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too-to · 2 years
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TOO TO BOOK CLUB vol.9
読書会を通し、新鮮な考え方に出会い、思考を広げたり奥に向けたり、自由に意見を交わせる場、TOO TO。6月に開催した第9回目読書会では、TOO TOの丸が、韓国の作家、ソン・ウォンピョンの『アーモンド』をセレクトしました。今回のメルマガでは、1年以上ぶりにリアル開催となったTOO TO BOOK CLUB vol.9を、運営メンバーで振り返ってみたいと思います。
おーたちゃんの文章にもある通り、暇さえあれば、家でも移動中でもご飯を食べながらでも韓国ドラマを観てしまう私です。2日で全話観てしまったときなんかは、時間がないない言いながらも、いくらでも時間はつくれるんだなと反省したりもします。そんな私の日常に欠かせない存在になっている韓国カルチャーについて、もっと詳しくなりたくて、今回はドラマを観るようにライトで、ドラマチックで、韓国の生活が見える本を選んでみたいと思いました。ソン・ウォンピョンの『アーモンド』。「一言で言うと、この物語は、怪物である僕がもう一人の怪物に出会う話だ」から始まるこの物語は、中学生である主人公目線で語られるため、割と簡単な言葉や淡々とした口調で綴られています。 感情の中枢を担う扁桃体(別名アーモンド)が人より小さい主人公・ユンジェは、人の心を読むことや、感情を理解する、表現することができません。空気を読む、周りに合わせる、愛想笑いをする、本当はいやだけど大丈夫と言う。それらのユンジェができないことは逆説的に、普段自分が無理に取り繕っていることでもあるように思えました。“もう一人の怪物”である同級生のゴニは感情をオーバーに表現する人物で、ユンジェとは対照的だけど、どこか似ている部分もあります。この二人が惹かれ合ったり、敵対したりする様はすごく人間味があっていいんですよね。 読書会では、『アーモンド』がとても映像的な本であることが話題になりました。ソン・ウォンピョンにとって『アーモンド』は初めての長編小説で、それまでは多数の映画の脚本、演出を手がけてきたため、映像的な本になるのは必然なのかもしれません。本を普段あまり読まない人も、読みやすい本だと思います。ぜひまわりの方にもおすすめしてみてください。──  Mitsuki Maru
最近は何してるの?と聞くと、大体韓国ドラマにはまっているTOO TOの丸ちゃんがセレクトしたソン・ウォンピョンの『アーモンド』。過去の読書会にも何度か参加してくださった方とTOO TOメンバーの3人で多摩川ピクニック読書会を開催しました。普段よりもミニマムな読書会ということもあり「学生の頃、ゴニみたいな不良の子と仲良かった?」といつもよりパーソナルなことを訊いたり、いい意味で(?)緊張感のない会になりました。不良の友だちはいなかったけど、地元の学校の不良で白髪のイケメンがいたという話を聞いて、なんてことない質問だけど、その質問がきっかけでその人の頭の隅っこにあった記憶が現れる、みたいなことって面白いなあ、と改めて思いました。白髪の不良イケメンは今何をしているんだろう......。──  Aska Ota 
『アーモンド』は、ユンジェのまっすぐな視点で描かれた世界だなと思いました。彼のまっすぐな視点を直球な言葉や表現で物語にしている。だからこそ最初はこの物語が少し幼稚に感じられました。けれど途中から、私に答えられないことや見えていなかったことが、ユンジェの言葉や行動の中に現れるようになっていきました。彼の言動は、突飛なようで腑に落ちる。そこで気がついたことは、私や、恐らく他のたくさんの人の視点は、いろいろな価値観や偏見にぶつかって屈折を繰り返した結果、すごく遠くて複雑な場所から物事を見ているのかなということ。まわりの人や自分のあり方とひたすらまっすぐに向き合うと、人はみんなユンジェのようになるのではないかとさえ思います。でも私はゴニのように、いろいろなものに揉まれてまっすぐではいられなくなって葛藤するし、それが人間らしさだとも思う。「いやいや、、、」と思ってしまうようなユンジェの質問は、ゴニやドラが自分自身の素直な気持ちに気づくきっかけになっていました。そんなユンジェの存在に触れると、読者も本を閉じて我に帰るような、不思議な瞬間がありますよ。──  Minami Shishido
