「わたしの線は、いつもすこし震えています。 まるで心臓の鼓動のようでしょう。 震える線はわたしの個性なのです。」
2月に旅をしていて気づいたことがある。ー(いち)の感覚、あらゆるものは複雑さを内包しながらも、一筆の円のように自然であること。それはまだおぼろげにしか言葉にできないけど、自分がこれからものを作る上で何よりも大切にされていくものなのではないかと思う。
今日、テレビを見ていたらディックブルーナの特集が流れていた。やさしくて穏やかなチャームを持った彼の姿に心引かれたのだけれど、彼が自分と同年代の頃に訪れたロザリオ礼拝堂でマティスの線画やステンドグラスから感じとったという「研ぎ澄まされたシンプルさ」とは一体なんなのだろう。
24歳になった。歳を重ねていくことに少し不安もあるけれど、見出したものを大切に運んでゆけるように、やってくる運命をキャッチできるように、身近なものをよろこび、限られたものを愛で、続けていく日々を送りたい。
2022.6.16
2 notes
·
View notes
ゴールデンウィークも後半に入り、ベランダのバラたちは次から次に開花しています。どれも香りのある種類なのですが、午前中の日が高くなる前が、特に芳香が強いような気がします。香りのシャワーを浴びながらの癒しの時間が、私にとってのグラウンディング・タイム。
グラウンディングとはグラウンド、つまり大地を直に感じながら自分を含めた自然の本質と繋がることです。アーシングという言い方もありますが、どちらも『地に足がついた』感覚で地球のエネルギーと共に在ること。『今、この瞬間』に完全に存在して『心非ず』という自動操縦状態にならないこと。未来を心配したり、過去をジャッジしないこと。自分の注意を思考やマインドから身体の方へと向けること。素晴らしいビジョンや夢、アイデアを持っていたとしても、グラウンディングしていなければ顕現化させることが難しいかもしれません。グラウンディングをすることによって肉体的・精神的ストレスや痛みから解放されたり、睡眠障害が改善されることもあるそうです。
グラウンディングのやり方としては、裸足で土の上を歩いたり、芝生の上に寝転んでみたり、土いじりをしたり、海岸線を歩いたり、お風呂に入って水のエネルギーを感じたり、適度な運動とバランスの取れた適切な量の食事でベストな体型を保ったりすることなどが挙げられます。また、リラックスできる場所で瞑想するのもグラウンディングに最適ですし、自然からインスピレーションを受けた絵画や音楽、詩などに触れるのもいいと思います。
先日、国立新美術館で開催中の『マティス 自由なフォルム』展に行ってまいりました。(去年は見逃しているので…)アンリ・マティスは『色彩の魔術師』とも呼ばれたフォービズムを代表するフランスの画家で、目に映る色彩ではなく心が感じる色彩を表現したことで有名です。空間を広く開けたのびのびとしたレイアウトと、豊かな色彩を強調するために壁が一面白く塗られた会場は、マティスという園芸家が演出した色鮮やかな植物たちが咲き並ぶ、憩いの庭のようでした。
今回の展示では特に、晩年のマティス��愛した『切り紙絵』に焦点が当てられていました。ハサミでリズミカルに色紙を切っていく手法は自由度が高く即興的で、どこかミディアムシップにも似ています。『切り紙絵』という、色と線を同時に表現する幾何学的かつ抽象的な作品は画家の美意識を凝縮した形で表れていて、「極限まで純化された」スピリットからのメッセージと似通っているように思えます。
会場の最後には、マティスが晩年に4年の歳月をかけて無償で完成させ、自身が生涯の最高傑作と評した南仏ヴァンスのロザリオ礼拝堂の内部が実物大で再現されていました。マティスはこの礼拝堂の設計にあたり、空、植物、光という3つのテーマを選び、 それぞれを示す色として青、緑、黄色を使っています。『生命の樹』と名付けられた双子窓のステンドグラスから溢れる鮮やかな3色が、シンプルな線画で描かれた聖ドミニコ像の上に少しずつ形を変え、混ざりながら映し出されてゆきます。静寂に包まれた光と色の移ろいは、神秘的で瞑想的でした。祈りの場に必要なのは荘厳さや重厚さではなく、光だということを思い出させてくれる空間です。実際の礼拝堂の見頃は、低い陽光を受けて空間全体が色と光で満たされる午前中だそうです。バラが花びらを開いて芳香を広げる時間帯と同じなんですね。
夏学期クラスがもうすぐ開講します。サイトとショップにてお申し込みを受付中です。(アイイスのサイトでも告知されています)
春学期に蒔いた霊性開花という名の種を、眩しい太陽と清らかな水、豊かな土壌、そして爽やかな夏の風のエネルギーを享受しながら、共に大切に育んでゆきませんか?皆さまのご参加をお待ちしています!
アウェアネス・ベーシック前期 Zoomクラス
月曜日:10:00~12:00 開催中止
日程:5/13、5/27、6/10、6/24、7/8
火曜日:10:00~12:00
日程:5/7、5/21、6/4、6/18、7/2
・・・・・
アウェアネス・ベーシック後期 Zoomクラス
土曜日:19:00~21:00
日程:5/11、5/25、6/8、6/22、7/6
・・・・・
アウェアネス・ベーシック通信クラス
開催日程:全6回
・・・・・
アウェアネス・オールレベルZoomクラス
火曜日:19:00~21:00
日程:5/14、5/28、6/11、6/25、7/9
木曜日:10:00〜12:00
日程:5/9、5/23、6/6、6/20、7/4
・・・・・
アウェアネス・マスターZoom クラス
火曜日:19:00〜21:00
日程:5/7、5/21、6/4、6/18、7/2
金曜日:19:00〜21:00
日程:5/17、5/31、6/14、6/28、7/12
・・・・・
サイキックアートZoomクラス
日曜日:17:00~19:00
日程:5/12、5/26、6/9、6/23、7/7
水曜日:16:00~18:00
日程:5/15、5/29、6/12、6/26、7/10
・・・・・
インナージャーニー 〜瞑想と内観〜 Zoomクラス
月曜日:16:00~17:00
日程:5/20、6/3、6/17、7/1、7/15
土曜日:10:00~11:00
日程:5/11、5/25、6/8、6/22、7/6
・・・・・
マントラ入門 Zoomクラス
土曜日:13:00~15:00
日程:5/18、6/1、6/15、6/29、7/13
・・・・・
トランスZoomクラス
土曜日:19:00~21:00
日程:5/18、6/1、6/15、6/29、7/13
・・・・・
サンスクリット・般若心経 Zoomクラス
月曜日:13:00~15:00
日程:5/20、6/3、6/17、7/1、7/15
水曜日:19:00~21:00 NEW!
