Tumgik
efwpo · 2 years
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Baby Face
「…盧笙ってええパパさんなりそうやなァ」 「あ?そうか?」 「やって知らん子がジッと見てたからて、旗あげる?」 「いや、俺別にプリンアラモードに乗っとる旗、集める趣味ないねん」 「でも見知らん子にやで」 「いや店置いて帰るだけやし喜んでもらえるなら有効活用やん。…お前ほんま子供嫌いやなぁ」 「いやいや俺老若男女誰にでも愛されるぬるさらやで、……そん時来たら盧笙のガキとやってちゃんとなかよしになるわ」 「……。」 「え、何?」 「…じゃあ、言うけど」 「う、ウン」 「俺が知ってる教師もやってた親はな、あんまええ親ちゃうかったで。まぁ、やから俺もええ親なれへんのちゃう」 「ど、どしたん」 「……。」 「え、あ、なにその、怒ってらっしゃる…?」 「別にぃ」 「そ、その拗ね顔一枚、撮ってええですか…?」 「空気読め」 「……うー…まぁ、じゃあ…俺も言うけど、法律でも神さんの前でも永遠の愛誓った夫婦は俺の物心ついた頃はもう既に仲悪かった…な?」 「……」 「そ、そのしょんぼり顔も一枚…」 「…じゃあ、」 「ハイ」 「ちょうどええんちゃう」 「…なんで予測してボイレコ用意せんかったんやろ俺」 「そーやって茶化すのはよくないと思うで俺」 「やってオーサカ人やもん。」 「それは、まぁ確かに」 「やろ、楽しくやろ」 「せやな」
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efwpo · 2 years
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光呼吸
やっと全てが終わり、タクシーに乗り込み、運転手に行き先を告げてから、満を持してスマートフォン、通話ボタンをタップした。
「終わったで、お待たせ」 『…オオ、』
イヤホンの向こう、聞こえる声は低い。
それもそうである、0時はとうに回っている。本来なら電話の相手、簓の愛しい愛しい太陽、盧笙は寝ている時間である。しかし通話を望んだのは盧笙だった。〝ラジオ終わったら電話してこい〟と、レギュラー深夜の生放送のラジオをお送りしていた簓のスマホにそれは届いた。CM中にそれに驚いてスマホを落としてしまったのはご愛嬌。え、何、どうしたん、いい、直接電話で伝える、とりあえずじゃあちゃっちゃと終わらせるわ、あほが仕事ちゃんとやれ、と数回メールリレーをしているうちにラジオは終わった。
そして今。
『西口さんから連絡来てん』 「…西口サン」
て、誰やっけ?と思い簓はメモ帳アプリを開いた。ここに盧笙の口から出た生徒の名前を全てメモしている。西口サン、西口サン…あ、俺のラジオのヘビーリスナーちゃんね。あーなるほど合点承知の助。全て理解。うんやろうね、あの発言ね、いやぁ、ストレートにスグ届いて嬉しいなぁ、おおきにね、西口サン。あと学生ちゃんやのにリアタイ勢なんやね、聴取率もまいどおおきに、と簓は思った。
「盧笙は寝てたん?」 『寝てた』 「先生を起こすなんて西口サンも罪な子やね〜」 『それは注意したわ、流石に明日学校やろって、タイムフリーあるやろ、リアタイはアカンて。』 「いやぁ、俺としては聴取率ありがとぉ、って、西口サンに特別にこんど番組ステッカーとボールペンあげたいレベルやわ、」 『〝メールちょいちょい送ってるのに読まれへんねん〟とは言うてたけどな…、…いや、ちゃうねん、俺が言いたいのはそれちゃうねん』 「あーはいはい、」
簓はスッ、とイヤホンを改めてしっかり耳に入れ直した。
『〝今日は月食やねぇ、ゲッ、ショック〜〜なんちて、まあ俺は太陽がそばにおるんで月食とか関係ないですわ、じゃあここで曲いきましょか〟…やないねん』 「完コピやん…感動したわ俺」 『西口さんが文字起こししてくれたからなァ、今それ読み上げたわ』 「追っかけ再生は?」 『したわアホ、今しがた全部聞き終わったわ』 「ろしょ〜〜〜〜」
簓は嬉しそうに、それでも、しっかりバックミラーを見た。最近はタクシーの運転手も安心できないご時世なので。しかし運転手は乗客に興味なさそうだった。結構お年を召した方。ひょっとしたら簓のことなど知らないのかもしれない。それは大変結構。まぁ、声のボリュームは下げるけども、だって、今から簓は愛を囁くのだから。
『太陽って誰なんや、ってSNSで夜中やのに今えらい話題になっとるで、』 「そうなん。盧笙のことやで」 『…ちゃいますが』 「?盧笙やで?」 『ちゃう』 「俺の太陽は盧笙やで」
一回目はさも当然のように。二回目は天然、あどけなく。三回目はイケボ、カッコめな声で。簓は盧笙の名前を答えた。
『俺はディビジョンラップバトル出場するとはいえ、一般人やねん』 「そんなことは一切関係ないねん」 『ハァ?』 「盧笙は俺の太陽やねん、一生ずっと」
簓がその言葉を噛みしめるように吐き出すと同時にタクシーが高層ビルが立ち並ぶ通りを抜けた。簓はタクシーに乗った時から、窓をずっと見上げていた。やっと見えた、月食。月がうすらぼんやり変な形。まぁ、そんな事簓にとってどうでも良いことだ。
『眠いからかなァ、さっきから一切話が見えへんわ』 「あと15分でそっちに着くからちゃーんと丁寧に話すな」 『ハァ!?』 簓はケラケラと笑った。 「盧笙」 簓は盧笙の名前を呼びながら、じっと耳をすませる。足音とガチャリと戸締まり、チェーンロックの音。 『…なんや。今チェーンロック掛けたわ』 「盧笙の家な、玄関ドアの横、消火器入れとる赤いやつあるやん?」 『ア?あるな?…なんや急に…』 「そこにチェーンロック切れるペンチ隠しとるから掛けても無駄やで」 『アア!?』 簓はまたケラケラ笑った。 「退去料掛かるなぁ、」 そう言うと、ぷつん、と電話が切れた。 一分後着信、 「あった?」 『嘘つきよって!こんボケが!』 「もいっこ嘘ついててんやけど俺、」 簓は肩と耳でスマホを挟みながらタクシー運転手に財布から取り出した一万円札を渡した。タクシーの窓から盧笙が見えた。やって高速でエエんでなる早でお願いしますわァって運ちゃんに最初に言うたもん、と簓は心の中で思った。
「ヌルデってあるやん」
簓の向かいに座っている盧笙は不機嫌そうだ。そんな顔も好きやなぁ、と簓はその顔を見て思う。
「ア?」 「ヌルデ、俺の名字、や、なくて、ヌルデって植物があんねん」 「あ、ああ、それは知っとる…昔出た番組で紹介された覚えあるわ」 「植物って太陽の光受けて、光合成するやろ」 「あ?まぁな…?」 簓の突拍子のない言葉に盧笙は今度不思議そうな顔をした。真剣にどんな話も聞いてくれるそんな顔もやっぱり好きやなぁ、と簓はその顔を見て思う。 「盧笙はな俺の中であの日喫茶店で話した時から太陽やねん、ヌルデの俺は光合成するねん、それで酸素発生や、で、俺はその酸素吸って生きるから、そういうことやねん。盧笙おらんと俺は酸欠で死んでしまうなぁ。はい説明終わり」 簓は一気にそう言い切ると、立ち上がった。そのまま遠慮なく盧笙のタンスを開ける。部屋着は一番下の段。 「は?は?」 「盧笙は太陽、俺はヌルデ。まぁ、ヌルデが光合成するか知らんけど〜」 そこはまぁ、オオサカ人のご愛嬌ということでよろしゅうまいどおおきに、と言いながら簓はお気に入りのスエット上下を取り出した。
酸素を吸って生きていくために。
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efwpo · 2 years
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アブラカタブラ
最後の念押しに、と、でもばかりに盧笙はビニール袋越しに醤油と生姜と酒に漬けていた鶏肉をぎゅ、と握った。 そしてそのまま、そっとシンクの上に置き、キッチンバサミでビニール袋を切りボウルに中身をどばぁと出す。そのボウルの隣には片栗粉が入ったボウル。 何しとるんや俺は、と改めて盧笙は思った。
盧笙は一人暮らしの成人男性である。職業は教師。 なので別に料理人ではない。また料理が趣味という訳でもない。 盧笙は普段、栄養と金銭の問題で自炊をしているというだけで、それも割と簡単な物ばかり。揚げ物、──例えば今から作る予定の唐揚げとか──は、食べたくなったらスーパーかどこかで買えば良いと思ってた。自分で作るとか、油はねとか凄そうやし、なんや、怖いし。 なのに、簓、が数日前に『ツマミにはやっぱ揚げたての唐揚げがたまらんね、で、ビール、ベタやけど、』とテレビを見ながら言ったから。その言葉がなんだか妙に盧笙の頭に残ったから。それでまた、タイミング良く簓がそれを言った日の翌日(この日は簓は来なかった)に盧笙がぼおっとテレビを見ていたら、〝名店直伝!自宅で作れる最強簡単唐揚げレシピ〟が流れたから(盧笙は思わずそれを目にした瞬間、HDレコーダーのリモコンを取り録画ボタンを押した)、で、更にネットで検索したら〝フライパンでも出来る〟って出てきたから。だから、昨日盧笙はスーパーと百均で必要な物を買い込んで、タネは今朝出勤前に仕込んで、で、今。 ちなみに簓にはこの事、この一連の事について、一切連絡していない。 盧笙は今日初めて〝揚げ物〟というものにトライするのだ。失敗する可能性も大いにある。串カツ屋の自分で揚げるタイプのアレとはまたきっと勝手が違うのだろうし、 ──いや、違うねん。 これは知的好奇心やねん、と盧笙は、自分の中でまた何度目かの言い訳をする。あのアホがいつも俺が適当に作った料理を美味そうに食うから。巻き方失敗してぐちゃぐちゃになった卵焼きも、一玉25円のうどんで作っためんつゆ味の肉うどんも、野菜室と冷凍室に残ってたものをただ塩コショウで炒めた野菜炒めも、なんでも、嬉しそうに食べるから。 やから、好きなツマミ、急に、出してやったら、どうなる、ん、かな、って、思た、だけ!
盧笙の言い訳の圧が強すぎて、菜箸で握っていた鶏肉が飛んでいった。 …やってアイツ、豚玉食べたい!て、よ〜〜〜俺にリクエストしてくるし。 こないだなんて、『出た番組でな、取り上げられてて、便利やなぁ思て』て、なんかごっつええスライサーとでっかいキャベツ用ピーラー持って来たし(そして当たり前のようにそれらを盧笙の家に簓は置いていった)。
「はぁ…」 と盧笙は声に出して溜息を吐いた。 用意していた鶏肉をすべて片栗粉にまぶし尽くしてしまった。
フライパンにサラダ油をどぽどぽと注ぐ。あー、エラい油の量。正直、怖い。怖いものは怖い。ラップバトルなんかとはまた違う怖さ。怖い。火事になったらどないしたらええんや、火消そうとして油に水を入れたらあかんのだけはわかる。なんで俺、唐揚げ、揚げ物なんてしよ、なんて思ったんやろ…アホや…、内心最大にビビりながら盧笙はコンロの火を点けた。すかさず菜箸をフライパンに入れる。…箸全体から泡が出てきたら、揚げる。箸全体から泡が出てきたら、揚げる。箸全体から泡が出てきたら、揚げる。箸全体から泡が出てきたら、 「出てきた…」 ………絶対バチバチバチバチ!バチバチバチバチ!って、くる。 すぅ、はぁ、と盧笙は深呼吸をした。そして覚悟を決めフライパンから菜箸を出し片栗粉塗れの鶏肉を掴む。そして、肉を投────
────ガチャ、
「え。」 盧笙は思わず玄関を見た。玄関ドアの鍵が右に回る。 ジュワジュワジュワジュワジュワジュワと音がするのに、いや、音がするからこそ、動けない。揚げ物の最中に鍋の前から離れるとかテレビなんかでよー紹介される火事原因やん。走って慌てて鍵を左に戻して、チェーンロックを掛けたりなんかしたら絶対フライパンがエラいことになってまう。そんなことで、もし火事起こしたらどんな顔で次の避難訓練の日に生徒を誘導したらエエんや、と、盧笙の頭の中は大パニック。
だが非情なり、普通に鍵は周り、ドアは開き 「ただいまぁ〜〜〜!」 と簓が不法侵入。
一周周り、盧笙は急に冷静になった。 『俺の頭脳をもってすれば、簓が来れへん日絶対割り出せたよな、なんでせえへんかったんやろうな、深夜の生放送のラジオの時間以外にも絶対簓が夜に家来れへん週の曜日とか法則性、多分あるはずやねん…』と後悔しながら諦めの境地になり、菜箸で掴み続けていた鶏肉を油の中に解き放った。そしてひょいひょいと次の鶏肉を一個ずつ油の中に投入していく。
「盧笙揚げ物とかするんや〜」 「……黙れアホ」 「来て早々いきなり罵倒された〜〜〜!!」 「これ全部揚げ終わるまで俺に近づいてみ、家、火事なる、フリちゃうぞ、マジやからな」 「え、串カツ屋と」 「あれはフライヤーやろ!!!!」 「え、盧笙もしや、めっちゃビビっとる?」 「ビビるに決まってるやろ!揚げもんやぞ!!!!こっち初めてやるんやぞ!!!!」 「そ、そうなん、どしたん急に」 「お前がッ!ボケッ!死ねッ!」 「え?え?待って、意味分からん、俺?俺のせい?何?俺何か言うた?」 「知らん!」
テーブルの上にはバットに入った揚げたての唐揚げとご飯とインスタントの味噌汁。あとビール。唐揚げが揚げたてな事以外は至って普通の一人暮らしの成人男性のメニューである。
「俺もな、」 「……おん」 「近づくな言われたから実況して笑わせたろ思たけど、あまりにも盧笙が真面目やったから、思わず固唾を飲んで玄関から見守ってしもたわ…」 「それで正解や」 「改めて思うねんけど…」 「なんや」 「串カツ屋で自分で揚げる時あるやん…」 「あれはフライヤーやろが!」 「差がよう分からん…」 「い、いただきます…」 盧笙は手を合わせて、そしてバットの中の唐揚げを一つ箸で摘んだ。中の肉が生だと怖いので、どれも若干色が濃い目。ちゃんとスマホのタイマーで時間も計ってしっかりと揚げたけれども、カンピロバクター…… 「中が」 「ウン、」 「赤かったら即ペッ、するんやで」 「分かった…」 盧笙につられて目の前の簓も思わず真顔になった。 簓はずっと、盧笙の家に来た瞬間からなんやろ今日、と思っていた。だがよく分からないなりに簓はただただ盧笙のことを死ぬほど愛しているので別に盧笙が元気ならばなんでもよかった。 「はい、いただきます…」 「イタダキマス…」 ほぼ同時につまんだ唐揚げを口に含んだ。熱かった。でも…うっま、と盧笙は思った。咀嚼しながら半分口にした肉の断面を見る。しっかり白色。多分、多分、大丈夫。ごくんと口の中のものを飲み込み、残りの肉を口に放り込みながら、缶ビールのプルタブを開く。 飲む。 最高。
