大阪・十三 イマナカ 十三に降り立ったので、今年初めてイマナカさんでサクッとちょい飲みスタート いつものカウンター席 淡麗大瓶いいねぇ〜 #イマナカ #イマナカ酒店 #十三グルメ #十三ランチ #十三立ち飲み #十三飲み歩き #十三ちょい飲み #十三酒屋飲み #関西グルメ #関西ランチ #関西立ち飲み #大阪立ち飲み #大阪飲み歩き #大阪飲み #淡麗大瓶 #十三 #barhopping #standingdrink #juso (イマナカ) https://www.instagram.com/p/Cox5ys5y9Ui/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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【かいわいの時】文久二年(1862)四月二十三日:南画家田能村直入らが大煎茶会「青湾茶会」を開催(大阪市史編纂所「きょうは何の日」)
清湾茶会には、天気がよかったこともあり千二百人もの人が参加したと記録されています(『清湾茶会図録』)。茶席は、大長寺から桜宮まで本席7副席4の11席で、1席の定員10人。1200人だと、延べ120席を11会場で回した勘定になり、1席30分としても6、7時間は要したであろうと思われます。
ところで、この茶会に参加した国学者の近藤芳樹(長州藩士。当時、京にて情報収集活動を行う)が、周防防府の酒造家で文化人のパトロンであった上田光美に送った書簡[註1]によると、
・切符500人前を前日より発売
・当日に300人前を追加
正規チケットを持った参会者は1200人中800人で、つまり、あとの400人はタダ乗りとゆうことになりそうです[註2]。
船の席は小舟で送迎するので混雑はなかったが、その外の席には一度に大勢の者が押しかけ大混乱。切符を持っている人が席に入れず身動きもとれず、「あいつは切符も持たんと茶ァ飲んでけつかる」などと大声で叫んで大騒動になった。(近藤書簡を超訳)
茶会は、お世辞にも「清風」とは言い難い状況で、そんな中でも、切符をもった近藤さんは、ゆうゆうと全席コンプリートしたと述懐。勤王の志士でも、茶会は別格であったようだ。本人は9席と供述。実際は11席なので、2席は飛ばしたようです。世情穏やかならぬ幕末にあっても、たまたま京・大坂に滞在中であった近藤は茶会を楽しむ余裕があったようです[註3]。
[註1]『近藤芳樹書牘集一』(山口県文書館蔵)。幕末期の国学者。周防(すおう)の人。本姓田中、通称晋一郎、号は寄居(ごうな)。旧長州藩士で明倫館助教。維新後、東京に移り住んで、宮内省御用掛に任じ、御歌所寄人(よりうど)などをつとめた。本居大平、村田春門また山田以文に師事して、国文学、律令学を学んだ。同じ大平門の加納諸平を尊敬して最も歌をよくし、幕末歌壇に際立った活躍をした。学績として《令義解校本》《淫祠論》など、歌論書に《古風三体考》《寄居歌談》、紀行文に《陸路廼記(くぬかちのき)》がある(改訂新版 世界大百科事典 「近藤芳樹」の意味・わかりやすい解説 )。
[註2]売茶翁は、売茶の折、「茶銭は黄金百鎰より半文銭まではくれ次第、たゞのみも勝手、たゞよりはまけまうさず」(『近世畸人伝』1790)とゆう看板を掲げており、切符の代金はいくらであったのか定かではないが、タダで飲まれても文句はいえない。按ずるに、切符は単なる整理券で、茶会はタダだったのかもしれない。「僧侶の身分を放棄し、餓死に繋がる決断を下した売茶翁の声に想いを巡らし、且、清湾茶会が売茶翁の追善と懸賞の爲に開催されたとするなら、“無錢飮食”とゆう表現は、如何なものであらうか」(千三屋)。
[註3]近藤書簡には「伏見も大騒動ニ御座候然處大都會と申ものハ妙なものに而此内ニ過ル二十三日網島ニ於煎茶の大會御座候」とあり、丁度同じ日の夜に起こった伏見の寺田屋騒動にも触れている。
(写真)木村孔陽編・青木夙夜画『賣茶翁茶器圖』1823・1924復刻より「茶籏」
賣茶翁の茶道具は、翁と親交のあッた木村蒹葭堂が其の姿・形を記録した。翁沒後60年の文政6年(1823)に、蒹葭堂の後嗣・木村孔陽が、この圖を蒹葭堂と交友のあッた南畫家・青木夙夜に���させ、圖譜にまとめて刊行した(千三屋)。高翁(賣茶翁)の衣の紘(切れ端)で作成、「清風」の文字は大典禅師書。
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サイドシートの君
ゆかは旅先で呼んだコールガール。
地元が近いのと趣味が合った事がきっかけで連絡先を交換した。
そしてお盆の帰省のタイミングで会う約束を決めた。
ゆかのいる町まで車で一時間ほど。
来るか来ないかは半信半疑だった。
約束を破るような子では無いと思ってはいたけれど、連絡の返信の遅さがちょっと気になっていて、来なければ来ないでいいやと思っていた。
約束の時間の十分前に待ち合わせ場所に着いて車を停めた。
ゆかに着いた事と車の特徴を書いたメッセージを送る。
来ても遅れるだろうと思い、二十分後に発走する競馬を予想して買った。
既読が着いたのは約束の時間を二分過ぎたあたり。
あと五分くらいで着くらしい。
少し安心した。
それから十分後にメッセージ。
車のナンバーはこれですか?と来て、車の後ろを振り向くと、こちらを見ているゆかと目が合った。
手招きをして助手席に呼ぶ。
ゆかが席に乗り込んでくる。
「すみません」
「久しぶり」
「お久しぶりです」
「元気だった?」
「はい」
「ありがとね、来てくれて」
「いえいえ」
「じゃあ行こうか」
プランを二つ提案した結果、神社に行って近くにある貝出汁のラーメンを食べることにした。
近くのコンビニでコーヒーを買う。
「そうだ、さっき競馬買ってたんだよね」
「そうなんですか」
「一緒に見る?」
「見ましょう!」
一緒に見たレースは見事に的中だった。
ゆかも喜んでいた。
車を走らせる。
車内ではゆかが同棲中の彼氏に薦められて見た頭文字Dの話を熱く語っていた。
今度聖地巡礼に行くらしい。いろは坂はあのまんまだよと言っておいた。
ゆかが今日着ている服はライトなロリータ風のワンピースで、童顔の彼女にはそれがとても似合っていたので伝えた。
嬉しそうに笑うゆか。ロジータというブランドらしい。
田舎道を走っているとひまわり畑を見つけた。
下りてみると一面ひまわりが咲き誇っていて、その後方にある風力発電のプロペラがまたいい味を出していた。
夢中で写真を撮るゆかは無邪気な少女のようで、転んてしまわないか心配になるくらいだった。
車を再び走らせて神社へ向かう。
険しい階段を上って本殿でお参りをする。
「五円あった」ゆかが財布から硬貨を取り出す。
「俺は欲張りだから五円が十倍あるように五十円にするよ」
「なるほど!」
神様に祈ったことは今日が楽しく終わりますように。きつねの神様は俺を助けてくれるだろうか。
反対側に下りて行くと無数の赤い鳥居が並んでいる。何度来ても圧倒されるが、ゆかも同じだったようだ。
ここで少し雨が落ちてくるが気にせずに歩いていく。鳥居の中を歩いていくと横に水場がある。そこに咲く蓮の花を見つけたのでゆかに教えると鳥居から蓮にスマホを向けて撮影した。
白い花びらが水から顔を出して咲く姿は可愛らしさだけではなく強さも感じた。何となくそれはゆかの姿にも重なった。
高台から鳥居が並ぶのを眺める。
雨が本降りになってきたので木の下で雨宿り。
ゆかの持っている赤いバッグには傘が入っていないらしい。
「折りたたみもってくればよかった」
「雨降るなんて考えてなかったよ」
「県の真ん中の方は降るって聞いてたんだけどなぁ」
「しゃあないよ、ここ真ん中じゃないし」
しばらく経ってもやまない雨。結局少し濡れながら歩くことにした。
雨降りにも関わらず別な色の蓮の花を見つけて二人で写真を撮った。
階段を上って下り、おみくじをひいた。
天然石が入ってるおみくじで、パワーストーンが好きなゆかにはぴったりだった。
昼食の時間になったので店へ向かうが、時期や時間もあって行列ができていたので、同じく貝出汁のラーメンを出している別な店で食べることにした。
運良くすぐに座れ、ゆかとあれこれ話した。
ゆかは小学校から高校まで卓球をしていたらしい。
大学ではクラゲの研究をしていて、クラゲの生態にも詳しかった。
「一応理系なんで」
確かに同人小説を書き方を聞いたら実に論理的に話を作っているなと感じていた。
そんな話をしているとラーメンが出来上がって食べた。貝の出汁とバターの風味がうまくマッチしていて絶品だった。ゆかも気に入ってくれたようだ。
店の外に出るとまたもや雨。
近くの公園にあった遊具も濡れていた。
「晴れてたらやりたかったのになぁ」
「これじゃ濡れちゃうね」
残念そうにするゆか。
ここの段階で時間は十三時をまわっていた。ゆかは十六時くらいまでならと言っていたので、次の場所を迷ったが、思い切って賭けに出ることにした。
市街地へ車を走らせる。
「あのさ」
「ん、なに?」
「夜の仕事、まだやってるの?」
「いや、しばらくやってない。昼の仕事で稼げるようになったから。このままやめようと思ってる」
「そっか、昼の仕事が順調ならいいね」
「うん、もう知らない人に会わなくてもいい」
「お疲れ様。よう頑張ったと思うよ」
「彼には絶対言えないけどね」
「体調もよさそうだね」
「うん、抗うつ剤は飲んでないし、元気になったよ」
「よかったよ」
ゆかの手に触れて握ると、握り返してくれた。
川沿いの堤防を走る。
カーステレオからは真夏の果実。
市街地にあるホテルへ入り車を停めた。
ゆかの表情は暗くて見えなかった。
「いい?」
「タダじゃ嫌」
「そっか」
その返答は予測していた。元々は金で繋がった関係だ。
「いくらくれる?」
価格交渉が始まるが、割とすぐにまとまった。
タッチパネルで安い部屋を選んで入る。横にあるシャンプーバーの香りが鼻についた。
部屋に入ってソファに座る。
唇を重ね、ゆかの胸に顔をうずめた。
その後の事は何となくしか覚えていない。何度もキスをして、何度も愛を囁いた。
そして二人並んで眠った。
ゆかの寝息を聞きながら時間を気にしていた。
リミットの時間はとうに過ぎている。
目を覚ましたゆかに聞いた。
「時間大丈夫なの?」
「ああ、うん。別に花火があるからそれまでに帰れれば。そんな花火見たいわけじゃないんだけど」
その日はゆかの住む町で祭りがあって二十時から花火が上がる日だった。
「そっかそっか。一緒に見る?」
「うーん、誰かに見られると嫌だから」
「だよな」
その後はゆかの書いた小説を読んだ。そしたら俺もゆかに自分の書いた物を見せたくなった。
「ゆかの事書いた作品があるんだけど見る?」
「えー!恥ずかしいからやだ」
「まあまあ、自分だと思って見なきゃいいからさ」
「うーん、ちょっと興味はあるんだけどね」
そしてTumblrに投稿してたコールガールを見せた。
時に笑いながら、時に考えながら読んでいた。
「この表現好き」
ゆかを花に例えた部分が気に入ったらしい。
「人の書いたもの見ると勉強になる。すごく読みやすかった」
「ありがとう」
「今日の事も書くの?」
「そうだなぁ、たぶん書く」
「めっちゃ恥ずかしい」
そんな事を話しながら、不思議な関係だなと思った。
現実で会った人にTumblrを見せたのは初めてだった。
彼女でもなければセフレでも無い。そもそも会って二回目の関係なんだから名前をつけようにもまだ難しいだろう。
それでもこの関係は何だろうと思いながら気づけば温くなった風呂に二人で入っていた。
洗面台で歯を磨くゆかに後ろから抱きついたり、服を着るのを邪魔してみたりした。
帰路につく。
夕焼けの時間だった。
この様子だとゆかの町に着くのは十九時くらいになりそうだ。
「今日さ」
「うん」
「何で来てくれたの?」
「えっ、うーん…誘われたし暇だったから」
「そっか。お金もらえるって思ってた?」
「いや、それはない。ただ会ったらするかもなとは思ってた」
「そうなんだ」
「うん」
途中の海辺で夕焼けの写真を撮った。
「すごくいいね!あとで送って」
「いいよ、今送るよ」
すぐゆかに送った。
「ありがとう」
そっとゆかの手に触れた。自然と繋ぐ。
車は海沿いの道を駆け抜けていく。
町に着くと大勢の人で賑わっていた。
「どこで下ろせばいい?」
「真ん中は嫌だから…朝会ったとこ」
そこへ向かって車を進めると、警備の人が立っていて入れなかった。
「ちょっと入れないな…」
「うーん、どうしよう」
ぐるぐると町中を周る。
「やっぱ入れないよ」
「離れたとこなら一緒に見てもいい」
「えっ、あっ、そっか。じゃあそうしよか」
「うん」
「食べ物買いに行こか」
「屋台はダメだよ。知ってる人いるかもしれないから」
「そうだな。コンビニでいいか」
その町にある唯一のコンビニで食事を買った。
その隣りにある駐車場から花火が見えそうだったので、そこに停めて見ることに決めた。
花火が始��る。
ここでもゆかは写真を撮るのに夢中。
俺も撮ってみたけれど、信号が邪魔して上手く撮れなかった。
合間に見せてくれるゆかの写真は上手に撮れていた。
プログラムの間、ひたすらゆかはスマホをいじっている。その動きが止まると俺のスマホに通知が来た。
「アルバム作った」
開いてみるとトーク画面に日付が入ったアルバムが出来ていた。花火や蓮、ひまわりの写真がたくさんおさまっていた。
「おー、いいね。ありがとう!」
「ふふっ」
ゆかはまた外にスマホを向けた。
「あの色はリンで…」
花火の色を見ながらそんな事を言っていた。
「覚えたことって言いたくなるよね」
ゆかが笑う。そうだなと俺も笑う。
あっという間に花火大会は終わった。
「帰ろっか」
「うん…」
帰りに降ろす場所を探しながら車を進めた。
「あっちに行くと公園がある」
「そこで降ろす?」
「いや、遠いからいい」
「行ってみようか?」
「うん」
公園に行くと暗くてよくわからなかったが、日中は眺めがいい���ろうなと思った。
「あっちには小学校がある」
「行ってみよか」
何となくゆかの気持ちがわかった。
「あれだろ」
「なに」
「別れが惜しくなったんだろ?」
笑いながら言った。
「でも明日は友達と遊ぶから泊まれない」
「もうちょっとドライブするか」
「うん」
小学校へ入った。ゆかが通っていた小学校はかなりきつい坂の上だった。
「こんなのだからめっちゃ足腰鍛えられた」
「これは中々スパルタだな」
「でしょ」
小学校を後にして車を俺の地元方向へ走らせた。
「あれだよね」
「なに?」
「泊まっても寝ればいいじゃん」
「うーん」
「俺いびきかかないし」
「そうなんだ」
ゆかの右手に左手を重ねた。
「朝、めっちゃ早起きだよ?」
「いいよ。またここまで送るからさ」
「わかった」
「じゃあ、泊まろっか」
「親に連絡しとく」
コンビニでコンタクトの保存液とビールとほろ酔いを買った。
ホテルへ入る。今日二度目だ。
カラオケがついていたので酒を飲みながら二人で歌った。
