本日、7月10日(日) Bar Gothicは お昼15時からオープン‼️🈺15時〜22時までの営業です (ラストオーダー21時30分) 昼飲みゴシックを楽しもう(!) 明日、11日(月)から13日(水)までお休みを頂きます m(_ _)m 次回営業日は 14日(木)21時〜となります Bar Gothic【バーゴシック】 福岡市中央区舞鶴1-8-30プリズモ21ビル8階 (福岡 天神 親不孝通PARCO・あんみつ姫・やまちゃん・舞鶴交番近く、ドラムBe-1隣の隣のビル) ※イベントや貸し切り等で営業日や時間を変更することがあります お気軽にお問い合わせ下さい #bargothic #バーゴシック #ゴシック #親不孝通り #福岡 #天神 #博多 #中洲 #カラオケバー #福岡おすすめ #天神昼飲み #福岡イベント #V系 #1人飲み #イベント #福岡昼飲み #映えスポット #福岡グルメ #コンセプトバー #観光 #昼飲み #福岡観光 (Bar Gothic【バー ゴシック】) https://www.instagram.com/p/Cf0e-UEr1zV/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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サイドシートの君
ゆかは旅先で呼んだコールガール。
地元が近いのと趣味が合った事がきっかけで連絡先を交換した。
そしてお盆の帰省のタイミングで会う約束を決めた。
ゆかのいる町まで車で一時間ほど。
来るか来ないかは半信半疑だった。
約束を破るような子では無いと思ってはいたけれど、連絡の返信の遅さがちょっと気になっていて、来なければ来ないでいいやと思っていた。
約束の時間の十分前に待ち合わせ場所に着いて車を停めた。
ゆかに着いた事と車の特徴を書いたメッセージを送る。
来ても遅れるだろうと思い、二十分後に発走する競馬を予想して買った。
既読が着いたのは約束の時間を二分過ぎたあたり。
あと五分くらいで着くらしい。
少し安心した。
それから十分後にメッセージ。
車のナンバーはこれですか?と来て、車の後ろを振り向くと、こちらを見ているゆかと目が合った。
手招きをして助手席に呼ぶ。
ゆかが席に乗り込んでくる。
「すみません」
「久しぶり」
「お久しぶりです」
「元気だった?」
「はい」
「ありがとね、来てくれて」
「いえいえ」
「じゃあ行こうか」
プランを二つ提案した結果、神社に行って近くにある貝出汁のラーメンを食べることにした。
近くのコンビニでコーヒーを買う。
「そうだ、さっき競馬買ってたんだよね」
「そうなんですか」
「一緒に見る?」
「見ましょう!」
一緒に見たレースは見事に的中だった。
ゆかも喜んでいた。
車を走らせる。
車内ではゆかが同棲中の彼氏に薦められて見た頭文字Dの話を熱く語っていた。
今度聖地巡礼に行くらしい。いろは坂はあのまんまだよと言っておいた。
ゆかが今日着ている服はライトなロリータ風のワンピースで、童顔の彼女にはそれがとても似合っていたので伝えた。
嬉しそうに笑うゆか。ロジータというブランドらしい。
田舎道を走っているとひまわり畑を見つけた。
下りてみると一面ひまわりが咲き誇っていて、その後方にある風力発電のプロペラがまたいい味を出していた。
夢中で写真を撮るゆかは無邪気な少女のようで、転んてしまわないか心配になるくらいだった。
車を再び走らせて神社へ向かう。
険しい階段を上って本殿でお参りをする。
「五円あった」ゆかが財布から硬貨を取り出す。
「俺は欲張りだから五円が十倍あるように五十円にするよ」
「なるほど!」
神様に祈ったことは今日が楽しく終わりますように。きつねの神様は俺を助けてくれるだろうか。
反対側に下りて行くと無数の赤い鳥居が並んでいる。何度来ても圧倒されるが、ゆかも同じだったようだ。
ここで少し雨が落ちてくるが気にせずに歩いていく。鳥居の中を歩いていくと横に水場がある。そこに咲く蓮の花を見つけたのでゆかに教えると鳥居から蓮にスマホを向けて撮影した。
白い花びらが水から顔を出して咲く姿は可愛らしさだけではなく強さも感じた。何となくそれはゆかの姿にも重なった。
高台から鳥居が並ぶのを眺める。
雨が本降りになってきたので木の下で雨宿り。
ゆかの持っている赤いバッグには傘が入っていないらしい。
「折りたたみもってくればよかった」
「雨降るなんて考えてなかったよ」
「県の真ん中の方は降るって聞いてたんだけどなぁ」
「しゃあないよ、ここ真ん中じゃないし」
しばらく経ってもやまない雨。結局少し濡れながら歩くことにした。
雨降りにも関わらず別な色の蓮の花を見つけて二人で写真を撮った。
階段を上って下り、おみくじをひいた。
天然石が入ってるおみくじで、パワーストーンが好きなゆかにはぴったりだった。
昼食の時間になったので店へ向かうが、時期や時間もあって行列ができていたので、同じく貝出汁のラーメンを出している別な店で食べることにした。
運良くすぐに座れ、ゆかとあれこれ話した。
ゆかは小学校から高校まで卓球をしていたらしい。
大学ではクラゲの研究をしていて、クラゲの生態にも詳しかった。
「一応理系なんで」
確かに同人小説を書き方を聞いたら実に論理的に話を作っているなと感じていた。
そんな話をしているとラーメンが出来上がって食べた。貝の出汁とバターの風味がうまくマッチしていて絶品だった。ゆかも気に入ってくれたようだ。
店の外に出るとまたもや雨。
近くの公園にあった遊具も濡れていた。
「晴れてたらやりたかったのになぁ」
「これじゃ濡れちゃうね」
残念そうにするゆか。
ここの段階で時間は十三時をまわっていた。ゆかは十六時くらいまでならと言っていたので、次の場所を迷ったが、思い切って賭けに出ることにした。
市街地へ車を走らせる。
「あのさ」
「ん、なに?」
「夜の仕事、まだやってるの?」
「いや、しばらくやってない。昼の仕事で稼げるようになったから。このままやめようと思ってる」
「そっか、昼の仕事が順調ならいいね」
「うん、もう知らない人に会わなくてもいい」
「お疲れ様。よう頑張ったと思うよ」
「彼には絶対言えないけどね」
「体調もよさそうだね」
「うん、抗うつ剤は飲んでないし、元気になったよ」
「よかったよ」
ゆかの手に触れて握ると、握り返してくれた。
川沿いの堤防を走る。
カーステレオからは真夏の果実。
市街地にあるホテルへ入り車を停めた。
ゆかの表情は暗くて見えなかった。
「いい?」
「タダじゃ嫌」
「そっか」
その返答は予測していた。元々は金で繋がった関係だ。
「いくらくれる?」
価格交渉が始まるが、割とすぐにまとまった。
タッチパネルで安い部屋を選んで入る。横にあるシャンプーバーの香りが鼻についた。
部屋に入ってソファに座る。
唇を重ね、ゆかの胸に顔をうずめた。
その後の事は何となくしか覚えていない。何度もキスをして、何度も愛を囁いた。
そして二人並んで眠った。
ゆかの寝息を聞きながら時間を気にしていた。
リミットの時間はとうに過ぎている。
目を覚ましたゆかに聞いた。
「時間大丈夫なの?」
「ああ、うん。別に花火があるからそれまでに帰れれば。そんな花火見たいわけじゃないんだけど」
その日はゆかの住む町で祭りがあって二十時から花火が上がる日だった。
「そっかそっか。一緒に見る?」
「うーん、誰かに見られると嫌だから」
「だよな」
その後はゆかの書いた小説を読んだ。そしたら俺もゆかに自分の書いた物を見せたくなった。
「ゆかの事書いた作品があるんだけど見る?」
「えー!恥ずかしいからやだ」
「まあまあ、自分だと思って見なきゃいいからさ」
「うーん、ちょっと興味はあるんだけどね」
そしてTumblrに投稿してたコールガールを見せた。
時に笑いな��ら、時に考えながら読んでいた。
「この表現好き」
ゆかを花に例えた部分が気に入ったらしい。
「人の書いたもの見ると勉強になる。すごく読みやすかった」
「ありがとう」
「今日の事も書くの?」
「そうだなぁ、たぶん書く」
「めっちゃ恥ずかしい」
そんな事を話しながら、不思議な関係だなと思った。
現実で会った人にTumblrを見せたのは初めてだった。
彼女でもなければセフレでも無い。そもそも会って二回目の関係なんだから名前をつけようにもまだ難しいだろう。
それでもこの関係は何だろうと思いながら気づけば温くなった風呂に二人で入っていた。
洗面台で歯を磨くゆかに後ろから抱きついたり、服を着るのを邪魔してみたりした。
帰路につく。
夕焼けの時間だった。
この様子だとゆかの町に着くのは十九時くらいになりそうだ。
「今日さ」
「うん」
「何で来てくれたの?」
「えっ、うーん…誘われたし暇だったから」
「そっか。お金もらえるって思ってた?」
「いや、それはない。ただ会ったらするかもなとは思ってた」
「そうなんだ」
「うん」
途中の海辺で夕焼けの写真を撮った。
「すごくいいね!あとで送って」
「いいよ、今送るよ」
すぐゆかに送った。
「ありがとう」
そっとゆかの手に触れた。自然と繋ぐ。
車は海沿いの道を駆け抜けていく。
町に着くと大勢の人で賑わっていた。
「どこで下ろせばいい?」
「真ん中は嫌だから…朝会ったとこ」
そこへ向かって車を進めると、警備の人が立っていて入れなかった。
「ちょっと入れないな…」
「うーん、どうしよう」
ぐるぐると町中を周る。
「やっぱ入れないよ」
「離れたとこなら一緒に見てもいい」
「えっ、あっ、そっか。じゃあそうしよか」
「うん」
「食べ物買いに行こか」
「屋台はダメだよ。知ってる人いるかもしれないから」
「そうだな。コンビニでいいか」
その町にある唯一のコンビニで食事を買った。
その隣りにある駐車場から花火が見えそうだったので、そこに停めて見ることに決めた。
花火が始まる。
ここでもゆかは写真を撮るのに夢中。
俺も撮ってみたけれど、信号が邪魔して上手く撮れなかった。
合間に見せてくれるゆかの写真は上手に撮れていた。
プログラムの間、ひたすらゆかはスマホをいじっている。その動きが止まると俺のスマホに通知が来た。
「アルバム作った」
開いてみるとトーク画面に日付が入ったアルバムが出来ていた。花火や蓮、ひまわりの写真がたくさんおさまっていた。
「おー、いいね。ありがとう!」
「ふふっ」
ゆかはまた外にスマホを向けた。
「あの色はリンで…」
花火の色を見ながらそんな事を言っていた。
「覚えたことって言いたくなるよね」
ゆかが笑う。そうだなと俺も笑う。
あっという間に花火大会は終わった。
「帰ろっか」
「うん…」
帰りに降ろす場所を探しながら車を進めた。
「あっちに行くと公園がある」
「そこで降ろす?」
「いや、遠いからいい」
「行ってみようか?」
「うん」
公園に行くと暗くてよくわからなかったが、日中は眺めがいいだろうなと思った。
「あっちには小学校がある」
「行ってみよか」
何となくゆかの気持ちがわかった。
「あれだろ」
「なに」
「別れが惜しくなったんだろ?」
笑いながら言った。
「でも明日は友達と遊ぶから泊まれない」
「もうちょっとドライブするか」
「うん」
小学校へ入った。ゆかが通っていた小学校はかなりきつい坂の上だった。
「こんなのだからめっちゃ足腰鍛えられた」
「これは中々スパルタだな」
「でしょ」
小学校を後にして車を俺の地元方向へ走らせた。
「あれだよね」
「なに?」
「泊まっても寝ればいいじゃん」
「うーん」
「俺いびきかかないし」
「そうなんだ」
ゆかの右手に左手を重ねた。
「朝、めっちゃ早起きだよ?」
「いいよ。またここまで送るからさ」
「わかった」
「じゃあ、泊まろっか」
「親に連絡しとく」
コンビニでコンタクトの保存液とビールとほろ酔いを買った。
ホテルへ入る。今日二度目だ。
カラオケがついていたので酒を飲みながら二人で歌った。
夜は深くなっていく。
シャワーを浴びる。マシェリでゆかの髪を洗った。
洗面台でそれを乾かしてベッドへ入る。
互いに欲望のまま相手を求めあう。
眠っては起きて、キスをして、何度も何度も。
「俺に好きって言ってみてよ」
「言わない」
「いいじゃん、嘘でも言ってみなよ」
「嫌だ言わない」
「そっか」
力一杯抱きしめて、それをゆかも返した。
俺は六月にあったことを話した。
自殺未遂のことも。
「ガチで死のうとしたんだね」
「うん、そうだよ」
