Tumgik
karoyakachan · 9 months
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#387
ゆびさきのきれいなひとにふれられて名前をなくす花びらがある/笹井博之
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karoyakachan · 9 months
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#386
さあ私たちは崩れましょう 月の海を走りつかれたジープのように/笹井博之
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karoyakachan · 9 months
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#385
カーテンの隙間にどうしようもなく青があふれてのち長い午後/佐藤弓生
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karoyakachan · 9 months
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#384
僕たちは月より細く光りつつ死ぬ、と誰かが呟く真昼/黒瀬珂瀾
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karoyakachan · 9 months
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#383
十九歳から二十歳になるときが一番絶��的で 甘美で 真珠の中には それよりも大きな水蜜桃がかくされています/「冬のレストラン」清岡卓行
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karoyakachan · 9 months
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#382
そうして 痺れ果てた そのひとのやわらかい石膏の肌に わたしの爪深く 祈りの言葉を刻ませよ こいびとよ 永遠に冷酷なれ/「唯美」清岡卓行
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karoyakachan · 9 months
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#381
風に運ばれながらぼくの心は歌っていた --もう 愛してしまった と。 それは今日までつづいている きみもどうやら 自分の 名前が思い出せないのだ。/「思い出してはいけない」清岡卓行
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karoyakachan · 9 months
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#380
砂糖がけの菓子を食べてはいけません夜の輪郭が緩くなるから/大辻隆弘
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karoyakachan · 9 months
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#379
ひかえめにそっといのるような 遠くからそっと いのるような 愛し方をしたいと思う 目の前のあなたを/銀色夏生
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karoyakachan · 9 months
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#378
本当は分かってる 2度と戻らない美しい日にいると そして静かに心は離れていくと/小沢健二
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karoyakachan · 9 months
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#377
濡れたまま重ね合う胸あおい花のどにこぼれるまでを愛した/東直子
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karoyakachan · 9 months
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#376
地下鉄に季節がふいに目をさます「春は前駅を出ました」/杉崎恒夫 『パン屋のパンセ』
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karoyakachan · 9 months
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#375
彼女はここへやって来る、ここへ。みじんこや魚やとかげの形をとおりぬけて、ひとの形に生まれて。百日ぜきと、やけどと幾つもの忘れてしまいたいことをとおりぬけて/片山令子「生きている時間」
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karoyakachan · 9 months
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#374
すうっとするためだけになめたあめだまのように生きていきそう こわいよ。/今橋愛
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karoyakachan · 9 months
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#373
あの人はもう想い出だけど 君を遠くで見つめている/銀河鉄道999
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karoyakachan · 9 months
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#372
夢で、ルドは少女だった。白い砂浜に座っていた。その膝に頭を乗せたサバルが、海を見ながらあおむけに寝転がっていた。二人は過去のこと、未来のことを話していた。思い出を語り合っていた。二人の笑い声は、眠たげな朝に輝く鳥たちのように、空気を震わせた。それから、サバルが立ち上がった。「日が昇ったよ、ルド。行こうか」そして、二人で光の方角へ向かい、歩き出した。笑いながら、話しながら、これから船に乗る人たちのように/P267
『忘却についての一般論』ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ 木下眞穂訳
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karoyakachan · 9 months
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#371
「これ以上、ご自分を苦しめないでください。過ちがわたしたちを正すのです。忘れることが必要なのかもしれません。忘れることを、わたしたちは練習しなければ」
ジェレミ明日は苛立たしげに首を振った。さらに一言、二言、ノートに書いてからそれを息子に渡した。
「父は忘れたくないのです。忘却は死と同じだと、父は言っています。忘れることは降伏することだと」老人はさらに書いた。「父は、自分たちの一族についてぼくから話すようにと言っています。みなさんに牛のことを話せ、と。ぼくたちの財産は牛ですが、売り買いするための財産ではありません。ぼくたちは牛を眺めるのです。みんな、牛の啼き声を聞くのが好きなのです」
ムクバル族とともに過ごしているうちに、別人にではなく、別の人々に、別の民族に、ジェレミアスは生まれ変わっていたのだった。かつての糧は、その他大勢のなかの一人だった。他者との関係など、せいぜい腕を組む程度のものであった。砂漠のなかで、彼は生まれて初めて自分はすべての一部なのだと感じたのだ。ただ一匹の蜂、一匹の蟻がその個体の動く巣房だと主張する生物学者がいるが、真の有機体とは、ひとつの蜂の巣であり、蟻の巣なのである。ムクバル族の人間とて、他者がいなくては存在しえない。アントニオが一所懸命に読み上げている間、ルドは、フェルナンド・ペソーアの詩を解説する父の言葉を思い出した。
星たちは気の毒だ/大昔から輝いて/大昔から……/星たちは気の毒だ/疲れはないのか/事物には/万物には/脚や腕に感じるような/存在することの疲れ/あることの疲れ/ただ、あることの疲れ/輝くことや微笑むことへの悲しみ……/結局は、ないのだろうか/万物にとって/死ではなく/違う種の終わりは/あるいは崇高な論拠は/--たとえてみれば/赦しのような? /P251
『忘却についての一般論』ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ 木下眞穂訳
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