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#食道括約筋を刺激
okumaseitai · 1 year
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・ 『七草粥』 お正月 食べ過ぎ 飲みすぎになっていませんか?   このような時は 「胸やけ」を起こすことがございます。 この時期には「ある、ある〜」ですよね~ 笑笑😊   原因として考えられるのは   ・食べ過ぎ(胃酸過多) ・飲みすぎ(胃酸過多) ・肥満(胃を圧迫) ・姿勢の悪さ(胃を圧迫)   などです。   しかも 食道から胃に入るところの筋肉は 普段は 締められているのですが アルコールや甘いものを食べすぎると緩んでしまうんです。しかも胃酸の分泌も増えています。 ですので 締めないといけないところが 緩んでしまうことになり胃酸も増えるので ダブルパンチとなるのです。   酷くなると 逆流性食道炎を起こす原因となったりするのです。 ゲップが多くなったり胃腸の調子が悪いと感じる方は注意してくださいね。   対策としては ❶よく噛んで食べる ❷脂っこいものやお酒は控える ❸甘いもの(チョコレートなど)を控える ❹腹八分目にする ❺姿勢を正す ❻消化の良いものを食べる   これらを守ってみてはどうでしょうか! ここで七草粥が登場します! 笑笑😊 温かくて消化の良いものを食べるようにしてください。   それと 下部食道括約筋を鍛える方法としては 犬が息を口で「ハァハァハァ」とするように やってみると横隔膜の動きを鍛えることができます。 これで胃酸を抑えて 逆流を防ぐ横隔膜の運動 食道括約筋の筋肉の刺激を助けて 逆流性食道炎の予防になる可能性があります。 今日は 七草粥を食べてゆっくりして 温まるようにしてくださいね。 参考になれば幸いです。 #七草粥 #逆流性食道炎の予防 #食道括約筋を刺激 #横隔膜の運動 https://www.instagram.com/p/CnF5rfaSYL8/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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2ttf · 12 years
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xf-2 · 5 years
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 世界経済の成長は、足元で安定化の兆しを示しており、総じて、本年後半及び2020年に向けて、緩やかに上向く見通しである。この回復は、緩和的な金融環境が継続すること、幾つかの国々で景気刺激策の効果が発現すること、一時的要因が解消することによってもたらされている。しかしながら、成長は低位であり続けており、リスクは依然として下方に傾いている。何よりも、貿易と地政を巡る緊張は増大してきた。我々は、これらのリスクに対処し続けるとともに、更なる行動をとる用意がある。
 我々は、強固で持続性があり均衡のとれた包摂的な成長を実現するため、また、信頼を高める対話と行動を強化することにより、下方リスクから守るために全ての政策手段を用いるとの我々のコミットメントを再確認する。必要に応じて財政バッファーを再構築し、かつ、公的債務が持続可能な道筋にあることを確保しつつも、財政政策は、機動的に実施し、成長に配慮したものとすべきである。金融政策は、中央銀行のマンデートと整合的な形で、インフレが目標に向けた軌道を維持するか目標付近で安定することを確保すべきである。中央銀行の決定は引き続きよくコミュニケーションがとられる必要がある。構造改革の実行を続けることは、我々の潜在成長力を高める。我々は、国際的な貿易及び投資が、成長、生産性、イノベーション、雇用創出及び開発のための重要なエンジンであることを改めて強調する。我々は、ブエノスアイレス・サミットでの貿易に関する首脳の合意を再確認する。我々は、国際的な協力及び枠組みを強化するために、引き続き共同行動をとる。我々はまた、2018年3月に行った我々の為替相場のコミットメントを再確認する。
 世界金融危機の後、グローバル・インバランス(経常収支不均衡)は、新興国や開発途上国を中心に減少し、次第に先進国に集中してきた。しかしながら、不均衡は依然として高水準かつ持続的であり、対外資産・負債の水準も拡大を続けている。我々は、対外収支を評価するにあたっては、サービス貿易・所得収支を含む経常収支のすべての構成要素に着目する必要があることに留意する。我々は、対外収支には、景気循環要因、国内政策及び経済のファンダメンタルズ、海外からの波及効果が複合して反映していることを認識する。我々は、対外不均衡の中��は、経済のファンダメンタルズに沿ったものもあれば、過度でありリスクを孕むものもあるという見解を共有する。過度な対外不均衡の根底にある要素には、過剰な法人貯蓄、誤った財政政策、財・サービス分野の貿易障壁が含まれうる。我々は、協力推進の精神に基づいた上で、過度の対外不均衡に対処し、強固で持続性があり均衡のとれた包摂的な成長というG20の目標実現に対するリスクを低減するには、各国の実情に即しつつ、注意深く策定されたマクロ経済・構造政策が必要であることを確認する。一方で、我々は、外国直接投資などのように、より安定的な資金を提供する形態もあるため、資金調達の構成についても注視すべきことを認識する。我々は、IMFによるグローバル・インバランスに関する更なる分析を期待する。
 高齢化を含む人口動態の変化は、G20すべての国に対して課題と機会をもたらす。我々は、このアジェンダの複雑性に鑑み、人口動態の状況に応じたグループに分かれて、高齢化に関連する包括的議論を行った。人口動態の変化は、財政・金融政策、金融セクター政策、構造改革など広い分野にわたる政策行動を必要とする。 各国は必要に応じ、以下の政策を考慮すべきである。 高齢化社会における金融包摂を強化するため、我々は、金融包摂のためのグローバル・パートナーシップ(GPFI)とOECDが策定した「高齢化と金融包摂のためのG20福岡ポリシー・プライオリティ」を承認する。我々は、「GPFI作業計画提案」を承認し、2020年までのロードマップに基づき、GPFIがその体制を簡素化することを求める。
 グローバル金融セーフティ・ネットにおけるIMF の中心的役割を維持すべく、我々は、強固で、クォータを基礎とし、かつ、十分な資金基盤を有するIMF にコミットしていることを再確認する。我々は、第15次クォータ一般見直しを遅くとも2019年年次総会までに完了することに引き続きコミットしており、IMF資金とガバナンス改革に関する作業を最優先事項として早めることをIMFに求める。我々は、賢人グループの提言のフォローアップ作業の進捗を支持する。我々は、効果的なカントリー・プラットフォームに関するあり得る原則の策定に向けた進展を歓迎し、また、我々の考え方を固めコンセンサスを形成するための更なる作業を期待する。加えて、我々は、新たな標準契約書の作成及び複数の国際開発金融機関(MDBs)との協力合意を含む、多国間投資保証機関による開発金融におけるリスク保険を向上させるために進められている努力を歓迎する。我々は、G20賢人グループの提言を受け、4月の代理レベルや昨日の大臣レベルで見られたような、開発金融に係る議論を歓迎する。我々は、資本フローに関する国際機関の取組を歓迎する。OECDは、資本移動自由化コードの見直しを完了し、資本フローの自由化と金融安定を支えるようコードを近代化した。我々はまた、価格に見合った価値に関する国際開発金融機関の報告書を歓迎するとともに、適切で、過剰な負担とならず、かつ明確な利益を生む形での指標の調和化に関する更なる作業を期待する。我々は、賢人グループの提言が複数年にわたる性質のものであることを認識しつつ、その作業を継続する。
 我々は、債務の透明性を向上し、債務の持続可能性を確保するための、債務者及び公的・民間の債権者双方による協働の重要性を再確認する。我々は、IMF及び世銀グループによる、新たに生じつつある債務脆弱性に対処するための「様々な角度からのアプローチ」の直近の進捗に関するアップデートを歓迎し、更なる実施を支持する。とりわけ、我々は、IMF及び世銀グループに、債務の記録・監視・報告、債務管理、公的財政管理、国内資金動員の分野における債務者の能力強化のための取組を継続することを求める。我々は、IMF及び世銀グループに、債務上限ポリシー及び非譲許的借入ポリシーの見直しの文脈で、担保付貸付の慣行の分析を引き続き深めることを奨励する。我々は、「G20持続可能な貸付に係る実務指針」の実施に関する任意の自己評価の完了、及びその評価結果と政策提言をまとめたIMF及び世銀グループのノートを歓迎する。我々は、評価を完了したG20及び非G20メンバーを称賛する。我々は、貸付慣行の改善を目指して、このノートで強調されている課題を引き続き議論していく。我々は、民間貸付に係る債務の透明性及び持続可能性を向上させるための、「債務透明性のための任意の原則」に関する国際金融協会の取組を支持し、フォローアップを期待する。我々は、二国間の公的債務を再編するための主要な国際フォーラムとして、債権者たる新興国のより多くの参加に向けてパリクラブが進めている取組を支持する。これに関連して、我々は、パリクラブと協働するために、インドがパリクラブに事案に応じた参加を自発的に決定したことを歓迎する。
 インフラは経済の成長と繁栄の原動力である。質の高いインフラを強調することは、「投資対象としてのインフラに向けたロードマップ」に沿いインフラ・ギャップの縮小に向けて継続中のG20の努力の必要不可欠な一部である。この文脈で、我々は、公的財政の持続可能性を保つ形での持続可能な成長と開発を達成するためのインフラの正のインパクトの最大化、ライフサイクル・コストでみた経済性の向上、女性の経済的なエンパワーメントを含めた環境・社会配慮の統合、自然災害その他のリスクに対する強靭性の強化、及びインフラ・ガバナンスの強化の重要性を強調する。我々は、この理解に基づき、また、テーマ横断的な協働を歓迎しつつ、我々の共通の戦略的方向性と高い志として、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」を承認する。我々は、国際機関に対して、効果的な実施のために有用であろう、質の高いインフラ投資に係るレファレンス・ノート及びファシリティとリソースに係る新たなデータベースを作成したことを感謝する。我々は、質の高いインフラ投資に係るあり得る指標を探求することを含めて、インフラを投資対象へと育成するための作業項目を引き続き前進させていくことを期待する。
 我々は、自然災害に対する財務上の強靭性を促進させる手段としての、災害リスクファイナンシング・保険スキームの重要性を認識する。こうしたスキームは、政府が民間部門の資金を効果的に活用し、それによって時宜を得た形で自然災害からの財務上のリスクを管理することに資する。この関連で、世銀からの報告書「災害ショックに対する財務上の強靭性の強化:グッドプラクティスと新たなフロンティア」は、マクロ経済・財政計画の策定を通じたものを含む、災害リスクファイナンシングに係る手法に関する知識を広げることに役立つものである。
 ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に向けた前進は、途上国において、人的資源の開発、持続可能で包摂的な成長と開発、パンデミックや薬剤耐性といった公衆衛生上の緊急事態の防止、発見及び対応に貢献する。この観点から、我々は、「途上国におけるUHCファイナンス強化の重要性に関するG20共通理解」へのコミットメントを確認する。「共通理解」文書に示されたとおり、国際機関による活動を基礎とし、民間部門や非政府団体による適切な貢献を伴った、多分野にわたるアプローチ、特に財務当局と保健当局の連携は、保健財政強化のために重要である。この点に関し、我々は首脳サミットに際して開催される財務大臣・保健大臣合同セッションに期待する。我々は、世界銀行グループが作成したレポート「21世紀における持続可能かつ包摂的成長の推進のための優れた保健財政」に感謝する。
 我々は「アフリカとのコンパクト(CwA)」への継続した支持を強調する。これには、民間部門の投資家とのより緊密な関与や、二国間の関与の強化が含まれるべきである。後者には、開発金融機関からの一貫した貢献や、CwAを実施する上での役割に対する明確な理解の上に立った、参画する国際機関(WBG、AfDB、IMF)の役割の強化が含まれる。
 我々は、世界規模で公正、持続可能かつ現代的な国際課税システムのための協力を継続するとともに、成長志向の租税政策を推進するための国際協力を歓迎する。我々は、G20/OECD「税源浸食と利益移転(BEPS)」パッケージの世界的な実施及び税の安定性向上の重要性を再確認する。我々は、経済の電子化に伴う課税上の課題への対応に関する最近の進捗を歓迎し、BEPS包摂的枠組みによって策定された、2つの柱からなる野心的な作業計画を承認する。我々は、2020年までの最終報告書によるコンセンサスに基づく解決策のための取組を更に強化する。我々は、税に関する金融口座情報の自動的交換の進捗を含む税の透明性に関する最近の成果を歓迎する。我々はまた、国際的に合意された税の透明性基準を満足に実施していない法域の更新されたリストを歓迎する。我々は、強化されたすべての基準を考慮した、OECDによるリストの更なる更新を期待する。リストに載った法域に対しては、防御的措置が検討される。この点において、我々は利用可能な措置を列挙した2015年のOECD報告書を想起する。我々は、全ての法域に対し多国間税務行政執行共助条約への署名及び批准を求める。我々は引き続き、「税に関する協働のためのプラットフォーム(PCT)」を通じた協調や、中期歳入戦略に関する経験の活用、能力が限られた国々における国内資金動員を支援する各国の状況に合わせた努力等により、開発途上国における税に関する能力構築支援を支持する。我々はPCTの最初の進捗報告書及び日本における「アジア大洋州租税・金融犯罪調査アカデミー」を歓迎する。
 合意された国際基準に基づく、開かれた、強靭な金融システムは、持続可能な成長を支えるために極めて重要である。我々は、合意された金融規制改革の完全、適時かつ整合的な実施に引き続きコミットしている。我々は、これらの規制改革の影響を引き続き評価し、中小企業金融についてのFSBの市中協議文書を歓迎する。我々は、金融安定性に対する脆弱性と生じつつあるリスクについて、引き続き注視し、マクロ・プルーデンスの手段を含め、必要に応じ対処する。我々は、ノンバンク金融仲介が金融システムに与える多様性を歓迎する一方、引き続き、関連する金融安定リスクを、適切に特定、注視、対処する。我々は、FSBと証券監督者国際機構(IOSCO)による市場の分断についての報告書を歓迎し、10月に、進行中の作業も含めた進捗報告を受けることを期待する。我々は、規制・監督上の協力等により、意図せざる、悪影響をもたらす市場の分断に対処する。我々は、コルレス銀行関係の解消の原因及び結果と、銀行サービスへの送金業者のアクセスにかかる課題について、引き続き監視し、対処する。サステナブル・ファイナンスの動員及び金融包摂の強化は、世界の成長にとって重要である。我々は、こうした分野における民間部門の参加と透明性を歓迎する。
 暗号資産の基礎となるものを含む技術革新は、金融システム及びより広く経済に重要な便益をもたらし得る。暗号資産は、現時点でグローバル金融システムの安定に脅威をもたらしていないが、我々は、消費者及び投資家保護、マネーロンダリング及びテロ資金供与への対策に関するものを含め、リスクに引き続き警戒を続ける。我々は、マネーロンダリング及びテロ資金供与への対策のため、最近改訂された、仮想資産や関連業者に対する金融活動作業部会(FATF)基準を適用するというコミットメントを再確認する。我々は、FATFが今月の会合にて、解釈ノート及びガイダンスを採択することを期待する。我々は、消費者及び投資家保護や市場の健全性に関し、暗号資産取引プラットフォームについてのIOSCOの報告書を歓迎する。我々は、FSBの暗号資産当局者台帳や、暗号資産における現在の取組、規制アプローチ、及び潜在的なギャップに関する報告書を歓迎する。我々は、FSBと基準設定主体に対して、リスクを監視し、必要に応じ追加的な多国間での対応にかかる作業を検討することを要請する。我々はまた、分散型金融技術、それが金融安定性や規制、ガバナンスにもたらす潜在的な影響、及び当局が広範なステークホルダーとの対話をどのように強化できるかについてのFSBの報告書を歓迎する。我々は、サイバーの強靭性を高める努力を強化し続けるとともに、サイバー攻撃への対応や復旧のための効果的な取組を明らかにするFSBのイニシアティブの進捗を歓迎する。
 我々は、マネーロンダリング、テロ資金供与及び拡散金融と闘い、これを防止するための国際基準の設定主体としてのFATFの不可欠な役割を強調する国連安保理決議2462号を歓迎する。これらの脅威と闘う努力を強化することについての我々の強いコミットメントを再確認する。我々は、FATF基準の完全、効果的かつ迅速な履行を求める。我々は、今年4月に開催されたFATF大臣会合において、FATFマンデートが恒久化されるとともに、大臣級会合の2年に1度の開催やFATF議長・副議長の任期延長を含めたFATFのガバナンス強化につながる成果が得られたことを歓迎する。我々は、FATFの「戦略的な見直し」に期待する。我々は、金融技術革新がもたらすリスクと機会をモニターし、FATF基準が変化に適応した適切なものであり続けることを確保するとのFATFによるコミットメントを歓迎する。我々は、その進捗を2021年に報告するようFATFに求める。我々は、拡散金融への国際的な対応を強化するためのFATFによる更なる行動を期待する。
スキルへの投資、女性・高齢者における労働参加率の促進、高齢者に優しい産業の育成などによる生産性及び成長の向上。
公共支出・投資の効率性や実効性の向上、世代間及び世代内の公平性に考慮した機能的かつ財政持続的な社会保障の強化。
高齢化がもたらす課題により良く対応するための公正で成長を促す税制の設計。
金融政策に対する高齢化によるインプリケーションのより良い理解。
金融機関がそのビジネスモデルとサービスを必要に応じて適応できるよう支援。
人口動態変化による国境をまたがるインプリケーションの管理(資本移動や移民など)。
(以 上)
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cardamomoespeciado · 4 years
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いつも思う事だが考えが甘いのと海外、国際社会を知らなすぎる北海道観光業界。インバウンドに頼りすぎて自国の旅行者を無視したツケが今の現状、中国人旅行者、韓国人旅行者が来る前に戻っただけ、これからが本当の意味で創意工夫と旅行者が何を求めているのかを見直す時間。倒産する企業が出るのは当たり前の現実を生かして行くかが経営者の思案。
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温泉街「まるでゴーストタウン」…“ウポポイ“への期待と憂い 北海道観光の今【#コロナとどう暮らす】
8/4(火) 17:02
北海道ニュースUHB
 コロナ不況により、3700億円の損失が出ると試算される北海道の観光業。好調だった訪日外国人(インバウンド)はゼロとなり、各地に影を落としている。一方で、ポスト・コロナを見据えた動きも。4回にわたり観光に携わる北海道の人々の「今」を伝える。
 3回目はゴーストタウンと言われるほど客が激減した温泉街や、地元が復興の起爆剤と期待を寄せる政府の肝いりのアイヌ文化施設「ウポポイ」、そしてアイヌの人々の憂いに迫る。
「お祭り騒ぎ」から「ゴーストタウン」へ…外国人が消えた温泉街
 インバウンドが消え、道内の観光地は深刻な影響を受けた。北海道の空の玄関口、新千歳空港から車で1時間。国内外で人気の高い登別温泉も閑散とし、かつての賑わいが嘘のようだ。年間40万人いた外国人宿泊客はほぼゼロになった。
 「まるでゴーストタウンみたい。インバウンドが入っている時は毎日お祭りみたいな感じでしたから」(温泉街の食料品店で働く女性)
 創業52年、全館200室の温泉ホテル「登別万世閣」もインバウンド消滅の波が直撃した。宿泊予約を総括する土肥昌史部長が現状を語る。
 「外国の、特にアジア圏のお客様が増えていたので、大きな打撃になった。お客様は年間15万人で、外国人客は3割近く。約4万人減ってしまった」
15人で混雑…浴場に”AI導入” レストランは大量のシート 徹底した感染対策
登別万世閣ではAIで浴場の混雑を予測するシステムも導入した(6月)
 万世閣では感染対策を徹底し、少しでも客を呼び込もうと必死だ。その一つが大浴場の男女入口前に設置された真新しいモニターだ。
 「大体15人前後になると混雑の表示になる」(土肥部長)
 浴場の混雑を避けるため、人の出入りをセンサーで把握し、混み具合もAIで予測できるシステムを導入した。
 人が最も集まるレストランには、いたるところに飛沫(ひまつ)感染防止シートを張り、パーティションも各テーブルに置いた。しかし、落ち込みは防げない。土肥部長は自らを鼓舞するように前向きな姿勢を強調する。
 「先が見えず社員からも不安の声があるが、いずれ落ち着く」
“クマ牧場”来場者の半分インバウンド「死活問題」…損失は3億円か
 温泉街のそばにある観光名所「のぼりべつクマ牧場」も深刻だ。「の・ぼ・り・べ・つ、といえば、クマ牧場」とラップ調のテレビCMで知名度が上がったこの施設。ヒグマ約70頭を飼育していて、ヒトがヒグマに狙われる獲物になったような体験もできる。
 外国人にも人気で、年間来場者20万人の半数をインバウンドが占めていた。営業を担当する吉田廣勝さんは危機感をあらわにする。
 「非常に死活問題。年間の入園者数のウェイトの半分を占めているので」
 年間売上高の半分、3億円が消えようとしている。
北海道独自の支援策「どうみん割」… 即売り切れ続出 “焼け石に水”
 基幹産業の一つ、観光業の落ち込みに北海道の鈴木直道知事が6月9日会見し、支援策を打ち出した。
 「道内旅行商品割引、通称『どうみん割』。道内の観光需要を喚起するための旅行商品割引事業を7月から実施する」
 「どうみん割」は道民の道内旅行を後押しするのが狙いで、旅行代金から1人当たり最大1万円が割り引かれる。国の「Go To キャンペーン」が委託費をめぐり遅れる見通しがあった中、道単独で実施した。予算総額は23億円。4回に分け配分する計画で、6月28日に初回の予約が開始された。
感染者が宿泊し一時自主休業した湯の川プリンスホテル渚亭も「どうみん割」は30分で売り切れた
 感染者が宿泊し一時自主休業していた函館市の湯の川プリンスホテル渚亭でも、客を呼び戻すチャンスと期待していた。ただ、予約できたのは35組。わずか30分で売り切れた。
 「もう売れてしまった。あっという間。それほど割り当てはなかったので」(ホテル従業員)
 その後も問い合わせが殺到し、対応に追われた。こうした事態に道は新たな追加枠を設けたが、渚亭は申請を見送った。
 「(枠の)10倍以上のお客様からのお問い合わせを頂き、お断りせざるをえない状況でした。十分な準備時間の確保やお客様へのご予約の機会の提供が難しい」(ホテルのSNS)
渚亭同様30分で「どうみん割」が完売した小樽朝里クラッセホテルの客室
 同様のケースが道内各地で相次いだ。小樽市の小樽朝里クラッセホテルの枠は70人分。渚亭と同じく30分ほどで完売した。
 「本当にあっという間だった。電話が鳴りやまず、断っている状態」
 23億円という予算では効果は限定的で、まるで焼け石に水だった。2018年、北海道胆振東部地震の際の支援策「北海道ふっこう割」は83億円で今回の3.6倍以上。ただ、国からの補助81億円が含まれていた。予算規模から、北海道の厳しい財政が浮き彫りとなった。
“ウポポイ”2か月遅れで開業…「観光と地方経済の再生に」と政府意義強調
2か月以上遅れて開業したウポポイ(北海道白老町)
 そんな中、アイヌ文化の復興と発展のためにと、国が白老町に整備した「民族共生象徴空間(ウポポイ)」が開業した。北海道で初の国立博物館はコロナの影響で2度も開業が延期。2か月以上遅れてオープンした。視察した赤羽国交相は施設の意義を強調した。
 「オープンを機に観光事業、ひいては地方経済の再生につながると確信している」
ウポポイは国際社会に政府が先住民族の尊厳を尊重していると示すためにつくられた
 ウポポイはアイヌ語で「(大勢で)歌うこと」の意。東京オリンピック・パラリンピックを控え、国際社会に先住民族の尊厳を尊重しているとアピールするため、総工費200億円をかけ造られた。
