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ishuran · 22 days
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ブログお引越し
この度ブログをnoteの方へお引越しすることになりました。
���後は是非こちらからイシュランメルマガのバックナンバーをお楽しみください。
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ishuran · 1 month
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がん関連のおすすめ書籍
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街中の本屋さんで医療関連、特にがん関連の本を探そうとすると、悲しいことに書棚の8割方は「怪しい本」で埋まっています。
「悪貨は良貨を駆逐する」ということわざがありますが、現代日本の医療本は「悪書が良書を駆逐」している状況と言えましょう。
ここでは、イシュラン編集長の鈴木が実際に読んでみて、がん患者さんやそのご家族にとって真に有益な情報を載せている良書、と判断した書籍をご紹介します。
※書籍の画像を押していただくと、Amazonにて該当の書籍が購入いただけます ※X(旧Twitter)アカウントのある先生方については、お名前部分にリンクを貼ってあります
「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった 最高のがん治療」(津川 友介、勝俣 範之、大須賀 覚)
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真っ当ながん治療本の決定版と言って良い内容。SNS上でも率先して情報発信してこられた3人の先生達(津川 友介、勝俣 範之、大須賀 覚)がタッグを組んで出された書籍で、患者さんにもご家族にも広く読んでいただきたい内容が網羅されています。文中に、イシュランのメルマガでも紹介してきたようなデータも解説されています。
「がんの?に答える本-がん相談ホットラインに寄せられた100の質問と回答」(日本対がん協会)
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「まさか! 」の事態に備え、傍に置いていただきたい一冊 がん予防やがん検診の推進とともに、がん患者とその家族に対する支援、正しい知識の普及啓発等、幅広い活動を行っている『公益財団法人・日本対がん協会』 その「がん相談ホットライン」に寄せられた、「がん」に悩む日本全国の皆様からの100の質問と回答をまとめた決定版的な新刊です。 「がんの検査では何をするの? 」「放射線療法ではどんな治療が行われますか? 」「がんの治療費はいくらくらいかかりますか? 」等々、がんの基礎知識から、がん治療時の懸案事項、さらに仕事や退院後の生活のことまで、真に必要と思われる情報を分かりやすいイラストや丁寧な説明で紹介していきます。 がんについて気がかりに思われている方や、「がんである」という告知を受けられた方、そしてそのご家族まで、多くの皆様に手に取っていただき、万が一の時に備え傍においていただきたい一冊です。
「すばらしい医学――あなたの体の謎に迫る知的冒険」(山本 健人)
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外科医けいゆうとして、ブログ累計1000万PV超、X(旧Twitter)フォロワー10万人超のフォロワーを持つ著者が、医学5000年の歴史、人が病気になるしくみ、人体の驚異のメカニズム、薬やワクチンの発見をめぐるエピソード、人類を脅かす病との戦い、古代から凄まじい進歩を遂げた手術の歴史などを紹介する
「おしゃべりながんの図鑑 病理学から見た わかりやすいがんの話」 (小倉 加奈子)
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病理医の小倉先生が、がんが一体どういう病気なのかを、イラストも交えて大変わかりやすく説明している本です。 「病理学者」って一体何している人たちなの?という疑問を持っている方にも、がんの「診断」に欠くべからざるそのお仕事の内容がよく理解できると思います。
「Dr.ヤンデルの病院選び〜ヤムリエの作法〜」 (市原 真 (病理医ヤンデル))
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病理医の市原先生の著作。X(旧Twitter)では「ヤンデル氏」として昔から結構知られている先生です。がんに限らずの話なのですが、病気になった時に医者が病院を選ぶときにはどういう観点で選んでいるのか、というお話がかなり具体的に出てきます。お医者さんって、自分の専門領域や自分が所属している施設以外では、どこの病院や医師が良いのかって情報を、意外に知らなかったりするものなので、この本で紹介されている考え方は大いに参考���なると思います。
「こわいもの知らずの病理学講義」 (仲野 徹)
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これも病理医の仲野先生の名作です。ちょっとだけ専門的といえば専門的な内容ですが、関西弁も交えた軽快な書きぶりで、小難しい話をわかりやすく学べます。
「患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2023年版」 (日本乳癌学会)
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患者さんが見てもわかりやすい形にまとめられている、乳癌診療ガイドラインの最新版です。治療がどんどん複雑化して、がん診療医であっても知識をアップデートしていくのがなかなかに大変な時代、学会主導で治療ガイドラインが患者さん向けにまとめられているのは、素晴らしいことです
「新装版「ニセ医学」に騙されないために 」 (NATROM)
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ブログやTwitterなどで有益な医療情報を発信し続けている、インターネット界隈では著名なNATROM先生の著書。前著「『ニセ医学』に騙されないために」同様、がん領域に限らず、世の中に溢れる「えせ医療」に引っかからないための視点をふんだんに提供してくれる本です。
「医療現場の行動経済学: すれ違う医者と患者」(大竹 文雄、平井 啓)
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行動経済学というのは、人間が必ずしも合理的な意思決定を行わない、もしくは行なえない事象と、その背後にある力学を解き明かす学問です。がん治療の意思決定の現場では、医師が合理的と考える話でも患者さんにとっては受け入れ難い話という場面がありがちなのですが、具体的にどのようなことが起きがちなのか、それを解決していくためには何をしていったら良いのか、という話が展開されます。患者さんのみならず医療従事者の方にぜひ手にとって頂きたい本です。
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ishuran · 2 months
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Vol.171 遺伝子変異を調べるタイミングは早ければ早い方が良い?
比較的暖かな日の多い今冬ですが、先月末は関西出張で滋賀県の大雪に遭遇し、びっくりしました。
この時期の関西と東京の往復は長年やってきており、関ヶ原付近の”雪国ぶり”はよく知っていましたが、あそこまでの勢いで雪が積もっているのを見たのは初めてでした。
ニュースになった名神高速道路の立ち往生を、ノロノロ運転の新幹線から目の当たりにして、これはえらいことだと思ったものです。
先日の関東地方の大雪の日も、東京の一般道が大渋滞になっていましたし、大雪が予想される日は、とにかく車で出かけることは控えた方が良いですね。
一つ、お知らせです。
「イシュラン皮膚がん」をリリースしました。
これで、乳がん、血液がん、婦人科がん、肺がんに続き、5つ目の領域です。引き続き、カバー領域を広げて参ります!!
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【記事1】 遺伝子変異を調べるタイミングは早ければ早い方が良い?
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遺伝子パネル検査の意義については、このメルマガで何度か取り上げてきました。
日本の保険制度の現状からすると、遺伝子パネル検査が保険適用されるのは、固形がんにおいて「他の標準的な治療手段がなくなった段階」で「1回限り」です。
しかしながら、それで本当に良いのでしょうか?
遺伝子変異がより早期の段階でわかったら、それに対応した治療を先に行うことが可能になります。
もちろん、後からわかっても遺伝子変異に対応した治療はできるわけですが、それによって生じる治療の順番の違いが、治療成績に影響しないと言えるでしょうか?
この点に関し、非常に示唆のある研究結果が出てきました。
 ■”Compromised Outcomes in Stage IV Non–Small-Cell Lung Cancer With Actionable Mutations Initially Treated Without Tyrosine Kinase Inhibitors: A Retrospective Analysis of Real-World Data”
「チロシンキナーゼ阻害剤なしで初期治療された、治療可能な変異を有するステージIVの非小細胞肺がんにおける予後の悪化:リアルワールドデータの後方視的解析」(Journal of Clinical Oncology)
非小細胞肺がんは、がんを引き起こす遺伝子変異の種類が最も数多く見つかっているがんで、それに対応する分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害剤)も数多く開発されています。
その中で、早期に調べて遺伝子変異に対応した治療を受けている人と、最初は別の治療をして後から遺伝子変異に対応した治療を受けている人が混在しています。
そこで、全米の1000を超える医療機関から過去の治療データを集め、治療可能と考えられる遺伝子変異(EGFR, ALK, ROS1, BRAF, MET, RET, HER2, NTRK1/2/3)が見つかったステージ4の非小細胞肺がん患者510名を、次の3群に分けて分析したのが、上記の研究です。
・グループA:遺伝子変異の結果が判明してから、適合する分子標的薬で治療開始した群(379名)
・グループB:遺伝子変異の結果が判明する前に、化学療法もしくは免疫チェックポイント阻害剤の治療を開始し、35日以内に分子標的薬の治療にスイッチした群(47名)
・グループC:遺伝子変異の結果が判明する前に、化学療法もしくは免疫チェックポイント阻害剤の治療を開始し、35日以内に分子標的薬の治療にスイッチし��かった群(84名)
次の治療もしくは亡くなられるまでの期間(TTNT)と、全生存期間(OS)を比較してみたところ、
<次の治療もしくは亡くなられるまでの期間(TTNT)>
・グループA:10.5ヶ月
・グループB:5.5ヶ月
・グループC:6.4ヶ月
<全生存期間(OS)>
・グループA:28.8ヶ月
・グループB:21.7ヶ月
・グループC:15.3ヶ月
と、いずれもグループAに対し、グループBもCも有意に劣る結果となりました。
今回の研究は、いわゆる後方視的な過去の結果を振り返ってのもので、エビデンスレベルとしては落ちるのですが、それでもこれだけの差が出たということは、「治療の順番の違いは治療成績の差として出る」可能性を強く意識せざるを得ません。
本テーマ(遺伝子変異をどのタイミングで調べるべきか)は、今後もがん治療全体の中で非常に重要な論点であり続けると思いますので、追いかけて参ります。
※本項執筆時点(2024年2月15日)で、筆者は遺伝子パネル検査メーカーの株式を若干数保有しています。
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【ご協力お願い(再掲)】 難治性乳がん患者さんをサポートするインスタアカウントのフォロー
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トリプルネガティブ乳がんや再発ハイリスク乳がん、進行・再発乳がんなどの「難治性乳がん」の患者さんをサポートする「アッピーチ」というプロジェクトがあります。
このアッピーチとギリアド・サイエンシズ株式会社が共催する形で、インスタグラム上で難治性乳がんの啓発キャンペーン「桃凛(ももり)インスタキャンペーン」が始まりました。
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•難治性乳がんの患者さんの日常生活について知ることができる
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といったことが期待できるとのこと。
インスタグラムを使われている方、ぜひ当該アカウントをフォローしていただければ幸いです。(アカウントのフォローだけですので、特にお金がかかることはありません)
なお、本内容の掲載につきまして、ギリアド・サイエンシズ株式会社から広告費をいただいています。
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上記の趣旨をご理解いただき、多くの皆さまにご協力頂けましたら幸いです。
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【記事2】抗肥満症治療は血圧低下にも効果あり:米国発の2本の論文
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昨年12月に発行したメルマガで、「世界待望のダイエット薬が日本にも登場。保険診療の是非は?」という記事を書きました。
その中で、「体重がうまくコントロールできれば、糖尿病・高血圧・高脂血症等の他の疾病の治療にかかる費用を将来的に削減できる可能性も高いです」と書きましたが、それをサポートするようなデータが立て続けに出てきました。
 ■”‘It’s a new era’: Weight-loss treatments significantly lower blood pressure, studies find”
「新時代だ:減量治療が血圧を有意に低下させることが研究で判明」(CNN)
上記のCNNの記事で2本の研究結果が紹介されています。
1本目は、チルゼパチドという、メルマガ内で紹介したセマグルチド(ウゴービ)と同じ、GLP-1受容体作動薬と呼ばれる種類の薬の試験結果です。
BMIが27以上、かつ2型糖尿病ではなく、正常な血圧もしくは治療により血圧コントロールされている600人で、チルゼパチド投与前と投与9ヶ月後の収縮期血圧(”上”の血圧)を比べたところ…
・5mg投与群は、7.4 mmHg
・10mg投与群は、10.6 mmHg
・15mg投与群は、8.0 mmHg
の血圧減少が見られました。
降圧剤1剤で下げられる血圧は10-15mmHg程度と言われていますので、そこまではいかないにせよ、これは喜ばしい”副作用”と言えるでしょう。
もう1本は、「減量手術」に関する研究です。
肥満症かつ高血圧の患者さん100名を、「減量手術+降圧剤投与」群と「降圧剤投与のみ」群に分け、5年後の経過を見て両者を比較したところ…
・BMI:28 vs 36
・降圧剤の投与数を減らすことができた人の割合:80% vs 14%
さらに、「減量手術+降圧剤投与」群で高血圧が寛解となった人が半数いました。
ということで、n数が少ないためそこまでハイレベルな研究では無いとはいえ、減量手術が血圧低下に結びついていることが伺える結果です。
肥満と血圧との関係は、神戸循環器クリニックが書かれているブログ「肥満により高血圧が起こるメカニズム」に詳しいですので、気になる方はチェックしてみてください。
※本項執筆時点(2024年2月15日)で、筆者はセマグルチド、チルゼパチドに関連する特筆すべき利益相反はありません。
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ishuran · 3 months
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Vol.170 毎年恒例、日本のがん治療医”Warm 30”<2023年版>発表!
遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます。
能登の震災、日航機と海保機の衝突事故と、心落ち着かない年初となりました。
被災された皆さまには、心よりお見舞い申し上げます。
私は例年通り、蓼科で年末年始を過ごしていたのですが、本震の際は、山の木々が嘘みたいに左右に振れるのが窓越しに見え、「これはマズい」と身体が直感するような揺れでした。
イシュランメルマガ2024年初の発刊ということで、今号は、毎年恒例の日本のがん治療医”Warm 30”<2023年版>を発表します。
本年も変わらぬご愛読を、よろしくお願いいたします。
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【記事1】 毎年恒例、日本のがん治療医”Warm 30”<2023年版>発表!