日程:5/15、5/29、6/12、6/26、7/10
サイトのクラス紹介ページはこちらです。
継続受講の方は直接ショップからお申し込みください。
1 note
·
View note
マティス展
2024.4.20
国立新美術館のマティス展を観てきました。意外と初期の作品はこれといった特徴がなく、ある時期から急にマティスっぽくなり、『何があったんだろう?』と不思議な感じがしました。
女性の顔も初期の作品は、『マティス自身、描いていて楽しかったのかしら?』と思うような…奥さまをはじめ描かれた本人も喜ばなかったのでは?という感じで。つまり「もう少し可愛く描いてよ!」と言いたくなる絵(笑)
でも線がシンプルになるとその印象がなくなり…ちょっと不思議でした。
そしてマティスは20世紀最大の巨匠と言われているのですが、この絵はたとえ下描きとしてもいけているのか?と思うものもあり、切り紙絵も適当そうにしか見えない形の物もあって、どんな流れで巨匠にのぼりつめたのかだんだん不思議に思えてきて…。
「ブルー・ヌードⅣ」なんてホントかっこいいし、これは全く適当そうだなんて言えない作品ですが、もし私がマティスに自邸の壁画とかを頼んだとして(←妄想)出来上がった作品に即感動するか、『えーっと……』となるかは紙一重で、かなり賭けのような気がしました。
会場の最後にヴァンスのロザリオ礼拝堂を再現したお部屋があったのですが、聖ドミニクス…あらためて見ても、普通こうは描けないですよ。(下の写真の右のタイル画です)
そしてもっと普通じゃないと思ったのは、教会の後方にある「十字架の道行」。(これもタイル画です。気になった方は展覧会で観るか、ネットでご確認ください)
線やフォルムがシンプルになったと聞くと、『単純化』なんて言葉が連想されますが、マティスの場合、シンプルになればなるほど分からなくなるような、不思議さが増すような気がしました。
昔から好きで結構観ていたと思っていたマティス。でもその創作の歩みや不思議さを全然分かっていなかったことを知った展覧会でした。
0 notes
マティス 自由なフォルム@国立新美術館へ。
昨年6月のマティス展@東京都美術館はパリのポンピドゥーセンター所蔵品が中心だったが、今回はニースのマティス美術館から切り絵を中心に150点を展示。
前回は時系列での展示で作風の変遷がよく分かったが、今回はテーマ毎になっていてこれはこれで分かりやすかった。気軽に見れるというか、マティスの作風を要素別に分解していくような感覚。
切り紙絵の代表的作例である<ブルー・ヌードⅣ>、そして大作<花と果実>が展示のハイライト。後者はとにかく大きな作品で、楽しくなるような切り絵的な作風とのアンマッチが面白かった。
展示の最後はヴァンスのロザリオ礼拝堂を再現したスペースもあって、なかなか現地に行くのは大変そうなので、雰囲気だけでもこうやって体験できるのは楽しかった。
0 notes
#新国立美術館 で開催中の #マティス展 を観てきました。
#マティス 大好き。たぶん一番好きな画家の一人。
昨年の #東京都美術館 での展覧会に続き2年連続で見られるなんて。
切り絵、デッサン、彫刻、油絵、そして #ヴァンス の #ロザリオ礼拝堂 。
こんなに見ることができる幸せ。ありがたいと思いました。
帰宅後、大急ぎで描いたけど、まだ描き足りない感じ。
ロザリオ礼拝堂、描きたいなぁ。
2枚目は、昨年の展示のデッサンです。
どうしてあんなおしゃれな線や空間を作れるんだろう?
新国立美術館での展示は5月27日まで。
あと2回くらい行きたい。
#art #coloredpencil #fabercastell #polychromos #色鉛筆 #ファーバーカステル #ポリクロモス #1日1絵 #イラストグラム #今日何描こう #今日何描いた #絵を描く暮らし #travelersnotebook #トラベラーズノート #ペンスケッチ #pensketch #絵日記 #スケッチジャーナル #sketchjournal #matisse #japan #museum
1 note
·
View note
マティスの最高傑作と
名高い「ロザリオ礼拝堂」の
上祭服のデザインポスター
0 notes
マティス展 The Path to Color
初期の作品から後期の切り紙絵の作品まで、たくさん見れてほくほく。大学の授業で見てマティスを好きになるきっかけとなった、鮮やかな赤の作品も真近で見ることができて嬉しかった。
ロザリオ礼拝堂の映像は見ているだけで心がきれいになるような感覚。いつか現地に行ってみたい。
思い返せば大学の一般教養は絵に舞踏に音楽に和歌に、そんなのばかり好んでとっていて、もう少し実用的なことも勉強すれば良かったと思うこともあるけど、その頃に出会って響いたものはいまだに私の中にちゃんと残っている。
0 notes
Henri Matisse.....🎨
マティス・コレクションを所蔵するパリのポンピドゥー・センターから20年ぶりに日本にやって来た......
初期の作品から晩年に至る150点余りの作品がお目見え......🖼
開催中の【マティス 回顧展】を取り上げていた....
元キュレーターの原田マハさんの其々の作品の解説も☆☆☆
色彩の魔術師 ….
絵画に加えて彫刻 素描 版画 切り紙絵 南仏ヴァンスのロザリオ礼拝堂🛕…..
やっぱりMathis 好きだなぁ〜♡ ♡ ♡
久しぶりに折々観た図録をもう1度観たくなった.... Mathisの赤……
🎧......nat "king" cole 〜 Fascination 〜🎶
0 notes
マティス展
東京都美術館で「マティス展 Henri Matisse: The Path to Color」を見る。「20年ぶり 待望の大回顧展」という触れ込みの特別展である。マティスに関してとりたてて知識も思い入れもないのだが、フランスのコロニアリズムの影響下で活躍した画家だと認識していた。しかし、この展示ではコロニアリズム的な要素がすっかり漂白されているように見え、食い足りなさを感じた。いまさらマティスのキレイなところだけ見せてどうする?
さて、まずは初期の作品から。以下は《ホットチョコレートポットのある静物》。素人目にはマティスだと言われないとそれと認識できない画風に見えるが、静物画が好きなのでこれは気に入った(コロニアリズム臭くもないし)。1900〜1902年ごろの作とのこと。なお、以下、撮影不可の作品の一部はポストカードの写真で代用している。
《豪奢 I》。1907年の作。大きいキャンバスで、画風もぐっとマティスらしさを感じるものになっている(という言いかたは変だけれど)。
《金魚鉢のある室内》1914年。構成が巧い。
《コリウールのフランス窓》1914年。今回の展示で見た、窓が描かれたマティス作品の中で、これがいちばんおもしろかった。窓の向こうに見えるはずのものが黒く塗りつぶされているため、抽象画のような趣があるのがおもしろい。具象と抽象のあわいを感じる。
《蔦のある静物》1916年。果物などはセザンヌの静物画を想起させる。
1910年代半ば以降から1920年代にかけての小さいサイズの作品。ドローイングもある。
《ニースの室内、シエスタ》1922年ごろ。
《赤いキュロットのオダリスク》1921年。
1920年代後半の静物画。やはりセザンヌの影響を感じる。
1930年代に入る。《夢》およびその習作。
マティスらしいポージングの裸婦像。
ニースからヴァンスへ移ってからの作品。同じ場所を異なる色遣いで描いた静物画2点、いずれも1941年の作。
《赤の大きな室内》1948年。
《黄色と青の室内》1946年。
1940年代前半のドローイング。
このあと最晩年の切り絵作品へと続く。アップできる画像がないのと、マティスといえばコレ、と言えるほど有名なので、ここでは省略する。展示を締めくくるのは、マティスがデザインを手がけたヴァンス・ロザリオ礼拝堂の紹介。ファサードの円形装飾用の聖母子像のデッサン、告解室の扉のデザイン画や実物の写真、礼拝堂の紹介映像など。
余談ながら、特設ショップではレモンケーキを買い込んだ。
0 notes
太陽がいっぱい
秋たけなわのウィーンから飛行機でアルプスを越えてわずか1時間45分
到着したのはたくさんの人々がビーチでまだまだ夏を楽しんでいるコート•ダ•ジュールあるいはリビエラ海岸のニース
ここはまさに太陽がいっぱいです
日本で言えば距離的•地理的にはちょうど秋田から日本アルプスを超えて高知へやって来たくらいの感じなのにこの落差
ヨーロッパってなんというか便利ですね(笑)
豪華なホテルが立ち並ぶセレブな海岸をイメージしていましたが、狭い路地が入り組んだ趣のある旧市街が隣り合わせにあって思ったよりいい感じです
まぁ観光地化されてるのは当然ですが
さて、当地の目的はニース郊外のマチスのロザリオ礼拝堂
すっきりとシンプルなチャペルにこれまたシンプルだけれど不思議な幸福感がこぼれ落ちてくるステンドグラス
残念ながらチャペル内は撮影禁止だったので写真はマチス美術館の映像資料を写したものです
あ、それはそうとニースの美術館共通入場券!
