Tumgik
angtelice · 1 year
Text
2.3日おきに送られてくる、実家の窓からの風景写真が急に真っ白になって、ああまたこの季節だなと真っ暗な気持ちになりました
私のことを殴り続けた同期も、私のすべてを虫けらみたいに踏み潰した教授も今日も楽しそうに過ごしているのに、情けない私はまだ立ち上がれずにいて、大学の匂いで肺の潰れるような気持ちとか靴の先だけ一生懸命見て歩いて日々のことを思い出してぐわっと視界が時計回りに傾いたりして
私は私のために逃げ出したはずなのに、所在のない自分に、努力の指標を失った軸のない自分に、帰る場所の割れた自分にずっと居心地の悪さを感じてしまってどうしようもない。耐え続ける痛さと逃げ出した痛さはどっちがマシだったのかなあと延々頭の中で天秤を揺らして、また視界が時計回りに傾いて
人は大怪我しないために転び方を学ぶし、怪我をして強くなるし、過去の失敗に生かされるとよく言うけど、大怪我をして以降起き上がれなくて怪我が治らなくて過去の失敗で死んだ人はどうやって生きていますか?回復の兆しは見えますか?
何回冬を通り過ぎても毎年毎年胸が痛くて、心臓に包丁を突き立てる痛みもこれよりはマシなんじゃないかと包丁を見つめて朦朧とするのは私だけじゃないはず。そう信じると少し楽になる私も大概性格が悪いよなあ。
一生はいはいで生きられるんだろうか、、強く立派に我が道を歩く友人たちにずっと負い目を感じつつ、自分と友人の間の、広がり続ける差に押し潰されながら、一生はいはいして私は生きていけるんだろうか
9 notes · View notes
angtelice · 2 years
Text
口に出さない努力は初めから無かったものにされる、と親友が憂いげに呟いた事がありました。同じ様に、どんなに鮮烈な感情も、劇的な思い出も、音や形に残さない限り存在しないことと同義になってしまいます。私は、この経験をお前の勝手な夢物語だろうと片付けられたくありません。だから此処に書き残したいと思います。長くなりますが、書きたいと思います。
昨日私は、自殺に失敗してしまいました。
痛みも恐怖もあったけれど、でも、それよりも生きていてはいけないという使命感のようなものに頭が支配されていました。遺される家族や恋人や友人を慮る余裕など何処にもありません、ただ、これ以上耐えかねる苦痛があった、それだけで突き動かされました。しかし不運にも物理的な理由により自殺は失敗に終わり、途方に暮れてどうでも良くなりふらふらしているところを友人に回収され、死にぞこなったままいろんな人に怒られ説得され時間が過ぎていき、現在に至っています。
私には一つ、あまり治らないとされている大きな病気があります。苦労にしろ功績にしろ、ひけらかすという行為自体に学も品もないように思えていた私は、この病気のことをあまり人に言っていませんでした。毎日泣いたり、吐いたり、外出に恐怖が付き纏ったり、動けないほどの倦怠感や、突然の体の震えや、夜眠ろうと思って目を瞑ると悍ましい映像が次々と流れることや、幻覚、眩暈が治らなくなったこと、とにかく誰かといるか何かをして気を逸らしていないとじっとしていられないほどの苦痛がある日々ですが、ほぼ誰にも詳細は言わずに耐えておりました。もちろん体調のために大切な約束、責任の伴う会議、単位のかかった授業といったような、絶対そこだけは耐えなければいけなかった瞬間に耐えきれなかったことも数えきれない程ありました。その度に、病気と言いたくないが故に適当な理由を言い訳として、嘘を重ねておりました。全て病気の所為にしたらいよいよ人としての終わりだと思っていたからです。でも、そんなことだから私は、日々やるべきことや大切な人より甘えや遊びを優先する堕落しきった楽しい毎日を過ごす人に見えていたようです。結果、元より無かった社会的な信頼や、大切な人たちからの期待も、遂に全て失ってしまいました。
