Tumgik
nahofunatsu · 6 years
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短歌
怒鳴り合いお前が悪いと叫び合い あなたの袖の毛玉に目がいく
右の子もその前の子の右の子も机にキッス 火曜二限目
「誕生日おめでと」君にメールする年に一度の春の夜です
くねくねのトビウオだったお前もさ 上司の前じゃ顔を澄まして
まっさらな短冊見つめマッキーペン手にし固まるわがままな僕
夕刻のニュース番組睨みつけ「無罪!」と騒ぐお前に恋
夜の川 みずはとろとろ流れても水面の月はにじむだけだね
大好きなオレンジジュースの端っこの「無果汁」の文字 何も見てない
今日もまたきみの寝息が最高のラブソングだよ 電話越しでも
夢の中ピンクに濡れた嘴で貴方の睫毛をそっと弾きたい
ごっそりと取れた小鼻の角栓に気味の悪さと愛が芽生える
師走の夜 思わず「あっ…」と漏れる声 自販機の缶コーヒーうりきれ
「窓あけな!外はいい風吹いてるよ」クーラー嫌いな祖母の口癖
居酒屋で頼んだラムネの裏側はまるであの日のシーグラスだわ
前もって用意していた言い訳を上目遣いであなたにぶつける
真上から仏に殴り潰されたような見た目の廃棄車両ら
ラーメン・餃子の声に魅了され入った店で喰らうレバニラ
愛らしいビーグル二匹 引き連れる愛らしい娘を連れるばーちゃん
退屈な横断歩道の向かい側 赤信号の下に元カレ
自民党演説してる傍で 二十歳のわたし 唇に紅
無人駅前のわたしを照らすのは君の育った街のお日様
四つん這い揺れる黒髪セミロング 今宵窓際乱れた毛布
スライドでロック解除を撫でてから青い小鳥をそっと潰した
ガタンゴトこちらの電車最終です うつむき寝るバカ雪崩れ込むバカ
心から「君に出会えてよかった」と笑うあなたに会えてよかった
「君がいなきゃ僕は死ぬほど寂しいよ」「そう言うあなたを見るのが淋しい」 #tanka
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nahofunatsu · 6 years
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短歌 生き物
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nahofunatsu · 6 years
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短歌 2017 冬
11月はじめの手帳レジに置く 初雪ふぶく師走の本屋
着床もしてないはずの子宮からくるしんでいる子の声がした
喫煙席ふたつ隣のカップルが数学Aのドリル広げる
お布団を眉の上まで乗せている わたしの横はさむそうな彼
酢の物が食べたいなんて三陸のワカメ見つめて立ち止まる冬
夜更けすぎ雨が過ぎゆく仙台の光の粒はきっと消えずに
シチューにはやっぱライスが合うわねと微笑むきみと選ぶジャガイモ
アイスコーヒーがホットに変わるときわたしの中で冬がはじまる
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nahofunatsu · 7 years
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蛇目
洋一と、籍を入れずに八年が経った。 広瀬通りから錦町公園を抜けてずっと真っ直ぐ歩いた路地にある大山豆腐店の向かいが私と洋一の暮らす六畳半のアパートだ。木造二階建てで築年数は五七年と少し古いが、私たちが此処に越してくる少し前にリフォームが施されていたため内装は綺麗で、住み心地も悪くない。家賃は四万九千円、それに管理費が千五百円と、光熱費水道代を合わせて月々ざっと六万ちょっとだ。二人で割れば一人当たり三万円ほど。夕飯の買い物に困らないこと、エアコンが備え付けられていること、ユニットバスではないこと、トイレの蓋が勢いよく倒れないことが私たちの部屋選びの条件だった。 彼と出会ったのは今から十年前、お互いが大学三年生の夏休みだった。「お前は我が儘すぎてついていけない」と当時の恋人に振られて傷心していた私はとにかく誰かと話していたくて、普段なら断るはずの飲み会に急遽参加することになった。酔っ払いのサラリーマンや、顔を赤くした茶髪の女子大生が騒ぎ立てる民衆居酒屋の六人掛けテーブルの端の席に私は腰をかけた。同じテーブルの女の子達が顔を赤くしてケラケラと笑っている様子を見て、今日に限って伸びたバイトの残業を憎らしく思った。そんな私の向かいの席には仏頂面でハイボールを飲み続けている猫背で蛇みたいな眼をした男。遅れて来た私が渾身の苦笑いで繰り出した精一杯の自己紹介にもまるで反応がない。ああ、こんなことならやっぱり来なければよかった。どうにでもなれという一心で、私は運ばれてきた生ビールを一気に身体へ流し込んだ。