「生きててよかったね」
「ほんとそう思う」
「今も彼女のこと好き?」
「いーや、全然」
「そっか」
「新しい好きな人いるらしいし」
「いなきゃ好きなの?」
「いや、そういうわけでもない。俺にはあわなかった」
「切り替え早いね」
ゆかの首筋にキスをして眠りについた。
結局は予定の時間にゆかは起きれなかった。
俺も軽くは起こしたけれど、別れを早くしたくないなんてエゴが出た。
「私ほんと時間にルーズなんだよね」
と言いながら、そんなに慌てないゆかが滑稽だった。
「私と付き合わない方いいよ」
「どうして?」
「時間守れないし、好きなこと話すと止まらないし」
「時間を守れないのはよくないな。でもそれはパートナーがちゃんとしてれば支え合っていけるんちゃうか?」
「うん…」
ワンピースを着ながらゆかは俺を見た。
「うしろのチャック閉める?」
「閉めよっか」
「自分でも出来るけど」
「いいよ、閉めるよ」
背中を向けたゆかの背中のファスナーを閉めた。
「上のボタンもかけて」
「はいはい」
ボタンを掛けて後ろから抱き締める。
「かわいいよ」
「ふふっ」
ゆかにかわいいと言うといつも笑う。
そんなとこはあざといのかもしれない。
「友達との待ち合わせ場所まで送ってくれるんでしょ?」
「うん、送るよ」
「やったー」
「そのかわり」
「なに?」
「お金は無しな」
「えー、少しも?」
「当たり前だろ。泊まったし送るんだし」
「ふふっ、そうだよね。わかった」
「交渉成立な」
「電車代浮いたからいいや」
「なんだよそれ」
ゆかが笑った。
ホテルを出てコンビニでコーヒーと朝食を買った。
予定時刻までに着かないのはわかっていた。
友達やら予約しているカラオケに電話をしながら、車の中でアイラインを引き、ルージュを塗った。
「ちょっとはおしゃれしないと」
「昨日と同じ服だけどね」
「それはしょうがない」
「そうだな」
「そうだ、スッピンどうだった?」
「あー、うん。可愛かったよ」
「ふふっ」
相変わらず笑う。
海辺を見ながらゆかは言った。
「普段海見ないけど、やっぱりこっちの海のが好き。向こうはなんか深くて怖いから」
戻ってこいよ。なんて言おうと思ったけど、別に俺がそれを言える立場じゃ無い。
「やっぱさ、十八年見た海は特別なんだね」
「確かにそうかもな」
「今回帰ったら、次見るのは冬か」
「その時も一緒に見たい」
「うん、いいよ。あっ、あとは会いに来てくれれば会えるよ」
「行きたいなとは思ってるよ」
海辺を過ぎて内陸へ入る。
あと五分で目的地。
信号で止まった時にゆかの唇を奪った。
信号の色が変わるのを感じで離れる。
ゆかの表情はどこか寂しげだった。いや、そう思いたいからそう見えたのかもしれない。
カラオケの前で降りる間際にもキスをした。
去り際にゆかは俺を見てこう言った。
「死なないでね」
短いけど重い言葉だった。
「そっちもな」
車を大通りへと向かわせる。
何度もゆかの耳元で囁いた言葉を思い出す。
車線を変えながら車を一台二台と抜いた。
「俺って本当に」
アクセルを踏んで帰路につく。
サイドシートにマシェリの香り。
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2年前の日記
一軒目のスーパーで肉や牛乳を買い、二軒目のコンビニでキャベツを買う。通勤鞄に入りきらないのでラグビーボールみたいに手で抱えて帰路につく。昭和の盗人みたいに。
さくらに手紙の返事を送ってから一か月近く経つ。その返事、「ついたよ」という連絡が一向にない。
理由はなんとなくわかっているからこそ「届いた?」という確認のラインを送れずにいた。新幹線の中で一気に書き上げ、ほとんど推敲せずに会社で印刷して送った。多くなるとわかっていたのでwordで打ったものの、印刷すると5枚で、印字で送るには厚みおよび手紙としての気迫が足りない、と思い最初のページにちょっとしたイラストを落書きして「手書きじゃなくてごめんよ」と吹きだしを足しておいた。エアメールなのに名前だけ癖で日本語で書いてしまい、あわててSakuraと郵便局でローマ字を振った。
さくらは不思議な友人だと思う。
サークルの同期だった。それなので付き合い自体はかなり長いのだけれど、本当に素で彼女と話せるようになったのは結局のところ社会人になってからだった。
1年の新歓時期だかに部室で会ったのが最初の出会いだった。初手から、綺麗な子だなと思っていた。その頃のわたしにとって、その感想はイコール「仲良くなってもらえないかもしれない」という危惧とあきらめに直結していた。
かつ、さくらは明るくて元気でなつっこい性格で、当時そんな言葉はなかったが言うなればどう見ても「陽キャ」で、日なたの国道を歩いてきた子のように見えた。事実はどうかわからない、けれど、容姿のきれいさ、人にしゃべりかける屈託のなさ、応じている人の嬉しそうな笑み、そのどれも自分が持ちえないものだった。こういう人はわたしとは仲良くしたいと思わないだろう、と決めつけて遠巻きにしていたものの、さくらからしゃべりかけてきて、そこにはなんのへだてもなかった。あ、こういう子なんだ、と思った。性格に裏表がない天真爛漫な美人。わたしの中にある、「顔が綺麗な人はこういうもの」という偏見の型のどれにもあてはまらなかった。
仲良くなれるはずがない、と思った。性格が悪ければ品のない話で盛り上がったり誰かの陰口に花を咲かせるなり、という邪道な方法で近しくなることもできるのだけれど、さくらは本当に、目に見えるままの子だった。完敗だった。「さくらちゃんって冗談通じないタイプだよねー」と性格の悪いイケメンの先輩がいつだったか彼女がいない場で漏らしていて、それを聞きながらこっそり溜飲を下げている自分がとてもくだらなく、浅ましい存在だと思った。
1年の終わりに部長を決めなければならなかったので、誰もいないだろと思って立候補してみたらさくらも手を挙げたので正直びびった。お互いに打ち明けていなかったので、その時点ではまだ表面的な「仲良し」だったんだと思う。投票で決めることになり、なんとなくわかっていたが、さくらが部長になり、わたしは副部長になった。
票がどんなふうに割れたのかは結局知らないのだけれど、さくらが選ばれた、という事実は、当時のわたしをそれなりに傷つけた。わたしの方が部室に顔を出していたし、展覧会で作品もまめに出していて、部員として「まじめ」だった。本当に部長を務めたかったのかと言えば、いまに思えばそうでもなかった気はする。ありていにいえばそもそもなんで立候補したのかもいまひとつその時の自分の気持ちを思いだせない。でも、負けた、と思ったし、わたしではなくてさくらの方がこの場では上だとみんなに思われてるんだなあ、と思った。もちろん、単に人気投票ということではなく性格や適性や総合的なことを鑑みて選挙がおこなわれたにすぎないのだけれど、当時のわたしは結果をみんなで分かち合っている、という状況がいたたまれなくてしょうがなく、羞恥の意識が身体を貫いた。立候補なんてしなければよかった、と思った。
思いだせないなりにいま振り返ると、わたしは部長になりたかったのではなくて(むしろめんどくさそうだなと思っていたのだし)、「そうだよね、このメンツだったら**ちゃんがふさわしいと思う」とみんなにうなずいてほしかっただけなのかもしれない。けど、結果はそうじゃなった。
別にその一件を通してさくらと関係がぎこちなくなったとかわたしがよそよそしい態度をとったとか、そういうことは特になく、そのあとも適度に仲は良かった。逆に言えば、一定の友だちではあったけれど、深い仲になることもなかった。さくらがどう思っていたかはわからないけれど、わたしは結構確信的に、この子とはここまでだ、と思っていた。決定的なことがなくてもしにたいと思ってしまうことや、サークルの中でかっこいいなと思っている異性のことや、サークル内で聞きかじった下世話な噂話をさくらと盛り上がれる想像が全くつかなかった。
憶えていることがある。新入部員の頃、先輩に「さくらちゃん彼氏いたことあるでしょ! むしろいまいる?」と聞かれて「ないですよ」とこたえ、「うそー! 絶対もてるでしょー!」と騒がれ、さくらは素で困ったようにはにかんで、話題が変わるのをしずかに待っていた。そのやりとりを見ながら、ああ、ほんとにこの人は自覚がないんだ、と思った。自分がひかっていて、それはどうにだって武器にできるものなのに、居心地悪そうな顔をして。
嫌い、と思えた方が楽だったと思う。ただひっそりと、ちゃんとしゃべったことないけどたぶんこういう子はわたしの苦手なタイプだろうな、と思った。そしてその思い込みは、結局大学を卒業するまで、石のように残りつづけたまま、それでもサークルはおなじであるからして、「友だち」でいた。
東京に出たわたしは、23区ではなく国分寺に配属された。仙台よりいなかじゃんか、と思いながら、どうにか慣れない日々や人や街に慣れようと必死だった。そんな時、さくらが「東京行くから泊めて」と連絡を寄越してきた。遠いけど来なよ、と言うと「ありがとう!」と返ってきた。さくらは大学在学中アメリカに留学していたので、ストレートに学部を卒業したわけではない。そもそもいまひとつ、いまどういう状況なのかも知らないでいた。
夜遅く、さくらがマンションに来た。遠かったでしょ、と言うと、遠かった、と笑っていた。着いたのは22時過ぎとかだったので、お風呂を貸して、すぐ布団を並べて寝ることにした。
「**はどういう会社に入って、何の仕事をしてるの?」
川の水を掬ったような澄んだ声で問われ、一瞬言葉に詰まった。在学中に作家になれず、挫折をひきずったまま出版社に潜り込もうとしたものの内定は出ず、そうなるともう自分が何をしたいかなどまったくわからなかった。手当たり次第に企業を受けたものの、結局、自分がなるとはまったく想定していなかった職につき、当然、業務内容に全く関心をもてないまま社会人生活は始まってしまった。
ごまかしようもないので職種と日々の仕事内容をありのままに説明すると、「そうなんだ、意外だね」と言われた。本人が一番そう思っているのでへらへらするしかなかった。
「**はやりたいことがあって、仕事もちゃんとやって両方がんばってて、すごいね。わたしは自分が何をやりたいのか、まだよくわからないから」
「さくらっていまどうしてるの? まだ大学にいるの?」
いまさらのように尋ねると、アメリカの大学でアニメーションの勉強をしているのだと明かしてくれた。さくらは建築学科だったので、意外だった。「アニメーターを目指してるの?」と尋ねると、まだ決めていない、としずかに返ってきた。
「**みたいに、小説が心から好きで、一所懸命書いてるのうらやましい。わたしは、まだ自分がどうしたいのか定まってないから。向こうでいろいろ美術のこと勉強中」向こうでは、デッサンの基礎を学んだりアニメーションを実際につくったりしているらしかった。美術部は完全に趣味で在籍していたわたしからすれば、せっかく名前のある大学に入ったのに随分思い切った進路だなあ、とひそかに思ったけれど、小説を書かない人間からしたらわたしがしていることだって相当突飛だろう、と思い直した。
「**みたいに、これだ、って思える芯があるわけじゃないから羨ましいよ」
わたしは黙り込んだ。
会社のトイレで泣き、月曜日から木曜日まで毎日「早く金曜日にならないかなあ」と思いを馳せながら働き、日に日に時計を確認する頻度が上がる、東京の郊外での些末な暮らし。仙台にいる恋人からは4月に「別れよう」と言われてから別れ話がこじれにこじれ、肝心の小説は、失恋や引っ越しで精神がめちゃくちゃにになったことを盾に事実上筆を折っていた。新人賞用の原稿はせっかく書き上げていたのに推敲が面倒くさくなり、というか急に点数をつけられるということが怖くなって土俵に送り込まずにボツにして、新しい小説は書こうとしては途中で投げていた。こんなの全然「羨ましい」なんかじゃないよ、と思ったけれど、いまの自分のていたらくを一つひとつ明かす勇気も気力もなかった。そして、こんなめちゃくちゃな生活でも、羨ましい、と思えるような面がまだ残っているのであれば、その虚像をまだ信じていたかった。さくらが、誰かを、それも自分を「羨ましい」と思うことがあるなんて、想像もしていなかった。
四年も付き合いがある中で、初めて、いろんな話をした。ほかの、さくらよりもっと親しいと思っていた部員にも言ったことのない本音や、愚痴や、夢や、感情のことを話した。次の日は「**がこの町で好きなところに連れて行ってよ」と言うので、妹尾図書館まで歩いて行って、お昼を食べて、さくらを駅まで送った。