「あーーーーー!」 やりきった、と盧笙は思わず、左手を床に付けて後ろに重心を掛けた。内心そのまま寝転んで天に向かってガッツポーズでもキメたい気分だ。やりきった。 「…よう分からんけど」 「なんや」 「盧笙が楽しそうでなにより」 「…なんも楽しなかった」 「そうなん!?」 「もう二度とやらん、揚げもんなんて。今度からやっぱ店で買う。心臓に悪い」 「大げさすぎへん?こんなに美味しいのになぁ、」 簓は楽しそうに笑って、箸で摘んだ唐揚げに軽くチューしてから、あむ、と齧った。 「うま、」 「あっそ…」 「……あー、やっぱ、揚げたての唐揚げとビール、最高やね」 「アッソ、」 「〝アゲアゲの唐揚げ〟」 「つまんな…」 盧笙はその場に座り直し、二個目を食べるべく箸を取った。
「…てか、この唐揚げさん揚げてた時『お前が!』って盧笙、言うてたけどアレ何やったん?」 「やっぱ全体的に揚げすぎやな…ちょっと苦いとこあるわ…」 「ろしょー」 「あ、お茶切れた、湯沸かしてくるわ」 「盧笙〜」
ささろワンドロライ #112「舌鼓」
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efwpo · 2 years
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ハレルヤ
頭が割れそうに痛く、目が霞んできた。ロキソニン3錠一気、最早それも効かず、逆にそれの副作用かなんなのか、胃がずっとキリキリ、またそれも痛くて、さっきも吐いた。何を食べても腹を下すので、結局もう出てくるのは胃液だけだ。眠気は無い。多分寝てる場合ではないと身体で分かってるからだろう。目の前、タスクの山・山・山。判断も曖昧になってきて、結局一時間調べた事がぱぁになったりなんかもして、泣きたいけれど、泣いたところで仕事は減らない。指先で感じるPCのキーボードが熱くてその温度が気持ち悪い。ブォオと鳴るPCのファンの音がうるさいから違う音でかき消したかったが、音楽も動画サイトからの音もラジオの音も思考回路に干渉してくるので結局無音。ただ真夜中部屋の中、キーボードとマウスのカチャカチャとした音だけが鼓膜を揺さぶる。 本日何徹目?分からない。自宅で作業しているだけマシ?違う、残業時間がエグくて上層部?ナントカ局?から注意が入ったから、締切はそのままでPCを持たされ自宅に帰されているだけ、月末だから、いや違う残業時間が既定値越えたら自宅で仕事するようにと命じられ、退勤させられ持ち帰り仕事。この数ヶ月は繁忙期で毎日、毎日。 コレが終わったら、アレまとめて、あの資料のリサーチ。終わらない、終わらない、きっと、明日も眠れない、休日なんてない、営業車の中か社内のどこかで1〜2時間寝る、それだけが、俺の、休日。 きっと俺はそのうち死ぬんだろうなと、思う。 嫌だなぁ、と思う。
だって、
などと、ぼおっと考えていたまま手と目を動かしていたら、ガチャリと遠くで音がした。 理由が帰ってきた。 目を擦って、そのまま目の前のモニターを見つめる。白い画面が目に痛い。ずっと、それでもカタカタカタカタ、カタカタカタカタ、カタカタカタカタ、カチャッ、 「起きてた」 「…起きてる」 「今日で何徹目だっけ」 「分からん」 「分からんか〜」 と、いつもより小さく、穏やかな声で一二三が、そのまま、近づいてくる。 ので、俺もほんの少し身体を後ろに引く。するといつも通り俺の膝に小さなクッションを乗せてその上に一二三が頭を乗っけてくる。 一二三から香る、無香料タイプの消臭剤の香り。流石シンジュクナンバーワン。配慮は人一倍。 一二三はそのまま黙ってスマホを取り出し、目の端で緑色、アプリの起動画面が目に入る。モニター右下の時間を見る。あー…、俺なんかほっといて子猫ちゃんとアフターなりなんなり、そもそも寝ればいいのにこの馬鹿、と思いながら結局この体温に助けられている。心配されても止まるわけにはいかないから、いつも、こうなる。こいつと俺との間で謝るのも最早馬鹿らしくなるぐらい付き合いは長く、地獄も修羅場も馬鹿みたいに乗り越えてきていたから、案の定、結局何も言わないままで救われている。多分お互いに(自惚れるのも今更な付き合いだ)。
「……終わらん…もう、死にたい…」 「え、いーよ?何死にする?何必要?今ポチったら明日の昼には届くんじゃね?ニコイチ。オソロっちで。」 事も無げに一二三はそう言う。 「…一体いつになったらお前は倫理を覚えるんだ」 お、いい文献見つけた。そそくさと、一文をコピーして、白い画面に戻り、貼り付ける。 「独歩より重要な内容だと覚える〜、え、ずっと言ってんじゃん、独歩死んだら俺っちは即追っかけるよ」 「なんて脅しだ」 「22から決めてる〜、だから、23、……まぁ、18ん時も、もっといえば10歳の頃からそーな気がする」 「愛が重い」 「普通の愛って俺っちよくわかんない…」 「シンジュクナンバーワンの地位今直ぐどっかに返せ」 「見返りも、期待も、何にも相手に求めないまま相手をただただずっと好きなのが本物の愛だと伊弉冉ひふみん的には思う。」 「それ子猫ちゃん達にも言ってこい」 「んー…あ、でもこれ、言い回し変えたら逆にイケる気がする、いやイケるイケる、逆に。」 「無理じゃないか?今言われても俺、お前に〝モエシャン入れちゃお♪〟とすら思わなかった」 「独歩に入れられても…。あと独歩は俺っちに何か入れるなら、リシャールぐらい入れても良いとおも〜、俺っちの家事労働への日頃の感謝として。」 「殺すぞ。」 「殺して。」 手を止めてじ、と下を見ればしっかり一二三と目が合った。数秒見つめ合って、またそのままモニターに戻す。 ブー、とかすかな音がまたタイミングよく鳴ったので、一二三も視界の端でスマホをいじりだす。 「…俺っち達が小学生の時に、いや、別に小学生の時じゃなくって最近とかでもだけど」 「うん」 「なんか超超超有名な歌手が死んだじゃん」 「説明が雑すぎる」 「でも、未だに、TVとかつけたらCMとかでその人の曲は流れんじゃん」 「TV久しく見てない」 「そーね、ここ数ヶ月日曜日も一緒にいれないね」 「休みたいんだよ俺だって」 「別に責めてない、寂しいとも思ってない」 「寂しいとは思え」 「思っていいの?じゃあ、寂しい、どこにも行かないでずっとそばに居て、俺っちのラップアビリティ悪用してずっと独歩のこと家に監禁してていい?」 「そこまで言ってない」 「話ズレちゃった。まあ、だから、観音坂独歩も伊弉冉一二三も、えむしーどっぽもえむしーじごろもここで別に死んでもいいと思う。なんにもかわんないって。てか、今頭上とかで飛んでる飛行機がなんかのミスでこのマンションに落ちてきたらどうすんの?」 「話が飛躍しすぎだ」 「ニュアンスで理解して」 「説明を放棄するなシンジュクナンバーワン」 「独歩の前では10歳のまんま」 「19もサバよむな」 「好きなだけなんだもん、しょうがねーじゃん」 「その謎キレ告白やめろ」 「ついでにキレちゃお。例えば独歩が明日どっかの女と運命の出会いをしても俺っちは別にいいよ、結婚でもなんでもして。で、男の俺っちの家事のほうが完璧だったって奥さんに言って嫌われて。俺っちは横でずっと勝手に独歩のこと好きなだけだし一生。そのスタンスは変わんないから。」 「ついでで暴露するレベルの内容じゃない」 「むしろ旦那さんとかパパの顔してる独歩ってこんな感じか〜って観察内容が増える。」 「カマキリか何かか俺は」 「生きててくれたらそれでいーよ、一方死んだらこっちも即死ぬからそのつもりでヨロ」 「お前は前を向いててくれ頼むから」 「独歩が本格的に後ろ向いたらまあ俺っちもしっかり後ろ向くよね。ちゃんと皆の前で演技はするけどね。俺っち恋するメンヘラちゃんだから大好きな人のマネしたいもん。独歩はそうじゃないけどねー、さ〜みっしっ。」 コントロール+Sで保存。そのままファイルを閉じる。完成。タスク一個、終了。 「あー……ここで2人死んだら先生に怒られる…」 「先生生き死に問題だけは厳しいもんね〜」 「先生を悪く言うな」 「そおいうつもりじゃないけど」 不意にぎゅっと、一二三が腹にしがみついてきた。そのまま顔をこすり付けてくる。 「くすぐったい、汚い」 「全然汚くないし、汚れたとしても洗うの俺っちだからいくね?」 「確かに、もう、い、今日、寝るかな…」 「お!朝ごはんリクエストある?」 「鮭粥…」 「おっけ、ちゃんと鮭買ってる、何時に起きるの」 「6時」 「りょ!」 膝から、重みと体温が消えた。 「高級、なんかいい卵買ってるから楽しみにしてて」 「うん」 そのまま一二三は立ち上がって、俺のデスクの前を横切る。その前にその手を掴んでやった。 「めずらし」 と一二三が笑う。 「いつか、…この給料でラスソン勝ち取ってやる」 「いーらない!」 「…今のは我ながら格好良い口説き文句だったと思うが、振るか普通」 「いや、んー…ラスソンなんかより日曜休日もぎ取って。てか、ソッチのほうが絶対楽っしょ?俺っち的にもそっちの方が百倍嬉しいし」 「あと、お前が死んだら俺も死ぬ…」 「俺っちが死んだら即結婚そーだんじょ?とか行ってお嫁さんもらいなね…」 「このネガティブバカ」 「初めてゆわれたそんな罵倒…」 掴んでいた手を少し手を伸ばしてぎゅ、っと握りしめてやった。 「お前が死んだら、俺も即追っかけて死ぬ」 「…死んでみろ馬鹿」 「初めてお前に真面目に馬鹿ってゆわれた」 「いやそれはないっしょ、何回か言ってる、多分、どっかで、」 「覚えてない、」 「じゃあ今日のこの会話も全部忘れるよーに!」 「やだ」 「何そのわがままちゃん、」 「可愛いだろ?」 「うん。」 する、と一二三の手が離れて行った。 「とりあえず独歩は寝た、寝た!あと3時間半?その間にご飯作っとくから」 「イツモスマナイネー」 「ソレハイワナイヤクソクデショー…じゃあ、おやすみ」 「おやすみ。」 そう言って一二三は部屋から出ていった。そのままぼふっ、と後ろのベットにもたれる。
目がさめたら身体に毛布が二枚掛けられ、頭の下にクッション。もたれて即寝落ちしたらしい。 ドアの向こうから米が炊けるいい匂いが漂ってきていた。
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efwpo · 2 years
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ハピネス
『あんな、盧笙家おる?』 土曜日、11時、盧笙が家でぼぉっとテレビを眺めながら、なんとなく若干ややこしい数学の数式を書いていれば携帯が震え、着信。簓からだった。 「…おるけど、」 『あ。ほんま。俺な、なんか急にロケが向こう?の事情でなくなって、』 盧笙はチラ、と自宅の玄関の扉を見た。換気のためにリビングのドアは開けっ放しだったのでストレートに見える。ガチャッと鍵が開く音。開くドア。 「だから、来た」 「連絡すんならもっと早よ言い、」 耳に当てたスマホと窓の外から聞こえる救急車のサイレンの音がシンクロしていた。 盧笙は握っていたペンを手放した。
「今日のロケ割と長丁場の予定やってん、やけど向こうの施設?の都合で無理なってな、折角現場行ったんやけど、なくなた」 「なくなたん、」 「なくなた、別日差し替え。やから今日はもうオフや」 「おー、良かったやん。で、家来たと。」 「第二の自、いやメインの自宅やからここ…」 「初めて聞いたわ、許可した覚えもない」 そう言いながら盧笙は立ち上がってキッチンに向かう。ジャー、と電気ケトルに水道水を入れ、台にセットする。ケトルに注いだ水の量はマグカップ約2杯分ほど。 ア、こうやって俺も甘やかしとるから簓調子乗んのかな、と盧笙は思ったが時既に遅し。もうカチリとスイッチをONにしていた。ええわ、なんやったら2杯、自分で飲むわ、とよく分からない開き直りをしている間に湯はあっという間に沸いた。そのまま流れるように盧笙は茶をいれた。 そして、リビングにまた戻りテーブルにマグカップ2つ置けば片方をさっさと簓は掴ん��。やっぱアレや、甘やかしすぎとるかもしれん、と盧笙はまた思ったが、さも当たり前の様子でマグの持ち手を握りながらもう片方の手で人の家のHDレコーダーのリモコンを操作している簓に盧笙はもうなんでもエエわアホらしい、と思った。