 ポロト湖畔の約10ヘクタールに、民族衣装や祭りの道具など約1万点を所蔵する国立アイヌ民族博物館を建設。伝統的コタン(集落)に再現された家屋「チセ」や慰霊施設も整備し、夜にはプロジェクションマッピングショーも行われている。
「悔しさしかない」×「先祖も喜んでいる」…アイヌで分かれる施設の評価
アイヌ民族で評価が分かれているウポポイの展示
 「どこにもアイヌを大変な目に遭わせたと書いてない。何度行っても悔しさしかない」
 アイヌの有志団体「コタンの会」の清水裕二代表は憤る。強制移住やアイヌ民族独自の風習を禁じた同化政策の記述が乏しく、アイヌ民族の体験を記した展示も少ないといぶかる。
 全国各地の研究者が明治から昭和にかけ、墓所を掘り起こすなどして大学で保管していた遺骨をめぐり、コタンの会は「盗掘された」として返還を求め提訴した経緯がある。
 ウポポイの慰霊施設に約1300体が集約されているが、国の対応を疑問視。葛野次雄副代表はウポポイへ足を運ぶことをかたくなに拒む。
 「元の土地に戻すべきで、なぜ遺骨を集約しなければならないのか。慰霊施設で手を合わせるなんてできないし、ウポポイを認めることになるので、行くことすらできない」
 一方、北海道アイヌ協会の加藤忠・元理事長は施設を高く評価。コタンの会の立ち場と一線を画す。
 「過去にあったことに補償を求めるのではなく、これからどう社会にアイヌ文化を紹介していくのかが大切。日本一の施設で、先祖も喜んでいる」
 ウポポイへの評価はアイヌで見解が分かれ、深い溝を生んでいる。
感染対策で目標100万人”達成困難” 修学旅行に期待寄せる温泉街
 関係者によると、ウポポイの入場者は平日1日2000人、土日祝日で2500人。当初の目標は平日3000人、土日祝日5000人だったが、感染防止対策で事前予約制とし、入場を制限している。
 年間100万人の目標は達成困難だが、修学旅行の訪問先として予約が殺到している。全国の小中高約680校、6万6000人を受け入れる予定だ。
 ウポポイから約30キロにある登別温泉は、消えたインバウンドの代わりにと期待する。
 「秋に修学旅行客がウポポイに来る。宿泊が必要になるので、近くとなれば登別。セールスをかけている」(登別万世閣・土肥部長)
温泉街の土産店ではアイヌ文様の商品がメインに
 温泉街の土産物で一番の売れ筋は、温泉から作った入浴剤の「湯の花」だった。これからはウポポイを意識し、メインをアイヌの工芸品に変えようとしている。
 「アイヌ文様の商品や刺繍の入った商品を増やす。温泉街に宿泊していただき、商品を手に取っていただければ」(土産店従業員・今野佳代さん)
 のぼりべつクマ牧場でも、ウポポイの修学旅行客の確保を目指す。明治初期のアイヌの生活を再現した施設を前面に押し出す。ヒグマとアイヌは密接な関係があると、先代のオーナーが建てたもので、3棟ある家屋「チセ」の床は土で復元されていて、フローリング仕上げのウポポイよりリアルだ。
 「コロナで延期になっていた修学旅行が秋に移り、ウポポイを中心に旅行の行程が組まれている。近くにあるのが強み」(のぼりべつクマ牧場・吉田廣勝さん)
 ウポポイが復興の起爆剤になるのかは不透明だが、すがる思いで客を待つ。
 この記事は北海道ニュースUHBとYahoo!ニュースの連携企画です。北海道観光の現状を追うとともに、ポスト・コロナを見据え復興の道を模索します。
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hochagera · 6 years
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ホルクスワ総括
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ホルクスワ
日程 2018/5/1(火)ー5/5(土)
時間 pm7open pm7:30start 出演 前田斜め キムG ぷんぷん カメラマン 倉科麟太郎 場所 SONIC屋上 料金 予約¥2000 当日¥2500(要ワンドリンクオーダー) 音楽 クイクイジーラ 主題歌 うずくまる巨人(作詞作曲/原耕太) 予約 シバイエンジン
※雨天により5/3(木)公演中止 屋上での公演だったため雨に弱く、ステージはまだしも客席を雨養生するのは現実的に厳しかった。仮に完璧に雨養生できたとしても屋上の開放感が失われてしまう。そうなってくると屋上で公演する意味を容易に失うので、これは屋上と芝居は相性が悪いとしか言いようがない。気持ちいいときはさいこうに気持ちがいいのだが。
概要 今回の作品は芝居をしながらその芝居をカメラで捉え、リアルタイムの映像が舞台上のスクリーンに投影されるという仕組みで構成される。舞台上の役者は等身大、カメラで収める映像はそのミクロの部分である。その大小のスケールの幅を映像と芝居で出したかった。さらにスクリーンの映像は上下で2分割されており、上半分は撮りためていた街(松本市内・遠景)の映像、下半分はリアルタイム(ミニチュアの街、ミクロ)の映像が投影される。 お客さんはその映像を観る、という映像作品の趣もあったといえる。
脚本 巨人が街にやって来た 巨人が街を通った 巨人が街を去った
趣旨 今回の作品で一番やりたかったことは『ドラマ』を用意しないこと。 芝居において脚本がある以上、その脚本に芝居の根幹を成すということは普通のことである。今まで観たたいていの芝居はそうだった。しかし、芝居を構成している要素はそれだけではないということが最近の自分にも分かり始めてきて、その脚本以外の要素というのが、身体であったり、セリフであったり、環境であった。なるほど、脚本がなくても芝居を作ることってできるんだと思い、とりわけ身体に興味があった。ダンサーではないのでダンスはできない。ただ、ある拘束(ルール)の中から身体の動きを(芝居的に)紡ぎ出せばそれは見せ物になるのではないかと思ったのだ。 そのために、今回は脚本を最小限まで削り、ドラマを用意しなかった。 (ドラマというのは作成者の頭の中でこねくり回せばいくらでも準備できる、理論上は。ただその手のひらで転がす感じ、自分の采配次第でどっちにも転がせる、そしてそのすじに観ている人は一喜一憂するといったことが作成者としてむなしくもあり悲しく感じられた。そこを信じる(信じさせる)ってどういうことなんだろう。じゃあここの展開でもしもこうなっていたらもっと良かったわけか?感動するわけか?。事実ではないフィクションの作品なのでそこを信じる(信じさせる)というのはタフな作業だ。だから今回はそのタフな作業を放棄した。放棄してみた。放棄した方が面白いんじゃないかと思ってみた。これは疑いも含んでいるわけであってほんとうは、信じ通して貫いて引き摺り込む作品を作ることができる作家が本物なのだとも思っている。) これは会場をビルの屋上にしたことにも起因している。 屋上という空間。それだけで既に一定の心地よさがあり空間として完成度の高い会場だった。サイズ感もしかり、街の中、風、音、空、街の明かり。それらので構築されたこの空間を壊さず、沿って、少しの要素を添加させることでこの公演は成り立つのではないかと考えた。(空間の力はでかい。) 題材にしたのは『巨人』。これは以前クイクイジーラの『うずくまる巨人』という曲を聞いたからなのか、前から扱いたいと思っていた題材であった。今回の芝居の主題歌にもこの曲を使用させてもらった。 この芝居のために用意した脚本は3行。//巨人が街にやって来た 巨人が街を通った 巨人が街を去った// この3行をベースに3人の芝居中の動きを紡いでゆく。 動きを支える要素として、音楽、言葉としてのセリフ、小道具(ビル・車・街頭・パンチラ・風呂・ビルへの投影など)があった。 そのほかの重要な要素としてはカメラがあった。
音楽 音楽は環境音楽として、屋上の空間で僕たち役者の背景(というか土台)に公演中(70分)ずっと鳴っている。なにもないステージにも音だけはなっている。いつしかお客さんは音がなっているということすら忘れ音が鳴り止んだ時、始めて音がなっていたことに気づく、というような、、(つまるところ、いなくなってわかった的な)ことが音楽を使ってやりたかった。これも脚本の3行をベースにして考えたことで、『巨人がやって来て、街を通って、去る』の時間的に幅のある起伏を持続音のフェードイン、フェードアウトのみで表現したかった。(つまり“このシーンでこのセリフ言った時に音響もドーン!”みたいなことを避けたかった。この作品はただ巨人が通って去っただけ。)この芝居で通底して言えるのは、巨人は嬉しいんでも悲しいんでもない、ただ街を歩いただけ、ということであって、そしてそれを受けて人間も嬉しかろう悲しかろう様々なドラマがあろうが、それを作者は用意しないということである。
セリフ 言葉。発語。これも小道具として用意した。極力そこに意味を求めたりはしていない。ある一定の分量の3人の会話を繰り返すことでセリフは構成されているが厳密に会話が成立するのは真ん中あたりの1巡(何巡も同じ会話を繰り返している。)だけであるし、その他は虫食い状態で今ひとつ会話の内容が読み取れないようになっている。これもまた脚本の3行がベースになっており、巨人が街を通るというところで会話は成立し、その前はフェードイン残りはフェードアウトするような形で虫食い状態、ほぼ空白だらけの単語状態になってゆく。内容もたいしてない。意味として言葉を読み取ってほしいということでなく役者の作業として、そして空間を構成する音の要素としてセリフを準備した。※それならば外国語にしてしまえば良かったと今思った。
小道具 小道具の使い方もこれまた脚本の3行に基づいており、閑散としている芝居冒頭のミニチュアの街並みが次第に繁栄し巨人が街を通るというところで、巨人のお面を持った役者3人がミニチュアの街を踏み倒し、その後は『去る』のイメージとともに片付けられ、街から遠のいたのイメージで元の街は姿を消す。この芝居は基本的にこの至極単純な一山の起伏しか描いていないということになる。ただ、その単純な起伏を錯乱させるために飛び道具として、『ぷんぷんのパンチラ』『キムGの風呂』『3人の巨人の映像のビルへの投影』がある。これらはこれまでの脚本の起伏とは関係なく点在する形で1回づつ芝居の中に登場する。やっている方としては基点となる重要なシーンである。とりわけぷんぷんのパンチラのシーンはうまくカメラに収め映像を通してお客さんに見せるというのに苦慮した。キムGの風呂に入るというシーンはもともとは違うシーンのアイディアとして出てきた要素ではあったが、それ自体は面白かったので採用された。ビルに映像を投影するというのは現場に入ってからできるということがわかって急遽盛り込まれたシーンであって、室内用プロジェークターであっても意外に綺麗に投影できたが、やや強引な力技であった。
カメラ(映像)を使った カメラを使って芝居の映像がスクリーンに投影される。これは近頃斜めがイベント等で使っている手法(?)であり、例えばカメラを外に設置する、役者は外でカメラに向かって芝居し、お客さんは室内のスクリーンに投影される映像を観るという珍妙なもの。役者は近くにはいるのだがそこのはいない。今回は舞台上の役者を撮影、投影することとなったが、おもに手元や小さな小道具など些細なパーツを撮影することに固執したためスクリーンに投影される映像は肉眼で見るよりもはるかに繊細なものとなっていた(はず)。 それは『巨人』というキーワードに依拠しており、ここでは等身大の人間を巨人として扱い、そのスケールを捉えるツールとしてカメラ、映像が適当だと考えた。 カメラも舞台上に堂々と登場するためカメラマンに登場人物としての役を与えることも考えたが(例えば、『ホルクスワ』はあるカメラマンが記録したお話である、的な。)今回は出演者とスタッフの倉科くんがカメラマンをになった。
ユニットでの3人芝居 劇団としての集合体ではなく、ユニットとしての3人芝居である。劇団に所属していない以上、複数人で公演するにはユニットを組むしかない。今回は2人ではなく3人での作品を作りたかった。男3人でもなく男女織り交ぜたかった。 最初に声をかけたのはキムGであり、彼は舞踏など身体表現を主とした分野で活動している。キムを中心とした『キムG一家』といったチームを所有していたり、方々の劇団やイベントに客演としての出演を多々こなしている。もうひとりがぷんぷん。彼女は1児の母でありこちらも舞踏を肝とした分野で活動をしている。正確にいうと活動していた、ということらしく今回はおよそ3年ぶりの出演作であったとのこと。今回はこの2人と斜めの3人での公演だった。 それぞれの出演者の仔細な実情はさておき、ユニットを組むということに関して。 これは一筋縄にはいかない大きな問題である。 ユニットを組むということは豊かなことである。その時々の作品に応じて、適役をキャスティングしその時に応じた有志によってチームを構成できる。その道に精通している表現者を作品の中に取り込めるとしたら、作品の質は上がるだろうし、また他の分野で表現する者同士が相互に刺激を与え合うこともできる。しかし、しかしである、ユニットには未来がない。そのチームはその1点のみにおいて存在しているだけで、その苦楽を共にしたとしても終演してしまえばてんでんばらばらそれぞれの帰路へついてしまい、その経験が建設的に次回の作品作りに生かされることはない。これは重要な問題であり、そのことを意識せずにむやみやたらと様々な表現者と共演することで齟齬は広がっていくのではないか。作品を作り続けるからには前回までの反省が生かされ経験則から判断されることは大いにあることだが、なにがよくて何が悪い、何を目指しているのかという感覚を共同で創作する以上共有している必要がある。さらに、個人的な感覚でいうと、何を目指しているかを共有するよりも、何が問題であるかとうい『悩み』を共有することが重要ではないかと考えている。『悩み』があり、つまり倒すべき目下の敵を共有していることで作品としての精度が生まれる。それぞれのシーンで活動しているもの同士が集まったところでその『悩み』は違った経験則から測られることとなり共有の悩みを抱えることは難しいのではないか。そうなると作品としては霞んでしまい、澄んだ眼差しを望むことができない。 であるからして、ユニットで表現するということは豊かである反面その一体感を強固にすることは性質上困難であり貧しい作業でもある。 その意味では今回演出を十分にこなすことができなかった。出演者のそれぞれの作品に対するウェイト、歳の違い、経験の違い、作品に求めるものの違い、見ているものの違い、やりたいことの違い等ひっくるめて1人の演出家によってそれらの齟齬が滑らかに解消され1つの方向に向かわせるということに大いに手こずったし、自分のみが信じていることをうまく言葉にして伝えることができず、またそれを怠り、そのことによって確執は生まれたと思う。ユニットであるという期間限定の存在であるという宿命を背負いつつも、それでも真摯に自分の言葉で伝えるという態度がより一層必要だったのではないかと思う。
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afiri8backlog · 5 years
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たばこについて喫煙者でもあり、禁煙者でもある両方の観点から、え?その中途半端な状態が一番体に悪い!?毒を食らわば皿まで理論!?安易にたばこに手を出してはいけない本当の理由・・
たばこ復活一日目で発生する謎の下痢から始まる思考
ちょっと前の小旅行の時、軽く復活したたばこ(長距離ドライブの眠気対策) その時から感じていた違和感なのだが・・最初はすぐに下痢の症状が発生した
数日もすればそういった症状もなくなっていったのだけど、しばらくまた辞めてから今度は難しい本の読書をする時にすってると落ち着く事から一時的に復活
するとまたしても一日目はお腹が下り下痢の症状が発生した ・・これってたばこの影響、肺じゃなくて、胃とか腸にきてね?
たばこ喫煙で医学的な見地からいつも話題に上がるのは肺がんとの因果関係 確かにたばこを吸う時、一旦肺に入れて、口から出すという経路ではあるが・・
何か飲み物を一緒に摂取したり、口の中の唾液に煙が浸透して飲み込んだ場合 それは食道、胃、小腸、そして大腸へと体内を循環していく事になる
おそらく私の禁煙状態の体内に液体と混合したたばこ成分が混入してくる事で 胃や腸の活動への妨げが起きて下痢という症状が起きているのかもしれない
という素朴な疑問からそっち方面で色々と考えて情報を探してみたら おもしろい事に気づいたのでまとめていこうと思う
たばこを吸うと腹が減らない不思議
たばこと胃の活動の関連性について調べてみた
たばこは血管を収縮させて、通り道が細くなるため血行が悪くなるメカニズムが有名だが、胃の粘膜には毛細血管が張り巡らされているため、胃の機能低下は間違いなく因果関係がある
例えば、喫煙者あるあるでよく言われるのが・・ たばこ吸うと飯食わなくても大丈夫だ!という謎理論
実際、その通りで、飯を食わずともタバコを吸っていれば腹の減りが気にならなくなる また、吸っていた頃は痩せていたという理由を持ち出す人も多い
でも、それはあくまでも感覚であり、体内では胃の活動を妨げているという事が関係している事になる
血管が収縮するという事は血流の流れが早くなり、血管壁の摩擦により細胞が傷つけられ酸化が進む。酸性の環境は胃粘膜の抵抗力を下げ、胃潰瘍など胃のただれの原因ともなってしまう
胃潰瘍の浸潤が進めば、胃に穴が開き、胃ガンの原因となる
また、胃本来のメカニズムである、胃酸の放出や消化して次の器官へ送るタイミングなどにしても、胃が十二指腸と接する部分の筋肉(幽門括約筋)の自律神経が乱れあらゆるバランスが崩れる
という訳でたばこは胃に悪い影響を与える&胃がんの因果関係は強くありそうだ
禁煙からたばこ復活すると下痢になる?
たばこと腸の活動の関連性についても調べてみた
たばこを常時吸っていて喫煙状態になっている人やもともと吸わない人は気にしなくていいが、禁煙、喫煙と定期的に繰り返す人は知っておいて損はないだろう
従来の健康な状態の腸にたばこが混入すると、一時的にプロテオバクテリアとバクテロイデスという2種類の細菌が増えるらしい
この2種類の細菌は、エネルギーを効率的に利用し食物繊維を分解するとの事で、食物繊維が体に与えるメリットとデメリットについて調べる必要がある
食物繊維と一言で言っても、水溶性食物繊維や不溶性食物繊維と二通りがあり、それぞれ、役割りが違うので気になった方はこちらの実践記事をどうぞ
糖質制限中に血便!?その理由は食物繊維
食物繊維のメリット
食品添加物の害を軽減
ブドウ糖の吸収速度の緩和
糖尿病の予防・改善
腸肝循環する胆汁酸の減少
大腸内の食物繊維を餌としている腸内細菌の増殖の予防
大腸がんの予防
食物繊維のデメリット
人の消化酵素では消化することのできない
食物繊維は、エネルギー源としては役に立たない
脂肪酸やメタンガスなどを生成
これらの情報から考えれば、食物繊維はただ便通を良くするためだけの成分ではなく、いかに人間の腸の状態管理して健康を守っているかがわかる
この中で着目すべきなのが 大腸内の食物繊維を餌としている腸内細菌の増殖 おそらくたばこを吸う事で一時的に増殖する2種類の細菌はこれに該当する
エネルギーを効率的に利用し、食物繊維を分解するという事は次の事を意味する
ブドウ糖の吸収速度(血糖値の急上昇)
食品添加物の害の増加(人口科学物質への抵抗力低下)
糖尿病の促進
胆汁の増加(胆石、胆のうがんのリスク)
大腸がんのリスク増加
ただこれだけだと、食物繊維が減るなら逆に軟便や下痢になりにくいのでは?と思うが、つぎの成分はそこに因果関係があるようだ
ニコチンには便を柔らかくする作用がある
ニコチンは腸を刺激してぜん動運動を活発化させる効果があるらしい これは不溶性食物繊維や水溶性食物繊維を摂取した時も同じような効果がある
そういう意味で言えば、便秘の人には救世主のように思えるかもしれないが・・前述したように、腸内細菌環境を一時的に変えるリスクはとても大きい
たばこ吸う事でニコチンの性質により、ぜんどう運動が起きて下痢が誘発されると同時に、一時的にプロテオバクテリアとバクテロイデスという2種類の細菌が増えた事を意味し
本来は腸を守ってくれるはずの食物繊維(人の消化酵素では消化することのできない)を分解する事によって、人間の体のメカニズムを内側から破壊し始めた状態になっているという事になる
たばこを止めると太るのは排泄物が脂肪になるメカニズム
注:これは私ではありません(笑)
これは正直、調べてみてぞっとした・・
喫煙者が禁煙した時あるあるでいう、禁煙すると太る理由として最も該当するのが 口さみしいから物を食べてしまうという行動変化
これは多くの喫煙者が実行し、実際に体重が増えるという現象で確認しているだろう
だが実際は、食べる量が増えたから太った・・はあくまでも付加価値的な要素であり、本当は、排泄物を体外に押し出すための食物繊維が体内から消えてしまい
代わりに排泄物として外に出るはずの不要物を脂肪として体内に蓄積させてしまう事により 便秘ではなく、単純に体重に加算されてしまっていたかららしい
つまり、極論で言えば、うんこを体に貯めているといっても過言ではないのだΣ(゚д゚lll)ガーン
でも、思い返せばなんとなく実感する変化はあった
食べた量に比例するほど便が出た気がしない という違和感
便秘なら詰まってるけど出ないとか苦しい・・という体の状態を伴うが、それもなくて、ただ出ない、出る量が少ないという謎現象
これで納得がいくような気がする
一時的に体内に溜まった排泄物が下痢として出るは出る(体験談)のだが、今度は排泄物処理を助けるはずである食物繊維が不足して、分解ができなくなり
糞詰まりではなく脂肪という形で体内に蓄積されるのだから始末に負えない これがどうやらたばこを止めると太るというメカニズムの本当の理由と思える
ニコチンやタールよりも過酸化水素が健康被害の要因?
たばこの害と言えば、一般的にニコチンやタール!と思う人が多い しかし、人体への総合的な影響を考えると煙に含まれる過酸化水素は盲点だと思う
過酸化水素とは、簡単に言えば活性酸素の事らしい たばこの煙にはこの���酸化水素が含まれている
活性酸素と言えば、健康の大敵で、体内に増えれば増えるほど 余った活性酸素が体内の細胞を攻撃し酸化を早め体内器官の老化に繋がる
細胞や血管、器官が酸化すると、酸性環境では正常な細胞増殖が行われず がん(奇形細胞※DNA異常)が発生する可能性が高くなる
本来は活性酸素の減少は健康を意識して体内バランスをとるために気を付けるものだが、たばこを吸うたびに、それが外から侵入してくると思えば・・
はっきり言って 百害あって一利なし と言いきれてしまう
結果:肺はあんまり関係ない気がする
たばこを吸い続けて50年、いまでも肺がんになる事なく健康に吸い続けてる人が身内にいるが、もっと若くしてCOPDなど呼吸器障害を起こしている人もいるようだ
もっとも気管支の強さなどは体質的なものもあったり、過度のヘビースモーカーともなれば、常時、短期間でのチェーンスモークによって喉や気管支が煙に汚染された状態で飲食して摂取しているのだから一概にどこに問題があったかなどはわからない
ただ肺がんになった人のケースでみても、たばこを吸ってない人の場合、副流煙の影響だ!という見方もあれば、私の母のように、たばこに影響されない環境での生活であっても
別の部位で発生したがんの細胞転移によって 肺がん(ステージⅣ)として診断されている人もいるのも事実
PET-CT検査、細胞病理検査など詳細にチェックして初めて転移とわかるのだから【喫煙者で肺がん】というケースのデータだけでは当てにはならない。※この場合、どんなに小さな早期がんであっても、転移の時点でステージⅣというらしい
これは個人差として考えてみれば、体質の問題であり、肺がんの直接的な因果関係とは深く考えられないが、胃や小腸、大腸へなど活性酸素増加による酸化による影響という意味では 口に入れた煙が液体(飲み物や唾液)に混合し体内に吸収されるのは大いに関連性はあると思われる
実際に腸内細菌の構成に変化が現れるという意味では 肺よりも、それ以外の臓器への影響を懸念したほうがいいかもしれない
※喫煙者でも他の部位で発生したがんが転移して肺がんになってる可能性
特にたばこを禁煙してからデブ(太り始めた)になった人は プロテオバクテリアとバクテロイデスという2種類の細菌の活動を覚えておこう
エネルギーを非常に効率良く使用し、消化されにくい食物繊維を分解する =食べ物が排せつ物として体外に排出されずに、通常よりも多く脂肪に変換される
禁煙の反動で食べ物を食べる=最悪な状態で最悪な行動をしている という事を自覚しよう
たばこを吸い続ければ、まったく吸わない人と同様の正常の状態になるらしいので、あくまでも、禁煙←→喫煙を定期的に繰り返す人は要注意だ
これが たばこをやめると太る というメカニズムの答えらしい
結果論として・・対策は
デブはたばこを止めて一生禁煙して食物繊維を意識的にとる! デブはたばこを吸い続ける!
