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#丸みショート女子
69creator · 1 year
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𝕝𝕟𝕤𝕥𝕒𝕘𝕣𝕒𝕞をご覧の皆様。 こんばんは。 ⁡ ⁡ また最近、髪型迷走中の ゆういちです。 ⁡ ⁡ #ウシロノヘアカタ #ヨコノヘアカタ #マワルヘアカタ #アフタービフォー ⁡ 今回は... ボブショート? ショートボブ? 丸みショート? ⁡ スタイルはそのあたり。 ⁡ ⁡ 僕はショートスタイルの時は えりあしが結構重要視してて やっぱりえりあしからも 可愛さがにじみでるようにしたい。 ⁡ ⁡ 軽めで束感ある感じがタイプ。 ⁡ シザーとレザーを使い分けて つくるえりあしが好き。 ⁡ なんて僕の趣味嗜好はどうだって いいですよね(笑) ⁡ ⁡ 元々はワンレン... いわゆる切りっぱなしでしたが ⁡ 削りながらショートに大変身。 ⁡ 可愛くなりました。 ⁡ ⁡ それではまた次回の投稿で。 See you NEXT Time👍 ⁡ 僕の中の髪型を決める際に 重要視する3大ポイントは☝️ ①やりたいかやりたくないか ②似合うか似合わないか ③オシャレかオシャレじゃないか * この投稿を見たあなたの髪を切るのは… オレかオレ以外か…は違うか(笑) ♚ 今、目の前の担当している お客様にとって何がBESTなのか🧐⁉️ 四六時中考える服部です。 よろしくお願いします🙇‍♂️ * ヘアを自分史上最高にカワイクして 毎日ハッピーな毎日を 僕と一緒に始めませんか…💓 ✩ たくさんのお客様のヘアパートナーに なりたい!! ✯ ✩ #僕のセブンルール 【レディ編】 【ユウイチの7⃣ルール】 1⃣髪の生え方や癖を見る 2⃣頭の骨格を感じる 3⃣顔立ちを見る 4️⃣鏡越しに表情などをみる 5⃣前髪、顔周りは特に丁寧に仕上げる 6⃣椅子を回して360度のシルエットチェック 7⃣『僕の目をみて』と正面から質感チェック ★ ☆ △夢中になってるアプリのアカウントI.D. ▼Instagram:69_top_of_creator_96 ♢Tik Tok:6_hairdresser_9 ⿴ZEPETO:3XD7F6 ⿻YouTube:服部裕一のゆうチャンネル フォローしてくれたら飛んで喜ぶ。 ⿸ 【Hair menu】 cut…4500 color:retouch…5800 fulllengthcolor…8000~ doublecolor…15700~ medicalcolor…7300~ pointbleach…3600~ perm…9900~ medicalperm…16500~ pointperm…4000~ treatment…3000~ headspa…5000~ ※料金は税別+長さにより変わります。 ♡ヘアスタイル創りのコンセプト↓ ♥髪は作物、頭皮は畑、カットは剪定。 ♡ #名古屋 #名東区 #名古屋カフェ #名古屋美容師 #zele一社 #madeinゆういち #名古屋のyoutuber美容師 #僕にしか出来ないヘア #似合わせカット #オシャかわ #シースルーバング #えりあしかわいい #丸みショート女子 #校則余裕でクリアヘア #黒髪美人 #オルチャンヘア #be容師 #レア髪 #認知されたい #いいねコメントフォロー待ってます #頭は丸い #髪は動いてこそ美しい #ホットペッパービューティー ✩ ZELE一社( ✧Д✧) カッ @69_top_of_creator_96 愛知県名古屋市名東区一社1-87 ユウトクビル2階 ☏052-709-4100 営業時間 平日*土曜日 10:00~19:00 日曜*祝日 9:00~17:00 今までイメージ通りの髪型になったことのない方😫 自分に似合う髪型が分からない方🧐 ぜひお気軽にDMでご相談下さい👍 #服部裕一 ✩ お電話予約の際は あなたの綺麗を叶える魔法の合言葉は 『服部さんのインスタを見た!』ですよ。 特典があるかもしれませんよ。 ✩ トップのリンクから ホットペッパーのWeb予約出来ます!! おかげさまで口コミ高評価増えてます。 ありがとうございます。 (Itsushiya, Meito-ku) https://www.instagram.com/p/CofLEngPIAz/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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kouseiitani · 2 years
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elle-p · 4 months
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P3 Club Book Koromaru short story scan and transcription.
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虎狼丸の優雅な一日
初夏の爽やかな日差しが心地よい日曜日。今日もなかなかの散歩日和だ。少し早めに出かけて、少し寄り道をするのもいいかもしれない。明確な言葉によるものではないが、だいたいそんなことを考えつつ、その柴犬は神社の石畳から身を起こして軽くあくびをした。
犬の名はコロマル。正式には虎狼丸と書くのだが、本人 (本犬?) は字が読めないので、とくにその違いにこだわりはない。彼がこだわっているのは、毎日の散歩。先日、彼の飼い主である神社の神主が事故で亡くなって以来、新しく神社の主となった人間は、最低限必要な食事は出してくれるものの、散歩に連れて行ったり頭をなでてくれたりはしない。コロマル自身、前の飼い主だけが唯一の主人であると思っており、もし新たな神主が散歩に連れて行こうとしたとしても、以前のルートを変えるなど考えもつかないことだった。なので、今日もコロマルは散歩に行く。まず、長鳴神社からムーンライトブリッジを超えてポートアイランドの駅前まで。その後、再びブリッジから蔵戸台方面に戻り、町をぐるりと巡ってから神社に戻る。これが、毎日の長い散歩のロードマップ。
「わん!」
人間の言葉に直せば、さあ行くか、といった感じだろうか。コロマルは一声鳴くと、いつもののんびりとしたペースで歩き出した。
「あ、コロ助、おはよ!」
ふと、かけられた声に、コロマルは面倒くさそうに顔を向ける。それは、三つ編みの髪を頭の両側でお団子にした、小学生くらいの女の子。いつも、夕方ごろに神社で遊んでいる子だ。
実を言うと、コロマルはこの子が少し苦手だった。嫌いなわけではないのだが、ややコロマルを構いすぎる傾向にあるのだ。大人と比べて体温が高い子供が、気温が高い日にむしゃぶりつくように抱きしめてくることを想像してほしい。毛皮に覆われたコロマルの苦労は、その想像の軽く上をいくものだ。ただし、慈悲深いコロマルは、そんな女の子も無下には扱わない。この子がわりと苦労人であることを、コロマルは知っているのだ。そうしょっちゅうではないが、この子の両親は酷いケンカをするらしく、夕刻の神社で悲しみをこらえるようにコロマルに抱きついてくることがある。群れで暮らす犬族は、それこそ家族や仲間は命に等しい。それが仲良く暮らせない悲しみは、いかほどのものだろうか?そう思うと、コロマルは多少うっとうしくても、彼女に優しくせずにはいられないのである。
「あ、もう時間だ。ごめんねコロちゃん、舞子もう行かなきゃ。あーあ、塾面倒くさいなあ」
そう言って、彼女はコロマルの頭をひとなですると、廠戸台商店街方面へと歩み去った。うん、これぐらいのスキンシップが、コロマルにとってはちょうどいい。少し気分を良くして、コロマルも再び歩み始めたのだった。
潮の香りがする中、コロマルはムーンライトブリッジをてくてく進む。人間は、ここを観光地とかいう扱いでありがたがって見に来るらしいのだが、コロマルにとっては散歩ルート中もっとも退屈な行程である。というのも、橋の手すりが高すぎて、コロマルの体高では絶景と噂の風景も見えないからだ。しかも、やたらとたくさんの自動車が前から後ろから突っ走ってきて、危ないわ埃っぽいわ、嫌な油臭い空気を吐き出すわで不愉快ですらある。
であるからして、コロマルはこの場所を無心で歩く。なるべく潮の匂いにだけ集中し、遠くに見えるポロニアンモールの丸いドームを目指してずんずん歩く。時おり、ランニング中の人間が立ち止まって手を伸ばしてきたりするが、それも可能な限り無視してひたすら前へ。
しかし、それでも2度呼ばれると、つい立ち止まってしまう。コロマルが行ってやらないと、呼んだ人間は時々えらく傷ついた顔をすることがあるのだ。人間を傷つけることは、コロマルの本意ではない。なので、コロマルはあくまで “仕方なく” 人間に思うさま頭をなでさせる。コロマルはそういう自分の性格を時おり誇らしくすら思っているが、じつはなでられている間、ついつい尻尾を振ってしまっていることには気づいていない。コロマルはそんな犬だった。
「あれー、コロちゃん?こんなとこまでお散歩に来てるの?」
「あ、ホントだ。健脚だね〜」
ポロニアンモールに来たところで、厳戸台あたりでよく見る女子高校生に出会った。いつもの制服姿ではなく私服姿。セミロングの髪の子は、ピンクのタンクトップにデニムのジーンズ、ショートの髪の小さい子の方は、水色のワンピースを着ている。もっとも、犬であるコロマルにとって、服の違いは別にどうでもいいのだが。
このふたりは、けっこうコロマルのお気に入りである。水色ワンピースの子は、動物の扱い方を心得ているのか、コロマルが気持ちいい場所を的確になでてくれる。タンクトップの子は、なでかたこそ普通だが、あまりベタベタしようとしない点で好感が持てる。コロマルに触りたいという気持ちは、たくさん伝わってくるので、むしろもっと触ってくれてもいいのに、と思うことすらある。もし犬の言葉がわかる人がいれば、遠慮しないでいいよと言ってあげたいほどだ。まあ、そうそう都合のいいことはないと、犬ながらに買いコロマルはそう思う。
「あ、コロちゃん、こういうの食べるかな?」
そう言って、水色ワンピースの子が手に提げていた袋から何かを取り出す。赤いビニールに包まれた、棒状の何か。漂ってくるかすかな匂いに、ある期待を抱き、思わずコロマルの尾がぶんぶんと大振りになった。
「あれ?ソーセージじゃん。どーしたの?」
「え?あ、た、たまには自分で料理しようかと思って······さっきデパートで、ちょっと」
「ふーん、風花も料理したりするんだ」
「ま、まあね。あはははは」
ワンピースの子は何か焦った様子だが、すでにコロマルは、想像の中に広がるソーセージの味で心が一杯になっている。ワンピースの子は、そんなコロマルの期待に応えるように、できるだけ意いでビニールをむいてくれた。
「はい、どうぞ」
「わん!」
礼を言うのもそこそこに、コロマルはソーセージにかぶりついた。そういえば、朝食をとってからけっこうな時間が過ぎている。ちょうどいいタイミングの思わぬ幸運に、コロマルの心にじんわり幸せが広がっていく。やはり、何かを食べているときが、いちばん幸せだ。それがとくに、好きな人が手ずから食べさせてくれるとあれば、それ以上何を望むことがあろうか。
欠片ひとつ残さずにコロマルはソーセージ��たいらげ、もう一度「わん」と礼を言う。
「どういたしまして」
とワンピースの子が答え、買い物の続きがあるからと、コロマルをひとなでしてどこかの店へと向かってふたりは歩き出した。ごくまれにだが、このようにコロマルの意思が、人間に通じているように思えることがある。それは単なる錯覚や勘違いかもしれないが、それもまたコロマルに満足感を与えることのひとつなのだ。
ともあれ、コロマルは今日彼女たちに会えた幸運に感謝しつつ、散歩の続きを楽しむことにした。いずれ、コロマルは先ほどの想像どおり彼の言葉を理解できる存在と出会い、この日もっとも幸運だったことは、ワンピースの子がくれた食物が “調理前” だったことにあったのだと知るのだが、それはまた別の話である。
散歩の折り返し点、ポートアイランド駅に着いたときには、太陽は南天を過ぎ、もっとも暑い時間帯を迎えていた。駅そばにあるオープンテラスのカフェは、日曜ということもあって満員。いつもなら、ここで小腹が空くタイミングとなるために、カフェの客に愛想を振りまいたりすることもあるのだが、今日はもらったソーセージのおかげでその必要もない。
とりあえず、涼しい日陰でも探そうかとコロマルが駅前広場を見回したとき、ぞわり、と背中の毛 が逆立つような感覚がした。無意識に、尻尾が丸くなって足の間に挟みこまれる。コロマルは、その感覚に覚えがあった。
--いた。
花塩そばのベンチに座った、白いドレスの少女。手には大きめのスケッチブックを持ち、空ろな目でしばし前を見つめては、手元に目線を移して右手を動かす。その作業を、少女はひたすら続けている。
コロマルは、あまりこの少女に近づいたことがない。別に危害を加えられた訳ではない。ただ、以前1度だけ、少女の前方にいたときにじっとあの目で見つめられた。それだけだ。その目が、コロマルは今も怖くて仕方がない。
言葉を持たないコロマルは、その印象をうまくまとめることはできないが、あえて説明するとしたら、それは生き物としてはありえないほどの、虚無に満ちた視線だった。コロマルの目からは、少女は既に死者に等しく見えた。
だが、そんな少女が。
「······おいで」
なんと、コロマルを認めて声をかけてきたのである。一瞬のためらいののちに、コロマルは少女のほうへと近寄った。丸めた尻尾は、気力を振り絞って常態に戻している。少女に対しておびえを見せることが、何となく申し訳なく思えたからだ。それがなぜかは、わからない。
コロマルが近寄ると、少女は手に持ったスケッチブックを数枚めくり、やがてコロマルにひとつの絵を示した。強弱が定まらない輪郭線、不安定な色彩。正直、犬であるコロマルに絵の良し悪しはわかりはしないのだが、その絵からは何か圧倒されるものが伝わってきた。それは、この世のすべての生き物が恐れるべく定められた、“死” そのもののイメージだった。
「······これ、お前よ」
その言葉に、コロマルは首をかしげて再び絵を見る。よくわからない。だが、コロマルの生き物としての鋭敏な感覚が、その絵にこめられた別のイメージを感じ取った。
これは、憧れ?
