでいた。
そして開発を避けた水は鳥たちの影をそのまま描くほど透明だった。
J教授は綾影に声をかけた。
「ね、あそこまで行ってみない?きっと水は冷たいはずだよ。」
「でも、河に降りていく道が草の茂みなのにどうやって……? 蛇に噛まれるかもしれないでしょう?」
「じゃ、車でクーラーでもつけて待っていて。」
J教授は一人で茂みが吐き出す熱気の中に入った。草でできている最後の部分からはしばらく泥沼が続いた。やっと��いた石を踏み、後ろに背を向くとKのアングルで世界が見えた。
『石は永遠性の象徴だから石をもらった以上、結婚指輪なんか要らないと言ったら、彼が感動した。』
Kのアングルは、何の拠り所もない純粋そのものから始めなさいと主張しているようだった。そして案の定己の手を引き、綾影の肉体に抵抗した。
ナビゲーションが教える通りに行ったのがまずかった。来た道とは違い、高速道路を経由して帰る道は海に向かう避暑客たちのせいで渋滞した。もやもやしい気分を抑えながら先の見えない車両の行列を凝視していると、綾影が言い出した。
「なんか変。いったい誰に愛をしているの?」
綾影はJ教授の返事を待たずに、恥辱感に震えながらすすり泣きを始めた。
「来年には子供と旦那がイギリスから帰ってくるんだって? どうせ、最初から自分で終わらせようと思っていたくせに。こんな関係ってやっぱり、お互いに傷でしかないんだよ。」
太陽が地面に近づくごろ、綾影のマンションの前に車を止めた。発令さえ通告されれば、もう二度と見ることはないかもしれない人の後ろ影だった。J教授は金色の河辺に降りて、Kとプオンの姿を探したが彼女たちはどこにも座っていなかった。
Kはその時、大学山岳部の閉ざされたドアの前に座っていた。Kは一年生の時若一か月間山岳部の部員として活動した。山岳部特有のマッチョイムズが苦手で脱退したいらい、部員たちとは一度も連絡を交わしていない。もはや連絡先すらも除去されていた。だから彼らに助けを求めるためにはいつまでも部室のドアの前で待つしかなかった。大きな助けは求めない。倉庫でいくつかの使わないテントのうち一個だけを借りてもらうことはいけないだろうか。
木々の緑に囲まれて、スレートぶきの部室たちが一列に並んでいた。いつまで待っても山岳部員に出会わなければ、ドアの開いた部に入部して泊めてもらうことも可能かもしれない。でもいざとなったときに体が動かなかった。もう、新しい人の温もりによって新しい希望を持つこと自体が非常につらかった。
夜になって、Kは二十四時間灯りの消えない大型カフェに入った。普段からも不眠症がひどく、騒音の絶えないカフェではなおさらぐっすり眠れることは期待してなかった。
何に使ったのか、残りの財産は七百円程度しかなくなっていた。カフェで徹夜をするのも明日が限界というわけである。香ばしいコーヒーを一口含んではプオンに罪意識を感じた。
プオンにはコーヒーの贅沢をする金すらなかった。彼女は自分の足を壊した旦那から逃げて不法の一間部屋に自立していた。文波はこの国の人たちより安い人件費で彼女を雇った。ほかのバイト先でも状況は同じだった。ほとんどの店は彼女の足が不自由なのを問題視して雇用し難いと伝えてくる。そんな中で、言い分があっても黙々と働くしかなかった。
深淵がのぞき込まれないほど傷ついた女性がKより明るく健気に笑っていた。
「プオンはなんで笑っていられるの?」
「今はとても幸せですよ。」
いつもそんな風に、プオンは正確なことは言ってくれなかった。Kには分からなかった。幸せに至る方法ではなく、幸せとは何かが追体験できなかった。Kの中から、確かなものは一つもなかった。ただ体が生きるために頑張っていることは認知していた。Kは食べて、飲んで、歩いて、息を吸って、絵までを見る自分という塊を取り戻しつつあった。
時折圧殺されるほど不毛な気持ちがKを襲ったが、プオンの沈黙が命綱を投げてくれた。
プオンとは言語のせいでいろんな会話を交わすことはできなかった。簡単なことを話し合うためにも多くの横道が必要だった。だけどKはむしろそれに救われた。匿名の存在、生きとる器官の塊となる地点に向かって自然に流れて行けた。挙句にディテールを要さない堅固な同質感がKとプオンを貫いた。
