Tumgik
twinetmmm · 4 years
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 ひさしぶりに東京に帰ってきて暇だし一緒に飲まないか、と女から電話があったのは別れて1年ほど経った頃だったろうか。女は誰もが知っている大企業に就職して日本語とは思えないほど酷い訛りで話す寒い町に勤務することが決まり、俺は見事に大学を留年した。どうせ新社会人と大学生の遠距離恋愛なんて続くわけがないと思ってサッサと別れたから、未練など無いつもりだった。
「ひさしぶり。変わらないね」 「俺は大学生のままだし、たった半年だからね。そっちはリクスーなんか着て変わっちゃったな。服と住むところ以外になにか変わった?」 「仕事は忙しいけれど、上司がすごく良い人で色々と教えてもらってる。社会人としてのマナーだったり、田舎での人付き合いの方法だったり」 「へぇ。新しい町には慣れた?」 「おばあちゃんたちがすごく優しいの。仕事で外回りに行くんだけど、もってけぇってなんて言って採れたての野菜をくれたりすんのよ」 「...へぇ」  生まれてこのかた包丁など持ったことない東京生まれ実家暮らしの女でも、田舎で暮らすようになると茄子や人参を刻むようになるものだろうか。
 ひとしきり近況報告を終えると特に喋ることがあるわけじゃないが、ふたりとも酒が好きだったから店を変えながら杯を重ねていった。居心地の良い時間だった。 「冬は毎日雪かきしなきゃだし、車の運転も大変だけど、夏はすごくいいところよ。田んぼに風が渡る時にさやさやってそよぐ音なんて、こっちに来てはじめて聞いたもん」 「まさかお前が雪道を運転してるの?本当に?」 「もちろん。雪の山道だって走るわよ。...ところで、あなた就職先は決まった?」 「特に就活してないし、バイトしてるバーにそのまま勤めようかなぁと思ってる。向こうも卒業して行くとこなければ社員にならないか、って誘ってくれてるし」 「就活してないならヒマでしょ? 夏の間、ウチに遊びに来ればいいじゃない。夏に大きなお祭りがあって、会社のみんなで毎年一緒に参加するの。私も綺麗な笠を被って踊ってるのよ。ちゃんと練習して」 そう言って見せてきた写真には、化繊の浴衣を着て誕生会にティッシュで作る花のようなボンボンを付けた笠をかぶった女が映っていた。やけに胸の大きな女だったから浴衣がまったく似合っていないのだが、おおらかであり、エロティックでもあった。  俺が興味深そうに写真を見つめているのを眺めながら、女はタバコに火をつける。俺と付き合っていたときにタバコを吸うようになったのだ。俺と同じ銘柄の、もっと軽いやつを。 「まだアメリカンスピリットを喫ってるんだね。それはそうと、それ、東中野にあるラブホテルのライターじゃない」 「...どこかで間違えて持ってきちゃったんじゃない?」 「他人のライターをパクるやつは、平気で他人の恋人も盗む」 「私はあんたの意味ありげな喋り方が嫌いだった」 「オーティス・レディングのSitting on the dock of the bayって曲知ってる?  Look like nothing's gonna change  Everything still remains the same  I can't do what ten people tell me to do  So I guess I'll remain the same, yes...て曲なんだけど」 「知らない。それより次、どこ行こう?」 「So I guess I'll remain the same...」 「私はあんたの意味ありげな喋り方が嫌いだった」 「梵が吸いたい。家に行こう」
「さぁ、ゆっくり口まで煙を入れて、ゆっくり空気と混ぜながら肺いっぱいになるまで吸ったら息を止めて....」 「あんたが何度も吸うところを見たから、そのぐらいわかるし。ご丁寧に、説明しながら」 女は18歳の頃のような蓮っ葉な喋り方で、噎せもせずに煙を吐き出しながらそう言った。 「なぁ、オーティス・レディングのSitting on the dock of the bayって曲、忘れちゃった?付き合ってた頃にふたりで聴いた...おい、聞いてるのかよ」 「えぇ、効いてるよ...」  その晩、大麻をしこたま吸いながら女を抱いた。女は特に体型が変わったわけでもないのにどっしりとしていて、俺は1年分の不摂生で痩せこけていた。  俺は稲穂が出る前の青々とした田んぼと遠くに聳える山々を背景に、花笠をかぶって笑う女を夢想する。女は首筋にうっすらと汗をかき、いつもより小さく濃い口紅を引いていた。  女の服をたくし上げて荒々しく突き上げると、女は踊る様に腰をくねらせて嬌声をあげる。俺が体位を変えるために離れるたびに、女は急かされるかのように俺の陰茎を口に含む。なんとなく、こいつの今の男は俺より歳上なんだろう。おおかた世話になってるらしい上司あたりと不倫でもしてるんだろう、なんてことを考えていた。たぶん俺が次の夏にこいつのところへ会いに行くことはないだろうし、こいつも本気で誘っているわけじゃない。だけど、死ぬまで夏は毎年やってくる。
 翌朝、女と朝飯を食って別れたあとタバコを喫おうと思ってポケットを探ると、タバコと一緒に行ったこともない東中野のラブホテルの名前が入った百円ライターが出てきた。その時にやっと、あぁ俺たちはもう別々の道を歩いているのだ、と理解した。
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twinetmmm · 9 years
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大久保百人町の思い出、或いは新宿浄化作戦についての所感
はじめて東京でひとり暮らしをスタートしたのは18歳の時、それまでに何度かやった野宿旅の気分で寝袋一個だけ持って上京した。電気が通っていない6畳一間のがらんどうのようなマンションに寝袋と少しの着替えが詰まったバックパックがぽつんとひとつ。変に突っ張ったせいで親から仕送りを貰う訳にもいかず、カーテンすら買う金が無かった。真っ暗な部屋で寝袋にくるまりながら窓の向こうから漏れてくる団らんの光を見て、はじめて「あっ、旅と生活は違うんだ」と実感した。流石にこれはマズい。大学の友達すら部屋に呼べない事に気付き、少しでも家具を揃えるため、先輩が働いていたしゃぶしゃぶ屋でバイトをはじめた。場所は大久保百人町。深夜勤務だったから、10時に入って朝方の5時まで。二丁目から流れてくる常連のゲイ3人組から「あなたはメニューに載ってないの?」なんて、よくからかわれたりした。
大人しく電車に乗って西武新宿駅から職安通りへ抜けるのが一番近くて楽なルートだったけれど、金を節約するため大学からバイト先まで歩いて通った。戸山公園のホームレス団地から大久保通りを渡って百人町の細い路地を抜ける通勤路は、時々身の危険を感じた。まだ石原都知事が新宿の浄化作戦に乗り出す前で、大久保の路地裏は混沌としていたのだ。電柱毎に立っているのは韓国系と南米系の娼婦。南米系の娼婦はとても積極的で、時々バイト上がりでクタクタになっている僕の腕を引っ張って、無理矢理「ホテルいこ。ホテル」と連れ込もうとしてきた。相場はホテル代別で1万5000円ぐらいだったかな。ひとりだけ南米系で物凄いとしか言いようのないおっぱいをした黒髪美人さんがいたけれど、流石にエイズ多発地帯で娼婦を買う気にはなれなかった。いつも同じ角に立っているイラン人は僕らが歩くと「チッ、チッ」と舌打ちしてくる。「アレはクスリ買わないか、っていうサインなんだ」と先輩が教えてくれた。時々、マンションのエントランスで客と取引をしているのを見掛けた。福岡に居る頃は知り合い伝手からネタを買うばかりで、流しのプッシャーなんて見た事がなかったので、新鮮な経験だった。酔っぱらっているのか、クスリでも盛られたのか、ふらふらと歩いたかと思うと路肩の縁石にパンツ丸出しで座り込むリクルートスーツ姿の姉ちゃん、聞いたことのない異国の言葉で罵り合っている血まみれの男たち、僕にとって東京の夜は外国だった。
しゃぶしゃぶ屋のバイトを辞めてからは大久保に来ることも少なくなったのだが、ある日、久しぶりに所用で訪れてびっくりした。あれほど沢山いた街娼や密売人たちが居なくなり、百人町はただの薄暗い路地裏へと変わっていた。どうやら、石原都知事の新宿浄化作戦が功を奏した後だったらしい。あいつらは一体どこへ行ったんだろう。同じ街の夜の隅っこで働いていた僕は彼らにシンパシーを感じていたため、何だか悲しい気持ちになった。
「住宅街で薬物の密売が公然とおこなわれている」というニュースが夕方のワイドショーを賑わすようになったのは、それからしばらく経ってからだ。僕はそれを眺めながらニヤニヤしてしまった。なんだ。やっぱり奴らはタフだ。ひとつの場所が都合悪くなれば、次の場所へ移るだけ。闇雲に追いかけても、よりわかりにくいよう巧妙に姿を隠す。ニュースでは「住宅街で密売がおこなわれるようになって、主婦や学生が薬物のターゲットになっている」なんてことを言っていた。繁華街にネオンが煌めけば、必ず影はできる。キッチンジャンキーが増加しているとしたら、夜を払い清めるようなバカな真似をした石原都知事のせいだと僕は思っている。
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twinetmmm · 9 years
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���ッドショップの思い出よもやま話
90年代後半にマジックマッシュルームが流行するにつれて、福岡にもヘッドショップが雨後の筍のように乱立した。ほとんどの店が「誰が買うんだ?」って言うようなくだらない雑貨やシケたパイプを申し訳程度に並べてて、レジの近くに設けたショーケースにマジックマッシュルームを陳列しているような類いの店だった。だいたいショーケースに並んでいるのはダミアナやチャクルーナ、ワームウッドみたいな効かないハーブ類と、ペヨーテやサンペドロなどのサボテン類、そして「メキシカン」や「ハワイアン」といった名前で売られていたマジックマッシュルーム。フィロソファーズストーンというマジックマッシュルームの菌塊も、一度だけ売っている店を見たことがある(これは現在でもアムスではマジックトリュフと言う名前で売っているそうだ)。 大概はロクでも無い店ばかりでアイデアもオリジナリティも無いため、すぐに潰れてしまうのだが、そのうちの1店舗とは栽培したマジックマッシュルームを買い取って貰ったりとお世話になった。当時は高校生だったので、そこそこ良いお小遣い稼ぎになっていた。
