LEC weekly review / week 9
はじめに
LECはいよいよSpring Splitの全試合を終えた。フランチャイズ化に伴い大幅な増資と選手の補強、新たなチームの参戦や一度は降格した名門の復帰など様々な話題に満ちた新シーズンも一つの区切りを迎えることになる。新シーズンに波乱はつきものだが、各チームがどのような決着を迎えたのか、プレイオフに進出したのはどのチームとなったのか。Week9を振り返る。
Week8終了時点での順位表はこちら。
写真:公式Flickerアルバムより
以下試合の結果を含む。
Day1
MSF vs SPY
MSFはヨリック、ルシアン、リサンドラと強力なレーナーを揃えて序盤からリードを取りに行く狙いの構成。対するSPYはアジールやヴェインなど終盤のスケールを重視した上で、相手のダイブへのカウンターとなるポッピーをトップレーンに送る、完全に集団戦狙いのチームとなった。ヨリックのスプリットプッシュを確実なものにするために、MSFはトップレーン重視の試合を作る。MSFからすると他のレーンは序盤有利が確定しているので、対面のポッピーを潰すという意味でもまずはトップという展開である。しかしSPYも狙いを読み、さらにポッピーはスキル構成がガンクに対して有効なチャンピオンなため、圧倒的な差で押し込むという展開には至らない。それでもレーンのマッチアップとしては有利なMSFに対してSPYが耐えるという展開が続く。転機はMSFがバロン獲得を狙ったタイミングで、バロンピット内に入ったMSFのチャンピオンたちをアジールが一気に撃破。さらにバロンをスティールしてSPYが一気に逆転した。30分を越えて装備の整ったアジールとヴェインがその火力を発揮して最後はSPYが勝利する。MSFはプレイオフ争いから脱落となった。
SK vs RGE
ケネンやルブランといった相手に入る動きでダメージを出すチャンピオンを主軸としたSKに対し、RGEはジャーヴァンⅣやリー・シン、シンドラなど交戦拒否能力のあるチームを構築。序中盤はリー・シンのガンクが的確に機能し、シンドラがルブランを抑えることでRGEがリードを作る。しかし、ゴールドの有利を決定的な差(バロンやインナータワー)に還元できずに、トリスターナの装備が整う時間帯まで試合が伸びてしまう。終盤はケネンとトリスターナの火力がRGEの前線を粉砕し、SKが逆転勝利を収めてプレイオフに向けて大きな一歩とした。
FNC vs G2
序盤に強力なボットレーンとスケールに期待できるミッド&トップ、そしてカーサスジャングルという構成のFNCに対し、G2はボットにカシオペアを置き、トップはライズ。そしてターゲットBANが重なったCaps選手はなんとゼドを選択。形としては1-3-1狙いというチームを作った。試合は序盤にG2の赤バフへのインベードを成功させたFNCがそのままボットレーンに圧をかけてガンクに成功、そのリードをさらにミッドでも広げていく形で進んでいく。G2もトップレーンでGPをガンクしてライズを育てようとしたものの、Bwipo選手が上手く耐えてゴールドを渡さない展開で終盤までつなげる。それでもG2はネクサスをギリギリのところで守り、さらにはFNCとの集団戦に勝ってバロンの獲得から巻き返す凄まじい粘りを見せた。さらに試合時間を延ばしたところで、G2はエルダードレイクの奪い合いの中でFNCの裏を完全に突いた反撃を届かせ、獲得ゴールドで逆転してみせた。誰もが固唾を飲んで見守っていたこの試合、最後は予���もしなかったすさまじい幕切れを見せ、FNCがG2に対して勝利した。
XL vs VIT
XLは前半のピックでルシアン、エイトロックスと序中盤から強力なチャンピオンを揃える。対するVITもブラウムやエレクトンを選択して押し負けないレーンを整える。後半のピックでXLはヤスオ&グラガスを確保し、一方のVITはカーサス、ヴェインと終盤のスケールにも対応するチーム構成を作った。最序盤はミッドレーンのヤスオvsアカリでXLのヤスオが有利な戦いを繰り広げるが、中盤でVITはトップとミッドがレーンスワップ。有利なマッチアップで逆にVITがキルを回収する展開となった。しかし十分な差ができたと判断したのか、VITはマッチアップを最初の形に戻して試合を展開。しかし、ヤスオが合わせやすいノックアップ持ちが揃ったXLによるキャッチでVITは思うような戦闘を展開できず、主導権を失ってしまう。バロンを巡る攻防にXLが勝利してバロンを獲得、そのまま試合を決めた。
S04 vs OG
S04はジャーヴァンⅣ、エリス、リサンドラとがキャッチから仕掛けたい構成。一方の、OGはカイトできるエズリアル、ディスエンゲージが得意なブラウム、ポッピーにくわえて、乱戦になれば絶大なAoEダメージを出せるスウェインと完全にカウンターを取れる構成。S04は先手を取ろうとするものの、逆にタイミングを寸断されてOG側が各個撃破する形になってしまう。序盤からのスノーボールに失敗してエリスが存在感を失ってしまったこともあり、中盤以降はほぼOGが試合をリードする形でOGが勝利した。
Day2
G2 vs MSF
互いに序盤から積極的にリードを取りたいボット、キャッチも1vs1もこなせるトップレーン、ガンク重視のジャングル、高火力のミッドと似通った動きが狙いの構成で両チームが激突した。MSFはスキルセット上有利なミッドレーンのシンドラがG2のゾーイを抑えるが、G2もレク=サイがガンクを決めてトップ/ボットでの優位を作っていく。MSFのエリスもガンクを成功させ、全体的にキルの多い荒れた試合展開が序盤から続くが、レーナーのゴールドが多いMSF側がジワジワと有利を広げていく。レク=サイの賞金をシンドラが獲得し、さらにインファーナルドレイクを得��MSFが火力の高さでG2を圧倒するようになると、キャリー陣の機動力に乏しいG2は戦うことが難しくなってしまった。そのままMSFがリードを広げて勝利を収めた。
RGE vs S04
RGEはジェイス、S04はヨリックで共にサイドレーンを押したい構成。残った4体はRGE側が単体のキャッチと長射程のアルティメットで1-3-1を強く狙う構成。S04も似たような形だが、ジャーヴァンⅣやリサンドラを選択しているため、まとまってぶつかるならS04側に分があるという構図で試合が始まった。S04はプレイオフ進出の可能性を残すために絶対に勝ちたい一戦である。レンジ差からトップレーンで有利を取り、S04のボットガンクにカウンターする形でヘラルドを獲得、さらにジェイスを加速させるという所まではRGEが有利なゲームを展開させる。しかし、S04の外側タワーを破壊した辺りから、育ったS04のヨリックを潰そうとする動きにリソースを割きすぎてカウンターを受ける状況が目立ってくるようになる。多人数のぶつかり合いであれば装備の揃ったカイ=サが圧倒的な火力でRGEを殲滅。RGEがリードを手放すような形ではあったが最後はS04が逆転し、タイブレークへと望みを繋いだ。
VIT vs SK