夜は深くなっていく。
シャワーを浴びる。マシェリでゆかの髪を洗った。
洗面台でそれを乾かしてベッドへ入る。
互いに欲望のまま相手を求めあう。
眠っては起きて、キスをして、何度も何度も。
「俺に好きって言ってみてよ」
「言わない」
「いいじゃん、嘘でも言ってみなよ」
「嫌だ言わない」
「そっか」
力一杯抱きしめて、それをゆかも返した。
俺は六月にあったことを話した。
自殺未遂のことも。
「ガチで死のうとしたんだね」
「うん、そうだよ」
「生きててよかったね」
「ほんとそう思う」
「今も彼女のこと好き?」
「いーや、全然」
「そっか」
「新しい好きな人いるらしいし」
「いなきゃ好きなの?」
「いや、そういうわけでもない。俺にはあわなかった」
「切り替え早いね」
ゆかの首筋にキスをして眠りについた。
結局は予定の時間にゆかは起きれなかった。
俺も軽くは起こしたけれど、別れを早くしたくないなんてエゴが出た。
「私ほんと時間にルーズなんだよね」
と言いながら、そんなに慌てないゆかが滑稽だった。
「私と付き合わない方いいよ」
「どうして?」
「時間守れないし、好きなこと話すと止まらないし」
「時間を守れないのはよくないな。でもそれはパートナーがちゃんとしてれば支え合っていけるんちゃうか?」
「うん…」
ワンピースを着ながらゆかは俺を見た。
「うしろのチャック閉める?」
「閉めよっか」
「自分でも出来るけど」
「いいよ、閉めるよ」
背中を向けたゆかの背中のファスナーを閉めた。
「上のボタンもかけて」
「はいはい」
ボタンを掛けて後ろから抱き締める。
「かわいいよ」
「ふふっ」
ゆかにかわいいと言うといつも笑う。
そんなとこはあざといのかもしれない。
「友達との待ち合わせ場所まで送ってくれるんでしょ?」
「うん、送るよ」
「やったー」
「そのかわり」
「なに?」
「お金は無しな」
「えー、少しも?」
「当たり前だろ。泊まったし送るんだし」
「ふふっ、そうだよね。わかった」
「交渉成立な」
「電車代浮いたからいいや」
「なんだよそれ」
ゆかが笑った。
ホテルを出てコンビニでコーヒーと朝食を買った。
予定時刻までに着かないのはわかっていた。
友達やら予約しているカラオケに電話をしながら、車の中でアイラインを引き、ルージュを塗った。
「ちょっとはおしゃれしないと」
「昨日と同じ服だけどね」
「それはしょうがない」
「そうだな」
「そうだ、スッピンどうだった?」
「あー、うん。可愛かったよ」
「ふふっ」
相変わらず笑う。
海辺を見ながらゆかは言った。
「普段海見ないけど、やっぱりこっちの海のが好き。向こうはなんか深くて怖いから」
戻ってこいよ。なんて言おうと思ったけど、別に俺がそれを言える立場じゃ無い。
「やっぱさ、十八年見た海は特別なんだね」
「確かにそうかもな」
「今回帰ったら、次見るのは冬か」
「その時も一緒に見たい」
「うん、いいよ。あっ、あとは会いに来てくれれば会えるよ」
「行きたいなとは思ってるよ」
海辺を過ぎて内陸へ入る。
あと五分で目的地。
信号で止まった時にゆかの唇を奪った。
信号の色が変わるのを感じで離れる。
ゆかの表情はどこか寂しげだった。いや、そう思いたいからそう見えたのかもしれない。
カラオケの前で降りる間際にもキスをした。
去り際にゆかは俺を見てこう言った。
「死なないでね」
短いけど重い言葉だった。
「そっちもな」
車を大通りへと向かわせる。
何度もゆかの耳元で囁いた言葉を思い出す。
車線を変えながら車を一台二台と抜いた。
「俺って本当に」
アクセルを踏んで帰路につく。
サイドシートにマシェリの香り。
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カウンター、その145 ^ ^
The counter is a place to exchange smiles😊
立呑屋 三角
https://tabelog.com/kochi/A3901/A390101/39007120/
四十五圓
https://tabelog.com/kochi/A3901/A390101/39005523/
新宿ピカデリー コンセッション
https://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13093600/
西鉄イン 高知はりまや橋
https://tabelog.com/kochi/A3901/A390101/39004446/
洒落亭
https://tabelog.com/tokyo/A1318/A131812/13084030/
いろり庵 きらく 池袋店
https://tabelog.com/tokyo/A1305/A130501/13252171/
かめ幸
https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130101/13002319/
そば処 三津屋 エスパル山形店
https://tabelog.com/yamagata/A0601/A060101/6005290/
居酒屋 伝七
https://tabelog.com/yamagata/A0601/A060101/6002200/
鉄板ホルモン焼きオールドルーキー
https://retty.me/area/PRE06/ARE162/SUB16201/100001657279/
リッチモンドホテル 山形駅前
https://tabelog.com/yamagata/A0601/A060101/6000742/
ル・パン・コティディアン 芝公園店
https://tabelog.com/tokyo/A1314/A131401/13120999/
&BEEF shinjuku
https://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13274434/
I MUSIC BAR
https://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13280371/
ヒューマントラストシネマ有楽町
https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130102/13261559/
菩提樹
https://tabelog.com/tokyo/A1310/A131003/13003546/
武ちゃん
https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130101/13007710/
ファボリ
https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130101/13015842/
アーンドラ・ダイニング 銀座
https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130101/13136701/
てんぷら 近藤
https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130101/13004993/
Ron Herman Cafe 二子玉川店
https://tabelog.com/tokyo/A1317/A131708/13166283/
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休暇。
10月1日~長期休暇だという噂が職場に流れていた。長期の休みなら行きたい場所はたくさんあったが、噂が流れはじめたのは8月の末くらいで、そんな時期から用意しはじめたのでは何も間に合わない。釧路と舳倉島、どちらにするか悩んだが、どちらも現実的ではないのであきらめて、結局長期休暇は取らずに、四連休だけ取ってあとは出勤した。来年も同じ時期に長期休暇があるのなら、半年くらいまえには教えてもらいたいし(一年後の予定がすでに決まっているような生活をしている人間なので)それなら周到に旅に出られる。
とはいえ、せっかくの休暇なので何かしたいと思っていたら、東京のイゼルローンフォートレスでキルヒアイスのアフタヌーンティーへ行けることになった。
東京は文フリで年に多いと二回くらい行くのだが、単純に『遊びに行くだけ』というのは、何年ぶりか……。イベントまえのストレスや緊張、イベント後の疲れのない旅行というのは、もしかしなくても十年くらいは経験していないのでは? という…。
いつもは始発に乗るのをすこしゆっくりの電車に乗って名古屋駅へ。
平日の、しかも朝だからすんなり食べられるだろうと思っていた名古屋駅名物「ぴよりん」のモーニングは、びっくりするくらい人が並んでいた……。とりあえず名前だけ書いて、出かける直前にバタバタしてて買えなかったお土産を探しに行くも、あせってしまいぴよりんのバウムクーヘンを一個しか買えないまま、席へ通される。
そしてぴよりんモーニングを注文して食べる。
当たり前だがこの「カフェ・ジャンシアーヌ」は、ぴよりんを求めているひとがわざわざ並ぶお店なので、みんなぴよりんを食べる。いろんなひとが「ぴよりんモーニング」を注文するのを、「ああこの人たちはみんな、ぴよりんを楽しみにこのお店に朝早くにやってきたんだなあ」という幸せな気持ちで感じることができる。とてもいい旅立ちの朝だった。
新幹線は少し遅れている便もあったようだったが、わたしが乗るのは大丈夫だった。予定通り東京駅へ着き、約束の駅へ。
休日はとても並ぶというラーメンのようななにかのお店へ連れて行ってもらう。透き通ったスープに、きしめんみたいな麺(麺は10種類くらいからえらべたが、初心者なので先達に従って頼んだらきしめんみたいなのだった)、たくさんのネギとパクチーが浮いている。パクチー大好きなので、追加すれば良かった。とにかくめちゃくちゃおいしくて、スープまで飲んだ。
到着したときにはお店は結構すいていたのに、すぐに満席になって、お店を出るころには人が並びはじめていた。
皇居まで歩いて行ける距離だというので案内してもらう。
人生で実は皇居に行く(しかも結構奥の一般人が入れないようなところまで入れる)機会があったのだが、一��も行かなかったので、皇居は初体験だった。入り口は閉まっていて、見学はできなかったのだが、かつて皇居へ入る機会があったころからはずいぶん違う道と考え方をしているわたしには、そういうものなのだと思った。偶然だが。
皇居の周りは走っている人がたくさんいた。柳がたくさん生えていて、風が目に見えるので気持ちよかった。
「このお堀、冬は鳥がきそう」と言ったら、案内してくれた人が、「黒くて足がこんな鳥がくる」と指を三本立ててオオバンを表現したのが面白かった。たしかにオオバンは、カモとかと違って、指がわかれていて足がへら状になっていない(指がわかれていてそれぞれに水かきがついている)。
そのあとは、紅茶屋さんへ。いろいろ悩んだけど、暑かったのでレモンティーを頼む。たくさんおしゃべりして、二杯目も。ロイヤルミルクティーを飲む。どれもおいしかったし、カフェはとても居心地が良かった。
いつも東京で誰かに会うときは、イベントの後の打ち上げとかで、疲れとお酒でハイになってたり、時間も時間だから焦っていたりするけれど、ゆっくり時間を気にせずおしゃべりができたのがうれしかった。
だれかに会いに行く旅、というのを久しぶりにしたなあと思った。
その人とは別れて、イゼルローンフォートレスへ。十年来のフォロワーさんと会う。BL短歌の頃に出会っていて、タイムラインでは毎日のようにおしゃべりしているのに、会うのはこれが初めてなのが不思議。
イゼルローンフォートレスは「銀河英雄伝説」という小説のコンセプトカフェ(公式)で、物語の中の陣営で席がえらべたようで、イゼルローンを選んだよ、と言う話だったが、なにが違ったのかよくわからなかった。記念の銀貨・金貨をもらったり、コースターをもらったりした。ドリンクについてくるコースターにシェーンコップが含まれていたのを、ながれるように渡されたのがおもしろかった。
アフタヌーンティーのケーキにひとつめちゃくちゃ酸っぱいのがあって複雑な顔をしていたら「酸っぱいのきらいだもんね」と言われて、「やっぱりいつも一緒にいる人だ!」と思った。
ライチョウのぬいぐるみをもらう。夏羽と冬羽を選ばせてもらう。まだ夏羽のオスにしか出会っていないので、夏羽をもらった。
ひとしく一緒にわちゃわちゃしているフォロワーさんたちにお土産を買う。今日発送したが、よろこんでくれるとうれしいなと思う。
自分用には、箸を買った。迷ったけど、同盟の箸にした。
世界が平和でありますように、この小説の主人公の一人が語るような、健全な民主主義の世界にたどり着き、すこしでも長くそれがつづきますようにと祈る。
翌日。
泊ったホテルの近くに野鳥のサンクチュアリのような場所があるようだったが、とにかく「緑色のインコ(ワカケホンセイインコ)」と「オナガ」が見たいと思っていたので、目撃情報があり、さらに良く発生するという井の頭公園へいく。何年かまえ、みんなでアヒルボートを漕いで楽しんだ井の頭公園だ。朝早く到着したからか、あの楽しかったアヒルボートを漕いでいる人は誰もいなかった。
カメラを持っている人が何人かいて、鳥への期待が高まる。
池にはカイツブリとカルガモが浮いていた。
一生懸命探すも、オナガの鳴声とシジュウカラの鳴声しか聞こえないので、公園の管理塔で「緑色のインコはどこにいますか?」と聞く。
「夕方に群で飛んでくるけど、昼間はあんまり見ないね」と言われる。好む木とかが分かればそこから探せるのに…と思ったが、そういうのもないらしい。とりあえず玉川上水を遡る。オナガの声がたくさん聞こえるけど、全然見つからない。
ブラインドがもうけられているところがあって、鳥写おじさんがたくさんいたので覗いてみる。池があって、ムラサキシキブが池の周りに生えていたので、鳥は来そう。だけど鳥があらわれなかったので情報収集。ちょっと離れたところにたくさんいる場所があるとわかったので移動。
関東の人はもしかしたら「なんでこいつ、こんなにオナガ(とワカケホンセイインコ)を見たいんだ?」と思うかもしれないが、オナガは関東にしか住んでいないので、三重では見られないのである。
どきどきしながら歩いて行くと、まず見つけたのはオナガ。
「オナガだ!!!!めっちゃいる!!!!!オナガ!!!」もう大興奮である。オナガはしきりに飛びまわり、すぐに木の中に隠れてしまうので、まだ葉っぱが繁っている今は見つけづらいし、写真を撮るのがむずかしい。でもときどき、開けたところへ出てくるのでそれを撮影していると、なんか変な影が……飛んでくる……。なんて言うんだろう、ロケットみたいな……。日本にいるタイプの鳥ではない、形状の……。
目の前にとまったのはワカケホンセイインコだった!