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too-to · 2 years
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TOO TO BOOK CLUB vol.8
読書会を通し、新鮮な考え方に出会い、思考を広げたり奥に向けたり、人々が自由に意見を交わせる場、TOO TO。
第8回目となる4月の読書会はピクニック形式での開催を予定していましたが、あいにく天候に恵まれず、急遽オンラインで実施しました。何度か参加してくれている方はもちろん、初参加の方も積極的に自分の考えを共有してくださり、予定していた時間をオーバーするほど話題が尽きませんでした。
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今回は私がセレクトを担当し、『言葉を失ったあとで』を課題本に選びました。本の中では、目の前にいる人たちの話をどう「聞く」のか、信田さんと上間さんが真摯に向き合って対話をしていく姿が印象的ですが、読書会の中でも、参加者一人ひとりが慎重に言葉を選んで語っているように感じました。
「身近な人の性被害に対峙した場合、自分はどうアクションするのか」というトピックから「不安を感じているときの自分自身のケアをどうしているのか」とパーソナルな話まで横断していきましたが、読書会をしていて不思議だなあ、と毎回思うのが、初めて会った人同士なはずなのに、以前から知り合いなのかな?というくらい全体的にゆったりとした空気が流れていることです。また、今回の読書会では医療従事者の方が参加してくださったこともあり、現場の声についても聞けたことがとても印象的でした。
3時間以上話し、そろそろお開きですかね……とZoomのルームから退出すると、さっきまであんなにワイワイ話していた画面と私1人しかいない部屋の温度差に耐えられず、読書会が終わった後はなんだか人恋しくなります。──  Aska Ota
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私は今回どうしてもお仕事の都合で読書会に参加できなかったのですが、録画で読書会の会話を視聴して、すごく自分の中の理解や関心が深まり、この読書会があって改めてよかったなと感じました。
会話の様子を見る限り、参加者の皆さんは今回の課題図書である『言葉を失ったあとで』を、私よりもすんなりとそれぞれの解釈に落とし込めているように思えました。DVや性被害といった問題に長く向き合い、現場で培ってきた知見を豊富に持つ著者の2人が対談形式で意見を交わしていく本書。そのあたりの知識が乏しく、まして経験など全くない自分には、テンポ良く専門的な知識を交えながら進んでいく会話の中で、2人の感覚を掴み取ることは結構難しかったです。ですが皆さんの会話を聞くうちに対談のポイントが浮かび上がり、読み解くのに夢中になっていて見落としていた視点に気づかされ、私自身も理解を深めることができました。それは、大事な部分に下線を引いたり、わかりやすく言い回しを変えたり、みんなで教科書を勉強しているような感覚です。
中でも信田さんの「言葉を禁じる」という話は、読書会を通してその鋭さに気づきました。信田さんはご自身のカウンセリングに来た人との対話の中で、その人の経験や感覚を安易に既存の概念に取り込んでしまうような言葉を禁じるのだそうです。数えきれない人たちと向かい合っていく中でも、個人という単位で人に寄り添っていく信田さんの姿勢とそのスキルにある意味で言葉を失いますが(笑)、個々のニュアンスを厳密に拾いたいというその感覚は、自分にとってもかなり腑に落ちるものでした。一人ひとりが違う経験と感覚を持っている中で、日本語というひとつの言語フォーマットでそれを表現する。果たして自分はどれくらい忠実に自分の感覚を言葉にできているのだろうか?私がTOO TOのメルマガ vol.1で『オートコレクトされる思考』と題して書いた内容を思い出し、話の背景は違えど、言葉と向き合うということは自分にとって大切なテーマなのだなあ、と改めて気づきました。本を読んでいる最中は気づかなかった視点を深められる。読書会の魅力のひとつですね。