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イシュラン毎年恒例の、「日本のがん治療医”Warm30”」2023年版が出ました!
・乳がん   https://www.ishuran.com/trophies/2023-warm30-breast
・血液がん  https://blood.ishuran.com/trophies/2023-warm30-blood
・婦人科がん https://women.ishuran.com/trophies/2023-warm30-women
・肺がん   https://lung.ishuran.com/trophies/2023-warm30-lung
“Warm30”は「コミュニケーション・タイプの投票」「感想の投稿」「サンキューレターの投函」を、イシュラン独自の観点でポイント換算したランキング上位30名の「コミュニケーションの名医」です。
2016年の乳がんから毎年集計して発表していますが、その頃から変わらずお名前を連ね続けられている”常連”の先生がいらっしゃる一方、今年は”新顔”の先生もかなり増えた印象です。
7年経って、医師の世界でも着実に「世代交代」が進んできている感じがします。
昨年から、Warm30に選出された先生方には、イシュラン特製卓上POPを進呈していることもあってか、この取り組みも病院や先生方にかなり認知されるようになってきました。
雑誌などの「日本のがんの名医xx人」的な特集だと、いわゆる有名医師しか出てこないのですが、”Warm30”は、業界歴の長い私でも存じ上げない先生が何人も出てくるのが面白いところです。
日々、患者さんに寄り添いながら診療に励まれている先生方にとって、少しでも励みになるよう、”忖度一切無し”のランキング、今後も継続して参ります。
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【記事2】台湾の肺がん患者の研究から拝察される、遺伝子パネル検査の意義と実力
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昨年11月のメルマガ内で、「肺がんの事例から見えてきた、遺伝子パネル検査の隠れた実力とは」という記事を書きました。
>>
今回、ある施設で遺伝子パネル検査を用いて調べたところ、
・コンパニオン診断(シングル)では陰性と判定されていた遺伝子変異が、遺伝子パネル検査をすると陽性と判断されるケースが無視できない比率で出てくる
・治療薬が存在する遺伝子変異が見つかる比率は、コンパニオン診断(マルチ)での結果より遺伝子パネル検査の結果の方がやや高い
という結果になりました。
1施設でのデータなので確定的なことは言えませんが、遺伝子パネル検査をすることで、より適切な治療に繋げられる患者さんが一定程度存在していそうというのは、かなり重要な示唆です。
>>
遺伝子パネル検査の実力と意義を更に考える上で、興味深い研究結果が台湾から先日出てきました。
 ■"Comprehensive Genomic Analysis of Patients With Non–Small-Cell Lung Cancer Using Blood-Based Circulating Tumor DNA Assay: Findings From the BFAST Database of a Single Center in Taiwan”「血液ベースのctDNAアッセイを用いた非小細胞肺癌患者の包括的ゲノム解析:台湾の単一施設のBFASTデータベースからの知見」(Journal of Clinical Oncology)
おさらいですが、「ctDNA」とは血中などに流れている、がん細胞の遺伝子レベルの欠片です。この情報を読み解くことで、がんの特性(遺伝子変異)を検知します。
「BFAST」は、国際的に行われている、血液を用いたctDNAの研究で、今回の論文はその中で台湾の患者さんのデータのみを解析したものです。
269人が血液を用いたctDNAの遺伝子パネル検査を実施し、その内264人はがん病変の組織検体の検査も実施しています。
組織検査は、EGFR, ALK, ROS1, BRAFの4つの遺伝子変異を調べるコンパニオン診断(シングル)で行ない、一部(20人)がオプションとして組織検体を用いた遺伝子パネル検査も行ないました。
結果、次のことがわかりました。
・ctDNAの遺伝子パネル検査をした人の内、76%に治療薬が存在する遺伝子変異が検出された
・一方、組織検体の検査では、54%に治療薬が存在する遺伝子変異が検出された
・結果、ctDNAの遺伝子パネル検査を補完的に使用することで、治療薬が存在する遺伝子変異の検出率は42%増加した
シングルのコンパニオン診断だと、たくさんの遺伝子変異を調べるには限界があるので、この結果は当然で、やはり遺伝子パネル検査を初期に行なう方が、より適切な治療に結び付け易いと言えます。
悩ましいのは、データをよく見ると、EGFR, ALK, ROS1, BRAFに関しては、ctDNAの遺伝子パネル検査でしか検出されないケースもある一方で、組織検体でのコンパニオン診断でのみ検出されるケースも同じくらいある点です。
患者さんの治療成績を上げることを考えたら、ctDNAもしくは組織検体を使っての遺伝子パネル検査を基本行なって、補完的にコンパニオン診断を行なう、という方向性が正しそうですが、今後の研究と臨床適用の進展を注目していきたいと思います。
※本項執筆時点(2024年1月15日)で、筆者は一部の遺伝子パネル検査メーカーの株式を保有しています。
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ishuran · 4 months
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Vol.169 世界待望のダイエット薬が日本にも登場。保険診療の是非は?
寒いのか暖かいのか、よくわからない感じの年の瀬ですが、いかがお過ごしでしょうか。
私は、例年よりは仕事が落ち着いていたこともあり、古い書類をだいぶ整理・廃棄しました。
会社関連のほとんどの書類はオンライン化しているのですが、それでも15年近く事業をやっていると、経理や契約関連の書類は溜まってきています。
最近は契約はほぼオンライン化されてきたので、あとは経理/税務書類関連さえ何とかなれば、書類からおさらばできるのですが…
2023年も、本メルマガのご愛読をありがとうございました。お陰様でメルマガ会員数は8万人近くまで増えてきましたし、開封率も40%近くを保っております。
来る2024年も、引き続きのご愛読をよろしくお願いいたします。
それでは、皆さま、どうぞ佳き新年をお迎えくださいませ。
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【記事1】 世界待望のダイエット薬が日本にも登場。保険診療の是非は?
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がん医療と直接の関係はありませんが、年末の大きな話題として、ダイエット薬(肥満症治療薬)がいよいよ日本でも発売のニュースを取り上げます。
 ■「ノボノルディスク、肥満症薬『ウゴービ』を日本発売 来年2月」(REUTERS)
昔から「ダイエット薬」は”夢の薬”でした。実用に耐え得る有効な薬がなかったからこそ、世の中に「ダイエットビジネス」がこれだけ溢れているわけです。
その状況が一気に変わってくるかも、というのが今回の話です。
GLP-1受容体作動薬と呼ばれる種類���糖尿病治療薬に、”副作用”として体重減少があることは昔から知られており、これを活用して肥満症治療薬としての開発が世界的に進んでいます。
その内の一つ、セマグルチド(ウゴービ)は、日本では今年の3月に承認取得済でしたが、恐らく生産体制が整わずに発売が延びていた中、上述の通り来年2月から販売ということになりました。
添付文書を見ると、保険適応の条件として、以下が定められています。
>>
高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。
・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
・BMIが35kg/m2以上
>>
まあでも、どう考えてもニーズの強さから、上記に当てはまらない人も含めて年間百万人単位の患者(?)さんが医療機関に殺到することが容易に想定されます。
セマグルチド(ウゴービ)の年間の薬価は30-40万円程度と想定されます。
メーカーは日本でのピーク時(5年目)の投与患者数は10万人、売上高予想は328億円としているようですが、競合薬が出てきたとしても売上高の桁数は余裕で一桁上回るでしょう。
では、セマグルチド(ウゴービ)以外のGLP-1受容体作動薬も後に続くと想定される中、肥満症治療薬に千億円単位の保険財政を割くことの是非はどうでしょうか。
私は実はかなり肯定的です。
一つは、薬価がそこまで高くないことです。
これも話題になった早期アルツハイマー治療薬のレカネマブ(レケンビ)の年間薬価が300万円ほどですから、それと比べれば一桁安い。
更に、体重がうまくコントロールできれば、糖尿病・高血圧・高脂血症等の他の疾病の治療にかかる費用を将来的に削減できる可能性も高いです。
実際にどれくらい医療費の削減効果があるかや、長期的な投与に伴うリスクは、フォローアップ期間を取って検証すべきでしょうが、良質な”予防医療”になる可能性を十分秘めていると思います。
今後の動きを注視して行きましょう。
※本項執筆時点(2023年12月29日)で、筆者はセマグルチド(ウゴービ)、レカネマブ(レケンビ)に関し、特筆すべき利益相反はありません。
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【記事2】「がん研究10か年戦略(第5次)」に決定的に欠けている視点
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クリスマスの日に、「がん研究10か年戦略(第5次)」というものが発表されました。
 ■「がん研究10か年戦略(第5次)を4大臣合意 DCT、RWD、PRO活用した研究手法確立で革新的新薬創出」(ミクスOnline)
「10か年戦略」と言うからには、長期的な視点で日本のがん研究にとって何が重要なのか、という時代感を伴った視点が必要です。
本戦略の緒言には、次のような記載があります。
>>
一方で、いわゆるドラッグラグ・ドラッグロスが顕在化しているほか、難治性がんの生存率には大きな改善が見られていない。小児・AYA世代のがんや希少がんに対する治療法の開発等を含め、多くの課題を残している。 
こうした課題への対応に加え、個々人に最適化された予防・医療の実現に資する研究の展開や、医療AI等を含む新たな医療技術開発等の強化が求められているほか、がんの本態解明、シーズ探索等の分野横断的な研究の推進、国際共同臨床試験の環境整備を含めた国際連携等の取組強化も重要である。
>>
「今現在ここにある課題」はうまく整理されているように見えますが、私にとっては以下の時代感が反映されているようには見えませんでした。
・今後10年の日本の国家財政は、社会保障支出の増加で厳しい状況が続く
・従って、がん研究にかけられる投資もそれほど増やすことはできず、全体で見ると新薬開発で米国・欧州・中国には水を開けられる状況にならざるを得ない
・特にがん領域の新薬は高額な薬剤が増え続けており、上記の状況の中でドラッグラグ・ドラッグロスの改善を進めることは、医療費の更なる増大を意味する
・ジェネリック医薬品やバイオシミラーの浸透による医療費削減は、この10年でほぼ閾値に達している
以上全ての「不都合な真実」に向き合った上で、第4期がん対策推進基本計画で掲げている「誰一人取り残さないがん対策」を実現するために何が必要か、ということが問われているわけです。
これらを考えると、「質を落とさない形での、がん医療の効率化」が欠かせない視点になります。
その意味で、「”De-escalation(デ・エスカレーション)”的な治療法の開発推進」と、「特許期間の切れた古い薬剤での新たな効用の発見」は、是非付け加えたいところです。
”De-escalation(デ・エスカレーション)試験”は、本メルマガでも何度か取り上げてきていますが、服薬に伴う患者の負担を減らすことを目的に���抗がん剤の投与量や投与日数を減らしても既存の治療法に効果が劣らないことを立証する試験です。
特許期間が切れた古い薬剤の可能性としては、春先に出したメルマガの中で紹介したような、オランザピンやリドカインのような事例があります。
これらのテーマは、新薬の売上拡大を指向する製薬会社が投資したがらない分野であり、だからこそ国家のお金を投じて研究を進める意義があるのではないでしょうか。
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「この話についてどう思うか教えて欲しい」というようなご要望、メールマガジンの内容についてのご質問やご意見、解約のご希望などにつきましては、返信の形でお気軽にメールしてください。
配信した内容とは無関係の質問でも結構です。必ずお返事いたします。 メールマガジンの内容の引用、紹介、転送も、どんどんやっていただいて構いません。
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ishuran · 5 months
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Vol.168 グッジョブYouTube!有害/無効ながん治療動画の削除開始をアナウンス
月の出だしは夏日連発で、夏服が仕舞えない日が続いていましたが、ようやく冬の足音が聞こえてくる気候になってきました。そりゃそうですよね、11月なんですから。
寒くなってくると、心配なのがインフルエンザです。
こちらの記事にもあるように、今年は流行の開始が異常に早く、例年よりかなり早いタイミングで近年最大規模のピークになる可能性があります。
予防ワクチン接種を検討されている皆さま、打つのなら早めがよろしそうですし、過去3シーズンほとんど流行していないことからも、マスク着用で相当予防できるかと思います。
インフルエンザ以外でも周囲で風邪はかなり流行っているようです。皆様、どうぞご自愛ください。
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【記事1】 グッジョブYouTube!有害/無効ながん治療動画の削除開始をアナウンス
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前々回のメルマガの「【記事2】信頼できる?できない?ソーシャルメディア上のがん情報」で、SNS上のがん情報は怪しげなものも多く、SNS内検索での情報収集は注意を要するという話を書きました。
そんな中、YouTubeに関して興味深い動きを取り上げた朝日新聞の記事「がん治療動画、誤り消します 根拠ない情報、ユーチューブ削除」が最近、私の周囲で話題になっていました。
上記は有料記事のため、元となったYouTubeの発表に対する日本語記事をこちらに貼ります。
 ■「YouTube、有害または無効と証明されたがん治療に関する動画削除を開始」(ITmedia NEWS)
>>
特にがん治療については、「がんは世界中で主な死因の1つであるため」信頼できる医療情報源からのコンテンツを簡単に見つけられるようにし、誤った情報を排除するのがYouTubeの使命だとしている。
削除対象の例としてYouTubeは、「ニンニクはがんを治す」や「放射線療法の代わりにビタミンCを接種する」という動画を挙げた。
>>
流石、Google傘下だけあって、こうした動きは素早いですね。
特に動画でのコミュニケーションは、わかり易さ故にインパクトも大きいもの。YouTube(Google)さん、グッジョブどころか、グレート・ジョブです!!
