Tumgik
orikou · 2 days
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4/28
好きなグループのメンバーが亡くなったとテレビのテロップに流れたそうだ。悪い冗談だと思ったし、悔しいけれどそこまでの知名度はその子にはない。自分の目で確かめたくてテレビをつけてみたけれど、テロップは誤字をしているし、そもそもグループ名を出さない始末だ。テレビにはその子が棺桶で運ばれていく様子を写していて、でもお茶目なその子は白装束を着ていたずらっぽくはにかみながらその棺桶からそっと這い出していた。わたしはその映像が自分の妄想が見せたものだとわかっているから本当に悲しくなって、泣けて仕方がなかった。泣きながら昨日アップされた動画をどうやったら保存できるか必死に考えているのがあさましくて情けなかった。昨日のライブは相当無理してたんだ。幸せそうに見えたし、一昨日は体調が悪かったらしいけれど回復したと思っていた。いや、本当は辛くなかったのかもしれない、ただの風邪だと思って、少しだけしんどいなと思いながら眠りについたのかもしれない。私にはなにもわからなくて、そうこうしているうちに公式のホームページで発表があって(ここも誤字だらけで読めたものではなかったけれど)わたしは電気屋でもたもたしながら会計を終えたところだった。いつのまにかわたしはその子になっていて、ダンスの練習を終えてみんなでロビーでくつろいでいるうちに眠くなって足元がおぼつかなくなってラックの上でへばっていたらスタッフやメンバーがやってきて助け起こしてくれて、熱を測ってつめたい水を手渡してくれたのだった。その子(わたし)は皆のやさしさが本当にうれしくてありがとうを言って、メンバーにあなたが大好きだと手を取って伝えて、そう、大好きだとちゃんと伝えて、眠りについたのだった。
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orikou · 7 days
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4/23
友人たちと車で遠くまで旅をして、日が落ちかけた頃に入ったショッピングモールでは窓の外に海が見えた。
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orikou · 12 days
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4/18
地下に潜って今まで出会ったことのない人に会う。プロレスラーの女の人が迎えに出てくれて、わたしはその人の興味津々だった。地下で暮らすということは地上で起こるすべてを受け入れてやり過ごせることはやり過ごすということで、わたしは大雨が降った時のことなんかをずっと考えていた。絨毯に水をかけてきれいにして、びしゃびしゃのままの絨毯を4人で抱えて教団のようなところまで持っていき、家族が揃ったので写真を撮った。家族がいなくなったら、守られて生きているというたしかな安心がなくなってしまうのだな、と悲しい気持ちになった。友人がテスト勉強をしていて、わたしとその子では受験時期が違うのだけれど一緒に勉強している。調べたい漢字がなかなか検索しても出てこず、母に聞くと、母も思い出せなくて笑ってしまう。グッズがたくさん並んだ部屋を見て、階段を登り切ったところで幼馴染の祖父がいて、耳の遠い人だからちょっと大きめに声をかけたら祖父ではなくお父さんで、私の声におどろいて胸を押さえて苦しみだして、わたしは幼馴染が来るまで何もできなかった。泣きながら友人に謝ると、大丈夫、あんたのせいじゃないよ、と笑ってくれたが泣くのをやめられなかった。
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orikou · 16 days
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4/14
窓のない真っ白な校舎の階段を集団で降りていたら寮に向かう途中だった仲のいい男の子(体格のいい、眼鏡をかけた子)にグータッチを求められてそれに応じる、そのままぐるぐると降りていって広いトイレのほうにくると、足元に転々となにか小さなものが落ちていて、毛虫のようだと思っていたらそれはお菓子だった。クラスメイトのおとなしい女の子がひとりひとりに配っているようで、「これがもらえるところ、行く?物々交換なの。渡すものはなんでもいいんだけど」と誘われて、ちょうどいいものがあるかなとロッカーを確認して、降りていくと地下にあるハンバーガーショップでH先生が食事をしていた。地下は薄暗くてハンバーガーショップの看板のネオンライトがぼんやり光っていた。昼を食べているだけにも関わらず、秘書になにか言いつけているのが内容もわからないままに嫌だなあと思った。
