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#壁紙にペンキ塗ってみた
fusa-b · 2 years
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なっちゃんの味わいを消し去ったペンキがヒビ入ってる件。 ヒビが入る原因を調べるべくGoogle先生に訊いてみたんよ。 で、これは某外壁屋さんのサイトの引用なんだけど 刷毛目もあるし、てことは、 (1)元々の粘度が高い可能性 (2)ペンキを載せすぎた可能性 がありますね… なんかねばねばしたペンキやなーとは思ってたんだけど、そういう商品かと思ったよ! あとから買った普通のペンキでカラーボックス塗った時、「同じニッペなのに、こっちはサラサラで塗りやすいのぅ」と思ったんだよね… 水で薄めて塗り直してみるかなー( ˘-з-)チェッ #ニッペ #ニッペホームプロダクツ #ウイルストン #壁紙にペンキ塗ってみた #diy #diy女子 #壁リフォーム (Kanazawa, Ishikawa) https://www.instagram.com/p/CiMvogGJSWA/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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shiineharuka · 2 months
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ペンキ塗りをした日、ふと、東京に住んでいたときのお隣さんを思い出した。隣も賃貸なのに、外壁にもドアも緑色のペンキを塗っていて、びっくりした日のこと。子どもたちと走り回るお父さんの笑い声。
わたしは10年くらい前に一人暮らしをするまでの間、さまざまな仲間と住んだ。シェアをしながら暮らせばお金もかからないし、広い家に住める。べたべたしすぎず、意外とひとりの時間もある。
最後の共同生活をしていたとき、ベランダでタバコを吸いながらお隣さんのペンキのにおいをかいでいた。からだにはよくないかもしれないけれど、いいにおいがした。
隣の家の方は 「 緑色がすきなんだよ!」 とのことで、毎日のようにペンキ塗りをされていた。杭を打ったり花を植えたりと、たのしそうに庭づくりをしているように見えた。
イギリスうまれの夫、関西うまれの妻。二人には二人の子どもがうまれ、隣の家からはいつも笑い声が聞こえてきた。二人目の子どもは、隣の家に咲く植物の名前。愛情深く育てられると、こんなふうに育つのだなと思うようなかわいらしい子たちだった。
わたしたちは夜中にマリンバの録音をしたり歌ったりもしていたので、おそらく迷惑もかけたけれど 「 うちも歌うし、音楽がすきだからどんどん歌って!」 とのことだった。
そんなお隣さんはなにかのタイミングでイギリスに引越してしまい、緑色のドアもいつのまにか茶色に戻っていた。
何年か経った頃、突然はがきが届いた。ペンキ塗りをしていたお父さんが亡くなったという。
手紙には、縁もゆかりもないイギリスだけど、しばらく住んでみますと書いてあった。
わたしはローズマリーをみる度にあの女の子を思い出すし、これからペンキを塗る度にあのお父さんの笑い声を思い出すだろう。
杭を打ったり花を植えたり、たのしそうに庭づくりをしているように見えたけれど、大変だということもわかった。
みんな大きくなったかな、元気に暮らしていますように。
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tsukuruhibi · 1 year
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今週の作業
ピアス作業と、展示用の布の端の始末。
27日 紙ピアス、組み立て。 また紙をカット。 再生和紙。
夜は、純チタン線でピアスフックづくり。
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28日 歯科検診。 治療が必要なところはなかったけれど、 モヤッとする。 うん、気持ちよく通えるところを探そう! 次は半年後かな?
さ、倉敷に集中!
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29、30日 ピアス作業、いろいろ。
せっかく買った布、カット幅を間違える。 布の端の始末はしないことにしたのに、結局縫うことに。 (涙)
まあ、いいや、失敗したのはレジ台に使おう。
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31日 ピアス作業、いろいろ。
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マメにノズルチェックをしていたつもりだが、またプリンターの調子が悪い。 というか、コレ互換インクの残量表示がちゃんとできてないっぽいんだよな。 あの互換インクは買わないでおこう。
これまでヘッドクリーニングをし過ぎたせいか メンテナンスボックスなるものが一杯になったらしい。 なるほど、クリーニング時のインクはここに溜まるのか。 あわてて購入。
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4月1日 チタンフックづくり、最終工程。 先端を丸める。
--- メンテナンスボックス、到着。 ヨドバシさん、ありがとう!と思いながら、交換。 あ、ヘッドクリーニング1回じゃだめだったな。 夜、チェックしてもう1回やるか・・・。
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壁用の布を縫う。
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2日
風の強い倉敷の展示対策。 配置を考えながら、必要な個数を出す。 わー、厚紙を48枚カット。 コレにペンキを塗るつもりなのだが、上手くいくのだろうか?
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樹脂が固まってきたところで、カットしていく。 あー、結構時間かかるんだよな、コレ。
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spunking-dummy · 1 year
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わが家の可愛い坊ちゃん。 見た目は、🐻くまさんみたいで厳ついけれど、とても気持ちの穏やかで優しい性格。 梅子ママに良くお部屋でも唸られたり吠えられたりして、叱られてる。 何をして怒られてるのかは、いつも見に行くと何事も無さそうなので分からず終い。 昨日は、お留守番中に緩衝材変わりにAmazonが使ってる紙を畳んで置いたのを引っ張りだして、ビリビリに破いて遊んでありました。 梅子ママか🐻もんちゃんか、どっちがやったの? 嘘のつけない 全身に「ドキドキ」「叱られるかも!」が現れ過ぎてるし💧 梅子ママも、一緒にやってる筈だけど、ポーカーフェイス。 🐻もんちゃんの素直なところが可愛いです。 昨日、朝ん步で、久しぶりに通る道を歩いていると画像の右側の茂みからレトリバーの雑種的な大型犬の雑種が飛び出して来て、🐻もんちゃんの首に噛み付いたんです! 幸い首輪のところでケガしなかったけど、この茂みの向こうが古い戸建てアパートの群れが並ぶんですが、もうほぼ ほぼ廃墟でガラスも割れてたり、戸が外れてたりする。 一軒だけ、最近、壁を青いペンキ塗って住んでる人がいるのだけれど、そこの犬。 番犬かわりに飼い出した様子なんですけど… ヤブ蚊がワンワン沸いてる茂みに繋がれてる💧 庭には、道路に沿ってワイヤーを渡してあり、そこに5メートル位の長さがありそうな係留ワイヤーで、この犬を繋いでる。 以前は、短いワイヤーで繋がれていて、手作りの犬小屋と日除けのパラソルが設置されてる狭い範囲しか動けなかったので、アパートの敷地から道路へは出なかったのだが、このワイヤーの長さだと道路まで出てくるドコロか、ガードレールのある道路の反対側まで、この犬は出てこられるんです! 車も停まっていて、部屋の中から音がしているにも、関わらず、呼び鈴を押しても、ドアを叩いて呼んでも、全く姿を現す気配も無い飼い主。 これでは、この道を通行する事が出来ない。 人が通っても飛び掛かってくる。 こういう飼い主は、本当に迷惑千万です。 警察に連絡し、敷地から出ないようにしないと、通行人に飛び掛かって来て噛もうとしてくるから危なくて通れないと伝えたけど仕事するか… #黒い親子はマックが大好き #保護犬を家族に #保護犬 #里親 #わんこのいる生活 #わんこのいる暮らし #いぬすたぐらむ #似た者同士 #親子 #犬のいる暮らし #保護犬 #保護犬を家族に https://www.instagram.com/p/CoUTtU2PjX2/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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tanji-rie · 1 year
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 Wallpaper Series
I create works about the relationship between buildings and people, using the space of buildings, walls, columns, and other structures as motifs. In the "Wall paper" series, I use pencil and paint to add touches to the unevenness of the matière of ordinary wallpaper that is often used in room spaces. The pencil brings out the matiere of the wallpaper, and the paint erases the matiere by applying layers of paint.  Wallpaper is widely used in Japanese buildings, such as public facilities, hotels, corporate offices, and homes, and the walls occupy the majority of the interior space. Our private space, if we look around a little, is one space wrapped in wallpaper. When something that is normally inside is destroyed and exposed to the outside world, we realize the gravity of the situation.
 建造物における空間、壁や柱など建物の躯体などをモチーフにし、建造物と人の関係性について作品制作をしています。「Wall paper」シリーズは部屋の空間に多用されている凡庸な壁紙のマチエールの凹凸に鉛筆やペンキを使用し手を付け加えた作品になります。  鉛筆は壁紙のマチエールを浮かび上がらせ、ペンキは何層にも重ね塗りすることにより、マチエールを消していく行為になります。  日本の建物において壁紙は公共施設やホテル、企業の事務所や家など幅広く使用されており、壁の面積は内部空間で大部分を占めます。わたしたちのプライベート空間は、少し俯瞰して見渡してみると壁紙で包まれたあるひとつ空間になっています。  本来であれば内側にあるものが、破壊されて外部に露わになったとき事の重大さに気づきます。
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mceru44 · 2 years
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8/28 お疲れ様でした!
こんにちは!eruです。
改めて、8/28のイベントに足を運んでくださった皆様ありがとうございました。当初告知していたものから新刊の内容を急遽変えてしまったり、そのお知らせもギリギリだったりと色々と不親切だったのですが、遊びにきていただけてとても嬉しかったです。
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今回の新刊は、10月に予定している本がケイトの過去や未来を妄想して描いているお話なので、その前に学生時代のお話をもう少しアウトプットしておきたいな、という気持ちもあって生まれた本でした。出せるかどうか分からなかったのでギリギリ告知になってしまい本当にすみません(^_^;) でも、おかげで自分の中で軽音部の解像度を引き上げることができてよかったし、前から描きたかったマレウスくんと軽音部の共演を描けて満足でした。
差し入れ&お声がけ&お手紙ありがとうございました!
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チェーニャイメージのグッズとお菓子だ〜〜〜!涙 すごく嬉しいです…ありがとうございます……かわいい…嬉しい。。
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ハーツラビュルっぽくてかわいい!薔薇のお菓子とイチゴのタルト。 そらまめっち!これタマチャンショップのお菓子ですね!タマチャンショップの製品大好きでよく利用してるので嬉しいです(栄養粉末とか買ってます!)健康的になれそう…ありがとうございます。
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かわいいケイトくん(のレイヤーさん)がお菓子配りに来てくれた。 お菓子が入っている袋がペンキ塗りのバケツを模してて、小物まで世界観が崩れないように工夫されているのが素敵でした。トレイくんからも差し入れをいただいたのですが、けーくんからのお菓子は可愛くラッピングされてるのにトレイくんはジップロックだったというのがキャラ作り徹底されてて可愛かったです。やり取り目の前で見れて眼福でした。お手紙もありがとうございました!軽音部本、楽しんでいただけますように!