悪質な情報が除かれているのであれば、YouTubeは手軽に良質な情報を取得できるツールになります。
一例として、悪性リンパ腫の患者会「グループ・ネクサス・ジャパン」がYouTube上で開設している、「ネクサス・チャンネル」をご紹介します。
患者会が主体となって、日本のトップを走る先生たちに疾患や治療を解説してもらうというのは、もっと拡がって欲しい取り組みですね。
※本項執筆時点(2023年11月30日)で、筆者はGoogleに関し、特筆すべき利益相反はありません。
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【書籍紹介】「がんがつなぐ足し算の縁」
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笠井信輔さんと言えば、フジテレビの「とくダネ!」で、小倉智昭さんとの掛け合いをよくされていたアナウンサー、というイメージが強い方も多いのではないでしょうか。
その笠井さん、2019年にフリーアナウンサーに転身後すぐに悪性リンパ腫を罹患され、抗がん剤治療を経て寛解後に現場復帰という経験をされています。
その体験談を中日新聞社に綴った連載が、書籍化されました。
 ■「がんがつなぐ足し算の縁」(笠井信輔 中日新聞社)。
医療者が書くと小難しい書き方になってしまう、がん治療における大切なポイントを、笠井さんが平易な言葉で「患者視点」で解きほぐして、余すことなくこの本に詰められています。
特に、「抗がん剤は幸願剤」という表現は、「伝え手」のプロである笠井さんならではですね。
がんに罹患されて月日が浅い患者さんやご家族に、特にお勧めできる書籍だと思いますので、興味を持たれた方は是非読まれてみてください。
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【記事2】肺がんの事例から見えてきた、遺伝子パネル検査の隠れた実力とは
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月初に、幕張で開催された肺癌学会の学術集会に参加してきました。
数多くあるがん関連の学会の中で、テーマ設定や先生たちの間で交わされる議論が一番興味深いので、毎年参加するのが楽しみな学会なのです。
このメルマガでは通常は論文になった研究結果をご紹介するのですが、肺癌学会で遺伝子パネル検査にまつわる極めて興味深い知見が口演で共有されていたため、紹介したいと思います。
まず前提として、肺がんでは、がんを引き起こす様々な遺伝子変異やそのサブタイプが次々に明らかになってきており、それぞれの変異に応じた治療薬が盛んに開発されているということがあります。
それに伴い、遺伝子変異を見つけるための検査も、新たな技術がどんどん臨床で使われるようになってきています。
・コンパニオン診断(シングル):承認された治療薬が存在する遺伝子変異を1種類のみチェック
・コンパニオン診断(マルチ):承認された治療薬が存在する遺伝子変異を複数種類まとめてチェック
・遺伝子パネル検査:治療薬が存在するものもしないものも含め、網羅的に遺伝子変異をチェック
という流れでオプションが増えていますが、遺伝子パネル検査は費用や承認条件の関係で広くは普及しておらず、多くの施設はシングルかマルチのコンパニオン診断を用いているのが日本の現状です。
今回、ある施設で遺伝子パネル検査を用いて調べたところ、
・コンパニオン診断(シングル)では陰性と判定されていた遺伝子変異が、遺伝子パネル検査をすると陽性と判断されるケースが無視できない比率で出てくる
・治療薬が存在する遺伝子変異が見つかる比率は、コンパニオン診断(マルチ)での結果より遺伝子パネル検査の結果の方がやや高い
という結果になりました。
1施設でのデータなので確定的なことは言えませんが、遺伝子パネル検査をすることで、より適切な治療に繋げられる患者さんが一定程度存在していそうというのは、かなり重要な示唆です。
遺伝子パネル検査については、現状どの施設でも受けられるわけではなく、また、どのがん種でも保険が効くのは1人1回だけ、それも標準治療で効果が得られなくなった段階でしか対象になりません。
今後、どんながん種であっても、より早期の段階で、また場合によっては複数回、遺伝子パネル検査を受けるような時代が近づいて来ていることを予感させる発表でした。
患者の皆さんにとっては、今すぐ必要というわけではないけれど、将来どこかの時点で最適な治療を判断するために遺伝子パネル検査を受ける可能性を、頭に入れておかれるとよろしいかと思います。
※本項執筆時点(2023年11月30日)で、筆者は一部の遺伝子パネル検査メーカーの株式を保有しています。
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ishuran · 6 months
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Vol.167 沢井製薬の品質試験”不正”はどこまでヤバい話なのか
秋が深まりつつあるとはいえ、11月最初の週の天気予報を見ると、東京はまだ夏日がありそうな気配ですね。季節の進みが例年から半月くらい遅れている感じがします。
先日、気分転換も兼ね、富山県黒部市に一泊出張してきたのですが、そろそろ紅葉が見頃かもと期待していたものの、山間でもまだようやく色づき始めたくらい。
とはいえ、初めての土地を歩き回ることで、脳がだいぶリフレッシュされました。脳も筋肉みたいなもので、時々意識的に休めてあげたり、異なる刺激を入れてあげるのが大事ですね。
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【記事1】 9週投与でも1年投与でもハーセプチンの効果は同じ!?
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服薬に伴う患者の負担を減らすことを目的に、抗がん剤の投与量や投与日数を減らしても既存の治療法に劣らないことを立証する試験を「デ・エスカレーション(De-escalastiion)試験」と呼びます。
このメルマガでも、下記の記事をはじめ、何度か取り上げています。
 ■「超低用量免疫療法が世界を救う?インド発の画期的な試験結果」(イシュランメルマガVol.157)
今回紹介する研究は、まさにその「デ・エスカレーション試験」の典型的な事例です。
 ■”Nine-Week Versus One-Year Trastuzumab for Early Human Epidermal Growth Factor Receptor 2–Positive Breast Cancer: 10-Year Update of the ShortHER Phase III Randomized Trial”「早期HER2陽性乳癌に対するトラスツズマブの9週間投与と1年投与の比較:ShortHER第III相無作為化試験の10年アップデート」(Journal of Clinical Oncology)
トラスツズマブとはハーセプチンのことです。(このメルマガでは成分名での表現が基本ですが、今回は製品名がかなり馴染み深いものと思いますので、本記事では”ハーセプチン”で行きます)
ハーセプチンは、HER2陽性の乳がん、胃がん、大腸がん等に使われます。
早期乳がんで再発予防効果を期待して術後療法として使われる場合、通常、ハーセプチンの投与期間は1年です。
上記のShortHER試験は、通常の1年投与した群627名(1年投与群)と、9週間(約2ヶ月)に短縮投与した群627名(9週投与群)とを比較する試験で、今回その最終解析結果が出てきました。
結果を見ると、
・10年DFS(無病生存期間) 1年投与群:77% vs 9週投与群:78%
・10年OS(全生存期間) 1年投与群:89% vs 9週投与群:88%
と、再発や他の病気がなく患者さんが生存している期間(DFS)も、単に生存している期間(OS)も、一見して差が見られません。
しかしながら、統計解析ではサンプル数不足が響き、9週投与の1年投与に対する「非劣性(劣っていないこと)」の証明には至りませんでした。
「ええ、そんなバカな!?!?」って思いますよね。
統計解析を勉強していないとわかりにくいところなのですが、要はこの程度のサンプル数だと偶然同程度だった可能性がわずかながら残り、差がないことを証明するには不十分ということです。
例えば、両群で5人ずつの試験だったら、いくら同じ様な結果だったからといって、それは偶然そうなっただけでしょ、というのは直感的にわかるかと思います。
今回のサンプル数だと、9週投与群が1年投与群に劣っていない確率は93.2%と計算されています。これが、95%を超えればOKだったのですが… 惜しい!!
ということで、試験としては「失敗(劣らないということを証明しきれなかった)」なのです。
一方で、これだけいい線行っているのであれば、9週投与と1年投与では患者負担的にも大きく違うわけですから、短縮するオプションも患者さんに説明する意義が出てくるのではないでしょうか。
いずれにしても、現状に一石を投じる非常に意義深い試験と言えましょう。
いつも言及することですが、デ・エスカレーション試験は患者や保険者にとっては非常に有意義なのですが、製薬会社にとっては費用をかけて試験を行なうインセンティブはありません。
今回の試験も、「イタリア医薬品庁」という国の公的機関がスポンサーになっています。
日本でも、今後もっと盛んに行なわれることを期待したいですね。
※本項執筆時点(2023年10月31日)で、筆者はハーセプチンに関し、特筆すべき利益相反はありません。
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【お知らせ】イシュラン上で広告を希望される方へ
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現在、イシュランはサイトへのアクセスが月間で約11万PV、メルマガの会員数が約7万5千人と、がん患者さん向けとして国内で最大規模のメディアになっています。
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【記事2】沢井製薬の品質試験”不正”はどこまでヤバい話なのか
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ジェネリック医薬品の大手、沢井製薬が品質試験の不正を行なっていたというニュースが10月23日に駆け巡りました。
 ■「別カプセルに詰め替え…胃炎薬の検査で“不正”沢井製薬 社長が謝罪」(テレ朝news)
同記事の報道ステーションでの一画面の抜き取りを見ると、「不正検査8年も…  ”溶けない”カプセル」と何やら非常に「ヤバい」ことが���きているように見えます。
他社の大手メディアも似たような見出しで一斉に報じていましたので、特にご自身で沢井製薬のお薬を服薬されているような方は、かなり不安を覚えられたのではないでしょうか。
ただ今回の事件は、報道内容を詳細に見ると、「沢井製薬がやったことはよろしくないのは確かだが、そこまで騒ぐ話ではなさそう」というのが素直な感想です。
 ■「薬の安定供給への影響懸念も 沢井製薬の検査不正」(産経新聞)
薬の中で最も一般的な「飲み薬」では、薬本来の成分を顆粒でコーティングしてカプセルに詰め込む「カプセル剤」や、成分を圧縮したりコーティングしたりした「錠剤」が典型的です。
飲み薬で薬本来の成分が、胃の中でどのように溶け出すのかを、試験管の中で擬似的に確認する試験(検査)を「溶出試験」と呼びます。
今回は、薬が一定の保存期間を過ぎても品質を保てているかを確認する溶出試験での不正がありました。以下、上記の産経新聞の記事の抜粋です。
>>
平成22年に行った社内の試験で、有効期限の3年を1年超えている長期保存していたカプセルを使った場合、薬の成分の溶出が低下していることが分かった。その後、27年以降、保存3年目のカプセルから内容物を取り出して別の新しいカプセルに詰め替えて試験を行うという、承認を受けた手順と異なる方法で試験を進めた
>>
なんでこんなことをしたのかというと、ガイドラインの改定により、「それ以前は、成り行き室温(工場内温度の約22度)で保存した検体が用いられていたが、25±2度、60%の湿度で保管された検体が対象となり、劣化が早く進むようになった」(ミクスOnline)ことが背景にある様です。
爪水虫薬に睡眠導入剤を混入していたとか、品質試験不合格の錠剤を砕いて再び加工していたとかの、製造工程での問題が発覚した近年の他の不祥事と比べると、そこまでクリティカルではありません。
気をつけるとしたら、ご自宅で例えば2年を超えて保存している薬は使わない方が良いという話です。
マスメディアというものはセンセーショナルな報道をした方が商売になるので、冒頭に挙げたようないかにも不安を煽る伝え方をしますが、そこに踊らされる必要はありません。
とはいえ、沢井製薬の不正自体を擁護するわけではありませんし、そこは真摯に反省していただき、再発防止や社内風土の見直しはしっかりしていただければと思います。
※本項執筆時点(2023年8月31日)で、筆者は沢井製薬に関し、特筆すべき利益相反はありません。
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ishuran · 7 months
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Vol.166 「カンタン」でも飛びついてはいけない、線虫N-NOSE検査
ようやく少し「秋」を感じられる空気を味わえるようになってきましたが、それでも例年のこの時期と比べるとまだまだ暑いですね。
私は魚介類(+日本酒)好きで、特に秋刀魚は大好物なのですが、黒潮の蛇行の影響か、今年も深刻な不漁が続き、大きな秋刀魚の塩焼きを食べながら一杯飲る贅沢はしばらくお預けかもしれません。
大谷選手の二刀流もそうですが、今目の前にあることを当たり前と思わず、思いっきり感謝しながら日々を過ごさなければですね。
今号は、本メルマガとしては少し”柔らかめ”の話題を2本取り上げます。
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【記事1】 「カンタン」でも飛びついてはいけない、線虫N-NOSE検査
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線虫によるがん検査、最近では仲間由紀恵さんを使った広告を目にされたことのある方も多いかと思います。 私は電車の吊り広告で見かけたことあるのですが、こんなTV-CMまでやっています。 (そういえば、以前は、あのジャニーズの社長になった東山さんがCMに出ていましたね)
 ■「線虫がん検査【N-NOSE】TVCM 『要件だけ』篇 30秒」(HIROTSUバイオサイエンス) 線虫が尿に含まれる「がん特有の匂い」を検知する特殊能力を持つとし、その技術を活用して「N-NOSE」という商品名で、「世界初の線虫がん検査」を世に出しているHIROTSUバイオサイエンス社。
いつの間にか、評価額が10億ドルを超える未上場のスタートアップ企業、いわゆる「ユニコーン」になっ��います。 この線虫検査、本メルマガでも一度取り上げたことがあります。
 ■「Vol.141 どうなの?”精度86%”の『尿一滴の線虫がん検査』の真の実力」(イシュランメルマガ)
この時書いたように、そもそも当時の論文情報から判断するに、実際に検査として使うには特異度が低く、「実力不足」と考えていました。 今、HIOTSU社のHP上では、線虫検査の感度と特異度について、
>>