途中でやめて、途中で吸ってが一番体に悪い って事やね という事は・・最近はやりの加熱式たばこって・・えぐいね?(緩やかに・・)
それにしても・・人間の体のメカニズムはつくづくおもしろい
前回調べたケトジェニックは、グリコーゲンに貯めた糖質を使い切り、糖摂取によるエネルギー補給をカット→エネルギー源をタンパク質摂取に変えるという方法
中性脂肪を効率よく減らすケトジェニックにいきつくお話
これによって運動では簡単に燃やせない不燃性の脂肪を分解してエネルギー再生に利用するというメカニズムにシフトできるようになっている
なので、ケトジェニックを実行する人は絶対にたばこはご法度だ!(笑)
ただ今回のたばこ摂取によって腸内にプロテオバクテリアとバクテロイデスという、食物繊維を破壊する細菌が体に入ってくる事で排泄物として体外に出るはずのものを
体内に蓄積させて脂肪を増加させて太らせるという逆メカニズムは悪意を感じる ニコチンによる依存があるため、自分の意思でやめてもまた復活する再発性があり
そのたびに太る&体が病魔に蝕まれやすくなり→健康食品・医療の環境が必要になる 運動を促し、痩せろ痩せろという流れを作る反面、タピオカ・タピオカ(太らせる)
うーん、ビジネス(-ω-;)誘惑に負けない強い意志が必要だ
自然栽培の健康食品も作れなくされていくし、食生活の改善という方法もいつまでできるやら(いい意味でのゲノム編集ならいいのだが)
HACCP義務化とこれからの農家の在り方
健康備忘録
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harudidnothingwrong · 5 years
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mashiroyami · 5 years
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Page 102 : 地を這う者たち
 アーレイスでポケモンを従える人間は限られている。誰もがポケモンを持ち、連れ歩き、共に生活をしているわけではない。多少の地域差はあれど人とポケモンの線引きはむしろ強く、それは野生と社会の境界線そのものでもあった。故に、どの町にもポケモンを扱える医者が居るわけではない。ポケモンと一口に括っても、その種族は何百と報告されており、千を超えるとの説もある。全てのポケモンを一律に診ることのできる者はそういない。簡単な治療や体力回復ならば大きな問題は無いが、重症度が高くなるほどそうはいかないのは人間と変わらない。  キリに向かう途中で立ち寄ったフラネの町にて真っ先に診療所に足を向けると、虫ポケモンは専門外だと言われラーナーは眩暈を覚えた。頼み込んで包帯を換えてもらい痛み止めである水剤を貰い、門前払いにされなかっただけ御の字だったが、考えてみれば当然なもののどこでも治療を受けられるとは限らないというのは思いがけない重石だった。  出入り口の屋根の下で曇天を仰ぐ。しとしとと降る雨は、正午から降り出したものだ。雨の気配は朝から漂っており長く危惧していたが、結局この町、フラネに辿り着くまで雨粒が落ちることは無かった。  ラーナーは怯えるような深い溜息をつく。心の澱みは一色に限らない。アメモースの傷口を実際に目にしたのは初めてだったが、それ以上に衝撃的な出来事が焼き付いている。壁にもたれ掛かりながら、欠片を拾うように思い返す。  水風船のような弾力のある身体に入った忌まわしい亀裂、そこを白い糸が幾度も往復していた。内包された繊維や���体が鮮明に露出していたのだろう部分は縫われ息を潜めていたけれど、大きく腫れあがり、決定的に足りていない何かが存在していた証である傷だった。  包帯を取り、傷の具合を確認しようと患部周辺に医師の手が触れた瞬間、アメモースは決壊したように叫んだ。悲痛な金切り声はラーナーが耳にしたことのない類だった。  たまらず名を呼び近付いたが、目玉を模した触角が力任せにラーナーの頬を弾き、突き飛ばした。歪な羽ばたきでその場を飛び、しかし壊れたように予想もできぬ��安定な軌道を描いたかと思えばすぐに頭から墜落してしまう。床に叩きつけられた音が処置室に響き、そして尚も触角は揺れ、小さな翅は激しく震えた。床を転がるように暴れ回る姿は、悠々と空を滑空していた姿とはまるで対照的で、羽虫が最期に死に物狂いで足掻いている姿と重なった。そしてその目は、抉り出すようにぐるりと向いたその目は、座り込んで呆気にとられているラーナーを捉えた。つぶらで純粋な漆黒の双眸が、はっきりとラーナーを視た。声と視線で訴えかける、なにか強い意志が、彼女を槍の如く貫いた。  アメモースは、嗚咽を漏らしていた。  抑えつけられながら即効性の鎮静剤を投与されその場は沈黙したが、ラーナーはアメモースから発せられた衝撃に戸惑っていた。既に痛みなど無いはずなのに、叩かれた頬がまだ熱を帯びているようだった。  掌に収まっている小さな紅白に視線を落とす。細い手では抱えられないだけのなにかが、無理矢理この中に詰め込まれているのだ。  途方に暮れるとはこのことだろう。焼き尽くすような烈しさを前にしながら、尚も膜を張っている自分の心が虚しかった。  不透明な感傷を抱えたままラーナーは傘を差し、エーフィと共にその場を後にした。  フラネの町は長い草原帯を抜けた場所にある町で、白い壁と色とりどりの屋根が特徴的な町並みだ。それまで続いていた閑散とした風景の中にぽっかりと浮かぶような町は、田舎町だが愛らしい情緒がある。煤汚れたような深い色をした煉瓦造りの道路が町全体に張り巡らされているが、濃縮したように建物が連なっているためにどこも道が狭い。ラーナーは入り組んだ迷路のような町だという印象を持った。見た目は可愛らしいが、気を抜くとどこにいるのか解らなくなってしまいそうだった。だが、人口が少なく路地が狭い分人目には付きにくい。隠れ場所が多いようで、そのことはラーナーを安心させた。  音も無く降る雨の中を進んでいると、思考が明滅する。アメモース。宿。服装。食事。それから、じゅくじゅくと泡立つ音を立てている足下。雨の中を進んでいれば尚更だ。気になって仕方が無い。  町をぼんやりと彷徨っていると、青果店、肉屋を始めとした商店の集まる広場に出た。中央には巨大な樹が枝を伸ばしており、象徴的な佇まいをしている。樹を中心とした花壇は季節の花が植えられており、柔らかい桃色や紫色がしっとりと初秋を彩っている。雨に濡れる様は艶やかでもある。広場には買い物籠を手に品定めをしている者もいれば、浮き足立った表情でカメラを構える者もいる。全体に漂う和やかな賑わいは鬱屈とした雨模様を感じさせない。  霧雨のような人々の他愛もない会話を横にラーナーは壁を沿うように広場を歩き、どこにも立ち寄らなかった。店先に並ぶ彩色豊かな食べ物が目に付いたが、視界が濁っているように見ただけでうんざりした。首都を出てから、結局まだまともな食事をしていない。腹を空かしているはずなのに、全身が静かに拒否をしている。  広場から幾つも伸びている道の一つに足を踏み入れた。  再び狭い路地に入り声が遠くなったところで、ラーナーはひたと足を止め顔を上げた。  こじんまりとした白壁の建物だが、店頭に貼り出された一枚の大きな写真が目に入ったのだ。  険しい岩肌と真っ白な雪。辺りを薄らと漂っているのは霧のようにも雲のようにも見える。そしてあまりにも鮮やかな青い空。上空ほど濃い色になり、繊細なグラデーションが一切の汚れを知らぬ澄んだ空気を想像させた。雪山の写真だった。それも山頂だ。中央には、爽快な表情で高々と両拳を突き上げている男性の姿が写されている。  ラーナーは何故だかその写真に釘付けになってしまう。  山などまともに登ったことは無いが、雪山の険しさは言われずとも納得できる。切り立った岩肌は大自然の牙そのもので、美しさと同時に畏怖を感じさせる。凍える世界なのだろう、写真で満面の笑みを広げガッツポーズをしている彼も、背中を覆い尽くすような巨大なリュックサックを背負い、顔が埋もれているような防寒具を着込んでいる。  どこだろうか、素直に疑問が浮かび上がり目を凝らすと、写真の隣の扉が開き危うく声をあげそうになった。  写真よりもやや丸みを帯びた男性が、店内から顔を覗かせた。 「お客さん?」  尋ねられ、ラーナーは心臓を高鳴らせながら思わず曖昧に首肯した。そうか、と彼は笑う。笑窪が深く、ほっとするような笑い方をする人だった。がっしりとした体つきだがどこか草臥れ、三十か四十代程の外観に見える。 「いやね、あんまり夢中になってるようだったから、ちょっと気になりまして。僕も入り口近くにいて、たまたま見えたから」  そう言って顎で入り口を指す。扉は全面硝子張りになっていて、室内がよく見えた。中にも同じような山の写真が何枚か壁に飾られ、棚に並べられている商品も登山を想像させるものばかりである。 「ご迷惑でしたか」 「まさか。単に珍しくて」男性は腰に手を当て、隣に立つ。「山、登るんですか?」  ラーナーは即座に首を横に振った。 「そうじゃないんですけど、目に入って」 「そうですか、ここは登山向けの物しか置いてないけれど」  不意に、はっと彼は目を丸くししゃがみ込んだ。 「驚いた……エーフィだって」  男性の顔が興味深げに輝く。まるで新しい発見をした少年のような純粋な表情だ。  顔を近付けられたエーフィは二叉の尾を揺らし、動揺している様子が無い。エーフィは感情の機微を繊細に感じ取れるポケモンだ。彼から向けられた感情に悪意が混ざっていないことが見て取れる。 「君のポケモンですか」 「はい、一応」 「トレーナーとは恐れ入るな。良かったら、触っても?」  どうぞ、と促すと、男性は優しい手つきでエーフィの巨大な耳の後ろをさすり、それから頭全体を掴むように大きく撫でた。大きな手だった。甲の隆起が荒々しく、一本一本の指が太い。 「まさか生きていてエーフィに会える時が来るとはなあ」  大袈裟だと思いラーナーはくすりと笑った。けれどそうなのかもしれない。エーフィとブラッキーはどこに行っても物珍しい視線を集める。当然のように自分はこの二匹を連れているけれど、自分の方が異端なのかもしれない。正確には、彼等に出逢い育て上げた両親の方が。 「ありがとうございます。急に悪かったね」  長い胴体をゆったりと撫でてから、満足げに男性は笑い、徐に立ち上がった。ラーナーとは頭一つ以上の差がある。見上げた勢いで写真が目に入り、気になった。 「この写真の人は」 「ああ、僕です」  やはり。ラーナーは達成感に満ちている写真と現実の男性を無意識に見比べる。照れ臭そうに男性は苦笑いを浮かべた。 「結構前の写真ですけど。五年以上前かな」 「どこの山ですか」 「シルビア山脈。西に連なっている山脈の中でも険しい山です」  ラーナーは唾を呑み、改めて写真を見る。  険しくも美しい山並み。白い断崖絶壁の向こうには、遙かなる青が、絵の具で一気に塗りたくったように広がっている。白と青で構成された中で高々と拳を突き上げている一枚が、なんとも爽やかだ。どんよりとした雨が降っている今、余計に華やかに浮かび上がっている。 「最近は小さな山ばかりだけど、この山を登頂できたのは今でも誇りでね、でかでかと主張してしまうんですよ」  でも、と前置きをする。 「自分で言うのもなんですが良い写真でしょう。アピールするには良い一枚です」 「じゃあやっぱりお店も」 「そうですね。見ていきますか?」  ラーナーは自然と頷いた。  招かれた店内はアウトドア向けの商品が所狭しと置かれ、棚と棚の間は人ひとり分でいっぱいになる狭さだった。男性は身体が大きいので、余計に窮屈のようだった。  入り口正面の壁際にはずらりと服がかけられている。レインウエアから下着の類まで、僅かな隙間も埋める品揃えであった。部屋を仕切るような棚にはヘッドライトやコンパスなど細々とした商品が並べられ、ラーナーはしげしげと眺める。 「あ」  店内を移動しながら、ラーナーは声をあげる。部屋の奥にはトレッキングシューズや本格的な登山靴が並べられていた。 「靴を探してるんですか」 「あ、いえ……はい」  狼狽えながら辛うじて肯定すると、男性は嬉しそうに靴の商品棚の前に立つ。 「女の子だからなあ。むさ苦しいデザインばかりで申し訳ないんですが」 「あの、私、山は登らないんですけど」 「わかってます。でも、しっかりした靴が欲しいんでしょう」  胸の奥が引っ込むような感覚がした。  僅かな狼狽を見て、男性は豪快に笑った。 「なんとなく只者じゃないような気がしたんですよ。間違っていたかな」  これだけのやりとりで、何を感じ取れるというのだろう。ラーナーは疑問に思いながらも、曖昧な表情を浮かべた。 「修行の旅かと」 「修行」  思わず繰り返してしまい、その雰囲気から間違っていたとすぐに判断したらしい。 「漫画の読みすぎか」 「いえ……でも、旅はしています」 「あ、やっぱり?」  随分と年上だろうに、ぱっと華やいだ顔が何故か子供らしい。 「エーフィなんて珍しいポケモンを持ってるし、プロトレーナーの中には強い野生ポケモンとの出会いと自らの鍛錬を求めて修行の旅に出たっていう話もあるから。他の国では、そう珍しくもない所もあるらしいしね。とはいえ、アーレイスでは確かに聞かないし、現実離れした浪漫だからなあ」  親密な雰囲気でまくし立てる男性の前で、平然とした顔を繕いながらラーナーはどきどきしながら話を聞いていた。旅をしていると正直に話してしまったことを後悔した。どこかするりと自然な物言いで懐に潜り込んでくるような雰囲気が、突いてほしくない部分に触れてしまうのではと気が気ではなかった。 「それほど重装備じゃない方がいいかな。かといって、ウォーキングシューズだと心細いだろうか」  ラーナーの心配をよそに、彼は熱心に勤しんでいる。  独り言なのか話しかけているのか判別のつきづらいような口振りで、男性の頭より少し高い位置に掲げている靴を一足取る。スニーカータイプだが生地が厚く、今ラーナーが履いているカジュアルなデザインよりもずっと無骨だ。しかし黒地に白いラインが二本入っているのがアクセントになっていて、小洒落てもいる。 「どこでも歩けるものがいいだろうな。サイズは?」 「……三十七です」 「あるかなあ。ちょっと待ってて」  靴を足下に置くと、男性はレジカウンターの奥の部屋へと入っていった。  残されたラーナーは軽くなった肩を落とし、壁一面に整然と並べられた靴を眺める。黒、灰色、茶といった落ち着いた色合いのものが多いが、中には蛍光色が全面に出された主張の強い種類もある。ラーナーにはデザイン以外の細かい違いが解らない。スニーカーデザインもあれば、ベルトで締めるタイプもあり、ブーツもある。試しに男性が床に置いていった一足を手にとってみると、今自分の履いているものより重量感があり、靴底が殆ど曲がらず驚いた。こんなもので長距離を歩けるだろうか。勿論歩かずに電車などの乗り物を駆使する方法もあるが、町で人との擦れ違いすら怯えることがあるのに、密閉空間で他人と暫く同じ空間を共にしたら、と考えるだけで背筋が震える。  それに、これではいざという時走れるかどうか。 「おまたせ」  扉が開き、男性はいくつか白い箱を抱えて戻ってきた。 「履いてみた?」 「いえ。でも、ちょっと重そうだなと」 「最初はそうかも。履いてみるとまた印象が変わると思うよ。サイズあったから試してみる?」  なんだかあれよあれよと流されているようだ。ラーナーはエーフィに一瞥すると、彼女は涼しげな顔をしていて、むしろ何故か楽しそうな印象がある。  ラーナーは提案に乗って近くの木椅子に座り、スニーカーを脱ぐ。雨中を歩いていたからだろう、穴が出来た影響で中までびしょ濡れで靴下も足首まで水が浸透していた。見るも無惨な姿に言葉が出ない。人目に晒しているのだから尚更たちが悪い。  だが、それほど気に留めてないように男性はしゃがみ込んでせかせかと箱から真新しい靴を出し、準備を進めている。  とはいえ、少なくともこんな足で試し履きをするのは憚られる。ラーナーは鞄から使い古したビニール袋を取り出し濡れた靴下を放り込んで、急いで予備を履く。 「随分履き込んだんだね」すっかり汚れたスニーカーを一瞥し、男性はゆったりとした表情を浮かべた。「その靴を見て、きっと靴が欲しいだろうなあとか、随分と歩いてきた人なんだろうなあとか思った」 「それだけで?」  ラーナーは目を丸くする。 「勿論靴だけじゃない。エーフィもそうだけど、膨らんだ鞄とか、服もどことなく着古している感じとか……あ、気を悪くし��なら申し訳ないけど」  慌ててラーナーは首を横に振ると、男性は肩を揺らして笑った。 「まあ、一番はなんとなく同業者の匂いがしたってとこかな。さ、どうぞ」  足下に差し出され、ラーナーは僅かに胸が高鳴った。  するりと足を入れると、新品独特の、足を引き締めながらもぱりぱりと弾き返すような質感がした。そこで改めて、自分がどれだけ今の靴を履き潰してきたかを実感する。  両足を揃え、すうっと立ち上がる。やはり靴底が堅く、厚い分背が伸びたような気になった。試してみると案外重みは感じない。膨らんでいる分、急に足が大きくなったようなアンバランス感が可笑しかった。 「いいね」  満足げに言いながら、彼は素早い手捌きで靴紐を締める。一つ一つの動作が早いが、急いでいるというよりも、最初の一歩を躊躇せずに踏み込める性格なのだろうとラーナーは思った。自分に自信を持ってて、その自信に揺らぎの無い確信を得ている人。  促され歩いてみると、重みが安定感を生み出しているような気がした。数歩離れ、また戻る。確かめるように、じっくりと一歩一歩を踏みしめる。 「どう?」 「思ったより歩きやすいです」 「それは良かった」  また少年のように笑った。表情だけを見ると、気軽で隙のある雰囲気が、彼が一回りも二回りも年上であろうことを忘れさせる。 「でも、底が堅いのがやっぱり気になります」 「こんな平らな床だと余計ね。でも、たとえば岩道とか滑りやすい道だとやはり違う。元々履いていたこのスニーカーだと地面のでこぼこが直接伝わるから、足が疲れやすくなる。それでなくとも足は体重に耐え全身を支えているものだからね。これだと底が衝撃を吸収してくれるから足に疲労が溜まりにくいんだ」  熱の籠もった説明を聞きながら、ラーナーは相槌を打つ。元々疲れやすいのは体力が無いこともあろうが靴のせいでもあったのだろうか、などと考えるが、そもそも比較対照は無尽蔵の体力をもっていたことを思い出し、すぐに自ら消し去った。 「それに生地が厚く防水加工もしてあるから、雨や雪にも強い。うん、悪くないと思う。まあ、一番は君が気に入るかどうかだ」  ラーナーは逡巡して、顔を上げる。 「他も履いてみていいですか?」 「勿論」  靴を脱ぎながら棚を仰ぐ。基本的には男性を対象としている品揃えなのだろう、一目で大きいと解るサイズばかりが揃っている。こじんまりと左側に女性向けの靴が寄せられていた。  いくつか履いてみたが、これで良いと踏ん切りがつかない。値段もそう簡単に出せるようなものではなく、彼女を萎縮させた。  想定外に真剣に打ち込むうちに独特の疲労感が押し寄せてきて、方角を見失ったような気分に陥る。 「ちょっと考えてもいいですか」  出直したい、という意を込め、苦い思いでそう切り出すと、男性は嫌な顔一つ見せずに頷いた。 「まだこの町に?」 「とりあえず、今日はフラネに泊まるつもりです。でも……明日雨が止んだら出ようかと」 「そうか」  男性は少し残念そうな表情を見せ、やや考え込む。 「明日、出る前にもう一度来ないか?」  引き留める提案に、ラーナーは睫毛を伏せた。  彼の柔和な言動や雰囲気には、無理矢理売り込もうという強い下心も絡みつくような強制感も滲んではいなかった。しかし却ってそれが小さな違和感を抱かせる。が、正面から向けられる期待の視線もあって熟考する間もなく、ラーナーはふらりと一つ頷いていた。 「そうか」あっさりと嬉々とした表情を見せた。「明日までに店の奥に掘り出し物がないか、探しておこう」  ラーナーは目を細めた。  別れの挨拶を簡素に済ませ、店を出る。不思議だった。べたべたと付き纏ってくるような粘着感は無く、適度な距離感で接してくる。居心地が良いとは言い切れないが、悪くもない。出来るだけ人に会いたくなかったはずなのに、再訪問の約束まで交わしてしまった。  そういえば名前を聞いていなかったし、あちらも尋ねてはこなかった。が、大した問題ではないだろう。そのぐらいの距離感が良い。あまり自分をどこにも残したくない。  再び傘を差し、店の正面に堂々と飾られた写真をもう一度背中越しに振り返る。  西の山脈。  彼はそう言った。胸に針が刺さったようだった。  狭い路地を歩き、町で一番大きな広場へと戻る。交通の便は悪いが、可愛らしい町並みが人気を呼ぶのか、土産物を全面に押し出した観光向けの���も並んでいる。そういう場所に行けば、宿の案内をしてくれる場所もある。嘗て教えられたことだ。できるだけ安い場所、と釘を刺すように言われた記憶が蘇る。  素泊まりで一泊。町のはずれでひとまず宿を取ると、肩の荷が下りたように安堵する。築年の長い宿独特の古びた小汚さがあり、小さな一人部屋は簡素なベッドが部屋の大半を占領しているが、野宿に比べれば充分贅沢だ。寒さと雨を凌げればそれ以上は望まない。ラーナーはベッドに頭から倒れ込んだ。どっと疲れてしまった。  どうして明日も行くと約束してしまったのだろう。苦い後悔が広がっていく。  あの男の、不思議な吸引力に惑わされてしまったのなら、こんなことではいけないと思う。簡単に流されても、簡単に懐に入り込まれてもいけない。  だらだらと時間を弄ぶうちに窓の外は暗くなり、電気も点けずにいたので部屋も丸ごと黒く塗りつぶされていく。あまりにも自然と暗くなっていったので、ラーナーは暫く暗闇に気付かずに時間を過ごした。  靴。服装。食事。そしてアメモース。  追い立てるように頭の中で流れていくけれど、総じて怠くて仕方がない。  結局そのままラーナーは眠りに落ちた。ポケモン達も、今度は誰も起こさなかった。彼女から迸る不可侵の膜を破ることはできなかった。  早朝に目を覚まし、窓から差し込む薄明に彼女は眉を潜め、時刻を確認しまた倒れ込む。  夜も降り続けていた雨は止んだようで、風の音も無い。  無為に数分を過ごしたラーナーは、よろめきながら堅い窓を開け放つ。雨は止んだが上空は分厚い雲に覆われている。幾分冷えた空気が肌を刺し、いよいよ目が冴えた。正面はすぐに他の建物があって、身を乗り出して周囲を見渡す。細い道に面し、左の方に行くと確か階段があって、町の中心部へと続いていく。湿った朝の空気は霧がかかったように静かだ。ひっそりとまだ眠っている町。自分だけが息をしているようだった。  今なら誰にも気付かれることなく町を抜け出せる。過ぎった思いつきに、ぎゅっと窓枠を握る。  しかし、あの写真の突き抜けるような青空が過ぎって、ラーナーの足を掴んだ。  シャワーを浴び、髪をタオルで挟み込むようにして乾かした。朝に清めると全身の細胞が起きあがるようだった。これから始まる一日を生きる気合いのようなものが泡のように浮かんでくる。頼りないけれど、ちょっとだけ前を向くような泡。  部屋を出て階段を降り、宿の玄関に出ると既に従業員の姿があり、宿泊費を払い宿を出た。  ポケモン達をボールで休ませたまま、冷ややかな朝のフラネを歩く。宿を出て左の道ではなく、右の道を選び、なだらかな坂を昇っていく。まだ乾かない靴の裏から煉瓦道のおうとつが伝わり、昨日店で聞いた話を思い返した。  長い階段を昇っている途中でふと振り返ると、左右に壁に挟まれながらも色鮮やかな屋根が立ち並ぶ町並みが奥の方で広がっていた。縦に長い額縁に飾られた絵のようだ。もう少し高台へ行こうと思い、階段を登り切り、左の方へ。当てもなく歩いていたが、偶然建物が途切れて町を見下ろせるような空き地に辿り着く。急に視界が開けて、ラーナーは朝に眠るフラネを眺望した。  石造の欄干にもたれ掛かる。  綺麗な町だ。  素直にそう思った。灰色の曇天だからこそ、カラフルな屋根の色がそれぞれ強調されるようだった。あらゆる色が町中を彩っている風景は立体的な絵画のよう。子供が思いつくままにクレヨンで塗ったような愛らしさもある。  こんな町もあるのだ。まだ知らない空があって、知らない場所がある。  もうじき町は起き上がるだろう。溶け込む間も無く自分は出て行く。キリへはフラネから更に西へ進む必要がある。  気が熟すまで暫し堪能していたラーナーは、ふとした勇気でアメモースを外に出した。  閃光を払い、地面に着地したアメモースは眠たげだ。昨日の荒れた行動の気配を微塵も感じさせない。いつものアメモース。マイペースで、気ままで、悠然としていて、誰にもとらわれない自由なアメモース。  ラーナーは彼を抱き立ち上がると、共に凪いだ町を見渡した。  烈しく暴れ鋭く睨みつけた姿が彼の本性だろう。彼は元々野生で生まれ育った。詳しい経緯をラーナーは知らないが、何かがきっかけで旅を始め、それでも尚アメモースは大空に解き放たれ、また戻ってきた。時に血生臭い炎の中を翔けた。あの間にある繋がりを、モンスターボールを通じた主従関係のみで片付けることは難しい。  誰かが消えて、多くの糸が途切れた。ラーナーもアメモースも等しく。そうして生まれた希薄な繋がりにどんな名前を付けたら良いのだろう。  黙り込み物思いに耽っていた、次瞬。  三枚翅が震え、前に乗り出したアメモースは緩んでいるラーナーの腕を突き放した。  え、と、彼女が声をあげる間も無く唐突に腕の中から離れる、翅をばたつかせて、空を、飛んだ、飛ぼうとした。背中。薄い逆光。高台では、青白い陽光に照らされた町がよく見える。遠くまで見える。硬直した。下まで、一体、どれほど。  こんなの一瞬だよ。  一瞬で、ぜんぶ終わる。  ぞっとするような透明な顔が、笑って、透明な声が、近い場所から聞こえる。  咄嗟にラーナーは腕を伸ばした。指が辛うじて触角を掴む。 「だめ! だめ!!」  悲鳴のような叫びと共に、体重を背中にかけて引き戻した。後ろから倒れ込み尻餅をつくと、アメモースは縫いぐるみのように手から滑り落ちて後方へと転がっていった。  翅を素早く震撼させるけれど、壊れた動作は不気味ですらあった。三枚翅の羽ばたきは収まらず、鋭い風の群れを呼ぶ。銀色に輝く歪な旋風が巻き起こり、乱雑に煉瓦の表面を抉った。ラーナーは思わず顔を覆う。その隣で、銀の鱗粉に紛れ込むように白い閃光が鞄から飛び出し黒獣がアメモースに襲いかかった。風を切り裂き、一瞬で四つ脚が相手の体を地面に縫いつけ、同時に風は収束する。 「ブラッキー! 落ち着いて!」  喉を低く唸らせ組み伏せたアメモースを威嚇するブラッキーだったが、主人の声にハッと血眼を見開く。踏み潰しているのが仲間と解るやいなや、息を留めた。  気まずい余韻に冷や汗が流れる。  ラーナーの耳元では荒々しい鼓動が鳴り止もうとしない。迂闊だった。あまりにも軽率だった。ずっと遙か奥に霞むまで続いている町の光景は、自由な飛翔を最上の喜びとするアメモースに突き付けるには残酷だと何故気付けなかった。  ブラッキーは恐る恐る離れたが、殆ど不発に終わった銀色の風をもう一度起こす気は無いようで、アメモースはその場に倒れ込んだまま動かない。それぞれの息遣いが随分遠い。唾を呑む音すら躊躇われるような冷たい沈黙に誰もが痺れてしまったようだった。  飛べないんだよ、アメモース。  私達は、飛べないんだ。 < index >