ミッドのライズをサイドレーンに送ってコントロールを取り、残りのメンバーは序盤からリードを取りやすいチャンピオンで揃えるいつものスタイルを貫くVIT。対するSKはレク=サイとリサンドラで、極めて強力なガンクを仕掛けられるミッドレーンをセットアップした。ボットレーンは終盤の戦闘力が極めて高いジンクス、トップはWerlyb選手が得意とするジャックスとした。こちらも1-3-1を重視した構成である。試合はSKがミッドレーンを激しく攻めてライズを抑え込み、特にSelfmade選手のレク=サイはスノーボールしていく。ミッドおよびジャングルを抑えられたVITはサイドレーンを押すことも難しく、少し無理な押し上げを計ったタイミングを咎められてしまう。最後はSKが鮮やかなキャッチから一気にネクサスの破壊まで持ち込み、LEC最速の勝利とタイブレークの権利を勝ち取った。
XL vs OG
XLはヨリックを軸にサイドレーンを押していく構成。ボットにカリスタを取れたので4人の部分の集団戦能力も悪くないラインナップとなった。一方のOGは9.5では安定のミッドとされるXLのリサンドラに対して、Nukeduck選手がまたしてもスウェインをピック。キャッチ手段を複数持ち、集団戦も強烈な範囲ダメージを出せるメイジを並べているため正面から当たれば相当な火力が見込めるチームだ。
試合は射程差でトップ・ミッドはOGが有利。ボットレーンはOG側が非常に慎重な試合運びでXL側のガンクをいなして、次第にゴールド差を作っていくという展開を見せた。XLはOGのバックラインを脅かす手段が無く、集団戦でのダメージ量という点でOGを打倒すには至らなかった。
FNC vs SPY
FNCはキャッチ能力を重視してゾーイやスカーナーといったチャンピオンを揃え、ヴェインが順番に相手を粉砕する構成。SPYはリサンドラ、ランブルとより範囲にダメージを出せる構成を用意、ADCはドレイヴンと序盤からリードを取りに行く形を狙った。ドレイヴンが先行すれば戦闘を繰り返してスノーボールしようというチームである。実際の試合ではFNCのヴェイン&ブラウムのラインが極めて強力に機能しドレイヴンを圧倒、トップ側もFNCのジャーヴァンⅣがリードを広げる。そのまま視界を広げ、各オブジェクトを着々と回収する試合運びでFNCが勝利した。
タイブレーク
SK vs S04
SKはADCのトリスターナをフォローしつつポークも可能な構成。対するS04もケネンやカイ=サ&スレッシュといった自信のあるピックにプレイオフ進出を託す。各レーンとも射程の上ではSKが有利だが、全体的に耐久力に難のある構成なため、S04のジャーヴァンⅣによるガンクによって差を埋めるという五分の展開が中盤まで続いた。しかし、バロン周辺の視界を巡る戦闘でS04の寄せが遅れた一瞬を突き、SKがキルとバロンを確保する。トリスターナが成長したこともあってそのまま試合を決めきった。
プレイオフ出場チーム評
SK(9-9)
LEC復帰の初シーズン、Week9にきっちりと勝ち数を重ねて最後はタイブレーク勝利とドラマチックな形でプレイオフへと進出してきたSK。各レーンがいずれも十分な戦闘力を持っているので、チームとしての仕上がり次第という事になるだろう。その点でWeek9はSelfmade選手が活躍できていたのはプラスだ。初戦はSPY、こちらも春からほぼ刷新したロースターのチームとの戦いとなる。
VIT(10-8)
VITはWeek7までは好調で一時は2位を確保していたものの、終盤に3連敗と調子を落として5位という結果となった。他チームの仕上がりや、試合が長引きがちな環境において少々苦しんでいるようにも見える。攻撃的なスタイルが持ち味だが、調子という点ではプレイオフ前に一度は勝っておきたかった。初戦は8連勝で順位を上げてきたFNCということで、激しい当たりあいを制して調子を取り戻したい。
SPY(11-7)
ストーブリーグの間にロースターを一度解散し、事実上の再結成となったSPYだが、期待の新人Humanoid選手をはじめとしたロースターは当初の予想を大きく上回るパフォーマンスを発揮した。特に後半戦は4連勝と、ロングゲームに強いという結果を出している。スケールに優れたチャンピオンをピックし、得意とされる視界管理を確実に行えば勝機が見えるだろう。
FNC(11-7)
3勝7敗の状況から8連勝で一気に3位まで浮上してきた。Nemesis・Broxah両選手のラインが仕上がってきたこと、環境がマークスマンに有利な長めの展開にスライドしていったという辺りが好材料だ。何より勝ち続けて勢いに乗っているというのは大きいだろう。とはいえ初戦の相手は強豪VIT、楽な戦いにはならないだろう。
OG(12-6)
NAから帰還したMithy選手が注目されたLEC復帰チームの一角だが、終わってみれば最後は6連勝で2位と素晴らしい結果でレギュラーシーズンを終えた。新ロースターとは言うものの、メンバーは非常に充実していた。ADC以外の4人はいずれもWCS出場経験を持つ実績のあるプレイヤーであり、特にMidのNukeduck選手はLECでも随一の経験の長さと豊富なチャンピオンプールを誇るベテランなのだ。そして若手の注目株だったPatrik選手が期待とおりのパフォーマンスを発揮できる現状であれば、この順位も納得である。
G2(13-5)
豪華すぎるラインナップ、Perkz選手のボットコンバートなど話題に欠かなかったG2は、当然のように1位でレギュラーシーズンを終えた。終盤はMikyx選手の故障や、2位以上が確定したことから選手の健康管理を優先してパフォーマンスが一時期よりも下がるといった点はあったものの、集団戦で見せる強さは相変わらず脅威だろう。Round2までにどの程度コンディションを戻してくるのか、OGと戦うのに不足の無い状態でステージに上がれるのかは気になるところだが、復調すれば2016-2017頃のように圧倒的な強さを見せてくれるだろう。
プレイオフのフォーマットについて
LECのプレイオフは他の地域と異なる方式なので簡単に解説する。まず共通事項として、各マッチ自体はBo5で行われる。そして決勝戦へ出場するための手順だが、こちらは1-2位と3-6位で若干条件が異なる。1週間ごとに進んでいくラウンドに合わせて順に説明する。
ラウンド1.FNC (3位) vs VIT(5位)、SPY(4位)vsSK(6位)の2マッチ
ラウンド2.ラウンド1の勝者2チームの対戦、G2(1位) vs OG(2位)
ラウンド3.3-6位の4チームから勝ち抜けた1チーム vs 上位チームのマッチで敗れた側
決勝. ラウンド2の上位チーム対戦で勝利した側 vs ラウンド3勝者
という事で、1-2位のチームはラウンド2で一度敗れてもラウンド3に進んで敗者復活戦のチャンスがあり、3-6位のチームは全て勝ち上がる以外に決勝へ進む方法は無いという形式になっている。
初戦は3月29日深夜から、新たなリーグとなった欧州で最初の王冠を掲げるのがどのチームになるのかを見届けよう。
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裕の誕生日
この小説は同好者の間だけで楽しむために作られた二次創作の小説です。
原作者様とは一切関係ありません。
本編のネタバレ、及び各キャラクターのルートネタバレを含みます。
メインキャラクター5人のルートが終わってない方は読まない事を推奨します。
世界観等への独自解釈アリ。
定晴さんトゥルーED後の妄想。
定晴さんトゥルーED後と言いながら定晴さんが殆ど出てこない罠。
裕の誕生日パーティーしようぜ!いえーい!的な。
同年代組がわちゃわちゃしてるとこが書きたかったんですよ!!!