「わーーーーーー!!!本物だ!!本物だ!!!!」
重いカメラとレンズを担いできたかいがあった……。このインコも木陰に隠れるし緑色なので、はっぱと紛れて見つけづらいし写真も撮りづらい……。
こんなトロピカルな鳥がなんでこんなところにいるかというと、外来種である。飼われていたのが逃げ出して野生化しているらしい。とても異様……。
寿命が30年くらいあるらしい。外来種についてはいろいろ思うことがあるし、その存在を全面的に肯定はしないが、かれらをここに持ちこんだのは我々人間なので、「彼ら」が悪だという立場にはわたしは立っていない。存在と言うよりは、「棲みつかせてしまった」構造や、行為を批判したいと思っている。
絶滅危惧種を「この目で見てことほぐ」必要があるとしたら(その行為の根底には人類の営為による贖罪と、その環境の改善への努力への約束が含まれると思う)、等しく外来生物も「この目で見る」必要があるとおもう。たしかに、都会の森の中に、この南国にいそうな姿は異様で、その「違和感」は、環境について考える動機になる。
とにかくワカケホンセイインコとオナガを見つけて満足する。
どちらも動き回る鳥なので、追いかけて歩いていたら、ひらけた場所に鳥写おじさんがたくさん集まっていたので寄っていく。
エゾビタキとキビタキを撮影していた。
今年はエゾビタキに出会ってないし、なんだかんだキビタキにもほとんど出会えないので見られて良かった。
名古屋駅でお土産にぴよりんを買いたかったので、はやめに東京を出ようと東京駅にもどる。
スマホリングが壊れてしまっているので、東京駅のちいかわちゃんのショップでちいかわちゃんのスマホリングを買おうと思っていたら、東京駅のちいかわちゃんショップは一時間待ちだった! あきらめて、東京駅にあるというクルミッコショップへ……人が全然いないなあと思っていたら、なんとクルミッコは売り切れ!
そんなぁ~~と落胆しながらお土産を物色していたら、普通の総合お土産ショップみたいなところにクルミッコとサブレのセットが売っていた。
「これ、おふくもち(赤福によく似た伊勢のお土産)みたいな……なんかそういうクルミッコじゃないよな?」と不安に思いながらレジに持って行くと、ちゃんと紅谷の袋に入れてくれたので本物のクルミッコのようだった。
崎陽軒のシウマイもほしくて、真空パックじゃなくてチルドのやつを探し回るが見つけられなかったので真空パックのを買って、お弁当も買って電車に乗る。
じつは朝、ホテルのバイキングでしこたま食べてから何も食べていなかったが、腹が減っていなかったので、帰りの近鉄特急で弁当を食べようと思って、新幹線ではもうすぐ車内販売がなくなるというシンカンセンスゴイカタイアイスを食べる。次に新幹線に乗るのは文フリの時だから、もう食べられるのはこれが最後の機会だ。いつまで経ってもやわらかくならないのを待っていたら、いつの間にか静岡を通過していた。豊橋辺りでなんとか食べ終える。そうこうしているうちに、名古屋。
駅でぴよりんを買おうと思ったら、めちゃくちゃ並んでいた。とりあえず特急券を買ってからぴよりんの列に並ぼうと思っていたら、いろいろあって列にならばず、特急も乗らないことに。
ゆっくり急行と鈍行で三重まで帰る。
急行と鈍行のベンチシートではお弁当は食べられないので、家に帰ってきてからお弁当を食べた。おいしかった。
良い旅をした。
翌日(つまり今日)伊良子へタカの渡りを見に行こうと思っていたのに、雨が降っていた。
来週からはとても忙しいので、今年は、もうヒヨドリの渡りを見に行けないだろう。
11月の半ばくらいには忙しいのは落ち着くので、そしたら、いつものアフタヌーンティーの秋のコースを滑り込みで食べよう。そしたらすぐに、ハッピーホリデーアフタヌーンティーがきちゃう。
月末に、今度は九州へ行く用事がある。九州では、カササギを探したいと思う。
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2024年5月18日(土)
上方落語協会が主催する<彦八まつり>、4年ぶりのリアル開催ということで初めてやって来た。お目当ては<奉納落語会>の第4部、露の新治師匠の出番があるからだ。とは言え真夏のような暑さ、夕方までの時間つぶしに<高津神社><四天王寺>へお詣りしてきた。私にとっての大阪は点は理解できても、面としての把握は難しい。おかげで大分地理的理解を身体に染み込ませることができた。しかし暑かったなぁ、会場でビールを我慢した自分を褒めてやりたい!
4時45分起床。
日誌書く。
洗濯機回す。
朝食。
珈琲。
酢タマネギ仕込む。
麺つゆ仕込む。
今日は<彦八まつり>、17時開演の<奉納落語会>のチケットをとっているので昼頃に出発する。
会場は<生國魂神社>、以前にも来たことはあるが谷町九丁目駅から来るのははじめてのこと、少し迷って到着。<米澤彦八の碑>にお詣りする。
軽口噺[かるくちばなし]や役者の物まねを演じていた米澤彦八は、京の人気者、露の五郎兵衛とともに元禄年間(1688~1703年)にここ生玉さんの境内で活躍した。五郎兵衛が「聴衆を前にして口演する」というスタイルを打ち出し、現在の落語の形態をつくる。このため「上方落語の祖」と仰がれ、彦八は「大坂落語の始祖」と位置づけられている。二人の芸風はどう違ったか。「五郎兵衛が先行の噺から材料を多く得ていたのに反し、彦八のは創作が多く、この点などに彦八の意気ごみがうかがえる。彦八はただ軽口噺を口演するだけでなく、むしろ身振りをまじえた『しかた物真似』を本領とした」と、大阪の郷土研究家・肥田晧三氏は『上方学藝史叢攷』で考証する。
(https://www.westjr.co.jp/company/info/issue/bsignal/05_vol_99/feature03.html)
まずは腹拵え、<笑福亭仁鶴一門>でたこ焼きを購入、8個で400円、二人で半分こ。<桂米二一門>でふぐの唐揚げ、800円といい値段。
この熱気の中で夕方まで過ごすのは辛い、落語に縁のある場所ということで<高津神社>と<四天王寺>へと向かう。
お詣り済ませてから再び生玉さんへ、なぜか鳥取県八頭町のブースがあって、ツレアイは<エリンギつかみ取り>に挑戦している。
会場の日射しを避けて<参集殿>前で待機していると、イベント会場からNさんが出てこられてご挨拶、近くのビジネスホテルが取れたとのことで明日も楽しまれるそう。
奉納落語会、前から2列目で楽しんだが、畳敷きの和室では1時間が限界だ。
月亭秀都「秘伝書」、桂八十八「釜猫」、露の新治「中村仲蔵」。
新治さん、十八番を途中で絶句するハプニング、<柳島の妙見>が出てこない。流れでMRIの結果で脳梗塞が起こっているとの説明で会場びっくり、何とかサゲまでたどり着いたが汗の掻き方も酷くて一寸心配。
自宅に戻ったのは19時50分、あり合わせで晩酌開始。
録画番組視聴。
桂三幸「天井高い」
初回放送日:2024年5月18日
土曜の早朝は関西の笑いをたっぷりと!▽今回は桂三幸の創作落語「天井高い」▽第1回「あさわら“まくら”大賞」視聴者投票で優勝が決まる…投票は番組ホームページから!