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blog-tsutomu · 7 years
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抗凝固療法中の患者に鍼灸をすることの安全性に関する論文の訳文です。よく分からない文は原文を訳文の後ろにそのまま残してあります。 抗凝固薬を使用中の患者での鍼灸の安全性:システマチックレビュー Michael McCulloch, LAc, MPH, PhD, Arian Nachat, MD, [...], and Joseph Cook, JD 
 要約 イントロダクション:理論的に抗凝固薬を使用中の患者での鍼灸は出血リスクが高いはずである。しかし抗凝固薬を使用中の患者での鍼灸からの正確な出血併発率の見積もりはシステマチックに確かめられていない。 目的:抗凝固薬を使用中の患者での鍼灸の安全性の証拠を批判的に評価すること 方法:PubMed, EMBASE, the Physiotherapy Evidence Database, Google Scholarを調べた。
 結果:39の関連のありそうな引用論文のうち2つのランダム化トライアル、4つのケースシリーズ、5つのケースレポートの計11が基準を満たした。7つが鍼灸の安全性を評価するのに十分なレポートの質を提供していて、その患者数は384名(治療回数は3974回)だった。抗凝固薬を使用中の患者での鍼灸に関連する低〜中程度の出血のケースが1つあり、それは大きなお尻の血腫であり、医学的な根拠の再評価の後にビタミンKを戻し、ワーファリンを中止して管理した(ビタミンKは血液凝固に必要な因子)。鍼/注射によくあり圧迫/脱脂綿でコントロール可能な点状出血は229名のケースシリーズのうち350回のうち51回(14.6%)あった。抗凝固薬を使用中の鍼灸は5名で起こった出血には関連しておらず、むしろ不適切な深鍼が組織を損傷したり、あるいは抗凝固薬の副作用の結果だと考えられる。(74名の抗凝固薬を使用中の患者での)2つの研究では出血は報告されなかった:1つのケースレポートと鍼灸に関連した出血を明確なエンドポイントとして前向きにモニターした1つのランダム化トライアル。全体では3974回の治療で1回の中程度の出血があった(0.003%)。
 結論: 鍼灸は適切な刺入部位や深さであれば抗凝固薬を使用中の患者でも安全なようである。0.003%という併発率は27360名の抗凝固薬を使用中の患者でのランダム化トライアルで股関節/膝の置換術後の12.3%という先の報告や229230名のあらゆるタイプの患者での前向き研究での鍼灸の6%よりも低い。 前向きトライアルは我々の所見を確かめるのに役立つだろう。 
 イントロダクション 鍼灸は生理機能や神経機能の調節を意図した治療法であり、新石器時代の鍼灸の道具が見つかっており、殷王朝時代に鍼灸について書かれた文章が見つかっている (1766 BC to 1046 BC)(1 )。鍼灸の鍼刺激は皮質ネットワークの上向き調節と辺縁系-傍辺縁系新皮質ネットワークの下向き調節を通じた治療効果を獲得する。その痛みへの効果は同時に起こる感覚、認知、感情の経路の変化のコンビネーションである(2)。 鍼灸はがん(3-6)、心房細動(7-9)急性虚血性脳卒中(10)、虚血性脳卒中後(11)、術後疼痛(12)、腎疾患(13)、重篤な集中治療中の患者(14)、人工呼吸器をつけている患者抗凝固薬を処方されている患者(15)の症状にも有効である。鍼灸に使われる鍼は0.12㎜(日本のゲージ)から0.35㎜(シナのゲージ)まで幅があるが、我々のデータの検索では鍼灸治療の安全性上の鍼のゲージ上の作用について実験した報告は特定できなかった。 抗凝固薬は病院やコミュニティケアの場で安全性が証明された上で凝固障害や血栓現象の予防のために広く使用されている。 19958名の入院中(周術期でない)の患者で抗凝固薬予防治療と治療なしを比べたランダム化トライアルのメタアナリシスは大出血の増加が認められないことを示した(16)脳卒中直後や冠状動脈ステントに使うクロピドグレル(プラビックス)、心房細動の患者で血栓の予防に使うワーファリン(17)、あるいは深部静脈血栓や肺血栓(17)、長期入院での血栓塞栓症(19)、肝硬変(20)やがん(21, 22)での血栓塞栓症の予防のための低分子量ヘパリン、未分画ヘパリン、ビタミンK拮抗薬などは古いがよく使われる抗凝固薬である。新しい薬には心房細動と術後血栓症の予防(23, 24)のための第Ⅹ因子阻害薬(フォンダパリヌクス、リバーロキサバン、アピキサバン )や心房細動や静脈血栓症(25)のための直接的トロンビン阻害薬(ヒルジンとその由来薬、アルガトロバン、エラガトラン、アビガトラン)がある。 低分子量ヘパリンやビタミンK拮抗薬を飲んでいる患者の広範な状況に我々のレビューをについて考えると、鍼灸よりもずっと侵襲的な外科的手法の安全性が厳密に実験されている。27360名の抗凝固薬を使用中の患者でのコクランメタアナリシスは股関節あるいは膝の置換術を受けた後4〜6週に1000名中123(12.3%)の出血が起こったことを見出した(26) 鍼灸を受けている抗凝固薬治療中の患者での手技に関連した出血は少ないであろうが、この疑問は決定的に研究された訳ではない。
 なので我々は医学出版物の 特定可能なピアレビューを再考するためにこのメタアナリシスを行い、抗凝固薬治療中の患者での鍼灸の安全性を批判的に調べた。 資料と方法 我々は関連する引用論文を特定するためにPubMed、EMBASE、the Physiotherapy Evidence Database、Google Scholarを調べた。PubMedとEMBASEで調べた用語はサイドバーに並べてある。 
 PubMed 検索ワード (“anticoagulant”[MeSH Terms] OR “anticoagulant”[All Fields] OR “anticoagulants”[MeSH Terms] OR “anticoagulants”[All Fields] OR “anticoagulants” [Pharmacological Action]) OR (“warfarin”[MeSH Terms] OR “warfarin”[All Fields]) OR (“heparin”[MeSH Terms] OR “heparin”[All Fields]) OR (“clopidogrel”[Supplementary Concept] OR “clopidogrel”[All Fields]) OR (“enoxaparin”[MeSH Terms] OR “enoxaparin”[All Fields]) OR (“aspirin, dipyridamole drug combination”[Supplementary Concept] OR “aspirin, dipyridamole drug combination”[All Fields] OR “aggrenox”[All Fields]) AND (“acupuncture”[MeSH Terms] OR “acupuncture”[All Fields] OR “acupuncture therapy”[MeSH Terms] OR (“acupuncture”[All Fields] AND “therapy”[All Fields]) OR “acupuncture therapy”[All Fields])
 EMBASE 検索ワード ([anticoagulant OR anticoagulants OR warfarin OR coumadin OR heparin OR clopidogrel OR enoxaparin OR aggrenox] AND acupuncture)
 我々は類似するワードでその他のデータベースを検索した。2人のレビュアーはあらゆる引用論文を検索し、引用論文の包含と除外を決めるのに不一致が持ち上がった時には3人目と協議した。 除外基準は:抗凝固薬と鍼灸の両方について議論していない、データが数量化できないもの、抗凝固薬に使用が確かめられない、有害事象が報告されていない、だった。我々は関連のありそうな39の記事をオーダーして、全文コピーのレビューと除外基準 (Figure 1)に基づいて、鍼灸と1つかそれ以上の抗凝固薬の組み合わせについて報告している、という包含基準に合う11を特定した。データ抽出の後で我々はこれらの11の記事について協議をし、臨床的な評価と文献評価基準を組み合わせ、報告の質と抗凝固薬への被曝と鍼灸との出血に関わる因果関係の明らかな可能性によってグレード分けをした。 明確なリスク層別化を促すため、これらの記事は結果(出血イベント)が共被曝(鍼灸、抗凝固薬使用中の患者)に因るものだという正確性の見込みをグループ分けした。我々は発表された原稿の質と、それぞれの治療法の考証の徹底ぶりと同様に、抗凝固薬の投与量と鍼灸との間のの経過時間に基づいた正確性の見込みを評価した。記事全文からのデータはそれから表形式に抜擢された(Table 1)(27–38)。 結果 システマチック検索 我々のシステマチック検索は11の適切な引用論文(Figure 1)を得た。2つのランダム化トライアル(29, 33)、3つの後向きケースシリーズ(28, 34, 36)、5つのケースレポート(27,31,32,37,38)、1つの臨床記述(35)である。我々は比較対象の患者あるいは前後の比較を伴う複数の研究を見つけることができなかったため、数量的メタアナリシスは行われず、システマチックレビューとして結果を報告した(Table 1)。
 抗凝固薬使用中の患者での鍼灸の安全性の評価を許す報告の質を伴う記事 我々は抗凝固薬と鍼灸治療の現時点において、観察された有害事象について適切な記述があり、明らかな文献を探した。 我々は鍼灸の安全性が併用している抗凝固薬療法によって影響されたかどうかを評価するのに十分な報告の質を伴う7つの文献を見つけた (Table 1)(27–29,31–34)。 鍼灸と薬剤の注射のどちらにもよく見られる小出血(圧迫と綿棒で単純に管理できる一滴の血液)が229名のケースシリーズでの350回の治療で51例(14.6%)に観察された(28 )。出血は臨床的に明らかではなく、薬剤の注射後によく行われるような圧迫で止まった。深鍼での1つの中程度の出血は抗凝固薬療法からリバースするために経口ビタミンK製剤で管理されていたワーファリン抗凝固療法の存在によって悪化するようである(27)。明らかな出血(鍼灸よりもむしろ積極的な抗凝固療法に関連したもの)が脳内出血が結果として報告されている発作後6時間までの急性虚血性脳梗塞の80名の治療での2つの異なる鍼灸の方法を比較したランダム化トライアルで報告されている。患者らはA)デクストラン/アスピリン+頭蓋鍼灸、B)デクストラン/アスピリン+ウロキナーゼ、C)デクストラン/アスピリン+プラセボの生食、の3群にランダムに振り分けられた。著者らは、デクストラン/アスピリン+頭蓋鍼灸群で1症例、デクストラン/アスピリン+ウロキナーゼ群で2症例、デクストラン/アスピリン+生食群で1症例の計4症例の脳内出血を報告している29, 30。 不適切な深鍼が明らかに原因である著しい出血(抗凝固療法を受けていない患者にさえ起こりそうな)が、(薬剤は不特定だが)抗凝固療法を受けている81歳の女性が鍼灸の翌日に手の伸筋腱のいくつかの断裂から出血し急性手根管症候群を起こして外科的に管理されたもの(31) 、75歳の女性で長い鍼を繰り返し腸壁を貫く深さに刺した結果、虫垂の内膜に多数の小さな血腫(32)が2つのケースレポートで観察された。残る2つの高品質な報告は鍼灸による出血を報告していない。アスピリン/低分子量ヘパリン抗凝固療法あるいは鍼灸と抗凝固療法の組み合わせのどちらかにランダムに振り分けられた70名の患者でのトライアルでは小さな有害事象は報告に含まれていないものの、重篤な有害事象は報告されていなかった(33)。痛みの緩和のために鍼灸を受けるため個人の開業医に現れた4名の女性の結果の後ろ向きチャートレビューで、4名の患者は根底にある症状のためにワーファリンを受けていた。累積で4名の女性は51回の電気を使わず、局所と遠位を使った鍼灸治療を受けた。1名の患者で上背部への鍼灸で無症状の字が存在していたことがあったが、治療後に出血や出血に関連した問題を起こした患者はいなかったことが鍼灸の資格を持つ医師によって確認されている(34)。After treatment, none of the patients demonstrated any bleeding or bleeding-related problems, either as observed by the physician-acupuncturist or through self-report, except for an occasional asymptomatic bruised area at an acupuncture site on the upper back on one patient.34 抗凝固療法中の患者での鍼灸の安全性を評価したり、結論を導くにはレポートの質が不十分な記事 Dana Farberがんセンター (Boston, MA)で行われた臨床レビューでは、著者らは6000名以上のがん患者の治療の経験から、鍼灸が抗凝固薬を投与されているがん患者で(比率は特定されていないが)出血の機会が増加することはないと報告している(35)。トロント脊髄損傷リハビリテーション病院の鍼灸ができる医師による数百名の患者のケースシリーズでは、 抗凝固療法中の患者での鍼灸による出血事故は一件もなかったという11年間の彼女の個人的な経験を報告している。しかしこれはジャーナル編集者への手紙であり、正式な後向き症例記録のレビューというよりは記憶によって書かれたものであった(36)。さらに2つのケースレポートは時間的な前後関係は特定していないが、鍼灸治療の患者に抗凝固薬を投与したことによる血腫(38)とコンパートメント出血(37)を記している 。これらの4つの記事はレポートの質が乏しいため、結論を導いたり、レビューのセットから取り下げることはできない。(?)Because of the poor quality of reporting in these 4 articles, we were unable to draw conclusions and withdrew them from the review set. 議論 我々は11の記事のうち7つで「抗凝固薬を使用中の患者に鍼灸をすると果たして出血リスクが高くなるのか?」という研究の疑問を批判的に評価するのに十分な質のレポートを提供しているシステマチック検索を特定した。7つの記事で議論されている鍼灸治療を受けている抗凝固療法中の患者では、384名の鍼灸の患者で3974回の治療のうち出血イベントは58、出血発症率は1.4%だった。これは股関節や膝の置換術を行った低分子量ヘパリンやビタミンKで抗凝固されている患者らの出血発症率12.4%と比べると大変好ましい数字である。特筆すべきことは1.4%という鍼灸の出血発症率は限定的な除外基準なしの多様なグループの229230名の患者での大規模前向き観察研究に記載されている6%よ���も低いということである(39) Remarkably, the 1.4% acupuncture bleeding complication rate is lower than the 6% rate documented in a large prospective observational study of 229,230 patients, a diverse group without restrictive exclusion criteria.39 我々の研究では鍼灸の出血イベントの大部分は無症状性のあざ(34)あるいは針を刺す手技によくある圧迫や綿花(28)で管理できるような血液滴であることがわかった。我々の評価によれば深刻な出血イベントは(2名に起きた」不適切な深鍼によるものと(31, 32)抗凝固薬のミックスによるものだった(29)。Liらによるランダム化トライアル(29)では、 頭蓋内出血が観察されたのは、デクストラン/アスピリン+頭蓋鍼灸で1症例、デクストラン/アスピリン+ウロキナーゼで2症例、デクストラン/アスピリン+生食プラセボで1症例であつた。これらの観察は鍼灸と抗凝固薬の組み合わせが血腫の原因となるというよりは、抗凝固薬のミックスがより大きな問題であることを示している。残る2つの質のよい報告は鍼灸による出血を記述していなかった。アスピリン/低分子量ヘパリン抗凝固単体あるいは鍼灸と抗凝固薬とにランダムに振り分けられた70名のトライアルで、著者らはひどい副作用はなかったと報告している(しかし小さな有害事象はデータに含めていない)(33)。2つめは痛みの緩和のために鍼灸をした4名の女性の結果(計51回の鍼灸治療)を後ろ向きチヤートレビューだった。1名の患者で鍼灸をした上背部に無症状のあざができていただけだった(34, 36)。 我々が特定した残り4つの症例において出血イベントと鍼灸+抗凝固薬との関係が確定できなかった。 2つのケースレポートは鍼灸の後に発症した下腿のコンパートメント症候群を記しているが、鍼灸と抗凝固の期間が明示されていないため、我々は原因は評価できないと決定した(37,38)。不幸なことに、抗凝固薬を投与されている患者での鍼灸の安全性の疑問に包括的に述べるというポジションの最後の出版物である6000名の後向き臨床レビューは詳細な報告が不足しており、原因の評価が不可能だった(35)。Unfortunately the final publication, a 6000-patient retrospective practice review, which could have been well positioned to comprehensively address the question of the safety of acupuncture in patients receiving anticoagulants, was lacking in reporting depth and assessment of causation was not possible.35 結論 384名の患者のうち56名(3974回の治療;1.4%)が小出血を経験しており、ただ1名のみ(0.02%)が抗凝固療法と鍼灸の組み合わせに関連したひどい出血を経験していて、このエビデンスは抗凝固療法を受けている患者において鍼灸はかなり安全性が高いと示している我々のシステマチックレビューの中で特定され、また評価されている。 その患者の鍼灸師が腱や内臓を損傷した場合にのみ明らかな出血が起こるという事実は適切な刺入部位と刺入深度の重要性を強調している。 我々が特定したあるランダム化トライアル(33)に類似しているが、抗凝固療法中の患者での鍼灸に続く小規模あるいは大規模な出血をどちらもモニターしている前向きランダム化トライアルは我々のシステマチックレビューの初見を確かめのに役立つだろう。 我々のシステマチックレビューは我々が観察した出血の発症率とWittら(39)との間の大きな違いを強調している。その記事と我々の施設での好ましい安全性の観察との違いをさらに明らかにするため、我々は後向きでこのレビューのフォローアップをし、その後抗凝固療法中の患者での鍼灸の安全性に関する独自の患者記録の前向き分析をするという計画している。
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エルドラド 花鶏匡俊の場合①
今日の商談相手はけぶるようなアッシュブロンドが目を引く美々しい骨格の男だった。年のころは三十代後半、といったところだろう。左目の下にあるほくろが何とも言えずセクシーだ。
「ボンジュール、ムッシュー」
「花鶏匡俊(あとりまさとし)です。初めまして」
「Attlee? 日本人なのに変わったファミリーネームだな」
「あとり、です。変わっていることは認めますがね」
澄んだ茶色の目を瞬く男に曖昧に笑う。名字のことはもう慣れっこだ。
男もそれ以上は突っ込んでこなかった。雄々しい見た目に反して分別と茶目っ気がある。社交でもビジネスでも花形の人間だろう。自然と人間が集まってくる太陽のような男だ。自分とは属性がまるで違う。
瞳の奥で冷たく自嘲し、花鶏は男に勧められるがままに椅子に腰かけた。手早く自前のノートパソコンを起動し、プレゼン用のパワーポイントをスクリーンに映し出す。
ちら、と伺い見た男の横顔はすでにビジネスマンのそれだった。
ならばこちらも、と引き締める。顔だけではなく、気に入りのダーバンのオーダーメイドスーツ、その滑らかな布地に包まれた臀部、双丘の谷間に息づく菊門も。
キュウ、と肛門を締め上げると内部のモノの質量が腸壁を刺激する。ぞわ、と尾てい骨に広がる痺れに口元がだらしなく開きそうになるのを唇を噛んで堪える。
トイレに行きたい。――ウンチがしたい。
だがそれは叶わないのだ。この商談が終わっても、会社に戻っても。
自分の便所はこの世界でただ一つであり、それ以外のトイレはすべて意味がない。
「……ふむ、素晴らしい話だ。良いだろう、交渉成立だ」
笑顔で差し出された男の手に応える。骨ばったおおぶりの手のひらに握られ、ブンブンと腕を左右に振られる。僅かな胴体の揺れ。たったそれだけで狂ったように肛門を押してくる糞便の圧に、く、と漏れ出そうになる苦鳴を奥歯を噛んで飲み込む。
終業まであと三時間。
それまでは何があっても耐えなければ、と花鶏は悲壮な決意を新たにした。
      都内某所、高級住宅街と商業街の境目にその館はある。
館だ。白亜の壁と豪華なフレンチガーデンを持つ城のような洋館。地域住民がどこかのお偉いさんの別荘だと思い込んでいるそこは、けれど悪魔がとりつく豪華絢爛な地獄だった。少なくとも、花鶏にとっては。
近場でタクシーを降り、足にぴったりと吸いつく一点物の革靴の踵を鳴らしながら足早に進む。腹に詰まった異物感は相当で、ベルトの穴を緩めても何をしても一向に収まらない。早く、と気だけが急く。早く、早く出させてくれ。
指紋認証式の門扉をくぐり、手入れが行き届いた庭を突っ切って裏口に回る。瀟洒な装いのドアノブを回して館内に滑りこみ、入ってすぐ右手にあるドアの中に入る。
室内は従業員用の更衣室だ。
更衣室、とはいってもスチール製のロッカーが整然と並んでいるような光景は目の前にはない。二十畳はあるだろう広大な室内に古めかしいアンティークランプ、猫足の調度品各種、いくつも置かれた黒檀のタンス、そして畳一枚分はありそうな大きさの姿見が置かれた豪華な空間がそこには広がっていた。
「あ、花鶏さん」
名前を呼ばれて顔を上げると、柴犬のように愛らしい顔をした、青年と少年の間のような年頃の男が着替えている最中だった。市来くん、と呼べばにこりと笑う。だがその頬はいつもと違いどこか青白い。
市来智也(いちきともや)はこの店でも若手の『ショーキャスト』だ。愛くるしいルックスと天真爛漫な仕草で固定のファンも多い期待の星である。白いシャツに黒いスラックス、燕尾ベストにリボンタイという格好も彼の良さを助長していた。
「すみません、後ろ止めてもらえませんか。上手く出来なくって」
市来はそう言ってこちらに背中を向けてきた。どうやら燕尾ベストのホックが止まらないらしい。断る理由は無いので了承し、彼の手からホックを受け取って引っかけてやる。
「顔色が悪いね」
「はい。……五日目、なので」
歯切れ悪く付け足された日数にああ、と納得する。そして市来の腸内をこれでもかと蹂躙している滞留便のふてぶてしい有り様を思い、同情の念が湧いた。この腹に五日分も詰め込んでいるのは大層辛いだろう。
「大丈夫ですよ。俺、今日でボトルキープ終わりですから」
心配させまいとしてか、市来が殊更に明るく言う。
健気な後輩にかける言葉を見つけられずにいると、入口のドアが三度ノックされた。キャストであればノックなどせずに入ってくるのが普通だ。誰だろう、と市来と顔を見合わせる。
断りを入れて入ってきたのはコンシェルジュだった。ホールの業務を総括する、給仕役の総取締だ。
「ああ、よかった花鶏くん。まだ着替えていなかったようだね」
「どうかしましたか?」
「いや、大したことではないよ。今日はそのまま出てくれ」
「このまま?」
花鶏は思わず聞き返してしまった。
別に人前に出るのが憚られる服を着ているわけではない。むしろ逆だ。ダーバンのスーツにジョンロブのストレートチップ。これ以上ない洒落た勝負服だからこそ、このままホールに出るのは躊躇われた。そこで自分が何をするのかを思えば気後れはさらに増す。
だがコンシェルジュは無慈悲だった。
「あと五分でオープンだよ。早くスタンバイしなさい」
はい、と慌てたように市来が返事をする。そのまま走り出しかけ、けれど小さく呻いて腹を抱えた。ゆっくりと近寄り、その背中をさすってやる。
「無理はしないほうがいい。ゆっくり行こう」
「う、く……っ」
すでに涙目の市来を支えながら、花鶏はきらびやかな地獄へと続く廊下をゆっくりと進んでいった。
      エルドラド。すなわち黄金郷。
なんとも皮肉めいた名前をつけたものだ、と思う。
店内はその名前に恥じる事のない豪奢な装飾品で満たされていた。
細やかな彫刻が刻まれた柱や壁、キラキラとした光の粒を辺りに振りまくシャンデリア、磨き抜かれた木製のテーブル、黒い革製のソファ。ともすれば嫌味に映りそうなそれらを柔らかな間接照明がぼかし、品良くまとめ上げている。一見してセンスのいい空間だった。
だが何より壮麗なのは壁際にずらりと控える選り取り見取りの美男達だった。皆、多少の違いこそあれど仕立ての良い黒を基調としたフォーマルウェアに身を包み、足元はこれも艶やかに光を弾く革靴で飾っている。
正装を見に纏った美しい青年たちはしかし、皆悩ましげに眉を顰め、控えめに膝を擦り合せていた。原因はただ一つ。原始的な欲求を必死に堪えているからだ。
かく言う花鶏も例に漏れず、本能的な欲��を力づくで抑え込んでいた。
(っ、出したい……ッ!)