裕の誕生日
・・・初めて打波島を訪れて約一年。
蛭子の干渉がなくなり、その庇護下から離れた打波島はその豊かさを失いつつある。
けれど、それでも島の人達は今を生きるため少しずつ前に進んでいる。
禍月もなくなり、月狂いの性質もほぼ鳴りを潜めたようだ。
生活にも変化が現れ、禍憑きだのなんだのと言った差別も表向きは解消されたようだ。
さて、そんな打波島の景観はというと一年やそこらで大幅に変わるわけでもない。
が、明らかに以前より様々な建物が増えているのがわかる。
どちらかと言うと建設中のものが多い、という印象か。
急激な変化も軋轢を生むとの事で、尊久さん主導のもとゆっくりと生活の近代化が進められている。
これは元々尊久さんが行っていた事業でもあり、その点に関しては特に問題は無い。
潮の結界が無くなったため島から本土へ足を運ぶ人が多くなり、文明開化さながら色々な情報が飛び交っている。
そんな変化を始めた打波島に、俺は再び足を運んでいた。
色々あったし、母さんの一周忌くらいはキチンと島で迎えたかったのだ。
とは言え、お寺の住職がいるという事もなく、立派な墓があるわけでもない。
簡単な墓参りみたいなものだ。
そんな訳でちょっとだけ大学を休みつつ、俺は連絡船に飛び乗ることになった。
泰蔵さんとはちょくちょく連絡を取っていたためそこまでそこまで目新しさは無かったが、この一年間島と本土を恐ろしい頻度で行き来していたのを知っている。
曰く、「一年の1/3は船上の生活だった」とかなんとか。
それが比喩なのかどうかは分からなかったけど、去年会った時より若干やつれたような印象を受けたのも事実だ。
本当に忙しかったのだろう。
島に着き、伯父さんと崇と一年ぶりの再会。
崇は少し背が伸びており、成長期に入ろうとしていた。
学校にも通い始めたようで楽しくやっているようだ。
屋敷に再びお世話になりつつ、三人で母さんの墓へと赴いた。
読経を上げるわけでもないが、墓の前で皆で腰を下ろす。
持ってきた弁当を広げながら、伯父さんから母さんの思い出を聞き、崇の近況を聞き、俺の近況を話す。
本当にただの墓参りの光景だった。
前より本土との行き来が楽になったとはいえ、あまり島に長居するわけにはいかない。
以前お世話になった人たちに挨拶回りをして島内を移動する事約一日。
体力を使い切った俺は屋敷の部屋で突っ伏していた。
「むり・・・もう歩きたくない・・・」
「何だよ、向こう帰って軟弱になったんじゃないか?裕」
「俺は元々都会のもやしっ子だっての・・・。常に体力持て余してるお前らとは違う生き物なんだよ・・・」
突っ伏す俺の横で千波がからからと笑う。
千波もあの後色々とあったようで中々大変だったようだ。
最近はその状況も少し落ち着いたようで、何度か本土の方にも足を運ぶ機会もあったようだ。
「で、明日には帰っちまうのか」
「まぁな。大学自主休講してこっち来てるわけだし長居するわけにはいかないよ」
明朝には島を離れ、夕方には本土に到着予定だ。
潮の結界が無くなったおかげで迂回するルートを使う必要が無く、片道6時間足らずで動けるようになったのは本当に有難い。
「なぁ、裕!」
「ん、どうした?」
「お前、もうちょっとで誕生日だろ?誕生日ぱーてぃーしようぜ!」
「確かにそうだけど・・・俺本土に帰るんだぞ?」
唐突な提案に面食らいはするが、そもそも自分は明日には本土に帰るのだ。
この様子だと今からという事でもなさそうだ。
その辺をわかっているのだろうか。
「おう!だから、俺も一緒についてくぜ!」
「・・・はぁ!?お前、漁はいいのか?」
確かに島の住民は本土に出れるようになったし、千波も数回本土に来たらしい話は聞いている。
だが、こいつの本業は漁師だろう。
そんなホイホイ島から出ても良いものなのか。
「おう!実は、父さんから内地での用事を頼まれててな。薬だの医療器具だの色々受け取りに行かなきゃいけねんだ。そのついで、ってワケじゃねえけど」
成程、耕��先生のおつかいか。
あの人の事だからそれにかこつけて千波が本土に来る機会を作ってるんだろうとも推察できる。
「・・・やっぱ、ダメか?」
不安そうな、しゅんとした雰囲気を出された顔をされて無下に扱える程俺は人でなしではない。
そもそも、向こうが厚意で祝ってくれると言っているのだ。嬉しくない筈がない。
「・・・いや、嬉しいよ。千波がいいって言うならありがたく祝ってもらおう!」
「いよっしゃあ!辰馬にはもう連絡して約束してあんだ!」
嬉しそうに叫ぶ千波。辰馬にも連絡済みと来た。
そんな話は聞いてないけど・・・辰馬の事だ、秘密にしてたってところだろう。
「用意いいな・・・。辰馬も来てくれるのか」
「へへ、デンワって便利だよな!連絡したら即決で乗ってくれたぜ。よっぽどお前の誕生日祝いたかったんだろうなあ」
「まぁ・・・去年はそれどころじゃなかったしな」
電気が広く普及し、文明の利器が入り始めた打波。
新市街等一部の施設にはあった電話も、だいぶ広く普及したようだ。
去年の8月頃にたまたま誕生日の話になって「何でもっと早く言わないんだ!」なんて怒られたこともあったっけ。
あの時は母さんの事や島の事で自分の誕生日の事すらどうでもよくなってたからなあ。
・・・そう言えば、イザナギに誕生日おめでとうって言ってもらったっけ。
「なあ裕、洋一さんも呼ぼうぜ!勇魚のおっちゃんや海堂のおっさん、冴の姉ちゃんとかもさ!」
「ちょ、落ち着けって。第一、皆自分の生活があるんだからそんな急に来れる訳ないだろ・・・」
「えー・・・」
確かに旺海邸で生活したあの面々とまた一堂に会したいという思いもある。
たった2か月という時間だったが、あの人たちはそれだけの思い入れと感謝他様々な気持ちもあるのだ。
幸いそれぞれの連絡先は聞いている。
自分の誕生日という機会を使うことに若干の気後れもあるがそれはそれとして。
誘ったら、来てくれるだろうか。
そんな期待が仄かに浮かぶのも事実だった。
「わかったわかった、聞くだけ聞いてみるから・・・」
「頼むぜ裕!」
そんなこんなで各方面に連絡したが、やはりと言うか皆各々の仕事・予定がある為来ることは難しい、となってしまった。
が、大学に通い始めたという洋一さんは時間が取れるということで、俺達4人で集まる事となった。
幸いな事に今年の誕生日は日曜日という事で、土曜日から集まってそのまま夜更かしコースとなった。
「お、いたいた!おーい!洋一さーん!辰馬ー!こっちだこっち!」
当日、千波と先に合流していた俺は2人との待ち合わせ場所に向かっていた。
遠目で見てもすぐに判別の付く洋一さんを目印に、千波が声を掛ける。
「久しぶりだな、裕、千波」
「お久しぶりです、裕さん。千波も元気そうだな」
2人は千波の声にこちらに気づいたようで無事合流することができた。
島から戻って来た後もこの2人とは連絡は取っており、何度も会う機会があったのでそこまで久しぶりという訳ではないけれど。
「お久しぶりです、洋一さん。辰馬も元気そうだな!」
「ああ。裕達も健勝そうだな」
「あはは、ラガーマンは健康第一ッスからね。風邪ひいてる暇なんて無いッスよ」
「なんだよ辰馬、俺は風邪ひきそうな貧弱ってか?」
「そ、そんなつもりは・・・!いやでも、裕さん製作で結構不規則な生活してるってこの間・・・。そういう点は関心しないッス」
「そうだぞー。だから島回っただけでバテるんだぞ」
「うっ・・・藪蛇だったか・・・」
「あはは!裕、ちゃんと早寝早起き快眠快食快便は大事だぜ?」
「うむ。生活のリズムを崩すのは心身共によくない。バランスの良い食事、適度な運動、規則的な生活、これが乱れれば様々な不調が現れるぞ」
あれ、なんで俺こんな説教されてるような状況に?
今日は俺を祝ってくれるための日じゃ無かったの・・・?
「う、今日はその辺で勘弁してくれ」
「はは、裕さんの健康指南はまた今度改めてやるとして」
「先延ばしにはされたけどやるつもりなのか・・・」
意外と辰馬はそういう時スパルタだからなァ。
島に居た時の特訓を思い返す。
そういう所は一般人の限界を考慮しないと言うか藤馬さん仕込みの厳しさというか。
うん、今日はもう考えないようにしよう。不安な気持ちになって来た。
「じゃ、行きましょうか」
「おー、裕の家行くのは初めてだな!」
千波の言う通り、この面子を家に呼んだことは無かったなあと思いながら冷蔵庫の中身を思い出す。
帰って来てからもバタバタしてたからロクな物がないぞ。
「いや、その前に買い物行かせてくれ。準備する時間なかったし色々足りないから」
「ならご飯の用意も考えなきゃッスね。どうしましょうか」
今からの時間なら俺が作るのもアリか。
この面子なら皆で夕飯を作るのもそれはそれで楽しそうだ。
「あ、俺ぴざ食いてえぴざ!前に見て食ってみたかったんだよな!」
「ふむ、ピザか」
誕生日パーティーにピザ。
こう、フライドチキンとかコーラとかそういうジャンクな感じの食べ物が集まったパーティーにつきものなチョイスだ。
良いかもしれないけど家にあるオーブンで焼くには小さ目のものになってしまいそうな気もする。
それも悪くはないけれど、どうせならでっかいピザを皆でカットして食べたい気持ちもある。
「いっその事買うのもアリか・・・?」
「おー!〇ざーらか?どみ〇ぴざか?」
「いいけど、出せる金も限界があるからな」
嬉々として店を上げる千波。楽しそうでなによりだ。
だがしかし俺達は学生の身。
バイトをして収入を得ていたとしても日頃の生活だってある。
出せるお金だって多いわけではないのだ。
「いや、資金に関しては気にするな」
「え?」
「巌から結構な額の金を渡されている。巌にも裕の誕生日に皆で集まらないかという話をしたのだろう。自分は当直で行けない代わりにこれで楽しめと」
資金繰りを気にしていると、洋一さんが懐から厚めの封筒を取り出し手渡される。
渡されるままに中身を確認すると、諭吉様が・・・いっぱい。
「うわ、こんなに!?かなりの金額ポンと出しましたね。何か申し訳ないな・・・」
「気にするな。裕宛に巌からの手紙も預かっている。これだ」
「なになに・・・」
『皆と楽しくやれよ。んで、洋一を目一杯楽しませてやってくれ。それと、誕生日おめでとうさん』
(過保護かよ!!ていうか俺の誕生日ついでかよ!!)