その一件から、わたしのさくらへの気持ちや関係性の捉え方が変わった。時々ラインを交わし、時差のすきまで電話をした。
そして、社会人1年目の年末、さくらから再び連絡があった。日本に帰ってきてるから晩御飯食べよ、と誘われ、自分の職場である新大久保のトッポギを食べることにした。学生時代からうすうす気づいてはいたが、さくらは辛い物、というかげてものが好きなタイプの女の子だった。言いはしなかったけれど、可愛いのにへんなやつ、と失礼な感想を持っていた。
「そういえばさ、さくらは死にたいとか思ったことなさそう、って昔**に言われたな」
さくらが選んだ店は、大久保でも有名な激辛の店だった。熱くて辛い、痛みの根源のような食べものと格闘しているさなか、急にさくらが言いだした。ぎょっとして「そんなこと言った?」ととっさに言い返した。さくらは邪気のない笑顔で言ったよ、とうなずいた。
「なんてこというんだ! って思ったもん。覚えてないの?」
全く、覚えていなかった。頭があせりで真っ白になった。
大学生の頃だったら、さくらのように明るく、人に囲まれたきれいな子はしにたいとか思うはずがない、と思い込んでいたかもしれない。いや、かもしれないとかじゃなくて、そう思っていた。
覚えがない。でも言ったのかもしれない。あの頃の自分ならありうる。内心汗をかいていると、さくらはあっさりと別の話題を話し始めた。正直に言えば、言った言わないの問答にならなかったことに心から安堵した。さくらがそういうなら言ったんだろう、と思った。
新しい仕事や近況の話をして、残ったトッポギは包んでわたしが持って帰ることにした。新宿駅に向かって歩きだし、線が違ったので地下へ降りる階段の前で別れた。
よいお年を、と口にしたら「おない年の人と言い交わすのって変な感じ」とさくらが笑った。それを見て、どうしようもなく、さみしい気持ちになった。
あ、いまわたしこの人に抱きつきたいかも、と思った。同性の友達に対してそんなふうに思ったのは初めてだったし、友達とハグをした経験も数えるほどしかなかった。正確に言えば、こういう場面でそういう、突発的なハグをしたことがなかった。びっくりされそうな気がして、言わないでおいた。
だって、さくらとはそういうんじゃないし。この期に及んで、そう思う自分が、確かにいた。遠慮、後ずさり、虚勢。結局、また明日学校で会うみたいな顔をして、手を振って別れた。
それからもなんどか電話した。突然ラインをくれるのはいつも彼女だった。あれからいちどもわたしの失言についての言及はなく、読んだマンガやいま書いている作品について、あるいははまっているアイドルについてとりとめもなく雑談した。塩釜で全裸になったときの原稿を送ったらすぐ電話をくれて、会社の非常階段で15分くらい話した。性的な話を全くかわしたことがなかったので、道徳的な観点で批判されたり軽蔑されたらちょっとやだな、と思っていたけれど、そんな無粋なことは全くさくらは口にせず、ただただ面白がっていた。
この人はわたしが思うような人ではなかったのかもしれない。友だちになってから随分時間が経つというのに、いまさらのようにそう思った。そして、離れてからしか気づけなかった自分が、あまりにもおろかだと思った。自分の保身ばかり目を向けていて、さくらを「顔のきれいな人」としか見ていなかったのだ、といまになって思った。
さくらから突然ポストカードが届いたのは8月の終わりのことだった。玄関で、靴も脱がずにそれを読んで、わっと泣いた。とくべつな内容ではなく、日本の小説を読んで、わたしと話したくなって、筆を執った、そういう簡潔な内容だった。まぎれもなくわたしだけにあてられた手紙だった。
大学生の頃、わたしはさくらとはここで終わりだろう、と思っていた。もちろん一人の友だちに対して明確にそう思っていたのではなく、社会人になっても遊んだり、連絡を取ったりするだろうとは全く思っていなかった。それを、さびしいとも、正直に言えば思っていなかった。さくらとはここまで、と思っていたから。
でも、大学を出て4年経ったいまでも、わたしたちは友だちだ。それはさくら一人の力によって関係性がつづいているんじゃないだろうか。だって、わたしから連絡をするのは、書き上げた小説を送る時くらいだ。それは、よく言えば信用しているから読ませているとも言えるけれど、わたしは当事者だから自分の気持ちはわかっていた。
ものをつくっている人に送れば、内容に問わず書き上げたことに「すごいね」と言ってもらえるとわかっていたから、その賞讃ほしさに送っていただけなんじゃないだろうか。
でもさくらはそうじゃなくて、本当にただ純粋に友だちとしてわたしを好きで、信じている。はっきりそう書いてあったわけではないにしろ、そういうことが伝わる手紙だった。というよりも、アメリカからわざわざ手紙を送るという行動だけで、充分だった。封筒には、きらめくはなびらの切り紙も一緒に入っていた。ラブレターだ、と思った。
さまざまな感情が津波のように打ち寄せ、長い手紙を書こう、と思った。集中して書きたい、と思って移動中に書き上げた。それはさくらに対する感情の変化を綴った、独白のような懺悔のような、一方的な内容だった。書いている時は集中していたので気づいていなかったけれど、送って数日後に読み返して、うわ、と思った。顔が、赤ではなく蒼くなるのを感じた。さくらが寄越したものがラブレターだとしたら、これは単なる弁解だった。許してほしい、とうわめづかいが浮かび上がるような。
うーんと思っているうちに、ひさしぶりに東京で大きな地震があった。(これは、本当にだめなほうの地震かもしれない)と思った。部屋の真ん中で硬直しているうちに揺れはおさまった。
そういえば忘れてたな、地震ってくるもんだったな、とぼんやりしているうちに、いまだったら、送りそびれているいくつかのメッセージを送れそうだと思った。どれも年単位で滞っている連絡で、地震程度ではやはり、勇気が湧かずに素通りした中で、さくらには送れる、いま、と思った。
【手紙届いてる?】
次の日に連絡があった。【手紙で返信送ろうと思ってた!ごめんね】【来週一時帰国するから会おう!】だった。拍子抜けした。怒って連絡を寄越さない、ってわたしじゃあるまいしさくらにかぎってありえないか、と思ってちょっと笑った。
【13日なら空いてる うち泊まりなよ】
さくらからの手紙には、「**とべろべろになるまで飲んでいっぱい話したい」とあった。さくらが結構お酒に強いことを、ふっと小さい風が吹くようにして思いだす。さくらがうちに来るまでに、ヘパリーゼと一ノ蔵を買っておこうと思う。
2021.11
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今日は初めて髪質改善美容室に行ってきた。柔らかすぎてコシがなくなっていた髪にハリとツヤが出てサラサラ。色はオリーブベージュにしてもらった。こんなに綺麗に染まるんだ、と感動。もっと綺麗な髪になりたいので次回はストレートパーマをしようと思っています。
帰りのバス停に、ルートの変更のお知らせが掲示してあった。今週末、広島市内の胡子神社では広島三大祭りのひとつである 「えびす講」なるお祭りが開催されるのです。
胡子神社は商売繁盛の神社なので、お店や会社を営んでいる人が大きな熊手を買いに行くんだよ。全国各地でこういうお祭りやってるよね。
その胡子神社の近くの中央通り(写真)は夜になったら歩行者天国になるので、その間バスは違うルートを通りますよ、ってことで。
土曜日は友達と昼飲みするんだけど、こういう日って昼間から人手が多いからお店入れるかな…と心配になってきた。お祭りとか行かないからえびす講の開催日を知らなかった。
このお祭りでは、1999年に暴走族と機動隊が衝突して80人も逮捕者が出るという大事件が起きました。私はその当時、中央通りの1本奥にある流川という歓楽街で働いていたのでよく覚えてる。街はとんでもない事になっていました。
コロナが終わって、お祭りの出店も歩行者天国も元に戻ったけど、時代の流れで暴走族はすっかり見なくなりましたね。
お祭りの日は、誰もケガしたり怒ったりせず、みんなが楽しかった!って笑顔で帰宅できたらいいなと思います。
🐻
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1976年(昭和51年)
6月18日 - 愛知県名古屋市の自宅兼自社ビルでエレベーターが違った階に止まり、開いたドアから女性が転落死。
6月20日 - 東京都板橋区の高島平団地で幼児2人が誤って非常停止ボタンを押して急停止、非常口から脱出を試みるが転落して1人死亡。
1982年(昭和57年)12月4日 - 東京都豊島区にあるサンシャイン60の展望台直通エレベーターが57階付近で突然停止、28人が1時間45分にわたり閉じ込められる。
1984年(昭和59年)8月8日 - 神奈川県横浜市保土ケ谷区のニチイ天王町店(現・イオン天王町店)で乗降扱い中に突然かごが作動し、乳母車を引いて降りようとした主婦1名がカゴと建物の間に挟まれ死亡。
事故を起こしたエレベーターは前日に点検したばかりだったが、その後の調査で設計の不備から安全装置が作動しなかったものと判明した。
事故後エレベーターは撤去されている。なお、このエレベーターはフジテック社製であった。
1994年(平成6年)12月7日 - 神戸市の神戸質屋協同組合会館の貨物搬送用エレベーターが2階部分で停止、手動で作動させようとしたところワイヤーが断裂し、エレベーターが1階部分まで落下。
乗っていた4人のうち、3人が軽傷・1人が重傷。
1999年(平成11年)7月31日 - 東京都中央区日本橋馬喰町の飲食店が入居しているビルでネズミが滑車に挟まりエレベーターが停止、乗っていた70歳の女性が一晩中閉じ込められ、翌日昼ごろに救出された。
2004年(平成16年)10月23日 - 東京都港区にある六本木ヒルズでエレベーター6機が新潟県中越地震の長周期地震動によって損傷。
2006年(平成18年)6月3日 - 東京都港区にある23階建ての住宅「シティハイツ竹芝」で高校2年生がエレベーターのかご部分と建物の天井との間に挟まれる死亡事故が発生。
事故が発生したエレベーターの製造元であるシンドラーエレベータのずさんな体質が明らかになり、全国的に不祥事として報道された[2]。
2007年(平成19年)4月 - 東京都港区にある六本木ヒルズでワイヤーロープ破断から火災が発生。
2012年(平成24年)10月31日 - 石川県金沢市にあるアパホテル金沢駅前支店で、清掃作業員の女性が、かご部分とエレベーター床に挟まれ死亡。
このエレベーターは2006年に事故を起こしたシンドラー社製であった。
2022年(令和4年)3月31日 - 東京都中央区銀座にある建設中のビルで工事用のエレベーターが10階から地上に落下し、中にいた男性作業員が死亡。
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シグナル
高校の最寄りで電車を降りて、通学路を歩いていると、同じ制服が流れる前方に、三橋の背中を見つけた。同じ電車に乗ってくるのだろうか、よくこんなふうに朝から三橋の背中に気づく。
でも、あたしは、その背中にいつも声をかけられない。
校門の手前の横断歩道が、緑色を点滅させて赤信号になった。もちろん、三橋はそれなら立ち止まるから、あたしはやっとその背中に追いついて「おはよ」と声をかける。
背の高い三橋はあたしを見下ろし、「おー、野崎、おはよ」と答えてあくびを噛む。かわいい。
「寝不足?」
どきどきする心臓を抑えて、そう問うと、「んー」と三橋は目もこする。
「奈津のとこからまっすぐ来た」
けれど、三橋のその言葉でずきっと心が壊れそうにすくむ。奈津。美堂奈津。顔も知らないのに、あたしはその人を無意識によく知っている。「ふうん」と流しておいたのに、三橋ははたとして、慌ててつけくわえた。
「いや、何もエロいことはしてねえぞ!?」
三橋を横目で見て、コメントはさしひかえた。
うん。そうだろうね。幼なじみ、だもんね。
でも、話を聞いてるだけで両想いって分かるよ。みんな分かってる。だから、あたしたちの高校でも、美堂奈津の高校でも、ふたりがつきあうまで秒読みなのは、有名な話。
