Tumgik
satoshiimamura · 2 months
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一次創作置き場
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・長編小説 神殺しの巡礼
・短編小説 機械の神様
2024.2.25 COMITIA147にて頒布
サイバーパンク小説「AFTER AVENGER」
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satoshiimamura · 2 months
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龍と誠葉の契 ページ
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企画名「龍と誠葉の契」 
―――乱世を憐れんだ龍王は、此の世の再編を宣言した。
龍と人とが分たれてより数百年。ある日全ての生物は直観する。現行世界の破壊者、あるべき世界の創造者が現れたと。 龍王に降る者、現状を是とする者で争いが始まった。
真名契約を交わした龍と魔法使いの、これは抵抗の物語。
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name ハボダ 別名「晦冥(かいめい)」
龍王軍所属 龍王の右腕として動く
太古の時代、1000年以上前から生きた存在
陰の魔法「重力」の誠葉を操る龍。龍王の正体を知っている?
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neme 玲瓏 別名「金緑の魔法使い」
人龍連合所属の魔法使い。甘いものが好きで、連合にはご飯を恵んでもらったので所属している
天星教の僧侶であり、星に魅入られた子。星の下では皆同じ、人と龍の差はないものとして、葬送のウタをよく歌う
変化変容の誠葉を操る魔法使い
投稿作品
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小説
「普遍性なき真実(立場逆転IF)」
140字SS 一覧
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satoshiimamura · 2 months
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雨濡れ色のペトル残響
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企画名「雨濡れ色のペトル残響」 X @amapetozankyou
□諦観(パドル) □期待(パドル)
第0章
第1章 雨請い 大変換のときの円城寺吾郎について
第1章 雨請い 大変換のときのジーナ・チャイカについて
第2章 雨笠煙簑 期待と諦観の邂逅あるいは金属板の踏み鳴らし
第2章 雨笠煙簑 天変地異下の小石はパドルか蝌蚪か
第3章
第4章 断響雷雨 円城寺吾郎の前、諦観であった男の話
第4章 断響雷雨 ジーナ・チャイカの前、期待であった彼女の話
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satoshiimamura · 2 months
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蔦絡みの館ページ
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□ノナン・キュー □ゲイブ
掌編小説「ミッション・オブ・バレンタイン」
掌編小説「ハイド・アンド・シーク」
掌編小説「キャンディ・サイエンス」
掌編小説「ビフォー・ハロウィン」
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satoshiimamura · 2 months
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試し読み「AFTER AVENGER」
一章
 燃え盛る室内にBと呼ばれた青年はいた。無意味に広い、何が目的なのかわからないホールだ。多くの死体が燻り、肉が燃える悪臭が漂っていた。
 その中にBと、彼の相棒であるAと呼ばれた青年と、二人が幼少期から憎悪を募らせた相手である三人目の男がいた。
「セキュリティ破壊! あいつの身を守ってるのは何一つない!」
 Aの勝利宣言ともいえる報告に、Bは高鳴る鼓動と上がる口角を抑えられない。彼はカタナを構え、そして足に力を込める。
 Bの視線の先にいる屈強な男は、焦る様子はない。男はいつものように短機関銃を構える。
 男の持つ短機関銃から火薬が爆ぜた音がしたのと、Bが地面を蹴ったのは同時だった。
 弾雨の中を加速装置を使ってBは回避し、近づく。だが男も加速装置を使っていた。互いに読み合い、距離を一定に保たれる。だが、Aが男の行動を邪魔していく。遠隔でシステムダウンを狙うAの妨害に、男は初めて苦しい表情を浮かべた。
「ヨランダ母さんの仇だ!」
 男の背後をとれたBは、カタナで胸を貫く。カタナを伝って、循環液と冷却液、そしてオイルが流れた。
「はは、お前も終わりだ」
 これまでの人生でBが出したことのないほど、歓喜を纏った声だった。喜びすぎて、カタナを握る手から一切力が抜けないほどだった。
 直後、男の全身が炎に包まれる。悲鳴をあげることも、うめき声さえあげない男はBの方を向いて、嘲笑するように告げた。
「お前もいずれ、誰かの母を殺す。そして俺と同じように殺され、お前と同じように誰かが復讐に身を焦がす。復讐は終わらない」
「うるさい! うるさい、うるさい、うるさい‼︎」
 炎の熱が感じ取れない。ただ煌々と燃え盛る炎の中で、男が笑っていた。
「お前たちは逃げられない。お前たちもいずれ俺と同じになる」
「違う。僕はお前とは違う。お前のようにならない。だって、僕は」
 否定の言葉をなおも言い募ろうとしたBは、気がつくと背後から誰かに刺されていた。
 胸元から生える、彼が握っているカタナとよく似た武器。
 Bは誰が刺したのか確認しようとし、後ろを振り向いた。そこにいたのは、幼い少年。Bの幼少期によく似た少年が、涙を流しながら「母さんの仇だ」と言って憎悪を向けていた。
「――ッ」
 荒い息を吐き出しながらも、青年が飛び起きた。途端に見た目よりも遥かに重い身体を受け止めていた、安物のベッドが悲鳴をあげる。
 息切れと激しい動悸。青年が自分の胸元を見て、そこにカタナがないことに安堵する。
「おい、大丈夫か?」
 夜中特有の薄暗い室内。その部屋に安置されてたベッドのそばに立つ人物に、青年はようやく気づいた。いつもならばサングラスで隠されている、青白く輝く目が心配そうに青年をみている。