がん患者を「がん」と判定する確率(感度):86.3% 健常者を「がんではない」と判定する確率(特異度):90.8%
>>
と記載されています。本当にこの通りであれば、良いのですが… 実は、「虚飾のユニコーン」と題し、NewsPicksで今月6回シリーズで特集があり、医療界隈のSNSで大きな話題となりました。
(個別の内容は有料記事となります)
衝撃的な、これぞ「渾身のスクープ」記事なのですが、この中で特に注目したのが、本年6月に開かれた日本がん検診・診断学会総会での次の内容の発表です。
>>
会場内がざわめいたのは、宮崎鶴田記念クリニックの藤田晴吾・がん診断センター院長が、次のデータを示した時だった。 がんと診断されたばかりの10人の患者から了承をもらい、それぞれの患者の尿でN-NOSEを受けたところ、10人全員がAまたはB判定、つまり低リスク(陰性)の結果が返ってきたというのだ。
>>
もし、本当に感度86.3%の実力値があるとしたら、本当はがんなのに陰性として判定してしまう確率は真の陽性者1人あたり13.7%です。 10人続けて「外す」確率は、13.7%x13.7%x13.7%…. と13.7%の「10乗」となりますので、0.00000023%。
つまりほぼありえないわけで、感度86.3%は全く信じられない数値になります。 もう一つ記事で印象的だったのが、「ブラインド検査はしない」というHIROTSU社の方針です。 「ブラインド検査」は、尿の検体が真の陽性者or陰性者のものなのかわからない状態で判定し、その判定がどの程度真の陽性or陰性と一致するのかを見るやり方です。 「ブラインド検査」でないということは、最初からその尿が本当は陽性なのか陰性なのかわかった状態で検査するということになります。
検査結果に手心を加える余地を残してしまいかねず、これだと検査結果は信用し難いのです。 この記事を見る限り、線虫検査のN-NOSEは信頼に足る検査結果を出せているとは全く言えません。 「カンタン」な検査ではあるし、「早期発見」の方が完治の確率が高まる、というのは事実でも、慌てて飛び付くべきではない検査と心得ましょう。
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【記事2】信頼できる?できない?ソーシャルメディア上のがん情報 ─────────────────────────
TV-CMで俳優さんが宣伝している商品だからといって、信頼できるとは限りませんよという話を前段でしましたが、ネットの世界の情報の信頼度はどうでしょうか。
もはや昔話になってきましたが、実は、GoogleやYahooの医療情報の検索結果は、かなり「クリーン」になっています。
それ以前は、がん関連の言葉を検索すると、怪しげな治療を行なっているクリニックのサイトが検索上位を占居するなど、目を覆わんばかりの惨状でした。 それに対し、Googleが英断を下したのが6年ほど前。
>>
医療や健康に関連する検索結果の改善について 2017年12月6日水曜 Google では、今週、日本語検索におけるページの評価方法をアップデートしました。 この変更は、医療や健康に関する検索結果の改善を意図したもので、例えば医療従事者や専門家、医療機関等から提供されるような、より信頼性が高く有益な情報が上位に表示されやすくなります。本アップデートは医療・健康に関連する検索のおよそ 60% に影響します。Google では、医療や健康だけに限らず、今後も継続的に検索の改善に取り組んで行きます。
>>
ということで、今では病気の名前や薬の名前など、医療系の検索ワードを入れると、基本的には信頼性の高いと思われるサイトが上位に並びます。 (ただし例外はありますし、広告費を払って一番上や一番下の目立つ場所に掲載されるサイトは怪しいものが並びますので、そこは注意してください)
しかし、最近は若めの世代の人たちは、Twitter、Instagram、Youtubeといったソーシャルメディア上で直接検索する人も増えてきています。 となると、ソーシャルメディア上での情報は信頼できるものなのでしょうか?
ここに切り込むべく、日本でTwitter(現在は”X”ですが、Twitterの方が馴染み深いのでこのまま行きます)に出ているがん情報が、どの程度「適切」かを評価した論文が出てきました。
 ■ “Fact-Checking Cancer Information on Social Media in Japan: Retrospective Study Using Twitter”「日本におけるソーシャルメディア上のがん情報のファクトチェック:Twitterを用いたレトロスペクティブ研究」(JMIR Publications)
2022年8-9月に投稿された、「がん(癌)」の文字が含まれる7万件弱のツイート(140字以内の短文投稿)の内、「いいね」数の上位100件を専門家2名でレビューしたところ、次のことがわかりました。
・44件に誤りの情報、31件に有害な情報、30件に誤りの情報と有害情報の両方が含まれていた
・有害な情報は安全な情報の95倍の「いいね」が付いていた ・誤りの情報は、正しい情報の29倍「リツイート」(自分がフォローしていた人のツイートをそのまま自分のフォロワーにツイートすること。メールの”転送”みたいなものですね)されていた
・有害な情報は、安全な情報の35倍「リツイート」されていた まあ、安全な情報とか正しい情報ってのは、そうではないものと比べるとつまらないのが相場で、”注目を獲得してナンボ”というソーシャルメディアでは、どうしても埋もれがちになります。
Twitter上で目立つ情報は、安易に信用しない方が良さそう、というのがひとまずの結論です。
とはいえ、Twitterは、”誰をフォローするか”によって、流れてくる情報の質も大きく変わってきます。
がんに関する情報でしたら、腫瘍内科医や、各がん種の専門医資格を持っている医師をフォローして、彼ら彼女らの言説で判断、というようなやり方をまずはお勧めします。
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ishuran · 8 months
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Vol.165 遺伝子変異は早く知るに限る〜進行非小細胞肺がんでの興味深い研究結果
お盆が過ぎ、少しは涼しさを感じられるようになるかと思いきや、変わらずの猛暑&熱帯夜続きで、流石に身体に堪えますね。
東京で猛暑日がこんなにもあった年はあったかなと記録を調べてみたら、今まで一番多かったのが、昨年の16日間。2010年に記録した13日間を12年ぶりに更新しての数字です。
そして、今年は…  なんと8月29日時点で既に22日間!!
世界陸上での日本記録の大幅更新はWelcomeですが、こんな大幅な記録更新は勘弁して欲しいです。
私自身も、夏バテなのか先日来体調を崩してしまい、久しぶりに高熱にうなされる日を過ごしています。検査の結果、コロナでもインフルでもなさそうなのはまだ良かったのですが…
読者の皆さまにおかれましても、どうぞお身体ご自愛くださいませ。
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【記事1】 BMIと副作用:太るべきか、太らざるべきか?
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適切な体重管理は、がん治療においては一般的にプラスに働くと考えられています。
特に、乳がんについてはかなりエビデンスが揃っており、ガイドラインの中でも肥満の影響について論じられています。
 ■「CQ6    肥満は乳癌患者の予後に影響を及ぼすか?」(乳癌診療ガイドライン2022年版)
「乳癌診断時に肥満である患者の乳癌再発リスク,乳癌死亡リスク,全死亡リスクが高いことは確実である」
「乳癌診断時より肥満度が上昇した患者において乳癌再発リスク,乳癌死亡リスク,全死亡リスクが高いことはほぼ確実である」
と記載されており、治療医が患者の体重管理について助言をする根拠となっています。
一方で、抗がん剤治療の際に、体重(BMI)がどのような意味を持ち得るのかについて、一本興味深い論文が出てきました。
 ■"Impact of BMI in Patients With Early Hormone Receptor–Positive Breast Cancer Receiving Endocrine Therapy With or Without Palbociclib in the PALLAS Trial”「PALLAS試験でパルボシクリブ併用または非併用の内分泌療法を受ける早期ホルモン受容体陽性乳癌患者におけるBMIの影響」(Journal of Clinical Oncology)
抗がん剤は注射剤の場合、一般的に「体表面積」あたりで投与量が決まっています。「体表面積」は身長と体重で決まります。
一方で、パルボシクリブ(イブランス)のように「経口剤」の抗がん剤もありますが、この場合、身長とか体重には関係なく、投与量は基本誰でも同じです。
PALLAS試験は、ホルモン陽性の早期乳がんの患者さんに、術後療法として標準的なホルモン剤にCDK4/6阻害薬パルボシクリブ(イブランス)を上乗せした場合の再発予防効果を検証した試験です。
この試験を実施した際に、BMIによる副作用の出方の違いも同時に検証しており、その結果について論じられているのが、上記の文献になります。
解析に組み入れられた5,698例のうち、ベースライン時の体重は、68例(1.2%)が低体重、2,082例(36.5%)が標準体重、1,818例(31.9%)が過体重、1,730例(30.4%)が肥満でした。
そして、パルボシクリブ群では、BMIが高いほど好中球減少症が有意に減少(7%)し、これがBMIが高いほど治療中止率が有意に低下(25%)したことに繋がったと考えられました。
ちなみに、BMIに関係なく、本試験ではパルボシクリブの上乗せ効果は認められませんでした。
ここから推察されることは、パリボシクリブだけでなく経口剤の抗がん剤の治療においては、体重がある方が副作用の出方やそれに伴う中止のリスクは下がるかもしれないということです。
有効であることがわかっている治療方法であれば、副作用による中止リスクは下げた方が良いでしょうから、その意味では体重は増えている方がむしろ良いのではと考える向きもありそうですが…
とはいえ、全体としては再発リスクがBMIの増加により上がることはほぼ確実なわけで、この試験結果をもって「太るべき」とは、言えないでしょうね。
いずれにしても、パルボシクリブ以外の薬剤での追加的な研究結果が期待されるところです。
※本項執筆時点(2023年8月31日)で、筆者はパルボシクリブに関し、特筆すべき利益相反はありません。
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【記事2】遺伝子変異は早く知るに限る~進行非小細胞肺がんでの興味深い研究結果
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非小細胞肺がんは、がんを引き起こす「ドライバー遺伝子」の解析と臨床への応用、すなわち「個別化医療」がもっとも進んでいるがんです。
現在、日本で対応する分子標的薬が存在する遺伝子変異は、EGFR, ALK, ROS1, MET, RET, NTRK, BRAF, KRAS遺伝子G12C変異、と数多くあり、今後も増えていくことが予想されます。
従って、このメルマガでも何度も取り上げている「遺伝子パネル検査」を行なう意義がもっともあるがんと言えます。
ところが、ここで大きな問題が一つ。
現状では、遺伝子パネル検査が保険で認められるのは、「標準治療がない、または局所進行または転移が認められ標準治療が終了となった固形がん患者さん(終了が見込まれる方を含む)」のみです。
本来であれば、再発/進行が判明した時点で、「遺伝子パネル検査」を行ない、適合した治療にすぐ進んでいったら良さそうなものなのに、そうなっていないわけですね…
遺伝子パネル検査をなるべく早期に行なった方が良さそう、ということを示唆する研究結果を、一本ご紹介します。
 ■”Compromised Outcomes in Stage IV Non–Small-Cell Lung Cancer With Actionable Mutations Initially Treated Without Tyrosine Kinase Inhibitors: A Retrospective Analysis of Real-World Data"「チロシンキナーゼ阻害剤なしで初期治療された、治療可能な変異を有するステージIV非小細胞肺癌における予後の悪化:リアルワールドデータのレトロスペクティブ解析」(Journal of Clinical Oncology)
「チロシンキナーゼ阻害剤」とは、遺伝子変異に適合した分子標的薬とお考えください。
研究時点で治療アクションが可能ながん遺伝子変異「EGFR, ALK, ROS1, BRAF, MET, RET, ERBB2, or NTRK」を持っていたとわかっていた患者さんの転帰を以下の3群に分けて調べました。
・A群:遺伝子変異が判明するまで治療開始を待ち、適合する分子標的薬で治療した群(379名)
・B群:当初化学療法or免疫チェックポイント阻害剤で治療開始し、分子標的薬に35日以内にスイッチした群(47名)
・C群:当初化学療法or免疫チェックポイント阻害剤で治療開始し、分子標的薬に35日以内にはスイッチしなかった群(84名)
ちなみに、遺伝子変異の内訳は下記の通りです。
EGFR (n = 451), BRAF (n = 113), HER2 (n = 60), MET (n = 59), ALK (n = 58), ROS-1 (n = 21), NTRK1/2/3 (n = 15),  RET (n = 14)
結果、全生存期間(OS)の中央値は、
・A群:28.8ヶ月
・B群:21.7ヶ月
・C群:15.3ヶ月
となり、A群とC群の間では有意差ありという形でした。
ということで、遺伝子変異がある場合、なるべく早いタイミングで適合した分子標的薬での治療に入ることが大事になるということが示唆されるデータでした。
ちなみに日本での臨床実態は、いきなりの遺伝子パネル検査は保険診療の中ではできませんが、EGFRやALKなど、比較的昔から知られている遺伝子変異については事前に調べ、そうでない遺伝子変異についてはスキップしたり後日実施したりする形で対応されている施設が多いと考えられます。
遺伝子変異は「早く知っておくに越したことはない」ということで、今後、より早いタイミングでの遺伝子パネル検査の保険適応を期待したいと思います。
※本項執筆時点(2023年8月31日)で、筆者は複数の遺伝子パネル検査機器メーカーの株式を保有しています。
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ishuran · 9 months
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Vol.164 外来化学療法はiPod&イヤホン持参が吉!? 音楽療法の新エビデンス
大谷翔平選手(野球)のMLBでの大活躍、井上尚弥選手(ボクシング)の4階級制覇、とスポーツ界で大きなニュースが続いてますが、女子サッカーW杯も見逃せません。
娘のおかげで、私も女子サッカーに注目するようになってきたのですが、日本ではプロリーグができたものの、なかなか「マイナー」な競技のイメージから抜けきれていないのが現状です。
これを打破するためにも、やはりW杯での活躍は不可欠。まずは予選リーグを無事通過しましたので、決勝リーグで、2011年・15年当時のような躍進を再び期待したいですね。