だから、あたしは、君にこの想いを伝えられない。
「お、青になったぜ」
三橋はあたしの肩をたたいて、歩き出す。触れられた肩に伝わった、三橋の手の熱がじわりと軆に染みこんで疼く。何となく隣を歩いて、軽口を装って会話する。それだけで嬉しくて、心も軆も甘く痺れて燃えるようにほてる。
隣に三橋がいる。咲ってくれている。熱くて、蕩けそうな感覚があふれそうになる。誰もが、三橋と美堂奈津を当然のように応援しているから、あたしはこの気持ちを誰にも相談できない。
ひとりで抱えこむしかなくて、キャパオーバーでシグナルが発動する。赤が点滅する。報われない想いが降り積もる。いくらでも花びらがほ��ほろこぼれていく、赤い花みたいに。その重さが息苦しい。
九月になったばかりの二学期、突き抜ける晴天はまばゆく暑く、まだまだ熱中症に警戒するようにスマホの天気予報に表示される。夏服でも制服は堅苦しくて汗ばむ。
でも、夏休み中はあれだけ空を引っかいていた蝉の声はほとんどなくなった。夜には��虫の羽音が透き通る。風がゆるりと流れて、別に三橋が気になるそぶりを見せたわけでもないのに、制汗剤ちゃんと効いてるかななんて心配になる。
すぐ高校に到着して、靴箱で男友達と合流した三橋は「じゃあな」とあたしに声をかけ、先に教室に行ってしまった。
待って、あたしも──。
……やっぱり、それは言えない。飲みこんで、のろのろと靴を履き替える。
三階の教室では、すでに三橋は友達の輪の中で笑っていた。カーテンが開けられた青空と白雲のパノラマの中で、いつも通りの教室の光景だった。
「野崎さん、おはよー」と声をかけてくれるクラスメイトに声を返しつつ、三橋はもうおはようは言ってくれないよな、とあきらめて自分の席に向かう。
「彼女の部屋から出勤とか爆発しろ」
「いや、まだ彼女じゃねえし」
「『まだ』と言える余裕」
「やってること同じだからクロだわ」
「や、やってねえよ」
三橋たちの会話が、耳を素通りしていく。ほんと、ばればれだ。三橋が美堂奈津に恋をしているのは、分かりやすいほど一目瞭然だ。なのに、何であたしは三橋をフラットに見れないのだろう。
恋なんて、しなくていいじゃない。彼氏がいないと寂しいとか、そんなことは思わない。
三橋に対して、こんな気持ちがなければ楽なのに。何で三橋が好きで、どうしようもなくて、こんなに求めてしまうのだろう。今の関係を壊したいわけでもない。口はきく程度の、わりと仲のいいクラスメイト。このいい距離感に、どうして満足できないの? なぜこんなにも三橋を遠く感じるの? 飢えて、渇いて、精神が消耗していく。
四時間目まで教室で授業を受けて、お昼になった。三橋は朝と同じグループでお弁当を食べはじめる。そのお弁当を覗きこんだ男子は、「おー、愛妻弁当?」なんて問う。三橋は照れ咲いを見せてから、「まあなっ」と誇らしげにからあげを頬張る。
友達と談笑している三橋の笑顔に、また赤く点滅する心。くっきりとこの心を赤く染めて、三橋にさしだしたらどうなるのだろう。
いや、そんなのは見せることできない。あたしの赤じゃ、三橋は立ち止まってくれない──その真実に愕然とするだけ。三橋の脚を引き留められるのは、美堂奈津という彼女ひとり。
「んー、何だよ、野崎」
不意に名前を呼ばれてはっと我に返ると、三橋がこちらを振り向いて首をかしげていた。
やば。見てたのばれた。焦るあたしに、三橋はきょとんと無垢な表情を浮かべる。
何か、言いたい。
でも言えない。
言っちゃいけないから、首を横に振る。
「ガンつけてたじゃん」
「つけてないよ、のろけにあきれてただけ」
「のろけって」
三橋の友達も爆笑して、「マジのろけだよなー」なんて三橋の背中をたたく。
心が、苦しい。赤いシグナルが痛い。点滅のたび、突き刺さって血飛沫が走る。
午後の授業が終わった放課後、「じゃあな、また明日」とあたしの頭を小突いて、三橋はさっさと教室を出ていった。
また、あの子に会って過ごすんだろうな。分かりきっているから、あたしは三橋を追いかけられない。呼び止められない。
心が赤く点滅している。君への想いで、もう頭は故障しそうなのに。このシグナルは、絶対に君に届くことはない。
FIN
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【SPECIAL THANKS】
RED/杉野淳子
『SERIES SINGLE 1/4』収録
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2023.8.11
わたしのヒースクリフ、休暇も今日で終わり。わたしが修道女になりたかった頃の話を少しするから、適当に聞いて欲しい。
最も修道女になりたい熱が高まり、それが冷えて固まった頃のこと。まだわたしがずいぶん若く、仕事を辞めてぼんやり京都市で暮らしていた頃、北海道の、父方の法事に足寄まで母と父で赴いた。父が故郷に帰る最後の機会になるだろうことはぼんやりと聞いていた。確か季節は十月ごろのことで、セーターを持っていくか行かないかで迷ったはずだ。飛行機で帯広に着くと、父の弟が迎えにきてくれていて、一晩泊まった。次の日が法事なので帯広から足寄まで父の弟(この人にはほとんど会った事がないので、叔父というイメージがない)がわたしたちと一緒に車で連れて行ってくれた。法事が終わると足寄の親戚がパックにたくさんの混ぜご飯とおかずを詰めてくれて送り出してくれた。父はずいぶん名残惜しそうで、こっちで働ける場所はないのか、と父の兄に聞いていたが、その答えは意図して耳に入れなかった。
鉄道で函館へ向かう。函館はこの旅行のついでとして設定されていたが、ずいぶん長い距離を電車の中で過ごしたと思う。いつもの京都行きの電車ならもうとっくに京都に着いているだろう時間乗っていても、まったく函館に着かない。わたしは北海道が広いことを知らなかったので、そう感じるのだろうけれど。函館では修道院を見学するつもりだった。もちろん一観光客として。その頃わたしはまだ教会の勉強会にも通っておらず、カトリックとの細い繋がりは、よくしてくださったシスターを介してだった。あんなふうにいられたらどんなにいいだろう。それがそのシスターだったから、ふんわりとわたしは修道女に憧れていたのだ。
修道院では確か、大きな大天使ミカエル像がわたしたちを迎えてくれたと思う。それから慈しみのマリア像。広くて、緑が豊かで、時間の流れ方がずいぶん違うようだった。ミカエル像はまだ写真が残っているかもしれない。土産屋で母はシスターに扮したリカちゃんのキーホルダーを二つほど買い求めたと思う。わたしはなんだっただろう。今もまだ持っているのは、「修道女の生活」という小冊子。そして多分もう一つは『天使の聖母 トラピスチヌ修道院』(野呂希一/青菁社)という写真集。写真集は後から通販などで買ったのかもしれないが、もうわからない。小冊子には修道会に入会を希望される方向けの簡単な説明がある。わたしはそこをだいぶ熱心に読み、何度も読んで、そして諦めたのだった。まず第一に、当時すぐ洗礼を受けても熱心なキリスト教者であることを示すために三年は掛かる。そうすると修道院が受け入れられる年齢の女子ではなくなってしまう(多少の事情は汲むとのことだが)。教会の推薦もなく、親の承諾はまず取れない。そして一番重要だと思われる、身体的・精神的に健康であること。これだけは絶対にクリアできないからだ。性格的に熱心に献身するだけであればそれもできないこともなかったろうが、健康だけはわたしには持ち合わせがなかった。それで、無理なのだと知った。当時はひどい希死念慮と自殺願望があり、ほとんどの物事を見下していて、不摂生極まりない生活をしていたから、今さらなにをするにしてももう、遅かった。わたしのふんわりとした憧れは終わりにする事になった。でもねえヒースクリフ、わたしは、あのシスターに会えたことで本当に今やっと思うのだけれど、あのシスターこそ、わたしに、わたしのみに遣わされた人だったのだということ。そして過去になってはじめてその深い恵みや愛を知ったのよ。あのシスターは当時それなりに高齢だったから、今もまだお元気かはわからない。心残りはあるけれど、わたしたちは姉妹になったので、いずれここではないところに集う事になる。それってとっても素敵でしょう。でも、夜の祈祷に蝋燭を捧げ持って集まりたかったわ、とも思う。
昨日から冷たい飲み物やカフェインの摂りすぎでお腹の調子が悪かったが、今日は網戸を洗った。砂埃などでサッシもひどく汚れていたので気になっていたからだ。去年は連休がなかったから洗わずにほっておいたから、えらい汚れで閉口したけれど、ブラシで擦ったからだいぶ汚れが落ちたと思う。ついでにシェードを下ろしてない方の窓も洗ったらそれも綺麗になって、透き通るような青空が見えた。それは網戸をはめてなかったからなのだけど、晴れた空も案外綺麗なものだな、と思った。少しずつカフェインを摂り始めているが、いったん減らしてみると眠くてたまらない。今日の午後はほとんど寝て過ごしたので、ずいぶん楽になった気もする。でもそれも今日で終わり。明日からはまた一日に七時間四十五分働く事になる……(この十五分の意味を知りたい人は検索してみて。馬鹿げてるから)。大体八時間も働くのは人間には無理なのだ。昼寝でもしないと身体が保たないようになっているというのに、この社会は野蛮だ。
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2024/02/17
2月17日(土)晴
神戸に行く予定であったが取りやめになった。天気もいいしせっかくなのでドライブがてら高知に行ってみようということになり急遽高知へ。
高知に着いてお昼は鰹の塩タタキを注文。分厚くてトロトロでうまい。今までスーパーとかで買って食べていたのは一体なんだったのか。あまりにも違うので衝撃的だった。車だったのでビールが飲めないのは残念だったが。
途中TSUTAYAに寄ってみると最近のTSUTAYAは本屋というより雑貨屋のような雰囲気になっていて、本屋も生き残るために色々な工夫をしているのだなと思った。
帰る前にお土産物を物色すると地ビールがあったので購入し帰宅。
天気も良くて気持ちいいし、美味しい鰹が食べられて満足した1日だった。予定にないことを急遽やるのも悪くない。
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それはきっと酔拳
神奈川から友人が帰ってきたので、飲むことになった。地下鉄すすきの駅から地上に出て、ニッカのおじさんの看板に背を向け西へ10分ほど。好きな店。
「メニュー表に書いてるんですけど、書いてないやつがほとんどで。好み言われたらそれ出します」 と。店主1人でやるそういう店なのだ。日本酒バルという名目の店だが、クラフトビールも多く一杯目はビールで。「ホップホップしたのがいいです」という間もカウンターにどんどん日本全国のビールが並べられていく。見繕ってもらったふたつから、ジャケがピンクで可愛いからという理由で“おらニャンセッションipa”を選ぶ。(今、safariで検索かけたら性的なコンテンツかと思われたのかセーフサーチが作動する。やめてくれ、違うぞ)店主がグラスに注ぐと、黄金の370mlと数ミリの泡が丁度良く収まる。見ていて気持ちがいい、一口飲んで好みすぎて驚く。爽やかなホップが鼻を抜ける。店主の尋常じゃない舌利きと静かなこだわりが垣間見れ、心華やぐ。今日は平日で客も少なく、料理も続々届く。これまた完膚なきまでのアテ。すすきので1番好きだ。前回来た時も心に決めたが、店主かわたしが死ぬまで永遠にこの店を愛そうと思う。札幌にはそんな店がいくつかある。友人も「本州は見掛け倒しの店ばっかり。北海道が一番」と言っている。看護師を辞め、1年こっちで学生をやるという。わたしはと言うと、今の職場に不満はあるが転職する気もなく、4回目の春を迎えようとしている。彼女のような行動力の切れ端みたいなものはわたしも持ち合わせていたはずだが、ここ数年でなくなってしまった。この職業でいる限りは生活に困ることはおそらくない。看護師ではなく、元看護師という肩書きにわたしも恍惚感を覚えるが、看護師を辞めてしたいこともない。やりがいもあって性格にも合うし、手に職とも呼ばれるが、天職とまでは思えない。ビールがなくなる。次のクラフトビールを見繕ってもらう。鯖サンドと鶏ハムを追加する。こんなん一生、北海道から出るもんかと決意する。インスタグラムのストーリーに挙げると、今年度で札幌を去る宇宙の隙間で会っていた彼から久々に「どこ」と送られていた。「秘密❣️」と送り返す。君には教えてやるものか。いい店なので、ここで女の子を口説かれそうで困る。必要な人だけここに辿り着いて欲しいので、闇雲に人には教えない。けれど、これ読むtumblrの人たちが来札する際にはこっそり教えたい。
