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#ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦い
anime-sheep · 2 years
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アニメ映画「ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語」感想
「日本人よ、これがアラブのエンターテインメントだ」 サウジアラビアのアニメ製作会社「マンガプロダクション」と「東映アニメーション」による共同制作作品。はっきりと「あまり面白くない」と言ってしまうが、サウジのアニメとして見ると興味深い。 制作発表を聞いた時点での一番の懸念は「サウジアラビアのプロパガンダアニメなんじゃねーの?」疑惑だったのだがそんなことはない。サウジアラビアのプロパガンダ映画ではなく、イスラム教のプロパガンダアニメだった。 110分のうちに10分ずつ三回ほど聖書やコーランの挿話の紙芝居が入っている。「ノアの方舟」「出エジプト」「円柱のイラム」だ。タイミングといい脈絡の弱さといいCMを見せられている気分だった。特にクライマックスの盛り上がってきたときに10分の紙芝居は興ざめだった。そして全体のストーリー自体もコーランの「象」の物語だ。物語としてのオリジナリティが薄い。 バトルシーンはけっこう見ごたえがあり、キャラクターも立っている。信仰心の厚い主人公のアウスと信仰心の薄い相棒役のズララ。そして悪役のアブラハ。なかなかいいキャラクターを揃えている。国と国がぶつかる戦記物は抽象度が高くなりすぎてキャラクターが薄くなることが多いのだが、この作品は一つの戦闘に焦点を絞っているのでその点はうまくいっている。野暮ったい国際情勢ナレーションがなくて良い。 全体のテーマは「勇気を持ち、諦めず、戦い続けた者たちにのみ起こる奇跡」だ。日本人の言う「奇跡」とはニュアンスが少し違って、「奇跡」をむしろ「神の恩寵」と捉えているのだと思う。そもそも「罪深く卑しい人間は自分で自分を救うことができない」というのはアブラハムの宗教のテーマでもある。 このアニメはバトル物であり、一見するとジャンプ的な「友情・努力・勝利」の物語に見える。さすがアラブのエンターテイメント、アメリカ的なスーパーヒーロー物ではなく日本のマンガにシンパシーを感じているのかな、なんていうふうにも思うのだが、締め方が明らかに間違っている。アラブのエンターテイメントでは神は諦めない人間に味方をするが、人間は自分で自分を救うわけではない。最後には神が全てを握っている。 「これが、神の御業。ありがとうございます」じゃないんだよ。「友情・努力・勝利」の上に神を置くな。
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