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orikou · 28 days
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4/2
廃墟みたいなショッピングモールがあって、中央にあるエスカレーターをのぼるとそこに大きなくじびきの自動販売機があり、10年前のアニメの景品なんかが入っている。天井が高い。友人たちと仕事の話なんかしていたら帰りに熱が出て大量の薬をさげて家に帰る。家の前で母に会ってその薬は誰の?ときかれ、自分のだと答える。玄関扉の前でうずくまっていたらタイミングよく父が扉を開けてくれてそのままのろのろとベッドに這いずり込む。いま家には4人の人間が住んでいるのにベッドがふたつしかない。うちひとつは妹がすでに使っている。この熱も妹からうつったものかもしれないなと思いながら枕に額を押し当てる。これから仕事があるのだった。いつもと同じように話をしようとしても呂律が回らなくて話している途中でしゃがみこんでしまった。でもなんだかもうぜんぶどうでもいいようななげやりな気持ちで、昔の友人が社内メールをチェックするのをぼんやり見ていた。
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orikou · 2 months
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3/11
式典に出るための準備を整えて正装をしていたのだけれど、時間になっても始まらないので不思議に思い、なかには空を見つめる人もいた。大きな女神が両手で耳を塞いでいるのが見えて、わたしはとうとう主人公がやってきたのだな、と思う、女神の姿はそのまま見えなくなり、きちんとした身なりの私たちだけが残された。駅や神社を総出で回ったけれど女神の姿はどこにもなく、宙ぶらりんな気持ちのまま、とりあえず昼飯を食べに行こうか、となったのだった。作業工程を見直したおかげで賞味期限が伸びたというパン屋さんを通る。私は桃色の羽織に袴といった格好で、気に入っていた。黒いコルセットにいろいろな装飾をつけている女の子を見て、私も成人式の時につけた髪飾りを装飾に使ってもよかったなと話していた。
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orikou · 2 months
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3/4
空港の中のレストランで知人たちと食事をしている。大きな窓からはかすんだ薄水色の空が見えていて春の視界だと思う、そろそろ食事を終えておしゃべりに興じる人が増えてきたのでわたしはあたりに散らばっているかんぬきやピックを回収する、両手の指の中にちいさな凶器をつぎつぎ集めていく作業がなんだかものすごくて、親指の付け根のところに当たっていた刃がちょっとだけ皮膚を傷つけて痛みも感じていた。
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orikou · 2 months
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2/17
夜の庭で先生と話している。きびしくて口の荒い女性の数学の先生なのだが、こんなふうに誘われる時は、とても機嫌が良かったりするから、それほど怖くはないのだった。「試験に英作文あっただろ、無記入で出すなんてお前、阿保のすることだ。何も思いつかなかったのか。せめて問題文を訳すくらいのことはしろよ」「そこまで頭が回ってなかったです」なんだかそれは他人事みたいに愉快な会話で、そんな話をしていたら先生は別の先生に呼び止められていた。先生の視界からわたしが外れた瞬間、膝の力が抜けてうずくまってしまう。もう誰も見つけてくれないなと思いながら、立ち上がる力が戻ってくるのを待つ。目の粗い白い砂で庭はできていて、思い切って裸足になると細かな痛みが足裏に快かった。崩れやすい丘を登ると人工的に道を作っているのが照らされて見える、そのあたりをぼんやり歩いていたら塾の先生がわたしを見ていて、「きみは寂しそうに歩くねえ」と言った。「そう見えますか。」「うん。昔からそうだ。変わらないものだね」それは詩のことばだったのでわたしはとてもうれしく、にこにこと穏やかに言う先生の様子も相変わらずだった。煉瓦の道はたくさんの男の人が総出でつくっていて、見ながらわたしは土塊のようなものを喉の奥から吐き出していた。いまつくっている��の道の一部はわたしの吐瀉物でできるのだな、と思ってなんだか申し訳ない気持ちになった。
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orikou · 3 months
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2/14
