Tumgik
#st.jamess street
tailormadeyamaki · 6 years
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「厚塗りされたドア  LOCK&Co」
ロンドンのオーダースーツ店が並ぶ通り、セヴィル・ロウからバーリントンアーケードを抜け、フォートナム・メイスンの横を通るとジャーミン・ストリート。右に曲がり理髪店、靴店などのウインドウを眺め歩を進めると、今度はセントジェームス・ストリートにぶつかる。それを左に曲がったところに帽子屋「LOCK」はある。隣は靴のLOBBだ。頭の先と足先の店が隣り合わせるところが面白い。 「LOCK」は小さな店だがとてもいいファサードの雰囲気を持っている。「こんな見せ方があるのか」と私は訪れた時にとても感心した。その表現方法の最たるものが外装に塗られたペンキ。1676年創業という老舗の歴史、帽子専門店としての誇りが上手く表現されている。
実際店の前に立つとまず驚く。 正面中央にあるドアは上塗りが繰り返され厚いペンキ層が波を打っている。また両サイドのウインドウには縦横格子状に柵が組まれているが、これにもペンキがベタ塗りだ。しかも双方ともにその塗り方は素人同然。私は見た瞬間、店のスタッフがタブロイド紙とマスキングテープを使って夜中にペンキ塗りをする姿を想像した。と同時に私が感じたのは、「LOCK」が帽子のみを専業にやってきた誇りをこの「一見適当」に見える外装に込めているのではないかということだ。「LOCK」が取った策は、「単にペンキを積み増すという作業の中に自身の創業以来の積み重ねた日々、長い歴史を重ね、ファサードに凝縮・具現化すること」だったのではないかと私には思えた。そこには店の売上や評価につながる重要なファクター、「美観」「新鮮さ」「規模」などといった一般的な考え方は全く当てはまらない。 「LOCK」が位置するジャーミン・ストリート界隈は、いわゆる「紳士」を作り上げるためのメンズ専門店が18世紀から多く軒を連ねる。その中でもLOCKのファサードが持つ、あの「世界観」「存在感」は唯一無二だと私は思う。あのくたびれた「LOCK」の外観に対し他の人がどのような評価をするかは分からないが、少なくとも私はストレートな表現の裏に隠された「奥深さ」を感じた。
決して明るくない店内で、男性が薦めてくれたのは兎毛のボイジャーというシリーズのフェルト帽。この帽子は、クラウンを中折れにしたりホンブルグのようにドーム状にしたりと形を変えることができる。収納はクラウンの頂点を中心に縦に丸めて筒状のケースに収める。つまりタテに折り畳みロール状になるボイジャーは、旅先でも荷物にならず簡単収納できることにその名の由来がある。私はスタッフが薦めてくれたこのソフトな雰囲気を持つボイジャーを気に入っている。勿論ウールのロングコートとの相性はすこぶるいい。
帽子、特にスーツに合わせ中折れ帽をかぶるには相当の勇気が必要だ。まず買うにも躊躇するし、かぶれば帽子だけが独り歩きしているようで落ち着かない。確かに慣れるまでに多少の時間は必要だが、守備が整えばこっちのもの。黙って歩けば間違いなく「良識を持った」「マナー違反など決してしない」「品ある男性」と周りは見てくれる。たとえそんな男で無くとも、そう見せるだけのチカラが帽子にはあるということだ。
ある時の夏場。バス停で着物を着た初老の女性が「暑いですね」と言い、そっと日傘を差し伸べてくれた。またある時は、自転車の若者が「カッコイイですね」と声をかけてくれた。これ、大した男じゃない私が帽子をかぶっていた時の出来事。私は今でも「帽子のチカラ」だと思っている。 少しでも帽子に興味や憧れがあるなら、ぜひかぶることをお薦めする。始めるには冬場がいい。コートやグローブと共にすれば帽子の印象も和らぐから、そう意識することなく使い始められる。
注文服ヤマキ  木下 達也
-スーツスタイルの完成形に必要なのは帽子です。昨今世間を賑わす親方のショールやサングラスがマフィアみたいだと話題になっていますが、あれは中途半端に服装を知った人のスタイルです。「ここぞ」とメディアに露出した時の、あの二人の服装を思い返してください。白いストールを付けた太郎ちゃんとお付きいっぱいの白スーツ着た山口組の組長さん。お二人とも頭にはしっかりと帽子があります。いい悪いは別として、服装を勉強し熟知された本物の着こなしです-
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