紙の上にすみずみまで満ち溢れる、死というマイナスイメージの中、ほんのかすかに匂う生への憧れというプラス。それはまるで、地平線まで広がる黒々とした底なし沼の真ん中から、すがるように空に向かって伸ばされた白い手。
「普通は······誰かに見せたりしないけど······お前は、勝手にモデルにしたから、一応······」
目を合わせず、言い訳するように少女は呟き、そそくさとスケッチブックを畳んでしまう。
「く~ん」
と、コロマルは、甘えるように鼻を鳴らす。少女に付きまとう、得体の知れない死のイメージは微塵も薄れてはいないが、それでも小さな小さな助けを呼ぶような気配が気になった。だが、少女にはそんな想いは通じず--。
小さな体に不釣合いな大きさのスケッチブックを抱え、少女は無言で立ち去ってしまった。
自分には、あの虚無から彼女を助けることはできない。それを本能的に知覚し、コロマルは少し悲しくなる。そしてコロマルは気づく。
--誰かを守れる力が欲しい。
そんな想いが、自分でも意外なほどに、強く強く満ち溢れていることに。それは、愛する主人を突然の事故で亡くして以来、自分の気づかない場所で、静かにっていた火だった。
それから、コロマルは沈んだ気分を晴らすように、ポートアイランド駅近辺をたっぷり散策した。今日はなかなか面白い人間が多く、別に吠えたり呻ったりもしていないのに「ちょっと!アタシは犬って苦手なのよ!犬は悪い人がわかるって言うし、アタシなんか噛まれるに違いないんだからね!しっし!訴えて慰謝料とるわよっ!」と叫ぶ中年男にじゃれ付いたり、なにやら月高の女生徒を付け回す同じく月高の男子生徒を、真似して尾行してみたりした。そして、ほんの少し気持ちが復活したところで、コロマルはポートアイランドをあとにして、行きと同じ道を辿って帰路に着く。
ポロニアンモールで立ち話をする主婦の、買い物袋から漂う匂いの誘惑に打ち勝ち、相変わらず埃っぽくて油臭いムーンライトブリッジをずんずん進み、ほんのちょっと厳戸台駅前に寄り道をする。これもいつものルート。
このあたりに来ると、昼が長い夏とは言え、すっかり日は傾きかけていた。駅前商店街に多数存在する食べ物屋からは、それぞれに違ったいい匂いが漂ってくる。とくに気になるのが、香ばしく焦げたソースの匂い。前に1度だけ食べたことがある、たこ焼きの匂いである。
ちょっとした気まぐれで、店主が散歩中のコロマルに投げてよこしたたこ焼きは、今までに経験のない美味だった。
「ホンマは犬猫にタコやイカはあかんのやけどな。ウチのはほら、タコ入ってへんから」
店主はそんなことを言っていたが、コロマルにとってはどうでもいいことである。ただ、もう1度だけ店主が気まぐれを起こしてくれないかと、このあたりで足を止める癖がついてしまったのが、我ながら情けない。
空腹をこらえながら、コロマルは商店街を進む。今日はあいにく、コロマルに食べ物を恵んでくれる気になる人間はいないようだ。いつも新しい神主が提供してくれる食事は、コロマルにとってはやや物足りない分量である。今日はちょっと疲れたので、もしかするとあれでは足りないかもしれない。今夜は、空腹をこらえて寝るしかないかと、コロマルが覚悟したとき。
「よう、コロちゃんじゃねえか」
後ろからかかる声。
大きく尻尾を振って、コロマルは声の主のもとに走り寄った。亡くなった主人を除けば、おそらくコロマルがもっとも大好きな人間だ。
「ほら、焦るなって」
そういって、その人は懐から容器を取り出し、地面に置いて開けてくれる。中身は何か肉を煮込んだもの。巌戸台商店街やポートアイランドでよく見かけるその人は、いつの頃からか、定期的にコロマルに食べ物を持ってきてくれるようになっていた。口調は乱暴だが、優しい人だ。
「よし、いいぜ。食えよ」
いつものことだが、コロマルは律儀に一声吠えて礼をいい、それから出された食事を食べ始める。あまり味を気にしないコロマルだが、その肉は絶品だった。濃すぎない味付け、適度な歯ごたえ、神社で出されるドッグフードとは雲泥の差である。食べながらコロマルは思う。色々あったが、今日は総じていい日だった。明日もいい日になるだろうか?
どちらにせよ、コロマルは毎日を精一杯生きるだけだし、日課の散歩も変わらないだろう。手が届く範囲の幸せ、それを守ることがコロマルの重要事であり、それは確かに、生き物すべての真理なのである。
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rosysnow · 28 days
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ずっとそばに
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 ゆっくり、夜の街に明かりが戻ってきたと感じる。居酒屋やスナックが夜遅くまで光を灯している。
 そんな通りに並ぶ、とあるバーに大学時代からよく行っている。ゲイバーじゃないけど、ママがニューハーフで、トークがなかなか愉快なのだ。そんなママを気に入って、店によく来る奴のメンツもだいたい決まっている。
 その人々の中に、いつからそのカップルがいたのかは憶えていない。自然と、名前と顔は一致するようになっていた。長身でワインレッドのメッシュを入れた男が真寿、黒髪ショートのきりっとした女が寧々だ。真寿は二十六の俺とタメくらいで、寧々はそれより年上で三十手前だろうか。
 見ている感じ、真寿は寧々の尻に敷かれている。寧々が何かしら一方的に言うと、真寿はしゅんとして謝っている。
 あんな女、俺なら嫌だな。そう思うけど、だからこそ、好きこ���んで寧々とつきあう真寿は、よほど彼女が好きなのだろうと俺は思っている。
「あの子も、あんなモラハラみたいな女、やめとけばいいのに」
 その日も仕事を終えて、帰宅前にカウンターで一杯飲んでいた。すると、大学時代に同じサークルだった茅乃も顔を出し、俺の隣でカクテルを飲みはじめた。お局に対する愚痴をひと通り述べたあと、ボックス席にいる真寿と寧々を一瞥して、茅乃はそう言った。
「モラハラって」
「いつも怒られてるじゃん、あの子」
「あいつが彼女のこと好きなら、勝手なんじゃね」
「克宏も、好きな女だったらああいうのOKなの?」
「……俺は嫌だけどな」
「ほら。あーあ、真寿くんならもっといい女がいるのにさ」
 俺は静かにハイボールを飲んだあと、「それは、お前が『いい女』だと自称してるのか?」と眉を寄せた。
「悪い?」
「お前は『いい女』ではないな」
「克宏にはそれでいいけど」
「真寿くんに興味あんの?」
「私は可哀想な男が好きなの」
「可哀想って……」
「放っておけない。私が幸せにしたい」
「本人は幸せだと思うぞ」
「あれを見て、本気でそう思う?」
 真寿と寧々がいるボックス席をちらりとした。寧々は腕を組んでソファにもたれ、何か言っている。真寿はやっぱりうなだれている。会話はジャズと客の話し声に紛れている。
「絶対モラハラだわ、あれは」
 茅乃はひとりうなずき、オレンジ色のカクテルを飲んだ。「そうですか」と俺は聞き流して、スマホを手に取っていじる。
 今まで、真寿と寧々のそういう関係は、当たり前のように見ていた。でも、実は真寿は寧々に負担を感じているのだろうか。だとしたら、別れない理由が俺には分からないけど、真寿は別れたいと切り出せるタイプじゃなさそうだなとは思う。
 やがてアルコールが軆にまわり、ほどよいほてりを覚えてきた。茅乃には「あんま野暮なこと考えんなよ」と釘を刺し、俺はママに支払いをしてバーをあとにした。
 びゅうっと寒風が吹きつけてくる。十二月になって、一気に冷えこむようになった。マスクが隠れるくらい、マフラーをぐるぐるに巻いて、駅へと革靴の足を向ける。
 この通りは、パンデミック前は酔っ払いもかなりふらふらしていて、やや治安が良くない感じだった。でも、時短営業を機に閉じた店も多く、現在はそこまでうるさくない。灯っている明かりは増えたけど、活気が戻るのはまだもう少し先なのかなと思う。
 恋人もいない俺は、毎日会社で仕事をやるしかない。リモートワークも選べるけど、実家住まいの俺は、フルリモートが解除されたら、さっさと出社するようになった。リモート授業の大学生の妹に、「満員電車に乗ってきて、そのまま近づかないでよね」とか言われるが、そもそもお前がそんなふうに生意気だから家でゆっくりできねえんだよと思う。そして、これを口にしたら、両親は確実に妹の味方をするのも鬱陶しい。
 年末感が濃くなる金曜日、俺はまたバーにおもむいた。今年は土日がクリスマスなので、何となくうんざりしていた。彼女持ちの後輩は、「彼女とゆっくり過ごせるから最高ですよね」とか言って、俺は引き攣った苦笑いをするしかなかった。
「今年は久しぶりにオールのクリスマスイベントやるから、うちに来たら? 出逢いもあるかもしれないわよ」
 ママになぐさめられて、それもありかもしれないと深刻な面持ちで検討していると、からん、とドアベルが響いた。ついで、「こんばんは」と誰か店に入ってくる。
「あら、真寿くん。寧々ちゃんは?」
 俺はグラスから顔を上げ、入ってきたのが紺色のコートを羽織った真寿であることを認めた。彼は相変わらずな印象の弱気な笑みを見せると、ホールのボックス席でなく、俺のいるカウンターにやってくる。
 手にしたメニューを見つめた真寿は、吐息をついて、「とりあえず水を……」と言っ��。
「いいの? お水でもお金はいただくわよ」
「分かってます」
 ママは肩をすくめ、ミネラルウォーターをペットボトルごと真寿に渡した。しかし、受け取った真寿は、それに手をつけようとしない。
「何かあったの?」
 スツールがあいだにふたつあるけど、その横顔を見兼ねて、俺は声をかけてみた。はっと真寿はこちらを見る。女顔だなあと失礼ながら思っていると、「……克宏くん」と真寿はつぶやく。話すのは初めてだが、名前ぐらい把握されていても驚かない。
 真寿は視線を下げると、「あの子……」とぽつりと口を開いた。
「君の恋人ではなかったんだね」
「はい?」
「茅乃さん。ずっと、そう思ってたよ」
「………、え、茅乃と何かあったのか?」
 真寿はやっとペットボトルを開封すると、ごくんと喉仏を動かして、ミネラルウォーターを飲みこんだ。
「夕べ、茅乃さんと一緒だったんだ」
「はっ?」
「それが寧々に見つかって、怒られちゃって」
 え……と。
 何言ってんだ、こいつ。茅乃と夕べ一緒だった?
 もしや、この男、おとなしそうな顔して下半身は緩いのか。一緒だったということは、まあ、そういうことだろう。そりゃあ寧々も怒る。
 いやいや、待て。茅乃は先日、モラハラとかめんどくさいことを勝手に言っていた。
「もしかして、茅乃に無理に迫られた?」
「……まあ」
「マジか。それは……何か、あいつの友達として謝らないとな」
「いやっ、僕が流されただけで」
 そこは確かにお前も悪い。と言うのはこらえて、「真寿くんって、寧々さんとうまくいってなかったりする?」と問う。
「え? そんなことはないけど」
「じゃあ、あんまり……良くはなかったな」
 あんまりというレベルじゃないが、そう言っておく。真寿は黙りこんでしまい、ただ不安そうな顔で水を飲む。
「茅乃は、その──あいつなりに、真寿くんを心配にしてたみたいだから」
 沈黙が窮屈になった俺の言葉に、「心配?」と真寿は首をかたむける。ワインレッドのメッシュがさらりと流れる。
「真寿くんが、寧々さんにモラハラ受けてんじゃないかって」
 真寿は心底驚いた丸い目になって、「それはないよっ」と身まで乗り出してきた。
「確かに、寧々は僕のダメなところに目敏いし、よく指摘するよ。でも、それはほんとに僕が直さなきゃいけないところで」
「お、おう」
「ふたりきりになれば、寧々は僕のいいところもたくさん褒めてくれるんだ。すごく厳しいけど、すごく優しいんだよ」
「そう、なのか……」
「寧々はかっこいい。ずっと僕の憧れだった」
「ずっと?」
「うん。友達のおねえさんだったんだ、もともと。何年も、すれちがうときに挨拶するだけで。寧々からお茶に誘ってくれたときは、夢みたいに嬉しかったなあ」
 真寿は幸せそうに寧々との馴れ初めを語り、俺は臆しながらそれを聞く。
 何か、こんなに寧々にベタ惚れしていて、こいつ、本当に茅乃と寝たのか?