久しくなかったのに、いじめが始まった。リズム天国の音に合わせて作業を片付けていたら、こういうちょっとした、どうでもいい嫌がらせが続くのが苦痛だったなと思い出してくる。誰が味方かわからないあの感じ、でもそれはみんなそうかも、と思えてくる、わたしのすがたは人気者の男の子だったり私自身だったりしている。わたしのすがたのときは、男の子がみんなを盛り上げている時、率先して笑ったりしている。
ポケモンパンを作っている会社のうちとてもおいしいところは2社あると母に教えられ、とても精巧な砂糖菓子がたくさん入っているものを食べた。ドーナツは母と半分こしたが、妹がいないうちに袋を開けることをためらっていて、わたしはばれるわけないのになあと思っていた。赤白帽をかぶった漫画の猿にあせをかかせる作業をパソコンでおこなっている。身分証明書にはペンギンの名前と生まれが書いていた。
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orikou · 3 months
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1/30
朝、友人の家で目覚める。友人の姿は見えなくて、とっくに仕事に行っていた。外は小雨が降っていて友人は雨の中出かけたのだなと思う、小さな平屋でちゃぶだいがぽつりと置かれていて、ふかい器に私の分の味噌汁が入っていたが朝から食べる気がどうしても起きなかった。そこにいた痕跡をできるだけ消すようにして逃げるように自宅に帰る。帰って二度寝をしていたら母が叔母を連れて部屋に入ってきた。仕事を辞めてせいせいしたと言っていた。
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orikou · 3 months
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1月24日
世界中から突然人が消えてわたしは同級生とふたりきりになった。高速道路を歩いていて見える街はこれでもかというくらい都市灯りがびかびかで、空を見あげると星もいちめんにかがやいていて、太陽も月も同時に光っている、そうしてにんげんはわれわれの他誰もいない、異様な光景だった。「わたしたち置いていかれちゃったのかな、みんなすっかり移動してしまったのかな」先をゆく同級生は背中しか見えず、ため息のような途方に暮れた相槌が返ってくるばかり、それでもブレザーを着た背中が頼れる存在に見えるのだった(それしか頼れるものがないのだった)。こんな最大火力みたいないきおいで使われる電力も、食料もどのくらいもつのだろう。それともこれが死後の世界なのだろうかと思う、それなら顔の見えない彼のような存在がいることを幸福に思った、わたしは今や彼が自分の作り出した都合のいい幻覚かもしれないと疑いをもっているけれど、きっとそんな想像力をもてずに孤独な死者になる人も、きっといるだろうと思ったからだ。わたしたちはもともと人のいなさそうな路地に入る。
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orikou · 4 months
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1/12
水上バスのような乗り物に乗っている。午後の、拡散してまるくなった光があたりに満ちていて、次の停留所に着くまでに何かが起こると言うのが信じられない気持ちだった。となりの男の子は体が弱かったので、なんともないか聞いてみたら、とくになにも、と答えた後、しばらくして「やっぱりちょっと」とよたよた前方に移動して行った、そのときだった、ゴミ箱から赤黒い牙のようなものが飛び出して男の子を飲み込んであたりが血に塗れたのだった。呆然とするわたしたちだったけれど、助かった命もあって、まだ臍の緒がつながったままの子猫が命を取り留めていた。外から見える景色と中の景色は違っていたようで、わたしの乗った乗用車が他の車にぶつかったらしい、外を見ると大型のどうぶつが血まみれで横たわっていて、その飼い主と思われる(いとこだった)ひとびとがそのいきものを服が汚れるのも気にせず抱いていて、とんでもないことをわたしたち家族はしてしまったのだと思った、顔に触れると左目に大きなこぶができている。
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orikou · 4 months
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12/27
ひどい寝不足なので、一限の体育は欠席し、保健室で過ごそうと思う。お手洗いに行ってから階段を降りて行ったらなにやら高い天井から水漏れしている。最近壁紙を張り替えたばかりなのにな。家を出る。友人たちふたりがゲームの準備をしていた。あとの取り付けだけ私の作業。壁にテレビを貼り付ける時、雨を避けてお菓子を買いに行く。たくさんのなかからひとつを選ぶのは苦手だ。妹とおなじ弾力のあるグミを選ぶ。受付の人にいえば祖父の遺言書をきれいに清書してくれる。