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既刊「Voyage」の3人のイメージでハンドメイドアクセサリーを作ってくださったんですって…!!!ありがとうございます!すごく綺麗で上品…。まるで花火ですね。この3人の関係性、本当にそれぞれが良すぎるんですよね。。こうして本を読んで感じて頂いた想いを別の形で表現して伝えてくださるの、本当に嬉しいです。写真は如いかようにもお使いくださいと書かれていたのでご紹介しちゃった!いつも励まされています。逆に話しかけてビックリさせてしまっていたらすみません。お会いできて嬉しかったです。
今回は1人参加だったので買い物時間が少ししかとれなかったのですが、その数分の間で買い回ったり好きな作家さんに感想を伝えに行けて嬉しかったです。イベント自体も良い感じに賑わっていて、久しぶりに最初から最後までイベント会場にいました。
元気をありがとうございました。
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元々描いていたお話も引き続き楽しみに描きたいと思います。形にするのが楽しみ。すごく久しぶりのオール描き下ろし中長編になりそうです。もし間に合えばチェーニャとトレイのお話も描きたいな。ほんと頭の中に描きたいお話がいっぱいです。
長めのストーリー漫画を描いてるとTLを全く見れなくなる人間なので、また低浮上な時期があるかもしれませんが、今描いてるんだな〜〜と思ってあたたかく見守って頂けると嬉しいです。イベストで狂ってWEB漫画が描けたらまた壁打ちに来ると思いますが😂
あと、最近本当に時々ですがpixiv skechで作業配信をすることがあります。原稿の進捗(ネタバレ)になるので特にTwitterの方で告知することはありませんが、pixivをフォローいただいていると通知がいく?ようです。なるべくクリティカルなネタバレシーンや台詞は隠した状態で作業していますので、もしご興味あれば。 https://www.pixiv.net/users/54655850
ということで改めてお疲れ様でした!
こうしてWEBや本を通して、twstの世界や推し達の魅力を誰かと分かち合えることに改めて感謝です。またお会いしましょう!
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olympicnic · 2 years
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2021.9.8/9.19 「空席が目立たないスタンド壁紙」を作ってみた。
新しく作られた国立競技場の観客席のシートの色は、森の木漏れ日をイメージした五色がランダムに配置されているという。が、これは空席が目立たないような工夫でもあるらしい。結果的にではあるが、無観客開催となった東京オリンピックで誰もいない空席の観客席を目立たなくすることに成功した。他の会場は大体客席の色は同じであり、無観客の寂しさは目立っていた。特にテレビ中継など、画面を通じて見ていると、国立競技場のランダム配色の座席の効果はかなり感じられた。
わたしたちは、国立競技場の観客席に座っているかのように錯覚する壁紙を作った。競技場の座席の写真を見ながら、五色のペンキを用意し、代々木公園(9.8)と駒沢公園(9.19)で壁紙を広げ、座席の形を描いてランダムな配色で色を塗った。
代々木公園では途中から雨が降ってきて、陸橋の下で描いていたので、雨宿りがてら覗いてくるおじさんがいたり、カラスを呼んでる?おばさんがいたり、コントの練習をしている二人組がいたりした。駒沢公園でペンキを塗った日は快晴で、日向で色を塗っているとあっという間に乾いた。日焼けしているボディービルダーや、サッカーをしにきた少年たち、ダンスレッスンをしている大人たちなどがいた。少年たちは色を塗りたいと言って手伝ってくれ、実はサッカーより絵を描くのが好き、と話していた。
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この壁紙は、10月のトーキョーアーツアンドスペースでの展示の際に、ベンチの後ろに設置した。
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harinezutaka · 3 years
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一年前日記35 (2020年8月26日~9月1日)
8月26日 10時チェックアウトの設定でだらだら。やらなきゃなという気持ちがクリアになった。いい感じ。また立て直して行こう。お昼からリモートで打ち合わせ。スマホがよくわからないひともいたので、家の電話も使いながらなんとか全員参加できた。初めての試み。打ち合わせや会議はどんどんなくなってしまえばいいと思う。さよたんていの本を読んでいると、シトルーナとの共通点について書きたくなったので文章にまとめてみた。ちょっと熱くなってしまった。夜、買い物へ。昨日、夫が義実家からもらってきた紫蘇がかなり野性味あふれる味だったのでサムギョプサルっぽいものを食べたくなる。夜ご飯、サムギョプサル、イチジクの白和え。北欧暮らしの道具店で買い物をしていたものが届く。夫の誕生日プレゼントにフラワーベース。私はリップと靴下を買った。フラワーベース、好きそうとビビッときて衝動買いだったが喜んでくれていたみたいでよかった。
8月27日 午前中、鍼へ。元気になると調子に乗ってしまう話をすると、「元気なときぐらい調子に乗らないとね」と言われた。少し体調が悪いぐらいの精神状態で身体は元気でいられたらいいのになと思う。心と体を分けすぎなのかな。帰りに初めての一人カラオケをした。土用が明けたらやりたかったことのひとつ。ひとりの人も多くて、全然大丈夫だった。歌い疲れたら、本を読んだり。楽しかったです。夕方、水道管から変な音がしだしたと思うと、下の人がやってきて水漏れしてるとのこと。うちは水は使っていなかったので、給水関係かなと思っていたのだが、念のためと思って元栓を締めると何と音が静まった。業者の人に見てもらうと、やっぱりうちだったみたい。時間も遅いので、修理は明日になるとのこと。水が使えないので、お互いそれぞれの実家にいくことにした。夜ご飯は、スペアリブとまくわうりのスープ。
8月28日 朝から工事。家にいないといけないので、仕事は私が休んだ。「今日中に直すからね」と、どんどん職人さんが来てなおしてくれた。お昼に団地の職員の人も来てくれて、謝って帰られた。うちももっと早く元栓を閉めてあげられたらよかったんだけど。下の人の対応や補償が大変だろうな。もう古いのでどこがいつ今回のようになってもおかしくないみたい。水道管クライシスだ。安倍総理が体調不良を原因に辞任することに決まった。潰瘍性大腸炎って大変な病気だな。できることなら心身ともに健康な人がリーダーになって欲しいが、そんな人はおそらく政治家になりたくないと思う。夜ご飯、オクラとコーンのグラタン、ベーコンと蓮根の酸っぱい炒め物、トマトともずくとモロヘイヤのスープ。
8月29日 特に予定のない土曜日。朝、散歩する。今日も工事があるのかなと思っていたけど、今日はないみたい。壁のペンキを塗るって言ってたような気もするが、それはまたあとでの話なのか。お昼は高山なおみさんのレシピの煮干しとゴーヤのチャーハン。毎年、ゴーヤの季節の定番。大好きなレシピ。夕方買い物へ。初マイカゴでの買い物。「これに入れてください」というタイミングが難しい。夜ご飯は、手羽元の酸っぱ煮、なすの味噌炒め、きゅうりの梅和え。夜、ファッジと郵便局がコラボしたラジオがあった。40分、コーヒーの入れ方やキリンジのライブを聴きながら手紙を書くというもの。寝室に小さな机とランプをもって、過ごした。これがなかなかよかった。手紙は3通かけた。
8月30日 日曜日。今日中にやらないといけないはずのことがあるのに、ほかのことばかりやっている夫についイライラしてしまう。課題の分離、課題の分離、あなたは困ってもわたしは困らないんだぞーと頭のなかで唱えた。頭がうまく働かないモードになってきたので、全部ログを取ることにする。やるべきことを決めておいてサクサクとやっていくようにすれば動ける。Kちゃんとお昼を食べに行く。一人ずつ仕切りのあるラーメン屋さん。中で並べないようになっていて、順番がきたらLINEで呼び出してくれるシステム。車の中で20分ほど待った。そのあと、お茶をした。一人暮らしをしようかなと言っていた。いいないいな。私はまたなんか偉そうなことを言っていた気がする。何か近ごろ表面を撫でているようなコミュニケーションじゃ満足できなくなっている。でもそれは、お互いの掘りたい気持ちが同じでないと。嫌な気持ちになったかもしれないな。次は自分からは誘わないようにして待ってみよう。誘うと彼女は嫌でも会おうと言ってくれるから。夫は明日が誕生日だったので、ケーキを買って帰った。夜ご飯は、肉味噌炒めのレタス包み、キムチとえのきのスープ。肉味噌にひじきと豆の煮物も加えたら美味しかった。
8月31日 夫は少しやる気になっていてさくさく動き出した。私もさくさく動こう。やることリストを片付けていく。本も読んだ。夫が夜勤(今は時短になっているので22時まで)の日は、お昼ご飯が一日のメインになる。ハッシュドビーフとサラダ。たくさんできたので、晩ご飯もこの残りを食べた。もうすぐ満月なので、今のうちに欲しいものを買ったり、図書館の本の予約をしたりした。満月から新月の間は、なるべく物を増やさずはしゃがず月とともに身軽になっていけたらいいなと思っている。今日が誕生日の友人にメールしたときに、共通の友人が入院していることを知る。子どもも小さいので家族も大変だろう。早く良くなって欲しいけど、ゆっくり休むことが必要なんだとも思う。
9月1日 仕事の日。何となく憂鬱だったことが前に進められた感触があった。後輩がワープロを知らないと言うので「ワープロが出てくる小説、読む?」と言って『キッチン』を貸そうとしたけど「本読まないんで」と断られた。そっか。帰りに朔日餅を受け取りに。受け取り場所で少し並んで、来月の予約をする人はして、ある程度の人数ごとに店員さんに連れられて店内へという流れ。9月の朔日餅は小さなおはぎ。6個入りだったので、実家に持っていって、ひとつずつ食べてもらい私もひとつ食べた。上品な甘さで美味しいし、思ったより小ぶりだったのでペロリと食べられた。一年に何度かの楽しみにして何年かかけてコンプリートできたらいいな。夜ご飯は実家で。ハンバーグ、モロヘイヤのスープなどを作った。冷蔵庫を見ると今日もぎっしり。豆腐もたくさん入っている。何があるかメモしてから買い物に行けばいいのになあと思う。そういうのは習慣なんだろうな。日々のモヤモヤを放置しておかないことは気持ちよく暮らしていく上での筋トレやストレッチだ。どんどんシンプルにしていかないとなと思う。自分から目を逸らさないようにしないとと思って、物理的に鏡を見る時間を増やすことにしてみた。今は少し恥ずかしいが、大切なことだと思う。
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家のリノベーション
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イギリスに来て約2年半。最初はどのエリアに住めば良いのか、全く見当がつきませんでした。特にロンドンは隣接していても、街が変わると治安や雰囲気がガラッと変わる都市。夫の友人のすすめで、今の南西エリアに家を借りてこのエリアがとても好きになり、昨年、今の家から徒歩5分の場所に、築100年ほどのエドワード時代の家を購入しました。
イギリスでは新築の家は珍しく(郊外や開発地区ではわりと見かける)、家を購入する際は大体が中古。景観保護の目的で外観は変えられないことの方が多いので、古い場合には中だけ自分好みにリノベーションします。
私たちの家はおそらく50年以上、改築など行われていなかった模様。20年住んでいるお隣さん(家を見に行くたびにどこからともなく現れて、色々教えてくれるいい方です笑)の話だと、この通りで唯一残っていた手付かずの家、だそうです。
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金額の合意が取れて契約書を作っている間に、プロの調査士に依頼して建物に異常がないかをみてもらいます。害虫がいないかとか、リノベーションに耐えられるかとか、かなり細かくチェックしていました。もしここで問題があれば、売り手側に伝えてそれを解決してもらう、もしくは金額を下げてもらう場合もあるとか。
契約が完了したら、建築士とどんな風に改築したいかをプランニングし、その計画をカウンシル(市役所)に提出します。カウンシルが景観的にOKか、建築法的にO Kかなど様々な観点からチェック。イギリスは横につながっている家が多いので、工事をすることで地盤が崩れて他の家に影響がないかなども調べます。提出書類の中に「20m以内にある、大きな木を全部記入して」という項目があり、隣のさらに隣の家の木がな���の木なのか、調べるのが大変でした笑。
この許可どりに2〜3ヶ月要することもザラです。ビザの発行もそうですが、イギリスの役所仕事って本当に時間がかかる…。移民も多いから、色々と日本とは勝手が違うんでしょうけど、以前駐英大使館で娘のパスポートが1週間以内に出来上がってきた時、イギリス人夫はかなり驚いてました(イギリスは最低でも数週間はかかる)。
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カウンシルの建築許可が降りた後に、隣人への確認も行われます。「こんな工事しますが問題ないですか?」という手紙がカウンシルから両隣に住む人たちへ届きます。幸い、今回はどちらの方も「問題なし」と返事をくれましたが、ここで隣人と揉める話もよく聞きます。↑の色々教えてくれるお隣さんは自分たちがやった時「うちの家に本当に影響がないかどうか、プロの調査士をもう一度入れてほしい」と言われたようで、自腹で10数万払って調査を入れたとか。さらに数軒隣の方は、5mの増築に隣人からNGが出て、裁判にまでなったらしいです。結果、増築OKになりましたが、これから長く隣に住む人とこんな風に揉めるのちょっと…ですよね。
と、長くなりましたが、私たちの家は無事全ての許可が降りて、3月1日から工事が始まりました。ここから予定では6ヶ月。ペンキ塗りや壁紙貼り、収納の設置など自分たちでやろうと思っている部分もあるので、今年は忙しくなりそうです。
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前の住人の方が植えていたピンクの椿が咲き始めました。
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ロフトの骨組みは2〜3週間で形になってきました!