海堂さんと洋一さんの事情は島から帰って来た後になんとなくは聞いている。
この人達はこの人達で様々な苦労をしてきたのは知っている。
本土に戻ってから海堂さんにも頼まれはしたが、暇がある時は洋一さんと連絡を取って時には一緒に出掛けたりもしている。
それはそれで楽しいし、洋一さんにとっても良い刺激になるかとは思っているが・・・。
(初めて打波島に行く時からしたらえらく変化したもんだなあ・・・。いや、良い事だな。それに、これも海堂さんなりの気遣いか。ありがたく使わせて貰おう)
去年の打波行きの連絡船での出来事を思い出しつつ、頬が少し緩む。
あの時と比べたら、皆色々と変わった。きっとそれは良い事なんだろう。
「俺も母ちゃんと父さんから幾らか持たされてるぜ!金なら心配すんなって!」
「沙夜さんまで・・・。ちょっと流石に申し訳ないな」
「うう、こういう時に沢山出せない自分が悔しいッス・・・」
「辰馬は父さんと同じ医者になるんだろ?なら医者になってその後裕に色々してやりゃいいじゃんか」
「そ、そうかな・・・」
「そうだな。その時は稼いでる筈の辰馬先生に奢ってもらおうかなー」
「なら頑張るッス!その時はまた皆で集まりましょうね!」
脳裏に浮かぶ耕平先生と沙夜さんの笑顔に感謝しつつ、今度お礼をしなければと脳内にメモする。
苦学生の辰馬が申し訳なさそうに眉を下げるが、すぐさま千波がそれを引き上げる。
こういう時千波の真っ直ぐ純粋な精神は、生真面目過ぎる辰馬をガッチリとフォローする。
光属性のメンタルは周りすらも照らし出す。
・・・プリキュ〇かな?
「そしたら後でピザー〇でも寄ってくか。持ち帰りの方が安いし」
「ピザ・・・高級品ッスね」
「確かに。なんでピザってあんな高いんだろうな」
「人件費、配送料の関係上割高になるのだろう。メニューにもよるのだろうが生地や材料の原価、それに基づく粗利率、定価から逆算しても明らかな乖離があるからな」
「だから持ち帰りで一枚タダとかやってるのか」
先に買い物をする為スーパーに向かう途中、ピザの価格について話したり。
「ビールはスーパードゥライでいいか?」
「あ、俺ドゥライ好きッス」
「裕ー!これ!俺ポテチ食いてえ!」
「ああ、いいぞ。好きなもの入れろよ。洋一さんは何か欲しいのあります?」
「えり好みはしない。任せよう」
「あ、コーラとかも買ってくか。辰馬も酒だけだとキツイだろ?」
「助かるッス」
「他のソフトドリンクも多少あった方が良いだろう。割り材にもなる」
皆でワイワイ喋りながら菓子や飲み物を選んだり。
「後はケーキか?」
「どうせならばホールで良いのではないか?」
「ホールっスか!?そんな高級品を・・・」
「いやまぁ今回は軍資金も潤沢なので・・・」
「裕、どれにすんだ?どれも美味そうだぞ!」
「うーむ・・・これは迷う」
ケーキ屋に入って色々悩んだり。
「ジューシーステーキか、アスパラベーコンか・・・」
「クォーターもアリッスすねぇ」
「洋一さん、このなげっとってなんだ?」
「ナゲットは貴金属の塊という意味もあるがこの場合はチキンナゲット、つまり鶏ひき肉に衣などをまぶして調理した料理のことだな」
「おい千波、お前が食いたいって言ったんだからお前も選べよ」
ピザー〇でメニューを前に唸ったり。
終始皆でワイワイと騒ぎながら買い物をする。
こういうノリ、大学の友人とはあまりした覚えがないからそれがまた楽しい。
そんなこんなで買い物を終えた俺達は今日の会場である俺の家へと到着したのであった。
「おっじゃましまーす!」
「お邪魔します」
「邪魔をする」
「おお、4人もいるといつもより狭く感じるな・・・」
男四人というむさくるしい図というのもあるが、辰馬や洋一さんの体格が大きいのもあるかもしれない。
決して狭い部屋ではない筈なのに、部屋の中が妙にみっちりした気分になる。
「おー、裕の家結構綺麗だな!なんかこう、裕の家!って感じ」
「なんだそりゃ」
「裕、冷蔵庫を借りるぞ」
「ええ、ケーキと飲み物はそっちに。今テーブル出しますね」
「千波。飾り付けしようか」
「おう!まかせろ」
「え、飾りつけ?そんなものまで用意したのか?」
「だって内地の誕生日ぱーてぃーはこれが当たり前なんだろ?」
「いや、そうなんだけど・・・それをやるのって大体子供じゃ」
「いいじゃないスか。折角準備したんですし、俺達がやりたいので」
「・・・じゃ、お言葉に甘えて。頼んだぞ」
飾りつけまで準備してくれた千波と辰馬に面食らいつつ、パーティーの準備にそれぞれ手を付けていく。
軽い掃除は流石に済ませているのでテーブルや食器を用意し、食べ物類と一緒に準備していく。
と、そんな時だった。
『ピンポーン』
家の呼び鈴が鳴り、何かと思い玄関のドアを開けた。
「はーい」
「こんちゃー!ノラネコヤマトです。旺海裕さんでお間違えないですか?お荷物お届けにあがりましたー!」
「・・・何か頼んでたっけ?・・・あ、ここにサインですね。ご苦労様です」
「床に失礼しますね。重量ありますのでご注意ください。ありがとうございました~!」
やって来たのはノラネコヤマト便。
特に何かを頼んだ覚えはないけれど俺宛なのは間違いないらしく受け取りのサインを記入する。
ノラネコのお兄さんはニカッと笑って礼をして去って行った。
床に置かれた大き目の四角い段ボール。
重量あるって言ってたけどどんなもんだろう。
「って重っ!」
持ち上げた段ボールはかなりの重量があり、ひーこら言いながら持ち上げる。
と、その重量が一気に軽くなる。
段ボールの反対側にはいつの間にか辰馬が来て一緒に支えてくれていたようだ。
「裕さん、大丈夫ですか。持ちますよ」
「助かる。しかし一体誰から・・・冴さんから!?」
「これ結構な重量ありますね。何が届いたんスか?」
「えっと・・・ワレモノ、酒類・・・ああ、うん。実に冴さんらしいプレゼントだ」
段ボールに貼られた依頼主の名前を見て一気に納得する。
冴さんからの贈り物、と言ったところだろうか。
誘った時に皆で集まる旨を話したので行けない代わりにお酒を、という事だろう。
辰馬に台所まで運んでもらい、早速中身を検分させてもらう。
「日本酒、焼酎、ウィスキー・・・え、これウォッカ、にスピリタス・・・?え、アルコール96%!?お、リキュール類もある。カシスにピーチにコーヒー。どんだけ詰め込んだんだあの人」
「ふむ。流石冴だな。豊富なラインナップだ」
『裕、誕生日おめでとう。誘ってもらったのに行けなくて悪いわね。代わりに私のオススメを入れたから皆で楽しんで頂戴。面白い事態になったら仔細の報告よろしくね。P.S.今度は別日に是非呼んで頂戴ね。あなたの料理が食べられなくてちょっと口寂しいわ』
(祝ってくれてる・・・んだよな、これ?)
