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#地殻の下の嫉妬心
indatsukasa · 1 year
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Είναι τρελή από ζήλια, όπως η Ήρα
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mocomocon · 6 months
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うぼぁあぁ
希佐ちゃん割り込み負傷事件が予想の3倍くらい白田先輩の救いになってて僕は、僕は!!!!!
以下ジャックジャンヌ小説、ユニヴェール歌劇学校と月の道しるべ、及び夏劇を合わせた白田美ツ騎という人物諸々考察。
尊重と放棄は紙一重である──このどこか諦めにも近い言葉がとても白田先輩らしいな、と思いました。
立花継希が抜けた後の落ちぶれたクォーツおよび、田中右という絶望の象徴のような存在につぶれてゆく同期。控えめにいって77期クォーツ、地獄すぎる。
人とあまり関わりたくないっていう性格の根底には、やはり幼少期の離婚が響いてると思うんですよね。
夏劇を読むに、恐らく父親派だったと思うんですけども、親権は母親に渡ってしまい、多分この辺で"捨てられた"っていう気持ちも抱いたんじゃないかなぁと。親権事情はわからないですし、そもそも親権は母親が有利とも言いますけど、少なくとも"誰も助けてくれないから"自分でどうにかするしかないという基本気質を見るに父親からのフォローは皆無だろうし、結局のところ幼少期に守られた記憶がないまま育ってしまったんだろうなぁと思います。
母親もまぁ、片鱗はゲームで観測してましたけども、ネグレクト+容姿否定(他人からの視線が気になってしまう性質の原因と予測)、白田先輩の大切なものをことごとく貶すっていう、もう毒親フルコンボダドン!(ガチギレ)なんですよね……。だから大切なものを守るために、自分の大切なものを口にしなくなる、殻にこもるっていう人格になってしまったのだと思います。
ただねー、ほんとねー、白田先輩は本当に優しいんだろうなって思います。毒舌だけど、基本的に心が綺麗なんだと思いますね。だから無意識下でも母親が悪いんじゃなくて、自分が悪いのかもしれない、って考えてしまっていたんですよね。
これは離れていった同期に対しても同じなんじゃないかな。だからこその尊重と放棄は紙一重って言葉に繋がるんだと思います。大切なものを守るために動くっていう能動的発想が弱いといいますか。みんなが自分で決めたことだから、という尊重の気持ちもあったのは確かでしょうが、それを手放したくはなかったのに、守る術を知らなかった無力な自分を自嘲して、放棄。
この背景を思うと、母親学園侵入、口論ののち希佐ちゃんが白田先輩の代わりにぶたれる、っていうイベントの重みが断然違ってくるんですよね。
他人なんてどうせ自分を守ってはくれないのだから、という諦めをいとも簡単に乗り越え、代わりに身を差し出すっていうね。そして白田先輩の大切にしている歌を尊重して、大事にしてくださいって言うの、ホンマ主人公。母親によって抑圧されている二つの面を一気に解放ってんだから、そりゃあこのイベントの後に心を許すわなっていう。多分このイベントで自分と、自分の大切なものを真っ直ぐに受け入れてくれたわけだから。だから、最終的に希佐ちゃんに赦しを与えるポジションに落ち着くのかもしれませんね、赦され、赦し、と優しい情けは人の為ならずの輪。
だからこその頼って欲しい、でも何も喋ってくれない希佐ちゃんに自分からは踏み込んでいけないっていうジレンマが際立つんですよね。でも、この二人の関係性はお互いを大事にしたいという気持ちが根底にあるので柔らかなんですよね。嫉妬や感情の爆発はあっても、なんでしょうね、どろりとした心の醜さのようなものは感じなかった。
この点に関しては、男女の差を明確に描いてない部分も関係してくるのかなと。温泉での距離感とかがまさにこの二人の関係性を象徴してるように思います。ほどよい無関心さ、といいますか。多分白田先輩って希佐ちゃんが男でも対応は変わらないだろうなって思います。細けぇことはいいんだよ、白田美ツ騎って奴ぁまるっと人格を愛してくれるような包容力があるんだよ(個人的見解です
あと個人的に好きなのは、お互いの下の名前を呼ぶのにまるっと1年かけたところ。それこそスズ君とかフミさんが一足飛びで駆け抜けていったイベントを、ヤキモチは焼けども強要せず、お互いのタイミングを待っていたところ。律儀というか、ともすればなんてことないと日々の流れに見逃されてゆくような小さなことも大切にしていく人なんだろうなと思いました。
あとは白田先輩ルートでの彼の成長は、ユニヴェールを確かな自分の居場所として認識できたからなんだろうなと思います。家族問題が片付いて、気にかけてくれる先輩や守ってくれる大人に気づいて、ようやく初期から見せていたさりげない面倒見のよさであったりとか、歌に対する想い、そして大切にしてくれた先輩への恩返しや、新しい風を吹かせた一年生達もひっくるめて先導していく熱さを見せる。いやね、クォーツ二年のネームドは白田先輩だけだしな、ってのをさっ引いても、ああ、次の組長は白田先輩なんだな、ってすとんと府に落ちるあのストーリー構成はまさに脱帽ですよね。
あとはもう随分と前から二年生組を推しているのもあり、夏劇で御法川先輩の面倒見のよさであったり、歌もダンスもと、例え同期にトレゾールという絶対的な歌姫、白田美ツ騎がいるのだとしても自己を高めることを放棄しない菅地先輩であったりが、無意識下であったとしても白田先輩に影響を与えてたんだな、というのがわかって満足です。ていうか、菅地先輩、最初から白田先輩に負けないって言ってるあたり、大分白田先輩意識してますよね。なんかいいなって思います。なんだかんだ二年生組はお互いに尊敬してて、正の影響を与えあってるところが好き。この小説での心理描写を踏まえて白田先輩ルートを見直すと熱さが段違いでヤバいです。そうやって頑張る二人を見てたからこその叱責になるんだね、ニコッ(満足
結論:ジャックジャンヌの小説はいいぞ
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yosiokayosiko-blog · 2 years
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運命の人は、嫁の妹でした。ネタバレ感想文
@はじめに(言い訳の話)
 僕はご依頼で何かを描かせて頂いたとき、同人商業問わず個人的な感想を長く述べながら宣伝することを避ける傾向がある。(たまにそうはいかないときもある)なぜなら関係者にも関わらず熱烈ファンかのような長文を書くと第三者にとっては気持ち悪い……かもしれないし、何より依頼して下さった制作者本人というわけでもないのにファンの方々へバイアスをかけてしまう恐れがあるからである。なので熱烈な感想はなるべく作者さんへのメールに留まらせがち。それすらも返信義務を生んでしまうようで避けるときもある。つまるところ、いい作品ほど僕の感想という介入を挟まずに……受け取って欲しい!という気持ちがあるのです。しかしながら、そうはいかないときもままあります。僕も人間なので。状況によってはそれを抑えきれない!!
 で、今���も抑えきれなかったわけですが……本作では僕は関係者のような関係者じゃないような微妙なポジションなので感想文を書く権利がある!!あくまで宣伝動画に協力させて頂いただけの一般人!直接関わっていたメカニカと違って、書籍そのものには1ピクセルとも僕の介入はないのだからー!!という言い訳を自分に課し、長文感想を述べます。我慢できねえんだ好きだから。この女達が……いや……大吾くんも……。
@人間性がよい
とにかく人間性がよい。ヒロインだけではない。主人公も、その友達も皆良い。読んでいてとても気持ちが良い。俺も仲間に入れてくれないか?そう思えるくらい始末がいい。彼女らは自分のことをあまり良い人間だとは思っていない節があるが、そもそもほぼ全員が人のために善意で動いたり、立ち止まったりできる人間なんだよ。思いやりがある。
 中でも大吾くんはそれがぶっちぎり。特に第9話はそれが詰め込まれている。後ろめたさや運命に翻弄されるあまり苦しむ兎羽、その心を解きほぐしていく大吾。それまでも大吾は獅子乃の横浜での環境づくりに尽力したり、落ちてくる兎羽を受け止めたり、探偵パートで頭のキレのよさを見せたりなどはしていたがここまでは男としての魅力。9話では大人としての魅力が見える。
 彼が結婚できたのも再婚できたのも、前世で運命の相手を見つけたのも偶然ではない。彼が大人の男だからだと思う。人に優しさを向けることができて、そのために必要なたくましさと知恵がある。しかもまっっったく説教臭さがない。なぜなら彼は自分を大きく見せようだなんて考えもせず、相手を想う気持ちが第一で、そのために知恵を尽くしているからである。だから、ヒロインたちの心がほぐれていくことに強い説得力がある。俺が言われたわけでもないのに、大吾の優しさに触れて泣いてしまう。だからね、もうしょうがないんだよ。嫉妬もわかない。俺は大吾が好きだし、好きな女たちが大吾を好きでいてくれるのが、嬉しいんだ……。
@SF色が思ってたよりメチャクチャ濃い
 まずいくつかワードを羅列させて頂くと、「人口悪魔」「存在論的感染症」「中庸騎士団」「空気力学車」そして「銀河鉄道」もうわけがわかんないですよね。オイオイ置いてけぼりだぜ!特にそれぞれの詳しい解説とかはないんですよね。最低限の情報だけある。それが良い。気分的には初めてスター・ウォーズを観たときのような、なるほど理屈はさておき今はそういうものとして受け止めるだけで……楽しいなこれは!という状況に近い。そして概念。オタクなら攻殻機動隊くらいは通ってきたよな?くらいのカジュアルさで電子ネットワークに意識を移して肉体から離れるみたいな部分はさも当然のように出てくるし、物質を非存在的概念に切り替える??顔面がテクスチャ??は??となっている間に、おはようございます……ちゅっ💕なんてくるもんだからこちらも正気を失わねば不作法というもの。特殊なワードもなんとなく言葉のニュアンスでこういうもんかな……と思ったら大体あってるかんじの雰囲気で進行していくので問題ないのですが、いちいちワード出るたびにワクワクしてしまうので大変ですよ!
 そしてこれは読者の大半が感じたと考えているのですが、思ったより……思ったより深刻に……世界終わっとるやんけ!もう隕石はトドメでしかないねこれね。フロムソフトウェアの世界観以上に終わってる。なんなら前世編これ世界はとっくに滅びたあとじゃないですか!?くらい終わってる。すっごい!すっごい好み!そのうえで朝のパンと夜のウイスキーを楽しみたいとか、ただ傍にいてキスしたいみたいな話を展開するのだからたまらない。PVのセカイ系自称は伊達じゃない。隕石の落下地点でロボットたちがレイ・チャールズのアイキャンストップラヴィンユーを歌いだしてもおかしくない。全力で世界終わらせながら恋愛してやがる……最高だな……俺はずっと観たかった……セカイ系に全力を尽くすような作品を……いや結構最近もみたな……メカニカだこれ!!やっぱり LOSER/Sさんの作品じゃないかー!!
@感情の言語化がうまい
 雷に撃たれたようなどうしようもない恋に落ちたときの胸のざわつき、とめどないどうしようもない気持ちの発露。行き場のない苦しさと説明し難い気持ち。経験あるでしょうか。俺はある。恋文も書く。だからこそその難しさがわかる。獅子乃と兎羽ふたりの気持ちが、どうしようもなく自身を振り回す恋心が、それを書くことの難しさはきっと果てしない。二人の抱く切なさにつられて泣いてしまう。作者さんはきっと苦しい恋をして、どうしてこんなに苦しいのか?自分はどうしたいのか?たくさんのそれから逃げずに向き合ってきたんだと思う。(勝手な憶測)でなければこんなもの書けるはずがない!!
 恋愛ごとだけではない。小さな困難、大きな困難、色々な苦しみと向き合ってきた人にしか書けない……そう思わせてくる。前述した大吾さんの器の大きさについてもそうなのだけれど説得力がある。その恋心とその苦しみに。だからこそ、ヒロイン二人に対して好意が強まる。本気で恋愛している女性は美しいって、思うんだ……。
@おわりに
 読み終えた後の幸福感はなんだろう。1巻は修羅場で終わっているのだけれど、その過程に至るまでがなんというか、人を好きになったり優しくすることの大切さを思い出させてくれるような、それを躊躇してしまいそうなとき少しの勇気を与えてくれるような、そばに寄り添ってくれるようなそんな魅力がこの作品にあるからかもしれない。僕は恋愛小説をあまり好まないし、恋愛がテーマの作品には惹かれることが少ない。でもこの作品は別。
 きっと僕にとって彼らは、恋愛小説の登場人物としてではなく、僕自身がなりたい人間性を持っていて、憧れている人間なのだと思う。こうなりたい、こでありたいという。まさしく終わりかけの世界に隕石が降ってくるような状況でも、彼らのように気高く生きたいという力をくれる。そんな本でした。そんなのもう、エンタメ以上の何かじゃないですか。幸せだよ……俺は……。
 2巻も楽しみにしています。具体的には168ページの先を見たい。兎羽には運命を乗り越えて幸せになってもらわないと困る。大好きなので。獅子乃ちゃん共々幸せになって欲しい。そのために、大吾くんには今の2倍はデッカイ男になってもらわないと……これ以上どうやって?楽しみですね。2巻は9月10日発売です!!楽しみですね!!3000字に及ぶ感想文読んで下さってありがとうございました。1巻発売当日の勢いだけで手打ちしているので誤字脱字ご容赦下さい。それでは、それでは……。
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steppedoutoftheline · 2 years
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Uさん(2021/11/29)
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その日は久し振りにUさんと電話をした。自分を守るための考えは書かないでおく。シンプルに、素直に書きたいと思っているから。Uさんと久し振りに話していて話していてたくさんの話題が上がった。そしてそのどれもに興味が湧いて、そしてUさんも関心を持って話を聞いてくれた。人が関心を持っていていときはすぐにわかる。でもその不自然さ、ぎこちなさがなくてとても心地よかった。
自分の悩んでいることや、何があったか話していたとき、何の躊躇もなくスラスラと話すことができた。これはなんて気分がいいのだろう。私が英語で話す時、日本語で話している時よりも感情に流されにくい。それはいいことだと思う。特にUさんと話す時はその塩梅がとても良い。理性と感情が飽和しているような感じだ。論理的な部分と感情的な部分がどちらも押さえつけあわずに話せるというのは、人とのコミュニケーションの最高峰だと思う。その日Uさんと話していてそう思った。本当に調和のとれた時間だった。
なぜそう思ったのかにはもう一つ?いくつか理由がある。それはUさんと言う人物がそうさせたのだ。Uさんは人の痛みをわかる人だ。ユーモアもあって面白い。何よりUさんの考え方は何かに縛られたものではないと思うからだ。一緒に過ごしていた時間で、Uさんの悩み、落ち込む姿も見たことがある。それでもUさんについていきたいと思ったり、一緒に話したり過ごしたいと思うのは、相手に何かを押し付けたりしないことだ。いつも相手を尊敬する心が伝わる。おそらく私の中でUさんは初めてのロールモデルだと思う。過激なファンにはなりたくないし、ならないと思うけど、本当に心から尊敬する。いつも私の見えていない視点を教えてくれる。心に残ったのは「苦労を知らない人は本当に価値の見えている人なのかな」と言う言葉だ。丸ごとそのまま書いたわけではないが、私はそう受け取った。偏見を持たずに世の中を見ることは大変だけれども、大切なことだ。それがあなたをあなたたらしめることであると。私は去年海外で生活したが、、今もずっと海外へ行く前と変わらない気がする。いつも心の中は偏見で満ちている。自分でもそれは間違っていると思う。私の解釈で偏見とは、セルフディフェンス/自己防衛なのだと思う。よくわからないものは危ない、良くないことだと。もちろんその考えが身を助けることは自分でも経験済みだ。だけれども、わからないことをわからないままでいいのだろうか?自分の経験したことないことを常に悪いと言えるだろうか。誰かにとっては悪だったとしても、私にとっては善、いや言い方が良くない。誰かにとっては苦い思い出、マイナスなことだったとしても私にとっては好環境であったり、プラスになることかもしれない。何でもやってみてから、判断を下すべきだと。私は若いし、間違うことはこれから先たくさんある。これは何度も言ってるし毎回痛感してる。
でも正直、自分の殻に閉じこもるのは飽きてきた。私は恵まれている。失うものなんて本当に少ない。何にそんなに怯えているのか馬鹿らしくなってきた。「大丈夫、仕事だけが人生じゃない。他のこともしてみたら?ブログを書いていつか本にするとか。詩を書くのが好きならどんどん書きためていけばいい。私も詩を書きたいしな〜」どうしてこうも、Uさんの言葉は心に響くのだろうか。
Uさんも「相手をポジティブにできる相手もいれば、目の前にするとシャイになってしまう相手もいる」と言っていた。これこそ、自分を受け入れている証拠だし、共生の根本だと思った。〈みんなちがってみんないい〉それは当たり前だとわかる。でもいざ現実で現実で〈みんなちがって〉にぶち当たると妬み嫉み、あれが嫌だとかこれは受け入れられないと思ってしまう。相性の合わない人がいたら、そうかそうか〜この人はこんな人なのか合わないけど。くらいな感じでいいのかなって。そうUさんから学んだ気がする。
「何もできていない、何も頑張っていない」と自分を責める言葉は裏を変えせば
「何でもできる。なぜやらない?好きなことをすればいい」と言うことなのだなと。それを気づかせてくれたのはUさんだ。ようやく暗いところから引っ張りだされたと思う。ありがとう。私はいつかUさんみたいな人になりたい。そしてUさんが大変な時には絶対に助けたい。そんな人に出会えただけでも、私の人生は実りある幸せなものだ。
もっと強く、しなやかに生きていきたい。ありがとう。ありがとう。
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tsuneminnn26 · 3 years
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Kanazawa-Kuruwa
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郭の中の金沢、辺京の小宇宙
郭_この辺京の遊郭には、金沢の美しさと醜さがくるわれている。
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郭は...