マチス美術館に入る時に買ったのにシャガール美術館で「ここは共通券は使えません」ってどうなの?ニースの2大美術館でしょ!?詐欺かと思ったよ(笑)
ま、確かに安すぎるなとは思ったけど
ちなみに美術館にはマチス、シャガールとたいそうな名前が付いてますがこれだけを観に来るほどではないように思います
まぁ日本にもありますよね、観光地の美術館
いや、ちょっと厳しすぎるかな、ウィーンの美術館が軒並み凄すぎたのでその残像とついつい比較してしまいます
0 notes
【SPN】庭師と騎士
警告:R18※性描写、差別的描写
ペアリング:サム/ディーン、オリキャラ/ディーン
登場人物:ディーン・ウィンチェスター、サム・ウィンチェスター、ボビー・シンガー・ルーファス・ターナー、ケビン・トラン、チャーリー・ブラッドベリー、クラウス神父(モデル:クラウリー)
文字数:約16000字
設定: 修道院の囚われ庭師ディーン(20)と宿を頼みに来た騎士サム(24)。年齢逆転、中世AU。
言い訳: 映画「天使たちのビッチナイト」に影響を受けました。ボソボソと書いてましたがちょっと行き詰まり、詰まってまで書くほどのものじゃないので一旦停止します。
◇
自分のことなら肋骨の二本や三本が折れていたとしても気づかないふりをしていられるが、部下たちを休ませる必要があった。
王国騎士の象徴である深紅のマントは彼ら自身の血に染められ、疲労と傷の痛みとで意識がもうろうとしている者も数名いた。何よりも空腹だった。狩りをしようにも、矢がなく、矢を作るためにキャンプを張る体力もない。
一度腰を下ろせばそこが墓地になるかもしれなかった。
辺境の村を救うために命じられた出征だった。王はどこまで知っていたのか……。おそらくは何も知らなかったのに違いない。そうだと信じたかった。辺境の村はすでに隣国に占領されていた。彼らは罠にかけられたのだった。
待ち構えていた敵兵に大勢の仲間の命と馬を奪われ、サムは惨めな敗走を余儀なくされた。
森の中を、王城とは微妙にずれた方向へ進んでいるのに、サムに率いられた騎士たちは何もいわなかった。彼らもまた、サムと同じ疑いを胸に抱いていたのだ。全ては王に仕組まれたのではないかと。
誰一人口には出さなかったが、森の中をさ迷うサムに行き先を尋ねる者もいなかった。
なけなしの食糧を持たせて斥候に出していたケビンが、隊のもとに戻ってきた。彼は森の中に修道院を発見した。サムはその修道院に避難するべきか迷った。森は王国の領内だ。もしも王が裏切っていた場合、修道院にまで手を回されていたら彼らは殺される。
だが、このままでは夜を越せない者もいるかもしれなかった。サムは未だ六人の騎士を率いていて、王国よりサムに忠実な彼らを何としても生かさなければならない。
サムはケビンに案内を命じた。
◇
ディーンは自分の名前を気に入っていたが、今ではその名前を呼ぶ者はほとんどいなかった。
修道院では誰もがディーンのことを「あれ」とか「そこの」とか表現する。もしくは彼自身の職業である「庭師」とか。彼自身に、直接呼びかける者はいない。なぜなら彼は耳が聞こえないし、口も利けないから。
ディーンは今年で二十歳になる……らしい。彼は子供のころに両親を盗賊に殺されて、もともと身を寄せる予定だったこの修道院に引き取られた。ただし支払うべき寄付金も盗賊に奪われたので、修道士としてではなく庭師として働いて暮らしている。
夜中、ディーンはフラフラになりながら修道院を出て、納屋に帰り着いた。家畜小屋の横の納屋が彼の住処だ。神父が彼に酒を飲ませたので、藁の下に敷いた板のわずかな段差にも躓いてしまった。
そのまま藁の中にうずくまって、眠ってしまおうと思った時だ。納屋の戸の下の隙間から、赤い炎の色と複数の人影がちらついて見えた。
ディーンは、静かに身を起こした。少し胸やけはするが、幻覚を見るほど酔ってはいない。ディーンがいる納屋は、修道院の庭の中にある。修道士たちをオオカミやクマから守る塀の、内側だ。修道士たちは夜中にうろついたりしないから、この人影は外部からの――塀の外、森からの――侵入者たちのものだ。
門番の爺さんは何をしていたのか。もちろん、寝ているんだろう、夜更かしするには年を取りすぎている。今までも修道院が盗賊被害には遭ったことはあるが、こんな夜中じゃなかった。オオカミにとってはボロを着ていようが聖職者のローブを着ていようが肉は肉。強襲も山菜取りも日差しの入る間にやるのが最善だ。
では何者か。ディーンはそっと戸を開けて姿を見ようとした。ところが戸に手をかける間もなく、外から勢いよく開けられて転がり出てしまう。うつ伏せに倒れた鼻先に松明の火を受けてきらめく刃のきっさきを見て、そういえば、神父に持たされたロウソクが小屋の中で灯しっぱなしだったなと気づく。
「こそこそと覗き見をしていたな」 ざらついて低い声がディーンを脅した。ディーンはその一声だけで、彼がとても疲れて、痛みを堪えているのがわかった。
「やめろ、ルーファス! 何をしている」
若い男の声がした。ディーンを脅している男は剣のきっさきを外に向けた。「こいつが、俺たちを見張っていた。きっと刺客だ。俺たちがここに来るのを知っていて、殺そうとしてたんだ」
刺客、という言葉に、側にいた男たちが反応した。いったい何人いるんだ。すっかりと敵意を向けられて、ディーンはひるんだ。
「馬鹿な、彼を見ろ。丸腰だ。それに刺客なら小屋の中でロウソクなんて灯して待っているわけがない」 若い声の男が手を握って、ディーンを立たせた。俯いていると首から上が視界にも入らない。とても背の高い男だった。
「すまない、怖がらせてしまった。我々は……森で迷ってしまって、怪我を負った者もいる。宿と手当てが必要で、どうかここを頼らせてもらいたいと思って訪ねた」
背の高さのわりに、威圧的なところのない声だった。ディーンが頷くのを見て、男は続けた。
「君は――君は、修道士か?」 ディーンは首をかしげる。「そうか、でも、ここの人間だ。そうだろ? 神父に会わせてもらえるかい?」 ディーンはまた、首をかしげる。
「なんだ、こいつ、ぼんやりして」 さっき脅してきた男――闇夜に溶け込むような黒い肌をした――が、胡乱そうに顔をゆがめて吐き捨てる。「おお、酒臭いぞ。おおかた雑用係が、くすねた赤ワインをこっそり飲んでいたんだろう」
「いや、もしかして――君、耳が聞こえないの?」 若い男が自分の耳辺りを指さしてそういったので、ディーンは頷いた。それから彼は自分の口を指さして、声が出ないことをアピールする。
男の肩が一段下がったように見えて、ディーンは胸が重くなった。相手が自分を役立たずと判断して失望したのがわかるとき、いつもそうなる。
彼らは盗賊には見えなかった。何に見えるかって、それは一目でわかった。彼らは深紅の騎士だ。王国の誇り高い戦士たち。
幼いころに憧れた存在に囲まれて、これまで以上に自分が矮小な存在に思えた。
「聞こえないし、しゃべれもしないんじゃ、役に立たない。行こう、ケビンに神父を探させればいい」 疲れた男の声。
抗議のため息が松明の明かりの外から聞こえた。「また僕一人? 構いませんけどね、僕だって交渉するには疲れ過ぎて��…」
「一番若いしまともに歩いてるじゃないか! 俺なんか見ろ、腕が折れて肩も外れてる、それに多分、日が上る前に止血しないと死ぬ!」
ディーンは初めて彼らの悲惨な状態に気が付いた。