前半部分は兎も角、後半と追伸がメインの文章に見えて仕方がない。
贈られてきたお酒もバラエティ豊かで色々と楽しめそうではあるが、どう見ても冴さん専用のお酒としか思えないものもある。
・・・これは後日お礼も兼ねてお招きしなければならないんだろうな。
「いっぺんに消費できる量じゃないな。取りあえず楽しめる分だけ使わせてもらおう」
「裕ー!こっち準備出来たぞー!」
「おー!じゃあ始めるか!」
取り合えず冴さんからのお酒は一旦しまい込み、台所から離れる。
部屋側に戻ると壁や天井、テーブルに様々な飾り付けがされており、正にパーティーの雰囲気だ。
俺の家なのに別の場所みたいだ。
「・・・凄いな」
「へへ、辰馬と一緒に頑張ったんだぜ!」
「どうッスか?中々いい感じに出来たと思うんスけど」
「ああ、これは凄いよ。ありがとうな、2人とも。さて、準備万端という事で始めようか」
「飲み物の準備もOKだ」
「千波、音頭頼むぞ」
「おう!一日早いけど裕の誕生日を祝って。かんぱーい!」
「「「かんぱーい!」」」
一斉にグラスを掲げ、乾杯。
皆でピザにかぶりついたり。
辰馬がピザにちなんだ苦労話を零したり。
ポテトのフレーバーで論争になったり。
洋一さんがナゲットをひたすら食べ続けたり。
結局食べ足りなくて俺が台所に立ったり。
俺がケーキのロウソクの火を一本消し損ねたり。
千波が初めて食べた苺のショートケーキに目を輝かせたり。
楽しい時間はあっという間で、飲んで食べて騒いでいる間に時間は0時前になってしまった。
そして。
「お、日付変わったな!というワケで、裕、誕生日おめでとう~!」
「裕さん、誕生日おめでとうッス!」
「裕、誕生日おめでとう」
「うん、皆ありがとう・・・ははっ」
誕生日おめでとう、という言葉と共にパンパン!というクラッカーの音が鳴り響く。
クラッカーから飛び出た火薬臭い紙テープが降りかかる。
そんな匂いすらも嬉しく、愛おしく感じる。
「本当にありがとうな、皆。去年の今頃はそれどころじゃなかったし」
「裕さん・・・」
「だから、凄く嬉しいよ。千波、企画してくれてありがとうな」
「おうよ!俺もまさか内地の裕ん家来て誕生日ぱーてぃーできるとか思ってもなかったぜ。ありがとうな!」
千波の笑顔がすごく眩しい。
ああ、お前は本当に良い奴だなあ。
思わず感極まって千波を抱き込んで撫でまわす。
「千波・・・。この、可愛い奴め!」
「うわ、やめろよー!」
「うりうりー!っはははは!」
「うひっ、そこやめろって!あはははは!」
一通り千波を弄りまわして解放する。
千波はくすぐったかったのか、未だに笑っている。
そんな俺達を眺めていた辰馬と洋一さんに改めて向き直る。
「辰馬も、洋一さんも今日は来てくれてありがとう。こうやって皆に祝ってもらえるなんて思いもしなかったよ」
身を正して礼を言うと、辰馬がふるふると顔を振る。
「お礼を言うのはこっちの方ッスよ、裕さん」
「島でも、島から戻って来た後も、皆お前には世話になっている。俺達が何かをして喜んでもらえるならば嬉しい」
「ええ。色々、本当に色々ありましたけど、皆裕さんには沢山感謝してるんスよ。だから、少しでもお返ししたいッス」
「辰馬、洋一さん・・・」
2人の言葉に思わず涙ぐむ。
本当に、本当にあの島に行って皆に出会えて良かった。
こんなに暖かくて、幸せで、掛け替えのない友に出会うことができたのだから。
「・・・ちょっとしんみりしちゃったな。さ、夜はこれからだ。呑むぞー!」
「おーっ!」
折角の誕生日にこんな空気は似合わない。どうせならもっと楽しい思い出にしたい。
そう思い、再びグラスを掲げようとすると辰馬がゴソゴソと動き出した。
「と、その前に。裕さん。俺達から裕さんに誕生日プレゼントッス!」
「お、おお・・・!マジか、そんな用意もしてくれたのか」
誕生日プレゼント!
俺にとってはこのパーティーだけでも十二分にプレゼントのようなモノなのにまだあるのか!
驚く俺に、辰馬は笑顔で紙袋を手渡してきた。
「俺からはコレッス!どうぞ開けてください」
「じゃあ遠慮なく、って重っ!リストバンド・・・にしては随分ゴツいというか重いような」
「リストウエイトとアンクルウエイトッス!これなら日常生活でもトレーニングできるッスよ!」
「えっ・・・?」
「裕さんはもうちょっと鍛えておいた方がいいッス。ただでさえこっちは物騒なんスから。製作作業で運動不足ぎみって言ってましたよね?これなら日常生活でもトレーニングできるし健康にも良いし、いざって時に動けるッス!」
(これ、1パーツ毎に5kgって書いてあるように見えるんだけど・・・)
「ふむ、これはいいな」
「俺の使ってたのよりは軽いですけど動きを阻害しないし吸汗性も抜群ッス!おすすめッスよ!」
ラガーマンの辰馬にはこれでも軽いくらいなのかもしれないが悲しいかな文系の俺にはかなりキツい代物なんだが。
とはいえ島で教わった武術の型は今でも継続してるんだ、基礎体力と筋力だって去年よりは上がってる筈。
折角だしこれを機に改めて鍛えてみよう。
「ありがとう、辰馬」
「どういたしましてッス」
「次俺な!俺はこれだ!」
次は千波か。
千波がそう言って取り出したのは本、本、本。
あっという間に目の前に本の山が築かれる。
「おお・・・これは・・・」
「こっち来るたび色々読んでみたけど俺のおススメ10選!特にこの『白猫ジロ』シリーズが凄い良くてな・・・!」
「あ、これ前にサキが読んでた奴ッスね。めっちゃ泣けるって言ってたッス」
10選という割には冊数が15を超えているという事は10冊ではなく10種類といったあたりか。
本の虫である千波の選んだものに外れはないだろう。これは楽しみだ。
「さんきゅな、千波」
「おう!読んだら感想も聞かせてくれよな!」
「俺からはこれを」
最後は洋一さん。
カサリという音と共に手渡されたのは小さ目の紙袋。
辰馬の時と違って随分と軽い。
「おお、これは・・・んん!?」
開けてくれ、と促されたので早速開封。
出てきたのは馬の写真がプリントされた薄く、手のひら大の黒い箱。
なんか見覚えのある形状だ。
表面には英語でデカデカと商品名が書かれていた。
「ぎがんとほーす?・・・洋一さん、これは・・・?」
「コンドームだ」
こんどーむ・・・コンドーム!?
今洋一さんコンドームって言った?
「えっ?」
「えっ!?」
「・・・?」
聞き間違いかな?と思い聞き直そうとすると、辰馬も声を上げた。
千波は言葉の意味が分からないのか不思議そうな顔をしている。
「ああ、避妊具のコンドームだ。何を贈るべきか色々迷ったのだが、実用性、希少性を鑑みてこれにした。あまり流通量が多くないのだな」
「え、あの・・・」
「以前、勇魚との性行為の際に避妊具の調達が大変だと言っていただろう。色々調べたがこれが最も頑丈且つ大きいサイズのものでな」
「アッハイ」
ああ、やっぱり聞き間違いではなかったのか。
純粋な厚意なのだろう。
洋一さんはそういう人だ。
その気遣いは有難い。有難いんだけどちょっと違うよね?
なんかこう、誕生日に贈るものとしては揶揄いとかを含むチョイスだよこれは。
海堂さんか。
海堂さんチョイスなのか。やはりあの髭親父とは一度決着をつける必要がありそうだ。
「すまん、誰かに贈答をするなど余り経験がなくてな。巌にも相談したのだが自分で考えてみろと言われてしまってな。・・・不適当だっただろうか」
まさかの洋一さん自身のチョイス。
珍しくしゅんとした表情の洋一さん。
んー!千波とは違う方向のこの純粋培養メンタル!たまんねえな!