できなかったこと、叶わなかったことや失敗や、失ったものばかり数えていた日々の中、僅かに残っていた物をさらに失った痛みは憔悴した私に全てを諦めさせ、自死に駆り立てる動機としては十分でした。目の前が悲しい色の絵の具で一色に塗り潰されて、何も見えなくなって、私は居なくなった方がいい人間だ、こんなものが存在していて許される訳がない、誰も喜ばない、みんなのために、私のために、はやく、はやく、はやく、こうするしか、。頭の中をぐるぐるぐるぐる、ものすごい速度でそんな思考が回って私を支配していました。恐ろしい手際で準備を済ませ、自殺を決行しました。
でも、死ねませんでした。
冒頭でも触れた、私が死ねなかった“物理的な理由”ですが、最期に及んでも情けないことに、一瞬の外出のその間に鍵を紛失して家に入れなくなった為、でした。人に迷惑をかけずに死ぬために用意したものは全て家の中でしたので、家に入らなければ何も実行できなかったのです。遺書も書けないですしね。そんな訳で、手段を失ってしまいました。力なくドアの前をうろうろして、へにょりと項垂れてしばらく突っ立っていました。惨めでした。全てに失敗したから終わりにしようとしたら、終わらせることすら失敗に終わったんです。この上なく惨めすぎて、もう全部どうでも良くなりました。後に母に、電話口で言われました。「鍵が無か���たのは、偶然じゃないからね。それは私がやったのよ。いい?私はあなたを愛している。あなたが思うより、強くあなたを愛しているの。どれくらいかというとね、あなたが自殺だなんて馬鹿げたことをしようとしたときに、こうやって離れているのに鍵を無くして防げてしまうくらいには、あなたを愛しているの。そう簡単に死なせたりなんかしない。だからもう、馬鹿げたことは考えないでちょうだい。」震える声でそう言われました。この瞬間私は膝から崩れ落ちて声を上げて泣きました。
その後、家に帰れない死に損ないは、フラフラと1時間半歩き続けました。10キロの楽器を背負っていたこともあり、何度もベンチや地面に座り込みながら徘徊を続けました。そのうち、天使みたいな人格をしている友達が私を回収しに来てくれました。隣の駅で待ってるからそこまで来いと言うことで、歩いて向かっていたのですが、ふと見上げた先の彼女が待つ駅には、天から幾つもの光の筋が垂れていました。川べりの傾斜の急な土手をよじ登った先で、手の泥を落として顔を上げた時にこんな景色が目に飛び込んできたものだから、少しの間呼吸も忘れて立ちすくみました。これまでとは違うあったかい雫が頬を伝って、ああ、本当に彼女は神様が使わせた天使なのかもしれない、そんなことを考えました。彼女は普段通り、暖かいカフェでゆっくり穏やかに楽しい話を聞かせてくれました。
Tumblr media
友人に家へ送り届けられた後は、家で待つ仕事帰りの恋人にしっかりと怒られてしまいました。不思議と、死のうとしたなんてまだ言ってないうちに、「生きているだけで丸儲けなんだから」と諭されて、この人には嘘が付けないなあなんてぼーっとする頭で考えていました。
他人と自分に見放され尽くしたことで一度は命を手放した私ですが、結局のところ人の愛に生かされています。幸か不幸か、こんな経験をした事で、母にも、お天道様にも、友人にも恋人にも、本当に愛されていると思えるようになりました。
まだ自分が生きていて良いのか自信はありません。死んだら喜ぶであろう人達の顔も、たくさんたくさん思い浮かびます。でも、少なくともあの時死んではいけなかったなと、振り返って思えるようになりました。何故生きるんだろうと切羽詰まって考えれば考える程、人生には大層な意義が必要なような気がしてきます。でも大義なんて、勿論あったらベターだけど、無くたって嘆くことはない、言ってしまえば嗜好品くらいのものでした。今のところ私には大義はおろか、思い残したことも夢も食べたいものすらありません。それでも、ただ愛のために生きる人生があっても良いじゃないかと思っています。立派ではないのかも知れないけどそれはすごくあたたかい生き方なような気がしています。状況は何も変わっていないので今後も、唇を噛んで耐えなければならない理不尽や、私を傷付けたい人や私自身の所為で何度も心が潰れることがあると思います。でも、私が見失っていた綺麗な綺麗な景色は、醜い人の心如きが汚せるものではありませんでした。辛い時は下ばかり向いてしまうけれど、これからはむっと踏ん張って、空を見上げて、そのことを思い出したいと思います。
