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#キツネ、雨傘物語
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キツネ、雨傘物語: Fox, Umbrella Story
NND Upload: https://www.nicovideo.jp/watch/sm32097937
Music/Illustration: Inumaru Shibaigoya
Translation: Kagamine_Neko
Lyrics:
(空が曇り、どーんと鳴った)
(The sky clouded up and thundered)
夕立が降る
ざあざあと
無人駅
帰り道
The evening shower pours
with a loud pitter patter
At the empty station,
On my way home
パシャパシャ水を駆ける足音
年端も行かぬ子飛び込んだ
ずぶ濡れたまま辺り見回し
走り出そうとする腕掴んだ
(鉄砲はきらい、こわい、人間はこわい、こわい)
Splash, splash, I hear footsteps running on the water
And a small child leaps inside
Drenched from the rain, they look around*
And I grab their arm as they try to run away
(I no like guns, scary, humans are scary, scary)
「ねえねえ待ってよ、待ってよ、風邪ひくよ、これ差しな」
差し出した自分の傘、ああ
泥が跳ねて雨で滲みひらがなのネームプレート
綺麗だなんて言えないが
遠慮がちに睫毛を伏せたから
「家が近い」と嘘をついた
「必ず返す」と言い子は去ってった
“Hey, hey, wait, wait, you’re going to catch a cold, use this”
I hold out my own umbrella, ah
With a hiragana* nameplate covered in mud and blurred out from the rain  
I can’t really call this pretty, but
Since they hesitantly lowered their eyes*
I lied that “my house is close by”
“I’ll return this for sure,” they said so and left
雨雨降るな傘を渡した
あの夏から2年が過ぎた
雨雨降るな傘を忘れた
天気予報的が外れた
雨雨降るな傘を探した
無人駅で途方に暮れた
雨雨降るな傘を忘れた
「あの」と下駄の音近付いた
(人間はこわい、こわい)
(貴方はこわい、じゃない)
Rain, rain, don’t fall,
2 years have passed since that summer when I gave them that umbrella
Rain, rain, don’t fall,
I forgot to bring an umbrella
The weather forecast was wrong
Rain, rain, don’t fall,
I search for an umbrella
At the empty station I am perplexed
Rain, rain, don’t fall,
I forgot to bring an umbrella
“Excuse me” the sound of the geta* comes closer
(Humans are scary, scary)
(You are scary, not)
「風邪をひいてはならぬ、送ります、参りましょう」
差し出された蛇の目傘、ああ
和服に外套襟巻引っ掛け下駄をカランコロン鳴らす
美しい人がいた
遠慮がちに睫毛を伏せた
「家が遠いから」と断った
「嘘つき」手を引かれて
“You shan’t catch a cold, I’ll take you home, let us go”
They hold out their janome* umbrella, ah
They sound their geta in their traditional Japanese clothes with a coat and scarf overtop
