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jilltrojilltro · 4 years
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三つ編み レティシア・コロンバニ
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インド・イタリア・カナダに住む3人の女性が、それぞれ厳しい環境にいながらも信念をもって道を切り開いていく様子を描くフェミニズム文学。
3人とも家族がモチベーションの源泉になっているが、「家族のため」と「自分のため」のバランスが絶妙。ミシェル・オバマの『マイ・ストーリー』も、NETFLIXの『AWAY』でも描かれていたが、「家族のため」がエンジンで「自分のため」がガソリンになって物事を成し遂げていく。
『AWAY』で「今フェミニズミ論を語るの!?」というシーンがあったが、大切な人の前では、大義もルールも習慣も今までの努力もかすむ。判断基準は「どちらが大切な人に幸せをもたらすか」。それと同時に自分の幸せも手放さない。
「家族のため」といっても3人とも少しづつ違っている。サラはずっと会社のためと言いながら自己実現のために働き、ジュリアは父母姉や従業員のための決断を迫られ、スミタは娘のためと自分のためが一致していた。最終的にはサラもジュリアも、自分も大切な人も幸せとなるような選択をしていく。その過程では3人ともどうありたいかを見失わず、環境に柔軟に向き合い一歩を踏み出す様子に惹きつけられる。作者が映画監督なので、3つの話が映画のように進行しエンディングで見事に結実する描き方がよかった。
この本を読んだのは、ルース・ベイダー・ギンズバーグ判事が亡くなった直後だった。アメリカのサラやジュリアやスミタのような人(女性に限らず)のために戦ってきた人だ。『RBG 最強の85才』と『ビリーブ』を観ないと!
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jilltrojilltro · 4 years
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天才たちの日課 女性編      メイソン・カリー
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一般的な勤務時間に縛られることのない作家や画家などのアーティストたちが、自由な生活だからこそ、どうやって自己管理をし創作活動をしていたかがわかる。天才たちをいくつかのグループに分け、うち1人のエピソードからのキーワードを章のタイトルにしているが、それが魅力的だ。例えば、「巧妙でとらえにくい設計図」のタイトルは、ヒラリー・マンテルが、本を書くことをそう表現している。「最後までしあげてしまわないと設計図がどんなものだったかわからない」それってそもそも設計図なの?最初に思い描いていた設計図と大幅に変わるってことの作家的表現?
内田樹と平川克美の対談本で、村上春樹は「日常生活を一階として地下階があり、さらに地下2階があり、そこで経験したことを物語る」と言っていたそうだ。また、平川氏は「ゴッホはあのように表現したのではなく、あのように見えていたのではないか」とも言っている。彼にとってはリアリズムなのだと。天才たち204人の中にこのような特異な能力を持つ人はひと握りなんだろうけど、創作するということはその能力を使うための、もしくはその感覚に近くための闘いなのだ。思うままに書いて、直し書いては直しの繰り返しで高めていく。
前回の『天才たちの日課」は161人のうち女性は27人と少なかった反省を踏まえ、143人の女性を取り上げている。雑に性別での傾向を見ると、男性はルーティンを守ることや自分を律することにエネルギーを注ぎ、ともすればドラッグや酒などに依存したり病みがちだ。一方女性は家をマネジメントすることにもエネルギーを必要とし、そのためか日常にメリハリが生まれ、精神衛生上にもいいように思う。没入による作品力アップかマルチタスクによる健やかさか。両立するにはよりエネルギーがいる。そして当然両立を可能にした人もいる。スーザン・ソンタグとえエレノア・ローズベルト。彼らは全てを完璧にすることを目指し、達成する。矢野和男が著書「データの見えざる手」で活動予算と表現していたが、ああ。私は省エネ。エネルギーの総量は何によって違いが出るのだろう。
また個人のエネルギー総量と他者との関わりの量は比例する。そしてルーティンやルールの取り入れ方は様々で、1日のほとんどをルールに則って過ごす人もいれば、1つ2つに限る人もいる。他者との関わりが限定的な人はルールが多いし、関わりが多い人は少ない。夜は必ず牡蠣を食べるとか、ジョブズみたいに同じものを着る、同じことをする(散歩する人が多い!)ことで、創作のスイッチを入れる、日常的な決断の機会を減らす、ルーティンから生まれる違いをキャッチアップするとか効果があるのはわかる。ヘミングウェイの毎日その日書いた字数をカウントして記録するというのは、作家ならではでおもしろい。毎日基礎体温を測ったり、体重を測るのと同じなんだろうな。決まりが少ない人の中でも、女性編に多く見られるのが、すきま時間をうまく活用している人たち。だって家族に時間を奪われるからね。
この本をコロナ禍の自粛期間に読んだのはいいタイミングだった。変化のない日常を、ルールを設けてメリハリをつける、スイッチを切り替える、もしくは何もしないなど、俯瞰して見ることができた。天才じゃなくても日常をコントロールするためのヒントがたくさんあった。
