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oshimatakuromemo · 2 years
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おおしまたくろう楽器展#2 滑琴の耳奏耳(かっきんのみみそうじ)
Date:2022/03/25(Fri.)~04/03(Sun.) @パララックス・レコード
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背景
 2021年の前半は山下残さんと音遊びの会のコラボレーションのお手伝いがメインの活動だったので、後半は自分の活動に力を入れたいと思い、締め切りを設けるために助成金を獲得して活動することを目指しました。活動内容としては、コロナ禍以前から取り組んでいたスケートボードとエレキギターを合体させた楽器「滑琴(かっきん)」の活動と、コロナ禍以後に取り組み始めた耳型マイク装置「ミミックロフォン」の活動を掛け合わせた内容を企画しました。無事に企画がアーツサポート関西の助成対象活動に採択されたので、3月の展覧会開催を目標に動き始めました。
https://artssupport-kansai.or.jp/grant_list/index.html ▲助成企画について
 まず活動を始めるにあたり新たに導入したiPadでスケッチを描きました。美術大学の工房に就職してから造形を意識するようになり、装置の見た目も機能であると考えるようになりました。またスケッチを描くことで他人とアイデアを共有でき、企画が助成金に採択されやすくなったり共同作業が楽になりました。  活動の方針として、1)量産化を視野に入れた新型滑琴の開発、2)滑琴用の背負子型ギターアンプの開発、3)耳型マイク装置を用いたライブ配信の実施。以上の3つを活動方針に定めて制作を進めました。具体的には、1)は3DCADと3Dプリンターを用いた滑琴専用部品の開発、2)はレコーダーや通信機器の機能を兼ね備えたバッテリー駆動のギターアンプの開発、3)はカメラ越しにもマイクの位置関係が把握できる高さ40cmほどの巨大な耳型マイクの開発を行います。
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▲ギターアンプと耳型マイク装置のスケッチ
滑琴4号機マルチプライアー(増殖子)について
 滑琴の新作を作るにあたり「量産化」を目指した設計を意識しました。具体的には3号機ではスケートボードの木の板(デッキ)に穴を開けて、エレキギター用の部品を取り付けることで楽器の構造を実現していましたが、手作業での組み立てが難しく、締結部品が多いために重量増加を招いていました。そこで通常のスケートボードのトラックを滑琴用のものに交換するだけで簡単に楽器化できる構造を目指しました。これはエレキギターのテレキャスターというモデルをヒントに考案した構造です。テレキャスターが従来のエレキギターと違いボルトでの組み立てを可能にしたことで、職人技無しで量産化に成功したように、デッキへの追加工無しで滑琴用トラックに交換するだけで簡単に楽器化できます。  また光造形3Dプリンターのタフレジンを用いて、複雑な形状の部品を十分な強度と軽さで実現します。まだまだ小ロットでの生産が続くと思いますが、金型制作への移行も視野に入れて滑琴用トラックを3DCADで設計します。
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▲3D設計した新型トラックの初期案
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▲初期案をテスト出力したところ
 滑琴3号機を持って秋田県に滞在した際に、地元のスケーターの方に乗っていただきアドバイスをいただきました。ギターペグが面に出ているとトリックの障害になるのでできるだけ隠した方が良いとの意見があり、今回はペグをデッキの内側に隠すような構造に変えました。最初のプロトタイプでは、パーツの干渉や負荷が集中する箇所を確認するため安価なFDM方式の3Dプリンターで試作を行いました。実際に組み立ててみるとギター弦が干渉していたり、負荷が集中しやすい箇所で弦が切れやすく、試乗してみるとトラックが破損しやすい箇所が見つかりました。
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▲仮組みしたところ
 設計のアップデート作業には、以前にも耳型マイク装置「ハッピーニューイヤー」の制作の際にモデリングサポートいただいた水口翔太さんに関わっていただき、より軽量かつ強度のある形状に改良しました。まだペグ周辺の設計などに課題が残るものの、3号機と比べて格段に組み立てやすく、軽量で量産化に適した設計が実現できました。  完成した滑琴の意匠として、ピックガードを取り付け僕のキャラクター「ピンクのあいつ(エンジェルVer.)」を描きました。ピンクのあいつのイラストは、いつも僕の活動のデザインを担当してくださる丹羽彩乃さんに依頼しました。楽器は人間が発せられない音を出す点で神様の道具であったり、神様と交信するための道具に例えられます。ピンクのあいつも天使になって滑琴の音を天上に届けてくれているのでしょう。
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▲安全を祈るピンクのあいつ
響筐(きょうきょう)と疑似耳(ぎじじ)
 これまでの滑琴を使った野外パフォーマンスではマーチングバンドの小太鼓で使用するキャリングホルダーにギターアンプをくくりつけてパフォーマンスしていましたが、肩に負担がかかって長時間のパフォーマンスが難しい状況でした。そこで今回はギターアンプをホルダーが一体になった背負子型ギターアンプ「響筐(きょうきょう)」を制作しました。
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▲従来の背負子型ギターアンプ(左:1号機、右:2号機)
 背負子部分には登山メーカーの背負子を流用して、肩だけでなく腰にも荷重が分散でき、クッション性のあるものを選びました。またギターアンプ部分はスケッチをいくつか描いてから3DCADで設計してレーザーカッターを使って組み立てました。ギターアンプの回路にはBoss Cube Street 2を分解して使いました。Cube Street 2は電池駆動かつスマートフォンから音量調整が可能なため、いちいちアンプを背中から降ろさなくても良い点に着目して選択しました。
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▲CADで設計した背負子型ギターアンプ
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▲市販のアンプを分解している様子
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▲仮組みしてサイズ感を確認
 響筐の側面には巨大な耳型マイク「疑似耳(ぎじじ)」を取り付けます。疑似耳は野外での滑琴の演走音を集音してライブ配信先に送るためのマイク装置です。マグネットとベルクロテープで響筐に取り付けており、取り外すことで好きな音の定位感覚でフィールドレコーディングできます。  ライブ配信と耳型マイク装置の組み合わせは新型コロナウイルスの環境下で思いついたアイデアで、本来は透明化したメディアとして映像の中に潜んでいるマイクの存在を耳の造形でアピールします。鑑賞者は画面に映る巨大な耳を見て、現場のマイキングを把握できる仕組みです。耳型マイク装置の総称を「ミミックロフォン(ミミック+マイクロフォン)」と称しており、耳の造形には僕の耳を3Dスキャニングしたデータを用い、これまでに3つのバリエーションでミミックロフォンシリーズを作りました。疑似耳の特徴としてギターアンプとスムーズに切り離しができることと、サイズの大きさが挙げられます。
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▲ダンボールでサイズ感を把握
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▲マグネットで洗濯機に付けてみる 
実験とフィールドワーク
 制作した滑琴などを用いてパフォーマンスイベントに参加したり、フィールドレコーディングの収録を実施してみました。まずは金沢などの4都市をつないでオンライン開催された「NxPC. LIVE Vol.54 密(ヒソカ)」に出演しました。イベントの2週間前にお誘いいただいたイベントでしたが、だらだらと開発を進めていたこともあり、ひとつのゴールとしてちょうど良いと思い、参加を決めました。このイベントでは「新作を完成させてイベントに参加する」を目標に制作を進め、無事に楽器本体と配信システム、パフォーマンス構成を完成させました。  パフォーマンスは3部で構成して、第1部では室内での2人の演奏者による疑似耳を用いたパフォーマンス(通称:耳奏耳、みみそうじ)を実施して、第2部は前日に金沢市に滞在して撮影した疑似耳を用いたフィールドレコーディングの記録映像を放送し、第3部は疑似耳を響筐に取り付け、市内を滑琴で演走する様子をLINE通話で配信しました。30分のパフォーマンス時間の中で矢継ぎ早に構成が変わっていくてんこ盛りの内容でしたが、自分のやりたいことを妥協することなく実施できました。  今後の課題としては、3部の配信でLINE通話を用いた配信を実施しましたが、音声の集音が上手くできておらず、野外での配信システムの見直しが必要そうです。また響筐と疑似耳の装飾が完了しておらず寂しい印象でした。
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▲会場で展示中の楽器たち
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https://nxpclab.info/vol.54/
▲イベントのアーカイヴページ
 次の実践の場はFIGYAを拠点とした配信実験とフィールドワークです。滑琴3号機の完成発表を兼ねた個展をFIGYAで開催した経緯があり、今回もFIGYAでの発表を通じて前作との差異を確かめる狙いがありました。前回の個展ではFIGYA周辺でのルート譜(滑琴の規範的楽譜)を作曲したので、新型の滑琴で同じルート譜を演奏してみました。残念ながらレコーダーの設定にミスがあり良い記録を残すことができませんでしたが、疑似耳を組み合わせて新たな音響の鳴らし方が実現できました。  またFIGYA周辺で疑似耳を用いたフィールドレコーディングを実施しました。マイクスタンドに疑似耳を付けて自販機や高架下、公園、河原などに設置して録音しました。町の景色の中に耳が生えている様子は自分が自販機の気持ちになったり、町の気持ちになって環境音を聴く感覚を呼び起こしました。この時の改善点として、疑似耳の中が空洞のため共鳴によるコーという音を集音していました。これについてはスポンジなどの軽くて吸音性能のある素材を詰めて対応したいです。
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▲此花区での演走(撮影:mizutama)
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▲淀川での録音風景(撮影:mizutama)
 次に説明するパララックス・レコードでの展示中にFabCafe Nagoyaでの自作楽器イベント「廻転 -DIY Instrumental Performance」に出演しました。残念ながら個展開催中だったため会場を離れるわけにいかず、オンラインでの出演を検討するなかで新作の滑琴を用いたパフォーマンスを実施することにしました。  金沢でのパフォーマンスの画質や音質への反省を受けて、今回のパフォーマンスではLINE通話でなくGoProから直接YouTubeへライブ配信するシステムを採用しました。パフォーマンス構成は前半・後半に分かれており、前半はZoomを使って主催者や来場者と会話をして、ZoomのチャットにGoProのYouTube配信URLを貼って後半へ進みます。後半は演走者の頭に付けたGoPro目線の映像を配信します。  ZoomとYouTubeという異なるサービスを行き来することに興味を抱きパフォーマンスを構成しましたが、鑑賞者からは「3人称視点と1人称視点を行き来するパフォーマンス」のように評していただき、確かにカメラの視点や会話の関係性がパフォーマンスの中でダイナミックに変化する状態は面白いと感じました。今後のライブ配信のバリエーションのひとつとして考えていきたいテーマです。
https://fabcafe.com/jp/magazine/nagoya/2204_rotation_report/ ▲イベントのレポート
パララックス・レコードでの展示
 助成金に採択されたのが9月末ごろだったので、半年くらい開発活動を続けてきました。活動のまとまった成果発表の場として、京都にあるアバンギャルド系のレコード店「パララックス・レコード」で展覧会を開催しました。  パララックス・レコードには高校生の時からお世話になっており、当時はより変わった音楽を探してレコード店を回っているうちに出会ったお店でした。特に工学を勉強していた高校生の僕にAlvin Lucierを出会わせてくれた重要な場所で、Lucierとの出会い、そしてパララックス・レコードとの出会いがなければ自作楽器を作る僕はいなかったかもしれません。そんな僕の原点とも呼べる場所で新作を発表できることは感無量でした。
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▲展示風景
 展示会場には開発した3つの装置(滑琴4号機マルチプライアー、響筐、疑似耳)とこれまでの滑琴開発に関する記録映像、NB-606、Zine、それからパララックス・レコードの商品をチョイスさせていただき「おおしまたくろうのスペシャルセレクトコーナー」を設置しました。僕がパララックス・レコードで購入したお気に入りのアルバムや気になる商品をチョイスしました。  会期中は久しぶりに会った友人や美術関係の方々が見にきてくださったほか、パララックス・レコードの入っている詩の小路ビルのストリート系のお店の店員さんやお客さんも見てくだ��り、現場の人のリアクションやアドバイスをいただけました。個性的な店内にも不思議と馴染んでおり、アバンギャルドな姿勢を貫きつつもフレンドリーな見た目の作品になったなぁと展示空間を見ていて思いました。
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▲セレクトコーナー
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▲展示会場の記録映像
展示を終えて
 半年に及ぶ開発と展覧会の開催を経て、滑琴の開発がかなり進んだと思います。特に新しい職場に就いてから造形意識が芽生えてきたので、作品の造形やカラーリングに注意を払ったこともあり、展示会場でもキャッチーな印象を放っていました。  開発中や展示中にも周囲の人から「ベース型の滑琴」や「小型で安価な滑琴」などのバリエーション展開を期待する声や、購入を希望する声をいただきました。これは楽器をテーマに活動する僕としては重要な声で、常に「楽器はあくまで音楽のための道具」という側面を意識しており、僕一人が扱うアート作品ではなく、他の人の身体と組み合わさって新たな価値を生み出すものであってほしいと願っています。人々が滑琴を自分ごととして捉えてアドバイスをいただいている今の状況は大変ありがたいですし、期待に応えないといけないですね。
 今後の展開としてはアドバイスにあった1)滑琴のバリエーション展開や2)パフォーマンスの展開、また3)展示方法の検討などが挙げられます。滑琴のバリエーションとして、ベース弦を張った滑琴や弦の本数を減らしたモデルの実験、ペニーの滑琴化などが考えられます。パフォーマンスの展開として、これまで野外での演走のみでしたが今後は室内での大音量でのパフォーマンスを検討しており、特に2022年度は秋田市文化創造館の企画「SPACE LABO 2021」に採択されたこともあり、新しい滑琴の演走形式が提案できるでしょう。コロナ禍になってから安定的にパフォーマンスイベントを開催することが難しい状況が続いています。そのため滑琴の展示活動にも力を入れていかないと認知が広がらないので、今後は滑琴の展示方法も検討していきます〜終
https://akitacc.jp/article/220408/ ▲SPACE LABO 2021のレポート
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oshimatakuromemo · 5 years
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真夏の夜の音楽祭 “オト”の気配を感じる
Date: 2019/08/17(Sat.) @A-Lab(あまらぶアートラボ)
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【背景】
 ギャラリー・A-Lab(あまらぶアートラボ)※1でのパフォーマンスイベントに参加しました。今回のイベントは展覧会「存在と気配」※2の関連イベントとして開催されたものです。A-Labという場所は京都精華大学の卒業生の中から優秀作品を展示する企画を通して知っていましたが、実際にギャラリーを訪れたことはありませんでした。  展覧会「存在と気配」には若手作家3人の作品が展示されています。各作家のテーマは時間やシステムなどの目には見えない構造を可視化した作品が多い印象でした。参加したパフォーマンスイベントも「“オト”の気配を感じる」と副題が付くように、目には見えないものの気配をテーマとしたパフォーマンスが期待されていると感じました。とはいえ、音自体が空気の振動であり、視覚的に知覚できないものです。オーディオビジュアライゼーション(音の視覚化)などの作品形態がパッと思いつきますが、僕に期待されているパフォーマンスはもっと別の軸だと考え、パフォーマンスの制度・構造自体を顕在化させるような内容を考えました。
【準備・設計】
 パフォーマンスの構成を考えるにあたって、会場の空間はパフォーマンスを条件付ける要素として影響力が大きく条件を任意に変化させることが難しい一方で、ハッキングできる余白を見つけて作品に応用すれば、その会場でしか見れない作品になり、その場所でパフォーマンスを実施する説得力や必然性をもたらします。まずはイベントの1ヶ月ほど前にA-Labを訪れ、展覧会を鑑賞しながらギャラリー空間を観察して、パフォーマンスに適した場所(=ハッキングできる余白)を探しました。  会場を見学してみて、最初に入り口の階段が空間を大きく占めており、なぜだか気になりました。ギャラリーは2階部分にあり、1階には保育施設が入っているようです。また1階と2階を繋ぐエレベータが動く際に「ビー」という趣きのある電子音が鳴ります。この1階と2階に空間が分かれた構造が面白く感じたので、観客が集める2階部分に対して1階部分やエレベーターの中でパフォーマンスを行い、パフォーマーの姿が見えない状況で音や通信情報をヒントにパフォーマーの姿を想像するような内容を考えました。
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▲広い階段が印象的
【本番】
 以前に金沢21世紀美術館で行なったパフォーマンス※3では、パフォーマンス当日までの2週間に渡ってパフォーマンスの準備をする様子を記録して、当日の会場にプロジェクションしました。このパフォーマンスの準備段階と撤収後の様子を見せる実践はライブパフォーマンスにおける「今ココ性」を瓦解させる試みであり、パフォーマンスの制度(ステージによって演者と観客が区別される。各パフォーマンスには制限時間があるなど)を顕在化させました。今回は金沢でのパフォーマンスの展開として、機材を現場に搬入する様子やパフォーマンス行為を観客に渡す様子を目指しました。機材の搬入段階から見せるアイデアは悪魔のしるしの「搬入プロジェクト」※4を参考にしました。
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▲以前のパフォーマンス
 また昨年の企画展「No-interaction」※5から現在のSNS環境の瞬間的な反応速度に対して、間の悪さがもたらす内省的な視座を意識して活動するようになり、今回のパフォーマンスでも間の悪さを意識して構成しました。例えば機材搬入の演出ではエレベーターでの移動中にゲームのロード画面のようにパフォーマンスが停止して会場が静かになり緊張感が生まれます。音が鳴り続けるパフォーマンスというより、小さな音が鳴るまでの緊張感を楽しむパフォーマンスを目指しました。  また観客同士の連鎖反応が起きる瞬間を面白く感じており、かつて人々が街頭テレビで相撲を見ていたような風景を目指したいと思っています。そこで今回は僕を囲むように観客同士が向き合うように椅子を並べ、観客同士で表情が見えるような空間構成にしました。
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▲当日のパフォーマンスの様子
 新しい音響システムとして、スタイロフォームをカットする音をコンタクトマイクで集音することや、ラジコンを使った演出を試みました。スタイロフォームは以前に山下残さんとライブした際に使用した素材です。熱線でカットする際のチリチリという音が面白くライブでも使ったのですが、今回は会場の広さに対して音が小さく、もっと大きなアンプで増幅すべきでした。  切り出したスタイロフォームは2つのテーブルに並べて、それらを2台のラジコンカーで落下させ、地面とスタイロフォームの接触する音を楽しみます。2台のラジコンカーは同じ周波数帯で設定されており、1台のリモコンでテーブルの上の2台のラジコンカーを操作します。ラジコンが落ちないようにコントロールする様子が非常に緊張感があり、今後のパフォーマンスにも展開できそうでした。
【まとめ】
 今回の活動を振り返ってみてパフォーマンス構成に意識がいくようになったのは、演劇やダンスなどの舞台作家と一緒に制作するようになったことが影響しています。これまでの僕の活動は自作楽器の奏法や組み合わせのバリエーションを時間内で展開していく時間構成でしたが、今回から時間を展開させるだけでなく時間を停止・中断させる試みができるようになったと思います。時間の停滞はパフォーマンスに緊張感を与え、鑑賞者に不安感や次の展開への期待を促せる一方で、フラストレーションにもつながるので両刃の剣です。それでも現在のテーマである「間の悪さ」の面白さを表現する上で重要な手法なので、今後も「停滞」という手法を深化させていきたいです。
ーーー
1.A-Lab(あまらぶアートラボ) http://www.ama-a-lab.com/
2.存在と気配 http://www.ama-a-lab.com/files/2615/9912/5394/archive21.pdf
3.NxPC Vol.36 @金沢21世紀美術館 https://www.iamas.ac.jp/activity/nxpclive36/
4.悪魔のしるし「搬入プロジェクト」 https://www.akumanoshirushi.com/cip/
5.No-interaction
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oshimatakuromemo · 5 years
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Maker Faire Kyoto 2019
Date: 2019/05/04(Sat.)~05(Sun.) @けいはんなオープンイノベーションセンター(KICKS)
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【背景】
 京都で初めてMaker Faireが開催され、今年のメインで開発している楽器「滑琴」と映像作家の丹羽彩乃さんの視覚玩具シリーズ「象の像」を展示しました。これまで東京と大垣で開催されたMaker Faireに参加してきましたが、今回は地元の京都での初開催ということで、イベントを盛り上げる助けになればと思い、出展を決めました。今回の出展ではブース展示の他に、5/4(土)にはワークショップ、5/5(日)にはライブイベントにも参加しました。いろんなイベントに参加したので、今までのMaker Faireで一番忙しくなりました。  ワークショップは京都精華大学からの依頼で実施しました。京都で開催するMaker Faireということで大学にも声がかかったらしく、僕にもワークショップの話が来ました。ワークショップの話をいただいた時に、以前に妙伝寺で開催したShake Bugのワークショップ※1をブラッシ��アップしたものを開催しようと考えました。Shake Bugは見た目にもインパクトがあり、発音の原理もシンプルなのでワークショップに向いていると思っています。
【ワークショップ】
 今回のワークショップでは触角型楽器Shake Bugの制作ワークショップを開催しました。前回のワークショップからの変更点として、参加者の人数と学生アルバイトの人数の違いがあります。以前に妙伝寺で開催したワークショップでは参加者が4人くらいなのに対し学生6名だったのですが、今回のワークショップでは10組が一斉に参加するのに対して、予算の都合で学生アルバイト4人で運営することになりました。効率よく運営するために学生さんにはShake Bugの作り方を習得してもらう必要があると考え、4/17(水)に学生さんを対象とした学内ワークショップ「SOUNDやろうぜ」でShake Bugを制作しました。※2
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▲学内で開催したShake Bugワークショップ
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 また参加者10組分のニッパーやグルーガンといった組み立てに必要な道具を準備しました。ワークショップに必要な道具として、ニッパーによるカット工程があったので防護メガネも人数分用意しました。こどもを対象としたワークショップにおける防護メガネの必要性はオライリーの『はんだづけをはじめよう』※3を読んで勉強しました。さらにShake Bugの体験にはギターアンプが必要なので、人数分のミニギターアンプを購入しました。当初はギターアンプの自作も考えましたが、新学期と金沢でのライブ準備の忙しさのために今回は既製品を購入することにしました。経費はかかりましたが、10名規模のワークショップが開催できるようになったので、今後もワークショップでの活動も展開していきたいです。  当初はShake Bugを作った後で参加者たちと会場内を歩き回るパフォーマンスを考えましたが、ワークショップの所用時間をオーバーするため今回は実施しませんでした。Shake Bugの組み立てにかかる時間を学内ワークショップで事前に把握していたからできた判断でした。
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▲ワークショップの様子
 ワークショップ当日は学生アルバイト4名と教員の落晃子さん、それから僕の合計6名で運営しました。開始時間になっても参加者が集まらず不穏な雰囲気が漂いましたが、開始ギリギリになって親子10組が参加してくださいました。会場スタッフの方が頑張って人を集めてくださったようで本当に感謝です。参加者の年齢として小学校4年生以上を条件に掲げ、親の同伴であれば小学校低学年も参加可能としていましたが、参加者のほどんどは小学校低学年でした。こちらが想定していたよりも低い年齢層が集まったため最初は無事に組み立てができるか不安でしたが、親御さんも一緒になって子供のサポートをしてくださり参加者全員が完成させることができました。  今回は自分にとって最大規模のワークショップでしたが、スタッフを上手く動かせるようになってきて10人くらいの規模なら開催できると自信になりました。今後もワークショップの活動を自分の持ち札として切れるようになるまで洗練していきたいです。
【展示】
 先にも述べたように今回は一緒に活動しているモーショングラファーのにわあやのさんと展示しました。にわさんは視覚玩具のシリーズ作品「象の像」と題して、ストロボライトと回転盤を組み合わせた玩具を始め、板が回転することで異なるイラストが重なって見えるものなどを展示されました。それぞれの視覚玩具はシンプルな原理ですが、動物の象をいろんなイメージ(像)として表示します。
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▲象の像
 僕はスケートボードとエレキギターを合体させた楽器「滑琴(かっきん)」を展示しました。今年は助成金をいただいて滑琴の開発を進めており、Maker Faireには技術に詳しい人からのアドバイスをいただいたり子供たちのリアクションを確かめられる貴重な機会です。
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▲滑琴の展示の様子(K.A.さん提供画像)
 僕とにわさんの展示は��造こそシンプルですが少し頓智の効いた作品となっており、技術者の価値観がメインストリームになりがちなMaker Faireにおいて浮いた展示になれば良いなと思いました。Maker Faireの展示に参加して良い点として、何度も自作について説明するのでプレゼンが洗練されるという点が挙げられます。僕たちの展示も最初はカオスな展示だなと思っていましたが、何度も説明するうちにお互いの作品の共通項が見えてきて必然性を帯びたプレゼンが可能になりました。今後も挑戦的な作品こそMaker Faireに出して来場者からの素直な反応を楽しめるようになりたいです。
【パフォーマンス】
 ワークショップへの参加を決めたので、当初はライブイベントに参加する予定はありませんでした。しかし運営側からライブイベントへのお誘いをいただいたので、僕を必要とする人がいるなら是非とも出ようと決めました。ライブではせっかくなら展示をしている滑琴を使ったパフォーマンスを実施しようと考えました。滑琴の演奏は本来なら路上でのパフォーマンスを考えていましたが、今後の活動を考えて室内でもパフォーマンスできた方が良いと判断して、ステージでの滑琴の演奏に挑戦しました。