秋田 真夜中のそば屋で
初回放送日:2024年5月17日
秋田市にあるちょっと変わった、おそば屋さんが舞台。開店は夜の10時で、夜通し営業して閉店は翌日お昼ごろと、まさに昼夜逆転。そばだけでなく、お酒とつまみもいっぱいある。ここにはさまざまな人たちが集う。お酒を飲んだあと、そばをシメにという人たちや、歓楽街で接客の仕事を終えた人たち、また3月は就職や転勤での別れを惜しんで飲みあかす人たちの姿も。なごり雪の舞う季節、真夜中のそば屋に密着する。
片付け、入浴、体重は二日前から350g減、順調だ。
連日の12,000歩越えは嬉しい。
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ずっとそばに
ゆっくり、夜の街に明かりが戻ってきたと感じる。居酒屋やスナックが夜遅くまで光を灯している。
そんな通りに並ぶ、とあるバーに大学時代からよく行っている。ゲイバーじゃないけど、ママがニューハーフで、トークがなかなか愉快なのだ。そんなママを気に入って、店によく来る奴のメンツもだいたい決まっている。
その人々の中に、いつからそのカップルがいたのかは憶えていない。自然と、名前と顔は一致するようになっていた。長身でワインレッドのメッシュを入れた男が真寿、黒髪ショートのきりっとした女が��々だ。真寿は二十六の俺とタメくらいで、寧々はそれより年上で三十手前だろうか。
見ている感じ、真寿は寧々の尻に敷かれている。寧々が何かしら一方的に言うと、真寿はしゅんとして謝っている。
あんな女、俺なら嫌だな。そう思うけど、だからこそ、好きこのんで寧々とつきあう真寿は、よほど彼女が好きなのだろうと俺は思っている。
「あの子も、あんなモラハラみたいな女、やめとけばいいのに」
その日も仕事を終えて、帰宅前にカウンターで一杯飲んでいた。すると、大学時代に同じサークルだった茅乃も顔を出し、俺の隣でカクテルを飲みはじめた。お局に対する愚痴をひと通り述べたあと、ボックス席にいる真寿と寧々を一瞥して、茅乃はそう言った。
「モラハラって」
「いつも怒られてるじゃん、あの子」
「あいつが彼女のこと好きなら、勝手なんじゃね」
「克宏も、好きな女だったらああいうのOKなの?」
「……俺は嫌だけどな」
「ほら。あーあ、真寿くんならもっといい女がいるのにさ」
俺は静かにハイボールを飲んだあと、「それは、お前が『いい女』だと自称してるのか?」と眉を寄せた。
「悪い?」
「お前は『いい女』ではないな」
「克宏にはそれでいいけど」
「真寿くんに興味あんの?」
「私は可哀想な男が好きなの」
「可哀想って……」
「放っておけない。私が幸せにしたい」
「本人は幸せだと思うぞ」
「あれを見て、本気でそう思う?」
真寿と寧々がいるボックス席をちらりとした。寧々は腕を組んでソファにもたれ、何か言っている。真寿はやっぱりうなだれている。会話はジャズと客の話し声に紛れている。
「絶対モラハラだわ、あれは」
茅乃はひとりうなずき、オレンジ色のカクテルを飲んだ。「そうですか」と俺は聞き流して、スマホを手に取っていじる。
今まで、真寿と寧々のそういう関係は、当たり前のように見ていた。でも、実は真寿は寧々に負担を感じているのだろうか。だとしたら、別れない理由が俺には分からないけど、真寿は別れたいと切り出せるタイプじゃなさそうだなとは思う。
やがてアルコールが軆にまわり、ほどよいほてりを覚えてきた。茅乃には「あんま野暮なこと考え��なよ」と釘を刺し、俺はママに支払いをしてバーをあとにした。
びゅうっと寒風が吹きつけてくる。十二月になって、一気に冷えこむようになった。マスクが隠れるくらい、マフラーをぐるぐるに巻いて、駅へと革靴の足を向ける。
この通りは、パンデミック前は酔っ払いもかなりふらふらしていて、やや治安が良くない感じだった。でも、時短営業を機に閉じた店も多く、現在はそこまでうるさくない。灯っている明かりは増えたけど、活気が戻るのはまだもう少し先なのかなと思う。
恋人もいない俺は、毎日会社で仕事をやるしかない。リモートワークも選べるけど、実家住まいの俺は、フルリモートが解除されたら、さっさと出社するようになった。リモート授業の大学生の妹に、「満員電車に乗ってきて、そのまま近づかないでよね」とか言われるが、そもそもお前がそんなふうに生意気だから家でゆっくりできねえんだよと思う。そして、これを口にしたら、両親は確実に妹の味方をするのも鬱陶しい。
年末感が濃くなる金曜日、俺はまたバーにおもむいた。今年は土日がクリスマスなので、何となくうんざりしていた。彼女持ちの後輩は、「彼女とゆっくり過ごせるから最高ですよね」とか言って、俺は引き攣った苦笑いをするしかなかった。
「今年は久しぶりにオールのクリスマスイベントやるから、うちに来たら? 出逢いもあるかもしれないわよ」
ママになぐさめられて、それもありかもしれないと深刻な面持ちで検討していると、からん、とドアベルが響いた。ついで、「こんばんは」と誰か店に入ってくる。
「あら、真寿くん。寧々ちゃんは?」
俺はグラスから顔を上げ、入ってきたのが紺色のコートを羽織った真寿であることを認めた。彼は相変わらずな印象の弱気な笑みを見せると、ホールのボックス席でなく、俺のいるカウンターにやってくる。
手にしたメニューを見つめた真寿は、吐息をついて、「とりあえず水を……」と言った。
「いいの? お水でもお金はいただくわよ」
「分かってます」
ママは肩をすくめ、ミネラルウォーターをペットボトルごと真寿に渡した。しかし、受け取った真寿は、それに手をつけようとしない。
「何かあったの?」
スツールがあいだにふたつあるけど、その横顔を見兼ねて、俺は声をかけてみた。はっと真寿はこちらを見る。女顔だなあと失礼ながら思っていると、「……克宏くん」と真寿はつぶやく。話すのは初めてだが、名前ぐらい把握されていても驚かない。
真寿は視線を下げると、「あの子……」とぽつりと口を開いた。
「君の恋人ではなかったんだね」
「はい?」
「茅乃さん。ずっと、そう思ってたよ」
「………、え、茅乃と何かあったのか?」
真寿はやっとペットボトルを開封すると、ごくんと喉仏を動かして、ミネラルウォーターを飲みこんだ。
「夕べ、茅乃さんと一緒だったんだ」
「はっ?」
「それが寧々に見つかって、怒られちゃって」
え……と。
何言ってんだ、こいつ。茅乃と夕べ一緒だった?
もしや、この男、おとなしそうな顔して下半身は緩いのか。一緒だったということは、まあ、そういうことだろう。そりゃあ寧々も怒る。
いやいや、待て。茅乃は先日、モラハラとかめんどくさいことを勝手に言っていた。
「もしかして、茅乃に無理に迫られた?」
「……まあ」
「マジか。それは……何か、あいつの友達として謝らないとな」
「いやっ、僕が流されただけで」
そこは確かにお前も悪い。と言うのはこらえて、「真寿くんって、寧々さんとうまくいってなかったりする?」と問う。
「え? そんなことはないけど」
「じゃあ、あんまり……良くはなかったな」
あんまりというレベルじゃないが、そう言っておく。真寿は黙りこんでしまい、ただ不安そうな顔で水を飲む。
「茅乃は、その──あいつなりに、真寿くんを心配にしてたみたいだから」
沈黙が窮屈になった俺の言葉に、「心配?」と真寿は首をかたむける。ワインレッドのメッシュがさらりと流れる。
「真寿くんが、寧々さんにモラハラ受けてんじゃないかって」
真寿は心底驚いた丸い目になって、「それはないよっ」と身まで乗り出してきた。
「確かに、寧々は僕のダメなところに目敏いし、よく指摘するよ。でも、それはほんとに僕が直さなきゃいけないところで」
「お、おう」
「ふたりきりになれば、寧々は僕のいいところもたくさん褒めてくれるんだ。すごく厳しいけど、すごく優しいんだよ」
「そう、なのか……」
「寧々はかっこいい。ずっと僕の憧れだった」
「ずっと?」
「うん。友達のおねえさんだったんだ、もともと。何年も、すれちがうときに挨拶するだけで。寧々からお茶に誘ってくれたときは、夢みたいに嬉しかったなあ」
真寿は幸せそうに寧々との馴れ初めを語り、俺は臆しながらそれを聞く。
何か、こんなに寧々にベタ惚れしていて、こいつ、本当に茅乃と寝たのか?
そこのところを、具体的に訊けずにいたときだった。
「やっぱりここにいた」
からん、とベルを鳴らして、店に入るなりそう言ったのは、カーキのオーバーと細いデニムを合わせた、いつも通りボーイッシュな寧々だった。
真寿ははたと寧々を振り向き、口ごもる。
「ねえ、あんたの部屋にあたしとあの子とふたりきりにして、あんたは逃げ出すって何なの?」
おいおい、そんな修羅場を投げてきたのかよ。ついそう思ったが、同じ男として、そんな現場は逃げたくなる気持ちも分からなくはない。
真寿は気まずそうにうつむいているので、思わず「友達が失礼したみたいで」と俺は口をはさんだ。寧々はこちらに、長い睫毛がナイフみたいにも感じる鋭利な目を向ける。
「あの女の子の友達?」
「そうです」
「友達は選んだほうがいいわよ。で、真寿、あんたはあたしに言い訳ぐらいしたらどうなの?」
「言い訳なんて……悪いのは、僕だし」
「それで、何も説明しないのはもっとずるい。あたしがどうでもいいってことなら別だけど」
「それはないよ! 僕が好きなのは寧々だよ、絶対に。寧々のこと、大好きだよ」
「あの子にも同じことを言ったの?」
「言うわけないっ」
「じゃあ、それは、あたしにきちんと説明してほしかったな」
「……ごめん」
「あと、一緒に過ごしたくらいで、だいぶ大ごとに捕えてるみたいだけど、何もなかったならあたしは怒らないわよ」
え? 俺は思わずぽかんとして、真寿もまばたきをする。
「あの子が言ってた、『相手にされなかったから』って」
「信じて……くれるの?」
「むしろ、信じないと思われるほうが不愉快ね」
「ご、ごめんっ。僕だったら、寧々がほかの男とふたりで過ごしたら許せないし、たぶん、何もなかったなんて信じられないから。そんなの、頭が変になると思う」
「……あたしも、頭は変になりかけたけどね」
むすっとした感じで寧々が言うと、真寿はぱあっと笑顔になり、スツールを立ち上がって「ごめんね」と彼女を抱きしめた。「あらあら」なんてママはにっこりしているけど、俺にしたら痴話喧嘩なので、しょうもないと思いながらスマホを取り出す。
いつのまにか、通話着信がついている。茅乃からだ。俺はいったん席を立ち、壁際で茅乃に通話をかけた。奴はワンコールで出た。
「真寿くんとひと晩過ごして、何もなかったことは聞いた」
俺が開口で言うと、茅乃は『ありえないでしょ……』と絶望的な涙声でつぶやいた。
「だから、真寿くんはそれだけ寧々さんに惚れてんだよ」
『うー、つらいよお。私、真寿くんのこと、けっこうマジで好きだったんだよ?』
俺は壁に背中をもたせかけ、けっこうマジで好きなのはこっちもだけどな、と思う。
本当に、見る目がない女だ。そんなお前に恋をした俺が悪いんだろうけど。マジで、鈍感すぎる。
俺がいつも隣にいるって気づいてくれよ。何だかんだ、ずっとそばにいるじゃないか。でも、こいつはおもしろいくらいに気づいてくれない。
真寿と寧々は、いつも通りのホールのボックス席に移動している。寧々が何か言っても、真寿はいつになく嬉しそうだ。
あのふたりは、ずっとお互いのそばにいるんだろうな。茅乃の泣き言を聞きながら、そんなことを思う。
俺が茅乃とあんなふうになれるかは分からないけど、憂鬱だった週末のクリスマスは、ひとまず彼女のやけ酒につきあって過ごすことになりそうだ。
FIN
【THANKS/診断メーカー『お題ひねり出してみた(ID:392860)』】
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鼻筋で滑り台ができそうで羨ましい
1年以上ぶりに顔を合わせるいい男といい雰囲気の店でいい酒を飲みいい料理を食べたもんだから、反動で、ひとり薄汚い赤ちょうちんの大衆居酒屋のカウンターの隅っこで動物の内臓の串焼きをかじりながらお茶割を飲みたい衝動に駆られている。
すばらしい夜だった、んだと思う。たぶん。ずっと会いたいと思っていたひとだったし、話もまあまあ弾んだんじゃない。横並びのいやらしい席だったせいで(素敵なお店だったよ)、そのひとの尋常じゃなく整った鼻筋と、目頭の鋭い切れ込みにばかり目がいってしまって、わたし自身はあまり気の利いたことを言った記憶はないけれど。
すばらしい夜を過ごせば過ごすほど、なにかとてつもなく普通のことをして記憶を薄めたい。ひとに優しくされすぎると、自分をいじめたくなる。抱きしめられると、頭を掻きむしって大暴れしたくなる。うれしくてむなしい。理由が分かっているせいで、余計にあほらしい。もう三十路だぞー、って、今よりずっと上手に遊んでいた若いわたしが笑っているが、本当にうるせえなと思う。
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2023.9.29fri_yamanashi
こんにちは。マリンバ&ビブラフォン(木琴と鉄琴)奏者でシンガーソングライターとしても活動している
影山朋子といいます。