日本酒も同様。「軽くて華やかなのがいいです」と直接店主に頼む。これは千歳市の日本酒居酒屋で教えてもらったのだが、日本酒には日本酒度という尺度で甘口辛口はあるが実際飲んでみると違うように感じることが多い。それは日本酒の酸味やキレは尺度に影響しないからだと言う。前来た時にこの店の店主も他の客が「甘口で〜」と言ってた時に淡々と説明していたのを覚えている。だから小さな見栄を張って気をつける。これでいいですか?とも言われずに、コクコクと音を鳴らして徳利に日本酒が注がれ、カウンターにその五合瓶が置かれる。この店主のことは絶大なる信頼を置いているので、気にもならない。薄張りのグラスに水も淹れてくれる。日本酒を一口飲んで、目を瞑ってん〜〜〜!と唸ってしまう。スルスルのめる。水も一口含む。15%もアルコールを含む日本酒を美味しく飲むには、ひとくち日本酒ひとくち水と交互に飲むことが大切。こうやって胃内で高アルコールが吸収されるのを避ける。店主に「そういや、この前あそこの席座ってましたよね」と言われ驚く。それは確か半年も前のことだったからだ。あたふたしながら「男の子と来ました!あ、ただの飲み友達でぇ!」と返すとそんな言い訳みたいな言い方しなくても、と笑われた。そんな前のことを覚えられているので、前回ここでどんな酔態晒したのか少し不安だが、この空間の全て��心地よい。そこからもしばらく飲んで、終電前に解散。良い酒は酔いも上品、悪酔いもしない。と思ったが、いつものすすきの帰りと同じく、服を脱ぎ捨て下着だけでベッドイン。脳みそプラグからコンセントが抜かれたかのように記憶もここまで。明日も休み。昼まで眠った。
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本日、7月10日(日) Bar Gothicは お昼15時からオープン‼️🈺15時〜22時までの営業です (ラストオーダー21時30分) 昼飲みゴシックを楽しもう(!) 明日、11日(月)から13日(水)までお休みを頂きます m(_ _)m 次回営業日は 14日(木)21時〜となります Bar Gothic【バーゴシック】 福岡市中央区舞鶴1-8-30プリズモ21ビル8階 (福岡 天神 親不孝通PARCO・あんみつ姫・やまちゃん・舞鶴交番近く、ドラムBe-1隣の隣のビル) ※イベントや貸し切り等で営業日や時間を変更することがあります お気軽にお問い合わせ下さい #bargothic #バーゴシック #ゴシック #親不孝通り #福岡 #天神 #博多 #中洲 #カラオケバー #福岡おすすめ #天神昼飲み #福岡イベント #V系 #1人飲み #イベント #福岡昼飲み #映えスポット #福岡グルメ #コンセプトバー #観光 #昼飲み #福岡観光 (Bar Gothic【バー ゴシック】) https://www.instagram.com/p/Cf0d93qL3th/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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昨日結城神社へ行ったあと、ちょっと遅めのお昼で、二度目のはな明かりさんへ。 今回はえび天うどんセット。セットのご飯は前にメニュー見て食べたかったとり天丼に変更。 前回は花ごぼ天でお腹いっぱいになって飲み干せなかったおつゆ、今回は飲み干してしまった😚❣️ ここのおうどんほんとに大好き。 かまげんなき今、イチオシのうどん屋さん。 ちょっと家から遠いのでなかなか行けないのがつらいところ😵 今回も美味しかったですごちそうさまでした✨ (豊前うどん はな明かり) https://www.instagram.com/p/CpM3Ip5rWW-/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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2022/10/29〜
10月29日
いろいろ疲れているので、日記も写真も今日の予定もすっぽかそう!の気持ちでいちにちを始めたら、全てまずまずやり遂げてしまった。
3ヶ月に一度の歯科検診へ。
前回、黒ごまラテの着色いじりへ不服を態度で伝えることができた、と思っていたのは勘違いで、今回も黒ごまラテから始まった診察。黒ごまラテは飲んでないけれど着色汚れがある。お茶をやめて水にしろ、言われたこともあったけれど、それは無理なので、コンクールジェル、シュミテクトホワイトニングの2回磨き+コンクールマウスウォッシュの消毒+ホワイトニングマウスウォッシュ、で術を尽くしていた口内事情。それを伝えると、シュミテクトホワイトニング以外やめてみましょう!と、新商品のシュミテクトホワイトニングの試供品をくれた。
シュミテクトって海外では違う商品名らしい。
とにかく歯が白くなって嬉しい。
でも口を開けっぱなしだったからか、喉を痛めてしまった。それと、毎度のことながら歯医者さんの後はお腹を壊している。
都写美で野口里佳の“不思議な力”を鑑賞。
ほとんど観たことのある作品だった。作品展の空間に居られることがとても幸せに感じた。心地よい展覧会で幸せ。
撮っているものは、キュウリやヤシの木やコップなど、シンプルで一瞬で認識することができる写真。でも、じっくり落ち着いて観ていたくなるようにさせてくれる写真たちだった。
潜水して撮影したり、胃カメラを使って撮影したり、思っていたよりへんなことをしているのに、写真はシンプルで美しいのが不思議。
“夜の星に”のデジタル映像とコンタクトシートの展示を観て泣きたくなった。
昔、平日の曇天の昼の品川のキャノンギャラリーで観たことがある作品。会社員たちと、昼食にテイクアウトした商品を入れた緑の袋が、モスバーガーの店舗からどんどん出てくるシーンに、わ〜〜〜となった記憶。
何となく街のちょっとした陽の当たるところとか、そう��う写真を撮っても良いんだね、と思い出して、まんまと写真をたくさん撮って恵比寿駅まで戻った。
アトレの無印良品で冬のお部屋のものなどを買い込んだ!
夜お部屋で花火が打ち上がる音を聞く。
10月30日
今日の日はもうないものとして過ごしていたので、少しの家事や用事を済ませることができただけで大満足な日だった。
体の調子は変わらずに良くなく、体力を余分に消耗している体感でソワソワしながら日中を過ごした。
スーパーで年末年始っぽい音楽が流れている。駅前の歯医者にはツリーがあって、ショッピングモールにはカボチャのアイテムを身に付けた子供がたくさんいた。
10月31日
昨晩、渋谷と京都のライブカメラ配信を見ていたら、渋谷はハロウィン前日の人の多さで、警察も出動していた。予定していたライブは、渋谷のライブハウスが会場だったので行けなくてよかったかも。
風邪薬が効きすぎているのか、エネルギーが勢いだけ有り余り、でもチャージはされていないのでスカスカの身体が、今日もずっとソワソワしている。
朝、一応体調が戻った気がして出掛けてみた。
途中で抗原検査キットを処方してもらう。
フィルム現像を出しに写真屋さんへ行くと、年賀状の注文をしている人がいた。
平日の昼間のオフィス街がやはり大好き。
大手町から日比谷までの丸の内を歩いて歌って、ショーウィンドウを眺めて写真を撮っている時が一番楽しい!と思った。
みんなが働いているのに休んでいる優越感なだけ?と考えたけれど、みんな働いているのを知らない大学院生時代からこの通りを歩くのが大好きだった。
東京駅は外国の方が増えた。
日比谷のTOHOシネマズで映画を鑑賞。
うん、少しずつ映画館恐怖症?が治ってきている…はず。今日は2時間超の作品で、途中、とてつもなく気持ち悪くなりかけたけれど、足をゆさったり深呼吸をして凌げた。
鑑賞したのは趣里ちゃんが出演し、根本宗子が脚本の“もっと超越したところへ。”
いろいろすごかったし、音が大きくて何度か酔っていた。趣里ちゃんの動き方や身体のバランス感がとても好き。
こないだyoutubeで予告を見た三浦透子ちゃん主演の映画にも、あっちゃんと元乃木坂の子が出演していたな〜、と思い出す。
映画は、後半からエンドロールまでが、演劇っぽい作品!と何も映画にも演劇にも詳しくないのに、なんとなく思っていた。
映画の後、大丸のパパブブレでラスト1つのハロウィンキャンディセットを購入し、大学の研究室へ持っていくことにした。
駅から大学まで、都会特有の長い信号待ちの横断歩道を2回渡りながら、1つ目を渡った後、とっても走れば2つ目の青信号に間に合うことなどを思い出した。
結局、大学まで行って、何か怖気付いてしまい神保町古本祭りを眺めて帰宅した。
東京の平日の昼間って、たくさん撮りたくなるシーンがあって貴族の遊びが捗ってしまう。
丸の内のショーウィンドウの中のものたちが、どれもキレイで、それを欲して入店する人達も気品があるので安心する。
平日に、北関東のスーパーやディスカウントストアやショッピングモールやファミレスばかり見ていると、インターネットで欲しくないものばかり買ってしまうので、精神衛生的にも金銭的にも良くない。
11月1日
朝起きて、これはだめなやつ!な身体だったのでお休みをすることにした。
けれど、このままずっと休んでしまうのでは?と、午前休にする。8時の電話をかけるまでの時間、いろいろな言い訳を頭の中でし続ける。
連絡をした後も、この午前休を何か有効的に使わなくては…!と眼科を予約。
身支度を済ませた時に、身体が本当に空っぽで薬の効果で駆動力だけ湧き上がっているのに気が付き、予約まで1時間以上あるのに家を出てしまう。
すぐエネルギー切れになり、何か食べよう!と思った。
いつもは、少しの血糖値の上昇でも身体がきつく眠くぱったりしてしまうため、日中に食事はしない。でも、こうなると無理で、他のことが見えず、食物を探し彷徨ってしまうことがたまに起きてしまう。
とりあえずキレートレモンを片手に電車に乗った。
車内では秋の行楽のアナウンスが流れていて、窓の外を見て、休んでいた3日間で通勤経路の秋がどっと深まっているのを感じた。
無心で金曜から予定していた旅行をキャンセルした。
隣の席の人のスマホの画面を見ると、東博の“国宝展”のチケットを予約して、ラインで予約完了の報告をしている。あ!と、友人に国宝展のお誘いメッセージを送ると、なかなか予約が取れないらしい。その時、他の人からディズニーランドへ行く予定の確認が来ていて、でも今は全くディズニーランドなんて行きたくない!どちらかと言えば、有給とってでも国宝展へ行きたい気分。
下車した先のスタバの店員さんが赤いTシャツを着ていて今日からクリスマス解禁。
ここからまたコンビニというコンビニをうろつき、食物を探すけれど納得のいくものがなく、駅のちょっとした物産展へ入ってみると、こだわりプリン的なものが半額だったのでちょうど胃も辛いし咀嚼も辛いので、食べてみることにした。
広場の椅子とテーブルでは、女子高生が1人数学の問題集を解いていた。
私もそこに座りプリンを食べた。
近くではロボットが実走させられている。
プリンはカラメル以外は食べることができたし、満たされる美味しさを感じることができた。半額で190円支払ったので定価400円程する高級プリン…。
血糖値おばけになってガクガクしながら出勤して、やっぱり苦しくて虐げられて泣いたり、体調不良でワクチン接種できなかった事を笑い飛ばされたり、暇だけど何か手伝いますか?何をどうすればさらに職場環境が向上するか的なの前向きな話題を聞いたりして半日を過ごした。
すぐ泣きたくなる。すぐ、みんな良く喋るなー、ってモードになる。暇な時間をどう埋めるべきかで私の頭はとっても忙しい。そして実際に暇でもなくて、それはもう忙殺。
11月2日
うさもっちの白はamazonで既に売り切れ!