娘たちの部屋をどんな風にするか考えるのが、最近の一番楽しい時間。Pinterestでピンをたてまくっています。
このIKEAのカスタマイズ棚かわいいな…
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この壁紙、娘たちの名前の花が両方描かれているのでどこかで使いたいな…。
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4面全部だと強烈な感じになりそうなので、クローゼットとリーディングスペースにしようと思っている一面にだけ貼ろうかな…
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壁の色はサンドピンクみたいなのがいいかな…
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こんな感じの寛ぎながら本読めるスペース作りたいな…
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と、色々考えがふくらんで、いつまでも見ていられます^ - ^。見過ぎ注意。これからは家のことや庭のことも少しずつアップできればと思います。
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kurihara-yumeko · 3 years
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【小説】The day I say good-bye (1/4) 【再録】
 今日は朝から雨だった。
 確か去年も雨だったよな、と僕は窓ガラスに反射している自分の顔を見つめて思った。僕を乗せたバスは、小雨の降る日曜の午後を北へ向かって走る。乗客は少ない。
 予定より五分遅れて、予定通りバス停「船頭町三丁目」で降りた。灰色に濁った水が流れる大きな樫岸川を横切る橋を渡り、広げた傘に雨音が当たる雑音を聞きながら、柳の並木道を歩く。
 小さな古本屋の角を右へ、古い木造家屋の住宅ばかりが建ち並ぶ細い路地を抜けたら左へ。途中、不機嫌そうな面構えの三毛猫が行く手を横切った。長い長い緩やかな坂を上り、苔生した石段を踏み締めて、赤い郵便ポストがあるところを左へ。突然広くなった道を行き、椿だか山茶花だかの生け垣のある家の角をまた左へ。
 そうすると、大きなお寺の屋根が見えてくる。囲われた塀の中、門の向こうには、静かな墓地が広がっている。
 そこの一角に、あーちゃんは眠っている。
 砂利道を歩きながら、結構な数の墓の中から、あーちゃんの墓へ辿り着く。もう既に誰かが来たのだろう。墓には真っ白な百合と、あーちゃんの好物であった焼きそばパンが供えてあった。あーちゃんのご両親だろうか。
 手ぶらで来てしまった僕は、ただ墓石を見上げる。周りの墓石に比べてまだ新しいその石は、手入れが行き届いていることもあって、朝から雨の今日であっても穏やかに光を反射している。
 そっと墓石に触れてみた。無機質な冷たさと硬さだけが僕の指先に応えてくれる。
 あーちゃんは墓石になった。僕にはそんな感覚がある。
 あーちゃんは死んだ。死んで、燃やされて、灰になり、この石の下に閉じ込められている。埋められているのは、ただの灰だ。あーちゃんの灰。
 ああ。あーちゃんは、どこに行ってしまったんだろう。
 目を閉じた。指先は墓石に触れたまま。このままじっとしていたら、僕まで石になれそうだ。深く息をした。深く、深く。息を吐く時、わずかに震えた。まだ石じゃない。まだ僕は、石になれない。
 ここに来ると、僕はいつも泣きたくなる。
 ここに来ると、僕はいつも死にたくなる。
 一体どれくらい、そうしていたのだろう。やがて後ろから、砂利を踏んで歩いてくる音が聞こえてきたので、僕は目を開き、手を引っ込めて振り向いた。
「よぉ、少年」
 その人は僕の顔を見て、にっこり笑っていた。
 総白髪かと疑うような灰色の頭髪。自己主張の激しい目元。頭の上の帽子から足元の厚底ブーツまで塗り潰したように真っ黒な恰好の人。
「やっほー」
 蝙蝠傘を差す左手と、僕に向けてひらひらと振るその右手の手袋さえも黒く、ちらりと見えた中指の指輪の石の色さえも黒い。
「……どうも」
 僕はそんな彼女に対し、顔の筋肉が引きつっているのを無理矢理に動かして、なんとか笑顔で応えて見せたりする。
 彼女はすぐ側までやってきて、馴れ馴れしく��僕の頭を二、三度柔らかく叩く。
「こんなところで奇遇だねぇ。少年も墓参りに来たのかい」
「先生も、墓参りですか」
「せんせーって呼ぶなしぃ。あたしゃ、あんたにせんせー呼ばわりされるようなもんじゃございませんって」
 彼女――日褄小雨先生はそう言って、だけど笑った。それから日褄先生は僕が先程までそうしていたのと同じように、あーちゃんの墓石を見上げた。彼女も手ぶらだった。
「直正が死んで、一年か」
 先生は上着のポケットから煙草の箱とライターを取り出す。黒いその箱から取り出された煙草も、同じように黒い。
「あたしゃ、ここに来ると後悔ばかりするね」
 ライターのかちっという音、吐き出される白い煙、どこか甘ったるい、ココナッツに似たにおいが漂う。
「あいつは、厄介なガキだったよ。つらいなら、『つらい』って言えばいい、それだけのことなんだ。あいつだって、つらいなら『つらい』って言ったんだろうさ。だけどあいつは、可哀想なことに、最後の最後まで自分がつらいってことに気付かなかったんだな」
 煙草の煙を揺らしながら、そう言う先生の表情には、苦痛と後悔が入り混じった色が見える。口に煙草を咥えたまま、墓前で手を合わせ、彼女はただ目を閉じていた。瞼にしつこいほど塗られた濃い黒い化粧に、雨の滴が垂れる。
 先生はしばらくして瞼を開き、煙草を一度口元から離すと、ヤニ臭いような甘ったるいような煙を吐き出して、それから僕を見て、優しく笑いかけた。それから先生は背を向け、歩き出してしまう。僕は黙ってそれを追った。
 何も言わなくてもわかっていた。ここに立っていたって、悲しみとも虚しさとも呼ぶことのできない、吐き気がするような、叫び出したくなるような、暴れ出したくなるような、そんな感情が繰り返し繰り返し、波のようにやってきては僕の心の中を掻き回していくだけだ。先生は僕に、帰ろう、と言ったのだ。唇の端で、瞳の奥で。
 先生の、まるで影法師が歩いているかのような黒い後ろ姿を見つめて、僕はかつてたった一度だけ見た、あーちゃんの黒いランドセルを思い出す。
 彼がこっちに引っ越してきてからの三年間、一度も使われることのなかった傷だらけのランドセル。物置きの中で埃を被っていたそれには、あーちゃんの苦しみがどれだけ詰まっていたのだろう。
 道の途中で振り返る。先程までと同じように、墓石はただそこにあった。墓前でかけるべき言葉も、抱くべき感情も、するべき行為も、何ひとつ僕は持ち合わせていない。
 あーちゃんはもう死んだ。
 わかりきっていたことだ。死んでから何かしてあげても無駄だ。生きているうちにしてあげないと、意味がない。だから、僕がこうしてここに立っている意味も、僕は見出すことができない。僕がここで、こうして呼吸をしていて、もうとっくに死んでしまったあーちゃんのお墓の前で、墓石を見つめている、その意味すら。
 もう一度、あーちゃんの墓に背中を向けて、僕は今度こそ歩き始めた。
「最近調子はどう?」
 墓地を出て、長い長い坂を下りながら、先生は僕にそう尋ねた。
「一ヶ月間、全くカウンセリング来なかったけど、何か変化があったりした?」
 黙っていると先生はさらにそう訊いてきたので、僕は仕方なく口を開く。
「別に、何も」
「ちゃんと飯食ってる? また少し痩せたんじゃない?」
「食べてますよ」
「飯食わないから、いつまでも身長伸びないんだよ」
 先生は僕の頭を、目覚まし時計を止める時のような動作で���雑に叩く。
「ちょ……やめて下さいよ」
「あーっはっはっはっはー」
 嫌がって身をよじろうとするが、先生はそれでもなお、僕に攻撃してくる。
「ちゃんと食わないと。摂食障害になるとつらいよ」
「食べますよ、ちゃんと……」
「あと、ちゃんと寝た方がいい。夜九時に寝ろ。身長伸びねぇぞ」
「九時に寝られる訳ないでしょう、小学生じゃあるまいし……」
「勉強なんかしてるから、身長伸びねぇんだよ」
「そんな訳ないでしょう」
 あはは、と朗らかに彼女は笑う。そして最後に優しく、僕の頭を撫でた。
「負けるな、少年」
 負けるなと言われても、一体何に――そう問いかけようとして、僕は口をつぐむ。僕が何と戦っているのか、先生はわかっているのだ。
「最近、市野谷はどうしてる?」
 先生は何気ない声で、表情で、タイミングで、あっさりとその名前を口にした。
「さぁ……。最近会ってないし、電話もないし、わからないですね」
「ふうん。あ、そう」
 先生はそれ以上、追及してくることはなかった。ただ独り言のように、「やっぱり、まだ駄目か」と言っただけだった。
 郵便ポストのところまで歩いてきた時、先生は、「あたしはあっちだから」と僕の帰り道とは違う方向を指差した。
「駐車場で、葵が待ってるからさ」
「ああ、葵さん。一緒だったんですか」
「そ。少年は、バスで来たんだろ? 家まで車で送ろうか?」
 運転するのは葵だけど、と彼女は付け足して言ったが、僕は首を横に振った。
「ひとりで帰りたいんです」
「あっそ。気を付けて帰れよ」
 先生はそう言って、出会った時と同じように、ひらひらと手を振って別れた。
 路地を右に曲がった時、僕は片手をパーカーのポケットに入れて初めて、とっくに音楽が止まったままになっているイヤホンを、両耳に突っ込んだままだということに気が付いた。