今回このような日記を書く機会を頂けてとっても嬉しい。最近文章を書いていきたいなと思っていたのでした! さて、初めに鷹取さんから日記のことでお声かけてもらったのは7月末のこと。2年前から突如ご縁ができて毎年通わせてもらっている大好きな能登半島のイベントに出演する日が候補日だったので、これは!と思い是非書かせてくださいとお返事し意気込んでいたところ、出発当日になって発熱しはじめ、抗原検査は陽性。泣く泣くイベントを欠席する事になりました。 それでも、日記は書きます!と申したものの、どんどん熱が上がり動けなくなり、コロナ舐めてましたごめんなさい!! ということでまた後日にとお願いしたのでした。
-コロナ罹患の思い出-
初めてのコロナ、3、4日寝続けるなんて何年ぶりだろう。熱が上がってだんだんと苦しくなってくるにつれて、
多分これまで何十年と溜め続けてきた、”ああ、私なんて・・” みたいな笑っちゃうほど自虐的な惨めな気持ちや不安が奥から奥からぐろぐろ出てきて( 笑 すみませ ん、、)
自分ネガティブキャンペーンがピークに達した頃、突如「あ、そういえば鬼滅の刃の新しいのまだ見てなかったな、何もできない今こそ見るのにぴったりやん」と思い立ち、
ネットフリックスで鬼滅の刃の刀鍛冶の里編を一気観したのでした。 そうしたらば、どうでしょう、最後に出てくる上弦の鬼が、それはそれはみみっちい人(鬼)格で、自分は悪くないのに何故咎められるんだろう、自分はなんて可哀想なんだろうと、ずっと泣いているのでした。人を殺めるようなことをしても「私が悪いのではないです、この手が勝手にやったのです」と泣いているそのどうしようもなさ・・。
あああ~、私にも、こういうところがあるので、鬼を見ていて自分の悪いところそ っくりだなと思っていたら、炭治郎が鬼の首を切ったところで、自分の中の鬼も成敗されて付き物が取れたかのような爽快さとともに、コロナから回復して行ったのでした。 なんだかそれが面白かった初めてのコロナ体験でした。 うちは夫と猫二匹と暮らしているのですが、夫も同時にかかったので、かかる前と後で二人ともなんか取れた(浄化された)みたいで家庭の空気もすっかり良くなった のでした。 大変な思いをされた方が沢山いらっしゃる中で、ちょっとふざけた文章でごめんなさい。今も患っていらっしゃる方、後遺症などで苦しんでおられる方のご回復をお祈りいたします。
-河口湖猫LIFE-
さて、前置きが長くなりましたが、今日、9月29日の日記を書いていきたいと思います。
昨年、八王子から山梨の河口湖に引っ越しをしました。週に2、3日、夫と一緒に東京方面に行き八王子に住んでいた時にしていたお仕事 (音楽療育やマリンバのレッスンをしています)を続けながら、それ以外の日はライブなどが無ければ山梨の家 で自分の仕事(音楽の作業)などをしています。
今住んでいるお家は山の入り口辺りにあり、目を覚ますと 一日の始まりに緑が揺れる素敵な光景を見ることができます。
今日は曇りで見えませんが、ありがたいことに富士山がよく見える場所です。 最近少し涼しくなってきて嬉しいのは、起きた時、大概猫ちゃんが体の上に乗って いることです。
今日は休みの日にしては早起きして、朝近所のカフェに用事に行き、帰りに河口湖浅間神社にお参りに行きました。
こちらは杉の木が、ほんとにすごいんです、大き~な杉の木がたくさんそびえたっておられます。 神社の奥にまた立派な杉の木が並んでいます。
鎮爆の文字。この地域ならではですね。
本当はこの神社から少し登ったところに 母の白滝、父の白滝という素敵な滝があってそこまで行けばとっても気持ち良いのですが
今日は作業があるのであきらめました。
いつも行くわけではありませんが、今日はせっかくの日記の日なので、河口湖の人気のパン屋さん レイクベイクに寄ってパンを買って帰りました。なんだか優雅な気持ち。
天気が良ければパン屋の小窓から富士山が見えるみたい。
。
家に帰って、最近新しくできたルーティーン “もみ散歩” 飼い猫の紅葉(もみじ)の散歩に付き添います。
これはなんだかとっても、いい
すごく癒される時間です。
今のお家に引っ越してから最近まで猫ちゃんは室内飼いにしていてお外には出さないようにしていましたが、
1ヶ月ほど前に外出を解禁したのです。(前の家では自由に外に出してあげていたので二匹ともお外大好き)
二匹のうち三毛の紅葉(もみじ)は、気高くナワバリ意識が強くて、喧嘩っ早く、 紅葉の娘猫の心(ココロ)は気ままでマイペース、外の猫ちゃんに遭遇しても臆病ですぐ逃げ帰ってきます。
お外に出すようになって二日目のこと、紅葉が外の猫ちゃんと喧嘩しめちゃめちゃにやられてゼーハー言って帰ってきたのでした。
お腹と脇の下が傷だらけになってそれはそれは可哀想な状態でした。
とても心配でしたが、1日静かに寝てから動物病院に行き、抗生物質を飲ませて3日ほどすると回復し始めてもう薬を飲まなくなり、
1週間くらいで大分元気になりました。
もうお外に出すのは無理かなと思っていたら、懲りずに、、外に出たくて窓のところでドアを開けようとするのです、
傷がすっかり消えたところで、また外に出してあげる事にしました。
でも外猫ちゃんと遭遇したら、また喧嘩しかねない・・ プライドの高い紅葉はきっと・・危ないなと思い、
紅葉の散歩は毎回付き添う(というか見張るというか様子を見る)事にしました。
まずお外に出てプラプラ、日向ぼっこしてごろごろして、お気に入りの場所と縄張りを一通りパトロールして、
そして、草を食べます。(可愛い・・)
(手頃な草を探す紅葉)
( 実は、紅葉が草を食べ終わったくらいのところで、「もみちゃんそろそろおうち 戻るよ。私仕事しなくちゃいけないからね」
と言って抱っこして無理やりつれて帰ろうとしたら シャーって怒られて噛みつかれて逃げられました、、 その後に、おトイレをしてから自分で家に戻ったのでした )
ああやっぱり大人の(人間の)都合で動かそうとしたらダメなんだなぁ。
待つことや ちょっと遠目で見守ること 大事なんですね~ (人間の子どもと同じですね~)
おかげで紅葉の散歩ルーティンや行動パターンがわかってそれはよかったです。安心しました。
(お外やベランダで気ままに過ごす猫ちゃんたち)
ああ可愛い。
ギターとシタール演奏のほか映像作家もやっている旦那さん(田井中圭)が、細かい 作業を手伝ってくれてめちゃくちゃ助かりました。
ありがとう!!!
家で仕事をしていると猫ちゃんたちがそばで応援してくれる時もあります。
時々ベランダに出て休憩していると見たこともない綺麗な虫たちをよく見ます。
この辺りの虫はだいだいキラキラ光っていたり、透明に透き通っていたりして、綺麗です。
そうして夕方、またお外に行きたい猫たち。
私も体がガチガチになってきたので、家の周りを一周歩いたり走ったりしにいきます。
すぐ近くに川が流れているのでそこに行くとすごくリフレッシュできます。
大分日が暮れてきました。
家には、浅間神社のコノハナサクヤヒメのお札(というのでしょうか・・?)と、
夫がインドで買ってきたサラスヴァティーと
能登半島の天日陰比咩神社のハガキを飾って(祀って)います。
夜、旦那さんが外で草を摘んできて紅葉にあげていました。
可愛い・・
さて、もうそろそろ寝る時間です。
とても平和な1日でした。
読んでくださりどうもありがとうございました。
本当は、河口湖や富士山周辺のおすすめスポットもご紹介したかったです。
忍野八海や、樹海や、道の駅や、温泉・・
楽しいところがいっぱいあります。
そのうち、家で自然療法(蒟蒻湿布や石の温灸やよもぎ蒸しなどでの身体のあたため)と楽器の音でのサウンドセラピーのようなことと、
山や川、河口湖周辺の散策などをするリトリート的なことをやっていきたいなと思っています。
ご興味ある方いましたら声かけてください。
まだ準備中ですが、ひっそりと、”森のおとリトリート”というインスタグラムアカウントを作りました。
https://www.instagram.com/morinootoretreat/
こちらに引っ越してから、だんだんとやりたいことが自然とできるようになってき ました。
ありがたい。
カバー動画もやっていきたいし、
音楽以外にも、やりたいことが沢山あり、デザインやグッズ制作、文章も書いてい きたくてnoteも始めようと思っています。
楽しみ。
とりあえずは!! 11/15に、マリンバの弾き語りでのセカンドアルバム(8曲入り)をリリースいたします。
ゲストミュージシャンに夫のシタールの田井中圭と、クラリネット奏者の渡邊一毅 さんを迎え一曲ずつ参加してもらいました。
よかったらこちらSENSAさんに詳しく情報掲載いただいているのでご覧ください。
https://sensa.jp/news/20230927-kageyama.html
リリースパーティは!!ゲストミュージシャンのお二人と、シンガーソングライター のkiss the gamblerちゃんを迎えて
恵比寿リキッドルーム二階のKATAで開催します。
世田谷の美味しい硴とお酒のお店 アリク が 硴めしや、炊き込みご飯などで参加してくれます!!
ぜひ遊びにきてください♪
詳細こちら https://t.livepocket.jp/e/tampopo
ええと、こんなことを書いている今。夜寝る前。
ふと見ると室内にいるはずの紅葉がベランダに・・!
窓の網戸用鍵はかけてあるのになぜ?!
と思ったら、なんと網戸を破いて外に出ていました。
恐るべし・・
-プロフィール-
影山朋子
1982年6月 神戸生まれ
11年間の東京生活の後、昨年より山梨県富士河口湖町在住
マリンバ・ビブラフォン奏者、シンガーソングライター、 風と木の音楽教室主宰(八王子と河口湖でマリンバのレッスンをしています)
ときどき療育のお仕事にもたずさわっています。
HP https://www.tomokokageyama.com
twitter https://twitter.com/momotukituki
instagram https://www.instagram.com/tomoko_kageyama632/
風と木の音楽教室 https://kaze-to-ki-music.webnode.jp
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桜くつ器
「くつ」というのは今自分で考えた動詞で、その場に固定するみたいな意味です。くくりつけるとか、打つとか、木槌で叩いてぴんと固定させる感じ。なにかいい漢字がないかなと思ったけど、思いつかなかった(と思ったが、「繰つ」というのがいいかもしれない、口が3つもあって硬そうなところがいい)。桜くつ器というのは、桜が固定されて飾られている器の意。
カウンセリングに行ってカウンセラーの先生に3ヶ月ぶりに話をしてもらい(ずっと予約の電話をかけることができず、3ヶ月ぶりとなってしまった)、さまざまなことが整理され、やっと、ここ数週間のうつ状態からすこし回復したように思われる。とくに一秒ごとに噴出していた希死念慮は無くなった。帰りに蔦屋書店に寄ってしまい、まさかここで本を買うとは思わなかったのだが、文庫本4冊をレジに持っていっていた。まだ前に買った本を読み終わっていないのになぜかこのようなことをしてしまう。これは23歳くらいからずっとそう。恐ろしい書籍購買依存症だ。「本を買う」という行為にのみ意味があり、読むことは全然しない。たまには読むが、1冊を頭から終わりまで読み切るということは殆どない。最近はその事に罪悪感も苦悩も呆れも何も覚えなくなってきた。この数ヶ月本を買うことをやめられていたのに、いきなりこのように浪費してしまい、衝撃もあるが、まあいつもの自分だなと思った。『京都SFアンソロジー』『貝に続く場所にて』『クララとお日さま』『実力も運のうち』の4冊。京都SFは暴力と破滅の運び手さんの「ピアニスト」が読みたくて買った(まだエチ小賞アンソロも読み終わっていないし、ブラームスの乳首も読み終わっていないのだが)。貝に〜は、書店で見て、芥川賞と群像新人賞の受賞作で、言語に関する物語とあったので、かなり気になって買ってしまった。講談社文庫はビニールが最初からかかっていて中が見えないのだが、帰宅してビニールを破って(この作業、省略したい。講談社は早く正気に戻って文庫本にまでビニールを掛けるのはやめてほしい)中を見たら、かなり余白の多い組版で、行間もひろく、見た目のうつくしさに拘りを感じた。いかにも芥川賞受賞作という感じで良い(組版への拘りというと黒田夏子の『abさんご』を思い出す。あれもかなり好きだった)。クララとお日さまは、ことこさんに内容を教えてもらった時に読みたいと思い、文庫化もしたことだし、と買っておいた。ひじょうによい子のAIの一人称で、カズオ・イシグロのいつものあれですよ、と言われたので(語り手の認識と世界との齟齬というかズレが特徴的なことが多い)、そして立ち読みしたところクララ(AI)にかなり好感を持ったので、読もうと思った。マイケル・サンデル(実力〜)は、かなり西洋哲学やキリスト教的価値観を引いて解説している(おそらくアメリカ人の状況を)と感じたので買った。『資本主義の〈その先〉へ』(大澤真幸)を読んでいるところなので、かなり内容に惹かれた。昔からだが、やはり「アメリカ」というものの面白さが私の冒険心を掻き立てる。同じくらい「日本」というものも面白いのだが、日本には一見してわかるような一貫性がない。