 そこのところを、具体的に訊けずにいたときだった。
「やっぱりここにいた」
 からん、とベルを鳴らして、店に入るなりそう言ったのは、カーキのオーバーと細いデニムを合わせた、いつも通りボーイッシュな寧々だった。
 真寿ははたと寧々を振り向き、口ごもる。
「ねえ、あんたの部屋にあたしとあの子とふたりきりにして、あんたは逃げ出すって何なの?」
 おいおい、そんな修羅場を投げてきたのかよ。ついそう思ったが、同じ男として、そんな現場は逃げたくなる気持ちも分からなくはない。
 真寿は気まずそうにうつむいているので、思わず「友達が失礼したみたいで」と俺は口をはさんだ。寧々はこちらに、長い睫毛がナイフみたいにも感じる鋭利な目を向ける。
「あの女の子の友達?」
「そうです」
「友達は選んだほうがいいわよ。で、真寿、あんたはあたしに言い訳ぐらいしたらどうなの?」
「言い訳なんて……悪いのは、僕だし」
「それで、何も説明しないのはもっとずるい。あたしがどうでもいいってことなら別だけど」
「それはないよ! 僕が好きなのは寧々だよ、絶対に。寧々のこと、大好きだよ」
「あの子にも同じことを言ったの?」
「言うわけないっ」
「じゃあ、それは、あたしにきちんと説明してほしかったな」
「……ごめん」
「あと、一緒に過ごしたくらいで、だいぶ大ごとに捕えてるみたいだけど、何もなかったならあたしは怒らないわよ」
 え? 俺は思わずぽかんとして、真寿もまばたきをする。
「あの子が言ってた、『相手にされなかったから』って」
「信じて……くれるの?」
「むしろ、信じないと思われるほうが不愉快ね」
「ご、ごめんっ。僕だったら、寧々がほかの男とふたりで過ごしたら許せないし、たぶん、何もなかったなんて信じられないから。そんなの、頭が変になると思う」
「……あたしも、頭は変になりかけたけどね」
 むすっとした感じで寧々が言うと、真寿はぱあっと笑顔になり、スツールを立ち上がって「ごめんね」と彼女を抱きしめた。「あらあら」なんてママはにっこりしているけど、俺にしたら痴話喧嘩なので、しょうもないと思いながらスマホを取り出す。
 いつのまにか、通話着信がついている。茅乃からだ。俺はいったん席を立ち、壁際で茅乃に通話をかけた。奴はワンコールで出た。
「真寿くんとひと晩過ごして、何もなかったことは聞いた」
 俺が開口で言うと、茅乃は『ありえないでしょ……』と絶望的な涙声でつぶやいた。
「だから、真寿くんはそれだけ寧々さんに惚れてんだよ」
『うー、つらいよお。私、真寿くんのこと、けっこうマジで好きだったんだよ?』
 俺は壁に背中をもたせかけ、けっこうマジで好きなのはこっちもだけどな、と思う。
 本当に、見る目がない女だ。そんなお前に恋をした俺が悪いんだろうけど。マジで、鈍感すぎる。
 俺がいつも隣にいるって気づいてくれよ。何だかんだ、ずっとそばにいるじゃないか。でも、こいつはおもしろいくらいに気づいてくれない。
 真寿と寧々は、いつも通りのホールのボックス席に移動している。寧々が何か言っても、真寿はいつになく嬉しそうだ。
 あのふたりは、ずっとお互いのそばにいるんだろうな。茅乃の泣き言を聞きながら、そんなことを思う。
 俺が茅乃とあんなふうになれるかは分からないけど、憂鬱だった週末のクリスマスは、ひとまず彼女のやけ酒につきあって過ごすことになりそうだ。
 FIN
【THANKS/診断メーカー『お題ひねり出してみた(ID:392860)』】
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79nihs · 1 year
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日記 / 5.7 / 写真を再び
どうもここ数ヶ月、写真が撮れなかった。半年前から撮っている写真のシリーズについてのことだ。製本ワークショップに参加して製本してみて、一度立ち止まって俯瞰的に見てみようと試みたが、これがまさかの急ブレーキとなってしまった。本の形になった高揚感に浸りつつ、「足りない」こと探し、粗探しを繰り返した結果、撮影を始めたときに抱いていた前のめりな感覚を忘れてしまっていたように感じていた。
京都国際写真祭でそれに拍車がかかった。凄みのある作品を三日三晩浴び続けることで、着眼点や撮影の技量、熱量、我が事とする力強さ、数え切れないポイントと比較ばかりして苦しくなってしまっていた。正直、息ができていない状態に陥っていた。1年前は「制作」をしていなかったから、どの作品も憧れのような対象だった。尊敬する写真家の自宅に訪ねて相談させてもらったり、他の写真家の方には、勤務中に彼の働く会社まで足を運んで助言を請うたりした。ようやく、自分なりの視点を持って撮影してこれたのではと、思った今年のはず…と思っていたのだが、違った。「作品をつくるようになった若い人」(と言われるようになった)は、先人たちから厳しいレビューを受け、落ち込んでしまったのだ。この落ち込みを誰かに解消してもらうことなんてできないし、親しい友人に話しても、結局情けをかけてもらいたいという気持ちから始まってしまうわけで、健全ではなかった。
先週には、撮影をお願いしていた方と長い時間お茶をして撮影に望んだが、正直に伝えた。「今は撮れるような状況ではない」と。相手からも、見透かされたような気がして、ブローニーフィルム一本を撮り切ることだけにしか集中できなかった。つまり被写体との対話ができていたとは言い難い。きょう、現像から上がってきた写真たちは、それなりに撮れているのだが、撮ったときの感情をまだ記憶しているので素直に見ることができないことで思い知らされた。現像があがるまでの高揚感、ポジティブな気持ちを抱いていなかったことに気づいた。
ここまでネガティブなことばかり書き連ねているのだが、ようやくトンネルを抜け出せそうな感覚をきょうは覚えた。一日を振り返りながら、いろいろ考えてみようと思ったからきょうは書こうと思う。
まずは、久々に早朝に起床できたことに始まる。朝マックに足を運び、エッグソーセージマフィンのセットを食し、スイッチを入れる。朝ごはんを食べると血糖値が高まり、血の巡りを感じる。ファストフードとはいえ、気持ちが前向きになったようだった。その勢いで、都内の展示へ。本当は丸木美術館に行きたかったが、せっかく晴れている日、2時間も電車に乗るのがもったいないと思い、終了日前日なのに諦めた。
昨日、WHOがコロナ緊急事態宣言の終了を発表。週明けにはコロナが第5類に移行する。パンデミック下に置かれていた日常は、ようやく活気づいてきたことを武蔵小杉から乗り換えた行楽日の総武線快速で感じた。先月行った京都も、外国人観光客が戻ってきて、マスクをしている人がほとんどみなかったので、不思議ではないのだが、東京にもコロナ前の日常が戻りつつあった。そんなことを思いながら、上野に着くとすごい人だった。動物園に並ぶ人々の姿も見えた。美術館前で記念撮影をする人。にぎやかな声が聞こえてくるから、自然と触発される。
向かったのは東京芸術大学陳列館。「解/拆邊界 亞際木刻版畫實踐」(脱境界:インターアジアの木版画実践)(※)を見るためだった。初夏の日差しに浴びる青々とした葉をつけた木々が陰をつくる上野公園がこんなに気持ち良いとは思わなかった。陳列館の2階は、天窓から優しい日光が注ぎ込み、版画がすられたキャンバスや布がゆらゆらとしていた。版画は力強かった。日本、韓国、中国、香港、台湾、フィリピン、インドネシアのアーティストの作品をゆっくり何周もしながらみる。印象的だったのは、タイトルの通り、ボーダーを越えていくことの希望だ。
點印社(香港)の「私たちは輪になって食べる、刷る」は横長の大きな版画。テーブルでご飯を食べる様子を描いているのだが、そこに描かれているのは、人間だけでなく、シャチや、犬など動物もいる。コロナ禍によって幾多の国境が閉ざされた世界で、異なる国籍や民族やルーツ、バックグラウンドを持つ人々の間に境界線が引かれるようになったことを忘れてはいけない。そんな時代だからこそ、他者との時間を共有することを肯定し続ける力強さを感じた。登場する人々や、動物の表情は笑顔で豊かで、美しかった。決して丁寧に、きれいにつくられたわけではないけれど、その雑然さを版画で刻む描くことの尊さを感じた。
韓国のキム・オクさんが制作した7枚の版画からは、いつか未来で消える朝鮮半島の南北の境界線を想像させた。30年以上に渡り、朝鮮半島南部をくまなく歩き、フィールドワークしてきたというキムさん。農村地帯など韓国の原風景が描かれた7枚は、南北統一という先に続きがうまれるはずだという期待を抱かせ、そしていまだ解決しない南北問題について、極東の島国にいる自分をハッとさせた。
何よりエンパワーメントされた。この展示の作家の多くが社会運動に参画し、運動を活性化させたり、アジテーションを強化するという目的を持ったりしながら制作しているということを掲示されているテキストで知る。政治的抑圧に抵抗する。それは大きな主語を語りがちのように感じられるが、版画を刷るということによって我が事として捉える身体性が一層増していくように感じた。何より、作家自ら社会に対して、異議申し立てをするまでのプロセスを、自らの生活実践の場において果たそうとする姿勢が感じられた。だからこそ、「私たちは輪になって食べる、刷る」のカラフルな描き方に心が揺さぶられたのだろう。
何より、描いて、版を作り、刷るという繰り返しを諦めない。その先に、社会的に生じている苦しさから解放されるように思えた。新聞記者として多くの時間を、社会的課題について考えようとしながら、当事者性があるかどうかなど悩み、写真撮影においても強度があるかないかなど気にしていた自分にとって、今までの悩みがちっぽけに思えたし、何よりそうだ、自分が言いたいことを言えばいいんだと思えた展示だった。
彫り続ける作家たちの姿勢に刺激をもらい、浅草に移動してから入ったタリーズで本を開いた。坂口恭平の「継続するコツ」だ。数ヶ月前に綴方で購入したまま開いていなかったが、効果てきめんだった。「才能という言葉」の呪いにかけられたように、他者の作品を羨望の眼差しで見ていた。そして、撮影ができない状態に陥っていたけれど、それは「比較が始まり、否定が始まり、手が止まる」という項で正体が書かれていた。ある程度、自分がやりたいことを続けていくと「慣れ」が生じるというのだ。「慣れ」。なるほど。確かに、慣れてきた。こうして撮っていけばいいのだ。こう進めていけばいいのだという実感は、いつしか、「見る人に伝えるには○○が足りない」と完成度ばかり気にすることに変わっていたからだ。
製本して、足りないことが見えて、評価を受ける作家のアーティストブックやダミーブックに圧倒され、到底その領域に達していないのにと自分を卑下して、比較をし続けていたなと気付かされた。なんか自分が馬鹿らしくなった。撮っていく。それだけでまずは十分じゃないか。当初抱いていた撮りたい写真への気持ちは、いろんな人の助言や苦言や励ましで少しずつ変容したりしているけど、自分の撮りたいという気持ちに正直になれるのは自分しかいないわけなんだから。
そうだ。去年の7月、アレック・ソスに「SLEEPING BY MISSISSIPPI」にサインを入れてもらったとき、メッセージをお願いして書いてもらった言葉を思い出した。「Don't ever forget the feeling when you first piched up a camera」。そうだよね。初心忘れずって言うよね。いま撮っているカメラは別に「First」じゃないけれど、このカメラで撮っていくぞって嬉々としていたときのことを思い出した。小さな1Kで、千尋からも「買ってよかったね」なんて言われて、ファインダーを覗いて初めて装填したネガフィルムに彼女を焼き付けたんだっけ。うまく扱えず、フォーカスと露出を決めるのに時間がかかって切ったシャッターによって写し取られた千尋のふと力の抜けた表情が自分は好きだったんだなと。あの感覚があったから、静かに被写体となる他者に正対する感覚を今でも大事にしているのかもしれない。
そんなことを思いながら、ベトナムの写真作家たちのダミーブック展をあとにしたあと、ブローニーを装填した。ゴールデンタイムの日差しが当たる街にカメラを向けてシャッターを数枚着る。隅田川に沿って歩いていくと、ふと人を撮りたいなという気持ちが湧いた。
ふと、目が止まった。若い男女が微動だにせず、静かに抱き合っている姿に見とれてしまった。高校生か、大学生かな、と思い、声をかけさせてもらった。こうやって街にいる人に声をかけて撮りたいって伝えるの久々だな。心のなかで自分に語りかけていた。それに、やっぱり最初は緊張する。「ティックトックですか?」と聞かれたけど、「いえ違いますよ」という。最近、インスタやYou Tubeのショート動画で確かに「ストリートスナップ撮っているんですけど」という動画が流れてくるなと思い出した。それのおかげなのかな。恥ずかしがっていた彼らは、少し悩むそぶりを見せてくれたけれど快諾してくれた。撮らせてもらえる。高揚感が全身に走った。
マキナで露出を決め、フォーカスを固める。透明の四角いファインダーの向こうで、静かに佇む二人に引き込まれる。女性は恥ずかしいからマスクをしたままだったけれど、風になびく黒髪の隙間から見える青いカラーコンタクトをつけた瞳から向けられる視線が、まっすぐ力強く凛としていた。男性の方も、無表情ながら芯の強さを感じさせていた。
撮影後に聞くと、二人は15歳の高校1年生。男性はぼくの父とおなじ江戸川区で生まれ育ったという。在日朝鮮人の母を持ち、インスタグラムには日本と韓国の国旗アイコンを掲げる。聞きづらかったけれど在日コリアンかどうかを聞いて���まったが、「そうですよ」とさらりと答える。僕がこれまで川崎で取材をしてきたことなども伝えると、親しげな感じを見せてくれた。そして、なにより自分のルーツに誇りを持っているようだった。スケートボードが好きで、スケートボードが「バ先」だといって、店長のインスタグラムアカウントを見せてくれた。女の子はシャイだ。ファインダーの奥に見たあの視線の強さとは相反するのか、不思議だった。
街で声をかけ写真を撮る。撮影時間を入れても、賞味10分ほどしかなかったかもしれない。写真はSHOOTだ。池澤夏樹によると、「Shoot」は銃撃か撮影でしか使わない。だから、若い彼らをカメラの前に立たせる行為というのは、主従関係が生じ、抑圧・被抑圧の関係性が生まれることにほかならない。それでも、撮影を許容してもらうために、僕は彼らに誠意を伝えようとする。そして彼らも受け入れるために覚悟をする(覚悟を強いている可能性も忘れてはいけない)。そのわずかな時間でも、僕と彼ら彼女の間に一定の緊張感が生まれ、正対することによって他者を信じ切るしかないのだ。嘘偽りがないとは言い切れない。それでも、1/500秒という膨大な時間軸における一瞬、フィルムに焼き付ける行為そのものが、僕がこの社会に接点を築いていくことに必要なプロセスなのだと言い聞かせるには十分なんだ。そのことを、二人との出会いによって改めて認識させられた。
これが、明るい兆しだ。写真を諦めなくてよかったと思えた撮影だった。写真を撮ることでしか、僕は社会を知るすべがないことも知っている。それが、なにか明確なメッセージや、スローガンがなくても、そこに写し込まれた人々の姿によって、この社会の輪郭が際立ち、描かれていくことを信じたいから撮っている。僕にとって人を撮ること、正対してポートレートを撮ることとは、その決意表明みたいなものなのだ。沈みかけていた気持ちが、ようやく前を向き始めた。