あの髭親父とは一度洋一さんの情操教育について話し合う必要がありそうだ。
しかし、不適当どころかピンポイントで適切すぎるというか。
実際、勇魚さんとシてる時にゴムの方が持たない事はままあるのだ。
大体そのままなし崩し的に生でやる事になってしまう時も多い。
実際凄く有難いチョイスでもあるというのは流石と言うべきか。
兎も角、洋一さんの顔を曇らせるわけにはいかない。
中身にツッコミどころはあれど、俺の為に選んでくれたプレゼントなのだ。
そう思うと表情が緩むのを感じた。
「いいえ、助かります。ありがとうございます、洋一さん」
「ああ、喜んで貰えてなによりだ。今後誰かに贈呈する時の参考にもなった」
「次は俺も手伝いますよ!何なら巌さんにも相談しましょう!」
「む?・・・ああ、そうだな。そうしてくれると嬉しい」
次なる犠牲者を増やすわけにはいかない。
そんな思いで食い気味に洋一さんに協力を申し出ると、案外満更でもなさそうに洋一さんも笑う。
海堂さん、後でちょっとお話ししましょう・・・。
そんなハプニング?もありつつ3人からのプレゼントを受け取り、自分の机に一旦置きに行く。
戻ってくると、辰馬がもう1つカバンから何かを取り出した。
「その、裕さん。あの・・・兄さんとおじいさんからも預かってるッス」
ちょっと顔を曇らせながらも辰馬がごそごそと取り出したのは風呂敷に包まれた箱のようなもの。
・・・来た。来てしまったか。
「なぁ辰馬。これって・・・」
「兄さんとおじいさんから裕さんに、と。その、誕生日プレゼントらしいッス」
「お、おう。ありがとう・・・」
いやね、今日辰馬に会った時から感じてはいたんですよ。
あの島でも感じたビリビリとくる感覚というかエネルギーというか。
明らかにヤバげな物を辰馬は持ってきているな、と。
気付かないふりをしていたけど出された以上は避けることは不可能。
辰馬自身もそれを感じとっているのだろう。
こう、何とも言えない表情がそれを物語っている。
しゅるりと風呂敷を解くと、中にあったのは厳重に封をされた桐箱。
「おおー。何か凄そうだな!」
「こういった贈り物も趣きがあるな。参考になる」
千波と洋一さんが無邪気な感想を言っているがこっちはそれどころじゃない。
藤馬さんとおじいさんの贈り物だ。変なものでは絶対ない。
純粋に俺を思って贈ってくれたものなのはわかる。
わかるのだが、あの人たちの好意というか善意を本土基準で考えてはいけない。
(ええい、ままよ!)
意を決して桐箱の蓋を取る。
と、箱から突風が吹いたような衝撃を受けた。ような気がした。
「うわっ!」
「おい裕どうした!?大丈夫か?」
「お、おう。大丈夫だ、ちょっとびっくりしただけ」
叫び声をあげた為千波に心配されつつ、呼吸を落ち着ける。
大丈夫、大丈夫だ。
自分にそう言い聞かせつつ桐箱の中を改めてのぞき込む。
「これは・・・」
「勾玉、か?御守のようだが」
中に入っていたのは小さめの勾玉。
ぱっと見は御守やアクセサリの類に見えるものだ。
淡い水色をしているが、光の当たり方では赤い色にも見える気がする。
が、問題はその中身というか性質というか。
箱を開封した瞬間、部屋の中の空気が一気に清浄化されたのが理解できた。
「裕さん、これ・・・」
「うん・・・これはヤバい。いや、確かにこれは凄まじい御守だわ・・・」
辰馬も少なからず感じ取っているのか圧倒されている。
そうだよね、そう思うよね。俺自身もヤバイと思うもん。
これ、あれじゃん。ヒヒイロカネじゃん。
島に居た時適当に採掘してたら出てきたヒヒイロカネの欠片。
いつ��ったかテンションがおかしかった時の細工に使ったけど、余った分を海皇神社に奉納したんだった。
『裕殿の誕生日と聞き、おじいさんと共に贈り物を用意させて頂きました。これが裕殿にかかる厄を祓ってくれるでしょう。機会がありましたら、また島に遊びに来てください。裕殿の息災を願っております』
『御子殿、ご生誕の日誠におめでとうございます。何か贈り物を、と思い以前御子殿が神社に奉納してくださったヒヒイロカネの欠片を加工して御守をこしらえました。これが御子殿を災いから守ってくれるでしょう。どうぞ息災であられますよう』
はい。ありがとうございます。
お気持ちは嬉しいです。本当に。
けど・・・。
(・・・重い)
何というか、思いが重い。
ギャグで言ってる訳じゃないよ?
給料3か月なんてレベルじゃない。下手すれば一生ものの贈り物だ。
いやでも元々は俺が採掘したものが材料だしいやでもこれはちょっと洒落にならんブツというか。
色々な考えが頭の中を駆け巡り、俺はやがて考えることをやめた。
「取り合えず、普段身に着けるものに入れておこう」
「そ、そうッスね・・・」
余談ではあるが、この御守を貰ってから島に居たときのように『勘』が鋭くなった、ような気がする。
島に居た時に聞いた、ヒヒイロカネの『勾を増幅する』というその性質。
本土にいてもその性質は有効なのか、虫の知らせというか直感というか。
明らかに日常における危険というか災難が減ったと言いますか。
・・・凄いな、コレ。
色々衝撃が走ったけど仕切り直して改めて乾杯。
ここからは本格的にお酒も解禁だ。
冴さんから貰ったお酒たちもさっそく開封させてもらおう。
「これだけ種類があればカクテルも色々作れるな」
「幅広く使えるリキュールの種類。入っているのも甘めのものが多い。流石冴だな」
「なぁ裕。この銀色の水筒はなんだ?」
段ボールの中に入った中身を検分。
本当に様々な種類の酒が入っている。
と、千波が銀色のボトルのようなものをを見つけて持ち上げる。
「ああ、シェイカーだな。簡単に言うと、これを使ってカクテルを作るんだ」
「かくてる!ヘミングウェイが愛したって言われるアレか!」
「これだけ材料が豊富にあれば結構な種類を作ることができる。何か作るか?」
シェイカーまで用意されているとは流石冴さん。
そして洋一さんのこのスキルである。
「え、洋一さんカクテル作れるんですか!?」
「見よう見まねだがな。レシピにはよるが混ぜるだけでも作れるカクテルはある。シェイカーを必ずしも使う必要はない。やろうと思えば誰でもできる」
「へぇ・・・」
ホントに洋一さんは何でもできるな。
関心している間に、洋一さんは段ボールの中身の検分を進めている。
「ラムはあるな。・・・ライムジュースを買っておいて正解だったようだな」
取り出したシェイカーを洗い、キッチンペーパーで丁寧に水気を拭き取り準備完了。
シェイカーにカラカラと氷を入れ、ラムとライムジュースとシロップをメジャーカップで量ってシェイカーに入れる。
蓋をして、映画とかでよく見る動きでシェイカーを振る洋一さん。
洋一さんの太い腕が振られると、シャカシャカ、カシャカシャという軽快な音が響く。
「「「おおー!」」」
何て言うか、凄く様になっている。
これでバーテンダーの恰好してたら本職の人かと勘違いしてしまいそうだ。
洋一さんだったらバーテンダーの恰好も様になるだろうなぁ。
そんな妄想はさておきシェイカーが振り終わり、グラスに静かにカクテルが注がれていく。
流石にカクテルグラスなんてないから普通のグラスだが。
そのグラスがスッと千波の前に差し出される。
「フローズンではないが、ダイキリだ。生ライムや生レモンを使うレシピもあるが、今回はライムジュースを使った簡単なレシピだ。ヘミングウェイに縁のあるフローズンダイキリの元になったカクテルと言えばわかるか?」
「おー!これが!・・・うめえ!すっきりした甘酸っぱさだな!」
ヘミングウェイとかフローズンダイキリとかはよくわからないが、千波にとっては馴染みあるワードだったようだ。
嬉々としてグラスを傾ける。
千波はダイキリを気に入ったのか、少量ずつではあるが何度もグラスを口に運んでいる。
「辰馬ー!お前も飲んでみろよ、だいきり!甘酸っぱくて美味いぞ!」
「そうなのか?じゃあ一口だけ・・・」
「あっ、千波、バカ!」
カクテルってモノにはよるけどかなりの度数あるんだよね。
特にダイキリの元はラム。蒸留酒で結構の度数の酒だ。
だからこそよっぽど軽めのモノを作らない限りビールよりアルコール度数が高くなりやすいわけで。