「***」
 青年が咄嗟に呼んだ名前に、相手は怪訝な顔をする。
「寝ぼけてんのか? おい、今がいつかわかってるよな?」
 その質問に、青年はゆっくりと思い出そうとした。
「二一XX年の十一月……十日? それとも十一日?」
「零時過ぎてるから十一日だな。俺たちが今いるのはどこだ?」
「コスモ・シティに向かう途中の、モーテル」
 そこまで答えてから、青年は落ち着いて周囲を見る余裕が戻ってきていた。
 ここはモーテル特有の安っぽい部屋で、本来は一人用の部屋だ。
 じゃんけんで勝った青年がベッドで寝て、ベッド代わりになりそうなソファに、もう一人が寝ることになったのだ。ソファの上には、ぐしゃぐしゃになった毛布が乗っている。人一人がそこにいたと分かる形状のままで、それだけ相手が慌てて青年の方にやってきたのが察せられた。
「そうだ。俺たちはコスモ・シティに向かってる。七年ぶりの帰還だ、その理由は」
「……評議会の暗殺者として復帰するため」
「そこまで思い出したなら、今の俺の名前と、お前の名前を言ってみろよ」
「君はAのアッシュ・アトウッド。僕はBのビリー・バイロン」
 淀みなく告げられた名前に、ようやくベッド脇に立っていた人物――アッシュが安堵したようだった。
「ちゃんと思い出したみたいだな」
「うん、ごめん。寝ぼけた」
 ビリーの謝罪の言葉に、アッシュは「気にするなよ」と言い返す。そして、その青く輝く目をサングラスで隠した。
 途端に室内の光が減る。代わりに窓の外から月光が入ってきた。
 アッシュの金髪が月明かりに照らされ輝く。対し、髪も目も真っ黒なビリーは輪郭だけが浮かび上がった。
「魘されてたぜ。……あの日のあれか」
 アッシュの指摘にビリーは頷く。
「いつも炎の中で、あの男が笑いながら言うんだ。僕たちはあの男のようになるって、復讐は終わらないって」
 夢の内容を思い出しながらもビリーは、自身の左手薬指に触れた。根本が少しばかり細く、リングが嵌っていたと思われる跡がある。
 いつだってビリーは復讐を思い出すと薬指――というよりもそこに嵌め込んだリングに触れていた。復讐を終えたはずなのに、その仕草の癖は抜けない。
 彼の存在しないリングを撫でる仕草を見てアッシュは渋い顔をしたが、その表情の変化に薬指ばかり見ていたビリーは気づかなかった。
「違うって否定しても、背中から刺されるんだ。僕の体をカタナが突き破ってる。誰が刺したのか見ようとして、振り向くんだけどいつも誰かわからない。ただ、子供だった。僕らが復讐を決意した、あの年頃の子だった」
 夢の内容を語りながら、ビリーは左手でシーツを強く掴んだ。彼の右手は夢の中でカタナが突き刺さった場所を撫でる。その視線は部屋の具体的な場所を見ておらず、夢の光景に向けられていた。
 ビリーの話を聞いていたアッシュは、何も言い返さずにソファまで戻り、深く座り込む。その姿勢は疲れて脱力した様子にも見えた。
 何度か顔を下に向けて、上げてと数度目の葛藤の末に、アッシュは意を決してビリーへ告げる。
「なぁ、ビリー。お前がそんなに悩むんだったら、別にコスモ・シティに戻らなくていいんだぜ」
 その言葉に、ようやくビリーは顔をアッシュへと向けた。彼の真っ黒な目が、サングラスの向こうにある青白く光る目へ向けられる。
「お前だけじゃない、俺もお前と一緒にあの男を殺したんだ。お前だけの罪じゃない。お前だけが苦悩する必要はない。お前がそんなにも組織に復帰するのが嫌なら、俺は戻る必要はないと思ってる」
 べらべらと喋るアッシュは、わかりやすく苛立っていた。
 当たり前だ。長年一緒にいた相棒の苦悩を放って置けるほど、彼は薄情ではない。その苛立ちにビリーは気づいているが、それでも一抹の後ろめたさがあった。
「金はどうするんだ」
「なんとかなるだろ」
 あっけらかんとした勢いで、ビリーの問いにアッシュは返す。
「べつにお前も俺も、この体をメンテしなくても死にはしない。そりゃあ、たまには手入れしなきゃだけど、それくらいの金は外でも稼げるさ」
 アッシュがソファから勢いよく立ち上がった。さも名案だろうと言わんばかりに、立ち姿も堂々としている。だが、ビリーはその勢いに乗れず、冷めた表情を返すしかなかった。
「死にはしないけど、動けなくなる。アッシュ、君も僕も特別性の体だ。メンテナンスだけで金がかかるんだ」
 分かっているだろう、と何度もした話を幼な子に伝えるよう優しく紡ぐビリー。
「この七年仕事をしなかったから貯金はわずか。コスモ・シティに戻らないと、どうしようもない」
 その大人ぶったビリーの仕草が気に入らなかったのか、アッシュは舌打ちをする。そのまま彼は自分の髪の毛をぐしゃぐしゃにして、再度ソファに座った。
 アッシュの様子を拗ねた子供のようだ、と内心で思ったビリーだったが、その子供っぽさが彼の見せかけなのもよく知っている。彼は、ビリーよりも遥かに人との距離の取り方が器用だ。
「きっと君だけなら、きっとこの七年で定職に就けたし、どこかで安穏と暮らせた。僕の不甲斐なさで、これ以上君に迷惑は掛けたくは」
 ない、と続く言葉を遮るようにアッシュは「迷惑じゃない!」と強く否定する。
 けど、となおも言い募ろうとするビリーに、再び苛立ち混じりにアッシュは立ちあがり、ずかずかと大股で近寄った。
「俺は、お前とずっと一緒にいるって決めてんだ。同じ復讐を共にした、唯一無二の相棒として、お前と地獄まで一緒にいるつもりだ。だから、お前がそんなにも復帰するのが嫌なら」
「嫌じゃない! ……嫌じゃないんだ、アッシュ」
 今度はビリーが悲痛な声で、アッシュの言葉を遮った。そのまま両手で顔を覆い、逃げと苦しみを背負ってベッドの上で丸まる。
「むしろ僕には暗殺しかない。暴力しか手段がない」
 ビリーは自分の手を見る。人工皮膚で覆われた掌には、傷一つ見えなかった。だが彼は覚えている。この手をどれだけ血で汚したのか。この手でどれだけの人を切ったのか。
「でもいつか僕らは、あの日復讐を誓った僕らと同じ目で見られる。終わった今だからこそ、復讐をしなかった自分たちの『もしも』を考えてしまうんだ」
「……ビリー」
 アッシュは相棒の苦悩の理由を知り、呆然とした。
「アッシュ……あの日僕らがした選択は、本当に正しかったのか?」
 苦悩の眼差しで向けられたビリーの問いかけに、アッシュは答えられなかった。
 両者とも答えられない問いは、沈黙したまま朝を迎えて消滅した。
 車の中でビリーとアッシュはお互いに黙ったまま、コスモ・シティに続く道路を走っている。
 天気は十一月にしては日差しが強く、快晴だった。
 道路標識には、ゆるやかなカーブの道路とコスモ・シティまでの距離しか書かれていない。
 その看板に記載されている距離が二桁まで縮まったとき、運転席にいたアッシュが「お?」と何かに気付いてサングラスを外した。
「どうしたんだ?」
 ビリーの問いかけに中空を眺めたアッシュは、いやと言って首を微かに横に振る。