「で、来て何なん、」 「いやノープラン、何も。ロショセン、今日の予定は?」 そう言いながら簓は盧笙が録画していた番組の一つを選び、決定ボタンを押す。途端部屋中にカメラを通したタイプの簓の元気な声が響き渡った。 「特に無いことも、無いけど」 「ソレは?」 簓は手にしたリモコンで盧笙が先程まで使っていたノートを指す。 「再来週頭にやる小テストの問題作ってた、」 「つまり暇?」 「…暇…」 なんとなくストレートに簓を良い気分にさせるのは癪。盧笙は簓から目を反らしてマグカップを両手でソッ、と持った。 「こおゆう時」 「おん」 「よっしゃデートしょ!チャヤマチに新しく出来たオシャレなパンケーキ食べに行こ!で、そのままぶらぶら歩いて夜はシンチでディナーや!………て、言えばモテるんやろか、盧笙に。」 「…それ言われて俺が『ワァ〜!素敵!』って言うとでも思てんのか」 「思わんし俺は盧笙が作った昼飯と夕飯とツマミ食べたいなぁ、思てます〜〜〜〜」 「あぁ?あー…」 その言葉を聞いて盧笙はぼんやり、冷蔵庫の中を思い出す。冷凍室のご飯、卵、あと玉ねぎ、ミンチ… 「じゃあ昼飯、チャーハンな、で、夕飯前にスーパー行くか、」 「付いてく〜〜〜!」 そう言った簓の声は上機嫌だ。テレビから流れる声よりも、どこか、遥かに。何か。あー、でもあれや、俺が甘やかしとるからかこれも。あれや、悔し、でも嬉…?いや嬉…?いや、うん、なんやっけ、なんやったこの気持ち、既視感、あのあれ、あれや、足立くんが貸してくれた漫画に出てきた、あ、えっと、ツンデレ…?いや俺、26の男やねんけど………──と、盧笙がぐるぐる考えごとをしているとテーブルの下、盧笙の向かいに座っている簓がツンツンと足先で正座している盧笙の膝先に触れた。 「…」 黙って盧笙が顔を上げると目の前の憎たらしい面、簓はニコー、と楽しそうに笑って、それでいてテーブルの下で右足で盧笙の膝を叩いたり、撫でたりと遊び始めた。 「ア?なんや」 「暇。盧笙黙ったから。あとアレ、なし崩しワンチャンセックスチャンストライ中」 「チャーハン作るからせんわ」 「じゃあ食べたら…、あ、皿と風呂は洗うわ俺」 「スーパー行くからせんわ」 「いやまァええけどね別に…」 「心折れんの早、」 「自分俺に甘すぎへん」 「それは…俺もずっと考えとった、…アカンな、アカンわ。これからは厳しく行こ思う」 「え、もっと逆目指そや、ささちゃんをデロデロに甘やかすんや」 「デロデロってどこまでや」 「膝枕、で、耳かき、とか?」 「そういう店行け、ニホンバシとかにあるやろ」 「最終的に赤ちゃんプレイまでやってみよ、」 「ヘルス行け」 「……待って、言うてみたものの、赤ちゃんプレイが通じたことも盧笙の口からヘルスって言葉が出たってことも簓さん的にショックすぎる、は?無理やねんけど」 トン、とやや強めに簓は盧笙の膝頭を蹴った。 盧笙ははぁ、とため息を吐きながら、あー、と目を伏せる。 「…言わなアカンことあんねんけど」 「は、絶対聞きたない、嫌。」 「俺、■■■■さんのラジオのヘビーリスナーやで」 「想定の500倍マシな内容やった、…いや、…いや…?500ちゃうわ250、や、130、え、アレ…?」 「数値はっきりせえ、数学教師の前やぞ」 「言うて、盧笙シュールギャグ好きやもんな、どっちかと言えばヒガシ寄りの…、一方俺はコッテコテのニシの漫才師、…でもきっと笑いのツボも愛で乗り越えれる…!」 「愛で乗り越えられる内容かそれ、あとお前のラジオもちゃんと聞い、」 あ。盧笙は途中で口をつぐんだ。あ、ほんとに、なんや甘やかし過ぎや。どうしたんや俺は、今日、浮かれすぎ、いや別に今日だけちゃうわ、なんやろ、なんやろな… 「それは知っとる。」 「知っとるんかい」 「いや普通に俺がラジオで言うた事、説明なくても話通じてる時あるし」 「あー、じゃあええわ、聞くの辞めよ。西口さんがお前のラジオのリスナーやから来週から西口さんに聞くわ」 「まどろっこしない逆に?」 「お前、西口さんが言うてたけど、心配されたで俺…、『センセ個人情報毎週ちょっとずつ出されすぎやない?』て。あ、あと、なんや、匂わせ?えっと…『ウチ新たな扉?開いてしまうからやめて』って西口さんから伝言?や、お前に。」 「ヘトヘトに毎日仕事しまくって、で、そっからお送りする深夜のラジオなんてそんなもんやろ。」 「プロ意識持て」 「西口サン、俺らの実情知ったらたまげるやろな…」 「ア?」 「えーのえーの。お前は分からんで。あ、おわた」 簓がそう言うので、盧笙がぱっとテレビを見れば、確かに簓の言う通り先程簓が再生していた番組が終わった。 「30分番組やったはずやのになぁ、…ほんまアレ、盧笙といると時間、一瞬。こわ、」 「いやお前、話しながら適当にリモコン操作してたからやろ」 「盧笙とおる時が最高の暇つぶしやわ、俺」 「え、暇つぶしの相手なん俺」 「え、拗ねんといて!盧笙は俺の最愛の人やで!」 「何そのきしょい言い回し…」 そう言いながら盧笙は、近くにあるスマホをタップして時刻を確認した。11:24、…確かに、まァ、簓と話しとったら時間の進み、早い気がする、と、ぼんやり思った。こんなくだらない話をしているうちに今日もあっという間に終わってしまう気がする。ま、ええけど。……うーん、俺やっぱ簓に甘ない? テーブルに手をついて盧笙は立ち上がった。 「チャーハン作る」 「手伝う〜」 「玉ねぎ皮剥いて」 「了解です、隊長!」 …ま、ええけど。と盧笙は思った。思いながらツマミ用に買ってた魚肉ソーセージもチャーハンの具にしたろ、とも思った。
──────────────────── ささろワンドロライ #112「暇潰し」
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efwpo · 2 years
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ポップミュージック論
「簓って普段どういう曲聞いとるん?」 「え、あー…俺?」 「なんか、なんや気になって。俺、生徒の皆から色々勧められとるから流行りのJーPOP、アニソンからボカロやろ、V系も詳しいで、演歌ぐらいちゃう?分からんの。」 「はへぇ〜…、流石LINEの通知が常に50件越えとるロショセンやなぁ。」 「いやあれは大概クラスのグループチャットや」 「いや、ロショセン担任持ってへんやろ」 「皆、学科担当の俺も混ぜてくれて…ええ子や…」 「…音楽なー……、…実は、俺、邦楽嫌いやねん、」 「え、そうなん」 「めちゃくちゃ流行っとるやつとかは番組とかで出てくるから一応軽く聞くけどな?でも、盧笙に解散切り出された日からな、すべての失恋ソングが俺かな?って思ってしまうようなって、もおそっから邦楽全般聞かんくなった。『この曲……俺か…俺や…俺やな…どうしてこんなことなって…盧笙……ウッザ俺…』て思て…しんどくて…」 「それは確かにウザ…引いたわ…」 「スパッっと遠慮のない盧笙、ブレへんで好き…」 「じゃあ、なんや、お前。普段音楽とか聞かんのか?」 「いや、えーご、ヒップホップ、聞くで、」 「え!そうなん、だからお前妙に英語の発音エエんか!」 「正直、言うとな」 「?」 「銃声のSEが入ってなくて、ワンバース内にFUCKが五回入ってへん曲はラップやないって思てる」 「…ウソやろ、…少なくともお前、リーダーやろ、それ絶対言ったらアカンやつやろ、待て待て今までそんな片鱗見せたことないやろお前!」 「盧笙知っとる?〝マザーファッカー〟と〝笑いたいなあ〟で韻踏めるんやで」 「よう分からんけどなんや重ッ…!」 「あ…。盧笙ってジェイソン・ステイサムって知っとる?」 「アッ!?ああ…ハリウッド、海外の俳優さんやなぁ…?」 「ソイツがな、ワイスピって映画の7で一人で病院を壊滅させるシーンあんねん、そん時BGMに掛かる曲好きやで。ラップ。怠い仕事の前とかそれ聞きながら、セットとか全部バキバキに潰したろかて思てる〜」 「朗らかに笑顔で言うことちゃう…ストレス明らか溜まっとるやん…」 「でも、最近盧笙とな、またこうやって隣におれるようなって、邦楽聞けるようなってん俺…。」 「いや、ええムード出されても直前の暴露の衝撃で俺まだそっち行けへんわ…」 「俺あれ好き〜、〝恋のつぼみ〟」 「…お前はなんでカラオケ行くたびに俺にあれ歌わせようと画策するんや」 「盧笙に合法的に『めちゃくちゃ好きやっちゅーねん』って言わすのソレしかないねん…」 「合…逆に違法があんのか」 「違法マイク」 「ほんまに違法やん…」 「てか、そもそも」 「…おん、」 「基本盧笙の曲しか聞かへんし、こないだのラジオとやっぱ俺とコンビ来んでた頃のラジオの盧笙の部分しか聞かへんかな…、で、合間にそのな『Payback』とか…」 「簓……お前一回、GReeeeNとか聞いたほうがええんちゃうか…?ベタやけどキセキとか、あといきものがかりとか…」 「ろっ、盧笙が、俺の想像通りの盧笙や…!!!!!!」 「えっ、なんで泣き出すん、どうなっとるんやお前の情緒…」
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efwpo · 2 years
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ルミナス
「…ほんま、どうしてええか分からんことがあって、」 「…マジな顔やな、」 「おお、大マジ、今回はちゃんと、しっかり、マジ」 「何」 「週刊誌の記者が俺に寄ってきてな、アレやって、零、…中王区の人間らしい、て」 「…。」 「それ、さっきのことでまぁ、取り繕って、またまた〜ってマイクチラつかせて引かしたんやけど、…どないしょ…」 「そいつ、週刊誌のやつはまぁ、置いといて、どないしょって何も…、…今俺らが二人でここで考えたとこで…、」 「……掛ける?」 「おん…」 「…………オイ、零か?あんな、単刀直入に聞くわ、お前中王区の人間なん……ア?商売的に有利?」 「!ッ…!ポイな…!!」 「OK、大丈夫や、ロショセンOK出た!分かったそういう理、ア?来やんでええわ来んな、ア?おい、おい」
「まァ〜あれだ、白膠木簓んとこに直接行ったそいつも馬鹿だなぁ、ま、俺の耳に入った以上チョチョイのチョイの刑だわ」 「そんな事はどうでもええねん。」 「…なんだよ」 「お前が中王区の人間やったらなんで俺ら2nd準決負けてん、手回せや」 「おま……ンー…ぶっちゃけていいか?」 「むしろぶっちゃける回や今日は。」 「俺にそういう権限はねえし、あったとしても、だ、…万が一、億が一盧笙にそれバレてみろ……おいちゃんこの歳で骨折、骨折どころか脱臼もしたくねぇ……、俺の歳考えろ」 「一発で理解した…!!確実に致命傷やなオッサン…!!!!」 「オッサン言うなガキ、…ついでに更にぶっちゃけていいか、」 「エエ。ぶっちゃける回やからな」 「このヒプノシスマイク、割と俺すげえ関わって、作った」 「ハァッ!?じゃあなんで、俺ら負けてん!どっちかのマイクにちょいと小細工で勝、ッタァッ!?」 「…簓…?…………あ、零、餃子焼けたで、ちょっとどけて」 「オウ」 「何の話してたん?」 「…流石盧笙や…片手でこの威力……」 「いやあ、もう〝おいちゃんお疲れ、色々全部ぶっちゃける回〟ってのを今やってんだけどな、」 「あ、そのラー油ドバッって出るから気ぃつけや、で、おん、」 「ヒプノシスマイクって割とおいちゃんが作ったようなもんだぜ、って今この簓君に」 「えっ!ホンマか!えっ、すごいなぁお前…!?そうなんかぁ…零が…………なるほどなぁ…?」 「え、あ、え」 「とりあえず零、餃子一人一列やで、ちょっとコイツに説教するから先食うてて、で、後で話じっくり聞かせてや、ちょう待ってな、……簓、そんなんでお前」 「ハハ。」
「…じゃあなんでお前俺ら狙ってん」 「狙、ってひでえ言い様だな、そりゃあれだ、白膠木簓のラップスキルが天才的だったからだよ。」 「…。」 「あ?なんだお前、ストレートな褒め言葉に弱えのか。ハ、そーかそーか。おいたんがいっぱァい褒めてやるよ、この天才。そうそういねえよお前みたいな天才、普通にラップするだけじゃなくて、漫才も盛り込んで、その漫才もしっかり韻も踏んで、あとアレだ地味にお前、英語の発音も良いしな、あとなんだラップアビリティも…、いやあ〜おいちゃんお前と組めてマジで良かったなーって日々思ってるぜ、この才能の塊ちゃん」 「…。」 「そやねん…。この子ストレートな言葉に実は結構弱くてなァ…。よかったなぁ簓!俺もお前のラップスキル、天才的やと思ってるで!」 「…と、…とりあえる、俺を馬鹿にしてるかられーはしばくとして、」 「噛んでんじゃねーか。」 「じゃあなんで盧笙」 「いや、ま、お前、さっさと、………ハァ、まあいいや、でもな、もしも、もしも、だ。簓。お前もし盧笙とディビジョン組めなかったら、絶対適当に手抜いて、初戦でさっさと負けるつもりだったろ、〝俺の本業はお笑いですわ〜〟、とか言って。」 「簓ァ…、選抜されたんやから何事にもスポーツマンシップ、」 「いや照れろや自分」 「あー……お前らのおつむのネジが外れすぎてて、結局俺ももうここまでぶっちゃけたから、あー…なんだ、言うけどな…………おいちゃんダヨ?」 「「合点承知の助…!」」 「おいちゃんがお前ら守ってやんねえと…。僕ちゃん達馬鹿すぎるゥ…………てか、そもそもだなァ、」 「うん」 「俺はな、確かに中王区と太いパイプがある、認めてやるよ。でもな、別に中王区って訳じゃねえからな。どうみても男だろ俺。…で、そこらへんにいるヤクザともズブズブだ中王区は。ハァ……H歴もその前の政権も、海外でも、歴史を紐解いてもいいぜ?政治、ってなんかそういうモンだろ?」 「えっ、じゃああの左馬刻君も中王区の人間なんか!?」 「!?!?!?」 「いやアレは違ぇ。……てかほんとぶっちゃけていいか、ヤクザの組多すぎ枝分かれしすぎて、そろそろおいちゃん覚えるの限界…ぴえん…」 「イヤマッテドウシテサマトキ、クンヅケ」 「零…やから、ぴえんはもう死語や…」
「乙統女」 『はい』 「うちのチームメンバーにしょうもねえ理由で俺の素性バレちまったけど、うちの子達馬鹿すぎた、なんであんなに馬鹿なんだあいつら…普通に餃子パーティーして終わっちまったんだが…」 『…これは、マウント、でしょうか』 「じゃあお前も連絡取れよ息子に」 『貴方に言われたくないですね』 「俺今何人の子持ちなの…?」 『私に聞かれても…』 「とりあえずテキトーにごまかしたとこもウソも混ぜたけどよ、でも、なんか、…あいつらほんと馬鹿…」 『知りませんが…。』