この傷心中の我が儘女と、仏頂面のハイボール男がその後の私たちだ。 「今から買い物して帰ります。お米一合炊いておいてね」洋一にいつもの業務連絡を済ませ、書類の散乱したデスクを片付ける。残業決定の上司が放つ嫌味のヴェールをくぐり抜け、私は早足でそさくさとエレベーターに乗り込んだ。昨夜の雨でアスファルトに撒き散らされた水溜りを上手に避けながら疲れ足でアパートの階段を懸命に上り、財布から鍵を取り出して玄関の鍵を開ける。履き慣れた黒のハイヒールを脱ぎ捨てて「ただいまあ」と声をかけると、部屋の奥から洋一のおかえりが返ってきた。横目で冷蔵庫の上に置かれた炊飯器をチェックする。よし。 「お米ありがとう」 「ああ、うん」 こくりと頷く洋一はいつもの定位置に腰掛け、猫背を壁にぺたりとくっつけてお気に入りの黒いストラトキャスターのエレキギターでランディ・ローズのDeeを弾いていた。 「好きだね、本当に」 「この曲はこう、簡単なようでたまに難しいフレーズを挟んでくるから」 昨日近所のスーパーで値引きされていたもやしと豚ひき肉、それに大山豆腐店の特製木綿豆腐をフライパンでシャーシャー炒める音と、黒のエレキギターから時折聞こえてくる澄み切った心地の良いハーモニクスが滑らかに絡まり合う。今日の夕飯はいつものように「何でもいい」と言われたので、洋一が好きだという麻婆豆腐を作った。 「そういえばね、去年一緒に会津に旅行しに行った祐奈ちゃんと日野君、結婚するって」 「へえ、そうなんだ、すごい」 三十歳になった私と洋一にとって、結婚のふた文字は周りから頻繁に押し付けられる厄介な言葉であった。 「洋一君からまだプロポーズされてないの?若くないんだから、早く結婚しないと子育てが大変だよ」 学生時代の友人と食事に出かける度、まるで「結婚しない男女は悪だ」と言わんばかりにせっせと責め立てられる。私はプロポーズをしてこない洋一に腹を立てたことはないし、子供が欲しいとも思わない。それに、籍を入れることが家族になる唯一の手段だとも思っていない。洋一と私は同じ部屋に住み生活を、人生を共にしてきた。私たちは家族だ。洋一はいつだか、俺は大人になりたくない、と言っていた。人一倍に優柔不断な彼の心は、どうしても社会に追いつけないらしい。 食卓についてテレビのチャンネルを回していると、毎週タレントと専門家が様々なテーマに基づいて議論を重ねる番組が目にとまった。コチュジャンを多めに入れた熱々の麻婆豆腐をかっ喰らいながら画面を見つめていると、婚活について熱弁を繰り広げる女タレントのキンキン声やベッタリと塗り重ねられたアイメイクが癪に障ったので、ぷっつりとテレビの電源を落とした。 「ビールまだ冷蔵庫にあるよね?」 「ああ、ついでにハイボールも取って」 社会から外れた六畳半の広い世界で、私達は今日も乾杯をした。
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nahofunatsu · 7 years
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回文短歌 SS
昼下がり 穢れた”憂”が見切る夜 君が言う「誰?」陰りが去る日 僕の恋人は、消える記憶と戦っている。 湿気でくもった窓の反対でジージーと蝉が騒ぐ。六畳一間のくたびれた布団の上、疲れ切った様子でわずかに身体を揺らして寝息をたてている彼女。前回は四日間、今回は三日間一睡もしていなかったのだという。彼女の記憶は、眠りから覚める度に少しずつ消えていく。「あなたのことだけは絶対に忘れたくない」と真剣な眼差しで話す彼女に僕は恋をした。彼女を好きな気持ちに偽りはない。しかしそれでも、ある日彼女がどこか知らない世界にのみ込まれてしまうのではないかと、時折僕自身が憂鬱に壊されそうになる。 考えることをやめ、スースーと寝息をたてている線の細い身体を布団の右側に寄せる。そっとその横に潜り込む。互いの肌が、絡む。そのとき、高く短い悲鳴があがった。叫んだ彼女はものすごい形相で、横にいた僕を跳ね除けた。 「あなた、誰」 ああ、ついにか。 夏の日差しが燦々と降り注ぐ僕の部屋で、怯えた声を漏らす下着姿の女の目は、目の前の男に対する恐怖に埋め尽くされていた。 昼下がり 穢れた”憂”が見切る夜 君が言う「誰?」陰りが去る日
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nahofunatsu · 7 years
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nahofunatsu · 7 years
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短歌
怒鳴り合いお前が悪いと叫び合い あなたの袖の毛玉に目がいく
右の子もその前の子の右の子も机にキッス 火曜二限目