最後に冒頭のヴァージニア・ウルフの言葉
時が人の顔つきを変えるように、習慣は人生の容相をシダに変えていく。そして本人はそのことに気づかない。
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jilltrojilltro · 4 years
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サピエンス全史  ユヴァル・ノア・ハラリ
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最近わくわくする趣味を見つけた。それは織物。「組織図」といういわゆる設計図をもとに、一列ずつ織り機を打ち、徐々に柄が出来上がる。淡々と、でも集中力を切らすことなく織る作業が楽しすぎる。同じ時期に魅力を感じて取り組んでいるのが、独学でリベラルアーツ(人間を自由にする技)を学ぶこと。思考法とかフレームワークといった即時性があるビジネススキルを学ぶのと違って、哲学や歴史、自然科学など11種の分野を広く学ぶのでとても時間がかかる。織物のように少しずつ重ねていきたい。
こうして学んだことを、人生に活かしている人に魅力を感じる。例えば岡本太郎。芸術を生業としながら、若い頃から社会学、民俗学、精神病理学を学び、それを考えや作品に影響を与えている。そして彼の著書に、ピカソが「1枚の傑作を描くよりもその画家が何者であるかということが重要」とあったように、背景にあるストーリーを知ってこそより楽しめる。
そこでこの本。リベラルアーツのイントロとして最適な本だった。7万年前にヒト科ホモ属サピエンス(賢い)が誕生してから現代までに何があったかを語る壮大な歴史書。約550ページ!歴史が始動した“認知革命”、歴史が加速した“農業革命”、歴史に終止符が打たれるとする“科学革命”という3つの切り口で語られる。概要は訳者あとがきで見事にまとめられているのでそちらを参考にしてもらうとして、随所に皮肉が効いた語り口のおかげか読みやすかった。とはいえ読後の達成感はなかなかだったけど。著者はこれほどの知識と思考力でまだ43歳なんてびっくりする。彼こそがサピエンス。
視野を広げてくれる記述がたくさんあった。私たちホモ・サピエンスが生き残っているのは知性があったからだとぼんやり思っていたけど、数万年もサバイブできるほど残虐な種でもあるという事実が突きつけられる。アメリカの心理学者ハリー・ハーロウの猿の発達研究のくだりは胸が締め付けられる。
また生物学、物理学を根拠としていると思っていた「普通」「普通じゃない」とか「自然」「不自然」の判断が実は、宗教に影響された文化がそう感じさせていたのでは?と考えさせられたり。日本にいると宗教を身近には感じないけど、文化として側にある。最近見た “2人のローマ教皇”(フェルナンド・メイレレス監督)は今年ベスト3に入るいい映画だった。同じカトリック教会でも二人の教皇は考え方が違う。現在のように市場経済が世界を動かす前に牽引していた宗教とはなんぞやとか、フランシスコ教皇最高とか思ったり。
他には自由と平等は成り立たないという記述があったが、現代は自由が加速し、平等が減速しているなと思った。自由の加速でいえば、US hiphop界では10代の子たちが、見た目がなんでもpoorでもいいじゃない!っていうムーブメントが起こってるらしいし。平等の減速でいうと、2016、2018、2019カンヌ映画祭のパルムドールはそれぞれ英、日、韓の底辺家族を描いた作品が受賞してるとか。
他にも色々気付きはあったし、目標の11分野99冊の本を読み終えたときのアウトロとして再読したらおもしろいだろうな。
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jilltrojilltro · 4 years
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マイ・ストーリー  ミシェル・オバマ
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初のアフリカ系アメリカ人ファーストレディ、ミシェル・オバマの回想録。幼少期から8年間の公職を終えるまでの約600Pに及ぶ長いストーリーだが、身近な目線で書かれているためとても読みやすい。 
身近な目線だと感じる理由の1つは、名門大学に行き弁護士になり、地域で活躍していた彼女だが、常に「Am I Good Enough? 私は十分な人間なの?」と問い続け、悩みながら進んでいく様子が、(後半の常に〜のところだけ。。)私も一緒じゃないか!と思えるから。芸人でコラムニストであるプチ鹿島曰く、グレーで悩み続けるのがいい。「白」と言い切るのは思考停止だし、「黒」にするのもあきらめだったりする。悩みがあるのはいい状態じゃないと思ってたけど、思考停止でもあきらめでもないのだ思うと悩み続けるのも楽しめるな。
ファーストレディになる前から女性「初」黒人「初」など、ロールモデルが少ない中で努力し続けたミシェル。連想するのは2016年公開の映画「ドリーム」。ミシェルが大統領夫人になる50年ほど前、NASAの研究所で計算手として働き、宇宙開発に多大な貢献をした黒人女性たちの話。こちらも力を発揮できないのは環境のせいだというのは理由にならないと思わされる。厳しい環境で発揮できない人をダメだと言うつもりはないけれど。。ないのか?