朝、霧が濃くて紅葉が白に生えていたので、何となく持って行けたカメラでたくさん写真を撮った。帰り道も何か月とか撮ろうとしたけれど、いつも撮っているよね?と自制を効かす。
ケイトはいつまでもつのかな。
お花の片付け時がわからず、1週間と決めてしまっている。
なるべく、本当は明日から旅行だったのに!と思わないように2日間は生活と自分を喜ばせる時間に充てたい。
SNS映えのためにずっと生活をしているので、なるべく“映え”がテキトーにバカにされる言葉にならないで欲しい。
(“映え”という言葉が出てきた時、私のしたかったことはこの一言で表せるのかも!と思ったりした。一瞬。)
明らかに仕組み作られてしまったインターネットの世界でなかった頃、飲み会帰りにさっきまで一緒にいたみんながするツイートをふぁぼしていた頃、そうゆう感じで、掴みどころのないツイートを仕事終わりにして、みんなでいいね!をし合うものだと思っていた頃、その頃のインターネットを知っている私は幸せだと思う。
11月3日
午後の予定まで東京駅〜銀座をお散歩した。
国際フォーラムではゴジラのイベントが開催されていた。本当に外国人の観光客が増えていて、話題の食べ物とセルカ棒で写真を撮っている。
KITTEの郵便窓口では、年賀はがきや年賀切手を60枚、70枚と大口購入されている方が多い。今年はもう年賀状をやめてしまおうと思っていたけれど、30枚インクジェット年賀はがきを購入してしまう。卯年のデザインのうさぎは、どことなくマイナンバーカードのうさぎに似ていて、うーん。
うさもっちは20体ほど残っていた!
紅しかいなかったけれど、実物はとっても可愛い。お会計してくれた局員さんは“うさもっち”と、言わないようにお会計手続きをしている感じ。
その後エルメスへ行ってみると展示が変わっていたので鑑賞。犬の粘土アニメーションが面白かった。
帰りにスーパーへ行く。
どうもずっとお腹が気持ち悪く何も食べたくないのに身体はエネルギーを欲していてあべこべな気持ちで食材を買った。レジでお会計していたら、隣のレジのおばさんが「これ使った?私は今日もう使っちゃったのであげる!」と、10%引きクーポンをくれた。「え!?あっ、ありがとう…」と、ろくにお礼も言えずに、おばさんが先に袋詰めを済ませて店を出ていく姿におじぎをしたら、振り返って手を振ってくれた。
今、少し長い地震があった。こわい。
今日は結婚する報告を受けた。こうゆう時、誰かいるとこわさが軽減されていいのかもしれない。大丈夫なきれいな人がいるといいのだと思う。
ケイトを生けていた花瓶を倒して水を撒いてしまった。ケイトはまだ元気そうだったけれど、さよならすることにした。
11月4日
1日休んで1日働くくらいが身体的にはちょうど良い。
明日から文化祭なので、広場には仮設ステージが設営されていて、朝から夜まで準備をしている人がいて、少し元気になった。
こうゆうイベントが少しずつ許されていて、元々苦手だったものは、この感染症を理由に断ったりして利用しつつ、うまくやっていければいいな。
文化祭前夜の仮設ステージと照明と雨の夜がとてもよかった。
酉の市には行けていないけれど、雨が降っているので!と行けない理由もできて大人しく帰宅できた(でも40分くらい写真を撮って遊んで貴族退勤した)。
「3年目までのメンバーで新人さんの歓迎会をやるんですけど、どうですか?」とお誘い話を受ける。ちゃんとこうゆう会を開こうって思ったり、人に声をかけたりできる人ってすごい。確かに歓迎会らしい会がなくここまできてしまったので、3年経ってもなんとなく知っていてなんとなく過ごしている人だらけ。
先週の反省として、頑張って掃除をしすぎない(体調を崩す)と言い聞かせて、いま夜を過ごしています。
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2023年9月15日(金)
戦後初めて関西に落語定席・天満天神繁昌亭ができたのが2006年9月15日のこと、今日は17周年特別公演の日だ。朝・昼・晩の3回公演、露の新治さんが中トリ、それに桂二葉さんも登場とあって早くから<ぴあ>で第2回のチケットをおさえておいたのだ。平日ではあるが休みを取得したツレアイと一緒に、猛暑を忘れる楽しい午後を過ごすことができたのだ。
5時30分起床。
日誌書く。
朝食。
洗濯。
可燃ゴミ、30L*1。
10/15(日)帰路の新幹線、早得の締切当日に申し込んだので、やはり取れなかった。しかたなく、普通に予約する。
北海道深川市・さんだかん燻製工房が京都大丸へ出店中、いつものようにハム・ソーセージ・ベーコンを仕入れる。
早めに素麺でランチ、和服に着替えたツレアイと天満天神繁昌亭へ向かう。
各演者とも一杯の客席の雰囲気と調和しての好演、それでもやはり二葉さんの勢いは群を抜いている。我らが新治師匠も鉄板の頭髪マクラから十八番へと良い流れでの仲入り。席は最前列だったが、東京のNさんが挨拶に来てくれた。先月の東京でのお礼を申し上げたが、明後日の神戸名人会にも行かれるとのことだ。終演は17時、足早に帰路へ向かう。
いつものように、阪急桂駅で惣菜を買って帰宅する。
定番の唐揚げ・竜田揚げで簡単に夕飯、息子たちにはスパークリングワイン、私たちは冷酒からフランス赤へ。
放送中の<雲霧仁左衛門>を録画モードで楽しむ。
片付け、入浴、体重は一昨日と同じ。
背中の痛みは今日も続いているが、痛み止めを飲んでいるのでなんとか過ごせる。明日も痛みが止まらなければ、外科を受診するかな。
無事に3つのリング完成、水分は1,480ml。
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週末精神科に再診するので整理を兼ねて書く。概要・20代後半の社会人女・全般的な感覚過敏(後述)で大学時代から抗精神薬(エビリファイ)を飲んでいた・引っ越したので、1週間と数日前に新しい精神科に行ったところ、前述の薬ではなく抑肝散という漢方を処方された・結果、感覚過敏が解消されるとともに抑肝散が効いている間は感性が変わり、分かりやすく言えば自分②が生えた・自分の感性が2種類ある状況をうまく処理できず精神的に参っている追記・感覚過敏は先天的なもの。小さい頃から世界が眩しく、音はうるさく、タートルネックは着れなかった。・エビリファイは何も飲まないよりは随分マシ程度には感覚過敏を抑制してくれていた。エビリファイがなければ卒業も就職もできていない。感性の変化とかはなかったが。・いま思い立って今まで一口も嚥下できなかったチョコミントアイスを買って食べてみているが、食べられないことはないしなんならちょっと美味しい。やや美味しい歯磨き粉。追記終わり変化改善された感覚過敏かいつまんで書くと以下。詳細は末尾にまとめているので興味あれば。元の状態→抑肝散が効いてる状態。・繁華街では視界の情報量に負けてすぐ気持ち悪くなっていた→平気になった・首にストラップが当たるのが無理で社員証を首からさげられなかった→さげられるようになった・香水に常に不快感があった→ただただ良い匂いと感じる。なんとLUSHにも行ける。感性の変化抑肝散が効くことで、単なる感覚過敏抑制の枠を超えた変化があった。・好きだった音楽がとてもぼやけて聴こえるようになり、今まで聴けなかった曲をリピート再生するようになる。・好きだった服(派手な柄シャツ)が嫌いになる。全く違うテイストの服(ほぼ無地のモノトーン)が好きになる。・好きだった食べ物の味がぼやけ、嫌いだった食べ物を美味しく感じるようになる。・友人たちのことは好きなままだが、新たに人間関係を築く際の人間の好みが若干変わっている感覚がある。 具体的には、頭の良さよりも行動の面白さを重視するようになり、体格は小さい方が好きだったのだがどうでもよくなった。その他の変化抑肝散によるその他の変化は以下。・絵を描いているのだが、「人間や物体を球や円筒などの概形で捉える」という感覚が薬の効いている時のみ分かるようになった・肌がきれいになった(肌が過敏じゃなくなった???)・食欲が約半分になった・夜の7時間半+昼寝20分が必要睡眠時間だったのだが、夜の6時間半程度のみで大丈夫になった。(スマートウォッチによれば睡眠時の心拍数が平均で3~5拍/分 下がっている)・(上に関連して)眠気回避のためコーヒーを毎日かなり飲んでいたのだが、ほぼいらなくなった。所感、困っていること感覚過敏がほぼ消失したことで、今まで楽しめていなかったものが楽しめるようになった。絵が若干だが描きやすくなったり、肌がきれいになったり、コーヒーを飲まなくても覚醒していられる等、ほかのメリットも多い。ただ、薬が効いている時と切れかけている時で自分の「好み」が変化するのがつらい。朝起きて薬を飲んで着替えようとすると、部屋には自分の好みではない服しかない。今まで好きだったものをもう一度味わおうとしても、常に「今の自分はこれを好きだと思えるかが分からない」と不安になる。実際にあまり好きではなくなっていることも多い。なんとなくやる気が出ない時、好きなもので気分を上げようとしても、その「好きなもの」がいちいち試さないとわからない。「好きなものが広がる」のとは体験として違う。薬を飲んだ朝好きだったものが夕方にはたいして好きではなくなり、夜の薬を飲んだらまた好きになっている。思考する自分は一貫して存在している。ただ、感性が2種類ある。それぞれ好きなものが違う。 「好きなもので自分を語れよ」と言われるように、「好きなもの」というのは自分の一部である。自分が2人いるような感覚になるのだ。これが思ったよりかなり精神的にストレス。感覚過敏だけ抑えて、感性にまで影響を及ぼさない薬があればいいが、それは存在しない気がする。今までの私の感性は過敏な感覚を前提にしたものだったからだ。体調や気分次第で行動が変わる人はいると言い聞かせたが、そんな程度のものじゃないだろと思ってしまう。感性の経年変化とも違う。朝着た服が夕方気に入らないのだ。 ネットで有名な投書に以下のものがある。【3868】コンサータによって自己の連続性を失いつつあるhttp://kokoro.squares.net/?p=7763私はこの投稿者と違い、精神的なすべてのものが中枢神経の発火であることにショックは受けない。薬が効いていないときと効いている時の両方を自分だと思う。ただ、私の精神は「自分が二人いる(感性の状態が2種類ある)」ことに現状耐えきれない。 冷静に見れば抑肝散を飲むメリットの方が多い。どうにかして折り合いをつけたいが、方法が分からない。感覚過敏の変化の詳細視覚・繁華街の看板群、人混み、夜のネオンが平気になる・色がうるさいとあんま思わなくなる・外が眩しくない・(ガン効きのときのみ)視界の端まで意識が及ぶ感覚がある聴覚・ノイキャンヘッドフォンなくても生活できる・音楽の音の輪郭が全て鈍って聴こえる・ヘッドフォンの音質がいいことに気付く・米津玄師や他の邦楽が全て飽きない限りエンドレスで聴けるようになる(今までは一曲聴き終われないこともあった)・好きだった音楽(KPOPや洋楽)では刺激が足りなくなり、日本語の曲ばかり聴くように・今まで楽器別に聴こえていた音が、「声」と「楽器群」の2つにグルーピングされて聴こえるようになる触覚・全身の触覚と痛覚が鈍麻(温度感覚には影響なし) ロキソニンを飲んだときよりも鈍麻している・社員証が首からさげられるようになる・手首のスマートウォッチの振動に気付けなくなる・首元の詰まった服が着られるようになる嗅覚・香水をいい匂いと認識できる・LUSHも平気※嗅覚は鈍麻したわけではなく、不快感のみ消えた味覚・一定以上の強い味は切り下げられて感じるようになる・反対に薄めの味をしっかり感じられるようになった・甘いものを美味しいと感じる(今まで苦手だった)・しいたけなど食感がだめだったものを食べられるようになった