北陸の美学の結晶であった。 卯辰山へまっすぐ伸びる石畳、黒光るボッテリとした能登瓦、弁柄色の木虫籠(きむすこ、細い桟の出格子)。九谷の襖の手掛けや輪島塗りの調度品、べっ甲のかんざしや色とりどりの菓子や酒、夜遅くまで鳴り響く唄、笛、鼓の音色。
同時に人身売買の巣窟でもあった。 極めて幼い頃に身売りされた少女は、楼主と養子縁組を結び、自らにかけられた身代金を返すまで拘束を受け、芸妓・娼妓として働いた。町を彩った女のいくらかは楼主となった。
今回は、金沢の光であり影である茶屋街について、制度・人びと・建物・遊び・性の観点から明治・大正の茶屋を前提にご紹介する。
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(参照:『金府大絵図』金沢市立玉川図書館所蔵)
明治に生まれた主計町を除けば、ひがし・にし・きた・愛宕の郭は2つの大きな川、犀川と浅野川の金沢城から見て外側に位置している。(これは、江戸の吉原が常に皇居から見て川向いに建てられて、都市の外周部に位置していたこと同様の理由で、穢の場所を都市の外側に配置するためであろう。)
その中でも、金沢人が憧れと嫉妬を込めて名付けた東の廓(言うまでもなく京都の祇園・東山にかけている)であるひがし茶屋街は、北陸の最も代表的な茶屋街であった。
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(参照:『金府町絵図』金沢市立玉川図書館近世資料館所蔵)
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A:郭の制度
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金沢の花街の仕組みは京都と同様にお茶屋が客の要望に応じて、芸妓を置屋か ら呼ぶ方式である。芸妓は置屋に所属し、お茶屋から依頼があれば、料亭やホテルなど地域外へも出張することが可能なのも、京都と同様の取引制度である。 さらに金沢の三茶屋街の特色として、お茶屋と置屋の兼業が挙げられる。つまり、お茶屋は場所を提供するのだが、同時に芸妓を抱え、他のお茶屋に派遣することもでき、食事は飲食店から取り寄せることとなる。
お茶屋には上茶屋、中茶屋、下茶屋の3つがあり、上茶屋は5等級に格付けされていた芸者の中でも、一等級のものしか置かなかった。上茶屋は農家の出や他国の婦女は抱えたがらない気風があり、それを誇りにしていた。加賀血筋を大事にし、みっちり芸と作法を仕込むとのこと。明治時代には能登半島をはじめ、日本全国から身売りされた少女が芸妓として所属しており、朝鮮出身の芸妓の記録もある。
郭では「旦那」は芸妓の経済的な保護者であり、後援者であった。旦那は月々お手当を置屋の女将に渡すかわりに、贔屓の芸者を自分一人のものにすることができた。女将は抱え芸者の旦那から一ヶ月の手当をもらうこと大きな収入源であった。ある置屋の抱え芸者が、別の置屋の客を旦那としている場合、旦那はその置屋の女将に毎月の斡旋料を支払うこととなっていた。
お茶屋では客は一見の客は挙げない。理由は、遊興費が後でもらえるか不安なことと、もう一つは酒癖が悪い客を案じてであった。たちの悪い客の中には、火鉢の中に小便をしたり、掛け軸に盆をぶつけたり、美人画を盗む客もいたという。二度目から置屋は電話で芸者の予約を受付け、時間の打ち合わせをする。客は遊興費を何ヶ月に一度、現金で女将に直接手渡しでまとめて払っていた。
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B:郭のひとびと
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お茶屋に以下の人々が住み込んでいた。どこの家もかなりの大所帯で、大抵は十数人で寝ていた。
①女将:
多くは元芸者で、お茶屋の経営をするとともに芸妓と養子縁組を組み芸妓を育てるとともに労働者として管理する。
②芸妓、娼妓:
女将と養子縁組を結び、芸者として客に奉仕する。住み込みと通いがあったが、殆どが住み込みで、通いは芸者でも年季明けの終わった歳高の人たちだけだった。年季明けや旦那がお金を支払った場合は妾として茶屋街の周辺に暮らしていた。
③たあぼ:
行儀見習いと諸芸習得の傍ら、日中は走り使いの雑用、夕方からは芸者衆の座敷勤めな三味線をもって供をなし、供先きの置き屋とか料亭では家族用玄関の片隅で芸者衆の座敷終わりを待つ。12歳になると振り袖芸者と呼ばれ見習いの芸者とみなされ、さらに15,6歳になると留め袖芸者と呼ばれ水揚げが行われた。このころには体だけではなく、三味線・踊り包などの芸も一人前の扱いを受けた。
④ばんば:
年寄りが多く、飯炊賄いが主な仕事。
⑤べえべ:
10-40代、女中、下働きの女で賄い全般、掃除洗濯、女将の身の回りの世話をした。やりてばばあと呼ばれるべえべは客から以下にして金を使わせるか、寝床での振る舞いを芸妓に教え込んだとのこと。
男衆:
登楼のの客引き、芸者の世話役として付き添い、用心棒兼見張り役をする。
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C:郭の建物
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(参照:金沢「東の郭」の復元 平井聖・大林組)
茶屋は2つの大門を持ち、文字通り塀によってくるわれていた。門の外には妾宅が並んでいた。2本の大通りは卯辰山に向かい、卯辰山がアイストップの役割を果たしている。かつては壱番町へは小川を越えてアクセスするようになっていた。
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(参照:『浅野川茶屋町創立之図』文政3年(1820年) 石川県立図書館蔵 「旧東のくるわ」伝統的建造物保存地区保存対策事業報告書 1975年 金沢市教育委員会)
建物の外観は、1階は出格子となっており、木虫籠と呼ばれる細い縦格子がはめてある。縦桟は断面が台形になっており、外から中が見えにくい仕掛けとなっている。2階は今では小窓付きの雨戸になっており、全て開け放てる仕組みになっている。祭りの際には大通りにステージが設けられ、開け放した2階の座敷から芸者の踊りを見下ろしていたのだという。現在では失われているが、かつては木部分に紅殻色の塗装が施されており、赤い色彩と卯辰山の緑が生えたことだろう。また、屋根はかつて石置き板葺きであったが、今では釉薬を全面に施した北陸特有の黒く厚い瓦が葺かれている。
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平面は時代を経て大幅に変更されており、機能上の要求から下記図面の小さい方の平面図(明治以降)へと変更されていったようだ。
明治以降の平面図を前提に話すと、まず玄関を入ると黒漆塗りの大きな階段があり、ハイサイドライトから薄光が差し込んでいる。階段の横は長火鉢が置かれた茶の間であり、女将が座って一切を指示していた。奥座敷と茶の間は主に女将が使用する部屋で、奥座敷は仏間、寝室として使用していた。
みせの間は支度部屋で、芸妓が詰めていたから、街路には芸妓の声がよく聞こえていたことだろう
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2階は大きく表(前2階)・中・奥(広間)の3室に分けられ、表と奥を座敷とし、中はロビーのように使用されていた。間口が大きい場合は表と奥は2室に分けられ、4畳の部屋を芸妓が踊り演奏するステージのように使用していた。2階の更に奥には廊下や小階段を隔てて「離れ」があり、数寄屋風のしつらえとなっている。水揚げや日中の娼妓の使用にはこの部屋は人目につかないので都合が良かった。
3階はどの家にもあるとは限らないが、座敷を1間もつ場合がある。
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(参照:金沢「東の郭」の復元 平井聖・大林組)
座敷の土壁は紅殻色が用いられる場合が多く、柱は紅殻と灰をあわせて塗装されている。金沢では紅殻色や群青色が来客の場所に使用されることが多いようである。
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(参照:https://www.kanazawa-kankoukyoukai.or.jp/spot/detail_10094.html)
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(参照:https://www.pinterest.de/pin/523332419194794021/)
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D:廓遊び 
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(参照:金沢「東の郭」の復元 平井聖・大林組)
宴会は夜だけではなく、遊びなれた客は深更にきて朝帰りということも珍しくなかったし、庄屋の番頭などが小僧の手前もあって夜抜け出せないために早朝に密かに遊びに来ることもあったし、昼遊びの客もあった。これらの時間の揚げ代は夜よりもむしろ高かったとのことである。
客としては、加賀友禅などの伝統工芸の職人の親方や商人、旅の客などがいた。
廓の花代の1単位は45分だった。1時間を1番木と言って、拍子木が隣の控えの間で打たれた。合図の1番木で、芸者は時間切れを伝えて帰り支度をはじめ、そこから客を送り出すまでを15分と見ていたようだ。これは線香1本が燃えるまでに40分かかったことからきていると聞いた。
婚礼の祝宴が夜通し続いたりすると、芸者たちは三日三晩睡眠を取ることもできないこともあった。
芸妓は昼に芸を磨いた。自由を厳しく制限された分、芸に自らの存在価値をかけたからなのであるが、当時の売れっ子は芸を磨くだけの時間的な余裕がなかった。遊客は気に入った芸妓がいると追い回し、昼夜となく名指しをしたため、彼女らは歌や踊りの稽古などしている暇がない。流行りっ子ほど無芸という結果になったのであった。しかし、芸に精進することは文字通り体をいじめ抜くことになり、体の形を崩してしまったようで、例えば、笛の達人と言われた美津は増えをあてがう下唇がミミズ腫れのように腫れ上がっていたとのことである。
お茶屋遊びは数多くあるが、ここで流行ったものに「かんざしえらび」がある。座敷で客と芸妓は輪になって歌った。
お姫さんと寝るがに かんざし引こう お姫さんを抱くがに かんざし引こう 人のかか抱きゃ せわしない ほれ せっせっせ せっせっせ
黒く塗った丸い盆の縁にかんざしが10〜20本、妓の数だけ放射状に置かれ、客たちはじゃんけんをして勝ったものからかんざしをとり、そのかんざしの持ち主と一晩寝ることとなった。
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E:郭の性
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中店以下にいる芸者は、多くは二枚鑑札を持っていた。芸者と娼妓を使い分けなくては前借りを支払うことができなかったからである。上店では芸者と娼妓の区別が一応はひかれていたが、明治から大正にかけてはほとんど建前になっており、体を張ることによって何十円と貰いが増え、前借金を返すことができたから、体を張る者も多かった。
朝から夜まで客が来た。一人は娼妓を置かなくては営業許可が降りなかったため、芸妓は自分の代わりに一日中客の相手をしてくれる娼妓には感謝していたとのことである。
日露戦争の折には、松山、習志野、大阪に加えて金沢もロシア人俘虜の収容地となり、4000人近くの俘虜が寺院などに収容された。彼らは「大切に」扱われたというが、国から通達を受けた市当局が置き屋の女将に協力を要請し、廓の芸者らがロシア人の相手をしたそうだ。廓には梅毒の予防のために「下洗い」する建物が設置され、性的搾取の対象となった。
第二次世界大戦の際には、芸者は三味線を弾くことや太鼓を禁じられ、専ら復員や動員に押しかける兵隊を相手に慰安婦、接待婦として働いた。
15歳ほどになると水揚げがある。水揚げの相手の旦那は、女将同士であらかじめ相談し、決められ多くは老人だったとのことである。若者では手荒く、過ちがあると良くないと考えられたためと、水揚げをするには大金が必要だったからである。相手が年寄りであることは女たちは皆嫌がった。水揚げというものは一回きりで一人前の女になるというわけではなく、二度も三度もしなければならない。水揚げは特別に料金が高いからお茶屋が儲かったとのことである。場所は自分の住むお茶屋とはとは限らず、離れの間が使用される事が多かった。
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(旦那衆が人目を避けて利用した梅ノ橋とかつての妾邸)
金沢の芸妓の生涯を描いたノンフィクション小説である『郭の女』(井上雪著)には花街の美しさと醜さがよく描かれている。
読者は気がつく。 あの美しく見えた芸妓は木虫籠という籠に囚われているのだと。
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arthur-meursault · 3 years
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ひさびさの日記だよ。
またグダグダくだを巻くと長くなっちゃうから、最近読んだ漫画に点数つけてくね。100点満点だよ。
前から読んでた作品は省いて、最近読み始めたものだけにするよ。
ちなみにダンジョン飯、沈黙の艦隊、火の鳥、ジョジョ、ワールドトリガー、ウォッチメン辺りが95点以上の作品。チェンソーマン、呪術廻戦、鬼滅の刃が90点。ゴールデンカムイが85点、アンデッドアンラックが83点。映像研が80点。
こういう感じで減点方式でやらせてもらうよ。
あ、ちなみに前から読んでる作品はレビューしないよ。
あと買ってある単行本をまだ読んでない作品もできません。
レビューの順番はバラバラだからスクロールして気になるタイトルがあったら読んでね。
・葬送のフリーレン/アベツカサ,山田鐘人
85点
うまい、新しい、面白い。
現3巻で連載中。のっけから点数高めの作品。これは1巻が最強に面白かった。
勇者が魔王を倒してからいく年が経った。1000年以上もの長い長い寿命を生きるエルフが勇者の仲間として(本人としては)たった10年だけの冒険を思い出しつつ旅してく話。まず設定がエモいし、それを料理する手腕もうまい。また魔王勇者ものの設定のアレンジが絶妙で、そこかしこで感心させられる。
2巻以降は新たな仲間を得て再び旅路につくのだが、この展開もなかなか面白い。が、面白さのピークは1巻に詰まっていた。これを超えてくれることを望む。そしたら90点越えも視野だよ視野。ぜんぜん期待できる。この作品は強い。
今後アニメ化などをきっかけに大ヒットしていく作品だろう。すげーぜ。
・嘘喰い/迫稔雄
93点
歴史的大傑作ギャンブル漫画
49巻で完結済み。
全巻買いしたのを20冊ペースで読んでいきました。
面白いねえ。よく作者はこんなこと考えつくなというトリックの数々。途中で先読みは諦めて素直に漠さんの掌で楽しむことにした。
まずなんといっても嘘喰いこと斑目獏のキャラクターが良い。このキャラ一人がこの漫画をここまで成長させた。本当に天才の思考を覗き見ている感覚が味わえる数少ない作品ですよ。彼は訳がわからない天才ではなくて「常軌を逸して観察力に長け、かつ周到」という本質の部分が丹念に描かれてる。
そんなの獏さんにしかできないだろ、という説得力がある。
やってることはババ抜きとかじゃんけんとかポーカーとかなーんも難しくないのに、裏ではこちらの読みを遥かに超えた戦略同士がぶつかり合ってる。
減点ポイントがあるとすれば作者の迫稔雄氏はツイッターのレスバが弱すぎる。
・ハイパーインフレーション/住吉九
76点
なんだこりゃで知的なオモシロさ
ジャンプ+にて6話まで更新中。
若干異世界の入った中世西洋文明にて、迫害される少数民の少年が生殖機能と引き換えに無限に偽札を生む能力を身につけ、資本主義社会に立ち向かっていく話。なんかもう、説明不要なんだよね。なにが面白いのかよくわからないけど、キャラとか、セリフ回しとか、なんもかんも面白い。
最近読んだ歴史系(歴史ものではない)の漫画ではピカイチの独自のセンスを感じる。単行本で早く読みたい。
・満州アヘンスクワッド/門馬司.鹿子
62点
1巻最高、その後ひどし
現在3巻で連載中。
落ちこぼれの日本兵が満州でアヘンを栽培し裏社会を手中に収めていく話。一巻は問答無用で面白かった。窮地に追い詰められて金を欲する日本兵の青年が、嗅覚と植物の知識を活かして芥子を手に入れアヘンを作る。ダウナーなクライムサスペンスとしてワクワク感がすごかった。でも2巻以降は勢い重視のB級サスペンスになっちゃった。この漫画に求められてるものってそうじゃないと思うんだけど。
本来なら50点以下でもいいけど、1巻めちゃくちゃ面白かったからそのぶん加点。
・逃げ上手の若君/松井優征
72点
さすがの松井
現在3話まで連載中。
松井優征作品はそこまで好きではないのだが、それでもやっぱり面白いし上手い。うまいというか、テクい。うーん。1巻出たらたぶん買うな。
ジャンプに掲載するのに最適な形にオミットされた歴史もの。見習う箇所多々あり。
・ネオ・エヌマ・エリシュ/マミー
62点
緻密な歴史もの
現在全2巻で完結。
ツイッターでアップされていた古代における奴隷の扱いに関するくだりが気になり購入。
完全記憶能力を持つ女子高生が博物館でうっかり古代のピポグリフを読み解いてしまい、魔法の力?で過去に飛ばされ預言者扱いされつつ、魔法の石板の破片を集めて元の世界に戻ろうとする話。
歴史ものとしては豆知識などが横溢してて面白い。舞台も目新しくて楽しい。
異世界転生もの(タイムリープもの)としては微妙。専門性は極めて高いがお話としては上質と言い難い。キャラ作りもハズし演出など頑張ってはいるのだがもう一歩といったところだ。
ところで本作は2巻が電子書籍でしか発売されてないので渋々全巻電子で購入した。売れなかったら最終巻とか紙本で出さないやつ、本当に嫌い。
・四ツ谷十三式新世界遭難実験/有馬慎太郎
73点
奇才が描いた異世界探訪もの
現在全1巻で連載中(休載中?)
ワープ技術を開発した天才研究者四ツ谷十三は性格がとにかくねじ曲がっており、他人が苦しむ様を見るのが大好き。そんな彼の弟妹はいつも苦労させられていて……そんな導入から四ツ谷が弟妹と友人2名を全く知らない惑星へ放り込んで置き去りにする『いたずら』から物語ははじまる。転送先はワープ技術の元ネタとなった特殊なワープ生物が生息する未知の惑星。帰る方法はワープ生物を捕らえること。地理も生態系もなにもかもが常識離れしたダンジョン的異世界で彼らの5人のサバイバルがはじまった……5人というのは四ツ谷もうっかり帰りそびれたからである。というあらすじ。
長くなったが、この話のキモは四ツ谷十三というキャラクターなのだ。
天才であり度を越した皮肉屋で楽天家でドジな『いたずら』好き。かといって人を真顔で殺すよくある極悪人ではなく、あくまで度を越した嫌がらせ程度。そんな四ツ谷と四人のメンバーがつかず離れずで異世界を探索していく、これが面白い。
ただし欠点としては、異世界探訪ものとして突出した面白さがないということ。設定はかなり緻密なのだが、どことなく既視感が漂う。また異世界で意思疎通可能な生物が出てこないので人間ドラマにも寄与しないし、仲間内も基本仲良しなので四ツ谷十三以外のキャラ同士でドラマが生まれない。
ただし1巻のオチに当たるくだりでは少し息を飲まされた。上記の減点ポイントは要するに序盤だからで、これからどんどん面白くなっていくのだろう。しかし2017年以降続刊が出てない…打ち切られたか廃刊したのかなんなのか。無念。
・攻殻機動隊/士郎正宗
95点
天才が描いたアウトローガンアクション
全3巻(1〜1.5〜2)で完結済み
説明不要の傑作。
僕がいうことなんかないかな。本作は岡田斗司夫のYouTubeチャンネルで紹介されてて興味を持った。
いやー面白い。当然SFとしても面白いし、アウトローものとしても古臭くて面白い。そのチグハグ感がたまらない。
SF的ギミック描写が今なお古びていない、というより示唆的であるというその点は素直に凄み、賞賛する。
押井守が才能の大半を費やしたのも理解できる。庵野秀明や宮崎駿が褒め殺すわけだ。
傑作!
怪獣8号/松本直也
70点
普通
全1巻で連載中
普通だなあーー……普通にうまいし普通に面白いし大衆ウケしそうだなあー……。俺としてはそんな惹かれるものはなかった。
作家として気になるポイントは、本作の見開きの作り方がウェブにも紙にも対応している、ということらしいのだ。見開き漫画としてドバーンと一枚絵をただ描くのではなく、一枚1コマの情報量を意識して描くと。それが縦スクロール漫画にも対応してるというのだ。面白い。勉強になるなあ。
抜刀/ザビエラー長谷川
45点
キメ絵はすごい、それ以外が……
全2巻で連載中
作者のザビエラー長谷川さんはすごい人なんである。そのすごさは抜刀の1巻巻末に掲載されている「僕はアナタに殴られたい」という漫画を読めばわかる。嘘喰いの顔面ドアップ演出をさらに力強く汗臭く荒削りにしたようなど迫力の『顔』。これを見るだけで惚れ惚れしてしまう。
他にもストーリーの山場で銀杏BOYZの歌詞をそのままオノマトペのように叩き込む。音楽を漫画化したものとしてこれ以上の圧がありえるだろうか。ロックンロールだ。嫉妬する。
だが一方で、この作者さんに連載は難しいんじゃないのか、長編構想はできないのでは?とも感じていた。
キャラクターのバリエーションは多いわけではないし、世界観や凝った展開で魅せることはできるのかどうか。
ストーリーも作れるのか。
あと、根本的に画力はどうなのか。
圧のある顔面に一点特化された画力が連載漫画の強度を保てるのか?
で、その懸念が全部当たったのが本作。
45点は正直あげすぎかな?と。
20点でもいいくらいだ。それくらい本作はひどい。背景はおろかキャラの画力すら伴っていない。お話に関しては素人以下といってもいい。
でも1巻巻末についてくる読み切り『僕は〜』の衝撃にはそれを補ってあまりある価値がある。
そういうわけで25点上乗せして45点です。
最果てのソルテ/水上悟志
73点
ああ、これが水上悟志だ
全1巻で連載中
水上悟志は好きな作家だ。何が好きって、作品がじゃない。作品はとにかくうまい、うまいと思う。だが最高傑作の惑星のさみだれも僕にはあんまり合わなかった。
すごくわかりやすい作家なのだ。そして優しいのだ、水上悟志は。そこが好きだし、だからこそピンとこないのかもしれない。
いうなればコロコロの冒険漫画を200%上質にしてすこしビターにチューニングしたような、そんな世界観なのだ。そして僕はそういう作品があんまり好きではない。この持ち味は石黒正数にも通じる。彼らは藤子・F・不二雄の影響が多大なのだろう。そして藤子先生はそんなに好きでない。ドラえもんとかも、子供の頃あんまり面白いとおもってなかった。僕はパーペキにブラックジャック派だった。手塚治虫派だったのだ。
それでも僕は水上悟志が好きだ。尊敬してる。こんなにも縦横無尽に自分の描きたいものを描き切れる人はいない。こんな作家になりたい。
だから追いかけますよ、水上先生。
九国のジュウシ/西公平
75点
なんじゃこりゃ〜ヘンテコ〜な歴史もの
全2巻で連載中
作者があの『ツギハギ漂流作家』の西公平だという。何が嫌いかよりなにが好きかで自分を語れよ!という。俺によく効くセリフである。
そんなことまったく知らずに購入し、読了し、感想を呟いた。よかった、それで。おかげで本作は『打ち切り漫画家が描いた妙な作品』というレッテルでは済まされない奇妙な魅力を持ち得たからだ。
戦国時代。主人公の十四郎はニホンオオカミに育てられた野生児。超人的な強さを持ち、戦場を育て親の母オオカミの狩場としか認識していない。そんな彼が大友家家臣であり岩谷城主である高橋紹運、その息子で戦国と江戸を跨ぐ傑物・立花宗茂と出会い、彼らの運命を少しずつ変えていく(史実とは変わらないケド)という。
いわゆるメアリー・スーものである。
とにかく面白いのは主人公のチートじみた強さ……ではなく。
濃いキャラ群である。主人公の十四郎は狼に育てられたため人間を冷めた目で見ており、戦場も「弱い同種が争ってるな』程度の認識しかない。この冷め方、突き放し方が面白い。
またとぼけたハゲだがそこそこ強く優れたリーダーである紹運、軟弱だが十四郎の修行を経て覚醒していく宗茂、その許嫁である性悪だが憎めない誾千代、さらにはたびたび出てきては十四郎に首をスポスポ吹っ飛ばされるモブたちまで……全員キャラ立ちしてる。
そして時代考証もしっかりしている。最初はこの手の歴史物に詳しい新人の作品かと思ったほどだ。巻末を読むと一から調べたらしい。なるほど。
そんでアクション描写だが、なんだろうな、これは。もうまさに……すポポポーンという感じで人が死んでいく。かといって迫力がまったくないわけではなく。刃牙と榎本俊二を混ぜたような。
……もう読んでいただきたい。
面白いんだよお〜!