私は日頃から喋り過ぎてしまうタイプで、「マシンガントークだね」と評された経験も多数。それも、自分の感覚を厳密に言葉で伝えるために捕捉し過ぎてしまうのかもしれません(メルマガも文字数オーバー常習犯)。自分の想像が及ばない世界に絶句した読書時間と、新たな気づきがある読書会。良いところずくしの会にご参加くださった皆さんに感謝でいっぱいです。──  Minami Shishido
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RECOMMENDED BOOK
読書会の後半では毎回恒例、参加者が最近のおすすめの本を紹介してくださいました。どの本も参加者の色が濃く出ているラインナップに。ぜひ今後のブックガイドとしてご活用ください。
『NEUTRAL COLORS 3』 特集「大人になって見る行きたい学校の夢」
第3号は、「大人のための学校」特集。2号の「子どものための学校」特集とゆるやかにつながっています。インドネシアのコレクティブ、ルアンルパを訪ねる。スイスの美大、バークリー音楽大学、国際教養大(AIU)など、大人になって行った学校についてのレポート。温又柔さんや上間陽子さんらが語る“学ぶことの意味”。「なぜ大人は学び続けるのか」という根源的な問いに個人的に向き合うイシュー。リソグラフとオフセットを融合させたかつてない誌面デザインで伝えます。(NEUTRAL COLORS HPより)
『シベリアン・ドリーム 上』 イリーナ・パンタエヴァ 著
極寒のシベリア、旧ソ連の辺境の街ウラン・ウデ。劇場で働く両親のもとに希有な感性と美貌を持った少女、イリーナは生まれた。成長した彼女を待ち受けていたのは、自由と夢を奪い取ろうとする旧ソ連の現実だった。生きることの本当の意味を求めて、闘い続ける彼女に、旅立ちの日がやってくる―美しい自然と淡い初恋が眠る故郷を捨てて、一路モスクワへ。(「BOOK」データベースより)
『書く、読む、生きる』 古井 由吉 著
作家稼業、書くことと読むこと、日本文学とドイツ文学、近代語と古典語、翻訳と創作、散文と韻文、口語と文語、「私」と「集合的自我」、夏目漱石『硝子戸の中』『夢十夜』、永井荷風、徳田秋聲『黴』『新世帯』、瀧井孝作『無限抱擁』、馬と近代文学、キケロ、シュティフター、ゴーゴリ、ジョイス、浅野川と犀川、競馬場と競馬客、疫病と戦乱、東京大空襲、東日本大震災、生者と死者、病と世の災い―。深奥な認識を唯一無二の口調、文体で語り、綴る。日本文学の巨星が遺した講演録、単行本未収録エッセイ、芥川賞選評を集成。(紀伊国屋書店 HPより)
『勉強の哲学』 千葉 雅也 著
人生の根底に革命を起こす「深い」勉強、その原理と実践。勉強とは、これまでの自分を失って、変身することである。だが人はおそらく、変身を恐れるから勉強を恐れている。思想界をリードする気鋭の哲学者による本格的勉強論。(紀伊国屋書店 HPより)
『言語が消滅する前に』 國分功一郎、千葉雅也 著
人間が言語に規定された存在であることは二〇世紀の哲学の前提だった。二一世紀に入って二〇年が過ぎたいま、コミュニケーションにおける言葉の価値は低下し、〈言語を使う存在〉という人間の定義も有効性を失いつつある。確かに人間は言語というくびきから解き放たれた。だが、それは「人間らしさ」の喪失ではなかろうか?──情動・ポピュリズム・エビデンス中心主義の台頭、右・左ではない新たな分断。コロナ禍で加速した世界の根本変化について、いま最も注目される二人の哲学者が、深く自由に精緻に語り合う。(幻冬舎 HPより)
『袖幕』 木村和平 著
多々ある記憶の中でも、発表会の日に舞台裏を覗きにいった際に体感した、
舞台袖に射し込むおおきな光。
まるで初夏の満月のような光。
そのイメージが、いまでも身体のおくに、鮮明に残っている。(『袖幕』あとがきより)
『春のこわいもの』 川上未映子 著
こんなにも世界が変ってしまうまえに、わたしたちが必死で夢みていたものは――。
感染症大流行(パンデミック)前夜の東京──〈ギャラ飲み〉志願の女性、ベッドで人生を回顧する老女、深夜の学校へ忍び込む高校生、親友を秘かに裏切りつづけた作家……。東京で6人の男女が体験する甘美きわまる地獄巡り。これがただの悪夢ならば、目をさませば済むことなのに。『夏物語』から二年半、世界中が切望していた新作刊行!(新潮社 HPより)
『ただしい人類滅亡計画 反出生主義をめぐる物語』 品田 遊 著
全能の魔王が現れ、10人の人間に「人類を滅ぼすか否か」の議論を強要する。結論が“理”を伴う場合、それが実現されるという。人類存続が前提になると思いきや、1人が「人類は滅亡すべきだ」と主張しはじめ……!?