 僕が小学校を卒業した、一年前の今日。
 あーちゃんは人生を中退した。
 自殺したのだ。十四歳だった。
 遺書の最後にはこう書かれていた。
「僕は透明人間なんです」
    あーちゃんは僕と同じ団地に住んでいて、僕より二つお兄さんだった。
 僕が小学一年生の夏に、あーちゃんは家族四人で引っ越してきた。冬は雪に閉ざされる、北の方からやって来たのだという話を聞いたことがあった。
 僕はあーちゃんの、団地で唯一の友達だった。学年の違う彼と、どんなきっかけで親しくなったのか正確には覚えていない。
 あーちゃんは物静かな人だった。小学生の時から、年齢と不釣り合いなほど彼は大人びていた。
 彼は人付き合いがあまり得意ではなく、友達がいなかった。口数は少なく、話す時もぼそぼそとした、抑揚のない平坦な喋り方で、どこか他人と距離を取りたがっていた。
 部屋にこもりがちだった彼の肌は雪みたいに白くて、青い静脈が皮膚にうっすら透けて見えた。髪が少し長くて、色も薄かった。彼の父方の祖母が外国人だったと知ったのは、ずっと後のことだ。銀縁の眼鏡をかけていて、何か困ったことがあるとそれをかけ直す癖があった。
 あーちゃんは器用だった。今まで何度も彼の部屋へ遊びに行ったことがあるけれど、そこには彼が組み立てたプラモデルがいくつも置かれていた。
 僕が加減を知らないままにそれを乱暴に扱い、壊してしまったこともあった。とんでもないことをしてしまったと、僕はひどく後悔してうつむいていた。ごめんなさい、と謝った。年上の友人の大切な物を壊してしまって、どうしたらよいのかわからなかった。鼻の奥がつんとした。泣きたいのは壊されたあーちゃんの方だっただろうに、僕は泣き出しそうだった。
 あーちゃんは、何も言わなかった。彼は立ち尽くす僕の前でしゃがみ込んだかと思うと、足下に散らばったいびつに欠けたパーツを拾い、引き出しの中からピンセットやら接着剤やらを取り出して、僕が壊した部分をあっという間に直してしまった。
 それらの作業がすっかり終わってから彼は僕を呼んで、「ほら見てごらん」と言った。
 恐る恐る近付くと、彼は直ったばかりの戦車のキャタピラ部分を指差して、
「ほら、もう大丈夫だよ。ちゃんと元通りになった。心配しなくてもいい。でもあと1時間は触っては駄目だ。まだ接着剤が乾かないからね」
 と静かに言った。あーちゃんは僕を叱ったりしなかった。
 僕は最後まで、あーちゃんが大声を出すところを一度も見なかった。彼が泣いている姿も、声を出して笑っているのも。
 一度だけ、あーちゃんの満面の笑みを見たことがある。
 夏のある日、僕とあーちゃんは団地の屋上に忍び込んだ。
 僕らは子供向けの雑誌に載っていた、よく飛ぶ紙飛行機の作り方を見て、それぞれ違うモデルの紙飛行機を作り、どちらがより遠くへ飛ぶのかを競走していた。
 屋上から飛ばしてみよう、と提案したのは僕だった。普段から悪戯などしない大人しいあーちゃんが、その提案に首を縦に振ったのは今思い返せば珍しいことだった。そんなことはそれ以前も以降も二度となかった。
 よく晴れた日だった。屋上から僕が飛ばした紙飛行機は、青い空を横切って、団地の駐車場の上を飛び、道路を挟んだ向かいの棟の四階、空き部屋のベランダへ不時着した。それは今まで飛ばしたどんな紙飛行機にも負けない、驚くべき距離だった。僕はすっかり嬉しくなって、得意げに叫んだ。
「僕が一番だ!」
 興奮した僕を見て、あーちゃんは肩をすくめるような動作をした。そして言った。
「まだわからないよ」
 あーちゃんの細い指が、紙飛行機を宙に放つ。丁寧に折られた白い紙飛行機は、ちょうどその時吹いてきた風に背中を押されるように屋上のフェンスを飛び越え、僕の紙飛行機と同じように駐車場の上を通り、向かいの棟の屋根を越え、それでもまだまだ飛び続け、青い空の中、最後は粒のようになって、ついには見えなくなってしまった。
 僕は自分の紙飛行機が負けた悔しさと、魔法のような素晴らしい出来事を目にした嬉しさとが半分ずつ混じった目であーちゃんを見た。その時、僕は見たのだ。
 あーちゃんは声を立てることはなかったが、満足そうな笑顔だった。
「僕は透明人間なんです」
 それがあーちゃんの残した最後の言葉だ。
 あーちゃんは、僕のことを怒ればよかったのだ。地団太を踏んで泣いてもよかったのだ。大声で笑ってもよかったのだ。彼との思い出を振り返ると、いつもそんなことばかり思う。彼はもう永遠に泣いたり笑ったりすることはない。彼は死んだのだから。
 ねぇ、あーちゃん。今のきみに、僕はどんな風に見えているんだろう。
 僕の横で静かに笑っていたきみは、決して透明なんかじゃなかったのに。
 またいつものように春が来て、僕は中学二年生になった。
 張り出されていたクラス替えの表を見て、そこに馴染みのある名前を二つ見つけた。今年は、二人とも僕と同じクラスのようだ。
 教室へ向かってみたけれど、始業の時間になっても、その二つの名前が用意された席には、誰も座ることはなかった。
「やっぱり、まだ駄目か」
 誰かと同じ言葉を口にしてみる。
 本当は少しだけ、期待していた。何かが良くなったんじゃないかと。
 だけど教室の中は新しいクラスメイトたちの喧騒でいっぱいで、新年度一発目、始業式の今日、二つの席が空白になっていることに誰も触れやしない。何も変わってなんかない。
 何も変わらないまま、僕は中学二年生になった。
 あーちゃんが死んだ時の学年と同じ、中学二年生になった。
 あの日、あーちゃんの背中を押したのであろう風を、僕はずっと探してる。
 青い空の果てに、小さく消えて行ってしまったあーちゃんを、僕と「ひーちゃん」に返してほしくて。
    鉛筆を紙の上に走らせる音が、止むことなく続いていた。
「何を描いてるの?」
「絵」
「なんの絵?」
「なんでもいいでしょ」
「今年は、同じクラスみたいだね」
「そう」
「その、よろしく」
 表情を覆い隠すほど長い前髪の下、三白眼が一瞬僕を見た。
「よろしくって、何を?」
「クラスメイトとして、いろいろ……」
「意味ない。クラスなんて、関係ない」
 抑揚のない声でそう言って、双眸は再び紙の上へと向けられてしまった。
「あ、そう……」
 昼休みの保健室。
 そこにいるのは二人の人間。
 ひとりはカーテンの開かれたベッドに腰掛け、胸にはスケッチブック、右手には鉛筆を握り締めている。
 もうひとりはベッドの脇のパイプ椅子に座り、特にすることもなく片膝を抱えている。こっちが僕だ。
 この部屋の主であるはずの鬼怒田先生は、何か用があると言って席を外している。一体なんの仕事があるのかは知らないが、この学校の養護教諭はいつも忙しそうだ。
 僕はすることもないので、ベッドに座っているそいつを少しばかり観察する。忙しそうに鉛筆を動かしている様子を見ると、今はこちらに注意を払ってはいなそうだから、好都合だ。
 伸びてきて邪魔になったから切った、と言わんばかりのショートカットの髪。正反対に長く伸ばされた前髪は、栄養状態の悪そうな青白い顔を半分近く隠している。中学二年生としては小柄で華奢な体躯。制服のスカートから伸びる足の細さが痛々しく見える。
 彼女の名前は、河野ミナモ。僕と同じクラス、出席番号は七番。
 一言で表現するならば、彼女は保健室登校児だ。
 鉛筆の音が、止んだ。
「なに?」
 ミナモの瞬きに合わせて、彼女の前髪が微かに動く。少しばかり長く見つめ続けてしまったみたいだ。「いや、なんでもない」と言って、僕は天井を仰ぐ。
 ミナモは少しの間、何も言わずに僕の方を見ていたようだが、また鉛筆を動かす作業を再開した。
 鉛筆を走らせる音だけが聞こえる保健室。廊下の向こうからは、楽しそうに駆ける生徒たちの声が聞こえてくるが、それもどこか遠くの世界の出来事のようだ。この空間は、世界から切り離されている。
「何をしに来たの」
「何をって?」
「用が済んだなら、帰れば」
 新年度が始まったばかりだからだろうか、ミナモは機嫌が悪いみたいだ。否、機嫌が悪いのではなく、具合が悪いのかもしれない。今日の彼女はいつもより顔色が悪いように見える。
「いない方がいいなら、出て行くよ」
「ここにいてほしい人なんて、いない」
 平坦な声。他人を拒絶する声。憎しみも悲しみも全て隠された無機質な声。
「出て行きたいなら、出て行けば?」
 そう言うミナモの目が、何かを試すように僕を一瞥した。僕はまだ、椅子から立ち上がらない。彼女は「あっそ」とつぶやくように言った。
「市野谷さんは、来たの?」
 ミナモの三白眼がまだ僕を見ている。
「市野谷さんも同じクラスなんでしょ」
「なんだ、河野も知ってたのか」
「質問に答えて」
「……来てないよ」
「そう」
 ミナモの前髪が揺れる。瞬きが一回。
「不登校児二人を同じクラスにするなんて、学校側の考えてることってわからない」
 彼女の言葉通り、僕のクラスには二人の不登校児がいる。
 ひとりはこの河野ミナモ。
 そしてもうひとりは、市野谷比比子。僕は彼女のことを昔から、「ひーちゃん」と呼んでいた。
 二人とも、中学に入学してきてから一度も教室へ登校してきていない。二人の机と椅子は、一度も本人に使われることなく、今日も僕の教室にある。
 といっても、保健室登校児であるミナモはまだましな方で、彼女は一年生の頃から保健室には登校してきている。その点ひーちゃんは、中学校の門をくぐったこともなければ、制服に袖を通したことさえない。
 そんな二人が今年から僕と同じクラスに所属になったことには、正直驚いた。二人とも僕と接点があるから、なおさらだ。
「――くんも、」
 ミナモが僕の名を呼んだような気がしたが、上手く聞き取れなかった。
「大変ね、不登校児二人の面倒を見させられて」
「そんな自嘲的にならなくても……」
「だって、本当のことでしょ」
