Tumgik
070-xxxx-xxxx · 5 months
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一生
その男の腕の中で目覚めるのが好きだ。柔らかい毛布に包まれ、程よい重さと心地よい落ち着く彼の香りが鼻腔を擽る。じんわりと布越しに伝わる体温が愛おしくて自然と頬を擦り寄らせてしまうほど、この時間が好きで好きで堪らない。
長く濃いまつ毛は伏せ、未だに夢の中にいる彼を起こさぬように僅かに乾燥した彼の唇を舐める。人より浮腫みやすいと気にする男は確かに朝は少しばかり顔が丸い気がするのだが、それはそれで可愛いと自分は思う。後に"気にしてるんですから言わんといて"なんて怒られてしまいそうだけれどそればかりは仕方ない。そのまあるい頬を口に含んで歯を立て食べてしまいたいとさえ思うのだから寧ろ、無くなってはいけないものだ。塩分なんか控えさせてたまるものか。
冷たい外気に触れている男の頬は触れると冷えていて寝起きの火照った身体にはちょうど良い。体温を分け与えるように指を滑らせ擽ってやれば眉根を寄せ擽ったそうな表情をする男が愛おしくて仕方がなかった。起きて欲しいと思う反面この時間が永遠に続けばいいとさえ思うほど溺れている。
ふと、自分の名を呼ぶ掠れた心地よい声が鼓膜を震わす。まだ開ききらない眠たそうな目は何度も瞬きを繰り返し己の姿を映してるのか否か分からない。普段は気恥しさから頑なに逸らしてしまう瞳も、この時ばかりはじっと見つめてしまう。視線が交わった瞬間、柔らかな表情を浮かべ嬉しそうに鼻を擦り寄せてくる男が好きだから。一生、なんて言葉昔は苦手だったのに、この男を"一生"自分のものにしたいと思ってしまったのだから皮肉なものだ。
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070-xxxx-xxxx · 7 months
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特等席で眠る
膝の上で眠る愛おしい犬を撫でていた。耳はぺたんと倒れ、機嫌良さそうに揺れるしっぽを見せつけながら時折掌に擦り寄って来る姿はいつだって可愛い。ここは彼の特等席なのにも関わらず、未だに一度俺の顔を伺って"良し"を貰ってからしか乗ろうとしない。曰く、無意識だそうで。根っからの犬気質なのか、なんなのか。 普段の姿からは想像出来ぬような柔らかな表情を浮かべ、今にも溶けだしそうな瞳は一時も逸らすことなく己を映していた。
『……そんな見つめられたら恥ずかしいんやけど。』
「…………。」
『わかった、わかったから。寝るまでは許したる。眠なったらちゃんと目ぇ閉じなあかんで。』
理解したかは定かではないが、犬はこれがお気に入りらしい。元より人の顔を見つめてくるのは常で、飼い主の少しの違いでも見つけてしまえば鼻を寄せ"これはなんだ"とでも言うように咎めて来る。目敏く小さなものでも指摘してくるものだから、自分以外の匂いや噛み痕を見つけた時にはどうなってしまうのだろうか。まあ、愛犬意外に触るのも噛まれるのも勘弁したいところなので実行に移す気すらないのが現実なのだが。
そんな考え事をしていると、膝の方から寝息が聞こえ始め先程までこちらを見つめていた瞳は瞼に隠されてしまっていた。自分より先に寝るなんてことは滅多に無いものだから急いで自分の携帯を探して寝具を撫でる。ぱしゃり。あ、可愛い。誰に見せることもない写真フォルダ。昔から可愛くて大切なものは隠して誰にも見せず触れさせない。いつか"閉じ込めてしまいたい"なんて言った俺に"貴方になら何されてもええですよ"と笑いながら言った犬を思い出した。
本当にこの家から出ることも出来ず、頑丈な首輪に鎖なんてつけられてしまったらどんな反応するのだろうか。ああ、でもきっといつだって従順な俺の犬は「わん。」と鳴くのだ。
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070-xxxx-xxxx · 10 months
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何度生まれ変わっても君を
ある一人の男に出会った。黒髪の、好青年と表すのが正しいのだろうか。そんな彼が僕に一番最初に零した言葉は『薄情な僕の言葉はあまり信じないでください。』であった。そんな、出会い頭に自分は薄情だと宣言してくる人間が面白く、半場興味本位で手を伸ばしたのが始まり。今思えばこの出会いの瞬間から僕は君に惹かれていたのかもしれない。月日は流れ、彼の隣に居ることが至極当たり前になった。信じるな、と言われたことなんて全て忘れ君に心酔していた。来世、なんてものまで約束をして。