※参考)近年、アジア各地で木版画による芸術・文化実践が再び注目を集めています。20世紀初頭の中国で魯迅によって始まった近代木版画運動は、民衆自身が社会や現実を表現する運動/方法としてアジア各地に伝播しましたが、20世紀後半になると社会構造やメディア環境の変化により下火となっていきました。しかし、2000年代から2010年代にかけてアジアの芸術家や社会活動家たちの一部は木版画を通じて社会や政治の問題を表現し、文化的直接行動や集団的創造の実験、さらには国境を越えた交流・ネットワークを生み出してきました。 本展は《「解/拆邊界 亞際木刻版畫實踐」(脱境界:インターアジアの木版画実践)》と題し、アジア各地から12の作家・活動団体による木版画を紹介します。とりわけ2020年に始まったパンデミックでは、人やモノの移動を一元的に管理する国境の問題や、差別や排外主義などの社会的、心理的な排除や断絶の問題を現前化させました。本展はわたしたちの生きる世界や社会に張り巡らされた「境界」を改めて主題化し、これらの境界からの離脱・解体を志向するトランスナショナルなアジアの木版画実践とそのネットワークについて紹介します。同時に、コロナ期に各地で制作された木版画を比較することで「アジア」という地理的/政治的概念への批判的認識と、さらなる理解・議論の可能性を開くことを目指しています。
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manganjiiji · 2 years
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さいごの一講
48こめ。いよいよ。速読英単語上級編(advanced level)。この本を買ってから8年は経っているはず。塾の教材として使っていたので3分の2は解説のために読んであったのだが、40番台くらいは手付かずであったのを、やっと終わらせ…ていない、まだ。最後に単語を調べて通読して終わりだがそれは明日にした。一晩寝たら分からない単語も構造も閃くかもしれないので一旦置く。これは単語を覚えるのにもいいし、精読にもちょうどいいので、GMARCH以上を目指す子には通読させていた。自分がしてねえのかよという感じだが。もう英語を頑張って読んだ割に書いてある内容が大して面白くない、という英語学習あるあるにやや飽きてしまい、…など贅沢なことはいいたくないが、大人になるとこういう事を言い出すから困る。私はあくまで英文の構造が意味を作り出すのが好きなのであって、英語で書かれている内容には興味は無い(なんとも手段が目的化している)。と思っていたはずなのに、大したこと言ってねーじゃねーか、と思うと、なんかがっくりきてしまうのも最近は増えた。読むものの面白さを上げろ。そういうコンテンツを日常的に摂取しろ。いろいろあるんだから、この電脳の海には。と思うが、光る画面は目が疲れて頭痛になるので紙がいいです。つまり新聞とか、本とか…本も出来れば小説じゃなくて…ということで、すごく昔に丸の内オアゾの丸善でユヴァル・ノア・ハラリのmoneyというのを買ったことを思い出した。なんとなく邦訳はまだのような気がして。今となってはユヴァル・ノア・ハラリがなんの人だったのかも朧げ。人類史みたいな名前の本が売れた人だったっけ。いや、ホモ・サピエンスの人か。あっ、サピエンス全史。調べました。その人。あと昔流行った『銃・病原菌・鉄』(ジャレド・ダイアモンド)とか若い読者のための世界史、とか、買ってあるのに通読できていないシリーズのことを今思い出した。読むか。その前に大澤真幸×橋爪大三郎の『アメリカ』を読んでしまいたい。いい紙を使っている河出新書。本は何年経ってからでも、持っていればいつでも気軽に読めるから最高。私は自分の読みたい本をだいたい持っているので、あとは読むだけだと思う。どれもこれも面白そうな本しかなくてびっくりして泣きそう!と思う。自分の本棚を見ると。最近は全然本を買っていないし買わないようにしています。その代わりなのか化粧品をやや買いすぎています。太っていて服が買えないため、顔面に意識が集中している。表参道のそんなに高くない美容室でショートにしてもらい、確かな技術に深謝。後輩のメイクや服を一式プロデュースするために1日遊び倒したりしたなあ!9月。最後は爆笑しすぎておたがいへろへろになりながら新宿東南口のエスカレーターを降りていた。ひいひい言っていた。だいたい友達と会うと最後は箸が転げてもおかしいの境地になり、死にそうになってしまう。呼吸困難で。もう勘弁してほしいのにまだ笑いの波が来る、酸素が足りない、涙が出る、呼吸ができない、表情筋が言うことを聞かない。苦しいけど脳内では天国みたいなことになっているんだろうな。たしか「ポーチふたつ」を「ポーツふたち」と言い間違えたとかそんなことで倒れそうになるほど笑っていた。酒は一滴も入っていない。
studimbler?みたいな表記で、勉強したノートの写真や勉強の仕方のハックを載せているアカウント(英語)がおもしろいのでよく見ている。私も勉強した結果の写真を上げるだけのスタディンブラー、作りたくなってしまったぞ。しかしそんなもの誰が見るのか?
毎日痩せたいと思っては、なぜ食べてしまうんだろうと思って悲しくなっている。なぜ、とかではなく、単に「食べれば元気が出るはず」という宗教に入信しており、もはや自力ではその信仰を捨てられないからである。街をゆく人、みな私より痩せている。なぜそんなにお腹が出ていなくて、腕がほっそいんだ?そういう美しい女はたいてい高いものを身につけており、社会人としての完全な自立を感じさせる。歩き方や目線のやりかたが、もうプロ。人間のプロ。なにもかも強い意志のもとで、計算されて動いている。美しい女。いいよねえ。
2022.9.27
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shigerunakano · 2 years
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忘れうる伝承
まず第一には家族主義的傾向を挙げることが出来ます。ー家族主義というものがとくに国家構成の原理として高唱されているということ。日本の国家構造の根本的特質が常に家族の延長体として、すなわち具体的には家長としての、国民の「総本家」としての皇室とその「赤子」によって構成された家族国家として表象されること。
‐丸山眞男「日本ファシズムの思想と運動」
ここはどこなのか。もちろん富山県東部を走行中であることは分かっている。しかし横で車を運転する妻の存在も忘れてしまうほどの混迷に襲われていたことは確かだ。辺りはほとんど真っ暗闇である。私は思い出していた。幼い頃「祟りの子」と呼ばれ忌み嫌われていた旧友の存在を。私は山梨県の生まれだが、その響きが妙に頭に残り結局この歳まで度々思い出すことになった、その存在を、再度思い出していたのは偶然ではない。これから調べることになる地域の人びとが信仰心や土着の慣習に基づいて私に依頼をしていることだけは確かなのだ。かつて、森博嗣が「すべてがFになる」で冷戦構造の脅威を描いた時代とは異なるとはいえ、実際の探偵業は理詰めではなく迷信に満ちているというわけだ。
ち��みに、彼の作品群はアンチ・ミステリーという系譜或いは系列に含み入れるべきであると考えているが、これは探偵としての自負でもある。思弁的探偵小説というわけだ。もっとも仮に冷静なミステリー作家がこの世にいればの話だが。
車が目的地である民宿に着いた。駐車場があることは既に聞き及んでおり、そこに車を停めた。宿泊料金は向こうが持ってくれるという。「はじめまして、遠藤さん��すね」と言いながら女が出てきた。
お察しのとおり、私は遠藤秀 (みのる) である。どうやらここは朝日町と呼ばれる地域のようで、依頼主である、施設を管理する普通の主婦のような見た目の女性は高橋と名乗った。見た目は可もなく不可もなくといった感じの初老ほどの女性だ。髪型はショートだが、服装が浴衣のようなつなぎでクロックスのような踵を覆うサンダルを屋内で履いていた。彼女の名前は関東地方に多い名前なのではないかと思ったのだが、話の腰を折るのも億劫なので黙っていたがどうやら関東の出身のようであった。
「主人にとっては普通のことが私にとっては不思議なことだらけで……」
大きな声で話す女だと思った。関東の女の印象とは異なるが、指摘しないことにした。その代わりと言っては何だが彼女から事のあらましを語ってもらうことにしよう。
食事を採り、応接間のような場所に通された後に30分ほど世間話に興じることとなり、妻の美貌などの話で盛り上がった。私は否定したが恐らく多くの者にとって妻は美人だろうということは付け加えさせていただく。悪しからず。彼女は庶務だと思って欲しいと言った。事実ではあるが、元々出掛けの際は一人にしておきたくなかったという事情がある。名前は遠藤夫人とでも読んでいただきたい。それにしても声の大きな女だと思った。依頼の件を話すことは可能ですかと彼女に問われ私は快諾した。先程眠っていたからだ。元はといえば5日前に私の事務所に「複雑調査」の依頼が来たことが始まりだった。「複雑調査」というのは私が名付けたサービスの名前で通常の興信所では行わない複雑な依頼のつもりなのだが、実のところ私の理解では特殊な面はない。ただ単に煩雑な調査だと思って頂ければいい。電話越しの彼女が言うには市内3ヶ所の神社に藁人形が釘で刺された上に「レイ破廉恥、座敷男と交わった」という脅し文句のようなものが書かれた貼り紙が貼られていたというのだ。私は実のところその貼り紙に書かれた言葉が気になってわざわざ日本の反対側である日本海に面した富山県にまで来たのであった。
彼女は言う。「初めは近所の人が気付いて話題にしていたのを耳にしたのですが、貼り紙にあるレイというのが他ならぬ私の娘なんです、10歳になります」
「それで、私に依頼したわけですね」
「はい。座敷男と交わったという表現はうぅん、何ていうんでしょう、お前の母ちゃん出臍みたいなこの地域における慣用表現なんです。ひょっとしたら娘に危害を加えるつもりの人物が書いたのではないかと思ったのです」
「ちょっと待ってください。座敷童ではなく、座敷男ですか」
「そうなんです。大人の男は時々見境が無くなるという教訓を込めたと言われています」
「なるほど、警察にはまだ言ってないんですね」
「娘の為にも大事にしたくなかったのでまだ通報はしていません。近所の噂程度です」
「町内会のようなものへは」妻が聞く。
「話していません。私と夫を除いては見つけた近所の方とその方と仲良くされているお宅の方だけではないでしょうか。貼り紙を見つけた橋下という方が言っていました」
「とりあえず、分かりました。また話がある場合はまた明日伺うので、今日は休ませてもらいます。調査もぼちぼち始めます」
「分かりました。それではおやすみなさい」
翌日、私は女将さんに件の神社の住所を聞き妻と一緒に向かった。近年の富山は雨や曇りではなく、むしろ晴れている印象なのだが、その印象に違わず晴れていた。子どもの頃には日本海側は雨や曇りの印象があったが、なぜこうなったのだろうと思う。そのことを妻に話したら無視された。
3件の神社を回ったが、どれも何の変哲もない神社だった。土地の価値の関係か都会にあるものよりも大きく感じた。こんなところに藁人形が打ち付けてあったら驚くだろうなと思った。特に今日のような晴れた日には。しかし正直他には何も分からない。3件目の神社は他のものとは違い鳥居が黒く塗られていたの。既に大分禿げかけていたがそれがかつて黒かったことはよく分かった。
民宿に着いて女将さんに実行した人に身に覚えはないか、と聞いたが身に覚えはないと言う。
3件目の神社の管理を任されているという、橋下というお宅へ向かった。その方が藁人形と貼り紙を持っているというからだ。まだ元気そうなお爺さんが出てきて怪訝な表情を浮かべている。早速用件を伝えると例の貼り紙を持ってきて頂いた。どれも白い紙に黒いマジックのような跡で「レイ破廉恥、座敷男と交わった」と書かれてある。大体前情報の通りだ。今度は藁人形を見せてもらった。藁人形が着いて私はあっ、という声が出た。藁人形が紫色に塗られていたのだ。何かのペンキだろうか。
私と妻は、民宿の部屋に腰を落ち着け、話し合う。
「どういうことなんだろうね」私は言う。
「まぁ、大きな事件というわけではないみたいだし、ゆっくり事に当たればいいんじゃない」
「確かに」
そして私たちはその日は食事を採るまでゆっくり過ごし、その後は寝ることにした。食事は美味しかった。
翌日、私たちは女将さんの許可を貰いレイちゃんの通う小学校に向かった。今日も晴れていた。担任の先生と待ち合わせしたのが午後0時10分で、ちょうど昼休みである。親の許可を得たと伝えた上で探偵であることを述べると大人しく同意してくれた。コンプライアンスがあるだろうがある程度は融通が利くようだ。
職員室に通され「何があったんですか」と単刀直入に尋ねられた。電話越しに分かる通り、若い女性だった。
「近所の神社3件にレイちゃんを誹謗する内容の貼り紙が為されていたんです」
「それは大変ですね、彼女には何と言えばいいですか」と彼女が言う。
「とりあえずレイちゃんには黙っていてあげてください。ところでここからが本題なのですが彼女に過剰な関心を持つ人ないしは生徒に心当たりはありませんか」
「いえ、分かりませんがここ1か月ほどかなり怪しい風貌そして挙動の人が学校の周りで生徒によって確認されています」
「どのような人ですか」
「はい、サングラスをかけており生徒の方を見ながらぶつぶつ独り言を言っていたとのことです。学校の者が確認に当たりましたが残念ながら見つけることは出来ませんでした」
「そうですか。参考になりました。食事の時間も必要でしょうから今日は退席させて頂きます。何かありましたらこちらまで」と言って私は名刺を手渡した。事務所の名刺だ。
「はい、どうもありがとうございました」と彼女は言っていた。
翌日事件は起きた。民宿で妻とテレビを見ていたら、女将がちょっと待っていてくれ、と言って下の方へ降りていきしばらくすると警官が私たちの部屋に来た。警官が部屋まで来て、ちょっと話を伺いたいと言ってきた。民宿の部屋で私たちは警官に、レイちゃんが帰宅途中、何者かに突き倒され背中の辺りに小さな樽一杯分ほどの紫色のペンキをかけられ、軽い擦り傷を負ったと述べられた。目撃者はおらず捜査を進めており、そのことに関して何か知っていることはありませんかと。それと並行して自分たちのこと、すなわち探偵という身分であることについても細かく質問を受けた。必然、話題は神社の藁人形と貼り紙のこととなり、私たちはそのことについて調べていたことを話した。するとどうやら、警官は用を終えたと判断したらしく、部屋から出て行った。
「レイちゃんがそんなことに」妻は言う。
「あまり怪しまれない内に俺たちも撤収することになるかもしれないよ」私は言う。犯人と自分たち、一体どこが違うのかという疑問は口にしないことにした。
「え、自首」
「えぇ、今朝警察から電話がありました。これから、署に向かいます」部屋に入ってくるなり、申し訳なさそうにぶつぶつと声を漏らした後で、女将さんは言う。