 当日は多忙を極めてパフォーマンス内容を十分に考えないまま始めました。まずは自分のペースに持ち込もうと思い、会場を茶化すようなことをしようと考えていました。偶然にも会場の椅子に謎のボタンが付いていたので会場アナウンスで観客にボタンを押してもらうことにしました。もちろんボタンを押しても何も起きないのですが「何も機能しないボタンが椅子に付いているという状況の可笑しさ」を観客と共有する意図がありました。つまり、これから始まるパフォーマンスも椅子のボタンと同じように無意味なものだが、その奇妙さこそが可笑しさであると了解してもらうための誘導でした。私は「パフォーマンス空間における観客と出演者の間で暗黙のルールを結ぶこと」を「共犯関係を築く」と呼ぶようにしています。うまく伝わったかは不明ですが、次に同様の機会があれば共犯関係を築く技を洗練させたいです。
 室内で滑琴に乗るパフォーマンスは窮屈なものになってしまい、個人的には納得できるものではありませんでした。それでも無理にでもパフォーマンスの中で新しい楽器を使っていくことは自己破壊につながり、新たな創作のダイナミズムを生むでしょう。
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▲パフォーマンスの様子
【反省と今後の展開】
 自分の活動拠点である京都で開催される初めてのMaker Faireということで、展示にワークショップ、パフォーマンスと自分にできる最大限でイベントの盛り上げにお手伝いしたつもりです。1年間にいくつかのMake系イベントに参加させてもらっていますが、開催地によって来場者の顔ぶれが大きく異なることが印象的でした。京都に住んでいながら京都の音楽やアートシーンへの繋がりが希薄なので、今後はMaker Faire Kyotoの出展をきっかけとした活動の広がりが得られるとよいなと思いました。  最後に、おおさか創造千島財団※4からの助成金を受けた滑琴の活動を改めて整理して、これから1年間の活動に見通しを立てられたことが良かったです。Maker Faireは定期的な活動進捗の確認の場として、自分のポートフォリオをまとめる機会としても働いています。ただ反省点としては、作品の見せ方として実際に乗ることができず、滑琴をテーブルの上に置いて弦を指で弾いてもらう展示になっていました。これでは単なる普通のギターを同じ体験です。これからMaker Faire Tokyoなどもあるので、もっと滑琴の魅力が伝わるような展示方法を考えていきます。終
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▲指で滑琴に触れてもらう様子
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参考URL
1.音の間にいらっしゃい 〜触角で聴く音の世界〜 京都のお寺・妙伝寺で開催された岡崎ワールドミュージックフェスタ2017にて、Shake Bugのワークショップを開催した。 https://www.iamas.ac.jp/activity/okazaki-wmf2017/
2.SOUNDやろうぜ vol.17 Shake Bug 触角で聴く音の世界 https://www.youtube.com/watch?v=BDe3gytR5C4
3.Marc de Vinck著、テクノ手芸部監訳、鈴木 英倫子訳『ハンダづけをはじめよう』オライリー・ジャパン https://www.oreilly.co.jp/books/9784873118529/
4.おおさか創造千島財団 for U30 http://www.chishimatochi.info/found/service/3467/
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oshimatakuromemo · 5 years
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NxPC. Live vol.36
Date: 2019/04/20(Sat.) @金沢21世紀美術館シアター21
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【背景】
体験拡張環境プロジェクトNxPC.Lab(以下、NxPC)※1の金沢21世紀美術館でのイベントに出演しました。NxPCはクラブイベントでの新しい体験を探究するIAMASのプロジェクトで、これまでもアプリと連動する演出やVRライブを実現してきました。僕が初めてライブパフォーマンスしたのはIAMAS在学時に参加したNxPCのイベントでした。NxPCは、IAMASの学生にとって実験的な活動ができる場となっています。 今回のイベントはIAMASの伏田昌弘さんが中心となって取りまとめてくださいました。伏田さんとは僕の卒展(IAMAS2017※2)で出会い、伏田さんがIAMASに入学してからもIAMASでのイベントなどでお会いした際によく声をかけてくださいました。昨年のIAMASの卒展(IAMAS2019※3)を見に行った際に、レセプションパーティーで伏田さんに「ライブイベントがあれば呼んでください」と無理を承知でお願いしたところ、ちょうど今回のイベントを準備されていたところだったらしく、僕を金沢に呼んでいただきました。
今回の会場である金沢21世紀美術館にはシアター21という劇場があります。この劇場は半年前に予約をすれば誰でも借りられるらしく、伏田さんは半年前から今回のイベントの準備していたのです。またFM石川の番組に出演するなど積極的に広報活動をされていました。伏田さんはIAMASに来る前に石川県で活動されていたので、今回の石川でのイベントでは段取りよく準備されていました。
今回のイベントにはゲストとして呼ばれたので少しプレッシャーがありました。そのため、普段通りのパフォーマンスではない、なにか特別な演出をしようと考えました。NxPCは映像とDJ音楽を中心としたダンス系の���ベントなので、自分のパフォーマンスがイベントにそぐわないことは予想していました。そのことを利用して、場の環境やルールに従いながらも少しズレたパフォーマンスを提示することで、よりマッサージ的な効果が得られると考えました。ダンス系のイベントではVJによるプロジェクションがイベントを盛り上げます。この慣習を利用して、僕も映像を使ったパフォーマンスを構想しました。
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▲過去のNxPCイベントの様子
映像を使った表現を行う上で「ビデオフィードバック」と「語りによるドキュメンタリー」を意識しました。ビデオフィードバックに興味を持ったのは、最近一緒に活動しているYüiho UmeokaのVJパフォーマンスを見て、ライブでないと実現できない表現としてビデオフィードバックは良い技法だと思ったからです。今回挑戦したビデオフィードバックは、カメラの映像をプロジェクターを使って会場に投影し、投影された映像を再びカメラで撮影することで合わせ鏡のような表現ができます。こうしたビデオフィードバックによって作られた映像は、あらかじめ準備された映像ではなく、リアルタイムで何が起きるかわからない点においてライブでないと実現できない表現だと言えます。特に僕のパフォーマンスでは動きのあるモチーフが多いので「ビデオフィードバック映え」すると考えました。
youtube
▲Yüiho Umeokaのビデオフィードバックを使ったパフォーマンス
また語りによるドキュメンタリーについては、杉山雄哉の映像作品を参考にしました。杉山さんの作品は、インスタグラムのタイムラインを見ながら写真にコメントをする様子を記録した1時間ほどの映像です。それらの映像の大半は鑑賞者に向けられた言葉ではなく独り言に近いシーンが多いのですが、1時間という長尺にも関わらず不思議と鑑賞できる強度があります。例えば、ネット配信動画で「ゲーム実況」という分野があり、配信者はゲームをしている様子をキャプチャしてコメントを言ったりして、見る側は自分でゲームを進めるわけでもなく、他人がゲームを進める様子やコメントを受けるだけですが、こちらも杉山さんの作品と同じように見続けることができます。おそらくインターネット環境の普及によって、一人での語りや文脈のない話にも対応できる体を習得しているからかもしれません。今回のパフォーマンスでも僕の独り言を観客が眺める構造を意識しました。
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▲杉山雄哉の再録/再鑑シリーズ
【準備】
今回のドキュメンタリーのテーマとして、ライブ当日までの準備の様子を記録することにしました。ライブでは「今ココ」でしかできない体験が強調されがちですが、ライブまでの準備の期間や終わってからの高揚感もライブの醍醐味です。クリストファー・スモールの『ミュージッキング』※4という本では、会場に椅子を並べることやライブ後に会場を掃除することも音楽行為(ミュージッキング)の一部だと提唱しています。ドキュメンタリーではライブまでの準備の期間や、ライブ後のありえるかもしれない将来の様子(!?)を描写して、ライブにおける「今ココ」だけでなく、もっと広い時間軸でミュージッキングしている様子を示しました。
4/2から映像を撮り始めましたが、途中から勤務先の大学で新学期が始まり、時間の確保が難しくなるとパフォーマンスの準備だけではなく普段の仕事の様子を撮影するようになりました。ただ撮影の途中でパフォーマンスの準備の映像よりも普段の仕事の様子の方が増えてしまい、ライブ会場で上映しても当初の意図からズレると思いました。そのためドキュメンタリーの展開に編集を加え、仕事が忙しくて映像が撮れなかった、という方向に修正しました。こういう既成事実を編集によって編み出す手法をフェイク・ドキュメンタリーと呼ぶのでしょうか(勉強してみます)。
僕のパフォーマンスでは使用する機材が多く、搬入・搬出に時間がかかります。DJのパフォーマンスでは、前のDJが鳴らしていた曲をつないで会場の音楽を止めずにパフォーマンスを始めます。そんなイメージでドキュメンタリーの映像を搬入・搬出の時に流して、会場の雰囲気を止めない工夫をしました。 また搬出の時に流す映像として、4月31日のドキュメンタリー映像を用意しました。イベント当日が4/20なので、今後ありえるかもしれない未来の僕を録画したフェイク映像です。また本来4月は30日までしかないので、4月31日の映像という点でもフェイクだと言えます。ひとり平成の時代に残された男を演じました。
音の面での工夫として、荷物を減らすためにギターアンプを持参せず、会場のPAで鳴らしました。僕の考えではギターアンプは演者の身体に合わせて積極的に音へ色付けを行う道具であり、音を身体化させるという点で楽器の一部です。一方でPAは演者の鳴らした音楽の「原音」を忠実に再現して拡声することが求められる点でギターアンプと異なります。会場のPAを通して音を鳴らす場合、PAエンジニアに音を預ける印象があり、できるだけ自分で音をコントロールしたいという欲望からギターアンプを使ってパフォーマンスしていました。ただ大きな会場でのパフォーマンスでは僕の持っているギターアンプでは音量が足りず、またアンプを持参すると電車での移動が大変になるため、今回はPAを使うことにしました。
【当日】
前日から金沢に宿泊してカプセルホテルの中で映像の編集を行いました。仕事が終わってから京都から移動したので金沢についた時は23時ごろになっていて、また当日も朝からリハーサルがあったため金沢を観光している余裕はありませんでした。 現場に着くとIAMASの学生さんが機材の搬入やリハーサルをしていました。僕のリハーサルの時間までは余裕があったので、本番前に流す映像素材として当日の様子を撮影して編集しました。リハーサルは15分ほどしかなかったので、ミキサーからPA宅への接続やラジカセやFMトランスミッターの音量の調整を行い、楽器の動作はチャックしませんでした。またパソコンやカメラからの映像出力もビデオミキサーにつないで確認しました。 本番まで時間があったので美術館近くの「ターバンカレー※5」に行きました。何も情報を持たずに行きましたが有名なお店だったらしく、安いのにボリュームたっぷりのカレーでした。今回の旅行では金沢観光はできないと思っていたので、少しでも金沢らしいものに触れ合えて嬉しかったです。
イベントが開始されると直ぐに会場はお客さんでいっぱいになりました。少し集客に不安がありましたが、イベント中は常にお客さんの出入りがありました。これは演者としては嬉しいことです。 今回のNxPCは転換に時間が取ってあったので、DJイベントのようにパフォーマー同士が音をつなぐのではなく、パフォーマンスイベントのように場面の切り替えがはっきりとありました。転換中にお客さんがいなくなるシーンが目立ったので、前のパフォーマーの間に次のパフォーマーが準備できた方が良かったのかもしれません。
多少の機材トラブルはあったもののイベントが無事に進行し、僕の出番になりました。最初にミキサーとPA卓を接続して、次にビデオミキサーにも接続してから編集したオープニング映像を流しました。 オープニング映像を流している間にプラレールのセッティングを行いました。セッティング中は気づかなかったのですが、どうやら映像のコントロールパネルの上にパソコンのマウスカーソルを置いていたので、映像の途中までコントロールパネルが表示されたままになっていました。そのことに在校生の兼城さんが気づいてくださり、咄嗟の機転でカーソルを動かしてコントロールパネルの表示を消してくださいました。 オープニング映像の構成として、冒頭は新年号「令和」の話題に触れつつ、今回のパフォーマンスの狙いを作家自身の語りで述べるシリアスな展開です。ただ途中から当初の計画が崩れて、毎日活動するはずが仕事に忙殺されてグダグダになっていく様子を描きました。プロセスワークはルールを貫徹してこそ意味も持ちますが、実際に仕事をしながら活動する上での困難や計画が崩れてももう一度やり直すことの大切さを伝えたくなりました。 僕もルーティンワーク的に活動をすることが多いですが、実際には毎日活動できない体験をすると、あまり潔癖になってルールを守ることよりも挫折や失敗を許容する寛容さが個人活動では大事であると知りました。こうしたマインドは、仕事と自分のやりたいことを両立させるための奥義だと思います。
オープニング映像が流れている間に機材をセットして演奏を始めました。今回の演奏で印象的だったことはPAから流れる音が非常に迫力があった点です。これは会場の音響機材が良かったことも要因ですが、なによりPAエンジニアの技に支えられたことが大きかったです。 バイオリンセクトというバイオリンに触角とタイヤが生えた自走楽器では、触角の振動をアンプで増幅して発音します、大きな音量であるほど迫力があって良いのですが、マイクでセンシングしているため会場の音を大きくしすぎるとハウリングが起きてしまします。今回のパフォーマンスでも最初はハウリングが起きていたのですが、途中から全く起きなくなりました。今回のパフォーマンスではPAエンジニアのタケベさんが周波数をモニタリングされていのですが、おそらくハウリングしている特定の周波数をカットしてくださったのだと思います。 その後もラジカセを使ったプラレールの演奏でもラジカセ特有のヒスノイズが軽減されていた(ように感じた)ので、これも特定の周波数にフィルターをかけていただいたのかもしれません。これまでPAエンジニアとの協力を避けていた自分にとって、エンジニアの力を借りることでより良いパフォーマンスになるという発見は今回のイベントで一番の収穫でした。 パフォーマンス後にタケベさんに話を伺ったところ中学生のころからPAエンジニアに憧れがあったそうで、やっぱりそういう人が飛び抜けていくんだなぁと納得しました。どの現場にも技術のある方がPAをされるわけではないと思いますが、会場スタッフさんとの協力でより良いものに近づけていく努力も忘れてはいけませんね。
パフォーマンスが終わ���て撤収作業の間にエンディング映像を流しました。エンディングでは「パフォーマンスは盛り上がったと思う」などのポジティブな(少しフェイクな)内容をコメントして、映像メディアの向こうでは役者が勝手な意見を言う構図を意識しました。この構図は寺山修司の映画「書を捨てよ、町に出よう※6」の冒頭部分を参考にしました。「書を捨てよ」では主人公が映画館にいる鑑賞者に向かって、映画館や劇場という装置の構造を暴くような言葉を述べます。僕の映像の中で述べた「パフォーマンスは盛り上がったと思う」という発言は、鑑賞者はパフォーマンス内容に関係なくその言葉を一旦受け止めるしかありません。
これまでパフォーマンスでは、パフォーマーが鑑賞者を楽しませなければならない構造があると感じていました。鑑賞者はパフォーマンスを見て満足するか否かを判断する、とても殺伐とした関係です。しかし今回のエンディング映像があることで鑑賞者は僕のパフォーマンスを評価する裁判官でなく、僕の自己評価を認める証人になったのではないでしょうか。「パフォーマーV.S.鑑賞者」の関係をマッサージして、パフォーマンスを成立させる共犯関係を築けたように思います。
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▲パフォーマンスの記録映像
【今後と反省】
ひとまず新学期が始まるなかでしっかり準備をして、良いパフォーマンスができました。また「語り」という新しい武器も手に入れ、ひとつ自分のなかの表現の複雑さが増したように感じています。 また映像をたくさん撮ったにも関わらず、ほとんどがお蔵入りになり、さらには準備映像とパフォーマンス内容がほとんど関係ありませんでした。しかし、何かを創造することはほとんどがゴミの山を作ることかもしれません。たくさん作ったなかでほんの少しだけが陽の目を見ることが創作には避けられませんが、それを恐れずに作り続ける勇気が必要になります。とはいえ、あまりストイックに作り続けるのも苦しいですので、今回のパフォーマンスのように無駄だった行為も笑いや遊びの文脈として機能して、ユーモアへと転換できます。笑いや遊びは「どういったルールか、なんの話をしているか」を提示して、そこから脱線していく文脈のゲームですので、今後は新たな武器「語り」をユーモアを発生させる装置として活動に利用していきたいです。
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参考URL
1.体験拡張環境プロジェクト(NxPC.Lab) http://nxpclab.info
2.IAMAS2017 https://www.iamas.ac.jp/exhibit17/
3.IAMAS2019 https://www.iamas.ac.jp/exhibit19/
4.ミュージッキング https://www.amazon.co.jp/dp/4891768266
5.ターバンカレー http://www.turbancurry.com
6.書を捨てよ、町に出よう https://blog.goo.ne.jp/masamasa_1961/e/1767b8b6492572a031bb71c6d061c358
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oshimatakuromemo · 5 years
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京都精華大学展2019 角矢胡桃企画 DAY2 トーク(角矢胡桃+中田粥+おおしまたくろう)
Date: 2019/3/3(Sat.) @京都精華大学
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背景
京都精華大学の卒展でパフォーマンスする機会がありました。ポピュラーカルチャー学部の助手になってから、学部内で僕の活動を見せることは初めてなので、僕の活動を学内に知ってもらう貴重な機会です。今回のパフォーマンスは4回生の角矢胡桃さん※1の卒制企画の一部として開催されました。前日の16日には語り弾きの女性アーティストを中心に構成されていましたが、今日は中田粥さん※2と僕が呼ばれてノイズ中心の構成でした。
準備
パフォーマンス内容は機材を持っていくときに大体決め、細かい流れは会場の雰囲気に合わせて即興的に変えます。今回は角矢さんの展示ブースでのパフォーマンスだったので、角矢さんが展示で使用していたCDプレイヤーをいくつか拝借してパフォーマンスすることにしました。 パフォーマンス内容としては本来CDを再生するための機械であるCDプレイヤーを演奏の楽器として使用しようというものです。このアイデアは、音響メディアに固有の沈黙とテーマに友人たちと一緒に活動していた流れから派生したものです。友人との活動では、ラジオが受信できていない時のノイズやラジカセのヒスノイズ、CDプレイヤーのモーターの回転音などをマイクでピックアップして録音しました。今回のパフォーマンスでは、CDプレイヤーのモーターの回転音や、ループ再生時のCD読み取り機構の動きをピックアップしてアンプで鳴らすことにしました。 こうした本来音響メディアを再生するための装置を演奏に使うというアイデアはChristian Marclayの"Ghost (I don't live today)"というニューヨークのクラブ「キッチン」で行われたパフォーマンスが元になっています。このパフォーマンスはレコードに記録された音を忠実に再生することが求められるターンテーブルを演奏のために使用します。ターンテーブルのアームを持って押し付けたり、レコードを激しく回転させることで、まるでエレキギターのようなノビのある音を鳴らします。当時のパフォーマンスではJimi Hendrixのレコードを使用して、Jimi Hendrixのようなアグレッシブな演奏を行いました。
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▲Ghost (I don’t live today)
当日
当日は午後からゆる〜くリハーサルを始めて、14時には客入りを行いました。流石に角矢さんも中田さんもリハーサルに慣れているのでリハも直ぐに終わり、自分だけ機材が多いためか、セッティングに時間がかかってしまいました。
オープニングは角矢さんのマイクのハウリングを用いたパフォーマンスが行われました。エフェクターの繋がれたダイナミックマイクをギターアンプやベースアンプに近づけることで力強い低音が鳴り響いていました。前日のパフォーマンスではドリフトボックス※3を使ってパフォーマンスをしていましたが、今回はシンセに触らずマイクのハウリングだけをインプ���トにしていました。角矢さんによると対バンが僕と中田さんなので、普通に良い音を鳴らすだけではダメだと思い、直前にマイクのハウリングというアナログな原理を使ったパフォーマンスに決めたそうです。おそらく僕と中田さんが電子楽器を使いながら物質性や身体性を感じさせるパフォーマンスをするので、手元で音を作るシンセサイザーよりもマイクのハウリングの方が2人のパフォーマンスとマッチすると考えたのかもしれません。確かにパフォーマンスではマイクの動きに合わせて音域が変化していました。 本番前にパフォーマンス内容を変更できる点にライブへの慣れと度胸を感じます。単純にライブの本数は僕よりも圧倒的に数が多いので、現場で培った力が発揮されていました。ただ途中で学生対応のために現場を離れることになり、パフォーマンスを全部を見れなかったのが残念でした。助手の悲しい運命(さだめ)です。
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▲ヨガのようなポーズでマイクを構える角矢胡桃さん
次に僕の番になりました。僕の出番になるとオープンキャンパスで学校を見学に来てくれた女子高生たちが見てくれました。角矢さんがイベントを開催する前に目的として「若い人にいろんな音楽を見て欲しい」と言っていたので、まさに目標達成した瞬間でした。 パフォーマンス内容は最初にCDプレイヤーからCDの音源を使わずに音を鳴らし「演奏」しました。音の原理としては、CDプレイヤーの蓋を開いたときのカパカパ音や、モーターの振動をピエゾマイクで読み取りました。当初はテレフォンピックアップも使って磁気変化も読み取るつもりでしたが、インターネットでテレフォンピックアップが売り切れになっており、直前までの体調不良でピックアップを自作する元気もなかったのでピエゾだけでのパフォーマンスにしました。ちなみにCDプレイヤーをカパカパするアイデアはChristian Marclayではなく、ボボボーボ・ボーボボのギャグ「CDのケースをカパカパする真拳」から着想しました。
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▲CDのケースをカパカパする真拳
パフォーマンスを通して気づいたこととして、同じCDプレイヤーでもマイクの取り付け位置によって読み取る音が異なるということです。ずっと微振動する場所もあれば、定期的にリズムを刻むように激しく震える箇所もありました。CDプレイヤーの構造を理解して、マイクの取り付け位置に固有な振動をコントロールすることができれば、本当に「CDプレイヤーを演奏した」と言えるかもしれません。道具を楽器化するプロセスとは、身体化のプロセスです。目を瞑っていても手で耳たぶを挟めるように、道具が自分の体の一部として自然に馴染んでこそ演奏という領域に踏み込めるでしょう。
またパフォーマンスでは久しぶりにプラレールを使いました。久しぶりの使用だったので、プラレールも状態が悪くなっており、春休み中にメンテナンスが必要だと思いました。昨年は自分の武器でもあるプラレールをあえて使わず「脱プラレール」を合言葉に活動していました。これは自らを厳しい環境に追いやることで、新しいアイデアを考案したり、プラレールに頼らずとも強度あるパフォーマンスができるように楽器の選択肢を増やすためでした。その甲斐もあって、昨年は空き缶を使ったパフォーマンスや会場の空間の個性をハックするような発想が身につきました。今年は「再プラレール」を合言葉にプラレールを使った楽器制作を進化させます。ひとまずはプラレールを銀河鉄道のように空中を走らせる構想に挑戦します。
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▲パフォーマンス動画
次に中田粥さんが電子楽器の基盤をサーキットベディングした「バグシンセ」を用いたパフォーマンスです。バグシンセのパフォーマンスはライブで見たことがあるのですが、今回は1mくらいの近距離で中田さんのパフォーマンスを見ることができました。
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▲バグシンセ
中田さんのパフォーマンスを近くで見る中で、電子回路がパフォーマンス前からすでにサーキットベンディングされているに気づきました。電子回路に電源を入れるだけですぐに発振した電子音がなったり、他の基盤とショートしやすいように電極が伸びていたりしました。それまで回路基盤を重ねることでショートさせるバグシンセの奏法は、完全にコントロールできていない演奏だと思っていましたが、電子回路があらかじめパフォーマンス向きにベンディングされているということはある程度コントロールされた即興演奏であることがわかりました。 バグシンセをあらかじめベンディングしておくことは、DJがレコードにテープを貼る「マーキング」と呼ばれる技法と似ています。DJはレコードにシールを貼ってマーキングすることで、すぐに曲の頭出しを行えるようにしたり、レコードをスクラッチする角度を視覚化します。このようにあらかじめレコードに工夫を施すことでよりレベルの高い演奏が可能となるのです。
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▲レコードのマーキングについて
DJプレイがレコードという音響メディアを誤用した音楽のジャンルだとすると、中田さんのバグシンセも電子楽器の回路というメディアを誤用した音楽のジャンルになるポテンシャルを秘めています。サーキットベンディングが現在のようなノイズを発生させる面白楽器という扱われ方ではなく、サーキットベンディングでないと実現しない音楽があると広く認知されれば、ひとつの音楽のジャンルとしてのカルチャーを築くかもしれません。
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▲中田粥さんのパフォーマンス
3人の演奏が終わると、次は角矢さんと中田さん、僕の3人によるフリーセッションを行ないました。今回のセッションに合わせて僕は触覚型楽器Shake Bugを3台制作して、角矢さんと中田さんにお渡しして、3人で触覚の演奏を行いました。3人のフリーセッションはノイズっぽいものになるだろうと予想していたので、Shake Bugを使って空間を歩くパフォーマンスになればシュールな雰囲気になってお客さんも気軽に見れるのではないかと考えました。 実際にパフォーマンスが始まると最初のことは触覚の動きを確かめるように遠慮がちに演奏していましたが、すぐに2人のパフォーマンスの道具として利用してくれました。角矢さんはおそらく自分のエフェクターボードの入力装置としてShake Bugを使い、ギターアンプからファズの効いた音を出していて、中田さんは電子回路をショートさせるためにShake Bugの金属弦を電子回路に当てていました。
僕が用意したShake Bugですが、最終的にそれぞれの作家の特徴ある使い方を提示してくれました。楽器はあくまで道具であって、それを使って表現される音楽とは異なります。今回は角矢さんと中田さんがそれぞれの楽器の使い方を見せてくれたおかげで、Shake Bugの楽器としてのポテンシャルを確認することができました。パフォーマンス後に中田さんから、左右の触覚が回路的につながっていないから電子回路に触覚で触れてショートさせることができなかった、とコメントをいただきました。次に一緒にパフォーマンスするときは、左右の触覚を導通させたバグシンセ仕様のShake Bugを用意しても良いかもしれません。自分で楽器を作って自分で使う、いわゆる「自作自演」では知ることのできなかったヒントが得られてよかったです。今後も自作楽器はあくまで道具という観点で、多くの人に使っていただき共創的な発想で 改良を続けていきたいです。
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▲セッションの様子
一通りのライブパフォーマンスを終えた後は、休憩を挟んで3人によるトークを行いました。かなりディープな面子でのトークだったので一般のお客さんは帰ってしまい、学生さんでノイズ的な表現に興味のある子たちだけが聞いてくれました。