『建築家の解体』 秋吉浩気 著 その他6名
2008年の金融危機以降、世界で同時多発的に広がるデジタル建築の潮流を総覧するインタビュー集。デジタルテクノロジーを用いて建築の状況を革新していく世界の建築家・建築理論家と、その当事者であるVUILD・秋吉浩気が語りつくす、デジタル建築、そして未来の建築家像の最前線。 「建築家はいま、解体の過程にある。ただしそれは、建築やぼくたちにとって、ネガティブなことではない。単に解体されるだけでなく、むしろ再発明され、地域社会や地球環境を改善するシステムアーキテクトとして再構築されようとしている。デジタルテクノロジーによって建築の設計方法・生産方法が民主化され、建築がぼくたちにより近い存在になろうとしているいま、建築家はどのような姿へと変わってゆくのだろうか」 (秋吉浩気「はじめに」より抜粋)
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too-to · 3 years
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TOO TO BOOK CLUB vol.4
6月に開催した読書会はポール・オースターの『ガラスの街』を題材に、オンラインで開催しました。以前にも何度か読書会に参加してくれたメンバーだったこともあり、和やかな雰囲気で会話が広がるアットホームな会でした。
ポール・オースターの他の作品を読んだことがある参加者も数名いたので、『ガラスの街』についての感想にとどまらず、他作品との比較やそれぞれの作品における彼の作風の変化などを交えて、”ポール・オースター”トークを展開しました。たとえば、『ガラスの街』を読むとポール・オースターと名付けられた人物が登場することに驚く人も多い。ポール・オースターが自分自身を作品に絡めることで、彼に対する興味も湧いてきます。作品の中で彼自身に関わることはあるのか?たくさんの登場人物の中に彼を象徴するキャラクターもいるのか?などなど。参加してくれたFさんによると、同じくNY三部作の『鍵のかかった部屋』では、本編でポール・オースターの作者としてのコメントが添えられたりしているらしい。気になってそっちも読んでみたくなる。そうしてリーディングリストが増えていくのも読書会の醍醐味です。
セレクターとして本を選ぶときは、頭の中に大体こんな会話ができるだろうと当たりをつけています。今回は複雑な登場人物の相関関係や謎めいた過去と未来、含みを持たせたストーリー展開について各々の解釈を持ち寄って、新作映画が出たときにするような考察トークに花が咲くのではないかと思っていました。ですが今回の参加者には、作中の謎めいた文章や出来事について深読みし過ぎず、軽く困惑させられる感覚を楽しむという人が多くいました。私はこの手の作品を読むと謎めいた部分を解き明かしたくて考え込んでしまうタイプなので、作品から受ける自分の感覚については注意を払っていませんでした。自分とは違った本の楽しみ方に出会い、また別の目線で読書をしてみたくなりました。
そしてトークの後半は、作品を読んで感じたことから派生して、自分たちの経験や感性を絡めた会話も弾みました。TOO TOではよくある流れで、読書を通して感じたことや学んだことが自分たちの経験や感覚に思いを巡らせるきっかけとなり、本の感想だけでなく、よりパーソナルな会話に発展します。
今回は特に主人公のクインが、作家や探偵など複数の顔を持っていたことから、「どれが本当の彼なんだ?」という疑問が何度か話題にのぼりました。彼は1人の人であるはずなのに、そのシチュエーションや求められていることに応じて自分自身を変えている。そのことについて自分の生活に置き換えて考えると、自分の態度が話す相手や立場に応じて変わることや、まわりの人の自分に対する接し方が状況によって変化することなど、参加者の中から共感する声もありました。それぞれの経験談が飛び出したり、逆に変わらないという人もいたりして、人と集まって話す機会が減っていた近頃の自分にとって、かなり貴重で楽しい会話ができました。
今回は参加人数があまり集まらず、開催前は不安もありましたが、逆に一人一人の発言の機会も増えて、のびのびと話すことができたので良かったです。ご参加いただいたみなさま、あらためてありがとうございました!