だからこそ歴史の追いがいもあるのだが、やはりプロテスタントの「理想国家」として作られた人工物のアメリカのほうが理解しやすく、直截的なエキサイティングが得られる。昨日観劇したミュージカル「ラグタイム」では、二十世紀初頭のアメリカのフランス系アングロサクソン、ラトビア系ユダヤ、アフリカ系黒人の三つの民族の交わりがえがかれており、面白かった。私はスウィング・ジャズが好きなので、音楽としてのラグタイムにもっと言及があるのかしらんと思ったが、そこは特になかった。ミュージカルとしては、クラシック、ラグタイム、スウィング、ポップスと、割とオーソドックスなラインナップだったので、音楽的にはそこまでラグタイムに特化していたわけではなかった。そもそもこのラグタイムという語の、本来次の音が来るであろう箇所(次の拍)ではまだ音が来ず、ラグがあって少し拍より遅いところで次の音が来るシンコペーションのことを表している本来の意味とともに、さまざまな人種や民族がアメリカに絶えず流入し、立場がさまざまに変わりながら、「アメリカ人」になっていくまでのラグタイム(過渡期、猶予期間のようなイメージ)を描いているということなのかもしれない。私は音楽的なラグタイムは、クラシックとジャズを繋ぐ時期のもの(リズム、シンコペーション)という認識なので、まさにラトビア(欧州、クラシック)から移民としてアメリカ(新大陸、ジャズ)へ渡って、映画監督として「アメリカ人」として認められるまでのターテ(俳優は石丸幹二さん)の不遇の期間のことと考えると自然だ。音楽を、ジャズを主体としたミュージカルというのが見てみたいと思う(映画でも)。そういう作品はたくさんあるので、そのうち出会えるといいなと思う。そういえば前回日生劇場で見た「ジャージーボーイズ」はジャズを通り越してポップス…というかブルー・アイド・ソウル(白人がアレンジしたR&B)またはロックの話だったが、アメリカの商業音楽の世界を存分に楽しめた。ジャズのミュージカルとしては誰に焦点を当てるかだが、誰に当てても大物だらけの舞台(要素がもりだくさん)になってしまい、かつミュージカル・ナンバーもジャズにしないと成り立たなさそうだが、日本のミュージカル俳優はジャズ・シンガー(の歌い方)ではないので、なかなか難しいのではないかと感じる。「ラグタイム」ではサラ(黒人女性)役の遥海さんの歌唱が圧倒的で(彼女だけミュージカルの発声ではなく、全編通してソウルの歌い方だった)、歌だけでいえば主役の3人を凌駕していたのではないかと思う。完全に自分の声を縦横無尽に舞台全体で走り回らせ、かつコントロールも完璧だった。ミュージカルの歌い方では、ああいう芸当はできないというか、そもそも方向性が違うのでなんとも言うべきではないが、ソウルやジャズの歌い方もできるミュージカル俳優というのがもしいたら最強だろうな、ということを夢想した。クラシックの基礎の上にジャズの歌い方もマスターしているとなると、日本では平原綾香やKOKIAが私などは浮かぶが(上の世代だと美空ひばりや森山良子だろうか)、芝居も歌も極める上に、歌は2種類も、というのはやはり難しいのだろうか。我らが東啓介氏(私が舞台刀剣乱舞のバックステージ映像で好きになり一時期ガチで応援していた俳優)に関しては、私は今回もあまり納得が行かなかった。同行した友人は「28歳だし、そんなにすぐに変わる(成長する)ものではなく、熟達を求めるのは10年後とかかなあ」というようなことを言っていて(記憶違いがあったら申し訳ない)、私は東啓介にあまりにも多くを求めすぎているのだろうか、と思う。応援していることは応援しているのだが、追っていた頃の急成長と比べて、本格的なミュージカル俳優となってから、舞台上で分かりやすい「成長」というのが感じられないため、刺激に飢えているのかもしれない。演技もいつも同じに見えるし、発声の仕方も特に試行錯誤するでもなくいつも変わらず、なんかこう、変化…バリエーションが無い。それがつまらなく感じる。育ちが良く上品な所作、という当て書きのような役柄を続けて見てしまっているせいもあると思う。5DAYSの時みたいな、もっとしょうもない若者とか、マタ・ハリの時の恋に狂った青年とかの、本人の育ちの良さを封印するような役の方が見てみたいなあと思う。もっとヘドロの中を生きてきたような役を与えられた時に、果たしてどこまで生来の「品の良さ」を封印できるのか。というのは、彼を起用する演出家やプロデューサーが、どこまで東啓介の演技に期待してくれるのか、という問題も関わってくると思う。舞台上の発声はもっと先輩俳優の声の響きを聞いて試行錯誤してみてほしい。声が小さくても響かせるための発声。歌い方も最初の子音の破裂音というか呼気が入りすぎているが、これも前回から変化なしで、歯がゆい気持ちになった。歌はロングトーン以外でも「聴かせ」なければならないが、今のところロングトーンがないと東啓介の歌声はあまり目立てないというか、ほかの歌声との差別化が為されない。これに関してはどうすればいいのか素人にはわからないが、とにかく今までの練習や方向性を踏襲するのではなく、さまざまなやり方、歌い方、技法、発声方法を試して、もっと声に色をつけてほしい。ファンレターに書けばいいことを長々と書いてしまった。ファンレターに書きます。
夜、じゅんえん先生と話していたら赤森さんが来訪し、最終的に2時過ぎまでウエルベックの小説や文化や価値観の違いについて話してしまった。私は『ある島の可能性』を見つけて買って持っているだけでまだ最初の3ページしか読んでいないのだが、今日あらすじを聞いて、中身を結構拾い読みして、どんどん読んでいきたいと思った。ウエルベックを紹介する時の赤森さんは「とにかく中年男性主人公がキツい(見ていてキツい、キショい)」ということを語るのに非常に活き活きとしていて面白い。赤森さんはもともと面白い方なのだが、ウエルベックを語る時の赤森さんは「主人公のここが無理」ということを鮮烈に話してくれるし、ストーリーの面白さもきちんと伝えてくれるので、凄いなあと思う。ちなみにファフナーをTwitter上で語っている時の赤森さんもかなりのエンターテイメント性がある。
じゅんえん先生は酒が飲めない、かつ所得の低い私のことを気遣って、飲みに誘わないでいてくれたのだが(とても優しくて感動した)、今後は数回に一回は混ぜてくれるらしい。私があまりにも拗ねすぎたなと思ったのでやや反省した。
2023.9.19
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大阪・十三 立呑処 イバタ 久しぶりに十三に来たので、イバタさんに寄ってサクッとちょい呑み〜 おばんざいからアテ選ぶのが楽しみ〜 #立呑処イバタ #十三イバタ #イバタ #十三グルメ #十三ランチ #十三立ち飲み #十三飲み歩き #十三ちょい飲み #十三酒屋飲み #関西グルメ #関西ランチ #関西立ち飲み #大阪立ち飲み #大阪飲み歩き #大阪飲み #角打ち #十三 #barhopping #standingdrink #juso (イバタ) https://www.instagram.com/p/CkEmmI5SmDI/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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旧東隊の小説(二次創作)
刺身蕎麦クッキー
三輪秀次の好物は、ざる蕎麦、刺身、クッキーである。
一、刺身
ドアがあくと、まずプンと磯臭い空気が部屋に入ってきた。ここは東隊の作戦室で、三輪は同隊隊員である。
「大漁だぞー」
ついで入ってきたのは、発泡スチロールの箱を抱えた隊長の東春秋である。機嫌がいい。私服である。本日、東隊は任務のないシフトであったが、学校のあと、隊員は作戦室に集まっていた。仕事のためではない。
「おかえりなさい」
現地で購入したとおぼしき白い箱の中身は釣った魚だ。手持ちのクーラーボックスに入りきらなかったらしい。肩に下げているクーラーボックスだってかなり大きいのに、発泡スチロールの箱はさらに大きかった。重そうだ。三輪は発泡スチロールのほうを受け取った。ずっしりとしていて、よろける。氷がゴロゴロ動く音がした。
「床を濡らさないでください」
二宮匡貴が用意しておいたブルーシートを指す。
「気が利くな」
ニコニコしながら、東がクーラーボックスを肩から下ろす。三輪を手伝ってやりながら、二宮は黙って頷いた。
「東さん、長靴と道具は?」
「まだ車の中だな」
「後で取りに行きましょ。ほっとくと忘れちゃうわ」
加古望がキッチンから顔を出した。
ペリペリとビニールテープを剥がして、蓋を開ける。
のぞき込むと
「…大きい魚」
「鯛だな」
氷水の中に魚の王様が埋まっている。
東が器用にさばいていく脇で三人の隊員も忙しい。キッチンが臭くなるのは嫌と、加古はあらかじめ新聞紙をシンクに敷いていた。
「内臓はここに入れてね」
新聞紙で作った箱は暇なときに皆が折ってストックしてある。
タッパーや折を用意していくのは三輪の役目だ。紙袋にもポン、ポンと保冷剤を入れていく。
「秀次は手際がいいな」
「俺が教えました」
「あら、私が教えたのよ」
「今日、本部にいるのは誰かな? いつものことで悪いが、
手分けして、配りに行ってくれ」
「二宮、了解」
「加古、了解」
「了解です」
テンポよく言えずに、三輪は口の中でつぶやいた。
「ねえねえ、東さん、海鮮しゃぶしゃぶにしてみない?」
加古はカレイを見ながら提案する。
「新鮮なんだから、刺身だろう」
二宮が言い返す。二人はいつもこんな調子だ。
本日は、東隊長の釣ってきた魚を堪能する会なのだ。作戦室では飲酒禁止なので、ビールを飲みたい東の希望もあって、このあと本部内の彼の持っている居住スペースにお邪魔させてもらっての開催である。
「鍋があるからできるが、それなら最後はうどんで締めたいなあ」
「売店で売ってるんじゃないかしら」
東は包丁の手を止めてそうだなあと言いながら、チョイチョイと手招きして三輪を呼んだ。
「はい」
てっきり、うどんを買ってくるよう言われると思っていた三輪に東は、
「味見」
鯛の切れ端をヒョイと三輪の口の中にいれた。
「どうだ」
「おいしいです」
白身魚が甘いのを三輪はここにきて初めて知った。
ニ、クッキー
「暑いわね」
盆である。
この時期、食堂が休みなのだ。若者はコンビニに行き、偉い人は仕出し弁当を頼む。
今日の東隊長は上層部に呼ばれて会議に出席中である。これはよくあることで、片手間で隊長をやってるのではないかと思うほど忙しい人なのだ。今頃、上層部と高級弁当を食べていることだろう。
時刻は午後一時である。
「お腹が空いたわね」
先程から、加古は暑いとお腹が空いたしか言わないと気がついて、三輪は少しおかしかった。二宮はまだ到着していない。要領のよい彼のことなので、どこかで食事をしてからやってくるのだろう。
「コンビニで買ってきます」
三輪は立ち上がった。本部の中にも最近コンビニができたのだ。
「今日はコンビニのご飯って気分じゃないのよねえ」
と、加古は顎に長い指を当てた。二宮がいたなら、わがままだとののしったに違いないが、三輪はあまり気にならない。
「外へも買いに行きますよ」
どのみち三輪も何か腹に入れないといけない。
「本部の外は暑いわよ」
「そうだけど」
最近、加古に対しては敬語がすっぽ抜けるときがある。年上とか年下だとかそういうのを突き抜けたところが加古にあるからだ。
加古は天井に視線を送って、しばし考えたあと、
「どっかにクッキーがあったはず」
ぽんと手を叩いて、立ち上がった。
「東さんがもらってきてた」
「え! あれ? 」
あれは確かお中元でもらった高級クッキーだった。お中元をもらう大学生もどうかと思うが、東はよく頂きものをする。ご相伴にありつくのは隊員の役得だ。
しかし、いいとこのクッキーを昼飯代わりとは。
棚をゴソゴソとあさって、すぐに加古はクッキーの四角い缶を見つけてきた。目星をつけていたらしい。
「これこれ」
遠慮なくカパッとあけると、ほとんど手つかずの高級焼き菓子が現れる。
「三輪くん、冷蔵庫から飲み物持ってきて。私、アイスティー」
三輪は麦茶にした。
「お前らばっかり何食ってんだ」
案の定、程なくして現れた二宮は呆れた声を出した。
「太るぞ」
「三輪くんはもうちょっと太ったほうがいいわ」
「お前だ、加古」
「ご飯代わりだもの。それにこれから、動くから問題ないわ」
「トリオン体じゃあ関係ないだろう」
そう言いつつも、二宮もクッキーに手を伸ばす。
「二宮先輩、何飲みますか?」
「牛乳」
結局、三人でバリボリ食べて、缶のクッキーはすっかりなくなってしまった。
「内緒ね」
「証拠隠滅だな」
三輪くんの方で捨てておいてねと空の缶を持たされた。三輪が本部に住んでいるからだ。
なんとなく捨てそびれて、東隊が解散して、それぞれが別の隊を持つようになった今でも、その缶は三輪の部屋にある。
三、ざる蕎麦
「なんだ、引っ越したばかりなのか」
東隊が結成されたばかりの頃の話だ。
なんの用事だったか。多分、東からの言伝てがあったのに三輪へのメールが既読にもならないし、電話にも出ない。
二宮、すまない。俺、手が離せないから、伝えるついでに様子をちょっと見てきてやってくれ、そのまま帰っていいから。