松明を持っているのは一番背の高い、若い声の男で、彼はどうやら肋骨が折れているようだった。肩が下がっているのはそのせいかもしれなかった。ルーファスと呼ばれた、やや年配の黒い肌の男は、無事なところは剣を握った右腕だけというありさまだった。左半身が黒ずんでいて、それが全て彼自身の血であるのなら一晩もたないというのも納得だ。女性もいた。兜から零れた髪が松明の炎とそっくりの色に輝いて見えた。しかしその顔は血と泥で汚れていて、別の騎士が彼女の左足が地面に付かないように支えていた。その騎士自身も、兜の外された頭に傷を受けているのか、額から流れた血で耳が濡れている。
六人――いや、七人だろうか。みんな満身創痍だ。最強の騎士たちが、どうしてこんなに傷ついて、夜中に森の中をゆく羽目に。
ディーンは松明を持った男の腕を引っ張った。折れた肋骨に響いたのか、呻きながら彼は腕を振り払おうとする。
「待って、彼、案内してくれるんじゃない? 中に、神父様のところに」 女性の騎士がそういった。ディーンはそれを聞こえないが、何となく表情で理解した振りをして頷き、ますます騎士の腕を引っ張った。
騎士はそれきりディーンの誘導に素直についてきた。彼が歩き出すとみんなも黙って歩き出す。どうやらこの背の高い男が、この一団のリーダーであるらしかった。
修道院の正面扉の鍵はいつでも開いているが、神父の居室はたいていの場合――とりわけ夜はそうだ――鍵がかかっている。ディーンはいつも自分が来たことを示す独特のリズムでノックをした。
「……なんだ?」 すぐに扉の向こうで、眠りから起こされて不機嫌そうな声が聞こえてほっとする。もう一度ノックすると、今度は苛立たし気に寝台から降りる音がした。「なんだ、ディーン、忘れ物でもしたのか……」
戸を開いた神父は、ディーンと彼の後ろに立つ騎士たちの姿を見て、ぎょっとして仰け反った。いつも偉そうにしている神父のそんな顔を見られてディーンは少しおかしかった。
ディーンは背の高い男が事情を説明できるように脇にのいた。
「夜半にこのような不意の訪問をして申し訳ない。緊急の事態ですのでどうかお許し頂きたい。私は王国騎士のサミュエル・ウィンチェスター。彼は同じく騎士のルーファス。彼は重傷を負っていて一刻も早い治療が必要です。他にも手当と休息が必要な者たちがいる」
神父は、突然現れた傷だらけの騎士たちと、さっき別れたばかりの庭師を代わる代わる、忙しなく視線を動かして見て、それから普段着のような体面をするりと羽織った。深刻そうに頷き、それから騎士たちを安心させるようにほほ笑む。「騎士の皆様、もう安全です。すぐに治癒師を呼びます。食堂がいいでしょう、治療は厨房で行います。おい」 目線でディーンは呼びかけられ、あわてて神父のひざ元に跪いて彼の唇を読むふりをする。
「治癒師を、起こして、食堂に、連れてきなさい。わかったか?」
ディーンは三回頷いて、立ち上がると治癒師のいる棟へ駆け出す。
「ご親切に感謝する」 男のやわらかい礼が聞こえる。「……彼はディーンという名なのか? あとでもう一度会いたい、ずいぶんと怖がらせてしまったのに、我々の窮状を理解して中へ案内してくれた……」
ディーンはその声を立ち止まって聞いていたかったが、”聞こえない”のに盗み聞きなどできるはずがなかった。
◇
明け方にルーファスは熱を出し、治癒師は回復まで数日はかかるだろうといった。サムは騎士たちと目を合わせた。今はまだ、森の深いところにあるこの修道院には何の知らせも来ていないようだが、いずれは王国から兵士が遣わされ、この当たりで姿を消した騎士たち――”反逆者たち”と呼ばれるかもしれない――がいることを知らされるだろう。俗世から離れているとはいえ修道院には多くの貴族や裕福な商家の息子が、いずれはまた世俗へ戻ることを前提にここで生活している。彼らの耳に王宮での噂が届いていないことはまずあり得なく、彼らがどちらの派閥を支持しているかはサムにはわからない。もっとも王が追っている失踪騎士を庇おうなどという不届きな者が、たくさんいては困るのだった。
出征の命令が罠であったのなら、彼らは尾けられていたはずだった。サムの死体を探しに捜索がしかれるのは間違いない。この修道院もいずれ見つかるだろう。長く留まるのは良策ではない。
かといって昏睡状態のルーファスを担いで森に戻るわけにもいかず、止む無くサムたちはしばらくの滞在を請うことになった。
修道院長のクラウス神父は快く応じてくれたが、用意されたのは厨房の下の地下室で、そこはかとなく歓迎とは真逆の意図を読み取れる程度には不快だった。彼には腹に一物ありそうな感じがした。サムの予感はしばしば王の占い師をも勝るが、騎士たちを不安させるような予感は口には出せなかった。
厨房の火の前で休ませているルーファスと、彼に付き添っているボビーを除く、五人の騎士が地下に立ち尽くし、ひとまず寝られる場所を求めて目をさ迷わせている。探すまでもない狭い空間だった。横になれるのは三人、あとの二人は壁に寄せた空き箱の上で膝を枕に眠るしかないだろう。
「お腹がすいた」 疲れて表情もないチャーリーが言った。「立ったままでもいいから寝たい。でもその前に、生の人参でもいいから食べたいわ」
「僕も同感。もちろんできれば生じゃなくて、熱々のシチューに煮込まれた人参がいいけど」
ガースの言葉に、チャーリーとケビンが深い溜息をついた。
地下室の入口からボビーの声が下りてきた。「おい、今から食べ物がそっちに行くぞ」
まるでパンに足が生えているかのように言い���にサムが階段の上に入口を見上げると、ほっそりした足首が現れた。
足首の持ち主は片手に重ねた平皿の上にゴブレットとワイン瓶を乗せ、革の手袋をはめたもう片方の手には湯気のたつ小鍋を下げて階段を下りてきた。
家畜小屋の隣にいた青年、ディーンだった。神父が彼を使いによこしたのだろう。
「シチューだ!」 ガースが喜びの声を上げた。チャーリーとケビンも控え目な歓声を上げる。みんなの目がおいしそうな匂いを発する小鍋に向かっているのに対し、サムは青年の足首から目が離せないでいた。
彼はなぜ裸足なんだろう。何かの罰か? 神父は修道士や雑用係に体罰を与えるような指導をしているのか? サムは薄暗い地下室にあってほの白く光って見える足首から視線を引きはがし、もっと上に目をやった。まだ夜着のままの薄着、庭でルーファスが引き倒したせいで薄汚れている。細いが力のありそうなしっかりとした肩から腕。まっすぐに伸びた首の上には信じられないほど繊細な美貌が乗っていた。
サムは青年から皿を受け取ってやろうと手を伸ばした。ところがサムが皿に手をかけたとたん、びっくりした彼はバランスを崩して階段を一段踏みそこねた。
転びそうになった彼を、サムは慌てて抱き止めた。耳元に、彼の声にならない悲鳴のような、驚きの吐息を感じる。そうだ、彼は耳が聞こえないのだった。話すことが出来ないのはわかるが、声を出すこともできないとは。
「急に触っちゃだめよ、サム!」 床に落ちた皿を拾いながらチャーリーがいう。「彼は耳が聞こえないんでしょ、彼に見えないところから現れたらびっくりするじゃない」
「ディーンだっけ? いや、救世主だ、なんておいしそうなシチュー、スープか? これで僕らは生き延びられる」 ガースが恭しく小鍋を受け取り、空き箱の上に並べた皿にさっさと盛り付けていく。階段の一番下でサムに抱き止められたままのディーンは、自分の仕事を取られたように見えたのか焦って体をよじったが、サムはどうしてか離しがたくて、すぐには解放してやれなかった。
まったく、どうして裸足なんだ?