トークにあたってBGMがないと寂しいと思い、梱包材のエアキャップ(プチプチ)を家から持って来て、会場のみんなで潰すことにしました。会場内でお互いが任意のタイミングでプチプチと音を立てて潰せば、不思議なグルーヴが生まれるのではないか、と考えてのことです。実際にやってみると、お客さんの座っている位置などによって音の定位が変化して面白く、音量もトークの邪魔をしない程度でちょうど良い印象でした。 こうした日用品から奏でられる小さな音・弱い音に音楽的な喜びを見つける感覚は、関西に引っ越して来てPORT※4に出入りするようになってから、より強く反応するようになったと感じます。PORTはライブハウスというよりカフェに近い雰囲気で、商店街の中にあるような状況なのであまり大きな音が出せませんが、そうした環境でも実現できる小さな音量のパフォーマンスのイベントが開催されています。
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▲トークイベントの様子
トークでは角矢さんが今回のようなイベントを開催した経緯や、中田さんがバグシンセを生み出して現在の奏法になるまでの説明がありました。僕も触覚型楽器Shake Bugのコンセプトや作品が技法として世の中にインストールされる意義について話しました。 角矢さんによると彼女の企画に若い人を集められる最後のチャンスなのではないかと思い、ノイズミュージックを若い人に広める目的で、卒展でのイベント開催を決めたそうです。ノイズミュージックのポピュラリティについて、最近はアイドルがノイズバンドとコラボ(BiS階段など)したり、大友良英の活躍などで一定のメディア露出はあります。過去に比べると大衆の認知は得ていると言えますが、高校生や大学生の多くはノイズミュージックと呼ばれるような音楽のジャンルがあることさえ知りません。そこで外部から高校生や大学生が多く訪れる卒展でノイズミュージックを実際に見てもらうことで、若い人たちが新しい音楽(ノイズミュージック)に目覚めることを期待したそうです。そして若い人が初めて目にするノイズミュージシャンとして、ノイズ的でありながら見た目がポップでわかりやすいパフォーマンスをする中田さんと僕を呼んでくれたそうです。 僕はトークの中で角矢さんに、ノイズの現場に若い人が少ないことについて「問題意識」があったから今回のイベントを開催したのかと尋ねました。すると角矢さんは問題意識という意識ではなく、単純に若い人がもっと増えたら面白いと思うから開催したと答えてくれました。僕は角矢さんの答え方から、角矢さんが現在のノイズシーンを悲観しておらず、むしろこれからどんどん面白くなる可能性や期待の方が大きいのだなと感じました。それはとてもポジティブなことだと思います。角矢さんにはトークの中で、現場に立つアーティストとしての視点から現在のシーンをどのように見ているのかを深く語ってもらっても良かったかもしれませんね(次に会ったときにもっと詳しく聴いてみます)。
中田さんのトークでは、大学で現代音楽を学んでから東京で活動したのちに関西へ移住するまでの略歴を説明されました。東京では「視聴室その2」という場所で活動されていて、そこで大島輝之さん※5にサーキットベンディングという技法を紹介されたそうです。そこから自分で情報を集めて電子楽器(おそらくCasioの電子ピアノなど)をサーキットベンディングして、視聴室その2で初めて演奏したそうです。 この話で興味深かったのは、中田さんが最初から電子楽器のケースを使わずに回路基盤だけをライブの現場に持って来たという点です。サーキットベンディングでは元々の製品の外見を活かして改造することで見た目と音のギャップを楽しむような趣向があります。例えば、Kaseoさんのピカチュウのおもちゃ(おしゃべりピカチュウ)を改造した「ピカルミン」では、ピカチュウの見た目を残しながらもピカチュウらしくないノイジーな音が鳴ることから、サーキットベンディングの「元々の製品からのギャップを楽しむ」という趣向を体現した例です。しかし中田さんの場合は、そうしたサーキットベンディングの趣向を意識せずに、最初から電子回路のケースを使わずに改造した回路基盤だけで演奏活動を始めています。僕は中田さんのような「元々の製品を想起させないサーキットベンディング」に、これまでの価値観に囚われないサーキットベンディングの新しい領域が広がっているように感じます。元々の製品を想起させないサーキットベンディングの他の事例として、Kaseoさんの「神と対話するための装置」も挙げられます。プリセット音源が安価な電子ピアノを想起させるかもしれませんが、サーキットベンディングの技法を用いて、見た目はモジュラーシンセのようでありながら新しい楽器の可能性を示しています。
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▲神と対話するための装置
先にも述べたように、サーキットベンディングがカルチャーとして耕されていくためには、サーキットベンディングでなければ実現できない音楽を開拓していく必要があるでしょう。そのひとつのアプローチとして、元々の製品のイメージに依存しない、電子回路のマテリアル性に着目した作品が増えていく道がある思うのです。
まとめ
イベントが終わってみれば、ディープな内容でしたがパフォーマンスは幅広い層に見てもらえたので角矢さんの「若い人を集めてノイズを聴いてもらう」という目的は達成されたのではないでしょうか。特に女子高生たちが僕たちのノイズミュージックを聴いて何を思ったか気になります。パフォーマンス後にお客さんにインタビューやアンケートをしても良かったかもしれません。
個人的にはライブを行うだけでなく、コラボレーションやトークを開催してマイナーな音楽の魅了を伝えようとする姿勢がイベントに厚みを与えていました。今後も今回のような厚みのあるイベントを開催していきたいです(後日、トーク内容を文字起こしして公開する予定です)。終
1.角矢胡桃 関西を拠点に活動する若手のノイズミュージシャン。今年は卒制として制作したファーストソロアルバムを発表。 https://www.kurumikadoya.com
2.中田粥 電子楽器の基盤を丸ごと取り出してサーキットベンディングした「バグシンセ」を発表。バグシンセ同士を積み重ねることで予測できない音を鳴らす。 http://www.kayunakada.com
3.ドリフトボックス 大阪のシンセメーカーREONの看板商品。過激なノイズを出すことができる優秀なマシン。一方で誰でも同じような音になるため用量用法を気にして使うことが肝。 https://www.minet.jp/brand/reon/top/
4.PORT 米子匡司さんが共同運営されているギャラリーカフェ。野外パフォーマンスのイベントPARADEも米子さんと中田さんで毎月開催されていました。 http://shikanjima-port.jp
5.大島輝之 まだお会いしたことのない方ですが、かなり幅広い活動をされている印象です。 https://hello.ap.teacup.com/ohshima-sim/
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oshimatakuromemo · 5 years
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けいはんな科学体験フェスティバル2019「モーション・ソニック・コースター」
Date: 2019/01/26(Sat.) @けいはんなプラザ
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・背景
最近の大学では地域と連携することで、大学内に閉じこもって研究するのでなく、社会との関わり合いの中で活動する流れがあります。IAMASでもRCICという部署が、そうした地域との関わりの入り口になっていましたが、京都精華大学では地域連携センターという場所があります。 今回はその地域連携センターから僕のところに「けいはんな科学体験フェスティバル」※1での小学生を対象にした科学教育に関するワークショップの依頼が来ました。元々はポピュラーカルチャー学部の落晃子さんに依頼があったそうですが、授業の兼ね合いで参加することが難しかったため、昨年度に市内でワークショップを開催した経験のある僕を紹介してくださいました。僕自身も12月から特に活動の予定もなかったことと、ワークショップという活動形態に興味があったことからワークショップ依頼を受けました。 昨年度開催した「音の間にいらっしゃい 触覚で聴く音の世界」※2では、楽器の制作をメインの体験にしたものの、楽器を使った体験のデザインが上手くできていませんでした。そこで今回は楽器を作るのではなく、楽器を使った体験に重きを置くことにしました。前回のワークショップで楽器制作のデザインを学んで、今回のワークショップで体験のデザインを学ぶことができれば、次の機会にその両方を兼ね備えたワークショップが設計できるようになると考えたからです。
今回のワークショップは落さんのご紹介で京都精華大学芸術学部の映像コースの平野砂峰旅さんと一緒に設計することになりました。平野さんは小型の加速度センサーとMax/MSPを組み合わせて、オブジェの動きを音に変換するシステムを構築されており、今回はこのシステムを利用してワークショップを設計することになりました。 はじめに平野さんから「Sphero Mini」※3という内部に加速度センサーやモーターを内臓した球型のロボットを見せていただき、ロボット内部の加速度センサーの情報を読み取ってMaxで音にする仕組みを見せてもらいました。
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▲Sphero Mini
そこでロボットを使ったアイデアとして、坂道に球型のロボットを転がして加速度をセンシングして音楽を奏でる作品を思いつきました。坂道はワークショップ参加者が自由に組み立てることで、参加者それぞれに個性的な音楽が奏でられ、それぞれの坂道は音の構成を決める楽譜とみなせます。このアイデアの前例として、DocomoのCMの「森の木琴」やAnimusicの一連の作品が挙げられます。これら先行作品の面白い点として、モノの動きと音の発音の関係性が直接的に理解できることで、音が鳴ることの根源的な喜びや関係性が生み出す複雑さを丁寧に描いています。一方これら先行作品との違いとして、音の発音の契機を加速度や動きに設定することで「普段意識しない加速度の変化を音として聴き取る」体験ができると考えました。
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▲TOUCH WOOD SH-08C「森の木琴」篇
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▲"Pipe Dream" - Animusic.com
作品を開発する上で初めから車のエンジン音やピアノの音などの具体的なモチーフを定めるのでなく、サイン波のような抽象的なイメージで開発を進めることになりました。これは初めから具体的なモチーフで定めるとアイデアがモチーフに引っ張られることを防ぐためであり、抽象的なイメージで開発することで後から様々なモチーフやデザインを被せることができると考えたためです。つまり、今後の活動に展開の可能性や余白を残したプラットフォームを開発することを意識しました。
・準備
平野さんが加速度センサーから音に変換するプログラムを開発する間に、僕はワークショップのデザインや坂道を組み立てる仕組みを考えました。まずは「科学体験」をテーマにしたイベントに参加するので、「科学」をどのように「体験」できるかを考えました。 ワークショップのテーマとして考えていた「速さ」は小学生の高学年で学び、「加速度」は中学生で学ぶため、どの程度現象や原理を説明するか悩みました。はじめに速さの概念を口頭で伝えても短い時間では理解が難しく、ワークショップとして頭でっかちな印象を感じました。そこで今まで自分が受けてきた面白いと思うワークショップを思い出し、はじめに作品制作などの手を動かす作業を行い、その後で原理を知る構成にしました。このように設計したきっかけとなった2つのワークショップがあります。
はじめにIAMASで城一裕さんがプロジェクトのなかで「紙のレコード」のワークショップ※4を開催した時が印象に残っています。城さんは最初に紙のレコードの作り方を紹介して、参加者と一緒に完成まで作ります。完成した紙のレコードは実際にターンテーブルで鳴らして遊び、その後にレコードから音が鳴る仕組みを紹介して紙のレコードの意義や狙いを伝えます。 もう一つのワークショップ体験は、昨年に岐阜県美術館で開催された展覧会「みる こころみる かえりみる」※5で行われた会田大也さんのワークショップです。この展覧会はIAMAS時代の担当教員だったクワクボリョウタさんと会田大也さんの共同展示です。クワクボさんが主催するプロジェクト「あたらしいTOY」の作品が展示された美術館内で、合田さんのワークショップの成果物が増えてゆき、展示期間を通して変化し続け、来場するたびに作品同士の新たな関係性に気づくことができる展示です。僕は「パスタ建築ワークショップ」というパスタにグルーガンを使ってタワーを作るワークショップに参加しました。このワークショップでもはじめにルールに従った制作を行い、その後で共創といった概念について学べます。 これら2つのワークショップに共通しているのが「手を動かして楽しさを体験してから、原理や狙いを学ぶ」ということです。この流れが座学的でなく、実際に原理が理解できていなくても満足度の高いワークショップを実現しています。
ワークショップの参加人数は、一度に使用できる加速度センサーの数に依存しており、平野さんが所有する加速度センサーの個数が6個だったため、数に予備を持たせるために参加人数を5人に制限しました。所要人数は20分と気持ち短めに設定しました。これはMaker Faireの出展を通して学んだことですが、ブース展示では参加者が他のブースに気を取られて集中できない環境なので長く拘束しないように意識しました。また一度に参加できる人数が5人までと少ないので、代わりに開催する回数を多くすることで全体としての参加者を増やす試みでもあります。坂道の設計では球型ロボットのSphero Miniを使う予定だったので、丸いボールが転がる仕組みを考えて、ボールがレールの上を転がるインテリアの「スペースワープ」を参考にしました。
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▲スペースワープ
スペースワープのようなレールを作るにあたって3Dペンでレールを作りました。3Dペンを使おうと思ったのは、ファッションデザイナーの津野青嵐さんが洋服の設計に3Dペンを使用しているとの情報を聞いて、3Dペンの素材の持つ丈夫さと柔軟さが様々な形をしたレールの制作に適していると考えたためです。
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▲津野青嵐さんの作品
またレールの構造はMaker Faireで小型のマーブルマシンで有名なdenhaさんを参考にしました。denhaさんの2本の直線レールに小さな曲がったレールを取り付ける作り方が、3Dペンによる立体物の作り方と相性が良いと考えたためです。3Dペンでは立体物を作る場合に、いきなり空中に立体造形できるわけではなく、はじめに地面で基礎となるパーツを出力して、それらを組み合わせて立体物を作ることが一般的です。そこでdenhaさんの作り方に倣って、直線レールを3つ出力してから小さく曲がった補強用のパーツを出力して、最後にそれらを組み合わせてレールをつくりました。
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▲3Dペンによる立体造形の手順(地面で平面パーツを出力して、組み立てることで立体物にする)
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▲denha’s channel(レールの組み立て方)
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▲3Dペンで制作したレール
レールの固定には、竹ひごとミノ虫クリップを組み合わせた持ち手を使いました。ミノ虫クリップでレールを挟み、竹ひごをテーブルの上に置いた油粘土に刺すことで倒れることを防ぎます。Sphero Miniのケースを平野さんからお借りして実験すると上手くレールの上を転がったので、この方式で開発を進めることにしました。
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▲主催者に送った展示作品の広報用写真
しかし、その後の平野さんとの打ち合わせの際に、Sphero Miniの中に加速度センサーやモータなどの内部機構を入れて転がしたところ、Sphero Miniの重量が大きくなってしまい、レールがSphero Miniの転がる衝撃に耐えられず倒れてしまいました。ちゃんと実物と同じ条件で実験や試作を行うべきでした...。 そのため急遽レールの設計を見直して、僕が普段から作品で使用している「プラレール」を使って坂道を作ることになりました。レール素材の変更に合わせて、球型ロボットのSphero Miniもプラレールの上では脱線してしまうため今回は使用せず、新たなに円筒形のケースに加速度センサーを入れて転がる加速度をセンシングすることにしました。無印良品の円筒形の化粧品ケースが加速度センサーを入れるのにちょうど良いサイズで、さらに化粧品ケースの高さがプラレールの幅に近かったことから、厚紙で作られた車輪を底面に取り付けて、���がした時にプラレールから脱線しないようにしました。
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▲プラレールと新しいケースによる実験の様子
プラレールと化粧品ケースによる実験を行なったところ、レールの上下運動のアグレッシブさは失われたものの安定した動作が得られたことから、プラレールと化粧品ケースによる開発へ本格的に進みました。特に厚紙で作っていたタイヤは、レーザーカッターで制作することで正確な円形でタイヤを作ることができたため転がり摩擦が減り、より綺麗な加速で動くようになりました。私たちは化粧品ケースのことを「コロコロ転がす」というイメージから「コロ」と呼ぶことにしました。
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▲コロ(内部に加速度センサーが入っている)
平野さんによるプログラムの開発もレールを転がるさいに生じるノイズを軽減して、より正確に転がりが音に変換されるようになりました。また音色の変化も当初は実験用にサイン波、三角波、ノイズなどの音の変化のわかりやすいものでしたが、スケール感を持った周波数のコントロールやMaxのMIDI音源を再生する仕組みに変わりました。パソコン1台で最大4つまでの加速度センサーをセンシングできるので、ワークショップ参加者が合奏できます。プログラムはイベント当日まで改良してくださり、センシングした情報や音色の変化が把握できるインターフェースまで用意してくださいました。
ワークショップ前日には大学でポスター制作などに追われ、結局23時ごろまで残ることになってしまいました。ポスター制作の際は手作り感を意識してイラストレーターでデザインした部分と手で描いた部分が混ざることを意識しました。ただポスターの上に紙を重ねて貼った結果、現地に持ち運ぶために丸めた時にたくさんのシワが入ってしまいました。ポスターとして制作する際には持ち運びを考慮して、紙を貼り合わせる手法は避けるべきかもしれません。 またコロは会場で混ざらないようにひとつひとつ異なるデザインを描きました。デザインははじめにノートにアイデアを描いてから清書して、カーボン紙でタイヤに模様を写し、ポスカで着色を行いました。デザインを描く時には回転した時に模様がモアレになったり、回転角がはっきりわかる模様を意識して描きました。
・イベント当日
イベント当日は雪が降っており、無事に現地までたどり着けるか不安でしたが、電車は止まることなく無事に最寄り駅まで行けました。最寄りの家で平野さんとタクシーで会場となる「けいはんなプラザ」へ行きました。会場の近くには小学生のころに課外授業で行った「私のしごと館」があったらしく、企業などが実験的な開発を行える環境になっていました。 会場に着くと既に多くの出展者が準備を終えており、僕たちも急いで用意を始めました。会場の開場は10時からでしたが、僕たちのワークショップは現地のトラブルを見込んで12時からの開始にしていました。それでも整理券の配布のために午前中から多くの観客が僕たちのブースに並んでくれました。そのため午前中に配布を予定していた整理券は全て配り終えてしまい、僕の予想を超える来場者の人数に驚いてしまいました。
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▲会場の様子
会場にはお手伝いとして学生アルバイトとして松田哲弥くんと緒方俊太朗くんが、事務局からは有水康倫さんが来てくださいました。4回生の松田くんは会場の近所に住んでいることと卒業後の活動範囲がけいはんなプラザで開催されるイベントと重なりそうなので来てもらいました。2回生の緒方くんは少し変わったアート系音楽の活動場所としてワークショップという場を知ってもらいたかったので来てもらいました。ただ雪のために交通機関が止まってしまい、会場まで来るのに苦労させてしまいました。有水さんは度々ギャラリーフロールでの展示の際にお世話になっておりましたが、今回のワークショップでは子供や親御さんの難しい���ーンを対応していただき、整理券が無くなったときに追加で定員を増やす提案など、現場でアドバイザー的な立場で助けていただきました。
ワークショップ会場にはポスターとレールの作例、パソコン、スピーカーを設置しました。ポスターは前日の準備中には大きく感じましたが、実際に会場に置いてみると小さく感じました。パソコンにはコロの角度や音量などをグラフで表示して、コロが転がると音が鳴る仕組みを明示しました。今回のワークショップではセンサーを使うので音の鳴る仕組みがブラックボックス化することを防ぐ工夫を意識しました。コロの化粧品ケースに透明なものを使ったのは、電子回路の存在を明らかにするためでもあります。魔法のような体験を目指しつつも魔法ではないことを明示するべきでしょう。
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▲展示の様子とバイトの2人
初回のワークショップは様子見のつもりで簡単な説明をはじめに行い、すぐにプラレールの組み立て作業へ移りました。プラレールを組み立てる際に子供達にコロを渡して、レールを組み立てては音を奏でるトライ&エラーが行えるようにしました。しかしその結果、お互いの音が混ざり合って子供達は音を聴かずにレールにコロを転がすことだけに専念するようになりました。会場はお互いの音がぶつかり合うカオスな状態になってしまい、これはワークショップの体験のゴールが不明瞭が原因だったと考えました。 そこで次のワークショップから、レールが完成した子供から順番に僕たち係員に声をかけてコロを手に入れるシステムにすることで、レールの組み立て作業中に音がなりっぱなしになることを防ぎました。さらに参加者のレールが完成すると一旦全員の作業の手を止めて、順番にお互いのレールから奏でられる音楽を聴くことにしました。体験のゴールとして「お互いの音を聴く」を設定したことで、子供たちはコロを転がすことだけでなく、面白い音が鳴るようにレールの組み立て方を工夫するようになりました。
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▲組み立ての様子
・ワークショップを終えて
全部で8回のワークショップを開催して、まだワークショップ進行のデザインが未熟だと感じました。例えば、組み立てた後に「この体験は何だったのか」というカバーが不十分だったり、参加人数の制限のため兄弟全員で参加できず泣いてしまう子供に対して十分なケアができなかったことなどは反省点として挙げられます。 一方で昨年度のワークショップ※2に比べると、時間制限や作業範囲などの「枠」を設けたことで参加者の自由な発想を誘発できたことは良かった点でした。昨年度のワークショップの反省点として、参加者の自由に任せすぎて質の高い体験まで誘導できなかった点が挙げられます。まずは作例を見せたり、作業時間の「枠」を設定することで、参加者がワークショップでのルールを学習して、より応用的な表現を開発するように誘導しました。 ある意味では「管理された自由」と言えるかもしれませんが、子供たちはそうした制限の中でも僕たちが予想していなかったレールの組み立て方を見せてくれました。例えば、ある子供はレールを2段に重ねて、ビー玉スロープのように途中で方向転換する複雑な動きを発明しました。そうした新しいアイデアを発明した子供が出てくると他の子供たちもその技法を真似して、自分独自のレールの構成を考えようとしていました。
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▲二段レールを組み立てる様子
進行に課題が残った反面、前回からの反省を活かしたワークショップになったと思います。嬉しいことに今年の5月のMaker Faire Kyotoでもワークショップの依頼があったので、今後はワークショップも自分の活動の一つとして展開できるように研鑽していきたいです。終
1.けいはんな科学体験フェスティバル2019 けいはんなプラザで毎年開催される科学体験ワークショップのイベント。京都府内の大学や企業が小学生を対象とした体験的な学習のできる作品を出展する。 https://kscan.jp/science-events/festival/
2.音の間にいらっしゃい 触覚で聴く音の世界 岡崎ワールドミュージックフェスタ2017において、触覚型楽器Shake Bugを政策するワークショップを開催した。 https://www.iamas.ac.jp/activity/okazaki-wmf2017/
3.Sphero Mini https://www.sphero.com/sphero-mini
4.紙のレコード IAMASの車輪の再発明プロジェクで城さんの「紙のレコード」を用いた派生作品を制作した。デジタルファブリケーションの時代において、制作手法を作品として提案できないかという試みだった。(その後、城さんは2019/1/19の日本音楽学会と日本ポピュラー音楽学会の合同プレゼンで「他の誰も実践していないのに手法と呼ぶのは無理がある」と考え、紙のレコードを「手法」から「作品」へと呼称を改めていた。) https://www.slideshare.net/jojporg/131222-papaerecordjp http://oshimatakurodailywork.tumblr.com/post/182348086580/
5.みるこころみるかえりみる アーティストとは天才的な一部の人だけを指す言葉でなく、一般的にアーティストと呼ばれる人も裏打ちされた歴史の上に表現を考案している。その点では誰しもアーティストになれることを考えさせられる展示とワークショップが開催された。特にワークショップを通して「共創」の意識を強く考えさせられた。自分の作ったものは必ず誰かの影響を受けている。その事実と向き合える良いワークショップでした。 https://www.iamas.ac.jp/af/06/
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oshimatakuromemo · 5 years
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Ogaki Mini Maker Faire 2018
Date: 2018/12/01(Sat.)~12/02(Sun.) @ソフトピアジャパンセンタービル
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準備
僕が岐阜県で開催れるものづくりの祭典Ogaki Mini Maker Faire(以下OMMF)に出展したのは今回で二度目で、前回は2016年に開催された時にIAMASの学生として出展しました。前回の出展では、自己紹介的に自分の制作した楽器をずらーっと並べて展示しましたが、今回はもっとターゲットを絞って、今年メインに制作した「NB-606」という作品を展示しました。
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▲今年のメインの出展物「NB-606」
NB-606は車のウィンカーの点滅のずれに着目した作品で、ビジュアルは楽しそうですが体験自体は大変地味な作品です。今までもMaker Faireで展示してきましたが、来場者の反応は賛否別れます。面白いと思う人は何度も体験して着眼点の面白さを受け入れてくれますが、ウィンカーのタイミングのずれに面白さを見出せない人は全く受け入れられません。作品としては、今までウィンカーのずれという現象に面白さを感じなかった人たちに面白さを気づかせる作品にならないといけないですが、まだ作品の強度がそこまで到達していません。これからの課題です。 作品の体験が地味ということもあり、今回の展示ではプレゼンテーションのイベントに参加しました。ブースでの体験だけで判断するのでなく、作品が作られる背景を知ってもらうことでNB-606で目指した「グルーヴとは何か?」の議論が深まると期待しました。
今回の展示では新しいグッズとして、Tシャツとステッカーの開発を行い、会場で物販ができるCommercial Makerという立場で出展しました。Commercial Makerは展示するだけのMakerと違って出展料に1万円かかるため、これまではMakerとして出展していました。ただダン&レイビーの「スペキュラティヴ・デザイン」※1ではお金を使う体験の効果を説明しており、「購入できるプロダクト」というのは作者のコンセプトに消費者が賛同することが可能です。例えば、フェアトレードされたコーヒー豆を選んで買う人は公正な取引きが行われる未来像に賛同して少し高いフェアトレードのコーヒー豆を購入していると言えます。つまり、買う側の人間も企業の提供するサービスを消費するだけの受け身の存在ではなく、「何を買うか」と選択することを通して主体的に社会形成に関われるということです。反対に売る側の人間は、買う側の人間が選択できる多様な未来像を提供することを意識して製品開発に臨むべきでしょう。 この考えからできる限り僕の作品は「買える・使える状態」を目指して開発しています。今回の展示では販売する楽器を準備できませんでしたが、Tシャツやステッカーを購入して僕の活動自体を応援できる状態を目指しました。
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▲オリジナルTシャツとステッカー