There was a beautiful person there
I hesitantly lower my eyes
“I live far away” I refused
“Liar” they pull my hand
「さあさ、転ばぬように、送ります、参りましょう」
いつの間に唐傘の中、ああ
細く降る秋雨の中子どもの様に手を繋がれ
無言で歩いた
家の前蛇の目渡された
戸惑うと「あなたのものです」と
手にあるのはいつか貸した傘
驚き顔あげれば誰もいなかった
“Let’s, be careful not to trip, I’ll take you home, let us go”
Before I realize it I’m already under the umbrella, ah
In the thin falling strands of autumn rain, like a child, they hold my hand
And we walked in silence
They hand me the janome in front of my house
I get confused but they say “this belongs to you”
In my hands is the umbrella I gave away some time ago
Surprised, I raise my face but no one is there
(あなたはだあれ、だあれ、だあれ、やっとで化けをおぼえたの)
(あなたはだあれ、だあれ、だあれ、本当はかえしたくはないの)
(あなたはだあれ、だあれ、だあれ、せっかくひらがなおぼえたの)
(あなたはだあれ、だあれ、だあれ、名札がにじんでよめないの)
(Who are you, who, who, it took me so long to learn how to transform)
(Who are you, who, who, the truth is that I don’t want to give it back)
(Who are you, who, who, I learned hiragana just for this)
(Who are you, who, who, but I can’t read the blurred out nameplate)
____________
*The artist has stated that the person is drawn to be gender neutral, so they are referred to as “they”
*Hiragana is an easy type of Japanese writing
*Literally says eyelashes
*Traditional wooden Japanese shoes/sandals
*Literally means snake eyed umbrella but is typically called bull’s eye umbrella
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bamfas · 7 years
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sejulog · 7 years
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ゼーユングフラウの戯言Ⅲ
 その日は雨が降っていた。在り来たりな天気の一つである。  空から注ぐ猛攻を受けて、木陰で雨宿りをする青年は(花束が濡れるな)ということを考えていた。  文字通り彼の腕には、溢れんばかりの花が抱えられている。  その日は雨が降っていた。朝から変わらない、相変わらずの天気だった。
 予定を立てていたわけではない。ただ、たまたま今日が雨で、たまたま休日で、たまたま早起きをして……つまり気分だった。  薄暗い蒼い空の下を歩く。  何の変哲もない傘に当たる水の音が間近に聞こえる。馬車が時たま通るたび、水溜りに警戒をして……また足を進める。その繰り返し。  雨は止みそうにない。今朝目を通した新聞にも、先日見かけた天気予報でも、今日は一日中雨だったはずだ。期待するだけ無駄なようだ。そもそも期待など微塵もしていないのだから、問題はない。 「すみません」 「あっ、いらっしゃいませ」  客と談笑していた��員に声を掛ける。嫌そうな顔もせず、彼女は営業スマイルを彼に向けた。  差していた傘を店先で畳めば、バシャバシャと足元へ遠慮なしに水が落ちる。 