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orikou · 4 months
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12/21
一緒に眠るなんてもう何度もしているのに背中合わせになろうとしたら「くっつくのはやめて」と冗談混じりに拒否されてしまって軽くショックを受ける、「寒くてさ」とこちらも冗談めかして返すしかない。ショッピングにいくあいだも、相手の顔色ばかり窺ってしまったが、とくに変わった様子はないようだった(寒がっていることを証明するように、半袖を着る必要なんてなかったのだ)。Rの目で世界を見ている。この修学旅行はとにかく天候が最悪で、雨宿りのために空を見ていたら雷のながれを辿ることができたし大きな落下物や土砂崩れがおちてくるのを見て避難を呼びかけたりした、この旅行は中止すべきでは?と思っていて実際に意見もしてみたけれど、どうなることやらと思っている。なにか覚悟が必要かもしれないと思う。
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orikou · 4 months
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12/20
古本の回収所に本を持っていくと、「うわ!赤丸だ!」と本についた印を指して言われる。「赤丸は買取できないんですよ。古くて、図書館にも回せない」「だったらこのまま資源ごみに回します。お手数かけてすみません」「こんな時間にごみを持ってくるなんて。でもまあ時間内なだけましか」わたしはたくさんの本をすでに何度かに分けて持ってきているのだけれど、その人はちくちくと嫌味を言ってくる。言うたびにこちらの顔色が変わっていないか探るような間があるので、淡々と作業をしていた。赤丸のついていない本(ビジュアルブックだった)を手渡し待合スペースへ移る。わたしたちのバスはたぶんもう来ているが何本か逃している、隣の家の息子さんが遅刻しているからだ。さがん(茶山と書くらしい)から出発して明石までいくのにどのくらいかかるかM先生たちが計算していて、宿泊所を変えようかなんて話しているからそんな大ごとかと訝しむ。到着が、数時間遅れるだけだろうに。待合室は退屈で見るものもなくて、東京のHさんが作ったといわれる紙のオブジェのあざやかな青色だけ記憶している。
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orikou · 6 months
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11/12
深海の電灯がつかなくなり、私たち海の生きものは帰宅困難になったため、しばらくはかわるがわるで番をしようという話になっていたのだった。なかには自分で光ることのできる生き物もいたので、そういう子たちであたりを照らしながら、ほそぼそと夜を過ごしている。すると、いつのまにか電気がついている。誰もそのことに気づいていなかった。番をしていた2匹のいきものは、その必要がなくなったから家に帰ることになり、あとは砂に埋まる生き物たちに任せることにしてさよならする。砂に埋まる生き物は、いつから自分が砂に埋まっているか、もう思い出せなくなっている(もともとふたつの生き物が寄生関係になりひとつになるとそういうことがおこるのだ)。たまに人間が訪れる時があるから、そういうときは大人しくしている。美しい生き物を目の当たりにする時は幸せな気持ちになるけれど、ぶよのような生き物が通過する時はあたりが暗くなり嫌な匂いがするから、赤いもやが立ちこめるところまで浮遊していった時は、わたしは眠るようにしていた。
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orikou · 6 months
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10/27
当たった座席はA列の12番だったけれど会場の配置を見るといちばん前というよりむしろ後方の端っこのようだった。というのもステージとトークコーナーで場所が分かれているからで、タイミングによっては演者を間近で見れそうだ。目の前にやってきた演者が「足を崩していいですよ」とはにかみ、さすが、きれいな顔だなあとぼんやり見ている。場面転換のたびに十数分待たされるのには辟易した。諦めて外の空気を吸いにいくといつのまにか曲が始まっていたりする。花道の方に歩いてきた演者をじっと見つめていると、ふと立ち止まり、うなずいたように見えた。
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