仄見える少年/後藤冬吾,松浦健人
65点
普通のジャンプ漫画じゃ
全2巻で連載中
なんかもうあんま言うことないな……実は一巻だけで読むのをやめてる。呪術廻戦に影響されてるのはもちろんわかるんだが、呪術で面白いのはあの過剰とも言える世界観を覆う悪意と殺意、高度な駆け引きを要求される戦闘描写、そして残酷な世界を打ち破り、時として叩きのめされ、それでも立ち上がる愉快で軽快で型破りなキャラたちなのだ。それがないときちゃあもう……なんかブリーチが連載してた頃のジャンプ漫画読んでるみたいだったな。
メダリスト/つるまいかだ
70点
普通の青年漫画、絵が良い
全1巻で連載中
もうあんまり言うことないのだが、幼女と兄ちゃんという組み合わせで買った。アフタヌーン系にしては珍しくロリらしいロリキャラだったので。中身は普通にアスリート漫画だったな。絵はめちゃくちゃうまいし華がある。ヒットしてもおかしくないな。ブルーピリオドもそうだけど、アフタヌーンは俺が興味ない面白い漫画を作るのがうまいな。
レベルE/冨樫義博
85点
面白いけどさすがに古びてる
全3巻で完結済み
ハンターハンターなんだよなあ、これ。面白い。
あんま言うことねえや。個人的にはそんな気に入らなかった。暗黒大陸編のほうが百倍おもしろい。
でも技術点で85点もってくのはやっぱ冨樫おかしいよ。無敵素敵。
終わりの国のトワ/上田完
72点
良質!
全1巻で連載中
この世界から失われた言語と『あるもの』を求めて古代ローマ的ファンタジー世界観を旅する若者の話。
話は『あるもの』の正体とそれを突き詰めるところに向かっていくのだが、この設定が面白い。
メタ的にいうと、BLというジャンルをこういう形に落とし込んでくるのか!といったような。萩尾望都だなあ…。
���だ大きな山場はないけれど、ゆったりと3巻ぐらいかけた中編として読みたい作品だ。
絵も美麗。
続刊が楽しみである。
そのへんのアクタ/稲井カオル
90点
もう好きすぎますよこの世界観
全1巻で連載中
宇宙生物による海岸からの侵攻がはじまった世界。とてつもない強さで敵を打ち倒し人類を救う、『終末の英雄』と呼ばれた男がいた。彼の名は芥。人々は彼に続いて立ち上がり………その数年後、人類はなんとなく平和を取り戻していた。宇宙生物は相変わらずやってくるが対処法がマニュアル化されてるため誰でも倒せるようになった。もはや英雄は必要ない。というわけで思春期の大半を怪物退治に費やしたばかりに人間性と社交性を失った英雄が鳥取に左遷される場面から物語ははじまる。
シリアスな世界観を下敷きにしたコメディ作品。なにより情報量マシマシのギャグがたまらん。
それがいちいちキャラ立ちに繋がっている。
無駄なキャラクター、不要なキャラ描写が一切ないタイトでキレキレの構成と、『終末も回避できたしゆる〜く生きていきましょう』というゆるゆるアポカリプスなテーマがなぜだかベストマッチ!
全キャラ好きじゃー。打ち切りはやめておくんなまし。無限に読みたいんだ。
宙に参る/肋骨凹介
75点
良質な宇宙SF最前線
もともと宇宙SFものというジャンルはそこそこ好きで、あさりよしとお作品とか主要なものはだいたい買ってある。この宙に参るもそうした系譜の作品だ。
この手の作品の特徴として、まず知識量がハンパではない。つぎに、ストーリーよりも考察第一。そして、考証や設定に限らずキャラクターの死生観や着眼点が目新しい。最後に、キャラがなぜか全員ドタバタしがち。
本作もこれらの課題?的なものをしっかりクリアしている。こういう作品はいつの時代も作られていかねばならんと思う。まあ、宇宙SFを義務感で描く人だーれもおらんだろうな。それでいい。
出版元が大手ではないらしいので頑張って続いてくれ。人気出て欲しいなあ。
ドゥームズデイ・クロック/ジェフ・ジョーンズ(脚本),ゲーリー・フランク(作画),ブラッド・アンダーソン(着色)
85点
ヒーローものとしてのウォッチメンの決着
ウォッチメンの続きをやってやろうという、ヒーローものを好む人間なら誰しも一度は夢見る大海を目指したコミック。
ロールシャッハの手記により再び崩壊の危機に面したウォッチメン世界。彼を再生してもらうべくドクターマンハッタンを追いかけロールシャッハ二代目とオジマンディアスが手を組んでDCユニバース世界に飛び込む……。
この設定だけでワクワクさせられるが、端々の描写もいちいち秀逸。
ジョーカーやバットマンとロールシャッハのやりとり。
ドクターマンハッタンVSヒーロー総当たり戦で圧倒的な強さを見せつける我らが青ハゲ超人(ついでに元ネタのキャプテンアトムも倒していく)。
マンハッタンとスーパーマンがもし出会ったら?これをまさに『完璧に』描き切るとは……ジェフ・ジョーンズ恐るべし。
原作のような圧倒的カリスマ性を帯びることはなかったし、もちろんそんなことは期待していない。それでも本作は十分に成功したヒーロー漫画だった。
ヒーローに鮮烈な負の疑問を投げかけ、陽炎のように消えていった『ウォッチメン』。
その疑問に終止符を打つのもまたヒーローなのだ。
アメコミの底力を見せられた気がする。
以上、最近読んだ作品の個人的レビューでした。
つまらない作品を買うことは基本しないので点数高めだな。といっても異世界転生もののしょーもない作品も一巻だけ買ったりしてるのだが、まあ当たりはそうそうないよねえ。
日記っぽいことも書いておくか。
ここんところは資料本とかハードカバーをパラパラ読むことが多い。漫画の資料本はバカスカ買い漁るタチなので。
漫画、わりと買ってるつもりだったけど、思ったより新規参入作品に手をつけてなかったな。
連載中で追いかけてる作品は
・ゴールデンカムイ
・ワールドトリガー
・呪術廻戦
・チェンソーマン
・ハンターハンター
・アンデッドアンラック
・亜人
・映像研には手を出すな
・ハクメイとミコチ
・ダンジョン飯
・空母いぶき(シリーズ)
・デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション
・ブルージャイアント(シリーズ)
・ゴールデンゴールド
・上野さんは不器用
・キルミーベイベー
・ねえピヨちゃん(あ、これ最高)
・ヒストリエ
・大ダーク
・ドリフターズ
この20作品かな。ハンターとかドリフは全然新刊でないけど、それでも毎月なにかしら新刊買ってる気がする。
他にもいろいろ読んだ気がするけどこの辺でやめとくか。
最後に、購入したけどまだ読み切ってない作品を下記しておく。
・カムイ外伝
・ミステリと言う勿れ
・不滅のあなたへ
・銃座のウルナ
・ブルーピリオド
・ヴィンランド・サガ
この辺かな。
まあ頑張ってそのうち読みます……。
それではまた。
2月の日記でした。
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see also How to Edit a Glyph that is not listed on iFontMaker
4 notes · View notes
sutemono · 3 years
Text
シンエヴァの感想を書きたいけどエヴァQが一番好きだからエヴァQを語りたい
終盤から少しだけシン・エヴァンゲリオン劇場版のネタバレを含みます。
3/15 少しだけ追記
「エヴァンゲリヲン新劇場版」はどういう作品だったのか?
結論から言えば、私は「エヴァンゲリヲン新劇場版」のシリーズはメタフィクションだと考えていた(後出しジャンケンだけど)。「エヴァンゲリオン」という劇の中でエヴァンゲリオンという物語を演じることとはどういうことなのかを描くという意味の。
それは「エヴァンゲリヲン新劇場版:Q」(以下Q)を何度も見てから思うようになった。
「エヴァンゲリヲン新劇場版:Q」はどういう作品だったのか?
Qはエンタメとしてはつまらない。プロットこそ三幕構成に従った盛り上がり方になっているが、主人公の碇シンジは喪失ばかりでクライマックスに至っても何も変化することはないし、何も得られない。
それでも私はQが一番好きだ。
Qは「エヴァンゲリオンという劇が壊れ終わってしまった舞台を比喩した作品」だ。
私がQをそのような作品だと思うようになった重要なポイントを列挙する。
「エヴァンゲリヲン新劇場版:破」でシンジは綾波レイを助け出そうとした。その結果シンジが人の範疇を超えてエヴァが覚醒してしまい、ニアサードインパクトが引き起こされ、世界が大きく変わってしまった。
劇で例えると「演劇の中でシンジはシナリオや登場人物・設定の範囲を超える力を演者であるシンジが欲してしまったために劇が壊れてしまった」と説明することが出来る。
世界中が真っ赤に染まってしまったのは緞帳(舞台の赤い幕)のメタファーだ。劇が壊れてしまったから幕が降ろされ、登場人物達は真っ赤な緞帳の外側で戦わなくてはならなくなった。
AAAヴンダーがピアノ線のようなもので吊るされていること。
「エヴァに乗る」役割と、劇からの逸脱
エヴァンゲリオンという劇(エヴァンゲリヲン)にとって、シンジを始めとしたチルドレン達がエヴァに登場し戦わなくてはならないことは演者に課せられた重要な使命だ。エヴァに乗り、敵である使徒を殲滅する。物語の行く先は使徒を殲滅し人類が生き残るか、人類が敗北し使徒が世界を簒奪するかだ。チルドレン達はその物語を進める為に「エヴァに乗る」という行為を強いられている。
作中に何度も登場するゼー��は劇作家のメタファーとして登場する。��ーレはシナリオ通りに劇を進め、人類補完計画という最終目標に向かうように演者たちを裏で操っている。シンジの父である碇ゲンドウはゼーレに従う姿勢を見せながらも、予定とは異なるシナリオに事が運ぶように仕組んでいるように見受けられる(破での加持リョウジの「数も揃わぬうちに初号機をトリガーとするとは。ゼーレが黙っちゃいませんよ」という台詞もそれを象徴している)。
メタな視点から語ると、サードインパクトとは劇の終焉と登場人物たちの演者の物語の解放を指している。「魂の浄化」であり、ゼーレのシナリオである人類補完計画は、劇を正常に終了し魂をあるべき所へ返す(登場人物の魂を物語に返し、演者の魂を舞台から降ろす)ことなのである。
碇シンジは(シナリオを逸脱したいゲンドウの目論見通り)演者としての役割を逸脱し、「綾波レイ」という一人の魂を持った(逆説的に劇中の設定では魂を持たない)登場人物を本気で救おうとしてしまった。
そして舞台はQに移る。
登場人物と、現実を区別できないチルドレン
碇シンジが目覚めると、鏡のようなものを見せられ自分が自分であることを自覚させられる。このシーンはQの観客と碇シンジを結びつける仕掛けでもああるが、自分自身が状況的証拠から「イカリシンジ」と呼ばれる存在と判断され判断しているのに過ぎないことを強く示唆しているシーンでもある。「イカリシンジ」というのはエヴァンゲリオンという劇の中で与えられた役の一つでしか無い。今やシンジは自ら劇を破壊し、破壊された劇の中から(14年掛けて)救出された何者でもない演者でしかないというのである。
Qは終わってしまった劇と、終わってしまった劇の中で生きる演者と登場人物それぞれを描いたものだ。
エヴァンゲリヲン新劇場版:序、そして破まではシンジは「エヴァに乗る」ことを強いられてきた。それは旧作である新世紀エヴァンゲリオン(TV版及び旧劇場版)をメタ的な視点で見ればシンジは役者であることを強制され、「運命を仕組まれた子供たち」として支配されているということでもあった。Qでは一転して「エヴァに乗るな」ということがシンジに告げられる。壊れてしまった劇の登場人物たちはシンジにもう劇を続ける必要はないし、続けてほしくないと言うのだ。それどころかシンジに処刑具であるDSSチョーカーまで架せる。劇を壊した罰として、舞台から逸脱した行動をすれば死ねということだ。
シンジ達チルドレンは、他の登場人物とは異なり何の役も与えられていなかった子どもたちが、他の大人の都合で物語の役に当てはめ続けられる。エヴァとは役割を演じる殻そのものであり、劇の中で与えられた役と物語が全てであるとまだ信じている子供が初めて「大人と同じ力を持ち役者として振る舞うこと」を許される装置だ。その点で新劇場版の中では子供という存在とその他の登場人物は区別されている。
エヴァに乗り続けると「エヴァの呪縛」によってリリン(人間)ではなくなっていく。役を与える力を持つ殻に依存し続けると、自らの意思で役を演じる力を失い、劇と役を演じる自分自身を区別できない子供であり続ける呪いとして返ってくるのだ。
「アヤナミレイ」がシンジを迎えに来て、アヤナミの声がシンジだけに頭に直接聞こえてくるシーンがある。劇を追い出されたままの生の人間であり、かつお互いを求めている子供同士だけがその声を聞き取ることが出来る。実はかなりメタっぽい。
アヤナミレイは元の綾波レイと同じ個体ではない。空っぽの役だけを演じている。命令だけに忠実である。
シンジへの屁理屈返しだけで神殺しの力を得たヴンダー
WILLEの母艦であるAAAヴンダーにも劇を皮肉った表現がいくつもある。ヴンダー本体は常にピアノ線のようなもので吊るされており、この特徴にデウス・エクス・���キナを想起した人は多いと思うが、表現としては正に「劇の外部から与えられた力で駆動する機械仕掛けの神そのもの」なのだと思う。劇は既に終わっている。既に終わった舞台において、劇を追い出された登場人物たちは劇の外側にある力を頼らなければ自らを目的地に運ぶことすら叶わない。
だから「劇中での力の範囲を超えて神と等しい存在になってしまったエヴァ初号機」を母体とした戦艦を作ったに過ぎないということだ。
人類は屁理屈だけで神殺しの力を得たのだ。
舞台の外側でシンジに希望を教えるカヲル
冒頭のシーン後、渚カヲルの「おかえり碇シンジくん。待っていたよ」と言う台詞は碇シンジが大気圏内に回収されたという意味だけではなく、シンジが劇の外側であるこの世界にやって来たことを迎えている意味合いも含まれているのだと思った。カヲルが劇という範疇の外側の存在であることも示唆されている。
シンジとカヲルが星を見るシーンも大好きだ。カヲルは星よりも星を見てその安らぎについて語るシンジのことを見つめている。カヲルは他でもない碇シンジという存在がどのように劇の中で役割を演じ、また劇の外側で役割を演じまた演じないかに深い関心のまなざしを向けている。役割でもない登場人物でもないシンジ自身の魂を愛している。
シンジとカヲルがピアノを打ち込むシーンはシンジが劇や役割といった束縛から一切解放され、真に自由でいられる数少ないひとときでもあった。
シンジにとっては自分に課せられた役割を果たした結果が世界を滅ぼしたことだっとというのは耐え難いことだった。滅んで物語が終焉すればまだ良かったのかもしれない。物語は完遂すること無く途中で崩壊してしまった。それも父親の目論見によって自身に全て押し付けられ引き起こされたことだと知り、何も信じられなくなる。
それでもカヲルはシンジに希望を持つように諭す。自分で物語をまた始めれば良いのだと。それに希望を見出せば良いのだと。お芝居が壊れてしまったのなら、劇をもう一度やり直せばいい。
二人でなら何でも出来る。例え物語や役割を失ったとしても。それは全てから解放されたピアノの連弾で経験したことでもある。
劇をやり直すのに槍が二本必要だというのは多分「槍でやり直す」という駄洒落でしか無い。
舞台に囚われ続けるシンジ、大人になろうとするアスカ
シンジは世界を槍でやり直そうとする。それに相対するWILLEやアスカ達は終わってしまったエヴァンゲリオンの劇を放棄し新しい世界で新しい物語を初めようとする側の勢力としてQを通して描かれており、この戦いで顕著に現れる。アスカは新しい舞台での登場人物になろうとしている。「女に手をあげるなんて最っ低」という台詞もアスカがシンジとは別の共同体に属した価値観を持っているということを強調するものなのかもしれない。
アスカの台詞が棒読みっぽいのも伏線になっているんじゃないかと思った。アスカは新しい舞台のルールに順応し、新しい舞台での台詞を喋ろうとする。それが舞台の外側を舞台の外側として観察している私達にとっては陳腐な台詞回しのように聞こえるのかもしれない。
カヲルが第1使徒から第13の使徒に堕とされたというのはシンジとともに新しい劇の舞台を作った第一人者ではなく、世界を終わらせる側の者となってしまったことを示している。
劇作家のメタファーであるゼーレがここのタイミングでゲンドウに別れを告げられることは、実はシンジが壊してしまった劇はこの時点まで辛うじて残りカスが続いていたという表現なのかもしれないし、完膚なきまでに失われてしまったという表現なのかもしれない。
カヲルがシンジに託した希望はシンジの希望ではなかった。シンジはかつての舞台で多くを喪失してしまった感情を引きずったままであって、世界を復元する目的をカヲルと共有できていたのも逃避でしかなかった。だからやり直す為の槍ではなく世界を再び否定し破壊する力しか与えられなかった。
カヲルはシンジの希望と違ってしまったことを詫び、例えシンジが全て失っても、意思が世界を変えて行くこと、自分自身を変えていくこと、シンジが安らぎと自分の場所を見付けられることについて最期まで説きながら命が絶たれる。
「ガフの扉」の中心最上部に映っているのは舞台の上にある、照明や機械を吊り下げる為の骨組みなのではないかと思った。
「L結界」というのはリリン、(劇の中に生きているという意味での)人類が生きていくことは出来ない、お話の中の人物を拒絶し浄化する緞帳の効果を示すものなのだろうか。
シンジがこれまでの劇を取り戻す期待も新しい舞台を作る希望も喪失する中でQは終わる。
所感
Qは(大人の都合で)世界を壊し、罪を押し付けられ、役割を奪われ、劇の外側に放り出されてしまったシンジがカヲルと出会い希望を教えられるお話だった。
崩壊してしまった舞台というメタフィクションの視点が強い世界観の中で、シンジの希望にひたむきに向き合い続けたことが本当の本当に素敵で、私はそんな所が大好きな作品だと思った。
結局シンジは逃げる為に希望に縋ってしまったがために全てを喪ってしまうのだけど、カヲルがシンジに希望を見出し続けたこと、託したことがこれからどうシンジを導くのだろう。
シン・エヴァンゲリオン劇場版の感想に続きます↓
シン・エヴァンゲリオン劇場版の感想
集大成とか傑作と言うよりかは、エヴァンゲリオンシリーズ全てをちゃんと成仏させようみたいな気概で作ってる作品だなと思った。おばか。お疲れさまです。
壊れてしまった舞台、赤い緞帳の外側で新たに物語を紡いで生きていこうとしている人々について丁寧に描かれていたと思う。そんな人々とシンジの暖かい対比も良かった。
「ガフの扉」の上に映っているのは骨組みなのではないかって上に書いたけど、そうではなかったみたい。
散々考察されていた You are (not) alone. You can (not) advance. You can (not) redo. というタイトルは肯定と否定どちらでも自分自身選べるんだよという意味だった。シンジは選ばなかった。そこから自分の責任を学び、大人になるということについて描かれていたと思う。
マリとアスカが付き合っているか、付き合っていたという描写があったことがシンエヴァの中で最も衝撃的だった。最終的には違う人と結ばれるけど。そうなるとアスカは二股の可能性もあるのだろうか...? 空白の期間は14年もあるから、それぞれの関係がどのように発展・収束していったのかは想像が尽きない。
黒い封印柱(破本編冒頭やQ予告にも出てきたもの?)の正体が結局よく分からなかった。「人外未知の言語」というのは、上のQの考察から、エヴァンゲリオンという劇の外側にある言語で書かれているものは劇中で出てきた人類には読むことが出来ないという表現なのかもしれないと思った。じゃあ誰が置いたんだろう?