次回の開催は8月。読書が好きな人も苦手な人も、いろいろな発見がある会ですので、ぜひ気軽にご参加ください。
今回ご参加いただけなかった人も、メルマガの登録やInstagramのフォローなど、いろいろな形で応援していただき、ありがとうございます!今後も温かい目で見守っていただければ嬉しいです。
文・宍戸南
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too-to · 3 years
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TOO TO BOOK CLUB vol.1
読書会を通し、新鮮な考え方に出会い、思考を広げたり奥に向けたり、自由に人々が意見を交わせる場、TOO TO。
昨年末の12月19日(土)に第1回目を開催しました! 第0回目は代々木公園でピクニック形式で開催しましたが、今回はコロナウイルス感染拡大中ということを考慮して、オンラインでの開催となりました。 初めて参加してくださる方や初対面の方もいるなか、オンライン上での開催に不安も感じられた今回。ご参加くださった皆さんとの会話も交えながら振り返ってみたいと思います。
今回、課題図書として選んだ1冊は村田沙耶香さんの『コンビニ人間』。
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コンビニでアルバイトを18年間続ける36歳の女性を主人公に据えたお話です。現代社会の中で常識として鵜呑みにされがちな基準”普通”が、この小説におけるキーワード。特に作中では「その歳(36歳)でなんでアルバイトなの?」「なんで結婚しないの?」「女性は早く結婚して家庭に入った方がいい」などの言葉が幾度となく登場しています。 その”普通”を逸した主人公・古倉と、”普通”に意義を唱える男性・白羽の2人の考えや行動から、”普通”の規範の中では見えてこない、外側からの視点を生々しく描いた1冊です。
現代社会に生きる現代人として、”普通”について行けなくて溜め息が出てしまう瞬間というのが誰しもあると思います。 今回この本を選んだ理由には、そんな、普段は言葉にする機会がないけれど、言ったら少しすっきりするようなことを会話にする機会になれば、という狙いがありました。 実際の会話では、想像していなかった参加者独自の意見がたくさん聞けました。
”普通”を軸にした様々な視点
普段はあえて言葉にされることの少ない”普通”を辛辣なまでに描き出している『コンビニ人間』を読み、普遍的に受け入れられているはずの”普通”も、実は人それぞれの考えがあるということがわかりました。
「主人公と白羽がちょっとヤバイ人みたいに描かれているけれど、ちょっと視点を変えてみると、それ以外の人たちも結構ヤバく見えてくる。 古倉さんの友達とか、自分が多数派だから正しいと思って自然に振る舞っている人たちって、実際にいるなと思うし、それってちょっと怖いなとも思う。」
「実際にバイト先とかで誰かのことを「まじあいつ使えねえな」とか言ってる人たちがこの本を読んだら、白羽さんみたいな存在に対して、「こういうやついるのわかる、本当ありえないよね」って気持ちで共感するのかなって。白羽さんっていうキャラクターにイライラするのかなって思った。」
白羽や古倉の強烈なキャラクターに注目しがちですが、その他のキャラクターに目を向けたり、別の角度から小説を読むことでいろいろな感じ方ができる。 1冊の本に描かれている概念について、多様な意見や捉え方があるということを発見できる、読書会の醍醐味を感じました。
それぞれの”普通”について
一般に”普通”とされている基準にもそれぞれの捉え方があり、様々な意見が出ましたが、その上でその”普通”とどう付き合っていくのか、参加者の皆さんに意見を聞いてみました。