「ただの評議会からのメッセージ。リングは新居の荷物に紛れ込ませるってさ」
 評議会の支配圏内に入ったのだと気付いたビリーは、メッセージ自体に監視されている圧を感じる。が、自動運転すら搭載していない旧型にも程がある車を運転しているのも分かるだろうに、と呆れもした。
「……何も運転中の君に渡す必要はないだろう」
「そりゃあ、俺がサイバー空間エキスパート! ���、ノック・ノッカーだからだろ。現実空間での大暴れ特化スウィッシュ・スウィッパーのビリーちゃんより、遥かにセキュリティ意識高いし。と言うか、お前は割とその辺不用心じゃん」
 馬鹿にしたアッシュの言い回しに、ビリーはムッとする。
「言っておくけど、僕のボディに搭載されてる秘匿メッセージへのセキュリティ強度は君と一緒」
 現実空間大暴れは否定しないのかと笑うアッシュに、ビリーは否定要素はないと素直に認める。
「そゆとこビリーは真面目だよなぁ。ま、マジで言えばリングがあればの話だ。あれがないと評議会との連携だってろくにできないし、俺たちのボディ性能を十分に発揮できない。正式復帰してない、リングなしの俺たち相手じゃ、評議会の連中だって注意を払う」
「……それはそうかもしれないけど」
「拗ねるなって。ほら、あと一時間もしないうちにコスモ・シティに着くぞ」
 サングラスを掛け直したアッシュは、運転に集中し始める。それを見たビリーもまた黙って前を向き、これから戻るコスモ・シティに思いを馳せた。
 
 コスモ・シティ���それは科学者たちの理想郷だ。
 二一〇〇年を目前に起きた核戦争。それにより広大な更地が誕生し、国家は事実上消滅した。数少ない土地を巡り更に争いは続いたが、その一つの着地点としてコスモ・シティができた。
 人類は過ちを起こすものであり、その過ちをできる限り科学技術によって排除し、人類の平等を実現させようと科学者たちが生み出した理想都市。
 その正体は、人類の生存を第一の主題とした統括AIコスモにより支配された都市だ。
 可能性の算出として量子コンピューターも併設されている、スーパーコンピューターを礎に存在する統括AIコスモは、あらゆる問題と方針と解決策を出力する。このAIコスモの出力通りに現実を整備するため、議会では日々議論が行われ、行政が動いている都市。
 結果、コスモ・シティ内部は至る所に監視カメラや監視ドローンが整備、記録されており犯罪の発生しやすい構造を徹底的に排除。
 また、労働にもロボットのサポートが入り、人類のワークライフバランスが管理されている。このバランスが崩れた際は、回復するまで施設に入り療養しつつも、何故ワークライフバランスが崩れたかについて調査され、改善までのサポートがなされる。
 つまり犯罪を起こす人間を生み出しにくくし、また犯罪を隠匿しにくい社会構造を作り上げることで、小さな事件を発端に全世界を灼き尽くした戦争へ発展した、かつて人類が辿った道を狭めたのだろう。
 だが、シティの犯罪発生率は低いとは言え、ゼロではない。
 どれだけシステムで排除しているとは言え、排除しきれなかった犯罪は警察により捜査される。大抵はすぐに犯人が捕まるのだが、時に入念な計画の元行われたと思われる事件にまで発展した場合は、警察よりも更に上のシティ捜査官が捜査する。
 彼らは常に傍に監視ドローンを携えている。シティ内部に記録されたあらゆる情報、証拠を集め、犯人や組織を捕まえ裁判へと進むのだ。
 そしてこれらを基にし、判決を下すのもまたAIコスモである。このAIによる裁判に忖度はあり得ず、人類側の利益の有無を考慮しないシステムで、人種性別職業による差別は存在しない。
 これらの要素から、シティ外部からは安全な都市、秩序ある都市と評価されることもしばしばだ。
 表向きとしてはだけど、とビリーは内心で吐き捨てる。
 コスモ・シティの暗部に存在するのが、これからビリーとアッシュが復帰する予定の組織『評議会』だった。
 コスモ・シティ運営の障害を排除するために設立された秘密組織。
 どう足掻いても表では罪を裁けない人物や、運営の障害となる人々を消し去るのがこの組織の目的である。その実行部隊として暗殺を手掛けていたのがビリーとアッシュだった。
 彼らも彼らで復讐目的で評議会に属していたが、それも遂げた七年前に休業となり、今に至る。
 ビリーたちは七年間評議会とは音信不通で過ごしていたが、それでもこれだけは確信して言えるだろう。
「ビリー、見えたぜ。七年ぶりのコスモ・シティだ」
 アッシュの指摘の通り、目の前に遠目からも高層ビルが並ぶのが分かる巨大な都市が現れた。
「ああ……七年前と変わらないな、あの街は」
二章 
 コスモ・シティ内の検問所で、旧型すぎてシティ内では乗れない車の売却をするアッシュと、交渉が滅法弱いビリーは一時別れた。
 そしてビリーは、現在シティの中心部からは外れた繁華街の入り口にいる。
 この繁華街は整備が行き届いたシティのイメージとは異なり、雑多な印象が根強い場所で、イースト・タウンと呼ばれるエリアだ。
 入り口の目印として建てられた巨大な二頭の犬のモニュメントは、コマイヌの愛称で地域住民に愛されている存在。更にコマイヌから見える光景だけでも、アルファベットではない言語があちらこちらに記載され、隣り合う看板の文字の形がまるで違う。
 また派手な色を多用した壁や屋根、根本的に異なる建築様式が混在している建物が並んでいた。建物の間にある狭い道は、日が入るほどの広さもなく薄暗い。
 ついでに昼時が近いせいか、屋台も多く出ており、そこかしこから、香辛料やハーブ、独特な調味料の匂いが漂っていた。威勢の良い売り込みも聞こえてくる。
 おいしそうだと思ったビリーの腹の虫が、微かに鳴る。
 手持ちの金は少ないが小腹を満たすくらいの余裕はあるので、ビリーは内心で何を買おうかと思案する。
 と、妖艶な雰囲気を携えた美女が、「はぁい」と彼に甘ったるい声を掛けてきた。
「イースト・タウンの新人かしら? よかったら、案内するわよ」
 ばっちり化粧をした女性は、魅力的な顔と身体を近づけてくる。ビリーは、懐を守るように左手で彼女の顔を制した。
「この手の薬指のリング跡、分かるだろう?」
 にっこりと笑って牽制した彼と、途端に嫌そうな顔をした女性。
「お察しの通り、パートナーと新居に越してきたんだ。これでも新しいリングが今日届くのを待っててね」
「なーんだ」
 言葉だけなら残念がっているようだが、明らかに女性は警戒しているようだ。目が笑っていない。
「よき隣人としてなら案内頼むよ」
 ビリーは愛想良く無難なお願いを女性にするが、もう関心がないと言わんばかりに彼女は離れていった。
 その変わり身の早さに苦笑いをするビリーだったが、離れていく女性が向かう方向から、今度は恋人同士の口論が聞こえてくる。
 先ほどナンパ目的かスリ目的か分からない女性とは対照的に、赤毛の気の強そうな女性が、周囲の困惑を無視して男性に怒りを顕にする。