「あの、花束を適当に繕っていただけませんか」 「はい、構いませんよ。どのような花束かご希望はありますか?」 「あ……」  思わず青年は口ごもった。あまりこのようなことは得意でないらしい。花束を適当に、と行き成り声を掛ける程度なのだから当然だ。それを店員も察したのか、さりげなく助け船を出す。 「どなたかに捧げるものですか?」 「え」  キョトン。青年は暖色の目をパチクリとさせる。  彼の瞳は、ここ一帯を行き交うどの人々にもない、はちみつのような甘い色をしていた。  まさか真っ先にそのようなことを訊かれるとは思っていなかったのか、それとも図星だったのか……少なくとも、彼が動揺する理由がそこにはあったようだ。  どうやらこの青年、元々あまり口数が多い方ではないらしく、相変わらず笑顔の店員を見て思わず、すっ、と視線を伏せてしまった。  そして、彼は思い出す。 『それ』 『……なんだ』  目を伏せた途端に、彼は低い声音で短く言った。  それ、という指示語だけでは分からない。それも、目を向けていなかった青年は特に。  彼が渋々視線を上げると、眼前の少年はジッと自分を見つめていた。 『あんたは元々あんまり喋らないじゃないか。それに加えて目まで逸らされると、不安になる』 『しょうがないだろう。くせなんだ』  また目線を下げそうになって、留まった。そういえば、これをたった今指摘されたばかりではないかと。  結果、訝しげに視線を返すだけになった。 『目を見られることには慣れないんだ。それに僕は、自己表現があまり得意でない』 『陰気だよね、相変わらず』 『余計なお世話だ』  流石にそこまで言われると気分も害す。ムッとして少年を睨むと、微笑まれた。  思わぬ反応に、え、とキツネにつままれる。 『そうやってスウェイズが表情を変えてくれると、俺は安心するよ。折角綺麗な目をしているのに、向けてくれないなんて勿体無い』 『……君といると疲れる、ラファエル』 『あはは。そろそろ慣れたでしょう』 『開き直るな』  青年――スウェイズが指摘すると、また少年は笑ったのだった。  その笑顔と言葉があまりにむず痒く心を焦がしてくるものだから、また、スウェイズは思わず視線を外す。  ――心臓が、どきどきと煩かった。 「お客様?」 「あの人に、」  ポツリ、と彼の唇から言葉が零れる。硝子越しの雨音に邪魔されることなく発せられた。 「慕う人に渡したい。それで構わないか……?」 「まぁ! はい、喜んで!」  女性というものは、いつの世も色恋が好物なのか。  スウェイズの言葉を聞いた途端、彼女はさかさかと動き始めた。  ――近くの椅子に腰を掛けて、出来上がりを待つこと数十分。雨は止まない。 「お待たせしました」 「有り難う」  彼女が抱えていたのは、薔薇とかすみ草の花束だった。受け取ると、ガサガサと紙の刷れる音がする。  潰さないように注意を払って、スウェイズは花束を抱えた。 (……情熱的)  香りと色合いで存在を主張する荷物を一瞥して、そのような感想も抱いた。 「これ」 「えっ」  ポケットから適当に数枚の紙幣を差し出す。テーブルの上に置くと、彼女は妙に焦った。両手を横に振って、こんなにいらないと。 「いいんだ。どうせ使い道などあまりないんだ。感謝の気持ちだから」  ぐい、と半ば強制的に押し付ける。  そしてスウェイズは表の傘立てに突っ込んでいた持参物を取って、再び雨の中を歩きだした。  ただただ歩く。雨の中を歩く。ぼう、とあくる日の出来事を思い出してしまうのは仕方がないこと。  向う場所が、向かう場所だからだろうか。それは定かでない。  記憶の中の彼は言った。最近はどうしてるんだ、と。  どこかの野外カフェテラス。人気はまばら。湯気が微かに上るコーヒーと、洒落たティーセットが向かい側に置かれてる。  スウェイズの前に座っているのはラファエルだった。 「辺鄙な場所で保安活動。あまり物騒なことはないが、それなりに忙しない一日を過ごしてるよ」 「そうか」  頷いて、暖かなコーヒーを口に運ぶ。するとラファエルが「自分から聞いといて、それだけ?」と微苦笑を浮かべた。  う、とスウェイズが若干咽る。 「そ、そうか……」 「お、頑張る?」  ニヤニヤ。ラファエルが楽しそうにスウェイズを眺める。  何か言おう、何か言おうと彼は奮闘しているが……中々声は出てこない。プルプルと小さく震えていた。 「不便なことは、ない、か」 「ん? あぁ……」  やっと出てきた言葉に、ラエルの顔から笑みが引く。右手を左肩に沿えて、撫でた。  そこには本来あるはずの、腕がない。 「最初は慣れなかったけど、今は順応してるよ」 「そうか……」  先ほどと同じ返答。思わずラファエルはまた笑いそうになったが、堪えた。 