犯人が警察に自首したのだそうだ。神社の件も自分がやったと認めていると。警官が民宿に来ており、その説明の合間女将さんから聞かされた。犯人は近所に住む20代の若い男で、レイちゃんに好意を抱く無職だったそうだ。彼女への好意以外に何もなかったと。何の意外性もない展開に驚かされたが、案外、世の中そんなものなのかもしれない。今回の件は自分の手を介在させずに解決したので、初期の費用には達しないが着手金は頂くので、半分程度は料金を頂くことになる。
「こんなふうに帰っちゃっていいのかな」私は妻に言う。
女将さんは料金は後日指定の口座に振り込むと述べ、今回のことでは誠にご感謝致します、と言ってくれた。私が翌日帰ることを告げると、彼女は会釈しながら部屋から去っていった。
翌日宿を離れる際、女将さんに異様に感謝されたのが少し気にかかった。
走り出した車の助手席に座りながら外が曇っていることに気がついた。これでこそ富山。妻に話すとそうだね、と笑ってくれた。
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kendawk · 2 years
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shigeru2 · 2 years
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emiko-nakanishi · 2 years
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◆ スタッフは毎日体温計で体温を測定いたします
◆ 体調不良・微熱等のあるスタッフは自宅待機
◆ 常に入り口を換気・解放いたします 外気温による体調の変化にを気をつけくださいませ ◆ 大型高級空気清浄機を待ち合いに導入しております ◆ 前回のご来店より期間のあるお客様には来店の際、直近での渡航歴の有無、体調や熱がないかなどのセルフチェックをさせて頂きます ⁡   ⁡ ⁡ 📮604-8233 京都府京都市中京区藤本町560 ☏0752310006 ⁡ 🔝よりご🅆🄴🄱予約できます おまちしております ⁡ ⁡ ⁡ ⁡ ⁡ ⁡ ⁡ (Mauloa) https://www.instagram.com/p/CgDUvs0vlLZ/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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皆様の『今まで一番のキレイ』を目指します♪ 初めてご来店でご指名頂き本当にありがとうござます😭💖ばっさりショートにさせて頂きました! あごのラインに合わせた小顔カット!後頭部に丸みを出して顔周りは、長めで大人なクールなスタイルに! #大人クール丸みショート #丸みショート埼玉 #丸みショート越谷 #ばっさりカット #かりあげ女子 #クール丸みショート #スモーキーアッシュ ⚫︎20〜50代のお客様多数! ⚫︎ショート指名8割越え! ⚫︎極上艶髪で若返る☆極艶☆透明感カラー! ⚫︎Instagramからのご予約ご相談!急増中! ⚫︎指名のお客様は、ほぼおまかせオーダー! #DiMPlE 越谷/越谷駅前 西口から徒歩20秒 #越谷レイクタウン からもアクセス◎ #越谷美容室 #越谷美容  #越谷カット #越谷カラー  #埼玉ボブ #越谷ボブ #埼玉ショート #越谷ショート #埼玉ショートボブ #越谷ショートボブ #内巻きボブ #ショートが得意なサロン #ブリーチ #Wカラー ◎ 人間関係を重視する方を大募集♪ #DiMPlE 越谷/越谷駅前 西口から徒歩20秒 #越谷レイクタウン  #埼玉美容師求人  #越谷美容師求人  #埼玉美容師求人 #越谷美容師求人  #美容師スタッフ募集  ◎ ディンプル 越谷/越谷駅前 DiMPlE 048-967-1303 (ディンプル) https://www.instagram.com/p/CgZaxXjP5KC/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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kouseiitani · 2 years
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顔まわりのカットお任せください🙆‍♂️ 小顔に見える大人女子 #ショートボブ はお任せください☀️髪質や骨格に合わせて似合わせカット🍎 . 井谷幸政( @kousei_itani )のカットでお任せ😊 【良いなと思った写真は保存して頂けるとカウンセリングですぐ見せれますので是非✨】 ❤️のいいね👍も押してくれると嬉しいです! コメントなどもお気軽にしてください🙆‍♂️🙆‍♂️ . ☑︎カットのこだわり✨ ♪しっかりお悩みカウンセリング ♪似合わせの小顔カット ♪生え癖や髪質、骨格に合わせたカット ♪丸みや女性らしさのあるシルエット ♪ふんわり動く軽い質感の束感カット ♪大人可愛いく女子力UPで😊 ばっさりイメチェンもお任せください👍 最高に可愛くします🙇‍♂️ . 初めての方もぜひお気軽に ご予約&ご指名ください✨✨ 指名料ナシ😊 初回割引として、 DMからのご予約の方は施術料金から30%オフさせて頂きます❗️❗️ . . ご予約や詳細のお問い合わせはプロフィールから。 . ネットご予約、TEL予約または、DMからでもどうぞ✨ . 【&STORIES 表参道店】アンドストーリーズ . [営業時間] 10:00〜22:00 [TEL] 03-6447-5955 [定休日] 水曜日 . 150-0001 東京都渋谷区神宮前3-18-24 ジムアベニュー2F 明治神宮前駅より徒歩5分 . ネットご予約が× の時は お電話にてお問い合わせください☺️ . 〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️ #ショートヘア #ショートカット #絶壁 #ショートスタイル #ショート #ショートヘア #耳掛けショート #丸みショート #丸みショートボブ #ハンサムショート #お洒落ショート #黒髪ショート #ショートヘア女子 #ショートヘアー #前下がりショート #マッシュショート #大人ショート #大人ショートボブ #ショートカット井谷 (at Harajuku, Tokyo(原宿)) https://www.instagram.com/p/CeDCTokvK7J/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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bookmeter-blog · 2 years
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2022年7月の新刊情報
2022年7月の新刊で、発売前から読みたい本登録数がたくさん集まっている作品や、読書メーター運営事務局が注目している作品を紹介します。 読書メーターの読書家さんたちに発売前から注目されている 新刊、シリーズ最新作、文庫化です!
 新作
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リーガルミステリーの新星、圧巻の最高到達点!
 幻告 
  五十嵐 律人
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世にも美しいアート×ショート・ショート
 マイ・プレゼント 
  青山 美智子
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恐ろしくて歪んだ世界に五つの物語が私たちを導く
 紙の梟 ハーシュソサエティ 
  貫井 徳郎
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抱腹絶倒・感涙必至の本の旅!
 その本は 
  ヨシタケシンスケ,又吉直樹
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あなたの心に火を灯す驚愕×号泣ミステリ―!
 終活中毒 
  秋吉 理香子
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毎月2万円の貯金。節約を重ねてでも、欲しいものがあった――。
 財布は踊る 
  原田 ひ香
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ちょっぴりつらい今日の向こうは、光と音があふれてる。
 掬えば手には 
  瀬尾 まいこ
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いくつもの人生が交差して響き合う、極上の青春群像劇。
 腹を割ったら血が出るだけさ 
  住野 よる
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六つの世界の物語が一つに繋がる一大幻想奇譚
 箱庭の巡礼者たち 
  恒川 光太郎
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直木賞作家 今村翔吾の凄みあふれる驚愕の歴史短編集
 蹴れ、彦五郎 
  今村翔吾
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「夜の街」の住人たちの圧倒的なリアリティ。芥川賞候補作。
 ギフテッド 
  鈴木 涼美
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丸山正樹「デフ・ヴォイス」シリーズのスピンオフとなる児童書
 水まきジイサンと図書館の王女さま 
  丸山正樹
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誌上発表後、新聞各紙絶賛、話題沸騰!第167回芥川賞候補作
 家庭用安心坑夫 
  小砂川 チト
     
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「人を消す物語」の正体は。長編ホラーミステリの神髄!
 あさとほ 
  新名 智
  
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心に潜む “明るすぎる闇“に迫る著者新境地
 嫌いなら呼ぶなよ 
  綿矢 りさ
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ままならなさを悪態に変え奮い立つ、19歳のヘヴィな日常。
 あくてえ 
  山下紘加
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人間の取り返しのつかない刹那を描いた4篇
 とんこつQ&A 
  今村 夏子
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学長選挙に暗躍するダーク・ヒーローあらわる!
 フクロウ准教授の午睡 (文春文庫) 
  伊与原 新
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鬼才ケアリーが描く、もう一つのピノッキオの物語。
 呑み込まれた男 
  エドワード・ケアリー
  
 シリーズ新刊
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土地と記憶をめぐる四世代にわたる物語、感動のシリーズ第五作
 菓子屋横丁月光荘 金色姫 (ハルキ文庫) 
  ほしお さなえ
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シリーズ累計50万部超!感動と涙のストーリー完結編
 水族館ガール9 (実業之日本社文庫) 
  木宮 条太郎
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『自由研究には向かない殺人』待望の続編
 優等生は探偵に向かない (創元推理文庫) 
  ホリー・ジャクソン
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ケーキの橋をふたりで歩こう。尊い二人の青春スペシャリテ第6弾
 ケーキ王子の名推理 6 (新潮文庫) 
  七月 隆文
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ロボットと人間の心温まる超人気シリーズ、待望の第5弾!
 ロボット・イン・ザ・ホスピタル 
  デボラ・インストール
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これは、少女があいされて幸せになるまでの物語。
 わたしの幸せな結婚 六 (富士見L文庫) 
  顎木 あくみ
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澪の淡い恋の行方も気になる、呪術幻想譚シリーズ第二弾。
 京都くれなゐ荘奇譚(二) 春に呪えば恋は逝く (PHP文芸文庫) 
  白川 紺子
  
 文庫新刊
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東野圭吾の「家族」の物語。待望の文庫化!
 希望の糸 (講談社文庫) 
  東野 圭吾
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圧倒的な筆致により日本SFと世界文学を接続する著者初の短篇集
 嘘と正典 (ハヤカワ文庫JA) 
  小川 哲
  
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『しずかな日々』『るり姉』の著者が描く喫茶店ミステリー
 純喫茶パオーン (ハルキ文庫) 
  椰月 美智子
     
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したたかに生きる正子の姿を痛快に描き切る極上エンターテインメント
 マジカルグランマ (朝日文庫) 
  柚木 麻子
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読者の心に「熱」を残さずにはおかない書き下ろし歴史大作
 熱源 (文春文庫) 
  川越 宗一
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バルサが挑む、ロタ王国の歴史の闇!
 風と行く者 (新潮文庫) 
  上橋 菜穂子
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復讐に生きる女性の情念を描いた愛憎のミステリー!