【未来軸】 「──と、言う訳だから、悪りいな、仲良しごっこ楽しかったぜ、ハッ、悪いおじさんに騙されちゃったなァ、僕ちゃん達」 「…いや自分な、悪役ムーブかましてるとこ悪いんやけど、お前俺らとホンワカパッパーってラップしてるからな」 「自分のパートちゃうのにせんぱー晴天とも呑気に口ずさんでたやんお前ェ…!火ぃ灯してんかベイベぇ…!」 「…もおやだ馬鹿ちゃん達…泣イチャウ…」 「大丈夫や…大丈夫やで零…!、安心し…、俺、俺な、最近生徒から『東リベ』って漫画、借りて読んでな、俺…悟ってん…──やっぱ、この世で一番強いのは拳や。」 「はぁあ…、しゃーないなぁ…、れー、今回だけ特別やで?〝電ノコの簓〟の復活や…!」 「いやマイク使え、マイク。お前らがソレやったらもみ消すのおいちゃん。大変。」 「めっちゃ悪っぽい事言うてる」 「こっわ…」 「いや怖ええのこっち、頼むからマイク使えほんとに」 「え?よう分からんけど俺、昔マイクで相手の精神ぶっ壊してからオフにしたマイクで物理的に相手の頭かち割るのデフォやったんやけど…よー修理出してたなァ昔…」 「そうなん?お前非力やん。お前の握力的にそんなん無理やろ、話盛るな……あ、でも俺も〝来る…!〟って思った瞬間、ラップカマす前に咄嗟に手ェ出て相手倒したことあるわ…ソイツ急にラップしながら飛び出して来てな…」 「ハァッ!?何!?それ俺聞いてへん!いつ、いつや!ソイツぶっ殺すわ。」 「いや、夜中になんや寝れん日があってな、散歩がてらメガドンキ行ったら駐車場で、な……まぁ、大丈夫やで簓、俺、そこらへんのチンピラぐらいやったらだいたい拳で勝てる」 「いや、盧笙、今後夜中は外出禁止や、むしろアレや、一緒に暮らそ、やっぱ、それしかあらへん」 「あの、おいちゃん置いてかないで、あの、恥ずかしいから、てかなんでお前らそんな馬鹿なの」 「「俺ら生まれも育ちもオオサカ」」 「一発で納得しちまったァ…このお馬鹿ちゃん共ォ…」 「てか…お前いつも見逃しとってるけど、お前俺らの事馬鹿馬鹿言うとるけど、〝アホ〟や。ニシの人間にとって〝馬鹿〟は最大の侮辱やからな。ええかげん覚えや。変なイントネーションばっか覚えよって」 「イントネーションもなんかちょっと無理してる感あって一種の棒読みみたいなっててアレやで自分」 「……もうおいちゃん本籍地オオサカにしよっかな…」 「おお!ええんちゃう?家賃安いしな!」 「うちの家賃は高いけどな…」 「タワマン自慢やめえ自分」 「やったらさっさと家引っ越して来いや」 「おいちゃんほったらかしで漫才続けるのやめてぇ……」 「え、普通の会話やけど」 「?何言うとるんや零」 「ヒガシ帰ろ…」 「ア!?お前本籍こっちする言うたりヒガシ帰る言うたりどっちかにせえ!」 「ハァ…らーぶらーぶ、かわいい坊や達…」 「零…きもい…」 「零…きしょい…」 「殺してやろうか。」 「悪や」 「悪だ、言ってんだろうが…」 「オッサンの中二病は流石に教師のこの俺でも…」 「疲れた…」 「しゃーないなぁ、タコパとお好みパと餃子パ、どれがええんや?今日はお前に選ばしたるわ」 「餃子…」 「じゃあキャベツ買って帰ろか」 「ぬるさら明日オフやからニンニク入れて」 「今5時やろ、零お前も餃子包めれるか?ギュギュって折るやつ」 「包める…」 「よっしゃ帰ろ帰ろ」
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efwpo · 2 years
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ダンディダンディドン
※今年のアプリ(ゲーム)のハロウィンイベスト、D.H&B.A.Tコミカライズ、そして前記事?Twitterだと一つ前のリプ?の前日譚を読んで頂かないと分からない内容です。大変お手数ですがそちらを読んでいただいてから宜しくお願い致します。すいません※
23時ジャスト、盧笙のスマホが震えた。見ると簓からの着信だった。予測していたので、そのまま盧笙は通話ボタンをタップする。 『まいどぉ!簓さんやで!』 「ン、」 『よし君寝た?』 「寝たよ」 ちら、と盧笙は視線を近くのベットに移す。預かっていた親戚のよし君がぐっすりと眠っていた。本日ヨコハマ前乗り。今は目的の遊園地近くのホテルに滞在中。ヨコハマの遊園地でハロウィン当日限定に開催される特別な催しにどうしてもよし君が行きたいと言い、それを盧笙の母親が知り、教職に専念するだけでなくディビジョンラップバトルにも出ると決めた盧笙は、あの母親からの��ういったお遣い(いや、命令と言っていい)に対しては、…決して拒めるわけもなく。 よし君、いい子やし、よし君の家族もええ人達やねんけど…、ハロウィン、てか10/31なぁ、なぁ、 ──あの日、宣言通り〝朝ま���飲もか〟と笑った簓には、しこたま飲まされた。 で〝夜電話していい?一番に祝って〟と本日簓より、そうメッセージを貰ったので〝よし君寝たらな、だいたい23時ぐらいからなら〟と返し、それが、今。
『盧笙今どんな部屋泊まってんの?』 「んー?」 盧笙は言われたままカメラを起動し、適当に腕を伸ばして部屋の写真を撮り、そしてそのまま送った。 『狭い部屋ぁ』 「腹立つ」 『今度簓さんが超デラックスでスイートでゴージャスでラグジュアリーなホテルに泊めたる!』 「いらんわ別に」 電話口の簓は元気そうだ。〝元気そう〟。どうなんやろ、本当に元気なんかな、演技なんかな。多分今日はビデオ通話、拒むんやろな、と盧笙は思いながら 「お前、零からのLINE既読スルーやめえ」 と言葉を返した。 『あ?なんで知ってんの』 盧笙はトーク一覧に戻り、零との個別トークを開き 「『簓クン、既読スルーでオジさんぴえん』」 そのまま零が寄越したメッセージを読み上げる。するとイヤホンの向こうからドアッハッハ!と爆笑する簓の声。 『ちょ、ちょ、その、トーク、スクショ、スクショ送って!』 ふ、と盧笙も笑って、簓の言葉に従い送ってやった。件のメッセージ、長押しすると部分的にスクリーンショットが撮れるので本当に便利なアプリやなぁと思う。いっつも色々教えてくれて助かるわ、と盧笙は普段接している生徒達の顔を頭の端で思い出す。 文字で見ると余計面白かったのか、イヤホンの向こうでずっと簓は笑ってる。 「んな笑うなら返したりや」 『嫌』 「お前そう言うてると来るからな、零」 『明日限定でSP雇おかな、』 「ふ、…明日は?」 明日という話題が出たので、盧笙は遠慮なく聞いた。〝仮装して街に繰り出そうや〟とあの日は言っていたが、 『え、めっちゃ仕事。朝からずっと、』 やろなぁ。と。盧笙は思う。なんたってあの白膠木簓、しかもお誕生日という属性付き、出演を希望する番組は多々あるだろうと、だからこそ、あの日、簓は割と早めに10/31の予定を盧笙に聞いてきたのだ。断られる可能性も考えていたのだろう、なにせ頭の回転が異様に早くて計算高い恋人だから。 「夜は?」 『夜?ンー、わからん、知らん』 あ、やっぱ元気やないわこいつ。と盧笙は確信した。いやでもわかりやすいパス。良い傾向。 「あ、そ。明日夜には普通に帰っとるで、シンオオサカに確か…」 『え!あ、えっ、そうなん』 「おお、…0時ちょい前にそっち?に着くよ?メール?短すぎたかな?」 『あ、…ん?なんやっけ、なんやっけソレ、聞いたこと』 「〝おおさからばー〟」 『あ!あれなぁ、ジェットコースター乗ったら流れるやつ』 「そうやっけ、そうなん?」 『いや、知らん。今もそうか、知らん。でも、確か、そう』 「適当やなあ」 『よし君は盧笙と遊園地デート出来てええなぁ、まぁ、俺も明日行くで遊園地、ロケ』 「はぁ、仮装とかすんの」 『知らん』 「お前なぁ…」 『やって仕事なんて、俺の頭脳とお口があればそれで万事解決やん、俺ぬるさらやから』 あ、アカン、もうコイツ完全に元気やないし、スネとるし、荒れとる、酒も飲んどる確実に。盧笙は寄ってしまった自分の眉間をぐりぐりとほぐした。いやでも、無理なものは無理な訳で、言い訳はしたくなかったが盧笙だってちゃんと簓に〝母さん案件〟だと伝えたのだ(それに対して〝親戚〟ってワード出た時点で察してたわと簓は言っていたが。本当に賢いおつむ。)。だから盧笙は〝頼むで〟と零をけしかけた?差し向けた?というのに、既読スルーしよってコイツ。零可哀想やろ。 『とりあえず話しよ、』 「ええよ」
盧笙のスマホが再び震えたのは、23時59分のことだった。 だらだら簓と話すやろな、と予測していたので、0時になる1分前、盧笙は事前にアラームを掛けていたのだ。 「あ」 『何』 「あと1分で0時」 『ああ、ほんま、』 「誕生日プレゼント用意してんねん、俺、ちゃんとお前に」 『え!…あ、冷蔵庫のケーキはもう食べた』 「…お前、やっぱ家で酒盛りしてたな」 『それを見込んで冷蔵庫に入れてくれたんやろ?ケーキ。〝景気づけにケーキづけ〟!』 「…まぁな、でもなんか、…今更か…、でも普通0時越えてから当日に食うもんやろ」 『今日一日なんも食べてなかってん』 「ああ、それは…」 そう言いながら、盧笙はスマホをジッと見つめた。 『盧笙?』 「……5,4,3」 『あ、ウン』 「2,1」 10/31。 「おめでとう」 『うん』 「じゃあ、お誕生日を迎えた白膠木簓君に誕生日プレゼントあげよかー」 『えっ、ケーキ以外にもあった?え、俺くまなく部屋探したで?』 簓の発言に盧笙はあー、と思いながら眉間に指を置く。ぐりぐり。…まぁ、それも分かった上で結局付き合ってるわけやし、と、いや逆にアレやな?俺の考えたこの〝お誕生日プレゼント〟は最適で最高なモンかもしれん、と、盧笙は自分をたたえた。 なにせ形あるものではないので。 「簓、あんな、俺、お前に教えたいことあんねん」 『え?教えたい?伝えたい、やなくて教えたい?え?ロショセンが?俺に?なんやろ…』 「俺な、俺が酔ってる時にお前が俺に向かって言うてること、俺割と覚え──」 ──トゥルン! 「は?」 と思わず盧笙はスマホ画面をまじまじと見つめた。トーク画面には『通話終了』の文字。 「アイツ…」 と呟きながら簓に通話を掛け直す。しかし反応なし。盧笙は今度はアプリではなく、簓の携帯番号に電話を掛けた。しかしやはり出ず。 しょうがないので、またアプリに戻り、メッセージを送る。
〝改めて教えたるわ。お前俺が酔ってる・翌日覚えてないと思って言ってること、俺結構覚えてるし、ちゃんと聞いてるで〟
文字を入力しながら盧笙はにやぁ〜と人の悪そうな笑みを浮かべた。 恋人なのだから、そういう関係になったのだから、なんというか、なんでもポンポン腹割って話すべきやろ、と盧笙は思っていた。てか、お前言うてたやんけ、酔っ払った俺にグスグスくっついて泣きながら〝ほんとは全部聞いて欲しい時、ある〟と。あと布団に寝っ転がりながら〝ちゃんとしたのはいつか、言う〟とも。なんぼでも聞くよ。焼酎もウィスキーも泡盛も、そもそもアルコール無くても。オチがない適当な話でも、つまらん、おもろないとお前が切り捨ててる話でも、なんでも。全部。
盧笙はじっ、とトーク画面を眺め、次いで『おい』や『コラ』やスタンプなども送ってみたが、結局、既読が付いたのは〝誕生日プレゼント〟の一文に対してだけだった。 やれやれ、と思って、盧笙は零とのトーク画面を開いた。
『よぉ』 低い零の声がスマホを通して聞こえてくる。 今盧笙はオオサカ。適当なベンチを見つけたので、そこに座って零の電話を受けることにした。 親戚のよし君は無事、お菓子や遊園地などで購入したお土産をいっぱい抱えて、大はしゃぎのまま、よし君の家の最寄り駅まで来てくれたよし君の両親にお出迎えされてバイバーイと先程別れたばかり。 「すまん、待たせたな」 『いいってことよ、子守りお疲れ、俺。』 「俺、ってお前かい、ア?ん?子守り?」 『これが子守りじゃなかったらなんなんだよ』 「…。」 盧笙は視線を彷徨わせた。ごもっともである。 『いや、まぁ、トークでも送ったが、簓、やっぱあいつ面白えし、プロだな、』 「頼む、とは言うたけどまさかわざわざ遊園地まで行くとは思わんかったわ」 『俺見つけた時の簓の顔…っく…おいちゃん、あの顔があんまりにも面白すぎたもんだから、遊園地の次?か次?のロケ地にも一般客のフリして見に行ってやったわ』 「……待て、なんで行けるねん、遊園地は教えたわ、俺簓から直接行くわって聞いたから、やから教えた、けど、その後、」 『え、俺あいつのスマホにGPS仕込んでるし』 「……。」 なんとなく想像していた通りの答えが返ってきて盧笙は頭を抱えた。うちのチーム二人倫理観が欠落しとる、…今更やけど…。まあ、流石に誰かにそれを売ったり?とか悪用は恐らくせえへんと思うから、ええか…?ええんかな…?俺のスマホも変なん入れられてんのかな、入れられてんのやろな… 『いっやー、アイツ、二回目も最高の顔…っく…でも、プロだなぁ、一瞬で表情切り替えられて、おいちゃんぴえん。』 「零…ぴえんはもう割と死語や」 『えっ、マジかよ。死語になんの早ぇえな、まぁ、いい。あ、で、トークで〝ボケカス去ねや〟って送ってきてな、あいつ』 「さっさら……て、なんや零上機嫌やな?」 『いや俺、猫好きだからよ、たまんねえんだわ』 「猫…?あいつのスピーカーはたしかに猫やけど」 『こっちがよしよしって構うと拒むとことか、それでいてたまに懐いてくるとことか猫そのものじゃねえか。いや〜可愛いなぁ、アイツ』 なんだかいつもより上機嫌というかデレデレ?な零の声を聞きながら、そうか…?と盧笙は訝しむ。盧笙の知っている簓と零の言う簓像が一致しない。 『あいつはお前にとっては犬だな、ワンちゃん、番犬。器用だなぁ簓』 「…そ…そうか?…あ、でも犬っぽいとこはあんなぁ…」 『で、まあ、おいちゃん嬉しかったから、キティちゃんのスタンプでLOVEって送ってやったわ』 「っ…な、何してんねんお前…ッ…」 少しツボってしまい盧笙は慌てて手で口を抑えた。スマホの向こうからは楽しそうな零の笑い声。 『──で、だ』 「お、おお…」 『俺が指示した通りロッカーの中身手に入れたか』 「おお」 盧笙は鞄の中を開く。鞄、内ポケットの中、鍵が一つ。 帰りの新幹線に乗っている時、零からシンオオサカ駅のとあるロッカーの位置を説明したURLと暗証番号を記したメッセージが送られてきた。〝こん中に入ってるモン、受け取れ〟と。なんや怪しい取引みたいやな、と思いながらその指示通りにロッカーを開くと鍵が一つ入っていた。 「これなんの鍵なん」 『簓ん家の鍵』 「えっ…」 盧笙は絶句した。え、やって、あいつ、タワマンやろ…。 盧笙の驚きも楽しんでいるようで、零はご機嫌で言葉を続ける。 『言っとくが、勝手に作ったもんじゃねえぞ、あの、白膠木簓くんから直接貰ったからな』 「えっ!」 思わず盧笙は大きな声を出した。慌ててキョロキョロと周りを見るが、特に誰も盧笙を見ていなかった。というか時間帯のせいか人気がない。良かった、が… 「アイツが…?」 『おう、ソレに対してはドヤァ?優越感感じてえとこだが、割とネガティブな理由で貰った』 「…ネガティブ、」 なんとなく、零の言うてる理由分かる気がする、とぼんやり盧笙は思った。 盧笙が簓の家に行ったことがあるのは零と一緒の時、一回だけ。零が〝お前ん家見てみてえ〟と散々駄々をこねたから。で、お邪魔した簓の自宅はなんというか、綺麗で、整理整頓されていたが、物が少なくガランとしていてなんだか寂しい部屋だった。だから家に入り浸ってくんのかな、と勝手に思ったのを覚えている。 