���れまでのオリジナルTシャツはライブシャツをイメージしてユニクロの黒シャツにシルクスクリーンでPLAY A DAYのロゴを印刷していましたが、少し男性的なイメージが先行していたので、今回からはZineで描かれている女の子や子供のイラストをメインに配しました。デザインにあたってはデザイナーの丹羽彩乃さんにお願いしました。 ステッカーもこれまではシルバーの紙に印刷した小さなステッカーがありましたが、今回はユーモア商品として僕のマルチステッカーを作りました。とてもマニアックで誰がターゲットかわからない商品ですが、そんなPOPでありながら狂気溢れる雰囲気もPLAY A DAYのイメージにあるので、コンセプト商品として販売しました。
さらに当初はライブパフォーマンスの出演は考えていなかったのですが、OMMFの運営側からライブへ誘っていただきました。あまり人からライブに誘われること自体が少ないので、今回もライブに出演することにしました。 ライブの内容を考えるなかで、ものづくりの祭典ということでフルカラーLEDやプロジェクションによる派手なパフォーマンスが多いと予想しました。僕は以前からMaker Faireに蔓延る「目立ったもん勝ち」の雰囲気に問題意識を抱えていました。私たちはDIYの「ものづくりを通して自らの生き方を内省する態度」をもっと大事にすべきです。 私たちの世界は様々なものによって構築されているからこそ、ものを作ることは世界を作り変えることであり、個人の手の届く範囲でものを作ることは自らの生き方を自ら作り変えることなのです。これがDIYの基本態度であり、Maker Faireでも意識されるべきです。NB-606という地味な体験の作品を展示した意図も、僕のMaker Faireに対する問題意識が反映されています。一見するとなんの役に立たないものも、ものを作る行為を通して作者本人の世界を作り変える点で役に立っているのです。 そうした考えから、シンプルな仕組みを用いて見た目には地味だけど聴覚的に複雑に感じるパフォーマンスを目指しました。具体的には、生活の中でゴミとして扱われる空き缶をモータで共振させて高音を鳴らすシステムを会場内に複数個設置することで、空間内の共鳴や観客の聴く位置によって音が複雑に変化すると考えました。
当日
展示場所はサウンド・自作楽器系があつまるブースの近くで、隣のブースはサーキットベンディングで有名なKaseoさん※2でした。Kaseoさんとは昨年の秋に岐阜のFab施設「スケッチオン」で開催されたKaseoさんのトークイベント※3で出会いました。反対側の隣のブースはIAMASの現役生が運営するクラブ系のプロジェクトNxPC※4でした。NxPCは僕がIAMASの学生だったころに樽見鉄道でのライブ※5や地下駐パーティーなどの色んな機会をいただきました。またKaseoさんの隣はゲームボーイのサーキットベンディングで有名な谷浦朋文a.k.a世紀マ3さん※6でした。谷浦さんとはKD Japonでの共演以来、サウンドパフォーマンスプラットフォーム※7などで一緒に活動することが多い仲良しさんです。スケッチオンでのKaseoさんのトークでもお会いしました。そんな良く知った人たちに囲まれて幸せな展示を行いました。
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▲僕のブース
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▲Kaseoさんのブース
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▲谷浦朋文a.k.a世紀マ3さんのブース
初日はプレゼンテーション・イベントに参加しました。3月のMTRL KYOTOで行なったプレゼン資料をベースにOMMFバージョンに改良しました。プレゼンの機会を重ねることで作品のプレゼン資料が���実していくことを体感したので、今後もプレゼンの機会があれば積極的に参加したいです。 プレゼンブースでは当初お客さんが一人も居なかったので不安でしたが、プレゼン前になると10人ほどが聞いてくださいました。プレゼンではNB-606の問題意識から制作過程、考察まで述べ、さらに先に述べたMaker Faireの「目立ったもん勝ち」への問題提起も行いました。初めはコンセプトが理解されるか不安でしたが、プレゼン後の質疑応答ではいくつか質問があり手応えを感じました。質問の中身としては「ウィンカーの制御は厳密に行なっているのか?」「車の台数は難題が適切か?」という質問でした。 初めの質問に対しては、アナログの電子回路を用いているため厳密にウィンカーの点滅をコントロールすることはできないと答え、ボタンを押して体験するたびにウィンカーの点滅パターンが変わることを説明しました。 二つ目の質問に対しては、人間は「3つ以上の現象は同時に処理できない」との考えと、Roland社のリズムマシーンTR-808へのオマージュとなるように車のカラーリングを4色とし、現状では車の台数は4台で設計している旨を説明しました。現象の同時処理については、クワクボリョウタさんが「10番目の感傷」を設営するなかで影が3つ同時に交差しないように配置しているとの話を聞いて、鑑賞者を作品に導入したり混乱させたりする際に意識するようになりました。今回の作品では、3台のウィンカーが点滅するまでは音と光の関係性を把握できるものの、4台同時に動作すると追えなくなり鑑賞者は音を頼りにグルーヴを感じることになります。 今回のプレゼンイベントでは来場者から質問が出たのは僕が初めてだったそうです。そういった意味では作品のコンセプトがうまく伝わったようで良かったです。
OMMF2018の2日目は午前中からオープンしました。昨日に比べて午前中は来場者が少ないので、このタイミングに他の出展ブースを見にいきました。 今回の展示ではIAMAS関係者が多く出展しており、同級生のブースもありました。エムノ※9はハードウェアデザイナーの宮野有史とソフトウェアデザイナーの松野峻也からなるユニットです。エムノとは今年の大阪で開催されたMakers Bazaar Osaka 2018※10で販売していた「CHAKUYO-BAKO」の改良版を展示していました。今回の展示品では、新しく購入した光造形式3Dプリンターでケースを出力したそうです。制作の様子はエムノのホームページ(https://emno.work)で見ることができます。
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▲エムノ
また特別支��学校内で3Dプリンターなどを使って教員や当事者が自ら自助具を作る活動を支援する団体「教材自作部」※11の展示もありました。教材自作部は同級生の篠田幸雄さんが運営する団体です。今回の展示では音符の形と音の長さを体験する道具が新たに展示されていました。 障害福祉施設への出入りを繰り返すうちに、障害に合わせた製品への多様なニーズがあることに気づき、それらのニーズを叶える手段としてデジタルファブリケーションに着目したそうです。例えばハサミのデザインについて考えると、障害者によって握力の個人差が大きくあり、個人の身体性に合わせた製品開発は一般企業では対応できません。そこで様々な握力に調整可能なハサミを開発して、製造データを共有すれば、障害者個人に合わせた道具が入手できるようになるのです。 決してキャッチーな活動ではありませんが、個人的な気づき(障害者のたようなニーズと手段としてのデジタルファブリケーション)を起点とした篠田さんのものづくりは、僕の考えるDIYの態度「ものづくりを通して自らの生き方を内省する態度」を実装した良い活動です。実際の現場に足を運びながら新しい作例を生み出す教材自作部の活動に今後も注目していきたいです。
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▲教材自作部
またIAMASの後輩たちも多く展示していました。全部は紹介できませんがいくつか紹介すると、僕の一つ下の学年で卒業した加藤明洋さんの「TRUSTLESS LIFE」※12はブロックチェーンをテーマにしたボードゲームです。ブロックチェーンの技術への理解はもちろん、ブロックチェーンが普及した際の「信頼」をベースにした身の振り方などが体験できるそうです(ちょっと難しくて、僕はシステムをすぐに理解できませんでした。)。最近はいろんなデジタル系コンペで受賞していて1日目もISCAの展示で神戸に行っていたそうです。今後も活躍して欲しいです。
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▲加藤明洋さん(卒業後にすごくヒゲが伸びてた…)
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▲TRUSTLESS LIFE
IAMAS在校生の展示ではヒョロ・ちび・wifeの「ブンブンビンビンブン」※13という作品がありました。この作品では3人の在校生が制作に関わっており、それぞれが得意なプログラム・音響・アニメーションを組み合わせたものです。 アニメーションの中ではベルトコンベアにシシトウが流れており、映像の中の作業員はシシトウ以外のものを取り除く作業をしています。時々ピーマンが流れてくるので、鑑賞者はボタンを押して作業員にピーマンを取り除く命令を出します。ループアニメーションの中に鑑賞者がインタラクティヴに関わるシステムはUnityで制作しているようです。 自身もIAMAS在籍時は他の分野の学生とコラボして活動していたので、昔の自分と重ねて見ていました。また作品コンセプトを伝えるために小冊子を用意しており、これも自分がZIneを作っていることと重なり印象的でした。展示も謎な人型パネルがあって奇妙でした。
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▲ブンブンビンビンブン
2日目はNxPC Lab.のパフォーマンスイベントがあり出演しました。当初はミニマルな展示で運搬する道具も少ないと思っていたのですが、パフォーマンスの機材を準備していたら結局いつもと同じ量の道具になってしまいました。
今回は道具の量を減らすためにプラレールと洗濯台という2つのメイン機材を使いませんでした。その代わり、最近実験している空き缶をモーターで擦ってドローンを鳴らすシステムを持参しました。劇場空間では地味なパフォーマンスだったかもしれませんが、今回は非常にリラックスした良い状態でパフォーマンスできました。決して適当に演じた訳ではありませんが、余計な力が入っておらず、淡々とシステムを組んだ今回のパフォーマンスは、自分自身も観客の視点に近い客観的な聴覚に基づいてパフォーマンスできたように感じたのです。 今回のようなドシンとした態度は、IAMASというホームグランウンドも関係しているかもしれませんが、夏から新しいパフォーマンスを模索して挑戦を続けてきた一つの現れかもしれません。今後、自分はどんなパフォーマンスができるようになるのか楽しみです。
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▲NxPCでのパフォーマンスの様子
展示を終えて
OMMF2018を終えて、抽象度の高い作品を意識して展示しましたが、来場者からの反応が鈍く、「本当にこれで良かったのだろうか」と思う時間が多かったです。勢いや目立つことが優位な社会背景を受けて、Maker Faireへの問題提起のつもりで展示しましたが、他の展示を見ていると来場者を笑顔にする展示の方が素晴らしいようにも思えるのです。 しかし、そのように考える時間の中でも確かに届く瞬間があると嬉しいものです。とある女性は体験自体は地味でもNB-606が「日常の中のささやかな風景」に着目して綺麗に展示していることに感動したと感想を言ってくださいました。また別の来場者は、僕のZIneを見て彼女の企画するイベントへの参加を誘ってくださいました。今回の展示を通して、少ない人数ではありますが、僕の活動が誰かに届いている感触を確かめることができました。 ブース展示という環境の中では短い時間でコンセプトや面白いポイントが伝わる方が強いですが、少しづつでも粘りつよく活動を継続することが大切でしょう。石の上にも3年!ということですね。
また今回の展示で印象的だったことは、隣のブースのKaseoさんがずっと展示ブースで立っていたことです。僕は来場者の少ない時間帯は他の展示へフラフラしていたので、Kaseoさんの一人でも多くの来場者とコミュニケーションを取ろうとする態度から反省することも多くありました。Kaseoさんは長い休憩時間の時は展示物に布をかけて休んでいることを明示していて、展示しているか・していないかわからないよりは良いと思いました。今後のMaker Faireでは僕も真似しようと思います。終
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▲布がかかった展示ブース
参考URL 1.スペキュラティブ・デザイン https://boxil.jp/beyond/a4954/
2.Kaseo https://www.iamas.ac.jp/ommf2018/maker/455/
3.美術室の壁穴#2 http://oshimatakuromemo.tumblr.com/post/166044509759/
4.NxPC http://nxpclab.info
5.CLUB TRAIN 2016 https://www.facebook.com/events/1245851155487028/
6.谷浦朋文a.k.a世紀マ3 https://www.iamas.ac.jp/ommf2018/maker/554/
7.サウンドパフォーマンス・プラットフォーム2018 https://www.iamas.ac.jp/activity/spp2018/
8.Fab Meetup Kyoto vol.24 https://mtrl.com/kyoto/events/180328_fab-meetup-kyoto-vol-24/
9.エムノ https://www.iamas.ac.jp/ommf2018/maker/497/
10.Makers Bazaar Osaka 2018 http://makersbazaar.jp
11.教材自作部 https://www.iamas.ac.jp/ommf2018/maker/541/
12.加藤明洋 https://www.iamas.ac.jp/ommf2018/maker/534/
13.ヒョロ・ちび・wife https://www.iamas.ac.jp/ommf2018/maker/518/
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oshimatakuromemo · 6 years
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Makers Bazaar Osaka 2018 + Maker Faire Tokyo 2018
Date:2018/08/04(Sat.)~08/05(Sun.) @東京ビックサイト 西ホール1・2
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【Maker Faire Tokyoとは】
 今年もMaker Faire Tokyo(以下、MFT)に出展しました。MFTは、レーザーカッターや3Dプリンターといったデジタル工作機器の発達により、個人単位での製造(パーソナルファブリケーション)※1が可能になった現代において、個人で面白いものづくりを行なっている人々が集まるイベントとして、年に一度、東京で開催されています。  昨年もMFTに参加したことがあり、昨年は自己紹介のつもりで自作楽器を沢山展示してパフォーマンスも行いました※2が、今年はMTRL Kyotoのレジデンス※3で制作した「NB-606」をメインに展示することにしました。昨年から展示の方向性を変えた理由として、前回参加して気づいた「目立ったもん勝ち」の風潮への疑問があります。MFTの展示は隣のスペースとの区切りのないブース展示なので、来場者の方になんとか足を止めて見てもらう必要があるため、フルカラーLEDでの電飾や大きな音、コスプレなどで目立とうとする展示が多いです。面白さを伝えるために目立とうとすること自体は悪いことではないのですが、自分が面白いと思ったことを突き詰めるよりも目立とうとすることの方が先行しているように感じたのです。
 私の考える「個人によるものづくり(DIY)」で大切なことは、自分が望む生き方を自ら形つくることです。現代の生活において必要な道具は消費活動で大部分は補うことができます。それでも自らの手で作るということは、なにか人生に必要な遠回りに挑んでいる気がします。
こうした「目立ったもん勝ち」の風潮は近年の「インスタ映え」といったSNSでのシェアを意識した見せ方が反映されたものだと思いますが、イベント終了後のメディアで取り上げられる展示も技術的な挑戦をしている展示より目立った展示ばかりが注目されています。このままではMFT全体が「目立ったもん勝ち」の論理に飲まれるかもしれません。こうした雰囲気に異議を唱えるために、目立つとは逆の方向性として「耳を傾ける・じっと待つ」といった静かな体験をテーマにNB-606を展示しました。精神的には静かなパンクです。
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▲NB-606
【準備】
 今回メインで展示したNB-606について説明すると、この作品は2018年3月に京都にあるFab施設・MTRL Kyotoに1ヶ月間滞在して制作した作品です。音楽における「グルーヴとは何か」を考えるため、私がグルーヴを感じる身近な現象である「車のウィンカーのタイミングをずれ」を利用した音響装置です。詳しい制作過程はMTRL Kyotoのブログを参照してください。
https://mtrl.com/blog/report_cir2018_oshima/
 MFTに出展する前に、7月に大阪で開催されたものづくりフェス「Makers Bazaar Osaka vol.5」に参加してNB-606を出展しました。展示は2日間に渡って行われたのですが、1日目にNB-606に対する来場者の反応をみると作品体験にかける時間として2分間が耐えられるギリギリの時間でした。Makers Bazaar Osakaもブースでの展示だったため、来場者は急いで展示を見ている印象でした。そこで2日目からは2分より前に体験のピーク(4台の車が一斉に点滅する)が来るようにシーケンスを調整しました。Makers Bazaar Osakaでの経験を活かして、MFTでも来場者が耐えられるギリギリにシーケンスを用いました。
 またMakers Bazaar Osakaで良かった経験として、周囲の出展者と仲良くなれたことがあります。これまでものづくり系のフェスではMFTの他にOgaki Mini Maker Faire 2016※4などに参加してきましたが、それらの時は自分の作品を出すだけで精一杯で他の出展者と交流する余裕がありませんでした。今回は展示をミニマルにしたことで周囲の展示を見る余裕ができました。  はじめに声をかけてくださったのは、隣のブースで展示をされていた「株式会社ソフトウェアコントロール」さん※5でした。イベントに慣れたグループから最初に声をかけていただいたのは幸運なことでした。それから僕も面白いと思った出展者さんに声をかけるように意識しました。ハードウェアとか研究所※6が出展されていた「多数決マリオ」は、大阪の展示で一番印象に残った作品でした。ファミコンの実機を改造して、ゲーム内のひとりのマリオを3人がコントローラで操作します。3人のうち2人がボタンを押さないとマリオが動かない仕組みになっており、まさに多数決でマリオの運命が決まる作品です。このゲームを遊んでいる時は、来場者同士が声を合わせてワイワイと操作していました。ゲームを改変して新しいコミュニケーションの関係性を築いた点と、エミュレーターではなくあくまで実機を用いて作品を実装するエンジニアリングの気合に感動しました。
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▲Makers Bazaar Osakaでの展示の様子
 MFT開催前日は、仕事を終えてから新幹線で東京へ向かい、近くのカプセルホテルに宿泊しました。学生CGコンテストで展示した時※7と同じカプセルホテルだったので、慣れた場所に宿を取れて良かったです。
【当日】
 当日はIAMASの関係者やサウンド系の出展者さん、Makers Bazaar Osakaで知り合った方と会いました。イベントへの出展を重ねることで知り合いが増えて、それぞれのプロジェクトの変化の様子が時系列に沿って理解できることは楽しいです。IAMASの関係者も多く出展されていましたが、その中でも同級生の出展があったのが嬉しかったです。  ものづくり系のイベントにはいくつか出展してきましたが、Maker Faire Tokyoの特徴として圧倒的に来場者の数が多いことが印象に残っています。
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▲会場での準備の様子
 これだけ見てくれる人が多いと、展示物への意見も多様です。全ての人の意見を取り入れていては何もできませんが、気になる意見も多くあります。特に音量に関して、聞こえないからもっと大きい音が良いという人と、小さい音の体験だからこそ感覚が研ぎ澄まされるという人に分かれました。個人的には、小さな音だからこそ「耳を澄ませる」という行為に誘導できると考えたので、音量が小さくて聞こえにくいという意見は僕の狙いからは外れています。音量が大きいことを期待する来場者は、Maker Faireという場所にエンターテイメントとしての体験を期待しているように感じます。  じつは前から気になっていたこととして、Maker Faire Tokyoの来場者は出展者に楽しませるサービスを要求しているように感じていました。これは他のものづくり系イベントと異なる点だと思うのですが、出展者の数が多いことと入場料を支払っていることがサービスへの期待につながっているのではないでしょうか。例えばOgaki Mini Maker Faireは入場無料なので、出展物の多少の動作不良には寛容な印象があります。入場料を支払っていることが出展物への期待とハードルを上げているのかもしれません。もちろん出展者は動作不良に寛容な態度に甘えるわけにはいきませんが挑戦的な展示物が減ってしまうのではないかなぁという危惧も感じました。
 話を作品への反応に戻すと、作品に対する意見が分かれたことは非常に興味深いことです。これはIAMASで所属していた「あたらしいTOYプロジェクト」で問題意識として共有されていた「ポピュリズムとアカデミズムの乖離」に通じると思います。複雑な社会背景を考慮して作られた現代アートの作品は難解になりすぎて大衆に届かず、逆に大衆に支持される体験は作品の問題意識よりも動員数で評価されており、アカデミズムな態度とポピュリズムな態度の分断がプロジェクトの議論に上がっていました。  そういった観点からNB-606を見直すと、わかる人にわかれば良いといった態度はアカデミズムな態度と言えます。一方で可愛い外見に惹かれて鑑賞し始めた子供が何周も作品を体験してくれたことは、複雑な作品背景を共有せずとも体験に誘導できたとも言えるかもしれません。「作品の門戸は広く、体験は深く」というNB-606で目指した態度が一部達成できたでしょう。これからも鑑賞者に親しみやすい見せ方・デザインを意識しつつ、体験としては明確なゴールが用意されていないものを目指していきたいです。
【終わりに】
 「目立ったもん価値」の論理に挑んだ展示を終えて、鑑賞者の多様な反応を得ることができたことは良い経験でした。今回の展示を通して、全ての人に受け入れられる作品は存在しないのではないかと考えました。どんなに大衆に支持されている作品でさえ批判的な態度はあるもので、人目に晒されれば晒されるほど批判的な意見は増えていくものです。アートと呼ばれるものは本当に大衆に支持されるだけで良いのか、批判的な意見も受け止めた先にあるブレない表現を目指したいものです。
 ブース展示に出展するといろんな価値観に出会い、いろんな問題意識が噴出してきます。それらを全て扱うにはどうしたら良いのか迷うこともありましたが、僕はKOSUGI+ANDOの小杉美穂子さんからいただいたアドバイスを活動のコンパスにしています。小杉さんによると、一つの作品に自分が抱えている問題意識を全て込める必要はないとおっしゃいます。作品に対してテーマとする問題意識を絞ることで、今作っている作品では扱えなかった問題意識を次の作品に込めることができます。そうして作家は手を止めることなく、次々に異なる問題意識を抱えた作品を作ることになるそうです。このように考え始めてから、複雑な問題意識に対しても「作る」というシンプルなアプローチで挑むことができようになりました。
 東京での2日間の展示は移動費や宿泊費がかかるため、決してコストパフォーマンスとして良いものではありませんが、作品に対する直接的な反応を見る場として今後も継続的に参加していきたいです。今後のMaker Faireの目標としては、会場で知り合った作家さんを紹介する小さなメディア(冊子やZine)の発行を目指してみようと思います。既存のメディアでは視聴者が興味を持ちやすい目立つものが扱われますが、自分自身で運営するメディアであれば個人的に興味を持った出展者さんを紹介することができます。そうしてMaker Faireのたびに出展者がそれぞれを紹介する文化が築けば、目立ったもん勝ちの論理にみんなで立ち向かうこともできるかもしれません。まずはできる範囲で頑張ってみます。終
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参考URL(2020/02/25アクセス確認)
1.デジタルファブリケーションについて参考記事 https://wired.jp/innovationinsights/post/analytics/w/future-of-digital-fabrication/ ▲デジタルファブリケーションが変革する未来 3DプリンターからIoTファブリケーターへ(from WIRED.jp)
2.Maker Faire Tokyo 2017 https://makezine.jp/event/makers2017/m0051/
3.MTRL Kyotoでの滞在制作(クリエイターインレジデンス) https://mtrl.com/blog/report_cir2018_oshima/
4.Ogaki Mini Maker Faire 2016 https://www.iamas.ac.jp/ommf2016/makers/62/
5.株式会社ソフトウェアコントロール https://makers.scnet.co.jp/archives/451
6.ハードウェアとか研究所 http://hardwareandsoonlab.blogspot.com/2018/07/2018.html
7.第23回学生CGコンテスト受賞作品展 https://campusgenius.jp/2017/
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oshimatakuromemo · 6 years
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4’33”の再演
2018/05/16(Wed.)
場所:京都精華大学 友愛館
学内でサウンドアートや実験音楽を学ぶ自主的なワークショップ「SOUNDやろうぜ」を開催しており、今日はジョン・ケージの4’33”の再演と勉強会を行いました。ワークショップでは、はじめに学部内にグランドピアノのある録音スタジオ「Magi Sound Studio」で実演しました。
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演奏を終えて、学生からは、予想以上に沈黙の質が高かった(周囲の雑音が少なかった)。キーンという高音が聴こえた。途中で笑いそうになった。寝そうになった。などの感想が聞けました。今回はレコーディングスタジオでの演奏だったので、部屋の外からの音はほとんど聴こえず、自分の神経や耳の穴のキーンという高音が聴こえたのでしょう。この経験から「無音という状態はなく、沈黙(サイレンス)がある」というケージの気づきを体験できました。 また演奏者側の僕も途中で笑いそうになってしまい、笑いをこらえることと、音を出さないことに集中する必要があったので大変緊張しました。グランドピアノや演奏会という形式がもたらす権威性が、良い緊張感を生み出したように思います。 4’33"は3部構成に分かれており、これはピアノソナタの伝統的な形式に則ったものだと言われています。こうした4分33秒という「時間の枠組み」や、ピアノやソナタといった音楽における「伝統の枠組み」を設定した点に、ケージの作家性があるように感じました。
生演奏後は録音された4’33”や、続編にあたる0’00”などを聴き比べました。特に録音された4’33”では、スピーカーから鳴るピアノの蓋の音に耳がフォーカスされ、ケージが意図した作品の効果とは違ったものになりました。一方で、すでに記録された4’33”であるにも関わらず、周囲の環境音を聞くことができれば、それは毎回異なる体験ができるレコード音楽と呼べるかもしれません。この気づきから、レコードは必ずしも反復的に「同じ」体験をさせるものではなく、どんなレコード音楽も聴く状況によって毎回異なる意味を持つから、反復的に「異なる」体験を生じさせるものなんだと気付きました。
今回のワークショプでは、特別新しい気づきを思いつくことよりも、文献などで「知ってるつもりになっていたこと」を体感することに意味があるのかもしれません。これからも教科書では知っていても、自分の体で感じて理解する体験を学生たちに提供できればと思います。
参考文献
「4分33秒」論ー「音楽」とは何か、(2014)、佐々木敦、ele-king books http://amzn.asia/2TXAX29
参考作品
「0分00秒」ジョン・ケージ https://youtu.be/6I1gfOlNNo4
「波長」マイケル・スノウ https://youtu.be/aBOzOVLxbCE
「ほとんど何もない」リュック・フェラーリ https://youtu.be/z2aWEM1nnNg
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oshimatakuromemo · 6 years
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Alternative Act 1.0 -Tech Paerformance Fes.