修道士たちが詩を読みながら朝食を終えるのを交代で横になりながら過ごして待ち、穴倉のような地下室から出て騎士たちは食堂で体を伸ばした。一晩中ルーファスの看病をしていたボビーにも休めと命じて、サムが代わりに厨房の隅に居座ることにした。
厨房番の修道士は彼らがまるでそこに居ないかのように振る舞う。サムも彼らの日課を邪魔する意思はないのでただ黙って石窯の火と、マントでくるんだ藁の上に寝かせた熟練の騎士の寝顔を見るだけだ。
ルーファスは気難しく人の好き嫌いが激しい男だが、サムが幼い頃から”ウィンチェスター家”に仕えていた忠臣だ。もし彼がこのまま目覚めなかったら……。自分が王宮でもっとうまく立ち回れていたら、こんなことにはならなかったかもしれない。
若き王の父と――つまり前王とサムの父親が従弟同士だったために、サムにも王位継承権があった。実際、前王が危篤の際には若すぎる王太子を不安視する者たちからサムを王にと推す声も上がった。不穏な声が派閥化する前にサムは自ら継承権を放棄し、領地の大半を王に返還して王宮に留まり一騎士としての振る舞いに徹した。
その無欲さと節制した態度が逆に信奉者を集めることとなり、サムが最も望まないもの――”ウィンチェスター派”の存在が宮殿内に囁かれるようになった。国王派――この場合は年若き王をいいように操ろうとする老練な大臣たちという意味だ――が敵意と警戒心を募らせるのも無理はないとサムが理解するくらいには、噂は公然と囁かれた。何とか火消しに回ったが、疑いを持つ者にとっては、それが有罪の証に見えただろう。
自分のせいで部下たちを失い、また失いつつあるのかと思うと、サムはたまらないむなしさに襲われた。
ペタペタと石の床を踏む足音が聞こえ顔を上げる。ディーンが水差しを持って厨房にやってきた。彼は石窯の横に置かれた桶の中に水を入れる。サムは声もかけずに暗がりから彼の横顔をぼうっと眺めた。声をかけたところで、彼には聞こえないが――
床で寝ているルーファスが呻きながら寝返りを打った。動きに気づいたディーンが彼のほうを見て、その奥にいるサムにも気づいた。
「やあ」 サムは聞こえないとわかりつつ声をかけた。まるきり無駄ではないだろう。神父の唇を読んで指示を受けていたようだから、言葉を知らないわけではないようだ。
彼が自分の唇を読めるように火の前に近づく。
「あー、僕は、サムだ。サム、王国の騎士。サムだ。君はディーン、ディーンだね? そう呼んでいいかい?」
ディーンは目を丸く見開いて頷いた。零れそうなほど大きな目だ。狼を前にしたうさぎみたいに警戒している。
「怖がらないでいい。昨夜はありがとう。乱暴なことをしてすまなかった。怪我はないか?」
強ばった顔で頷かれる。彼は自らの喉を指して話せないことをアピールした。サムは手を上げてわかっていることを示す。
「ごめん――君の仕事の邪魔をするつもりはないんだ。ただ、何か困ってることがあるなら――」 じっと見つめられたまま首を振られる。「――ない?」 今度は頷かれる。「――……そうか、わかった。邪魔をしてごめん」
ディーンは一度瞬きをしてサムを見つめた。彼は本当に美しい青年だった。薄汚れてはいるし、お世辞にも清潔な香りがするとは言い難かったが、王宮でもお目にかかったことのないほど端正な顔立ちをしている。こんな森の奥深くの修道院で雑用係をしているのが信じられないくらいだ。耳と口が不自由なことがその理由に間違いないだろうが、それにしても――。
水差しの水を全て桶に注いでしまうと、ディーンはしばし躊躇った後、サムを指さして、それから自分の胸をさすった。
彼が動くのを眺めるだけでぼうっとしてしまう自分をサムは自覚した。ディーンは何かを伝えたいのだ。もう一度同じ仕草をした。
「君の? 僕の、胸?」 ディーンは、今度は地下に繋がる階段のほうを指さして、その場で転ぶ真似をした。そしてまたサムの胸のあたりを指さす。
理解されてないとわかるとディーンの行動は早かった。彼はルーファスをまたいでサムの前にしゃがみ込み、彼の胸に直接触れた。
サムは戦闘中以外に初めて、自分の心臓の音を聞いた。
ディーンの瞳の色は鮮やかな新緑だった。夜にはわからなかったが、髪の色も暗い金髪だ。厨房に差し込む埃っぽい日差しを浴びてキラキラと輝いている。
呆然と瞳を見つめていると、やっとその目が自分を心配していることに気が付いた。
「……ああ、そっか。僕が骨折してること、君は気づいてるんだね」 ”骨折”という言葉に彼が頷いたので、サムは納得した。さっき階段から落ちかけた彼を抱き止めたから、痛みが悪化していないか心配してくれたのだろう。サムは、彼が理解されるのが困難と知りながら、わざわざその心配を伝えようとしてくれたことに、非常な喜びを感じた。
「大丈夫だよ、自分で包帯を巻いた。よくあることなんだ、小さいころは馬に乗るたびに落馬して骨を折ってた。僕は治りが早いんだ。治るたびに背が伸びる」
少し早口で言ってしまったから、ディーンが読み取ってくれたかはわからなかった。だが照れくさくて笑ったサムにつられるように、ディーンも笑顔になった。
まさに魂を吸い取られるような美しさだった。魔術にかかったように目が逸らせない。完璧な頬の稜線に触れたくなって、サムは思わず手を伸ばした。
厨房の入口で大きな音がした。ボビーが戸にかかっていたモップを倒した音のようだった。
「やれやれ、どこもかしこも、掃除道具と本ばかりだ。一生ここにいても退屈しないぞ」
「ボビー?」
「ああ、水が一杯ほしくてな。ルーファスの調子はどうだ?」
サムが立ち上がる前に、ディーンは驚くほどの素早さで裏戸から出て行ってしまった。
◇
キラキラしてる。
ディーンは昔からキラキラしたものに弱かった。
木漏れ日を浴びながら一時の昼寝は何物にも得難い喜びだ。太陽は全てを輝かせる。泥だまりの水だってきらめく。生まれたばかりの子ヤギの瞳、朝露に濡れた花と重たげな羽を開く蝶。礼拝堂でかしずいた修道士の手から下がるロザリオ。水差しから桶に水を注ぐときの小気味よい飛沫。
彼はそういったものを愛していた。キラキラしたものを。つまりは美しいもの。彼が持ち得なかったもの。
サムという騎士はディーンが今までに見た何よりも輝いていた。
あまりにもまぶしくて直視しているのが辛くなったほどだ。彼の瞳の色に見入っていたせいで、厨房で大きな音に反応してしまった。幸いサムは音を立てた騎士のほうに目がいってディーンの反応には気づかなかったようだ。
もう一度彼の目を見て彼に触れてみたかったが、近づくのが恐ろしくもあった。
ディーン何某という男の子がこの世に生を受けたとき、彼は両親にとても祝福された子供だった。彼は美しい子だと言われて育った。親というのは自分の子が世界で一番美しく愛らしいと信じるものだから仕方ない。おかげでディーンは両親が殺され、修道院に引き取られる八つか九つの頃まで、自分が怪物だと知らずに生きてこられた。
修道院長のクラウス神父は親と寄付金を失った彼を憐れみ深く受け入れてくれたが、幼い孤児を見る目に嫌悪感が宿っているのをディーンは見逃さなかった。
「お前は醜い、ディーン。稀に見る醜さだ」と神父は、気の毒だが率直に言わざるを得ないといった。「その幼さでその醜さ、成長すれば見る者が怖気をふるう怪物のごとき醜悪な存在となるだろう。無視できない悪評を招く。もし怪物を飼っていると噂が立てば、修道院の名が傷つき、私と修道士たちは教会を追われるだろう。お前も森に戻るしかなくなる」 しかしと神父は続けた。「拾った怪物が不具となれば話は違う。耳も聞こえなければ口もきけないただの醜い哀れな子供を保護したとなれば、教皇も納得なさるだろう。いいかね、ディーン。お前をそう呼ぶのは今日この日から私だけだ。他の者たちの話に耳を傾けてはいけないし、口を聞いてもいけない。おまえは不具だ。不具でなければ、ここを追い出される。ただの唾棄すべき怪物だ。わかったかね? 本当にわかっているなら、誓いを立てるのだ」