『あ、ソレ貸しだぜ、ちゃんと後で返せよ』 「お…おお」 『欲しいならアイツに直接言って貰え、タワマンのだから勝手に作ると高っけぇぞ』 「だれがアイツみたいなマネするか」 『ハッハ〜…しかしアレだな、何?おいちゃん愛のキューピットすぎねえ?すげえ良いやつじゃねえか』 「す…スマン」 『いやいいぜ、俺は多様性?偏見とかねえからよ。痴情のもつれが原因でチーム解散になったら泣いちまうけどな』 「いや、それは無い。」 きっぱりと盧笙は言い切った。 それを聞いて零はハ、と嬉しそうに笑った。 『まぁ、結婚式には呼んでくれよ、参列者が全員大号泣するスピーチしてやるからよ』 「は?いや、結婚とか、そういうのは今んとこ別に考えてへんのやけど…、いや、そばにはおるつもりやけど、なんや、そういうのは…いまんとこ…、向こう芸能人やし、ディビジョンラップバトルとかもあるし…」 『ア?お前がプロポーズしたから簓クン逃げてんじゃねえの?』 「はぁ?いや?てか、俺がプロポーズ?…あー、まぁ、今日日、変な話やない、けど…」 『あ?じゃあ何言ったんだよお前、流石に解散とか別れ話とかじゃねえだろ?』 「いやいや、せん、今んとこ全く考えてない、言う予定も一切ないわ、あー……秘密の暴露?」 『ふぅん、まあポジティブな内容ならおいちゃんそれでいいわ』 「いつもスマンなぁ…」 『言ってお前ら一線引いてくれるし、こんなおいちゃんを仲間はずれにしてくれねえから、オジチャンハ嬉シイデスヨ』 「なんで急に片言なんねん」 『恥ずかしくて…』 「急にマジになんのやめえ…俺も恥ずいわ…」 盧笙はパタパタと手で顔を扇いだ。さっきからずっと恥ずかしい。見る限り周囲に誰もいないとはいえ、往来で何言うてるんだか。 『ハァ…まぁ、いいや、家は分かるな?アイツ今自宅。まぁ、一応、住所と部屋番号も送っといてやるよ、ホイ、』 一瞬盧笙のスマホが震えた。 「助かる…」 『一階のコンシェルジュにも話通してある、あとはその鍵があればすんなり行ける』 「お前めちゃくちゃ有能やなぁ…」 『おいちゃんだからね。』 「何その言い方…」 そう言いながら盧笙は立ち上がり、駅に向かって歩き出す。 『俺の代わりに簓にハッピーバースデーの歌、歌っといてくれ』 「分かった、てか今度飲もうや」 『いいねえ。』 トゥルン、と通話はいきなり切れた。 零ってええ奴やなぁ、と改めて盧笙は思った。
高級ホテルのラウンジを思わすようなピカピカのエントランスに入り、よく仕組みがわからないまま零の言う通りにとりあえずカウンターに居たコンシェルジュに話をすれば『お伺いしております、躑躅森様、鍵はお持ちでしょうか』と、そしてあれよあれよと、気づけば盧笙は簓の自宅、ドアの前に立っていた。 できる限り音を立てないようにとどこかドキドキしながら、そっと手にしたキーを鍵穴に差し込むとそれはすんなり、ぴったりと入り、右に回せばかちりと開いた。アイツいっつもこんな事しとんのか、なんやもう自宅みたいに勝手に作った合鍵で堂々と入ってくるけど。 ゆっくりと扉を開けば、簓からいつもふんわり香る匂いと、あと煙草の匂いが鼻孔をくすぐった。たたきを見れば乱暴に脱ぎ散らかされた靴。盧笙は静かに靴を脱いで、そのまま歩く。リビングのドアは中途半端に開いていて、TV、誰かの話し声や笑い声、カメラを通したタイプの簓の声も聞こえる。やはり、どこか寂しい部屋やなここ、と盧笙は思った。 できる限り気配を消してリビングに入れば、盧笙の目にまず入ったのはテーブルの上とテーブル周りに置かれた酒、酒、酒の空き瓶。あとゴツい灰皿の中には吸い散らかされた煙草、ライター、散乱するタバコのパッケージ。 当の目当ての人間はソファーに寝っ転がり、背を向けている。ゆるやかに身体が上下しているので、どうやら寝ているみたいだった。 ふ、と盧笙が顔を上げたら、壁にかつての自分と簓、コンビを組んでいた時代の宣材写真が目に入った。ご丁寧にもパネル加工、高級そうな額に入れられて飾られ、…嘘やん、前来た時、こんなんなかったやん、と盧笙は思いながら、申し訳ないような、それでいてどこかくすぐったいような、だけど少し胸を締め付けられるような、複雑な思いに包まれた。
盧笙は持っていた鞄を床に置き、ソファーの背もたれに体重を掛け、グ、と眠りこけている簓の頬に爪を立てた。 「おい、」 それだけで簓は目を覚ました。 「ッ!」 勢いよくガバッと簓が身体を起こす。そしてまじまじと目も見開いて盧笙を見る。 「ろ、…盧笙…」 「一日、既読すらつけんと、アホ」 「え、あ、……零、あ、鍵、かぁ〜…」 簓は自分の顔を手で覆って俯いた。ほんまに頭の回転早いなこいつ、と盧笙は改めて思う。 「か、…帰って、悪いけど…、今日、すま……あ…えっと…〝タクシーで帰宅しぃして〟…?」 「誰が帰るかアホ。あと無理につまらんダジャレも言わんでええねん、おもろないねん、毎度毎度」 「あ、いや、あ、…えっと…」 ソファーの背もたれに体重を掛けながら盧笙はジッ、と簓を見つめていた。 今の簓は、かつて盧笙が『天才や』と思った・抱いた姿とはあまりにもかけ離れていて、盧笙が過去相談に乗った・今も乗っている多くの生徒の内の中の、ある種の同じような悩みを抱えている数人の生徒達とも似ているとも思ったし、かつて小学・中学、グレる前の自分(今もまだどこか抜け出せてはいないのだけれども)とも似ているなとも思った。
〝お笑いの神サンに愛された天才〟ではなく、〝どこか危うい不安定な子供〟。
教師という道を選んだきっかけは、夢破れ、結局はあの母親の思惑通り、敷かれたレールの通りだったけれども、それでも悪くない人生だと、教師になってよかったと、改めて盧笙は思った。町田くん、平山くん、それだけやなくて、今やと坂下も、濱口も新戸さんも、足立くんも、……目の前の、この恋人も。自分一人の力はたかが知れているとしても、それでも背中を押したり、もっといえば心を、想いを、掬うことができるのならば、かつてのいつも寂しくて、悲しかった自分が、芸人という道じゃなくても、誰かを救えるのならば、もうそれは、幸せで、冥利に尽きて、結局自分だって、こちらこそ、救われる。…と、盧笙は目の前の簓を見て思う。
「愛してんで」
と、盧笙ははっきりと、力強く言った。 「…り、…リップサービスは、い、いらん…」 「いやだからなんでそこでネガんねんお前は、ホンマ。」 頬杖をつきながらそれでも盧笙はジッと簓を見続ける。 「愛してんで。」 いつものお返しとでもばかりに、今度は盧笙がまた、その、簓いわく〝こっ恥ずかしくてガチ感出てなんもおもろない〟言葉を繰り返す。 それを聞いて簓はギュッといつもよりも強く目を瞑り俯いた。泣き出しそうだ。 「お前、酔うと泣き上戸タイプやな、」 そう言いながら盧笙はポケットに入れていたスマホを取り出した。そしてメモ帳のアプリをタップする。 「じゃあ、先生と採点してこか、」 簓が何も言わなくなったので。 「まず、6月4日、ええっと、〝生まれ変わったら、一緒に万年に生きる亀になって、盧笙��一万年そばにおりたい、ずっと話してたい〟これやねんけど、残念やけど亀、例えばよう見かけるミドリガメの寿命はだいたい40ね──」 簓の手がグッと伸びてきたので寸前で盧笙はその手を交わし、できる限り腰を反らしてスマホを頭上に掲げた。睨みつけるような形相の簓に対して盧笙もじっと真顔で見つめ返す。 「40年やから、調べた所、万年は難しいけどニシオンデンザメってサメが500年生きるらしいからそっちの方がええんちゃう、第六感ってのがサメに備わってるらしいから、それでどうにか会話できるやろ、多分」 そのまま盧笙は簓から視線を外し顔を上げて頭上のスマホの中身を見る。流石に細かい日付までは覚えていないので。 「次、6月25日、…あ、この日は氷筋さんの事どんだけ好きか、」 バッ、と簓が立ち上がり盧笙のスマホを奪い取ったので盧笙が掴んでいたソレは彼方に飛んでいった。 それだけ、特に激しい運動もしていないのに、簓は息を切らし、ジッと盧笙を睨みつけている。 「お前ほんま、氷筋さん好きやもんなぁ、この日は酒飲む前からずっと言うてた、で、酔った後もずっと〝一緒にロケしてん、ロケやで!?俺ほんますごない!?〟て、ずっと、」 そう言いながら盧笙は今度はニヤ〜と人の悪そうな笑みを浮かべる。ああ、おかし。あと、アレや、ほんまにちょっと簓、猫っぽいとこあるんかも、流石零やなァ。見抜いてたんやろうなぁ。と零の凄さを改めて感じた。 「……………、別れた、ないです、」 「いやだから、なんでネガるん。てかなんで敬語」 ぷは、と盧笙は吹き出した。いやでも犬でもあるわ、簓、あーたしかに可愛い?かもなァ?と盧笙は思った。別に今も外見は可愛くないけれども。いやもう、可愛い通り越してブサイクや。大号泣やん、鼻水出とる。 盧笙は鞄の中からポケットティッシュを取り出し数枚、簓の鼻に当てた。簓は素直にそれで鼻をかんだ。 「黙るから、もう言わんから、なんやったら酒も飲まんから、すぐ帰るから」 「愛してるって言うてるやろが」 そう言いながら、盧笙はティッシュと一緒に取り出していたハンカチで簓の涙を拭う。よし君の方が聞き分け良かったわ、この幼児以下。と思いながら、うーん、可愛いなぁ、面白いなぁ、愛しいなぁ、とも思った。
18、出会ってすぐ、喫茶店で、はじめて簓とちゃんとしっかりと会話した日の事を盧笙はまた思い出す。あの時の会話は解散した後も度々思い返していた。『普通とは違う視点を持ってるのはめちゃくちゃええことやと思う、けどな、その視点しかないと世間からズレすぎてしまうねん』、なぁ、それは、どこで得てん。もしかしたら過去、同じようなことをお前も誰かに言われたんか?俺のギャグを即座に取り込むとか、申し訳ないけど普通の人間には出来へんことやねん。18、19、いや、こないだ、零の助言、通天閣のあの夜まで俺はそれを〝天才〟〝才能〟そんな言葉だけで片付けてたけど、思い返せばかつてお前が住んでた家、今のこの家やって、お笑いのDVDのパッケージだけが色とりどり鮮やかで、それ以外は、シンプルで、がらんとした、寂しい、部屋。
「俺ん家でよかったら、いっぱい来てええよ、まあ、お前言わんでも来るけどな」 「言うてる、意味が、わかりません…」 「いや、だからなんで敬語やねん」 「わからなくて、理解できんで…」 「わからんとこを一緒に解決すんのが、先生の役目やなあ」 「…盧笙が、どこまで聞いたんか、覚えてんか、わからへんけど、…めちゃくちゃな事ばっか、言うたやん、俺」 「そやなぁ、なんでお前が耳のソコにピアス開けたか聞いた時は、理由はともかく、グロ、って思った。」 「ッ…」 盧笙がそう言うと、簓は息を呑み、俯いて顔を覆った。ぽろぽろと涙がソファーに落ちていく。 「…俺、頭おかしい」 「せやなぁ、いや、カジュアルに勝手に人の家におる時点で普通に頭おかしいからなお前、あ、でも俺も今日してもうたわ、人のこと言えへん。」 「…イカれとる」 「お前と付き合ってる時点で十分俺もイカれとるわ、分かっててええよって言ったんやから」 「お前、ピザとかの代金すらおごらせへんし、なんだかんだ割り勘やし飯作ってくれるし、お前、俺なんて、金と名声ぐらいやん、あとはなんやろ、ネタ?、わからん、メリット、」 「や、愛してるだけやし。」 「…頭おかしい、イカれとる、怖い」 「怖い、って言われても俺も元芸人やし、グレとったしなぁ、…お前誰よりも知っとると思うけど。」 「うっさい、あがり症、お前、あいちゃんとかなおき君とかにSNSで〝今日のロショセン〟ってハッシュタグで割と頻繁にレポあげられとるからな、」 「あい…、三橋さんか?なおきは多分木下やわ、知らんかった…」 「いやツッコめや、なんで知ってんねん、ってツッコめや」 「今更やろが。」 「怖い…」 「いや、お前考えてみいや。怖がってたら、食われる事見越して自分の家の冷蔵庫にショートケーキとメロンソーダ入れとかへんやろ、で、まんまとお前はソレ食うたわけやけど、俺対してなんも言わんかったやろ」 「盧笙馬鹿やから…」 「いやお前、西の人間に馬鹿はアカンやろ、どつきまわすで」 「キレるポイントズレてるゥ…好き、」 「そこ、ソレ、〝愛してる〟でええで。」 クッションの背もたれに頬を付け、盧笙は簓を見上げた。簓は一瞬ぽかん、とした表情を浮かべ、慌ててグッ、と更に深く俯いた。 盧笙は遠慮なく両手を伸ばし、簓の両頬を掴んで顔を上げさせた。簓の涙で手が濡れた。 「ブサイク」 「うれ、売れっ子、ぬ、ぬるさら、に対して、お前ぇ…」 「鼻水たれ流しとる人間に何言われても…」 右手で簓の顔を掴んだまま盧笙は左手で床に置いてたままのティッシュを一枚取り、簓の鼻に当てる、 「はい、チーン」 そう言いつつも、盧笙はティッシュ越しに簓の鼻をギュっと遠慮なくつまみ、グッと下に引っ張った。 「…下手くそ、全然鼻かめへんかったわ」 「よし君やって自分で鼻かめんのにな、なんでええ年のお前は逆にかめへんねん、流石の俺も人の鼻かんだった事無いわ」 「…なんで、俺の誕生日やったのに、よし君やねん、ありえへんやろ」 「それはスマン、…ほんまに」 「…ガチトーンで、謝られると、罪悪感、スマン、ごめん、いや、ずっと、」 「俺やってそれなりに抵抗したんですよぉ」 「…何その口調…」 「……〝口調に無い特徴〟…」 「つまんな…」 「今、お前に言われた言葉で過去一腹立ったわ」 「すいません…」 盧笙は簓の顔から手を離し、また乱暴にハンカチで簓の顔を乱暴に拭いた。涙も鼻水も一緒くたに布に吸収されていく。 「痛い…」 「クッションと床汚れるやん」 「俺をないがしろにすんのお前ぐらいや…」 「俺にそうされんの本当は嬉しいくせに、たまらへんねん、ってお前」 「お前、どこまで、知、覚えてんねん」 「流石に毎回?全部?は覚えてへんけど、なんとなく覚えてるとこは翌日メモアプリにちゃんと毎回記録しとる」 「何し…、絶対消す…」 「せやなあ、なんで言うてしまったんやろうな、お前俺のスマホも勝手にイジっとるもんな、ストーカー」 「やって、全部知りた、…ロショセン、生徒とトークしすぎやろ、あとぽんぽん告られすぎ、やろうなぁと思ってたけど、案の定や…」 「…お前生徒の名前控えたり最悪接触?してへんやろな、それしとったら流石に俺でも法に訴えるからな」 「してへん…、読んだだけ、興味ない、ほんまに、ほんとに、あ、SNSのロショセンタグで投稿しとる子だけ何回も写真上げとるからなんとなく顔覚えとるけど…」 「やっぱアレやなぁ…ネットリテラシー、力入れなあかんなぁ、いや、坂口先生や三島先生とも前話してたけど、プリント作ろ…、」 「知らん名前ぇ…」 「いや何更に泣きだしとんねん、坂口先生は学年主任な、三島先生は割と歳近い2個上の先輩の教師や、」 「…既婚者…?」 「既婚者やし、両方男、」 「…俺も盧笙と結婚したい、結婚しよ、」 「いや、お前売れっ子芸人やろ、あとディビジョンラップバトルとかあるから、今無理やろ、どう考えても」 「どんな理由で断っとんねん、普通好きか嫌いだけやろ、そこは」 「好きやし、愛しとるけど、今は流石に時期が悪い」