Date:2018/04/14(Sat.)~15(Sun.) @北千住BUoY
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東京にあるアートスペース北千住BUoY※1で開催された音楽フェス「Alternative Act 1.0 -Tech Performance Fes.」※2にゲストパフォーマーとして出演しました。このイベントは、東京芸大の音響環境創造科の卒業生を中心に企画されたイベントです。今回このイベントに参加するきっかけとなったのは、IAMASでお世話になった城一裕さん※3のゼミ生で学生CGでも知り合いになった松浦知也さん※4からお誘いでした。
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▲Alternative Act 1.0のメインビジュアル https://2018.alternative-act.tokyo
お誘いを受けた時に嬉しかったことが、東京という遠い場所への出演依頼とギャラが発生するということでした。いままではライブハウスに行って客さんの入りに応じてその場でギャラを支払われる、もしくは客さんが少ない時はこちらがチケット代を支払うこともありました。その点、依頼の時点で明確にギャラが提示されていたので、輸送費などを計算してパフォーマンス内容を決めることができました。
【準備】
学生CGの受賞展で何度もパフォーマンスをした時に、プラレールと洗濯台を組み合わせた新しいアイデアを思いついていました。そこで今回のイベントでは、最近メインで使用している機材のリモコン、プラレール、洗濯台を組み合わせたサウンドシステムを作るパフォーマンスにしようと計画しました。 またPLAY A DAYのZineの最新号vol.3も持参して会場の入り口で配布することにしました。vol.3はブタニコバーン※5の特集だったので会場に現物を持って行こうと思ってましたが忘れてしまいました。せっかく機材リストも作ったのに、MTRL KYOTOでの展示や大学での展覧会企画の提出準備などでバタバタしている最中に失念してしまったようです。残念。
パフォーマンスの前日は東京の友人の佐野和哉くん※5の家に泊まりました。佐野くんを待っている間に地下鉄の改札で待っていましたが、電車が通過するときの風が印象的で、この風を使って何か音の鳴る仕組みができそうだなぁと思いました。 パフォーマンス当日はリハーサルのために早めに会場に向かいました。会場となる北千住BUoYは、東京芸大の音響環境創造科の校舎の近くにあります。かつて銭湯だった場所を改造してスペースを作っており、外装は工事中で内装もいろんなところから配菅が飛び出していて非常にアンダーグラウンドの雰囲気でした。会場内には銭湯の一部も残っており、面白い空間だったのでステージとして使ってみたかったのですが、地面がうねっているせいでプラレールのレールを敷くことができなかったので、今回の使用は見送りました。もっと空間の使い方が上手くなった時には、会場の空間的な特徴を利用したパフォーマンスができるようになりたいです。
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▲会場となるビル。外装は工事中。
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▲アンダーグラウンドな雰囲気の会場。設営で疲れて眠る人の姿も...。
【リハーサル】
今回は遠方でのパフォーマンスでライブハウスで使用するようなサイズのギターアンプを持参することができなかったので、昨年のMaker Faire Tokyo※7でのライブ以来の会場のPAを使用したパフォーマンスを行いました。個人的にはミキサーへのライン信号で送った場合、音が素直に鳴る印象があり、ギターアンプで鳴らした時のような音の粘りがないのが気になっています。なのでプラレールの楽器で使用しているラジカセのノイズもそのまま会場に響いてしまいます。今後はギタープリアンプやスピーカーシミュレーターを使うなど、ライン信号での入力でも満足できる音が鳴らせるような工夫を考えたいです。 リハーサルでは音出し確認のつもりで臨んだのですが、会場のみなさんが集中して聞いてくださり通しリハのようになって緊張しました。それでもリハーサルを通して機材の不調をいくつか発見し、本番までに修理することができました。場の雰囲気に焦ることなく自分のペースで機材を確認できたのは、以前に出演したサウンドパフォーマンス・プラットフォーム※8でリハーサルの大切さを学んだからでしょう。リハーサルは即興ライブをつまらなくするものでなく、もっと高いレベルの次元でパフォーマンスするための準備です。リハーサルするとネタバレ感��あります���、本番ではそれを乗り越えるような強度でパフォーマンスしないと、それは良いパフォーマンスとは呼べないでしょう。 他の出演者のリハーサルも見ているとZEN-NOKANさん※9の演目は、演者3人とオペレーター3人による会場全体を移動するダイナミックなパフォーマンスでした。僕の楽器開発では、これまで移動で便利になりようにコンパクト設計を志向していたので、パフォーマンスも小さな空間に留まっていたように思います。よく日本のマジシャンと海外のマジシャンの違いとして、観客との距離感と空間の使い方が挙げられます。日本のマジシャンは観客と接近してテーブルの上でパフォーマンスをしますが、海外のマジシャンは空間を比較使うダイナミックなパフォーマンスします。そう考えるとZEN-NOKANさんのパフォーマンスは海外的で、僕のは日本的だと感じました。今回のZEN-NOKANさんのパフォーマンスと自身を比べて、自分のパフォーマンスの特徴を意識できました。
【本番】
本番にはIAMASの後輩で、昨年一緒に展示もした浜田卓之くん※10が来てくれました。東京に行ってからも多摩美の助手として頑張って活動しているそうです。元気そうで良かったです。
自分のパフォーマンスの前にはスタッフさんにお願いしてお客さんを僕の周りに集めるようにお願いしました。これはサウンドパフォーマンス・プラットフォームの時に、同じ方法でお客さんを集めたことで会場に一体感が生まれたのが良かったので、今回もやってみました。照明の暗転などもスタッフさんと打ち合わせしており、会場の優秀なスタッフさんに色々と助けていただきました。スタッフさんも東京芸大の卒業生や現役生で構成されていたらしく、僕よりも若いのにみんな優秀ですごいなぁと思いました。
本番では、武石樹さん※11とダンサーによるLED照明と影によるパフォーマンスが印象的でした。LEDを床に配置して、ダンサーに向けて点滅させることでダンサーの影が壁面に映し出される仕掛けです。シンプルなコンセプトですが、シンプルゆえに面白さが明快に伝わりました。浜田くんもLEDを使った作品を作っているので気になったパフォーマンスだったようです。
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▲武石さんのパフォーマンス準備
他の出演者のパフォーマンスがレベル高くてプレッシャーがかかり、前半は少し慌ててしまいましたが、プラレールを延長し始めたころに落ち着きを取り戻し、あとは最後まで好きに暴れることができました。慌てた理由として、当初シミュレーションしていた楽器の順序を間違えたかもしれません。普段は観客に自作楽器の操作方法がわかるように決めるのですが、途中で間違えたことで観客を置いてけぼりのパフォーマンスに切り替えることにしました。
前回のパフォーマンスした時は学生CGコンテストの受賞展だったので、観客も子供たちが多く丁寧すぎるくらいに楽器の操作方法を示してパフォーマンスしていましたが、今回は途中から芸術鑑賞に慣れた観客が多いと判断して「これくらいのパフォーマンスついて来い!」という挑戦的な態度に切り替わりました。その割り切りがJAM感を生み出したのかもしれません。
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▲パフォーマンスの様子
【感想】
僕よりも若い作家さんのレベルの高いパフォーマンスが見られたのは良い刺激だったでうす。これまで感じなかったプレッシャーを感じたのは、他の出演者が僕よりも若かったからかもしれません。なかなかサウンドの世界で自分より若い人と共演することがないので、彼らがクオリティーの高いパフォーマンスをしていたので年長の自分も負けてられない!とプレッシャーを感じていたのです。 これからは自分もドンドン年老いていく中で、自分よりも優れた年下が出てくるでしょう。その時に勢いだけでなく、年月の積み重ねがにじみ出るような、そんな存在になっていたいものです。例えばサウンドアーティストの鈴木昭男さん※12は、最新技術に精通しているわけではありませんが、その道で右に出る人がいないくらい音をオブジェを使った作品とパフォーマンスで独特な世界を構築されています。今回のイベントと若い作家さんとの交流を通して、鈴木さんのように時代の流行に流されず、自分のフィールドで活躍するような作家を目指したいと思いました。終
参考URL
1.北千住BUoY http://buoy.or.jp
2.Alternative Act 1.0 -Tech Performance Fes. https://2018.alternative-act.tokyo
3.城一裕 http://jo.swo.jp
4.松浦知也 https://matsuuratomoya.com
5.ブタニコバーン https://www.youtube.com/watch?v=3QqMLkxmvb8
6.佐野和哉 http://sanokazuya0306.com
7.Maker Faire Tokyo 2018 http://oshimatakuromemo.tumblr.com/post/164680666454/maker-faire-tokyo-2017
8.サウンドパフォーマンス・プラットフォーム2018 http://www.aac.pref.aichi.jp/gekijyo/sp/syusai2017/detail/180210_spp2018/
9.ZEN-NOKAN http://www.zen-nokan.com
10.浜田卓之 https://takayuki-hamada.com
11.武石樹 https://2018.alternative-act.tokyo/artists/takeishi/
12.鈴木昭男 https://www.akiosuzuki.com
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oshimatakuromemo · 6 years
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クリエイターインレジデンス
Date:2018/02/21(Wed.)~3/28(Wed.) @MTRL KYOTO(京都)
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テーマ:車のウィンカーを用いたグルーヴの探求 制作物:NB-606
【準備編】
はじめまして、おおしまたくろうです。僕は京都精華大学で助手として勤務する傍で、身近な道具や現象を改変した自作楽器・装置を制作する「PLAY A DAY」と称した作家活動をしています。2月23日から3月28日の約1ヶ月にかけてマテリアル京都に滞在して、新作のプロトタイプを制作したので、その滞在レポートをお届けします。
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・制作のきっかけ(1月16日〜24日)
今回の滞在制作では、車のウィンカーに使われるリレーという電子部品を使って、複雑なリズムを刻む楽器・音響装置を作りました。今回の制作の動機として、1)これまでパフォーマンスを中心に活動を展開してきたので、ギャラリーなどで展示できる形態の作品を作りたいと思ったこと、2)学生さんが卒業制作として「グルーヴをモチーフとした楽曲」を作りたいと相談されたことがあります。 音楽における「グルーヴ(Groove)」とは、言葉で定義することが難しい言葉です。ノリのいい感じ、踊れる雰囲気、明るい印象…。日本文化の「わびさび」のように、言葉で定義したとしてもどこか言葉からこぼれ落ちてしまう印象があります。 そこで僕は自分が身近に感じるグルーヴを作品として作ることにしました。僕が身近に感じるグルーヴ、それは「車のウィンカーのズレ」です。ウィンカーの明滅のタイミングは車の機種や電球の寿命で微妙に異なります。交差点で右折を待つ車の列を見ていると、ウィンカーの明滅が同期していたのに段々とズレていって裏拍になったりします。それぞれの車は反復的に明滅しているだけなのに、それらが組み合わさると無限にも思える複雑なリズムパターンが生まれる。これが僕の思う「グルーヴ感」でした。
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▲初期の構想ノート(1月16日)
・シミュレーション(1月24日〜2月1日)
車のウィンカーのズレがグルーヴになる。この単なる思いつき(ジャストアイデア)が本当に作品の体験として成立するのかを確認するためにシミュレーションを行いました。シミュレーションにはヴィジュアルデザインに使用されるプログラム言語のProcessingを使いました。一定のタイミングに合わせて車のイラストのライトが明滅し、ウィンカーの音が鳴ります。
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▲4台の車によるタイムシーケンスを考慮したシミュレーション映像
これまでの制作ではあまりプログラミングを使わなかったのですが、今年から社会人になり、机に向かって制作できる時間が減ってしまったので、通勤の電車の中でも作業できるプログラミングでプロトタイピングしようと思い、今回の制作のために勉強しました。Processingの勉強にあたっては『Processingをはじめよう 第2版』を参考にしました。 シミュレーションの結果、それぞれのウィンカーの明滅のズレから生じるグルーヴを確認できたので、シミュレーション映像を持ってマテリアル京都(MTRL KYOTO)に相談したところ、今回の滞在制作が決まりました。
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▲ビジュアルやタイムシーケンスの設定(1月24日、30日)
・ダーティプロトタイピング(2月21日〜22日)
滞在制作にあたって3Dプリンターでの出力や電子回路の組み立てなど、地味な絵面の作業が多くなると思ったので、早めに周囲と作品のアウトプットを共有するために段ボールでのモックアップを制作しました。これはダーティープロトタイピングと呼ばれる手法で、実際に動作するわけではありませんが、作品のサイズや鑑賞者の見る視点などを検証するのに用います。このモックアップがあったおかげで、現場のスタッフさんや見学者の方と作品の最終形を共有でき、具体的な議論やアドバイスがいただけたと思います。
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▲段ボールで制作したプロトタイプ
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▲段ボールのプロトタイプでアイデアを説明する様子
当初の計画では3Dプリンターで車の模型を出力してシリコン型を作り、「ジェスモナイト」という水溶性の樹脂で車を複製しようと思いました。ジェスモナイトはレジンのような臭いもなく、乾燥すると陶器のような高級感ある仕上がりになるので、今回使ってみたい素材のひとつです。 また車の土台にあたる部分はウィンカーの音を共鳴させるパーツとなっており、「飛騨の木材」など様々な木材をレーザーカッターで切り出して試作することで、音の響き方をいろいろと試せるのではないか、と思いました。
【制作編】Creator in Residence
2月末から大学が春休みに入ったので、本格的に滞在制作を開始しました。自宅の電子部品や工作機器をマテリアル京都に置かせてもらって作業しました。ここからは各作業に分けて詳しく説明していきます。
・電子回路のテスト
まずは電子回路の設計についてです。車のウィンカーは、1)リレーという電子部品と2)明滅のタイミングを決める部品で構成されます。リレーには電気の流れを自動で切り替える役割(スイッチング)があり、ウィンカーが明滅するときのカチッカチッという音は、リレーが動作する時にスイッチ内部の金属板が接触して生じる音です。 このような金属板を接触させてスイッチングを行うリレーを「メカニカルリレー(有接点リレー)」と呼び、アメリカの発明家ジョセフ・ヘンリー(1797~1878)がリレーを発明してから長らくはリレーの基本的な構造でした。しかし、近年の車のウィンカーには電子的にスイッチングを行う「電子リレー(無接点リレー)」が主流になっており、寿命やメンテナンスの面で不利なメカニカルリレーはウィンカーに使用されなくなっています。今回制作する作品では、あえて電子リレーでなくデッドメディアとなりつつあるメカニカルリレーを使用しました。 また回路の設計には『Make; Electronics 作ってわかる電気と電子回路の基礎』を参考に、コンデンサーと抵抗のみでリレーの明滅をコントロールしようとしました。できるだけアナログな電子部品と単純な回路でウィンカーの明滅が実現すれば面白いと思ったからです。
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▲コンデンサーと抵抗による回路実験の失敗の様子(2月22日)
ただ残念ながら、先の動画のようにコンデンサーと抵抗のみの簡単な回路で安定したウィンカーの明滅を実現できず、結局市販されているウィンカーを分解して内部のタイマー回路を流用する方針に変更することになりました。可変抵抗を回すことで明滅の速度を調整することができる仕様になりました。
ウィンカーでのLEDの明滅を成功させたところで、段ボールのプロトタイプに実際にウィンカーやフロントライトのLEDを取り付け、より最終形に近い形のプロトタイプを制作しました。これで基本的な電子回路の実験は完了です。
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▲段ボールプロトタイプに電装している時の作業机
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▲段ボールプロトタイプにLEDとウィンカーの回路を実装
・ボディの設計
ここまで段ボールでプロトタイプを制作していましたが展示に用いるには耐久性に難があるため、ここからは3Dプリンターを用いて樹脂材料で車のボディを制作します。段ボールも素材として味わいがあって良いのですが、自身の経験から段ボールに萌えるのは大人が多く、子供たちは外装がしっかりパッケージされた方を好む印象です。どちらが良いという話ではないですが、段ボールで作るという態度自体が今回の作品の体験にはあまり寄与しないと思いますし、せっかくマテリアル京都で制作するのだからデジタル工作機器を使ってみたい、という思いもありました。
ボディの設計にあたっては、最初にスタイロフォームで曲線的なデザインの模型を作りました。段ボールでプロトタイプを作った時には、作りやすさとサイズ感を優先しており、角のアール感やルーフのパース感などは無視して作っていたので、スタイロフォームで作る際には、実際にどの位置にアール加工を施すのか、パース感は適切か、などを検討しながら作りました。スタイロフォームで曲線的な造形モデルを作るアイデアは『Prototyping Lab 「作りながら考える」ためのArduino実践レシピ』の第1版で紹介されている手法です。
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▲スタイロフォームで立体的な造形を確認する(3月4日)
車のデザインに関して、当初はリアル路線で検討していましたが、実車をモデルにすることで発生するデザインの権利問題や車のリアルさが、作品の体験の邪魔になると考え、むしろ「車っぽいデザイン」で留めるアイデアに落ち着きました。
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▲初期のデザイン案は実車がモデルだった(2月6日)
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▲曲線的なデザインになった車(3月4日)
スタイロフォームで切り出したモデルが納得のできる形状になったら、実際のモデルを測定して方眼紙に図面を描きおこします。方眼紙に描いた図面を頼りに3Dプリンターで出力するための3DCADデータ(STLデータ)を作成します。 CADデータの作成にはFusion 360を使用しました。車の内部にLEDを仕込んで配線を土台へと通すので、窓ガラスの透明パーツで内部が見えたり、車のボディと土台の間に隙間があると配線隠しが面倒です。そこで車の窓ガラスは凹形状で表現し、��イヤはボディの側面に取り付けることで配線が見えないように工夫しました。実際の車ではありえない形状ですが、おもちゃっぽい外見が逆に作品の見立てを強調しているように思います。
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▲設計したCADデータ(3月4日)
・3Dプリンターでの出力と研磨
制作したCADデータを3Dプリンターで出力しました。はじめに完成品の1/5サイズの小さなモデルを出力しました。3Dプリンターは樹脂を積層して形状を作るため、大きなモデルより小さなモデルの方が構造的に弱くなるので、はじめは小さなモデルで出力して耐久性のチェックします。ちなみに3Dプリンターで出力する材料としてABSとPLAと呼ばれる2種類の樹脂があります。それぞれ特徴があり、ABSは頑丈なので実際に触るものや負荷がかかるものに適していますが加工中に反りやすいというデメリットがあります。今回作るボディではABSのような丈夫さは必要なく、むしろ反りにくく造形の正確さに優れたPLAを使用しました。
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▲1/5サイズの小さなモデルで出力した(3月5日)
3Dプリンターの出力には時間がかかるのですが、設計したボディを一度に出力すると予想される作業時間が11時間となってしまいマテリアル京都の営業時間ギリギリになってしまうため、今回はボディを3分割して出力しました。3分割に分けて出力しても1つのパーツに6時間程度かかってしまいますが、3Dプリンターの出力も必ず成功するわけではないのでリスクを回避する意味でもパーツを分割しての出力は有効だったと思います。
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▲3Dプリンターでの作業の様子(3月7日)
3Dプリンターから出力したボディは積層痕が残っているので、ラッカーパテを塗ってから紙やすりで削ることで積層痕を埋めました。鑑賞の妨げにならない程度までボディの表面を整えるには、パテ埋めとやすりがけがそれぞれ3回ずつ必要でした。
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▲出力したばかりのボディは積層痕が残っている
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▲ボディの表面をラッカーパテで埋める
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▲パテ埋め3回、やすりがけ2回したボディ
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▲パテ埋め3回、サーフェイサー2回、やすりがけ4回したボディ
3Dプリンターで作ったボディからシリコン型を取ってジェスモナイトを流し込む予定だったので、ジェスモナイトの販売店の型に使い方をレクチャーしてもらいました。ジェスモナイトは2つの白色の無機溶剤を混ぜることで効果が始まり、一晩で固まるので部屋の中でも安全に作業できます。滞在先のマテリアル京都はカフェとしても経営しているため、基本的に有機溶剤のような臭いのきついものはNGなのですが、ジェスモナイトはマテリアル京都でも使用できる流し込み造形の樹脂です。ジェスモナイトの基本色は白色ですが、溶剤を混ぜる際に着色料や金属粉を加えることで様々な色やテクスチャを与えることができます。
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▲ジェスモナイトのレクチャーの様子(3月8日)
ただ予想以上にボディを型取るのための表面仕上げが大変だったことと、シリコン型からの型抜きを想定してボディを設計していなかったため、今回はジェスモナイトは使わない方針に変更して、車のボディ4台分を全て3Dプリンターで出力することになりました。そのため今回の滞在制作では、4台分のボディを3Dプリンターで出力して積層痕を処理する作業にかなりの時間を費やしました。 パテ埋め作業は地味な上に乾燥に時間がかかるので、最初はイライラしながら作っていましたが、3台目の積層痕を消す作業のあたりで、この作業がとても精神的な作業に感じられました。作品の体験の邪魔になるものは排除しなければなりません。3Dプリンターの積層痕は作品の体験の妨げになるため、可能な限りパテ埋めで消す必要があります。パテ埋めしたボディを紙ヤスリで削るたびに作品の完成に近づいていることを実感して「ああグルーヴの神に近づいているなぁ」と思うのでした。
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▲積層痕を消す作業(パテ埋め、やすりがけ)の様子
・塗装作業
表面処理を終えたボディはサーフェイサーを吹いてカラー塗装の段階に入ります。マテリアル京都には常設された塗装ブースがないので中庭を塗装場所として借りました。日によっては1階でイベントがあるときなどは、2階のテラスにビニール袋を敷いて作業しました。塗装作業が始まる頃には滞在制作の残り期間も1週間ほどになっていたので、夜も作業するために自転車のライトを設置して作業しました。ただカラーの塗装はちゃんと昼間の明るさの中で作業した方が傷や塗り残しを発見したりできるので、夜の塗装作業はあまり効率的とは言えませんでした。
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▲中庭の塗装ブース
ボディの色は4台の車が並んだ時に左から赤、橙、黄、白の順番になるようにしました。今回の作品がリズムやビート、グルーヴに関わる装置なので、Roland社の伝説的なリズムマシンTR-808のキーの色をイメージしました。あとは作品の体験が耳を傾けてじっくり待つハードコアな体験なので、せめて作品の印象だけでもポップするために明るいカラーを選択しました。作品の門戸は広く、体験は深くですね。
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▲カラー塗装されたボディ
・土台パーツの制作
土台パーツは電子回路や音を反響させるための部品で飛騨の木材などで試作する予定でしたが、レーザーカッターで加工できる厚さに制限があるため薄い木材として市販のシナベニア合板を使いました。レーザーカッターで箱物を作る際には、木材の縁を凹凸に切り出して組み立てる方法が一般的なのですが、最近ではフリーで公開されているソフトウェアを使えば、箱のサイズや切り出す板の厚みなどの条件を与えるだけでレーザーカッターで箱物のデータを自動的に作成してくれます。
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▲土台パーツのアイデアスケッチ(3月2日)
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▲レーザーカッターで切り出した木材(3月12日)
土台パーツの正面には装飾として横向きの長穴加工を施し、ウィンカーの音が抜けるようにしました。これはラジカセのデザインなどを参考に音の出る部分を強調するアイデアです。 また正面にはPLAY A DAYのロゴマークを入れるために白いアクリル材からレーザーカッターで切り出しました。ロゴマークのイメージはギターアンプなどに楽器メーカーのロゴが貼り付いてるのを参考にしました。切り出したロゴの縁はマスキングゾルでコーティングして黒色に塗装した後、やすりで削ることで背景の黒地は残ったまま白い文字が浮かびあがります。
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▲ロゴマークの塗装作業
・制御回路の制作
今回の作品では1台ずつの車は明滅するだけの簡単なリレー回路を仕込み、それぞれの起動のタイミングをArduinoで管理することで体験のタイムシーケンスを設計しました。具体的には『Prototyping Lab 「作りながら考える」ためのArduino実践レシピ』の22章「AC100V機器のオンオフをコントロールしたい」を参考にしました。 滞在終了後は作品をマテリアル京都で展示していただけるとの話を聞いていたので、スタッフさんが混乱しないように起動・撤収はシンプルに電源スイッチをON/OFFするだけで良いように工夫しました。
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▲全体システムのアイデアスケッチ
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▲制御回路はタッパに入れた
作品のタイムシーケンスに関しては、最初は一度の体験を3分くらいに設定していましたが、マテリアル京都のスタッフの方たちに体験していただき「体験が長い」とのアドバイスをいただいたので、タイムシーケンスを2分くらいに変更しました。「インスタ映え」や「バズる」などの近年の勢いや感情を重視するような評価の台頭に疑問を持ち、もっと我慢強くじっくり耳を傾けないと味わえないような作品のあり方を志して、今回の作品もぱっと見の第一印象はポップでも実際の体験の難易度は高めになるように設定しました。ただ、難易度が上がりすぎると多くの人に届かなくなるので、さじ加減が難しく、僕はいつも他人に感想を求めてチューニングするようにしています。特に作品を展示するマテリアル京都は作品を鑑賞するマインドの人ばかりが来る場所ではないため、体験のエッセンスだけでも味わう設計でも良いかなと割り切りました。展示する場所が変われば再びタイムシーケンスをチューニングし直すと思いますが、マテリアル京都では1〜2分くらいが鑑賞者の足を止められるギリギリの長さではないかと思います。
・組み立て作業