 灼熱 (PHP文芸文庫) 
  秋吉 理香子
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真梨ワールド炸裂!あなたは騙される快感を知る。
 坂の上の赤い屋根 (徳間文庫) 
  真梨幸子
  
 過去ページ
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manul-manul · 2 years
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今日の記録。3日くらい前から調子が悪く、会社を休みがちになる。今は忙しくないので。今日も遅刻。なんか、ずっと熱中症みたいだ。耳がキーンってなるし、頭が締め付けられるように傷むので、気圧のせいかもしれない。気圧と眼精疲労と姿勢のせい。たぶん。課長に呼び出される。マイルドに注意を受ける。私が会社で過食嘔吐や軽めのODを繰り返しているのを知っているらしい。繊細な人を相手にすると、叱る側も戦々恐々だ。いつ誰がパワハラ加害者に仕立て上げられるかはわからないのだ。管理職ってまじで割に合わない。とりあえず、仕事は真剣にやりすぎないようにして、人生楽しみましょうという結論になった。どういう注意の仕方!!!!?????ゆとりか!???就職してなおゆとり教育!?次世代(私にエクセルを教えてくれてる若手社員)を犠牲に安寧をむさぼる!??やりー。一生しがみつくぜ。会社大好き。しゅきしゅき。靴でもなめます!?なんかきょうはやってもやらなくてもいいような仕事が多かったな。こういうのは早めに切り上げて、楽しい仕事しよーぜって言われた。容量のいい人は違うな。前の部署はとにかく不器用でもいいから真面目(風)にやれって感じで残業すると喜ばれた。今は若い上司が仕切ってる部署にいるのでらくちん。やりー。ぐへへ。
午後からは他の拠点と会議。だらだら過ごす。あつすぎ。上司のおかげでとても気が楽になった。思えば社会人になってからお局のもとでしか働いたことがなかった。しかも全員黒髪ショートの丁寧な生活系(お金はかけてませんが小綺麗です。年収200万円でも幸せに暮らせます。系)。自分も気を抜くとそちらによってしまいそうになるので、意図的にフェミニン系、ゴージャス系に寄せないといけない。ナチュラルメイク、ダメ絶対。
上司すきすぎ。上司、おっさんなのに目の粘膜が丸出しで歌舞伎町の女の子みたい。目が綺麗すぎてみいっちゃたよ。粘膜丸見えなの、羨ましい。上司いわく、自己啓発本を見つけてきて、素直に丸パクリしてればそれなりにできるようになるらしい。そもそも世の中読書しない人のほうが多いから。ちょっと頑張ればさがつくんだよって。なんか気が楽になったな〜。転職してよかった。明日からは意識高い系になろっと。
ほしい化粧品。RMKの秋の新作。おそらく似合う色。一目惚れした化粧品、衝動買いした化粧品はだいたいお気に入りになる。直感的に似合う色が分かるんだね。直感で選び続けた結果、ポーチの中がラベンダーばかりになってしまった。たまには違うのほしい。黄色とか。
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kyo-sakisaka · 2 years
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鈴蘭の花言葉を知ってるか
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学生時代に付き合っていて卒業と同時に別れたふたりが、プロヒーローになってから復縁する話。 これ(https://kyo-sakisaka.tumblr.com/post/685577858426486784/%E5%A4%8F%E3%81%8C%E6%9D%A5%E3%81%9F%E3%81%AD%E8%BD%9F%E3%81%8F%E3%82%93)の続きのつもりで書いていますが多分単体でも読める。
***
目が覚めたら、手を伸ばしていた。 ぴぴぴ、という音に意識が浮上する。軽い電子音は、瞬く間に狭い部屋に吸い込まれた。ベッドの横にある窓。揺れるカーテン。白くぼやけた朝日。いつも通りの、朝。 「あ……」 まるで時が止まったかのように、静止して動くことのない部屋の中。その中で天井へと伸ばしていた自分の手だけが、ただ異質だった。鳴り止まないスマホのアラームと、朝を告げる鳥の声が混ざりあって溶けていく。力を抜けば、重力に従ってぱたりとベッドの上に崩れ落ちる手。七年前の傷痕は残ったままだった。 起きあがると、ふるりと背筋が震える。寂しいような、それでいてどこか温かいような胸騒ぎが肌を満たしていた。じわじわと浸食していく微かなざわめきと、花びらを噛んだあとのような苦み。 一度大きく深呼吸をして、傷だらけの右手を見つめる。目蓋の裏側に鮮明なまでに描かれた、燃え盛る炎の色。強い意志を秘めた色違いの瞳。手のひらから生み出されるその熱量。 「……………」 夢の内容など、覚えていない。 というよりは夢を見ていたことさえ記憶にない。それでも自分が夢を見ていて、そしてそれがどんな夢かなんてことはなんとなく想像が付いた。 いつもよりほんのり温かく感じられる右手。 確かめるかのように一度握って開けば、勘違いの温度が指の隙間からこぼれていった。ぬるい体温の残るシーツを抜け出して、フローリングに足をつける。ひたり、と朝の冷たさが裸足に刺さった。 透ける光を求めるように、隙間から柔らかな朝日を届ける窓の方へと向かう足。その薄い足の裏の皮膚を刺す、氷のような冷たさ。それを気にしないようにして緑色のカーテンを横に引いた。ひとしきり眩しさを瞳の奥に焼き付けて、祈るように目を伏せる。 ――右手に刻み込まれた傷跡は、僕の人生のなかでただ一人を彷彿とさせる。 窓枠にそっと手を掛けてぐっと押し引く。からからという乾いた音を立てたと同時に、どこかしらから漂う花の香りが鼻腔を擽った。 「……轟くん」 思い出の中で優しかったはずのその香りは、きっと一生ぶんの恋煩いの味だったんだと思う。苦みさえ知らない頃の、風が吹いてしまえば消えてしまいそうな。しゃぼん玉のような恋煩い。 ――みどりや。 耳の奥に残る甘い低音。僕を包み込んでいた優しい影。風に流れる白と紅。癖のないさらさらの髪の毛。澄んだ青空のような轟くんの匂い。繋いだ手のひらの熱。爪を立てた夜の鼓動。最後に見た、泣きそうな顔。 ぴぴぴ、と辛抱強く鳴り続けるスマホのアラーム。それをタップして解除すれば、でかでかと書かれた今日の日付が飛び込んでくる。リスト上に並べられるはずの通知は何も届いていない。特別な予定があるわけではないのだけれども、その日付は僕にとって見覚えがありすぎた。 轟くんの隣で見た世界の色を、君の隣で見た奇跡を。僕はずっと覚えている。 いや、違う。忘れられないままでいるんだ。君を。 「………そっか、もうそんな経つんだ」 緑谷出久。独身、二十三歳。職業、プロヒーロー。ヒーロー育成機関の最高峰、雄英高校ヒーロー科を卒業して五年が経つ。 ――つまるところ、轟くんと別れてから五回目の春が巡ることになる。 *** 雄英高校に在学していたときと比べればめっきりと減ったが、それでもヴィランや小悪党は未だ多く水面下で蠢いていた。僕がヒーローとして活躍する頃には、ひょっとしたらもうヒーローなんてどこも雇ってくれないかもしれない、だなんて考えていたあの頃が懐かしい。僕らヒーローの仕事がないのが一番ではあるのだけれども。どうやらこの個性社会ではそうもいかないようだった。 出社時刻よりすこし早めに家を出て、通勤がてらパトロールをする。それがプロヒーローとして事務所を立ち上げてからの僕の日課になっていた。そうして事務所へと出社すれば、ここ数年で随分と見慣れた顔のサイドキックの視線が僕を捉える。大量の書類が挟まったバインダーを片手に持ちながら、顔を綻ばせた。 「おはようございます、デク」 「おはよう」 雄英高校ヒーロー科。ことヒーローの育成機関としては最高峰だと謳われるその高校。そんな高校を卒業して五年も経てば、あのころ有精卵と呼ばれていた仲間も軒並みプロヒーローとなっていた。これは社会に出てから痛感したけれども、雄英のカリキュラムはかなり実践的なものだ。今までの現場において、何度あの頃の雄英の教育に感謝したことだろうか。 出世したなぁ。 そんなことを思いながら事務所のロッカーにどさりと荷物を置いた。プロヒーローになってまだ日は浅い。それでもこうして信頼を寄せて支えてくれるサイドキックがいる。ありがたいことだった。けれどそれは同時に、あの頃にはなかった責任という言葉がついて回ることになる。彼らは僕を信じてサポートをしてくれるのだから、僕はその期待に応えなければならない。当たり前だけれども、プロヒーローという職業は、想像以上に大変なものだった。肉体的にも、精神的にも。 「デク、眠れましたか?」 「え?」 「少し顔色が悪いように思います」 ばたん、とロッカーの扉を閉めて自分のデスクへと赴けば、いつの間にか珈琲の香りが漂っている。手に持っているトレーを見る限り、どうやら傍らに立っているサイドキックが淹れてくれたようだった。 本当に有能なサイドキックには頭が下がる思いだ。なにより、気遣いが素晴らしい。僕にはもったいなさすぎるな、なんて思いながら椅子に腰を下ろす。体に馴染んだそれはいとも簡単に僕を支えてみせた。 「大丈夫、仕事に支障はないよ」 「でも………」 「心配性だね?僕は平気だから、ありがとう」 その優しさにふわりと僕の頬の筋肉が緩んでいくのがわかった。ほんとうに心根が優しい。そして考えが顔に出るタイプだ。心配そうに瞳を揺らすサイドキックに有無を言わさぬよう言えば、まだ何か言い足りなさそうな唇が引き結ばれた。 明らかに今朝の夢のせいだとは思うけれど、夢見がなんだろうがプロには関係ない。必要であれば命を懸ける。そういう世界に生きているのだから、甘えなど許されなかった。勿論、それを選んだのは僕だ。 「今日は午後三時から会議ですので、それまでに事務所のことは終わらせておいたほうが良いかと」 「そうだね。そうする」 温かい珈琲に口を付けながらぼんやりと考える。最近活動が目立ってきている犯罪組織。その取り締まりを一斉に行おうという話はプロヒーローの間で前々から出ていた。所謂、チームアップだ。 ――懐かしいな。 チームアップにはじめて参加した、あのエリちゃんの事件を頭の中で思い出していた。あのときは、周りをプロヒーローとビッグ3に囲まれて萎縮することしかできなかったような気がする。今やそれが日常茶飯事なのだから、ほんとうに時の流れというものは早い。五年なんて、すぐだった。 舌先に絡まるほろ苦さが、ミルクのまろやかさに優しく溶ける。香りの良い豆の匂いが、少しだけ尾を引いていた眠気を霧のように消していった。僕がひとつ温かな息を吐き出して、凝り固まりがちな首をぐるりと一回転させれば、事務所のテーブルの片隅にあるそれが目に付く。 「これ、どうしたの?」 「ああ、春ですから」 良いかと思って。 そう笑うサイドキックの横に飾られた、透明なガラス瓶とそこに生けられた花。透き通るようなガラスは光に当たると、うっすらと青の色を纏う。ぽつん、とそこにある青色が少しだけ胸の奥をざわつかせたのはきっと、目の前で笑うサイドキックには気付かれていないだろう。 生けられていたのは、少しでも力を入れれば折れてしまいそうな細い枝と、その先に咲く白い小さな花。絨毯のように野原に咲いているその花を見たことがある。群生するその花は、その花の色と小さく丸い形から綿毛のようにも見えた。 なんて名前の花だろうか。知識があれば粋な返しもできたのかもしれないけれど、生憎と僕は花にあまり詳しくない。知ってるのは1つくらいだった。花の名前だとか、花言葉だとか。そういったものをもっとちゃんと勉強しておけばよかったかな、なんて密かに思う。 「お嫌でした?」 「まさか。ありがとう」 着慣れた緑のヒーロースーツ。傍らで笑うサイドキック。朝の澄んだ空気に、一日の歯車が回り出す。 これが、プロヒーローになってからの僕の日常だった。 *** プロヒーロー、ショート。その圧倒的なルックスと、氷と炎というふたつの力を併せ持つ、強力な個性。そんな轟くんの涼しげな瞳が、世の女性を虜にしないはずがなくて。轟くんがヒーローとして活躍するようになってからというものの、その人気はとどまるところを知らなかった。サイドキック時代から「抱かれたいヒーローランキング」だなんていかにもなランキングで堂々の一位を獲得し、今現在に至るまでその一位の座を譲ったことがない。そんな轟くんが報道陣の目に止まらないはずなどなく。事あるごとに週刊誌に熱愛報道をすっぱ抜かれているのだった。轟くんは全部、否定しているようだけれども。 淡雪のような恋を抱いたその相手のことを、気にならないといえば嘘になる。だからと言って、何かをするというわけではない。要は、外野から偉そうに「ふーん、そうなんだ」と見るだけ見ているような、そんな感じだ。だってもう、他人だろう。轟くんと僕なんて。 仕事終わり。すっかり日が落ちて、真夜中にさしかかろうとする時間帯。ヒーロースーツから私服に着替え、マスクと帽子だなんてなけなしの変装で顔を隠した僕は、帰路についていた。 高校時代からの日課である、ヒーローニュースのチェック。人気がない、街灯だけが照らす道を歩きながらそれを確認すれば、見慣れた「プロヒーローショート」の文字が並んでいた。 ――ほら、また派手な噂だ。 プロヒーロー、ショート。彼が記事になる場合だと、ヒーローとしての活躍ぶりを書かれるか、熱愛報道が出されるかのどっちかだ。ほかのヒーローだったらこうはいかない。そもそもこんなに熱愛報道が出ること自体すごいのだ���大方、そのルックスだからだろうけれど、 (今度はどこぞの女優とだろう) 見出しの「ショート、熱愛発覚!?」の文字列を、到底タップする気にはなれない。相手の女優の顔なんて見れば苦しくてたまらなくなることくらい、わかっていたから。隣に並んでいるだけで、心臓が張り裂けそうに痛むのがわかっていたから。ずっと隣で見ていた、あの柔らかな笑顔を。甘く溶ける色違いの瞳を。 「………情けない」 考えれば考えるほど馬鹿な話だった。今更何を言っているんだろう。捨てたのは僕だというのに。 