「だから、わたしとしては仕事をしながらが大前提で、辞めて家を守るとか考えてないの」
 あまりにも大きな声で聞こえてきた内容に、古風なことだ、とビリーは驚く。イースト・タウンでは家中心主義のようなものがあるのは知っていたが、それも廃れかかっているのを彼は知っていた。
「けれど、ルビー。君の仕事は危険で、続けるのならもっと安全性を高めるために、サイボーグ手術を更に受ける必要が」
「そうね、その必要性はあるわ」
 仕事の単語と、女性の履くスリットの深いスカートから露わになった足。その足に刻まれたサイボーグ化を象徴する溝を見たビリーは、女性が警察組織に属していると気づく。男性に比べ小柄な女性警察官の緊急用武器格納エリアに選ばれやすいのは、大腿周辺だ。
 なるほど、大切な女性は危険から離れて欲しいという男心なのかと思ったビリーだったが、続く男性の言葉に耳を疑った。
「それだと外の連中と同じ身体になるってことじゃないか⁉︎ あの『无令(むりょう)』の連中みたいな」
 あまりにも、職務のためにサイボーグ化していた女性を侮辱する言い回しだった。明らかに赤毛の女性はいらついた様子を見せている。
 それでも彼女は一応の常識で持って反論していた。
「それは偏見よ。だいたい、他の都市では全身サイボーグは結構な人数がいるのよ。このコスモ・シティでだって栄誉ある捜査官や、中心部にあるような企業所属の警備員たちは」
「あいつらは脳筋だからいいんだ」
 侮辱に次ぐ侮辱が続き、ついに女性も我慢の限界を超えたらしい。
 景気良く男性の頬を叩き、胸ぐらを掴んだ女性。
「待ってくれ、ルビー! 謝る! 謝るよ、すまなかった、ちょっと助けてくれ」
「その愛称で呼ばないでくれるかしら」
「クリス、わかった、本当にすまないクリス、謝ってるだろう、ねぇそこの人助けてくれないか」
 助けを求める男性の周囲にいた人間たちは、見て見ぬふりをしていた。全身サイボーグであるビリーもまた、見なかったことにした。
 ちょうどその時、ようやく待ち合わせ相手だったロボットがビリーの前にやってくる。
 周囲の喧騒など何も気にしていない雰囲気で、彼の腰にも満たない高さのロボットは名乗った。
「オ待たせしまシタ、ビリー・バイロン様。ワタクシが新居案内サービスを担当シますRE30175デス」
 ぶつ切り音声と、細長い円筒形のフォルム。顔代わりのモニターに出された表情は短い棒線だけで表されているし、足元は左右共に三つの履帯で段差対応はしているが、全体的な動作は鈍い。明らかに年代ものだ。
「ああ、待っていたよ。僕がビリー・バイロン。個人証明書としてのコスモ・シティ登録IDはどこに提示すればいいのかな? パートナーの代理証も預かっているよ」
「でハ、両方をコチラの読み取り器に当ててくだサイ」
 モニター上部に矢印で示された場所へ、ビリーは手を翳す。
 手のひらに埋め込まれた端末同士の通信は一瞬にして終わった。
「はイ、確認できまシタ。所属は未定デスが、ウィッシュ・ウィッパーのビリー・バイロン様とノック・ノッカーのアッシュ・アトウッド様ですネ。次に家まで案内しマス」
 コチラへどうゾ、と続く案内に従い人通りの多い道をRE30175と共に歩き出すビリー。再度人のざわめきが大きくなったが、すでに背にした光景に興味はあまりなく、彼は振り返らなかった。
 代わりに、古びたロボットへ質問を投げかける。
「未だにコスモ・シティでは全身サイボーグは珍しいんだね。もしかして、イースト・タウン周辺だけかもしれないけど」
「コスモ・シティ全体デ珍しいト思いマス。あの七年前に『无令』ガ起こしタ事件で、我々ロボットも肩身ガ狭いデス」
「……君たちのせいではないのに」
 七年前の話ができることにビリーは驚いた。それだけで、このロボットが七年前から動いている存在なのだと察せられる。
「ワタクシたちのせいデはナイ。それデモ、恐怖ハそう簡単ニ消えないのデショウ」
 ビリーは自分の左手の薬指を見た。そこにあるべきリングは、まだない。
 イースト・タウンでそれなりの高さがある集合住宅。外観は下層階は落書きだらけで、適当な張り紙も目立つ。が、広場には子供の遊具も存在する家族向け物件。無機質で、同じ見た目の扉が並ぶ建物内の、寂れた玄関前にビリーとRE30175はいた。
 先ほどより集合住宅の注意事項、鍵の取扱、各種契約内容についてRE30175から説明を受けていたビリーは内心飽きていた。
「以上デ説明を終えマス」
 そして長々とした説明も終わりを迎え、いよいよ電子鍵を渡される段階となる。
「何か質問ハございマスカ?」
「いや、ないよ」
「��ハ、改めまシテ契約成立となりマス。引越しの荷物運搬は契約外とナッテおりマスが、ビリー様はウィッシュ・ウィッパーとのことデスのデ」
「そうだね、問題はないよ。これでもコスモ・シティに来る前には、ウィッシュ・ウィッパーらしく大型貨物の移送なんかもしてた身だ」
 全身サイボーグの中でも、戦闘および力技に特化したサイボーグであるウィッシュ・ウィッパーのビリーにとっては、引越しの荷物運びなど朝飯前である。
 本来であれば、こういったロボットとの契約はサイバー干渉を得意とするノック・ノッカーのアッシュの方が色々と都合が良い。のだが、車の売却値をできる限り釣り上げてくると、嬉々として強面ディーラーに挑むよう向かった相棒を止める術は、ビリーにはなかった。
 結局、評議会復帰の目印となるリング回収を早めるためにも、住居の契約程度はお使いレベルなので、気にせずにビリーがこの場にいる。
 ビリーとRE30175の間で再度、契約のための通信が行われた。なんの問題もなく、ビリー・バイロンとアッシュ・アトウッドの部屋として登録され、電子鍵がデータとして転送される。
 契約完了とRE30175のモニター部分にも表記された。
「でハ、お荷物はアト――分に到着すル予定となっていマス」
「うん? 何分後だって?」
 一瞬、RE30175の音声に雑音が混ざる。古めかしいロボットなので、音声関係の不良かと思ったビリーは再度RE30175に問いかける。だが、それまで問題なく応答していたのが嘘のように沈黙し、ボディが少し震えていた。
 キリキリキリと何かが激しく動いている。それがロボットの視覚センサとして埋め込まれた多数のカメラが動く音だとビリーが気づいたときには、RE30175の異常が表面化していた。
「あと、あと、あと、あトアトアトアトアト」
 ビリーは驚愕ののちに、警戒感を抱き、構える。
 同じ言葉が繰り返され続けると思ったが、唐突にそれは止まった。
「リングがなイのデスね、B」
 ありえない呼称が出た瞬間、RE30175がビリーに襲いかかる。円筒形のボディが急加速でビリーに向かって突撃したが、彼はあっさりとその攻撃を避けた。
 RE30175は止まりきれず、激突した先の壁にヒビが入る。あまりの衝撃に隣の部屋の住人が玄関から飛び出て文句を言うが、RE30175の異変を見てすぐに戻り玄関の鍵をかけた。
 RE30175は方向転換をし、少し増えた傷など気にしないと言わんばかりに再度ビリーの方を向いた。