だからプオンが彼女を探してモテるにやってきた旦那にひどく殴られながら引っ張られていくとき、Kは理性を失い、あの男を殺す覚悟で飛びついたのである。Kがこぶしで打たれて倒れている間、旦那は彼女を車に乗せてどこかに消えた。
この暴行事件が起きたのが文波のモテるの一階であった。カウンター代わりの窓は閉ざされていたが、文���はその中にいた。文波が携帯からKの鼻のほうに視線を回した。
「大丈夫ですか? ティッシュはここに。」
ティッシュを渡して文波はまた携帯を拾い上げ、ゲーム画面のほうに視線を移した。
Kは血を拭きながら自分の全身が熱く揺さぶっているのを発見した。
あの男と同じ屋根の下で眠っていた。
そう思うだけでも鳥肌が立つのに。
自分の大切な素肌をあの男に託していた記憶は全身に決してとれない汚れを刻み込んだ。
そこも去るべきだった。Kはもう一度荷物をまとめた。
初めてこうして荷物をまとめたのは青少年時代だった。
書店からであった彼の本は俗世を見下げる懐疑のにおいが濃い。
厳しい競争社会を生きる娘が、なるべくゆがんだ懐疑を抱かずに、普通に順応して育ってほしい親。そんな親に反旗を翻したいほど、Kは彼の普通ではない懐疑の産物を体化するようになった。
純愛がそこから咲いた。
愛に免疫もないまま、愛の導きに従って、Kは彼に接近した。
彼と住み始めた。
まもなくしてKは、自分に訪れたたった一つの愛が、空中ブランコのようなものだと気づいた。
彼によってKは、人間の臭みを禁じられ、食欲を禁じられ、性欲を禁じられ、美容すら禁じられた。彼はそれを浅はかだと叱った。彼はKに理想の被造物であることを望み、そうでなければならない根拠を文法の欠がない長いテクストに組み立て、いまだ鋭い主体の判断力が完全に形成されていない青少年の頭に絶え間なく吹き込んだ。
底知れぬ優越意識にKは無理やり引っ張られて行った。
そのような捕縄を切らないと、対等になることなんて出来なかった。
わざと地方都市の大学を選んだ。そして、できる限り彼がもっとも知ったふりのできない分野に進学した。男の禁忌が破られる最初の瞬間だった。男ががっかりするほど、男の欲望で作られたKの骨も傷んだ。Kの頭の半分は、自分はもう価値のない人間だから死ぬべきだという悲しみで満たされた。でも残りの半分はそうではなかった。
『これを革命につながらせなければいけない。』
幸い、大学での経験はKの批判能力を柔軟にしてくれた。男の支配の陰で生きていくべきとは思わなくなった。
でも簡単に離れることができなかったのは、彼があまりにも多くの種を己の精神に移植したからである。
いくら他人でもそれほど己に近づくことはできない。もう彼はKにとって他人だとは思えなかった。
逃れようともがくほど、潔白な愛だけが戻ってきた。
だけどやはりそれを愛と呼んではいけなかった。
結婚宣告のために、夕陽の実家を尋ねた日、緊張してお母様と一言もまともに交わさずに帰る道。夕陽がKに言った。
「お前は俺の恥だ。」
二十三歳だったKは麗らかなワンピースを着て、清楚なストレートをしていた。
屈辱のない年。
あるがままの欲のせいで一番幸せである年。
頭の完璧な理想の中に閉じこもり、世界と仲良しであったことがほぼなかった夕陽は、そんなKに羞恥を感じ、Kと付き合っている自分に羞恥を感じた。
夕陽を愛している女である前に、一人の人間としてのKのプライドはその時点で破産した。
Kは文波と浮気をすることになった。
夕陽が呪っていた物質の混濁な世界に本物の根を下ろし、勝利の気分で夕陽の利己的な要求を聞いてあげた。
Kは夕陽の服を洗濯し、アイロンかけ、掃除し、ごみ袋を捨て、湿疹になるめで夕陽の台所で食事の準備をさせられても何の文句もなく、夜には「愛してる」と夕陽の耳にささやいてきた。
「愛してる。」
一か月も持たず、夕陽はこう答えた。
「お前とは食事とセックスしかできない。しかし俺はそれらをちっとも重要に考えてない。俺が重要に思うのは精神的価値だけだ。お前は、俺とこんな生活をやり続けたいのか? いつかこりごりになって、俺から離れていくのではないのか? 愛してるなんて、お前は本当に無責任なことをいう。いま俺たちの関係の中のどこで本物の愛を見つけ出せばいいのか。お前のやさしさは俺の核心にまで浸透することがない。いまの俺は数年前よりももっと寂しい。本当に俺が愛されているのならば、こんなに寂しくてもいいのか。」