封印柱はコア化した大地を元に戻すことが出来る(コアと融合したものを切り離すことが出来る)し、起動した時に地面からやや抜けるような挙動をすることから「逆エントリープラグ」って個人的に呼んでる。
破で上映されたQの予告はQ上映後には嘘予告と呼ばれるようになったが、その回収があった。今見返してみると嘘予告の各カットの前には必ず“KEEP OUT”が添えられており、ただ情報として出してないということだった。
S-DAT。
「エヴァ・インフィニティ」「インフィニティのなりそこない」というのがエヴァンゲリオンという終わらない物語に囚われ続けた(と庵野が勝手に思っている)私達のメタファーで、概ねファンに予想されていた通りだった。そのインフィニティ達ごとさよならすることで解放してあげようという演出がなされたことでインフィニティという表現がかなり陳腐なものに感じるようになった。
「エヴァンゲリオン第13号機」の名前って、もしかして10+3で「父さん号機」って意味なんだろうか? そうとしか思えなくてめちゃめちゃ笑っている。旧劇から初号機は母親の象徴として描かれていたから、ゲンドウも「父さんとしてのエヴァ」が欲しかったし、そのエヴァ自身になることで初号機となった碇ユイを追いかけたかった。
そう思うとQでノリノリで「第13号機だ」って言ったのも、これが父さん号機だって自慢したかったのかなと想像するとゲンドウの行動がとても可愛らしいものだと感じてしまう。ずっとユイにもシンジにも嫉妬をしていたのかもしれない(実際にどうかはわからないけど)。
もう一つ増やしましょう
ここのQの感想・考察記事はシンエヴァの上映前に完成させようと思って結局できなかったんだけど、考察し過ぎたせいでシンエヴァ自体の深さを感じなくなってしまった所はあるかもしれない。だからこのタイミングで書くことが出来て後知恵としては良かったのかも。それを抜きにしても、底の浅いところのある作品ではあった。
この作品に敢えてチープな演出を盛り込んでいるのも、庵野監督自身の大人としての責任としてちゃんと成仏させよう、その為にどんな手段でも使ってちゃんと終わらせようというのが表れているのかもしれない。
それでも、序盤でこの世界で生きていこうとしている人々について丁寧に描いたことで、シンエヴァを見て数日経った今、「どういう意味があって生きるのではなく、生きてどういう意味があるのでもなく、どうやって生きていこう」という感覚が心の中に暖かく染み付いている。それだけは庵野監督の自慰ではなく、純粋に私達の為にやってくれたことなんだろうと思った。ありがとう。
メタフィクションとしての面白さはQの時点で新規性も深さもQに軍配があったと思う。それはシンエヴァに頼っていたのか少々難解過ぎたけど。シンエヴァも所々の映像表現としてはQ以上に色々盛り込まれていたけど、全体としてのメッセージ性の強さも少なくとも私にとってはQや旧劇には劣る。だからシンエヴァはそこそこにつまらないし、でもエヴァンゲリオン全編を通しての締めくくりとしては面白かったと思う。
それに加えて、「どうやって生きていこう」をシンエヴァを見る前よりも見た後の方がちょっとだけ面白く思えるようにしてくれた作品であるのは間違いないと思う。それでもQほど好きではない。それだけQが好きだ。
さよなら、全てのエヴァンゲリオン。また会えますように。
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indatsukasa · 1 year
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A by-product of Othello Into the Puddle of Green Envy
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chibichibita · 7 years
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誘惑の多い世界にいるんだから、少しぐらいのことは目を瞑ってあげなさい。 彼に限って有り得ないとは思うけど もしも彼が浮気をしたとして 浮気は病気だから、持病を患う彼を支えてあげたいと言うならかまわないけれど もし もしも 彼が本気で誰かを愛してしまったときは、すがりつくのもやめなさい。 それはもう、お互い幸せになれないからね 海燕殿との結婚を決めた時、仕事で数年お世話になった先輩はそう言った。 私の結婚祝いにとご飯を食べて、少しお酒を飲んだその席で。 仕事を辞めた先輩が、野球選手の妻となって5年目の夏 私が結婚を決めた頃 彼女の家庭は崩壊したようだった。 貴女の祝いの席でごめんねと先輩は泣いていた。 大丈夫です、先輩のほうが心配ですと言いながら、少しだけ怖くなった。 私にも起こり得る未来 どんなに私が海燕殿を愛していても 海燕殿の気持ちが何処かに奪われるかもしれない未来を思えば怖かった。 そのときは今の先輩の言葉を思い出します 目を瞑ること すがりつかないこと 自分の為にも彼の為にも まさか まさか私が 海燕殿でない男に心も身体も奪われる日が来るなんて あの日の私はもちろん知らないのだから
◾ ◾ ◾
3度めの参加のその場所で 男は最初から人目を惹いた
周りの女性達は皆ちらちらと見ていたし、友人同士で参加している者達はあからさまに彼の話ばかりをしていた。 確かに素敵な男性で間違いなかったが 見下すような目付き顔つき、そして態度に 私はうっすら嫌悪感を抱いていた。 こういう場所に来てあの態度はなんだろうか? あからさまにこの場所にいる者達を醜い人種だと言わんばかりの態度に思えた。それなら来なければいいのにと思う。出逢いに飢えてるような男でもなさそうなのに。 こういう場所に来ておきながら、その態度はなんなのだ何様なのだと思ってしまう。
海燕殿の爪の垢でも呑ませてやりたい
そう、自然に思ってしまえば今度は自分が落ち込んだ。 まただ、またそんな風に海燕殿と誰かを比べて見下している。私は何故此処にいるのか何のために此処に来たのか。 あの男は、私だ 私もそうやって醜い顔で 此処にいる男を見下しているのだから だからあの男に嫌悪するのは同族嫌悪なのだとわかってしまえば、憂さ晴らしをすることも出来ず、憂鬱は更に薄暗く汚いものへと変わっていくように感じた。 そうやってどこまでも堕ちていく時に思い浮かぶのは海燕殿の顔。笑顔。 でもその笑顔は私のほうを見てはいない。 たくさんの人に囲まれて笑う海燕殿から、少しだけ離れた場所にポツンといる私に 妄想の中の海燕殿は気がつかない。 妄想の世界も現実の世界も同じだと思う。
寂しくて苦しくて どんどん意固地になって 何を言われても笑っている私に 海燕殿はなにも気づかない 笑えば笑うほどに 私の心が閉ざされていくのを 海燕殿は知らない 気づいて欲しいというのは我儘なのだろうか 見て欲しいというのは傲慢なのだろうか そうやって皆と楽しく笑っていればいい 貴方がかまってくれないなら 私は他の男にふらふらついていってやるんだから いいの? ねぇ海燕殿 私のことだけ見て欲しいんだ 誰彼構わず笑顔を振り撒かないで欲しいのだ 私は海燕殿の全部が欲しくて独り占めしたいそんな、女なんだ
醜い自分の心に呆れたり落ち込んでも どうしても時々この妄想に取り付かれた。 海燕殿は誰に対しても優しかったし笑顔をみせた。そこがとても好きなのに、いつの間にかその笑顔を憎く感じるようになっていた。 私にも同じなのに。結婚して数年たっても私にも同じ笑顔をみせてくれるのに それなのに何が不満なのだと何度も自問した。 我儘以外のなにものでもないのも、頭の片隅ではわかっていた。 ◾ ◾ ◾ 今まで志波さんだったのが、海燕さん、と突然名前で呼んだ時の菅田彩夏のしまった、という顔と いつものことだ何でもないというように平然としている海燕殿を目の当たりにした時から 醜い心が芽生えたように思う。 菅田彩夏は海燕殿と同じ、人を惹き付ける笑顔の明るい女性だった。
「事務所の後輩でさ、まだ若くて世間知らずで手がかかる妹みたいなんだけど、がんばり屋でいい子なんだよ」 海燕殿は菅田彩夏のことをそう言っていた。 彼女に会う前から、そう聞かされた時から 既に小さな闇は私の中に巣食っていた。 単純にいやだなと感じてしまったのだ。だってまるでほっておけない存在みたいではないかと思ってしまったのだ。ブラウン管の中で笑う菅田彩夏を初めて見た時には、闇は完全体として私の中に居座った。 彼女はとても可愛らしかった。 明るく可愛く嫌味のない喋り方をする菅田彩夏は仕事で悩んでいるとのことだった。 海燕殿が相談されて、菅田彩夏と会う回数は日に日に増えていた。 菅田彩夏だけはいやだと、まるで本能が拒否し始めた。でもそんな幼稚なことは言えなかった。言えないくせに態度は押さえきれなくなって、ある時おかしな形で言葉になった。 「海燕殿は誰にでも優しすぎないか?いい顔をしすぎではないか?」
妬みや嫉妬で構成された言葉は思っていたより棘のある意地悪な言い方でしかなかったらしく、その日疲れていただろう海燕殿は珍しく嫌な顔をした。その顔を見た瞬間後悔したがもう引けなかった。 思えば初めての喧嘩だった。お互いの空気が険悪なものなったのは後にも先にもこの時だけだ���たように思う。 嫉妬だった。 今ならはっきりわかるが、あのときの私には それがわからなかった。 私には可愛くヤキモチを妬くというスキルがないのだ。 だから海燕殿には私の気持ちなど伝わらず、ただの愚痴に聞こえてしまったようだった。 海燕殿はうんざりした顔をした。 その顔が自分に向けられた事が悲しくて一人でこっそり泣いた。そんな顔をさせたのは間違いなく自分のせいだった。醜い自分が悲しくて涙は溢れた。 海燕殿は私の事を「おまえは幸せなんだ」と言った。それが自惚れや傲慢にならないのは海燕殿の人柄なのだとは思う。 確かに憧れていた男と結婚して、結婚しても変わらず愛されている私は幸せなのだと思う。そんな私に、厳しい世界で生きていく苦しさや辛さは確かにわからないのは本当のことなのだろう。
俺に可愛がられて幸せなおまえには 生きることに必死な奴等の気持ちはわかんねぇかも知れない でも俺はその苦しみを知ってるから放ってはおけないんだよ 俺に頼ってるだけじゃないんだ、一人でたくさん苦しんでるんだ 抱えきれなくなったら誰かに甘えたっていいんだ そういう奴等を甘えさせてやりたいんだよ 仲直りをした時 海燕殿は私を腕に抱いて丁寧にそう話してくれた。 海燕殿の言葉が本心なのはきちんと私の心に届いた。 本当に、人を放っておけない優しい方なのだと思って目を瞑った。 そんな海燕殿を愛しく感じていながらも 私だけを見て欲しい願望が消えることはなかった。
菅田彩夏の想いを、海燕殿が気がつかないのは 私の薄暗い嫉妬心に気がつかないのと同じなのだということに 安堵と失望が渦巻いていた。
菅田彩夏は私に気を遣いながらも 海燕殿への気持ちを隠すこともなかった。 漫画やドラマのようにわかりやすい振る舞いをすることがないのはさすが女優に転向するだけの女なのだなと感心したほどだ。 ヤキモチを妬けない私の、それでも何か気がついたのか海燕殿は「おまえも一緒にいればいい」と菅田彩夏を家に連れて来るようになった。 何もしなくていいから、おまえは俺の隣にいればいい。話を聞いてればいいと海燕殿は言った。 そこまでされれば、余計に何も言えなくなった。けれど。 もう!見ましたぁ?いっつもこうしてすーぐ私のこと子供扱いするんですよ? 海燕殿に頭を撫でられた菅田彩夏は くるりと振り向いて笑いながら私にそう言った。同じように海燕殿もわたしの方を向いた。 まるで、それはドラマのワンシーンのようだった。 傍目から見れば、さしずめ私は恋人達を見守る姉か友達の役で。いちゃつくカップルにみせつけないでちょうだいとでもいう台詞を返す役どころがあっているだろう。 でもそんなほんわかした台詞はドラマならではの話であり この時私は、勝手にしてくれ、そう思った。 「そんなことねぇよ。ルキアにもいつもこうするよな?」 多分、何かしら少しは伝わったのか、海燕殿はすっと私の横にくると私の頭も同じように撫でようとした。ほら、犬や猫を撫でくりまわしたくなるのと一緒だと更に私の頭をぐしゃぐしゃとしようとしたその手から逃げた。
いやだ、と思った 犬猫はよくても 女にやるのなら 私はされたくない 同じにしないで 菅田彩夏とわたしを 同じ扱いにしないで 彼女の頭を撫でるなら 私は海燕殿に触られなくていい もう、やだ こんなに可愛がられてるのと見せつけてくる菅田彩夏も 天然で無意識で誰とでも仲良くする海燕殿も 家に呼んで安心させようとする海燕殿の 私を心配させないようにという優しさすら あさはかな考えにしか 思えなくなってしまった
◾ ◾ ◾
「でもそれさ、おまえが一言そういうのやめてよって怒ればいいんじゃねぇの?そんでそれでまぁーるく収まる話じゃねぇのか?」 「……貴様はやはりバカなんだな。だから言えぬといっておるだろ」 「だからそれこそ演技するみたいにさ。 私だけにしてよ!って、おまえ一回泣いてみ?」
男はそういうの、弱いからさ~とケタケタと笑いながらベッドから起き上がると、男は素っ裸のままテーブルに置いたタバコを取りに行った。 「泣くなんて演技できない」 「じゃあ演技なんだから、目一杯甘えた声で可愛いしぐさをすりゃいいだろ」 「…………」 そんなの、わからない。 そもそも可愛くない私がそんな演技をしたら気持ち悪いだけではないだろうか そう考えていると、タバコをくわえたまま、またベッドの上に座って男は私の頬をするりと撫でてから、上唇をふにっと摘まんで笑った。 「アンタは可愛いよ」 「……なんだ貴様、気持ち悪いな」 「いや?そもそも可愛いから俺、アンタと浮気してるわけじゃん?」
ふふん、と上に向かって煙を吐き出しながら鼻で笑う男が何を考えているのかわからない。 思えばこの男とこんな関係になるとは思わなかった。出会い頭に嫌悪すら抱いた相手だ。 上っ面を取り繕うようなありきたりの話を振ってきた男を適当にあしらっていたのに プライドが傷付いたのだか男は執拗に追いかけてきた。あまりにも強引な男に負けて、ご飯だけでも食べさせてもらうことにするかと思っていただけなのに。 おかしなことに男との食事は楽しかった 男と食べる焼き肉は美味しかった 酒の酔いも手伝って、気がつけば初対面の男だというのにぺらぺらと話をしていた。 話したかったのかも、しれない。 この男にというよりは誰でもよかったのかもしれない。心に住み着いた暗闇を言霊にして吐き出したかったのだ。 それが、きっと、たまたま この男だったそれだけのはずなのに。 私はこの男と会う事を楽しみにするようにな
っていった。
最初こそ、嬉しい言葉を浴びせてきて とても優しく抱いてくれたのに 会う回数が増えれば増えるほど男の甘い言葉が顔を潜めていくのが物足りなくなる自分が惨めで情けなく感じた。別にこんなの、遊びだし浮気だしと思えば情けなさよりも悲しくなった。強引な男にほだされたはずの関係はとてもおかしなものになっていった。 男ー黒崎一護は一言で言うなら読めない男だった。 一護には妻子がいた。既婚者パーティーにいたのは友達に頼まれてあの日初めて来たのだというが、それは本当のことのようだった。 何より驚いたのはその年で教授だという。 一護が私に声をかけてきた誘いかたが気に入らなかった(機嫌が悪いのもあったのだが)から辛辣な態度をしてしまった私に、彼のプライドが許さないのだろうと思った。だから執拗な彼に申し訳なくなり食事ぐらいまぁいいかとさえ思ったのだ。
そのわりには何故か、一緒に話していると自然に素直に話せる自分に驚いた。 浮気相手に俺を選べよと言った一護の顔に あのときの私は何故か「ばかじゃないのか?」と言えなかった。言えなかったのはそれはなんだろう? 元より本気で誰かと浮気をしたいなんて思っていなかった。恥ずかしすぎて言葉にするのも無理なぐらいの愚かな妄想だった。 海燕殿にかまって欲しい自分を見て欲しい、それだけの妄想の延長だったのだ。だからあんな場所に行ったところで、どれだけ声をかけられたところで 海燕殿じゃなきゃイヤだと思う自分に安堵に近いものを覚えて自己満足していたのかもしれないのに。 一護の目が声が、触れてきた一護の指が 心地好い熱を持っていた。 その熱さに私は囚われた 海燕殿とは違う無機質なようで熱を持つ一護に全て委ねてしまいたくなった 囚われたことに、うっとりとした私に 逆らう理由はどこにもなかった
芸能人の妻とはいえ、私の顔は公開NGとされていたから、海燕殿の関係者以外には知られていなかった。結婚の時も一般女性と報道で言われていたような気がする。 けれど一護 は何度逢瀬を繰り返しても外で私の掌を握ってくれることはなかった。 それがもどかしくてたまらなかった。 だからある日私から一護の掌を握った。 浅草で、その日は有名な老舗で肉を食べた帰りだった。 一護は振り払わなかったが、下を向いて少し笑った。 「何がおかしいのだ?」 「いや?ごめん、何でもねぇ。俺がバカだと笑っちまったんだ」 「んんん?」 「おまえは、志波海燕の気を引きたいんだったもんな」 「?」 一護の笑った意味もその言葉も意味がわからず見上げていると、一護は眉間に皺を寄せて苦しそうな瞳で無理やり笑うという不思議な顔をした。どうしたのだ?と聞き返すより早く、一護は突然道端だというのに繋いだ手を自分の方に引き寄せて私を抱き締めた。煙草と肉と一護のつけている柑橘系のコロンか何かの匂いに包まれ、驚いたし少し心配にもなったが嬉しくてそのまま顔を胸に寄せていた。
「今日はどっか、泊まろ?」 海燕殿は撮影で帰らない日だったから、悩むことなく頷いた。ふ、と頭の上で一護は小さく笑った。その日の一護はとても執拗に私を求めてきた。 嬉しくて気持ちがよくて 獣みたいな一護にゾクゾクさせられたのに 眠りに落ちる頃には何故か落ち着かなくなった。いつもより一護が求めてくれているのに いつもより言葉少ない一護は何か切ないような苦しんでいるようなそんな感じがした。 その日を境に、一護に振り回される自分がいた。 嫌われているとか嫌がられているという感じでは一切なく、連絡を寄越してくるのも一護なのだが 一護は日によって色々な顔を魅せた。 それでも本来優しい男なのであろう一護は 私を孤独にも不安にもさせるような態度も言葉もなかった。 なかったけれど やはり外で私に触れることはなかった どんなに激しく抱いてくれても ホテル以外で私に指一本触れることはなかった ◾ ◾ ◾
海燕殿からきたラインに「おやすみなさい」と返事をした時、一護と銀座一丁目の裏にある小さなバーにいた。 「志波海燕?」 「そう」 「なんて?」 「おやすみって」 「仲いいな」 掌に顎をのせて首を少し傾けて一護は優しい顔をして笑った。 笑い返したけれど、何で笑うのだろうなと胸がチクリと痛む自分に溜め息を落としそうになった。じゃあ何て言って欲しいのかーその続きを考えたくないと話を変えようとしたところで、海燕殿からの着信が鳴った。 LINEの返事をしたばかりなのに何故?と不思議に感じながら電話に出れば、海燕殿の声は恐ろしく低く、怒りを隠すことなくどこにいる?と聞いてきた。 ひっ、とみっともなく喉が鳴りそうになる。 海燕殿は、家にいるという。 寝ると言ってもぬけの殻の家に私に 嘘をついている私に怒っているのが、携帯越しにも伝わってきた。 携帯を耳にしたまま一護と目が合う。 強張った一護の顔に、何故か冷静さを取り戻す私がいた。 一護を護らなければ
何故かそう思えば、私の唇からはまるで女優のようにさらさらと嘘が飛び出した。 少し、早口かもしれないと分析できる余裕まであった。 それでも海燕殿の怒りはともかく、この状態ー 一護といること ー は隠し通せたことに安堵して電話を切った。 電話を切って初めて震えがきた。 海燕殿を怒らせたこと 嘘をついたこと それがばれたこと それでも何よりもこの嘘を死守せねばと自分の言った言葉を頭で反芻していると、途中で席を立っていた一護が戻ってきて私の腕を引いた。 「大丈夫か?」 「うむ、すまぬ今日は帰る」 「わかってる、行こう」 会計すませといたから、何時頃くるんだ? そう私に聞きながら掴んだ腕を掌に移して指を絡めて私を引いて歩き出す一護に違和感を覚えた。 一護から、私の掌を握ってくるのも指を絡めてくるのも初めてのことだったのだ。 でも、何故今?と悲しくなる。 普段は1度もしてくれないくせに、ホテルに行こうと言っても私の手を握ってくれなかったくせに こんな余裕のないときに何故ー 「…………よかったな」 私の手を引きながら、前を向いたまま 一護はポツリとそう言った。 「は?何がだ!私は嘘ついたのがばれたんだぞ?」 「……だから、夢かなったじゃねーか」 「何?」
一護の言葉の意味がわからず立ち止まると、一護はまた眉間に皺を寄せた顔で振り返り、早くしろよ、何分ぐらいで来るんだよと聞いてきた。 「……ここまでは、車をかなり飛ばしても20分はかかるから……あと30分ぐらいは、平気だ」 「そっか」 「すまぬ、一護。ここで別れよう。貴様は有楽町線だろ?私は三越まで歩くから」 ちょうど店を出てすぐが銀座一丁目の駅だった為そう言ったのだが一護は手を離さないまま、わかったと駅を通りすぎようとする。 「一護?」 「なんだよ。まだ時間あるから三越まで送るよ」 「いい、ここでいいから」 「やだ。最後かもしれねーなら好きにさせろよ」 「最後?」 間抜けにも、最後かもという一護の言葉になんだそれ?と聞き返してしまった。 そう、本当に、意味がわからなかったのだ。 「おまえは、何で俺といたんだよ」 「え、何なのだ、さっきから意味がわからぬのだが」 「志波海燕に浮気した自分をみせつけたかったんだろ?」 「あ、」 「嘘、ばれたんだろ?スゲー怒ってたな。携帯から声が駄々漏れして俺にまで聞こえたからな。良かったじゃねぇか、志波海燕をあんなムキになるほど怒らせて。迎えにくんだろ?言ってやれよ、寂しくてどうでもいい男と浮気したって。どうなるかはしらねーけど、とりあえずおまえの望みはこれで叶ったじゃねーか、よかったな」 一護の言葉が頭に染み渡って理解をしてしまえば、余計に何も言えなくなった。 よかった、だと? 望みが叶った、だと? 呆然としたまま、一護を見つめることしかできない私を一護はまるで憎いものでも見るような顔で私を見ていた。 私を、憎んでいるのだろうか 蔑んでいるのだろうか でもこの顔を、私は知っている。 こんな状況下だというのに、私の腹の下が疼きだすのは この顔をみるのは ベッドの中で一護が魅せる顔だからだ。
悲しいのか悔しいのかもう何もわからない わからないけれど、一護の手から逃れようと手を払い除けようとすれば一護はそれを許さなかった。 「最後なら、手ぐらい握って歩いてもいいだろ」 最後? 「おまえの望みが叶ったんだから、この関係は終わりだ。俺と浮気することももう必要ないんだから、だからあと少しだけ10分だけでもおまえの手を握らせてくれよ」 一護の言葉に何も返せない 違う、何か違う
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pinoconoco · 7 years
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Time To Say Goodbye (8)
8月も終わりとはいえ、まだまだ陽の高い昼過ぎに、駅前のドラッグストアまで痒み止めを買いに行かされた。
確かに姉ちゃんに借金をしてるのは俺だ。 「絶対来月返すから!」と言い続けて半年返してないのも俺だ
つまり、こういう時使いっぱにされるのは ある意味仕方ないとも言える。 が、暑い。とにもかくにも、暑い。
夏は好きだけどアスファルトの照り返しの蜃気楼とかほんと、もぉやだ。 溶けそうだな……と商店街のガラス越しに映る自分をチラリと見ればなんだか猫背でだらしない男が映っていて更にゲンナリとする。こんなダッセー男に彼女なんかできねぇよなぁ……とガラスに映る自分を冷静に見つめながら、ガラスにでかでかと貼ってある浴衣の写真のポスターに目が移る。
あれ……?空座盆踊り大会、今日じゃん
……
……
なんだか突然どうしようもなく寂しくなってしまい思わずそのまま立ち竦んだ。 毎年行ってたその祭りを自分が忘れていた事もあるが、誰からも誘われてもいない。 去年はー そうだ、一護や井上さん達と行ったよな その前の年も
…………
俺だけ? 俺だけ誘われてねぇとか?