水太りのようにぶくぶくと膨れていくこれは。これはきっと恋なんて綺麗なものじゃない。独占欲に汚れていったのは、いつからだっただろうか。 気が付けばヒーロー事務所があった通りは小さくなっていて、自宅近くの閑静な住宅街にまで着いていたようだった。瓶いっぱいの藍をぶちまけたような夜の隅に、ひたひたという足音が響く。暖かい季節になったとはいえ、夜は昼間と比べぐっと気温が下がる。ずれ落ちそうになったマスクを引っ張り上げて、十字路に差し掛かるあたりで視線を持ち上げれば、欲しがりすぎた恋の結末がそこにあった。 (あ、――――) 帽子の隙間からはみ出た、紅と白の色。その特徴的な左目の火傷の痕。甘い残像と、あの日の面影。最後に見たときよりもぐっと男らしくなった轟くんは、雑誌のなかやテレビで見るだけではわからない、くらくらすほどの色気を纏っていた。両手にいっぱいの荷物を抱えて、その瞳がまっすぐに僕を射抜く。記憶の中の僕と君が笑った気がした。 「轟、くん」 「…緑谷」 「はは…久しぶりだね…元気にしてた?」 「ああ」 続かない会話と、落ちた沈黙。僕は自分のスニーカーの爪先をじっと見つめていた。僕はいま、うまく笑えているのだろうか。 どうしてこんな日に限って君と会うのかな、轟くん。 おそらく、今日が人生で一番ついていない日だ。そんな事を頭の片隅で思いながら、途切れた会話の話題を探すように視線をうろつかせる。すぐにその手元に抱えられている大きな荷物に目がいった。 「どうしたの、その大荷物」 「……ちょっと、逃げてきた」 「へ?」 「報道陣。またデマで騒いでやがるから」 「ああ、あれ…」 さっきまでネットニュースにあがっていた熱愛報道を思い出す。どうやらそれでマスコミに追いかけられているようで、「家まで押し掛けて来る」なんてため息を吐きながら轟くんは言った。僕と違って、世騒がせな色男は大変なようだ。 「デマ、だったんだ」 「……そりゃそうだ」 「…へぇ。そう、なんだ」 轟くんはよくマスコミにすっぱ抜かれる。ただその割には毎回違う相手だし、ヒーローショートの熱愛報道なんて誰も本気にしていない。そんなこと世間もわかりきっているだろうに。 ――あんなに派手に噂されているのに。彼女つくらないの、轟くん。 喉元までこみ上げて唇から溢れそうになった、毒のような言葉を飲み干す。びりびりと喉が焼け付いたように痛んだ気がした。この毒が君を殺しかねないだなんて思うのは、烏滸がましいだろうか。笑って言えば、轟くんは苦しむだろうか。 会いたくなかったんだ。会ってしまえば、こうなることくらいわかっていたから。求めすぎて過ちを繰り返すことくらい、わかっていたから。僕はあの頃と、何も変わっていやしない。 夢に見るくらい。手を伸ばすくらい欲しがっても。それでも僕は、轟くんと離れる決意をしたのだった。したはずだった。 「…じゃあ、気をつけてね、僕はこれで――」 「緑谷」 喚き出す胸の奥を押し殺して去ろうとした、僕の手首を掴んだのは轟くんで。手首にかかる指の感触が。その温度が。懐かしくて愛おしくてたまらなくて、目の奥が熱くなっていくのがわかる。それでも僕は涙をこぼすことはなかった。だってもうあのころとは違う。 君も僕も。大人になったんだよ、轟くん。 「………どうしたの、轟くん」 ぶちまけた藍色の中、かすかに煌めきが宿る。僕の鼓膜を、すう、だなんて酸素を取り入れる音が揺らした。心臓をナイフで貫かれたようだ。傷口から漏れ出すこれは、いつの間にか変色している。もう、愛だなんて呼べやしない。 今更何を躊躇っているんだい、君は。 あのとき、「わかった」と。「ありがとう」と言ったのは、轟くんだったはずなのに。降り積もった五年分の歳月は元に戻らない。いつの間にか僕と轟くんの間にできた溝を、繋ぐかのようなその手。僕の腕を掴んだ轟くんは緑谷、とつぶやいた。 「お願いだ、五日間だけ泊めてくれねえか」 「え?」 「この通りだ、頼む」 そう言って僕に頭を下げる轟くん。重力に従ってさらりと流れるその髪の毛が、普段は隠れているかたちの良い耳を露わにしていた。 *** たぶん、断るべきだったんだろう。それでも断れなかったのは、惚れた弱みというやつなのだろうと思う。 連絡先は知っていた。高校時代にやりとりをしていた、メッセージアプリの友達欄。そこにまだ轟くんはいる。トークルームを開けば五年前の懐かしい日付と、柔らかな口調のメッセージが残っていた。 連絡を取ろうと思えば、取れた。それをしなかったのは、結局のところ弱さで。まだ好きだから、連絡が取れなかった。あのころの恋人としての轟くんのことを忘れられていたら。そうしたら、「ひさしぶり!轟くんは元気?」だなんて、軽々しく連絡が取れたのだろうか。 プロヒーローとしてお互い忙しい身であるし、五日感も一緒にいることを考えたら合鍵を轟くんに渡すのは自然なことで。五年ぶりに動いたそのトークルームの履歴は、轟くんが先に僕の家に戻っていることを告げていた。「飯まだだろうから、作っとく」だなんてことも。 なんでこんなことになったんだろう。 こんな近い距離で、轟くんと五日間も過ごすことになるなんて。その距離はどうしたって高校時代を彷彿とさせるのだから、今から気が重くて仕方ない。悶々としながら今日も仕事を終えて帰宅すれば、扉を開けたその先で出迎える姿があった。 「おかえり、緑谷」 その声に、その微笑みに、どくんと心臓が跳ねる。 (君との、――) 君との未来は、こんな感じだったのかな。もし君と。未来を描けたのなら。無意識のうちに手のひらに爪を立てていた。柔らかい肉の中を堅い爪が沈んでいく感触と、鈍い痛み。 痛い。ああ、痛い。頭の片隅で思う。胸の奥が、とんでもなく痛い。 「――――っ」 「…緑谷?」 「なんでもない、なんでもないよ轟くん」 はっとしたようにドアノブから手を離せば、ばたん、と扉が締まる。それと同時にかさりという音が鼓膜を震わせて、靴を脱ごうとした僕の動きを止めた。 「…え?」 それは、花だった。 一番に飛び込んでくるのはその鮮やかな色。黄色、紫、白といった色とりどりの色が花びらを染め上げていた。茎のところ白色のリボンで結ばれて、ぎゅっと一つに束ねられている。 まるで死体のようだった。 あくまで小ぶりなかたちの花弁は、慎ましやかに玄関の下に落ちていた。視線を上げれば、ドアの内側に取り付けられた、郵便受け。ドアを閉めた際にそこから落ちたのだろう。恐る恐るのぞき込めば、そこには名刺サイズのカードが隙間に挟まっていた。 『もの想い パンジー』 「?…なにこれ」 手書きで書かれたような文字は、どこか暖かみがあって。懐かしいような、切ないような、不思議な気分になる。右手で花をそっと拾い上げれば、蕩けるような花の香りが鼻腔を刺した。カードを裏返してみても、そこには何も書かれていない。 「…花か?」 「うん、なんだろう、僕になのかな?」 「お前の家なんだからそうだろ、きっと」 差出人不明の花。匿名で贈られた花。ありとあらゆる生命活動をやめた、死体のような花。 どうしても、恐ろしいものだとは思えなかった。たぶん、思うべきだった。萎れずに、まだ瑞々しいままの花びらを見つめる。郵便受けに入れられたのは、きっと数時間前のことなんだろう。 「この、『もの思い』ってなんだろう」 「……花言葉か?」 「え?」 「たぶん、パンジーはもの思いだった気がする」 スウェット姿の轟くんが、花を見つめてそんなことを言う。その花を見つめる轟くんの視線はどこか優しくて。 (――――、) まるで、高校時代に戻ったようだった。 目尻を下げて、頬を緩めて、瞳の奥を甘く蕩かせていた、あの頃の轟くんを思い出す。目に焼き付けた筈の残像が、また熱を持って甘く疼きだす。近いようで遠くて、たまらなかった。 なんなんだろうな。なんでこんなことになっているんだろう。 消え失せて、と心の中で願えども消えないから、瞳を伏せる。――もの思い。ふつうは考えないことまであれこれ考えること。 「詳しいんだね」 「まあな」 それきり、その話はしなかった。靴を脱いで、肩から鞄を下ろす。キッチンからは良い匂いが漂っていた。轟くん料理できるんだなぁとか考えて、また嫌になる。そんな僕を見た轟くんははっとしたように、顔を上げた。 「ごめん、今から温める」 「いいよいいよ、それくらい自分でやるから。だから轟くんは寛いでて」 ばたばたと着替えながら、轟くんの視線から逃れるようにキッチンの方へ向かう。自分の家の中に轟くんがいるということが。轟くんを見るということが、痛いくらい苦しいのに、ばかみたいなほど嬉しくて、触れたくて、愛おしくて。自分から捨てたくせに、気を抜けば縋りついてしまいそうだったから。 「あ、お風呂もう入った?僕ご飯食べてるから、もしまだだったら先入ってて良いよ」 「……まだ、俺も食べてない」 「え、」 ほら、僕はこんなにも弱い。轟くんを極力見ないようにと決意した矢先にこれだ。ぴたりと足が止まって後ろを振り向く。伏し目がちに呟く轟くんの、少しばかり恥じらうような声。 「一緒に食べたかったから」 「……………、」 その言葉に、なんて返せばいい?なんて返すのが正解なんだ?「嬉しい」?「先に食べててよかったのに」?学生時代に何気なく返していたはずの言葉。それさえ思い浮かばなくなってしまった。轟くんを振った僕が言える言葉は、何だ? 「そっか」 手を伸ばせば届く距離。まだ好きなんだと、もう一度やり直したいと、言える距離。それでも僕のくちびるからこぼれたのは、その一言だけだった。 *** お互い好き合っていて、気持ちが離れたわけではない。 そう言えば、十人中十人が「どうして別れたんだ」なんて疑問に思うだろう。実際、轟くんと別れたことをクラスメイトに話せば、予想通りの反応が返ってきた。 好きなら良いじゃないかと、誰かに言われた気がする。おぼろげな記憶の中で、僕はその言葉になんと返したんだっけか。五年も前のことだ。もう覚えていない。 ――好きだから、だめなんだよ。 好きだから、だめなんだ。恋愛感情だけじゃなくて、轟焦凍という人間が好きだから。だから、離れなければならないんだ。 『別れよう、轟くん』 目を伏せれば鮮やかに映る、最後の日の記憶。君と近づいた夏、君と離れた春。さざ波の音と、昇りはじめた太陽。地平線の向こうを眺めながら、これで最後だと、頬に触れた轟くんの手のひらをそっと離した、あの日。 僕の中で大きく育ちすぎた想いが、ヒーローとしての君を殺していくんだ。そばにいられたらそれでよかったはずなのに。いつの間にか我が儘で欲しがりになってしまった僕は、やがて君の全てを欲しがった。馬鹿だろう。ヒーローになりたがっていた君が好きだったはずなのに。 もう、僕はわからなくなってしまっているんだよ、轟くん。 『………わかった』 ありがとう、とこぼれる言葉。波の音と、朝焼け。瞳の奥に焼き付けた、最後の顔。泣きそうな、轟くんの顔。 安堵していたはずなのに。すれ違いの温度がやけに目の奥に沁みた。 君が、好きだから。僕を好きでいてくれる君が、好きだから。 だから、君が好きな僕のままで、終わらせてほしい。 「――――デク、」 「え?」 「何回も呼びましたよ、大丈夫ですか」 思考を打ち砕く声に、手にしていた書類がばさりと落ちる。書類の白から開けた視界の向こう側から、心配そうにこちらを見つめるサイドキックの顔が視界に飛び込んできた。 「はは…ごめん」 轟くんがうちに泊まりに来てから、今日で四日が経つ。一日目に贈られた花は、それ以来毎日ポストの中に投函されるようになった。最初は、『もの想い パンジー』。次の日は、『うれしい知らせ ハナショウブ』。またその次の日は、『いたわり ポピー』。こんな連日花を贈られれば、大方今日も何かしら贈られているのだろうと思う。 それは決まって夜だった。朝、出勤前に郵便受けを覗いても、そこに花の影はない。よくわからない業者からのダイレクトメールか、チラシかくらいだ。瑞々しい花びらを見れば、投函されてからそう時間が経ってないことくらいすぐにわかる。 夜の藍色に隠すように、そっと贈られる花。ご丁寧に花言葉までしっかり書かれたそのメッセージカード。こんなことを言えば気持ち悪がられるのはわかっていたけれども、僕には何故かそれを捨てる気にはなれなかった。手書きで綴られた文字の羅列は、今もデスクの引き出しの中で眠っている。 ――頃合いかな。 少しばかり水気を帯びた、春の色。窓の外に浮かぶ厚い雲。散ってしまった桜の花びら。窓ガラスの向こう側で大きくなる涙の粒は、光を反射して青にも赤にも装ってみせた。雨だ。静かに降る、春の雨。 隠し事は得意だった。それはもう、学生の頃から。オールマイトから受け継いだこの力のことは、墓場まで持って行くと決めていた。僕は、無個性のデク。ただの、木偶の坊。君と一緒に、未来を描きたいだなんて。そんなのは傲慢だ。 意を決してじっとその瞳を見つめる。真面目で優秀な僕のサイドキックは、僕のただならぬ雰囲気を感じ取ったようで。一度きょとんしたのち、一拍おいてその瞳を負けないほど強いものにしてきた。 「ほしいもの、ある?」 「え?」 「欲しいもの。手に入らないもの。ある?」 びっくりしたように丸められる瞳が、ゆっくりと細められる。睫毛が震えて、終わりを告げるかのように目蓋が落ちた。うすく開かれた唇と、吸い込まれた鋭利なまでの酸素。 「――ありますよ」 まるで、針の山を飲み込んだかのように笑う。いや、違う。笑ってるんじゃない。泣いてるんだ。目尻を下げながら、口角を持ち上げて。泣いてるんだ。心臓に突き刺して、そうして漏れ出たのはきっと。きっと愛だ。 苦しかった。ぱらぱらと降る雨の音が、ひどく静かな部屋に木霊する。鼻腔を擽る珈琲の香りすら、煩わしかった。それでも、と続ける彼女の声。 「デク。あなたは、違うでしょう?」 「――――、」 「わかります。一緒だから」 私もあなたと一緒だったから。 そんな話、聞いたことなかった。ここにない、どこか遠くを見つめる彼女の瞳が。切ないような、懐かしむような、そんな色をするから。でも、デク。そう言葉を続けられるまで僕は、息が出来なかった。 「あなたはまだ、伝えられるでしょう?」 ――伝えるとしたら。きっと、今なんだと思う。 奇跡のような偶然。悪戯のような巡り合わせ。この機会を逃したら、金輪際、轟くんに近づけやしないのだろう。 「…そうだね」 目を伏せれば、愛された記憶が蘇る。この思い出だけを抱いて。繰り返し映し出される記憶の中で。僕は、何年でも生きようと思っていた。 