何かの為に生きる、と思うとその何かが崩れた時に道標を失ってしまいます。人も物も、幸も不幸も変わらずにずっと続くなんてことはありません。無情な時の流れの中で、唯一変わらないものは、“過去には確かにあった”という記憶だけだと思います。もし今私を愛している人たちが死んでも、未来では私を嫌いになっていても、それでも今愛してくれたことがなくなる訳じゃない。記憶は褪せて、思い出せなくなることはあっても、褪せただけで、思い出せないだけで、完全に無くなることはない。そう思うと愛してくれた人がいたという誇らしさとくすぐったさで、私は一生独りでもあたたかくいられると思いました。生き続けるかは分かりません。長々滔々と述べておきながら、結局明日にはまた全て諦めていたりするのかも知れません。でも、とりあえず今はまだ死んじゃいけないと思っています。弱くて不器用で要領も悪い、嫌われ者で取り返しのつかない間違いも何度も重ねる自分は、まず愛されるに足る人間になれるように頑張りたいです。少しずつ頑張って、死ななくてよかったって思える日が来たなら、それを人生の幸せと思いたいです。
16 notes · View notes
angtelice · 2 years
Text
なるべく考えないように目を逸らすことは、怠惰に見えて最強の自己防衛かも知れなかった。誰かと一緒に居ることで誤魔化すことができるなら、一生そうしておけば良いのだ。でも1人になった時、ふと石畳がこっちを見ていたり、食べ物が緑色をしていたり、外では常に誰かが叫んでいたり。腹の中の大きな岩も、赤ずきんの狼みたいに切って割いて出してくれればいいのに。不器用なくせに変に気を使いすぎる性格のお陰で沈んだ空気を他人に見せるまいと踏ん張れる、けど、それは決して自分じゃない。いつから自分のことを放っておいているだろう、思い出せないくらい昔にはなった。自分の心の持ちようだ、自分の心の持ちようだ、自分の心の持ちようだ、いつか元気に過ごせるようになりたい。いつかがだめなんだろうなあ
8 notes · View notes
angtelice · 3 years
Text
人を愛するってつまりどういうことなんだろう。そんな果てしない議題について時々考え込んでしまうことがある。結論に辿り着いたことはないけれど、でも例えばあなたが頭を撫でたせいで崩れた髪型はしばらく整えたくないと思ったり、力を込めると同じだけ握り返してくるひとまわり大きな手にどうしようもなく頬が緩んでしまったり、別れ際、唇に残る温度だけで震えるほどの渇望に呑まれたりすること。あるいは幸せすぎると涙が止まらなくなることを知ったり、どんな理不尽や悪意に晒されても右手の薬指を撫でるだけで立ち向かえるようになったり、大嫌いで死んで欲しかった自分をあなたのために好きになりたいと思うようになったこと。それはきっとあなたを愛しているということなんじゃないかなと思ったりする。柄にもなく身勝手な幸せを望んでしまって、確約された別れに抗いたくなって、いつまでも隣で笑っていてほしいと願わずにはいられない。あまりにも綺麗すぎる日々を重ねた記憶が私の中に残るであろうというだけで、もしもこの先ひとりぼっちになっても生きていけるとすら思える。結論には辿り着かないけれど、もしかしたらこれが人を愛するということなのかなあとふんわり思ったりしている。                      そうだとしたら、愛って綺麗だなぁ。あなたがくれたこの感情は綺麗で綺麗で時々怖くなるくらいだ。空を情熱的に染める夕焼けや、雨の中にぽこぽこ咲いている紫陽花や、星の無い空にぼんやり浮かぶ三日月や、陽炎の立ち上る横断歩道、鬱蒼とした人気のない大学の森、猫のまどろむ日向のベンチ…見渡す限りの景色の中にあなたとの思い出が溶けていて、目を向けたところに滲んで現れる。あなたのおかげで私の見ている世界は1人でいた時よりずっとずっと綺麗だ。