 スケッチブックを抱えるミナモの左腕、ぶかぶかのセーラー服の袖口から、包帯の巻かれた手首が見える。僕は自分の左手首を見やる。腕時計をしているその下に、隠した傷のことを思う。
「市野谷さんはともかく、教室へ行く気なんかない私の面倒まで、見なくてもいいのに」
「面倒なんて、見てるつもりないけど」
「私を訪ねに保健室に来るの、――くんくらいだよ」
 僕の名前が耳障りに響く。ミナモが僕の顔を見た。僕は妙な表情をしていないだろうか。平然を装っているつもりなのだけれど。
「まだ、気にしているの?」
「気にしてるって、何を?」
「あの日のこと」
 あの日。
 あの春の日。雨の降る屋上で、僕とミナモは初めて出会った。
「死にたがり屋と死に損ない」
 日褄先生は僕たちのことをそう呼んだ。どっちがどっちのことを指すのかは、未だに訊けていないままだ。
「……気にしてないよ」
「そう」
 あっさりとした声だった。ミナモは壁の時計をちらりと見上げ、「昼休み終わるよ、帰れば」と言った。
 今度は、僕も立ち上がった。「それじゃあ」と口にしたけれど、ミナモは既に僕への興味を失ったのか、スケッチブックに目線を落とし、返事のひとつもしなかった。
 休みなく動き続ける鉛筆。
 立ち上がった時にちらりと見えたスケッチブックは、ただただ黒く塗り潰されているだけで、何も描かれてなどいなかった。
    ふと気付くと、僕は自分自身が誰なのかわからなくなっている。
 自分が何者なのか、わからない。
 目の前で展開されていく風景が虚構なのか、それとも現実なのか、そんなことさえわからなくなる。
 だがそれはほんの一瞬のことで、本当はわかっている。
 けれど感じるのだ。自分の身体が透けていくような感覚を。「自分」という存在だけが、ぽっかりと穴を空けて突っ立っているような。常に自分だけが透明な膜で覆われて、周囲から隔離されているかのような疎外感と、なんの手応えも得られない虚無感と。
 あーちゃんがいなくなってから、僕は頻繁にこの感覚に襲われるようになった。
 最初は、授業が終わった後の短い休み時間。次は登校中と下校中。その次は授業中にも、というように、僕が僕をわからなくなる感覚は、学校にいる間じゅうずっと続くようになった。しまいには、家にいても、外にいても、どこにいてもずっとそうだ。
 周りに人がいればいるほど、その感覚は強かった。たくさんの人の中、埋もれて、紛れて、見失う。自分がさっきまで立っていた場所は、今はもう他の人が踏み荒らしていて。僕の居場所はそれぐらい危ういところにあって。人混みの中ぼうっとしていると、僕なんて消えてしまいそうで。
 頭の奥がいつも痛かった。手足は冷え切ったみたいに血の気がなくて。酸素が薄い訳でもないのにちゃんと息ができなくて。周りの人の声がやたら大きく聞こえてきて。耳の中で何度もこだまする、誰かの声。ああ、どうして。こんなにも人が溢れているのに、ここにあーちゃんはいないんだろう。
 僕はどうして、ここにいるんだろう。
「よぉ、少年」
 旧校舎、屋上へ続く扉を開けると、そこには先客がいた。
 ペンキがところどころ剥げた緑色のフェンスにもたれるようにして、床に足を投げ出しているのは日褄先生だった。今日も真っ黒な恰好で、ココナッツのにおいがする不思議な煙草を咥えている。
「田島先生が、先生のことを昼休みに探してましたよ」
「へへっ。そりゃ参ったね」
 煙をゆらゆらと立ち昇らせて、先生は笑う。それからいつものように、「せんせーって呼ぶなよ」と付け加えた。彼女はさらに続けて言う。
「それで? 少年は何をし、こんなところに来たのかな?」
「ちょっと外の空気を吸いに」
「おお、奇遇だねぇ。あたしも外の空気を吸いに……」
「吸いにきたのはニコチンでしょう」
 僕がそう言うと、先生は、「あっはっはっはー」と高らかに笑った。よく笑う人だ。
「残念だが少年、もう午後の授業は始まっている時間だし、ここは立ち入り禁止だよ」
「お言葉ですが先生、学校の敷地内は禁煙ですよ」
「しょうがない、今からカウンセリングするってことにしておいてあげるから、あたしの喫煙を見逃しておくれ。その代わり、あたしもきみの授業放棄を許してあげよう」
 先生は右手でぽんぽんと、自分の隣、雨上がりでまだ湿気っているであろう床を叩いた。座れと言っているようだ。僕はそれに従わなかった。
 先客がいたことは予想外だったが、僕は本当に、ただ、外の空気を吸いたくなってここに来ただけだ。授業を途中で抜けてきたこともあって、長居をするつもりはない。
 ふと、視界の隅に「それ」が目に入った。
 フェンスの一角に穴が空いている。ビニールテープでぐるぐる巻きになっているそこは、テープさえなければ屋上の崖っぷちに立つことを許している。そう。一年前、あそこから、あーちゃんは――。
(ねぇ、どうしてあーちゃんは、そらをとんだの?)
 僕の脳裏を、いつかのひーちゃんの言葉がよぎる。
(あーちゃん、かえってくるよね? また、あえるよね?)
 ひーちゃんの言葉がいくつもいくつも、風に飛ばされていく桜の花びらと同じように、僕の目���前を通り過ぎていく。
「こんなところで、何をしていたんですか」
 そう質問したのは僕の方だった。「んー?」と先生は煙草の煙を吐きながら言う。
「言っただろ、外の空気を吸いに来たんだよ」
「あーちゃんが死んだ、この場所の空気を、ですか」
 先生の目が、僕を見た。その鋭さに、一瞬ひるみそうになる。彼女は強い。彼女の意思は、強い。
「同じ景色を見たいと思っただけだよ」
 先生はそう言って、また煙草をふかす。
「先生、」
「せんせーって呼ぶな」
「質問があるんですけど」
「なにかね」
「嘘って、何回つけばホントになるんですか」
「……んー?」
 淡い桜色の小さな断片が、いくつもいくつも風に流されていく。僕は黙って、それを見ている。手を伸ばすこともしないで。
「嘘は何回ついたって、嘘だろ」
「ですよね」
「嘘つきは怪人二十面相の始まりだ」
「言っている意味がわかりません」
「少年、」
「はい」
「市野谷に嘘つくの、しんどいのか?」
 先生の煙草の煙も、みるみるうちに風に流されていく。手を伸ばしたところで、掴むことなどできないまま。
「市野谷に、直正は死んでないって、嘘をつき続けるの、しんどいか?」
 ひーちゃんは知らない。あーちゃんが去年ここから死んだことを知らない。いや、知らない訳じゃない。認めていないのだ。あーちゃんの死を認めていない。彼がこの世界に僕らを置き去りにしたことを、許していない。
 ひーちゃんはずっと信じている。あーちゃんは生きていると。いつか帰ってくると。今は遠くにいるけれど、きっとまた会える日が来ると。
 だからひーちゃんは知らない。彼の墓石の冷たさも、彼が飛び降りたこの屋上の景色が、僕の目にどう映っているのかも。
 屋上。フェンス。穴。空。桜。あーちゃん。自殺。墓石。遺書。透明人間。無。なんにもない。ない。空っぽ。いない。いないいないいないいない。ここにもいない。どこにもいない。探したっていない。消えた。消えちゃった。消滅。消失。消去。消しゴム。弾んで。飛んで。落ちて。転がって。その先に拾ってくれる��みがいて。笑顔。笑って。笑ってくれて。だけどそれも消えて。全部消えて。消えて消えて消えて。ただ昨日を越えて今日が過ぎ明日が来る。それを繰り返して。きみがいない世界で。ただ繰り返して。ひーちゃん。ひーちゃんが笑わなくなって。泣いてばかりで。だけどもうきみがいない。だから僕が。僕がひーちゃんを慰めて。嘘を。嘘をついて。ついてはいけない嘘を。ついてはいけない嘘ばかりを。それでもひーちゃんはまた笑うようになって。笑顔がたくさん戻って。だけどどうしてあんなにも、ひーちゃんの笑顔は空っぽなんだろう。
「しんどくなんか、ないですよ」
 僕はそう答えた。
 先生は何も言わなかった。
 僕は明日にでも、怪人二十面相になっているかもしれなかった。
    いつの間にか梅雨が終わり、実力テストも期末テストもクリアして、夏休みまであと一週間を切っていた。
 ひと夏の解放までカウントダウンをしている今、僕のクラスの連中は完璧な気だるさに支配されていた。自主性や積極性などという言葉とは無縁の、慣性で流されているような脱力感。
 先週に教室の天井四ヶ所に取り付けられている扇風機が全て故障したこともあいまって、クラスメイトたちの授業に対する意欲はほぼゼロだ。授業がひとつ終わる度に、皆溶け出すように机に上半身を投げ出しており、次の授業が始まったところで、その姿勢から僅かに起き上がる程度の差しかない。
 そういう僕も、怠惰な中学二年生のひとりに過ぎない。さっきの英語の授業でノートに書き記したことと言えば、英語教師の松田が何回額の汗を脱ぐったのかを表す「正」の字だけだ。
 休み時間に突入し、がやがやと騒がしい教室で、ひとりだけ仲間外れのように沈黙を守っていると、肘辺りから空気中に溶け出して、透明になっていくようなそんな気分になる。保健室には来るものの、自分の教室へは絶対に足を運ばないミナモの気持ちがわかるような気がする。
 一学期がもうすぐ終わるこの時期になっても、相変わらず僕のクラスには常に二つの空席があった。ミナモも、ひーちゃんも、一度だって教室に登校してきていない。
「――くん、」
 なんだか控えめに名前を呼ばれた気はしたが、クラスの喧騒に紛れて聞き取れなかった。
 ふと机から顔を上げると、ひとりの女子が僕の机の脇に立っていた。見たことがあるような顔。もしかして、クラスメイトのひとりだろうか。彼女は廊下を指差して、「先生、呼んでる」とだけ言って立ち去った。
 あまりにも唐突な出来事でその女子にお礼を言うのも忘れたが、廊下には担任の姿が見える。僕のクラス担任の担当科目は数学だが、次の授業は国語だ。なんの用かはわからないが、呼んでいるのなら行かなくてはならない。