腹が際限なく蠢いて排泄物を生成し、直腸へと送り込んでくる。もう一ミリの隙間もないのにだ。まるで満員電車に乗客を押し込もうとする駅員のような無慈悲さに、こめかみを冷や汗がたらりと垂れる。
はふ、と重だるい吐息を吐き、腹部をさすろうとする手のひらを必死に諌める。ショーキャストは常に品格よく振る舞うこと。それがエルドラドの鉄の掟だ。もちろん便意を堪えていますと言いたげに下腹部を撫でるなど言語道断、スタッフに見つかれば懲罰モノである。ただ、美青年が必死に排泄欲と戦っているいたいけな様子を視姦するのが目当ての客も多く、多少であればスタッフもお目こぼしをしてくれるのだが。
腹の中はたんまりと滞留したものでくちくなっていた。下っ腹が便の嵩で膨らんでいるのが背広の上からでも分かる。一昨日出したのに、と花鶏は恥辱と苦痛に歯を食いしばる。
出したい。みっともなく衆人環視のなかで尻をさらけ出し、中身を全てぶちまけてしまいたい。
そう、あんな風に――
花鶏の目線は自然とホールの中央、どの席に座っていても見られるように計算されてしつらえられた円形の壇に向いていた。例えるならウェディングケーキ、だろうか。同心円状の段が三つ重なったステージは一人用で、今は小柄な茶髪の青年が下半身を丸出しにしてしゃがみ込み、健気に息んでいた。市来だ。
「ふ、ん…っ、ぐぅ……!」
苦しげな唸り声とともに、メリ、ムリと肛門を拡げていく糞の塊はごつごつとした黒っぽい拳ほどの大きさがあった。五日分の大便が腸内でくっつき、歪に膨れ上がり、水分を無くして硬度を増したブツ。まさに糞栓と呼ぶにふさわしいそれは市来のつつましやかな肛門を皺の一本まで余すところなく伸び開かせ、地滑りを起こす一歩手前の斜面のようにひどくゆっくりと外界に這い出てくる。とんでもない大きさだ。観衆の目もライトアップされた市来の丸尻、その谷間に咥えこまれた黒々とした糞塊に釘づけだった。
「ん、ぐ、ううぅ…っ!?」
深く息を吸った市来が、頭の血管が切れるのではと心配になるほど顔を真っ赤にして腹筋に力を込める。
と、ようやく半分ほど頭を覗かせていた溜まり糞の大蛇が重力と自重でズルルルルゥッ!と一気に滑り落ちた。
「ふあぁぁぁっ……!」
ドサァッ!とペットシーツの上に倒れ込んだ一本糞は丸々と太ったヘチマのように長く太く、見た目はゴーヤのようにゴツゴツとしていた。まるで巨大な双頭ディルドだ。あれを丸ごと飲み込んでいたなんて、相当の苦痛だったろう。
「ふ、ん……ぅあっ、あ、出るぅっ……!」
ふてぶてしい便蛇を放出した解放感に軽く意識を飛ばしていた市来が小さく悲鳴を上げる。
同時にひくひくと収縮を繰り返していた菊門がくぱり、と内側から押し開けられた。
ズゥリルルルル、ムチ、ニチュチュチュチュ、ズルゥッ!と大して息んでもいないのにひり出されてきたのは健康的な太さのバナナ便だ。合間にブボォォッ!ブスッ、プスゥゥゥゥゥゥ…!と大音声のガスのコーラスのおまけつきである。大胆な排泄にホールがにわかにさざめき立つ。つられるように市来の顔が首まで真っ赤に染まる。
「は、ひ……ぁ」
ようやく全てを出し終えた市来は圧倒的な放出感にしゃがんだまま脱力していた。市来くん、と名を呼ばれ、我に返ってのろのろとした仕草で足元に置いてあったハンケチで尻を拭う。二、三度往復し、残滓を拭われた菊穴はほんのりと褐色がかった肉色の愛らしい蕾に戻っていた。つい先程まで手首ほどもある大便をひり出していた肉穴だとは到底思えない。
よろよろと立ちあがってスラックスを上げ、ベルトを締めた市来は汗で額に張りついた前髪もそのままに一礼した。ほんのりと上気した頬とわずかに惚けたような眼球の甘さについ股間が熱く疼きそうになる。市来の人気の秘訣はこれだ。彼は出し終えた時の解放感に満ちた表情がとにかく性的なのである。
一礼された客は「次は一週間後ね」と今回よりも長いボトルキープを市来に命じた。一瞬市来のこめかみがひくり、と動くが、彼は静かな絶望を飲み込んで「はい、またのご来店をお待ちしております」と弱々しく微笑んだだけだった。
「花鶏さん」
壇上で今まさに痛苦から解放された市来を焦げるような羨望の眼差しで注視していると、すぐ隣から控えめに声をかけられた。見ればそこにいたのは酒を持ってフロアを動き回るボーイの一人だった。
「こちらをどうぞ。お客さまからのご注文の品です」
ボーイの手の中にあったのは小さなミサイルのような白い物体だった。それの正体を花鶏は知っていた。便を柔らかくする即効性の座薬だ。胎の中の異物を、浣腸のように便を溶かして水様便にするのではなく、あくまでもドロドロに形を保った泥状便からねっとりとしたペースト便へと緩める薬である。破裂するような排泄音とひり出す肛門の収縮、汚れる柔肌を楽しみたい客が注文する、悪趣味なメニューの一つだ。
「……誰から?」
声音が冷たくなってしまったのはそれだけ追いつめられているからだ。
ボーイは素っ気ない花鶏の態度にも表情一つ変えず、ただ「あちらのお客様です」と間接照明の明かりに半ば埋没しているフロアの一角を手で示した。
遠目からでも欧米人と分かる骨格の男が数人と、日本人と思われる細身の男が一人、丸いテーブルを囲んでシャンパン片手に談笑していた。顔までは判別できない。だが富裕層ではあるのだろう。照明の光を弾くシャンパンのボトルを見ても彼らが財と知識を有した階層であることは如実に知れた。
震える指先で座薬を受けとり、すぐ近くに置いてある、病院の診察室にあるような間仕切りのカーテンの中へと滑りこむ。ベルトを外し、下着ごとスラックスを掴んで尻を半分だけ露出させる。外気に晒された肛門がキュウッ、と収縮して、内容物が期を見計らったかのように暴れ出す。ともすれば溢れそうになる糞便を必死に腸内に押しとどめ、花鶏は手に持ったままの座薬の先端をひたりと菊座に添えた。くぱ、くぱと口を開いては閉じるのを繰り返している肉孔は啜るように座薬を飲み込んでいく。ニュルン!と一息に異物が肛門を滑り抜け、その些細な擦過熱にさえ骨盤が砕けそうなほど痺れた。もう限界なのだ。なのにこれからもっと自分を追いつめる。
スラックスを穿き直し、所定の位置に戻ってから数分後、座薬の効果は突然現れた。
グルル、と腸が捻じれるように蠕動し、直腸に熱いマグマが湧いたような感覚と圧力が一気に充満する。ゴポ、と汚泥が煮立ち、我先にと肛門に殺到する。
「はう……っ!」
差し込むような腹痛に思わず背が丸まりかける。とっさに後ろに回した手を目敏く認めたコンシェルジュは、けれど注意をしてこなかった。顧客の一人が熱い視線をもだえ苦しむ花鶏に注いでいたからだ。
熱視線に気づく余裕のない花鶏は奥歯が砕けるほど歯を食いしばって暴れ回る直腸を抑え込んでいた。一瞬でも気を抜くと決壊してしまいそうだ。
その時カランコロン、と場違いなほどに陽気なベルの音が響いた。
「オーダーだ。花鶏くん、三番テーブルへ」
名指しされ、はい、と吐息交じりというにも弱い声で返事をする。荒れ狂う腸を抱えて足を踏み出せば、振動が直接菊座に響いた。一歩、二歩。歩くたびに呻き声が上がるのを抑えきれない。ともすれば固く窄めた括約筋が力尽きて中身を吐き出してしまいそうになる。それだけは嫌だ。
震える足でなんとか客のもとに辿り着く。近くで見るとやはり美しい壮年の白人男性たちが揃っていた。一緒にいた細身の男の姿は見えない。トイレにでも行っているのだろうか。
花鶏は痙攣する太腿を叱咤してその場に片膝をついた。腹に圧がかかる姿勢だ。おぞましいほどに膨れ上がる汚濁した渦を菊門で堰き止めつつ、花鶏は英語でオーダーを問う。
「お客様、どうなさいますか」
完璧なクイーンズイングリッシュとともに差し出されたメニュー表に、男達が片眉を跳ね上げた。その唇には一様に笑みがこぼれている。
「良い発音だ。やはりここには良いキャストが揃っているね」
「ありがとうございます」
蒼い顔で感謝を述べる。そんなことより早く決めてくれ、と叫び出しそうになるのをすんでで堪える。
男の一人が先程まで人が座っていた席に視線をやり、悪戯っぽく肩を竦める。
「彼からの言伝だ。――Nothing.」
ひゅ、と喉が鳴った。それは花鶏が最も嫌うオーダーだった。
Nothing。その通り、何もなし。つまり床に直接ぶちまけろという命令だ。
だが花鶏に否やを唱える権利も余裕もなかった。尻の谷間の菊花はもう限界だった。Yes,sirと答えてメニュー表を閉じ、それをボーイに手渡す。立ちあがるとグプ、と水っぽい音が尻で鳴った。漏らしたか、と全身の筋肉が強張る。だがまだ粗相をした感覚はない。まだ、まだ大丈夫だ。
でも、もう――
花鶏は我慢できずに両手で尻を押さえながら、ふらふらとした足取りでステージへと近づいていった。一挙手一投足を注視されている感覚に背筋が震えあがる。漏らしてしまえ、と誰かが囁く。その囁きに小さな笑いが起こる。
体をくねらせてなんとか段を上りきったときにはグプ、グピュと断続的に尻穴が鳴っていた。
「あっ、あっ、ぅ、んんっ」
緊張しすぎて冷たくなった手でベルトを抜き取るように外し、がむしゃらにスラックスをずり下ろす。そして足を肩幅に開き、中腰としゃがみの中間のような情けない体勢を取る。革靴に皺を着けないためにはこれ以上屈めず、しかも踵を浮き上がらせる必要があるのだが、そうすると客に尻を突きだしているような惨めな体勢になる。しかも屈んだせいで尻たぶが自然と割り開かれ、普段は秘されている谷間の肉菊さえ露わになる。
花鶏の尻は瑞々しい桃のようで、しっとりと潤い、ツンと上向いた極上の��品だった。この上品な尻が今から糞に汚されるのだ、と観客の間にざわめきにも似た興奮が波打つように広がっていく。
スポットライトが集まっている。会場の視線が一人のあまりもなく自分に注がれている。ごくり、と生唾を飲む音さえ耳に響く。
一瞬、世界が沈黙する。
刹那、ブバッと下品な音を立てて花鶏の肛門がついに決壊した。
「んんんんぅッ……!」
勢いよく、スプリンクラーのように軟便が噴射される。バタタタタッ、と床に散る音はまるでバケツの中身を宙に放り出したときのようだ。膝についた手をギュッと握って息めば、ブチュブチュとあられもない音を立てて沸騰した泥が辺りに散った。圧巻の排泄に誰かがヒュウ、と口笛を鳴らす。
渋る腹を抱えながら生臭いペーストをひり出す花鶏は、顔を上げてぼんやりと会場を見渡した。俯いていると気に入りのスーツをずり下ろして脱糞している自分を否が応にも自覚して惨めになるからだ。
一瞬、こちらに向けられたスポットライトに視界が白く染まる。顔を顰め、目が光に慣れるのを待つ。その間も後孔からは我先にと黄金色のマグマが噴出している。
焦点がようやく合う。
そうして店の奥まで見渡した花鶏は、壁際に立つ一人の青年の姿を見つけて目を極限まで見開いた。
先程あのテーブルにいた男だ。暗くてよく見えなかったが、今はよく見える。だからこそ息を呑む。
高い位置にある腰と、グレーの洒落たスーツ。ベネチアンマスクをしていても分かる整った顔立ち。いつもニヒルにつり上がっていることの多い唇を引き結んでいても、その顔には見覚えがあった。つい二時間ほど前まで一緒にいた男だ。
嘘だ、と現実を拒絶する花鶏の思考を打ち据えるように、男が唇を動かす。――せ、ん、ぱ、い。
その動きで確信した。彼は有栖川飛鷹(ありすがわひだか)。自分の部下だ。
でも、まさか、そんな。どうして彼がここに。
花鶏の思考回路は錯乱していた。目の前が眩み、現実と虚構が入り混じる。
見られている。軟便で尻を汚して惚けているさまを、よりにもよって職場の後輩に。
その事実は花鶏の脳を沸騰させるには十分すぎるものだった。
「あ、いや、見ないで、あ、ぁ、ひぃッ」
ビチュ、ムチュウッ、ブリュ、ビチィッ!
はしたないとしか言いようのない排泄音に鼓膜から犯される。溶けた糞便をひり出す感覚に脳髄が甘く痺れていく。ツン、と鼻の奥に刺さる生々しい匂いに眼球の奥が熱く潤む。潤みは見る間に眼球を濡らし、目尻からボロボロと零れ落ちていった。
「や、おねが、見ないで…っ!」
火がついたように熱い顔を両手で覆い隠す。
発火している耳がざわめきをつぶさに聞き取り、意味のある言葉として変換してしまう。
「おやおや、泣き出してしまったよ。初物のようで愛らしいね」
「すごい音と匂いだな。こちらまで臭ってくるようだ」
嘲笑を浴びるように受けながら、それでも排泄は止まらない。座薬で緩んだ便を出しきった菊座は薬で溶かしきれなかった糞便をニチュ、ヌチュヌチュムチュウ!と一息にひり出した。程よい長さで千切れたそれは汚泥の沼にベチャ、ボチャン!と墜落しては生臭い軟便を辺りにぶちまける。モリュリュリュリュルルゥ!ブプッ!と肛門の粘膜を引きずるように擦りあげて排出される短いバナナ便は留まるところを知らず、汚濁の沼の上に糞礫の塚を築き上げていく。
ようやっと花鶏の肛孔が沈黙した頃には、ステージの床は茶色いマグマと柔らかい糞塊の山でほとんど覆われていた。糞がひり落とされる際に飛び散った汚泥はステージの床のみならず段、フロアの床、果てには花鶏のまろい白尻までをドロドロに汚していた。
「オプションです」
冷徹なコンシェルジュの声にゆるゆると顔を上げる。
いつのまにか三番テーブルに戻っていた有栖川がひらひらと右手を振っている。その手には白いハンカチーフ。
ああ、と花鶏は新たな絶望の涙が頬を転がり落ちていくのを感じた。
あれは尻拭い用のハンカチだ。彼は、有栖川はこの状態のままステージを降り、彼のもとまで歩き、尻を晒して拭かれろと言っているのだ。その汚泥まみれの尻を抱えて俺のところまで来い、と。
なんてむごい。
それでも断る権利は花鶏にはなかった。
震える指先で足元に溜まっていたスラックスのウエスト部分を掴み、太腿まで引き上げる。尻を露出したまま、よたよたとおぼつかない足取りでステージを降壇すれば観衆から忍び笑いが上がった。笑われている、という事実が頭を熱く鈍らせる。どろり、と肛門の辺りにへばりついていたペースト状の便が内またを伝っていく感覚に背筋が震える。
なんとか有栖川の元までたどり着くと、花鶏は彼に背を向けて立ち、持っていたスラックスを足元に落として尻を突きだした。
「へぇ、これはこれは」
興奮でざらついた声に湿った笑いが混ざる。軟便で汚れた菊門に突き刺さる視線の強さを感じ、ひく、と咽頭が咽ぶように蠢いた。
尻たぶを掴まれ、ゆっくりと左右に割り開かれる。ヌチャ、という感覚と共に谷間の奥へと空気が触れる。むっとした臭気がにわかにたちこめ、誰かがウッと鼻をつまむ。
「おっと、ずいぶんとひり出しましたね。溜まってたんですか? 可愛いアヌスが泥まみれですよ。まるで赤ん坊みたいだ」
直接的な揶揄に茹だりきった脳がさらにぐずぐずになる。仄暗い興奮と快感が毒のように心身に広がっていくのが分かる。
見られている。嗤われている。この痴態を、後輩に。
それは背徳的な、地獄へつながる穴のように黒い快感だった。
いたたまれなくなって目を伏せると、黒く艶やかな革靴が黄土色の泥で汚れていた。きっと固形便をひり出した時に跳ねたのだ。紳士たる者足元まで気を抜くなと常々口にしていた祖父を思い出し、花鶏は固く目を瞑った。これ以上現実を直視したくなかった。羞恥と屈辱が許容量を超えて、思考力が根こそぎ奪われていく。
「……よし、綺麗になりました。可愛かったですよ、花鶏さん」
菊門を丁寧にぬぐっていた手が離れ、一瞬だけ尻たぶに口づけを落とされる。そんな些細な刺激にさえ脊髄が甘く震撼した。あふ、と鼻にかかった吐息が漏れる。
腹は先程までの苦痛が嘘のようにすっきりとしていた。腹だけではなく全身が軽い。そして熱かった。
人前で排泄を晒す汚辱に、この異常な空間に適応した体は確かに快楽を拾い上げていた。
そんな自分を肯定したくなくて緩く頭を振る。スラックスを上げ、ベルトを締め、いつものように完璧なスーツスタイルになる。
振り返るとそこにベネチアンマスクをつけた後輩がいる。
獣のような冷たい眼差しに射すくめられながら、花鶏は完璧な所作で一礼した。
「ありがとうございました。またのご来店を、お待ちしております」
      頭から熱いシャワーを浴び、しばし呆然とする。終業後の花鶏の至福のひと時だ。
髪をドライヤーで乾かし、温められて緩んだ筋肉をスーツという名の理性で覆う。
最後に靴を履こうとして、花鶏は思わず固まった。
オートクチュールのストレートチップ。祖父の言もあり、足元には特に気を遣う自分が一番気に入っていた一足だ。履く誇りに等しかったそれは、入浴前にこれでもかというほど拭いて磨いた。それこそ胸ポケットに飾ってあった真っ白いポケットハンカチーフがいたたまれない色に染まりきるくらいに。それでもまだ汚辱がそこに残っているような気がしてならない。
「いいですね、その靴。先輩によく似合ってますよ」
そう言って朗らかに笑った有栖川の顔を思い出し、花鶏は頭を抱える。
明日からどんな顔をして会社に行けばいいのだろう。
けれど同時に、自分を射すくめるあの視線の強さがまざまざと蘇ってきて、頬が火照る。股ぐらに血が集まる。
「ッ、見られる趣味は無いのに……!」
どうして、とくしゃりと前髪を掴む。涙腺がじわ、と緩む。
それでも、何故か、花鶏は背筋がぞくぞくと歓喜に粟立っているのを知覚していた。
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ntrcp · 7 years
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混乱する夫 1
勤め先は大都市圏近郊の中小企業、ほどほどの程度の大卒で、就職して首都圏の自宅を離れた コンビニが少なく夜間は静かで、育った首都圏の暮らしと異なる環境にもさほど違和感は感じなかった もとから何事にも熱中することはなく、勉強もスポーツもほどほど、少ない友人との付き合いも年に数回程度で、あまり親密になることもない代わりに友人関係に煩わされることもなかった 学生の頃からバイトをしていたため、就職してからも仕事について悩むことはなく、ただ毎日実直にこなしていた 同期入社が悩みをかかえ相談を受けたり、特に優秀な同期が初年度から抜擢されることも、自分には関係ないことと考えていた 職場では、それなりに人間関係も築き、目先の問題を片付けるうち、その姿勢が部内では評価されたようで、面接を経て5年で昇進し、現在は主任として小さいチームを率いている 妻とは勤めている会社で知り合い、2年ほどの交際を経て結婚した 部署は異なる建屋だったが、入社当時より出勤時間にあうことが数回あり面識はあった これといって目立つほどの美人でもなく、評判となるほどに愛想が良いわけでもなかったが、部内の壮年以上の層には受けが良いようだった 自分が思うには、割とのっぺりした表情ながら笑顔が素晴らしく、一方では極力性的な特徴を画一化するための制服に身を包んでさえも感じられるバストと、それに不似合いなほどすんなりとしたプロポーションに、正直女性としての魅力を感じていた 勤め先の総合職は本社一括採用だったが、事務員採用は各地方にある事業所毎の採用のため、事務員は近隣地域の出身が多く、妻も同様だった 異なる点といえば、事務員採用枠は高校卒業が多かったところ、妻は大卒だったことだ 採用担当のものが後にもらしていたが、最近は事務員採用枠に大卒がエントリーすることも珍しくないが、当時は応募の間違いではないかと、本人にエントリーが総合職でないかと再度確認をしたこともあったようだ 採用面接時には、総合職採用並みの受け答えで、事業所レベルの人事部では評価以前に、2時面接前に内定通知を出し、本人確約をとって逃がさないようにしたとの逸話もあった 採用後3ヶ月の研修期間では、大学進学のため大都市圏で一人暮らしをしたこともあったかも知れないが、昨年まで高校生であった事務員採用の新入社員の中にあっては、しっかりしているとの評価だった この時は本社研修と新事業部の立ち上げ応援に駆り出されており、あまり顔を合わせることはなかった 毎日の通勤で顔をみるだけではあったが、忘年会では隣にすわることもあり、仕事の連絡時に見せる姿と、寛いだときの差に、帰宅時など柄になく気分が高揚することもあった 話すことといえば、この地域の伝統や、節々の行事など、あたりさわりのないことだったが、自分が育った地域は新興住宅街にあったので、こと行事に逸話があったり、それに付随する話を聞くことも楽しいことだった それを話す妻も、同僚はこの地方出身者が多く、入社当時は同期が年齢を気にすることもあって、馴染むより頼りにされるお姉さん的な立場にあって苦労があるところ、大学のときの友人のように会話できた自分が気晴らしになったと、後に聞いた 付き合うきっかけは、年末の終業時帰宅のため会社の門を出ようとしたときだった 普段妻の勤める社屋は入り口に面した配置で、現業のものからは、「事務は定時でいいね」とボヤかれることもあるほど18時以降に明かりが灯っていることはまず無いところだった 年末だからといって実家に帰省する予定もなく、自由になる数日を得たことを内心喜びつつ帰宅するところで、そのまま無視もできないところだった 全社屋の空調やセキュリティは所管の部署で管理され、昨今の情勢から情報管理や環境影響評価に厳しくなっているところ、年末年始に鍵の開け放しや電気の消灯漏れなどあれば他部署とは言え、下される処分など思えばお気の毒とだけ思うほど非人情にもなれないところだった まして、先月にはあるトラブルに巻き込まれ、予定の大幅な遅延となるところを、その部署の同期の助けでリカバリできた事情もあればなおさらのことだった 既に来年の初日には作業を問題なく開始できるよう手配した後だったので、踵を返し、普段通らない事務所に入り様子を見てみることにした この事務所には普段から足を運ぶことがなく、記憶にある範囲でも新人研修明けに辞令を受け、3日程の異動猶予期間に慌しく引越しを済ませた後に着任の挨拶に足を運んだくらいだ 通常は、建屋���セキュリティがかかるところ、警備解除状態となっていることを確認し、その当時妻の勤める職場に足を運んだ その場には妻ともう一人女子の事務員が途方に暮れた様子で一角に明かりを灯して座っていた 聞けば、この事務所のセキュリティ権限を持つ3名の連絡が行き届かず、それぞれ年末の混乱の中で直帰後地方の実家で帰省してしまったり、数日前から休暇をとり海外に出かけてしまったとのことだった。 通常、イントラネット上で予定は管理され、管理者が3名もいるところ、全員不在となる事態は起こり得ない事だった ただ、この時は1名当日出社した管理者が急用で別事業部の支社に呼び出され、急遽外出するところで確認を受けた妻が他の1名の管理者で大丈夫と回答したことが原因で、建屋を閉じられないこととなっていた 2名は連絡がとれず、別事業部に呼びだされた管理者に詫びて、帰社をお願いし、それまでの留守番を務めているとのことで、話を聞く限りでは、年末で慌しく出張して、不手際により急遽帰社することとなった管理者も相当に腹を立てているようだった なるべく作業は遅くならないように心がけていたものの、部署内では比較的若い身分と独身でさほど離れていない場所の寮に住んでいたことで危機管理の策定時に望まずも緊急時対応者として登録されており、幸いその当時には社屋の通行には困らない程度のセキュリティ権限を得ていた 帰社する管理者に事情を説明したところ、本人はさほど立腹な訳でもなく、ただ作業が年を越す見込なので戻らなくて済むことは有難い、と逆に礼を言われ感謝されてしまった 妻ともう一人残っていた事務員は仲が良く、妻が困っているところ、普段から世話を掛けているところ一人にはしておけないと、どこか文化祭前夜を思い出すような口調でいった後、帰って良いなら、ほど近いところに彼氏を車で待たせているので帰ります、との事だった おそらく、今年は年末が週末にあたる関係でその彼氏とやらも仕事で疲れたところに呼ばれているところ、随分と待たされていることにやや同情を感じつつ、一応はねぎらいの言葉を掛け去っていく足音を聞いた 妻は、しっかり者と聞いていたところでも、このような状態ではしおれているものと思っていたが、思いの他元気に感謝を述べ、着替えてくるのでそれまで待つことをお願いされた 内心、仕事のトラブルで傷心の女子社員の対応には、やや困ることが多かったので、面倒になることを危惧していたこともあったが、相手が妻なら、むしろ喜ばしいことと思い、時間も遅くなっていたので、その当時は妻の住所も知らず、一旦寮に戻って車で送って行こうかなど思案していた また、静まった職場に時折聞こえる見慣れぬ事務機器からの電子音をききながら、今この建屋には自分と、更衣室で着替えをしている妻だけとの事実に戯けたことと思いながらも、着替える姿を想像しながら、年相応に性的な想像を巡らしていた 程なくして、妻は戻り、待たせたことを詫びながら、急いでいたので靴を履き替えていないと訳の分からないことを言いつつ、社内で履いていた靴を脱いで、手に持ったブーツに履き替えようとしていた 年末で綺麗に整頓された事務所の椅子に座ることも遠慮して、妻の机の斜め前の机に寄りかかっていたのだが、膝丈ほどのスカートに仕事中と同じストッキングが目から離れず、その動作を眺めていたところ、妻が不意に目を合わせ、こちらを覗きこんだ 「気になります?」