Kが築いてきたすべてが霞になった。
Kが築こうとしたすべてが白い平面になった。
夕陽の頭の中を走る汽車で生きることは不可能だった。けれどその汽車から降りたことで己が壊されたくはなかったため、曖昧に残った最後のものに「私を壊さないで」と、訴えていただけだ。
夕陽は自分という名の汽車を降りたものは容赦なく壊してしまう男だ。そんなものは少しも大切じゃない。己がどんな努力をしたって、愛は完成されない。
そこまでいけば、夕陽を去ることは簡単だったものの、以後のKの居場所は段々と狭くなってゆくありさまだ。
金だけがないのではない。心から求める美しさがない。
『だとしても、これからは自由に生きないと。』
誰の言いなりにもならずに、誰とも無関係に、自分で選んだ人生を、自分で責任とっていかないと。
きっとそのために、たくさんのものを諦めなければ駄目だったのだし、これからも諦め続けなければ駄目なのだろう。
胸が引き裂かれそうな喪失感がKの白い心に鮮やかな色彩の線を描いた。描くことへの感覚が蘇った。
もう、一週間が経てば夏休みが終わる。その前にどうしてでも自分の絵に出合いたかった。
山岳部のドアに連絡をくれと書いた紙を貼ってから、芸術大学に向かった。子供の時から、才能があるという言葉は聞いてきた。夕陽さえ登場してこなかったら、自分の人生は哲学とか数学とは無縁なものになれたのかもしれない。本当にやりたいことは自分が一番才能ある芸術なのかもしれない。
美大に入り自分のロッカーから筆と染料とオイルバーを引き出した。もっと中には、学期中に作って置きそのまま使わなかったカンバスがあった。実習室なら夏休みの間にも開いていた。そこで描けばいいはずだった。
イーゼルの前で数時間座っていても、何も生まれてこない。
突然携帯のベールが鳴って、下意識から意識の地平に上がってきた。出てみたら」山岳部員だった。詳しい事情は説明できなかったけれど、テントと寝袋は借りそうであった。
七百円で一週間を持つために、一日の食費は百円にすると決めた。
それでコンビニの電子レンジにいれて即席に食べれるお米を一つ買った。おかずは美大と人文大の挟間にあるカフェテリアで、誰でも接近できる場所に放置されている沢庵とキムチにしよう。
学期が始まると、一年分を支払い終えた寮で今年の十一月までは食べて行ける。一日一食はそれまでの辛抱だ。
そして学期が始まると勉強よりはバイトを探して稼ぐ必要があるのかもしれない。漠然だったばかりの金に対する切実さが耐えられない涙と化し零れ落ちた。改めて、あの男にささげた己の青春が己の手には何も残さなかった不毛なものであったことを知る。
もっと己のために生きたならこんなことにはならなかった。
でもまだ手掛けてる絵がいい絵になれる可能性は消えてない。絵に対する僅かな希望を抱いて、山岳部のそばに設置したテントの中で目を閉じた。
とこでも寝れる体質じゃなかった。薄い眠りの幕を引き裂いて太陽と向き合ったら、莫大な疲労が全身をくるんでいた。
うがいもできないままイーゼルの前に座った。やっぱり、数時間が経っても線一つ描く自信がなかった。
末梢神経で蠢く睡眠欲と食欲を倒し得る精神的能力の欠如が、絵に対する自信の欠如にもつなかった。
もう、駄目なんじゃないか。
必死に描きたいことを考えるほど何にも集中することができなくなった。
痛い心で窓辺に立つと人文大学が見えた。あの建物の二回でJ教授は研究にふけているに違いない。
自分の頭で考えることの大事さをKの頭ではなく骨に響かせたのはJ教授だった。
夕陽は嘲笑で物事を疑い、J教授は臆病なつつましさで物事を疑う。J教授は自分は無知だと言い続ける。彼は生徒が無知を細かしたときに叱る。彼は論証の純度をそれ以上あげられぬことにいつも落ち込みながら野生の言語と戦っていく。難しい、優越だという偽物の装飾を捨てた本当の哲学者だ。本当に頭のいい人はあのような堅実な謙虚さを持っている。
KはJ教授がいるから、自分も何とかしていけるのではないかと安心した。人生の純度を上げる過程は複雑ではない。まだ白いとはいえ、己の内面は本有のものである。周りが静まり返ったところで、己の直観をひたすら磨いていけばいいだけの話だ。J教授を見て、J教授の歩き方を、熟達するまで自分も真似ればいい。