さて、そんな綺麗なものを後生大事に抱えて歩く私なのだが、とっても汚れた人間らしい。それは先日ついうっかり世間の声を代弁してしまった友人の言葉で思い知ったことだ。確かに私は、過去の恋人の数がどれ程か、両手に収まるのかどうかも覚えていない。覚えていないというか数として認識してない。セックスした回数も忘れたし初恋もファーストキスもいつだったか覚えていない。求められたら応える、正論を盾に自分と他人を律したりしない、そこにある感情と衝動だけが答えだと思っている人間だ。蔑まれるのも仕方ないと自分でも薄々感じてはいる。                   ただ、思うのだ。人に蔑まれる過去を持っていなかったとしたら、私はあなたに導かれるまま、ほわほわの幸せをまっすぐ大事に受け取ることはできただろうか。伸ばした手を振り解かれる傷みと、眠る彼に背中を向けて涙を流す苦しさと、上手に想い合えなかったもどかしさや自責の念や、葛藤と孤独の中で見ていた世界の色をもしも知らなかったら、今あなたがこうして手を取ってくれることがいったいどれだけ幸せなことなのかがわかっただろうか。あなたがどれ程一生懸命私を愛しているか理解できただろうか、こんなにもあなたを愛したいと思えただろうか…
私の過去の全てが、今の私を生かしている。傷痕も不器用に精一杯愛そうとして転んだものなら私にとっては愛おしいものだ。寂しさを埋めるための体温も、肌を重ねる男の背中に愛する人の影を重ねて泣くことも、その青い静かな鈍痛がかつて愛した人が残したものならその過去ごとぜんぶ一緒に愛したい。そう思うことすら汚いと言うのならどうぞ好きなだけ私を罵ってくれ。それでも大丈夫、私自身はもう無知や無垢なんてものよりも、永遠にあなたを思い出してしまうことと、西陽を受けてきらきらしているあなたの瞳を何より美しいと思えること、その瞳をまっすぐに見つめ返せることと、あと必殺上目遣いがかわちくてたまらないことのほうがずっと価値があるって知ってるから。
ところで、結局人を愛するってどういうことなんだろう。まだ考えていて、分からず終いだ。でも例えば、死んだ恋や汚い私の過去を知っても綺麗と言って抱きしめてくれたあなたを、同じ傷を持つ愛しい人を、誰よりも愛したいと思っていること。それは愛することなんじゃないか、とは思ったり思わなかったりしている。
何より愛しいこの気持ちもいずれは過去になる。寂しいけれど、私にできることはこの恋の顛末を選択することだけだ。ならば、この日々が愛すべき過去となるように今の私の精一杯を捧げよう。後悔しない今を生きようとしよう、恥も外聞もプライドも捨てて全身全霊で愛をしよう。愛するとはつまりどういうことなのか。願わくば、あなたとの日々にその答えがありますように。
38 notes · View notes
angtelice · 3 years
Text
鳴りを潜めていた絶望が頭を擡げるのは、確かこれで三度目のはずだ。この来訪が繰り返される度に、私の身体は少しずつ深くまで沈むことを覚えているように思う。前はここまで落ちた、でも上がってこれた。だからあそこまでは行っても良いんだと思っているのかもしれない。道は知らなければ長いが、一度覚えてしまえば随分近くなる。かつての最深部への到達はなんとも容易いものだったし、もう、理由も失った。たぶん、沈むことが目的だ。もしくは身体が勝手に記憶を反芻しているだけ、敷いてしまったレールの上を走っているだけ。それならば浮かぶ理由も無いんだろうしこのまま消えてしまいたい、雨に打たれて心地よくてお風呂の底に額を付けて大声で泣いて、ものを食べるのは気持ち悪くてなんだか怖くて痛くて寂しくて辛くて、昨日あんなに美しかった桜の花びらが今日になったら腐っていて、目をあけているのが億劫で、ここは苦しいんだ、浮かび上がる気力も振り絞れないほどに、諦めて溶けて消える瞬間はきっと美しくて、私も美しくなりたいと、心から、思った、
7 notes · View notes
angtelice · 3 years
Text