ボディ、土台パーツ、回路が出来上がったので、最後にこれらを組み合わせて完成させました。結局、組み立て作業は滞在制作の成果発表のプレゼン当日まで行われ、最後までドタバタでしたがなんとか発表までに完成しました。なんか作業の進め方が学生時代と変わってないな〜と実感してヘコみました。 ボディにLEDを仕込む際に工夫した点として、LEDの表面を紙ヤスリで削って曇り加工にすることでLEDの光を面発光にしました。作品では車同士が隣り合うため、無加工のLEDのままだと車の側面に取り付けたLEDの光が隣の車に直接当たってしまいます。そこでLEDを面発光にすることで光が強く当たらないようにしました。 また土台パーツにウィンカーを取り付ける際に、取り付ける位置や向きを変えることでウィンカーの動作音が少し変化させています。4台の車から鳴るウィンカーの音はそれぞれ変えた方が、音が混ざり合って生まれるグルーヴを体験しやすいからです。 また作品の体験の開始のタイミングは作品の横に設置した赤いスタートボタンを押すことで開始します。スタートボタンのケースもレーザーカッターで加工しました。
【発表編】Fab Meetup Kyoto vol.24
約1ヶ月におよぶ滞在制作の成果を発表する場がマテリアル京都で定期的に開催される発表会「Fab Meetup Kyoto vol.24」でした。毎回いろんなジャンルの方が登壇されるイベントで、僕も実際に制作した作品を展示して作品のテーマや制作の苦労ポイントをプレゼンしました。
・展示
3mほどの長さの机の上に作品を並べ、その横には作品の完成に至るまでのプロトタイプを資料として置きました。僕は作品の仕上がりよりもプロセスを重視したいので、できる限り活動のアーカイヴを保存し、自分がどんな思考や実践を経て作品に至ったかを見えるようにしたい欲求があります。こうした作品資料はギャラリー展示では邪魔かもしれませんが、今回のような滞在制作においては過程の変化などが見えると意義あるものだったか俯瞰できると思います。 印象的だった反応として、プレゼンの準備をしていて作品から少し離れていた時に、お客さんが作品に近寄りスタートスイッチを押したのですが「じっくり見なきゃいけない作品は苦手だな」と言ってすぐに立ち去ってしまいました。とても残念な反応でしたが、自分が問題視している「バズる」とか「インスタ映え」といったリアクティヴな価値観が正義とされている現状を打ち砕くには、まだまだ高い壁があるんだなぁと改めて感じました。
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▲展示の様子
・プレゼンテーション
プレゼンではあまり資料を十分に用意できていなかったので出たとこ勝負で臨みました。もともと話すことが得意ではないので映像や写真の資料を多く用意して、僕が喋らなくても大体の流れがわかるようにしました。作品のコンセプト自体がシンプルでわかりやすいものなので、お客さんの反応も悪くなく、僕が何をしたいかが伝わっていたようなので良かったです。プレゼンが苦手な僕の中では良いプレゼンだったと言えるのではないでしょうか(自問)
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▲緊張で前を見て話せていないプレゼンの様子
・交流
登壇者のプレゼンが終わった後はお客さんと交流の時間が設けられています。地味な作品ですが、作品のコンセプトはしっかり伝わっていたようなので良かったです。 お客さんからのアドバイスとして一番多かったのは「車ごとにウィンカーの機種を変えてみてはどうか」ということでした。今回はウィンカーの取り付け位置で音を少し変化させているとはいえ、ウィンカー自体を全く別物に変えてしまえば更なる音の変化を期待できるかもしれません。あとは「車を交換式にする」というもので、土台に乗っている車ごと交換してウィンカーを交換すれば自分好みの音を楽しむインテリアになるかもしれません。他には「おもちゃっぽくするより高級路線にいってほしい」「街の他のLEDの明滅もグルーヴになりそう」など色んなアドバイスをいただきました。 個人的にアドバイスをもらう時に大事にしていることとして、一人の人しか言わない特異なアドバイスより他の大勢の人も言っていたアドバイスにも注目します。大勢の人が指摘するポイントにはある種のベタさ(≒ポピュラーさ)が付き纏います。このベタさに乗っかるか、ベタさを裏切るかは作家の指向性だと思いますが、何がベタなのかは理解しておくと大勢に共感されながらも違和感を含んだ表現が可能になるのではないかなと思います。今後も作品の敷居の低さと体験の深さを追求していきたいです。
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▲交流の様子
【まとめ】
・感想と反省
感想として、大学院を卒業後は自宅のアパートに閉じこもって作品制作することが多かったので、久しぶりに制作プロセスから他人の意見を聞きながら作業できたのは楽しかったです。作家さんにはいろんなタイプがいますが、僕は他人の意見に左右されながら作るのが基本的なスタイルなのでマテリアル京都のようなオープンな作業場は居心地が良かったです。 3Dプリンターに関しては簡単に複雑な造形物が作れる一方で、出力にかかる時間の長さや積層痕を消す大変さを身をもって理解したので、作品の最終完成品をつくる用途よりもプロトタイプの道具として割り切って使う方が無難かもしれません。一方で滞在制作の後半では3Dプリンターと友達になれたような感じで、出力されたモノを見て「そろそろメンテナンスが必要だな」とわかるようになっていました。また積層痕を消す作業も、最初の1台目は4日ほどかかっていた作業が3・4台目では2日ほどで済むようになり、自分のスキルが上昇していることにも気づきました。 こうした経験からデジタル工作機器の使い方に関して、機械だけで全ての作業を賄おうとするのでなく、素材の特性や人間の手わざと組み合わせて機械と人間、デジタルとアナログのお互いの得意なことは何であるかを理解して作業を割り振るべきでしょう。
反省点としては、当初考えていたジェスモナイトや飛騨の木材といった新素材を使う計画はどれも実現しなかった点が挙げられます。これは今回の作品の最終形のイメージが最初から決定していたので、イメージから外れて素材と一から対話する余白がなかったためだと思います。つまりアイデアが先にあって素材はその後にあったため、アイデアを優先した結果、今回は新素材は使いませんでした。次作を構想する際は素材をお題にアイデアを考えるような発想で考えてみても良いかなと思います。
・グルーヴとは何だったのか
結局、グルーヴとは何だったのだろうか。今回の滞在制作に際してわかりやすいテーマが必要だと考え「車のウィンカーを用いたグルーヴの探求」と題しましたが、探求という言葉は大抵ゴールがないので便利な言葉としてついつい使ってしまいます。なので「グルーヴとは何か」と問われたら「わからない」と答えることもできますが、それではあまりにも味気ないので制作を通して考えたことをまとめてみます。
音楽作品の中で最初にグルーヴらしきものを意識したのがミニマル・ミュージックの第一人者のひとりであるスティーヴ・ライヒの『Come Out』(1966)という作品です。この作品は黒人暴動の犯人の疑いをかけられた青年の弁明の言葉をテープで録音し、音源の断片を反復的に再生して少しずつズラしながら重ねることで、政治的な意味の強い言葉をただの音響のうねりに変化させます。僕はこの作品の後半部分を聴いている時に「なんか踊れるな〜」とひらめき、反復的な音とその差異から生まれるグルーヴらしきものを意識しました。
ライヒの次に作家として海外でも活躍しているDJのAOKI takamasa(青木孝允)に注目しました。青木さんは京都精華大学でも非常勤講師として教鞭を執っておられ、ポピュラーミュージシャンとしての活動は一言で言えばミニマルなエレクトロダンスミュージックという印象です。少ない音数の電子音をコントロールしながら、いつまでも聴いていられる音楽は、よく聴くと複雑に変化し続けていることに気づきます。青木さんの活動や制作態度を知るうえでCINRA.NETの良いインタビューがありました。 このインタビューの中で印象的だったことは、青木さんもライヒの影響に言及されていることと、自身のことをミュージシャンだとは思っておらず、ただ現象を提示しているだけだと話している点です。青木さんはライヒについてフラクタルと関連させて言及していますが、反復と差異から生じるグルーヴ(らしきもの)にはシンプルな音の要素が生み出す無限とも思える展開の複雑性が隠されているように思います。 また青木さん自身は音の現象を提示しているだけなのになぜ踊れるのかについて、聴者のバイオリズムに注目されています。音は究極的にはただの空気の振動であり、どの空気の振動から音という意味を見出すのは聴者の文化的な背景が関わっていると思います。また音の羅列をなぜ音楽と思えるのかは、聴者が音の反復と差異の経験から音のまとまりを認知するからだと思います。どの空気の振動を音のシグナルとみなすか、さらには音のまとまりを音楽とみなすか、これらの判断は聴者に託されており、何がグルーヴであるかは生理的な反応や社会的な背景とは切り離して語れないでしょう。つまり、何にグルーヴを感じるかは一義的に定まるものではなく、各個人によって異なるということです。
この作品を体験した人が、街でウィンカーの明滅のズレを見かけた時に「おっ、グルーヴだ!」と思ってもらえれば作品の狙いは成功したと思います。そして、今回の作品のようにもっと多くの多様な立場の人が自分の感じるグルーヴを表現するようになれば、その表現の総体が「グルーヴとは何か」の答えではないでしょうか。
みなさんはどんなものにグルーヴを感じますか?終
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oshimatakuromemo · 6 years
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第23回学生CGコンテスト
Date:2018/02/16(Thu.)~18(Sun.)@日本科学未来館
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【学生CGコンテストとは】
学生CGコンテストとは、学生の作品を幅広く公募するジャンル不問のコンペです。部門は2つにアート部門とエンターテイメント部門に分かれており、映画・アニメーション・ゲームアプリ・プロダクトデザインなどの作品あ集まります。以前の映像やアニメーションを中心に扱うコンペだった学生CG(=Computer Graphics)から、学生CG(=Campus Genius)に読み替えて幅広いジャンルの作品を扱うようになったそうです。 このコンペの存在はIAMASに入学後に知ったのですが、IAMASの卒業生や先輩たち※1が多く受賞されていて、1年生の時に友達とグループを組んで映像作品を応募しました。ただこの時はコンペに出すということが、権威に迎合しているようで気に食わなかったので、コンペに出すべきか悩んでいました。でも結局「コンペに出すべきか悩んで、コンペの構造を批判する」という映像をコンペに出すことにしました。制作のモチーフも、スターウォーズの続編※2が発表されるという安直な動機で決定し、支離滅裂な内容は鑑賞者を置いてけぼりにします。そうした制作態度の軽さでコンペという構造自体を批判しようとしたのです。 今思うと審査する側にとってはただの迷惑ですし、マナー違反な作品でしたが、それでも自分たちの考えを貫いいて出展した経験から、ビビらず見せる勇気(横柄さ?)が身につきました。
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▲アウトな気がする
【応募】
それから1年後、2年生になってからは修士作品として「PLAY A DAY」というパフォーマンス作品を制作していたので、この作品を学生CGに応募することにしました。ただコンペの募集が9月終わりだったのに対して、修士作品の学内展示が9月中旬、しかもその直後に名古屋のライブハウスでのパフォーマンスも控えていたので、ろくにアーカイヴ映像を撮影せずに学内展示を撤収してしまいました。その結果、学内展示中に友人にiPhoneを渡して撮影をお願いした映像で学生CGに応募することになってしまいました。 結果、1次選考にノミネートされず落選してしまいました。ノミネート作品発表の際には、審査員の馬さん※3にノミネート選考ギリギリの作品を紹介するコーナーで取り上げていただき、作品は個性的なものだけど記録映像の撮り方が悪いとのアドバイスをいただきました。学生CGは応募の際に動画で投稿するため、映像・アニメーション作品に比べて、インスタレーションやパフォーマンスの作品は映像でうまく作品の特徴をプレゼンしないといけません。自分でも記録映像の甘さは承知していたものの、そんなところで作品の評価を落とすなんて嫌だなと反省しました。
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▲2年生の時に応募した映像
それからは展示やパフォーマンスがあるたびに記録映像を残すように努めました。最初は10月の商店街での展示とパフォーマンス。この時は友人にカメラの操縦をお願いしました。
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▲10月の商店街でのパフォーマンス(IAMAS WORKS 2016より※4)
12月は学内展示でのパフォーマンスでは、友人が自主的に撮影してくれた映像と自分が定点で置いていたカメラの映像を重ねて、マルチカメラでの記録映像を制作しました。
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▲12月の学内最終展示でのパフォーマンス(記録協力:原田和馬)
アーカイヴ映像を頑張って撮ろうと思っていきなり上達するわけでもないですし、今でも決して特別上手というわけではないですが、少し意識するだけで新たなテクニックを学べたり、別の誰かの映像を見て「どうやって撮影しているんだろう」と考えるようになりました。また近くに映像を専門にしている友人が多くいたので、わからない技術や編集のテクニックは尋ねることができました。僕は編集作業にAdobeのPremiere Proを使っているのですが、マルチカメラでの編集などは公式から動画で解説※5があるので勉強になりました。
12月の学内の最終展示中に、IAMASで映像を専門に教えていらっしゃる前田真二郎さん※6から、即興演奏の記録撮影のスタディとしての協力依頼がありました。前田さんは学内でHD2プロジェクト※7という4K時代の映像表現を考えるプロジェクトを運営されていて、その中で7分間の即興演奏を4Kカメラで撮影して独自の編集技法を学生たちと考えていました。その即興演奏の題材として僕を選んでくださったのです。記録撮影に四苦八苦していた僕には渡りに船、すぐに承知して撮影に入りました。 撮影には学内のギャラリーを使用して、4Kカメラ5台を3人の学生で操作する形で行いました。7分間のパフォーマンスを2度行った後に、30分前後の撮影を行いたいと撮影前に交渉しました。当時は30分前後が自分のパフォーマンスとしてちょうど良い長さだったので、是が非でも撮影したいと思ったのです。追加のパフォーマンス撮影は快諾されたものの、パフォーマンス時間の長さは7分間を2本撮影した後のカメラのSDカード容量との兼ね合いとなりました。SDカードの容量も考慮に入れて撮影計画を立てないといけないなんて、流石4Kカメラだなと思いました。最終的には25分程度なら大丈夫との判断が降りたので、20分を少し超えるくらいのパフォーマンスを行いました。
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▲HD2プロジェクトと撮影した映像
大学院を卒業後、社会人1年目の夏に再び学生CGの応募がありました。実は学生CGには現役生でなくても昨年の卒業作品を応募できる仕組みがあるのです。応募締め切りの9月までに作品の完成が間に合わなかった学生への救済措置ですね。僕は早速、HD2プロジェクトが撮影してくださったデータを編集して応募することにしました。ただここで問題が生じます。4K映像のデータは容量が恐ろしく大きく、編集作業も性能の良いパソコンでないとできないのです。僕の持っているMacbook Proでは少し動かすと30秒待機しなければ編集できませんでした。結局、20分間の映像の簡単な編集だけで徹夜で2日間もかかってしまいました。途中何度もパソコンが落ちてデータが飛んでも、何がなんでも提出するぞー!という心意気で編集しました。平日だったので仕事もありましたが、気力を振り絞って働きました。あと、編集した映像データの書き出しにも2日かかったと思います。提出間際の数日の記憶はありませんが、とにかくギリギリな状態だったと思います。なにはともあれ無事提出できたので、あとは結果を待ちました。
一次審査の様子はネットで中継されていました。学生CGの最大の特徴として、コンペの審査過程を公開している点が挙げられます。普通のコンペでは結果だけが伝えられ、応募者にとってはなぜ落ちたのか、どのように評価されたのかがわかりません。その点、学生CGでは作品への評価だけでなくアドバイスが得られるのが特徴です。残念ながら審査会をリアルタイムでは見ていなかったのですが、Youtubeには審査の様子がアーカイヴされていました。審査では、楽器そのものの凄さより楽器を演奏する作者の姿や制作態度の真面目さ、映像の美しさを評価してくださいました。意外とあっさりとした感想だったので拍子抜けでしたが、とりあえずノミネートされて良かったです。
https://youtu.be/_DyD-3YRf-Y
▲一次審査(ノミネート作品の決定)の様子 ※URLは僕の作品紹介から再生が始まります。
最終審査もネットで中継されていましたが、仕事の都合でリアルタイムでは見られませんでした。優秀賞の受賞は友人からの連絡で知りました。最終審査では、一見すると幻想的な風景だけど実はコンセプトが真面目な点やコンセプトが実装されている印象、映像の綺麗さを評価していただきました。 また今回は最優秀賞がなく、代わりに優秀賞が通常の3人から4人に変更になりました。この判断には後から色んな意見があったようですが、にはともあれ卒業後に修士作品で受賞できて良かったです。一次審査に引き続き、4K映像の綺麗さや記録映像の技術を評価されたので、本当にHD2プロジェクトの力添えで賞をいただいた形だったと思います。本当に感謝です。
https://youtu.be/r5L2YRb1c9A?t=1h16m57s
▲最終審査の様子 ※URLは僕の作品紹介から再生が始まります。
【準備】
受賞決定後は、日本科学未来館(以下、未来館)※8での受賞展準備のために担当の方と連絡を取り合いました。今回の展示では、3日間の展示で、受賞した作品の映像とパフォーマンスを行いました。映像展示には松平雄介さんが運営されるUZUMAKI PRODUCTS※9のスピーカー「Ratio」を使用しました(UZUMAKI PRODUCTSの詳細は以下のURLから)。個人的には家のヘッドホンでは聞こえなかった高音まではっき��聞こえて、ライブの音に近くなったと感じました。 https://uzumakiproducts.com/uzumakiproducts_d/
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▲映像展示の様子。左右の木製スピーカーが「Ratio」
パフォーマンスは1日平均3回程度行いました。これは個人的な考えですが、パフォーマンス作品なら日に何度でも行えるようにすべきだと思います。1度のパフォーマンスに集中することはもちろんですが、もっと先の無我の境地と言いますか、過度な集中を必要せずに日常の中で呼吸するようにパフォーマンスできることが僕の目指す境地かもしれませんね。 また展示では、Tシャツやステッカーを販売することにしました。これは単にパフォーマンスだけでなく、それを取り巻く活��も地続きであることを知ってもらおうと思ってのことです。Tシャツの制作には自作したシルクスクリーンを用いて、ユニクロのTシャツに印刷しました。同時期に開催されたサウンドパフォーマンス・プラットフォーム※10でもグッズを持って行き、Tシャツが4枚ほど売れたので今回も多めにTシャツを持っていくことにしました。
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▲自宅アパートでのTシャツの生産の様子
【展示】
展示設営はオープニング前日に行われたのですが、勤務先の大学の卒展と重なってしまいどうしても現場に行けなかったため、オープニング前の1時間ほどで準備することになりました。朝から松平さんと未来館に集合して、急いで展示を設営しました。音周りのセッティングは松平さんがやってくださり、僕はパフォーマンス機材や物販コーナーの準備に追われました。 オープニング後、少ししてから子供連れが館内に入ってきましたが、その多くは企画展に吸い込まれていきました。確かにいきなり早朝から学生の展示を目当てで未来館に来る人は少ないかもしれませんが、僕が予想していたよりも会場の客層が違っていてショックを受けました。最初のパフォーマンスの時間になったのでパフォーマンスを開始したのですが、全然お客さんが来てくれず、松平さん相手にパフォーマンスしている状況で大変辛かったです。それでも会場スタッフの方や松平さんが子供たちを連れてきてくださり、まだなんとかパフォーマンスの形になりました。自分が想像していた学生CGの受賞展の雰囲気とは異なり、会場は冷めた雰囲気だったのが残念でした。
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▲少し寂しくパフォーマンス
1日目の展示が終わるころに授賞式が行われました。そのころには何人かの学生さんが集まり、会場は賑やかな様子になりました。授賞式では審査員のトークと授与式が行われ、その後で立食パーティーが行われました。パーティーにはIAMASから宮野有史さん※11と佐野和哉さん※12、綿貫岳海さん※13が参加していました。やはり会場には東京の学生さんが多く、普段お会いしたことのない人ばかりでしたが、新しい人たちと接点が持てたことは大変有意義でした。また作品の映像だけ見ていてもわからなかったコンセプトや作品の質感を感じ取れるのも現場に行ったことのメリットだったと思います。
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▲受賞式の様子
この日は物販として、Tシャツが1枚とステッカーが2枚売れました。やはりサウンドパフォーマンス・プラットフォームの時と比べ、ブース形式の展示でライブの体験が少し淡白だったこともあり、グッズを買うまで熱狂的になるお客さんが少なかった印象でした。
2日目はスタッフの方が前日のお客さんの入り方を見て、会場のレイアウトを変更してくださり、よりパフォーマンスに人が集まりやすくしてくださいました。その結果、パフォーマンスの際には人が集まりやすくなり、前日よりも近くで食い入るように見てくれる人も増えました。 またこの日は受賞者によるトークイベントも開催され作品の説明を行いました。ただアート部門のトーク登壇者の数がイベント時間に対して多かったため、1人あたり8分程度しか話せませんでした。他の部門では作者1人あたり30分くらい話していたので、少し公平ではないなと感じました。それでも前日話せなかった作家さんとも話せたので有意義な時間ではあったと思います。僕は話すことに苦手意識があるので、短い時間でもプレゼンは苦手です。そのためにZineやWebなどの他のメディアを使って活動しています。ステージ上のプレゼンは自分のフィールドではないと割り切って、今後も様々なメディアを組み合わせて活動して行きたいと思います。 2日目もお客さんが少なく、誰もいない状況でパフォーマンスを始めることもありました。その時は少し残念ではありながらも、自分がとても精神的な作業をしているように思いました。完全に下界と切り離された、自分と音だけの世界で神への捧げ物としてパフォーマンスする。そこには人間へ向けられたエンターテイメント性やサプライズなどありません。そんなパフォーマンスを終えて、ふと顔を上げるとIAMAS同級生で韓国人のジョ・ジェヨンさん※が座ってパフォーマンスを見ていました。ジェヨンさんは普段韓国に居て、本来日本には居ないはず。「これは神が与えた奇跡だろうか」そんなことを考えていましたが、ジェヨンさんの会社は日本にも支社があり、今回は都合よく東京へ出張されていたついでに展示を見に来てくださったそうです。東京まで高い金を使って滞在して、誰も見てくれないパフォーマンスして、何の得があるのか悩んでいましたが、どこで誰が見ているかなんて自分の想像を超えたところにあるのかもしれません。それは神のみぞ知る繋がり方で、自分の些細な悩みなど捨てて、今この瞬間のパフォーマンスに没頭できる喜びを味わうべきでしょう。お客さんの少ない展示でしたが、悩みはふっ切れました。
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▲ジェヨンさんが撮影してくださったパフォーマンスの様子
3日目はパフォーマンスはより挑戦的になっていきます。自分がこれまで試したことのなかった楽器の組み合わせや、会場にいた子供たちと一緒になってパフォーマンスしたりしました。完全に会場の雰囲気にも慣れ、自分本来のPLAYを取り戻した感じでした。パフォーマンスの時に感じる無敵感、無我の境地に入っていた時でした。あまり詳しくは覚えていませんでしたが、パフォーマンスの成功・失敗の評価も通用せず、芸術性やエンターテイメント性も無視した、完全にフリーなパフォーマンスに到達できました。3日目はただただ楽しかった記憶だけを覚えています。
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▲子供たちとパフォーマンスする様子
【感想】
3日間の展示・パフォーマンスを終えて、来場者が少なかったのは残念だったが子供の反応を近くで観察できたのは良かったです。子供の性格によっては、すぐに近づいて参加する子もいれば、遠くでこちらの様子を伺う子もいます。その子供の性格に合わせてコミュニケーションを変えていく必要があるでしょう。 また表彰式や展示で同年代の作家さんと交流できたのも良い刺激でした。特にジャンル不問の学生CGでは、音楽以外のいろんなジャンルの作家さんが集まるので、普段は関わることのない世界を見ることができました。特にアニメーションは業界との繋がりが強く、ビジネスライクな話が多く飛び交っていた印象です。東京に住んでいる作家さんたちはお互いを認知しているらしく、東京という土地での作家さん同士の繋がりの強さも感じました。
サウンドパフォーマンス・プラットフォームなどの大きなイベントで修士作品が広く評価されたことは自信になりました。今後も引き続き、勢いのあるうちに新たな挑戦の場へと進みたいと思います。直近では3月から、MTRL KYOTOで滞在制作が開始します。初めての滞在制作で展示型の作品を作る予定ですが、パフォーマンスとは違った新しい地平に挑んで行きたいと思います。終
参考URL 1.第22回学生CGコンテスト http://campusgenius.jp/2016/ 2.スター・ウォーズ/フォースの覚醒(エピソード7) https://eiga.com/movie/78626/ 3.馬定延(マ・ジョンヨン) https://researchmap.jp/snowshoerabbit/ 4.IAMAS WORKS 2016 https://www.facebook.com/pg/iamasOS30/posts/ 5.Adobeの解説 https://helpx.adobe.com/jp/premiere-pro/how-to/multicamera-improvements-premiere-cc.html 6.前田真二郎 http://maedashinjiro.jp 7.HD2プロジェクト https://www.iamas.ac.jp/exhibit15/projects/project//hd2/ 8.日本科学未来館 http://www.miraikan.jst.go.jp 9.UZUMAKI PRODUCTS https://uzumakiproducts.com/uzumakiproducts_d/ 10.サウンドパフォーマンス・プラットフォーム2018 http://www.aac.pref.aichi.jp/gekijyo/sp/syusai2017/detail/180210_spp2018/ 11.宮野有史 http://campusgenius.jp/2017/nominate/149/ 12.佐野和哉 http://sanokazuya0306.com 13.綿貫岳海 https://watakemi725.github.io/biography 14.ジョ・ジェヨン https://www.iamas.ac.jp/international-student-guide/students.html
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oshimatakuromemo · 6 years
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サウンドパフォーマンス・プラットフォーム2018
Date:2018/02/10(Sat.), 02/12(Mon.)@愛知県芸術劇場(名古屋)
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【サウンドパフォーマンス・プラットフォームとは?】
 愛知県芸術劇場で開催されたサウンドパフォーマンス・プラットフォーム2018に出演しました。サウンドパフォーマンス・プラットフォーム※1とは、愛知県芸術劇場の小ホールを使って、コンサートの形式にはあてはまらないサウンドパフォーマンスを展開するアーティストを紹介する公募のイベントです。大きな特徴としては、1)普段手軽に使用することが難しい「劇場」という空間を使ってパフォーマンスができることと、2)「サウンドパフォーマンス」という一般化していない言葉をどう解釈するか、だと思います。 サウンドパフォーマンス・プラットフォームの前身となる「AACサウンドパフォーマンス道場」※1は2006年から始まり、現在活躍されているIAMASの卒業生の音楽家やサウンドアーティストが出場しており、大学院在籍時より作家活動のひとつの目標としていました。 http://www.aac.pref.aichi.jp/bunjyo/jishyu/dojo/index.html