「なんで」
 ビリーの独り言に、RE30175は答える。
「あなたはポーンだ。忠実なポーンだ。融通の効かないポーンだ。悲しいポーンだ」
 これまでのぶつ切り音声とは違う、流暢な言い回し。古めかしい、骨董品レベルのロボットにしてはありえない音に、何かがRE30175を操っているのだとビリーは推測する。
 だが、問題なのはビリーをBやポーンと言ったことだ。
 再度RE30175……いや正体不明となったロボットがビリーに襲いかかる。
 ビリーが勢いを相殺せんばかりにロボットへ飛び蹴りを仕掛けるが、ボディが微かに凹むだけで行動停止の致命傷にはならない。
「……リングなしの通常機能だけじゃダメか」
 集合住宅の廊下にいる限り周囲への被害が大きくなると判断したビリーは、続けて突撃を繰り返すロボットを避けて広い場所への脱出を優先する。
 ビリーの後を追いかけるロボット。
 両者の鬼ごっこに気づいた住人たちが、避難のために室内に戻ったり、玄関が閉められる音があちらこちらからする。
「忠実なポーンだ。融通の効かないポーンだ。悲しいポーンだ。哀れなポーンだ。復讐に取り憑かれたポーンだ。終われないポーンだ」
「うるさいッな!」
 繰り返されるメッセージに苛立ちをビリーは込めて舌打ちをする。数度ロボットが曲がりきれずに壁にめり込んだりしたが、それでも止まる気配はなかった。
 何度かビリーからも、ロボットの攻撃を避けて反撃はしているが、全てが軽い凹みで終わりダメージが入らない。
「もしかして七年前より頑丈になってないか⁉︎」
「ポーン、ポーン、ポーン、同胞の痛みを知りなさい」
 ビリーの叫びも無視してロボットが更に加速する。そして今までしまわれていたアーム部分が出されたことで身の危険を感じたビリーは、咄嗟に廊下の柵から広場へと身を乗り出す。
 地上までは十五メートル以上あるが、躊躇せず彼は飛び降りた。直後ロボットのアーム部からレーザーが発射される。
 そのまま重力に任せてビリーは広場に勢いよく着地した。
 ズドンッと重苦しい音と、衝撃が辺りに響く。彼の着地点はクレーターとなり、土埃が舞っていた。
 広場の周囲にいた人々が何事かと遠巻きに様子を伺っているが、無傷のビリーは身を乗り出した階層に視線を向ける。
 そこには右往左往するロボットがいた。アームは相変わらずしまわれていない。
「あれは強制退去用の鍵開けレーザーか、ますます厄介……な⁉︎」
 距離をとったことで安堵したビリーが、先ほどの攻撃内容を考察しているとロボットが変形し始めた。そして先ほどの彼と同じく柵から身を乗り出す。
 やめろ、とビリーが叫んでも遅かった。
 ロボットは十五メートル以上落下し、着地する。案の定一部変形しているが、それでもビリーに向かおうとしていた。
「あなたの罪を知りなさい。無知を知りなさい。可能性を奪った傲慢さを知りなさい」
 破壊をするには躊躇うほどの執念に、ビリーはどこに逃げようかと思案する。と、その直後に赤毛の女性が彼とロボットの間に滑り込んだ。
「N250648、クリス・ラザフォード現着しました」
 声高らかに自分の識別番号を告げた女性は、少し前に見かけた喧嘩しているカップルの片割れだった。
「君は、コマイヌ近くにいた」
 現れた女性に、つい余計なことを喋るビリー。
「あら、もしかしてさっきの喧嘩見られちゃったのかしら?」
 彼女はスカートのスリット部に手を入れ、右大腿から警察官専用の電気銃を取り出すと、ロボットへその銃口を向けた。
「僕としては、あの男と付き合うのはお勧めしないね」
「大丈夫、さっき円満に……とはいかないけど別れたわ」
「なるほど。本当に余計なお世話だったか」
 気にしないでと言い返した女性――先程の名乗りからするとクリス・ラザフォードは、装着したインターカムに向かっておそらく警察側に現状を報告する。
「対象RE3000型。足に損傷がありますが、レーザー及びアームは健在。現在進行形で暴走状態のため、レベルDの解放を要請します」
 途端に彼女が握る電気銃側から「了解。レベルD解放を許可」とアナウンスが流れた。
 次いでクリスの手元の電気銃からいくつかのロック解除音が鳴る。聞き取れたアナウンスからすると、対ロボット用電気銃モードへの移行と、放出されるエネルギーの上限値の読み上げのようだ。
 そのままロボットへの警戒を緩めずに、クリスは背後に庇ったビリーへ声をかける。
「では、改めて無事ですか? もし動けるようなら、わたしの背中にいつでも逃げられる状態で立っていてください。現在、他の警察官がこちらに向かって��ますので、ご安心ください」
 二人のやりとりの間にも、ロボットは負傷した足を無理やりに動かして移動しようとしている。音からして、履帯を回転させるギアの軸の歪みが考えられるが、それでも目の前にいるロボットはビリーを狙っていた。
「ポーン、ポーン、ポーン、同胞の痛みを知りなさい」
 ばちばちとレーザー起動の動きも見せるが、間にクリスがいるせいか打ち込んではこない。ビリー以外の人間への攻撃ができないところをみると、ビリーへの認識を人間からそれ以外に書き換えられたのかもしれない。
「助けてくれてありがとう。できれば、あのロボットをさっさと撃ち殺してほしいところだけど」
「破壊レベルの許可は、あなたが元気なうちは無理ね」
「ああ、破壊許可はレベルBだったか。怪我しておけば良かったな」
 頑丈なサイボーグのウィッシュ・ウィッパーだからこそ、実は一連の中でビリーには傷一つついていない。
 むしろ周囲への被害の方が大きいので、正直賠償金をどうしようと思っていたくらいだ。できれば相手側の過失で済ませて賠償金を支払わせたいのが、金欠な彼の本音である。
「それだけ冗談が言えるなら、無事な状態と思っていいかしら」
「丈夫なのが取り柄なんだ」
「ならよかった。今までこんなお喋りできた人いなかったわ」
 クリスの言い回しに、ビリーは首を傾げた。
「今まで? もう何件もこんな事件が起きてるような言い回しだ」
「あら知らないの? 今コスモ・シティでは」
 クリスの説明が止まる。ロボットが繰り返していたポーンという単語が出なくなったためだ。
「目撃者増加、認識者増加、会話可能、意思疎通可能、続行困難、排除困難、思考開始、計算開始、確率算出、……ああ無念デス」
 最後だけ、正体不明のロボットから、RE30175に戻ったような言い回しだった。
「ロボットが無念ですって?」
 何も知らないクリスが、ありえないといった雰囲気で声を上げる。だが、RE30175はクリスを無視し、ビリーへと言葉を投げかけた。
「残念デス、無念デす、悲しいデス、悔しいデす、リングがないノならアナタを排除でキルと思ったノニ」
「生憎と君の恨みを買った覚えはないんだけど」
「七年前に殺しタじゃナいデスか、ワタクシの仲間ヲ」
 RE30175のぶつ切りの音声が、ビリーには嫌に悲しく聞こえた。
 クリスは「七年前って、」と零すが、ビリーもまた彼女の呟きを拾っている余裕はない。
