“ジットロンは、検索の質をめぐる取締役会の闘争の物語を綴っている。その取締役会で、Googleの全盛期を支えた古参Googlerであるベン・ゴームズが、コンピュータサイエンティストからマネージャーに転身したプラバカール・ラガバンとの闘争に敗れたのだ。ラガバンの戦術は、検索の質を下げることで検索クエリの数(つまり、同社が検索者に表示できる広告の数)を増やすこと(訳注:「エンゲージメント・ハッキング」)だった。そうすれば、ユーザは目的のものを見つけるまでにGoogleでより長く時間を過ごさなければならなくなる。 ジットロンはこの2人の経歴を対比させている。ヒーローのゴームズは19年間Googleで働き、とてつもなく困難な技術的スケーリングの問題を解決し、最終的に同社の「検索皇帝」になった。一方、ヴィランのラガバンは、2005年から2012年までYahooの検索トップを務めるなど、キャリアを通じて「失敗を重ねながら出世」してきた。ラガバンの指揮下では、Yahooの検索市場シェアは30.4%から14%に落ち込み、最終的にYahooは検索事業を完全に放棄し、Bingに取って代わられた。 ジットロンが掘り当てた社内メモから、ラガバンがCEOのスンダー・ピチャイ(元マッキンゼー社員)の助けを借りて、ゴームズ追放が画策されていったことがわかる。iPhoneやSamsung、Mozillaまで、あらゆる検索ボックス提供者とGoogleとの独占的な取引により、品質を落としてもビジネスへの影響はないだろうという(正確な)考えのもと、プロダクトを劣化させて利益を上げようとするメタクソ化の勝利だった。 単に大きすぎて潰せない企業の姿ではない。FTC委員長のリナ・カーンが『The Daily Show』で言ったように、「大きすぎて気にしない(too big to care)」のだ。”