ほとんどがどうしようも無い駄目な店だったのだが、ある日飛び抜けてぶっ飛んだ店がオープンした。もともとMという店の店員だった兄ちゃんが独立して大名地区に開いたCという店で、この人のクスリの知識が半端無かった。試薬を自分で試してブレンドしているらしく「こんなのが欲しい」とリクエストすると最適なネタを見繕ってくれる、ソムリエのような人だった。ブランド物のガンジャの種もアムス価格より少し高いぐらいの値段で販売しているわ、挙げ句の果てに「もっと安い種ありませんか」と聞いたら「質は劣るけど、これなら安く出しても良いよ」とカウンターの裏から種がパンパンに詰まったパケが出て来たり……あれは絶対に自家栽培した種だったと思う。
何より驚いたのが店でネタを吸わせていたことだ。店を入った奥にコの字型になった1畳ほどのデッドスペースがあって、そこに空気清浄機とずっとサイケデリック系のビデオが流れているTV、それに小さな円筒形のスツールが置いてあった。「なんであんな場所に」と疑問だったのだが、何度か通ううちに時々そのスペースはカーテンが閉められていることがある。そして、奥からコポコポと音が聴こえてくるwww 僕らは「あんなアブねぇところで吸えるか!!」と思って、極力近づかないようにしてたのだが、結局オープンしてから2・3年ほど経った時に大麻の栽培と密売で捕まって潰れてしまった。なんでも知人と一緒に鹿児島で栽培してて芋づる式に捕まったそうな。多分店でこっそり売っていたんだろうなぁ。裏メニューの多い店だったけど、まさか大麻まで売ってたとは知らなかった。今のようにヘッドショップから出て来た客の後を尾行して職質されるような事も無い、のどかな時代の話だ。
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twinetmmm · 9 years
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おクスリとグレープフルーツの意外な関係
日本には古来より“食べ合わせ(合食禁)”なんて風習がありまして、ウナギと梅干しは一緒に食っちゃいかんとか、スイカと天ぷらは下痢する、とか色々と食に関するタブーがあるわけです。大体が迷信に属するものですが、蟹と柿の食べ合わせ(体温が下がるらしい)のように、たまには根拠のある組み合わせもあったようです。 で、科学の光が行き届いた現代では合食禁の多くは迷信となって廃れたかというと、さにあらず。科学的分析を経て、ホントに避けるべき合食禁が判明、むしろタブーな組み合わせは増えたと言っても過言ではない。 以下はWikiから転載。
スイカとビール :両方ともほとんど水分であるが、利尿作用もある。ビールの摂取が進みすぎ、急性アルコール中毒を引き起こす可能性がある。また、水分を摂っているつもりでも気づかないうちに脱水症状に陥っていて、水泳前や入浴前では水死の危険性もある。
ラーメンと飯(ラーメンライス) :チアミン(ビタミンB1)は糖質代謝に関連するビタミンであり、その必要摂取量は炭水化物の摂取量に依存する。ラーメンと飯(白米)はともにビタミンB1をあまり含まず、炭水化物摂取量が増えるため、疲労や肥満を招く恐れがある。ちなみに、ご飯もの(米飯料理)でも同様の理由で合食禁の扱いとなる。
お茶による食品中の鉄分(非ヘム鉄)の吸収阻害 :食後に茶(特に緑茶)を摂取すると、食品中に含まれる非ヘム鉄は吸収を受けにくい形に酸化されてしまう。鉄欠乏性貧血で悩む女性やダイエットによって鉄分の補��が十分でない人は食後すぐに緑茶を飲むのは避けるべきである。
生の卵白とビオチンを含む食品 :アビジンがビオチンの腸管からの吸収を阻害する。
ら、ラーメンライスも駄目だとは……いや確かに身体には悪そうだけどさ(肥満的な意味で)。 で、合法・非合法問わずドラッグに関するあれこれについて書いているプソイドーグが、なんでこんな事を書いているかと言いますと、表題にあるおクスリ×グレープフルーツも新しい合食禁なわけです。
グレープフルーツの果肉に含まれるフラノクマリン類がシトクロムP450CYP3A4酵素(薬物の代謝を司る酵素)を阻害し、多種多様な薬物の新陳代謝に影響を与え、生物学的利用能を増加させるそうで。つまりおクスリの効きが強くなる→ジャンキーさん大歓喜、ということです。※注意!!クスリの種類によっては死ぬ危険もあります
そういえば映画『ラスベガスをやっつけろ』でもジャンキー2人が電球とグレープフルーツをクルマのトランクに山ほど積んでるのが警官に見つかって絞り上げられるシーンがありましたね。僕、てっきりジャンキー生活でビタミンが不足するからグレープフルーツを積んでるのかと思ってたら、実はクスリの効きを良くするためだったみたいです。日本だとあまり知られてないけど、アメリカだと一般的なのかな。
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twinetmmm · 9 years
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白人専用ドラッグ流通ルート、或いは離島の大麻畑の話
韓国で英会話教室の外国人講師がチョコや合成麻薬の所持と使用で逮捕されたそうです。しかし記事中の「2C」ってなんだろ?2C系のクスリなんて山ほどあるぞ。てか韓国って採用の前にきちんとドラッグテストしているんですね。日本よりちゃんとしてるじゃん。
大麻や合成麻薬を使用、外国人講師ら11人を検挙
 米国人のM容疑者(30)は、昨年6月に韓国に入国し、ある英語教室の講師として勤務した後、今年2月からソウル市内の小学校で子どもたちに英語を教えた。M容疑者は子どもたちから「親切な外国人の先生」として親しまれていた。ところがM容疑者は、大麻樹脂(ハシシ)を常習的に使用していたことが分かった。M容疑者はほかの外国人講師たちと共にロックバンドで活動、ソウル市麻浦区の地下鉄弘大入り口駅近くにあるバンドのレッスン室でハシシなどの薬物を使用していた。
 ソウル地方警察庁の国際犯罪捜査隊は3日、外国から密輸したマリファナやハシシ、合成麻薬「2C」などを流通させたとして、京畿道竜仁市にあるH語学スクールの英語講師J容疑者(31)を逮捕するとともに、J容疑者が密輸した薬物を購入し、使用したM容疑者ら10人を書類送検した。  逮捕または書類送検された容疑者のうち4人は、ソウル市や首都圏の幼稚園、小学校、語学スクールなどで英語を教える「先生」だった。容疑者らは外国人英語講師のコミュニティーや、ソウル市内の江南駅、弘大入り口駅周辺のクラブなどで麻薬を売買していた。  薬物を使用していた容疑者らが英語講師になれたのは、採用手続きの一環として行われる薬物検査に盲点があったためだ。尿や血液を利用した薬物検査では、12週間以内に使用した薬物の成分だけが検出される。このため、薬物の常習者でも、検査の対象となる期間に使用を中断すれば、検査をパスすることができる。実際、容疑者らは検査の23週間前に薬物の使用を一時中止していたことが分かった。
このニュースを読んで思い出した事がある。もう10年以上前の話だ。
中学生の頃に仲良くなった英国人のNは、某大手英会話教室で講師をしていた。当時僕は13歳で、向こうは29歳。もともと従兄のシェアメイトだった彼とは音楽やファッションを通じて仲良くなって(恥ずかしい話、当時の僕はパンクキッズだった)、一緒に水パイプをボコボコ言わせたり旅行に出掛けたりする間柄になったのだが、今思えばかなり有り得ない話だな。でも、音楽もドラッグも人生に対する考え方も、全部彼から教わった。
Sは来日して以来ずっと勤めていた英会話教室を退職した後、ALT(中学校に月イチとかで来て、英会話の授業に同席する外国人助手)として、日本の某離島にある中学校と小学校に派遣されることになった。慣れない土地で寂しいのか「驚くほど海がきれいだ」とSがしきりに電話やメールで主張するので、その年の夏休みにSが派遣されている離島を訪れてみた。確かに、本当に驚くほど真っ青な海が広がるビーチで、しかも、人っ子ひとり居ない穴場だ。ひとしきりシュノーケリングや銛突きで遊んだ後、砂浜に寝っ転がるとSはビーチバッグをごそごそ漁り、パイプとハッパを取り出した。
僕「えっ!!こんなド田舎でどうやって手に入れたの?」
S「ALTの前任者が島の空き地に畑作ってこっそり栽培しとって、引き継ぎする時にその畑の場所も教えてもらったねん。まだ若いけど、ちゃんとバッズやで」
とかなんとか言いながら、パイプに火を着けてこちらにも回してくれる。僕も出来るだけ息を停めて、ゆっくりと吐き出す。自家栽培ものを喫ったのは、たぶんその時が初めてだったと思う。確かにまだ若かったが、セッティングの良さも手伝ってフレッシュでメローなトビだった。
僕「確かにこれだけユルい島なら、アウトドアグロウも簡単やね」
S「それがそうでもないねん。ここら辺の人は見慣れない植物があったら、すぐに図鑑で調べよる。結構気ぃ使うで。畑に行くのも大変やし」
Sは離島でALTを2〜3年勤めて後任に畑も譲り、別の外資系企業に就職した。そこでも同僚からディーラーを紹介してもらい、ネタを手に入れていた。給料が出た後、月イチで同僚たち何人かと一緒にネタを買い出しに行くのが恒例だと、さも当たり前のように言っていたが、日本企業じゃまず考えられない話だ。まだ連綿と伝統が受け継がれていれば、あの島にはまだ大麻畑があるはずだ。
日本でもよく英会話講師が麻薬所持で逮捕されてニュースになるが、ALTや語学講師は、特に教育に関する専門的なトレーニングを積んでいるわけではなく、言わばそこら辺にいる気のいい兄ちゃんたちなので、当然ドラッグを嗜んでいる確率も高いのは仕方ない。日本には英会話講師や外資系企業に勤めるホワイトカラー、特に白人専用の流通ルートがしっかりとできているんだな。