「僕は、君の仲間を殺してない」
 強い口調で否定をする彼に、RE30175は数十秒間無言でいた。が、たった一言だけ言い返す。
「嘘つキ」
 その瞬間、RE30175のアームが振り上げられる。クリスが電気銃の引き金を引こうとするが、その前にRE30175は自身のアームを胸部にレーザーを使って突き刺した。
 クリスは驚愕し、ビリーは自らが貫かれた夢の光景を思い出す。
 そしてカチリという音が聞こえたビリーは相手の狙いに気付き、クリスを抱き抱えてRE30175に背を向ける。
 直後、ロボットの動力部とそのエネルギー源を基にした爆発が、二人を襲った。
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satoshiimamura · 2 months
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2024.2.25 COMITIA147 お品書き
2024/2/25開催 COMITIA147
サークル名:「一号三号」 配置:東2 さ37a
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小説「AFTER AVENGER」
あらすじ
 21XX年、AIコスモによって統治されるコスモ・シティに向かうのは全身サイボーグのビリーと相棒アッシュ。彼らは復讐のためにシティの裏組織「評議会」の暗殺者となったが、7年前に復讐を終え休業。しかし体のメンテナンスで金欠となり、今回復帰のために戻ったのだった。  だがシティでロボットが7年前の恨みと言って2人を襲撃する。偶然助けに入った警察官クリスと共に退けたが、暗殺者の証でもあるリングを奪われてしまった。  リング奪還に動く中、クリスも7年前の事件関係者と分かり……復讐後の暗殺者と復讐を誓う警察官のサイバーパンク小説
キャラクター紹介
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name ビリー・バイロン
「あの日僕らがした選択は、本当に正しかったのか?」
戦闘および力技に特化したサイボーグであるスウィッシュ・スウィッシャーの青年。その正体は7年前から休業している評議会の暗殺者B。アッシュとは長年の相棒で共犯者
真面目な性格で、復讐の連鎖に怯えている。発想がやや脳筋。
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name アッシュ・アトウッド
「お嬢さんお名前なぁに? ビリーとどこで気があったの?」
サイバー干渉に特化したサイボーグであるノック・ノッカーの青年。その正体は7年前から休業している暗殺者A。ビリーとは長年の相棒であり共犯者
チャラい言動と派手な見た目だが、実際はかなり冷静沈着タイプ
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name クリス・ラザフォード
「N250648、クリス・ラザフォード現着しました」
コスモ・シティの警察官。7年前のテロ事件で両親を亡くし、テロを起こした組織「无令」を追っている。危険な任務につくため広範囲サイボーグ化を願っているが、養父は反対している。
勝気な性格だが、地域の住人からは慕われている。
試し読み
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satoshiimamura · 3 months
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機械の神様
 僕の職場には、Tさんというベテラン技術者がいた。Tさんは現場で突発的に起きる大トラブルには大抵出勤している、ツイている人だ。あまりにもツイている人なので、トラブルが起きればTさん頼りになることもしばしばだった。
 Tさんはユーモアもあった。
 祝日に制御PCが不調なら「休みの日だから働きたくないよなぁ、俺も休日出勤してるから分かる」と同情した。機械の駆動部を目視していると正常なのに、目を離した途端に異音が鳴ったときも「あのなぁ、べつに俺の前で無理しなくたっていいだぞ」と声をかけていた。結婚記念日でこれからホテル��ィナーなのだと照れ臭そうに笑って帰ろうとしたときに、なぜか警報の大合唱になった日。Tさんは「おいおい、お祝いにしちゃ派手だな」と言った後、颯爽と対処にあたっていた。最後のは、さすがにTさんを帰らせようと僕らが頑張った。
「夏休み明けで、この数はすごいな」
 皆が交代でとる夏休み。Tさんが休み明けで戻ってきた日に、数件の機械トラブルが続いた。どれもTさんならどうにかできるけど、僕らでは少し荷が重いトラブルだった。
「Tさんが帰ってくるのを、ここの機械たちも待ってたんですよ、きっと」
 汗を拭いながら、僕はTさんに返す。
「俺がいなくなったらどうするんだか」
「なら、いつまでもいてくださいね、Tさん」
 もちろん僕らはトラブルの前兆を見逃さないように注意していたし、Tさんがいない時でもトラブルに対応できるよう努力していた。それでも、圧倒的にTさんは機械の異変に気付くのが早い人でもあった。
 Tさんが退職された。病気治療に専念するために早期退職を選んだらしい。
 Tさんの送別会で僕は酒に飲まれてしまい大声で「Tさん辞めないで」と叫ぶ醜態を晒した。横にいた同僚からの証言で、Tさんは「いい加減、自信をつけろ」と笑っていたらしい。
 その送別会から月日が経ち、トラブル対処に自信がつき始めた頃、職場にTさんの訃報が入った。僕は通夜の日程を聞き、何事もなければ出席できそうだと思った。
 その矢先、機械がけたたましく警報を鳴らす。前兆も予兆もなく、一斉に鳴り響く不快な音が、送別会で醜態をさらした僕自身と重なる。僕は「分かるよ、悲しいよな」と声をかけてから、機械を強制的に止める操作をした。悲痛な警報音はぷつりと止まった。
文字数:959文字
某所に投稿した短編
テーマ「神様が死んだ日」
1000文字以内の縛り
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satoshiimamura · 4 months
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美しい、綺麗
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Art by RAB
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satoshiimamura · 7 months
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かわいい!!!とてもかわいい!!!