「あんたこそどう? アドルフ兄さんとはうまくいってる? リンは変なことしてない?」 「…………」 「あれ」  シーン。  ラファエルの言葉にあからさまな沈黙を挟み、スウェイズはもう一度コーヒーを咽喉に流し込む。マグカップをテーブルに置いて、一言。 「アルフは先日、貴族屋敷の番犬と乱闘」 「おっと」 「リンは護衛で某研究所に赴いた際、変な物を食べたのか食中毒」 「……相変わらずだな」  再び苦笑いを浮かべるラファエル。迷惑そうにスウェイズの眉間にはシワが寄っていた。  次いで感情を露わにするかのように「はあ」とため息を吐く。 「番犬って、人間ならまだしも本当の犬だぞ。身分を考えろ……。リンは大方あの性格だ、勧められて断れなかったんだろうが……」 「だろうな。兄さんたちらしいよ」 「疲れる」 「苦労かけるな」  そう言って、ラファエルは紅茶を飲んだ。香りの強い紅茶だ。  チラリと彼の顔を見て、スウェイズは残りの質問に対する答えを続ける。 「上手くはやってるつもり」 「……そっか」  心底安堵でもしたのか、ラファエルは柔らかい笑みを返した。微かに肩の力が抜けたように見える。どうやらそれが一番気がかりだったようだ。  和やかな空気が流れるかと思いきや、「でも」とスウェイズがそれを遠ざける。 「僕は、君に居て欲しい」 「…………」   無言。  沈黙が続いて、それを破いたのはスウェイズ。 「戻ってこないのか」 「……ああ」  一言だけ、ラファエルは答えた。  先刻嫌と言うほど「そうか」と返していたスウェイズであるが、今回はそういかない。  食って掛かるように、溜め込んでいた思いを小出しにしてラファエルの説得に徹する。 「君だけの実力があれば、片腕のブランクなどあってないようなものだろう」  カップに口を付けて、彼の言葉をラファエルは黙って聞いていた。紅茶の水面に視線を落とし、落ち着いた様子で口を開く。 「俺が――"隻腕の仲間"という存在があんたたちの中にいるというだけで、きっと兄さんもスウェイズも無意識に俺を庇おうとする。そんなハンデを最初から負う必要はない。命を落とすぞ」  ジッとラファエルの碧眼がスウェイズを見た。片目の色が違う。  彼は幼少時代、右目に鉱石病という奇病なるものを患った。  書いて字の如く、なんと眼球が内側から物質・鉱石へと変化していくものである。奇病というだけあって未だ原因や治療法などが見つかっておらず、近年感染者は増えて行く一方。症状としては段々と視力が低下し、やがて失明する。  ラファエルの場合は他に類を見ないパターンで、なんと、鉱石病によって眼球が完全に侵されることなく病魔は消え失せた。  それでも彼の目は既に半分近く鉱石化をしており、結果として、定期健診を受けるだけに留まっている。  今の彼の右目に居座っているのは、本来の碧眼ではなく偽りの青い眼だ。  ただでさえ彼は右目に視力がなかったというのに、今度はとうとう、利き手であった左腕まで。 (ひとつくらい、僕に肩代わりさせてくれてもいいじゃないか)  ひとつ、ひとつ。失われていく彼に不安を抱いた。  いずれ彼は、本当に――奪われてしまうのではないのかと。ここから消えて、無くなってしまうのではないのかと。  だからせめて、安心させてほしかった。もっと触れられる距離に、目に見える場所にいてほしかったのだ。 「――当たり前だ」 「?」  ラファエルの言葉を受けても、尚スウェイズは引かない。それどころか力んでいた。 「君を見捨てるはずがない。君は知っているだろう、僕の……僕らの腕を」 「……熟知してるつもりだけど」  そう言って、ラファエルは紅茶を一口。  落ち着いているが故の余裕なのか、それとも逆か。 「君のことは守る。今更命を落とすことに恐れ戦く僕ではない。僕が君の失われた腕の代わりになる。だからもう一度」 「スウェイズ」  もう言わないでくれとばかりに、ラファエルが彼の台詞を遮った。  もしかすると、彼自身にも惑いがあったのかもしれない。  こ��以上説得をされれば、傾いてしまいそうになる弱さがそこにはあったのかもしれない。  カチャン、と皿に乗せられたティーカップが鳴る。水面が揺れた。 「スウェイズ。ごめん」 「……」  自然と拳に力が入っていたが、それはスッと抜ける。  沈黙を口にして、視線を落とした。気にならなかった鳥の声がやけに大きく聞こえる。  ボソリと零れた声音はあまりに弱々しい。 「そんなに僕が頼りないのか」 「そうじゃない」  スウェイズが肩を落とすと、ラファエルはゆるゆると首を左右に振る。そして己の左肩に右手をやった。腕の無い左腕を撫でるようなしぐさをして、愛しそうに告げた。 「こんな俺でも、傍にいてほしいんだと言うやつがいるんだよ」 「!」  途端、スウェイズは目を見開いた。