辛い!寂しい! そりゃねぇんじゃないの? いやいや、つい最近皆で海行ってるし。あれ俺誘われたんだし?一護来なかったけどさ。
……じゃあ祭りは とうとう、誰ももう行かねぇってことか……
無意識に唇を尖らしてしまう いやいーんだけど
俺だって今じゃ高校の頃の友達より、専門の奴等とつるむ方が全然多い。どうしたって毎日会う奴との方が話すし出かける率も高い。 高校の奴等と会うのも、最近じゃ誰かしら来れない事も多々ある。 皆、優先するものが変わって行くんだ
それにしてもこの間の海に一護が来なかったのは意外だった。
だって死神サン達と遊ぶのに一護がいないなんてさ。 井上さんとチャドと石田は親交もあるけど、 俺と有沢なんてほとんど知らねーのに行ったのに。まぁ楽しかったけど。 それにしても石田が可愛い女の子を連れてきたのには驚いた。うん、あれは驚いたな。 なんか初々しくてちょっといいなとか思っちまった。でもあれ、彼女なんだろーなぁ? 連れてきちゃうんだし。 そういやルキアちゃんいなかったんだよな。
あれ? ん?
一護とルキアちゃんいないのって 何か怪しくね?
「うん、じゃあまた……」
祭りのポスターの前でぼんやりしていたら、よく知る声が聞こえて思わず顔を横に向ける。向けてからわざとらしいくらいの2度見をすれば、女はスマホを耳から離して眉間に皺を寄せて俺を見た。
「……なんだよ、そのわざとらしい態度」 「いや、だって、らしくねぇ格好してっから見間違えかと」 「うるせぇーよ!馬鹿」
ペシンと女は俺の頬を平手打ちしてきた。 平手打ちしちゃう?ねぇ?
「どっか、行くの?」 「は?」 「いや、有沢サンが女の子みたいな格好してるから……どこかへおでかけですか~なんて」 「…………一護んとこ」 「は!?」
一護とデート?と言えば今度は反対側の頬を平手打ちされた。痛いんですけど、本当に。
「……浅野さぁ、暇なら一緒に行かない?一護んとこ」
痛いってばよぉと涙目の俺を気にすることなく、そのわりには伏し目がちに有沢が俺を誘ってきた。
なんだコイツ?
というか、だから何で今日そんな格好してんだよ。一護の為……はないなありえないよな。
「行く!暇だし」 「……ありがと」
ありがとうって何だ?とも思ったが、一護とは最近会ってないしなんとなくセンチメンタルな気分になってた(一瞬ね)し即答した。 じゃあ手土産にアイスでも買って行こう、と有沢とサーティワンに入る。
「浅野何?」 「俺ね、あれ、パチパチするやつ!」 「ラヴね、あとは?」 「2個いいの?」 「いいよ」 「……半分だそうか?」 「いいよ、出かけるのやめたから。金あるんだ」 「……ふーん。……じゃあナッツの」 「オッケー。一護はチョコだよな……」
そう言いながら有沢は合計8個のアイスを買った。遊子ちゃん夏梨ちゃんのだろう。
一護の家まで二人で歩く。 今日の有沢はうっすら化粧までしていて何だか落ち着かない。足元もいつもみたくスニーカーじゃなくてミュールを履いていた。 足首が妙に生々しく感じて、つ、と目を反らす。 まてまて俺。何ときめいてんだ。これ、有沢だから。
「……おまえ、出かけるって一護んとこ行くのにその格好したの?」 「はぁ?」
有沢は不思議そうな顔をして俺を少しだけ睨んだ。
「つーか、別に普通なんだけど」 「普通じゃねぇだろ!?おまえ、スカートなんて履かねえじゃん」 「履くよ馬鹿。あんたが知らないだけだろ?」 「化粧してるし」 「いつもしてるよ」 「嘘!?」 「嘘ってなんだよ、あんたいつまであたしを高校生と思ってんだよ」
ばーかと言われ、キツい言い方でもないのに何だか少し凹む。 確かに 確かにそうだよな 高校出てもう2年だもんな
皆、変わっていくんだ 今の生活に染まっていくんだ さっきそう思ったばっかなのにな
あっちーなぁと化粧して頼りない足首を晒す有沢のその口調に、それでも何だかほっとするな、なんて思ってるうちに一護の家についた。
◾ ◾ ◾
「おぅ、って、啓吾も一緒なんだ」 「ぅぃ〰っす」
一護に会うのはそんな久しぶりというわけでもないけど。 一護も海にでも行ったのか珍しく日焼けしていた。 真っ白なTシャツにスエットを膝の辺りまで捲りあげて、元々明るい髪色の一護は、なんだかやんちゃな奴みたいでちょっと笑える。
「焼けたねーあんたも海行ったんだもんな」 「たつきはあんま焼けてねぇのな」 「女はもうそろそろ日焼けやばいからね」
楽しそうにそんな会話をする二人に ちょっと嫉妬。なんつーか俺よりはこいつら会ってたりするんかなー
「啓吾はすげー焼けてんな」 「まぁね、一護の来なかった海でかなり遊んだからさ」 「あー、悪かったなそれ」
一護はちっとも悪びれない態度で笑いながら謝ってきた。別にいいんだけどね。
まぁ、あがれよと言われ有沢と二人、一護の部屋に通された。エアコンが効いていて凄く涼しい。
「アイス買ってきたの。とりあえず冷凍庫にいれといてよ」 「おぅ、さんきゅ」
一護は有沢からアイスの箱を受けとると階段を降りて行った。 久しぶりの一護の部屋は何も変わらない。 よいしょっとベッドの下に腰を下ろした。 有沢もすんなり俺の反対側に腰を下ろすと、ふぅ、と吐息を溢した。
なんだろな?
さっきから感じるこの違和感
てゆーか有沢は何で今日一護のとこに来た?
告るんじゃないだろう。それなら俺を誘わないだろうし。何か、何かわかんないけど引っかかるのだ。
「コーラでいいか?」
そう言いながら一護が片手にグラスを3つ、片手にコーラのボトルを持って戻ってきた。
有沢が受け取り手際よくグラスにコーラを注いで俺達に渡してくれる。
…………そういや、幼馴染だっけこいつら
なんていうか一護と有沢は嫌みのない仲の良さがある。嫌みのないというか 井上さんと一護とか ルキアちゃんと一護とは違う、なんていうか……
ひとしきりくだらない話を続けているうちに、海の話になる。 あのツルピカ頭の奴とかそれのボスみたいな怖い男が海の家で暴れた話とか 松本さんと井上さんがナンパされまくる話とか スイカ割りをしたらルキアちゃんのお兄さんがものすごく正確に綺麗にスイカを割ったなんて話を笑いながらしていた。
「あんたも来ればよかったのに」 「俺はその日はデートだって言ったろ?」
二人のその会話に「はい!?」と思わず声が裏返る。
「い、一護さん、デートって言いました?」 「おぅ」 「な、なぬ……?」 「連れてくればよかったのに」 「やだね、二人でいらんねーじゃん」 「石田は連れてきたよ」 「え!石田が?彼女?!」 「一護……いつの間に彼女いたの……」 「そうだよ、小さくてカワイイ人だったよ」 「まじで?あの石田が?」
……
俺の話をスルーして二人は話している。 待て待て待てよ、一護彼女とか俺知らねーし。有沢知ってて俺知らないとか酷くない? つーか 一護の彼女って それってー
「あんたも、こそこそすんの、やめなよ」
少しだけ、力強い声で有沢が言った。
「こそこそなんて、してねーよ?」 「してるよ。アンタらしくないよ」 「……俺は彼女を護らなきゃなんねーの」 「……何から?」 「彼女を傷つけるものから」
なんか、喧嘩とまでは言わないけれど 二人の雰囲気が少しだけ変わった。 一護の纏う雰囲気が、少しだけ怖くなる。 かといって有沢は怯む事なく一護に食らいつく。
なんだよ、どうしたんだよぉと口を挟めず、ベッドの上にいる一護に目をやった時 あれ、と思わず目を擦った。
……ん?
一護はベッドの上で、手を後ろ���ついて胡座をかいている。 いやそれはさっきからずっとなんだけど。 ぼんやりと何かが見える。 一護の右腕の間に何か見える。 何かが、一護にしがみついている。
え?
一護の腕の間に、ルキアちゃんが見える。 見間違えか?幻か? いやいやいや どういうことだ?さっきまでいなかったよな?そーだよ、だって一護なんも言わねえし。
それに
なんていうか見たことない感じというか
いつもどっちかといえば腕組をして一護を見上げて小言を言うような感じのルキアちゃんじゃなくて 体全体で甘えているルキアちゃんが、いる。 顔もぴったり一護の胸元にくっつけて 伏し目がちに悲しそうな顔をしている。 悲しそうなのはなんで? いや俺おかしいのか?幻覚みてんのか?
違う、
有沢と一護の会話を聞いて、 そんな顔をしてんじゃないのか? 一護にしがみついてるのも そのせいなのか?
「あんたの行動で傷つく人もいるんだよ」 「……だから?」 「だから……」 「俺の大事なものを傷つける奴もいるんだぜ?例えそれが悪意なくても無意識でも」
一護は怒ってるとは言わないが、断言するように有沢に話す。 有沢は口をつぐむ。 そして、幻覚なのかわかんねーけど ルキアちゃんが一護の胸から顔をあげてふるふると首を振っていた
「だからって……」
少しの沈黙のあと、有沢が躊躇いがちに話し出した。
「あんたが、一人で悪者になることはないんだ。自分から、身を引くみたいな真似する必要はないんだよ」 「…………」 「そりゃあさ、前みたく、は難しいよ。そんなのわかってる。でも、あんたは悪いことしてるわけじゃないんだ、そうだろ?」 「……そうだよ」 「じゃあ堂々としてろよ。彼女云々なんて言葉でごまかさないで、ちゃんと朽木さんって言えばいい。連れてくりゃいいんだよ皆の前に。曖昧に彼女なんて言葉で誤魔化さないでさ。だって、皆しってんだから。アタシ達は皆、あんたが朽木さんしか見てないの、知ってんだから」 「…………たつき、」 「このままじゃ織姫はいつまでも浮かばれないし、アタシ達だって、あんたと織姫をどう扱っていいのかわかんなくて嫌なんだよ!朽木さん護りたいのはわかるけどそれなら堂々と手を引いて皆の前にいりゃーいいじゃんか!ずっと、ずっとそうだったんだから。織姫だって馬鹿じゃない。でも好きな男には頭も悪くなるし決断も鈍くなるよ。織姫だってわかってんだ。あんたが朽木さんしか見てないこと好きなこと。なのに、それを言わないで彼女がいるとか変な事言うからー」 「でも俺、別に井上に何も言われたことねーんだぜ?それでわざわざ井上に言わなきゃいけねーの?」 「わかってんだろ?悪趣味なこと言うなよ!」 「俺が不愉快なら会わなきゃいいだろ?井上や他の奴等が困るなら、俺をほっといてくれよ!」
全然ついていけない、わけじゃないけど 会話には入れない。それよりルキアちゃんの困ったような顔が切なくなってきて
「やめろよ、二人とも!ルキアちゃん泣くぞ!」
思わず口走ってしまう。え?と一護が驚いた顔して俺を見てから、やはり幻覚なんかじゃないのだ、ルキアちゃんの顔に視線を落とした。
「……浅野、あんた、見える���?」 「ふぇ?は? じゃあ、有沢も……?」 「え?何?まじ?なんで?」
一番慌てたのは一護だった。 有沢ははぁ、とため息を落として
「見えてるの、あたしも。あんたの腕に朽木さんいるのが。……ごめんね、朽木さん」
そう言ってやはりルキアちゃんのいる場所に目を向けた。
「……なんだよ」
そう言うと一護は徐に立ち上がり、クロゼットからルキアちゃんの脱け殻?を取り出した。ぐたりとしたそれに驚いて俺も有沢もひぃ!と声をあげた。 ルキアちゃんがすっとその脱け殻に入って今度はいつも見ているルキアちゃんが俺達の前に現れた。
「すまぬ、有沢」 「謝らないでよ、それからあたしは朽木さんと一護のこと、責めにきたんじゃないんだよ?その反対」 「反対?」 「朽木さんも、これからは一緒に遊ぼうよ」
照れたように有沢が笑った
「今さらこそこそしないでさ、今まで通りでいてよ」 「有沢……」 「あたしは、織姫の親友だけど、一護との方が付き合い長いんだ。幼馴染ってやつね。これでもさ、大事な幼馴染なわけよ。 そいつが色んなこと気にして下手な嘘ついたり一人で抱え込んでるなら助けてもやりたいんだよ。朽木さんもさ、織姫の事気にすんなって言うのは難しいと思うけど……でも隠れないでよ。寂しいじゃんか」
ルキアちゃんが下を向いてしまった 一護がそっと抱き締めて膝にのせる。な、なにこの甘い一護。って、俺が照れてどーすんだ。
「最初はキツいし居心地悪いかもしんないけど。こんなことでアタシ達は一護を嫌ったり怒ったりしないって。織姫もそう。二人が真剣なら、それを壊そうとか邪魔しようなんてしないよ?……認めるのに時間はかかるかもだけど。それは仕方ないんだ、誰が悪いとかじゃないじゃん?ないんだよ」
ありがとう、有沢
ルキアちゃんは震える声でそう言った
ルキアちゃんを見つめながら一護は何だか少しだけ泣きそうな顔をしていた。有沢も。 不覚にも、俺も。
俺もそうだ、井上さんが一護の事好きなのは知ってた。一護がルキアちゃんを好きなのも知ってた。そんなのもう、ずいぶん昔から
でも最近は
井上さんが一護に一生懸命な事に 一護が俺達との付き合いが悪い事に
どうしていいのかわからなくなっていた
そしてそれは 一護も有沢も同じだったのかもしれない
「なぁ、祭り行かない?」
場違いな気もしたけど、提案してみた。
「今日空座盆踊りじゃん。4人で行こーぜ」
頼むよ断ってくれるなよ?そんな祈りも込めてそう言えば 3人とも、笑った。
「行くか?」 「うむ」 「あ、じゃあさ、さっきのアイス食べちゃおうよ」 「あ!そうだよ俺あれね、サーティワンラブとナッツトゥーユー」 「一護にはロッキーロードとなんだっけ? 朽木さんには抹茶とイチゴ系選んだけど、イヤならアタシのと変えよ?」
え? あ、そーいやコイツ多めに買ってたよな ルキアちゃんの分だったのか
最初から知ってたのか? ここにルキアちゃんいること
いつのまにか すっかりいつものように寛ぐ有沢と 笑う一護と もう泣きそうな顔じゃないルキアちゃんを眺めながら
有沢って 本当は井上さんと同じくらい 一護を好きなんじゃないのかなと思った そんでもってその愛情は 何ていうか大きくて強くて 何だか無性に胸を掻きむしりたいような 落ち着かない気持ちになった
◾ ◾ ◾
俺と有沢が並んで歩く前を 一護とルキアちゃんが歩いていた。 色とりどりの灯りの雑踏の中、手を繋いで 一護を見上げながら楽しそうに笑うルキアちゃんと 優しい瞳でルキアちゃんを見つめながら笑う一護にからかいたいようなそっとしておいてやりたいような くすぐったい気持ちになる
「高校の頃は、朽木さん苦手だったんだよ、あたし」
前を向いたまま、ぽそりと有沢は呟いた。その顔は穏やかだ。
「そーなの?」 「うん。だって、ぽっと出て来て一護の全部持ってっちゃってさ。織姫の作った笑顔みせられるのも辛くて」 「うん……」 「だから、逆恨みってゆーか。んでもってどこかで朽木さんのこと人間じゃないしそのうちいなくなるだろうしなんて、酷いことも思ってたんだよ」
すごい意地悪だよな、と唇を少し曲げて有沢は笑った。
「それなのに、なぁ……」
笑いながら有沢はもうすっかり闇に包まれた空を見上げた。
「有沢、お前さ、一護好きなんだな」 「は?」 「それも無償の愛っての?」 「なんだよ、それ」
目元をクシャッとさせて笑う有沢に それ以上は言わなかった。 すげーよ、おまえは
独り占めしたい愛 誰にも渡したくない愛 有沢の愛は
愛する男の幸せを願う愛なんだろな
ちぇ、 一護の野郎 なんか色々羨ましい男だよな
有沢の想いを絆を 無駄にすんじゃねぇぞ?