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Witch cat
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satoshiimamura · 7 months
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宙のイカロス
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企画名 平行世界のエイドス X @AuOusia
宙のイカロス 本編
第一部 1  卒(ゆりかご)業 2  地(とし)上 3  五(じつりょく)番 4  姉(ななばん)妹 5  英(げんそう)雄 6  悪(はじまり)夢 7  日(かんけい)常 8  研(ふしん)究 9  夜(すばる)闇 10 願(とり)望 11 襲(ついらく)撃 12 記(そら)憶 第二部 1  望(とも)郷 2  人(しゅうえん)類 3  地(わらえ)獄 4  名(かりもの)前 5  審(しゅうちゃく)判 6  真(ていこう)実 7  誕(らくえん)生 8  暴(だいえいゆう)走 9  決(ねがい)着 10 宇(そら)宙
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登場人物 一覧
No.1 海下 涼 高城 綾春 迂音 一 No.2 アレク・リーベルト アンナ・グドリャナ ローゲ No.3 現見 空音 クレイシュ・ピングゥ 金剛 司紀 No.4 ナーフ・レジオ ユエン・リエンツォ フー No.5 神楽 右近 ★獅子夜 ゆらぎ エイト・エイト (スバル・シクソン) No.6 神楽 左近 ルル・シュイナード 瀬谷 雪斗 No.7 兎成 あゆは 梓・A・兎成 テトラ ユタカ・マーティン フィンブル・アダムス 夢見・リー タスカ・スロ めろり・ハート 早瀬 ルナ イナ・イタライ 福良 真宵 乾 祐介
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satoshiimamura · 7 months
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キャラクター紹介:めろり・ハート
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画像:Picrew「かわいい女の子メーカー」
名前:めろり・ハート(Merory Heart)
性別:女
年齢:見た目は19歳
体格:華奢
身長:140cm
体重:ホログラムのためなし
肌色:白色
髪色:ピンク、ツインテール
目色:紫、垂れ目
一人称:めろり
ポジション:養成学校の教育用AI
能力:仮想世界の構築が得意。そのためデータさえあればさまざまな戦場を再現可能である
人柄:かわい子ぶりっ子、とても惚れっぽい
趣味:ファッション、メイク
その他:
 数百種類いるAI人格の一つ。ぶりっ子だが、教育者としては大変長い間起動しているため���ビアな判断を下す。候補生たちはめろりを苦戦させたら優秀
 かわい子ぶりっ子なのは、もともとの設定がそのような性格。設定を突き詰めたところこのようになった。AIらしく根本的な憎悪を知らないし、理解できないのだが、この理由にAIとして人格が記録されたのが最初のペティノス襲撃直後というのがある。実は超初期の人格ゆえに人間らしさが薄れている。見かけも享年の姿である。
 三十年前の英雄たちが学生だった頃も知っているが、それを口にすることはない
作者からの一言:
そうそう作者が思い付かないキャラなので、結構愛着がある。もしも宙のイカロスの続編というか過去編をやるなら彼女を主人公にしたいレベルで好き
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satoshiimamura · 7 months
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キャラクター紹介:夢見・リー
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画像:Picrewの「ひよこ男子」
名前:夢見・リー(Yumemi Lee)
性別:女
年齢:29歳
体格:痩せ型、ギザ歯
身長:163cm
体重:55kg以下
肌色:黄色人種、日焼けしていない
髪色:深緑で黒に近い
目色:釣り目、赤
一人称:あたし
ポジション:イカロスおよびペティノスの研究第一人者
能力:好奇心を倫理で止められないところを強みとしている
人柄:好奇心旺盛、研究熱心、感情の起伏が激しい
趣味:論文購読
その他:
 研究のためなら人命軽視や非人道的行為も厭わない。自分第一、危険からは真っ先に逃げ出す、他人を盾にする。研究以外で自分の思い通りにならないと癇癪を起こす少々個性的な科学者
 上記背景には、進路適正検査および道への好奇心から、地下の研究機関から地上でのペティノス研究を進められてそのままやってきた。が、多くの犠牲が出た地上戦を間近でみてトラウマと化したのがある。好奇心旺盛だが、同期たちの屍を目の当たりにしているために戦闘そのものは嫌い。血が苦手、うめき声が苦手、戦闘が嫌いなので実はデータが直接取れない
 また、新人の頃の上司がことごとく夢見の研究を認めない人であったため、上の世代への不信感がある(元上司の研究は非常に尊敬していた)
 都市ファロスにやってきたのは、スバルやタスカと同時。ただし、航空部隊を囮とした別の輸送組だったので彼女の輸送車に被害はなかった。
 タスカとは口喧嘩しつつもイカロス改良で手を取り合い、悪夢世代としてアレク・アンナとは仲が良い。肉は食べられない
作者からの一言:
倫理を吹っ飛ばしながらも、それでもイカロスやペティノスというものを研究する理由はなんだろうかと考えた末に決められた設定。結構重要ポジション
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satoshiimamura · 7 months
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キャラクター紹介:フィンブル・アダムス
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画像:Picrew「無題のおんなのこ」
名前:フィンブル・アダムス(Fimbul Adams)
性別:女
年齢:21歳
体格:スレンダー体型、胸囲は控えめで左胸に傷
身長:171cm
体重:53kg
肌色:色白
髪色:深い青、ロングヘア、左目を隠す前髪
目色:オッドアイ(左:緑、右:緑みの青)、目つきが悪い、左目瞼に傷
一人称:私
ポジション:ユタカ司令官の秘書
能力:全体的に優秀だが突出したものはない
人柄:自分にも他人にも厳しい、不器用、冷ややかな印象
趣味:スイーツ好きで、こっそりエイト・エイトの菓子レシピを自宅で作っていたりする
その他:
 スキップを経て卒業、航空部隊への入学となる。順調にパイロットとしてイカロスに乗って戦闘へ参加するも、一度瀕死になるほどの攻撃を受けた。奇跡的に回復するも、その後イカロスへの搭乗が不可能になるほどのトラウマを負い恐怖で戦場に立てなくなった。戦場復帰の難しさが精神に由来することにコンプレックスが存在するが、その経歴から海下を思い出すユタカによって、秘書への推薦を得た。
 現在は新しい役割に納得いっているようだったが、それでも戦場への焦燥感はある。
 実はナーフやクレイシュとは同期、二人が活躍することへの嫉妬もある(二人が著名なパイロット、オペレーターと組んでいることへの妬み)。ただし、直接彼らに何かするタイプではなく、現在は冷静にサポートしている
作者からの一言:
冷静な秘書官として、そして可愛らしい女性でもあり、能力は凡人の代表格でもある。彼女の境遇は都市ファロスではよくあることで、だからこそ無神経な言葉も口にされたし、口にしたことがある
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satoshiimamura · 7 months
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キャラクター紹介:ユタカ・マーティン
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画像:Picrew の「小首を傾げるメンズ」
名前:ユタカ・マーティン(Yutaka Martin)
性別:男
年齢:48歳
体格:同年代に比べ大柄筋肉質で重い、威圧的風貌
身長:185cm
体重:68kg
肌色:白
髪色:薄い灰色
目色:赤系統
一人称:私
ポジション:ファロス機関司令官
能力:壊滅状態の組織を再編した手腕
人柄:兄貴肌、頼られることが嬉しい、
趣味:バーチャル空間での釣り
その他:
 現見の後輩であり、元パイロット。30年前に多くの仲間を失ったが、それでもペティノスに蹂躙されることを認められなかった。
 弱みを見せたがらないが、これは30年前に助けられなかった英雄たちへの後悔と崩壊した組織を立て直そうとした結果。かつては外見に反して気弱な少年だった。
 公の場では常に丁寧語で友人関係の中では砕けた口調になるのだが、彼と同年代はほとんどいない。大半は既に死別、離別している。
 クレイシュやナーフなど若手への態度が甘いのだが、右近/左近の双子とあゆは/梓の姉妹に関しては、問題児として頭を抱えている。もう少しあの辺は静かにならないものか、とも思っている。
 30年前に関しての箝口令を出した張本人なのだが、あまりその事実を知られていない。
作者からの一言:
エイドス参加に伴い、宙のイカロスで威厳のあるリーダーが必要になった結果生まれたキャラ。とはいえ、作中では大人ぶっているが、実はかなり大人になりきれなかった部分も多い。大人のふりをした、割り切りと妥協と逃避の集大成であり、この物語の行く末で彼が何の罪を犯したのかが分かる予定
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satoshiimamura · 7 months
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キャラクター紹介:テトラ
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画像:Picrewの「はりねず版男子メーカー(2)」
名前:テトラ(Tetra)
性別:女
年齢:19歳
体格:凸凹があまりない
身長:175cm
体重:ホログラムのためなし
肌色:健康的な肌色
髪色:黒髪、ショートヘア、癖毛気味
目色:赤
一人称:ワタシ
ポジション:No.7 ナビゲートAI
能力:情緒不安定な姉妹へのフォローが得意。AIとしての能力は平均的
人柄:王子様気質、寂しがりや
趣味:写真撮影、特に姉妹の新しい服などを撮るのが好き
その他:
数百種類いるAI人格の一つ。パイロットとオペレーターの性格を診断し、起動された
男性的な口調。ボーイッシュなパンツスタイルで一見するとイケメン。王子様然としており、兎成姉妹からは好きなタイプに出されるほど。実は学園の中にもファンクラブがある
兎成姉妹に甘すぎるので、時たま双子たちへ毒舌を発揮するし、そのAIたちへも辛辣。女の子にはアマイ
作者からの一言:
ちょっと凹みやすい姉妹をフォローする男装の麗人イメージ。女の子の王子様像をこれでもかと詰め込んだAIなので、女の子ウケはとてもいい
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satoshiimamura · 7 months
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キャラクター紹介:梓・A・兎成
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画像:Picrewの「可愛い女を作るめーかー」
名前:梓・A・兎成(Azusa Arrows Tonari)
性別:女
年齢:21歳
体格:むちむち体型、胸が大きい
身長: 151cm
体重:52kg
肌色:青白い
髪色:濃い金髪、ツインテール
目色:マーブル模様を描いている藍色
一人称:わたし
ポジション:No.7 オペレーター
能力:天候による誤差の修正が得意
人柄:他人を見下しがち、同性(姉を除く)を嫌っている、本来は根暗で自虐的
趣味:趣味で物語の執筆を行うが、馬鹿にされるのではと秘密にしている。オタク
その他:
あゆはとは、全く同じ家庭環境で育てられた擬似的双子。そのため血が繋がっていないが、あゆはを姉妹として認識している。擬似的双子の家庭環境ができたのは、神楽双子のような高い適正を持つ存在を生み出せないかという実験的措置
お姉ちゃんは強いんだ!という意気込みで、全てを敵視している
少し濃いめの化粧、男性受けを狙った服装。まれにロリータを着用している
姉と違う目をコンプレックスとしており、珍しい目だったためにからかいを受けたことから自虐的になった
対面ではコミュ障なために他のナンバーズとはあまり交流していない。あゆは経由でルルとは少し話せるが、それでも少し
こっそり少女漫画趣味やロリータ趣味のコミュニティに属しており、そこでは割とハキハキしている。この趣味は姉であるあゆはにも内緒。サポートAIのテトラにも口止めしている
作者からの一言:
お姉ちゃん大好き、テトラ大好きの気弱な妹で、ちょっとオタク。実はゆらぎと一番趣味が合うし、気が合うタイプではある
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satoshiimamura · 7 months
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キャラクター紹介:兎成 あゆは
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画像:Picrewの「可愛い女を作るめーかー」
名前:兎成 あゆは(Ayuha Tonari)
性別:女
年齢:21歳
体格 :痩せ型、胸は小さい
身長:167cm
体重:55.1kg
肌色:色白、頬が赤らみやすい
髪色:黒髪、ツインテール
目色:茶色、やや釣り目
一人称:あたし
ポジション:No.7 パイロット
能力:遠距離射撃と精密射撃
人柄:ややツンデレ、面倒見がいい、目立つことが苦手、友達は多いが親友がいない
趣味:無趣味(右近と似た回答なので、趣味を見つけたいとは思ってる)
その他:
梓とは、全く同じ家庭環境で育てられた擬似的双子。そのため血が繋がっていないが、梓を姉妹として認識している。擬似的双子の家庭環境ができたのは、神楽双子のような高い適正を持つ存在を生み出せないかという実験的措置(神楽双子が幼少期から高い能力を有していたのを彼女は知っている)
双子の存在を都市ファロスにきてから知り、自分たちの生育環境の原因として意識している。そのため元からやや感情的になりやすいが、特に双子からの煽りに弱い。特に右近とは相性最悪。左近の方がまだマシ。ルルとはそれなりに交流しているが、彼女の不運属性をカバーしきれずに巻き込まれるため、少し苦手。
前髪の赤メッシュは梓とのおそろいで、姉妹の証。実は梓に比べて幼児体型なことがコンプレックス
作者からの一言:賑やかなお姉ちゃん。今後ゆらぎ君に苦手意識持たれるけど面倒見はとてもいい人なので……たぶん生活面と人間関係は右近よりは頼りになる
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