材料はラムとライムジュースとシロップ。どう見てもダイキリって度数高いよな。
「おー、うまい!それに体が温まってきたッス!」
「だろー!うまいよなー、だいきり!」
ダイキリを飲み終わった辰馬の顔が一気に赤くなる。
グラスに残っていた量は結構少なかったのだが辰馬にとっては十分すぎる量だろう。
さり気なく千波の顔も真っ赤に染まっている。
「ああ、遅かった・・・」
「あのダイキリで辰馬のアルコール許容量がオーバーしたようだが」
「ですよねー。・・・洋一さん、もし辰馬のベアハッグが俺に来たら助けてください」
「善処しよう」
この後に起こるであろう惨劇をなんとなく感じ取り、洋一さんに救助要請をしておく。
そして俺はその未来を回避するため、すぐさま台所に行きグラスに水を用意した。
「ほら、水飲んどけ。千波」
「おー。さんきゅ、裕。んぐ、んぐっ・・・はー、水うめー!あはははは」
そう言って水を千波の前に置く。
千波は酔ってはいるものの意識はハッキリしているらしく水を一気に呷る。
が、やっぱり結構酔ってはいるらしく水を飲みながら爆笑している。
だがこの状態なら千波はまだ大丈夫そうだ。
問題は―
「辰馬、大丈夫か?水飲めそうか?」
「うー・・・」
顔を真っ赤にしながらゆらゆらと揺れている辰馬だ。
声を掛けても唸り声をあげるだけ。
「ほら、水だ。後が楽になるからちょっとでも飲んどけ」
「ん、ぐ・・・んぐ、んぐ」
自発的に動きはしないが、グラスを口元に運ぶと少しずつ水を飲み始める。
辰馬の喉もゆっくりと動いているのできちんと水を飲んでいるようだ。
なんかこう、子供をお世話しているような感覚になってきて微笑ましい。
「お、ちゃんと飲めたな。よし、えらいえらい」
「へへへぇ・・・」
グラスが空になったのを確認してテーブルに置く。
まだお世話している感覚が抜けていなかったのか、思わず辰馬の頭を撫でる。
辰馬も満更ではないのか子供のようにへにゃりと笑う。
うん、もう少し水を飲ませれば落ち着くかな。
そんな風に考えて、完全に安堵した瞬間だった。
「裕さん・・・裕さーん!」
「おごっ!?ちょ、辰馬・・・」
「裕さん裕さん裕さん裕さん裕さん!だーい好きッスー!」
案の定というか分かっていた結末というか。
辰馬が弾丸のようなスピードで俺に飛びついてきた。
当然俺がそれを受け止めきれる筈もなく、肺から空気を漏らしながら運動エネルギーに飲まれるまま床に激突する。
「ごふっ!ちょっ・・・苦し、しまって・・・ギブギブ!イデデデ!よ、洋一さん、ヘルプ!」
「ああ」
「なら俺は洋一さんに抱き着くー!」
「むっ。構わんが・・・」
辰馬が俺を床に押し倒し、千波は洋一さんの背中に飛びつく。
ていうか辰馬、抱き着くのはいいけど締まってる、首締まってるから。
なんというか、酔うと人にくっつきたがるなあお前ら。
そんな感想が頭に過ぎりながら意識が遠のきはじめる。
あ、本格的に締まってるっぽい。
「辰馬、それくらいにしておけ。裕、大丈夫か」
「かはっ、けふっ・・・た、助かりました。っ痛つ・・・」
白み始めた視界に唐突に色が戻ってくる。
体が酸素を求め多少咳き込むも、意識はハッキリしている。
むしろ、辰馬のベアハッグによるダメージの方がデカい。
「うー・・・何で邪魔するッスかぁ!裕さぁーん!」
「裕、大丈夫かー?っと、洋一さんやっぱでけー!高ぇー!あははははは!!」
切なげな辰馬の声につられて前を見ると、洋一さんが辰馬を羽交い締めにしながら持ち上げている。
その洋一さんに千波がおぶさるようにくっついており、肩越しに楽しそうな顔が見える。
「千波、すまないが辰馬についてくれるか」
「いいぜー。おりゃー、今度は辰馬にはぐだー!あはははー!」
「裕、もう一杯水を用意してくれるか。2人の面倒は俺が見ておく」
「はい、お願いします。辰馬、ちょっといい子にしてろよ」
「裕さぁーん・・・」
洋一さんに頼まれ、水の準備するために立ち上がる。
辰馬の鳴くような声に仔犬を連想してしまい、後ろ髪を引かれつつも俺は台所に向かう。
もうグラスじゃ足りないだろうからピッチャーで出すか。
というか、最初からピッチャーで水を用意しておくべきだったな。失敗した。
軽くピッチャーを洗い水を用意して戻ると、随分と静かになっていた。
「あれ・・・?」
「2人とも完全に意識が落ちた。裕、すまないがお前のベッドを借りていいか?」
辰馬が洋一さんを背もたれにした状態で眠っており、その辰馬に抱き着くような体勢で千波も寝ている。
普段中々見ることのない光景だ。
「ええ。こっちです」
「すまない」
洋一さんは2人を起こさないようにゆっくりと抱え上げる。
俺は誘導するように寝室のドアを開ける。
洋一さんがゆっくりと2人をベッドにおろし、タオルケットをかける。
筋肉のついた野郎2人を乗せたせいで俺のベッドがギシギシと悲鳴を上げているが、そこは頑張ってもらおう。
2人は横向きで向かい合うように眠っており、スースーと寝息を立てている。
「よく寝ているな」
「ふふ、顔は似てないのに兄弟みたいだなァ」
そんな2人の寝顔を眺めた後、リビングへと戻る。
「少し飲ませ過ぎてしまったようだな」
「飲ませ過ぎたというか自ら呑まれに言ったというか・・・」
「だが、辰馬も千波も楽しんでいたようだ。俺も、楽しかった」
「俺も楽しかったですよ」
テーブルの上を軽く片付け、もう使わない食器は先に洗ってしまう。
洗い物、軽い掃除程度ならば洋一さんと一緒にやればすぐ終わってしまう。
片付いたテーブルの上に、改めてお酒の準備をしていく。
正直なところ、飲み足りなかったのでもう少しだけ2人で飲むことにしたのだ。
「改めて、今日はありがとうございました。洋一さん」
「構わん。言っただろう、裕には感謝していると。お前が喜んでくれたならば、何より嬉しい。それは千波も辰馬も同じだ」
いつもより饒舌に語る洋一さん。
酔っているのせいなのかはわからないが、目じりが緩み、口角が少し上がっている。
洋一さんがこうやって感情を少しずつ表に出せるようになってきているのが、友人として素直に喜ばしい。
「はい、ありがとうございます。で、今日のお礼に俺に一杯作らせてください」
「ふむ?カクテルか」
「ええ」
レシピはさっき見ていたので覚えている。
ラム、ライムジュース、そしてシロップ。
シェイカーに氷をガラガラと放り込み、メジャーカップで量って注いでいく。
注ぎ終わったらシェイカーの蓋をして、シャカシャカとシェイクする。
中身がよく混ざり合ったら、グラスに静かに注ぐ。
「ダイキリか」
「ええ。洋一さん、カクテル言葉って知ってます?」
「ああ。ダイキリのカクテル言葉は希望・聡明だったか」
ホントに何でも知ってるなこの人。
俺なんてさっき軽く調べて初めて知ったのに。
「流石ですね。俺の、誇らしい聡明な友人に。その友に、希望ある未来があることを願って、なーんて。ちょっとキザっぽいかな」
「そんなことはない。・・・ありがとう、裕」
その後は、洋一さんにカクテル作って貰ったり、互いの近況を話したりしながらゆっくりと飲んでいた。
ふと気づけば3時を回ろうとしている。
「俺達もそろそろ寝るとしよう。裕は今日これから勇魚に会うのだろう?しっかり休んでおいたほうがいい」
「え、知ってたんですか」
「いや、もしこの集まりに勇魚が居なかったのなら何かしら贈っているか日付が変わった時間に連絡してきているだろうと���ってな。そんな風にも見えなかったからな。そんなところだろうとあたりをつけたのだが」
「流石・・・」
洋一さんの推理力というか察しの良さに脱帽しつつ、後片付けを終える。
ベッドをあの2人が占有しているため、使える布団が1つしかないためどちらがソファー使うかでひと悶着もありつつ消灯。
「おやすみ、裕」
「ええ、おやすみなさい。洋一さん。・・・千波も、辰馬も」
翌朝、昨晩の記憶がバッチリ残った辰馬による謝罪の嵐と、カクテルの飲みすぎで二日酔い状態な千波による騒動が起こったりしたものの。
朝飯を食べながら、また皆で互いの誕生日を祝おうと約束をしながら解散。
21歳の俺の誕生日パーティーは楽しい記憶で満たされて幕を閉じた。
「で、終わるワケもなく・・・」