精神薬変えたら自分②が生えて困っている
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第13回常陸の国・里山&野外ワークショップ&マインドフルネスアート合宿【初秋特別編】(2023年9月18日-19日 in 茨城県常陸太田)
第13回常陸の国・里山&野外ワークショップ&マインドフルネスアート合宿【初秋特別編】
(2023年9月18日-19日 in 茨城県常陸太田)
https://kanglohoops202309.peatix.com/view
https://www.facebook.com/events/690266253005922
今年で12年目を迎えたオープン合宿。今回は、初秋特別編です。「160年の古民家荒蒔邸、300年の菊地邸などの里山古民家、1000年古神社で過ごす心鎮めるマインドフルネス、本格有機農体験、手仕事ワークショップ、深い森と滝散策リトリート、参加者との交流ダイアローグ、創業200年八幡太郎義家ゆかりの湯で心と体を癒すなど、今年もゆったりと過ごす企画にする予定です。
茨城県の常陸の国は、元は日高見国とされていた土地。7世紀に令制国として常陸国が誕生。『常陸国風土記』によれば大化の改新(645年)直後に創設されました。ここは、古い里山だけに多くの文化遺産が残っています。昨年には、NHKの朝ドラマのあの「ひよっこ」の舞台にもなりました。今回は、天候、状態にもよりますが、御岩神社への巡礼も行う予定です。
そして、160年古民家荒蒔邸を拠点に、ゆったりとマインドフルネスな時間を体験をします。地元でも秘境の深い森や滝、古神社でゆっくりと過ごします。また、就農25年目となる布施大樹さんと美木さんご夫妻の経営する有機栽培農園「木の里農園」の有機野菜と共に、夜は本物の火や囲炉裏を囲んだ談義と自分達で仕込んだ自然食を頂き下鼓を打ち、焚火の灯で温まりながら、夜の思い出を刻みます。今も住人が住み続ける300年を超える古民家「菊地邸」(ご主人の話を聴けるかな?)で安土桃山時代の空気を味わいます。
このような素晴らしい里山で2日間共に過ごす程、贅沢な時間はないでしょう。里山の人たちとの交流や自然・大地の恵みを得ながら、ライフコーチ、スピリチュアルカウンセラー、アーティストの森夕花先生と共に人生の本来の目的を思い出し、明日への道を見出したいと考えています。今回も素晴らしい機会となることを確信しています。ご参加をお待ちしております。
主催:カングロ株式会社 HOOPS!事業部
https://www.facebook.com/hoops.kanglo
■旅の案内人:
★マインドフルネス&ライフコーチング担当:森夕花(もりゆうか)先生
●ライフコーチ/アーティスト/カングロ(株)取締役執行役員、尚美高等音楽学院ピアノ科卒業 京都芸術大学芸術学部卒業。ピアノ、声楽、シナリオ、演劇、ジャズダンス、日本舞踊などの自己表現を通して自分自身を探求する。1993年ドイツ、イタリアへの留学。その後、21世紀に入り、ハワイ、セドナ、インドのアシュラムを巡礼する。心理学、哲学、美学、手相、インド占星術、代替医療(中医学・ヒーリング)などを学び、 ヒーリングカウンセラーとして23年間、企業のライフコーチとして9年間、セッション、研修を行う。現在、「大人のためのアート思考講座」「Philoarts研究会」を主宰。趣味は、声楽、読書、人間観察、そば栽培、ヨガ、瞑想。特技、人・動物の心を読む、直観力、探求。好きな言葉は、「自由」「日日是好日」
★企画&案内人担当:藤井啓人(ちょろお)
●茨城県東海村出身。高卒後、上京し新聞配達をしながら予備校に通い筑波大学に入学。4年間、体育会硬式野球部に所属し選手と2軍監督を経験。1992年に株式会社リクルート入社。12年間、組織・人事コンサルティング事業に従事し、約2000社の企業の変革に携わる。社内表彰制度で全国MVP・部門MVPの受賞計8回。2004年に独立し、事業再生コンサルティングのマネジメントリコンストラクション社を設立。2010年5月カングロ株式会社 代表取締役に就任。独自のサステナビリティ・イノベーティブ・コンサルティング事業を開始。米国で「今最も羨望の注目を浴びる企業」とされるオンライン・リテーラーのザッポス社のハピネス経営、「社員をサーフィンに行かせよう」「レスポンシブルカンパニー」の題材となっているアウトドア用品メーカーの米パタゴニア社を研究し続け、約1000社3000名のビジネスパーソンにセミナーや勉強会等でその真髄を伝えている。2013年には西アフリカのナイジェリア連邦共和国にて合弁会社を設立し、水問題、エネルギー問題、食糧問題、環境問題を日本のテクノロジーで解決するソーシャルビジネス事業も行う。実地の中から発信される指南は、斬新・先駆的でかつパワフルであり、魂を揺さぶるものとなっている。2013年以降、システムD研究会、自転車事故防止委員会、セブメディの会を設立。2015年より同士と共に「懐かしい未来プロジェクト(HOOPS!)」「サステナ塾」を開始し、持続可能な地域社会の実現のために人間本来の役割を思い出すためのあらゆる「体験」の場と機会を提供している。自転車のある生活をこよなく愛し、年間約1万kmを走破する。マラソンランナー、トライアスリート。趣味はゴミ拾い、俺のベランダ菜園。
★有機野菜:木の里農園
http://konosato.com/
■開催日:2023年9月18日(月)- 19日(火)1泊2日
※下記集合場所に10時頃に集まり、翌日16時頃に現地解散予定です
■集合場所:
道の駅さとみ(茨城県常陸太田市小菅町694-3)
http://www.hitachiota-michinoeki.jp/page/dir000003.html
■スケジュールイメージ:
※天候などの状況により変更となる場合があります
<8月26日(土)>
*10時:集合場所(道の駅さとみ)
※電車組は、JR常磐線東海駅からの送迎有り
*10時15分~:手打ち蕎麦ワークショップ
*12時~13時:自分の打った蕎麦で昼食&オリエンテーション
*13時15分:大中町の荒蒔邸へ移動しチェックイン
・1000年以上前に建立された大中神社にご挨拶
*13時30分~22時頃:
※概ね下記のメニューをゆるりと実施していきます。
・里美の滝散策(美しい秘境の滝を巡ります)
・300年古民家「菊地邸」訪問
・全員で夕食準備&自然食料理での夕食&片付け
・荒蒔邸の囲炉裏と焚火を囲んでのダイアローグ(対話)
・横川温泉 中野屋旅館 で入浴(入湯料は個別清算)
*22時頃:自由時間
*23時頃:就寝
<8月27日(日)>
*06時:起床~朝のさんぽ(朝陽を拝むマインドフルネスウォーク)
*07時:全員で朝食準備&朝食(禅イーティング)&片付け
*09時~:森夕花先生のマインドフルネスアートセッション
*11時~:清掃・片付けをし移動
*12時~:御岩神社巡礼
*14時~:ゆっくり昼食&対話&クロージング
*16時頃:解散(電車組は近場のJR常磐線内の駅まで送迎します)
■宿泊場所:
里美 160年古民家の宿「荒蒔邸」
茨城県常陸太田市大中町1547
【地図】https://www.aramakitei.com
■当イベントの参加資格:どなたでもご参加可能です。
お気軽にお申し込みください。以下は参考です。
どなたでもご参加可能です。お気軽にお申し込みください。
※エコビレッジ、パーマカルチャー、トラジションタウン、半農半X、
スローライフ等に関心のある方
※マインドフルネス、スピリチュアル、メディテーション、ヨガ、
リトリート等に関心のある方
※お子様は、小学生高学年以上が良いと思います(過去参加有)。
お子様を同伴されたい方は、事務局に事前にご相談下さい。
■参加料:お一人様 3万800円(税込)※小中大学生は1万5400円(税込)
※上記には、参加費、宿泊費、夕食のBBQ及び翌日の朝食付き代が含まれています
(アルコールは最低限用意をしますが、多めに飲まれる方は持参頂いています)
※上記には、交通費、夕・朝食以外の食事、入湯料、工芸料などは含まれておりません
※小中高大生はお一人様半額となります(お子様同伴の方は、事前にご相談下さい)
※必要に応じ、領収書をご用意致します
■注意事項:※必ず目を通しておいて下さい
※コロナ対策のご準備をお願い致します
※当企画は、現地集合・現地解散企画です
※電車組は、JR常磐線「東海駅」にてピックアップ致します
※宿泊は、状況に応じ、女性専用部屋を用意します(枕、敷/掛布団あり)
※横川温泉 中野屋旅館 で入浴(入湯料は500円、個別清算となります)
http://www.satomi-nakanoya.com
※工芸ワークショップは「常陸蕎麦・本格手打ち蕎麦教室」を予定(昼食込みで一人2000円程度)
※参加者同士、車での乗り合いをお勧めしております
※参加料は、事前振込制となっております(申込後にお知らせ致します)
(前日キャンセルは50%、当日100%のキャンセル料を徴収致します)
■定員:8名限定
※先着順。定員になり次第締切ります。
※最小携行人数は5名。参加者が5名を下回る場合、開催を見送る場合があります。
※小学生未満同伴の場合は、事前にご相談下さい。
■当イベントの申込方法【重要】:
※ 下記をご一読いただきお申込み下さい。
①下記URLの申込フォームにより正式エントリー
申込フォーム
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSft1YNO6SP4C-YGlgpacoHgGK-wLQ9t-NOybyJuhsVg8sNbjg/viewform
③���の返信メール内にある振込み先に前日までにご入金
(現地でのお支払いも可能です)
④これにて「申込完了」となります。
■協力:木の里農園さん、地元の仲間たち
■主催:カングロ株式会社 HOOPS!事業部
https://www.kanglo.co.jp
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P3 Club Book Akihiko Sanada short story scan and transcription.