「俺も、愛しとる…ッ…!」 簓の両腕が伸びて来たので盧笙はそのままそれを受け入れ、抱きしめられた。
「…お前、俺の服で、鼻拭いたら殺すからな」 ふ、と盧笙は笑った。 「…うっさい、服なんてなんぼでも買うたるわ」 「お前ファッションセンスないから絶対嫌やわ」 「お前にだけは言われた無いわ…っく…なんやねんあのトゲまみれの靴、武器やんあれ」 「アレかっこええやろうが」 「衣装さんが用意した時点でくっそ笑ってたやん俺、」 「アレお前が笑ってた意味正直わからんかった」 「で、びっくりしたわ、あんなに俺も零も笑っとったのに、ある日盧笙ん家の靴箱開けたらあったやないですか、」 「いや、シンサイバシたまたま歩いとったら売っててなぁ、思わず買ってもうたわ、二千円」 「パチもんやんけ!」 「せやねん…、安物買いの銭失い…あれで街歩いとったらすぐスダッズ取れてもうて…」 「やから二回目靴箱開けた時無かったん…」 「やっぱ、最低2万からとか、ちゃんとしたブランド品買うた方がええんやろか…流石に職場には履いて行けれへんから、お前と零とかと外で打ち合わせする時と、後は買いもんする時ぐらい…」 「履いてきたら毎回俺も零も爆笑の渦で打ち合わせどころやないわ、てか盧笙、夏?いつやっけか、ちゃんとした打ち合わせの時に一回クロックス履いてきた時あったやろ、気抜きすぎやろ」 「ア?あれコラボ商品やぞ、以外と高かかったんやであれ、カッコええし」 「クロックスはクロックスやろ、ずっとどっか発想がヤンキーやねん、先生のくせに、ほんま…あ、そういえば、よぉ見た時にな、耳ピアスの痕あんなぁ、自分、」 「よお見過ぎや、高校ん時に安全ピンで開けたわ、もう完全塞がったけど」 「ベタやなあ、俺はニードルでガンガン開けたったわ、適当にやったからめっちゃ痛かった、」 「…俺、その話苦手やねん…グロはちょっと…」 盧笙は顔のすぐそばにある耳、そのピアスを見、遠慮なくその金属に触れた。簓がとんでもない理由で開けたのを盧笙は酔った本人から聞いていて、それもちゃんと覚えている。…それでも結局、盧笙は簓とお付き合いしていて、今こうやって抱き合っている。愛し合っている。 「ソファー…邪魔…」 「せやなぁ、俺もこの姿勢ちょっとしんどいわ」 「盧笙とセックスしたいねんけど」 「ええよ」 抱きついていた簓の身体が離れた。そのまま顔が近づいてきたので盧笙も顔を寄せて口を重ねてやった。 「……あ、でも、ゴム、ない、この家」 「中、出してみる?」 盧笙がさらりとそう言うと、簓は今日一番マヌケな表情を浮かべて、そして一気に顔が赤くなった。その顔が面白すぎたので、盧笙は遠慮なく腹を抱えて笑った。 「っは、お前、」 「……待って、盧笙って、アレ、ビッチなん、ヤリチ、ヤリマン…!?」 「誰がビッチやねん、マンついてへんし、男との経験はお前としかあらへんわ」 「じゃ、じゃあ、なんでそんなにエロいんですか…」 「え、何、自分童貞なん」 「いや…全然…とても、大変ただれた性生活を送っておりましたが…」 「ですねえ、酔ったお前から聞いています、先生、ドン引きしました、」 「当時めっちゃ荒れてたんです、スレてたんです、てかぶっちゃけ断んのもめんどくさくて、全部何もかもどうでもよかったんです、あ、ゴムだけはしてました」 「大変でしたねえ、避妊してたのは性感染症防止の観点からも偉いと思います、」 「今は一途です、盧笙しか、」 「知ってる」 そう言って盧笙が笑えば、噛みつかれるようなキスを簓から喰らった。ような、というか実際グッ、と唇に歯を立てられた。 「…痛い」 「愛してる、」 「うん」 「愛してる」 「せやなあ」 「愛してる」 「っ……はぁ…、…うん、知ってる」 簓は立ち上がり、ソファーから降りた。そのまま歩き、盧笙のすぐそばへ、そしてギュッと盧笙の右腕を掴んだ。 「…こ、…こっ恥ずかしい…え、待って、俺、今までどんな風に盧笙、抱いてたっけ、」 「あ?んー…こう…グワッとしてガンッとして最後はドンッ!や」 「なんもわからん…」 「あー…ガッとしてドガッでベチョベチョ?で、最後はドンッ!や」 「最後ドンッなのは変わりないんか…」 「説明が難しいねん…とりあえずドンッや、なんか、毎回そんなかんじや」 「もしかして俺下手…?」 「ねちっこい。」 「即答…」 「嫌いやないで…って言ってあげたいとこやけどアレはチョット…」 「待って立ち直れへんかもしれん」 「俺普通の人間やから…お前俺に過度になんか色々想ってるみたいやけど全体的にチョット…」 「いや十分、てかこの世で一番お前がオモロいと俺は思うんやけど」 「ア?絶対馬鹿にしとるやろその言い方」 「なんで!?なんで急にそこでキレるん!?」 簓は思わずツッコんだ、いつもどおりに。そして、ぷ、と笑った。 なので盧笙も笑った。 簓の両腕が盧笙の身体に回る。盧笙は少しかがみ、簓の額と己の額を合わせた。視線が絡まる。 「愛してる、」 「うん」 「愛してるねん、ずっと言いたかってん」 「いやお前既にアホみたいに言うとるし、ばっちり聞いてたけどな」 「…今後も言う、」 「聞いてる」 唇がまた重なっていく。
意外と簓は紳士なのか、なんなのかわからないが、とりあえず盧笙のことを死ぬほど(これが比喩的表現ではないことも盧笙は知っている)大切に想っているので、そのまま、盧笙は簓に風呂場に連れて行かれ、丁寧に洗われ・ほぐされ、その場で抱かれるかと想いきやタオルで拭かれ(ドライヤーはまどろっこしいわと断った)、寝室に連れてかれ、ベットになだれ込む最中、盧笙の目に不意に映った時計は0時を越えており、すでに11月がはじまっていた。 「…あ、」 「何」 「誕生日、終わっとる」 「あー…あー、ほんまや」 「改めておめでとう、ハッピーバースデー。あ、お誕生日の歌、歌ったらな。零に頼まれてた」 「…俺、零キライ」 「零はお前の事可愛がってるで、お前が猫みたいで可愛いんやって。猫派やからな零」 「ア?だからあいつ俺にキティさんのスタンプばっかやたら送ってくんのか、キティさんが飛び出してきたり、話しかけてきたり…もお俺決めた、ブロックや、あいつブロックしよ」 「どんなトークしとるん自分ら…」 「基本既読スルー、」 「あとあれや、トーク言うたらお前、どついたれ本舗のグループ、事あるごとに零退出させんのもやめえ、毎回入れ直すこっちの身にもなれ」 「俺悪ない、アイツが悪い」 「毎回入れ直したあと零個別で〝しょんぼり〟スタンプ律儀に送ってくるんやで、絶対楽しんでるけどなアイツ」 「最低や…」 と、言いながら簓は盧笙の髪に手を入れ、ぐしゃ、と弄んだ。そしてじっ、と盧笙の目を見る。 「最高の、一生分のプレゼントでした」 「…いや、だからなんで敬語やねん」 真面目なトーンの簓に恥ずかしくなりつつも、それでも盧笙は目をそらさずに、じっと簓を見つめ返す。 「あの言葉、今日の記憶だけで一生生きていける、」 「え、なに、その刹那的?なヤツ、え、別れんの?今日からまたなんか始まるんちゃうの?」 「ウン…」 簓が盧笙の鎖骨辺りに頭を擦り付けた。 「あ、ソレ、ようやるやつ、くすぐったいねん、いっつも、」 「…夢でしょうか、これは」 「現実や」 「えっ、かっこえ…抱いて」 「嫌やわ、お前みたいな鼻垂れ泣き虫ブサイク」 「ハァ?ささちゃんかわええやん、尽くすタイプやろが」 「もしかしてオタク、鍵複製とかストーカーな行為一連、尽くすって勘違いしてらっしゃる?…あ、なんか相田さんがおすすめしてくれた曲にもあったわそんなん…あの子、ナゴヤの子のファンでちょっと先生しょんぼりや、」 「自分生徒と距離近すぎやねん、俺だけ見とれや」 「あ、完全言うてることストーカーや」 「監禁したろか、このアホ」 「残念ながら、今日はこれ終わったら帰ります、仕事です」 「ア?」 「ガラ悪、じゃあなんでお前10/31日曜日に生まれてん、10/31に生まれた自分が悪いやろ、先生はよっぽどなことが無い限り安易に休めへんのや」 「クッソ、俺も朝から仕事や…!」 「おおー、ガンバレー」 「…もう盧笙、今年…、今日、昨日か、誕生日絶対会われへんと思ったから、忘れたくて何もかも…ここ数日アホスケジュールやった」 「それは素直にすいません、」 「でも、今日の夜はガッツリ開けた。会いに行こう思てた」 「来るとこっちも思てたわ」 「お好み…、豚玉焼いて、」 「分かった、俺生地作るから、キャベツ、スライサー渡すからやるんやで、」 「なんぼでも」 簓の顔が近づいて来たので盧笙は口をゆるく開いた。犬歯、歯のとんがったとこ舐めんの好きやなこいつ、と盧笙はぼんやり考えていたが、そのうちまともに考え事はできなくなった。ほんま、ねちっこいなコイツ、とは思った。
「簓、タクシー来るから」 盧笙はいよいよ、我慢できなくなり、ぎゅうぎゅうと抱きついていた簓の身体を右肩で押した。が、簓は抵抗する。時刻は5時半。もう完全に本日はほぼ徹夜で出勤。 「キスマークもアホみたいに付けよって、お前」 「付けてええ、言うた」 「歯型は許した覚えはないんやけどな、痛くて台無しやったわ、歯立てるのは禁止や、痛いのはアカン」 「やったら、今度からはせやな…、事前に今から噛みますよー、痛くないですよー、って言うたらええ?」 「注射ちゃうんやぞお前…」 そう言いながら盧笙はスマホを見る。あと一分でこのマンションの前に手配したタクシーが到着するそうだ。 「…後で会えるやろ、あとお前も仕事やろ」 「世界滅べへんかな」 「極端」 「愛してるー」 「あっそ」 簓が腕を外し、離れたので盧笙は顔を近づけて、一瞬だけキスしてやった。 「…、いや、自分、帰るんちゃうの、焚き付けて、どういうつもりなん」 「え、お前の事情なんて知らん。帰る」 盧笙は立ち上がり、振り返り 「また後で。」 そう言うと、 「おお!」 簓はぱぁ、ととてもとても心から嬉しそうに笑った。その表情を見て、まぁなんや色々あったけれども、なにはともあれ良い誕生日をプレゼント出来てなにより、と盧笙は思った。
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efwpo · 2 years
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ヒッピヒッピシェイク
ささ誕前日譚/暗い
花金ってほんまええもんやね、と簓は思った。 今簓の身体の下には盧笙の身体があり、盧笙は眠っているのか起きているのか、寝ぼけまなこ。可愛いなァ!と簓は思う。 花金だから、明日は土日だから盧笙はこんなにもぐでんぐでんになるまで酒をいっぱい、めいっぱい飲んでくれるのだ。だから好き。 また簓は決して口に出さないが零のことも好きだ(こっちは恋愛的な意味は一切無い。)。だが花の金曜日はここの部屋以外、世の中的にもまあ色々と様々な思惑が蠢くらしく、零は割と金曜夜の飲みの誘いには付き合ってくれない(気遣われてる可能性もあるんかもしれんけどなぁ、とも簓は考えるが)、なので零を仲間はずれにすることなく、それでいて堂々と盧笙とふたりっきり。花金最高。 え?〝金曜日は何もできんよう〟?ンなまさかぁ。二人でマァマ���マァ、と簓が用意した度数高めの酒を呑んで、盧笙が適当に焼いてくれたり茹でてくれたツマミを食べて、おもしろいTVを見て、馬鹿みたいな話をいっぱいして、そしたら、あっという間にグデングデンの可愛いらしい盧笙の出来上がり。しかもでろでろに酔い潰れて、明日の朝になったら前日の記憶ほとんど忘れてくれているという素晴らしい仕様。 もぉ最高です〜。 たまらへん、と簓はジッと盧笙を見つめ、そしてぎゅうぎゅうと盧笙の胸に顔を埋めた。いつもより高い盧笙の体温。顔も真っ赤で大変キュートってやつやし、これからもめいっぱい上等な酒呑ましたるからなぁ、と簓は思う。思うというか、黙っている必要もないので(なんたって盧笙はもうどう見ても今の記憶を明日まで引き継げるレベルじゃなくなっているので!)簓は思ったことをそのまま口に出す。 「でも俺なあ盧笙と零とコンビニとかドンキとかで夜ぶらぶら歩きながらカゴに適当な酒やツマミ、ガンガン突っ込んでく時間も好きやねんなぁ、」 「ん…」 「あの時間のためなら…、や。お前と零とおる時間のためなら全然スケ無理できる」 「ちゃんと…」 「えー。でも俺自分で言うのもあれやけどお笑いもめっちゃ好きやねんな?俺、強欲、貪欲?やからなぁ、…あ、でも最近多いV見るだけ・適当にワイプで抜かれるだけの番組は嫌い、内心めっちゃ眠い、クズな事言うけど糸目キャラで良かったわァ、って思う時あるわ、」 「…ギャラどろぼ…」 「こないだなんて最悪やったで、V何時間やっけ、番組自体は3時間か、延々映像見せられて、見せられただけ、話も振られず企画もナシ、アホちゃう?そもそもわざわざ紹介せんでもみんな個別に動画サイトで見るやろ、…なんやっけ、なんか、誰かがパクられた?か?なんかかで急遽差し替えで、ってことやったらしいけどなぁ、怖いなぁ芸能界」 そう言いながら簓は盧笙の頬を遠慮なく触れる。盧笙の身体を何も考えず意図も込めずただただ無遠慮に触る事が出来るのはこの時間だけである。 簓の手がくすぐったいのか目をつむったままふにゃ、と盧笙が笑った。 「お前は、残らんで正解やったかもしれん」 「ン…」 「ディビジョンラップバトルのアレはな、俺と零がおるからええけど、芸人のままやったら、俺がこうやなくても、お前がああならんでも、もっと言えば俺やなくても、お前やなくても、大変、間違いなくエラいことなってた、なってる」 「…」 「ぬるさら、ゴールデンタイムにも冠持っとるから定期的にあっやしいハニトラ仕掛けられるし、枕も遠慮なぁくお願いされるし、ゴミみたいな誘いは毎日来るし、兄さんらの強要も鬱陶しいし、は。