「学生の時はみんなが求めること、例えばみんなが嫌だと言ってることに「嫌だよね」と賛同すると、すごい生きやすくなる感覚があった。それやったら友達も増えたし、なんならモテるようになるし。でも多分それを繰り返すことで私はそういう人間になっていたの。そういう自分の言動を最近考えるようになって、結局みんなに合わせてるだけで自分の考えを言えなくなってるって思って。だから(”普通”に合わせるということは)生きやすくなるけど、自分を見失うってことが、コンビニ人間に描かれてる古倉のまわりの人に言えるのかなって思った。」
「その普通という共通認識があるおかげで世の中がうまく回っている部分もあるのかな。」
「なんとなしに生きてると飲み込まれてしまうと思うけど、その中で一度立ち止まって、自分は自分の考えを持って発信しているのか、それとも世間で良しとされていることに迎合しようとしているのか、そこに対して自覚的であることが大切ってことだと思う。」
考え方の違いがあっても、自分たちの意見を主張して個人が自己中心的に生きるのではなく、みんなの共通認識である”普通”を尊重している。 そしてその共通認識を強制することが正解ではない。 多様な意見が聞ける読書会という場だからこそ、意味のある意見交換ができたと思います。 その一方で、”普通”とされていることの全てが、今の社会において適切ではないのでは、という意見もありました。”普通”とされていることを鵜呑みにするのではなく、一人一人がきちんと考えていくことの必要性もあるようでした。
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長くなりましたが今回は参加してくださった方々の言葉も抜粋してまとめさせていただいたので、TOO TOの活動がどんな様子か少しでも伝われば嬉しいです。
開催頻度は変わらずのんびりですが、ぜひ興味が湧いた方には気軽に参加していただければと思います。WELCOME!
TOO TOのInstagramでは今回の読書会で参加者の方々がおすすめしてくださった本を紹介予定ですので、そちらもぜひ参考にしてください。
今後ともTOO TOをどうぞよろしくお願い致します!
文・宍戸 南
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too-to · 3 years
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栗野宏文『モード後の世界』
先日服屋に行った時のこと、1本のパンツが目に止まりました。目に止まるどころかとっても気に入って、今まで使ったことのない金額をパンツ1本に使いました(笑)
広い店内には他に何本もパンツはあり、もっと身の丈にあった金額のものももちろんありました。でもそのパンツは他とは全く違ったシルエットをしていて、かなりハイウエスト。「このパンツを着てみたい!」と「こんなパンツ他ではみないぞ!」という気持ちが私の予算をネクストレベルに引き上げたのです!(または来月の生活水準を押し下げたのです。)
ちょっと服が好きな一般消費者のありがちな目線の例として、私の最近のお買い物事情を共有してみました。 私がこのパンツを購入したユナイテッドアローズのクリエイティブディレクションを担当する上級顧問 栗野宏文さん著「モード後の世界」に記されているのは、 洋服の流通ライン上で私たちとは反対のエンドにいる、売る側の人たちの目線です。
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トップクリエイティブディレクター目線の消費者心理
ファッション業界のトップの人たちってオシャレで仕事ができてかっこいいイメージ。でもそれ以上の、彼らがどんなお仕事をしていてどんな視点を持っているのかということは詳しく語られません。 「モード後の世界」を読むと、彼らの視点は私たちのそれと近い(近づけようと心掛けている)ことがわかります。もちろん彼らが持つ消費者視点が、私たちの持つ視点と全く同じ視点にとどまっているなら、それは問題です。正直私たちは自分が欲しいと思ったときに、なぜそれに惹かれたのか、なぜお金を出して買おうと思ったのか、そこまではっきりわかっていない。彼らの持つ消費者の理解は、そこを追求し尽くした研ぎ澄まされたもので、いわば消費者視点のその先です。 では彼らはどんな風に考えてその理解を養っているのか。それを1つ1つ解説してくれているのがこの本だと思います。