と妻 先ほどまで、やや性的な想像をしていた延長で、ストッキングの作り出すふくらはぎに微妙な陰影に見とれていたので、咄嗟に言葉がでず、曖昧に否定しかできなかったが、やや上気することを抑えることはできなかった 事務所の消灯と、セキュリティを警備開始とし、繰り返し礼を言う妻と門まで歩いた 学生の時には、サークルで付き合うことが普通だったことで、望まなくても付き合うこととなり、あまり意識せずとも初体験まで済ますこととなったが、社会人となり数年、独身の同僚や少数の友人も年に数人ずつ結婚していく中にあって、自分の結婚を考えることはあまりなかった 自分の職場には、あまり恋愛対象となる女性がいなかったこともあるが、毎日の作業に追われ、性的な処理は、数ヶ月に数本アダルトビデオを借りる程度だった そんな環境のなか、隣に女性が歩いていることを意識せずにはいれられなかった 門をでて、バス停なら数分のところ、おそらくこの時間になっては既に終バスも無い筈であり、駅もさほど遠くはないものの、本数は首都圏と同じく十数分に一度というほど多くはないのだった やや下心もあり、それを抑えることもできないことを自覚しつつ、寮までくれば自動車で送ることを申し出したところ、妻は即答で了解してくれた 女性が多い事務や、近隣採用の者を除いたものが寮に暮らすことを考えれば、自分も含めた結婚前の独身男性か、単身赴任者が入寮者の大多数だったので、社内的な噂となることを避けるため、妻を一時最寄のショッピングセンターに待たせ、車で迎えに行った 車の鍵を取りに帰宅したものの、スーツのまま車で妻を拾ったところを人に見られたら、と着替えた後に車に乗り込みエンジンを回して、必要なさそうな自分の先読みに、久しぶりの心の高鳴りに奇妙な驚きを覚えるのだった やはり妻は事業所採用だけあり、車で30分ほど、電車でも3駅ほどのベッドタウンの実家から通っていた ごく自然に夕飯を誘うと、先ほどと同じく即答で了解してくれ、なぜか送っていく実家と逆方面にあるレストランを提案するのだった なぜかとの問いには、やや躊躇ったものの、実家の近所では、顔見知りが多く二人に噂が立っては困るからとのことだったが、自分の顔にやや驚きの表情がでたことを察してか、打ち消すように、妻が困るのでなく、自分が噂を立てられては迷惑かと思う、と語る妻の表情は、先ほどの誘いを受ける際の明瞭さはなく、やや照れているかのようだった 食事は思ったより長く話が弾み、心配した妻の実家から電話が入って我に返る始末だった 深夜となりほとんど車どおりもなくなった国道を、不審に思われない範囲でゆっくりと運転し、住宅地に入る前の通りで車を止め別れを告げた 別れ際、それまでと同じような口調で、また会えるか、と問う妻に、今度は自分が即答で答えたのだった それから、年明けには付き合うこととなり、しばらくは社内に伏せていたものの1年を経るころには公然となっていた それでも、職場では建屋がことなることもあり日中はほとんど顔を見ることもなく、数日に一度は帰宅時に妻をショッピングセンターで拾い夕食をともにし、休日には足を伸ばし交互に運転して旅行に行くようになった 自ら社内で対応したことが少なかったことから、しっかり者の評判だけを聞いていたが、本人から聞く話では、自分と同じく何事にも熱中することが無く、平穏に暮らしてきたこと、今の会社に決めた事も、深く考えたことではなく、就職活動となったときに、キャリア志向もなく総合職を目指す友達ほどの熱意をエントリーシートに書き込むほどに自分の進路を決めることができなかった結果とのことだった 本来話していいことでもなかったが、人事部から聞いていた話と違うので意外と思ったが、人の間の立ち回りは不得手ではなく、むしろ人間関係で問題を起こすことを嫌うあまり率直にいって八方美人的になったと思う、その内心は同期が年下で相談にのる方が多かったので自ら自ら話をすることもできず、年末の契機から自分と話すことができて嬉しかった、と同時に始めてのキスをした 普段から、あまり派手な服装を好まず、清楚といわれるようなワンピースや、フレアスカートが多い妻だったが、初めてのセックスの時だけ違っていた 秋に入り、気温が急激に低くなるころ、事前に電話で待ち合わせして、自分が帰宅して車で向かえにいくと、普段とシルエットの違う人物がドアを開けたのだった その日の妻はウール地のタイトスカートに黒のストッキングと同色パンプスにブラウスをあわせ、姿だけなら、どこかの会社の秘書を思わせるような姿だった 日中は会わなかったので、普段通勤時にそんな姿をしているとも思わず、率直過ぎるほどに感想を述べると 「前にこんなスタイルが好きっていっていたから・・・」 と顔を伏せがちに妻が言うのだった 以前のドライブで、好きなスタイルから、ふざけ半分に性的な話になった時、つい漏らしてしまったものをそのまま実現していることに気が付き、車寄せから発進することを忘れてしまった やや肌寒くなっているところブラウスに大判のストールを羽織っているものの、つい目が向けてしまう胸元からは角度の関係でおそらく薄緑のブラジャーの上部が見えている、かあるいは見せている 取り立てて社内でも 別部署にまで声の聞こえた美人ではないが、年末にあったときからスタイルの良さには気が付いていた 二人で出かけた時も、妻が実家から通っている関係で泊まりはせず、あまり遅くならない時間に送るようにしていたが、このときは、妻からつまりながらもはっきりと言うのだった 「今日は両親が旅行にいって火曜日まで帰りません」 「あの、わたしたち・・・よかったら・・・今日はセックスしましょう」 このころには最初の敬語から丁寧語を経て、普段の口調ではなしていたところ、この時だけ丁寧語になってしまう妻は恥らっているのか、頬を上気させていた 自分から言わなかったことにやや不甲斐なさを感じつつ、自分のために、あるいは誘うために普段しない服装までする妻が堪らなく愛おしかった 寮につれて帰ることは論外なので、顔見知りがいない程度に離れたコンビニで買い物をし、そのまま県外まで離れてホテルにチェックインした この時にはラブホテルにはいるつもりが、週末であるためかほとんど満室となっており、やむなくインターチェンジ沿いのビジネスホテルに宿を取ることになった 既に自分がラフに着替えているところ、妻はフォーマルに近い姿だったので、人目にはさぞ妙な組み合わせと映ったことと思うが、幸い時間帯からロビーは人気がなく翌日のチェックアウト時も同様だった いつに無く、ほぼ無言で部屋に入り、カーテンを閉めて向かいあうと、後は考えることはなかった 長くキスをすると、先にシャワーを浴びようとする妻を引きとめ、ベッドに横たえた 首筋から唇にキスを繰り返し、慣れない手つきでボタンを外し、服を剥いでゆくと縁がレースで飾られている他、あまり装飾のないブラジャーが残った 前にホックを外したのは数年前で、そのときもあまり上手の外せて記憶が無いのだったが、この時は興奮のあまりそのままカップを下に摺り下げてしまった そこからでてきたものは薄いピンクでやや立ち上がり掛けた乳頭と、普段のスタイルから想像する以上の張りをもった乳房だった 目の前の白く形の良い乳房を数十分は嘗め回し、同時にストッキング越しに秘所にも指を伸ばしていた セックスのテクニックは、せいぜい学生時に性豪として知られた友人から聞いたものとアダルトビデオ程度の知識しかなかったものの、当面テクニックほどの手管を労せずとも、既にブラジャーと同質のショーツははっきりと分かるほどに湿っていた その時は、全くといっていいほど、翌日の服装まで考えることはなかったので、ショーツを下にずらす時に一部ストッキングを引っ張り過ぎて伝線したことも気にしていなかった 片足をショーツから抜き出すと同時にストッキングも外したものの、もう片足にはショーツもストッキングも残っている非対称が妙に扇情的で、その頃には、秘所を露出したことで、先にシャワーを、とつぶやく妻の乳房をまさぐりながら、そこに口付けした ある程度妻も覚悟していた行為とは思うが、その瞬間体に衝撃が走り、口付けたところにより深く押し付けられることとなった 過去のセックスで、相手のそこをまじまじと眺めることもなかったが、いわゆる裏ビデオで女性器を見たことはあり、正直大陰唇あたりには美しいと感じることもなかった このときは、先にそのことを考えたのではなかったが、口づけたそこは脳裏に残る映像でなく、ピンクに艶めく2重の襞とその上部に薄く生えた陰毛が、本能的にそこを滅茶苦茶にしたいと自分の思考のほとんどを占めるのだった 薄く妻自身の香りを感じながら、襞の一枚一枚を舐めとり、小刻みに声を震わせる妻を感じながら襞の合わせ目の膨らみを舌を押し込みつつしばらく愛撫すると、声にならない呻き声を上げて大腿で自分の顔を強く締め付けるのだった 左右の頬に感じる生足とストッキングの感覚がより一層自分をみなぎらせ、いつしか妻が力なく倒れ付すまで数回繰り返したのだった 後の妻によると、初体験ではなかったものの、学生の時に初体験し、ただ苦痛に耐えて、妊娠しないことを考えていたという レイプまがいかと心配もしたが、特に暴力的なつきあいでもなく、薄い恋愛感情を感じている間に、当時の彼氏に迫られ周囲の体験を聞く限り、そんなものかと行為したとのことだった それに比べると、この時のセックスは前戯で、初めての登りつめる感覚を連続で数回流し込まれ、すでに行為の前に体だけでなく頭も相当痺れており、もはや事前に考えていた程、服装で自分を誘惑して、リードするなど消し飛んでいたのだそうだ 自分のものは準備万端だったが、さすがに初回から避妊する程度の理性は保っており、もどかしくゴムをつける間も、妻は肢体をベッドに晒していた 衣服をすべて剥ぎ取ろうかとも考えたが、ずらしたブラジャーに大腿だけに残ったショーツとストッキングの姿は改めてみるに相当扇情的だった 豊かな膨らみは仰向けになってもそれとわかるほど盛り上がり、その頂点からやや上を向いた小ぶりな乳頭はそれまでの刺激でピンと立ち、強引に開いて刺激し続けた股間はいまだ閉じずに女性器はベッドサイドとランプを浴びて欲情的な反射を放っていた もはや、言葉で意思を確認する必要なく、最大となった自分をベッドサイドに露になった女性器に入り口だけあわせ、あとは一息に本能の求めるまま深いところまで侵入した 多分、ぐったりしていても、そのことを予知していたのか、瞬間に目が合い、そのまま妻が伸ばした手が自分の肩から首に周り、上体が重なりあう事になった 姿勢が変わったことで結合がより深くなり、妻の体内の暖かさが自分の根元まで感じられ、さほど動いていなくとも、奥から緩く刺激する幾重の襞を感じた それまで声をあげることを躊躇っていた妻が、この時から溜まらず、最初は抑えた呻き声から、艶のある声、そして明らかに女性が性的な歓びであげる嬌声へと反応を見せるのだった 最初の射精は純粋に繋がったことの喜びで加速がいや増し、数分の狂乱ののち妻の背筋が張り詰めたタイミングと2呼吸置いて訪れた 息が止まるほどの絶頂のあとは、そのまま深淵に落ち込むかとも思ったが、妻は満足げな表情で、自分の胸にもたれ掛かってきた 何か言うべきかとも考えたが、まわらない頭を自覚するだけで、そのまどろみを数十分楽しんだ後に、妻はシャワーに向い、その後に少しの会話をはさんで後ろから合体したのだった 結局、翌朝まで3回、チェックアウト前に1回の行為をした それから数ヶ月、妻の両親にも挨拶し、正式に結婚を前提とした付き合いに許可を得てからは、泊まりの旅行も可能となり、その翌年には結婚式を行うように結婚式場をみてまわることで週末を過ごすこととなった 自分の収入も大卒総合職としては決して高給ではないものの、さほど出費をしない生活のため、結婚式とその後に計画的な暮らしが可能な程度の収入と預金残高はあり、それに妻の収入とそれにみあった預金残高があれば、当面の暮らしは全く順調といえるものだった その翌年、まず申し分ない結婚式を開き、親族それぞれから祝福をうけ、ある程度心配していた地方の閉鎖性とも妻の実家は縁がなく、全く順風満帆の新婚生活を始めた 自分に関して言えば、順調に昇給し、仕事についても一定の評価を受けていることを実感できる程度にはこなしていた 暮らしも楽だったので、定例会議で本社に出向く都度、本社勤務の同期が過労や、重大過失で脱落していることを見るにつれ、自分の昇任について考えることなった 現在の職場では折から他事業部との統合、実際にはこちらへの合併を控えており、事業統合と生産集中のプロジェクト自体が大きなうねりとなっていることを考えれば、本社への異動を希望しなくとも、この地での一定の仕事・一定の生活が自分の希望する将来に最も合致するものと思われた 本社の人事部にも内々に希望を伝え、あまり得手ではないものの、職場と本社それぞれに根回しをしてほぼ将来に見通しを立てることができた 寮は独身か単身赴任が条件だったので、結婚と同時に、会社から程近い場所に比較的新しいアパートを借りた 築2年とのことだったが、居住者はおらず、内装は新築同様だったので、妻と喜んで部屋の調度品を決めたり家具をそろえたのだった それから2年、年に数回喧嘩もするものの、深刻でもなく、数日たってみれば互いに笑い会える二人だった 結婚の後、妻は仕事を辞めて、近隣にパートの仕事を探すつもりだったが会社からは強い慰留を受け職に留まることとなった 元々、仕事については妻も評価を得ており、賃金水準こと違えど事務員のなかでは存在感のある立場となっていた 職場から聞く話でも、身内である分聞こえる話を割り引いた上でも、その存在が事務員の活性化と勤続年数の延長に貢献しているとの事だった また、過去例が無い地方の事務員採用出身者が、社内応募の本社総合職に転任した件では、妻が主導したとの噂だったが、本人によると、後押しはしたが主導ではないとのことだった 本社の定例会議の時にあった当人によれば、まったく妻の啓発によるものだったとのことであれば、妻自身の昇任希望かとも思ったが、この点では妻は全くその希望はなく今の環境以外にはどこも行きたくはない、との事だった 共稼ぎで数年立てば預金残高も相当なものとなり、徐々に将来を見据えて子育てと住居を考えることとなった 自分は次男で両親が暮らす家を継ぐことはほぼ無いこと、妻の両親も自分が家を持つことは、妻自身の幸せと理解してくれ積極的な賛成をしてくれたので、この地で住居を購入することを決めた さすがに数千万の投資となるので、易々とは決まらなかったが、丸1年を掛けて検討した結果、自分も妻も妥協することなく満足する住居を選ぶことができた 会社からは通勤に数十分の距離となったが、環境が良く、旧来の因習に縛られるほど以前からの町並みに近くなく、でかけるにも、交通機関やインターチェンジが程近い好適な立地だった これから、おそらく過大な表現を使うなら終の棲家となる家なので、当初から愛着があり、アパートの運びいれた当時より数段高い基準で調度品を選定し、また居住人は2人なものの、初めて手に入れる我が家に幸福を感じる毎日だった それは、新居に越してから半年たった時のことだった 帰宅すると、普段から自分より早く帰宅する関係で近隣のスーパーで買い物をし、帰宅時間あわせ夕食を準備している筈の妻の顔が消耗しているように見えた なにより肌寒くなってきたところに生足で、からかってみたが反応は芳しいものでなかった 何事か尋ねてみたところ、仕事で疲れた、とのことだったが、数分で慌しく表情も変え夕食の支度を始める頃には先の心配も杞憂と思えるようになっていた 人口の多くが住む地域に比べ、この近辺はこの地域の新興住宅地といって差し支えなく、インフラは整っているものの住宅はまだ多くはない ここに新聞配達を受けることも、また同じ料金であることも、特に昨年の様に度々の降雪時には気の毒とも思うが、ともかく毎日門扉の郵便受けまで新聞をとりにいくのも自分の日課だった その日は、新聞をしたから引き抜くと当時に、新聞に挟まった紙片が見えた 紙片にはなんらかのインターネット上のアドレスと、それ以外の長い文字列が印字してあった アドレスには心あたりはなかったが、なんらかのファイル交換サービスらしいことは見当がついたので、1階の自室のPCで接続してみることとした 本来、見知らぬ他者から預かったアドレスに接続するなど、危険な行為と承知しているが、仮になんらかの業者が広告目的で配布したなら、この様な辺鄙なところをターゲットにする訳はないし、紙質からして広告用より高級な用紙らしいことが気になっていた まだ朝は早く妻が起きる前に新聞を取りに行くことも、週に半々といったところで、やや寝ぼけたまま指定のアドレスを入力し、パスワードを求める欄に半信半疑で長い文字列を入力したが、集中を欠いたことと、ご丁寧に大文字小文字を判別するものだったため、3回目の入力で漸くサイトに接続の表示となった どうやら、テキストファイルとビデオファイルのダウンロードと見て取れ、サイズは1ギガほどもあった さすがにダウンロードについては暫く考えたが、ダウンロード後と解凍後にそれぞれウイルススキャンすることとして、とりあえずクリックを進めた どちらのファイルもウイルスの反応はなく、開いてみることにした 次の数分間の記憶は定かではない 画面には、紛れもない妻が写っていた 最初は良く似ていると思った程度だったが、徐々に嫌な予感と共に仕草・髪型・ネックレスなど妻本人でないことの証明が無くなってゆく 服装は昨日帰宅時に身に着けていたもので、薄手のブラウスに黒字のカーディガンに同色のプリーツスカートに濃い目の黒のタイツだ 場所は風呂の様だが、画一的な場所なので、自宅の風呂かは自信がもてないところだ やや、嫌な予感がしたが、まさか妻のドッキリかとも頭の片隅で思うところもあった なぜか妻は表情が硬く、自分が過去にみたことのない表情だった 無言の妻は透明な筒状のものを取り出し、それになにかの粘液をまぶしていた それが、いわゆるディルドであることは分かったし、これからしそうなことも予期できたが、依然何のための行為なのか、何故するのかはまったく分からなかった 万一妻の悪戯にしても、これは度が過ぎているし、そもそもそんなことをする性格でもない 思考しているうちに、妻は画面の中でスカートに手を入れ荒っぽく秘所を刺激し、もう充分と判断したのかタイツを脱ぎ、黒いショーツを脱いでゆく やや画面には影となる範囲をのこしつつ、妻はバスタブの縁にもたれ掛かるように腰掛け、浴室の照明に淡く照ることが受け入れることを可能と示している秘所を片手で少し広げ、そこに強引にディルドを突き込んだ さほど濡らしていなかったのか、妻は表情を歪めて暫くゆっくりとディルドを抜き差ししているが、これで妻が自らのぞんでしていることでないことは分かった 仮に自分に送ったものならば、あるいは初めてのセックスの時の様に誘っているならば、わざわざ苦悶の表情など浮かべるような行為をしなくても良いからだ これで、この撮影は昨晩だったことが確信できた 妻はさほどランジェリーにこだわるほうではなく、ブラジャーとショーツのセットで5千円程度のものを普段購入している 画面でみた黒の下着は、昨年ふざけて自宅でストリップなど話していたときに買ったものだった 妻の下着の中では、比較的セクシーなデザインで正面はともかく、後ろがTバックほどでなくとも尻の半分もカバーせず側面がバンドになっている自分にも記憶にあるものだったからだ 普段滅多に妻がそれを着用することはなく、生理明けなど、まず妻が誘ってくるときにわざとみせるときに家の中でだけしか着ず、行為が終わってからは洗濯籠へ行くものであるところ、昨晩は風呂上りに洗濯籠にタイツを発見し、帰宅時に生足だったことを単に脱いだだけと一人得心した後、その下にこのショーツがあったからだ そのときは既に妻は普段どおりとなっており、その点も聞くことはなかったが、衣服も下着も同じことなど自分はともかく女性である妻にはそうあることではない 画面ではカメラに視線を向けることなく、妻はディルドの下部をバスタブの縁に固定し、プリーツスカートに隠れて秘所のディルドの行方は見えないものの、おそらくを股間にはさんでバスタブと浴室に跨り腰を下ろしていく 横を向いているので表情は見えないものの、ゆっくりと体の上下の動きは早まっている そして音声はごく微弱なものながら呼吸に混じって、呻き声が上下動のそれぞれの頂点で僅かに聞こえる しばらく放心したように眺めていたが、我に返ったときには、今朝妻の顔を見ることができないことだけは確信していた すぐに身を整え、妻には用箋に、所用で先に出社することを告げて家を出た 出社の途中でも、考えが全くまとまらず、電車の乗り降りにも慌てる始末だった とにかく順を追って解決することを自分に言い聞かせ、まずはメモリに保存したダウンロードファイルを確認することを優先することを考えた 会社にも自由になるPCはあるものの、情報セキュリティの面から、まず考えられない ならば今日早退して自宅で確認するか、これは自分が早退すれば妻の職場にも知らせがいく可能性もあり好ましくない とるべき手は、出張として偽りの用件で外出することだ 幸いに一定の裁量は任されるようになっており、成果を報告する限り勤務についてつぶさに見られたことはない あるとすれば、以前のように他者の参考になるように研修の受け入れだが、この時期に研修受け入れの話もない 早速、辻褄があうようにスケジュールを調整し、午前中には事業所を出た 万一自宅でなんらかの理由で監視されていた場合の難を避けるため、電車で数駅の地方都市にでて、インターネットカフェに入った ある程度移動中に考えをまとめたものの、妻が望ますしている行為と、それが自分に知らされた理由に説明が付かないまま、PCを起動して持参したメモリを参照した 映像については後に参照することとして、先にテキストファイルを確認することとした 「ご主人へ」 「あなたの奥様には次のお願いをしました」  「1.まずご自身の写った映像ファイルをみてみてください」  「2.それが拡散した場合を考えてみてください」  「3.今の仕事を続けることはできますか?」  「4.そこに住み続けることはできますか?」  「5.ここまで理解して、私のお願いを叶えて下さるなら、メモリビデオカメラを購入して下さい」  「6.透明のディルドを購入して下さい」  「7.セクシーな下着でオナニーを撮影して下さい」  「8.ディルドをオマンコにいれてオナニーを撮影してください」  「9.次に示すアドレスにファイルをアップロードしてください」  「10.