「誕生日おめでと」君にメールする年に一度の春の夜です
くねくねのトビウオだったお前もさ 上司の前じゃ顔を澄まして
まっさらな短冊見つめマッキーペン手にし固まるわがままな僕
夕刻のニュース番組睨みつけ「無罪!」と騒ぐお前に恋
夜の川 みずはとろとろ流れても水面の月はにじむだけだね
大好きなオレンジジュースの端っこの「無果汁」の文字 何も見てない
今日もまたきみの寝息が最高のラブソングだよ 電話越しでも
夢の中ピンクに濡れた嘴で貴方の睫毛をそっと弾きたい
ごっそりと取れた小鼻の角栓に気味の悪さと愛が芽生える
師走の夜 思わず「あっ…」と漏れる声 自販機の缶コーヒーうりきれ
「窓あけな!外はいい風吹いてるよ」クーラー嫌いな祖母の口癖
居酒屋で頼んだラムネの裏側はまるであの日のシーグラスだわ
前もって用意していた言い訳を上目遣いであなたにぶつける
真上から仏に殴り潰されたような見た目の廃棄車両ら
ラーメン・餃子の声に魅了され入った店で喰らうレバニラ
愛らしいビーグル二匹 引き連れる愛らしい娘を連れるばーちゃん
退屈な横断歩道の向かい側 赤信号の下に元カレ
自民党演説してる傍で 二十歳のわたし 唇に紅
無人駅前のわたしを照らすのは君の育った街のお日様
四つん這い揺れる黒髪セミロング 今宵窓際乱れた毛布
スライドでロック解除を撫でてから青い小鳥をそっと潰した
ガタンゴトこちらの電車最終です うつむき寝るバカ雪崩れ込むバカ
心から「君に出会えてよかった」と笑うあなたに会えてよかった
「君がいなきゃ僕は死ぬほど寂しいよ」「そう言うあなたを見るのが淋しい」 #tanka
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nahofunatsu · 8 years
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photo by ono
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nahofunatsu · 8 years
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くじらの背中
くじらの背中のったまま 
ぷかぷか浮かぶあおいろの海
くじらの背中のったまま 
おてんとさまをココにスケッチ
くじらの背中のったまま 
「いまなんじなの」「そりゃあいまくじ」
くじらの背中のったまま 
柵の中にははいらないでね
くじらの背中のったまま 
真白の靴を泥に沈めた
くじらの背中のったまま 
タバコくわえておじさんごっこ
くじらの背中のったまま 
おかめ納豆からしは抜きで
くじらの背中のったまま 
きみの手の甲めがけてキッス
くじらの背中のったまま、夏
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nahofunatsu · 8 years
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nahofunatsu · 8 years
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エスカレーターとドキドキ
「エスカレーターとドキドキ」
深く暗い青に染められた18時過ぎの空に浮かぶ大きな黄色い看板が、一際映える仙台市内の某ショッピングビル。
上方の階にあるテナントで、昨日食べきってしまった”レーズンをホワイトチョコで包んだアレ”をいくつかまとめ買いした私は「あんた今日夜ご飯いんの?連絡くらいちゃんとしろよ」という母(42)からの攻撃的なメッセージに適当なスタンプで応戦しつつ、駅へ向かう出口のある二階を目指していた。
四階から三階へと下るエスカレーターで、それは起こった。
奥へと動く階段に足をかけ、ふと目線を上げると手前にはカップル。たぶんあれは、大学三年生くらい。一つの段に二人で並んで乗るなんてことはせず、きちんとエスカレーターの左側に段を分けて乗っている。 「おいおいお二人さん、二人ともキャメル色のコートにスキニーパンツって、恥ずかしいくらいに服装被ってるぞ」なんて意地の悪い考え事をしていたら、おもむろに彼女の一つ上の段に立った彼氏が、優しく、彼女の肩を揉んだ。
後方で思わずグッと息をのんだ。
彼女は「やめてよ」なんて、くすぐったそうにしつつも、肩に添えられた彼の手を柔らかく包む。
思わずグッと、息をのむ。
はっ!しまった!やられた!と我に返ったが、エスカレーターの折り返し地点でチラリとカップルの顔を確認して、安心する。なんだ、あの程度か。 ん、あの程度に、私は思わず息をのみ、羨ましがってしまったのか。
悔しい。
2016.1.22
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