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【記事1】 私のがんにも関係ある?「HER2陽性」は乳がん/胃がんのみにあらず
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「HER2陽性」のタイプがあるがんというと、乳がんや胃がんを思い浮かべる方が多いかと思います。
以前のメルマガで、実は大腸がんにもHER2陽性タイプがわずかながらあって、代表的な抗HER2抗体薬のトラスツズマブ(ハーセプチン)が効果を発揮した、というお話を紹介しました。
 ■「Vol.140 すごいぞSCRUM-Japan! 肺がんと大腸がんで立て続けに新治療に繋がる成果」(イシュランメルマガ)
本研究の成果もあり、大腸がんでは、「トラスツズマブ(ハーセプチン)+ペルツズマブ(パージェタ)」という抗HER2抗体薬での治療が日本で昨年承認されました。
また、HER2は肺がんにも発現しているケースがあって、HER2陽性非小細胞肺がんの二次治療として、新世代の抗HER2抗体薬「T-DXd(エンハーツ)」が承認申請を昨年末しています。
更にHER2は、他の様々ながんでも、それぞれ確率は低いものの発現しているケースがあることがわかってきています。
そこで、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、胆道がん、膵臓がん、膀胱がん、およびその他のがん種で「HER2陽性」と判明した患者さんで、「T-DXd(エンハーツ)」の有用性を検証しようという「DESTINY-PanTumor02試験」が進んでいます。
蛇足ですが、このような、がん種横断の臨床試験を「バスケット試験」と呼びます。
一つ一つのがん種だけだと対象となる患者数が少なく、相応の規模の試験ができないので、”まとめてドン”でやるわけですね。
この「DESTINY-PanTumor02試験」の中間解析結果の続きが出てきました。
 ■"ENHERTU® Demonstrated Clinically Meaningful Progression-Free Survival and Overall Survival Across Multiple HER2 Expressing Advanced Solid Tumors in DESTINY-PanTumor02 Phase 2 Trial"「DESTINY-PanTumor02フェーズ2試験において、エンハーツが複数のHER2発現進行性固形がんにおいて臨床的に意義のある無増悪生存期間および全生存期間を実証」(第一三共株式会社プレスリリース)
執筆時点で何故か、日本語のサイトにはなく、英語サイトにだけプレスリリースが掲載されてるのですが…
元々、今年のASCOで本試験の主要評価項目である客観的奏効率(腫瘍が縮小した症例の割合と考えてください)は37.1%で、安全性で特に新しい懸念点はなし、というデータは出てきており、今回の発表で有用性がさらにしっかりと示されたという感じです。
・フェーズ3まで待たずに承認申請がされるかどうか
・その場合、フェーズ2で客観的奏功率が低かった胆道がんや膵臓がんの扱いはどうなるのか
あたりが今後の焦点となってくると思いますが、今後の動向を見守りたいと思います。
※本項執筆時点(2023年7月31日)で、筆者はT-DXd(エンハーツ)やトラスツズマブ(ハーセプチン)に関し、特筆すべき利益相反はありません。
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【書籍紹介】「言葉はいのちを救えるか? 生と死、ケアの現場から」
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友人でもあり、数少ない”腕利き”の医療専門記者である岩永直子さんが、独立されたと共に、初めての書籍を書き下ろされたので、ご紹介。
 ■「言葉はいのちを救えるか? 生と死、ケアの現場から」(岩永直子 晶文社)
重たいテーマ設定ですが、当事者の肉声を丹念に紡いだ渾身の著です。ご興味ある方はぜひ手に取られてみてください。
岩永さんは読��新聞とバズフィードで長年活躍され、バズフィード時代にまだ乳がんしかカバーしていなかったイシュランを取材していただいたことがあります。
それが、会社の突然の経営体制の変更に伴い、医療記事を書けない状況に追い込まれ、ちょうど独立されたところです。
今、ご自身で「医療記者、岩永直子のニュースレター」という媒体でオリジナルの取材記事を連載されていますので、こちらもよろしければチェックしてみてください。
一部の記事は無料で閲覧可能で、別途有料のサポートメンバー限定記事もあります。記事を読まれて、岩永さんを応援されたいと思われた方は、ぜひサポートして頂けたらと思います。
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【記事2】外来化学療法はiPod&イヤホン持参��吉!? 音楽療法の新エビデンス
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以前のメルマガで、運動ががん治療にもたらすベネフィットについて研究する「運動腫瘍学」を取り上げたことがあります。
 ■「Vol.153 【記事2】運動とがんの関係を科学する「運動腫瘍学」の登場」(イシュランメルマガ)
では、「体育(運動)」に相応のベネフィットがあるとして、「音楽」はどうなんでしょう?
ちょっと古いですが、緩和医療学会がガイドラインの中でエビデンスのレビューをまとめていますので、まずはご紹介。
 ■「がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版) Ⅲ章 各論:クリニカル・エビデンス 音楽療法」(日本緩和医療学会)
この中で、音楽療法は、
・がんの身体症状に関しては、「痛みを軽減し得るが、有用性が確立されているとは結論づけられない」「倦怠感の軽減については有用であるとは結論づけられない」とされ、それ以外の症状についてはエビデンス不足。
・精神症状の軽減については、「不安を軽減し得るが、うつの軽減には必ずしも有用であるとは限らない」とされ、それ以外についてはエビデンス不足
であることが示されています。”音楽療法”は、エビデンスそのものがかなり乏しい状況と言えそうです。そんな中、興味を惹く試験結果が出てきました。
 ■"Using Music as a Tool for Distress Reduction During Cancer Chemotherapy Treatment”「がん化学療法中の苦痛軽減ツールとしての音楽の活用」(Journal of Clinical Oncology)
化学療法のために来院した成人患者750名を、音楽活用群と非活用群にランダムに振り分け、前者は好きなジャンルの音楽を選択して点滴中にiPodで最大60分間聴いてもらい、後者は何もなし、とします。
介入前には、音楽活用群と非活用群の間で、「疼痛」「ポジティブな気分」「ネガティブな気分」「苦痛のレベル」で差はなかったのが、介入後はどうなったかというと…
「ポジティブな気分」「ネガティブな気分」「苦痛のレベル」について、音楽活用群で有意な改善が認められ、「疼痛」については有意差は見られませんでした。
改善の度合いがどの程度の意義かが分かりかねるところですし、点滴終了直後の気分の改善がどれくらい継続するものかなど、ツッコミどころはあるのですが、それでもエビデンス不足の中でこうした研究結果が出てきたことは素晴らしいと思います。
なにせ、追加コストも副作用もほぼ心配ないので、現場でどんどん試してみる価値はありそうです。
化学療法中の患者さんで良いなと思われた方は、次回の通院の際にはiPod&イヤホン持参で行かれてみるのも良いかもしれませんね。
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ishuran · 10 months
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Vol.163 遺伝子パネル検査はこれからのがん治療のパスポートになる
7月に入って、関東地方は身体に堪える暑さが続いています。もしかしたら、もう梅雨明けしてしまっているのかもしれません。
一方、九州北部は大変な豪雨とのことで、お住まいの方にはお見舞い申し上げます。
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【記事1】 遺伝子パネル検査はこれからのがん治療のパスポートになる
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遺伝子パネル検査についてはこれまでも何度かメルマガで取り上げてきました。
背景と現状のおさらいですが、、、
・がんを引き起こす様々な遺伝子異常がわかってきた中で、一つ一つの遺伝子異常の有無を調べていく既存のやり方ではキリがないので、まとめて一気に調べる「遺伝子パネル検査」が出てきた
・遺伝子の異常がわかっても、対応する治療薬が存在しない場合が多い。とはいえ、存在する場合はその治療薬を使わなかった場合と比べ、圧倒的に優れた治療効果が期待できる
・現状、日本だと、当該検査の医療費は56万円で、保険が適用されると患者負担はその1-3割
・日本で保険が適用されるのは、「標準治療がない、又は終了する見込みである固形がん」などごく限られたケースで、それも一人一回のみとなっている
さて、この遺伝子パネル検査に関連する論考が出てきました。
 ■”Universal Germline and Tumor Genomic Testing Needed to Win the War Against Cancer: Genomics Is the Diagnosis”「がんとの闘いに勝つために必要な、生殖細胞系列と腫瘍の普遍的な遺伝子検査:遺伝子は診断である」(Journal of Clinical Oncology)
この論考の中で、首がもげるほど頷けたのが、
「がんとの戦いに本気で勝とうとするならば、がんを治療するためにも、がんを早期に発見するためにも、がんに関するあらゆる情報を得る必要がある。」
という一文です。
今のところ、遺伝子パネル検査が普及していないのはコストの問題が一番大きいわけですが、技術の発展と共に、今後さらにコストは下がっていく可能性が大きいですし、普及すれば患者さんが無駄な検査や治療をするリスクとコストを下げ、治療成績が上がることも期待できます。
折しも、日本では、患者会から遺伝子パネル検査に関する要望書が政府に対して上げられました。
 ■「『適切なタイミングでのがん遺伝子パネル検査の実施に関する要望書』厚生労働省への提出と財務副大臣への手交のお知らせ」(一般社団法人 全国がん患者団体連合会)
”米国でのがん遺伝子パネル検査については、「全てのStageⅢ、StageⅣの進行再発がん、あるいは再発、再燃、転移がん」の患者さんが対象となっており、初回治療の患者さんを対象にがん遺伝子パネル検査を実施し、その検査結果に基づいて「従来の標準治療の実施」「コンパニオン診断の結果に基づく分子標的薬の投与」「がん遺伝子パネル検査の結果に基づく新たな治療候補薬の選定(治験やコンパッショネートユースなど)」いずれかの治療選択を可能とする「プレシジョン・メディシン(精密医療)」が初回治療から可能となっています”
とあるように、米国の方が一歩進んでいるのが現状です。
日本でも、もう一段遺伝子パネル検査のコストが下がって、誰もが治療の中で何度か使うような「がん治療のパスポート」的な存在になる時代が、早くやってくることを期待したいですね。
※本項執筆時点(2023年7月13日)で、筆者は複数の遺伝子パネル検査機器メーカーの株式を保有しています。
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【記事2】すったもんだの保険適用:オンコタイプ DX 乳がん再発スコアプログラム
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ホルモン陽性・HER2陰性の早期乳がんの患者さんで、「術後化学療法」を行なうかどうかというのは、これまで医療者にとっても患者にとっても悩みどころでした。
再発リスクは下げたいけれど、術後化学療法での副作用を経験したくないという患者心理がある中で、どのような人であれば術後化学療法をやる必要なしという明確な”線引き”がなかったのです。
そこに出てきたのが「オンコタイプDX」という検査です。腫瘍に関連する21個の遺伝子を解析し、再発リスクを「RS(Recurrent Score)」という形でスコア化します。
現在、乳がん診療ガイドラインでは、Oncotype DXを用いたTAILORx試験の結果に基づき、
「Oncotype DXのRSが25以下の場合には,リンパ節転移陰性であれば術後化学療法を省略することを強く推奨する」
としています。
 ■「CQ11   ホルモン受容体陽性HER2陰性乳癌に対して,多遺伝子アッセイの結果によって,術後化学療法を省略することは推奨されるか?」(乳癌診療ガイドライン2022年版)
TAILORx試験では、リンパ節転移陰性でRSが25以下の集団は、化学療法をやった場合(化学療法+ホルモン療法)とやらなかった場合(ホルモン療法のみ)で
 5年IDFS(再発しないで元気に過ごした患者の比率):93.1% vs 92.8%
で、有意差はなく、化学療法を加えるメリットはないという結果になりました。
ということで、オンコタイプDXを使用する意義も示され、日本でも2021年8月に承認されたわけですが、ここからすったもんだがありました。
 ■「オンコタイプDXに関するこれまでの経緯と今後の対応について」(厚生労働省)
いやあ、当該企業(エグザクトサイエンス株式会社)に対して完全に怒ってますね、厚生労働省(苦笑)
2021年12月1日までにプログラムの修正を約束していたのに、企業側が守らなかったということで、
「当企業に対しては、厚生労働省に対して、正当な理由なく安定供給が困難な事態を遅滞なく 報告しなかったことから、企業からの再発防止策等の改善策が示されない限り、経済課において今後の保険適用の手続きを留保する。」
とまで書かれてしまってます。
これがようやくのこと、本年9月に保険収載されることになりました。
 ■「乳がん遺伝子検査、9月から公的医療保険の対象に…3割負担で13万500円」(読売新聞オンライン)
問題が起きてから解決するまでなぜ2年もの時間がかかったのか等、モヤモヤは残りますが、ともかくも正常な環境下でこの検査が普及する体制が整ったことを、まずは歓迎したいと思います。
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ishuran · 10 months
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Vol.162 【ASCO特集】カペシタビン(ゼローダ)の手足症候群に救いの手
梅雨真っ只中、ムシッとした空気に覆われていますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
私は先日、北海道(札幌)に出張で行き、一瞬だけですが爽やかな青空を楽しむことができました。
今月は皮膚科関連の学会に17年ぶり(!)に立て続けに参加してきたのですが、流石にこれだけ年数が経つと、座長や演者で見知っている先生はごく僅かで、時の流れを感じます。
今号は、月初に開催されたASCO(米国臨床腫瘍学会)からの最新情報を2本お届けします。