カフェテリアの夕食タイムまで木炭でドローイングを終えた。それぞれの形をしたたくさんの瞳に囲まれている人間たちの体には目がない。そういう絵にする。
次の日。
割れそうな頭で教養館のソファーで休んでいたら哲学科の事務室から連絡がきた。
「J教授が急にうちの大学をやめられまして…… えっとだから… ほかの大学に行くことになりまして、学生さんのJ教授の講義に対する受講登録を変形してもらいたいんですが。」
体にあるすべての幹と枝が凍りつけた。
J教授が捨てたごみ箱に自分も入ってる感覚がたまりえなかった。
このままじゃもっともっと立ち直れない。
震える拳でJ教授の研究室のドアをノックした。
誰もいないかと思うと涙があふれた。そのとき、目の前のドアが開け広げられた。
立っていた人物は泣いてるKだった。取りあえず荷物を片付けている研究室に入らせた。
「元気にしていたか?」
「先生、行かないでください。」
「その根拠は?」
「先生が私を変えさせてくれると思うから。」
「俺にその義務があるのか?」
「私はいったいどうすればいいんですか?」
J教授は考えた。自分はこの女が誰なのか知っている。そして自分はこの女を愛している。でも、それだけでは物足りない。
『俺のような種族に愛は毒だぞ。』
Kを見つめ続けていると、ひどく下りかかった隈に目が行った。いつもこぎれいな格好だったが、その日は妙に薄汚かった。放っておくわけにはいかなかった。
「いま、どこに住んでるのか。」
「……露宿を。」
「疲れて見えるな。」
「はあ……」
「では露宿をしながら何をやっているのか。」
「絵を描いてます。学期が始まる前までは完成させようと思ってます。」
「ご飯は?」
Kは苦笑いして見せた。
「絵を持って、うちで泊まることにしなさい。どうせ俺は今日荷物の整理が終わるなりこの都市を去る予定だし、家賃は今年の九月まで払わなければいけないんだ。つまり今日から俺の家には誰も住まないというわけだ。鍵をあげるから、先に行って休んでいなさい。そこに置いてあるものは、本以外はほとんど捨てていくつもりだから、勝手に使ってもいい。」
そして彼はKの携帯に家の位置を入力して渡した。
「先生の携帯ナンバーは?」
「それを教えるわけにはいかない。」
J教授が今日まで研究室を片付けなきゃならないというので、Kはろくに挨拶もできず研究室から離れた。
パッキングを済ませたJ教授は待っていた郵便局の訪問宅配員と一緒に荷物を運んだ。大学院生を使わず、一人で掃除を成し遂げた。建物を出たら空は暗い。もう、この大学にはさらばを告げる。
帰り道にスーパーにより、Kのための食材を買った。帰った家にKがいると思うと世界が感情に満ちた。
けれど、去らねばならない。己には野望がある。誰にも、何にも邪魔されず学問だけを愛し続け、新論理主義を賦活させ、スターの哲学者になる。誰にも己のやることの意味が理解できないこんな地方では夢は遠ざかる一方だ。己の作業に対して、それなりの待遇をしてくれるアメリカに行くのは当然な決断だ。
残念ながら、己はKのように人生にまで純粋でいるつもりはない。学問の純粋と人生の純粋は違うものだ。人生の純粋は時々学問の純粋を制限する。人生の純粋に徹底していたら今の位置には上がってこられなかったはずだ。Kを尊敬しているが、Kのように生きる勇気はない。代わりに、己は学問の理想のためならなんだってできる。あえて選択しろというなら、己は人工の真実を所有し、それの代弁者になりたい。それが己の隠された野望だ。それ以外は漂白していかねばならないと思ってる。
こんな酩酊の熱気も今日で最後だ。
玄関に入るとたん狭い部屋の隅々までが見えてくる。
暖かいスタンドライトの色が女の脱いだ肩を潤沢に染めている。傍らにはイーゼルに乗せられたカンバスがあった。台所にビニル袋を置いて、気づかれず絵に近寄った。孤独な絵。
やはりKは自分が十分陥りえた立派な落とし穴だった。
おとなしく寝ていると思っていたKが体を起こした。
まぶしいほど完璧な屈曲だった。
喝求の夜が始まった。だが、そのような夜は始まりとともに終わっていることをKは知っていた。
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