彼らは有色人種の外国人と比べて、比較的裕福で服装もしっかりしているし、語学に堪能な人が多い。いきおい職務質問されることも少ないため、ディーラーも安心してネタを捌けるのだろう。そう言えば、Sが外資系企業に勤めていた時にやり取りしていたディーラーも白人だった。 取り締まりにおびえながら真面目に働いている有色人種の不法滞在者を思うと、ほんのちょっとだけ差別というか区別というか、やりきれない気持ちにならないでもない。
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twinetmmm · 9 years
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マジックマッシュルームとはじめて出会った日、栽培に至るまでの話:おまけ
①と②のおまけです。せっせとマジックマッシュルーム栽培に精を出していたある日のこと。一度収穫した後の菌糸塊でもジメジメした地面に埋め直すともう一度キノコが生えてくると知り、裏庭で試した事がある。裏庭に埋めて1週間ほど経ち、ふたたび生えてきたキノコを収穫しようと裏庭に向かった僕��K。数日前にひと雨降ったのが良かったのか、一回目よりも少ないものの充分な量のキノコが生えていた。ところでウチのばぁちゃんはジョイントを吸ってるときやオナニーしている時など、タイミングの悪いときを見計らってやってくるある種の天才的な才能を持っていたのだが、僕とKが裏庭でコソコソと何かしているのを目ざとく見つけて「なんしよーとね」と見回りにやって来た。とっさに僕が「いやー、見た事ないキノコが生えとるけん、図鑑で調べようと思って採りよるとたい」と適当なウソを付くと、ばぁちゃんは「あぁ、それは馬糞に生えるキノコたい……バカんなるけん、食べられんよ」と、即座に毒キノコであることを見抜いた。昔の人の知恵ってすごいもんだなぁと思った次第。
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twinetmmm · 9 years
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セットとセッティング、あるいは葬式の思い出話
大麻で良いトリップをするには、ユーザー本人の内的な心の状態(セット)と外部環境(セッティング)をリラックスできるように整えることが大切だと言われる。極端に暑いところや寒いところ、心配事があるときや落ち込んでいる時は使用を控えるべきだ、というのが一般的な考え方だ。さもなくばバッドトリップに陥るぞ、と。だが、時として最悪な状況を大麻が癒してくれることもある。今回はそんな話。
僕が大学進学で上京してからしばらく経って、叔母が亡くなった。身近な人の葬儀に出るのは、はじめての経験だった。夏の暑い日、国道沿いに建つ葬儀場は何十年にも渡って死者を迎えてきたせいか、病院のような生臭い腐臭がこびりついている気がした。
九州の葬式はとにかく焼酎を沢山飲む。通夜はもちろん、精進落としや火葬場の焼き上がり待ちの間まで、男衆はどれだけ酒を飲んだかでその器量が計られる。坊主が読経している最中に赤ら顔を顰めているのは、悲しいだけでなく前夜の酒が残っているせいでもある。気が狂ったように酒を飲み続けるのは、身近な人が死んだという事実から少しでも目を逸らし、忙しさの中に悲しみを埋める為の処世術なのだろう。まだ成人前だった僕の前にも、当然のように焼酎が注がれた湯のみが置かれていた。
通夜の席では、父方の従兄弟達と約10年振りに再会した。30代後半で、ふたりとも会社勤めをしていると風の噂で聞いていた。特にすることもないので、近況報告を交わした後は僕の兄も含めて4人でひたすら焼酎を飲みつづけた。その後、何度か臨席して気づいたのだが、葬式はとにかく変な酔い方をする。げらげらと笑ったかと思えば、急にしんみりと涙がこぼれるのだ。死臭に酔う、とでも言うのだろうか。自分の感情に振り回されるはじめての体験に驚きながら、ひたすらグラスを干し続けて午前4時を回った頃、従兄弟のひとりが卓に顔を寄せて「ちょっとツラ貸さんね」と囁いた。わけもわからずについて行くと、葬儀場の裏で従兄弟が取り出したのは、太巻きのジョイントだった。
「叔母ちゃんば俺たちだけで弔っちゃろうたい」
そう言うと従兄弟はジョイントに火を付け、深く煙を吸い込み、僕の兄に手渡した。兄も器用に受け取り、ひと口喫ってから僕に手渡した。副流煙だけでも良いネタであることがわかるような、馥郁とした香りのジョイントだった。「いまちょうど4時20分だね」なんて言いながら交わしたジョイントの往復が、4人の間にあった10年の空白を埋めてくれた。予期していた事とは言え、あまりにも突然だった叔母の死に直面して奇妙にささくれ立った感情は穏やかになり、叔母のことを思い出しながら純粋にその死を悼みたくなった。生涯を独身で通した叔母。50歳を越えてからも会社に勤めながら大学の夜学に通い、癌に侵されてからも病床で油絵を描き続けていた叔母。通夜の席では「結婚せんで、寂しかったろう」と言う人も多かったが、そうじゃない事を僕は知っている。すうっと立ち上っては消えていく煙が、叔母に届けば良いのに。気づけば4人とも黙ったまま、何かに思いを馳せているようだった。そのまま皆で夜が明けるのをずっと見ていた。
死の悼み方は人や地域によって様々だ。 九州は浴びるように酒を飲むことで死の辛さを忘れようとする。韓国では葬式で大声を上げて泣くのを仕事にしている『泣き女』がいる。ニューオーリンズには、葬式専門のマーチングバンドがいて、故人が生前好きだった曲や葬送曲を陽気に演奏して死者を送り出す。ラングストン・ヒューズは「俺の葬式には皆で赤い服を着ておいで この世じゃロクなことがなかったから 葬式くらいは派手にやってくれ」とも言っている。大麻を喫って故人を偲ぶのも、弔いのひとつの在り方なのではなかろうか。少なくとも僕は、あの瞬間、誰も喋らず同じ夜明けを眺めたあの時間、叔母に感謝し、叔母を通して自分がいま存在することの不思議を感じることができたように思う。
僕が死んだらアメリカンスピリットと太巻きのジョイントを棺桶に入れてくれ。火葬場の煙突から昇る煙に深呼吸して、陽気に騒いでほしい。
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twinetmmm · 9 years
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マジックマッシュルームとはじめて出会った日、栽培に至るまでの話②
前回からの続きです。
マジックマッシュルームを気に入った僕とKは、当時まだダイヤルアップ回線だったインターネットを使って情報を探し、菌糸塊(培地に菌糸を蔓延させたもので、湿度や温度を適当に保つとマジックマッシュルームがにょきにょき生えてくる)を販売しているサイトを発見した。「不思議植物園」という今はもう閉鎖してしまったHPで、ゴールデンティーチャー、アマゾニアン、タンザニアン、カンボジアンetc、シロシベ・クベンシスだけでも様々な亜種が販売されているだけでなく、キノコ以外のシャーマニックプランツも販売していた。カートを購入したのもそこだ。
僕らはすぐに貯金をおろし、菌糸塊を取り寄せて栽培を始めた。4つで1万5000円、ひとつの菌糸塊で10〜20回分が採れるとかだったような気がする。僕らがネットの情報を参考にしながら作った、はじめて栽培システムはこんな感じだった。
よくもまぁ高校生がこんなモロバレで大掛かりなシステムを作ったもんだとおもう。Kの親が放任主義だったため、Kの部屋に設置したのだが、親には「学校の課題でシメジを育ててる」と言い張ったらしいwww その後何度か挑戦した大麻の栽培と比べると、マジックマッシュルームの栽培は一度軌道に乗ってしまえば圧倒的に簡単だ。雑菌が混入しないように気をつけながら菌糸塊を株分けするだけでドンドン採れる。ほとんどコストを掛かけずに、省スペースで大量に収穫出来る。匂いも出ない。ただ、このシステムの問題は常に収穫し続けるようにサイクルを回さないと菌糸が駄目になってしまうことだった。2週間ごとに20〜30回分が採れるため、仲間内ではとても使いきれずヘッドショップに卸したり、勿体ない話だが余ったキノコは捨てたりした。今でもマジックマッシュルームの栽培に関する資料は保存してあるので、胞子紋か菌糸塊さえあればいつでも当時と同じ栽培システムを作る自信がある。
いつでも好きな時に生のマジックマッシュルームが手に入るようになった僕らは、有り余る材料を使ってキノコ料理にも挑戦した。と言ってもせいぜい定番のオムレツやカップ味噌汁に突っ込む程度だったが。牛糞に生えている野生のキノコとは違い、穀物培地で栽培したキノコは比較的匂いも少なく食べやすかったが、生ならではのアクシデントも多かった。輪切りにしてコーンスープに突っ込んだときは青色反応と胞子のせいか、あっと言う間にスープ全体が薄紫色に染まって、余りのグロさに半泣きで飲み干したりしたなぁ。
その後、伊藤英明がキノコでテンパって泣きながら助けを求めてコンビニに駆け込む珍事が発生したり、夕方のニュースでマジックマッシュルームのことが流れるようになると、流石に親から疑いの目で見られはじめた。しかし理系で粘着質なKは、栽培そのものの楽しさにハマっていたため諦めきれず、執念で装置を小型化。最終的にはペットボトルサイズで収穫まで完結する栽培方法を編み出し、親の目を盗んで栽培していた。02年にマジックマッシュルームが違法化される直前、僕とKは栽培を続けるかどうか何度も話し合った。「このまま栽培を続ければ、億万長者になれる」と主張する僕に対し、Kは拒否。結局僕一人で作るのも何となく嫌だったため、栽培を止めてしまった。
ちなみに今でも伊藤英明はテレビに映るとチャンネルを変えるぐらい嫌いだ。海猿も見ない。だってバッドに入った程度で「おかーさーん!!たすけてー」ってべそべそに泣きながらテンパる海猿なんて、感情移入できないもんね。
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twinetmmm · 9 years
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マジックマッシュルームとはじめて出会った日、栽培に至るまでの話①
前回、幻覚サボテンで失敗した話だったので、たまにはグッドトリップの話でもひとつはじめたい。