「神様に嘘をつけとおっしゃるのですか?」
まろやかな頬を打たれてディーンは床に這いつくばった。礼拝堂の高窓から差し込む明かりを背負って神父は怒りをあらわにした。
「何という身勝手な物言いだ、すでに悪魔がその身に宿っている! お前の言葉は毒、お前の耳は地獄に通じている! 盗賊どもがお前を見逃したのも、生かしておいたほうが悪が世に蔓延るとわかっていたからに違いない。そんな者を神聖な修道院で養おうとは、愚かな考えだった。今すぐに出ていきなさい」
ディーンは、恐ろしくて泣いてすがった。修道院を追い出されたら行くところがない。森へ放り出されたら一晩のうちに狼の餌食になって死んでしまうだろう。生き延びられたとしても、神父ですら嫌悪するほど醜い自分が、他に受け入れてくれる場所があるはずもない。
ディーンは誓った。何度も誓って神父に許しを請うた。「話しません、聞きません。修道院のみなさまのご迷惑になることは決してしません。お願いです。追い出さないでください」
「お前を信じよう。我が子よ」 打たれた頬をやさしく撫でられ、跪いてディーンを起こした神父に、ディーンは一生返せぬ恩を負った。
ぼんやりと昔を思い出しながら草をむしっていたディーンの手元に影が落ちた。
「やあ、ディーン……だめだ、こっちを向いてもらってからじゃないと」 後ろでサムがぼやくのが聞こえた。
ディーンは手についた草を払って、振り向いた。太陽は真上にあり、彼は太陽よりも背が高いことがわかって、ディーンはまた草むしりに戻った。
「あの、えっと……。ディーン? ディーン」
正面に回り込まれて、ディーンは仕方なく目線を上げた。屈んだサムはディーンと目が合うと、白い歯をこぼして笑った。
ああ、やっぱりキラキラしてる。
ディーンは困った。
◇
サムは困っていた。どうにもこの雑用係の庭師が気になって仕方ない。
厨房から風のように消えた彼を追って修道院の中庭を探していると、ネズの木の下で草をむしっている背中を見つけた。話しかけようとして彼が聞こえないことを改めて思い出す。聞こえない相手と会話がしたいと思うなんてどうかしてる。
それなのに気づけば彼の前に腰を下ろ��て、身振り手振りを交えながら話しかけていた。仕事中のディーンは、あまり興味のない顔と時々サムに向けてくれる。それだけでなぜか心が満たされた。
ネズの実を採って指の中で転がしていると、その実をディーンが取ろうとした。修道院の土地で採れる実は全て神が修道士に恵まれた貴重なもの――それがたとえ一粒の未熟な実でも――だからサムは素直に彼に渡してやればよかった。だがサムは反射的に手をひっこめた。ディーンの反応がみたかったのだ。彼は騎士にからかわれて恥じ入るような男か、それとも立ち向かってくるか? 答えはすぐにわかった。彼は明らかにむっとした顔でサムを見上げ、身を乗り出し手を伸ばしてきた。
サムはさらに後ろに下がり、ディーンは膝で土を蹴って追いすがる。怒りのせいか日差しを長く浴びすぎたせいか――おそらくそのどちらも原因だ――額まで紅潮した顔をまっすぐに向けられて、サムは胸の奥底に歓喜が生まれるのを感じた。
「ハハハ……! ああ……」 するりと言葉がこぼれ出てきた。「ああ、君はなんて美しいんだ!」
ディーンがサムの手を取ったのと、サムがディーンの腕を掴んだのと、どちらが早かったかわからかない。サムはディーンに飛びつかれたと思ったし、ディーンはサムに引き倒されたと思ったかもしれない。どっちにしろ、結果的に彼らはネズの根のくぼみに入ってキスをした。
長いキスをした。サムはディーンの髪の中に手を入れた。やわらかい髪は土のにおいがした。彼の唾液はみずみずしい草の味がした。耳を指で挟んで引っ張ると、ん、ん、と喉を鳴らす音が聞こえた。とても小さな音だったが初めて聞いた彼の”声”だった。もっと聞きたくて、サムは色んなところを触った。耳、うなじ、肩、胸、直接肌に触れたくて、腹に手を伸ばしたところでディーンが抵抗した。
初めは抵抗だとわからなかった。嫌なことは嫌と言ってくれる相手としか寝たことがなかったからだ。ところが強く手首を掴まれて我に返った。
「ごめん!」 サムは慌てて手を離した。「ご、ごめん、本当にごめん! こんなこと……こんなことするべきじゃなかった。僕は……だめだ、どうかしてる」 額を抱えてネズの根に尻を押し付け、できるだけディーンから離れようとした。「僕はどうかしてる。いつもはもっと……何というか……こんなにがっついてなくて、それに君は男で修道院に住んでるし――ま、まあ、そういう問題じゃないけど――ディーン――本当にごめん――ディーン?」
ディーンは泣いていた。静かに一筋の涙を頬に流してサムを見ていた。
「待って!」
またも彼の身の軽さを証明する動きを見届けることになった。納屋のほうに走っていく彼の姿を、今度はとても追う気にはなれなかった。
◇
夜、クラウス神父の部屋でディーンは跪いていた。
「神父様、私は罪を犯しました。二日ぶりの告解です」
「続けて」
「私は罪を犯しました……」 ディーンはごくりとつばを飲み込んだ。「私は、自らの毒で、ある人を……ある人を、侵してしまったかもしれません」
暖炉の前に置かれたイスに座り、本を読んでいた神父は、鼻にかけていた眼鏡を外してディーンを見た。
「それは由々しきことだ、ディーン。お前の毒はとても強い。いったい誰を毒に侵したのだ。修道士か?」
「いいえ、騎士です」
「騎士! 昨日ここに侵入してきたばかりの、あの狼藉者どものことか? ディーン、おお、ディーン。お前の中の悪魔はいつになったら消えるのだろう」 神父は叩きつけるように本を閉じ、立ち上がった。「新顔とくれば誘惑せずにはおれないのか? どうやって、毒を仕込んだ。どの騎士だ」
「一番背のたかい騎士です。クラウス神父。彼の唇を吸いました。その時、もしかしたら声を出してしまったかもしれません。ほんの少しですが、とても近くにいたので聞こえたかもしれません」
「なんてことだ」
「あと、彼の上に乗ったときに胸を強く圧迫してしまったように思います。骨折がひどくなっていなければいいのですが、あとで治癒師にみてもらうことはできますか?」
「ディーン……」 神父は長い溜息をついた。「ディーン。お前の悪魔は強くなっている。聖餐のワインを飲ませても、毒を薄めることはできなかった。お前と唯一こうして言葉を交わし、お前の毒を一身に受けている私の体はもうボロボロだ」
「そんな」
「これ以上ひどくなれば、告解を聞くことも困難になるかもしれない」
ディーンはうろたえた。「神父様が許しを与えて下さらなければおれは……本物の怪物になってしまいます」
「そうだ。だから私は耐えているのだ。だが今日はこれが限界だ。日に日にお前の毒は強くなっていくからな」 神父はローブを脱いで寝台に横たわった。「頼む、やってくれ、ディーン」
ディーンは頷いて寝台に片膝を乗せると、神父の下衣を下ろして屈み込んだ。現れたペニスを手にとって丁寧に舐め始める。
「私の中からお前の毒を吸い取り、全て飲み込むのだ。一滴でも零せば修道院に毒が広がってしまう。お前のためにもそれは防がなくてはならない」
「はい、神父様」
「黙りなさい! 黙って、もっと強く吸うんだ!」 神父は厳しく叱責したが、不出来な子に向けて優しくアドバイスをくれた。「口の中に、全部入れてしまったほうがいい。強く全体を頬の内側でこすりながら吸ったほうが、毒が出てくるのも早いだろう」
心の中でだけ頷いて、ディーンはいわれた通り吸い続けた。もう何度もやっていることなのに、一度としてうまくやれたことがない。いつも最後には、神父の手を煩わせてしまう。彼は自分のために毒で苦しんでいるのにだ。
今回も毒が出る前に疲れて吸う力が弱まってしまい、神父に手伝ってもらうことになった。