人の心のねじれた矛盾がすきです、矛盾する理想と感情の狭間で良心に苛まれている優しさはもっとすきです。感情って、一貫性や規則があるものではなくて、反射的な生理現象もしくは代謝みたいなものじゃないですか。毒を毒と感じることは身を守ることであり、それを排出するのもまた人の機能として正しいことだと思うので、どんな情動も受け入れ吐き出すことに罪悪感は必要ないと思うんです。それでも、信条に反する矛盾が許せないで苦しんでいるあなたは綺麗です、そんなあなたが本当に本当にだいすきです。
5 notes · View notes
angtelice · 3 years
Text
悲しくて涙を流す人にいつだって寄り添う人になりたくて、その涙をちゃんと理解できる人になりたくて、誰にも理解されない苦しみに触れられる人でいたくて、それでいつでもいつまでも弱い人間でいようと思っていた。でも、傷を舐め合う為だけに自分を傷つけて弱って、擦り切れたままふらふら歩く自分がふとなによりも醜悪な生き物に思えてしまって、耐えられなくなった。共感できることにどれほどの意味があるんだろう、常に弱っていたかった私は痛みを乗り越える方法は知らないままでいるのに、私と同じように同情だけ望む人はきっと居ない。強さを唾棄する私は1人で立つ術を知らない。自分のことすらわからないんだから座り込んでしまった誰かがまた1人で立つために背中を押す方法なんて、当然知らない。私は結局自分を救いたいだけで、痛みを共有してくれる誰かに会いたいだけなんだ、自分は自分の欲求のために人の苦しみを利用しながら生きる寄生虫のような存在だったんだ、盛大な独りよがりに過ぎなかったんだ。涙と一緒に腹の底の不快感を吐き出しながら、気が付いてしまった自分の醜悪さも一緒に吐き出せないかと喉の奥に力を込めてみたが、少し血の味が混じって終わっただけだった。
家族とか夢とか、ありきたりでもなによりも大切だった生きる理由が一つずつ壊れていく。生きるために縋っていたものを失うことは、息の仕方を忘れるくらい苦しい。もう私が日々を消化する理由は自分の中にしかなかったのに、またそれも失った。何も望みたくないと思う傍、空っぽの頭や体にはあなたへの渇望があって笑える。何も考えずただ雑踏を彷徨っている、どこかに希望落ちてないかな。落ちてるかもしれないし、今日もやっぱり地面を見つめて歩く。
4 notes · View notes
angtelice · 3 years
Text
立て続けに起こる悲しい出来事は背中にしょって歩くにはあまりにも重すぎて、いつからか酷く肩は凝り背中は丸まって足取りも重くなった。顔を上げて歩いても額を打つ雨粒が目に入って痛いだけだし、滴を拭って視界を凝らしたところでそこに映るのは他人の刃物のような視線や、道端に溜まる吸い殻とごみ、カラスにつつかれる猫の死骸に踏み潰された花、そして灰色に沈む寂寞とした街並み…そんな冷酷で澱み濁ったものばかり。いつからか自分の足元だけを見て歩くようになっていた。排気ガスやゴミの腐る匂いで息をするだけでも苦しい、数分前の厳しい言葉に情けない自分を思い出して涙が止まらない。顔を上げなくたってわかる、傘を持たずに大雨の中泣きながら歩いている惨めな人間へと向けられる侮蔑の視線。心臓が痛い、早く帰りたい、何も見たくないお願いだから放っておいてくれ。あ、横断歩道、信号だ、確認しないと…一瞬だけ信号を見よう、何も見ないように、一瞬だけ…覚悟を決めて顔を上げた次の瞬間、私は息を呑んで硬まった。                      そこには、大きな虹がかかっていた。       コントラストの低い街並みと単色の絵の具で塗りつぶしたような空、そこに架かる光り輝く7色の橋。灰色の世界を突き破る鮮やかな色彩。しばらく、動けなかった。そのうち太陽はすぐに翳り、虹も消えたけど、でも私は見た。私の体温を急激に奪っていく憎たらしい雨粒に、雲間から溢れた陽光が反射する瞬間だけ現れるあまりにも美しい幻想に、私は偶然居合わせた。きっと傘と後ろ指差して私を横目に通り過ぎていった通行人は気付かなかっただろう。涙で滲んだ7色がこんなにも美しいなんて知らないだろう。また泣いた、でも気付いたら笑っていた。いつぶりかわからないけれど心の底から幸せで笑っていた。雨も不幸も他人の悪意も涙も、きっとこの瞬間を私が独占するためにあったんだと思えばもう何だってよかった。記憶の中にだけまだ少し残ってるこの虹のこと、いつまでも覚えておこう。これからどうせまた悪意や不幸に揉まれて擦り切れていくんだから、そんな時に思い出そう。まだ私は虹を美しいと思えるんだって。だから大丈夫だ、今日は顔を上げて背筋を伸ばして歩いて、帰ろう。