2年前のサウンドパフォーマンス・プラットフォーム2015では同級生らと路上パフォーマンスを応募しましたが落選していました。この時は採用されることが目標ではなく、自分たちが興味をあることを応募することを目標にしていました。これは当時の担当教員だった城一裕さんから「ちょっと活動したくらいでコンペに採用されると思う方が浅ましい」という言葉をいただき、同じように三輪眞弘さんからは「コンペには呼吸するように応募しなさい。落選しても息を吸って吐くようにまた出しなさい」というアドバイスを受けました。これらのアドバイスから当選することを目標とするのではなく、自分が面白いものを応募し、それが如何に面白い試みであるかを説明する努力をしました(結果的に落選してしまいましたがね…)。
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そして今回のサウンドパフォーマンス・プラットフォーム2017には修士作品の「PLAY A DAY」を応募して、公募枠として採用されました!作品の応募に際して、パフォーマンスの動画を応募するのですが、今回は2016年9月のIAMAS OSでのパフォーマンスを選択しました。このパフォーマンスは大垣商店街のお祭りに合わせて企画された展示※2の一環として実践したパフォーマンスでしたが、会場には子供が参加して外では大垣の地方アイドル「むすび@せんせーしょん」※3がライブをしている大変カオスな状況でのパフォーマンスでした。
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もう一つ同じ時期に応募したコンペに学生CGコンテスト※4があるのですが、こちらに応募する際にはHD2プロジェクトの協力を得て撮影した4K動画を使いました。今回のサウンドパフォーマンス・プラットフォームの応募に際して、あえてカオスな状況のライブ映像を使ったのは、応募テーマが「知覚の解放体験」だったからです。劇場というステージに向かい集中して作品を鑑賞する装置に対して、僕は子供やギャラリー外の外的要因というノイズを再評価するようなパフォーマンスがPLAY A DAYならできるのではないかと考え、それが劇場という装置内における知覚体験の拡張になると思いました。
【準備】
公募での採用が決まってから、パフォーマンスの仕様を決定する打ち合わせを行いました。初めはパフォーマンスを実現するために必要な空間の広さ、明るさなどを書いた仕様書をメールで送り、年明けには実際に劇場に赴いて会場のテクニカルスタッフと打ち合わせしました。会場のスタッフには、今回の企画のマネージャーの他に、音響・映像・照明などの技術的なスタッフさんもいました。 打ち合わせのなかで驚いたのが、劇場の仕様にあたって運用のルールが存在するということです。特に劇場には消防法が定められているので、立ち見が発生する場合は届け出が必要というルールに衝撃を受けました。立ち見が発生するということは劇場の席数以上の人が見に来るということであり、観客を安全に誘導できるかの証明が必要になるそうです。当初は劇場内で僕を取り囲むように観客が座った状態でパフォーマンスする計画でしたが、消防法的に実現が難しかったです。 そこで代替案として、劇場内ではなく劇場の外のロビーでパフォーマンスすることにしました。グレーゾーンな解決策ですがロビーの外であれば劇場ではないので、僕を取り囲むように観客が座ることが可能になりました。(他の解決方法として、観客がパフォーマーの呼びかけでパフォーマンスに参加すれば、観客でありつつもパフォーマーなので立って鑑賞することも可能になるそうです。)
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下見の際に撮影したロビー(その気になれば入場しなくても外から鑑賞できるくらい開けた場所)
今回のライブでは会場のPAは使わず、ギターアンプを持参することにしました。僕のパフォーマンスでは基本的に会場のPAではなく、ギターアンプを使うことが多いのですが、これはギターアンプの方が個人の身体に合わせてチューニングしやすいという特徴があるからです。IAMAS在学時の三輪さんの講義でギターアンプについての話がありました。PAとはパブリックアドレスの意味の通り、元となる音声を崩すことなく多くの人に届けることに意義がありますが、ギターアンプはギター演奏者が想像する音を作り込むことに意義があります。高音を削ったり、リバーブを多めにしたり、ギターアンプのノブを触ることで演奏者にとって都合の良い音の性質に作り込むのです。このギターアンプの考えもアリーナクラスのライブになれば、演奏者が直接音を作り込むというよりローディーなどのテクニカルサポートが操作するため、必ずしもギターアンプを「演奏者の身体性にチューニングする装置」とは言えないかもしれないですが、PAとギターアンプの間に考え方の違いがあることは確かです。 これまでは友達のギターアンプを借りて、2台のアンプでパフォーマンスしてきましたが、今後のことも考えて新しいアンプを追加で購入しました。すでに持っていたFender社のSuper Champ x2(真空管15W級)と同程度のアンプを探して京都の街中を走り周りました。初めはトランジスタアンプと真空管アンプのワット数の違いを理解せず、Roland社のJC-22(トランジスタ22W級)などを探していましたが、実際に演奏すると音のボニュームと通りの良さが比べ物にならず、真空管アンプってすごいんだな〜と実感しました。 1週間ほど時間をかけてアンプを探し、最終的にはMarshall社のDSL-15C(真空管15W級)を購入しました。すでに持っていたSuper Champ X2を購入することも考えましたが、同じアンプで揃えるよりも異なるアンプで音に多様性を持たせる方が音が豊かになると考えました。アンプ購入後にDSL-15Cの上位機種DSL-20が発表されたのはショックでしたが、人生そんなもんでしょう。
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またMaker Faire Tokyo 2018※5のために制作した横断幕をパフォーマンス会場の後ろに掲げるために、カメラスタジオでバック紙を支えるスタンドを購入しました。ちょっとサウンドに直接関係ないので実際に掲示するか悩みましたが、実際に会場に設置して決めようと思いました。今回は物販にも力をいれており、PLAY A DAYのオリジナルTシャツを作りました。Tシャツのサイズはこれまでメンズサイズだけでしたが、いろんな会場で女性客がサイズが大きくて購入を控えてたのでレディースサイズも用意しました。
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【前日リハーサル】
本番の前日(2/9)には会場に前入りしてリハーサルを行い、音量チェックや電源の確保、当日の進め方などを確認しました。会場に到着すると楽屋に通され、そこにはすでにゲスト出演者の米子匡司さん※6や谷浦さんの世紀マ3さん※7がいらっしゃいました。米子さんは楽屋で電子回路の組み立てを行なっており、世紀マ3さんは3人で談笑されてました。ちょうど僕が到着したころは堀尾寛太さん※8のリハーサル中だったようです。 鏡貼りの壁や過剰に照明が配置されている楽屋という場所はとても情報量が多く、楽屋に慣れていない僕はリハーサルが始まるまでの時間がとてもストレスでした。 楽屋の文化で勉強になったのは、スタッフの皆さんが楽屋に入ってくるときに、必ずノックをして「失礼します」と言うことです。楽屋の扉は廊下を塞がないように内開きになっているので、扉の向こうに人がいればぶつかってしまいます。そこでノックと声かけを心がけているようでした。また楽屋には更衣室が用意されていますが、開けた場所で着替える人もいるので、失礼しますと声をかけて開ける方が無難なのかもしれませんね。僕も真似して、楽屋に入るときはノックするようにしました。こういうプロのちょっとした仕草が見れたのは面白かったです。
リハーサルでは、主に機材の配置と音量の調整、スタッフの動きを確認しました。機材の配置の確認では、初めに観客を劇場内に入れる時にロビーに荷物があると危険なので、イベント開演後の20分で裏口より機材を出してきて、ロビーに並べる練習を行いました。これまでのライブハウスでのパフォーマンスに慣れていたので、10分程度で機材を並べることに問題はありませんでした。また音量についてリハーサルでスタッフと打ち合わせてゲインなどの数値を決定し、ポストイットに記入してアンプに貼っておきました。これのおかげで、機材を運び終えたあともポストイットに書かれた数字を頼りに音量を決めました。 スタッフの動きについては、インターンシップで劇場に来ていた学生さんに指示を出しながら、当日の観客の見る位置を決めていきました。できるだけ近い距離で見てもらうため、僕の周囲1.5m程度にビニールテープで目印をつけて、そこまで観客を導いてもらうことにしました。
ロビーの空間は開けていて、音が反射しにくい空間だったため、リハーサルでは音量のモニタリングに苦労しました。自分ではよく聞こえていない音でもアンプの前に立つと結構な音量が出ていたりして、今までのライブハウスのような狭い空間との音の違いに戸惑いました。何度かリハーサルを重ねていくうちに音量の勘所がわかってきて、今回のパフォーマンスではリハーサルの大切さがわかりました。よく即興演奏ならリハーサルするほどライブ感が失われると考えていましたが、実はライブ感にはレベル(層)が存在していて、リハーサルはより高いレベルでの即興に到達するための調整なんだと思います。 全てのスタッフを交えた2度のリハーサルでは、実はあまりうまく演奏することができませんでした。自分の持ち時間の20分という時間の感覚を体に覚えさせ、展開の順番を何度も調整しながらリハーサルしました。パフォーマンスの展開についてはメモ書きをしながら、どのように展開すれば観客が原理や現象を理解しつつ、よりレベルの高い現象へと至る経過を楽しめるのか考えました。そして、僕のひとり遊び的なPLAY A DAYのパフォーマンスに、観客と接触するタッチポイントを設けて笑いを誘い、それがパフォーマンスの段階の変化の合図になるようにしました。
【本番】
当日の午前はスタッフと出演者全員で通しのリハーサルを行いました。まずは観客の劇場への案内、イベント企画者の挨拶や注意事項、そして世紀マ3さんのパフォーマンスが始まります。世紀マ3さんから僕のパフォーマンスが始まるまでの20分間に機材のセッティングを終わらせ、観客が劇場からロビーに出て来て、僕の周りに着席したらパフォーマンスを始めます。結局、午前中のリハーサルでもうまくパフォーマンスがハマらず焦りましたが、何度も展開を整理しました。また午前のリハーサル後も、楽屋では米子さんが会場スタッフの方と電子回路を組み立てていて驚きました。どうやら来場者全員に音の鳴る回路を配布する予定らしく、劇場の収容人数分の電子回路を用意していたそうです。すごい熱量でした! 午前のリハーサルが終わり、本番開始までの間に同じく公募枠の清水卓也さん※9とラーメンを食べに行きました。清水さんがプログラマー時代?に通っていたという「麺屋 豚神」に行き、話題のイカスミラーメンを食べました。イカスミのラーメンを食べるときはエプロンが渡され、食べてる最中は口が真っ黒になってしまいましたがとても美味しかったです(パフォーマンス前なのに口を黒くするなんて…でも美味かったんだよ〜)。
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(画像はネットからね)
清水さんと音楽の話になりました。清水さんはパフォーマーではなく作曲者という立場で今回のイベントに参加されており、僕の活動をサウンドアート寄りだとすると清水さんは現代音楽の作家さんだと思います。現代音楽の条件に「楽譜になっている」という条件があり、清水さんの今回の作品では、五線譜ではなく人間の体を分割した表が楽譜として使われていました。話の中では「Alvin Lucierは神である」や「何が音楽たらしめてるのかを人間の知覚から問う」といった刺激的な話がありました。清水さんは年上ではありますが、同じ時代を生きるものとして新たな問いを探求し続ける人がいたことは、これからも励みになると思います。
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午後から開演後はギリギリまでうまくパフォーマンスできるか不安はありましたが、観客が劇場から出て来て、僕を囲むように座ってからは完全にスイッチ(何の?)が入りました。劇場から出てくる観客を見ていてふと気づいたのが、彼らにどんな音を届けるかではなく、彼らがどんな音に気づくかが大切なのではないか、ということです。リハーサルの時は「パフォーマーとしてどんな音を聴かせるべきか」と自分主体で考えていたのが、実際にこれからパフォーマンスを目撃する観客を目にした時、これから生じる現象の主体は彼ら(観客)側であって、自分はただの媒介に徹するべきだと考えたのです。 今回のイベントは「サウンドパフォーマンス」がフォーカスされていたため、無意識のうちに自らに「サウンドパフォーマンスとしておおしまたくろうは何するの?」と圧をかけてしまっていました。つまり、観客に自分のアイデアを一方通行的に理解させようとしており、それがリハーサルでのハマらなさを生み出してように思うのです。 肩の力を抜いてもっと観客とのキャッチボールを楽しむように、こちらが自作の楽器を持ち出して音を出すとみんなが驚く、なぜそんな音が鳴るのか分析しようとする人もいる。パフォーマンスの中では僕の想像や管理を抜け出して観客たちの自由な動きが発生する。僕の視点から周囲を見渡すと、実はパフォーマーはそれぞれの観客なのではないかとさえ思える。 こうしたパフォーマーやパフォーマーから発せられる音だけでなく、それを鑑賞する観客の反応や動き(=バイオリズム)こそが音楽的であり、僕が世界の豊かさや幸福を感じる瞬間です。すなわち、僕にとって「音楽とは、音を媒介とした他者のバイオリズムの発見」ではないかとさえ思いました。IAMAS在学時に三輪さんから「おおしまくんにとって、音楽とは?」と問われ、常に答えをはぐらかして来ましたが、あの瞬間の僕にとっての「音楽とは」そういうことだったと思います。
もちろん観客を目の前にした瞬間、言葉にできるほど理解していたわけではありませんが、感覚的に彼らとの音を媒介としたキャッチボールがしたくなったのです。そう僕に思わせたのは、おそらく観客の顔だと思います。つまり、リハーサルの段階では僕のパフォーマンスを見る人(=他者)が想像できていなかったのが、実際に大勢の観客を前にして圧倒的な他者性と出会い、彼らが一体何者なのか知りたくなった、と同時に自分が彼らにとっての何者なのかを知りたくなったのです。 こうして基本的には僕のひとり遊びを周囲が見守る構造は保ちつつも、パフォーマンスの切り替え段階で観客とうまく接触することができ、パフォーマンスとしては成功と呼べる形で終えることができました。リハーサルが不要だったと言いたいわけではありません。しっかりとしたリハーサルや確認があったからこそ、更なる表現の高みに挑戦することができたのではないかと思います。
【終演後】
僕のパフォーマンス終了後はロビーで休憩の時間となったので、そのまま観客とお話するチャンスがありました。何人かはIAMAS2017※10で一度パフォーマンスを見てくれていて、もう一度改めて見て一年前よりパワーアップしていると言ってくださったことが嬉しかったです。またパフォーマンスには三輪さんも見に来てくださり、終演後に意見をくださいました。三輪さんとしては道具の数をもっと減らして、縛りをきつくした方が表現としてのクオリティの高さが際立つのではないか、というアドバイスでした(ありがたい!)。 全体のイベント終了後は物販コーナーでTシャツとステッカーを売りに出しました。Zineも合わせて配布し、Tシャツは3枚、ステッカーは6枚売れました(まずまずというところですね〜)。結局用意したけれど、レディースサイズは一枚も売れず、メンズのMサイズが売り切れてしまいました。バンドTシャツぽいデザインなので、女性客でも大きめで着る人がいるようです。今度からはメンズMサイズを多めに持って行きたいと思います〜
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物販会場の様子
またイベント終了後は出演者とスタッフを交えての飲み会が催され、本番まで緊張して上手く話せなかった他の出演者の方々と話せたのが良かったです。また最後の最後に谷浦さんからベンディングしたゲームボーイをいただけたのが嬉しかったです〜!しかもゲームソフトは初代ポケモンのピカチュウ版!ピカチュウはベンダーたちの標的になりやすいのかもしれないね…。
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【反省】
今回はリハーサルをしっかり行ったことが功を奏したと思います。これまではリハーサルはネタバレ感があって、あまりしっかり行わないことが多かったのですが、今回を受けて、より高いレベルでパフォーマンスするにはリハーサルをしっかりすることが大切だと思いました。単純に「パフォーマンスを成功させる」くらいのレイヤーならその場の思いつきを即興演奏と称して行うだけでそれっぽくなりますが、もっと大きなスケールで「人生におけるこの瞬間の音楽とは?」を問い始めるには機材の電池切れなどの余計な場面でソースを使ってる場合じゃないんだと思います。 良くなかった点としては、今回はイベント直後に学生CGコンテストの展示が控えて忙しかったので機材の選定せずに多めに持って行きましたが、さすがに量が多くてコストパフォーマンス悪かったと思います(運送費が結構かかりました…)。また相変わらず、プラレールDJから洗濯台の流れが不自然で、もっとプラレールと洗濯台の関係性を持たせる必要があると思いました。 とはいえ全体的には準備は大変でしたし、金銭的にも大きな負担にはなりましたが、収穫の大きな実践になったと思います。在学時の活動の目標の一つをクリアして、次なる表現の高みの片鱗も見えた(ような気がする)ので、今後も精進してPLAYしていきたいと思います。とりあえず直近では学生CGコンテストの展示を頑張ります。終
参考URL
1.サウンドパフォーマンス・プラットフォーム http://www.aac.pref.aichi.jp/bunjyo/jishyu/dojo/index.html 2.IAMAS OS 2016 https://ja-jp.facebook.com/iamasOS30/ 3.むすび@せんせーしょん https://ameblo.jp/musubi-sensation/ 4.第23回学生CGコンテスト http://campusgenius.jp/2017/ 5.Maker Faire Tokyo 2018 http://makezine.jp/event/makers2017/m0051/ 6.米子匡司 http://www.chochopin.net 7.世紀マ3(谷浦朋文) http://centuryma3.hatenablog.jp/entry/2017/12/04/011256 8.堀尾寛太 http://www.ntticc.or.jp/ja/archive/participants/horio-kanta/ 9.清水卓也 https://www.wantedly.com/users/770443 10.IAMAS2017 http://www.iamas.ac.jp/exhibit17/
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oshimatakuromemo · 6 years
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Mimiz 3rd Album『Romantik』リリース記念イベント
Date:2017/12/23 @K.Dハポン(名古屋)
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【動機】
 IAMASの先輩ユニットMimiz(みみづ)※1のレコ発イベントにお誘いをいただき出演しました。2016年9月16日(金)にK.DハポンでMimizが主催されたイベント「金曜ノイズ劇場」※2でご一緒してから、Mimizとは今回で2回目の対バンでした。今年度は僕自身が企画したイベントに自分で出演するという自家発電的な活動が多かったのですが、今回のように誰かから必要とされて出演できるというのは大変ありがたいものです。感謝!  僕にわざわざ声をかけていただいたということは、僕に期待するパフォーマンスの質が要求されていると考えて、何か一年間の成長を見せるようなパフォーマンスにしようと思いました。まずPLAY A DAYにおける質とは完成度の高さではなく、飽くなき挑戦の心です。そこで今年よりパフォーマンスの終盤で活躍させているパラソル型の物干し台を一年間の成長を表すモチーフとして楽器化することにしました。 
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パラソル型の物干し台(イメージ)
画像はhttps://item.rakuten.co.jp/ra-must/0815308/より
【準備】
 まず今年の夏に企画した展覧会「Heterogeneous」※3で展示した物干し台の作品からアイデアを考えました。扇風機の風をタオルに当てることで回転する運動を利用して、タイラップをカタカタと振動させました。タイラップの振動はコンタクトマイクでセンシングし、ギターアンプで増幅させました。これが基本的な発音の仕組みです。  次に京都のお寺でパフォーマンスした際※4に、偶然にも物干しの下の段と上の段の両方を回転させることに成功しました。今までは下の段にタオルをかけ、扇風機の風をタオルに対して真横に当てていたので下の段しか回転しませんでしたが、上の段にタオルをかけて風を斜め上に向けることで下の段と上の段の両方を回転させることに成功したのです!!これにより下の段と上の段の両方の回転を音のトリガーに利用できるようになり、より複雑な音響を作ることがでるようになりました。  またライブの日がクリスマスの時期に近いこともあり、クリスマスツリーを持って行きました。これは完全に思いつきのアイデアだったので、ツリーを楽器に改造することはせず、会場で素材として即興的に利用することにしました。
 今回のライブで一番自分の中でテーマにしたことは「車を使わず会場に行き、これまで通りPLAY A DAYの世界を展開する」です。実はこれまでのライブでは、車の免許を持っていない僕に代わって、周囲の人に車での移動をお願いして現地まで移動していました。そのため大量の機材や素材を現場に持って行くことができ、その場で即興の内容を決めることができました。ただ大学を卒業してから周囲に車での移動を頼める人も少なくなり、ヤマトでの配達もコストがかかるため、今回は「電車での移動のみでどこまでこれまで通りのPLAY A DAYをPLAYできるのか!?」を検証しました(ひとりで勝手に)。荷物の量としては50Lのプラスチックケース2個と物干し台、クリスマスツリー、バイオリンという大荷物になりました。大変重くて何度も死にそうになりましたし、電車の乗り降りの際は周囲の目が痛かったです。撤収の時に誰かが「会場に来るまでの様子もパフォーマンスみたいだなぁ」と言いました。次は会場入りまでを記録撮影してもいいかもしれませんね〜☆今回のテーマに関して言えば「電車だけでも会場に着き、十分なパフォーマンスができた。ただもう少し荷物は減らせたはず」という感じです。
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当日の機材 
(帰り道の途中でカートのタイヤが壊れ、そこからは地獄でした。)
 今回のライブでは商魂を見せて、オフィシャルグッズとしてステッカーを制作しました。デザインはいつものようにニワアヤノさん※5にお願いしました。たびたび僕のZineに登場する男の子(PLAY BOY、もといPLAY Kids)をテーマに制作してもらいました。可愛い顔して笑顔でパソコン壊してるサイコーなパスです(パソコンに貼ってアンビバレンスを味わいましょう)。写真ではわかりにくいですが素材がアルミシールでできており、キラキラと光って大変可愛いのでライブで手に入れてくれよな!
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ステッカー銀 ¥100
【本番】
 会場のK.D Japonは三度目の出演なので会場に慣れていましたが、現場ならではのトラブルもあり、コンクリートの床の凹凸が激しかったため、プラレールのレールが波打ち、プラレールが安定して走らずによく脱線しました。前回のライブではあまり脱線しなかったのですが、今回のライブではなぜか上手く走ってくれませんでした。ここで「今日はプラレール不調!」と気持ちを切り替えて他の演目へ移ればよかったのですが、なぜか僕はプラレールを走られることに執着します。その結果、パフォーマンス中盤はプラレールの脱線に苦戦するシーンが続きます。  プラレールのシステムが上手く作動しない場合、本来であればプラレールを動力としたキネティックなサウンド・システムを作ります。これはプラレール・サスケという動画シリーズを元に着想したものですが、プラレールの上にレールを乗せてレールの側を動かすアイデアです。今後はプラレールの逸脱的使用によるサウンド・システムの構築に挑みたいです。
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プラレール・サスケ(と勝手に呼んでいる)
 また今回のパフォーマンス一番致命的なミスが時計を忘れたことです。普段なら置き時計を会場に置いて時間を管理するのですが、自室で使ったため機材に加えることを忘れていました。また帰り道の途中で雨が降ってきたのですが、機材を守るブルーシートなどの雨具を忘れたため、少し機材を濡らしてしまいました。これも今までは車で移動していたため気づかなかったことですが、電車で移動する際に注意すべき基本事項です。こうした初歩的なミスによりパフォーマンスや準備で焦る結果となったのは残念でしたが、今回の失敗より「ライブ毎に機材リストを制作する」というルールを考えました。今回使用した機材をリストアップし、ライブ後に必要だった機材、不要だった機材を洗い出すことで、今後のライブの準備の際に参考にすることで、現場での機材のミスを確実に減らせるのではないでしょうか?
(機材リストを制作したのですがTumblrに掲載する方法がわかりませんでした。機材リストはまた今度公開します)
【まとめ】
 ライブを振り返ると「物干し台をモチーフにした楽器」と「電車で移動する」という2つのテーマを実施できました。またプラレールと会場の床との相性をリハーサルで調べることや、忘れ物防止のための機材リストの必要性などの反省点も得られました。まだまだ改善点も多いですがひとまず一年間の成長を見せるパフォーマンスができたのではないでしょうか?
  次回はサウンドパフォーマンス・プラットフォーム2018※6や学生CGコンテスト受賞展などの大きな舞台でのパフォーマンスがあるので、短い時間ですが更なる進化を遂げて次の活動につなげていきたいです。終
参考URL
1.Mimiz 
http://mimiz.org
2.金曜ノイズ劇場(について書かれたブログ)
http://incincincincincinc.hatenablog.com/entry/2016/09/17/101137
3.Heterogeneous
http://www.kyoto-seika.ac.jp/fleur/past/2017/0824haterogeneous/
4.音の間にいらっしゃい〜触角で聴く音の世界〜 
http://www.okazaki-iki-iki.org/img/20191029ohshima.pdf
5.にわあやの 
http://niwagif.tumblr.com
6.サウンドパフォーマンス・プラットフォーム2018 
http://www.aac.pref.aichi.jp/gekijyo/syusai2017/detail/180210_spp2018/
7.第23回学生CGコンテスト受賞作品展 
http://campusgenius.jp/2017/
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oshimatakuromemo · 7 years
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音の間にいらっしゃい 〜触角で聴く音の世界〜
Date:2017/10/29 @妙傳寺 本光院(京都)
主催:岡崎いきいき市民活動センター(NPO あつまるつくる)
 京都で開催された音楽イベント「岡崎ワールドミュージックフェスタ2017(以下、岡崎WMF2017)」※1で、触角型楽器「Shake Bug」を作るワークショップとパフォーマンスを開催しました。岡崎WMF2017は「NPO法人あつまるつくる」を中心とした「食と音楽のまち岡崎実行委員会」が毎年開催している音楽イベントで、京都の中でいろいろな国の食と音楽が楽しめるプログラムを実施しており今年4年目の開催になります。昨年には京都精華大学ポピュラーカルチャー学部が授業の一環として民族楽器を作るワークショップを開催しており、その縁で今年は僕がワークショップを開催することとなりました。これまで授業の一環としてワークショップを開催したことはあっても、外部からの依頼としてワークショップを開催することは初めてなので、活動の新しい方向性への挑戦と思って引き受けました。
 今回のワークショップで作るShake Bugは頭から生えた触角で演奏する楽器です。ダンボールで作ったバンドを頭に被り、ギター弦の触角を頭から生やして周囲のものを探ります。すると物に触れた衝撃でギター弦が振動し、ギターアンプから発音します。「楽器は身体の延長・拡張だ」と言われますが、新しい楽器を自称するなら新しい身体の使い方を提案すべきだと考え、頭を振って演奏するスタイルの楽器として開発しました。
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 僕は子供の頃にギター音楽(ロックやブルース)に影響を受けてきたので、楽器を発明するときにはロック文化を意識してしまいます。Shake Bugの頭を振る動作はメタルのライブなどで見られる観客が音楽に合わせて頭を振る「ヘッド・バンギング」がヒントになっており、素材にギター弦を使用したのはエレキギターの再発明を目指しています。ちなみに名前の理由は、開発した際にシンガーソングライターのジェイク・バグ※2のTシャツを着ていたからです。  こうしたロックの影響や意識はローリー・アンダーソン※3の活動に似ているように思います。彼女の活動は(例えば「ドラム・ダンス」とか)サウンドアート的な技術へのアプローチをロック的な表現へと落とし込んでいる印象があります。ちょっと明和電機ぽくって笑えるところも似てるかも!?