僕が高校生だった頃のある日、福岡の大名という地区に妖し気な看板が乱立した。黒バックに大きく赤で書かれたベニテングタケのイラスト、その周囲にはXTC、AMT、5-meo-DMTなどのアルファベットとともに大きく書かれた「Magic Mashroom」の文字と、小さく書かれた携帯の番号とマンションの一室らしい住所。
今では考えられないことだが、それまでも少年向け漫画雑誌の裏表紙広告に胡散臭い開運ペンダントやグングン背が伸びる機械と一緒に「めくるめく幻覚の世界を体験!!」みたいなキャッチフレーズとともにマジックマッシュルームが通販アイテムのひとつとして紹介されていたため、すぐに僕はピンときた。
すぐにKという悪友を呼び出して、その店の住所を訪れた。普通のオートロック式賃貸マンションの部屋から出てきたのは、キノコの精といった趣きの、ヘンプのニットキャップを被った小太りの兄ちゃん。どこから見ても高校生にしか見えない僕と違い、Kは16歳なのに20歳以上に見られるほど老けて見えたため、兄ちゃんも安心したのだろう。ひとつひとつ丁寧に説明をしてくれて、結局定番のメキシカン(シロシベ・クベンシス)とハワイアン(コーポランディア・シアネセンス)を購入した。兄ちゃんの説明によるとメキシカンは1回分1.5グラムで「精神ごと持って行かれるようなカオスなトビ」でハワイアンは1回分0.7グラムで「幻覚の出方は強烈だが、比較的クリアなトビ」とのことだった。大振りなシメジを乾燥させたような見た目のメキシカンに対し、より小振りなハワイアンは茎が真っ黒なエノキ、といった感じだった。
ちなみにこのヘッドショップ「サイケデリック・マタンゴ」は後にきちんとした店を構え、生のキノコを売ったり福岡のヘッドショップを集結して平和台でレイヴを開いたりといった独自の活動で、福岡のスキモノ連中の間で伝説の店として知られるようになる。他にも「鴉」や「○○●○(まだ実在しているハズなので伏せ字)」など、変わったヘッドショップとのエピソードもあるので、機会を見て書きたい。
家まで帰った僕らはわくわくしながらコーラを自販機で購入し(兄ちゃんからキノコの味を消すにはコーラが一番、と教えてもらったのだ)、近所の空き地で切り刻んだキノコを飲み干した。あらかじめ6時間は食事を採らず、空腹の状態にしてある。「まだ来ないね」「どの位で効き始めるんだろうね」なんてKと話しながら効き目が出るのを待って一時間ぐらい経った。合間にずっとキノコ臭いゲップが競り上がって来て辟易し始めた頃、やけに木々の緑が美しく見えることに気がついた。ちょうど5月から6月にかけて、新緑の美しい時期だった。はじめはキノコの効きだと気づかず、効き目を見つけるために注意深くなっているからだと思って「今まで何となく眺めていたものでも、じっくりと集中して観察する事ではじめて、モノの美しさに気がつくんだなぁ」なんてことを考えていたのだが、明らかに普段とは違うことに気が付いた。生命力に溢れた木々の葉が、緑の蛍光インクを垂らしたように発光しているのだ。思わず見とれてしまう、新鮮な光景だった。あまりの美しさにぼぉっと葉っぱを眺め続けてどのくらい時間が経ったことだろう、ふとKのほうを見ると、目が合った瞬間にKがニヤリと笑った。Kの瞳孔も限界ギリギリまで開いて、真っ黒に輝いている。Kにもキノコの精が舞い降りたらしい。
そこからのトビは強烈だった。モノの輪郭すべてに七色の虹が縁取り、手を動かすと残像のように虹色の軌跡が目に残る。遠近感が狂ったのか、体育館ほどの広さの空き地がいきなりギュンと4畳半ほどに圧縮されて見えたり、コーラを飲もうと手を伸ばすとダルシムのように止めどなく腕が伸びていったり、カマキリが柴犬ほどの大きさに見えたり……目の前に広がる異常な光景が面白くて、キマったことが嬉しくて、いちいち「オイ!!なんだこのカマキリ!!でかいってレベルじゃねーぞ!!」とか「なんで君は右足だけ超ちっちゃいんだよ」「あぁ!!お前が変なこと言ったけん、ほんとに小ちゃくなったやん。……これどうやったら元に戻るとかいな??」とか、くだらないことを言いながら、Kと一緒にゲラゲラ笑い続けた。
目を瞑るとより深い世界に行けることも発見した。思わず息をするのを忘れるほど、没頭してしまうのだ(事実、一番深い場所に行こうとすると息が続かなくなって『ブハァーーー!!ハァはぁ』って感じで目を開けてしまう)。目を瞑ると真っ黒な空間にウネウネとした蛍光の世界が広がり、それがゆっくりとオイルのように流動する。身体の感覚が溶けてなくなり、意識そのものも不定形の、ウネウネとした世界に組み込まれていく。その深い瞑想のなかで「太陽系は太陽を中心に地球やその他の惑星が周回している。一方で、物質の最小単位のひとつである原子もまた核を中心に電子が飛び交い構成される。この相似が何を意味するか。存在の本質は周回であり、ミクロはすなわちマクロなんだ!!」みたいに世界の成り立ちについて発見したり「こんな美しい世界に住んでいるにも関わらず、僕らは常識や固定概念に囚われているせいで、その美しさに気づかずに生きているんだ」と気づいたり、今までの価値観がぶっ壊される体験をした。ま、今から考えたら完璧に魔境というか野弧禅なんですけど。
キマっていた時間は正味5時間ほどだったろうか。食べて1時間で効き始め、2時間ぐらいでピークに達し、1時間ほどピークが続いたあとゆっくりと着地する、といった感じだった。後に見た名作Flash「Flash back」の世界観は、アノ時の感覚そのもの、というか、僕らがトリップ中に出会ったクリーチャーたちも出演していてビビったww。
はじめてのマジックマッシュルーム体験が強烈なグッドトリップで終わった僕らは、一気にこの遊びに魅了された。しかし、高校生にとって1回分3000円は正直痛い出費だ。ここから、この面白い遊びをなんとかして仲間内で流行らせたいと思い、Kとともに栽培を手掛けるようになるまで時間はそう掛からなかった。
長くなるので、続きます。
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twinetmmm · 9 years
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ウバタマ、ペヨーテ、サンペドロ、或いはメスカリンとそれらにまつわる苦い思い出話
マジックマッシュルームが日本で大流行していた90年代後半、ヘッドショップではマッシュルームと並んでひっそりとある種のサボテンが売られていた。ペヨーテやサンペドロといったメスカリンを含む幻覚サボテンの類いで、メキシコではヒクリ・ワナメという名で神格化され、シャーマンが儀式に使っている神聖な植物だ。僕がはじめてその存在を知ったのは故・中島らもの名ドラッグエッセイ『アマニタ・パンセリナ』の中だったと思う。作中で中島らも氏は奥さんが丹精込めて育てたペヨーテを輪切りにしたメスカル・ボタンを肴に日本酒をちびちびと飲むのだが、1回目は胃痙攣、2回目は青い光が奇麗に見えただけ、と、その結果は芳しくなかったそうだ。
その頃の僕はマジックマッシュルームを栽培しており、ネタに困る事は一切なかったため、他のサイケデリクスに食指が動くことは無かったのだが(らも氏も失敗していたし)、付き合いのあるヘッドショップに遊びに行った時に話の流れで購入したことがある。サンペドロの粉末1回分20グラム入りで4500円だったと思う。ペヨーテは1回分10グラムで確か6000円近くしたはずだ。
その後、なんとなく試す気にならず、3年ぐらい放ったらかしにしていたのだが、ある日、大掃除をした時に棚の奥から見つけた。確かメスカリンは非常に安定していて、サボテンを輪切りにした通称“メスカルボタン”の状態なら10年近くその効果を失わない、と何処かで読んだ事もあるし「これも何かの縁だろう」思い立って、その日のうちに試してみることにした。
マジックマッシュルームもそうだが、とにかくこの手のサイケデリクスはマズい。味だけでテンションが下がり、バッドトリップのきっかけになるほどマズい。マズい食い物を一番手っ取り早く胃の中に取り込む方法はオブラートで包んで水で流し込むことだが、20グラム(大きめのパケがパンパンになるぐらいの量)も粉薬を呑むように水で流し込むのは正直辛い。オブラートも無い。そこで一計を案じて、あらかじめ水に粉を溶かしておいて、その水を飲む作戦を実効した。
コップにサンペドロの粉を入れ、上から水を注ぐ。 箸でかき混ぜると20gほどの粉状のソレはマグカップ1杯分ほどのドロドロとしたゲル状の、得体の知れないスライムに変貌した。見た目や匂い、質感はサボテンのすりおろしそのものというか、水を吸って在りし日の姿を取り戻してしまった。どうやらヒクリ様を召還するつもりが、バブルスライムを呼び出してしまったようだ。 「やっちまった……」という後悔と自責の念に駆られて、正直なところ捨てちまおうかと思ったのだが、「今日こそは試す」と一度決めたことなので、恐ろしく苦いその物体を涙目になりながら飲み干した。
結果は惨敗。 胃のムカムカ感だけが残り、期待していた効果はまったく起きなかった。 流石に古かったのかもしれない。ただ、オルダス・ハスクレーも『知覚の扉』で自身のメスカリン体験を記述しているし、アンリ・ミショーの「みじめな奇跡」でメスカリンについて詳細に記録しているところを見ると、キチンと使えば正しい効き方をするのだろう。ちなみにマジック・マッシュルームが規制された今も、幻覚サボテンの類いは合法のままだ。だって全国の(園芸的な意味で)サボテン愛好家が沢山育ててるしね。
ただし、これらのシャーマニック・プランツはセットとセッティングが大事というか、適切なガイドとともに敬意を持って接する事が必要なように思う。さもなくばヒドいバッドトリップに陥ったり、“わかっちゃった症候群”に陥って現実を斜に見るようになったり(いわゆる魔境って奴ですね)、変に精神世界に傾倒したりする羽目になりがちだ。……僕のサンペドロ体験が失敗したのも、サイケデリクスに対する敬意が足りなかったせいかもしれませんね。 皆さんの回りにも居ませんか?サイケデリクスを使っていくうちに脳みそに花でも咲いたのか、アッチの世界に行ったまま帰って来れなくなっている人。「気づき」とか「生きとし生けるものに感謝」「ハイヤーセルフ」「脱原発」とか言い出したら要注意ですね(僕は原発推進論者でも反対論者でもありません。筋金入りのノンポリです)。サイケデリクスと魔境、ニューエイジや精神世界の危うさみたいな話は近いうちにひとつのエントリとしてまとめたいと思います。