段々と冷静になったのか、それとも意味を噛み砕けたのか……瞳に色が戻る。  暫くの沈黙後、そういうことかと呟いた。  まだ残っているコーヒーにうつる彼の目にはどこか、悲しみに似た色が滲んでいる。  ――己の醜さに反吐が出る。  膝の上に置かれた手に、再び力がこもった。彼の目にも、また別の感情が混ざる。  彼のことを思うなら、知っているからこそ、喜ばなければならない。  隻腕となってからの彼は、幾度となく自分を卑下する節があった。  元々そのような性格であることも知っている。その彼が、今の自分でも出来ることをやると言っているのに。  あの時の自分は、むしろ――。 「――ニャアァ」 「!」  真横から聞こえた猫の鳴き声に、ハッと我に返った。  相変わらず雨は酷い。  声の聞こえた方に目をやると、ふやけたダンボール箱が置かれていた。だいたい察しはつくが、近寄って箱を覗き込む。  すると、まだ小さな猫が箱の中をウロウロとしていた。クリーム色の毛色に包まれていながら、目元は茶色い。本来は毛が長い品種なのか、濡れ切った体毛は垂れ下がっていた。敷かれたタオルが雨水を吸い込んでグショグショだ。  それを見て、スウェイズは(見るんじゃなかったな)と僅かに後悔する。思わず目を逸らした。 「ニャー、ニャー、ニャアア」  目的地は近い。人気は少ない。このまま放置していては、恐らく――。 「……君、この辺には黒猫ばかりしかいないのに。タヌキみたいな品種なんて、珍しいな」 「フニャ?」  ふ、と、スウェイズは僅かに口元を緩めた。泳がせた視線が真上にいく。  水をはじく傘。少し揺らしてみれば、雨粒がボタボタと落ちてきた。これを失ったとしても、彼が死ぬことはない。だが、目の前の小さな命は別である。 「これで、勘弁してくれるか」 「ニャア……」  コートの内側に花束を入れて、持っていた傘を箱の上に置いた。気休めだ。  折り曲げた膝を伸ばし、猫を一瞥する。尚も変わらず必死に何かを訴えるように鳴いていたが、顔を逸らした。至る所を転々としている自分に、動物を養うことは出来ない。  精々彼に出来るのはこの程度であった。あるいは、 (一思いに殺してやるか、だな)  腰に下げられた得物を見やる。  このような場所には不釣り合いなほどに物騒な代物だ。しかし何故か、持ってないと不安なのだ。  むしろ持っているからこそよからぬことに巻き込まれかねないのだが。 (元来、こんなものは必要ないのだろう)  人を斬るための刃など。  雨に濡れることで、羽織っていたコートの色が段々と暗くなっていく。  流石に今の季節、こんな状況でノロノロとしていては風邪を引く。何より寒い。少し急ごうかと、スウェイズは足を速めた。  住宅街から離れ、丘の上。ポツポツと並んでいる石には人の手が入っている。  ――墓地だった。  その中の一つに、スウェイズは近寄って行く。そして足を止めた。  あ、と思わず声が漏れる。ずっと雨から守るように持って来た花束だったが、供えてしまえば濡れてしまうではないか。  それに遅れて気が付いて、スウェイズは息を大きく吐き出す。 「……やはり、僕は媚を売るなんて器用なことは出来ないな」  あの時もそうだったように。今までも、そうだったように。  まだ小さな頃、リンと喧嘩をしたのだと彼が悩んでいたことがあった。  あまりにも泣きそうな顔で相談してくるものだから仲直りの仲介を行った。しかし本心はまったく別のことを考えていた。  君は、僕と喧嘩をしたら今と同じように悩んでくれるのか。泣きそうになってくれるのか。  ……このまま仲直りなどしなければいいのに。どうせ放っておいても、君たちは仲が良いのだから和解するだろうに。  そのようなことを考えては、己を嫌悪し表情を隠した。 『この際だからハッキリ言わせてもらう』 『急に改まってどうした?』  我慢ならなかった。幼い頃からずっと彼を守ってきた。  リンと喧嘩したときも味方でいた。武具を片手に敵を掃討する時でさえも、彼の傍から離れることなどなかった。  ずっとそばにいた。 『僕は』  あの時の台詞を、今一度口にする。雨に濡れながら、ゆっくりと花束を差し出した。 「"僕は君が、好きだった"」  ――告げると彼は驚いたように目を見開いて、そしてすべてを悟ったようにスウェイズを見つめた。  それは恋ではないんだよ、と言って。  ずっと守ってきていたものを奪われることが嫌になったのか、そうなのか。これは恋情ではなく、ただの独占欲というものか。  いいや、違う。違う。でも彼には。  届きさえもしなかった。  同性なのだから気持ち悪がられるだろうと、距離を置かれてしまうのではと少なからず畏怖はあった。  しかし彼は変わらず接してくれていた。本当に何事もなかったかのように、あれは本当に恋ではないと思っているように。  ――それは拒絶されるよりも、断られることよりも、残酷な答えだった。  しかし皮肉にも、それが自分の想いを今一度考え直すきっかけにもなった。 「なぁ、アルフ」 「ん」  爪の手入れをしていたアドルフに声を掛ける。片手間だ。 「僕、多分ラファエルが好きだと思う」 「知ってる」  バチン。爪を切る音。本当に片手間である。しかしスウェイズは特に気にしていない。  最初から、アドルフが真面目に取り合うようことはないだろうと思っていた。  だからこそ爪の手入れをするアドルフに、今声を掛けたのだ。 「そうか……」  スウェイズは頬杖をついて目を瞑る。何かを思惟するように。 「ブラザーコンプレックスふたつも背負って、ラエルも大変ですね。君の場合はブラコンというより、過保護な保護者って感じですが……あ、切りすぎた。サエ、やすり取ってください」 「……そうか」 「おい、やすり」 「そうか」 「話聞けコラ」 「ん」 「っわ、投げんなよ」  手元にあった小さな細長い物体をアドルフに投げつける。  危なげにそれをキャッチしたアドルフは、偶然とはいえやっとスウェイズの方を見た。  話を聞けとは、どっちのことか。既にスウェイズは呆れているのか、それとも慣れているのか――あえて言及することはないが、目は語っている。  それを察したらしいアドルフは、面倒くさそうに本題に便乗したのだった。しかし相変わらず片手間である。 「ラエルは俺らの中では小柄です��、自分で言うのもアレだが一番上の兄がこんなんなので、実質長男の役割を担ってくれていたわけですしね」 「君はちゃんと、彼らの……僕らの長男だと思うよ。他の誰よりも」  ピタリ。アドルフの手が止まる。僅かに視線をスウェイズに寄越して、また逸らしたのだった。 「……俺は見てるだけだ。それを言うなら、君の方が彼らの面倒を看ていると思いますよ。でも、あんまり保護者やって、反抗期迎えられても知りませんが」 「反抗期か。気を付ける」  適当に相槌を打っておくが、スウェイズはどこか釈然としない。会話がかみ合っていない気がするが、気のせいである。そう、気のせい。  パチン、と爪切りの音とアドルフの結論が耳に入る。 「それは恋ではないさ」 「……あぁ」  それだけ答えて、目を閉じた。  不毛な恋というものか。いいや、恋でないのなら不毛でもないのか。  否定。否定、否定、否定。否定。  ――睫から雫が落ちる。既にびしょ濡れといったレベルだ。  瞬きをすれば視界が歪む。まるで泣いているような視界。 (あの後、リンとラファエルが葡萄酒を持って来て騒いで飲み明かして)  楽しかった。あの日々が続くのなら他には何も望んでなどいなかった。剣を振るうその先の願いも同じく。 「だというのに、君は関係のないところで逝ってしまったな。……それが、君が選んだことだったんだな」  これがアドルフの言っていた反抗期か、と自嘲するように笑う。  しかし反抗期なら、もっと可愛らしいものがよかったなとも思った。  ――生きていてくれるなら、嫌われてもよかった。いっそ嫌われた方がマシだったのかもしれない。 「ただ、性別が違うというだけだったのに」  ずっとそばにいた。ずっと守っていた。ずっと、ずっと好きだった。  けれども君は、"傍にいてほしい人"という女性に連れられて逝ってしまったということなのか。  悔しかった。だからこそ、素直に喜ぶことが出来なかった。  いいや、素直なんてものではない。微塵も喜ぶことなど出来ていなかっただろう。きっとずっと仲が良かった。ずっと好いていた。なのにこの違いは一体なんだったのか。彼が恋慕した少女とは根本的に違う部分もあったのかもしれない。彼にしか分からない、彼の趣向というものもあったのかもしれない。  けれど第三者である自分にはそれが分からない。 (もし君が女性なら、僕を選んでくれたのだろうか)  なんて絵空事を描いてみる。  相手にはその気がないというのに、本当に、稀に性的な目で見てしまうことがあれば呑み込まれそうな罪悪感に苛まれ。ただ想いを伝えたいだけでも許されるかたちではない。彼の幸せを願うならば、報われないことが一番いい。そんなことも分かっていた。もし、もしも彼と結ばれるようなことがあったとしても……その先に明るいものはない。互いのことを想えば、結局。  ――けれど。 「君を失うくらいなら、もっと早くに攫ってしまえばよかった。腕に閉じ込めてしまえばよかった」  それが本音だった。  ギリ……。奥歯を噛みしめる。  閑散としたこの場所なら、雨が降るという日なら、――君を失った今なら、吐き出しても許される気がした。 「僕だって、本当に、君のことを愛していたさ」  ゆっくりと花束を下ろす。それと同時に、腰に下げられた得物に手をやった。  柄を握り、鞘から細身の刀剣を引き抜く。  