俺があんまりにも断るもんやからどっかのおエラいさんにゲイやと思われたらしくてな?こないだイケメンのあんちゃんになんか誘われたわ、ハ、安易やねん、どいつもこいつも、人気者なりたかったら腕磨けや、股開く前に」 簓はグリグリとすこし盧笙の鎖骨辺りに頭をこすり付け、同時にそっと自分の左手と盧笙の右手とを繋いだ。盧笙の清潔で、どこか懐かしい庶民じみた匂いが簓は大好きだ。はやくこの匂いがわからなくなるまで盧笙と同じ時間を過ごしたいなぁと思う。 「愛してる」 花金って最高やね、と簓は思う。 「愛してる」 「ン…」 「愛してる」 うわ言のように簓は繰り返す。結局浮かぶのはその言葉しか無いのだ。面白さも、笑いどころもない、その言葉しか。だから花金最高。ぐでんぐでんの盧笙万歳。盧笙にツマラナイ愛の言葉をいつだって伝えたい。盧笙のそばに居るだけでもう正直言いたくて言いたくてしょうがない。だけど盧笙には届かないで欲しい。自分が発する言葉、だいたい全部、それを聞いた盧笙には笑ってもらうかツッコんでもらうかどっちかで居て欲しいから。もう、これからは、ずっと、永久に。 「〝好き〜〟ならな、ふざけて言えんねんけど、〝愛してる〟はこっ恥ずかしくてガチ感出てなんもおもろないからね。いやあるよ、〝愛してる人とお付き合いしてる〜〟って言葉遊びは。いやでも、で?ってなるやん。ギャグ言うておお〜!って反応貰うのは大喜利キメたときだけでええねん。感動のギャグってなに?一番アホらしい。笑いは笑い。笑いは絶望を救う」 「ウン…」 とくんとくんと動く盧笙の心臓の音を簓はジッとそのまましばらく聞いていた。この世にあるどんな音よりも一番美しく素晴らしく綺麗な音だと思った。己がイカれてることはもう盧笙と出会うずっと前から簓は分かっていた。盧笙と出会って、そして解散を切り出されて、もっと更にイカれてしまったことも理解していた。…まぁでも今はちょっとマシ、簓の世界は通天閣の夜、あの日、変わった。この世界は俺と盧笙と零とその他大勢の有象無象。 「すごない?俺の世界三人まで増えた、」 「簓…」 盧笙に名前をはっきりと呼ばれて簓は素早く身体を引き上げた。…──が、相変わらず盧笙はふにゃりと目を閉じてるので、あ、びっくりした、と、また簓は盧笙の身体の上に身体を沈めた。そのままジッ、と盧笙を眺める。あ、左首筋、んなとこにちぃっちゃなホクロあるやん。知らんかった。簓は手を伸ばして見つけたばかりのソレに軽く爪を立てた。 「た…」 「ハ、」 と笑いながら簓は爪を立てたその小さなホクロに今度は唇を落とした。キスマークは決して付けない。怖いから。〝何してくれとんねん!〟と怒鳴られる程度なら良いが、万が一〝ちょっとこれ困るねん…〟とマジなトーンで返されてしまったらきっと立ち直れない。 「流石に『キスマークは今流行りのマストアイテムやで』と盧笙を丸め込むのはこの簓さんでも無理や。」 「…くすぐ…」 「簓さんは紳士やから、酔った子を抱く趣味ないから安心してな?てか俺、性行為嫌いやねん、盧笙とヤルのは大好きやで、でも他はダル、ずっとダルかった、円滑なコミュニケーションの一環としてセックス、イカれとるやろ人間関係。てか疲れマラとかダルない?男辞めたいわ、や、でも盧笙は抱きたい。盧笙をぐっちゃんぐっちゃんにしたいし気持ちよぉしたげたい。盧笙の全部見たい、…難しい男心…」 「ン…、……あー…。あー……言わな…言わな、あかんこと、ある、ささら、」 瞬時に簓は遠慮なく盧笙の両頬を掴んだ。だが相変わらず盧笙の目は閉じているし、くたっと全身の力は抜けている。次いで簓は盧笙の上まぶたを軽く引っ張って眼球の状態を見た。あ、ちゃんと白目。 「ンンー」 「ン〜…大丈夫か…、……何?何言いたいん?教えて」 「…謝らな、あかんことあって…、」 「…何ぃ?」 「…俺のばあさん癌で亡くなってん…」 「っは。」 思わず簓は言葉を失った。?意味がわからない。流石ろしょー、意味不明、おもろ、愛してる。 「だから…、多分俺も、癌で死ぬ…」 「…ごめん、俺も詳しないねんけど、日本人、癌の死亡率?って高こなかった?あ、てかその婆さんは何歳でお亡くなりになったん?」 「87…」 「大往生やん」 「先死んだらスマン…」 盧笙の左手が、すか、と空振りした。 「あれ…、ささら、」 「ここおるよ」 簓は空振りした盧笙の腕を丁寧に掴んで己の頭に乗せた。 「…87、えっと、わからんけど、まぁ、ほぼ60年後として、…大丈夫やで、多分、そこまで生きてへんと思うなぁ、俺」 そう言いながら自分の鼻の奥がツンとなるのを簓は感じていた。好きやなァ、と思った。盧笙と関わる度にこうやって簓は盧笙に恋をしている気がする。 「生きいや、」 「やってな、俺、めっちゃ酒飲んでるし、くっそ忙しいからロクに寝てへんし、悪いことも多々してきたからそのツケもあるやろうし、正規違法問わず変なマイクも使こてる・使こてきたし、あ、あとたまにやけどまた煙草吸い始めたし、せやなぁ…多分50辺りで死ぬと思うで」 「お前死んだらお笑い界の損失や…」 「おもろいやつはどこにでもおるよ。俺はせやなぁ、目の付け所がエエだけ、あと言語能力?ちゅうの?それのデキがええだけ、笑いの才能自体は実はあんまないんちゃう?努力の果て、」 「謙遜は…オオサカでは嫌われるんやで…」 「ありゃあ、本音やねんけど、」 「でも、努力してるのは分かとるよ…、…お前、思い返したら、どんだけ、ひとりやったん…」 「主語?文法?めちゃくちゃやなぁ、…何を思い返して、ソレにたどり着いたん?」 そう言いながら簓は盧笙の腕を外し身体を起こした。そのままテーブルの上の瓶を取り口に含む。そしてそれを口移しで躊躇なく盧笙に飲ませた。ネットで買った泡盛、アルコール度数43度。 「う…、や…」 盧笙が抵抗するので少し中身が溢れてしまった。なんや悪いことしてる気分、と簓はそれを見ながら、それでもまた口にキツい酒を含んで、今度はガッチリと盧笙の顔を固定させしっかりと飲ませる。 盧笙の喉仏が上下、そしてむせ、咳き込んだからその背中を擦る。 「びっくりさせたな、ごめんな、」 「あー、あー…、泡盛嫌ぃ…」 「あー、オキナワの人に悪いことしてもうたわ、吐きそう?気持ち悪ない?」 「意識トぶ…」 「じゃあ寝て、」 簓はそっと手を伸ばして盧笙の両の瞼を覆った。 「さ…」 「愛してる」
花金ってほんまええもんやね、と改めて簓は思った。眠った盧笙の顔を眺めながら一人で酒を飲む夜もたまらなく簓は好きだ。
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efwpo · 3 years
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でも意外と長かった、命。
独歩からメールが来てて、それがまたいつものそっけないやつじゃなくて俺っちへの気遣いが透けて見える内容だったから、あ、そっか結構ここんとこ、ちゃんどぽと会話してないな〜と思った。 時々、俺っち、だって明るくてにぎやかで優しくいられない時だってあるのだ。ミジュクだなぁ、ダメダメだなぁって思うんだけど。 忙しかったとか色々どうしてもやっぱ、いんや、言い訳はダメだ。 スマホの画面をジッ、と見て、んー…と思う。けどうまく言葉が出てこなかった。 文だけなんだし演じることは簡単なんだけど、演技してるって気づくかもしれないし、…気づかなかったらそれはそれでつらいし。 気づかなかった、ってことにしーとこ、
一日でもいいから、一秒でもいいから長く、俺っちは独歩と居たい。 刻一刻と独歩と離れる時間は近づいている。 もーちょっとしたら、多分きっと独歩の生活は落ち着く。 そしたらさっさと会社の奴なり合コンの相手なりちゃっかり普通に結婚するんだろう。 俺っちはその頃、自分の店でも持って逆に忙しいんだろうなー。 ──だから、もうちょっと、少しでも長く。 …って、思ってんのに、分かってんのに、今がとても貴重だって、後からやり直しなんて効かないのに ミジュクだなぁ、俺っち。 オトナになれない、コドモのまんまだから未だにずっと、ずっと独歩の事が好きで、まだまだ諦められないでいる。夢も見るし、ドキドキもする。だから言いたいことも言わないし、見せないし、隠しちゃう、こーやって。 届いたメールに保護を掛けて、スマホオフにした。
朝方、帰ってきたらテーブルにケーキがあった。 白いちゃんとしたケーキ入れる箱に入ったやつ。 改めてスマホを出して昨日の保護して結局返せなかったメールを開く。 そっかぁ、昨日早く帰れたん、で、買ってきてくれた。なるほどなるほど、 パカ、と開けたらチョコケーキとミルクレープ。 俺っちがこのタイプのケーキ好きなの小学生の頃の話だけど?ちゃっかりミルクレープも買ってきて、一緒に層数えタイムに付き合ってほしかったの?独歩ちんはほんと独歩ちんだねぇ、俺っちの前では傲慢。嬉しいけど、…あー、オトナになりたいなぁ、キャパがどうしても、今なくて。ごめん、ごめんねぇ、って箱を閉じた。『起きたら食べるねありがと!』ってメモに書いた。
「…て」 部屋に戻れば、俺っちのベットに独歩ちんが眠ってた。 …忙しくて、寝ぼけちった、的な? いや、昨日早かったっけ。 「…」 音を立てないように細心の注意を払って手にしてた服をクローゼットに仕舞って、適当に下着とか着替えを取ってまたそっとドアを閉めてリビングに戻った。 いいや、シャワー。 毛布は独歩の部屋から借りてソファーで寝よ。
目覚めたらどうなるかな、わっかんねえや。
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efwpo · 3 years
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命みじかし、
前から左にひー、ふー、みー、4つ目、舌先で触れた。その先端が鋭く尖っていることを一二三は知っている。押し付けば淡く痛く。その痛みがどこか気持ち良いので押し付けた。すると若干痛みが増した。舌先に力を込めたのもあるが、ゆるく開いていた口が閉じてきたのだ。そう、閉じてきたのだ。一二三はうっすらと目を開いた。みどりの瞳は一二三を見ていた。舌先で一個ずつ丁寧に歯の先端をなぞってから口を離した。 目の前の相手は、観音坂独歩は、温度を感じさせない据えた目で──それでいて上目遣いで──、一二三を伺い見た。 一二三は独歩の顎に手を掛けた。独歩の瞳と視線が混じり合う。 目は口ほどにモノを言う、とはいうけれど、一二三は目の前の独歩の瞳が何を言っているのか今も全くわからないのであった。『好き』なのだろうか、『同情』なのだろうか、『どうでも良い』なのだろうか。想いがなければ振り向かせれば良い、なんてポジティブ思考を抱くのはどうしても一二三には難しい。 捌け口に巻き込んでいるのだ、一二三は。自身の中にあるどろどろに渦巻いている劣情の捌け口を、あろうことか、それを生み出した根源に。 伊弉冉一二三は観音坂独歩が好きだった。 ずっと、ずっと、年齢が一桁だった頃からずっと。 脳が焼ききれるほど、胸がじんわり甘くとろけるほど、あたたかくて背中にじっとり汗をかくほど、落っこちてきた星くずを手の中でそっと隠してしまうほど、 伊弉冉一二三は観音坂独歩が好きだった。
隠しきれなかった。
隠しきれなかったのだ。
好きだよ、ごめんね、でも、返事は聞きたくない、お別れできるほど心が成長できてない。つつ、と舌先でまた口内をなぞった。『独歩の右から四番目の歯の先端が鋭く尖っていること』を知っているのはこの世で一人自分だけが知っていればいいのに未来永劫、と一二三は願い続けている。17歳の他愛のない子供じみた祈り。
伊弉冉一二三、17歳。17歳の彼は小学生の頃からの幼馴染である観音坂独歩に命を燃やしている。
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efwpo · 3 years
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10.16.2nd.VR
「ゴミ見るような目で見ることないじゃん」 「わわ〜ゴミが喋ってるぅ〜」 「まぁ…たしかに俺っちの肝臓の数値がゴミなのだけは認めるけどぉ」 「いやいや、貴方、先程ライブの映像見直しましたけど、”しょがないね〜〜〜〜〜”とか言って映ってたの乱数の頭。しょうがないの誰 笑笑笑」 「あん時俺っち、あー、夢野っちだー、うっとし〜って思ってたから顔やばばだったのかも。。。」 「ずっと、…ずっと仮面被ってるからですよ馬鹿ホスト」 「そっちも大変な癖にアコギ小説家」
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efwpo · 3 years
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今夜の零おじさんのお土産「ジン/炭酸水/コーラ」