最後に。 ペヨーティズムで知られるメキシコのウイチョル族の創世神話がとても素敵なので、紹介したいと思います。テキストはエンセオーグさんから拝借しました。ペヨーテは青い鹿のスピリット、カユマリの化身として崇められているそうです。旅と相互理解と歌。レイヴ・トラベラーの世界観にも通じる、とても美しい世界のはじまりだと思います。
青い鹿が静寂の世界に住んでいた。 他には誰もいなかった。
ある日、鹿は歌を歌い始めた。世にも美しい音色だった。 歌は風にのって世界のはじまで運ばれ、他の神々の耳にも届いた。 この美しい音楽はいったいどこから来るのだろうと 不思議に思った神々は、歌の聞こえてくる方角へ歩きはじめた。 神々は今まで存在を知らなかった他の神々と出会い、 仲良くなって、音のする方へと共に旅をした。
旅をしながらお互いのことを知り、やがて山の草原に神々の一同が集った。 青い鹿が歌を歌っていた場所だ。 青い鹿の愛らしい歌に刺激された神々は生命を創ることにした。 植物、動物、人間を創り、そのひとつひとつの内側に美しい音楽を埋め込んだ。
このようにして世界ははじまった。エクスタシーと音楽と共に・・・。 http://www.entheo.org/blog/?p=982
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twinetmmm · 9 years
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「マイアミ・ゾンビ」続報 バスソルトが原因ではなかった
先月にマイアミで起こった人間が人間を喰らうという猟奇事件、通称「マイアミ・ゾンビ事件」。当初、この事件はアメリカで流行している『バスソルト』という名目で流通している脱法ドラッグが原因と目されていた。正直なところ、僕もその通りだと思っていたのだが、検死解剖の結果、検出されたのは大麻のみで脱法ドラッグは未検出だったそうです。
NBCマイアミのレポートによると、「(マイアミ・デイド)警察の毒性試験所では、大麻の活性成分を確認しました」と、ブルース・ハイマ 検視官(Dr. Bruce Hyma)が声明の中で発表しました。続けて、「試験所では他の麻薬、アルコール、処方せんドラッグなどについても検査しました。これはコカイン、LSD、アンフェタミン類(amphetamines: エクスタシー、覚せい剤、他)、フェンシクリジン(phencyclidine: PCP、エンジェルダスト)、ヘロイン、オキシコドン(oxycodone: 処方せん鎮痛剤)、ザナックス(Xanax: 坑不安薬)、脱法ハーブ(Spice)、そして他の類似した薬物も含みます」とも述べました。 CBSマイアミの情報では、マイアミ・デイド郡検視局は外部の法医中毒学参照試験所の助けも借り、バスソルト(bath salts)の活性成分が認められないことを再確認したそうです。これはこの事件が、過去にバスソルトが原因で起こった他の犯罪と似ていたためです。「両方の試験所において現時点で存在する技術の範囲内で判断する限り、ルディ・ユージーンの体内に発見された薬物は、大麻に限られます」とレポートは締めくくられました。 ユージーン容疑者は白昼の公道で自らが全裸になり、ホームレスの被害者ロナルド・ポッポさん(Ronald Poppo, 65)を殴打して衣服を引きはがし、さらに18分にもわたり射殺されるまで被害者の顔の大半をかみちぎり続ける、という尋常では考えられない行動に走ったことから、何か「バスソルト」のような脱法ハーブと呼ばれる合成覚せい剤か、または他の薬物による一時的精神病(drug-induced psychosis)であろうと推測されていました。警察の記録によれば、ユージーン容疑者には8回の逮捕歴があり、その内4回は大麻がらみだったそうです。母親を一度「殺す」とおどしたことがあるものの、これほどの暴力をふるうとは、周囲の友人・家族は誰も予測しませんでした。聖書を勉強するグループに参加し、コーランも読み、最近になって「大麻をやめたい」と友人に語っていたそうです。 「何かあの日(きっと)、ただごとではないことがあったんです。『マイアミゾンビ』なんて、呼ばれてほしくありません。」と、ユージーン容疑者のガールフレンドはマイアミヘラルド紙のインタビューに答え語りました。「彼は(人格を持った)人間でした。こんな風に覚えていられるのは嫌です。」とも。一方被害者のポッポさんは「順調」に回復している、と先日治療を受けているジャクソン記念病院の医師団が発表しましたが、その顔は1つの目と鼻を欠いており、これから何回もの再建手術を受ける予定です。「精神科のチームがこれからの対処プロセスを助けていく予定ですが、今のところ、非常に良くやっておられます」と、形成外科医のルード・カシラ医師(Dr. Wrood Kassira)は会見で語りました。 http://news.aol.jp/2012/06/27/rudy-eugene-face-marijuana-medical-examiner-results_n_1632253/
……脱法ドラッグが原因でないとしたら、逆に怖いですね。あと、大麻がスケープゴートにされないか心配です。検出不可能な新種のドラッグ(そんなもんがあるのかどうか知りませんが)なのか、ドグラ・マグラでも読んで一時的に発狂したのか。マイアミゾンビ事件が発生してすぐ アレ や コレ など、ずいぶん香ばしい陰謀論が囁かれてて、内心アホじゃねーの?と疑問に思ってたんですが、 中国でも同様の事件 (こちらは白酒を山ほど飲んでたみたいですけど)が起きてるあたり、なんとなく陰謀論が真実味を帯びて来てたりして。 シンクロニシティすなぁ。
このブログの中の人は「NO!!正体不明の脱法ドラッグ」であり、大量飲酒も「ダメ!!絶対」の立場ですよ。
=========補足=========
これ結局原因はなんだったんだろう??? いまだに不思議な事件ですね。
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twinetmmm · 9 years
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オカルトとドラッグ、或いは不動明王について
僕はオカルトを信じない。 よくドラッグユーザーの中には病的にスピリチュアルにハマる人やニューエイジ思想や宗教の虜になる人がいるが、彼らは現実に目を背ける臆病者だと思っている。よく「薬物の使用によって感覚が研ぎ澄まされ、第六感が目覚める」とか「覚醒剤ユーザーは幽霊を引き寄せる」みたいなことがまことしやかに囁かれているが、ほとんどはドラッグの使用によって幻覚を見たり被暗示性が高まっているせいだと思う。 僕も乱用者だった20代前半の頃に何度か不可解な現象に出会ったことがあるが、そのほとんどが思い込みに類するものだと思っている。が、どうしてもそれだけでは納得がいかない出来事がひとつだけあった。
20歳頃のこと。大学の夏休みで帰省した際は友人たちと福岡の某山に夜景を観に行くのにハマっていた。その山は標高が1000m近くて、夜景スポットに着くまでの道のりは街灯の無い真っ暗な山道を延々と進まねばならず、しかもすれ違いが出来ないほど細いワインディングが続く。頂上の展望台ではシンナーを吸ってるヤンキーがたむろしていることもあるため、まともな人はほとんど近寄らない穴場だ。当時つき合っていた彼女を連れて行こうとした際も彼女が真っ暗な山道が続くのを怖がったため結局途中で行くのを諦めたほど、まぁ深山幽谷といって差し支えない場所だ。山の頂上には木造の展望台があり、その横にミカン箱サイズの小さな祠がひっそりと安置してある。僕らはいちおうその祠に手を合わせてから展望台に昇るようにしていた。展望台に昇ると背後には修験場として有名な山々が真っ黒に染まって聳え、前には博多から遠く佐賀まで見渡すことができる。人はほとんど来ない。聞こえてくるのは山を渡る風のそよぎだけ。そんなナイスセッティングな場所なので、単に夜景を眺めるだけでなく、スピーカーやジャグリングなどの道具とともにジョイントを持っていくのが仲間うちのお決まりだった。 その日は夏なのに肌寒い夜だった。いつものように展望台で友人と一服していると、雲のなかに入ったのか、夜景はおろか自分のつま先すら見えないほど濃い霧に包まれてしまった。山深い土地なので霧が出たことはこれまでも何度かあったのだが、あれほどの密度と質量を持った霧ははじめての経験だった。展望台は5m四方程度の小さなものだったが、対角線状にいるはずの友人が霧に包まれて全く見えないのだ。まるで牛乳のようなみっしりとした霧に包まれ、Tシャツがしっとりと濡れるほど潤いを含んだ空気は、いつもより肺の奥にまで届くような気がした。真っ暗なのに真っ白という不思議は空間はTHCに酔った僕たちを興奮させるには充分な舞台装置で、友人と一緒に「スゲー!!スゲー!!」と言い合った。ひとしきり騒いで飽きると「まったくなんにも見えなくなったねー」なんて言いながら暫く博多方面を向いてベンチに腰掛けていたのだが、なんとなく視線を感じたような気がして後ろを振り返った。霧が晴れていれば山が聳えているあたりは霧に包まれて一面真っ白なキャンバスと化していたが、その白の中にも微妙な濃淡があってとても美しい。霧の流れていくに従って形を変えるその模様に見とれていると、徐々に意思を持っているかのように濃淡がうつろいはじめ、何かを形作りはじめた。まるでサンドアートの様に濃淡が滑らかにうつり変わり、あっと言う間に巨大な不動明王の顔が浮かび上がった。たぶん僕はあっけにとられてポカンと見上げるだけだったと思う。不思議と恐怖感は無かった。 霧の中に浮かび上がった不動明王は曼荼羅のような2Dとも仏像の3Dとも違う、2.5Dといった感じの奥行き感で、今から思い出すとなんとなく磨崖仏のような感じだった。時間にして10秒とか20秒ぐらいのものだろうか、すぐに消えてなくなったのだが何だかありがたいものを見たに違いないと思い、手を合わせた。