隊長にそう頼まれたら、二宮も嫌とは言えない。もう、夜と言っても差し支えない時間だった。加古は既に帰宅している。
東に聞いた区画で三輪の部屋を見つけ、何度か呼び鈴を鳴らして、ようやくドアはあいた。
単身者用らしく、玄関から見渡せるほどの部屋だ。
およそ、生活感というものがない部屋だった。
中はガランとしていて、薄い蒲団が敷いてある他は、ダンボール箱がひとつおいてあるだけだ。入り口すぐに見えるキッチンも使っている形跡がない。
だから、二宮は引っ越してきたばかりかと聞いたのだ。三輪は焦点の合わない目をして、否とも応とも言わなかった。
出会ってまもないが、三輪には時々そういう不安定な状態に陥るときがある。何もかもが億劫になるらしく、食べることも眠ることもしなくなる。反応も鈍い。
この街には、この街独特の事情によって、そういう人間は割と存在し、容認されている。だから、二宮もそれほど奇異には思わない。あの日あのとき、『あちら側』だったんだなと思うだけだ。
それでも淡々と任務をこなす姿は評価するが、面倒な後輩であることにはかわりなかった。
東からの用件を伝え、確認をとったらもう二宮の任務は終わりだ。
しかし、
「夕飯は食ったのか?」
「ああ、はい、いえ」
返事は要領は得ないが、おそらく食べていない。
(昼も食べてなかったな)
「夕飯、食うぞ」
「……え?」
やはり反応が鈍い。二宮はイラッとしたが、今の三輪相手に何か言う気はしない。
三輪を連れて、食堂に行こうとする。
が、二宮はふと気が変わった。
「鍋あるか?」
「ないです」
「皿は?」
「ないです」
「コップは?」
「ないです」
二宮がため息をつくと、すみませんと三輪が謝った。徐々に意識が浮上してきたようだ。
「あの、二宮先輩、食堂で」
「いや、待ってろ」
三十分後、調理道具一式を調達してきた二宮は再び三輪の部屋に現れたのだった。
「蕎麦を茹でるぞ」
「…蕎麦ですか?」
その頃には、三輪もうつ状態になっているどころではない。二宮のペースに乗っかりもできず、さりとて落ちることもできない。
「あの、なんで、蕎麦」
「引っ越ししたら引っ越し蕎麦だろう」
引っ越しのことを考えたら、最初に思いついたのが蕎麦だった。新居で食べるのにふさわしい。
「あちこちから、借りてきたからな。明日、返しに行くぞ」
本格的な塗りの四角いセイロまである。三輪はおっかなびっくり持ち上げて、意味なく裏をのぞき込んだ。
その間に、二宮は鍋を沸かし、乾蕎麦を放り込んでいる。
「七分、計ってくれ」
「了解です。料理されるんですね」
「麺を茹でるくらい料理に入らんと思うぞ」
菜箸で、麺を動かしながら、二宮はこともなげに言った。
「三輪も食堂の飯ばっか食ってないで、蕎麦くらい茹でろ」
「はい」
思いの外、大量に茹で上がった蕎麦をセイロに山のように盛って、二人ですすった。箸もなくて割り箸だった。
もうここに一年ほど住んでいますと言えずに三輪は黙って、蕎麦を食べた。
この日にようやく三輪の引っ越しが終わったといえるかもしれない。
終わり
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Dear M
今から三ヶ月前に同時に仕事や恋人を失った時に支えてくれたのは、Tumblrで知り合ってかれこれ五年話していた愛奈だった。
その愛奈に先日会うことが出来た。
ここに書こうとは思ってなかったけれど、愛奈が望んだので綴っておく。
降りるはずのインターを一つ過ぎて愛奈に連絡した。
アパート近くの変な名前のラーメン屋が待ち合わせ場所だった。
カーナビの到着予定時刻は約束より五分過ぎた時間。
愛奈の顔を見たのは今から五年前くらいか。まだ十代だった。そのイメージだけが頭にあってどんな女性なっているのか見当もつかなかった。
長閑な農道の中にあるセブンイレブンで気を落ち着けるために緑茶���買った。
マウスウォッシュで口をすすぎ、お気に入りのナイルの庭を首筋や足首につけた。
約束の場所に到着してすぐにLINEを送った。すぐに今から向かうと連絡があった。
間もなく道路の向こう側からスラリとした女性が歩いてきた。白いニットに黒のスカート。肩まで伸びた黒い髪。すぐに愛奈とわかった。
運転席に座ったまま、どうしていいかわからなくなった。どんな言葉をかけたらいいのか、どんな表情をしたらいいのか。
とりあえず降りることにして運転席のドアを開けたタイミングで愛奈が助手席のドアを開けてあららとなった。
愛奈と向き合い顔を見た。昔見た写真とは随分と変わり、大人の女性になっている。例えるなら吉高由里子や和久井映見、笑うとYUIや橋本愛に似た雰囲気で和服が似合いそうだという印象を受けた。
この辺りは何を話したのか記憶にないが、地元の名産や実家で作った米、お守りなんかを渡した。そのお土産があまりにも多かったからアパートの近くで待ち合わせていた。
荷物を置きに一度部屋へ戻る愛奈の後ろ姿を見ながら素敵な人になったなとしみじみした。
車で繁華街へ向かう。夜市があってそこに行こうと約束していた。
車内では昨日の飲み会の話を聞いて青春だななんて羨ましくなった。愛奈は大学生だ。
「電話で聞くのと声若干違う」
「確かに」
助手席側の窓から西陽が射し込む。
「いい時間ですね」
「そうだね、着いたらちょうど薄暮でお酒が美味しいんじゃないかな」
緊張していた。助手席に座る愛奈の横顔をほとんど見れなかったのを今では後悔している。それとカーオーディオから流れる曲がたまたまTaylorSwiftの「DearJohn」とかバラードばかりだったのがちょっと恥ずかしかった。
俺が泊まるホテルにチェックインしてから夜市へ向かった。川沿いの道を愛奈と歩く。
「この街を歩くのは初めてですか?」
「そうだな、中学生の時に歩いて以来だから十五年くらいぶり」
「そっか研修で来たって言ってましたね」
「いい街だね。住みたいくらい」
「私ももっと住んでてもいいかなって思う」
マンションの間をすり抜けていくと目の前に夜市の旗が���げられていて、大勢の人で賑わっていた。
「まずは食べたい物に目星つけて端まで歩こうか」
「途中でビール買いましょ」
「いいね」
焼鳥、海鮮焼き、日本酒、スイーツなど様々な店が並んでいる。人は多いが決して歩けないわけじゃない。
「彼に夜市行くって言ったらいいなって言ってました」
「今度連れてきたらいいよ」
「でも彼人混み苦手なんですよね」
「それじゃあダメか」
「そういう私も苦手なんですけどね」
「俺も得意ではないな」
ビールを売ってる店を見つけて並ぶ。
ふんわりした泡が美味しそうな生ビールだ。
生憎座る場所が空いてなかったので立って乾杯した。
「はじめまして」
「はじめまして」
二口で半分くらいまで飲んだ俺を見て愛奈は笑っていた。好きな銘柄ではなかったけれどここ何年かで一番美味しい生ビールだった。
色々と歩いて海鮮焼きを買って食べることにした。
何となく愛奈の前を歩いたのは横に並んで歩くのが照れくさかったのと、俺が横にいることで愛奈の価値が落ちてしまうじゃないかと思ったからだ。それくらい愛奈の姿は美しさとミステリアスさがあって、もし知らない間柄でどこか別の街ですれ違っていたらきっと振り返ってその後ろ姿を目で追ってしまっただろう。
親子連れの横の席がちょうど空いており、了承を得て座った。
Tumblrの人の話なんかをして海鮮焼きを食べる。
イカ焼きに苦戦してタレを服にこぼしそうになる愛奈を心配なようなちょっと可笑しいような気持ちで見ていた。
「ビールもう一杯飲んだら帰ります」
「えっ?」
虚をつかれたような気持ちになった。
「そう言わずにどこかお店行こうよ」
「週報書かなきゃいけなくて…」
「まあな、今朝まで友達と飲んでたんだもんね」
無理矢理そう納得させる。
何か嫌なことでもしていたのだろうか。もしくは俺のルックスやらファッションが想像と違っていたから早く帰りたいのかとも考え、次のビールを買いに行った愛奈の背中を見ながら天を仰いだ。
ビールを飲みながら残っていたホタテを食べた。手がタレだらけになっているのを見て愛奈がハンカチを渡してきた。
「いいよ、せっかくのハンカチが汚れる」
「裏側ならいいですよ。見えないし」
「なんかごめんな」
お言葉に甘えて手を拭いた。十一匹のねこの刺繍があった。
「かわいいね」
「お気に入りです。書店で買ったんですよ」
ハンカチを返す。
「口にもついてます」
そう言うとそのハンカチで俺の口の横を拭った。
ほんの数秒の出来事なのにその瞬間は鮮明に残っている。
「なんか子供みたいだな。かっこ悪いね」
「男の人はいつまでも子供ですから」
愛奈の底知れぬ母性は本当に罪だ。年甲斐無く甘えてしまいたくなる。かれこれ五年も話しているからどんなバイトをしてどんな男と交際しているのかほとんど知っている。だから同い年の女の子達とは一線を画すくらい魅力的な人になったんだな。
夜市を後にする。空は確実に夜に近づいているがまだ青が見えている。
駅の方向に向かいながら二人してトイレに行きたくなり場所を探した。
「この街のトイレなら任せてください」
そう言う愛奈の後ろをついて行った。
二人とも限界に近づいていたから小走りでテナントが多数入る建物に入った。
終わるとお土産コーナーを見ながらコンビニに入った。
玄米茶と愛奈が吸ってる赤いマルボロを買った。
「そこの角で吸いましょう」
「そうしよか」
玄米茶を一口飲んでアメリカンスピリットに火を点ける。愛奈はライターを持っていなかったのでその後に俺が点けた。
「今日はありがとう」
「こちらこそたくさん貰ってしまって」
「いいんだよ。命の恩人なんだから」
「いやいや」
「これで思い残す事はない。いつ死んでもいい」
「そんな事言わないで。悲しい」
「最近思うんだ。生きてる価値あるのかなってさ」
「じゃあ飲みながら人生語りましょ」
愛奈の言葉に驚く。
「帰らなくていいの?」
「いいです。お話しましょ」
なんか泣き落とししたみたいでかっこ悪いなと思った。愛奈の時間を奪っていくみたいで罪悪感も湧いた。でもそれを超えるくらい愛奈ともっと飲みたい話したいというエゴがあった。
「そうか。ありがとう。愛奈ちゃんと一緒に行きたい店があるんだ」
「どこですか?」
「バーなんだけどさ」
「バーあまり行ったことないから行きましょ」
煙草を吸いながらバーを目指す。
途中で車に轢かれそうになると腕を引っ張ってくれた。
「いいんだよ、俺なんか轢かれたって」
「ダメですよ。死んだら悲しいですから死なないで」
「でもさ、よく思うんだよね。交通事故なら賠償金とかでお金残せるしさ」
「それは私も思うときあります」
そんな話をしていたら店についた。
俺が持っていた玄米茶を愛奈が自分の鞄に入れてくれた。
明るめな店内のカウンターに横並びで座る。
愛奈はモヒート、俺はモスコミュールをオーダーして乾杯。
「私、親の老後見たくないんです」
「そうなんだ」
「前に言いましたっけ?産まなきゃよかったって言われた事」
「うん、覚えているよ。それならそう思うのも不思議じゃない」
「計画性ないんですうちの親。お金無いのに産んで。三人も。それでたくさん奨学金背負わせるなんて親としてどうかなって思うんです」
「そう思うのは自然だな」
「だから私、子供産みたくない。苦労させたり嫌な気持ちにさせたくないから」
「でも愛奈ちゃんはそうさせないと思うけどな」
「育てられる自信ないです」
「そっか。でもそう思うのは愛奈ちゃんの人生を振り返ってみたら自然だよ。それでいいと思うし、理解してくれる人はたくさんいるよ」
「結婚しないと思いますよ」
「それはわからないよ。これからさ、その気持ちを超える人が出てくるかもしれないし」
モスコミュールを飲み干した。
もし自分が同じことを親から言われたとしたらと思う怖くなった。そんな中で愛奈は自分の力でそれを乗り越えて立派に生きている。愛奈を抱きしめたくなった。ただただ抱きしめてもう大丈夫だって言いたかった。
愛奈からマルボロを一本もらう。久々に吸った赤マルは苦みが程々で後味が美味かった。そこで知ったのは赤マルは二種類あって、俺が渡したのはタールが高い方で、愛奈は普段低い方を吸っているらしい。
「あの棚の右から二番目のお酒知ってます?」
「知らないな」
「友達が好きで美味しいらしい」
「読んでみよか」
スコッチだった。
ソーダ割りで飲むと中々美味しかったけれど、元々カクテル用のウイスキーとして作られただけあって、もうワンパンチ欲しい味だった。
三杯目は俺はヨコハマというカクテル、愛奈は和梨のダイキリをオーダーした。
「俺もさ、親を看取らなきゃいけないプレッシャーがあって辛いんだ」
「一人っ子ですもんね」
「出来た親でさ。ほとんどのことを叶えてくれた」
「すごいですね」
「ほんとすごい人だよ。だから期待に応えなきゃって思うとさ。色々しんどくなるんだ」
ヨコハマを一口飲む。ウオッカとジンの二つを混ぜるカクテルだからぐっとくる。愛奈に一口飲ませると「酒って感じです」と感想を述べた。茹で落花生がメニューにあったのでオーダーする。愛奈は食感が苦手だったようだ。愛奈はダイキリについてきた梨を一口食べ俺にくれた。甘くて美味い梨だった。次にオーダーしたのは愛奈はシャインマスカットを使ったウオッカマティーニ。俺はサイドカー。
「ゴリラいるじゃないですか」
「実習先の人ね」
「ほんといいなって思う。優しいし人のこと良く見てるしたくさん食べるし」
「既婚者じゃ無きゃね」
「そうなの。でも奥さん可愛かった」