例えファッションに興味がない人でも、あらゆるビジネスや制作活動に共通して役立つ考え方がこの本にはたくさん詰まっています。 私はファッションが好きですが、消費という言葉がファッションを語る上で登場するとストレスを感じます。だからといって「ファッションはアートであり、売上や数字に囚われるべきでない」とか、そんな理想主義なことは言いません。 ファッションに限らず、その制作活動において資金源が得られるか、つまり“お金を出すべき価値を他人に見出してもらえるか”は、あらゆる活動の継続性に直結していると思います。となれば他の人たちの視点に立って、どのようにして自分の制作物をその人たちのベネフィットにできるか考えるのは少なからず必要なことです。
「直感とお勉強」
例えば、
僕は長年バイヤー業務も担当してきたので、売れるか売れないかわからないままやってみようということは絶対にありません。......何かをいいなと思ったら、いいと思った直感を大事にします。次に、「なぜそれが気になるのか?」を客観的にチェックし、その事実そのものについてアプローチ&スタディーしてみます。食いついて深堀りするということ。そして、なぜいいと思ったのか、裏付けをきちんととれればとれるほど、「やはりこれでいいのだ」と、自分にゴーサインを出すことができますし、兆しをつなぎ合わせて、一つの大きな方向性を描き出すことができます。 p34(『モード後の世界』扶桑社より)
栗野さんの言う「直感とお勉強」のアプローチは、私たちがどんなに独立した人間であっても世の中や身の回りの様々な人や事象に影響を受けていることを考えると、すごく理にかなった考え方だと思います。自分の興味やひらめきをアナライズしてみると、社会動向につながっている部分がどこかにあるということです。 さらに、この考え方は内省に応用できます。 何かに興味が湧いたとき、何かのアイディアが浮かんだとき、何かをやってみたいと思ったとき、私の場合その思いつきはまだフワフワしたもので、具体性を持たせることは難しかったりする。 そこで自分が何に惹かれているのかをよくよく考えてみることで、では自分が一番重要視しているポイントを形にするにはどんなアプローチが一番良いのかがわかってきます。 私が購入したパンツはそのシルエットが一番の魅力なので、トップスはシンプルかつ、パンツのシルエットを覆い隠さないようオーバーサイズを避けてスッキリしたものを選ぶ、とか。
その他のテイクアウェイ
このほかにも、ファッションというかなり流動的な消費活動をテーマに、トップクリエイティブディレクターの思考が一つ一つ丁寧に解説されています。 そんなどちらかというと堅い話をわかりやすく教えてくれているほかにも、クリエイティブディレクターとしてどんなモノに価値を見出しているのかなど、もう少し栗野さん個人の価値観や経験を織り交ぜた部分もあって、なかなか(上から目線ではなく)刺激になる一冊です。
読者がファッション業界の人なら特に、そしてそうでなくても、まるで塾の面白い先生が、自分のエキサイティングな経験や教訓を交えて授業をしてくれている、そんなイメージで付箋を貼ったり赤線を引いたりしながら最後まで読破できます。
文・宍戸南
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too-to · 3 years
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TOO TO BOOK CLUB vol.0
TOO TOは読書会を通し、新鮮な考え方に出会い、思考を広げたり奥に向けたり、自由に人々が意見を交わせる場です。「学び」から「創作」へを目標とし活動していきます。一つ一つ、手さぐりで進んでいくかと思いますが、今後ともTOO TOを気にしていただけますと幸いです!