「おー、悪いな、呼び出して」
 去年大学を卒業したばかりの、どう見ても体育会系な容姿をしている担任は、僕を見てそう言った。
「ほい、これ」
 突然差し出されたのはプリントの束だった。三十枚くらいありそうなプリントが穴を空けられ紐を通して結んである。
「悪いがこれを、市野谷さんに届けてくれないか」
 担任がひーちゃんの名を口にしたのを聞いたのは、久しぶりのような気がした。もう朝の出欠確認の時でさえ、彼女の名前は呼ばれない。ミナモの名前だってそうだ。このクラスでは、ひーちゃんも、ミナモも、いないことが自然なのだ。
「……先生が、届けなくていいんですか」
「そうしたいのは山々なんだが、なかなか時間が取れなくてな。夏休みに入ったら家庭訪問に行こうとは思ってるんだ。このプリントは、それまでにやっておいてほしい宿題。中学に入ってから二年の一学期までに習う数学の問題を簡単にまとめたものなんだ」
「わかりました、届けます」
 受け取ったプリントの束は、思っていたよりもずっとずっしりと重かった。
「すまんな。市野谷さんと小学生の頃一番仲が良かったのは、きみだと聞いたものだから」
「いえ……」
 一年生の時から、ひーちゃんにプリントを届けてほしいと教師に頼まれることはよくあった。去年は彼女と僕は違うクラスだったけれど、同じ小学校出身の誰かに僕らが幼馴染みであると聞いたのだろう。
 僕は学校に来なくなったひーちゃんのことを毛嫌いしている訳ではない。だから、何か届け物を頼まれてもそんなに嫌な気持ちにはならない。でも、と僕は思った。
 でも僕は、ひーちゃんと一番仲が良かった訳じゃないんだ。
「じゃあ、よろしく頼むな」
 次の授業の始業のチャイムが鳴り響く。
 教室に戻り、出したままだった英語の教科書と「正」の字だけ記したノートと一緒に、ひーちゃんへのプリントの束を鞄に仕舞いながら、なんだか僕は泣きたくなった。
  三角形が壊れるのは簡単だった。
 三角形というのは、三辺と三つの角でできていて、当然のことだけれど一辺とひとつの角が消失したら、それはもう三角形ではない。
 まだ小学校に上がったばかりの頃、僕はどうして「さんかっけい」や「しかっけい」があるのに「にかっけい」がないのか、と考えていたけれど、どうやら僕の脳味噌は、その頃から数学的思考というものが不得手だったようだ。
「にかっけい」なんてあるはずがない。
 僕と、あーちゃんと、ひーちゃん。
 僕ら三人は、三角形だった。バランスの取りやすい形。
 始まりは悲劇だった。
 あの悪夢のような交通事故。ひーちゃんの弟の死。
 真っ白なワンピースが汚れることにも気付かないまま、真っ赤になった弟の身体を抱いて泣き叫ぶひーちゃんに手を伸ばしたのは、僕と一緒に下校する途中のあーちゃんだった。
 お互いの家が近かったこともあって、それから僕らは一緒にいるようになった。
 溺愛していた最愛の弟を、目の前で信号無視したダンプカーに撥ねられて亡くしたひーちゃんは、三人で一緒にいてもときどき何かを思い出したかのように暴れては泣いていたけれど、あーちゃんはいつもそれをなだめ、泣き止むまでずっと待っていた。
 口下手な彼は、ひーちゃんに上手く言葉をかけることがいつもできずにいたけれど、僕が彼の言葉を補って彼女に伝えてあげていた。
 優しくて思いやりのあるひーちゃんは、感情を表すことが苦手なあーちゃんのことをよく気遣ってくれていた。
 僕らは嘘みたいにバランスの取れた三角形だった。
 あーちゃんが、この世界からいなくなるまでは。
   「夏は嫌い」
 昔、あーちゃんはそんなことを口にしていたような気がする。
「どうして?」
 僕はそう訊いた。
 夏休み、花火、虫捕り、お祭り、向日葵、朝顔、風鈴、西瓜、プール、海。
 水の中の金魚の世界と、バニラアイスの木べらの湿り気。
 その頃の僕は今よりもずっと幼くて、四季の中で夏が一番好きだった。
 あーちゃんは部屋の窓を網戸にしていて、小さな扇風機を回していた。
 彼は夏休みも相変わらず外に出ないで、部屋の中で静かに過ごしていた。彼の傍らにはいつも、星座の本と分厚い昆虫図鑑が置いてあった。
「夏、暑いから嫌いなの?」
 僕が尋ねるとあーちゃんは抱えていた分厚い本からちょっとだけ顔を上げて、小さく首を横に振った。それから困ったように笑って、
「夏は、皆死んでいるから」
 とだけ、つぶやくように言った。あーちゃんは、時々魔法の呪文のような、不思議なことを言って僕を困惑させることがあった。この時もそうだった。
「どういう意味?」
 僕は理解できずに、ただ訊き返した。
 あーちゃんはさっきよりも大きく首を横に振ると、何を思ったのか、唐突に、
「ああ、でも、海に行ってみたいな」
 なんて言った。
「海?」
「そう、海」
「どうして、海?」
「海は、色褪せてないかもしれない。死んでないかもしれない」
 その言葉の意味がわからず、僕が首を傾げていると、あーちゃんはぱたんと本を閉じて机に置いた。
「台所へ行こうか。確か、母さんが西瓜を切ってくれていたから。一緒に食べよう」
「うん!」
 僕は西瓜に釣られて、わからなかった言葉のことも、すっかり忘れてしまった。
 でも今の僕にはわかる。
 夏の日射しは、世界を色褪せさせて僕の目に映す。
 あーちゃんはそのことを、「死んでいる」と言ったのだ。今はもう確かめられないけれど。
 結局、僕とあーちゃんが海へ行くことはなかった。彼から海へ出掛けた話を聞いたこともないから、恐らく、海へ行くことなく死んだのだろう。
 あーちゃんが見ることのなかった海。
 海は日射しを浴びても青々としたまま、「生きて」いるんだろうか。
 彼が死んでから、僕も海へ足を運んでいない。たぶん、死んでしまいたくなるだろうから。
 あーちゃん。
 彼のことを「あーちゃん」と名付けたのは僕だった。
 そういえば、どうして僕は「あーちゃん」と呼び始めたんだっけか。
 彼の名前は、鈴木直正。
 どこにも「あーちゃん」になる要素はないのに。
    うなじを焼くようなじりじりとした太陽光を浴びながら、ペダルを漕いだ。
 鼻の頭からぷつぷつと汗が噴き出すのを感じ、手の甲で汗を拭おうとしたら手は既に汗で湿っていた。雑音のように蝉の声が響いている。道路の脇には背の高い向日葵は、大きな花を咲かせているのに風がないので微動だにしない。
 赤信号に止められて、僕は自転車のブレーキをかける。
 夏がくる度、思い出す。
 僕とあーちゃんが初めてひーちゃんに出会い、そして彼女の最愛の弟「ろーくん」が死んだ、あの事故のことを。
 あの日も、世界が真っ白に焼き切れそうな、暑い日だった。
 ひーちゃんは白い木綿のワンピースを着ていて、それがとても涼しげに見えた。ろーくんの血で汚れてしまったあのワンピースを、彼女はもうとっくに捨ててしまったのだろうけれど。
 そういえば、ひーちゃんはあの事故の後、しばらくの間、弟の形見の黒いランドセルを使っていたっけ。黒い服ばかり着るようになって。周りの子はそんな彼女を気味悪がったんだ。
 でもあーちゃんは、そんなひーちゃんを気味悪がったりしなかった。
 信号が赤から青に変わる。再び漕ぎ出そうとペダルに足を乗せた時、僕の両目は横断歩道の向こうから歩いて来るその人を捉えて凍りついてしまった。
 胸の奥の方が疼く。急に、聞こえてくる蝉の声が大きくなったような気がした。喉が渇いた。頬を撫でるように滴る汗が気持ち悪い。
 信号は青になったというのに、僕は動き出すことができない。向こうから歩いて来る彼は、横断歩道を半分まで渡ったところで僕に気付いたようだった。片眉を持ち上げ、ほんの少し唇の端を歪める。それが笑みだとわかったのは、それとよく似た笑顔をずいぶん昔から知っているからだ。
「うー兄じゃないですか」
 うー兄。彼は僕をそう呼んだ。
 声変わりの途中みたいな声なのに、妙に大人びた口調。ぼそぼそとした喋り方。
 色素の薄い頭髪。切れ長の一重瞼。ひょろりと伸びた背。かけているのは銀縁眼鏡。
 何もかもが似ているけれど、日に焼けた真っ黒な肌と筋肉のついた足や腕だけは、記憶の中のあーちゃんとは違う。
 道路を渡り終えてすぐ側まで来た彼は、親しげに僕に言う。
「久しぶりですね」
「……久しぶり」
 僕がやっとの思いでそう声を絞り出すと、彼は「ははっ」と笑った。きっとあーちゃんも、声を上げて笑うならそういう風に笑ったんだろうなぁ、と思う。
「どうしたんですか。驚きすぎですよ」
 困ったような笑顔で、眼鏡をかけ直す。その手つきすらも、そっくり同じ。
「嫌だなぁ。うー兄は僕のことを見る度、まるで幽霊でも見たような顔するんだから」
「ごめんごめん」
「ははは、まぁいいですよ」
 僕が謝ると、「あっくん」はまた笑った。
 彼、「あっくん」こと鈴木篤人くんは、僕の一個下、中学一年生。私立の学校に通っているので僕とは学校が違う。野球部のエースで、勉強の成績もクラストップ。僕の団地でその中学に進学できた子供は彼だけだから、団地の中で知らない人はいない優等生だ。
 年下とは思えないほど大人びた少年で、あーちゃんにそっくりな、あーちゃんの弟。
「中学は、どう? もう慣れた?」
「慣れましたね。今は部活が忙しくて」
「運動部は大変そうだもんね」
「うー兄は、帰宅部でしたっけ」
「そう。なんにもしてないよ」
「今から、どこへ行くんですか?」
「ああ、えっと、ひーちゃんに届け物」
「ひー姉のところですか」
 あっくんはほんの一瞬、愛想笑いみたいな顔をした。
「ひー姉、まだ学校に行けてないんですか?」
「うん」
「行けるようになるといいですね」
「そうだね」
「うー兄は、元気にしてましたか?」
「僕? 元気だけど……」
「そうですか。いえ、なんだかうー兄、兄貴に似てきたなぁって思ったものですから」
「僕が?」
 僕があーちゃんに似てきている?
