Tumgik
#あ秋田県、大館市、舟場、タイヤ痕、冬の嵐、真冬日、マイナス8℃
at-ht-2111 · 2 years
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シルクの雪
 夜明け前に一面に白く積もった雪を窓越しに上から見ても積雪量を知るのは難しく、早朝出勤らしい隣の車庫から道路に続くタイヤ痕の深さで雪嵩を目測する。早く起き出していた妻が「雪は3㎝くらいだから雪かきは不要ね」との声に「あっそう。じゃあ、もう少し寝るよ」私の見立てと合致する日もあるが「えっ、もっと多いんじゃない?」と疑問を投げかけて「もう一度よく見てよ」と催促し「7㎝ほど積もっていました」との訂正に「そうだろう」と雪かきの身支度をしながら答える日もある。今月の半ばまでは雪が雨に変じて雪を融かすことも多かったが、さすがに大晦日が近づけば、どんより空を覆い周囲の山並みさえも閉ざした鉛色の雲から落ちる雫は全て雪になる。「とうとう、雪かきの季節が来た」半ば諦めと半ば立ち向かう心情が交錯するが、二昨日から昨日まで続いた「雪は全然ありませんよ」妻の雪かき不要宣言に安堵の胸を撫で下ろす。
 膝下まで届く防寒コートを着て毛糸の帽子の上からフードを被り防寒防水の手袋をはめ、雪目防止のためにサングラスをしてゴム長靴を履いたのが私の雪かきスタイルである。冷え込みが厳しい朝は義姉さんから貰った防寒ズボンも必須のアイテムだ。昨夜から大雪暴風注意警報が発令されていた今朝は、窓障子を開けると二重の窓ガラスの内側が霜に覆われて外が見えない。かなり外気温が低い今冬初の現象に「だいぶ冷え込んだな」と呟く。霜を爪でこそぎ落として隣家のタイヤ痕で雪嵩を見ると、就寝前に覚悟していたよりはかなり少なく8㎝ほどのようだ。それは十分に雪かきの対象だから、急ぎ寒さ対策の着衣を身につけていると妻が顔を覗かせて「雪は10㎝くらい、気温はマイナス8度だって」と告げる。これまでマイナス5℃が最低だったから、これも今冬初の低気温だ。台所に立つ妻に「朝食前に片付けてしまうよ。ひとりで大丈夫だよ」と言い残し、玄関で雪かきの身支度をしていると「一段落したら手伝います」と妻の声が背中を押す。
 マイナス8℃の外気は一瞬ピリッと顔を刺すが防寒装備の内側までは侵入せず、むしろ動き続けている間に出る汗が心配になる。それよりも強い風に煽られた雪が絶え間なく舞い落ちて搔き出した雪面を跡形もなく覆ってしまい「この調子だと、今日は三~四回も雪かきする必要がありそうだ」などと独り言ちていると「遅くなりました」と出て来た妻に車二台の雪落としを頼む。 幸いなことにお向かいの田中さんが雪かき機械で道路の雪を吹き飛ばして片付けてくれたから、私の雪かき範囲は玄関前と駐車場だけでずいぶん楽になった。妻に「今朝の雪はシルクのようだよ」と言うと「本当にきめ細かくて艶めいてシルクみたい」と同調する。マイナス8℃の成すところだ。
 今日の天気予報は終日の雪で最高気温がマイナス3℃、凍えるような真冬日は明日まで続くらしい。沿岸地域は30mを越える暴風が吹き荒れて運休の鉄道路線がひっきりなしに報じられる冬の嵐だ。妻はクリスマス礼拝を兼ねた日曜礼拝に息子の運転で出かけ、車の跡に残った雪の片付けに出た私は、さっきの雪かきから僅か二時間でもう10㎝くらいの積雪に驚き、条件反射のように二回目の雪かきを済ませる。2021.12.26
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