今までずっと、霧のせいで視覚を遮断されたため幻覚を見たのだろうとか、「修験道や密教では修行の際に大麻を使う」という噂を耳にしていたため自己暗示に掛かったのだろうとか、適当に理由をつけて自分のなかで納得していた。当時の事をたまたま思い出したので、ブログの題材にでもしようと思ってネットでその山について検索してみたところ、「某山の頂上には不動明王の石祠が祀られており云々」と言う一文を発見した。いつも手を合わせていたあの祠は、不動明王を祀っていたらしい。もちろん当時、その山の頂上で不動明王が祀られていたことは知らなかった……ひょっとしてあれ、マジだったのかな。
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twinetmmm · 9 years
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卵が先か、或いは鶏が先か
あらゆるドラッグは質が下がるうえに値段が上がる一方だ。最近だとエクスタシーがその顕著な例だろう。押尾学にしても逮捕時に所持していた錠剤はMDMAではなく、TFMPP。つい最近まで合法だったピペラジン系の化学物質で、まったくの偽モノだ。偽モノを掴まされたうえに実刑判決喰らうなんて、つくづく運の悪い人だと思う。いま日本でエクスタシーとして売られている錠剤にはMDMAはほとんど含まれていない。そう思ったほうがいいんじゃないだろうか。
そんななか唯一大麻だけは品質も底上げされてきたし、値段も安くなった。きっと国内での大麻栽培がメジャーになってきたことが大きいように思う。2000年代初頭、福岡ではすごく細く巻いたジョイント1本1500円から2000円だった。どのルートを辿っても同じグレード、同じ価格で同じ巻き方のジョイントだったから、相当に手広くやっている供給元がいたんだろう。ジョイントって巻く人の癖が出るから、どこがネタ元なのかわかりやすいのだ。夏休みに福岡のローカルテレビが放送した麻薬の特集でフリーターが得意気に見せたジョイントも自分がその時持っていたのとまったく同じだったから、思わず笑ってしまったこともあったっけ。 その頃はジョイントではなくグラムで買う場合、品質によっても違うが3000円から8000円。3000円だと道産子やバッズですら無いこともあった。それ以前に品切れで手に入らないことも多かった。それがいつの間にかいつでも手に入るようになり、道産子や中途半端な品質の輸入プレスものは消え失せ、ふかふかのバッズばかりが回ってくるようになった。いわゆるノーザンライトやスカンクみたいなブランドものも出回るようになった。それまではブランドものと言っても、北見クリスタルや十勝ゴールドといった“道産子”のブランドものだったのだ。
「酒、タバコよりも大麻は安全」という認知が若者たちの間で一般的になった現在、よく反対派が大麻の害悪を説明する際に「暴力団の資金源になる」ということを持ち出す。 でもそれもどうやら通用しないようだ。 以下は大麻報道センター(http://asayake.jp)からの引用です。
カリフォルニア州サンタクルズ:火曜日にランド薬物政策研究センター(訳注:シンクタンク)が発表した研究によれば、カリフォルニア州における大麻の合法化は、州内の大麻の商業取引におけるメキシコのドラッグ密売組織の関与を「効果的に排除する」であろうと結論づけている。
著者らは、報告書(19ページ)において以下のように結論付けている。「カリフォルニア州における大麻の合法化は、メキシコのドラッグ密売組織がメキシコ産の大麻をカリフォルニア州のマーケットに供給することによって得ている収益を効果的に排除するであろうと考えられる。・・・課税した後でも、合法的に生産された大麻はメキシコ産の非合法大麻よりも安価であり、THC量当たりでは半額以下であると見込まれる。そのため、カリフォルニア州の市場のニーズは、新たに生まれる合法的な産業によって満たされるだろう。理論上は、ドラッグ密売組織の被雇用者が合法的な大麻産業で働くことを選択することも考えられるが、異常な高収入を得たり、犯罪組織に特有な素質を備えたりすることは出���ないだろう。」
規制するからアンダーグラウンドに金が流れる、というのはアメリカの禁酒法を見てもあきらかだ。アンダーグラウンドで流通するから、頭が痛くなるような粗悪なものや身体に危険なものが混入する。大麻に限って言えば、いまよりも規制を緩くした方が公共の利益が増えるのは間違いないだろう。
大麻に関して言うと、11月に全米で初となる嗜好目的の大麻合法化の住民投票がカリフォルニア州でおこなわれる。アメリカが風邪引けばくしゃみをする日本も、今後なにか変わるかもしれない。
==========補足==========
結局カリフォルニア州では僅差で嗜好用大麻の合法化は否決されたものの、ワシントン州、アラスカ州、コロラド州、オレゴン州では可決され、医療用に関しては既に23州が合法化されている。今後TPPによって日本にも合法化の波がやってくるのではないかと期待している人も多いようだ。
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twinetmmm · 9 years
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中毒の治療、馴化、寛解、或いは完治についての考え
故・中島らもが「人間が快楽原則に則っている以上、中毒とは人生の本質である。薬物に中毒しなくとも金や権力など、みな何かしらに中毒している」と自著のなかで繰り返し述べているように、厄介で、かといって無視するわけにもいかない中毒・嗜癖の問題。アディクションとの付き合い方というのは、このブログのテーマのひとつでもある訳なんですが……。 この辺のエントリで書いていたように、これまでの医学領域において、中毒とその治療に関するスタンスというのは「一回中毒になった以上、元の状態に戻るのは無理。あとは騙し騙し付き合っていくしかない」というのが通説なわけです。で、僕はそれに対してずっと疑問があった。金や権力などの漠然とした概念への中毒はカウンセリングによる治療の領域でしょう。でも、ほんの僅かな量の化学物質によって引き起こされた薬物中毒という、原因や結果のわかりやすい事例に対して現代医学が白旗を挙げていることに、ある種の無力感や胡散臭さを感じていたのです。
ところが最近、薬物治療において新しい流れが生まれそうな気配がある。 詳しくはこちらをご参照のほど。
読むのが面倒臭い人のために要約すると、そもそも僕がこの療法について知ったのはライターの石丸元章氏のTwitterを介してなんですが、そもそも石丸氏はMDPVとかα-PVPといったバスソルト系のケミカルにやられて入院していたようで、その時に受けた麻薬更正プログラムが画期的であった、と。それは「パブロフの犬」で知られる条件反射理論をベースに、人間の報酬系に関与することによって問題嗜癖(=依存症)は完治する、というものだそうです。「萎びた大根はタクアンになるしかない」でも「割れた茶碗を継げばもっと美しい」でもなく、「萎びた大根でも割れた茶碗でも奇麗に元通りにしまっせ」。うん。実に画期的だ。
「パブロフの犬」はすべての生き物が快楽原則に則ってる証明をした実験であるわけで、単細胞生物から人間まであらゆる生物にその原則が適用される以上、人間を人間たらしめている大脳真皮質よりももっと深い根源的な部分に訴えかけるものでなければならない訳です。つまり薬物による報酬系の回路が出来上がった状態(クスリをキメるという行為と、気持ち良いという結果の学習が終わった状態)は、薬物への嗜癖は人間の理性よりも深い、食欲や性欲といったタームと同じレベルへ訴えかけるからこそ、中毒は厄介だ。だからこそ、問題嗜癖は現代医学でも完治が難しいとされてきた。
こんなブログやったりツイッターやったりしてると、稀に現在進行形で中毒に悩んでいる人から相談を受けたりもあります。同病相哀れむ気持ちで、なるべく話を聞くようにしてますが、僕は自分の体験ベースで話すことしか出来ませんし、会って話したことも無ければ顔も知らない相手に出鱈目並べて安心させるわけにもいかない。たくさん話を聞いて、僕も思ったことを相手に伝えるんだけど、結局は「なんかお役に立てなくてすみません……」ってことになる。一体、僕に相談してきた人たちはどんな言葉を掛けてほしかったんだろう。
医者は責任の重い大変な仕事だと思うのです。 医療ミスや院内感染問題などのせいもあるでしょうが、いつの間にか「治りますよ」と明言する医者が居なくなってしまったように思うんです。 僕が小さい頃に通っていた町医者はでっぷりと太ったお爺ちゃんで、子どもの頃に病気をしてもそのお爺ちゃんが野太い声で「どうしました?風邪ですね。お薬出しておきますね。これ飲んだら熱が下がるからね」なんて言って、僕はその言葉だけで随分気持ちも身体も楽になったもんです。
「治るよ」。
そのひと言こそ、いま中毒で悩んでいる人への特効薬の気がするんだけどな。
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twinetmmm · 9 years
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コカインの思い出、或いはバチ抜けした日のこと
自分が壊れていく様子をずっと観察していた。あと1パケだけ。1ラインだけ。コカインで気持ち良くなったことは、ほとんど無い。眠気が覚めて心臓がバクバクするだけ。身体に合わなかったのかも知れない。なのに、ずっと使い続けていた。いつの間にか離れられなくなっていた。何度も「マズい」と思いながらも、だらだらとラインを引いて消費することに快感を憶えていた。
西麻布のレミーはいつも不健康そうな彼女と大人しいフレンチブルドッグを連れて取引場所に現れた。犬の散歩を装えば、深夜うろついていても職質される危険性が減るからだろう。客から注文があるたびに散歩に付き合わされる犬からしたらたまったものじゃない。レミーと落ち合う場所はいつも大通りから1本入った路地裏の駐車場。1ヶ月分の買い出しは1回で済ませる。コーク4パケと玉を4錠と、チョコを4つ。買い出しにいくとレミーは必ずチョコやコークをひとつ多めにサービスしてくれた。そのうち玉は質が急速に悪くなったので買うのをやめ、その分の金をコカインに回すようになった。