「裕、スマン・・・その・・・大丈夫か?」
「・・・ええ、だいぶ落ち着きました」
「・・・なら、もう一発、な?」
「え・・・ちょ、もうちょっと休ませ、ンッ・・・」
夜、久々に勇魚さんと会い、誕生日のディナーに連れて行ってもらいつつ、その後は当たり前にホテルにエスコートされ。
誕生日というシチュエーションだったせいかお互いに盛り上がってしまい、折角もらったゴムも余り使うこと無く。
そのまま朝まで激しいコースと相成りましたとさ。
0 notes
ゴツい収納ボックスだけじゃダメ、絶対!JETMINMINの収納バッグがキャンパーを狙い撃ち
アイキャッチ画像出典:instagram by @jetminmin
キャンパー好みなデザインに一目惚れ「JETMINMIN」
出典:instagram by @jetminmin
キャンプ用品の収納には何を使っていますか? 無骨でカッコいいハードな収納ボックスも良いけれど、使わないときにはコンパクトにしまえて場所を取らない収納バックもおすすめです。
収納バッグであれば、車への積載時にデッドスペースにぎゅっと押し込めるのもメリットですよね。
出典:instagram by @holisticcaravan
今回はそんな収納バッグを作り出すブランドの中でも、知る人ぞ知る「JETMINMIN(ジェットミンミン)」をご紹介します。シンプルで洗練されたデザインかつ、ミリタリーカラーな製品の数々が魅力的! 今のうちに押さえておきたい収納バッグをチェックしましょう。
JETMINMINってこんなブランド
出典:JETMINMIN
静岡県浜松発のトートバッグブランド「JETMINMIN」。不要になった軍用品や廃棄品を活用し、一つ一つ丁寧に手作業でバッグを生み出しています。
受注生産のためストラップの長さ変更ができる!
出典:楽天市場
バッグは、ハンドメイドということもあり基本的に受注生産方式。そのため注文時にバッグのストラップをお好みの長さに変更できたりと、オリジナリティ溢れる製品作りが行われています。
カラー展開豊富!サイトの差し色にもなるデザイン
出典:instagram by @setagaya_100
さらにモデルによって、全9色のカラー展開があったりと選択肢の幅広さも魅力の一つ! カラーによって様々な顔を持つバッグたちは、使い方次第で統一感を持たせたり、差し色になったり、サイトをおしゃれに演出してくれますよ。
それでは数あるアイテムの中から、2つの定番シリーズアイテムをご紹介します。
9つの豊富なラインナップ「DART!」シリーズ
出典:JETMINMIN
「DART!」シリーズは、所謂ブルーシートと同素材のターピーシートから作られたバッグ。つまりは、水や汚れがついてもさっと拭き取れるので、キャンプ場や雨の日でも汚れを気にせずガシガシ使えるということ!
特徴①ちょっと防水仕様
出典:JETMINMIN
ターピーシートは、工事現場での養生や災害時の雨よけなどに使われるほど頑丈で、水や汚れに強くお手入れしやすい素材です。またバッグは、底部分に縫い目がこないようマチが設けられているので、地面に直置きしても安心。
しかしそんな工夫がされている一方で、どうしても側面の縫い目から水の侵入を完全にカットできないということから、JETMINMINのバッグは、“ちょっと防水”と謳われています。正直にスペックを表現してくれるあたり、かなり好感を持てますね。
特徴②用途によって選べる、9つの製品ラインナップ
出典:JETMINMIN
「DART!」シリーズだけで見ても、7サイズ展開のトートバッグ、ボックスポーチ、2wayトート合わせて9つのラインナップ。
特徴③トートバッグは、ゴム紐付きでコンパクトに携行できる!
出典:JETMINMIN 画像はSHORTサイズ
トートバッグ上部中央にはボタンとゴム紐がついているので、口を留めておけば中身が飛び出すこともありません。また使用しない時は、ご覧の通り畳んでゴム紐で留めればコンパクトにまとまります。カバンに忍ばせておけば、エコバッグやサブバッグとして使用しても便利ですね。
「DART!」シリーズの特徴をご紹介してきましたが、ここからは、キャンプ向きな3モデルをご紹介します。
小物ギアをポンポン収納できる「DART!WIDE」
出典:instagram by @jetminmin
「DART!WIDE」は、サイズ44×20×33cmに加え、間口63cmとギアをポイポイ詰め込める大型トートバッグ。車に積載する時に散らかりがちな家族分のシュラフも纏めて持ち運べます。
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テントも小物もぜ〜んぶ一緒に詰め込むなら特大「DART!SUPERWIDE」
出典:JETMINMIN
「DART!SUPERWIDE」は横巾なんと約1メートル。68×30×45cmの超ビッグサイズなので、テントやタープ、マットなど一切合切収納できます。撤収時に雨が降ってきたとしても、これなら安心ですね。
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シューズケースとしても���える「DART!BOX」
出典:instagram by @backstage.selectshop
こちらは「DART!」シリーズのボックスポーチ。シューズ入れにはもちろん、温泉に立ち寄る際の衣服入れとしても便利です。
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続いては、テント素材を使った「FOLLOW」シリーズをご紹介します。
普段使いバッグとしても◎テント素材を使った新シリーズ「FOLLOW」
出典:instagram by @setagaya_100
次は、テント屋さんから供給を受けたビニールテント地で制作している「FOLLOW」シリーズをご紹介。「DART!」シリーズに比べると、ハリ感のある素材でタウンユースとしても取り入れやすいデザインです。
素材は、トラックの幌(ほろ)や店舗のオーニングに使われるほど耐久性にも優れています。こちらも“ちょっと防水”仕様で、5サイズ、6色展開のトートバッグが販売。
シリーズ最大サイズ「FOLLOW-63」
出典:JETMINMIN
5サイズの中でも一番大容量でキャンプ用品の持ち運びに打ってつけな「FOLLOW-63」。間口が63cmと幅広く、マチも26cmあるので、ランタンなどを立てたまま持ち運ぶこともできます。
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タウンユースにもピクニックにも!洗練されたデザイン「FOLLOW-48」
出典:funkadelic
このサイズ感、お弁当とポットを入れてちょっとしたピクニックに出かけたくなりますね。キャンプシーンではテーブルウエアなどちょっとした小物の収納にもちょうど良いサイズ感です。
製品の詳細はこちら
【番外編】UFO
出典:JETMINMIN
「FOLLOW」シリーズと同素材を採用したUFO型バッグもラインナップ! インテリアとしてお部屋の片隅に置いても絵になるデザインです。
出典:JETMINMIN
しっかりと自立し形状を保つものの、幅広のトートバッグとしても使用できます。間口が直径32cmと広いため、キャンプシーンでも活躍! マット類やタオル、着替えなどを入れて置いておいても良さそうですね。
製品の詳細はこちら
キャンプ収納は、変幻自在かつスタイリッシュなJETMINMINの収納バッグで!
出典:instagram by @jetminmin
キャンプにもタウンユースにも、また部屋に置いてもインテリア馴染みもする万能なJETMINMINの収納バッグ。カラーや形によってテイストががらりと変わるので、色違いで使い分けても楽しいですね。狭いスペースにも積載できる便利な収納バッグを車に乗せて、キャンプへ行きませんか?
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