「顔のつくりとかは、もちろん違いますけど、なんていうか、表情とか雰囲気が、兄貴に似てるなぁって」
「そうかな……」
 僕にそんな自覚はないのだけれど。
「うー兄も死んじゃいそうで、心配です」
 あっくんは柔らかい笑みを浮かべたままそう言った。
「……そう」
 僕はそう返すので精いっぱいだった。
「それじゃ、ひー姉によろしくお伝え下さい」
「じゃあ、また……」
 あーちゃんと同じ声で話し、あーちゃんと同じように笑う彼は、夏の日射しの中を歩いて行く。
(兄貴は、弱いから駄目なんだ)
 いつか彼が、あーちゃんに向けて言った言葉。
 あーちゃんは自分の弟にそう言われた時でさえ、怒ったりしなかった。ただ「そうだね」とだけ返して、少しだけ困ったような顔をしてみせた。
 あっくんは、強い。
 姿や雰囲気は似ているけれど、性格というか、芯の強さは全く違う。
 あーちゃんの死を自分なりに受け止めて、乗り越えて。部活も勉強も努力して。あっくんを見ているといつも思う。兄弟でもこんなに違うものなのだろうか、と。ひとりっ子の僕にはわからないのだけれど。
 僕は、どうだろうか。
 あーちゃんの死を受け入れて、乗り越えていけているだろうか。
「……死相でも出てるのかな」
 僕があーちゃんに似てきている、なんて。
 笑えない冗談だった。
 ふと見れば、信号はとっくに赤になっていた。青になるまで待つ間、僕の心から言い表せない不安が拭えなかった。
    遺書を思い出した。
 あーちゃんの書いた遺書。
「僕の分まで生きて。僕は透明人間なんです」
 日褄先生はそれを、「ばっかじゃねーの」って笑った。
「透明人間は見えねぇから、透明人間なんだっつーの」
 そんな風に言って、たぶん、泣いてた。
「僕の分まで生きて」
 僕は自分の鼓動を聞く度に、その言葉を繰り返し、頭の奥で聞いていたような気がする。
 その度に自分に問う。
 どうして生きているのだろうか、と。
  部屋に一歩踏み入れると、足下でガラスの破片が砕ける音がした。この部屋でスリッパを脱ぐことは自傷行為に等しい。
「あー、うーくんだー」
 閉められたカーテン。閉ざされたままの雨戸。
 散乱した物。叩き壊された物。落下したままの物。破り捨てられた物。物の残骸。
 その中心に、彼女はいる。
「久しぶりだね、ひーちゃん」
「そうだねぇ、久しぶりだねぇ」
 壁から落下して割れた時計は止まったまま。かろうじて壁にかかっているカレンダーはあの日のまま。
「あれれー、うーくん、背伸びた?」
「かもね」
「昔はこーんな小さかったのにねー」
「ひーちゃんに初めて会った時だって、そんなに小さくなかったと思うよ」
「あははははー」
 空っぽの笑い声。聞いているこっちが空しくなる。
「はい、これ」
「なに? これ」
「滝澤先生に頼まれたプリント」
「たきざわって?」
「今度のクラスの担任だよ」
「ふーん」
「あ、そうだ、今度は僕の同じクラスに……」
 彼女の手から投げ捨てられたプリントの束が、ろくに掃除されていない床に落ちて埃を巻き上げた。
「そういえば、あいつは?」
「あいつって?」
「黒尽くめの」
「黒尽くめって……日褄先生のこと?」
「まだいる?」
「日褄先生なら、今年度も学校にいるよ」
「なら、学校には行かなーい」
「どうして?」
「だってあいつ、怖いことばっかり言うんだもん」
「怖いこと?」
「あーちゃんはもう、死んだんだって」
「…………」
「ねぇ、うーくん」
「……なに?」
「うーくんはどうして、学校に行けるの? まだあーちゃんが帰って来ないのに」
 どうして僕は、生きているんだろう。
「『僕』はね、怖いんだよ、うーくん。あーちゃんがいない毎日が。『僕』の毎日の中に、あーちゃんがいないんだよ。『僕』は怖い。毎日が怖い。あーちゃんのこと、忘れそうで怖い。あーちゃんが『僕』のこと、忘れそうで怖い……」
 どうしてひーちゃんは、生きているんだろう。
「あーちゃんは今、誰の毎日の中にいるの?」
 ひーちゃんの言葉はいつだって真っ直ぐだ。僕の心を突き刺すぐらい鋭利だ。僕の心を掻き回すぐらい乱暴だ。僕の心をこてんぱんに叩きのめすぐらい凶暴だ。
「ねぇ、うーくん」
 いつだって思い知らされる。僕が駄目だってこと。
「うーくんは、どこにも行かないよね?」
 いつだって思い知らせてくれる。僕じゃ駄目だってこと。
「どこにも、行かないよ」
 僕はどこにも行けない。きみもどこにも行けない。この部屋のように時が止まったまま。あーちゃんが死んでから、何もかもが停止したまま。
「ふーん」
 どこか興味なさそうな、ひーちゃんの声。
「よかった」
 その後、他愛のない話を少しだけして、僕はひーちゃんの家を後にした。
 死にたくなるほどの夏の熱気に包まれて、一気に現実に引き戻された気分になる。
 こんな現実は嫌なんだ。あーちゃんが欠けて、ひーちゃんが壊れて、僕は嘘つきになって、こんな世界は、大嫌いだ。
 僕は自分に問う。
 どうして僕は、生きているんだろう。
 もうあーちゃんは死んだのに。
   「ひーちゃん」こと市野谷比比子は、小学生の頃からいつも奇異の目で見られていた。
「市野谷さんは、まるで死体みたいね」
 そんなことを彼女に言ったのは、僕とひーちゃんが小学四年生の時の担任だった。
 校舎の裏庭にはクラスごとの畑があって、そこで育てている作物の世話を、毎日クラスの誰かが当番制でしなくてはいけなかった。それは夏休み期間中も同じだった。
 僕とひーちゃんが当番だった夏休みのある日、黙々と草を抜いていると、担任が様子を見にやって来た。
「頑張ってるわね」とかなんとか、最初はそんな風に声をかけてきた気がする。僕はそれに、「はい」とかなんとか、適当に返事をしていた。ひーちゃんは何も言わず、手元の草を引っこ抜くことに没頭していた。
 担任は何度かひーちゃんにも声をかけたが、彼女は一度もそれに答えなかった。
 ひーちゃんはいつもそうだった。彼女が学校で口を利くのは、同じクラスの僕と、二つ上の学年のあーちゃんにだけ。他は、クラスメイトだろうと教師だろうと、一言も言葉を発さなかった。
 この当番を決める時も、そのことで揉めた。
 くじ引きでひーちゃんと同じ当番に割り当てられた意地の悪い女子が、「せんせー、市野谷さんは喋らないから、当番の仕事が一緒にやりにくいでーす」と皆の前で言ったのだ。
 それと同時に、僕と一緒の当番に割り当てられた出っ歯の野郎が、「市野谷さんと仲の良い――くんが市野谷さんと一緒にやればいいと思いまーす」と、僕の名前を指名した。
 担任は困ったような笑顔で、
「でも、その二人だけを仲の良い者同士にしたら、不公平じゃないかな? 皆だって、仲の良い人同士で一緒の当番になりたいでしょう? 先生は普段あまり仲が良くない人とも仲良くなってもらうために、当番の割り振りをくじ引きにしたのよ。市野谷さんが皆ともっと仲良くなったら、皆も嬉しいでしょう?」
 と言った。意地悪ガールは間髪入れずに、
「喋らない人とどうやって仲良くなればいいんですかー?」
 と返した。
 ためらいのない発言だった。それはただただ純粋で、悪意を含んだ発言だった。
「市野谷さんは私たちが仲良くしようとしてもいっつも無視してきまーす。それって、市野谷さんが私たちと仲良くしたくないからだと思いまーす。それ��のに、無理やり仲良くさせるのは良くないと思いまーす」
「うーん、そんなことはないわよね、市野谷さん」
 ひーちゃんは何も言わなかった。まるで教室内での出来事が何も耳に入っていないかのような表情で、窓の外を眺めていた。
「市野谷さん? 聞いているの?」
「なんか言えよ市野谷」
 男子がひーちゃんの机を蹴る。その振動でひーちゃんの筆箱が机から滑り落ち、がちゃんと音を立てて中身をぶちまけたが、それでもひーちゃんには変化は訪れない。
 クラスじゅうにざわざわとした小さな悪意が満ちる。
「あの子ちょっとおかしいんじゃない?」
 そんな囁きが満ちる。担任の困惑した顔。意地悪いクラスメイトたちの汚らわしい視線。
 僕は知っている。まるでここにいないかのような顔をして、窓の外を見ているひーちゃんの、その視線の先を。窓から見える新校舎には、彼女の弟、ろーくんがいた一年生の教室と、六年生のあーちゃんがいる教室がある。
 ひーちゃんはいつも、ぼんやりとそっちばかりを見ている。教室の中を見渡すことはほとんどない。彼女がここにいないのではない。彼女にとって、こっちの世界が意味を成していないのだ。
「市野谷さんは、死体みたいね」
 夏休み、校舎裏の畑。
 その担任の一言に、僕は思わずぎょっとした。担任はしゃがみ込み、ひーちゃんに目線を合わせようとしながら、言う。
「市野谷さんは、どうしてなんにも言わないの? なんにも思わないの? あんな風に言われて、反論したいなって思わないの?」
 ひーちゃんは黙って草を抜き続けている。
「市野谷さんは、皆と仲良くなりたいって思わない? 皆は、市野谷さんと仲良くなりたいって思ってるわよ」
 ひーちゃんは黙っている。
「市野谷さんは、ずっとこのままでいるつもりなの? このままでいいの? お友達がいないままでいいの?」
 ひーちゃんは。
「市野谷さん?」
「うるさい」
 どこかで蝉が鳴き止んだ。
 彼女が僕とあーちゃん以外の人間に言葉を発したところを、僕は初めて見た。彼女は担任を睨み付けるように見つめていた。真っ黒な瞳が、鋭い眼光を放っている。
「黙れ。うるさい。耳障り」
 ひーちゃんが、僕の知らない表情をした。それはクラスメイトたちがひーちゃんに向けたような、玩具のような悪意ではなかった。それは本当の、なんの混じり気もない、殺意に満ちた顔だった。
「あんたなんか、死んじゃえ」
 振り上げたひーちゃんの右手には、草抜きのために職員室から貸し出された鎌があって――。
「ひーちゃん!」
 間一髪だった。担任は真っ青な顔で、息も絶え絶えで、しかし、その鎌の一撃をかろうじてかわした。担任は震えながら、何かを叫びながら校舎の方へと逃げるように走り去って行く。
「ひーちゃん、大丈夫?」
 僕は地面に突き刺した鎌を固く握りしめたまま、動かなくなっている彼女に声をかけた。
「友達なら、いるもん」
 うつむいたままの彼女が、そうぽつりと言う。
「あーちゃんと、うーくんがいるもん」
 僕はただ、「そうだね」と言って、そっと彼女の頭を撫でた。
    小学生の頃からどこか危うかったひーちゃんは、あーちゃんの自殺によって完全に壊れてしまった。
 彼女にとってあーちゃんがどれだけ大切な存在だったかは、説明するのが難しい。あーちゃんは彼女にとって絶対唯一の存在だった。失ってはならない存在だった。彼女にとっては、あーちゃん以外のものは全てどうでもいいと思えるくらい、それくらい、あーちゃんは特別だった。
 ひーちゃんが溺愛していた最愛の弟、ろーくんを失ったあの日。
 あの日から、ひーちゃんの心にぽっかりと空いた穴を、あーちゃんの存在が埋めてきたからだ。
 あーちゃんはひーちゃんの支えだった。
 あーちゃんはひーちゃんの全部だった。
 あーちゃんはひーちゃんの世界だった。
 そして、彼女はあーちゃんを失った。
 彼女は入学することになっていた中学校にいつまで経っても来なかった。来るはずがなかった。来れるはずがなかった。そこはあーちゃんが通っていたのと同じ学校であり、あーちゃんが死んだ場所でもある。
 ひーちゃんは、まるで死んだみたいだった。
 一日中部屋に閉じこもって、食事を摂ることも眠ることも彼女は拒否した。
 誰とも口を利かなかった。実の親でさえも彼女は無視した。教室で誰とも言葉を交わさなかった時のように。まるで彼女の前からありとあらゆるものが消滅してしまったかのように。泣くことも笑うこともしなかった。ただ虚空を見つめているだけだった。
 そんな生活が一週間もしないうちに彼女は強制的に入院させられた。
 僕が中学に入学して、桜が全部散ってしまった頃、僕は彼女の病室を初めて訪れた。
「ひーちゃん」
 彼女は身体に管を付けられ、生かされていた。
 屍のように寝台に横たわる、変わり果てた彼女の姿。
(市野谷さんは死体みたいね)
 そんなことを言った、担任の言葉が脳裏をよぎった。
「ひーちゃんっ」
 僕はひーちゃんの手を取って、そう呼びかけた。彼女は何も言わなかった。
「そっち」へ行ってほしくなかった。置いていかれたくなかった。僕だって、あーちゃんの突然の死を受け止めきれていなかった。その上、ひーちゃんまで失うことになったら。そう考えるだけで嫌だった。
 僕はここにいたかった。
「ひーちゃん、返事してよ。いなくならないでよ。いなくなるのは、あーちゃんだけで十分なんだよっ!」
 僕が大声でそう言うと、初めてひーちゃんの瞳が、生き返った。
「……え?」
 僕を見つめる彼女の瞳は、さっきまでのがらんどうではなかった。あの時のひーちゃんの瞳を、僕は一生忘れることができないだろう。
「あーちゃん、いなくなったの?」
 ひーちゃんの声は僕の耳にこびりついた。
 何言ってるんだよ、あーちゃんは死んだだろ。そう言おうとした。言おうとしたけれど、何かが僕を引き留めた。何かが僕の口を塞いだ。頭がおかしくなりそうだった。狂っている。僕はそう思った。壊れている。破綻している。もう何もかもが終わってしまっている。
 それを言ってしまったら、ひーちゃんは死んでしまう。僕がひーちゃんを殺してしまう。ひーちゃんもあーちゃんみたいに、空を飛んでしまうのだ。
 僕はそう直感していた。だから声が出なかった。
「それで、あーちゃん、いつかえってくるの?」
 そして、僕は嘘をついた。ついてはいけない嘘だった。