メディアに取り上げられるたび。その顔を、名前をみるたび。胸の中で渦巻いていた感情の名前を。それを、僕はもう一度恋と呼んでいいのかな。 しとしとと降り続ける春の雨は、答えをくれない。 『ちいさな幸せ スミレ』 その日郵便受けに届けられていたのは。紫色の花だった。幸せを告げる、花だった。 *** その日は、朝から忙しい一日で。プロヒーローたちと幾度もの会議を経たのち、活動が目立ってきている犯罪組織の取り締まりを明日に控えていた。当然、僕の事務所の面々も緊張した面もちで。 ――正直、その忙しさに助けられていた。 「……………はぁ」 忙しくしていれば、轟くんのことを忘れられた。今日が五日目の夜だということを。今夜、夜を越えたのなら。轟くんが僕の前からいなくなることを。通い慣れた道ですら、さよならのカウントダウンをされているように思えてならない。 「…おかえり」 「ただいま」 ドアを開ければ、白と紅の髪の毛が揺れていた。見上げたところにある色違いの瞳は、いつもよりほんの少しだけ痛そうに見えた気がして。 この会話にも、温度にも、慣れ始めている僕を、僕はどうするべきなんだろう? 轟くんは、あくまで紳士的だった。元恋人という間柄にあるとはいえ、この五日間、轟くんは僕に迫るようなことはなかった。一度たりとも。 そんな轟くんだから、なんとなく。なんとなくわかってしまう。 あの頃轟くんを振ったのは僕で。そして恐らく、今度は轟くんが僕を振るのだ。思い描いた未来は白紙のままで、もう一度は聞き届けられない。僕が想っていることを轟くんも想っているだなんてばかばかしい。自惚れにもほどがある。 轟くん。料理、上手なんだね。初めて知ったよ。 あの頃気づけなかったことが。知らなかったことが。今更になって溢れてくる。一緒に食事を摂る間だとか、流しっぱなしのテレビがCMを挟む間だとか。気まぐれに落ちる沈黙を、僕はとりとめのない言葉で会話を繋ごうとした。いつもより、途切れがちな会話を。かすかな糸が切れてしまわぬように。 『どこか遠くへ ハマユウ』 郵便受けには、白い花があった。百合にも似た、その花。繊細な曲線を宿した、白い花。差出人の名前のない、メッセージカードに書かれた「どこか遠くへ」の文字。 もしも。もしもどこか遠くへいけるのなら。ヒーローも、ヴィランも、個性ですらない世界へいけるのなら。そうしたら僕は君と一緒にいられたのだろうか。 願ってはいけない恋だった。シャワーヘッドから土砂降りのように落ちていく水の温度はいつもよりぬるくて。春の雨に打たれて、緑は栄えるのだろうな、なんてことを思う。窓ガラスの向こうに見えた、踏まれ泥にまみれた茶色の桜の花びらも。きっといつか無駄じゃないと思えるのなら。 「轟くん。電気、暗くしていい?」 「おう」 お風呂からあがれば、ソファに肘を突く轟くんの姿があった。グレーのスウェットがよく似合っている彼は、僕がそう声をかけると流しっぱなしのテレビをぷつりと切る。 途端に、静けさが部屋を埋めてだめだった。肌を侵す緊張を悟られないよう、寝支度を整える。僕が部屋の電気を小さなものにすれば、轟くんも貸していた布団を整え始めた。 「消すね」 「ん」 おやすみ、と小さく震わせれば、おやすみと返ってくる声。ゆっくりと目を伏せた、その先に見える青。 ――眠って、朝が来たら。もうそのときには、轟くんはいない。 『あなたはまだ、伝えられるでしょう?』 「緑谷」 「…なあに」 眠れないのは轟くんも同じだったみたいで。暗闇に慣れた目には月明かりが眩しく映る。ひどく、優しい声だった。だから僕も、ひどく、優しい声で返した。 視界の端で、轟くんが動く気配があった。それを捉えてそちらを向けば、暗がりでも美しく映る瞳に射抜かれる。 「――――、」 何も、言わなかった。 何も、言えなかった。 好きだと、言うべきだった。別れようだなんて、言うべきじゃなかった。忘れられると思っていた。それなのに、五年経っても、心の穴は空いたままで。 どこもかしこも痛くてたまらない。今でも轟くんが好きだよと、伝えなければならないのに。声が出ない。どうしてこんなにうまくいかないんだろう。君を忘れるために、強くなるために別れたはずなのに、それどころか臆病になっていたようだ。 ゆっくりと伸ばされた轟くんの手が、ベッドと布団の間の空間を繋ぐ。その熱い手のひらが、祈るように���僕の右手に触れた。 轟くんと、僕の間で掛け渡されたのは、なんだったのだろう。 「これで、最後にする」 「…………とどろきくん」 「もし、お前が――」 月が綺麗な夜だった。もしも叶うのなら。あの白い花のように、どこか遠くへいきたい。この夜を溶かして、瓶に詰めて。そうしてそれだけを抱えて、どこか遠くへ。 ぎゅ、と痛みを耐えるように寄せられる眉根。その癖は変わらないね。別れを告げた日も、君は同じ顔をしていた。 言葉に詰まった轟くんの瞳が、深海のように揺らめく。海底で光を受けてきらめくような瞳。その中に溶ける緑色に僕は泣きそうになった。 「いや、なんでもない」 触れた指先はひび割れていて。あかぎれの出来たその指先に、ゆるく絡め取られる。ぎゅ、と僕の指の一本一本の隙間に轟くんの指先が絡んで、苦しいくらいに優しい力で指先を抱き締められた。 手首にそっと落とされるくちびると、なみなみと心に注がれるなにか。ベッドと布団の間を繋ぐその腕はゆっくりと離れていって。そうして小さくおやすみ、という声が夜の淵から聞こえた。 ――花はもう、届かないような気がした。 *** 目が覚めたら、手を伸ばしていた。 「………………」 一体いつ、轟くんがこの部屋を去っていったのかを僕は知らない。昨日まであった轟くんの荷物も、確かに触れたはずの温度も。僕が朝起きたときには、もうそこにはなかった。ただ、轟くんの匂いだけが、いたずらに残っていた。 代わりとばかりに、テーブルの上に控えめに置かれていたのは鍵だった。泊めてくれと言われ五日前に渡した、この部屋の合鍵。その横を見ても、書き置きの一つすら見当たらない。まったく。嫌になるくらい、轟くんは最後まできっちりしている。 ――それはまだ、鮮やかだった。確かに息をしていた。 静止して動かないどころか、縋りつきたくなるくらいに優しかったのだ。僕の指先に触れた熱が。狂おしいと、暴れのたうち回る胸の奥が。一瞬でも僕と轟くんを繋いだ、昨日の夜が。 『いや、なんでもない』 一瞬だけ揺れて、伏せられた瞳。手向けられたのは、餞別のつもりだったのだろうか。僕にはわからない。轟くんのことが、わからない。 言えなかった言葉たちが目の奥から溢れていく。すきだよ。轟くん。僕はまだ、君のことが好きなんだ。馬鹿みたいな話なんだ。それでももう、その言葉すらきっと受け取ってもらえないんだろう? 「……ふ、ぅ、っ……とどろき、くん…っ」 窓の外から差し込む、眩しいほどの光。その眩しさに目をくらませて窓枠に手をかければ、すぐに風が吹いてくる。夏の前の、少しだけ青々しい匂いを纏った風が。 ――春が終わったね、轟くん。 きみと近づいた夏の日。アイスを分け合った帰り道。額に乗せられた、ひんやりとした君の手のひら。氷が溶ける音と、一瞬だけ触れたくちびるの感触。爆ぜる炎の揺らめき。夏が終わる、水の冷たさ。 君の、体温。 僕らはもう。どうしようもないくらい大人になったんだね、轟くん。初恋は叶わないなんて言葉、知ってたらもっと楽になれていたのかな。君に恋することなんて、なかったのかな。僕たち、友達のままのほうがよかったのかな。 戻ってきた。僕の日常が、戻ってきた。卒業してからの五年間。轟くんのいない、僕の日常が。そうだろう? 「……ぅ、っく……とどろき、くん…、っ…しょうと、…くん、っ……」 ほら、どうだ。笑ってみろよ。これが僕が望んだ、僕と君の結末だ。笑えよ。幸せな記憶に手を伸ばして、その指の隙間から取りこぼした想いの欠片がこれだ。君がもう一度願ってくれるならと甘えて、君の優しさにあぐらをかいて。置き手紙ひとつない、無機質な銀色だけが答えじゃないか。笑えよ。笑ってくれよ。こんな僕を。 風に靡いて揺れるカーテンの裾。その揺らめきの向こう側から差し込む光。なにも答えてくれない風と、嫌になるくらい気持ちの良い朝。 それらすべてを目に焼き付けて、そっと光の中で手を繋いだ。慣れたはずのひとりの朝と。ここにはいない、誰かを想って。 ――3、2、1、 ゼロ。その合図と同時に、派手な土煙が昇る。空を白く染め上げたそれは、瞬く間に硝煙の匂いを撒き散らした。耳の奥で轟々と鳴る音はまだ止まない。視界を煙に奪われながらも、僕らは足を踏み出した。 「――デク、これは」 「…いないね」 やがて土煙が収まって視界が開ければ、そこはもぬけの殻だった。巷で勢い付いている犯罪組織。その組織の幹部やら下っ端やらがいると思われていたアジトには、人間の形が一つとして見あたらない。おかしいな、と訝しがりながら僕はぐるりと部屋を見渡した。今までの情報に狂いがないことくらいわかっている。確かにここは追っていた犯罪組織のアジトだったはずだ。 そっと壁に手を付けば、ばらばらと崩れていく瓦礫。部屋の中央に置かれた、年季の入った赤いソファ。テーブルの中央に置かれた灰皿の上の煙草。 近づいてよく見ればそれは変色していた。灰皿のなかで無数に蠢くそれをひとつつまみ上げる。冷たい。僕たちが来ることに気が付いて急いで逃げたようには到底思えなかった。 「僕たち、嵌められたみたいだ」 「…まずいですね」 「うん」 穏やかじゃないね。 僕のその言葉は、廃墟めいた瓦礫のへと吸い込まれる。不気味なほどしんとした静けさと、硝煙の匂い。ぴりぴりとした緊張が肌を焦がしていた。傍らに控えている、いつもは温厚なサイドキックですらその顔は強ばっている。頭の中で広がり続ける嫌な予感に、僕は考えを巡らせた。 ――もしここに僕たちを誘導したのなら。その目的はなんだ? 考えろ。考えるんだ。そうでなければきっと、取り返しの付かないことになる。僕のせいで、誰かが傷つくことになる。恐らくヴィランは、僕たちを邪魔だと思ったんだ。だからこうしてここに誘導した。ということは―― 八ッとする。考えたくない考えが、頭に浮かぶ。だって、こんなの、 「――時間稼ぎ?」 ジジッと耳に付けていたイヤホンモニターから、ノイズ音が走る。焦ったようなヒーローの声を耳にしたとき、遠くで爆発音が響いた。 *** 嫌われてると思ってたんだ。生まれたときから。そんな僕は、嫌ってたんだ。こんな僕を。 無線越しの焦ったような声。耳が拾った、ショートという音。爆発音と灰色の煙。 ねえ神様。もしもあなたがいるなら教えて欲しいんだ。これはもうなんと呼んだらいいんですか。相手のためを思って。そうして離れたのは僕のエゴですか。もうしそうなら、こうやっていま息を切らせている僕を、僕を逸らせる想いすらエゴになりますか。 愛だとか恋だとかもう、もうわかんないんだよ。もうほんと、どうしてくれんだよ。 「――、っ轟くんっ、」 がらりと引き戸を開ければ、いつか見た姿がそこにあった。消毒液の匂いと、嫌になるくらい白い部屋。その中で一際鮮やかに滲む、赤。 昨日の夜ぶりに見た、白と紅の髪の毛。色違いの瞳。 それを目にした途端、膝が震えて。目の奥が熱くて。喉が引き攣るように痛んで。そうして上下する胸を整えて、僕は轟くん、と切り出す。 「君だろ、これ」 「…みどりや」 すべてはもう遅かった。轟くんが怪我をして、病院に搬送されたと聞いて。急いで事務所に戻って、引き出しを開けた。差出人不明のメッセージ。贈られた花と、花言葉。きみが五日間といった意味を。 『もの想い パンジー』 『うれしい知らせ ハナショウブ』 『いたわり ポピー』 『ちいさな幸せ スミレ』 『どこか遠くへ ハマユウ』 ――その五枚のカードが意味することを。 「らしくないよ、轟くん」 「………」 「こんなの、君らしくない」 「………みどりや」 「こんなの、…ッ口で!伝えてくれなきゃわからない!」 「もういい」 気が付いたら、轟くんの腕の中にいた。もうどうして、僕はこんなんなんだ。怒鳴って、けが人に抱き締めてもらっているだなんて。 「もうわかんないんだよ!どうして今更になってなんて思う!どうしてこんなわかりにくいやり方でなんて思う!でも、っ」 溢れていく涙が止まらない。ああ、ほんとうに嫌になる。轟くんからの想いを断ち切ったくせして、もう一度欲しいと強請るなんて。 痛い。痛くてたまらない。それなのに、それ以上に好きで。そばにいたくて。会いたくて。触れて欲しくて。 「でも、一番わからなくて嫌なのはこの僕だ!君を振ったくせに五年も好きで好きでたまらなくて、今だって君のことが大好きな…っ」 そうしてこうやって、どうしようもなくなって。病室にまで駆け出してしまうような。 「僕、なんだよ…」 顔もあげられなくなった僕の頭を、そっと撫でる指先があった。炎と氷を生み出す指先。思えば、はじまりは轟くんに触れられたことだった。僕の右手を、愛おしそうに触れられたことだった。 「もういいんだ、緑谷」 それが聞けただけで、俺はもういいんだ。 傷だらけになりながら、轟くんはそんな事を言う。五年なんて時間、もうどうでもいいんだ。お前の傍にいられるならなんて。そんなことを。 ――優しい人。一途な人。愛おしい人。 みどりや、と名前を呼ばれる。轟くん、僕はね。君に名前を呼ばれるのがいちばん好きなんだ。ずっとずっと前から。 「俺と、やり直してくれますか」 「………っ、……」 震える手で、花を差し出される。その花には、見覚えがあった。轟くんも、怖かったんだね。お互い好き合ってるのに、離れるなんて。ほんとうに僕らは臆病だった。 病室のベッドの枕の下から顔を出したのは、鈴蘭の花だった。メッセージカードはなかった。差出人なら知っている。花言葉でさえ、覚えている。だってその花を贈ったのは僕だ。 涙に濡れて、しっとりとした感触がくちびるから伝わる。少し塩辛いそれに、轟くんはゆっくりと微笑んだ。僕からキスしたのは、はじめてだったかもしれない。肯定代わりのそれを、鈴蘭の花だけが見ていた。 ―――――……………… 『なに見てんだ?』 『轟くん』 『…花か?』 『うん、鈴蘭っていうらしいよ』 『へぇ』 『…はい。これは君にあげる』 『…いいのか?緑谷が見つけたんもんだろ?』 『うん!だって――』 ――鈴蘭の花言葉はね、「再び幸せが訪れる」なんだから。
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