そして、10月25日にTOO TO第0回目の読書会を開催しました。 第0回目ということで、とにかく参加いただいた方が話しやすい雰囲気にできればと思い、代々木公園でピクニックという形で集まりました。課題図書はブレイディみかこさんの 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』
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政治、ジェンダー、貧困、移民、経済、差別... これらの一つの軸では語れない問題を、イギリスで保育士として働くブレイディさんの息子の日常を通して提起していきます。このような考える余白が多く残されている題材を選ぶのは、それぞれフォーカスする部分がちがうので興味深い話が聞けそうだと思いセレクトをしました。
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初めての読書会ということもあり、実際どのような流れで進んでいくか未知数でしたが、参加者一人の感想から、その言葉を紡ぐように会話がはじまりました。
エンパシーとシンパシーの話。この話題は特に参加者と積極的にお話ができました。
自分で誰かの靴を履いてみること、というのは英語の定型表現であり、他人の立場に立ってみるという意味だ。 日本語にすれば、empathyは「共感」、「感情移入」または「自己移入」と訳されている言葉だが、確かに、誰かの靴を履いてみるというのはすこぶる的確な表現だ。 p73(『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』新潮社より)
実際に、empathyとsympathyの日本語訳を調べると「共感」と出てきます。ブレイディさんの本を読む前から、この言葉の違いを調べた参加者がいました。意味を調べると、同じ「共感」と出てくることに、当時困惑していた話をしてくれました。 エンパシーというのが「誰かの靴を履いてみること」であり、「誰かの感情や経験を分かち合う能力」であるならば、能力というのは学びを通して高めることができるのではないかという意見がありました。その言葉を聞くと、エンパシーという言葉は、未来の、この世界の希望になる言葉な気がしました。
今回の読書会は比較的、近い価値観の方が集まった読書会でした。『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』でもう一度読書会ができそう、という言葉が聞けるくらい、参加者同士の会話がはずみました。個人的には貧困、移民の話題についてさらにフォーカスしたいですが、それはまた別の機会にできればうれしいです。
ブレイディさんの本で、いくつかおすすめの本を選んでみました。
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『子どもたちの階級闘争』ブレイディみかこ ブレイディさんが保育士として働く底辺託児所での出来事を書いた本です。いわゆる、労働者階級の親や子供がそこには集まり、イギリスの緊縮政治で衰退していく託児所の切迫した空気感がひしひしと伝わります。普段生活をしていると、政治が遠くに感じられますが、実は政治と生活というのは一本の線上に密につながった関係なんだということを思い知らされます。
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『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう』ブレイディ みかこ 貧困についてメスを入れるのであれば、経済の話は避けては絶対に通れない。松尾さん、北田さん、ブレイディさんの鼎談で形式ですすむ本書は、左翼は経済の話をしたがらないというドキッとする会話からはじまります。松尾さん、北田さんの視点で専門的に経済の話をしつつ、ブレイディさんの体験がはさまれるので、経済を日常の体験として読み解ける一冊です。
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参加者おすすめ本
参加者が、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を読んで、話がつながってきそうだな...と思った本や、おすすめの本を持ってきていただきました。ぜひ今後のブックガイドとしてご活用ください。
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『ちぐはぐな身体 ファッションって何? 』鷲田 清一
ピアスや刺青をすることの意味とは?コムデギャルソンやヨウジヤマモト等のファッションが問いかけているものは?そもそも人は何のために服で体を隠すのか?隠すべきものの実体は?若い人々に哲学の教授が身体論をわかりやすく説いた名著、ついに文庫化!「制服を着崩すところからファッションは始まる」。(AMAZONより)
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『LGBTを読みとく ─クィア・スタディーズ入門』森山 至貴
最近よく見かける「LGBT」という言葉。メディアなどでも取り上げられ、この言葉からレズビアン、ゲイの当事者を思い浮かべる人も増えている。しかし、それはセクシュアルマイノリティのほんの一握りの姿に過ぎない。バイセクシュアルやトランスジェンダーについてはほとんど言及されず、それらの言葉ではくくることができない性のかたちがあることも見逃されている。「LGBT」を手掛かりとして、多様な性のありかたを知る方法を学ぶための一冊。(AMAZONより)
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『���らしさの終焉』グレイソン・ペリー
男性が変われば世界全体をより良い場所にできるはず。異性装者でもあるアーティストが、「権力・パフォーマンス・暴力・感情」といった男性性の4エリアを検討し、新しい時代のジェンダーとしなやかな男性のあり方を模索する。(hontoより)
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『海の百合』アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ
若い娘が自ら処女を棄てさる〈儀式〉を、あざやかな色彩と香気に満ちたイメージで微細に描きあげたマンディアルグの傑作。東京国際ブックフェア記念復刊。(AMAZONより)
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読書会という場所をひらくのも初めてだし、参加する、ということも初めてだったのでどのように進んでいくのか当初は未知数でした。けれども、思っていた以上に素敵な時間を過ごせ、また、参加者からポジティブな感想をいただきとても嬉しく思います。
気軽に参加できる場所をつくることに努めてまいりますので、今後ともぜひぜひTOO TOをよろしくお願いいたします。
文・太田明日香
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