朝起きたら短いラインを引いて、脳みそに活を入れる。PCの電源を入れ、メールチェック。コーヒーを淹れるのはその後だ。昼飯時になるとチョコを吸って食欲を沸かせてから、近所の定食屋に行く。頼むのはいつも同じメニュー。何も言わなくても同じ飯が出る。飯を食ったら眠くなる前に1ライン。玉は週末用。時々、砕いてコカインと混ぜてスニッフする。玉をスニッフすると鼻に激痛が走るわ苦いわでロクなことがないのだが、コカインと混ぜると少しだけマシな味になった。気づかないうちに鼻血を垂らしていたり何かが腐ったような変にネバネバした汁が喉の奥から湧くこともあるが、大して気にはしない。いつものことだ。仕事に煮詰まったら、チョコを吸って気分転換する。親代わりに育ててくれた祖母の死と、10年来付き合ってきた友人の死が重なって僕は気が滅入っていた。仕事をこなすためには、チョコとコカインが必要だった。快楽が目的ではなく、その日を生き抜くためにコカインをやっていた。ドラッグユーザーのなかには、案外そういう人も多いのではないだろうか。
1年ほどそんな生活を続けていたら、いつの間にか部屋はゴミ溜めと変わらない有様になっていた。統合失調症を患ったり、メンタルバランスを崩した人は生活力が圧倒的に低下する。掃除や洗濯ができなくなったり、風呂に入らなくなったりするのだ。レミーも明らかに僕にネタを売るのを嫌がる素振りを見せ始めた。僕の場合、かろうじて仕事を通じて社会と繋が��ていたため身なりや挙動には気をつけていたのだが、チンケな売人風情でも判るほど中身はヨレてたんだろう。もう終わりも近いなと、自分でも感じていた。1年でここまで行けるんだ、と変な感慨もあった。ビール缶と腐ったコンビニ弁当で台所が埋まったので、包丁はさっさと処分した。とっくの昔に家で料理することなんか無くなったし、もう包丁の使い道は2つしか残ってない。狂ったふりして道端で振り回すか、自分の首を切るか。ともかく、他人に迷惑を掛けたくなかった。
金銭的にも精神的にもじりじりと追いつめられていたその頃、ひとりの女の子と知り合った。映画監督になりたくて自主映画を撮ってるという美大生で、新宿のゴールデン街でバーテンをやっていた。「高校のときに好きだった先輩に似ている」というだけの理由で懐かれて、知り合ってすぐセックスをした。努力もせずにメジャーデビューまでの道を語るバンドマンやDJ、ダンサーをたくさん見てきたせいで、僕は夢を語る奴は嫌いだった。「面倒くさくなったらヤリ捨てれば良いか」ぐらいの気持ちで何度か遊ぶと、彼女が本気で映画に取り組んでいること、才能があるかどうかは判らないが飛び抜けて変わった子であることが判った。
彼女から付き合ってほしいと言われたとき、なんだか「これで助かったな」という実感があった。僕はすぐに来月支払われる予定のギャラを前借りして当面の生活費に充て、残った金のすべてをコカインに替えて、猛烈に就職活動をはじめた。年齢の割に実績を積んでいたし、面接前にトイレでコカインを入れてクソ度胸をつけていたせいか、百発百中で採用された。幾つか内定をもらった中から、同じ業界のなかでも条件の良い会社に就職した。彼女の家でささやかなお祝いをした時、残りのコカインはすべてトイレに流した。自分の部屋を掃除したら、ストロー代わりに巻いて輪ゴムで止めた1万円札が2・3枚出て来たので、彼女を連れて少し高いホテルに泊まった。あれほど止められなかったコカインに、もう未練は無くなっていた。ウィリアム・バロウズが「ジャンクを止めるために必要なのは、細胞の決意だ」と言っていたが、まったくその通りだと思う。本当にある日突然、自分のなかから自然に「もう必要ないな」という実感がわき起こったのだ。
その後、彼女とは2年ほど付き合った後にフラれたのだが、現在では若手の映画監督として活躍している。別れたすぐ後に男と手を繋いで楽しそうに歩いているところを見掛けたが、命を助けて貰った恩があるので、感謝こそすれど怒りは沸かなかった。
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twinetmmm · 9 years
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ネタの持ち運びについて、あるいはフランス女の股間について考える
昔、僕がよく遊んでいた在日コリアンのK君はドン引きするぐらい酷いジャンキーだった。兵役中に支給品のモルヒネで中毒になった挙げ句、その治療のために訪れたアメリカでLSDを食いまくってたせいか、どこか壊れてる感じがした。彼は何故か税関がフリーパスだそうで、旅行に出掛けると必ずタバコの空き箱にパンパンにクサを詰め込んで持ち帰ってくる。昔はダウンジャケットの羽毛代わりにクサを詰め込んで運んだりしていたらしい。おかげで僕もよくお相伴に預かっていた。日本の税関がそんなに甘い訳がないと不思議に思った僕が何度訊ねても「昔から海外にしょっちゅう行ってたから、税関の人とは顔見知りになってる。だからノーチェックなんだよね」と言うばかりで、いまいち要領が掴めない。ものすごく金持ちだったから、偉い人と繋がりでもあったんだろうか。まぁ、これは個人密輸の方法としてはレアケースだろう。
さて、今回は飛行機とネタの持ち運びの話。 世はお盆休みなので、ジョイント片手に帰省や旅行に出掛けている人も多いだろう。国内でネタを持って移動する際に荷物チェックを警戒して飛行機を使わない人も多いが、僕は電車やバスのほうがネタを抱えて街をうろつく機会が増える分、危険だと考えている。 ちなみに国内線は手荷物として簡単に機内持ち込みできる。荷物チェックの焦点を危険物に絞っているからだ。 本当はカウンターで預ける荷物に紛れ込ませても良いと思うが、積み込みトラブルが起こった場合や荷物を紛失した場合が怖い。X線をあてられて覗かれるのも避けたいので、機内持ち込みの鞄に入れておくのもイヤだ。なので僕はネタを持って飛行機に乗る際はアラームが鳴らないように身体から金属類をすべて外し、なるべく触られないポケットにネタを忍ばせておくようにしていた。ポケットは手持ちの金属探知器で反応が出ない限り、チェックされることは無い。よく靴のなかに隠す人がいるが、アラームが鳴った際は真っ先に靴を脱がしてチェックするため、やめておいたほうが良いだろう。実際に間抜けな友達は靴下の中にネタを隠していて金属探知器に反応してしまい、一瞬で真っ青な顔になっていた。アレは表情の変化に敏感な国際線の税関や警察官だったら捕まってたなぁ。
国際線でネタを持ち運ぶ場合に今も昔も変わらずメジャーなのは、コンドームで包んだネタを体内に隠して運ぶボディパッキングだ。僕は試したこと無いが、ケツからネタを入れる方法と飲み込んでケツから出す方法の2種類あるそうで、それぞれ一長一短あるらしい。まぁしかしボディパッキングで持ち込めるネタの量なんてタカが知れているし、何となくヤローのケツの穴を通ったネタだと思うと、なんだか喫っても複雑な気分になりそうだ。 そう言えば、僕は一度だけボディパッキングのネタを貰ったことがある。 それは、人によってはお金で計れない価値がある、貴重なネタだったかもしれない。
中学から高校にかけて、長期休みのときを見計らって家出するのが習慣だった僕は、高校2年の夏休みに英国人のSのところへ遊びに行くことにした。当時Sは従兄弟とルームシェアを解消してひとりで大阪に住んでいた。福岡-大阪間なら青春18切符を使って丸1日あれば行ける。ただそのままSの家に行っても家出っぽさが足りないので、なんとなく初日は甲子園の脇にあるテニスコートに段ボールをひいて野宿することにした。 翌朝、テニスに来たおばちゃんに起してもらった後、ちょうど甲子園では夏の選抜がおこなわれていて地元の高校が試合する予定だったため、観戦してからSの家に向かった。教えてもらった住所には古いけれど趣きがある一軒家が建っていた。関西在住の外国人は何故かこういう掘り出し物件を探すのがうまい。呼び鈴を鳴らすと、Sは20代後半ぐらいの痩せぎすで背の高い奇麗な女性と一緒に出て来た。フランス人だそうで、語学スクールの同僚という事だった。
栽培したマジックマッシュルームを宿賃代わりにSにプレゼントし、居間でビールを飲みながら12時間以上鈍行に揺られた話や野宿の話をしていると、フランス女が「私もこないだまでタイに行ってました」と言う。「へー、なにしに?」と訊くと「マリちゃんを喫いに」と指でジョイントを挟む真似をしながら答えた。タクシン政権になってから麻薬取り締まりは強化されたものの、まだ離島や田舎では安心して大麻ライフを楽しめるんだそうだ。
タイの大麻はサティバの原種のため、バッズが貧弱だ。そのため竹串に刺して糸でぐるぐる巻きにして1本の棒に仕立てたものをタイスティックやブッダスティックと呼んでブランド化しており、阿片を添加する場合も多い(注1)。 フランス女はそのタイスティックをお土産代わりに密輸し、昨日からずっとSと一緒に吸ってたらしい。折角なので僕も一服させてもらうことにした。
このタイスティックには視界がコマ送りに見えるほどブッ飛ばされた。当時の僕らに回ってくるのはリーフ並みのクソネタばかりだったため、単純に良いネタに慣れてなかったせいもあるだろう。キマり過ぎて朦朧とした意識のなかで、僕はなぜか「女の人が居るのにトビ過ぎで潰れるのはカッコ悪い!!なんとか会話を続けなければ!!」とチェリーボーイらしい強迫観念に駆られて必死に喋った、が、正直なところほとんど会話の内容を憶えていない。ただ、僕が「密輸って勇気あるね。どうやって隠したの?」と訊いたときに、「女の子はアナタよりも隠すところがひとつ多いですね」と言いながらウィンクされたのは、はっきりと憶えている。フランス女の股間に隠して密輸された大麻!! ワカメ酒や女体盛りのような淫靡な楽しみに耽ってるようで、ものすごくドキドキしたのを憶えている。「某芸能人御用達のカリフォルニア産医療大麻」だの「宮崎で仙人が作ってるオーガニックアウトドア」だの、色んな由来つきの大麻を貰ったことがあるが、今のところ「フランス女のラブジュース漬けタイスティック」がインパクト度ではナンバー1だなぁ。
クラブやフェスなど職質されそうな場所に行くときは女の子にネタを持ってもらうケースも多い。女の子は隠せるところが多いし、持ち検もやり辛いしね。果たしてあの奇麗なフランス人は、スティック状のままコンドームを被せ、マ○コに入れて運んだんだろうか。なんとなくだが、是非そうであって欲しい。だってタイスティックってこんなの↓なんだぜ!!