矛先を墓に向け、下に向けると――振り下ろした。  ザクッ! と、土に深々と刃が突き刺さる。  振り下ろすというよりも、突き立てたと表現した方がよかったかもしれない。  まずは剣士としての追悼を。  得物を手に取り、共に戦った同士として安らかな眠りを。――同時に、捧げる。 「これで君の愛した人を、しっかりと守っていけよ。君が、君でいられる理由だったんだろう」  ――ツゥ、と生暖かい雫が頬を伝った。  堪えていたというのに、いつの間にか溢れていた。それを自覚した途端に、グチャグチャとした感情と涙がこみ上げてくる。  雨が酷い。  空が代わりに泣いている、などという表現はなんて図々しいのか。 「どうして。どうして……どうして、僕は……君は……どうして……」  何を問い質したいのかも分からない。  どうして彼は死んだのか。どうして彼はそのような人に惹かれたのか。どうして異性でなかったのか。どうして異性でなければならないのか。どうして。 「どうして僕は、君のことを好きになったんだろうな……」  それは他でない、君だったからで。  ――不毛だ。  色の濁った瞳が、ゆるりと手元を見る。雨にしめった花束があった。  ――とっくに雨なんか、上がっていた。  でもそういうことにしないと、泣いてるとバレてしまうから。  いつから泣いていたのかなんて分からない。もうずっと前から泣いていた。苦しくて、苦しくて、痛くて、泣いていたんだ。  しかしそれは自業自得。好きになってしまった自分が悪い。彼を守ることの出来なかった、自分の失態。  周りにバレないよう、彼に迷惑を掛けないよう、自分が胸中に思いを秘めて閉じ込めてしまえばいい。それだけのこと。だけどできなかった。  彼が死んだと知らされてから、本当はどうにかなりそうで。  それでも周りに気を遣い、似合わない笑顔を妙に取り繕ってみたりもして。――このまま平気になれたら。無理に笑うことで、どうにかなったら……なんて無責任な期待を抱いて。  悪あがきに過ぎなかったけれども。 (君のことを忘れるなんて、醜い僕には、やっぱり不可能みたいだ)  だから、せめて、どうか。  ――この気持ちだけは、綺麗なままでいさせてくれないか。  ぎゅ、と花束を握りしめる。そして思い切り悪天候に向かって葬った。  拘束を失った花がバラけて、風に踊らされる。――花の香りに吐きそうだ。  降り雪ぐのは花の雨。そのまま醜い感情を消し去ってしまえばいい。ただ僕は純粋に、彼に別れを告げたいだけなの���から。  ただ、この花たちと共に恋心を散らせてくれ。 「ラファエル、ありがとう」  最後まで、僕を嫌わないでいてくれて。傍に置いていてくれて。  この気持ちを教えてくれたことも、苦しみを与えてくれたのも総て君なのだから。  ゆっくりと墓石に近付いて、傅く。  そうしてそっと、唇を触れさせた。本当に触れるか触れないかの、微かな口づけ。  好きでいさせてくれて、ありがとう。これできっと最後にする。 「君はこれを恋ではないと言ったけれど、――間違いなく、恋、だったよ」  確かに恋だった。不毛な恋だった。  実るはずなど最初からなくて、今となっては君もいなくて。  それでも僕は、君を追って死ぬことはしない。でも恐らく、君以上好きになる人もいないだろう。 「……さようなら」  またひとつ、頬を雫が滑り落ちていた。  ――その日は雨が降っていた。在り来たりな天気の一つである。  濡れた顔をグシグシと拭う青年は、(酷い顔になってるんだろうなぁ)と、明日からまた顔を合わせる仲間に対する言い訳を考えていた。  彼の目蓋は赤く腫れ、目は未だに潤んでいる。  その日は雨が降っていた。朝から変わらない、相変わらずの天気だった。  しかし避けた雲間から――一筋の光が差し込む。恐らく明日は、晴天なのだろう。  頭に花びらを乗っけたまま、スウェイズは空を仰いで微かに笑んだのだった。
fin.
2013.2.26
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Will you guys please translate キツネ、雨傘物語 by Inumaru Shibaigoya?
Our requests are closed right now, so it will take a while for us to get around to it. If it isn’t translated by November than request the song again and we’ll find time to do it!
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