「歯を立てたら地獄行きだからな。お前を地獄に堕としたくはない」 神父は忠告してから、両手でディーンの頭を抱えて上下にゆすった。昨夜はワインを飲んだあとにこれをやったからしばらく目眩が治まらなかった。今日はしらふだし、神父がこうやって手を借してくれるとすぐに終わるのでディーンはほっとした。
硬く張りつめたペニスから熱い液体が出てきた。ディーンは舌を使って慎重に喉の奥に送り、飲み込んでいった。飲み込むときにどうしても少し声が出てしまうが、神父がそれを咎めたことはなかった。ディーンが努力して抑えているのを知っているのだろう。
注意深く全て飲み込んで、それでも以前、もう出ないと思って口を離した瞬間に吹き出てきたことがあったので、もう一度根本から絞るように吸っていき、本当に終わったと確信してからペニスを解放した。神父の体は汗ばんでいて、四肢はぐったりと投げ出されていた。
ディーンはテーブルに置かれた水差しの水を自分の上着にしみこませ、神父の顔をぬぐった。まどろみから覚めたような穏やかな顔で、神父はディーンを見つめた。
「これで私の毒はお前に戻った。私は救われたが、お前は違う。許しを得るために、また私を毒に侵さねばならない。哀れな醜い我が子よ」
そういって背を向け、神父は眠りに入った。その背中をしばし見つめて、ディーンは今夜彼から与えられなかった神の許しが得られるよう、心の中祈った。
◇
修道士たちが寝静まった夜、一人の騎士が目を覚ました。
「うーん、とうとう地獄に落ちたか……どうりで犬の腐ったような臭いがするはずだ」
「ルーファス!」 ボビーの声でサムは目を覚ました。地下は狭すぎるが、サムがいなければ全員が横になれるとわかったから厨房の隅で寝ていたのだ。
「ルーファス! このアホンダラ、いつまで寝てるつもりだった!」 ボビーが歓喜の声を上げて長い付き合いの騎士を起こしてやっていた。サムはゴブレットに水を注いで彼らのもとへ運んだ。
「サミュエル」
「ルーファス。よく戻ってきた」
皮肉っぽい騎士は眉を上げた。「大げさだな。ちょっと寝てただけだ」 ボビーの手からゴブレットを取り、一口飲んで元気よく咳き込んだあと、周囲を見回す。「それより、ここはどこだ、なんでお前らまで床に寝てる?」
「厨房だよ。他の皆はこの地下で寝てる。修道院長はあまり僕らを歓迎していないみたいだ。いきなり殺されないだけマシだけどね」
「なんてこった。のん気にしすぎだ。食糧をいただいてさっさと出発しよう」
「馬鹿言ってないで寝てろ。死にかけたんだぞ」 起き上がろうとするルーファスをボビーが押し戻す。しかしその腕を掴んで傷ついた騎士は強引に起きようとする。
「おい、寝てろって」
「うるさい、腹が減って寝るどころじゃない!」
サムとボビーは顔を見合わせた。
三人の騎士は食堂に移動した。一本のロウソクを囲んで、鍋に入れっぱなしのシチューをルーファスが食べるのを見守る。
「で、どうする」 まずそうな顔でルーファスはいう。もっともルーファスは何を食べてもこういう顔だから別にシチューが腐っているわけではない。例外が強い酒を飲む時くらいで、一度密造酒を売って儲けていた商売上手な盗賊団を摘発した時には大喜びだった(酒類は国庫に押収されると知ってからも喜んでいたからサムは心配だった)。
修道院にある酒といえば聖体のワインくらいだろう。ブドウ園を持っている裕福な修道院もあるが、この清貧を絵にしたような辺境の修道院ではワインは貴重品のはずだ。ルーファスが酒に手を出せない環境でよかった。しかし――サムは思い出した。そんな貴重なワインの匂いを、あのみすぼらしい身なりの、納屋で寝ている青年は纏わせていたのだった。
「どうするって?」
ボビーが聞き返す。ルーファスは舌打ちしそうな顔になってスプーンを振った。「これからどこへ行くかってことだよ! 王都に戻って裏切者だか敗走者だかの烙印を押されて処刑されるのはごめんだぜ」
「おい、ルーファス!」
「いいんだ、ボビー。はっきりさせなきゃならないことだ」 サムはロウソクの火を見つめながらいった。「誤魔化してもしょうがない。我々は罠にかけられた。仕掛けたのは王だ。もう王都には戻れない――戻れば僕だけでなく、全員が殺される」
「もとからお前さんの居ない所で生き延びようとは思っていないさ。だが俺とルーファスはともかく……」
「若くて将来有望で王都に恋人がいる私でも同じように思ってるわよ」 チャーリーが食堂に来た。ルーファスの隣に座って平皿に移したシチューを覗き込む。「それおいしい?」
「土まみれのカブよりはな」
「なあ、今の話だが、俺はこう思ってる」 ボビーがいった。「この状況になって初めて言えることだが、王国は腐ってる。王に信念がないせいだ。私欲にまみれた大臣どもが好き放題している。民は仕える主を選べないが、俺たちは違う。もとから誰に忠義を尽くすべきか知っている。もう選んでいる。もうすでに、自分の望む王の下にいる」
「その話、なんだか素敵に聞こえる。続けて」 チャーリーがいう。
「いや、まったく素敵じゃない。むしろ危険だ」 サムはいったが、彼の言葉を取り合う者はいなかった。
ゴブレットの水を飲み干してルーファスが頷いた。「サムを王にするって? それはいい。そうしよう。四年前にあの棒みたいなガキに冠を乗せる前にそうしとけばよかったんだ。野生馬を捕まえて藁で編んだ鞍に乗り、折れた剣を振りかざして、七人の騎士で玉座を奪還する!」 そしてまた顔をしかめながらシチューを食べ始める。「俺はそれでもいいよ。少なくとも戦って死ねる」
ボビーがうなった。「これは死ぬ話じゃない。最後まで聞け、ルーファス」
「そうよ、死ぬのは怖くないけど賢く生きたっていい」 チャーリーが細い指でテーブルを叩く。「ねえ、私に案がある。ここの修道院長に相談するのよ。彼から教皇に仲裁を頼んでもらうの。時間を稼いで仲間を集める。探せば腐った大臣の中にもまだウジ虫が沸いてないヤツもいるかもしれない。血を流さなくても王を変える手はある。アダムだって冠の重さから解放されさえすればいい子に戻るわよ」
「それよりウィンチェスター領に戻ってしばらく潜伏すべきだ。あそこの領民は王よりもサムに従う。俺たちを王兵に差し出したりしない」
「だから、それからどうするのかって話よ。潜伏もいいけど結局王と対決するしかないじゃない、このまま森で朽ち果てるか北の隣国に情報を売って保護してもらって本物の売国奴になる他には!」
「ちょっと落ち着け、二人とも。修道士たちが起きてくる。それから僕の計画も聞け」
「ろくな計画じゃない」
「ルーファス! ぼやくな」
「そうよルーファス、死にかけたくせに。黙ってさっさと食べなさいよ」
サムはため息を吐きそうになるのを堪えて皆に宣言した。「王都には僕一人で行く」
「ほらな」とスプーンを放ってルーファスが特大のため息を吐いた。「ろくな計画じゃない」
◇
行商売りの見習い少年と仲良くなったことがあった。同年代の子と遊ぶのは初めてだったから嬉しくて、ディーンは思わず自分の秘密をもらしてしまった。自分の口で見の上を語る彼に、少年はそんなのはおかしいといった。
「君は神父に騙されているんだよ。君は醜くなんかない、夏の蝶の羽のように美しいよ」
「神様の家で嘘をついちゃいけないよ」
「嘘なんかじゃない。ホントにホントだよ。僕は師匠について色んな場所へ行くけれど、どんなお貴族様の家でだって君みたいな綺麗な人を見たことがないよ」
ディーンは嬉しかった。少年の優しさに感謝した。次の日の朝、出発するはずの行商売りが見習いがいなくなったと騒ぎ出し、修道士たちが探すと、裏の枯れ井戸の底で見つかった。
井戸は淵が朽ちていて、遺体を引き上げることもできなかった。神父は木の板で封印をした。ひと夏の友人は永遠に枯れ井戸の中に閉じ込められた。
修道院は巨大な棺桶だ。
ディーンは二度と友人を作らなかった。