「たぶん可愛いだろうな」
「一緒にいれはいるほどいいなって気持ち強くなる」
「叶うとか叶わないとかそんな事はどうでもいいから今の時間楽しめたらいいね」
「頑張ります。お局怖いけど。でも最近機嫌いいからいいや」
シャインマスカット一粒を俺に寄越す。繊維質の食べ物があまり好きではないらしい。サイドカーを飲ませると美味しいと言った。
「サイドカーに犬って映画知ってる?」
「知らないです」
「すごくいい映画だよ。小説原作なんだけれど」
愛奈がスマホをいじる。
「Huluで見れるんだ」
「そうなんだ。便利やな」
「今度見よう」
その後は愛奈の好きな小説の話をした。加藤千恵って読んだことなかったなと思いながら話を聞いていた。
「次なんだけどさ」
「はい」
「ピアノがあるバーに行きたいんだ」
「行きましょ。その後ラーメン食べて帰るんだ」
「いいね、そうしよう」
店を出てると少しだけ肌寒くなっていた。
ピアノのあるバーに向かって歩いていく。
「バーに入るの初めてでした」
「そうなんだ。前の彼とは来なかったの?」
「入るのに緊張するとこには行かなかったんです」
「最初は緊張するもんな。慣れればいいんだけど」
「あっちの方にあるビストロにもやっと入ったくらいだから」
「そうなんだ。でもいいもんでしょ」
「すごくよかったです」
「そうだ」
「どうしました?」
財布から千円札を数枚出して愛奈に渡した。
「タクシー代、忘れないうちに渡しておくよ」
「えっ、いらないですよ」
「遅くまで付き合わせてしまったし」
「いいですって」
「いや、受け取って。今日は本当にありがとうね」
愛奈のポケットに押し込んだ。
「すみません。ありがとうございます」
「ほんと愛奈ちゃんには救われっぱなしだよ。だからこれくらいはさせてよ」
そうこうしてるとピアノバーの前についた。
少しだけ緊張したが意を決して入る。
店内は混雑していたが運良くピアノが横にある席に座れた。さっきまでは横に座っていた愛奈と向かい合わせで座った。目を合わせるのが照れくさくなるなと思った。
「リクエストしてもいいみたいだよ」
「えー、いいな。弾いてもらいたい」
「何かあるの?」
「一時期、月光にハマってて」
「いいね」
「でも何楽章か忘れちゃった。ちょっと聞いてもいいですか?」
「いいよ」
愛奈がイヤホンを繋げて聞いている。
その間に俺は「Desperado」をリクエストした。
「一でした」
「そっか、次に言っておくよ」
Desperadoが流れる。
愛奈も知っていたみたいで俺が勧めたピニャコラーダを飲みながら聞いている。柔らかくて優しい表情が美しく貴かった。
「これはさ恋愛の曲っぽいけどポーカーで負けた曲なんだ」
「えー」
愛奈が笑う。
次にピアニストの方に愛奈のリクエストを伝えた。
始まると今にも泣きそうなくらいに感動している愛奈がそこにいた。スマホを向けてその時間を記録している。その時の顔は少女のよう、昔見た愛奈の写真に少し似ていた。
お酒が進んでいく。
カウンター席のおじさまがビリー・ジョエルをリクエストしている。ストレンジャーやHONESTYが流れている。
会話は愛奈の男友達の瀬名くんの話題に。
「今度ドライブに連れてってくれるんですよ」
「ロードスターに乗ってるみたい」
「オープンカーか。この時期はまだ気持ちいいね」
「天気の良い日見ておくねって」
「いい子やね。その子と付き合っちゃえば?」
「でもね、絶対彼女いるんですよ。いつも濁してくるけど」
「そっか」
「沼っちゃう男子ですよね」
「じゃあさ、俺と付き合って」
「仮にも彼氏いるんですよ」
「冗談だよ。俺は君に似合わない」
もっと若くて横浜流星みたいなルックスで何か才能があって自分に自信があったらもっとアピールしたかもしれない。そう、愛奈に合うのはそれくらい優れている人で、愛奈を大切に包み込むことが出来る余裕がある人に違いないからだ。
「あの曲聴きたい」
「なに?」
「秒速の曲」
「One More Time?」
「それ!」
「じゃあ頼んでおくよ」
ピアニストの方にお願いするとすぐに弾いてくれた。愛奈は感激してこのときは本当にその強い眼差しが少し濡れていたように見えた。
タバコに火を点ける。愛奈をちらちらと見ながら吸うタバコはいつもより目に染みる。
ダービーフィズを一口飲む。久々に飲んだがやはり美味しい。
「すごく嬉しかった」
「よかったよ」
最後の酒に選んだのは愛奈はシシリアンキス、俺はXYG。
そのオーダーを聞いていたピアニストの方はGet Wildを弾いてくれて俺は笑った。
「これさ、シティハンターで出てくるんだよ」
愛奈はもちろん知らなかった。男の子の映画だからね。
「ボズ・スキャッグス弾いてほしいんですけど」
近くの席の女性が弾いているピアニストに声をかけたがちょっと待ってと制止された。女性がトイレに入った間に俺はこの隙にと一曲リクエストした。
愛の讃歌。
愛奈も知っていた。
タバコも吸わず、氷だけになった酒で口を濡らし、聞いていた。少しだけ目頭が熱くなった。
曲が終わるとお酒が届く。
「渋いお酒飲まれますね。さっきのダービーフィズとか」
マスターから声をかけられた。ダービーフィズの泡がいいよねと話した。
ピアニストにさっきの女性が話しかけている。
「ボズ・スキャッグスをお願いします」
「曲はなにがいいですか?」
「曲名がわからなくて…」
「それならウィー・アー・オール・アローンを聞きたいです」
俺が言った。すると二人ともそれがいいとなって弾いてくれた。
訳詞には二つの解釈がある。
僕ら二人だけ。なのか、僕らはみな一人なのか。
今だけは前者でいさせてほしいと思った。
「ピアニストの人が弾いてて気持ちいい曲ってなんなんだろう」
愛奈が言う。
「確かに気になるね。聞いてみるよ」
ピアニストの方に聞く。
「その時で変わります。上手くできたなって思えば気持ちいいですから」
なるほどなと二人で頷いた。
最後のリクエストに「ザ・ローズ」をお願いした。
ピアニストの方も好きな曲らしい。
「気持ちよく弾けるように頑張りますよ」
この曲は愛奈も知っていた。
オールディーズの有名な曲だ。
気持ちよさそうに弾くピアニストと聴き惚れる愛奈を見ながら最後の一口を飲み干した。
後半はあまり愛奈と話をした記憶がない。二人ともピアノの音色に癒やされながら静かに酒を飲み、少しだけぽつりぽつりと会話をする。そんな落ち着いたやり取りが出来る関係っていいなと思った。
会計をする。
お釣りを全て、といっても少額だがピアニストの方に渡してもらった。
財布の中身が増えている気がした。
愛奈に聞くと何もしてないらしい。
「きっと財布の中でお金が生まれたんですよ」
そういうことにしてピアノバーを出た。出る直前に流れていた曲はドライフラワーでちょっとだけ不釣り合いで笑えた。
愛奈がラーメン屋を案内してくれるが場所が少し分かりにくくて何とかたどり着いた。
ビールを少し飲みながら餃子を食べているとラーメンが届いた。
二人して黙々と食べた。美味かった。
「大盛りにしてもよかった」
「私もう食べられないからあげますよ」
愛奈が麺をくれた。それを全て食べてビールを飲み干す。
二人で一頻り飲んだあとに餃子をつまみながらビールを飲み、ラーメンを一緒に食べてくれる女性は出会った事なかったかもしれない。
会計前にトイレに行きたくなって財布とカードを愛奈に渡して払っておいてほしいとお願いした。
戻るとテーブルに忘れていた眼鏡を俺に渡しながら
「使い方わからなくて自分で払っちゃいました」
「えっ、ああ、ごめん。現金渡すよ」
「いらないですよ。たくさんご馳走になったんでこれくらいはさせてください」
何度かやり取りしたが甘えることにした。
愛奈には甘えてばっかりだ。
店を出て大通りに向かう。
タクシーをつかまえようと。すぐにつかまった。
「このタクシー割引使えるんですよ」
「ありがとうね、また会おう」
「はい!」
タクシーを見送った。夜の大通りをすーっと去っていった。
ホテルへの帰り道。コンビニでお茶と赤マルを買った。久々に吸って美味しかったからだ。お茶は愛奈の鞄に預けたまま忘れていた。
赤マルに火を点ける。
やたらと煙が目にしみる。夜空を見上げたら明るい繁華街にも関わらずいくつか星が見えた。
生きていてよかった。
それくらい楽しくて美しい夜だった。
また愛奈に会いたいと思った。次はいつ会えるだろう。そんな事を考えながらホテルのベッドに倒れ込む。
「死んだら悲しいですから死なないで」
今日何度か言われた愛奈の言葉がリフレインしている。
本当に素敵な人だ。あんなに幼くてどうしようもない人と恋に落ちてたのに上手に成長した。
あんなに気遣いできて疲れないのかなって思う。
少し心配だ。
愛奈を写した写真を見返す。ブレてる写真ばかりで下手さが目立つが二枚ほどいい写真があった。
大切にしなきゃならない人がこの世にはいる。
間違いなくそれは彼女である。
これは一夜の記録と愛奈への恋文だ。
なんてね
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【かいわいの時】明治二十二年(1889)4月7日:北野村に凌雲閣(九階)開業(大阪市史編纂所「今日は何の日」)。
浅草凌雲閣竣工の前年の1889年、大阪・北野茶屋町の遊園地「有楽園」内に、凌雲閣(9階建て・高さ39メートル)(北緯34度42分21.1秒 東経135度29分59.1秒)*が完成していた(檀重三から鷲尾宇兵衛へ譲渡)。「梅田東生涯学習ルーム体育館」(旧梅田東小学校跡地)の門前に、その碑が残る。
ノーベル文学賞作家のラドヤード・キプリングは1889年の日本旅行中に大阪で凌雲閣を見学し、「大阪のエッフェル塔」と呼んで、「日本人は誰でも眺めの良い所にやって来て腰をかけ、お茶やお菓子や酒を賞味するのが大好きだから、大阪では郊外に木材と鉄骨を用いて9階建ての塔を築き、粋を凝らした日本庭園を造り、一面に真っ赤な提灯を巡らして人を呼び寄せる商売が十分儲かるのだ。この大阪エッフェル塔は正直なところ美しい建築とはとても言えないが、そこから見える景色は補ってあまりある」と評し、1、2階にずらりと並んだ茶店でお茶を飲みながら花の景色を楽しむ満員の客を見て「東洋人がこれほど何かにうっとりと夢中になっているさまに私は驚いた」と書き記した。英領インド生まれの英国人であるキプリングは、景観を楽しむ趣味があるのは西洋人の上流階級のみと思っていたため、東洋人である日本の庶民が景色を楽しむ姿に衝撃を受けたという。(ウィキペディアより)
(写真)「大阪西北部」(明治42年測図・明治44年10月30日発行)と現在の地図(「今昔マップ」より)。赤印が凌雲閣のポイント。
(参考)グーグル航空地図による該当ポイント
https://goo.gl/maps/nGZPKWxvfwaVCgWx5
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2024年1月7日(日)
正月休みに読むべく用意していたのは、立川談笑『現代落語論』。落語もしくは落語家を扱った本は多数あるが、落語家自身が<論じる>ものはさほどない。この分野での嚆矢は何と言っても立川談志『現代落語論』(1965年)、続いて桂米朝『落語と私』(1975年)、柳家小三治『落語家論』(2001年)といったところが主なところか。とは言え、元日からテレビに齧り付く時間が増えたため、開いた本も読了しないままに正月休みが終わろうとしている、やれやれ。
5時30分起床。
昨晩は早めにダウンしてしまったので、日誌を書く。書き上げると<予約投稿>という扱いにするので、午前6時30分に公開される。
洗濯機を回す。
朝食はいつもの蕎麦定食、正月用の三ツ葉をやっと消化出来た。
私がコーヒーをいれている間に、ツレアイが洗濯物を干す。
食材をあれこれチェック、ツレアイは必要なものをメモしたうえでマツモト・セントラルスクエア・ライフ・サンディと、買物に走る。
私の方は半熟酢卵を仕込み、毎日のようにアマゾンから届く段ボール箱を整理する。
ランチ、息子たちには日清ラ王、私たちは先日の鍋の残りのうどんを頂く。
録画番組視聴、昨晩の続きで落語研究会から、「禁酒番屋」柳亭小燕枝、「生きている小平次」三遊亭兼好。
軽く午睡。
早めの夕飯、残り食材消費メニュー、白菜と薄揚げの炊いたん・春雨サラダ・ベーコンステーキ・レタスとトマト。
録画番組視聴、日本の話芸から
立川談笑 落語「金明竹」
初回放送日: 2024年1月7日
立川談笑さんの落語「金明竹」をお送りします(令和5年12月6日(水)東京・町田市 町田市民ホールで収録)【あらすじ】おじさんの道具屋で与太郎が留守番をしているところへ、いろいろな客がやってくる。雨宿りの男やら、猫を借りに来た近所のお店の番頭さん、骨とう品の目利きを依頼に来た手代。そのつどおじさんに教わったセリフを言うのだが…
この人は上手いのだから、普通にやっても噺の魅力で十分に面白いと思うのだが、なぜこんな風に改作するのだろうか・・・。
腹ごなしに町内ウォーキング。
片付け、入浴、体重は一昨日から250g増。
今週は血圧が高い、体重増と飲酒がその要因であろう。来週から修正せねば。
辛うじて3つのリング完成、歩数も1万歩越え、水分は1,880ml。
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