真田明彦の難攻不落伝説
某日深夜---ここ、月光館学園巌戸台分寮のと ある一室で、その恐ろしくもおぞましい謀略は、徐々に形を現わそうとしていた。
「許せねえ······絶対に許せねえぜ、真田サン。いや、真田明彦ぉ!」
「じゅ、順平くん。そこまで怒らなくても······」
「甘いわよ、風花!私も順平に同感。食い物の根みが恐ろしいってこと······真田先輩の骨の髄まで思い知らせてやらなきゃ!」
「別に僕は、甘いものがそれほど好きって訳じゃないですが······美味しそうでしたよね。お土産のー日限定100個の特製プリン」
「わん!」
「コロマルさんも、ひとりで10個は食べすぎだと申しているであります」
「トレーニングで疲れてたか何だか知らねえけどよ、フツー全部食うか?俺たち仲間だろ?みんなの分残しとくとか考えるだろ!?」
「あ、あうう。り、リーダー、皆さんを止めなくていいんですか?え?······別にどうでもいい? ううううう······」
あまり恐ろしくもおぞましくもないようだが、ここからが恐ろしい。
「よっし!んじゃ、満場一致で “真田先輩をギッタンギッタンにしてギャフンといわせてグウの根も出なくさせる計画”、略してトリプルGプロジェ クトの発動を宣言します!」
「おーっ!」
この今どきどうよ、というネーミングセンスのなさが恐ろしい。
ともあれ、真田の天然ぶり---というより鈍感さに端を発する、特別課外活動部メンバーの怒りの鉄槌が、真田の頭上に振るわれようとしていた。だが彼らはやがて思い知る。真田明彦の天然もまた、ボクシングの腕前と同じように、超高校級であるということを······。
~フェイズ1 伊織順平&山岸風花~
「オレの武器は······これだ」
そう言って順平が取り出したのは、普通ならスポーツドリンクなどを容れるのに使う、ストローつきの白い円筒形のボトルだった。
「トレーニングで疲れたセンパイに飲ませるための、特製栄養ドリンクって訳だ」
「あんた······敵に塩送ってどうすんのよ?」
ゆかりの言葉に、順平はちっちっちと指を振って、恐るべき事実を公表した。
「これはな 風花の······手作りだ」
「そうなの。頑張って、作ったんだよ」
どよつ。
場の温度が下がり、驚愕のどよめきが走る。
「そ、そんな······順平さん。そこまで酷いことをしなくてもっ······!」
「こ、これは、ワシントン軍縮条約に抵触する可能性すら考えられるであります!」
「きゅ~ん······」
「順平······本気ね······?恐ろしい男······」
この液体がもたらす惨劇の予感に、その場にいた全員の顔が着白と化す。ちなみに、兵器開発もとい調理担当の風花は、皆の評価によって心に深い傷を負い、壁際でしくしく泣いていた。
「お!来たぜ!」
順平の言葉どおり、朝のトレーニング帰りの真田が寮の玄関から姿を現わした。すかさず順平がタオルとボトルを持って歩み寄る。
「センパイ!お疲れさんッス!どうスか?運動あとに特製ドリンクなんて?」
「おお、順平。ありがたいな、ちょうど喉が渇いていたところだ」
「しめしめ······じゃなくて、どーぞ!いい感じに冷えて、飲み頃ッスよ!」
何の疑いもなく、真田は順平からボトルを受け取ると、ストローに口をつけて中の液体を勢いよく吸い込んだ。
ずずずずずずずず!
何だか、嫌な感じに粘度を感じさせる音が響き······そうして、真田が口を開いて叫んだ。
「美味い!これはいけるな!」
「······へ?」
予想を裏切る真田のセリフに、唖然とする順平。そこに、真田の歓声を聞きつけ、何ごとかといった表情で桐条美鶴が現われた。
「どうした、明彦?」
「いやな、順平が作ってくれた特製ドリンクが、なかなか美味だったからな。美鶴も飲むか?」
ごく自然に、真田が美鶴にボトルを手渡し、そしてごく自然に、美鶴もストローを口にくわえる。付き合いが長い上、精神年齢的に成熟しているふたりは、間接キスなど気にはしない。······してくれれば、順平の制止は間に合ったろうし、その後の悲劇も防げたのだが
ずずずずず······。
やや飲みにくそうに、美鶴は頬に力を込めて体を吸い上げ、次の瞬間。
ぶびっ。
表情を変えないまま、美鶴の鼻の穴から腐った沼のような色の液体が噴出した。
「き、 桐条センパイっ!!」
美鶴の顔色が、黄土色から紫色、さらにはオレンジ色から緑色へと目まぐるしく変化する。そして最後は、ぐりんと白目を剥き、棒が倒れるような勢いでばたんと倒れ伏した。
「せ、せんぱぁあああいっ!!」
順平の悲痛な叫びがこだまする。それは、この後に来るはずの、美鶴の報復を予感し
ての、早すぎる断末魔のように聞こえた······。
~フェイズ2 岳羽ゆかり~
「えー、牛丼をプロテイン茶漬けで食べる、真田先輩の味覚を甘く見すぎてました。そこで、食欲以外のアプローチで行きたいと思います」
「順平さんはどうしたでありますか?」
「解凍���、あと半日はかかります。ついでに、風花も部屋にこもってしまい戦力外です」
計画の第1フェイズで、すでに彼らの戦力は激減している。あまつさえ、善意の第三者であるところの美鶴まで巻き込み、もはや失敗は許されない状況へと追いやられていた。
「で、あの······ゆかりさん、今度の作戦は?」
そう言う天田は、ゆかりから目線をチラチラと外しては戻すという、不審な動きを続けていた。し かし、それも無理からぬことだった。
「ズバリ!色気で落とすっ!」
きっぱりと宣言したゆかりの服装は、いわゆるボンデージ風のタイトな超ミニワンピース。服というより、数枚のラバー生地を紐で大雑増に繋ぎました、という感じの露出過多のデザインである。胸元や背中そして左右のサイドから、これかというくらいに眩しく、白い素肌を見せつけている。日ごろ弓道部で鍛えた均整の取れたプロポーションを誇るゆかりが着ると、これが意外と悪くなかった。第二次性徴期が来たかどうか微妙な年頃の天田ですら、頬を赤らめてぼうっとなるほでの色香を放っている。
「これで真田先輩をメロメロにして、さんざんしてあそんだ挙句に捨てるという、自分の非情が恐ろしくなるほどに完璧な作戦よっ!メイクバッチリ、ヘアスタイルもオッケー!」
「胸部の追加装甲も問題なしであります」
「アイギス、ひと言余計! 」
ちなみに、いま彼女らがいる場所は、白昼のポロニアンモールのど真ん中。真田は辰巳東交番の中で、黒沢巡査と話している。出てくるところを狙って、作戦開始という段取りである。
「あ、出てきた出てきた。んじゃ、みんな。行ってくるよーっ!」
何も知らずにやってくる真田を確認し、ゆかりがゆっくりと接近していく。2メートルほど近づいたとき、ついに真田がこちらに気づき、ゆかりと目が合う。すかさず身体をくねらせ、ほどよい弾力を感じさせる太ももを見せつけるように、グラビアアイドル風のポーズを取った。
「······」
つゆつゆつゆ。
······見事に、真田はそれをスルーした。
「んなっ!?」
たとえ色気が多少足りなかったとしても、後輩このゆかりをシカトするとは······。プライドを傷つけられ、ゆかりの中の女の意地が覚醒した。
立ち去ろうとしつつある真田をダッシュで追い抜き、くるりと振り向いて真田の���路を塞ぐように対���する。さすがに歩みを止める真田。そしてその真田の目の前で、ゆかりは前かがみになり左右の腕でバストをぎゅっと中央に圧迫した。寄せて底上げした胸が、さらに押し付けられて豊かな双丘を形作る。そして---。
「セ•ン•パ•イ (はぁと)」
微動だにしないまま沈黙する真田。手ごたえあり!と、ゆかりが心の中でガッツポーズをしかけたとき、真田がゆかりに話しかけた。
「あー······月光館の生徒か?すまんな、覚えがない。しかし平日は制服着用が定められているはずだぞ?生活指導に見つからないうちに着替えに戻ったほうがいい。それじゃ、な」
つかつかつかつか。
再び見事にスルーし立ち去る真田。取り残されるゆかり。ひゅるりら~と風が吹いた気がした。完敗、というか惨敗、というか勝負にすらなっていなかった。あろうことか、ちょっと髪型を変えて化粧をし、いつもと違う服を着ただけで、真田はゆかりを知人だと認識できなかったのだ。よく年配のオジサンたちが、若い女の子はみんな一緒に見える、などと言うが、それのさらに酷いやつである。予想の斜め上を突っ走る真田の朴念仁ぶりと言えよう。
「せ、せんぱい······会ってからもう半年たつっていうのに······もてあそばれたー!酷いぃぃ!!」
真田の無心ゆえの見事なカウンターアタックで、ゆかりは精神を破壊されかねないほどの敗北感を感じていた。その再起には、まだしばらく時間がかかりそうだった······。
~フェイズ3 アイギス&コロマル~
「ホントに、大丈夫ですか?」
残る戦力となる、天田、アイギス、コロマルの3者が、夕方のランニングをしている真田を遠くから追跡しつつ作戦会議を行なっていた。
「大丈夫であります。私とコロマルさんがいれば、十全と言えるでしょう」
今度の作戦はシンプル。真田にコロマルをけしかけ、ズボンの尻でも破いてトホホな目にあわせてやろうというものだ。
「では、アイギス行きます!」
コロマルの首に結びつけたリードをしっかりと握り、アイギスが走り始める。さすがに運動性能が高いアイギスは、天田が見守る中、どんどんと真田に接近していく。
あと20メートル。10メートル。5メートル。4、3、2、1······あっさり追い抜いた。
「あ······」
見ている天田の額から、汗が一筋垂れる。その間も、アイギスとコロマルは走る走る。どうやら、久々の広い場所が嬉しくてしかたないコロマルが、目的を見失って猛ダッシュしているようだ。念入りにリードを手に絡めていたアイギスは、前に倒れそうになりながら振り解くことも止めることもできずに引っ張られ。
コケた。
そしてそのまま。
ずるずるずるずるずるずるずる。
1機と1匹が巻き上げる砂煙が、遠く地平線の向こうに夕陽とともに消えていくのを、ただ天田は見つめるだけしかできなかった。
~最終フェイズ 総攻撃~
「正攻法で行きましょう」
各々の理由で叩きのめされ疲れ果てた面々に、天田は溜め息交じりに提案した。だが。
「ダメだ······勝てる気がしねえ······」
「見た目はともかく声ぐらい覚えててよ······」
「ぜっはっぜっはっ (散歩して満足)」
「もはや、ベコベコであります······」
部隊の士気は、嫌が応にも低かった。
ちなみに、前髪が長い現場リーダーは、フェイズ2の頭あたりで、ばったり会ったクラスメイトの友近と、はがくれのラーメンを食べに行ってまだ帰ってきてはいない。ぐだぐだである。
全員が集まった寮のラウンジに、どよんと重く苦しい空気が沈殿する。と、そこに。
「おう、みんな。何だか元気がないようだが、どうした?風邪か?食中毒か?」
攻撃目標 • 真田明彦が現われた。トラウマがかった「ひぃ」という悲鳴を、誰かが上げる。
いったい、どうやって戦えば······どうすれば、勝てるんだ······。この、痛みを感じない (それ以外のものもあまり感じない) バケモノのような人に、どうやって太刀打ちすれば······?いっそ復讐代行サイトにでも依頼を······。
そこにいる全員が、絶望に覆われ心を闇に侵食されかけた、そのときである。
「おう、こら、アキ!」
「ん?どうしたシンジ?」
今日は朝からどこかに出かけていた荒垣真次郎だった。いつの間にか寮に帰ってきていたらしく、二階からドスドスと音を立てて降りてくる。そして、鋭い声がラウンジに響いた。
「てめぇ······昨日美鶴が買ってきた限定プリン、全部食いやがったんだってぇ!?」
「ああ、悪かったな。まぁでも普通のプリンと味は変わらなかったぞ。牛乳と卵と砂糖の味だ。今度コンビニで代わりを買ってきて---」
順平たちが問い詰めたときと同じ。謝っているようで、まったく謝罪の意味をなさない、それどころか被害者の神経を逆なでする、無神経な言葉の羅列。昨日は、この真田の態度にさんざん文句をつけたのだが、“たかがプリン” に目くじらを立てるということが、どうしても真田には理解できず、最後までこちらの怒りが伝わらなかったのだ。荒垣も真田の無反省な態度には怒り心頭に······発してはいなかった。むしろ、またかよ、と呆れたような 顔。そして。
「おい、アキ。ちゃんと謝らねえと······」
何を怒られているのか、わからない風の真田に、荒垣が投げかけた言葉は。
「絶交だぞ」
「ごめんなさい!」
真田のリアクションは、これがまた早かった。
「もう、人の分まで食うんじゃねえぞ」
「あ、ああ、わかった」
「食った分、おめえが買ってこいよ?」
「もちろんだ!」
その様子を見て、呆然となるラウンジの面々。
「あんなんで······良かったんですか?」
「今度から······荒垣先輩に頼もうね」
「その作戦を推奨するで、あります······」
そして、力尽きた後輩たちは、バッタリとソファに倒れこみ、そこからしくしくとやるせない泣き声が漏れ始める。その泣き声は、翌日の朝から行列に並んだ真田が、限定プリンを人数分買ってくるまで続いたのだった。
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