そう思いながらなんとなく幸せな気持ちになって手を繋ぐ二人の間にジャンプして飛び込んだ。
「なぁ!ケバブ食お~ぅぜぃ!」
無理やり手を引き離して俺が真ん中に割り込んで、俺が一護とルキアちゃんの手を繋ぐ。 俺も混ぜてよ~とルキアちゃんに笑いかければ一護の鉄拳に制裁された。 コイツ、洒落も通じない奴だったんだなと改めてわかった。
よくある射的の景品に大きなウサギのぬいぐるみを発見したルキアちゃんは、欲しいぞ一護、あれをとれ!と無茶な事を言い出した。 いやあれは無理だろ、倒れねえだろ と俺と有沢が言っても一護はしかたねぇなぁと挑戦していた。が、やはりウサギは倒れない。 下手くそ、と罵られると拗ねた顔する一護が面白い。 こんな顔するんだなぁとなんだかニヤニヤしてしまう。 よし、ここで俺あのウサギ取ったら一護悔しがるだろーな、と
「よっしゃ!!ルキアちゃん、頼りない一護でなくこの浅野啓吾が打ち落としてみせますよ!」 「ぉお、本当か?」 「ばぁか、無理だぜこれ」 「浅野~、そんな大口叩いて取れなかったら朽木さん泣くぞ?」
いやいやいや、倒れるとは思ってないけど 奇跡はあるかもしんねーじゃん? んでもってルキアちゃんにあの可愛い顔で 嬉しそうにみつめられちゃったりして、そしたら一護悔しがったりとか……なんて調子いいこと考えていると、くん、と腕を引かれた。
「パパ、お願ぁい、あれ、絶対とってね」
……は?
小さなルキアちゃんの上目遣いの可愛い顔で甘えたその言い方はすごい破壊力だった。やべぇ、取ります打ち落とします!浅野啓吾あなたの為に絶対ウサギをあなたのその手にお渡しします!
てか!何なの、その台詞!?
「な、なに言ってんだよ!おまえ!」 「ん?この魔法の言葉を使うと相手は絶対言うことをきいてくれるのだろ?」 「ばばばばかじゃねぇの?誰に教わってんだよ馬鹿!つーか、それはせめて俺に言えよ!あ、や、やっぱいい、そのうちそれ、シャレにならなくなる!」
なんだか笑えるほどに動揺して怒りだす一護ときょとんとして悪びれないルキアちゃんに有沢が腹を抱えて笑いだした。 そんな中俺は、ルキアちゃんの破壊力半端ない甘え方に奇跡をおこしてウサギを倒していたのだが
「なぁ、まじで今のはもうやめろよ?他の奴にあんな事、言うなよ?」 「わかったわかった、しつこいなぁ」 「なぁ誰にそんなこと教えられたんだよ」 「ん?浦原が。何かどうしても欲しいものがあったらそう言えと」 「あんにゃろぅ……マジ一度ぶっとばさねぇとダメだな」
ウサギはもういいんでしょうか? 二人はなんだかいつのまにかイチャイチャしてるし。というか一護がね。
トホホホと今となっては恥ずかしい、大きなウサギのぬいぐるみを店主に渡され抱えていると有沢が手をだしてきた。
「そのうちエキサイティングしてんの落ち着いて気がつくから。あたし持っててやるよ」 「な、なんだよ。手柄とる気かよ」 「はぁ?ばかじゃないの?じゃぁいいわよ、自分で持って歩けよな」 「わ、嘘です!恥ずかしいからお願いします有沢様!」
仕方ないなぁ、と俺の手から大きなウサギのぬいぐるみを受け取り抱えて笑う有沢が ちょっとだけ、なんだか可愛く見える。 横ではまだ一護がルキアちゃんにぶつくさ言っている。
いいな、なんか ダブルデートみたいでさ
「そういやさ」
「あんた、ずいぶん可愛い財布使ってんのな」 「へ?」
えぇ、そこで思い出しましたよ
今日の昼間、財布渡されて 「痒み止め買ってこい10分で戻らなきゃコロス」と姉に家を追い出されていた事を
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find-u-ku323 · 4 years
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『部分的にそう』
 あなたのことは前からそんなに好きじゃなかったし、と、呆気ないほど素っ気なく恋の幕は閉じられた。情けない姿を晒すまいと閉じ込めていた気持ちはいつのまにか溢れだしていて、ただ黙って、告白の舞台として僕が指定した中庭をとぼとぼと歩いて帰るしかなかった自分が、本当は一番情けなかった。  忘れなければいけないのだろう。本当は、忘れなければ大変なことになると、自分でもそう分かっているはずなのに、高嶺の花相手に挑んだ無謀な恋愛の後遺症は、僕が思ったよりも強く深く抉れた傷を僕に与えてきた。まるで誰も足を踏み入れることができない山岳地帯に咲いている白いサザンカを自らのものにするために、命懸けでそこに分け入っていったら、何か逆らえない神の逆鱗に触れたような重力で全身を強打したみたいな、そんな痛々しい気分だった。  じゃあ、なんであんなに気のあるフリをしたんだよ! ああいうことをするから、僕みたいに勘違いして傷つく奴が出るんだろ、って。そうは思わないかい、──。  僕は路傍にあった石ころ、その全てを転がして、晴れない気持ちを全てそこに籠めるかのように、制服が汚れるかもしれないという懸念も頭に浮かぶことなく水溜りの方へシュートしてみせた。瞬間、汚い水しぶきが上がるのを見たが、もちろんそんなものでは何の気休めにもなりやしなかった。  家に帰って来てから、晩御飯を食べる気力もなかった。休んだ部活の同級生から来たメッセージを横目で消していくだけで、なんとなく精一杯だったから。きょうのことがなかったことに出来たなら、ちょっとは楽なのにな。告白した相手に僕の感情が漏れていたなら、正直、女々しいんじゃないの? って言われてしまいそうだった。  晩夏の夕空にかかった飛行機雲を見ながら、明日は雨なら学校に行かない、と憂鬱な気持ちを飛ばしていった。コップに注いだ強めの炭酸水の泡が抜けていく音が、魂の抜けていくような気持ちと重なって哀しい。名前のない感情が、声のない声に漏れ出ている。  力の抜けた片手で、さっき落としたスマホを拾い上げる。相変わらずメッセージを読む気力はない。  しかし、メッセージアプリの上のほうにいつも表示されている広告に、今日はなぜか目がいった。その広告は、どこか気味が悪くて自分の知らない異国の言葉で飾り立てられていたけれど、イメージを示す絵だけで、すぐにそれが意味するところが分かってしまった。  そのバナーを押したときに、自分は何をしているんだ、と内なる理性が僕を押しとどめようとした。なんの未練もないはずなのに、そんなに不確実なことをしてまで知りたいなんて、どうかしている、と。  内なる衝動もそれに答える。別に、自分にはどうでもいいことに成り果てたが、恋もつい先ほどまで生きていたんだから、供養をしてあげなければいけない。それに少し時間を割くことまで否定されるのは、なんとも耐え難い、と。  自分の中で延々とループし続ける善悪の秩序に、流れる無音の精神は鎮まらないままに、耳にはサイトから流れるエキゾチックな音楽、もう発狂しそうだった。情報が整理できない。こんなところで情報を受け取ってしまったら、もう二度と自分の消し去りたい過去から逃れることが出来ないんじゃないか、と散々悩んだ挙句、結局、そのサイトに描かれている珍妙で勝ち誇ったような顔をしたランプの魔神の導きに僕は従っていった。  サイトにある「人やキャラクターを思い浮かべて」というメッセージに従って、まさにきょう振られたばかりの女子を思い浮かべる。なんて甘えた妄想をしてしまうのだろう、と少し頭を振る。そして「スタート」の文字をタップすると、その魔神が、誰にでも簡単に答えられるような質問をしてくる。僕はそれに答えていれば、それでいいようだった。 『男性ですか?』  いいえ。 『30代ですか?』  いいえ。 『名前に漢字が入っている?』  はい。 『眼鏡をかけていますか?』  うーん、たぶん、いや絶対かけていたはず。 『セクシーなビデオに出たことがある?』  そんなの、いいえ、に決まってる。 『その人は個人的にあなたを知っている?』  これはどうだろう。僕は間違いなくあの子のことを知っていたけど、彼女が僕のことを知っていたかどうかは全く分からない。 『学生ですか?』  はい、間違いなく。 『その人は人気者ですか?』  ……たぶんそう、部分的にそう。 『その人の部活動は、体育会系?』  残念、ガチガチに文化系なんだよね。 『背は高いですか?』  はい。身長の低い僕がコンプレックスを抱くくらいには。 『さっぱりした性格?』  これも間違いなくそう。表向きに振る舞う顔は明るく利発そうな優等生だし、僕の告白を断った時だって、まるで僕の気持ちを慮ったからねと言いたげに、さらりと流れるように済ませたけれど、きっとひとりでいるときの彼女はもっとずっと暗くて深い。僕がそうなんだから、彼女もきっとそうなんだ。 『その子は、白いシュシュをしている?』  即座に自分の指は「はい」を押していた。核心をついた問いを突然ぶつけられて、処理能力を越えてしまったのだ。どぎまぎするのは、なんでこんな個人的なことを知っているんだろう、という疑念。狂気。僅かな恐怖。  誰も目にかけないほど小さなシュシュのことを思い浮かべるのは、彼女に執着しているから、どれほど細かなことでも見えてしまうくらいに見つめていたってこと。そんなことを、なんで初対面のはずの魔神が? 僕はスマホに映っている魔神の目を見ている間、ずっと密かに困惑した。だけど、偶然に当たってしまっただけのことかもしれない、と思いたい気持ちもどこか端々にはあったのも事実だった。  生唾を飲み込んだ。少し手汗をかいていた。緊張が顔以外の場所に出るのは、自覚している限りでは初めての経験だった。 『その子は、──ですか?』  やはり、か。僕は自分がしたことの重大さと軽率さに呆れかえるほど悲しんだ。しかし、同時に奇妙な達成感も味わってしまった。見つけてしまったと思うことで、失恋相手をコンピューターに学習させ、これからの彼女の人生をほんの少し変化させるくらいの、いや、バタフライエフェクトを起こすくらいのことが起こるのではないかという期待すら感じた。  だが、それだけなら僕は自己満足の自慰行為に勤しんだ虚しさで寝転んでしまってもおかしくなかったはずなのだ。無為なことだと斬り捨ててしまえば、それまでだったんだから。  僕がそれでもスマホの画面から目を離すことが出来なかったのは、彼女の顔写真を誤操作でタップしたときに表示された、彼女を象る個人情報の暴走のせいだった。  そこに出ていたデータは、名前や生年月日から、住所や電話番号、家族構成、自室の写真まで、有象無象森羅万象が全て記載されていた。  僕は、最初、それを全く信じなかった。名前や誕生日だったらまだ知れないこともないけれど、どう見ても本人しか知り得ない質問にも回答されてしまっている以上、こいつは嘘デタラメを書き記しているんじゃないかと思ったのだ。それでも何度か見返すうちに、その記述内容がどんどん彼女の本来持っている気性である根暗な性格にぴったりと当てはまるようにして見えてきてしまった。  ベンチウォーマーだった自分のことなんか���ているはずもないのに、彼女は彼女なりに「誰にでも分け隔てなく笑いかける華凛な少女」を演じようとしていたのだろう。しかし、運の悪いことに、それが僕を不機嫌にさせてしまったのだから、仕方ない。  窓の外は、スマホにくぎ付けになっている間にもう闇の中へと溶けていた。全てを凍り付かせる月の光は、ぴきり、ぴきりと心の壁まで冷気で覆う。もう、目の前のサイトがいかにして個人情報を手に入れているとか、人智を越えたものに対する畏怖とか、そういうものをすっとばして心は既に歪なほうへとねじれていた。
 人を騙すつもりはない純粋な少女の姿を目で追ってしまう、そんな歪んだ独占欲のせいで、あのサイトを使った次の日から、僕は世間一般でいうところのストーカーになってしまった。そうでもしなければ、一人で満足に承認欲求も満たせやしないのだ。  いつかの歌に『怖がらないでね、好きなだけ。近づきたいだけ、気づいて』なんて歌詞があって、初めて聴いたときはまったく共感できなかったけど、今なら分かる。全て知ってしまった今だからこそ、僕には彼女にいまさら何度もアタックする勇気も根気もない代わりに、彼女のことをずっと見ていたいという気持ちだけがふつふつと湧き上がっていた。怖いくらいに、そんなことがとても純粋だと自分の中で思いあがっていたのだ。  現実にリンクしない世界の話じゃないのに、ゲームを操作している感覚を持って浮遊している。いま、自分はあの魔神が操作するアバターで、彼女は間違いなく最終ターゲットのヒロインに違いなかった。そう、視野狭窄だから、この眼にはボクとキミの二つしか映っていないのだ。  角を曲がって商店街の花屋が見えるあたりに、彼女が足繁く通う古めかしい喫茶店が見える。きっと、午後五時きっかりに彼女はこの店を出て、家に帰っていくのだ、とあのサイトに書いてあった。であれば、いつものようにここからつけていけば、彼女の一人きりの姿を独占できるに違いない、今日だってそう思っていたのだ。  そう「思っていた」と過去形になったのは、彼女が店を出たときに感じたただひとつの違和感によってだった。彼女はいつもジャムトーストとミルクティーのセットを頼んでいると書いてあったが、今日はいつもと違って口の端にストロベリージャムをつけたまま、どこか落ち着かないような気持ちでもって辺りをきょろきょろと見渡す(そのしぐさは相変わらず可愛かった)。しかしその後に、思いもかけないような光景を目にしてしまって、僕は思わず眩暈を感じた。くらくらしたのだ。  彼女は、店の中の方へ誰かを手招きしたと思ったら、財布を鞄の中に仕舞いながらドアを開けた男の手を握った。とてもその姿が仄かに輝いていて、僕は暗闇の中の宝石を見つけた気分だった。しかし、その輝きも、横にいるよく知りもしないような男のせいで一気にくすんでしまう。こ、こ、こいつは誰だ。一体、誰なんだ。俺の知らない人間を招き入れるのだけでも何か純粋なものを汚された気分になるのに、そんなに近しい距離で彼女と男が歩いているということで、もう、世の中に不条理しか感じなくなる一歩手前まで自分の心が乱されてしまう。  彼女たちに与えられた風はそのまま僕の方まで平等に吹き抜けた。そのおかげか、雨の匂いを敏感な感覚器官で感じ取るが、生憎、僕には傘がない。知り得た情報だけでは何にもならないように、いまここで降りそうな雨を防ぐには鞄を屋根代わりにしただけじゃ不十分に違いないのだった。 「僕の知らないところで……何で告白を……受けたんだ……」  僕の私怨を飲み込むほど彼女も子供じゃないことは分かっていた、つまり僕の方があまりに幼い精神のもとで行動していたことは相手にもバレているんじゃないか、と恐れながら生きていた。しかし、ここまで来てしまった今、もう止まることはできない。  僕はすぐさまスマートフォンのシャッター音が鳴らない改造カメラアプリを起動し、彼女と一緒に歩いている男の写真を撮った。もちろん、名前も、素性も、いやもしかすると僕と同じ高校であるという確証すらないのかもしれない。それでももしかしたら、彼女を『解体』したときと同じように、名前すら分からなくとも何者かが分かるはずだ、と僕は察知したの��──本当にできるかどうかはともかく。  興奮のあまり、通信料を気にしてしまうなんてこともなく、その場で例のサイトにアクセスした。僕は、そこで先に撮ったイメージを想起し、彼女を思い浮かべたときと同じような要領で、魔神が出してくる質問にただただ淡々と答えていった。 『男性ですか?』  はい。 『背は高いですか?』  はい。 『その人は百八〇センチ以上ありましたか?』  こればかりは、平均より背が低い僕がいくら相対的にといえども評価することはできないだろう。だから、分からないとだけ言っておいた。 『人気者ですか?』  これも全く分からない。この男のことを一度も見たこともないから、判断しようがないのだ。 『眼鏡をかけていますか?』  魔神は眼鏡フェチなんだろうか? (問いに対して、)いいえ。 『あなたの近くに住んでいる人ですか?』  正直、『近く』という言葉の定義次第だろうとは思うが、まあ、あの喫茶店から出て来たのだから、近所に住んでいるという解釈でだいたい間違いはないだろう。 『その人は目つきが悪いですか?』  その質問を見たとき、少し思い当たる節があって、さっき撮った写真を拡大してみた。男の目のあたりを比べてみると、たしかに鋭くて吊り上がった狐目が特徴的だった。 『どちらかというと暗い雰囲気ですか?』  彼女といたときの彼からは、──無表情気味ではあったけれど──どこか人格に欠損のあるような後ろ暗さを持っている感じはなかった。そして彼女もそんな奴を選ぶほど落ちぶれてはいないはずなんだろうって、そう信じたいだけだった。 『その人は、あなたの大切な人の横にいますか?』  魔神はなぜこんなにも意地悪で、絶望を促すようなことで僕を揺さぶるのだろう。好きになったのに、好きになれなかったという屈辱的な現実に死にたくなるけれど、しかしそれは厳然たる事実を示しているに過ぎなかった。彼女は好きになりたかった大切な人で、その傍にあの憎き男がいたのだ。それは僕の目が捉えた紛れもない、正しいことなんだと、再び絶望の淵に突き落とされた気分だった。  そして、それが最後の質問だったようだ。僕は、魔神の考える姿を見て、この魔神は電子空間上の存在だから感情の正負もないし誰かの悪意も感じないはずなのにどうしてこんなに「悪意」の姿が見え隠れするのだろう、と訝しんだ。  数分の後、やはり僕の知らない男の名が画面に表示される。彼女と同じように顔の画像はタップすることが可能となっていて、やはりこれも彼の個人情報を確認することが出来る。  男の名を知り、その住所や電話番号、学年やクラス(僕が知らないだけで、彼は同じ高校の同級生だった)、好きなものや嫌いなもの、所属する部活動、家族構成、果てには性的嗜好やバイタルデータ、その全てを知った時に覚える慄然とした気持ちを、僕は否定しようとした。  ──イマ、ボクハナニヲシヨウトシテル?  否定しようとした気持ちは間違いなく理性だった。しかし衝動はもはやあのサイトに出て来た魔神のコントロール下にあって、彼を罰せよ、彼を憎めよ、と原始的な生存本能でもって敵対する雄を蹴散らそうとする。なぜ魔神の制御を受けていると言えるのかというと、もはや今この場所に立っている自分は、あのサイトを見て行動を起こす前の失恋したときの自分とは、まるきり行動規範が違うからだ。いくら誰を否定しようとも、それを傷つけることを選ばなかった自分が、「復讐」の二文字さえ頭によぎるくらい、それくらい海より深く山より高い嫉妬に狂わされていた。  ──オイ、オマエノテキッテノハ、アイツラダロ?  内なる声のナビゲーションは、僕を路地裏への暗がりへと誘って、そのまま潜む。  ぐらぐらと実存が脅かされる音がする。魔神が把握していた位置情報によれば、彼女と男は、喫茶店から商店街を突き抜けるかと思いきや、そこから脇道に外れて、地元でも有名な治安の悪い通りへと進んでいった。  通りの悪評は、ネットで調べなくたって、この町では暗黙のうちに知れ渡っているところだ。路には吐き捨てられたガムと鳥の糞が交互に撒き散らされていて、使い捨てられたコンドームの箱であるとか、あるいは良く知らない外国産の薬のゴミ、タバコの吸い殻、そういったものがあちらこちらにあった。何度綺麗にしたってそうなるのだから、周囲の人々もほとんど諦めているに違いない、と僕は思っている。  ──大丈夫だ、僕にやましいことなど何一つない。  そんなステートメントとは裏腹に、やましいことだらけの僕が足を進めた。  辺りは灯も少なくて、闇の青さがすぅっと浮かび上がっているのだ。その青さが、心霊現象すら思わせるくらい非人間的な冷たさを含んでいて、僕はまだ秋にもなっていないのになぜか背筋が凍るように寒かった。  