6 notes · View notes
angtelice · 3 years
Text
指に吐瀉物のにおいがこびり付いてしまって、また涙が止まんない 壁に押し付けた背中が冷たい、それが胸と喉が焼ける熱さを鮮やかにするから物凄く不快で つい手首の血管を睨み付けてしまう 血を流して胃酸と汚物に塗れた左手と、カッター握りしめたり物を投げ壊したりする右手で私は明日もピアノを弾くんだ、だからかな、ピアノを弾いてる間ってすごくすごく楽しい あ、何いってんだ今私 天井が回ってる この風景好き
4 notes · View notes
angtelice · 3 years
Text
時計がぐるぐる回る間じゅう動悸、汗、腹痛に嘔吐、目眩が止まらない一緒に 混濁する意識は左腕の傷たちに爪を立てた瞬間に浮上しますが、私は今何をしていたんだっけ 感情も記憶も必要ない頼りになるのは痛覚と疲労眠い、眠れない、気の狂いそうな長い長い時間と私は今日何をしていたんだっけ?手足が痺れてほっぺが冷たい 腹の底だけ熱い脳みそは多分甘いふと気付いた時の恐怖は大丈夫すぐに忘れてブロンの空箱もカッターも引き裂かれた楽譜も愛おしい私はいつも柵のない屋上でキラキラ光る足元の夜景に溶ける瞬間を頬を撫でる夜風に全身を包まれる瞬間をいつでも、夢見ています死がだんだん近づいて来るのはこの上ない幸せででもまだ私はもう少しもっともっとそれから 今、たった5秒前の自分は何をしていたんだっけ
5 notes · View notes
angtelice · 3 years
Text
ふと気付いた時、踏切の真ん中に立ち止まってた、暴力的に強い光が物凄い勢いで私に向かってきてるとき、その一秒もなかった間にあらゆる記憶が脳裏を流れてって、次の瞬間背中を押されて腕を引かれて、また気付いたら歩いてた、寒いよってLINEで初めて寒いことに気付いて体が震え始めて、変なのーさっきまで平気だったのにーってなんか面白くて笑えた、雪が降ってる夢を見た
3 notes · View notes
angtelice · 3 years
Text
血と涙があったかい
2 notes · View notes
angtelice · 3 years
Text
そうか、出会った瞬間、口に運んだ瞬間に最高の感動が約束されてる美味しいものって、だいたい後半死ぬほど気持ち悪いんだよな。ラーメンでもスタバでも。あー、あの、ぬるいスープに浮かぶてらてらの油とか、味のしないフラペチーノの氷がでろっとコップの底に横たえてるのを、箸なりストローなりを持て余しながら見つめる時の感情ってすごい既視感ある。ばいばい今までありがとうってLINEするときの感情と一緒じゃない?片付けるの大変だよね、もう気持ち悪くて口に運べない美味しかったはずのものも、大好きだったはずなのに冷めてしまった気持ちも
きっとふとした時にあ、欲しいって思うホットコーヒーくらいのものが一番心地いいんだね。いつも、なんとなくで頼んでしまうような無意識の信頼に、なんだかほっとする苦味。そういえばコーヒーは時間が経って冷めてもみっともなく姿が変わることもないね。そうだよ、冷めても美味しいはず、きっと。あー美味しかったってえいやって飲み干してすっきり終わるはず。素敵だなあ、良かった、やっと身体に良い恋ができてる気がするわ。カフェインの中毒性には目を瞑って、ひとまずタリーズの注文はホットコーヒーに決定です。
3 notes · View notes