定期的にお願いをするので同じアドレスを確認してください」  「※明日中にファイルが確認できない場合はファイルを公開します」 「ここからはご主人へのメ��セージです」 「奥様はとても魅力的です」 「誠にお気の毒ですが、私は奥様の体にとても興味があります」 「ビデオファイルをご覧いただけばお分かりいただけますが、奥様は既に覚悟をされています」 「奥様の覚悟は、あなたを守るためでもありますが、その点を充分にご理解ください」 「これから数点のお願いをすることになりますが、それを受けた奥様の覚悟を無駄にされないことを切にお願いします」 「それによりお願いが叶えられない場合には他のサイトも含めパスワード無しで全ファイルを公開します」 「奥さんが開発される様をともに楽しみましょう」 読んで愕然とした 妻がしていたことに納得がいったのだ 単純な脅迫だが、逃げられない 自分の写った映像が分からないが、それは困るものなのだろう、妻がこの要求に屈するほどに ここに働き暮らすことを選択した以上、それ以外の選択肢はもはやない 既に本社異動はここでの勤務確約とのかたちで方々に根回ししてあり、住居については20年のローンとなっている 万が一、元の映像でなくても、昨晩の映像だけでも自分と妻の将来を破壊するに充分と思える かといって警察に駆け込んだところで、最悪自暴自棄となった犯人がネットに公開すれば同じこととなるのだ どんな手を考えたところで、犯人を特定し、その犯人がいわゆるデッドマンスイッチを仕込んでいない場合にのみ捕まえることができた場合、この場合にだけ解決ができる 犯人が複数の場合、捕まえる前に気付かれた場合、そのほかどんな場合も結果は自分と妻の終わりとなる ふと、犯人を考えてみたが、仕事に触れていることから、現時点では妻と自分が同じ職場で働いていることをしっているらしい、こと以外は何も分からない 焦燥感のみ溢れ、なにも解決の一歩も踏み出せないまま、映像ファイルの上気した顔を天井に向け、上下動から僅かに前後の動きが加わった妻を見ていた 画像の妻は手をバスタブの縁と壁面に当てながら徐々に動きを増している 首筋からうっすらと汗が浮かんだのか光を反射し、腰の動きに合わせて揺れる胸の動きに目が離せなくなってゆく ふと、何故胸を見せないのだろうと、頭をよぎった考えを、自分自身を殴りたいほどに後悔する 頭が加熱していることを感じつつ、手は股間にのび、画面に吐息で曇りを映すほどに近づき、すでに済んだ行為としりつつ、妻を救うことができなったことと、扇情的な妻の腰振りを見つめた 5分もたっただろうか、深いグラインドから、先端を少し食い込ませた程度に見える浅さで妻は小刻みに動いていたかと思うと、絶頂に達したものとみえ、背筋を張り伸ばし、数秒固まった末に、力を失ったように腰を下ろした が、この様な異常な性体験のない妻は、自分の股間にあるものは、自分との性交のように絶頂のあとは都合よくしぼむものと考えていたのか、あるいはそこまで考えられないほど、その透明に屹立するものに追い詰められたのか、敏感となった秘所に深くディルドを突き込むこととなってしまった それまで、僅かな甘い呻き声と、秘所の立てる淫猥な雫の音の他、目立った音はなかったが、この時は妻は異様な声を響かせるのだった 例えるなら、断崖絶壁にしがみついていたが、無力にも握力の限界で奈落に落ちるときに声といえるだろうか その声で、間違いなく妻であることを確信することになった 夫婦のセックスで、深く突き入れるときの声と全く同じだったからだが、妻を乱れさせることが自分でなく、バスタブの縁に固定され、その無機質な下部分だけが見えているディルドという事実に、また、達した妻を、いまさらに深く抉り、ほとんど股間を縁に擦り付けんばかりに妻の性器が飲み込んでいるものが、自分でないことに情けなさを感じつつも、何故か感じたことのない快感が登りつめるのだった 画面の妻をそれに答えるように、カメラに写されているために上下動を見せるのでなく、ただ下腹部をかき回す存在を鎮めるために、やや前のめりになって腰を縁に落とし前後に、快楽を得ていることが明らかに分かるほど動いている それは最初のような機械的な動きでなく、動き始めの滑らかさと数センチの引きずる感覚に、止める間際で甘く微動する淫猥な快楽を貪るための妻の腰が、性器がディルド全体をフェラチオするかのような動きだった 顔にかかった髪でよく表情は分からなかったが、一心不乱に紅潮した顔と、だらしなく涎を垂らす唇もまた欲情を誘った 動きが早くなることもなく、そのまま数分同じ姿が映像に写しだされ、スカートに隠れディルドが妻を貫いているであろう箇所からは、幾つかの液の筋がバスタブの壁面をつたっていた 同じ動きから、数度痙攣するように体を震わせた妻は、緩慢な動作で股間を後ろに引き、たくし上げたスカートの前面からは、いままで妻の性器と内部で荒れ狂ったのか歓待を受けたのか、引き抜かれたディルドが液を引かせつつ姿を現した 最後に妻の体内にあって斜めになっていたものが、弾力のある素材のためか、すべて引き出されると同時に二三度勢い良く震えるのだったが、それは無機質なディルドが、自分に妻を堪能したことを告げているようにも思われた 妻は放心の体ではあったが、深く呼吸しつつ、視点の定まらぬ一種無表情ともとれる顔でこちらに近づき、手を伸ばしたと同時に映像は終わった 考え必死に音を立てず歯を食いしばりながら無力さをかみ締めながら、射精しかつて無いほどの快感を得たことに自分の心を蝕みながら、店をでた 長い時間を過ごしたように思ったが、実際には、2時間半程度の時間だったので、元々予定していなかった取引先を訪問し、所用を済ませて帰社した 考えることは尽きなかったが、むしろ映像で見た妻の姿は自分を昇天させるに充分であり、一回射精してからは、頭も冴えたようで取引先への訪問でも、一切不審さを気取られることはなかったと思う 取引先との交渉で白熱した議論を行い、合意に達してからは、急な訪問でも成果を生み出したことで先方とも友好的な空気を手に入れることができた 帰社の電車でも報告書案を頭の中でまとめ、不思議なほど朝からの混乱が引いていくことを感じていた 帰宅後、妻はいつもどおり夕食の支度をしてくれており、普段と変わらずに見えた 恐らく昨日の今頃は映像にあったような痴態であったところ、落ち着いて食卓をはさんで摂る食事は美味しく、この現実と、映像の非現実の妻が同じとは思えないのだった ふと会話をとめ、そんなことを考えてまじまじと妻を眺めていると、不審がったり、微笑んだり、最後には少しふくれたりする妻には普段と変わりないことを感じて安心すると同時に、恐らくこれだけで終わることのない妻への仕打ちと、このささやかな幸せの時間は妻の犠牲に成り立っていることを忸怩と思わねばならない自分と、妻の痴態へ劣情を催した自分にいいようのない不安を感じるのだった 夕食の後、風呂に入り、映像どおりの変哲のない浴室に、徹底的に掃除したと思われる形跡を見てとった 既に覚悟はしていたが、排水溝の端に、本来あるはずのない、性行為にしか使うとは思われないローションらしいヌメリを探りだしたことに陰湿な満足を覚えたのだった それから数週間たち、心の片隅では期待するところもあったのだろうか、定期的に海外のファイル共有サービスを確認したが、特に変更されたものはなかった 妻とのセックスも、結婚してから変わらず週に二三回で、付き合い当初の熱情的なものでなくても、性に乱れた妻を抱くことができることは、愛の発露としてだけでなく、男性的な欲情をも満たすことができ満足できるものだった 妻からも、そのことを告げられることもなく、匂わす程度に話すこともなかった 卑怯とも思いながら、可能な範囲で、犯人を考えたが、対象者が多すぎ日中の時間が仕事にとられている身としては取れる行動もほとんどないのが実情だった 最初に妻があの映像の行為に及ぶにいたった契機にビデオというものが気にはなったが、まさかこちらよりその映像を所望する訳にもいかない 一応、外からの盗撮である可能性程度には思いが至り、自宅の周囲には植木による塀を巡らすこととした 特にこの地域では珍しいことではなかったが、新しい住居に備えることは多くはないようで植木屋の老人もしきりに自分の判断を褒めてくれていた 妻には正直な理由も話せるはずもなく、ポツポツと建築現場が増えてきたので、後々植栽するなら、近隣トラブルとなる前に植栽をしたほうが有利なこと、妻の実家の植栽が前から好きだったので、自分もいつかは庭にこれを植えたかったことなどで説明した 妻の実家の植栽は実際に見事であり、それを自宅に揃えたいと思ったのは本心からだが、このような契機でもなければ、相当優先順位が下がったものだっただろう 妻の実家でも、都会の生まれで地方の妻を娶ったにもかかわらず、地域の伝統を大事にしているとのことで誉めそやされ悪い気はしなかったものの、さすがに妻の実家では複雑な気分になった 季節も春を迎え、コートをクリーニングに出し仕事では新卒研修の初々しい面々から挨拶を受けるなど気持ちの良い暖かさを感じていたころのことだった 2月あたりまでは、欠かさずファイル共有サービスをチェックし、万が一、妻の映像が流出していないか気をもみながらさまざまなサイトを夜な夜な彷徨っていたが、寒さが緩む頃には、4ヶ月も経てば忘れられたのか、犯人が別件で捕まったのではないかと期待することもできた ある朝、遠くで鳴くカラスの時ならぬ声に目覚め、まだ黎明の空を眺めながら寝室から新聞を取りに玄関にでたときだった 既に忘れていたのだが、問題のサイトを最近チェックしていなかったことを思い出し、妻が起きだしていないことを伺ってから自室でPCを立ち上げ、接続した 「!!っぅ」 声にならないショックが画面から自分を引っ叩いたようだった 従来表示されるままになっていた画面から、先日の動画ファイルが削除され、新しいメッセージファイルが置かれていた テキストファイルだけなのですぐにダウンロードして、内容を確認する 「ご無沙汰しておりました」 「今回のお願いをお伝えします」 「1.次に指定するバイブレーターを購入してください」 「2.購入し準備ができたら、それを挿入する姿を映像に収めてください」 「3.映像を確認したらお知らせする指定の場所にバイブレーターを挿入して向ってください」 「4.そこでは少なくとも4時間滞在していただきますが、お手洗いなど閉所での滞在は不可です」 「いずれも着衣はTPOに合わせたもので結構ですがパンツは避けてください」 「※このお願いの1週間以内に動きの無い場合には警告をします」 「以上が奥様へのお願いです」 「今回はご主人にもご協力をお願いします」 「指定の場所は、xx県xx市のショッピングモールです」 「バイブレーターは同じものを購入してください」 「このタイプのリモコンの電波可能範囲は約200mです」 「奥様に見つからないようにリモコンのみ所持し、ショッピングセンターでは期待に沿う映像を撮影してください」 「映像はこのサイトにアップロードしてください」 驚いたことは、この内容だけでなかった ファイルがアップロードされた日付は日曜日で、今日は水曜日となると、購入する時間は後4日間しかない ショッピングモールは内容からして休日にいくこととなれば、それまでに手に入れる猶予は2日間となる しかも、今週の妻の行動からして購入したそぶりは無いので、妻も同様に最近はサイトを確認していないのだろう 警告がどのような形をとるか分からないものの、不愉快なものであることは容易に想像がつく この下劣なお願いを拒否したところでは、それ以上に生活を破壊するようなことになるのであれば、選択の余地が無いことは想像できた 必ずしも望んで、ではないが、まずは妻にこれを知らせる必要があるが、直接知らせることはできない まして、今回は自分も参加することとなれば余計に慎重にかつ期日までに実行しなければならない 自分もあまり妻に隠し立てすることはなかったが、妻に不審さを感じさせない方法で、妻に自らサイトを確認させる方法を考えねばならなかった 漸く明るくなった空を仰ぎ、不意に勃起している自分の身体構造と、少しでも妻の痴態を想像して如意ならぬ興奮を感じている自分を悲しむことしかできなかった 新聞を読み、印刷したてのインクの香りを嗅ぐとアイデアも浮かぶのだった といっても、自分のPCの調子が悪いことを妻に告げ、妻のPCを使用しようとすれば、当然妻は止める筈なので、それが契機とならないか、程度のものだった 他に名案もなく、残された日数からしても実際には今日明日には妻が購入することが必要だ 快晴の空に洗濯機を回し始めたころ妻は起きてきた 暢気に朝食の支度などしているが、ある程度強引に進めることとして、妻がコンロに火をいれた音を聞いてから、調子が悪いので、妻のPCを借りることを2階から告げる 数瞬の後、妻はスリッパの音を響かせて走ってやってきた 自分のPCの調子が悪い証左にあらかじめ設定を消去しネットワークエラー表示を妻に見せる 妻の反応はやはり落ち着いており、もう出勤時間も近いので準備している朝食を落ち着いて食べて欲しいこと、取り分け急ぎでなければ会社で見ればいいことなど宥めるように言うと、階下に下りていってしまった やや、拍子抜けの反応とも思ったが、少なくともPCの利用をさせない意図を確認できたので所定の目的は達したのだった 出勤時間は自分の方が早くでている 結婚しているのだから二人で通っても良いのだが、出勤時間が遅い事務員で妻が早く出社すると、ある種のプレッシャーをあたえかねないとして、結婚後、数回通ったのみで断念している 脳裏には、妻の行動が残ったものの、なすべきことをすれば、特に考えることもなく一日の課業を終えた この日にも自分のバイブレーターを購入することを検討したが、購入することのできる店も数軒しかなく、交通機関が電車に限れば、ほぼ一つに限られるため、無用のリスクは避けることにし帰宅することとした 家は明かりが灯っておらず、妻が帰っていないこと、それは恐らく計画通りであることにささやかに安堵しつつ夕食の準備を整えて妻の帰宅を待つこととした 予想していたより妻は早く帰宅し、少し普段より陽気な姿に訳を聞くと、週末に学生時代の友人と会うのでお土産など探していた、との事だった ご丁寧にこの地方名産の菓子など買っており、自宅用にも買ったものを夕食後に食べよう、などと誘われると、自らの行為は、妻の犠牲を無駄にしないことに名を借りた、ただの性的欲求解消のために妻を慰み者にしていることに過ぎないのかと暗澹となるのだった 翌日も日の出前後に目覚め、PCを確認する いつもと変わらぬサイトの接続に必要な、長いパスワードも最早覚えてしまっていることには自分でも呆れることだった 恐らく、妻用のサイトと自分用のサイトは別だと思われるが、すでにお願いのファイルの他、外出場所の指定メッセージと数百メガの動画ファイルがあった 早速ダウンロードし、タイムスタンプをみれば昨日の晩となっていた 最初はごそごそノイズと時折漏れる光の他は暗い画面だったが、漸く落ち着いた画面には、昨日の妻がトイレの個室に腰掛けていた そこそこの広さがあり、音楽が聞こえることを見ると、地方都市にある百貨店と思われた 白のブラウスにベージュのジャケットを羽織り、長めのウールのプリーツスカートに黒のハイソックスといった普段どおりの落ち着いたスタイルだったが、俯いた表情は諦観したような、といって普通に想像される悲しみの要素は見当たらないものだった 後に、ある場面で思い出したのだが、それは、諦めと期待と快楽の混合したものだった 画質は先日のものより良く、恐らくスマートフォンをドアに立て掛けて自らを撮影したもののようだった 既にショーツはハイソックスに掛かるあたりまで引き下ろされており、かた一方の脚はショートブーツを抜いて便座カバーの上に載せていた 撮影がそこまで鮮明に載らずとも、せいぜい立って下から入れました、程度に撮影すれば良いとも思っていたが、妻には自分と別に撮影の内容がお願いされているのかもしれない ただ、2回だけのやり取りを見るに犯人は相当狡猾な反面、行動にブレは感じられず理性的とも考えている たとえば、脅迫のやり取りに安易にメールを使わず、海外のファイル共有サイトを使っていることは、本人特定をほぼう不可能とする点で優れている まったく同情する余地のない犯人に妻が2度までも秘所を見せつけていた事実は、怒りの感情を生むに充分だった 本当なら必要の無い撮影に、携帯からではおそらく位置情報なども付属したまま送信したのでは、相手に付け入るスキを与えるばかりだった いつかの暮れに見とれた魅力的な曲線を描く妻の脚に柔らかに繋がる太腿とその間に恥ずかしげに収まっている秘裂と帽子を被ったような陰毛は、それまでにみたどんなアダルトビデオより興奮を誘うものだった 既に包装から取り出してあった比較的小振りのバイブレーターを潤滑剤代わりに妻は一心に嘗め回すが複雑なくびれをもつ電波式の内蔵式バイブレーターは、普段の夜にその性器を埋める所有者である自分から見ると、卑劣な簒奪者に見えるのだった やがて妻はバイブレーターから口を離すと、不意にそれから目を背け、視線をトイレットペーパーホルダーにむけた そちらになにかあるものと思ったが、画面に見える範囲にはそれ以外になかった と、妻の手にあるバイブレーターは少しずつ手を震わせながら性器に近づいてゆく アダルトビデオの展開では、脅迫された妻があっけなく快楽に身を任せるのだが、見知らぬ犯人の屈辱的な指示にしたがうことは相当なストレスであるとは思うが、あくまで妻は落ち着いているように見えた 精神的に不安定になることもあるだろうし、不安に苛まされることもあるかもしれない しかし、妻の表情はあくまで淡々とし、嫌な仕事を片付ける程度の表情でしかない それはむしろ、この映像をみる者に一切の欲情を抱かせない妻の決意の様にも思われ、その事務的な表情と、普段着でありながら非日常的な姿勢で、股間に異物を挿入するため股間を開いた姿のギャップは既に自分のものを勃起させるに充分だった おそらく妻は、そのような器具の使用経験が無いようだった 澄ました表情で隠しているようだが、明らかに先端を押し当てているのだが、自らの挿入口の形状はよく理解していないように見え、押し込んでは引きだすことを数回繰り返していたが、その際、僅かに割り込んだ小陰唇から切なげにバイブレーターが引き抜かれるときに、最後までバイブレーターの張り付いていたまるで唇のような襞には潤いが見えていた やがて、妻はため息を一つつくと、それまで立てたひざを抱えていた腕を放し、その指を下腹部に伸ばすのだった 妻の指は、さほど飾り気のあるものではなく、爪を磨く程度の手入れしかしないものの、しなやかに下腹部から太腿の裏側を通り、クリトリスの弱く刺激したのち、また下腹部を手のひらでなでる動作を繰り返していた 画面のその部位だけに集中すると、妻の体を、誰かが刺激しているように見え、いいようのない悔しさがこみ上げるのだった 最後に妻は中指を立て、少しひねりながら、回しこむように性器に挿入していった 差し込んだ手は暫く動いていなかったが、その間の妻の表情を消した顔に、淫猥な姿が走ったように思われた なぜ差し込んだままであるのか不審にも思ったが、手の内側にある腱が伸び縮みしていることは、妻の体内に埋もれた指は何かを探すように動いているに違いなかった 数分でしとどに濡れた指を出し、そこにぬめぬめと再度咥えたのちに唾液で光るバイブレータの先端が妻の性器にあたり、呆気ない程抵抗なく挿入されていく さすがに場所もあり無言で、複雑な形の玩具が妻の性器の内部に触れている姿を妻は自ら撮影している 差し入れた器具を動かすこともなく、暫く俯いていたが、やがて深いため息をひとつ漏らし、片手で傍らの台に置いていたリモコンを取り上げスイッチを入れるのだった。 電源投入と同時にその動作を予期していたのか妻は眉間に皺をよせ、耐えるような表情を浮かべていたが、その時点ではどうやら動作していないようだった。 妻は数度スイッチをスイッチを動かしていたが一旦リモコンを傍らに置き、自らの股間に挿入した器具に触れた。 改めて全体像を見ると、普段の仕事と変わらぬ服装の妻が便座カバーに腰掛け、片足を上げた状態で股間を広げ、その秘部には、白い器具が埋まっており、それだけで日常の上半身と非日常の下半身が画面の上下でまったく相反していることに強い欲情を感じるのだった。 妻は自らを抉る器具をそろそろと引き出していたが、フック状の形をしたそれは下に引き抜くことはできず、やや腰を浮かせて手前に引き抜く形となったが、その際の姿勢はカメラにむかってぬめぬめと濡れた秘部を見せ付けているようで、ずるずると引き抜かれる途中にも妻のピンクに光る肉は器具を惜しむようにその形にぴったりと張り付き、やがて先端が抜けるときにはそれが収まっていた穴がほんの数秒だけ黒い形を留め、やがてもとの通りにぴったりと張り付くのだった。 元の通り腰を下ろした妻は、まるで釣り針のようなその器具をしげしげと眺めていたが、再度リモコンを手にとりスイッチを入れて仔細に動きを確認していた。 おそらくその素材はなめらかで弾力に富む素材なのか、すこしゆれるだけで卑猥に震えそれが先ほどまで妻の体内に埋まっていたことを考えるとつい怒りを器具に向けてしまうのだった。 スイッチをいれただけでは動きはなく、妻はリモコンの側面にスライドスイッチを見つけたのだった。 妻はスイッチを一気に動かしたため、撮影しているカメラのマイクにも音が拾える程度の振動音が響き、慌てて妻はスイッチを戻した。 音声にその音が聞き取れない程度の動きに抑え、再度妻は先ほどと同じように腰を浮かせて股間を広げ、秘部が開いて小陰唇まで見えるところへ器具を差し込むのだが、見た目ではほぼ動きのないそれは微細に動いているのか、先ほどの挿入とは異なり、先端をつけるだけでなかなか咥えてゆくことができないようだった。 数回それを試みた後、一旦スイッチを切ってから腰を下ろした状態で腰を前方に突き出し上げていた片足を下ろしてから、自らの手で挿入箇所を確かめているようにも見え、また挿入を助けるように肉を広げているようにも見えるのだった。 恐らく動きをとめた器具は先ほどの数倍のスムーズ差で再度妻を貫いてゆく。いや、貫くより悪く、妻の体内の快楽を呼ぶための形状は今妻の体内でその形をそれぞれ満たしているのだった。 もはや妻の痴態で最大限に伸張した自らのペニスに触れずにいることはできず、それをなでながら眺める自分の前で妻はリモコンのスライドをゆっくりと動かしセレクタの真ん中あたりで動きをとめると、不意にリモコンを握り締め腰を突き出したことで若干仰け反るようになっていた背中を起こし、屈みながら訴えるような視線をカメラに向けるのだった。 無表情から思った妻の顔は確かに何ら痛痒を感じているようではなかったが、時折眉間に寄せる皺と、徐々に上気した表情が股間を埋める器具と相まってかつてないほど嫉妬を感じるのだった。 そのまま数分が過ぎころあいを見たのか、妻はバイブレータを取りだしたが、そのときにこぼれた液は、先についていた唾液よりも濃い粘液だった。 また、引き抜く前に、器具に密着した自らの性器の周りをなぞるように指がまさぐっていたのは、抜くための準備ではなく、それの伝える快感を確かめていたのではなかっただろうか。 先ほどより数倍の遅さで徐々に器具は姿をあらわし、その先端が出たところで弾性が体内から抜ける方向と異なっていたため妻の女性器の上にあるクリトリス辺りを先端がなでるようになった。 その瞬間妻は僅かな音をマイクが拾う程度にあえぎ声をもらし、いまだ器具を恋しげにその埋まっていた形を残す性器は明らかに血色がよくなり当初のピンクから、濡れて淫猥にピンクに光っており、キスの時間近でみる妻の唇を連想するのだった。 数分座りながら俯いていた妻は、やがて性器のあたりを確かめ、ショーツを引っ張りあげるところで映像は終わっていた これで妻の準備は整ったため、自分は金曜日に定時で会社を出で、おそらくは妻が向ったと同じ店で、昨日の記憶も新しいバイブレーターを買うのだった 翌日妻は朝食の後、いそいそと出かける準備をしていた。 妻は自分のクローゼット前で着替えすることが多いので、その脱衣着衣を除いたことは僅かしかなかったが、今日のことを考えると、妻の装いが気になってやまないのだった。 化粧台にむかう途中の妻の服装は紺のブラウスに紫のニットをあわせ、濃い目のグレーのタイツに黒のシフォンスカートという普段とあまり変わらないものだった。唯一異なる点は、普段の仕事時は黒のタイツ・ストッキングのところが、みなれないグレーのタイツであることのみだった。 いつもの通り、特に気を張らないように場所と帰宅時間を尋ねたところ、本来の行き先と異なる別方向の駅のショッピングモールを知らせ、帰宅は友人と食事をしてから22時頃になると思う、とのことだった 内心の動揺を抑え、妻への指示を考えると、現時点で既に妻の体内は器具を飲み込んでいると思うと、怒りより先に欲情の感情がもたげるのだった。 普段より念入りに時間をとって化粧した妻は美しく、これが今日汚されると思うと全ての秘密を明かし、どこか遠くで新しい生活を送ることを言い出そうとするのだったが、決して認められない自分の脳裏に妻の痴態とその快感が浮かぶと、声を上げることができないのだった。 車で駅まで送ることを伝えると、普段と変わらぬ笑顔を自分に向け、感謝してくれたが既に妻の笑顔の下に服装で覆われた裸体を想像してやや勃起しつつある自分を静めることに集中しなければならなかった。 駅で妻を降ろし、ロータリーから車を発進させ駅から見えない範囲のコンビニの駐車場にとまった。 人目が無いことを確認してから、鞄から昨日手に入れたバイブレータのリモコンを取り出し、改めてその作動を確認してみた。それが妻の体内で脈動したときの妻の感覚は分からなくても、その卑猥な形の下側、体内に収まったときに、外側に位置する部分は、本体と別に動くようになっており、素材がまるで固めの蒟蒻のような部分は手前側に反っているのでそれが妻の性器の上側に位置する一番敏感な部分に当たることは想像がついた。 他の女性経験もあまり無いので妻が女性として敏感か否かは判断しようがなかったが、営みの際にそこを刺激することで妻の内部の湿���が増すことは経験的に知っていた。じっと車のなかでそれを見ていると、自分が妻を陥れる一端を担っている、立場が半ば強制されているとしてもそれが許されないことは容易に判断でき、避けようのない事態としても暗澹たる気持ちになるのだった。 数分そうしていただろうか、行動を起こさねばならないことに気付き我に返った。既に動き出してしてしまったことで、ここで一日過ごしたところで事態が好転するとも思われず、むしろ妻の行いを無にすることを自分がすることは更に事態を悪化させる可能性もある。