慎重に、痰とかガムとか糞を踏まないように気を付けながら、彼女らの後ろをつける。もはや気づかれることが怖い、なんて地平はいつのまにか超えていた。もう、死ねない僕は幽霊になって足跡を残さずにどこにでも付いていければいいんじゃないかって、そのくらいのことはずっと考えていたのだから。  暗い路地の隙間から、一軒、また一軒と光が漏れ出しているのを僕は見た。藍色の中から浮かび上がるそれを神々しいと表現するのは、とても浅はかなことだ。なぜなら、その光は林立するラブホテルからラブホテルへとつながっていたのだから。  光を追えば、必ず彼女たちへと繋がった。それは、到底避けられないような類の天災に似ていた。月並みな表現だが、雷が落ちたときって、こんなにビリビリするものなのか、と雲一つない空に思うのだった。  そして、こんなときに限って、あの告白を断られたときに言われた台詞が思い浮かぶのだ。 「──……君って、なんで私のことが好きなの? だって、私は……君のこと、まったく知らないし、興味もないのに」  知らないわけないだろう、と思っていた。彼女のことなら何でも知っていると勘違いして告白して、そして彼女のことを全て知ることが出来たと錯覚した今もまだ、勘違いしている。きっと僕がストーカーだと彼女が知ったなら、それはそれで彼女はゾッとするだろうが、何よりそのときに僕に向けられるであろう視線で僕は瞬間冷凍されるだろうと思った。一方通行の愛でもない、まがいものを見るような顔をするだろう……、ふたりとも。  しかし、歩き出した足は止まろうともしなかった。もう、これは魔神のせいなんかではない。自らの本能が、それでも自らの愛を受け入れなかった彼女らに罰を与えんとしているのだ。  汚れっちまった悲しみに、なすところもなく日は暮れるのだ。何も生まないことは知っている。  彼の背中を目がけて、一気に距離を詰め、家から持ち出した果物ナイフを何度も突き刺す、何度も突き刺すのだ。一度じゃ、人は死なないから、念入りに、何度も刺すのを忘れずに。ついでに、目撃者となる彼女にも、そうした鋭い苦痛を分け与えてやる。誰かに返り血でバレたって構わないのだ。もはや復讐は目的であって手段でもあった。 『あなたが復讐したい相手はいますか?』  魔神に問いかけられる声がして、ふとナイフを取り出す手が止まる。……そりゃあ、もちろん、殺してやりたいほどなんだ。それをなんだ、今更どうしたんだ、と僕は少し愚痴るような表情で心の中のランプに問いかけた。 『あなたは、相手があなたのことを知っていると思いますか?』  どうだろう。彼女が僕のことを知らないはずはない──覚えていないかもしれないが──、だから彼女から男へと「こんな情けない男がいたんだよ」くらいのことは伝わっているのかもしれない。答えは『部分的にそう』ってところだろうか。 『あなたは、相手があなたのしようとしていることを知っていると思いますか?』  そんなことはない! 僕は叫びたくなるのを抑えた。  死にたくなるほど惨めで飢えた獣が何をしたって構わないと思われているのかもしれないが、相手は僕のことを「覚えていない」とか言った奴なんだから、知らないに決まってるだろうよ! 『あなたは、相手のやろうとしていることを知っていますか?』  全く、ひとつとして知らない。それが答えで、特にそれ以上のこともない。大体、相手は間抜けにも復讐されて殺される側なんだから、これ以上彼女のことを考えるのは時間の無駄だ。  もう、さっさとめった刺しにしてやりたい。だが、魔神の声は質問が終わるまで僕を離してはくれないのだ。  魔神は、突然すっとぼけたような声でこんなことを問うた。 『あなたは、いま、幸せですか?』  幸せの定義にもよるだろうな、と僕は思った。そもそも、僕の周りにある大体のことは僕が不幸になるように出来ている。それを前提にして彼女や傍にいるクソ男を恨むという今の状況は、一面的に見れば幸せとは程遠い。しかし、反対から見てみれば、彼ら彼女らさえ消してしまったなら、恨まざるを得ない対象から解放されるのだから、それを幸福と呼ぶことだって僕は厭わない。  僕はそんなことでもって、結局『部分的にそう』としか答えられないのだった。  そして、それきり魔神の声は聞こえなくなった。  僕は、魔神が何をしたかったのかさっぱり分からなかったが、それを聞いたことによって、復讐をすることの意義であるとか正統な理由を獲得することに成功したのは確かだった。  まるで霧に包まれたかのように謎深き彼女のことも、あるいは隣で見せつけるように笑って彼女の手を繋いでいる男のことも、今では僕のスマホの中にある情報によって、地獄まで追いかけてやることすら可能だって、いったい誰が想像したんだろうね?  僕は人の悪い笑みを浮かべて、鞄から想像通りに果物ナイフを取り出す。そこから何十歩か歩めば、彼の背中に、満願叶って二度と消えない傷を刻めるのだ。その瞬間に僕はこの世で受けて来た耐え難い苦悩から逃れることができるし、くだらない集団から一抜けすることもできる。ああ、ようやくこの時が来たのだ! 晴れがましい気持ちで、すっかり夜になったこの町の空気を、一度だけ大きく肺に取り入れる。……少しだけ、煙草臭かった。  恐ろしい計画は、血飛沫で清々しく終わりたかった。だから、勢いをつけて、彼の背中へと突進する構えでもって飛び込んでいった。  ぐさり。  その擬音が生じたのは、彼の背中ではなく僕のお腹であった。瞬間、内臓の中を抉られるような深く鋭い痛みと、今にも沸騰しそうな血の熱さが僕の中を駆け巡る。  イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ──イタイ──イタイ…… 「お前がやろうとしてたことなんか、全部バレてんだよ。  知ってるだろ、このアプリ?」  男は、息絶えかけている僕にとても不快な微笑みを向け、スマホの画面を見せた。朦朧とする意識と、刺された衝撃でかけていたメガネが吹っ飛んだせいで弱まった視力でも、それは確かに分かった。『部分的にそう』なんて玉虫色の回答をするつもりもない。 「ああ、知っているよ」  魔神の顔は、俺を嗤うように口角が吊り上がっていた。思い返してみれば、さっきの声は警告だったのか? ……なんにせよ、全ては、あの魔神の掌の上で出来上がっていたことであって、きっと世界のシステムの中に仕組まれていたことだったのだ。  イタイイタイイタイ……イタイイタイ……タスケテ……イタイイタイイタイイタイイタイイタイ!  きっとこんな腐った路地じゃ、助けを呼んでも誰も来ない。おまけに僕は果物ナイフを持っていたから、仮に彼が罪に問われるとしても正当防衛として弁護されてしまうのだろう。  僕は意識を手放す前に、僕の中に現れた魔神に問いかけた。 『これは、僕が死ぬために仕組まれたことだったのか?』  答えは、なかった。答えるはずもなかった。これは憶測でしかないが、僕の中に魔神はいなかったのだ。あくまで、純粋な狂気が詰め合わされただけの自分を、あのサイトが後押ししただけだったのだ。  ああ、ああ、思考する能力がだんだんと弱まっていく……。  とある恋を葬るための赤い噴水が、僕の身体から吹きあがるときに──、白いサザンカが彼岸に揺れているのを見た。  その花言葉は、『あなたは私の愛を退ける』。
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2020/04/08 静寂
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年明け前に書いていたものを引っ張り出してきた。12月29日に書いたものらしい。この暇な期間色々書いたがどれもしっくり来ず。結局下書きに残っていたものを採用。これもその時にはしっくり来なかったんだろうが、何故かゴミ箱行きにならずに済んだ珍しいもの。相変わらず文章が堅いな〜。
新しい事を始めると、最初は不安でしかない。何処を調べても「初心者向け」だとか「これを読めばすぐに始められる」とか書いているが誰も肝心な部分を書いていない。例えば、「あれを持ってきて」と言われる。大体指を差して言う。が、あれとは具体的に何なのか。材質、大きさ、色、名称。そこにそれだけが置いてあればさほど迷うことは無い。でも、何故かそうゆう時に限って、何個かある内の1つを指している。「一番左端の棚の、2段目の1番小さい鉄のボウルを持ってきて」くらい言ってもらわないと、こちらには全く伝わらない。そんで結局、これでいいとは言うが自分で後から別の物を持ってくる。この徒労。
分かりにくいかもしれないが、この様な具体的な部分が全部抜けている。説明書の説明書が欲しい。誰が見ても説明している人と全く同じ事が出来るよう具体的に、簡潔に。自分で調べろという話なのだろう。結局、その様な物は多分出発地点を示しているだけなんだろう。事前準備=初心者の手前は自分で調べて用意しておけと。それくらいしろよと。普通の人はそこでやる気を出して調べるのだろうが、自分の場合そこで折れることが多い。残念ながら思ったより不親切な先輩達だ。すぐに人のせいにするし。
話は変わるが、「若い」というだけでチヤホヤされる。何かにつけて「若い」という単語を使う。「若い」だけで嫉妬される。以前は意味が分からなかった。そんなにも価値があるものなのかと。でも、だんだん歳を追うごとに「若さ」というものがどれだけ尊いものなのか分かるようになった。というか、単純な話だ。個人的に若いと言われるの年齢は30前半までだと思っている。また、日本の平均寿命は83歳だそうだ。若いと言われるのはたった30年間だけで、後の50年間はどうなるのだろう。その50年もの間、果たして生きているだけの価値はあるのか。決してチヤホヤされたい訳ではないし、死ぬ覚悟も無い。「若い」という言葉に捕らわれて、自分には「若さ」だけしか取り柄が無いように思えてくる。これはもう洗脳に近い。「若いうちに勉強をたくさんしておきなさい」と言われるが、それは「歳を取った後、能のない人間にはなるな」の様な裏返しというか戒めみたいな言葉で、能のない人間は一体どうなるのか。こんな事を考えては、色々と着飾れそうなものを調べるがどれもしっくり来なくてただただ時間が過ぎてゆく。とりあえず、無難に何かの資格を取りたいとは思っている。資格を持っていればどこかには転げ落ちる事が出来ると思うので。行き当たりばったりの人生なんて羨むだけ無駄だ。そんな突飛なことは出来ない。真面目なので。貴方は貴方で良い、とかそんな言葉は全く聞こえない。
と、まあこんな事考えていたな〜と思い出しつつ結局勉強は最近始めたばかり。こんな時だからこそ、と時間を有効活用したいとは思いながら結局は寝てばかり。最近急に暖かくなってきたので、毛布も直しておらずその中ですぐに寝てしまう。そんなもんだ。何かと理由をつけては何もしないのは悪い癖だ。癖とか言えるほど大層なものではないけど。
もっと明るい話は書けないのかね。こんな時だからこそ。でも期待するだけ無駄なんだよな〜。というか、思い込みだと思うけど、昔から人に過信される事が多いんだよね〜。頼むから過信なんてしないで欲しい。こっちはそれが苦痛だし。変に期待されて、その価値が徐々に下がっていくのは目に見えてるし。自分は誰かに期待はしないし。人に期待するだけ無駄なのは十分過ぎる程分かったし。例外は少なからず居るけどね。書き始めると殻にこもるの本当にどうにかしたいよね〜。
写真は引っ越しの手伝いに行った時のもの。単純に寂しい。たまに寄れる機会があれば手土産でも買って行ってやろうと思う。そう思えるのはこの人が初めてだ。
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otoha-moka · 5 years
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ちょぎ←くにからのちょぎくに
朝言ってたやつ。ちょぎ←くにからのちょぎくに。 まんばが長義くんに片思いしてて、長義くんはこの頃は「写しが本歌に懸想など意味がわからない」とか思ってて、その事実に毛嫌いしていたので、まんばの気持ちに気付くと、ちょっとからかって振ってやろうとかそういう出来心で、
まんばを呼び出し「お前、俺のことが好きなんだろう?」と詰まった。自分を「偽物」と呼び嫌う彼を、それなのに恋しく思ってしまう自分を責めては、でも、こっそり見るくらいなら許されるだろうか、と思っていたまんばは大層慌てふためくんだけど、
長義くんはそれに対して「いいよ、付き合ってあげる」と言ってしまう。というわけで、長義くんはまんばに恋愛感情はないまま恋人になってしまったが、まんばから長義くんを求めてくることはない。長義くんは不思議に思うけど、何せ長義くんは現状そういう意味で好きではないので、
自分からまんばを求めて抱こうとかそういう発想には至らない。でも、何も無いというのもどうなんだ?とそこそこ真面目に長義くんは考える。それで、入ってたドラマにでてきた指輪を渡す光景を見て、本当に気まぐれに適当な、それこそおもちゃの指輪なんかを買ってきて、まんばに渡す。
まんばは少し驚いて、それから「ありがとう、大事にする」と嬉しそうに目を細めるのだった。こうしていると、長義くんの良心にちくりと刺すものがあったけど、でもここまでやってこっぴどく振ればこいつも俺への想いなど捨てるだろうと思っていたし、
何よりも、自分の行為に対して「よくないこと」という認識が長義くんにはあるので、だからこそ認めがたかったために、引き摺っているのもある。 ある晩、長義くんはその日夜戦出陣だったので帰ってきて夜遅くにお風呂に入って、それで風呂上がりに縁側を歩いて自室へと戻ろうとしていたときだった。
まんばが縁側に座っていて、気まぐれに渡した指輪を月明かりに照らしている。何となく声をかけてはいけないような気がして、長義くんはさっと息を潜めて隠れた。すると、その日長義くんと同じ部隊だった堀川くんが逆側から歩いてきて、まんばに気付くと「兄弟、まだ寝てなかったの?」と話しかける。
それから「…それ、指輪?」と尋ねた。まんばは「…ああ、貰ったんだ」と少し声色を明るくして言うので、「そっか。…あ、そういうのって、左手の薬指に付けるんだよね」と堀川くんが察してくれて返す。しかし、まんばはそれに対して「いや…それは、出来ない」とこたえた。
聞き耳立ててる長義くんがどういうことだと思っていたら、堀川くんも疑問に思ったらしく聞いてくれる。まんばは「…あいつは、別に俺のことはなんとも思ってないんだ。だから、そんな勝手はできない」と言って、
それから、何か言いたげな堀川くんを制して「好きでいることを許してくれているだけで、もう十分なんだ」と不器用そうに微笑むのだった。 翌朝、長義くんは昨晩のまんばの言葉とあの微笑みが頭から離れなかった。だって自分の打算など全て気付かれていたのだ。自分でも酷い仕打ちをしたと思う、
それでもなお、何一つ糾弾することなく、今だって斜向かいに座って朝ご飯を食べている。じっと見ていたら視線に気付いたのか、まんばはちらりとこちらを見て、少し恥ずかしそうに目を逸らした。その行動の一つ一つが長義くんには不可解だ。
こちらはお前の心を弄んでいるようなものなのに、な��そんな顔ができるんだ。眉を顰めて長義くんはそう思う。見れば、やはり指輪はどこにもしていなさそうだった。
そんなこんなで、イライラが募る長義くん。まんばは相変わらず何かを求めてくるようなことはない。そもそも長義くんは後々振る予定だったのに、まんばが「好きでいることを許してくれている」だなんて言うのを聞いたせいでタイミングを逃した(と、長義くんは感じている)。それもまた腹が立つ。
なんで腹が立つのかはわからないけど…と、そんな感じで、長義くんが向かった先はまんばの自室。夜だし、まんばは今日は出陣予定などもないから、自室にいるだろう。そう思って、声をかけることもなく、勢いよく戸を開ける。「…長義?どうしたんだ、こんな時間に」とまんばは驚いて長義くんを見る。
その瞬間にまんばが慌てて何かを隠したのが見えて、長義くんは無言でズカズカとまんばの方へ歩いていって、捻りあげるように手首を掴む。「痛っ…な、なにするんだ…っ!」「今、何を隠した?」「何、言って…」「何か、隠しただろう?何を隠した?」「…隠してなんて、」「…ふぅん、引き出しね」
そういって、目が泳いだまんばの視線の先、手近にあった文机の、勢いよく閉めたせいで少し開いてしまっている引き出しを開けると、そこには、手の取りやすい位置に例のおもちゃの指輪があった。「これ…」「…っやめろ!」「…俺があげたものなんだから、俺が手に取っても問題はないだろう?」
長義くんがそれを手に取ると、まんばは零れそうなほどに目を見開いて、それから「返せ!」と声を荒らげ、長義くんが掴んでいた手を振り落として、長義くんが持っていた指輪を奪うように取り返す。まるでお気に入りのおもちゃを取り上げられた子供のような反応に、長義くんの苛立ちはさらに募る。
「…抱いてやろうか?」そんな長義くんが思わず放った言葉はそんな言葉だった。まんばは固まってしまって言葉がでない。ようやく出たと思えば「は…?」という一音だけ。長義くんはそんなまんばの様子に構うことなく続ける。「聞こえなかった?抱いてやろうか、と言ったんだよ」「…何、を」
「少なくとも、おもちゃの指輪より余程満足できるだろう?」その言葉は言外に、だから指輪は手放せ、と言っていた。それはまんばにも伝わったようで、まんばは何度も首を横に振る。拒絶だった。長義くんは頑ななまんばにすっかり興醒めしたとでも言うように立ち上がる。
「…そんな、おもちゃの指輪の方がいいだなんて、偽物くんは随分と少女趣味だったんだね」「…なんとでも言え」そうして長義くんは嵐のようにまんばの部屋から出ていくんだけど、長義くんが部屋から出ていってからもまんばは放心していて、ずっと障子戸から目が離せなかった。
ふと手に握られた小さいものの感覚がして、おもちゃの指輪に目を向ける。自分の感情など、このおもちゃの指輪と同じで、長義にしてみればなんの価値もないんだろう、だなんて、そんなことをふと考えた。それでも好きだというのだから、自分は到底どうかしている、とまんばは自嘲する。
はた、と自分勝手な考えをしていた、とまんばは思い直した。思いもよらない相手から唐突に恋愛感情を向けられるのは、やはり酷く気味が悪いものだ、とまんばは自身を戒める。「…だから、好きでいていいというのは、幸せなことだ」まんばはひとりきりの部屋で、自分に言い聞かせるようにそう呟いた。
そんなこんなで長義くんは相変わらずイライラしていた。自分よりも自分が気まぐれてくれてやったものを、自分のことが好きだなどと宣う写しは優先した。ひどい仕打ちをしているとは今でも思っている。でも、まんばの方から何か糾弾すること相変わらずない。
ひょっとして、あいつはその実、俺のことは大して好きじゃないんじゃか?と 長義くんは思いついてしまう。おもちゃの指輪を大事にしているのも、案外本当にああいうのが好きなのかもしれない。何せ、長義くんはまんばのことなんて何も知らないのだから、まんばが何を好きかなんてのも見当がつかない。
そんなこんなで、状況は進退のないまま日々は過ぎ去っていく。そこまで来て、長義くんはここまできておいて自分から別れを切り出すのは癪だと感じるようになっていた。どうせ、まんばは自分が恋愛感情を持たずに付き合うことを持ちかけたことに気付いている。
今別れを切り出したところで、別に恋人らしいこともしてないし、「ああ、そうか」で終わるのではないか、それは嫌だ、と長義くんは考えていた。それどころか、あの様子なら、気まぐれにやった指輪の方が今の関係よりも優先順位が高いかもしれない。このまま別れるのはとにかく自分の気が済まなかった。