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 またShake Bugを演奏する時は、頭を下げて触角を垂らすように身体を動かすので、虫になった気分になります。ここにヒントを得て、僕はShake Bugは虫の気持ちになる楽器としても活用できるのではないか、と考えています。正確には触角と同じ機能するわけでなく、音に変換して疑似体験してるにすぎないので、虫というより昆虫人間になっているのかもしれません。ここで重要なのは人間ではない異なる者を想像している点です。  僕はこれまで社会の不寛容へのマッサージとしての音楽活動を展開してきました。社会の不寛容とは、自分と異なる立場・主張を世の中が認めない風潮のことです。例えば、社会的な背景としては少数民族・移民への差別がありますし、個人的背景としては自身が抱える吃音(きつおん)症という言語障害により感じる生きづらさが挙げられます。自分の見たいものしか見ない、見たく無いものは見ようとしない、そんな時代になっているように思います。
 社会の不寛容が蔓延する現代において自分と異なる立場・主張(他者)を想像することの重要性が増していると思います。とはいえ、僕たち人間の想像力には限界があると思います。誰しもが自由な想像力を持っているわけでなく、自分の中の小さな常識にとらわれてしまうこともあるでしょう。でも、そんな凝り固まった頭をマッサージするために技術(テクノロジー)があるのではないでしょうか?  僕たち人類は道具や技術を発明することで可能になる行動範囲を広げてきました。例えば、望遠鏡の発明は天体の運動を観察することを可能にし、ひいては正確な地球の運動や宇宙の姿についての考察を可能にしました。道具・技術の発明、すなわち科学の進歩は単純な事実の解明ではなく、新たな想像力の開拓ではないでしょうか?そういった観点から、楽器の持つ道具的側面はまさに人間の想像力を広げるテクノロジーだと思います。突飛なアイデアではありますが、Shake Bugとは人間と異なる存在、すなわち他者としての昆虫の聴く音楽を想像する楽器なのです。
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 以前に学内でワークショップを開催した際に、参加者の自由度を高く設定したのですが、参加者によって進行にバラツキがあり、逐一口頭で説明して周るのが大変でした。そこで今回のワークショップの準備段階では、作る過程をプリントにまとめて配布することにしました。このアイデアはテクノ手芸部の本※5を参考にして、背景に緑色の画用紙を置いて撮影しました。
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 当日は台風の接近する中、イベントは開催されました。前日のうちに会場であるお寺の塔頭(たっちゅう)に搬入して当日の朝にセッティングしました。ワークショップをお手伝いする学生さんたちも朝早くから準備に参加してくれました。  来場者には基本的に学生が対応し、困っているグループを僕がサポートする形で運営しました。テーブル席を4つ用意して、一度に4人までの来場者を対応できるようにしました。一番最初の来場者を対応する時は、学生も作り方がわからなかったりして僕もサポートに奮闘しましたが、午後になるころには学生も慣れてきて、プリントを見なくても作り方を教えれるようになっていました。当初は1個のShake Bugを作るのに10分くらいの計算で1日で40個作れるはずが、作って体験するまでに30分くらいかかってしまい、1日の開催を通して14個を作った程度でした。前もって初心者相手に制作時間を計測して必要な材料の個数を計算すべきだと反省しました。一方で、参加者全員がShake Bugを完成させて体験するところまで進めたのはうれしかったです。  またこの世に自分のShake Bugが14個もあることは不思議な感覚を感じます。自分の考えやアイデアが目に見える形で世の中に広がっていく感覚は今までに感じたことがなく、勘違いかもしれませんが楽器や作品が流布することは直接的に社会に影響を与えているような気分になるのです。
 パフォーマンスは午前と午後の2回行いました。午前はワークショップで制作したShake Bugをメインにした展開にしましたが、パフォーマンス前に子供が遊んでおり、パフォーマンスで使うころには電線が断線していて音が出ませんでした。Shake Bugが使えないことに驚きましたが音が出ないことを逆手に触角でシンバルを叩くパフォーマンスになりました。ただ断線に戸惑ってしまい結局はプラレールとリモコンをメインにしたパフォーマンスになってしまいました。  またパフォーマンスの際にはお寺の住職さんの子供が近づいて来ましたが、パフォーマンス中は楽器を触ってきませんでした。以前に岐阜県大垣市の商店街でパフォーマンスした時は、黙っていても子供たちが勝手に参加してきてカオスな状況になりました※6が、今回の子供たちは参加してきませんでした。これは住職のお子さんだからではないでしょうか?つまり法要などのイベントを多く体験してきた子供たちは、法要=パフォーマンスを邪魔しないように教育されているのかもしれません。子供たちは勝手に参加するものだと思っていましたが、それぞれの子供たちにそれぞれの性格や考え方があることを知りました。  午前の反省を活かして、午後のパフォーマンスでは子供たちに積極的に話しかけて、楽器に触って良いこと・楽器の触り方を教えてあげました。すると子供たちは徐々に楽器に触り始め、最初に誰かが触り始めると他の子供は「触ってもいい」というルールを学んで自分から触り始めました。最終的には、子供たちと会話でコミュニケーションをとりながら各々が考えて動くことで、状況が複雑かつダイナミックに変化する面白いパフォーマンスとなりました。
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 今回はワークショップ参加者の困っている箇所を見つけたり、子供たちの性格を想像することを通して「人を見る」ことの大事さがわかりました。今後は聴衆や観衆などの曖昧な概念で人をくくるのでなく、その人となりや性格を想像して制作に取り組みたいです。終
参考
1.岡崎ワールドミュージックフェスタ2017 お寺で開催されるワールドミュージックと地域食材のお祭り。お寺でアフリカンな音楽が流れる様子は大変シュールで良かった。 http://atsumaru-tsukuru.sakura.ne.jp/okazaki-wmf/ 2.ジェイク・バグ(Jake Bugg) デビュー時にボブ・ディランの再来だ!と騒がれ、次世代のギターヒーローとして期待されたが最近は鳴かず飛ばずな印象。それでも僕は好きです。 https://youtu.be/fY0oPg1h8fQ 3.ローリー・アンダーソン(Laurie Anderson) ルー・リードのパートナー。原理が明快なサウンドアート作品を多数発表しており、現代美術とエンタメを横断したパフォーマンスが素敵。O Supermanのパフォーマンスは最高です。 https://youtu.be/Vkfpi2H8tOE 4.明和電機 技術に裏打ち面白楽器と重厚なコンセプトで攻めた製品?作品?を発表しているグループ。工学を学んでいた高校生の時から工学的なアプローチで芸術に言及する姿に影響を受けてきた。 https://youtu.be/pGa8u6nlY48 5.テクノ手芸部『テクノ手芸部』 手芸と電子工作ということなるジャンルを合体させたら新ジャンルになる、という手法を僕に見せつけてくれたグループ。同様の手法にはとんかつDJアゲ太郎も。 http://techno-shugei.com
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oshimatakuromemo · 7 years
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美術室の壁穴#2(Kaseoさんトーク)
「貴方の知らないサーキットベンディングの世界」
Date: 2017/09/30 @Sketch on(岐阜)
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 廣瀬周士さんが主催するシェア工房「Sketch on※1」にて日本を代表するサーキットベンダーのKaseo※2さんのトークイベントがあったので参加しました。Sketch onの中には金属加工の道具や作例がたくさん置いてあり、Fab施設でも金属を扱える場所は少ないと思うので、こんな場所が近くにあれば素材に金属が検討できて便利だなぁ、と思いました。Kaseoさんについては自作楽器の教本※3やWeb記事で知っており、岐阜在住であることも知っていましたがIAMAS在学時に会えず、今回初めて会える機会を得たわけです。僕自身もテレビのリモコンを改造してサーキットベンディングをしていましたが、Kaseoさんの作る楽器はクオリティが高く、どのように制作しているのか、どんな人かずっと気になっていました。同じく楽器を制作する者としては必ずいつか会わなければと思い参加を決意しました。
 会場に着くと10人ほどが入れる部屋の中に楽器が並べられており、そこには既にKaseoさんと主催者の廣瀬さんと数人の参加者が居ました。Kaseoさんはピカチュウの玩具を改造したピカルミン※4が有名で、ピカチュウのコスプレしてるアーティスト写真しか見たことがなかったので普段着が新鮮に見えました(なぜ?)。
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 会場には谷浦※5さんが来ていて、谷浦さんとはライブで共演してから何度かイベントでご一緒する機会があり、京都での企画展「Heterogeneous」も見に来てくださいました。また今回のイベントには一緒に活動している具志堅※6さんも参加しており、具志堅さんもサーキットベンディングに興味があったので、谷浦さんと具志堅さんが会えたのは良かったです。今後、彼らとは一緒にサーキットベンディングに関する展示ができれば面白いなぁと思います。(展示してある楽器に来場者が触れる展覧会とか?)
 イベントでは初めに「サーキットベンディングとは何か?」から解説が始まりました。サーキット(Circuit)とは「電子回路」を意味し、ベンディング(Bending)は「曲げること」を意味します。この「電子回路を曲げる」が転じて「電子回路を改造する」という意味でサーキットベンディングは使われます。ここで面白かったのはKaseoさん自身はサーキットベンディングを「魔改造」の意味で理解しており、デコトラやデコチャリ(LEDで装飾した自転車)とサーキットベンディングの共通点を見出していたところです。元々トラックだった物を改造して鑑賞物にまで昇華する様が、おもちゃを楽器・ノイズマシーンに変えてしまうサーキットベンディングに似ているのです。  またKaseoさんは改造には2種類あり、製品の機能をより良く改造する「改良」と、全く別物に変えてしまう「改悪」があると言います。通常の楽器開発ではより綺麗な音・多彩な音が望まれ「改良」されますが、サーキットベンディングやデコトラでは悪趣味なほどに別物に変えてしまう「改悪」が施され、Kaseoさんはこの「改悪」の方に魅了されたそうです。
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 次にKaseoさん個人にフォーカスを当てて、サーキットベンディングとの出会いが語られます。きっかけとなったのはクラフトワークのアルバムの中で使われたオモチャの音で、そのオモチャがどうしても欲しくて調べていたときにサーキットベンディングに出会いました。そのおもちゃというのがサーキットベンディングの定番「Speak & Spell」だったのですが、当時(10〜15年前)は日本で手に入りませんでした。そこでアメリカから取り寄せるためにebayで中古品を調べていたところ、魔改造されたSpeak & Spellの画像に出会ったそうです。Kaseoさんは魔改造されたオモチャを初めて見た時に音が鳴りとは思わず、何か美術作品のような鑑賞するものだと思ったらしく、この時にサーキットベンディングをデコトラやデコチャリの一種だと解釈したそうです。やがて魔改造されたSpeak & Spellを調べていくうちにリード・ガザラ(Reed Ghazala)※7が提唱した「Circuit Bending」という言葉を知ったそうです。
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 Kaseoさんにとってサーキットベンディングは、電子回路の初心者がやったほうが面白い、やっちゃいけないことをやることが面白い、「オモチャを壊しているけど作っている・音を作っているけど壊している」といったある種のアンビバレンスな側面が面白いと言います。この感覚には共感するところが大きく、僕のPLAY A DAYという活動でもやっちゃいけないことに果敢に挑むことを意識しています。例えばViolinsectという楽器は、ヴァイオリンという高級なイメージのある楽器にタイヤをつけて自走された作品です。一見すると悪趣味に見えますが、処分されていくジャンク品のヴァイオリンに新たな価値をつけて再び楽器として再生しているのかもしれません。この純粋な好奇心で道具を破壊していく感覚と、道具に新たな価値を見出そうとする態度が常に綱引きをしているように思えるのです。
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 また興味を引かれた話としてKaseoさんの好む音楽とサーキットベンディングとの相関についての説明がありました。サーキットベンディングはあくまで楽器・装置を作る手法であって、その先にある音楽とは別物です。どんな音が良いと判断して改造するかは各個人に任され、これがサーキットベンディングにおける個性とも言えます。ある種のチューニングのような概念が存在するのです。Kaseoさん自身はリアルタイムに体験した音楽としてHiphop、それも特にレコードDJに影響を受けたらしく、DJに特有の人様の音楽を流用して自分の表現にしてしまう「インチキ臭さ」に面白さを感じたそうです。サーキットベンディングも同じように改造したハードウェアをDJにとってのレコードように流用した音楽を意識しているそうです。これまでサーキットベンディングした楽器をどう扱うべきか迷っていた自分にとって、自らの音楽原体験と照らし合わせて表現すべき音楽を見出す考え方はとても参考になりました。
 そして、僕が個人的に気になっていた話題「サーキットベンディングのこれから」についても語られました。15年前のサーキットベンディング界隈はニューヨークのアートスペース「The Tank」※8を中心に盛り上がり、その後日本でもシーンを受けて美大ではサーキットベンディングの講義が行われるなどを一世を風靡しました。しかし、ここ10年くらいでシーンの熱は冷めた印象だそうで、Kaseoさんはサーキットベンディングの流行が下火になった理由として、オモチャの変化、コミュニティーが形成できなかった点を挙げます。
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 サーキットベンディングは身近な道具の電子回路を意図的にショートさせて誤作動させることが基本的な手法です。この手法の前提には電子回路をハンダゴテを使って改造できる必要があるのですが、最近のオモチャの電子回路は技術が発達して数ミリの小さなチップと電池だけで動作するため、電子回路を改造する余白がありません。そのため改造できるオモチャ(元ネタ)の素材も少なってきているのです。このままではサーキットベンディングできるオモチャを探すだけで一苦労します。
 またサーキットベンダーたちの多くが個人で活動しているため、中心となるコミュニティーが形成できていないそうです。この点に関して、何かMaker Faire※9のようにサーキットベンダーが年に一度集まるイベントがあっても良いのかもしれません。ただ、コミュニティー形成を試みた先行する実践例があると思うので、なぜムーブメントやコミュニティーができなかったのかを調べてみたいと思います(研究になるかなぁ?)。  イベントの休憩時間に他の参加者とも話しましたが、「サーキットベンディングのこれから」は明るくないというのが共通認識のようです。サウンドアーティストのニコラス・コリンズの著書「Handmade Electronic Music」※10でkaseoさんと同様のことを指摘しており、これからはサーキットベンディングで培った技術を用いてデジタル機器をハックする実践「ハードウェア・ハッキング」※11が主流になりそうです。
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 kaseoさんはピカルミンを430体以上作っているとの話を聞いて大変驚きました。15年間活動されているので、だいたい2週間に1体のペースでピカルミンが誕生している計算になります。ほぼ毎日活動されているわけですが、Kaseoさんからはストイックさよりも楽しくてやってるという印象が残っています。ここ最近は「とにかく続ける」をキーワードに活動していますが、もし活動が苦痛に感じるなら何かを変えなきゃいけない時なのでしょう。やっぱり「楽しい・面白い」が持つ軸のブレなさはとても強度があるように思います。「初心忘るべからず」という言葉がありますが、今年から社会人になって制作に割振れる時間とディスカッションし合える環境が少なくなった今、目の前に新たな初心が立ち現れている気がします。そんな時にKaseoさんの活動は僕の一つの道しるべになるでしょう。とりあえず「これだ!」と思えるものに自分を放り投げてみます。終。
参考 1.Sketch on https://www.sketch-on.net 2.Kaseo https://kaseo.theblog.me 3.楽しい電子楽器―自作のススメ http://amzn.asia/aNBHY4I 4.ピカルミン https://youtu.be/kpjd4lvhhW4 5.谷浦朋文 a.k.a. 世紀マ3 https://artmediaroom.jimdo.com/amrフェス/アーティスト/谷浦朋文/ 6.具志堅裕介 https://94-94-94-94.tumblr.com 7.リード・ガザラ(Reed Ghazala) http://amzn.asia/20F8UWQ 8.The Tank https://vimeo.com/710023 9.Maker Faire Tokyo http://makezine.jp/event/mft2017/ 10.Handmade Electronic Music ―手作り電子回路から生まれる音と音楽 http://amzn.asia/cE0cMMZ 11.ハードウェア・ハッキング http://artscape.jp/artword/index.php/ハードウェア・ハッキング 12.「初心忘るべからず」世阿弥 http://textview.jp/post/culture/11843
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oshimatakuromemo · 7 years
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Maker Faire Tokyo 2017
Data:2017/08/05-2017/08/06、東京ビックサイト(東7・東8ホール)
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 Maker Faireは、変わったものづくりの実践をしている「Maker(メイカー)」と呼ばれる個人や団体が集うイベントです。Maker Faireの中でもMaker Faire Tokyo(以下、MFT)は国内で最大級のMakerのイベントです。私はIAMAS入学前からMFTの存在を知っており、MFTに参加することを活動目標のひとつにしていました。そして、今回念願叶ってMaker Faire Tokyo 2017(以下、MFT2017)に参加することができました。  Maker Faireに参加すること自体は初めてではなく、昨年IAMASで開催されたOgami Mini Maker Faire 2016(以下、OMMF2016)に参加していました。その時は初めての展示だったので、どれだけの作品を展示できるのか、会場の雰囲気や運営について調査や準備せずに参加したため苦労しました。例えば、作品がテーブル内に収まらず、仕方なく展示作品を減らしたり、一人で出展したために休憩に入ることができず、お昼ご飯が食べられなかったりしました。今回は前回の反省を活かして出展しようと決めました。
 まず展示にはニワアヤノさん※1に参加してもらい、2人体制での運営に変えました。彼女にはいつもPLAY A DAY全体のイメージデザインを依頼しており、前回もPLAY A DAYのロゴマークやZine Vol.1のデザインを依頼したことがあります。今回も彼女には後述するZine Vol.2とTwippyという作品キットのデザインを依頼しています。2人体制に変わることで順番に休憩したり、気になる展示を見に行けたりできると考えました。  また当日のパフォーマンスを希望し、展示空間もテーブル2つ分のスペースを希望しました。これはOMMF2016の反省点として、楽器の展示にも関わらずほとんどまともな演奏を見てもらうことができなかったことから、ちゃんと時間を確保するためパフォーマンスを希望しました。展示スペースに関しては「ぼくのDTM」という作品が大きいためOMMF2016では展示できなかったことの反省を受けてのことです。そして、無事にパフォーマンスとスペースともに希望が通りました!ありがたいことです。
 今回のMFTではテーブルクロス、ZIne第2弾、Twippyキットをメインに制作しました。  まずはテーブルクロスについて説明します。これはMaker Faireで提供されるテーブルが無機質な事務机なので、展示の味気なくなることが気がかりだったことへの対策です。また単に事務机を隠すテーブルクロスとして使うのでなく、パフォーマンスの際に後ろで掲示するなど、今後の活動でシンボルとして使えるものにしようと考えました。  京都の手芸屋さん「ノムラーテーラー」で幅120cm長さ2mの布を2枚購入し、つなぎ合わせて2*2m2の1枚の布にしました。布にはPLAY A DAYのロゴマークを書き入れるため、横断幕を自作するブログ※2を参考に文字はTシャツくんの白※3を使いました。ブログではチャコペンで書いた下書きにマスキングテープを貼っていましたが、私は手作りの味わいが深まると考えてフリーハンドで色を塗ることにしました。布端は2つ折りして熱接着テープ※4でまとめました。ミシンが手に入れば改めて布端の処理を行いたいと思います。
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 Zineの制作は今回で2回目になります。初回はOMMF2016で発行した経験があり、名刺の代わりにもなり、自身の活動のマインドを伝える手段にもなります。なにより自分の活動の物的証拠になるので、今回もZineを用意することにしました。今回から新たに「楽器紹介コーナー」を設け、初回はShake Bugという触覚型ギターを掲載しました。Shake Bugのコンセプトを伝える文章ページと「Shake Bugがこの世に普及したら…」を考えるIFページで構成されています。
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 最後に展示のメインとしてTwippyのキットを制作しました。Twippyとはモールス信号で会話をするための道具で「インターネットを手作りする」をテーマに考案されました。今回Twippyをキット化した理由として、今後は自分の制作した作品を使って活動を継続させたいと考えたからです。  これまでは学生身分で作品を作っていましたが、社会人になったことで制作資金や制作時間の確保に関する問題が表面化してきました。今後10年後も同様に作品を作り続けるためにはどうすれば良いのか、を考え始めた結果、とりあえず自分の作ったもので収入を得るというインディペンデントな作家の生き方を真似してみることにしました。具体的に参考にした例として、明和電機やテクノ手芸部があります。彼らは自身で製品を制作・販売したり、メーカーや企画会社への技術提供を仕事にしていました。まずは制作の手引きを作り、勤務先の大学内でのワークショップを開催するなどして洗練させ、最終的には一般的なキットとして販売できればと思います。  組み立て説明書はA3用紙を8つ折りにしたデザインで、表面にコンセプト説明、裏面に実制作を解説したページにすることにしました。初めに私がラフな原稿を書き、デザイナーのニワさんにイラストの執筆とページ構成をお願いしました。裏面はプリント基盤を設計して外部発注することで、プリント基盤付き説明書を販売する予定でした。しかし、MFT2017で販売するには出展料が別途必要になり、金銭面で支払うことができなかったため販売は諦め、基盤の付かない説明書のみのプロトタイプ版を無料配布することにしました。  また初めてのプリント基盤の設計に手こずり、裏面の執筆が印刷入稿に間に合わなかったため、表面のみの説明書となりました。学生時代は24時間を制作に使えたが、今後は社会人になって制作時間が削れたことを考慮にいれて作業工程を考えるべきでしょう。
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 開催前日の8/4(金)から展示準備ができると聞いていたので、荷物の到着や会場の確認のために東京へ入りました。会場に着くと荷物は無事に届けられていました。しかし、展示スペースは当初2つ分を希望していましたが1つ分しかなかったため、スタッフに問い合わせて直してもらいました。幸運なことに近くに他の出展者がいなかったので、私のスペースを2つ分に直す際にトラブルなく済みました。もし近くの出展者が展示を完了させていたらテーブルを動かす際にトラブルになっていたかもしれないので、前日から会場を見ておいて正解だったと思います。  また会場には「世紀マ3」というバンドの谷浦さん※5がいました。谷浦さんとは2016年9月のKD.Japonでのライブで知り合い、OMMF2016の出展も見に来てくださっていました。OMMF2016で会った際には谷浦さんもMaker Faireに出展したいとおしゃっていたので、MFT2017で会えたときは大変嬉しかったです。下の図は谷浦さんのゲームボーイを改造した作品です。
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イベント初日はPLAY A DAYのパフォーマンスを行いました。今回の会場は今までの中で一番大きい会場でのライブだったので、私の小さい音のパフォーマンスは聞こえないのではないかと危惧しました。2017年3月にCircus Tokyoでライブした際にいつもどおりパフォーマンスしたら客から音が小さくて聞こえないと指摘されたことを受けました。私が音の小さいパフォーマンスしているのは現代のライブの大きすぎる音量への批判なのですが、なかなか理解されないことは気づいていました。これまでPAを介さずライブしてきましたが、今回はマイクを使ってライブしてみようと考え、バウンダリーマイクを用いることにしました。あまり頑固になりすぎず何事も挑戦とユーモアを忘れずに活動したいと思ったためです。  しかし、実際にはマイクのハウリングを注意しつつパフォーマンスするため、全然集中できず伏線の回収できないグダグダなパフォーマンスになってしまいました。お客さんも理解できず帰る人もチラチラ見えました(まあ、これはいつものことですが)。ただ、PLAY A DAYとは過去の自分の破壊でもあるため、バウンダリーマイクを導入したことでライブから久しぶりの緊張感を感じました。パフォーマンスは失敗に終わりましたが、PLAY A DAYとしては成功だったかもしれません。��の失敗や成功の軸では評価できないことが自分の活動の特徴ではないか、と考えて心を強く生きましょう。
 展示ではディスプレイでShake Bugガールを展示したり、ぼくのDTMの実演、自作のテーブルクロスを使ってポップで不思議な雰囲気になりました。OMMF2016の時に、来場者から「君の作品は簡単なように見えて、技術の裏打ちがあるね。でも簡単に見える点で損してるかもね。」と言われたことがあります。どうやら最初に見ただけでは何の展示かわからないけど、実際に触ったり説明を受けたりすると作品の面白さがわかる。でもMaker Faireのような客が流れていくブース展示には向かないかも、との趣旨でした。今回の展示でも一見すると何の展示かわからない展示になってしまいました。このポップだけどわかりにくい感じは、もう自分のカラーなのかなと思うこともあります。どうしたらいいでしょうね〜?なにかアイデアや意見があれば教えてください。ただ展示を通して、子供や女性たちの反応が良かったことが印象的でした。TwippyやShake Bugといったシュールな作品の実演をみんな笑っていましたし、エンジニア系の人たちには滑琴やぼくのDTMといった技術的なとんちがある作品の受けが良かったです。幅広い客層に受けたことはとても良かったと思います。特に何人かに「販売しているのか」と尋ねられたことは今後の販売を考える際に自信になりました。
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展示中に近くの出展者が「なんでお金がかかるのに、広いスペースに大荷物抱えて来るんでしょうね?」と言っているのが聞こえました。私も大荷物抱えてきた側の人間なので、自分のことを言われているのかと思いました。なお東京への搬入・搬出には50lのプラスッチクケースをヤマト運輸で運びました。結局、プラスッチクケース3個とダンボール2個の大荷物になったため、搬入・搬出をあわせて15000円ほどの出費が出ています。これにプラスして移動費・宿泊費が重なったので50000円程度の結構な出費になりました。確かになんで高いお金を支払ってまで出展しているのでしょうか?ちょっと考えてみます。  展示を終えて、実際に何か仕事がもらえた訳でも、収入があったわけでもありませんが、自分と同じように変なものを人生かけて作っている人たちに会えたことは大変な刺激になりました。社会人になり、仕事と制作の狭間で悩んでいましたが、社会人で何十年も制作を続けている先輩たちに会って「自分も自分のペースでとにかく作り続けよう」と思い直すことができました。あと私のファンを名乗る人物とも会えたことは衝撃的でした。おそらく2017年3月のDommuneライブを通して知ったようですが、ちゃんと自分の活動が届いてることは嬉しかったです。  そして最後に、今回の展示にはIAMAS同期の仲間たちが多く出展しており、互いの近況が聞けたことが大きかったです。それぞれ活動は順調とは言えなくとも、こうして再び会えたことが単純に嬉しかったのです。彼らが頑張っているから私も頑張れています。そして私が頑張っている姿を見せることが彼らの頑張りにもつながるのではないかと考えています。  なかなか結果のでない日々ですが、こうして年に一度ドープな仲間たちに会えるなら休日潰して、高い金払って出展しても良いではないかと思います。論理の整合性が取れた回答ではないかと思いますが、とりあえず出展に対して自分の中では納得した収穫を得られているので、また来年もみんなに会えるようにパワーアップしてMFTに戻ってきたいです!来年こそは何かグッズや作品を販売したいなぁ〜。終
参考URL 1.niwa gif http://niwagif.tumblr.com 2.ニシヘヒガシヘ ☆障害レース応援ブログ☆ https://ameblo.jp/westeast-yuna/entry-11437786511.html 3.太陽精機 Tシャツくん インク 300g ホワイト 02-6797 http://amzn.asia/gdBUADe 4.KAWAGUCHI 普通地~厚地用 強力両面接着テープ アイロン接着 幅12mm 長さ12m http://amzn.asia/dZqsJpX 5.谷浦 朋文 a.k.a. 世紀マ3 http://makezine.jp/event/makers2017/m0009/
(2017/08/27アクセス)
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