 あーちゃんは生きている。今は遠くにいるけれど、そのうち必ず帰ってくる、と。
 その一週間後、ひーちゃんは無事に病院を退院した。人が変わったように元気になっていた。
 僕の嘘を信じて、ひーちゃんは生きる道を選んだ。
 それが、ひーちゃんの身体をいじくり回して管を繋いで病室で寝かせておくことよりもずっと残酷なことだということを僕は後で知った。彼女のこの上ない不幸と苦しみの中に永遠に留めておくことになってしまった。彼女にとってはもうとっくに終わってしまったこの世界で、彼女は二度と始まることのない始まりをずっと待っている。
 もう二度と帰ってこない人を、ひーちゃんは待ち続けなければいけなくなった。
 全ては僕のついた幼稚な嘘のせいで。
「学校は行かないよ」
「どうして?」
「だって、あーちゃん、いないんでしょ?」
 学校にはいつから来るの? と問いかけた僕にひーちゃんは笑顔でそう答えた。まるで、さも当たり前かのように言った。
「『僕』は、あーちゃんが帰って来るのを待つよ」
「あれ、ひーちゃん、自分のこと『僕』って呼んでたっけ?」
「ふふふ」
 ひーちゃんは笑った。幸せそうに笑った。恥ずかしそうに笑った。まるで恋をしているみたいだった。本当に何も知らないみたいに。本当に、僕の嘘を信じているみたいに。
「あーちゃんの真似、してるの。こうしてると自分のことを言う度、あーちゃんのことを思い出せるから」
 僕は笑わなかった。
 僕は、笑えなかった。
 笑おうとしたら、顔が歪んだ。
 醜い嘘に、歪んだ。
 それからひーちゃんは、部屋に閉じこもって、あーちゃんの帰りをずっと待っているのだ。
 今日も明日も明後日も、もう二度と帰ってこない人を。
※(2/4) へ続く→ https://kurihara-yumeko.tumblr.com/post/647000556094849024/
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fusa-b · 2 years
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昨日のあらすじ。 なっちゃんのスリスリで味わい深くなってた角を綺麗にしようとしたけど、かつてリーダーが爪を研いだ傷跡がなかなか深く、イマイチ綺麗になりきらんかったのであった…… で、どーーーーしても綺麗にしたくて、先日の「猫のご飯倉庫の扉」を塗り塗りしたペンキを塗ってやりました! 見てこれほら! かなり綺麗!!✨✨✨ もともとの壁紙との境界も全くわからない!! 待って、私天才ちゃうん……😎 夫に「綺麗に塗れてるけど今やらなくても……」と言われたよ👍✨ 仕事が滞ってるクライアントさんごめんなさい……夏バテでスランプです……息抜きでペンキ塗り出す私…… 使った塗料 ニッペホーム PROTECTON インテリアウォール VK-200 DIY用 1.6L スノウホワイト プロテクトン #diy #diy女子 #セルフペイント #ニッペ #ニッペホームプロダクツ #壁リフォーム #内壁塗ってみた (Kanazawa, Ishikawa) https://www.instagram.com/p/ChnqoWkBe37/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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hinakipena · 4 years
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実家に帰ってきてから部屋の掃除を頑張ってます。
物置部屋とかしていたので、綺麗でお洒落な風通しも良く、光が入ってきてくれるような温かで
植物も元気に咲いてしまうような部屋にしたいんです。
壁の色は、ベージュの壁紙の上から
ホワイト にする予定。初めて塗るので楽しみ^^
ついでに庭のペンキ塗りと、家具の改造もやっちゃおう。
玄関に棚を作りたいと母が言ってるので、
手伝おうと思います。
最近喧嘩をして、
いい学がありました。
喧嘩は傷つく言葉も言われるけど
根本として何かに気づかせてもらえる。。。
自分を責めるでもなく、相手や他人を責めるでもなく、
行動に責任を持つことは、自分を信じること愛することに繋がる。
怒ってしまうのは、悲しいから。
悲しい時は
悲しいんだ。。と自分で見つめてゆっくり休めばいい。。
そう思います。
この経験を経て今私は相手に光の言葉を求めるのではなく
自分で望むビジョンを
作っていくことだって心から気づくことができました
母には一緒にやってほしい。そう思っていたけど
強く伝える必要は本当はなくて。
ただ、一人で家を変えていくことは大変だし
同じ方向を向いてほしいと相手に求めてた。
でも行動しはじめたらね、協力してくれないことなんてないんだ。*
宇宙って愛な行動に応援してくれるの。
私はお家を快適にして基盤を持ち、
今の私を最高波動の空間で過ごしています。
ライトワークが具体的に私はわからないけど
いいなと思うことをひとつずつ、、、
そして、豊かさをわかちあった世界。
エネルギーが大きく回る世界に住みたいです😊
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tsukuruhibi · 1 year
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今週の作業
・ピアスをつくる! ・今回の倉敷で、はじめてレンタル長机を使う。 配置と布の購入を考えなくては。
・先週の積み残し。イヤーカフをつくる実演の準備。
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20日~23日 とりあえず、ピアスの仕込み。 カットして、樹脂を染み込ませて、余分な樹脂をカットして、削って、組み立てる。
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24日 特定健診。 血がドロッとしているらしい。 水分をもっと摂取しなさいと言われた。 結構、飲んでるつもりなんだけどなー。
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倉敷の展示を考える。 レンタル長机を使った展示は、覚えていないくらい久しぶり。 手持ちの布とにらめっこ。スイッチが入る。
検索の旅では、激安のダブルガーゼを注文。 風よけは? 壁は? 黒ボール紙買うか? ペンキを塗るか。どっちだ?
眠れなくなって、2時まで起きていた。
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25日 あ、今日はピアス軸を買わなくちゃ。 厚紙も買った。
今日こそは樹脂作業。 落下祭りだ。克服したと思っていたのにー。 つきっきりだよ。
組み立て。 夜。 あー、そうだ、このカタチ! っていうのが出てきたかも?
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26日 引き続き、組み立て。 疲れたー!
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sallypraha · 5 years
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今さらながらですが、マレックのたっての希望により、屋根裏部屋大改装の模様をお披露目いたします!
我が家には屋根裏部屋がありまして、ずっと足の踏み場もないくらいのがらくた物置になっていました。前住んでいたアパートの賃貸が決まり、入居者の要請でアパートにあるもの全て撤去しないといけなくなり、7月後半からはマレックの大奮闘の日々が始まりました~。
まずは物置にあったがらくたの処分。
そして壁紙をはがしたら、その下には古いグリーンのペンキがぬってあって、これはがさないとあたらしくカラー塗れないので、ペンキ剥がし!
これが一番大変な作業だったそうです。工具レンタル屋さんで電動削り器というのでしょうか、借りて来てペンキを削っていました。この時部屋中が埃で
真っ白になったそうです!部屋から出て来たマレックはおじいさんのようになっていました!(この写真載せたかったんだけど、本人がだめと言うので残念ですわ。。。)
最後の写真は完成図!やったー!祈りの部屋完成!。。もつかの間で。。
今はまたアパートからもってきたものでごったがえしています。
チェコ人はなんでも自分で家の改装、修理もやるんです。
マレックほんとによくがんばりました!
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昨日の礼拝に、約束通り、かほちゃんのお友達のパトリックがお母さまと妹のハンナちゃんと家族3人で来てくれましたぁ~!3人!3人!
お祈りありがとうございましたぁ~!パトリックとっても好青年!
かほちゃんいわく、まだイエス様信じていないとのことでしたが、昨日お祈りの最後に、パトリックが「アーメン!」って言ってたって、マレックが言ってました!聖書も持ってきてくれていてびっくり!
彼らはプラハから電車で1時間半もかかる郊外の町から礼拝に参加してくれました~。もう涙ちょちょぎれ!
今朝一番でメールが来てて、また次回来れたら来たいって書いてありました!
うそでも嬉しいー!かほちゃん!パトリックを導いてくれてありがとー!
そして!神様~!ほんとうにありがと~!!
昨日はとっても祝福された日曜日でした\(^o^)/!
唯一心残りと言えば。。。帰りがけにパトリックに栗饅頭の入った袋、その場の勢いってやつですか?全部ぱっと、おみやげ!って、渡してしまって。。。3つだけ渡せばよかったと。。。何を隠そう、わたし食べたかったので(T.T)
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soraniyan · 5 years
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Ta-da〜~♪
I put a wallpaper with my daughter.
white ⇒flowers
we did it! It made my house briten so l am so satisfied with the finish.
❁❀✿✾✩°。⋆⸜(*˙꒳˙* )⸝(ˊo̴̶̷̤ ᴗ o̴̶̷̤ˋ)v
なんと、娘と2人で
壁紙貼りに挑戦してみました!
壁のペンキ塗りはやったことがあるけど
さすがに壁紙は失敗しそうで
手を出せずにいたのですが
楽天の『かべがみ道場』という
https://www.rakuten.ne.jp/gold/kabegami-luck/
ショップさんでワクワクの壁紙が
超お手頃なお値段で販売されているのを
見つけてしまったんですよ。
これはやるしかない!と、一大決心。
ついでに簡単な壁紙貼りの
道具セットも購入。
壁紙貼りの手順が書かれた説明書も
入れて頂いていたので
それをよ~~く読んでやってみました!
実際にやるまでは
本当に出来るかどうか不安でしたが
のり付きの壁紙だったという事もあって
落ち着いて手順通り作業を進めるだけで
な、な、なんと!オサレな壁紙が
私たちのようなサルの親子でも
しっかりバッチリ貼れました✨😂🐒
感動です! \(*´∀`*)/バンザ~イ!!
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yuko-a7 · 2 years
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コンセント隠し
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2022.3.21
リビングのここの一角。ちょうど直射日光も当たらず、絵を飾るにはいい場所なのですが、何故か真ん中にコンセントが。
その上にインターホンもありますが、流石にこれはどうにもならないので、以前、必要な箇所を出す形でカバーを作り、パカッとはめています。これで壁と色がだいぶ馴染みました。
で、問題はコンセント。意外と使用頻度は高いため、完全に隠すわけにはいきません。
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いかがでしょうか?(笑)
簡単に出来ると思いきや、板にペンキを塗っただけでは質感がいまいちで、左右に壁紙を貼り、その上から壁に合わせた色を塗りました。
真ん中の蓋は木だと反りが出てうまくいかず、プラスチックにして、これまた壁紙を貼り、取手と蓋の左右は板を重ねてモールディング風に。下の台が石で洋風なので、多少デコラティブでもいいかなと。
最初、板で蓋を作った時には丁番で開くようにしたのですが、上から丁番が見えるのが嫌で。蓋をプラスチックにしたら、テープで止められたので上部もスッキリするし、軽いしよかったです。
コンセントよりも目立つのでは…という気も若干しますが、想像より苦戦したので、途中でやめられず(笑)
しばらくこれでいくことにしました!
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