そんな膠着状態の明くる日、アクションがあったのはまんばの方だった。部屋を訪れたまんばは「先日はすまなかった」とこともあろう事か謝罪してくる。まさか、あの時抱いてやると言ったのを本気にした?今になって惜しくなったとか?なんて考えたが、まんばの言葉は全く違うものだった。
「わかっていたんだ、お前が、俺を好きではないことくらい…ずっと見ていたからな」そういって切り出したのは「だが、俺の我儘で付き合わせてしまっていたんだな…先日、それを思い知らされた…今まですまなかった」という言葉から始まる、長義くんが望んでいたはずの別れの言葉だった。
それからさらに数日。これでやっと終わった、と長義くんには思えなかった。もやもやとした感情がどうにも拭えない。そのもやもやが何か長義くんにはわからない。ただ、その原因がまんばだということだけははっきりとしていた。まんばはあからさまに長義くんを避けていた。
南泉くんが「お前ら何かあったのか?」と声をかけてくるほどにはわかりやすく。南泉くんは「まあ、こんなに大人数の本丸だし、関わろうとしなければ関わりようもないか、にゃ。あいつも忙しそうだし…」と続けてきた。
「…忙しい?」「にゃ?知らねーのか?ほら、あいつ昔からいるだろ、だからあちこちの面倒とか見てるんだってよ」そこで長義くんはハッとした。そう、今までは、まんばとは何もせずともそれなりに関わりがあって、話す機会も嫌でもあった。同じ本丸にいるのだから、それはそうだろう、と思っていた。
でも違う。長義くんではなく、まんばの方が関わろうとしていた。だから、長義くんはまんばと会う機会も話す機会もあった。まんばが避けているのではなくて、何もないならこちらの方が”普通”のはずなのだ、と気付かされた。もやもやとした感情にイライラしていた長義くんは、そこではっきりと自覚した。
まんばが自分に関わろうとしないことが嫌だ。「写しが本歌に懸想など」とはどの口が言ったのか、いつの間にやら、まんばに特別意識されている、自分が何もしなくても、恋愛感情を自分に向けている、ということに胡座をかいていた。つまり、長義くんもまんばを意識していたのだった。
とはいえ、今更どうしようというのか。長義くんはすでにまんばから別れの言葉を受けている。まんばが積極的に長義くんに関わろうとしていないから、長義くんの方から関わりに行かない���、そもそもまんばは捕まらない。けれど、その方法が長義くんにはわからなかった。
わからないなりに、長義くんの方も日に日に思うところは増えていく。そんなある日、非番だった長義くんが街へ出ると、まんばがどこかの路地に入っていくのが見えた。なんとなくあとをつける。「本当に……たのか?」「…ああ、間違いない……のはずだ」まんばと、それからもう1人の話し声。
聞き覚えがないはずがない。その声は他ならぬ自分と同じ、山姥切長義の声だった。もう少し近づいて会話を聞こうと試みる。「すまない、手間をかけさせて…」「別に構わないよ、持てるものは与えなくてはね」「…だが、」「いちいち気に病むな、暇だった、と言っているんだ」
そう言う長義くんの目に見えたのは、別本丸の長義くんが例のおもちゃの指輪を手にしている瞬間だった。まんばと言えば、あの日怒って取り返そうとした時とは打って変わって、ひどく嬉しそうにしている。どうして、なぜ。居てもたってもいられなくなり、長義くんは走ってその場を去った。
自室まで戻って、戸をしめると、思い切り息をつく。結構な距離を走ったからかそれとも別の理由か、バクバクと心臓がうるさい。今の姿を誰かに見られていたらどうしようか、とすら思う。嫉妬だった。明確な嫉妬だった。ふつふつとまんばに対する怒りが湧いてくる。
筋違いだとは頭では理解しているのに、それが止まらない。別れてまだそんなに時がたっているわけでもないのに、もう誰かを見つけているのか、とか、山姥切長義なら誰でもいいのか、とか、少なくとも俺より優先するほど大事なものじゃないのか、とか、そんなことを次々と考えてしまう。
熱くなりすぎて冷えた頭で、そのまま、まんばの部屋の前まで来た。さほど時間をあけずにまんばが帰ってきて、長義くんの姿を認めると足を止めた。「…どうしたんだ?そこは俺の部屋…」「…帰るのが早かったな」「え?」「てっきり逢い引きだと思っていたから、もっとかかると思ってたよ」
わざとらしくからかうようにそう言えば、まんばは不快そうに眉根を寄せる。「…何言ってるんだ、俺は万屋に主から頼まれていたものを買いに行っただけで…」「名目はそうだろうね」「名目…?」「とぼけるのもたいがいにしたらどうかな…あんなに、大事そうにしていたくせに」
そういうと、まんばは少し驚いた顔をして「…まさか、見ていたのか」とまるでひとりごとのように呟いた。言質を取ったとばかりに長義くんは畳みかける。「”俺”なら誰でもいいってところか、俺だって、お前がそこまで節操なしだとは思わなかったよ」
まんばはその言葉には耐えられないとばかりに「そ、んな…いくらなんでも、」と言い澱む。小さく聞こえないような声で「侮辱だ」と言ったのが長義くんには何とか聞き取れた。「いくらなんでも?…それはこっちのセリフだよ。突然別れようと言ってきたのも、ひょっとして”代わり”でも見つかったから?」
勢い任せに放った言葉だった。その瞬間、今まであまり変化のなかったまんばの表情が思い切り歪む。「…”代わり”を、俺が求めた、と…お前は考えてるんだな」絞り出すような、泣きそうな声でまんばがそういうのを聞いて、しまった、と長義くんは思った。
いくら冷静さを欠いていたとはいえ、まんばがどこかの山姥切長義と会っていて、自分のあげた指輪をそいつが持っていたとはいえ、言うつもりのなかった言葉だった。それがまんばの柔い部分を刺す言葉だと、長義くんは知っていたから。
「…あ、」そんなつもりではなかった、と言おうとするももう遅くて、まんばは無言で部屋に入って、ぴしゃりと戸を閉めてしまう。先日のように、無遠慮に入ることは、長義くんにはできなかった。
部屋に入って、扉を閉めて、まんばは座り込んだ。溜め込んでいた涙が止まらない。この日、まんばは主に頼まれて万屋に買い出しに行っていた。結構な量の荷物で、主が誰かに手伝ってもらった方がいいかもしれない、と言ったのを、買い物くらいひとりでできるし問題ないと答えてしまったのを後悔した。
袋にいっぱいに詰め込まれたものを持っていたから、うっかりひととぶつかって、荷物を結構派手にぶちまけてしまった。それらを拾って詰め直して、その時、持っていた御守りをどこかにひっかけて落とした。御守りの中には例の、長義くんから貰った唯一のものであるおもちゃの指輪をこっそり入れていて、
だから二重の意味で、絶対になくしたくないものだった。探せば近くに袋部分はあった。しかし、紐が切れてしまっていて、中身はなくなっていた。そうして、ひとり指輪を探していたところ、「やあ、偽物くん…そんなところで何してるのかな」と声をかけてきたのが、よその本丸の山姥切長義だった。
「…写しは偽物とは」「はいはい、それで?お前は地べたを這いつくばる趣味でもあるのか?」「…。その、御守りを、落としてしまって、袋は見つかったんだが、中身が…」まんばがそういうと、よその本丸の長義くんは少し考える素振りを見せる。
「…中身?札の類か?」それなら、残念だけど風で飛ばされてしまってるんじゃないかな、と続ける。まんばは言いにくそうにしながらも「いや…指輪、なんだが…」と返した。「指輪?どうしてそんなものをそんなところに入れているんだか…まあいいか。形状は?特徴とかある?」
「え…あ、いや…無関係のあんたに探させるわけには…」長義くんはその話を聞くなり、しゃがんでゴミ捨て場の影になっている部分なんかを見ていく。
まんばが慌てて制止するも「いいから、ほら、どんなやつ?色は?なにか装飾はされてる?」と訊ねていく。まんばも折角の好意を無下にするわけにもいかないので「…おもちゃの、軽い材質で、銀の指輪」と答えていった。
「全然見つからないけど…本当にこの辺りに落としたのか?」「…ああ、間違いない…袋の部分はこの路地の入口に落ちてたから、この辺りのはずなんだ」指輪という特性上、どうしてでも転がりやすく、どこかの隙間に落ちてしまっているのかもしれない。そうして、少し入り組んだ路地裏まで探していった。
指輪を見つけたのはよその本丸の長義くんだった。「あった、探し物はこれ?」「…あ、それだ。すまない、手間をかけさせて…」よかった、とまんばは指輪を受け取る。大事そうにしている様子に、よその本丸の長義くんは不思議そうにしながら
「それにしても、そんな安物の指輪が大事だなんて、お前変わってるな」と返す。「貰い物なんだ…すごく、大事な」「…ふうん?お前のところの審神者からのものとか?」審神者が幼いのなら、おもちゃの指輪をまんばが大事そうにしているのも頷ける、とよその本丸の長義くんは考える。
しかし、まんばは静かに首を横に振った。「…いや、」と答えて、それから言いにくそうに目の前の長義くんを見る。「…まあ、どうでもいいけど。そんなに大切なものなら今後はなくすなよ」「本当にすまなかった…その、ありがとう…」そういって、路地から出て、挨拶を交わしてふたりは別れた。
少し予定よりも遅くなってしまったから、急いで本丸へと戻る。主に買い出し分を報告して、片付けて、それから部屋に戻ろうとしたところで、部屋の前の長義くんを見つけた。何か用だろうか?貰ったものをなくしてしまったことへの罪悪感が少しありつつ、まんばは声をかけた。
一頻り泣いたからか、少し頭が痛い。けれど、さっきよりは冷静になった。きっと、長義は自分があの指輪を落としたところを見ていたのだろう、とまんばは考える。「…代わり、か」さっきはその言葉に頭が真っ白になってしまった。
本科が来れば自分は用済みになるだろう、とよく不貞腐れていた頃のことを思い出す。もうずっと昔のことだ。そのことを長義くんも知っていることはまんばにもわかっていた。だからこそ、長義は俺がそうすると思ってるんだろうか、自分がされたくないことを他ならぬ好きな相手にすると、と考えてしまう。
長義くんの中でのまんばがそういうやつだというのが、まんばにとっては何よりも悲しい。「偽物」と呼び嫌う彼をそれでも好きになったのは、長い年月によるものだった。好きになるきっかけや理由があったわけではなく、本当にいつの間にか好きになってしまった。
好きになったことに理由がないなら、嫌いになる理由もあるはずがなくて、こんなにも悲しくて苦しいのにやっぱり嫌いにはなれそうにない。好きだというのがそもそも迷惑だというのに、自分の感情というのはままならず、身勝手だ、とまんばはまた、体育座りをした膝に自分の顔を押し付けるようにした。
やってしまった、と長義くんはかつてないほど落ち込んでいた。自分の行動が自分でも明らかに間違ったと思ったからだった。夕飯の時間になってもまんばがどこにも姿を現さないので、早く謝らなければならない、とも思った。色々と考えてたせいか、眠りは浅く、翌朝はいつもより早く目が覚めた。
着替えて適当に部屋を歩いていると声が聞こえてくる。すぐそこの部屋から聞こえる声だった。「何があったのか知らないけど、これきりにしてよ?」「すまない…朝早くに起こすような真似をしてしまって…」加州くんの部屋から聞こえてくる声は、加州くんのものと、それからまんばのもの。
長義くんは通り過ぎようとして、足を止める。「ちっがーう!朝早くってのはいいんだよ、安定がいつも異様に早起きだから、俺もいつも起こされるし…朝の散歩とかお爺ちゃんみたいな趣味してるんだよなあいつ…ってそうじゃなくて、痕を隠したいから化粧をしてくれ、みたいなのをやめろって言ってんの」
「もしかして、かなり手間がかかるのか…?」「かかんないよ、俺の手にかかれば朝飯前!そうじゃなくて、長年一緒にいる奴が目元腫らしてんのを何もないように偽装するのが嫌なんだよ、もう、恥ずかしいからあんま言わせんなって」長義くんはぎくりとした。酷く傷付けたという自覚があったからだった。
昨日の泣きそうな顔を思い出す、泣きそうな、というよりも、入ることが出来なかった部屋で泣いていたのだろう、というのは会話から容易に想像できた。きっと、例えば兄弟あたりにバレて心配をかけさせたくないんだろうな、というのも想像に容易い。あいつの考えそうなことだ、と長義くんは考える。
「あーもう、お前擦ったでしょ、綺麗なのにもったいない…」「…綺麗とか、」「はいはい、わかったから目閉じて!」「あ、その…長義には、バレないようにしてほしい」バレたくないだろう対象が兄弟だと思っていたから、長義くんは驚いた。驚いて、さらに耳をそばだてる。
自分の名前が出てくるとは思っていなかった。「…やっぱあいつ絡みか。お前も頑張るね、俺はちょっと理解に苦しむな」「…俺は、欲張りすぎてしまうから。迷惑をかけたくないんだ…もう、これ以上は」その言葉を聞くや否や、長義くんは加州くんの部屋を遠慮なく開けていた。
開けた部屋は布団が敷きっぱなしになっていて、どちらももぬけの殻、部屋の住人はひとりだけ。正確には、部屋には予想通り部屋の住人の加州くんと、それからまんばがいた。まんばは長義くんを見るなり、悪いことがバレた、とでもいうようにさあっと青ざめた。声も出ないようでそのまま固まっている。
代わりにとばかりに加州くんが対応した。「…部屋に入る時は声くらいかけてよ」「それは失礼。でも、声をかけたらそいつは逃げ出すだろう?」「…まあ、そうだろうけどさ…あ、ちょっと?!」加州くんは固まったままのまんばをちらりと見るとそう返す。
そういう加州くんの隣にいるまんばの腕を、長義くんは引っ張って立たせると、そのまま部屋を出ようとする。「こいつを着飾るのは後日にしてくれるかな、俺もこいつに至急の用があってね。それじゃ、朝早くに悪かった」加州くんが抗議の声を上げると、長義くんはそう答えて、まんばを連れて部屋を出た。
行くあてがあるわけでもないので、とりあえず部屋に引き返そうと長義くんは自室を目指す。この本丸では部屋は希望に応じて一人部屋でも複数人部屋でも選べるため、長義くんは一人部屋を所望した。だから、加州くんの部屋のように同居人はいない。
しばらくされるがままだったまんばが「…長義、」とようやく言葉を発した。まんばが続きを言う前に、長義くんの方が「悪かった」と告げた。ふたりはその場で立ち止まる。「昨日のは、言い過ぎたと思ってる」「…思っていること、なんだろう」「違う!」
思わず大きな声が出て、まだ寝ている者も多い時間帯だったため、長義くんはしまった、と声を潜める。「確かに、思ったよ。でもそれは、本心ではないというか…そう、嫉妬だった」「…嫉妬?どうしてお前が…だって、お前は…」俺のことなんか、とまんばは口篭る。納得がいってないことは明白だった。
「ああ、そうだね。今から、随分と自分に都合がいいことを言うよ」そう言って、長義くんは言いにくそうに頭をかき、それからまんばに向き直る。「…お前が好きだ。けれど、お前のことが好きではなかったというのも真実。俺は、お前と別れてから気が付いたんだから」真剣な顔で、長義くんはそう告げた。
「な、んだ…それ…」まんばが発することが出来た言葉といえばそれくらいで、その言葉に思わず半歩後ずさる。言われた言葉がうまく飲み込めなくて、昨晩あれだけ泣いたというのに、またじわりと視界が滲んだ。涙脆いほうじゃなかったはずなのに、なんてまんばは心の隅の方で考える。
そんなまんばに対して、長義くんは続ける。「お前がよその本丸の俺に、あの指輪を渡しているように見えた時、本当に頭に血が上った。あんなに大事にしていたものを、そう簡単に人に渡すのか、と…いや、違うな、俺は…って、袖で拭うな、加州にも言われてただろう?」
長義くんがまんばの手を掴んで、まんばが服の袖で瞼を擦るのを止める。結果的に両手を掴んでしまったので、まんばは逃げることも出来なくなる。ぽたぽたと床に涙が落ちて、それをなんとか止めようとまんばは小さく身をよじった。「だ、って…お前、困る…っ」「…こう何度も泣かれると確かに困るけど」
「もう、こ、困らせたくない…っのに、止め、ないと…いけないのに…っ」そういってまんばはクズグズと泣き出してしまう。困ったのは長義くんの方で、どうすればいいのかと考えた末に、まんばの腕を引いて自分の胸にまんばの頭を預けさせた。
まんばは僅かに抵抗を見せたものの、頭をおさえるようにして抱き締めてしまえば、大人しく腕の中で嗚咽をもらす。「…まったく、どうしたら泣き止むのかな、お前は」「…お前の、せいだ…!お前が、お前が勝手だから!」「俺だって都合がいいこと言って、」「だから、諦められないんだ…っ!」「え?」
まんばの少しくぐもった声が、顔を上げたことでクリアになる。至近距離に、場違いにも少しドキッとして、長義くんは反応が遅れてしまう。まんばはそれには構わず「今更、遅いんだ…俺は…諦め、ようと、諦め、たかったのに…」と言ってついには泣き崩れてしまう。あたふたふる長義くんに対して、
さすがに騒動に気が付いた本丸のみんなが次々と出てきて「何があった?」「山姥切コンビ喧嘩っぽい?」「あー!長義さん、国広さん泣かせてる!」と口々に好き勝手言い出す。長義くんも、ここが本丸の廊下だということを思い出して、居た堪れなくなって、まんばを引っ張って部屋に連れ込む。
部屋に連れ帰って、戸を閉めればさすがに泣き止んでたまんばが「す、すまない…俺のせいで、お前を巻き込んで…」とどんよりした空気のまま謝ってくる。長義くんはその様子を見て「お前がそこまで泣き虫だとは思わなかったよ」とか言い出すから、まんばも「俺だって!こんなこと、なかった…」と
言って俯く。「お前が、俺をなんとも思ってないの、ずっとわかってて…でも、少しだけ、嘘でもいいから、と…黙っていた…」「…うん、以前も言ってたね」「お前が、気紛れでくれたものだって、そんなの分かってるのに、指輪…嬉しくて。この嘘が終わった時、残るものはこれだけだって、思って…」
だから、お守りにしたんだ。お前と別れたその日、あの嘘の日々をお守りにした。そういってまんばがポケットから取り出したのは、紐の切れたお守りだった。長義くんは自分の勘違いを察して目を逸らす。顔が赤い気がする、異様にあつい。「その、それ…紐…」「ああ、引っ掛けたみたいで、切れてたんだ」
そう言って、事の顛末を話されて、長義くんは自分の勘違いを嫌という程に恥じた。「…つまり、あの長義は…お前の持ち物を一緒に探してただけ…?」「…そうだと言ってる」「………その、昨日は本当に悪かった」「…別に、」俺も気にしすぎていただけだ、と言おうとしたところで、長義くんが口を挟む。
「でも、それさえあれば、みたいなのはやっぱり気に入らないな」「は?」今そう言う会話の流れだったか?とまんばは斜め上の長義くんの言葉に、言葉を詰まらせる。「それに、御守りにするなら…こっちにしてほしい」そう言って、長義くんはまんばの左手をとるので、まんばは目を白黒させる。
「お、まえ…っほん、と都合のいい…俺がどれだけ…」「だから、都合いいことを言うとさっきから言ってるだろう?」「…もういい」そういう勝手なお前を好きになったんだから。その言葉に、今度は長義くんが撃沈するのだった。こうして、まんばの片想いは、長義くんからの告白によって幕を閉じた。
後日、「今度は、ちゃんと本物をあげるよ」と本当に指輪を用意してくる長義くんと、それはそうとしておもちゃの指輪をお守りに入れ続けるまんばがいるとかいないとか…。 おしまい!最後ちょっと無理あったけどハッピーエンド!長々とありがとうございました!
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