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(注1) タイスティックやブッダスティックの定義は混乱しており、人によって変わる。憶測だが、もともと単にバッズを棒状に纏めたものをタイスティック、阿片を添加しているものをブッダスティックと呼んでたんではないだろうか
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twinetmmm · 9 years
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告知:合法ハーブのやめ方を募集中、および最近の事件・事故について
「合法ハーブ」のやめ方を募集!ヤバイことになる前にやめよう!
いわゆる「合法ハーブ」、マスコミ的には「脱法ハーブ」、大麻報道センターでは「正体不明ケミカル」と呼んできましたが、これの使用が重大な事故につながるケースが相次いで報道されています。使用者本人の死亡だけでなく、無関係の第三者を巻き込んでしまう事故の報道もありました。
違法薬物をどう社会的に扱うかは各法律に定めがありますが、個人の単純所持や使用を刑事罰とする現在の政策が、安全な大麻よりも「合法ハーブ」という名の「正体不明ケミカル」に若者を向かわせているのではないでしょうか。 ゼロ・トレランス政策とはよくいったものです。これは一般に「非寛容政策」と呼ばれるようですが、たとえば覚せい剤などは使用罪があるので、中毒に陥った人は逮捕を恐れ、治療のために病院に行くこともできないのです。この無慈悲な政策こそが若者たちを「合法ハーブ」に追いやっているのではないでしょうか。同じ値段で大麻が吸えれば誰がこんな正体不明ケミカルに手を出すでしょう。現在の日本政府の薬物対策は、ハーム・リダクション(害の削減)どころか、「害の最大化政策」です。
当サイトのフォーラム(掲示板)に「合法ハーブ体験記」というコーナーがありますが、そこにこの「合法ハーブ」をやめられないという切実な書き込みがありました。その書き込みが本当のことを書いているのかどうかは確認のしようもありませんが、同じような思いを抱えている人は多いのかもしれません。 そこで、「私はこれで合法ハーブをやめました」といった内容のコメントを募集します。 合法ハーブ体験記フォーラムに体験談などお寄せ下さい。
厚労省と政治家は薬物対策を見直して下さい。薬物依存患者に必要なのは手錠ではなく治療です。アルコールやタバコより安全な大麻はさっさと合法的に使えるようにしましょう。そうすれば、日本はもっともっといい国になれます。ホントです。嘘だと思ったらやってみて下さい。よろしくお願い致します。 http://asayake.jp/modules/report/index.php?page=article&storyid=2745
大事なことだと思うので、拡散。ご存知かと思いますが、大麻報道センターは大麻の非犯罪化に向けて活動している団体ですね。有料会員になろうと思ったけど、万が一痛くない腹を探られるようなことがあったら嫌だなと思って、結局入りませんでした。
僕の個人的な印象だと、ここ最近頻発している合法ハーブによる事故は、ある特定の銘柄が悪さをしていると予想してます。 いま市場に出ている大多数の銘柄は合成カンナビノイドが含有されているんですが、こいつはどっちかというとぼーっとなったりお腹が空いたり陽気になったりと、大麻と似た症状で大した被害をもたらさない(といってもあくまでケミカルなので、ダメージや不快な副作用はもの凄く大きいですけど)。 ところが、合法ハーブのなかのある特定の商品には稀に合成カンナビノイドではなく、アッパー/サイケ系のデザイナーズドラッグが含まれているものが存在する。含有されているのはおそらくカチノン系、MDPV系かと思います。デザイナーズドラッグのなかでもエクスタシーミミックやニセコカインと呼ばれている一群ですね。もちろんハーブメーカーが成分を公開している訳ではなく、僕が試してみた実感なので、信じるも信じないも貴方次第ですが。
で、何度か合法ハーブを吸ったことあるだけで、たいして他のドラッグに対する知識や経験の無いユーザーがこの手の商品をいつものハーブと同じだと思って吸ってしまうと、エラい目に遭う訳です。合成カンナビノイドと違ってこれらのアッパーケミカルは連用するのに向いてません。身体へのダメージも段違いです。大麻だと思ってキメたらシャブだった、なんてテンパって当たり前ですわ。
これらが含まれた合法ハーブはまず、何度も追い焚きをしてしまう。食欲が無くなり不眠や歯ぎしりがヒドくなる。さらに被害妄想や追跡妄想も生まれやすくなる。仕事から帰って寝る前の一服、なんてのは当然無理で、夜が明けるまで追い焚きを続けて、疲労困憊のままベッドから這い出して会社に行く。もちろん依存性も超強い。「おかしい、合法ハーブなのになんで?どうして?」なんて思いながらずぶずぶと泥沼にハマっていく羽目になる訳です。先日京都で起こったクルマの暴走事故では容疑者が合法ハーブを吸って追跡妄想状態だった、という報道がありましたが、おそらくアレもカチノン/MDPV系のハーブだったのではないでしょうか。マイアミゾンビ事件も然りです。
必要なのは、逮捕ではなく治療!! 大事なのは、規制ではなく情報!!
と、もう一度声を大にして叫びたい所存。
-2013年6月27日追記- 弁護士の小森榮氏が脱法ハーブに含まれる興奮系の合成薬物はα-PVPだとレポートしています。僕が危惧していることを非常に分かりやすくまとめているので、引用させて頂きます。
街で販売されている脱法ハーブを大学の研究室で分析したところ、ハーブ製品に含まれているとは誰も想定しなかった、興奮系の合成薬物が検出されたというのです。その成分とは、α-PVP。 つい先日、東京都が公表した「知事指定薬物」のなかにも、同じような事例がありました。こちらは、上記のα?PVPと実によく似たデスエチルピロバレロンという物質が、「MONSTER King」というブランドの脱法ハーブから検出されています。
α-PVPやデスエチルピロバレロンは、覚せい剤に似た中枢神経興奮作用をもつ成分で、「バスソルト」と呼ばれる興奮系ドラッグの成分として使われてきたもの。一般的には白い粉末状の薬物として販売されています。 こんなものが「脱法ハーブ」に使われているとは、まったくの想定外です。「脱法ハーブ」は、いよいよもって正体不明な有害物へと、変身しつつあるのでしょうか。
「スパイス」の登場以来、「脱法ハーブ」タイプの製品には基本的に、大麻中のTHCに似た性質をもつ合成カンナビノイドが使われてきました。脱法ハーブの製造者たちは、様々な特性をもつ合成カンナビノイドを選択し、時には数種類を組み合わせて使うことで、製品に多様な個性を持たせてきたのです。 しかし、乾燥植物片に添加される合成成分は、合成カンナビノイドに限定されるわけではなく、極論すれば、どんな薬物でもよいわけです。 そういえば、2011年夏、ニュージーランドで販売されていた脱法ハーブ製品に対して、保健省が回収命令を出すという騒ぎがありました。オーストラリアやニュージーランドでは「クロニックKronic」と呼ばれる脱法ハーブ製品の1種に、向精神薬のフェナゼパムが含まれていることが明らかになったのです。
たしかに、まったく異質の成分を加えることで、製品に際立った個性を生み出すことができるでしょう。しかし、こうした発想は、あまりにも危険です。
脱法ドラッグの世界では、製品の成分はどこにも表示されていません。ユーザーも、おそらく売り手さえも、配合されている成分を正確に知らないまま、不確かなクチコミ情報を交換し合って品物を選択しています。大麻類似の作用を期待して「ハーブ」を選択したユーザーが、いきなり覚せい剤類似の強い作用に見舞われたとしたら、急性中毒や事故に直結しかねません。
ところで、「ハーブ」の陰に隠れてあまり目立たない存在ながら、実際の脱法ドラッグ市場では、覚せい剤やコカインに似た中枢神経興奮作用をもたらす合成薬物がかなり多彩に出回っています。 このグループの薬物も、次々に指定薬物に指定されていますが、しかし、後から後から、類似薬物が登場しています。上記のα?PVPやデスエチルピロバレロンは、かって「バスソルト」の代表格だったナフィロンやMDPVの後継品として、最近登場したもの。(後略)
===========補足===========
この後、さすがに事故が頻発してベテランのジャンキーたちも「ありゃ毒だ。絶対使うな」って言いはじめ、いわゆる「ハーブ類」の使用は下火になったように思う。いまだに使ってる人がいたら……はやく止めたほうがいいっすよ。
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