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【記事1】CDK4/6阻害剤の使い方に一石を投じた「SONIAスタディ」
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「ホルモン陽性・HER2陰性」は、乳がんで最も多いサブタイプです。
このタイプの乳がんの場合、がんは女性ホルモンを糧に増殖するため、術後療法にしても進行/再発時の治療にしても、ベースになるのは女性ホルモンを抑制する「ホルモン療法」になります。
ここに加わったのが、CDK4/6阻害剤というタイプの抗がん剤で、日本ではパルボシクリブ(イブランス)とアベマシクリブ(ベージニオ)の2剤が、2017年から18年にかけて、進行/再発のホルモン陽性・HER2陰性乳がんの治療薬として登場しました。
当初は二次治療以後で使われていたのですが、一次治療での有用性を示すエビデンスが出たことにより、現在では一次治療でもCDK4/6阻害剤+ホルモン剤(アロマターゼ阻害剤)がホルモン剤単剤の治療よりも推奨度の高い標準治療となっています。
ところが、そこに一石を投じるような試験結果が出てきました。
 ■”Primary outcome analysis of the phase 3 SONIA trial (BOOG 2017-03) on selecting the optimal position of cyclin-dependent kinases 4 and 6 (CDK4/6) inhibitors for patients with hormone receptor-positive (HR+), HER2-negative (HER2-) advanced breast cancer (ABC)”「ホルモン陽性HER2陰性進行乳がん患者に対するCDK4/6阻害剤の最適な投与タイミングの選択に関する第3相SONIA試験(BOOG 2017-03)の主要アウトカム解析」(Journal of Clinical Oncology)
一次治療でホルモン剤単独療法、二次治療でCDK4/6阻害薬の併用療法を行う場合と、一次治療からCDK4/6阻害薬の併用療法を行う場合を、”ガチンコ”で比較した試験は今までなく、SONIA試験はそこを明らかにしようとした試験です。
1050名のホルモン陽性・HER2陰性の進行/再発乳がんの患者さんを、以下の2群に分けてその後の治療経過を比較しました。
・一次治療でCDK4/6阻害剤+アロマターゼ阻害剤、進行後の二次治療でフルベストラント<A群>
・一次治療でアロマターゼ阻害剤、進行後の二次治療でCDK4/6阻害剤+フルベストラント<B群>
結果、2つの治療を合わせた無増悪生存期間(PFS2)は、A群は31.0ヶ月、B群は27.8ヶ月で、両者の間に有意差はなし。
一方で、CDK4/6阻害剤での治療期間は、A群は24.7ヶ月・B群は8.3ヶ月と、圧倒的にB群が短く、Grade3以上の重篤な有害事象の発生件数も2778件vs1620件と、B群が少ない結果となりました。
色んな意味で負担の大きい治療はなるべく後回しにしたい患者ニーズは一般的ですので、アロマターゼ阻害剤単剤治療が一次治療でも効果面で明確な不利がなさそうという今回の試験結果は、患者さんにとって選択肢の幅が広がったという意味で朗報だと思います。
最後に、こんな試験を製薬会社がやるわけないよなと思って資金提供者をチェックしたら、「オランダ医療研究開発機構とオランダの医療保険会社」と出てました。
今後もこうした患者さんの負担面に配慮する「デ・エスカレーション」的な試験は、保険者が率先して行なう流れが続きそうですね。
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【記事2】カペシタビン(ゼローダ)の手足症候群に救いの手
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「手足症候群」という言葉、抗がん剤治療を経験されてきた方は、耳にしたり実際に経験されたことがあるかもしれません。
抗がん剤を投与することで、
・手や足がしびれる、痛むなどの感覚異常が出る
・手や足の皮膚が赤くなる、むくむ、しみが出来る、皮膚が硬くなる(角質化)、水ぶくれが出来る
・爪が変形する、色がつくことがある
(出所:国立がん研究センター東病院)
などの症状が副作用として出てくることがあり、これら一連の症状が「手足症候群」と呼ばれています。
酷くなると、ものを持てなくなったりキーボードを打てなくなったりなど、著しくQOLが阻害されます。
「手足症候群」を引き起こしやすい抗がん剤の中でも代表的なものが「カペシタビン(ゼローダ)」。経口剤という簡便性もあって、胃がん、大腸がん、乳がんで、広く使われています。
このゼローダの手足症候群を予防するのに、「ジクロフェナク」という消炎鎮痛剤の外用剤を試してみた試験結果が出てきました。
 ■”Randomized double-blind, placebo-controlled study of topical diclofenac in prevention of hand-foot syndrome in patients receiving capecitabine”「カペシタビン投与患者における手足症候群予防を目的としたジクロフェナク外用薬の無作為二重��検プラセボ対照試験」(Journal of Clinical Oncology)
ジクロフェナクは昔からよく使われている消炎鎮痛剤で、ブランドとしてはボルタレンが一番有名です。
カペシタビン投与予定の乳がん/胃がんの患者さんに、ジクロフェナク外用剤を予防的に4サイクル投与する群(130名)とプラセボ群(133名)とで、手足症候群の出方に違いがあるか調べたところ…
グレード2以上の手足症候群の発症率:3.8% vs 15.0%
全てのグレードの手足症候群の発症率:6.1% vs 18.1%
と、有意差ありで、ジクロフェナク投与群が低い結果になりました。
手足症候群が酷くなるとカペシタビンを減量せざるを得ないので、抗がん剤の本来の効果を期待するという意味でも、ジクロフェナク外用剤の予防投与は意義があると考えられます。
さらに、ジクロフェナクは古い薬剤なので、コストが極めて低いのも喜ばしいですね。
今回の試験はカペシタビン投与に限定されたものですが、手足症候群は、カペシタビン以外の抗がん剤でも比較的よくある副作用のため、更に応用が進むことを期待したいと思います。
※本項執筆時点(2023年6月30日)で、筆者はジクロフェナク外用剤、カペシタビンに関して、特筆すべき利益相反はありません。
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ishuran · 11 months
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Vol.161 「HER2(ハーツー)」の気まぐれにご用心
日差しの強さに”夏”を感じるようになってきました。
例年、ここから2ヶ月くらいが私にとっては「学会シーズン」なのですが、今年は乳癌学会を含め、最大5つほど参加を検討しています。
学会というと、一般の患者さんにとってはあまり身近な存在に感じられないかもしれないですが、実は無料で参加できるプログラムがあったりします。
今号では、乳癌学会期間中に開催される、患者・市民参画プログラムのご案内も出しておりますので、ご興味のある方、ご一読ください。
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【記事1】「HER2(ハーツー)」の気まぐれにご用心
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「HER2(ハーツー)陽性」タイプは、乳がんに多く、その他に胃がん、そして更には大腸がんや肺がんなどでもわずかですが存在します。
そして、この「HER2陽性」の考え方が変わってくるという話を、以前のメルマガの中で書きました。
 ■「 Vol.150 <ASCO速報>T-DXd(エンハーツ)の治験結果にスタンディング・オベーション!」(イシュランメルマガ Vol.150)
記事内にもありますが、IHCという検査方法で「3+」のスコアが出た場合、もしくはIHCで「2+」(偽陽性)となりFISHという別の検査方法で陽性となった場合、「HER2陽性」判定となります。
これに対し、IHCで「1+」もしくは、IHCで「2+」かつFISHで陰性、の状況を「HER2”低発現”」と呼びます。
トラスツズマブ(ハーセプチン)に代表される既存の抗HER2抗体は、「HER2”低発現”」では効果が出ませんが、T-DXd(エンハーツ)は進行乳がんの標準治療として入ってきています。
「ホルモン陽性・HER2陰性」と判定されていた方は、実は「HER2低発現」であるケースが半々くらいの確率でありますので、今一度お手元の検査結果を確かめておかれた方がよろしいかと思います。
HER2に関してはもう一つ、気になる話があります。
それは、HER2の判定はかなり「揺らぐ」可能性があるという点です。
 ■"Intra-patient and inter-metastasis heterogeneity of HER2-low status in metastatic breast cancer”「転移性乳がんにおけるHER2低発現の患者内および転移先間の不均一性」(European Journal of Cancer)
献体された「HER2陰性」の10人の再発乳がん患者さんの転移巣257個と乳腺腫瘍8個の生検サンプルと、生前に採取された41の生検サンプルを染色して、HER2の状況について調べたところ。。。
・10人中8人の患者さんについて、HER2低発現とHER2陰性の組織が転移巣に混在
・HER2低発現病変の割合は、5%から89%
・ホルモン陽性原発の患者では、陰性原発と比較して、HER2低発現の転移の割合が比較的高かった
ということで、原発の判定で「HER2陰性」であっても、転移組織での判定は「HER2低発現」の可能性がかなりあるし、同じ患者さんであっても組織の採取部位によってHER2の判定が変わり得ることが示唆されています。
こうなってくると、腫瘍組織そのものを採取する検査より、血液等を用いたリキッドバイオプシーの方がむしろ精度高く判定できる、みたいな世界が将来やってきそうな気もしますね。
いずれにしても、HER2は現時点では”気まぐれ”な指標とも言え、「HER2陰性」は真に「陰性」と早合点しない方が良さそうです。
※本項執筆時点(2023年5月31日)で、筆者はハーセプチン、エンハーツに関して、特筆すべき利益相反はありません。
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【ご案内】2023年日本乳癌学会 患者・市民参画プログラム「BC-PAP」
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今年の乳癌学会学術総会の会期中に患者・市民参画プログラム、通称「BC-PAP(ビーシー・パップ:Breast Cancer Patients and Advocates Program)」が開催されます。
編集長の鈴木も参加経験のあるプログラムですが、各専門の医師を講師に招き、乳がん治療・ケアの最新情報を、患者さんやご家族、一般の方も分かり易く学ぶことができるセッションです。
無料で乳がんの最新情報について学べますので、この機会にご参加されてみてはいかがでしょうか。
・開催日 2023年6月30日(金)、7月1日(土)(学術総会 第2日目、3日目)
・場所   パシフィコ横浜ノース (神奈川県 横浜市西区みなとみらい1-1-2)
・参加形態 現地、オンラインのいずれかを選べます。参加タイプにより学術総会の医療者向けセッションの聴講が可能です。
※学術総会終了後のオンデマンド配信は7月上旬~8月末を予定。
お申込みや詳細はこちらから ↓↓↓↓↓↓
https://www.congre.co.jp/jbcs2023/patient/index.html
締め切りは5月31日(水)15時です。お早目にお申し込みください。
※申し込みの途中に、参加区分の選択項目があります。患者支援者、一般市民の方も含めBC-PAPに参加される方すべて、「非会員(患者・家族)」を選んでください。
不明点などは、HP掲載のメールアドレスにお問い合わせください。
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【記事2】営業赤字の製薬企業増加で気になる、医薬品の安定供給
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昨年、ジェネリック医薬品メーカーの相次ぐ不祥事に端を発し、新型コロナのオミクロン型の流行なども相まって、多くの種類の医薬品で供給不足が話題となりました。
供給が怪しくなっても同種同効の他剤があればまだ良いのですが、”替えの利かない"抗がん剤で供給不足になると、問題は大きくなります。
そんな問題が今年起きてしまったのが、再発・進行卵巣がんの標準治療薬である「ドキシル」です。
元々は、私の古巣であるヤンセンファーマが製造・販売していた薬剤なのですが、いつの間にか製造元はバクスター、販売は富士製薬に代わっています。
 ■「『ドキシル®注 20mg』の供給に関するお知らせとお詫び」(富士製薬/Baxter)
3月から限定出荷ということで、医療現場でもかなり混乱があったと思われます。
そこに今月新しいお知らせが入ってきました。
 ■「ドキシル注® 20mg 供給に関するお詫び」(Baxter)
またもや「お詫び」で悪い知らせかと思いきや、「日本においては、製造・出荷検定・輸入期間を鑑み、2023年9月に供給が改善される見通し」とのことで、とりあえず一安心ですね。
その一方で、ちょっと気になるニュースも。
 ■「国内製薬23年3月期、営業赤字の企業が増加…中堅企業、事業環境の悪化が収益直撃」(AnswersNews)
製薬会社といえば、かつてはどんなに業界下位の企業であっても、黒字経営というのが相場でした。
ところが、ここ10-20年で
・特許切れの古い薬剤は、ジェネリック医薬品への置き換えが進む
・日本国内での基礎研究への投資が細る
・新薬の開発コストは嵩む一方
という大きな流れが起きており、画期的な新薬の開発が(ほとんど)できず、古い薬剤群に売上の大半を頼らざるを得なくなっている製薬会社は、段々と経営が厳しくなってきています。
製薬会社も営利企業である以上、経営が傾いてくると費用削減のため、製造拠点の集約・在庫の縮小・従業員の削減、といったことをせざるを得なくなったりして、供給能力が脆弱になりかねません。
本記事の中でヤクルトは特に気になりますね。
ヤクルトと言えば、乳酸菌飲料やプロ野球の球団を思い起こす方がほとんどかと思いますが、実は「オキサリプラチン」や「イリノテカン」という、基幹的な抗がん剤を製造・販売していますので。
いずれにしても、今後、中堅製薬企業にとって経営環境はますます厳しくなると考えられますので、安定供給が保たれるか、注視が必要になってくる薬剤も出てきそうです。
※本項執筆時点(2023年5月31日)で、筆者はドキソルビシン塩酸塩(ドキシル)、オキサリプラチン、イリノテカンに関して、特筆すべき利益相反はありません。
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ishuran · 1 year
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Vol.160 術中の局所麻酔ががんの再発を防ぐ!? リドカインの興味深い治験結果