また、この本でも子どもに対して「あなたをちゃんと見てるよ」と示すことでそれだけ力を発揮するとあった。でもこれって上司部下でも友人でも夫婦でも同じだ。夫が私を「見ている」から私は能力を発揮できているのだ。時に迷惑だけど。
元大統領夫人で信念がある女性という意味ではヒラリー・クリントンがいるが、彼女がこの1年前に書いた回想録「WHAT HAPPENED 何が起きたのか?」を読んでみたい。(こちらも100万部突破のベストセラー!)ブラックとホワイトという社会的には大きな差がある2人だが、さらに大統領候補となるヒラリーの思いも読み比べてみたい。
それにしても読み終わりたくなくて、終わりかけでしばらく置いていた本はひさしぶり!事あるごとに開き、その度に気づきを与えてくれるバイブル的な本になりそうだ。
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jilltrojilltro · 4 years
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新聞記者  望月依塑子
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東京新聞の記者である作者が、子育てをしながら記者として信念をもって取材をする様子を描くエッセイ。官房長官会見で、後に引くことなく質問を重ねる様子で注目を浴びた筆者が、どういう思いで仕事にのぞんでいるかかがわかる。
前回書いた、底辺託児所で働き底辺小学校に子どもを通わせながらイギリスで生活するブレイディみかこ。どちらも社会と関わり、その社会で感じた違和感を表現し発信している。
ジャーナリストの世界にある悪い因習や馴れ合いに一石を投じかき回すことができたのは、女性だったからではないだろうか。どの世界でも変化をもたらすのはマイノリティで、(というか実際社会的マイノリティでなくても)自分がマイノリティだという自覚が奮起させ、力を与えてくれるのだろう。
筆者を知ることで、官僚として政権にNOと言った前川喜平さんやジャーナリストとして社会にNOと言った伊藤詩織さんなど、現政権の暗部を知ることができ興味深かった。知れば知るほどゲンナリするけど。。
子どもの頃のエピソードでは、筆者の母親がいつも世界の貧困や不平等について諭すような本やテレビをすすめており、「自分の身の回りだけでなく、世界で何が起きているか常に関心を向けなさい」というメッセージを感じたそうだ。
その時には興味を示さなくても自分がいいと思うものを伝え続けることで、いつの間にか影響を受け、関心を持つようになるんだな。子どもは別個人で、いつも親の望み通りにはならないけど、それでも伝え続けることで、確実にエッセンスは子どもに浸透していくのだと思うと、報われる思いがする。
昔行った養老孟司の講演会で、参加者の質問に対し彼が「子育てに正解はないのだから、自分がいいと思うことをすればいい」と言っていた。シンプルだけどそれって案外難しい。分かっていながらよくないこともやってしまう〜猛省。
映画版は主演のシム・ウンギョン(映画 “サニー 永遠の仲間たち” のイム・ナミ役 最高にいい映画!!)だし、ぜひ観よう!
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jilltrojilltro · 4 years
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子どもたちの階級闘争  
ブレイディみかこ
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イギリスの底辺託児所で働く著者が、政治が与える市民(特に貧困層) への影響とその中でたくましく生きる人、どうにもならず力尽きていく人などを描くエッセイ。この後に書かれた “ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー” では差別や理不尽な環境の中で光る子どもの感性の鋭さと賢さがすばらしく、多くの発見があったが、対して本書は大人の目線で見たリアルなイギリス社会が見える。
肌の色や国によるレイシズムには意識的である人々が、階級によるレイシズムは平気でする。特に階級社会であるイギリスではそれが顕著に現れるようだ。レイシズムにも多面性があって、無自覚に差別的になりやすいことに自覚的であり続けることが必要だと教えてくれる。
また、託児所には手に負えない暴力性を持つ子ども、極端な無関心、無反応をする子どもが多くいる。彼らに対して「いつもあなたを見ていますよ、気にかけていますよ」ということが伝わると、その子たちの心は和らいでいくのだ。親ができればいいが、貧困がその余裕を奪い取ってしまう。そんな中で著者を含めた周りの大人や兄弟、同じ託児所の子どもが彼らに向き合うことで行動が変化する様子には救われる。
自己責任論という排他的な強者の論理を一切持ち出さない著者を見習いたい。今恵まれているのは幸運だっただけで、いつ弱者にあるか分からないということを忘れがちになる。東大の入学式の祝辞で上野千鶴子も言ってたな。
イギリスの貧困がよくわかる映画として Ken Loach監督の “わたしは、ダニエル・ブレイク” が生々しかった。そして、NETFRIXのドラマ “ザ・クラウン” は、いわば階級社会イギリスの頂点(エリザベス2世とイギリス王室)のドラマで、あわせて観ると面白い。頂点では「イギリス国民」とひとくくりにしているが、底辺と頂点の距離は恐ろしく遠い。しかし底辺を底辺にしている政治に口出しできない頂点のジレンマも描かれている。
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