『必ず、探し出すから。』
朝日が眩しい、いつだって目覚めては隣に居ない誰かを探して掌がシーツを這う。勿論、誰かがいた形跡なんてなく冷えた無機質が拡がるばかりでそれを嘲笑うかのような外の蝉が煩く鳴いているのをただぼんやりと聴いていた。君を探し始めて何度目の夏だろう。その君の顔も声も性別さえも分からないのだけれど、自分のかけがえのない何かであったことは確かである。甘く溶けるような声音で僕を呼んでは、ゆっくりと頬を撫でるその手が好きで仕方がなかった。壊れ物を扱うかのように優しく包み込む身体が、恋しい。
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070-xxxx-xxxx · 10 months
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補足
前回の独り言から、飼い慣らしたい、優位にたちたい訳ちゃうって言うたんやけど、上から目線で来られるんはむちゃくちゃ嫌いやから「抱かせてください。」て足元に擦り寄られるんが一番興奮する。(前回の言葉嘘やん、て?それとこれとは別。こっからは俺の癖の話。)どうしたって力も体格もお前のが優位やのに、恥を忍んでまでオネダリをしに来てくれる姿が可愛くて愛おしくてしゃあない。
目ぇ見開いて、息荒らげて、いかにも俺しか見えてへんって状態で待て、ってさせたい。今にも泣きそうな顔で眉垂らして懇願する様子とかほんまに堪らへん。グズグズやなあ、て笑って撫でてやれば「誰のせいやと思うてるんですか。」って怒られるんも一興。首輪やって、噛みちぎれるはずやのに律儀に付けて俺の前ではええこなわんちゃんで居ろうとするのがええなあ…って。ね、後で好きにしてええから今は俺の言うこと聞いてや。ちゃんと最後まで出来たら褒めたるから。『上手に種付け出来てええ子。』いうて。まあ俺、男やから孕まへんけど。
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070-xxxx-xxxx · 10 months
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3回まわって、わん。
服の裾を握って、『行かんといて。』って言うた俺に面倒くさそうに顔を歪め、ああだこうだと理由を並べては、出て行った奴はどんな顔やったっけ。そんなことをされた数ヶ月後、色んな匂いを漂わせながら帰ってきては、やっぱりお前しか好きになられへん、なんて手を伸ばしてきたのを覚えてる。お前が好きなんは、従順な自分を好きでいてくれる玩具やろ。出会った当初、嘘が嫌い、ていうて俺の顔を殴ったんはお前ちゃうの、ほんなら俺はお前のこと原型が留められへんくらい殴ってええんやろうか。そんなことを思い出していたら、目の前には怪訝な顔をした可愛い子が不思議そうに首を傾げていた。
「誠也くん。なに、考えてるんすか?」
『んー?なんも考えてへんよ。』
「ふぅん、そうは見えへんけど。教えてくれへんの、俺には。」
『…なあに。お前しか、って言葉、心地いいもんやけれど実際問題信じられへんよなあて思うてただけ。』
「何、俺への当て付けか何かですか?」
『あはは、どうやろ。自分に言い聞かせてるだけかもしれん。』
「…じゃあ、俺は今貴方しか見えてへんので。貴方も今は俺しか見ないでください。これやったら信じてくれます?」
『可愛ええなあ、そうやって必死なんが可愛くて愛おしい。』
「…求めてた回答とちゃうんやけど。」
拗ねたように唇を尖らせて、俺を見下ろす姿は犬のようで可愛らしい。まあ、してる行為自体は可愛いもんとちゃうんやけど。あまりに意地悪し過ぎると機嫌損ねてまうからこのくらいにしておかなあかんな、とお詫びに頬に指を滑らせては相手の唇を奪う。あ、嬉しそうなん可愛いなあ。
分かりやすく尻尾を振ってくれる犬は可愛い。表情や行動に好意が滲み出るから、安心する。好きなタイプは犬みたいなやつ、って言うんは飼い慣らしたいわけでも、自分が優位に立ちたいわけでもなくてただただ安心したいだけ、てのが本音。
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070-xxxx-xxxx · 1 year
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📞 不在着信
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