1 note
·
View note
隠れキリシタンの歴史をたどる天草ドライブコースその3・下天草〜牛深で伊勢えび祭り(熊本)【車中泊女子の全国縦断記】
宇土(うと)から始まった天草ドライブコース、ラストは下田温���から天草下島の最南端・牛深を目指します。 【大江天主堂】 住所:熊本県天草市天草町大江1782 下田から国道389号線で下島の西海岸を南下すると、左手の丘の上にロマネスク様式の教会・大江天主堂(大江教会)が佇んでいます。天主堂前の駐車場は狭いので、大型車は手前の資料館【天草ロザリオ館】駐車場に停めて歩いて登って行くことをお薦めします。 ロザリオ館では隠れキリシタンの遺物を多数展示していますので、あわせてご覧ください。入館料は300円です。 大江教会は、キリスト教解禁後に天草で最も早く造られた教会で、現在の建物は昭和8年(1933)フランス人宣教師・ガルニエ神父が地元信者と協力して建立したものです。拝観は自由(月曜日は休館、日曜の礼拝時は見学不可)、内部の撮影は禁止です。 教会のすぐ下あたりに『ルルドの泉』を再現した小さな水場に、マリア様と少女ベルナデッタの像が配置されています。 ルルドとはフランスの南西部のオート=ピレネー県の小さな町で、1858年2月11日、当時14歳の少女ベルナデッタが郊外のマッサビエルの洞窟のそばで薪拾いをしているとき、聖母マリアが出現したという伝説が残っています。『ルルドの泉』は聖母マリアとされる女性がベルナデッタに教えたもので、現在も存在し、カトリック教会の巡礼地ともなっています。 【崎津(﨑津)集落とカトリック崎津教会】 住所:熊本県天草市河浦町崎津539 かなり狭い漁師町なので、手前の【﨑津資料館みなと屋】に停めて歩いて向かいます。資料館の入館は無料。12月30日〜1月1日までは休館ですが、駐車場とトイレは開いてます。 とっても小さな集落なので、教会まで10分程度です。崎津集落および漁港一帯は、日本の渚百選、日本のかおり風景100選、国の重要文化的景観にも選ばれていますので、お時間があればゆっくり散策してみてください。 崎津教会(崎津天主堂)は、昭和2年(1927)に赴任してきたフランス人司祭・ハルブ神父の希望で、かつて踏み絵が行われた庄屋宅(吉田家)跡に、昭和9年(1934)に建立されました。 教会としては全国的にも珍しい、畳敷きです。祭壇は、踏み絵が行われていたとされる場所の真上に置かれているそうです。拝観は自由(月曜日は休館、日曜の礼拝時は見学不可)、内部の撮影は禁止です。 慶安4年(1651)に建立された﨑津諏訪神社。キリシタン達は詣でる際に「あんめんりうす(アーメン デウス)」と唱えたと伝えられています。鳥居は貞亨2年(1685)のもので、現存している鳥居としては天草最古。 崎津だけにしかないお菓子【杉ようかん】。説明板【杉ようかんと琉球王使節船漂着】によると、寛政2年(1790)、徳川家斉が将軍となった祝賀で来航した琉球王使節(53人)が難破し崎津に漂着。住民に救助され、お礼に杉ようかんの製法を伝授したのだそうです。 ぱっと見カマボコのようですが、しっとりとしたお餅で包まれたこし餡が上品な甘さの餅菓子です。1個120円。崎津を訪れたなら、是非ご賞味あれ。 【牛深温泉センターやすらぎ荘】 住所:熊本県天草市久玉町内の原2193-2 電話:0969-72-6666 崎津から国道389号線〜国道266号線で牛深方面へ約20km。閑静な山間に佇む温泉旅館で、ほっこり寛げる落ち着いた空間です。日帰り入浴は大人500円、営業時間 9:00〜21:00、毎月第3火曜日は休館です。お食事処や、無料の足湯もあります。 【遠見山公園】 所在地:熊本県天草市牛深町1415 【牛深温泉センターやすらぎ荘】から約11km。牛深市街地から住宅街に入り、狭い山道を4kmほど登ると遠見山山頂(標高217m)に到着。一帯に約45万株の二ホンスイセンと19種5万本の西洋種のスイセンが咲き誇ることから「水仙公園」とも呼ばれています。 ちょうど写真の正面が西側で、もっとも眺望がよく【天草夕陽八景】のひとつにも数えられています。水仙のシーズン中は混雑が予想されるので、対向車にお気をつけください。水仙の見頃は1月から4月上旬までです。(写真は2016年末の早朝です。) 【道の駅 うしぶか海彩館】 住所:熊本県天草市牛深町2286-116 電話:0969-73-3818 駐車:普通車 51台/大型 5台/身障者 2台 【牛深温泉センターやすらぎ荘】から約8km。隣接する【三和フェリー】は牛深〜鹿児島・長島(蔵之元)間を毎日10便、片道30分で運行しています。 漁港がすぐ近くにあり、毎朝穫れたて新鮮な魚貝類が入荷します。物産館【海彩館】の巨大生け簀で購入したものは、1階の炭火焼【漁師村】や2階の【海のレストランあおさ】で食べることもできますし、その場で捌いてくれるのでお持ち帰りにも便利です。 海彩館のすぐ裏手に延びる【ハイヤ大橋】は、優美な曲線を描く全長883メートルのループ橋。橋の途中で分岐しており、下須(げす)島への分岐からランプ橋となっている珍しい造りです。夜間はライトアップされ、魚鱗のような風よけ板がまるで龍のように浮かび上がります。歩道も完備されているので、海と島を眺めながら散策するのもいいですね。 熊本市の無形民俗文化財に指定されている【牛深ハイヤ祭り】(毎年4月の第3金・土・日)では、大漁旗を掲げた漁船団が海上パレードでハイヤ大橋をくぐり、また【牛深ハイヤ節】総踊りが練り歩きます。 天草では、今年も【天草伊勢えび祭り】が開催中! 天草(本渡エリア、下田温泉エリア、牛深エリア)に宿泊して、新鮮な天然伊勢えび料理と海鮮料理が食べられる宿泊プランが、前述の下田温泉ホテル【望洋閣】や【牛深温泉センターやすらぎ荘】はじめ多くのホテル・旅館で実施中。お食事のみでもOKな施設もありますので、日帰りでも楽しめますよ。 さらに【天草伊勢えび祭り】宿泊プラン利用で、島鉄フェリー・三和フェリー・天長フェリーのいずれか往復をご利用の方は、片道車両代(5m以下)と運転手1名分が無料になるキャンペーンも! さらにさらに、長崎港発着【高速船びっぐあーす】往復乗船券+1泊2食 伊勢えびプラン+レンタカーがセットになったプランや、福岡空港発着 天草エアラインで行く1泊2食プランなどなど、お得なプラン満載です。期間は2017年12月28日(木)まで。この機会に、暖かい冬を体感しに天草ドライブへおでかけしてはいかがでしょうか。 (松本しう周己) あわせて読みたい * 冬でもハイビスカスが咲く天草ドライブコースその2・上天草(熊本)【車中泊女子の全国縦断記】 * 熊本・天草は11月も温暖です!ドライブコースその1・宇土から上天草へ(熊本)【車中泊女子の全国縦断記】 * 巨木に会いに行こう。樹齢1000年以上を誇る水屋神社の大クス(三重)【車中泊女子の全国縦断記】 * 世界で唯一無二!とある神社の御神体とは!?(山形)【車中泊女子の全国縦断記】 * 名曲の舞台・浄蓮の滝や紅葉、特産のワサビなどプラスアルファが楽しめる道の駅 天城越え(静岡)【車中泊女子の全国縦断記】 http://dlvr.it/Q01qRx
0 notes
マティス展@東京都美術館へ。
パリのポンピドゥーセンターから約150点を展示するマティスの大回顧展。絵画、彫刻、ドローイング、版画、切り絵、そして晩年に手がけた総決算のロザリオ礼拝堂の資料まで、生涯を通した作品の変遷を見る事ができる。
土曜日の午前中、大混雑って訳では無かったがそれなりに来場者は多かった。マティス作品はそこまで惹かれておらず、見終わった後もあまり印象は変わらないのだが、それでもいくつかの作品は見応えがあるというか改心の作というモノもあったりで楽しく鑑賞する事が出来た。
0 notes