桜が散り、ツツジが咲き、新緑が目につく季節になってきました。
花粉症族の一人としては、GW近くになると日々の服薬と屋外でのマスク着用から自由になり、気持ち良い空気を思い切り吸えるようになるのが何よりです。
今月は、昔から他の用途で使われているお薬が、実はがん治療に役立ちそうというお話の2本立て。いずれもインド発の研究のご紹介です。
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【記事1】がん患者の「食欲不振」に効果が認められた意外な薬とは
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医療用の医薬品には副作用がつきものですが、中には「意外な”副作用”」があって、それが新たな治療の開発に結びつくことが時折あります。
例えば、古典的な鎮痛薬であるアスピリンには、血液をサラサラにする作用があることが昔から知られていて、日本でも血栓の予防薬として2000年に承認されてます。
最近では、GLP-1受容体作動薬という糖尿病の治療薬が、肥満症の治療薬として承認されたなんてニュースもありましたね。
さて、1990年代に開発された抗精神病薬で、オランザピン(製品名ジプレキサ)という薬があります。
この薬に吐き気を止める作用があることは昔から知られており、緩和医療の現場ではよく使われていました。2017年には、「公知申請」という仕組みを使って、制吐剤としての承認を得ています。
 ■「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議 公知申請への該当性に係る報告書 オランザピン 抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状(悪心・嘔吐)」(PMDA)
吐き気を伴う抗がん剤の治療経験のある方は、このお薬を飲まれたことがあるかもしれませんね。
そして、オランザピンの類のお薬のポピュラーな”副作用”として、「食欲亢進」もあります。
統合失調症の患者さんだと長期で投与されるお薬になりますので、
 ■「統合失調症に合併する肥満・糖尿病の予防ガイド」
なんていうガイドも作られているくらいです。
そこを逆手にとって、化学療法中の食欲不振に、このオランザピンが効果があるのではないか、という仮説のもと、行なわれた研究がこちらです。
 ■”Randomized Double-Blind Placebo-Controlled Study of Olanzapine for Chemotherapy-Related Anorexia in Patients With Locally Advanced or Metastatic Gastric, Hepatopancreaticobiliary, and Lung Cancer”「局所進行性または転移性の胃癌、肝胆膵癌、肺癌患者における化学療法に関連した食欲不振に対するオランザピンの無作為二重盲検プラセボ対照比較試験」(Journal of Clinical Oncology)
124人の進行がん患者を、オランザピン投与群(63人)とプラセボ投与群(61人)に分けて、その後の経過を見たところ、
体重増加:60% vs 9%
食欲改善VAS指標良化:43% vs 13%
食欲改善FAACT AC指標良化:22% vs 4%
さらに、オランザピンを投与された患者は、QOL・栄養状態が改善され、化学療法の毒性も軽減され、副作用は最小限。
化学療法中の患者の食欲と体重増加を有意に改善する、シンプルで安価な治療という結論となりました。
オランザピンのようなクラシックな薬の場合、特許が切れてしまっているため、新たな研究に製薬会社が投資することがなかなか期待できません。
今回は、Jawaharlal Institute of Postgraduate Medical Education and Researchというインドの医科大学の学内助成金を活用しての研究だったようです。
今後、日本発でもこうした研究が出てくることを期待したいですね。
※本項執筆時点(2023年4月28日)で、筆者はオランザピンに関して、特筆すべき利益相反はありません。
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【記事2】術中の局所麻酔ががんの再発を防ぐ!? リドカインの興味深い治験結果
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歯医者さんで、虫歯や親知らずなどの抜歯を経験されたことのある方は、歯茎にチクチクっと局所麻酔をされたことと思います。
胃カメラ(内視鏡)検査をされた方なら、喉にシュシュっとスプレーをかけられて、やはり局所麻酔された経験があることでしょう。
これらの「局所麻酔」によく使われるのが、リドカインというお薬です。
がんの手術中にこのリドカインを使用することが、がんの再発リスクを下げるという仮説があります。
がん治療に手術は欠かせない治療法ではありますが、手術自体が身体に与えるストレスが、がんの再発リスク増につながっているかもしれない。だとしたら、局所麻酔を追加することで身体にもたらされるストレスを軽減することにより、治療成績が上がるのでは、という考え方です。
実際に、過去の治療成績を振り返って比較した研究で、全身麻酔の有無にかかわらず、がん手術の局所麻酔が再発のリスクを低減する可能性が示唆されています。
そこで、実際にリドカインを使う群と使わない群で、前向きな比較を行なった研究の結果が出てきました。
 ■”Effect of Peritumoral Infiltration of Local Anesthetic Before Surgery on Survival in Early Breast Cancer”「術前の局所麻酔薬の腫瘍周囲への浸透が、早期乳癌の生存率に及ぼす影響」(Journal of Clinical Oncology)
1583人の早期乳がんの患者さんをくじ引きで、術前にリドカインを注入する「リドカイン使用群」と通常の手術のみの「不使用群」に分け、その後の経過を観察したところ、次のような結果となりました。(数字は「リドカイン使用群」vs「不使用群」)
・5年DFS(5年間再発や他の病気がない状態で生存した率):86.6% vs 82.6%(有意差あり)
・5年OS(5年間生存した率):90.1% vs 86.4%(有意差あり)
・局所再発率:3.4% vs 4.5%(有意差なし)
・遠隔再発率:8.5% vs 11.6%(有意差あり)
・リドカインが原因と考えられる有害事象はなし
ということで、リドカインの使用が再発リスクを軽減することはまず確実と言えそうです。何よりも、ほとんど追加の費用がかからず副作用の心配も不要なのが素晴らしいところですね。
日本では現在、乳がんの手術は全身麻酔が基本で、場合によって局所麻酔を併用したり、局所麻酔のみで行なったりするようです。
この試験結果を受けて、日本でも今後どのような対応をしていくのか、要注目ですね。
※本項執筆時点(2023年4月28日)で、筆者はリドカインに関して、特筆すべき利益相反はありません。
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ishuran · 1 year
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Vol.159 ワクチン効かせたいなら睡眠を取るべし。特にあなたが男性なら
桜の季節に合わせるかのような、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)での日本チームの大活躍、素晴らしかったですね。
大谷、ダルビッシュ、吉田、ヌートバーといったMLB組の活躍はもちろんですが、脇役の選手たちの貢献(分厚いリリーフ陣、源田の守備、出塁しまくる近藤、山田の打席での粘り、周東の走塁、等々)にも目を見張りました。
日本のプロ野球(NPB)は米国のマイナーリーグとメジャーリーグの間くらいという評価を長らくされてきていますが、今回のWBCで一段と評価を上げたのではないでしょうか。
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【記事1】ワクチン効かせたいなら睡眠を取るべし。特にあなたが男性なら
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新型コロナのおかげ(?)で、ほとんどの日本国民が大人であってもワクチンを毎年打つような状況になりました。
私自身は、新型コロナのワクチンはもちろん、インフルエンザワクチンも毎年のシーズン前に接種しているのですが、ワクチン接種全般について気になる研究結果が出てきました。
 ■"A meta-analysis of the associations between insufficient sleep duration and antibody response to vaccination”「睡眠不足とワクチン接種に対する抗体反応の関連性に関するメタアナリシス」(Current Biology)
どんなワクチンでも、接種当日は激しい飲酒や運動は避けましょうとか言われるものですが、睡眠について注意喚起されることはほぼありません。
しかし、睡眠不足がワクチンの効果に悪影響を及ぼすとしたらどうでしょうか?
これまで発表されてきた睡眠とワクチン接種の抗体反応の関連性を調べた19本の研究結果の内、質が高いと判断された7本(ワクチンの対象は、インフルエンザや肝炎ウィルスなど)を統合・解析したところ、以下がわかりました。
・ワクチン接種前後の睡眠不足(6時間/日未満)は抗体反応を減弱させる
・睡眠不足による減弱は、2ヶ月間のCOVID-19ワクチン抗体の減衰と同レベル
・男性では顕著に減弱するが、女性については定かではない
ということで、なぜ性差があるのかは不思議なところですが、男性であればワクチン接種前後の睡眠不足は効果の減弱につながるという結論となりました。
気になったのが、どのタイミングでどれくらいの期間、睡眠をしっかり取った方が良いのかですが、個々の研究によってまちまちなので、一概には言えなさそうです。
ただし、7本中3本の研究が接種直後の一晩、1本が接種直前の一晩のみの睡眠時間での話なので、とりあえず前後の1日はしっかり寝ましょうという受け止めで良いのかなと、個人的には判断しています。
男性諸氏、ワクチン効かせたいなら前日と当日は睡眠しっかり取りましょう!
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【記事2】がん遺伝子検査のマルチとシングル、どちらが経済性が高いのか?
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がん遺伝子パネル検査については、このメルマガでも何度となく取り上げてきました。
がんを引き起こす様々な遺伝子異常がわかってきた中で、一つ一つの遺伝子異常の有無を調べていく既存のやり方ではキリがないので、まとめて一気に調べる「遺伝子パネル検査」が出てきた、という話は、下記のエントリーでも書いています。
 ■Vol.144 解決に光明。がん遺伝子パネル検査が生み出す「がんゲノム難民」
遺伝子パネル検査のように複数の遺伝子異常を調べる検査を「マルチプレックス検査」、それに対し遺伝子異常を一つずつ調べる検査を「シングルプレックス検査」、と呼びます。
遺伝子パネル検査で認識されている欠点の一つは、「費用」です。
現状、日本だと、検査のみの医療費は56万円で、保険が効くケースの患者負担はその1-3割。
そして保険が適用されるのは、「標準治療がない、又は終了する見込みである固形がん」などごく限られたケースで、それも一人一回のみとなっています。
そのため、医療現場のプラクティスとしては、最も多くの種類の遺伝子異常が明らかになっている肺がんでも、いきなり”マルチ”(遺伝子パネル検査)というよりは、EGFRやALKなどの個別の遺伝子異常を調べる”シングル”で進めるケースの方が多数です。
でも、シングルの方が本当に”安上がり”なのでしょうか?マルチの方が素早く最適な治療に入れるわけで、その分の効用を考えた時、それでも”高い”という話なのか?
この疑問を考える上で、大変示唆のある研究結果が出てきました。
 ■"Cost-Effectiveness of Next-Generation Sequencing Versus Single-Gene Testing for the Molecular Diagnosis of Patients With Metastatic Non–Small-Cell Lung Cancer From the Perspective of Spanish Reference Centers”「転移性非小細胞肺がん患者の診断における次世代シーケンサーと単一遺伝子検査の費用対効果比較:スペインのレファレンスセンターの視点からの検討」(Journal of Clinical Oncology)
スペインで1年間に診断・治療開始されると理論上考えられる、進行非小細胞肺がん患者9,734人分につき、標準治療とそこから想定される治療期間や副作用などを加味した上で、実際のコストを当てはめ、シミュレーションしたのがこの研究です。
結果、もし対象者全員にシングルプレックス検査の代わりに遺伝子パネル検査を使用した場合、1,873の遺伝子変異が追加的に検出され、82人の患者が臨床試験に登録される可能性があることがわかりました。
そして、長期的には、遺伝子パネル検査を使用することで、対象集団において1,188”質調整生存年(QALY)"の追加が期待されます。一方、増分コストは、21,048,580ユーロ。
質調整生存年(QALY)とは、「元気に過ごせる1年」と考えれば良いので、全体として見た時、遺伝子パネル検査を全面的に使うと、2100万ユーロ余計にコストがかかるけど、1,188年分の「元気な一年」を生み出せる、という構図ですね。
新薬を保険適応するかどうかで、「元気な一年を生み出すのにいくらかかるか」という観点は重要なのですが、上記であれば2万ユーロ(280万円)弱の計算で、これは保険者として十分に”安い”と考えられるレベルです。
ということで、少なくともスペインにおける進行非小細胞肺がんの治療では、遺伝子パネル検査は十分に費用対効果があると考えられそうです。
日本での保険適用の基準は、前述の通り「標準治療がない、又は終了する見込みである固形がん」等に限られているのですが、同様のシミュレーションはできるはずなので、ぜひそうしたシミュレーションを通じて、保険適用の範囲が拡大できないかの検討を進めていくべしですね。
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ishuran · 1 year
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Vol.158 血液がんの患者さん必見:新型コロナ「5類移行後」のがん患者のリスク対応
梅が満開で、早咲きの桜も目にする季節になってきました。
愛犬の散歩の際も、朝晩の空気から鋭さが消えてきて、仄かに春を感じています。
花粉症持ちの私としては、文字通り「痛し痒し���ではあるのですが…
前号のメルマガ「Vol.157 超低用量免疫療法が世界を救う?インド発の画期的な試験結果」は開封率42.3%ということで、過去最高の開封者数(2.6万人)となりました。
こうして読んでいただけるのが、書き手にとって一番の励みになります。これからも、皆様の興味を惹く記事を書き続けていくよう、頑張って参ります!