迷う自分を振り捨て、単に作業をするだけと自分に言い聞かせつつ、妻が向かったであろうショッピングモールへカーナビをセットしたのだった。 さほど渋滞もなくたどり着けるようだったが、まず電車から自動車が見えてはならない経路で向うことと、現地でもショッピングモールから容易に見渡すことのできる範囲には駐車することができない制約が道順に熟慮を要した。 また、思えば休日といえばほとんどが妻と過ごしており、その際の服装などは昔と変わらずラフなもので気を使うことなどあまりなかったのだった。もとから衣類は多く持っておらず、服装から妻に気付かれては今回の企みが失敗し、犯人の怒りを買うことにもなりかねないので、安価な衣料品店に寄り、店頭に陳列してあったジャケットとそのなかに着込む薄手のパーカーを買ったのだった。 購入時にその場で着ていくことを言い出せず、車に戻ってから車内で着替えているとミラーに写る自分の姿は、普段の休日の自分ではなく、なにか浮ついた姿に見え、それが自分の内心を移しているようでより行動することに気が重くなるのだった。晴れない気分のまま車を走らせ、線路沿いを避けた旧国道をまわる迂回ルートをたどり、最近発展したショッピングモール付近を避け、旧市街のタワーパーキングに駐車することとした。 当日の行動については、妻の移動経路を含め情報はなく、自分の手にあるものは撮影用の携帯電話とバイブレータのリモコンだけだった。おそらく犯人は妻の羞恥心をあおる行動にでるとの仮定から、比較的見通しのよい喫茶店あたりに妻を向わせる筈と考え、またそこなら妻に遭遇することもないため3階の駐車場から暫くそこを監視することとした。 休日の人通りは多く現れては消える人ごみから妻を見落とさないために、常にそこを見守っていることは思ったより大変なことだった。既に一時間が過ぎ、妻の姿は見えず、位置を変えるべきか迷い始めたころ、朝に見た妻の姿と同じスタイルの女性を見つけた。 こちら側の建物から歩いてきたものらしく、後ろ姿でしかなかったが、喫茶店に入るまでの数秒にみた服装の配色に間違いは無かった。ただ、髪色がほぼ黒の妻と異なり明るめの茶色だったことが奇異だったが、それは変装しているかも知れないとすぐに納得できた。妻は犯人の目的からテラス席に座るものと思ったが、暫くしても見通しの効く範囲には姿は現れないままだった。 それから十数分待ってみたもののやはり妻の姿は見えず、奥のシートに向ったようだと判断し、監視位置を変えることにした。あくまでこちらの姿を見せる訳には行かないので、喫茶店の奥側を見渡すことのできる場所は、建物を離れDIY用品の販売エリアの屋外にあるガーデニング関連用品売り場だけだった。 経路も慎重に検討し、駐車場の外階段から一旦モールの外に出て、半周外側を回ってから目的の位置に移動した。 既に妻が移動していることも考えに入れて、周囲を気にしつつ視線が不自然にならないように移動することは、快適といっても良い気温のなかでも汗ばむほどの緊張感の中に自分を置くのだった。適度に興味の無い庭木を見やりつつ、濃い目のガラス越しに妻の面影を探していたが、先ほど見えた範囲と現在の視野をあわせても妻の姿は無かった。 次第に自分の中に恐慌をきたしている精神状態を抑えつつ、ひたすら落ち着くことを自らに言い聞かせ、一旦駐車場に身を隠したがこの先の自分の行動を考えかねていることも事実だった。 犯人が妻に与えたメッセージを再度確認し、他に可能性のある場所を全体の案内版から見ていると、10数メートル離れた駐車場の事前清算機に前に妻がいた。 慌てて駐車場のトイレに隠れようとしたが、既にそのときには妻は機会から振り返りこちらを見ていた。と、すぐにその女性が妻ではないことに気が付いた。思えば朝の時点でグレーのタイツであったところ明らかにその女性は黒に模様の入ったタイツを着用しており、その表情も常に妻が自分に向ける視線でなく、全く周囲に興味が無い風の醒めたものだった。 体型も異なり、髪色も違うところそれを妻と確信していた自分にやや嫌気が差したものの、問題が解決したわけでもなく午後も続いて定期的に場所を変えつつショッピングモールを回っていたが、晩になっても妻を見つけることはできなかった。 既に時刻は19:00となり朝から食事も摂っていなかったので空腹を抱えつつ、ショッピングモールの出口付近を確認していたが、既にあたりは暗くなっており、この状況で妻を捜すことも、また犯人の狙いを叶えることもできないと思われる状況だった。 モール中を神経を使って歩き回ったことで消耗しており、もはや妻を心配することより、妻の居場所を確認することが必要だった。仮に妻と連絡が取れたとしたら、休日のドライブでここまで着たから、拾って帰るだけでも説明できると考えたのだった。 一旦決意をすると、今まで奏しなかったことが時間の浪費に思え、その場で直ぐに妻に連絡を取ったのだった。 通常の休日でも妻は携帯を離すことはなく、基本的に電話は2コールもあればとっていたが、今回に関しては呼び出し音が15回ほど鳴らしても着信は無かった。 呼び出し音がなったことから、妻が屋内の電波が届かない場所にいる可能性は排除でき、その点では妻の安全が確認できたことは一つ安心できる材料だった。 それから数分の後再度電話を試みた。これは数コールほどで呼び出し音が途切れ、耳慣れた妻の声を聞くことが出来た。特に妻の声に不審はなく、ただ、車で向えにいくことについては、妻と友人はこれから食事をしてから帰るので遅くなるのでいい、との事だった。不自然にどこで食事するかは聞くことは出来なかったが、周囲の雑踏の音から、少なくともこのショッピングモールにいないことは確かだった。駅の周囲のようで、耳慣れないメロディが聞こえたものの、この場合どこにいるか尋ねることは疑うことと同義となるため、気をつけて帰るように伝えることができる精一杯だった。 電話を切ると一日の緊張が途切れ、脱力感のあまり暫くベンチで動けなくなってしまった。適度に醒めたベンチの温度が服の布地越しに伝わることは心地良くそこに半時間ほど留まってから自宅へ戻ったのだった。 漸く自宅に戻ったのは晩も21時を過ぎたころとなり、帰宅と同時に疲労を癒すため直ぐに風呂に入ることにした。風呂で今日の出来事を考えると、妻がショッピングモールに行かなかったことと犯人の自分への指示との齟齬が理解できず、自分と妻が犯人の思惑の中で動いていることを痛感するのだった。もっとも、その間も今日の妻の股間にあることを考えると、外出時には浮かばなかった欲情が強烈に自分を刺激するのだった。 風呂上りにテレビをつけると同時に外に自動車の音が聞こえ、妻がタクシーで帰ってきたらしいことが分かった。 なにがあったにせよアリバイを通すため少しは酔っているかと思ったが妻は素面で笑顔を自分に向け今日の不在を詫びるのだったが、自分の心中ではいままで秘密を互いに自覚している範囲で持ったことが無い二人が、深い闇を互いに抱えたことがいまさらに想起されるのだった。 その晩は既に食事を済ませていたこともあり、自分が居間でテレビをみている間に妻は先に休むことを告げて寝室に上がっていった。 日中の出来事から強烈に妻を求めたい情欲がこみ上げるのだったが、何事もタイミングからして妻に自分について疑念をいだかせる訳にいかず、結果自分のPCで先日の妻の乱れる動画を見て自身を慰めることにした。 机に向かい、PCからいつものニュースを閲覧しているとき、鞄から僅かに動作音がすることに気が付いた。迂闊にも昼間に持ち歩いたバイブレータを鞄にいれたまま自宅に持ち込んだことは帰宅時の疲労のしたことではあるが、今鞄から取り出したそれが妖しく蠢いていることは自分の意思ではない。リモコンの電源が切れていることを確認したうえで残る可能性は、それと同様の動きをするものが、もう一つあり、それを操作する際の電波がこちらにも漏れ伝わった結果に同じ動きをしていることだった。 あの妻が、今同じ家にいながら自分を慰めている。本来、自分の性器が納まるべき場所に、異様な形の器具を埋め込み快楽を貪っている。そのまったく同じ動きをするものがこの手元で震え脈動している。一瞬、それを窓に力任せに投げつける衝動に駆られたものの、いつまでも机で妻の性器を穿っているそれの写しをみると、静かに涙が流れ、自分の幸せを汚した犯人への焼け焦げるような怒りが繰り返し胸を満たし溢れるのだった。 その晩、器具が動きを止めたのはそれから30分の後、自分の涙が枯れ、奇妙な冷静さでこの問題の全体を考えているところだった。
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mashiroyami · 5 years
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Page 47 : 落
 クロ達がリコリスに帰還したのは、戦闘から二晩を跨いだ夕方のことだった。家の方にはソフィから帰りが遅くなることは連絡が入っていたが、その空白の期間はルーク家の誰もが気が気ではない状態であった。今日帰宅すると宣言があり騒然とした家内に、沈んだ表情で帰ってきたクロの表情を見た瞬間圭は息を呑んだ。  頭と右手に巻かれた包帯。外見からは分からないが、長袖の服装の下の胴体にもそれは厳重に巻かれている。怪我の程度を考えればほんの少ししか日数が経っていないのにも関わらず普通に歩けている方が不思議である程だ。深緑の瞳が圭を捉えた時、圭の体は凍りついた。帰ってきたら即座に彼に事件の詳細を聞こうという考えはいとも容易く彼方に吹き飛び、ただ茫然と目の前の現実に立ち尽くすだけだった。
 *
 見慣れたリビングに一同は集まる。既に緊張感が張りつめている中でクロは話を持ち出した。 「俺達はもう荷物を持って、すぐに出発します」  クロははっきりとした口調で言い放つ。ラーナーも既に同意しているようで特に驚く素振りも見せず無表情で一つ頷いた。しかしルーク家にとっては突然の申告であった。家に待機しており事件を間近で体験してはいないジークやフェルナンは一斉に反対の意を唱える。 「大怪我じゃないか、何もすぐに出て行かなくても、少しここで休んでいったらどうだい」 「というか、よう医者も許したもんだ」  ジークの慌てた言葉に呆れた口調のフェルナンの声がクロに浴びせられる。しかしクロの表情は微塵も変化しない。 「もう���れ以上迷惑をおかけするわけにはいきません」  使い古された常套句だ。すらすらとなんの抑揚も無く躊躇いも無くクロの口から流れる。それ以上に、クロから発せられる周囲を完全に拒否しているような刺々しい雰囲気に一同は言葉が出なくなる。 「十分すぎるほど良くしてもらいました。俺は頑丈にできてるので、このくらい大丈夫です。俺よりも、ソフィ達の方に気をかけた方がいいかと。心を傷つけた、それだけでもう俺はここに居る資格はありません」  淡々と、しかし鬱々とした口調でクロは言う。  その言葉にソファに腰掛けていたソフィは視線を落とす。そしてソフィの胸に頭を沈め部屋の雰囲気に耐えきれていないミアの頭を撫でる。  戦いの直後、クロの傷だらけの体とそこから溢れる血を彼女たちは目の当たりにした。ウォルタでラーナーが目の前で似たような光景を見て記憶に張り付いたように、それらは至って平穏に過ごしていた娘達の心に衝撃的な傷痕を残した。現実を見れば、彼女たちはクロに怯えている。まだ幼いミアはクロを見るたび泣いてしまう始末だ。それはクロ自身も納得していた。戦いに巻き込まれながらそれでもクロを支援し続けているトレアスのアランやオーバン夫婦の方がよっぽど異常なのだ。 「でも」ジークは依然納得しない表情だった。「今すぐは、いくらなんでも」 「ジオさんは優しい人ですね」  クロは嘲っているような口調を示す。 「少し優しすぎると思いますよ」 「クロ」  ラーナーは居ても立ってもいられなくなったように隣から牽制する。 「……お気持ちは有難いんです、本当に。でも、やっぱりあんな騒ぎの後だから、この辺りからはすぐに離れなきゃいけなくて」  沈痛な趣でラーナーは言う。  彼女の言うとおり、ホクシアは今大変な状況になっていた。  火事に残された大量の血痕。有名な市場の町でもあり一般人でも怪我人も出たというから最早全国的なニュースにまでなっていた。その状況はクロは勿論逃亡の最中であるラーナーにとって好ましくなかった。情報を得る限り盛る炎の強さや戦いの壮絶さのおかげか、現在の明らかになっている確定事項はザングースが居たということくらいか。情報の流出を嫌う黒の団が何か噛んでいる可能性もある。ただ、これからどんな証言が出てきてもおかしくはない。少なくともホクシア周辺には近づけないし、なるべく早い段階で遠くへ離れ、ほとぼりが冷めるのを待ちたいというのが正直なところだった。  しかしジークやフェルナンは相変わらず顰め面を貫き通している。 「ラナは本当にこれでいいのかい?」  半ば苛立ったような声音でジークが問うと、ラーナーは口を堅く結び複雑な表情を見せながらも、しっかりと頷く。紛れもない覚悟の印だった。真剣で強い視線に彼は押し負け、諦めたように溜息を吐くしかなかった。  重い沈黙が流れ、クロはふと思い出したように背筋を伸ばし辺りを目だけで見まわす。 「ところで、圭はどこに行ったんですか。話をしたいんですけど」 「連絡がとれないんだよ、それが」  クロの問いにジークは更に肩を落とす。  この場所に唯一居ない人物、それが圭だ。騒然とした空気に紛れたように目を離した隙に姿を消してしまった。彼が普段寝るのに使っている六畳ほどの客間にはポケギアが残され、完全に連絡手段を断った状態である。少なくともログハウスのすぐ近くには居ない。声をあげて呼んでも返事は無く、仮に近くで隠れていたとしても、いくら小柄な体とはいえその明るいオレンジの髪が目についてしまうのだ。目の届かない場所に行ってしまった圭の動揺した様子もまた、家族に重い空気をもたらす一滴だった。 「……私、探してくる」  息が詰まりそうな程重い沈黙を突き破ったソフィはゆっくりと立ち上がる。 「お父さん、ミアをお願い」  必死にしがみ付くようにして手を離そうとしないミアを無理矢理剥がしてジークに預ける。ジークはまだ小さな背中を優しく撫でながら温かく全身で包み込んだ。  身軽になったソフィは一度クロの方に体を向け、少し躊躇うような素振りを一瞬見せた後に口を開く。 「今日一晩は、居て。体のこともそうだけど、少し落ち着いてから出てほしい。圭は、私が絶対に見つけてくるから!」  クロに対して距離を置きながらも揺るぎない決意を光らせる。彼女が培ってきた度胸の据わった強さが佇む。クロが返答に迷っていると、ソフィは返事を待つことなく唇を噛みしめ踵を返した。 「コノハナ、手伝って。圭を探そう」  涙目を浮かべながらソファの陰に隠れていたコノハナはびくりと体を震わせ、いつにない強い口調の命令に慌てて立ち上がる。傍にやってきたのを確認するとソフィは乱暴にリビングを出ていき、数秒後には玄関を出ていく音がログハウスに響いた。  平穏な空気は既に壊れ、息苦しい気まずさだけが残る。ジークの服を握るミアの手が力を強めた。  原因であるクロは居たたまれなくなり、ゆっくりと立ち上がる。一同の静かな視線が背中に突き刺さるのを感じながら、ソフィが出て行った後を追うかのように廊下へと続く扉へ足を向ける。それを制止しようと咄嗟に腕をつかんだのは、ラーナーだった。  普段なら反射的に振り払うクロだったが、まるでそのような素振りを見せず驚いた目でラーナーを見るだけだった。ラーナーが見たことの無い程力の無い表情だった。 「どこへ行くの? 圭君なら、ソフィに任せよう」 「違う。ちょっと外の空気に当たってくる」 「あたしも行くよ」  虚ろな深緑の瞳にはかろうじてラーナーの姿が映っている。僅かな���笑が彼女に向けられる。 「見���り役のつもりか」 「そうじゃない」 「なら、一人にさせてくれ」 「何もしないし、何も言わない。約束する」  骨と肉だけの細い腕を掴む手が強くなる。  切実に絞り出した要求を拒否する力など、今のクロには残されてはいなかった。
 *
 一メートル程距離を置いてラーナーはクロの後を追う。夕日は西の山々に沈み、周りは瞬く間に暗くなっていく。真上で輝き始めた星の大群を視界に入れて、なんの会話も無くひたひたと歩いていく。旅で歩いているときはクロのやや速い歩き方にラーナーは追いつくのが精一杯という状態が通常であるのに、現在の歩行速度はそれと比較すると随分と遅い。ラーナーの方がクロに合わせて一定の距離を保っている有様だ。平然としているようで全身を蝕む痛みがそのまま表れているのだ。地面を踏むたび、特に背中に鋭い痛みが走る。それなのに、彼は歩き続けていた。  どこに行こうというあても無かった。外に出たい、それだけを理由に家を後にしたが思考はそれきり進まない。  その時、ふと彼は足を止めた。神経を尖らせていたラーナーはほぼ同時に止まる。  夜に残る光に照らされて佇む向日葵達が、クロの視界に突き刺さる。太陽の光を失ったためにどれも頭を垂れており、独特の侘しさを醸し出している花畑に彼は無性に惹かれた。道沿いに腰を下ろし、通り抜けていく涼風に目を閉じる。帽子を外している今は、少し長い髪が風になびいていた。  ラーナーはやはり距離を置いて同じように座り込んだ。  それからしばらく沈黙が続いた。重苦しい沈黙だった。ただ、ルーク家にあったものと種類が違うのは、恐らく外という開放的空間にいるおかげだろう。  砂を掠める音がラーナーの耳に入ってきて、隣に視線を送ってすぐに目を丸くする。  クロは背中を僅かに丸め軽く折り曲げた膝に両腕を乗せ、顔を埋めていた。縮こまり弱々しい様子はまるでいつもとは状況が違い、ラーナーは思わず声をかけそうになるが、約束を思い出し寸前で止める。 「……」 「……」 「……」 「……なに」 「……」 「そんなに見られても」 「……」 「別にどうだっていいけど」  何をクロが言おうとラーナーは口を固く結んだまま声を発そうとはしない。  先に折れたようにクロは溜息を吐くと共にゆっくりと顔を上げた。 「甘かった」 「……」  呟かれ始める弱音が、彼の揺れる心をそのまま表す。 「体も動かなかった。助けられてようやく逃げることができた」 「……」 「一人じゃ戦えない程弱くなってしまった」 「そんなことない」  思わず飛び出た言葉にクロは顔を上げる。慌ててラーナーは口を塞ぐ。 「何も言わないんじゃなかったか」  ラーナーは首を思いっきり横に振る。何も言っていないとでも表現しているようで、クロは息をついた。  話は続いた。 「黒の団を倒す、そう思ってここに来たんだ。圭を誘うつもりだった」  ラーナーにとってクロの立てたその目的は初耳だった。凝視するが、そんな彼女には気が付いていないかのようにクロはまた言葉を連ねていく。 「なのにこんなボロボロになって」 「……」 「なんで生かされたんだろうな。敵に命を助けられたようなものじゃないか」 「……」 「俺はなんでまだこうして生きてるんだろう」  理由を求める独り言がぽつりぽつりと呟かれる。  クロの深淵に触れているようでもあった。  激しい戦闘は確かにクロを追い込んだだろう。しかし、ここまで憔悴してしまっていては、あまりにも見ていられない。ラーナーは声を出したくてたまらなかった。気合の一つでも入れるために背中を叩いてやりたいくらいだった。  クロは長く深い溜息を吐いた。 「命なんてどうだっていいのに」 「!」  低い呟きにラーナーは目を見開いた。  衝動とはつまり、今の彼女のことを指すのだろう。思わず彼の名前を張り裂くように呼んだ。静寂の中でそれは異様に響いた。 「そんなこと言わないで」ラーナーは歪んだ表情で、驚いた彼の瞳を必死に見つめた。「あの日……クロに死んじゃいけないってあの時手紙に書いてくれたから、あたしは今ここにいられる。……そんな風に自分を追い込まないで」 「――そう押し付けられても困る。それより喋らないって」 「それは、だって……見てられなくて」 「あんたが思ってるより俺は平気だ。こんな怪我、すぐ治る」 「いや怪我の問題じゃなくて、それも心配なんだけど」後ろめたさを感じているように、そっと重たい瞼を伏せる。「あんまりに弱々しいから」 「約束」  低く苛立った声でクロが突き放したためにラーナーは胸の中にもやを残したまま仕方なく押し黙る。  その様子を確認してからクロはあからさまに大きな息を吐いてみせる。 「心配されると調子狂う」 「心配しない方が無理だよ」  ラーナーがそっぽを向いた状態で唇を尖らせて咄嗟に呟くと、クロは思わず彼女を睨みつける。ラーナーはその姿を目に入れてないが彼の鋭い視線が突き刺さっているのだろうと直感していた。  何のためにここに来たのだろう。ラーナーは肩を落とす。気まずい雰囲気を作り出すためじゃない、でもどう行動すれば彼を励ますことができるのだろうか。何も言わないという約束も破り、苛立った空気に乗り、それなのにどうして元気づけられようか。うまくやれない自分に腹が立つ。 「……まあいいや。今日はもう疲れた」  クロはゆっくりと立ち上がり向日葵畑の向こう側を見つめる。  こんな夜ではキマワリにも会えないだろうか。ラーナーは考える。キマワリの笑顔でも見れば彼も笑うかもしれないと思ったが、彼女自身も言い知れぬ倦怠感に襲われており体は動かなかった。重苦しい空気が彼等に纏わりつき、心も体も重くする。 「明日、ここを出る」  熟考した末答えを弾きだしたクロは横目でラーナーを見やる。 「圭はここに残るにしたって出ていくにしたって、腹を括る必要がある。それをちゃんとはっきりさせてから、出ていく。それでいいな」  彼の最後の言葉は了承を得るためのものではない。ただの命令に過ぎない。まるでこれから刃を向けようとしているかのような殺気立った冷たい氷の眼光に怖気づいたラーナーは恐る恐る頷いた。  ホクシアでの戦いをきっかけに、クロは雰囲気が変わってしまった。病院にいる間もそうだった。小さく怯える子供のような弱々しさと剣のような鋭さ、あまりに極端に豹変する彼の精神状態は心許ない。揺らぎというには激しく、彼を常に支えてきたポニータも負傷しボールの中で眠っている。  まるで、ひとりで溺れかけているかのようだった。  だからこそ。  ラーナーはふっと息を吐き、自分の胸に手を当てて決心を固めるように唇を噛みしめ、彼の背中を見つめる。  だからこそ、しっかりしなくちゃ。
 *
「ああああぁあああぁぁああああ!!」  溜め込んだものを全て吐き出すように、現実に抵抗するように、枯れきった叫び声をあげながら圭は木刀を振り切った。また一つ傷が幹に加えられる。ぐらりと大木が大きく揺れる。それだけの力が籠もっていた。汗が全身を覆い尽くし、激しい動きをするたびに飛び散る。そのたび体に反動の衝撃が走る。  そんなのはかまわなかった。  ふと動きを止め、一度木刀を下ろしてその場に大の字に転がった。体全体が心臓になったように脈打ち、熱が溢れる。全身で呼吸をするように胴体は膨らんではしぼみ、大きく大きく繰り返す。頭が熱さでくらくらと混乱しそうだった。それでも一向に胸の中は満たされない。空虚とわだかまりとが支配したまま。  場所は彼が暇さえあれば来ると言い放った、林の中にぽっかりと空いたギャップ部分��  一人になりたい時にやってくる場所。  その中心に転がった圭は暗くなりつつある空を仰いだ。 「クソッ」  右手で地面を叩きつけた。 「くっそ……くそお!!」  張り裂いた。何度も何度も繰り返す。底の知れない悔しさが彼を掴んで離さない。発散しようとしても離れようとはしないそれは圭を蝕み、体を傷つけていくだけだった。  しばらくしてふっと我に返り、再び大波となって押し寄せてくる虚しさに茫然と暮れる。  自身の中で動と静は忙しく波打つ。  脳裏に記憶がよみがえる。夕陽を背景に落ち込んだ顔で帰宅してきたソフィの様子だ。無事か、そんなありきたりな言葉をかけた。振り返ってみれば怪我をして帰ってきたのはクロだけだが、ソフィもミアも修羅場を潜り抜けてきたかのような重く疲れ切った表情を浮かべていた。ソフィは大丈夫だと答えた。相変わらず生気を失ったような顔で言われても説得力があるはずもなく、圭がそれに言及しようと一言かけようとする前に、彼女は小さく付け加えた。  ――でも、ちょっと怖かった。  肩身を狭めて怯えきった目での彼女の言葉は、ちょっとという程度では済んでいないことなど圭には手に取るように理解できた。  ミアはソフィの背後に回り顔を一切見せようとはしなかった。  そんな光景とクロの怪我をした姿を思い出し、圭は歯を食いしばる。  どうしてだ。  圭は混乱で今にも崩れ落ちてしまいそうな心の中で力無く呟いた。 < index >
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