「…なァ簓なぁ、」 「はいはい〜気持ち悪ない?大丈夫?」 「大丈夫大丈夫〜あんなおれ、お前に聞きたいこと、あってなぁ…」 「なに〜?なんでも答えたるよ〜」 「あんな、先週木曜…なんやっけ、あ、あの8ちゃん、7時からの2時間の、衝撃とペット映像の、かたかなの、あ、特番…」 「えっと…あー…えっとなんやったっけな、木曜の特番?はち…」 「あんな、そこでな、お前、『友達とのとっておきエピソード』喋っとったやん…?オチが2人で服屋行った、で終わったやつ」 「あー!あれな、どしたん?あのエピ初おろしやってんけど、おもろなかったん…?」 「いや、俺…あんなこと言う?そもそも服屋て、行ったことあった?お前とはアレやん、ドンキやん…スウェット…ドンキ服屋ちゃう」 「ろっ…盧笙…?えっ…、待って、えっ、めっちゃ盧笙、傲慢や!!待って!えっ、自分、素は傲慢なん!?俺、知、聞いてへん!え?待って、盧笙俺の友達自分しかおらんと思ってるん!?」 「ンン、お前とれーも立派な友達や…、やけど零はキャラ的にあんなこと言わへんと思…、お前らなら服屋も多分、一緒行かんやろ?いや、簓、お前知人はいっぱいおるやろうけど…、あ、いや知人さんを、」 「うう!ちゃうちゃう!全然ちゃう!…うう…っ!待って…!なんや盧笙がちゃあんと正しく俺の事理解してくれとる!!は?泣く!あと盧笙は俺にとって相方兼恋人兼親友兼パートナーで運命の相手やで!めっ……めっちゃ嬉しい…あんなあんな、あれ作り話!イマジナリーささちゃんのお友達やから!あんなおもろいことそこらの人間から起きるわけないやんか!一般人ナメたアカン!」 「あー?……あー…えっと、あ、ん?ンン?あー、あ!なんや中二病?やな君?先生ちょっと…や、でもええと思���!俺も昔なぁ……あ!今度足立くんからおすすめのラノベとか漫画聞いといたろか?君、好きか?足立くん絵上手でなあ…すごいわあの子…、…大丈夫やで、うちのクラスほんまええ子ばっかで、すぐみんなと仲良くなれるんちゃうかな、なってくれたら先生嬉しいわ……あ、漫画とか興味なかったら石井くんとかと話合うんちゃうかなあ…」 「え、俺先生しかいらんし。先生俺と結婚して」 「あー…ごめんなぁ…好意は嬉しいんやけど…それは恋やなくて憧れ、思春期特有のはしかみたいなもんや、大丈夫、未来で君を大事に想てくれる人絶対現れるから…、でも気持ち、ありがとうな、嬉しかったで…、ありがとうな…」 「ァ?やっぱ盧笙JKに告白されまくっとったなその返し、あ?誰、言って、誰に告られたん、てか目開けて、ちゃんと俺見て」 「あー?……あれ、簓や、あれ…、あー…、そか、うん…」 「盧笙、…やっぱアルコール30パー以上の飲ませて1時間経ったらええ感じやなあ…、可愛い、好き、あ。今度泡盛買うて来よ」 「おー…ええなあ泡盛、美味しいなあ…」 「なんやったら行く?オキナワ?」 「修学旅行で何回か行った…」 「じゃあネットで買うわ、盧笙がおればなんでもええからな、俺な、」
「俺がコイツら守ってやんねえと……」
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efwpo · 3 years
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シャタファッカー
「…独歩。俺っちから、大事な、大事な話があります」 「…」 「正座!」 「……ハイ」 「ごめん、俺っちよくわかんないし絶対人の触れちゃいけないことだって分かってんだけど、あのどうしても言わないといけないことがあります。独歩が最近オカズにしてるAVのことです」 「ッ…!?え、あ、えっ、あっ、おま、なん、知、えっ、あっ!見れっ、見れるのか画像…!?」 「ブラウザにはテキストモードってゆーのがあってえ…、んで、独歩ログインしっぱなしだし、PCのパス高校ん時から一緒じゃん、…いや、わかる、センシティブな話題だってゆーのは俺っちも分かってる、だからずっと独歩が見放題有料会員なのも好きなジャンル、女優?も知ってたけど放置してたの、俺っちも。だけど…」 「…。」 「独歩、最近監禁モノばっか見てるのは流石に駄目だとおも…。……ストレスたまりすぎて女の子さらってめちゃくちゃにしたいん?ど、どうしてもってゆーなら俺っちじゃだめ…?俺っち、独歩のためなら、逆も、」 「い…いや、違う、一二三、違う、誤解、誤解なんだ」 「誤解」 「その…、……監禁されたら仕事行かなくていいよな…気持ち良いだけで仕事行かなくてイイよな、と…あ、ハードすぎるのは無理だった…」 「えっ、女優?に自分重ねてたん!?……おけ。俺っち今から休み一ヶ月ぐらいとる、ゆってよー!!!!!あー!!!!!びっくりした〜〜〜!!!!!」 「うう…、もういっそ、その話に賛同したい…」 「えっ、しないの?」 「されたいい…………だけど…タスク…アポ…営業成績、ノルマ…」 「独歩…とりあえず俺っち、なんだっけ、SMグッズ?とか?買えばいい?」 「ヤダ、優しくしろ、いや、そもそも、というか、無理だ…無理なんだ……」 「独歩…とりあえず俺っち手錠持ってるけど…」 「今日は火曜日なんだ一二三ィ…」 「ぶっ壊そ?」 「壊さない、明日10時、新規顧客アポ…やっと取り付けたから…」 「そっか…や…じゃあ誤解とはいえ、独歩の大事な秘密暴いちゃったから俺っちもカミングアウトすんね」 「…。」 「俺っちのオカズって小学校の時から独歩だけなんだけど〜」 「ま……小…?」 「流石にそろそろそれはダメっかなーって思って…、俺っち昔、テトラポットでヌケるかチャレンジした事ある。」 「テトッ…」 「や、もうそん時もう女無理でぇ、でもゲイビもなんか、や、独歩の方が多分絶対イケメンだしありえないしって思ってぇ、…で、色々検索してたら、無機物の王道はテトラポット、ってなんか、出てきて……結局無理だったんだけど…」 「俺…テトラポットに勝ったのか…」 「独歩の方が数百倍テトラポットよりセクシー!俺っち保証する!!!!」 「全く嬉しくない…」
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efwpo · 3 years
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泥棒さん
「はい!相談があります!」 「…帰ってきたばっかやし、当たり前に居座っとるし、俺の服勝手に着とるし、俺が仕込んでた煮玉子も食うてるし…、簓お前なぁ………まぁええわ、最近ちょっとずつ悩みとか相談してきてくれるのはええ傾向や、なんや。」 「盧笙…、ほんま一個ずつちゃんと丁寧にツッコんでくれるから好き…」 「相談は。」 「あ、ハイ、あんな、まぁいつも通り俺の知らんうちに知らん仕事をぶっこまれてたんやけど」 「おお、」 「なんか俺、とある映画の応援団長?応援隊長?になっててん。なんか30分の番組のMC?映画の舞台なったとこ聖地巡礼しながら、その映画主演の二人おもてなしせなあかんらしいんやけど」 「おー、なんかよくあるやつやな」 「その映画の内容がな、俺のド地雷、【先生と生徒の禁断の恋愛映画】やねん」 「受けなさい。」 「いや、そういうと思ったわ…、なんで、それは受けるねんけど」 「偉い。」 「…」 「おー、ええ笑顔や。」 「撫でて!」 「調子のんな。で」 「あんな俺が思うに、多分これ俺がキャスティングされたのって、教師である盧笙とディビジョン組んでるからやと思うねん。──本題や。つまりこれは番組内で〝実は俺も先生と禁断の恋愛してます〜!〟ってカミングアウトしてもええってことなんやろか?」 「…分かてるよな?」 「エーッ、どないしょ、どないしょ、えっ…!」 「お前…、…………ええわ、分かとると思うけど、俺は優しいからなァ、アホのお前に逐一説明したるわ、あんな、お前がその番組でカミングアウトするとするやろ、」 「ハイハイ、はぁ…あかん…想像しただけでドキドキしてきた…」 「きしょ…、…まあしてみ、したらその番組100パーお蔵入りや」 「俺の権力」 「事務所の力」 「個人事務所作る時来たか…!」 「……で。まぁ、お蔵なっても、まぁどっかから漏れるやろうな」 「積極的に漏らしていきたいんやけど」 「そしたら、どうなるん?その応援?PR?する映画よりどっかのアホがチームメンバーとの仲カミングアウトしたってことが話題なるな、それ言うたんがよりにもよってあの白膠木簓やからなァ。したらどうなるん?その番組のスタッフだけやない、その映画のために頑張った俳優さんも映画監督さんもカメラマンさんも音響さんもその他諸々映画に関わった人たちみんなの頑張り、なあ、」 「うう…盧笙いつも着眼点がなんかどっかずれてて、そんなとこもめっちゃ好き…」 「どうも。分かってくれて嬉しいわ。……ってお前煮玉子残り2個やん、おン前!」 「おいちかった。」 「おいちかった、ちゃうわ!朝から楽しみしとったのに!…もう無理や…心折れた…」 「盧笙…簓さんが慰めたるからな…」 「お前、今すぐあっこのスーパーで生卵Mサイズ1パック買うてこい、大至急」 「えっ、俺ぬるさらやで?」 「偉そうにすな。お前はここではただの煮玉子泥棒や、」
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efwpo · 3 years
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オーバーナイト
「ろっ!!!!盧笙…!!」 「さ…ささらァ……」 「ろっ、盧笙な、泣いとるん!?なんで!?なんでなん!?どうしたん!?あとなんで今日ドア、チェーンロック掛かっとるん!?いっつも鍵閉まっとるだけやん!!俺入れへん!!」 「おれっ、俺なあ…今日のあの、コントの…見てん…」 「コン…ああ…あの番組なー…、あー…あの回かなぁ…、盧笙怖がりちゃんやもんなあ…」 「あのあれ、途中流れたコント、簓がストーカーやってたやつ…!あれ、アレお前、めっちゃ、めっちゃ怖いやん…!!笑えへん、特に最後の方、部屋勝手に入ってきて、あの、あの芸人のあの子の背後に立っててニタァ…て笑てたとこ…ほんま、ほんま怖くて…、簓 演技も上手いなあ、すごいなあって俺も最初は思ててん、思ててんやで?…思ててんけど…アレ、俺もこれと同じ事簓にやられるんちゃう?って思ったら…も、そしたら…」 「だから盧笙LINEで『今日は絶対来んな』って送ってきたんか…慌てて駆けつけて来たわ…」 「なんで来んねんお前ええ…!!念の為にチェーンロック掛けといて良かったわぁあ…」 「盧笙……あんな、こっから30分ぐらい行ったとこに、よう俺と一緒にお忍びデートする、盧笙もよく行くメガドンキあるやろ?朝5時まで開いとるやつ」 「アア…?あるなあ…?」 「そこにこのチェーンロック切れるレベルのゴツいペンチ売っとんの俺知っとるで、このチェーン開けてくれへんと俺タク呼んで今からそれ買うて来るで」 「あああああ…!完全俺 今コントのあの子やん!」 「裏話すると、俺あれ演ってる時盧笙のこと考えてたわ…」 「聞きたない…!」 「さてどないする盧笙?俺にチェーンロック切られたら引っ越す時退去料エラい事なんで、なぁ?どないする?」 「ウッ………」 「…そうや、それでええんや盧笙…1人で怖かったな……ささちゃんが今夜は抱っこして一緒にねんねしたるからな…」 「………」
《ピッ》 《シュンッ》
「…盧笙…ヒプノシスマイクはアカン…部屋、壁とか傷つくで…めっちゃ退去料掛かんで…」 「ウッ…うう…」 「盧笙……ッ!アカンアカン!盧笙!俺的には全然ええんやけど、俺に怪我、骨折させたら盧笙に事務所から賠償金請求…」 「うう…っ…俺は…俺は無力や…!……明日朝一であっこの、スーパー前の宝くじ売り場行って売り場の宝くじ買い占めるしか道、ないんか…?」 「盧笙……番組始まったん20時やろ?で今22時過ぎや…どんだけ飲んだん…?」 「ビール2缶と零が置いてった獺祭……」 「めっちゃ飲んだなあ…気持ち悪ない?ささちゃんが介抱したるからとりあえずリビング行こか…」 「そお言うてお前、リビング座った俺の真後ろでニタァ…って笑うんやろ…もう嫌や…!」 「せえへんって真正面からぎゅうしたるから」 「そお言って抱きしめながらニタァ…するんやろ…!!」 「せえへんって!盧笙の前ではいっつもニコニコササちゃんやろ?」 「………ウン…」 「1人で怖かったなぁ、大丈夫やからなあ〜俺が一生怖いもんから守ったるからなあ〜」 「うう…でも俺もお前守りたいねん…」 「盧笙…」 「でもお前が怖いストーカーやから俺どおしたらええねん…」 「盧笙そもそもあれコントやから、な!」 「合鍵…」 「これは愛や、ストーカーちゃう」 「ニタァ…せえへん?」 「せえへんよぉ〜〜!!」
「簓さん、レギュラー降板したいって何言うてるんですか。今日日コント番組なんて珍しいんですよ!!あんなに決まった時喜んでたじゃないですか!それにあのストーカーのコント大評判で、新境地言うて、ドラマ出演、俳優としてやってくのもアリかもって番組のディレクターさんと話してたとこですよ!」 「…降板はまあ…確かに無理、難しいのはわかてる、俺も悪手なん分かる…けどあのストーカーコント、シリーズ化するって言うならもうそうするしかないねん…どっちかや…もうアレだけは演じられへん…」 「何言うて…めっちゃ最高の演技やったやないですか!リアルすぎて、スタッフみんな冷や汗かいたって好評やったのに…!」 「とにかくもうアレは演じられへんのや…!!………てか、そもそも、アレ、再現エピソードコント言うテイやけど、絶対作り話やし、あのオチのどこがオモロイん?怖いだけやん」 「簓さん…コント番組が迷走するのはよくある話やないですか…」
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efwpo · 3 years
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モーニンワールド
「…夢ん中で…てなんか俺…雑誌の付録?…ピンナップ見ててん…」 「おお…おはよう…」 「ピンナップ……盧笙がな…知らん女とせくしぃに横たわって笑てた…あの女誰やねん…」 「どういう状況やねん…」 「でも髪緑やった気がする女…」 「じゃあお前ちゃうんか…?」 「そもそもアレ、見てたヤツ、男の髪色紫やったか不安なってきた…」 「じゃあ誰やねんそれは…」 「……起きたない…」 「アラームなったからあかん。眠いけどなあ…」 「…………寝起きで眠うてオモロいことなんも浮かばんでごめん…」 「せやなあ、最近顕著やなあ、まあええと思うで、ええよ」 「………すき…盧笙……愛してる…ッ!」 「んな事言うぐらいハッキリしてきたら起きい!!!!」 「照れ隠し?」 「…」 「った!朝から盧笙のツッコミ効くわ〜盧笙ツンデレちゃんやねえ、可愛い〜」 「いや、悪いけど照れてへんしツンデレやないしいつでも不法侵入で訴えてええんやでこっちは。着布団干したいし洗濯回したいからはよどいて」 「借りたこの部屋着は持って帰ってええや…ッタ!!!髪抜ける抜ける!」
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