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【記事1】血液がんの患者さん必見:新型コロナ「5類移行後」のがん患者のリスク対応
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最近はニュースにもならなくなってきましたが、年末から年始にかけておそらく過去最大の感染者数となった新型コロナの「第8波」、ほぼ完全収束の様相です。
ここまで3年間、いわゆる「ロックダウン」的な激しい処置は取らず、複数回のワクチン接種をきっちり行なってきた日本は、諸外国と比べてうまく舵取りしながら、集団免疫を獲得して荒波を乗り越えてきたと言えるのではないでしょうか。
ニュースになった「5類」への感染症法上の位置付けの変更は、意思決定タイミングとしても極めて適切と考えます。
一方で、5類への変更は、がん患者さんにとってはリスクも孕みます。
今後も定期的に予防ワクチン接種で免疫を再強化していくことが前提なわけですが、がん患者さんはワクチンでの予防効果が一般の健康状態の人と比べると低いと考えられるからです。
いくつかのサイトを見比べてみたのですが、最も分かりやすくかつ詳細な情報が日本語でまとめられているこちらは、がん患者さん必見です。
 ■「がん患者さんへの新型コロナワクチン接種Q & A」(国立がん研究センター東病院)
「米国におけるがん患者のワクチン効果は固形がんで66%、血液がんで19%という報告がありますが、mRNAワクチンに限定した研究では固形がんで79%、血液がんで74%という報告もあります。」
ということで、
「健康な人より効果が劣ることが懸念されるため、接種後も屋内や人ごみでのマスクの着用や手洗い、換気をしっかりと行うなどの感染対策の継続が必要」
とされています。周囲は5類移行ということで、ガードが下がる人が多くなるのでしょうが、そこはしっかり続けていく必要がありそうです。
特に、一定の条件下で血液がんの治療を受けていらっしゃる患者さんは、注意が必要です。
上記サイト中の「3.がん治療中の場合接種できますか?」にありますように、血液がん治療でよく使われる抗がん剤が、新型コロナワクチンの予防効果に大きな影響を与えることがわかっているからです。
該当するかもという患者さんに見ておいていただきたいのは、「7.エバシェルドÆ︎(チキサゲビマブ及びシルガビマブ)について」。
本剤は、ワクチン接種しても十分な予防効果を得られないことが想定される患者さんにおいても、感染予防効果が期待され、日本でも昨年8月に承認されています。
以下の状況でかつ「新型コロナウイルス感染症患者の同居家族又は共同生活者等の濃厚接触者ではない」方は投与対象になりますので、該当される方は主治医に相談されるとよろしいかと思います。
・抗体産生不全あるいは複合免疫不全を呈する原発性免疫不全症の患者
・B細胞枯渇療法(リツキシマブ等)を受けてから1年以内の患者
・ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬を投与されている患者
・キメラ抗原受容体T細胞レシピエント
・慢性移植片対宿主病を患っている、又は別の適応症のために免疫抑制薬を服用している造血細胞移植後のレシピエント
・積極的な治療を受けている血液悪性腫瘍の患者
・肺移植レシピエント
・固形臓器移植(肺移植以外)を受けてから1年以内の患者
・急性拒絶反応でT細胞又はB細胞枯渇剤により治療を最近受けた固形臓器移植レシピエント
・CD4Tリンパ球細胞数が50cells/μL未満の未治療のHIV患者
※本項執筆時点(2023年2月28日)で、筆者はエバシェルドに関して、特筆すべき利益相反はありません。
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【記事2】皮膚の保護用フィルムが急性放射線皮膚炎リスクを劇的に下げる
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がんの3大治療というと、手術、抗がん剤、放射線です。
この中で、放射線は乳がんや前立腺がんなどで頻用される治療法です。
放射線治療は手術や抗がん剤と比べると、身体への負担は少ない治療と言えますが、それでも副作用はあります。
乳がんの乳房手術後の放射線療法の際にみられる副作用として、「患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版」では下記のように説明されています。
>>
乳房手術後の放射線療法中または治療終了後数カ月のうちに現れる副作用としては皮膚炎, 倦怠感(けんたいかん),放射線肺臓炎などがあります。皮膚炎はほとんどの患者さんでみられますが,一般的に軽度なものです。
>>
ただ、医学的に「軽度」だからといって、患者さんにとって影響が小さいかというと、そんなことはありません。
 ■「乳がん放射線治療時の肌のお悩み対策 ①」(MediCure)
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治療を開始して3~4週間ぐらいで、照射部位の皮膚が日焼けのように赤くなったり、ひりひりしたりといった症状が出ることがあります。個人差がありますが、重症化すると衣類が擦れて痛みが出たり、入浴で沁みたりと、日常生活にも負担が出てきます
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これだと、患者さんのQOL、かなり下がりますよね。
この放射線治療による皮膚炎対策として、刮目すべき研究結果が出てきました。
 ■"Mepitel Film for the Prevention of Acute Radiation Dermatitis in Breast Cancer: A Randomized Multicenter Open-Label Phase III Trial”「乳癌における急性放射線皮膚炎予防用メピテル・フィルム:多施設共同無作為化非盲検第III相試験」(Journal of Clinical Oncology)
「メピテル・フィルム」とは、メンリッケヘルスケア社が販売している救急用の保護剤(テープ)で、皮膚の様々な”傷”の保護に使われます。
このフィルムを使用することで、急性放射性皮膚炎の発症を抑えられるかどうかについて、過去の2本のランダム化比較試験の結果は相反するものでした。
そこを決着つけに行ったのが本試験です。
手術の種類(全摘or温存)、放射線量や照射方式がバランス取れるように、メピテル使用群と標準的ケア群の2群に分けて比較してみたところ…
グレード2もしくは3の急性放射線炎の発症率は、
 メピテル使用群:15.5%
 標準的ケア群:45.6%
とメピテル使用群の圧勝。当然有意差もついています。
患者本人による評価でも医療従事者による評価でも、”Radiation-Induced Skin Reaction Assessment Scale”という急性放射性皮膚炎症状スコアはメピテル使用群が、優位に小さいという結果。
このような「現場のちょっとした工夫」レベルの話に、しっかり科学的な根拠が付与されるというのは素晴らしいですね。
今後、”標準治療”としてメピテルフィルム使用が広がっていくことを期待したいです。
※本項執筆時点(2023年2月28日)で、筆者はメピテルフィルムに関して、特筆すべき利益相反はありません。
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ishuran · 1 year
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Vol.157 超低用量免疫療法が世界を救う?インド発の画期的な試験結果
10年ぶりとやらの超強力な寒気団が来るなど、文字通り「大寒」の日々が続きますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
2023年初の発刊ということで、本年もご愛読のほどよろしくお願いいたします。
3つほどお知らせです。
その1:毎年恒例の日本のがん治療医”Warm30”、2022年版が出ました!
・乳がん   https://www.ishuran.com/trophies/2022-warm30-breast
・血液がん  https://blood.ishuran.com/trophies/2022-warm30-blood
・婦人科がん https://women.ishuran.com/trophies/2022-warm30-women
・肺がん   https://lung.ishuran.com/trophies/2022-warm30-lung
その2:前号記事の訂正
肺癌学会の内部の先生からご指摘いただきまして、以下2点を補足・訂正いたします。
確認不足のまま記事にしてしまいましたこと、お詫び申し上げます。
・「肺癌診療ガイドライン」の改訂タイミングは、出版物としては確かに2−3年に1度ですが、ウェブサイト上では毎年されているとのことです。
・ガイドライン作成に患者委員の方が参加されていないかのような書き方をしましたが、実際は参加さ
れているとのことです(ただし、記事内の学術集会の特別セッションには参加されていません)
その3:書籍のご紹介
乳がんサバイバーかつ組織開発の専門家(コンサルタント)である筆者が、「行きすぎた能力社会じゃ、幼い子どもを残して死にきれない!」という思いで書いた本です。
 ■「能力」の生きづらさをほぐす(勅使河原麻衣 著、どく社)
この「第9話」で、一般的には極めて”リテラシー”が高いと思われる筆者が、「先の見えない不安」からいわゆる「インチキ医療」に嵌っていく様が赤裸々に語られています。
患者が医師に求めるコミュニケーションとはどのようなものか、のヒントが迫力と愛情を伴って記されていて、患者さんよりむしろ、がん治療に関わる医療従事者の方にぜひ読んでいただきたい一冊です。
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【記事1】その腫瘍、本当に取り切れてますか?画像診断薬パフォラシアニンが暴く実態
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大半のがんの手術の目的は、腫瘍を全て取り切って、”完治”を目指すことにあります。
従って、”取り残し”がないように切除することが重要であることは、論をまちません。
しかしながら、部位によっては腫瘍の全体像が確認しにくい場合があり、卵巣がんはその意味で切除範囲の判断が難しいがんの代表例です。
卵巣がんの切除範囲を判断する際に、術中分子画像(IMI)という技術を使って、標的となる腫瘍を明確化し、手術結果の改善につなげようとする試みが、研究結果として出てきました。
 ■"A Phase III Study of Pafolacianine Injection (OTL38) for Intraoperative Imaging of Folate Receptor–Positive Ovarian Cancer (Study 006)”「葉酸受容体陽性卵巣癌の術中画像診断におけるPafolacianine注射剤(OTL38)の第III相試験(006試験)」(Journal of Clinical Oncology) 
この研究では、葉酸受容体陽性の卵巣がん(卵巣がんの約8割が該当)をリアルタイムで検出するパフォラシアニンの使用の有用性が検討されました。
パフォラシアニンは、葉酸受容体が出ているがん細胞に結合する蛍光薬で、術前に投与すると術者が手術の最中にがん細胞の所在を確認できる、というわけです。
この手法を用いたところ、なんと33%の患者さんで、本来は切除予定がなく、通常用いられている白色光評価および触診では腫瘍と判断されなかった組織に、腫瘍があることが判明しました。
吐き気、嘔吐、腹痛などの有害事象が30%の被験者で報告されたものの、重篤なものは一件もなし、ということで、安全性もまず問題なさそう。
臨床現場で早く活用されて欲しいと思わせる結果ですが、卵巣がんの切除経験のある患者さんにとっては、ご自身の腫瘍が本当にきっちり取り切れているのか、不安を感じかねないという面もあります。
手術経験のあるサバイバーの方に対しての善後策についても、研究が進むことを期待したいですね。
※本項執筆時点(2023年1月30日)で、筆者はパフォラシアニンに関して、特筆すべき利益相反はありません。
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【記事2】超低用量免疫療法が世界を救う?インド発の画期的な試験結果
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免疫チェックポイント阻害剤(以下、免疫CP阻害剤)を活用した治療法が、多様ながんで次々に開発され続けているのは、読者の皆さまもご存知かと思います。
一方で、免疫CP阻害剤は、「超高額」な治療薬の代表選手でもあります。
先進国でも問題になっているくらいですから、保健財源の乏しい世界の多くの国々では、よほどの富裕層でない限り、免疫CP阻害剤にアクセスできないことになります。
ならば、「超高額」な免疫CP阻害剤を思い切り低用量で使ってみて効果を出せないか、という研究結果がインドから出てきました
 ■"Low-Dose Immunotherapy in Head and Neck Cancer: A Randomized Study”「頭頸部がんにおける低用量免疫療法:無作為化試験」(Journal of Clinical Oncology)
進行性頭頸部扁平上皮癌に対し、低用量の化学療法を長期間頻回投与する「トリプルメトロノミック化学療法(TMC)」に、低用量のニボルマブ(オプジーボ)を追加することで、全生存期間(OS)が改善されるかどうかを評価することを目的とした試験です。
ニボルマブの用量は3週毎に20mgということで、日本の添付文書にある「1回240mgを2週間間隔又は1回480mgを4週間間隔で点滴静注」を考えると、通常用量の1/20程度という”超”低用量です。
その結果、
・主要評価項目の1年OSは、43.4% vs 16.3%と、ニボルマブ追加群がTMC群に圧勝。
・グレード3以上の有害事象は、46.1% vs 50%と、安全性は同等。
ということで、”超”低用量ニボルマブの上乗せ治療は、十分に有用であることが示されました。
超低用量の免疫CP阻害剤の上乗せは、経済的な理由で免疫CP阻害剤を投与できない患者に対する代替的な標準治療になり得る、という示唆は極めて重要です。
前述のように、途上国で免疫CP阻害剤へのアクセスを増やす良い手段になるでしょうし、日本でも経済的な理由で高額療養費の範疇でも支払いが厳しいという方が増えてきているという声も聞きますので、そういう方々に新たな治療オプションを増やせる可能性にもつながります。
オプジーボの薬価は、上記のような頭頸部癌ですと、大体75万円/月くらいになります。単純計算ですと、3割負担で22万円の支払い。これが、超低用量療法であれば1万円程度ですからね…
製薬会社側はこの類の”De-escalation"的な治療法の臨床試験を進めるインセンティブはあまりありませんので、国として対応を考えていくべきところと思います。
※本項執筆時点(2023年1月30日)で、筆者はニボルマブ(オプジーボ)に関して、特筆すべき利益相反はありません。
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